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参考人(福岡正巳君) 福岡でございます。地震に対する土木
構造物のことにつきましてお話を申し上げたいと思います。先ほど大澤さんのほうからお話がありましたけれ
ども、このパンフレットを借用いたしますならば五八ページに橋梁の設計のしかたのようなものが書いてございますので、それをごらんになりながらお聞き願いたいと思います。
まず、地震に対する土木
構造物の設計の方法でございますが、これは現在のところ、各
機関ごとあるいは各学界ごとに
基準ができております。で、
建築の場合は、
構造物が簡単と申し上げては失礼かもしれませんが、まず一種類のものとみなせるわけでございますが、土木
構造物の場合には非常に種類が多いものですから、
一つの
基準でこれをカバーするということがなかなかむずかしいわけでございますので、いろんな
基準が生まれているわけでございます。で、このほかに、土木の
構造物をつくります場合には、実際工事をやって物ができ上がってまいりますので、これを施工と称しておりますが、その施工を行なう場合におきましては、十分に行き届いた工事がなされていなければならないわけでございます。で、その工事を実施する場合に、十分な品質管理がなされているということが重要でございます。十分な品質管理を行ないまして、設計のとおりに施工いたしますというと、りっぱな
構造物ができるわけです。
で、先ほど、大澤さんの話しにありましたように、ロサンゼルス地震で非常に大きな
被害を受けたわけですけれ
ども、特に私、感心いたしましたのは、ロサンゼルスの中心街におきまして、
被害を受けた建物と受けない建物がありました。設計の方法につきましては、たいして違いなかったと思いますけれ
ども、工事を実施する途中で
予算の
関係とか、そのほかのやむを得ざる事情があったかと思いますけれ
ども、工事の施工のしかたが適当じゃなかったというために、ほかの建物よりもよけいに
被害を受けたというものがあるという話を聞いております。ですから、私
どもは
基準をしっかりつくるとともに、工事を実施する際に十分入念に品質を管理しながら、いいものをつくっていくということが必要ではなかろうかと思います。これは耐震という面からだけではなくて、そのほかのいろんな面から考えましても重要なことでありまして、耐震だけが特にどうということはありませんけれ
ども、こういう点がややもするとおろそかになるというふうに考えられます。
で、地震が襲来いたしますというと、
構造物のこわれるのがいつも弱点でございまして、その弱点というのは、設計のときにつくられた弱点と、それから施工のときにつくられた弱点と二種類ございます。で、地震が起こるたびに新たな弱点が発見されまして、それを次第に直して今日に至っているという状況でございます。今回の地震におきましても、弱点というのがいろいろなところにあらわれております。で、私
どもは、その弱点を
強化する方法をこれから考えていかなければならぬと、こう思っております。
で、さて話をもとに戻しまして、
基準のことでございますが、まず最初に、土木
構造物の中で一番よく出てまいりますのは、コンクリートまたはスチールでつくった
構造物であります。この
構造物の耐震設計のしかたには二種類ありまして、
一つは非静的な方法であり、他の
一つは動的な方法であります。
この静的な方法というのは、関東震災の起こりました大正十二年ころに考えられました方法でありまして、昔の土木研究所の所長——当時は、土木試験所と言うておりましたが、そこの所長をなさっておりました物部博士が考えられた方法だと言われております。
建築のほうでは内藤多仲
先生が考えられた方法だといわれておりますが、土木のほうでは物部
先生のお考えになった方法だというふうにいわれております。その方法は、ここに
構造物があったといたしますと、重力というのは上から下のほうに向かって、地球のしんのほうに向かって作用しておりまして、これは大きさは一Gであるというふうに考えておるわけです。地震力をこの建物の重さの重心に横方向にかけまして、地震は横から建物あるいは
構造物を引っぱって倒そうと、こういうふうな力だと考えているわけです。その横方向から引っぱってこれを倒そうという力の大きさは、地震の際に重力の〇・二倍あるいは〇・一倍というような大きさを特っているというふうに考えておりまして、そういったふうな水平地震力を横にかける方法をこれを震度法と称しております。その水平力の大きさをじゃあ実際どの程度にしておるかということを申し上げますと、アメリカの場合は今度のロサンゼルス地震の際にこわれた
