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1971-02-01 第65回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月一日(月曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 小平 久雄君 理事 田中 正巳君    理事 坪川 信三君 理事 藤田 義光君    理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君    理事 田中 武夫君 理事 鈴切 康雄君    理事 今澄  勇君       足立 篤郎君   稻村左近四郎君       植木庚子郎君    大坪 保雄君       大野 市郎君    大村 襄治君       奧野 誠亮君    川崎 秀二君       上林山榮吉君    小坂善太郎君       佐藤 守良君    笹山茂太郎君       田中 龍夫君    登坂重次郎君       灘尾 弘吉君    西村 直己君       野田 卯一君    福田  一君       別川悠紀夫君    松浦周太郎君       松野 頼三君    山下 徳夫君       豊  永光君    阪上安太郎君       辻原 弘市君    楢崎弥之助君       西宮  弘君    原   茂君       細谷 治嘉君    安井 吉典君       相沢 武彦君    大久保直彦君       桑名 義治君    坂井 弘一君       岡沢 完治君    竹本 孫一君       東中 光雄君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 小林 武治君         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 内田 常雄君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  宮澤 喜一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君         郵 政 大 臣 井出一太郎君         労 働 大 臣 野原 正勝君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         自 治 大 臣 秋田 大助君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (科学技術庁長         官)      西田 信一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中曽根康弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         警察庁警備局長 山口 廣司君         行政管理庁行政         管理局長    河合 三良君         行政管理庁行政         監察局長    岡内  豊君         防衛庁参事官  高瀬 忠雄君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁長官官房         長       宍戸 基男君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      江藤 淳雄君         防衛庁衛生局長 鈴木 一男君         防衛庁経理局長 田代 一正君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁施設         部長      薄田  浩君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         計画局長    矢野 智雄君         経済企画庁総合         開発局長    岡部  保君         科学技術庁長官         官房長     矢島 嗣郎君         科学技術庁計画         局長      楢林 愛朗君         科学技術庁原子         力局長     梅澤 邦臣君         沖繩北方対策         庁調整部長   田辺 博通君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         法務省人権擁護         局長      影山  勇君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省条約局長 井川 克一君         外務省国際連合         局長      西堀 正弘君         大蔵省主計局長 鳩山威一郎君         大蔵省主税局長 細見  卓君         大蔵省関税局長 谷川 寛三君         文部省初等中等         教育局長    宮地  茂君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         農林大臣官房長 太田 康二君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         通商産業省公害         保安局長    莊   清君         通商産業省重工         業局長     赤澤 璋一君         工業技術院長  太田 暢人君         運輸省航空局長 内村 信行君         気象庁次長   岡田 茂秀君         郵政省電波監理         局長      藤木  栄君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         労働省労働基準         局長      岡部 實夫君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         建設省都市局長 吉兼 三郎君         建設省河川局長 川崎 精一君         建設省道路局長 高橋国一郎君         建設省住宅局長 多治見高雄君  委員外出席者         外務省アメリカ         局北米第一課長 千葉 一夫君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 二月一日  辞任         補欠選任   相川 勝六君     佐藤 守良君   小川 半次君     豊  永光君   小沢 一郎君     別川悠紀夫君   灘尾 弘吉君     山下 徳夫君   二見 伸明君     大久保直彦君   渡部 通子君     桑名 義治君   谷口善太郎君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   佐藤 守良君     相川 勝六君   別川悠紀夫君     小沢 一郎君   山下 徳夫君     灘尾 弘吉君   豊  永光君     小川 半次君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十六年度一般会計予算  昭和四十六年度特別会計予算  昭和四十六年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和四十六年度一般会計予算昭和四十六年度特別会計予算昭和四十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。大久保直彦君。
  3. 大久保直彦

    大久保(直)委員 私は、本日、公害問題並びに外交問題につきまして、総理並びに各関係大臣に御質問申し上げたいと思います。  初めに公害問題でございますが、公害につきましては、わが党が昨年来公害点検全国的に行ないまして、いろいろな成果をあげておりますことは総理並びに各大臣も御承知のことと思いますけれども、私ども点検を行ないました結果、私たちがこの足で歩き、またこの目でつぶさに全国状況を見てまいったわけでございますが、またその検出したものを科学的に分析もいたしましたが、一口に言えますことは、総点検を行ないまして、総理もたびたびお耳にされていると思いますけれども日本の海は死んでいるともいわれるような状態であった。またさらに、日本河川も同様な状態でございました。また公害に毒された患者方々、また公害によって生活を奪われた農民の方々、また漁民方々、そういった方々全国に満ちあふれておりますことを私たちこの目で見てまいりました。  ここで本日すべてのデータを申し上げるわけにはまいりませんけれども、たとえば例を海にとりますと、東京湾は、私たち幼いころ認識をしておりました海というものはもうすでに変わっておった。まるでヘドロによってどろどろになった、いわばポタージュ状になっておりまして、これも重金属がミックスされました腐ったポタージュのような状態を呈しておりました。伊勢湾では、一緒に同行されました漁民の方が網を打ちました。この網の中からボラが数十匹あがってきた。よくまあこんなにきたない水の中にこんなに魚が住めるものだと思っておりましたならば、船にそのボラを上げたとたんにそのボラは口からヘドロを吐き出し、また腹を割ってみたら、はらわたは、内臓は重金属で腐っておった。すでに肉もそげております。ものすごい悪臭を放っておったわけでございます。  また大阪湾では、私どもハマチとタイを持参して大阪湾調査に参りました。そして、大阪湾海水を船にくみ上げ、そこに持参したハマチをその海水につけますと、何と五分でハマチがひっくり返って白い腹を見せた。また最も耐久力があるといわれておりますマダイですら、十数分後には死ぬような状態でございました。また、日本一風光明媚といわれております瀬戸内海総理の郷里も近いところでございますけれども、漁船のスクリューが、使用後わずか二カ月間で腐食してしまってもう使用にたえない。たった二カ月です。そういった現実を私どもこの目で確認をしてまいりました。さらに九州の洞海湾におきましては、海水サイケ調に赤、青、緑、黄色、オレンジ、白、黒と、七色汚染されて、総理、この洞海湾は魚がすでに一匹も住めないような状態になっております。  この各湾から検出した、また分析したおもなものを申し上げますと、大体水質環境基準に検出されてはならないとされているシアン、これは大体〇・〇五ないし六グラムで人間致死量といわれておりますが、そのシアン洞海湾で〇・六四一PPM、また大阪湾で一・四五PPM東京湾では何と七・六九PPMが検出されておる。水質基準では検出されてはならないということになっているこのシアンです。  以上、海でございますけれども河川につきましても阿賀野川、木曽川、多摩川、あらゆるところでこの重金属毒物が検出をされまして、そして清流が巨大などぶ川に化してしまった、排水溝に化してしまった。もう詩情というようなものは全くありませんで、その河川の流域の漁民方々また農村の方々生活を奪われたそういった方々の涙ながらの訴えを聞いてまいりました。  私、以上公害の一端を簡単に御報告申し上げたわけでございますが、現在の公害問題、これから具体的な質問に入るわけでありますけれども、その前、一点お伺いしておきたいのは、元来、わが国はきわめて豊かな自然に恵まれた美しい国土といわれてまいりました。それが今日、公害列島というありがたくない代名詞をもらいまして、公害によって自然は破壊をされ、人間生命すらがむしばまれ、国民は不安と恐怖の中の生活をしいられております。私、総理にまずお伺いしたい点は、今日このような現実を見るに至った根本的原因は一体何であるのか、この公害実態根本的原因は一体何であるのか、まず総理の御見解をお伺いしたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大久保君にお答えいたしますが、大久保君もこれは十分御承知のことだと思います。私どもも別にいまさらあらためて現在のかもし出している公害原因、これを指摘するまでもないことだと思っております。申すまでもなく、一口にいえば非常に経済膨張が急激であり、それがまた非常な力をもって発展した、そういうところに基因している、かように思っております。これは一口に申してそのとおりでございます。その場合に、われわれがいままで取り組んでいたその考え方も悪かったんではないか、かようにも思います。  申すまでもなく、わが国産業がおくれている、やはり産業を発達させなければお互いのしあわせがないんだ、こういう考え方政府国民もまた産業発展に協力してきた、ここらにやはりその目的手段を十分見きわめることができなかった、そこに原因があるんじゃないかと思うので、おそまきながら、福祉なくして成長なしと、かように申しておりますのはその点なんで、やはりわれわれの生活発展さす、生活をしあわせにする、これが目的なんで、経済発展もただその手段にすぎない、手段目的、それを取り違えてはならない、かように思って、おそまきながらただいま取り組んでおる次第でございます。  この間において公明党御自身が、ただいま大久保君が御指摘のように総点検をなすったという、これは私ども政治を担当する上におきまして非常な貴重な資料でございますし、たいへん啓発されておる、かように思っておりますゆえ、これはありがたく感謝しながら、同時に、ただいま申し上げるように手段目的を見誤ってはならない、このことを強く感ずる次第であります。
  5. 大久保直彦

    大久保(直)委員 総理、ただいまの御答弁を伺っておりますと、経済成長過渡期現象としてやむを得ない面もあるというような御答弁のように伺っておりますが、私たち現場へ行きまして、イタイイタイ病の患者の方が、動くこともできず床に休んでおる、そしてほおがかゆいらしいのですね、ところがそれをかくと手が折れてしまう。かゆいのをじっと耐えながら、その手の痛さを気にしながら耐え忍んでいる姿を見ましたときに、私たち政治家としてその患者の方の前へ行って、これは企業発展だから、企業発展するためにやむを得ないんだなんということは、口が曲がっても私たちは発言できなかった。政治家の一人として、そういうほおのかゆさにも手が届かないような方に対して、ただ私たちは無言で頭を下げてまいった次第でございます。  今日のような、公害全国にはんらんしておる、日本の国が公害列島と言われるような現状になった、こうした根本的原因について、私たちはもっともっとこの問題解決のために謙虚にそれを究明しなければならないんではないか、このように思っておりますが、同じことをもう一度総務長官に御答弁願いたいと思います。
  6. 山中貞則

    山中国務大臣 総理から基本的な考え方について言われましたとおりでございまして、さらに私たびたび答弁をいたしておりますが、諸外国においては、この公害問題は、いわゆる環境に対する汚染への挑戦であるという意味において、汚染されざる環境を維持し、それを取り戻すという努力に終始しておるようであります。そこがまた本来の公害問題の出発点であるべきであったろうと私どもは思うのであります。しかしながら結果論として、不幸にも総理のただいま申されましたような経過をたどって、日本においてはその公害現象において人の生命、健康というものにおいて具体的な被害が生じておる、このことは私たちはまことに申しわけないことであり、そのような事態において日本の高度の経済成長がなされたことを正確に認識し、反省をしなければならぬと思います。  しかし、かといってこれを放置するわけには絶対にまいらない問題でありますから、今後の姿勢としては、絶対に公害の発生を防止するとともに、もちろん人間生命や何ものにもかえがたい健康その他に公害という現象が影響を与えることの絶対にない状態をつくり出すと同時に、そのようなことが不幸にして発生した場合においても、十分の法的な行政的な対応措置を講じておく必要がある。そしてわれわれの大目的は、公害を不幸にして発生せしめた国であるけれども、その科学技術政治努力によって公害を克服し得た国であるという諸外国評価を得るまでとことん努力すべき価値のある問題であると考える次第でございます。
  7. 大久保直彦

    大久保(直)委員 御答弁に対して私なりの感想もございますけれども、先ほど総理から評価をいただいた総点検、わが党が行ないましたけれども、決してこれで十分だとは思っておりません。この公害問題の具体的な解決のために、冷静な現状調査といいますか、によるところの実態の把握が何よりも必要ではないか、私はこのように考えておりますが、総理は、公害撲滅の第一歩としまして、この全国公害汚染状況及び被害状況というものを実態調査をすべきであると私は思いますが、これについてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま言われるとおり、公害対策をするには何をおいてもまず実情を把握すること、これが必要なことは御説のとおりでございます。私はそういう意味で、いまの実情について政府みずからももっと現状を把握する、そういう態度でなければならない、そういう意味予算その他も今回は特にいろいろくふうした、そういうことも言えるんじゃないかと思っております。
  9. 大久保直彦

    大久保(直)委員 総理もお忙しい、なかなか現場を見られないと思いまして、私ちょっときょう写真を持ってきたのです。これはさっき申し上げた伊勢湾ボラです。これがいわれております指曲がり病ですね。指が曲がっておる、先のほうが。これがさつき申し上げた瀬戸内海スクリューです。使用後二カ月。  総理はただいま公害に対してきわめて積極的な御発言をなさいましたけれどもヘドロというのはごらんになったことがありますか。まあ御答弁けっこうです。実はきのう東京湾から持ってきたヘドロ、ちょっとこのにおいをかいでみていただきたい。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは東京湾のどの辺で……。
  11. 大久保直彦

    大久保(直)委員 これは本牧沖です。  ここで伺いたいのですけれども総理は今回の公害問題に対して法案整備並び環境庁の設置による行政の一本化等々おっしゃっておりますけれども、私お伺いしたいのは、この東京湾ヘドロ、これは全国の一例として申し上げるわけでありますけれども環境庁にあらゆる公害部門及び権限が最大限移管されたとして、このヘドロ東京湾からなくなることは可能でございますか。
  12. 山中貞則

    山中国務大臣 たびたび申し上げておりますとおり、ヘドロというのは私たちが最近使い始めた表現でございますが、正確にはヘドロ天然の海底に堆積するあらゆる物質、深海にも堆積するものでございまして、いまおっしゃいましたのは、人間が人為的にその天然ヘドロの上に堆積せしめたヘドロ様の物質ということになろうかと思います。その場合に、これは今後このような状態を現出せしめないためのあらゆる努力行政部門がいたしますとともに、それらの基準の設定その他について、一切を環境庁が所管して行政の勧告あるいは協議等を行なうことによって、今後はそのようなことを発生せしめない状態を現出することは可能であると私たちは信じて努力をしてまいりたいと思いますが、いま堆積しておりまするそのような人為的に汚染された物質除去について、広大な東京湾をはたしてきれいな海に取り戻すことはいつの日可能であるかという問題については、いま少しく専門的な検討の時間をかしていただきたいと考えます。
  13. 大久保直彦

    大久保(直)委員 先ほど天然云々というお話がございましたが、この中にはシアンが七・六九PPM含まれているのです、総務長官。これは魚が住めないのですよ。貝も住めない。私の同僚議員東京湾にもぐりましたけれども、水面から二メートル入るともう何にも見えない。それがまさか天然の古来からの現象であったということは、これはいただけないと思うのですね。物理的にまた技術的に、人為的に汚染されたヘドロ生息物が住むことができないヘドロ、これを取り除くということは可能なのですか、不可能なのですか。私は、やるとかやらないとか、そう言っているわけじゃない。これは可能か、不可能かと伺っている。
  14. 山中貞則

