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1971-02-25 第65回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月二十五日(木曜日)     午前十時五分開議  出席分科員    主 査 田中 龍夫君       伊藤宗一郎君    坪川 信三君       灘尾 弘吉君    勝澤 芳雄君       辻原 弘市君    近江巳記夫君       岡沢 完治君    兼務 大原  亨君 兼務 安井 吉典君    兼務 横路 孝弘君 兼務 渡部 一郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議官      城戸 謙次君         内閣総理大臣官         房会計課長   川田 陽吉君         内閣総理大臣官         房交通安全対策         室長      須藤 博忠君         警察庁交通局長 片岡  誠君         沖繩北方対策         庁長官     岡部 秀一君         沖繩北方対策         庁総務部長   岡田 純夫君         法務省人権擁護         局長      影山  勇君         自治省行政局長 宮澤  弘君         自治省財政局長 長野 士郎君  分科員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    黒川  弘君         大蔵省主計局主         計官      渡部 周治君         文部省社会教育         局社会教育課長 鹿海 信也君         農林省蚕糸園芸         局砂糖類課長  小島 和義君         最高裁判所事務         総長      吉田  豊君         最高裁判所事務         総局総務局長  長井  澄君         最高裁判所事務         総局人事局長  矢口 洪一君         最高裁判所事務         総局経理局長  大内 恒夫君         最高裁判所事務         総局民事局長  瀬戸 正二君         最高裁判所事務         総局刑事局長  牧  圭次君         最高裁判所事務         総局家庭局長  外山 四郎君     ————————————— 分科員の異動 二月二十五日  辞任         補欠選任   辻原 弘市君     勝澤 芳雄君   鈴切 康雄君     小川新一郎君 同日  辞任         補欠選任   小川新一郎君     近江巳記夫君 同日  辞任         補欠選任   勝澤 芳雄君     辻原 弘市君   近江巳記夫君     鈴切 康雄君 同日  第三分科員大原亨君、渡部一郎君、第四分科員  横路孝弘君及び第五分科員安井吉典君が本分科  兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十六年度一般会計予算皇室費、国会、  裁判所内閣総理府(防衛庁及び経済企画庁  を除く)、法務省及び文部省所管並びに他の分  科会所管以外の事項  昭和四十六年度特別会計予算文部省所管及び  他の分科会所管以外の事項  昭和四十六年度政府関係機関予算中他の分科会  の所管以外の事項      ————◇—————
  2. 田中龍夫

    田中主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和四十六年度一般会計予算中、裁判所所管を議題とし、最高裁判所当局から説明を求めます。吉田最高裁判所事務総長
  3. 吉田豊

    吉田最高裁判所長官代理者 昭和四十六年度裁判所所管予定経費要求額について、説明申し上げます。  昭和四十六年度裁判所所管予定経費要求額の総額は五百八十九億九千七百七十七万円でありまして、これを前年度予算額四百八十八億九千四百八十一万円に比較いたしますと、差し引き百一億二百九十六万円の増加となっております。これは、人件費において七十九億一千四百六十八万九千円、裁判費において二億七千百四十六万二千円、最高裁判所庁舎新営費において十三億七千八百六十三万一千円、下級裁判所営繕費において二億七千五百四十二万七千円、その他司法行政事務を行なうために必要な旅費、庁費等において二億六千二百七十五万一千円が増加した結果で、あります。  次に、昭和四十六年度予定経費要求額のうちおもな事項について説明申し上げます。  まず、最高裁判所庁舎の新営に必要な経費であります。  最高裁判所庁舎東京千代田区隼町十三番の一に、工事費経額百十九億九千四百四十七万三千円、工期三年で新営する初年度工事費及び事務費として十四億五千八百七万円を計上しております。  なお、この歳出予算額のほかに、国庫債務負担行為として二十六億五千三百八十二万一千円を計上しております。  次は、人的機構充実のための経費であります。  特殊損害賠償事件等処理をはかるため、判事補十二人、裁判所書記官十二人、裁判所事務官二十四人の増員に要する人件費として三千五百七十八万三千円、簡易裁判所交通事件の適正迅速な処理をはかるため、簡易裁判所判事二人、裁判所書記官二人、裁判所事務官十人の増員に要する人件費として九百八万七千円、家庭裁判所資質検査の強化をはかるため、家裁調査官三十六人の増員に要する人件費として三千四百一万一千円、執行官法所定の金銭の保管及び予納事務を取り扱うため、裁判所事務官二十人の増員に要する人件費として八百七十万五千円、家庭裁判所充実、強化するため、専任の家庭裁判所長を置く庁の増設二庁に要する経費として二百五十四万九千円、合計九千十三万五千円を計上しております。  次は、裁判運営能率化及び近代化に必要な経費であります。  裁判官執務環境の改善をはかるため、下級裁判所裁判官研究庁費一億七千五百六万五千円、資料室図書図書館図書充実をはかる等のため、裁判資料整備に要する経費一億三千七百十四万円、裁判事務能率化をはかるため、検証用器具等整備に要する経費八千五十八万九千円、電子計算機による事務機械化調査研究のため、研究開発に要する経費一千百六十八万一千円、調停制度審議するため、臨時調停制度審議会の設置に要する経費七十六万九千円、合計四億五百二十四万四千円を計上しております。  次は、公害訴訟処理に必要な経費であります。  公害訴訟を適正迅速に処理するため、協議会を開催する等に必要な経費四千百四十七万五千円を計上しております。  次は、下級裁判所営繕に必要な経費であります。  下級裁判所庁舎の新営、増築等に要する経費として裁判所庁舎等継続工事十六カ所、新規工事十七カ所、増築工事二カ所の工事費及びその事務費等四十億二千二百二十万三千円を計上しております。  次は、裁判費であります。  国選弁護人の報酬及び日当を増額するに必要な経費として四千百八十六万一千円、調停委員等日当を増額するに必要な経費として三千七百四万六千円、証人等日当を増額するに必要な経費として四百八十四万円、合計八千三百七十四万七千円を計上しております。  最後に、沖繩本土復帰に伴う沖繩裁判所受け入れ準備に必要な経費であります。  沖繩司法制度調査研究に必要な経費二百八十九万七千円、職員の任命がえ等人事関係に必要な経費七百八十万三千円、合計一千七十万円を計上しております。  以上が昭和四十六年度裁判所所管予定経費要求額の大要であります。  よろしく御審議のほどをお願いいたします。
  4. 田中龍夫

    田中主査 以上で説明は終わりました。  この際、分科員各位に申し上げます。質疑の持ち時間は、一応本務員は一時間程度兼務員もしくは交代して分科員となられた方は三十分程度にとどめ議事進行に御協力をお願いいたします。  なお、裁判所当局におかれましても、答弁はでき得る限り簡潔明瞭にお願いをいたします。  この際、質疑の申し出がありますので、順次これを許します。勝澤芳雄君。
  5. 勝澤芳雄

    ○勝澤分科員 最後に、最高裁判所庁舎の新営が今年度予算で出ておりますが、新営の計画全体について御説明を願いたいと思います。
  6. 大内恒夫

    大内最高裁判所長官代理者 お答えを申し上げます。  最高裁判所庁舎を新営するという計画は、多年最高裁判所といたしまして大きな問題として検討を続けてまいったわけでございますが、昭和四十年に最高裁判所庁舎営審議会という審議会が設けられまして、そうした機関を通じまして検討を進めまして、諸般の準備を終了いたしましたので、昭和四十六年度の予算工事費要求をいたしたわけでございます。その結果、先ほど事務総長からも御説明申し上げましたように、総工事費百十九億九千四百万円、工期三カ年ということで全体計画がきまりました。その初年度経費といたしまして工事費十四億、国庫債務負担行為二十六億というものが計上されているわけでございます。  ただいま勝澤委員からお尋ねの、全体の今後の計画の進め方でございますけれども最高裁判所を建設する場所千代田区隼町十三番地の国立劇場南隣の土地、その広さは約一万坪でございますが、そこに建物庁舎延べ面積約四万七千平米の建物を建てる予定でございます。現在の建物明治二十九年に建てられた、すでに七十数年を経過した建物でございますので、この機会にりっぱな最高裁判所庁舎建築いたしたい。私どもといたしましては、この三カ年の工事建設省お願いをいたしまして、建設省が施工いたすわけでございます。  初年度といたしましては整地工事、いろいろ整地とかあるいはくい打ちでございますとか、そういった基礎工事をまずやりまして、それから鉄骨鉄筋躯体工事を一部行ないます。それから、第二年度に入りますと、その鉄骨鉄筋工事の残りを終わりまして、同時にいわゆる外装を行なっていくということに考えております。第三年度に入りますと、外装とともにさらに内部の仕上げと申しますか、今度は内装に力を入れてまいりまして、四十九年三月に完成をする、こういう計画でございます。  先ほども申し上げましたように、最高裁判所建物は、多年の懸案事項でございますので、私どもといたしましては、これは単に最高裁判所庁舎をつくるというだけではございません。一つの国家的な事業といたしまして、後世に残すに足りるりっぱな記念的な建築物をつくりたい、かように考えまして、工事の推進につきましては建設省とも十分協議、協力いたしまして万全を期したい、かように考えております。
  7. 勝澤芳雄

    ○勝澤分科員 最高裁判所にふさわしいりっぱな建物計画され、完成されることは、たいへん喜ばしいことだと思うのですが、いまある残る建物は、何といいましても御案内のように、最近ああいう古い文化財的な建物というのは少ないわけでありますが、あとはどういうふうになる御計画になっておりますか。
  8. 大内恒夫

    大内最高裁判所長官代理者 現在の最高裁判所建物は、明治二十九年に建築された、ただいま勝澤委員からもたいへん御理解のある御発言を賜わりまして、たいへんありがたく存じております、非常に長い年月はけみしましたけれども、仰せのとおり由緒のある建物でございまして、文化財的な価値も十分にあると存じます。  その今後の扱いにつきましては、まだ最終的に決定いたしてはおりませんけれども、そうした点も含めまして、なお十分その用途に適するような方法は考えなければならないと存じております。ただ、現在の建物は、戦時中に戦災をこうむりまして、外壁のれんがだけを残して、内部は一ぺん全部焼けてしまったものでございます。その後、昭和二十四年に一応これは復旧して、できるだけ前の姿に直したつもりではございますけれども建築当初は、あれはドイツルネッサンスの方式によりまして、前面に高い塔などもあったわけでございます。一そう昔の建物のほうがよかったわけでございます。そうした外形が若干くずれているような点もございます。  それから、正面からごらんになりますと、れんがづくりのたいへんりっぱな点がございますけれども、裏のほうに回りますと、戦災の傷あとが現在もなおなまなましく、れんががくずれているところもそのままになっておるというふうなことでございまして、建物そのものもかなりもろく、災害にあっても非常に危険性もあるといったような点もございます。そこら辺の点もさらに考えまして、今後どうしたらいいかということは、十分に検討いたしたいと思います。  ただ、ちょっと申し上げますと、霞が関のあそこにございます東京高等裁判所でございますとか、地方裁判所でございますとか、これがまた相当狭隘になっております。いずれ東京高等裁判所につきましても、執務環境をよくして、裁判あるいは訴訟関係等に十分利用していただけるような庁舎も考えなければならないと思っております。そうしますには、やはり場所としては現在の最高裁判所が建っておるところしかございません。ですから私どもといたしまして、現在の構想といたしましては、これは事務当局限りでございますけれども、現在の最高裁判所が建っております場所には東京高等裁判所を将来はやはり建てなければならないだろう、かように考えています。と申しましても、現在ございます最高裁判所建物自体をどうするかということはまた別問題でございます。これにつきましては、ただいまの御理解のある御発言でもございましたので、そうした点も十分頭にとどめまして、今後最も適当な方法を研究くふういたしてみたい、かように考えたいと思います。
  9. 勝澤芳雄

    ○勝澤分科員 あと地をこれからどういうふうにしていくかという問題は、裁判所だけでああこうするということはなかなかむずかしい問題だと思います。裁判所自体としてはいまおっしゃるようにできるだけあそこに別の建物を建てたい、これは裁判所の財産ですから、そうだと思う。対大蔵省との問題もあろうと思うのです。  ただ私たち考えなければならぬことは、私の町は興津というところで、西園寺さんのいらっしゃる坐漁荘があったわけです。町でできるだけ保存費を出して坐漁荘を保存しようじゃないかということをやってきたわけです。しかし、それができなくなりまして、明治村に持っていったわけであります。ああいう古い由緒あるものというのは残そうというのが方針ですけれども、国が積極性がないので、結局民間の有識者による保存法しか実はないわけです。ましてやこういうような問題は、国自体が破壊をしてしまうということになるならば、文化財に対する国の姿勢そのものがあるわけでありますから、これは私は裁判所でこうせよああせよということは無理だということはよく存じておりますけれども、やはりそういうふうになりそうだということを早く一般国民に知らせることによって、どういう解決がいいのだろうかということの世論といいますか、扱いというものは出てくるのではないだろうか、こういう意味でこの問題は質問いたしたわけでありますから、十分留意しながら、やはり由緒ある建物というものはできるだけ残していく、文化財というものは保護していくのだということを国自体が示していくようにしていただきたいということを特に要望いたしておきます。  次に、裁判促進という問題が長い間叫ばれてきているわけであります。そういう点から見てみますと、今度の四十六年度予算を見てみましても、要員状態を見てみますと、当初裁判所要求をしておった要員から実際の決定した人員を見てみますとまだまだこれでは不十分ではないだろうか、こういう点があるわけであります。そうしますと、裁判所というのは独立しているわけでありますから、二重予算制度というものが認められておる。二重予算制度が認められておるのに、もっと積極的な姿勢というものは望まれないのだろうか。大蔵省との折衝の中でおりるといいますか、方針に従っていくということも当然なことだと思いますけれども、やはり裁判所自律性ということからいって、自信を持った予算をおつくりになるためには人の問題は特に考えなければならないのではないだろうか、こう思うのですが、その点についていかがでしょう。
  10. 大内恒夫

    大内最高裁判所長官代理者 裁判所予算折衝の問題につきましてお尋ねでございましたので、お答えを申し上げます。  裁判所予算につきましては、八月の末に一応見積もりをつくりまして内閣に送付いたしまして、それから予算折衝が始まりました。四十六年度の予算の場合でございますと、昨年の暮れに最終的に一応折衝が済んだということになっております。  そこで、ただいま人の問題その他を含めまして、裁判所要求の点についてお話がございました。増員の問題になりますと、裁判所としては、当初は先ほど事務総長から御説明申し上げた数字よりも多い数字要求しておったことは事実でございます。ただ、八月の段階でございますので、その段階事件予測と申しますか、昭和四十六年度における事件予測を一応いたしておったわけでございますが、最近におきまして裁判所訴訟事件は、民事事件でも刑事事件でも、総体的に事件が減少しておるということでございまして、四十四年度から四十五年度にかけても減少の傾向が見られます。私どもといたしまして、四十六年度には、現在学生の事件もございますし、その他公害訴訟もございます、交通事件どもございます、そこら辺を見きわめましていろいろ検討して、相当事件もふえるだろうということで一応計算を立てておったわけでございますが、秋になり、十二月になってまいりまして事件の様子を見てまいりますと、必ずしも私ども予測した程度には増加ということも見られない。これはほんの一要因でございますけれども、そういった点を含めまして、最終的にただいま事務総長から御説明申し上げました増員百十八というところで私ども要求をしぼって最終的に折衝いたした、かような経過になっております。  ただいま二重予算についてお話がございました。財政法十九条の二重予算制度は、私どもといたしまして非常に大事な制度でございますので、常に頭にとどめまして折衝をいたしておるつもりでございます。  なお、折衝につきましても、できるだけ裁判所必要性なりその他経費につきまして十分強力に説明をいたしておるつもりでございます。同時に、政府並びに財政当局であります大蔵省といたしましても、裁判所の機能でございますとか、使命でございますとかいった点についても最近はよく理解を示されまして、折衝につきましてもきわめて円滑に事が運んでまいりました。少なくとも昭和四十六年度の、御審議いただいております予算につきましては、そういった観点におきまして、裁判所としては二重予算ということを発動する必要はなく済んだ、かような経過になっておるものでございます。  お答え申し上げます。
  11. 勝澤芳雄

    ○勝澤分科員 全体的に裁判促進状態といいますか、私しろうとでよくわからないのですけれども、こういう点はいまの状態でいいのですか。人権を守る立場からいえばもう少し早めねばならぬのですか、その点どうなんでしょう。
  12. 長井澄

    長井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  訴訟一般的に遅延しているというのが今日の常識であろうかと存ぜられますが、事案によりまして、たとえば涜職に関する犯罪、公職選挙法に関するもの、大規模の詐欺事件、こういうものは非常に長期化いたしておりまして、特に社会的な批判がきびしくなっております。しかしながら、迅速に片づいております事件相当数ございまして、個々的な問題としておくれているものの迅速化をはかり、迅速に処理されているものにつきましては、処理充実ということを考えなければいけないというふうに私ども考えております。  数字的に申し上げますと、現在処理に要する期間は、昭和四十四年度におきまして、高等裁判所では民事事件の一件当たり平均審理期間は十七・一カ月、刑事事件では五・九カ月、地方裁判所及び簡易裁判所におきまして、昭和四十四年度の平均審理期間は、民事事件が九・三カ月、刑事事件が五・一カ月、このような数字となっております。私ども目標といたしましては、これを半減したいというのがただいまの目標でございます。どのくらいの審理期間が適切であるかということはなかなかむずかしい問題でございまして、計算上明らかに結論の出るようなものは迅速に処理すべきでありますが、人事に関する問題、人情の伴うような問題、あるいは企業の経営の好転を待てば債務の履行ができるというようなものにつきましては、ある程度審理期間をかけるほうが、結論としてはいいものが出るというようなものもございますので、事案によりまして一がいには申されませんけれども、半減したいというのがただいまの努力の目標でございます。  で、一般戦前に比べて訴訟が遅延しているといわれておりますので、その原因を簡単に申し上げますと、何よりも法意識が向上いたしまして、さらに社会生活も非常に進展、複雑化いたしましたので、その方面からまいりますところの事件数増加事件の内容の複雑困難さ、簡単な例を申し上げますと、昔は六法全書といいまして、六法で済みましたものが、今日の六法全書は、むしろ法令集というような体裁をなしますほどに社会生活経済生活法的規制を受ける場面が広くなりまして、裁判所の判断を要する事項が多くなったということが、いま申し上げましたような事情を伴いまして審理期間を延長しておる。さらに訴訟手続が非常に厳格に進められるように国民意識が徹底してまいりましたこと、訴訟手続が変わりまして、権力による強い訴訟進行ということが、事案処理として必ずしも適当でないというようなことも伴いまして、戦前に比べまして審理期間が延長し、今日訴訟が遅延しているのではないかという批判を生む原因になっているものと考えられます。  戦前との比較は、もし御要望がございますれば、申し上げますが、時間の関係があれば割愛さしていただきたいと思います。
  13. 勝澤芳雄

    ○勝澤分科員 前へ進みますが、いま裁判所定員と現在員というのを調べてみますと、私の手元にあるこの下級裁判所裁判官定員と現在員というのは、高裁、地裁、家裁、簡裁で六十一名の欠員になっておる。千二百七名のうち六十一人といいますと、約五%欠員状態になっている。それから職員関係でも欠員がだいぶあるようでありますが、この原因は何か、対策はどういうふうに行なわれているかという点について……。
  14. 長井澄

    長井最高裁判所長官代理者 欠員数につきましては、ただいま御指摘のとおりでございます。  欠員原因につきましては、裁判官裁判官以外の裁判所職員等につきまして多少趣きを異にするわけでございます。  裁判官には、欠員原因となりますものは、一つ定年制がございまして、定年で退官する、それから一般的な死亡あるいは病気による退官、それから自分の職業の系列を変えると申しますか、弁護士になるため、あるいは大学の教授になるために退官するというようなことが原因としてあげられるわけでございますが、その生じました年間六、七十名に及びます欠員は、その給源はただいまのところ、司法修習生からの任官にほば限られておりまして、弁護士さんから裁判官になられるということが絶無ではございませんけれども任用制度等関係でなかなか困難な状況にございます。そのために欠員補充が、司法研修所の修習を終了いたします三月末ないし四月初めということに時期的に限られてまいりますために、その後一年間は漸次欠員が生じて、三月の末には欠員数最高になるというようなことで、途中の欠員補充のできませんことが充員対策として裁判所で最も悩んでおるところでございます。この点につきましては、任官者を極力ふやす、そしてまず欠員をなくするということから始めまして、努力していきたいと思いますが、年度途中の充員策ということは、ただいま対策としては非常に困難な状況に置かれているというふうに申し上げたいと存じます。  次に裁判官以外の一般職員欠員につきましても、その職種によりまして欠員の状況がいろいろ異なってまいります。裁判所書記官裁判所調査官というような、任用資格をきわめて限定し、その資格を高いものにいたしております者につきましては、学歴、経験年数あるいは研修により、あるいは任用昇格試験により資格を付与するというような形になっておりまして、それらの研修の終了します時期あるいは資格試験が行なわれる時期に充員できるというような状況にありますために、やはりその時期以後漸次欠員増加いたしまして、次の充員期までは欠員補充できないというような事情が出てまいるわけでございます。  その以外の職員につきましては、必ずしも任用につきましてのきびしい制約はございませんが、国家公務員一般の採用の状況等にやはり比例いたしまして、経済がこのように好転いたしますと、公務員の欠員補充ということが必ずしも容易でないという現状が出てまいります。  なお、このほかにもう一点御説明申し上げたいことは、御承知のように、裁判所にも定員予算上定められておるわけでございますけれども、その運用につきましては、事件数の繁閑に応じまして各裁判所に配置いたしておるわけでございますが、御承知のように、過疎化する地帯、大都市のように人口が非常に集中し、経済が伸展いたしまして、先ほど申し上げましたような原因事件数が激増する、事件数の移動が過疎地帯から大都市へ急激に行なわれるというような事情が出てまいりますと、定員の配置を事件量に応じまして変更しなければならないわけでございますけれども、人員の現実の配置をそれに即応させて配置がえする、転勤させるということは、個人の生活との関係等もございまして、なかなかすみやかにこれを移動させるということが困難でございます。
  15. 勝澤芳雄

