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参考人(
内山尚三君)
内山でございます。
わが国のように
建設投資が盛ん在国では悪い、
信用のできない
業者が
建設業界に入ってくる可能性が多分にありますので、よい
業者を
育成し悪い
業者を排除するという
意味で、すなわち憲法に
規定しております営業の自由の原則がそこなわれない限り、すなわち
業者数を単に減らすために
許可制をしくということでない限り、やはり当然の成り行きであると思います。しかし、ここで
考えなければいけないことは、まじめに営業を、
仕事をしておる
業者、すなわち一人親方あるいは小さい工務店などが
許可制によって排除されていくということになりますと、昨年
住宅宅地
審議会で発表されましたように、今後十五年間の
住宅建設のうち、三百万戸のうちの二百万戸は一人親方あるいは町の小さい工務店に手を借りなければならないというようなことから
考えましても、そういう方向にいかないようにしていかなければならないと思います。その点で、今回の
改正で一般
建設業と特定
建設業に分けて
許可基準に難易をつけましたことは、賢明な処置であると思いますが、しかし、一般
建設業者の
許可基準などは
政令にゆだねられておりますので、この点がどういうふうになるかということは、私としては大いに関心を持たざるを得ないわけであります。次に、
建設業の
許可制は公明正大によって行なわなければならないのであります。不当な圧力によって本来
許可すべきでない
業者が
許可される、あるいは当然
許可になるべき
業者が
許可にならないというようなことがあってはならないわけであります。その点から
考えまして、今度の
建設業法の
改正におきまして、アメリカなどで行なわれておりますライセンスの
委員会というものが設けられて、そこで公明正大に
許可を与えられるということがないということは、非常に遺憾であります。このことはたぶん地方自治体などに多大な財政的な負担をかけるということを配慮して設けられなかったのではないかと思いますが、しかし
許可制をしくならば徹底的な
許可制をしいて、よい
業者は
育成し悪い
業者は排除していくということでなければ、
建設業の
許可制は大きな
意味を持たないのではないかと思うわけであります。
第三に、今回の
改正案を見ますと、
下請業者の経済的地位を強化するということが、目的の
一つに掲げられております。これは当然の成り行きでありまして、現在深刻に社会問題にもなっております
労働力の不足というものは、元請と
下請との間が対等な権利
義務関係ではなかった。そのために
下請が、いろいろ矛盾が
労働者、末端の
建設労務者に
しわ寄せされるということになっているわけであります。
建設労働力の不足はしばしば問題になっておりますが、これは
労働災害や
賃金の不払いということで、
建設業は危険左
産業である、近代的な
経営をしてないということで若年
労働者が入ってこないという悪循環が起こっておりますので、この点は十分
考えなければならないと思います。そういう
意味で元請と
下請との
関係を近代化しようと
考えた今回の
建設業法の
改正には賛成したいと思います。
ただ、問題にいたしたいと思いますのは、四十一条二項で、
下請の
賃金の不払いがあったときには、元請がそれの立てかえ払いを勧告することができるという
規定であります。これは
建設労働力の不足を解決するためには、
賃金の不払いなどの問題が起こった場合にそれを解決するためには、一番強い元請に負担をさせるというふうに
考えたわけであると思いますが、私はこの点はやはり
下請対策についての
考え方の混乱があると思います。私といたしましては、
下請はやはり労務供給
業者としてではなく、職別
工事業者として独自な
経営をする、強化していく、元請と
下請との
関係は
発注者と受注者という、そういう
関係であるべきでありまして、したがって、第一の
下請が
責任を負うというふうにすべきであると思います。そのためには、
下請を独立した
企業として
育成していくという方向がとられない限り重層的
下請が行なわれまして、一番末端の
関係ではどうなっているかわからないということが起こるわけであります。その
意味で重層的
下請を排除していく、なくしていくという方向を
建設業界、監督官庁は
考えていくべきではないかと思います。
次に、今回の
建設業法の
改正が
考えられましたのは、
建設業界の長い懸案でありますが、このことしの秋から始まります資本の自由化ということから
考えますと、外国から入ってくる
建設業者に、その国で
許可制がしかれているというならば、
わが国でも
許可制をしきまして、対等な
関係になっていかなければいけないということはあり得ることだと思います。
