○岡沢
委員 二十一
世紀の共通の戦い、これは
日本だけでなしに、人類の共通の戦いというのは、貧困との戦い、あるいは疾病との戦い、無知との戦い、偏見との戦いといわれます。私はその中できょうは三つの戦いを取り上げて、
総理を
中心にお聞きしたいと思うわけでございますけれども、自由を守り平和に徹するとおっしゃる
総理に対してでございますから、もちろん熱い戦争ではございません。
佐藤内閣が成立されて以来六年余、おそらく勝利を得られなかった戦争、あるいはまた将来もなかなかむつかしいと思われる戦争を取り上げさしていただきまして、具体的には
公害戦争、そして物価の中の地価を
中心にした地価征伐といいますか、土地戦争、そしてもう
一つはいわゆる交通戦争、これは私は大戦争と名づけたいぐらいの
社会問題だと思いますけれども、この三つの質問を
中心に質問をさせていただきます。
その前に、
総理は、野党質問の第一陣の石橋さんの質問に関連されまして、司法権の独立についてお触れになりました。司法権の独立、三権分立のたてまえから民主主義の基本だと思うわけでございますけれども、ここ一、二年この問題が大きく
社会的、
政治的な関心を呼んでまいりました。もちろんこの問題は最高裁判所に関する部分が主要なものではございますけれども、
政治と司法との交錯ということが一番大きな
課題として昨今議題に上がっているわけでございます。
私は、
内閣、
政府に関連する部門からの質問を試みさしてもらいたいと思うわけでございますけれども、たとえば昨年の四月、いわゆる青法協に所属しておる福島裁判官、北海道の長沼ナイキ訴訟に関連いたしまして、裁判官も御承知のとおり
内閣の任命にかかるわけでございますが、国が任命された裁判官を国自身が忌避されるという、
世界にも例を見ない事実がございました。この忌避申し立てば裁判所で却下はされましたけれども、大きな
社会的な関心を呼びました。
また昨年五月、小林法務大臣は、
佐藤総理の了解を得たという前提で、分離修習といわれる、法曹人の養成制度について、いわゆる法曹一元化と違った
方向で、すなわち裁判官、検察官になるいわゆる任官希望者を特別に分離して修習するという
方向への
転換を示唆する発言をなさいました。これは一般にいわれる青法協の問題ほど
社会的な関心は呼びませんでしたけれども、
日本弁護士連合会をはじめ、やはり大きな
課題として波紋を投げかけ、現に日弁連、そしてまた単位弁護士会で反対
運動が起こっているわけでございます。この分離修習の問題、法曹人の養成というのは、私から申し上げるまでもなしに司法研修所が所管をするわけでございますが、これの直接の担当部局は最高裁判所であります。最高裁判所に属する司法修習生の養成制度について法務大臣が、そして
総理までが発言されるというところに、やはり私は
政治の司法への干渉という印象を
国民が持つのも避けられないのではないか。特に法治国として法律秩序を重んじ、三権分立をたてまえとする
日本の
政治の立場からいたしまして、在野法曹あるいは最高裁、いわゆる法曹三分野の中の他の二分野との相談なしに、御協議なしに、司法の根幹に触れるいわゆる人の養成に関する問題を御発言になったということについては、やはり私は問題にせざるを得ないという感じがするわけでございまして、この分離修習制度についていかがお
考えになるかということをこの席でお尋ねいたしますが、質問にお答えいただく前に、もう少しこの司法と
政治の交錯についてお尋ねを続けたいと思います。
それは、最近、前駐米大使の下田さんを最高裁判所の判事に御任命になりました。私は、下田判事は人間としてきわめて見識のあるりっぱな方だ、まだ気骨のある方だと心から尊敬をする一人でございますし、下田判事が最高裁裁判官に御就任になったときの記者会見での御発言等はきわめてりっぱなものではございます。また私は、最高裁判所の十五人の裁判官の一人に、
日本の国際的な地位あるいは最高裁に持ち込まれる法律案件の性質等を
考えました場合、国際的な視野を持ち、また国際的な知識を有され、また国際法、国際条約に詳しい方が任命されるということに異存はございません。しかしこの時期に、そしてまたきわめて
政治的の発言という問題から
社会的な
政治的な論議を呼んだ方をこの時期に御採用になる、幾ら人事の
佐藤といわれる
総理でありましても、ちょっと私はタイミングとして適切を欠いたのではないか。私は、三権分立という立場からいたしました場合、裁判所が独自の立場で、いわゆる憲法と法律に従った正しい裁判をなさるということもきわめて大切でございますけれども、
国民の立場から見て、
政治の干渉を許さない、
総理といえども最高裁判所はどうにもできない――事実といたしまして、国権の
最高機関は
国会である、その代表をするのは衆議院の議長であるといわれながら、いまの船田衆議院議長にいたしましても、もし新聞の報ずるところが正しいといたしますならば、総裁である
佐藤総理のもとで副総裁をやることに意欲を持っておられるというような報道もございます。まして、また三権分立の
一つであります最高裁十五人の裁判官の中で、十二名までが
佐藤総理が
政府を組織されて以来任命にかかる方々でございます。また最高裁
長官自身、やはり
総理、
内閣の指名に基づいて天皇が任命されているわけでございます。私は、これは憲法上のたてまえでございますから、それに異論を申し上げるわけではございませんけれども、いわゆる
政治があるいは
政府が人事的にあるいは
予算的に支配をするという印象を
国民に与えるということは、三権分立のたてまえからいたしましても、民主主義の基本を守るという立場からいたしましても、きわめて不幸なできごとではないかと感ずるわけでございます。
特に最近の西郷前法務大臣の問題がございます。これはすでにこの
予算委員会でも論議の対象にはなりましたけれども、あの西郷前法務大臣にまつわる事件が
国会の議員会館で行なわれたということにおきまして、
国会もまた被害者の一人であるという見方ができるかもしれません。しかし、それよりも私は、
国民の立場から見まして法の権威、検察への信頼というものをそこなった損失はきわめて大きいのではないか。ことに全国の千八百人の検察官に与えた心理的な影響というのは無視できないのではないか、人事の
佐藤の
佐藤総理もこの点については大きなミスをなさったのではないか、すでに不明をお恥じにはなりましたけれども、私は指摘をせざるを得ない感じがいたします。
とりあえずここで、先ほど申しました法曹人養成の分離修習の問題につきまして、法務大臣の御発言をいまも
総理は支持されるのか、
総理と法務大臣、法曹界に与える影響が大きいだけに、この祭はっきりしていただきたいと思います。