    ○勝澤分科員 時間がありませんので……。もう一つ臨時調停制度審議会が今度新しく設置されるようでありますけれども、この目的、構成、それから大体答申のめどといいますか、これについてちょっと簡単に御説明願いたいと思います。
  16. 大内恒夫

    大内最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  調停制度は大正十一年に発足をいたしまして、ちょうど本年が満五十年目に当たるわけでございます。その間調停制度につきまして、根本的にまたいろいろの点の問題点を検討した機会が一度もございませんでしたので、臨時調停制度審議会というものを設けまして、調停制度に関する各般の問題を検討いたしたいというのがこの審議会の目的でございます。  どういうふうにやるかと申しますと、最高裁判所の事務総局を中心といたしまして、さらに民間のいろいろの有識の方、もちろん調停員なども含めまして委員の方にお集まりいただきまして、審議をいたしたい。審議する事項といたしましては、調停に関する制度あるいは運営の実態全体にわたりましていろんな問題を取り上げて検討してみたい。答申のめどといたしましては、二年目には答申が出るというように考えております。
  17. 勝澤芳雄

    ○勝澤分科員 先ほどもちょっと申し上げましたのですけれども、この裁判所というものは独立して、そして財政法上も予算制度というものは独自の立場が守られておるわけであります。これは国会も同じことでありますけれども、形式的に——私はあえて形式的にと言います。形式的に大蔵省とも相談されている。しかし、大蔵省からいえば、そうじゃないと言うかもしれませんけれども、やはりそういう立場でものを考えてみますと、もっと積極的な裁判促進なり、あるいは必要なものというものは必要なだけ、やはりしっかりした信頼される司法制度というものをつくっていかなければならぬというふうに思うわけです。たとえばいま臨時調停制度審議会予算を見てみますと、最初は五百六十万ぐらいであろうという規模が七十六万にこうなってしまったわけでありますから、やはり五十年たったのだから、この際大々的に根本的にやろうというのが、中途はんぱになったのかなという気がいたしますけれども、金の問題ではないと、こう言われれば、それまでですけれども、そういう点で私はやはり今日の司法に対する権威を保つという立場からいうならば、予算がないからできないのだということは言えないわけであります。なぜならば、自分で予算をつくる力を持っておるわけでありますから、あるいは新しい制度が出たのですから、極端に言えば、国会に大蔵省予算裁判所予算二つが出て、どちらを国会で採択するかというぐらいやる必要があると思うのです。いまだやったことがないようでありますけれども、そういう点でぜひやはり今日もう一回見あらためて、再検討をしていただきたいと思うわけであります。  それから、私の手元に特に調停員の皆さんから、調停員の人たちの日当が実情に合わないのではないだろうか、もっと調停員としての活動が十分できるようにしてもらいたいという陳情が参っております。今度の予算を見てみましても、少しは日当が増額されているようでありますけれども、そういう要望があるということをよく承知いたしておりまして、ぜひ次の機会には検討していただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  18. 大内恒夫

    大内最高裁判所長官代理者 いろいろの問題がございましたが、まず調停の問題でございますが、調停員の日当につきましては、私どものほうにも調停員の方々からそういう強い御要望を承っております。そうでございますので、本年の予算折衝、御審議いただいております四十六年度の予算につきましては、特に力を入れましてその点の折衝をいたしたわけでございまして、勝澤委員も御承知のように、本年度は例年の倍の二百円のアップということになりまして、来年の一月からそれが実施されるということで私ども非常に慶賀にたえない次第でございます。ただいま申し上げましたように、臨時調停制度審議会というものも今度設けられまして、根本的に検討される機会でありますので、それらの審議の答申の結果なども見ながら今後の改定を考えていきたい、かように思います。  なお、予算につきましていろいろお話がございました。私どもといたしましても裁判所予算につきましては、当然のことでございますけれども、真剣に取り組みまして、真に国民のためになる裁判の実現に寄与するような予算を編成し、それを実現しなければならない、かように信じております。ただいまの御発言は、裁裁所を御鞭達いただいた御趣旨の御発言と、かように考えまして、一そうの努力をすることをお誓い申し上げたいと思います。
  19. 勝澤芳雄

    ○勝澤分科員 終わります。
  20. 田中龍夫

    田中主査 次は、横路孝弘君。
  21. 横路孝弘

    横路分科員 時間がございませんので、お尋ねしたいことがたくさんあるわけでありますけれども一つ二つにしぼってお尋ねをしたいと思います。  一つは、過日札幌弁護士会が全裁判官に対してアンケートによる調査をいたしまして、その回答が集約されたわけであります。私も札幌弁護士会の一員であるわけでありますが、先日いろいろ会長そのほかの選挙が行なわれまして、公開をするというほうが多数を占めましたので、きょうの夕方にはこの詳細な内容が発表されることになるだろうと思いますが、いままで私のほうで調べた範囲内で一、二の点についてだけお尋ねをしたいと思います。  これは二千四百六十一名の裁判官にアンケートを送りまして、そのうち回答をもらったのが四百三十三名、そのうち退官した人あるいは白紙の人を除きまして、三百八十五名の裁判官についての内容でありますが、一番大きな問題なのは、この三百八十五名の裁判官中三十人の裁判官が、従来裁判の干渉を受けたことがあるということを回答しているわけであります。平賀書簡の問題というのは、裁判制度が日本に発足して以来の前代未聞のできごととして非常に大きな問題になった。ところが、これが例外的な現象ではなくて、三十名の裁判官に、こういうような干渉を受けた経験を持っている人がいるということは、これは見のがすことのできない問題でありまして、最高裁判所事務総長お尋ねをいたしたいと思いますけれども、こういう結果が出たということについてどういう御見解を持っておられるのか、まずお伺いをいたしたいと思います。
  22. 吉田豊

    吉田最高裁判所長官代理者 お尋ねの点でございますが、札幌弁護士会のアンケートは匿名で答えるようになっておりますので、私どもその結果につきましては必ずしも信用ができない。ことに回答者は、いまのお聞きいたしました数字から申しますと、約十何%になるわけでございまして、そういうパーセンテージから申しましても、必ずしもその結果だけでとかく判断はできないではないかと思います。ことに、私も裁判官であったわけでございますが、私の経験から申しましても、裁判官がほかの裁判官からいわゆる干渉を受けるというようなことはとても私は信用できません。それで、そういうアンケートにつきましては裁判所といたしましてはやはり信用できない、こう申し上げるよりほかにございません。
  23. 横路孝弘

    横路分科員 信用できないとおっしゃっても、現実に平賀書簡という問題が発生をしているわけです。匿名だから信用できないということでございますけれども、この内容をもう少し詳細に検討いたしますと、この三十名中、同僚からいろいろとその裁判についての干渉を受けたというのが一人、あとほとんどの二十九名は上司からなんです。これは司法行政上の立場を通しての明らかな裁判干渉であるというぐあいに思うわけであります。しかも、そのうち口頭で受けた者が二十八人で、あとの一名は文書による、つまり平賀書簡と同じような形での干渉を受けているということをこのアンケートの中に明確に答えをしているわけです。きょうの夕方さらに詳細な結果が発表されますから、その中にはいろいろな事実もまた明らかにされるだろうと思いますけれども、こういう事実を、単に信用できないといってほっておくことはできないのじゃないか。前に、日本評論社から「現代の裁判」という、前の真野最高裁判事等を含めた裁判官のいろいろな手記が載っておりましたけれども、その中にも、これはいろいろな具体的なケースについてこういう干渉を受けたということが、実はすでに公表されているわけであります。司法行政の任にあずかる者として、かようなことが——いま信用しないとおっしゃったけれども、少なくともこういう事実をもって三十名出てきたという、もしこれが事実であるならばどういう措置をおとりになりますか、司法行政の責任者として。これは私は内部的にゆゆしき問題であると思うのです。外部からの干渉の問題じゃないですよ。内部からの裁判の、司法権の独立を侵すようなそういうものが現にいまの裁判所の中にあるということ、それをこのアンケートの結果は物語っていると私は思うのです。いかがですか。
  24. 吉田豊

    吉田最高裁判所長官代理者 結局、そのアンケートの内容でございますが、さっきおっしゃいましたように、同僚から干渉を受けたという者が何名とか、上司の裁判官から受けた者が何名、また口頭で受けた者が何名、書面で受けた者が何名とか、その程度のことはなるほどおっしゃるとおりかもしれません、私まだ正式な発表は聞いていませんですけれども。しかし、その程度で、もう少しやはり具体的に、どういう場合に、どういう事件について、どのようなことを言われたのか、そういうことを知りませんと、これが干渉とかなんとかということは言えないのじゃないかと思います。と申しますのは、裁判官は合議でよく議論をいたしまして、ことに先輩の裁判官からは後輩の裁判官に対していろいろやはりいままでの経験や法律知識に基づいた意見を強く述べるだろうと思いますが、それまでも含めて言われるのかどうか、そうではないのかと想像したりいたします。その想像いたしますのが、先ほど申し上げましたように、裁判官がほかの裁判官から干渉を受けるというようなことは、もうこれは裁判の独立からいきましても当然あってはならないことでございますので、とても考えられない。こういうことから、いま申し上げるわけでございます。
  25. 横路孝弘

    横路分科員 この三十名の中身は、判事補が二十名、判事が八名、そういう回答をしているのは。そういうことであるならば、むしろ皆さんのほうで無記名でそういうような調査をやってみたらどうですか。札幌弁護士会のこの内容が公表されれば、これはやはり一つの大きな問題になっていくと私は思うのです。皆さんのほうできちんとこれやられたらどうですか。
  26. 吉田豊

    吉田最高裁判所長官代理者 裁判所が各裁判官に対して、そのような調査はとてもできません。裁判官というのは、御承知のように憲法によりまして、良心に従って独立して職務を行ない、この憲法と法律にのみ拘束される、こういうことになっておりますので、そのような調査は絶対に必要ございません。
  27. 横路孝弘

    横路分科員 まあ正式に公表されない前に、あまりその内容について御質問するのもどうかと思いますので、さらにこれが公表されてから場所を移しまして議論をしていきたいと思うのです。  そこで、これから少し、先ほども定員の話が出ていましたけれども、私も法曹に身を置く一人として、裁判所職員の方が非常に苦労されている姿というものをいつも見ているわけであります。少しお尋ねをしたいわけでありますけれども、特に見ていて気の毒だと思うのは、速記官の方ですね。本来なら職業病に認定すべきような病気でもまだ認定されないで苦労されて仕事をされているわけでありまして、この速記官制度というのは、やはり裁判の真実というものを明らかにしていく中では、書記官なんかの調書と違って非常にこまかいところまで出ておるので、私たちとしては非常に役に立つわけでありまして、まずお尋ねしたいのは、この速記官制度というものは、そういう意味でさらに裁判所の中で拡充していかなければならない、強化していかなければならないというように私は思いますけれども、御見解を承りたいと思います。
  28. 長井澄

    長井最高裁判所長官代理者 速記官制度が、現在の訴訟手続の上において非常に大きな役割りを果たしておりますことは、御指摘のとおりでございます。ただ昔の速記と違いまして、今日は法廷におきましては、いわゆる速タイプを使用して、新しい方式による速記を打ち立てておりますけれども、速記制度自体がそのように進歩したわけでございますが、さらに機械の進歩によりまして今日録音というような制度が出てまいりました。録音が必ずしも速記に取ってかわるものではございません。が、録音の活用によるさらに効率的な速記制度の展開ということも検討してまいりませんと、速記官の負担が非常に加重されていくのではないか。法廷におきまして特殊な用語、専門語が出てまいりますような段階におきまして、これを緊張しながら誤りなく速記に移していくという作業は、人間の精神状態にはかなり過重な負担となるわけでございます。このようなものを、いかに機械を利用しながら速記制度を活用するかという検討の分野も非常にございますので、現状のまま速記制度を拡充していってよろしいのかどうか。拡充ということの内容には、新しく開発された機械を取り入れた上での速記制度、録取及び反訳、記録というようなものを検討することも含めて考えるべきか、このような問題がございますので、後者のような考えを含めましての拡充は私どもすでに着手いたしまして、コンピューターを活用しての速記制度のさらに大幅な拡充というような方面についての検討をいたしておりますが、人員をさらにふやすというような方面での拡充はもう少し検討の余地があろうかとこのように考えているわけでございます。
  29. 横路孝弘

    横路分科員 そこでお尋ねしたいのですけれども、速記官のいまの定員欠員についてお答えいただきたいと思います。
  30. 長井澄

    長井最高裁判所長官代理者 定員は約九百名でございまして、そのうち欠員が約二十名となっております。
  31. 横路孝弘

    横路分科員 定員は九百三十五名じゃないのですか。
  32. 長井澄

    長井最高裁判所長官代理者 正確には九百三十五名でございます。
  33. 横路孝弘

    横路分科員 そうするといま欠員が二十名だということは、実際の実人員としては九百十五名裁判所におられるということですか。
  34. 長井澄

    長井最高裁判所長官代理者 そういうふうになるわけでございます。
  35. 横路孝弘

    横路分科員 私速記官の人と札幌あたりでときどき会って、いろいろ話を聞くと、ともかく人間が足りないということで、いま二十名ということで、先ほど勝澤委員のほうからも提示されました裁判所職員定員法の一部を改正する法律案参考資料という法務省で出しているものでも大体それくらいの数字にしか出ていないわけでありますけれども、いろいろ調べてみると、実際の人間というのはいま九百十五名おるという話ですけれども、実際には六百人くらいしかいないんじゃないですか。
  36. 長井澄

    長井最高裁判所長官代理者 私ども、速記官としては欠員が約二十名というふうに報告を受けておりまして、その計算のもとで運用いたしているわけでございます。
  37. 横路孝弘

    横路分科員 では、ちょっと北海道の速記官の定員と、実際の人員を教えてください。
  38. 長井澄

    長井最高裁判所長官代理者 北海道に限りますと、資料をただいまこちらへ準備してございませんので……。
  39. 横路孝弘

    横路分科員 いま速記官制度を、録音そのほかを利用して記録は正確にしていくという方向で考えていきたいという話は、それの一つ方法かと思うのですけれども、やはり現実には速記官にしても、これからあと書記官、そのほか全部聞いていきますけれども、皆さん方が報告されている数と実際の職員の数とは違うんじゃないですか。いま九百十何名だということでもって言われておりますけれども、じゃそういうことでしたら、この予算審議が終わる前までに、去年、おととしの速記官、書記官についての定員と、速記官については名簿を出していただきたいと思います。そういうでたらめなことをやっていることは許されないと私は思いますね。
  40. 長井澄

    長井最高裁判所長官代理者 ただいま資料がございませんので、いずれ調査いたしまして資料をお届けしたいと思います。
  41. 横路孝弘

    横路分科員 書記官についてお尋ねしますけれども定員の数と欠員は、先ほど申し上げました資料にあります現在定員が六千三百九十三名、欠員が七十六名というのに間違いないのですか。
  42. 長井澄

    長井最高裁判所長官代理者 書記官の定員、現在の欠員、そのとおりでございます。
  43. 横路孝弘

    横路分科員 それもいろいろ調べてみると、まだまだこんな問題じゃない。欠員の数なんというのは、こういう状況じゃないのですよ、実際にいる人間は。私は札幌なり何なりへ行ってみたって、実際に皆さん仕事がきつくてたいへんだとおっしゃる。じゃ実際どういう定員であって、どれだけ人間がいるのか、実際に調べてみたら、皆さんのほうで言っている定員の数だけなんていないじゃないですか、どこにだって。速記官にしたって、書記官にしたって同じですよ。この間調べてみたら、国会に報告されている数というのも、全然ごまかしの数字ですよ。だから、それはともかく私のほうとして皆さん方にお願いをしたいのは、労働過重でみんな困っている。北海道の場合なんか、東京に填補だといって、一カ月に一人ずつ東京のほうに送り出して、そうしてみんなそのあとどうするかというのでもって、もうほんとうに困ってやっているのですよ、書記官の人は。裁判官填補で来ているでしょう。それに伴って書記官も来ているでしょう。そしてこっちでどういう仕事をしているかというと、令状書きのような仕事をしておって、東京に来たらひまだといっている。北海道はたいへんだ。だから私は、その分のお金をどこに使っているのかよくわかりませんけれども最高裁判所を、りっぱな建物を建てるそうであります。それも司法の権威を保つために必要なのかもしれませんけれども、一番司法の権威を高めるためにはやはりきちんとした仕事を第一審でやることですよ。それには、そういうところにいる人たちの労働条件なり、環境というものを、きちんとしてやることが、よい裁判、そして迅速に裁判処理していく一つの大きな基盤になる。裁判所を建てることも必要だけれども、やはりそういう第一線の人たちが困っている実情というのを皆さん方は知らないと私は思う。これはみんな労働過重で困っているのですよ。そういう実態についてどうですか。いまの定員の問題は資料を出していただくということですから、衆議院における予算審議の終わる前までにそれを出していただきたいと思いますけれども、その問題についてお答えいただきたいと思います。
  44. 長井澄

    長井最高裁判所長官代理者 先ほど勝澤分科員に対するお答えが途中になりましたけれども事件数の移動が、人口の移動に伴いまして、各庁間で負担すべき定員の間にアンバランスを生じているということを申し上げたわけでございますけれども事件数に即応した定員を配置いたしますことは、計算をいたしました結果によることでございまして、ただいまその計算中でございます。  御指摘の北海道のうち、ことに札幌におきましては、事件増加が著しいわけでございまして、この点についてはわずかではございますが、すでに余裕の範囲で増員の措置も札幌に対していたしたわけでございますけれども、なお、根本的な配置定員の異動をしたいと目下努力中でございます。  全体的な問題を申し上げますと、民事事件刑事事件、ともに事件数はここ二、三年来減退を示しておりまして、この関係で全体的な増員ということが困難であることと、事件数に即応した配置定員の変換ということが、現実の人間の移動を必要といたしますために迅速に適応させ得ないということが、裁判所の特殊事情及び現在の公務員の執務の態様から困難であるというような事情がございますので、御指摘のような負担の不均衡ということが出ているわけでございまして、この点は正式に解消することのできますようにいま検討中で、近いうちにこれは実現できるものと考えております。
  45. 横路孝弘

    横路分科員 定員のワク内の配分の問題はいいのですよ。それはもう確かにそういうようにやられなければ、事件の集中しているところでは労働強化になるばかりなのですね。そうではなくて、そのワクの中でそれだけ確保されていない。確保されていないにもかかわらず、その辺のところを少しごまかして国会あたりにこういう資料を提出してくるなんというのは、私は不届き千万な話だということなんで、書記官も速記官もというと皆さん方の作業もたいへんでしょうから、速記官だけについてでけっこうですから、皆さん方の配分した定員の数、北海道の場合でしたら札幌、旭川、釧路、函館と地方裁判所がありますね。それごとでけっこうですからまとめられて、実際の人員、つまりどこに欠員があるかということを明らかにした資料をぜひお出しいただきたいと思います。それは約束していただけますね。
  46. 長井澄

    長井最高裁判所長官代理者 お届けすることにいたします。
  47. 横路孝弘

    横路分科員 もう一つ、特に地方の裁判所へ行くとひどいところがたくさんあるわけなのでありまして、これはもう皆さん方御承知のとおりだと思いますね。たとえば旭川地方裁判所管内の天塩簡易裁判所、羽幌簡易裁判所なんかの場合は、裁判用の図書とか資料等というのは、十年間全然送られてきていないというのですね。全然この十年間ですよ。ですから、法律雑誌なり諸条例というのは、書記官等の人は、自分の費用でみな買っておる。最高裁判所をりっぱにすることも必要でしょうけれども、こういうところにもうちょっと予算を回して、資料くらいせめて——十年間全然送られてこない、こんなばかな話ないですよ。これが実態です。一つの例です。  時間がないからもう一つ指摘します。たとえば山口地方裁判所の船木簡易裁判所の場合、宿直勤務員がふろをわかすのに燃料費がないから何をやっているかというと、古い図書をたいているのです。ちゃんとそういうたきつけに使っているものを私のところに持ってきた。これは古いものですけれども、みんな破ってこれを焼いている。燃料費を何も皆さん方が分け与えないから、そういうことをやっている。松江の地方裁判所の西郷支部では、宿直用のガスぶろはあるけれども、ガスの燃料費の予算がないために、全く使用されていないで物置きになってしまった。ガスぶろだけはあるけれども、燃料費がないからといって、ふろをたかないで、そこは物置きになってしまっているというのです。これは大きい裁判所でないですよ。その支部、簡易裁判所、こういう地方で苦労して庶民のいろいろな法律的な争いの解決に努力をしておるところに、裁判の図書も資料も送らない。あるいはガスぶろの燃料費、そのほかのそういう庁費、これは庁費の中からいくのでしょうけれども、全然予算を出さない。そうして最高裁判所ばかりはりっぱなものを、あれは総額幾らでしたか、百二十億でしたかもかけてつくる、こんなばかな行政ありますか。どうですか。
  48. 長井澄

