運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1971-04-16 第65回国会 参議院 科学技術振興対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年四月十六日(金曜日)    午前十時十八分開会     —————————————    委員異動  四月十五日     辞任         補欠選任      野上  元君     武内 五郎君  四月十六日     辞任         補欠選任      沢田 政治君     鈴木  強君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鈴木 一弘君     理 事                 長田 裕二君                 平島 敏夫君                 久保  等君                 矢追 秀彦君     委 員                 岩動 道行君                 金丸 冨夫君                 木内 四郎君                 鍋島 直紹君                 秋山 長造君                 鈴木  強君                 武内 五郎君                 向井 長年君        発  議  者  矢追 秀彦君    国務大臣        国 務 大 臣  西田 信一君    政府委員        科学技術庁長官        官房長      矢島 嗣郎君        科学技術庁研究        調整局長     石川 晃夫君        科学技術庁原子        力局長      梅澤 邦臣君        外務省アメリカ        局長       吉野 文六君        水産庁次長    藤村 弘毅君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        原子力委員会委        員        有澤 廣巳君        通商産業省公益        事業局技術長   和田 文夫君        労働省労働基準        局労災管理課長  桑原 敬一君    参考人        日本原子力船開        発事業団理事長  佐々木周一君     —————————————   本日の会議に付した案件海洋資源開発振興法案矢追秀彦君外一名発  議) ○海洋資源開発公団法案矢追秀彦君外一名発  議) ○海洋資源開発技術総合研究所法案矢追秀彦君  外一名発議) ○海洋資源開発委員会設置法案矢追秀彦君外一  名発議) ○日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○原子力損害賠償に関する法律及び原子力損害  賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) ただいまから科学技術振興対策特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、野上元君が委員辞任され、その補欠として武内五郎君が、また、本日、沢田政治君が委員辞任され、その補欠として鈴木強君が、それぞれ選任されました。     —————————————
  3. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 去る三月十六日本委員会に付託されました海洋資源開発振興法案海洋資源開発公団法案海洋資源開発技術総合研究所法案海洋資源開発委員会設置法案、以上四案を一括して議題といたします。  まず、発議者から趣旨説明を聴取いたします。矢追君。
  4. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 ただいま議題となりました四法案につきまして、その提案理由並びに要旨を御説明いたします。  今日、世界の人口の急速な増加に加え、国民生活向上産業経済発展に伴いまして各種資源に対する需要が増大しております。このため、最近、海洋資源利用が世界的に注目され、米ソ仏等先進諸国においては、海洋資源開発について国としての長期計画を立て、多額の研究開発費を投入して、これに積極的に取り組んでおりますことは御承知のとおりであります。  これは、海洋資源が人類に残された未開発重要資源であるとの認識によるものであり、投資すれば必ずそれに見合うものが返ってくるであろうとの見通しが、ほぼ確実視されるに至っていることによるものと思います。  四面海をめぐらし、国土の七五%に当たる大陸だなを有し、しかも陸上資源に乏しいわが国としては、海中、海底に眠っている海洋資源開発は、最も重要かつ緊急を要する課題であると思います。  最近における科学技術の急速な発展は、海洋資源開発を可能にしております。しかし、海洋陸上と異なり、特殊な環境にあり、その開発には巨額の経費と広範な総合的技術、さらにはすぐれた人材の結集が必要であります。そのため、わが国としても早急にこれが対策を樹立し、国の施策として総合的、計画的に推進する必要があります。  この四法案は、こうした最近における海洋資源開発重要性緊急性、さらに開発体制のおくれ等にかんがみ、海洋資源開発に対する政府の目標、基本的施策等を定め、それに基づき、開発のための機構整備し、海洋調査開発技術研究及び関連産業育成等を強力に推進しようとするものであります。  以下、法案要旨を簡単に御説明いたします。  まず、海洋資源開発振興法案について申し上げます。  第一に、この法律海洋資源開発推進することによって、わが産業振興国民生活向上に資すべきことを明示し、その達成のため、海洋等調査開発技術研究推進、その成果の利用推進研究機関整備研究者技術者の確保と勤務条件適正化等施策を講ずることとしております。  第二に、海洋資源開発平和目的に限られ、しかも自主、民主、公開、国際協力の原則に従って行なわれるべきことの基本方針を明示するとともに、政府は、これらの施策を実施するため、必要な法制上、財政上及び金融上の措置を講ずべきものとし、政府が講じた施策及び海洋資源開発進展状況に関し、毎年国会に報告すべきことといたしております。  第三に機構整備につきましては、海洋に関する調査開発技術研究などに関する事項について企画、審議決定する最高機関として海洋資源開発委員会を設置することとし、さらに、開発技術等研究機関として、政府監督のもとに海洋資源開発技術総合研究所を、また、実際に開発事業を行なう者に対する資金貸し付けを行なう機関として海洋資源開発公団を、それぞれ設立することといたしております。  第四に、委員会海洋資源開発に関する基本計画を策定しなければならないこととし、しかも、毎年基本計画検討を加え、必要があるときはこれを修正しなければならないことを定めております。     —————————————  次に、海洋資源開発振興法案に基づき設置されることとなっております三機関に関する法律案について御説明申し上げます。  まず、海洋資源開発委員会設置法についてでありますが、  第一に、この委員会は、委員長及び委員六人をもって組織することとしております。委員長国務大臣をもって充てるものとし、委員は両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命することといたしております。  第二に、この委員会所掌事務は、海洋資源開発に関する基本計画の策定のほか、海洋資源開発に関する重要な政策、関係行政機関事務総合調整のうち重要なもの、関係行政機関経費の見積もり、研究者及び技術者養成訓練その他海洋資源開発に関する重要事項について企画し審議し、その決定に基づき内閣総理大臣に対して意見を述べることであります。  第三に、委員会の庶務は、科学技術庁計画局において総括処理するものとし、関係行政機関所掌に属するものについては、その行政機関と共同して処理するものといたしております。     —————————————  次に、海洋資源開発技術総合研究所法案について御説明いたします。  第一に、この研究所は、海洋資源開発を総合的かつ効率的に推進するため、海洋に関する調査海洋資源開発技術及び機器装置に関する基礎的研究及び応用研究のほか、研究者及び技術者養成訓練等を行なうことといたしております。  第二に、研究所は、政府及び政府以外の者の出資額合計額資本金とすることとし、さらに必要に応じて資本金を増加させることができることといたしております。  第三に、研究所は、理事長、副理事長理事七人以内及び監事二人以内をもって構成し、理事長海洋資源開発委員会同意を得て、内閣総理大臣が任命することといたしております。  最後に、海洋資源開発公団法案について御説明いたします。  第一に、この公団は、海洋資源開発に必要な資金貸し付け及びその資金にかかる債務の保証並びに海洋資源開発に必要な機器委託開発、購入及び貸し付けを行なうことといたしております。  第二に、公団資本金政府が全額出資するものとし、さらに必要に応じて資本金を増加し得るものといたしております。  第三に、公団は、総裁、副総裁理事五人以内及び監事二人以内をもって構成し、総裁海洋資源開発委員会同意を得て内閣総理大臣が任命することといたしております。  以上四法案につきまして、提案理由及びその要旨を御説明いたしましたが、何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  5. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 以上をもちまして四案の趣旨説明の聴取は終了いたしました。  なお、四案に対する質疑は後日に譲ります。     —————————————
  6. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 次に、日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法律案原子力損害賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案、以上両案を一括して議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  7. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 初めに、この法律案内容のほうから入っていきたいと思いますが、最初に、従業員補償について質問いたします。  原子力事業従業員業務に従事しておる最中に損害をこうむった場合、被害者である従業員労災制度補償を受けると、こういうことになっておりますが、その法制上の手続、これについて教えていただきたいと思います。
  8. 桑原敬一

    説明員桑原敬一君) お答え申し上げます。  原子力事業に従事しております労働者災害を受けました場合には、労災保険法の第十二条によって、いわゆる療養補償、休みました場合の休業補償、あるいは障害が残りました場合には障害補償、もし死亡されました場合には遺族補償という、そういった補償が受けられるようになっております。なお、この法律に基づきまして、それぞれの請求手続規定施行規則の十一条から十六条の規定にそれぞれ書いてございます。監督署長にその請求手続をいたします。それによって、業務上でございますれば、補償通知が御本人に参る、こういうふうになっております。
  9. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 その場合、物的損害とか精神的損害、これは含まれるのですか。
  10. 桑原敬一

    説明員桑原敬一君) 労災保険法のたてまえは、使用者に無過失責任を課してございまして、したがいまして、使用者故意過失がなくても補償しなければならぬ、こういうたてまえになります。したがって、もし労働者過失がございましても、使用者側に全然過失がなくても、当然に法律上の補償をしなければならぬ、こういうたてまえになっておりますので、したがって、労災保険法は、使用者にそういった道義的な責任というものは問わずに、一律に補償しなさい、こういうふうになっておりますので、したがって、その補償内容も、精神的な損害というような積極的な損害については補償しない仕組みになっております。
  11. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 労災制度が定めておる金額をこえる損害、これが出た場合については、どういうふうになっておりますか。
  12. 桑原敬一

    説明員桑原敬一君) 先生の御指摘のような問題が出てまいると思います。現実使用者側故意があったり、過失があったりした場合におきましては、労災で定めております補償では足りないというような問題が出てまいりました場合には、まあ最終的には民事訴訟で、その足りない分、つまり積極的な損害等につきましては争って、その損害賠償を受ける、こういうことができるわけでございます。それから、その前に、もちろん労使の間で、お話し合いで、足りない分についてその補償上積みをしてほしいというようなことも、現実においては、事業所の中で、一般的な民間事業の中において行なわれております。
  13. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 原子力によるその損害の場合ば、やはりその特殊性ということが考えられると思うのです。その場合、その補償額の割り増しをするということは可能か不可能か、その点はいかがですか。
  14. 桑原敬一

    説明員桑原敬一君) 労災保険法に定めております補償以上にその上積みをどうするかの問題につきましては、労使間でお話し合いできめられることは当然にあり得ることでございますし、また、できると思います。お話のようなことが結果においてできると思いますが、法制度で、あるいはそれ以外の措置で一般的な制度としてやることは、まあ労災といたしましては、起こりましたそのけがの治療なりあるいは障害を受けましたその損失というものは、その労働能力喪失の限度によって判断いたしておりますので、その起こりました業種なり作業によってその補償の中身を制度的に違わせることは不可能だと思うわけであります。したがって、最終的には、そういった労使話し合いでその上積みをきめるということは可能でございますけれども制度的に、この原子力事業だけを労災補償法上特別に扱うことは、一般の労働者との均衡から考えまして、また、労災保険法労働力損失を補てんするという意味から、職種なり作業によって区別することは不可能でございます。
  15. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 昭和四十年五月の原子力事業従業員災害補償専門部会、この答申で、まあ相当詳しくこの問題について検討が加えられておりますが、この考え方について、どのようにお考えでございますか。
  16. 桑原敬一

    説明員桑原敬一君) 非常に詳細な内容でございまして、私ども三つくらいにこれを分けてお答え申し上げたいと思いますが、一つは、補償措置の問題が一つでございます。  これについては、住民に対して全損害について補償するというような考え方に対して、労働者もそれに合わせるべきではないかという御見解がございますが、私どもも、同じような危険にさらされておられます労働者住民と同じ具体的な損害が起こりました場合には、同じような扱いをしていただきたいということは、前々から労働省としては申し上げておったわけでございまして、その考え方はいまも変わりありません。  それから第二番目に、原子力災害におけるこういった災害というのは非常にむずかしい問題がありますので、「みなし認定」をしろというような御指摘がございますが、これについては、非常にいろいろ、何と申しますか、学問的に解明ができない分野がたくさんあるようでございます。これについては、私どもも引き続き科学技術庁等と相談しながら研究していかなければならないと思いますけれども、私ども行政運用といたしましては、原子力災害というものは放射線を含めまして非常にむずかしい問題、因果関係の究明がむずかしい面がございますので、できるだけ、「みなし認定」ということばは別といたしまして、労働者が働いておられる環境なり、作業条件なり、あるいは作業に従事されたその期間とか、そういったものを総合的に判断をして、この業務災害認定については弾力的な措置を現在もとっておりますし、今後もとってまいりたいと、かように考えております。  第三番目に、不妊症というような問題が取り上げられておりますけれども、これについても非常にむずかしい問題がございます。現実的に具体的な事例を私どもまだ聞いておりませんけれども、特に不妊症の問題は、一つには、因果関係が非常に複合して出てまいりますので、はたして業務に基因して不妊症になったということが明らかであるかどうかということが解明すべき一つの問題でございます。もし因果関係があったといたしましても、先ほど私が申し上げましたような労働能力喪失と申しますか、それとの関連があるかどうか、そういった損失があれば補てんするということが労災法のたてまえでございますが、そういった問題で、不妊症問題については今後引き続き十分私ども検討をいたしてまいりたい。  以上のような三点について一応お答えを申し上げます。
  17. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 これ、長官でもだれでもいいのですが、原子力委員会は、専門部会答申を受けて、原子力産業従業員原子力損害原子力損害賠償法にいう原子力損害に含むようその改正を考慮すると、こういう決定を同じ年の六月に行なっておりますが、それが今回見送られたのは、これはどういうことでありますか。
  18. 有澤廣巳

