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1971-02-04 第65回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月四日(木曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 小平 久雄君 理事 田中 正巳君    理事 坪川 信三君 理事 藤田 義光君    理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君    理事 田中 武夫君 理事 鈴切 康雄君    理事 今澄  勇君       足立 篤郎君    相川 勝六君       赤澤 正道君   稻村左近四郎君       植木庚子郎君    小川 半次君       小沢 一郎君    大坪 保雄君       大野 市郎君    大村 襄治君       奧野 誠亮君    賀屋 興宣君       川崎 秀二君    上林山榮吉君       小坂善太郎君    笹山茂太郎君       田中 龍夫君    登坂重次郎君       灘尾 弘吉君    西村 直己君       野田 卯一君    福田  一君       松浦周太郎君    松野 頼三君       森田重次郎君    豊  永光君       阪上安太郎君    辻原 弘市君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       原   茂君    細谷 治嘉君       安井 吉典君    相沢 武彦君       小川新一郎君    坂井 弘一君       多田 時子君    岡沢 完治君       西田 八郎君    青柳 盛雄君       谷口善太郎君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 小林 武治君         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 内田 常雄君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  宮澤 喜一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君         郵 政 大 臣 井出一太郎君         労 働 大 臣 野原 正勝君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         自 治 大 臣 秋田 大助君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (総理総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (科学技術庁長         官)      西田 信一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中曽根康弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         近畿圏整備本部         次長      播磨 雅雄君         公正取引委員会         委員長     谷村  裕君         首都圏整備委員         会事務局長   川島  博君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         開発局長    岡部  保君         外務省経済局長 平原  毅君         大蔵省主計局長 鳩山威一郎君         大蔵省理財局長 相澤 英之君         大蔵省証券局長 志場喜徳郎君         大蔵省銀行局長 近藤 道生君         国税庁長官   吉國 二郎君         厚生政務次官  橋本龍太郎君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省薬務局長 武藤琦一郎君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省児童家庭         局長      坂元貞一郎君         厚生省保険局長 戸澤 政方君         厚生省年金局長 北川 力夫君         社会保険庁医療         保険部長    穴山 徳夫君         社会保険庁年金         保険部長    八木 哲夫君         農林大臣官房長 太田 康二君         農林省農政局長 中野 和仁君         農林省畜産局長 増田  久君         農林省蚕糸園芸         局長      荒勝  巖君         食糧庁長官   亀長 友義君         通商産業省通商         局長      原田  明君         通商産業省繊維         雑貨局長    楠岡  豪君         特許庁長官   佐々木 学君         中小企業庁長官 吉光  久君         運輸省港湾局長 栗栖 義明君         労働大臣官房長 道正 邦彦君         労働大臣官房会         計課長     増田 一郎君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         労働省労働基準         局長      岡部 實夫君         労働省婦人少年         局長      高橋 展子君         労働省職業安定         局長      住  榮作君         労働省職業訓練         局長      渡邊 健二君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         建設省都市局長 吉兼 三郎君         建設省河川局長 川崎 精一君         建設省住宅局長 多治見高雄君         自治省行政局長 宮澤  弘君         自治省財政局長 長野 士郎君         消防庁長官   降矢 敬義君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ――――――――――――― 委員の異動 二月四日  辞任         補欠選任   福田  一君     豊  永光君   瀬野栄次郎君     多田 時子君   二見 伸明君     小川新一郎君   青柳 盛雄君     谷口善太郎君 同日  辞任         補欠選任   豊  永光君     福田  一君   谷口善太郎君     青柳 盛雄君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十六年度一般会計予算  昭和四十六年度特別会計予算  昭和四十六年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議開きます。  昭和四十六年度一般会計予算昭和四十六年度特別会計予算昭和四十六年度政府関係機関予算、右各案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。大原亨君。
  3. 大原亨

    大原委員 私の質問にも関係をいたしますが、最初質問に入ります前に、最近続発をいたしております火災における焼死事件、昨日は桐友学園という精薄施設におきまして五人の死亡者が出る、こういう事件が出ております。その前には宮城県の小島病院におきまして、火災で入院中の精神病患者が六人焼死する事件が起きておりますし、特に昨年来この社会福祉施設火災事件続発をいたしておるわけでございます。で、集団的に住んでおりますところに火災が起きますと、非常に被害が大きくて、特に昨年一カ年を見ましても、正確な資料を持っておりませんが、千五百名以上の焼死者が出ているというふうなことでありますが、そういう事件が次から次へと出ておるにもかかわらず、特にそういう社会福祉施設やあるいは病院等におきましてこういう事件が起きるということは、私は非常に問題ではないか。政府のいろんな監督上あるいは施設充実、そういう面やあるいは職員勤労条件労働条件、そういうもの等における問題のしわ寄せとして、そういう事件が発生した場合に大きな被害が出ておるのではないか。これに対して消防庁所管自治大臣見解を聞きたいのです、長官ではなしに大臣の。その前に厚生大臣、あなたのひとつお考えを述べていた、だきたい。
  4. 内田常雄

    内田国務大臣 このたび精神病院並びに精神薄弱者収容施設に引き続いて火災が発生いたしまして、収容者犠牲者が出ましたことは、私もまことに遺憾にたえないことで、心を痛めております。ことに精神病院に収容されておりまする精神障害者あるいは昨日の精薄収容施設の方々は、自分で自由に自主的な避難活動等ができないものでありますだけに、これらの施設に対する管理あるいは緊急時における避難等につきましては、十分のことをやるべき対象であるにもかかわらず、犠牲者が出ましたことを考えますと、私どももさらに思いを新たにして、こういう施設に対しましては、特に耐火施設に切りかえてまいるとか、あるいは非常の際の避難指導等につきまして、十分の訓練をしなければならないことを一そう痛感をいたしました。  ところで、実は昨年来も同じような災害がございましたので、この種の精神病院精薄施設等につきましては、たとえば医療金融公庫等政府資金を優先的にあっせんをいたしまして、できる限り耐火構造に切りかえをいたしておりますが、まだ全体的に申しますと木造老朽精神病院あるいは精薄者収容施設等が三〇%近く残っておりますので、昨日も関係者緊急会議をいたし、また医療金融公庫のほうとも連絡をいたしますとともに、消防庁のほうとも連絡をとりまして、できる限り一そうすみやかにこれらの木造老朽施設耐火構造への切りかえ、そのための融資のあっせん、また助成というようなことにつきましても進めてまいらなければならない、かように考えておりますので、従来の施策にさらに思いを新たにした構想を積み重ねまして、これらの不幸な人々を災害から守らなければならないと私は深く心に期するものでございます。
  5. 大原亨

    大原委員 自治大臣、この焼死事件が非常に多いわけですが、これに対しまして消防庁関係各省連絡をとって、どういう措置をとっているか。
  6. 秋田大助

    秋田国務大臣 最近火災が多いばかりでなく、死傷者、ことに死者が多いということにつきましては深く憂慮をいたしております。  建築の材料あるいは建築構造あるいは新建材あるいはいろいろものがたくさんあるという、これは一般家庭における問題のみならず、いろいろの施設、多数の方が集まっておる旅館、ホテル、こと精神病院等問題深刻でございます。これにつきましては、一般的に建築構造資材等その他水利の便あるいは消防器材あるいは消防査察訓練等各般にわたりまして法制上の規定の点もございまして、これらについて注意をいたし、かつホテル等事件の頻発にもかんがみまして、最近消防署に十分注意するよう厳重な示達を出しております。昨年度精神病院の大きな火災があり、死者が出ましたので、そのときもいろいろ厳重な示達を出しておりますが、考えてみますと、そのつどやるのでございますが、あとの始末をほんとうに厳重にやっていないんじゃないかという点が感ぜられる点がございます。したがいまして、これらの点についてもう一ぺん総見直しをしまして、ひとつ厳重に示達をするとともに、その査察及び検査の結果、欠陥は直ちにこれを直すということを厳重にやるようにいたしたいと考えております。
  7. 大原亨

    大原委員 自治大臣のような答弁はいままで何回も繰り返されたわけですが、これがほとんど実を結んでいない、こういうのが問題であります。火が出まして三十秒ぐらいのうちに逃げなければ死んでしまうという、そういうふうな状態建築がまかり通るということに問題があるだろう、そういう問題等を含めて関係各省と根本的な検討をすることが私は必要ではないかと思います。  それから厚生大臣大蔵大臣、本年度予算編成関係いたしまして、私どもは党におきましても社会福祉施設の総点検というのをやったわけでありますが、これに刺激されて与党の諸君もやられたわけであります。本年度予算編成では、社会福祉施設改善五カ年計画という問題がかなり議論されたわけですが、その中で厚生省側は三千億円の五カ年計画による社会福祉施設改善を要求した。それから私どもが実際にそういう福祉施設に行ってみまして感ずることは、職員勤労条件が非常にきびしい、なり手がない、待遇が悪い、そういうことであります。そして低い待遇の中で非常な長時間労働をやっておる。そういうことですから、たとえば桐友学園などの例は新建材の問題ではない、老朽施設の問題であると私は思うのです。精神病院等においてもそうだと私は思うのです。ですから、大蔵省は、社会福祉施設の五カ年計画というふうなものは住宅下水道等とは違って五カ年計画長期計画になじまぬ、そういうことで五カ年計画については熱意を示さなかったというふうな最終的な意見というものが流布されておるわけです。待遇改善の問題についても、こまかいことは申し上げませんが、一般勤労者水準に比べまして定期昇給がないとかたくさんの積み残しがありまして、それが累積しておるわけであります。これは精神主義だけではいかぬわけでありますから、そういう物心両面において大蔵大臣は、今日並びに近い将来において社会福祉施設、そういうもの等に対する改善措置をとることについて熱意を示されるように期待をするわけですが、大蔵大臣見解を求めておきます。
  8. 福田赳夫

    福田国務大臣 社会福祉施設につきましては、私は気持ちは大原さんと少しも変わりません。ただこれを長期計画という形に乗っけることにつきましては非常にむずかしい点があると思うのです。しかし年々の努力、それを積み重ねてまいりまして、先進諸国にもおくれをとらないような状態に早く持っていきたい、かように考えております。最善の努力を今後といえども尽くしていく所存でございます。
  9. 大原亨

    大原委員 この質問につきましては後に同僚の質問に譲りたいと思いますが、さて佐藤総理大臣福田大蔵大臣はいままでの本会議施政方針演説等におきまして、日本GNP世界資本主義国では第二位である、一人当たり国民所得もだんだんとよくなって、二十位ぐらいから十五、六位になっておる、これは近くアメリカを追い越すかもしれない、こういうことを述べておられるわけですし、最近はちょっと核武装問題等がありましてハーマン・カーンの演説を引用されることに慎重なようでありますが、しばしば言われたわけであります。しかし、この数日来本委員会における審議を見ておりまして、たとえば阪上委員等質問いたしましたナショナルミニマム国民生活の最低限の望ましい姿、こういうものを政治目標にすべきだという議論の中で、消極的な意見もたくさんあったわけですが、一人当たり国民所得国民生活水準を国際的に比較をするなり、あるいは私ども政治の上において目標を掲げる際にそういうことを目標にすることは、私は問題があるのではないかと思うわけであります。経済企画庁長官、その問題につきましてひとつあなたの見解最初に聞かしてもらいたい。
  10. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 ただいま御指摘がございましたが、従来GNP中心にして指標としておった。これは経済成長一つのあらわし方として私はやむを得ないところであろうと思いますが、しかし、御存じのように最近におきましては高度成長のいわゆるひずみと申しますか、環境問題あるいは交通事故問題等のいわゆる公害的な問題も起こってまいりましたし、それからまた他面において生活環境中心とする社会資本の立ちおくれの問題が指摘されるようになってきております。そういう意味において個人所得のいわゆる上昇追求、あるいは個人消費生活上昇追求、こういうことだけでは経済政策目標たり得ない、こういう反省が徐々に高まっておることは御存じのとおりでございます。そういう意味におきまして、単なる個人所得上昇以外に、さらに広く社会資本の問題も含めまして、われわれとしてもいわゆる国民生活の実質的な生活水準をどこに求めるべきであるか、こういうふうなとらえ方をしようとしてきております。  これは一つは、毎年毎年の経済成長、すなわち毎年毎年の国民所得上昇ということももちろん大事でございます、個人消費生活がそれで上がるわけですから。ただ個人消費生活だけが生活ではない。もっと広い意味社会生活の基本が上がっていくことが大事である。これには何と言いましても、残念ながら過去のストックということがものを言います。わが国は、資本主義的な意味での近代的な資本の蓄積も、まだまだ先進諸国に劣ってきております。そういう意味社会資本ストックのおくれが今日ここにあらわれております。今後こうしたものの充実に大きな重点を置いていく、こういう考え方でおるわけであります。
  11. 大原亨

    大原委員 質問も気をつけますが、答弁を気をつけて簡単にやってください。あまり長くやったら質問妨害ということになる。指摘しておいたほうがいいと思います。私があとで採点するから……。  私が言っているのはこういうことです。一人当たり国民所得国民生活水準比較をしたり、目標にするのは間違いではないか。これは、GNP国民所得開きというのは何かといえば――これは一問一答をやっていると長くかかるから、国民所得GNP開きがあるのは、国民所得は大体八割ぐらいですね。これはどこに差があるのかということは、総理大臣、知っておりますか。知ってないでしょう。――知ってない。これはどこに差があるかと言えば、GNPからナショナルインカム、国民所得の差が出てくるのは、これは減価償却とか関接税を差っ引いておるだけの話なんです。ですから、一人当たり国民所得の基礎になる国民所得の計算の場合には、法人所得が入っておるわけですよ。企業所得が入っておるのです。だから国民一般生活水準、は、これでは測定できぬわけだ。一人当たり国民所得が幾ら上がったといっても、大きな企業所得が上がっておったのでは、格差の問題があるわけですから、これは国民生活中身は正確にできないわけです。  そこで、経済企画庁長官昭和四十四年に国民生活白書で、ナショナルミニマムというか、経済企画庁は、生活行動水準生活環境水準についての前年度実態調査をして、国民生活のあるべき姿の指標を求めようとした国際的な比較をしている。そうしたところが、閣議において佐藤総理の発言であったかと思うけれども、こんな美濃部ばりナショナルミニマムというふうな考え方を入れる必要はないじゃないか、こういう一撃を食うて、本年度国民生活白書を見てみますと、そういう生活行動水準生活環境水準、つまり生活中身生活環境をよくする、こういう生活白書のとらえ方というものがなくなった。私が聞きたいのは、経済企画庁生活優先企画官庁であるというふうにしばしば言ってきたけれども、そういう点について、具体的にどういう考えをもって経済総合調整をしようといたしておるのかという点を、私はまず経済企画庁長官から聞きたい。
  12. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 今回の生活白書に四十三年度生活白書のような数字を出さなかった、これは別に総理に一喝を食ったからではないのでございまして、もともとあそこで断わってございますように、四十三年度国民生活白書において、初めての試みとしてああいうものを出してみたわけでございます。実際問題といたしましては、国際比較が非常にむずかしゅうございます。各国の生活様式も違います。でありますから、たとえば住居比較をいたしますときにも、部屋の数で比較するときに、部屋の大きい国もあれば小さい国もある。いろいろと制度も違います。様式も違います。それから何といっても統計が不備でございます。そういうようなことで、試みとして出しましたけれども、必ずしもわれわれが満足すべきものではございませんでした。そこで、私どもといたしましては、最近のいろいろな要望にもこたえる意味におきまして、まずその指標をどういうふうにして開発するかということの試みから始めようということで、お聞き及びと思いますけれども経済企画庁におきましても、また企画庁に設けられておる審議会におきましても、この新しい国民福祉指標というものを一ぺん求めてみよう、それの開発試みよう、こういうことを目下やっておるようなわけでありまして、決して四十三年にやったのを今回載せなかったというのは、そうした方向の探求を怠っておるという意味ではございません。
  13. 大原亨

    大原委員 だから、そういう政治目標総合性を欠いて後手後手になっておる。公害問題だって物価だってみなそうでしょう。総合行政が全部おくれておる。それはあなたがしっかりしていないのが一つの原因ですよ。経済企画庁長官だめだからですよ。  私が続いて質問をいたしたいのは、昭和四十四年の白書によりまして、いろいろ内訳を書いてあるわけですが、私はあなたに最初答弁を求めたいのは、生活行動水準生活境水準、二つに分けまして、アメリカイギリス、スウェーデン、フランス西ドイツイタリア日本主要先進国比較をいたした指数を出しておりますが、その中で特徴的な点で、日本がそういう先進国の中で比較的高位にある――一番いいとは言わないが高位にある、よいものを若干あげてみてください。どういう点がよろしいか。
  14. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 国際的な比較におきまして、日本比較的よろしいのは教育並びに健康の面でございます。そして住居その他の社会資本並びに社会保障の点で立ちおくれが見える、こういうことが概括的に言えると思います。
  15. 大原亨

    大原委員 生活中身生活環境行動水準環境水準と分けたのは、昭和四十四年の国民生活白書は非常に賢明であると私は思うのです。その中で、あなたはいいほうを言ったわけですから、私は悪いほうを言ってみますよ。日本は栄養、カロリーはよくないですよ。特にたん白質イギリスフランス西ドイツの大体七分の一です。それから水洗便所普及率は全く問題にならないわけです。例を申し上げますよ。この中に出てくる例です。下水道普及率も問題にならないわけです。それから道路舗装率も、イギリスの一〇〇%に対しまして日本は九%ですから、問題にならないわけですよ。それから公園の広さにいたしましても、東京一人当たりは〇・八九平方メートルですが、パリは六平方メートルで六倍です。アムステルダムは非常に高価な土地であるけれども、緑地を確保いたしまして十二平方メートルです。これも問題にならないわけです。市街地面積に対する道路面積も、これは問題にならないわけです。子供事故死世界一なんです。これは順序不同ですが、子供のガンの死亡率世界一なんです。それから自動車の事故率は、ここの資料はとり方が違うのですが、しかし、別の観点で一万台当たり事故率を調べてみますと、日本が第一で、イタリア西ドイツフランスイギリスアメリカというふうな順序なんです。不慮の事故死、それから妊産婦の死亡率は、先進国中第一なんです。妊娠中絶に至りましては世界第一の第一なんです。日本堕胎天国なんです。日本に観光に来る人は、そのために来るという人があるぐらいですから。それから社会保障給付率は、国民所得と対比いたしまして先進国の三分の一の水準です。これはあとで申し上げます。それから物価上昇率先進国世界一なんです。これは後進国では高い。インフレがありますからね。それから、公害の発生率も、アメリカと競うて世界一なんです。問題となりました自由時間。東西ヨーロッパでは総理大臣に至るまで一年間に一カ月は休暇をとるわけです。労働時間も規制されているわけです。ですからそういう点で、人間的な生活ということになりますと、日本比較にならぬ、こういうことです。  そういう事実を私はずっと指摘をいたしまして、こういう問題について、生活中身生活の環境について実態を把握した上で的確な指標を求めて、そうして政治目標を総合的に達成して、生活優先政治をするということが政治でなければならぬと私は思うわけです。これがナショナルミニマムの問題である、いままで提起されて議論された問題であると思うわけです。私が申し上げた――あなたはいいほうを言った。私は悪いほうを言ったんです。そういう点は私は間違いない。間違いがあれば反駁してください、私は反駁するから。そういう点で、これからの経済総合調整あるいは政治一つ目標というものは、そういう点を踏まえたものでなければならぬと思うが、これらの議論を踏まえて、ひとつ総理大臣のほうから見解を聞きたいと思います。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大原君もいま指摘されましたが、いいほうについては、これは佐藤企画庁長官の説明を納得されておるだろうと思います。また悪いほうについては、私も同感でございます。なぜ日本がそれだけおくれているか。私ども古い歴史だ、かようには申しますが、近代国家としてはわずかな歴史しか持っておりません。私どもの私生活考えたときに、これで近代的国家と言えるか。いま言われた水洗便所がいい例であります。一体いつになったら国内に水洗便所が普及するか。私どもつい最近までこの水洗便所でない便所を使っていた。しかも、われわれのはき出す屎尿、これが唯一の肥料だ、そういうようなもとで生活をしてきた。ここにたいへんな近代化のおくれがあります。下水は不足している。これもいまのような状態でありますからこそ、これはたいへん近代化的なものでない、かように私は考えるものでございます。過日もこの席で、もっとわれわれは近代的生活、これをわれわれの生活自身に取り入れなきゃいかぬということを指摘したつもりでございますが、いま言われましたことは、まさしくそれに該当するんじゃないかと思います。ただ、やや幾分か違っておりますのは、もっと緑がほしい、都市に緑がほしい、あるいは子供の遊び場がほしい、そういうような点が欠けている。だからこそ予算編成にあたりましても、社会資本充実をはかろうとしている。ただいま申し上げるような点についての欠陥を補う下水道の問題、第二次下水道整備計画などは、これは画期的な計画だと思いますが、これは当然のことでございます。私は、いまさら自慢するというようなものでなくて、これと取り組まないでわれわれの基本的な生活環境改善されない、かように思うからであります。まあ幾多そういうような感じがございますが、この辺で私の説明もやめますけれども、とにかくわれわれは近代生活、その生活から取りおくれておる、この点は私どもも率直に認める、この気持ちでございます。
  17. 大原亨

    大原委員 総理大臣の御答弁は、言うなればそつがないのですが、しかし、これからやはり内閣全体として政治に取り組んでいく際に、そういう抽象的なGNPや一人当たり国民所得ということではなしに、具体的な生活中身生活環境を、個々の全部の条件や内容にしたがってどう総合的に引き上げていくか、こういう点に私は政治の重点を指向すべきである。こういう点について、この足並みにおいて、いろいろな点も私ども考えてみました際に、乱れがあるのではないかということを指摘をいたしたかった点であります、いままでの議論から。  そこで社会保障の問題に移るわけですが、日本社会保障水準は、たとえば振替所得その他で計算することもできますが、国民所得に対する社会保障の給付費という国際的な一応の水準を計算するそういう方式でやりましても、先進ヨーロッパの各国の二分の一ないし三分の一であります。特にたとえば老人問題などというふうなのは、公害に次いで第二の社会問題だというふうにいわれておるわけであります。しかしながら、この問題についての総合対策もないわけであります。社会保障にはかなり力を入れたというふうな意見もあるし、あるいは政府・与党の中には、社会保障に力を入れると惰民をつくるというふうな、そういう非常にうしろ向きの議論もあるわけであります。(「ない、ない」と呼ぶ者あり)いや、いまごろは一、二年、公害、物価の問題が起きたからないのであって、その二、三年前、高度成長を謳歌しているときはそういうことを言ったんだ。だから、つまり人間というものはある程度不安におとしいれておいて働かせるほうがい、こういう動物的な考え方、こういう考えは、これはうしろ向きの考えである。  そこで社会保障の問題でありますが、厚生大臣日本社会保障水準が低い上に大きな欠陥を持っていると思うが、その社会保障日本の制度における欠陥ですね、どういう点が欠陥なのかということを主管大臣として、あなたはかなりの年数を経て大臣をやっているわけだから、きのうきょうじゃないわけだから、お答えをいただきたい。
  18. 内田常雄

    内田国務大臣 大原さんが御指摘のように、今日のわが国の国民所得に対する振替所得の割合とか、あるいは社会保障給付費の割合というようなものは、ヨーロッパのEECの諸国に比べると残念ながら三分の一程度、あるいは北欧の諸国に比べても二分の一程度であることは間違いございませんので、私どもは、これから福祉大国を目ざす以上は、どうしてもこれらの先進国に追いついてまいりたいと思います。  しかし、内容を調べてみますると、大原さんも御承知のように、わが国では人口構成がまだヨーロッパのように老齢化を現在はしてきていない。これからしかし非常なスピードで老齢化をいたしますが、そういう事情がございまして、老人福祉施設というものに対して、これまでのところは十分な施策がない。また年金制度などにつきましても、できたばかりで本格的な年金を受けている人がほとんどないというような状態もございまして、いま申し上げますような振替所得ないし社会保障給付費が低い状態にございますが、しかし、これから年金も成熟をいたしてまいりますし、また老齢者人口というものも急速にふえてまいりますので、私どもはこういう事態をほんとうに直視いたしまして、老人対策も用意をいたしまするし、また年金の成熟を待っておる。さらにまた、児童手当のようなものも、まあ今回とにかく出発点にまでたどりつきましたので、今年度といいますか、四十六年度の分はまだ少のうございますが、これもやはり四、五年のうちには成熟するというようなことによりまして先進諸国に追いついてまいる、私はこういうつもりで勉強をさせていただいております。
  19. 大原亨

    大原委員 総理大臣つまり日本社会保障水準が三分の一というのですから、これは問題にならぬわけですよ。この社会保障の欠陥は、年金制度が成熟していないという議論もあるのですが、たとえば国民年金の福祉年金を増額すれば、これは所得の再配分として、保険料だけでなしに、税金の再配分として、これは成熟させることができるのです。厚生年金にいたしましても、一万八千円というのでは、六十歳以後は、いまのインフレ時代に年金に依存をして生活するということはできないわけです。そして厚生年金の場合は、他の職場を求めて働けば厚生年金の給付がないわけです。全く中途はんぱである。定年制についても、五十五歳というようなことで非常にシビアであるわけであります。社会保障とのつながりがないわけです。雇用と社会保障の連関がないわけであります。六十二カ国がやっておった児童手当については、私どももしばしば国会で議論をいたしました。これはちょっぴりではあるけれども芽を出した。これは財界の反対等があったのに芽を出したということは、これは佐藤総理のイニシアチブの問題として、悪口ばかりを言うのも能ではないから、これは若干、十分の一ぐらいはほめておきたいと思うわけであります。それにいたしましても、所得保障の面が非常におくれているということが一つであります。それはなぜかと言いますと、何が問題かといえば、医療保険の問題について総合政策がなくて、一兆円をこえる社会保障の厚生省の予算の中で、半分以上医療費のために金が使われているということはしばしば指摘されたとおりなんです。正当な理由があってその方面に私どもの保険料や税金が使われることはいいわけですが、しかし医療保険の問題を、佐藤内閣の六年間を見ても、全部じんぜんとこれを放置しておいて、そしてこれが社会保障全体の成熟を妨げている原因である、これは社会保障の最大の欠陥であると私は思っておる。その点は厚生大臣いかがですか。
  20. 内田常雄

    内田国務大臣 さっき申し述べませんでしたけれども、わが国の社会保障水準は、御指摘のようにヨーロッパの諸国に比べて非常に低いわけでありますけれども、医療給付費だけはヨーロッパの諸国に比べて遜色がない。ある場合にはそれを上回っておるというような状況にございます。厚生省の予算は一兆三千億でございますが、お話しのように、医療関係の支出というものが半分近くございますが、しかしそれは、弁解ではございませんけれども、医療保険だけの関係ではございませんで、厚生省がやっております、たとえば精神衛生にいたしましても、結核対策、らい対策あるいは乳幼児対策等々、これは医療保険の形でなしに、部分的ではございますけれども公費医療というふうな方法をとっておりまして、そういう面の支出もあることもぜひ念頭に入れていただきたいと思います。しかりしこうして医療保険は国民皆保険でございますので、どうしてもこれは国がお手伝いをしなければ、いま市町村保険でも、雇用者がございませんので、全部市町村住民の保険料負担というわけにまいりませんので、国が四割五分保険給付について国庫補助をいたしますと、これだけでも四千五百億以上かかります。また、今日私どもが御提案いたそうとしております被用者保険につきましても、中小企業を対象とする政府管掌健康保険などでは無理なこともできませんので、毎年政府が二、三百億の負担もしておるというような状況もございまして、このことは決して私は悪いことだとは思いません。ただ、それらの制度の組み立て方、診療報酬でありますとか、あるいは支払いのチェックの方法でありますとか、あるいは保険ばかりでなしに、他の国民健康管理の制度と保険制度がはたしてうまくかみ合っているかというところにはいろいろ問題がございますので、私は真剣に国会とも御相談を申し上げながら、そういう問題に取り組んでまいりたい、かように考えております。
  21. 大原亨

    大原委員 それでは質問を進めてまいりたいと思うのですが、厚生大臣日本の総医療費、あらゆる保険制度や生活保護の分野を含めまして、国民が出しておる総医療費は、昭和四十五年度は幾らになりますか。それから昭和四十三年、四十四年、四十五年と、どういう率で増大いたしておりますか。
  22. 内田常雄

    内田国務大臣 大体私がそらで覚えておりますところによりましても、四十五年度はおそらく二兆円を相当こえているだろうと思います。幸いここに政府委員から数字が届けられましたから申し上げますと、四十一年度は一兆三千五百二十二億円、四十二年度は一兆五千四百六十三億円、四十三年度は一兆八千四百十九億円となっております。国民所得に対する割合は四・四%、四・三%、四・三七%でありますが、四十三年度までしかございませんが、四十五年度を締めくくりますと、現在は四十五年度中でございますけれども、おそらく二兆円を相当こえているんじゃないかと私は考えます。
  23. 大原亨

    大原委員 あなたは勉強不足だ。四十五年度は二兆円を相当こえていると言っているが、二兆五千億になるであろうといわれておるのです。  そこで、さらに質問を続けていく上において、実態についての質問をいたしたいのですが、政府がやっておる、中小企業を対象としております政府管掌健康保険の昭和四十四年度の赤字、昭和四十五年度の赤字、昭和四十六年度の、今回の健康保険の改正はまだ出ておりませんが、これをやらなかった場合の赤字、やらなかった場合の四十六年度までの累積赤字、この四点について、これは政府委員でよろしい、お答えいただきたい。
  24. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 医療保険部長でございます。  四十四年度末の累積赤字が千三百十九億、それから四十五年度末の累積赤の見込みでございますが、これが千九百五億、それから四十六年度におきまして何も対策を講じませんでしたときの赤字が六百七十六億でございまして、四十六年度末には累積赤の見込みが二千四百五十二億になる見込みでございます。
  25. 大原亨

    大原委員 政府管掌の健康保険だけで四十六年度の累積赤字が二千四百五十億円に達するであろうというふうに言われておるわけでありますね。  そこで厚生大臣総理大臣、問題はこのように赤字がどんどんふえておる原因は何かということであります。政府管掌の健康保険だけを取り上げてみましても、なぜこんなに累積赤字がふえているのか。昭和四十二年には特例法を出して、社会党の佐々木委員長や成田書記長が吹っ飛ぶような問題が起きたわけです。昭和四十四年には、御承知のように特例法の改正案を出しましたけれども、しかしその抜いた刀を、抜く手も見せないで、今度は議員立法で本法改正をやったわけです。四十四年にそういうふうな強行手段で本法改正をやっておりますが、こんなふうに政府管掌健康保険の赤字はどんどんふえているのです。ちょっとやそっとではこの赤字の解消はできないというところに一つ問題があるわけです。  厚生大臣からお答えいただきたいと思うが、総医療費が昭和四十五年には二兆五千億円をこえるというふうに、だんだん雪だるまのように大きくなっているが、一年間の医療費の増加率を見てみますと、最近は二〇%ないし三〇%に達しておる。これは賃金や所得国民所得の増大をはるかにこえる増大ぶりである。この事実に対して、どうすればこの問題を解決することができるか、こういう問題について、まず厚生大臣から簡潔に見解を明らかにしてもらいたい。
  26. 内田常雄

