○中林
公述人 私きょうは、
全国消費者団体連絡会の責任者として、
予算について
意見を述べさせていただきたいと思います。したがって私は、もっぱら消費者運動をやっている
立場からこの四十六年度の
予算を見てみたい、そうしまして、最初にひとつ諸先生方にぜひお聞きいただきたいと思いますことは、私、仕事の関係で最近いろいろな婦人団体の集まりに引っぱり出されるわけであります。そういう中でどちらかと申しますと保守的な婦人団体、私、県の教育
委員会の主催する婦人の講習会などにも引っぱり出されたりするわけでございますけれ
ども、どちらかと申しますと労働組合やイデオロギーがかった婦人団体、といったら語弊がありますが、そういう婦人団体よりも、むしろ保守的な婦人団体の集まりに出ました場合に、奥さま方から非常にラジカルなお訴えを実は聞くわけでございます。そういう場合の奥さま方は、主人は、
社会的な地位や職場の関係でやむなくいろいろなことをやっているでしょう。しかし、それは主人が
立場上やむなくやっているんだから、ひとつぜひ大目に見てやってもらいたい。しかし、主人の健康や子供の健康を守っている責任者は私たちなんです。私たちは、夫や子供の健康のことを考えると、毎日心配でしかたありません。主人から預けられる給料でやりくりしなくちゃならないし、買いものに行くたびごとに、この野菜の中に、この食品の中に、有害な添加物が入っていないか、農薬が入っていないか、
一つ一つの買いものについて胸を痛まされるのです。争ういうことを毎日私たちは考えているのです。どうしてこれを昔のように直すことができないのですか、そのことを非常にむなしく思うということを、私は奥さまたちから訴えられて、むしろ中林さんはどういう
立場で消費者運動をやっているのですかということを、非常に切実に、いま私が申し上げるような言い方よりももっと非常になまの形で奥さまたちから追及されて、私はむしろ突き上げられてびっくりして帰ってくるというようなのが、実は最近の事情であります。私はこのことをぜひ党派を離れて諸先生方にお考えをいただきたい。
現在、この
物価とか有害食品の問題については、家庭の主婦たちは非常に心を痛めている。これは、ほとんどの主婦たちはそうであろうというふうに私は思います。私はそういう
立場から——私は
予算につきましていろいろな
意見を持っております。しかし、私はそういう中から、きょうはもっぱら
物価の問題に焦点をしぼって
意見を述べさせていただきたいというふうに思っております。
実は私、
全国消費者団体連絡会の責任者をいたしておりますけれ
ども、所属は
日本生活協同組合連合会の役員をいたしております。それで、
日本生活協同組合連合会では、ここ十年ばかり、全国の生協の奥さまたちに家計簿をつけなさいという、家計簿をつける運動を積極的にやっております。ことしも、
日本銀行の家計簿を九千部余り全国の奥さんたちに私らはお世話をいたしました。毎年九千部あっせんしても、その中でどれだけ家計簿をきちんとつけていただけるかどうかということには、まだいろいろな不安があります。しかし、家計簿をつけることは、消費者として現在一番大事だという
立場から、私らは家計簿の記帳をすすめていて、その中で特に五百人ばかりの奥さま方には、いろいろな集計で協力をしていただくために、特別に正確に記帳をしなさいという指導を各組合でやらせております。そういう中から、毎年二へん四月と十月に、御主人が四十歳代の家庭の家計簿を集めております。これも十年近くになりますが、四十歳代で、お子さまを二人持っていらっしゃる家庭ということでしぼって集計しますので、大体数からいうと百五十足らずということに、いつもなるわけであります。
それで、昨年の十月と一昨年の十月の家計簿の集計を最近私たちは整理をいたしました。それによりますと、
政府では、四十五年度の
消費者物価は残念だけれ
ども七・七%になってしまった、しかし四十六年度は何とか五・五%で押えたいということをいっておいでになります。ところが、私たちが集計しました家計簿の調査によりますと、消費支出は一七%上がっております。七・七%どころか、実際の家計簿を通じて見ますと、家計におけるところの消費支出は、一年間に一七%多くなっております。そうしまして、その中でこの一年間に一番