    長井最高裁判所長官代理者 図書の関係についてお答え申し上げます。  過去十年間、法律関係の資料が一切いかないというのは、私どもちょっと考えられないところでございまして、なお調査はいたしますけれども、ある程度のものはいっておる。ただ、それがきわめて不十分であるという事情はあろうかと存じます。この点につきましてはなお十分に調査いたしますが、各庁にあてて私どものほうから発送もいたしておりますし、法令集の追録の変換もやっておるわけでございまして、多少表現が、あるいはその庁の立場からして強かったのではないかというふうに考えられるわけでございます。  なお、簡易裁判所の図書資料の充実につきましては、執務環境整備の十カ年計画の第二次五カ年計画に入りまして、昭和四十五年度から五年間に簡易裁判所の図書資料を充実いたしますために相当の費用の支出を計画いたしておりまして、昭和四十五年度の予算におきましても、各簡易裁判所相当数の図書資料を配付いたすことになっております。その点は実績を御検討いただきたい、このように存ずるわけでございます。
  49. 横路孝弘

    横路分科員 そのあとの燃料の問題どうですか。写真がこれ、ちゃんとあるのです。いいですか。ふろの前でもって燃やしたかすですよ。こんな状態になっておる。そうして図書のほうの古い資料を焼いて使っているなんて、こんな情けない話ないですよ。一体予算どうなっておるのですか。
  50. 大内恒夫

    大内最高裁判所長官代理者 ただいまのお話は初めてお伺いしましたので、実情をよく調査いたしてみませんと、何ともその特定の庁につきましては私どもはっきりした知識を持ち合わせておりませんです。全般的に申しますと裁判所執務環境をよくする。こまかい点で申しますと、宿直室のふろといったようなものも含めまして、当然のことでございますけれども職員執務環境を改善するということに力を尽くさなければならないことは当然のことでございます。私どもといたしましても、そうしたきめのこまかい手当てということにつきましては力を入れなければならないと考えておりまして、現に本年度におきましても、宿直室のふろの状態がどうなっているかということも、全国的に経理局では調査を始めているわけでございます。いまお話を伺いました庁につきましてどうなっておりますか、まだ精細に結果を承知いたしておりませんけれども、今後におきましてもそういった点を含めまして検討いたしたい。燃料費につきましてはこれは各庁の庁費の運用の問題でございます。もしそういう点につきまして不適当なところがございましたならば、私どもといたしましても適当な指導を続けてまいりたい、かように考えます。
  51. 横路孝弘

    横路分科員 いまごろそういうような調査を始めるというところが問題なんですね。本来ならば、そういう一番末端で苦労している人たちの条件がどうなっているかということは、これは常にやはり裁判所の中で掌握していなければならぬことです。私が憤慨したのは、最高裁判所のあのいまの建物だって、りっぱな建物ですよ。さらに百二十億もかけて建てる、そうしながら地方の末端はこういう状況です。これはたくさんあげればきりがないです。そういうような問題を私はぜひ考えていただきたいと思うのです。  時間が来ましたから、この辺でやめておきたいと思いますけれども、いずれにしても、司法権の独立がたいへん問題になっているときに、やはりこういう皆さん方の姿勢もきちんとされると同時に、そういう地域の、地方のほうの条件というも、のをきちんと上げていく、一審を強化していくということが、やはり訴訟の迅速に、間接的ではありますけれども、一番大きく役立つことだと私は思うのです。ぜひその辺のところを検討していただくことを要望して、質問を終わりたいと思います。
  52. 田中龍夫

    田中主査 これにて裁判所所管質疑は終了いたしました。  この際、暫時休憩いたします。     午前十一時十二分休憩      ————◇—————     午後零時十一分開議
  53. 伊藤宗一郎

    ○伊藤(宗)主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  主査が所用のため出席がおくれますので、その指名により、私が主査の職務を行ないます。  昭和四十六年度一般会計予算中、内閣、防衛庁及び経済企画庁を除く総理府所管を議題とし、前回に引き続き質疑を行ないます。安井吉典君。
  54. 安井吉典

    安井分科員 沖繩の問題に集中して、短い時間ではありますが、お尋ねをしたいと思います。  復帰対策要綱の第二次分はいつごろお出しになりますか。そしてそれが最後のものになるのか、あるいはまたさらに第三次というふうに続くことになるんですか。
  55. 山中貞則

    ○山中国務大臣 作業を大体今月一ばいというめどでやっておりますが、琉球政府との意見の交換あるいは意見の一致をなるべく求めたいという願望がございますので、その点で少し琉球政府側の県民会議あるいは政府準備その他を仄聞いたしますと、ややおくれるかもしれませんが、三月上旬に表に出したい、閣議決定の形をとるわけですけれども、そういうつもりでおります。上旬でも少しおそい上旬になるかもしれませんが、なるべく早く発表することが必要であると思っております。  さらに、きのうも御質問等のありました点でございますが、復帰後の政府の側の機構をどうするかという問題に関連をして、現地の出先の機関、それらについてもやはりもう少し議論を詰める必要がありますので、場合によってはこれは二次には入れないほうがよろしいかなという感じもしております。それらのものを含めて、具体的には砂糖とかパイナップルを共済の対象にしてくれとか、そういう問題等がありますし、含みつ糖の問題等、御質問あるかもしれませんが、そういう問題等がなかなか詰まらない場合は、具体的なものでありましても三次分に回さざるを得ない。三次には、最終的なものにしたいと考えております。     〔伊藤(宗)主査代理退席、主査着席〕
  56. 安井吉典

    安井分科員 いま第二次分に入るか入らないかといわれております行政機構の問題でありますが、きのうも上原君の質問で、いろいろお答えがあったそうであります。沖繩開発庁という考え方は、現在北海道に対して北海道開発庁がありますが、それと似たようなことなのか、あるいは別な構想なのか、その点です。
  57. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは私は沖繩のために必要だと思ってはいるわけです。ということは、新生沖繩県というものが踏み出します場合に、やはり外交、内政いろいろ問題のあるところではありましょうが、内政上の予算において、沖繩がどのように遇されているのかという問題がはっきり出なければいけないと思うのです。その際に、現在の本土各県のように、ばらばらの各行政機関というものに埋没してしまいますと、単にそれぞれの省庁は熱心にめんどうを見るという努力はすると思いますけれども、集計をした結果幾らになるというような形になります。それでは各種特例法等を内政上も講じながら、沖繩を大きく新しい誕生として力強く応援してあげたいと思う形のとり方が思うにまかせないのではないかと考えて、やはり現時点における総理府が、沖繩北方対策庁をかかえて、沖繩予算が本年度は六百億二千万円であるというふうに、はっきりと琉球政府側の御要請とも、復帰後沖繩県になりますが、よく窓口で一本にしぼって御相談申し上げるほうがよりよろしいのではないかと思っております。しかし、沖繩側においては、一方県政の自主性を失うことになりはしないか、これは出先の機構も含めてでありますが、そういう異論があるように承っておりますので、そこらの点がどこまで異論がおありなのか、沖繩側から考えて、私の考えております構想はかえってマイナスになるのか、あるいはそういうことの御理解をいただいて、それがプラスであって賛成していただけるのか、これらの問題を今週にも田辺調整部長を派遣いたしまして、私の意のあるところを伝え、率直な意見の交換をいたしまして、できれば開発庁設置ということが望ましいとは思っておりますが、琉球政府側の御意向というものを事前に十分に反映させて後決定する手段をとりたいと思います。
  58. 安井吉典

    安井分科員 いまの沖繩北方対策庁を一応廃止して沖繩開発庁、そういうふうなお考えですか。
  59. 山中貞則

    ○山中国務大臣 沖繩の復帰後、北方をどうするかという問題がもう一つあります。これは別な機会にまた意見交換もしたいと思いますが、やはり北海道開発庁には専任の大臣がおるわけであります。専任という意味は、そのための大臣でありますから、これは兼任可能な大臣ということを反面意味するわけでありますが、やはり沖繩に責任を持つ大臣がいるべきではなかろうかと私は思っております。しかし、そういう必要はない。やはり事務当局というものがはっきりしておれば、いまの沖繩北方対策庁を沖繩開発庁という形にかえても、それでいいじゃないかという御意見が強ければまたそういう方向でまとめられるかどうか御相談をしたいと思っておりますが、いずれにしてもまだきめていないというのが実情であります。
  60. 安井吉典

    安井分科員 北方領土の関係の人から言わせると、北方のほうは、ではどこに行くんですか、こういうような疑問も出ているようですね。ですから、その点いま検討中だというからそれ以上はお聞きできないかもしれませんが、いまの沖繩開発庁構想の際の沖繩県、つまり現地における国の出先はどういうふうにお考えですか。
  61. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは国の専管行政のもの、許認可事務等がどうしてもございますから、そういうもの、あるいはサービス行政的なもので国政事務、たとえば海上保安部とか、そういうようなもの等がございますので、やはり現地に置かなければならないものがございます。それらの場合に出先を、これは金融機関も含めてですけれども、およそ考えられる本土各県のようにたくさんの出先機関、あるいは本土各県のように地域で済ましてしまうようなわけに沖繩はいかない場所でありますから、相当な数が出ていかなければならないだろう。そうすると、いたずらに沖繩の行政の上において屋上屋みたいな形になっても困るし、一人一人の県民が、国民として行政、国政にタッチいたします場合に、幾つもの役所を回って歩かなければならないというようなこと等も問題があろうかと思いますので、その意味では現在の沖繩事務局の形とは違うことになると思いますけれども、なるべく一緒になれない独特の性格を持っておりまする国の機関以外は一緒にして、もっぱら沖繩県民へのサービス行政というものを中心に統一した機構にしたらどうであろうか、これもやはり親元がきまらないと出先もきまらないというものでございますから、これまた検討中ということになります。
  62. 安井吉典

    安井分科員 いまいずれも、中央の対沖繩国家行政機構のあり方、さらにまた現地における行政機構のあり方、それぞれ検討中だということでありますが、一部には、沖繩一般の都道府県と違って、知事権限を特に強くして、国の委任事務を大幅に知事に与える、そういう中で自治体の首長としての沖繩県知事に、国家事務の遂行の大きな責任を負わせる形で処理してはどうか、こういう意見もあるように聞いておりますが、その点いかがですか。
  63. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ものによっては県知事に国家事務を機関委任なりあるいは委託をしたほうがよろしいものもあるかと思いますが、やはり沖繩も県知事権限というものは、本土各県並みの権限を持たれることはまず原則でありましょう。それより引っ込むことは当然ない。そのためにこそ開発庁とかあるいは出先機関とかというものの設置に非常に慎重を期しておるわけであります。  それからさらに沖繩については特別に知事に何か権限を持たせるという場合において、沖繩において何か特別の法律上のほかの地域にない措置をとらなければ経過的にどうしてもだめだというような問題等については、国のとった措置でありましても、知事に相当な権限を行使していただくような形をとらざるを得ない、むしろお願いしたほうがよりうまくいくというようなものが出てくるかと思うわけであります。
  64. 安井吉典

    安井分科員 一番初め、山中長官が現地側から出されている疑問という形でおっしゃった、つまり住民意思というものがどれだけ反映するかという問題でありますが、現在までの沖繩は、占領下にはあっても一応一つの独立国であるわけです。現在ここの中央政府がやっているのを小型にして、琉球政府主席が、特に公選になった姿の中で百万県民の意思を県政の中に執行機関として反映していく、それからまた立法院も全県民から選ばれた形でその意思を立法院の決議として役割りを果たしているというわけです。つまり国家事務も自治体事務も——今後、自治体事務は、沖繩県に当然ほかの県と同じようなものがずっと続くわけですが、そういう自治体事務のほかに、国家事務までが、県民から直接選ばれた主席と議員によって処理されてきたという経過とそれから現状にあるわけです。ところが、復帰はいいわけですけれども、その後の段階において国家事務と自治体事務とが分割されると、これはもうおそろしいほど沖繩県の仕事というのは少なくなるのです。きわめてやせてしまった知事と県議会になって、それだけは相変わらず県民の直接の意思統一のもとに執行なり議決をしていくことになりますけれども、国家事務はとんでもない知らないところに、中央政府に持っていかれて、そして県民意思とは直接つながらない中央の出先官庁で処理される、こうなるわけです。ですから、そのところが私は、沖繩県民の人の立場からすれば、自治権は拡大はしたいし、しかし、予算をどんどん中央政府が出して仕事ができるようにはしてもらいたいしと、そういう二つの願いがまじり合っているのが現在の状況ではないか、こういうふうに思います。だから私は、いまのところはどうすればいいということはきょうは申しませんけれども、やはり国家行政の機構をつくる際においても、現状は全県民の意思と直接つながった国家事務が行なわれているのだ、そういう現状から一ぺんに飛び離れてしまった形を何とかつくりたくないものだと、その点だけきょうは申し上げておきたいわけであります。  とりわけ沖繩県も、いわゆる革新主席になっているわけです。中央の政府は自民党です。私は御承知のように北海道の出身なんですが、北海道は戦争中から戦争が終わるまでの段階で、こちらの都道府県知事とは違って、北海道庁長官というのは、北海道全体における国家事務もほとんど担当していました。国鉄とか郵政を除けば、厚生省やいまの労働省だとか、運輸省の港湾行政、そういったようなものも、国家行政まで全部北海道庁長官が持っていて、同時に自治体の——あのころは完全自治体ではありませんけれども、当時は北海道地方費というふうなことで呼ばれたわけですけれども、それの長官が、地方事務と国家事務を一緒にやっていたわけでですね。そういうようなことがあって、その後田中敏文さんという人が社会党の知事として当選をして、何かそれのいやがらせみたいに国家事務だけを切り離す形で北海道開発庁ができた。そこで混乱が起きた、そういう経過があります。私も記憶しておりますけれども、あの法律は北海道開発法でしたか、それができるときには北海道庁長官が参考人に出てきて、ここで反対をいたしました。ですから、そういう北海道の前例を私知っているだけに、この問題についてもやはり慎重な対応をお願いしておきたいと思います。きょうのところはそういうことにしておきたいと思うわけであります。  そこで、自治省の行政局長もおいでいただきましたが、沖繩県、それから沖繩県にある市町村の設置について——設置ということばが当たるのかどうかわかりませんけれども、いまはアメリカの施政権下にあって向こうに占領されているわけでありますが、復帰後の地方自治法上の扱いですね、県なり市町村の資格を取得する、それについて自治省としてどういうふうにお考えになっておられますか。
  65. 宮澤弘

    ○宮澤政府委員 沖繩県の地位でございますが、事実問題としては、いずれにいたしましても復帰後の沖繩県が、戦前沖繩県の立場を引き継ぐことになるだろうと思うのでございますが、その場合の法律上の構成と申しますか、考え方の問題でございます。それにつきましては、ただいま法制局を中心にいろいろ議論をいたしております。まだ最終的な結論を持っているわけではございません。その議論の過程では、戦争でああいう二十数年間中断をされておりますので、新たに沖繩県を創設をする必要があるのではないか、私が申し上げておりますのは法律的にですが、という議論もございますけれども、私はそういう考え方をとる必要はない。むしろいままで日本の行政権限が及んでおりませんでしたのが、復帰に伴って日本の憲法下に帰ってまいりますので、私は沖繩県がそのまま法律的に申しますと復活をする、沖繩県という人格が復活をする、そういうふうに考えるべきではなかろうかと思っております。したがいまして、もし私のような考え方が最終的な結論になるといたしますれば、法律的な措置といたしまして沖繩県について何か規定を設けます場合におきましても、それはいわばその確認的な規定を設ける、こういうことになるのではなかろうかというふうに考えております。
  66. 安井吉典

    安井分科員 そういたしますと、自治法の第五条第一項でいくということですね。県の段階はそれにして、市町村については、つまり「従来の区域」ですね、従来の区域ということでいいのではないかと思うのですが、市町村についてはどうですか。従来と同じ形でいけるところといけないところとがありはしませんか、どうですか。
  67. 宮澤弘

    ○宮澤政府委員 市町村につきましてのお答えが漏れておりました。市町村につきましては、お話しのように、合併をいたしましたり境界変更がございましたり、戦前の市町村の姿がそのまま現在の市町村の姿になっておりません。したがいまして、奄美群島が復帰いたしましたときも同様でございましたけれども、市町村につきましては、琉球の自治法上の市町村が、日本の自治法上の市町村となるという規定を設ける必要があろうと思います。
  68. 安井吉典

    安井分科員 私もいまの初めの御答弁のように、地方自治法の上で何か新しい絶海の孤島が領土になったというふうな扱いで、これはたしか所属未定地域の指定のたとえば第七条の二ということじゃなしに、やはり従来の区域という規定でいくべきだというとこが正しいのではないかと思うわけであります。  そこで、これも今度の予算委員会のどっかでも質問があったそうでありますが、今度の復帰にあたって暫定措置法や特別措置法やその他いろいろな沖繩に関する法律措置があるわけでありますが、これはやはり憲法九十五条の住民投票に付すべきではないかという意見も現地にはあるように聞いています。これが全体的な意見かどうかはわかりませんけれども、そういう意見があるように聞いておりますが、この問題については、総理府総務長官あるいは自治省との間で、政府としての意思統一はもうできているのですか。
  69. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは前提条件によって違いますが、私ども沖繩県は、本土の各自治体である各県と変わらない自治体にしたいと思っております。でありますので、各種の形態のいま非常に異なっておりまする国家行政形態というものから、県の形態に移ります間のショックの緩和、激変緩和、特例措置等の手段はとりますけれども、それは目標を本土の各県のような広域自治体に県をしたい。市町村は、もちろん本土各県市町村のようにしたい、こう願っておるわけでありますから、憲法九十五条のいう住民投票でなければ法律を定められないという条項には該当しないものであると考えております。  また憲法九十五条の実際上のあり方についても、これはそれらの法律が国会において議決されたときに、臨時会もしくは参議院の緊急集会等において議長が総理大臣のほうに手続をとる。そして自治法がそれを受けるというたてまえになっておりますから、単に政府ばかりの見解だけでも済まないでありましょうが、私どもとしては、憲法九十五条に該当すべき特例措置ではないと思っております。
  70. 宮澤弘

    ○宮澤政府委員 趣旨は、ただいま総務長官から御答弁があったとおりだと思います。私どもは、憲法九十五条の趣旨は、一般的な原則的なものに対して例外的なものをつくる場合にああいう制度が必要であるということであろうと思うのでございます。今回沖繩県の復帰に伴いまして、経過的に多少の措置は必要であろうと思うのでありますけれども、これはやはり本土並みの制度に復帰をさせるための措置でございます。原則に戻ってまいります場合の経過措置でございましょう。そういう意味合いで、九十五条の趣旨から申しまして住民投票を必要としないのではないか、こういうふうに考えております。
  71. 安井吉典

    安井分科員 これもいまは前提なしの議論ですから、いま大臣なり行政局長がおっしゃるような法案の出され方をするのか、それとも沖繩だけに特殊な位置を与える法律案というふうなことになるのか。その出される法律案の内容によっても問題の扱いというものが違ってくると思うわけでありますが、一応いまそういう議論があるものですからお尋ねをしてみましたが、これももう少し事態の推移の中からさらにまた機会をあらためてお尋ねするなり何なりしたいと思います。  そこで、今度の復帰対策要綱の中に入れられるおもな問題はどういう問題ですか。
  72. 山中貞則

    ○山中国務大臣 正式な公文書が来ておりませんが、琉球政府の第二次復帰対策要綱に対する要請というものが一部、二部、三部と分かれて一応入手はいたしております。それらを見ますと、大体たとえば沖繩に対する特別な金融機関の設置等は原則として認めるというような意向等がありますので、そういうところで意見が一致すれば、そういう金融機関等は打ち出すことが可能であると思いますが、その他の大きな問題は、税制が中心であります。さらに沖繩だけの特産物、たとえばパインとか、キビとか、その中でも含みつ糖とか、そういうような問題等について結論が出せればそれを盛り込みたいと思っておりますが、県民生活の日常生活に身近な問題がずいぶん数多く盛り込まれる。内容については相当膨大なものになろうかと考えます。
  73. 安井吉典

    安井分科員 もう時間がないものですからいろいろな問題についてお尋ねできませんが、特に沖繩の医療のおくれは、しばしば指摘されるとおり非常に重大な問題で、医療の施設、つまり病院だとか、ベッド数、さらにまた医療担当者の両面からこれはおそろしい不足状態にあって、いわゆる一体化の一番初めに取り上げなければならない問題であろうと思います。ですから、その問題では従来からずっと主張されておりましたような琉球大学保健学部医学科の設置の問題やら、国立総合病院の設置の問題、あるいは離島の医療対策、そういったようなずんぶん盛りだくさんな琉球政府側の要求が従来からあるわけでありますが、そういう問題は盛り込まれますか。
  74. 山中貞則