    内田国務大臣 お話がございましたように、医療費はふえてまいっておりますが、一般的に申しますと、国民の医療需要というものが非常に伸びている。つまり、からだが悪い場合にはどんどんお医者さんにかかろうというマインドがふえているということと、それから医療水準というものも上がっておりまして、よい薬やよい手術というものも開発され、またいままで保険の対象になっていなかったような技術や薬も、保険の対象に私どもはどんどん入れておりますので、そういう面から医療費の伸びる分が一つございます。それから、政府管掌健康保険は、もう御承知のように千三百万人並びにこれに伴う家族を包容いたしておりますが、それぞれ単独で健康保険事業を営んでおりますような組合単位の健康保険事業と違いまして、中小企業比較的多うございますので、それらの従業員の年齢構成、したがってまたその疾病上の頻度というようなものも多うございます上に、所得が、今日では中小企業もだんだん大企業との格差を消しておりましょうけれども所得、つまり標準報酬にはめ込まれる所得が低位でございますので、結局一人当たりの収入に対しまして、一人当たりの医療給付費のほうが何千円か多いというような状況を毎年来たしておりますので、これらをまとめました結果は赤字にならざるを得ない、こういうわけでございます。  そこで、これに対する根本策は、私は医療需要を押えるとか、あるいは医療水準を低目にして、いい手術やいい薬を飲ませないということは決してやるべきではないと考える一方、やはりこれは勤労者の保険でありますから、比較的余裕を持っております組合健保と、それから政府管掌健保とを、できましたならば一本にしてしまって、そして勤労者保険一本というような抜本構想というようなことも、これは私の先代、先々代の大臣や皆さんが案を立てまして、関係審議会にそういう構想を諮問をいたしておる最中でございますが、これはなかなかむずかしい。そこまでいかなくても、やはり余裕のある組合、また余裕のない組合を並べておいて財政調整をするというようなことも、一つの方法だろうと思います。その上また、薬が医療費の中で非常によけい占めているということも、私どもも当局者として十分承知をいたしておりますので、医療費の中に占める薬が合理的であるようなこともやって、そして医療費の増高の歯どめというか、チェックというようなこともやはりいたしてまいる。昨日も問題になりました添付の廃止等もそれにつながる問題でありますが、そういうような医療費支払いの合理化というようなことも構想をいたしながら、また政府のほうも、これは相手が中小企業の団体の保険でございますから、いままでよりも上そうのめんどうを見てやってほしいということを、私は政府の中でも唱えまして、それらの方法によりまして改善を期してまいりたいと思います。
  27. 大原亨

    大原委員 もう少し簡単に答弁しなさい。  あなたの長い答弁があったのですけれども、私が賛成できる点は、確かに経済高度成長政策の中で人口の流動が始まっておる。都会に人口が集中している。交通機関その他から考えてみても、精神病がふえるとか正体不明の奇病が続出するとか、精神的なストレス、そういうものが大きな病気となって、これが顕在化しているという点が、確かに労働密度の問題と一緒に医療費が増大しておる原因の一つです。しかし問題は、一年間に二兆五千億円にも達するような総医療費の中において、投薬や注射代の占める比率が非常に増大をしている、こういうことが、この政府資料を見ましても一目りょう然である。特に問題が多いのは、ひどいのは、甲表ですから大病院ですよ。昭和四十四年ですが、病院の外来患者に対しまして、払っている医療費の中で五五・二七%が投薬代である。入院患者に対しましては四九・八五%が投薬、注射代である。外国のは、私も先般行きましてフランスやスイス、小さな国等全部調べてみましたが、大体総医療費に占める比率というものは一〇%から一七、八%、せいぜい二〇%の問題でありますね。だから、そういうところに問題があるということは間違いない事実なんですね。間違いない事実なんだ。ほかの指数については、これは見てみましたら横ばい状況なんですよ、全部言わないが。診察、検査――検査がちょっと伸びているけれども、手術その他全部そうだ。だから、私どもがいままでしばしば指摘した点は、医療の需要、金を出すほう、保険料の負担、患者の負担、そういうものだけの側面で赤字財政の対策をやることは、これは片手落ちであるだけでなしに間違いである。医療の供給面、診療報酬の体系、甲乙表の議論もいろいろあるが、医療機関、薬価基準や薬務行政、医学部の教育、医科大学の教育、そういう問題にメスを入れなければ、赤字の構造、赤字基調を安定基調に持っていくことはできない。そういう点を、国民の立場から是正をするということが抜本改正ではないか。そういう問題に対する把握のしかたが厚生大臣は足らないのではないか。簡単に答えてください。
  28. 内田常雄

    内田国務大臣 医療費の中に占める薬、注射代の割合が多いことは私も申し上げ、いままた大原さんも御指摘があったとおりであります。したがって、私どもはこれの合理化ということは、当然やるべく残されたことであろうと思いまして、私もその決意でおります。しかし、その反面は、やはり診療報酬の組みかえ等によって、医師に正当な技術料の評価を認めていくというようなこともまたしなければならないところであろうと思いますので、いまお話がございましたようないろいろの面を含めまして、私は保険制度の改正を一つの車の輪とし、またいまお話がございましたようなことを他方の車輪として、両輪を伴った抜本改正に向かうべきだとほんとうに考えております。
  29. 大原亨

    大原委員 これは大蔵大臣にちょっと聞いてみたいのですが、私の記憶によりますと、あなたは去年の八月、IMFの総会のときに、何かふしぎな病気にかかられて一カ月ほど休まれて行かれなかったですね。あれは、私は聞いたのですが、口蓋炎とかいう病気であって、薬の飲み過ぎだという話ですが、それはほんとうですか。
  30. 福田赳夫

    福田国務大臣 病名は口内炎というのです。口内炎というのですが、虎の門病院で聞いてみますと、原因は二説あります。つまり、いろいろな売薬みたいなものの飲み過ぎじゃないかという説と、ビタミンCの不足からくることじゃないかと、両説があります。
  31. 大原亨

    大原委員 それは両説とも正しいわけだろうと私は思う。それはほかのことで聞いたわけだから……  私は薬務行政一つをとってみても、つまり公害と同じ問題で、化学物質による直接的な身体の汚染の問題なんです。去年、私は食品添加物の問題でチクロの問題、残留農薬の問題を議論した。きのうやはりずっと議論されているけれども、それは大気の汚染とか水の汚染、こういう環境の汚染の問題は、化学物質による汚染の問題なんですね。それから残留農薬とか食品添加物とか薬の飲み過ぎとか、そういう問題は直接的な汚染の問題なんですね。だから、それはきょうあしたのうちに直すことはできないが、しかし、そういう実態を確かめてやるという観点に立つならば、投薬や注射代が国民所得の増大を上回って非常にふえている、総医療費の中で四二%も占めるというふうなべらぼうな国はどこにもないわけだ。社会保障の名前においてそういう汚染が行なわれているというところに問題があるわけです。そういう医療の供給側のほうにメスを入れないで、そういう抜本改正をしないでおいて、患者負担と保険料を増大させるだけで常に急場をしのいでいこうというような考え方というものは、さか立ちをした考え方である。その点について私は議論を進めてまいりますけれども総理大臣にひとつ、これはもう数年来議論したことだから、ある日突然私はあなたに言うことじゃないわけだから、もう理解があるはずだ。どういう考えを持っておられますか。
  32. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お説のとおり、薬にメスを入れなければ医薬行政はどうも地につかない。過日もこの席で渡部通子君からその点で、どうも役立たない薬、また廃止すべき薬、そういうものがいまなお表に載っているとか、あるいはまたおまけがついている、そういうような二重販売価格があるとか、こういうことを許していてうまい医療行政ができるはずはないという御指摘がございました。また、これは今回の会議ばかりではございません。もうしばしば聞くところであります。ただいまのお説、私は同感でございます。これはもうその意味におきまして、薬は整理しろと何度も厚生省に要求し、また厚生省もその線で取り組んでおるはずでございます。
  33. 大原亨

    大原委員 議論を進めていく上において、もうちょっと数字の問題を質問いたしますが、今回政府、厚生省が提案するやに伝えられておる、われらの手元に来てない健康保険の改正案によりまして赤字対策をやるわけですが――これは政府委員答弁してもよろしい。こういう問題は、厚生大臣は長々とわからぬことを答弁するから、政府委員のほうがよろしい。つまり患者の一部負担をふやす、初診料、入院費の一部負担をふやす、それによる昭和四十六年度並びに平年度の負担増は幾らになって、保険料率に換算をすると幾らになるか。それから保険料の、標準報酬制ですから、十万四千円で頭を打っているわけですが、これを二十万円にする、それから前年度のボーナスの三分の一に対しまして、これを報酬に算入いたしまして保険料率を掛ける、そういうことによって収入が幾らふえて、保険料率に換算をすると幾らになるのか、その二つについてまず答弁してください。
  34. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 一部負担金の改定による効果額は、四十六年度年度で二百五十一億円であります。この内訳は、再診時の一部負担による分が二百十四億、それから入院時の一部負担額の増額分が三十六億、合計して二百五十一億でありまして、これを料率に単純に換算しますれば千分の二・九という数字が出ます。それから、今度は標準報酬の上限引き上げ等による財政効果、これは、同じく四十六年度年度で二百八十五億、それを料率に単純に換算いたしますと千分の三・三、それから、前年のボーナス三分の一を加算することによる財政効果額は二百四十六億、これを料率に換算しますと千分の二・八になります。したがって、一部負担金の改定による分と、そういう標準報酬の合理化による分を単純に合計しますと千分の九になります。  なお、先ほど医療保険部長が赤字の見込みを申し上げました数字で、ちょっと言い違えました点がございますので、私、訂正させていただきますが、四十六年度につきまして、何も対策をしなかった場合の赤字額は六百七十六億でございますが、そのあと、四十六年度末の累積赤字見込みを二千四百五十二億と申し上げましたのは、今回考えております対策を実施した場合という数字でございまして、これを何も実施しなかったならば、利子などを含めますと、四十六年度末には三千億近い赤字になります。
  35. 大原亨

    大原委員 つまり、私が議論を結論的にしたいのは――大蔵大臣総理大臣、そういう保険料を上げる、これはばく大な上げ方なんですよ。千分の九も上げることになる。保険料率に換算いたしますと、患者負担というものは千分の九になる。すでに四十二年や四十四年の特例法の改正のときには、千分の三か四の引き上げで、あれほど大きな問題になっているのですよ。今度は千分の九上げるわけです。千分の一は八十七億円に相当するわけですから、それを九倍すれば金額が出てくるわけです。さらに伝えられるところによると、今回の改正によって弾力条項というのを設けまして、千分の七十から千分の八十に保険料率を引き上げることを、保険庁の長官に委任をするという法律があるわけであります。これを加えてまいりますと、千分の十九を保険料や患者負担で増加をしていくという法律を今回出すやに伝えられておる。これはたいへんな問題であります。赤字の原因につきまして私は言いました。そして医療の需要、保険料や患者負担のそういう赤字対策だけでは、赤字基調を変えることはできないという議論をいたしたわけですけれども、これは非常に重要な問題であります。  この問題の議論を進めるにあたりまして、私は総理にお聞きをいたしたいのでありますが、私は、昭和四十年以来ずっと、国会で議論をされたことを全部調べました。あなたが総理大臣になられて以来、ずっと委員会や本会議等で議論になったことを調べたんです。あなたの答弁以外に、斎藤厚生大臣やあるいは坊厚生大臣やそのずっと前の神田厚生大臣、園田厚生大臣、現在の厚生大臣内田厚生大臣、そういう人々が、そういう意味の抜本改正で何回約束をしているか、本会議委員会において約束をしておるか、これは私は全部調べたんです。最初答弁は、厚生大臣総理大臣答弁は、一言で言うならば、昭和四十二年に特例法を出したときに、四十三年から抜本改正をやりますと答弁をしておる、総理大臣も。これが四十四年にできなくて、四十四年に特例法の延長を出したときも、その前後の議論を聞きましても、全部四十六年までには必ずやります、こういうことがずっと出てきておるわけですね。そこで私は、これは総理の責任だと思うわけですが、医療保険制度の一番の欠陥は何かということがわかっていないのではないか。そして、抜本改正を、国会を通じて国民に約束したことを実施しなかったその政治責任は一体どこにあるのか。こういう二つの点を明確にしなければ、私どもは今年度の予算を通すこともできぬし、もちろん改正法律案について、この問題について私どもがうのみにするわけには絶対にいかない。国会の権威からそうである。この二つの点について、総理大臣が責任ある答弁をしていただきたい。
  36. 内田常雄

    内田国務大臣 直接の所管が厚生大臣でございますので、私から、まず露払いの答弁をさせていただきます。  お話しのとおり、昭和四十六年から抜本改正に入るということを政府は言明をいたしてまいりました。それは、昭和四十四年の法律改正の経緯がございました。そこで私も責任を感じまして、その抜本改正にぜひ入りたいというのが、今度提案をいたそうという健保の改正案でございます。  一方、関係の社会保険審議会並びに社会保障制度審議会に、すでに一昨年言明をいたしましたその直後から、抜本改正につきましての諮問をいたしておりますが、それは、先ほど来お話がございますように、複雑かつ広範な問題でございますので、両審議会におきましても、本格的な抜本改正の答申はまだできない、もうしばらく検討さしてほしい、こういう御意見でございますが、私どもは国会での言明がありますので、その抜本改正への、それのアプローチの案を今度出しました。したがって、決して単なる財政案だけではございませんので、政府もいままでの定額補助を定率補助に直すとか、あるいは何千億かにたまりました累積赤字を全部保険の外で、一般会計で肩がわりをするというような抜本的なことをやったり、あるいはまた、御承知のとおり、老齢者保険の見地も入れました改正も今度出しましたわけでありまして、決して抜本改正をのがれた単なる赤字処理案ではございません。ただ、どういう抜本改正をいたしましても、財政問題を避けて通るわけにはまいらないので、今回政府もあるいはまた被保険者も、また一部の患者の方々の負担というようなことも、いわば三者三泣きと申しますか、そういうようなことを取り入れたものになっておりますことは、おっしゃるとおりでございます。  なお、政府委員から説明をいたしました数字につきましては、私、大臣といたしまして、さらにこれはこう解釈していただきたいということはございますが、それはまた関係委員会で、ぜひ私の意見を聞いていただきとうございます。
  37. 大原亨

    大原委員 ちょっとこれは政府委員に聞いてみるのですが、三方三泣きというようなことを言われましたからね。問題は、四十二年に特例法が提起されましてから、政府管掌健康保険に二百二十五億円の国の補助が出たことは、これは御承知のとおりです。しかし、毎年毎年医療費は増大する、保険料の負担や患者負担はふえているのに、これは一つもふえなかったことも事実であります。三方三泣きではないのです。今回は五%の定率になったことは一歩の前進です。しかし、五%の定率によって、昭和四十五年度に二百二十五億円よりどれだけふえるのか。平年度で、四十六年度にどれだけふえるか、四十七年度にどれだけふえるか。そういう点をお答えいただきたい点と、いま政府委員から答弁がありましたが、千分の九に相当する患者負担や保険料の徴収の増大、そういう千分の九は金額に直して幾らになるか、幾らの負担になるか、こういう二つの点について数字を説明していただきたい。
  38. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 四十六年度におきまして、五%の国庫負担が、満年度考えますと、三百二十四億になります。ただし、四十六年度は、いま私ども考えております対策が、一応十月実施ということで考えておりますので、予算的には、国庫補助は四十六年度におきましては、二百七十五億を計上しているわけでございます。  それから、先ほどの料率換算の基礎になる数字でございますが、これは満年度で申し上げますと、上限引き上げによる収入増、これが二百八十五億でございます。それから、ボーナス三分の一加算によります収入増が二百四十六億でございます。それから、一部負担の関係の金額は、これは再診時、入院時合わせまして二百五十一億でございます。合計して約七百八十億ぐらいでございます。
  39. 大原亨

    大原委員 こういうことであります、厚生大臣総理大臣。七百八十億円程度の負担増があるわけです。そのほかに、弾力条項を活用いたしますと八百七十億円ほどとれるわけです。これはあとで加えて議論いたしますが、ばく大なすなわち患者側の負担なんです。それで政府のほうの二百二十五億円を、五%の定率方式にいたしまして平年度で三百二十四億円ですから、いままでの二百二十五億円から言いましたら、七、八十億円の増大ということになるわけです。これは国民の立場に立って見ますと、決して納得できる立場ではないわけです。問題は、私が言いたいことは、総理大臣質問いたしましたが、抜本改正は、供給面の改革を並行してやらなければならぬ。これは一厚生大臣の責任ではない。佐藤総理大臣がイニシアチブを持ってやるべきことである。だから、それを並行してやるという、そういうかまえをいままで昭和四十二年以来何回も国会で公約しながら、国民に対するその約束が実行できていないではないか。実行しないでおいて、保険料と患者負担を、一気にぱっとこういうような形で上げるようなことを意図して予算を組み、法律改正案を出すということは、これは政府対国会の関係、行政対国会の関係、いままでの国会の審議の上において許されないことではないか。たくさん問題があるが、これは一つの基本の問題であります。私は、このことについて、国民の立場に立って考えて、責任ある答弁ができなければ、私どもはこれを了承するわけにはいかない。たくさん問題があるけれども、こういう問題について総理大臣見解を示してもらいたい。
  40. 内田常雄

    内田国務大臣 もう一ぺん補足して説明をさせていただきますが、私はおっしゃるとおりであると思いますので、したがって、診療報酬体系の適正化の問題でありますとかあるいは薬価基準の適正化の問題でありますとか、あるいはまた、先般来しばしば問題になってまいっております指導監査体制の強化の問題でありますとか、そういうようなこと、一方におきましては、法律事項ではございません政府政治姿勢の問題、また厚生大臣の姿勢でもございますので、私は、ぜひ、今回法律案を提出いたします以上は、同時にそれらについても進めてまいる所存でございます。幸いこれらの問題につきましては、昨年末以来、中医協の公益委員中心といたしまして、検討項目を持ち寄っておりますので、私どもは、独断的なことをいたそうと思えばそれはできるのかもしれませんが、そういうことよりも、中医協の公益委員の持ち出される検討項目を論議を尽くしまして、そうして私はそれを忠実に取り上げていく、こういうつもりでございます。  それからもう一つは、さっきの数字でございますが、先生おっしゃるとおりの負担にはなりませんので、これは、またいずれ説明をぜひさせていただきます。
  41. 大原亨

    大原委員 私が質問いたしておるのは、四十一年、四十二年当時以来、四十三年には抜本改正やりますと言っているし、四十四年にも言っている。その最後の言明によると、四十六年までには必ずやりますと言っているのだ。だから、今回の健康保険法の改正案を出すべきか、出すべきではないかという議論が政府・与党の中にあったのは事実です。三百三名だから押し切って出せ、こういうことでやったのです。その中にはとんでもない内容が入っておる。これを国民として黙って通すわけにはいかぬわけであります。幾ら三百三名といえども。  そこで私が言いたいのは、総理大臣が何回も厚生大臣答弁を引き継いでいる。あなたはここにあるように、こんなにたくさん抜本改正について何回も言明しておられるが、その政治責任をあなたは一体どうなさるのですか。昭和四十六年には、そういう問題解決についてのかまえもなしに健康保険の改正案を出すということは、これは許しがたいことではないか。いかがですか。
  42. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大原君は、この問題については最初からよく御承知と思います。経過を長々と説明するとまたしかられますからやめますが、私どもは、この問題をいつまでもほうっておくつもりはない、できるだけ早く抜本改正をしたい、その気持ちでしばしばお約束をいたしました。しかしながら、なかなか複雑多岐にわたる問題でございまして、簡単にはなかなかまいりません。ことに、御承知のように、これをきめます前に私ども審議会にかけなければならない。そこで結論を得ることがなかなかできない。そういうところにむずかしさがございます。しかしながら、何とかしてこの解決をしなければならない状態、そのことは、先ほど来お話しのとおりであります。でありますから、今回は一部的な問題ではありますが改正案を提案して、これが抜本改正への一つの手がかり、足がかりになっておる、かように私は感じております。どうかそういう意味で御審議を願い、ぜひとも御協力を得たいと心からお願いをいたします。
  43. 大原亨

    大原委員 それならもとに話が返りますよ。総理大臣、抜本改正とは何かというあなたの認識から聞かなければならぬ。抜本改正とは何か。今回の改正案は、こんなものは抜本改正じゃありませんよ。私が指摘したとおり、医療の供給面を総合的に需要面と一緒に考えて、総合対策を立てようという政策じゃありませんよ。  それから、あなたはそういう抜本対策について、総理大臣として、本会議でもどこでも四十二年、四十四年に問題となったときに、必ずやる、最終の答弁は四十六年にはやる、こういうのであるのに、その構想も明らかにされていない。ではそういう点について、私は、内閣全体としての抜本改正に取り組む認識の問題と対策の問題について、この際統一見解をはっきりしてもらいたい。私はこれから重要な問題を議論するが、これはその前提条件である。その統一した見解が明らかにされない限りは、私どもがじんぜんとおしゃべりをしている場所ではないわけですから、この予算委員会審議だって順調に進めることはできない。これは内閣で十分相談してやってもらいたい。     〔発言する者あり〕
  44. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 不規則発言はやめていただきたいですが、私は、ただいまの中医協等の結論がなかなか出にくい、その点に一応触れました。これは、もう大原君、私が申し上げるまでもなく御承知のことだと思いますが、この関係は、診療者側さらに国民の側、受診者側、そういうような立場で利害関係の錯綜している、その立場の方々が集まって結論を出そうとするのですから、簡単には結論が出ておりません。そこらにむずかしさがあるのでございます。こういうことをとにかく政府の責任においてやれとおっしゃるんなら、これはたいへん楽でございますけれども、しかし、私どもこの国会でお話を申し上げておることは、国会に対する責任もさることだが、やはり何と申しましても、国会の基盤である国民に対して私ども約束する、そういう立場でございますから、そういう点は十分御了解いただいて、とにかくいま政府が進んでおる、一歩でも近づこうとして、そうして基礎的な考え方を固めておる、それを御審議いただきたい。重ねて申し上げます。
  45. 大原亨

    大原委員 これはまだ、こまかに議論すれば幾らでもあるんですが、大まかな私のいままでの議論は、総理大臣以下に十分了解してもらいたい、閣僚諸君に了解してもらいたい。そういう観点で、このような赤字対策では、これはべらぼうな赤字対策であるけれども、しかし、赤字の、安定基調へ持っていく政策としては、なっておらぬ。昭和四十四年にやったけれども、四十五年には五百億円以上の赤字にこれはなっておるのだ。昭和四十四年にあれほど騒動してやった。四十五年には五百億円以上の赤字になっている。そうして、べらぼうな保険料と患者負担によって赤字対策をやるというふうに称しておるが、政府は五%条項、定率の助成をやったのは一歩前進であるけれども、これはわずかなものだ。これは決して赤字対策になっていないではないか、片手落ちではないか、そういうことを私は議論してきたんです。それを理解するために議論してきたんです。それに対応するあなたの議論ではないわけです。この法律案というのは、中から、これから議論したら、これは討論にたえない議論が一ぱいあるのだ。あるのだが、その基本は、抜本改正を、いままで本会議委員会を通じて厚生大臣総理大臣が約束してきた、そういうことについて政治責任をどうとるのか、どう抜本改正をやろうとしているのか、こういう問題について明快な答弁がなければ――私は決して小またすくいをやろうと思っているのじゃない。暴露しようと思っているのじゃない。これは正々堂々の議論だ。そういうことについてはっきりした見解を示さない以上は、私は、この予算審議を順調に進めるわけにはいかない。このことの見解をはっきりしてもらいたい。国民として、私は総理大臣に要求いたします。
  46. 中野四郎

  47. 大原亨

    大原委員 あなた、だめだ。あなた、総理大臣じゃない。
  48. 中野四郎

    中野委員長 指名したのだから……。
  49. 内田常雄

    内田国務大臣 委員長から私に……
  50. 大原亨

    大原委員 だめだといったらだめです。あなた、総理大臣じゃない。
  51. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が厚生大臣を指名いたしますから、厚生大臣の説明をお聞き取りいただきたい。そんならいいでしょう。
  52. 内田常雄

    内田国務大臣 どうもおそれ入りました。  ちょうど私はここに速記録を持っておりますが、昨年の二月に同じ大原さんの御質問に、抜本改正とは何ぞや、どういう準備をしているかということをお答えをいたしておりますので、その気持ちといまも変わっておりませんが、それは私は、抜本改正には三つの面がある。一つは、いまの健康保険制度というものはたくさんあるから、それを合理的に、負担の均衡とか財政調整とかいうものを含めて、あるいは老人保険の創設というようなものも含めた、保険制度そのものの大改正というものを目標にするということが一つと、もう一つは、先ほどから大原さんが御指摘なさいますように、医療費支払いの組み立てがえの問題と申しますか、診療報酬適正化の問題等、そういう問題が第二だ。第三番目は、さらに全体の国民健康管理の問題、これは医薬分業の問題もございましょうし、そういうような保険外の制度の問題、この三つを含めて私は抜本改正と心得て、そうしてこれらと取り組んでまいる、こういうことで、またその同じ内容で関係審議会にも諮問をいたしておりますが、たいへん広範な問題でございますので、審議会では、全体の最終構想を示すのにはまだ時間がかかるということでございます。  そこで、しかし、国会での言明もございますので、ちょうど昭和四十六年度からその三つに取りかかるような施策として、法律的の制度に関するものは健康保険法の改正として、今度の国会に私どもは提案を計画をいたしておりまするし、また、診療報酬の適正化等につきましては、先ほど申しますように、中医協を中心としてやっております。その他の制度面につきましても、私が言明どおり、できる限りの努力をいたしておりますので、さような面から御理解をいただきとうございます。
  53. 大原亨

    大原委員 時間のむだじゃないか、そんな答弁。もう一回言いますよ、総理大臣、こういうことです。  昭和四十二年に、特例法を出して二カ年の時限立法をつくった。これは抜本改正が前提である。昭和四十二年に特例法を提案したのは、抜本改正が前提である。国会では、形は変わったけれども、その言明については変わらないと、総理大臣は本会議で何回も言っている。そういうことについて問題の本質は――今回は、本法を改正して千分の九プラス千分の十、いままで考えられなかったような被保険者の負担を強化しながら、そして開き直った形で赤字対策をやろうとしているじゃないか。だから、この議論を進める場合には、この提案が必要であるという場合には、いままでの抜本改正についての具体的な内容、方向を示して、政治責任において示して、そして関係方面に諮問する。そういうことを通じてやるという点について、明快な政治責任を佐藤内閣が示さない限りは、われわれは、負けたりとはいえ、小なりとはいえ、野党としては絶対に了解できないということを言っているのである。これは正論じゃないですか。この今回のは抜本改正にならぬということを、いままで言ったんじゃないですか。だから、この点について総理大臣が責任ある言明をしない限りは、私はこれは進めるわけにはいかぬ。そのほかたくさんあるでしょう、問題は。問題はあるけれども、この問題を含めて、前提条件はこれではないか。これは時間がたつばかりだ。だめですよ、そんなことでは。総理大臣は明快に答弁してもらいたい。
  54. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大原君もよく御承知のとおりで、先ほど来から経過をいろいろお話ししました。いまお読みになったその経過を、私は否定するものじゃございません。四十二年以来の基本的な根本改革をするという、そういう問題であります。しかしながら、この問題が一朝一夕に片づくとはお考えではないだろうと思います。そうでしょう。やっぱり積み重ねが必要だ、かように考えます。そういう意味のいま改正案がでておるのですから、その点において十分御審議をいただき、皆さん方の御意見を、私ども尊重しないわけではございません。十分その場において御審議を願いたいとお願いいたします。
  55. 大原亨

    大原委員 御審議を願いたいと言われますね。それならば、健康保険法の改正案を出しなさい。出ていますか。ここへ出ていますか。予算の総括質問があした終わろうとするのに、出ていますか。法律案が出ていないじゃないか。何を審議せよと言うのですか。
  56. 内田常雄

    内田国務大臣 予算関係の法律でございますので、私どもも、できる限りすみやかに国会にその法律案は、法律案として提案をいたすつもりで準備をいたしております。
  57. 大原亨

    大原委員 そんなことは百も承知している。なぜ社会保険審議会社会保障制度審議会でこの議事が進まぬかといえば、社会保険審議会に健康保険の改正案要綱なるものを厚生大臣が提案した。そうしたら、資本家の側も、労働者側も公益委員も、全員一致して、抜本改正についてすみやかな結論を得ない限りは、こういう目先だけの保険財政対策ではだめだと、こう言うて全部が反対した。そういう経過があるじゃないか。それは社会保険審議会として、健康保険上の権威ある諮問機関であるから、そういう責任ある議論をすることは当然である。そのことがおくれているのが、私が議論している問題である。中医協の問題で神田厚生大臣の職権告示以来、これはずっと問題になってきた問題であって、この問題について私に言わせるのだったら、まだこれから幾らでも言うことがある。  それから、その前提として、政府が全体として抜本改正について正しい姿勢、大きな方針を示すことが、この全体の問題を解決する道である。国会はおしゃべりの場ではないわけだが、しばしばここで答弁なすったことについては、私は政治責任を明らかにしてもらいたい。抜本改正とは何かという認識、抜本改正をどういう考え方でやっていくのかという問題、そして今回の伝えられる健康保険の改正案の取り扱いの問題、こういう三点。中身はまだありますよ。ありますけれども、三点について政府が責任ある答弁をしない限りは、この審議は、私は国民の名において促進していくわけにはいかない。これは決してむちゃじゃないのだ、そのために私は議論してきたのだから。いかがですか総理大臣
  58. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま、中医協でこういう問題についての各側の代表者からも反対されている、こういうことを大原君御自身が御指摘になりました。私ども、ただいま診療者側あるいは組合側、さらに受診者側等について、もっと説得を必要とするものがあります。一ぺんに問題を解決するということができない限りにおいて、私どものいまのやり方、これは私ども間違っておるとは思いませんので、その点を御了承いただきたい。
  59. 大原亨

    大原委員 私の主張は全然撤回する意思はないし、了解できない。これはまだ時間があることですから、時間中にまだ詰めてまいりますが、厚生大臣、社会保険審議会や制度審議会において議論している――社会保険審議会は専門的な三者構成の審議会である。一部に伝えられるところによると、その審議会において、とうてい政府の、厚生大臣の態度というものは、各サイドから了承を得られない。これは日経連その他を通じて総理大臣が工作するということを言われるかもしらぬ。しかし、それでも国民の前では、はっきりこのことについて政府に賛成の意思表示はできないだろう。一部伝えられるところによると、つまり見切り発車、社会保険審議会を無視して、そうして政府案を国会に出すということが一部伝えられておるが、それについてはどう考えておりますか、厚生大臣
  60. 内田常雄

    内田国務大臣 御承知のように、せっかく両審議会に諮問をいたしまして御討論いただいておりますので、私は、その御討論の結果、御意見の表明がいただけるものと考えておりまして、説明を現在尽くしておるわけであります。
  61. 大原亨

    大原委員 見切り発車は……。
  62. 内田常雄

    内田国務大臣 見切り発車をするというような考えはございません。
  63. 大原亨

    大原委員 これは中医協をはじめ社会保険審議会の意向を無視いたすということになれば、組合管掌の健康保険は千幾つあって、それぞれ運営審議会を持って民主的にやっている、保険料の負担その他。これは政府管掌であるから、だから三者構成の審議会は――当然にこれがきまったならば強制執行するわけだから、源泉徴収、強制執行するわけだから、これは財政法第三条の課徴金と同じだ。ですから、これは慎重の上にも慎重を期するべきであると思う。  そこで、私はもう一つ、この抜本改正の問題に関係して聞きたいことがある。去る一月二十九日であったか、社会保険審議会の席上において、昭和四十六年度、新年度の途中において医療費の値上げがあり得るという政府側の答弁がなされたやに新聞に報道され、私も速記録をとってみると間違いない。そういうことは一体どういうことであるのか。保険料を大幅に引き上げて、患者負担をふやして、しかも予算はまだ通っていないし、法律案も出ていないのに、そのこととは別に医療費の値上げ、そういうことを方針として決定しているやに伝えられることは、これは行政の独走である。国会の無視である。本気で抜本改正などを考えていない証拠である。この事実を、私は事実だけをひとつ聞きたいけれども、どうなんです。
  64. 内田常雄

