○谷口
分科員 最後に、これは
大臣、政治論になりますが、先ほど申しましたように、いまの
診療報酬体系の中で、
医者は薬を売ってそれによってかろうじて
医者として成り立っている。これは事実そうなんですね。だから、今後たとえば、あなたのほうで
薬価基準を改定されて五%なり一〇%なり下げられるということがあるとしましても、決して総
医療費中における薬剤費は減らぬ。これは
大臣御
承知のとおりです。
薬価基準にさえぎられた低いところでやっておったんじゃ
医者はもうからないから、製薬独占
企業は新しい薬を開発して出す。
医者もそれを使ってやるということでやりますからね。それだけでは
医療費、薬剤費が減らないとは言えませんけれ
ども、非常に重要なウエートを占めておるというように思うのですが、そういうことを事実上やっているんです。そういうことですから、
医者は薬によって生計を立てている、と言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、生計をも含めた
医者の活動をかろうじて維持しているというのが実情だと思うのですよ。こういうことはやはりうまくないので、
大臣おっしゃったとおりに、科学者として、
医者として、全くそれにふさわしい
医者の労働、看護婦の労働あるいは医業労働者の労働を
評価するという、そういう
立場からの
診療報酬体系を原則的に考える必要があるということを主張しているわけであります。
それと関連しまして製薬会社が、特に十大製薬会社が
日本にあるわけですが、ここらが、
国民の生命と健康を守るということを目的
にした国の事業ですね。これは
国民皆
保険でありますから、
医療保険制度は。そういう国の事業が、
国民の健康、
国民の命、こういうところをマーケット
にして、そして製薬大
企業だけがここでもうけるというようなことが許されていいかどうか、そういう問題は根本的に
検討すべき問題じゃないかというようにわれわれは考えております。これはどれくらいもうけているかという問題ですな。これは私、そういう点でも若干
資料を持ってきているのですけれ
ども、先ほど申しましたアリナミンなんかの例は
一つの例でありますが、これはシクランデレートですか、何かむずかしい名前で私はよく読めないようなややこしい名前ですが、これをつくっている人に聞いた。原価は一体幾らだということです。そうしますと、シクランデレートの原末が一キログラム、これは値段がいろいろ幅があるようです、五千円から三千円だそうです。一カプセルに百ミリグラム。五千円ですからこれは一カプセルが五十銭になります。これが原料です。それから乳糖を入れますので、これが原料代として八銭。それからゼラチンのカプセルの代金が五十銭。それから包装資材、これが約一円。容器代が二十銭。合計二円二十八銭。これが
薬価基準で十八円三十銭。
メーカーが
医療機関に渡す値段は、高いので八円から十円ですね、二円二十八銭のものが。もちろん、このほかに広告費やその他がありますから、全くこれはそのものの原価だと思いますが、いずれ
にしましても約三倍から四倍が市価です。しかも、それよりももっと高く、倍以上に
薬価基準がなっている。製薬会社がどれだけもうけているかということは、これ一事をもってもわかる。
それから四十四年、四十五年について武田と大正についてだけ調べてきたのですが、武田の総売り上げが千七百十億。利益が、これは全くいろいろなものを差っ引いた利益だそうですが百四十三億。配当が一七%。大正に至っては総売り上げが五百四億。利益が百一億。配当が五〇%。ことしじゅうに設備投資を二百億やるそうです。これは武田です。九月に大体四割の増資をするということです。これは大体年間の数字です。それくらいもうけているのですね。
総
医療費のことしの見通しはどうか知りませんが、二兆五千億くらいになるのじゃないですか。四〇%と見まして薬代が一兆でしょう。そのうち、私
どもの計算によると、四八%くらいが十大
メーカーです。つまり五千億ですな。そしてこのようにぼろもうけをしているのです。こういうことが
国民の命を守るという国家的事業の中で行なわれることが正しいかどうかということです。そういう問題も私
ども検討すべき時期に来ているのじゃないですか。赤字赤字といっておりますけれ
ども、ここらでメスを入れて、安くするというよりも私はやはり規制すべきだと思うのですね。もちろん、資本主義でありますから、どんな大きい
企業でありましても、利潤を無視するということは、私
どもはいまのところ考えません。将来へ行っては知りませんが……。しかし、ほんとうに適正な利潤を認めてやっても、こんなべらぼうな独占的なもうけ方はあり得ないと思うのです。もしこれを国の
一つのやり方としてメスを入れ、規制を加えるということになりまして、たとえ二割なり三割なり下げることができれば、それだけでも
保険財政には相当なものが出てくるということですね。
私は、前にこの財政の問題で、
日本の国家の
保険医療、
保険制度に対する援助という問題全体として諸外国に比べて非常に劣っていることを、
資料をあげ、数字をあげて言ったことがありますが、やはり国の援助と同時に、独占的な薬価に対する規制という問題を当然考えるべきだと思う。命を守る仕事、これを何か商売のようにされたのではかなわぬということです。そういうものだと私
どもは思うので、独占的な薬価に対する国の規制の問題、そこから財政的にも引き出すという問題を、これは真剣に考えておく必要があるだろうと思う。
抜本改正――単にことしの
健康保険の
改正案でも、私
どもは非常に不満です。あなたはだいぶこれが
抜本改正の第一歩であるし、この中に本質的なものは出ているとおっしゃるけれ
ども、そこに出ている本質というものはまことにこわいので、これは
予算の総括のときにも話がありましたとおり、上限を引き上げるとか、あるいはボーナスにまでかけるとか、あるいは料率を上げるとか、いろいろなことがありました。相当な金を引き出すことになっていますが、ああいう被
保険者に転嫁するというやり方はまことにうまくない。だから
社会保障制度審議会なんか、
政府の今度の案に対して、もう一ぺん考え直せというような答申すら出しておるということです。そういうやり方ではまずい。やはり次第に国あるいは
企業家がよけい負担していく。行く行くは、私
どものことばで言えば、
政府、資本家全額負担ということ
にしていく必要があると思いますが、その過程でやはり薬価の問題を解決する必要があるという考えを私は持っているのです。御所見を承って私の
質問を終わりたいと思うのですが、いかがでしょう。