値上がりの激しかったのは野菜とくだものでございます。野菜は四〇%上がっております。それからくだものが四一%上がっております。そうしまして、消費者米価は一応据え置かれているわけでございますけれ
ども、お米に対する支出がやはり二〇%多くなっております。それから魚介類が二六%、それから肉類が二四%、それからおやつのお菓子が二九%、それからお酒が一五・三%というぐあいに、実際の家計簿を通じて見ますと、一年間でそういうふうに
物価は家計に大きくはね返っております。
そうしまして、四十歳代で子供を二人持っておいでになる家庭の家計簿を見ますと、現在御主人の収入だけでは家計をやれない家庭がだんだんふえております。そうしまして、主婦の内職による収入が毎年ふえております。四十四年十月と四十五年十月とを比較しますと、主婦の内職の収入が四〇%ふえております。主婦は、内職をやって夫の収入の足らないところを補っているわけでございますが、しかしながら、主婦の小づかいがどうなっているかということを見ますと、四十四年十月は一カ月に千八百二十四円だったのが、昨年の四十五年十月の集計では千二百四十六円と、むしろ主婦の小づかいはダウンしているというのが、これは最近の実際の家庭における
物価上昇の反映であります。
それで、私は婦人団体の会合に出まして
物価の問題について切実な訴えを聞くわけですが、主婦たちの
物価に対する悩みというものは非常にきびしくなってきている、深刻になってきているということは、私が地方へ出かけて聞くばかりでなくて、この私たちの全国で集計しました家計簿の集計からしても、そのことははっきりしているというふうに私は思うわけでございます。そういう点から、
政府でも現在、
物価の問題は
公害の問題とともに最も重要だということをいっておいでになりますが、私は、ほんとうに
消費者物価の
上昇ということは、現在の
日本において真剣に考えなければならないという時点になっているということを深く考えるわけであります。そういう点から、諸先生方に、
予算の御審議の中でもほんとうに
物価をどうして押えるのだということをひとつ御
検討をいただきたいというぐあいに心から思う次第でございます。
そういう点から、昨年
予算編成にあたって、
政府が公共料金の一年間ストップということをおきめになったときに、私はほんとうに心から、一年間公共料金のストップをして、その間に
物価対策というものを徹底的にやっていただきたいというふうに思いました。ところが、先ほどの岩田
公述人からもありましたが、その後の経過を見ますと、
予算委員会における大臣の
予算に関する御説明の中にも、郵便料金、電話料、一部やむを得ずかくかくだということがありますけれ
ども、私は何としても、やはり
政府が
物価を本気で押えるためには、公共料金については、いろいろありましょうけれ
ども、蛮勇をぜひふるっていただきたいということを切に感ずるわけでございます。そうして現在
物価の問題で、
物価を押えるためにほんとうに考えなくちゃならないのは、私は、
政府が許認権を持っておいでになる、あるいは地方自治体の持っている、そういう広範な公共料金についてはっきりとした態度で押えるということをぜひやっていただきたいということを強く先生方にお願いをいたすわけであります。
それからその次は、最近いろいろ問題になっておりますところの管理価格の問題でございます。この今日の
物価の
上昇あるいは下方硬直といわれる中には、私は管理価格の問題が非常な大きなウエートを占めていると思います。もちろん公正取引
委員会でもこの問題と取り組んでおいでになります。私も公正取引
委員会の独禁懇談会に消費者代表で実は出ているわけでございますけれ
ども、この管理価格にほんとうにメスを入れることが、今日の
物価政策上一番必要な問題だというふうに思っております。
それで、私たち、皆さんも御
承知のように、カラーテレビの買い控え運動というのを消費者五団体でやりました。私たちの生協の婦人部も、その五団体の
一つとしてカラーテレビの買い控えに積極的に参加をいたしたわけであります。そうしまして、カラーテレビの買い控え運動は非常な世論の支持を得て、非常な浸透をいたしました。そして一定の成果があったというふうに
評価をされております。しかし、私は甘く