    内田国務大臣 診療報酬の適正化ということが問題になっておりますことは間違いございませんが、しかし、厚生省当局が、この際医療費の引き上げ、診療報酬の引き上げを計画しておるというような発言を保険局長等がしたということは、私は聞いておりません。しかし、保険局長もおりますし、自分でもそのことを釈明したいと申しておりますので、よろしければ本人に説明をさせたいと思います。
  65. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 事実だけを申し上げます。  当日の質疑の速記録によりまして、回答のその部分を読み上げてみます。  質問は、いま病院等では非常に経営に苦しんでおる、年内の医療費引き上げは必至である、常識であるというふうに思われるが、どう考えるかというような趣旨の質問でありますが、それに対する回答を読み上げてみます。  この問題については、特に病院関係等では、昨年の暮れの年越しをするのに非常に苦労したというようなところが多うございまして、病院が非常な赤字に悩んでおります。そういうところから、すでに医療費値上げの要請が来ておるわけであります。しかしこの問題は、それこそ中医協の場でもって最終的に決定されるものでありまして、また中医協に対して正式な要求がありませんので、私どもといたしましては、今回の改正としてこの点は考慮いたしておりません。ただ医療費改正の問題は、現在の医療費では病院がやっていけない、あるいは必要な医療が確保できないことになりますれば、これはこれとしてやはり検討しなければならないと考えております。この改正を考えるにつきまして、特にそのことを頭に置いて料率の改定等を考えたとか、そういうことはいたしておりません。  以上でございます。
  66. 大原亨

    大原委員 そのあとにまだあるわけで、いま読まれたとおりで、私も読みましたが、しかし、医療費の値上げということが当然に予想し得る、その幅がこういうようになった場合には、こういうケース、こういうケースということを言っておることは間違いないのです。これは非常に重要なことなんです。そんならば本年度の予算に出てしかるべきです。たとえば、公務員の春闘その他によるベース改定であるならば何%程度ということはやったんだから、昨年も医療費値上げをやったわけですから、私どもは、何も医療費値上げに反対しているのではない。技術料を尊重する、技術を正しく評価する。そうして売薬医療、薬を売ってもうけるというようなことを助長することはやめる。そのことは悪徳の医師やあるいは悪徳のメーカーを助けるだけになる、保険財政が赤字になる。そういう二つの原則で抜本改正をやるべきであることを主張いたしておるわけですから、医療費値上げについて反対ではない。ないけれども、正当な理由がなければならぬ。正当な理由が客観的にあるとするならば、私は本年度の予算の中において、あるいは法律改正の中において、そういう点が説明されてしかるべきである。であるのに、保険局長が保険審議会の席上でそういうことを言いふらして、全く行政独走だ、国会を無視するもはなはだしいことであります。これはもうだめだ。  そこでもう一つ、私は重要な疑惑について聞きたい。千分の七十から千分の八十に保険料を上げるという多年の厚生省の懸案がここに頭を出しておる。三百三名を背景にして出しておる。これは一年間にすると、八百七十億円の負担である。千分の一が八十七億円であるから、十倍すると八百七十億円の負担を保険庁長官の告示、この問題はあとで議論するが、そういうことでやろうとしておる。私はいままでの経過の議論から見て、このことは財政法第三条の精神に違反をする、その背景をなしておる憲法に違反をする、こういうふうに思う。これについて厚生大臣見解を示してもらいたい。
  67. 内田常雄

    内田国務大臣 健康保険制度ができましてから昭和四十一年の改正までの間は、御承知のように料率の弾力条項というものがあったようでございます。四十一年から改正をされて今日に至ったものを、今回一定の幅のもとに、しかも社会保険審議会審議を経た上で弾力条項を設けさせていただこうということを考えておるわけでありますので、本来の姿に戻すといいますか、昔やった姿に戻そうというわけでございます。  もう一方、御承知のように労働関係の保険では、あるいはまた共済組合等の保険では同じような形がとられておりますので、そういう例にもならってやりたい、こういう次第でございます。
  68. 大原亨

    大原委員 この点は、私は簡潔に明快に指摘しておきますよ。というのは、昭和四十一年までにあった弾力条項というのは、千分の五十五から千分の六十五であった。法律できめることになっておるから、千分の六十をきめておいて、保険庁長官の告示で五十五から六十五の間の弾力条項をきめておった。そして千分の六十五まで保険料を上げる際に、千分の六十五で弾力条項をやめて固定してある。それから特例法の改正が始まった。今回は千分の七十から千分の八十なんです。つまり標準報酬というものは、賃金が上がり所得が上がっていけば、料率は一定しておりましても、こっちがふえるのですから保険財政はふえていくわけだ。その中で何らかのまかなう方法を考えるということが第一の原則であるはずだ。だから当時は、千分の六十を中心として千分の五十五、千分の六十五、そういう弾力条項を設けてその間で運営するという、労働関係の保険と同じようにやっておったけれども、しかし今回は、千分の七十から一気に千分の八十に上げる。こういうことをどういう法律で――中身はわからぬ。示しておらぬのだからわからぬ。わからぬけれども、そういうでたらめなことをやっておる。これは健康保険法の精神のみならず、課徴金や、あるいは国家が独占的な権力を背景として国民から取り立てるそういう事業上の資金、そういうものについて法律できめる、国会の議決を要するという憲法の精神からいうなれば、問題がある。なぜかといえば、これは歯どめがない。これはやったからといって、千分の八十にしたからといって、それで安定するという歯どめがない。これは赤字基調の問題について私が質問したとおりである。そういうことをやるということは、これは健康保険法や財政法や憲法の精神をじゅうりんする。実態論は私が述べたとおり。そういう重大な問題がある法律案をいまだに出さない。しかも、抜本改正については何らの誠意ある統一見解が示されない。これについて、法律が出ていないんだから、出していないんだから、そういうことを含めて、予算委員会においても、あした終わるまでにこれは出せ――出しましょう、努力しましょう、こういうことを言っておる。  そういう点からいって、私はそれらの問題を踏まえながら総理大臣にあらためて質問いたしますが、今回の健康保険の改正案は、いわゆる保険料の値上げ、患者側の負担、需要側、そういう国民の側に負担を強化することによって、増加することによって、赤字対策をしようとするのであって、抜本対策では断じてない。総理大臣以下みんな抜本対策についてはしばしば公約したとおりである。しかも、それに対する展望を示さないでこの予算の審議を進めようという、そういうことについて私は国民の立場から納得できない。したがって二、三の点を指摘したけれども、これらの問題に対する政府の統一見解を含めて、抜本改正に対する責任ある総理大臣答弁を私は求めたいと思います。
  69. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来私からも申し上げ、同時にまた厚生大臣からもいろいろお答えをいたしました。どうもその答えが満足がいかぬということで御不満のようです。重ねて厚生大臣からいま考えておる政府の最終案を申し上げさせます。
  70. 大原亨

    大原委員 委員長、その答弁の前にちょっと、厚生大臣答弁する前に、あなたは、見切り発車はしない、これは重要問題であるから、こういうことをはっきり言いました。私は当然だと思うのです、こういう重大問題について。これはなぜかというと、抜本改正に対する責任ある言明がなされていないからなんです。私どもそのことを議論してきましたけれども、抜本改正については、つまり医療の供給の側、診療報酬体系、薬価基準、薬務行政の問題、医療機関の問題、あるいは医科大学の問題、そういう問題全部含めて供給側の問題、そういう問題について前向きな総合的な対策が、ともかくも私どもがやや納得できるような案を示すという方針がない限り私は了解できないということを主張いたしておりますね。たとえば医師のモラルの低下というのは何かというと、私立大学の医学部に入るのにたくさん金がかかるということである。去年、ことしにかけまして私立大学はじゃんじゃんできておるが、入学金は一千万円、千五百万円取られているのですよ。それでも入れないわけだ。それであってなおかつ教育と研究についてモラルを確立することができるか。できないでしょう。投薬や注射について、一番たくさん使っているのは、開業医もさることながら、診療所ではなくて、大学病院とか、国立病院とか、県病院とかの公的医療機関が、一番苦しまぎれに使っているのです。全体の体系が悪いから。五〇%をこえて投薬、注射に使っているんだ。あなたの足元じゃないか。これは独立採算、独立経営の問題と関係がある。これは国立の機関などは赤字が出るほどいいんだ。それほど国民にサービスしていることになる。僻地医療もやっていないじゃないか。保険料は巻き上げているけれども、僻地に対する医療はやっていないじゃないか。そういう点から考えてみると、抜本改正はできておらぬと私は考えておるわけであります。  だから私はそういう見切り発車をしないという話はわかったが、じゃいつ健康保険法についての改正案を出すのか。そういうことを含めて、私が指摘した抜本改正について、納得できるあなたの答弁があれば、その裏づけの答弁として総理大臣見解をお聞きします。
  71. 内田常雄

    内田国務大臣 先ほど来、ことばはへたでございますが、私は抜本改正は広くとりまして、単に健康保険制度だけの問題でなしに、診療報酬の適正化とか、あるいは国民健康体制というようなものの整備をも考えながら計画をいたしまして、最終的な抜本改正の答申につきましては、審議会のほうがまださらに十分研究をしておらぬということでございますので、今回は抜本改正に手をつけるという意味の、その制度の改正案を出すわけでございます。  それから、現在社会保険審議会並びに社会保障制度審議会にこのことも申し上げまして論議をいたしておりますので、私は論議をいいかげんにして、論議も尽くさないで見切り発車をするということはしないので、私といたしましてはできる限り誠意を尽くして両審議会にも説明をいたしまして、そしてこの予算の審議中に出す、こういうことでございます。ですから、誠意を尽くして審議会にも私どもは御説明をいたしますので、審議会におきましても必ずこの予算の審議に間に合うように御意見の表明がいただけることを私どもは期待し、またそれをお願をいたしておりますので、審議会をいいかげんにして見切り発車をするという意味なのではございませんので、その点は御了承をいただきたいと思います。十分説明を尽くしてまいる。国会のほうも、いつまでもほうっておくわけにまいりませんので、これは国会の予算審議に間に合うような時期までに出す、こういうことでございますので、その辺を御理解をいただきたいと思います。
  72. 中野四郎

    中野委員長 田中君より間連質問の発議がございますが、大原君の持ち時間の範囲内においてこれをお許しいたします。田中君。
  73. 田中武夫

    田中(武)委員 見切り発車はしないと言ったのでしょう。それなら審議会の結論は一体いつごろに出る見込みなのか、それを受けて健康保険法の改正案はいつ国会へ提出するのか。それがはっきりしない限り、予算の重要な部分を占めるところのこの問題ですから、これ以上の審議は続けていけないのではないか、私はこう思いますが、どうですか。
  74. 内田常雄

    内田国務大臣 まず見切り発車の件でございますが、私が見切り発車と申しておりますのは、審議会をいいかげんにしてということではないということでございますので、審議会に十分私は説明を尽くしました上で国会に出す、こういう意味でございます。しかして、これはいまお尋ねのように時期がございますので、国会の審議に間に合う時期、こういうふうに思っております。
  75. 田中武夫

    田中(武)委員 国会の審議に間に合う時期とはどういうことなんですか。もうすでに総括質問は終わろうとしているのですよ。あと一般質問、分科会と、こう来るのですがね。国会の審議が終わる時期とは一体どういう時期なんですか。しかも、予算審議は国会がやるのです。それが終わるか終わらぬかということはあなたのほうでわかるのですか。はっきりしてください。
  76. 内田常雄

    内田国務大臣 いままでの政府部内の打ち合わせでは、私どもは予算関係法律につきましては、二月の十六日の閣議で最終的なものをきめて国会に出す、こういうことに実はいたしております。それよりも早くお出しするのはいいわけでありますので、場合によりましては、二月十六日以前におきましても要綱というような形でお出しをしよう、こう考えております。
  77. 大原亨

    大原委員 この二月の十六日というのは、行政府のほうの一方的な答弁です。われわれは予算委員会においては、総括質問、あした終わりますが、あした終わるまでということを言っているのです。総括質問総理大臣が全部出て、第一段の討論をする最中にこういう重要法案が出ないということで、私は、質問の内容についても触れられない、そういうようなことでは審議ができないですよ、法律について。それと一緒にこれが延びていることは、あなたが抜本改正について説明したことでは全然納得できないということだ。前から言っておる。これは、やはり内閣全体の政治責任の問題だ。だから抜本改正について、どのような国民が納得できる取り組みをするのか。予算関係重要法案についていつ出すのか、こういうことについて、国会と国民が納得できる、そういう政府の統一見解を、委員長、私は要求いたします。これはむちゃじゃないですよ。これは堂々と筋の通った話だ。それでなければ、私の質問は建設的に進めていくわけにはいかない。理事で御協議いただきたい。
  78. 中野四郎

    中野委員長 大原君に申し上げますが、本日正午からの理事会において、これを御説明申し上げる御約束でありまするので、いずれ、その席上において御了解を得ると思いまするから、本日の質疑をどうぞ御続行願いたいと思います。
  79. 田中武夫

    田中(武)委員 見切り発車はしないと言うのでしょう。そうすると、審議会の結論はいつごろに出してもらえるという見通しがあるのかないのか。もし、この予算審議の間に出なかった場合、それでは法案をどうするのか。出すのか、出さないのか。そして、法案をいつ出すのか。これをはっきりしてもらわなければ、予算の大きな部分を占めるところの問題なんですから、これ以上審議できませんよ。少なくとも法律案でも、いつ出すのか、それをはっきりしてもらいたいのです。
  80. 内田常雄

    内田国務大臣 いま、私が申し上げましたように、十六日の閣議に私はかけたいと思っております。それで、それまでに答申は――私は、できましたならば答申というかっこうで、あるいは意見書というようなかっこうでいただけるように審議会にもお願いをいたしますし、またそういう努力もいたしておりますので、これは形式はどういう形になるか知りませんが、審議会を私どもは決してボイコットをするわけではなしに、審議会で十分私ども意見を尽くしました上で十六日に出すということで、答申の形になるかどうかということは、それは向こうの会長に私はおまかせをいたしたいと思います。
  81. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、最終的に一体健康保険改正法案はいつ国会に出すのです。いつ出すのです。
  82. 内田常雄

    内田国務大臣 二月十六日の閣議を午前中にいたしまして、その日中に国会に出せるようにいたします。二月十六日中に閣議決定をいたしまして、その日に国会に出せるようにいたしたいと思います。
  83. 田中武夫

    田中(武)委員 二月十六日までには出す。ところが、われわれが要求しておるのは、総括質問の終わるまでに出してもらいたいということなんです。また百歩譲って、二月の十六日に出すというならば、それまでに審議会の三者の意見が出て、結論が出るのかどうか。それはどうなんですか。もし出なかった場合、二月十六日という日を設定して見切り発車するのですか、どうなんですか。
  84. 内田常雄

    内田国務大臣 その見切り発車ということばの意味でございますが、ほったらかしてという意味ではございませんで、十分説明をいたします。つまり言いかえると、定時発車ということになりますか、それまで十分説明をいたしまして、そしていろいろな御意向が反映されますので、その結果が書面で答申をいただける場合もございましょうし、あるいは意見書の形になるかもしれませんし、あるいは口頭で御意見があるかもしれませんし、そういう状態のもとに、国会にはいま申しますような提出のいたし方をいたします。  なお、その前に、要綱案等でも私は必要によってお出しするようにもいたしたいとも考えております。
  85. 大原亨

    大原委員 見切り発車というのはわかっておるのですよ。つまり三者の意見が大体において議論を尽くして一致するということは、いままでの経過から見て、抜本改正にからんでいるからこれはあり得ないのですよ。そういうのであるのに、昨年末突然出してやっておるのだ。そこで見切り発車というのは何かといえば、公益委員の一部の意見です。公益委員の一部の意見で、これが意見書をもって答申があったと称して、そうして政府の法律案を出そうとしている。それは見切り発車ですよとこう言って、私はことばを簡単に言ったのだけれども、それを言っておるのだ。あるいは社会保障制度審議会だけの答申でやる、ここは各省の次官がおるから。そういうことで社会保険審議会を無視する。これも見切り発車。二つの場合がある。だからそういうことをやろうとしておるのだ。押し切ろうとしておるのだ。  それではもとへ返って、抜本改正についての政治責任はどうしますか。いかなる内容をもってこれからの改革を進めようとしておるのかということについて、納得のできる政府答弁を私は求めておる。この二つは裏表ですよ。その点について統一見解を、委員長、やってもらいたい。統一見解を出してもらいたい、せっかく日も切ったのだから。
  86. 田中武夫

    田中(武)委員 いま大原委員の言った統一見解と同時に、意見書でもつけてという考え方があるのじゃないかと思うのですが、この意見書というのは答申ではないわけですね。法律的には、答申を得て提出するのでしょう。したがって、意見書だけでは異様な国会提出となるのじゃないですか。その辺のところをはっきりしてください。
  87. 中野四郎

    中野委員長 いま統一見解厚生大臣みずからが行なっておりますから……。
  88. 内田常雄

    内田国務大臣 この抜本改正についての諮問は、御承知のように、一昨年の八月に両審議会に出してございます。しかし、これは先ほど来御議論がございますように、関係するところが広範多岐であるので、まだ相当の時間がかかる、こういうことを前提といたしまして、明年度措置についてはこれこれの点に十分留意をされたいというような意見書を両審議会からいただいております。しかし、私どものほうでは、それをもって今度の国会に出す――諮問あるいはその他の手続が一切要らないとは解さないで、国会に出す法律案の要綱の形にいたしましたものを、形式上諮問という形にして両審議会にお出しをいたしてございまして、いろいろ御議論をいただいております。これは一昨年からの全体の諮問に対する明年度措置についての、やり方についての念のための御意見伺い、私はこういうようなつもりでやっておりますので、それに対しまして両審議会のほうが答申書という形でお出しくだされば一番けっこうでございますし、あるいはまた意見というようなかっこうでお申し入れがあるかもしれませんし、あるいはこれはもう前に、ここにございますけれども、両方の審議会の一方の社会保険審議会からは、昨年の十月ないし十二月の間に意見書というものをいただいてもおりますので、それの上乗せの御意見としていろいろなことを承れば、そういうことを基礎といたしまして法律案を国会にお出しできる。しかし、できる限り、形式的にも答申書とかいう形であれば一番望ましいわけでございますので、そういう形にしていただきますように目下努力をいたしておりますので、みな御理解をいただけることと私は思っております。
  89. 大原亨

    大原委員 社会保険審議会の答申を尊重するということと、見切り発車をしないということをあなたは最初言ったのです、そういう質問に対して。  そこで、私は議論の中でも言ったのですが、十分議論したい。しかし、法律案が出ていないから議論できないのだが、たとえば千分の七十から千分の八十に保険庁長官の告示で上げられるというふうなことは、特例法の審議の経過を無視しているわけだ。赤字を解消する保証はないわけです。極端に言えば、千分の九百九十九にしても、数字で上限を示せばこれは合法的なのかということに議論はなってしまう。歯どめがないじゃないかという議論はいままでした。それは抜本改正の問題なんです。これはすべて政府政治責任の問題なんです。ですから私は、この審議会や制度審議会審議や答申というものは、国民の納得できる形においてなされなければならぬ。その上において、見切り発車がないということをあなたが言ったことは当然のことである。であるとするならば、そそくさとこういう中身のわからないような法律案について、それを前提として予算の審議を進めることはできないじゃないか。ましてや、抜本改正について、その明確な方向づけをしないでおいて、そうしてこの議事を進行するということはできないではないか。その二点において、私は、もう少し責任ある具体的な佐藤総理以下の見解を求めるということは、国会議員として当然のことではないか。したがって、私は何回も同じことは繰り返さない。それらの問題について政府の――非常に内田さんは口数が多いから、どういうことを言っているかわからぬから、それらの問題を含めて、政府の見通しと考え方の基本について、はっきりした統一の見解を私は求めます。ただ同じことを繰り返したって建設的な議論になりません。その上に立って私は議論を進めていきたい。重要な問題がまだありますから、議論を進めていきたい。  もう予算の総括質問は終わるのですから、一般質問、分科会に入っていけばどんどん進んでいくんですよ。ですから私は、この重要な段階で――予算委員会理事会においても五日までというリミットを示しているわけです、委員会側としては、国会側としては。それらを勘案しながら、これは話し合いの余地が若干あるだろう。あるだろうが、私はこの二点の問題について、責任ある見解委員長のほうで取り計らわれるように要求をいたします。
  90. 中野四郎

    中野委員長 内田厚生大臣より明快な答弁を求めます。
  91. 内田常雄

    内田国務大臣 健康保険制度の改正の中には、いまのように定率改正の問題等、国会で十分御議論をいただかなければならない問題があると思いますので、私といたしましては、先ほど述べましたような考えもありますけれども、これは十分国会で御議論をいただきたいと存じます。  それから審議会の尊重のことにつきましては、もちろんそういうつもりでおりますので、国会に提出するとお約束をいたしました二月十六日までの間に、答申あるいはこれにかわるべき何らかの御意見をいただけるように私は努力もいたしておりますし、今後も努力をいたすものでございますので、それらの御意見も反映して国会に提案をいたしたいと思います。
  92. 大原亨

    大原委員 もう一つの点。
  93. 内田常雄

    内田国務大臣 抜本改正の基本方針につきましては、私はもちろん今度の制度改正だけをもって抜本改正の全部と考えるものではございませんで、診療報酬の適正化でありますとか、あるいは国民健康管理に密着する諸般の医療制度の問題等を、車の両輪といいますか三輪といいますか、あとのほうのそういう施策も、十分私は、並行してやるべきことはやる、また聞くべきことは聞くという方向で進んでまいりたいと思っております。
  94. 大原亨

    大原委員 抜本改正、医療の供給側の指摘をした問題点、そういうものについて、やるやると言うだけであって、中身は何もないわけだ。いままでもやってこなかった。一部はやってきたけれども、ほとんどやってこなかった。今回の法律案にも定率国の補助ということでちょっとあらわれているけれども、全体から見れば赤字対策にならぬわけですよ。ですから、そういう問題、項目ごとに抜本改正で議論された問題、自民党の医療対策要綱もあるわけだし、牛丸案もあるわけですから、それらはいまたな上げになっているわけだから、現段階においてそれらを整理した問題点について、どういうふうな方向でやるのだという、責任のある明快なそういうことを示すと一緒に、それらの問題を示すことは社会保険審議会や制度審議会審議というものを軌道に乗せるもとになるから、そういう問題を含めて私どもが見通しをつけたい。それについてあなたのいままでの答弁というのは、十六日というあなたは見通しについて努力をするということを言ったけれども、その見通しがはっきりしないのと、予算委員会理事会においては五日までということを言っておることであるから、それらの問題を含めて、もう少し具体的な点を文書によって私は政府のほうで示してもらいたい。でないと、あなたの言っていることは抜本改正でも何でもない。やります、やりますと言って、いままでやってきたことを、昭和四十年以来繰り返してきたことをあなたは言ったにすぎないのだ。これは何ら事態の進展にもなっていないし、これは佐藤総理のほうから責任ある答弁をいただきたい。それでなければ建設的な議論は進まないですよ。でなければ総理大臣厚生大臣の首を取りかえてからあらためて出直してもらいたい。
  95. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは厚生大臣の問題じゃなくて私自身の政治姿勢の問題だろう、先ほどからそういう意味で私についてもずいぶんきびしい批判をいただきました。  四十二年以来抜本改正をやると言いながらできてないじゃないか、こういうおしかりでございます。私も今日まで抜本改正ができてないこと、まことに残念に思っております。しかし、今度やろうとしておる。これはまあ一ぺんに問題が解決するということならけっこうですが、そうもいかないようですから、まずできるものからやって、そうして基本的な改正に取り組む、そういう姿勢が望ましいだろう、かように私思いますので、今回厚生大臣の提案するものについて、先ほど来、提案がありましたら十分御審議をいただきたい、かように申し上げておる次第でございまして、おそらく過去の責任を責めるばかりで、それで十分だというわけでもないだろう、建設的なお考えのもとにこの問題と取り組め、かような御叱正でもあろう、かように私思いますので、いままでのいきさつを説明しながら今後の取り組む姿勢を申し述べてお答えといたします。
  96. 大原亨

    大原委員 いまの点は二点において納得できないです。出てきたならば審議してくれと言っている。そういう重要な法案をいまだに出してないということは、政治責任をどうするのだということにやはりなる。まず手をつけてと言われるけれども、この手のっけ方が、どろ沼にはまるようなものではないか、問題点ははっきりしておるのに、抜本改正についての展望がないではないか。こういうことにおいて、私はいままで抜本改正を公約されて、いまのどたんばで、健康保険の改正案の問題が議論になっている、そういう際における抜本改正に対する総理大臣見解としてはこれは私は納得できない。これは依然として進んでない。だからこの点については、もう少し十分責任のある具体的な、総理としてのお答えを私はいただきたい。
  97. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この改正については、厚生大臣が諮問している機関、これはもう御承知のとおりでございます。早急になかなか一致したその結論が出てこない、たいへんむずかしい状態にあること、その状態のもとで厚生大臣はあらゆる努力をして、そうしてお約束しておるように、この審議の期間中、いわゆる二月十六日までに閣議決定を終えたい、そうして提案したい、こういうことを申しておるのでございますから、これを私自身が、もちろん確認すべきことだろうと思いますが、これはもうすでに閣議で話し合い済みのことでございますから、あえてここで確認はいたしませんでした。しかしながら、その点ではこれは御了承はいくんだろうと、かように思っておったのであります。しかし、それについても総括質問中に法案は全部出せ、こういうことで約束ができていたと、かようにお話しですが、私どもの感じとはその点はやや違っておるようです。少なくとも予算審議中に、予算がまだでき上がる前に、とにかく予算に関係のある法律案は提案しろ、かように私ども理解し、またそうしてそれがおくれてはならないということで、政府としては二月の半ば、そういうことだろうというので、いまのような日をきめたわけであります。しかし、その際でも十分法案ができないときには要綱でも出そうか、こういうようにして皆さま方の御審議に便するような処置をとるという考え方で、ただいまいるわけであります。その点は御了承いただきたいと思います。
  98. 大原亨

    大原委員 総理大臣、私が議論いたしてきましたことも、おそらく社会保障制度審議会や社会保険審議会で議論しておることも、これでは片手落ちであって、抜本改正にならない、こういうことが議論の中心ですよ。だから、答申が出るまでには、抜本改正についての大きな展望が、柱については出なければならぬ。その決定は関係審議会で議論をして決定するけれども政府のそういう方向づけが出ない限りはから回りをするという見通しを私どもは持っておるわけです。国会の審議においてもそのことを前提として私は統一見解を求めておるわけですから、その抜本改正の問題点だけは、供給面の問題点だけは指摘をしたのです。それについては何ら具体的な前進ある答弁がないわけです。ですから、それは私はこのままでは国会の権威において議論を進めることはできませんよ。この問題についてはもう少し責任ある皆さん方議論をされて、そうしてそのことを統一見解として示してもらいたい。そういうことを私は委員長に要求いたしておるわけですね。
  99. 中野四郎

    中野委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  100. 中野四郎

    中野委員長 速記を始めて。  大原君に申し上げます。  この件については、後刻理事会において御相談することとし、これにて大原君の質疑は終了いたしました。  午後は一時より再開することとし、この際、暫時休憩をいたします。   午後零時十九分休憩      ――――◇―――――   午後一時八分開議
  101. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議開きます。  大原君の質疑に関する点につきましては、先ほどの理事会において、政府側より木村官房副長官の出席を求め、説明を聴取いたしましたが、提出予定予算関係法案五十五件中、二月五日までに提出可能のもの三十二件、二月五日以降二月十六日までに提出するもの二十三件である旨説明があり、さらに健康保険法改正案につきましては二月十六日までに提出することとし、両審議会の件につきましては、政府としてはその結論を得るよう極力努力し、期待する旨の答弁があり、理事会もこれを了承いたしました。  次に、医療保険の抜本策については、厚生大臣よりその経緯及び内容について当委員会理事会に資料として提出を求めることにいたしました。  総括質疑を続行いたします。小川新一郎君。
  102. 小川新一郎

    小川(新)委員 まず私は、今国会に総理大臣が施政方演説をお述べになりまして、私もねんごろにこれを聞かせていただきましたし、またこの要約したものを拝読させていただきました。  一九七〇年代は、御存じのとおり、遠く宇宙の開発と都市問題といわれております。総理がそういう視点に立ってこの七十年代を乗り切るためには、国土総合開発計画――昭和の激動期を乗り切ってこられた総理大臣の最後の力を振りしぼって国土のビジョンというものを打ち立て、国土像はかくあらねばならぬという御決意をまず秘めて御演説をなさったと私感じております。  しかし、いまこの私たちの住んでおる日本の国土を見たときに、公害問題、交通問題、また大都市問題は、東京に象徴されますように、緑がなくなり、私たちが子供の時分にはセミやトンボやドジョウをすくった小川はいまは公害で絶滅しております。いまの天皇陛下がちょうど総理と同じ年であるというふうに聞いておりますが、こういった七〇年代まで、この昭和の激動を乗り切ってきた昭和というものをもっと大事にしていかなければならない。いまこういう観点に立っておりまして、私たちの後輩である若き世代にこの国土像を引き継ぐにあたりまして、最も有意義な点を一つ総理大臣国民のために何かプレゼントをしてあげられないかと私考えております。実は自然と人間、自然と調和ということがここにも述べられておりますが、そういう視点に立って私は一つ提案をしたい。  第一に、昭和自然博物館。自然博物館というのはいま日本にありません。東京に科学博物館というのがございまして、きのうも政府委員の方に聞きましたときに、科学博物館というのはあるけれども、自然博物館というのはないという確認をとりました。しかし、その科学博物館の内容の中に自然的な要素が含まれておる、だからいいんじゃないかというお話がありましたが、私がいま述べておりますのは、昭和というそのものを記念して、ひとつここに国民的に、若い人たちがほんとうに学び得る自然博物館――外国にあるものはたいてい日本にもある。     〔委員長退席、坪川委員長代理着席〕 そして日本の自然、動植物、鉱物、こういうものが全部一堂にあって、滅びゆくわがふるさとの動植物や鉱物を研究のためまた資料として残しておきたい。私はこういう意味の自然博物館をどうしても一つつくりたい。こういう国民の要望を総理にお伝えしたい。そうして名前を昭和自然博物館、そして総理大臣あとの指導者にバトンをタッチでき得る国民の課題として私はこれを望みたいのでありますが、ひとつお願いしたいと思います。
  103. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 小川君にお答えいたします。  おそらくこれは小川君の願いをもかねての要望だろう、かように思いますが、政府自身とすれば、すでに御指摘になりました国立科学博物館、また最近国立民俗博物館、そういうものも考えたい。また私どもの風俗そのものもやはり残しておきたい。かような意味からも、そういう点で考えられております。それをもっと広めて、自然そのものも残したらどうだ。とにかく自然の状態はどんどん変わりつつある。破壊されているじゃないか。こういうところへ目をつけられたこと、これは私は一つの――この際に自然を大事にするという意味からも、ただいまのような博物館、これがあってしかるべきだろうと思います。  だから、大事にするということを中心にして、ただいまの状態ではできないまでも、国立科学博物館、その中身充実していくとか、さらにまた、いまつくろうとしておる民俗博物館等にただいま言われるような構想がどの程度取り入れられるか、こういうことも考えていきたい。あるいはどうしてもそれが取り入れられない、そうすれば、独立した別な博物館をつくる、こういうことにすべきじゃないか。  ただいま何といたしましても初めての御提案であり、また政府関係者としてもそういうことを考えないではないというような答えはしたでありましょうが、しかし、まだ具体化したことはない、こういう問題でありますから、十分そこらの点を検討して、そしていまのような自然博物館そのものがずばりと表現できるようなものがはたして可能かどうか、よく検討して、御要望に沿えるものは沿いたい、かように考えております。
  104. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 ただいまの総理大臣のお答えに補足して申し上げたいと思います。  外国におきましても、たとえばワシントンに自然史博物館、ロンドンには大英博物館、カナダには国立科学博物館、パリには国立自然史博物館という形であるわけでございますが、私どもの国におきましても、ただいま総理からお話がございましたように、国立科学博物館があるわけでございます。しかしながら、自然史という問題につきましてかなり手薄でございまして、御指摘のとおりでございます。  そういうことから、昭和四十四年度に新たにこの自然史研究部門というものを拡充いたすために、四十四年から三年計画で、ことし昭和四十六年度二億五千六百十九万円をかけ、合計五億五千九百十二万円をかけまして、百人町にこの研究部門を移すということになっております。いま上野には展示と研究部門と両方ございますけれども、これができました暁には、研究部門は全部百人町に移しまして、展示は上野にする。しかもその展示のやり方が、従来ともいたしますと、この社会の要請といいますか、あるいは世界の動きに対しまして非常に陳腐でございました。こういうような点も抜本的に改善、改革をしようということで、いま努力をいたしておるということを一つつけ加えておきたいと思います。
  105. 小川新一郎

