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1971-02-22 第65回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月二十二日(月曜日)     午前十時三分開議  出席分科員    主査 登坂重次郎君       相川 勝六君    赤澤 正道君       正示啓次郎君    中野 四郎君       松野 幸泰君    大原  亨君       後藤 俊男君    田邊  誠君       西宮  弘君    堀  昌雄君       岡本 富夫君    古寺  宏君       中野  明君    渡部 一郎君       寺前  巖君    兼務 井野 正揮君 兼務 井上 普方君    兼務 島本 虎三君 兼務 原   茂君    兼務 細谷 治嘉君 兼務 寒川 喜一君    兼務 吉田 之久君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 内田 常雄君  出席政府委員         警察庁刑事局長 高松 敬治君         経済企画庁総合         開発局長    岡部  保君         厚生政務次官  橋本龍太郎君         厚生大臣官房長 高木  玄君         厚生大臣官房会         計課長     上村  一君         厚生省公衆衛生         局長      滝沢  正君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省環境衛生         局公害部長   曾根田郁夫君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省薬務局長 武藤琦一郎君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省児童家庭         局長      坂元貞一郎君         厚生省保険局長 戸澤 政方君         社会保険庁医療         保険部長    穴山 徳夫君         自治省行政局長 宮澤  弘君  分科員外出席者         法務省刑事局刑         事課長     前田  宏君         大蔵省主計局主         計官      相原 三郎君         国税庁直税部審         理課長     中村 平男君         文部省大学学術         局審議官    安養寺重夫君         文部省大学学術         局大学病院課長 甲斐 安夫君         文部省体育局学         校保健課長   橋本  眞君         農林省農地局参         事官      住吉 勇三君         通商産業省企業         局商務第一課長 竹村  豊君         労働省労働基準         局安全衛生部労         働衛生課長   山本 秀夫君         建設省河川局河         川計画課長   宮崎  明君         自治省財政局公         営企業第二課長 神崎治一郎君     ――――――――――――― 分科員の異動 二月二十二日  辞任         補欠選任   赤澤 正道君     正示啓次郎君   西宮  弘君     堀  昌雄君   渡部 一郎君     岡本 富夫君   谷口善太郎君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   正示啓次郎君     赤澤 正道君   堀  昌雄君     田邊  誠君   岡本 富夫君     中野  明君   寺前  巖君     谷口善太郎君 同日  辞任         補欠選任   田邊  誠君     中村 重光君   中野  明君     古寺  宏君 同日  辞任         補欠選任   中村 重光君     後藤 俊男君   古寺  宏君     瀬野栄次郎君 同日  辞任         補欠選任   後藤 俊男君     西宮  弘君   瀬野栄次郎君     渡部 一郎君 同日  第二分科員井上普方君、第四分科員井野正揮  君、島本虎三君、原茂君、寒川喜一君、吉田之  久君及び第五分科員細谷治嘉君が本分科兼務と  なった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十六年度一般会計予算厚生省所管  昭和四十六年度特別会計予算厚生省所管      ――――◇―――――
  2. 登坂重次郎

    登坂主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  昭和四十六年度一般会計予算及び昭和四十六年度特別会計予算中、厚生省所管を議題といたします。  政府から説明を求めます。  この際、大臣に申し上げます。予算説明につきましては、時間の都合もございますので、簡略にお願いいたします。
  3. 内田常雄

    内田国務大臣 昭和四十六年度厚生省所管一般会計及び特別会計予算案概要について御説明申し上げます。委員長のお指図もございますので、簡単に申し上げます。  昭和四十六年度厚生省所管一般会計予算総額は、一兆三千二十億八千七百十八万五千円でありまして、これを前年度昭和四十五年度当初予算一兆一千三十五億二千十二万三千円に比較いたしますと、一千九百八十五億六千七百六万二千円の増加と相なり、一八%の増加率を示しております。また、一般会計予算総額に対する厚生省予算の比率は一三・八%と相なっております。  あらためて申し上げるまでもなく、厚生省の受け持つ行政の分野は多方面にわたっており、しかも国民生活と密着したものであります。福祉優先が強調される今日、責任の重大さを思い予算確保に努力いたしましたところ、児童手当制度の創設をはじめとして年金健康保険改善社会福祉施設生活環境施設整備等、幾つかの見るべき成果があったものと考えております。  以下、主要な事項についてその概要を御説明申し上げるのでございますが、ただいま委員長からのお話もあり、また委員各位のお手元に資料を配付いたしてございますので、お許しを得て説明を省略させていただきたいと存じます。  何とぞ、本予算案の成立につきましては、格別の御協力をお願いいたす次第であります。
  4. 登坂重次郎

    登坂主査 この際、おはかりいたします。  昭和四十六年度厚生省所管一般会計及び特別会計予算概要につきましては、これを本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 登坂重次郎

    登坂主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――   〔内田国務大臣説明を省略した部分〕  第一は、生活保護費であります。  生活扶助につきましては、その基準額を一四%引き上げ、また、教育扶助につきましても所要改善をはかるなど、生活保護費として総額二千五百二億八千九百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し、三百三十一億四百余万円の増加となっております。  第二は、社会福祉費でおります。  まず、社会福祉施設整備につきましては、対前年度三十億円増の八十三億円を計上し、老人福祉施設心身障害児施設及び保育所等緊急整備に重点を置いて計画的に推進することといたしております。  また、社会福祉施設入所者飲食物費日常諸費等引き上げるとともに、施設職員の定数の大幅な増加給与改善を行ない、特に民間施設長期勤続者については給与上の特別措置を講ずることとし、所要経費を計上いたしております。  老人福祉につきましては、老齢福祉年金増額などの施策にあわせ、新たに脳卒中後遺症老人について機能回復訓練を行ない、ひとりぐらし老人について相談、介護を実施し、また、老人社会奉仕活動助成するなど所要経費を計上いたしております。  心身障害のある者の福祉につきましては、家庭奉仕員増員特別児童扶養手当の額の引き上げなど、従来の施策を一そう充実するとともに、新たに高度難聴児用補聴器支給精神薄弱者のための通勤寮の設置、在宅重度障害者に対する訪問診査点訳奉仕員の養成などのきめのこまかい配慮を払い、さらに、これまで建設を進めてまいりました心身障害者福祉協会施設いわゆる国立コロニー運営費を計上し、この四月より入所を開始することといたしております。  これらもろもろの施策に必要な社会福祉費として、総額一千四百十八億八千六百余万円を計上しており、前年度予算に比し、三百八億四千八百余万円の増額となってあります。  第三は、社会保険費でおります。  まず、社会保険国庫負担金は、厚生保険特別会計及び船員保険特別会計への繰り入れに必要な経費として九百七億五千五百余万円を計上いたしております。そのうち政府管掌健康保険につきましては、新たに給付費の五%相当の定率国庫補助を行なうこととして二曹七十五億円を計上いたしておりますが、これは医療保険制度に懸案であった抜本改正の第一歩として、当面明年度から主として老齢者医療の充実をはかりつつ単年度の収支の均衡を回復するため、必要な改善合理化方策を講ずる一環となるものであります。また、厚生年金保険については、最近の物価上昇を考慮し、定期的な財政計算期を待たず年金額を一割程度引き上げ、その実質的価値を維持しようとするかつて例を見ない措置を講ずることといたしております。  国民年金国庫負担金は、国民年金特別会計への繰り入れに必要な経費として一千七百二十五億八千二百余万円を計上いたしております。  このうち福祉年金については、各年金月額をそれぞれ三百円引き上げ扶養義務者所得制限を大幅に緩和するとともに、准士官以下の軍人等について、福祉年金を全額支給することとし、身体障害のある老人には六十五歳から老齢福祉年金支給することとするなど、これまたこれまでにない改善をはかることといたしております。  新たに児童手当国庫負担金として計上した額は、三十億六千八百余万円であります。  児童手当制度は、家庭における生活の安定と、児童の健全な育成、資質の向上を目的として、いよいよ、昭和四十六年度から発足することにいたしました。  義務教育終了前の第三子以降の児童対象月額三千円を支給することを目標としつつ、本年度はさしあたり満五歳未満の児童対象として段階的に実施することにいたしております。  国民健康保険助成費につきましては、療養給付費補助金など四千二百十八億七千五百余万円を計上しております。  以上申し上げました社会保険費総額は、六千九百五億四千七百余万円で、前年度予算に比し、一千六十六億一千三百余万円の増額となっております。  第四は、保健衛生対策費であります。  保健所費につきましては、保健所整備を積極的に推進し、保健婦訪問活動用小型自動車整備するとともに、過疎地域には新たに保健婦を配置するなど、保健所機能向上をはかるため九十三億六千七百余万円を計上することといたしております。  原爆障害対策につきましては、長崎市の特別被爆者範囲拡大するとともに、健康管理手当年齢制限を六十歳に引き下げ、また、原爆病院施設整備を行なうなど、八十六億八千三百余万円を計上いたしております。  僻地医療対策につきましては、僻地診療所患者輸送車等整備をはかるほか、新たに住民の健康管理を中心とした総合的な僻地医療地域連携対策を行なうなど、所要経費を計上いたしております。  このほか、結核医療費は四百五十四億二千九百余万円、精神衛生費は三百九十四億七百余万円をそれぞれ計上するなど、保健衛生対策費として総額一千六百一億一千四百余万円で、前年度予算に比し、百九十五億六百余万円の増額となっております。  第五は、遺族及び留守家族等援護費であります。  恩給の改正に準じて障害年金遺族年金等年金額増額するほか、準軍属の年金額の是正、公務扶助料扶養加給対象となっていない父母等に対する後順位遺族年金支給戦傷病者等の妻に対する特別給付金等支給範囲拡大及び入営または復員帰郷の途上で死亡した者の遺族に対する特別支出金支給など、遺族及び留守家族等援護費として、総額二百六十四億六千六百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し、十九億三千四百余万円の増額となっております。  第六は、生活環境施設整備費であります。  生活環境施設整備は、国民生活を豊かにするために欠くことのできない前提でありまして、昭和四十六年度は対前年度四十億四千三百万円増の百三十七億三千七百万円を計上いたしております。  そのうち、水道関係では水源の確保及び広域水道助成をはかるため五十億一千七百万円を計上して都市部の上水道の需要の増加に対応することとし、また、簡易水道整備については、四十三億五千九百万円を計上して農山漁村水道の普及をはかることといたしております。  廃棄物処理施設整備につきましては、去る第六十四臨時国会において廃棄物処理及び清掃に関する法律の制定を見たのでありますが、これまでの施策にあわせ、新たに都市産業廃棄物処理施設及び粗大ごみ処理施設について助成を行なうこととし、合計四十三億六千百万円を計上いたしております。  第七は、公害対策等経費であります。  公害対策につきましては、さきの臨時国会において諸法律整備され、規制地域拡大規制措置強化がはかられたところでありますが、昭和四十六年度におきましては、公害対策費として十四億八千五百余万円を計上し、環境基準の設定、監視測定体制整備保健所公害担当職員の大幅な増員をはかるなど、これが施策を一そう強化するとともに、新たに緊急公害機動調査班を設け、臨機に公害問題の処理について調査、指導に当たらせることとしております。  また、公害防止事業団については、事業計画規模を四百億円と大幅に拡大し、助成費増額することとし、さらに、公害による被害の救済については、医療手当の額の引き上げ支給要件改善をはかることとしております。  なお、自然保護対策につきましては、国立公園等施設整備費増額するほか、新たに自然環境を保全するため所要経費を計上いたしております。  食品及び医薬品安全衛生対策につきましては、既存の食品添加物及び医薬品点検検討を進めるとともに、残留農薬等規制強化食品衛生調査研究費増額など所要経費を計上いたしております。  以上のほか、社会的に強い要請のある特殊疾病等について、小児ガン治療研究費二億円、心身障害研究費一億円、スモン等特別研究費一億六千万円を計上し、重点的な研究を進めることといたしております。  以上、昭和四十六年度厚生省所管一般会計予算案についてその概要を御説明申し上げました。  次に、昭和四十六年度厚生省所管特別会計予算案の大要について御説明申し上げます。  第一は、厚生保険特別会計についてであります。  一般会計より九百八億九千二百六十八万一千円の繰り入れを行ない、各勘定歳入歳出予算をそれぞれ計上いたしております。  第二は、船員保険特別会計についてであります。  一般会計より二十九億三千百六十八万五千円の繰り入れを行ない、歳入六百二十一億四千七百七十七万五千円、歳出三百八十一億七千八百九万四千円を計上いたしております。  第三は、国立病院特別会計についてであります。  病院勘定一般会計より百三十一億七千二百三万五千円の繰り入れを行ない、歳入歳出とも六百九十七億一千七百三十八万円を計上いたしております。  療養所勘定は、一般会計より二百八十六億九千二百四十一万七千円の繰り入れを行ない、歳入歳出とも六百二十億四千九百三十五万二千円を計上いたしております。  第四は、国民年金特別会計についてであります。  一般会計より一千七百二十五億八千二百四万八千円の繰り入れを行ない、各勘定歳入歳出予算をそれぞれ計上いたしております。  最後に、アヘン特別会計についてであります。  歳入歳出とも十二億六千六百九十三万八千円を計上いたしております。  以上、昭和四十六年度厚生省所管特別会計予算案について、その概要を御説明申し上げました。     ―――――――――――――
  6. 登坂重次郎

    登坂主査 これにて説明は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 登坂重次郎

    登坂主査 この際、分科員各位に申し上げますが、質疑の持ち時間は一応本務員は一時間程度兼務もしくは交代して分科員となられました方は三十分程度にとどめ、議事進行に御協力を願いたいと存じます。  なお、政府当局におかれましては、答弁はでき得る限り簡潔、明瞭にお願い申し上げます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  8. 堀昌雄

    堀分科員 最初に、二月八日の予算委員会総括質疑におきまして、佐藤総理との間に論議をさせていただきました献血対策の問題を取り上げたいと思います。  内田厚生大臣にお伺いをいたしますが、先週は二日にわたって実は物価対策特別委員会が行なわれまして、いま国民関心事というのは、公害の問題もありますが、あわせて物価の問題というものにきわめて大きな関心国民が寄せていることは御承知のとおりであります。そこで私は二月八日に現在の保存血液価格の問題について予算委員会総括で取り上げたのでありますが、後の関係もありますので、この予算委員会総括で申し上げたことを記録にとどめる意味をもって、もう一回ちょっと申し上げておきたいと思います。  「実はこの二月から、手術をいたしましたり外傷いたしましたときに受ける輸血保存血液が、これまで二百cc千五百五十円から千八百六十円に三百十円値上がりをいたしました。約二%の値上がりと、こうなったわけであります。そこで、これは私はぜひ政府に考えていただきたいと思うのは、昭和四十五年の献血の総量は、四十五万六千四百六十八リットルあります。四十六年の献血はおそらく四十六万リットルくらいだろうと思うのですが、これは国民の少なくとも二百三十万人の方が――自分からだ血液というものは、これは自分からだ一部分なんであります。この一部分無償で――ただ善意に基づいて実は献血をしておられるわけですね。これは政府の方針に基づいて、いま売血から献血にたいへん進捗をいたしました。そうして二百三十万人の人が何らの報酬を考慮することなく、からだの一部を、それも血液という貴重なものを、一年間に二百三十万人が献血をしておられる。その血液が実は日赤に委託をされておるために、日赤人件費上昇分をもろにはね返して千八百六十円に今度値上がりをするということになるのです。ところが、献血制度合理化をしようなんという芸当はできないわけですよ。ですからこれは今後とも人件費が上がれば輸血を受ける側の費用というものはどんどん上がります。おそらく次には三千円になり四千円になってくるでしょう。こうなったときに、国民の側からすればただ自分の貴重な血液献血しておるのに、受け取るものが三千円も四千円もになって受け取るのはおかしいじゃないかということが起こってくるのは、私は当然だと思うのであります。そこで提案をしたいのは、今度二月から一応引き上げましたけれども、その今度の引き上げ額を一年間に計算すると、わずかに六億五千三百四十八万円にしかすぎないのです。だから、これをただにしろとは言いません。これまでの千五百五十円というものを当分据え置いて、これから出る差額程度は私は国が補助をしてもいいのではないか。それはだれのために補助をするのか。いまの二百三十万人の国民善意のために、私はこの程度のことは国が責任を持っていいのではないかと考えますけれども、総理大臣いかがでしょう。」佐藤内閣総理大臣、「ただいま御指摘になりましたように、十分考えておきましょう。」こうお答えになったわけであります。委員会が終わりまして、すぐ委員会室で、福田大蔵大臣は私のところにおいでになりまして、ただいまの六億円の問題は承知いたしました。直ちに下部に申し伝えます。こういうふうに、これは記録に載っておりませんけれども、私にお話しになりました。  そこで私はその翌日、実は小林法相問題が起きました委員会におりましたのでありますが、佐藤総理はそこで重ねてこういう発言をしておられるわけであります。佐藤内閣総理大臣、「私並びに政府の姿勢が答弁を通じて変わっているとは私は思いません。安井君にこの前お話ししたとおり、そのことは、執行にあたっては人によって差別をつけるというようなことはいたさない、これはそのとおり、またかくあるべし、久保君も言われるとおりであります。また、この審議を通じまして、建設的な御意見ならどんどん取り入れております。これは昨日の堀昌雄君、社会党の方ですが、堀昌雄君の質問に対して、私は建設的な御意見だから、これは取り入れましょう、こういったものもございます。また過去の審議におきましても、そういうような態度でございます。」重ねて実は総理は確認をしておられるわけであります。  そこで厚生大臣にお伺いをいたしたいのでありますけれども、このような手続について厚生省は御賛成かどうか、最初にそれを伺いたいのであります。
  9. 内田常雄

    内田国務大臣 堀委員からお話がございましたように、最近の保存血液はほとんど全部に近い数量が献血によりまして確保されておるわけでございまして、私も実は献血年齢が一番最終の限界にきておるわけでございますが、厚生大臣でございますので、先般も進んで献血をいたしたようなわけでございます。もちろん無報酬、無価格でございます。そうした血液が、これはやはり調製をしたり管理をいたしますためにいろいろな費用がかかるわけでございましょうが、もとは、献血された方は無償でございますので、献血された血を使うときの価格というものはできるだけ安いほうがいいということにつきましては、堀委員と全く同じ考え方でございます。先般各都道府県がこれらの保存血液調製管理費用等上昇やむを得ないものがあるということで、約二割程度値上げをいたすことになりましたときも、ほんとうのことを申しますと、私は厚生大臣といたしましてもあまりいいことではないと思いましたけれども、どうしてもやりくりがつかないということでございますので、これを阻止する有効な手段がございませんでしたが、先般、ただいまお読み上げのとおり予算委員会におきまして堀昌雄委員総理大臣とやりとりをなされました際、私もその席におりまして、総理大臣もあなたの御提案賛成の向きを表明されたと承っております。でございますから厚生省とすればたいへんありがたいことでございますので、さっそくあなたの御提案を受けまして、大蔵省のほうにも予算補てん方につきまして折衝を開始いたしておる段階でございます。賛成でございます。
  10. 堀昌雄

    堀分科員 厚生大臣も御賛成のようでございますし、福田大蔵大臣に私はそういうさっきの経過を申し上げましたけれども、あくる日の小林法相問題のときに、重ねて私、福田さんに主計局長のほうにお話しいただきましたかとこう申し上げましたら、話をしました、金額は精査をして六億円になるか少し少なくなるかはこれは別だけれども、申してございます、こういうお話でございました。  そこで実は二月に値上げになっておるのでありますが、やはりいいことは善は急げというのが日本の格言でございますから、当然私はできるだけ早くこの処置を進めていただきたい、こう思っておるわけであります。  今日が二月二十二日でございますが、二月はまだあと一週間ばかりあるわけでございます。二月一日に千八百六十円という告示になったわけでありますが、これを事務的にすみやかな手続をとっていただけば、三月一日に再度千五百五十円の告示をすることも私は決して不可能なことではない、かように考えておるわけでございます。財政的には御承知のように予備費もあることでありますし、予算委員会において総理が約束されたことでもありますから、当然私はひとつ三月一日から実施してもらいたい、こう考えておりますが、財政的な取り扱いについて相原主計官からお答えをいただきたいと思います。
  11. 相原三郎

    相原説明員 この問題につきましてはかねてから堀先生からお話がございまして、そのときは当初の質疑だけを承ったわけであります。ところが再度お話がありまして、二月九日の総理大臣の再度の答弁もありまして、その後厚生省にもお話を聞いております。そうしてその総理大臣の再度の答弁をどう生かすかにつきましても厚生省の方針なり考え方もございましょうから、十分厚生省と相談してやっていきたいと思います。
  12. 堀昌雄

    堀分科員 それでは厚生省のお考え方に基づくと言っておりますから、厚生大臣、これはいろいろな行きがかりやいろいろなことはあると思うのですが、これだけ国民にとって重要な問題ですから、最短距離でこの問題を進めていくと、三月一日が困難とすれば三月十五日になるのか、一体何日からなら再度告示を出せる条件になるのか、具体的にお答えをいただきたいと思います。
  13. 内田常雄

    内田国務大臣 これは主として大蔵省の問題になるわけでございますが、手続的に計算をいたしますと、やはりその決定をして手続の最短距離を走ったといたしますと二週間かかると私は聞いております。  実は、これは堀さんは大蔵委員でその方面のことにごたんのうでいらっしゃいますから御承知でございましょうが、厚生省にそういう費目がございまして補充使途、流用使途と申しますか、他からそこへ厚生省の不用の予算を流してくるというようなことでございますならば事は簡単にいくわけでございますけれども、補充使途にする、あるいは流用を受けるという火種の項目がございませんので、その設定の手続というようなことがあるようにも思います。その他私は乏しい財政的の判断もないことはございませんが、善は急げということでございますから、厚生省のためにまた厚生省国民の健康に役立つ省でありますからせっかくのあなたのいい御意見が一日も早く生きるように大蔵省とも折衝してまいる所存であります。
  14. 堀昌雄

    堀分科員 相原主計官伺いますけれども、現在は確かにこの項目はございません。これまでに、かつて要求もしておらないし、これが初めてその費目がつくことでありますから、確かに項目はありません。項目はありませんけれども、少なくとも、もうどうせ三月になることですね。三月になることならば私は日赤の経済上の問題としてそれを先に立てかえてそれだけの分を日赤が補うことによっておろして、そうしてその日赤の負担した分は四十六年度予算の中で全部見てそこに項目を起こしても別に問題ないのではないか。そのやり方は技術的な問題でございますから、その点は厚生省財政当局十分相談をして――何も私は財政法に違反したことをやれと申しておるのではありません。しかし国民が願っていることを、単にそういう財政技術の問題だけで延々として日を送って四月一日以降でなければならぬというようなことも政治上の問題としていかがであろうかと思いますが、そこらは日赤財政と、それから政府の取り扱い方、厚生省及び財政当局で十分検討して、少なくとも、いま厚生大臣が二週間とおっしゃいましたけれども、多少の余裕を見て三月十五日にはこの告示が出るように御配慮を願いたいと思いますけれども、内田厚生大臣いかがでございましょうか。
  15. 内田常雄

    内田国務大臣 でき得る限り御期待に沿うように大蔵省と交渉をいたしてみたいと思います。
  16. 堀昌雄

    堀分科員 大蔵省どうですか。三月十五日にできるようにやってもらいたいと私は思うのですが、どうですか。
  17. 相原三郎

    相原説明員 やり方につきましてはいろいろ問題点もございましょうし、十分厚生省と検討いたしたいと思います。そのやり方とか時期については両省の相談に待ちたいと思います。
  18. 堀昌雄

    堀分科員 こういういいことを、そんな日にち――私の方針は相原さんよく知っておられるでしょう。ものをやるのに、口火を切ったらいつまでにやれるかきちっとしろというのが私の長年の委員会における方針ですから、それはいつまでにやれるのか、そこらをきちっと答えてください。責任のある答弁願いますよ。
  19. 内田常雄

    内田国務大臣 実は、これは堀さんの御質問にはございませんが、私はあなたの御提案に重ねて、それ以上に積み上げると申しますか、あなたの御提案のところまでのつなぎと申しますか、これは私自身の発意で、あるいいことを考えておりました。それはどういうことかと申しますと、お互いさっき論議をいたしましたように、これは無償献血でございますので、もし献血をした本人なり、あるいはその家族なりがその血液――これは預血ではありませんから、血液にしるしはないわけでございますから、その本人なり御家族が輸血を受ける場合には、本人負担というものはないことにしたい、こういうことを実はあなたの御提案の前からひそかに考えまして、そのことを検討を日赤に命じておりました。もはや現在そのことについていろいろな計算をさせたり、やり方について検討さしておりますので、いまあなたの御提案、これはいいことでありますから、私も申し上げましたように大蔵省と相談をして、でき得る限り早くやらせるようにいたしますが、その間のつなぎといたしましても、少なくともいま言ったような献血者並びにその家族の方々に対しましては、それらの人々が輸血を受けるときには無償にするという、つなぎの手だけは、私は厚生大臣としてできる限り早くやらせるようにいたします。その上あなたの御提案で値段の引き上げをしないことにいたしましても、私のほうの提案をやめるわけではなしに、それに加えてそういうことをやろう、こういうことでございますので厚生省善意をお信じいただいて、日にちの点はいまここでできる限り……。
  20. 堀昌雄

    堀分科員 日にちの点は言ってもらわなければ、できる限りでは、一年も二年も先になっては困るのだから、これはいまきちんとしてもらわなければ困りますよ。あなたはいま事務的には二週間でできると言ったのでしょう。国民は待望して待っていることでしょう。だから技術的な問題なんで、もう政治的には総理と私との間の話できまっているのですよ。政治的にきまっていることが事務的な技術の点で日にちがおくれる、そのことは国民に対して厚生省大蔵省が重大な責任を負うことになると私は思うのですよ。日にちを明らかにしてください。何にしても日にちを明らかにしてください。日にちを明らかにしない間は一時間たっても私は承知しません。
  21. 登坂重次郎

    登坂主査 堀君に申し上げますが、事務当局が話し合ってあとで答弁させることでよろしいでしょう。そうしましょう。
  22. 堀昌雄

    堀分科員 それではこの委員会で公式にもう一ぺん発言をさしてもらって、そこで答えてもらいます。ないしょで聞いたのではオーソライズされませんから。それをひとつ主査にお願いをして、いまの問題は検討を本日中にひとつお願いしたいと思います。きょうの委員会の終わりごろに私は伺うことにします。それは主査のほうで適当におはかりを願います。  その次は、実は最近非常に私どもも残念に思っておりますが、原因のわからない疾病が次々とございます。スモン病のような問題、あるいはベーチェット氏病のような問題、そうしてそれらの疾病にかかられた方とその家族は、たいへんお気の毒な状態に置かれていることは厚生大臣も御承知だと思うのです。現在の段階ではまだこれの調査研究費がつけられておる段階で、きわめてこれの対策が遅々といたしておるわけであります。ちょうどこれらの病気の問題に対して非常に熱心に努力しておられるお医者さんたちの方が厚生省の滝沢公衆衛生局長にお会いになったところが、滝沢局長は難病予算をもっとふやすためにも法の裏づけが必要で、この中身に賛成という感想を述べられたという、仮称難病救済基本法というような案を、ベーチェット病患者を救う医師の会というので実はつくっておられるわけであります。私はこれらの問題は何も基本法がなくても当然進めるべきことだと思うのですが、さらに基本法をつくってこの問題を扱うことは非常に時宜を得た問題だ、こう考えるのでありますが、厚生大臣はこれに対してどういうお考えでおられるのか、お答えをいただきたいと思います。
  23. 内田常雄

    内田国務大臣 これは文明が進むに従いまして、いままで私どもが気づかなかったような病気に気づいてまいりますことは御指摘のとおりであります。スモンしかり、ベーチェットしかり、カシンペックしかりでありますので、これらに対してたいへん熱心なお医者さん方がおられまして、私どもに対していろいろといい御示唆をいただいておりますことも事実でございます。これに対しましては、いま一体法律をつくることがいいかどうかということは、それらの病気の原因もわからないし、あるいは治療法もわからないというような状況にもございますので、問題は法律をつくっても直ちに解決するという種類の病気ではございませんので、いままでの研究費が足りなければ研究費をふやしてまいる、あるいはまた一人二人でこういう病気に取り組んでも、なかなか帰結が得られない場合もありますので、その方面に深い研究をなさっておられる方々、関心を持たれる専門家にお集まりをいただきまして、研究班をつくるというようなことを、実はスモンにつきましても、あるいはいまのカシンペックにつきましてもやっておりまして、昭和四十六年度におきましても、いまあげました両方の病気につきまして、これらの予算を相当にふやすつもりでございますので、厚生省はこれらの病気に対する処置を怠る、対応策を怠る、そういう考え方もなければ、またそういう意味で申し上げるわけではございませんけれども、実際にこれらに対する検討、診断、あるいは療法、原因というようなものを究明することを続けながら、いまの難病基本法についてのこれらのお医者さん方の考え方は好意ある御示唆として取り上げながら、しばらく研究を続けてまいりたい、こういうつもりであります。
  24. 堀昌雄

    堀分科員 公衆衛生局長入っていますか。――要するに九日の日に公衆衛生局長がこう言っているのですよ。難病予算をもっとふやすためにも法の裏づけが必要で、この中身に賛成だなんて言っているのですね。新聞にちゃんと報道されているのです。公衆衛生局長こういう答弁をしていたので、私、これもいまの大臣お話と――私はむしろいまおっしゃるように、この中に書いてある、たとえばこういうもののリハビリテーションを含めて公費負担をもう少し積極的に考えるとか、そういうことをやれば、何も基本法がなければならぬと思ってないのですよ。しかし公衆衛生局長予算をふやすためにもこういう法律が必要だと言っているのなら、これはやはり厚生大臣としても、局長が言っていることをそれは違うというわけにもいくまいと思うのですがね。ここら辺はひとつ――公衆衛生局長入っていないので、どう言ったか、これは新聞の報道だから、私もそこまで確認の方法がないが、いまの調査研究費をふやすという問題、これはけっこうですよ。相原主計官、この方向は、国民が非常に困っていることに対して、すみやかに原因を究明するということは重要なんだから、研究調査費をふやすということに財政当局も異論はないでしょう、どうですか。
  25. 相原三郎

    相原説明員 特別研究費は一億一千万が一億六千万にふえておりますが、その中のやりくりはまた別にいたして、この中でベーチェットには四十五年度に四百万計上してございます。四十六年度はどうするか、これからの配分の問題でございますが、厚生省としても相当多額のものを考えておるようでございますし、そういう方向でベーチェットに対する対策が見られていくということは賛成でございます。
  26. 堀昌雄

    堀分科員 あわせて主計官に伺いますが、これは会計の処理がどうなるのかわかりませんけれども、リハビリテーションとか、こういう問題、あるいはこういう目が見えなくなる、あるいはスモン病のようにからだが動かなくなる、いろいろな問題は、もう少しやはり公費負担という問題を含めて、財政的にも配慮をしてやってもいいじゃないかと思うのですが、これについてはどうですか。
  27. 相原三郎

    相原説明員 リハビリテーションの問題につきましては、老人問題とかその他に関係します非常に大きな問題でございますし、公費負担全般にもからむ問題でございますから、これはひとつ十分勉強させていただきたいと思っております。
  28. 堀昌雄

    堀分科員 もう一つ、厚生大臣、私ぜひ考えてほしいことがあるのです。それは今度健康保険法の改正案が出されておるのです。これはとんでもないものがたくさんあるのですが、中には一つ、二ついいことがあるのですね。お年寄りの医療費を少し負担しよう、こういういいことがあるのですが、その前に私は、やはり日本は現在米をたくさん食うせいですか、都市部はだいぶ減りましたが、農村部を含めて広い範囲に脳卒中による、要するに半身不随のねたきりの脳卒中患者というものが相当たくさんあるのです。実はこのねたきりの脳卒中患者というのは、まさに重症身障児と同じで、介護がなければ生きていけないというたいへんなお気の毒な状況になっているわけですね。しかし、それに対して何か特別の手当てをするといってもできないことですから、この際私は、いまの脳卒中患者を含めて、少なくとも六十歳なら六十歳以上でねたきりの人の医療費は、少しこれは公費で考える、こういう考え方をこの際考えてもらいたい、こう思うのです。これはせめて医療費ぐらい負担されれば、まだ介護をする方たちも、せめてもの、介護のほうに費用を出す道はありませんから、何とかねたきりの人に対して老人の――その場合は脳卒中だけということにならないと思います。介護を必要とするねたきりの老人の治療費については公費で考えるということをひとつ検討してもらいたいと思うのですが、いかがでしょう。
  29. 内田常雄

    内田国務大臣 私の記憶に間違いがなければ、これは御承知のとおり、わが国の死亡原因では脳卒中が一番多い。第一位でございますが、その脳卒中になられる方が、一年に四十万人くらいあるはずでございます。そのうち死亡される方が十万をこえる、こういうような状況でございます。死亡されない方も、脳卒中の後遺症、予後に対するリハビリというようなものが必要であるということは、非常に世間で認識をされるようになってまいりました。しかもわが国の人口が老齢化してまいりますと、このことはさらに加重されてくる問題でございます。  そこで、この問題に対しましては、いま御提案の公費医療という、全部がそのままずばりではございませんが、倒れられた方はでき得る限り特別養護老人ホームにお入りにいただくように、そのほうの充足をはかることが一つ。また、家庭で在宅で予後を養われる方々のためには、たとえば介護人の制度というようなものを一、二年の間に始めてまいるとか、あるいは特別のベッドをお貸しするとか、あるいは入浴とか便器とかいうようなことについてめんどうを見てまいるとかいうようなこともやってまいりましたし、特にことしは、全面的ではございませんけれども、所得の少ない方々につきましてリハビリの公費負担によるサービスをいたそうというようなことを四十六年度予算の中に、まだ卵みたい、卵でもないんでしょうが、初めですが、入れてあるわけでございます。それから国会方面からも御要望があり、私もぜひそうしたいというようなことで、いまたとえば老齢福祉年金というものは、七十歳以上でなければ御承知のとおり出しておりません。それを身体障害があり、しかも障害福祉年金をもらうに至るまでの程度にならない方でも、六十五歳までに引き上げるというか、六十五歳くらいまで支給範囲を広げることにいたしまして、そのときに、その中には脳卒中等で倒れられてその予後、リハビリの必要のある人々を実は想定いたしております。  これを要するに、厚生省の考え方、また私どもの考え方というものは、堀さんの考え方と共通するものがございます。あとはそれをいつ、もっと具体的な形でできるかという問題でもございますので、私がいままで申しましたような線をさらに進めてまいりたい、かように考えます。
  30. 堀昌雄

    堀分科員 厚生大臣のお考えで私はけっこうですけれども、やはりいまこの高度成長下で収入が十分ある方たちはこの物価上昇その他にたえられるのですけれども、高度成長下で取り残されているのはこのような特にお年寄り、そのお年寄りの中でも、身体の不自由な人たちは非常にお気の毒なことになっているわけですね。私は、いま何よりもまずこういう人たちに十分あたたかい手を伸ばすということが政治の要諦ではないか、こう考えているわけです。厚生大臣もすでに二年目ですから、来年の予算委員会であなたとここでまみえることになるかどうかわかりませんから、ひとつ事務当局にきちんと申し上げておきますけれども、よろしゅうございますか、私は大体問題を一回取り上げましたら、片がつくまでは毎年何回もやるという主義です。どうかひとつ四十七年度予算には、いま厚生大臣も述べられておりますが、私どもの願いはおそらく皆さんの願いだと思うのです。厚生省としては当然の願いだと思うのです。どうかそれを積極的に概算要求に出してもらって、私はまた私なりに大蔵省に対して十分働きかけてこれの予算化の実現をはかっていこう、こう考えております。皆さんが積極的に出してくれないと、さっきの献血の問題みたいに、項目もなければ予算がつけにくいということは非常に困ることですから、どうかひとつ国民の願いを皆さん方は大胆率直に予算要求の中に出していただいて、そうしてそれを私どもも厚生省と同じ立場に立って大蔵省に要求していく、こういうことで処理をしていきたいと思います。今年度はいますでに予算も組まれておることでありますから、それの実施をする中で、ぜひひとつ四十七年度には、いま私の申し上げました難病対策に対する、単に研究費にとどまらず、もう少し広い範囲の手だてを要求してもらいたいし、あわせていまのねたきりのお気の毒なお年寄りに対しても、より具体的で効果のある施策厚生省として立案して、これを財政当局に必ず要求をしてもらいたい、こう思います。これについてひとつ厚生大臣からお答えをいただきたいと思います。
  31. 内田常雄

    内田国務大臣 堀さんのおっしゃるように、あなたのそういうお考えは、すなわちまた厚生省の考え方でございます。おまえ二年目だから来年は厚生大臣じゃないだろうと、こうおっしゃるが、私は厚生大臣でなくても、今度はあなたと同じくそこへすわりまして、厚生省にねじを巻くようにいたしたいと思っておりますので、そのように御理解をいただきたいと思います。
  32. 堀昌雄

    堀分科員 終わります。
  33. 登坂重次郎

    登坂主査 次に、田邊誠君。
  34. 田邊誠

    田邊分科員 いま堀委員の質問にもありましたが、最近老齢人口がふえてまいりましたけれども、それに伴うところの疾病も非常に多くなっておるわけでありまして、老人対策は国の全体の施策からいって非常に重要になってまいりました。したがって、われわれは、この老人問題について総合的な対策を講じてもらいたいと思っておるわけでございますけれども、その中でも、施設入所できるところの老人については一応の手だてが講じられるようになってまいりました。まだまだ不十分な点が数多くありまするけれども、しかし、それはそれとして、また改善の道があると思うのであります。問題は、全国に散在するねたきり老人あるいはまた手足が不自由でもって日常生活に非常な困難を覚えるところの老人、こういった、いわば核家族化になる現在の状態の中で、社会から疎外をされておるところのお年寄りに対して、手厚い手当てをしなければならぬことがいわれておるわけであります。その一環として厚生省は、さきに、老人家庭を訪問してこれのいろいろなお世話をするところの家庭奉仕員、ホームヘルパー、あるいはまたねたきり老人に対していろいろな手当てをするところの、ねたきり老人に対する家庭奉仕員、こういったものをつくって現在その人たちの努力にまっておるわけでありまするけれども、この奉仕員制度というのは、私は、今後の日本の社会構造の変化や、いま申し上げた核家族化になる状態の中では、より一そうこの制度の充実化をはかっていかなければならない段階に来ているのじゃないかと思いますが、大臣も私の考え方と同じでございましょうね。
  35. 内田常雄

    内田国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、従来からホームヘルパーといわれておる家庭奉仕員制度をねたきり老人などのためにも設けておりましたが、さらに明年度からは、そのほか介護員というような制度も設けまして、両々相まって、施設入所し得ない在宅のねたきり老人などのお世話をするような方向に、今後ともさらに踏み出してまいりたいと存じます。
  36. 田邊誠

    田邊分科員 そこで、これは老人対策として、特にホームヘルパーの果たす役割りというのが非常に大きいのは私どもも承知をしているわけですが、しかし、これはまた老人対策ばかりでなくて、たとえば身体障害者に対する対策としても、家庭に行っていろいろと世話をする人たちが必要である。いま施設が非常に不十分な状態の中では、この家庭奉仕をするところの人たちが必要である。あるいはまた母子家庭、寡婦等に対していろいろ身の上相談をしたり、今後のいろいろな相談にあずかる、そういういわば相談員、こういったものも非常に必要であります。言うなれば、国民家庭に入っていっていろいろな世話をする、あるいは相談にあずかる、そういう人たちというものが非常にふえてきておるわけでありますけれども、もしおわかりいただけましたら、これは社会局長だけではないわけでありますからあるいはおわかりにくいかと思いますけれども、いま申し上げたようなところの老人に対する家庭奉仕員、ねたきり老人に対する家庭奉仕員、あるいは母子相談員あるいは身体障害者に対する家庭奉仕員、重度心身障害児に対する家庭奉仕員等があるわけですけれども、大体どんな種別がありまして、現在どういう配置をしておりますか、おわかりでしたらお知らせいただきますと同時に、わからない部面はひとつ書面で回答してください。
  37. 上村一

    ○上村政府委員 お答えいたします。  厚生省関係家庭奉仕員でございますが、一つは身体障害者の家庭奉仕員、これは障害等級一級で介護を要するところに派遣をする。四十五年度六百五十人でございまして、四十六年度予算案では七百八十人に相なっております。それから老人家庭奉仕員、これに二つのタイプがございますが、一つは、被保護世帯に行く家庭奉仕員が四十五年度千七百人でございます。四十六年度予算案では千九百人になっております。それからねたきり老人家庭奉仕員は、先ほど来話が出ておる問題でございますけれども、四十五年度四千四百人おりまして、四十六年度も同数でございます。それから児童家庭局の所管に属するものでございますが、重度心身障害児の家庭奉仕員、これは重症心身障害者等の世帯に行って介護をするわけでございますが、四十五年度五百九十一人おりまして、四十六年度予算案では千百八十二人ということになっております。この他相談員関係では、お話しになりました母子相談員とか婦人相談員等がございます。
  38. 田邊誠

    田邊分科員 いま私がお話し申し上げたように、これは国民生活の中に入り込むわけであります。家庭を訪問するわけでありまするから、その人柄なり、できればいわば識見なり、実はいろいろ必要なものがあると私は思うのであります。そういう条件を具備した人というのは、実はなかなか見つかりがたいのでありますけれども、現在、いまお話のありましたような形でもって配置をされておるわけでありますが、社会局長、いま話のありました、老人に対する家庭奉仕員なりねたきり老人に対する家庭奉仕員、その方々の平均年齢は一体どのくらいでございますか。
  39. 加藤威二

    ○加藤政府委員 平均年齢はまだ調査いたしておりませんので、ちょっとわかりかねます。
  40. 田邊誠

    田邊分科員 あとで調査をしていただきたいと思いますが、私の調べたところでは、大体四十歳から四十二歳くらいまでが平均年齢ではないか、こういうふうに実は見ておりますが、あとでお知らせをいただきたいと思います。いずれにしてもかなりの年輩の方々、またそれでなければ私はこの役目を果たすことができないと思うのであります。ある程度子供さんが成長してうちを出て働いてもいい人たち、あるいはまた未亡人の方々、そういう方々がかなりおるのではないかと思うのであります。  さて、いま申し上げたような重要な任務を果たすこの家庭奉仕員でありますから、かなりの識見を持ったり、社会経験を持ったり、また人柄がよかったり、非常にまじめでいい人たち、あるいはまた下の始末までするわけですから、そういう仕事をいやがらない人たち、言うならばいろいろな条件が必要なわけでございまするけれども、この家庭奉仕員の方々の身分は一体どういうものでございましょうか。老人福祉法十二条には「老人家庭奉仕員を派遣して」云々となっておりまするし、この法律に基づいて「老人家庭奉仕事業の実施について」という社会局長の通知を都道府県なり市町村に対して出しておりまするが、この中に運営要綱というのが載っておりまして、家庭奉仕員には「身分を証明する証票を携行」することとなっております。身分証明を持っておるというのでございますが、はたして一体この方々はどういう身分で仕事をされておるのでございますか。
  41. 加藤威二

    ○加藤政府委員 老人家庭奉仕員についての御質問にお答え申し上げたいと思いますが、老人家庭奉仕員は四十五年度で六千百人おりますが、そのうちの大体四千人、三千九百人くらいでございますが、これは市町村の職員でございます。それからあと二千百人余り、これが社協の委託職員、大きく分けると大体そういう身分になっております。  市町村の職員につきましても、これはそれぞれの市町村によって処遇がいろいろ違っておりまして、全く正規の市町村職員として処遇しているところもございますし、それから非常勤職員、そういう身分の人もあるようでございます。さらには賃金職員という身分といいますか、そういう処遇を受けている場合もある。市町村によっていろいろ違う、こういうのが実情でございます。
  42. 田邊誠

    田邊分科員 いまお話のありました中で、私は、大体の傾向は常勤的な非常勤職員というように格づけをされておるのではないかと思うのです。すなわち、地方公務員法三条の三項の三号、常勤的非常勤職員、こういうのがかなり多いのではないかと思いますが、それ以外にも全くの常勤職員になっておったり、賃金職員になっておったりする者もある、こういうお話であります。この状態は、私はちょうど学校給食が始まった当時の学校給食員のような姿ではないかと思うのであります。しかし、年々歳々その事業が拡大をしてまいりまして、常勤職員として移行する、こういう状態になってきたのとその経過がかなり似通っておるのではないかと思いますが、一体このままでこの家庭奉仕員を置いていいのかどうか。いま申し上げたように国民生活の中に入り込んでくる人たち、しかも非常に人がいやがるような仕事をしている、こういう家庭奉仕員がきわめて宙ぶらりんな、不安定な身分関係でもって働いているというのは、これは私は国民の側にとっても、また働くその人たちにとっても、非常な不幸なことではないかと思うのであります。今後、いま大臣お話のように、いわばこの種の仕事が年々歳々ふえてくることはあっても減ることはない現在の状態の中で、この身分関係というのは、私は何らかの、いわば定着すべき段階に来ているのではないか、こういうように思いますけれども、この家庭奉仕員の身分についてこれから先どういうようなものにしていきたいのか、どういうものにしなければならぬ、こういうようにお考えでございましょうか、お考え方を明らかにしてもらいたいと思うのです。
  43. 加藤威二

