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渡部(一)
分科員 そこで、私は陳情書を持ってまいりましたので、ひとつ長官に読んでお聞かせをしようと思っております。
赤痢等伝染病
対策に関する要請決議
糸満町の赤痢患者は去る十月下旬頃から発生し、これまでに疑似真性を合わせて約六百人に達し更に二人の腸チフス疑似患者が発生している現状であります。これらの伝染病の
原因は那覇保健所や本町の調査によって簡易水道ではないかとみられている。本町の水道事情は他市町村に比較して極めて悪い実状にあります。従って本町の赤痢チフスその他の伝染病予防の抜本的
対策として現在の簡易水道を早急に上水道に切替えねばならないと思料されますが、財源その他の事情により現在農村部の数ケ部落と字糸満のごく一部がようやく給水された
程度であり人口の大半を占める字糸満の中心部はもっぱら私営の業者による簡易水道に頼っている現状であり、一日も早く水道法の規定に基づいて業者の権利を買収し町営上水道を字糸満全域に完成させ併せて農村部にある部落経営の簡易水道の施設改善が本町に於ける緊急課題となっております。ところが本町の財政事情からして、多額の事業費を捻出することは極めて困難であります。
又水源についてもこれまで
政府の指導援助を得てその開発につとめてきたが、これだけの給水人口をまかなえる水源の確保が出来ず現に町上水道による農村部に供給している水は、水道公社より購入している
状態で町上水道事業経営の大きな負担となっています。
よって糸満町議会は次のとおり強く要請します。
一、上水道事業に要する一切の
経費について全額支出していただきたい(本土
政府財政支出を含む。)
二、上水道事業に必要な水量を確保するために与座川水源の返還方について
関係当局に接渉していただきたい。
三、農村部落経営の簡易水道の施設改善に要する
経費に補助金を交付していただきたい。
一九七〇年十一月二十八日
糸満町議会
こういうのが出ております。私は、ちょっと遺憾に存じておるのでありますが、御承知のように、向こうから
お話が出てこなければ、これは非常にやりにくい事情があるということも多少わかるわけでありますけれ
ども、
総理府の出張先が現地にあるわけでございますし、こういうことは、ちょっとのぞけば、もうたいへんな問題になって、地元で大騒ぎをされておることもよくおわかりだと思います。私の調べによりますと、赤痢患者の発生は、一九六六年に一千百十八名、一九六九年の赤痢発生患者数は一千九百名になっております。この七百という数は、おそらくは
沖繩全体で起こっているほぼ半分に匹敵するほどの大発生であります。私、簡易水道を見てまいりました。そうして、長官のまねをして見てまいったわけでありますけれ
ども、そうしましたら、まさにものすごいものであって、その水道からときどきミミズが出る。得体の知れないゲジゲジのようなものが一緒に出てくる。それを使っているわけでありまして、上水、下水なんというのは抜きにしたようなひどい水でありまして、それにたよっておる。しかも、そこの地域における簡易水道を実際に経営していらっしゃるその業者の方が四人ばかりいらっしゃるけれ
ども、いずれもその簡易水道を当初つくったときは戦後ものすごいときであって、そのものすごいときに、自分の費用をなげうって町民のために水道をつくったという事情があり、その権益というものはある
程度確立している。しかし、それを全部、公営水道に切りかえるために差し上げたいと地元では言っておるわけであります。ただ、差し上げたはいいけれ
ども、自分の仕事をしておったわけであるから、何らかの形で補償がしていただきたいということで、そうたいして多くない金額が提示された。つくり直す費用と両方合わしてもおそらく三、四十万ドル、五十万ドルもあればもう完全にいくのじゃなかろうかと思われるような金額です。業者に対する補償金はほんの十万ドルから二十万ドル
程度の間でおさまるのじゃなかろうかと思われるわけです。ところが、肝心かなめのお金の話が出てこないために、業者と町議会とが話をしても
結論がつかない。そうして町の代表は、琉球
政府に出かけていって、この陳情書をどこに置いてきたのだかもよくわからないような状況である。しかし、その琉球
政府がそれを受け取っていることは確かである、そういう状況であります。
それで、私がここで問題にしたいのは、非常に熱心にやっていらっしゃる皆さんに申しわけないけれ
ども、大体、出先にいる、日本
政府からの出先
機関はきわめて不熱心であって、出て歩かないんですな。だから、この間糸満町で、今度のコザ
事件の、暴動の
一つの大
原因となった交通事故がありまして、御婦人が一人ひき殺された。糸満の目抜きの通りでひき殺されているわけです。そうしてそのひき殺された補償金や何かで米軍側といろいろ
折衝を地元でやっておる。そうしてそれを糾弾するためにいろいろな組織ができておる。またそこのところで
裁判が行なわれておる。ところが、その
裁判が英語ばかりで、のぞきに行ったら全然わからぬなんという悲劇もあった。、また、アメリカの保険会社が乗り出してきて、支払うが、その支払いをのんでいいかどうかもわからぬなんという問題もあった。しかし、そこにおいて、日本
政府の出店の
機関は、一回もその
場所をのぞいても見ないし、慰問にも行かないし、弔問にも行ってないし、ニュースを集めにも行っていない。踏み込んでもいない。私はここに問題がある、こう思ったのです。実は私は水道のことを調べに行ったんじゃないんです、ここでは。ちょっと通りがかっただけです。しかし、ちょっとおりてみたら、もうとたんにそんな問題が起こってしまう。私は、要するに、長官が非常にかけ回っていらっしゃることは大いに高く評価しているのであって、この点の評価にかけては、私は大いに高く高く評価しているのでありますけれ
ども、実際行政の面の、こういう
沖繩県のような場合には、引き取るぐらいの気持ちでこの問題を扱わなければうそじゃなかろうか、こう思っておるわけであります。私は、この糸満町の水道の問題が放置されるならば、本年また赤痢問題が爆発するのはもう目に見えております。起こらないというのは、単なる奇跡をたよるしかない。これについては、できるならば早急な
予算措置を講じて糸満町に何とかする、こうしなければならないだろうし、それと同時に私は、根本的に、向こうがいうてきたものから順番で、向こうの自主性を尊重してというようなやり方でなくて、むしろ踏み込んでいって問題点をえぐり出していって、それを解決するという
姿勢がなければ、何次かにわたる復帰要綱のようなものが出されたとしても、大きな穴があいてくるんじゃないか。私は、その点を深く反省を求めたい、こう思っておるわけなんです。