○細谷
委員 ただいま、
日本社会党、公明党、民社党の三党共同で提出されました
昭和四十六年度
一般会計予算、
昭和四十六年度
特別会計予算及び
昭和四十六年度
政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について、私は、提案者を代表いたしまして、その趣旨を説明いたしたいと思います。
予算は、その国の政治の顔といわれるのでありますが、今回提案されました
政府の総
予算案は、はたして国民の期待にこたえるものでありましょうか。以下、私はそのしからざるゆえんを順を追うて述べてみたいと思います。
まず第一は、国民生活軽視の
予算だということであります。
昭和四十六年度
予算に対する国民の要望は、これまでの産業優先政策を大きく転換し、人間優先、国民生活、福祉の向上に重点を移すことであります。しかるに、
政府予算は相変わらず、経済成長優先の政策を続け、大企業本位、産業中心の刺激型
予算を組み、高物価、重税、国民福祉軽視の
予算編成を行なって、国民の期待を大きく裏切っておるのであります。
第二は、税負担の不公平が
拡大されている点であります。
昭和四十六年度における税の自然増収は、一兆五千億円に達する巨額にのぼっているにもかかわらず、減税は千六百六十六億円にとどめ、反面、大企業や資産所得を中心とする租税特別措置などの整理を怠り、税の不公平を一そう
拡大しております。その上、税体系の矛盾を改めることなく、いわゆる自動車新税を創設して、高負担化の
方向に拍車をかけていることは許しがたいことであります。
第三は、物価政策の不在であります。物価の安定は、国民生活にとって最大の課題であり、
政府も
予算編成の再重点項目に置くと公約しておきながら、何ら有効な物価安定対策はとられていないのであります。公共料金を抑制するといいながら、郵便、電話料金の値上げを事実上容認し、緊急課題である野菜価格安定対策や管理価格の監視体制の整備等は放棄しております。また急騰を続ける地価対策を忘れ、さらに消費者米価に対する物価統制令適用除外を行なおうとしていることは、消費者米価の値上がりのみならず、諸物価の上昇を招き、国民生活を脅かすものといわなければなりません。
第四は、公害
予算がきわめて不十分な点であります。第六十四臨時国会で成立いたしました公害
関係諸立法を実施するための財政的な裏づけすら十分でなく、地方公共団体に公害防止事業を押しつけ、監視、調査、研究体制の整備も著しく立ちおくれております。特に無過失賠償責任制度の実施と被害者救済制度の充実、中小企業公害防止施設に対する援助など、緊急な問題に対する取り組みが軽視されており、公共下水道についても、補助率の引き上げが見送られてしまっておるのであります。
第五は、社会保障の後退であります。先進諸国に比し著しく立ちおくれている社会保障の充実は、現在最も緊急を要する課題であります。しかるに、社会保障
関係費は依然として低水準に置かれています。福祉年金、生活保護基準の改定、児童手当の実施、被爆者援護など、申しわけ程度にとどまり、老人医療の無料化は全く無視されております。しかも、
政府が公約した健康保険の抜本対策を行なわず、保険料の恣意的引き上げと患者負担の増大など、重大な制度改悪を企図していることは断じて容認できないことであります。
第六は、住宅、社会資本の立ちおくれであります。深刻な住宅難で苦しむ勤労者のための住宅建設をはじめ、高度成長の中で矛盾を
拡大しつつある社会資本の充実に対する施策は、全く場当たり的であり、第二次住宅建設五カ年計画も、民間自力建設にその大半を依存するというさか立ちした計画となっております。また、国鉄の再建についても、国鉄経営の根本
検討、総合交通体系の確立した上で、利用者の
立場に立った抜本策が講じられなければならないのに、何ら手をつけておりません。さらに、人命尊重の中心である交通安全対策についても、ほとんど前進が見られず、交通事故がますます増大することは必至であります。
第七は、教育軽視の
予算であります。教育
