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説明員(江口健司君) 政治的な行為に対する収支の問題は、実は正直に申しますと、税法でしかく明確には予想していなかった事態でございますが、先生御案内かと思いますが、四十一年以来この問題が特に検討を要するということで今日まで来ておりますが、先生の御質問の中で、若干不正確と言うと失礼でございますが、若干
補足させていただいたほうがよろしいかと思いますが、政治
団体、これにもいろんな形態のものがございます。いわゆる人格なき社団というようなものもございましょうし、あるいは財団、あるいは社団というようなかっこうをとっておるものもございますし、それから正式の法人の形態をとっておるものもいろいろあるわけでございますが、これらに対する支出、これは法人あるいは個人がそこに寄付金あるいは交際費、その他役務に対する対価、あるいは資産の譲渡といったような形でいろいろの形の金品が贈られるわけでございますが、この場合には、贈ったほうについてどういう問題が起きるかという一般的な税法の問題がございます。受けたほうの政治的
団体、これにつきましては、現在の所得税法では、収益事業を行なわない限りは課税の問題は生じないということにはっきりなっておるわけでございます。そこで、収益事業を行なわない限りは課税の問題は起きない、しかし、部分的には料金その他を取ってある種の経済活動を行なうとあるいは刊行物を有料で発行するといったような
事例が間間見受けられますので、その刊行物等の場合には特にまた問題が分かれまして、純粋に一般の刊行物であるかどうか、あるいはそのほかに政治的な活動あるいは特定の人の政治活動を応援するための刊行物であるかどうかというようなことによってもまた判定をしなくちゃいかぬと思いますが、とにかく有料の場合にはそれが純粋の一般の経済取引のような収益性があるかないかということによって判定しなくちゃいかぬと思います。それから特定の
団体、政治的な活動を支援する
団体、あるいはみずから政治的な活動をする
団体、これが特定の個人に対して金品を支給すると申しますか、贈与すると申しますか、そうした場合には一応現在の税法上は四十一年度以来の経緯によりまして雑所得になるべき収入というふうにみなす、したがって、それに伴う
経費がございますればその
経費を差し引いて、なお残りがあればこれは雑所得として課税の
対象になる、こういうたてまえで現在まできておるわけでございます。ただそうした場合に、雑収入とはなぜ雑収入という観念をとるかという理論構成につきましては、衆参両院の大蔵
委員会の理事等の皆さんとしばしば議論が当時行なわれまして、現在一応
統一解釈と申しましょうか意思
統一と申しましょうか、税法上の解釈を
統一したわけでございますが、ある特定の個人に対して政治的な活動を負託する、その負託するものに対応するものとして金品を、一応贈与ということばを使いますが、贈与をする、そうした場合には雑所得を生ずべき一応収入とみなそう、そこから引きますところの必要
経費、雑所得というのは必要
経費を引くことに
法律が、明文がございますので、なおそれで余りがあれば、雑所得の残に対して十二月三十一日現在の状況でもって課税をする、こういうことになるわけでございます。ところが、その雑所得の必要
経費とは一体何かということになりますと、実は冒頭に申し上げましたように、税法では必ずしも政治活動というものを一般の経済活動と違った形でとらえていないというところに実は問題があるわけでございます。政治活動とは何か、あるいはそれよりも前に政治家とは何かという点につきましても他法令等には明確な定義がないわけでございます。したがって、一応われわれの段階といたしましては、
選挙等の時期が近づきました場合には、そうした政治
団体が一応政治資金規正法に基づいて届け出が出されておるかどうかということを確認することを励行いたしてございます。政治資金規正法によって届け出を出しておられれば、その収支につきましては必ず
選挙管理
委員会等に届け出を出すことになっております。現在、御
承知のとおり、上半期と下半期の分を年二回に分けて届け出を出すということになっておりますので、私
どもは自治省その他でそれらの資料を全部写し取りまして一応資料を管理する、その中で政治活動に使われたかどうか、あるいは個人に渡されたものかどうか、あるいはその
団体みずからがそれを使ったかどうかということを判定するわけでございます。そこで特定の個人にそうした
団体から金品が一応贈与された場合にどういう場合に原則として課税になるかと申しますと、いま言ったような雑収入でありますれば、必要
経費を引きまして残があれば一応課税の
対象になる——これは十二月三十一日現在で残があればということになります、個人所得でございますから。そのほかに残がなくても個人の資産にかわっておる、たとえば、うちを建てるとか、あるいは株式を取得したとかいったような事実があった場合、あるいは個人の消費生活にそれが使用されたという事実が明らかな場合、これは、明らかに政治活動とはもちろん申せないわけでありますから、そういう資料がキャッチされた場合には、従来も必ずしも数は多くないかもしれませんが、課税処理をした例がかなりございます。そんな観点で処理をしておるわけでございます。
それからもう一点、まあ特定の人がそうした
団体等から
旅費等をもらいまして、外国あるいは国内の場合でも、まあ
程度の差で同じような問題があろうかと思いますが、
旅費は一体どうなるかという問題でございますが、一般的には雇用
関係にある場合には、所得税法の九条に、いわゆる相応の
旅費であれば非課税という規定がございます。しかし、雇用
関係がない場合にはどうなるかということになりますと、一応贈与という形になる
可能性がございます。それから、まあ政治家の定義が、先ほど申しましたように、必ずしも明確な法的な措置がないわけでございますが、まあ、かりに政治活動をしておられる方ということになりますと、先ほどの問題に返りまして、一応雑所得を生ずべき収入というふうに
考えてはどうかと、かように
考えております。したがって、それがまさしく政治的活動にその
旅費等が使われた場合、
旅費日当等が使われた場合に、それが社会常識から
考えて適当なものであるとすればプラスマイナスゼロという形で、事実上課税の問題は起きてこないというふうに
考えられます。
それからもう
一つ、特殊な場合として、
選挙の時期が近づきますと、公職
選挙法によりまして、いわゆる公職の候補者の届け出が、
公示または
告示の日から四日以内に行なわれるわけでございますが、そういたしますと、公職
選挙法によって金品の授受があったということになりますと、当該公職の候補者が、これも
選挙管理
委員会等に収支の
内容を明らかにいたしまして届け出を出すことになっております。そういたしますと、所得税法の九条一項二十二号に、公職
選挙法によって届け出を出しました法人からの金品の贈与については非課税とすると、こういう規定がございます。なお、個人からの贈与につきましては、これは相続税法のほうに規定がございまして、全く同文でございますが、やはり非課税にするという明文規定がございます。したがって、公職
選挙法に基づくところの公職の候補者ということになりますと、明らかにその部分につきましては非課税の取り扱いになるということになります。ただ、この場合でも若干私
ども、まあ少しくどくなって恐縮なんでございますが、公職
選挙法のたてまえからいきますと、
公示または
告示の日から四日以内に届け出ますと、これは一応公職の候補者という
法律の定義に全く合致するわけでございますが、いまの公職の候補者が受けますところの金品あるいは出資するところの金品等につきましては、その期間の前後につきましても
報告をすることが可能になっております。そういたしますと、いつの時期まで、
公示または
告示の前あるいは
選挙のあといつまでの
時点までを公職の候補者として判定すべきかどうかということについて、かなり問題があるのではなかろうか、まああまり何年も前の話では、これはおかしいと思いますけれ
ども、一応公職の候補者という認識が、本人もそれを意識され、多数の方がそれを認識されるという事態が起きた範囲内で、しかも届け出をされて公職の候補者になった場合、その場合の金品の出入りにつきましては非課税の
対象として
考えざるを得ない、まあかように解釈をしておるわけでございます。