運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1971-02-12 第65回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月十二日(金曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 小平 久雄君 理事 田中 正巳君    理事 坪川 信三君 理事 藤田 義光君    理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君    理事 田中 武夫君 理事 鈴切 康雄君    理事 今澄  勇君       足立 篤郎君    赤澤 正道君      稻村左近四郎君    植木庚子郎君       大坪 保雄君    大野 市郎君       大村 襄治君    奧野 誠亮君       賀屋 興宣君    川崎 秀二君       田中 龍夫君    登坂重次郎君       灘尾 弘吉君    松浦周太郎君       森田重次郎君    豊  永光君       辻原 弘市君    楢崎弥之助君       西宮  弘君    原   茂君       細谷 治嘉君    安井 吉典君       相沢 武彦君    有島 重武君       坂井 弘一君    松尾 信人君       岡沢 完治君    竹本 孫一君       青柳 盛雄君    谷口善太郎君  出席公述人         日本証券業協会         連合会会長   瀬川美能留君         東洋大学経済学         部教授     御園生 等君         日本消費者連盟         代表委員    岩田 友和君         全国消費者団体         連絡会会長   中林 貞男君  出席政府委員         北海道開発政務         次官      菅野 儀作君         経済企画政務次         官       山口シヅエ君         法務政務次官  大竹 太郎君         外務政務次官  竹内 黎一君         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省主計局次         長       橋口  收君         大蔵省主計局次         長       竹内 道雄君         大蔵省主計局次         長       佐藤 吉男君         文部政務次官  西岡 武夫君         通商産業政務次         官      小宮山重四郎君         運輸政務次官  山村新治郎君         郵政政務次官  小渕 恵三君         建設政務次官  田村 良平君         自治政務次官  大石 八治君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 二月十二日  辞任         補欠選任   上林榮吉君     豊  永光君   斎藤  実君     松尾 信人君   林  孝矩君     有島 重武君   佐々木良作君     岡沢 完治君   寺前  巖君     谷口善太郎君 同日  辞任         補欠選任   豊  永光君     上林榮吉君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  昭和四十六年度一般会計予算  昭和四十六年度特別会計予算  昭和四十六年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和四十六年度一般会計予算昭和四十六年度特別会計予算昭和四十六年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を続行いたします。  この際、御出席公述人各位にごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところを御出席いただきまして、まことにありがとうございました。  御承知のとおり、国及び政府関係機関予算は、国政の根幹をなす最重要議案でありまして、当委員会といたしましても慎重審議を続けておるわけでありますが、この機会に各界の学識経験豊かな各位の有益な御意見を拝聴いたしまして、今後の予算審議の上において貴重な参考といたしたいと存ずる次第であります。  何とぞ各位におかれましては、昭和四十六年度総予算に対しまして、それぞれ御専門立場から忌憚のない御意見をお述べ願いたいと思う次第であります。  次に、御意見を承る順序といたしましては、まず瀬川公述人、続いて御園生公述人順序で、約三十分程度ずつ一通りの御意見をお述べいただき、その後公述人各位に対しまして、委員から質疑を願うことにいたしたいと思います。  なお、念のために申し上げますが、発言の際は委員長の許可を求められること、また、公述人委員に対しては質疑をすることができないことになっております。この点あらかじめ御承知おきを願いたいと存じます。  なお、委員各位に申し上げますが、公述人各位に対し御質疑のある方は、あらかじめ委員長にお申し出くださるようお願いいたします。  それでは、瀬川公述人から御意見を承りたいと存じます。瀬川公述人
  3. 瀬川美能留

    瀬川公述人 私、ただいま御紹介をいただきました日本証券業協会連合会会長瀬川でございます。  私は、四十六年度予算案を短期的な景気政策との関連でとらえた場合の問題点と、やや長期的な観点から七〇年代における財政政策役割りに照らして考えた場合、一体四十六年度予算案はいかなる評価がなされるであろうか、という二つの点にしぼって、若干の私見を申し述べさせていただきたいと存ずる次第であります。  まず初めに、景気の現状を振り返ってみますと、昨年の秋ころから景気は次第に鎮静化に向かいまして、最近の生産、出荷、在庫水準卸売り物価などの景気諸指標に見られます動きは、明らかに景気が一段と悪化していることを示しておるのでございます。ことに企業収益の悪化は著しく、本年三月期の企業決算かなり大幅な減益になることは避けられないものと予想されております。さらに来たる九月期の企業収益の回復も、あまり大きなものは期待できないようでございます。  このような景気の見方に立って考えますと、四十六年度予算案に対する評価一つのポイントは、それがどの程度景気刺激効果を発揮し得るかという点にかかってくるわけでございます。政府経済見通しは、すでにこうした情勢をある程度織り込んでおるだろうと思われます。確かに昭和四十六年度の一般会計予算伸び率は一八・四%、また財政投融資計画伸び率も一九・六%と比較的高い水準になっております。しかし、その実体政府財貨サービスの購入について見ますと、前年度に比べまして一五・四%と、ほぼ四十五年度並み伸びにとどまりまして、四十六年度の名目成長率一五・一%に比べましても、必ずしも積極的な景気刺激要因になっていないのでございます。  景気実体は、先ほど申し述べましたとおり、政府が想定いたしました安定成長路線を下回る可能性が強くなっており、それが金融政策によって補うことのできない、すなわち、より積極的に有効需要を喚起する必要があると考えられますだけに、四十六年度の予算案積極機動型予算が組まれてもよかったのではないかと考えられるのでございます。その意味で、四十六年度予算案の中には弾力化条項が盛り込まれ、かつ、公共事業等の支払いの促進策検討されておりますことは、それなりに評価される適切な措置であると思いますが、場合によっては、国債の増発を考慮したさらに積極的な財政措置ができる余地を残しておくことも、考えられてよいのではないかと思うのでございます。  いずれにいたしましても、財政支出有効需要を喚起するまでにはかなりのタイムラグがございますので、早目早目対策が打ち出されることが肝要かと存じます。  四十六年度予算案の個々の内容につきましては、専門家検討におまかせするといたしまして、私は、二、三の点について申し述べたいと思います。  近年、生活関連投資社会福祉関係の経費が徐徐に増加しておりますことは歓迎すべき傾向でありますが、国民の期待に比べますとまだ十分なものとは言いがたいのではないかと存ずるのでございます。ことに、社会資本蓄積は貧困で、その拡充が焦眉の急であることは、だれしも認めるところであろうと思われます。四十六年度の公共事業関係費は、前年度に比べまして一九・七%増と、積極的な編成でありましたことは、十分その意をくみ取ることができると思うのでございますが、民間設備投資は、好景気ともなりますと三〇%近い増加をいたしますので、ことしのような景気沈滞期に大胆な施策を講じないと、ますます社会資本は立ちおくれ、いずれ経済発展阻害要因にすらなると懸念されるのでございます。  四十六年度の経済環境は、民間設備投資が沈滞する、つまり社会資本充実をはかる絶好の機会でございます。住宅、下水道、港湾等につきましても五カ年計画がスタートいたしましたことでもあり、この機会社会資本充実を一段と推進することが適切であろうと考えられるのでございます。その財源といたしましては、四十六年度の国債発行額増加してもよいのではないでしょうか。もちろん、そのために国債消化体制を早急に整備する必要があることは申すまでもございません。  このほか、政府と私ども経済見通しを比較してみますと、政府消費者物価上昇率が過小評価されているのではないだろうか、また、政府より高い成長率を見込んだといたしましても、国際収支黒字幅は拡大するのではないかという、この二つの問題を指摘することができます。この点につきましては、多くの方々から御意見が述べられておりますので、ここでは省略さしていただきたいと存じます。  以上、四十六年度予算案につきまして、当面の景気政策との関連からとらえたのでございますが、さらに長期的な観点から、すなわち七〇年代におけるところの財政政策役割りに照らしまして四十六年度予算案を考えてみますと、その姿が一そう浮き彫りにされてくるように思われます。  申すまでもなく、七〇年代の財政政策は、本格的な国際化時代を迎えまして、金融政策以上に景気調整機能が重視されてくるものと考えられます。一方、生活重視福祉優先型の経済政策という要請からは、社会資本充実、高福祉、高負担によるところの豊かな社会建設財政政策の重要な課題になってくると思われるのでございます。こういう観点から、幾つかの問題を提供してみたいと存じます。  まず第一の点は、税制あり方でございます。  わが国租税負担率は、欧米先進国に比べまして低く、かつ、課税最低限はすでに欧米並み水準になっておることは、御承知のとおりでございます。しかし、著しい物価上昇を調整するための所得税減税は、常に国民の強い要望でございます。また、欧米に比べまして富の蓄積水準が低いところからくる重税感を取り除く努力が今後とも必要なことは申すまでもございません。その意味で、四十六年度の減税幅はなお不十分であるとの評価が一般的でございまして、この種の不満は今後年を追って高まってくるものと考えねばなりません。先ごろ福田大蔵大臣は、わが国税制所得税中心であるために重税感が強いので、所得税減税して、そのかわりに三、四年後には付加価値税を導入したいとの構想を明らかにされたのでございますが、高福祉、高負担を目ざす七〇年代の財政あり方とも関連いたしまして、その検討が急がれなければならないものと考えるのでございます。  税制はまた、長期的な景気政策との関連においても再考する余地があるのではないかと存じます。と申しますのは、経済国際化に伴いまして、金融政策、とりわけ金利政策は内外の金利バランス配慮をせざるを得なくなってまいりますからして、銀行貸し出し量的規制も、資本交流活発化によりまして従来のような効果をあげることはできないのでございます。だんだんむずかしくなってくるのでございます。つまり、金融政策効果がそれだけ弱まりまして、七〇年代の景気政策はますます財政政策にウエートが移ってくるように考えられるのでございます。この点、景気調整機能一つといたしましての租税政策の活用が予算編成の上でさらに重視さるべきではないかと存ずるのでございますが、こういう見地からいたしますと、たとえば四十五年度より四十六年度のほうが減税規模が小さいということは、ややちぐはぐな、ひっかかった感じがいたすのでございます。第二の問題点は、公害対策社会資本充実に関するものでございます。  六〇年代の経済政策は、経済成長の高さを競うものでございまして、その質につきましてはあまり関心が寄せられていなかったことは事実でございます。そのひずみが公害社会資本不足を招きまして、社会問題を起こしておりますことは御承知のとおりでございます。  振り返ってみますと、社会資本不足が叫ばれましてからすでにかなりの歳月が流れております。また、公害問題につきましても、古くから問題意識としては重視されてきたのでございます。たとえば公害対策の経緯をたどってみますと、民間企業におきましても、すでに三十年代にいろいろの問題意識を持たれまして、施策を講じられ始めたのでございますが、政府におかれましても、四十年には第四十八国会におきまして、衆参両院公害対策に関する特別委員会が設けられております。そして、四十二年の第五十五特別国会におきまして、懸案となっておりました公害対策基本法が成立いたしまして、従来個別的に立案、実施されておりました政府公害対策が一本化されております。この公害対策基本法が成立いたしましてからさらに三年を経過しました今日、公害問題は大きな社会問題となってまいったのでございます。  私が申し上げたい点は、現在社会問題となっておる、あるいは経済運営の障害となっております問題の多くは、このようにかなり前からその打開策が講じられまして、関係当局におかれましてもこれについて御努力を重ねてまいられたことと存じますが、しかし、今日、結果から見ますと、中には施策があまりにも手おくれになったものがあるのではないかと考えられるのでございます。  社会資本充実につきまして申し上げますと、景気政策と切り離した独自のタイムスケジュールが必要となってまいりましょうし、その実施にあたっては、新しく資金調達の手段を開発する必要が起こってくるように思われます。いつまでも市中金融情勢を軽視した資金調達を続けていきますなれば、結局、民間経済の停滞したとき、不景気のときしか社会資本拡充ができないという従来のパターンから抜け出すことができず、社会要請に応ずることはできないと思われるのでございます。受益者負担の考え方を適宜取り入れていくことも、社会資本充実一つの方策かと存ずるのでございます。  第三の点は、福祉政策に関してでございます。  福祉政策は、今後予想されます核家族化進行あるいは人口の老齢化等に対応いたしまして、七〇年代の財政政策一つの柱になると思われるのでございますが、その一環といたしまして、このほど実現を見ました勤労者財産形成制度は、時代要請に即した、きわめて有意義な施策であろうと存ずるのでございます。また、少額貯蓄非課税制度国債別ワク非課税制度など、一連の貯蓄奨励策拡充を見ましたことも、高く評価される点であろうかと存ずるのでございます。  ところで、福祉政策拡充は、一方におきまして高負担を伴うものでありますことは、これまた是認されなければならないのでございますが、しかし、高負担前提というものがまず財政合理化であり、いわゆる三K赤字に見られます硬直的な財政運営打開をはかることでございます。先ほど来申し上げておりますように、七〇年代は国民経済に占める財政役割りが飛躍的に増大するであろうと見られるときだけに、この点につきましては、新たなる観点から抜本的な改善が望まれるのでございます。  第四の点は、財政政策外貨政策との関連としてとらえられる問題でございます。  御承知のように、日本アメリカに次いで、自由世界第二位の経済大国になったことによりまして、ことに東南アジアにおける日本役割りが、六〇年代とは比較にならないほどに重要になってまいりましたし、また、経済成長を持続するための資源確保も急を要する問題となってまいりました。  幸いに、わが国は、今後とも外貨準備蓄積が順調に進むものであろうと予想され、それを有効に活用することを考えなければならない情勢になってきているものと存じます。  このような環境前提といたしまして、まず、海外直接投資を強力に推進することの必要性がクローズアップされてまいるのでございます。直接投資を推進するために、税制上の優遇措置を一段と充実し、企業海外進出税制金融、保険などの面から政策的に誘導いたしまして、経済協力をあわせて充実させていくことが、最も有効であろうと考えている次第でございます。  以上、財政政策につきまして、私の私見を申し述べてまいりましたが、最後に、私どもが日ごろ携わっております証券市場立場から、一言つけ加えさせていただきたいと存じます。  先ほど、社会資本充実関連いたしまして、その施策資金調達あり方につきまして、若干の問題提起をいたしたのでございますが、これは、国債政府保証債消化体制と密接なかかわり合いを持っております。公社債市場発行条件は、もっと弾力的に決定されるのが望ましいという議論は、戦後一貫して続けられてまいっておりますが、しかし、実情は、発行条件は、常に流通市場利回り水準を下回っておりまして、その結果、発行量を一定のワク内で調整しなければならない状態が続いておるのでございます。もしも、発行条件が弾力的に決定されるようになりますと、公社債発行量は飛躍的に拡大をいたしまして、企業資金調達が円滑に行なわれるようになり、また、資金の偏在が是正されるようになるばかりではなく、硬直的な金融市場を改善する上においても大いに役立つことは、十分期待されるのでございます。国債政府保証債消化も一段と容易になりまして、インフレの抑制と社会資本充実を支援することは申すまでもございません。  以上、企業経営の経験を通じまして感じた点を率直に申し上げたのでございますが、批判をすることが、私の意とするところではございません。四十六年度予算案は、その編成当時におきましては、その当時の景気実勢に照らしまして、中立機動型であったと思われます。その意味では、まことに当を得た予算案であると評価いたしたいと存ずるのであります。しかし、最近の経済情勢の変化は、国際化進行とも関連いたしまして、まことに目まぐるしいものがございますだけに、そうした景気実勢に合わせて、今後の予算運営に一段の御配慮をお願いしておきたいのでございます。今後、国民財政政策に期待するところがますます大きくなってまいりますことが予想されますだけに、国民の一人といたしまして、こうあってほしいという希望を申し述べたのでございます。  これで私の公述を終わらせていただきます。まことにありがとうございました。(拍手)
  4. 中野四郎