    ○加藤政府委員 この家庭奉仕員につきましては、老人であろうと児童であろうと、私は今後ますます社会的な需要も多くなりますし、またそれなりに非常に大切な仕事であろうというぐあいに考えます。したがって、私どもといたしましてもこの家庭奉仕員の処遇というものについては、今後できるだけその処遇の改善につとめてまいりたいと思います。家庭奉仕員のみならず、社会福祉に働く人たちの処遇改善というのが、私は今後の社会局における仕事の非常に大きな部分になろうと思いますが、その一環として、やはり家庭奉仕員の方々の処遇改善ということも考えてまいりたいと思います。これにつきましては、いま先生も御指摘のように、いろいろ市町村によって身分も違う。これはなるべく常勤職員的な方向に持っていきたいというぐあいに考えております。さらに、やはり具体的な方法といたしましては、全部の家庭奉仕員の処遇を一挙に改善していくというのもなかなか困難な点もあろうかと思いますので、何と申しますかなるべく中核的な、家庭奉仕員の中心となってその他の家庭奉仕員をいろいろ指導していくというような人たちをまずなるべく身分を確立いたしまして、それから漸次その他の職員に及ぼしていく、こういう方向で全般の家庭奉仕員のレベルアップをはかってまいりたいというぐあいに考えております。
  44. 田邊誠

    田邊分科員 私は、したがっていまお話のありましたとおり、当然常勤化に進めなければならない問題でありますが、それにはもちろん段階はあろうと思いますが、老人福祉法が昭和三十八年にできて、この老人家庭奉仕員の実施によるところのこの運営要綱というものの社会局長通知というのが、昭和四十年四月一日に出ておるのですね。したがって三十八年以来、ないしこの通知が出た四十年以来、かなり長くつとめている人があると私は思うのですよ。たとえば二年なり三年なり引き続いてその仕事に従事しておった人たちは必ず常勤にする、あるいは常勤化の方向に向かわせる、こういう何か、単にばく然と常勤化の方向に行くというだけでなくて、そこにはおのずからくふうと段階があろうと私は思うのでありまして、そういう具体的なことについて、あなたのほうで検討されて実施に移すという御用意がございますか。
  45. 加藤威二

    ○加藤政府委員 先生の御指摘の点はまことにごもっともだと思います。私が先ほど申し上げましたのは、処遇改善といいますか、そういう常勤的な職員にする、これは全体的になるべく持っていきたい。そのほかに、いろいろな処遇の面において、特に中核的な職員のある程度のレベルアップをまずやりたいということを考えたわけでございますが、常勤職員に持っていく段階としましては、すでにある程度の期間家庭奉仕員としてそういう身分でやってきたという者をまず優先的に常勤職員に持っていくという方向は、先生御指摘のとおりでございます。
  46. 田邊誠

    田邊分科員 そこで、いまお話のありましたとおり、もう相当な年数を経ている人たちが多いのでありまするが、手当は一体どういうことになりましょうか。これは予算を見ますると、二万一千二百円から来年度は二万三千九百円にするというのでありますけれども、この二万三千九百円に来年度格づけをしようとする根拠は一体どこにございますか。
  47. 加藤威二

    ○加藤政府委員 二万一千二百円から来年度二万三千九百円に引き上げたわけでございますが、その引き上げ率は十二・六七%、これは国家公務員給与引き上げ率と同じということで、国家公務員給与に準じて引き上げたということでございます。
  48. 田邊誠

    田邊分科員 これは最初の出だしが、非常に実は根拠のない形で出だしをしたところに問題があるわけですけれども、この際ひとつ身分問題も常勤の方向に行く、地方公務員法三条のいわば特例事項としての非常勤職員、そういう三項三号の適用からはずすという、正規の地方公務員にする、こういう形が望ましいわけですけれども、それに伴って手当についても、これは当然いろいろのランクも必要でありましょうし、それからいわば手当を算出する根拠自身についてもこれは考えなければならぬ、こういうように私は思うのです。もちろん正規の地方公務員でありますならば当然給与の支払いが行なわれるという形になりまするけれども、それまでの経過の中でも、この手当について、ある程度の根拠が必要になってきているのではないかと私は思いまするけれども、これはないのですか、あるのですか。
  49. 加藤威二

    ○加藤政府委員 これは制定当時はいろいろな、たとえば婦人相談員とか各種の相談員等がありました。そういうものとの均衡でこういうぐあいにきまったというように考えます。
  50. 田邊誠

    田邊分科員 まことに根拠薄弱でありまして、何かこうつかみでやっているような仕事なんですね。私はいま申し上げたような、この際やはり安定した形で仕事をしてもらうために、当然身分と同時にこの手当についても根拠を明らかにして、相当の形でもって手当を支給しなければならぬ、こういうように思いますけれども、そういう検討をひとつ早急にしていただくということが必要だと思いますけれども、いかがです。
  51. 加藤威二

    ○加藤政府委員 確かに、御指摘のとおり、私どももこの家庭奉仕員の手当が非常に低いと思います。いま人を一日雇っても一日二千円くらいはすぐ取られるわけでありますから、しかもこういう非常に苦労の多い仕事をお願いするということからいいましても、いまの手当は、私どもとしては非常に不十分だと思います。これについては、極力大蔵省とも話し合いをいたしましてレベルアップにつとめたいと思います。
  52. 田邊誠

    田邊分科員 いまの二万三千九百円という手当は、公務員の給与からいいますと一体どの程度に当たりますか。
  53. 加藤威二

    ○加藤政府委員 ちょっと公務員の給与表を持っておりませんので、調べて後ほど御連絡申し上げます。
  54. 田邊誠

    田邊分科員 大体私どもが考えているところでは、高校を卒業した女子の公務員の二十八歳くらい程度の人たちの八割掛け、八〇%ではないかと実は推定をされるのであります。これはあとで質問をいたしまするけれども、実は勤務時間との関係で八〇%かけるという、こういう根拠が出ているようにも聞いているのでありますけれども、したがって、平均年齢が四十歳を過ぎている状態の中で、二十七、八〇歳くらいのいわば女子の公務員賃金の八%、こういうことでは私は満足な仕事はでき得ないのじゃないかと思うわけでありまするけれども、いまお話のありましたとおり、当然新しい形でもって根拠を持ってこれに対して相当な手当増額をはかっていかなければならないというように考えて、今年度に比べて来年度は、一二・何がし%ふやしたというだけで事足れりというものではないというように私は思っておるわけであります。  さらにもう一つお聞きをしたいのは、この勤務の形態は一体どうなっていますか。どのくらいの受け持ちを持って働いておられるわけですか。
  55. 加藤威二

    ○加藤政府委員 この老人家庭奉仕員は、大体一人が六人くらいのねたきり老人家庭を担当いたしまして、大体一日に二軒くらいずつ回る、こういう状態になっております。勤務時間につきましてはいろいろでございまして、大体五時間から七時間くらいという勤務の方もおられますし、七時間以上、長いものは九時間という勤務状態の者もおられるようでございます。非常にまちまちのようでございます。
  56. 田邊誠

    田邊分科員 したがって、大体日曜を別とすれば三日に一ぺん行くわけですね。そこで問題になるのは、社会局長も御案内と思いまするけれども、私は実はこの老人問題、いろいろと私なりに検討させていただいておるのですけれども、このねたきり老人がなくなった状態というものがわからぬということなんですね。一体いつ死亡したのかわからぬ。家庭奉仕員が数日たって行ったところがすでに死亡されておった。いわば死亡診断書を書くにしても死体の検案書を書くにいたしましても、実は日時がなかなか明らかにならない、こういう事例があると私は聞いておるのでありますけれども、あなた御承知ですか。
  57. 加藤威二

    ○加藤政府委員 新聞等で承知いたしております。
  58. 田邊誠

    田邊分科員 まことに不勉強。新聞で承知しているなんということじゃ、私は社会局長としてはあまりいい点数をつけられない。これはひとつよく調べてもらいたいのでありますけれども、そういう事例がかなりあるのであります。したがって私は、家庭奉仕員がせっかくおいでになるのでありますから、できるだけ手当もやり、そして身分を明らかにすると同時に、勤務時間についてはある程度厳格にといいましょうか、ある程度ワクをはめてもいいんじゃないか。すぐさま四十四時間とか四十八時間ということにはなりませんでしょうけれども、一週間たとえば三十八時間から四十時間程度の勤務をしていただくというぐあいに持っていくことは決して不可能ではないと思うのです。これはもちろん家庭を持っている未亡人等もかなりその中に含まれているという実情を私は承知しておりますから、すぐさまそれに持っていくことはなかなかむずかしいでしょうけれども、いま言った身分それから給与等の充実と相まつならば、私はこの勤務についてもさらに考えていいのではないかと思っておるのでありまして、現在の指導基準である四日ないし五日行けばいい、一日午前一軒、午後一軒回ればいい、こういうような形というものを私はもっと充実さしてもいいんではないかと思うのです。これは相対的な問題ですよ。ただ単に勤務時間だけふやすというのは、そういうことでもって済むわけではございませんから、いま言った身分と給与と相まって勤務問題についてもひとつ考えていく、こういうことがはかられていいのではないかと思いまするけれども、これは私はきわめて役所的に考えて、その側に立っていわば前進的な発言をしているのでありますけれども、そういうお考え方もあわせてお持ちになる必要があると思いますが、いかがですか。
  59. 加藤威二

    ○加藤政府委員 確かに先生の御指摘のとおりだと思います。いままで何と申しますか、非常に処遇が低かったというのは一つはやはりある程度こういう特殊な仕事でございますので、こういう方面に働かれる方々の善意に期待するということもある程度あったのかもしれません。しかし非常に需要も多くなってくる、今後ますますそういう仕事に専門的な知識も持ってもらいたい、こういうことになりますと、単なる善意で非常に安いお礼だけでやっていくということではこういう制度も維持、発展することが困難であろうというぐあいに考えられますので、やはり合理的に一つの職種として位置づけて、それにふさわしい処遇をしていくという方向で考えてまいりたいと思います。
  60. 田邊誠

    田邊分科員 したがっていまお話をずっとやってきたとおり、私は時代の要請に従ってこの種のものも従前の惰性による形というものを改めなければならぬ、こういうふうに私は思っておるわけでありまして、いま身分の問題あるいは給与の問題、勤務時間の問題等について私は質問してまいりましたけれども、大臣どうでしょう、いまお話を聞いておわかりのとおりでありまして、やはり私は形だけ毎年毎年幾らか前進をすればいいというものじゃないと思うのでありまして、こういう際に、この家庭奉仕員のいわば勤務の形態についてもひとつ制度自身を改めて、ほんとうに国民の要求に沿うような状態というものをつくり上げる必要がある、制度自身をさらにひとつ洗い直して改善をすべきときに来た、こういうふうに思っておるわけでありますけれども、ひとつそういう改善の方向についての内容を早急に検討されて実施に移す御用意と決意がおありでございますか。
  61. 内田常雄

    内田国務大臣 田邊さんと社会局長の御論議を私も傾聴いたしておりました。今日ではもう何千名かのホームヘルパーができてきておりますので、基本的な身分等の問題につきましても、給与の問題につきましても、検討すべき時期にだんだん入ってきていると思います。ただお話の過程にもありましたように、パートタイマーとしての活動に待つ場合もございましょうし、あるいはまたお互いに命が長くなったものでありますから、老人と一口に申しましても稼働の老人もたくさん出てきておるわけでございますので、老人老人のめんどうを見るというような形、それによってまた健康な老人の生きがいを維持していくようなケースもあり得るとも思いますので、全部が全部というお話ではございませんでしょうが、少なくとも中核となるべきような人々については、外国などにも例があるようでございますので、基本的な身分というようなものを確立するということであってしかるべきだと思います。  これは私がここで言うだけではなしに、私も一、二身体障害者を知っておりまして、そこにホームヘルパーの方が回ってきてくださるのですが、その身体障害者の家庭の方がホームヘルパーの方に非常に気の毒がって、給与を上げてやってくれということもさることながら、身分が非常に不安定なので何か身分を確立させてやるべきではないでしょうかというような、なまの話も実は聞いたことがございますので、田邊さんの話、私は実感をもって感ずる面もございますので、研究をさせてまいりたいと思います。
  62. 田邊誠

    田邊分科員 いま大臣お話しのとおり、実は私は運営要項自身も変えていかなければならぬと思うのです。必ずしも何か家事の手伝いをしたり、あるいは介護に関することをやったりするだけでなくて、もっと老人自身を積極的な、いわば状態に置くようなそういう相談をしたりする形も必要になってきていると思うのです。したがって私は運営要項自身もちょっと変えて、さらに積極的な意味を持たせるという必要があるのじゃないかと思うので、そういう意味合いで、私は制度についての全般的な洗い直しをすることが必要ではないか、こういうことを申し上げたのであります。このまま行きますと、いま大臣がいみじくも言いましたように、ねたきり老人なり、老人なり、あるいは身体障害者の家庭自身が、そのホームヘルパーが気の毒に思えまして、実は何がしのものを別に出すというのが、そういうことが実は行なわれておるんじゃないかと私は心配するのであります。行なわれておるとは言いませんよ。言いませんけれども、そういうことも実は心配するのです。そうすると、何かいわば私的な関係になってくるのでありまして、われわれはこれは社会的な意味における一つの位置づけをはかっていかなければならない問題である、これはやはり国と地方自治体の責任である、こういうふうに考えて、私は実はお話を申し上げてまいったのでありまして、ぜひひとつ社会局長、いまの大臣お話を受けて、来年度以降において早急に、いま私の申し上げた数点を中心として、この制度についての前進的な検討をするということをお約束いただきたいと思うのですが、よろしゅうございますね。
  63. 加藤威二

    ○加藤政府委員 先生の御指摘に従いまして、最大限の努力をいたします。
  64. 田邊誠

    田邊分科員 終わります。
  65. 登坂重次郎

    登坂主査 次に、渡部一郎君。
  66. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 私は、きょうはネフローゼ、じん臓性疾患の問題について、お伺いしたいと考えております。  ネフローゼのじん臓疾患、それがこじれた慢性じん炎、それからネフローゼ、こうしたじん臓病関係の子供さんが、非常に目立たないようでありますけれども徐々にふえている点については、もう皆さんも御承知のとおりであろうと私は存じます。時間がありませんので、率直に伺うのでありますが、このじん臓疾患の問題についてどれぐらいの認識をまず持っておられるか。現在どれぐらいの患者数を見込んでおられるか。またこの治療上の困難性はどの辺にあるのか、そういったことに対して、まず話の始まりといたしまして、そういうものに対する認識についてお伺いしたい、こう存じております。
  67. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 専門的なお話でございますので、私からお答えいたさせていただきます。  じん臓疾患ネフローゼ等を含めましたわが国での死亡は、全国で一万九百人、大体一万一千名でございます。それから患者数でございますけれども、これは厚生省が医療機関に出てきております患者を毎年一回ずつ把握をいたしております。それによりますと、そういう疾患の数が約四万人でございます。したがいまして、常時ほぼ四万人程度のじん臓疾患の方々が医療機関にかかっておるというふうに存じていただいていいかと思います。これらの疾患につきましては、先生も御承知のとおり、古くからある疾患でございます。したがいまして、各種の内科的治療その他によりまして対応してまいっておるわけでございますけれども、中にはいま死亡者の数でも申し上げましたようにそのかいなくという場合があるわけでございます。特に今後私どもが留意しなければならない問題の一つといたしましては、いわゆる人工じん臓あるいはじん臓移植という問題がきわめて重篤な場合に対応する手段としていま開発されつつございます。この問題を体系的に整備をするということが最終的に非常に危険な状態に入った場合の必要な措置であろうということで、ただいまそういう方向についていろいろ準備をしておるところでございます。なおそのほかに慢性のネフローゼの場合にはかなり長期の療養を要するわけでございまして、特に学童期等におきましては、そのために学校を休むというような問題が出てまいります。この点まだ十分とは申し上げられませんが、たとえば国立療養所等におきましても、小児の慢性疾患を対象にいたしましたベッドを持っておるわけでございます。そういうところにおきましては、大体において学校教育が同時に行なわれますような養護学級あるいは養護分校的なものが設置されておるわけでございます。そういうところであわせて教育とともに療養させる、こういうことも考えております。
  68. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 私はいまの御認識で大体意見一致しておるわけでありますが、その中でも特に子供のネフローゼの問題について、特に関心を未していただきたい、こう思っているわけであります。それはなぜかと申しますと、局長あまりはっきりおっしゃいませんでしたけれども、非常に金がかかる。治療費が異常なほどかかるというのがその特徴であります。私が、神戸市民病院からきょう持ってまいりましたのでは、入院時におきましてどれくらいかかるかといって平均を出してもらいましたら、基本料、検査料、投写投薬料、注射料、一方入院料、検査料そういうものを全部ひっくるめまして、付き添い人までひっくるめまして十三万円が平均水準になっております。国民健康保険を足したといたしましても十三万円という費用はあまりにも多い。半額出していただいたといたしましても、七万円、八万円でもたいへんな金額になってくる。しかもネフローゼにつきましては、いろいろな学者の皆さんから資料を出していただきましたけれども、いずれも一カ月や二カ月で済む病気ではない。非常に軽快して、軽いものでありましても、大体三万円、五万円のランクを自分で払わなければならない。大きくかかります場合には、御自分一人の費用が十万円からのランクでかかる。そしてその治る期間というものが、実に大体平均して二年、三年というランクがあたりまえ。そして長くかかるものでは十年という長い間病院に入っていらっしゃるという方があるように私は伺っております。この具体例を幾つか申し上げてもいいのでありますが、私が持ってまいりましたのでは、姫路の日本赤十字病院に入っておられるあるお方の場合でありますけれども、どれくらいかかっているかといいますと、十日間に大体――これはちょっと古い検査でありますけれども、四十五年の九月一日から十日までの間、入院時基本診察料が六千六百円、特別食加算五百五十円、入院時医学管理料三百五十円、入院室料千五百円、検査料二千二百四十五円、投薬料二千八百七十七円、注射料一万四千八百四十四円、小計二万八千九百六十六円、これは保険料を抜いて自己負担の分がこうなっております。そうなると、三万円十日間でかかって、一月で九万円かかっておる。そこであまりにも耐えがたい犠牲から、この方はしばしば入院をやめなければならなかった。一年ぐらい置いてはやめられる。その結果としては四十年から今日に至るまで約足かけ六年というもの出たり入ったりしておられる。こういう形というものはただに御病人のそれ自体の問題だけではなくて、もう経済全体をぶちこわしてしまう。その家庭自体を破壊する病気である。私はそういうのを見ていられないという感じがするわけであります。最近に至りまして結核関係、そういったものにつきましては、結核予防法等をはじめとする皆さま方のたいへんな御努力もあって、ぐんぐん減っているようでありますけれども、現在の小児ネフローゼ問題につきましてはもう結核をしのぐ数字にもなってきております。そうしましたらこれだけの健康保険国民健康保険のワク内で済ましておられる問題ではない。どうしてこれに対して経済的な補助をするか、医療的な補助をするか、そういった問題について考えるのが当然ではないか、私はそう考えるわけであります。そこで率直な御意見を聞かしていただきたい、こう思っております。
  69. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 小児慢性疾患というような代表的なものがいま問題になっておりますネフローゼといわれているものでございます。確かに小児の慢性疾患等につきましては、いま御指摘のように長期間にわたりましてしかも相当の治療費というものがかかる、これはいわれているとおりでございます。そこで私どもといたしましては、このような小児慢性疾患というもの、ネフローゼもその一種でございますが、たとえばそれ以外に小児ぜんそくとかあるいは後天性の心臓疾患、こういうものもまた問題としまして残されているわけでございます。したがいましてそういうような小児慢性疾患というものの治療対策というものを、全体的にどういうふうに今後考えていくべきか、やはりこれは一つの基本問題でございます。私どもといたしましては従来先天性の心臓疾患なりあるいは明年度から実施をいたします予定の小児のガン等の対策等につきましては、一応治療費の公費の援助というものをやっていくわけでありますが、残されたそのような問題点について今後どういうふうにしてやっていくか、これはやはり一つの基本問題でございますので、大臣の御指示もございますからよくその実態を把握の上今後積極的に検討を進めていく必要がある、かように思っております。
  70. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 いまのあなたのおっしゃり方を聞いていますと、大臣の御指示のとおりやっていらっしゃるんだ。ですから大臣お答えになるしかない。そうするとこのじん臓疾患について小児ネフローゼでこういうふうに家庭が破壊されておるほどひどい状態に放置されているということは、大臣責任だということになるわけですよ、あなたのおっしゃり方を聞いていると。私もまさにそのとおりだと思うのです。大臣としてはそれこそいろいろ折衝なさったりお考えになったりしたあげくの果てにこういう結論になったのでしょうけれども、これは一月ほうっておいても二月ほうっておいてもその家庭に対する打撃というのはただごとでないという認識をしていただければ私はいいのです。小学校の学生や中学校の学生で病院に入っておるそのおかあさん、おとうさんというお方に私は会ってきましたけれども、そういう方は大体三十代のおとうさん、おかあさん方です。そうするとそういう方々が実際的にはどういうことになるかというと、三万円の費用を実際自己支弁で出すということになるとどういうことになるか。それは家庭がつぶれるということである。持っているわずかの財産が消えるということである。これを放置していて生命を守るというような原則というものは立てられない。しかもそれは当人に対してはすごい打撃ではあるけれども、日本の社会全体としてはそれほど大きな金額でない。そうすると私はこれに対して大臣から積極的にこの問題について取り組んでいく姿勢を明らかにしていただきたい。それを、全国のネフローゼの子をかかえて苦しみ抜いている、それこそ家庭がつぶれかかっている御両親の苦しみというものを大臣がどう評価しておられ、今後どうなさるおつもりか、それに対する前向きの答弁を承りたい、こういうことであります。
  71. 内田常雄

    内田国務大臣 ごもっともなお尋ねであり、また御意見であると思います。私も何でも知っているわけじゃございませんけれども、小児の先天性の心臓疾患などにつきましては、育成医療ということで公費医療の範疇に入れてまいってきておること御承知のとおりでございます。またガンにつきましても、来年度と申しますけれどもこの四月から、これはいろいろな世論の動向等もございまして、その考え方と私ども全く同じだというような見地から、これも全面的にというわけには必ずしもまいりませんけれども、とにかく小児ガンの臨床研究と申しますか、あるいは臨床治療と申しますか、そういうものを公費をもってめんどうを見る対象に入れてきております。  そこで、やはりいまの御指摘のネフローゼ、ことに小児ネフローゼあるいは小児ぜんそく、それから心臓でも、先天性のものは先ほど申し上げたとおり公費による育成医療の対象になっておりますが、後天性の心臓疾患の手術費というようなものが続いて取り上げられるべき大きな対象である、私はこういう認識を持っておりますので、これらにつきまして、全面的に直ちにこういうことはなかなかできない面もございますけれども、そういう姿勢を持って対処をし、また医務局長なり児童局長を督励をしたりしてまいる、こういうつもりでございます。
  72. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 大臣がこれからその問題について積極的に取り組んでいく姿勢を示されましたので、今度は私は具体的な問題について御要望しておきたいと思うのです。  一つは、なおす場合に第一に考えなければならぬのは早期発見であります。その早期発見ができるならば、これは非常にスムーズになおる病気のようでありまして、日本赤十字のほうでお調べになったデータによりましても、大体見つけた者につきましては八%からなおる。そして治療費があればそういうふうになおっていくというような病気のようであります。したがって、早期発見の問題につきまして私は考えておるのでありますが、小・中学校におきまして健康診断が行なわれております。これは文部省のほうでおやりになるわけでございますけれども、このときに……(内田国務大臣「このことはこれからやるのです」と呼ぶ)これからやるのですか。――いいですか。健康診断というのは学校で身長だとか体重だとかをはかっておるでしょう。私はそれを言っているわけなんです。それを学校ではずっとやっておるわけだ。われわれが小学生のときもやっておったわけだ。ところがいまもあまり変わらないんだと私は言っておるのです。だから背たけをはかって体重をはかり、胸囲をはかるということはほんとうの健康診断とはならぬ。それは徴兵検査でもやる予備検査ならわかるけれども、そんなことだけでは実際に子供の健康の内臓の疾患というものを調べるのには非常に弱い。そして背中をたたいて先生が元気でやれよというだけでは、これはそれこそ人間を診断するスタイルでないと私は思うのです。  そこで私は、内臓疾患の全般的なものでありますけれども、お話もさらにスピードでしゃべらなければなりませんけれども、特にからだのじん臓疾患についてはたん白の検査をやるということが大事なことになっておる、こういうわけであります。ところがそのたん白の検査も昔は非常にめんどうくさい検査が要りましたけれども、学者の先生方に伺いますと、いまではリトマス試験紙みたいな紙を尿に入れることによって、相当荒いチェックでありますけれども、できるようであります。しかもその費用というものはそうたいしてかからぬ。神戸市において勘定したところによりますと一人が約四十円で済む、こういうことであります。全国で学童が千四百万人でありますから、四十円かけたといたしましてもそうたいした金額ではない。これはもうせいぜい七、八億、そんなものでできるわけであります。これは全然たいしたことない。しかも先生方に伺ったところによりますと、最近は子供の糖尿病なんかも出ておる。また糖分を検査することもその検尿でできる。肝臓の検査も同じようなやり方でできる。それから潜血反応といいますか、胃から血が漏れたり腸から血が漏れたりすることも尿の検査でできる。要するに検尿検査をしっかりやればいい。その検尿検査の基本単価だけ伺いましたところが、技術料は別といたしまして百円くらいのものでできるのだというお話を私は聞いてまいりました。  それで私は言うのでありますが、健康診断のときに身長、体重、胸囲をはかっているのではなくて――それも大事な点もあるのでありましょうけれども、こういうたくさんの校医の先生が子供さんのめんどうを見られておるわけでありますから、こういうお子さん方の病気については検尿制度というものをかっちりと小学校、中学校の健康診断の中に入れる。そうしてこれらについては一部公費で負担するというような形を将来は考えるとして、ともかく検尿する、こういう方向を明らかにしていただくならば、このような悲惨な病気の大半はその発見時において食いとめることが可能である、私はこう考えるわけでありますが、これについての御答弁を承りたい。
  73. 内田常雄

    内田国務大臣 渡部さんのおっしゃるとおりで、病気は何でもそうでございましょうが、小児のネフローゼについては早期発見が非常に大切だ、こういうことに聞いております。  そこでいまお話しの学童の健康診査といいますか、学校保健法という法律に基づく学童の健康診断をやります際に、いままでのような身長、体重とかいうことだけでなしに、尿の検査はネフローゼ疾患などにつきましてもやっていただくほうがよかろうという考え方を私どもも持つものでありまして、そのことにつきましては文部省と当局同士で打ち合わせをいたしておるはずであります。私がいまことばをはさみまして、これからやるのですと言いましたのはそのことでありまして、これは文部省もいらっしゃると思いますが、話がどの程度進んできておるかお答えただきたいと思います。
  74. 橋本眞

    橋本説明員 お答えいたします。  いまおっしゃいましたじん臓性疾患等につきましては、現在学校保健法の第六条の健康診断の検査項目の中には、一応心臓疾患、じん臓疾患というのは入っております。現在もやることにはなっておりますけれども、いま先生のおっしゃいましたような尿の検査あるいは心臓疾患でいいますと心電図の検査、そういったものは厳密に規定して義務づけておりません。ところで、現在予防医学事業中央会に学校等から委託いたしまして尿の検査等をやっておりますのは二十四都府県でございます。ですからこういったことにつきまして、いまお話のございましたように最近の子供の疾病傾向といたしまして非常にそういうものを検査する必要がございますので、現在その検査方法、検査項目等につきまして検討中でございます。またその検討におきましては保健体育審議会にはかりまして、現在鋭意検討を進めておるところでございます。
  75. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 私、そういうようにお話ししていただければ非常に話が早いのでありますが、二十四都府県でやっておってそのほかの県でやっておらぬ。それは監督なさいまして厳重にやっていただくようにしなければうそだろう。こうしなければならないというよりも行政的な措置をもって、法律をいじらなくても十分できる問題であるし、今後そうお願いしたい。厚生大臣のほうからも文部省のほうにお話しをいただいてやっていただかなければどうにもならぬ。そうしていただけますか。
  76. 内田常雄

    内田国務大臣 私はそれはそういうことでいいと思います。文部省のほうは学童に対する健康管理をしっかりおやりになる役所でございますし、私どものほうは子供から老人を含めまして国民全体の健康管理をやるべき役所でございますので、両方でほんとうに打ち合わせましてやったほうがいいこと、できることは前向きにやっていただけるように私のほうからも文部省にお打ち合わせ、御努力をお願いいたします。
  77. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 ちょっとくどいようですが、大臣もう一つおっしゃってください。全国でそういうふうに二十四都府県だけですから、全部の地域でやれるように措置していただけますか。
  78. 内田常雄

    内田国務大臣 これは文部省が担当官庁でございますが、いまも申しますように、くどいようですが、厚生省は学童も老人をも含めました国民健康管理官庁でございますから、その学童の分につきましても文部省に、他の都道府県についてもやる姿勢でひとつ取り進めを願いたいということを御要望を申し上げ、また私どもは必要な面については協力もいたしてまいる、こういうつもりでおります。
  79. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 ことしじゅうにそれはお願いできますか。
  80. 橋本眞

    橋本説明員 先ほど私お答えの中で申し落としましたが、先生のおっしゃいましたような趣旨で、こちらからも指導を強化してまいりたい。それから、制度的な裏づけといたしましては、先ほど申しましたように、現在検討しております。
  81. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 私、ついでにもう一つ申し上げておきますが、学校保健法施行令というのを出しておられますね。これは昭和三十三年六月十日政令百七十四号となっておりますが、この二条の中に、「就学時の健康診断における検査の項目は、次のとおりとする。」その七に「その他の疾病及び異常の有無」というのがございます。この「その他の疾病」というのは、このようないろいろなものは全部その他の疾病ですから、疾病の中には明らかに入る。だから、その明らかに入るものをやっていないというのは怠慢でしかないというふうに、話は拡大して言えると思います。したがいまして、この問題については徹底的にやっていただくように強く要望したいと存じます。  それでは御了解いただいたものといたしまして次に進みます。  今度は、このための費用の点につきましても、そんなにたいしてかかる費用ではない。それから、先ほどお話が一部出ておりました心臓でありますが、子供の時代の心臓の先天的な障害については非常によくわかっております。そうすると、この心電図につきましては、全員が全員でなくても、一部の人を診断するだけでも十分できる。そうすると、これもやはり学童時代に心電図をとれば十分できる、こういうことが言えると思いますので、早期発見問題についてはひとつ十分やっていただきたい、こう考えております。  今度は費用のことで、また押し問答になりますとあれなんですが、地方自治体では相当にわたりましてやっておる。たとえば新潟県におきましては、健康保険やその他からはみ出したネフローゼの治療費は出しております。それからまた、神戸市におきましては、検査の場合におきまして、ことし大体八百万くらいを最終的に出す予定でありますけれども、このネフローゼの検査については、全額やる姿勢でいま臨んでおります。また群馬県におきましてはやはり療養給付をやっておりまして、健康保険の残りの部分の費用について、ほぼその大部分の支払いをいまやっております。また愛知県においてもこういったような措置が行なわれております。地方自治体にそういったような費用を全部まかせておいたらいいのかというだけの問題ではなくて、私は、ある県に住んでいる人間は安心して病気にもかかれるが、ある地域においては不安定だ、こういうふうなばらつきが出てきて不公平になってくるということはどうかと考えるわけであります。私、これはいやみで申し上げるわけじゃありませんけれども、前にも兵庫県におきまして、赤ちゃんが鉄分が不足するとんでもない病気になって脳みそがやられるという病気がありました。そのときに、兵庫県におきまして、それに対する検査、初期治療というものに対する費用を計上したことがございますが、その翌年厚生省からお取り上げをいただいたようです。こういうふうに大きな問題になってきているという認識がようやく出てきているところですから、今後その費用についても公費負担の方向で努力していくという姿勢を、大臣から明らかにしていただきたい、こう考えておるわけであります。
  82. 内田常雄

    内田国務大臣 冒頭にお答えを申し上げましたとおり、私はいまここで直ちに今年度予備費をもってやるというお答えはできませんけれども、厚生省としては同じような考え方をもちまして、そうして前向きで努力をいたしてまいる所存でございます。
  83. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 それから費用の出し方について相当問題があるということまでは私もわかります。現在、厚生省関係で育成医療というものをやっておられます。たとえば心臓手術であるとか、整形であるとか、義足、義手を渡したりなさっておられる。また養育医療、未熟児なんかを実際に治療する際に、その費用をほとんど全部負担されております。こういうような項目の中に、今度は先天性の心臓疾患などをお入れになっていらっしゃるし、また小児ガンなんかの問題についても、こういうやり方で突破口を開いておられると思います。ですから私は、もしおやりになるとしたら、予算措置を講ぜられれば、こういったような中に入れるということもあるんでしょうし、また、文部省としていうならば、学校保健法の中で、トラホームであるとか、あるいは寄生虫であるとか、そういったような学校病の中に入れるというような考え方も当然できるのじゃなかろうか、こう考えておるのでありますが、いかがでありましょうか。
  84. 内田常雄

    内田国務大臣 そういうような方向で考えることに相なろうと思います。
  85. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 しからば、今度は地元で非常に心配されておることがあります。それは、厚生省に、いま国立病院に、症状別にこういう養護しなければならない学童たちを集めようという計画があるということが町に漏れております。たとえば心臓疾患の子供を全国から東北なら東北に集めてしまうとか、あるいは小児ガンの人は関東なら関東に集めてしまうというような野蛮な計画が行なわれているというので、皆さんがえらい心配しております。一体、子供だけを、私の子供は筋ジストロフィーだから北海道にやられた、私の子供はじん臓病だから九州にやられてしまった。私は九州に住んでいるけれども、私の子供は結核だから関東にやられた、そんなようなおそるべきことが起こりますと――国家がなおしてやるのだからそばになんか来るなというお気持ちでまさかなさるのではなかろうと私は思っているわけでありますが、これはまさに近代の遠島流罪の立場になってしまう。こういう遠島流罪みたいなやり方をなさらないで、当然その市町村とかなんかの別に各種の病人みな一緒でいいから、養護学級をつくって、そこで勉強ができるというふうになさっていくのがあたりまえのことじゃないか。そうお考えになるだろう。私はまず自信がある。ところが実際は、そういううわさが流れておるし、これについて明確に、そんなお気持ちがあるとかないとかはっきり述べていただく、それを私はまず第一にお願いしたい。
  86. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 国立病院や療養所を通じまして、ただいま先生前段で御指摘のように、ブロック別に患者を集め直すというようなことは毛頭考えておりません。そういうことはやろうとしてもできない問題でございます。特に後段で御指摘のような、また先ほどもネフローゼのときに少し触れておきましたが、やはりそういう養護学校というのは、各町村の単位に完全につくるということにもなり得ないと思いますけれども、たとえば県の中に幾つかという形でやるという方法でいままでも進めております。また、御承知のように、比較的慢性だといいながらも、子供というものは比較的遠くへ行かない基本的な問題がございます。そういったことは医療の場合にも十分考慮すべき問題だと私どもは考えて進めております。
  87. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 それではあと、文部省の四十二年十月十二日の全国調査で、ネフローゼ関係が四千七百五十四名という数が出ております。全部で六千六百六名のうち、処置を要する方々が四千七百五十四という数字が文部省から発表されて、私データをいただいております。ところが、この数につきまして、それじゃ実際にその中で何名ぐらいが病院に入っていて――このネフローゼの場合は長期間を要しますから、病院の中で勉強する制度がいま少しずつ行なわれております。ところが、全国で何カ所あるかというと、大臣、たった十五カ所しかない。そして、そういう指定育成医療機関というのに入っている人は三百八十八名しかいないのです。これは、四十四年十月現在の病弱教育研究会という資料にあります。そうしますと、四千七百五十四名いて三百八十八名というのは一体どうかというと、八%ですね。だから百人のうち八人しかそういうことができない。あとはばらばら。これは私はどうかなと思うわけであります。これについては早急にこの指定育成医療機関の整備拡充ということを、新しい年度施策に入れていただきたい、こうお願いしたいと思います。
  88. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 特に学童との関係におきまして、教育との関係から見た体制といいますか、これは必ずしも十分ではございません。しかしながら、先生も御承知のように、その療育という問題が始まりました最初は、児童福祉法における結核児童の問題から始まってきた問題であります。したがいまして、結核児童対象といたしましてそういう展開のしかたをやってまいりました。子供の結核もきわめて減少してまいり、そういうような能力というものを今後新しい小児の慢性疾患に展開すべきではないか、こういうふうに私どもは考えております。  私どもの関係いたしておりますところでも、直轄の部分でもそういうところをふやしたいと思います。また、なおそういう方向のために一つ申し上げておきますと、医療法の中で公的病院の病床について一定の規制方法がとられているわけでございますが、ことしの一月一日から適用いたしました施行規則の中で、特に小児の慢性疾患に対して、あわせて教育を行なえるような病院については、かりにそのとき病床が満タンでございましても、その上に伸ばすことができるという措置をとっております。そういうこともやはり制度の面から、御指摘のような、そういう施設を伸ばしていきたいという伏線を打ったつもりでございます。
  89. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 最後にもう一つ、先ほど人工じんのお話をちょっとなさいました。じん臓をなおすために人工じんというものは非常に大きな問題なんですが、大臣、この人工じんが幾つあるか、おそらく御存じなかろう。(内田国務大臣「知っております。見たこともあります」と呼ぶ)そうですか。これは全く少なくて、話にも何にもならないわけであります。そこで、人工じんは、これから研究途上のものであるから、さらに小型化するとか、さらに廉価にするとかいうくふうや研究が非常に要るわけでございます。これについて、しかるべく研究開発の援助、それから技術開発の援助、それからこういったものの政策、そういったものに対して後援をしていただくということは、非常に効果のあることであるし、早急にやっていただきたい、こう考えるわけであります。いかがでありましょうか。
  90. 内田常雄

    内田国務大臣 大臣見たこともなかろうとおっしゃられるものですから、私が立ちましたが、私はその臨床治療をいたしておるところも見まして、まことにどうも、人工じん臓というと、皆さん方はからだの中に何かじん臓の機械を入れられると思うのですが、あなたもごらんになったと思いますが、そうではなくて、からだの外に置いて血液を循環させていくような施設でございまして、あれは血液の清浄化のために非常に大切なものであろうと思いますので、しろうとの私が見ましても、いかにももう少し何か前進研究できないだろうか、ことに一人が一台使っておりますと他の人は使えない。日本にはたしか二、三百台ぐらいしかないというふうに私は聞いております。その程度しかない。これは、違ったらあとで補充させますが、その程度しかない、そういうことであります。あのままでいいとは思わないのです。あれは、ほとんど一人の人が何時間もかかっておる。一週間に一回か、五日に一回くらいやらなければならない。かりに二、三百台あったといたしましても、その回転率は五倍ぐらいなんです。だから、千人の患者もかかれないという状況でございますので、ああいう体外にある施設にしても、何人もの方が一ぺんにかかれるような施設にするとか、いまおっしゃったように小型化するとか、何かやらなければならないということを私も感じました。これを見て、厚生省に参りまして聞きましたところ、これまで毎年数百万円の人工じん臓の開発補助金を出しておるということでございました。たしか四十六年度は、百万円オーダーではなしに、千万円オーダーの補助金を出すということにいたしておるはずでございます。ことに現在は、アメリカあたりでつくった外国のものを輸入しておるか、あるいはそのまねをしておるかという程度のものでございますけれども、そういう、私が見ましても、機械で血液をきれいにするあの施設は、もっと開発のために研究費も出してしかるべきだとつくづく思っておりますので、そういうふうにやらせたいと思っております。
  91. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 それでは、時間が参っておりますから、最後に一つだけ私申し上げたいと存じます。  先ほどから、私がすったもんだ申し上げておりますことは、私は、費用的に見ますと、非常に大きな問題ではない、せいぜい十億とか二十億とかのランクの問題である。検査するにしてもたいしたことではない。治療するにしても、その費用もたいしたものではない。それこそもう、最近飛んでおりますジェット戦闘機一機分の代金である。その一機分の代金で、この悲惨というものをどんどん食いとめることができる。特に、子供から病気をほとんど追い出すことができるような問題である。大臣も当然そうお考えでありますし、文部省のほうからも積極的なお話がありましたので、私は非常に意を強うしておるのでありますが、大きな成果である、そこでこの成果を大事にして、ぜひともこれだけの費用を新規に計上していただいて、そうしてこの病気を食いとめる、そういうことがなければ、いかに日本がGNPを誇ったといたしましても、ほんとうの文化国家ではないと私は考えるわけであります。  特に、一番最後に一つだけ申し上げておきたいのですが、厚生省でやっておられることですが、三歳健診というのをやっておられますね。ところが、三歳健診というのは、私はしろうとで、拝見してみたのですが、三歳健診の項目の中に、いろいろからだの発育状況とかその他のことがずっと書いてあるのです、冒頭のところで。けれども、内臓のじん臓が悪いとか心臓が悪いとか、先ほどから言っておるようなこういったような病気については、十二番目の「その他の疾病及び異常の有無」ぐらいである。そして、その診査方法、技術的基準なんというのを見てみますと、そういう技術的な基準の中には入っていない。これは非常に時代おくれのものになっておるのじゃないかと私は感ずるわけでありまして、昭和三十六年八月十四日厚生省告示二百六十二号と書いてありますね。こういったものにつきましては、十分再検討されてしかるべきではなかろうか。そして、これが現代に不適格でありますならば、食品公害とかいろいろなつまらない公害があるのですから、子供の病気も複雑化するのは当然でありますが、こういった問題については、あらためて再検討していただいて、ほんとうに現実に適した、子供の病気を防ぐという方向から、子供の命を大事にするという親心ある立場から御検討を賜わりたい。最後にお願いいたしまして私の質問の最終といたします。
  92. 内田常雄

    内田国務大臣 ごもっとものことであると思います。しかし、私がそう言っただけでは、これは役所はやはり役所として動いておりますから、そのままになってはいけませんから、責任を感じてもらう意味において、児童局長からひとつその点につきましては御答弁をさせます。
  93. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 三歳児健康診査あるいは乳幼児健康診査というものを、法律制度としてここ数年来やっておりますが、その内容等について、確かに若干現実に合わないという面がございます。したがいまして、いま御指摘になった点も含めまして、私ども検査の内容なりあるいは考え方等について新しい見地から検討を進めてまいりたい、かように思っております。
  94. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
  95. 登坂重次郎

    登坂主査 吉田之久君。
  96. 吉田之久

    吉田(之)分科員 まず初めに、大臣にお聞きいたしたいのですが、まあ公害の中でも大気汚染あるいは騒音、地盤沈下、水質汚濁など、非常に、刻々人命をそこなっている、あるいは国民の健康をむしばんでいる深刻な公害がいま大いに問題化されていることは論をまたないのです。しかし、それとは別に、もっと静かな、しかも持続的かつ国民生活の変化と同時に進行している公害問題があると思うのです。それは厚生省自身が本来の仕事として今後さらに意欲的にその施策を集中していかなければならない公害、いわゆる不要耐久消費財をどうしていくのかという問題でございます。実は、このことで昨年十二月二十五日に、廃棄物処理及び清掃に関する法律というものが公布されました。しかし、この法律をしさいに読んでまいりましても、現に社会的な重要な機能の一環として行為している、いわゆる再生資源回収業者――昔はバタヤさんとかくず屋さんとか呼ばれてまいりましたけれども、今日はきわめて組織的な、かつ近代的な業者として、一方においてはみずからの生計を営みながら、他方においては資源の乏しい国家の資源を再生する役割りを果たし、かつ他面において、いま問題のそうした大型ごみをどうして処理していくかという、社会一般の公害防止の機能も果たしている業界があります。この業界に対する認識、かつは今度のこの法律の中における業界の位置づけ等について、大臣はいまどのようにお考えになっているか、まずお伺いをいたしたいと思います。
  97. 内田常雄

