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奥野分科員 新
年度の
予算に、
僻地勤務の
医師を養成する
目的を持った
大学を設置することに要する
経費が、
自治省予算に計上されております。
府県が、
僻地といえ
ども診療所に
医師が勤務できるような体制をつくっていくことは、
府県の重要な
行政課題の
一つだと
考えるものでございます。
医師なくして
地域住民の健康を守れないわけでございますから、特に重要な
行政課題の
一つだと言いたいのでございます。
全国に
公立医大が十校ございます。
医科大学を設置する
府県は、その
大学の運営をくふうすれば、みずから
当該府県の
僻地診療所に勤務する
医師を確保することが比較的容易ではないかと思うのでございます。しかし、これまで
府県は、その
医科大学を
国立に
移管を求めましたし、現にまた求めているところもございます。それはそれなりに理由があるのだと思いますけれ
ども、
当該県の
行政目的遂行にあまり役立っていない点もあるのではないだろうかという
心配を私抱くのでございます。同時に、
医科大学を維持するには相当な
財源を必要とするわけでございまして、地元の
奈良県立
医科大学では、四十四
年度決算で七億二千五百万円、四十五
年度予算では、八億九百万円の
一般財源をこれに出しておるわけでございます。金がかかるために
国立移管を求めるということであれば、それは是正したいと
考えましたので、先日、
自治省当局に、
医科大学に要する
経費を
地方交付税法上の
基準財政需要額に算入して、それだけ
普通交付金を
当該府県に増額交付すべきだと主張いたしましたところが、
自治省当局は、そうしますと答えてくれました。そうしますと、
公立大学を設置するために要する
財源、今後はそれほど苦労しなくても済むということになるのではないかと思います。残されているもう
一つは、
当該府県の
行政目的に沿わせることができるかどうかということにかかってくるのではないか、こんな
感じがするのでございます。
県立医大でありましても、その
県出身者が
学生であります場合には、
卒業後も
県内で勤務してもらうことを期待しやすい。また
県内僻地に勤務してくれることも期待しやすいわけでございますけれ
ども、他
府県から来ている
学生につきましては、なかなかそれが困難だ。やはりもとの
府県に帰ってしまう傾向が多いのじゃないかと思うのでございます。
私、
奈良の
県立医大についてその資料を求めたわけでございます。見てまいりますと、
昭和二十六年に二十九人の
卒業生を出しておりますが、
県内にとどまっているのは六人でございます。二十三人が
県外へ行っているわけでございます。せっかく
県立医大で
医師を養成しているにかかわらず、みなよそへ行ってしまっておるのであります。二十八年には四十二人の
卒業者を出したわけでございますが、
県内にとどまっておるのは十九人でございまして、二十三人が
県外へ行っております。三十年には三十六人の
卒業者を出したわけでございますが、
県内にとどまっているのは十三人でございまして、二十三人も外へ行っているのでございます。三十一年には三十九人の
卒業生を出したわけでございますが、
県内にとどまっているのは六人、三十三人が
県外へ行ってしまっているわけであります。これじゃ何のために県が多額の金を投じて
県立医大をつくっているのか、私はわけがわからなくなってしまうのじゃないか、こう思うわけでございます。問題は、
県立医大の
入学者をきめます場合に、
県内出身者に特別な
配慮を加えることができるかできないかということにかかってくるように思うのでございます。
奈良県の
県立医大に入学する者について調べましたら、四十四
年度六十一人採用しているのですが、
県内の者はわずかに四人でございます。四十五
年度は五十九人採用しているのでございますが、
県内の者はわずかに十二人でございます。こういう
運用に問題があると私は
考えるのでございます。県によりましては、じょうずに半数ぐらいの者は
県内出身者を入学させております。
選抜試験の
運用において
配慮しているわけでございます。またそんな
配慮をされるなら、私は
学生のために、
学生を募集する際に明らかにしておいてあげるべきじゃないだろうか、こうも思うのでございます。こうも思うのでございますが、どうやらいろいろ当たってまいりますと、憲法の二十六条の規定「すべて
国民は、法律の定めるところにより、その能力に鷹じて、ひとしく
教育を受ける権利を有する。」と書いてある。この規定を形式的に解釈されて、そして
文部省当局が、特別な
配慮を押えるように
指導されてきたんじゃないだろうかという疑問も持っているわけでございます。もしこの憲法の規定が
心配なら、内閣法制局と十分相談されて、その結果に基づいてやむを得ないんだ、場合によっては法律をつくる、こういう挙に出られるべきだと思うのでございます。もし、この憲法の規定から、そんな
指導をしているんだということであれば、
指導されているかされていないか知らないですよ。知らないけれ
ども、現実の医大の合格者の姿を見てみますと、そういう疑問が私にはわいてくるのであります。会社、工場が、従業員に
大学の
教育を身につけさせたい、それで従業員のために
大学をつくる。やはり競争試験でよそから来れば、みんないい成績をとる限り入れなければならぬのだということじゃ、その
大学はつくれないのでございます。また現実に
府県立の高等
学校、いい高等
学校にはよその県から入ってこようとします。そういうものも防ぐようにしているわけでございますから、無理にその府
県内に居住しているような姿を、
希望者はとったりもしているわけでございます。
こういう事情でございますので、私がいまお尋ねをいたしました県立
医科大学、それが重要な
行政課題に沿うものだ。またそれを達成されるためには、どうしても
県内出身者が相当その
大学に入ってくれなければ
目的を達成できない。
目的を達成されるためには、
選抜試験の
運用にあたってある
程度の優遇措置が必要になってくる、こう
考えるわけでございますが、これらにつきましてお
考えを承っておきたいと思います。