    説明員有澤廣巳君) 原子力施設従業員に対する損害賠償につきましては、いま御指摘のございました専門部会意見を私どもは十分尊重していきたいと思っております。この点につきましては、労働省労災保険との関係で、できるだけ労災保険の解釈を大幅に拡大していただきたい、こういうふうに申し上げてありますが、まあなかなか、いま労働省のほうから御説明がありましたように、むずかしい点がございます。したがって、私どものほうといたしましても、事故によるはっきりした損害の場合には、これはもう労災保険で十分カバーできると思います。しかし、低線量の問題から起こってくる問題につきましては、まだなかなかはっきりしたことをつかみ得ないというような事情もあろうかと思います。  それで、今回の損害補償法案の中に、いろいろ従業者災害についても補償問題を取り上げるべきでないかというふうな議論もありましたけれども、いまお答えがありましたように、一つは、原子炉といいましょうか、原子力施設設置者、それから労働組合従業員との間で労働協約の上でその問題を取り上げて、それに対応するところの条項を加えておるということが一つあります。  それからもう一つは、損害保険会社といいましょうか、損害保険の上から、この従業者損害についての保険による賠償考えておる。で、この点につきましては、ちょうど私どものこの災害補償制度検討会の場で保険会社のほうからの御意見が出ましたが、それによりますと、近く従業員に対する損害保険の構想といいましょうか、保険制度をどうするかについての案が、保険会社のほうで、保険会社プールでいま検討しておるから、その結論が出るということであります。その結論が出ました場合には、この保険制度に基づく従業員災害補償制度を取り上げたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから、もう一つの、低線量に基づく——なかなかいま突きとめるのがむずかしい問題、これにつきましては、低線量の人体に及ぼす影響につきまして放射線医学総合研究所でその研究を進めております。それがはっきりしますものならば、労災保険のほうで十分取り上げていただけると思いますが、それがまだはっきりしない間は、いま申し上げました保険制度従業員に対する損害賠償保険制度をもってやっていきたい、こういうふうに考えております。
  19. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 先ほども少しお話、か出ましたが、放射線疾病認定が非常に困難でありますが、現在の認定基準、これはどうなっておりますか。さらに、その認定にあたっては弾力的にやるべきであると思いますが、その点についてどうなっておりますか。
  20. 桑原敬一

    説明員桑原敬一君) 放射線障害につきましての業務障害認定の問題につきましては、この問題は非常にむずかしい案件でございますので——実は、最初につくりました認定基準昭和二十七年でございます。これは役所だけでつくりましては問題がございますので、斯界の御専門家にお集まりをいただきまして、この認定基準をつくる協議会を設けまして、そこで慎重審議をしてつくりまして、二十七年にまず最初つくったわけです。その後一、二回改定をいたしまして、現在使っておりますのは、三十九年に最終的につくり上げたものを基準といたして運用いたしております。  で、まあ慢性、急性に分けまして具体的な基準を明示いたしております。わりあいに急性のものはわかりやすいわけでございますので、地方の基準局なり監督署に、その認定基準によりまして、一応まかしておる。しかし、慢性的なもの、その他非常にむずかしいものにつきましては、第一線ではなかなか認定がむずかしいので、本省に認定をさせて、そこで専門家の御意見を聞きながら判定をしていく。こういう慎重な手続をやっております。考え方といたしましては、被曝線量測定等がまず大前提になりますけれども、これもなかなか、その測定結果というものと起こりました障害との関係が必ずしも明確でない場合もございますので、こういう測定結果だけにこだわらないで、先ほどもちょっと申し上げましたように、その人の働いております作業内容とか作業環境とか、作業についておりました期間とか、そういった諸条件を総合的に判断をして、いわゆる被曝可能性というようなところを推定をいたして処理をいたすということで、弾力的に処理をしております。また、放射線障害というのは、長期間潜伏、潜在をして、あとから発生いたしますので、そういった仕事、そこから離れたあとでも出てまいりますから、そういう離れたあとでも発病しました場合でも当然に補償の対象にするというような処置をとってまいっております。  まあ、今後とも、この放射線障害業務障害認定については、適確にやってまいりますために、いろいろの医学的な研究は進めてまいりたいと思いますけれども、現在までは、そういった現在し得る範囲内において斯界先生方のお知恵をかりまして、慎重に、またさらに弾力的に処理をいたしてまいりたい、こういうように思います。
  21. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 本人が、放射線疾病ではないかと、まあ意識をして医者にみてらもう、そういう場合はいいでしょうけれども、そうじゃなくて——まあ、こういう関係職員で、正式の職員といいますか、ずっと朝から晩までやっていらっしゃる方ならば、定期検診とかそういうことでやっておられると思いますけれども、そうでないいろんな人がおります。そういう従業員で、そのときだけそういう施設に入るとか、いろんな場合がありますので、一般的に、こういう原子力産業に従事したことのある人に対するそういう診断の問題ですけれども検診の問題ですけれども、この点はどうお考えになりますか。
  22. 桑原敬一

    説明員桑原敬一君) 原子力なり放射線等作業に従事している労働者につきましては、労働基準法によって、まあその場合場合によって違いますけれども最低年二回、それから項目によって違いますけれども、ないし四回健康診断を実施しなければならぬという義務づけをいたしております。そういうことで発見をしながら、できるだけそういった予防も含めまして、実際に起こらないように、また、起こりました場合の発見が早くできますような、そういった法律的な手当てもございますし、そういった法の履行を十分させるように、監督指導もいたしておるようなわけでございます。
  23. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 その検診を受ける診療所ですがね。これはどうなっておりますか。やはりある程度そういうことの専門的な頭がないと、非常にむずかしい疾病問題であるだけに、どうにでもなってしまうと思うのですが、その点はいかがですか。
  24. 桑原敬一

    説明員桑原敬一君) 法律のたてまえといたしては、使用者に義務づけておりますので、使用者が適当と思われる医者労働者診断を受けさせる、こういうことになっております。特に労働者のほうからここの診療所でというふうなたてまえにはなっておりませんので、そういうことで御了承いただきます。
  25. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 その辺で、労働省が、こうしろでなくて、その使用者のきめておる診療所のお医者さんのある程度の知識といいますか、そういうのに対しては指導されたほうがいいと思うのですけれども、その点はいかがですか。
  26. 桑原敬一