評価をしてはならないというふうに思っております。と申しますのは、御婦人の方たちが一番はっきりしてもらいたいというのは、蔵出し価格なんです。蔵出し価格を明示してもらいたいということが、各婦人団体並びに下部の主婦の方たちや消費者の切な願いです。しかしながら、家電業界の団体と折衝したりあるいはメーカーと折衝したりしても、蔵出し価格は
企業の機密だということで明示されません。そうしますと、一体ほんとうにどういうふうに——一五%から二〇%の値引きということがいわれたり、新聞にも発表され、私たちのほうへも各メーカーからそういうふうに言ってまいっております。しかしながら、この一五%なり二〇%を引いても、いままでの実際の売り値というのは三〇%から四〇%現金正価から値引きをして売られ、消費者は買っておったわけであります。それで、一五%なり二〇%引いた値段を標準価格としてそれを設定して新しく売り出しているわけでありますけれ
ども、それを実際に買う段になったら、消費者は一体幾らで買えるのか。そこで五%や一〇%を値引きしても、いままで三〇%も四〇%も値引きして買っておったんだから、へたをすると、いままでとあまり違わない結果になるのじゃないかというような問題が出てまいるし、また場合によったら、新しい管理価格というものがそういう形で生まれるのではないかということを消費者はみんな心配をいたしております。
それでどうしても私はその蔵出し価格——これはカラーテレビばかりではありません、最近いろいろな大きな業界で管理価格というものが形成されているのだけれ
ども、それに徹底的なメスを入れる必要がある。それには現在の公正取引
委員会がその機能を持っているかといえば、やはり現在の公正取引
委員会はまだそこの立ち入り検査をして経理
内容を調べるとか——
企業の機密あるいは、技術上の関係なりいろいろなことで、一般に
企業の
立場でもしも公開できないようなことがあれば、せめて公正取引
委員会はそれを明らかにすることができるというくらいの権限を公正取引
委員会に持たせなければ、管理価格にメスを入れていくことはできないのではないか。それですから、管理価格に徹底的にメスを入れていくためには、現在の公正取引
委員会の機能というものに
企業の立ち入り検査——この問題は管理価格ばかりではありません。これも管理価格の一種でありますけれ
ども、再販売価格維持契約というものがあります。再販売価格維持契約というのが
物価の硬直ということにやはり大きな
役割りをなしております。しかし、独禁法二十何条かで、あれは
昭和二十八年だったか九年だったか、独禁法の改正で再販売価格維持契約というものが独禁法の適用除外となって認められたわけでありますけれ
ども、あの当時と現在とは
経済界の事情、
企業の実態というものも非常に変わってきております。それで、
物価問題にメスを入れていくという
立場では、管理価格とそれから再販価格というものは原則的にはなくしてしまうべきだというふうに消費者の
立場では考えております。
化粧品などを見てみますと、
内容よりも、容器とか包装とかというものがだんだんデラックスになって、そして中身のクリームだとかいろいろなものはどうかといえば、中身はほとんど変わっていない。そして値段の安い化粧品と高い化粧品ということになりますと、わずかな香料とあとは容器とか包装とか、そういうものがデラックスになって値段が高くなっておる。そしてそれが再販価格の適用を受けている。そうしてそういう形の中で化粧品なりお薬というものはずっと値段が上がっていっている、つり上げられている。そうして宣伝費だけが膨大に使われているというのが実態で、最近の新聞の広告などでも、化粧品とか薬品の広告がいかに大きなウエートを占めているかというようことを考えました場合に、管理価格、再販価格、このあたりに徹底的にメスを入れるということが、今日の
物価対策としてほんとうに先生方にお考えを願わなければならない点だ。そうして管理価格はいまやすべての業界に及んでいるというのが現状だろうというふうに私は考えるわけであります。
それで、
物価の問題を調べてまいりますと、公共料金、それから一般の大
企業を中心とするところの管理価格にメスを入れるということ、それからもう
一つは、やはり
生鮮食料品などを中心とする流通機構に対して徹底的なメスを入れる必要があるというふうに私は考えるわけであります。そうして現在の