    内田国務大臣 これまた担当の局長から補充さしたほうがいいと思いますけれども、先般、従来の清掃法を廃棄物処理及び清掃に関する法律というぐあいに、タイトルから直しましたのは、いわゆる家庭ごみ、あるいは一般廃棄物のほかに、吉田さんがお触れになりましたような、産業廃棄物と申しますか、あるいは新しい化学的な高分子製品等で、家庭で使われるものにおきましても、従来の処理方式をもってしては処理できないようなものが非常にふえてきたという現状に対応するために、ああいう法律の形に直していただいたわけでございます。  そこで私は、処理業者にも二つ出てくると思うわけでございまして、従来の屎尿とかあるいは一般の家庭ごみを処理する業者、これは業者というよりも、主として市町村がみずからの仕事としておやりになっておるので、先般の国会におきましても、簡単に言いますと、あまり業者を使うな、むしろ市町村本来の体系の中でやらしていくべきだ、その体系を変えるなというような御意見もかなりございましたが、とにかくそういう範疇に属する廃棄物並びにそれの処理業者と、それから新しい産業廃棄物あるいは産業製品の家庭に回ってからの廃棄物処理するための、いわば産業廃棄物処理体系というものが新しく加わることと相なるわけでございます。  そこで、産業廃棄物につきましては、いままでは清掃につきましてはいわば高みの見物、といっては悪うございますけれども、遠くから指導督励をしておった府県というものを当局者に引っぱり出しまして、府県みずからが広域的な産業廃棄物処理を担当し、あるいはその処理計画をつくらせる、こういう法律上の立場を与えると同時に、その府県の指導監督下に産業廃棄物処理業者というようなものを認める仕組みをあの法律の中に織り込んでございます。したがって、これは非常にむずかしい高度の技術やら、また場合によっては設備投資等を必要とするものであると思いますが、産業廃棄物処理業者というようなものを許可し、あるいはそれを育成をしていくということに相なることと思います。この業者も単に営利機関だけを業者とするわけではなしに、もっと広い意味の、場合によっては地方公社的なものも――大阪などがそういう例になるのではないかと思いますが、そういうものも産業廃棄物処理業者の範疇に入れていいのではないかということになりますかどうですかという問題がございます。  さらにもう一つは、この法律が直接想定をしているわけではございませんけれども、廃棄物処理として、つぶしてしまう、焼いてしまう、埋め立てに使ってしまうというのではなくして、再生をする業者というものがあり得る。   〔主査退席、松野(幸)主査代理着席〕 たとえば自動車をプレスして、そして新しい鋼材原料に使うとかというようなもの、その他プラスチックなどでも、再生の面を大いにこれから開発をさるべきであると私は思いますので、そういう再生業者というものもあり得るわけでございまして、これらにつきましては、通産省その他関係方面とも協力をいたしながら、指導、育成をしていく、こういう考え方でいかがでござろうかというように考えておるわけでございます。
  98. 吉田之久

    吉田(之)分科員 大体大臣のお考えはわかりました。かつ、その考え方で今後進められるべきだろうと思います。ところが、その最後の再生業者ですが、これが今日非常に零細な人たちがどんどん減ってきております。これもやはり社会の変化だと思うのです。昔は鉄くずを集めに行って、そうしてあめ玉でもやれば子供は喜んでそれに協力したのどかな時代がありました。しかし今日はそんな子供はほとんどおりません。もちろん学校などは学校みずから指示し、あるいは生徒たちが自主的に日をきめてそういうものを搬出して業者にゆだね、かつみずからの貯金活動をやったり、あるいは学校の活動にプラスする資金集めなどをやっておりますけれども、しかし、こういうことだけでは今後この重要な再生資源回収業者というものは成り立たないのではないか。しかし、それにもかかわらず、今日たとえば近畿地方だけで二府四県で一カ月に出される新聞くずですね、これだけで約七万トンだといわれております。この新聞をあるいはバラでトラックにでも積もうものなら、一台のトラックにせいぜい一トンくらいしか積めない。だとするならば、七万同車を往復させなければならない。これは容易ならぬ仕事であります。単に新聞、雑誌をとってみただけでもそれでありまして、まして、先ほどお話しになりましたような電気冷蔵庫であるとか、あるいは洗たく機であるとか、あるいは自動車の廃棄物、これらを積極的に大規模に組織的にかつ民間の産業として発展さしていく、そういう政治的な援助というものをこの段階でしなければ、地方公共団体ではとても手に余る仕事になってきはしないかというような気がするわけであります。ところが、この法律を読んでみましても、いま大臣がおっしゃいましたように、確かに業者を認める仕組みをわずかにこの法律の中に織り込んであるだけでありまして、この業者を今後どのように保護しようとするのか、育成しようとするのかという点には、毛頭触れられておりません。いま申しましたようなことで何らかの手直しが今後必要になりはしないかという感じがいたしますが、いかがでありますか。
  99. 浦田純一

    ○浦田政府委員 確かに経済事情の変化によりまして、いわゆる故紙とかあるいは故銅と申しますか古い金属といったようなものを回収して、また貴重な資源として利用するという仕事は、なかなかむずかしい局面に差しかかっておるように思います。また、多くの業者は、御指摘のように零細な規模の業者の方々だろうと思います。今回の法改正によりまして廃棄物処理及び清掃に関する法律と題名が変わったわけでございますが、その中で、一般廃棄物の章であります第二章の第七条、あるいは産業廃棄物につきましては第三章第十四条に、それぞれ一般廃棄物処理業あるいは産業廃棄物処理業という形でもって、従来の汚物を処理する業者についての定めを引き継ぎましてこの新しい改正法律の中にも盛り込んだわけでございますが、ここでただし書きをもちまして「もっぱら再生利用の目的となる一般廃棄物のみの収集、運搬又は処分を業として行なう場合その他厚生省令で定める場合は、この限りでない。」ということで、わざわざいわゆる従来の汚物の処理業者の中から除いたわけでございます。  この点は従来とどうなっておるかと申しますと、実は従来の旧法律は、運用といたしましてはいわゆる回収業者、再生業者、別のことばでいいますとバタヤさんと申しますか、そういったような方々の業については除いておる取り扱いをしてきたわけでございます。産業廃棄物につきまして新しく法律が定められましたが、それにつきましても、みずから再生利用を目的とするという業者につきましては、汚物取扱業者、産業廃棄物処理業者に入らないという定めがしてございます。すなわち、私どもとしては、従来からの考えといたしましては、一般のあるいは産業廃棄物の取扱業者というものと再生利用回収業とはやはり中身が違うのじゃないか、ことに、一方では完全に有価物を取り扱うというたてまえに、たてまえとしてはなっているわけでございまして、違うのじゃないかということで、今度の法律でもわざわざ区別をはっきりとしたわけでございます。  しかしながら、先ほどの法律改正のときの衆議院の附帯決議の中でも、再生利用の技術あるいは資源としての廃棄物の利用方法の開発といったようなことについては政府として格段の配慮をすること、研究をすること、というふうな附帯決議もございました。私どもといたしましては、先生の御趣旨、衆議院における附帯決議の御趣旨に沿いまして、全体としてのこれらの有用な資源の回収のシステムと申しますか、これらにつきましては、関係の各省とも相談を進めまして、また、場合によりましては融資その他の措置も検討いたしまして、全体としての廃棄物処理体系の一環として円滑に進むように努力してまいりたいというふうに思います。
  100. 吉田之久

    吉田(之)分科員 そこで、いまおっしゃいました格段の配慮ですね、それが、ただじっと配慮しているだけではこれは配慮にならないわけでありまして、現にこの有価物を処理し再生しようとする人たちと、それから、もうどうにもならない本来の廃棄物をどう処理していくか、しかも、この二つの性格の異なった仕事を一つにかみ合わせて、どう組織的に推進していくか、私はこれがこれからのごみ処理問題に対する一つの公害対策だと思うのです。  そこで、単に業者が、ただ金になりそうなものだけをより好みして散らし食いをするようなことでは、これはかえってわれわれの考える趣旨とは全くかけ離れたものになります。いかにしてこれらを一つに統合し、そして行政指導の中できわめて効率的な運行をはかどらせていくかという問題は、そろそろ厚生省自身が真剣に考えられなければならないのではないか。そこで、われわれが一番注目いたしておりますのは、この専門業者の人たちが呼んでおります神奈川方式と申すものであります。横浜の飛鳥田市長さんらが、月に一回、あるいは場所によっては二回、三回、日を定めて、自治会と協議連絡の上で、一定のあき地に、住民の協力を求めて、そういう有価的な廃棄物あるいは全く価値のない廃棄物、それらをそれぞれ一定の日に集めさせて、かつ分類しながらそこへ置いておいてもらう、そこへは市みずから、あるいはいま申されております再生業者も一つの組織として加わって、そしてそこで適切に分類しながら、それぞれ運搬する、あるいは再生の機関のところに持ち運ぶ、あるいは焼却場に持っていく、この辺の方式が非常に着目すべきものではないかというふうな気がするのです。他の市町村においてもそれぞれこれに類似した試みを現にやっているところがあります。私は、この辺が今日の問題の処理をする一つの賢明な政治の知恵ではないかという感じがいたします。この点について厚生省はどの程度の注目をなさっておるか、お伺いいたします。
  101. 浦田純一

    ○浦田政府委員 厳密に言えばまだ廃棄物とまではいっていないわけでありますが、廃棄物の回収、再生利用ということは、先ほどの先生の御説でも、もう非常に重要な問題であることは申すまでもございません。それのやり方としてどういった点を考えていったらよろしいかと申しますと、私は、何と申しましてもやはり一つのシステム化ということが一番重要ではなかろうかと思います。それと相関連いたしまして、最終の処分、処理というものの技術、それの設備ということが必要であろうかと思います。もちろんその前に、今回の法改正に見られましたように、すでに製品としてつくる段階あるいは加工する段階でもって、あとの廃棄の問題、処分の問題まで顧慮するということが必要でございますが、また、それぞれ業者の責任において産業廃棄物については処理、処分あるいは再生利用ということを考えていただくということは当然のことでございます。したがいまして私は、神奈川方式と申しますか、そのような方式も一つの参考としながら、全体といたしましては一つのシステムということで、一番問題になりますのは、おそらくは回収に要しまする人件費、運搬費といったようなところでございます。  また、もう一つの問題といたしましては、これらの廃棄物を資源化するためには、仕分けをするということが非常に重要な問題でございますので、それらにつきまして、すでに排出される段階――家庭の主婦の御協力を得てその段階でもってある程度のことが済むということは非常に重要なことであろうと思います。しかしながら、全般的に考えました場合に、たとえば東京都の例で申し上げますと、家庭から出ます廃棄物を仕分けして出すということにおいて、なかなか現実的にいろいろと問題があろうかと思います。かつてはいわゆる台所の厨芥とそれ以外の雑芥とを分別収集しておりましたが、現在では混合収集しております。これらは、収集に要します経費、つまりいままで一台で済んでおったのが二台もあるいは三台もごみの収集車を回さなくちゃならないといったような面とのバランスもございまして、私は、地域地域に応じて、神奈川方式がとれるところは大いにこのようなかっこうでもってやっていただくということはきわめて重要なことじゃないかと思っております。  なお、これらにつきましては、いまのシステム化の問題、これは産業廃棄物全般の問題といたしましても、ただいま私どものほうで検討を進めておるところでございます。
  102. 吉田之久

    吉田(之)分科員 どうして二台のトラックが四台要るのか、ちょっといまの説明はよくわからないのですが、それはあとで承るとして、大臣、私はこういう場合に、いわゆる地方自治体――この法律にはいまおっしゃったような気持ちが十分背景にありながら、しかし、いま問題になっている業者は法律のらち外に置かれておるとおもうのです、再生業者は別に許可制にならないわけですからね。そうすると、確かに一つの機能、役割りを果たしていることは認めるけれども、しかし、それは現実に法律の中には組み込まれていない。しかも、いま御答弁のように、何らかのシステム化をはかって有機的、有効的なごみ処理を一そう推進していかなければならない、その方法を模索していただきたいと思うのです。同時に必要なことは、地方自治体自身がそういう再生資源を回収する仕事まで入り込んでいいのか悪いのか、入り込ませるべきか、あるいは当分の間はさい然と分けておいて、お金になるものは業者にやらせよう、どうしても業者の組織とかそういう条件がないところは話は別でありますけれども、主体としては業者にやらせようというのか。あるいは諸外国のように、どんどん、もう地方自治体の本来の責任として、そういう有価的なもの、無価的なものを問わず、一元的に処理していこうとするのか、この辺は非常に微妙な問題であります。かつ業界にとっても深刻な問題であります。またその辺がはっきりしないと、この業というものは成り立たないと思うのであります。その点はいかがでございますか。
  103. 内田常雄

    内田国務大臣 これは私が断定的なことを申し上げて非常に誤解を与えたりしてはいけませんから、多少弾力的な意味もあるということで吉田さんにお聞きをいただきとうございます。それは、あなたがここでわざわざ御質問をなさらなければならないほどこの問題についての政策がはっきりしてないから、そういうことだと思います。実は私は、いま担当者のほうと紙のやりとりをしているのですが、私が考えているような返事がこないのです。それはどういうことを私が言っているかというと、再生業であるから、その面から考えると生産事業なんだけれども、その生産事業は、再生事業を通じて世の中の不要なものを清掃しているんだろうから、法律ただし書きではずしてあろうがなかろうが、やはりそういう清掃の面を持っているわけなんだろうから、許可事業にはなっていなくても、あるいはまたそれが厚生省所管の環境衛生金融公庫でありますとか、公害防止事業団でありますとか、そういうものの法律上の融資対象になっていなくても、厚生省自身が、中小企業金融公庫なりあるいは国民金融公庫なり、もしバーベキューなどで大規模なものがあって、それをすることが国民経済的意味がありますものならば、日本開発銀行であったってかまわないわけでありますが、そういうものから融資のあっせんをして、そして一方では世の中をきれいにし、他方では資源の再生によって国民経済に役立つようにすべきではないかと私は考えますし、それをやることによりまして、厚生省厚生省設置法に書いてある第一条の目的がひっくり返るわけでも何でもないわけでありますから、私はやったらどうかと思うものでございます。  それから、お尋ねの、それは国の業務であるか、市町村の業務であるか、ということでありますけれども、私は、大体廃棄物処理というものは、全体としては国の問題でありますから、大きな指導方針は国が立てるべきでありましょうが、やはり地方公共団体としての固有事務、機関委任とかなんとかということでなしに固有事務であります面もたくさんありますので、公共団体みずからが神奈川方式のようなことを、私はよく知りませんけれども、他の府県でおとりになったり他の市町村でおとりになることは一向差しつかえない、また、それに国が助力協力できる場合には助力協力すべきであると私は思います。
  104. 吉田之久

    吉田(之)分科員 これはひとり厚生省サイドからのいわゆる清掃を中心として考えた法律だけでは、ちょっと片手落ちな現実が出てくると思うのです。やはり通産の側から、一体わが国の再生資源というものを中心とするそういう産業をどう育成助長していかなければならないか、かつそれが公害や清掃とどうかみ合っていかなければならないかという点が、今後特段に配慮されなければならないと思うのです。その点、通産省お見えだと思いますが、御意見いかがですか。
  105. 竹村豊

    ○竹村説明員 再生資源の取り扱い業につきましては、現在、業界全体といたしまして、共同事業として再生資源の処理センターあるいは廃車の処理センターといったような構想が練られているわけでございますので、通産省といたしましては、このような構想につきまして今後検討を続けてまいりたい、かように考えております。
  106. 吉田之久

    吉田(之)分科員 そこで大臣、ひとつこれからいろいろ省内でも御検討いただきたいし、他の省ともいろいろ御相談をいただきたいのですが、この業者はこの法律では現在らち外にあります。それを明確にどう組み入れて、かつどのような任務を与え、かつまた法的にどのように保護していくか、この辺はひとつ早急に総合的な検討をいただきたい。かつ市町村が行なう事務の中で、この業界がどう共存していくか、非常に重大な問題だと思います。諸外国のように捨て場が幾らでもあって、ともかく有価であろうが無価であろうが、一挙に谷間へ捨ててしまえというふうな条件は日本にございません。そういう点から見ても、これは日日実に深刻な問題になろうといたしております。  そこで、いま一つは、こういう廃棄物を政治の指導の中でもう少し減らしていく方法が現にあると私は思うのです。たとえばいま保存が叫ばれております飛鳥へ参りましても、飛鳥の石舞台の周辺はビールとジュースのあきかんの山です。これが、ひとりそこだけでなしに、日本じゅうの観光地というものがそうです。なぜビールやジュースを――肉や魚のかん詰めばいたし方ないとして、びんでいいはずのジュースやビールを、どうしてこれほどかん詰めでやっていかなければならないのか。かん詰めのほうが確かに軽便であることはわかります。しかし、そういうものは便利であることはわかったけれども、それがどんどんはんらんしていくことによって容易ならぬ公害になり、また環境の汚染になり、生活に不愉快な面を与えていくことだけは事実です。そういう点はひとつ厚生省自身が中心となって産業界にも呼びかけ、あるいは政府自身が指導能力を発揮して、もうびんでいいではないかというふうなことをやっていかないと、こうした法律というものは生かされてこないと思うのです。プラスチックの問題にしても同様であります。ビニールの問題にしても同様であります。それをもってしかかえがたい製品や商品は別として、他の従来どおりの方法で十分に機能を果たし得る商品については、やはり公害面等も考えて、この辺でひとつものの考え方を抜本的に転換していくべきではないか。そういうことをしないで、ただ無秩序に、人間の環境を一方でどんどん破壊しながらこんな法律をつくったところで、どうにもならないと思うのです。その点の所信を伺いまして私の質問を終わります。   〔松野(幸)主査代理退席、主査着席〕
  107. 内田常雄

    内田国務大臣 吉田さんからたいへん厚生省的な立場から御意見をお述べいただいて、私どもも百万の味方を得たような思いがいたします。ところが、いまビールあるいは食料品等をなぜ従来のびんをやめてかんにしておるか、またそのかんがなぜ回収されて再生の役に立っていないかというところには、いろいろ経済事情の変遷やまた経済構造の変化もあると思いますが、びんにするよりもかんにしたほうがコストが安いとか、あるいはびんにしたら回収されるかというと、このごろ人手不足――最近は不景気で人手も余ってきているそうですが、回収することが、びんであってもされないようなことになってまいってきている面もあると思います。また、製鉄の技術そのものも昔と変わってきまして、そういうかん詰めのあいたものなどをプレスしてスクラップにする、これに製鉄業がたよる面が非常に少なくなってしまって、さっぱり要らないというような、そういう製鉄技術の方向に進んでいるようにも聞いております。しかし、これは日本がいま一億トンの鉄をつくっておるといたしまして、そんなもので済むものではないわけでありますので、今後やはりもう一ぺんスクラップが非常に必要になってくるというようなまた経済の変遷もあるでございましょうから、そうなれば別でございますが、従来のところはそのままあきかんは捨てっぱなし、こういうような面も実はございました。でありますから厚生省が一番困るわけでございます。しかし、日本の経済の成長とともに、資源が非常に足りなくなってくる面や、また社会的汚染という面、両方の面からこの問題は取り組みまして、そして吉田先生の御激励やまたお考えを生かすようにやっていくことが私どものつとめと考えまして、いろいろ考案をいたしてみたい、かように思っております。
  108. 吉田之久

    吉田(之)分科員 やめておこうと思ったのですが、びんは回収されているのです。びんは一本持っていけば幾らか引いてくれるのです。あるいはかためておけばちゃんとすぐに正当にお金になるわけですから、非常に零細な金額であっても。それはほとんど的確に回収されているのです。ところが、かん詰めのあきかんは持っていったってだれも、それこそ一つや二つでは金にならない。だからみんな捨ててしまうのです。その捨てたものを市町村が集めたり、あるいは再生資源回収業者がいろいろ集めて、しかも割りが合わなくてどうしようか、こう言っているわけですから、これは質問じゃなしに最後の意見として大臣に申し上げますが、ほんとうの近代国家、文化国家はかん詰めのかんでできるものをあえてびんでやるのだ、こういう先例を日本あたりが示さなければ、問題は解決できないのではないか、かように思います。ひとつよくお考えおきをいただきたい。
  109. 内田常雄

    内田国務大臣 どうもありがとうございました。
  110. 登坂重次郎

    登坂主査 この際、午後一時に再開することといたしまして、休憩いたします。    午後零時二十一分休憩      ――――◇―――――    午後一時五分開議
  111. 登坂重次郎

    登坂主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生省所管に関する質疑を続行いたします。細谷治嘉君。
  112. 細谷治嘉

    細谷分科員 私は、短時間でありますけれども、現在いろいろな問題がございます食品添加物を中心として若干質問してみたいと思います。  最近、食品衛生の問題が新聞をにぎわしておりまして、明けてから新聞に出た重要な問題を拾っても相当たくさんございます。たとえば二月の八日までに都衛生局の調べたもなかにナフトールエローSという三グループの色素が使われておった、あるいはチョコレートにオレンジ1が使われておったとか、あるいはイギリス製のドロップスが螢光物質を塗った包装紙に裸で包まれておったとか、あるいはびん入りの調味料にデヒドロ酢酸があったとか、あるいはさらに外国産のドロップスにカナマイシンとかあるいはパテントブルーとか食品には使ってはならないことになっておりますいろいろな添加物がつけ加えられております。こういう問題について厚生大臣としてどうお考えになるか、まずお尋ねいたします。   〔主査退席、松野(幸)主査代理着席〕
  113. 内田常雄

    内田国務大臣 私どもは最近世上で大きな課題になっております産業公害の問題のみならず、それとあわせまして国民の日常生活に緊密な関係のあります食品につきましては、その安全性を守るということが当然厚生省のつとめである、かように考えておるものでございまして、いま仰せの食品添加物などにつきましても、さらにこれを再検討いたしまして、そして催奇性あるいは発ガン性というようなものがあるかもしれないと疑われますようなものは極力これを削除をしてまいります一方、また新規の添加物などにつきましては、その申請がございましても厳重な慢性試験を経たものでなければ許可を慎重にするというようなことは、時代に即して当然のことであるという方針のもとに処理をいたしております。事実またこの数年間に三百数十品目ございました合成添加物などにつきましても、二十数種類は削除をいたしてまいってきておりますし、またごく最近の間にも十数品目くらいは削除をすることになる見込みであります。   〔松野(幸)主査代理退席、主査着席〕 さらに残されましたものにつきましても、これは慢性試験でございますから、即戦即決というわけにはまいりません。やはり二、三年の検討は要るものもございますが、少なくとも昭和四十八年くらいまでの間には問題のものは全部検討を済ませるということで進んでおるものでございます。  最後に、日本におりますと、いかにも日本の添加物が非常に外国より多くて添加物行政がずさんのような気が国民の皆さま方もいたす場合もあるのじゃないかと思いますが、実情におきましては、添加物の種類はアメリカよりも、また西ドイツよりも若干少ない、こういうようなことになってきておりますので、いま述べましたような方針を今後もさらに推進をいたしまして、そうして国民の皆さま方に安心をしていただいたり、信頼をしていただいたりするようにしなければならない、かように思うものでございます。
  114. 細谷治嘉

    細谷分科員 いまの問題は主として色素関係でありましたけれども、やはりこれも一月に、前にも例があったのでありますけれども、富山県で煮干しから許容量以上の亜硝酸が出ておりますね。多いのは二九PPM出てきている。それがプロパンガスなり灯油で直接乾燥したものに非常に多い。新聞等を見ますと、直接乾燥したものでどうして一体亜硝酸がふえたかということについて、火でイワシの中に亜硝酸ができたという、ちょっと考えられないような解説があります。それで業者のほうは、亜硝酸は加えておらぬ、こう言っているわけですね。これはやはりいろいろと、うまく仕上げるために、亜硝酸を入れてないのなら硝酸塩を入れているでしょう。硝酸塩を入れれば、直火でやれば、これは亜硝酸ができることは必至ですね。そういう点、大臣一生懸命やっているというけれども、だいぶ問題があると私は思うんですね。亜硝酸というのは、私は前に申し上げましたけれども、非常に発ガン性の強い物質になるわけでありますから、これは十分気をつけていただかなければならぬと思うのです。  もう一つ、重要であります点は、国立衛生試験所あたりで、全国的にみそ等で、これはこうじでカビがはえますね、それで現実に長野県あたりではアフラトキシンという猛烈な発ガン性の物質がすでに検出されておる。こういう状況でありまして、しかも衛生試験所の倉田室長あたりは、このアフラトキシンというのが、まず飼料が汚染され、牛や豚が汚染される。人間の体内で濃縮される。そうなってまいりますと、いま問題のBHCとかディルドリン等が母乳にすらもあらわれてきておりますから、たいへんに重大な問題をかかえているのではないか、こう思うのであります。こういうような点もありまして、どうも騒然としている。ややオーバーなのかもしれませんけれども、問題が問題だけに騒然としていると思うのです。時間がありませんので、ひとつ簡単にお答えただきたいと思います。
  115. 浦田純一

    ○浦田政府委員 富山県の煮干しの中から検出されました亜硝酸ソーダの件でございますが、これはさっそく富山県のほうに照会いたしまして、富山県のほうはまた富山県として、その点実情調査いたしまた結果、先ほど先生が御指摘になりましたように、直火で高温で処理したという場合に、亜硝酸ソーダが生成するという過程が発見されております。   〔主査退席、松野(幸)主査代理着席〕 しかし、天火などで時間をかけてゆっくりやるという場合には、亜硝酸ソーダは発見されておりません。また直火である場合に、途中で何かそういった亜硝酸塩のようなものを加えておるかということでございますが、この事実は発見されておりません。さっそく富山県のほうではそれらの製造工程の改善ということについて強く指示しておるところでございます。  それから第二点、御指摘のアフラトキシンでございますが、場合によりましては、むしろ一般添加物以上に発ガン性その他については注意しなくてはならない物質であることは先生御指摘のとおりでございます。これにつきましては、四十五年度にガン研究費などから研究費を出しまして、全国調査をいたしております。近く結果が出るものと考えております。
  116. 細谷治嘉

    細谷分科員 これは、間もなく全国を幾つかのブロックに分けて検討しておりますアフラトキシン等についての報告がまとまると思うのでありますが、従来、黄変米に関連してこのアフラトキシン等の問題がありましたけれども、米については大体湿度あるいは水分の量からいって、あまり危険性がないんだといわれておりますけれども、少なくともやはりみそ、こうじ、こういうものについてはたいへんな危険性があるのではないか。すでに現に長崎県でも発見され、そして長野県ですらも出てきたわけでありますから、ぜひその調査に基づいて徹底的な調査をひとつしていただきたい、こういうことを要望しておきたいと思う。  そこでお尋ねしたいのでありますけれども、ことしの一月九日に食品衛生調査会の答申が出ましたね。この答申に対して厚生省はどういう態度をとったか、とろうとしておるのか、お尋ねいたします。
  117. 浦田純一

    ○浦田政府委員 一月九日に食品衛生調査会からちょうだいしました答申、その中で、先生おっしゃっておられるのはジフェニルの問題であろうかと思います。ジフェニルの指定にあたりましては、まず第一点といたしまして、果実中のジフェニルの試験法を十分に検討すること、それから第二点といたしまして、消費者にわかりやすいように標示を行なわせること、第三といたしまして、これは主として労働衛生の関係でございますが、作業者に労働衛生上の配慮を行なうようにすること、という意見が述べられてございます。第一の、果実中の残留量の試験につきましては、オランダの試験研究機関などの資料がございましたが、わが国におきましては国立衛生試験所におきましてこれを追試いたしまして、間違いないことを確認しておりますので、その方法によりたいと思います。標示につきましては、果実を入れました箱、包装紙並びにジフェニルをしみ込ました紙そのものにも標示をさせることといたしております。また作業者の労働衛生上の問題につきましては、労働省のほうに申し入れいたしまして、打ち合わせ済みでございます。
  118. 細谷治嘉

    細谷分科員 だいぶ先に答えていただいちゃったわけですけれども、一月九日の食品衛生調査会の答申というのは、硝酸カリウムなり硝酸ナトリウムの使用の限定をするということ、それから新しくグレープフルーツ、レモン、オレンジの三つに対して、三条件をつけまして防カビ剤としてジフェニルの使用を許可してもよろしい、それから醸造用の添加物、しょうちゅう等でありましょうが、過マンガン酸カリウムの使用を禁止する、この三点でありますが、そのうちいまジフェニルの点について先回りの答弁をいただいたのでありますけれども、このジフェニルについて、新聞等では――アメリカで防カビ剤としてシフェニルを使う。レモン等にそういうものがついてくる。日本ではそれを許可してありません、外国ではむろんジフェニルを許可しておる国もあるわけでありますけれども。ですから、日本に輸出ができない、そういうことで米国のフルーツ会社から米国の政府にいって、そして日本の政府に相当大きな圧力がかかってきたと新聞には書いてあります。これは事実ですか。
  119. 浦田純一

    ○浦田政府委員 ジフェニルはまだ指定をしてないわけでございますが、近く指定する予定でございますが、ジフェニルがアメリカから輸入されるレモン、オレンジ、その他のかんきつ類に使用されておったということは確かに事実でございます。ところが、この事実を発見いたしましたのは昨年の夏のことでございまして、私どものほうの輸入食品の検査に当たっておる監視員が発見したのでございます。それで、私どもはジフェニルが国際的に使用されておるという事実は十分に承知しておりましたけれども、国内法におきましていまだこれが指定されておりません段階では明らかにこれは法律違反でございますので、直ちにジフェニルを使っている包装紙あるいは紙の撤去を命じたわけでございます。しかしながら一方におきましては、ジフェニルの特性にかんがみまして、また国際的にも、たとえばWHO、FAOあたりでもこれの許容基準をきめまして近くわが国のほうにも勧告するといったような段階でもございましたので、私どもといたしましては、専門家の意見を聞き、食品衛生調査会の御意見をお聞きして、あらためて使用できるように指定しよう、こういう手続きをとったわけでございまして、その間業者の圧力といったようなことは全然ございません。
  120. 細谷治嘉

    細谷分科員 新聞ではぴしゃっと、アメリカのフルーツ会社からアメリカ政府を通じて外交ルートで日本政府に対する強硬な申し入れがあった、こういうふうに報じております。事の真偽についてこれ以上ここで申し上げたくないのですけれども、そこでお尋ねいたしたいのでありますが、大体一月中にはこの答申に基づいて措置をする、こういうふうに新聞に書いてありますが、まだしてないようであります。いつなさるおつもりですか。
  121. 浦田純一

    ○浦田政府委員 少し手続がおくれましたが、今月中に指定できる見通しでございます。   〔松野(幸)主査代理退席、主査着席〕
  122. 細谷治嘉

    細谷分科員 そうすると二月中にやるということですね。  そこで、いまこのジフェニルというものについてはそういう試験方法を試験したことはない、衛生試験所等の試験データに基づいてきめたと言うのですが、新聞では、ただ文献を読んだ程度厚生省はやっつけた、こう書いてあります。一体このジフェニルというのはどういう生理作用を持っておるか。レモンやオレンジやグレープフルーツにつくわけですから――私はよくレモンティーを飲むわけですけれども、レモンなんというのは皮ごと食べちゃうのだな。あれはなかなか栄養があるというので、ただ紅茶に入れただけじゃなくて皮ごと食べるのですよ。そうなってくると非常に危険性がある。しかも食品衛生調査会の会長すらも三つの条件をつけておるのに厚生省のほうは、許可の条件なんてないのだ、許可する段になれば無条件だ、こういうようなことを言っておる。こういうことで、会長もこの答申の厚生省の受け方についてかなり問題を指摘しておりましたが、この辺はいかがですか。
  123. 浦田純一

    ○浦田政府委員 第一点の、ジフェニルの摂取量につきましてどのように考慮がされておるかということでございます。先生御案内だと思いますが、ジフェニルの許容量につきましてはWHOとFAOが協力して行なっております国際食品規格計画では百十PPM、今度日本におきまして指定する際の許容量は七〇PPMということで、御指摘のように皮ごと食べましてもなお安全であるように配慮がされております。  それから指定につきまして小林会長が三条件をつけられたことは事実でございますが、新聞のほうにどのように述べましたか、私その場におりませんので詳細は承知しておりませんが、食品関係審議官がクラブのほうに発表したわけでございますけれども、このような事実があるということで意見として述べたというふうに報告を受けております。条件ではございません。
  124. 細谷治嘉

    細谷分科員 このジフェニルというのは、いまたいへんな問題になっておりますカネミのライスオイル、これはジフェニルに塩素が入ったクロルジフェニルですね。それから最近また問題になっておりますPCBという薬がありますね。ポリクロルジフェニル、こういうものがありますね。これはジフェニルの塩素誘導体でありますから、骨組みは一向に変わらぬわけですね。そしてカネミ自体も、何年もあのライスオイルを食べてからなるわけですが、ピンホールからクロルジフェニルが漏れて油に入って、それでたいへんな中毒症状を起こしたわけであります。それと同じ骨格なんですね。ジフェニルに塩素が入っただけなんですから、ジフェニルそのものがたいへんな肝臓障害を起こす。あるいは、稲神前九大教授のあれによりますと神経麻痺を起こす危険性がある、こういうわけですね。私など毎日大体四、五はい、レモンを入れて紅茶を飲むわけだ。FAOなりWHOでは、いま八十PPMと言いましたけれども、大体百二十五PPM。あなたのほうでは七十PPMぐらいに押えるつもりらしいけれども、最低でいくらしいけれども、私はこの種のものは、カネミのあの事件を通じてみましても、体内蓄積性、あるいは排せつが非常にしにくい骨格を持っている薬だけに問題がある、こう思うのです。どうもこの問題は純然たる厚生省のベースではなくて、政治的にこの問題が扱われるような気がいたすわけでありますけれども、厚生大臣、いかがですか。
  125. 内田常雄

    内田国務大臣 私は、環境衛生局長がいま申しましたとおりの報告を受けておりまして、国際的にも許容せられておるものであり、ことにWHOとかFAOとかいうような国連のその方面の機関までが共同で検討をされてそのスタンダードを示し、また環境衛生局長の報告によりますと、何か近いうちにこの両機関から日本に勧告もくるたてまえになっておるというふうに聞かされておりますので、そのとおりに考えておりまして、また外務省とかあるいはまた対米通商交渉等に関連して、通産省等から私に対しまして政治的に、日本でもあれを許容するように考えてほしいといったような意味のことは全くございませんでした。  それから、これは化学のことで私はよくわかりませんが、カネミオイル事件を起こしました塩化ジフェニルとは、もちろんジフェニルが何らかの化合物で入っておりますことはそのとおりだろうと思いますけれども、でき上がった構造式によりますものは、カネミ事件の塩化ジフェニルとは違うので同日に論ずる必要はないのだというふうに教え込まれておりましたので、安心をいたしておるわけでございます。
  126. 細谷治嘉

    細谷分科員 教え込まれておると言われるけれども、私が申し上げるように骨組みは同じなんですよ。まあ時間がありませんから何ですが、ですからこれは問題があるし、現にやはり肝臓障害を起こすあるいは神経麻痺を起こす、こういうことが専門学者の中から指摘されておるわけでありますから、私は問題があろうと思うのです。  しかし時間がありませんから、そこで今度は厚生省が計画しております食品再点検についてお尋ねするわけでありますけれども、昨年の五月二十六日に食用の緑色二号等五品目が添加物からはずされたわけでありますけれども、私は、厚生省のほうからいただいた資料、このFAO等の学者が追跡した資料から見ますと、どうもこれも納得できないものがあるわけです。たとえば食用緑色二号を指定からはずすならば、なぜ一体三号をはずさないのか。その前に、緑の一号というのはギネアグリーンで、これは一グループから三グループに移したわけですね。そして、二号を去年はずした。三号といいますと、二号と三号は化学構造を見てもほとんど変わらないのですよ。しかもあなたのほうのこの資料によりますと、三号にも危険性があるわけですよ。そして一号は二、三年前にはずした。二号は去年はずした。三号が残っておって、そしてどういうことかといいますと、あなたのほうの計画では四十七年度以降四十九年度までにこれの毒性を検査しようとあがっております。二号をはずすなら、三号はもっと早く試験もしなければいけないだろうし、その間ははずしておくのが妥当ではないかと思うのですが、どうですか。
  127. 浦田純一

    ○浦田政府委員 お答えする前に、先ほど塩化ジフェニルとジフェニルとの関連について先生がおっしゃいましたので、こちらの……(細谷分科員「もう時間がないから…」と呼ぶ)結論から申しますと、ジフェニルにつきましてはやはり塩化ジフェニルと違いまして、体内的の蓄積はほとんどないというふうに国際的に認められております。  それから稲神前九大教授が中国新聞で発表されました、ジフェニルは神経麻痺を起こす云々ということでございますが、この実験の対象とされました物質はジフェニルとエーテルの混合物であるということで、若干その点において事実と食い違うのではないかというふうに感じます。  それから緑色三号でございますが、これにつきましては、FDAの資料によりましてほぼ問題はないものと私どもは考えておりますが、念のためにもう一度再点検をするということでございます。
  128. 細谷治嘉

    細谷分科員 あなたのほうの資料をよく読めば、食用二号よりも食用三号のほうが悪い結果が出ているんだ。この結果を指針にして、二号をはずして――三号はちゃんと書いてあります。「高濃度投与群の雌犬は軽い間質性の腎炎と軽い骨髄の増生を示した」といっているのです。二号より悪いんだ。しかし時間がないからこれ以上言いません。  そこで、四十六年度に十品目、四十七年度以降四十九年度までに十五品目、合わせて二十五品目の検査をするわけでありますけれども、四十六年度中にやる中にデヒドロ酢酸とかあるいは食用赤色百二号から百六号まで。百六号に至ってはどこでも許可していない。日本だけしか許可していない色素も入っております。これはあぶないのですからデラニー条項ではありませんけれども、危険のあるものについては、疑いのあるものについては早くはずしていく、こういう形でやるべきものであって、さらにこの間来たネーダーも指摘しておりましたけれども、食用紫の一号、これを見てもあぶないんですよ。やはりプラスの結果が出ている。そして化学構造からいっても食用紫はあぶない。ネーダーもこの間ちゃんと、アメリカの学者、カナダの学者の結果から見てあぶないと言っているのですから、こういうものははずしていくべきである。  それから、四十七年度から四十九年度まで取り上げていく中においてようやく亜硝酸ソーダ、こんなものをやろうとしている。亜硝酸ソーダはあぶないんですから。もう試験が、外国の結果もあるし、国内の結果もあるのですから、試験することはけっこうでありますけれども、私は、この十品目、十五品目のとり方、順序に問題があると思うと同時に、たとえば問題の硫酸銅も毒なんです。そういうものがこの二十五品目の中に入っておらぬ。こういう点で私はいろいろ問題があろうと思うのです。この辺について、ひとつ大臣局長意見を伺っておきたい。私は意を尽くしませんけれども、どうもやはり問題点がある。科学的ではない、合理的でない、こう思うので、ぜひひとつ是正をしていただきたい。そして、あぶない紫色一号はアメリカでは約二十トン、日本では約六トン、あんこの色や何かに使われているわけです。あぶないのですから、これは、試験するのもけっこうでありますけれども、やはり早く指定からはずして、安全性をとっていったほうがいいのじゃないか、私はこう思っております。  お答えをいただいて、私の質問を終わります。
  129. 内田常雄

    内田国務大臣 私の姿勢でございますが、冒頭にも述べましたが、私は、細谷さんのような御意見、たいへんありがたいと思います。私はとにかく、疑われる添加物のようなものはでき得る限り整理してはずせということの厳命を下しております。そればかりでなしに、毒性がなくても無意味なものはやめろ、赤飯であろうが紅白のもちであろうが、あるいはお茶とかノリなどに、タール系色素でない色素といいますか、添加物として無害として残されておる色素を使っておるのではございましょうが、さような意味のないことは、お茶でもノリでもやめろ、それは本年度中、ことしの半分くらいまでの間にぜひやめろというようなことを実は申しまして、正直なところ役人諸君からだいぶ反感を買っておるくらいでございます。でございますから、いまのあなたの御意見の点は、環境衛生局長にも重々含んでもらいまして、やめるべきものはやめる、こういうことでいきたいと思います。ただ、私は科学者じゃないですから、一言弁明の余地があるようでございますので、お聞き願いとうございます。
  130. 浦田純一

    ○浦田政府委員 別に弁明ではございませんが、細谷先生は専門家でもいらっしゃるし、その点非常にお詳しいわけでございますので、あえてこちらのほうでつけ加えることはございません。ただいろいろと私どもも削除につきましては大臣から厳命を受けておりまして、たとえば御指摘の硫酸銅につきましては、今月中の削除の品目の中に入っております。それから先ほどの赤色百二号ないし百六号の件でございますが、これは慢性毒性試験をやっておりますので、近くその結果が出ると思いますし、これらについてはいまのところでは安全性がほぼ確認されるのじゃなかろうかといったように見ております。  それから、試験の順序その他でございますが、これらにつきましては、おっしゃる御趣旨もわかりますので、なおできるだけスケジュールが早く終了をするように格段の努力をするようにいたしたい。それから紫一号でございますが、これは新聞の報道がございましたので、さっそくカナダの試験所のほうに照会いたしまして、資料を得ていろいろと検討したところでは、発ガン性はないというふうに私どもは確認いたしております。
  131. 細谷治嘉

    細谷分科員 私は一言ずばり言うと、緑色二号を排除をして、そうして紫色の一号を残すというのは、私も若干その方面をかじっているものですから理解できないのです。発ガン性ということからいえば、アルキルアミノ基を持ったものはきわめてあぶないのですよ。ところが何も持たないほう、あるいは硫酸基を持ったほうははずしておいて、より危険だと常識的に考えられる紫色一号を残すということは、科学常識から考えられない。私は若干それをかじっていますから。しかし、もう時間がありませんから、これ以上申し上げない。いずれまた詳しいことについては、それぞれの委員会で突っ込んだ指摘をしたいと思います。  終わります。
  132. 登坂重次郎

    登坂主査 次に、岡本富夫君。
  133. 岡本富夫

    岡本分科員 私は本論に入る前に、厚生省は明治百年来の歴史の中で、あまりいいことをしなかったけれども、いいことをなさったのが二つある。それは来年から始まるところの児童手当、それから次には公害病の認定をした。イタイイタイ病あるいは水俣あるいはまた阿賀野川の水銀中毒事件、これは非常に高く評価されてよいと思うのですけれども、たとえばイタイイタイ病事件の状態を振り返ってみますと、イタイイタイ病と取り組めば選挙に落ちるというジンクスがあったので、なかなかイタイイタイ病に取り組むことがなかった。われわれ何とかしてこの人たちを救わなければならぬということで、現地にも行きました。ところが厚生省調査をする、そうしていよいよ婦中町の付近の人たちが、イタイイタイ病はカドミウムによるんだということを結論づけようとすると、通産省は横やりを入れて、そして当時別の試験を始めた。私は商工委員会でこの問題を取り上げまして、当時の椎名通産大臣に対して、厚生省の結論を認めるか、認めますということで、結局イタイイタイ病は公害病に認定された。それによって水俣病あるいは阿賀野川水銀中毒事件は、約十五年の係争があったけれども、やっとここで落着して公害病と認定された。なお引き続き救済の問題が残っておりますけれども。  このイタイイタイ病の公害病認定をされたその陰には、貴重な存在の方がいる。これは婦中町の開業医であるところの萩野博士、それから岡山大学の小林教授。この小林教授の専門的な知識によってこういうようになったわけであります。ところが、この専門学者にいま難が起こっておる。それは何かと申しますと、厚生大臣も知っているかわかりませんが、盛んに脅迫の電話がかかっておる。これは聞いておると思います。とにかくひんぴんとして、たとえば昨年末のある晩、十二時近く、自宅に電話をかけてきて奥さんを脅迫したり、あるいはまたこの小林教授の研究室に電話をかけてきたり、そして盛んに脅迫をやっている、こういう事実があるわけであります。厚生省のりっぱな功績のもとに、こうした公害病認定をした功績の陰には、こうした専門学者がおるのです。こうした専門学者を厚生大臣としてはやはり守らなければならぬ、大事にしなければならぬ。それが国民から課せられた義務である、こういうふうに思うのですが、大臣の所見を伺いたい。
  134. 内田常雄

    内田国務大臣 おっしゃるとおりでございます。厚生省だけでできることではございませんので、その方面の専門の学者の方々に御協力をお願いいたしておるわけでございますので、それらの人々が意見の違う人々から脅迫を受けるというようなことは、あってはならぬことでございます。
  135. 岡本富夫

    岡本分科員 そこで、刑事局長さんが見えていると思うのですが、電話によるところの脅迫というものは、これは犯罪になるのかならないのか、これをひとつお聞きしたい。
  136. 高松敬治

    ○高松政府委員 脅迫に該当する事実と申しますか、その内容があれば、電話によろうと手紙によろうと、それはかまわない、いずれにしても脅迫は成立いたします。
  137. 岡本富夫

    岡本分科員 そうしますと、すでに御承知かと思いますけれども、自宅のほうに、あるいはまた研究室にこうしたいやがらせ――中には一時間ぐらい電話をかけているのです。こうした状態をあなたは御存じであったのかどうか、これをひとつ聞きたい。
  138. 高松敬治