    説明員桑原敬一君) 基準法と、それに基づきます電離放射線障害防止規則というのが詳細な条文がございまして、それを十分に使用者側も理解していただき、また、そういった検診についても規定いたしておりますので、そういった防止規則を通じまして、私ども監督官が、できるだけ専門的な監督官も養成しながら、そういった事業所に対する指導啓蒙をやっております。そういったところで、前言ったような考え方で進めさせていただきたいと考えます。
  27. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、安全対策の問題に入りますが、これまで世界の原子炉事故の中で外部に影響の生じた事故の件数は、どのくらいございますか。
  28. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 先生おっしゃいました外部に影響を及ぼしたという大事故といたしましては、英国のウインズケールの事故というのがございます。目立ってはそれだけでございます。
  29. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 そのウインズケールの原子炉事故の規模はどの程度のものでありますか。
  30. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 外部のほうに対しましては、約二百平方マイルの牧草に影響がございまして、そこからとります牛乳、これの出荷をとめたというようなことがございます。それで、私たちの聞いているところでは、この事故の被害と申しますか、それは約七千万円です。日本円にいたしまして七千万円ということになります。
  31. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 被曝者の人数は。
  32. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 被曝者は、従業員の中に十四名ございます。
  33. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 外部に影響の生じたというような考え方で、いまのウインズケールだけを言われたと思いますが、死んでおる場合、あるいは炉が破損した、そういうことを含めますと、かなりふえると思うのですけれども、その辺はどの程度掌握されておりますか。
  34. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 原子力発電所の中のいろいろな事故として一応計算されますと、全部で約百件程度になると思います。
  35. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 死亡はどのくらいありますか。
  36. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) ちょっと、いま、死亡の数、計算させていただきます。死亡と障害とがございます。
  37. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いままで、大体過去三十年ぐらいの間には、まあ死亡、いま言われた被曝あるいは後遺症、そういうのがかなり世界的には起こっております。特にアメリカに非常に多いわけでありますけれども、日本の場合は、いままではどうですか。
  38. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 現在までのところ、日本には全くございません。
  39. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いままでのこの各国の原子炉の事故の原因等を踏まえて、原子力施設の事故防止の基本施策、これについては、政府としてはどのように考えておられますか。これから相当原子炉ができてくるわけでありますけれども
  40. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 私たちのほうで原子力をやります場合に、前々から申しております安全審査等で、過大事故評価ということで、安全性を確かめて、これを設置いたしております。また、そういう関係から考えられ得る範囲内におきまして十分安全であるということで進めておりまして、それを進めます場合には、もちろん過去のアメリカ等のデータ等を十分その中に把握して進んでいるわけでございます。
  41. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 この原子力災害については、他の災害と同じように、基本的には自治体が行なって政府が援助すると、こうなっておりますけれども科学技術庁はどういうふうな仕事をこれに対してやられることになっておりますか。
  42. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 賠償法におきましては、設置者が無過失責任をとっております。そうして設置者が民間に保険をかけまして——五十億を今度六十億にしていただくわけでありますが、そのほかに天変地異等、そういう問題につきましての国の補償契約というのがそこで五十億までついております。それから、それ以上の大きなものにつきましては、すべてこれを、その災害について十分間に合うように判定いたしまして、その分については国がすべてこれを援助していくという形をとっております。
  43. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 事故発生のときにとるべき緊急処置について、その施策は確立をしておりますか。事故が発生した場合の緊急処置です。
  44. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 防災計画で、中央防災計画あるいは地方ごとに地方防災計画をつくらせております。それで進んでおります。
  45. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 その場合、原子力施設周辺の地域住民の健康管理ですね、これは十分行なわれておりますか。
  46. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 原子力発電所等をつくります場合に、もちろん管理地域等を設けます。その場合には、すべて、現在のところ、一般の皆さん方には全然影響のないというところまで土地を取得いたしております。それで、それ以外に、全般的な、放射能が一般第三者に影響があるかどうかということを、その本人を見るよりも、大気の汚染程度等を常時監視いたしまして、絶対ないように行なっているというのがやり方でございます。
  47. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 原子力施設の安全性確保のために、公正な第三者のモニタリングが必要だと思いますが、その点についてはどのようになっておりますか。
  48. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 福井県あるいは福島県、それに茨城県にございますが、おもに大きい発電所がございますのはそこでございます。その関係におきましては、やはり第三者の監視機構と申しますか、設置者がやりましたデータを第三者が評価をして、十分安全であるという機構を設けたいということがございまして、われわれ原子力局におきましても、やはりそれは指導して、できるだけ設けたほうがいいじゃないかということで、すでに福井県等はできております。それで、私たちのほうもそこにすべてデータ等を出して、安全であるという評価をしていただいております。
  49. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 現行の原子炉規制法では、自治体には原子力施設の指導監督等の権限が全くありません。これに対して、自治体にも権限を持たせるような体制に持ってこられる意思はございますか。
  50. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 原子力は非常に新しい技術でございます。したがいまして、非常に専門的な問題がございますので、もうしばらく私たちのほうは、やはり中央の専門的なところでもって安全等をはかっていきたいと思います。その関係から、現在のところ、地方自治体のほうが、そういう技術能力といいますか、そういう感覚といいますか、そういう点においてはまだ十分であると判定いたしません。したがいまして、もうしばらく中央で十分これを行なって、もちろん、その自治体に対しましては現在でも実質的にはすべて連絡をして、たとえば地元対策等については十分なる連絡をとることで進めておるわけでございます。
  51. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 ということは、自治体にそういう能力ができるようになれば権限を委譲してもよいと、こういうふうにとってよろしいでしょうか。
  52. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) まあ私もそこまでまだ十分考えておりません。ただ、やはりそういう問題が将来起こった場合には、関係各省と十分相談しながら、安全が十分守れるような体制で考えていきたいと思っております。
  53. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 法律案とは直接関係ありませんが、やはり関係の出てくる問題でありますので、先日来ずっと続けてやってきております放射性物質の管理の問題について少し触れてみたいと思います。  先日の予算委員会の分科会でも質問いたしましたが、この密売事件でありますが、その後の経過はどのようになっておりますか。現在大阪府警でずっと調べられておりますが。
  54. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) いまのお答えをいたします前に、先ほどの御質問の死亡の数字でございますが、二十五人ございます。それから六十五人程度が被曝を受けたという数字になっております。  それからただいまの御質問でございますが、その後の経過を申し上げます。  大阪府警からの情報によりますと、日本希元素は酸化トリウムを約一トンセーフティ産業株式会社に譲渡いたしております。また、和歌山県の青果業の者に酸化トリウムの原鉱石あるいはモナズ石約三トンを譲渡いたしております。それで、セーフティ産業は、規制法それから薬事法に基づく許可をとることなくて酸化トリウムを含んだ医療器具を製造して販売しておりました。それから日本希元素も、規制法に基づく許可を得ずにやっておりました。  なお、日本希元素はどのような経路で酸化トリウムを入手していたかということについては、まだ大阪府警のほうで捜査中でございまして、現在のところ、明らかになっておりません。酸化トリウムとモナズ石は、現在、押収しまして大阪府立放射線中央研究所というところに安全に保管されております。  それから、こういう問題がございましたので、付近の住民に対する放射線障害についての件でございますが、和歌山市の保健所が青果業者の付近の住民に対しまして健康診断を行ないました。その結果では、現在異状はないということになっております。これは和歌山県の薬務課長からの連絡を受けております。それから、セーフティ産業株式会社が酸化トリウムを貯蔵していた所の住民につきましては、貯蔵しております場所からすべて約十メーター以上離れておりました。したがいまして、考えられるところでは放射能の影響はないと存じます。  したがって、この件は、日本希元素、それからセーフティ産業が、当然とるべき許可をとっておりませんので、その核物質を使用し譲渡を行なったという点において法律違反になっております。その関係から、今後とも大阪府警と十分な連絡をとりながら検討を進めていきたいと、こう思っております。
  55. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 このような事件の起こった原因ですね、この点ははっきりしておるのですか。どう思われますか。
  56. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) ただいま申し上げましたように、薬事法あるいは規制法等に基づく許可を受けずに、隠れてやりましたので、現在、大阪府警で十分その原因を調べていただいているわけでございます。この原因その他については、もうしばらくお待ちいただきたいと思います。
  57. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 この前も、質問のときにお答えになったのですが、去年も同じような事件があって、一年間いろいろやってきたけれども、またこういうことが起こって、まことに残念であったと、こういうことでありましたが、今後こういう事件を起こさないための対策、これについては、この間も少し触れられましたけれども、それから相当またやられておると思うのですが、どのようにお考えになっておりますか。また、現在どういうようにされておりますか。
  58. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 確かに、去年起こりまして、その後、そういう類似のところの会社に対しましてはわれわれのほうから注意監督等いたしたわけであります。それでまた、申しわけないのですが、こういうことが起こりました。したがいまして、私たちの現在検討いたしますことは、規制法なり薬事法にひっかからないで、やみでやっているものをどうするかということが一つの問題だと思います。それが一つ。もう一つは、許可をとっているところが許可をとらないところに売ったりなんかする場合があるのではないか、したがって、許可をとっているところについての注意喚起ということは早期にしなければならないのではないか。ただ、現在のところでは、本件の原因を追及いたしまして、その追及の結果において調査のしかたも十分考えていこうというふうに考えております。
  59. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 放射性物質を輸入したり売買する場合は科学技術庁の許可が要る、こういうふうになっておるわけでありますが、このことを専門的にやっておる監督官のような立場の人はあるのかどうか。また、あるとすれば何人ぐらい現在配置されておりますか。
  60. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 私のほうの核燃料課というところがこれを取り扱っております。それで、現在、兼務等を入れまして約十人がこの仕事に関係いたしております。
  61. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 それで、こういうことが今回起こりましたけれども、その監督がそれだけの体制では手薄なのではないか、このように思うのですが、その点の見解はいかがですか。
  62. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 先ほど申し上げましたように、まだ原因がわかりませんので、これは通産省と十分相談いたしまして……。その経路等で、またどういうところの経路を通るかということもございます。ただ、私たちのほうの仕事として、規制法での使用の許可あるいは出てきました報告の監査等については、一応この人数で現在のところは間に合うと、こう思っております。
  63. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 輸入する際の通産省と科学技術庁との間の連係、これに私は問題があるのではないかと思うのです。というのは、御承知のように、元の大阪の通産局の課長も、今回、任意出頭ではありますが、取り調べを受けておるわけです。結局、輸入するのが通産省で、チェックするのが科学技術庁と、こういう体制になっておるわけですが、その点に谷間みたいなものができて、この取り調べがどうなるか、これはわかりませんけれども、もしこの疑いが事実であったとすれば非常に問題になってくると思うのですけれども、その点はいかがですか。
  64. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 通産省が受けまして、その合議を私たちのほうにもらいまして、それで決定していく形になっております。現在までのところ、その制度で、まあ必要かつ十分に動いたと思います。しかし、今度の原因がそういう体系のところにどこかにあるのかということは十分検討しなきゃならないと思います。そういう環境を十分検討して今後整備させていただきたい、こう思っております。
  65. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 今回は、そうたくさんの量じゃないので、事故というまでいかないと思いますが、もしこういう密売によって事故を起こした場合、その場合の賠償責任はどうなるわけですか。具体的に言うと、密売の売った先が事故を起こした場合、輸送中に事故を起こした場合、密売によって買った先が事故を起こした場合、三つに分けて、まあ可能性はあまりないかと思いますが、どうなりますか。
  66. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) これは、物そのものが今度の賠償法の対象になりません。したがいまして、民法によって片づけなきゃいけないと思います。規制法によりましては、先ほど申し上げました譲渡・譲受けの違反ということで、六十一条にひっかかるわけでございます。それから使用許可の制限につきましては、五十二条でひっかかるわけでございます。これについては、当然、罰金刑等の規則がきまっておりますが、ただ、いま先生おっしゃいました、それを途中の人間がどう取り扱ったかというところは、これは民事的な関係でいくことになると思います。
  67. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 そういう点は、これは新しい問題かもわかりませんけれども、そういうことも含めて、先ほど言っているチェック体制あるいは監督体制をこの際はっきりしてもらいたいと、このように思うわけであります。  それとともに、また、この間この委員会で問題にした放射性廃棄物の海中投棄の問題でありますが、この場合、ドラムカンをコンクリートで固めてやられたにしても、もしそういうものが何かの事故で途中で何かに当たったりして破れて、そうして放射能が流れ出した場合、それによって何らかの事故が出てきた場合、これは非常に深いところですから、おそらく可能性は少ないと思うのですけれども、こういう場合の賠償責任はどうなりますか。
  68. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 一般的に、そういうものを海に捨てまして万が一の事故が起こりましたときには、当然、賠償法の対象になって措置されることになると思います。
  69. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 放同協が事故を起こした場合、この賠償はどうなりますか。要するに、原子力事業者から放同協に運搬する途中で事故を起こした場合、それから放同協に来てからの事故、それから放同協から原研に一部の放射性廃棄物の処理を現在させておりますが、原研で事故が起こった場合、そういういろんなケースが考えられるわけですが、放同協というものが中心になって扱っているものが何らかの事故を起こした場合、その賠償責任はどこになりますか。
  70. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 先生おっしゃいました放同協のはコバルト六〇でございます。したがいまして、今度の賠償法の対象にはなりません。これはいわば放射能の関係でございます。これは世界的に大体みんなそうなっております。したがいまして、民事の関係処理されると思います。
  71. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 だから、いまの両方を考えますと、かなり民事が多いわけですが、はたしてそういう方向でいいのかどうか。その点についてはどうお考えになりますか。
  72. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 放射線関係につきましては、大災害が起こらないという前提、それからそれにつきましては、もう起こらないように安全性を確かめて許可をするという形をとっております。したがいまして、原子力発電所のような大災害が起こらないという観念でいっているのが一つ。  もう一つは、やはり世界的なルールといいますか、見方として、当然そういう措置をとられているというのが常識になっておりますので、その関係でいっているわけでございます。
  73. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いまの廃棄物の問題ですが、大体昭和六十年には一年間で使用済み燃料千六百トン、一般廃棄物四万五千立方メートル、このようになって、それから一般廃棄物だけでドラムかん二十二万五千本相当になる、こういうようになっておりますが、この処理に非常に苦慮された結果ああいう海中投棄の問題になってきたと思うんですが、これをどのようにこれから考えていかれるのか。特にまあ保存あるいは投棄あるいは保管とか、こういうことだけじゃなくて、やはりエネルギー政策全体の上から考えてこの対策を講じていかなければただ出てきたものをどうするということだけでは、済まない問題になると、このように思うわけでありますので、その点についてはどのようにお考えになっておりますか。
  74. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) ただいま先生おっしゃいました廃棄物の量は発電所から出ます量の計算でございます。これにつきましては現在やっと、私たちのほうも、どのくらいの量が出るかというのは、敦賀等の発電が起こりましたので、そこの実績から計算が出て、まあ具体的にそういう数字が出たわけでございます。これの処理については重大問題でございます。したがいまして、現在、約一年半にわたりまして、廃棄物の処理、処分の検討会というので検討していただいておりまして、この四月一ぱい、あるいは五月にかけるところで、そこから意見書が出てくるわけになっております。まあ大体これは、内容から申し上げますと、海洋投棄する場合の問題点、あるいは地上に保管する場合の問題点、それに対する体制の問題等が検討されておりまして、その検討の結果に基づきまして、私たちはこれから先の保管あるいは廃棄等についての整備を進めていきたいと、こう思っております。
  75. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 まあ、いまのいろんなこういう公害も含めまして私考えるんですけれども、結局、あとあとを追いかける、そういう処理が、廃棄物にしても、公害にしても……。先にどうして計算を立ててできないか。原子力発電はやらなきゃならないと思いますが、その結果こういう廃棄物が出てくる問題と、それから今後資源的にもウランの問題があります。そういう両面から考えて、やはりこれからの原子力産業、特に原子力発電については、かなり考えていかなければならない。それだけに、片面における高速増殖炉あるいは新型転換炉、そちらのほうに相当の力を入れていかなければならないと私は思いますけれども、そういう点の先の見通しというものがいつもないままに、どんどん発電所ができる。また、電力も現在足りなくなりつつありますから、よけいこの原子力発電所の設置にはピッチがかかってくる。火力発電のほうは相当地元の反対も強うございますので、なかなかそれも進まない。電力も、どんどん産業発展しておりますから、また要る。結局、根本的に、日本の産業のあり方、また、それに伴う原子力産業のあり方、それから原子力発電のあり方、そういう基本的な問題をもっときちっとやらないといけない。要するに、いまの政府の体制がGNP第一主義、産業優先、そういうことで、もうどんどん進んできた結果いろんな問題が出てきた。こういう点、基本的な問題からもう一度、ここまでの大きな問題になってきておるんですから、公害も含めて、ここら辺できちっと政府としては、七〇年代さらに八〇年代、その辺までの見通しを持った上でやらなければならぬと思うんですが、特に長官はこれに対してどのようにお考えになりますか。
  76. 西田信一

    国務大臣(西田信一君) わが国原子力産業、ことにその主軸をなしますところの原子力発電、これは、長期的見通しに立ちましても、将来わが国のエネルギーにおきますところの地位は非常に高くなってくると思います。それで、それによって生じますところの廃棄物の処理の問題につきましては決して等閑視しているわけではございません。現在は、まだ発電量にいたしましても全体の一%程度でありますが、これが急ピッチに伸びてまいりまして、やがて一〇数%、二〇%台、あるいは遠い将来にはもっと比率が高まってまいる。これからが本格的なこの原子力の活用時代に入るわけであります。したがいまして、いま先生が御指摘になりましたように、この廃棄物の処理というような問題も急速にその対策を立てなければならぬという観点から、検討会で鋭意検討を進めておるわけでありまして、遠からずその結論が出ます。これによりまして、将来このような急ピッチの原子力発電等が進みましても不安のないような廃棄物の処理体制をつくりたい、こういうことでございますので、いままで決して等閑視しておったわけではないということと、もうすでに具体案をつくりつつあるということで、ひとつ御了承願いたいと思います。
  77. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、温水の問題、冷却水の問題ですが、通産省にお伺いしますが、現在全国でどのくらいの火力発電所が運転されておりますか。その運転されておる発電所で一番規模の大きい発電所の出力は何キロワットくらいですか。
  78. 和田文夫

    説明員(和田文夫君) ことしの三月末の数字、まだ正確に統計をとっておりませんけれども、火力発電所、九電力と電発と合わせて約三千五百万キロワット程度と考えております。で、一番規模の大きい発電所でございますが、これは東京電力の横須賀火力、出力が二百六十三万キロワットでございます。
  79. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 その発電所で使われる冷却水は、大体の標準でどのくらい排出されますか。
  80. 和田文夫

    説明員(和田文夫君) 火力発電所の必要とします冷却水の量は、大体の標準でございますが、これは海水の温度、季節等によって異なってきますが、大体出力十万キロワット当たり毎秒三ないし五トンというふうなことが標準になっております。
  81. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 その排出される温排水はどのくらいの温度のものが排出されておりますか。
  82. 和田文夫

    説明員(和田文夫君) これも、運転状況その他によって少々異なりますが、冷却水を取るところと排出するところの温度差が、大体五度ないし九度程度、こういうふうに考えております。
  83. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 水産庁にお伺いしますが、いまの通産省からの答弁による温排水が海に排出された場合、その拡散分布状況、これはどのようになっておりますか。
  84. 藤村弘毅

    政府委員(藤村弘毅君) これは、施設の設計や季節によりまして拡散も変わってまいりますし、それから気象条件、海況によっても変わると思いますが、毎秒五十ないし六十トン程度がもし排出されるといたしますと、大体半径——これは海岸線を直線的に見て理論的に計算した場合でございますが、海岸線に直角に排出される、毎秒五十トンないし六十トン排出されるといたしますと、先ほどお話がありました五度ないし九度というのを平均いたしまして七度高い水が出るといたしまして計算いたしますと、三度影響するところが五百メートル、二度まで影響するところが九百メートル、一度まで影響するのが二千百メートル程度じゃないかというふうに推算いたしております。
  85. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 この拡散分布状況を現在までどこかの地域で実験されたことがありますか。もしその実験がされておりましたら、その結果について概略教えてほしい。
  86. 藤村弘毅

    政府委員(藤村弘毅君) 正式な実験というのはございませんけれども、茨城県の東海村の原子力発電につきましては、現地の話によりますと、五百メートルで影響がない。これは毎秒十一トン程度の水が出ておるようでございます。
  87. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 この海水の温度上昇によって漁業にはどのような影響があると判断されておりますか。
  88. 藤村弘毅

    政府委員(藤村弘毅君) これも季節によって異なると思いますが、特に冬季におきますノリと、夏場におきますワカメには、かなりな影響があるのではないか。特に冬季のノリが、漁場が十度以上になりますと非常な被害があらわれるというふうに考えております。
  89. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま概略言われましたけれども、具体的にかなり被害が出て、それに対していろいろ補償等の問題が起こった事件はどれぐらいありますか。
  90. 藤村弘毅

    政府委員(藤村弘毅君) いままでは、原子力あるいは火力発電所が排水口をつくるところは、おおむね漁業権を消滅させて、そこに排出しておるのが現状でございますので、現在まで、漁業者に被害が出たので、それに対する補償要求という話は聞いておりません。
  91. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま、冬と夏と違うと言われましたが、夏の場合、海水温が三十度近くなるところで、さらに温排水によって上昇した場合には、生物を飼育する場合非常に致命的になる、こういう場合が少なくないと言われておりますが、その点についてはどのように掌握をされておりますか。
  92. 藤村弘毅