    小川(新)委員 総理、私の意図は、ほんとうに国民昭和という年号を記念して、こういった自然と調和ということを総理も言っているのですから、ひとつそのぐらいのものを国民にプレゼントしたって大したことじゃないのです。ファントム戦闘機一機二十億円もする。総理、そういう点を考えて――そういうところが、ちゃんとやらなければ、言われるのです、国民から。国民はそういうことを非常に敏感に感じ取っておる。まだまだいろいろやることがあります。だから、いま文部大臣は、私何も要求しないのに、一生懸命説明なさっておられますけれども、そういう点では、私ほんとうに情ない思いがするのですね。自然の調和とかなんとか言ったって、そういう姿勢そのものがだめになる。だから、国土像というものは大事なんです。まあその点は総理、ここで私はもう前向きに総理大臣の気持ちをくみ取って十分国民の皆さんにお伝えしますから。よろしいですか。  では第二点。総理の言われている国土像の中で、東京を昭和五十年までに人口をどれくらいの規模に総理考えていらっしゃるかという点が一つ。  第二点は、昭和六十年の全国総合開発計画のビジョンに照らし合わせて、メガロポリスというものは当然自然の流れとして受けとめるべきものなのかどうか。ところが、ここにいろいろな問題があるから、もう新全総でいっている考え方では古い、情勢が変わってきた。そこで、新しい展開を求めねばならないのかどうか。この点きわめて大事でありますので、二点お尋ねいたします。
  106. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いずれ企画庁長官から説明がありますが、私はあまり大東京をこれより以上に大きくしたくない、そういう気持ちで一ぱいです。だから、そのことだけ申し上げて、あとは企画庁長官から説明させます。
  107. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 新全総の計画におきまして、大体首都圏の人口は二千五百万人ぐらいというものを想定いたしております。われわれは日本のいわば中枢地区ともいうべきこの地域に対する人口のいわゆる集中を、今後テンポを非常に落としまして、同時に全国の中枢神経的な職能というものを持たせるという、二重のむずかしい立場を想定いたしております。そうした観点から、新全総においては、この地域の地域的なプラン、こういうものを立てているわけであります。  なお、東海道メガロポリスの問題ですが、これにつきましては、御存じのように、国土の再編成という立場からいいますと、従来とかく太平洋ベルト地帯に偏在しがちであったところの人口なり産業の集中、こういうものを全国土にできるだけ分散いたしまして、そうしてわれわれが今日まで経験したような偏在的な現象というものをできるだけ避けながら、地域に応じたところの開発を進めてまいる、こういう考え方を示しております。
  108. 小川新一郎

    小川(新)委員 ほんとうにきめていることは、この全総でいっていることが、それだけの開発計画にきちっと乗って、ベースに乗らなきゃならないですね。そのためには土地利用計画だとか地域社会計画とか、こういうものが当然乗ってくるわけです。ところが、そういう点がまだ明確にされていないので、いまいろいろとした開発計画が出てきます。それで六十八も開発計画がある。大体六十八もありますと、一つ一つを見ていきますと、日本の姿がこういういびつなかっこうになっていくのですね。でありますので、これは経済企画庁長官、この関係法が六十八もあるのを整理統合していかないと、いろいろと食い違いがいまあるのですけれども、それはあなたも認めていらっしゃると思うのですが、その六十八の法律をどう整理統合なさっていくのか、その点。
  109. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 御指摘のように、開発関係の法律は非常に多うございます。そこで、私たちといたしましては、これをできるだけ数を減らしまして総合化する、こういう方向において検討もいたしております。  それから、一方においてそれぞれの法律の間の関係づけ、これが大事でございますが、そのためにはいわゆる国土総合開発法、これが一番全体の法律の頂点に立つ法律でありますが、今日においては、残念ながらまだその頂点に立つという中心的な性格が不十分であります。そういう意味において、われわれは国土総合開発法の改正というものについては検討を始めております。それを中心にしまして、できるだけ今後重複を避けるように、そして体系づけが行なえるように、そうした方向でもって考えていきたい、こう思っております。
  110. 小川新一郎

    小川(新)委員 前向きに法の改正ということをいま考えられておるとおっしゃったので、私も了承いたしますが、十分ひとつ検討をお願いいたしたい。  さて、第二次住宅建設五カ年計画は九百五十万戸、総理大臣演説の中にもございます。いよいよこれがわれわれの、審議にゆだねられるわけでございますが、第一次住宅五カ年計画の六百七十万戸、これについて私はいささか疑義がある。その点について建設大臣にお尋ねしたい。  まず、建設省からいただきました資料というものは、われわれが国会において審議をするにあたりまして信用しなきゃならない。また、これが唯一のよりどころであります。ほかからいろいろ出ている資料というものは信用できませんので、この「第二期住宅建設五箇年計画(案)参考資料」、昭和四十六年一月建設省住宅局、同じく「第二期住宅建設五箇年計画(案)の構想」、建設省住宅昭和四十五年八月、二ついただきました。これについてわれわれはどっちも信用してよろしいですか。
  111. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 具体的な数字の若干の説明が足らないために、誤解を生むようなこともあるらしいのでございますので、住宅局長からこの資料についての説明をいたさせます。
  112. 多治見高雄

    ○多治見政府委員 資料の数字について御説明申し上げます。  いまお示しがございました資料の中で、昭和四十三年度の公団住宅の建設戸数につきまして四千戸数字の違いがございます。これは、最初に出しました参考資料につきましては、四十三年度に建設できる見込みの数字を出しておりますので、その後訂正いたしまして、四十六年一月に訂正して四千戸の差がございます。これは四十三年度建設予定戸数で、その年度計画いたしておりました戸数が、用地その他の関係で、四十四年度当初に建設されることになりまして、四十四年度の実績のほうに移しましたので、その点で四千戸の食い違いがございます。
  113. 小川新一郎

    小川(新)委員 いま住宅局長の御説明によると、予定ということになっておりますけれども、この第二期住宅建設五カ年計画案のほうは、昭和四十五年の八月にできたやつをいただいたのですよ。われわれの手元に渡ったのは、四十六年近くになって渡っている。それからこっちの四十六年一月のは最近いただいた。それで、いまあなたが御説明になった四十三年実績の住宅公団の数は六万九千戸になっている。こっちは六万五千戸になっている。これは実績ですよ。見込みじゃござ  いませんよ。大臣、どういうわけなんですか。実績というのと見込みとどう違うのですか。われわれは実績というのは、もうそれができ上がったものだと思っている。だから、これは決算に通っている。それがいまのお話でいきますと、見込みだという。それじゃ、どうしてここに見込みと書かないのですか。あなた、四十五年にいただいたということは、四十三年のものはもうできてしまっているということじゃないですか。これをいただいたときには、われわれは住宅公団が六万九千戸つくった、こう理解していたわけです。ところが、あとからいただいたほうは六万五千戸になって、まぼろしの四千戸が消えてしまった。私どもはこのことについては、時局講演会や至るところの講演にこの資料をもとにしゃべってきた。国民の皆さん、住宅五カ年計画においては政府では六万九千戸つくりましたよと、大ぜいの議員が全部言ってきた。何といっていまから言いに行くのですか。たいへんなことですよ。こういうのをインチキというのですよ。
  114. 多治見高雄

    ○多治見政府委員 いまの御説明ちょっと足りなかったかと存じますが、資料をつくりましたときには、四十三年度発注ができるということで六万九千戸という数字をあげたわけでございますが、実際の契約の発注が四月になりましたので、その後の資料では、四月に年度が変わってから発注いたしましたので、その数字を四十四年度のほうに移しまして、四十三年度の分をそれだけ差し引いたということでございます。
  115. 小川新一郎

    小川(新)委員 局長、四十四年の分といったって、これは四十五年の八月にもらったものですよ、一年もあるものを。じゃ、そのようにここへ書いたらいいですよ。一年間もあなたほっておいて、六万九千戸だ、六万九千戸だといって割り当てておいて、四千戸減っちゃった。一体どこへ行ったかということは国民の疑惑なんです。それじゃ、それでけっこうです。  それではもう一つ聞きます。昭和四十四年、今度ここは計画になっていますね。計画のほうがこっちは七万八千戸です。ところが、こっちは四十四年実績ですよ、七万九千戸。千戸ふえた。確かに千戸ふえたことはわかります。先ほど四千戸足りなかったから、ここで千戸ふやした。じゃ、あと三千戸はどうしたのですか。
  116. 多治見高雄

    ○多治見政府委員 四十三年度計画戸数と実績の差につきましては、先ほど申し上げましたように、四十四年度のほうにその四千戸を移しましたので、それに従いまして千戸ふえたという結果になっておりますが、実際は、四十四年度計画に対しまして、実績は、三千戸――用地の値上がり、鉄鋼資材の値上がり等で計画戸数が達成できなかったということがございましたので、それを差し引きいたしまして、千戸ということになったわけでございます。
  117. 小川新一郎

    小川(新)委員 大臣、いまの局長のお話聞いていまして――われわれ国会議員は、あくまでも政府の出された資料に基づいて、あらゆる審議、予算、決算のことをやるわけです。これが比べていって数字が食い違った。確かに数字は三か二か一のものです。しかしこの三、一とか、二とかという数字の裏には一千戸も二千戸もの住宅がくっついているのです。そんなにあれは間違いでしたとか、ああ四月にやりましたとか、これはそういう単純なものじゃないでしょう。まして、こっちの昭和四十六年の一月にいただいたほうでは、四十三、四十四年の実績です。実績が七万九千戸なんです。局長のお話ですと、四千戸加えたならば少なくとも八万二千戸にならなければならないじゃないですか、こっちの実績が。どういうわけなんですか、この点。実績ですよ、これは。見込みをぼくは言っているのじゃないのですよ。これは大事なことですよ。政府から出た資料をもとにしているのですから……。
  118. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 ただいま住宅局長から説明いたしましたが、この理由については御質問によって初めてわかったようなことで、これでははなはだ政府資料としては欠陥があると思います。今後十分注意させます。従来は……(「問題をはっきりさせろ」と呼ぶ者あり)それは、申し上げましたように見込みで発表して訂正しなかったところにあやまちがあると思います。だから、それが見込みとして出したのは、実質上関係の機関、たとえば土地の入手あるいはその他のことが都道府県等において実施するつもりであったが、実施できなかったということがそのおもな原因のようです。しかしそれをすぐに訂正しなかったということに疑惑が持たれたと思いますので、今後そういう事態が起こった場合に、明確に、すみやかに訂正すべきものは訂正して発表するというように措置いたさせます。
  119. 小川新一郎

    小川(新)委員 ここですね。いま大臣が御答弁になったことは、私よく理解できますが、住宅公団と公営住宅とはその住宅の建て方、締め切りのしかたというのが違う。これは財政投融資を中心にして建てておるところの住宅公団というものはどういうシステムでいきますかというと、原価償却方式でいっている。家賃は事業費の千分の七で平均家賃が大体算出される。だから、入居基準がその人の収入の四倍が妥当になっておる。公営住宅のほうは政策家賃に押えられている。だからたまたま土地の入手や何かがならない場合も、地方公共団体が繰り越すという場合はあり得る。公団は、その年度年度に戸数が出た場合には消化しなければならないことになっているのです。それだったらお金の面でいかなければおかしいじゃないですか。われわれが心配しているのは、黒い霧があるとか何とかをいま論じているのじゃないのです。国民が一番望んでいる――総理、私は木造賃貸民間アパートの実態調査の指揮をとった男ですからね。ほんとうに申しわけない、この間も総理からおほめのことばをいただいて感謝していますけれども、この目で実態を見てきている。総理、あるアパートに行って二階へ上がったのです。トイレから荒なわが下がっているのですよ。何のために荒なわが下がっているかというと、トイレするときつかまらなければ下へ落っこってしまう。そういう、民間には憲法第二十五条で保障されているという国民の、総理がおっしゃる選択の自由なんというものは住宅の中にはないのです。それで公営住宅と公団住宅の二本の柱が住宅建設のわれわれ国民にとっては大事な柱だ。それがいまのように誤ったとか誤らないとか、私たち、実際この資料をもって、白本をもってやるよりしようがないじゃないですか。まあいいです。それならけっこうです。  それじゃ重ねてお尋ねしますが、大臣、この四十四年の七万九千戸は間違いなんですか。これは公団、ほんとうに七万九千やったのですか。
  120. 多治見高雄

    ○多治見政府委員 数字についてお答えいたします。  先ほど申し上げました四十三年度の四千戸分を合わせまして七万九千戸を実施いたしました。
  121. 小川新一郎

    小川(新)委員 ほんとうに七万九千戸を公団がやったのですね。間違いの場合はどうしますか。もしも七万九千が間違っていたならば。――じゃ住宅公団から私が取り寄せた資料によると、いいですか、さらにですよ、七万五千三十戸しかやっていないと言っているのですよ。またここで三千戸違いが出たじゃないですか。委員長、こんな資料じゃ国会の審議できないですよ。
  122. 多治見高雄

    ○多治見政府委員 お答えいたします。先ほど御説明申し上げましたように、四十三年度の四千戸が繰り下がっておりますので、それで七万九千戸の、そこの資料にございますようにカッコして計画というふうにございますが、それについて四十四年度鋼材の値上がり、用地費の増高等の関係で、三千戸計画に及ばない戸数がございます。したがいまして、差し引き千戸増の七万九千ということで実施をしたということになっております。
  123. 小川新一郎

    小川(新)委員 だから私がいま言ったじゃないですか。七万九千なんてやっていない。住宅公団では七万五千三十しかやっていないというのですよ。これじゃまた食い違いが出たじゃないですか。大臣、どうですか。
  124. 多治見高雄

    ○多治見政府委員 いま申し上げましたように、四十三年度から繰り下げました四千戸分を除くと、いまお話の数字になるわけでございます。
  125. 小川新一郎

    小川(新)委員 そうすると、四十四年度の戸数というものは七万九千が正しいのですか、七万八千が正しいのですか。
  126. 多治見高雄

    ○多治見政府委員 いまお話のございました七万五千何戸という数字が、四十三年度計画戸数として除きますとそれが正しい戸数になります。
  127. 小川新一郎

    小川(新)委員 そうしますと、この資料はまた七万五千に訂正するという意味ですか。二度も三度も――ちょっと待って、局長じゃないです。委員長、私、大臣に聞きたいのです。二度も三度も訂正、私が国会で追及しなければ――大臣、これを見てごらんなさい。こういうでたらめな数字が出ているのだ。これはちょっとはっきりするまで私、審議できない。
  128. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 もう冷静に、この問題は資料に基づいていま事務当局が説明しているようでございます。(「ごまかしているよ」と呼ぶ者あり)ごまかしてはおりません。それで資料についてやっておることでございますから、事務当局からもう一回繰り返して説明させます。
  129. 多治見高雄

    ○多治見政府委員 それでは数字について御説明申し上げます。  当初、最後にお話のございました四十三年度六万五千、四十四年度七万九千という数字でございますが、これは四十三年度計画いたしました計画戸数のうち、四千戸が四十四年度の四月になりましたので、この計画戸数を四十四年度の実績にあげております。それから先ほどお話ございました、公団のほうで出しました七万五千という数字でございますが、これは四十四年度計画して発注した戸数を出したわけでございまして、その数字の中には、四十三年度計画で四十四年度に繰り越しました先ほどの三千戸分を引いてございますので、その差でございます。それと先ほど申し上げましたように、四十四年度計画に対しまして、三千戸の実施ができなかった戸数がございますので、その差し引きで千戸の差が出てきたということでございます。
  130. 小川新一郎

    小川(新)委員 私が言っているのをもう一ぺん申し上げますと、総理大臣、ちょっと聞いておいてもらいたいことは、なぜ私が問題にしてますかと申しますと、国会で審議する場合に、一々一々これまで持って――私が言っているのは、暴露ものをやっているのじゃないのです。そんな何か変なものを引っぱってきてここで審議しているのじゃないです。明らかにいただいた資料に対して、どこから見ても実績と書いてあるのが違うのじゃ――見込みなんて書いてないでしょう。それでその三千戸足りないのがどこにふえていったか、逆にいくと、どんどんどんどん下がっていっちゃうのですね。公団が七万八千だというのをまた七万五千三十に減らしておるのです。本来だったら最初が四千戸足りなかったのだから加わっていかなければならないのだから、ここでは当然八万二千戸にならなければならないわけですね。それはおわかりですね。それが七万八千でもわれわれは少ないと思っていたところが、今度は七万五千戸に公団が実績数として出した。それがどこに七万五千なんて出ているか、何も出ていないのです。国民はやはり――われわれはこの数字をやりとりしているのじゃないのです。まぼろしの三千戸だといわれないように私は言っている。三千戸というと一戸は――総理御存じないと思うからお教えいたしますけれども、大体公団住宅の一戸は三百万近くするのですよ。それが三千戸ですから、四千戸としてもたいへんな数です。約百億近くなりますね。その問題点をここでいまわれわれが審議しているわけですね。だから私は先ほども話したように、木造賃貸住宅にいて苦労なさっておる人たち、この人たちを救わなければならない立場に立つ政府住宅五カ年計画のこういった公団がなぜできないかということを私は指摘したいのです。何も皆さんをいじめて喜んでいるんじゃないです。私は逆にいえば建設大臣はかわいそうだと思っておるのです。大蔵大臣、あなたに責任があるのですよ。ほんとうからいうと、私に言わせれば。おれは知らないというような顔をしているけれども、冗談じゃないですよ。建設大臣、かわいそうだ。建設大臣は第二次五カ年計画で何万戸要求したと思います。それはそう言うと、今度大蔵大臣が答えるには、そんなに金ないよ、こうくるのです。それはわかっているのです。金がないとかあるとかの問題を私は論議しているのじゃないのです。私はそれだったら切り返すのを持っておる。  そこでその前に、建設大臣、この問題ではミスを認めてくださいますか。
  131. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 発表の文章が誤解を生むような状況であることは、これは遺憾に思います。今後次年度に繰り越したものあるいは計画を変更した等については、すでに発表した文章について訂正するように指導いたさせます。
  132. 小川新一郎

    小川(新)委員 それでは大臣もそこまでおっしゃるのですから、私もそれ以上この数のことはもう追及いたしません。大臣も頭を下げられて、ミスだと認められておるのですから、それをさらに追い打ちをかけるようなことは武士と情けでできませんからやめます。やめますが、総理大臣、笑いごとじゃないですよ、ほんとうに。カメラ映ってますよ。こういう大事な問題なんです。それをよく認識していただかなければ困る。  それでは大蔵大臣にお尋ねしますが、住宅の事業投資の額というものは一体どれくらいあるのですか。
  133. 福田赳夫

    福田国務大臣 昭和四十六年度において約一兆円の額を用意しております。
  134. 小川新一郎

    小川(新)委員 私が聞いているのは住宅行政投資額を聞いております。住宅行政投資額を聞いている。――わからないですか。一兆円なんていうのじゃないのですよ。私が聞いているのは、住宅行政投資額というのはどういうものをさしているかと申しますと、この範囲が公営住宅、公団住宅政府施策住宅のそのお金ですね。大臣の言っているのは全部の投資額を一兆円とおっしゃった。だからその中でもいま言った公団、公営の賃貸住宅の分を聞いているわけですね。
  135. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま小川さんのおっしゃるような内容だとすると、そのおっしゃる行政投資ですね、約一兆円でございます。
  136. 小川新一郎

    小川(新)委員 まあ私はその数字をほんとうに聞きたかったのですけれども、それでは大臣、私ちょっともう一ぺんお尋ねしますが、新社会発展経済計画に述べられているこの三兆九千億という五カ年間は、全額その投資をしてくれるのですか、住宅に。
  137. 福田赳夫

    福田国務大臣 主計局長から……。
  138. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 お答え申し上げます。  住宅五カ年計画は戸数でございますけれども、企画庁のほうできめました計画は金額になっておりますから、この金額もおおむね両者は符合するものというふうに考えて、そういう計画にのっとってわれわれも考えているわけであります。
  139. 小川新一郎

    小川(新)委員 私は時間がもっとあればこの点もっと詰めたいのですが、下水道計画二兆六千億いただきました。二兆三千億でしたね。これはそっくりいただいた。ところが大蔵大臣、じゃこの三兆九千億――私が聞きたいのは、建設省がこの五年間に試算していくその試算のしかたですね。公営住宅に入るその入居の人たち、これは上限が百一万円までの方が入れるのですね、一種で。その方々が伸びていく、その五年間の昭和五十年度の末のその住宅に入れる人たちが百五十万、いまの経済成長のあれで伸びていくわけですね。これは毎年勤労所得者として一一%から一二%伸びるということは新社会発展経済計画で述べているのですね。それで加算していくと、ちょうどいまの百五十万円ぐらいまでいってしまうのです。ところが大蔵省の査定では、これは百二十五万円ぐらいまでにしか伸びない計算になっている。そこにこの三兆九千億円の使い方というのが今度余ってきてしまうのです。そこで三兆九千億を要求すれば、六十九万戸要求した額を――建設省が六十九万戸を要求しているのに、あなたのほうは十万戸減らしたのだから。なぜ減らしたのかというと、その勤労所得者の伸びが大蔵省は五%しか見ていないのです。そこに十万戸減らしたという原因がある。そこで建設省は泣いているのです。どうですか、その点、大蔵大臣
  140. 福田赳夫

    福田国務大臣 五カ年計画は、これは戸数で示しておるのでありまして、九百五十万戸。それで金額は表示しないのです。つまり金額は今後の物価の状況なんかで移動いたしますので、表示はいたさない。これはしかし、九百五十万戸という計画は、その年次年次追いまして財源の手当てをしてまいる、こういうことでございます。これはあくまでも完遂をするというための財政努力をいたす所存であります。
  141. 小川新一郎

    小川(新)委員 大蔵大臣、九百五十万戸、九百五十万戸と言っていますけれども政府施策住宅は三百八十万戸しかつくらない。残りの五百七十万戸は民間自力建設をいっているのですよ、九百五十万戸で。その中でも、政府施策住宅の中でも、住宅金融公庫から借りる資金じゃなくて賃貸住宅、私が言っているのは公営住宅と公団住宅が、民間木造賃貸アパートに住んでいる人たちの望んでいる賃貸住宅の姿なんです。そこを私はさっきから言っているが、あなたは九百五十万戸と言ったって、民間が建てる分まで入れちゃって言っている。そこの建設省が算定した六十九万戸はぜひとも必要だ、それを大蔵省は十万戸へずって五十九万戸にしてしまった。それだから三兆九千億のワクの中で計算したのは建設省じゃないですか。
  142. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 小川さんの御質問の前提条件になることをちょっと申さないと誤解が出てくると思うのです。九百五十万戸を全部政府の施策でやるということではないのでございます。これは御承知のように、戦後非常に住宅が困窮したことについて一々申し上げる必要はございませんが、現実に現在の情勢では、昔でありますれば相当の財産家は子供にどんどん住宅をつくってやった。ところが現在の税制上からすると、ほとんどこれが相続税等でとられるために多くの人がみんな施策住宅に入りたいということになってきます。これでは、いま小川さんが指摘されたような、いわゆる木造の非常に質の悪いところに入っている人が入ろうとしても、なかなか入るチャンスがないのです。そこででき得るだけ民間の力で持ち家、これが持てる人、あるいは民間の貸し家に入ることができるチャンスを多くするために、御承知のように、政府が税制上あるいはまた利子補給等いろいろのことをやりまして、そうしていま御指摘になりました低所得者で住宅に困窮している人に集中的に政府施策住宅を充てたい、こういうことでございます。それが九百五十万戸のうちの三百八十万戸ということでございます。その中には、御承知のように、公団と公営住宅がありまして、これをできるだけやっていこう、ただ本年度の査定においてわれわれが要請した金額に達し得なかったということは事実です。しかしこれは、五カ年計で漸次後年度に重点を配置して配分するということは従来のとおりの手法でございまして、この五カ年間では必ずやってもらえると思っておりますので、われわれとしてはこれでやむを得ないということで了承した次第でございます。
  143. 小川新一郎

    小川(新)委員 ほかの人はごまかせても、私はごまかせられません、よくわかっていますから。こんな数字の九百五十万戸の点を言っているんではありませんけれども、これは後ほど当該委員会でまたがっちりとやります。  次に、千葉県の埋め立ての問題についてお尋ねします。  まず第一番目に、公有水面埋立法の立法趣旨が現在の国土開発計画と大きなギャップがあると私は考えておりますが、この点いかがなものでしょうか。
  144. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 御指摘のとおり、これは昭和十年ごろに立法された法律でございます。当時は海面を埋め立てするということはごく限られた範囲でやっておりまして、非常に小規模のものでございました。しかるに最近における日本経済の発展、特に臨海工業地帯が日本産業の主たる産業基地になるに及びまして、これが急速に大規模のものが出てきました。そういう観点からいたしますれば、御指摘のとおり、地域開発あるいは大きな国土計画の線に沿わない面も出てきておることは、これは否定できないと思います。そういう意味で、これは御承知のように、運輸省と建設省と共管しておりまして、なおまたこれの実施にあたりましては自治省と非常に関係がある、あるいはこれを地方自治体にやらせるとすれば、財投関係も非常に大きな問題になりまするので、今後この問題は、ますます埋め立てに基づくところの国土開発は大きくなると思いますので、これは慎重にも検討しながら、時勢に合うような法改正をいたしたく、われわれのほうからも申し出ておるという段階でございます。
  145. 小川新一郎

    小川(新)委員 いま昭和十年と申しましたが、この立法は大正十年です。
  146. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 間違いました。大正十年です。
  147. 小川新一郎

    小川(新)委員 大正十年で、もう五十年もたっておるんです。  そこで千葉県の埋め立てについてお尋ねいたしますが、千葉方式という方式がありますけれども、この千葉方式というのはどういう方式をいうのですか。
  148. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 私から御答弁するのはあるいは適当でないかもしれませんが、これは御承知のように、千葉県が千葉中央港の埋め立てにあたりまして、民間の資金をも導入して、そうしてこの埋め立てをやった、そうして千葉県としては公共用地を確保して、この公共用地は道路あるいは港湾というふうな、あるいは一部鉄道等に充当せしむるというような方式のようでございます。残余のものは分譲して、その土地に企業としてあるいはまた住宅等を建てるために進出する企業に分担せしむる、予納させてやるというような方式と聞いておりますが、これについては運輸審議会にかけて、そうして適当だということでその承認を得てやっておる、こういうふうに聞いておるのでございます。  運輸省のほうからもあるいは御説明あると思いますが、私のほうで調べた結果は、そういうふうに承知している次第であります。
  149. 小川新一郎

    小川(新)委員 これは常日ごろ建設大臣がおっしゃっておる民間デベロッパー導入方式ということは私もよく聞いておりますが、千葉県の場合は少しく事情が違う。大体千葉の埋め立てというものはどれくらいの面積を埋め立てておるかと申しますと、浦安、市川、船橋、習志野、京葉港、千葉西部、それがいまお話が出ました千葉港中央、千葉南部、五井-市原、五井-姉崎、南袖ケ浦、木更津市北部、木更津市中央部、木更津市南部、君津、富津、これが合計五千万坪、海を埋めて国策に沿う産業立地をしようと計画をしたわけです。ところが、この五千万坪の海面を埋めるわけですけれども、海というものは一体だれのものですか、建設大臣
  150. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 私が所管することではございませんが、それは端的にいいまして日本国民のもの、こう解釈するのが至当だと思います。
  151. 小川新一郎

    小川(新)委員 そうしますと、国民の海です。いま申し上げましたところは昔は海水浴もできた、アサリもとれた。ところがいま飛行機からごらんになればよくわかりますが、京葉工業地帯は一面の工場群です。まだまだそのうち私がいま申し上げました数の半分は埋め立てが終わっておりません。四四・六%二千三百万坪が現在もう造成が終わったのです。それではこれは運輸大臣にお尋ねいたしますが、運輸大臣はこの千葉港中央の問題に関しては免許を千葉県に与えたときにどのような報告を聞いておりますか。
  152. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 御質問の千葉港中央地区の埋め立てに関する問題その他の港湾関係の埋め立てのことだろうと思います。最初に、実は私就任以来、東京湾とか大阪湾のような工業立地条件が非常に過密している傾向につきましては、今後これは考えていかなければならぬというので、目下港湾審議会等で問題を検討さしておりまするが、この計画につきましては、御承知のとおりに、運輸大臣の諮問機関である港湾審議会に千葉県当局から計画案が出されるわけであります。この計画案に基づきまして審議をするのでありまするが、先ほど建設大臣から説明ありましたように、千葉県側で、いわゆるこの千葉県方式といいますか、千葉方式というものによって事業計画が進められております。その契約内容等を検討いたしますと、かなりきびしい条件で民間デベロッパーとの間に協定をしておるようであります。たとえば総事業費につきましては、その三分の一は県が費用を出しますが、三分の二はもちろんデベロッパーが出す。しかしでき上がった土地の価格につきましては、これは県当局がきめる。そしてそのうち公用面積としては大体二八%、ものによって違いますけれども、大体二八%が公用使用面積として、これは前もってとられる、残りのものを総事業費に割り当てまして、それを県当局が値段をきめて、そしてこれを希望のいわゆる工業の関係者に売り渡す。そういう点につきましてはかなり厳格な方式をとっておるようであります。それらの内容を審議いたしまして、これを認可をいたしておるわけであります。
  153. 小川新一郎

    小川(新)委員 私がここに「千葉港中央地区土地造成事業に関する協定書」というのを持っておりますが、「千葉県(以下甲という)三井不動産株式会社(以下乙という)千葉港中央地区土地造成に関しては次のとおり協定する。」そこでこの面積の大きさは約百五十万坪、この百五十万坪の造成をなぜ競争入札制度にせず三井一社と契約をしたのか、まずお尋ねをしたいと思うのです。
  154. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 ごらんの契約書でありますが、御質問は三井不動産と随意契約の点でありますが、これにつきましては千葉県当局との間の問題でありますので、運輸省としてはこの計画内容等について審査をする、こういう方針でありますので、その点の関係は承知いたしておりません。
  155. 小川新一郎

    小川(新)委員 それではもう少し言わしていただきますと、千葉港中央地区造成、本事業を行う千葉県を甲とする、三井不動産を乙とする、そうしてずっと面積を述べてまいりまして、概算事業費が百五十億円、このお金がここに動いておるわけでございますが、ここで私が一番疑問に思うのは、同項第六号に規定する事業費の三分の二に相当する金額を乙が負担することを条件として、三分の二に相当する面積の土地を乙に分譲したわけです。国有地、県有地、この公共用地を一民間会社に、県は三分の一しか要りませんよ、あとの三分の二はあなたがおとりなさいよ、そこで造成に関する費用というものはこれくらいかかりますよ、そのかかったものは当然県が払わなければならない、ところがそれに対しては、お金は要りませんよ、土地でくれ。そして三分の二の面積の土地を三井不動産が獲得した。これが協力と言えますか。この点はどういうように判断したらいいか私はわからない。これは確かに千葉県の問題ではございますが、先ほどから申し上げているとおり、たいへんな利潤が生み出されておる。これができ上がった時点のお金が、実際は造成費が二百九十四億かかっている。二百九十四億から百五十億を引くと、ここだけでもう百四十億造成費でもうけた。そうしてその売却代金が三百八十四億、この差額が九十億円、その九十億円の三分の二が三井のほうへいったのです。残り三分の一の三十億円が県なんです。こういうことがはたして――国民の海を埋め立てた、それを造成して得たお金を県が三分の二とったというならまだ話はわかる。そうして造成に対する費用は、民間企業だって仕事をするのですから、これは当然払ってあげなければだめです、利潤追求しているのですから。ただそのもうけについては協定があるでしょう。だけれども残りの九十億のもうけに対して、県は三十億しかとらない。六十億はもう三井不動産がとっている。これがただ港中央地区一地区でそうですよ。残りは、私が先ほど述べましたばく大な計画がずっと述べられている。これに対してはどうですか。
  156. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 小川さんがおっしゃるとおり、県当局のやっておる仕事であります。詳しいことは私自身、運輸省もわかっておりませんけれども、ただわれわれの聞いております範囲内でお答え申し上げますと、いまおっしゃったように、三分の二の土地を引き受けるわけでありますが、その三分の二の土地を引き受ける場合の価格の形成、価格の計算は、これは県当局自身が一定の基準に従って坪幾らという単価を出します。それによって売るのでありますから、三井不動産がかってに売るということではないように聞いております。その間においてどういうことがあるかわかりませんけれども、しかもその価格の決定に対しては日本銀行で設定いたしました不動産の全国価格の標準といいますか、その造成割合といいますか、利率の出し方、それを基準にして、それを下回る金額でこれをきめておる、かように聞いております。
  157. 小川新一郎