    ○高松政府委員 私ども承知しておりますのは、二月十九日の地元の新聞に、小林教授のお宅に何か怪電話があるという記事が出ました。それまで小林教授のほうからは別にそういう連絡なり被害の申告がなかったわけであります。そこでさっそく小林教授のほうに連絡をとりまして、事実を聞いてみますと、二月二日に脅迫めいた電話があったということがございました。それから昨年の末にも一日に数回そういうふうな電話があった。ただ、御本人のほうでは、そういう電話があったことは事実だが、脅迫という程度かどうかというふうなことについては、まあいたずら電話というふうに考えられたと見えまして、警察のほうには届け出しなかったということでございます。そこで、地元の岡山東警察署としては、今後そういう電話がかかってきた場合には、ひとつよく御連絡を願いまして、適当な措置をとります、こういうことでいまやって、その後また電話がかかったという事実はないようでございます。
  139. 岡本富夫

    岡本分科員 局長さん、こういう電話がかかってきましたということで、かかってきたら連絡してくれ、連絡しました。電話というのはすぐ切れるのですよ。小林先生は逆探知して――テープにとってありますけれども。捜査上のことに対してまで私は口出しはしませんけれども、どうもいまあなたにお聞きすると、地元のやり方は手ぬるいのじゃないか。またそういうのがかかってきたら届けてください、届けた時分には何もないのですよ。この人は科学者ですし、また日本でも有数の人です。あのためになんだかんだということはないと思うのですけれども、連絡はしないかしりませんけれども、もう少し前向きで――いまあなたは大したことはないじゃないか、こう思っていらっしゃるかもしれませんけれども、小林教授あるいはまた萩野博士、あるいはその他の方がいらっしゃいます。こういう方は日本でも指折りの大事な人なんです。だからもう少し突っ込んだ、またもう少し警備の面あるいはまた捜査の面をやっていただかなければならないと思うのですが、その点の御所見はいかがですか。
  140. 高松敬治

    ○高松政府委員 ちょっと御説明が足りなかったと思いますが、もちろん小林教授には電話の録音をやっていただく、そういうことによってある程度証拠保全をする。逆探知できる場合には逆探知いたしますけれども、逆探知というのは非常に長い時間を要したり、非常にむずかしい部面もございまして、なかなか早急には間に合わぬと思うのでございます。私どもとしましては、むしろ早く御連絡を願うということ、いままで御連絡がなかったものですから、そういうことがありましたら、時節柄でもございますし、そういうことを早くひとつ御連絡を願うということで現在に至っておるわけでございます。なおその二月二日の電話の中身というのは、たとえば電波であなたをねらいますというような、ややとっぴな電話でもあったということも、小林さんのほうでいたずらというふうに判断された一つの理由だったのではないかというふうに思っております。
  141. 岡本富夫

    岡本分科員 私、この問題で長い間やっておるわけにいきませんけれども、たとえば美人の濃厚な化粧をした女を使って小林先生に近寄せて、あとから写真をとろうとしたり、いろいろと迫害があるわけです。そして小林教授あるいはまた萩野博士は、イタイイタイ病あるいはこうした病気の裁判で両氏も証言しなければならぬ、こういうようなことにもなっている。したがって、こういうことをやるということはそのときに不利になる、そういう面からこうしたことを使ってやっているのではないかというように勘ぐる人もいるわけです。したがって、根は若干深いのじゃないかと私は思うのです。ですからそういう面もよく調査をしていただいて、そして徹底的にこの大事な学者を守っていただきたい、こういう要求をしたいのですが、いかがですか。
  142. 高松敬治

    ○高松政府委員 私どももそういう被害につきまして小林教授のほうともっとよく連絡をとりたいと思うのです。ところがそれが現在のところでは、非常に密接に小林教授と連絡がとれるという状態でございません。残念ながらそう意味では、私どもとしてはむしろ、そういういろいろなことがありましたら進んで積極的に警察のほうに御連絡いただきたい、それによって私どもとしてもできるだけの手を尽くしていきたい、かように思っている次第でございます。
  143. 岡本富夫

    岡本分科員 連絡しなければやらないということなのですか。
  144. 高松敬治

    ○高松政府委員 私どもにはどういう事態があったのかということは、被害者からお話を願わなければわからないわけでございます。
  145. 岡本富夫

    岡本分科員 これは刑事局長さん、そう感情的にならぬと、ひとつもう一度よく現地を指示してちゃんとやっていただきたい。そうでないと、これはほんとうに人権問題ですし、もうすでに奥さんなんかノイローゼになりかけている。そういったことになりますと、非常に今後困る、こう思います。
  146. 高松敬治

    ○高松政府委員 別に感情的になっているわけでもございませんし、先ほど御説明しましたように、今度の事件も私ども実は新聞で知って、警察のほうからお宅にお伺いして事情をいろいろ聞いた、こういう状態で、私どもとして決してそういう状態をなおざりにするとかそういうことはございません。先ほども申し上げましたように、こういう公害が問題になっている時期でありますし、いろいろな不測の事態が起こらないように、私どもとしてはできるだけの努力はしてまいるつもりでございます。
  147. 岡本富夫

    岡本分科員 この問題でやっていると本間に入れませんので、特に厳重にやっていただきたいことを要望しておきます。  次に、老人無料医療制度について厚生大臣にお聞きしたいのですけれども、昨年一年間で六十歳以上のお年寄りが四千九百四十二人も自殺したというショッキングな事実が、これは読売新聞ですか、この数字が出ておりました。これは全自殺者の三分の一である。これが六十歳以上の老人である。そこでその中の状態を見ますと、過密都市あるいは過疎地帯、この老人の自殺が非常に増加しておる。そこで病と孤独と貧困が老後の三大恐怖といっていいというように報じておりますが、総理は、福祉なくして成長なしなんということをこの間言っておりました。これからこの高度成長の社会の暗い谷間の人たちを救済することが、まず福祉ではないか。よって救済なくしては福祉なし、こういうように私はつけ加えたいと思うのです。そこでお年寄りの無料医療制度についてどういうような見解を厚生大臣は持っていらっしゃるか、これをひとつお聞きしたい。
  148. 内田常雄

    内田国務大臣 たびたび私がいろいろの機会で申しておりますように、日本の人口構造がこれから十年、二十年の間に急速に老齢化をしてまいることと、それからまた老人に対するいろいろな福祉施設というものが、従来家庭で見られておったものが、核家族等の状況の進行に対応して、社会福祉あるいは国家福祉という面で見なければならない点が多くなりますので、単に疾病対策に限らず、老人福祉問題というものがこれからの国民福祉問題あるいは社会保障問題の一番大きな課題になるだろうというまず私どもは認識に立つものでございます。そのうちでも、年をとりますと稼働能力が減ってまいる、つまり所得が減る。それからまた、いかにじょうぶな老人でもやはり病気しがちになりますので、つまり年をとられた方々の所得を保障して差し上げる年金等の問題と、それから病気に対応する医療保障の問題がいろいろの老人福祉対策の中でもまた大切な問題になるというような、そういう認識に立ちまして、ただいま岡本先生が仰せられますような、そういう角度につきまして、でき得る限り前進した施策を今後とってまいりたい、こういうつもりでおるものでございます。
  149. 岡本富夫

    岡本分科員 そんなことでなく、前進とか前向きとか言わずに、もっと明確に一つ二つは答えていただきたい、時間もあまりありませんから。  そこで総理府の統計を見ても、老人の自殺は特に女子は世界第一位、あまり誇っておれません。それから男子は世界で第六位。そこで考えられることは、有病率、病気になった中で一若い人の約四倍お年寄りは病気になっている。ところが受療率、医者にかかった率は二分の一、約半分しかかかっていない。これを見ますと、金がないから医療を受けられないというような気の毒な姿をあらわしておるのではないか、こういうように私は思うのです。また老後の生活世論調査によりましても、健康問題で苦しんでおるお年寄りはその四五%、こういうように総理府で発表しておりますけれども、約半数に近いですね。またあなたのほうの、厚生省の社会保険審議会の答申によりましても、昨年十月に医療保険の前提問題の意見書で、お年寄りの医療は公費負担でやる構想が必要である、こういうような意見を出しておる。そこで大体健康保険で七〇%を見るのですから、あとの三〇%を公費負担で見る。これでいま各地方自治体におきましては、この問題を見るに見かねて、乏しい財政の中から何とかやっていこうというわけでやりかけておるわけでありますけれども、そこで地方自治体の一つの姿を見ましても、西宮市の状態を、これからやろうというので調査をしたのを見ますと、七十歳以上で人口が約一万一千五百人、それに要する必要経費が二億三千五百万、七十五歳にすると、五千八百人で一億一千八百万、こういうような数字を出しておりますけれども、そこで一つはこういうことを国でやるべきではないかということでありますから、大臣の構想として七十歳以上、あるいはまたもう一歩考えて、こうしたところの、地方自治体で見るに見かねてやっているところに対して補助金を出す、こういうようなお考えはないだろうか、この二点についてお聞きしたい。
  150. 内田常雄

    内田国務大臣 岡本さんがるるお話しをなさいましたようなそういうことを認識いたしまして、私は先ほど申しましたような老人対策の姿勢に立つものでございます。  そこで、結論的に申しますと、七十歳なり七十五歳以上の老人に対しては、保険でめんどうを見てもらえない分につきましては、さらにその分を、つまり自己負担分を別個の形の保険で補充していくなり、あるいはまた公費で国なり公共団体なりがその老人の個人負担を埋め合わせていくという方法をとらねばならない方向にだんだんきていると私は認識をいたしております。ただ岡本さんも言われましたが、地方では老人の医療は保険で七割見る、あとの三割が自己負担だと言われましたが、つとめ人の家族であるお年寄りは現在七割までも保険で見てもらえないで、五割までしか保険で見てもらえないということがありますので、今度私どもは健康保険法の改正案でも、つとめ人の家族でも七十歳以上のお年寄りは七割保険で見るようなことで、まず下のベースをそろえてまいりたい。その上の三〇%につきましては、それが健康保険制度のもとにあるお年寄りであれ、あるいはまた国民健康保険にカバーされるお年寄りであれ、七〇にそろえておいた残りの分につきまして、岡本さんの仰せられるようなことをだんだんやってまいりたい。だんだんということは、何も二年も三年も五年も先ということではありませんで、いま実は、もう御承知のように、厚生省予算の半分くらいは保険関係補助金で支出をいたしております。国民健康保険でも四千数百億円というものが厚生省からの補助金でございます。七割負担のもとにおける。でありますから、あとの老人の残りの三割負担ということを一緒にやれるかというと、一緒にできない面がございますので、私は二つに分けまして、ある種の病気で、公費負担に適するようなお年寄りの病気は公費で見るというふうに進め、そしてまた、その他の一般のお年寄りの病気につきましては、国と地方とが抱き合いでめんどうを見ていくような制度にしたらいかがであろうか、こういうふうにも考えまして、これから先の施策を進めてまいるようにいたしております。
  151. 岡本富夫

    岡本分科員 確かにあなた、前向きに三〇%の問題、あるいは五〇%の問題を検討する、なお地方自治体でやるものに対しての補助金についても前向きに考える、こういうように承っておりますが、そこで大臣、していいことと悪いこととあるわけです。公害病の認定とかあるいは児童手当、これはしていいことなんです。して悪いことが一つあります。これはいま健康保険問題が出たから言っておきますけれども、健康保険の今度の問題、私はやめておくつもりにしておったのですが、これはやはり答申に基づいて、そして出してきたところの健康保険改正であれ――改悪であるという人もいますけれども、改めるものであればまた考えられますが、この間、大臣は非常に正直ですから、答申が出なければ見切り発車するつもりでおったというようなことを言っておりましたけれども、答申が出る前に政府案をつくっておるわけですね。それから答申が出たからそれ、これならほんとうに木に竹を継いだようなものです。この問題は、また社労でいろいろ問題があろうと思いますけれども、やはりしていいことじゃないのです。ですから、どっちかといいますと、もっと抜本改正をやるべきその一部であると言いますけれども、全般を通じたもので審議しないと、頭だけ審議して足だけ残したとか胴だけ残した、そういうことでは国民は納得しません。内田さんはえらいときに厚生大臣になってしまったのですけれども、健康保険問題だけはいつもたいへんな問題であります。いずれにしてもその点は申し入れておきます。これは社労でまた取り上げてみたい。  そこで次に、予防接種の件について私はお聞きしたい。昨年の十月二十二日、二十五日付近の新聞を見ますと、予防接種事故について救済制度厚生省でつくられた。ところがしり抜けになっておるんだ。私は社労委員でありませんので、これも何だろうと思っていろいろと調べてみますと――これから私簡単に質問しますから、どんどんと明確に簡単に答弁ただきたい。  そこでまずジフテリアと百日ぜきの二種混合接種、これは国からやれということになっておりますが、いま地方自治体でやっておるのは破傷風を入れて三極混合になっております。これは普通実施しておるところの実際的な問題です。したがって、三種混合も、もしものときには救済制度の中に入れるかどうか、これが一点。
  152. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 入れます。
  153. 岡本富夫

    岡本分科員 次に、インフルエンザは、現在の対象は小学校、中学校、幼稚園あるいは保育所の児童、こういうことになっておりますけれども、日本脳炎は生後六カ月から十五歳まで、五十五歳から六十四歳まで、こういうことになっておりますが、いまインフルエンザあるいは日本脳炎は一般市民の皆さんにもやっておるわけです。なぜ一般市民にもするかと申しますと、たとえば日本脳炎、これは西宮の状態を見ますと、一つだけ例をあげるのですけれども、昨年二十一歳の女子と十八歳の高校生、こういう人がやはり日本脳炎にかかって死んでおるわけです。これは事故によって死んだのではない。まだこれに対する事故はありませんけれども、事故が起こらないという保証は何もないわけです。したがって、これも対象の中に入れるかどうか、これをお聞きしたい。
  154. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この点につきましては、御指摘のように、こちらで年齢を限りまして勧奨して、法的に予算措置もいたしまして実施いたしたものにつきましては救済の対象にいたすことになっております。二十一歳あるいは十八歳、これは日本脳炎そのものにおかかりになったということでございますが、脳炎の予防接種そのものを今後――現在は正式な予防接種法には取り入れてございませんが、これを取り入れるかどうかにつきましては、ただいま伝染病予防調査会の中に予防接種部会を設けまして検討していただいております。
  155. 岡本富夫

    岡本分科員 大臣、これはあなたもよくおわかりだと思うのですが、国から勧奨接種、要するに国からやれということでこの予防接種をしておるのか、あるいは地方自治体が独自にやっておるのか、これは一般の住民にはわからぬわけです、国が来てやってくれるのじゃないのですから。そうしますと、ここに差別が出てくるわけです。しかも、いまどこか審議会で審議してもらう、こういうようなことを言っておりますけれども、こんなものは審議なんか必要ないと思うのですね。要するに予算上の問題ではなかろうか。現在救済しなければならぬというような事故は起こっておりませんけれども、事故が起こらないという保証はないわけです。この点について大臣からひとつ……。
  156. 内田常雄

    内田国務大臣 お話がございましたように、いま補償の対象にいたしましたのは、国の法律による義務接種と、実質上それに近いものとを対象といたして予算を組みました。これは自慢話じゃございませんが、いままで何十年来こういうことに対する補償というものはだれもし得なかったのを、私どもががんばりまして、とにかく第一歩を踏み出したわけでございますので、おっしゃることはよくわかりますが、とにかくここで私どもがこれに踏み出したということを認めていただいて、そしてだんだん、もうこんなものは法定伝染病というか、義務接種も要らないものも、はずれてくるものも当然出てまいります。それと同時にまた、加えたほうがいいものもあるわけでございますので、お話はよく承りましたから、今後引き続いて検討対象ということにしていただきたいと思います。
  157. 岡本富夫

    岡本分科員 そこで、要するに幼稚園、保育所なんかに行っていないところの幼児、これが対象に入っていない、これもひとつお考えいただきたい。大蔵省主計官、来ておりますか。――これはあなたのお子さんも、それから国民の皆さんが予防接種というのは大事な問題でありますから、ひとつここらで厚生省のこうしたものは予算を削らないようにやってもらいたい。これは要望しておきます。  そこで、最後に一点だけ。大臣国民保険の、まあ事務費の問題もあるわけです。国の委任事項が、地方自治体が相当国の委任を受けながら、国民保険の取り扱いについて事務費が非常にかさむ。あるいはまた国民保険の赤字、これを地方自治体は一生懸命やっているわけですけれども、その点もひとつ今後考慮していただくことを、年々あがっておりますけれども、要求しておきます。  最後に、国民保険の取り扱いについて。国あるいは公立の大学付属病院、こういうところで、たとえばこの方は尼崎の七十一歳の中川スエノさんというおばあちゃんですですけれども、この方が尼崎の関西労災病院の耳鼻科でいろいろと診察を受けたけれども、これは阪大の病院の放射線科に行かないとだめだというわけで、紹介してもらった。ところが、そこへ行きますと、国民保険をかげながら、全額先に払わないと――あとで返してくれるわけですけれども、払わないと受けられない、こういうようになっております。国民保険を払っているわけですから、どういう制度になっているか知らぬけれども、そこへ行って国民保険の証書を見せれば同じように受けられるように、ひとつ、制度改正をお願いしたいと思うのですが、いかがですか。
  158. 内田常雄

    内田国務大臣 まことにごもっともで、そうなりますとどれだけ国民健康保険の被保険者は助かるかわかりません。ただ国民健康保険というのは、国民という字はついておりますが、実際は地域保険、市町村保険でございますので、一つの同一都道府県内におきましては、どの村の患者がどの市の病院へ行きましても、みな現物給付で、請求はあとから国民健康保険のその県の連合会に請求するということで問題ないわけでございます。これを私どもは全国的に広げたいということでかねがね苦労をいたしておりまして、お話がございましたが、国立病院のほうは、どの県の国保の被保険者がどの県にある国立病院に行きましても、全部同じような取り扱いにいたしておるはずでございますが、岡本さんのおっしゃるのは、文部省所管の大学付属病院のほうがそうなっていないではないかということであります。いずれにいたしましても、現在大体全国の六、七割の医療機関は全部どこの患者でも後払いで現物保険給付をするということまできておりますが、あと三、四割の医療機関がそれに加入いたしておりません。それは支払い機関が各都道府県の連合会でありますために、それに老人医療なんかをやっておる地域、やってない地域なんかがございまして、やや複雑な問題がありますから残っておりますが、それも御趣旨のように私は尽力をいたしてまいりたいと思います。
  159. 岡本富夫

    岡本分科員 大臣国民保険は国の義務によって国民のために国がきめておるわけですよ。何かいま聞きますと、地方自治体がやっておりますので、それは入ってもらわぬでもいいというような感じ、地方自治体でやっておるのだから国の問題じゃないというように聞こえたので、これは訂正しておいてください。
  160. 内田常雄

    内田国務大臣 全くそういう意味ではございません。少し舌が足りなかったようでございますが、施行主体、施行区域を各市町村ごとにやっております。でございまするので、またその支払いは各都道府県ごとに国民健康保険組合会の連合というものをつくってやっておりますから、日本じゅうで四十六の国民健康保険連合会という支払い審査団体がございますので、地域保険になるという仕組みになっておりますから、なかなか全国一本の仕組みではいかない面が残っておる。およそ六、七割までいっておりますので、あと全部カバーできるように私どもは努力をいたしたい、こういうことでございますので、地方にやらしておるから国は知らぬなどということではなしに、一番お金を出しておるのはこの保険でございますので、国が一番お金を、四割五分も出しておる、こういうようなことでございます。
  161. 岡本富夫

    岡本分科員 終わります。
  162. 登坂重次郎

    登坂主査 寒川喜一君。   〔主査退席、松野(幸)主査代理着席〕
  163. 寒川喜一

    寒川分科員 私は、限られた時間でございますので、一つだけ質問をいたしたいのでございます。たいへんじみな質問になりまするが、私は重要な問題だと認識をしてお伺いをいたしたいわけでございます。  まず昭和二十三年の七月に制定されました医師法二十四条、「診療録」、舌をかむようなことばになりますので、以後カルテということばを使いますので御了承をいただきたいと思いますが、本法制定前の医師法と内容が同じなのか変わっておるのか、まず医務局長にお伺いしたいと思います。
  164. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 私、ちょっとその当時のこと、変わっているかどうか、即答いたしかねますが、後ほどまたお答え申し上げます。
  165. 寒川喜一

    寒川分科員 なぜ私がこういうことを申し上げるかと申しますと、カルテの保存期限が五年、しかも五年を経過いたしますると、厚生省自体は具体的にその取り扱いについて今日まで何らの措置がなされておらないやに私は承知いたしておりまするが、公的にその後の扱いについて何か指示をされておるのかどうか、伺いたいと思います。
  166. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 御指摘のとおり、五年間というものはいわば最低のものでございまして、その後のことについて、御質問のような特別の法文等を持ちまして、かくかくしなければならぬというようなことはいたしておりません。
  167. 寒川喜一

    寒川分科員 私思いますのは、戦前の医師法にしろ、現行法にしろ、診療行為というものが、特定の医師に終身見てもらうというような前提でできておるのじゃないかと判断をしておるわけなんです。今日のように人口がたいへん大きな規模で移動をしている、生活の本拠が常に変わる、こういう時代はわれわれも想像し得なかったような状態にあるわけなんです。ところが、かつて病気をした、その後地方から都会に出てきて医者にかかるというような場合には、過去の診療経歴というものが、ただ単なる――専門のことばはよく知りませんけれども、問診で、あなたは過去にどういう病気をしたかとか、何日間くらい入院をしましたかとかいうようなものを土台にして現在の診療行為が行なわれておると判断してよろしゅうございますか。
  168. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 御指摘のような場合には、通例、先生の御指摘のようなことで次の診療が行なわれていると御判断いただいていいと思います。
  169. 寒川喜一

    寒川分科員 私は、その点が、今日のように非常に技術の発達した時代、とりわけエレクトロニクスの技術等の発達によって、たとえば写真技術、コンピュータによる計算その他管理というようなことを考えまするときにおいて、厚生省が非常に広範にわたったお仕事を持っておられますのに、限られた陣容であるということも肯定できましょうけれども、根本的な問題を等閑視して、現象のことのみにあまりにも目を奪われ過ぎておりはしないか、私はこんな所見を持つものでございまするが、こういうことについて何かお考えになったことはございませんか。
  170. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 御指摘のとおり、過去の記録というものはきわめて貴重なものでございます。その意味におきましては、大病院等におきましては、むしろ永久保存という形で非常に大事な資料としてこれを保存整理いたしておりますことは御承知のところだと思います。ただ、日本の医療の中で、医療機関相互が、その受診に際してきわめて緊密な情報の交換をするということが、残念ながら非常に潤滑にいっているとは言えない。この点が私どもは、やはり医療体制というものを考えます場合の今後の非常に重要な一つのポイントではないかと考えております。ただ、その場合には、おそらく将来において国民健康管理というようなものの体制を考えます場合、それらもすべてこれに関与する問題ではなかろうかというふうに見ておるわけでございます。
  171. 寒川喜一

    寒川分科員 大臣の常に国民健康管理ということに御熱心な御発言を承っておりますので、姿勢としては私は理解できます。しかし、国民健康管理というものは、発病したその時点、前後が断絶があっては、ほんとうの健康管理というものはあり得ないとぼくは思うんです。そういう意味で、大臣自身は、この問題についてどういうお考えを持っておられるか、あるいは、こういうことによって具体的にめんどうな問題が起こっておると判断されませんかどうか、お伺いしたいと思います。
  172. 内田常雄

    内田国務大臣 正直に申しまして、私はそこまでいろいろな考えが回りませんでしたけれども、こうやって承っておりますと、寒川さんのお話はたいへんよくわかります。したがって私は、昔のことにとらわれず、やれないことはしかたがありませんけれども、やり得ることは、常に新しい視野に立ってやったほうがいいのではないかと思います。
  173. 寒川喜一

    寒川分科員 具体的な例を一例だけ、そういうことがあるのであれば真剣に考えなければいかないという点で申し上げてみたいと思います。  たとえば、最近交通事故の事案が多くなりまして、本人が注意しておりましても、第三者からの加害というようなことが自動車の運行等でも間々あるわけなんです。そこで、数年前にそういうことをやった、五年以降に発病をした、その因果関係等について非常に論争が起こっておる。加えて、やった場所が、たとえば北九州であった、現在大阪に来ておる、そういうときに、その医師に出てきてもらって証言をしてもらうということはなかなかたいへんなんです。  そういうような一例をとってみましても、カルテの取り扱いということについて本格的に、やはり角度を変えて、現在の科学技術の発達した時代に即応するような体制でなければ、こういう問題は解決しないと私は思います。それにも関連してまだございまするけれども、その問題について医務局長は、そういう事態が起こればあなたはどういう措置をおとりになられますか。
  174. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 通例の場合は、そういう医療機関、あとのほうの医療機関等で、前にかかったというような事実があったということがわかれば、必要な場合には、その病院に照会をして、そのとぎの状態はどうであったかということを、普通の通信手段等によりまして問い合わせているというのが普通行なわれている、しかもそれが最適だと思われているような状態ではなかろうか、こういうふうに考えます。
  175. 寒川喜一

    寒川分科員 そういうことであれば、もうのれんに腕押しで、ほんとうに発病した患者というものは、もう取りつく島がないのです。たとえば、あとで具体的に提案もしたいと思っておりまするけれども、カルテが保存をされておって、そういうものが当然に要求されれば出して、過去の診療経過の中で、数年後に発生をしたむち打ち症、脳波の異常というような問題が議論にならなければいけないし、しいて言えば、その過程で、振動の多い職業についておって、そこで定期健康診断の過程で異常はなかったか――この定期健康診断自体の問題については、あと、労働省からお見えをいただくようにお願いをいたしておきましたので、お聞きしたいと思いまするが、最終は水かけ論になってしまうのです。一例だけをとって申し上げておりまするけれども、そういうことに対する基本的な姿勢というものが、厚生省ではもうほったらかしておった、二十三年の七月制定の医師法と戦前の医師法との関係が即答できないというようなことは、こんなことに重きを置いておらない証だと私は思いまするけれども、大臣の御見解はいかがでしょうか。
  176. 内田常雄

    内田国務大臣 私も、告白いたしましたとおり、このことに従来そこまでの関心はございませんでした。しかし、あなたのおっしゃるようなこともよくわかりますので、たとえば、わが国にいろいろな文献がありますのを、科学技術情報センターというような機関がございまして、そこには、マイクロフィルムにおさめまして、そしてコンピュータで、ある種の事故が起こったときには、どういう論文があるか、どういう所論があるかというようなことがさっと出せるようなのがあそこに実はあるわけでございます。でありますから、日本の医療機関というのは、大体医者の数は十一、二万くらいでありますが、医療機関は六万くらいあります。それらの六万について、それらの医者が取り扱った患者のカルテを、日本じゅう――科学技術センターじゃなしに、診療カルテセンターみたいなものをつくって、そうしてマイクロフィルムかなにかにとって、コンピュータでいつでも引き出せるようなことができるかできないかという問題があるわけでございます。網羅的にやらなくても、必要がある限界において、ここまではできるはずだ、ここまではやったほうがいいということが、人間の知恵の進歩とともに、また必要性とともにあり得るわけでございますので、そういうような面につきましては、私がさっきも申しますように、やれないことはしようがないけれども、やれる範囲のことは、新しい視点に立って検討に値することではないか、こう申しましたのはその意味でございます。
  177. 寒川喜一

    寒川分科員 関連をして労働省にお伺いをしたいのですが、労働省の定期健康診断という診断のやり方なんですけれども、医師法二十四条に定めておるカルテを使ってやっておるのかどうか、まずその点を伺いたいと思います。
  178. 山本秀夫

    ○山本説明員 労働省は労働者保護でございますから、さまざまな一般の労働者全部に共通する健康診断がございます。それから鉛なら鉛に従事しておる人たちに対する特殊な健康診断もございます。したがって、それぞれに中身が分けて書いてございます。大体のことは先ほど調べた結果、診療録の中身と一致しております。
  179. 寒川喜一

    寒川分科員 私が申し上げたいのは、工場の健康診断でも、人が動かないという前提に立って健康診断をしておる。企業におる間ということでなしに、やはり国家的な立場で働く人の健康を管理していく、こういうことでなければならないと思う。そういう面で、たとえば公害が起きる。安中製錬所の健康診断の問題一つにしましても、ほんとうに労働省自身が先を見て処置をしておれば、いろいろ発掘された死体の解剖結果からくるカドミウムの保有量というような問題については、一般の知識のない方々から見れば、一万以上のカドミウムを含んでおるということになりますると、たいへんなことだというような議論と、専門家でわかっておる方々であれば、正常な人でも一万台のカドミウムがじん臓等には含まれておるというようなことを教えていただくとわかりやすいわけなんであります。その際に、やはり健康診断というが、ほんとうに診療行為を行なうというようなたてまえでの健康診断でなければならないと私は思いますし、そうい機関があったのではないか、こう判断をいたしておりまするが、積極的に労働省当局はどういう指示をし、どういう結果を生んでおるか、お尋ねをいたしたいと思います。
  180. 山本秀夫

    ○山本説明員 ただいま健康診断の問題は、労働省としては実は全面的に見直しをしております。最近のカドミその他の問題につきましては、その関係の規則整備を実はすでに手をつけております。おそらく近いうちに規則改正が行なわれるだろうと思います。
  181. 寒川喜一

    寒川分科員 そういう点、さきの社労委員会でも、公害を事前に防除するという施設基準の問題についても、通産当局とは考え方の違った前向きでいろいろ議論をされておるようでございまするが、いま御答弁のあったような趣旨でひとつ早急にこういった問題は解決していただきませんと、いろんな面がやはり後手後手になるし、同時に、そういったことが、あとで提案するような方法等についても、厚生当局は十分配慮していただいて、特にこれから、あなたの所管でございませんけれども、中高年齢層の就職というようなものが、ただ単に一地域だけで解決し得ないような労働需給の状態に、完全雇用を目ざしますならば当然になってこようかと私は思います。そういう時点におきまして、やはり本人の健康の経歴というようなものが詳細にわかっておって、ことばの上で適職に配置をするとかあるいは軽作業につけるとかいっておりましても、職場環境という問題が健康に及ぼす影響というものは大きなウエートを持つものだという理解のもとに措置いたしていただきたいということを要望いたしておきます。  そこで厚生省にお聞きしたい点は、学校の健康診断も私は五十歩百歩でなかろうかと思います。年少の時代から老年に至るまでの一連のものがやはりなければ、ほんとうの意味で健康管理をしていくというような面のデータにはならないのではないか。私は、先ほど大臣の言われました、今日の科学技術をもってすれば、マイクロフィルムの技術、コンピューターの活用、そういうもので十分処理し切れるものだと判断をいたしておるわけでございます。予算の伴う問題でございまするけれども、ほんとうに国民の健康をお考えになるのであれば、ただ単に起こっておる現象だけをとらまえてやるよりも、個人の生まれてから死ぬまでの健康の状態というものを正確に記録され、それが、人の移動がありましても、当然に判断の材料に、しかも的確にしていくという診療行為が行なわれてこそ、ほんとうの意味の健康管理になるのではないか、私はかような判断をいたしておるわけでございます。   〔松野(幸)主査代理退席、主査着席〕  したがって、そういう面で副次的な利益をあえて申し上げまするならば、現在の健康保険制度の問題について、今日ではいろいろな立場の人が御自分の都合のいい主張のみをしておる面がかなり大きなウエートであるのではないか。社労委員会でも質問が出ましたように、たとえば医師の不正請求というような問題なども、やはりカルテがそういう形でマイクロフィルムにとられ、しかも第三者がこれを常に見ておるというような状態になりますると、一本注射しておいて二本請求するというようなことなどは、あるいはレントゲンの関係で、他人の名前で違ったものを診察して請求をしていくというようなことは、もう一目りょう然にチェックできてまいるような状態になると私は思います。したがって、そういう面でほんとうに時代の要請に即応する科学技術を駆使したカルテの運営というものについて今後考えていく意思があるかどうか、大臣から率直な意見を聞きたいと思います。
  182. 内田常雄

    内田国務大臣 私は、先ほど科学技術情報センターの話をちょっと申しましたが、それと同じことがこのカルテについてやれるかどうか。つまりカルテセンターみたいなものを六万の医療機関を対象とし、また患者は、とにかく日本に一億三百万人おるわけでありますから、全然医者に行かなかった方は別といたしますとそれだけ減りますけれども、とにかく一億枚近いマイクロフィルムのコンピューターによる操作というものができるかどうか。そのためにはどれだけお金がかかるかという問題も当然あるわけでございますので、それを抜きにして私はその構想が実現できるとも思いません。しかし、たとえば国立病院相互間ではどうであるかとか、あるいはガンならガンの病歴についてはどうであるかとか、ことに最近、じん臓移植などの問題に関しましては、どこに移植可能なじん臓があるかというようなことが、国内的に情報網が必要だというようなことが特にいわれるようになっていることを、私は大家から聞かされたことがございますので、局限された範囲において、また必要なる面において、お話がありましたようなこと、また私がちょっとさわりましたようなことはできないとはいえない問題ではないか、私はかように思います。
  183. 寒川喜一

    寒川分科員 大臣の御答弁は、関係財務当局との関係もあるから、なかなか断定したことは言えないと思います。しかし、私が申し上げたから、それに符節を合わせたような次元での姿勢であっては困るわけです。したがって、ほんとうにあなたがそういうようなお気持ちを、私の質問を動機とするものではなくして、過去からお持ちであれば、大臣になられてもう一年以上おたちでございます。したがって、そういう問題について調査費をつけて本格的にやらしてみるとか、あるいは医務局長が戦前の医師法の中でのカルテの取り扱いについて全く知らないというようなことは、ほんとうにやろうという考え方が今日まではなかったと私は判断せざるを得ないのです。それを私は責めようとは思いません。警察庁の免許の問題にしましても、これが機械に完全にのって消化される実績がすでに生まれております。したがって、いろいろな面で創意くふうをして、ケース・バイ・ケースになろうかと思いますけれども、最小限度からでもこれについてはやらなければいけないというような、科学技術を導入して、おくれておるそういった面をこの際早急に回復をしていこうというお気持ちがほんとうにあるかどうか、重ねて伺って質問を終わりたいと思います。
  184. 内田常雄

    内田国務大臣 私は、寒川先生の御質問に符節を合わして答弁をしておるのではないので、私のところにはそんな想定質問も何もない。これは質問なさる方のお名前と時間割りだけでありまして、あなたのお話を聞いておるうちに、なるほどこういうことだろう、科学技術情報センターにおけるああいうことだろうということで、できることをやったらいいだろう、いつまでも旧態依然として何十年もおるべきものではない、こういうことで私は申し上げました。しかし、お話しのように財務当局の関係がございます。これは非常に金も要ることでございますから、必要な範囲、できる範囲において検討をさせてまいりたい、かようなことを考えております。
  185. 寒川喜一

    寒川分科員 もう一言だけ。別にあなたの御答弁に強弁をしようとは思いませんけれども、むしろ私自身も長い間あなたと同じように答弁する立場におったわけなんです。したがって、先刻のお察しからいたしますると、ニュアンスというものはよく私はわかるのです。そういう面でしらを切ったような話じゃなしに、ほんとうに国民健康管理という問題を大臣が真剣に考えるのであれば、もっと誠意のあるような御答弁をいただきたいと思います。いずれまた社労委員会等で、こまかい意見等も持っておりますので、その機会に申し上げることにして、本日はこれで終わりたいと思います。
  186. 登坂重次郎

    登坂主査 次に、原茂君。
  187. 原茂

    ○原(茂)分科員 基本的な健保そのものの抜本策についてはいろいろまた同僚議員がお尋ねすると思いますが、私は医療専門官を中心に、その業務内容等を通じて、いわゆる誤診とか不正というものをなくしていくことを中心にお伺いをしてみたい、こう思うわけです。  時間がありませんから、あまり私のほうから言う必要はないと思いますので省きますが、医療専門官並びに国保の技術吏員といいますか、こういうもののほかに給付専門官、これに与えております権限、仕事の内容、これをちょっとお願いしたいと思います。
  188. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 医療専門官というのは都道府県に置かれております。  それから、国民健康保険関係につきましては、同じような職務に携わる者が技術吏員として市町村に置かれているわけでありますが、この職務は医者としての専門的な立場から、社会保険医療の適正な運営をはかるために置かれているのでありまして、具体的な職務としましては、保険医療機関等に対して診療報酬等についての指導、それから不正不当の請求に対しての監査、それから基準看護、基準給食、基準寝具、そういったものの調査などを行なっておるわけであります。  それから、給付専門官というのは、政府管掌の健康保険の保険者としての業務を行なうために、給付に関するいろいろの調査とか決定とかいうことに関連する業務を行なっておるのでありまして、これは社会保険事務所に置かれているものであります。
  189. 原茂

    ○原(茂)分科員 監査権を持っているのは、そうすると医療専門官だけですか。それから、全国にある人数を言ってください。
  190. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 監査権限を持っておりますのは、法律によりまして厚生大臣と都道府県知事でありまして、その実際の業務に携わる者がこういった医療専門官、それから国保の場合には技術吏員でございます。数は、医療専門官のほうは現在定員が百五名で、現員は七十八名、それから国民健康保険のほうの技術吏員は十九名になっております。
  191. 原茂

    ○原(茂)分科員 いま、厚生大臣なり知事が持っている監査権といいますか、監査する仕事を医療専門官、それから国保技術吏員に委託する、こういうお話だったのですが、要するに、よくいわれる抜き打ち監査みたいな監査を随時行なう権限がこの医療専門官あるいは国保技術吏員にあるかどうか。それから、給付専門官というものが担当する職務について、やはり監査を抜き打ちに行なうことができなければいけないと思うのですが、それができますかどうですか。
  192. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 随時というわけではありませんが、必要がある場合には立ち入り検査を行ないます。
  193. 原茂

    ○原(茂)分科員 給付専門官も……。
  194. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 給付専門官はそういうものはありません。医療専門官であります。
  195. 原茂

    ○原(茂)分科員 要するに、給付専門官にはそれができない。きょう伺いたい第一点はそこにあるのです。たとえば現在不正請求なりいろいろ行なわれている。それだけでも千何百億、おそらく九百億ですか、たいへんな金額にのぼるということが新聞に出ておりますが、そういう不正な請求をする医師は、全国の多い医院なり医療専門機関の中のわずかなお医者さんであることはもう間違いないと思う。大部分の先生は公正におやりになっているに違いない。もちろん患者は病気をなおしてもらうのに医者を信用しなければだめですから、そういう意味では、いまのようにたいへん不正が横行しているというようなことが、マスコミを通じて広がってきますと、精神的にも患者のほうは何となく不安を感じて、またもうけられてしまうのではないか、また何か変なことをされるのではないか、そう思っていたのでは病気はなかなかによくならない。そういう意味では、何といっても数少ない不正というものを、この際根本的になくさせるということが必要だろうと思うのでお伺いをしているのです。  いろいろな例がここにあるのです。たとえば一日しか行かないのに半年間通院したように請求をされて、しかも支払いがされていてみたり、あるいは、一体これはどんな診療の内容で、医者の薬はどんなものかというようなことや、支払い代金の内訳を患者が聞くと、とたんに医者がふきげんになって、あともうとにかくおっかないという実例がある。とにかくなおしてもらわなければいけないという弱みがありますから、なかなか、冗談じゃないということを言えないらしいのであります。そういう件数の多いのは、何か国立病院に準ずるような大きな病院はわりあいにいいのだそうですが、そうでないところへいくと、もうたいへんな例がここにあるのですね。これは一々申し上げなくてもお調べになってわかっていると思うのですが、私端的に言って、この種の不正な請求をして金を取った医師に対しては、医療専門官が今日七十八名いますが、いままでどんな処分をしたのか、その処分の内容を聞きたいわけです。
  196. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 最新のまとまっております四十四年度の監査の結果について申し上げますと、監査の件数は九十二件でございまして、それに対する処分は、指定医療機関の指定を取り消したものが七十一件、戒告処分にしたものが十二件、注意処分をしたものが一件。それから、監査の結果不正または不当な請求をして受け取った金につきましては、これは全部返還さしておりますが、その金額が約一億三千九百万ほどになっております。
  197. 原茂

    ○原(茂)分科員 大臣、いまお聞きになったような処分の内容なんですが、私は、不正に金を取ったとき返せばいいというものじゃないと思うのですね。こまかいことをいろいろ申し上げませんが、私は、処分された人の中には、詐欺罪が構成されていいのじゃないか、適用されていいのじゃないか。そのくらいな厳格な処分をしない限り、この種のものはあとを断たないのじゃないかと思うのです。いま私が一つだけ例を言ったような、そういうことを意識してやるのですから詐欺罪に該当すると私は思うのですが、そういう処分をされた医者はいない。法務省から来ておりますか。――私が言わなくたっておそらく皆さんはよく知っているでしょう。どんな不正を働いたかよくわかっているでしょう。その不正は詐欺罪に該当するものがほとんどだ。私の持っている例などはそう思われる。そういうものがそういう処分をされたあとがない。しかも不当に詐取した金で返されたものが一億三千万あった。これは、返っているからいいみたいな状態で放置するところに問題があるのじゃないかと思うのです。まだ法務省来ていないそうですから、来たら聞きますが、医療専門官というのは、もちろん医療技術上の問題の監査をするためにお医者さまであることが望ましい。十九名いるという国保の技術吏員にしても、確かにこれはお医者さまのほうがいいという内容があります。しかし、医者でなくても、給付専門官がやっているような仕事を通じてできる。そのほうこそ詐欺罪に値するようないわゆる不正な請求をするような事件が一番多いと思う。ですから給付専門官に監査の権限を与え、随時立ち入りを行なうということをさせて、この給付専門官の数を数多くふやす。医者だからふえない、数が少ない、全国に八十九名くらいいて、それから国保に技術吏員が十九名いたからといって、この何万とある医療機関が監査できるはずがないのです。当然この給付専門官という事務を担当できる人でけっこうですから、これが徹底的に監査をすれば、俗にいう不正というものは過半数が摘発できる。私はこれを徹底的にやる必要があると思うので、給付専門官に医療専門官と同じ監査権を与えるようにすべきだと思うのですが、大臣どうですか。大臣答えてください。
  198. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 ちょっと事実関係ですので……。給付専門官はいま百六十九名おりますが、これは先ほど申し上げましたとおり、保険者としての業務、給付に関する業務を行なっておる者でございますので、監督機関としての業務を行なっているわけではございませんので、この者に監査監督業務を行なわせるというわけにはいかないわけでございます。この医療機関等に対する指導監査に携わる職員としましては、お医者さんである医療専門官は先ほど申し上げましたが、それ以外に事務職員でもってこの指導監査に当たっている職員がございます。これは現在百六十五名ほどでございます。その百六十五名の事務職員と医療専門官、これが監査に当たっているわけでございます。
  199. 原茂

    ○原(茂)分科員 被保険者の立場でやる給付専門官の場合でも、とにかく自分自身が伝票に目を通しているわけですから、逆にぼくが言うのは、その伝票に目を通しているときにおかしいと思ったら、監査する権限を与えていいのじゃないか。この事務職員はいま言った医療専門官に付随しているといってはおかしいが、この人が監査権を持っていても、医療専門官と同じように歩調を合わせている限り効果はあまり期待できない。やはり大きな効果を期待するためには、ぼくは給付専門官にこそ逆に不審があったら随時監査ができる――これが一番伝票上の調査ができるのですから、伝票一つ持って三カ月前、半年前の患者の家に出かけていって、おまえさん何回ほんとうに医者に行ったんだ、薬は幾日分もらったかということを実際に調べてくる。その調べる権限を与えるということをしない限り、私はこの種の不正というのは除けないのじゃないかという考え方です。いままで与えてきた職務のたてまえからいってだめだというなら、別個につくってもいい。要するに医者でなければ、医療専門官でなければとにかく監査ができない、数が少ないからほとんど手が回りません、物理的に不可能です、というままで今日に至っておる。それなら医者だけを当てにしないで、事務職員でもできる伝票上の給付の不正に関しての調査、しかもその権限を持った者が仕事をするということに抜本的に改正しない限り、いまの不正をどうしてあばくか。前進していかないと私は思う。大臣、どうですか。
  200. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 給付専門官は政府管掌の健康保険の保険者の業務を行なうために設置されているものですが、似たような者は健康保険組合にもいるわけでして、こういう者が給付事務に携わっている間に何かおかしいものがあるというような場合には、その事実を県の保険課のほうに連絡して、そして保険課のほうで指導監査に当たる一つ資料にするということはあり得ますけれども、やはり保険者としての業務とそれから監督機関としての業務というのははっきり分けておきませんとぐあいが悪いのではないかと思われるわけであります。
  201. 原茂