    政府委員(藤村弘毅君) 三十度以上になりますと、カキ等が影響を受けると思いますが、ただいま申し上げましたように、漁業権の補償をしておりますので、現実にいままでにそういうところで養殖をしておりませんので、直接な影響はまだ聞いておりません。
  93. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 科学技術庁として、この温排水の問題については検討されておりますか。
  94. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 先ほど水産庁から御答弁ありましたように、原子力発電所も、やはり火力と同じように漁業権の消滅をさして、漁業に影響のないような措置をとりながら発電所をつくっております。しかし、やはり温排水の有効利用ということを考えなきゃいけないのじゃないかということで、ことしから約五年かけまして、茨城県の日本水産資源保護協会というのがございますが、そこに委託いたしまして、冷却水による魚の養魚、影響ということの研究を進めていくということをしております。それから放射線医学研究所におきまして、魚に対する放射線の影響ということを主体として、まあ間接的ですが、温度に関係することも研究を進めていきたい、こういうふうに思っております。
  95. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 原子力発暗所で現在運転中のもの、また現在建設中のもの、それから申請中のもの、それの排水量、それがわかったら教えていただきたい。
  96. 和田文夫

    説明員(和田文夫君) お答えいたします。  現在運転中のものは、原電の東海、敦賀、それから東電の福島一号、関西の美浜の四機でございます。合計いたしまして百三十二万キロでございます。一番大きなものが福島の四十六万キロでございます。で、温排水の量は、熱効率が原子力のほうが悪うございますので、火力よりちょっとふえまして、出力十万キロ当たり五トンないし六トンというのが標準になっております。  それから建設中のものはたくさんございまして、八機ございますが、八機合計で五百二十七万キロでございます。一番大きなエミットが八十二万キロでございます。  それから計画中のものは四機で三百六十五万、こういうふうになっております。
  97. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 通産省にお伺いしますが、いま少しおっしゃいましたけれども、火力発電と原子力発電では、その効率等も考えて、どちらが排出冷却水の温度が高いのか、それから同じ温排水でも、どのように違っておるのか、その点、いかがですか。
  98. 和田文夫

    説明員(和田文夫君) 排出冷却水の温度は大体同じでございますが、冷却水の量が、同じ規模にすると、原子力のほうが、さっき申し上げたようなぐあいにふえると思います。
  99. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 科学技術庁にお伺いしますが、これからの原子力発電の展望、計画、それからいまの、漁業権は消滅させると言われましたけれども、いまいろいろ各電力会社で考えておる用地のまわりも全部そのようにされるのか。ただし、そうされるとすると、私二、三聞いておる候補地について、もし漁業権が消滅される場合は非常に問題が起こるのじゃないか。しかも、たとえ地元の漁業者が納得をしたとしても、日本の漁業全体からマイナスになるような面もあるんじゃないかと、このように思うんですが、その点も含めてのこれからの計画、展望を教えていただきたい。
  100. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 原子力発電所の将来の規模の見通しでございますが、これは、先ほど通産省の方から申し上げましたが、昭和五十年度においてはほほ八百六十万キロワット、それから五十五年になりますと二千七百万キロワット、昭和六十年度で約六千万キロワットというところが具体的に大体計算されておるようであります。  それで、いま先生指摘の漁業権の取得で進めていくという方向は当分続くんではないか、そういうふうに思っております。それから地元対策というものは設置者がこれを行なって、十分そこで設置者が地元対策をしてから設置するということで努力していきたいと思いますし、それから先ほど申し上げました第三者機構等で十分監視をしながらいくという考え方とあわせまして、できるだけ地元に協力してもらって進んでいく方法しか現在のところはないのじゃないかと思います。
  101. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま問題にしている温水公害については今後どのように対処されますか。アメリカでもかなり問題になって、環境保護局長が警告を出しておることは御存じだと思いますが、いまのぐらいの温度の差であればかまわないという線でいかれるのか、あるいは、いまやられているハマチとかクルマエビ等のそういうふうな養殖、そちらのほうに使われる方向を持たれるのか、あるいはまた、この温度を下げて出すような何かの処置をされるのか、その点はいかがですか。
  102. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) アメリカで問題が起こっていますのは、主として川だとか湖とか、そういうところでございますんで、日本のような海に面しているところと条件が違って、相当問題が起こっております。しかしながら、やはり温水の出るということについては、原子力発電所の原子力の安全性というかまえ方とあわせて考えていかなければいけない。それをあわせ考慮しながら進みまして、今後水産資源への影響ということから考えますと、やはり温水を利用して養魚という考え方もわれわれ考えなければいけないのじゃないか。そういうことで、まあことしからそういう方向で進んでおるわけでございますが、水産資源の獲得で温水の利用という面を強力に進めることという考え方でまいるのではないかと思います。要するに、原子力発電所の安全性にからめまして温水をなるべく少なくするということも当然考えなければいけませんが、やはり安全性というものを十分考えながら今後当分進めていくことになると思います。
  103. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 水産庁にお伺いしますが、いま科学技術庁のほうからは、漁業権を消滅させる方向でいくと、こう言われましたけれども、水産庁としてその方向でよいのかどうか、場所によっては問題があると思うのですが、その場合、原子力発電所をつくる場所については一応水産庁にも相談があって、ここでは漁業権の消滅はまずい、こういうことを言えるような仕組みになっておるのかどうか、それがまず第一点。  それから、この温排水について、いま養殖の問題等がされておりますが、それが今後かなり可能なのかどうか、経済性も含めまして。その点はいかがですか。
  104. 藤村弘毅

    政府委員(藤村弘毅君) 一般的には、排水口の付近について漁業権を消滅さして、漁民に対する影響を少なくしてやっていくように考えていただきたいと思っておりますが、今国会に提案しております海洋水産資源開発促進法によりまして、特に養殖等に適している地域を指定いたしまして、指定地域を設けているようなところには排水口を設けないようなふうに考えていただきたい。それからまた、何かはかの施設をつくる場合でも、そういうところには都道府県知事がその施設についての勧告をすることができるというようになっておりますので、その法律で、特によい漁場のところについては考えたいというふうに考えます。  それから第二点の温排水につきましては、科学技術庁と同じでございまして、このあたたかい水が積極的に利用できるものなら大いに利用したいというように考えておりまして、科学技術庁が本年度から日本水産資源保護協会に委託しております温排水利用の養魚につきましても積極的に指導してまいりたいというふうに考えております。
  105. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま養殖の法律ができてとおっしゃっておりますが、養殖だけではなくて、やはり原子力発電所はどうしても海のそばですから、それから観光開発という面も関係が出てくるわけです。たとえば、まだこれは科学技術庁には申請が出ていないそうでありますが、関西電力で考えられておる和歌山の、南紀の原子力発電所、一応予定されている候補地等は、やはり観光開発の上から考えても、私は、その辺、問題が出るのではないかと、かように思いますし、また逆に、原子力発電所ができることによってその地域が開発をされ、観光開発になるという面も出てくる場合もあり得ると思いますが、結局、その辺をどのように総合的に考えていかれるのか。結局、日本列島のまわりをどのようにこれから区分していくか、そういう点がやはり問題が出てくる。その点について、まず水産庁は養殖の面と漁業の問題——観光地といいましても、結局、魚を見るような水中展望台というふうなものがいまできておりますか、そういうふうなものになってくると思うのですが、魚だけでなくて、サンゴとかそういうようなものを含めた上での話ですけれども、そういうものについては、ただ、そのときそのときだけチェックをするのじゃなくして、将来の展望をかなり考えていかなくちゃいけないと思いますけれども、その点はどうお考えになっておられますか。水産庁、それから科学技術庁はどういうふうにお考えになっておりますか、その点、お伺いしたい。
  106. 藤村弘毅

    政府委員(藤村弘毅君) 観光面につきましては水産庁が直接やっておりませんが、従来とも、厚生省と打ち合わせをいたしまして、海中公園等で、保護すべきものは保護いたすように、厚生省と十分打ち合わせをいたしておりますが、今後そのような問題が起きましたら、科学技術庁、厚生省、水産庁、関係各省庁で十分相談いたして、その場所々々について検討いたしてまいりたいというふうに考えております。
  107. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 私どもも水産庁と同じでございますが、要するに、先生おっしゃいましたように、なかなか地域的の特殊性というのがございます。したがいまして、一般的な考え方というのはすぐには出せないのではないか。したがいまして、その問題のありますところを、そのつど、その環境を悪くしないようにということは、関係各省と相談しながら十分適正な形で進めていきたい、こう思っております。
  108. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 最後に、長官にお伺いしますけれども、まあ非常に手前みそになって申しわけないのですけれども、結局、日本のまわりの海の問題について、この際きちっとした計画をはっきり立てていかないと、火力発電所、あるいは原子力発電所、あるいは造船所、あるいはその他の石油コンビナートとか、いろんな問題が出てくるわけです。だから、日本の近海をどういうふうにこれからやっていくのか、国としてきちっとした策定を講じなきゃならない。そういう点で、先ほど趣旨説明をいたしました、われわれとしては、あのようなことを考え政府にいろいろ働きかけていきたいと思っておりますけれども、その点について、どのようにお考えになりますか。展望とビジョンをお伺いして終わりたいと思います。
  109. 西田信一

    国務大臣(西田信一君) 原子力発電等に関連して、水産資源あるいはまた自然環境の問題等、どう調和するかということについてのお尋ねもございましたし、また、もっと高い立場から日本の海洋政策をどうするかと、こういうお尋ねでございます。私は、かねがねから、矢追先生御承知の、公明党におかれまして、たいへん海洋開発のことにつきまして御熱心に御研究、御検討をされ、一つ施策をお持ちになっていることに対して深く敬意を払っておったところであります。そこで、今回まあ四つの法案を御提案でございますが、私どものほうも、この海洋開発の問題につきましては、かなり積極的な姿勢で取り組んでおるわけでございまして、すでに御承知のように、この国会におきましても、海洋に関する二つの法律を、設置法を含めましてでありますが、提案をいたしまして、一つはすでに御決定をいただき、一つ法案につきましてはさらに御審議をちょうだいすることになっております。従来は、海洋開発につきましては、この技術の開発ということが中心でいままで取り組んでまいりましたが、お話のとおり、もっと広範囲な立場から海洋開発と取り組んでいかなければならぬという、そういうものの考え方で、海洋開発審議会というものを設けまして、きわめて広範囲な立場から海洋開発推進してまいりたい、こういう心がまえでおるわけでございます。さらにまた、何と申しましても、技術的に、諸外国に比べまして若干の立ちおくれを見せておりまするわが国といたしましては、海洋開発を進めまする上に、やはり、ただ開発面だけではなくて、いま御指摘になりましたような公害であるとか、あるいは環境保全というようなことも十分に配慮していかなければなりませんので、こういうことも含めまして、海洋開発のための科学技術センターを設けまして、人材の養成等も含めて積極的に取り組んでまいりたい、こういう考え方でございます。  この、矢追先生提案になりました中にも、たとえば海洋開発の総合研究所というような御構想もございますが、それと、私ども考えておりますところの海洋科学技術センターと、やや構想を同じくしておるような点もございまして、たいへんその点については共鳴する点もあるわけでございます。とにかく、このように、大陸だなの問題、あるいは領海の問題等も一つの大きな問題点でございますし、そのような問題も包含いたしまして、ひとつ、海洋開発の方向、政策というものをしっかりつくりまして、そうして、この技術の開発とともに積極的な取り組みをしてまいりたい、こういう考え方でございます。海洋開発をやります上には、考え方はいろいろあると思います。委員会の設置等も御提案になっておりますし、公団の設立等についても御提案がございますが、とにかく、そういった方向づけをするため、まず審議会におきまして十分な検討をしていただいて、そうしてひとつ具体的にこれを実行に移していく、具体的な政策を立ててこれに取り組んでいく、こういう順序を経てまいりたい、こういう心がまえでございまして、海洋開発につきましては、いままで、科学技術庁といたしましても、各省にまたがっておりまするが、他の陸プロジェクトに比べましては若干スタートがおくれている感じがございますから、このおくれを取り戻しまして、アメリカ、フランスその他先進国にも負けないような海洋開発を強力に推進してまいりたい、こういう考え方でまいりたいと思いますので、どうぞひとつ何ぶん御鞭撻をお願い申し上げます。
  110. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、日本原子力船開発事業団法の改正案についてお伺いしますが、今回の改正案では、原子力船についての事故は、原子力船の運航者の責任に関する条約、いわゆるブラッセル条約を参考にしたと、このように聞いておりますが、その点はどうですか。
  111. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 賠償法改正に伴いまして、ブラッセル条約の中身は参考にいたしました。ただ、ブラッセル条約そのものはまだ発効されておりません。したがいまして、その中身は参考にいたしましたが、今後ブラッセル条約が十分実際的に発効、あるいはわれわれが批准し、等の場合には、あらためてまた賠償法等の検討はさせていただくことになると、こういうふうに考えております。
  112. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 そのブラッセル条約の成立過程と、主たる内容について伺いたい。
  113. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) ブラッセル条約は、一九六二年、海事法外交会議において採択されました。その内容は、原子力船から原子力損害が発生した場合に、その運航者が無過失損害賠償責任を負うことと、それから賠償の支払いに備えて一億ドルの保険、それから国家補償等による損害賠償措置を講ずることになっております。それで、その発効する条件としては、原子力船保有国、それから非保有国、それぞれが一国ずつの批准が必要になっていまして、現在まだ非保有国であるポルトガルが批准しただけで、保有国の批准はございません。したがって、まだ発効いたしておりません。そういうのが現状でございます。
  114. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 わが国はこの作成には参加をしたのですか。
  115. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 作成審議にあたっては参加いたしております。
  116. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま批准国が少なくて発効しておりませんが、いま言われたとおりですが、その各国が批准しない理由は、どのようにお考えになっておりますか。
  117. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 各国と申しましても、おもに保有国のほうの態度だと思いますが、アメリカ等は、原子力軍艦が入っているという点で疑問を持っております。それからドイツは、自分の国の法律との関係で、だいぶ違っているという考え方がございますが、「オットー・ハーン」を持っておりますので、現在のところは積極的に参加したいという方向で進んでいるようでございます。
  118. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 わが国は、将来これに調印する意思はあるのですか。
  119. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 先ほど申し上げましたように、この条約は、三百六十億円、いわば一億ドルというアッパーリミットがついております。それで、現在御審議をいただいております賠償法は、いわばわれわれ通俗的に言っております青天井と申しますか、損害が第三者に起こった場合には全部十分補償する。したがいまして、その点にブラッセル条約とは食い違いがございます。それから、アメリカあるいはドイツにおきましても、すべて上の制限がついております。その関係から、日本だけが特殊な賠償法になっているという点が、これに批准する場合の問題点になると思います。しかし、やはりこの条約そのものができました場合には、わが国のたとえば「むつ」等につきましても、これは必ず日本の国内だけにいるというわけにはいきません。国際的に動かなきゃなりませんので、当然、この条約については前向きな考え方で進んでいかなければならない、こう思っております。
  120. 向井長年