    ○山中国務大臣 琉球大学医学部については、第一次要綱ですでにその方向が示されていると思いますが、具体的には琉球大学医学部問題懇談会というものを持ちまして、その具体的な足取りその他をいま検討しておりますが、その布石として琉球大学保健学部の付属病院というのもちょっとおかしいんですけれども、本土ではちょっと考えられないんですが、将来は医学部の付属病院になるための保健学部の付属病院の建設というものが、いまほとんど完成に近づきつつあるわけでありまして、ことしはいろいろな調度品と申しますか、必要な施設整備について相当な増加をさせておるわけでございまして、一応のスタートが切れるという状態になっております。さらに、医療担当者その他の医療面の体制はたいへんおくれておりますから、本土の半分以下三分の一という感じで、ことにそれも離島、僻地等を見ますと、まことに気の毒な状態でございます。国民健康保険も四月一日からできますように、国のほうの負担金については十二カ月分予算化いたしておりますけれども、すみやかな立法をお願いしておりますが、その背面にはやはり医師が絶対的に配置できないような場所等も、国民皆保険から見ればかぶっていかなければならない、恩恵に浴するようにしてあげなければならないと思いますので、一部事務組合とかいうようなこと等取り入れながら、なるべく沖繩県民が全部、できるならば四月一日から国民健康保険の恩典に浴せられるようにしたいというようにいま努力をしているところでございます。
  75. 安井吉典

    安井分科員 いま総合病院だとか僻地の医療について、もう少し何か具体的なものを第二次対策の中で書いてほしいというような希望があるんじゃないですか。
  76. 山中貞則

    ○山中国務大臣 国立病際をつくってくれという要望があるようでございます。これはちょっと二次要綱の段階では決断いたしかねる問題で、むしろいまの琉球大学の付属病院を、地域病院的な性格のものにも働かしていくことについて、われわれはそういうふうに運営を検討しておりますし、さらに現在の中部病院を県立病院ということで琉球政府が運営していただくという体制でいくつもりでおりますので、国立病院というのは現在の琉球政府がいま要望しておられる中に、突如として出てきたものでありますから、いまここでどこにどういう規模でという御答弁がいまのところ設置も含めてできない段階でございます。
  77. 安井吉典

    安井分科員 本土並みということになれば、本土には大学の付属病院もありますが、ちゃんと国立病院がありますね。ですから、そう無理のない要求ではないかと思うわけです。そういう点いままだお考えになっていないようでありますけれども、新しい段階で十分検討を要する問題ではないかと思いますから、その点だけ申し上げておきたいと思います。  もう時間がないのですか。——もう一つだけ、海運航路がもう少し充実できるような政府の措置を講じてほしいという要求もありますね、国有鉄道がない沖繩ですから。そういうような意味でもほんとうなら鹿児島から奄美を通って新幹線を海の底でも通してくれれば一番いいのでしょうけれども、それができないとすれば、もう少し海運が船の足が早くなって、本土との距離を縮めるとかいろいろな対策があると思うのでありますが、そういうような問題はどうですか、その第二次対策要綱には入れるというふうなことにはなりませんか。
  78. 山中貞則

    ○山中国務大臣 海運の問題は、復帰をいたしますと、本土の船舶公団融資の対象となりまして、共有船形式でありますが、非常に有利な条件で建造できるわけであります。ことに、沖繩に対して予定いたしております特別な基金等をつくりますと、その中で現在の奄美大島に適用されておるよりも少し手厚い感じの融資ができると思いますので、単に本土との航路のみならず、四十幾つの人の住んでおりまする島との連絡等についても船を大型化、近代化、高速化するということは焦眉の急であろうと考えまして、手落ちのないようにいたしたいと思っておりますが、いまのところそれを二次要綱に入れるというところまでは、これはたとえば本土との間の航路でありますれば既存の航路業者がおりますし、それの計画等でいろいろとありますけれども、どの会社のどれをということになりがちであります。したがって、まず原則的にはたとえばカーフェリーの希望等も本土側のほうからの船会社のカーフェリーの希望は、一応とめておいて、むしろ沖繩側の、琉球に現在あります船会社が、本土側のほうに向かってのカーフェリー路線の認可を優先するようにということを運輸省等に頼んでおりますけれども、それらの個々の問題がからんでまいりますので、一律的にはちょっと書きにくい点もございますが、それらの点については今後も配慮していきたいと考えております。
  79. 田中龍夫

    田中主査 次は、渡部一郎君。
  80. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 私は、沖繩における医療問題につきまして多少御質問したいと存じます。  ただいま私の前における応答におきまして、沖繩の医療問題が非常におくれているという点の御指摘がございましたけれども、私はこの問題にかかる前に、具体的な実例をもって、こういう問題に対する取り組みのスピードの問題からまず取りかかってまいりたいと思うのであります。非常に俊敏な長官は、おそらく私が一言言っただけで何を質問するかおわかりだと思いますから、お答えを全部言ってくだすってけっこうでありますが、一つは赤痢の話であります。糸満町を中心とする赤痢が大発生をいたしまして、昨年度おそらく七百名にのぼる赤痢患者が発生し、そして騒ぎになったことはとくと御承知だと存じます。ところが地元から陳情書も長官のところに来たのか来ないのかわからないのがまず問題でございます。それからまたおかしな話でありますけれども、琉球政府の今回の総理府に対する予算要求の中には、糸満の赤痢問題の抜本的な対策であるべき水道の問題について、何らお話がなかったやに伺うわけであります。私もはなはだ奇妙な事態である、こう思っておるわけであります。  そこで私は、この糸満町の水道の問題、赤痢患者発生の問題それに対する対策の問題、まず総括的に現在までの御存じよりの点をここで明らかにしていただきたい、こう思うわけであります。
  81. 山中貞則

    ○山中国務大臣 事実関係は周知のところでありますが、その後の糸満町の大部分は簡易水道にたよっておりますから、そういう事件が起こるもとがそこにあるわけですね。水道給水率は一〇〇%であっても、大部分の範囲が簡易水道である。そこに赤痢その他の発生の余地がありますから、それらのところは琉球政府も当然わかったことでありましょうし、その対策も一応は講じたようであります。しかしながら、私どものほうに陳情書も全然参りませんし、おっしゃったように琉球政府からの予算要求の上水道事業等に糸満町ということばが出てこない。出てきましたものについて、落ちているものでやらなければならないものについて、私どものほうで——ことに私各地を回っておりますから申し上げるものもありますが、こういう下水道事業予算というようなものをつけまする場合に、各市町村が琉球政府の中のやはり優先序列等があるわけでありましょう。それらの事情があるにしても、その配分の金額と順序というものによって、糸満町が新しく来年度予算という形でどうしても乗ってこないという内部事情があるのかもしれませんが、私どもとしてはちょっと意外に思うところでございますけれども、現実関係としては、要求のない予算というもので、なかなか糸満だけにつけることができなかったという残念な事情がございます。
  82. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 そこで、私は陳情書を持ってまいりましたので、ひとつ長官に読んでお聞かせをしようと思っております。    赤痢等伝染病対策に関する要請決議   糸満町の赤痢患者は去る十月下旬頃から発生し、これまでに疑似真性を合わせて約六百人に達し更に二人の腸チフス疑似患者が発生している現状であります。これらの伝染病の原因は那覇保健所や本町の調査によって簡易水道ではないかとみられている。本町の水道事情は他市町村に比較して極めて悪い実状にあります。従って本町の赤痢チフスその他の伝染病予防の抜本的対策として現在の簡易水道を早急に上水道に切替えねばならないと思料されますが、財源その他の事情により現在農村部の数ケ部落と字糸満のごく一部がようやく給水された程度であり人口の大半を占める字糸満の中心部はもっぱら私営の業者による簡易水道に頼っている現状であり、一日も早く水道法の規定に基づいて業者の権利を買収し町営上水道を字糸満全域に完成させ併せて農村部にある部落経営の簡易水道の施設改善が本町に於ける緊急課題となっております。ところが本町の財政事情からして、多額の事業費を捻出することは極めて困難であります。   又水源についてもこれまで政府の指導援助を得てその開発につとめてきたが、これだけの給水人口をまかなえる水源の確保が出来ず現に町上水道による農村部に供給している水は、水道公社より購入している状態で町上水道事業経営の大きな負担となっています。   よって糸満町議会は次のとおり強く要請します。  一、上水道事業に要する一切の経費について全額支出していただきたい(本土政府財政支出を含む。)  二、上水道事業に必要な水量を確保するために与座川水源の返還方について関係当局に接渉していただきたい。  三、農村部落経営の簡易水道の施設改善に要する経費に補助金を交付していただきたい。    一九七〇年十一月二十八日                 糸満町議会  こういうのが出ております。私は、ちょっと遺憾に存じておるのでありますが、御承知のように、向こうからお話が出てこなければ、これは非常にやりにくい事情があるということも多少わかるわけでありますけれども総理府の出張先が現地にあるわけでございますし、こういうことは、ちょっとのぞけば、もうたいへんな問題になって、地元で大騒ぎをされておることもよくおわかりだと思います。私の調べによりますと、赤痢患者の発生は、一九六六年に一千百十八名、一九六九年の赤痢発生患者数は一千九百名になっております。この七百という数は、おそらくは沖繩全体で起こっているほぼ半分に匹敵するほどの大発生であります。私、簡易水道を見てまいりました。そうして、長官のまねをして見てまいったわけでありますけれども、そうしましたら、まさにものすごいものであって、その水道からときどきミミズが出る。得体の知れないゲジゲジのようなものが一緒に出てくる。それを使っているわけでありまして、上水、下水なんというのは抜きにしたようなひどい水でありまして、それにたよっておる。しかも、そこの地域における簡易水道を実際に経営していらっしゃるその業者の方が四人ばかりいらっしゃるけれども、いずれもその簡易水道を当初つくったときは戦後ものすごいときであって、そのものすごいときに、自分の費用をなげうって町民のために水道をつくったという事情があり、その権益というものはある程度確立している。しかし、それを全部、公営水道に切りかえるために差し上げたいと地元では言っておるわけであります。ただ、差し上げたはいいけれども、自分の仕事をしておったわけであるから、何らかの形で補償がしていただきたいということで、そうたいして多くない金額が提示された。つくり直す費用と両方合わしてもおそらく三、四十万ドル、五十万ドルもあればもう完全にいくのじゃなかろうかと思われるような金額です。業者に対する補償金はほんの十万ドルから二十万ドル程度の間でおさまるのじゃなかろうかと思われるわけです。ところが、肝心かなめのお金の話が出てこないために、業者と町議会とが話をしても結論がつかない。そうして町の代表は、琉球政府に出かけていって、この陳情書をどこに置いてきたのだかもよくわからないような状況である。しかし、その琉球政府がそれを受け取っていることは確かである、そういう状況であります。  それで、私がここで問題にしたいのは、非常に熱心にやっていらっしゃる皆さんに申しわけないけれども、大体、出先にいる、日本政府からの出先機関はきわめて不熱心であって、出て歩かないんですな。だから、この間糸満町で、今度のコザ事件の、暴動の一つの大原因となった交通事故がありまして、御婦人が一人ひき殺された。糸満の目抜きの通りでひき殺されているわけです。そうしてそのひき殺された補償金や何かで米軍側といろいろ折衝を地元でやっておる。そうしてそれを糾弾するためにいろいろな組織ができておる。またそこのところで裁判が行なわれておる。ところが、その裁判が英語ばかりで、のぞきに行ったら全然わからぬなんという悲劇もあった。、また、アメリカの保険会社が乗り出してきて、支払うが、その支払いをのんでいいかどうかもわからぬなんという問題もあった。しかし、そこにおいて、日本政府の出店の機関は、一回もその場所をのぞいても見ないし、慰問にも行かないし、弔問にも行ってないし、ニュースを集めにも行っていない。踏み込んでもいない。私はここに問題がある、こう思ったのです。実は私は水道のことを調べに行ったんじゃないんです、ここでは。ちょっと通りがかっただけです。しかし、ちょっとおりてみたら、もうとたんにそんな問題が起こってしまう。私は、要するに、長官が非常にかけ回っていらっしゃることは大いに高く評価しているのであって、この点の評価にかけては、私は大いに高く高く評価しているのでありますけれども、実際行政の面の、こういう沖繩県のような場合には、引き取るぐらいの気持ちでこの問題を扱わなければうそじゃなかろうか、こう思っておるわけであります。私は、この糸満町の水道の問題が放置されるならば、本年また赤痢問題が爆発するのはもう目に見えております。起こらないというのは、単なる奇跡をたよるしかない。これについては、できるならば早急な予算措置を講じて糸満町に何とかする、こうしなければならないだろうし、それと同時に私は、根本的に、向こうがいうてきたものから順番で、向こうの自主性を尊重してというようなやり方でなくて、むしろ踏み込んでいって問題点をえぐり出していって、それを解決するという姿勢がなければ、何次かにわたる復帰要綱のようなものが出されたとしても、大きな穴があいてくるんじゃないか。私は、その点を深く反省を求めたい、こう思っておるわけなんです。
  83. 山中貞則

    ○山中国務大臣 まず、糸満の赤痢事件から申しますと、民営の業者が三業者あるということが大体異常なことであります。それを、赤痢が発生したときに琉球政府が調べたところが、全部不合格であった、これまた異常なことです。それで政善命令を当然公共的な立場から出したわけですが、ことしの一月二十四日で全部合格になったという一応の報告は得ておりますけれども、そこで私どもの出先の沖繩事務局のあり方の問題でございますが、やはり私どもとしては琉球政府の、ことにいま国家形態をとっておりまする自主性というものを、慎重の上にも慎重に尊重する立場をとっておりまして、事務その他のお手伝い等は遠慮なくしなさい、しかし、立ち入って、あまり自主性を侵すようなことはしないようにという配慮をしておりますので、糸満問題についても累次の報告は受けておりますが、現地に、琉球政府と別個の立場で、別な見解を求めるべく出張するというようなことは、あまりいたしておらないことは事実であります。ただし、私自身が直接回りました場所で、たとえば一番北部の島である伊平屋島、ここと野甫島との間を結ぶ橋というのが、戦前から陳情しておるけれども実現しないというお話が現地でありました。ところが、私の耳には全然聞こえておりませんし、戦前からの陳情というものが、どこで消えているのか、探れば、琉球政府の届くか届かないところでもうそんなむだなことを、という一言で消えてしまっておる事実もあったようであります。  そこで、そういうものは当然四十七年度予算では着手するつもりでありますが、私自身が参りましたところで気がついたものは、ほとんど今回の予算に全部入れております。その中には琉球政府は持ってこれなかったもの、たとえば嘉手納における大型公民館で、お年寄り、子供の休憩、病人の休憩、そして学校の生徒たちの復習、予習の施設、こういうものを一億八千万、全額国が出してつくってあげることにしたわけでありますけれども、これなどは琉球政府からは絶対に書類は上がってこない性質のものなんです。軍事基地否定、したがって、軍事基地があるためにしなければならない施設は反対だ——とは言っておりませんが、書類としては上がってこない。そこで、私が行きまして知った以上は、それを予算化するということはしておりますが、南部のほうに足跡をしるしていないわけではありませんが、糸満町の実態その他については、大臣になりましてからは、私は、糸満には足を運んでおりません。そこで、南部町村連合会という立場において、この次の機会にはぜひ南部の市町村長とも集まって話をする機会をつくってくれ、こういうことがございました。なるべく早い機会を見つけて参りまして、いまの問題も含めて、積極的に私自身がくみ上げてくる努力をしたいと考えます。
  84. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 私、いまの長官の後半のお話は、非常にけっこうだと思うのです。しかし、前半のお話、ちょっとうなずけないおっしゃり方があったように思うのです。それはなぜかといいますと、長官、確かにあそこは一つの国のようなところであったから、その自主性を大いに尊重してきた、こうおっしゃっている。これはこの問題の場合の弁解にはならぬと私は思うのです。長官がその後半でおっしゃいましたように、長官御自身が北部の島にお行きになって、一つの国のような沖繩ではあるけれども、その中に踏み込んでいって、戦前からの陳情でつつかえていたものを御自分で取り上げて帰ってこられた、それは一国の中に対するやり方ではない。明らかに長官御自身が内政干渉をなさった上でその問題を取り上げてこられた結論になる。
  85. 山中貞則

    ○山中国務大臣 担当大臣ですからね。
  86. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 そう。そこで私は、担当大臣である長官に対して、この問題もあなたの担当であると言いたい。その担当大臣が御自分で行ったときだけしか部下が動かないということはあり得ない。おそらくは長官だけがえらくて、ほかの人はみな目をつぶっておる。長官がお行きのときだけみんなが陳情書を持って殺到する。水戸の光圀か黄門か、お歩きになるときに陳情書が四方八方からささげられてくる。それであってはならないし、そんな民主国家はない。そんな行政だったら、長官一人を沖繩に置いておけばいいのであって、ほかの連中は全部呼び戻せばいいのであって、あとは要らない、あとはかばん持ちが一人おればよい、私はそう思う。したがって、私が言わんとしていることは、一つは、沖繩にある日本政府の出店は、長官のように四方八方に飛んで実情をもっと把握するように指導してもらいたい。それを私は言っておるわけです。この問題は明らかに緊急を要する性質のものであるから、早急に対策を立てていただきたい、私はこう申し上げておるわけであります。
  87. 山中貞則