    小川(新)委員 建設大臣にお尋ねしますが、この地区の地価公示値段は幾らですか。
  158. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 事務当局より答弁いたさせます。
  159. 高橋弘篤

    高橋(弘)政府委員 お答え申し上げます。  現在のところ、当該地区についてやっておりません。
  160. 小川新一郎

    小川(新)委員 地価公示制が敷かれてないということは、売買実例、不動産鑑定士の二人以上、不動産鑑定士法に従ったところの仕法を踏んで、これは土地を売買しなければならない。第一ここに不動産鑑定士の実例売買の値段が、私のところに手元に届いておりますが、現在では資生堂が坪三十万円で買いに来ても、三井さんは売らないという。橋本運輸大臣、その実例はいま初めて聞いたのですか、いかがですか。
  161. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 ただいま申しましたように、土地を売買する場合は、その造成地について、千葉県当局は、いわゆる総工費に対して、そのかかった費用の、それに対するある程度の税、あるいは管理費等を含めた利率をもって価格を決定するやり方をやっておる、かように聞いております。
  162. 小川新一郎

    小川(新)委員 運輸大臣は何も御存じありませんね。運輸大臣昭和四十二年にわが党の黒柳君が参議員決算委員会で、この問題に準じたことを二、三回ぐらいやっていることは御承知ですか。
  163. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 四十二年――残念で申しわけないですが、質疑応答したことを承知いたしておりません。
  164. 小川新一郎

    小川(新)委員 それはもうあなたが国会をほんとうによく注目していればわかる。こういう大きな問題が決算委員会で問題になった。それで私のところにいま土地売買契約書、これは個人の名前は言えませんけれども、千葉市中央港の土地売買契約書が来ております。「千葉県(以下甲という)及び三井不動産株式会社(以下乙という)、〇〇会社」――これは名前は言えない――「(以下丙という)は、千葉市中央港の土地売買に関して、次のとおり契約する。」、「第一条 甲は、千葉市中央港に所在する甲が造成した用地のうち、別途(別に添えてある地図に示す区域四三五五平方米、坪数一三一七・四七坪)乙の取得するところとなる部分を合わせて丙に譲渡する。」この値段が坪八万円です。何で県有地を買うのに、千葉県と三井不動産が甲乙丙と、丙の買う契約書に名前が出てこなければならないのですか。この点はどういうふうに理解したらよろしいですか。
  165. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 事務的な問題でありますし、私自身も内容を承知しておりませんので、港湾局長など関係者があるいは承知しておれば、そのほうから答弁させます。
  166. 小川新一郎

    小川(新)委員 資料要求をお願いしたいのですけれども――答弁者いるのですか。
  167. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 港湾局長であります。ただいまの契約書の内容につきましては十分存じてございません。
  168. 小川新一郎

    小川(新)委員 よくわかりませんので、私はこの当該地点の土地売買契約書、このほかにも毎日新聞等をはじめとして千葉銀行本店、千葉興業銀行本店、パレスホテル、これらが売買契約を結んでおりますので、この売買契約書を私見たいので、資料要求したいと思います。  また現地点に、売買実例としてはどれくらいの価格で土地が動いているのか、その実例数も御報告していただくようにお願いしておきます。
  169. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 ただいま御指摘の点、さっそく調べましてお届けしたいと思います。
  170. 小川新一郎

    小川(新)委員 このように国民の海、先ほど海面についての定義がなされましたが、私ども子供の時分に泳ぎに行った海が、いま産業開発の名目のもとに、企業から県が先に金を取って、その金で造成費をまかないながら、なおかつ三分の二は不動産会社に持っていかれている、われわれの土地が。こういう不当なことが法律によって押えられない。この一例だけじゃないのです。鹿島開発しかり、四日市しかり、もっと大きな下北半島しかり、鹿児島の志布志湾、周防灘、干拓地帯のこういった公有水面の埋め立て、総理がおっしゃっておりますところの国土総合開発のビジョンの上から照らしたら、今後これは重大な問題が生じてくる。そこで私が先ほどから言っていることは、公有水面埋立法というものは不備があるんじゃないか、こういうようにわれわれが指摘しているわけです。公有水面埋立法をちょっと見てみますと、その第二条には「埋立ヲ為サムトスル者ハ地方長官ノ免許ヲ受クヘシ」、これはたとえていえば、小川不動産なら小川不動産が埋め立てたいときには、あなた、橋本知事さんに免許を受けなさい。ところがこれに来ますと、国から機関委任されている。あなたが責任を与えられている。自分で免許を受けて、自分で今度許可を与えている。こういう不備なところに、三井不動産と千葉県とが談合でやっているとわれわれが疑ってもしようがないじゃないですか。何でこれだけの百何十万坪も二百万坪もする土地を競争入札制度にしないのですか。そうして多くの業者から――これだけの大きな県の財産を託するのですから、一銭でも安く造成してくれる会社に与えるのが本来のことというのが、私は耳にたこができるほど建設大臣から委員会で聞いていますよ。談合はいけないのだと言っているのです。そういうことを言われているにもかかわらず競争入札制度が取り入れられないじゃないですか。これはほんとうに総理大臣、重大な問題だと思うのです。そうして先ほどから申し上げているように、五千万坪の海をこれから埋め立てて、四四%しか埋まっていない。残り五六%はまだこれから埋めるのだ。どれくらい海から札束があがってくるかわからない。だから、ある漁師が言っているのです。われわれは漁船に乗って、アサリで金をもうけるけれども、民間デベロッパーは巻き上げ機で東京湾から札束を巻き上げてくる、こんなことが一体許されるだろうか、――こう言っているわけです。これについてはいかがお考えですか。
  171. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 基本的な方針は他の閣僚からお話があると思いますが、ただいま民間デベロッパーがつくった土地がいわゆる競争入札によらないで随意契約でやっているというお話でありますが、この問題は通産関係にも関係がありますが、御承知のように大規模工業地帯の造成というのはいわゆるそこに一つの目的があります。計画があります。ここにたとえば鉄鋼コンビナートをつくる、あるいは石油コンビナートをつくるとか、あるいは両方兼ねたものをつくる。あるいはその地域は田園もしくは工農両全と茨城県ではいっておりますけれでも、さような環境づくりをあわせて全体的な計画を県当局がやります。そういう関係からして、国の場合は、港湾をつくることは運輸省の関係でありますけれども、全体の設置の問題になりますと、あるいは県が関係しあるいは通産省も関係いたしておるような状態であるのみならず、最初申しました計画的に工業地帯をつくっていくということになりますと、県がいわゆる立案の総合主体になっていくのでありまして、その間、いわゆる前もってここに進出すべき企業との話し合いが進められておるのが現状のようであります。これがいいか悪いかの問題は別にまた議論があろうと思いますが、そのような方法でやっておられる。  そこで、もう一つお話のありました点でありますが、いわゆる港則法の改正の問題、これは大正十年にできてすでにもう五十年もたっている法律でありますから、当時の公有水面埋立法、これは当時は土地造成というものを主眼にしてつくられた。ただし河川の利用あるいは港湾の利用関係からこれに影響を与えないためということおいては消極的な規制であります。事情が変わってまいりましたので、先ほど来お話のありましたような国土総合開発という面からどういうぐあいに公有水面を使っていくかという問題は、これから十分に検討しなければならぬ問題であろうと思っております。
  172. 小川新一郎

    小川(新)委員 いまのように私が事実を指摘したのですから、契約を見てもうおわかりになったと思います。  総理大臣にお尋ねしたいのですが、一つの地域を民間デベロッパーが三分の二取ってしまって県が三分の一というのは、これは私どうしても納得できない。こういう方向でいったら五千万坪の三分の二は民間デベロッパーの所有地になってしまう。どうしてお金で取らないか。物納、土地でやるか。こういう点をいまお聞きになりまして、もうこの論法でいけば、千葉県と三井不動産が公有水面を利用して土地を食い荒らしたと私は理解し、総理大臣はどう理解されるかわかりませんが、私はここで刑法第二百四十七条の背任罪に千葉県知事が該当する疑いがあると思っておるくらいです、こんなことをやったら。国民の財産を、ほんとうに県の財産をどうして国が援助して――それを十分の一不動産にやったのなら話がわかるけれども、三つに分けて、その二つはあっちにあげて一つだけとる、これはどうですか。
  173. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来小川君から千葉県の例をいろいろ説明されました。私にもどうもふに落ちない点が非常に多いです。しかしおそらく知事さんは、そういう場合に県会の承認を経てそういう契約をするとか、何かそういうような手続があるんじゃないだろうか、かようにも思います。とにかくいずれにいたしましても、手続はとられて、背任罪を構成はしなくとも、いまのように民間デベロッパーにある一部のものが壟断される、そういうことについてはこれはもう少し私どもも研究する問題だ、かように思いますので、事実を、いま言われました点で明らかなようですが、私自身ももう少し確かめてみたい、かように思いますので、しばらく時間をかしていただきたいと思います。
  174. 小川新一郎

    小川(新)委員 私は、総理がただいま前向きに非常に御心配になられているということはよくわかります。しかし、この契約書、いま私もうお見せしたりお聞かせしましたですからはっきりしているのですね。甲と乙の契約の内容が、造成については三分の二はあなたにあげますよ、持ってらっしゃいよ、私は三分の一でいいんです。まことに欲のない話なんです。じゃ建設大臣、公有水面埋め立ての当面の責任者としてこの実態がいま明らかになってきたのですが、これに対してはどう対処しますか。
  175. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 この埋め立ての許可等は私のほうの所管ではございません。しかしこれは先ほど冒頭に御指摘になりました公有水面の埋め立てに関する法律に時勢に合わないようなところがありますので、むしろその問題から規制していくほうが今後前向きに対処するゆえんではないかと思います。そういう意味におきまして、県がどういう理由で、そしてまたどういう手続でそういうふうな契約をしたかについて、まだはっきりわかりませんので、いまここでにわかにこれについて私の意見を述べることは必ずしも適当じゃないと思います。よく事実を調べた上、私の意見をも述べる機会を得たいと思います。いまのところはいまあなたの出されただけのことですぐに私の意見を申し述べることは、私まだはっきり決断できません。
  176. 小川新一郎

    小川(新)委員 土地の先行投資とか国有地の確保ということは大蔵大臣非常にきびしく言われておりますね。公有地、公共用地を獲得しなければ土地問題は解決しない、このことはきびしく言われているはずです。その国有地、公有地をこういうふうに占領されていくという姿が、いま私がこうやって契約書を見せて言っているんですから、考えるも討検するも何もないじゃないですか、はっきりしているんですから。資料を出して私は言っているんですから。予想でそうじゃないかと言っているんじゃないんです。確かに、明らかに三分の二はあなたにあげますよという契約書をここに見せているのですから。まだたくさんありますよ、ここにがっちりと。そんなのを一々出したらたいへんなことになりますよ。何百億ともうけられて、それでわれわれ国民が――それは企業だからもうけてもいいですよ、もうけてもいいけれども、不当なもうけ方はいかぬ、国有地を食いものにしてはいかぬ、これを言っているわけです。どうですか、大蔵大臣のお考えは。
  177. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまのお話は県有地であって、国有地じゃないようです。(「公有地」と呼ぶ者あり)国有地じゃない。ありませんが、国有地につきましては厳正にその使途を吟味いたしまして、国有地が有効適切に全国民のための利益になるようにしなければならぬ、そういうふうにかたく考えております。
  178. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 私もこの契約書自身持っておりますが、詳しいことはよくわかりませんけれども、しかしこの契約書によりますと、土地を三分の二もらうということじゃないようであります。何か金にして、全部かかった事業費のうちの三分の一は県が金額で負担する、三分の二の金額をいわゆるデベロッパーがちょうだいをする。なぜそうなったかといえば、先ほど申しましたように、公有地として大体二十数%とられますから、残りの七十数%を総工事費でもって割った金額、そのうちの三分の二はデベロッパーが金を出しておりますからちょうだいしますよ。土地でちょうだいするような契約ではないようであります。私も詳しいことはわかりませんが、必要があれば港湾局長から説明させたいと思います。
  179. 小川新一郎

    小川(新)委員 運輸大臣、そんなことを言っていたら恥をかきますよ。三分の二土地でもらっているのですよ。そんなことはあなたのほうでチェックしないから、機関委任されている千葉県の県知事の監督ができないじゃないですか。運輸大臣の責任じゃないですか。あなたは機関委任されている知事に対する指導をする任務があるのじゃないですか。私の言っていることがうそなのかどうか現地へ行って調べていらっしゃい、私見てきたんだ。そこが私は言いたいのですよ。国土総合開発計画がこんなようでやられていったらたいへんだたいへんだと根本建設大臣もいつも言われている。開発デベロッパーの民間が入ってくる、けっこうです。その導入することもけっこうですけれども、その金のもうけが不当であったらいかぬというのです。土地は日本のものじゃないですか。三十七万平方キロしかないのです。そのわずかな三十七万平方キロの土地の利用のしかたが、国民がいま騒いで、こんなに毎年二五%ずつも、戦前から一千倍も土地が上がってしまったじゃないですか。大臣がおっしゃっていることは、私反復していえば、土地の高騰とは、公共用地の仕事をおくらせ、大衆から土地が高いために家を建てる希望を失わしめている。そうして多くの人たちが土地問題に殺到してアリのように群がって騒いでいるから、たいへんだたいへんだと言っているのです。そのことは総理大臣だって土地問題で、土地対策を閣僚会議で決定しているわけですね。そして土地問題は建設省も要綱を発表していらっしゃいます。その中に先行取得ということを非常にやかましく言っている。この調子でいったら下北半島もこういうふうになってしまうのじゃないかと心配していたら、下北半島のほうは第三セクターというわけのわからないものをつくりだした。その前にもう民間デベロッパーが三分の一も買い占めを終わってしまっています。一体これはどうするのです。そうしてその第三セクターに国が半分も金を出して、その中に三井さんも理事になって入っているじゃないですか。それで三井さんがお買いになった土地をまた買わせるのじゃないですか。二重三重の手間ひまをかけて土地が投機の対象になって動いている。これは大蔵大臣がいつもおっしゃっています。何もこれは国民総生産の中に計算する額じゃない。ただ勤労所得じゃない土地があっちへ行ったりこっちへ行ったりして、そこで生み出される利ざやによってお互いにもうけ合っているのがいまの現状であるから、こういった問題に対してはどう考えるのだ、どう考えるのだと、再三再四言えば、検討だ、わからない、契約書が違うのじゃないか、そんなことを言ってごまかしてしまうのです。あとの五六%は、この方程式でいけば契約を解除すべきだと思いますが、いかがですか。運輸大臣どう考えますか。
  180. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 具体的な問題は、県当局でありますので、十分な調査もできておりませんが、おっしゃるような点につきましては十分これを調査いたしたいと考えております。
  181. 小川新一郎

    小川(新)委員 調査してどうするのですか。
  182. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 不当不備の点がありますれば、これは指導いたしてまいりたいと思います。
  183. 小川新一郎

    小川(新)委員 よく聞き取れなかったです。もう一ぺん言ってください。
  184. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 不当な点あるいは不備等のところがありますれば、これはもちろん改善していくように指導いたします。
  185. 小川新一郎

    小川(新)委員 不当とは、県との契約の間において私企業に三分の二土地で払うということが不当と理解してよろしいですか。
  186. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 その点は、県会、千葉県当局の話を聞きますれば、千葉県知事はこれらの諸条件及び内容、契約等については県会の同意を得てこれをやっておると聞いております。したがって、いまお話のあった点が不当であるかどうかは、私としては、これは判断しかねます。地方自治体がみずから進んでこういう問題を片づけていくことは、ある意味においては好ましい問題でもあります。いわゆる土地造成を積極的にやっていく。これは、先ほど下北半島の問題があり、いま運輸省としては全国六カ所を大規模工業地帯として調査を進めております。すでにお話のあったように、一部のいわゆるデベロッパーが買い占めを進めておるところもありますが、運輸省としてはできるだけ、北海道であれば北海道道庁、あるいは秋田県であれば秋田県当局が積極的に前もってこの処置をしていってもらいたい。それには思い切った起債の措置も必要である、こういう総合的な問題からこれを考えてまいりたい、かように考えております。
  187. 小川新一郎

    小川(新)委員 この方式で――総理、九州の博多湾も埋め立てられているやに聞いております。こういうことになってまいりますと、いろんな問題が起きてきます。県会において、議事録をごらんになっていただければ、野党は全部反対していますよ。自民党の方々の中でも反対しているのです。質問していますよ。多数決で押し切られている。そういう議事録をよくお読みの上で、これが妥当であるか妥当でないかということくらいは、大臣は機関委任されている立場で、知事の指導というものをよく見なきゃならぬじゃないですか。議会が満場一致で賛成しているのは、そういう開発はけっこうだ。だけれども、その開発におけるそのやり方、契約のしかた、免許や認可や許可のしかたについては種々疑惑があるといって、最近、九月の二十五日に県会ではこの問題で大騒ぎになっているじゃないですか。わが党の県会議員も質問しております。こういう問題は非常な国家的な問題でありますので、私はあえてこの問題を国会の予算委員会の中に、総理、提起したわけです。確かに県会の問題ではございますが、この点について最後の総理のお答えをいただいて、私、結論を出したいと思います。
  188. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来のお話を伺っておりまして、手続上は県会の承認を得て知事がやった、こういうことのようです。ただ、その中身が、これで適当なりやいなや、これをいま判断しろ、かように言われるわけですが、これはやはりいまの開発段階で、過去のその当時のことを適当だったかどうだったか、それが一つの慣例になって、その後引き続いてそういうことが相変わらず行なわれているかどうか、こういうようなところに実は問題があるのではないだろうかと、私はそれとなく考えるのです。先ほど来のお話、いまの京葉地帯の非常な急速な発展、これはどこかに非常な利益を吸収する者がいたかわかりませんが、とにかくいま申すような埋め立てが進んだ結果が今日の京葉地帯の繁栄を来たしたゆえんでもある、一つの大きな理由である、かように私も思いますので、これは、それはそのままにやっぱり功績は認めてやらなきゃいかぬ。しかし、そういうものがいつまでも続いてまいりますと、これはいろいろ弊害が出てくる。そういうもののために自治体としても適当なそういうものを監視する機関があるはずなんです。県民の意思を代表するものがあるわけです。そういう県会等におきまして十分審議され、そうして適正にこれが運用されること、これが望ましいのではないかと思います。  国会におきましてもこういう問題を提起されました。私はひとり千葉県ばかりではない、各地において類似の事件が次々に起こりつつある、そういうことからの御心配だろうと思います。そういう点で、これは十分御発言になった、提案されたその目的は達せられておるだろうと思いますし、私どもも扱い方としてこういう問題についての行き過ぎがあれば、もちろん注意しなければならないことだ、かように私は思います。
  189. 小川新一郎

    小川(新)委員 たいへん前向きな御返事をいただきまして、私も意を強うしてこれ以上の追及はやめます。まだたくさん問題がありますので、これはあとでまた常任委員会でやらさしていただきますが、私の心配、総理、わかっていただいたと思います。鹿島灘の開発でも大騒ぎをしました。下北半島、苫小牧、こういった大工業地帯の建設に、いまや第三の開発期に入った日本列島ですから、もう総理が施政方演説の中に国土総合開発のビジョンを数字をあげてお示しになったくらい非常に情熱あふるる総理なんですから、これはひとつ国土総合開発計画の面においては厳重な監視と、ただいま言った公有水面のほうも前向きに御検討なさるということをいただきましたので、私これでやめさせていただきます。  次に、水道の問題をちょっとお尋ねいたしますが、多摩川の水道がいまとまっております。これはいかなる理由によってとまっておりますか。
  190. 内田常雄

    内田国務大臣 多摩川の周辺、ことに下流地域には団地、住宅等がたくさんふえましたことが原因で、非常に水質が汚染をいたしておりますことと、もう一つはカシンベックというような新しい病気の発生に関係があるのではないかというようなことも憂えられておりますので、私どものほうから渇水期においては、ただいまのような場合においては、この際むしろ取水を停止をして、専門家を集めた今後の対策等をやるべきであるというようなことで、とめるような指示をいたしております。
  191. 小川新一郎

    小川(新)委員 そういたしますと、多摩川の水は疑惑がある。カシンベックの疑いがあり、水質がよくないから、飲み水にはまだちょっと検討しなきゃいかぬ、こういうふうに理解していいのですか。
  192. 内田常雄

    内田国務大臣 カシンベックのほうはまだ断定はできません。しかし、そういう問題が提起されておりまするし、何しろ渇水期で水がよごれる時期でありますので、カシンベックについての専門家の検討をもまつということをも含めまして、とめておるようなわけでございます。
  193. 小川新一郎

    小川(新)委員 そうすると、多摩川の水よりも悪いところは同じような処置をとらなければならぬと私は思いますけれども、どうですか。
  194. 内田常雄

    内田国務大臣 そういうことになります。しかし、多摩川の水も絶対的に将来やめてしまうということではございませんで、水質基準に合うような汚染防除措置、なかんずく下水道の整備というようなことも建設省の援助のもとに東京都に計画をしてもらっておりますので、今後また解除してもいい時期が来ると思います。  なお、大阪方面にも似たような川があるはずでございまして、同様の措置をとる必要があると思うところもございます。
  195. 小川新一郎

    小川(新)委員 似たような川ってどこの川ですか。
  196. 内田常雄

    内田国務大臣 あれはヤマト川というのでしょうか、ダイワ川というのでしょうか、これなどは注意しなければならないところだと思います。     〔坪川委員長代理退席、委員長着席〕
  197. 小川新一郎

    小川(新)委員 総理国民の大事な水を飲ませる――ヤマト川でしょうか、タイワ川でしょうかなんて、名前もわからない。そんな、厚生大臣、たよりないことじゃ私は困る。この飲んでいる水は一体だいじょうぶなんですか。大臣、私毎朝九時に議員会館へ来るのですよ。議員会館へ行っていきなり水をあけると、まっ白くなるのですけれども、これは飲めますか。
  198. 内田常雄

    内田国務大臣 川の名前は固有名詞でございますので、私が万一間違ったらいけませんので、ダイワ川と読むか、ヤマト川と読むかということを申し上げただけでございます。  それから、そのまっ白になりますのは、前塩素処理といいますか、特にそういうことをやらせておる場合もございますので、その影響であろうと思います。  なお、多摩川のことについてちょっと申し上げますと、多摩川も上流の取水地点がございまして、その地点の水については問題がないようでございまして、問題はもっぱら下流のほうの取水地域でございますので、渇水期は一番水がよごれますので、その期間内にいろいろな体制を整備をしたり、東京都とも打ち合わせますので、渇水期が過ぎるころまでには十分の対策が講じ得るものと考えます。
  199. 小川新一郎

    小川(新)委員 厚生大臣、もう一度重ねてお尋ねします。多摩川の水をとっているかとってないかということは私よく調べてあります。砧の浄水場上はとっている。いまあなたがおっしゃっているのは調布の取水場から多摩川浄水場へ入っている水、これはどこへ回っているかというと、蒲田方面、約二十万人の人の対象人口を持っています。毎秒十六トン、この水がいま取水がストップになっている。それは、いま申し上げましたように、カシンベックの疑いや水質が極端に悪いから、いろんな社会的不安が巻き起こっているから、そういった面も、どういう運転基準をきめたらいいかということを検討するために、いま東京都ではとめているわけですね。そのとおりですね。そうすると、これはいつ判明し、また大和川の水が多摩川と同じ、同じ以上であれば、これは飲むに適しないと思いますが、大臣、これはどうですか。
  200. 内田常雄

    内田国務大臣 私は同様であると思いますので、大和川につきましても十分な水質基準の適応性を対照をいたしまして、ある処置をいたすべきことを昨年の九月に、これは多摩川も一緒でございますけれども、厚生省のほうから指示しておるように聞いております。
  201. 小川新一郎

    小川(新)委員 同様だという御返事ですが、その大和川とか淀川が多摩川並みになっているのです、飲んでいるのですけれども、いいんですか。東京の人間にはあぶないから飲ませない、大阪の人間はだいじょうぶだというんですか。大阪の人間の腹はじょうぶなんですか。大阪の人が一ぱい聞いていますよ。多摩川のほうはとまった、大和川は――じゃ私ちょっと科学的に御説明します、あなたはもうわからないから。総理もよく聞いてください。  多摩川は大体大腸菌は――一番あなたがよくわかる大腸菌から申しますと、水道に適する水というのは、この間大臣がみな集まって環境基準というのをきめてくださいました。AA、A、Bとある。このBのランク、ここまでは水道がとれる。わかりやすいので言います。大腸菌は十ミリリットルに五千個以上の大腸菌を含んではいかぬ、こういう基準をお立てになった。ところが大和川は昭和四十五年九月、二百四万五千個摘出されている。二百四万五千個ですよ。あなたのほうできめたのはたったの五千ですよ。二百四万以上です。その次、多摩川のほうは最高が六月、これはとっているときです、九月からですから。まだ多摩川の取水しているときが五十七万八千個、十二月にはこれが四十四万に多少落ちておりますが、実に大和川は二百四万五千個、それからBODで申し上げますと、多摩川が十二月に一〇だ。大和川では一六・四もあるんですよ。水道に飲めるという基準は五PPM以下はとっちゃいけないときめてある。それを一六・〇四も大和川では検出されている。厚生大臣どうですか。――厚生大臣答えてください。
  202. 内田常雄

    内田国務大臣 私も決して何にも知らないわけではございませんで、そういう多摩川、大和川等のことを気にいたしておることは、いま申し上げたとおりでございます。しかし、それらのいまおっしゃったPPMのことにつきましては、専門家の局長がおりますので、お許しを得て答えさしたいと思います。
  203. 浦田純一

    ○浦田政府委員 小川先生が御指摘のように、確かに大和川の河川の水質は、多摩川と比較してもあるいはそれ以上によごれているのは御指摘のとおりでございます。そこで私どもは昨年の渇水期を控えまして、これらの汚濁の非常に進んでおりまする河川に水源を求めておる個所につきましては、いろいろと取水上あるいは浄水上の注意を通知して、注意を喚起したところでございます。  実情を申し上げますと、御指摘の大和川につきましては、その計画取水量といたしましては、平常期では日量六万トンでございます。ところで渇水期になりますと、実はこの近くに地下水がございまして、さく井によりまして二万トン、あるいは大阪府営のほうからの応援給水などによりまして一万六千トン、またその他同じく大阪府営のほうからの分水その他を入れまして、必要な水量は確保しているような状態でございます。また、それでなお不安のあります場合には、一時的に取水を停止する、あるいはまた時間的な操作を短縮するといったようなことでもって、それ以上有害な水源が入ってこないように、またなおこれらにつきましては、浄水力というものの強化につとめまして、遺憾のないようにつとめておるところでございます
  204. 小川新一郎

    小川(新)委員 淀川は大体これに準じておりますけれども、四百万人の人口対象を持っておる。多摩川のほうは、いま安心の限度のところへいっていますけれども、ただいまお聞きになった大和川は、十二月は三十一日間とっているじゃないですか。十一月は三十日とっていますよ、昨年。それから昭和四十五年の十月も三十一日とっている。ちゃんととっていますよ。一番悪い、私が言っているその大腸菌が二百万個も摘出される。BODで一六・〇四、ABSで、これも〇・八九も出ておる、こういう状態の水を使っているのですよ。大和川や淀川が安全であるという安全宣言がここでできますか。
  205. 浦田純一

    ○浦田政府委員 御説明申し上げます。  確かに大和川から十二月にも、あるいは毎月取水していることは事実でございます。しかしながら、その水質の状況に応じまして時間差といいますか、いろいろとその取水の時間を短縮するなりいたしまして、できるだけ原水が給水のほうに影響しないような考慮を払わしているところでございます。
  206. 小川新一郎

    小川(新)委員 大阪がいま心配しているのは、大和川が多摩川より水質が悪い。いいですか。もう一ぺん申しますと、多摩川より大和川の水質が悪い。確かに時間給水、いろんなことをやっている。やっているということは、危険だからそういうことをやっている。水質が完ぺきならそんなことをやる必要がないです。だから大和川の水や淀川の水が絶対にだいじょうぶであるという調査を、いま多摩川のほうでやっているんだから、その多摩川の調査が判明するまでは水をストップして、東京と同じ態度はどうしてとれないかということを私は聞いている。
  207. 浦田純一

    ○浦田政府委員 御承知のように、近年の技術力は非常に進歩してまいりまして、たとえば下水道でございますが、下水道の処理水をまた再び工業用水に使うというほど技術的にはすぐれているわけでございます。したがいまして、理想的に申しますれば、もちろん水道の取水の水質そのものが清ければ清いほどよろしいということは、これは当然でございますけれども、近来の浄化力、その他の技術力をもっていたしますれば、究極的には衛生に害のない水を供給するということは可能でございます。問題は、ただその必要性とコストとの関連でございますので、その点につきましては、大和川あるいはそれぞれの地方の実情もございます。したがいまして、少なくとも給水に関する限りは、これは衛生上絶対に心配がないというふうにお考えいただきたいと思います。
  208. 小川新一郎

    小川(新)委員 そうしますと、多摩川をとめたわけがわからないじゃないですか。多摩川のほうが技術は上じゃないですか。大和川の技術よりも下ですか。あなたがおっしゃっているのは大学の試験場のフラスコかなんがの研究機関のことを言っている。現実に水道が稼動している機能においては絶対できない。重金属なんか全然摘出できない。たから危険であるから学者の皆さんが、危険性が多分に認められるから、いまこの運転基準というものを定めるまでこの水というものを検討させてくれといって、いまストップをかけているのじゃないですか。そんな必要がないんだったら、多摩川も飲ましたらいいじゃないですか。
  209. 浦田純一

    ○浦田政府委員 多摩川の取水を停止した理由につきましては、確かに一つ水質の汚濁が進んだということがあると思います。しかしながら、もう一つの原因といたしまして、カシンベック病の病因物質として疑われている物質が含まれているかもしれないというそういったような疑いがございまして、これらについてはその給水を受けておる住民の感情、不安というものを考慮した上で一応念のためにとめておるのだ、その二つの理由でございますので、あるいは大和川についても同じようなものがあるとおっしゃるかもしれませんけれども、しかしながら、私どもは、大和川の場合につきましては、先生が御指摘のような大腸菌の問題などもございますが、これらにつきましては十分に浄化の段階でもって考えておる問題じゃないかと思います。先ほど申しましたように、やはり少々給水のコストが上がっても、給水面、衛生面の万全は期しておるというふうに考えております。
  210. 小川新一郎

    小川(新)委員 だから、私がさっきから科学的にデータをあげてこう説明している。大臣、これは厚生省からいただいた資料ですよ。どのランクを見ても大和川のほうが上なんです、淀川のほうは上の部分もある、下の部分もありますが。  それでは、そんな社会的不安が巻き起こっているというのはどこで判定するのですか。私のほうでアンケートをとってみたら、これはよその団体のとったアンケート、その結果を見ると、利根川、多摩川を水源とする地域では、安心して飲むが四四%、不安を持っているは五六%、一方琵琶湖、淀川、大和川を水源上する地域ではもっと不安率は高く、安心して飲むはわずかに二四%、不安を持っていると答えた人は七六%、実に四人に三人は不安を持っており、四八%がしかたがない、あとは四九%はわかして飲んでいる、そうしてくさい、色がついた、こういう苦情がいろいろと出ておりますが、多摩川以上に淀川、大和川の関西のほうが民情が不安定になっております。その点について、どうしてこれを同じように見るのですか。
  211. 浦田純一