    ○向井長年君 まず、長官にお伺いしますが、国会で法案審議した過程で附帯決議をつけるわけですが、この附帯決議に対して、長官は、もちろん、尊重しなければならぬと、こういう形で言われておりますけれども、これをどう解釈されておるのか、国会の附帯決議というものは、これはやはり尊重して、生かして、それを次の法案改正等、あらゆる政策の中で入れなければならぬということに私たちは思うのですが、この点について、附帯決議に対するものの考え方、これをひとつお聞きをしたい。
  121. 西田信一

    国務大臣(西田信一君) 国会の附帯決議は、これは十分尊重しなければならぬということは、私ども常にお答え申し上げております。そのように考えております。附帯決議の中にはいろいろ内容がございまして、法律的にこれを処理しなければならないもの、あるいはまた、行政執行上これを実行し改善をしていくというような面もございます。したがいまして、これらの面は十分内容的に検討いたしまして、そうして法律的に処理を要するものはそういう方向で検討を加え、さらにまた、行政執行上改善あるいはまた御趣旨に沿うというものにつきましてはそういう方向で努力する、こういうことでやってまいっておりまするし、やってまいりたいと考えております。
  122. 向井長年

    ○向井長年君 では、三十六年に通りましたこの法案に対する附帯決議が衆参両院でつけられておりますね。特に従業員災害について万全の保護措置をつけよ、こういう形に両院ともなっておるわけです。これに対して、確かに形式的には一つの保護策をとられたと私も思います。しかし、この附帯決議に対して内容的にほんとうに検討されましたか。これ、ひとつお聞きしたい。
  123. 西田信一

    国務大臣(西田信一君) 詳細は有澤先生からお答えいただいたほうがよろしいと思いますが、それは確かに附帯決議にございまして、その附帯決議の趣旨に沿うていろいろ検討は行なわれておりました。ただ、いろいろまだ未解決の解明すべき問題点が数多く残っております。それで、その附帯決議の御趣旨そのものにずばりとは沿っておりませんけれども、十分その趣旨を尊重いたしまして検討いたし、今後も検討していくということでございまして、詳細はひとつ有澤委員から……。
  124. 向井長年

    ○向井長年君 有澤委員にお聞きする前に、長官に基本的な問題として、まずお聞きした。したがって、長官は、国会においての附帯決議というものはあくまでも尊重をし、立法化あるいは行政措置と、あらゆる方向で消化のために努力しなければならぬ、こういうことが言われたと思いますが、そこで、有澤委員にお聞きいたすのですが、三十六年につけられました従業員災害に対する保護措置について、どういう方向をとってこられましたか。
  125. 有澤廣巳

    説明員有澤廣巳君) 国会で従業員災害補償についての附帯決議がつきましたので、委員会といたしましては、これに対応するために、原子力施設従業員災害補償検討するための専門部会を設けました。我妻さんを委員長にした部会でこれを検討いたしました。それで、昭和四十年五月に報告書が出まして、その報告書では、先ほど労働省のほうから御説明がありましたように、一つ災害賠償額を十分にするように、一つは「みなし認定」、認定が非常にむずかしい、みなし認定をする、それから、何といいますか、健康管理の問題、これはいずれも労災保険で一応やるというたてまえで、その労災保険を十分に拡大し、かつ弾力的に運用するように、その関係から、いま申し上げました三点が指摘されております。それで、労働省におきましても、それを受けまして、先ほど来御説明がありましたように、いろいろ、認定の問題にいたしましても、補償額引き上げの問題にいたしましても、それから管理の問題にいたしましても検討されまして、まあ従来の労災保険の適用から申しますと、かなり弾力的な運用ができるようになったと私は思います。がしかし、それで十分かというと、十分でない点もございますが、今回のこの災害補償の、賠償の専門検討部会におきましても、やはりこの問題が取り上げられまして、そこで審議をしていただいたのですが、その場合には、一つは、設置者労働組合との間に労働協約ができておりまして、その労働協約労災保険上積みをする——これは一般的に大体行なわれておる。大きな施設につきましては行なわれております。がしかし、それだけでは十分でないから、もう少しこれを保険制度に乗せるような考え方ができないだろうかということで、いろいろ検討いたしましたが、保険会社のほうにおきましては、ちょうどその問題を取り上げて目下検討中で、近く結論が出るそうでございますが、したがって、その結論が出ました上で、さらに労災保険との関連考えて、いまの保険制度に基づいた従業員補償を取り上げていきたい、こういうふうに考えております。この十年間というものは、部分的でございますが、附帯決議を尊重いたしまして、その方向でさらに一そうの充実をはかるようにつとめておるつもりでございます。
  126. 向井長年

    ○向井長年君 いまの答弁では私は納得できないのです。ということは、我妻レポートと申しますか、専門部会でいろいろ検討されて、それに対しては保護措置をとらなければならぬという結論が出ておりますね。三点にわたって出ておりますね。その保護措置をとらなければならぬという中で、原子力委員会では何を検討したのか。みずからそれをやろうとする方向をとっていないのじゃないですか。いま申されました労働協約の問題とかあるいは保険の問題とか、他に依存する形であって、みずから政府として、あるいはまた委員会として、これに対する労災法の中でどうするかという問題とか、こういう問題はとりましたか。そういう点については、これははっきり言うならば、我妻委員会の出されたものを無視した形で何らか形をつけたとしか私たち考えられない。だから、これはさかのぼって、国会で附帯決議をつけた問題に対しては、形式的には一応取り上げておるけれども、非常に軽視しておる、こう言わなければならぬと私は思うのです。この点について、いかがですか。
  127. 有澤廣巳

    説明員有澤廣巳君) 我妻委員会の報告に基づきまして、この点で、労災保険を担当しております労働省といろいろ話し合いはいたしたわけです。しかし、労災保険制度の上から申しますと、いま私が申し上げましたような点、つまり、そういう意味の拡大以上にはなかなかむずかしい、したがって、どうしても従業員災害補償の問題につきましては労災保険以外の面におきまして何かを考えなければならぬ、こういうことに相なろうと思います。  それで、いま申し上げましたように、一つは、事業者、設置者との間で、自分でその損害賠償に対する措置を講ずる、それは労働協約として組合との話し合いでそれをきめる、これが一つ行なわれております。これは、私ども設置者に対しましてそのような一つの方法の損害賠償考えてもらいたいということで、そういう話し合いが進んできたと私は思っております。がしかし、なおそれだけではカバーできない面もあろうかと思います。それで、さらにやはり保険制度をこの際利用するのがよかろう、こういうふうに私ども判断いたしたわけです。がしかし、保険制度となりますと、損害保険責任会社、保険会社におきましては、それについては、いままで外国のほうにもそういう事例がないし、また、保険プールの上からいいましてもいろいろ検討すべき問題があるから十分検討さしてもらいたい、こういうことで、検討してきたわけでございますが、今回の災害補償制度検討会の席上で、保険業界のほうからそういうような話が出ました。それで、今度も、同じく我妻委員委員長でございましたから、その委員会で、それではこの保険制度ができるまで待ってくれ、その上で保険制度に基づく災害補償制度考えよう、こういうことに相なったわけでございます。私としましては、国会の附帯決議を十分尊重して、できるだけこれの実現に、いままでつとめてきたつもりでおります。
  128. 向井長年

    ○向井長年君 我妻委員会で三点ほど一応の答申がなされておりますが、この内容は、従業員災害労災法により補償をすべきである、こういう趣旨が述べられておりますね、まず第一に。それで、この労災法によってこれの補償をせい、こういう形で言われたのに、労災法は何らいらっていないじゃないですか。労災法の中で補償しようという考え方じゃないじゃないですか。労災法は一般的な問題でしょう。原子力災害に対しては我妻委員会労災法の中で考えろと、こう言っているのですよ。それが、労災法は一般論であって、特殊に何ら考えていないのですよ。そうじゃないですか、まず第一に。労災法は、これは労働省でやっている一般の災害なんです。原子力災害というものは特別にそれが必要だという附帯決議の中から取り上げて、我妻委員会では労災法の中で賠償を特別に考えろ、こういう答申が出ているじゃないですか。これに対して労災法はどうしたのですか。これは労働省関係もありますけれども、しかし、そういう答申を無視していると私は言うのです。他のほうに転嫁しているじゃないですか、労働協約とかあるいは保険とかという……。だから、我妻委員会が出したことはこれはもう無理なことを出した、できぬことを出した、こう言われますか。私はそうじゃないと思う。この三点出されたことは、やはり原子力災害に対して、従業員災害に対して保護措置としてそうあらねばならぬということを答申されておるわけですから、それを取り上げてやる場合においてはいかにすべきかという中で、みずからこれをやろうとせずして、労働協約だとか、あるいは保険だとか、そっちに依存しているだけであって、事実上これは取り上げていないことになるのですよ、結果的に。私から言うならばそうなる。この問題はどう判断されますか、我妻答申労災法の中で補償せいということは。
  129. 有澤廣巳

    説明員有澤廣巳君) いまお話し申し上げましたように、労災法の中で取り上げられるような程度にまでは十分労働省と話をしたわけですが、しかし、労災法を管理されている労働省のほうから申しますと、やはり従業員としてみれば、原子力もあれば、ほかのいろいろな工業、産業もある。それを特別に労災法の中で従業員災害補償をするのにはこの程度しかできない、そこまでは私はやっていただいたと、こういうふうに申し上げているわけなんでございます。ですから、もし、いま労災法の中でということになりますれば、労災法の特別法とでも申しましょうか、そういうものを考えなければ、労災法の中で——中でといいますか、中でこれを解決することはなかなかむつかしい、こういうふうに私ども判断いたしたわけでございます。だけれども、個々の産業につきましての従業者につきまして、それぞれ特別法をつくるということも困難だと、こういうことでございますので、そこで、労災法でやれるだけのものは十分やっていただいて、そうしてそれでカバーできないところ、足りないところ、それは、いま申し上げましたような付帯的な問題で——付帯的といいますか、労災法以外のところでそれを十分カバーしていこう、こういう考え方でございます。
  130. 向井長年

    ○向井長年君 そうなると、結局、労災法でできない、これは一般論である、そうすると、労災法以上の超過分に対しては、これは立法化してやるか、行政措置の方向をとるか、何らかの形がここで生まれてこなければならぬと思うですよ。そうでしょう。
  131. 有澤廣巳

    説明員有澤廣巳君) そうです。
  132. 向井長年

    ○向井長年君 それに対して、生まれてないじゃないですか。それはあなた、政府とかあるいは原子力委員会で、みずからそれに対して、やろうという形じゃないじゃないですか。
  133. 有澤廣巳

    説明員有澤廣巳君) 事業者と組合との間の労働協約、これはわれわれは直接タッチはできませんけれども先ほど申しましたように、保険制度従業員災害補償をするということになりますと、この制度につきましては立法をしなければならぬと私ば思っております。なぜなれば、設置者に対しまして、従業員災害補償のために、保険制度に基づく損害賠償を強制しなければなりませんので、その場合には法律をつくらなければならぬと思っております。
  134. 向井長年

    ○向井長年君 その原子力委員会で出された結論が、これ、四つほどありますね。これをいま私は言っておるのじゃなくて、基本的に我妻答申が具体的に取り上げられていない、精神がくまれていない、具体的にですよ、そういう問題を私は取り上げているわけです。たとえば、この第二番目にあるところの労災法の対象外及び超過額については賠償考えろということが言われておると思うんですよ。そういう問題について、これは何らその措置がとられてない。だから、まだ原子力委員会で出しておる四つの結論までは私は入っておりませんがね。具体的には入ってないのだが、基本的のこの問題についてのものの考え方答申に対する分析から取り上げ方、これに対する問題が消されておるのじゃないか、こういう感じから私きょうお聞きしているのですよ。具体的に、こうするのだ、ああするのだということでなくて、これを尊重して事実我妻委員会のやつがやられていると言われますか。
  135. 有澤廣巳

    説明員有澤廣巳君) 労災法でやるけれども、それからはみ出した部分を賠償法でカバーする、こういうことが御質問の要点だろうと思いますが、この点につきましては、今度の我妻委員会におきまして十分検討いたしたわけです。ところが、賠償法の中に入れるとなりますと、やはり保険制度を基礎にしなければならぬ、それで、いま保険制度については保険業界がこれを引き受けてくれるか引き受けてくれないかということが問題になりましたか、いま保険業界では、それは十分検討して近く間もなく結論を出すからそれまでしばらくお待ちください、こういうことで、保険業界がそういう構想を打ち出してきましたならば、それに基づきまして保険制度を取り入れた従業員賠償制度をつくる、こういう考え方になっておると思います。
  136. 向井長年