建設業界は現在いわば転換期に入っております。と申しますのは、
建設投資が盛んになり、景気が後退するということになりますと、ほかの
産業から
建設業に侵入してくるということが行なわれていくんです。このことは、毎年
建設省が発表いたしております年間
完成工事高のランクなどを見ますと、商事会社などが上位を占めてくるという点からも
考えられるわけであります。さらに、資本の自由化という問題が起こりますと、現在
建設業界のならわしになっております入札協定、これは指名入札と関連があるわけでありますけれども、そういうものがやはりだんだんくずれていくのではないかということを
考えておかなければならないと思います。その場合に、
建設業界に混乱が起こらないように、やはりほかの侵入する
産業、あるいは外国から入ってくる
建設業者とまともに競争できるように体質を改善していく必要があると思います。
次に申し上げたいことは、しばしば問題になっておりますし、今度の
建設業法の
改正におきましても目的の中に入っております
発注者と受注者の
契約の問題であります。この
契約は、戦後
建設業法が
改正され、中央
建設業審議会などが設けられまして、
標準約款ができましたので、戦前と比べましては非常に進歩しておりますけれども、私どもから見ますと、まだまだ対等な双務的な
関係になっていない点があります。これはひいて元請と
下請の
関係を対等左
関係にしないことになり、
下請を圧迫することになり、さらにそれが
労働力の不足の問題につながっていくわけであります。
それと同時に問題にいたさなければならないのは、適正な単価で
発注するということであります。現在のように労賃が上がり
——これは当然なことでありますけれども、労賃が上がり、あるいは資材が上がっている場合に長期的左
契約を行なう
請負契約におきましては、やはりこの問題を十分
考えて
発注しなければいけないと思うわけであります。そうでありませんと、景気後退のために
発注を急ぎましても、実際において
労働力の不足のためにその
工事を消化できないということが起こり得るわけであります。社会資本の
充実ということが叫ばれておりながら、実際に労務者の不足ということで
工事を消化できないということが起こってくることは、十分あり得るわけであります。その点で私が特に指摘しておきたいことは、
建設省の発表しております
建設白書によりますと、昨年の白書では、「
建設労働力の動向」というところで、「一般的な
労働力不足が深刻化するなかで、
建設業での
労働力の確保がいっそう困難となっているものと思われる。」というふうに、
建設労働力の不足の問題を指摘しております。これとは逆に、昨年の暮れに発表になりましたように、総理の諮問機関、である雇用
審議会におきましては、「低生産部門から高生産部門への誘導を円滑に進めるために、
労働力の傾斜配置構造の実現をはかることが必要である」ということが強調されております。その中で、
建設業は、「卸売り、小売り業や繊維製品などと並んで誘導の必要性が最も少ない部類に入れられておる。」、すなわち
建設業における
労働力需給がすでに逼迫から緩和の段階に入っているとする見解が述べられているわけでありますけれども、こういう見方が一部にあるということでありまして、こういう点におきましては
労働力の不足というものに対する政府の見解の相違がある。この点十分検討していただきたいと思います。
先ほども申しましたように、よい
業者を
育成し、悪い
業者を排除していくという
意味での
許可制であるとすれば、これは当然でありますけれども、しかし、単に
業者数が多くなるからそれを排除制限していく、既得権を守るという
意味では、
建設業の
許可制をしいた
意味がなくなるわけであります。その点で私が最も心配することは
建設業の
許可制をしくについて十分左予算の裏づけがああるかどうか。そういたしませんと、
許可制というものが非常に不完全左ものになりまして、せっかく
許可制をしきましても、悪い
業者に
許可が与えられ、一般の公共の福祉に反するような現象が起こるということになるわけてあります。
社会資本の
充実ということは佐藤首相はじめ各方面で叫ばれておりますし、私どもといたしましても
住宅問題あるいは道路の災害、交通事故などを
考えましたときに、社会資本の
充実ということをこれから進めていかなければいけないわけでありますけれども、これを実際にやるのは
建設業者でありまして、そういう
意味でやはり
建設業者、これは
建設業の
労働者を含めまして
建設業に対する理解が、非常に世間では少ないのではないか。このままほうっておきますと、
労働力の不足というような問題から、ますます矛盾が大きくなっていくのではないかと思うわけであります。
これをもって終わります。