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佐藤(一)
国務大臣 私はかねがね申し上げているのですが、現在の高い
経済成長のもとにおいては、これは
経済学者一般も認めておるところでありますけれども、どうしても高い物価というものが実現する。そこでやはりその成長と物価とのいわゆるトレードオフ関係といわれておりますが、その関係はこれを認めざるを得ないであろう。もちろんそれの具体的な幅については、そこにやはり政策的な努力によって違いも出てきますし、そういう点でいわゆる数字的に別に固定したことではありませんが、大きな流れとして、あまり
経済成長が高いと物価はどうしても上がるということも
基本に
考えざるを得ない。と申しますのは、やはり六十カ月に及ぶところのこの高度成長というものが加速度がついてきて、そうしてこれが物価上昇の非常な
基本になっておる、これはいなめないと思います。そういう
意味で、われわれとしてはかねがねこの成長というものをまずある
程度安定的なものに直していかなければならない。この
基本がなければ、ほかの対策をやってもなかなか
実効があがらない。そういう
意味において、まず軌道を修正するという
意味においてできるだけ成長を穏当なところに持っていく。労力から見ましてもその他あらゆる
経済の諸
条件から照らしてみて、
日本の現在の
条件に比してあまりにも無理な成長というものは、これは全部に対して無理を起こしひずみを起こす。その最大のものは物価である。そういうことを
考え合わせまして、やはり軌道の修正をやる、そしてできるだけ成長率を安定的なものにまずおろしていく、こういうことだろうと思います。そしてもちろんそのときにわれわれとしても注意を要する点は、最近いわれておりますように、消費者物価の上昇の中にはいわゆるコストプッシュという要因もだんだん強くなってきておる際であるから、昔のようにただ引き締めをすればすぐ下がるというものではない。卸売り物価は
御存じのように他の要因も加わっておりますが、やはり引き締めによって相当鎮静化してきていることは事実でありますが、消費者物価に対しては非常にタイムラグがある。そういう
意味において、ある時間の経過というものがやはり必要になってくる。そうしてまた今度は引き下げ方にもよるのでありますけれども、ある
程度景気が落ち込んでまいりますときに、やはり物価高というものがどうしてもあらわれがちであるから、そこにまた留意をしなければならぬ。そして現在そういう引き締めを通じて安定的な環境をつくろうとしておるわけですが、そういうときに、いままでの高度成長のツケが回ってきている。この高度成長のツケというものは何かというと、やはり賃金の上昇というものがどんどんと起こってくる、こういうことであろうと思います。そういうようなことで、今日の物価高にはそうした
基本的な点があるということを十分認識して、これからの物価対策を立てていかなければならぬ。もちろんその中には、たとえばやや特殊なものもあります。生鮮食料品というような問題については、これはそうした全体の
経済情勢の中とは無関係ではありませんけれども、しかし、特に
日本の場合には、この生鮮食料品高というものにはいろいろな特殊な原因が加わっておる。ですから、そうした特別のものについては、しかも相当比重の高い重要な問題ですから、これは個別対策として生鮮食料品の価格をどうやって安定させるかということについては、特別の
集中的な努力を、それはそれでしなければなりません。いつも言うのでありますけれども、今日の野菜の値段が高いのは、流通の問題、いろいろとありますけれども、
基本は何といっても絶対的な供給の不足であります。この供給の不足ということを放置しておいて、いろいろな小手先の価格対策をやっても安定するわけではありません。何よりも物をふやすことが野菜に対しては大きな政策で物価対策である。そういう
意味において、いまできるだけ生産の、供給の安定をはかっていく、これは現在一番問題になっている野菜の問題についての一つの大きな方策であろうと思います。それから生鮮食料品等についての価格対策は、そういう個別的な対策を進めることで
農林省を
中心に
——まだ十分とは言えません。これを強くわれわれも要求しているわけでありますが、そのほか、最近におきましては特に繊維製品であるとか、それからその他のいろいろなサービス料金であるとか、これが上がってきております。これらは、いずれも人件費が高くなったということを理由にして、
あとから
あとから値上がりが生じてきておる。これについては、先ほど申し上げましたような全体の
経済というものを、環境をもっと安定した、鎮静化したものにしていくということを
基本にして、今度はそれぞれの問題がございます。流通機構にも問題がありますし、そうした問題をやはり個別対策としてほぐしていかなければならぬと思います。それから野菜問題等にもあらわれておりますように、やはり急激な
経済成長によって消費需要というものは非常に急激に膨張しておりますが、それに対して生活必需品なんかで供給が十分に追いつかないものについては、野菜に限らず供給をふやさなければなりませんが、そうした
方面についての
投資がやはり従来不十分であった。そうしたものについては、生産性の低い部門についてやはりもう少しさらに
投資をしまして、そうしてその合理化なり供給の安定をはかっていかなければならぬ。そうして全体として、やはり流通機構も含めまして、競争、いわゆる自由競争の原理というものができるだけ働くようにしてまいる。それには競争を阻害するような諸
条件を排除していかなければならぬ。再販の問題もありますし、あるいは大
企業については管理価格の問題等も問題になってきております。また、ただ国内的にそういう対策について進めるよりも、何よりもやはり一番輸入を自由化し、そうしてそれによって各
方面に刺激を与えることによって、いまのような自由競争の原理というものをできるだけ実現する方法がある。こういうことで、
あといろいろと、いわゆる構造対策といい、競争対策といい、自由化対策といい、いろいろなものを、やはり
考えられるものはすべてやってまいる。そして過渡的には、価格の一部でありますから、ただ機械的に抑制することはできませんけれども、しかしその中にあって、やはり公共料金というものについては特別に抑制するような
考え方で臨み、そして安易な値上げというものを許さないというようなことで、現在の物価対策というものは、いろいろな角度から、できるだけのものを進めてまいる。全体の環境というものを鎮静化した中においてそうした政策をやっていく。それが鎮静化した雰囲気の中で初めて
実効を奏してくる。そういうふうに私
たちは
考えて、及ばずながらできるだけの政策努力を進めてまいりたい、こういう
考えを持っておるわけであります。