    ○向井長年君 保険制度の問題は、これは、期待しておるんでしょう、期待にすぎないのじゃないの。それだったら、この附帯決議を尊重したというのだったら、いまなぜその法案を出してこないのですか。これは政府に言わなければいかぬけれども。我妻委員会答申されて、それが原子力委員会答申されて、今度は立法化しているのだから、ほかの問題で。そのときに、附帯決議がついている以上は、今回その問題もあわせて立法化の方向をとられるのがあたりまえですよ。それがとられないということは、期待しておるか、まだまだそれに対して消化されてないということです。そして、原子力委員会では四つの別の問題を出しているわけです。  労働省がおられますが、大体労災という問題について、これは一般論でしょう。一般的な労災でしょう。しかし、原子力災害という特殊な問題であるということを頭に置くならば、いま委員会が出された答申に基づいて何らかの措置考えなければならぬじゃないですか。こういう立場から、私は、我妻答申はりっぱな国会決議が尊重された中で出されておると、こう思っているわけだ。これが消されてしまっているのですよ、言えば、ここで。ほんとうにそれがされるとするならば、今回の改正案の中で、附帯決議を生かして、別な立法措置とか、あるいはまた政府みずからの行政措置の中でこうするという問題がなければいかぬのじゃないですか。これが出ていない。労働省、どうなんですか。
  137. 桑原敬一

    説明員桑原敬一君) 御指摘のように、労災保険法は一般的な労働者災害に対する補償でございますので、したがって、根っこは、一般の賠償みたいに全損害を見ないようになっております。つまり、そこに制度の制約があることは先生指摘のとおりでございます。ただ、原子力災害は、その災害の発生の原因なり態様というものが非常に特殊でございますので、そこにおきます住民なり労働者も一緒に災害を受けるというような、非常に態様が特殊でございますから、私どもといたしましては、科学技術庁との相談の中においては、ぜひ、労災が持っております制度上の制約を、それを補てんするような形で、何らかの仕組みの中で、住民と同じような、全損害が補てんできるような措置をとってほしいということを申し上げていますし、現在でもその考え方は変わらないわけでありますけれども、しかし、いろいろの事情から今度の答申になって出てまいりましたわけですが、私どもといたしましては、住民労働者の間に賠償の差があることは決して好ましいことではございませんので、先ほど有澤先生のおっしゃいましたような、保険の仕組みで、きちっとした、そういった差がないような制度が近々できるというお話でございますか、強く期待いたしておるわけでございます。
  138. 向井長年

    ○向井長年君 労働省は、一般の労働災害としてこの問題を見ておると思うのですよ。それだから、そういう、いま答弁が出てくると思う。これはどうですか。大体、原子力平和利用という立場から、それに従事する人たちの災害については一般の問題とは別に相当これは重要視しなければならぬ。諸外国においてば、やはり軍の問題としていろいろやられておる点がたくさんあると思うのですよ。しかし、日本においては、そういう軍の問題じゃなくて、平和利用の立場から原子力開発というものは促進しなければならぬ、こういう上に立って今日いろいろ災害問題も検討する状態になっておる。それが、ちょうど附帯決議が十年前につけられて、十年間何をしておったのだと私は言いたい。たまたま、この改正案の中でそれが生かされなければならぬのじゃないか。検討と。いまさら検討はおかしいですよ。十年たっておるのですよ、できてから。そうでしょう、長官。大体、長官はかわっておるかしらぬけれども、十年検討しておったんですか。  それからもう一つ、いまその答申を受けて、しかも、この原子力委員会において、いま申された四つの結論が出ておるけれども労働協約でやれとか、あるいはまた保険でやれとか、こんなものは、あなたたちがそのままやらせることができるのですか。やらせられぬでしょう。第三者がかってにやるんですよ。労使がかってに労働協約をそれぞれつくるわけだ。保険保険言うけれども、立法措置をとらないでなぜ保険ができるんですか。期待以外の何ものもないじゃないですか。そうしたいという希望だけ、希望以外にできないでしょう。それから、従業員のアンバランスが起きるかって、アンバランスが起きるからというようなものの考え方が私は間違っておるのじゃないか、一般の作業と違うということ、これに従事する人たちは。それだから、何やら防止法で二十五年かなにか出ておるじゃないですか。そういうものを十年間置き去りにしておいて、それで今日他に依存したような形がとられておるということは、これは附帯決議の国会軽視もはなはだしいと私は言いたい。有澤先生、そうじゃないですか。私は有澤先生は尊敬しておりますけれども、十年間黙っておって、検討しておったのだろうけれども、その検討結論が他に依存することだけであって、何ら、みずから腰を上げて、立法化もしなければいかぬ、行政措置もこうやらなければいかぬと、こういうものは何も出ていないじゃないですか。そういうことを私は国会軽視もはなはだしいと言わざるを得ない。こういうことなんですよ。理屈は通っておるでしょう。それに対して、長官も有澤先生も、どう考えているか。労働省もそうですよ。労働省も、一般論でいま労働省では取り組んでおるけれども原子力の重大性というものはわからなければいかぬ。その災害というものは十分これはわかっているはずなんだ。特別の措置をとらなければならぬのじゃないですか。その点について、労働省は、一般でよろしいと、こう言うのですか、どうですか。
  139. 桑原敬一

    説明員桑原敬一君) 先ほどちょっと申し上げましたけれども労災保険の制約がございます、制度上の。これは諸外国でも同じような仕組みになっておりますけれども先生御承知のように無過失責任を課しておりますので、故意過失ということを全然事業主に問わずに、災害が起これば、業務上であれば本人にすぐに補償しなさいと、こういう仕組みになっておりますので、いわゆる慰謝料とか、物的損害とか、そういう全損害について補償するという仕組みに、これは日本だけじゃありません、世界的にも、なっておりません。したがって、原子力災害災害を受けられました方について労災補償の中で違った補償をすることは非常に問題がございます。したがって、私どもは、そういったその全損害——受けられました損害というものが住民と全く同質同様でございますれば、同じようなやはり賠償を行なうべきであるということについては当然にそう思っておりますし、また、そういったものは労災の仕組みの中でできませんので、科学技術庁と相談しながら、そういう面についていろいろと相談したわけでございますが、最終的には、いま有澤さんがおっしゃいましたような方向で処理をしてまいりたい。ただ、労災保険そのものの水準が低いんではないかという御指摘がございますと思いますけれども、これにつきましても、実は、原子力賠償法ができる前はまだ一時金制度で、たとえば、なくなられても一時金で処理をするというかっこうでございましたけれども、あるいは病気になりましても三年たってなおらなければ一時金で処理をするということになっておりましたけれども、三十五年改正、四十年改正、四十五年改正で、病気になりました方については、なおるまで長期傷病補償給付でめんどうを見る、あるいはなくなられた方、障害の重い方については、年金で終生それを処理していくというような形で、いわゆるできるだけその損失を全部必要な期間で見ていくというような形で、逐次その水準の向上にはつとめてまいりましたけれども、それはそれなりに補償としては水準を上げてまいりますけれども原子力災害の全損害補償ということにつきましては、やはり別の仕組みできちっと処理をすることが適当ではないか、こういうふうに考えております。
  140. 向井長年

    ○向井長年君 労働省ね、あなたのほうは、いま申しましたように、一応一般論の形でそれは補償する、それ以外の原子力の特殊な問題については別の形でやれ、やるべきであろうと、こういう意見ですね。別の形って何ですか。別の形ってどういうことですか。
  141. 桑原敬一

    説明員桑原敬一君) まあ一例でございますけれども、たとえば原子力賠償法という形の中で従業員住民も同じように扱うということも一つ処理の方法ではなかろうか、こういうふうに思います。
  142. 向井長年

    ○向井長年君 それはどういうことですか。結局ね、我妻答申が出て、そして原子力委員会労働省とも相談をされた。相談をされた結果、やはり労働省としては一般論として考えなきゃならぬと、こういう形で、その問題の改正には出てないわけだ。特殊性を取り上げないわけだ。そこで、特殊な形でやるべきだと、あんたいま言ったんだ。その特殊な形というのは、いまこの原子力委員会から出されている形でいいということですか。そういうことですか。具体的に言ってください。
  143. 桑原敬一

    説明員桑原敬一君) まあ、一つの例を申し上げますと、そういう賠償法の中での処理のしかたもございますが、今回いろいろ相談した結果は必ずしもそうなりませんでしたわけですが、それならばどうするかということになりますと、少なくとも、一般法の労災以上に上回る分については保険の仕組みなりの形で補償されるという形が望ましい、こういうふうに思っております。
  144. 向井長年

    ○向井長年君 あなたね、国会の附帯決議を知っておられるでしょう。国会の附帯決議を知っている中で原子力委員会からそういう形で相談を労働省は持ちかけられた。その上でどうするかという問題については、労働省みずからもこれは特殊な問題として考えざるを得ないでしょう。それをあんた、他人のことのように、それは保険でやってもろうたらいいんだとか、それは、労働省、無責任じゃないですか、そのやり方は。災害に対する考え方は。労働省みずからも、何も科学技術庁だけじゃなくて、原子力委員会だけじゃなくても、特殊な一つの存在である。それに対するいわゆる賠償なり、あるいはまた災害補償というものについてはこうあらねばならぬということを労働省みずからも考えなければならぬじゃないですか。これは別ですか。まあ、一般論だけで、もう私たちはタッチしないと、ものの考え方、そういうことですか。
  145. 桑原敬一

    説明員桑原敬一君) 労災保険は、先ほど申し上げましたように、一つ制度の制約がございますから、それを上向る分につきましては、科学技術庁のほうに、私ども考え方といたしましては、住民と同じように全損害が補てんできるような形で、たとえば賠償法でその処理をするという形を前々から主張をしてまいりました。ただ、その辺がいろいろの事情でできなかったような事情がございますけれども、それでも、それでは困りますので、その保険の仕組みなり何なりの形で、労災だけでは補てんできない分については十分そこの補てんをしてほしいということを強く申し上げてまいりまして、そういうことで、今回の答申なり措置法ということが有澤先生のほうから出ているようなわけであります。
  146. 向井長年

    ○向井長年君 長官保険の仕組みが、ようこれは原子力委員会からも、あるいは労働省からも出ているのですが、これはどこから出すのですか。どこから提案するのですか。こういう法律をつくろうとすれば、立法をしようとすれば。労働省からやるのか、原子力委員会から出されて科学技術庁からやるんですか、どこからやるんですか、それ。どっちからやるんですか。所管はどっちからやるんですか。
  147. 有澤廣巳

    説明員有澤廣巳君) 保険制度ということになりますと、保険業界のほうがそのやり方について十分検討いたしました上で大蔵省に認可を受けるわけでございますが、それにあたりましては、私ども科学技術庁原子力局と十分意見を取りかわして、その上で制度化すると、こういうことになろうと思います。ですから、まあ一般的には、この原子力従業員損害災害につきましては労災で世界的にもやっているようでございますが、ただ、まあ各国に一応労災制度はあるにいたしましても、それで十分にカバーできないという部分があろうかと思います。ですから、我妻委員会の報告では、労災で人間らしい生活を確保できるようにというふうになっておりますが、まあそれは労災でやれないとするならば、私どもは、これをほかの手段で十分賠償できるようにいたしたいと、こういう考え方で、先ほど来私が申し上げたような措置を講じてきておるのでございます。ですから、まあ近く保険制度に基づく従業員災害補償制度といいましょうか、補償法というようなものができなければならぬかと思います。で、これは、第三者の損害賠償と並んで、従業員災害賠償に関する法律というような形になろうと思います。
  148. 向井長年

    ○向井長年君 なろうと思いますって、あなた、そんな無責任なことで、私たち了解できないのですがね。とにかく、これ、十年たっておるということを頭に置きなさいよね。この法律が通って附帯決議が出されてから十年たっておるのですよ。十年といったら、人みなかわっている、これみな。大臣ももちろんかわっている。しかし有澤委員はかわってないはずなんですよ。私は、先般も議運で、有澤先生はもうりっぱだ、人格的にも、しかもまた原子力に取り組む意欲もりっぱだということで、実は再任再任をしてもらったと思いますが、しかも十年間、一応そういう検討をするというようなことでは、これは軽視と言わざるを得ないでしょう。これは認めるでしょう、まず第一に。  そこで、しからば、ここで出てきたものが何だ、今回ね、答申から出た結論は何だといえば、これは私は個々に聞いていこうと思うのだけれども委員会で出された結論——労働協約等により労災の積み上げをやってもらいたい、こういうことを言っておるのですね、これが一つ。それから、従業員の同一事業所においてのアンバランスがあるからこの問題をやはり配慮しなければならぬ、したがってそれはできないのだと、こういうのがある。従業員災害保険でやると一般第三者に向けられる分が少なくなる——これはまあ財源の問題でしょう。こんなことで有澤答申は無視したんじゃないですか。ここで有澤答申というものは基本的に保護政策というものを無視しておるわけですよ。もう反論しているんじゃないですか、これは。そうすると、反論したということは、国会に出されたこの保護措置をつくれというやつに対して、つくられないのだというやつをここに出したのじゃないですか、これは。そして一番最後に、皆さんいま言われておるような、保険制度検討と、こう言っておる。これは期待だけであって、実際やるという態勢でいわゆる意欲を持って今日までやってきていないのですよ。期待ですよ。十年間期待ですよ。  だから、労働協約に積み重ねてどうしてやらすのですか。これはあなた、立法措置できませんよ。労働協約というものは、みずから労使がかってにやっているものですから、それはできませんよ。それからまた、事業者によってはいろいろ違いますよ。そんなことは、あなた、これも一つは希望だ。続いて、アンバランス、アンバランスということを言うということは原子力災害というものを重要視していないということですよ。一般論と同じことを考えておるのだ、第二番は。私反発すれば。そうでしょう。アンバランスだと、事業所内においての他の業種とのアンバランスだということは、原子力災害というものを重要視してないということだ、まず第一に。そうなるじゃないですか。それからもう一つは、財源の問題を言ってますね。他の分が少なくなるからと。これも、いま申しました軽視ですよ。原子力災害に対する軽視ですよ。財源が少なくなるったって、財源をつくってやらなければならぬということを言っておるんですよ、これは。災害補償をしなければならぬと、特殊な保護政策をとらなければならぬということを言っておるんだ。それもこれも財源上これはいけないのだとこう言う。それから最後は、いま言った保険問題。保険会社がどう言うか、あるいはこれは十分ひとつ考えてもらわなければいかぬし、あるいは最終的には立法もしなきゃならぬであろう——責任きわまるじゃないの、これは。どうですか、その点。
  149. 有澤廣巳