    山中国務大臣 政治としてそれを可能にしなければならぬと思います。しかしながら、私が五年後に東京湾をもとの透き通ったきれいな水にできますと言明するのには、具体的な、それらの行政についてあるいは化学的な分析について、はっきりとして、それから後目標を定めなければなりませんし、東京湾浄化計画その他がきちんと定められてから初めてその到達目標というものが示されるべきであると考えます。東京都においてもいろいろとその研究をしておるようでありまするし、今後は海中の投棄も原則として認めないという方針等も打ち立てておるようでありますので、東京都の見解等も尊重しつつ、国において、各省において、なし得る精一ぱい努力を傾けて、単に東京湾のみならず、先ほどあげられました洞海湾七色の水にしても、それぞれの入り海等汚染にしても、それをきれいにする努力を傾ける結果が、私たち公害を克服した先進国になり得る道である、こう考えておると申し上げたのでございます。
  15. 大久保直彦

    大久保(直)委員 いますぐ、いつなくなるかということは答えられない、しかし、可能、不可能という問題は、可能にするのが政治である、こういう御答弁のように承りましたけれども、そうしますと現時点で——私さっき総理に申し上げましたように、このヘドロというのは、東京湾の一例を申し上げた。これはさっきも申し上げましたが、日本全国の湾にこういう現象が起きておる、そのヘドロ除去するのに、環境庁ができてもいまのところそのめどは立たぬ、もう少し研究してからでないとこのヘドロ除去については回答は出ない、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  16. 山中貞則

    山中国務大臣 政治はできないことを約束するわけにまいりませんので、やはりそのほかに、これは堆積物の中には、人口が過度に集中した結果による、日本の最も恥ずべき統計資料の一つである下水道普及率の低さ等々も伴いましての汚染等もいろいろと原因となっておりまするし、また最近はいろいろの水に溶けない物質その他が捨てられる、海洋投棄の問題、幾多の要素がございます。しかしながら、これらの状態を放置するわけにまいらないという決意は、政府としても昨年来るる申し述べておるところでありますから、私がここで東京湾をいつの日きれいにするのだという返答ができないといって、政府の、水をきれいにし、空気をきれいにし、そして緑を取り戻そうという努力を私どもが怠ろうという意味ではない。正確に申し上げなければ、国民に対して申しわけがないという結果になってはいけないということを申し上げておるだけでございます。
  17. 大久保直彦

    大久保(直)委員 答弁はあまりはっきりしませんけれども総理、これは政府が認定した公害病患者写真でございます。これは何病だと思われますか。日本公害病というのは二十も三十もあるわけじゃない。わずか五指の中におさまるわけです。これは総理も御承知かと思いますけれども、カルテに生きるしかばねと記された水俣病の四十一番目の患者でございます。現在体重十五キロ、ことし二十歳を迎えられました。目も見えなければ耳も聞こえない、こういった公害に悩んでおられます本人及び家族。総理は、前国会において法案整備がなされた、また今回も、行政の一本化によってきわめて強力な公害対策を前面に押し出されておりますけれども、その患者のために今度の立法及び本年の予算措置はどれだけの恩恵を与えるようになっておるのですか、御存じですか。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 おそらく、直接影響を与えるものはあまりないだろうと思います。しかし、医療費や医療、介護手当その他については少しは改善されておる、かように私思いますが、いまの立法が、法律が、そのまま直ちにこれに影響を与える、こういうことはわりにないのじゃないかと思っております。
  19. 大久保直彦

    大久保(直)委員 そうしますと、臨時国会で法案ができた、また本年も環境庁の設置等がプラン化されて、また予算措置も行なわれた。しかし、現に公害で苦しんでおるこの患者の方、また家族の方には何にも恩恵が与えられない。法案ができても、現在のままではこの人の問題は解決できない、こういう御答弁でいらっしゃるわけですね。
  20. 内田常雄

    ○内田国務大臣 厚生大臣でございますが、私から補足答弁をさせていただきます。  イタイイタイ病等、いわゆる公害認定患者に対しましてはいろいろ御指摘のような問題もございますので、とりあえず明年度におきましては予算を増額をいたしまして、医療手当の金額を増額すること、またその支給の要件を緩和をいたす所存で、予算もふやすつもりでおります。
  21. 大久保直彦

    大久保(直)委員 本年度予算で医療費の増額というお話がございましたけれども、本年度は幾ら上がったのですか。
  22. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これは医療費と医療手当と別にございまして、医療費のほうは医療保険でめんどうを見てもらう以外に、患者の負担する分は、それが幾らに上がりましても、全部医療費の支給をいたします。それから医療手当、これは入院とかあるいは通院等に要する医療費以外の雑費でございますが、従来は、その条件によって違いますが、二千円と四千円でございましたのを、これを三千円、四千円、五千円、こういうふうに引き上げることに用意をいたしております。
  23. 大久保直彦

    大久保(直)委員 厚生大臣、一緒に伺いますけれども、この方に付き添っている介添え人がおられますね。一人ではもう生活はやっていけないわけです。この方に、現在介添え人手当は一万円月に支給されておりますか。
  24. 内田常雄

    ○内田国務大臣 そのとおりでございます。
  25. 大久保直彦

    大久保(直)委員 月一万円ということは一日五百円、いま普通の病院の介添え手当を見ましても・・・・・・(「三百円」と呼ぶ者あり)いや、二十日間、二十日以上やれば一万円もらえるわけですね。ですから、二十日で割れば一日五百円、二十日以上介添えしますと、月一万円手当をいただけることになっている。いまこの物価高の世の中で、一日五百円でどこにこの公害重症患者を介添えしよう、こういう殊勝な方がおられると思うか。その介添え手当に今回の予算措置は一銭の増額もないんですね。どうですか。
  26. 内田常雄

    ○内田国務大臣 いま述べますように、援護の方法といたしまして医療費と医療手当とそれから介護手当とございます。医療費のほうは実額支給でございます。医療手当のほうは、いま申しますように、二千円、四千円を三千円、四千円、五千円と、こう引き上げます。それから介護手当の一万円は、昨年改正をいたしまして一万円にいたしたわけでございまして、以上の三つを合わせた要素の一つとして考えていただきたい。しかしこれは、私はいつまでも一万円でいいというものではなしに、やはりその状況、実際に応じまして検討をする対象であるべきものであると考えますので、私もさらに十分これは検討をいたすべきものであると思います。
  27. 大久保直彦

    大久保(直)委員 三つ一緒に考えて云々ということでございましたけれども、これは介添え人と患者の立場というのはおのずから別でありまして、交通費並びに食費等もこれでまかなわなければならない。そして、たとえばこの方に例をとってみれば、目も見えない、口もきけないような方を、一日介添えしてわずか五百円しか手当がもらえない。厚生大臣、これで前からおっしゃったように今回の公害認定患者の救済措置については強化をする、先ほど二千円から三千円になったというお話がございましたけれども、一カ月間二千円、三千円の手当をいただいて——それは日数によって違うんです。それは私全部知っております。わかっておりますよ。だけれども、これは最低の現実を見なければ、どういうふうにこの患者が遇され、また介添え人が遇されているかという判断の基準にはならない。そういうことを考えた場合に、いま検討するというお話がございましたけれども患者の方に伺いますと、通院日数は変わっても実際にもらう金額というのはあまり変わらない。いままで通院日数が八日であったのが今度は六日で同額のものがもらえるようになった。しかし、病院が一週間分まとめて薬を支給してしまえば、通院日数というものはそんなに問題にならないんだというような現実のなまの声も私聞いております。どうか、この公害患者並びに介添え人の手当についてぜひとももう一考する、そういう強い御意思を私にできればお約束いただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  28. 内田常雄

    ○内田国務大臣 公害による健康被害者の状況は、私も所管の大臣として承り、承知もいたしておりますので、大久保さんと同じように、まことにお気の毒であるという気持ちを持つものでございます。しかし、他のいろいろの患者等の関連もございまして、私どもは一つのことをやります場合に、他の関連も一緒に考えなければならないという立場もあるわけでございますが、しかしそれはそれといたしまして、私は常にこういう問題につきましては、固定した措置だけでなしに、常に前向きで進んだ措置をとるべきだという考えに立つものでございますので、いまこれを幾らにするということは、ここで申し上げませんけれども、先ほども申しましたように、いままでの二千円、四千円というようなものを三千円、四千円、五千円にしたり、あるいはまた、昨年一万円の金額をきめることにいたしましたようなぐあいに、今後も引き続いていろいろな方面から私は前向きの研究を進めてまいりますので、その金額をいつから幾らにするということにつきましては、どうぞひとつおまかせをいただきたいと思います。
  29. 大久保直彦

    大久保(直)委員 総理、この介添え手当につきましては、今国会で一万円から一万二千円にしようというような案もあったやに私伺っております。しかし、それが現実には据え渇きになってしまった。これはほかの問題もただいまいろいろあるというように厚生大臣答弁でございましたけれども、私たちが最もいま重点を入れて取り組まなければならないのがこの公害、ましてやこの公害の直接の被害を受けている患者並びにその家族に対して、またその患者を守る、助ける方々に対する考え方を、私たちはもう少し前進させてもいいのではないか、こういう考えを持つものですが、いかがでしょうか。
  30. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまも厚生大臣、このままでいいというものじゃない、こういうことを申しております。また、それぞれの予算のことですから、予算編成の際にさらに努力するものだろう、かように私は思います。また、そういうように御理解をいただきたいと思います。  ただ一言、私が私なりに考えてみますと、世の中にはずいぶん不幸な方が非常に多い。そういうものが、原因のいかんによって国の手当てが二、三になるということは、これはよろしいことではないのじゃないか。国から見れば、その被害がどういう原因から起ころうが、やはり同じように困っておられれば救済の手を差し伸べる、こういうことでなければならない、かように私は思うのでございまして、ただいま言われるように、産業公害だといわれておる、しかもそれがやはり会社の責任において処理されるべきものが主体である、かように考えるならば、その方向で処理し、また国は、その原因のいかんにかかわらず、救護の手を差し伸べる、その間に区別があってはならない、かように私は思います。その辺のところで、先ほどの厚生大臣答弁も、いろいろの問題があるからと、こういうようなお話が出ておりまして、これは国としてなすべきもの、それについては甲・乙しないで、やはり救護の手を差し伸べる、こういうことだと思っております。また、予算編成に際して、十分そういう点を考慮していく、かように申しておるのですから、御了承いただきたいと思います。
  31. 大久保直彦

    大久保(直)委員 過日の予算委員会で、防衛問題につきましても、日本の防衛の強化は、ころばぬ先のつえだというような政府側からの御答弁もございました。確かに私もそのことは大事な問題であると思いますけれども、ころばぬ先のつえというより、現にこの人はもうころんじゃっているのです、総理。もう身動きができない。ころばぬ先のつえという考え方も大事でありましょうけれども、この一億国民生命、健康を守る総理のお立場として、私はもっと突っ込んだ、この人たちの立場になった、そういう心の通うといいますか、あたたかい心の配慮、それを重ねて御要望いたしておきます。そして、前国会で十四法案が成立したから、また環境庁ができたから公害はなくなるのだというようなものでは決してない、むしろこれからだ、そういう法律や制度よりも、公害をなくそう、公害を救おうという総理の御一念に問題はかかっているのだ、そのことも重ねて申し上げておきたいと思います。現在、お隣の神奈川県の川崎の田島、大師、この両地区は公害の指定地域になっております。しかし、現場へ行ってまいりますと、その前の、一本道路をはさんだ向こう側の中央地区、ここは公害の指定地域になっておりません。また、川崎と隣接しております東京の大田区等も公害の指定地域にはなっておりません。また、神奈川県の鶴見地区等も指定地域にはなっておりません。現在、政府全国七地区を公害の指定地域としておられますけれども、たとえば川崎の気管支ぜんそく、気管支炎ですね、このぜんそくで悩んでおられる方々、道一本隔てたために、認定もされなければ手当もいただけない。また、地続きであるのに、東京都と神奈川県と、県名と都名が違っただけで一銭もその恩恵に浴することができない。こういった点で、非常に矛盾した現象が多々全国に見られるわけでございますが、私はこの特別措置法によって指定されたこの七つの指定地域、これも早急に改善されてしかるべきではないか、このように考えますが、これに対するお考えはいかがでございましょうか。
  32. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 指定地域は実情に沿ってきめなければならぬ、かように私も思います。なお、厚生大臣からさらに追加の答弁があろうかと思います。
  33. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私は、総理がたいへんいいことをおっしゃってくださったので、そのとおりでよろしいと思います。私も実情に応じまして、最近も尼崎等を追加指定をいたしましたが、これはあなたのおっしゃるとおりであると思いますので、そういう方向で常に処理してまいるつもりでございます。
  34. 大久保直彦

    大久保(直)委員 その実情に応じてというのですけれども、なかなか実情がおわかりにならないわけでしょう。けっこうですよ。いま御答弁いただいたので、それでよろしいのですが、公害病認定審査会等に対しまして、厚生大臣から、この指定地域の問題について早急に検討を加えて、実情に即した指定地域の認定をするように強力にお申しいただけるように私にお約束いただけますか。
  35. 内田常雄

    ○内田国務大臣 認定審査会に申し入れるべきものか、あるいは地元の都道府県あるいは指定市等に協議をいたすべきものか、おそらくあとのほうだろうと思いますが、そういう手続ももちろん踏んでまいります。
  36. 大久保直彦

    大久保(直)委員 総理、ここで私、安中公害の問題に入りたいと思います。  昨日、岡山大学の小林純教授の分析結果によりますと、安中市の中村登子さん、二十八歳——未婚の女性でございます——の遺体から、二二四〇〇PPMのカドミウムが検出されまして、これは新しい形のイタイイタイ病、カドミウム中毒ではないかということが判明いたしました。  ここで厚生大臣に伺いますが、人体から二二四〇〇PPMのカドミウムが出てきた。ちょっとこれは一般にぴんとこないと思うのですけれども、富山県のいままでイタイイタイ病患者の体内から出たカドミウム、この最高はどのくらいの数値だか御存じでいらっしゃいますか。
  37. 内田常雄