    ○浦田政府委員 淀川水系の水質の汚濁につきましては、先生の御指摘のとおりだと思います。しかしながら、またその地域の給水事情というものを考えまして、大阪府並びに大阪のいろいろな市町村営の水道につきましては、特別に前もって処理をするとかあるいは薬剤の投入を普通以上にするとかいったようなことでもって万全を期しているように承知しております。水というものは先生すでに御承知のように、外国におきまして、たとえばライン水系でございますけれども、これは途中で何度も水道水として取り入れまして、またそれを工業排水あるいは生活排水として取り出して、それを下水道でもって処理しておる、それを何度も繰り返してやっておるような地域もあるわけでございます。  したがいまして、私どもは、もちろん取水の水源の水質がこれ以上きたなくなるということは困りますけれども、またきれいであればきれいであるほどいいということは言えますけれども、そういったような状況も御了解いただきまして、技術者の懸命に努力しておるという点はひとつ御了承いただきたいと存じます。
  212. 小川新一郎

    小川(新)委員 よくわかりました。技術者の苦労もわかりますし、行政官の苦労もわかります。しかし、御了解をいただきたいというそれがちょっと不安なのです。何かそこにまだまだ不安定要素を含んでいる。しかし水が足りない、だからやむを得ず飲むのだとまあその点でそれ以上私が追及すると社会不安が巻き起こってきますから、どうかひとつ十分なる管理等をやっていただきたい。  ところが、今度はその管理のほうが不安になってきた。ではそれだけだいじょうぶなら、管理のほうはまかなえるかということが、今度は私の調査では管理のほうがだめになっている証拠が出てきた。私の持っておるこの資料は桐生水道局の資料です。ちょっとわからないと思いますが、これは砒素が渡良瀬川に入ってきた科学的な資料なんです。この赤いのはみんな機械が測定するのです。こんなに高くなっているのです、赤いのが。大臣見えますか、総理大臣、ちょっと見てください。厚生大臣、見てください。まっかになっていることがこんなに上がっているでしょう。どうしてここは不検査になっているのか。砒素というものは危険な物質である、金属である。でありますから、河川においては〇・〇五PPM以上は検出されてはならない。ところが、渡良瀬川ではこの科学的データが示すように極端に高い〇・三から〇・五にまでいっている。ところが、そういう高いときにはこっちの飲むほうの水は不検査になっている、消えているのです。どもいうわけでこれは不検査になっちゃったのか。
  213. 浦田純一

    ○浦田政府委員 その群馬県の古河鉱山に起因いたしまして、砒素が川に流れ込んでおる、それが水道の給水のもととなっておる、取水のもととなっておるという事実は私どもも承知しております。その後、県、市、鉱山と三者が話し合いまして、水質基準に合った水を流すということで、問題は解決の方向に向かっているというふうに承知しております。
  214. 小川新一郎

    小川(新)委員 そんなことを言ったって、機械というものは克明にちゃんと出ているじゃないですか。一番高いときにみんな不検査にしている。その渡良瀬川は利根川に入り行田の利根の取水路を通って朝霞用水路へ入る、そうして小河内ダムに入って、東京都の皆さんがお飲みになっていらっしゃる水です。これを広域利水計画の中では――この水の総合計画の中へ入っている。ところがこれは、あとから述べますように、水の需給計画が立たないから、こういう問題が起きてくる。この四十四年五月と四十五年三月のこの問題については厚生省はどのように指導したのですか。
  215. 浦田純一

    ○浦田政府委員 たしか桐生市の水道水源に砒素がまじっているという騒ぎが起こったのは一昨年だったと思っておりますが、昨年、市と群馬県県庁とそれから鉱山との間でいろいろと相談させまして、そして水質基準に合っておる水を流すという約束を取りかわしておる。その後十分にその取水につきましては検査もしておりますので、問題は解決しておるというふうに聞いております。
  216. 小川新一郎

    小川(新)委員 総理大臣、私がいま言ったようにこのような水道の検査をする体制が、高いときには不検査で消してごまかしてみたり、そういうような、一部ですけれどもありますね。いま私が示したとおりです。ですから、そういう実態で水道が出ていることが危険だということを指摘しているのです。私どもは何もこちらがどうということは言っておりませんけれども、これは桐生市の問題ですから。ただその姿勢、その監視の体制、これは厚生省、厳重にやってもらわなければ困る。どうですか厚生大臣、お約束していただけますね。
  217. 内田常雄

    内田国務大臣 もちろんそうあるべきであると思いますので、都道府県の衛生部長以下を督励いたしまして、安全な水質基準に合わせるような努力を続けます。
  218. 小川新一郎

    小川(新)委員 では、この問題、最後に建設大臣、琵琶湖総合開発計画がまだきまっておりません。需給計画、供給目標、県の策定段階における滋賀県側の意見と国の意見が食い違っております。最後に一言、この琵琶湖開発計画はどのようにしていくのか、これをひとつお聞かせいただきたい。
  219. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 琵琶湖総合開発計画については、もう十数年来の問題でございまして、どうもこの問題については地域的な利害関係が相対立いたしまして、なかなか合意に達していなかったのであります。しかし、幸い琵琶湖を持っておるところの滋賀県におきましても、従来の方針を政府が変えて、下流のために琵琶湖を取水するという態度をもう少し前進させて、琵琶湖の総合開発をし、かつ下流の水資源の確保もするというふうな幅広い施策をもってこれはやるべきだという意見、われわれのほうとしてもこれは傾聴すべき意見だということで、そのために関係省庁とも連絡をとり、その方向でいままとめつつあります。したがいまして、各関係省庁の協議会を発足させると同時に、本年度予算で水資源開発公団に約十億の開発資金を与えまして、第一歩を踏み出そうということでございます。滋賀県としては、あそこの美しい自然を開発し、あるいはまた琵琶湖周辺の地域開発を相当優先させてくれれば、これに合意するという傾向が出ておりますので、本年から第一歩が進められることと期待しておる次第でございます。
  220. 小川新一郎

    小川(新)委員 総理大臣住宅問題でお尋ねいたしますが、建設大臣関係がございますが、ただいまの琵琶湖総合開発計画、利根総合開発プラン、こういったフルプランの開発というものが完全にできませんと、多摩川のような状態がこれから全国で出きてきます。この点について、総理、どんなことがあっても利根川の開発と琵琶湖の開発については期待してよろしいかどうか、この点お願いします。
  221. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 私から……。  この前も建設委員会でちょっと申しましたように、従来ややもすれば東京都並びに南関東に人口、産業が集中するのは必然だ、それに対応する施策をあまり重点を入れ過ぎたと感じます。むしろ私は、北関東に水と人間と土地、これが相当豊富にありまするので、北関東に総合的な開発をしていく。そのために三県に百万都市を総合的につける。そうしますれば、必然的にいまの利根川の利用計画も変わってきます。それで、群馬とかあるいは栃木、こういうところに相当のウエートが出てまいりまするので、この方針に従って、本年度の首都圏の調査費にも相当重点を入れて各県と協議しながら進めてまいりまして、御期待に沿うように、利根川の総合開発計画も一部修正をこれでやっていきたいと考えておる次第でございます。
  222. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどから小川君のいろいろのお尋ねを聞き、また、政府側の答弁を聞きながら、一言多いと言われるかしれませんが、水とお互いの安全を確保する、ずいぶんこれは金のかかる問題だ、しかし、それに惜しみなく金をかけないと、真の水のありがたみ、さらにまた安全というものの確保はできない、最近読んだ本からもそういうことを感じたような次第でございます。  私の所感を申し上げてお答えといたします。
  223. 小川新一郎

    小川(新)委員 ほんとうはもっと具体的に利根川の開発も――実は思川開発、思川の問題、それから草木ダム、八ツ場ダム、これらは開発計画から、総理、五年も六年もおくれているのですよ、ほんとうの実態は。それが昭和五十年にはできるなんていっている。利根川には供給目標が立っていない。本を読んで御感想はけっこうなんですが、本じゃないのです、実際はもう。それを私は聞いている。そういう問題が解決しないうちに、多摩川の水とか大和川、淀川の水を論ずることはナンセンスだ。だから私はこうして心配だから申し上げているのです。その点、総理、もっとそういった実際の面においては、いまの建設大臣を応援してやらしてくれますか。
  224. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 建設大臣考え方、もちろん私支持いたしますし、ことに水がいま使われてない日本海岸の水、それなども十分太平洋岸に引っぱてくるような考え方をしなければならない。またある河川の水は自由に流れておる。しかし、その隣の河川ではたいへん困っておる、そういうようなこともございますから、それをお互いに融通し合うような横のつながりも考えていくとか、やはり水の確保というのが最近の重大問題だ、こういうことを申し上げたいのです。あまり長くなるから途中でやめただけです。
  225. 小川新一郎

    小川(新)委員 それでは最後に、住宅総点検のことで時間の許せる限りお尋ねしたいと思ったのですが、ございませんが、一言だけ。大臣、今度の調査を私どもやりました。約一万世帯の人たちを対象にやりましたが、その中で一番感じたのは、契約の条項です。子供ができたら出ていけというのと子供があったら入れないのと合わせて二〇%。こういう問題で、この憲法で保障されている住宅行政の中で事件が続々起きていますね。この間も、赤ん坊がうるさいからといって隣の人の部屋に気がねをして毛布をかぶせて窒息したかわいそうな子供さんの例、またお母さんが生まれたての赤ちゃんに腕をかぶして窒息しちゃった例、私が一番感じておりますのはその点です。  それから子供の教育の問題。文部大臣、これは聞いていていただければけっこうですが、たった  一部屋しかないために、私が行ったときは、ちょうど八時に行ったのですけれども、中学二年生の女の子が、押し入れの中で勉強していました。そこの部屋はテレビでも何でもみんなつるしている  のです。テレビというのは私は茶だんすの上か何かに置いてあるものだと思っておった。テレビを天井からつるしているのです。置く場所がないから、空間利用をしているのです。そして、その中学二年生になる女のお子さんが、家族が全部寝静まった、ふとんを敷いてあいた押し入の中で、そうして懐中電灯二本照らして勉強しておりました。総理大臣にぜひ私が勉強していることを――来年は高校へ行くのだけれども、どうかひとつ公営住宅をうんとつくってください、総理におじさんが質問するときにこのことだけは言ってくださいと私頼まれてきた。そうして、まだあるのです。そのお子さんが机を入れたくても部屋が狭いために机が入らない、こういうかわいそうな例もありました。これをひとつ解決していくのが政治であります。先ほど私が建設大臣に失礼なことを申し上げたのは、そういった建設行政の両の腕であるところの公営住宅、公団住宅を望んでいる家族が、東京都だけで六十万世帯もいるということを訴えているのです、私は。どうですか。この点をひとつお考えくださいまして、確かに一部不動産業者は、東京湾の埋め立てで何百億という金をもうけているのに、ある一部においては、勉強する机もない、押し入れの中で勉強しなければならないというのが政治の実態であり、世の中の実態であるならば、これを解決していくのが与野党ともにやらねばならない責任である。私は、佐藤総理が四選をなされて、このことについて敬意も表し、また批判もいたしておりますけれども、とにもかくにも前人未踏の四選をなし遂げたのですから、最後の勇気をふるって、この方々が公営住宅に入れるようにだけはしていただきたい。大蔵大臣にもお願いしたいことは、そういうところには三兆九千億の新社会経済発展計画でうたわれているこの金を十分に使って、戸数だとかお金だとかということなくして、どんどんひとつやっていただきたいことをお願い申し上げまして、私演説をやめさせてもらいますが、最後に――これは演説です、だけども質問として、総理大臣いいですか、いま私が三つ、四つ並べ立てたことをひとつ御答弁いただきまして、私終わらせていただきます。よろしくお願いします。
  226. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 いまお示しになりました公明党の住宅関係、特に木賃アパートの問題については私詳細に拝見いたしました。非常に貴重な資料であり非常に深刻な問題が出ておりまするので、これに対しましては善意をもって全面的に解決に努力したいと思います。  そこでまず第一に、従来公営、公団住宅の入居にあたりまして機械的な平等主義でやっておりましたのは、これは変えるべきだ。いわゆる非常に困窮しておる人、あるいは家族構成の非常に困っておる母子家庭とか、そういう方を優先的に入居せしめるような基準をつくってやらなければ、単なる平等の名のもとに機械的平等になると、これらの人はなかなか救われない。これは思い切ってやるべきだという指示をいたしました。  それからもう一つは、民間の木造アパートの経営者が、非常に悪い人もあるけれども、また善意の人もある。ただ、それが資金がないということで改造も何もできない。そういうところには政府資金を貸し与えて、それらの改善ができるような指導も、これはしてやらなければならないというような気もいたしております。  なおまた、住宅の総合計画につきましては、やはりできるだけこれは単価を安くしないと、また入る人が困りますので、工業化の点も通産省と協力して、プレハブにしてコストダウンすることをいまやっている。できるだけ御趣旨に沿うように努力するつもりでございます。
  227. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま公明党のやられました住宅総点検、私の手元にも届けられました。先ほどの話は、これは小川君が演説だ、かように言われましたが、私は国民の声だ、かように聞き取ったわけであります。先ほど来申しますように、建設大臣も真剣に取り組む、かように申しております。私もこの上とも一そう努力する決意でございます。ありがとうございました。(拍手)
  228. 中野四郎

    中野委員長 これにて小川君の質疑は終了いたしました。  次に、西田八郎君。
  229. 西田八郎

    西田委員 私はいままでに質疑をされました内容の重複をできるだけ避けて、具体的にいろいろな事実関係等と関連をして、総理以下各大臣にお伺いをいたしたいと思います。  まず、総理にお伺いをしたいわけでありますが、六十三特別国会の冒頭の首相の施政方演説に対する各野党委員長質問の中で、特に成田委員長が、提案されました予算に対して、修正を必要と認めたものに対してこれを修正する意思があるかどうかという質問がございました。これに答えて首相は、この予算は政府の責任においてつくった予算である、したがって修正する意思はないという御答弁がございました。そのあと立たれましたわが党の委員長西村榮一氏が、それは少しおかしいのではないか、やはり少数意見といえどもこれは聞き入れて、そして修正するのが本来の議会制民主主義の立場ではないかと言われました。それに対して大臣答弁は、「予算編成について与党だけで問題を解決しようというなら、国会はかってにやったらいいだろうと言わんばかりのお話でございます。私は、もちろん、とるべき意見は少数意見といえども採用するにやぶさかでありません。」こういう御答弁をなさっておるわけであります。  そこで私は伺いたいのは、この四十六年度予算の編成にあたって、政府は少数意見というものをどこで、どのようにしておくみ取りになったのか、その点をひとつお伺いをしたいわけであります。
  230. 福田赳夫

    福田国務大臣 予算は国民全体にたいへんな大きな関係があるものです。そこで国民各般、各層の意見を聞く、こういう必要があろうかと思うのです。各政党につきましてももちろんでありまして、私どもは自由民主党内閣ですから、自民党の意見を聞く、これはもう当然のことであります。しかし野党の皆さんがどう考えておるか、これもまた非常に重要なことだ、かように考えまして、私も忙しい時期ではありましたが、時間をさきまして各党――共産党は別でありましたが、その他の各党からそれぞれ意見も伺いまして、できる限りいいところは取り入れる、かような方針でこの予算は編成してあります。これはことしばかりじゃありません。ずっと私はそういうふうにやってきております
  231. 西田八郎

    西田委員 大蔵大臣がお回りになったのは、大臣という資格でお回りになったのですか。
  232. 福田赳夫

    福田国務大臣 大蔵大臣としてお目にかかっております。
  233. 西田八郎

    西田委員 それはもちろん総理と気脈を通じてやった、こう理解していいわけですね。
  234. 福田赳夫

    福田国務大臣 総理の指導のもとにやっております。
  235. 西田八郎

    西田委員 そこで私は一つの提言をしたいわけでありますけれども、そうして大蔵大臣が各党を回るということもたいへんなことだと思うのです。そうしてまた国民の前にはそうしたことはあまり明らかにされておりません。御承知のように四十四年十二月の総選挙で、自民党が選挙が上手なのですか、三百議席を確保されました。その後出入りがありまして、現在では三百三議席を持っておられるわけです。ところが、得票数から見ますと四七・六三%、これは投票した有権者の過半数を割っておるわけであります。もちろん無所属からも来られました。しかし沖繩の分を加えたりいろいろして五〇%には達していない、こういうふうに考えるわけです。そうすると、あとの五〇%はやはり野党が連合してとったということになるわけであります。そうすると、このいわゆる有権者多数が支持をしている野党の意見というものがそういう形で取り入れられているのかどうかと私は非常に疑問を持つわけで、したがって、予算を編成する前に、総理も有史以来の長期政権についておられるわけでありますから、もっと門戸を開放して、社会党の委員長、民社党の委員長、公明党の委員長、共産党の委員長も含めて野党の党首を招いて、胸襟を開いて話し合うという場所を持たれてもいいのではないかと思うのですけれども、いかがでございましょう。
  236. 福田赳夫

    福田国務大臣 大体そういうふうな心がまえで予算の編成に当たっております。  党首という話でありますが、党首をわずらわすのは、これはおそれ多いと存じまして、書記長に御連絡をいたしまして、書記長の相談に来られるところもありました。また政審会長の来られるところもありましたが、いずれにいたしましても、各党の意見をねんごろに聴取いたしまして、有益なものはことごとく取り入れるというふうにいたしております。
  237. 西田八郎

    西田委員 ねんごろにお聞きになったけれども、それは反映はされていなかったということにもなるかもわかりませんね、これはお互いに主観でありますから。  そこで私は、大蔵大臣が書記長、幹事長をおたずねになることは、これはいいと思うのです。しかし私の提言は、総理がそうした党首会談をやる意思はないかということを聞いておるわけですから、その点についてひとつ総理お答えをいただきたい。
  238. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 予算編成については、先ほど来の大蔵大臣の気持ち、これはひとつ了承していただきたいと思います。また私は、各党党首と、事重大な場合にはこちらからも話しかけたいが、それを待たないでも、党首のほうからもお出かけになります。私がアメリカに行って何をするかわからぬと、こういうようなわけで、私に箱口令をしくというか、あるいはまたこういう問題はというようなことで積極的に鞭撻も受けます。もうすでにそういう場合は過去においてもしばしばございます。とにかくお互いに国会で席を同じくするものですし、国政をまじめに審議する、そういう立場でございますから――それは国会の場ばかりじゃございません、いかなる場合でも私は快く野党の党首をお迎えする、そういう気持ちでございますから、誤解のないようにお願いしておきます。
  239. 西田八郎

    西田委員 これはもうしつこいようですけれども、それじゃそういう方法も講ずるということですか。そういうふうに理解していいわけですね。――私はこの問題で憲法論議をしようとかあるいは法律論議をしようという気持ちで、この問題を提起しておるわけではありません。やはり国民のすなおな感情というものがいわゆる政治全体の中にどうしみ込んできておるのか、またそれがどう反映されておるのか、希望はどう満たされるのかという、そうした国民感情というものをやはりやわらげ、そうして今後の日本の偉大な発展のために国民も安んじてついていける、あるいはそれを批判してまたいろいろないい道を見つけ出す、こういう意味から申し上げておるわけであります。したがって、いまの総理答弁いささか不満足ですけれども、とにかくやるとおっしゃっていただいたということで、次に質問を移します。  まず私の質問したいことは日米繊維問題なんでありますが、前の国会が、一昨年の五月の九日に決議をなされております。それからまた、国際的にはガットの協定があるわけでありますが、こうしたガットの精神、いわゆる被害なきところに規制なしというこの精神を、まあ踏みにじってとは言いませんが、ある意味においてはこうしたものを無視してその繊維交渉に踏み切られ、そしてどんどんと突っ込んでいかれた。その背景には一体何があったのかということでありますけれども、その辺のいきさつについてひとつお聞かせをいただきたい。
  240. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日米繊維交渉については、これはもうしばしば申し上げましたように、背景として何があったかとおっしゃれば、これは国益があったという、それ以外にはございません。私は、日米間にこういう問題でわだかまりがあるような形で残ることは、これはまずいと思っております。理屈をいえば、お説のとおりです。被害なきところにとやかくいわれる筋はないじゃないか、あるいはガットの原則があるじゃないか、もうそれで済むような問題でございますが、とにかく米国側としてはなかなかそのまま受け入れられない事情もある。それがよし一般経済事情の変化といいますか、やや不景気と申しますか、そういうことであろうとなかろうと、とにかく米国側といたしましては、もう少し何か自粛しくれないか、制限してくれないか、こういうような気持ちが多分に動いておる。自粛しないなら自分たちが立法すると、こういうような形にまで発展しそうな形であった。そういう状態でございますから、そういうことがあって、繊維の問題は立法で片づいた、今度は洋食器の問題も立法だ、テレビも立法だというようなことになると、私は両国間の関係がまずい、国益を守る上から申しましてお互いに話し合いをつけていくという、それが望ましいのではないかと、かように私自身が考えております。それはもちろん、国会の決議のあったこと、これも前提にして問題と取り組んでおるのでありまして、かように申したからといって、羽目をはずしてどこまででも相手方の言いなりになる、こういうものでないこと、これは御了承いただきたいと思います。そのことは、もしも相手方の言うとおりであるなら、もうすでに解決しておるはずなんだが、いまだに解決しておらないところ、相手方の言うとおりでないということが御了承いただけるのじゃないかと、かように思います。
  241. 西田八郎

    西田委員 お伺いしておりますともっともなようでありますけれども、しかし、いま国益ということばが使われました。もちろん国益ということであるとするならば、やはりわが国の産業を守り、そのもとで働く労働者の生活をやはり守るということでなければならないと思うのです。ところが、これは十二月に入ってからのことは別としまして、首相が渡米される以前からこの問題がちらほら経済界に出てきたときから、日本の繊維業界はあげて反対をしてきておったわけであります。また百九十万といわれる繊維の労働者は、過半数まではいきませんけれども日本で最大の労働組合といわれる全繊同盟という組織があります。現在五十六万の組織を持っておるわけでありますが、この五十六万の組織があげて反対を唱えておりました。そうした反対をも押し切ってどうしてもやるということが国益であったのかどうか、ひとつお伺いをいたしたい。
  242. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 問題は、どういう点で解決するかということだろうと私は思います。だから非常に、互恵互譲でなくて一方的に譲歩する、それが国益に合致するかどうかと、こういうお話なら、そういうことは私はしませんと、このことをはっきり申し上げます。しかし互恵互譲の形で話が進むならば、それはお互いにがまんし、そうしてお互いにしんぼうすべきことじゃないか、かように私は思っております。いまもなお、さように考えております。
  243. 西田八郎

    西田委員 そうすると、互恵互譲ということばがよく出てくるわけでありますけれども、繊維業界では、この問題は政治問題化するな、できるならば経済界同士で話し合ってもいいじゃないかという態度まで、一時はそういう空気まで出てきておったことを私は承知をいたしております。それをなぜ政府間交渉、政府でこう強硬にやられたのか。どうも互恵互譲ということが、いわゆる日本の業界のためでなしに、むしろ譲ることだけが何か互恵のように考えられておる、こういうふうに理解されておるわけですし、また業界紙なんかを読みますと、そうしたことを非常に大きく書き立てております。また私は、その主張はある一面において正しい主張ではないかというふうに思うわけであります。  そこで私がお伺いしたいのは、そういうふうにいろいろ政府答弁されるけれども、問題は、やはり四十四年の十一月、佐藤・ニクソン会談がワシントンで行なわれた際に、その佐藤・ニクソン密約説というものが業界にも、また一般の報道界にも一つの公然の秘密のように流れておるわけであります。これについて、なさったのかどうか。
  244. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 密約説というものはございません。だからこそ、二人の閣僚が出かけていって話をしても話がまとまらないで帰ってきた、そういう状態でございます。密約説があれば、もっと私自身が圧力を加えただろうと、御理解がいただけるだろう、あり得ないこと、はっきりいたします。
  245. 西田八郎

    西田委員 そうなりますと、アメリカのフラニガン米大統領補佐官と牛場駐米大使との第八回会談、これは十二月四日の朝、ホワイトハウスで行なわれたわけでありますが、その席上、日本が非常に苦労をしてつくったといわれる、これは業界は反対をしておりましたし、私どもも賛成ではなかったわけでありますが、この譲歩したと見られる案を示したけれども、それに対して拒否された、そしてフラニガン大統領補佐官はここで異例の暴露戦術に出た、そしてこれは日本政府と事前に約束したためである、ここまでそれを報じられておるわけでありますが、この関係は一体どうなるのか。
  246. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 さようなことはございません、先ほど来申し上げるとおり。
  247. 西田八郎

    西田委員 そうすると、私の持っておりますのは毎日新聞のスクラップでありますけれども、毎日新聞の報道が誤っておるというのですか。
  248. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私と大統領との間に打ち合わせる、そしてただいまのように、どういうような条件でどういうようにするとか、そんな話はございません。それははっきり申し上げておきます。これは一貫して国会で私は答弁しておるとおりであります。
  249. 西田八郎

    西田委員 そうすると、問題は重大になってくるわけでありますが、首相は約束はした覚えがない、こういうふうにおっしゃる。そうすると、向こうは約束ができておるというふうに言われますし、私は一冊の本を持ってくればよかったのですが、自民党の参議院議員で、四十三年の選挙のときに三百万票という大量の得票をされて当選をされました石原慎太郎さんが「週刊現代」という週刊誌に「慎太郎政治調書」というものを出しておられます。その「慎太郎政治調書」の中で「私はワシントンリポートの中に、日米共同声明を評価して書いた折り、日米共同声明にも繊維問題は現われてこず成功だった、と書いたが、共同声明に繊維問題への附言がなかったことは事実だが、実際はバーゲンがあったことを知っていた。」ここまで書かれているわけです。「今繊維問題がここまで来たから初めて書くが、交渉後総理を見送って残ったワシントンで、ニクソン側近の消息筋から、繊維問題についてどんなやりとりがあったかの大まかを聞いた。その情報だと、二日目の会談で、アメリカ側は繊維問題について縷々説明したが、日本側はそれに対して、アメリカ側のいい分を理解したと、答えたという。」「そこで、向こうの説明を聞いての返事は、そのようなものになった。曖昧といえば曖昧だが、しかし向こうがそれをイエスとする可能性は充分心得ての上でだろう。」というふうに書いておられるわけです。「だろう」ということばは反語であって、そうだろう、そうであるというふうに石原慎太郎さんはきめつけておられると私は思うのです。そうすると、こういう問題があって、そして向こうからもそういう約束をしたと言われる。首相はしなかったと言われる。そうすると、一体だれがしたのかということになるわけですね。一体だれがしたのか。やはり日本政府の名をかたってしたから、フラニガンが言われるのでしょう。まさか大統領補佐官がうそつきとは言えないと思うのです。だから、その辺を私は聞きたいのです。
  250. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 話し合ったのは私とニクソン大統領です。これを通訳をした者はおりますが、それ以外にはおらないのです。アメリカ側が困っている事情も私にわからないことはない。しかし、私は国会でしばしば申しますように、こういう問題は解決すべき問題だ、かように考えております。いまもなお考えております。しかし、それより以上に約束をした、かように言われるような問題ではない。石原慎太郎が何と書こうが、当の本人がさようなことはない、かように申すのです。おそらくこの国会でかように私が申し上げることは、必ず報道関係からアメリカに打たれるでしょう。私自身がでたらめを言ったり、うそをついているなら、そのままアメリカだって許すわけがないだろう、かように思います。  しかし、私自身がアメリカとの間にこの種の問題が解決されないで残ることはまずい、かように思っておることは、いまも変わりはございません。それには互恵互譲でなければならないということです。おそらくニクソン大統領御自身にしてもたいへん困った問題だ、かようには思っておられるでしょう。しかし、どういうようにしたらいいか、何はどうするというようなこまかな話というか、いま当面しておる交渉のアイテムなどの問題になってくると、たいへん専門的なことですから、おそらく知らないだろう。私自身も四期首相はしておりましても、その具体的な内容についてはどうしたらいいか、そういうことについてはまだ判断ができません。それほど専門的な問題である。だから、皆さん方から言われるようにこの問題を約束などするはずはない。またそれは人が何と言おうが、さようなことはございません。とにかく話し合ったのはニクソン大統領と佐藤榮作と二人だけなんです。ほかの人がその後にいろいろとやかく言ったからといったって、そのほうを信用されて当の本人の言うことを否定されては困ります。
  251. 西田八郎

    西田委員 どうも私頭が悪いのかしらん、おかしいなと言ったのですよ。佐藤首相は一国の総理大臣でありますから、同じ国会議員の一人として絶対に信頼したいと思う。信用したいと思うんだけれども、しかし、向こうでは約束をしたと言い、こちらは約束をせぬと言う。そしてした者はおらぬし、そのことが非常にネックになって、これはアメリカでも裏切りだというようなことも言われておる。  実は先月の十三日に共和党の下院議員でありますカマーベルという人がお見えになりまして、そして繊維関係について話をしたいということでお話しをしたわけでありますけれども、その人の話等から判断をしても、やはり今度の場合は日本が悪いんだ、こういうような言い方をされる。なぜ悪いんだと言うて言い返すと、いや、それは日本経済的に大きくなってきたんだ。少しぐらいアメリカの手助けをしてもいいじゃないかというようなことで逃げられるわけですが、話している者自身しか受け取れないニュアンスとして、やはり日本政府というものが信義を欠いていると言わんばかりの言い方をせられるわけであります。  そうすると、一体この決着はどうなるんですか。首相は約束していられない。そしてフラニガンは約束があると言う。そしてそのためにいま交渉は難航しておる。私は、やはり通産大臣大蔵大臣は六月に行ってこれは決裂してこられたのですから、推理小説の推理じゃないですけれども、これは一応白と断定せざるを得ないだろう。ということになると、首相か、それとも首相はこまかいことを知らぬと言われれば、あるいは下田大使がそういう発言をしたかもわからないですね。その点についてはいかがでしょう。
  252. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん駐米大使も、日本から出かけてはいますが、本省の訓令なしにかってなことはいたしておりません。これはもうはっきり申し上げてしかるべきでございます。ただいまの点はどこまでも私自身にかかわる疑念のように思いますが、さような点がないということ、これは私見身が皆さんに事情を説明する以外にないんだ、かように思います。私はもう信頼していただく以外にはない、かように思っております。
  253. 西田八郎

    西田委員 これは信頼せいと言われるのですが、その辺の一連の動きなりやりとりなりを見てみると、どう考えても――私は信頼せいと言われるから信用したいのです。私は人間がばかですから、人の言うことはほんとうに信用したいのです。信用したいのですけれども、いまの話のつじ  つまの合わぬものは、やはり信用ができないですね。   そこで、ひとつ首相、もしもそういうことがしてなかったら、これはやはりアメリカの謀略だと私は断定せざるを得ないのです。日本の牛場大使を困らせるためにフラニガンが、とにかく佐藤首相とニクソン大統領との間では約束ができておるんだ、貴国の総理大臣とわが国の大統領とでは約束ができておるんだ、あるいは政府間では話が進んでいるんだ、それを君たちは聞かぬのかということでおどしにかけてやってきた、こう解釈せざるを得ない。ところが、日米友好という立場に立って、大統領の補佐官ともあろう人を私は疑うということはどうも許せない。  ですから、その辺のところを、謀略説なのかあるいは根も葉もないことなのか、もしも根も葉もないことであるとするなら、根も葉もないことだとおっしゃっていただきたい。
  254. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 何と言おうと、根も葉もないことだからこそ話は進まないのです。あるいはフラニガン自身は、大統領から話をしろ、かように言われるから話をする。そうすると、大統領は佐藤と話があるのだろう、かように思うかもわかりません。私から牛場君に交渉しろ、こういう指図をしておりますから、牛場君も最初は何か約束があるかと思ったかもわからない。しかしながら、具体的な問題も指図がない。そういう状態ですから、とにかくフラニガン補佐官、同時に牛場君、これは両大使の間で話を進めていく以外には方法がないのです。具体的な問題を大統領と私でこれは直接やるわけはございませんから、そこらのことをよくお考えをいただくならば、これはおわかりがいただけると思います。  いま一番問題になっているのは十七品目、六グループとか、こういうようなことが問題なんですが、十七品目に何と何があがっているか、六グループに何と何が、どういうような分け方をするのか、そういうことなど専門家でなければわかるはずがございませんじゃないですか。私は、案外、通産大臣に任命されたからって、すぐその日からわかるような状態のものじゃないと思います。おそらく事務当局だって、相当長く関係しておって初めてこういう問題がわかるのじゃないだろうか、かように思います。
  255. 西田八郎

