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国務大臣(
愛知揆一君) 全体としてのまず御質問にお答えをいたしたいと思いますけれども、これはいま森
委員にもお答えしましたけれども、くどいようですけれども、整理をして申し上げますと、中国問題というのは、要するに、
わが国にとっても世界にとってもきわめて重要な課題であると同時に、きわめて複雑な問題であるということにまず十分留意してかからなければならないということが一番の前提であると思います。そうして、そのむずかしさの根本が非常にはっきりしていると思いますのは、「
一つの中国」の問題で、一方と国交を結べば一方とは断交するというのが双方の非常なきつい態度である。これは筋合いの問題としては本来解決すべき
——まあ私のことばで言えば、向こう様の内輪の問題だ。これをまあむずかしいことばで言って内政問題であるということになるのかもしれませんが、それはそういう筋合いの問題であると思います。同時にしかし、双方ともが「
一つの中国」ということで、たてまえとしては、何としてもこれは一方が「解放する」と言い、一方が「進攻する」と言っている。この点が日本としても、
アジアとしても非常に困ることで、武力抗争だけは何としてもやめてもらいたいという立場をとっている。それから、それはそれとして、大陸中国の
現状に対して、ただ単に民間の接触だけではなくって、
政府間の対話を持ちたいということは随時明らかにしているところでありますから、ただ、その
政府間の対話というのは、いわゆるプレコンディションを前提にして、向こうがこう言っているから、それには頭を下げてそこで入っていくというようなことは、日本外交のとるべき態度ではないと私は考えておるわけでございますから、双方の立場を尊重し、双方の内政に干渉しないという二大原則のもとに話し合いに入っていく。そして、その
政府間の対話の中で、いろいろの問題が、そこで率直に双方の立場が話し合えるようになれば、これは時間はかかりましょうけれども、その中でおのずからよい道が発見されるに違いない。こういう考え方で
政府間の接触も求めていきつつあるわけであります。
それからもう
一つ問題は国連代表権の問題でありますけれども、これはただいまるる森さんにお答えを申し上げたとおりでございます。私は実はこの国会の冒頭にも外交演説の中でも申し上げているように、客観的な事実として中華人民共和国
政府を中国の唯一の合法代表と認め国民
政府を国連から追放するというアルバニア決議案が、初めて反対票を上回る賛成票を獲得いたしましたということも客観的にそのままをお話しをいたしているわけでございまして、
政府としてはこのような結果をもたらした国際環境等について綿密な分析を行ない、今後の国際
情勢の推移も見きわめつつ今後とるべき方策を慎重に検討してまいります。私は、現在の
状況下におきましては、
政府は態度を明らかにしないという批判もあるけれども、私がいま申し上げたことが、そしてまたこれに関連していろいろの機会にいろいろの角度から御
質疑を受けたのに対してお答えしていることが、現在日本
政府として示し得る態度の表明としては、これ以上にいけるものではないんじゃないかと思います。同時に、その環境、条件のもとにおいて
政府として、
責任当局として申し得ること、そしてその考え方の中身の取り上げ方というものは、私はかなり明確にしておるつもりでございます。こういうかまえ方の中で私はいろいろの、それは自由民主党の中にも議論があることはいまも御
指摘のとおりでございますけれども、
政府としてはこの態度で私はけっこうなんではないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
なお、そのほかに
経済的のあれでどれだけのメリットがあるかどうかというような点にもお触れになり御質問ございましたけれども、
現状だけを基礎にしてとってみれば、たとえばアメリカを例に出すことがいいかどうかわかりませんけれども、アメリカに対するいろいろ問題があるのにかかわらず、一昨年と昨年との比較をしてみて、日本の対米輸出の伸びた額と、それから中国との間の往復を一緒にした額と比べてみれば、それが同様あるいは中国の
関係のほうが少ないわけですが、年間の対米輸出
貿易の伸びた額よりも日中間の前年間の輸出、輸入を引っくるめた額、これとがちょうど同じかあるいは少ないかぐらいの比重でございますから、
現状から見れば、私は
経済関係から見ましてもまことにこれは比重は少ないと言わざるを得ない。これが少なくとも
現状であると思います。しかも、その日本が中国大陸との間に行なっておる
貿易の額というものは、他のどこの国よりも一番大きな額であるというような事実から申しまして、現在の中国大陸の
経済状態というものがおのずから判断されるわけではないだろうか、こういうふうに考えます。