    中野委員長 どうもありがとうございました。  次に、御園生公述人
  5. 御園生等

    ○御園生公述人 四十六年度予算編成方針といたしまして、政府が説明された文書を拝見いたしますと、おおよそ三つ基本的な方針があるというふうにいわれております。第一に、景気に対する刺激的でない中立的な予算編成するということ、また第二に、租税負担軽減をはかるということ、第三に、国民生活充実向上のための施策推進のために予算を組む、およそこの三つに重点を置くことが強調されているわけであります。しかしながら、われわれの目から見ますと、これら三つ方針は、一応ことばの上では受け入れられるものを持っていながら、その内容を見ますと、はたしてどれだけ予算編成の上に実質的に生かされているかどうか疑問とせざるを得ない点が多々あるといわざるを得ないのであります。  たとえば、第一の来年度予算の中立的な性格という点であります。ただいま瀬川さんがこの予算の中立的な性格について、より景気刺激的であってもよかったのではないかという、主として財界の立場からの御意見がございましたが、私は他方において、金融政策として、御承知のとおり二度にわたって日銀の公定歩合の引き下げが行なわれております。これは明らかに景気刺激的な金融政策であると考えざるを得ないのであります。それにもかかわらず本年度予算かなり大型の予算として、ただいま瀬川さんも申されたとおり、前年度予算に対する伸び率一八・四%、財政投融資一九・六%という増加率をもって編成されました。こういうことの評価を考えますと、明らかにこれは総需要政策としての積極性を持つものであると考えざるを得ないのであります。もしかりに今年度予算政府の説明にあるとおり中立的な性格であるとするならば、金融政策としての積極的な景気刺激的な性格政策上の斉合性に欠けると考えざるを得ないものであります。  こういう点につきまして、後ほど申し上げますような、最近日本においても物価上昇が単に好景気のときだけではなくて、不況の時期にもかなり程度値上がりを見ている、いわゆるスタグフレーションの問題がきわめて重要な問題として浮かび上がっているわけであります。不況時の物価上昇、言うまでもなく現代の資本主義国家はヨーロッパ、アメリカを問わず、日本を含めてすべて国家政策に基づくいわゆる総需要政策をもって経済に介入している、そういう体質を持った資本主義経済であります。このような総需要政策がいわば経済にビルトインされた結果、物価不況時にもかかわらず上昇の勢いをやめない。私は、欧米諸国において、また最近の日本において、不況時にも物価が下がらない、むしろ上がっているということの基本的な要因は、このような節度を欠いた総需要政策にあるものであると考えるものでありますが、もしそうだとすると、今年度予算において政府の言明にもかかわらず中立的な性格があまり感じられない。特に金融政策の面との総合的な判断をした場合にかなり疑問である。この結果、四十五年度において七・七%という年率上昇を見た消費者物価上昇が、おそらく来年度においてもかなり程度において持続される可能性を持っているだろうということを憂えざるを得ないのであります。  この点についてはまたあとで触れたいと思いますが、また第二の租税負担軽減という予算編成上の方針につきましても、ただいま申し上げました年率七・七%に及ぶ物価上昇、しかもこの内容を見ますと、ほとんど寄与率においてその五〇%強が野菜類あるいは魚その他の生鮮食料品値上がりによっているわけであります。このような生活必需品上昇が、いかに国民生活、特に下層にいくほど、所得水準の低いほど、その生活を圧迫する度合いが強いかは私から申し上げるまでもないことだと考えられます。こういう点、今年度の減税、たとえば基礎控除引き上げあるいは扶養控除引き上げ等かなり程度減税が行なわれていながらも、ここ数年来の物価上昇を考えますと、はたしてその物価上昇すら償うに足る減税であるのかどうか、この点も検討を要するゆえんであると考えざるを得ないのであります。  特に私の専門立場から申し上げたいのは、第三の編成方針としてあげられている国民生活充実向上のための施策推進という点であります。特に公害の防止及び物価引き下げに、来年度予算においてかなり程度予算を充てているという事実は認めないでもありませんが、しかしこの点についても、政府政策斉合性においてはたして欠けるものがないかどうか、私の立場から言いますときわめて疑問であると考えざるを得ないのであります。  先ほども申しましたとおり、昨年度の物価上昇は七・七%という年率上昇を見ているわけであります。これは私の記憶によりますと、昭和三十八年以来、戦後の混乱期は別といたしますと、おそらく戦後二番目に高い上昇を見た年であります。このような物価騰貴、しかも先ほどの瀬川さんのお話にあるように、今年度後半は必ずしも好況ではなかった、むしろ不況の様相が強い、そういう中で年率において八%近い物価上昇を見たということは、きわめて異常であると言わなければならない。先ほど言いましたいわゆるスタグフレーションというような現象が、あるいは日本においても日本経済に体質化されているというふうに考えられる節が多々あるわけであります。  私が考えますのに、このような高い物価上昇は、繰り返し申しますように、ただ今年度だけに始まったことではなく、多年にわたる総需要政策、特に財政政策金融政策とに斉合性を欠いたそのとがめがこのような物価上昇になってあらわれたんだと考えられるわけでありますが、もう一つ重要な問題として管理価格の問題を指摘しなければならないと思います。かつて私が計測したところによりますと、消費者物価を構成しております商品のうち、ほぼ二〇%のウエートを持つ商品について管理価格であると推定される節がございました。これに中小企業協定価格その他の管理価格あるいはカルテル価格を加えますと、消費者物価のうちにおいてすら、三〇%近いウエートを人為的な価格が占めているというふうに推定できるわけであります。特に大企業による管理価格は、たとえばプライスリーダーシップというような価格維持の制度がございます。昨年、トップ企業が価格を上げることによって、他の数社が、これにさしたる理由もなく追随したという例が現実にございました。たとえばビールのごときはその典型的な例であると考えられます。このような例は単にビールだけではなく、たとえばしょうゆあるいは乳製品、あるいは工業製品中先ごろから問題になっております耐久消費財、テレビあるいは自動車その他の大企業製品について、多かれ少なかれその影響が認められるわけであります。特に消費者物価指数を構成しております商品よりも、このような大企業による管理価格の存在が重要であるのは卸売り物価指数であります。これも私が計測いたしましたところによりますと、卸売り物価中管理価格の占める比率はほぼ七〇%近いというふうに推定できるわけであります。このような管理価格は、そのまま消費物資の場合には消費者物価上昇に影響を及ぼしているわけでありますが、工業資材、原料等の価格につきましては間接に、すなわち消費物資を生産するための原料価格あるいは機械、資材等の管理価格として、間接的に消費者物価上昇をいわば底上げ的にもたらしているというふうに考えることができるのであります。  管理価格あるいはカルテル価格等のいわゆる大企業製品中の人為的な価格操作の影響、これにつきましてはかなりいままで論議がかわされております。また最近も、いわゆる消費者運動の中でかなり論議の対象になっているということも御存じのとおりであります。しかし幸いにして、従来の日本物価問題は、主として消費者物価上昇であった。卸売り物価は比較的安定的に推移した。言いかえれば、大企業の生産する工業製品は、中小企業あるいは農業、水産業等の生産する食料品、野菜、魚、そういったものに比べますと、それほど値上がりしてない、むしろ弱含みであるというのが従来の経緯でありました。しかし、私の観点から見ますと、大企業製品の価格が目立って上がっていないということをもって、これらの管理価格の物価上昇に果たす役割りがそれほど大きくない、あるいは無罪放免である、こういうふうに考えることには問題があると考えざるを得ないのであります。なぜならば、いわゆる低生産性部門である農業、水産業、あるいは工業製品中でも日の当たらない部分である中小企業製品に比べますと、大企業製品における生産性の上昇はきわめて顕著なるものがあります。もしそうであるならば、その生産性の上昇によって下げ得たコストを販売価格の引き下げに十分回し得なかったという点が、大企業の製品について責められるべき点であると考えることができるのであります。つまり一口に言いますと、大企業、特に人為的に価格を維持している先ほどあげましたような管理価格の物価上昇に果たす役割りは、目立って上がっていないというところにその責任がないというのではなくて、当然下げなければならない価格を下げなかったという点に責任があるといわなければならないと思うのであります。そういう点から最近の動向を見ますと、このような大企業製品についても、ここ数年来、特に昭和四十年代に入りますと、いままでむしろ弱含みであったこれらの大企業製品が、年を追うごとに、目立たないながら着実にその価格を上昇させている、そういう点に注目しなければならないのであります。     〔委員長退席、細田委員長代理着席〕  今年度予算において政府は、先ほども言ったように公害及び物価問題に予算配分上特段の考慮をされたというふうにいわれておるわけでありますが、はたしてこのような大企業の管理価格に十分な対策を講じ得たかどうか、そういう実質を持っているかどうか、この点を考えますと、私として疑問を持たざるを得ないのであります。たとえば、私が聞きましたところによりますと、管理価格調査のためにさしあたって最も関係を持っております官庁である公正取引委員会において、新たに一課を設け、管理価格の調査にこれを当てよう、こういう目的のもとに予算を計上しようとしたと聞いておりますが、この点につきましても、今年度決定を見ました予算の上では、わずかに従来の調査課に二、三名の人員増ということで終わったというふうに聞いております。これがはたして十分に物価対策、しかも私の目から見ますと、そのうち物価を押し上げているかなり重要な問題である管理価格問題に十分取り組んでいると言い得るのかどうか、私の疑問はこの点についても深くならざるを得ないのであります。  管理価格問題につきましては、管理価格に対する対策といたしましては、およそ二つの面から接近することが必要であると考えられます。  一つは、いまも申し上げました反独占政策の強化であります。競争を阻害する要因、カルテルあるいはプライスリーダーシップその他の阻害要因を除去する、こういう独占禁止法を中心にいたしました反独占政策の強化、これが一つの柱である、あるいは最も資本主義経済においては基礎的な競争促進政策であると考えることができます。  もう一つは、管理価格そのものに対する規制であります。これは直接的に管理価格に影響を及ぼすという点において即効的な効果を持つがごとく考えられますけれども、この点については、政策としての手段においてさまざまな問題あるいは困難が横たわっているという点に注意する必要があります。しかしいずれにせよ、管理価格に対するあるいは独占価格に対する対策としては、この二つの面から対策を講ずる必要があると思うのであります。  第一の競争促進政策としての独占禁止法の厳正な運用あるいはその強化、これが必要であることは私からあらためて強調するまでもないところであります。しかし、公正取引委員会の現在の陣容、あるいはいままでの独占禁止法運用の態度が、われわれから見て一〇〇%信頼が置けると言い得るかどうか、こういう点疑問を持たざるを得ないのであります。たとえば昨年度、結局は公正取引委員会によって認められた八幡製鉄、富士製鉄の合併、それによる新日本製鉄という世界第一の鉄鋼会社の出現、そのこと自体は、いわゆる規模の経済の取得として、私も必ずしも、経済的に見てあるいは技術的に見て反対しようとは思いませんが、しかし、その結果トップ寡占の出現によって、工業製品中の最も基礎的な資材である鉄鋼価格の高位安定という弊害を生むとしたならば、単に鉄鋼業界だけでなくて、それは日本の工業全体にとっての重要な問題であるといわざるを得ないのであります。現在鉄鋼製品は、いわゆる粗鋼一割減産という制度のもとにやや安定を見ているかと思いますが、これが将来鉄鋼価格の下方硬直的な性格を結果するものであるとしたならば、その法律技術的な経緯等はさておきまして、昨年度において、公正取引委員会自体によって認められた新日本製鉄の出現が、管理価格の取り締まり強化という点から考え、また将来の日本の工業製品の国際競争力の向上という点から考えてみても、きわめて問題であったと考えざるを得ないのであります。  こういうように、現在の公正取引委員会の法運用の態度に私は必ずしも全幅の信頼をおくものではありませんが、しかし、かといって、公正取引委員会という独占禁止法の番人が全くその意味がないということはできないのであります。また公正取引委員会の強化は、必ずしも人員だけの増加で十分であると考えることはできません。特に政府のそのときどきの経済政策、そういうものに動かされない、いわゆる基礎的な競争促進政策としての厳正な独禁法の運用をもっと考えるべきである、堅持すべきであるというふうに私は要望したいと思うのでありますが、そのためにも人員の増加、たとえば先ほど言いましたような管理価格を調査するための一課の増設すら認められないような、そのような政府方針で、はたしていいのかどうか、御再考をお願いしたいと思う次第でありますが、それだけでなく、公正取引委員会の基本的な法運用の方針に従来とも多少の問題があったと考える者として、ここで一つの御提案を申し上げる次第であります。  それは何よりも人材の充実、豊かな学識と競争促進政策に対する信念とを持った、そのような人材を公正取引委員会に集めるためには、ただいまの公取の制度には若干のネックがあると考えざるを得ません。特に、たとえば公正取引委員には定年がございます。また兼職の禁止という規定も設けられております。このような制約のもとに委員を求めるとすれば、おのずからその範囲は限定されてくる。いま私は、従来の委員の人物評について云々しようとは思いませんけれども、必ずしもそれは一〇〇%独占禁止法に信念を持ち、また学識も豊かであったとはいえないわけであります。そのような欠陥を取り除くために、私は非常勤の委員あるいは特別委員なるものを公正取引委員として考える必要があるのではないかというふうに思うのであります。そのような私の見解に基づきまして、一つの提案として、非常勤委員による管理価格調査のための特別委員会を、随時公取の制度の中に備えつけてはどうか、こういう考えを持っております。  イギリスにおきます公正取引委員会類似の機関であるモノポリーコミッション、独占委員会という存在がございますが、これは日本の独禁法とイギリスの独禁法との規定のしかたが多少違いますから、同列には論じられません。またイギリスのモノポリーコミッションにもさまざまな欠陥がございますが、その一つのメリットとして、ここでは随時、常勤の委員と非常勤の委員が混成で特別の委員会をつくりまして、商務省からの指示に基づいて、管理価格であると考えられる特定の商品について調査を行ない、その結果を政府に答申し、または一般に公表するという制度が存在しております。あとから申し上げますように、私は管理価格に対する対策は、競争促進政策という基礎的な政策より実は手がないのだというふうに考えるものでありますが、そのためにも、最も必要な国民一般の管理価格に対する認識を深める、そのためには、われわれ一般の者からはうかがい知ることのできない大企業製品の価格形成のメカニズムを明らかにする、そのための調査に公正取引委員会がいま少し重点を置き、その陳容を充実させる必要があるかと思うのであります。  幸いにして、独占禁止法懇談会というのが現在公正取引委員会で持たれております。しかし残念ながら、これは何ら法律の上で正式に認められた機関ではございません。多くの学識経験者その他業界の方々等人材を集めながら、いわば公取にとって正式な機関でないために、さまざまな制約があろうかと思います。このような独占禁止法懇談会を一つの母体にして、イギリスのモノポリーコミッション類似の管理価格調査のための特別委員会にこれを脱皮させる、そのことによって、管理価格対策としてのまず第一歩であり、しかも最も重要な対策である管理価格調査の機能を充実させることが可能であると考えるものであります。  しかし、管理価格の問題は、かりに私が申しましたような、あるいはそのほかさまざまな方法によって公正取引委員会あるいは独占禁止法の機能を拡充充実したとしても、実はそれだけで管理価格そのものに対する直接の対策にはなりにくいわけであります。周知のとおり、競争促進政策としての独占禁止法は、競争を阻害する要因、たとえばカルテルあるいはプライスリーダーシップ等の要素を取り除くことはできますけれども、現在存在している管理価格、これを幾ら幾らに引き下げよという、価格に対する直接の規制はできません。これは法体系上無理であると考えざるを得ないのであります。したがって、短期的な物価対策として、特にそのうちの管理価格に対する対策として、いかに独占禁止法を強化しても、直ちに即効的な効果は期待できないのであります。その点に、アメリカにおいて鉄鋼価格値上げに対し、しばしば大統領が直接ストップをかけるというような非常手段をとらざるを得ないゆえんもあるわけであります。しかし私は、そのような行政官庁の経済に対する介入の深化が必ずしも望ましいものであるとは思いません。特に日本の場合、先ごろからこの委員会でも問題になっておりますように、行政官庁と民間企業との癒着が問題にされている際、行政府としてあまりに民間経済に深入りすることは望ましいものであるとは考えられないのであります。したがって、先ほど申しましたように、管理価格そのものを引き下げる、かりにそれが不当な管理価格であったとしても、それを直接引き下げる手段を資本主義経済は持っていない。多少飛躍することを許していただくとすれば、私はその点、基本的な管理価格対策としては、企業社会化、少なくともトップ企業である大企業社会化以外にはないのではないかというふうに考えるものでありますけれども、これはさておきまして、そのように困難な、いわば資本主義経済そのものの体質化されている管理価格の問題、現代寡占経済においてそれはもはや資本主義経済の体質化されているというべきでありますが、そのような管理価格に対する対策としては、即効的な効果を期待できないまでも、結局は国民世論を管理価格の重要性に向けさせる、世論を広範に喚起するということ以外には、適切な方法がないというふうに考えざるを得ないのであります。  その点について、もしできますならば、単に行政府としての公正取引委員会に管理価格調査の機能を付与しこれを強化するということだけではなくて、国会においても管理価格の実態を明らかにするための機関をおつくりになることをお考えいただけないか。たとえばアメリカ国会に司法委員会特別委員会として独占小委員会というものを設けております。数年前になくなりましたエステス・キフォーバー氏が委員長になったことのある、いわゆる通称キフォーバー委員会と称するものも独占小委員会でありますけれども、私は、アメリカの独占禁止法制がアメリカの独占禁止、競争促進に果たした役割りよりも、むしろ一人のキフォーバー氏が——もちろん一人だけではありませんが、中心になって果たしたキフォーバー委員会の管理価格調査行為が、より多くアメリカの独占価格、管理価格に対する世論の喚起に大きな力を持ったというふうに考えるものであります。そのような機関が国会において設けられ、公正取引委員会の管理価格調査機能と相対応してその調査の実をあげますならば、この点についてもかなりの成果があげ得るものであるというふうに考えるものであります。  今年度予算関連して、特にそのうちの重点施策一つとしてあげられております物価問題について、私の専門立場から若干の意見を申し上げた次第でございます。  以上をもって、私の公述を終わりといたします。(拍手)
  6. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 どうもありがとうございました。     —————————————
  7. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 これより両公述人に対する質疑に入ります。松浦周太郎君。
  8. 松浦周太郎

    ○松浦(周)委員 お二人の先生に一つずつ簡単にお尋ねしたいと思います。  まず瀬川先生にお尋ねいたしたいことは、先ほど公害の問題について非常な御心配の点を伺いました。同感であります。四十年に法律をつくりましたことも事実でありますし、また水俣病あるいはイタイイタイ病その他の問題についてはこの国会では二十年前から叫ばれている問題でありまして、これは非常な大きな問題でございますが、去年の臨時国会であれだけの法律をつくって、急にあの法律に合わせるように国の現状の公害をなくしようとする問題は、これは実に大きな問題であります。  と同時に、私はこういう考えを持っておりますが、瀬川さんはそのほうの専門でもありますから、特に実はお聞きしたいのでありますが、一つ企業が出す大気汚染あるいは水の汚濁そのもの自体は、全然動物なり人体に影響はない。けれども二百も三百も五百も一河川なり一港湾に注ぐ場合、それは重大な問題が起こってくることは当然であります。現在の東京湾の問題について、この間ここで東京湾の水を持ってきて議論がありましたが、それは捨ておくことのできない現状であります。それは、東京湾に注ぐ各河川における企業の数あるいは東京湾にそのしりは全部流れ込むのですから、それで東京湾には魚が住まなくなることは当然であると私は思う。それともう一つは、この間のロサンゼルスの大地震、東京にこの前のような地震が起きたならば、今日の近代化東京の姿はおそるべきものになるじゃないかということも考えられる。だから、年次計画をもって、企業の種類をいろいろ第一位から順位をつけて、これを分散すべき計画を立てるべきではないか。それをやることは、半面に過疎問題と過密問題を両方とも解決つけることができる、それでこの狭い国土を楽しい国土に全体的にすることができる。こういう交通難も一つ公害でございますから、そういう問題もなくすことができるというふうに考えられるのであります。  こういう問題について、まあ直接経済に関係しておられますが、企業そのものには関係がない十分の議論ができる方でございますから、ひとつざっくばらんに、どういうふうにしたらいいというようなお考えがあると思いますが、私がいま言ったような年次計画を立てて、企業の種類ごとに適地適方面に再配置するというようなことを考えなければ、企業は何ぼ盛んになったって、人間が死んでしまえば何にもならぬということを考えれば、国としては、そういう長い年次計画のもとに、ある一定の予算を毎年計画的に組んでいくということが必要ではないかということを端的にお伺いいたします。  それから御園生さんにお伺いいたしたい点は、おっしゃる点は私は全く同感であり、物価の問題についてはそういうふうに考えます。不況時における物価が下がらない、ふしぎなことだとおっしゃったのですが、私はこの原因は、いまや何といっても賃金と物価は切り離すことができないと思うのです。そういう問題について、賃金のことについては全然お触れにならない。管理価格の問題についていろいろありますが、管理価格の問題については、できるだけ企業合理化をして、それで高度のヒュマニティーに立って利潤の分配を最終消費者にも与えるという考え方に立つことが、企業の本質であることは言うまでもありません。しかし、管理価格を一ぺんきめれば、その管理価格を更新するまでの間は賃金はくぎづけになるのですよ。そうでなければ矛盾が起きるのです。  そこで、もう一つ私が言いたいことは、最近の物価の問題、中小企業の問題、倒産について考えてみると、私も労働の問題について責任がありますから、私からこういうことを言うのはおかしいのでありますが、しかし、日本の労働市場というものを少し考えなければならぬのじゃないか、簡単にそう言います。というのは、あくまでも企業と労働者というものは闘争しなければならぬもののように教え込んでしまうのは一体どういうものか。私はこのことは、小さな企業でありますが、自分の企業を通じて五十年体験いたしております。それはそう言うべきものではないという信条を私は持っているから言うのでありますが、あくまでも闘争の中に真理があるという教え方は間違っておると思うのです。けんかの中に真理なんかできるものではありませんよ。どこまでもやはり協力の中にりっぱなものができていくという考え方に組み変えていくのでなければならないと思うのです。それは、革命的な考え方に立てば、そういうことを言わなければならぬが、私は、そこのところは一つの問題であるということは、以下述べることにおいてお考えを願いたい。  日本の労働運動は、組合が一つ方針をきめる。今年は一万五千円の方針をきめております。この一万五千円のものを純真に日本経済がのんでいいものか悪いものかということは、知識者はみんなわかっております。けれども、この旗振りの先頭に立つ者はだれかというならば、親方日の丸なんです。三公社五現業です。それで、親方日の丸で、電電はとにかくにして、国鉄でも林野でも赤字なんです。けれども、何とかしてくれるだろうということですよ。それで、ストライキの先頭に立つ者はみんな首を切られるのです。首を切られた者は労働団体がこれを養っていくということなんです。それで一つの問題がきまるのです。どうしてもとるというストライキによっていくということになると、今度は、大企業は金持ちけんかせずですよ。これに同調するのです。そこで労働相場がきまるのです。一万円なり九千円なりきまるのです。きまると、労働問題については、労働者が売り手市場なんですから、中小企業の二十年、三十年子飼いのでっちから育て上げた熟練工は、その相場に直してやらなければ持っていかれてしまうのです。赤字であろうが何であろうが、相場にしなければ、自分のうちの勤労者がいなくなるのです。それをどうして防ぎますか。防ぐ方法はないのです。それが、年末に一万件も一万五千件も倒産した一番大きな理由ですよ。  そういう日本経済組織下におけるいまの置かれておるような労働組織というものがもう少し一等国並みの、経済大国並みの方向に進歩していかなければならないではないか。いままでの行き方については、ここまで来たからとにかくにいたしまして、今後は、両方とも、経営者のほうも勤労者のほうももう少し歩み寄って、こういうような行き方ではなしに、ほんとうに国家百年の大計が立てられるような行き方に持っていかなければならないのではないかということを痛感する一人であります、  でございますから、相互協力のもとに満足に話し合いがついて、賃金が高く出されるということは非常によいことであります。そのことは望ましい。しかし、そのもの全体が購買力にすぐ変わっていくというところに、不況時における物価が下がらぬ理由があるのではないか。需要供給の上において物価がきまる以上は、それが原則であります。特にここ四、五年の間は天候がよくて、自然条件がよくて盗作が続いたものでありますから、農村の豊作とベースアップとの両方が全部デパートに行ってしまうのです。何ぼ増産しても滞貨金融をする必要がないといういままでの行き方が、最近は景気が悪いということが社会通念になってまいりましたから、悪くなると困るという預金、貯金関係が起こって、それで購買力が多少減ってきたというところに滞貨金融が逆に問題になって、先ほど瀬川さんのようなお説が生まれますことは当然でありますが、いままではほとんど持っていっているのですよ。それで、その面から見て、需要供給の関係においてものが上がることはあたりまえなんです。そこを調節することが所得政策ではないか。  所得政策をやるとすると、反対が起こってくる。私は、この問題について日本政府が、ドイツほどじゃないが、わずかばかりといえども所得政策を考え出しただけでも一つの進歩じゃないかと思うが、それについても反対があるということは、実際解せないのです。個人の預金がふえ、個人の財産がふえることは国家経済が深くなるんだから、日本経済が安定するということになる。それについて、貯金やそういうものをすることについて反対があるということはおかしい考え方ではないかと思うのです。そういう問題について、何かその辺にしっくりしない日本の政治の悩みがある。私は、所得政策の問題については、労働大臣をやっておるときから言って、もう十六年前から言ってきている。ドイツに行って調べてこい、どうしてもやらなければならぬ問題であると言っておるのですが、今年初めてこれが法律の上にあらわれてまいりましたことは、おそかったけれども、これからこれがだんだんとかさ置きされていけばいいことだと思うのでありますが、これについても反対があるということは、一体どういうことかということであります。  それからもう一つは、いまの自由経済の中においても悪い経営者もありますけれども、ほんとうに自分の企業の将来を考えるということになると、これはやはりマークを売るということがほんとうの考え方なんです。でありますから、マークを売るという自由主義的な基本はどこにあるかというならば、最終消費者の好意を得る人が、自由経済下においては最後の勝利者であります。最終消費者の好意を得るということは良品廉価である。最終消費者に対する利便の方法であります。そういう点が全然忘れられて、攻撃だけされて、自由経済ということになれば、何か弱肉強食の悪い点だけを強調されますが、私はそういう意味でなく経営してきました。それがりっぱに成り立つのです。  そういうことで、この管理価格、悪いことではない。もうけたものを逆に社用族がむだな金の使い方をしたり、一兆億の交際費を使ったりするようなことについては大いに考えなければならぬ。そういうものは十分考えて、最終消費者の利便のために、価格のために、品物をよくするためにしてやるということを、私は、自由経済の中でも奨励していって、そういうものを高く評価するようにすれば、悪いことをする連中には繁栄がないのですから、自然淘汰されていくのではないかということに考えられます。  おっしゃるように、管理価格を徹底的にするとするならば、これは計画経済以外にないのです。けれども、管理価格の第一歩でもいいからというお話であるならば、これをやるということになれば、更新するまでの間は賃金を上げられないことになりますよ。それでなければ不徹底です。そういう点はひとつどういうお考えでおっしゃるか。十分に研究の上だということでございますから、この点、納得のいくように御説明を願いたいという点と、購買力をあおっておいて物価を下げるということができるかどうかという点。この二点をお尋ねしたいと思います。
  9. 瀬川美能留