    ○山中国務大臣 誤解をされて恐縮でありますが、沖繩事務局に私が心がまえとして申しておりますのは、事務当局段階で、琉球政府の各局長以下のメンバーのおられるそれぞれの仕事の中に立ち入って、干渉がましいことを言ってはならぬということを言っておるわけであります。決して民議のあり方とか実態とかというものの報告、連絡をなまけておってよろしいというようなことを指図しておるわけではありませんので、逐次、事件なりできごとなり実情等の報告は求めてもおりますし、受けてもおります。その意味では沖繩事務局の諸君もある意味で気の毒であります。一方においては琉球政府の行政能力がなかなか追いついてこないという事態等も現実にありますけれども沖繩事務局は琉球政府の事務能力が劣っていたからおくれたということは言わせない、共同責任であるということをきちんと申し渡してございますから、そのような事務についてはむしろ積極的なお手伝いはしておりますが、一つの事柄について琉球政府の当局を飛び越して行動させることは慎ましておる。しかしこのようなことは、これは別な意味のケースでありますから、琉球政府が取り上げない理由はなぜか、そしてこれは実態とどのように現実は行政上かけ離れておるか等の報告を私のほうにやることは何ら差しつかえないことでありますから、そうすると私のほうで、なぜ持ってこれないかについて事前に琉球政府と相談をして、そして予算の金額をふやすなりあるいは優先順位等を変更するなりして着工できていた事柄かもしれません。その点、私が行かなければ動かないということではありませんで、たまたま糸満の問題は、私自身が、予算にも要求がなかったという事態をあとでわかって、しまったと思ったできごとであるということを認めておるにすぎないわけでございます。今後はこのような手落ちがないように、よく琉球政府と連絡をとっていきたいと思います。
  88. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 長官は、私の言わんとしたところを了解せられたようでありますから、少しほかの問題に移りたいと思います。  長官はいろいろなところをお歩きになったのですけれども、私は長官が歩かないようなところばかり歩いたようではなはだ恐縮でありますけれども沖繩に精神病院がございます。精神病院は、非常に率直な話でありますけれども、あそこに現在、ここのいただきました資料の中には約三百五十床のベッドがあると伺っております。しかし実際、具体的に何床あって、そして医者が何人おるかということを、長官でなくてけっこうでございますから、事務的にひとつお答えいただきたい。     〔山中国務大臣「ほかの質問をやっていてください。いますぐ調べさせます。」と呼ぶ〕
  89. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 現在私が見ておりますと、先ほど医学部の問題がございましたが、医学部の問題をかけ足でひとつ申し上げたい。  昭和四十六年の予算案によりますと、琉球大学医学部設置問題懇談会委員謝金というのが三十四万円、琉球大学医学部設置問題等調査連絡旅費二百七十四万五千円、琉球大学医学部設置問題懇談会出席旅費二十二万七千円、こうなっております。これは、先ほど懇談会ができたというお話でありますけれども、現地では琉球大学の医学部の問題については早くしていただきたいというので強い要請があるわけであります。この内容を、私がつかめるところは、こういう荒筋でしかありませんが、要するにこれは旅費ばかりじゃないですか。これがほんとうに医学部をつくる場合に、大学をつくる場合、ほんとうに設置しようという場合に、懇談程度のことで済むか。謝金というような簡単な形で済むか。おそらくは、三十四万円の謝金でございますと、一人の方に一回御出席願って一万円出したとする。十人の方を集めて議論したら三回分しかない。連絡旅費に至ってはお一人の方、どう考えても、こちらから向こうへ飛んで行って、向こうからこっちへ帰ってくると十万円は見込まなければならないでしょうから、そうすると、これは延べ二十二人分であって、十人の方が出張されたら二回分である。そうすると、懇談会出席旅費のほうは二十二万円でありますから、これのごときは一人分か二人分であろうと私は想像をつけているわけであります。そうすると、この一年間かかって、この費用は、懇談会の委員の方は十人くらいがちょっと行って帰ってこられる、またちょっと行ってちょっと帰ってこられる、それも長い期間ではない。こんなことで医学部ができるのか、それは非常な疑いがあるわけであります。実際この費用を見ないで、大いにおやりになっているなというのだったら、私はあるいはだまされてしまったかもしれませんけれども、これを見て、医学部がほんとうにできそうなニュアンスになってきたかどうかについては、全くわからない。大きな疑惑が地元において起こっているのは当然のことだと私は思うのです。私は、大学の医学部は何年何月につくれるというふうな見通しが立てば、地元の方も安心していただけると思うのです、この話を飛び越して。そういう御回答があるのか。それとも謝金とかこういったものがどういう性格のもので、今後半年後くらいには予算的にはこういう別項目を出すのだとかいうようなお話があるなら、またそれで了解もできますけれども、これでは説明のしようがない。私はずいぶんいろんなところを歩きましたけれども沖繩で大学の問題について懇談したことがあります、全部そういう方ばかりじゃなかったけれども。その中のお医者さんから言われたときに、私が今度沖繩へ行って、医学部設置の問題はどうなっているのですかと聞かれたときに、実は謝金が三十四万円でなんて、こんなみっともない話をしたら何と言われるか。私は返事のしようがないわけであります。したがって、この場において私が求めておりますのは、ほんとうに医学部ができるのかどうか、そういう見通しが立っているのかどうか、もし期日がきまっているなら、いつまでにつくろうという見通しを持っておられるのか。あるいは、この謝金等のあまりにも常識外に少ないこの金額に対して、何か特殊な御事情がおありなのかどうか。そこをちょっと御説明を賜わりたい。
  90. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは、懇談会というのは、武見医師会長を座長にして、約七、八名の方におりおりお集まり願って、その中で、将来琉球大学の医学部の付属病院になるであろう保健学部の付属病院等の新しい建物のあり方、その内容の施設、備品の調度のしかた、設計のしかた等についてこまかくお指図を受けておるわけであります。そういう意味では、それは懇談会の費用ですから、そういう意味の旅費もありますし、若干の謝礼も組んでありますが、お集まりを願って、そして現地から、琉球大学から必ず一人来ていただきますので、そういう方の費用も入っておるわけであります。そういうわけで、会合の費用でございますから、それは琉球大学がつくられるための準備費ではございません。琉球大学をいかなる形で、いつごろつくって、どれくらいの学部の規模にしていくべきかについて、いろいろまだ議論が分かれておるということであります。たとえば五十名定員の医学部というものをつくりましても、結果的には、五十名ずつ新しいお医者さんが沖繩県内において生まれていくことになります。これは現時点においては干天の慈雨であり、待望久しきお医者さんの自給自足になりますが、しばらくたつと、沖繩県内の限られた環境の中において専門のお医者さんがどんどん過剰になって、あふれていってしまうことはもう目に見えていることであります。そこで、琉球大学医学部の性格はどのようなものにすべきか。わが日本も、東南アジアの指導国といってはおこがましいのですが、唯一の先進国であって、いろいろの留学生が入っておりますが、東南アジアの医学生を専門に受け入れる病院はまだない。沖繩は立地条件からいっても、熱帯医学なんかを中心に、そういう留学生を半分ぐらい受け入れられるような医学部の設置はできないものであろうかというような議論をしておるわけであります。これはじんぜん日をむなしゅうしておるわけではありませんで、いますぐつくりましても、教官の確保その他においてとても不可能であるということ等も、まあ施政権の関係もありますが、現実に存在をいたしております。でありますから、まず付属病院というものを完成させることに、保健学部の付属病院の立場から全力をあげておる。そちらには、これは予算数字を申し上げるまでもなく、もうすでに相当な累積の予算もついておりますし、ことしも最終的な意味で予算をつけておるわけでありますが、これらのものが整いまして、医学部の構想を固めて設置に踏み切るということでありまして、設置そのことは、佐藤総理が沖繩に行かれましたときに、琉球大学に医学部を設置いたしますという約束をしておりますので、これは政府の公約でございますから、設置することにおいては変わりがありませんし、第一次復帰要綱にもそのことははっきりと書いておるわけであります。  それをどのような形でいつという問題を探求するための懇談会の費用がたったそれだけであるということでありまして、これは費用が多ければ多いに越したことはありませんが、その程度の規模で毎年やっておりまして、別段それで不自由であるという御意見等は出ていない。相当ひんぱんに会合をしてもらっております。私もそのつど出てディスカッションに参加しておるわけでありますから、有意義な懇談会だと思っております。
  91. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 時間がなくなってきたので、遺憾ながらその問題が詰め切れなくて恐縮なのですけれども、もしそうだったら、懇談会委員謝金だとか、懇談会関係というやり方でなくて、調査費をおつけになるのがまともなやり方だと私は思っております。  それはなぜかといえば、琉球大学医学部をつくるのだという問題についてお話し合いをするというだけで時間を延ばしているとしか見えないからです。ほんとうにつくるのだったらもう調査委員会——こういう懇談会をやって大体の方向をつくるというのは、それはこちら側で、本土内でできることでありまして、何もこういうところに計上する必要はないものである。そうじゃなくて、今度沖繩において医学部をつくる、定員を一体何名ぐらいにしたらいいのか、その問題について何も懇談会でやる必要はないのであって、医学部をいよいよつくりますので、つくるにあたってその調査費をつけて、そうしてお役人をちゃんと出して研究をさせ始めるのがほんとうじゃないか。  私はこういう款項目にはなれておりませんけれども、ちょっとうなずけないような感じがしてしようがない。どうもこれを見ていると、沖繩の方々が本土に対する深い不信を持っておられる一つの姿とも一致するわけでありますけれども、どうも本気でないときに、名目だけはあげておいて、それで実際やってないんじゃないかな、もっとあとへ引き延ばすんじゃないかな、要するに、あのときは佐藤さんがおっしゃったけれども、そのおっしゃったことがちょっとぐあいが悪いので、それで調査費なんかにしないで、懇談会謝金なんかにしているんじゃないかなということが、この数字を見ただけで浮かんできて消えない。その疑いを、私は押しつけているのではなくて、晴らすような具体的な行動を、先ほどからの御答弁の政治的表現として、調査費としてここにつけられたらいかがか、こう申し上げているわけであります。
  92. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは、懇談会をやっているのは、じんぜん日を延ばしているわけじゃありませんから、準備のための相談をしておるわけでありますから、準備委員会でもけっこうですし、その意味では調査費でもけっこうなのですけれども、要は、現在の琉球大学そのものが、復帰と同時に沖繩の琉球大学は国立大学にするときめましたけれども、その内容が、教官充足状態から教科の内容から見て、本土の国立大学設置基準にはるかに及ばないものであり、それらの教官充足のために非常な苦労をいたしますし、ことしも、わざわざ教官のための住宅もつくろうということで、初めて予算を四十六年からつけて、住宅まで提供するから行ってくださいというようなこと等もやっておるわけでありますが、まず現在の琉球大学そのものの内容充実すら本土の最低の基準の大学にはるかに及ばない現状を改善するのが精一ぱいでございます。  さらに、それに対して、四十六年度はもうきまりましたけれども、来年度予算で、四十七年度は医学部をつくりますといっても、先生のいない大学医学部ができても困りますから、それらの点をいま相談をしておるわけでありまして、やはり現実にできるときにできると言わないと、できることはさまっておりますから、つくるという意思はきまっておりますから、その意味では琉球大学医学部設置に関して興味を持っておられる大方の方々は、私の知っている範囲では理解をしていただいておると思っておるわけでございます。
  93. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 そうすると、私が理解したような言い方をしますと、琉球大学自体が設置基準よりはるかに低いから、その土台をまず固めるのが第一段階である。医学部の問題はその次にくる問題であるから、琉球大学が国立大学として明確にスタートし進んでいくようになってから、医学部の問題については当然考慮しこれを建設する、こういう意味である、こういうふうに理解してよろしいですか。
  94. 山中貞則

    ○山中国務大臣 琉球大学が、完全に本土並みの大学に整備されなければ医学部をつくらないのだという言い方ではありません。その問題のめどをつけて、そして医学部をどのようにするかという問題を議論するということで、医学部そのもののあり方についてはすでに懇談会で議論しておるところでありますから、国全体としては医学部をすみやかにつくりたいという願望のもとに努力をしておるというふうにお受け取り願いたいと思います。
  95. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 それでは、精神病院の話を、一番おもしろい話を申し上げる時間がちょっとなくなってきましたが、すぐお答えいただけますか。
  96. 岡田純夫

    ○岡田(純)政府委員 たいへんおくれましたが、数字について新報告申し上げます。  まずベッドのほうから申し上げたいと思います。四十四年末の琉球政府厚生局の数字でありますけれども、千三百五十四床、そのうち、参考に政府立病院の関係を申し上げますと四百床となっております。なお、千三百五十四床というのは、類似府県と比較しますと半分程度対策率と申しますか、になっております。  それから患者につきましては二万三千百四十人というふうに報告されております。  以上でございます。
  97. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 とても時間的にございませんから、この問題にちょっと注意をしていただきたいと私特に申し上げておきたい。  といいますのは、非常に病人が多いわけであります。いろいろな病人が多い。ともかく一つや二つじゃない。しかし、結核のほうはいまレールに多少乗ってまいりましたし、らい病のほうも非常な御努力がありまして乗ってまいりました。  ところが精神病の患者につきましては、この両者と比べまして極端に悪い。それは、先日私が琉球精神病院へ参りましたときに何というお話があったかというと、お医者さんがその病院の中でたった六人しかいない。お医者さんがきらって出てしまう。要するに開業していればもうかるけれども、そのもうけるもうけ方と、そういう政府立のものに入ったときの格差というものが、日本と違ってまたばく大に違っておる。この本土との大きな差というものが問題なわけでありますが、そのために精神病者を見ることがほとんど不可能である。六人である。それで病院の院長自体がもうそれこそ連続宿直をしておられるわけです。そこへもってまいりまして、すぐそばにらい病と結核の病棟があるわけでありますけれども、そこのところは患者の方々の運動もあって、そして爆音がうるさいだろうからというので、爆音に対する設備が行なわれた。そしてその爆音に対する設備が行なわれたと同時に、ただ爆音を防衛するだけでは暑いだろうからというので冷房の設備もつく。精神病者のほうは、そういう運動を起こす力がもう当人にない。それでそのままになっておる。  しかも、精神病のお医者さんのおっしゃるには、もう時間がありませんので簡単に言いますけれども、要するになおらないタイプのがほとんどである。そのためにいまベッドの回転率が〇・〇幾つかという数字である。もうほんとうにベッドが回転しない。死ぬのをじっと待っているのみである。だから、病院があるけれども、いま二万三千人とおっしゃいましたけれども、患者二万三千人に対して、まともなベッド、ベッドらしいベッドというのはおよそ三百ベッドぐらいしかない、ここにお話しになったものだけでも千三百ベッドぐらいのものですから、とてもじゃないけれども入らない。それが放置されておる。その放置されておる人々がものすごく家庭に対する打撃になっておる。それは本土内においても問題でありますけれども、特に沖繩の場合はちょっと異常じゃないかと思われるほど多い。しかも、米軍との接点にあるような地域は、よけいにコンプレックスといいますか、そういう政治的ないろいろな摩擦というものが精神構造に影響するせいでしょうか、病人が非常に多いわけであります。実際に中へ入って、一人ずつのおうちをおたずねしてみますと、極端によくわかりますることは、この精神病者の異常な大群のために、沖繩の人々がどんなに困っているかわからないし、公の席上で論争はされませんけれども、そういう人をかかえている家族がもうそこらじゅうにある。そのためのつらい衝撃というのは、まことにもう言語道断であると言ってよい。私は、その意味では、問題はひとつ注目をしていただいて——今回の予算を拝見するところ、私はあんまり注目されているようには拝見できない。それは、さっきと同じように、公式報告によっているからだと私は思う。ところが、実際行ってみると、ものすごい数である。おそらくこの統計の数倍の患者がおることは間違いないし、これが大きな問題になることも間違いないし、これに対しては、早急に適切なる、係官を派遣するなり急設の精神病院を増設するなりして問題に取り組まれなければ、そのスタートにおいて痛ましい返還になろうと私は思います。その点を指摘したいと存じます。
  98. 山中貞則

    ○山中国務大臣 沖繩においては、ことに結核と精神病患者の率が、本土に対して、比率でも非常に高うございます。これはいろいろの理由があってのことでありましょうが、要するにそれに対応する医療施策も非常に少ない、立ちおくれておるということで、私どもも非常に心を痛めておる問題でございますので、これは単にこの場での議論ばかりでなくて、これからそれだけの膨大な精神病患者をどのようにするか、これについてはよく相談をしてみたいと考えております。
  99. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 では、長官のこれに対する対策をまた伺うごとにいたしまして、私はこれで質問を終わります。
  100. 田中龍夫

    田中主査 次は、大原亨君。
  101. 大原亨

    大原分科員 きょうは、同和対策についての御質問をいたします。  最初に、昭和四十六年度の同和対策事業の国の予算と、それを裏づけとする地方の予算の規模、それから、これと並んで、——自治省見えていますね、昭和四十五年度の各地方自治体における同和予算の状況、総額、それと、地方自治体で予算措置が少なかったために、いわゆる超過負担ですね、超過負担額の概要、これをひとつそれぞれお答えいただきたい。
  102. 山中貞則

    ○山中国務大臣 昭和四十六年度の、私のほうで取りまとめて予算を最終的にセットいたしましたものは、一般予算で六十二億九千九百九十六万円でございますが、農林省の土地改良、漁港修築等の同和部門を公共事業のほうに入れまして八億三千三百万が別ワクでございますので、合計七十一億三千二百九十六万円となっております。対前年伸び率は六八・三%ということになります。
  103. 長野士郎

    ○長野政府委員 四十五年度の数字につきましては、当初予算におきまして、府県におきまして大体百七十六億ぐらい、それから、大きな都市しかいま計数がはっきりいたしておりませんが、それにおきまして百七十五億円、これを合計いたしますと三百五十一億円くらいになりますが、そのほかにこの関係におきましては、さらに公営住宅、それから改良住宅の関係が五十億円ばかり別になっておりますので、そういうものを入れますと大体四百億程度のものになります。  持ち出しの点ですが、住宅を除きましては、地方の単独事業、そういうものがいわゆる持ち出しというふうに言われるわけですが、こういうものにつきましては、ほとんど起債をもちまして手当てをいたしております。したがいまして、住宅関係においていわゆる持ち出し分というものが出てくるということになるわけでありまして、その持ち出し分の数字ははっきりはいたしませんけれども、大体超過負担が二〇%ないし三〇%ということでございますから、十五億から二十億近いところの持ち出しがあるのじゃないかというふうに考えております。
  104. 大原亨

    大原分科員 それで、大阪府と大阪市の同和予算は非常にモデル的なわけですが、昭和四十五年はどうなってますか。
  105. 長野士郎

    ○長野政府委員 これは大阪府の場合は、いま資料で見ますと、約九十六億四千万円、市の場合が百九億二千万円ということに相なっております。
  106. 大原亨

    大原分科員 そこで総務長官、昭和四十二年の実態調査に基づいて十年計画をやっておるわけですが、実態調査については議論がずっとされているわけですが、十年計画で大体どのくらい国は予算の規模を考えて本年度の予算を計上されたのですか。
  107. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は、先ほど対前年伸び率も念のために申しましたけれども、実は伸び率ということをあまり考えないで、今回は予算要求段階から各省庁の担当局長等にお集まり願いまして、私のところで何日かかかって調整をして、要求内容等も変えさせたりいろいろいたしました。その結果まとまった数字を申し上げたわけでありますけれども、問題は、四十二年調査による実態の上に立った特別措置法並びに十カ年計画であることに私は非常な問題があると思うのです。その当時は、調査をいたしましても、自分たちの自治体がこんな回答をしたところで国がめんどうを見てくれるわけではないし、仕事がふえるばかりだという気持ちがなかったとは否定できない環境にありましたので、今日の時点では、おそらく皆さんが実態を全部、すべて悉皆調査に応じていただけるもの、環境上私はそういう環境になっておるものと思いますから、四十六年度予算で一斉調査、悉皆調査をやることによって、今後、四十六年度予算初年度として、残りの期間に十カ年計画の達成にどれぐらいの費用を要するのか等については計算をしてみたいと思いますが、現在の時点までの金額は、ただ前年度よりか比較的伸び率の高い予算が、各省を集計した結果、それだけついていたという程度にすぎなかった点を私も認めざるを得ませんので、まず、一斉調査の結果というものを土台にしていきたい。それから計画を立てていきたいと考えております。
  108. 大原亨

    大原分科員 調査費が計上されていることは非常にけっこうなことで、昭和四十六年中に実態調査をして、いまの長官の御答弁は、その上にいままでの実績を踏まえながら、残された期間において差別の完全なる撤廃に向かって、政府としては責任ある措置をとる、こういうお考えのようですが、そのとおりに了解してよろしいですか。
  109. 山中貞則

    ○山中国務大臣 そのとおりでございます。
  110. 大原亨

    大原分科員 自治体の超過負担、独自予算あるいは自主財源でやったのと、予算が足りなくて超過した、それは大体起債において消化されておるという話ですが、そのことについてはそのとおりであるかどうかということが一つと、その起債によりましてやったものについては、年度を追うて交付税の対象としてこれが返還できるようなそういう財政の仕組み、こういうものについてもそういう方針でおやりになっておるかどうか、これにつきまして自治省のお答えをいただきたい。
  111. 長野士郎

    ○長野政府委員 先ほど申し上げましたように、同和対策事業の中で住宅関係事業以外の事業につきましては、おおむね地方負担分につきましても起債等によりまして措置をいたしております。  住宅につきましては、先ほど申し上げましたような超過負担が確かにございます。この点は、補助の見方その他にいろいろ検討していただいていい問題がありますが、これは同和対策事業特有の問題じゃございません。公営住宅とか、改良住宅一般に通ずる問題の一つだと私ども思っております。  それから同和対策関係の事業の起債についての元利償還のお話でございますが、これにつきましては、その料金なり収入をもって元利償還をまかなうようなかっこうの性質の事業、つまり公営事業でありますとか準公営事業を除きましては、元利償還費につきまして八割を交付税算入をいたしております。したがいまして、住宅につきましてはその関係は準公営企業として考えられておりますから、その元利償還についての算入はいたしておりません。
  112. 大原亨

    大原分科員 同和対策生活環境の整備で一番問題は住宅ですが、その住宅の問題の中で、土地を取得をしたり超過負担をどうするかということで、これはいままで何回も議論になっておるわけですが、私はそういう住宅問題を実態調査に基づいて実行していく場合には、原則的に、その自治体が差別をなくするために努力をしたことについて、それが自治体の負担になるようなことを国財政の措置としてなすべきではない。やはりそういう原則はいままで何回も議論いたしましたが、そういうことを確認をして、そして生活環境の整備を中心とした行政差別の撤廃をなすべきである、そういうふうに考えるわけです。そういう面において、私はまだたくさん問題が残っておるような気がいたしますけれども、総務長官のほうから新しい実態調査に基づいて、これからこれらの施策を進めていく上において、どのようなお考えを持っておやりになるかという点をお答えいただきたい。
  113. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いま財政局長の答弁を聞いていて、ちょっとおやと私は思ったのですが、その点はまだ述べておりませんでしたということですから、昨年私は自治大臣と相談をいたしまして、そして住宅については家賃収入がありますので、なかなか元利償還を交付税で幾ら見るかについて議論の分かれるところで、詰め切っておりませんが、土地については、やはり一番大切な問題でありますから、土地について起こした起債の元利償還についての二分の一は交付税で見るということについては、ただいま確認をいたしましたが、私と自治大臣との話し合いどおりセットしてあるということでございます。
  114. 大原亨

    大原分科員 最近、差別事件が頻発をいたしておるわけですが、法務省からお答えいただきたいのですが、そういう差別事件で問題となっておる問題について、件数その他の概要をお答えいただきたい。
  115. 影山勇

    ○影山政府委員 侵犯事件の受理状況を申し上げますが、昭和四十四年度では従来から受け付けておりました事件が二十六件、それから四十四年度に新しく受けました事件が三十件、計五十六件でございます。そのうち二十九件を処理いたしました。それから四十五年度は、古い事件、前からの事件が二十七件、新しい事件が三十六件、計六十三件ということになっております。その処理は三十八件でございます。  なお、昭和四十五年度分の処理の内訳は、人権侵犯の疑いがあるものとして説示等の処理をいたしたものが二十一件ございまして、非該当が十五件、他の法務局に移送したものが二件ということになっております。  さらに、本年二月一日現在で人権擁護局に報告のありました係属中の事件は十七件でございまして、その内訳は、結婚問題に関するものが一番多うございまして八件ございます。それから差別的言辞などに関係する事件が四件ございます。それから就職に関しての問題、これが一件ございます。それから交際関係、冠婚葬祭等の交際に関するものが二件ございまして、その他に入るものが二件、こういう内訳になっております。
  116. 大原亨