    西田委員 それは確かに、私でさえ長年、繊維で二十年ばかりめしを食ってきているわけですけれども、十七品目、六ワクと言われても、そうずばっとわかりませんよ。わかりませんけれども、大体読めばわかるということになるわけですが、しかし、それはいわゆる事務当局の交渉であって、繊維問題について解決するように努力してほしいとかあるいはアメリカとしてはいま繊維問題で困っているのだから、ひとつ日本はその線に沿って、おまえさん協力してくれぬかというような形でその話が出たかもわからない。もしも出たとすれば、よろしいということで、うちのある人に言わせれば、ハウ・アー・ユーだということで握手する程度だと思っていたやつが、向こうではイエスだと解釈した。石原慎太郎氏の著書の中にも、そういうふうに非常に持って回って書いておるわけですけれども、そういうことはきわめて重要な問題じゃなかろうかと思うのです。ですから、その点はやはり話はあったことはあったのですか。
  256. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来申しますように、あったことは事実ですよ。そして両国間にそういう問題を、懸案を残しておくことはよろしくない、かように私は判断しておる。いまさっきも話したばかりでございます。
  257. 西田八郎

    西田委員 そうすると、首相の外交辞令として使われたことばが、結局は百九十万――これは経営者あるいはその他末端零細な企業まで入れれば約二百三十万人に及ぶ労働者、それらの家族九百万人を含めた繊維産業のこれは重要な問題であるわけですよ。そういう重要な問題が首相の一言の外交辞令のようなことばでここまで発展をする。そしてしかも、それをたてにとられて、どんどんと向こうからは矢もたてもなく攻めつけられるということになってきたのでは、私はこれは重要な問題だと思うのです。そういう場合に対してやはり首相として責任をお感じになるかどうか。
  258. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この話が片づけばたいへんけっこうです。また片づけるべき筋のものだ、私はかように思っております。また業界の方々も、いろいろ態様はそれぞれございますから、糸をつくっておる段階もあるし、さらに織物の段階、さらにミシンを踏んでおられる方もあるだろう、いろいろの態様がございますから、関係者としてはたいへん広般なものだ。それだけに複雑なものであり、簡単に最初考えたようなものじゃないことがいまになってよくわかっておるわけで、その辺は申し上げる必要はないように思っております。
  259. 西田八郎

    西田委員 そうすると、いまのことばでは、結局簡単なものではなかったということは、反省するという意味に解釈していいわけですか。
  260. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおり、けっこうです。
  261. 西田八郎

    西田委員 次に、そうした情勢の中で私はお伺いしたいのですが、外務大臣、これはやはり外相の情報のキャッチのしかたが非常にずさんであったし、詳細でなかったのではなかろうかと思うのです。  第一初めにミルズ法案が通る通るということでけしかけられて、そしてあわてて繊維交渉に飛び込んだ。ところが、ミルズ法案は御承知のように、流れてしまった、七〇年通商法は議会を通過しなかった、こういうような情勢。しかもそれとかけ引きに持ってこられたということに非常に大きな問題があるし、下田大使は、先ほど首相は本国からの訓令を待ってと言われたけれども、本国の訓令を待たずに、かってにしゃべったことも数数あるわけです。ですから、そういう点で下田大使喚問ということまで六十三特別国会では起こったわけですよ。  ですから、そういう点から考えますと、私はこの情報をキャッチするについて、外務省非常におくれておったのじゃないかというふうに判断するわけでありますが、どうですか。
  262. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 こうした問題についての情報の収集や分析というのは、御承知のように、非常にむずかしい問題でございますから、御批評はいろいろあると思いますし、私どもとしても、それはある程度甘受しなければなりませんし、また今後も大いに努力を新たにしなければならないと思います。  ただ、私の経験上申し上げますと、この繊維問題は、ただいまもお話がございましたように、日本としては実にこれは重大な問題でございますけれどもアメリカ側の取り上げ方もまた非常に大きな取り上げ方になっておることは御承知のとおりでございまして、なかなかその基礎も私どもにもよく理解できません。たとえば関係する人員の数にいたしましても、二百四、五十万と向こうは向こうで言っておりますし、そうしてこれは企業者だけでなく、先方の労働界としても、そしてまた政治的にも非常に大きな問題になっております。それともう一つは、現在日米間が、御承知のように、他のどこの国との関係よりも密接でございますだけに、この種の問題にいたしましても、いろいろの種類の情報が相互からお互いに非常にツーツーに通じ合いますですから、私どもとしても情報の収集にはほんとうに骨を折っておりますけれども、その分析とか判断とかいうことになりますと、なかなかむずかしい点がございます。ただいま申しましたように、私はいろいろ御批評もあったことと思いますし、今後もまたなかなかむずかしいと思いますけれども、十分それらの点については配慮してまいりたいと思います。  それからもう一つ最後につけ加えたいのは、この問題はいままでも努力いたしておりますが、この問題の推移を注視しております国々が非常に多いわけでございまして、今後それらの国々の動向その他についての情報を正確に掌握するということが、本件を処理してまいります上にまた非常に大きな資料になろうかと思います。そういう点につきましても十分戒心してまいりたいと思います。  それからなお、これはお尋ねのなかった点を申し上げて恐縮なんですが、立ちましたついでに一言申し上げますと、こういうふうにいろいろの問題がむずかしいわけでありますが、幸いにして昨一九七〇年一年間の日米間の貿易で申しますと、通関ベースの実績がわかりましたが、対米輸出が五十九億五千万ドル、それから日本アメリカからの輸入が五十五億六千万ドル。これは相当なふえ方でございまして、こういう点から申しますと、政府が予想しておりました百億ドル前後にいくかいかぬかと見ておりましたのが、輸出入合わせますと百十五億ドルをちょっとこえたのではなかろうかと思います。こういう点はまず幸いであったかと思っております。
  263. 西田八郎

    西田委員 お尋ねしないことまでお答えをいただきまして、どうもありがとうございましたが、そういうふうに日本アメリカとの通関関係といいますか、貿易関係というものは非常に密接な関係にありますし、またお互い両国にとっても重要な輸出国であり輸入国である。こういう観点に立ちますと、これからの対米経済交渉というものは、いままでの観点と違った観点からしていかなければならぬと思うわけであります。いままでは、アメリカのほうでは――私は十年前に行ったのですからもう古いことになるわけですが、当時アメリカ日本経済援助をしてやろう、そして日本を何が何でもアジアにおけるりっぱな国に育ててやろうという感情がありましたよ。ところが、いまはそういうものはないわけですよ。とにかく、これはもう世界第二の経済大国に発展してきた日本だ、ひとつ競争相手としてもう決してわれわれひるむんじゃないぞ、好敵手じゃないか、こういう感覚で私は臨んできておると思うのです。  そういう感覚で臨んできておるアメリカとの経済関係、特に貿易関係について外務省は、今日までのこの日米繊維交渉に見られる限りは判断を誤っておるし、その資料の収集が適切でなかったというふうに私は思うわけです。さらにこれから自動車の上陸もありましょうし、スーパーの上陸もありましょう、農産物の関係もありましょうが、そうした点を考えましたときには、私はかなりそうした点について小さな配慮とそれからこまかい、何といいますか、情報網ですね、これをやはり持つ必要があると思うのです。  今度そもそもこういう問題が出てきたのを見ても、私は、アメリカは制限というか、全然インジュリーはないんだ、被害はほんとうにこうむってないんだ、それなのに、なぜだろうかという疑惑を持ったわけです。そういう点について将来一そうひとつ努力をしていただきたいのですが、それについて具体的に方策はありますか。
  264. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 外務省としては、こういう時勢でございますから、ますますもって通産省その他経済官庁との連携を密にいたさなければなりませんし、それから先ほどもちょっと申しましたけれども、ただ単にアメリカの状況の掌握だけではなくて、世界的な動向の掌握が非常に必要だと思います。そして根本は、やはり自由無差別の世界経済の原則と申しますか、これがともすると、最近繊維問題に象徴されておりますように、保護制限主義が台頭する傾向がございますので、日本の国益から申しましても、これをどうしても押えていくようにと申しますか、日本自身といたしましても、自由無差別の世界の繁栄という原則に照らして、日本自身が自己の国益のためにもそういう流れに引き続き指導的な立場になり得るようにしていかなければならない。これを基本的なフィロソフィーとして経済外交を展開していきたい、かように存じております。
  265. 西田八郎

    西田委員 そこで、この問題は解決がしたわけではなしに、一たん中断された形になっておるわけでありますが、これはフラニガン・牛場会談が決裂をしてどうしても妥協点に達しなかったからということでありますけれども、まだこの問題はこのまま継続するものと見なければなりません。向こうは引っ込めていないわけでありますから、今度は七〇年通商法で争う、こういうように言うてきておるわけでありますが、この交渉は今後さらにお続けになるのかどうか。
  266. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは本会議で私申しましたのでありますが、一口で言えば、国会決議の御趣旨を体して、国益を踏んまえてこの交渉は何とか妥結をいたしたい、こういうふうに考えておりまして、いま牛場・フラニガンの話し合いというものは、何と申しますか、停滞状況でございますが、決してわがほうとしてもあきらめたわけではございませんし、また先方もこれはあきらめたわけではもちろんございません。  ただいま御指摘もございましたが、今後アメリカとしてのいわゆるミルズ法案といわれているようなものは、昨年末におきますまでのアメリカ国内の動きなどにつきましても相当詳細に私どもも情勢の分析をしておるつもりでございますけれども、これとの関連において、あるいはまた世界的にどういうふうに見られるか、いろいろの点から情勢判断をしながら、そしてわがほうの牛場・フラニガン会談に臨んできました態度というものは、私は諸般の情勢から考えて、日本としては妥当なものであると私は考えておりますので、この基本線を十分米側にも一そう理解をさせることが必要である。こういう態度で、何と申しますか、あせらずに、じっくり落ちついてわれわれの意見というものを通す。  そして、これはもう申すまでもないことでありますが、そもそもがこの問題の解決の方法というのはいわゆる自主規制でございまして、それ以上に出れば、これはやはり基本のフィロソフィーにかかわる重大な事柄でございます。自主規制ということでありますからには、おのずから日本国内の関係の方々の御理解と御協力なくしては実行できないわけでございますから、そういう点も十分に踏まえて、今後とも、いま申しましたように、あせらず、じっくりかまえて対処していくべきではなかろうか、かように考えておりますが、なお今後とも政府部内の連携をますます緊密にいたしたいと思っております。
  267. 西田八郎

    西田委員 いま外務大臣から御答弁があったのですが、いまの答弁を聞いたら、繊維業界の人たちもさぞかしびっくりするだろうと思うのです。いままで強い姿勢であったのが、いま皆さんとひとつ話し合ってということばが出たわけであります。いままでは話し合いがなかった。だから、十二月十六日共立講堂で行なわれました繊維のあの決起集会というものはほんとうに――私どもは、業界というものは自民党の偉大なる支持者だと思っておったのです。ところが、あの大会では、自民党政権にはさようならと書いたプラカードやいろいろな、首相に言えばおかんむりをいただくような文言もあったわけです。そこまで政治不信というものは高まってきておったわけです。  しかし、いまも外務大臣がおっしゃるように、もともとこれは経済界が自主的に話し合いをする問題だと思うのです。ですから、今後こういう話があるとするなら、私はやはり民間ベースに移すべきだというふうに理解するわけですが、その点について御同意をいただけますか。
  268. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは率直に申しまして、やはり政府が仲に立って話し合いをしていくべきものであって、そして日本の国内といたしまして政府関係の方々との間が密接でなければならない。この種の問題の取り上げ方といたしましては、やはり日本側としては政府が窓口にならざるを得ない、またそれが適当であろうかと、かように存じております。
  269. 西田八郎

    西田委員 その場合は、重ねて念を押すようでありますけれども、業界――業界というのは会社の代表だけではなしに、私はそれの製造に従事しておる労働組合、これの意見もやはり十分聞かなければならぬと思う。そうしたその両者の合意を得られるという形において解決をするという、そういう決意であるかどうかお伺いをしたい。
  270. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 政府としての立場から申せば、これは国益全般の上に立ちまして、大所高所からの判断が必要だろうと思いますし、そうした判断をいたします場合に、十分国内的な理解と御協力を得うるようにしなければならない、こういう心組みで臨むべきであろうかと考えております。
  271. 西田八郎

    西田委員 心組みであって、そうするとそれは、かりに反対があったらという疑念がわいてくるのです。この問題に関してはどうも疑わざるを得ないので、疑い深いようですけれども、その点どうですか。
  272. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私は、心組みと申しましたのは文字どおり心組みでございますし、それから非常に大きな問題でありますけれども総理がしばしば言っておられるように、沖繩問題というような大問題も片づいたわけでございますから、日米関係において十分これからじっくり話し合いを詰めていけば、私はそうした立場に立っての日本の姿勢というものが理解されるであろう、またそういう面にこの上とも努力をいたしてまいりたい、つまり日本側の方々もこれならやむを得なかろうというふうな線を守ってまいりたい、かように思っております。
  273. 西田八郎

    西田委員 そこで、問題はやはりこれからの国内の繊維の政策ということになってくるわけであります。もうすでに、こうした自主規制という声が出かけてから、結局アメリカのバイヤーのほうでもこの買い控えというような点が出てまいりまして、綿織関係につきましてはこれはもう操短というような事態も出てきておるわけであります。また合繊織物につきましても相当な被害が出つつあるわけであります。そういう点から考えまして、特に通産大臣日本のこうした繊維産業が先進国から押えられる、開発途上の国々から追い上げられる。サンドイッチの中身のような立場で相当努力をしなければならないであろうということで、いままでの原糸素材メーカーとしてのいわゆるテキスタイルインダストリーから、やはり流行を売るというファッション産業に移行をしていこうという努力が行なわれて、そしてそれがいわゆる政府の御理解もいただいて、構造改善という方向に進んできておるわけであります。その構造改善が、いまのところあまり進捗していないというふうに聞いておるわけでありますけれども、それらの進捗度合いなりあるいは今後の見通しなりについてひとつお聞かせをいただきたい。
  274. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のようにだんだん情報産業化といいますか、ファッション産業化していかなければならないわけでありまして、それを目ざして構造改善をやっておりますが、織布がただいま予定の五割三分ぐらい、今年度、四十五年度を終わりますとそのぐらいなところでございます。そこであと紡績もございますし、ニットと染色とあるわけでございますけれども、紡績のほうはあらかた所定の時間でいけそうに思いますが、織布などはただいまのような状況でございますので、国会の御賛成を得られますようでしたら、四十六年までというのが在来の予定でございますから、情勢も変わってまいりましたし、もう二年ほど延ばすことがいいのではないかとただいま考えております。
  275. 西田八郎

    西田委員 きょうまで五年間かかって五三%というのが織布の構造改善の進捗状況であります。これはせっぱ詰まった空気というものもなかったでしょうし、そう大きな打撃も、順調に伸びてきたのでなかった。したがって、それに対して思惑もあって積極的に取り組まなかったという業界の一部の面もありますけれども、しかしこれは遅々として進んでないわけであります。ちょうど三年ちょっと、もう四年になろうとするわけですが、それで五三%、最初の一、二年はほとんど進捗しなかったというような状況でありまして、これがあと二年で解決するか。二年ということはことしから勘定して三年ということになるわけです。さらにニットの問題があります。そして染色があります。そして染色は日本では中小企業ばかりでありまして、大企業と目されるような染色工場はない、しかもそれをグルーピング化していこうということになると、たいへんな問題になってくると思うので、それがはたして二年間で、あと三年で達成できるかどうか、もしそのときできなかったらまた延ばすというようなことでは、私はやはりこのわれわれの審議というものが軽率であるというそしりを免れないし、また通産省の出される案も軽率のそしりを免れないと思うのです。そういう意味で、いま二年というお答えがあったようですけれども、もう少し慎重に検討をしていただいて、できるならばやはり見通しを立ててきめていただくということのほうがいいのではないかと思うのですが、いかがでございましょうか。
  276. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨年来の不況の中で確かに構造改善をやっておられたところはかなり強かったということを関係者がみんな知っておられますので、ここへきまして相当従来に比べて意欲が高いようでございます。賃金もずいぶん上がってまいりましたし、人手も不足になります、特恵等の問題もございますから、かなり情勢が変わってきておりますので、まず二年、これからと申しますことは言われるように三年ということでございますが、ということであろうかと思っておりますけれども、またそういう答申も出ておりますが、よほどよく見きわめまして、一度そういうふうにきめましたら、もうそれでひとつ皆さんお願いをするというふうにやっていきたいと思っております。
  277. 西田八郎

    西田委員 次に特恵供与の問題でお伺いをしたいわけであります。  当初、繊維製品については、いま構造改善のさなかでもあるし、いろいろの事情もあるのでということで、特恵を与えないというような姿勢でこられました。ところがそれだけでは済まされないということで、どうも繊維製品についても特恵を供与をしなければならないようになってきたというふうに聞いておるわけでありますけれども、その辺の事の真相といいますか、事実をひとつお聞かせいただきたい。
  278. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私自身わが国の置かれた立場から考え、発展途上国のことも思いますと、なるべく特恵というものはやはり譲れるものは譲りたいという気持ちを基本的に持っておりまして、どうしても説明がつかないあるいは見込みがないというものだけをやむを得ず例外品目にする。御承知のように米国、EEC等々の関係もございます。その三つの国の一つとしての先進国のわが国の立場というものもございますから、それで絹織物と生糸を残した。ほかの部分は何とか構造改善を進めてまいりますとやっていただけるのではないかという判断からそのようにいたしたわけでございます。
  279. 西田八郎

    西田委員 生糸と絹織物は除いてあとはということになりますと、これは全繊維に及ぶわけでありまして、これは構造改善を待っているまでもなしに、そのあおりというのは非常にきびしいものがあると思うのです。ということは、いま日本はようやく生産性の面あるいは機械設備の面あるいはそれに対する技能者の技術の面、そういう面で特恵を与える国々に対しては相当すぐれています。しかし最近、これら開発途上といわれる国々の技術開発はものすごく進んでいるわけです。開発が進むというよりもむしろ導入が進んでいるわけで、そして日本の場合はやはり昭和初期の織機だ、あるいはそうしたものがまだ工場の中では音を立てて実際に稼働をしておるわけです。ところが戦後そうした繊維工業に取りついた国々は、戦後できた新しい、イタリアの機械であるとか西ドイツの機械であるとかいうようなものが取り入れられてきて、もうそれを扱う技術者の技術面だけ、労働者の技術面だけというような点にまできておるわけであります。そうするとかなりな圧迫を受けるように思うわけでありますが、そうした面について多少の考慮をするという意思があるかどうか。  ついでに、立っていただくのですからもう一つお伺いしておきたいのですが、香港と中共が供与を与えられるほうの国側になるというようなことを仄聞するわけでありますけれども、その点について事実かどうか。
  280. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど例外にいたしました二品目を申し上げましたが、ただいま御指摘のような点もございますので、完全に特恵にするのと例外との間の、いわゆる税率を二分の一カットするという範疇の中に、綿の織物、合繊の織物、ニット、それから縫製品、綿糸、ここらをその段階に置くことがいいのではないかといま考えておるわけで、それは御指摘のような理由からでございます。でございますが、やはり発展途上国は全く新しい機械をぽんと入れてまいりますから、なかなか強いわけでありまして、われわれとしては先進国としてのデザインであるとか、あるいはいわゆる情報価値であるとかいうものに重点を置いていくべきではないかと思っておるわけでございます。  香港につきましては、まだ最終的に決定しておりませんけれども、たいへんにわが国のほうが出超の片貿易でもございますしいたしますから、交渉いたしましてあるいは特恵を与えることがいいのではないかと思いますが、しかし、その際には、繊維関係がたいへんに競合いたしますから、そこで与えるにいたしましても、両者で話し合いをいたしまして、一定の条件のもとにということにするのが適当ではなかろうかと思っております。  中共につきましては、せんだっても大蔵大臣からお答えがあったところでございますが、この特恵というものが今日までできてまいりました経緯が、発展途上国の強い希望ということから、ずっと国連貿易開発会議できておりますものですから、そのメンバーでもございませんし、またそのような希望があるかないかということもただいまさだかでもございません。いろいろな事情がございますので、法律といたしましてはなるべく広く書いておきたいとは考えておりますけれども、ただいま現実の問題としてあるわけではございません。
  281. 西田八郎

    西田委員 説明を聞いて大体わかるわけでありますが、ぜひともそういう点は日本の産業を――こう言うとまた、アメリカの保護主義を批判しておっておまえ何を言うのだと言われるかもわかりませんが、産業が対等で他と競争ができるというような立場になるまでは、やはりそういう点は十分考慮を払っていただきたいということをお願いをいたしまして、次の質問に入りたいと思うのです。  中小企業では三月危機説というものが若干流れているようであります。そこで昨年の倒産はどうだったかといいますと、昨年は市場第二位の倒産だということが新聞に報道されておるわけであります。こうしたような情勢というものは、やはりこの経済の高度化あるいは技術革新というような形の中で、いわゆる高度経済成長のひずみがやはり中小企業にかぶってきているのではなかろうかというふうに考えるわけであります。  そこで、このひずみというものを是正するためには、いろいろな近促法であるとか、いま先ほどお話のあったような特繊法というような形において、除去に努力しておられるわけでありますが、さらに二重の構造を解消するために一体どういう処置を講じていかれるか、この点をお伺いをしたいわけであります。
  282. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 技術革新がずっと進んでまいりまして、いろいろな製造の加工度というものが非常に高くなってまいりました。また部品などが多くなってまいりましたから、必ずしもいわゆる大企業の大規模生産に適さない部分が逆に出てまいりまして、それが付加価値の比較的高い部分でございますが、また大衆消費というものにも、一応みんなが、どう言いますか、あきてまいりまして、自分の独得のものを求めたいという嗜好も出てまいりました。同じことはサービス業についてもいえるであろうと思いますので、やはり小回りのきく、行き届いたサービスというものが評価されるようになってまいりました。中小企業のこれからの行き道を大体そういうふうに私ども見定めまして、ただいま御指摘の構造改善もさようでございますが、近代化促進法でありますとか、あるいは下請の振興でございますとか、金融財政その他の措置も、西田委員よく御存じでございますが、そういうことを地道に進めてまいりたいと考えておるわけでございます。
  283. 西田八郎

    西田委員 そこで私は大蔵大臣に、今年度の予算の中では、一般会計、財投を含めて約七千億、中小企業金融というものを用意されておるわけなんです。ところが今日までの貸し付け状態は一体どうなっているのか、その現状についてひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  284. 福田赳夫

    福田国務大臣 中小企業政府金融――いまお話しのは政府金融のほうかと思います。これは最近、景気の情勢もこれあり、昨年末、四十五年度予算に追加をいたしまして、とにかく最大限の金融の面における努力をしている、こういうふうに考えております。  なお、明年度予算におきましても、ことしの額の一八%ぐらい増になりますか、そのくらいの額を充当する、こういうふうに考えておりますが、特にいま景気が流動過程にある、超高度成長から安定成長への過程である、そういう景気の動く場合には、中小企業に対する影響が特に大きい、こういうふうに考えられるわけでありまして、大蔵省としては各財務局に指示をして、中小企業状態をよく注意をしておいてもらいたい、そして、もしまじめな経営努力をしている人に異変があるというような事態に対しては、それぞれ手配をするように、こういうふうにいたしておるのです。現に愛知県のタイルですね、あるいは燕の食器、こういうような問題につきましては、かなり政府金融を通じまして効果をあげている、かように考えております。
  285. 西田八郎

    西田委員 いまのお話で、やはり政府金融に中小企業はたよらざるを得ないのですね。市中銀行から借りた場合には、いけないといわれながら、やはり歩積み両建てをやられています。そうして高利の利子をとられるというようなことで、結局金も借りるところがなくなって、商利貸しの金を借りて倒産したという企業も、この史上第二位の倒産数の中には含まれておると思う。したがって、私はこの七千億では実際には足りないのではないか。十二月時点で積み増しをしたという、いまお話しでありましたが、本年度も足りないのではないか。さらに、今後保証協会の保証のあり方とか、あるいはいろいろなことを考えてみて、運転資金までめんどうを見てやるということになりますと、相当な金高を必要とするのではないか、こういう点について。  いまの点はもっと配慮をいただきたいということにあわせて、いま私が持ち出しました保証協会の保証の問題です。これをひとつ何とか改善してもらえないかということ。その企業は非常にいままでの業績もよかったし、これからも伸びるであろうということもわかっておっても、いろいろ資産状況を調査してみて、赤字であると、どうも貸すほうが鈍る、これはカットされる場合も往々にしてあるわけであります。これは非常に困った問題ではないかということで、たくさんな業者から、そうした面の改善の要求を受けておるわけでありますが、これについて保証協会が保証されればできるわけですから、そういう面で改善をしていただく意思はあるかないか。
  286. 福田赳夫

    福田国務大臣 保証協会の保証につきましては、かなり最近改善を見ておるわけでありまして、四十六年度の予算に関連してこれをさらに拡大するという計画にはなっておりませんけれども、とにかく私は、ことしは曇り後薄日というふうに申しておりまして、まあとにかく、今日のような経済の沈滞状態はそう遠くない時期に改善される、こういうふうに見ておるわけであります。もしそういうふうにならない事態におきましては、中小企業は非常に困る、そういうふうに考えますので、そういう際には適時適切な対策をとる、かように考えておるわけであります。
  287. 西田八郎

    西田委員 曇り後薄びよりと言われましたけれども、私はそれはマクロ的に見た場合であって、中小企業という立場から見ました場合には、曇り、あらし、そして薄日が出てくるわけです。必ず大企業におくれて、そして大企業よりも大きい打撃を受ける、こういうふうに私は見ていかなければならぬと思う。そういう点では少し判断が甘いのではないか。やはりもっときびしい判断をして、その準備をしていただくべきではないかというふうに考えます。  次に、同じ金融面ですけれども、最近問題になっておりますのが、下請企業に対する支払いの問題があるわけです。大企業は少し景気にかげりが出てきたりあるいは自分のところの収支状況というものが悪くなってくる、そうするとどうしてもそれを中小企業へ持っていく、そして下請支払いの防止法があるわけですけれども、それに基づいてうまくからくりがされておる。現物はもうすでに入っておるけれども、検収をおくらす、そして支払いをおくらせるというようなことがとられておる。そのために中小企業としては非常に運転資金に困っておる、こういう実情があるわけであります。ところが通産省のほうではそうしたことによる支払い防止法にひっかかるような支払いの遅延というものは、現在のところほとんど皆無だというようなことをおっしゃっておるわけでありますけれども、その実情はいかがですか。
  288. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 中小企業庁長官が参っておりますので、詳細にわかっておりましたら申し上げますが、確かに西田委員の言われましたような問題があるわけでございます。私どもは大会社が検収をおくらせて中小企業に迷惑をかけておるらしいという実情を知っておるケースが幾つかございます。しかしこれがなかなか調査では出てまいりません。御承知のような理由から出てまいらないわけでございます。しかし検収をおくらせるのもこれは法律違反でございまして、そういうふうに法律を変えたんでございますから、公正取引委員会なんかともよく連絡をして、こっちからの、つまり検査に行く、自発的に申告せいはなかなか無理でございますので、そういうことをしてまいらなければならない。またいたしつつあるわけでございます。ここでこういう御発言がありましただけでも、私はやはりずいぶんこれはそういう企業に対する警告になるだろうと思っておりますが、私どもせいぜいその点は心がけてまいります。
  289. 西田八郎

    西田委員 現職の大臣がそういう違反のあることを知っておっても手が出せぬ、これはどういうことかということで私は非常に疑問に思うわけですが、いまこれから強化していくというお答えがありましたので、そのお答えに免じて、これをそれ以上追及しようとはしませんが、とにかくそういうことで、もうあすの米代もないような中小企業たくさんあるんですよ。おやじさんはせびろ着て、そして皮のかばんを持って自動車に乗って走って歩いているけれども、ガソリン代待ってくれや、修理代待ってくれやということで、子供が学資の千円くれと言っても、ちょっと待て、あしたにせい、というような中小企業は数たくさんあると私は思う。しかもそれが日本経済をささえてきておると思う。そういう中小企業に対してやはり十分なる処置をひとつ考えていただきたい。特にこれをお願いいたします。  そこで、いま答弁があったんですから、それの何を求める必要もないだろうけれども、あらためてひとつ通産大臣熱意のほどを聞かしていただきたいと思います。
  290. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は昨年のいまごろ、産業構造審議会で、例の各企業の設備投資の動向を、ちょうどいまごろから四月にかけましてとるわけでございます。こういう年には必ず金のしわは最後に中小企業にいく、そういう年であるから資金調達状況まであわせてよく聴取をするようにということを、わざわざ事務当局に注意をいたしたわけでございます。他方で中小企業が昔に比べますと、大企業のバッファーといいますか、緩衝地帯としての地位からかなり強くなりつつはございます。ございますが、いま言われましたようなことを実際私ども間々聞くのでございますから、品物を受け取っておいて、しかも検収をおくらせるというのは、ありていに申して一種のどろぼうのようなものでございます。私ははっきり言って、そうだと思いますので、できるだけ私ども公取にも連絡いたしまして、立ち入り検査をするなりいたしまして、具体的なケースをつぶしていきたいと考えております。
  291. 西田八郎

    西田委員 ひとつ、ぜひともお願いをいたします。  次に、社会保障関係、特に七〇年代の課題は老人問題を解決することにあるとまでいわれておるわけであります。そうしてまた、日本の老人も六十歳以上で一千万、六十五歳以上で七百五十万という大量の人口になりつつあるわけでありまして、これはまださらに比重は伸びるであろうというふうに聞いておるわけであります。そこで、厚生大臣から老人に対する基本的な考え方、ということは、いままで老人は弱いものだ、敬老ということばで保護をするということに重点を置かれてきたのです。しかしいまの老人対策というものは、老人の持っておる知能あるいは経験というものを生かして、社会参加の中でそれを昇華させるというのが、これが正しいとらえ方だ、そしてそれに合わせて老人福祉をしていくというのが私は一般的な考え方になってきておるように思うわけでありますが、そういう点で厚生大臣の老人対策についての基本的な考え方を、ひとつ伺わせていただきたい。
  292. 内田常雄

    内田国務大臣 老人対策の重要性がこれから高まってまいりますことは、西田委員から御指摘のとおりでございます。幸いにして現在におきましては、日本の老人人口構造は、そのシェアが低くございますけれども、これから二、三十年ぐらいの間に急速にその比率が高くなってまいりますので、したがって老人対策が非常な重要性を持ってまいること、しかもその重要性の面は、所得保障の面、それから医療の面、さらに住まいの面あるいはまた人々の平均寿命が長くなってまいりますので、六十五歳といっても、私ももうそれにだんだん近いのでございますが、まだまだこのように働けますので、所を得て従来の経験を生かして働かせるようなそういう世話を見てまいるというようなこと、それからまた、最近の特色に核家族が多くなりましたので、ひとり暮らしの老人あるいはまた高齢者世帯というようなものがふえまして、それをほっておけないような事態もございますので、そういう事態に対応する特別の施策がなければならないと考えております。あとからだんだん申し上げたいと思いますが、それらのことにつきましても、でき得る限りの手を打つ、その手始めのようなことを四十六年度からもやっております。
  293. 西田八郎

    西田委員 そこで、いまおっしゃいました生活保障の面、医療、これは健康管理を含んでの問題だと思いますし、住宅、雇用、いろいろの問題があるわけですが、その一つ一つを具体的にお伺いするわけです。  まず生活保障について、年金制度がこれでよいのかというのが一つの問題になってくるわけであります。御承知のように、保険制度がとられております。したがって、これは保険というたてまえからやむを得ないであろうと思いますけれども、いわゆる国家公務員の共済、地方公務員の共済、それから軍人恩給は別としましても国民年金、厚生年金、公社の共済、いろいろな形においていわゆる老後の生活保障という意味での年金があるわけです。しかしそれは非常にまちまちでありまして、国民年金は、私が試算をいたしましたところによると、大体六十五歳の人が二十五年同じところへ勤続をして、継続して掛け金をかけてきて、そうしてそのやめた当時の月収が七万円だと仮定した場合、その試算でいきますと、国民年金では現在のところ八千円、そして公務員共済ですと三万三千円、厚生年金で二万七千五百円というふうに開きが非常に大きくなるわけであります。こんなことでいいのかどうか。ひとつその点についてお伺いをしたいのと、これらをひとつ早急に一本にまとめて、そうして社会のために尽くしてきた老人方、その老後の保障というものは社会がこれをめんどうを見るんだという、いわゆる社会保障体制という方向に保険から切りかえていくべき時期がもう来ているんではないかというふうに思うわけでありますが、その点についてどうお考えになるか、ひとつお聞かせいただきたい。
  294. 内田常雄