    瀬川公述人 私の専門外のことで、満足なお答えができるかどうか、非常に危ぶむのでありますが、私は、先ほど陳述書で公害問題に触れました意味は、実は一昨年でございましたか、経団連で日英経済人会議が開かれましたときに、公害対策の先進国としてのイギリスの財界人に私どもいろいろ教えを請うて質問をしたのであります。そのときに言われましたことは、イギリスで公害という文字が初めて出たのは一八〇〇年代だ。第一次産業革命が一番早かった国でございますから、おそらく一八〇〇年代でございましょうが、しかし、実際に公害対策を朝野とも真剣にやり出したのは一九五四年だというお話がございました。一九五四年といいますと、私ども、ロンドンはフォッグで有名で、太陽が見られないということをよく聞いておりましたが、事実私は五一年に参りましたが、その当時非常に不健康な町であったことを記憶しております。最近参りますと、非常に天候がよくなって、テムズ川では魚が釣れるというような状態になって、かなり町がきれいになっているというふうに見かけられますが、そのときにイギリスの財界人の中で、こういう発言をしたのが私の頭に最も強く残りました。公害問題の一番むずかしい点は、これを感情的に取り上げてはいけない。感情的に取り上げたらたいへんなことになるぞという発言がありまして、私は日本にもこういうことがあってはならないなということを、そのときに痛感いたしておりました。  先ほど日本でも早くから公害対策について朝野とも関心が深かったということを申しましたのは、一九六〇年代は日本の国としては食うや食わずで、いかにして経済力を高めるか、身もふりもかまわず、経済成長を目ざした時代でございますから、あるいは非常にやむを得なかった点もあるかと思いますけれども、しかし、そのときですら、すでにわれわれは朝野とも十分に検討をしておったのであります。これがもし一年早く政策として大きく取り上げられておりましたならば、こんなに混乱したことにはならなかったのじゃないかということを、私は実は今日痛感するのであります。  朝、めしを食っておりますと、テレビが公害公害と毎日公害の話をしております。めしもうまくないのであります。ああいう取り上げられ方が、先ほど松浦先生のおっしゃった問題の解決に役立つのじゃなしに、むしろおくれるというふうに私は思うのであります。公害は、高成長がありましたからこそ、いろいろの問題に取っ組めるのでありまして、高成長がないところに何ら対策はないのであります。  しからば最近民間はどういうふうな程度公害対策に取っ組んでおるかと申しますと、通産省の四十五年度の二千三百三社の調査がございますが、四十五年度では千三百四十二億の公害設備費を企業は計上いたしております。設備投資に対しまして五・八%でありますが、その中でも目立ったものは、火力発電所の一二・七%、二百五十五億、鉄鋼会社が三百二十五億、五・一%というのが金額では非常に目立っております。石油化学が二八・七%、百九十四億、合計千三百四十二億、五・八%でございます。これが四十五年度の企業公害に対する取っ組み方でございます。四十六年度は、先ほどもお話が出ましたが、会社の名前が出ましたが、新日本製鉄一社でたしか二百八十億の公害対策費を計上いたしておりますから、四十六年度の公害対策は、おそらく設備投資の一割以上で公害対策に取っ組むということになっております。それに対しまして政府の取り組み方がどうであるかということになりますと、もう少しやっていただいたらいいのじゃないかという感じを私どもは持つのであります。もちろん予算執行上の問題もありまして、これから徐々におやりになることだと思うのであります。  先生のおっしゃった企業それぞれ総合して公害が起こるんだから、ひとつ一社じゃなく、散らしたらどうかとというお話、まことにけっこうなお話だと思うのですが、公害認定についての権威ある機関をなるべく早くつくって、そうして国民が納得するような説明がなければならないと思うし、企業側といたしましても、国民的な合意がなければ、企業立地の点とか、いろいろむずかしい問題があります。いまのような状態ではなかなかむずかしい。  しかし、要するに私が申し上げたいことは、この問題は非常にこれから時間がかかるぞ、だからじっくり腰を据えて、みながよくお互いの立場を考えて、コンセンサスの上に立って行なわれていかなければならない。がやがや騒ぐことが解決にならないんだということと、それから長期的に、計画的にどんどん政府が御指導願いたい。公害対策意味からではなしに、一九七〇年代の経済というものは金融政策だけではいけない、どうしても財政政策主導型になってまいります。いろいろの面で政府当局の御指導によって発展していかなければならない時代に入ってまいるわけでございますから、どうかひとつ積極的に政策を打ち立て、どんどんいいことをやっていただきたいということを申し上げたかったので、ああいう表現をいたしたわけでございます。公害問題についてはまことにしろうとで、答弁にならぬかと思いますけれども……。
  10. 御園生等

    ○御園生公述人 お答えいたします。たいへん広範囲な御質問でございますので、短い時間の間にお答えできるかどうか、はなはだ自信はございませんけれども、申し上げます。  まず第一に私が申し上げたいことは、管理価格が不当だと私が考えますゆえんは、必ずしもそれが高い水準の価格ということだけにあるのではなくて、それがいわゆる資本主義経済の基本的な原則を認めた上でもやはり問題があるのではないか。つまり、言うまでもなく、価格は自由競争によってきめらるべきものであります。競争が価格をきめる上での唯一の原動力であるというのが資本主義経済の基本原則であるというふうに思います。そういう点からいいまして、競争によらず、また需要と供給との相互の関係によらない、それから独立した価格形成機能を持っているという点に、管理価格の問題性があるのだというふうに思います。  これに対しまして労働力価格、つまり賃金の問題が、いま関連して御質問にあったわけでありますが、現在春闘を中心にいたしまして、いわゆる春闘相場ができる。今年五けただとかなんとかいうような目標を掲げているというお話がございましたが、かりにそういう目標を掲げたとしても、賃金は、申すまでもなくその他の商品と同じように、競争と需給関係によってきまるべきものであるし、またそうきまっていると思うのでありますが、需給関係によってきまるという基本原則は、現在の春闘の力関係よりも、むしろ私は賃金の決定について強く作用しているというふうに考えるわけであります。  なるほど賃金が毎年上がっている、また人手不足も招来している。日本資本主義の伝統的な強みであった豊富低廉な労働力、企業が要求すればいついかなるときでも安い労働力が調達できたという事情は、そろそろなくなりつつある。しかし、そのこと自体が日本経済の近代化であり、国民一般の所得の向上であるというふうに考えるべきではないかというふうに私は思うのであります。してみると、お話の中にありました、中小企業でなかなか人手が集まらなくなっている、あるいは中小企業でも大企業並みの賃金を出さなければ人が来なくなったということは、そのこと自体決して憂うべきことでも何でもないのではないか。中小企業だから大企業よりも安い賃金で働かなければならないという理由は、経済的にも倫理的にも私はないと考えるものであります。  そうして考えますと、現在の物価と賃金との関係、お説のとおり所得政策かなり問題になっております。これにつきましても、私は先ごろ発表されました日経調の大川委員会報告の趣旨にむしろ賛成するものであります。つまり、現在賃金を直接規制する所得政策の必要は、経済的に見ると、ないと考えるものであります。生産性の上昇と賃金の上昇率、この率は、最近、短期的に見ますと、多少従来の傾向と変わってきている。これは言うまでもなく、労働力市場なり人手不足ということを反映したことによると思いますし、また、もう一つは、総需要政策が多少節度を欠いたということに基づくものだとも思います。しかし短期的に、かりに生産性の上昇率と賃金の上昇率が多少乖離したとしても、これを中期あるいは長期で考えますと、従来賃金の上昇率をはるかに上回った生産性の上昇率を見ているのは、これはもう明らかな事実ですから、そのことを考えますと、いま直ちに所得政策を施行すべき時期ではないと考えざるを得ません。また単に、賃金の上昇率だけではなくて、これは分配率という点からもアプローチすべきものだと考えられますし、ここで簡単に、そのことについての当否を決定的に申し上げることは、十分なデータを持っていないという点から避けたいと思いますけれども、総合的に判断いたしまして、私は、日本の現在、所得政策の必要がそれほどある、つまりコスト・プッシュ・インフレーションであるというふうに判断する材料は希薄であると考えざるを得ないのであります。  またもう一つ、最後につけ加えて申し上げたいのは、所得政策をもし施行します場合には、単にこれは賃金の抑制、生産性の上昇率の範囲内に賃金を押えるということだけでとどまらない。賃金という価格——需給関係によらず、また競争によらず、賃金という労働力商品の価格を何らかの方法において規制しようとすれば、当然その他の商品価格あるいは利潤の規制にまでいかざるを得ない理論的な必然性を持っているということにも御注意を促したいと思うのであります。  御答弁を終わります。
  11. 松浦周太郎

    ○松浦(周)委員 いまお答えになった中に、私の一番聞きたかったのは、購買力が旺盛になって、物価を下げることができるかという点を一点落としておられる。  それで、もう一つは、いまの、私の所得政策と言うのは、賃金を下げろと言うのではないのです。賃金を労使両方の相互協力によって上げられることは非常によいことだ、しかし、そのもらった、配分を受けた賃金そのものを全部デパートに持って行かないで、それを住宅なりあるいは貯金なりあるいは公債なり、そういうものを買う、財産をつくることは、個人の財産ができることとともに、国家財政経済が強くなるのだ、ここにウエートを置いておるのであって、何も賃金を上げることをやめろというのじゃないのです。あなたのお答えは、賃金を上げるということに私が反対しておるようにおっしゃるが、私はそういうことを言っているのじゃないのです。賃金は、労使双方において相互協力で話ができれば、こんないいことはないのです。私は前からそう言っているのです。私はこのことを三位一体と言っているのです。でございますから、そのことを誤解のないようにひとつお願いしたいと思います。そのことを変な宣伝されたら困りますから……。  それからもう一つは、いまの購買力というものを盛んにあおっておいて、どうして物価を下げることができるかという点をひとつ、物価専門だとおっしゃるからお聞きしたいのです。
  12. 御園生等

    ○御園生公述人 お答えいたします。  初めの御質問からお答えいたしますけれども、購買力が盛んになっている、つまり需要のほうに強さがある、そういう状態のときに物価引き下げることが可能であるかどうか、こういう御質問でございますけれども、確かに現在までの日本経済は需要超過的、いわゆるハイプレッシャー・エコノミーであるということを私も認めます。しかしもしそうであるならば、日銀の公定歩合の二回にわたる引き下げであるとか、あるいは政府予算の組み方の問題、赤字公債の発行であるとかいうような、いわゆる総需要政策は何ら必要がないということになるのではないか。またそのようなハイプレッシャー・エコノミーをもたらした基本的な要因は、総需要政策の活用にあるのである。今年度の予算においても、その点、財政の弾力性という点で加味されていると思います。そのこと自体に、私は、物価上昇の基本的な要因があるというふうに考えるものであります。     〔細田委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、どうも考え方の基本的な立場の相違がありますので、御質問自体に直ちにお答えすることはちょっとむずかしいのではないかというふうに思います。  それからもう一つ、所得政策の問題ですけれども、私はお話のような趣旨でございましたら、つまり納得のいく賃上げをという御趣旨でございましたら、私はあえて反対はいたしません。私も労働、資本両者がかりに納得ずくで生活を保障するだけの賃金が保障されるならば、それに越したことはないというふうに思います。しかし所得政策というものは、これは日本だけの政策ではございません。欧米諸国において、いままで経験を経た一定の所得政策ですね、そういうものとして考えますと、これは一言で言いますと、生産性の上昇率の範囲内に賃金上昇を押えろ、つまり生産性が全然上がらない場合には賃金を上げるなということですよね。逆に生産性が上がった範囲内だけで賃金を上げていけ、こういうことです。こういう考え方自体の経済的な当否、これを論じますと非常に長くなりますので、きょうは差し控えておきますけれども、しかしそうであったとしたならば、生産性の上がらない部門の労働者の賃金は、当然生産性の上がる、日本でいいますと、大企業の労働者の賃金よりも低く押えられざるを得ないということになるわけです。ちょうど高度成長が始まります三十年以前の状態のように、大企業の労働者の賃金に比べますと、中小企業の労働者の賃金は半分以下であるというような状態がおそらくどなたも望ましいとはお考えにならないと思いますが、もしいまのそのままの状態で所得政策日本において施行しようとすれば、こういう賃金の格差、規模別格差がそのまま温存されるか、あるいはそれ以上に拡大されるということ、そういう矛盾にもなるのではないかという点に、私はまず注意しなければならないのではないかと思うわけです。  どうもお話しの、賃金が上がった部分をデパートに持っていくのはやめろというお話は、私にはよく理解できませんけれども、貯蓄の問題にしましても、現在の日本の労働賃金が貯蓄するだけの十分なものであるかどうか、貯蓄に回すだけ十分なものであるかどうかということについては、これは私だけではなくてかなり疑問があるわけであります。なるほど日本の貯蓄率は、各国に比較しますと高いわけです。所得水準が低いにもかかわらずかなり高い。むしろ貯蓄率が高いのは、所得水準が低いところに理由があるというふうにもいわれております。     〔委員長退席、細田委員長代理着席〕 つまり賃金が安い、また老後の社会保障も十分ではない、したがって、老後の保障のために貯蓄する、あるいは不時の疾病のために貯蓄する、そういう要素を持った、そういう目的を持った貯金が個人の預金の中で非常に大きいということが、これは政府の調査によってもいわれているわけであります。そういう点を考えますと、貯金をすることが直ちに投資の増大に結びつくという点については、経済原則としてなるほどそうかと思いますけれども、貯金自体にもやはり多少の問題があるという点を私は注意したいと思うものであります。  御質問に対するお答えになったかどうか、はなはだ疑問ではございますけれども、以上をもってお答えといたします。
  13. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 大原亨君。
  14. 大原亨

    ○大原委員 簡単に御質問いたしますが、結論的に両公述人にお聞きしたいのは、予算前提、いろいろな議論がございましたしあるいは物価公害等ございましたが、土地問題について結論的にずばりどういう考えを持っておられますかということであります。というのは、公害の議論がいまもずっとあったわけですが、私ども国会で、臨時国会以来ずっと公害問題をやってきたわけですが、この国会では物価の問題が議論されておりますが、佐藤内閣のいままでの政策で、公害物価政策で一番欠けているのは総合政策がないということ、すべて政策が場当たりである、こういうことだと思うのです。瀬川公述人も言われましたが、公害問題はやはりコンセンサスが必要である、国民的な合意が必要だ、冷静でなければいかぬと言われたのですが、やはり総合計画がなければいかぬということだと思うのです。長期計画がなければいかぬ。  先般、これも私はその点はコンセンサスだと思うのですが、元大蔵次官の村上孝太郎君がスタッフを連れて一緒に国際的な世界の公害調査をされましたが、私も専門家と一緒に小さなスタッフで機動的に調査いたしましたが、村上孝太郎君の報告の中に、私も全く同感なのは、やはり二つの点が公害政策の基礎だ。というのは何かというと、企業責任つまり企業モラルの問題、日本は高度成長はたれ流しというふうに俗に言われるが、臨海工業地帯に工業立地をいたしまして過密状況が出ておるわけで、人間が集まり工場が集まってたれ流しだ。しかし輸送コストは非常に低いから非常に有利であった、たれ流しも有利であった。海というものは無限にきれいなものだというふうに考えておったけれども、そうではないということがあらわれたのが公害一つの水質汚濁の問題だということですが、そういう点で、たれ流しということばで俗に言われますが、感情論だというふうにあなたはおっしゃるかもしれませんが、私は間違いないと思うのです。企業責任、企業モラルの問題が一つ。  それからもの一つは土地政策、土地の問題に対して政策がないということが一つ、これは私は村上孝太郎君の報告と全く同じ感想を持ってヨーロッパを視察いたしました結論であります。ですから土地利用計画がないことを含めまして土地政策がない、地価が物価上昇の、インフレの根拠になっておる。たとえばあなたの証券業界の関係でも、株の値段でもそうですが、法人が土地を取得することをじゃんじゃん日本ではやっている。そして土地の取得を投機の対象にしているわけです。そういうことなどは私は全く無軌道だと思うのです、個人でもそうですけれども。土地の値上がりを投機の対象、そしてこれが土地インプレ——国債の引き受けを、日銀が引き受けてそして通貨を増発する、そういう通貨インフレと並んでインフレの最も大きなてこになっていると私は思うのですが、問題は物価でも公害でも総合政策がないというのは、土地問題について政策がない。場当たりの政策をやっている。佐藤内閣はずっとやってきた、高度成長の中で。私は議論を吹っかける意味ではないわけですが、御意見をお聞きしたいわけですが、公害問題一つをとりましても、コンセンサスというのはそういう点であると私は思うのですね、ですから土地について、財界も有力な皆さんのような方々も含めて一つのコンセンサスがなければいけない。土地は商品にあらずということは歴代の建設大臣も何回か言ったんです。土地は商品にあらず、限られたものですし、規制を受けるのは当然だ、そういうことですが、しかしそのコンセンサスが政策にあらわれない。これは主として与党の大きな責任だと思いますけれども、私はその点について結論的に、あまり長い理屈はともかくとして、土地問題についてずばりとどういうふうなことが欠陥であって、どうすべきであるという御意見があれば、両公述人からひとつ端的にお聞かせいただきたいと思います。長いことは無理ですからひとつお願いいたします。
  15. 瀬川美能留

    瀬川公述人 どうも私にはたいへんむずかしい問題で、御満足のいくお答えができるかどうかわかりませんが、さっき申し上げました公害問題につきましても、感情的に取り上げちゃいかぬ、取り上げ方が感情的であってはいかぬと申し上げたのですが、やはり感情面を除去しなければなかなか対策ができない。しかもそれは時間がかかるぞということを私は申し上げておるわけですが、土地問題につきましても先般新しい税制ができまして、税制の上から一つ手が打たれたわけであります。     〔細田委員長代理退席、委員長着席〕 先ほど企業が土地を所有して土地を投機の対象にしておるじゃないかというふうなお話があったわけでございますが、部分的に小さな問題としてそういうことがあるかもしれませんが、今日の企業の状態を見ますと、何としても非常に資金不足いたしております。そして本来の生産設備に投ずるための資金需要が非常に多いことは銀行のオーバーローンの状態をお考えになりましても、企業の自己資本の比率をお考えになってもよくおわかりだと思います。ただ土地開発を専門にしている会社に土地がしばらくホールドされているということは私は事実だと思うわけです。しかしこれは農家あたりから土地を買いましても、一定の期間やはりホールドせざるを得ない状態でありまして、それを開発して分譲していくわけでありますが、その場合におきましてもかなり良心的な適切な値段で分譲されておるというふうに聞いております。ただ土地を思惑しているという法人は非常に少ない。むしろ本来の仕事に追われているのがいまの状態であるというふうに思うのであります。専門の会社には先ほど申し上げましたように若干そういう傾向がありましょうが、これは商品性をつける間の一つの過渡的な現象といたしまして、あの源泉分離課税が行なわれますと、土地税制がやがてだんだんきいてくるだろうと思います。  そのほかの根本的な土地対策はどうかということは、これも御高言のように総合的に考えていかざるを得ない。社会資本充実をやっていきますとそれによって土地が開発されていく、土地が充実されていく、供給がふえていくということでありまして、やはり社会資本充実公害防止というものはいろいろの見地から総合的にやっていくことが土地問題の解決になるのではないか。土地問題一つだけ取り上げてやるということは不可能であるというふうに私は感じます。  お答えになるかどうか……。
  16. 御園生等

    ○御園生公述人 お答えいたします。  土地問題が現在の物価問題についてかなりの影響を及ぼしているという御指摘でございますが、私も賛成でございます。特に直接的な影響からいいますと、庶民の住宅はもはや都市近郊では自力では建設不可能になっているという現状、あるいは公団住宅の家賃すらそのような土地価格の上昇という影響を受けて十分な土地の確保が困難になっている。同時に家賃へのはね返りが相当大きくなっているという点から考えましても、土地問題は物価問題を場合によっては越えた大きな問題であるというふうに考えるわけであります。また昨年度七・七%の物価上昇の大部分が生鮮食料品物価上昇である。特に野菜の物価上昇は確かに寄与率にして三〇%くらい高い比率を占めているかと思いますが、このような野菜の物価上昇、この原因につきましては、たとえば流通機構の不備であるとか、不当な買い占め、売り惜しみといったようなことも指摘されておりますけれども、基本的にはやはり需給関係である。需要の増大に供給の増大のテンポが追いついていかないというところに基本的な要因があるというふうに思いますけれども、それにつけてもやはり土地問題が大きな影響を持っている。従来都市の蔬菜供給地は周辺の農村に依存しておりました。たとえば東京でいいますと、練馬あるいは世田谷、杉並、こういったあたりは昔の東京の蔬菜供給地であった。現在では御承知のとおり住宅地あるいは工場地域に変わっているわけでありますが、そのために野菜供給地がますます遠隔地へいっている。遠いところから運んでくるのですから、荷のいたみも大きいし、運賃もかかるし、したがって流通経費が非常に大きくなる。こういうことが、大都市における野菜価格の上昇を相当もたらしている原因だと思います。  そういう点であるとか、あるいは工業立地が、土地問題、土地価格を中心にしてかなりむずかしくなっているというような点であるとか、土地問題はきわめて重要な——繰り返して言いますように、場合によっては、単に物価の問題だけではなくて、基本的な経済政策としても配慮を要すべき重要な問題になりつつあるというふうに思います。  しかし、この対策になりますと、私は、残念ながら、有効な対策があり得るのかどうか、つまり、資本主義の私有財産権という基本的な権利を尊重した上で有効適切な政策を考えるとなると、かなりむずかしいのではないかという感じがいたします。たとえば、不当な不動産売買、投機的な売買の利益に対して税金をかけて、それを吸収するというような方法も、あながち悪いとは思いませんけれども、これは、必ず転嫁が起こってまいります。つまり、不当な利得者に対してかけた税金が、結局は、必要な土地需要者、庶民に対する土地販売価格の上昇に転嫁される可能性があります。これをどうやって防ぐか、そのことを考えませんと、単に不当な利潤を税金で吸い上げるということが、土地問題に対する解決になるかどうか、この点も考える必要があると思うのであります。  私は、やはりその点につきましては、これは憲法上の私有財産権の問題の解釈になりますので、しろうとでございますから十分なことはわかりませんが、直接統制の方法以外にないのではないか。諸外国においてその例もないではないと聞いておりますが、場合によっては、必要な住宅地あるいは公共用地を政府が強制的に買い上げる、あるいは土地販売価格を直接統制する、そういう方法も考えられていいのではないかというふうに思うわけであります。  なお、この問題につきましては、基本的にどういう解決方法があるかという点で、実は私もまだ解決方法を見出しておりませんので、はなはだ不十分ではございますが、以上をもって御答弁といたしたいと思います。
  17. 大原亨

    ○大原委員 一言だけ……。質問ではありません。瀬川公述人がおっしゃったことですが、公害対策で公共投資の点を強調されたのはよくわかるのですが、しかし、たとえば東京都内で、道路でもいろいろな施設に公共投資をする際に、三分の二くらい土地価格にとられる、そういうようなところは世界じゅうないわけですね。だから、公共投資予算を回しましても、社会資本の効率を発揮しないわけですね。日本は逆になっているわけですね。ですから、私は、あなたの議論とちょっと違う点は、逆な点は、土地問題の解決なくしてほんとうの意味公害対策はできないのではないか。あなたがおっしゃいましたのは、社会資本の問題と一緒に、あとで土地問題というふうな、先後が違うわけですが、そこの考え方を変えなければ、公害対策も、物価対策経済の一部現象ではないわけですから、総合的な一つの頂点に立つ基礎になる問題ですから、そういう点でコンセンサスが、財界の人々の中にもやはり国民的な立場でなきゃいけないのじゃないか。できなければ、私は、やはり選択の問題で、管理価格自体が自由競争を否定しているのですから、いまのように土地問題についても限界に来ているのですから、それならば、直接コントロールするしかない。社会化の問題が出てくるわけですね。ですから、私は、そういう面で、いまの資本主義経済は、ある意味では非常に試練だ、社会党は弱いですけれども、そういう意味においては試練だということではないか、こう思います。  私の意見ですから、御答弁が特にあればいただきたいと思いますが、終わりたいと思います。
  18. 中野四郎