    ○原(茂)分科員 まあ行き違っているようだけれども、分けたほうがいいのはきまっているし、いま分かれているわけでしょう。その分かれている被保険者の側に立って業務をしている人に、おかしいと思ったときに直接調査をする権限を与えろというのです。要するに、それが摘発するとかなんとかいうのじゃない。調査権を与えろ、監査権を与えなさい。事実こういう不正があったというのを、伝票の上だけでおかしいと思ったのじゃなくて、事実出かけていって医者も調べる、患者も当たって調べるということを直接やってその結果を、いま言ったとおりどうしても手続上報告しなければいけないなら報告させてもいい。いまのように伝票だけ見ていて、受け取り側で、患者の側で整理をしているだけで終わらしておかないで、そっちの側に、おかしいじゃないかということを感じたときの調査権なり監査権なりを与えたほうがたいへん徹底的にいくんではないかということを言ったわけです。もしそれがどうしても不可能だというのなら医者だけにたよるんでなくて、医者以外の事務職員でいいから監査を行なうものを別途につくる必要があるんじゃないか。現在のような医療専門官なり八十九名と国保技術員のような十九名だけの数で全国の不正を監査するなどということは不可能だ。いつか総括質問でも厚生大臣がそういう答弁をされていて、そうだなと私は思った。物理的に不可能だ、こんな数では。これをふやすのに医者だから困るんならかえって医者でなくてもいいんじゃないかと私は言うのです。それをふやしたらいい。そういう事務職員をふやしてそれに監査権を与えるということができないかというのですが、これはどうですか。
  202. 内田常雄

    内田国務大臣 原さんのおっしゃること、私は一つの考え方だと思います。何しろ八十人や百人で全国六万の保険医療機関の監査ができようとはとうてい思いませんが、問題は、だからといって他の職員を監査権を与えてそっちに向けるがいいかどうかということの前にもう一つあるので、一体社会保険の診療報酬というものが不正に請求されているという大前提に立って大いに監査を厳重にするという方向でいくというのか、あるいは医師すなわち医療担当機関というものはそういう不正は原則としてないんだ、したがってこれを犯罪人扱いにして監査をするのではなしに、事前に間違いがないように指導、個人的指導あるいは集団的指導、ことに治療指針とか診療基準とかいうようなものがございますようでございまして、どういう病気に対してはどういう治療方針をとれとかどういう薬をとれとか、新宿へ行くのに板橋を回って行っちゃいかぬということらしゅうございます。  そこで私は、その前提がどうであるかということが一番大きな問題である。そこで実際は、この十年間、人が足りないということもございましょうけれども、監査については医療担当機関は不正を前提とするものだから監査を厳重にするんだという前提には立たない方向でやってまいってきたと私は認めざるを得ません。その経緯については原さん御承知のとおりだと思いますが、最近の世論また国会における論議の動向がございますので、人の差し繰りの問題はさることといたしまして、だいぶ様子が違ってまいってきていることと思います。
  203. 原茂

    ○原(茂)分科員 そういうことを論議をしようと思っているんじゃないのですが、いまおっしゃったようなたてまえも私子供相手なら、小・中学校の指導程度の、なおるのをまっていこう、本人の良心にまとう、そしてまわりから道徳的にひとつ姿勢を正してもらおう、こういう考えもいいですが、ここまで問題になってくると、やはりおとななんだから、これだけの不正が現に出ている以上は、この不正というものはごくわずかな医師が行なった、それで善良な多数の医師が迷惑している現状は一掃してやるというためには逆のほうがいいんじゃないかという立場をいま私はとっている、これは多くの医者のためにですよ。勢そこで、いまのことはそういう私の意味なんですから検討をしてもらうとしまして、二つ目には、お医者さんに領収書を出すことを義務づけているのでしょうか。医者が患者に対して領収書を出すことを義務づけているかどうか、それから領収書の項目の内容が何かきまっているのか、これをひとつ……。
  204. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 保険医療機関について領収書の義務づけということはやっておりません。これは一般の民法上の契約義務として請求があれば出さなければならないというしきたりでもって運営しているわけであります。
  205. 原茂

    ○原(茂)分科員 これは大臣にお伺いするのですが、金を払ったときに請求があれば領収書を出すなんという概念はおかしいんですよ。原則はとにかく金を払ったら、受け取ったら、領収書を出すのが原則だと思うのです。医は仁術だというなら別ですけれども、医者だって経営上の業務としてこれを扱っている限り、われわれが支払いをしたら領収書を出すのが原則じゃないでしょうかね。請求すると医者はいやな顔をするんですよ。黙っていても領収書を出すのが原則だぐらいの指導はできませんか。そうしてその領収書に薬代、診療代、何だという五つか六つの大きな項目ぐらいは書かせて、それにやはり内訳を書いた領収書を出すことを強く私は指導すべきだと思う。領収書を出すだけでも二つ目に相当効果があるんじゃないか。どうでしょうか。
  206. 内田常雄

    内田国務大臣 非常にお答えがむずかしいのでございますが、これまではなかなかそれはやり得ない。いまの国民皆保険のもとにおける医師の診療、ことに診療報酬の請求というものは点数制の編成になっておりまして、お医者さんは御承知のとおり月末になりますと診療報酬の請求書をつくるだけで何日かを費やすのだ、こう承っておりますので、なかなかその領収書の発給を義務づけるというようなことができない。その他の面におきましてもむずかしい点がありまして今日まではやっていなかったが、今日この問題がいろいろの方面から取り上げられてきているという状況でございます。
  207. 原茂

    ○原(茂)分科員 状況だから今度は強い指導をしますか、領収書を出すように。
  208. 内田常雄

    内田国務大臣 その状況を承っておる最中でございます。
  209. 原茂

    ○原(茂)分科員 そういうことだから実際にほんとうにこの不正をなくして医療制度の抜本的な改正をしようということ、案が出なくても具体的にできるところから手をつけるという熱意が欠けているように思えてならない。やるべきだと思うんですよ。  いま法務省来ているそうですが、私いま不正の一つの例を言ったのですが、前田課長ですか、ちょっとお伺いしたいのですが、一日しか治療を受けなかった、それを半年も治療をしたと同じ状態で請求書を作成して医者が金を取った。これは詐欺じゃないですか。
  210. 前田宏

    ○前田説明員 先ほどの御質問を承っておりませんでしたのであるいは取り違えたかもしれませんけれども、要するに実際に診療していないのにそれを診療したようなふうに書類等をつくりまして、実際に請求できないものを請求したということになりますと刑法上の詐欺罪の成立ということが考えられます。
  211. 原茂

    ○原(茂)分科員 これは大臣、先ほど聞いたように、処罰、処分の内容を聞きますと詐欺罪が一つもないのですよ。詐欺罪を構成したものはない。私、厚生省そのものが、この種の不正があったら摘発をしましてそれで詐欺罪で告発していいんじゃないですか。そのくらいにしなければこの不正というものはなくならないと思う。私やっていいと思う。悪い人はわずかしかいないのですから、善良な医者まで迷惑しているのですから、私は親戚に非常に医者が多いのですがね。ですからかえって思い切ってやるべきだ。厚生省が、大臣が告発すればいい。その詐欺罪に相当するものは一ぱいある。もし例がないというのなら幾らでも私は持っている。だからその決意がありますか。やるべきだと思う。
  212. 内田常雄

    内田国務大臣 何年になりますか知りませんけれども、私が厚生大臣に就任いたします前までに厚生大臣みずからあるいはその部下の職員をして告発せしめたという話を私もほとんど聞いておりませんが、私はいま原さんが述べられておるようなことが世の議論となってまいってきております以上、今後のものについては厚生大臣よほど腹を固めていいんじゃないかというような私は気持ちになっております。  なお、これまでのそういう不正受給あるいは保険医療機関の取り消し等を行なった場合におきまして、これは詐欺罪でございましょうか、あるいはほかの罪名でございましょうか、刑事事件として取り上げられたものは絶無ではないそうでございます。もちろんこれは、指定医療機関の取り消しとかあるいは不正の摘発をいたしました結果は、これは厚生省と申しますか、厚生省が機関委任をいたしております都道府県知事のもとにおける保険課がやることでございますから、公表をいたしますので、その公表は、警察にも検察庁にもみなわかるはずでございますので、私は、自分責任を避けるわけではありませんけれども、各方面がそういう世論にささえられて、その気になれば私はできることではなかろうかと思います。
  213. 原茂

    ○原(茂)分科員 世論よりとにかく国務大臣とされて、明瞭にいま刑事課長が言っているように、そういうことがあれば詐欺罪に該当すると明言されている事実が不正請求にたくさんあることを知っているでしょう。局長だって御存じないですか、不正請求のあることを。たくさんの例がある。そういうものを、現にあるのに、回りの世論が醸成されてきたらそのときにいわゆる告発するようなことがあるかもしれないという大臣答弁は、少し熱意がないように思うのです。私は、もう大臣、思い切って、その意味では、内田さんという人、たいへん腹のすわったいい人だなと思っていつもあそこで見ているのですよ。だけれども、ちょっといま聞いてみますと、案外小さいなという感じですね。もっとやるべきだと思います。
  214. 内田常雄

    内田国務大臣 私と原先生がどっちが国会議員として古くから出ておるか存じませんが、では申し上げますと、いまから十年前に、これは監査を励行したということで、厚生省が袋だたきになってしまって、手も足も出なくなって、全くいじけてしまったというのがこの十年でございます。私は、いまあなたに激励をされたようなそういうものでもございますので、あなたにいまここで激励をされたり、御注文をされたりしておりますことを深く心にとどめておる、こういうことでございまして、私が、十年前あるいは八年前の事犯をここで取り上げてということはいたすよりも、こういう議論が国会で堂々と行なわれたり、また、厚生大臣がその姿勢を今後に向かって示すということが大きな意義があるのだということで、よけいは申しませんで、あなたに不満足を与えましたようなことを答弁いたしておる、こういうようなわけでございます。
  215. 原茂

    ○原(茂)分科員 どうもありがとうございました。数多い善良な医者がかえって萎縮するような現状をほうっておいてはいけない。患者も、医者を全面的に信頼できなければ、病気も早くなおらないという立場から言うと、緊急にやるべきだと思いますから、大臣、ひとつ在任中に思い切って前例を開いていただくようにお願いします。どうもありがとうございました。
  216. 登坂重次郎

    登坂主査 次に、中野明君に願います。
  217. 中野明

    中野(明)分科員 健康保険問題が再びやかましくなってきておりますが、それはそれとしまして、私、厚生省大臣の所管として、国民の健康と生命を守る、そういう立場から、全国的に僻地における医師の不足、この実情について二、三ただしてみたいと思います。  まず最初に、厚生省では定期的にお調べになっていると思うのですが、全国的に、俗に無医地区とこのようにいわれている実態、それの一番最近のはどの程度ございましょうか。
  218. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 いわゆる無医地区につきましての調査は、私どもの現在まとめられておりますのは、四十一年の四月調査でございます。ただし、これにつきましては、ことしの一月現在でさらに新しい角度で調査中でございますので、間もなくその結果はわかると思います。したがって、四十一年のときの調査で申し上げますと、いわゆる無医地区と私どもが申しておりますところ、すなわち、半径四キロ以内に人間が五十人以上住んでいるところ、しかし、その中に医療機関がないというようなことを一つの定義にしまして数えてみますと、全国で二千九百二十という地区が出ております。もちろんその中で、さらにきわめて交通事情が悪い状況、あるいは、何らか将来において医療機関の存在等が考えられるようなものと、いろいろ程度がございますので、それらによって区分をいたしますとともに、また、人口の規模によっても対策のあり方が違ってまいりますので、その両者を人口区分と組み合わせた上で、いまの二千九百二十をさらに分解をして、それぞれの対策を立てていくという資料にいたしております。
  219. 中野明

    中野(明)分科員 いまのお話では四十一年、それから次がことしの一月とおっしゃっているわけですから、大体五年に一回。どうでしょうか、この傾向としまして、こういう地域がふえてきているのか、それともだんだんそういう地域が解消されて減少してきているか、そこの動き、推移について……。
  220. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 過去の数字等具体的にはいまちょっと用意してございませんが、たとえば、ただいま申し上げましたような定義でとっている地区数は、多少ふえてきているという傾向にあるようでございます。
  221. 中野明

    中野(明)分科員 大臣、どうでしょう、この五年に一回の調査、これはほとんど厚生省じゃなしに、地方の自治体に尋ねられれば、これは自治体としては一番大きな悩みになっているわけですから、すぐはね返ってくるようなことで、そんなに手数のかかることじゃないと思うのです。五年に一回の調査というのでは、これは適切な手は打たれないんじゃないかという気がいたします。まずその点もっと短縮して――いまの局長答弁じゃ年々ふえてきている。ふえてきているような実情ですから、もっと短縮して実態を調べて、そしてそれに対して手を打っていくというようなことが私は大事じゃないかと思うのですが、この点どうでしょう。
  222. 内田常雄

    内田国務大臣 私は五年目を待つ必要はないと思います。ことに、僻地の状態が五年の間に態様が違ってきておる。人が住み方が少ない地域がふえているとかどうとかということはそれといたしましても、交通状況でありますとか、あるいは、私どもが、十分ではございませんけれども、所在の地方都市における公立病院等が僻地をかかえて、そこが無医地区解消の努力をいたしておりますので、そういう効果がどの程度まであらわれているかということを知るためにも、これは五年を待たないほうがいいと思います。
  223. 中野明

    中野(明)分科員 これは五年というのは、何か規則できまっているんだろうと思うのですが、もっと早くやるということを正式に指示される決意はおありかどうか。
  224. 内田常雄

    内田国務大臣 調査項目等が、いわば国勢調査式なたくさんの項目に及びますとなかなかできませんが、私どもの当面の行政目的を達する項目に整理縮小いたしまして、そして五年を待たないで調査するように私が指示いたしたいと思います。
  225. 中野明

    中野(明)分科員 これは人口の過疎とか過密ということが非常に最近騒がれ出しましたが、それとも関連はしておりますけれども、僻地におけるところの医師の不足ということは従前から、過疎、過密が騒がれる以前からの問題でして、これは大臣もよく御承知のように、地方の町村長というものはもう、これは頭痛の種であります。とにかく医者を連れてくれば町村長としてはまず合格である、ここまで深刻に悩んでおるし、また、考えております。そういう実態で、どう言ったらよろしいですか、この僻地で病気になったときには、これはもうたいへんな苦労をしておりますし、現実、病人が出ると、まず、医者のおるところまで病人を連れていかなければならぬ。それに、車がないので、医者のおるところには大体タクシーの会社もある。そこへ電話をかけて、タクシーをわざわざ呼んで、そして行くわけです。その途中で容体が悪くなってなくなっていったというような例は、これはもう過疎地域、郡部に行きますと珍しくない。特にたまたま電話をしたときにタクシーがおればよろしいけれども、おらない場合は、タクシーが帰って来るまで待っていなければならぬ、こういう実情です。そういうきびしい現地の実情を非常に悩んで、御承知のとおり、昨年、自治省が一日自治省をやりましたときに、高知県で秋田自治大臣がこの過疎地域の僻地の医師不足の解決の一案として高専の問題、これを打ち上げられたわけです。そのことについて、その当時から非常な意見が出ました。厚生省側とか文部省からも、やれ賛成だ、反対だという意見が出たわけですが、自治大臣がそこまで打ち出さなければならない深刻な状態、これは厚生大臣もよく御存じだと思います。ほんとうは私はそういうことはもうまっ先に厚生大臣がやってもらいたかった。私はそうまで思いました。あのとき非常に勇気のある発言だというふうに受け取りまして、この一石を投じられたことによっておそらくこの問題が大きく政治的にも発展していくであろうことを期待しておりましたが、その秋田構想に対する大臣の所見と、その後の推移を御説明ただきたい。
  226. 内田常雄

    内田国務大臣 関係局長からあとから補足させるかもしれませんが、私どもの考え方といたしましては、秋田構想そのものを受け入れることは適当でない。なぜならば、中学校の上に六年の医師養成課程をのせるということは、これは高等学校の上に三年のせるとこういうことになりますので、一般の大学よりもまだ就業年限が短くなりまして、ことばは適切ではないかもしれませんが、看護婦養成と同じ医師を養成するということになるということが一つと、もう一つは、直ちに始めたといたしましても、やはりそういう高専でもそこを卒業するには六年かかります。そのあとまた臨床研修等が上にのる、こういうわけでございますので、どうせやるならば中学校の上に六年のせるよりも、高等学校卒業の上に六年のせて同じじゃないか。いまは中学卒業生は余っている、高等学校卒業生は余っていないというんなら別でございますが、むしろ中学卒業生のほうが少ない状況でございますので、したがって同じ六年ならやはり正規の医者の課程を踏ませる方向で自治大臣の僻地における医師の供給の面を私どもも協力をいたしたいという気持ちでございました。そのためには一番主要になります付属病院は、厚生省が持っております国立病院のうちのどれでも、あるいは厚生省がいろいろ御協力を申し上げております赤十字病院なりあるいはまた公立病院、共済会等の病院のどれでも教育病院として地方に提供していいではないか、こういうような考えを持ちまして、自治大臣にも私どもからそのことをお話し合いをいたしました結果、もっともだ、こういうことに自治省のほうもなりまして、また大蔵省もおられるわけでありますが、その方向で地方にやはり正規の医科大学をつくらせる準備費をつけよう、こういうことになりましたので、自治省を中心とし、私どもと文部省が協力いたしまして僻地に足らない、不足する医師の養成をねらいとした地方立の、ということは必ずしも公立じゃないかもしれません。地方立の医科大学をつくる準備、調査を自治省がいたしておる、こういう段階でございます。
  227. 中野明

    中野(明)分科員 いま大臣答弁になっているわけですが、私、先ほどもちょっと申しましたように、確かに自治大臣の構想というものは不備なものがあると思いますけれども、自治大臣をしてそう言わしめたところ辺を厚生大臣としては真剣にお考えいただいて、そして何としても、形はどうあれ僻地の人たちの生命を守るためにはやはり医療機関というものがなければどうすることもできない現状でありますので、いま少し、担当の方からでけっこうでございますが、秋田構想から発展をいたしましたいまの地方立の大学の構想ですから、それについて事情を説明していただきたい。
  228. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 私もただいま大臣お答えになりましたような線でこの問題についていわば準備委員会のメンバーの一人に加えていただいております。そういう立場から私の知っている範囲お答え申し上げます。  いままでの経過は大臣からお話しのとおりでございますが、いよいよこれを具体化しようということでございまして、知事会議自体がいわば発起人みたいな形になりました。それで全体の知事会議をまとめる第二段としては、これが具体的にいろいろ構想をつくるにいたしましても、たとえばどこへつくるかという問題からいたしまして、かなり専門的な考慮を要するのではないか、こういうことでその準備委員会というものを発足をさせました。その中へ私どもも入りまして今後具体的ないろいろなあり方というものを詰めていこう。それも相当早急に詰めませんと自治省でも助成いたしております来年の四月から新しい学生を入れるということがきわめて困難になりますので、そういったことをいろいろと逆算をいたしまして、強くその具体的な構想についての作業を進める、こういう段階になっております。
  229. 中野明

    中野(明)分科員 これは一部文部省の部内に反対があるというようなことを新聞で報ぜられたことがあるのですが、その辺どうでしょう。
  230. 安養寺重夫

    ○安養寺説明員 文部省といたしましては高専構想がございましたときには、つづめて申しますと厚生大臣からいまお話がありましたような立場にあったわけでございます。その後特殊法人をつくって医科大学というようなものをつくるというようなお話に変わっております。これにつきましては文部省としてできるだけいい大学をつくることに御協力を申し上げよう、こういう態度になっておるわけであります。
  231. 中野明

    中野(明)分科員 その辺は三省でがっちり話ができている、これでよろしいですね。
  232. 安養寺重夫

    ○安養寺説明員 文部省の大学をつくることについての意見につきましては、御説のとおりでございます。
  233. 中野明

    中野(明)分科員 そこでこれは自治省の所管になりますか、文部省の所管になりますか、いまこの構想よりまして三省の大臣が話し合いをされて新しい地方立の学校というのですが、そういう形で医科大学を設立されるというのですが、具体的に全国で何カ所考えておられるのか、それはどこの所管になりますか。
  234. 神崎治一郎

    ○神崎説明員 ただいま御指摘になりました点でございますが、この辺地医師を養成する大学は都道府県が設立をする学校法人によりまして、医科大学というものを設置するということでございます。当面一校建設するということで措置をいたしておるわけでございます。
  235. 中野明

    中野(明)分科員 将来何カ所ぐらいを必要と考えておられるのか、一カ所ではどうすることもできないだろうと思うのですが、その定員と将来全体的に何カ所にするかということ……。
  236. 神崎治一郎

    ○神崎説明員 ただいま準備をいたしております医科大学の入学定員を百名と予定いたしております。それから将来何校程度かという点でございますが、一応入学定員を百名といたしますと一県あたりで考えてみますと大体二名ないし三名というような状況になりますので、私ども気持ちといたしましては全国で二校程度つくれたらいかがなものであろうか、こういうことを考えておりますが、確定的なものが現段階ではございませんので御了承いただきたいと思います。
  237. 中野明

    中野(明)分科員 候補地としてはずいぶん候補地がたくさん出ていると思うのですが、私の個人的な考えとしてはこういう僻地の医師を養成する医科大学、こういうことになりますと、やはり僻地につくってあげたほうが地域の人たちも大きな安心にもなりますし、支えにもなるし、そういう点の基本的な考え方はどうでしょうか。
  238. 神崎治一郎

    ○神崎説明員 先ほど厚生省の医務局長からお答えがありましたように、知事会の中で発起人の知事さん及び医務局長等も御参加いただいております開設準備委員会で検討願うことになるわけでございますけれども、場所の選定につきましては、医科大学のない県でありますとか、あるいは付属病院との関係もございますので、患者需要のこと、あるいは全日制でありますとかあるいはまた教授陣の確保の問題を考え、また加えまして付属病院の建設を完了するまでの間におきます代替病院の関係でありますとか、あるいはまた大学でございますので研究等の環境整備というようなこと等をも総合的に勘案をして場所を決定してまいりたい、こういう考え方でございますが、最終的には発起人会で決定をされる、こういう運びに相なっております。
  239. 中野明

    中野(明)分科員 厚生省局長、その委員に入っておられると思うのですが、候補地はいま全国でどれくらい出ておりますか。
  240. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 まだ私のところに委員の一人として何カ所だという具体的なものが入っておるわけではございませんが、たしか十カ所をややこえる程度にあるように聞いております。
  241. 中野明

    中野(明)分科員 それで、いまの自治省のお話では百名定員で二カ所くらいで、県当たりにすれば二人か三人ということになるのですが、二校くらいというお考えですけれども、その程度ではたしてこの問題が解決できるとは私思われぬのです。厚生大臣、医師不足を解決する一つの方法としていまのことも出てまいっておるのですが、ほかにこの問題について厚生大臣として、非常に大きな問題になってきておりますので、何か対策をお考えになっているかどうか。
  242. 内田常雄

    内田国務大臣 医療機関を幾つつくるかという問題がいま論議をせられておるようでございますが、もちろん今後――地方立と申しましたのは、私が、公立ではない学校法人を母体とする、形の上では私立というようなかっこうになるというようなことで地方立というようなことばを使ったわけでございますが、それが二つでありましても、私は二つで今後の医師の供給が足りるとは決して思っておりません。現在たしか医師の入学定員が全国で四千三百人くらいでございますが、厚生省の医務局方面の試算によりますと、昭和六十年くらいまでには六千人くらいの学生を入れる程度の医学部の設置あるいは定員の増加というようなものが必要ではなかろうかという一つの見方もあるようでございますので、いまの地方立二つにこだわらず、定員の増加あるいは学部の新設等についても研究を進めなければならないかと思います。  僻地医療の問題につきましては、もう毎国会で御論議をいただいておりますので、重ねて申し上げることは時間の関係上差し控えますが、患者輸送車とかあるいは巡回診療車等の助成はもちろんのこと、国立病院などでもできる限り公務員である医師をさいて僻地に駐在をさせるようなことをいたしたり、あるいはまた国立病院に限らず中間都市に親元病院制度というようなものを設けまして、そこから僻地にその巡回の医者をお回しするというようなこともいたしますほか、新たにいろんな通信網なども総動員ができますように、僻地の病気になられておる患者さんのみならず、住民の健康管理カード、つまり病気にまだなっていない方のカルテというようなものもつくりまして、その方が病気になった場合には、その背後の状況というものが電話等ですぐ親元病院その他の医療機関に連絡がとれるようにいたしますこと、さらにまた、保健婦をできる限り僻地に駐在させるように私どもが助成をいたしたり、またその保健婦さんが、自転車ではなくて、この節のことでございますし、僻地といえども交通、道路等はよくなりましたので、自動車の運転ができますように保健婦さん用の自動車の購入費の助成というようなこともいたすことにいたしまして、あらゆる手を用いまして僻地における医療の需要というものに対応していこう、こういう姿勢でおる次第でございます。
  243. 中野明

    中野(明)分科員 いま大臣がお述べになったことも一つの方法なんですが、文部省も来ておるようですのでもう一度尋ねますが、文部省としては、これは前々から議論になっておりますが、既設の国立大学に医学部を新しく設置する、こういうことについてはどの程度まで積極的に取り組んでおられるのか、ことし何か所か設置する構想はあるのかどうか。
  244. 安養寺重夫

    ○安養寺説明員 医師の必要数というのはいま厚生大臣からお話がございましたような前提、根拠に立って議論される筋のものでございまして、文部省としましては、最近主として僻地の医師不足等に関連して医師の養成数を増加せよというような声が強くなっているわけでございますので、そういう事態にかんがみまして、昨年秋田大学に医学部を新設いたしたわけでございますが、当面、各地方の要請もございますので、国立大学の医学部のないところへ学部をつくるようなことを総合的に全体的に検討してはどうかということになりまして、実は現在御審議ただいております明年度政府予算案にそういった関係調査費を計上させていただいておるわけでございます。おいおいそういうようなことを研究してまいりたいと思っております。  なお、四十六年度、国立大学、現在ございます二校にそれぞれ入学定員の増をやる。四十名という些少な数字ではございますが、そういう計画もございますし、県立大学一校でやはり二十名の増員計画が現在ございます。なお、私立の大学につきましても、すでに五校、文部大臣にまで明年度の四月からの入学定員増の申請がございまして、総計百人、設備その他の条件が整っておれば認可してもいいではないかという話も進めてまいっておりますので、明年度のいろいろ予算その他の措置が講ぜられますれば、現在のところ二百四十名程度の入学定員の増というものが見込まれるというように努力いたしております。
  245. 中野明

    中野(明)分科員 私の住んでいる四国に例をとりましても、現在国立大学がたくさんありますけれども、医学部がない。そういうことでわが高知も強い要望がございます。愛姫も同様だろうと思いますが、そういう点についていまのお話で相当積極的に取り組んでおられるということを聞いてある程度私どもも喜んでいるわけですが、先ほどから議論になっておりますように、過疎地域の医師の不足を解決する点については、当面の緊急課題として各担当のそれぞれの省で鋭意努力をしていただかなければ、ますます深刻の度合いを加えてまいっております。先ほど厚生省局長からお話がありましたように年々無医地区がふえてきている、この実情は事実だろうと思います。その辺でせっかくの努力を強く私要望したいわけであります。  いまの実情できょう私申し上げたかったことは、昨年の秋田構想から端を発してやっとここまで来たわけですが、本来厚生省がそういうことを音頭をとって、そして担当の責任から考えても一々推進役をしてもらわなければ、この問題は前に進まぬのじゃないか、そういうふうに私たち考えておったやさきでありましたので、要望を含めて質問をしたわけですが、今後ともこの過疎地域の医師の不足の問題については厚生省が一番真剣に考えていただいて善処していただきたい。このことを要望したいわけです。  それで、いまの審議会にも、御承知のように四国のような離れ島で全然そういうものがないというようなところへやはり重点的にこの学校の建設、こういうことも考えていただくことがそのまま、それは何年か先のことになるでしょうけれども、地域の住民を安心させる。大都会にはちゃんとりっぱな病院もあるし、また学校もある。全然そういうところのないところへそういうものを持ってくる。そのことがやはり政治の姿勢として大事じゃないか、そのように私考えているわけです。厚生大臣も重大な立場に立っておられますのでその点を強く認識していただいて、最後に私のいま申し上げたことを含めて御答弁をいただいて終わります。
  246. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 御指摘の点、私どももかねがね全く同じ方向でございます。特に新しく学部をつくる、あるいは医学部をつくるという場合に、当然その全国的な分布というものを十分考慮してやるということが、単に学生を卒業させるということだけではなく、そういう機関があることによって常時の医療レベルそのものも上がるということもあわせ考えるべきではないかということをかねがね主張いたしておりますので、御趣旨の線に沿って私たちも努力いたしたいと考えます。
  247. 中野明

    中野(明)分科員 いまの問題、大臣のほうからも最終的に一言……。
  248. 内田常雄

    内田国務大臣 先ほど文部当局からお話がありましたように教授陣等の整備の問題もございましょうけれども、中野さんのおっしゃっているようなこと、まことに私も同感でございますので、十分そのことは頭にとめてまいりたいと思います。
  249. 登坂重次郎

    登坂主査 次に、後藤俊男君。
  250. 後藤俊男

    後藤分科員 私は同和対策事業特別措置法に基づく厚生関係予算なりあるいは具体的問題につきまして御質問申し上げたいと思うわけです。  四十四年の七月十日に措置法が施行されまして四十六年度は三年目でございます。特に同和地区に対する解放問題につきましては、厚生省が環境その他におきましても非常に関係の深い問題が多いと思うわけでございます。それぞれの関係の団体のほうからも要求は出ておると思うわけですが、四十六年度につきまして厚生省が今日考えておられる予算につきまして、簡潔でけっこうでございますが、御説明ただきたいと思います。
  251. 加藤威二

    ○加藤政府委員 四十六年度の同和対策関係予算でございますが、同和地区におきまする厚生省施策といたしましては、主として生活環境の改善、隣保事業の充実等でございますが、昭和四十六年度予算を簡単に申し上げますと、同和対策関係費は厚生省関係で四十六年度は四十二億九千万円でございまして、前年度四十五年度の二十九億三千万円に比べますと十三億五千万円の増額でございます。約四八%程度の増ということでございます。このうち重点でございます環境改善施設整備費につきましては、四十六年度におきましては三十九億四千二百万円で、前年度に比べまして十三億一千四百万の増でございます。またそのほか保健相談指導費、これは二千百万円、トラホームの検診治療費四千六百万円等を計上いたしております。また隣保館の運営費につきましては、施設の増に伴うもののほか、職員の給与改善等をあわせまして、四十六年度においては一億四千九百万円を計上いたしまして、前年に比べまして約二千八百万円の増ということでございます。
  252. 後藤俊男

    後藤分科員 そうしますと、これは全般の予算としまして六十三億がちょっと切れるわけです一ね。その中で厚生省関係としてはいま説明がありました四十二億何がしでございますが、その中の大体六割五分ぐらいが厚生省関係になると思うのです。そうなりますと、非常にわずかな、要求の半分にも達しない六十二億の中で厚生省関係として四十三億、残すところは非常にわずかになるわけでございます。  そこで私大臣にちょっとお尋ねしたいわけでございますけれども、先ほど言いましたように、四十四年の七月十日に特別措置法が施行されまして四十六年度は三年目である。四十六年度が終わりますと、残す七カ年の間に全部完成しなければいけない。そうなってまいりますと、ことしの、四十六年度の総ワク六十二億というのはまことに私は少ないんじゃないか。非常に少ない。少なくとも百二、三十億の予算は組むべきではなかったのかというように私としては感ずるわけです。ところが部落解放問題の中心になっておられる自治省ですか、昭和四十二年の実態調査に基づいて予算を組まれた。それで年平均大体六十億ぐらいを想定しておられる。そうなりますと、十カ年間で六百億ですね。これで同和対策事業特別措置法を完全実施、そこへ持っていってしまおう、こういうような考え方に立っておると私は仄聞しておるわけでございます。きのうも実は労働省相手に、労働大臣ともこの問題をいたしましたら、労働大臣としては、ことしは非常に少ない、来年はさらにふやし、再来年はさらにふやしということで、どんどんと毎年毎年増加をしていかなければ、この同和対策の問題も完全にやることができないだろう、こういうふうな話も出ておったわけでございますけれども、ことしの厚生省関係の四十二億の予算とからみ合わせて、当初から十カ年計画でございますから、十カ年の計画でこの事業をりっぱになし遂げようと思えば、三年目の四十六年度ははたしてこの六十二億というものでやれるのかどうか、こういうふうなことも考えなければいけない問題だし、大臣としては当然全般的のこともお考えになっておると思いますので、その点お伺いします。
  253. 内田常雄

    内田国務大臣 御承知のように、前期後期合わせて十カ年計画、私の記憶に間違いがなければなるべく前期五カ年の間に整備をする、こういうような発言があったように思いますので、そういう趣旨に沿うように予算確保もいたしたいということで、これは厚生省だけの問題ではございませんけれども、私どもは微力ながら努力をいたしまして、昨年に対しましてたしか五割程度の、多い少ないは別といたしまして、とにかく五割の増額確保し得た、その総額が同和関係の本年度予算の六割ぐらいを占める、こういうようなことになったわけでございますので、私は決して厚生省関係予算がそれで十分だというわけではございませんけれども、厚生省だけ先がけいたしましても同和関係施設が充実するわけではございませんので、建設省、自治省その他関係方面の諸君ともさらに今後十分協力いたしまして、措置法の目的達成のためにつとめてまいりたいと思います。
  254. 後藤俊男

    後藤分科員 ぜひひとついまの問題は大臣言われた方向で今後御努力をお願いいたしたい。   〔主査退席、松野(幸)主査代理着席〕 先ほど予算説明を簡単に聞いたわけでございますが、この中におきまして隣保館の運営費です。これはいまから十日ほど前に、全国的な隣保館の経営に直接携わっておられる人、あるいはその県の代表者の方が来られまして、現在の隣保館を運営する場合には、少なくとも年間二百万円くらいのお金が要る。ところが国から出ますのは三十五、六万である。この不足分は県からももちろん出しますけれども、地方自治体に大きくしわ寄せをされておる。ぜひひとつこの隣保館の運営経費につきましては国でもっと考えてもらいたい、こういう組織の代表者なり各県の代表が来られまして強い要請があったわけでございます。ことしも予算を見ますと、大体一館当たりの単価六十六万五千円が七十一万九千円に上がっておりますけれども、これは六十六万五千円国から出るわけじゃないと思うのです。この半分が国から出まして半分は県から出る。ところが運営しようと思うと二百万円要る。百四、五十万円というのは地方自治体にしわ寄せになってしまう。これじゃかえって同和対策事業特別措置法そのものはそのことのみはいいかもしれませんけれども、自治体にしわ寄せする分を考えると、これは正しいやり方ではなかろう、こう思うのですけれども、この隣保館の運営経費増額につきまして御努力はいただいたとは思いますが、今後の問題として十二分に御検討の上さらに増額する方向へ努力をしていただきたい、こう思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
  255. 加藤威二

    ○加藤政府委員 隣保館の運営費補助金につきましては先生御指摘のとおりでございまして、四十五年度は基本額で六十六万五千円、そのうち国庫負担は半分でございますから約三十三万円でございます。それが四十六年度には全体で七十一万九千円、約七十二万円、その半額を国が負担する、約三十五万ちょっとでございますが、その残りの半分を市町村が負担する、こういう仕組みになっておるわけでございます。隣保館の運営費につきましては、これも先生御指摘のようにこれでは足りない。実績によりますと一カ所当たり二百万円以上かかるという実情のようでございます。やはり隣保館は同和問題の中心的な役割りを果たす施設でございますから、私も、この隣保館の運営というものがうまくいくということによって、この同和問題の解決にも非常に役立つであろう。したがいましてこの中心的存在の隣保館の運営が円滑に実施されるということがぜひ必要と考えます。そういう意味で先生御指摘の方向に従って来年度以降さらにこの運営費増額について努力をいたしたいと思います。なお、私どもといたしましては、来年度におきまして厚生省独自の立場から隣保館について実態調査を行ないまして、いろいろな面で隣保館の運営に困っているかどうか、その他実態をよく調査いたしまして、そういう調査に基づいてまた大蔵省と折衝してまいりたいというぐあいに考えております。
  256. 後藤俊男

    後藤分科員 そうしますと、ことしは七十一万九千円ですか、努力をしたがこうなった、四月ないし五月ごろですか、全国的に隣保館がたくさんございますもので、その実態を厚生省として、自治省がやる調査ではなしに厚生省みずからが実態調査をやりまして、その実態調査に基づいて隣保館の運営経費については来年度予算を組んでいくんだ、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  257. 加藤威二

    ○加藤政府委員 そのとおりでございます。
  258. 後藤俊男

    後藤分科員 次は保育所の問題でございますけれども、この同和地区における保育所の問題につきましては、昭和四十五年に施行令が改正されましてこの保育所関係も同和対策事業の対象になったと思うのです。ところがこの予算を見ますと、保育所関係につきましては、何ら考えておられないように私は思うわけでございますけれども、これは一体どういうふうな考え方でこの予算が組まれておるものか御説明をいただきたいと思います。
  259. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 保育所の予算につきましては、同和対策の特別の経費として特に独立した予算の立て方はしておりません。これは従来から社会福祉施設施設整備につきましては、社会福祉施設施設整備補助金ということで、全体の各種の施設を一括して補助金の制度を別につくっておりますので、その補助金の一括した全体の中で保育所の予算を毎年毎年しかるべく計上し、それを運用していくということになっております。したがいまして、お尋ねのように同和対策特別措置法によりまして保育所の施設整備につきまして政令が改正されたわけでございますが、これに基づきましていま御指摘のように保育所関係につきましての予算は別に全体の同和対策特別の補助金の中に計上したほうがいいのではないかという御意見もございますが、私どもとしましては従来から同和地区につきましてはほとんど都道府県から申請が上がってきておる要求につきましては、いま申しましたように社会福祉施設整備補助金の中でそれぞれの施設ごとに配分をいたしましてその保育所の施設整備費、たとえば四十五年度でございましたら七億五、六千万かと思いますが、全体の社会福祉施設の五十三億のうち、保育所関係七億五、六千万の予算昭和四十五年度は計上しておりますので、明年度におきましては、全体の社会福祉施設整備補助金というものが御案内のように八十二億と大幅に増額されておりますので、この八十三億の中で各施設別に所要額を配分しましてそうしてその保育所の施設整備費の中で同和対策の予算を、各都道府県から申請の上がってきた分につきまして実情を調査しながら配分をしていきたい、かように考えているわけでございます。
  260. 後藤俊男

    後藤分科員 そうしますと、昭和四十五年に先ほど言われました政令ですか、これを改正して保育所関係につきましても同和対策事業の対象というのか内容というのか、そういうことにしよう、こういう改正が行なわれておるわけですね。そういうことになるのならこの同和対策事業の厚生省関係の中に予算として組むのが正しいやり方ではないかと私は思うわけなんです。いまあなたが言われましたように福祉関係施設で八十三億円ある、その八十億円の中で同和関係の保育所の問題についてはどれだけとれるか知らぬけれども、これから十分相談してできるだけ多くという、さらに質問することになるとそういうことになると思いますが、正しくいえばこの中に予算を組んで進めていく、これが一番正しい方法だと思うのですが、いかがですか。
  261. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 確かにそういうようなお考えもあろうかと思います。ただ、同和地区の当該都道府県から私どものほうに、今年度はこれだけ保育所並びに児童館をぜひつくりたいという要望が、県を通じまして市町村からあがってくるわけでございます。そういうような場合に、私どもとしましては、あらかじめ国の段階でワクをこしらえておくという考え方は先生おっしゃるとおりでございますが、全体の、今年度でございましたら五十三億の社会福祉施設施設整備補助金の中で、やはり各都道府県なり市町村の実情に合うように、またその要望をかなえるようにするために、実態を十分勘案した上でこの配分をするということのほうがむしろより適切ではないか、こういうような趣旨からしまして、一括して社会福祉施設施設整備補助金の中に計上いたしておるわけであります。たとえば、四十五年度の場合は、同和地区の保育所につきましては二十四カ所の要望がございましたので、二十四カ所全部補助金をつけているはずでございます。金額で申しますと五千二百万円くらいでございます。五千二百万円くらいの国庫補助を出している、こういうことに相なっているわけでございます。
  262. 後藤俊男

    後藤分科員 それと、それにも幾ぶん関係があると思うのですが、この部落解放地域における隣保館というのは、いわばありとあらゆる関係の仕事を一切やっておられるわけなんですね。特に同和対策事業特別措置法完全実施のためには、環境整備の問題をはじめとしましていろいろな問題がたくさんあるわけですが、その中におきましても、青少年の教育というのは非常に大事なことだと思うのです。あるいは子供の教育、これらも非常に大事なことだというふうに思うのです。さらに隣保館の事業内容を見ましても、厚生省関係のほかに青少年の教育なり子供の教育、補習、これらのこともやはり隣保館の内容として入っておるわけなんですね。ところが、予算の面を見ますと、教育関係につきましては全然考えてないと思うのです。このことについてどうお考えになっていますか。
  263. 加藤威二

    ○加藤政府委員 確かに隣保館におきましては、御指摘のように、青少年の教育あるいは子供の教育、補習というようなことを現実に行なっているものが相当あるようでございますが、問題は、この同和地区に対しまして、厚生省のほうからの隣保館とそれから文部省のほうの同和地区集会所と申す施設、これが全同和地区に百五十六カ所あるようでございます。隣保館は四百十二カ所でございますが、この同和地区集会所におきましては主として教育関係をやっておる。ところが、隣保館のあるところには同和地区集会所がない場合が圧倒的に多いわけでございます。したがって、隣保館がある程度その肩がわりをやっているという実態があるようでございますが、御指摘のように、予算面でそういう教育面の金が出ていない、これをどうするかという問題、これは以前から再々問題になったようでございますが、その同和地区の教育関係予算が文部省につくということで、その予算の配分の問題あるいは予算のつけ方の問題等々いろいろむずかしい問題があるやに聞いておりますが、その間の連絡調整が必ずしもうまくいっていなかったというのが実態のようでございます。しかし、やはり隣保館におきまして、現実にそういう青少年の教育あるいは子供の教育、補習という問題をやっているということになりますれば、その実態に即してそういう補助金が流れていく、所管はどの省の所管にいたしましても、実態に即して国の裏づけの予算が流れていくというのがやはりあるべき姿ではないかという感じもいたしますので、今後とも文部省と十分話し合いまして、実態に即して補助金が流れるというような形に持ち込むように努力をいたしたいと思います。
  264. 後藤俊男

    後藤分科員 いまこれからの問題として、文部省と十分相談をしてやっていきます、こういう回答でございますけれども、それじゃ四十六年度は一体どうなるか。いまあなたが言われましたように、同和問題の解決のためには、青少年なり子供の教育が非常にこれは大事なことなんです。集会所のあるところは文部省がめんどうを見ておるかもしれませんし、さらに公民館についても文部省関係でやっておりますけれども、現在の文部省の姿勢というのは、隣保館には全然そちらを向いた姿勢になっておりません。文部省がそういうスタイルでございますし、さらに厚生省は、これは文部省だといってあまり――あまりどころか全然気をつかっておらない。こういうことになりますと、一番大事な教育なり青少年の育成問題につきましては、これは、なるほど環境関係その他の整備も大事なことでございますけれども、人間育成の上から考えると、一番大事な問題であると言っても私は過言じゃないと思うのです。それを、文部省は私は知りませんよ、厚生省はこれは文部省でございますと、こういうようなかっこうでやっていかれるということは、これは許しがたいと思うのです。いまあなたが努力しますと言われましたが、それなら四十六年度は一体この問題をどう解決されるのか、その点をはっきり明確にお答えください。
  265. 加藤威二

    ○加藤政府委員 四十六年度につきましては、文部省では、私の承知いたしております限り、同和地区集会所に対しまして、これは百五十六カ所でございますが、一カ所当たり三十万の全額の委託費が出るというぐあいに聞いております。まだ予算が可決されておりませんけれども、もしそういうぐあいに予算がきまってしまいますならば、その予算を少し隣保館のほうに分けろという交渉をしたいと思いますが、そういたしますと、同和地区集会所にいく金が減るという問題も出てまいりますし、率直に申し上げまして、四十六年度でこの問題が解決できるかどうかということになりますと、努力はいたしてみますけれども、なかなかむずかしい問題があろうか、かように考えます。しかし、何らかの方法があるかもしれませんので、文部省とも話し合いをいろいろやってみたいと思います。しかし、四十六年度でできない場合には、四十七年度予算要求のときからどういうふうにこの問題を解決していくかということを両省で話し合って、何とか四十七年度におきましては、先生の御指摘のような方向で問題が解決できるように努力をしてまいりたいと思います。
  266. 後藤俊男

