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政府委員(
西堀正弘君) まず第一に、
わが国の
主張が通らなかったところと通ったところというような御
質問でございますが、一昨年
わが国が
ジュネーブの
軍縮委員会に入りましてこの
条約の
審議に参加したわけでございます。その当時
わが国の
主張いたしましたところは、
禁止の
兵器の
対象につきましては、ここに書いてありますとおり、
核兵器その他の
大量破壊兵器でございましたけれども、その
地理的範囲につきまして、
わが国の
代表は、
領海やも含めて、とにかく
地球の三分の二を占めますところの海域、その
海底全域、これを含むんだという
主張をいたしたのでございます。しかしながら、何ぶんにもやはりこういった
軍縮条約と申しますか、軍備管理の
条約というものは検証ということが非常に重要でございます。そうなりますと、やはり
領海といった、
各国の
主権が厳然と存するところについて検証を強行するということは、現在の
国際法のもとにおきます、と申しますか、
国際情勢のもとにおいて非現実的であるという声が、やはり
軍縮委員会におきましても圧倒的でございましたので、その点は
わが国も現実的
立場に立って、一歩前進という
意味におきまして、
距岸十二海里
以遠の公海ということで、これはやはり
わが国が
妥協した、と申しますが、
わが国の
主張がいれられなかった一番大きな点でございます。
それから次に、
わが国の
主張がいれられたところはどういうところかと申しますと、まず、これはこまかい点でございますけれども、しかし、また重要なところなんでございますが、これは先ほども
西村先生に御
説明申し上げたところでございますけれども、
地理的範囲につきまして、これは非常に
できの悪い
条約でございまして、ごたごたした
規定になっておりますけれども、
最初の
規定によりますというと、
当該沿岸国の
距岸十二海里、それには
当該沿岸国はこういった
核兵器その他のものを
設置することが
できるという
規定がございますが、それがそれのみでございまして、
当該沿岸国でない国、よその第三国が他の沿岸国の
距岸三海里——すなわち
領海——から十二海里までの間、この間に
設置できるようなふうに読める、何と申しますか、非常に正確を欠く、それは
各国の意図するところではなかったのでございますけれども、そういった条項の不備があったわけでございますけれども、その点はわが
代表団が発見をいたしまして、したがいまして、この第一条の第二項、これはわが
日本代表団の
提案によりまして、
規定を明確にする
意味で入ったところでございます。これが
主張のいれられたところでございます。それからもう
一つ、これは大きな問題でございますけれども、第五条、これは核不拡散
条約にもございますように、ここで
禁止を同意いたしましたところのものに限りませず、今後とも
海底における
軍備競争の防止というものを推し進ていって、全海域について、しかもあらゆる軍事的な利用の
禁止というものを実現していくように
努力するという、その理想を掲げまして、したがって、そういった日的に向かって「誠実に
交渉を継続することを約束する」という、この第五条がございますが、これは
わが国の
提案によりまして新たに挿入された条項でございます。
これが、いわば
わが国の
主張がいれられ、あるいはいれられなかった点でございます。
それから
検証規定でございます。
検証規定でオブザーブというのは、ここに書いておりますとおり、文字どおり「
観察」でございます。例をとりますならば、
距岸十二海里
以遠のところでよその国の艦艇がやってきて何か作業している、どうも大量殺毅
兵器を敷設するような何か活動らしいものをやっている、しかも、そのあと行って見ましたところが、妙なものがそこに備わっておるという場合には、それを
観察する。いわば、何と申しますか、潜水夫を使って
観察してもよろしゅうございますし、潜水艦をもってそばへ行って
観察してもよろしゅうございます。とにかく
観察をするということで、
観察によって検証する。もちろんあくまで公海自由の原則というものが現在の
国際法において存在いたします以上、その
観察は、そういった敷設するような活動を妨げないで行なうことが必要なんですけれども、ともかくそのオブザベーションによって検証するということでございます。それから、どこの国がそういった活動をやったかわからない、あるいはどこの国がそういったものをそこに
設置したかわからないというような場合におきましては、これはまず、どうもあの国らしいと思われる国と協議をするわけでございますが、それが全くわからないといった場合につきましては、そういった活動にかかわる地域内の
締約国、それからその他の
締約国に、どうもおかしいという旨を通告して、そうして適当な照会
——アプロプリエート・インクワイアリーとなっておりますけれども、とにかく適当な照会を行なうわけでございますが、その照会を行なっにもかかわりませず、どうも責任を有する国を確認することが
できないといった場合には、その後の査察を含んで検証手続を行なうことが
できる。こういうことに
——第三条の第三項に書いてございますけれども
——なっております。そうして、その他の
締約国の協力をも得て、それらの
締約国にも依頼をして検証手続に参加するようインバイトするということでございます。それにもかかわりませずなおかつ疑念が残るという場合におきまして、この四項にございますところの「安全保障理事会に付託する」ということになるわけでございます。
そこで、第三点か第四点の御
質問になるわけでございますけれども、それでは
国連憲章のどの
規定によってその安全保障理事会に付託するのかということに対しましては、これは第六章、すなわち「紛争の平和的解決」、これがまず第一に適用される条項であろうかと存じます。それからさらには、たとえばこの第七章の
規定、第一義的にはいま申しました第六章の「紛争の平和的解決」の条項と存じますが、たとえば
日本に向けてどうもミサイルの発射基地が太平洋のどこかに置かれているらしい、非常に脅威を受けるといったような、何と申しますか、非常に緊急な状態の場合におきましては、この第七章自体も、これは
先生御
承知のとおり強制
措置に関するところの条項でございますけれども、この条項も私は適用することが
できるのではないかと存じます。
それから最後の御
質問の点、すなわち、
領海について他の国が、かりに
アメリカがNATOのある国に対して
核兵器を、たとえば、デンマークならデンマークの
領海内に置きたい、こういった要請を
アメリカがかりにいたしましたといたしました場合、デンマークといたしましては、政策問題は別といたしまして、
領海につきましてはこれは領土と同じでございますので、厳然たる
主権を持っているデンマークといたしましては、デンマークがそれを欲するならば
設置することについて
アメリカに同意すること、これは可能なわけでございます。すなわち、許されているわけでございます。