    中野委員長 原茂君。
  19. 原茂

    ○原(茂)委員 もう時間がないようですから、先に、お聞きしたいことを瀬川さんにまず六点申し上げて、お答えを願いたいと思うのですけれども、その第一は、戦後大きな課題として財閥解体ということが、これは現実的にも指導もされてまいりましたし、法的にもいろいろな措置が講ぜられてきたわけですね。まあ現状を見まして、この財閥解体というものが、証券業界から見て、ある時期から見て逆行をしているのじゃないかというふうに、復活をしたといいますか、感じられる節も私どもには見分けられるのですが、業界でお考えになって、現状をどうお思いになるか。特に金融業界、これと産業界との最近の非常に緊密な連携の、表面的なものもありますけれども金融二法などの改正がきっかけになって、また急速に癒着というか、密着という度合いが激しくなってきたわけですが、こういう点をどうごらんになっているか。これが一点であります。  それから二点目に、今日景気の下降状態というもの、先ほどお話があったのですが、長期的にごらんになったときに、やはりこの第四次防という防衛計画を通じての軍需産業に業界としては相当の期待を置かざるを得ないのではないかと思うのですが、この自主防衛という名のもとにおけるわが国の独自の軍需産業が、今後の長期の見通しに立ったときの景気に対して相当のウエートを持つというふうにお考えになっておられるか。これが二点目であります。  それから、私はあえて申し上げませんが、当面する施策の問題の一つ二つで、証券業界として国会に、こういう点はあまりきびしくやるな、こういう点をぜひやってもらいたいというようなことがおありになるのじゃないだろうか、あったら、ずばりとひとつこの機会にお話になったらどうか。それが三つ目であります。  それから四つ目には、OECDが、特に金融政策を中心にしてパリで近く委員会を持たれる、この二十六、七日ごろに日本がこの出席要請されているようですが、ここで、大体大きく言うと、四つの問題を問われるようですね。その中の一つに、いま言うところの、日本で論ぜられているところの所得政策というものを導入するつもりがあるかどうかということが、四点目の、OECDの金融政策委員会日本に対する質問になるだろうということが新聞で報ぜられていますが、このいま言われているわが国の所得政策というものが導入せられることが望ましいとお考えなのか。とするなら、どういう点に力点を置くべきだとお考えかを、証券業界の立場でずばりお答えをいただきたい。  それから五つ目には、今日の景気を何とかしょうというたいへん大きな目的を持った刺激的な今次予算が提案されていると私は思うのですが、この予算が執行をされるその前後から、あるいは何カ月後に今日の景気に対して的確な、今予算景気をささえていく、上向きにさせる、いつごろからそういう効果が発揮できるとお思いでしょうか。端的に言うと、この予算を通じての景気対策というものが、何月ごろにその芽が出てくるとお思いになるかを、これは短期の見通しなんですけれども、これが五つ目。  最後に、いわゆる資本の自由化というものがもう決定的な、迫られるばかりでなくて、自発的にもやらざるを得ない段階に来ているわけですが、この資本の自由化というものに証券業界のお立場でどう対処しておられるのかを、これも端的に。  以上六点を瀬川さんに、それからついでに、時間がありませんので御園生先生には三点お伺いしたいのですが、いま先ほどのお話でもスタグフレーションの問題がちょっと言及されました。基本的なことをお伺いしようとは思わないのですけれども、いまわが国でいろいろ論じられております中で、日本のような完全雇用下にある現状では、景気後退下におけるインフレ直ちにスタグフレーションとはいえない、完全雇用下にあるからそうはいえないんだという論者がたいへんおいでになるのですが、私それをどっちをとるべきかはわかりませんので、世界的にいわれますスタグフレーション、同時に日本における、完全雇用下におけるこの現状はスタグフレーションとはいえない、完全雇用がくずれたときに初めてスタグフレーションと見るべきなんだというのかどうなのかをお教えをいただきたいのが一点です。  それから二つ目に、先ほどもちょっと触れましたが、いわゆる証券の民主化というのが戦後叫ばれて今日に至ったわけでありますが、国家的にも証券の民主化の指導がされてきたわけであります。しかし最近の状況を先生ごらんになりまして、証券の民主化というのに値しているかどうか、最近の動向に関して、これも見解をお伺いしたい。  最後に三つ目には、先ほども物価問題にお触れになりました中で、公取の強化、新しいアイデアの御提案等がございました。私もたいへん貴重で、いい御意見だとお伺いをしたわけでございますが、私物価政策を考えましたときに、流通機構そのものを全般的に取り上げて、その中に小売り、販売業といいますか、こういうものの果たしている役割り、これは不可欠の流通機構の相当の部分を占めているのです。これがいま消費者物価が上がる上がるといって騒がれますと、いかにもその小売り業が消費者の敵でもあるような錯覚を持たされるマスコミの動向もあるわけです。これはたいへん危険だと思うのでありまして、やはり大事な不可欠の流通機構としての小売り販売業に対しては適切な——行政介入ではないのですが、いわゆる公定価格をつくるのではないのですが、安定価格を行政指導できるような幅をもって業種別に、この程度は四人家族、三人家族の業者として必要なマージンなんだというようなものを——ちょうど専売業に関しての小売りには法律でマージンがきまっているのですが、民間の場合には全然それがきまっていない、保証されていない。それがいまのような消費者物価の高騰、高騰の中で騒がれていますと、不当に変な過当競争も起き、中小零細企業がいろいろと困った状態になっていく、過当競争が生産をされるような経過まで自然的に起きてくる、これを放任していいのか。私はやはり小売りマージンに関する妥当な幅を持った業種別の安定価格というものを一応政府の責任で試算をする、そのためにはやはり大企業なりメーカーそのもののコストに対して先ほどの公取の一機関が調査権限を持つというようなことも必要になるという意味で、関連して小売りマージンのいわゆる安定価格指導行政が必要になるのではないかという点をお伺いをしたい。  以上三点であります。
  20. 瀬川美能留

    瀬川公述人 第一の財閥解体が逆行していないか、銀行と企業との間の癒着関係がさらに進んでもいないかというたしか御質問だと思いますが、御承知のような占領政策がとられまして、直後は一応財閥がばらばらになったわけでございますが、しかし何と申しましてもそこに人の関係は断ち切れない。財閥本社はカットされまして、財閥本社による人事のコントロールとか経営のコントロールというものは完全になくなったわけでございますけれども、しかし残ったばらばらになった財閥会社が、それぞれ従来の歴史とかあるいは人の関係とかを通じて、お互いにまた手を組んでひとつ仕事をしていこうという時期が参りましたのが、おそらく三十年以降じゃないかと存じております。しかしこれとてそのときの経済の発展に伴いまして、従来ばらばらになっているところが技術の関係、人の関係あるいは金融の関係からして、どうしても組んで仕事をしていかなければやっていけないというふうな情勢下において、当然のことだったと思うのでありますが、もはや今日になってみますと、財閥本社的な復活があるような感じが、どこどこの財閥が何々企業に、新しい事業に乗り出したとか、あるいはシンクタンクに乗り出したとか、はでに新聞がぶっつけますからして、それだけ見ていると、いかにも財閥が復活したような感じを持つわけでございますけれども、しかしそれとて一つの新しい企業をやります場合に、新しいプロジェクトをやります場合に、従来お互いの知り合いの間柄のものが寄り集まってやっていく、財閥じゃなくても、財閥以外におきましても、お互いに親疎の関係、人の関係あるいは従来の技術の関係、取引の関係と、あった関係の深いものがかたまってやっていくという最初のスタートの形をとるわけでございます。そのスタートにおきましても、今日の状態における企業のシステマティック化ということから、従来の財閥系の会社といえども、ほかの財閥系、極端にいうと、三井でありましても三菱の企業にも協力を求めなくちゃいかぬ、住友の企業も三菱の企業から協力を求めお互いにやっていかなければならぬ、そのほかの企業とも同然のことでありまして、形はいかにもそういう形を感じられますが、結局これは企業経営の必要からしていろいろお互いに便利なものが寄り集まっていく、これは国際的にも自然そういう形をとりますから、これから古い感覚の昔の企業の形における復活というようなものはとうてい考えられない。またそういう感覚から企業を経営しておればその企業は発展しない、むしろ世界的にも無国籍企業、あるいはお互いに人種のない企業というふうな企業に発展していく傾向すらあるわけでございます。そういう情勢でございますから、この台所をまかなう銀行と企業との関係にいたしましても、一時はワンバンク・ワンセット主義というようなことが行なわれましたけれども、しかしそれとてやはり古い頭であった、時勢はもっと先行するのだという最近の感覚あるいは最近の情勢から見まして、これは内外ともにそういう情勢になっておるわけでございますからして、一銀行が旧来の一財閥の中で金融をしているというよりも、むしろ協調融資の形で、それは国内の銀行だけでなしに世界的な銀行の協力も得まして、新しい時代には新しい金融の入れもの、金融機関のあり方というものを考えなくちゃいけないという時代に入っておりますので、そういう傾向はむしろもうだんだん払拭されてまいりまして、逆の傾向にむしろ行っているとお答えしていいのではないかと思います。  次に、第四次防衛計画景気にどういう影響を及ぼすと判断しておるかという御質問でございますが、今日の国民経済日本経済の二千億ドルに近いスケールと、さらに成長するスケールから見まして、防衛生産によって景気がささえられていくとかいうふうなことは全然考えておりません。むしろこれは非常に微々たるものであって、防衛産業が大きくおおってきてどうなるとかこうなるとかいうようなことはむしろ考えておらない。あるいは一部の企業で従来の一つのセクションを持っておりましたところが、これはひとつやろうと考えておるかもしれませんが、財界全体といたしましては、防衛生産については景気にどう影響を及ぼすかというふうなことは考えておりません。  それから第三、証券業界として財政にどういう点を望むかということでありますが、これは私ども具体的な問題としてずばり申し上げますと、従来、から念仏のように唱えられてきた金利の自由化あるいは公社債の市場の自由化というふうな問題にひとつ具体的に一歩一歩取り組んでいっていただきたいということであります。そして国債を中心とした一つの金利体系を打ち立てていただいて、そして国際経済にふさわしい公社債市場をつくっていく一つの素地をつくっていただきたい。すでに御承知のように、まあこれは準内国債のようなものではございますが、外国債の第一歩としてアジア開銀債の発行を昨年見たわけでございます。あるいは日本の株式がニューヨークに上場されるというふうなケースも見たわけでございまして、国際化は一歩一歩迫ってきておりますので、これに対しましてやはり政府施策も一歩一歩、一つずつほどいていただきたい。一ぺんにずばりとするような理想案が出るわけではございませんから、言い古された具体的な問題を実現していただきたい、ということが最も強い要望でございます。  第四番目は、OECDの会議で所得政策が論議されるだろうがどう考えるかということでございますが、私はやはり先ほども御説明がございましたように、所得政策という問題はまだ日本としては考える時期ではない。いろいろの問題を検討した上でそういう時期があるかもしれないが、いまはまだ時期尚早であるという感覚を持っております。  それから予算につきまして、今度の中立機動的な予算というものが景気にどういうふうに影響してくるかという御質問でございます。第五でございますか。この点につきましてはどうも、景気の先行きは私はしょっちゅう間違え、株の相場の先行きを間違える男でございますので、私のクリスタルボールはいつも間違いだらけでございますが、しかし一般的にいわれていることをもって御答弁にかえますと、やはり四−六月ぐらいに景気は一応底入れするんじゃないか。そして財政といたしましては、この時分からして景気のささえにきいてくるんじゃないか。四十六年の下期にはまあ設備投資も回復してまいりましょうからして、景気はようやく上向くのではないか、というふうな予想をいたしております。したがいましてごく短期的な予想でございますが、この四月期の決算は大体企業としては五%ぐらいの減益になるだろう。それから九月には大体横ばいになって、来年の三月から企業収益は回復に転ずるのじゃないかというふうなことが、一般的な常識のようになっておるようでございます。  それから資本自由化に証券業界としてどう対処していくかというお話でございますが、これは結局もう証券業のような人の知恵、人の頭と人のモラルスタンダードが活動する、人が活動する世界では、自由化になろうと、また自由化でなくても、結局そこに対策の根本があると思います。それから企業がやはり相当な蓄積と信用をもって信用ある機関として発展する、この二つに尽きるだろうと思うのでございます。その点につきましては証券業界といたしましては比較的早くから対策を講じております。昭和二十八年ぐらいから私ども海外に留学生を出し、駐在員を出し、それから海外に支店網をぽつりぽつりとやりまして、かなり外国の一流の証券業者と十分に対等に話し合って、いろいろのことを相談し得るだけの信用も、あるいは人的要素も、あるいは企業の信用もできつつあると思いますので、まあまあ自由化になったからといってみじめなことにはならぬだろう。しかし今後とも日本が大きな強国になってまいりますから、私どもといたしましては世界をリードする証券業者としての努力を重ねなくちゃならない、そういうふうに考えております。
  21. 御園生等

    ○御園生公述人 お答えします。  いわゆるスタグフレーションの問題ですが、これは学者によって考え方がかなり違うわけであります。主としてこれは近代経済学上の概念でございますので、その点を前提にして考える必要があるかと思うのですが、完全雇用あるいはそれに近い状態がスタグフレーションの一つの要件として必要であるという考え方は、確かにあり得るようです。これは一つは、現在が、その状態が好景気であるか不況期であるかということのメルクマールにもなりますし、それともう一つは、これはわれわれの立場からいいますと少し危険だと思いますが、スタグフレーションの原因、不況下の物価上昇の原因をコスト・プッシュ・インフレーション、つまり賃金の上昇物価上昇の原因であるというところに結びつける考え方が特に完全雇用下という要件を重要視することになろうかと思うのです。その二つの点から不況下の物価上昇、いわゆるスタグフレーションというからには、完全雇用という条件が必要なんだということになるかと思いますけれども、この点につきましては、繰り返し申しますように、近代経済学的な考え方でございますので、その点を一応よく認識した上で検討する必要があろう、私の立場からいいますとかなり問題があるというふうに思います。  それから特に現在の日本から考えますと、完全雇用といい得る状態にあるのかどうか、この問題をやはり考えていかなければならないのじゃないか。なるほど統計上の失業率はきわめて少ない。完全雇用というにふさわしいような失業率であるかもしれない。しかしその内容を見ますと、たとえば一カ月十日ぐらいしか就業できなかった者が雇用者に入っていたりする、あるいはほとんど半雇用ともいわなければならないような、共かせぎをしなければ食えないようなそういう雇用者をも雇用者の統計の中に入れている。そういう日本的な雇用条件ということをやはり考慮する必要がありますから、したがって現在の日本でスタグフレーションがあるのかどうかという問題については、先ほど言いましたようなスタグフレーションそのものの考え方の理論的な問題とともに、現在の日本における雇用統計の裏にある事実、そういうことをやはり考える必要があろうかと思います。  それから第二点、財閥解体以後の証券民主化の問題でございますが、これは専門家である瀬川さんを前に置きまして私から申し上げるのはたいへんどうも自信がないわけでございますけれども、どうも最近の状況を見ますと、たとえば私が計算しましたところによりましても、またこれはかなり広く認められているところを見ましても、旧財閥グループ、たとえば三井系の主要企業、三菱系の主要企業、住友系の主要企業という、こういったような旧財閥グループ間の企業の相互持ち株比率、お互いに株を持ち合っている比率を計算いたしますと、どうも一〇%をこしている、グループによっては一五%をこしているという状況すら見られる。これは単に会社の投資として株を持っているというだけでは説明のつかない濃さではないか、厚みがあるのではないかというような点を考えますと、私はいわゆる財閥の復活についてむしろ肯定的な、こういう立場をとるものであります。ことに最近のいわゆるシステム産業の登場に伴いまして、企業グループというものの威力が再評価されつつある。たとえば通産政策の一環としても、将来の情報産業であるとかあるいは地域開発産業ないしは海洋産業、いまはたしてそのような未来産業がどの程度の産業全体に及ぼす波及効果があるかどうかについて、私は疑問に思いますが、ともかくもそういう未来産業について巨大な力を持っております財閥グループがそのにない手になり得るのではないかというような点から、政策としても再評価されているという点もにらみ合わす必要があると思います。もちろん、かといって、単に持ち株比率だけで財閥グループの復活を云々するのは少し早計かとも思いますし、また財閥グループが復活したといっても、それは言うまでもなく戦前の持ち株会社、本社を頂点とする、しかもこの持ち株会社が御承知のとおりそれぞれ財閥家族の閉鎖的な所有であった、そういう形がそのままの形で現在復活しつつある、あるいは復活しているというふうに考えるものではありません。むしろ、より近代化された、いわゆる企業グループという形で、われわれのことばでいいますと、金融資本復活のきざしがあるのではないか、そういう点をわれわれは注目していきたいというふうに思います。ことに財界では、そういう企業グループの時代ではないというふうに、瀬川さんのようにおっしゃる方も多いわけなんですけれども、そのことばの裏から、持ち株会社禁止の独禁法第九条は、あれは改正すべきである、削除すべきである、そういうような声がかなり活発に言われている。そういうこともにらみ合わせますと、なぜこの時代に持ち株会社という、欧米諸国ではもう古くさくなったそういうものを持ち出す必要があるのかということも、勘ぐれば勘ぐりたくなるわけであります。そういう点で、私は財閥グループがより近代化された形で復活しつつあるのではないかというふうに考えるものであることをお答えしたいと思います。  それから小売り業の問題。これは物価問題に関連して、流通過程でのマージンの取り過ぎがかなり問題になっております。私もそういう事実が全くないとは思いません。しかし、これは基本的にいえばやはりメーカーサイドに問題がある。メーカー間の競争が十分活発であれば、そのような不当なマージンを小売りに与えるということもあり得ないし、まだ寡占間の競争が、そのようなリベートであるとかその他の不当な流通過程における競争手段をとらしている。競争というのは、必ずしも価格と品質に帰着するわけではありません。それが寡占の支配する状態になりますと、つまり大企業が支配する状態になりますと、価格競争をやらない。われわれの最も期待している、資本主義のメリットである価格と品質という点で競争をしないで、その他の、必ずしも消費者に還元されないような競争をやります。たとえばリベートであるとか、あるいは社用の乱費であるとか、私はこれも一種の競争手段だと思いますけれども、そういういわば好ましくない競争に費用をかなりかけるという点も生じてくるわけで、いわゆる非価格競争——独占的な競争の悪い面だと考えることができますが、こういうことが、流通機構におけるマージンの一見不当な取り過ぎと思われるような現象を生む基本的な要因であるというふうに思うわけであります。ですから、まず第一に、やはりわれわれはそのような大企業の不当な競争、それをやめさせるということに基本を置かなければならないのではないかというふうに思うわけであります。  それからもう一つは、にもかかわらず古い小売り業——古い小売り業が必ずしも悪いとは申しませんけれども、近代化という大勢からいいますと、あるいは資本主義経済の伸展という大勢からいいますと、いまや昔のようなよろず屋式の農村の小売り店に至るまで、近代化の必要に迫られている。これは一つは、御承知のような大型スーパーであるとか大資本による小売り業への進出、これに促されているわけでありますけれども、小売り業なりにやはり近代化の必要がある。それによって、零細な小売り店は小売り店なりに大資本に対抗し得るような体制を整えていくということが、やはりもう一つ対策になり得る。最後のところ、小売りマージンのガイドポストでございますね、これは最後の手段であるというふうに私は思います。なぜならば、価格そのものに資本主義経済ワクの中で政府なら政府が指示をする、ガイドポストを設ける、あるいは利潤についてもガイドポストを設けるということは、どうしてもその他の商品、つまり労働賃金も、労働力も商品ですから、そういうものに対するガイドポストをつくる口実を与えることになりますので、私はどうもその辺についてあまり好ましくないというふうに考えがちであることをつけ加えさせていただきたいと思います。  以上、お答えといたします。
  22. 中野四郎

