○磯崎
説明員 実はパイプラインの問題は、私
どもからいたしますと、何もここ半年、一年の間に起こった問題ではなくて、実は
昭和三十六年ごろから石油のパイプライン輸送、それから石炭のスラリー輸送という二つの命題を掲げまして、非常に研究してまいったわけであります。いわゆる流動体については、車で輸送するよりも流して輸送するほうがコストが安い、こういう原理に立ちまして、三十六年ごろから研究に着手いたしました。その後いろいろ
報告も出ておりますが、それを本格的に取り上げようと私
ども考えましたのは、
昭和四十二年の夏に新宿の駅でタンク車を一両焼きまして大きな騒ぎになり、非常に都民にも御迷惑をかけましたこと、またそれとほぼ時を同じくいたしまして、御
承知のとおり、阪神国道でタンクローリーが柱にぶつかりまして、これもやはり大きな火事になりました、そういうようなことで、陸上交通、路面交通で油を送るということはもう時代おくれだ、何とかここでもって転換しなければいけないということで、その後ヨーロッパ並びにアメリカに地質学者その他、私
どもの持っておりますあらゆる系統の学者を
中心として
調査団を派遣いたしまして、膨大な
調査報告も出ております。これらを基礎にいたしまして、実は一昨年の秋ごろから通産省の事務当局と事務的にいろいろな御折衝を始め、いろいろお知恵を拝借しております。その会合だけでも十数回にわたっております。その後、昨年のちょうどいまごろから直接業界と、すなわち業界と私
どものほうは荷主と輸送業者でございますので、直接にお話をいたしまして、ほぼ了解点に達しましたのが、たしか昨年の六月の末だったと思います。最後の
会議のときに、私自身出席いたしまして、業界の最高首脳部といろいろ話をいたしました。ほぼ話がまとまって、いよいよこれから実施方について具体的な施策に乗り出そうとしたときに、こつ然として、どういう理由かわかりませんが、ぷつっとひもが切れてしまいました。その後業界と私
どものほうとは直接のつながりが全く断たれてしまいまして、現時点におきましてなぜそうなったのか、よほど私のほうが何か悪いことでもしたのか何かわかりませんが、どうしても業界と直接話をする糸が切れてしまいまして今日に至っているわけでございまて、私
どもは、そういういままでの過去のいきさつ、並びに私
どものパイプラインに対する、流動体の輸送に対する研究の実績に徴しまして、私は三つの点からぜひ——何も私のほうだけで全国を独占するとかいう意味ではございません。後ほど申しますような理由でもって、ある個所につきましては具体的に早く進めていきたいと思っております。
その第一の理由は、安全の問題でございます。これはいま申しましたとおり、油類を路面で送るというのはもう時代おくれでございまして、ことに過密化のはなはだしい大都市におきまして、大型のタンクローリーあるいは私
どものタンク車が町を横行するというのは、非常に大きな危険性をはらんでいるというふうに私は思います。もちろん安全対策をいろいろ講じておりますが、やはりないにこしたことはない。安全輸送ができればそちらに移すべきだという意味で、まず安全の角度からパイプライン輸送に早く転換いたしたいというのが、第一のねらいでございます。
それから第二は、私のほうの輸送力の逼迫の問題でございます。東京付近の輸送力は、御
案内のとおり非常に逼迫しておりまして、ことに最近は、東京付近の発着貨物だけでなしに、東北から関西、あるいは関西から北海道へという貨物の通過地点として非常に大きなネックになっております。たぶんこれから油類の消費量はどんどんふえてまいると思いますが、いま以上石油類の消費が、ことに民需向けの消費量がふえた場合に、私
どもといたしましては、もういま以上の輸送力を油にさくことはできない。そうするならば、ほかの物資を押えるとか、あるいは旅、客輸送、ことに通勤輸送等に影響させない限り、これからふえるだろう石油類の輸送に
対応できない。したがって、今後油がふえる場合には、何かほかの輸送手段をもってしなきゃいけないということが、当然
考えられる時点でございます。その意味で、現在東京付近は、一日約三千両のタンク車が走っておりますが、その三千両を六千にするとか一万にするとかいうことは、これは不可能であります。ところが、三千両のタンク車で運んでいる油を、直径わずか四十センチのパイプライン一本でもって一日で運べるわけでございます。非常に安全に、しかもコストが安く運べるという意味で、国鉄の持っている輸送力逼迫の面からしましても、私はこれは焦眉の急であるというふうに
考えます。もちろん道路輸送についていまより大きなタンクローリーをつくることも不可能でございましょうし、路面交通も込んでいるという意味で、私は、今後別な輸送手段として、国鉄のパイプラインをつくるのが当然だというふうに
考えます。
それから第三は、私
どもは実は輸送業者であると同時に、石油類の大きな消費者でございます。現在国鉄が使っております油は、ディーゼルカーの軽油がおもでございますが、年間百四、五十万キロリットル、価格にいたしまして約百三十億くらい使います。
新聞でいろいろ聞き知っているだけでございますが、現在、石油については国際的ないろいろなむずかしい問題があるようでございます。それが消費者価格に影響のないことをいろいろ各方面で御
心配になっておるようでありますが、私
どもも消費者の一人として、石油類の値段が上がらないことを非常に強く希望しておる者の一人でございます。そういう角度からしてみましたときに、もしパイプラインで輸送すれば、実際の輸送費が現在の運賃よりも約二割前後上安くなる、これはもうはっきりしているわけでございまして、そういうあらゆる角度から、業界におかれてもまた
政府におかれても、石油類の価格が上がらないようにされるのは当然だと思います。その一翼として、パイプラインによって流通経費を減らすということは、当然なさってしかるべきだというふうに
考えます。
以上、三つの理由によりまして、私
どもが現在計画いたしておりますパイプライン輸送、ことに関東内陸に対するパイプライン輸送につきましては、私はおそくとも来年の秋までには完成させたい。そういたしませんと、来年の秋以降になりますと、いろいろ輸送条件も変わってまいりまして、そのときになって、やれ国鉄は油が送れない、けしからぬというようなおしかりを受けても困るのです。われわれは輸送
責任を負う以上、そのときに輸送ができるようにいまから準備をさせていただきたい。それには現在御審議中の予算に含まれております私
どもの四十億の
工事経費を——実はもう設計も何も全部できております。最終的に土木学会に委託いたしまして、最終的な安全性についてもう一ぺん学者の意見を聞いております。あらゆる角度から見て準備万端整った私のほうの輸送手段を、私は予算が成立し次第
政府にお願いをして御認可をいただき、
工事を始め、そうして来年の秋には実際に使ってまいりたいというふうに
考えておる次第でございます。