    ○内田国務大臣 政府委員からお答えいたさせます。
  38. 中野四郎

    中野委員長 曽根田公害部長
  39. 大久保直彦

    大久保(直)委員 時間がもったいないからこっちから言います。いままで最高は四九〇〇PPM、約五〇〇〇PPMですね、内臓から出てきたカドミウムの数値。(「鉱石並みじゃないか」と呼ぶ者あり)今回は二二〇〇〇PPM。いまお話がありましたけれども、鉱石の中にカドミウムが含有されておりますのは約二%です。二〇〇〇〇PPM、その鉱石を上回るようなカドミウムの蓄積、人体がもう鉱石化してしまっている。そして、さらに御注目いただきたいのは、先ほど申し上げた約五〇〇〇PPMのカドミウム、このイタイイタイ病というのは、三十年、四十年のキャリアがあって、もうほとんど老人の、お年寄りのからだから検出される数値がこの約五〇〇〇PPMです。この中村登子さん、まだ二十八歳、その方の体内から、内臓から二二〇〇〇PPMというのが出てきた。これは私たちかねてから、安中問題についてはたびたび警告を発しておりました。今度はカドミウム工場の——この方は東邦亜鉛の元従業員です、中村登子さん。カドミウム工場の従業員の中からこういう悲惨な事実が表面化してきた。そして、この二二〇〇〇PPMという、私たちがいままで聞いたこともない世界最高のデータであります。私たちは、この問題が単に公害の発生源である工場のみならず、これは重大な政治の責任を感じなくちゃならない、このように思います。本日、傍聴席にこの登子さんの御両親が見えておられるはずでございます。総理は、私に対するというよりも、この愛する娘さんを公害によって失ったこの御両親に対するという意味でも、この事実をどのように受け取られるか、御答弁を願いたいと思います。
  40. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま中村さんの体内から、予想だにできないような多量なカドミウムが出た。まあそれまでにどういうような経過をたどられたか、おそらく突然そういうことになったわけではないだろう、かように思いますので、そういう点もよく伺って、あるいはそれまでに何らか尽くすべき手があっただろうか、全然なかっただろうか、そういうことを考えながらも、なくなられた方に対して心からお悔やみ申し上げる次第です。
  41. 大久保直彦

    大久保(直)委員 それまでに尽くすべき手がなかっただろうかというお話がございましたので、かいつまんで、この二二〇〇〇PPMが検出されるまでの経過を申し上げますと、この方は学校を出られてすぐ安中の東邦亜鉛製錬所に勤務なさった。そして、カドミウムを扱う現場に二年間おられたわけでございます。それまで非常に健康なお嬢さんだったようでございます。しかし、近年、非常に腹痛といいますか、からだの痛みを訴えられた。そして、病院に通院をしたり、あるときは入院をしたり、また、自宅療養をしたり、また、からだの調子がいいときは出勤をいたしたりしておりました。会社の診断では十二指腸かいようということでございました。ところが、後ほど御被露したいと思いますけれども、どうも本人も、自分のからだが単なる十二指腸かいようではない。もうこの方がつづられた日記、大学ノートに三冊ございます。この方は詩人なんですね、全部和一歌でこの日記を書いてございます。その日記の中で「腸を五臓を地面に引きだしてたたきつけたし苦痛に耐える」また「疎ましい重腹感に夕食も食らず寝床に身を横たえぬ」「胃も腸も十二指腸も胆のうもみんないらなむ治療ごと広がる痛みに思う」「隣室の安き寝息をうらやみつ痛みに耐えて夜明け待ちいぬ」また、その他苦悶されている状況が、私ここに全部読み上げませんけれども、随所にしるされております。そして「日毎痛み全身に広がりゆく不安カドミによる神経病なるか」御本人がこういう疑惑を抱き始めております。そして「白菊やイタイタ病の癒ゆる待ちケースワーカーになりたしと思う」こういうふうに、自分は生前からひょっとするとイタイタ病じゃなかったか。そして、おかあさんとも相談の結果、あの萩野博士の診断も受けるべく考えもいたしましたが、何せ遠方なのでそれもできない。そうしたさなか、この登子さんは鉄道から落ちて自殺をされておる——まあ警察の診断でございます。そして、生前母親に向かって、私が死んだら私のからだはぜひ解剖してもらいたいということを再三訴えられたとのことでございます。まあ鉄道から落ちたというようなこともございまして、そのまますぐ娘さんの遺志を実現できなかったのですが、ある日おかあさんがテレビを見ておった。そうすると、そのモーニングショーで萩野博士がイタイイタイ病についていろいろレクチュアをした。それを聞いて、うちの娘はあの萩野博士が言っている症状そのまんまであった。あわてて萩野博士の書かれた書物を読み、また萩野博士のところまで電話をして、自分の娘さんの状況を知らせ、どうやら娘は十二指腸かいようなんかじゃなかった。会社の病院の診断では十二指腸かいようというようなことであったけれども、そんなものではなかった、イタイイタイ病に間違いないという確信を深めて、萩野博士と相談の結果、また分析の大家であります、先ほど申し上げた岡山大学の小林教授と相談の結果、この一月十五日に解剖いたしたわけです。そして月末、そのデータが発表になった数字があの二二〇〇〇PPMであったわけでございます。その過程で、会社の指定された病院からは十二指腸かいようだ、また自分でも原因不明であったけれども、その医者の診断をたよる以外にない。そうした状況で、きょうおかあさんも見えておられますけれども、その解剖の日におかあさんが登子さんにあてられた手紙、これを総理にも聞いていただきたいと思います。 「おかあさんから登ちゃんへ。  登ちゃん、かあちゃんですよ、わかりますか。どうして死んでしまったのです。  星になってしまった登子ちゃん。あの日からもう一年五カ月ほどになりましたよ。きょう四十六年一月十五日成人の日、登子ちゃんも二十歳のとき、太って健康でピチピチして、希望に胸をふくらませ式に参列したのに。あまりにも短い人生です。何から書いてよいやら、気ばかりあせって——。母として何一つこれということもできずごめんしてください。きょうは登子ちゃんが心の中に苦にしていた病明をはっきりしていただく解剖をしてもらう日です。大ぜいの方々のお世話になりましていたします。書きたいこと山のようです。もう朝ですのでいろいろと用事がありますから——。登ちゃん、よくがんばって働いてくれました。ありがとうございました。静かに安らかに休んでください。かあちゃんも登ちゃんのそばに行く日がいつの日か来ます。そうしたらゆっくり話しましょう。家族のこと、また世の中の移り変わりを報告に行きますまでは永久にさようなら。  二伸。かあちゃんの手紙のようなものはこれが最初で最後ですね。さようなら。  封筒と便せんを添えましたから、登ちゃんもお返事書いてくださいね。さようなら。」  こういった手紙でございます。  私、この安中でこういったカドミ中毒がいま判明した、そのことについて厚生大臣に伺いたいのですが、いままであなた方は、おりあるごとに、安中にはイタイイタイ病、カドミ中毒はないと住民や工場内の方に訴えておられた、呼びかけておられた。しかし現に世界にも例を見ないような、こうしたカドミ中毒が現在出たじゃありませんか。これに対して厚生大臣はどういう見解をお持ちになりますか。
  42. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私のほうは国民の健康や衛生を担当する役所でございますので、企業を担当する役所とおのずから立場が違います。したがって、私どものほうは産業公害による健康被害等が起こったというような事態に対しましては、できるだけ神経質に、また偏見を持たずに各方面の研究者、医学者等にお集まりをいただいて、そしてその原因等を検討をいたしてまいっております。  安中や、また近くの福島県の磐梯等におきまして、先ほどもお話が出ました指曲がり病というようなものが発生したというようなことに対しましても、県をして地元の大学等の協力を得て、そしてレントゲン調査はもちろんのこと、精密診査等のことも行なっていただく、とは別に、厚生省自体が現在カドミウムにつきましては、カドミウム中毒等鑑別診断班というものを編成をいたしまして、そしてそういうものと地元の大学、医師会、保健所等との研究を突き合わせてあの原因を究明いたしております。いまお話しの、一年数カ月前になくなられた中村さんの体内から多量のカドミウムが今回検出されたということは、初めて承ることでありますが、このことにつきましても、聞き捨てにしないで、私どものほうは、もちろん県からその正確な報告も取りますとともに、いまここにございますカドミウム中毒等鑑別診断班を、これはいま大久保さんがお話しになりました萩野病院長の萩野博士もその班員になっておられまして、班長は金沢大学教授の高瀬武平氏でございますが、そのほか、富山県立病院長、長崎大学教授、群馬大学教授等々、その道の専門家が集まっていただいておりますので、資料を取り寄せまして、この鑑別班にも十分御検討をいただいて、そして、はたして御心配のような事態であるか、また、そこであるとすれば、今後の対策いかんというようなことまでも、当然やってまいる所存でございます。
  43. 大久保直彦

    大久保(直)委員 厚生大臣は、いま私が申し上げた中村登子さんの遺体から二二〇〇〇PPMが検出されたということはお認めになるわけですね。
  44. 内田常雄

    ○内田国務大臣 けさ実は新聞で私は初めて知りまして、まだ現地からも、また、その死体を、解剖でございますか、あるいは焼却されました灰の中から検出された、どういう機関が主体になってやられたこと等についても、けさのことでございまして、聞いておりませんので、いま申しますように、十分検討をして、慎重に私は対処する、こういうことでございます。
  45. 大久保直彦

    大久保(直)委員 私が申し上げているのは、いままで厚生省では安中にカドミ中毒はないということをたびたび言ってきた、これを申し上げているわけです。  読みましょうか。公害課長の橋本さんという方が、「「東邦亜鉛周辺のカドミ公害は、心配しないように」、私たちが「安中などの調査をすすめているのは、公害があるからというのではなくて、公害予防の調査である」、「安中製錬所はいろいろの金属を回収する近代的な工程と設備により操業されている」」こういったことを公害課長がおっしゃっている。これは、厚生大臣、あなたのところじゃないですか。
  46. 内田常雄

    ○内田国務大臣 橋本君というのは、厚生省のかつて公害課長でございましたが、いまは、これは日本ばかりじゃなしに世界的にも非常に高く評価された公害学者でございまして、いまはOECDのほうに行っておりまして、おりません。しかし、安中に公害病があるかないかにつきましては、これはまだ最終的には結論が出ておりませんで、厚生省は、先ほど申しましたように、いまの鑑別班並びに微量重金属につきましては汚染状況の緊急調査班というものをつくりまして、そして要観察地帯になっております地域の精密健康診査等にも当たってもらっておりますが、安中の最終結果は、ことしの、もうすぐでありますが、三月ぐらいに出るそうでございます。むしろ、さっきもちょっと触れましたが、福島県の磐梯につきましては指曲がり病等も起こりましたけれども、それはさきの鑑別班並びにその緊急総点検の結果によりましても、カドミウムの結果ではないという発表をいたしておりますけれども、安中につきましては、三月にその最終の判定が行なわれる。しかし、私は、そこにおきましてもどういう結果が出るかわかりませんけれども、でき得る限り皆さま方の心配がないような状態であることを心の中では期待をいたしておることは事実でございます。
  47. 大久保直彦

    大久保(直)委員 厚生大臣、私は、結果がどうとかこうとかと言っているんじゃないんですよ。現に、けさ大臣も朝の新聞でごらんになったように、二二、〇〇〇PPMものカドミウムが体内から検出されたような、そういう方が安中から出ているんじゃないか。その安中の工場に働いていたとか、外だから——中は労働省だ、表は厚生省だ、そんなけちなことを私は論じているんじゃないんです。現に、安中から、二二、〇〇〇という、日本でも最高、世界でも最高のカドミウムが検出されているんじゃないですか。その安中工場に、いまはOECDかどうか知りませんけれども、厚生省の公害課長が、この安中製錬所はいろいろ金属を回収する近代的な工場設備により操業されている、安中にカドミウム中毒はありませんよ、こういったことをおめおめと発表しているんですよ。これは安中市役所発行の「広報あんなか」というのを見ればよくちゃんと書いてある。厚生省はこういうことをいままで言ってきた。いままでばそうだったかもしれませんよ。私たちはそうじゃないということを前々から言っております、厚生大臣も御存じのように。安中は非常に危険だと言っておりますよ。だけれども、現に中村登子さんのような犠牲者がここに出て、その上でもなおかつ三月の分析結果を見なければ何とも言えないというのですか、あなたは。人の命を何だと思っている。
  48. 内田常雄

    ○内田国務大臣 安中はもちろんカドミウム汚染の要観察地帯と私どもが指定をしているところでありまして、そこに住まれておる地域住民の健康につきましては、私どもも監視、観察を怠らない地域になっておるわけであります。私どもばかりではなしに、あの地域の県、市町村にも同様のことを私どものほうから指図をいたしておりますので、安中は何もしないでいいところだということでは決してございません。  橋本前公害課長がどういうことを言っておるか私は知りませんけれども、ただ、これは大久保さんもおそらく御承知だろうと思いますけれども、いないから私が言うわけではございませんが、橋本君という人はその方面では言い過ぎるほど危険をエンファサイズ、強化発言する人でございまして、企業に対しましては、ああいう危険企業とかあるいは殺人会社とかいうようなことばまでも放って、決して企業寄りの人ではございませんでした。でございませんでしたので、橋本君を弁護するわけではございませんけれども、橋本君は、そういう意味においては大久保さんが警戒をしなければならない人物ではございませんようでした。  いずれにいたしましても、きょういま大久保さんからもお話があり、新聞にも載っておりましたような、中村さんの死体に多量のカドミウムがあったことが検出された、こういう事実が指摘されたのでありますから、この新しい事態に対しましては、先ほどから私が申し述べましたように、決してこれを看過せず、軽視せず、十分専門家を集めた研究班等の御協力のもとにこれらに対処をいたしてまいりたい、こういうことでございますので、御理解をいただきとうございます。
  49. 大久保直彦

    大久保(直)委員 私は、その研究班だとか、橋本さんの人物評価を伺っているんじゃないのです。厚生省の公害課長の要職にある方が、いままでこういう安中公害に対する見解をとってこられた。また、安中製錬所に対してもこういう認識を持ってこられた。しかし、いままでの経過はいざ知らず、安中にはカドミウム公害はないと言っていたけれども、現に発生したではないですかと言っている。いままでいろいろな公害がたくさんありますよ。それも認めてないで——しかし、現にこういうカドミウム公害というのが大量に発生した。私は、ここにおたくの公害部が出しておられる文書を持っております。「人体に摂取されたカドミウムの大部分は尿や屎の中に排出され体内に残るものは、ごく一部であると考えられている。」厚生省はいままでこういう見解をとってきたのです。しかし、いままでのいきさつはともかく、大臣、こういう悲惨な事実が判明したのですよ。それに対して厚生大臣としてどういう見解をとられるのですか。
  50. 内田常雄