    大原分科員 就職とか、結婚で、あるいは差別的な言辞が社会問題となってそういう問題が大きくなりますと、その対象となった、差別をされた人の人権というものは非常な問題であります。生命にかかわる問題であります。それは個人個人がそういうことを考えてみればわかるわけであります。一生のうちで一番重要なことについて差別をされて、その社会的な基盤、生活基盤がゆらぐということはたいへんなことでありますが、それを法務省が取り上げる、ある場合には文部省が取り上げる、そういうふうな場合に、やはり取り上げ方が非常に消極的ではないか、そういう議論があるわけであります。意見があるわけであります。これは私は予算上の裏づけの問題にも関係があると思うのですね。私は、そういう面においては旅費とか、調査とか、そういうものが徹底的に行なわれて、十分納得の上にそういう判断なり人権を守るという方向が打ち出されることが必要だと思うのです。そういう面において私は予算が非常に足りないのではないか、実際に活動を裏づけるような予算がないのではないか、こう思うわけですけれども、そういう点については遺憾な点はないのですか。
  117. 影山勇

    ○影山政府委員 確かに仰せのように、調査活動その他について予算が非常に重要であることは申すまでもございません。(大原分科員「幾らあるのです」と呼ぶ)これは今年度御審議をいただいております予算案で、法務省の分は総額四百八万四千円でございます。で、その内訳は、増員経費といたしまして、事務官二人分、それから人権侵犯事件調査経費といたしまして三百三十万六千円ということに相なっておりまして、昨年度のこの種の事業、この種の予算の二百四十五万円に比較いたしまして百六十三万四千円の増額ということになっております。(大原分科員「それで十分なんですか」と呼ぶ)これでもう完全だということは申せませんけれども、常にこの予算の獲得に努力いたしまして、本年度もまあ昨年に比してかなりの増額を見たものと思っておりますが、引き続いて今後もなおこの点について力を入れてまいりたいというふうに考えております。
  118. 大原亨

    大原分科員 時間がないのですが、それで長官、この同和対策特別措置法では、差別について国と自治体の責任を明らかにしておりますね。したがって、国に対して要求もたくさんあるわけですが、自治体に対する要求は、これはもう昨年度は全国的に、言うなればいままで潜在していたものが出てきておるわけです。したがって、実態調査をいたしますと、おそらく事実に近いものがどんどん出てくるし、また地方自治体が独自に措置をしなければならぬ問題がたくさん出てくると思います。これは大阪の府、市その他の地方を見てもわかるわけでありますけれども、これは全国的な自治体の昨年度の一つの課題であったわけでありますから、その点で地方自治体当局は、その財政の裏づけのために非常に努力をいたしておると思うわけです。これは当然のことであって、特別措置法が出た上において当然の結果であって、この措置法の一つの成果であるとも言い得るわけであります。問題は、長官が最初御答弁になりましたように、どのように受けとめて、そしてこれを解決をしていくかという姿勢にかかっておると思いますが、そういう点につきましては昨年来の事態を、自治体の情勢把握等を、自治省等をも督励していただいて、そして各省にわたる分野も多いわけですから、そういう面を十分把握をしてもらって、なかなかこれは末端の市町村に至るまでは、自治省の資料を見ても大都市しかないわけですが、町村に至るまでこの問題はあるわけでありますから、それぞれの地方の問題があるわけですから、そういう問題を把握していただいて、どこに問題があるか、国の責任はどこか、こういう点等も考えて、本年度の実態調査を進める中において今後の施策の確立について、主管大臣として万遺憾なきを期していただきたい。そういうことを要望いたしまして、御所見をお伺いいたしたいと思います。
  119. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私もその点が気がかりでございましたので、単に各省の数字とか報告だけでは問題が解決しないような気がしまして、昨年解放同盟やその他関係の団体の人たちとお会いすることはもちろんでありますが、各県市町村の実務者の方々に、総理府の私のところまでお集まりをいただきまして、そして私自身と実務者の方々と、何が問題点であって、何がネックであるか、そして、しなければならない問題として自治体は国に何を要請したがっているのか。それぞれ地域にまた特色もございますが、私と実務者との間の座談会というものは、非常に有意義であったと私はそのとき思いました。また、実務者の方々も、私との間の座談会において、問題点を相当端的にぶつけてくださいましたので、これからの行政の参考に資する上に大いに役に立ったと思っておりますが、こういう会合等も、私自身も何回も持つことによって、地方行政の実態と財政上とも、違背、遺憾のないようにつとめてまいりたいと思います。
  120. 大原亨

    大原分科員 最後に、いま山中長官は、非常にその点は積極的に対処されているというふうに私ども了解いたしておりますが、まあ問題は、局面によってはエキサイトする面が多いわけですが、しかし、これは深刻な人権問題であるし、そのことを通じまして、お互いの人権に対する自覚を深めていくという大切な側面があるわけですから、そういう面では政策上ぶつかる面があってもそういう点を克服して、今後も、総理府の長官がいつまでも留任されておるわけにはいかぬだろうが、できるだけ長くおられて、そのよき伝統を引き継いでいただいて、積極的にそういう場面に出て、耳が痛くても意見を聞いて、そして十分ディスカッションする点はディスカッションして、そうしてそういう意見の相違を乗り越えて施策が前進するように格段の御努力をいただきたい。そういうことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  121. 田中龍夫

    田中主査 この際、暫時休憩いたしますが、本会議散会後直ちに再開することといたします。     午後一時四十六分休憩      ————◇—————     午後四時二十二分開議
  122. 田中龍夫

    田中主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。近江巳記夫君。
  123. 近江巳記夫

    ○近江分科員 きょうは時間も限られておりますので、沖繩関係の問題にしぼりまして、長官にお伺いしたいと思います。  いよいよ沖繩が返ることになりまして、沖繩復帰のための返還協定あるいは国内関係法の整備とか、いろいろとそうした作業にかかられると思うのでありますが、今後の予定を考えていきますと、陛下のヨーロッパ旅行、あるいはまた、その前に日米経済合同委員会あるいは日本・カナダ閣僚定期会議等が開催される。そういう点から考えていきますと、沖繩国会は、いまのところ、いろいろ言われておりますのは、この十月中旬過ぎからではないか、このようにも言われております。そういたしますと、ちょうど沖繩の主席の任期切れが十一月の三十日、また立法院議員も同様に十一月の三十日、こうなるわけでございますが、ちょうど国会が開かれるようなさなかでもありますし、この点どのようにされるか、復帰まで延長されるのかどうか、この辺についてお伺いしたいと思います。
  124. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは厳格に言いますと、本土政府のほうできめることは事実上不可能でありますし、また考え方の上でも、本土政府がきめて押しつける問題ではないと思っております。  そこで、沖繩現地の情勢でありますが、主席のほうで県民会議というものをつくられて、復帰対策のいろいろの問題を諮問しておられるようでありますが、その冒頭に、選挙のそういう問題等を相談をしておられるようであります。そこの県民会議では、私の知る限りでは、この一番大事な時期に選挙というようなことで時間を空費してはいかぬ、したがって主席、立法院ともに復帰まで延ばすべきであるという意向が、最終的に主席に伝えられたようであります。ところが一方、これは公式の会議ともいえませんが、琉球政府と各党との話し合いの中で、自民党は、この県民会議の方向に賛成しているやにこれも聞いておりますが、残りの、沖繩でいえば与党の革新三党でございますか、それらの諸君のほうで、やはり選挙は選挙、二年間や三年間の信託ということでなったのだから、それを延ばすべきでない、選挙は選挙でやるべきであるという意見が強いようにも聞いておりますので、最終的に琉球政府の御意向を伺って、私どもでその御意向に沿えるように、できるだけのことをしたいと考えております。
  125. 近江巳記夫

    ○近江分科員 長官がおっしゃったのはもっともだと思います。沖繩の方々のそうした意思というものは最も尊重しなければいけませんし、そこで長官としては、もちろんこれは沖繩でおきめになることでありますが、今後のスケジュールをお考えになって、あったほうがいいか、なかったほうがいいか、どのようにお考えでございますか。
  126. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私が、いまこの時点において私の見解を述べることは、かえって琉球政府の中の意思の統一に微妙な一石を投ずるおそれがございますので、意見の開陳を遠慮させていただきたいと思います。
  127. 近江巳記夫

    ○近江分科員 その後の問題といたしまして、復帰後公選による知事ということになるのじゃないかと思いますが、それまでの間、復帰時点で行政主席であったものを知事と見なす、もしくは知事の職務を行なうものとするという、そうした法的な措置を講ずる必要があるのじゃないか。またあわせて、行政主席の在任者が欠けた場合の措置というものを講じなければならないと思うのですが、その点についてはどのようにお考えでございますか。
  128. 山中貞則

    ○山中国務大臣 復帰のその日付で選挙を行なうことが物理的に不可能でもありますし、また復帰直前に、復帰の日に新しい知事が選ばれておるようにという配慮も、なかなか混乱を生むようなことになりますから、やはり延長されるにせよ選挙された主席であるにせよ、復帰の時点における主席並びに立法院議員その他市長、村長、議員に至るまで、やはり法的に措置をとらなければならないことは事実であろうと思いますので、私どもとしては、大体琉球政府の御意向等もその方向であるやに承っておりますから、沖繩のお気持に沿えるように、復帰当時において主席であったものを主席と見なし、代行すべきものは当然副主席になると思いますが、そういうものを代行として必要があればうたい込んでまいりますし、立法院議員は県会議員と見なしていく。市町村においてはたいして問題はないと考えております。
  129. 近江巳記夫

    ○近江分科員 きょうは時間がございませんので、断片的な聞き方になりますが、御了承願いたいと思います。  その次に、新全国総合開発計画及び新経済社会発展計画の中で、沖繩が今度返ってくるわけでございますので、沖繩地域を独立したブロックとして位置づけるように改定し、さきに琉球政府が策定した長期経済開発計画が実現できるように措置を講ずる必要があると思うのですが、この点についてはどのようにお考えでございますか。
  130. 山中貞則

    ○山中国務大臣 大体御意見のとおりにしたいと思います。したがって、琉球地域というものは、復帰後の新全総あるいは新経済社会発展計画の中で独立の独特の地位を与えるべきであろうし、また日本列島に加える付加価値の大きさから考えて、そのことにおいて本土の新全総等も当然改定を加えらるべき価値をもって日本に返ってきてくれるというふうに受け取るべきが至当であろうと考えるわけでございます。  さらに、当然琉球政府の企画局の諸君が苦労してつくりました——そのメンバーとも私会いまして、非常にりっぱな諸君でございます。そういう計画を尊重して反映していくようにしたいと思いますが、ただその前提等が、目標年次においては基地収入が皆無にひとしいというような前提等を、一応政治の理想でありましょうから掲げてございますけれども、はたして現実にそういうことでいけるかどうか等について若干の問題点はあるにしても、おおむねその志向する方向を尊重してまいりたいと思っております。
  131. 近江巳記夫

    ○近江分科員 いろいろと復帰に伴いまして事務的なことがたくさんあろうかと思うのですが、一つは公務員の引き継ぎの問題ですが、引き継いだ後において、どういう形にせよ国側で強制的な退職の措置をとるとか、あるいはまた給与等において従来よりも不利になるとか、そういうことは私はあってはならぬと思うのですが、この点について、長官としてはどのように御配慮されておりますか。
  132. 山中貞則

    ○山中国務大臣 身分も給与も不利にならないように、しかも実質上の首切り等のないように、完全に国、県事務等においての配置がえを行ないたいと考えております。
  133. 近江巳記夫

    ○近江分科員 次に、沖繩における海洋万国博覧会の開催でございます。通産省が非常に力を入れてやっておられるようでございますが、今年度その調査費というものがつきまして、調査団も送られるようになったわけでございますが、しかし、通産省だけが何かやっているような感じが非常にするわけですが、この点、長官といたしまして力を入れて今後この沖繩の海洋博をなさるおつもりかどうか、ひとつお聞きしたいと思います。
  134. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは当初、総理府沖繩復帰対策費に入れるつもりでおりました。ところが、海洋博が実際上行なわれる時期においては、沖繩は本土の県に戻ってきておるわけでありますから、やはり海洋博といいましても関係業界等を積極的にそれに参加させ、あるいは国際的に世界各国の参加を要請する場合においては、総理府よりもやはり実施官庁たる通産省のほうがやりやすいであろうと考えて、通産省の予算に計上をお願いしたわけでありますので、予算の編成の過程において、もし通産省がじゃま者扱い予算をした場合には、私どものほうで直ちに引き取って予算化する用意をいたしておりまして、通産大臣とはよく意思の疎通をはかってまいったところでございます。
  135. 近江巳記夫

    ○近江分科員 実施官庁が通産省ということで力を入れておられるわけですが、長官としても、さらにバックアップをしてりっぱな海洋博を開く、こういうお考えでございますか。
  136. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私の言い方が足りなかったかもしれませんが、私のほうで予算化をしようと思っていたわけでありますから、それを先ほど申しました理由で、通産省のほうに計上してほしいと頼んだわけです。したがって、私どものほうが本来の熱心な推進者であったということでございます。現在でもそういう立場でございます。
  137. 近江巳記夫

    ○近江分科員 わかりました。その次に、全軍労のストのことにつきましてお聞きしたいと思います。  この前の八日の補正総括のときに長官にお伺いしたわけでございますが、あのストが終わりまして、それで一応心配された大きな流血の惨事にならずに済んだ。これは国民の一人として非常にうれしいことでありますが、しかし、今度また第二波のストが三月の二日、三日、四十八時間スト、これがきめられておるわけです。ピケに対決の動きがまた非常に出てきておる。特に嘉手納の第二ゲート等が心配されておる。この前の十日、十一日のストの直前、政府としては、退職手当の本土との差額分の肩がわり支給あるいは特別給付金ですか、こうした手当てをされたわけでありますが、しかしながら、全軍労としては、解雇を七月以降に延期をしてもらいたい、あるいは解雇予告期間を三カ月以上延長するよう提案をした。しかし、けられてしまった。そういう点で、政府がとられたこの間の対策というものは、一時的にはそれでおさまったかのように見えますけれども、根本的な対策にはなってないのじゃないか。その証拠にまた第二波のストが行なわれる、こういうことであります。  そこで、長官といたしまして、この雇用者に対して、あるいは衝突が心配される基地業者ですね、そういう方たちに対して、今後やはり根本的なそういう対策をとる必要があるのじゃないか、これについてはどのようにお考えでございますか。
  138. 山中貞則

    ○山中国務大臣 沖繩において最も心痛される問題の一つであります。私、緊急に大蔵大臣、総理、外務大臣をまじえての裁断を仰いだ六億三千万円については、現地で屋良主席を通じて全軍労の幹部の諸君に伝えたのでありますが、前進は認めるけれども、スト回避の条件にはならない、こういうことで、遺憾ながらストに対しては、私どもの行為というものは何ら役に立たなかったという結果に終わりました。したがって、先般の六億三千万円を支出したことについてもそう言われておるのでありますから、ストをやめさせる手段というものについては、なかなか困難な問題が横たわっていることを認めざるを得ません。かといって、いま直ちにアメリカ側が予告期間の延長なり、それらの問題について色よい返事をするようにもなかなか見受けられませんので、財政上の理由でやっておる点が多いわけでありますから、立場はわかりますけれども、むしろそういうことよりも、配置転換その他によって実質上の首切りの数をなるべく減らすということに重点を置いたほうがよろしいのではないか。私のほうでもそういう感触で、幸い五百数十名については配転ということを公式に発表いたしたようでありますが、まだ可能性があるようでございますので、犠牲者をなるべく少なくしてあげるということにできるだけの努力をしていきたいと考えます。  さらに、一番心配された嘉手納第二ゲート、コザ市の軍の経済に依存して立っておられる、生活をしておられる業者の方々との対立の問題は、依然として根深いものがあろうと思いますが、しかしながら、前回のストの終結いたしました日の夕刻から、コザ事件以来部分的な解除しかなされておりませんでした米兵の立ち入りの一斉解除が、徹夜徹宵条件なしに行なわれることに、すなわちもとの状態に戻りまして、一応コザ市民の関係業者の方もほっとしておられるところでありますけれども、やはりストをやられますと、そのやられた時間だけは自分たちの営業停止ということにもなりますし、また、ピケの張り方いかんによっては、基地内の営業の業者の人たちが、自分たちの営業店舗に行くことができないというような事態等もあるようでございまして、これらの点について、私どものほうで御加勢申し上げることについては何でもいたしますということで、ただいま具体策についていろいろ御意見を伺っておるところでございます。聞くところによると、次のストではピケラインを、基地内の業者がみずからの店舗に入る場合においては認めようというような線も出てきておるようでありますので、全軍労の皆さん方の御理解を賜われば、少しでもそういう接触がなごむのではないかと考えておるところでございます。
  139. 近江巳記夫

    ○近江分科員 対策としては非常にいろいろな困難があるということは、よく私もわかるわけであります。  そこで、この配置転換等でできるだけ解雇者を少なくしていくとかいろいろなことは、長官からお述べになったわけでございますが、今後この雇用者については、解雇に対しての予告期間の延長あるいは十分な離職者保障を配慮するとともに、経済社会の受け入れ態勢と調和のとれたそういう対策をとる必要があるのじゃないか。さらにまた基地関係業者については、この米軍基地の縮小に伴い転廃業を余儀なくされる基地内免許業者その他基地依存度のきわめて高い業者については、転廃業資金等の特別措置、あるいは失業する従業員には再就職対策等の特別措置を十分に配慮する必要があるのじゃないか、このように思うわけですが、もう一歩具体的に、長官の構想というものをお聞かせ願いたいと思います。
  140. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ただいま言われましたことの大体全部を含めて、ただいま検討しておることでございますが、ただし、前段の予告期間の九十日とかいう具体的な問題については、外交ルートでやっておりますけれども、なかなか色よい返事が来ない。それはすなわち、日にちの問題ではなくて金目の問題であるというふうに米側では受け取っておりますので、ここらのところは、いままでに若干過去の経緯で前進はしておりますものの、なお本土並みの条件になっていないという点はそこにもございますので、これは引き続き努力をしてまいりたいと思います。
  141. 近江巳記夫

    ○近江分科員 その次に、私は、この沖繩の経済の中でも一番じみではありますけれども、はずしてはならない大事な問題がありますのでお聞きしたいと思います。  長官も、何回も沖繩に行って、現地をごらんになっていらっしゃると思いますが、向こうの経済の基盤というものは、何といってもやはり農業が一番強いのではないか。しかも、その農業の中でもキビ——あるいはパインあるいは畜産と、こうしたおもなものがあるわけですが、その中でもやはりキビが全島につくられておる、そういう点で一番の基盤じゃないか、私はこのように思うわけです。長官としても、キビの買い上げ等については、よく現地の方々の事情も知って御苦労されておるとは思うのですが、しかし、その現状を見ますと、まだまだ買い上げの価格というものは安いわけです。そういう点で、復帰を前にしまして、ほんとうに政府としては力を入れてくれるのかという不安が、まだまだ非常に強いわけです。御承知のように、大体日本の砂糖の消費量は二百八十万トンといわれておりますし、そのうち二百二十万トンくらい輸入しておる。まだまだ国内産糖の生産は幾らでもできるわけだし、そういう点で、農家の経済が維持できる、しかも希望の持てる体制にしてあげていただきたいと私は思うのです。そういう点で、このキビの買い上げについてどのようにお考えいただいておるか、これについてお聞きしたいと思います。
  142. 山中貞則

    ○山中国務大臣 現在は、キビは奄美大島、それから種子島等にも栽培されているわけでありまして、これは甘味資源特別措置法の指定地域に指定をされております。しかしながら、一方沖繩においては、沖繩援助費あるいは今回の沖繩復帰対策費等において四億五千万、来年は五億というような糖業振興費というものが実質上上積みされております。これが復帰いたしますとやはり本土の県と違わない状態になりますので、鹿児島県と差をつけて、キビ地帯を分けるわけにもまいりません。そういうような問題点がいま一つあります。  それについては、やはり復帰いたしますと、キビの北限と思われる種子島も、一番熱帯作物としては有利であると思われる最南端の波照間あるいは与邦国等の島も、同じ一本価格で買うという現在の糖価安定法の仕組み、これは当然本土法そのものを改正しなくてはなるまい。すなわち、それぞれの地域に実態的に即応するような買い入れの仕組み、したがって、買い入れ価格の当然の設定というものが一本価格では無理であるから、変えようというような作業をいま農林省とともにやっておるところでございますが、非常にむずかしい作業でございますけれども、やらなければならない仕事の一つであると思っております。  さらに、沖繩のキビ、パインは農業の基幹作物でありますが、同時に沖繩は台風の常襲地でございますので、これらの台風の襲いました年あるいは襲われた島というようなものが極端に豊凶の差が出てくるわけでございます。これらについては、現在本土の共済の中にキビもパインも当然考慮されておりませんので、これら等についても共済の適用品種にできるかどうか、いま検討を進めておるところでございます。  これらの点は、いずれも第二次要綱にはちょっと間に合わないのではないか、非常に問題点が多うございますので、少なくともしかし第三次復帰対策要綱には、この問題等も詰めて入れていきたいと考えておる次第でございます。
  143. 近江巳記夫