生鮮食料品の流通というのは、中央市場というものがその中心になっております。そうして最近でも新聞がしょっちゅう野菜がこうだ、タマネギがこうだと、いろんなことを書いております。それからまた魚はこうだというふうに書かれております。そして農林省——新聞も書いておりますけれ
ども、野菜は天候の関係だというような、自然的な原因で野菜が
値上がりをするのだ、あるいは供給
不足だというような形がよくいわれております。しかしながら、そういう自然的な現象によって野菜や魚の値段が上がっているのかといえば、もちろん
生鮮食料品にはそういうような条件もあります。しかしながら、そういうことばかりではなくて、現在の制度に大きな原因があるというぐあいに私らは考えております。
それで、いろいろ中央市場法の改正というような問題も、もちろん先生方によって審議がされているわけでありますけれ
ども現在の
日本の市場、中央市場というものがどうなっているのか。五、六年前に、私ら
生活協同組合の代表と農業協同組合、漁業協同組合の代表でヨーロッパに行きましたときに、西ドイツのボンの中央市場を見学しました。私、そのとき行った連中からの報告で聞きましたが、ボンの市場では、一般の私
企業の取引と、それから並行して、
生活協同組合と農業協同組合なり漁業協同組合の直接取引、対面取引というものが、二本立てで市場機構の中で認められている。そしてフェアな競争が市場の中でなされるようになっているということでございます。ヨーロッパの市場は大体そういう形になっているわけでございますけれ
ども、
日本の市場機構はそういうふうにはなっておりません。そうして大きな水産会社あるいは青果会社というものが中心になって、そこでせりが行なわれて、いろんな価格操作がなされている。そして特に最近は流通機構の近代化という中で、野菜であれば低温倉庫あるいは魚の冷凍庫あるいはコールドチェーン——このこと自体は私らもいいことだというふうに思いますけれ
ども、そういうような施設なり設備——今度の
予算の中でも、いわゆる
生鮮食料品の価格安定
対策としていろいろそういう
予算が組まれております。私はそういうことを考えることは、なまものでございますから必要だと思います。しかし、それが、価格の安いときには低温倉庫の中へ野菜は入っている、魚は入っている、そうして値段が高くなった場合に出てくるというような操作が、そういう中においてなされている。そこに私は野菜とか魚の値段が、産地では、漁港ではたくさんとれても、東京とか大阪とかの都市で大衆の口に入るときにはうんと高くなっている、あるいは野菜が農村で百姓から買われるときには安く買いたたかれるけれ
ども、都会に来た場合において非常に高くなっている。そういうような価格の操作というものがなされている。そういうところに今日の流通機構における大きな問題がある。私はそういう点ではぜひ中央市場の中で生産者と消費者が——消費者の団体といいますと、結局
生活協同組合ということになりますけれ
ども、生産者と消費者が、ヨーロッパの市場のように、話し合いでフェアな競争をして取引ができるようにぜひしていただきたい。
しかしながら、私も
政府の方たちにそういうことを言いますと、
日本の市場は古い因縁がたくさんあってなかなか簡単にはいかないのだ、それだからバイパス方式でいかざるを得ないのだという形で、バイパス方式ということがいまいわれております。あるいは消費者と生産者の直結ということがいわれております。しかしながら、生産地と消費地の直結ということが月に二回とか三回あるいは一週間に一回
程度でしたら、別に問題はなくそれは行なわれる場合があるわけです。しかしながら、恒常的に一定の量を生産地と消費地と直結しようとしても、これは実際問題として市場側からクレームがついてなかなかできないというのが現状でございます。たとえば東京でバイパス方式のテストとして農協の全販連が戸田橋で青果物の配送センターをつくっております。これが
一つのテストとなっていて、私たち生協やあるいはスーパーの首都圏のものは、戸田橋の配送センターを利用するようにバイパス路線に協力する