    ○内田国務大臣 たびたび申し上げておりますように、そういう事実が判明したことを私は軽視も看過もしない。これは新しい事実でございますので、単に厚生省の一課長、また医者でない私がここでその判断を申し上げますよりも、せっかく各方面の学者の方々にお願いをいたしておりまする鑑別班にこのことをかけまして、新しい事実として対処をし、十分の処置をしてまいる、こういうっもりでおります。     〔発言する者あり〕
  51. 中野四郎

    中野委員長 大久保君、進行願います。
  52. 大久保直彦

    大久保(直)委員 私は、こういう事実の判明に対して、三月まで結論を待たなければ何とも言えないとか、また専門家でないから答弁できないというような、そういう御答弁には承服しかねるのです。少なくとも国民の健康と生命を預かる立場におられる大臣がいままで、一課長とおっしゃったけれども、この公害課長はこういうことを言ってきた。また、厚生省の公害部でもこういう資料を出しておられる。事実と反することが現に発生したわけです。この一公害課長の発言は、大臣、どうですか。取り消しますか。
  53. 内田常雄

    ○内田国務大臣 先ほど前提に申し上げましたように、厚生省という役所は健康官庁でございますから、企業寄りでなしに、かりに他の官庁から、あるいは企業から抵抗がございましても、健康被害者の立場に立ったいろいろな判定をすべき役所であると私は考えまして、そういう立場からこれまでも処してまいりました。  また、橋本君の発言は、これは本人がおりませんし、また公害課長ではございませんが、適当でなかったものがございましたならば、これは私から、橋本君の発言は適当でなかったということをここで批判——取り消しと申しますよりも、批判をいたしておきます。しかし、橋本君という人はたいへん企業寄りでない人であったことは頭に置いていただきとうございます。それはともかく、橋本君の発言で適当でなかったものがありますならば、私がこれは適当でないということをここで申し上げておきたいと思います。  また、けさ新聞で知りました事実につきましては、たびたび申し述べますように、これら関係方面の権威の方々にもお集まりをいただきまして検討をいたしまして、そうして国民の健康擁護に立った立場から十分処置をいたしてまいる、こういうつもりでございます。
  54. 大久保直彦

    大久保(直)委員 総理、私はここで、ことばじりをとらえてどうとかこうとか、また、橋本さんの弁護をしたり、批判したりということについてこだわりたくありませんけれども、問題にしておるのはそんなことじゃないのです。私たちがこの公害問題に取り組む姿勢、この姿勢が、いまの論議を聞いておられて、総理も十分であるという御判断に立たれますか。いまこういう深刻な問題が起きつつある。それに対して、われわれはいまこそいままでのいきさつもかなぐり捨ててこの公害問題に対処するのがほんとうの福祉を目ざした政治じゃないんですか。それをああいう御答弁をいただいて、私はなかなかわかりませんけれども総理にちょっとお願いしたいと思います。
  55. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも話が食い違っているのじゃないかと思います。大久保君の言われることは、新しい事実が起きているじゃないか、この事実に即して、厚生省は適切な処置をとれ、こういうのが現在の、現時点における主張だろうと思います。それが、いかにも過去の橋本の発言あるいは橋本の著書、それが本来であるかのようにとられたところに話が食い違った、かように思います。どうも、橋本君の適当でなかった、こういう点は、ただいまも厚生大臣が申しますように、それは取り上げない、しかし新しい事実については十分、自分も医者でないからわからないが、新しい事実としてこれと取り組む、こういうことを申し上げておるのであります。どうも話がすれ違いになっておるように聞けました。しかし、大久保君のお話も建設的な御意見だと思いますし、私も、現実にただいまのような中村さんのような事件が起きた後でございますから、この問題をただ一公害課長の報告どおりだと、こういうことで見過ごすわけにはいかない、これはそのとおりだと思います。厚生省は新しい観点に立ちましてこの問題の処理に当たる、これが私、厚生省の考え方でございます。
  56. 大久保直彦

    大久保(直)委員 総理は、いままでのいきさつは十分御承知だと思うのですけれども、安中の公害問題は、私たちは前々から大問題として取り上げてきたわけです。にもかかわらず厚生省はこういう発言をしてきたんですよ。そのことを私は問題にしているのです。そして、いままたこういう事実が具体的に判明をした。こういう事実があって、私が言いたいのは、公害によって被害者が何人廃人となり、何人の家族の方がそのために涙を流し、何人の方が人体実験によって公害を立証すればほんとうに政府は本腰を入れて公害問題と取り組むのかということが私は問題だと思うのです。こういう冷厳な事実があるにもかかわらず、医者が研究しているからどうとか、結果は三月でないと出ないとか、この公文書、どうですか。厚生省の公害部が出した文書というものは、そんないいかげんなものじゃないでしょう。ここにはっきり書いてある。カドミウムは尿やふんの中に排出されて、人体、体内に残るのはごく一部だと考えられる。こういう見解をいままで厚生省はとってこられたんですよ。どうなんですか。まあ、大臣に伺ってもそれはわからないと思いますから、私はこれ以上ここで論議をしませんけれども、私たちはいままでさんざん安中公害については口をすっぱくしていろいろ御意見も申し上げ、分析のデータも各委員会等で発表しております。いまこういう事実の前に、私たちは、本腰を入れて政府がこの公害問題に身を入れた対処をすることを強く要望しておきたいと思います。
  57. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私も、毎夏軽井沢に出かけます。いつも安中を通る。そうして東邦亜鉛の危険な点をいつも指摘するのでありますが、これはだいじょうぶなのか、こういう疑問を持ちながら、この地域ではイタイイタイ病はあまり出てこない、他の場所では云々されておるが、これはだいじょうぶなのか、こういうことをしばしば係にも聞いてまいったのであります。しかし、いまの中村さんのような不幸な事件は、これは表面にあまり出てこなかった、かように思いますので、そういう点にどうも不備な点があったのではないか、かように私も思います。これは、町の所在と工場の所在がちょっと離れておる、そういう関係で、あるいはあの川にはそういう危険なものが流れてこないのかと——しかし、高崎等の下流では必ずそういう問題が起きているに違いないが、それははたしてだいじょうぶなのか、こういうことをいつも胸に思いながら、係にも注意してきたところであります。しかし、不幸にしてただいまのような具体的な事例が出てきた以上、これとさらに、いままでも取り組んでおりますが、積極的に取り組んで、前向きの姿勢でこの問題と取り組むことは、これは当然政府の責任でもある、かように思いますし、また、企業者自身も、こういう事態が起これば、もちろん在来の考え方と変わった結論を出すに違いない、私は、それを期待しております。
  58. 中野四郎

    中野委員長 この際、委員長より厚生大臣に申し上げますが、すみやかに事態を調査して、その結果において適当なる処置をされるように要望しておきます。
  59. 大久保直彦

    大久保(直)委員 先ほど厚生大臣から、工場内の問題であるというような御発言もございましたので、労働大臣に伺いたいと思うのですが、安中の東邦亜鉛工場の従業員に対して、どういう監督、指導をされてこられたのか。昨年の例だけでもけっこうですが、発表していただきたいと思います。
  60. 野原正勝

    ○野原国務大臣 労働省では、工場内の労働者の健康管理に十分注意してまいりました。ただし、カドミウムの問題につきましては必ずしも明確な規定がないわけでございます。そこで、今回の事件につきまして、中村さんの自殺、その後におきまして、調査の結果、はたしてこれが業務上の因果関係がはっきり出ますというと、あらためてこれは検討する必要がある。私どもは、これに対しましては、業務上の疾病として、必要な補償を行なう考えも持っております。したがって、これについては慎重に検討されまして、結論ができるだけ早く出されるように、その結果に基づいて遺族補償金であるとかその他の対策はできるだけ早急に講じたい、こう考えておるわけでございます。
  61. 大久保直彦

    大久保(直)委員 ただいまの御答弁の中で、すみやかに事態を調査した上で、これが職業病に該当するか、または遺族に対する補償等の問題についても、すみやかに検討されるという御答弁でありましたので、それ以上伺いませんが、私は、これは問題になりますのは、この中村さんと同じ職場で働いておった方がまだほかにもいらっしゃると思うのですね、一緒に作業なさった方が。そういうカドミウムの中毒になっておられる方がおられるのではないか。この方は現場には二年間しかいないのですね、登子さんは。そのときに一緒に作業なさった方がおられるはずであります。こういった、その他の方に対する対策としてはどういうお考えをお持ちですか。中村登子さんと一緒に働いておられた方ですね。
  62. 野原正勝

    ○野原国務大臣 これは厚生大臣の所管かとも思うのでありますが、しかしやはり、中村登子さんは三十五年の一月から安中製錬所に勤務をされまして、それで三十七年の八月には職場をかわりまして事務のほうへ移っております。したがってわずかな時間であったのでありますが、こうした解剖の結果たいへんなカドミウムが検出された。同じような事態が起こり得る可能性もないわけではないのであります。それにつきましては、職場に働くそういった環境方々がカドミウムの害を受けるという危険もございますので、これは十分にひとつ検討いたしまして、学界の協力を得まして、こういった災害が今後起きないように、そのためにはどうしたらいいかという対策も慎重に考えたいと考えておるわけでございます。
  63. 大久保直彦

    大久保(直)委員 先ほど、安中の東邦亜鉛の健康監督、指導については具体的な御答弁がありませんでしたけれども、労働省は昨年一年間で四十六人の健康診断をやっておられるのですね。従業員は一千名おるわけです。四十六人しか健康診断やっていない。また、全国カドミ工場関係の労働者、従業員に対する健康診断も、ほとんどなされておりませんね。何ならここでデータを発表してもよろしいのですけれども、ほとんど行なわれてない。いま、この中村登子さん並びに御両親、御家族の方が、二度とこういう犠牲者を出してはならぬ、こういう願いによって今度のこういった事件になったわけでございますけれども、そういう御家族の御意思を体しましても、私は、この中村さんと一緒の職場で働いておられた方々並びに全国のカドミ工場関係の従業員の方々、こういった方々に二度とこういうような痛ましい現実をもたらしてはならぬということを強く要望いたすわけでございますが、このために緊急でも、とりあえずカドミ工場関係だけでも、集団健康診断を労働省として指示されるべきではないか、こういうように思いますが、この点についてはいかがですか。これは専門家によって精密健康診断をやらないと、なかなか事態は判明しないと思います。中村さん御自身も、死んで解剖した後にこのカドミ中毒であることがわかった。生前の単なる一般の健康診断ではなかなかわからないと思うのでありますけれども、この点について大臣のお考えはいかがでございましょう。
  64. 野原正勝

    ○野原国務大臣 お答え申し上げます。  中村登子さんの場合も、実は定期的な健康診断を受けておりました。年二回でございます。特に異常はないということでございますが、どうもこのような事件になりますと、はたしてそれでよかったかどうか。これは特別な健康診断、特別な精密検査を必要とするのではないか。さっそく今後は精密な検査等を行なう必要があろうと存じますので、ただいま御指摘のような方向で、今後は特別検診を行なう方針でございます。
  65. 大久保直彦

    大久保(直)委員 いまの大臣の御答弁にありましたように、これは普通の健康診断ではなかなかわからないのですね。中村さん御自身も、十二指腸かいようだというふうに診断をされておりましたし、また同僚の方も、胃腸病、胃腸障害、そういう診断をされて現在おられる方もいるかと思います。ただ、これは全国約二十五万の従業員の方がカドミ関係にいま従業しておられる、こういったことを考えて、ただいまの御答弁をすみやかに実行されることを強く私要望しておきたいと思います。  私、この東邦亜鉛の安中製錬所、これはいたずらに誹謗はしたくないのですけれども、この会社はまことにけしからぬ会社だ。まあ悪徳会社の——今回の事件についても、犯罪行為とまで私は言いたいような気持ちなんです。そして登子さんが犠牲になったこの東邦亜鉛の安中製錬所につきましては、この事件の背景に、政治公害とも言えるような不届きな行為が行なわれているわけです。これをいまからひとつ明らかにしたいと思うのですが、総理もすでに御存じかと思いますけれども、通産省の東京鉱山保安監督部長が自殺をなさった事件で、これは数年前にかなり問題になった事件でございます。この裁判の判決が昨年出ております。  私、ここでもう一回、念のために伺っておきたいのですが、通産大臣、鉱山業者は新しい施設をつくる場合に認可を受けなくてはならない、また認可の手続としては工事着手の十四日前にその計画を届けなければならない、またその後検査を受け合格をしたものでなければ使用できない、これが鉱山保安法八条、九条の規定でございますけれども、これには間違いございませんでしょうか。
  66. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御指摘のとおりでありまして、東邦亜鉛の場合、両方の違反がございましたために、昨年告発いたしまして有罪となったわけであります。
  67. 大久保直彦

    大久保(直)委員 ただいま御答弁ありましたように、鉱山業者が新しい生産のために施設を増設することについては、過日も問題になりましたように、その認可及び検査等が必要なわけでございますが、東邦亜鉛は従来月産一万一千六百トンの電気亜鉛を生産しておった。しかし四十二年の十月に月産三千トン程度の電気亜鉛増産をもくろんで工場を増設いたしました。そして四十三年四月からその生産を無許可で開始をし、四十四年六月までこれを続行しております。この事実は間違いありませんでしょうか。
  68. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨年告発いたしまして有罪になりました案件の内容は、いわゆる違法操業が一年四カ月という非常に長い期間にわたっておったという事実に基づくものであります。
  69. 大久保直彦

    大久保(直)委員 ただいま違法操業が一年四カ月という長期にわたって行なわれておった。このちょうど同じ時期が、安中公害の最も問題視された時期でございます。この時期に違法な操業及び生産、たれ流しが一年数九月続いておった。この間、通産省は何をしておられたわけですか。
  70. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま違法操業と申しましたこと、即たれ流しという意味ではございませんので、これは鉱山保安法に基づく八条及び九条の違反でございます。これは昨年も御報告申し上げましたけれども昭和四十三年の十一月に増設の申請があったわけでございます。そして四十四年の一月に、それを書類審査によって認可をいたしました。ところが、どうも現実にはすでに工場が動いておるという疑いを鉱山保安監督部が持ちまして、検査をいたしましたところ、先ほど御指摘のように、八条及び九条、これは認可前に工事に着工して、それから落成の検査前に操業したということがわかってまいったわけであります。そこで、一応操業をとめまして、鉱山保安法三十七条に基づく司法捜査を行ないましたところが、両方の違反事実がはっきりいたしまして、しかも、さらに追及いたしましたところが、それがかなり長い期間に及んでおる、こういうことになったわけでございます。したがってその点は、片方で認可の取り消しという行政措置に出ますとともに、他方で告発をいたした、こういう経緯でございました。
  71. 大久保直彦