    ○近江分科員 今後について長官としてもいろいろ配慮されておられることは、私もよくわかりました。  この際、特に長官にも考えていただきたいのは、一つは黒砂糖の、要するに含みつ糖の問題があるわけです。私も、宮古のほうもずっと行きまして、多良間というような島にも渡ったわけでありますが、そこで見てまいりますと、島では、大体製糖工場というものは能力が小さいわけですね。ところが、あるときにキビが一万何千トンできた。ところが工場の能力が小さいものですから、結局八月、九月までなってしまって、立ち枯れになってしまった。そういうことで、生産しようと思えばまだまだできるのだけれども、工場の能力がないからつくれない。そういう悩みがあって、生活ができないから出かせぎに行くのだ。ところが一方の説では、つくるといったって人手がないじゃないか。それは結局、そこでキビができないから出かせぎに行くわけですね。ところが、工場の生産も、合理性からいけば千トンクラスでないとだめだということで、工場もなかなか増設させてくれない。それであれば、あくまでも採算主義の考えが先か、島民のそういう経済というものが優先するのか、この辺から私は一切がスタートするのじゃないか、このように思うわけです。  実際にまた含みつ糖の場合は、糖価安定事業団の買い上げ対象にもなっていない。琉球政府としては、一億八千万ぐらい補助か何かで出していらっしゃるらしいのですが、今後復帰すれば、そのお金もどうしてくれるのだという問題もあるわけです。もっと増額していただけるのかどうか。あるいは事業団の買い上げ対象にしてもらえるものかどうか。あるいは、あくまでも島民の経済という点から、どんどんと島一ぱいの生産能力を高めさせて、それに見合っただけの工場の増設等も考えていただけるのかどうか。そういう大きな問題点が残っているわけです。  いま私、そうした点、何点か申し上げたわけでございますが、そういう点につきまして、長官のお考えをひとつ伺いたいと思います。
  144. 山中貞則

    ○山中国務大臣 黒糖の問題は、仕組みの上でたいへんむずかしゅうございまして、分みつ糖のほうは、先ほど言われましたように、国内需要に対して五分の一ぐらいしか生産がないわけでありますから、これは増産政策をとってもおかしくはありませんし、関税や消費税で保護しているのも、そこらに理由があるわけでございます。  ところで、沖繩を除く奄美大島等の黒糖工場もあったわけでありますけれども、この法律をつくりますときには、黒糖というものはもう希少価値を持って、一定の需要に対して供給があればそれでいいのであって、これを近代化、大型化、分みつ糖化するには限度があるということで、黒糖は実は切り捨て政策をとってまいったわけであります。ところが、沖繩がいよいよ返ってまいりますと、沖繩の場合は、現在は、お話しのような補助金を琉球政府が出すことによって黒糖の地域も何とかやっていっておるわけでありますけれども、現在の本土法では、黒糖については指定地域にもなりませんし、買い上げの対象にもならない。原料価格の告示も行なわれないという状態に、そのままではなるわけであります。  ところで、黒糖というものは、分みつ糖と違って需要というものがほぼ横ばいで限定しております。三万四、五千トンの総需要でありますから、これをこえるような生産振興、奨励をやりますと、一ぺんに価格暴落ということになりまして、かりに事業団が買い入れ保管というようなことをやっても、技術的にも冷温倉庫その他に入れないと無理でありますし、しかも需要をオーバーして生産されたら、売る当てのないものをかかえ込んでいかなければならないという、非常にむずかしい問題があります。  そこで、このままほうっておくわけにはまいりませんので、現在の琉球政府が独自でとっておられる補助金政策というものを、復帰後も何らかの法的な根拠もしくは実質上の、国がそれに対して援助をしつつ、現在の奨励策について途中で立ち消えにならないように——ということは、そういう措置を講じたいと考えておりますことは、沖繩の場合は、小さい島々に小さい規模の工場が一ぱいあって、それが黒糖しかつくれない。いわゆる分みつ糖化できないという背景がある。しかし、それはキビしかできない島なんだということで、やむなく黒糖工場ということになっておるわけでありますから、これらの島の人々に、同じキビをつくっていて、含みつ糖であったら知らない、分みつ糖なら何とか考えましょうという政策はとれないところでありますし、ことにそれらの小さい離島の島々ほど生活その他においても苦しい、あるいは環境、条件等の悪いところでございますから、何らかの特例措置を開きたいものである。この黒糖については、需要の範囲内において生産が続けられますと、その価格構成あるいはまた原料価格のささえというものは可能な性格のものでございますから、それらの範囲内において何らかの具体策を講じたいと考えておりますが、これも直ちに、いまここでどのような手段を、と申し上げるには、まだ詰め切っていないという実情でございますが、放置しないということだけは言明できると思います。
  145. 近江巳記夫

    ○近江分科員 そこで、黒糖の場合、非常に消費が限られているという長官のお話でございますが、再製赤糖あるいは台湾から入っておるホーシャントウ、これらの量を見ますと、かなりの量になっているわけですね。黒糖のほうが若干多いわけでございますが、再製赤糖、そうしてホーシャントウというのは、これはほとんど同じ量の輸入であり、また生産なんです。ですから、確かに輸入業者なり、あるいは再製赤糖をつくっておられる業者の問題等もあるわけですが、この辺のところもよく調整をしていただくならば、私は、黒糖の生産はやってもまだまだ消費は伸びるのじゃないか、このように思うわけですが、その辺のところも含めて、この離島は、特に長官もすでに御指摘のとおり、全部含みつ糖でありますし、ただそれが一つ生活のささえなんです。それが非常に気の毒な状態に放置されておる。これは見るにたえませんので、ぜひともその辺のところをよく調整をはかっていただき、あたたかい対策をひとつとっていただきたいと思うのです。この辺、黒糖、再製赤糖、ホーシャントウについての長官のお考えをひとつ聞かしていただきたいと思うのです、消費とからみ合わせまして。
  146. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ホーシャントウは独特の用途でございますので、やはり根い需要があると思います。これはわずか五千トンでございまして、ほとんど台湾でありますから、この問題は別にしまして、再製赤糖の一万数千トンというものは、これはやはり沖繩において黒糖生産というものが、それぞれの地域の黒糖生産農家が順調に所得が伸びていったことによってさらに生産がふえますならば、当然総需要の中で、黒糖を原料とする再製赤糖でけっこうやっていけるわけでありますから、税制上その他の恩典もしてあるわけでありますし、沖繩産糖を使って再製赤糖を、ということに再製糖業者に対してよく話をすれば、それらの需要先の確保は可能であると思いますので、私としては、そのような置きかえその他は考えていける問題であると考えるわけでございます。
  147. 近江巳記夫

    ○近江分科員 そうしますと、この離島におけるそうした黒糖の生産というものは非常に希望がわいてきたわけであります。そうしますと、いま長官がお述べになりました、そうした、いま琉球政府がとっておるそういう援助なりそれを継続、さらに上乗せしてやっていくとかいろいろな対策を、いま具体的にお考えかと思いますけれども、まあ将来に私は大きな希望がわいたのじゃないかと思います。そういう点で、どうかひとつ、沖繩のかかえる問題というものは、特にそういう農業問題を中心としまして、きめこまかな対策が一番大事じゃないか。そのほかいろいろな問題はありますけれども、何といっても生活の大きな基盤であるこういう問題が一番大事であり、あたたかい配慮が必要じゃないか、このように思います。  時間もありませんので、これで終わりたいと思いますが、最後に長官から、そうしたキビ作農家あるいは畜産に励む農家等の人々に対する今後の長官の配慮、また決意というものを簡単にお述べになっていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  148. 山中貞則

    ○山中国務大臣 沖繩の小さい離島の人々が、分みつ糖にすることもできない、黒糖しか生産できないという実情については、私も、それぞれの島において強く分みつ糖並みの要請を受けたのでありますが、いままで一ぺんもそれに特別な考え方を示したことがありません。国会においても、そのような意向を表明したことは本日が初めてであります。私が就任いたしまして以来、ずっと一貫して黒糖問題が頭が痛かったのでありますが、練りに練って、何とか処置をできるという決心をいたしましたので、具体策はいま御披露するところにまだきておりませんが、初めて本日言明をしたわけでございますから、これで沖繩の、分みつ糖地帯のキビ作農家も、含みつ糖地帯のキビ作農家も、一応安心して、自分たちの未来も明るいんだという御希望を必ず抱いていただくものであると考える次第でございます。
  149. 近江巳記夫

    ○近江分科員 以上で終わります。ありがとうございました。
  150. 田中龍夫

    田中主査 次は、岡沢完治君。
  151. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 私は、今度の予算分科会の第一分科会ではラストバッターを仰せつかったわけでございます。お疲れだと思いますけれども約一時間、主として免許行政を中心にお尋ねをいたしたいと思います。  免許行政といいますと、国民にはあまり耳なれないことばかもしれませんけれども、私は、現下における交通事故、特にその死傷者の激増ということを考えました場合、ことに三年間、死者も負傷者も歴史的にその数を更新しているという実態を考えました場合、ことに一年間に二万人の死者、九十六、七万人の負傷者という実数は、総括質問でも指摘いたしましたけれども、公害罪における被害者とは、数においては全く比較にならないほどの国民に対する脅威でございまして、この交通事故と密接不可分の関係にあるのが運転免許行政だと考えます。ことに、すべての事故が人によって起こされるというのが一般であることを考えました場合、その運転者の養成と、あるいは安全運転教育、あるいは国民に交通社会人としてのマナーを定着させるという問題は、きわめて価値あり、重要性のある政治的な課題でもあるかと思います。  そういう観点から、最初に国家公安委員長に、指定自動車教習所が運転免許行政上占める地位について、どのように理解していられるか、お尋ねいたします。
  152. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 指定教習所は、初心者を収容しまして一貫した運転教育をするところであって、系統的に順序立てて教養を高める場所だと思います。
  153. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 その指定自動車教習所は、現在約三百万人、新しく運転免許証を取る人があるわけでございますが、その中で特に普通免許の場合、どの程度のパーセンテージの人が指定自動車教習所の卒業生であるか、国家公安委員長は御存じでございますか。
  154. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 具体的数字をちょっと明確に存じませんので、政府委員からお答えします。
  155. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 政府委員の答弁は、私は、けっこうです。国家公安委員長が、私は、この交通行政における責任者のお一人だと思います。そういう趣旨から、国家公安委員長が免許行政の担当所管庁の国務大臣として、指定自動車教習所が占める運転免許行政上の位置というものを御存じなかったことを、私は非常に残念に思います。
  156. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 数字的にお尋ねになりましたので、何百万人かということをちょっと失念しておりましたが、大体八五%を占めております。
  157. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 いまのお答えのとおり、普通免許を取得する者の中の八五%、数にして二百万人の運転者を養成しているのが指定自動車教習所の実態であります。これは一年間の数字でございまして、いわゆる義務教育によって中学校を卒業する生徒の数よりも多いわけであります。そういうことを考えました場合、指定自動車教習所の存在、協力、あるいはその中身、質的物的な充実なくして運転免許行政あるいは優良運転者の養成は考えられないと思いますが、国家公安委員長の御見解を聞きます。
  158. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 そのとおりであります。
  159. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 昨年、道交法の改正が地方行政委員会にかかりました。六十三国会と六十四臨時国会の両方に道交法の改正がございました。六十三国会における道交法の審議に関連をいたしまして、衆議院におきましても附帯決議がつけられました。その附帯決議の第一は、「市民生活と密接不可分な本法の性格にかんがみ、国民に十分な理解をうるよう、その表現を平易にし、また、副読本等の普及をはかるなどその周知徹底に努めること。なお、常時、必要に応じ、広く関係方面の意見を聴取することに努めること。」というのがございます。最近また道交法の改正原案なるものが、あるいはまた改正法案の荒筋が新聞報道によって発表されました。道交法が昭和三十五年六月二十五日に制定されまして以来、約十年の間に八回の改正を見ておるわけであります。朝令暮改だと言われてもしかたのないほどひんぱんな改正頻度であります。そのこと自体、日本の交通行政の当面している一つの問題点を浮き彫りにしているということを考えざるを得ませんし、またそのこと自体が必ずしも間違っておるというふうに解するものではございません。しかし、軽々に道交法の改正を繰り返すことだけが必ずしも交通行政あるいは免許行政の正しいあり方ではないと私は確信するわけでございます。  ところで、今度原案を御発表になりました道交法の改正案——荒木国家公安委員長はお忘れかもしれませんが、私は十日か二週間ほど前に、そこの喫茶室てあなたにお会いをして、道交法の改正案の中身を御存じですかとお尋ねをいたしました。あなたは、全く何も知りませんというお答えがあったと思います。事実でございますから否定なさりますまい。所管大臣の国家公安委員長が全くお知りにならない段階で道交法の改正が今回も進められておったわけであります。大臣に相談もしないぐらいですから、私たちの理解する限りでは、先ほど申しました運転免許行政あるいは優良運転者の養成という立場から見ました場合に、きわめて重要な役割りを持っております指定自動車教習所、あるいはその連合会の組織がございますが、これに相談がないのはあたりまえだという見解かもしれませんが、いま読み上げました附帯決議の趣旨からいたしましても、またこの道交法の性質、免許法の改正後の施行ということを考えました場合、関連当事者である、あるいは「関係方面」とこの附帯決議でいっておりますのにまさに当たります自動車教習所連合会の意見なり、あるいは考え方を聞き取る機会もなしに、あるいはこれと十分な協議もなしに原案作成に邁進されるということについては、私はいささか妥当性を欠くと思うわけでございます。当然道交法の改正は、これは一般国民にとってもきわめて重要な関心事でありますし、またその改正が必要な場合、これにわれわれも協力するにやぶさかでもございませんし、また事故防止を悲願とするわれわれにとって、正しい前向きの改正であれば、決してただ何でも反対するという立場をとるものではございませんが、関係者の十分の理解と協議、あるいは事情聴取の上でこういう改正はなされるべきではないかということを考えますが、これについて国家公安委員長、いかにお考えでございますか。
  160. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 全く聞いておりませんと申したのは事実でありますが、その後説明を聞かしてもらいました。ただし、だからといって、私が聞かしてもらったのがつい最近のことでありますことと、事務当局関係方面の意見等を十分に聴取しなかったということとは別問題だと思います。意見等も十分に聞いた上で立案に着手したことと思います。
  161. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 もし十分な意見等を聴取しないままで原案をつくったとすれば、国家公安委員長の意思には反すると解してよろしゅうございますか。
  162. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 それは、まだ意見聴取してないとすれば、いまからでもおそくない式に意見を聴取してけっこうだと思います。
  163. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 山中国務大臣にお尋ねいたしますが、やはり交通行政の一元的な最高責任者のお一人でございます山中長官は、この道交法の改正の中身についていつ御説明をお受けになりましたか。あるいは中身を承知していただいておりますか。
  164. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いつであったかはちょっとつまびらかにしませんが、道交法改正というものについての概略の説明は受けました。ただきのう、あなたから問題点というものを聞いて、そういう点をちょっと見落としていたという気持ちがしたわけでございます。
  165. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 頭のいい山中長官でございますので、大体いつごろ道交法の中身についての説明を——交通局長が就任されたのが去年の十一月の二十日です。これに一番関係の深い運転免許課長の御就任は、ことしの一月の二十日過ぎです。まさか免許課長が着任もされないのに、免許行政の中身を大幅に変える案がつくられるはずはない。一月二十日よりもあとであることは明らかでございますが、大体いつごろか、正確でなくても良心的にお答えいただきたいと思います。
  166. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私に説明いたしました交通対策室長が二週間ほど前であると申しておりますから、ほぼそんな見当であると思います。
  167. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 いまお聞きすると、荒木国家公安委員長は私とお会いしたやはり二週間前にはまだ聞いておられなかった。山中長官のほうも二週間ほど前にやっと聞かれた。ところが、ここで交通局長お尋ねいたしますが、今度の道交法の改正案の原案はいつごろおつくりになりましたか。
  168. 片岡誠

    ○片岡政府委員 昨年の暮れでございます。
  169. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 昨年の暮れから原案はちっとも変わっておりませんか。それとも原案の変更がございましたか。
  170. 片岡誠

    ○片岡政府委員 もう少し詳しく申しますれば、私の前任者時代から要綱という形で原案ができておりまして、それを相当前からマスコミにも発表いたしますし、第一線の府県の警察の関係者、その他関係者に出しておったのは事実でございます。ただ先生御指摘の免許行政関係につきましては、私が着任後決定したことでございます。昨年の暮れにきめまして、そして第一線の府県の警察本部あるいは指定自動車教習所連合会といった関連の向きに、その原案と申しますか、第一次案をお示ししました。そして意見をいろいろ伺った結果、その原案をよりよきものに直すという形で第二案をつくっていったという過程はございます。
  171. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 昨年の臨時国会でも道交法の改正があったわけであります。そのときに用意ができておるなら当然そのときの改正に盛り込まれるべきだったと思います。用意ができていなかったから、昨年の臨時国会以後の新しい情勢として今度の道交法の改正が用意されていると理解するのが当然だと私は思います。しかも先ほど指摘しましたように、交通局長の御就任は去年の十一月二十日である。いま免許行政だけにこの道交法の改正の中身の中でしぼって申し上げました場合に、一番深い関係方面である指定自動車教習所連合会にこの案の御提示のあったのが、私の理解する限りでは一月二十日であります。しかもそれは、警察庁からのお申し出による御提示ではなしに、連合会から、そういううわさを聞いて改正案の予定があるのではないかとお尋ねをして、初めて御説明に来られた。しかも二十日以後、まだこれは一カ月前後前でありますが、第二次案、第三次案と三回も原案が変わっておるように私は聞いております。またこの改正案の御提示を二十日に受けました。私もその席におりましたけれども、以後二月の上旬には連合会の意思決定をしてほしいという御要求がございました。しかし先ほど申しましたように、指定自動車教習所は年間二百万人の運転者を養成するような数的にも大きな存在であります。学校の数だけで千二百五十をこえるわけであります。もちろん全国に散在していることは言うまでもございません。しかも案は二次、三次と変わっている。御提示があって二週間前後の間に意見をまとめよというほうが御無理であるとお考えにならないでございましょうか。しかも、それがいわゆる字句の訂正とか、きわめて細部にわたる改正にすぎないのであれば、われわれ何も問題にいたしません。しかし、要は免許行政の抜本改正にも通ずるということを交通局長も否定されないと思います。  また、私自身に対して交通局長は、御就任早々に、免許行政の抜本改正を考えたい、慎重にやるので知恵もかしてほしいというお申し出があったことも事実であります。しかし、それはことばだけであって、一切の御相談もございません。抜本改正であるならば、それだけの慎重さと配慮と、そしてまた検討と御用意があってしかるべきではないか。いかに優秀な交通局長でありましても、御自分の独断ではやはり机上のプランになるおそれもある。私は今度の案を一つ見ましても、中身については、まだ法案が出ておりませんから論議する場所ではございませんけれども、はたして交通事故防止に役立つのかどうか、優良運転者の養成に前向きな改正案であるかどうか、疑問点も多いような気もいたします。やはり実際に運転者教育に当たっておる連合会の意見を十分にお聞きになって、長所、短所、メリット、デメリットを各方面から検討して、これがほんとうの意味で事故防止に役立ち、優良運転者の養成に役立ち、国民の期待にこたえるものだという段階で改正案をお出しになっても、決しておそくはないし、またそれだけの慎重さがむしろ要求されるのではないか。先ほど指摘いたしましたような、十年近くの間に八回も改正を重ねる道交法のあり方は、私は必ずしも警察庁の定見なり識見を示すものではないと思うわけでございますが、この際、荒木国家公案委員長の御見解を、特に法改正の前提にこの当事者との慎重な協議こそ必要だと私は思いますが、その必要性をお認めになるかどうかを含めて見解を聞きます。
  172. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 まだいまからでもおそくない式に、十分意見を拝聴して準備をしたらよろしかろうと思います。
  173. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 いまのお答えからいたしますと、関係者の意見を十分拝聴する機会を持つ、十分審議を重ねるという御態度であると理解してよろしゅうございますか。
  174. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 そのとおりであります。
  175. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 私が与党のこの法案に関係する部門の議員の方々にお聞きした範囲では、交通局長は、この道交法の免許行政に関する部分についての反対はきわめて一部だということを御説明になって、どうしてもこれは今国会で通すのだという趣旨の御主張をなさっておるようでございますが、その根拠をお尋ねいたします。
  176. 片岡誠

    ○片岡政府委員 私どもの耳に入る範囲では、主として大阪と京都の指定自動車教習所の設置者の方々が反対をしておられるというふうに聞いております。
  177. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 しかし、交通局がこの原案をお示しになったのは第一次案であって、しかもそれが一月二十日である。その後第二次案、第三次案については自動車教習所連合会に対しての御提示もないわけですね。その二次案、三次案についての賛否はまだ連合会としては全く明らかにされてないと見るのが通常じゃございませんか。
  178. 片岡誠

    ○片岡政府委員 一次案につきましては連合会におはかりをしました。それから二次案につきましても連合会におはかりいたしました。そして連合会から一次案については反対の御意向を承りました。二次案につきましては条件つきで賛成の御意向を承りました。三次案につきましては、これはごく最近でございますから、正式に文書をもっての御返答はいただいておりませんが、口頭において賛意を得ております。
  179. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 三次案のほうが原案になるわけでございますか。  それから口頭でも賛意を得ているとおっしゃいましたが、いつ、だれから、どういう賛意を得られたか、お尋ねいたします。
  180. 片岡誠

    ○片岡政府委員 指定自動車教習所連合会長から賛意を得ております。
  181. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 いつですか。
  182. 片岡誠