構造物で見ますというと、〇・〇三から〇・〇六ないし〇・〇八という程度の大きさに達しております。日本の場合はそれではどの程度の大きさにしているかと申しますと、先ほど申し上げましたように、
構造物によって違いますけれ
ども、例を橋梁にとってみますと、〇・一から〇・三まで使っております。ですからアメリカの場合に比較いたしますというと、もしアメリカが〇・〇五で日本が〇・三といたしますというと六倍の強さの地震力を考えておるということになろうかと思います。そういったふうな方法が静的な方法でございます。しかしながら
構造物のたわみ性と申しますか、たわみやすさが大きくなってまいりますと、ちょうどこの辺で申しますというと霞が関ビルなんかはそれに相当いたしますけれ
ども、橋梁で申しますと、いまつくっております第二関門というようなものは非常にたわみやすい
構造物になっております。そういったふうなものの場合には、ただ単に地震力を横にかけて設計するというようなことでは不十分でありまして、もう少し地震の波の性質を取り入れまして、そうして
構造物のたわみやすさを取り入れて設計をしなければなりません。こういったふうな場合には動的設計というのを取り入れます。建物の持っております固有周期が変わりますというと地震力の大きさが変わってまいるわけです。そういったふうな二つの方法を使って実施しておりますが、いずれも
問題点を含んでおります。
第一の静的方法に返ってみますというと、これはその地震係数と申しますか、地震係数の大きさ〇・三なりあるいは〇・二というものをきめる場合に、その中を三つに分析して考えております。第一番目はその位置における地震の強さ、これを考えております。その位置における地震の強さはどういうふうにして決定するかと申しますというと、あとからお話しになります
河角先生の御研究の結果を普通は使うのでございます。
河角先生が震度期待値のマップをおつくりになっているのは有名でございますが、その震動期待値によりまして非常に地震の起こりやすいところ、地震の多いところ、これはその係数を大きくとります。で、地震の起こりにくいところは係数を小さくとるというような処置を講じております。
その次に考えますのは、地盤によって地震力の大きさは違うということを取り入れまして、地盤係数というものを考えております。たとえば東京の山の手におきましては地震力が弱いだろう、下町の地盤の柔いところは地震力が強いだろうということを考えまして、その違いを数字の上にあらわしておるわけです。
第三番目の因子といたしましては、
構造物の重要度というものを考えております。この
構造物の重要度というのは、たとえば
道路で申しますというと、国道というようなものはこれは国の幹線でございますので重要度は高いと見なきゃならぬと思いますが、数軒しか家がないところの山の中というようなところでは重要度が低いと考えて、地震係数を小さくとるというようなことになるわけですが、そういったふうなことを考えて三つの要素を設定して、これをかけ合わして震度の大きさにいたしておるわけでございます。この
考え方は、現在の新しい耐震設計の
考え方でございますが、先ほど大澤さんのお話になりました
建築についてこれを見てみますというと、病院だとかあるいは学校というようなものは重要度が高いというふうに考えられますので、この重要度係数を大きくとるということになろうかと思います。で、われわれのこの
考え方は十日から十二日までの日米の耐風耐震
構造専門部会におきましても
議論されまして、アメリカでもこういったふうな
考え方をとっていきたいというふうに申しておりました。
で、いま申し上げましたように、この地震係数だけでそれじゃ建物の地震に対する強い弱いはきまるかと言われますと、それは確かに
一つの尺度でございますけれ
ども、そのほかにまだ二つばかり重要なものがございます。
一つは材料の持っております許容強度というものでございます。地震の場合には平素の場合と違いまして、力が瞬間的にかかるわけです。したがいまして持続的にかかっている力と同じような
考え方で設計したのでは少しオーバーな設計になり過ぎるというので、材料の許容強度を地震時には高く買っております。たとえば信頼性の非常に高い材料につきましてはその許容強度の割り増しを大きくする、それから信頼性の少ないものにつきましては許容強度の割り増しを少なくするというようなふうにいたします。で、ある設計
基準におきましてはスチールでは一〇〇%増しにする、コンクリートは五〇%増しにするというようなことをやっております。で、アメリカのカリフォルニアの設計