予算の充実に対する国民の要望はきわめて高いものがあります。ことに、社会教育をはじめ、幼児教育の拡充、私立学校の経営安定に資するため、経費を含めた助成制度の拡充、大都市周辺の人口急増地域及び過疎地域の文教施設の整備については、財成措置の増大が強く求められているのでありますが、依然として不十分のまま残されております。
第八は、農業の荒廃と中小企業の危機があげられます。
政府の農業軽視の政策の結果、いまや農業は荒廃し、農家は農業の将来に全く希望を失っております。従来の場当たり的農政を改め、農業再建のため真剣に取り組むべきであるにもかかわらず、かえって米の買い入れ制限と大幅減反によって、農政失敗のしりぬぐいを農家に押しつけ、農業を一そう危機におとしいれようとしております。特に消費者米価の物統令適用廃止は、事実上の食管制度の切りくずしであり、消費者には米価の値上がり、生産者には経営危機を一段と激化するものとなることは明瞭であります。
また不況含みの景気を背景として、中小企業経営は困難の度を濃くしているとき、中小企業
予算は相変わらず冷遇され、中小企業労働者に対する施策も、全く見るべきものがないことは遺憾のきわみであります。
第九は、防衛費の急増であります。国際緊張の緩和と平和を願う世論に逆行して、防衛費を大幅にふやし、攻撃的兵器まで準備しようとしていることは、平和憲法の精神に反し、諸外国に軍国主義への疑念を抱かせ、アジアの緊張を激化することになります。ことに国庫債務負担行為をはじめ、四次防計画に事実上着手していることは許せないのであります。
さらに、海外経済協力費の増額がはかられようとしていますが、これらが開発途上国民衆の生活向上と自立達成のためでなく、企業資本進出の先導的役割りを演じ、援助諸国民の不安を増大させ、非難を強めるようなことも容認できないのであります。
第十は、財政民主主義の軽視であります。
昭和四十六年度
予算案は、
政府保証債の発行及び運用に弾力条項を設け、また、予備費や国庫債務負担行為の増額を行なうなど、憲法が規定する国会の権限を不当に縮小しようとしていることは、国会の審議権の軽視であり、財政民主主義の
原則を破壊する
方向であって、絶対容認することができないのであります。
第十一は、財政投融資の恣意的運用であります。財投計画は
予算と一体のものであり、その民主的運用が確保されなければなりません。しかるに、その大部分を大企業産業中心の投資に振り向け、大衆生活に直結した部分への投資が押えられてきました。申すまでもなく、財投原資は、国民の零細な貯蓄の集積であり、その運用は、住宅、生活環境整備や勤労者福祉施設への融資の増大など、国民大衆に還元することが必要であります。
政府の計画と運用はこれと逆行しております。
以上述べましたように、国民生活軽視の
政府予算案はとうてい容認することができないのであります。
日本社会党、公明党、民社党は、三党共同して、
昭和四十六年度
政府三
予算案を撤回し、次に述べる基本
方針と重点組替え要綱に基づいて、
予算案の編成替えを強く要求する次第であります。
基本
方針の第一は、国民生活優先
予算への転換であります。すなわち、経済成長の成果を民生の安定と国民生活、福祉の向上に振り向け、大企業、産業優先の
予算から、人間尊重、国民生活、福祉優先の
予算とすべきであります。
基本
方針の第二は、アジアの緊張緩和と日中
国交回復を推進するため、防衛費を削減し、海外経済協力は体制のいかんにかかわらず、開発途上国の経済の発展と民生の向上を中心として計画実施し、平和のための財政経済政策を進めることであります。
基本
方針の第三は、国民生活上の緊急課題を解決することであります。すなわち、勤労所得税の減税と税の不公平是正、物価安定、公害対策の拡充、社会保障の充実、住宅、生活環境の整備、交通安全対策、教育政策、農業の再建、中小企業の育成、沖繩援助の
拡大など、国民の要求する緊急課題の解決をはかるべきであります。
以上述べました三つの基本
方針に基づいて、われわれが緊急に組替えを要求する重点は、具体的に次のごとくであります。
まず、歳入
予算の組替えについて御説明申し上げます。