    後藤分科員 これはいまあなたは非常にむずかしいけれども努力する、こういう形でございますが、文部省との関係につきましては、これはいま始まった問題じゃないと思うのです。四十四年に措置法ができて以来、青少年の教育なり子供の育成その他に関することにつきましては、これはおれのところのなわ張りじゃないのだ、文部省のなわ張りだ。文部省のほうとしましては、いまあなたが言われたように、集会所の問題、公民館関係で、隣保館については全然気をつかっておらぬ。そこだけが穴になってそのまま三年間捨ててあると言っても間違いないと思うのです。それくらいむずかしいというのか、なわ張り根性というのか私はわかりませんけれども、いずれにしてもはっきりしない問題だということははっきりしているわけなんです。ですから、昭和四十六年度につきましては、いままでは話がつかぬことはしようがないんだ、このままいくと来年の四十七年にまた相談したがということになって、おそらくこのままのかっこうでまた進んでしまうことは間違いないと思うのです。なぜ私がこの問題につきまして重ねて言うかというと、これは非常に大事な問題だということを言っておるわけなんです。私も隣保館を二、三軒、きのう、おととい歩きました。やはりこれは非常に問題になっておるわけなんです。先ほど言いました隣保館の運営経費の問題、さらには保育所の問題、さらにはいま言いましたところの青少年なり子供の教育の問題、集会所のないところは隣保館が全部やっておるわけなんです。何ら国としては、いま申し上げました面に対する経費は見ておらぬわけなんです。そうして十カ年計画でやりましょう、やりましょうとかけ声だけはやっておるようなわけでございますけれども、これはぜひひとつ四十六年度から、文部省が間に合いませんので残念でございますけれども、大臣もいまの話につきましてはよくわかったと思いますから、文部省と十分相談をしていただいて、この問題を解決していただくようにぜひお願いをいたしたいと思います。大臣いかがですか。
  267. 内田常雄

    内田国務大臣 お話十分承りました。
  268. 後藤俊男

    後藤分科員 まだこまかい問題たくさんございましたけれども、時間が参りましたのでこれでやめますけれども、ぜひひとつ大臣、冒頭に言いましたように、この部落関係予算につきましては、非常に少なくて不満なんです。四十六年度につきましては、これからどうこうということは非常にむずかしいと思いますけれども、四十七年なり八年になりまして、順次しり上がりに国家予算を組んでいただく方向へぜひひとつがんばっていただきますようにお願いをいたしたいと思いますし、それから具体的問題で恐縮でございますけれども、先ほど言いました隣保館の経営、運営費の問題あるいは保育所の問題、さらにいま申し上げましたところの青少年、子供の教育の問題、これらの問題につきましてもぜひ力を入れていただいて、特に最後の青少年教育問題につきましては、できるだけ早く実行に移せるように、文部省とも十分相談をしてやっていただきますようにお願いをいたしまして、終わります。
  269. 松野幸泰

    ○松野(幸)主査代理 次に、古寺宏君。   〔松野(幸)主査代理退席、主査着席〕
  270. 古寺宏

    古寺分科員 最初に、僻地の医療問題というのは非常に深刻な現状でございます。私の出身である青森県におきましては、昭和三十年ごろには九十五もあった診療所が現在十三くらいしか活動していない、あるいは台湾のお医者さんが十二人もおいでになっているというような実情で、この僻地の医療問題は非常に深刻でございます。これに対する厚生省のいままでの対策を見ますと、まことに残念ながら全然進歩がないと申しますか、積極性が見られませんので、これに対する厚生省の考え方というものをまず最初にお伺いしたいと思います。
  271. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 御指摘のようにたいへん困難な問題でございますけれども、厚生省がいわゆる僻地対策というものを三十一年ごろから年次計画を立ててスタートしてやっております。当初は、いまもお話がございましたように、主としてそういう地区に診療所を設置する、こういうことで中心をなした対策を立ててまいりました。しかしながら、それだけでは必ずしもすべてが解決するわけでもございません。また診療所をつくりましても、なかなか定着をする医者がないというような問題もございました。そのうち次第にいわば僻地性の解消とでも申しますか、交通の関係あるいは通信の関係というものが次第に改善されるということになってまいったこと等に着目いたしまして、最近におきましては、診療所を単につくるというだけではなくて、むしろいろいろな機動力を活用いたしまして、その地区における医療自体を確保しようじゃないか、こういう方向に申せば変わってまいったわけでございます。具体的にはそういうために患者輸送車でございますとか、あるいは巡回診療所、あるいは巡回診療の雪上車、離島の巡回診療船といったようなことを中心にいたしてまいったわけでございます。  さらに来年度は、そういったものを総合的に行なうという意味で、健康管理を含めましたような、その地域を含む一定の地域全体として僻地をカバーしていく、こういういわゆる連携対策というものを打ち出してきたようなわけでございます。
  272. 古寺宏

    古寺分科員 そういういろいろな対策を進める上において一番大事なのは医療従事者の問題であると思いますが、この医師確保という問題あるいは保健婦の問題、これが非常にその大きな隘路になっているわけでございます。それではこれをどうやって確保し、どうやって運営していくわけでございますか。
  273. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 御指摘のように、また私も申し上げましたように、診療所等をつくりましてもなかなか医者の確保ができない。できるだけそういうふうな特殊な方々をそれぞれ努力して募るということになるわけでございますけれども、しかし、これだけでも定着することは困難でございます。そういう意味ではいわば親元病院、その地区に近いところのある一定規模の親元病院というものを、むしろそこに医者のプール源といったようなものをつくりまして、そこからその診療所等に医者が出ていって診療に従事する、またそれとともに看護婦等もそれに伴って出ていく、そういういわば親元病院を中心にした医療の確保という方向を打ち出しておるわけでございます。
  274. 古寺宏

    古寺分科員 その親元病院に医師を確保するためには、やはり親元病院というものの内容の充実強化という面をはからなければいけないと思います。ところが、今年度予算を見ましても、ほとんどそういうことが考えられていないわけでございます。国立病院の例を見ましても、やはりこの病院の内容が充実しておりますと、非常に給与が安くとも医者は集まってくるわけでございます。そういう観点からいたしまして、こういういろいろな対策を進める上においては、当然この親元病院の内容の充実整備というものが必要になってくると思うのですが、そういうことがこの予算からは全然うかがえないわけです。そういう面については非常に厚生省は消極的である。全然僻地の人を顧みないんじゃないか、そういうふうに考えられるわけです。一例を申し上げますと、いま私のほうの青森県では、医療機関の適正配置の再編成を考えまして、大体県を六ブロックに分けまして、その中心の基幹病院というものをきめて、こういうような僻地の対策を進めようとしているわけでございます。この事業をやるためには、少なくとも一つの親元病院の整備には十億かかる、こういうふうにいわれているわけです。ところが、厚生省予算を見ますと、一カ所五百万円くらいの施設整備費ですか、これが計上されているようでございますが、あまりにその差が大きいようでございますが、それはどういうお考えによるものか承りたいと思います。
  275. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 ただいま御指摘の青森県内における医療機関再編成計画というのは、私どもも承ったことがございますけれども、おそらくその計画の十億といいますものは、相当大規模な大手術であろうというふうに私ども予想いたします。ただ、私どもが申しましたことで親元病院がやはり整備されなければならぬ、そこに魅力あらしめるということは、もう先生の御指摘のとおりでございます。ただ従来、親元病院については全く触れておりませんでしたけれども、そこがやはり一定の犠牲を払ってそれぞれ僻地診療を担当していただく、そういう面についての運営費助成ということについては、四十四年から若干ながらも頭を出してきた、こういう形でございます。私どもといたしましても、御指摘のような線で、その親元病院を魅力あらしめるような整備に努力したい、こういう方針でおるわけでございますが、まだ十分な実現をいたしておりません。ただ、御承知と存じますけれども、各都道府県等のそういう公的な医療機関の場合には、いろいろと特別地方債といったようなものによってその整備をかなりカバーすることになっておるわけでございまして、その面については、私ども自治省ともよくお話し合いの上で、優先的にそういうところにひとつ配当できますように努力をいたしておるような次第でございます。
  276. 古寺宏

    古寺分科員 厚生省では、ことしで三年目でございますか、医師確保のために僻地等医療振興会、こういうものをつくるという考えがあったようでございますが、全然これが実現しておりませんが、どういうわけでございますか。
  277. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 私どもも、僻地の医師確保等が非常に困難でございますので、あらゆる手を使ってやりたい。その一つの考え方が、御指摘の振興会の考え方でございます。これは主として、いま大学等に医者を頼みましても、大学の実態から見てどの教室にだれに頼んだらいいのかわからぬというようなことで、地元の方々も非常に苦労しておられる。そういったようなことにかんがみまして、こういう振興会というものがいろいろとあっせんするような機能を持ったらどうであろうか。それからまた同時に、いろいろと間に入って御紹介申し上げるというような機能、あるいはそういう僻地に行かれる方に対して支度金なり、あるいは長くおられた方に対する功労金なり、あるいは海外の研究の機会なりを与える、こういったようなことを、一つの財団をつくりましてその中でまかなっていったら、いま少しなめらかに動き得るのではないか、こういうのが私どもの構想でございます。これも先生御存じだと思いますけれども、その道をとりましたらはたして必ず有効な効果が出るかどうか、この辺になりますといろいろ議論のあるところでございまして、もう少しこういったようなものの中身についてさらに検討を詰めるべきではないかということで、見送りになった次第でございます。
  278. 古寺宏

    古寺分科員 これはいろいろ町村によっても実態は違うでしょうが、私どもが調べた調査の結果によりますと、大体僻地の診療所にお医者さんが行っているのは三カ月とかあるいは一カ月交代とか、そういうのが非常に多いわけでございますが、そのお医者さんを頼むのに、一年間の予算が一億か二億の町村の町村長さんが、一回お医者さんをさがしに行くのに七十万から百万円かかる。三カ月に一ぺんずつ交代いたしますと、年間にもう何百万というお金が要るわけですね。そのほかに、さらに最近は医師の給与というものも非常に上がりまして、特に僻地の場合には三十万以上とかあるいは五十万とか、そういうような高額の給与になっているわけです。そういういわゆる財源というものは、僻地においてどうやって捻出したらいいのでございますか。
  279. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 さような財源について、特別に厚生省からの予算をもって手当てをしていることはございません。
  280. 古寺宏

    古寺分科員 こういう事実について、大臣は、こういう僻地の医師確保の問題についてどういうふうにお考えになっておられますか。
  281. 内田常雄

    内田国務大臣 私も何とかして僻地医療の問題は解決したいと、いろいろ医務局長その他の意見も聞いたり、またその方面の論文や雑誌も実は読んでおりますが、なかなか一発でこうやればいいというような案がないものでございます。先ほども他の委員の方からお尋ねがございましたが、私は、あれもやっている、これもやっているということで七つか八つの項目を並べ上げまして、僻地医療に対応したいと思いますというようなことを申し上げたようなことでございます。四十六年度におきましても、たとえば医者が置けないものですから僻地の住民の健康管理カード制度というものを設けて、コミュニケーションを利用して、一たん僻地の住民の方が病気になった場合には直ちにこれに即応する処置ができるような方式をとることにいたしました結果、まあ事実そういうことをやるのでございますが、あるいはまたお医者さんが行ってくださらないものですからできる限り保健婦に行っていただけるようにし、またその保健婦には自転車ではなしに、これは一ぺんにはまいりませんけれども四十六年度から自動車、と申しましても軽四輪でございますが、そういうものをも配置するというようなこともいたしましたり、あとはもういままでやっております巡回診とか患者輸送とか、あるいは親元病院の協力システムでございますとか、そういうこと以外に、これをやれば完全に僻地医療の問題が解消するというような案がなくて、ほんとうにほとほと困っております。  私も政治家の一人でございまして、まあ古寺先生は青森県でいらっしゃいますが私も山の中の山梨県でございまして、全く同じような共通の事情がその村についてございます。何とか医者をひとつ学校の先生と同じように、義務駐在制にしてもらえないかという話のほうが先になるわけでございます。学校の先生のほうは地方の教育公務員ということでございますので、学校の先生の資格を取らせますと何年か僻地の学校を回っていただく、こういう仕組みもとれましょうけれども、医師の養成のほうは、これは国家公務員でも地方公務員でもございません。臨床研修という方法、これもむしろ大きい病院等に吹きだまりになるというような現象にしかならないわけでございますので、根本的には、もうほんとうから申しますと、一体ああいう中でそういうことができるのかどうかということにもなる面もあるようにも思います。しかし、幸いにいたしまして国勢調査の結果を見まして私、意を強くした面もあります。僻地の状況というものは非常に悪化をしていないで、大都市に人間がふえるかわりに地方の中小都市に人間が集まってまいるようになったり、また道路の改良、輸送等の面が非常によくなりまして、東京、大阪だけでなしに、地方の中小都市にお医者さん方が診療所をお持ちくださったり、またそういう地域の病院に勤務されるような方もふえてきている状況もございますので、そういうことも頭に置きながら、要は僻地性の解消ということも、ただ医者をそこに持っていってくぎづけにするというようなことだけではなしに、僻地性の解消という総合国土計画みたいな面からの対策もやらなければならない、こういうふうに正直のところ私は思います。
  282. 古寺宏

    古寺分科員 今度、健康管理カードをつくって健康管理をやる、こういうふうにおっしゃいましたけれども、健康管理カードをつくりましても、医者がいないことにはこれはどうしようもないわけです。そういうような面ではやはりどうしても親元病院というもの、基幹病院というものを整備いたしまして、そうしてお医者さんがいるようにしなければいけないと思う。そういうことを全然やりませんで、医者が来ない医者が来ないと言っても、これはどうにもならぬと思います。そういう面では、厚生省はもっと積極的に僻地の親元病院の整備というものを、根本的に考え直して整備をしていかなければならないと思います。  それから、いま国勢調査で意を強うしたと仰せになりましたけれども、青森県は、過疎地域は前回の昭和四十一年ですかの国勢調査では六地域だった、それが今度の調査では十四地域にふえました。ところが、今度の厚生省過疎地域保健婦の数が、全体で五十人しかいないわけです。青森県だけでも大体二十人から三十人くらい不足しているわけですね。こういう点を一体どういうふうにして解消していくお考えなのか非常に疑問なんでございますが、どういうわけで五十人という予算をことしは計上したのか、この点をお伺いしたいと思います。
  283. 内田常雄

    内田国務大臣 親元病院の充実でございますが、厚生省僻地医療対策としておりまして、そういうワクの中で組んでおる予算はたしか四億円か五億円くらいでございます。その中からいろいろやっているのでございますが、私は親元病院などの充実についてはそれだけをもって論ずることなく、むしろ国立病院について申し上げますならば、国立病院特別会計における施設の充実、若いお医者さま方が臨床のかたわらいろいろな新しい病気にも取っ組んで研究ができるというような体制を、地方に約百くらい御承知のとおり国立病院がございますが、あるいはまた療養所のほうにも同じような機能を持っているところもあるかと思いますが、そういうような国立病院の施設面での予算の充実を特別会計のほうでもある程度やっておるはずでございますので、国立病院における医者の充足率というものは、古寺先生も御承知のように思ったよりいいわけでございまして、九十何%とかいうようなことになってきておりますので、さらにそういうことを、うしろに大蔵省もおるようでございますが、要らない土地は売って財源をつくっても、また外から借り入れ金を認めていただきましても、幸い特別会計でありますので、地元の医者と摩擦を生じないような範囲におきましては、国立病院のそういう面での先駆性と申しますか、総合性と申しますか、あるいは研究面における充実もこれ以上積みまして、そうしてそういうところへ医者がどんどん集まってこられて、かたがたそこが担当する僻地への派遣というものにも応じてもらえるというような体制をつくっていくことも、実は配慮もしているわけでございます。  保健婦のほうは、何十人というのははなはだ少ないはずで、どうしてそういうわけなのか、ちょっと局長から答弁いたさせます。
  284. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先ほど来医務局長からもお話がございましたように、今回僻地医療に、医師を僻地に持ち込むという考え方とそれから医療を受けられるような開発を含めた対策、そういうふうに社会の情勢に対応した医療確保対策が必要であるわけであります。今回過疎地域に配置いたします保健婦の五十名の予算化は、根拠といたしましては過疎対策特別措置法に基づきましてこれを確保いたしたわけでございますが、過疎の特別措置法にもございますように、これは都道府県の計画に基づきまして、都道府県がそれぞれ道路の開発、交通事情それから県全体の医療の確保の実情、こういうものをあわせまして優先的に、この過疎地帯の医療確保のために都道府県計画というものを立案することになっておりますので、それに合わせました保健婦を当面五十名確保したわけでございまして、正確な数字ではございませんが、自治省等の見解におきましても五十名で十分とはいっておりませんけれども、都道府県の計画そのものからまいりますと、当面一応それに対応できるという考え方をわれわれも承っておる次第でございます。
  285. 古寺宏

    古寺分科員 いずれにしましても、国民健康保険税は、ある町村の例で調べました。五年間に大体三倍以上になっておる、住民税のほうは一・四倍くらいです。そういうふうに保険税が医療費の増大に伴ってどんどん増高しておりますけれども、医者もいなければ保健婦もいない、こういう地域が非常に多いわけです。そこで、何とかして保険税の不均衡というものを是正してもらえないか、こういう要望が非常に強いわけですが、昭和四十七年の四月一日から標準保険税制度というものを発足させるということを厚生大臣が前に言明をいたしております。その後、今度の国会にはその関係の法案がまだ提案もされておりませんし、一体これはいつからスタートするのか、こういうことを非常にみんな心配して見守っているわけでありますが、この点についてはどうでございますか。
  286. 内田常雄

    内田国務大臣 健康保険抜本改正の一環と申しますか、それに関連いたしましても、私は、いまのままの国保でも、各市町村によりまして住民の国保税の負担が違うということは適当でないと思いますので、いまお話がございましたような標準保険税、標準保険料制度をぜひ編み出したいということで、専門の先生方においでをいただきまして、検討をいたしておるわけでございます。四十七年度からやると申してはいないように私は思いますが、しかし、これは早くやらなければいけないと思います。それを基礎として、いま国民健康保険に対する国庫負担も四千数百億もいたしておりますから、またそのうちの調整費なども配分をいたしておりますので、それだけの財源をもって私は善処、対処し得るとも考えますので、いま私が申し述べました、また先生がお尋ねになりました標準保険料構想につきましては、その設定、構想の実現を急ぎたいといまでも考えております。
  287. 古寺宏

    古寺分科員 これは斎藤厚生大臣が四十四年の八月に、四十七年の四月一日から実施をいたしたいので早く答申をしていただきたい、こういうことを制度審議会で申し述べているわけです。四十七年の四月一日からスタートを切るといたしますと、いまの国会に提案しないと間に合わないわけですね。そういう関係上、早く答申していただきたいということを言明しているわけでございますが、そういう点についてはどうなんですか。
  288. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 標準保険料の問題は、お話しのとおり、現在市町村によって給付の内容とか付加方式などもいろいろまちまちで、不均衡を生じておるというところから、何とかこれをもう少し均衡のとれた、統一的な保険料を設定して、運営していきたいという希望が市町村のほうからもありまして、この標準保険料の問題として提起されているわけですが、厚生省としましては、昨年夏ごろ学識経験者からなる五人の懇談会を設置しまして、非常に熱心に検討していただきました。だいぶ検討は進んでおりますが、やはり標準保険料は保険料なりにいろいろ問題もございまして、まだ結論を得るに至っておりませんし、それから関係方面ともいろいろ意見の調整をしまして、できるだけ早い時期に実施に移せるようにしたいと思っておりますが、保険全体の抜本改正ともからむ点がございますので、いまのところ四十七年度から実施できるというはっきりした見通しもできておりませんけれども、できれば早い時期に実施できるように今後もつとめたいと考えております。
  289. 古寺宏

    古寺分科員 そうしますと、四十七年の四月一日には間に合わないわけですね。四十七年の四月一日からスタートを切ることはできないわけですな、発車することは。
  290. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 いや、まだ間に合うとも間に合わないとも断定はできませんけれども、早く実施できるように、今後もまた懇談会の御結論を急いでいただき、私どもも各方面と検討、折衝を進めてまいりたいというふうに考えております。
  291. 古寺宏

    古寺分科員 それでは今度の国会に間に合わない理由といいますか、むずかしい問題はどこにあるのでしょうか。
  292. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 懇談会はもう十数回にわたって熱心に検討をしていただいておりますが、やはり標準保険料を設定するといいましても、現行の保険料の実態から見ますとうんと負担増になるところもふえますし、また一口に標準保険料と申しましても、賦課方式の内容が非常に複雑であるために、なかなか統一的な基準というものが簡単につくりにくいといったようなこともございまして、懇談会としても苦慮いたしておるところでございます。そんなわけで、ことしの国会に法案を提出するというようなところまでは至らなかったわけでありますが、四十七年度実施が間に合うかどうか、これは今後の検討次第だと思いますが、できるだけ早くまとめるように努力いたしたいと考えております。
  293. 古寺宏

    古寺分科員 時間がないのであれですが、四十三年度の受診率でいいますと、東京都は四七五%、それから青森県の六ケ所村というのが一九三%ですね。それで金額を見ますと、東京は一万二千七百七十五円、それから六ケ所村というのは五千二百十七円。これに対する国庫負担金は、東京都の場合は五千百十円、六ケ所村の場合は二千六百八十一円、こういうふうに非常に格差がある。実際問題としてお医者さんのいない地域の人は、保険税は払うのですが、医者がいないわけですね。極端な例を申し上げますと、冬季間なんかは死亡されて、そしてお医者さんがいないために死亡診断書がもらえない。その死亡診断書をとるために、今度は遠隔地のお医者さんのところへ死体を運ばなければいけないというような、そういう事例もあるわけです。こういうような不均衡を是正するためには、どうしても標準保険料というものを早く定めなければいけないと思う。先ほどお話がございましたように、もう懇談会も十数回やって結論が出ていると思うのですが、そういう点について、厚生大臣は何か一月の制度審議会か何かの質疑の席上で、今度の国会には間に合わないというようなお話をなさったというようなこともお聞きしているのですが、厚生大臣としてはどうなんですか。
  294. 内田常雄

    内田国務大臣 制度審議会に参りまして、今度の国会に間に合わないということは申しておりません。おりませんし、私は保険料のことはともかく、昔の住民税などのことを――これは私などが手がけておりましたが、想定をいたしてみますと、これは各町村によって本文方式、ただし書き方式というようなものがまちまちで、学校の先生が甲の町から乙の町に転勤しますと、月給は同じでも税金のほうはえらい倍になってしまうというような不合理がございまして、それを直しますのに非常に苦労したことがございます。いわばそれと似たようなところもございまして、国民健康保険の標準報酬制度を理論的につくることは、私は、それはそれでおおむね結論を得られる時期に来ていると思いますが、それを実行に移します際に、今度の健康保険制度改正、これは別ではございますが、各方面にいろいろの抵抗が予想されまして、その見きわめもつけないで、やっと法律だけ理論的結論によっては出せない、こういう実は面がございます。しかし、これはどういう抵抗がございましても、標準保険料についてのいままで述べましたような考え方と、また先生が御指摘になられる点は克服しなければならない点でございますので、私は、でき得る限り早くその困難性をも克服して、そして法律を要するものは法律を出し、法律を要しない面のものは政令、告示等でやってまいるようにいたしたい、ほんとうにそう思っております。
  295. 古寺宏

    古寺分科員 最後に一つだけお伺いしたいのですが、今度の地方税法で上限が五万が八万円に改正になりました。そこでもう一つ問題があるのですが、米の生産調整の補助金の特別措置法というのが参議院を通りました。この場合に国民健康保険税が減少するのじゃないかと思うのです。一時所得になりますから減少すると思います。これについて保険税の値上げとかそういう問題がまた出てくるのじゃないかということが予想されるのですが、そういう点について厚生省はどういうふうにお考えになっておりますか。
  296. 内田常雄

    内田国務大臣 その問題は私はまだ聞いておりませんが……。
  297. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 お話しのように、一時所得ですから確かに税収が減ることは事実だと思いますが、これが保険料との関係においてどういう影響を及ぼしてくるか、これは十分支障のないように検討いたしたいと思っております。
  298. 古寺宏

    古寺分科員 残念ですが時間がないのでこれで終わりますが、標準保険税の問題は、ぜひひとつ四十七年の四月一日からスタートを切るように進めていただきたいと思います。
  299. 登坂重次郎

    登坂主査 次に、島本虎三君。
  300. 島本虎三

    島本分科員 時間があれば三点、なければ二点にしぼって大臣の考えをただしてまいりたいと思います。  まず、けさほどわが党の堀委員のほうからの質問にもございましたように、今回血液、すなわち献血によるところの血が二百cc千五百五十円から千八百六十円に値上がりしたということ、これはまことに私としては納得でき得ないところであります。まして献血によるものでありますから、これは人間のからだ一部分であります。人間のからだ一部分献血してあるのに、金を高く取ってそれを売り渡す。シャイロックではありませんけれども、こういうような行為は私は許されないと思います。したがいまして、先ほど御答弁にあったようでございますけれども、これはぜひとも大蔵省と折衝の上、値上げしなくてもいいような措置だけは十分講ずるように努力してもらいたい、こういうように思うのでございます。値上げしない、これはやはりいまの最低限の国民の要望であります。しかし、そのほかに、自分の血を献血しているのでありますから、献血している本人の場合並びにその家族の場合には、当然、それに見合う血を使うことになった場合には――これもまた千五百五十円から千八百六十円に値上げされたそれでもって使うということは、これはもうとんでもないことであります。当然これに対しては料金を課さないとか、こういうようなことに対しては厚生大臣、この際あなたは意思をはっきりさせておく必要があるのじゃないかと思うのです。私はこの点について大臣の決意を聞いておきたいのであります。
  301. 内田常雄

    内田国務大臣 血液は、実は私なども献血をするわけでありますが、もちろん無償献血をいたすわけでございますけれども、しかし、それの管理と申しますか、調整と申しますか、消毒をしたりいろいろいたしますための費用がかかる。その費用がこれまでの二百cc千五百五十円、それをあるいは今回人件費、物件費の値上がりに応じてそれではとても日赤はやれないということで、二割方引き上げるというようなことになったわけでございまして、人のただの血を高く売るというようなシャイロックとは仕組みが違うわけであります。私は、これはおっしゃるとおりに、なるべく値段などは上がらないほうがいいと考えるものであります。  そこで、この間、さすがは島本先生で、私に向かわれて何とか方法を考えろというときに、総理大臣が何億かの金を予算から出して、そして値段が上がらないことを考えましょうと言われる前に、私はあなたにお約束したことがございました。それは少なくとも献血をした本人なりその家族なりがその献血量に応じて使われる血液については、家族の分といえども無償にさせましょう、こういうことを私はあなたにお約束をいたしましたので、これだけはどうしても私はやらせるつもりで、日赤方面にも強く申し入れました結果、はっきりと申し上げ得ると思いますが、四月一日から私があなたにお約束をいたしたとおりにいたします。これは、おかげさまであなたがそういうことを強く迫られたことが私の決心を促したり、あるいはまた日赤もその気になられたその動機であると考えるものでありまして、お互いによかったと思うわけでございます。別口の値上げのことにつきましては、これは大蔵省と私どものほうでいつから幾らというようなことをせっかく打ち合わせ中でございまして、一両日中に大蔵省と話し合いがつきましたならば、別に個々に当委員会お答えを申し上げる、こういうことにいたしておりますが、これも前向きで処理をいたしたいと考えております。
  302. 島本虎三

    島本分科員 大臣にしてはいろいろ苦難の中に苦しみながら、きょうの答弁ほどいい答弁はあまりないのであります。しかしながら、今後こういうような答弁を繰り返すことによって、大臣もほんとうに錦上花を添えるような結果になろうかと思いますので、今後私はそれを心から期待するとともに、堀委員が申されましたように、六億で済むのであれば値上げをしないで、そういうふうに国民のためにとうとい血液を奉仕する人の意思に沿うように、これは大臣としても一そうの努力を払ってもらいたい。それだけの意思があるということを聞いて安心しましたが、もう一回この決意を伺って次に移りたいと思います。
  303. 内田常雄

    内田国務大臣 私がただいまはっきり申し述べましたとおりの決意で進むものでございます。
  304. 島本虎三

    島本分科員 次に、大臣は最近訴えられているようでありますが、御存じですか。それは未必の故意による殺人罪として告発されておりますが、御存じですか。
  305. 内田常雄

    内田国務大臣 それは島本先生北海道の選出でいらっしゃいますので、多分あのことだと存じますが、私が訴えられているといいますよりも、私が園田元厚生大臣等の連れ合いみたいなことで、つまり種痘でございましたか、免疫接種のことに関連して副反応を生じた、それはすなわち政府責任を負うべきだ、こういうことでともどもその訴訟の対象になっておる、そのことだろうと存じますが、いかがでございますか。
  306. 島本虎三

    島本分科員 そうです。これはそのうちにどうせ判決が出ると思います。しかし大臣は、これと同時に行政上の措置を的確にしておかなければならない責任があるわけであります。と申しますのは、私も十分調べてまいりました。これによりますと、国はWHOから安全性の高いリスター株を使うように勧告されているのにかかわらず、毒性の強いと思われる従来の大連、池田株を使用し、毎年数百名にのぼる後遺症や死者を出しておる。メーカーはこれを知りながらも製造、販売しておる、こういうようなことの理由のようであります。そして園田厚生大臣並びに当時の村中公衆衛生局長、それから橋本東芝化学代表取締役でしょうか、これは間違っていたらちょっと困るのですが、この人たちは未必の故意による傷害罪として告訴されておるのであります。そしてその後内田厚生大臣と村中公衆衛生局長、これも同じ未必の故意による殺人罪として告発されているのであります。しかし、実際これの審理の結果、いろいろ問題点もあるようでありますが、なぜこういうようなことを大臣を補佐しなければならない局長がやらせたのか。これは重大なる反逆であろうと思うのです。これは補弼の大任を果たしておらない。これはどうなんですか。
  307. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 ただいまこの具体的な刑事事件としての内容は司法当局において検討されておりますので、そのことよりも、ただいま御指摘のリスター株等がWHOにおいて安全な株であるという推奨があるにもかかわらず、日本が使わなかったという点について御指摘がございましたが、実は各国とも必ずしもリスター株を大幅に導入しているということはございませんで、それぞれの国が研究に基づきまして、それぞれの国で自信を持てる株を採用しているのが現状でございます。したがいまして、従来池田、大連株等につきましても、わが国の学者が十分検討の上これを適用しておったのでございますが、たまたまWHOが一般的にリスター株を推奨したことは事実でございますけれども、われわれの諸般の資料に基づきますと、リスター株そのものは局所に発赤等が若干軽度に出る場合がございますが、副反応等につきましては決してリスター株であるからといって安心できるというデータはないのでございまして、この点につきましては今後とも慎重な検討を必要といたすと考えております。
  308. 島本虎三

    島本分科員 この告発、告訴は札幌地方裁判所で扱われているようでありますけれども、これに対しての重大なる参考人と申しますか鑑定人には、高津忠夫杏林大学教授が指定されたようであります。杏林大学というと製薬メーカーの大学じゃないですか。そういうようなところの教授を一人だけやったということは、これは公正を期せられるのでしょうか。WHOではありませんけれども、これは二人で十分話し合える、こういうようなところまでなぜ配慮しないのか。まして杏林大学というと、私の耳には何か製薬メーカー、こういうような印象が起きるのでありますが、ただ一人に鑑定人をしたという点並びにこういうような特定の大学を選んだという点、この点では私は釈然とできないのでありますが、これは大臣でなければ事務当局、この点はっきりさしてください。
  309. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、われわれ申し上げられる範囲といたしましては、高津先生が今回の鑑定人として選ばれました理由は、おそらく予防接種の副反応等について、東京大学の教授時代から多くの研究データを持ち、またわが国としましては、その研究とまた見識において最高の力のある方であるというふうにわれわれも考えるのでございまして、今回の刑事事件の鑑定になぜ選ばれたか、あるいは一人による鑑定というものが適切であるかどうかという問題につきましては、刑事事件の鑑定問題でございまして、われわれ厚生省といたしましてはこれに関与しておりませんし、また見解を申し述べることは差し控えたいと存じます。
  310. 島本虎三

    島本分科員 したがって、そういうような関係がありますから、これは刑事関係、民事関係、この司法関係の人を参考人として来てもらいたい、これを要請しておいたのでありますが、国すなわち厚生大臣を長として国がやっていることであるから、これは行く必要がないとして出てこないのであります。したがって、あなたのほうが全責任を持ってこれにあたらなければならないわけであります。一人の人がやってしまった、その大学というのはこれは何でしょうか、私不敏にしてよくわからないのであります。  それと同時に、今後やはり種痘後の後遺症について、それが死亡の因果関係というものを、これを今後認められるのか認められないのかというのが今後の重大問題であります。ただ一人の決定がすべてのことを支配するのだ、こういうようなことになった場合に、厚生行政として今後安心して国民のために奉仕できましょうか。私はその点を心配するのです。ですから、このやった行為、こういうようなことに対してどう思いましょうか、これを伺いたいと思います。
  311. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 杏林という問題、先ほどちょっと落としましたが、私必ずしもその内容、大学と製薬会社との関係を知りませんので、ここでは正確なお答えはできません。  それから、ただいまの種痘の因果関係等について、ここで鑑定人を一人で判決的なものを下すということについて、今後に及ぼす影響という問題でございますが、この点につきましては、われわれが七月三十一日に閣議決定をいたしまして、行政的な緊急措置として今回の事故の救済制度をきめましたのも、故意あるいは過失による民事ないしは国家賠償法等でこれを白黒きめるという性格のものでない、予防接種の本質にかんがみまして、これを救済するという行政措置によっていたしたいということでございますので、この点につきましては、先生の及ぼす影響というそのものも、この鑑定の内容なりあるいは検事当局の判断の内容につながり、またその基本が医学的な判断、予防接種というものが健康な人体に接種されたときの反応による個々の人ごとの反応の違いというものを、全体を踏まえた問題の判決でございますので、われわれは救済措置というものは、そういうものと一応別のものとしての救済措置を実施していくという方針で今後も対処してまいりたいというつもりでございます。
  312. 島本虎三

    島本分科員 結論としてはもう法の改正を迫られる状態にあるわけであります。そうしてそれも、厚生大臣にとって喜ぶべきことかどうかわかりませんが、全員不起訴という方針にほぼ固まったようであります。ですからそうなりますと、晴天白日になるわけであります。しかしそうなりましても、法を改正し、それに対処するという責任があるわけであります。そうしてこれによりますと、今後は種痘を社会防衛上不可欠とする観点から、厚生大臣が行なった、厚生省の行なった行為は許された危険ということで法理論を適用するということのようであります。許された危険だ。そうすると後遺症が必ず起こらないということにはならない、起こる。もうすでにこれが認定されることになるのです。起こることがもうすでに許された危険としてその裏づけになるとするならば、今後起こされた人こそこれはもう不幸でありますから、それに対する対処をすぐしておくのでなければ、とんでもないことになるのであります。まあ大臣のことですから、おそらくこれは十分知っておられることだと思います。西ドイツでは種痘後四日から十八日間に異常があればこれは全部後遺症患者とみなして国が完全救済をすることに踏み切っている。これからいろいろ救済措置を考えたいという厚生省。これは一体どうなんでございますか。それでは罪にならずという概念、いままではおそらくは正当防衛であるとか緊急退避であるとか、そういうようなことで刑法上の違法性を免れておったけれども、今後は堂々と犯したそのものも、後遺症も認められるということで、許された危険という、こういうようなことになるようであります。そうなりますと、当然、この種痘を義務づけられるのでありますから、義務づけておいて、種痘をやらして、これは死ぬこともあるぞ、こういうようなことでも、その責任者は許された危険である、こういうようなことになる場合には、ばかを見るのは国民じゃありませんか。かわいそうなのは国民じゃありませんか。まして、次代をになう人材が、ここでそのためにまた死の道を選ばなければならないとしたならば、その責任はまことに重大だといわざるを得ないわけであります。私は、ここではっきり種痘を義務づけるという以上、西ドイツ以上の補償体制は必要だ、こう思うのでありますけれども、この点大臣どうですか。
  313. 内田常雄

    内田国務大臣 まず、御指摘になりました、鑑定人を一人選ばれた、この方が高津さんだということは、私は何しろいまの被告でございます、私のほうが申し立てたわけではございませんので、検察当局の御意向で選ばれたことと思いますので、私どもは関与いたしておりません。ただし、高津さんという方は、私が厚生大臣として承知いたす限りにおきましては、伝染病の大家あるいは予防接種の方面にも最高の権威と承っております。杏林病院以前から名高い方だということだけを申し上げておきます。  それから予防接種につきましては、訴訟を起こされたからということではございませんで、島本先生も御承知のように、私はかなり勇敢にしてまた野蛮なところのある人間でございまして、予防接種法というものがあって、個人防衛でなしに集団防衛の制度をやっておる。それでたまたま副反応の問題が、御承知のとおりの問題に限らず起こりました際に、何らかやはりそれに対する救済の措置を講ずべきである、補償ということになりますと、これは因果関係とかあるいは責任関係とかいう、今日のやかましい民法の問題、無過失責任の問題になりますので、少なくとも救済という措置を講ずべきであるということで、昨年すでに大蔵省にも迫り、また御承知のような予防接種に対する――ひとり種痘のみならず、法定接種並びにそれに近いものすべてを対象とする救済の措置について閣議決定をいたしました。これはいずればいまおっしゃるように、状況によっては法律で明定をいたします方向も一つの方向かと思いますが、昨年始めまして、まだその申請なり判定なりの状況等が定着をいたしておりませんので、とにかく実際の制度として、前向きで救済、実質的には補償のような措置が講ぜられてまいっておりますので、これらの定着の状況を待ちまして、さらに私は必要な処置を講じたいと思います。いずれにいたしましても、何十年来何らの対策が講じられなかったことを、国会の皆さま方の御激励あるいは御協力によりまして行政的にやるということで、閣議決定までいたしましたことは、ぜひひとつ御理解をいただければ幸いと存じます。
  314. 島本虎三

    島本分科員 当時生後六カ月、小樽市の新光町八十八番地にいる大橋達という人の子供、次男であります。いまだにはったまま、そうして腰から下は全然、成長はしておるんですが、感覚はない。長男は元気で遊んでいる。次男は、どうして自分の足が動かないのか、発作的にからだをかがめて自分の足に自分の歯でかみついてみる。それを見ている親の気持ちはせつないものであります。そして、その大橋段さんをだいて、そうして親は、いつでも、そうなりますと表に出ていろいろ気をまぎらわせるような行為をとるわけであります。親の気持ちになってみれば、子供一人を種痘によって、生まれもつかないような、いわばかたわにしてしまう。半身不随にしてしまう。この気持ちは、耐えられない苦痛です。私は、その親の気持ちを思うにつけましても、その救済がどのようにして行なわれているのか。結局は、救済の申請も出ているのじゃないかと思います。そうして予防接種事故審査委員会のほうにこれは当然かけられているのじゃないかと思うのです。なぜ、救済する必要があるならば、その方面の審査を急がないのでしょうか。私は、そういうようなところにも救済に対する考え方、こういうようなもののズレがあるのじゃないかと思うのです。この点、大臣でなく事務当局がいいと思います。
  315. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 大橋段さんの後遺症、一時金が支給されるかという問題につきましてでございますが、北海道を通じまして、申請の書類は申達を受けております。しかしながら、添付されるべき書類がほかのところに提出されておる関係もございまして、また提出されていないものもございまして、審査に付しがたい、付すことの困難な状況でございますので、何らか現地と連絡をとりながら、資料をなるべく早く入手いたしまして審査にかけたい。私は救済できる方向であると考えておりますが、いずれにいたしましても、審査会があって判定されるものでございますので、ここではっきりとした方向を申し上げることはできませんが、事務的にはそのような手続でなるべく早急に処置したいと考えております。
  316. 島本虎三

    島本分科員 健康保険問題をかかえて、これから苦難の道を歩む厚生大臣なんです。事務当局は、こういうふうな問題で行政上の一つ一つのしわ寄せを、大臣やそれを補佐する次官のほうまで与えてやるというのはこれはいけませんよ。やはりあなたたちは一生懸命に援助してやらないと、いま健康保険問題のために、もう太平洋の中に沈没せんとするような状態になる、そういうふうな状態になるのに、これを黙って、こういうふうに大臣にまでいろいろとしわ寄せをされる。これは事務当局、少し怠慢のそしりを免れない。これは今後大いに鞭韃してがんばらなければだめだ。この点だけはきつく、大臣を通じないで私のほうから皆さんに要請しておく、こういうふうに思うわけであります。それにしても、予防接種法、これには、後遺症、こういうふうなものの可能性は認められておりませんでしょう。その本来のたてまえから、予防接種をしなければならない義務があるわけです。今後与えられた、私どもの考え方とすると、当然ここに許された危険という概念が一つ生まれてくるわけです。危険はだれにくるかわからない。しかしながら法律で義務接種を命令する以上、そしてまた施行する側に立つ人に対しては、許された一つの危険だ、こういうふうな概念を与える以上、被害者の立場に立つと、どうしてもここに立法措置を講じなければならない、こういうようなことになるわけでございます。後遺症、これは可能だ、こういうふうになります以上、予防接種法の改正、これだけはぜひとも踏み切らなければだめな段階にきている、こういうふうに思うのであります。これに対してどういう準備がありますか。
  317. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 昨年の十月以来、伝染病予防調査会の中に制度改正部会というのを設けまして、その以前からございます予防接種部会という専門家の会議と並行いたしまして、この予防接種法の改正問題、特に救済制度の問題について審議を続けていただいておりますので、成案を得次第、なるべく早くその方向で措置したいということで、ただいま方針は立てております。
  318. 島本虎三

    島本分科員 今後、万遺憾なきを期してもらわなければなりません。法の改正その他の立法措置、これもあわせて考える、こういうふうなことでありますから、当然これはしておかないとだめなのでありまして、この点も強く要請しておきたい。そしてせめて、これはもう日本でもいま皆保険の段階であります。まして児童手当も、不満ではありますけれども、第三子からいま計画されているような状態であります。そうなりますと、児童憲章によっても、日本の憲法によっても、子供はまさに次代をになう人材として、親がかってに自分だけで子供をどうすることもできないほど、子供の尊厳を認めることになるわけであります。この認められている尊厳が、何ら法的に、これも裏づけがないとするならば、ここでたいへんなことになるわけでありますから、せめて種痘の段階までいって、これも本来ならばこの責任政府がとらなければならない段階に――そうでない方面へ判定が出そうでありますから、おそらくこれはもう、私どもとしては許されないことであります。考えられないことであります。しかしそうだとするならば、ただ一人の鑑定人しか選ばなかったというこのやり方は、私は納得することはできません。それと同時に、はたしてこういう名前の大学、製薬会社の名前に似た大学じゃないか、杏林とか。そうであるとするならば、この辺に対する因果関係と申しますか、何と申しますか、純粋さを、私はここに、少し認めるわけにはいかない、こういうのであります。しかしながらそのあとで、やはり今後は、この法の改正によって、次代をになう人材、また児童憲章によっても、憲法によっても守られているこの児童の尊厳、こういうようなものは、もう一回この種痘の段階に返って認めてやらないとだめだ、この責任厚生省にある、こういうふうなことであります。私は、許された危険、反対であります。しかしながら、そういうことになるとしたならば、法の改正によって万全を期して、先進国以上の法改正をここに準備されるように、この点は強く要請したいのであります。この準備はよろしゅうございますか、大臣
  319. 内田常雄

    内田国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、私どもは、もう、法律の制定を待って副反応を生じた不幸な子供たちの救済をするのではなしに、法律以前に思い切ってやろうということで、閣議決定で救済の措置を踏み切っております。それの状況を待ちまして、その状況を判定いたしまして、法律でつくるべきものは法律でつくる、こういうような方向に向かいたいと存じます。
  320. 島本虎三

    島本分科員 時間だからやめろという紙が来ましたから、残念ながらこれでやめておきます。しかし、いままで言ったこと、これはもう、ほんとに実施してくれるように、心から要請して、私の質問を終わります。
  321. 登坂重次郎

    登坂主査 次に、井野正揮君。
  322. 井野正揮

    井野分科員 当面する二、三の問題についてお尋ねをしたいと思います。  まず第一に大臣にお尋ねをしたいのでありますが、最近、物価の変動その他で、医療費の問題もさることながら、公的な医療機関の経営にもいろいろの苦しみがあるようであります。  その中で特に病院給食の問題でありますが、これは昭和三十四年ですね、保険局のほうから通達が出されて、一般的な基準、盛りつけに至るまで、こまかい御指示がなされておるようであります。そこで私のお尋ねしたいのは、そういうきびしい、きめこまかい規定があるのにもかかわらず、ある病院においてはすでに日本食堂なんかに委託をして病院給食の不採算性を切り抜けたいと考えておったり、あるいは学校給食協会におまかせをして給食面からの病院不採算性を克服したいというような動きがあり、そういうことが公的医療機関の中で検討されている。こういうようなことで、実は私、この予算期間の間に慶応病院、国立第一病院、あるいは東大の病院等々の給食献立を一カ月分取り寄せてみまして、昔とったきねづかではございませんが、かなりやってみました。数字は全部この規定に合うようになっております。しかし四十一年以来物価指数あるいは予算額の増高、そしてこのカロリーを見ますと、ふしぎなことにはぴったり、栄養士がおって、合うようになっておるわけでございます。まことに数字というものはうまくできるものだと思うのでありますが、しかしこの通達の精神が病院給食の中で生かされておるとは考えることができません。  そこで、大臣にまず一つお尋ねをしたいのは、病院治療の中で給食が占めておる医学的な意味というものについて、従来も今日も変更すべきではないと考えておられるか、経済事情の困難性の中から、そういうふうに変革することもやむを得ないと考えておられるか、この点をまずお伺いしたいと思います。
  323. 内田常雄