基準におきましては、割り増しを三三%にいたしております。この割り増し率が日本のほうがアメリカよりも大きいわけですから、アメリカのほうが日本よりも設計震度が小さいからといって、直ちにアメリカのほうがこれだけ弱い設計をしておるということはなかなか言えないわけでございます。
それからもう
一つ、第三のファクターといたしましては、許容変位の問題がございます。これはどういうことかといいますと、われわれの場合には橋梁ですが、橋梁が破壊しないというだけでは不満足でございまして、あまり地震のために大きくゆれますというと、大きな橋でございますとハンドルをとられて車が走りにくい、そのために事故を起こすというようなことがありますから、やはり変位の大きさはある程度まで規定をしなければならぬ。で、まあ水門のようなものでございますというと、ゲートが締まらなくなるというようなことが出てまいりますから、やはり変位は考えておかなければならぬ。現在におきましてはこの許容変位によって設計がきまってくるというものも相当ございます。で、こういうことがまだほかにも個々の
構造物につきましてはたくさんあるわけですけれ
ども、そういういろいろなことを考えまして設計というものは成り立っておるわけでございまして、簡単に震度というものだけでじょうぶな設計をしているとか、あるいは弱い設計をしているということは言えないわけでございます。
いま申し上げましたのは紙の上で行う、あるいは計算機の上で行なう
基準のことでございますけれ
ども、その設計の数式の中に入れます数字がございます。たとえばコンクリートの強さは三百キログラム・パー・スクエアセンチ
メーター、あるいはスチールの破壊強度は三千キログラム・パー・スクエアセンチ
メーター、そういったふうな数字でございますが、これは何によって求めるかと申しますと、試験によって求めます。材料の試験によって求めます。で、その材料の試験のためには、わが国におきましてはJISという
制度がありまして標準化されております。そのJISの
基準に従って試験を実施いたしまして数字を求めるわけですけれ
ども、まあ地震の設計というようなものは非常に新しいものでございますから、心ずしも全部JISでカバーされておるというわけにはまいりません。まだ研究中のものもありますから、いますぐJISにしようと思いましてもできないわけですけれ
ども、そういうことがございますので、地震に関する試験というのは各実験室の独自な規則に従ってやっているというのが
実情でございます。
それからその次に、土木の
施設として重要なのは土質
構造物というのがございます。先ほど申し上げましたのはスチールとかあるいはコンクリートでつくったものでしたけれ
ども、土を主体としてつくった
構造物、これがございます。それにはどういうものがあるかと申しますと、
道路だとかあるいは鉄道の盛り土ですね、それから河川の堤防、海岸の堤防、それからアースダム、そういうものがございます。それからどこにも出てくるものといたしましては擁壁、リテーニングウオールと言っておりますが、そういうものがございます。それから港湾にまいりますというと岸壁ですね、シートパイルを打ち込んでそうしてあとに土を盛った岸壁のようなものがございます。こういったようなものにはいま申し上げましたような設計法を適用いたしましてもなかなかうまくいかない。それでまた一段とむずかしいわけでございますので、これにはいろいろ設計法が規定がされておりますけれ
ども、スチールあるいはコンクリートの
構造物以上に未解決の問題がたくさんあるのが現状でございます。
それから、その次に土木
構造物は水に接触している場合があります。たとえばダムでありますが、ダムはコンクリートだとかあるいは土あるいはロックフィルの場合にはロックによってつくられておりますけれ
ども、一方に水がたまっております。海岸堤防、河川堤防、干拓堤防というようなところではやはり一方に水があるわけです。こういう水の作用がどういうものであるかということにつきましては、これも一応の研究はなされておりまして、その水圧の大きさだとか、あるいは波の高さというようなものはわかっておりますけれ
ども、まだ未解決の問題がたくさんあります。橋梁もやはり海だとかあるいは川につくられるわけです。そのピアに対しましても、どういう力がかかっているのかということが問題になるわけですけれ
ども、これもやはり本四連絡架橋の設計にあたりましていろいろ研究いたしましたので、ある程度まではわかっておりますけれ
ども、非常にむずかしい問題をまだ残しております。
それから今度は試験の
関係につきまして申し上げたいと思いますが、