政府の減税案は、まことにミニであり、物価減税と呼ぶにもふさわしくないものであります。そこで所得税の減税を重点に行なうこととし、基礎、配偶者、扶養控除及び給与者の定額控除をさらに引き上げることによって、五人世帯の課税最低減をおおよそ百三十万円まで引き上げることといたしています。これによる減税額の増は二千五百三十億円と見込まれます。また、さきに述べました理由により、自動車重量税の創設は、これを取りやめることといたしております。以上
二つの措置による減収は二千八百三十億円と相なります。
一方、年々ばく大な額にのぼる交際費課税の強化によって九百三十億円の増収を見込み、租税特別措置の整理、合理化による増八百億円、法人税率を三八%に引き上げること等による増一千百億円を合計いたしますと、税制改正による増収も二千八百三十億円と相なるのであります。
次に、歳出
予算の削減について申し上げます。
まず、第三次防計画を直ちに中止し、新規装備費、自衛官の定員増、欠員補充を認めず等の
方針で、防衛費から千六百五十億円を削減することといたしております。さらに、産投会計繰り入れ金の半減、物件費、公共事業費の効率的使用、その他既定経費の節減、予備費の削減等によって千九百八十億円、総額三千六百三十億円を、
政府案の歳出から削減することといたしております。
次に、歳出
予算の重点的な増額について説明いたします。
今日、国民生活上、物価安定対策が喫緊の急務であるにかんがみ、公取の強化による管理価格監視機構の充実、野菜生産の振興と出荷の安定、消費者保護行政の強化、冷凍、貯蔵集配施設の整備、流通対策の拡充、公共料金の抑制等、一連の政策を推進することとし、総額九十億円を物価対策費に増額すべきであります。
公害対策費につきましては、第六十四国会で成立いたしました諸法律の強力な推進と公害監視設備及び人員の拡充が強く望まれるのであります。同時に公害被害者の救済対策、中小企業の公害防止施設への助成、地方公共団体への財政措置、公共下水道の整備拡充等は、欠くことのできない重要事項であります。したがいまして、公共下水道に対する補助率引き上げを中心に六百二十億円を増額いたしております。
社会保障費につきましては、健康保険勘定への繰り入れを、取りあえず一〇%とするとともに、国民大衆にしわ寄せした健保赤字対策の撤回を強く要求いたします。さらに児童手当は、義務教育終了前の第三子より、月額三千円を今年度から実施するための経費、老齢福祉年金の増額、七十歳以上の老人医療の無料化、生活保護費の二割引き上げ、原爆被爆者援護費等の増額など、合計二千六十億円を増額することといたしております。
住宅対策としては、公営住宅の増加、公団への出費等に二百九十億円、交通安全対策には、交通遺児対策、救急医療体制の整備を含めて百二十億円を、また文教
関係では、社会教育施設の充実、過密過疎地域の義務教育施設の整備、私学振興、幼児教育の振興等、合計百億円を増額いたしております。
中小企業については、五十億円を増額し、農業
予算は、全面的な組替えを前提として、作付転換の
条件整備をはかる等、
予算の再編成を行ない、米の買い入れ制限を行なわず、消費者米価の物統令適用除外をやめることといたしております。
国鉄については、長期債務に対する利子補給の増大、公共負担金の国庫支払など、赤字対策として、百億円を増額すること。
また、沖繩復帰に伴う財政需要の増大に対応し、国の援助を増大することとし、二百億円を沖繩対策費として加えております。
最後に、財投計画の抜本的改革であります。この原資が、国民の零細な資金であることにかんがみ、大企業、産業中心の資金計画を改め、住宅、生活環境施設など、大衆生活に密着した面に大幅に投入し、国民に還元すべきであります。同時に、第二の
予算と呼ばれる財投計画の運用を民主化するため、国会の議決事項とするなど、現行制度を改むべきであります。
以上、
日本社会党、公明党、民社党の三党共同提案による組替え案の趣旨を説明申し上げたのでありますが、詳細は、別に配付しております案文を御参照いただきたいと思います。
何とぞ、御審議の上、御賛成くださるようお願い申し上げまして、私の趣旨説明を終わります。(拍手)