    ○片岡政府委員 約一週間くらい前でございましょうか、三次案の原案が固まった直後にすぐ連絡をいたしまして、賛意を得ております。
  183. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 私はこの連合会の賛否につきましては、この際明らかにする必要もないし、また連合会自体が十分の討議の機会もまだ持ち得ていないと思います。ただ問題は、ここで交通局長がはっきりと大阪とか京都の名前をあげて反対だということをおっしゃいました。ところが私の承知しております限りでは、全国の設置者の少なくとも半数以上は反対だというふうに理解できると思います。ところが、実際に反して表面的にあらわれた結果が、大阪と京都以外、反対の声が出てこないという理由について私は指摘したいのであります。  先ほど来申し上げております指定自動車教習所は全国に千二百五十六校ございます。そこに必置のいわば教習所の最高責任者の一人として管理者という制度があります。その管理者の八〇%以上、千二百五十六校中千十六校が警察の出身者であります。いまお名前の出ました連合会長の石井さんも元警察庁長官であります。私は個人的あるいは人格的に非難申し上げるどころか、むしろ尊敬をいたしておりますけれども、しかし体質的にはここに問題がある。ことに、私自身も現実に体験をしたわけでございますけれども、今度の改正案に関連をして、警察庁が各府県の警察本部を通じて、指定自動車教習所の管理者あるいは設置者あるいは各単位連合会の役員に対して、この法案に反対しないように、反対陳情もしないようにという趣旨の指示がありました。ないとおっしゃれば、私は具体的にお名前をあげたいくらいでございますが、あげられた方が迷惑をかけられると思います。私は、交通局長は良心に照らしてないとはおっしゃらないと思いますけれども、事実そういう行為がございました。この問題は憲法にも触れるおそれのある大きな問題ではないか。ことに警察庁の御指示であるだけに事は重大であります。最初に、こういう御指示をなされた事実は全くないと断言できるお立場にあるかどうかお尋ねいたします。
  184. 片岡誠

    ○片岡政府委員 私どもは、案の説明を第一線にいたしまして、文書も流しました。その案の中身について、関係の指定教習所の設置者の方あるいは管理者の方によく説明をして、理解を得て御協力を得るように、そういう説得をするように指示をいたしました。それだけでございます。
  185. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 交通局長はあるいはそういう御指示かもしれません。真意はそうかもしれません。現実にはしかし、各府県の交通部長等を通じまして、あるいは交通免許活動を通じまして、指定自動車教習所にいわゆる俗にいう圧力があったことは事実であります。また連合会長が警察出身であると同じように、各府県の教習所の連合会の役員の大部分が警察出身であります。私はここに免許行政の大きな問題点があるような感じがするわけであります。免許行政の法的位置づけその他についてはあとに譲るといたしまして、憲法十六条がございます。請願権であります。「何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人もかかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。」ところが、現実に指定自動車教習所の生殺与奪の権を握っておられる各府県の国家公安委員会、それを代行される交通部長、免許課長からのことばというのがいかに実際には圧力的に響くかどうかということについては、私は御判断にまかせます。憲法二十一条「集會、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」とございます。また憲法九十九条に、ここにおられる国務大臣のお二人も、われわれ国会議員も、公務員も「憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」しかも九十七条は  「この憲法が日本國民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び將來の國民に對し侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」ことに私は、警察庁においてこういう行為がなされたというところに問題が存するように思います。警察法第一条「この法律は、個人の権利と自由を保護し、公共の安全と秩序を維持するため、」云々とあります。第二条の第二項には「いやしくも日本國憲法の保障する個人権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない。」その第三条、服務の宣誓のところでは、「この法律により警察の職務を行うすべての職員は、日本國憲法及び法律を擁護し、不偏不黨且つ公平中正にその職務を遂行する旨の服務の宣誓を行うものとする。」現実には少なくとも憲法に保障する請願権の精神を踏みにじるような行為が、警察によって、現在、各府県の自動車教習所連合会に対して、あるいは単位指定教習所に対して行なわれているという事実を私は実感として否定できないような気がします。もし、ないとおっしゃるならば、また交通局長の意図がそうでないとおっしゃるならば、私はそれでもけっこうです。今後こういう自由な表現を抑圧するような態度はとらない、あるいはそれに反しても差別をしないということをお約束していただけますか。
  186. 片岡誠

    ○片岡政府委員 法案の趣旨の説明は徹底的にいたしますけれども、言論の自由を抑圧したり、それによってあとでしっペ返しをする、そういうようなことは一切いたす所存はございません。
  187. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 交通局長はそうして言明されるわけですが、もしそれに反して各府県の県警本部、警視庁等においてこういう行為があった場合には、それを是正する措置をとっていただけますか。
  188. 片岡誠

    ○片岡政府委員 とる所存でございます。
  189. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 そうすると、陳情を行なうことは、もちろん私は請願権に類する国民の権利だと思いますが、間違いございませんね。
  190. 片岡誠

    ○片岡政府委員 当然のことだと思います。
  191. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 同じようにこの法案に反対の意思表示をすることも、その賛否は国会がきめ、あるいはまたその是非は国民が判断するとして、反対の意思表示を行なうことも自由でございますね。それに対する抑圧はとられませんね。
  192. 片岡誠

    ○片岡政府委員 当然のことでございます。
  193. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 ここで私は特に山中総務長官にもお聞きいただきまして、指定自動車教習所のあり方あるいは法的位置づけ等を中心にお聞きしたいと思います。  先ほど来、私と荒木国家公安委員長との問答を聞いていただきまして、指定自動車教習所が運転者養成に果たす役割りの重要性については御理解いただいたと思います。ところが、現実に指定自動車教習所が法的に位置づけされておる地位と申しますのは、道路交通法の第九十八条、厳密には一カ条だと思います。九十九条にも指定自動車教習所という名前は出てまいりますけれども、実質的には道交法のたった一カ条、九十八条に規定して位置づけられているだけであります。しかも道路交通法というのは御承知のとおり取り締まり法であります。道路交通法の目的第一条にございますが、「この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする。」これは全く運転免許行政あるいは指定自動車教習所と関係がないとは、広い意味で言い切れないかもしれませんが、しかし道路交通法と自動車教習所はちょっと縁遠い感じであります。私は、交通事故の防止あるいは優良運転者の養成が国家的なあるいは社会的な政治的な課題であるということを考えました場合、この重要性は、単に個人に免許を与えるというものでは済まない。やはりお互いが加害者にもならず被害者にもならず、しかも現代の凶器といわれる車をして、逆に文明の利器たらしめる努力をする、そういう位置づけがなされてしかるべきではないかと思うわけでございます。  この指定自動車教習所がそれだけ社会的地位責任が重いものであれば、それだけに対応する中身の充実も必要でございますし、国家的な保護助成もある場合は必要である。そのかわりに、それに値する社会的使命を果たす努力を指定自動車教習所にも求めるべきであると私は考えるわけであります。現実には、単なる警察の取り締まり行政の対象にされ、あるいは古い警察官のいわばはけ口にされておる、これが実態であります。先ほど読み上げましたように、千二百五十六校の中の千校以上が警察官の出身者が管理者におさまっておるという事実、警察庁の所管であって、それ以外の各省は、これが教育的な機能を持ち教育産業的な使命を帯びておるとすれば、やはり教育的な要素があるべきだし、文部省もこの指定自動車教習所に大きな関心を持たれてしかるべきだと思いますが、いままでは全く無縁だった。きょうもこの質問に対して、文部省も立ち会ってほしいと言いましたが、あまり関係ない、所管外ですというお答えがございました。山中長官の御担当の交通安全の点から言いましても、きわめて密接な関係が指定自動車教習所とあってしかるべきだと思うわけであります。また国家的、社会的な責任を帯びる、公共的性質をも帯びる企業であるならば、大部分中小企業でありますだけに、通産省も企業保護の立場から、ある場合には中小企業近代化資金あるいは中小企業の金融関係の保護があってしかるべきでございますが、従来までは全くございません。これにつきましては、本予算委員会におきましても、社会党の委員からも御指摘がありました。指定自動車教習所はバー、キャバレー並みの扱いしか受けていないわけであります。この点につきましては、きょう通産省の金融課長に来ていただきまして、所管庁は警察庁である、これは指定業種になるので、所管庁からの申請があれば喜んで許可したい体制ができております。しかし、少なくとも、私が昨年四月ここで質問いたしました場合でも、警察庁は何らそういう努力をなさっておらない。取り締まりの対象には考えても、その重要性を認識されてそれを保護育成するという精神には全く欠けておられたと言っても私は過言ではないと思います。大蔵省は、これが公益的な性格を帯びるならば、やはりある面での免税措置、特に指定自動車教習所は、従来まではいわゆる教習所内部で教育することが中心でございましたが、最近は路上実習も加味されましたので、ガソリン税等、目的税に関する限りは免税措置等があってもしかるべきだと私は思いますが、そういう面での保護育成については全く無関心な態度できょうまで放置してこられました。  そういうことを考えました場合、この指定自動車教習所千二百校、しかも毎年二百万の運転者を養成している機関所管庁として、単に警察庁の取り締まりの対象にされるという存在は、どうしても私は納得できない。優秀な運転者を、そうしてりっぱな安全運転教育をやってもらうというためには、私は、できることなら交通省が設置されればそこの所管にしてもらうべきだし、少なくとも、総理府の賢明な山中総務長官なんかのもとで、各方面への配慮と十分な対策を講じられるような立場からの存在であるべきではないか。単に警察官の古い人を送り込む場所にし、警察の取り締まりの対象にする、その送り込むためには、かなり大きな指導監督をしないと言うことを聞かない。私の知っている限りでは、ある府県におきました場合、常に指定自動車教習所を指定する場合には、あらかじめ、管理者は警察庁の今度の定年予定者のだれにしてくれ、二、三年したらまたその管理者もかわってもらって次の人を送り込むという慣習も事実ございます。こういう存在であっていいのかどうか。この辺について、最初に山中総務長官、そして荒木国家公安委員長の見解を聞きます。
  194. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は交通安全対策の本部長としての立場でございますので、許認可行政の警察庁プロパーのあり方についての批判は差し控えたいと思います。  しかし、自動車教習所というものが公認の立場において果たしておる運転免許制度への貢献性というものについては、大体お話しになったことに同感でございます。私の聞いておりました点では、たしかあなたの質問だったのではないですか、宮澤通産大臣が、好意的に扱う旨の答弁をしておりましたね。だから、それらのところは、問題を次々と具体的に筋の問題で展開していけば、今後のあり方等については改善の余地が十分にあると考えております。ただ、警察庁の取り締まり法規といわれております道交法だけでそれが根拠づけられておるという点については、公安委員長の御答弁のほうに譲りたいと思います。
  195. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 中小企業でもあるわけですから、中小企業としての保護育成をやるということは賛成であります。教習所の責任者に警察出の人を推薦するというふうなお話がありましたが、その実態はよく知りませんけれども、ありそうなことだと思います。ありそうなことだとは思いますが、それも結局、交通取り締まり、道交法に通暁しておるというふうな長所を生かしての善意の推薦であろうかと思います。
  196. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 しかし、ありそうなことでは済まされない問題なんです。私は、警察官が、特に優秀な警察官が定年後りっぱな職業を得られる、そうしてそのりっぱな職業、ふさわしい職業の一つがこの指定自動車教習所の職員になられることだということを否定はいたしません。むしろ歓迎をしたいと思います。しかし、やはり指定自動車教習所の実態、社会的使命を考えました場合、警察の御出身の方だけがその中心におられる、指定自動車教習所のいわば中核というのは私は管理者だと思いますが、それが八〇%以上警察出身者であるということにはいささか疑問を感じます。あるいは場合によれば副管理者というのを置いて、それにはたとえば教育の経験者を充てるというようなことも一つ方法でございましょう。私は、警察の私物化されておる現実の指定自動車教習所のあり方、あるいは連合会も含めたその存在、今度の法改正に見られますように、単に警察の下請機関的な存在であることは、私は警察庁のためというよりも、連合会のためにも、国民の、優良運転者の教育という立場からも悲しいことだと感ずるわけでございまして、特に警察がいわゆる権力の権化といわれる存在であるだけに、よけい職権乱用というおそれのないように慎んでもらうべき立場にある。先ほど私が警察法に定めた服務基準等を読み上げさせていただいて指摘したとおりでございます。  そういう意味から、私は、やはりこの際、こういう弊害を除去する意味からも、先ほど私が指摘しました免許行政、指定自動車教習所の果たす役割りの重要性ということを考えましても、この際所管を単に道交法の一つという法的位置づけを改めるとともに、警察庁所管から、むしろ幅広い範囲であるいは視野でこれを指導監督、育成してもらえる存在にすべきだと思うわけでございますが、重ねてこの問題について、また、ついでに交通省の設置等の構想についての意見も含めて——荒木国家公安委員長は、国家公安委員長のお立場のほかに行政管理庁長官という大事な職務をお持ちでございます。むしろその立場から、私は、一国家公安委員長というお立場にとらわれないで勇気ある発言を重ねておられる荒木さんに、国務大臣としての見識も含めてお聞きいたします。
  197. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答えいたします。  立法論として承っておきます。
  198. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 もっと見識を持ってください。  私は荒木さんに苦言を呈するわけではございませんが、この間与党のある先輩議員と食事をする機会がございました。最近の荒木さんは守備範囲ばかりおっしゃって、なるべく食言をしないように、あるいは官僚のメモを棒読みされる、攻撃的な要素が全くなくなった、昔の荒木さんに返ってほしいということを率直に披瀝しておられました。私は、いま申し上げました交通省の設置あるいは免許行政の重要性を考えました場合、単に立法論として承っておくというような受け身の姿勢であるべき問題ではない、もっと、ほんとうに交通事故防止対策に熱意のある国務大臣のお一人であるならば、見識があってしかるべきだと思います。交通局長の助言を聞いて、それに従って発言をする。不見識じゃございませんか。見解を聞きます。
  199. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 御意見は傾聴すべき内容であると承りました。したがって、立法論として傾聴いたしたわけであります。
  200. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 先ほど山中国務大臣は、私が予算委員会の総括でもこの問題を取り上げたことを御記憶になっておられました。私は同じように、この免許行政のあり方についてはすでに予算の総括でも質問をしているわけなんです。国務大臣も居眠りをしておられなかったら聞いておられたはずなんです。そうすると、承っておくのではなしに、あらためてそれに対する所管大臣としての見識があってしかるべきではないか、御意見があってしかるべきではないか。いい意見だけれども承っておくだけでは、私は、現在毎日続発している交通事故、一日に四十二人も三人も死亡し、そして百万人近い負傷者を出す交通事故の関係大臣としての姿勢だとは思えない。これ以上聞きません。  この際、交通省の設置を含めまして、山中国務大臣の御見解を聞きます。
  201. 山中貞則

    ○山中国務大臣 行政管理庁長官がああ言っておられるわけでありますから、私のほうから意見をつけ加えるのは差し控えたいと思いますが、確かに現在の交通安全対策の角度から見まして、たとえば道路をつくる場合には、道路をただ延ばせ延ばせ、そして改良し舗装して快適な道路にするという観点からのみ行なわれてきたきらいもあったわけですね。そういうことでようやく道路五カ年計画の一年おくれで安全施設の五カ年計画も、道路をつくるならば安全施設をつくらなければならぬというふうに、やっと前進をしてきましたし、警察庁の交通安全対策の立場からも、その五カ年計画とドッキングをしよう、あるいは運輸省の踏切道五カ年計画というものも並べて三本柱にしようというふうに、だんだん私の手元で調整をはかってきておりますが、やはり感じますことは、各省がそれぞれ自分たちの角度からのみものを見ているという感じがすることがあります。その意味では、現在の私どものような調整機能だけで足りるのか足りないのか。私たちの平和な日本で御指摘をまつまでもなく、日々死亡者のない日はないし、また交通戦争と呼んでおかしくない、死亡者を二万人近く出しておる実態から見て、容易ならぬ事態であることについては、各自自覚をしなければなりません。そのためには、交通省というのも一つの御提案であろうと私は思いますが、諸外国にまた例のないわけでもありませんから、そういうようなことを考えて、わが国における少なくとも不特定の、いつだれが被害者になるかわからない、脅威ともいうべきこの事態に対処する政府の機構のあり方というような問題は、やはり検討の余地があろうと考えておるわけでございます。ただ、具体的にいまここで交通省に賛成とかどうとかいう意見までには、まだまいっておりません。
  202. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 ここで交通局長に。先ほど私が読み上げました昨年の六十三国会における道交法の改正の附帯決議の中に、これは第六項でございますが、「指定自動車教習所の果たす役割の重要性にかんがみ、早急にその保護育成に努めること。」という条項があったことは十分御承知だと思いますが、この条項も含めまして、所管の担当局長である交通局長自体が、指定自動車教習所の意義あるいは価値等について、どのように理解しておられるか、特に運転者入門教育に占める位置等も含めて、率直な御見解を聞きます。
  203. 片岡誠

    ○片岡政府委員 指定自動車教習制度が、歴史は古うございますけれども、代替的な制度として明確に定着し始めて十年になると思います。この十年間に指定自動車教習所そのものも非常に成長もし、中身も充実してまいったと私は思っております。そして私どもも、その方向に、指定自動車教習所の保護育成と申しますか、その初心者教育、入門者教育に占める重要さ、その役割りを十分評価して保護育成につとめてまいりました。現に昨年の暮れには、たとえば自動車損害賠償保障法の保険料率の引き下げとか、そういうものを実現いたしましたし、今後とも中小企業としてのいろいろな便宜をはかる面につきまして、中小企業庁なり通産省のほうに現に交渉もしておりますし、今後も続けてまいりたいと思います。そのように私どもは、指定自動車教習所が免許行政に占める役割りについては、十分認識もいたしておりますし、今後とも保護育成をしてまいりたい、そのように考えております。
  204. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 交通局長に伺いますが、それではいまの御答弁にもありましたけれども、道交法の去年の四月二十四日の附帯決議の第六項の精神に逆行するような方向での改正は考えない、あるいは交通事故防止に逆行するような、あるいは優良運転者の教育に逆行するような方向での道交法の改正は考えないということについて、お約束していただけますか。
  205. 片岡誠

    ○片岡政府委員 これは、役所の立場から見る場合と、指定自動車教習所の設置者の立場から見る場合との、ものごとに対する認識の相違は若干あろうかと思いますけれども、私自身は、いま岡沢先生のおっしゃった方向で現在の道交法改正案もつくった、そのように考えております。
  206. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 それでは最後に交通局長に。先ほど荒木国家公安委員長がお答えになり、関係方面の意見を十分聞く、もし聞いてなかったらこれからでも聞くということをおっしゃいましたが、この場合の最も大きな関係方面というのは、私は指定自動車教習所連合会だと思います。私自身は、連合会のために免許行政があってはいけない、ほんとうの意味で、国民の立場から見て、正しい優良運転者の養成はいかにあるべきか、事故防止に役立つ免許行政、運転者の養成制度について、公正な、そしてまた国民の納得されるような制度を模索し、法改正を求める姿であるべきだと思いますけれども、しかし実際には、やはり指定自動車教習所千二百校の協力なくして今後の免許行政の効果的な達成があり得ないということを考えました場合、十分意見は尊重されるべきだし、また少なくともその話し合いの機会は持たるべきだし、またその機会を与えられるべきだ、十分に審議し、あるいは意見を述べる時間的な余裕も与えらるべきだと思いますが、それについては御同意いただけるかどうか。あるいは、それについて特別の見解があればお示しいただきたいと思います。
  207. 片岡誠

    ○片岡政府委員 御承知のように、現在のあの法律、三月の中旬までに国会に提出いたしたいと思いまして、最終的な詰めをいたしております。時間の許す限り指定自動車教習所連合会あるいは指定自動車教習所の設置者の方々の御意見を十分伺いながら、最終的に作業を進めたい、そのように考えております。
  208. 岡沢完治

    ○岡沢分科員 ほんとうにいい改正で、各方面にも異論がない、また、かりに異論があっても、それはとるに足らない意見であったり、無視してもいい意見であれば、その一つの反対があるために一切の法改正がなされないというのは間違いだと思いますが、しかし、今日までほとんど国会ごとに道交法改正が繰り返されておるということを考えました場合、このような抜本改正について、今国会のいわゆる期間ということを意識し過ぎられて、いわゆる見切り発車とか、やや強引な時間的な無理をなさっての法案の成立ということは本末転倒ではないか。もし聞くべき意見、あるいはほんとうに成案についての賛否が分かれるような場合、あるいはメリット、デメリットについて疑問がある場合、十分な根回しなり、あるいは討議を重ねられて、あとでまた改正を要するというような法案でない法案をお出しになるのが正しいあり方だと思いますが、そういう方向での御努力を期待して、私のきょうの質問を終わります。
  209. 田中龍夫

    田中主査 これにて内閣、防衛庁及び経済企画庁を除く総理府所管質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、本分科会における質疑は全部終了いたしました。     —————————————
  210. 田中龍夫

    田中主査 この際、おはかりいたします。  昭和四十六年度一般会計予算中、皇室費、国会、裁判所内閣、防衛庁及び経済企画庁を除く総理府法務省及び文部省並びに他の分科会所管以外の事項昭和四十六年度特別会計予算中、文部省所管並びに他の分科会所管以外の事項昭和四十六年度政府関係機関予算中、他の分科会所管以外の事項に対する討論採決は、予算委員会に譲ることといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  211. 田中龍夫

    田中主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  これにて本分科会の議事は全部終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  分科員各位の格段の御協力によりまして、本分科会の議事が全部終了することができましたことを、ここに深く感謝いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十分散会