○近江
分科員 農林省の方はもうすでにここの問題についてはいろいろな報告書等もお調べになっていらっしゃると思いますが、一九七〇年、去年の三月に大阪府土木部が横浜国立大学生物学教室の宮脇さん、藤原さんというお二人の方に依頼をいたしまして、みごとな調査書ができているわけです。私、二冊ありますので、もしもなければあとで差し上げますけれ
ども、非常にこの箕面の明治国定公園が危機に瀕しておるということを切々と訴えておるわけです。その中の一部を読んでみますと、「大阪・神戸などの大都市に隣接した、ほとんど伐採後地が占めている箕面山地が国定公園に
指定されたこと自体は我が国の新しい自然公園政策の
一つの表われとして意義がある。日本人の大部分が大都市
生活を余儀なくされている現在、また将来、日本人の大都市集中が更に飛躍的に増大しようとする時、かつて平凡で、どこにでもあった半自然生景観が自然公園に
指定され、植生の復元までも行なおうとする試みは、
一つの先見的な政策の姿と
考えられる。このような大都市近くの自然公園は、都市
生活者
たちのかつての郷土の代償としての自然の復元を十分行なって、はじめて真の
意味が生まれてくるはずである。幸いにも、箕面川に沿った箕面滝付近から下流の渓谷ぞいには、自然林が残存している。これらの自然林は、今回の調査結果からイロハモミジ−ケヤキ群集、ヒイラギ−ウラジロガシ群集、モチツツジ−アカマツ群集にまとめられることがわかった。また、勝尾寺周辺の残存林も常緑広葉樹林(ヤブツバキクラス林)としてのヒイラギ−ウラジロガシ群集や、モチツツジ−アカマツ群集に属することがわかった。これらの残存自然林を中核とした特別保護地を箕面川ぞいに巾の広い帯として設定する。その他の
地域も、各立地の潜在自然植生またはその代償植生を復元存続させて名実共に新しい時代の大都市周辺の新しい自然公園——わが国特有の国定公園——の設定・管理が期待される。」そこで、こういう非常に今後を期待するということがあるわけですが、「現在の箕面国定公園予定域を概観すると、すでに自然公園に
指定されている箕面滝付近以南の渓谷ぞいを除いては、ほとんど自然植生は破壊しつくされている。とくに国有林域であった公園予定域のほとんどは、すでに皆伐が完全に行なわれてしまっており、現存植生は勝尾寺の寺林、尾根筋のアカマツ林などの一部残存林をのぞくと、スギの植林地で占められている。」要するにほとんど破壊し尽くされてきておる。こういう重大な警告を発しているわけです。昔からこの
地域一帯は非常にこん虫の宝庫として世界的にも知られておりましたし、大阪というところは動脈硬化の町ともいわれておりますし、ほとんど自然がないわけですよ。そういう
地域でありますし、残されたただ
一つのそういう緑地帯なんです。そういうところにありまして、いまそういうような破壊がどんどんと進んできておる。したがってそういう専門家の自然保護協会の人
たちがせっかく特別区域を
指定しても、まわりをどんどん伐採しては保護の
意味がない。それはそうですね。結局
お互いにこういう生物というものはやはり群集して初めてそこにいろいろな生存可能
条件というものが生まれてくるわけです。それをばさばさ切ってまる裸にしていく。そうすればそれはもう当然そこで生息できるものだって死滅をしていく。昔はここにサンショウウオもおったのですけれ
ども、いまなんか全然一匹もおらぬわけです。水源涵養林も全部川のところから切ってしまっておる。それではたして自然の景観も保ち、しかも自然を保護しておる姿であるかという問題なんです。山合いの沢をまる裸にするなど、水源涵養林をだめにしておる。そういう問題が起きてきておるわけです。そしてこの大阪だけではなくて関西一円にこの明治の森箕面国定公園を守れという声が日増しに強くなってきておるわけです。それだってはたして、
農林省が現在のような経営主義でいかれた場合に、いまでもそういう破壊寸前の状態にきておるのを一ぺん木を切ってしまえば六十年、七十前だめなんですよ。そのあとまた植えますとおっしゃるかもしれぬけれ
ども、六十年、七十年の歳月というものをどうしてくれるかという問題なんです。ですからいま重大な危機に瀕しているわけです。
そこで、今後この種の問題をどうしていくかということになると思うのですが、大体林野庁にしても経営主義といいますか、独立採算主義ということを世間の人はみな言っておりますが、結局そこで切って、それで従業員の給料なりを払うからしかたなしに切るのじゃないか、それじゃ何のために林野庁はあるのだというような極端なことまで言うわけです。私らもその施業のことはよく理解できるわけです。しかしながら全国でただ二カ所しか
指定してないものを人も入らないような深山と同じ状態で区域を定めて、ばさばさ切っていく、はたしてそういうやり方は全国的にどこもかしこも同じような状態でやっていいかどうかということです。それではこの明治の森と
指定したような意義は何もないわけですよ。たいへんな問題だと思うのです。これは
農林省と、公園のほうですから厚生省の方も共管の問題であろうかと私は思うのですが、厚生省としてもそういう
指定したところをまた施業だからということでばさばさと切っていってもいいわけですか。
農林省がいらっしゃるから言いにくいことだと思いますけれ
ども、たった二カ所の
地域なんですよ。少なくとも厚生省は厚生省としての筋を持った姿勢があるのじゃないか。だからこういう
指定した公園等については、自然をあくまで守るという方針が私は正しいのじゃないかと思うのですけれ
ども、どのようにお
考えでございますか。