    説明員有澤廣巳君) この原子力損害賠償制度検討専門部会答申におきましては、いま御指摘になっておるようなことが書いてありますけれども、「しかし、この問題については、今後とも原子力事業者の従業員の一層の保護のため、慎重に検討を続けることが必要である。また、別に労働者災害補償保険制度については、その給付水準、給付範囲等の改善につき検討が加えられることが望ましい。」という、そういう答申になっておると思います。そこで、労働者災害補償保険制度につきましては、むろん、なおやらなけりゃいかぬことはありますが、従業者補償のために第三者の損害賠償保険制度保険額を利用するというのは、これは第三者に対する不利益になるから、別に従業者につきましては賠償保険制度一つ設ける、こういうことでございます。ですから、それにつきましては、保険業界におきましても、先ほど来申し上げておりますように、十分検討を進めておる。近くその結論が出るから、その上で、その結論を得た上で、私どもなお十分検討を加えまして、そういう従業員に対する補償制度をここの損害賠償制度の中に取り入れるか、あるいは別個の従業者災害補償としてこれを特別の独立の制度にするか、それはまだきめておりませんが、いずれにしましても、そういう制度を今後とるつもりでおります。
  150. 向井長年

    ○向井長年君 そうすると、我妻レポートに対して、あなたたちは——あなたたちというのは、原子力委員会も、あるいは科学技術庁も、あの答申はそのままのみ込んでやるわけにはいかぬと、そういう形になりますか。我妻答申を生かしたということをあなたたち言われますか。言われないでしょう。
  151. 有澤廣巳

    説明員有澤廣巳君) 昭和四十年のときの我妻委員会答申でございますか。その答申につきましては、先ほど申しましたように、この答申の線に沿って労働省といろいろかけ合ったのでございますけれども労働省のほうでは、どうも、一般の労災保険制度としてこれを適用する——ただ、その適用につきましては、原子力施設従業員につきましては、いろいろ認定の場合におきましても、その損害につきましても、いろいろ範囲を拡大していただきまして、そしてなるべく広く原子力従業員の場合の損害、これは一般の場合とやや違った特別のものもあろうかと思いますので、そういう場合をも含めるように、なるべくそれを拡大していただいた。その努力は十分していただいたと思いますが、独立の原子力施設従業員のための労災制度というものをつくるということはどうも法体系の上からはできない、こういうことでございました。そこで、この問題はなかなかいろいろやりとりがありましたので、時間もかかりました。  同時に、他方におきましては、この原子力災害補償制度、第三者に対する賠償制度を改定しなければならぬ、その改定に際しては、再び我妻委員長のもとに部会を設けまして、その部会で十分検討してもらうようにということに私ども考えておったわけでございます。ですから、時間がかなりたちましたことはまことに私ども申しわけないのですけれども、なかなか一国の法律制度の中に特別のものを持ち込むということは困難であるということがだんだんわかってまいりましたので、そのことを説明いたしまして、第二回の我妻委員会で十分検討していただいたわけでございます。その結果が昨年答申が行なわれましたこの答申になっていると思います。ですから、この答申に基づきまして、従業員に対する損害につきましては保険制度でこれをカバーするように今後やっていこう、こう私どもは決意しておるところでございます。
  152. 向井長年

    ○向井長年君 これからまだ検討しようということらしいのですが、先ほど申し上げますように、十年間検討していて結論が出ないということは——第三者補償問題は、これ、今回出てきましたけれども、内部の従業員に対しての問題については、検討素材として十年間残して、まだ結論が出ていない。それくらいむずかしいもの。十年間もかかってもできないもの。あんたそんなこと言うておるけれど、そんなものですか。少なくとも十年間かかれば、いま言う保険の問題も今回出すことができるのがあたりまえじゃないですか。具体化してね。それを、いまだに、これが期待にすぎない。まだどう言うかわかりません、保険会社が。そうでしょう。そこを見て、やはり立法化が必要でしょう、そうなると。その立法化の構想も何らできていないんじゃないですか。これは無責任と言わざるを得ない。これは何たって。だから、私は一番ここで頭に来ているのは、国会軽視だ。私は、この前のときに、これ、審議したんですよ。そのときこの附帯決議もつけたんです。それが、いま一つもこれに対して生かされていないのだ、ここで。第三者の補償の問題は、期限が切れるから、しかたがないからということで、若干十億ふえたけれども、これ、やろうとする、これはけっこうですよ、私はこれは反対はしません。しかし、その中で生かさなければならぬ問題が生かされていないという問題については、これは私は責任を追及せざるを得ない。当時、いろいろとこの問題も論議しました。こういう中で、まあ少なくとも次の改正のときには何らかの措置がとれるだろうという大きな期待をしてきた。そして、しかも、その過程を見ますと、我妻委員会のほうではそういう附帯決議を尊重した一つ答申が出ておるのでしょう。それを、あなたたち原子力委員会では無視してしまっている。形だけで、転嫁して、事実上これが生まれてきていない。しからば、有澤先生保険保険と言われるけれども保険の具体化の構想、どう持っていますか。それに対する補償の具体的な構想、ありますか。あったら聞きたいのです、これ。
  153. 有澤廣巳

    説明員有澤廣巳君) まあ、保険制度でございますから、一つは、従業員損害といいましょうか、損害につきましては、第一には、労災法でカバーできると思います。しかし、労災法でカバーできないもの及びその全額が十分でないもの、これにつきましては、保険制度に基づいて保険のほうでこれをカバーするようにやっていきたいと、こういうふうに考えております。それで、原子力施設設置者にはこの保険にみんな加入していただきます。これは強制加入でございます。そして、その加入のもとに設置者保険をかけまして、そして、もし事故が起こって災害を受けるような場合には、損害を受けるような場合には、その保険金でその災害賠償していく、こういう形になろうと思いますが、まだ、先ほど申しましたように、保険業界のほうがどういうふうな構想を持っているか、結論を出しているか、これがはっきりいたしておりません。ですから、保険業界の結論が出ましたならば、その結論につきまして一応この保険制度の案を立てたいと思っております。その場合には、むろん保険業界には保険業界の考え方もあろうかと思います。また、われわれのほうとしましてはわれわれの考え方がありますから、十分保険業界とそこで折衝をしなければならないだろうと思っております。十年間全く何もしなかったというんじゃなくて、いろいろ私はいままでやってきたつもりでございますが、ただ、そう急速に結論——結論というか、そういう結果をつくり出せ得なかったことにつきましては、まことに申しわけないと思っておりますが、しかし、私たちがこの従業員に対する損害賠償制度を充実したいという、そのためにいろいろ努力してきたことだけはひとつお認めを願いたい、こう思うわけでございます。
  154. 向井長年

    ○向井長年君 努力努力と言われるんだけれども結論が出てなかったら努力してないということになるんですがね。私は、ただ我妻委員会が出された答申に基づいて保険の問題を重視されているけれども、要らぬことをここで考えていることがけしからぬと思うんですよ。労働協約の問題とか、そんな問題を、あなたたちがここで言うべき問題じゃないと思う。答申の中じゃ、災害というものに対してどうするか、労災では限度がある、これではどうにもならぬ、それに対してどうするかという問題については、事業者と労働者とどうするというような問題は、そんなものとは別ですよ、これは。いま言われるように、労災でプラス何々しなければならぬというやつをどうするかということに焦点を持っていっていいんじゃないですか。それ以外のことを何もあなたたちがやあやあ言う必要はないんじゃないですか。財源がどうだとか、第三者が薄くなるとか、これは結局は無視しているということですよ、われわれから言うならば。内部の問題で、アンバランスが起きるとか、アンバランスが起きるからもうやらぬということだ、それだったら。そして、いま言う、この第三者の財源が減るとか、こういうことは、これはちょっとこの趣旨に反しておるんじゃないですか。答申から別なことをかってに言ってるんだよ。こんなことを言う前に、保険なら保険でどうするかということを具体化するための検討がまず第一で、少なくとも、これがいろいろとむずかしい問題だから三年五年検討しましたと、ようやくここまでできましたので、できるならばこの国会中にこれの立法化もしたいとか、構想はこうであるとか、こういうことを言われるなら、まあ、努力はしたもののなかなか時期がかかったんだなと私は思いますよ。しかし、いまかって同じことで、よけいなことを言って、そして最後の問題は期待以外の何ものでもない。そこを、私は、この問題については何回も言うように、決議の趣旨というものを尊重していない、こう言わざるを得ないんですよ。長官、どう思う。
  155. 西田信一

    国務大臣(西田信一君) たいへんきびしいおしかりを受けたわけでありますが、この委員会の附帯決議は三十六年の六月二日にちょうだいしているわけでありますが、これでは、確かに、立法その他の措置により万全を期すと、こういう御趣旨でございます。まず立法が第一に書いてございます。あるいはその他の措置ということで、立法が第一望ましいという御趣旨だと思います。それにつきまして、いまるる御答弁申し上げておりまするように、たいへん時間がかかっておりますが、まだすきっとしたところまで来ておらないということはたいへん申しわけないわけでありますが、それだけに、なかなかむずかしい要素を持っておるというふうに言わなければならぬと思います。  そこで、我妻委員会答申をされている趣旨は、労災制度をさらに充実するということがまず第一に必要があるということを言っておられるようでありまするし、それでなお補てんされない場合には、一般第三者の保護を阻害することのないように考える、そういう形で賠償法で何とか考える、こういう御趣旨のように思います。そういう御趣旨だったと思います。しかし、いま有澤委員からるるお答え申し上げましたように、いろいろな検討が行なわれてきたが、ずばりとした解決まで到達しなかったということはたいへん恐縮でございますが、しかしながら、いろいろこれをカバーする方策につきましては、労働協約による上積みでございますとか、いろいろなことが行なわれておりまするし、さらにまた、この新しい保険制度におきまして必要なことと取り組んでいきたいということで、近くその結論が出るということでありまするが、その結論がどういうふうに出ますか、このことを十分見守らなければならぬと思います。しかしながら、私ども基本的には、やはりこの従業員のこの災害につきましては十分これを保護、カバーしていく必要があるということにつきましては十分に認識しているつもりでございます。基本的には、今後とも、これをどういう形でカバーするかということにつきまして、さらに、たいへんな強い御鞭撻をちょうだいしておるのでありまするから、私どももそういう姿勢で取り組んでまいりたいと考えております。  そこで、従業員についてのこの保険制度につきましても、要するに、これを対象とするところの保険制度というものが確立されなければならないということが、まず前提であると思います。で、なるべくひとつ民間保険制度を急速に発足させまして、そうしてこういう問題の処理を急ぎたいと考えておりますが、また、その状況によりましては、それらの状況を見きわめた上で十分さらに前向きに検討いたしまして、そうして、なおかつこれが不十分であるという場合におきましては賠償法に組み入れるという方向で検討いたしまして、そうして従業員の不安のないように対処していきたい、かように考えております。
  156. 向井長年

    ○向井長年君 私がこれを非常に重要視しているのは、おそらく、各委員おられますけれども、これを審議したのは私だけぐらいだと思うのですよ、この参議院において。そのときにこの問題を取り上げたために、今日きびしくそういう問題を言っておるわけです。そういう意味で、保険の問題は、そうすると、見通しはどうですか、具体的に。見通しとしては、いつごろ立法化して、どうするということを言えますか。
  157. 有澤廣巳

    説明員有澤廣巳君) 私どもは、わりあい早くこれが可能だと思っておりまして、まあ、昨年の我妻委員会保険業界の代表者が発言していただいたところによりますと、大体年内には制度的なものが考えられる、それほどにもう保険業界の考え方は煮詰まってきている、こういうことでございまして、私どももそれを期待している次第でございます。
  158. 向井長年

    ○向井長年君 そうすると、次の臨時国会か、またその次の臨時国会には、年内にこれは立法化できるということですね。そういう見通しになりますね。年内ということになれば、大体……。
  159. 有澤廣巳

    説明員有澤廣巳君) その場合には、この賠償法の中に組み込むことができるもしれません。そのときにはこの賠償法の中にこれを組み込むことにいたしたいと思います。また、保険の技術的な面で、組み込むとまずいというようなことがございましたならば、これは別の独立の法案という形に取りまとめなければならないかと思っております。いずれにいたしましても、まあ、この年内までにはわれわれの考えが固まってくると、こういうふうに思っております。
  160. 向井長年

    ○向井長年君 長官、年内にそういう固まってくれば立法化できますね、出せますな。
  161. 西田信一

    国務大臣(西田信一君) 明確に年内ということをお答え申すことは、保険制度がどういうふうにきまりますか、そうしてその実行状況がどうなるかということと十分勘案いたしまして考えていきたいと思いますので、時期的にここではっきり明言いたすことは、ちょっと無理かと思いますが、十分そういう御趣旨に沿っていきたいと思います。
  162. 向井長年