    中野委員長 もう時間がないから、質疑応答ともになるべく簡潔に願います。
  23. 原茂

    ○原(茂)委員 まことに残念ですし、いい御意見を聞いたのでお伺いしたいことがあるのですが、これでやめます。
  24. 中野四郎

  25. 谷口善太郎

    ○谷口委員 たいへん時間がおくれておりますし、私いろいろ伺いたいことがあるのですけれども、簡単に御園生先生に二点ばかり、理論的におっしゃっていただくよりも、そうではなくて、ずばっとそのものでひとつお答え願いたいと思います。  先ほど管理価格の問題でいろいろお話を伺って、私ども非常に参考になりました。ところで、私どもとして疑問あるいは解明していただきたい問題が幾つか出てきたわけなんです。  その一つは、つまり大企業製品でも、消費物資そのものは消費者価格に直接あらわれてくる、これはもう、そうである。しかし、工業用資材、つまり原料とかあるいはエネルギーとか、そういうようなものだと思いますが、この場合は間接的に消費者物価に反映するという点ですね。そこで、先生は新日鉄の話を一つの事実としてお話しされました。私どもも実は先生の御所見には非常に賛成でありまして、そこのところに非常に重大な問題があると思っているわけなんです。つまり、管理価格と普通に言われておりますのも独占価格の一つだと思いますが、大企業の独占価格の問題に入らなければ物価の問題も実際に解決できないという実情がある、こういうふうに思っているわけでございます。ところが、例証にあげられました新日鉄の場合などで、国会の論議の中では、企画庁長官はこういうふうに答えているわけなんです。たとえば新日鉄の場合は、独占価格あるいは管理価格をつり上げてその他の生産部門への影響を与えているということよりも、むしろ価格のほうは最近では下がりぎみであり、非常に需要の大きい時期に鉄を供給する能力をもって日本経済に果たした役割りこそ大きいのだ。私どもも、その点はそういう言い方をすれば認めざるを得ない事実があると思うのです。そうしますと、高邁な理論を学習している人は別としまして、国民としましては、鉄は上がっていないのだ、むしろ下がっているのだ、したがって消費者物価に影響するという言い方、そういう立場から独占価格の問題を取り上げてもそれは違うのではないかという疑問があるわけなんです。先生は先ほど高位安定ということばを使われましたが、これは私は非常に適切なことばというふうに承ったわけであります。私、実はきょう資料を持ってきておりませんから、大まかなことを申しますが、新日鉄が、富士と八幡が合併しようという話が出ましたとき、あの前後に、価格を、私の記憶であいまいなことを言うのですが、二万円ないし三万円のものを一挙に四万円ないし五万円に上げて、その水準でずっとここ数年間推移している。若干の生産調整なんかも去年あたりやりまして、不況局面といいますか、一応経済の発展の若干の鎮静といいますか、そういう状況のもとで生産調整をやったようでありますが、そういうことをやったりしている中で、下げたといいましても、四万円、五万円台のものを千円か二千円下げたり上げたりするというようなところでありまして、もともと倍以上につり上げ、そのいわゆる高位安定でやってきているということは、非常に大きな利潤をもって、それを生産拡大に投資したり何かしていると思うのであります。しかし企画庁長官が言うように、確かに横ばいか、もしくは下がりぎみだ、したがって消費者物価に影響する面ではそう問題にできないのだという理屈も成り立たないわけじゃないのですね。しかし先生のおっしゃる高位安定の状況におきまして、別なことばで先生おっしゃったように、非常に高い水準に生産性を高めたものを、これを引き下げないというところにこそ問題があるのだということですが、その引き下げない状態におること自体が間接的に消費者物価にどういうふうな影響をするかという点ですね。こういう点を若干具体的に御解明をいただければ、企画庁長官などの説明に国民は納得しませんので、これに対する反駁にもなりますし、国民の啓発の上にも大いに役割りを果たされることになるのじゃないかと思うのです。そういう点を一点として伺いたいことが一つであります。  それからもう一つ、これもずばり聞きますが、所得政策の問題は今度の国会では、先生おっしゃったように大川報告などありまして、政府は、ここで見ておりますと、この問題を提起したくてうずうずしておるのだけれども、よう出さぬというような状況があるわけであります。しかし決して、所得政策といいましても、ずばり言えば、賃金を下げようということあるいは上げることを押えるということだと思いますけれども、そういう側面は非常に私ども重視するわけですが、この所得政策を断念しているわけじゃない。おそらくことしの春闘では、いろいろな行政指導で労働者の賃上げ要求を弾圧するだろうと私どもは見ております。そこでずばり伺うのですけれども日本の労働者の賃金水準、これがアメリカやヨーロッパ諸国の先進資本主義国と比べてどういう水準にあるかということ、これをひとつずばり具体的な資料でお示しいただけると、政府の蒙を開くことになるというように思うのであります。この点が第二点であります。  それから瀬川さんに一つお伺いしたいのですが、非常に参考になることを伺ったわけでありますけれども、気にかかることが一点ございます。それは公害問題で、これは感情的に取り上げてはいけない、ぎゃあぎゃあ騒ぐことはうまくないというふうにおっしゃいました。文学的表現でなかなかおもしろいと思いますけれども、実は政府部内にもそういうことを言う人がありまして、国民の反発を買っているわけであります。ぎゃあぎゃあ騒ぐということあるいは感情的に取り上げるということは、これは国民の場合、生活の中で実際に公害の被害を受ける、企業のために公害によって娘が自殺するというような問題が起きたりしますと、泣きもしますしわめきもするのですね。これは確かに耳ざわりな発言が起こったりしますが、こういう国民世論が大きく盛り上がった中でやはり公害問題はクローズアップされ、政府もみこしを上げたというのが実情であります。ですから私どもは、国民世論というものは政治を動かす上で非常に大切だと思いましたので、これを弱めるようなことがあってはならぬというふうに私どもは思っておるのです。この点についてどうお考えになっているのかという点が一つ。  それから公害問題につきまして国民のコンセンサスが必要だとおっしゃいましたが、去る臨時国会政府の出しました諸法案を通じて、政府を含め、自民党を含めての大体の意思統一は、公害における企業責任——その発生源においてこれを規制する、あるいは防止するための責任を企業が持つという立場企業責任ということを非常に重視いたしまして、大体法律によってあらわれておりますとおりに、不十分でありますけれども、その点では国会の意思統一ができておると思うのであります。そういう点で、私どもはそういう側面で本質的な面を強化していく点ではまだまだ弱いと思いますけれども、一応企業責任の問題が前面に出てきたという点では国会の意思統一ができている、こういうふうに思うのであります。そこらを財界の皆さんはどう考えていらっしゃるかをお伺いしたいということです。  以上であります。
  26. 御園生等

    ○御園生公述人 お答えいたします。  二点ともたいへんむずかしく、またかつ具体的な数字をあげてお答えしなければならない問題でございますので、いま資料の持ち合わせもございませんし、十分すぐに御満足のいくお答えは実はできかねるというのが実情でございますが、しいてお答えいたしますと、鉄鋼価格が合併以来かなり持ち直しているということは、御指摘のとおり事実であると考えざるを得ないわけであります。従来日本の鉄鋼価格が、長期的に見まして戦後下がりぎみであったということをもって、鉄鋼製品は独占価格ではないというふうに通常言いわけしてきているわけでありますけれども、その生産性の上昇と比較しますと、はたしてその価格引き下げが十分であったかどうかという点に着目して検討しなければならないというふうに思います。それからもう一点は、鉄鋼価格は、御承知のとおり大口販売価格と小口の店頭売り価格とでは異なっております。この間にかなりの相違が置かれている。たとえば自動車向けあるいは造船向けの大口販売の価格についてはかなりの割引をしている。これは私も外からはわかりませんけれども、そういうふうに一応世上ではいわれております。それに対して店頭売り価格はきわめて高価格である。中小企業は大口販売価格あるいは建て値をもっては購入することができず、小口の店頭価格をもって購入しなければならない。この間にかなりの大きな開きがありますから、中小企業の製品が最近の物価上昇の中でかなりウエートを占めているということがいわれておる際に、それが工業資材である鉄鋼製品あるいはその他の中小企業が必要としております原料、資材、あるいは機械、こういったものにどの程度の管理価格の影響があるかということをやはりわれわれは計測して、それをもって鉄鋼価格は不当なものであるかどうかということについての検討をしなければならないというふうに思います。ただしこれはたいへん大規模な作業を必要といたしますので、私個人としてはまだ推定すらもできない状況でありますが、一般的にいいまして、鉄鋼あるいはその他の大企業のつくり出している工業原材料あるいは半製品、機械、資材、そういったものが中小企業製品の価格上昇、あるいは工業製品一般の価格上昇に影響しているということは、御指摘のとおりであるというふうに思います。  それから第二点でございますが、所得政策関連いたしまして、日本の賃金水準がヨーロッパ諸国の賃金水準に比べてどの程度のものであるか。これも時間がありませんので、簡単にお答えいたしますと、少なくともアメリカ及びヨーロッパの先進国水準、いわゆる後進国、低開発国は別といたしまして、先進国水準に比べますと、日本の賃金は、名目的な賃金を比較いたしますと、はるかに安いということが言えるわけで、実質賃金も最近における物価上昇を考慮いたしますと、やはりむしろ名目賃金で比較するよりもかなり安いというふうに判断されるわけでございます。具体的な数字をいま持ち合わせませんので、たいへん抽象的なお答えになりましたが、そういうことは言えるかと思います。ただし、賃金の国際比較というのは、これは単に名目賃金、平均賃金を公定レートで比較する、交換の国際的な固定レートで換算しそれを比較するということで、はたして足りるかどうか、これはかなり問題であります。つまり、各国の労働者の消費内容が異なっておりますから、そのような平均的な生活水準を比較して、それを考慮に置きつつ各国との比較をしませんと、直ちに名目賃金、貨幣賃金だけの公定換算レートによる比較だけでは、十分な評価はできにくいというふうに思います。しかし、それらを判断いたしましても、まだまだ日本の賃金は欧米諸国に及ばない水準であるということは申し上げて差しつかえないだろうというふうに思います。
  27. 瀬川美能留

    瀬川公述人 公害について感情的に取り上げてはいけないという点についての御質問でございますが、私が申し上げました意味は、国民公害という問題が正しく理解されずに、一つの起こった現象からがやがやと言って、それが政治に反映するというような政治であってはいけない。政治というものは、公害問題を取り上げておれば、当然それを国民の騒ぐ前に政治として大きく出していただきたい。そして、だれが公害犯人だというので、政府民間国民も騒いでおるというふうな状態は、日本のような一流国で、教育の行き届いた国民の層としては悲しいことだ。そして感情的に取り上げれば取り上げるほど問題の解決がおくれる、そういう意味で申し上げたのであります。当然国民公害に対する感情が起こる前に、やはり先進国にも——もうすでに日本は、先進国にも例のあったことでございますから、取り上げておってしかるべきではないかということを申し上げたのであります。  それから企業責任につきましては、公害というものはむろん企業だけの責任のある公害もありましょうし、いろいろ広い意味での公害というものを取り上げましたときに、企業側は企業側、国は国側、あるいは受益者は受益者、それぞれの立場から公害というものを解決すべき問題であって、企業といたしましては、先ほど申し上げましたように、公害に対して積極的に予算を計上して、そうして今後の公害を除去しようという決心になっていることは当然のことでございますし、また非常にみなそういうふうに努力しておるわけでございますから、これはひとつ、みんなが寄ってたかって冷静に解決をしていかなくてはいけない問題であって、国民がわあわあ騒いだからやるのだというふうなものであってはならないということを実は先ほど申し上げたわけであります。
  28. 谷口善太郎

    ○谷口委員 ありがとうございました。
  29. 中野四郎

    中野委員長 瀬川、御園生公述人には、御多忙のところ長時間にわたり貴重な御意見をお述べをいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後は一時三十分より再開することとし、この際、暫時休憩をいたします。     午後零時四十三分休憩      ————◇—————     午後一時三十二分開議
  30. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十六年度総予算について公聴会を続行いたします。  この際、御出席公述人各位にごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございました。  御承知のとおり、国及び政府関係機関予算は、国政の根幹をなす最重要議案でありまして、当委員会といたしましても慎重審議を続けておるわけでありますが、この機会に各界の学識経験豊かな各位の有益な御意見を拝聴いたしまして、今後の予算審議の上において貴重な参考といたしたいと存ずる次第であります。  何とぞ各位におかれましては、昭和四十六年度総予算に対しまして、それぞれ御専門立場から忌憚のない御意見をお述べ願いたいと思う次第であります。  次に、御意見を承る順序といたしましては、まず岩田公述人、続いて中林公述人順序で、約三十分程度ずつ一通りの御意見をお述べいただき、その後公述人各位に対しまして、委員から質疑を願うことにいたしたいと思います。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を求められること、また、公述人委員に対しては質疑をすることができないことになっております。この点あらかじめ御承知おきを願いたいと存じます。  それでは、岩田公述人から御意見を承りたいと存じます。岩田公述人
  31. 岩田友和

    ○岩田公述人 日本消費者連盟代表委員岩田友和でございます。  予算について御意見を申し上げたいと思います。  私ども消費者運動の場に立ち、市民の方々と接触する機会を非常に多く持つ者として、冒頭に一言申し上げておきたいと思うのであります。最近の議会制民主主義に対する市民の信頼感の喪失といいますか、そういうことにつきまして非常に危険を感じております。すべてが形式的に流れて、意見も聞くことは聞くが、形式であるというようなことが最近問題になったばかりでありますので、ぜひ民間意見、つたのうございましょうが、十分におくみ上げになっていただいて、この国会の権威のためにも、また国政の権威のためにも御尽力をお願いしたいと思います。  それで、本年度の所得税の問題から先に申し上げたいと思いますが、所得税課税最低限度につきまして、現在夫婦と子供二人の四人世帯で九十六万三千七百二十七円というところに押えられております。さらに事業をやっております者の所得が六十五万八千三百五十円というところに押えられておりまして、これに対照的なのが、毎年問題になるところでありますが、利子、配当所得、これの最低限が二百八十六万というところでございます。これは明らかに税金の課税の公平性からいきまして、先生方の御尽力でぜひ是正をしていただきたいところであります。現在の物価高その他から申し上げまして、戦前は千二百円、そこから課税対象であったといわれておりますが、その辺から勘案をいたしましても、現在の課税最低限度は勤労者所得、それから事業者所得それぞれ百二十万、百三十万程度にはとりあえず是正をお願いしたいものだと思うわけであります。その反面、利子、配当所得の引き下げを考えられたらよろしいのではないでしょうか、そういうふうに考えます。ここのところは、やはり税金の負担において御配慮をいただきたいところでございます。  いろいろ税の支出について、これから御意見を申し上げるわけでありますが、逆に税収入の増加財源も必要なわけでありまして、その面ではやはり大企業の法人税の引き上げ、累進率の導入というような、そういうことをぜひ御勘案をいただきたい。  それから、租税特別措置の中にも、もはや廃止に踏み切っていいものが多々あるということを、すでにいろいろな公述人の方からお聞き及びと思いますが、私どもも租税特別措置につきましては、全廃すべきであるというふうに考えております。  それから、同じく収入の部では間接税の比重がだんだん強まってくるというような傾向にありまして、直接税と間接税の比率を戦前の比率に近づけるんだということがいわれておりますが、その理由として、先ほど申し上げました所得税についての重税感国民が持っている。したがって、その重税感を緩和するために間接税をふやすほうがいいんだという御主張があるやに承っておりますが、これは、納税者が重税感を持つということは、直接生活の場において密接なるところに税金が十分に使われない、比較的あとでもいいと思われるようなところにたくさんの税金が使われているというところからくる生活実感を通しての不満であるとわれわれは受けとめております。たとえば本年も軍事費についてばく大なお金が予定をされておりますが、軍事費については実質的に計算をいたしますと、一兆四百億円、これは一般会計と国庫債務負担行為、継続経費その他を加算いたしますとそういうふうに勘定ができるわけでありますが、国民生活からくる実感といたしましては、いまやこういう防衛資材を買い求める資金をもう少し生活の場に持ち返ってもらえないだろうかという声は実に多いわけでありまして、たとえば消防の人員配置その他から考えましても、自衛隊を強化するなら消防隊を強化してほしいという感覚はやはり尊重をしていただかなければならないところだと思うわけであります。そういうところを十分に御勘案をいただきまして、いわゆる重税だという感覚を、実際の生活繁栄の中で税金を使う、筋を通していく、納得をさせていく、そういう政策をぜひお取り上げいただくならば、必ずしも間接税のほうで隠れた税金として税収をはかるというような処置は不要なのではないかと考えておるわけであります。  それから、特に物品税の関係で申し上げますれば、きわ立って間接税の高さを示すものとしてガソリン軽油税、これは道路の目的税にされておるわけでありますけれども、ガソリン軽油税の重税感は何とも説明のしようのない状態になっているといって差しつかえないと思います。再三再四にわたる税率の引き上げが繰り返されておるわけでありますが、その根源をもう少しく慎重に御検討いただいていけば、このようなことはしなくても済んだのではないだろうかというふうに考えられる要素がございます。たとえば道路の建設計画にいたしましても、二十九年の当初に立てられました第一次五カ年計画は二千億円でありました。次いで三十二年に立てられました第二次建設計画では一兆円に膨張をいたしました。三十六年の第三次におきましては二兆一千億円、三十九年の第四次では四兆一千億円、四十二年の第五次では七兆三千億円というふうに、いわゆる目的税の自然増収をはるかに上回って補い切れないような道路建設計画が設定をされてきておるわけでありまして、これを埋めるためには、有料道路その他の財源ももちろん使うわけでありますけれども、一番の根幹をなす七〇%以上の財源の負担を持っておりますこの間接税、物品税の引き上げ以外にはなかったわけであります。最近特にガソリンの問題をめぐりまして、国際的にも問題になり、さらにこれが値上げの要素としてうわさされております現時点において、思い切った財政的な御処置をこの際こそとるべきではないだろうか。いわゆる第五次の計画を、計画年度を繰り延べましてもそういう財源を生み出してくるような行政をぜひ考えていただきたいものだと思っておるわけであります。  間接税の問題で、物品税の問題で申し上げますならば、そのほかにも砂糖消費税というようなものは全廃してしかるべきものとして私どもは考えるわけでありますが、ぜひ御検討いただきたいと思います。  それから、特にもう一つは、野菜の値上がりが非常に問題になっておりますおりからでもありまするので、輸入をいたします農産物に対する関税の引き下げというようなことをぜひお考えいただいて、いまの物価高騰につきまして鎮静の役割りを果し得るようにぜひお願いをしたいところであります。関税だけ下げればそれで済むものではございませんで、先般来問題になっておりますように、それに伴う輸入業者の割り当ての問題、それから民間にもそういうワクを割り当てて、公正な競争原理を導入するような、別な視野からの補助作業は当然必要なわけでありますけれども、そういうことをからめて国会の場で御尽力をいただいたら幸いだと思うわけでございます。  私どもは、税金の支出を検討するにあたりまして、憲法第二十五条に示します国民の権利、国の責務という点からこれを検討させていただいてまいりました。したがいまして、国民の生存権を守るための国の責務があるとするならば、国民が健康に生活できるような状態をぜひ御尽力をいただかなければならないと考えておるわけでございます。  特に、最近の食料品をめぐる有害性の問題につきましては、おもに食品添加物をめぐりましても国民は多大な不安を持っておりまして、何を食べたらいいのかという質問は、私どもが地方を回りましても絶えることがございません。また反面、あまり気にしていたら食べるものがなくなってしまうからいまのものでがまんするといって、現状に無理にがまんをしている国民層というものも決して少ない数ではございません。中には、御自分だけは自然食と称するような食品を買いあさって、かなりな支出を負担しながらも、身の安全をはかろうと努力されている国民層もあるわけでありまして、これらの問題は、食品が本来安全であるという原則に立ち返りますならば、取り除ける不安であるはずであります。昨年問題になりましたように、きのうまで安全だといわれてきた食品添加物が、外国で有害説が出ますると、一夜にして有害物質に早変わりをしてくる。これは産業界の混乱もさることながら、消費者の食品の行政に対する不信感を伴う問題でありまして、したがって、現在使われております食品添加物についての再検討も、消費者保護基本法の論議を通じて、またはその他の国会の論議を通じて再三政府がお約束になっているはずのものであります。しかし、その約束は、消費者保護基本法以来あまりさしたる前進を認めることができないということは、国の行政に対する信頼感を失わせるものでありますし、ひいては国会の論議が意味します権威をも失墜させる危険を私どもは感じておりますので、ぜひそういうことのないように、今回の予算措置等を通じましても十分御吟味をいただいて、より完全なものに近づけていただきたいと思うわけであります。  ここで特に申し上げたいと思いますることは、食品の安全性の検討に対する費用が依然として少な過ぎる。国立機関の設備充実その他だけではなくて、やはり民間の大学の研究施設その他にも施設費、研究費等の補助を与えながら、総体的に国がこれを監督し、一日も早くこの食品添加物その他の安全性の問題については、国民の前に安全なのだということをはっきりと立証していただく措置がきわめて急務であろうと考えます。  さらに、製造過程の監視の問題、でき上がりました食品の監視の問題にあたりまして、すでに法律で検査義務を定められております諸事項について、厚生当局が毎年お示しになります実績は、四分の一を下回るということが相変わらず続いておるわけであります。食品監視の体制はきわめて微弱であり、形式化されてきつつあるということをあえて申し上げなければならないと思うわけであります。ある県におきましては、八カ所食品監視員を配置しなければならないのに、三カ所しか配置できない。あとの五カ所を補うために自動車による巡回でこれを補っている。食品監視の義務は、食品衛生法においても、また国の責務としても、自治体の責務としても、消費者保護基本法を引っぱり出すまでもなくあるわけでありますが、この最低の義務の履行すらができ上がらない状態の中で、国が監視をしておるから心配をするな、国が検査をしているから心配しないで食事をとれと言い得ない状態が出現をしているわけでありまして、ここのところは国民の食べものに関する、最低の生存権にまつわる問題でございますので、優先順位を高くしていただいて、ぜひこれらに対する保障体制を強めていただきたいわけであります。  それから、うそつき商品、欠陥商品、その他いろいろな業界に対する不信感も見のがすことができません。これはほうっておきますと、産業を受け持つ人々と、消費に当面をしておりますわれわれとの間に、必要以上の不信感、対立感が巻き起こることは必然でありまして、こういう状態が起こることは必ずしも好ましいことでないと思うわけであります。したがって、この面におきましても十分なる予算を御配慮いただかなければならない面がございます。  その一つは、あとで出てまいります管理価格、再販価格、その他いわゆる消費者保護基本法の成立期までの論議の中で、附帯決議として衆参両院が決議をくださいましたそれらの事柄の多くを実現をはかるために、最低必要な公正取引委員会の人員強化であり、予算強化であると思います。ここらのところについては、慣例として大体三〇%ぐらいずつしか予算の増を認められない、そういうような不文律があるやに聞いておりますが、公正取引委員会自体が持ちます予算がきわめて少ない、そういう中で三〇%増しを続けている限りにおいては、公正取引委員会が本来の倍になりますのには数年を要するわけでありまして、それらは自然増に基づく支出増、これらの影響を強く受けます関係から、実質的には現状維持が精一ぱいいというところで終わってしまう。ふえても二、三人で、そういう体制が維持できないという実績を残してきておるわけであります。管理価格を担当する者わずかに十名足らずの陣容で、物価に影響ありといわれる管理価格を追及でき得ないでいるわけであり、さらに不当表示の問題につきましては、それぞれの担当係官が一人で大体七つから八つぐらいの事例を担当させられている。それも同じものではなくて、チョコレートあり自動車ありというような関係で担当をしてきている。業界の意向を調べ、さらに実績を調べ、実態を調べ、そういう調査を要する仕事を一人が七つも八つも背負っておった状態の中では、とうていスピード化は望み得べくもありませんし、また、そういう状態の中では、それをいいことにして不当表示商品が出回るというような悪循環が繰り返されてきているわけでありまして、かなり努力にもかかわらず、こういったものがいまだに一掃をされない。一掃どころか、出ている事例の三分の一も手をつけられない状態のままに放置しなければならないわけであります。ここらの、先ほどの食品衛生監視員の予算の問題と、公正取引委員会予算の問題につきましては、きわめてドライに申し上げますならば、五カ年計画ぐらいのめどを立てて、年々倍額の予算保障をしていってやっとではないだろうかというような状態にあります。  先ほどもちょっと触れましたが、国民生活の実感に触れる問題にこそぜひ税金を有効に配分していただきたいし、そういう中で私どもも、国民の、市民の自主的な活動による監視活動が相伴いまして業界の姿勢を正し、お互いの、消費者と業界の間の信頼感を回復することができなければ、やはり業界の正常な発展はあり得ない、長年の経験でそのように私どもは感じまするがゆえに、ぜひとも、一方的に消費者サイドの問題としてではなく、業界の発展をも含めて御考慮をいただきたいところでございます。  それから、物価の問題につきまして少しく触れさせていただきたいと思いますが、物価の問題につきまして、まず主食であるお米だけは、やはり価格の安定を第一に考えていただきたいし、これが十分な用意がないままに物価統制令適用除外というような政策的なものだけを先行されますというと、国民生活に与える影響はやはり大きいということも申し上げておかなければならないと思います。さらに、郵便料金の値上げ、電話、電信料金の値上げ、このところ政府の打ち出します政策は、公共料金の値上げを伴います大きな影響を持つものが非常に目につくわけでありまして、昨年政府が、物価を抑制する、生活を優先する、人間性回復をまず優先させるというふうに言われましたこととは全くうらはらに、逆に逆にと印象づけるような政策が前面に打ち出されてまいっております。  そういうことになりますと、たとえば総体で公共料金が一〇%の値上がりをいたしますれば、物価指数に反映いたしますのは、直接効果と間接効果を含めて三・八%といわれているわけでありまして、政府がこの予算前提において、五・五%の物価上昇に見合うもの、それをこえるものを減税として用意したと言われましても、はたして五・五%で落ちつき得るものかどうかということについては非常なる疑問が出されているところでありますし、そういうような、いま申し上げましたような公共料金の値上げ、これが続行をされるということになりますれば、八%台をこえる可能性すらも出てまいりますわけで、いわゆる減税における有効性は相殺される可能性さえ感じるわけでありまして、ここいらのところにつきましても、やはり国民生活の安定を前面に打ち出されました政府当局及び政治の場に携わられる諸先生方の特段の御配慮をもって、ぜひそういう問題を静めるという方向に御尽力をいただきたいものだと思っているわけであります。  特に郵便料金、電話料金その他のそういう通信関係の値上がりにつきましては、憲法に保障をいたしております言論、出版その他表現の自由の保障の問題にさえ抵触をするのではないかと思われるような、いわゆる実質的にそういうものの制限を受けるという感じさえ抱くような影響を持つわけでございますので、ぜひそういうものを据え置いて、そうしてまず国民生活物価値上がりによる影響を極力阻止する、そういう政策を前面に打ち出していただきたいと思うわけでございます。そういうからみにおきまして、ぜひともそういう予算編成について再度御修正をいただきたいものだというふうに考えてございます。  それから課税問題で一つつけ加えますならば、現在住宅事情その他、私鉄、国鉄、そういう運送機関の値上がり、そういうものを含めましてかなりの支出増が消費者、国民には課せられておるわけでありますが、そういう実態にもかかわらず、通勤費の制限を越えたものについては課税の対象とするということが厳然として行なわれているわけでありまして、これは国の政策がまだ十分に行き渡らないために起こる過渡的な現象であるかもしれませんが、しかし、住宅はさらに遠くに遠くにと移転をし、それだけまた交通費もかさむという実態の中で、通勤に要しまする費用の負担、さらに課税されるというに至りましては、これは批判が出るのが当然であろうかと思うわけでございまして、こういうささいな問題ととらえられるような一つ一つについても、いわゆる市民感情からすれば非常に不合理さを感ずる面が多いわけであります。そういう意味からも、通勤費に対する課税の撤廃については御尽力を特にお願いしたいと思います。  それから教育費の問題につきましても、六・三・三制が原則として打ち出されまして現在進行しておるわけでありますが、現在は、六・三・三の最後の三の部分に当たります高等学校教育につきましては、もはや義務教育と同じくらいに、ぜひそういう教育を受けたいという希望が子弟の間では生まれておる。そういう現実にかんがみまして、国公立と私立との間における経費負担を均等化するような、そういう財政的な補助をぜひ御配慮いただいて、いわゆる国民が教育を高度に受けられるような、そういう国の施策を示していただきたいものだと考えておるわけでございます。国立、公立のそういったものをどんどんふやすということは実質的には大きな支出を伴うわけでありますので、この際は、私立のそうしたところの施設をも、やはり教育の機会均等という意味で活用していただいて、それが国公立並みに利用できるような処置をとられることが、当面必要な処置ではなかろうかと私どもは考えておるわけであります。  それから、公害予算が、一般会計で九百二十三億と示されました。財政投融資で一千七百二億円が出されて、多分に公害予算というものが注目を浴びたわけでございますが、しかし第三次の下水道整備費、一般会計からの六百六十五億、財投からの一千七十七億という、社会費の充実費として従来から組み込まれていたこの実績を引きますと、いわゆる、いうところの公害予算、昨年あれほどの問題になりました公害に対する予算としては、いささか少な過ぎるきらいを禁じ得ません。特に被害者の生活を考えまするときに、被害者に対するこれらの予算の中からの支出は、非常に少ないということがいえるわけでありまして、一例から申し上げますれば、医療の手当てを受けるための通院費、従来は八日以上通院した場合に一人二千円もらえたものが、今回の予算では六日以上通院すれば一人二千円もらえるということに変わった程度でしか上昇していないということは、昨年あれほどに、公害国会といわれるほどの御審議をいただいた結果としては、非常に失望を感じる種目の使い方、充実ぶりであろうかと感ずるわけであります。反面、いわゆる企業公害防止のためにつぎ込むお金が大部分である。そういう予算の配分につきまして、やはりいま現在苦しんでおる被害者、国民に対する国家支出というものをもう少し御配慮いただかなければ、当然な批判として、これは加害者の救済だけに終わっているではないかという批判を免れ得ないのではないでしょうか。そういうところが今回の予算をめぐりまして特に感ぜられますので、御検討をいただきたいと思うわけでございます。  それから、物価関連予算を拝見いたしますると、一般会計における昨年度との比率におきまして、二百三十億円ほど増にはなっておりますが、新たに取り組まれるという趣旨のもとに示されました金額は二十四億程度であります。物価がこれほどの上昇をし続け、どこでとまるのだろうかということで、怨嗟の声が起きている現状の中で、新しく組まれます予算のいわゆる新しい施策、これが非常に期待されておったわけでありまするが、ここにおいても期待はずれの感を禁じ得ません。これは、はたして物価予算といえるのだろうか。名目はつけようでありますから、農地の指導費その他、野菜への転換その他いろいろな費用、農業改造というほうに回るべき費用ではないだろうかと思われる費用も含めての話でありまして、そこから自然増を考えますと、この二百三十億という数字は非常に少な過ぎるのではないだろうかというふうに感ずるわけでございます。  先ほども申し上げましたが、まずは公共料金の引き上げを含む予算措置について、これを極力、せめて現状でとめていただいて、そして公共料金に伴って引き上げてまいります諸物価の問題にメスを入れていただかないと、どうしようもない状態になるのではないだろうか。もうすでに諸物価の高騰は、諸先生方御承知のとおり、予想以上の勢いで進んでおりまするので、そういうことをぜひこの減税予算を組む中で考えていただきたいと思うのであります。  軍事費について、いわゆる防衛予算についていろいろな意見はあるところでありますけれども、いま現在、国民がこれだけ生活苦を訴え、物価高を訴え、そして不安の中におりますときに、昨年来問題になりました管理価格、再販価格、その他のそれらの対策につきましても、先ほど来の公取のところで述べようと思いまして落としましたが、価格につきましても、わずかに飛行機一台そちらに振り向けてもらう程度で倍額の予算設置は可能なわけであります。現在の世界情勢または国内情勢において、飛行機一台どちらにくっつけることが国民にとって妥当な配置なのであろうかということを、イデオロギー抜きでひとつ御勘案をいただきたいものだというふうに思います。  まだそのほかにも、水質のよごれ、上水道の汚染の問題が、国民の健康を脅かすものとして心配をされておりますし、そういった健康への不安、これを取り除くことをまず今次予算から優先していただきたいものだと思います。現在までにそれらの諸原因が原因をして、からだをなおそうとするときに、いわゆる健康保険の負担額が増加しないように、いま御検討をされておると聞きます健康保険料値上げの問題につきましても、ただいま申し上げてまいりましたような、生活優先の予算をぜひとも組み上げていただきたいということを重ねてお願い申し上げまして、私の公述を終わりたいと思います。(拍手)
  32. 坪川信三