    大久保(直)委員 四十三年の四月から生産が開始されております。で、増設申請があったというのは、四十三年の十一月であったかと思います。そのときになぜ申請に至ったかといいますと、そこで通産省で調査をされておるのですね。違いますか。この時点で通産省が調査をして、無許可で操業していることはわかったわけでしょう。
  72. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 検査をいたしましたところが、従来届け出られておりました設備が違ったところに変わっておったということがわかりまして、それで不審を抱きまして調査を進めたわけでございます。
  73. 大久保直彦

    大久保(直)委員 同鉱山保安法五十六条、五十七条によりますと、八条並びに九条の規定に違反した場合には罰則規定があるわけですね、通産大臣。八条、九条の規定に違反した場合には、罰則規定が五十六条、七条でうたわれておる。この無許可操業後七カ月後に通産省で調査をした。そこで、無許可で工場が新しく建てられ、そして操業されている事実が判明をした。この時点でなぜこの五十六条、五十七条の罰則規定を適用しなかったか。なぜこの無許可操業をこの時点で通産省は見のがしたのかということが問題なんです。この時点で当然、無許可で増設され、また認可なく操業が開始され、もちろん検査も受けておりません。そういう事実が判明したときには、この操業は停止されなければならないんじゃないですか。通産省ではここでどういう処置をなさるんですか。
  74. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これはそういうものの考え方もあろうと思います。本件につきましては、御承知のように、役所の側にも犠牲者が出たわけでございますが、当時の考え方といたしましては、それに対して改善命令をする必要がある、こう考えまして行政の措置に出たものと思いますが、もちろん御指摘のように、法をそのまま読みますと、現実に無許可で工事をした、あるいは操業をしたという事実がありますれば、それをもって告発することも、これも可能でありましたと思います。現実に行なわれましたことは、そのこと自身、これは厳格に申しまして違法であろうかと思いますが、それから生ずる社会悪あるいは公害等々を考えまして、まず改善を命じて、そしてそれを十分にいたさなかったために取り消しをした、こういう措置であったようであります。
  75. 大久保直彦

    大久保(直)委員 この十一月の時点で通産省は確かに調査をされております。そのときに無認可増設、無許可操業というのが判明をした。しかし、ここで問題になることは、その十一月の時点まではわずか三千トンの操業量であったわけです。ですから、従来の一万一千六百トンにプラスして三千トン、一万四千六百トンが生産されておった。ところが、この無許可、無認可でこれが操業されている事実があった場合に、同法の先ほど申し上げました五十六条、五十七条によれば、ここで罰規則定を行なわなければならない。しかし、これも行なわずに、さらにこの一万四千六百トンに足すことの二千四百トン、合計一万七千トン分の生産増設申請をここで通産省は受理しているんですね。受理している。違法を認めた、発見した、そこで操業停止なり罰則規定に出なければならないのに、それを見のがして、そして、いままでの生産にプラス二千四百トン分を上のせした申請をなさしめ、それを受理している。三カ月後、昭和四十四年一月にのめのめこれを認可しているじゃありませんか。
  76. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはこういうことであると思います。法律によりますと、第八条あるいは第九条の違反がありましたときに、これに対して直ちに告発をして、そうして検察に送致をするか、あるいはその事態を改善命令ということで改めさせるか、これはある程度私は行政の裁量であろうと思います。で、操業の結果が非常な社会悪を生じておる、あるいは公害を生じておるということでございますと、まっすぐに罰則にいくことも可能であります。しかし他方で、そういう社会悪を直ちに認められない場合に、必要な措置をして、そしてあらためて申請をさせ、その後に許可するかしないかを決する、このあたりは、おそらく私は行政の裁量の範囲内であると思います。そこで考えますと、後にこの事件は、長い間の不法操業というようなことに発展をし、また粉じん、カドミウム等の問題を今日呼んでおるわけでございますから、そのときのそのような行政の裁量が適当であったかどうかという問題は私はあろうと思います。が、当時そういうことを知りながら、なお操業——いわゆる直ちに罰則の適用をしなかったということではない、こういうふうに聞いておるわけでございます。
  77. 大久保直彦

    大久保(直)委員 総理、これは安中の作付禁止区域の簡単な見取り図です。赤い線が引っぱってあるところが四十四年度ですね、十一・二ヘクタールが作付禁止区域になっております。ところが昨年になりますと、さらに三十・二ヘクタール、その作付禁止区域が増大している。これはいま話題になっている増設分の操業はしていないのです。従来の一万一千六百トンの生産をしている現状でそうなっている。いま改善命令というお話がありましたけれども、その一万一千六百トンから三千トン増産の無許可、無認可操業がなされておったわけでしょう。従来どおりの操業ではないはずなんです。そこに三千トンプラスされた無認可、無許可操業に対して、なぜ通産省は、この時点で、このカドミウムの排じんが安中の市内市外に落ちて大騒ぎになっている最中に、この無許可操業を見のがして、なおかつ水増しの申請をさせたのか。さらに増加分の申請もあわせてそれを受理したのか。これは、石原産業が海なら、こっちは山です。こういったなれ合い——この担当官の方が自殺されておりますので、私はそれのことはあまり触れたくないのですけれども、この事実を見のがしてここで申請をした事実については、どういうお考えをお持ちでしょうか。
  78. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 多少問題に混同があってはならないと思いますので申し上げるわけでございますけれども、この安中製錬所が告発され有罪になりましたのは、公害関係のことで告発され有罪になったのではございませんで、鉱山保安法の八条及び九条の違反によりまして有罪になったわけでございます。したがいまして、当時、この安中製錬所が粉じんあるいはカドミウム等の公害を起こしている、そういうかどで社会悪あるいは罪を追及される状態にはなかったわけでございますから、行政の判断といたしましては、増産が必要であるかないかということに重点を置きまして、そして行政上の裁量をいたしたもの、こういうふうに考えておるわけでございます。
  79. 大久保直彦

    大久保(直)委員 問題を整理してお考えいただきたいと思うのですが、私が申し上げたのは、そのカドミウム公害が最も話題になっている時期にこういう増産の事実があった、無許可操業の事実があったことを申し上げているのです。その当時安中では、ものすごい公害が大社会問題になっているときなんです。そのときに通産省の調査で、それが無許可で操業されていることが判明したのです。その時点で操業停止をするなり、また同法五十六条、七条の適用をすることは妥当の措置じゃないのですか。
  80. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは先ほど大久保委員御自身が御指摘になりましたように、安中にカドミウムの公害があるかないかということにつきましては、当時そういうものはまず——先ほどのお話のあとでまことに恐縮なことでございますけれども、工場から排出されるものとしては、あるという判定にはなっておらなかったわけでございます。したがいまして、鉱山保安の観点からいたしますと、その公害という観点ではなく、鉱山保安法そのものの八条、九条違反があるかないかということを中心に考えたものと思います。
  81. 大久保直彦

    大久保(直)委員 それは大臣と私とが見解を異にするところなんですが、八条、九条に違反した事実が摘発されたときに、見つかったときには、その八条、九条の違反事実をもって操業停止をするなり、またその八条、九条に規定されたものに違反した場合に五十六条、五十七条の罰則規定を適用すること、そのことが妥当な措置ではないのですかと伺っているのです。
  82. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは先ほどから何度も申し上げていることでございまして、形式的に八条、九条の違反があったわけでございますから、これを送検するということは、行政の判断として一つございます。その場合、公訴の維持ができるかどうかということは別にいたしまして、それはあり得ることでございます。しかしながら、もしそれがそれ以外の社会悪を呼んでいないという判断でありますれば、そのように直ちに罰則を適用するような告発をすることが、裁量としても適当であったかどうかということになるであろうと思うのであります。すなわち、何度も申しますように、当時、安中製錬所というものは、カドミウム等の公害を排出しているというのがむしろ定説ではなくて、いろいろ土地に話はございましたけれどもカドミウム公害病はないというのがむしろ厚生関係の判断でございましたから、そうなりますと、この形式的な違反を直ちに送検をするということが、行政の判断としては適当であったかどうかということであったろうと思うのでございます。
  83. 大久保直彦

    大久保(直)委員 通産大臣はもう十分御承知だと思いますけれども、この鉱山保安法それ自体には、公害云々ということはいわれておりませんですよ。その八条、九条に違反した場合は、その違反が発見された時点で、操業を停止されてしかるべきではないんですかと伺っておる。
  84. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それで問題がはっきりしてまいりましたので……。鉱山保安法は、公害病等々に関係がないわけでございます。そこで、届け出をせずに工事を始めるといったようなことは、確かに形式的に法律に違反することになります。そういう場合に、直ちにそれを告発すべきかどうかという行政の判断になるわけでございます。
  85. 大久保直彦

    大久保(直)委員 私は、その鉱山保安法の解釈上の問題と、この事件が問題になっているのとは別に、安中の公害が大社会問題になっているということを、先ほど並列して申し上げたわけです。ただいまの答弁によりますと、十一月の時点でそれを見のがして、それで操業停止もなく、そこからの増設申請を受け取ったことは、これははなはだ不十分な措置であったわけですね。そういうことですか。
  86. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は、こういうことになっております。増設申請が出まして、それに対して、監督部長は増設の認可を与えたわけでございます。しかる後に、昨年の二月に、私がその認可を取り消すという処置に出たわけでございますけれども、そのときの理由は、申請に出ました施設の内容の記載の中に虚偽の記載がありまして、行政が錯誤に基づいて行なわれた、こういうことで、私が認可取り消しという処置に出たわけでございますので、申請されました内容そのものは正確なものでなかったということは、御指摘のとおりでございますが、それは先ほどおっしゃいますように、公害云々とは無関係なことのわけでございます。
  87. 大久保直彦

    大久保(直)委員 どうも話がよくおわかりになっていないのかと思うのですがね。いいですか通産大臣、八条、九条に違反した場合、そこですぐ操業停止をさせる、これが従来の措置なんでしょう。正当な措置なんでしょう、それが発見された場合は。無認可で、無検査で操業されていた場合には、当然監督官庁としては、それはそこで即時操業停止をさせるのでしょう。それを見のがしながら、いままでの増設分にさらに二千四百トン分を足したものをここで申請させて、それを三カ月後に認可をする、この辺は、明らかに怠慢というのか、それとも企業となれ合いでいままでの三千トン分の増設、それに二千四百トンを足した、前の証拠隠滅にも匹敵するようなことをやらしているんじゃないですか。
  88. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど御指摘になりましたとおり、鉱山保安法の問題と公害の問題とを分けて御議論をいただかなければならないと思います。すなわち、鉱山保安法の観点あるいはその他の法律でもさようでございましょうが、届け出をしなければならないあるいは検査を受けなければならないという規定があり、それについて違反したものに罰則があるという場合に、これをそのまま適用することも一つの考え方でございます。しかしながら、そのこと自身が社会悪を特に別に生んでいないというような状況のもとに一々……(「生んでいる」と呼ぶ者あり)その点は分けて考えるとおっしゃいましたから、分けてお考えいただかなければなりませんので、一々形式的にそういうものを送検することが適当であるかどうかということは、これは私はやはり考えてみなければならないのではないだろうか。形式的に法律を適用いたしますと、もう罰則にかかる件数は実は幾らでもあるのではないだろうか。そのことの持っている社会的な評価、社会悪を起こしているのか起こし  ておらぬのかという評価は、これは当然入ってまいりませんと、場合によりましては民を網するということになりかねないのでありますから、この場合には、公害の問題がない、それと切り離された状態でそのような行政判断をしたものと考えるわけでございます。ただ、いまになりまして、公害があるということにいろいろな議論があるわけでございますから、もしそのときに厳格にすぐに送検をし罰則を適用しておりましたら、こういう問題についてかなり事態を改善できたのではないだろうかという御議論であれば、私はあるいはそうであったかと思いますけれども、当時の行政の裁量で直ちに送検、告発をいたさなかったことが、私は特に落ち度があるというふうには考えられないわけでございます。
  89. 大久保直彦

    大久保(直)委員 それでは伺いますけれども、私がたとえば大久保なら大久保工業という会社をつくりまして、これは社会環境と全く無関係にしましても、それを認可も受けず、また検査も受けずにかってに操業しておる。そこへ大臣がお見えになった。認可も検査も受けないで私が操業している事実を見て、大臣は、それはそのときの気分によって——先ほど自由裁量というようなことをおっしゃいましたけれども、そこで私に対する措置はどういうことをなさるのです。
  90. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、たとえば工場排水規制法にはそういうケースが間々あるわけでございまして、これもやはり届け出をしなければならない、そうして、二カ月たたなければ工事をしてはならないということになっております。そこで、そういう町工場に私がかりに参りまして、特に……(大久保(直)委員「町工場だなんて、私、言っていませんよ」と呼ぶ、笑声)たいへん失礼いたしました。大小は問いませんが、そういう工場に参りまして、特にその工場が公害を発生さしている形跡はない、しかし、届け出をなさらずに操業なすっておられるということを私、見ましたらば、まあそういうことはお気をつけいただかないといけませんなあ、すぐお届けください、こう申し上げるほうがむしろ筋だろう。二カ月間の規定をお守りになってないから、あしたから操業を停止いたしますと言うためには、こういう社会悪を犯しておられるではありませんかということを、やはり考えて申すべきではないかと私は思います。
  91. 大久保直彦

    大久保(直)委員 そうしますと、私がたとえば、お望みのように町のメッキ工場でたれ流しをやっておったということになりますと、今度は大臣はどのような処置をなさるのです。
  92. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 メッキ工場でございますと、これはもう排水基準に違反という問題がすぐ起こってまいりますから、いまのようにこの問題を皆さんが知っておられる状況でメッキ工場を届け出なしに、しかもいまからやられるというようなことになりますと、これは強い態度で臨まざるを得ません。これはやはりやっておられる側の、どう申しますか、法律に反する意識と申しますか、罪を犯す意識と申しますか、そういうことによって行政の裁量というものは考えなければならぬだろうと思います。
  93. 大久保直彦