    内田国務大臣 私は医者ではございませんが、常識ある厚生大臣といたしまして、病院における給食というのは単に宿屋の食料とは全く違うものでありまして、給食そのものが病院食と申しますか、医療食と申しますか、薬剤の投与やその他健康管理と当然相まって患者の健康を回復する手段であると私は思うわけであります。特にじん臓とか肝臓とかいう病気に至りましては食餌療法というようなものが非常に大きな分野を占めるものであると考えますので、いま井野先生からお話がございましたような、数字合わせをしてそれで病院食というものが済むものだとは決して思っておりません。
  324. 井野正揮

    井野分科員 方針が変わっていないので安心をした次第ですが、大蔵省もおいでになっておられますので一例をとってみますと、たいへんわが国の予算の積算の基準は、現政府においてはおかしいようであります。国立病院が一日一人当たり二百円、東大病院は二百三十五円、それから逓信病院は二百二十円、逓信病院は二つありました。二つとも二百二十円、鉄道病院は三百四十円になっております。これはいろいろ詰めていきますと管理費のとり方だとかいろいろ言うと思いますが、私は主材費に限ってとりましたので、そういう説明は要りません。少なくもこういうふうに違うということは、――文部省のほうもおいで願っておりますね。少なくもこういうふうに違うということは、それは厚生省の所管じゃないかしらん、と言われても私はそうはいかぬと思う。こういう通達を出して、病院給食のあり方について一般的に指示をしておる限り、これはやはり閣議の中でも病院給食の基準のとり方というものは、また大蔵省のほうでもそういう基準で不均衡のないようにされておると思いますので、こういう不均衡がなぜ起こるのか、この点ひとつお尋ねをしたいと思うのですが、これは医務局長、それから大蔵省のほうひとつお答えを願いたいと思います。
  325. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 御指摘の点は、いろいろアンバランスがあるということをどうして認めているかということに尽きるようでございますけれども、たとえば私ども国立病院でございますと、大体ただいま御指摘のような食料物価値上がりというものはこれは吸収できるようにいつもお願いをいたしまして、またそのとおり認められております。四十六年の予算では二百三十五円というようなこと、大体そういうことでございます。したがいまして四十年以来の消費者物価の食糧の値上がり指数というものと対比いたしますと、それよりも病院の給食の材料費のほうがやや上回って伸びてきておるというような勘定でございます。ただ、いろいろな病院についてそういうのが全く画一、同一的でないという点については、これはいろいろな理由もあろうかと存じますが、必ずしも材料費だけですべて栄養量というものが規制されるものでないことは先生よく御存じだと思います。したがってこの給食の単価というものは、いま御指摘のようにカロリーでございますとか、たん白というようなことだけを見ればある程度確保することが可能でございます。しかしながら内容そのものが、やはり食事でございますので、カロリーさえあればいいのだという性質のものでもないわけでございます。そういったような点は別の観点でやはり配慮がいろいろはかられるということであろうかと思います。   〔主査退席、松野(幸)主査代理着席〕 私もつまびらかになぜ単価がそう違ってくるのかということは存じませんが、一つにはやはりスタートのときとかなんとかの歴史的な事実があって、それを積み重ねながら原則としてはこの食料費を物価を下回らないという配慮がなされているのじゃなかろうかと考えております。
  326. 相原三郎

    相原説明員 私たちのほうも、査定は全部修正ございまして二百三十五円になっております。いきなりさかのぼって申し上げますと、四十二年度は平均百九十二円、四十五年度は二百二十二円、四十六年度は二百三十五円というぐあいに上げているわけでございますが、これは、いまちょっと概算でやってみたのですが、全くの材料費だけでございます。したがいましてかりに材料費が五割という計算、これはいいか悪いか別としまして、かりに五割としますと一日約五百円のものを食べる、そうしますと四品がついていれば二千円で、月に六万円ということになって、相当なものじゃないかと思うのですが……。
  327. 井野正揮

    井野分科員 聞いたことだけ答えてください。何しろ短い時間でございますから。  確かに私は、国の予算の編成で一日普通患者一人当たりの食費の積算が異なるということはあり得ることでない、こう考えておりますが、実際の病院の費用調査してみるとこういうふうに違った答えが出てまいっております。  そこで文部省のほうに、これは東大の関係でございますが、お尋ねをしたいと思うのですが、東大の同仁会は過去においてはかなり病院経営に協力したようであります。建物を建てて寄付をしたりいろいろなことをやってまいりましたが、最近では学園紛争その他のために要員の取得ができなくなって、東京で施設が余って、患者を収容しないで六四%というような収容病院があるのを見てびっくりしました。しかも天下の東大の付属病院。大臣厚生省管轄じゃございませんけれども、この病院が不足して入れないときに、病院がぞろっとあいているのです。そこで人間をかかえ過ぎたということで、この余った人件費の補充が、今度は給食の患者の数が減りますから、請負しているほうでは採算がとれなくなる、そこで財産を売ってこの赤字四百万を埋めるという経理を立てているのですね。あり得べきことでないと思うのです。しかし実際には、今度はこの職員の給料を計算してみますと、本給に対して三五%のオーバーロードで初めて世間並みの給料になっている。こういうような経営のあり方も問題ですね。本質的にはこの病院を満床活用すべきだ。しかも東大医学部の教室のそばなのです。大臣は、学校のそばなら人は集まるとさっき御答弁なさっておったけれども、うそのかっぱなんです。そういうことではないのです。基本的に病院経営の方針がはっきりしておらないとこういうあやまちを文部省はおかそうとしている。そこで私のお尋ねしたいのは、そういうことになったからといってこの給食を日本食堂に委託をしたり、あるいは学校給食協会に委託をするようなことはないでしょうね。
  328. 甲斐安夫

    ○甲斐説明員 東大病院におきましてただいま御指摘のように、患者数の減少、しかもそれはお話のございました大学紛争の発端が実は医学部病院でございまして、その経緯がまだ安定いたしておりませんことと、片や人件費値上がりということ等関連いたしまして、ただいまお話しのような状況になっておりますことはたいへん残念だと思っております。私どもは、先ほど大臣も御指摘になりましたが、病院給食はまさに医療の一環でございますので、そういった意味におきまして、たとえば給食協会などに一般の給食のような形で委託させるというようなことは好ましくない、そういうふうに思っております。
  329. 井野正揮

    井野分科員 私はきょう意地悪を言おうと思ってこういう問題を取り上げたのではないのです。薬物の単価とか技術料とかいうことになりますと、いろいろ専門的な議論になりますので、次に、大臣にお尋ねしたいところは、これはまず局長にお尋ねしなければなりませんけれども、診療報酬の算定を中医協へゆだねられて、本来その主管であるべき医務局は、法律で定められた制度審議会の中でこの審議会をいまだにつくらぬでおいてあるのはどういうわけですか。
  330. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 御指摘の点は、医療法にございます医療機関整備審議会、医療審議会の中に診療報酬部会というものを設けることになっております。これをなぜ使わぬかという御指摘だと思いますが、これは昭和二十三年ごろに二つの審議会というものが合同いたしまして、その後、いわば審議会の整理というような形で一本に入ったわけでございます。ちょうどたまたま二十五年に中央医療協議会に相当すべきものが生まれてまいりました。それで、その後この趣旨自体は、公的医療についてのみ診療報酬を別途定めることができるという機能を与えられておるわけでございますが、その当時としては、やはり公的機関が皆保険前にいろいろ割り引きずる、安い費用で担当するということを期待したということが大体主体のようでございます。しかしながら、今日皆保険になりまして、すべての医療費というものがほとんど全部こういう皆保険の診療報酬ということによってまかなわれる。そこに中医協というものがあって、これがそういうものを定めるという仕組みになっておりますが、いわば二つのものを操作するということは皆保険段階で必ずしも妥当とは考えられない、こういうことで自来この審議会というものは発足をしておらないという実情でございます。
  331. 井野正揮

    井野分科員 国民皆保険の方向に向かっていることは私は否定しません。しかしながら、いままで運輸委員会等で問題になりました救急病院の自由診療部門に対するあの非道徳な医師の行動というものはすでに昨年の国会で数度にわたって追及されておるじゃないですか。しかも、医療審議会の中にこの診療報酬部会をつくらないこと、すなわち自由診療の中の診療費請求は青天井ではないというモラルの面から、医道の中に求められておる道義心の問題、徳義心の問題、しかし今日の医師にそれが期待できない限り、やはり医療機関の請求すべき正しい報酬の請求基準というものをつくることが絶対に必要であることは言うまでもないと思うのです。先ほど以来大臣は、健保の中における不正請求について非常に悩んでおられるようでありますが、大臣を補弼すべきその事務当局が、しかも法律で命ぜられておる委員会というものを――中医協の構成を考えてみなさい。これは客観的にきまるところではないのです。それぞれの利益代表と中立の第三者でやって、厚生省の言うことが一度でも通ったことがありますか。毎回の大臣の悩みはそこじゃないですか。もしそういうことに利害関係のない、客観的に医療報酬を算定し得る機関、これは医療審議会の診療報酬部会じゃないですか。同じ保険の中で、国の管掌する保険と組合の管掌する保険で、片方が赤字になり、片方は黒字になるという原因を突き詰めたことがありますか。私は、それは保険局がやることではなくして医務局がやることだと思うのです。客観的に判定をすべきことだと思うのです。いま食料費の問題についても、あなたはわかったようなわからないような御説明をなさいましたが、すでに公的医療機関のこういう仕事に携わっておられる方から改善すべき意見がちゃんと出てきておるのです。それはきわめて客観的なものであり、正しいものだと私は思うのですが、そういう意見が取り上げられないで、逆にああいう中医協あたりの答申が、組合と保険者と中立の人の利害関係、力関係の中でつくられたものが出てくる。それがまた国民から反撃を受けるという結果が出ているのです。しかも、今日青空請求になっているいわゆる自由診療の部門が医療全体の中でどのくらいの割合になっているか、ひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  332. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 国民総医療費の中では確か三%程度が全くの自由な場合の費用と推定されるはずでございます。
  333. 井野正揮

    井野分科員 私は、国が客観的に行なう検査とか基準の策定というものが、利害関係、力係係じゃなく、そういう三%の中で求められて正しいと思うのです。そういうところにこういう制度を設けた理由があると思うのですが、すでに医療審議会の中で議論になっているのです。同じようなことをあなた方は答弁されておる。そうしていて解決のつかないところに解決を求めて、いつでも大臣を苦しめている。大臣、これはもう昭和四十三年六月四日の審議会の記録にきちんと載っていますから、ひとつおひまではなく、この機会にぜひ読んでおいてください。この制度もぜひ生かすべきだと思いますが、この点、大臣いかがですか。法令できまっているのですよ。
  334. 内田常雄

    内田国務大臣 私も実は医療、審議会というところに出席をいたしたことがございます。しかし、私が出席をいたしましたのは機関部会のほうでありまして、いま井野さんがおっしゃる報酬部会のほうは、一体あることになっているのか、ないことになっているのか、その所属の委員もきめていないというようなことらしゅうございまして、いまあなたからこういう議論が出ましたことは、一つの示唆に富むところであると私は思いますので、ぜひ一ぺん四十三年の記録を読みまして、私が一つの力を得る端緒にもいたしたいと思います。
  335. 井野正揮

    井野分科員 こういうふうに国会が分割審議になっておりますから、局長は出られないというのでおたくの一番の主務課長が二度出て私に答弁している。あなたにも報告しなければ大臣にも報告していない。こういうことだから厚生省はさっぱり力がない。これはぜひ直してもらいたいと思う。大臣に出席を求めても、ほかの委員会だから出られない。局長はほかに呼ばれている。それではしかたがないから課長。そこで政府委員として答弁したことは局長にも大臣にも伝わっていない。昨年の九月、十月の運輸委員会記録に全部ありますから……。そこでここへわざわざこうして来てこういうことをやらなければならなくなる。先ほどの食料費の問題等についても、私はたいへん大蔵省がよく予算を見たと思うんですよ。四十五年までは物価指数より低い食料費をきめております。四十六年度物価指数、これをかなり時間をかけてやってみましたが、一二五に対して一五九の食料費を認めておりますから、私はこの点は、めったに政府のいうことには賛成しないのですが、ことしの食料費だけは賛成をいたします。これは非常にいいことだと思うのです。その点は医務局も苦労して、大蔵省折衝で認めさせたのだろうと思いますが、これは非常に適切だと思います。しかし、こういうふうにこの投下した資金に対しては、今度は入院費用として受け取るわけなんですから、この関係がきちんとなれば過当な請求でもないし、公的医療機関が取るものだから、一般自由診療の場合にこの上に二%認めてもいいということになれば青空なんということにはならないわけだ。私はそういう点でも、この医務局の活動というものが、医療が保険局に全部移ってしまって、公正な医療のあり方というものについて意欲的でない、ここに問題がある。このことをまず指摘をしておきたいと思います。  その次に、これはひとつ提案なんですけれども、先ほどから大臣の苦しい答弁を聞いておりまして、医者の問題について苦しんでおられるようでありますが、これは妙なことを聞くようですが、医者の人格と自動車の運転手の人格とは、人間として同じものでしょうか、別なものでしょうか。
  336. 内田常雄

    内田国務大臣 私は、人間としては全く同じだと思います。ただ私どもの社会生活の習慣におきましては、お医者さんというものは先般当委員会でも御議論がございましたが、大学の教授でございますとか、また私どもも、いなかにおきましては、特定郵便局長さんとか、そういうような方々、あるいはそれ以上の指導者として私どもは尊敬をしておりますことは、自動車の運転手の方よりも、たいへん失礼ですが、医者はえらい人だ、こう思っております。
  337. 井野正揮

    井野分科員 しかし最近その概念がくずれつつあることは大臣とともに私もはなはだ遺憾といたしたいと思います。私も半生は医者と一緒に働いてきた立場の者でありますから、医者であったらすべて尊敬したいと思っております。しかしながら最近のそういう医道というものがなぜくずれたか、これは今日の変革していく社会の中にわれわれは古い観念にとらわれておってはならないと思います。私は過当競争あるいは天井知らずの欲望、こういうものが、教養があるからといってそれは教養のある人にはそういう非人間的な思想がないものだという考え方はやはり間違いだと思います。体制、制度の中でこれを規制していく以外にないと思うのであります。  私も医師の充足状態を調査室を通じていろいろ調べてみましたら、公的医療機関、特に国立病院は九八%というたいへん高い率になっているので、最近病院の事務長さんは楽をしていると思いますが、昔は大学の医局へ――最近は大学へお百度参りして充足しようと思っても、三カ月交代でうその名前で申請して給料をもらって、一年も二年もつとめてくれるようなことになっておりましたが、実際は一年に一つのセクションを四回回るというようなことでやってきたわけであります。ですから今日といえども九八%のこの医療技術官、この人たちの戸籍を調べてみたらおそらく戸籍は一緒だけれども、人間はかわっております。その実態はまだ抜け切っていないと思います。そういう実態の中に国立病院の職員も充足されているのだという認識は持たなければならぬと思いますが、書類上はそうなっておらぬことをこの機会に申し上げておきたいと思います。また東大の病院すら従業員が足りないために三一%の空床になっている、都民が聞いたらびっくりするだろうと思うのです。それで外来へ行きますと、救急患者を装わなければ診療が受けられないという状態であります。私も二日行ってよく見せてもらいました。まことに嘆かわしい状態にあると思いますが、私は医師の免許証と開業認可と区分すべきであると思います。それは人権じゅうりんじゃないかという議論がありますけれども、自動車の運転手の人格を聞いたのは、自動車の運転手は四十歳以上になり十数年の経験があって、その間一回も事故を起こしたことがない者でないと開業のナンバーをもらえない。しかしながらわれわれ命を預けていることは医者も同じであります。あるいは間違ってくれれば大臣といえども命をなくするわけであります。その点では今日人の命にかかわる非常な重要性を持っておりますから、そういう意味で、もしこの医師の免許証を与えた後、特定の先輩のいる病院、公的医療機関等に五年以上つとめないと開業させないというような、いわゆる今度は医療機関の制度審議会と医療報酬制度審議会とが今日の社会情勢を十分にらみ合わせて、これから免許を与える医者に、ちょうどインターンと同じように五年間の公的医療機関の就労義務を負わせるようにしたとするならば、これは私は大臣の悩みも一ぺんに解決すると思うのであります。医師会では賛成してもらえませんけれども、私も医療関係の知り合いが多いので聞いてみますと、もしそれができることなら画期的なものだ、こういう回答をいただいております。大臣、いい方法がないと悩んでおられるといわれましたので、この機会にこの問題にとらわれないで広く意見を聞いてもらいたいと思いますが、御検討の価値があるか、ひとつお答えただきたい。
  338. 内田常雄

    内田国務大臣 井野さんが実感からとらえられた一つの提案であろうと存じますので、聞き流しにいたさないで私もいろいろそういう問題を含んだ上で考えてまいりたいと思います。
  339. 井野正揮

    井野分科員 そこでもう二、三分あるようですから私はもう一つ提言をしておきたいと思います。  先ほど大臣は振興会をつくって、医師の待遇等改善することによって医師を得られるというお考えをお述べになられましたが、私はあの考え方に反対であります。私は過去に病院に医師を充足するために、国庫に収納すべき金を医師に給して定員十二名に対して二名しかおらなかったところを十二名確保して二年間やりました。それを受けた医者の中で投書をする者がおりまして、七年間裁判をやって懲役三年、執行猶予四年という判決を受けて、罪とは何であるか、いまだに私は疑問に思っております。しかも裁判官はおまえが厘毛の金すらとっていないで一生懸命やったことは認めるが、法律違反だから断罪する、こういうことになってまた裁判をやってようやくその罪からのがれたという苦い経験を持っております。今日健保の大きな赤字の原因の中には、先ほど青森のある先生がおっしゃったように、医師を獲得のために出かけていく町村長は七十万円の金をかかえていかなければならぬ。雇ってきた人は税抜き五十万である。それらの経費はそれこそ架空の診療表に載せて収入をしてまた架空支出をして二重の不正経理をやって支給されておるのが実態であります。そういうことをしなければ公的医療機関特に低所得地帯の僻村の医師は募集できないというのが実態なんです。こういうことを教室でまかなっておったのが今日までの東大初め教室の実態であります。安い給与ながらプロフェッサーの生活はこれによって保障されてギルド制は今日なお厳存しておるわけです。こういう医療制度の古い、いまだ現在の時代に対応できない実態がこういう問題を引き起こしておる。私はいまぜひ大臣にこの免許と開業の認可の間を分けるというのは、こういう問題を根本的に解決するには一定期間公的医療機関なりあるいは五人以上働く医師で十年以上の経験のある下で五年やらなければならぬというような制度をきめることによって、医道そのものを医道の社会に働く者に認識させ身につけさせることができると思うのです。今日の学校教室の中ではそれはできないと思います。学校教育は技術だけでもよろしいでしょう。医者としてのモラル、医者としての徳義心、これはやはりそういう実務の中にヒューマニズムを身につけさせる、徳義心を身につけさせるということは国家的要請だと思いますので、だからしたがって医者に金さえ与えれば充足できるという考え方はこの際払拭しないといけないと思います。この点大臣に考えていただきたいと思いますが、いかがですか。
  340. 内田常雄

    内田国務大臣 井野さん、何か聞き誤りがあったのではないかと思いますが、私は振興会をつくって振興会を通じてお医者さんにたくさんお金を渡して医師を確保するというようなお話をきょうは申したことは実はございませんで、古寺委員と医務局長の間の問答でそのことが出ていたようでございましたが、そのように御承知置きいただきとうございます。  いまだんだん井野さんのお話を承りまして、いろいろ世間では考えられておるが、なかなかいえない問題を井野さんがおっしゃったようなところもたくさんございますので、私も国会の皆さま方の御所論に耳を傾けるということが大臣としてのつとめである、こういうふうに考えるわけでございます。ただ大学等におけるプロフェッサー、医師のギルド制というのは今日だいぶくずれてきておるということを聞きまして、それがございまして国立病院などもだいぶお医者さんを集めやすくなったというような面もあるんだというようなことも聞かされておることも事実でございます。井野さんがいろいろ御苦労なさった時代と、それから今日大学の医学部付属病院等を中心とするいろいろな闘争などがありましたその後の事態と少し事態は変わってきておるようなところがあるのではないでしょうかとも思われますが、いずれにしてもいろいろ御注意ありがとうございました。
  341. 井野正揮

    井野分科員 最後にもう二分ほどありますので……。  都道府県が医科大学を設けたら医師が充足するという考え方、この考えも誤りであることを私は申し上げておきたいと思います。北海道はつとに札幌医科大学を設けまして八十人の養成をずっと続けてまいりましたが、私は田中知事時代の書記長でもございますが、この病院にかかった経費とか、そういうものをよく知っております。しかしながらあの病院を卒業した医者がどれだけ北海道に滞留してくれたか、それも知っております。したがって医者の数をふやすことはできますけれども、しかしそれで僻地の医療問題が解決するとかあるいはその県が潤うというような考え方があったとすれば、それは失望を招くだけでありますから、そういうことではないと思います。したがって、繰り返して言いますが、体制をつくって、その制度の中である一定の医師としての人格を養成させる、そういう義務づけの中でこの問題を解決する、こういう考え方以外にはないと私は信じております。また大臣が、あの秋田大臣の方針に反対をされて、医師の養成というものには一定の時間とあるいは一定の訓練と一定の費用がかかるものだということを中心にして、安上がり医者を養成することに反対をされた点については、私は同感であります。まことに敬意を表したいと思います。医者の下に働いた者として、かつての軍国時代の急造成の医者が人の命をあやめた経験、これは無過失というよりは未熟でありますから、そういう経験はたくさん知っておるわけでありまして、私は困難なことであっても、国家投資をしてでも医者は十分訓練をして、一人前の医者になるまでに十人の人を殺さなければならぬというような、医者が酒を飲めば歌うような世の中の状態はやってはならぬことだと思うのであります。世界第二位の国民生産をあげる国家が、また植民地時代のような医者をつくろうという考え方は間違いでありますから、いかに困難であってもそれはやらなければならぬことだと思います。  実は医者の養成に金のかかる問題についてお尋ねしようと思いましたが、時間がなくなりましたのでやめますが、ぜひそういうことで、今日の国民の医療に対する不均衡の問題と、地方財政の上に大きな負担をかけているこの問題については、厚生大臣がしっかりしていただけば解決のつく問題でありますし、ぜひそういう世論を巻き起こすように御努力をお願いしたいことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  342. 松野幸泰

    ○松野(幸)主査代理 次に、正示啓次郎君。   〔松野(幸)主査代理退席、主査着席〕
  343. 正示啓次郎

    ○正示分科員 きょうは私は上水道の問題、飲料水問題にしぼって、三十分間、厚生大臣をはじめ関係各省の担当者においでをいただいておりますから、御質問をいたしたいと思います。  まず厚生大臣、けさほどの朝日新聞に「広がる水不足上がる原価」、こういう特集があったことはお読みだろうと思いますが、いかがですか。これは上水道の主管大臣として非常に大事な記事だったのですが、御存じですか。
  344. 内田常雄

    内田国務大臣 中までは読みませんけれども、ちょうど私は電気の問題とたいへんよく似た問題だということで、その見出しに注目をいたしました。
  345. 正示啓次郎

    ○正示分科員 そこで、経済企画庁見えていますか――私はこの中にたいへん大事なことを書いていると思うのです。これは日本のこれからの水の確保、このために非常に大事なことを書いておると思うのですが、「水利権の対象となっている水は農業用が年間約四百億トン、工業用も含む都市用水用が約二百億トン」、こういう記事がありますね。これは経済企画庁の担当者は、水資源の総括としてどうですか。たいへん時間がないから、スピーディーに簡潔に答弁を願います。
  346. 岡部保

    ○岡部(保)政府委員 ただいまの先生のお話でございますが、私、まことに申しわけございませんが、数字的にただいまこの根拠になります数字を持っておりません。
  347. 正示啓次郎

    ○正示分科員 それはいかぬな、そういうことでは。農林省来ていますか――いま御無知のように、米の生産制限、水田転換ということが行なわれていますね。この間農林部会で私は党のほうへこの点を話をしておきましたが、きょうの朝日新聞の特集にも、これからは農業用水はだんだん減っていく。水田転換ですから、米を減産するのですからこれは当然のことですね。そうしてそれを都市の飲料水、工業用水、そういう方面に回さなければいけないけれども、ところが農業用の大半は法以前の慣行によるものである、これは非常に複雑怪奇なる水利権があるわけです。これの整理ということについて農林省は将来の水の需要を見て、農業用から、水田の分はだんだん減っていくから、工業用水に回せるということで努力していますか。また見通しを持っていますか。
  348. 住吉勇三

    ○住吉説明員 ただいま御指摘ございましたように、最近の水需要の事情が非常に逼迫しておりますことは御指摘のとおりでございまして、農林省といたしましても、ただいまお話のございました農業水利権の合理化ということに極力努力をしておりますが、何ぶんにもこの慣行水利権というのは非常に慎重な検討を要する問題がいろいろございますので、農地局といたしまして、四十四年から学識経験者の御参集をいただきまして、農業水利問題研究会というのを発足いたしまして、現在検討をいたしております。また部内といたしましては、農業用水合理化対策調査という調査費を計上いたしまして、ちなみに四十五年は一千七百万でございましたが、明年度は五千二百万というふうな予算を……。
  349. 正示啓次郎

    ○正示分科員 経済企画庁は担当者は来ていないとかいうけれども、いまのような問題、限られた水資源を農業用から工業用あるいは飲料水用にどうして振り向けていって、新しい水資源をどうして開発していって、将来の需要に応じていくかということは、一番大事な点なんです。これは佐藤大臣と至急にやって、そういうことの総合的な計画をつくっていますか。
  350. 岡部保

    ○岡部(保)政府委員 ただいま仰せの問題、私どものほうで水資源の開発を促進する意味で、五大水系につきましての水資源の開発計画を立てております。その際に、水の需要と供給という問題につきましていろいろ各省と御相談し、あるいは各地方公共団体と御相談し計画を立てるわけでございます。その際に、いま先生のおっしゃいましたような問題点について、われわれとしても努力をいたしているわけでございますが、現在必ずしも満足した段階ではないのであります。
  351. 正示啓次郎

    ○正示分科員 どうするんです、水がなくなったら。これは物価問題のような、ただ値が高いという問題ではない。水が絶対的になくなったら一体どうするのです。
  352. 岡部保

    ○岡部(保)政府委員 ただいまの御質問ごもっともでございまして、新しい開発をしていくあるいはダムをつくる、あるいは水道用水をつくるというような施設だけではございません。水のもとの問題が非常に大事でございます。これをできるだけ有効に利用するように努力はいたしているわけでございます。
  353. 正示啓次郎

    ○正示分科員 そんなのんきな問題じゃない。あなたは東京大学教授の石橋多聞さんの「飲み水の危機」というのを読んだですか。
  354. 岡部保

    ○岡部(保)政府委員 読みました。
  355. 正示啓次郎

    ○正示分科員 大臣読みましたか――このくらいの、いまや物価問題だけで経済企画庁長官は四苦八苦しているけれども、物価の問題はとにかく金さえ出せば何とかいくのです。しかし水が絶対的に枯渇したらどうするのです。そういうことを考えていますか。
  356. 岡部保

    ○岡部(保)政府委員 先生のおっしゃるとおりだと思いまして、たとえば開発計画といっておりますけれども、水が枯渇いたしましたら、事実上の開発が全然できないということは十分認識しておるつもりでございます。
  357. 正示啓次郎

    ○正示分科員 それじゃいまのようなのんきな答弁になるはずはないですよ。もっと急いで、この石橋多聞先生の書いたようなことを頭に入れて、ことしの予算でもこういうふうにやっています、さっき農業用水についてはある程度のことをやっているような答弁だったけれども、これはたいへんなことですよ。一般の識者はそういうことをあまりよく知らない。だからきょうの朝日新聞がこういうふうにこれを取り上げてPRしておるということは、私は、非常にタイミングもよく合って、タイムリーだった、こう思うわけですよ。  そこで、まず東京都の水の問題でございますが、これについては、いつまでの手当てができておるのですか。これはひとつ厚生省水道担当の専門官から聞きたい。
  358. 浦田純一

    ○浦田政府委員 東京都の水資源の開発計画は、昭和五十年までの計画でできておるわけであります。
  359. 正示啓次郎

    ○正示分科員 五十年までは心配ないということの需給計画はできているのですか。
  360. 浦田純一

    ○浦田政府委員 ほぼ五十年までは心配ないという計画であります。
  361. 正示啓次郎

    ○正示分科員 それは下水を飲ますんでしょう、多摩川の下水を。そして、いわゆる水質基準さえ通っておれば下水を飲ましてもみんながまんしろ、こういうことでしょう。そうじゃないですか。
  362. 浦田純一

    ○浦田政府委員 多摩川水系の水の汚染が非常に進んでおるということは確かに事実でございます。また、多摩川水系の水を源水として使っておるということも事実でございます。しかしながら、多摩川水系の問題の起きます水は下流のほうのものでございまして、それの東京都全体の給水量に占めまする割合は、一〇%前後のわずかなものでございます。これらにつきましては、もちろん源水は非常に清潔であればあるほどよいわけでございますけれども、十分に衛生的な前処理なり、あるいは薬剤の投入、活性炭の使用というようなことで、遺憾なきを期していきたい。また、場合によりましては取水量を制限する、場合によったら停止するといったようなことでもって対処したい、このように考えております。
  363. 正示啓次郎

    ○正示分科員 これはあなた、わずか一〇%だとかなんとか言うけれども、その人たちに、あなたは下水を飲んでいるんですがと言ったら、たちまち――これは厚生省だからお医者さんもたくさんおられるでしょうが、厚生大臣、そういうことになると、みんなすぐ吐きけを催しますよ、心理的にね。ところが、それを飲ませないと足りないということが今日の東京都の――これは大阪も同じような問題がありますが、私は東京都に局限して、ここでひとつ石橋多聞先生が言ったことを強調しておきたい。私は建設の理事をやっておりますから、建設委員会でこれをやろうと思うけれども、上水道問題は厚生大臣のところでございますので、きょうはこうして予算分科会で特に厚生大臣の時間をいただいてやっておるわけでございます。  先ほど、経済企画庁から、水資源の開発についていろいろやっておる、こういう話もありましたけれども、建設省の係官がおいでになっておると思いますが、建設省は、先般の公害国会において、下水道のほうは相当力を入れて立法もした、また、四十六年度以降の予算においても下水道整備計画をやりましたね。ところが、下水のもとは、幾ら下水をやっても、水がなくなったら、これはたいへんなんです。そこで、上水を確保するということがまず先行しなければならぬ。この上水の確保について、いまお聞きになっておられて、河川局の関係おられると思うが、日本でダムをつくるということはたいへんなことなんですね。この石橋さんの本を読んで見ると、いわゆるダムの効率あるいはダムの耐久力――この間ロサンゼルスの地震で、ダムが破壊されたということも報ぜられていますね。そういうふうなことを考えながら、建設省の河川局のほうにおいては、日本の飲料水なり工業用水なり、これからふえていくそういう水資源の確保ということについて、万全の措置がとられておるというふうに考えますか、どうですか、その点を伺います。
  364. 宮崎明

    ○宮崎説明員 ただいまお話しの点でございますが、私ども、前に四十三年でございますけれども、全国の水需給の見通しということで、六十年目標の水需給のおおよその見通しを発表してございます。それに基づきまして、現在、いろいろ水源開発、特にダムの建設等につきましてかなり広範な調査を実施してまいりました。現在約二千ほどのダム地点につきましての概略の調査を実施しております。先ほど御指摘のございました六十年時点の水需要を見詰めますと、今後全国で数百のダムを建設していかなければならないというような試算になるわけでございます。補償等の問題、たいへんむずかしい問題がございますけれども、積極的にダムの建設を推進しまして、何とか水の需要にこたえていきたいというふうに努力しております。
  365. 正示啓次郎

    ○正示分科員 今度のロサンゼルスの地震で、ロサンゼルスというところは、御承知のように、長期にわたる水を確保するために、アメリカは膨大な計画をやりましたね。そういうことからいっても――しかし、ダムに地震が来ると、ひび割れができておる、非常な危険な状態だと避難させましたね。そういうことを考えながら、小河内のダムとか、東京に給水しておるいろいろなダムについて心配ありませんか。
  366. 宮崎明

    ○宮崎説明員 ダムの安全性につきましては、関東大震災以上の地震にも十分耐え得るということで、そういう設計条件ですべて実施しております。特にアメリカの場合、あれはロックフィルタイプのダムでございますけれども、わが国でも十四、五、フィルタイプの大きなダムがございます。これらについても十分なそういう、先ほど申しました関東大震災以上の地震にも耐え得るという条件でやっておりますので、安全だと思っております。
  367. 正示啓次郎

    ○正示分科員 厚生大臣、いまお聞きのように、上水道確保という責任厚生大臣が持っておるわけですね。ところが、これの水源を開発するとか全体の水資源をどうするかという問題になると、経済企画庁とか農林省あるいは建設省、こういうことになるわけです。これで厚生大臣責任をお持てになりますか。
  368. 内田常雄

    内田国務大臣 私が黙って厚生省水道行政を見ておりますと、まず飲料水に適する水質基準を確保するということに第一の重点を置いているようでございます。ところが、いま正示先生が御指摘になるように、人口の都市集中はある、また下水道は二兆六千億の計画をやりましても、すぐにきれいになるわけではございませんので、いままで水源として引いておった多摩川をはじめ、それらの水質がよごれてくるというような問題になってまいりますと、厚生省はその水質基準のことだけを行政対象としているのではなしに、どこから水を引いてくるかということに当然関心を持ち、また計画を立てざるを得ないことになってきていると思います。  そこで、水道につきましても、今日では、予算を幾組か、簡単に申しますと、二組とりまして、一組のほうはダムをつくるための予算に対する負担金予算、それからまた、もう一つは、遠くから水を引いてきて、それを各町村に卸売りをするための広域水道計画、こういうことを助成するための予算、単にいままでのような簡易水道を小さいところへつくるとか、あるいは水質基準に合う水をつくるために上水道をどうするとかいうこと以外に、そういうことに実は入り込んでおるわけでございますが、それはまた、同時に、建設省の行政あるいは経済企画庁の行政あるいはまた東京都知事の意欲というようなことにも関連があるわけでございますけれども、私は、厚生大臣としては、いまのようなお尋ねを受けますと、水質ばかりでなしに、水の供給源につきましても考えてまいるということを行政対象としてまいるべきだと考え、また一部はそれに踏み込んできておるわけでございます。
  369. 正示啓次郎

    ○正示分科員 時間がありませんので……。  東海道メガロポリス、太平洋ベルト地帯、これは厚生省の人口問題研究所の研究によると、たいへんな――四十二年だそうですが、三千七百万人という給水人口、そして一人一日三百五十七リットルだ。ところが昭和六十年になりますと、給水人口は五千八百六十万人、水道の普及率も九三%に上がっている。一人一日四百リットルの水を使う。こういうことでこれはもうとてもとてもたいへんだというのがこの石橋多聞先生の水道のピンチ、水の危機に対するものです。それから東京都については、一九七二年以後は全然見当がつかぬ、こういうことです。そこでいま厚生大臣お話の中にもいみじくも言われたように、どうも東京都の知事と――これも東京都民に対する責任を持っておるわけです。ところが厚生大臣は、そういう東京都の知事の御意向云々ということはあるが、これはなかなかぴったりといっていない、こういうことだと思うのですね。その辺は非常にむずかしい問題になってきておると思うのであります。  ところで、こういう水の需給に関する全体の状況をバックグラウンドにいたしまして、東京都内あたりでは、たいへんな水の乱費が行なわれているということですね。これが石橋先生の家事用、工事用、大口使用者例、こういうことをこの間書いておられるわけです。これは特に何々公社柏木寮とか何々公社戸山寮とか、あるいはどこそこの株式会社の寮、名前だけはずっと伏せておられるが、これは学者のエチケットで伏せておられるのでしょうな。そこで先ほど申し上げたように、現在の使用量というものは、まあ時間があれば一問一答でいきたいが、時間がないから申し上げますが、とにかく百五十とか二百というふうなところへ、浪費、一日に五百リットル使っておるというのです。厚生大臣、これはどういう原因かというと、これもお答えをもらうと時間がかかりますが、これは結局各人が負担してないからですよ。みんな親方日の丸で、寮の負担で水道を使わしておるから、漏水、むだ使い、これがたいへんなものです。覆水盆に返らずと昔からいいますが、こういうふうにむだ使いした水は流れ去ってしまうのですよ。そうでしょう。そこで、きょう大蔵省から主計局と国税庁から来ておると思いますが、まずこういう公社の負担で寮に住まっておる者に、水をどんどん使わしておるのかどうか。またそれに対してこういう貴重な文献が出たならば、これは非常なる警告と受け取って、きびしく規制していく考えがあるかどうか。同じことが各会社の寮についてもいえるわけです、福祉施設として。税金を取るときにそんなルーズな使い方をしたものを認めて、そうして依然として世界一の水の浪費ですよ。たいへんなこれは資源のウェイストだと思うのです。そういうことを国税庁は各会社にやらしておるのか。これからどうするのか。主計局と国税庁の答弁を求める。時間がないから簡潔に。
  370. 相原三郎

    相原説明員 実態は必ずしも明らかでございませんが……(正示分科員「これを読んだか」と呼ぶ)読んでおりません。構造とかいろいろ利用目的が違う。ただ筋としては、当然先生がおっしゃいますように、専用部分については個人負担ということでございますし、また一般的にもそうなっておるだろうと思っております。さらに実態を調査いたしたいと思っております。
  371. 正示啓次郎

    ○正示分科員 だめだよ、そんなことじゃ。大蔵省そういう答えをするから、あの緊急なる物価問題も、検討します検討しますということで逃げておる。このところ水道の非常なピンチだ。「飲み水の危機」ですよ。これさえ読まずにやってきて、検討しますなんて、何だ。だめだ、そんなことじゃ。これは責任重大だよ。あなた、公社のそういう施設をする者として、じゃんじゃん水を使いっぱなしにしたり漏水が起こっても――これは厚生大臣だって私は責任あると思うんだよ、上水の確保については。しかし、とにかく時間がなくなってしまうんだなあ、つらいな。国税庁どうだ。
  372. 中村平男

    中村説明員 会社の寮や社宅の水道費あるいは光熱費を会社が負担した場合には、その負担を受けた個人がそれだけの給料をもらったということにして課税をすることにしております。したがいまして、会社の側では、その費用水道費ということで経費になるのではなくて、給料としての経費になってくる。その場合に、役員などにつきましては報酬とした額のうちで経費にならない部分もあるかもわかりませんが、そういうものを除いては会社の経費に一応なっております。
  373. 正示啓次郎

    ○正示分科員 中村さん、そういう考え方だと、ちょうど交通事故が保険にかかっているから銭さえ出せば解決するんだということで、一つも交通事故減らぬでしょう。私は、交通事故を減らすためには、違反をしたら会社の社長だって青い着物を着せて清掃事業でもやらしたらいいと思うんだ。いまのように、会社負担だからと天下国家の資源をむだ使いをしているようなやつには、そういうやり方、個人の負担で取って、会社には何ら痛痒を感じさせないということでなくちゃいかぬですよ。そこの問題は、いまの公社の問題も同じだと思いますが、もう少し考えてもらわなければならぬと思います。  そこで結論に入ります。水資源の開発の問題にしても、下水の浄化の問題にしても、大部分はわがおひざ元の東京都の問題が多いのです。大阪にも問題がありますけれども……。ところが東京都の知事さんと厚生大臣とは、ちょうど私は物価の連合審査で申しましたように、意思が疎通しないんだな。野菜の価格の問題、野菜の確保の問題、あるいはいまや、美濃部さんは物価の美濃部といわれておったが、物価の美濃部という以上、物価を下げる美濃部さんでなければ意味がないんだな。ところが物価の美濃部で当選してから盛んにいわく、どうも物価問題は大部分は都知事の権限ではできません、政府協力がなければできませんということで言いのがれをしておることは、皆さんのお耳にも入っておると思う。それじゃ水道の問題について厚生大臣と緊密に連絡しておるかというと、してない。建設大臣ともしてない。農業用水で農林大臣ともしてない。ここが問題です。それから、私は名前を言うとあいつは選挙応援だといわれるから言いませんが、われわれが知っておる候補者は、地震の問題についてこれはたいへんだ、それでロスアンゼルスに飛んでいって、帰ってきてこう言っておる。地震の対策としてはどうしても空地を確保しなければいかぬ、緊急避難の公共用地を確保しなければいかぬということを言っておる。これはまさにそのとおりだと思う。そこでいまや問題になっておるところの国有農地の問題を、東京都が防災計画を立てて、まずああいうものは優先的に確保してください、これを政府に言うべきです。そういうことを言ってこない。そういうふうに東京都との間が非常に意思相疎通してないということは、私は都民の不幸――物価にしても、地震の問題にしても、水道の問題にしても、これは不幸なことだと思う。きょうも京都の市長選挙で負けた。あれは五九%しか投票してないんだ。残りの四九%が投票したら問題にならないんだ。――笑いごとじゃないんだ。真剣な問題だ。  そこで私は、きょうは自治省が来ていると思うからここで申し上げたい。こういう重要な都民の生きるか死ぬかの問題、都民の幸福に直接つながるあらゆる問題、そういうものについて、ミーちゃんハーちゃんが、あるいはいわゆる政治無関心層がたくさん棄権するから、そこで政府と意思の合った都知事が出ないというために、そのギャップのために非常な不幸が都民の上に襲いかかっておるわけだ。そこでこれは――自治省のどなたか、見えておりますか。
  374. 登坂重次郎

    登坂主査 行政局長が見えております。
  375. 正示啓次郎

    ○正示分科員 私は、いみじくもアメリカのディストリクト・オブ・コロンビア――アメリカの首都はワシントンです。アメリカには五十州あります。しかしディストリクト・オブ・コロンビアは、これは州ではない。大統領がかわるとあそこの治安があまりよくないというようなことを言っておられたが、すぐこれは大統領の直接の責任において、このコロンビアの問題は、特別区の問題は処理されておる。こういうことは一つの他山の石として私は大いに参考になると思う。また、それをやらなければ日本国民は不幸だ。物価の問題だって、大部分は東京の問題なんだ。それを連合審査会においてきめ手が発見できないということは、日本の政治がそこに大きな、いま申し上げたような欠陥を持っておる。だから、そのはね返りとして都民は非常な不幸と地震に対する不安と、そして上水道のピンチという抜き差しならないものに直面させられておるのだ。そこでどうすればいいか。これは大きな制度の問題であるけれども、他山の石として参考にするとともに、近寄った選挙においては、四一%の京都の市長選のような棄権はなくして、りっぱにわれらの中央政府と意思の合う知事をあげるということが先決問題であり、これがすなわち物価問題解決のきめ手であり、実効であると私は思う。どうぞ自治省の局長答弁をいただきます。
  376. 宮澤弘

    ○宮澤政府委員 制度の問題とそれ以外の問題のお話がございましたので、制度の問題につきまして御答弁させていただきます。  水の問題につきましては、一昨年から昨年にかけまして地方制度調査会でもいろいろ議論がございました。その議論の中で、ただいまお示しのような、直轄にすべしというような議論も一部にはございました。ございましたけれども、やはり大多数は地方自治というものを基礎にした構造にすべしという議論になったわけでございます。私どもといたしましても、いま日本の自治制度の中で、そういう直轄的なものをつくるということは、憲法の趣旨の問題もございまして、きわめて重大な問題でございまして、いま直ちにここで御賛成を申し上げるというわけにはまいらぬ大きな問題でありまして、研究問題としてよく頭に入れさしておいていただきます。
  377. 正示啓次郎

    ○正示分科員 憲法の問題というのは、みんな防衛の問題とか大きな問題に限って言っているが、日常の都民生活の問題でさえも解決できないような、そういう点を大いにわれわれとしては考えて、都民の自覚を訴えていかなければいけないということを、厚生大臣以下の政府の皆さんに、これは水道の問題一つ取り上げても、この解決のためには非常に大きな問題をはらんでおるということを、きょうは一つの問題から浮き彫りにいたしまして、この点の皆さんの御注意を喚起いたしまして、私の質問を終わります。
  378. 内田常雄