    ○坪川委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、中林公述人
  33. 中林貞男

    ○中林公述人 私きょうは、全国消費者団体連絡会の責任者として、予算について意見を述べさせていただきたいと思います。したがって私は、もっぱら消費者運動をやっている立場からこの四十六年度の予算を見てみたい、そうしまして、最初にひとつ諸先生方にぜひお聞きいただきたいと思いますことは、私、仕事の関係で最近いろいろな婦人団体の集まりに引っぱり出されるわけであります。そういう中でどちらかと申しますと保守的な婦人団体、私、県の教育委員会の主催する婦人の講習会などにも引っぱり出されたりするわけでございますけれども、どちらかと申しますと労働組合やイデオロギーがかった婦人団体、といったら語弊がありますが、そういう婦人団体よりも、むしろ保守的な婦人団体の集まりに出ました場合に、奥さま方から非常にラジカルなお訴えを実は聞くわけでございます。そういう場合の奥さま方は、主人は、社会的な地位や職場の関係でやむなくいろいろなことをやっているでしょう。しかし、それは主人が立場上やむなくやっているんだから、ひとつぜひ大目に見てやってもらいたい。しかし、主人の健康や子供の健康を守っている責任者は私たちなんです。私たちは、夫や子供の健康のことを考えると、毎日心配でしかたありません。主人から預けられる給料でやりくりしなくちゃならないし、買いものに行くたびごとに、この野菜の中に、この食品の中に、有害な添加物が入っていないか、農薬が入っていないか、一つ一つの買いものについて胸を痛まされるのです。争ういうことを毎日私たちは考えているのです。どうしてこれを昔のように直すことができないのですか、そのことを非常にむなしく思うということを、私は奥さまたちから訴えられて、むしろ中林さんはどういう立場で消費者運動をやっているのですかということを、非常に切実に、いま私が申し上げるような言い方よりももっと非常になまの形で奥さまたちから追及されて、私はむしろ突き上げられてびっくりして帰ってくるというようなのが、実は最近の事情であります。私はこのことをぜひ党派を離れて諸先生方にお考えをいただきたい。  現在、この物価とか有害食品の問題については、家庭の主婦たちは非常に心を痛めている。これは、ほとんどの主婦たちはそうであろうというふうに私は思います。私はそういう立場から——私は予算につきましていろいろな意見を持っております。しかし、私はそういう中から、きょうはもっぱら物価の問題に焦点をしぼって意見を述べさせていただきたいというふうに思っております。  実は私、全国消費者団体連絡会の責任者をいたしておりますけれども、所属は日本生活協同組合連合会の役員をいたしております。それで、日本生活協同組合連合会では、ここ十年ばかり、全国の生協の奥さまたちに家計簿をつけなさいという、家計簿をつける運動を積極的にやっております。ことしも、日本銀行の家計簿を九千部余り全国の奥さんたちに私らはお世話をいたしました。毎年九千部あっせんしても、その中でどれだけ家計簿をきちんとつけていただけるかどうかということには、まだいろいろな不安があります。しかし、家計簿をつけることは、消費者として現在一番大事だという立場から、私らは家計簿の記帳をすすめていて、その中で特に五百人ばかりの奥さま方には、いろいろな集計で協力をしていただくために、特別に正確に記帳をしなさいという指導を各組合でやらせております。そういう中から、毎年二へん四月と十月に、御主人が四十歳代の家庭の家計簿を集めております。これも十年近くになりますが、四十歳代で、お子さまを二人持っていらっしゃる家庭ということでしぼって集計しますので、大体数からいうと百五十足らずということに、いつもなるわけであります。  それで、昨年の十月と一昨年の十月の家計簿の集計を最近私たちは整理をいたしました。それによりますと、政府では、四十五年度の消費者物価は残念だけれども七・七%になってしまった、しかし四十六年度は何とか五・五%で押えたいということをいっておいでになります。ところが、私たちが集計しました家計簿の調査によりますと、消費支出は一七%上がっております。七・七%どころか、実際の家計簿を通じて見ますと、家計におけるところの消費支出は、一年間に一七%多くなっております。そうしまして、その中でこの一年間に一番値上がりの激しかったのは野菜とくだものでございます。野菜は四〇%上がっております。それからくだものが四一%上がっております。そうしまして、消費者米価は一応据え置かれているわけでございますけれども、お米に対する支出がやはり二〇%多くなっております。それから魚介類が二六%、それから肉類が二四%、それからおやつのお菓子が二九%、それからお酒が一五・三%というぐあいに、実際の家計簿を通じて見ますと、一年間でそういうふうに物価は家計に大きくはね返っております。  そうしまして、四十歳代で子供を二人持っておいでになる家庭の家計簿を見ますと、現在御主人の収入だけでは家計をやれない家庭がだんだんふえております。そうしまして、主婦の内職による収入が毎年ふえております。四十四年十月と四十五年十月とを比較しますと、主婦の内職の収入が四〇%ふえております。主婦は、内職をやって夫の収入の足らないところを補っているわけでございますが、しかしながら、主婦の小づかいがどうなっているかということを見ますと、四十四年十月は一カ月に千八百二十四円だったのが、昨年の四十五年十月の集計では千二百四十六円と、むしろ主婦の小づかいはダウンしているというのが、これは最近の実際の家庭における物価上昇の反映であります。  それで、私は婦人団体の会合に出まして物価の問題について切実な訴えを聞くわけですが、主婦たちの物価に対する悩みというものは非常にきびしくなってきている、深刻になってきているということは、私が地方へ出かけて聞くばかりでなくて、この私たちの全国で集計しました家計簿の集計からしても、そのことははっきりしているというふうに私は思うわけでございます。そういう点から、政府でも現在、物価の問題は公害の問題とともに最も重要だということをいっておいでになりますが、私は、ほんとうに消費者物価上昇ということは、現在の日本において真剣に考えなければならないという時点になっているということを深く考えるわけであります。そういう点から、諸先生方に、予算の御審議の中でもほんとうに物価をどうして押えるのだということをひとつ御検討をいただきたいというぐあいに心から思う次第でございます。  そういう点から、昨年予算編成にあたって、政府が公共料金の一年間ストップということをおきめになったときに、私はほんとうに心から、一年間公共料金のストップをして、その間に物価対策というものを徹底的にやっていただきたいというふうに思いました。ところが、先ほどの岩田公述人からもありましたが、その後の経過を見ますと、予算委員会における大臣の予算に関する御説明の中にも、郵便料金、電話料、一部やむを得ずかくかくだということがありますけれども、私は何としても、やはり政府物価を本気で押えるためには、公共料金については、いろいろありましょうけれども、蛮勇をぜひふるっていただきたいということを切に感ずるわけでございます。そうして現在物価の問題で、物価を押えるためにほんとうに考えなくちゃならないのは、私は、政府が許認権を持っておいでになる、あるいは地方自治体の持っている、そういう広範な公共料金についてはっきりとした態度で押えるということをぜひやっていただきたいということを強く先生方にお願いをいたすわけであります。  それからその次は、最近いろいろ問題になっておりますところの管理価格の問題でございます。この今日の物価上昇あるいは下方硬直といわれる中には、私は管理価格の問題が非常な大きなウエートを占めていると思います。もちろん公正取引委員会でもこの問題と取り組んでおいでになります。私も公正取引委員会の独禁懇談会に消費者代表で実は出ているわけでございますけれども、この管理価格にほんとうにメスを入れることが、今日の物価政策上一番必要な問題だというふうに思っております。  それで、私たち、皆さんも御承知のように、カラーテレビの買い控え運動というのを消費者五団体でやりました。私たちの生協の婦人部も、その五団体の一つとしてカラーテレビの買い控えに積極的に参加をいたしたわけであります。そうしまして、カラーテレビの買い控え運動は非常な世論の支持を得て、非常な浸透をいたしました。そして一定の成果があったというふうに評価をされております。しかし、私は甘く評価をしてはならないというふうに思っております。と申しますのは、御婦人の方たちが一番はっきりしてもらいたいというのは、蔵出し価格なんです。蔵出し価格を明示してもらいたいということが、各婦人団体並びに下部の主婦の方たちや消費者の切な願いです。しかしながら、家電業界の団体と折衝したりあるいはメーカーと折衝したりしても、蔵出し価格は企業の機密だということで明示されません。そうしますと、一体ほんとうにどういうふうに——一五%から二〇%の値引きということがいわれたり、新聞にも発表され、私たちのほうへも各メーカーからそういうふうに言ってまいっております。しかしながら、この一五%なり二〇%を引いても、いままでの実際の売り値というのは三〇%から四〇%現金正価から値引きをして売られ、消費者は買っておったわけであります。それで、一五%なり二〇%引いた値段を標準価格としてそれを設定して新しく売り出しているわけでありますけれども、それを実際に買う段になったら、消費者は一体幾らで買えるのか。そこで五%や一〇%を値引きしても、いままで三〇%も四〇%も値引きして買っておったんだから、へたをすると、いままでとあまり違わない結果になるのじゃないかというような問題が出てまいるし、また場合によったら、新しい管理価格というものがそういう形で生まれるのではないかということを消費者はみんな心配をいたしております。  それでどうしても私はその蔵出し価格——これはカラーテレビばかりではありません、最近いろいろな大きな業界で管理価格というものが形成されているのだけれども、それに徹底的なメスを入れる必要がある。それには現在の公正取引委員会がその機能を持っているかといえば、やはり現在の公正取引委員会はまだそこの立ち入り検査をして経理内容を調べるとか——企業の機密あるいは、技術上の関係なりいろいろなことで、一般に企業立場でもしも公開できないようなことがあれば、せめて公正取引委員会はそれを明らかにすることができるというくらいの権限を公正取引委員会に持たせなければ、管理価格にメスを入れていくことはできないのではないか。それですから、管理価格に徹底的にメスを入れていくためには、現在の公正取引委員会の機能というものに企業の立ち入り検査——この問題は管理価格ばかりではありません。これも管理価格の一種でありますけれども、再販売価格維持契約というものがあります。再販売価格維持契約というのが物価の硬直ということにやはり大きな役割りをなしております。しかし、独禁法二十何条かで、あれは昭和二十八年だったか九年だったか、独禁法の改正で再販売価格維持契約というものが独禁法の適用除外となって認められたわけでありますけれども、あの当時と現在とは経済界の事情、企業の実態というものも非常に変わってきております。それで、物価問題にメスを入れていくという立場では、管理価格とそれから再販価格というものは原則的にはなくしてしまうべきだというふうに消費者の立場では考えております。  化粧品などを見てみますと、内容よりも、容器とか包装とかというものがだんだんデラックスになって、そして中身のクリームだとかいろいろなものはどうかといえば、中身はほとんど変わっていない。そして値段の安い化粧品と高い化粧品ということになりますと、わずかな香料とあとは容器とか包装とか、そういうものがデラックスになって値段が高くなっておる。そしてそれが再販価格の適用を受けている。そうしてそういう形の中で化粧品なりお薬というものはずっと値段が上がっていっている、つり上げられている。そうして宣伝費だけが膨大に使われているというのが実態で、最近の新聞の広告などでも、化粧品とか薬品の広告がいかに大きなウエートを占めているかというようことを考えました場合に、管理価格、再販価格、このあたりに徹底的にメスを入れるということが、今日の物価対策としてほんとうに先生方にお考えを願わなければならない点だ。そうして管理価格はいまやすべての業界に及んでいるというのが現状だろうというふうに私は考えるわけであります。  それで、物価の問題を調べてまいりますと、公共料金、それから一般の大企業を中心とするところの管理価格にメスを入れるということ、それからもう一つは、やはり生鮮食料品などを中心とする流通機構に対して徹底的なメスを入れる必要があるというふうに私は考えるわけであります。そうして現在の生鮮食料品の流通というのは、中央市場というものがその中心になっております。そうして最近でも新聞がしょっちゅう野菜がこうだ、タマネギがこうだと、いろんなことを書いております。それからまた魚はこうだというふうに書かれております。そして農林省——新聞も書いておりますけれども、野菜は天候の関係だというような、自然的な原因で野菜が値上がりをするのだ、あるいは供給不足だというような形がよくいわれております。しかしながら、そういう自然的な現象によって野菜や魚の値段が上がっているのかといえば、もちろん生鮮食料品にはそういうような条件もあります。しかしながら、そういうことばかりではなくて、現在の制度に大きな原因があるというぐあいに私らは考えております。  それで、いろいろ中央市場法の改正というような問題も、もちろん先生方によって審議がされているわけでありますけれども現在の日本の市場、中央市場というものがどうなっているのか。五、六年前に、私ら生活協同組合の代表と農業協同組合、漁業協同組合の代表でヨーロッパに行きましたときに、西ドイツのボンの中央市場を見学しました。私、そのとき行った連中からの報告で聞きましたが、ボンの市場では、一般の私企業の取引と、それから並行して、生活協同組合と農業協同組合なり漁業協同組合の直接取引、対面取引というものが、二本立てで市場機構の中で認められている。そしてフェアな競争が市場の中でなされるようになっているということでございます。ヨーロッパの市場は大体そういう形になっているわけでございますけれども日本の市場機構はそういうふうにはなっておりません。そうして大きな水産会社あるいは青果会社というものが中心になって、そこでせりが行なわれて、いろんな価格操作がなされている。そして特に最近は流通機構の近代化という中で、野菜であれば低温倉庫あるいは魚の冷凍庫あるいはコールドチェーン——このこと自体は私らもいいことだというふうに思いますけれども、そういうような施設なり設備——今度の予算の中でも、いわゆる生鮮食料品の価格安定対策としていろいろそういう予算が組まれております。私はそういうことを考えることは、なまものでございますから必要だと思います。しかし、それが、価格の安いときには低温倉庫の中へ野菜は入っている、魚は入っている、そうして値段が高くなった場合に出てくるというような操作が、そういう中においてなされている。そこに私は野菜とか魚の値段が、産地では、漁港ではたくさんとれても、東京とか大阪とかの都市で大衆の口に入るときにはうんと高くなっている、あるいは野菜が農村で百姓から買われるときには安く買いたたかれるけれども、都会に来た場合において非常に高くなっている。そういうような価格の操作というものがなされている。そういうところに今日の流通機構における大きな問題がある。私はそういう点ではぜひ中央市場の中で生産者と消費者が——消費者の団体といいますと、結局生活協同組合ということになりますけれども、生産者と消費者が、ヨーロッパの市場のように、話し合いでフェアな競争をして取引ができるようにぜひしていただきたい。  しかしながら、私も政府の方たちにそういうことを言いますと、日本の市場は古い因縁がたくさんあってなかなか簡単にはいかないのだ、それだからバイパス方式でいかざるを得ないのだという形で、バイパス方式ということがいまいわれております。あるいは消費者と生産者の直結ということがいわれております。しかしながら、生産地と消費地の直結ということが月に二回とか三回あるいは一週間に一回程度でしたら、別に問題はなくそれは行なわれる場合があるわけです。しかしながら、恒常的に一定の量を生産地と消費地と直結しようとしても、これは実際問題として市場側からクレームがついてなかなかできないというのが現状でございます。たとえば東京でバイパス方式のテストとして農協の全販連が戸田橋で青果物の配送センターをつくっております。これが一つのテストとなっていて、私たち生協やあるいはスーパーの首都圏のものは、戸田橋の配送センターを利用するようにバイパス路線に協力する意味でしております。しかしながら、戸田橋の配送センターにおける野菜の値段というものはどうなっているかといえば、東京における四大青果市場の築地と神田と千住と淀橋の四つの青果市場の売り値の平均値の仲値で、それ以下ではひとつ取引をしないようにという行政指導が実はなされているわけであります。したがって、バイパス路線をしいても、野菜の値段は下がらない。そしてまた、生産者側の農協でも、中央市場が現在のような形の場合には、消費者と恒常的に直結した場合においては、おまえのところの野菜は市場では扱わないよというような形で牽制をされる。それだからなかなかむずかしいんだというのが、実は私らの楽屋裏の話になるわけです。  そういうところに野菜とか魚の値段がやはり安くならない。そうして低温倉庫だとかあるいは冷凍庫だとかコールドチェーンというようなものが実は介在をしているということになっているわけであります。同じようなことが、最近野菜が高いから、くだものが高いからということで、緊急輸入の措置がとられますけれども、緊急輸入をやってもなかなか効果があらわれないというのは——時間もあれですから詳しく言うのはやめまして、やはりそういう流通機構におけるいろいろな問題が現実にあるということを、私はぜひ申し上げておきたい。それですから、せっかく政府国会で御検討になっておやりになる低温倉庫とかそういう流通機構の近代化のものが、いわゆる生産者とか一部の業界の高値安定のものに使われて、消費者の安定のために、消費価格の安定、野菜とか魚の値段を下げるというもののために使われていない。そのあたりを私はぜひ先生方に御検討をいただきたい。  そういう立場から、現在の予算の中でも、政府でも生活優先とかあるいは消費者云々ということをいわれますけれども予算編成というような中を見ますと、そういう点では各分野に非常な問題を持っているということでございます。そうして、三、四年前の国会で消費者保護基本法が通りますときに、附帯決議として満場一致で、消費者に関するいろいろな法律なり政令は一度洗い直してみるということが付帯条件になっているわけでありますけれども、全然それが進んでいない。そうして、いろいろ言われるけれども、やはりメーカーあるいは業者という立場で問題が見られている。  そういう点では、私は、諸先生方は法律とか、国会で御論議をいろいろなさいますけれども国会の論議を受けたあとの政令だとか、いろいろな行政指導ということでなされるところに、私はむしろ今日非常な大きな問題を持っている。中山伊知郎さんの物価政策懇談会でもいろんな提言がなされております。しかし、その提言が実際に実行されるのかといえば、実行されていないことがほとんどだと私は言っても差しつかえない。そういうようなことで、ぜひ先生方には、私は法律なり国会における審議ばかりじゃなくて、それがどのように実施されているのか、それは具体的な場合にどうなっているのかというところまで、むしろ先生方に追跡調査といったら非常に申しわけないのですけれども国会で法律が消費者の立場でどのようにやられているのかということを、私はぜひひとつ御検討をいただきたいというふうに考えるわけであります。総理も、独禁法の改正、独禁法の強化ということも言っておいでになりますけれども、管理価格の問題なり、そういう問題について、ほんとうに消費者の立場に立っての御検討をいただきたい。  それで、私らもかつて経企庁の総理の諮問機関である国民生活審議会で、消費者優先生言われるなら、消費者委員会のようなものを、一定の行政権を持った——私は役人の数だけふやすことは反対でございます。しかしながら、簡素な、スウェーデンとか、ノルウエーにありますような消費者委員会のようなものを持って、そうして現在の行政全体を消費者の立場からチェックできるような、一定の行政権を持った消費者委員会のようなものをぜひ——私らは国民生活審議会ではそういう答申を総理にしたこともあるのですが、それはそのままに実はなっておりますし、その当時前後して行政簡素化の五人委員会で、佐藤さんが委員長をしておいでになりましたあの五人委員会でも、蝋山委員は同じような形の答申を蝋山委員の案としてなされているわけでありますけれども、消費者優先という立場に立つ場合においては、私は現在の行政機構の中でぜひそういう消費者の立場に立っての行政、現在の——私はお役所の方を一人一人悪口を言う意味において申し上げるわけではないのですけれども、農林省にしても通産省にしても、あるいは厚生省の薬品行政にしても、いろんな長年の経過の中で、やはりすっきり消費者優先という立場に立っているのかどうかということになりますと、消費者はかわいそうな立場にあるから、消費者のこともひとつ考えてやらなくちゃいかぬわいという立場でしか、消費者の問題は見られない。     〔坪川委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、ほんとうにこの際消費者の立場に立って私は政治なり経済の問題を見ていく、そういう点ではヨーロッパの運動は——私らがやっています生活協同組合の運動が日本において非常に弱くてだらしないということに、自縄自縛になるかもわかりませんけれども、ヨーロッパの生活協同組合は食料品から日用品について全部自分たちで工場を持ってつくっておりますし、それから流通段階では、先ほどドイツのボンの例を引きましたが、やはり流通段階でも具体的な発言権を持っている。私は、ぜひ消費者が、そういう生産なり流通の段階でも、一般の業界なりと同じような一つの対等の立場をもって発言ができるようにすべきで、消費者の発言の場が日本に全然ない。ただ反対、反対ということを消費者は言っているだけであって、これはヨーロッパの各国の例のように、流通段階なり、生産なり、物価形成に消費者が具体的な役割りを果たせるように私はぜひしていただきたい。  それで、今度の予算を見ましても、消費者行政という立場でいろいろなことを考えられているわけでありますけれども、私はその中を見ますと、何億という金をかけて何とかセンターの建物をつくるとか、あるいは何とか婦人会館とか、いろいろな会館だとか、そういうものよりも、もっとじみちに消費者の立場に立ってのものの考え方なり、行政ということをぜひお考えいただきたいと思いますし、やはり必要なところに必要な人を配置する。たとえば、自由化の中で非常に輸入食料品が多くなってまいりました。しかしながら、十一の港でたくさん入ってくる輸入食料品を検査している検査員は現在全体で二十名、そうして今度の予算では二人しかふえていない。十一の港へ自由化して食料品がどんどん入ってくるのに、それの検査をする役人が今度二人ふえて二十二人だ。消費者の立場に立ってのそういう人員配置なり、そういう点でも私は予算の面でもっと御検討をいただきたいというふうに考えるわけであります。  時間がなくなりましたので、物価の問題でもっと申し上げたいわけでございますけれども、最後に、私は消費者米価を物統令からはずすというこの点につきましては、私はぜひひとつ予算の審議の中で、これは予算には関係のない問題でございますけれども、ここで物統令をはずしたら消費者米価は上がるだろうということはほとんどの方が言っておいでになります。国民の主食である消費米価がいま物価問題のやかましいときに上がるような施策、そうして私は特に消費者米価が投機の対象になるような、一部の商社の利潤の対象になるようなことは絶対に日本においてすべきではない。それで物統令の適用をはずしたら消費者米価は上がるだろうということがいわれておりますが、そういう中で、現在すでに物統令はなくなって、国民の半分以上はやみ米を食べているのだ、それだけだけじゃないかと、そういう悪いことが行なわれているのを、それを実績でオーソライズするような政治というものが、特に主食の問題でそういうことが行なわれたら、やはり国民のモラルの点からいっても、私は非常に重大な問題だ。それで、これは物価立場からも、消費者米価を物統令からはずすということについては、ぜひ先生方にひとつ審議の中で御検討をいただきたい。  それで最後にお願いでございますけれども、現在のこの予算というのは、消費者の立場から物価の問題だけをとらえてみましても、私は多くの問題を持っているというふうに考えますので、ひとつ先生方にぜひ御検討いただきたい。もちろん、そのほかに健康保険の問題とか、いろいろな問題、消費者の立場から私いろいろな話を主婦や一般の消費者の方たちから聞いておりますけれども、私はきょうは物価の問題だけから申し上げましたが、ぜひもう一度この予算というものを審議の中で先生方によって再検討をお願いしたいということを申し上げまして、私の公述を終わらしていただきます。  どうも失礼しました。(拍手)
  34. 中野四郎