    大久保(直)委員 これは東那亜鉛の所長及び副所長が有罪の判決を下された判決文でございますけれども、ここに裁判所は、この会社は「極めて悪質といわなければならない。」と東那亜鉛を言っております。政府が立ち入り検査をしたときに、この会社は操業を停止して通産省をごまかしたこともあるのです。ちゃんとここに書いてある。ちょっと読んでみますか。「同年四月一九日から同月二二日まで東京鉱山保安監督部が右製錬所の立入検査をした際は、増設施設の操業を停止して無検査操業の事実を秘する手段を弄するなど、その行為は極めて悪質といわなければならない。」こういうふうにはっきり言っております。相手はそういう会社なんだ。そして大臣は盛んに公害と切り離そう切り離そうとなさっておりますけれども、これは幾らあなたが努力されても、昭和四十三年、四十四年当時の新聞記事をごらんになるとよくわかると思います。安中はこのカドミ公害で、もう上を下への大騒ぎの時代なんです。そういう時代に、そのカドミ公害の発生源であり、この裁判官すらが悪質な会社だときめつけているようなこういう会社に、あなた方は立ち入り検査をしてごまかされる。以前にも審査した。そしてその時点で無許可、無認可操業が判明したにもかかわらずそれを見のがして、そしていままでの増設分にさらに上積みした増設申請を出させ、それを認可しているなどという事実は、これは明らかに安中の公害問題に政府が一役買っていると言っても過言じゃないじゃないですか。どう答弁されても、この事実関係は曲がりませんよ。このときの工場とは折衝された部長のことについて、その方はすでにおられませんので、私ここで具体的なことは言いたくないと思う、そんなことは。そのことに触れないために、私はわざわざ客観的なことを申し上げているのですよ。そうでしょう。その安中公害の元凶ともいうべきこの東那亜鉛の製錬所、この製錬所に対して、いままで通産省はそういう姿勢で接したことがある。それをそのときの裁量であるとかまた社会環境云々だとか、そういう姿勢自体が、私は先ほどから何度も言っているように、公害をほんとうに撲滅しようという根本的な姿勢に問題があるんじゃないか、そういうことを申し上げているわけです。いま、聞くところによりますと、この安中製錬所はあらためて増設申請をなさろうとなさっておりますね。これは認可するのかどうかわかりません。通産省は認可に足るだけの条件を満たされたとお考えになっているかどうかわかりませんが、こういう事実、先ほどるる申し上げてきた中村登子さんのああした悲惨な現実の裏には、こういう事実があるということを十分大臣認識なさって、今後二度とこういうことが起こらないように、厳重な監督方をお願いしたいと思うのです。私の申し上げていることは御理解いただけましたか。どうですか。
  94. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御指摘のことはよく理解をいたしております。昨年取り消しをいたしましてから改善命令を出しまして、間もなくその施設は、相当な金を使いまして完成いたすと思います。その上は十分検査をいたしますが、ただそれだけでは認可をいたしますわけにまいりませんので、土壌汚染の問題が相当実はあるのでございましょうと思いますから、そのほうについての会社の協力も確かめないといけませんので、十分慎重にいたします。  御指摘の点はよくわかります。わかりますが、申し上げるまでもなく、この何となくけしからぬとか何となくいいとかいうような行政のやり方というものは、やはり非常にそれなりにまた問題があるものでございますので、その点もひとつ御理解願いたいと思います。
  95. 大久保直彦

    大久保(直)委員 何かいま不可解な御答弁がありましたのですけれども総理、時間が来たようでございますので、最後に私、申し上げたいと思うのですが、公害問題が一九七〇年代の大きな課題であるということについては、総理も同じお考えを持っておられると思うのでありますけれども、あくまで人命を重視した上に、制度や法律だけでは公害がなくならないということを十二分に御認識いただきたい。そしてこの公害撲滅は、政府及び各企業公害をもう出さない、なくそうというその姿勢にかかっているのだということもあわせて申し上げたいと同時に、来年度の公害関係予算等についても、さらにこれを検討する旨要請をいたしたいと思います。この点について、総理から御答弁を願いたいと思います。
  96. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大久保君の先ほど来の話は私も謹聴し、また公害をなくさなければならないと、いよいよその決意を固めた次第でございます。  私が申し上げるまでもなく、制度や法律はお説のとおり幾ら整っても、これを積極的に具体化するという努力が払われない限り、うまく効果はあげ得ないと思うのです。また一昨日も指摘されましたように、行政企業が癒着しているような状態では、どんな法律をつくってもまずいと思います。ただいまいろいろお話しになりました東邦亜鉛の問題にしても、どうも行政と癒着しているのじゃないかという疑問を一部残しながらお話があった。しかし、自殺者まで出ておるその状況から見て、そこはあえてつかないのだ、そこまでの寛大さを持っておられますが、しかしわれわれ政府としては、企業家の自覚もさることながら、行政府自身が企業家に癒着して、それとともに便宜をはかるという生産者本位の行政をしているというような批判を受けるようなことでは、公害問題なぞ解決はできるわけがございません。そういうような意味で、これはよほどわれわれも政府部内を、業界との関係についても正しい姿勢をとること、これはもちろん大臣そのものからしかるべきだと思いますが、そういうことで、御指摘になりましたような点について、さらにさらにわれわれも姿勢を正していく、そして思いを新たにして公害問題と取り組みたい、かように思います。
  97. 大久保直彦

    大久保(直)委員 終わります。
  98. 中野四郎

    中野委員長 これにて大久保君の質疑は終了いたしました。  午後は一時より再開することとし、この際、暫時休憩をいたします。     午前十一時五十八分休憩      ————◇—————     午後一時五分開議
  99. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  総括質疑を続行いたします。楢崎弥之助君。
  100. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はまず、沖繩の毒ガス撤去の問題についてお伺いしたいわけです。私もあの撤去の際に党から派遣されて沖繩に参り、つぶさに見てきたわけであります。以下、私は私が調査した結果に基づきまして、お伺いをしたいと思うわけであります。  そこでまず、本土から派遣をされました参考人は、委員長、お見えでしょうか。
  101. 中野四郎

    中野委員長 両君とも出席をしております。
  102. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは私がいまから毒ガス問題についてお尋ねする点につき、どなたがお答えなさってもけっこうですからお願いをします。  そこで、まず私は特に総理に考えておいていただきたいのは、一月十一日の日に輸送阻止の騒ぎが起こりました。本土側から見ると早く撤去せよと言いながら、今度は輸送する段になると阻止するとは何事か、私はこういう常識的な考え方がやはりあったろうと思うのです。しかし決してそうではないのですね。あの毒ガス問題というのは、安全ということが一番大事なんですね。だからもし少しでも安全に輸送されるその保証がなかったら、これは輸送をとりやめてくれ、安全対策ができるまで待つ、こうなると思うのですよ。だから決して矛盾しないということです。とにかく早期に安全、完全、これを全部望んでいるんですね。そこをまずよく理解をしておっていただきたいと思うわけです。まず一番にお伺いしますのは、沖繩で毒ガスは砲弾化されておるやつがあるんですか。もしくはアメリカ本土で砲弾化されたものを持ってきておるのですか。全部そうなんですか。
  103. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私が聞きました範囲では砲弾化されて砲弾の中に入っているのもございますし、それからその時期になって液体を注入するのもある、そういうふうに聞いております。
  104. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 全部が砲弾化されて持ってこられていないのですね。ガスをそのまま持っていって、そしてあとで砲弾化するやつもある、これをまず知っておいていただきたい。  それからアメリカ軍が公表しております毒ガス量は一万三千トン、これは砲弾化されたものの量なのですか、それともガス自体の量なのですか。
  105. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私が聞いている範囲では、容器を含んだものであると承知しております。
  106. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは確実でありましょうか。いまさっきお答えがあったとおりに砲弾化されていないやつもあるのです。お答えになったとおりです。だからこの一万三千トンといっておりますけれども、はたしてこれは砲弾化されたものの量なのか、あるいはまだ砲弾化されないままの毒ガス量も含んだ量なのか、これは明確でないのです。いまだかつて明確にされたことはないと私は思いますが、反論がございましたら……。
  107. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それは砲弾及び要するに鉄片等も含んでおるものである、このように承知しております。
  108. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは砲弾化されない毒ガス量プラスの砲弾化された毒ガス量なのですか。それとも砲弾化されたものが一万三千トンで、ではそのほかに砲弾化されない毒ガスがあるということなのですね。私はそう思うのですが、そのように承っておっていいですね、いまの御答弁は。
  109. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 要するに全部を包含して一万三千トンであると承知しております。
  110. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それで、いまの御答弁はあいまいなんですね。全部を包含してとは、その弾丸の量もそれから液体の量もという意味のようでありますが、それを保証するものはありますか。私の調べたときには、公表されたものはないのですね。そういうふうに具体的に公表されたものはない。何かそれを保証するものございましょうか。
  111. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私のほうの毒ガス専門官から聞いた話では、普通何万トンというときにはそういう概念でまとめて言っている、こういうふうに聞いておるわけです。
  112. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまの御答弁でわかりますとおり、これは概念とかそういうふうに思われるというだけで、確証はありません。もし本土派遣の調査団の方が知られておる問題がありましたら、遠慮なしにひとつ出てきていただきたいと思うのです。出てこられないならば、御存じないものとして先へ進めます。  それから、今度運ばれたやつば大体百五十五ミリマスタードりゅう弾砲、これは一つのたまの重さ及びその中に含まれておるマスタードの量が、私が見ただけでもおのおの発表が違うのですね。本土派遣団の発表では、弾体全部の重さは発表されていない。ただ、毒ガスの充てんは十一・七ポンドと発表されておる。それから琉球政府が招聘した団は、弾体が九十六・二八ポンド、ガス量は十ポンド。ところが、ヘイズ少将が一月十二日午後三時、つまり二日延期されて十三日に運ぶ前の日に内外の記者団と会って発表したのは百五十五ミリ弾、弾体は約千ポンド、したがって、毒ガス量は九・七ポンド、充てんされたマスタードは九・七ポンドだから、マスタードガスは弾体のうちの一%にすぎない、こう発表しておるのですね。どれが一体正しいのでしょうか。
  113. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 政府委員をしてわかる範囲内において答弁せしめます。
  114. 中野四郎

    中野委員長 田辺君わかりますか。
  115. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間がもったいないのですからね。出てきていただいてけっこうですが。私はなぜこれを言うかというと、いままでのマスコミベースでは、沖繩に一万三千トンの毒ガスがあるんだ、そしてこの前に、一月十三日に百五十トン撤去されたんだ、みんなそう思っておるのですね。実はそうじゃないのです。もしヘイズ少将の発表どおりだったら、一月十三日に撤去されたのは一万三千トンのうちわずかに一・五トンになります。マスタードの量は百五十トンじゃないのです。それから、琉球政府発表でいくと、砲弾のうちのマスタード量は十分の一ですから、つまり一万三千トンのうち十五トン運ばれた、こうなります。もしヘイズ少将の言うとおりだったら、一万三千トンのうちたったの一・五トンしか運ばれていないのです。何の意味がありますか、これは。全く政治的な意味しかない。ほとんど意味がない。だから問題は、残ったものをどうするか、いよいよこうなるのです。だから、その辺をはっきりしてもらいたいと思うのです。
  116. 田辺博通

    ○田辺政府委員 お答えいたします。  こまかい各本の具体的な資料はいま手持ちがございませんが、百五十トンと申しますのは弾体を含めての重さでございます。私が記憶にございますのは、当時専門家の方が調べましたときには約一割がそのガスの内容である、こういうぐあいに聞いております。
  117. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、ヘイズ少将発表のやっと違うわけですね。ヘイズ少将の内外記者団への発表でいくと、これは「沖繩タイムス」に詳しく載っておるのですが、千ポンド中九・七ポンド、つまり一%にしかすぎない。いまあなたのあれだと、一割だから一〇%ですね。この辺はひとつ明確に調べてください。明確に、もう一度、米軍側に対して。これをお願いしておきます。よろしゅうございましょうか。
  118. 田辺博通

    ○田辺政府委員 専門家の方がその具体的な数字をお持ちであると思います。私が聞きましたのは、約一割というのがその内容であるというぐあいにヘイズ少将からも聞いております。
  119. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃあなたは確かめないというわけですか。——確かめないというわけですか。
  120. 田辺博通

    ○田辺政府委員 具体的な数字を専門家に聞きまして、それを詳細にお答えいたしたいと思います。
  121. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 専門家に聞く必要ないのです。ヘイズ少将に聞けばいいのです。ヘイズ少将が言っていることを私は言っているのですから。
  122. 田辺博通

    ○田辺政府委員 ヘイズ少将が一%と言ったということを私聞いておりませんので、それは外務省に問い合わせましてその真相をただしたいと思います。
  123. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それじゃ調べていただきたいと思います。  それから沖繩のCBの、つまり化学兵器の貯蔵庫はどのぐらいあって、どのぐらいの収容能力があるか。
  124. 中野四郎

    中野委員長 わかりますか、質問の趣旨が。
  125. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 おわかりにならなかったら、わからないとおっしゃってくださいね。長々要りませんから、前後は。  知花を中心とする毒ガス貯蔵庫はどのくらいあって、そしてどのくらいの収容能力があるかわかりますか。
  126. 田辺博通