    内田国務大臣 仰せのように、今日の年金制度は、計算をいたしてみますと八種類ございます。もちろんその大宗は、国民年金と厚生年金と、それから共済制度というようなことでございますが、それらがそれぞれの沿革を持ち、また目的を持って、たとえば雇用政策、もう今日の近代的意味における社会保障政策とは違った雇用政策のような面から発生したものもございますので、仰せのとおり、それぞれの支給開始年齢あるいは給付額等も違っております。国民年金は六十五歳でございますが、厚生年金はやめることを条件として六十歳、共済は五十五歳というようなことがございますので、実は、この数年前から、仰せのような何らかの一本化、共通化というような作業を関係官庁ともいたしておりまして、最低保障額というようなものにつきましては一部設けられてまいりましたし、また、一部の通算制度も御承知のとおり設けられてまいりましたが、さらに私は、老後の保障という意味におきましては、近代的意味において、これは同じような思想で統一すべきものであると考えますので、これからいろいろな面から検討を進めまして、そういうふうに持ってまいりたいと思います。  さらにまた、年金はやはり掛け金主義といいますか、保険主義が主体でございまして、掛け金なしの公費保障といいますか、国家保障というようなものは、特別の場合、たとえば今日の老齢福祉年金とか母子福祉年金とかいうような場合、あるいは一部に残されている戦争犠牲者等の場合のほかは、やはりこれはどうしても掛け金制度、保険制度をとらなければならないと思いますが、しかし、いろいろの問題がございますので、社会保障の趣旨に合うように年金の姿というものを合理化してまいりたいという希望、考え方は持つものでございます。
  295. 西田八郎

    西田委員 いまおっしゃる点のようにまいりたい、まいりたいということですが、これはもうほんとうに急を要する問題でありますし、そこへ持ってきて、ただいまおっしゃったように、保険の制度が発足した歴史的な違いもありますし、そしてまた、負担の金額の違いも出てきておるわけです。なかなか統一することはむずかしいと思いますが、しかし、これはもう五カ年計画では――これは二月の三日の東京新聞なんですけれども、おそらくこれは厚生大臣が発表なさったのか、厚生省当局が発表なさったのか知りませんが、その中にも、五カ年計画というものが出ておるわけです。その中では、年金の統一という問題はあまり触れられていない。しかし、これはもう早急を要する問題だと思うのです。一体どれぐらいの時期にそういう統一をはかるように努力をしていかれるのか。その五カ年計画を出された限りにおいては、やはり年金の統一についても年次計画を持っておられると思うので、差しつかえなかったら聞かしていただきたい。
  296. 内田常雄

    内田国務大臣 正直に申しまして、私は、いま申しましたような幾つかの年金の統合も、もちろん通算とかあるいは最低保障とかあるいは年齢、金額等でやってまいりますが、それよりも、年金制度には他の大切な問題があるようにも思います。いまは年金制度は完熟いたしておりませんので、掛け金をしておられる方に比しまして、もらう方が非常に少ないわけでありますが、これからだんだん生活水準物価が上がる状況のもとにおいて、年金をもらっていかれる方が多くなるわけでありますので、年金額をこういう社会、経済情勢に合わせていくというようなこと、それも、いままでやってきたように、数年一ぺんの計算をするというようなことでなしに、スライド制度を、そのままとるというわけではございませんけれども、前段に申しましたような趣旨において、十分老齢者の生活保障に役立つような向きに改善をいたしていきたい。ことに、国民年金などにつきましては、福祉年金と拠出制の年金とのさや寄せというようなことも、若干ではございますけれども、御承知のように、四十六年度から踏み出す、こういうことも念頭に置きながら、年金制度の改善をやってまいりたいと考えております。
  297. 西田八郎

    西田委員 そこで、現在、いろいろな年金がある中で、この老齢福祉年金というものがあるわけですが、これは今度二千円が二千三百円に引き上げられるわけです。これは国民年金でその経過措置として、当時六十五歳以上ですか、その人を対象にしてこられたと思うのですが、この七十歳以上の人にお渡しになる二千三百円、これは一体生活保障になるのかどうか。大根一本二百円する。小づかいもろうて十本大根を買う。毎日一本ずつの大根を買えないのです。三十日のためには六千円要るわけです。十日しか買えない。これで米も食わなければならぬということになってくると、この程度ではどうにもならない。しかも、寝たきりの老人が二十万人からおられる、あるいは、独居をしておられる老人も六十万という数字にのぼってきているというような現状の中で、こういうことではたしていま大臣が言われるような、胸を張ってお答えになるようないわゆる老人対策といえるのかどうか。この点について私は、早急に改善を必要とすることであるというふうに思うわけですが、いかがですか。
  298. 内田常雄

    内田国務大臣 先ほどもお答え申しましたように、何と申しましても、年金制度の中核は保険主義、掛け金主義でございまして、それにどうしても漏れたような場合の方々を、十年前から福祉年金というような制度で救うことにいたしてございます。毎年若干ずつ金額の引き上げもいたしておりまして、四十六年度は月二千三百円になるわけでございますが、もちろんそれで十分だとは考えておりません。しかし、老人対策はそればかりでなしに、施設への収容の問題でありますとか、あるいはまた、医療の問題もございましょうし、いろいろの面から総合的にやってまいる。また、福祉年金ももちろん二千三百円でおしまいとは私は考えておりません。大蔵大臣ともよく御相談をいたしながら、ことに、福祉年金を受け取られる方はだんだん減るわけであります。みんなこれは拠出年金に置きかわっていくわけでありますので、年金の本体からだんだんはずれてまいる人々もありますので、そういうことをも考慮いたしながら、できるだけのことはいたしてまいりたいと考えております。今度もまた、単に金額の引き上げばかりでなしに、問題になっておりました所得制限の緩和、ことに、年齢の一部の引き下げというようなことまでもやらせていただくというようなことをいたしまして、福祉年金の改善にもつとめてまいっておる方向をとっております。
  299. 西田八郎

    西田委員 いまの答弁にもあるように、国民年金にも該当していない人で、はずれた人なんです。網の目をこぼれた人なんです。それから、だんだん減っていく人なんです。そうだとするなら、その人たちに差し上げる年金、手当というものは、大幅に増額したって、日本経済を左右するほどの大きな予算にはならぬと思う。厚生省は一体これに対して、全員に対して厚生年金並みの手当を支給したらどれくらいになるか計算されたことがありますか。
  300. 内田常雄

    内田国務大臣 ここにこまかい数字は持ちませんが、私が大臣として常に頭に置いております大体の数字ですと、老齢福祉年金の受給の対象になられる方々が三百万人近くございます。それらの方々に月二千三百円でございますから、年額二万数千円ということになりますので、九百億円ぐらいに実は現在においてもなっておるわけであります。それを、厚生年金並みにいたすということになりますと、これは厚生年金も、その企業での勤続年数、また、勤続期間中の報酬によっても違いますけれども、その九百億円内外のものの何倍かというようなことにもなるわけでございまして、これはまあ老人が大切なことは、私は金額にはかえられないと思いますけれども、財政上直ちにその大幅な引き上げということもできませんので、一昨年より昨年、昨年よりも本年というようなぐあいに引き上げさしていただいておる、こういうわけでございます。
  301. 西田八郎

    西田委員 九百億、そんなになりますか、二千三百円で。
  302. 内田常雄

    内田国務大臣 三百万人の年三万円といたしますと、三、三が九百億ぐらいになる、端数は切り上げたほうになりますけれども、そのぐらいになると思います。
  303. 西田八郎

    西田委員 ちょっといま予算書の中に見当たらないのですけれども、それだけにはならぬと思うのです。というのは、三百万人全部に支払われない、所得制限もしておられるわけでありますから。しかし、それの十倍として二千三百円を二十三万円にして、そうすると六千九百万ですか、そうなりますね。
  304. 内田常雄

    内田国務大臣 千万台オーダーではなしに何百億オーダーだと思います。主計局長答弁していただきます。
  305. 西田八郎

    西田委員 十倍した場合ですよ、二千三百円、現行じゃなしに、それを十倍上げてどうなるかということを聞いている。
  306. 内田常雄

    内田国務大臣 それは十倍でございますから七百億ないし九百億くらいの――私は九百億と申しましたが、四十五年の数字やら四十六年の数字が私の頭に租徠をいたしておりますので、かりに七百億ないし九百億と申し上げておきますが、それを二倍にすれば倍になるし、五倍にすれば五倍になる、こういうようなことで、相当巨額になると思います。
  307. 西田八郎

    西田委員 非常にわかった御答弁でございまして、それはそのとおりなんで、これは四年生ぐらいの生徒でもできることなんです。しかし、そういう金を捻出することはできないか、私の言いたいことはこういうことなんです。問題はそこなんですよ。
  308. 内田常雄

    内田国務大臣 ただいま数字が届きましたが、私の記憶にあまり間違いがございませんで、福祉年金の四十六年度の総額は九百十五億円でございます。これは倍数にするとそういうことになりますが、たとえばこれは、話がそれて恐縮でございますが、児童手当をここ両三年の間には完全実施ということで法律を提案をいたしまして御審議をいただきますが、やはりいまの児童手当三千円ベースでいきましてもそのくらいの金額になるわけでございますし、またかりに私が、老齢者の医療費というようなものを、保険でいまは行っております。一部は公費医療で行っておりますが、そういうものを公費医療でできるだけ行きたいというような野心もございますが、これがやはり同じような金額になるわけでございますので、大蔵大臣ともじっくり相談をいたしながら、一挙にまいりませんけれども進めてまいりたいと思います。私は、社会保障というのはセキュリティーということばですが、これは昔ですとミリタリーセキュリティーということでいわれたのですが、今日はほんとうの国の防衛というものはソシアルセキュリティー、社会保障でなければならないという考え方のもとに、微力でございますが厚生大臣をつとめさしていただいておるわけでございます。
  309. 西田八郎

    西田委員 いいことを言われたと思うのです。軍隊の防衛よりもいわゆる保障の防衛だということになるわけですが、防衛予算をながめてみると、本年度で新規に購入されようとする武器弾薬合わせて四千億円を上回るわけであります。その金の半分をさけば、現在の二千三百円の老人福祉に対して五倍程度の手当が支給できるんではないかと私は思うのです。そういう点で、まあ防衛も、それは首相にいわせれば大事だというふうになるかもしれません。それはわかりますけれども、首相の気持ちはわかりますけれども、しかし、それくらいのことは、実際に国のために尽くしてきた人なんです、社会のために働いてきた人なんです、その人たちの老後を守るということが、政府の姿勢としてとれないかということを私は聞いておるわけなんです。その点について総理答弁をひとついただきたい。
  310. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来厚生大臣からお答えしたから、それでもう尽きるように思いますが、西田君がお若いにかかわらず老人にたいへん理解がある。私はその老人の一人なんです。もっといたわっていただきたい。
  311. 西田八郎

    西田委員 いや、これは先手をとられまして。そこに並んでおられる閣僚の皆さんは全部六十歳以上でと言いたかった、一部の防衛長官なんかを除いて、言いたかったのですが、先に言われてなんですけれども、しかし皆さんは恵まれた老人であります。恵まれない老人がおられます。  ここに私は一つの投書をいただいておるわけでありますけれども、わが党の佐々木書記長が一月二十六日の衆議院本会議で行なったその演説をラジオで聞いてよこされました投書であります。  「貴党佐々木書記長が、一月二十六日衆議院において一老人の声を発表されました。私もそれにさそわれてペンをとる次第です。老人のぐちとお笑いください。  私は六十歳を越す一主婦ですが、夫は三十年前病気で退職以来、私が働いて今日まで生計を維持してまいりました。夫は退職後病気の経過も悪く、身体障害者としてほとんど寝ています。夫の年金と収入合計年間三十万円で生活しています。病人の看護のため、生活費を得る道も少なく、困窮しています。市の社会福祉に相談したこともありますが、思うようにはなりません。三十年以上の病気療養でいなかの者に多大の不義理を生じ、近ごろでは援助の手もなくなりました。したがって、五年前から一切の医師の手当ても受けておりません。ところが、私が病気だということを知りながら、昨年は国民健康保険を使用しなかったといって表彰されました。湯上がりタオル一枚です。  私の希望としては、生活費は何とかしますが、せめて身体障害者の医療費を国民健康保険の負担としていただきたいと思います。  旧軍人は、身体障害者の場合は、軍人の障害年金と一般の障害年金を受け取っています。ところが、一般年金受給者は身体障害年金を受けられません。旧軍人に双方の年金が受けられるなら、一般年金受給者にも両方の年金が受けられるように法律を改正してください。  なお、夫も六十九歳となり、老人ホーム行きを希望していますが、なかなか見込みはありません。私も、歩行困難な夫をかかえ、三十年の労働に疲れました。都合により名前は書けません。私の生活状態は焼けあとに建てた六坪の板張りの家です。テレビも冷蔵庫もありません。(一老婦)」  という投書がまいっております。そしてまた、先日の新聞では、老人の自殺が非常にふえてきておることは御承知のとおりであります。  こういうような実態の中で何が福祉大国といえるのか。私は、そうした面からでも、せめて一番に着手すべきは老人対策ではなかろうかと思うわけであります。それに対して首相は、わしも老人だ、いたわってくれと言われました。しかし、首相の場合は、私は立場が違うと思うのです。そういう点から考えましたときに、軽率にそういうことばを吐かれるのではなしに、もっと真剣に全国の老人のことを考えていただきたい。切に私は首相に要望し、首相の決意を聞かしていただきたい。
  312. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は別に西田君のお話を茶化したつもりはございません。とにかく、老人に対する、これは手当その他金銭的なものもございますが、もっとあたたかい、温情、情味を持ってもらいたい。そういうところでやはり問題がある程度解決するものもあるのでございますし、また若い者がどうも老人を大事にしない最近の傾向等についても、やはり反省をしなければならないだろう。また、そういうような際でありますだけに、これからは、厚生省の対策として、児童手当もできた際、老人についても前向きで中身充実をはかるように一そうくふうすべきだ、かように考えております。
  313. 西田八郎

    西田委員 そのほか私は雇用の問題とかあるいは住宅の問題にまで触れたいと思いましたが、時間の関係もありますので、いずれこれは社労委員会でまた大臣と質疑応答あるいは討論をすることにいたしまして、最後に、私は、いまのような状態から考えまして、老人がふえてきておる、それも働くことを希望している老人がふえてきておるわけであります。そういう点から考えまして、老人に対する基本法というようなものを制定し、そして老後の開発、こういうことと福祉とあわせて、私は基本的に国の施策として取り組むべきではなかろうか。現在のところ、働きにいこうとすれば労働省、そして手当のほうは厚生省というような形において、いろいろと、公害でもそうでありますけれども、所管が違う。そのためにその老人も非常に戸惑っておるという現状ではなかろうかと思います。そういう意味で、まず老人対策基本法を制定し、そしてその老人の雇用を促進する意味において社会参加を求める、そして老人に生き生きとした毎日を送っていただく、こういうようなことから、その老人の雇用促進というような点を取り上げて、一貫した老人対策を打ち立てるべきではないかというふうに考えるわけであります。そういう意味におきまして、こうした私のいま言うような二法、いわゆる老人対策基本法、そして老齢者雇用促進法、この二法を制定すること、さらには、児童憲章もありますが、老人憲章というようなものをつくる。いま首相がおっしゃるように、もっと若い者の老人に対する敬老の念、感謝の念、さらには尊敬というようなものも含めて、私は老人憲章をつくる時期に来ておると思うのですが、そういう点について政府はどうお考えか、ひとつ首相からお答えをいただけませんか。
  314. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへんまじめな御提案だと思います。私は自分が年とっているからというわけでもないが、そういう段階に来ている。具体的に申せばもう少しわれわれがまだ取り組むべきものがあるんじゃないだろうか。五十五歳で定年だとか、こういうようなところはもっと変わっていってしかるべきだろう。とにかく過去においても十分老人として働いてきたのですが、同時にまた老人としてこれからも生きがいを感ずるような社会をつくり上げることが必要なんだろうと思います。その保護ばかりじゃなしに、やはり生きがいを感ずる、そういうような仕組みに世の中をしていかないと、どうもいま言われたことも生きてこないんじゃないだろうか。そこらによほどむずかしさがあって、場合によると老人憲章、たいへんけっこうだけれども、一体何と考えているんだ、こういうような気持ちを持つ人もあるんじゃないか、私は実は心配します。そういう意味で、それはよく検討しないとすぐ結論は出てこない、かように思います。他にももっと、いわゆる老人というのを何歳にするか。平均年齢まではもう老人のうちでなくなってくるという、そういうような世の中ではないだろうか、かように思っております。先進国ではそういうことがいわれておりますが、日本の場合も最近きわめて急速に平均年齢が高くなっておりますから、そういう点も考え、産業すべての点においてそこらにひとつの標準を置く、こういうような考え方が望ましいんではないだろうかと思います。
  315. 西田八郎

    西田委員 九月の十五日が年寄りの日であります。それはやっぱり国定祝祭日ということで国民全体が年寄りというものをいたわろう、あるいは年寄りを尊敬しようというような日を国定としてきめているわけでありますから、やはり人間というのは形の上で出てこないとなかなかそれに順応できないものでありますから、そういう意味でも――これはそういう意味でということで、私はそれをずばり言っておるわけじゃないので誤解のないようにしていただきたいのですが、そういうような老人の日まで設けたのですから、ぜひともひとつこの点はお聞き届けをいただきたいと思います。  次に、水資源問題について若干触れたいと思います。  先ほど小川委員質問に対して建設大臣からもお答えがあったわけでありますが、私はもう少し具体的についてみたいと思うのですが、それはいわゆる全体のことではなしに、現在近畿圏が直面をいたしております大阪の水資源の問題、ひいては淀川水系、琵琶湖の開発ということにつながるわけであります。今日大阪の飲料水、工業用水ともすでに危機に来ておるといわれております。また、この水を供給しておる滋賀県におきましても、水質が非常に汚染、汚濁をいたしまして、もう普通の状態ではないとまでいわれてきておるわけであります。加えて京都の河川流入等があって、非常に複雑な態様をなしてきておるわけでありますけれども、事実大阪がこの水の危機にきておるということはまさしくもう御承知のとおりであります。したがって、これに対する打開する方針、これについて建設大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  316. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 御指摘のとおり近畿圏の水の需給関係がかなり逼迫していることは事実でございます。主としていままでは琵琶湖の総合開発によって水の需給の改善をはかるということでございましたが、いままではこの水源地と見られる滋賀県が、非常に地域的な利害が異なるために、なかなか合意の点ができなかったのです。しかし、最近滋賀県の言い分をも十分に下流部それから政府当局も前向きでこれは取り上げるべきだ。それで先ほど御指摘になりました琵琶湖そのものもだいぶ水質が悪化しておる、こういうことからして、琵琶湖を総合的に今度は開発する。そのために、特に南の湖岸のほうが悪化しているので、今年から流域下水道をこれは着工するつもりです。これは大体二百五十億かかります。それからこれに流入する関連市町村の公共下水道、これは約三百億かかります。これをまず処置してやる。しかる後、今度は湖北の方面、それから湖西というふうに進んでいきますと、大体一千億かかるのじゃないか。これをやらなければ琵琶湖の水の問題と下流部の取水関係改善はできないということで、少し息の長いことでございますが、根本的にはこれをやる。それからもう一つは、和歌山県の水を相当部分、これは和歌山県自身の需給のためにも必要でございます。それから奈良県の水の問題もございます。それと総合して、いまの堺地区、こちらの方面の改善をしていく。それから一部は三重県の水資源をも近畿圏で活用する等の総合的な水の対策をしていく。そういうような形において、今度は、ある意味においては、逆に和歌山県あるいは三重県等にも工業立地を適当に分散させていく。そのほうがむしろよりよき環境のもとに産業と生活が両立するということで、少し指導を変えてまいりたい、こういうふうなことで、いまその基礎条件を固めつつあるという状況でございます。
  317. 西田八郎

    西田委員 近畿圏全体の水資源開発についていろいろと吉野川、有田川、三重県、その他についてお話しをいただいたわけでありますが、私は、特にこの琵琶湖の水資源開発、これはいま公共用下水道、流域下水道等によって汚染を防ぎつつ、その開発をしていきたいということであるし、先ほど小川委員質問の中では、滋賀県が非常に幅広い施策をもって、妥協の道が開けてきた、こういうような御答弁もあったわけですが、滋賀県必ずしもそうではないわけであります。ここに私は滋賀県の「琵琶湖総合開発に関する基本的態度」というものを持っておるし、これはおそらく建設省にも渡っていると思うのです。それはやはり何といっても滋賀県が中心にしなければならない琵琶湖の開発は、人間の豊かな環境の創造を第一義にする。そして自然の景観を守りたい、こういうことに重点が置かれておるわけであります。そうしますと、現在いままで地建案だあるいは建設省案だ、地元案だといろいろと出てまいりましたけれども、大阪の水事情から判断をして、いわゆる毎秒四十トン水を流すというようなことになれば、これは琵琶湖の自然景観というものはかなりこわされるということになるわけであります。そういう場合に、一体こういう地元滋賀県の要望を満たしつつ、ほんとうに大阪の水というものが不自由をしないように供給できるのかどうか。その辺のところ大臣、同時に近畿圏整備本部の本部長でありますから、ひとつお答えをいただきたい。
  318. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。  従来、ややもすれば都市化したところの需要を第一優先に考えて、その水需要を満たすためにはあらゆる障害を越えてもやるという手法が一つ考えられている。ところが、これはいま御指摘のように、非常にそのために他にマイナスの原因をつくる要因が相当出てきました。それをあえて続ける必要はないと私は思っております。むしろ都市は、水の問題のみならず、住宅の問題といい、交通の問題といい、公害の問題で非常なデメリットが出てきています。そのデメリットを解決するために、膨大な金と、それから関係地域の犠牲をしいるということは、これはあまり賢いことではない。だから、そういうところには人口は集中しなくなるし、しないようにして、むしろ逆に言うならば、琵琶湖周辺に、都市機能を持った、そうして風景を活用する住宅団地をつくって、職住近接の都市計画をやったほうがよろしい。あるいはまた、和歌山県の地方に持っていったほうがよろしい。あるいは三重県にその手法をやったほうがより効果的だ。そのために道路も、あるいは鉄道も、これがいま非常に高速化し、これを進めているわけでございますから。いままではそうじゃなくて、こうしたいろいろの社会資本が、やればやるほど大都市に集中する。そうしていくから、これは逆の現象が起こるから、それを方向転換しようということで、本年の施政方演説でも総理がその旨を強く指示し、それをわれわれはフォローして、いままでの全総計画も、その意味では相当方向転換をしておる、こういう意味でございます。
  319. 西田八郎

    西田委員 そうしますと、いわゆる従来の治水というか、大阪の水というものは、琵琶湖、いわゆる淀川水系だけにたよるのではなしに、また、それには限界が来ておる、また、都市の過密状況も全く飽和状態を越してしまっているというような状態だから、そうしたいわゆる都市の分散あるいは工業の分散、そういったもろもろの諸施策をあわせて、そうしてその一環として琵琶湖の開発も進めていきたい、こういうふうに理解していいのかどうか。
  320. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 大体そうでございます。そういう意味において、滋賀県でも自分たちのほうの主張も取り入れられていって、その結果出たところの水が下流地方で利用することには賛成だ、こういうふうになってきまして、必ずしもいま完全な理解ができたというのではなくて、方向づけはそういうふうになってきたということでございます。
  321. 西田八郎

    西田委員 それは望ましき方向だと思うのです。しかし、はたして工業都市大阪、煙の町大阪といわれた大阪がそういう形になるのかどうか。ここ十年間で大阪の企業が滋賀県に移駐をしてまいりましたのがまず五百事業場であります。これは大阪の何十万とある事業場のうち、わずか五百ぐらいしか移駐をしてきていない。そうして、しかもそれは増設という形においてふえているものもあるわけであります。そういう事情等から考えまして、はたして水の不便なところへそのような工場が、条件なしに移っていくかどうかというふうなことも考えられるわけであります。よけいな心配でありますけれども、そういう点を考えますと、私は、ここ五年や十年ではこの問題は解決しないと思うのです。五年や十年では解決しない。そうすれば、五年や十年の間は、やはり琵琶湖の水は大阪に送られなければならぬのです。これは自然の地形に従ってでも流れていかなければならぬというふうになってまいりますと、私はやはり、琵琶湖の総合開発という問題は緊急の課題ではなかろうかと思うのです。  そこで、本年、四十六年の一月から、従来は経企庁が窓口になっておりましたのが、今度はこれが近畿圏整備本部に窓口が移って、ことしの予算の中でも十億、調査費三億と交付金七億という形において計上をされておるわけでありますけれども、はたしてそういう近畿圏整備本部という範囲でとらまえてこれができるのかどうかですね。私はやはりそういう意味では、この琵琶湖の総合開発というのは特別立法にして、そうしてやっていかなければ、国の資金もかなり投入をしていただかなければこの問題は解決しないように思うのですが、大臣、どうですか。
  322. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 従来からそういう主張がございました。これは、琵琶湖のみならず、実は関東地区においてもございまして、さらには水資源開発のために水源地区の特別立法をせよ、こういう意見も知事会から出たことも事実です。これをいろいろわれわれのほうでも前向きで検討してみましたが、そうしたことを一つ一つ立法することによって現実的なメリットがあるかどうか、かなり疑わしいのです。それよりも、現実にその地域社会で要求することを政府の各省でそれぞれ連絡をとりながら、バランスのとれた施策をすることがより具体的であり現実的だ、こういう考え方でございます。したがいまして琵琶湖総合開発の具体的な計画につきましても、関係省庁の実務者、局長クラスをもって連絡協議会をつくりまして、それと現地の各県あるいは各事業の推進になる農協とかあるいは地方自治体、これらの意見を含めまして具体計画をつくっていく、このほうがより現実的だということで、いま、その方法で進んでいる次第でございます。
  323. 西田八郎

    西田委員 それは、現実的だ現実的だとおっしゃるけれども、私は、さらに現実的にものを言いますと、滋賀県というのは百万足らずの人口なんです。ことしの当初予算は五百億ほどしか組んでないのです。昨年が四百六十三億なんです。こんな小さい予算を持っている滋賀県が、いま考えておる、これはごらんになったということですが、この「基本的態度」の中でも、モデル事業として大規模公園都市、周遊道路、流域下水道、それに臨水性大規模レクリエーション基地というようなものも含め、さらにそれにあわせて、琵琶湖の水を大事にするためには、まわりの山々の森林増植までやらなければならぬ。そこへ河川の改修も行なわなければならぬということになれば、これはたいへんな事業なんです。その中には、国の費用でやられることもたくさんあるわけです。しかしそれを一々、こちらは建設省、こっちは農林省だ、こっちは厚生省だというようなことで走って回っておって、いまおっしゃるような総合開発ができるのかどうか、私は、これはやはりむずかしいと思うのです。公害行政がばらばらであるからむずかしいといわれて、この公害国会を通じ、本国会を通じてでもいろいろの委員から意見の出たところであります。それと同様なことが、やはり私は、国の事業としてやるものには必要ではないか。水を制する者その時代を制すといわれてきたのが従来からのことわざであります。そういう点からいきましても、私はこれはきわめて重要な問題だと思うのです。  そこへ加えて、最近これは滋賀大の湖沼研究所が発表した検査の結果でありますけれども、琵琶湖の水から一〇〇PPMに近いカドミウムが、琵琶湖の湖底のどろから検出されているのです。これはまだ県の正式な調査が終わってないので、これはどうかということははっきりしませんけれども、しかし、少なくとも権威のあるこの滋賀大の湖沼研究所が調べた結果によると、こういうカドミウムあるいは総水銀が含まれておるということなんです。昨年私は予算の分科会でもその点を厚生省の公害課長にもお尋ねをした。公害課長は、これはショッキングな問題だから発表しないということでおられたけれども質問があればということでお答えがあったのです。  こういうような、水が非常に汚染をされてきておる。そこへ、最近の農業用水、家庭用排水その他によって汚濁度もひどくなってきておって、もう琵琶湖の周辺で――いわゆる南湖、北湖と分かれておることは、通称そう呼んでおることは御承知と思いますけれども、この琵琶湖の南湖においては、透明度わずか五十センチというようなところまでできてきたわけであります。これはもう、水道用水ということになれば、零以下です。このようないわゆる汚水状況になってきておる。それをしも、やはり大阪の人たちに流さなければならぬのです。大阪の人はそれを使わなければならぬのです。ここに大きな問題があると思うので、私は、早急にこの問題は解決をしていただきたい、この点を特に要求をするわけでありますが、建設大臣、いかがでございますか。
  324. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 特別立法は先ほど申し上げましたように、ずいぶん検討しましたけれども、結局、幾ら法律ができましても、現実にやることは各省が協力してそれぞれ予算づけしなければ意味なさぬです。そういうことでありまして、今度それをやりますと、いずれも各地区について全部同じことをやらなければいけないということは、必ずしも立法技術として適切なのかいなかということが、これが検討さるべきだと思うのです。  現在の問題は、いかにして水源地の滋賀県が淀川水系の一番水源としての琵琶湖の開発に積極的に協力していただくかということが問題なんです。ようやく最近に至りましては、滋賀県当局も先般滋賀県の県会の首脳部あるいは知事さんも来まして、選挙後来たので、ぜひこの問題は一緒にやりましょう、向こうのほうでも、われわれの要求もあるが、われわれの要求も勘案してぜひひとつ一緒にやりましょう、こういうことになっておりまするので、従来よりは相当明るい見通しができたと思いますので、誠意をもってこれから関係各省庁が歩調を合わせてやるということにいたしたいと思います。
  325. 西田八郎

    西田委員 滋賀県民九十万、この問題については大きな注目をしておるわけであります。また、政府の施策に大きな期待をしておるわけであります。そういう意味から特別立法をということを私どもがあるいは滋賀県民が唱えるのは、琵琶湖は滋賀県のものではない、やはりこれは日本人のものだという考え方のもとで、琵琶湖もなかなかやりたくない水だけれども、たまってきたときにはやはり流さなければならぬのじゃないかということで、とにかく協力をしようという体制になってきておると思うのです。しかし、そこで頭に浮かび上がってくるのがやはりそうした付随してくるいろいろな事業の経費の問題、言うならば予算の問題なんです。したがって政府が、建設大臣がそうしたことに対して滋賀県に迷惑をかけるというふうにお約束をいただけるならばあえて特別立法とは言いませんけれども、しかし、そのお約束もおそらくいただけないんじゃないか。そうすれば何かこれに関する特別の立法をつくって、そしてそれをよりどころとして問題を解決するより道がないじゃないかという面から、県当局も特別立法の制定を非常に強く要望をしておるわけであります。どうかその点についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  326. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 趣旨に沿うように各省協力して推進してまいりたいと思います。
  327. 西田八郎

    西田委員 もう時間だというふうにして請求もされておるわけであります。いまの答弁ではまだほんとうは納得できない。しかし、この近畿圏全体から出ております自民党の代議士さんも非常に多いわけであります。緊急の問題だと思っておられるでしょうから、ぜひひとつこの点は挙党一致でやるつもりをしておりますから、もう各党一致でやるつもりをしておりますから、根本建設大臣もまた佐藤総理もしっかり腹に据えてかかっていただきたいということを要望いたしまして、まだ言いたいことはたくさんあるのですけれども、これで終わります。(拍手)
  328. 中野四郎

    中野委員長 これにて西田君の質疑は終了いたしました。  明五日は、午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十五分散会