意味でしております。しかしながら、戸田橋の配送センターにおける野菜の値段というものはどうなっているかといえば、東京における四大青果市場の築地と神田と千住と淀橋の四つの青果市場の売り値の平均値の仲値で、それ以下ではひとつ取引をしないようにという行政指導が実はなされているわけであります。したがって、バイパス路線をしいても、野菜の値段は下がらない。そしてまた、生産者側の農協でも、中央市場が現在のような形の場合には、消費者と恒常的に直結した場合においては、おまえのところの野菜は市場では扱わないよというような形で牽制をされる。それだからなかなかむずかしいんだというのが、実は私らの楽屋裏の話になるわけです。
そういうところに野菜とか魚の値段がやはり安くならない。そうして低温倉庫だとかあるいは冷凍庫だとかコールドチェーンというようなものが実は介在をしているということになっているわけであります。同じようなことが、最近野菜が高いから、くだものが高いからということで、緊急輸入の
措置がとられますけれ
ども、緊急輸入をやってもなかなか
効果があらわれないというのは——時間もあれですから詳しく言うのはやめまして、やはりそういう流通機構におけるいろいろな問題が現実にあるということを、私はぜひ申し上げておきたい。それですから、せっかく
政府や
国会で御
検討になっておやりになる低温倉庫とかそういう流通機構の近代化のものが、いわゆる生産者とか一部の業界の高値安定のものに使われて、消費者の安定のために、消費価格の安定、野菜とか魚の値段を下げるというもののために使われていない。そのあたりを私はぜひ先生方に御
検討をいただきたい。
そういう
立場から、現在の
予算の中でも、
政府でも
生活優先とかあるいは消費者云々ということをいわれますけれ
ども、
予算の
編成というような中を見ますと、そういう点では各分野に非常な問題を持っているということでございます。そうして、三、四年前の
国会で消費者保護基本法が通りますときに、附帯決議として満場一致で、消費者に関するいろいろな法律なり政令は一度洗い直してみるということが付帯条件になっているわけでありますけれ
ども、全然それが進んでいない。そうして、いろいろ言われるけれ
ども、やはりメーカーあるいは業者という
立場で問題が見られている。
そういう点では、私は、諸先生方は法律とか、
国会で御論議をいろいろなさいますけれ
ども、
国会の論議を受けたあとの政令だとか、いろいろな行政指導ということでなされるところに、私はむしろ今日非常な大きな問題を持っている。中山伊知郎さんの
物価政策懇談会でもいろんな提言がなされております。しかし、その提言が実際に実行されるのかといえば、実行されていないことがほとんどだと私は言っても差しつかえない。そういうようなことで、ぜひ先生方には、私は法律なり
国会における審議ばかりじゃなくて、それがどのように実施されているのか、それは具体的な場合にどうなっているのかというところまで、むしろ先生方に追跡調査といったら非常に申しわけないのですけれ
ども、
国会で法律が消費者の
立場でどのようにやられているのかということを、私はぜひひとつ御
検討をいただきたいというふうに考えるわけであります。総理も、独禁法の改正、独禁法の強化ということも言っておいでになりますけれ
ども、管理価格の問題なり、そういう問題について、ほんとうに消費者の
立場に立っての御
検討をいただきたい。
それで、私らもかつて経企庁の総理の諮問機関である
国民生活審議会で、消費者優先生言われるなら、消費者
委員会のようなものを、一定の行政権を持った——私は役人の数だけふやすことは反対でございます。しかしながら、簡素な、スウェーデンとか、ノルウエーにありますような消費者
委員会のようなものを持って、そうして現在の行政全体を消費者の
立場からチェックできるような、一定の行政権を持った消費者
委員会のようなものをぜひ——私らは
国民生活審議会ではそういう答申を総理にしたこともあるのですが、それはそのままに実はなっておりますし、その当時前後して行政簡素化の五人
委員会で、佐藤さんが
委員長をしておいでになりましたあの五人
委員会でも、蝋山
委員は同じような形の答申を蝋山
委員の案としてなされているわけでありますけれ
ども、消費者優先という
立場に立つ場合においては、私は現在の行政機構の中でぜひそういう消費者の
立場に立っての行政、現在の——私はお役所の方を一人一人悪口を言う
意味において申し上げるわけではないのですけれ