    ○田辺政府委員 これは今回の調査目的には入っておりませんで、全貯蔵庫の収容能力については調査をいたしておりません。
  127. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が調査したところによると、これは普通イーグルといいます。四十一が既設のもの、新設中のもの七つ、計四十八。そして新設中のものは、この予算委員会が終わりましたら質問が終わったとき言っていいのですが、新設中のものはいままでの既設のものと形が違うのですね。いままでの既設のものは、半分地下に入ったやつだった。半地下方式だった。いまつくられておるのは、上に大きい水槽があるのです。これは水槽というよりも池みたいなもの。そしてその下に地下的につくられております。そして一個の収容能力大体九千トン。たいした数です。そうするとどのぐらいの収容能力があるか答えが出てまいります。だから、私はさかのぼって言うのは、一万三千トンしかないというのはおかしいというのです。だから、私ども調査したところによれば、大体まあ耐用年数が来て運ばなければいかぬやつが一万三千トンぐらいだ。これは一九五〇年ないし五一年につくられた分のはずであります。それで別に一万三千トンぐらい致死量の分があるはずだ。そしてなおボンベのまま、さっき中曽根長官がちょっと触れられたように、まだ砲弾化されていないボンベのまま置かれているのが約三万トンあるとわれわれは見ております。したがって、そういう点について私は御調査をいただきたいと思うのです。御調査をいただきたい。  それから、一万三千トンといわれておる毒ガスの種類が全部わかっておりますか。
  128. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 毒ガスの問題については、私といたしましてもできる限りその実情をはっきり掌握をして、すみやかに安全に撤去することに全力をあげてまいっております。ただ、ただいままだ私自身といたしましても、十分実情を掌握しかねておるところもございますから、的確にお答えできないこと、あるいは専門的に私では十分の知識のないところもございますが、先ほど来の御質疑に対して私は常識的にお答えいたしますと、一万三千トンというのは、容器を含めての全量である、このすべてについて撤去をするということが日米間の外交チャンネルを通しての話し合いでございます。  それから一万三千トンの内容について、たとえばGB、VXがどういう区分けになるかということにつきましては、ただいま私としては詳細に承知しておりません。
  129. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 結局いまのお話は想像でして、一万三千トンが全部砲弾になっているやつだというのは想像でして、はっきりしていない。しかも種類はいまわかっていないというお話であります。  そこで、次に移りますが、これから致死性を運ぶようになる。致死性のいわゆる一番あぶない殺人毒ガスを運ぶことになります。この致死性の兵器は、砲弾化もされておる分があるとする、これはそのまま運んでいいのかどうか。無毒化しないで運んでいいのかどうか、この辺はどう思われますか。
  130. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま申し上げましたように、私も専門的に十分な知識がございませんし、まだ十分な、同時に説明の聞き漏れているところもありますが、ただいままで私の承知いたしておりますところは、現状のままの姿で安全性を確保してすみやかに撤去をするということについて、十分米側といたしましても確信をもってその準備に当たっている、かような段階でございます。
  131. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 結局何もおわかりになっていないわけですね。  それで、先ほど申し上げたのに追加しますと、新しくつくられつつある毒ガス貯蔵庫は、いままではディマロという会社が下請けをしておった。ところが今日では軍が直接やっております。念のために申し上げておきます。  それから一番今度でも問題になったのは、いろいろ安全の基準があると思うのですが、一番住民が知りたいのは、万一の場合はどういう対策をとったらいいんだろうか、この住民に対する避難対策、これが一番の焦点であったわけですね。この住民に対する避難対策を何か示す米側の安全基準について、外務省は把握しておられましょうか、具体的に。なかったらないでいいんですが……。
  132. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これはまず第一回の移送の際に、御承知のとおりにああいう非常な深刻な沖繩の県民の方々の心情をわが心としながら、われわれといたしまして、政府としてできるだけの努力をいたしたつもりでございますが、まず第一に公開の原則ということ、そして日中やりまして、専門家を政府から派遣をいたしまして、そういうところから始まりまして、移送の経路その他についても、十分の、できるだけのことをやったつもりでございますが、さらに今後におきましても、沖繩の県民の方々のお気持ちを十分受け入れて、すみやかに安全で移送できるように専門的にもあらゆる知恵をしぼって対処したい、こういう姿勢で現におるわけであります。またそういうことでアメリカ側の協力を求めている、これは御承知のとおりでございます。
  133. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その種のことは、いままでもう山中長官も御存じのとおり再三言われてきておるのですよ。具体的にどうかということを知りたいのですよ、基準があるんじゃないかということを、沖繩の人は。ところがアメリカには、それらしいものがあるんです。つまり沖繩からアメリカに持っていくという問題が起こったときに、さっそく騒がれた、ワシントン州あるいはアラスカあるいはハワイで。そのときにワシントン州からアメリカの上院に出された安全基準があるのです、こういうことを守るかといって。それで、これはひょっとしたら間違いかもしれませんが、五月十三日ごろワシントン州から出されております、上院に。まだ可決をされておりませんから、法律化はできてないかもしれない。しかしこれは外務大臣、アメリカの軍医総監にお確めになればわかります。それでその中にたくさんありますけれども、避難対策の分だけ披露しておきますと、輸送上の万一の事故から地域住民を安全に守るため、輸送期間中その地域を中心にして半径最高四十八キロメート火最小八キロメートル以内の住民を避難させる、こうなっておるんですね、それには。そうすると、これから先はもう一番あぶない毒ガスが来るのですから、この辺の基準というものを、一応アメリカがどう考えておるのだということを、やはり日本国民の前に明確にすべきだと思うのです。これは確かめて御報告をいただきたい。  それからCB兵器の実験、貯蔵、輸送を厳重に制限するアメリカ上院修正案というものが可決されております。これは御存じですか、外務大臣
  134. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 それにお答えいたします前に、アメリカにおける毒ガスの移送あるいはその安全基準等につきましては、アメリカ当局に照会することはもちろんでございますし、独自の立場でアメリカのいろいろの規則あるいは審議の経過等はできる限り政府としても調べております。  ただいま御質疑の第一点がございましたが、これはまだアメリカとしても正式の安全基準にはなっておりません。たとえば輸送の経路から八キロ先とかあるいは四十八キロ先とかいうようなことも案としては出ておりますけれども、安全基準として採用されておりません。  それから安全基準について、同時に安全移送について詳しくお話しいたしますると長くなりますけれども沖繩の場合におきましては、少なくとも現にアメリカにおいて実行されておること、たとえばオレゴン州とかその他の州においてかつて行なわれた場合における安全基準とこまかく照合してみて、そしてこれはアメリカのヘイズ少将以下と日本政府の専門家が打ち合わせましたり、あるいはそのブリーフィングを聞きましたときの主たる焦点でございますが、そういう点につきまして、少なくともアメリカにおいて現に行なわれた安全保障よりももっと安全であるようにということで先般の百五十トンの移送というものが、さような準備と計画のもとに行なわれた、これが現実の姿でございますし、また今後におきましても、先ほど申しましたように、公開の原則で、かような点につきましては、政府としてもできるだけ詳細にわたってお知らせをするようにしておりますし、また沖繩におきましても、わかりやすくこれをパンフレット等に作成をして、所在の、関係の県民の方々にも十分お配りをし、あるいは部落会議、その他を活用して詳細に御説明をしたことも御承知のとおりでありますが、なおその経験を通し、その後もいろいろの御心配のことや、また楢崎委員が、これからもるるお述べいただくと思いますが、そういう点を十分取り入れまして、絶対に安全で、かつすみやかに移送することに全力をあげたいと思います。
  135. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 長々言われましたが、私の質問にはちっとも答えていないでしょう。私が聞いておるのは、そういうことを聞いておるんじゃないんですよ。いいですか、もう一ぺん言いますが、CB兵器の実験、貯蔵、輸送を厳重に制限する米上院の修正案を御存じですか、それだけしか聞いていない。知っておるなら知っておる、知らないなら知らないとおっしゃればいい。何を言っておるのですか、あなた。
  136. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まず第一点の、安全輸送についてキロ数をあげて上院のこともお尋ねになりました一点ですから、それは私も承知しておりますからお答えをいたしました。  第二点については、つまばらかに承知しておりません。
  137. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうおっしゃればいいんですよ、知らないなら知らないとおっしゃれば。私は提案しようと思っているのですから、もしおわかりになっていない点があれば。  一九六九年八月十一日、アメリカ上院において、いま申し上げた修正案は賛成九十一、反対ゼロで通っているんですね。だから、いろいろな考え方があるんですよ。その中にいま関係する部分、長いですから申し上げますと、こういうことが入っております。「一、海外貯蔵については、先立って貯蔵される外国と協議する。」「一、処理する致死性兵器は輸送前に無毒化する。」いいですか、「無毒化する。」です。「一、外国で移動、実験または開発する場合は米国の国際的責任を十分考慮する。」ちょっと関係する部分だけ拾ってみました。いいですか、無毒化するとはどういうことかというと、弾丸を安全に運ぶという意味じゃないのですよ。弾丸化されておるものがあったら、これからVXならVX、GBならGB、これの砲弾を運ぶときにはあらかじめ無毒化して輸送しなければならないという法律ですよ。おわかりですか。  そこで、私は現状を申し上げたいのです、総理沖繩に持ち込まれたことについて、幾ら潜在主権しかないとはいえ、琉球政府もあることだし、日本政府もある。沖繩にいつ持ち込まれて、どういうように貯蔵されておる、こういうことをアメリカ側は琉球政府日本政府に協議したことがありますか。ないでしょう。致死性兵器の輸送は、無毒化しないと輸送されないのです。日本政府あるいは琉球政府はこれを守らせますか。それから移動の際に、アメリカは国際的な責任を十分明らかにする。  こういう修正案の内容を考えると、私に言わせると十分守っていない。だから、沖繩だからアメリカの法律は守らぬでいいのか。ここなんです、問題は。アメリカの本土の国民沖繩の住民は同じ人間でありながら、毒ガスの輸送についてこんなに無神経にあっちへやったり、持ってきたり出したりできるか、ここなんですよ、私が申し上げたいのは。この実態を知ってもらいたいということが一つなんです。  それからもう一つ申し上げたいのです。有名な二六七化学中隊、この中隊の近所に住んでおるアメリカの家族、これにはあらかじめ毒ガスマスクあるいは解毒剤が配られておるのを御存じですか。そういう情報を持っておられますか、外務大臣
  138. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 そういううわさは私も聞きましたが、事実確認されておりません。  それから、先ほど上院云々のお話もございましたが、これは前に、楢崎委員のお手元に提出してあると思いますけれでも、グラベル法の修正案その他に関連して、外国に持ち出すときには無毒化しなければならない、そういう提はされておりますが、さらにそれに対する資金の拠出をどうするというようないろいろの決議や修正案はございますけれども、これは承知しておりますが、現実に具体化されてはおりません。したがって、政府としてはかねがねの米側との打ち合わせのとおり、現状のままにおいて安全に移送ができる、科学的に技術的に。したがって、その安全のもとに即時に撤去をするということですみやかに処置をしたい。そして沖繩の方にも御安心を願いたい、かように考えておるわけでございます。
  139. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 安全に運びたい、安全を期したいということはもう何万べん言われておりますか。それでもなお不安である。具体的なものがわからないから不安なんですよ。だから、私はいま具体的なものを言っておるわけですよ。時間も限られておりますから、今後のためになるたけたくさんのことを明らかにしたいのです。  それで、配られておるのですね。その知花の近所に住んでおるアメリカの家族、これは大体知花基地から一キロくらい離れたところの米軍家族約百六十六世帯、これは三年前から緊急用と称してガスマスクが配られております。また、あまり家族を刺激しないために何げなくただ溶剤ということで解毒剤が配られております。二個ないし三個配られておる。非常にこまかい思いやりがあるわけですね、アメリカの家族に対しては。ところが、いま非常に不安に思っておるあの近所の住民は、一番近いところで約五百メートルです。アメリカの家族のほうは一キロ。そこに住んでおる日本人の家庭には何の音さたもないわけですね。それで過去二、三回現実に事故が起こっておる。そしてサトウキビが枯れたんで、これは毒ガスの事故ですよ、アメリカは補償しております。もっともサトウキビ以外は補償しておりませんけれども、そういう実態なんですね。  それから、今度の輸送コース沿道にある外人住宅の一部あるいは米軍基地、つまり一番最初輸送するという一月十一日のごの輸送作業前夜ですから、十日です。部隊ぐるみですでに米軍が避難をしております。そういう情報を御存じですか。
  140. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これも情報として流れましたことは承知しておりますけれども、これは事実が違うようでございます。
  141. 中野四郎

