○
政府委員(
志場喜徳郎君) ただいま議題となりました
外国証券業者に関する
法律案外一
法律案につきまして、提案の理由を補足して御説明申し上げます。
まず、
外国証券業者に関する
法律案につきまして申し上げます。
現行の
証券取引法は、当初より、国内において証券業を営む者として
外国証券業者を全く考慮の外に置き、国内の証券会社のみをその規制の対象としてとらえておりまして、このことは証券会社の免許制採用を柱とする
昭和四十年の同法の一部改正の際にもそのまま踏襲されてまいりました。
しかしながら、昨今、
資本取引及び証券業の国際化には著しいものがあり、わが国の証券会社が海外に進出する例も増加してきている事情にかんがみますと、
外国証券業者がわが国に進出できないこととなっている現行制度をそのまま維持することは適当でなく、この際支店形態での進出を認めるための法制を整備すべきであると考え、今回、この
法律案を提出することといたした次第であります。
この
法律案におきましては、提案理由の説明にもございましたように、
外国証券業者に対し、原則的には国内証券会社に対すると同様の規制を行なうことといたしておりますので、ここでは、国内証券会社についての取り扱いと異なるおもな点につきまして、若干補足させていただきます。
まず、免許につきましては、
外国証券業者が国内に設ける支店ごとにこれを付与することといたしております。これは、
外国業者の本拠が国内にないため、本支店を含めてその法人の営業を一体として見るよりは、各支店をそれぞれ本店に直接従属する別個の営業体としてとらえることが実際的であり、指導監督上も適当であると判断されるためであります。また、免許は原則として証券業専業でないものには与えないことといたしておりますが、これは、わが国において証券会社が原則的に兼業を禁止され、また、特に
金融機関が証券業務を営むことができないとされていることに対応して設けることとした規定であります。ただ、本国においては
金融業などを兼業しておりますが、わが国においては証券業のみを行なう場合であって、かつ、本国においても証券業につき明確な区分経理が行なわれているような者につきましては一定の例外を設けることを考慮いたしております。
次に、引き受け業務の一部についての許可の規定でありますが、本来、社債発行等の場合における引き受け業務につきましては、その業務のうちのどの部分でありましても国内で行なうためには免許を要するとするのが原則であります。しかしながら、国際的な証券発行は今後いよいよ盛んになることが考えられますとともに、諸
外国における慣行をも考慮いたし、たとえば、たまたま幹事証券会社から勧誘を受けて、
外国において販売を行なうため、その幹事証券会社が発行者と協議して内容を確定した元引き受け契約に参加して調印のみをわが国において行なうような場合にまで支店を設けて免許を受けなければならないとするのは、いささか窮屈に過ぎると考えられますので、そのような場合については、簡易な許可によってこれを行ない得るように措置いたしたいと考えている次第であります。
最後に、営業保証金に関する規定であります。国内証券会社につきましては、最低
資本金の定めがあり、また、純財産額が
資本金を欠くに至った場合には早期に経営保全命令を出すなど、支払い能力確保のための手段が用意されているため、特に営業保証金制度を設けておりませんが、
外国証券業者についてはその法人の本拠が
外国にあることにかんがみまして、国内における支払い能力を直接的に確保する
意味で、この規定を設けようとするものであります。したがいまして、その額は相当多額のものでなければ投資者保護の趣旨に合致いたしませんので、
外国証券業者について法定される最低
資本金の十分の一までとすることができることといたしております。他方、あまり多額の資金を供託させ、固定化させることは、資金効率を悪化させることにもなり、会社の負担をあまりに重くするおそれがあるので、諸
外国、特に米国において発達しております保証あるいは保険制度を参考としつつ、供託に代わるべき契約を一部認めることといたした次第であります。
なお、
外国証券会社の支店の資産のうち、一定部分については、国内で保有することを義務づけることとしておりますのも、国内投資者に対する即時的支払い能力の確保という、同様の見地からの措置であります。
—————————————
次に、
証券取引法の一部を改正する
法律案につきまして申し上げます。
今回、
証券取引法を改正することといたしました趣旨は、ただいまの提案理由の説明のとおりでありますが、有価証券の発行・流通に関する制度の整備改善の必要性につきましては、
昭和四十年に行なわれました証券業を免許制とするための
証券取引法の一部改正の際に本委員会の附帯決議におきまして指摘されたところでありまして、これを受けて証券取引審議会におきまして慎重審議を重ね、昨年十二月十四日、
大蔵大臣に対して、有価証券の発行・流通に関する制度の根幹をなす
企業内容開示制度等の整備改善についての
報告が提出されました。今回の改正は、この
報告を具体化しようとするものであります。
以下、改正の概要につきまして、順次御説明申し上げます。
まず、
企業内容開示制度の改正でありますが、その第一は、
企業が増資等を行なうに際しての開示制度の改正であります。現行制度のもとでは、増資のため募集する有価証券の券面額の総額が五千万円超の場合に有価証券届出書を提出することとされていますが、これを投資者が募集に応じて支払う金額、すなわち発行価額の総額が一億円以上の場合に提出することに改めることとしております。最近における増資の実態及び投資者保護の見地からは、発行価額に提出基準を求めることが合理的であること、及び金額基準を投資者保護に支障のないと考えられる範囲内で引き上げることが適当であることを考慮したものであります。
