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政府委員(
山崎敏夫君) 発展途上国との
条約の
締結でございますが、
わが国は全体として大体二十五カ国の国との間に
条約を
締結しているわけでございますが、そのうち十カ国は発展途上国でございます。その
締結した順序を追って申し上げますと、パキスタン、
インド、それから
シンガポール——シンガポールは、実は
説明申し上げましたように、先方が申し入れてまいりまして、新たに
条約を
締結して現在ここに御
審議を願っておる次第でございます。それからタイ、マレーシア
——マレーシアは一回
昭和三十八年に
締結、その後四十五年に改定をいたしております。ブラジル、セイロン、アラブ
連合、ザンビア、韓国、この十カ国でございます。
先生もいま仰せられましたとおり、
わが国としましては、地理的、経済的
関係が特に緊密な
アジア諸国を中心に
租税条約のネットワークの拡大をはかってきた次第でありますが、これらの
条約がそれぞれの国との経済取引の円滑化と拡大に果たした効果はきわめて大きいと考えます。また、近年経済
関係が急速に拡大しております中近東、アフリカ及び中南米の発展途上国とも
租税条約の
締結を推進してまいる考えでありまして、すでにブラジル、アラブ
連合、及びザンビアと
租税条約を
締結したわけでございます。
それから今後の方向でございますが、
アジア諸国のうちまだ
条約を
締結しておりません国でおもな国としてフィリピンと
インドネシアがございます。これにつきましては、外務省といたしましても、大蔵省と御連絡をとりまして、早くから交渉の申し出を行なってきたわけでございます。このうちフィリピンとは過去二回にわたって交渉を行ないましたが、両方の主張にまだ相当大幅な隔たりがございまして、目下、中断の状況にございます。しかし、これはできるだけ早く再開したいと考えております。
他方、
インドネシアも、最近に至りまして向こうの税制もだいぶ整備されてきたようでありまして、従来の消極的な方針を改めて、
租税条約の交渉に応じてもいいということを申し入れてまいりましたので、近く交渉の開始に至るのではないかと思っております。
他方アフリカにつきましては、昨年の夏に東アフリカ三国、ケニヤ、ウガンダ及びタンザニアと
租税条約の交渉を行ないまして、実質的な
内容については合意を見ております。ただ残念ながら、最近、ウガンダで政変がありまして、ちょっと政情が不安定なために、最終的な署名に至っていない状態であります。また中南米に関しましては、同じく昨年の夏にトリニダッド・トバゴと第一回の交渉を行ないました。
一般に発展途上国につきましては、国内税制の整備が十分とは言えない。また、税務行政の水準も低いという問題もあります。
他方、経済発展のために必要とされる歳入の不足に悩まされておりますので、これが発展途上国一般のナショナリズムの風潮と結びつきまして、ややもすると
外国人や
外国企業に対して過大な税負担を求めるという傾向があります。そうして、
課税をめぐっていろいろなトラブルが発生することは多いのでありますが、こういう発展途上国との
租税条約を
締結しますことは、このようないろいろなトラブルを解消する上にいろいろ役立つとともに、ある
意味での経済援助の効果をも期待できるわけでございまして、われわれとしても、従来の方針どおり、この発展途上国との
条約締結にはさらに積極的に取り組んでいきたいと考える次第であります。