新潟地震が起こりました際に、砂が流動化いたしまして大きな災害をもたらしました。この砂の流動化というのは、十勝沖地震においても見られましたし、アメリカにおきましてはアラスカ地震において見られたのでございます。今度のロサンゼルス地震におきましては、はっきりと地盤が流動化したという報告はございませんけれ
ども、向こうの大学の
先生が現場を歩いてそういうところがあったということを、私
どものほうに話をしてくれました。それから、これもいま
調査中でございますから、そういうふうに断定するのは早いかと思いますけれ
ども、先般参りましたアメリカの技術者それからカリフォルニア大学の
先生というような方の
意見を聞いたり私
どもの経験をもって判断をいたしますというと、バンノーマンダムというアースダムが決壊いたしまして、危うく大水害を免れたわけでございますが、そのバンノーマンダムの決壊した原因は、
新潟地震と同じく砂の流動化じゃなかったかと考えております。この砂の流動化という現象は、ゆるく堆積した砂に地震がまいりますというと起こる現象ですが、これがこんなにもしばしば起こるということになりますと、われわれもそれを無視して設計を考えるわけにまいりません。はたしてどういう地盤に流動化現象が起こるのかということは、現場の
調査とそれから実験室の試験と
両方から攻めていかなければなりません。これにつきましては、短
期間でありますけれ
ども、精力的な、非常に大きな量の研究がなされておりますけれ
ども、まだまだ十分にわかっていないわけでございます。これは
関係国の科学者が、あるいは技術者が一体になりまして、将来研究を早く完成しなければならぬじゃないかと思います。場合によりましては、流動化する砂のある場所では
構造物が全然できないということにもなります。またお金にいたしますというと十倍とかあるいは二十倍というような工費がかかるということになりますので、非常に重要な問題であると考えている次第でございます。もちろん、土木研究所、
建築研究所、それから港湾の技術研究所というようなところではこの問題と取り組んでいるわけでございます。
その次に、コンクリートとかあるいは鉄材の地震時の強度というものが、これが問題になっておりまして、繰り返しの力がかかった場合に非常にもろいのじゃないか。ある鉄筋の配置をした場合には非常にもろいのじゃないかというふうにも考えられますので、これは力を入れて研究して、その成果を設計に反映しなければならぬと考えております。
それから、これは今回は水害が全然なかったわけでございまして、こんな幸いなことはないわけですけれ
ども、地震がありますと必ず起こってまいりますのは、津波でございます。これはロサンゼルスの場合は、地震は海から、水害は海から起こってくるというのじゃなくて、ダムから起こりそうになったわけでございます。カリフォルニア大学の
先生方も、もう少し大きな地震がきていたら、もう少し地震の継続時間が長かったら、あのダムは崩壊して、約百万人の人たちは生命財産の危険にさらされていただろう、というようなことを言っておりました。そういったふうな水害というのはいつも考えていなきゃならぬ。で、ダムの場合に非常にこわいこわいというような感じを受けている方が多いのですが、今回の地震におきましては、パコイマダムというのがありまして、このパコイマダムは震央に一番近いところにありましたが、その震央に近いところにありましたせいか、いままで世界じゅうで記録された中の最大の地震加速度が記録されました。それにもかかわらずそのダムは全然
被害がなかったのです。ダムをつくりましたのが一九二〇年代でございまして、まだ耐震設計というものをしていなかった時代につくられたものでございます。それにもかかわらず全然
被害がなかったということは、非常に注目すべきことでありまして、コンクリートダムは
ほんとうに強いというふうに信用していいのか、あるいはまたそうじゃなくて、たまたまじょうぶだったのかという、どっちかよくわかりませんので、現在土木研究所におきましては、その解析をいたしております。もちろんアメリカのほうでも解析をすることでございますけれ
ども、事が非常に重要と見まして、
データを取り寄せて、日米協力してその現象の解明に当たっております。なお、先ほどのアースダムのほうでございますが、これはハイドローリックフィルという特殊な形式のものでして、日本にはそういう形式のものはございません。
時間がだんだんとたちましたので、
地震対策の
問題点ということでございますので、私がいま気がついておりますことにつきまして、項目的に簡単に申し上げておきたいと思います。
まず一番最初は何と申しましても、耐震工学の振興ということではないかと思います。いままで学術的なことを申し述べましたけれ
ども、それで十分御理解いただいたと思いますけれ