また、現行法では、届け出の効力が生じなければ有価証券届出書は公衆縦覧に供されず、また、投資勧誘もできないことになっておりますが、これを有価証券届出書が提出されたときは、直ちに公衆縦覧に供するとともに、届け出の効力発生前にも投資勧誘ができるように改めることとしております。有価証券届出書は投資者の投資判断資料でありますので、できるだけ早期に公衆縦覧に供し、かつ、これに基づいて投資勧誘が行なわれることによって投資者に十分な熟慮期間を与えようとするものであります。
第二は、既発行証券が取引される流通市場における開示制度の改正であります。現行制度のもとでは、増資等に際して有価証券届出書を提出した会社だけが、その後、毎事業年度、有価証券
報告書を提出することとされていますが、今回の改正では、有価証券届出書提出会社のほか、証券取引所に上場されている有価証券及び店頭売買銘柄として証券業協会に登録されている有価証券の発行会社は、有価証券届出書の提出がない場合にも、有価証券
報告書の提出義務があるものとしております。有価証券
報告書は流通市場における投資判断資料でありますので、流通性に富む有価証券、すなわち上場証券及び店頭登録証券の発行会社は、すべて有価証券
報告書を提出することとするのが適当であると考えられるからであります。
また、現行法では、一年決算会社は年に一度有価証券
報告書を提出することとされておりますが、年に一度の開示では投資判断資料として十分ではないと考えられますので、毎事業年度六カ月、経過後に半期の営業及び財務の
状況等を記載した半期
報告書を提出する制度を新たに設けることとしております。
次に、国外における有価証券の発行、災害の発生等流通
価格の形成に
影響するところが大きいと考えられる事実が発生した場合には、遅滞なく投資者にその内容を開示することが適当であると考えられますので、そのような事実の内容を記載した
報告書をその事実発生のつど提出する臨時
報告書制度を新たに設けることとしております。
第三は、粉飾決算等があった場合の民事、刑事上の責任規定及び行政処分の規定の改正であります。現行
証券取引法には、有価証券届出書に粉飾決算等の重要な虚偽記載があった場合の届出会社にかかる損害賠償責任の規定が設けられておりますが、今回の改正では、投資者がこうむった損害の救済についてさらに十全を期する見地から、届出会社だけでなく、その役員、売り出し人、公認会計士または監査法人及び元引き受け証券会社も賠償責任を負うことを明らかにしております。
また、有価証券
報告書に重要な虚偽記載があった場合の損害賠償責任については、現行法には規定が設けられておりませんが、有価証券
報告書の開示資料としての重要性にかんがみ、損害賠償責任に関する規定を新たに設けることとしております。
次に、有価証券届出書等の虚偽記載等に対する刑事罰についてでありますが、現行法では、その及ぼす
影響の大きさに比して刑事罰があまりにも低く定められておりますので、虚偽記載等に対する予防
効果をあげるため、これを整備強化することとしております。
さらに、現行法では、有価証券届出書に粉飾決算等の重要な虚偽記載があった場合であっても、届出会社が訂正届出書を提出して虚偽記載を訂正しさえすれば増資ができることとされております。しかしながら、虚偽記載が訂正されましても、虚偽記載を原因とする当面の不安定要因がなくなるまでの間は、健全な姿での増資は行ない得ないと考えられますので、その間、増資を延期させる行政処分を行ない得る規定を新たに設けることとしております。
次は、株式の公開買い付けの規制に関する制度の創設であります。
これにつきましては、投資者保護と証券市場の秩序維持という観点から所要の規制を行なうこととしております。
まず、有価証券市場外において不特定多数の株主からある会社の株式を買い付け、その結果その会社の発行済み株式総数の一〇%以上を所有することとなる者は、買い付け
価格、買い付け期間等所要の事項を記載した届出書を公開買い付けを開始する十日前までに
大蔵大臣に提出しなければならないこととし、その届け出の効力が発生した後届け出の内容を公告してからでなければ買い付けを行なってはならないこととしております。
次に、公開買い付けばその対象会社にとって重大な関心事でありますので、届け出の効力の発生するときまでに届出書の写しを対象会社に送付することを公開買い付け者に義務づけることとしております。対象会社は、これにより株主の判断に資するよう公開買い付けに関する意見を表明することが可能となります。他方、株主に対しては、
大蔵省及び証券取引所における届出書及びその写しの公衆縦覧により、公開買い付けに関する情報を開示することとし、買い付けにあたっては説明書を交付しなければならないこととしております。
また、公開買い付け者が公開買い付けによらないで株式を買い付けることは、公開買い付けに応じた株主に不測の損害を与えることにもなりますので、公開買い付け期間中はこれを禁止することとしております。
なお、公開買い付けにあたりましては、買い付け株式のすべてを単一の
価格で買い付けなければならないこととするほか、株券の受け渡し等について一定の規制を行ない、投資者保護をはかることとしております。
以上をもちまして、
外国証券業者に関する
法律案及び
証券取引法の一部を改正する
法律案の提案理由の補足説明といたします。