    中野委員長 ありがとうございました。     —————————————
  35. 中野四郎

    中野委員長 これより両公述人に対する質疑に入りますが、恐縮ですが、時間の制限はしませんけれども質疑応答ともに簡潔にひとつお願い申し上げたい。辻原弘市君。
  36. 辻原弘市

    ○辻原委員 岩田さんと中林さんからいろいろ消費者運動、それから当面している物価の問題について具体的に承りまして、ありがとうございました。  私は、いま委員長からもお話がありましたように、時間がございませんから、お二人とも消費者運動という点についてのベテランでございますから、二つの問題についてだけ承っておきたいと思います。  一つは、物価の中で、お話のありました管理価格に対してどうすればメスが入るかということについてであります。けさほどの東洋大学の御園生さんのお考えによりますると、国会みずからがその調査をして消費者に公表する、国民に公表するというような制度、これをお述べになっておりました。先刻これは岩田さんからもお話がありましたし、中林さんからいわゆる公正取引委員会の機能に立ち入り権を持たしてはどうか、こういうお話がありました。われわれもこの点についてはもう数年来いろいろな案を考えてきたわけでありますが、いまに至ってもどうすればほんとうに効果があるかという点についての意見かなり分かれております。私の考えによりますると、公正取引委員会にその全部の機能を持たせてはたして期待どおりの実効があがるかどうかについては若干の」疑問があります。やはり物価のメカニズムというものを消費者ベースあるいは第三者ベース、こういうことで徹底的に追及していくためには何か独立をした機関が必要なのではないか。たとえばいわゆる独占価格に対する何がしの管理委員会とか、それを行政委員会にするか、あるいは人事院的な第三者機関のそういう勧告権を持った機関にするか、どちらがいいのかというようなことをいろいろ今日具体的に探求しておる最中でありますが、それについてひとつどちらでもけっこうでございますから、もう一度お考えを現状に照らしてお述べをいただきたいと思います。
  37. 中林貞男

    ○中林公述人 いまの辻原先生の御質問ですが、私やはりこれには国会が一定の何かを持つことが必要じゃないかというふうに思います。しかし国会が常時開かれているものでもありませんので、恒常的には公正取引委員会にそういう権限を持たせる。それからこのたびも、行政的なことはあれなんでして、先ほど消費者委員会ということを私は申し上げました。これはなくなりました大原さんも国民生活審議会の会長のときに、大原さんと私話したら、公正取引委員会を消費者委員会のようなものにして、そして一定の行政権を持たせてやったらどうかということを言っておいでになりましたが、私は何らかの行政権を持った——現在の公取だけでは不十分である、しかしそういうことと、もう一つ大事なのは、私ちょっと言い落としましたが、消費者運動を育てる、世論の力、今度もカラーテレビの問題で、最初家電業界なり松下電器はがんとして応じませんでした。しかし消費者運動が拡大して、カラーテレビの買い控え運動が拡大していく中で家電業界、松下の態度がすっかり変わってまいりました。そのことは通産省についても最初の態度と終わりの態度は全然変わってきた。それですから、国会なりあるいは公正取引委員会なりあるいは行政委員会を何か先生方にお考えいただきたいということと同時に、やはり消費者運動というものが非常に大事だ、私は物価対策としては消費者運動を先生方にきらっていただかずに、自主的な消費者運動というものを大事に育てる、現在消費者はむしろ飼いならされているといっても私はいいと思いますので、そうではなくて、やはり消費者は消費者としての権利を堂々と主張するような形で消費者運動というものを大事に育てる必要がある。管理価格対策でもそれがなければ前進をしないのじゃないかというふうに私は思っております。
  38. 辻原弘市

    ○辻原委員 お話のように私も今度のカラーテレビのあの結末を見ても、その結果先ほど中林さんお述べになりましたように一五%だか二〇%だかの値引き、はたしてこれが成功というのにはいささか即断されぬ面がありますが、とはいたしましても、あれだけ土俵の中に引き込んできたということは消費者運動の成果であったと私も考えております。ですからそれを前提にしていまの監視機構、確かにわれわれもこれはかなり前になりますが、せめて内閣に直属する行政機関がないといかぬのじゃないか、こういう意見で法案化をしたこともございました。いずれにいたしましてもそういうかなり権限を持ったもので、それからもう一つこれは先ほでも触れられてありましたが、いろいろなものをつくりましても、何といいますか、ただ上つらをなでて走るのでは問題にならぬ。そこで一番必要なことは、これは企業の秘密あるいはある場合には企業の運命を左右する問題にもなりますからなかなら容易なことではないと思いますけれども、諸外国のいろいろ管理価格に取り組んできた例等を見ますると、やはり問題は原価にメスが入って初めて成功している。こういうことからいいますれば、やはりそれらの行政機関なりあるいは監視機関というものが原価に触れていくという点がないと問題にならぬのじゃないか、こういうこともやはり一番のポイントとして私どもは考えておるわけです。これはもちろんお話しになりましたので、われわれもこれはほんとうに消費者の立場という面から何がしの法改正なり立法措置、こういうものについてぜひくふうをこらしてまいりたいと思いますけれども、やはりその背景となるべきものは消費者運動だと思います。そういった点で今後もひとついろいろと御協力を、願いたいと思うのであります。  それから第二にお尋ねをしたいのは、お二方とも消費者運動と同時に生協活動の育ての親でいらっしゃいますから、特に私承っておきたいのでありますが、ことしの初めでありましたが、厚生省が最近の消費者運動の一環として生協を重視する、こういうことから生協についての育成策を東京新聞でしたかに具体的に発表をいたしておりました。中身を読んでみますとそう目新しいものはないのであります。せんだって私がここで総理に対してもこの問題をいまの野菜の問題と関連をして質問をいたしましたときに、ぜひ育成したい、こういうことなんです。  そこでわれわれも暗中模索するのは、いま全国的にかなり活発になってきましたけれども日本の生協運動というのは職域生協はかなりのところにいっておりますけれども、地域生協はあまりにもアンバランス過ぎる、こう言っては失礼でありますけれども、そういう感じがいたします。諸外国を見ますると小売りシェアの最高二〇%のところもあり、先進諸国では平均して一〇%ぐらい、わが国では地域それから職域を入れて一%内外という域からあまり伸展していないようにここ数年見受けられます。幸いにそういうことでいまの消費者運動の一環として国も世間もあらためてこの生協の果たす一つ役割りというものについて再認識をしてきておるのでありますから、ここらで一ぺんわが国の生協をもう少しいわゆる消費者連動として役立たせるためにどういった点を改正をしていけばいいのか、あるいはどういった点にスタイルを変えていけばいいのか、そういう点についてこの際たぶん御意見をお持ちだろうと思いますから、ひとつ承りたいと思います。
  39. 中林貞男

    ○中林公述人 これは私たちがあれでございますので、お答えしたいと思うのです。私も先ほど言いましたが、日本の生協運動はまだあまりにも弱くて、物価の問題とか何かにお役に立っていないということを私らは残念に思っております。それで何とか——私はヨーロッパのようなあまり過大なあれを持ちませんけれども、やはり物価の問題で何らかの役割りを果たせるんじゃないか。特に地域の生協をそういうふうに育成したいと私らは思っております。ところがいま辻原先生のお尋ねで、やはり現在生活協同組合は員外利用を法律で全面的に禁止されているのです。それで私、いつだったか、もう十年ほど前になりますか、国会で各党の先生方一人一人に、先生、生活協同組合にお入りになるときに、生活協同組合で品物を買ってみて、いいか悪いかためしてみてからお入りになりますか、最初に入れと言ったら、そうかと言って出資金をお出しになるかということを聞きましたら、一人残らず、君、いいものとも悪いものともわからぬのに出資金を出すばかいるか。それは君、一月や二月何回か買いものをして見てからでないと入らないよということを、一人残らずの先生方がそうおっしゃったんです。ところが、生活協同組合は経済団体であるにかかわらず、員外利用はまかりならぬというふうに法律でぴったりと規制されているわけであります。そこに私たちは一番問題がある。それで私たちは、これはウエーティングメンバーという形で組合員の一割なり二割なり一定の——生活協同組合がいいか悪いか利用してみる、よかったら組合員になる。その期間を三カ月なり半年なりという期間を設定する、せめてそういうふうにでもしていただけないかということをしょっちゅうお願いをいたしているわけです。  私らは、運動としては生活協同組合は員外利用はいけないという考えを持っております。これはみんなで消費者が集まって努力をする、出資金を出し合って、また手をよごして努力をする結果、よりよい品物をより安く手に入れることができるので、ただ安易にすわっていていい物をほしいということではだめですから、私らは運動なり指導としては員外利用というものはよくないということを言っているわけでございますが、法律でどんぴしゃりと禁じられるということは私らは非常に困る。  それから経済圏がこのごろのように広くなって、また住宅の場所が、東京から通勤する人が埼玉なり千葉なり神奈川、あるいは阪神においてもそうでございますので、やはり隣接の府県には店舗なり出せるようにぜひしていただきたいというふうに思っております。しかしながら現在は地域生協は知事の認可で県内だけと、それも法律できまっております。  それからまた職域生協、地域生協というふうになっておりまして、最近職域生協では、企業合理化なりいろんな点で人員が減ったりなどをして、やはり社宅なり社宅周辺に出していかないと経営的にも成り立たない。これは職域生協をやっている方たちも事業主の方も、社宅なりあるいは関連企業の労働者が利用できるようにぜひしたいということで、地域を中心にしてしたいというお考えを持っておいでになるのですが、それも職域か地域かということをきちんと定款でしろというふうになっていて、非常ににっちもさっちもいかない。これは職域の方たちからもぜひその制限をはずしてもらいたい、これは外国ではそういう職域生協、地域生協というような区分をいたしておりませんので、そのこともぜひ私は——これは企業側の方たちの間からも強い要望が出ているわけであります。  それで生活協同組合は法律でそういうふうにがっちり縛られているということと、それから融資を受ける道が、今度皆さん方のお骨折りで流通機構近代化資金の中に生活協同組合が、先ほど申しましたような消費者の立場からの配送センターあるいは冷凍庫というものを消費者サイドでつくれるというふうになって、消費者サイドでの仕事と、それから業界のものとがフェアに競争できるように、私らは外国の例からぜひすべきだという考えを持っていたのですが、その点については、今度の予算の中で、開発銀行などの財投の金で消費者団体がそういうものをつくろうとするときに、審査の対象にはする、この点は一歩前進でございます。  それから、これもちょっと私、言うのも恥ずかしいのですが、皆さま方のお骨折りで生活協同組合全体に、これは農業団体なり中小企業団体にいろいろな貸し付け金の制度なりいろいろなものがあるのですが、生活協同組合は、これまで全国の生協に対して貸し付け金が、厚生省に千二百万です。全国で千二百万なんです。千二百万の貸し付け金が、これは十年ほど前にそうなったままで、そして都道府県が同額をそれにプラスしてやる。それですから、全国で二千四百万の貸し付け金というものがあったのですが、これは現在の規模でいきますと、一つの組合でもそれでは足りない額だということでいろいろ運動をしましたら、千三百万が二千万ということに、七百万ふえたということです。これも私は生協育成ということが盛んにいわれている中で、やはり何か前進がないと、いろいろな会合には全国の会員の主婦の人が出てくる中で、政府やいろいろなところで新聞で生協生協と出るけれども、どういう予算措置なり具体的にどうだったんだということがいわれるのですけれども、いつも説明に困ったわけですが、今度は財投の金を生協が借りることができるようになったということと、まあ七百万プラスになったということを言っているわけです。  そのほか許認可の点で、酒とかあるいは薬品にしても、あるいはお米にしても、私は米の取り扱いを全面的に生協に認めなさい——これは私米価審議委員もしていますのでそういう主張もするのですけれども、やはりなかなか米屋さんとの関係があって、生協には認められない。一部古い生協では米を扱っていますけれども、最近の生協はみんな米を扱いたい、私らは消費者の団体とお米屋さんなり業界と、あらゆる面においてフェアな競争をしていく、それで生協でも悪いものは消費者の批判を受けて、つぶれるものがあったらつぶれたらいいんだ、やはり消費者が審判をすればいい、それだから生協も消費者の信頼にこたえるような努力をする、そういう中で、お米はぜひ生協に扱わしてもらいたいということを私ら強く言っているわけでありますけれども、現在許認可の中で、酒でもたばこでも、そういう許認可権が政府にありますものについては、ほとんど対等に認められていないというのが現状でございます。そういう点を、生協はやはり消費者の自主的な運動だから、われわれは苦労してこれを伸ばそうということでやっているわけですけれども、一般の業界なり農業団体の方に認められているもの程度は、私らはぜひ消費者のそういう経済活動にも対等に認めていただきたい。先生方にぜひ、生活協同組合が消費者の経済団体として、現在全く鬼っ子扱いというか、まま子扱いにされている点を、私はただ莫大な予算が云々とか、あったほうがいいのですけれども、運動をやっている立場からはそういうことを言うよりも、われわれは自前で努力しよう、しかし対等なものだけはひとつ先生方の御尽力で何とか認められるようにしていただきたい。そうして、ほんとうに物価対策に役立つように、私たちは地域の生協を育てていきたいというふうに考えているということを申し上げておきたいと思います。
  40. 辻原弘市

    ○辻原委員 あと一点だけお伺いします。  いまのあれで、中林さん、大体お考えの趣旨はわかりましたが、さっきのお話の中で最後に言われた生鮮食料品、なかんづく野菜の産地直結の問題については、やや悲観的な御意見というか、やはり市場法、市場メカニズムの問題があってうまくいかぬというお話がございました。確かにそうだと思うのですが、ただきわめてモデル的にやったいわゆる直結運動というのは、まあまあそれ自体においてはこれは成功しておる。そこで、けさほども私ちょっとラジオかテレビでしたか、横浜の農協がやはり配送センターをつくって伝々という放送がありました。いろいろやっておる実例等調べてみますと、いわゆる主体がないのですね。いわゆる産地直結というが、出すほうは、これは指定生産地の出荷団体ないしは農協、あるいは耕作者から直接と、これははっきりしているのですが、ところが、こっちの受け入れ側は主体がないわけですよ。東京の場合でいえば、都があっせんをしたり、あるいはその団地の何かの機関がそれをあっせんをしたり、横浜でいえば横浜市があっせんをしたりというような形で、いわゆる恒常的に実際それを推進する母体というのがないように私は思うのです。そこで、そういう点から、ひとつ生協さんがもう少しこの点に腰を入れたならば、恒常的にとまではいかないけれども、ある程度やれるのじゃないか、そうしてある程度やって、さっきお話しのように、やはりなかなか入荷に骨が折れる、あるいは向こうの出荷価格がおかしく操作されてくるというふうなことが、そういう経験の中で明瞭になると、これまた一つの大きな消費者運動にもなっていく、したがって、ひとつ実際のあっせん団体というか、実際の荷受け、いわゆる販売団体というものにもう少し——これは地域、職域いずれでも私はけっこうだと思うのですが、事実上大体一番効果のあるのは団地なんですから、そういうところにいま少しくふうをこらされたような方法がとれないものかどうか。そうしてそれがいいということになれば、私は、今後の生協の中で、そういう任務も新しく一つ位置づけられると思うので、こういった点について、これは全国的にというわけにはいきませんが、少なくとも首都圏あたりでは、ひとつ積極的に御検討いただければ、これはたいへんけっこうじゃないか、こう思っておりますので、その点、ひとつ簡単でけっこうですからお答え願いたいと思います。
  41. 中野四郎