ども、まだ不明な点がたくさんございます。したがいまして耐震工学を振興させますというと、これまであまりにも過剰な設計をしていた部分はなくなりまして
経費が節約できます。また逆に、われわれが知らないために非常に危険なものをつくっておりました場合には、安全なものができます。そういう非常に大きな効果がございますので、やはり耐震工学はもっともっと振興させなければならないのではないかと思います。先般アメリカの技術者の話を聞いたのですが、アメリカの
道路局だけでも年間二十一億円をかけて研究をしておるそうでございます。私は日本のことはよく知りませんけれ
ども、おそらくもっと少ない金額じゃなかろうかというふうに考えている次第でございます。で、日本でも学術会議に耐震工学研究連絡
委員会というものがありますし、
関係学会といたしましては地震学会、土質工学会、土木学会、
建築学会というものがありますけれ
ども、いずれもそうたいして研究費なるものを持っておりませんし、このような
状態ではいつになったら耐震工学上の問題が解決するのか案ぜられます。
それからその次に、最初のお話に申し上げましたように、
構造物の重要度係数というのは、これは新しい考えでございますけれ
ども、これをいかに配分すべきかという問題は、経済的な問題もからんでまいりまして非常にむずかしい問題だと考えます。できれば技術者の判断を下す場合に何かよるべきものがほしいじゃないかというふうに考える次第でございます。ですから、こういうものにつきましては広く
意見を聞きまして、何かよるべき
基準がつくられることを切に希望いたします。少なくとも人命は絶対に失わないようにしなければならぬというふうに考えます。
それから災害のときにはすぐ二次災害というものが発生するわけですけれ
ども、これにつきましての予測と対策を立てる必要がある。災害復旧につきましては、災害には必ず新しい現象が何かあらわれるものでございますので、その新しい現象をすぐ解明して、それを災害復旧の上に役立てるということが必要ではなかろうかと思います。
それからその次に先ほ
ども配られました東京都のパンフレットにもありましたけれ
ども、橋梁の場合には落橋防止というようなディーテイルの注意を払う必要がある。
それから大澤さんのお話にありましてダブリますけれ
ども、やはり強震計の設置ということが望まれます。それにはいまの地震計をもう少し簡易化いたしまして、そして現在の十分精度の高い強震計の補助として使うということが必要じゃないかと思います。
それから地中の地震は地表の地震に比べますというと、ゆれ方が少ないように私
ども思われるわけですけれ
ども、その違いを計測いたしまして、それを
構造物の設計に取り入れたいと考えます。
それから地震におきましては、地割れとかあるいは地変が起こりまして、そのために
構造物がこわれるということが間々あります。今回の地震におきましては、地盤が比較的よかったのですけれ
ども、やはり地表面にひび割れが起こりまして、そして
構造物をこわしているということがございました。それで私は、地割れだとかあるいは地変というものは予測しがたいのだとあきらめないで、もう少し
調査して、その結果に基づいてそれが予測できるようになりたいものだと思います。
それから土木
構造物は老朽化いたします。老朽化いたしますというと耐震性が低下いたしますけれ
ども、どの程度耐震性が下がっておるのかということを診断する診断方法ですね、これをもう少し熱心にやるべきじゃないか。
それから本州・四国連絡橋だとか、あるいは第二関門橋だとか、あるいは東京湾の沈埋トンネルあるいは地下鉄、地下
構造物というふうな新しい
構造物がどんどんつくられてまいります。それに対応いたしまして、それらのものの耐震の設計施工法というものも研究していかなければならぬのじゃないかと思いますが、現在の技術あるいは科学の陣営では、なかなかすぐにそれを解決するということはむずかしいので、この辺のところを補強する必要があるのじゃないかと考えます。
それからこれはアメリカで実際にやっておることですが、重要な
構造物に対しましては、設計者の資格を規定しております。たとえば学校
建築については特別なライセンスが要るということですが、わが国におきましては、少なくとも重要な
構造物を設計する人には、ぜひ耐震工学の知識を持ってもらいたいと考えるわけでございます。まあ
構造物が大きいというだけじゃなくて、事人命にかかわるような
構造物につきましては、やはり耐震工学の知識が必要だと考えます。
それから設計のことばかりにとらわれないで、やはり施工のことにつきましても十分に注意を払い、またその不明確な点は研究をしていくというふうにしなければならぬと、こういうふうに考える次第でございます。