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川崎(秀)
分科員 要点はそのとおりでございますから、さらに私は具体的に申し上げてみたいと思うのです。
あのラグビーの競技場は、何万入るのか実際にはよくわからないのです。一万五、六千か、まあ二万ぐらいだろうと思うのですが、中央スタンドだけは人数が四、五千人から六千人ぐらいまで入れるが、あとはばらっとしておって、立っておれば相当入れると思うけれども、御案内のように、イギリスでは最近サッカーの競技に興奮したる観衆が、帰りがけに、出るお客と、一ぺん外へ出ていたお客が、あと一分というところで自分の
地元が一点入れたものだから、もう一ぺん見ようというお客と重なって、六十何人か死者を出した。ちょうどあれと同じような古さですね、あそこの中央スタンドは。出入口もトンネル
一つしかない。よく事故が出ないものかと思うが、事故が出ないのは、いまのラグビーの競技場に集まる観衆は、これはいまの日本のスポーツにおいて最もリファインされた、それから出るときも粛々として出る、実に上品な観衆です。この間も私は非常に驚いたのだが、早稲田の女の子が三人、早稲田が後半で追い込まれておったけれども、
最後にとどめと思われるワントライ入れたら、よかったわね、これで勝ったわねと言う。ひそひそ言うとるのですな。これはよその競技場なら大騒ぎです。ところが、ラグビーでは、試合が終わるまでは、あまり敵を刺激をしないという
意味で、
応援も相手を罵倒するようなことは
一つも言わぬ。味方への拍手が主です。上品な観衆ですから、したがっていままで事故が起こらなかった。今後はあんな盛んな試合がどんどんとなると必ず事故が起こると私は思いますので、その
意味で今度のラグビー競技場の改築は、スタンドを五万人の
収容能力のあるものにしてもらいたい。片側中央が二万四、五千、あとぐるっと回って五万ということで構想を立ててもらったらどうかと思うのです。そういう
意味できょうは具体的な提案を申し上げたわけですが、もう
一つこの機会に文部
大臣に申し上げたいのは、実はこの競技場の建設をラグビー
関係者が自力でやった。故香山蕃氏をはじめ、難波経一君、山陽パルプの社長です。あるいはまあラグビーの先輩というのは財界ではかなり出世しておる人が多いらしくて、各会社のいいところもいますが、その連中がみんな香山蕃君の指令に基づいて、自分らで昔のことを思い出し、もっこをかついでつくった。もっとも秩父宮御自身が非常にラグビー競技を好きであったという、それが響いておる点もあるとは思います。私はラグビーのことでは、これは日本のスポーツ界に美風をうたわれた点では、三つないしは四つほどの佳話があると思う。それは、自力でやったことが
一つと、第二は、オリンピックの競技場が非常に困ったことがある。オリンピックの国立競技場、主競技場は前からアジア大会のときからできておったわけですが、プールをどこにしようかということで困って、いまのラグビー場にしようという
考えを安易に日本体育協会
関係者が立てて、香山蕃君——そのころはまだラグビーは日本体育協会の、国立競技場の
関係には復帰しておらなかったので、それで取り上げようとしたのですな。で、閣内の水田大蔵
大臣それから荒木文部
大臣、これが体協に口説かれ、香山蕃君のところへひざ詰め談判に行って、お願いしたい、何とかあれを水泳のプールにしようと言ったら、冗談言うな、これはわれわれが自力でつくったところであることが
一つ、もう
一つ忘れておるのは、朝霞村に選手村をつくろうというようなことを言っておるけれども、あんな遠いところへ選手村をつくってうまいこといくわけがない、選手村はアメリカに談判したら、アメリカの言うことだ、代々木の原っぱを返してくれるぞとがんばったのですな。それで、おれは断じてこの競技場を退かぬと言うていまの秩父宮ラグビー競技場が残って、そして香山君の言うとおりですな。また朝霞のキャンプも代々木の選手村に移ったという、このいきさつがあるのです。私はそのときに政界にいなかった。休憩中であった。落選中でした。ところが大野伴睦さんのところへ行ってこの話をしたら、もっともだ、そんな朝霞みたいなところへ選手村がいって、会期中選手がお通りになるときに東京じゅうが交通遮断なんかしてたまるものか、選手さまのお通りに交通遮断しては困る、それはラグビー協会長の言うことは正論だと言うて、党内をとりまとめてくれた非常な深い思い出が私にはあるのです。それから第三には、一時ギャンブルから金をもらうのはアマチュアスポーツを害するというて、香山君以下ラグビー協会の連中は全部体協から脱退したことがあるのですな。これも
一つの哲理であるけれども、しかしいまのスポーツ界では、やはり競輪や競艇の金をもらわなければ、そう財源があるわけではないので、これは少し行き過ぎであったかもしれぬけれども、アマチュアスポーツの精神ということから言えば、非常に高く評価されてよいのではないか。この三つの佳話をラグビー
関係者というものは持っておる。ことし早稲田大学のラグビーが勝った。私は早稲田の出だから言うわけではない。別にこれは日鉄釜石が勝とうが、どっちが勝とうがかまわぬ。しかし、ことしだけは早稲田が勝ったほうがいいだろうという一般の風潮であった。それは何かというと、それは選手のからだが必ずしもよくない。フォワードは日鉄釜石並びに日体大に比して身長で〇・三、四センチ低い、それから体重で五キロぐらい軽いのにもかかわらず、この強敵を破った。要するに十五人が一体として活動すれば、そして先輩が金を出し合って合宿をさせたりいろいろなことをすれば、非力の者でも勝てるのだ、こういう精神を発揮したので、非常に人気は向上してきた。文部
大臣賞というものがあるならば、世界記録の持ち主なんかにやるよりは、ことしは早稲田大学ラグビー部にやってくれ。
ほんとうです。そういう感じを私は持っておるのです。そういう
意味で、近ごろあらゆるスポーツが腐敗堕落をしようとしおるその中に一服の清涼剤である。そして社会に出た後にも相当に活動を続けておる人々の多いこのラグビー競技のことに対して、いまや国が援助を差し伸べて、国立競技場になったのですから、この機会に排水のよい競技場に直してやる。それからその間はもし競技場の改築が長くなれば、第二競技場みたいなものを便宜的にどこかの競技場でも借りて、その期間のものは国がめんどうを見るというような方式で、この競技場を直してやらなければいかぬじゃないか。ラグビーは昔はイギリスの
関係国だけしかやっておらなかったが、フランスもやるようになった。香港、マレーシア、それから南ア、ニュージーランド、オーストラリア、将来世界選手権もできるのです。そういう
意味におきまして最も男性的な、最もアマチュア的な、最近におけるスポーツ界の精神の粋を集めておる
意味での競技場の改築に、ひとつ御協力あらんことをお願いしたい。
大臣の
答弁を再度お願いをいたしておくとともに、再来年度、四十七年の予算でこれを実施しようとする気がまえであるかどうか、木田
局長にも承っておきたい。