ども、農林省にしても通産省にしても、あるいは厚生省の薬品行政にしても、いろんな長年の経過の中で、やはりすっきり消費者優先という
立場に立っているのかどうかということになりますと、消費者はかわいそうな
立場にあるから、消費者のこともひとつ考えてやらなくちゃいかぬわいという
立場でしか、消費者の問題は見られない。
〔坪川
委員長代理退席、
委員長着席〕
しかし、ほんとうにこの際消費者の
立場に立って私は政治なり
経済の問題を見ていく、そういう点ではヨーロッパの運動は——私らがやっています
生活協同組合の運動が
日本において非常に弱くてだらしないということに、自縄自縛になるかもわかりませんけれ
ども、ヨーロッパの
生活協同組合は食料品から日用品について全部自分たちで工場を持ってつくっておりますし、それから流通段階では、先ほどドイツのボンの例を引きましたが、やはり流通段階でも具体的な発言権を持っている。私は、ぜひ消費者が、そういう生産なり流通の段階でも、一般の業界なりと同じような
一つの対等の
立場をもって発言ができるようにすべきで、消費者の発言の場が
日本に全然ない。ただ反対、反対ということを消費者は言っているだけであって、これはヨーロッパの各国の例のように、流通段階なり、生産なり、
物価形成に消費者が具体的な
役割りを果たせるように私はぜひしていただきたい。
それで、今度の
予算を見ましても、消費者行政という
立場でいろいろなことを考えられているわけでありますけれ
ども、私はその中を見ますと、何億という金をかけて何とかセンターの建物をつくるとか、あるいは何とか婦人会館とか、いろいろな会館だとか、そういうものよりも、もっとじみちに消費者の
立場に立ってのものの考え方なり、行政ということをぜひお考えいただきたいと思いますし、やはり必要なところに必要な人を配置する。たとえば、自由化の中で非常に輸入食料品が多くなってまいりました。しかしながら、十一の港でたくさん入ってくる輸入食料品を検査している検査員は現在全体で二十名、そうして今度の
予算では二人しかふえていない。十一の港へ自由化して食料品がどんどん入ってくるのに、それの検査をする役人が今度二人ふえて二十二人だ。消費者の
立場に立ってのそういう人員配置なり、そういう点でも私は
予算の面でもっと御
検討をいただきたいというふうに考えるわけであります。
時間がなくなりましたので、
物価の問題でもっと申し上げたいわけでございますけれ
ども、最後に、私は消費者米価を物統令からはずすというこの点につきましては、私はぜひひとつ
予算の審議の中で、これは
予算には関係のない問題でございますけれ
ども、ここで物統令をはずしたら消費者米価は上がるだろうということはほとんどの方が言っておいでになります。
国民の主食である消費米価がいま
物価問題のやかましいときに上がるような
施策、そうして私は特に消費者米価が投機の対象になるような、一部の商社の利潤の対象になるようなことは絶対に
日本においてすべきではない。それで物統令の適用をはずしたら消費者米価は上がるだろうということがいわれておりますが、そういう中で、現在すでに物統令はなくなって、
国民の半分以上はやみ米を食べているのだ、それだけだけじゃないかと、そういう悪いことが行なわれているのを、それを実績でオーソライズするような政治というものが、特に主食の問題でそういうことが行なわれたら、やはり
国民のモラルの点からいっても、私は非常に重大な問題だ。それで、これは
物価の
立場からも、消費者米価を物統令からはずすということについては、ぜひ先生方にひとつ審議の中で御
検討をいただきたい。
それで最後にお願いでございますけれ
ども、現在のこの
予算というのは、消費者の
立場から
物価の問題だけをとらえてみましても、私は多くの問題を持っているというふうに考えますので、ひとつ先生方にぜひ御
検討いただきたい。もちろん、そのほかに健康保険の問題とか、いろいろな問題、消費者の
立場から私いろいろな話を主婦や一般の消費者の方たちから聞いておりますけれ
ども、私はきょうは
物価の問題だけから申し上げましたが、ぜひもう一度この
予算というものを審議の中で先生方によって再
検討をお願いしたいということを申し上げまして、私の
公述を終わらしていただきます。
どうも失礼しました。(拍手)