    内田国務大臣 正示先生ももちろん御承知だと思いますが、この「飲み水の危機」という、正示先生が推奨せられましたこの本、水源の危機を訴えておりますこの本の著者の石橋多聞という人は、現在東京大学の都市工学の教授なんですが、厚生省の前の前の水道課長でございます。それだけの人間を厚生省の代々の当局は持っておるということを御認識いただき、東京都のほうにも数百冊買っていただきますようにお願い申し上げます。
  379. 登坂重次郎

    登坂主査 寺前巖君。
  380. 寺前巖

    寺前分科員 私はきょうは、公害にかかわる健康被害の救済に関する法律ができて一年になります。一方、臨時国会では公害の問題について、世界最大の公害をもたらしたその原因が、例の生産、経済の上昇と相関連して対策を組まなければならないというところに法律上の問題があるということから、あの臨時国会においてこれが修正されるという状態になってきた。こういう立場を考えてみるときに、あの臨時国会で、この被害者の救済の問題に対するこれの処置の問題についても、考え方の出発点が明らかに前の時代の考え方の上に立脚している法律であるということから考えても、また現実から考えても、これについては一定の修正をしなければならない段階に来ているのではないか。おそらく大臣も検討しておられると思いまするけれども、私はこの問題についてきょうは聞いてみたいと思います。  実は私の手元に、神奈川県の川崎市の中山長助さんという六十八歳の方と、沼尾操さんという、これもお年寄りの方ですが、公害病認定患者に私をしてくれというんだけれども、地域指定からはずされているために、ならないのだ。何で私はならないのだろうか。一歩道が違うたならば何ではずされるのだろうか。私に被害を与えた人はだれか。大気を汚染させているその工場の生産にある。にもかかわらず、自分自分の身を自分処理していかなければならない。被害を受けておって、こんなばかな話はないということの訴えを聞きました。  そこで私は大臣にお聞きしたいのですけれども、まず第一番目に、おたくのほうから昨年の十二月に、全国の指定地域のSO2による大気汚染のデータというのをいただきました。これを見ますると、現在指定されているところの大阪市の西淀川区、四日市地区、川崎地区、尼崎、これ以外のところでもたいへんな事態が発生しているということがこの数値の中から明らかになってきます。  たとえば北海道の室蘭を見ましても、政府が指定しているところの基準から比べてみて、〇・〇五PPMと比較してみて、年平均室蘭は〇・〇六四で、緊急時というのは五十二日も一年間に出ております。また埼玉県の鳩ケ谷を見ましても、〇・〇七五、五十四日間の緊急時が出ております。東京都の糀谷の例を見ますと、〇・〇八五、七十九日の緊急時という問題が出されております。そして大阪のタワーのところを調べてみますと、〇・〇九五、九十三日緊急時が出されておる。まさに四日に一度緊急時という事態が発生している。  いまあげました例は、単なる皆さんのほうから出されている資料の一部分ですけれども、こういう緊急時が、指定地域の以外においてもたいへんな事態が発生している。したがって、それらの地域におけるところの大気汚染の被害というのも、あわせて大きなものがあるということは当然だと思います。そういう意味において、厚生省のほうで大気汚染の被害状況について、現実これらの緊急時がこれだけになっており、あるいは国の平均以上の地域においてどういう事態が発生しているかということをお調べになったことがあるのかどうか。もしお調べになったとするならば、今度は公害病の認定取り扱いの指定地域の問題において変更しなければならぬという事態の検討がされているのかどうか、その点について最初に聞きたいと思います。
  381. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 汚染地域のうちで、特にその汚染度の著しい地域についていろいろと調査をしておりますが、先生お尋ねの御趣旨が、環境基準を越えるようなすべての地域を統一的にやっておるかということであれば、私どもは汚染度の高いものを逐次実施するということでございますので、すべての環境基準に不適合地域ということではなしに、逐次年次的にやってまいりたい、そういう考えでございます。
  382. 寺前巖

    寺前分科員 緊急事態が発生しているというような状況のもとにおけるその地域の環境、その健康状態を緊急に調べるということは、私は当然のことだと思います。これを逐次これからなんということを言っておったら、実際国民の期待に沿わないじゃないですか。  私は具体的に川崎の例でもう一度提起をしてみたいと思います。川崎では、現在指定されている二つの地区があります。この二つの地区を合わせて、十八日現在、三百五十二人が公害認定病として認定されております。その中には、死んだ方は八人も発生しております。ところが、国民健康保険の被保険者の状態を調査し、そこから公害認定病にされているところの疾病を取り上げていってみると、これがたいへんな数字になる。これを国民健康保険だけじゃなくてほかの保険の状態も推定してみると、おそらく一万人になるんじゃないか。一万人からの人の中で現実に認定されているのは三百五十二人であまりにもひどい差ではないか。これは川崎の市長もそのことを認めておりますし、これは検討しなければならないということを言っております。しかも、川崎市の疾病患者とその対象者に対する割合というのを昨年の六月に調べております。この資料を市当局からいただきますと、現在指定されているところの大師という地区と田島という地区におけるところの公害の疾病にかかっている割合というのは、平均数にしますと百四・一人に一人が大師です。田島地区は百十三・九人に一人です。ところが中央というところを見るとそれよりも高い九十八・五人に一人ということになっております。あるいはまた御幸というのですか、この地域を見ると八十三・二人に一人ということになっております。山手の稲田というところを見ると七十・一人に一人という数字になってきます。指定されている地域よりももっと高い地域がある。しかもこのもっと高い地域の人が、私のところになぜ認定してくれないんだということで泣きついてきているんじゃないですか。こう考えると、私はどうしても現在行なわれている指定地域には問題がある。緊急にそれこそ拡大するという処置をとらなければならないという事態が発生しているというふうに思います。この件については川崎の十二月十六日に開かれた第五回の市会の定例会においても市長が答弁しております。これは国のほうにおいて緊急に処置してもらわなければならない、国がやらないんだったら川崎市長としても責任をとらなければならないということを言っております。私は、市民に責任を持つ立場の市長にすれば当然のことだと思います。大臣、いいですか、極端な事態が現に発生していることを、市民に責任を持つ市長が提起しているんです。そうすると、緊急にこれらの極端な被害が出てきているという大気汚染の地域について、今日まで、これからぼちぼちやろうという態度をとっている厚生省自身の責任は重大だし、また被害者に対して緊急に指定地域の改善をやらなければならないという、この数値に対しても、市長の気持ちから見ても緊急に処理をしなければならない事態が来ているのになぜやらなかったのか、私はふしぎでならないのです。大臣、この問題はどうでしょう。
  383. 内田常雄

    内田国務大臣 私は淡々としておる人間でございまして、この公害による疾病救済の地域の指定につきましては、法律上の要件に合致する限りやれるところはけちけちしないでやったらいい、ほんとうにこう考えております。その要件というのは、いまお述べになったところにもたびたびおことばがございましたが、大気の汚染が著しい状況にあるということと、それからその地域において現実にその影響による疾病が多発している、こういうような状況があります限りにおきましては、一ぺん線を引いたからその向こう側まで線を広げるのにちゅうちょするということでなしに、地元と打ち合わせて、そして必要な限度においては地域を広げてまいるということがこの法律制度の趣旨であろうと思います。ただ、都道府県知事の意見を聞かなければならないことになっておりますので、これもけちな手続みたいなことでございますけれども、川崎の市長さんが神奈川県知事ともお打ち合わせになって、県としてもそうだ、こういうようなお申し出をいただければ、私のほうでも地元の調査をでき得る限り信用したい、また足りなければ補足調査もしていただいて追加指定をいたしたいと思います。これはしかし川崎だけに限る問題ではございませんので、もはや今日では東京、川崎、横浜、私などの感覚では連なっているように思いますので、川崎市の区域をはみ出たって一向かまわない。これは大阪などについても同じでございます。年末、川崎などを追加指定いたしましたのもその趣旨でございます。ただ室蘭がはたしていま申し述べましたような二つの要件に該当をしてそういう公害病が多発しているかどうか、あるいは八戸についても同じ問題がございますし、富士市などについても同じ問題がございますが、そこの地域を私どものほうは特に避けて通る必要もございませんので、私は淡々とした気持ちで、繰り返しますが、必要な条件が満たされます限りあの地域の指定もいたしてまいりたいと、かように思います。
  384. 寺前巖

    寺前分科員 それじゃ局長に聞きましょう。大臣は率直に淡々たる気持ちで、多発地域で、しかもこういう被害の及んでいる事実がわかっておるときはどんどん広げたらいいという問題を提起されておられる。ところがあなたのさっきの答弁では、私は具体的に、あなたのところの資料に基づいてこれらの地域について健康調査をやって、指定を拡大する積極策はどうなんだということを聞いたときにはそうじゃなかった。あなたはいま大臣答弁を聞いてどういうように思います。  さらにもう一つ、川崎の市長は厚生省にも相談をしたと言っています。あなたは川崎の市長の提起された問題に対してはどういうふうに思っておられます。  私はこの二点について聞きたいと思います。
  385. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 第一点のお尋ねにつきましては、私が申し上げましたのも消極的な意味で申し上げたのではございませんで、おのずから汚染度の高い地域から順次、ただしその場合に、大臣のお考えは私ども実は昨年からよく伺っておりますので、できるだけ前向きの姿勢で、できるだけ広い地域を調査対象として取り上げるようにということでございまして、ただ形式的には環境基準違反というようなところを全部というところまでは、いっていないということでございます。  それから第二点の問題でございますが、おっしゃいますように、確かに川崎の大師あるいは田島地区に比べまして、最近の数字で見ますと中央保健所管内の汚染度が相当ひどくなっております。また地元の市長さんのそういう要望も承知しておりますので、この点につきましては早急に調査を始めてみたいと思います。
  386. 寺前巖

    寺前分科員 それじゃすでにいままで四日市とかその他の地域において市で独自に指定をして、同じような認定扱いをしておるところがありますね。明らかに市長さんみずからが同じように扱わなければまずいのではないかという、直面してこられたこれらの問題についても再検討しますか。
  387. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 国の制度とは別個に、地方公共団体限りで制度を発足させておるところもございます。その場合には、私どものほうにそれを地域指定として、していただきたいという希望もあるところもございますけれども、少なくともいままでのデータでいいますと、たとえば富士等の場合、いままでの既存の指定地区の汚染度に比べますと多少そこに差はございます。先生御承知のように、単にある年度だけのSO2団ならSO2の濃度が非常に高いというだけでは、必ずしもこの制度対象にはなりませんので、やはり疾病の発生と結びつけた濃度ということになりますと、それはやはり一定の期間そういうものが続く、またSO2以外にたとえばばいじんでありますとかあるいは浮遊粉じんというような、その他の大気汚染物質等の問題も考えなければなりませんので、各地方で発足したから直ちにそれが国の制度に切りかえるわけにはまいりませんけれども、先ほど大臣の御答弁もございましたように、気持ちの上では少なくとも来年度以降前向きにこの問題に取り組んでいきたいというふうに考えております。
  388. 寺前巖

    寺前分科員 それではもう一つ、私のところに川崎市の方から同じような問題が提起されたのです。それはどういう問題かといいますと、いま指定地域の問題を言いましたが、今度は公害病に認定されている方の問題。その公害病に認定されている方が川崎市の川中島という地域に住んでいる五十二歳の方なのですが、大田区の町工場で働いて、長い間慢性気管支炎に苦しんできた、四十四年の八月から病状が悪くなって働きに行くことができず休んでおる、ついに昨年の五月に会社を退職しなければならないという事態までになってきた、現在奥さんが働きに出てやっと生活をささえている。これはこの方に限らず、私はここへ行ったときに似たような例の人をたくさん見せつけられたわけですよ。考えてみると、いまの医療のあの救済措置――実際に本人は何も悪いことをしたわけじゃないのです。結局地域の大気が汚染したところからそういう事態になってきている。ここから離れたところに住めないという、今度は生活上の事態もあったわけです。これは川崎の区役所で聞いてみたら、田島地区というところは昭和四十一年の一月には七万六千六百九十六人おったものが、四十六年の一月になると六万八千三百九十一人、五年間の間に八千人から一万人の人が減っている。だから、飛び出していける人はまだよかった。飛び出していけなかった人の生活の問題、そう簡単に出られない、そしてそこでそのままの姿で病気をどうしてなおしていくかという事態、そしてついに動きがとれなくなってしまったという、こういう人。考えてみたら、結局この人にとってはどうして生活保障をしていくかという問題ですね。あるいはこの地域から逃げ出さないことにはやっていけないとするならば、移転を補償するところの責任を、いわゆる公害として持ってやるという問題とか、そういうような問題を考えないことには、生き延びることすらあぶないという事態がこれらの地域でいま発生しているのではないか。私は現在の医療上の救済問題をめぐっても――まだほかに問題はありますよ、あるけれども、認定患者でさえもその問題を含んでいる。大臣、これについて検討を要する段階にきているというふうに思われるのか、その点の御意見を聞きたいと思います。
  389. 内田常雄

    内田国務大臣 これは私が答えるのがいいのか、専門家が答えるのがいいのか、私は知っているところだけ答えさせていただきますが、問題は二つあると思います。  一つは、いまの法律のたてまえが、御承知のように医療費と、それから医療手当と、それからせいぜい状況の悪い方に対する看護料というものだけを見るが、生活保障までは見ない、こういうたてまえになっておりますこと、御承知のとおりでございますので、生活保障につきましては、その人が生活できない場合には、他の原因によって生活困難におちいった方々と同じように、生活保護で見るとかあるいは世帯更生資金の貸し付けをするとかいうようなこと以外に現在のところは方法はない。なぜ方法はないかと申しますと、この制度公害についての発生原因者の有効なる補償が行なわれるまでのつなぎの制度ということになっておりますことも御承知のとおりでございまして、これが最終的の保障の措置ではございません。また中央公害審査委員会というようなものもことしになりまして発効いたしまして、訴訟では長くかかるという方々が、この中央審査委員会に事案を持ち出しまして、健康のみならず、生活保障の問題までも含めた仲裁といいますか和解といいますか、そういう措置を求めることもできることになりましたので、それらによりまして、何らかの救済措置が講ぜられるまでの間のつなぎ、こういう趣旨で、当面最も必要な、とにかく病気の手当てだけということでこの制度ができておりますということをあらためて申し上げますことが第一点。  それから第二点は、その方がからだが悪くて、ここにおるとかえってよろしくない、どこか信州のほうにでも引き揚げたい、こういうふうな場合が私はあろうかと思います。たしかその場合には、その地域を引き揚げて三年間までは医療費などのめんどうを見る、あるいは医療手当などのめんどうを見る。しかし三年以上たった場合には自然消滅で、医療費などのめんどう見ができなくなるということに現在はなっているはずでございます。しかしそれは、これも淡々と考えまして、実際にそれが大気汚染による病気に基づきます場合には、よそへ引っ越したら三年しかめんどうを見ないということではなしに、その医者が証明する限りにおきましてはもっとそれを延ばすというような、そういう検討をしてもいいのではないかと私は思うものでございますので、これは、そういうことをやりますとそれだけ金がかかりますから大蔵省が何というか知りませんが、大蔵省と交渉するように担当者に言いつけたいと思います。
  390. 寺前巖

    寺前分科員 大臣が淡々として積極的にやりたいという問題を提起しておられるついでに、それではもう一つ淡々として、被害を受けた人、これは過渡期の問題だ、こうおつしゃいましたね、つなぎだとおっしゃった。ほんとうに主人なりおとうさんなりをなくされた方、残された遺家族、一切これは資本の生産活動の被害として受けた問題ですから、当然この補償問題というのは考えなければならない問題でしょう。つなぎだけでは済まない問題です。だからそこまで責任を持つように、私は医療上のつなぎだけではなくして、建物の面においても農作物の面においても、それから遺族補償の問題とかそういうものにおいても、もっと全面的にこの被害を受けた問題に対する救済制度というのを無過失賠償に基づく方向でつくり上げる必要があるのじゃないか、大臣はこの問題についてどうお考えになりますか。
  391. 内田常雄

    内田国務大臣 無過失責任制度を前向きで検討する必要が私はあると思います。現に公害担当大臣のほうでその検討もされているはずでございますので、私はそれを期待をいたしております。  それからもう一つは、中央公害審査委員会のほうでは、いまも申しました健康被害だけでなしに、生活保障の問題あるいは亜硫酸ガスで屋根のトタン板が腐ってしまって雨が漏って住めないというような、そういう財産補償の問題等につきましてもそこに持ち出して、そうしてこれは裁判と違った意味で、裁判外の仲裁というのでしょうか和解というのでしょうか、そういう措置をとってもらうことができるような状態がことしから起こったわけで、すでにそこでも何件かの案件を取り上げられたそうであります。しかも、これは私担当でないからわかりませんが、新聞が報道するところによりますと、中央公害審査委員会が、事案の処理にあたっては無過失責任的な考え方を取り入れて、そうした持ち込まれた事案の審査、裁決というのでしょうか、裁定というのでしょうか、それに当たる考え方であるということを述べたということが新聞にも報道をされておりました。したがって、中央公害審査委員会に持ち出されますと、必ずしも因果関係あるいは立証責任あるいは過失の有無というようなことにかかわらず、むしろあなたがおっしゃった意味において、自分責任ではない被害を受けたということに対するあたたかい救済の判定が行なわれるものと私は期待をいたします。  それから第三番目は、これはもちろん被害を受けられた方が、労働災害等で健康を害されたりあるいはまたなくなられました場合には、その労災の系列における救済の方法が遺族にもわたりますことは御承知のとおりでございます。
  392. 寺前巖

    寺前分科員 私は、この問題について、やはり法律を、いまの救済法だけではなくして、法的に、制度的に考えてもらうということを要望しておきますが、あわせて、少し今度はこまかい話になりますが、聞かしていただきたいというふうに思います。  その一つは、この間、カドミウムの被害が出ている安中へ行きましたときに、地域の住民の方から出ていた要望の一つとして、要観察地域だということで健康診断を地域の人にやってくれるけれども、何で治療の責任を持たないのだ、モルモットにされるんですかという意見が出ました。大臣、これについてどういうふうに思われますか。
  393. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 私も、先生方とお供をして現地へ参りましたが、要観察地域における健診は、先生も御承知のように、あくまでカドミウム中毒症というものの発生を防ぎたい、非常に強い予防体制、予防措置として行なっておるのでございまして、したがいまして、幸いにして現在までのところ、すでに指定しております七つの地域からの具体的な患者の発生は、いまのところは見てないわけでございますけれども、そういうわけでございますので、その具体的な疾病の治療というケースではなくて、あくまで、適当なことばじゃないかもしれませんけれども、場合によると、いわば健康管理というようなものをやっておる。疾病の発生を未然に防止する意味で、予防的措置としてああいう観察を行なっているということでございます。したがいまして、地域住民の方の中には、そういうようなあるいはお考えをお持ちになる方もおられるかもわかりません。これはまた、ああいう予防措置の持つ意義というものを理解していただいて、積極的な御協力をお願いしたいというふうに考えます。
  394. 寺前巖

    寺前分科員 それから、もう一つ聞いておきたいのです。さっきも非常に多発地帯の問題を提起しました。現在、公害病認定地域とされている地域の人々に対して健康調査をやっているのですか、やっていないのですか。
  395. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 この特別措置法の指定地域につきましては、そのことだけでその地域住民の全体の健康診査を統一的にやっておるということはございませんけれども、必要に応じまして、県等の要望があれば私どもは指導いたしていきたいというふうに考えております。
  396. 寺前巖

    寺前分科員 私は、大臣に要望したいと思います。さきも言いましたように、明らかに公害病認定患者として指定した地域というのは、それはその地域に多発したという条件がある。したがって、ほかの人はかからないという条件にないということはきわめて明らかでしょう。だから、それらの地域に対して責任を持って、国家がその健康を管理する立場から健康診断をするのは私は当然だと思うし、しかも、先ほど言いましたように、指定地域でないところに今日発生していっている実情から考えて、より広い地域にそういう施策を打って出る必要がある、私はこれは当然の仕事だと思う。  話は変わりますけれども、東京都の南部の学校での調査をしてみました。東京都の諸君に聞きましたら、認定されていない地域の子供たちの状況はどうだと聞いたら、認定病になるところのあの疾病の子供はほとんどゼロだということが報告の中にありました。ところが――これは特定の報告ですけれども……(内田国務大臣「子供が生まれないのですか」と呼ぶ)いや、子供の状況はだいじょうぶだという学校調査です。これに対して、精密検査を幾つかやってみると、南部地域で子供たちに八%という数字が出てくる。そうすると、学校の子供たちの健診のあり方も、大量式の健診のやり方だけではだめだということ、ちょっとメスを入れて健康診断をやったら、あの認定病になるところのあの疾病、気管支をやられるところの疾病がずっと出てくる。こういう事実を考えてみるときに、私は健康診断という問題について、公害病認定地域とかあるいはそれ以外の多発地域においても積極的に打って出る。それは学校の内部におけるところの調査の面において、地域の面において、私は積極的にやらないことには、今日までのあの産業活動の結果から生まれるところの大気汚染に対する、国民に対する責任はとれないのではないか。大臣の見解を聞きたいと思います。
  397. 内田常雄

    内田国務大臣 私とあなたとは政党が違いますけれども、あなたのおっしゃることはもっとものところがあります。それはしかし、どうせ厚生省では、そんな公害で汚れている地域でなくても、母子保健の見地から、妊産婦についてはそういう健康診査をやりまするし、また、乳幼児、三歳児についてもやっております。また、老人についても実は公費でやっておるわけであります。そこで、まん中の抜けている部分があります。抜けている部分を、そういう大気汚染等ですでに患者が多発して、そうして指定地域になっているようなところにつきましては、私は、状況次第で、その抜けているところを埋める努力が厚生省としては考えられるべきことだと正直に思います。そこで思いつきますのは、まず、抜けている三歳児以上の学校学童につきましては、せっかく学校保健法に基づきまする、健康診査とあれは申すのでしょうか、健康診断をやっておりまして、きょうも当委員会で、ほかのじん臓病の見地から検尿をもっとしっかりやれ、こういうお話が出てまいりまして、文部省もそれは考えることにいたしたいというようなお話でございましたので、したがって、そういう認定地域におきまする学童につきましては、あわせて厚生省がやっているいまの乳幼児、妊産婦あるいは老人についての診査と同じような意味の診査を加えたらよろしゅうございますし、また、工場、会社につとめられておられる方々は、これは当然、産業衛生基準の面からそういう検査がございますので、あとは一般成人の市民につきましては、これはもう保健所もあることでございますので、私は、状況によってはそういう――これは方法論まで申してしまって恐縮でございましたが、ただ、私が空空ばくばくと、それはやったらいい、こういうことだけではなしに、やれそうでございますので、やれそうだと私は考えますので、やれるような方向でひとつやってみたいと思います。
  398. 寺前巖

    寺前分科員 時間がきましたので終わりたいと存じますが、公害のそういう地域に対する検査については、一般の工場の定期の検診のやり方ではだめだということです。精密検査をやるという立場でもって責任を負ってもらうようにしていただきたいということを要望して、終わりたいと思います。
  399. 登坂重次郎

    登坂主査 次に、井上普方君。
  400. 井上普方

    井上分科員 先ほど来、ここへ参りますと、どこかの知事選挙の応援演説の予行演習らしきものもあり、なかなかはでなんでありますが、きょうは、私がどうもしんがりのようでございますので、ひとつゆっくりお伺いいたしたい、このように思うのであります。  第一番に、私は三年来伺っておるのですが、厚生大臣、去年私がたしかこの予算分科会でもお伺いいたしましたが、医師の研修指定病院が、昨年の三月段階でしたかにおきましても、不適格な病院を指定しておられたと思います。この不適格な病院はまだまだ、厳密に言うならばあなたの数字の三倍ぐらい出てきたのでありますが、まず、あなたがあの当時お認めになった不適格な病院はどうされましたか。まだやはり指定そのままでございますか。
  401. 内田常雄

    内田国務大臣 私に答えろということでありますが、医務局長から答えさせます。
  402. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 たしか昨年三月に非常にこまかくいろいろな研修病院の状態について御指摘をいただきました。私どももその状況を、まず研修審議会にそういう状況はよくお伝えいたしました。さらにその際に、こういう不適格なものについては、いかに改善をはかってもだめならば取り消す以外にございません、こういう方針もはっきりと申し上げて、また病院長自体も集めましてそのことを明確に申し渡しました。その後審議会におきましてもいろいろ視察をしたり努力をしていただきまして、去年の秋にすべてのデータを全部もう一度取り直して、その際個々にいろいろ審査をしていただきました。結論といたしましては、前回指定しておりましたものの、一般病院が百八の中で十八施設は指定を取消しという形に結論が出ました。精神につきましても十九のうちの九カ所、合計いたしまして百二十七の病院の中で――実際はダブっているものもございますので百二十六が病院数になりますが、それに対して二十七というものはこれは認めないという形に結論を得ました。近く公式の告示をいたすつもりでございます。
  403. 井上普方

    井上分科員 あなたいま昨年の秋とおっしゃいましたけれども、実際は私に三月時点において、六月に審議会を開きますからそれまでに改善さして、できなければその時点において対処する、こうおっしゃったのですね。ところがはやすでに三カ月、四カ月延ばして、そして指定は二十七病院を取り消したそうでありますが、まだ告示もしていないというのはどういうわけですか。
  404. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 いま手続中でございまして、近近のうちに告示はできる予定で進めておるわけでございます。たいへんおくれたようでございますけれども、先ほど来申し上げましたように、研修審議会の意見も聞かなければならぬということで、研修審議会にはるるいろいろな情勢をお伝え申し上げ、また実地にもいろいろ見ていただきました。そしていろいろな準備を整えまして早急にということで秋に審議会を開いた、こういうことでございます。それで、御承知のようにことしの三月末日でもって一応指定しました全部の病院の第一次の期限がくるわけでございますが、それとの関係をどうするかということが審議会でもいろいろ議論になりまして、すでにいろいろと個々にはもう話してございますけれども、そういう際にすべて一斉にいま申しました数は落とす、こういうことがよろしいのではないかという結論でございましたので、それに従って手続を請求しておる、こういうことでございます。
  405. 井上普方

    井上分科員 これは非常に重要な意味を私は含んでおると思いますので、あえて三年間お話し申し上げておるし、三年前には斎藤厚生大臣あるいはその前の園田厚生大臣あるいは内田厚生大臣、過去三回いずれも、研修指定病院に値しない病院は取り消しますと言いながら現在まだできていないのですね。手続中だとおっしゃいますけれども、まだ法的には発揮してない。去年の三月には六月とおっしゃいました。なぜ言うのかといいましたならば、医療法にも不適格な病院を医師の研修指定病院におたくがしておることについて私らは問題にしておるのです。去年の三月も内田厚生大臣は、六月には審議会がありますので、それにかけて早急に措置いたします、こうおっしゃいました。ところがまだ出てきていないのはどういうわけです、大臣告示がまだできていないのですよ。効力を発揮してないのですよ。どう考えます。
  406. 内田常雄

    内田国務大臣 私が三月の御答弁で六月に取り消すと言ったことにつきましては、速記録を調べてみないと私の記憶がはっきりありません。ありませんが、私はすなおなほうで、悪いものは悪い、こう言うつもりでございますから、実際資格要件が具備していないものをいつまでも置いておくということはほんとうによくないと思います。六月と言ったかどうか私も調べさしていただきます。ちょうど切りかえ目がこの三月にくるのじゃございませんか。そこで、三月限りで落としてしまうということを局長のほうでやっておるということでございますならばそういうことで、せっかく臨床研修の学生もいる最中にがたがたさせるよりも、切りかえ目のときに直すのがいいのじゃないかとも思いますが、私の申し方、間違っておりますか。
  407. 井上普方

    井上分科員 間違っております。研修指定は昭和四十二年の六月に第一回をやっておるのです、六月と八月に。期間は二年です。法律であなたのほうは二年ときめておるのです。したがいまして、あなたのおっしゃるのは、三月というのは、会計年度の話じゃございません。そのころあたりはもうはっきりしているのです。何もとやかく――あなたもはっきりおっしゃって、その処置をいたしたいということでございますので、この点了解いたしますけれども、なぜこのように事態がおくれてくるか。秋にもう不適格な病院が二十七できているのですよ。もうそれもお認めになっておるのです。私どもまだまだたくさんあると思います。たとえば精神病院は十九ありますが、このうちのおそらく十六、七は不適格でしょう。これは事実いえます。医療法上不適格な病院です。それをあなた方は指定している。そこで医者は研修しなければならないという道徳的な義務を与えているのです、医師法では。そこいらに問題ありせんかと私は申すのです。どうでございますか。どなたでもけっこうです。
  408. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 御指摘のとおりです。前にも御指摘をいただきまして、そういったような精神が、そういうことでやっていることがいろいろな医療機関における不祥の問題につながるのではないかという御指摘を受けました。私ども、まさにそういう点についてはきちんとしなければいかぬ、そういうことで、先ほど申し上げましたような趣旨でここにおけるいろいろな御議論の点もお伝えいたしました。審議会といたしましても一そうその条件等についてきびしい態度でいくべきであるという方向を強く出していただいたわけでございます。さようなわけで、五月、六月と、こういういろいろ基本の方針についての審議会等も開いてまいりましたが、ただいま申しましたように、そこの議論を通じまして秋に全部整理をするということで作業を進めさしていたような次第でございます。
  409. 井上普方

    井上分科員 これは一般病院はもちろんのことでありますが、特に精神病院におきまして非常に不適格病院が多いのであります。十九病院を精神病院は指定しておるのでありますけれども、実際に精神病院で合格しそうな病院といいますものはほとんど見当たらないのであります。これが現在の精神病院におきましていろいろ変な事件が起こっております根本だろうと思います。ここらに、法とはこのようなものだというような、軽い気持ちを起こさせる原因があるのじゃないか、このように思うのです。しかも、精神病院を指定する研修病院指定の審議会の委員にいまだれがなっておられますか。精神科代表としては、やはり武蔵野病院の方が出ているのじゃないですか。  それと、もう一つ聞きましょう。あなたは、十九のうちで九つの精神病院を取り消そうという原案を持っておられるそうですが、どことどこです。それをひとつ伺います。
  410. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 最初の、審議会における委員の中で、精神科の担当は順天堂の懸田さんでございます。  それから取り消します精神病院の八つでございますが、茨城県立友部、桜ケ丘保養院、東京武蔵野病院、新潟県立の悠久荘、それから愛知県立城山、それから三重県立高茶屋、それから京都府立洛南、大阪府立中宮のものでございます。
  411. 井上普方

    井上分科員 それだけですか。
  412. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 ただいま申し上げましたように、今度落とすということになっておりますのは以上でございます。
  413. 井上普方

    井上分科員 それじゃ、私は、病院の名前をあげて申し上げるのはまことに恐縮なんでありますけれども、申さなければ話になりませんので申し上げます。大阪の浅香山病院はどういうことになっているんですか。残すんですか。
  414. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 審議会の段階では、いまのところ残ります。ただし無条件というわけにはまいりませんで、やはり御指摘のような不足の点がございますので、こういうものは、ただいわばAクラスと同じようなランクで認めるというのじゃなくて、条件をつけて、早急に改善しろという条件づきのもとに一応指定をしておこう、こういうことになっております。
  415. 井上普方

    井上分科員 それじゃもう一つ。条件をつけているとおっしゃいましても、条件のつけようがあると思うんですよ。入院患者が千三百九十九人おるところで、医者の数はわずかに四十一人でしょう。せいぜいふえましても、浅香山病院のごときは六十名になっても医師法違反ですよ。あるいはまた、続いての兵庫の光風寮という病院なんかは、六百三十三のベッドのうちで医者の数がわずかに七人ですよ、せいぜいふえましても。あるいは、医者の名義貸しというのがあります。私らのところへも、免状貸してくれぬか、在籍しておるような形でひとつ置いてくれぬかというようなことを申してくるようなところもあるのです。そういうふうに、かけ持ちかけ持ちで、一人の医者が三つ四つの医者のところにかけ持ちするというようなことで補っておるんじゃございませんか。これはどうです。このいまの二つの例だけで、どういうお考え方を持っておられるのですか。松尾政府委員 非常にこまかい御質問でございまして、的確な資料が手元にあるわけじゃございませんが、ただいま申しましたように、かけ持ちではないかという問題でございますけれども、実は一般病院も含めまして全部、いわば常勤、非常勤の別に医者のリストをもらっております。それについてさらに指導力の問題等も検討した上での評価をさせていただいているわけでございまして、一応はそういう点は洗った上で判断をした経過をとったつもりでございます。
  416. 井上普方

    井上分科員 しかし、まだ告示してないのですからね。いまからでもできるんでしょう。ひとつ詳細な資料を私のほうへ、大臣、お送りいただきたいことをお願いしたいんです。早急にお願いしたい。
  417. 内田常雄

    内田国務大臣 出せるそうです。
  418. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 先般先生のお手元にございましたような資料から見ましても、その後いろいろと変わってきているかと思います。そういう段階でいろいろ判断いたさなければならないことがございましたので、新しい条件について要点をお知らせ申し上げるような資料を調製いたしたいと思います。
  419. 井上普方

    井上分科員 しかし、ベッド数が六百三十三のところでわずか七人しか医者がおらない。いいですか、患者九十人に一人というところを厚生省は指定したんですよ。(内田国務大臣「これはよくないですね」と呼ぶ)よくないですね。それで、それが改善せられたところ、どのように改善せられたんですか。私は、これが医師法にのっとるような、すなわち入院患者十八人に医者一人というふうに改善せられたとは思えない。特にこの点資料を要求いたしておきたいと同時に、大臣もその資料に目を通されてチェックせられるようにお願いしたい、こう思うのです。どうでございますか。
  420. 内田常雄

    内田国務大臣 私もチェックをして、よく説明局長から聞きたいと思います。しかし、と同時に、なぜそうなるのか、なぜ精神病院には、それだけのベッドを擁しながら医者がいないのか、来ないのか、あるいは来るけれども経営上カットしておるのか、その辺の、この必然性の基礎を私は知りたいと思うのです。
  421. 井上普方

    井上分科員 それは、あなたが基礎を御研究になるのもけっこうでしょう。しかし、現に医師法があり、医療法があり、医療法規則があるのです。この法律はあなた方がつくっておるのですよ。令のごときは厚生省独断でできるんでしょうが。規則も。その規則に違反している病院なんです。ここに問題がありませんか。悪ければ、なぜ規則を直さないのです。そうでしょう。(内田国務大臣「そのとおり」と呼ぶ)そのとおりとおっしゃるけれども、あなた方はずっとそのままやっているんだ。しかも、研修指定病院といえばこれは模範病院でなければならぬ。そうでしょう。模範病院でなければならぬ病院が、洗い直してみれば十九のうち九病院が悪かったとおっしゃるのですけれども、まだまだ洗い直せば出てくるんでしょう。まだまだあります。  そこで私は、研修医制度そのものに対して、大きな疑問を当時から持っていました。いま現在どうでございますか、研修指定病院に卒業生のうちの幾らがおり、大学の付属病院に幾ら卒業生が行っていますか。これはおわかりですか。
  422. 内田常雄

    内田国務大臣 あとのほうのことですが、実は、私も医者ではございませんが、先年制度の変革がございましたものですから、そのあとの臨床研修制度がどのようにセツルしてきているかということに関心を持たざるを得ませんで、二、三尋ねたこともございます。そうしましたところが、制度の変革当初はあのようなごたごたもあったが、最近どうにかセツルしてきて、制度が軌道に乗ってきたという意味の話を実は聞いておりますことがまず一つ。  それからその前の問題につきましては、十九のうち悪いのを九落とすそうでありますが、何か、ほかに研修指定病院としていいのがあるのにそっちを指定しないで、欠格条項が多いほうを指定しているということなのか、いいのがないから、しかたがないからその中で比較的いいのを十九指定した、しかしその十九のうち、見るに見かねるものがあって、そして井上先生から御指摘もあるから九は落としてしまった、こういうことなのか、その辺のこともよく、この機会にひとつ私も説明をさして――ここではなしに、役所でひとつ研究をして、それで、絶対できないことを法律に書いたままじゃよろしくありませんから、法律のほうを直すなり、できることなら法律制度に沿うように、現実のその病院の構造のほうを医療法の基準に合うように指導する、こういうことをしなければならぬと思います。
  423. 井上普方

    井上分科員 あなたが研修医制度が軌道に乗ったというお話を聞いたのは、おそらく国立病院の院長さんだろうと思う。そうじゃございませんか。
  424. 内田常雄

    内田国務大臣 はい、そうです。
  425. 井上普方

    井上分科員 ところが、この研修指定病院に、乗ったとおっしゃいますが、国立病院は乗ったでしょう。しかし一般の病院は乗ってないのですよ。というのは、国立病院には、若い、月当たり二万八千円の安い月給を渡すということで、しかも締めつけが行なわれておりますから、これは国立病院も、また東京第一、第二、こういうところにあると思うのです。(内田国務大臣「いや大阪です」と呼ぶ)大阪もそうだと思います。それは乗ったと思います。しかしほかの病院並びに大学の付属病院は乗ってないはずです。ここに日本の研修指定病院がなぜできたか、研修指定というのがなぜできたか。研修医というのができましたね。卒業すると国家試験を受けて研修医になる。ところがこれをともかく国立病院へ、国立病院会計が赤字だから、ここへ吸い寄せようというのが実は研修指定病院の隠れた目的であったはずです。――そうでもないとおっしゃいますが、しかし現状から見たらそう言わざるを得ない実情になっていることを、あなたひとつ洗い直してごらんなさい。  まだ言いたいことはあります。さらにこの一般指定病院も指定したんです。ところが、指定病院の中で、たとえば眼科の医者がなくなった。眼科が一人もいない、耳鼻科が一人もいないというような研修指定病院はございませんか。どうです。
  426. 内田常雄

    内田国務大臣 各科別にそういう人員を全部洗っておりまして、まずその耳鼻科、眼科がゼロというようなところ、これはもう全く見通しも立たぬというところは指定の対象にしないつもりでございます。
  427. 井上普方

    井上分科員 指定の対象にしないとおっしゃいますが、現にあるじゃございませんか。かけ持ちで、ここに眼科がない、耳鼻科がないという病院、実はありませんか。現状において、きょう時点において。どうです。
  428. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 きょう時点は存じませんけれども、私どもはその再審査のときに、全部洗いましたときにはまずそうではなかったという記憶がございます。しかし後ほどまたこまかい資料を全部見合わせた上で、次の資料のときに御回答いたします。
  429. 井上普方

    井上分科員 私がなぜこういうことを言うかと申しますと、それは眼科が一人あるいは耳鼻科が一人というような病院がありましょう。しかしそこで眼科の研修医ができるんです。あるいは耳鼻科の研修医ができるんです。内科は医局二十人おる、外科は十人おるというところでは、指導者のいい先生がおりましたならば、これは私は研修できると思います。しかし眼科が一人あるいは耳鼻科が一人というところでどのようにして研修するのか。しかもその人が卒業して二年、三年しかたっていないところの人たちによって、眼科あるいは耳鼻科あるいは泌尿科あるいは皮膚科というものが運営されておる実態は必ずたくさんあります。ここにも出ておりますが、松山の赤十字なんというのは、私らの後輩が行っているところですけれども、ここにもやはりすでにもう眼科、耳鼻科がないんですね。こういうようなところで研修さして、一体どうなるんだ。たとえば内科にしましょう。内科に入局いたしましても、一体、それじゃあ眼底検査をやる――お年寄りになりましたら動脈硬化が出てくるかどうかは眼底を見なければわからぬのです。ところが眼科にそれの専門家がいないというようなことになればどうなります。それで眼科の検査はほうって、内科的な検査だけでものごとを済ますというようなことになっておるわけです。こういうような点も、私は病院指定よりも、むしろやろうとするならば個々の病院の何科という指定をなさるほうがより合理的ではないか、こう思うのですが、どうです。
  430. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 私も先生のそういう御意見に対して、実態を見ますと、そういうことにかなり賛成を表したいつもりでございます。もう一つ申し上げますと、そういう実態がございましたけれども、私どもは、非常に指導力の弱い科には研修生をとるなということだけは指導したつもりでございます。
  431. 井上普方

    井上分科員 だから私は各科の科によって指定をすべきであって、しかもそれは総合病院と各科そろったものでなければならない。ここらあたりが、医務局長もお医者さんのようでございますから一応おわかりだろうと思いますが、ひとつ大臣におきましてもここらあたりもう少し厳密に――日本の将来の医者は、法に違反したつまらぬところで養成せられた医者だったら困るのですから、ここらあたりをひとつお考え願いたいと思う。  それからもう一つ、昭和四十五年度厚生省におきまして、本省において医者は何人採用しましたか。そしてまた医者は各県におきましてどれくらい採用されましたか。これは国立病院とか研究所とかいうような現場ではありませんよ。いわゆる保健行政に携わろうとする人を何人採用しましたか、この点をお伺いしたい。
  432. 内田常雄

    内田国務大臣 四十五年ばかりでなしに、四十六年の人ももうわかっているはずでございます。官房長もおりますが、このごろ厚生省評判がよく、大勢集まるそうでございます。
  433. 井上普方

    井上分科員 大臣、これは一時集まったのです。戦後、保健行政が非常に新しい分野として――進駐軍が入ってまいりまして、保健行政というのは非常に予防医学の面からも公衆衛生の面からもおもしろい学問だ、おもしろい分野だと、優秀な方がたくさん入ったのです。ところが厚生省のやり方があまりにもずさんといいますか、セクショナリズムに押されるのでしょう、仕事がおもしろくなくなって、現在ではどんどん数が減っていきつつあります。したがって、A級の保健所におきましても医者がないというような実態が出てきておるでしょう。A級の保健所にも医者がない。したがって、医者来てくれぬかということで、お年寄りの、もう開業医に不適格なような方が保健所へでも行こうかという、そういうところに現在の保健行政といいますか公衆衛生というものの貧弱さがあると思うのです。これが一つには、先ほど来問題になっておる公害問題に対しまして、厚生省が適宜迅速な処置ができない原因にもなっておるのではなかろうか、このように思うのです。最近になりまして公害問題が出てきた。したがって、ここ二、三年来厚生省には若い優秀な人、公害問題を勉強してやろうかという医者が集まってき出したと思うのであります。どうかひとつこういうような若い、公害問題をひとつ勉強してやろうかというような医者、技術者と申してもよいが、それらの方々が十分腕を伸ばせるような――企業に対して遠慮しなければならぬような厚生行政じゃなくて、ほんとうに腕を伸ばして自由に研究し、あるいは発言できる場をあなたはおつくりにならなければ、将来の厚生省はまた医者が集まらなくなるのは、これは目に見えております。この点御留意になることによって、日本の公衆衛生の発達があり得る、このように思うのですが、いかがでございますか。
  434. 内田常雄

    内田国務大臣 全くありがたいお話、御注意でございます。私もそう期待いたしまして、ここに法学士の方も経済学士の方も、厚生省の諸君の中にいらっしゃるでございましょうけれども、何といったって厚生省はやはり医療とか健康とか、そういう面に基礎を置かなければならない行政官庁であると考えますので、臨床の医者ももちろん大切でございましょうが、なかんずく行政医官になろうというような人はよほどの気概のある人であると思いますので、それらの人がほんとうに理想を持って仕事ができるようなそういう場をつくるべきだ、こういうふうに常に考えております。つきましてはどうか諸先生方も、何も厚生省がすべて悪いのだということでなく――みな各省たたきますと若い人が来なくなります。でございますので、いまのように、悪いのは厚生省ではないので、厚生省しっかりやれ、こういうことで、若いそういう優秀な医官が集まるように、私はそういうような状況もぜひつくっていただきたいと思います。
  435. 井上普方

    井上分科員 お立場としてそのとおりです。しかし、仕事がおもしろくなければこれはみんな逃げていくのです。事実、戦後一時優秀な連中が全部厚生省へ集まったけれども、どんどん途中から逃げていったのです。これは経済的な問題もあったでしょう。経済的な問題もあったでしょうけれども、あまりにも公衆衛生あるいは保健行政というものがおもしろくなかった。仕事に張り合いがなかったというところに原因があるのです。そうでしょう。行政官になっておりながら、行政医官が今度臨床のほうへいって、半年か一年またメッキをかけて臨床しなければならぬというようなことに数多くの行政医者はなっていったのです。ここをひとつお考えになって、優秀な人に張り合いのある仕事をやらすように、それには小じゅうといじめという、これは私らがいじめるのじゃないのです。役所の中でいじめるのです。あれがまた各省ごとにいじめるのです。セクショナリズムがいじめるのです。そういうようなことのないように、大臣としては特に御留意になっていただきたい、このようにお願いいたす次第であります。  以上で終わります。
  436. 登坂重次郎

    登坂主査 次回は、明二十三日火曜日午前十時から開会し、午前厚生省所管、午後本会議終了後直ちに経済企画庁所管について審査を行なうこととし、本日は、これにて散会いたします。    午後七時三十二分散会