    中野委員長 中林公述人。——時間かないからなるべく簡潔にしてください。
  42. 中林貞男

    ○中林公述人 私は、先生のおっしゃったように、やはり消費者の事業主体としては、生協がなるのが一番いいというふうで、団地などでも、大きな店舗を持つとかなんとか、店舗がなくても生活協同組合をつくって、やはりそういう事業の主体になっていくようにしようというふうな考え方でおります。ただ、その際、やはり生協の奥さんたちは、恒常的に来ないと、ときどききたのじゃ困るということを言われるので、先ほど申し上げたようなこと、それで、戸田橋の配送センターを、せっかくあるのだから、私らはそこに集中しよう。しかし、考え方としては、辻原先生のおっしゃったようなことを私らは積極的にやっていこうというふうに考えております。
  43. 辻原弘市

    ○辻原委員 どうもありがとうございました。
  44. 中野四郎

  45. 岡沢完治

    岡沢委員 時間の制約がないけれども、できるだけ簡単にという委員長の御要望でございますので、質問点を最初に列挙させていただきますので、両方の公述人から簡潔にお答えいただければありがたいと思います。きょうの午後は偶然に、先ほど辻原委員もおっしゃいましたが、消費者運動のリーダーあるいは権威者がお集まりでございますので、私もその点にしぼって質問させてもらいます。  具体的に、不良商品あるいはうそつき商品の追放に効果的な方法につきまして、先ほど岩田公述人のほうから若干お触れになりました。つけ加えることがありましたら、岩田公述人からも中林公述人からもお教えいただければありがたいと思います。特に政治的な立場から、あるいは予算措置立場から、どうしたら不良商品、うそつき商品を追放できるかという方法でございます。  それから、中林公述人のほうからはお触れになりませんでしたが、岩田公述人のほうから、物価安定、特に生鮮食料品の安定に関連して、輸入政策、関税の引き下げ等のお話がございました。それについて、流通機構の関係から、中林公述人のほうからは、逆効果の場合もあり得るというような御説明がございました。この点につきまして、両方の公述人から、もしさらにつけ加えて問題点の御指摘がございましたらお教えいただきたいと思うわけでございます。  それから、中林公述人のほうから、消費者運動の盛り上げということについて非常に強調されましたし、実際、われわれ政治の立場からいたしましても、昨年のテレビの買い控え運動等の効果に照らして、政治の無力と申しますか、むしろわれわれの努力不足を非常に反省しているわけでございますが、どうしたら消費者運動をもっと効果的に大きく育てられるかという具体策について、御希望でもございましたら、われわれにお教えをいただきたいと思うわけでございます。  それから、お二人とも先ほど来指摘されておりますように、生協のリーダーでもありますので、いわゆる生協とスーパーと小売り商、この三者の調和といいますか、われわれ自身も、やはり中小企業を守らなければいかぬというような要望もありますし、まあその三者の調和点をどこに見出したらいいのかという点につきましても苦慮いたしておりますが、何か御見解がございましたら御披露いただきたい、以上の点につきまして私の疑問点をただしたいと思います。
  46. 岩田友和

    ○岩田公述人 うそつき商法とか不良商品の出回りにつきまして、たとえばうそつき商法の問題では、昨年暮れ私どもはブリタニカの百科事典の販売方法がうそで一ぱいだということで詐欺で告発をいたしました。そこでも感じたのですが、そういう商法に基づくいわゆる契約書の内容その他については、すでに通産省は前から問題のあることをお気づきであったわけです。しかし、いろいろな仕事が優先をいたしまして、そちらがあとになる。問題が民間側から提起されると、あわ食って——あわ食ってと言ったら悪いのでしょうけれども、先に順序を直されましてやってこられた。いわゆる消費者保護という意味では、やはり気づかれているところを消費者保護のサイドから具体的にそれぞれ担当省で洗い直していただかないとだめなんじゃないか。  それから、いわゆる食品添加物につきましても、予算の関係で、毒性の試験も、急性中毒の試験しかやれない、やらなかったわけです。サルを使い、犬を使うとたいへんな金がかかるということで、慢性中毒とか、一緒に食べた場合相乗毒性とかという問題についてはいまからだ。それも、犬やサルを買うのは非常に高いので、せいぜいウサギぐらいまでしかできないんじゃないかというようなことなんであります。これではやはり国民に対して、国が何によって安全を保障しているのかという説得性が非常に薄いわけであります。それで、やはり民間に対しても、そういう食品添加物その他をつくっているところがあるわけでありますから、そういうところからも、積極的に義務づけて、いかに安全であるかということを立証させるような処置が並行しなければいけないのではないだろうか。それでまた、国のほうもせめて、諸外国ではサルを使っているそうであります。サルまでの試験ぐらいの費用はやはり見てほしいと思うわけであります。  それから、監視体制、先ほど触れましたが、これは何も国の監視体制だけをと言っているわけではないのです。われわれも、民間の監視体制をいま着々と築いておりますし、この夏休みには、初めての計画としては、大学生、高校生の有志を動員して、やはり全国的にそういう監視活動、実態調査をいたしたいと思っておりますし、そういう中からまた問題提起をして、各省の担当の洗い直しのきっかけをつくっていきたいと思っているわけでありますけれども、そういう相互の間の関連で、かなり前進できるものがある、期待できるものがある。しかし根本的に、先ほど中林さんが言われましたが、十一の港で二十人だったのを二十二人、それは数字の上から言いますれば一〇%のアップで、一割も上がったという言い方もありましょうけれども、しかし、基本が小さくて、そして一割上がったんだと言われても、これはまさに数字のテクニックだけの話でありまして、これから自由化してくる向こうからの商品についてどうチェックするのか。また民間民間で、過日ラルフ・ネーダーが来日いたしまして、私どものほうへも来訪されまして、そのときにでき上がっている民間協定としては、向こうの商品リストをチェックしたものについて消費者連盟に渡そう、そのかわり消費者連盟がチェックした日本の品物についてもよこせということで、民間の資料交換を約束いたしましたが、そういうようなことも、民間の監視活動の一つとしてはやはり強めていかなければいけないだろうと思いますが、同時に、一人病気したらもう補充がないみたいな、そういう監視体制の中では、非常に十分な、安全だということはできないのだろうというふうに思うわけであります。  それから、先ほど管理価格の問題を御質問になっておられましたが、基本的には、中林さんが言われたような消費者委員会の構想、そのとおりだと思いますけれども、補完的には、過去からの実績によってずっとグラフをつくってまいりますと、横ばいないしは上昇をして下がらない品物というものが、推定として明確につかめるわけです。これは現在公正取引委員会がやる能力を持っております。おりますが、現在の公正取引委員会は推定証拠に基づく勧告というのは行なわないことになっておる。したがって、証拠主義でありますから、おかしいと思った企業に対してさらに調査を進めて、よほどの証拠、協定の証拠があがらない限り指摘できない。そこにやはり少数の者ではとうていやってのけられない壁があるわけであります。どこの国でありますか、これは具体的には公正取引委員会のほうがはっきり知っておられると思いますが、諸外国では、そういう、実績に基づく推定で下方硬直を明らかに示している業界に対して、やはりおかしいという勧告ができるようなウエートの高さを置いておると聞いております。したがって、これからの、そういう非常にむずかしい、管理価格の協定があったかなかったか、だれだれが集まったか、どこに集まったかまでわからないとだめだというような、こういうことではなくて、やはり価格が硬直している事態、これをほぐすのはどうすべきかということを業界に問うていく積極性が、やはり国会においても、また公正取引委員会のようなところにおいても、もっと積極的に打ち出されてよいのではないか、そういうふうに思います。  消費者運動と中小企業の関係また商業者との関係について一言申し上げますれば、近く私も商業界のリーダーたちの研修の講師を引き受けておりましてその中でも申し上げたいと思うのですが、やはりこれは消費者の声をきちっととらえられるだけの姿勢は業界が持たねばだめなんだ。たとえば、先ほど言いましたように、うそつき商品にしても、食品で例をとりますれば、何を食べたらいいんだろう、これはだいじょうぶなんだろうかという不安に対して、メーカーがだいじょうぶだといって届けたんだからだいじょうぶだと取り次いでいるようなことでは、やはり中間の小売り商としては、ぼくたちから言えば落第点だろうと思う。マージンをとる分にはとるだけの取り次ぎに当たる責任を、消費者にかわって物を仕入れるという責任を、やはりきちっと持ってもらわなくちゃいけない。それから、メーカーにおかしいところがあれば、こういうことでは売れないんだといって突き返すぐらいの勇気が必要なのに、いまや何か系列店化してしまって、メーカーにはものが言えないで、消費者がものを言ってきたのを押え込むような仕事をなさっていたのでは、やはり信頼感は出てこないだろうと思いますし、それから生活協同組合のような関係においては、やはりフェアな意味の競争をすべきだ、けんかをすべきではありませんけれども、競争はあくまですべきだと思う。そこにやはり、競争相手にいいものがあれば技術は向上するというのは昔からの実績でございます。消費者が物の値段を知り、ものさしを持っている。そういうものと競争をして、本来的には負けるはずがないわけで、長い経験と古いのれんをお持ちでございますし、資金も個人の資金でありますから、そういう意味でははるかに大きいものをお持ちの方が多いわけであります。そういうところで、しろうとの消費者が経営する経営のやり方に負けるものがあるとすれば、それはそこの企業自体に何か老化現象が起きているためであって、生活協同組合がなぜうまくいって、おれのところがうまくいかないのかというところを積極的に検討されて改善をされていく、そういうような身近な、一種の健康診断書のような役割りを果たすことができるわけでありまして、決して消費者と小売り業者は敵対関係にはないということを、前から、生活協同組合連合会も明らかにしているところでありますし、しかしよい意味の公正な競争相手であるというふうにいっておりまするから、そこのところの姿勢だけは今後も生活協同組合も貫いていくでしょうし、小売り商のほうが偏見に基づく何かそういう取り違えがあったとすれば、ぜひ機会を見て先生方からもお示しいただいて、お互いが、やはり、消費する者、それから小売りで消費者のために代行業務をやる者、それぞれの立っていく道というのはきちっとあるということをお示しいただけたら幸いだと思います。そういう中からやはり提携が生まれてくるのだろうと私は思います。  以上でございます。
  47. 中林貞男

    ○中林公述人 お尋ねの四点について、簡単にお答えいたしたいと思います。  うそつき商品の追放の問題につきましての第一点、これはやはり法律なりあるいは予算なり、制度の中では、二、三年前にできました不当景品類及び不当表示防止法、景表法がありますが、今度の予算でも編成の中で、この機能を公取では強化をしようという計画でおったらしいですけれども予算かなり計画どおりいっていなくて、削られているようです。私は、行政的にはこの取り締まりを強める。同時に、行政なりそういうことばかりではなくて、やはり民間の運動の中から追放していく。生活協同組合の私たちは、純良でよりよい商品をより安くというのが私たちのスローガンになっております。そういう立場で、生活協同組合では、協同組合のコーペラティブの頭をとってコープ商品というものを、信頼できるメーカーと御相談をして、コープのマークをつけた商品、私の着ていますこのワイシャツは、実は帝人さんとタイアップしてつくっているものですが、信頼できるメーカーの方と、価格交渉、品質の交渉をして——日本では工場を持つだけの消費者に力がありませんから、信頼できるメーカーと交渉して、コープ商品をつくっております。現在約百種類余りになっておりますが、そういう純良な、消費者から信頼できる品物を生協で売り出していく。それを通じて、私たちは、有害なりあるいはそういう不当な表示なり、そういうものを追放しよう。それにはやはり生協がもっとウエートが強くならなくては効果があらわれませんけれども、生協ではコープ商品というものをつくって、私たちは洗剤では、その点ではかなり現在洗剤の有害性追放には主婦の方たちからは喜ばれているという確信を持っております。それですから、景表法の運用をもっと強めるということと、私たちは、やはり民間の運動が、これは生協ばかりではありません、消費者全体の運動を強めていくことが必要だと思っております。  それから二番目の輸入関税の問題では、やはり外割りといいますか、魚にしても野菜にしても、くだものにしても、いいものがあって外国から輸入しようというときに、まだ自由化されていない品目がかなりあります。そのときに実績主義という形で割り当てがなされる。そこに一つ問題がある。私たち生活協同組合では、皆さま方も御存じの方がおありかと思いますが、私のほうの会長はかつて農林次官をやって国務大臣をやったことのある石黒武重さんで、石黒さんが社長になって日本協同組合貿易会社というのをつくっております。それで特にそういう魚など外国から輸入しようということになると、いろいろなこういうことにぶつかるのですが、実績主義で、新しくて消費者の団体ですから、割り当てをもらうことがなかなかできないということがあります。それですから、この割り当ての問題を、過去に実績がなくても、消費者の団体であってもきちんと信頼できるものにはもっと割り当てていくというような形をぜひやっていただきたいと思いますし、それからやはり関税のほうですね。砂糖なりいろいろなものはやはり関税で高くなっているわけですから、そういう点についてはぜひ国会の先生方に私は物価の点から御検討を、経企庁でもそれは本格的に検討するといっていますけれども国会で、ぜひ物価対策の点から御検討をいただきたいというふうに思っております。  それから消費者運動を盛り上げる。私はやはりこれは先生方に激励をぜひしていただきたいと思うのですが、なかなか日本の消費者は、特に主婦は昔から非常に貞淑で、貞淑といいますか引っ込み思案といいますか、そういう形で、主婦の方たちはなかなか積極的になろうとはいたしません。そういうところで、私はむしろこれは各都道府県などでいろろいなモニターとか消費者センターとか、いろいろなものをおつくりになっておいでになります。その際の行政庁の指導を先生方にぜひお願いをしたい。行政の力で、消費者行政で消費者の問題を全部やってのけるというような空気が現在全国的にないわけではありません。私はやはり主婦たちの願いというものを、そういう消費者の自主的な運動が盛り上がろうとしているものを芽をつむような——これは各自治体や何かで主観的には消費者のためといって一生懸命おやりになっているわけですが、その中にはむしろ行政で、消費者行政が熱心なために主婦たちがせっかく自主的にやろうとする芽をつんでしまうおそれがなしともしない。私は消費者の問題は、やはり行政が先行するよりも主婦たちの自主的なそういう運動が先行して、それを行政がバックするというような形でぜひ行くように、先生方に御指導をいただきたいというふうに私は思っております。  それから生協、スーパー、小売り商人の調和の問題、これは先ほど岩田公述人がおっしゃったとおりで、私も数日前に、ざっくばらんに申しますと、西友の社長の堤さんはじめ西友の幹部あるいはダイエーの東京の支所長それから専門店会、日本商店会の幹部の方たちから、実は呼び出されまして、君は消費者運動をどういうつもりでやっているのだということで懇談をいたしました。それで先ほどから私言ったような形での説明をいたしました。私たち生協も決して小売り商人の方を敵にするというような考え方は持っておりません。そしてやはり消費者のためになるというフェアな競争をやっていく。それで日本の小売り商業界もいままでのような姿ではなくて、もっと協業化なり近代化を必然的に進めなければならない立場にあるだろう。小売り商業界のそういう近代化を進められること、そうして生協がやはりそれだけでいいかといえば、やはり消費者のそういう機能というものをその中で生かして、フェアな競争ということだということで話しまして、その席上では、あとは、じゃ、あんたが言うようなことなら、もっと日常的に話し合って協調していこう、そういうことであれば生協法の改正だってそうわれわれもこだわる必要がないんだなあというような形で、また話し合いをしようということで別れまして、私たちは小売り商業界の人たちと必要以上のトラブルを起こしてやろうとかという考えはさらさら持っておりませんし、運動としても、何でもかんでも安売りしろとか、員外利用を簡単にだれでも利用できるという宣伝をしようとか、そういうことはすべきでないと私は現在指導をしておりますので、私たちはそういうトラブルをできるだけ起こさないようにしてやりたいというふうに思っております。
  48. 中野四郎

    中野委員長 西宮弘君。
  49. 西宮弘

    ○西宮委員 お尋ねをしたいことがたくさんあるのでありますが、時間がありませんからほんとうに簡単に二つだけお尋ねいたしたいと思います。  一つは、全販連が経営しております戸田橋の配送センターですか、あそこの問題に関連して、せっかく生協があそこで荷受けをする場合にも、他の四つの市場で扱われておる値段の平均以下であってはならぬ、こういう制約を受けるという話であります。これは残念ながら今日生協のシェアが非常に低いので、そのためにほかのお客さん、ほかのお得意を失っては困るというような産地側の心配だと思う。これは非常に残念でありますが、生協の実力がそこまで行っておらない、そういうところから来るのだと思うのであります。私は、願わくは生協がもっともっと大きくなって、ヨーロッパあたりの生協と同じような、ああいうシェアを占めるようになってもらいたいということをひたすら念願をするのですが、現状においてはやむを得ない。やむを得ないという意味は、産地側ではそういう気持ちになるだろうということは十分想像できるのでありますが、さっき中林さんのお話の中に、そういうことを行政指導を受けておるというお話があったので、行政官庁がタッチしてそういうことをやっておるのかどうか。もしそうならたいへんだという感じがしたのでその点だけ教えていただきます。
  50. 中野四郎

    中野委員長 中林君。——簡潔に願います。
  51. 中林貞男

    ○中林公述人 これはバイパス方式をしくという中で、バイパスをつくるにしても、市場との関係のことはトラブルを起こさないようにというような、戸田橋のあれをつくるときに大体そういうトラブルを起こさないようにしてやってくれというような形のはっきりした文書とかなんだかじゃないのです。そういうようなやはり行政指導だろうと思いますが、そういうことが裏面にあるということでございます。
  52. 西宮弘

    ○西宮委員 わかりました。  第二点は、先ほど岡沢委員も尋ねましたので大体わかりましたけれども、小売り商業との関係ですね。これはだいぶ前ですが、ちょっと年代は忘れましたが、生協がお出しになった宣言の中に、「中小商業者と話し合う機会を積極的に作り、生協としての真意を披瀝したいと思います。そして、われわれの発展を阻んでいる共通な問題の解決のため、共に提携し、闘ってゆきたいと思っております。」これは宣言文の一節なんでありますが、私はぜひいまこれをやってもらいたい。先ほど来出ております、たとえば員外利用ができないとかあるいはまた酒、米、その他の許認可が非常に停滞しているというような問題等も、おそらくこういうところにあるのだろうと思う。したがって、もちろんわれわれは先刻申し上げたように、大方針は生協のシェアがもっともっと拡大されて、これが日本物価形成に重要なる役割りを果たすというところまで生協が伸びてほしいということを念願してやまないんですけれども、現状においてはこの辺の調整をはからないと、さっきの員外利用その他が思うようにいかない、こういうことになろうと思います。かつての、数年前の宣言を実際に生かしてもらいたい、それにはどうしたらいいんだというようなことをお尋ねしたいと思ったわけです。さっき岡沢委員の質問に対するお答えもありましたので、あれで全部尽きておるんならそれだけでもけっこうでございます。
  53. 中林貞男

    ○中林公述人 大体私尽きていると思います。しかし現実にはトラブルが、いわゆるフェアで競争をするといってもやはり日常的にはトラブルが起きますので、私も本部からそういうときには出かけていって調整をやったり、最近ある県に行って民生部長さんや商工部長さんや商工会議所の方たちと会って調整した経験を持っておりますが、そういう立場でやっているということでございます。
  54. 中野四郎

    中野委員長 青柳盛雄君。
  55. 青柳盛雄

    ○青柳委員 岩田さんに一点お尋ねがございますが、先ほど最初に税金の問題を取り上げられました。生活必需物資に対する間接税、物品税などを取り上げて詳しいお話がございましたが、最近大蔵当局あたりの基本的な意見、それから財界、の意見でもそうですけれども国民に対する税金の重圧感を除去するためには付加価値税というものを取り上げて、これに大きく財源を求めていくというような構想があるようで、これは数年の後には必ず実施するというかたい方針も出ているように見えるのでありますが、当然消費者の方々としてみればこの問題に無関心ではいられないと思いますので、この点について、いずれまたそういうことが具体的な日程にのぼれば、公述人として御意見を述べる機会もあろうかと思いますが、いまの段階でもこれは軽視できないことだろうと思いすので、その点、簡単にお話をいただきたいと思います。  それから次に中林さんにお願いでございますが、いまの米の食管制度は堅持したほうがいいというお立場なのだろうと思いますけれども、同時に先ほどのお話もありましたように生鮮食料品値上がり物価を上げるのに大きな寄与をしておるという点から、この安定的な供給を確保するという意味において、俗にいわゆる第二食管とでもいいますか、要するに米以外の農作物の価格保障制度、二重価格制度を設けるということが、消費者物価を安定させる一つの道ではないかという考え方もあるわけでありますけれども、こういう点についても御意見がありましたらちょっとお尋ねいたしたいと思います。
  56. 岩田友和

    ○岩田公述人 付加価値税の問題、間接税の問題、ともにやはり私たちの立場で無関心ではおられない問題でございます。それで現在までどうしているかといいますと、現在特に消費者連盟の立場では、民間のそして税金に明るい方々にチームをつくっていただきまして、ただいま特に付加価値税の影響について検討をお願いしております。したがってきょう申し上げましたのは、法人税の引き上げ、これは戦前より下回っているんだから、そのところはもっと上げることを考え、そして累進率の導入その他によってまかなうべきものはまかない、そして租税特別措置についても問題の多い特別措置が非常に目につくので、そこはもはや前々から問題になっているところですから、勇断をもって踏み切ってほしい。そしていまのところ、いわれております付加価値税、間接税の比重を高めるという問題については、そうならないように御検討いただきたいという立場で、きょうは意見を述べております。
  57. 中林貞男

    ○中林公述人 いまお尋ねの生鮮食料品についての価格保障の問題ですが、私は米ばかりではなくて主要食糧、この範囲をどのあたりにするかは国会などで十分御検討願いたいと思いますが、主要な野菜なり魚なり食料品については価格保障制度を設定すべきだ、私はおくれた農村なり中小企業についてはどこの国でもそういう制度を持っているからやるべきだ、というふうに思っております。
  58. 中野四郎

    中野委員長 岩田、中林両公述人には御多忙のところ長時間にわたって貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  以上をもちまして公聴会は終了いたしました。  明十三日は午前十時より委員会を開会し、昭和四十六年度総予算に対する一般質疑を行ないます。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十六分散会