    ○向井長年君 まあ常識的に言えば、年内に保険業界との折衝で固まってくる、煮詰められるということになれば、それを煮詰めればこれは当然出せると思いますよ。それが年内の臨時国会になるか、あるいは次の通常国会になるか、これは別として、これは出せるでしょう。それくらいのことは考えないと、また十年たったままだということになると、どうなるのですか。そうでしょう。だから、やはり煮詰まれば直ちに出し得る、それはできるなら、見通しとして年内に可能な形で努力したい、こういうものの考え方じゃないですか、いまは。
  163. 西田信一

    国務大臣(西田信一君) 問題が重要でございますので、十分ひとつ御趣旨に沿うように努力をしたいと思うのですが、はっきり時期的な明言をすることは、この際ちょっと控えさしていただきたいと思います。
  164. 向井長年

    ○向井長年君 それから、先ほどもちょっと言われた「みなし認定」制の問題については、その点はどうなんですか。
  165. 桑原敬一

    説明員桑原敬一君) 一般的に、労災法のたてまえは、起こりました事故と業務との間の相当因果関係をきちっと明確に見きわめて認定をいたすたてまえになっておりますが、この原子力関係あるいは放射線災害につきましては非常に一般原則では見れない問題がございます。したがって、私どもといたしましては、この問題は非常に専門的でございますので、専門家先生方にお集まりいただいて、この問題については特に認定基準をつくりまして問題の処理にあたっておりますが、特に一般的に認定基準ですぐ判断できるものは地方にまかせて、むずかしいやつは本省に稟伺させて処理判断を誤らないようにしたい。特にその場合に被曝線量測定という問題は非常にむずかしい問題がございますけれども、そういった数量だけにとらわれずに、やはりその方が働いておられました作業環境なり作業の従事期間なり、あるいはいろいろな諸条件を総合的に判断いたしまして、そしてできるだけ弾力的にこの問題は処理していきたいということで取り扱ってまいっております。今後もそういうふうなことでまいりたいと思います。特にまた、作業を離れて後ほど——そのころまでは潜在しておりまして、あとから出てくる問題がありますから、それにつきましても十分この関係を見きわめながら、そこの仕事に何年かついておられぬからといって業務上にしないということでもないということで、十分配慮してこの問題は処理をしたいと思います。
  166. 向井長年

    ○向井長年君 早流産の問題がありますから、その問題については。そういう問題について有澤先生は衆議院で答弁していますね、「みなし認定」の問題については。労働能力喪失には当たらないであろうということでね。これはやはり問題だと思うのですよ。じゃどうするかという問題が出てくるのですね。それについて、どう考えられますか。
  167. 有澤廣巳

    説明員有澤廣巳君) 放射線障害の場合にはなかなか因果関係を突きとめることはむずかしいことだと私は思っております。ですから、この問題は、一方においては放射線障害に関する研究、医学的な研究を進めております。が、しかし、なかなか医学的研究による結論もそう早急には出てこないと思いますので、私は「みなし認定」ということは十分拡大して考えていただかなければならぬ、こういうふうに思っております。しかし、いま労働省のほうでお答えになりましたように、その場合には、中央に専門家を集めて、その専門家に基づく判断による、こういうことになっておると思います。で、専門家判断でございますから、まあわれわれとしてはそれを尊重せざるを得ないだろう、こういうふうに思いますが、しかし、それにあたりましても、やはり放射線障害についての研究といいましょうか、これはまだまだわれわれが知らないような障害が出てくるかもしれません。そういう面を十分今後とも研究を進めていきたい。それが明らかになるにつれて、むろん、労災なら労災のほうにも取り入れていただいて、その「みなし認定」の根拠にしていただきたいと、こういうふうに考えております。
  168. 向井長年

    ○向井長年君 これも、あわせてやはり十分な措置を講じなければならぬ問題だと思うのですよ。これもね。  それと、もう一つは、二十五年レムですか、これ、問題ありますね。二十五年、あるでしょう防止法で。放射線障害防止法で、二十五年すれば職場を変わらなければいかぬというやつがあるでしょう。これについて、二十五年すればいわゆるそういうたんのうな技術者がその職を失って、違う仕事につくと思うのですよ。そうすれば、この人の能力が十分発揮できないというところから、大きな不利益をこうむる。この人に対して、そういう問題に対する一つ補償的な問題は、やはり「みなし」と同じような方向で考えなければならぬと思うのですが、この点についてはどうですか。
  169. 有澤廣巳

    説明員有澤廣巳君) その点も、いま申しましたように、放射線障害の医学的な研究が進むにつれまして、二十五年をもっと延ばしても差しつかえがないというふうな結論になるかもしれませんが、まあ、いまのところ、二十五年できまっておりますので、その節にはそれに応ずるような配慮を加えたい、こういうふうに考えております。
  170. 向井長年

    ○向井長年君 結局、言うならば、これは休業補償ですわね。能力に対する休業補償。この休業補償というものもそこで取り上げて考えなければならぬ。これは、三十年になるか、今後の問題は別として、二十五年を限度としていま現在あるのだから、これに対して休業補償というものも考えるという立場で、先ほどの問題とあわせて検討されますか。
  171. 有澤廣巳

    説明員有澤廣巳君) 検討します。そのように検討いたしたいと思っております。
  172. 金丸冨夫

    ○金丸冨夫君 関連。  ちょっと労働省にお伺いしますが、私、この従業員原子力関係に従事しておるいわゆる組合員というか、従事者に対する補償ですね、そういう問題は、本来ならば、労災というものがあるのだから、そういうもので責任を持って労働省がやるというのが大体本筋じゃないかと思うのですがね。だが、いま言ったように、どうもえらい違っているから、これはもう全く原子力自体の、通産省であるとか、あるいはまた科学技術のほうでもってやれというような考え方も、それはほんとうに全く切り離して特別のものであるならばそれはいいと思うが、いやしくも従業員のいわゆる健康保持であるとか、あるいはまた災害であるとかいうようなものであれば、それをやっぱり受けて立って、法律を出すとかいうようなことがやはり本筋じゃないかと私は思うのですがね。ときに、いま十年前の問題だから、向井委員が附帯決議でつけられたような問題は、なるほどそれはちょっとなかなか、はだに合わないような問題であると判定されるのも無理はないと思うが、今日においては、カドミウムの問題もあるし、鉛公害の問題もあるでしょう。ああいうものが次々に出ているのだが、そういう場合に、この労災法だけで始末のつかないのができてくるのじゃないですか。そういう研究はしていませんか。そういうことになるならば、その上に立っての特例での一条を加えるとか、あるいはまた、それではどうにもならない、特にこの原子力関係は全く他の企業とは違って、それに従事する従業員災害というものはもう格段に違うのだと、こういうことであればまた別ですけれども、それでなければ、これは労働省が逃げる手はないと私は思うのですがね。ですから、いまの鉛公害であるとか、あるいはカドミウムの問題なんかも、安中のあの問題にしましても、幸い従業員が少し黙っておるようですが、ああいう問題はほんとうに真剣に考えていくならば、ただ単に原子力だけじゃないと思うのですよ。たとえば、それが人体に残って、そして将来の労働活動に影響するというような問題であるとか、その治療の問題であるとかということが、ただいまのいわゆる労災法の一般法規によって処理する範囲外に出ていくものは、ただ単に原子力だけじゃないのじゃないか。そういうことになれば、これは労働省が、やはり立法措置においても、あるいはまた治療その他の点においても、いわゆるいまの一般のレベルにおいてやられるもの以外のものを考えていく、それが、普通の治療その他でもって年限の制限を若干延ばすというような点であればそれで済むのか、そうでなくて、全然別の措置を講じなければならないというようなものであるのか、そこのところをひとつ研究されなければ、これは私は、ただ単にこの原子力だけじゃないと思うのです。いま、カドミウムの問題だって、あれは十分研究していくと、やはり体内に残って、いつまでも、そのために労働力に影響し、あるいはまた人間の健康に終止符を打つような結果になるわけですね。この検討は、やはり労働省が先に立って検討されるべきものであって、原子力関係のごときは、これはもう世の中で全く違ったものであるから、われわれの関する問題ではないということには、今日私はならないと思うのですよ。特に原子力のごときも、いろいろピンからキリまであるでしょう。原子力利用したいろいろ治療の問題とか、あるいは技術の、工業の問題でも、それはたくさん私は生まれてきていると思うのですよ。そういうものをやる場合に、これは原子力関係だからということになると、今度は、カドミウム関係にまた一つ特別保険の立法をせなければならぬというようなことになるのじゃないですかね。だから、そういうものをまとめて、広い範囲において、やはり従業員のものであるならば、従業員の健康の保持あるいはまた労働力保持というような問題については労働省がやはり率先して取り上げていく、これが、世の中の科学技術の進んだのに従っての労働省の努力じゃないかと思うのですがね。この点、どうお考えになりますか。そういうことはもう原子力以外にはない、カドミウムその他でも、そういうものはいまの労災法で始末がつくんだという御見解に立っておるのかどうか、その点を一言お聞きしておきたいと思います。私は関連でありますから、簡単にその点だけをお答え願いたいと思います。
  173. 向井長年

    ○向井長年君 その答弁の前に、私もそれに関連して聞こうと思ったら先に言われたので……。いいですか、いいですね。  いま金丸委員から言われましたが、これは労働省にさっき聞こうと思ったのですが、労働省は、原子力委員会でこの問題を提起されて、相談を受けて、いや、これではできない、と、これは一般論で言われたと思うのです。いま金丸委員が言われたように、労働省みずからの、やはり労災問題、あるいはこういう能力喪失によるところの休業の問題、こういう問題が出てくる。これは、過去においては、けい肺法なんか特別にやったでしょう、労働省で。そうでしょう。したがって、そういう問題として、特殊にやはり考えなければならない問題として労働省検討を加えるべきだと思うのですよ。現在の一般論的な労災で、すべてこれでいいんだという問題ではないと思うのです、これは。そういう点は、労働省みずからも、原子力問題は、いわゆる放射線防止法があるのだから、そういう立場において、そういう問題もみずから提起しなければならない、いま金丸さんが言われたとおりです。そういう点について、特に先ほど申しました二十五年のいわゆる休業補償というような問題、先ほど答弁されて、検討しますと原子力委員会は言われておりますけれども、こういう問題についても労働省は今後どうするか、あの質問とあわせて答弁願いたい。
  174. 桑原敬一

    説明員桑原敬一君) 御指摘のとおりに、最近非常に新しい原材料を使ってまいりまして、新しい疾病が伸びてまいっておりますので、それに対する予防なり、それに対する治療なりということには新しい手をどんどん打っていかなければならぬ、私ども全く同感でございます。先ほど先生おっしゃいましたように、じん肺法なんかも特別の予防をやって、いわゆる管理部門をつくりまして、そういうことにつきましては労働省は積極的に進めていかなければなりませんし、進めておるつもりでございます。ただ、御理解いただきたいと思うのでありますが、予防と補償というものと二つございまして、予防については積極的にこれはやっていく、それから、不幸にして病気が出ました場合には、それは完全になおすまで治療していくということは労災保険で十分にやれるたてまえでやってまいりたいと思います。ただ、損害賠償になりますと、まるまる故意過失も含めまして全部労災でやるかどうかになりますと、諸外国の例その他がございますので、そこには限界がある。ただし、原子力みたいな、あるいは先ほどのカドミウムみたいな、いろいろな特殊な問題について、住民と同じような被災を受けていると、労働者が、そういうものについては、やはり労働者住民も含めて同じような、損失補てんというか、賠償をしていくということについては、積極的に私ども考えておりますし、また、進めてまいりたいと思います。したがって、原子力だけしかないというつもりは全然ございません。すべての産業、すべてのそういった職場に新しい問題として積極的に取り組んでいく、それに対する予防なり、補償なり、その治療については万全を期していくことは、全くそのとおりだと思います。ただ、それを上回る損害賠償になりますと、やや民事の問題その他が関連してまいりますので、それはそれなりに、その重点的な対象をきめて考えていく。また、先生おっしゃいました、何年かたって問題が起こってくるものについても、やはり補償の中で、どういう形でそれを——たとえば休業補償の問題もございます。そういうものも、いままでみたいに外科的な処置の補償ということでなくて、慢性的な、何年か先に出てくる疾病についての補償ということについては、特に私ども新しく取り組んで、それに対する万全の補償はしていかなければならない、こういうように思っております。
  175. 向井長年

    ○向井長年君 時間が来たようですから終わりますけれども、総括的に言って、先ほどからいろいろと質問の中で言いましたが、少なくともこういう法律改正の機会に、やはり国会で決定されたことはこれはやはり尊重するという立場で答弁されているのだから、しかも、これが半年間とかあるいは一年なら、まだ検討中でございますということは言えますけれども、長期間にわたって、検討はもう当たらない。少なくともそういう立場に立つならば、早期にあらゆる措置を、立法措置なりあるいは行政的な方向、政策なり、これを立てて、やはりそれに対して実行に移してもらいたい。これを強く要望します。  先ほどからの答弁、まことに不満でございますが、私はこれを了解しておるわけではございませんけれども、一応そういう立場で、今後の検討を、早期実現を期待いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  176. 西田信一

    国務大臣(西田信一君) ただいまの、御注意を含めての結びのおことばでありますが、これは、科学技術庁のわれわれだけでなくて、政府全体の責任であると思います。労働省も、あるいはまた、保険の問題等で大蔵省もございます。政府全体がこの問題にしっかり取り組んで、しかるべき結論を出すべきものだ、その責任があるというふうに存じます。十分にひとつ検討を急ぎまして、そして労働者の危険のないように措置いたしたいと思います。
  177. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 他に御発言もなければ、両案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  明日は午前十時より開会することとし、本日ばこれにて散会いたします。    午後一時一分散会         —————