    中野委員長 楢崎君、先ほどのこまかい数字について田辺調整部長から報告したいと言いますが、後ほどでよろしいですか。
  142. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 後ほどでよろしゅうございます。  どういう名目か知りませんが、部隊が動いておるのですね。輸送コースの間近にあるキャンプというとヘーグ、これは海兵隊、バトラー、海兵隊、コートニー、これも海兵隊、キンザー、これは海軍です。それから一九六陸軍弾薬処理隊、憲兵隊の軍用犬も含まれております。約十の部隊が駐とんしておるわけですが、これが十日から十二日にかけて保安要員なりあるいは中隊本部の重要な部分だけ残して、部隊ぐるみで三千ないし四千の人員がいなくなった。だから十一日の未明、私もおりましたけれども、私が帰ったあとの事件でしたが、過激学生が二六七中隊に乱入した。いなかったからたやすく乱入されたわけです。沖繩の人はこういう事態を知っておるのですね。米軍の家族にはマスクも配られておる。あるいは部隊は避難しておる。だから沖繩の住民はあれほど騒ぐのですよ。あれほど不安がるのです。だから、この辺はひとつ十分御調査をしていただきたい。私がきょうお伺いした点で満足な御回答は一つもないのですね、明らかにされておる点は。全然わかってないのです。だから、私がこういう点はどうだろうかと考えるくらいだから、当然政府としても、きょう私が申し上げた点あるいはほかの点も十分早く私は調査してもらいたい。そこで私がきょう申し上げた点について、後ほどでいいからひとつ調査結果をお知らせいただきたい。  総理の御見解をお伺いしておきたいと思います。
  143. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほど申し上げましたが、情報としていろいろ伝えられていることは私ども承知をしておるのですが、同時に、非常に大切なことでありますから、時を移さずその情報の真偽はできる限り直接政府としても調査をしたわけでございます。ですから、その情報が真相ならばこれはたいへんなことでありましょうが、政府として調べて、政府としての心証を受けていることは、いま最後におあげになった事例もそうでございますが、アメリカの駐留の部隊の名前も人数もおあげになりましたが、これは、その時間に兵舎からあるところへ演習に行ったり、その他の行動をしていることは事実でございますが、この安全移送とは何らの関係がないということをはっきり明白にいたすことができたような次第でございます。  それから、先ほど来いろいろおあげになっておりますようなことも、政府といたしましては情報としては承知しておりますが、その真偽については、その真相をはっきり確かめておるような次第でございます。
  144. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま外務大臣からお答えしたとおりでありますが、どうも情報程度、だいぶ楢崎君のお話と食い違っておるようですが、さらに実情、実地について十分調査する、これが大事だろうと思います。そのことをもう一度確認する、こういう意味調査いたします。
  145. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 移送があるからよそに行きましたなんて言いはしませんよ。いなかったという事実が大事なんです。それを私は申し上げておるのです。  そこで、次に移りたいと思います。沖繩の返還の問題ですが、返還協定の形式はどうなるかまだわからぬでしょう。その際に協定の付属書のような形で基地の使用問題を扱うというようなことが形式の問題としてありますか、考えられますか。
  146. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ちょっと御質問の要点がどこにあるのか、私、捕捉できかねましたが、どういうことでございますか。
  147. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 沖繩の返還後の基地の使用条件について、協定の付属文書あたりにそれを盛り込むというようなことがありますかと聞いているのです。
  148. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 返還協定の作成についてはいま鋭意努力いたしておりますが、大もとがきまっております。というのは、基地についても安保条約とその関連取りきめが何らの変更なしに適用されるわけですから、そのワク内で協定づくりをいたしておりますから、何か特別な異質なものとか実質が違ったようなものが付加されるというようなことは全然考えておりません。
  149. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 事前協議で、たとえば直接出撃、核の持ち込みでもそうですが、イエスという場合の形式は、これはいうところのゼントルメンズ・アグリーメントあるいは合意議事録、どういう形式でなさいますか。口でただ言うことだけはないですね。何か文書化されるわけですね。
  150. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 事前協議については安保条約第六条に伴う交換公文並びに交換公文の実施についての両国のアンダースタンディングこれらは何らの変更なしに適用されるわけですから、その考え方といいますか、そういうことを必要な限度において、あるいは協定に書くべきかどうかというような点、そういう点がこの返還協定の作成についての一つの主要事項になろうかと思います。どういうふうに書くかというようなことについてまだ検討中でございますけれども、ただいま申しましたように、何か風鈴みたいなものがつくということはないし、それから従来から行なわれておりました協定、交換公文、了解事項というものがそのまま沖繩に適用するという趣旨をはっきりさせる、こういうことに実態はなるわけであります。
  151. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が聞いておることじゃないんですね、そういうことは。どうしてそんなに長々と聞かないことをおっしゃるのですか。私は、事前協議でイエスもありノーもあるとおっしゃるから、イエスの場合はそれは文書化されますかと。言うと長くなるから、おわかりだと思って簡単に言ったのですけれども、たとえばどこどこのやつを何するとか期間とか、あろうと思います。個別にやるとか、その形式はいろいろあろうと思うのです。いずれにしても、何か文書化されるわけだろうと思うが、もしイエスの場合は、それは合意議事録のような形になるのか、あるいは——必ずしも沖繩との関連で言っているのじゃないですよ、一般的に言っている。ゼントルメンズ・アグリーメントのような形でやるのか、その形式を聞いておるのです。
  152. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 よく御承知の上に立っての御質問でありますから、私もどういうふうにお答えしていいのか、御承知のはずだと思いますから、なかなかお答えのしかたがたいへんなんです。そういうイエスの場合はどうだというような協定とかアグリーメントは現にないわけでございまして、これはもうるる御説明しておる、そのとおりのこと……(楢崎委員「そんなことを聞いてないですよ。」と呼ぶ)だから、ないことはないが……
  153. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今後イエスと言ったらどうするか。あるでしょう。全然ないですか。
  154. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 そういう場合もありましょう、事前協議ですから……
  155. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから、その場合はどうしますかと聞いておるのですよ。
  156. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 その場合はどうするかということが、現在もアグリーメントにはないのです。ないものはございませんし、それは沖繩返還につきましても同様のことでございます。
  157. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたは何を言っているのですか。今後イエスと言うことがあるかもしれない。もしイエスと言うようなときにはどういう形式になるのかということを聞いておるのです。あたりまえの話じゃないですか、あなたも。もういいですよ。総理にお伺いします。もういいです、あなたは。  総理は、私の質問に対して、イエスと言うのは内閣の専権事項だとおっしゃいましたね。これは行政権だと思うんです。そこで、もしイエスと言うことが起こったとして、そういう場合は国会にはかる必要はないとあなたはおっしゃいました。岸総理は、国会にも相談するというニュアンスの答弁があった。そこで、もしイエスと言われた際に、それを国会でチェックする形式は一体どういうものが考えられますか。
  158. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま言われるとおり、行政権だ。イエスと申して、それが行政権だといっても、事柄によりますね。そのイエスが、どういうような事態になってイエスを言っているか。それは重大なる場合には国会に話するのは当然です。また、ものによってはこれは国会にお話ししないで行政だけで処理する。御承知おき願いたい。
  159. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、国会がそれをチェックする道は何であろうか、行政権に対して。その際に、法的にはその交換公文の範囲内でやられる行為ですから、もしやるとしたら決議しかないであろう、もしチェックする方法があるとしたら。あるいは内閣不信任案等が考えられるが、いずれにしても政治的に拘束する手だてはあるかもしれないが、国会でそれを有権的にチェックする手だてはないのでしょう、イエスと言うその行政行為に対して。どうでしょうか。
  160. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 有権的だというような方法は——国会の了承を必要とする場合があるだろうと思います。そういうときの取りつけの問題だろう、かように思います。
  161. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 たいへん重要な御答弁だと思いますが、イエスの場合も国会にやはり相談しなければならない事態もあるだろうということで承っておきます。  それから次に沖繩の核抜きの問題でありますが、核をもし持ち込む、つまり装備における重要な変更でありますが、この際に核弾頭及び中距離ミサイル持ち込み並びにそれらの基地の建設ということが大体の統一見解のようであります そういうときは事前協議にかけなくちゃいけない。その基地の建設という中に——これは沖繩を私は頭に置いて言っているんです。沖繩の核貯蔵庫が含まれますか、総理大臣。——総理大臣でいいです。総理大臣のほうがおわかりが早いから。
  162. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 外務大臣のほうが私はいいと思いますが、特に御指名ですからお答えいたします。  いま沖繩を含んでと、こういうことですが、沖繩と本土とこれは区別はないのです。したがって、本土並みに沖繩は返還される、こういうことが前提として考えられる。ただ違っておるのは、ただいま沖繩はアメリカの施政権下にある。そのために、本土にはないが沖繩にはあるだろうというものが、先ほど言われるような、毒ガス兵器はあるじゃないか、こういうような問題があるわけですね。だから、いまの状態じゃなしに、沖繩日本に返ってくればそのときには祖国並みに扱われる、本土並みに扱われる、そういう立場でものごとを考えていかなきゃならぬ、かように私は思っております。
  163. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、本土には核はないということになっておるから核貯蔵庫もないが、沖繩にはあるわけです、核貯蔵庫は。そうすると、核抜きというものの中には核弾頭ももちろん、核兵器も含まれるが、核貯蔵庫も核抜きの中に含まれますかということを私は聞いておるんです。
  164. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 返還のときに核を撤去する、それからその後におきましては本土と全く同じに事前協議の対象になって、政府といたしましてはこれはノーという態度であることは明白でございますから、その中には貯蔵ということも当然入る、私はかように解すべきものと思います。
  165. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは明快な御答弁で私は満足いたしました。核の貯蔵庫も撤去する、これははっきりしておきたいと思うのですね。これは目に見えますから、ちゃんと沖繩ではわかるのですね。これははっきりしておきたいと思います。  そこで総理、七二年返還時には核抜きになります。もし再持ち込みの要請があった際に総理は、あるいは外務大臣も断わる、非核三原則で断わるという態度をずっと承ってまいりました。ところが、いいですか、核相談をするという行為、総理にはあるかもしれない。そのときまあノーと言われるのでしょうが、ないとはいえない、相談だけは。七二年以降ですよ、再持ち込みの問題。このときに総理には御相談があるかもしれないが、たとえばこの核の問題で相談を受けたけれどもノーと言ったとか、あるいは核持ち込みの相談を受けたというそういう事実すら日本総理大臣にはそれを公表する権限はないですね。
  166. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ものによっては、相談した事柄は一々発表する権限のないものもあります。しかし、いまの非核三原則、これは何度も申し上げておるように、私は今日も変わっておりません。そのことだけはっきり申し上げておきます。
  167. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それを踏まえてお聞きしているのですよ。だから今後の状態ですから、どういう事態が起こるかもわからない。アメリカとしてはもう一ぺん持ち込みたいという問題が起こらないとは言えないのですから。だからそういうときに、私がお伺いしているのは、アメリカのマクホン法もこれあり、日本には刑特法もこれあり、アメリカの大統領が発表する以外、あるいはアメリカの大統領が佐藤総理に発表してよろしいという以外に、その種の核相談を受けたとか、受けたけれども非核三原則でノーと言ったとか、そういう事実を公表することはできないんじゃないですかと言っているのです。
  168. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりです。
  169. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はここにマクマホン法を持っておりますが、この百四十二条なりあるいは百四十四条b項なりで、これはできないんですね。だからわが社会党は、一切その後どういうことが行なわれても公表できないんだから、これを称してわれわれは核隠しといっておるのですよ、この事実を称して。そうなるのです。法的になるのですよ。アメリカのマクマホン法、つまり原子力法、一九五四年。それをはっきりしておきたい。結局核問題については一切アメリカ大統領が発表しない限りはできない、こういうことです。それを確認されましたからよろしゅうございます。
  170. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 さっきの答弁は、別に変えるわけじゃありません。それはもうこちらのほうで話し合いの内容を外へ出すことはございません。  ただもう一つ、先ほどの話で誤解があると困りますが、行政府が、行政府の専権だが国会に相談を持ちかけるときがあるだろう、国会の議決を必要とする場合があるだろう、それは一体どういう場合だ、こういう場合に、これはやっぱり戦争ということを考えると、そういうような重大事案にまで発展する危険がある、こういう場合には当然行政府といえども国会の意見を聞く、こういう意味で先ほどのような話をした、かように御理解いただきたいと思います。
  171. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはたいへんけっこうです。私はそうあるべきだと思います。たとえ政府の専権事項であっても、事が重大なときには、判断すれば国会に承認を求める。これは初めてそういうことを聞いたので安心をいたしました。  そこで、次に中国問題について一点だけお伺いしておきます。わが党の石橋書記長も、中国問題を聞いてももうどうしようもないということを言っておるようですが、どうしようもあるかどうか、ちょっと一点だけ聞いておきます。  これは簡単でけっこうですが、いよいよ政府は七月一日から特恵関税を始めますね。そこでこれと関連して、宮澤通産大臣は一月十二日でございましたか閣議後の記者会見で、中国が日本に特恵を適用してほしいと意思表示をするならば弾力的な適用を考えてもいいというようにとれる記事でございました。そこでこれはその真意をひとつお伺いしておきたいと思うのです。
  172. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 特恵につきましては、まだ法律案を閣議決定いたしておりませんので、私の申しましたことは私の意見として申したわけでございますが、御承知のように、この問題は国連の貿易開発会議、UNCTADで長年にわたりましていわゆる発展途上国が強く希望をいたし、先進国側が最後にそれに応諾をするという形ででき上がったものでございます。したがいまして、この実施につきましては、発展途上国側の希望というもの、それについての先進国側の応諾というもの、これがやはり原則になる、これは経緯から考えまして当然でございます。ただ、私考えますのに、この特恵は今後十年続くという予定でございますし、わが国のこれからのつとめというものが、なるべく関税というものは安く、そして広く適用していくというのが基本的な姿勢であろう、こう考えましたので、先ほどのは原則でございますけれども、そういう将来弾力的に運営ができるような規定も置いておくことが賢明ではないか、こういう意味のことを申したわけでございます。
  173. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、これは大蔵委員会にかかるのだと思うのですけれども、四十六年度関税率改正案、この中で対中国関税格差是正の項目がある。そしてケネディラウンドとの間に格差のついておる五十二品目のうちの三十品目は是正をする。二十二品目残るわけですね。これは全部是正するわけにいかぬのですかね。どうでしょうか。こういう点を佐藤総理、具体的にお考えになりませんか。つまり対中国関税の差別を撤廃の方向に努力する、こういう点佐藤総理の御見解を聞いておきたいと思うのです。
  174. 福田赳夫

    福田国務大臣 関税につきましては、中国との間にはいま国交は開かれてはおりませんけれども、しかし中国の近隣諸国とわが国との関係、この関係とバランスを失するというようなことがあることは好ましくない、こういうふうに考えまして、一般関税率の引き下げ、あるいはケネディラウンドにおける引き下げ、そういうような場合におきましては、常に中国の立場、そういうものを考えながらやっております。  それからただいま宮澤大臣からも話がありましたが、これは関税暫定措置法といたしまして近く御提案を申し上げますが、その中において、中国におきまして特恵関税を適用してもらいたいといって手をあげる、こういうような事態がありますれば、ひとつ考えてみたい、こういうふうに思いまして、法的にその座を設けるというか、道を開く、そういう用意までしておるのです。
  175. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 やや前向きの発言でございますが、つまり中国がいまのところ国連に加盟しておらぬから、代表権のあれになっておらないからだ。しかし、これは関税自主権の問題で、日本の国内の法的な措置で同じような、差別のないような方向た持っていくべきではないか、いまの大臣のことばはそういう方向に考えるというふうに承りましたが、応諾がありましたので……。  それで一点お伺いをしておきたいのですが、なぜこんなふうに申し上げるかというと、これは対中国貿易の関係でいうと、もし中国を除いて、もちろん中国は除かれるわけですけれども、特恵が実施されたら、中国よりの輸入が六九年を基準にした場合、有税品目が三百三十七品目、これは有税品の七〇%に当たります。金額では百四十六億七千万強、これは有税品の二六%に当たる。これが特恵関税との間に格差がまた出てくることになるわけですね。それで、これはぜひ格差をなくする方向に行きたい。そこで問題になるのは、一番この問題で関係が深いのは香港です。香港に対してはどのように特恵をお考えでしょうか。
  176. 福田赳夫

    福田国務大臣 香港につきましても、香港から正式に特恵関税の適用方の要請がありますれば、これに対してもわが方といたしましては特恵を与え得るような法制的準備をいたしたい、かように考えております。
  177. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 香港に対する場合、品目あるいは税率というものはどのようなものか、いま明らかにできましょうか。
  178. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 楢崎委員は当然御承知のことでございますけれども、ケネディラウンドは先進国間でやりとりをいたしまして、ある意味で無差別なものでございましたので、均てんということは非常にやさしいのでございますが、特恵関税はそうでございませんために、先進国には与えないというたてまえでございますので、一般的にならないという違いがあるわけでございます。香港につきまして、いま大蔵大臣の言われたとおりの法的な準備をいたしますが、実はわが国で特恵の例外品目などを考えましたときに、香港ということを必ずしもはっきりと考えておりませんでした関係もございまして、多少品物の数あるいは品目等々につきまして、他と異なる扱いをする必要があるかと思っておりますけれども、それにつきましてはまだ決定をいたしておりません。
  179. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先に進みたいと思います。  私はいま党の指示によって防衛を担当しております。この予算委員会で審議をするときに、やはりいろいろ予算と関連して審議したいのです。ところがわれわれが要求すると出さないのですね。たとえば防衛庁から提出された昭和四十六年度の予算概算説明資料というものがあります。大蔵省に出しているから、わかりやすく書いてあるはずです。それを国会の予算委員であるわれわれもいただきたいと言ったら、それはそのまま出せないというのです。この私どもには出せないという、そういう防衛庁から出した説明資料を大蔵省で見て検討しておる人数は、一体何人ですか。何人の人がそれを見ているのですか。
  180. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 防衛係の人員は、いま十四名でやっておりますが、それに対して次長あるいは私まで含めれば、十六名ぐらいがやっております。
  181. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 御案内のとおり、当委員会は有能な中野委員長のもとにこれだけの委員がおるのです。われわれはこれを審議しなければならない義務がある。責任がある。どうしてわれわれに出せないのです。これは防衛庁の取り扱いでは、いわゆる秘密ランクは何になっているのでしょう。
  182. 福田赳夫

    福田国務大臣 楢崎さんが概算要求書、つまり各省から大蔵省に対して概算を要求します。それを大蔵省では調査いたしまして、正式の概算というものを決定するわけでございますが、その各省からの概算要求書を出せ、こういう御意思でありますれば、これはさようなわけにはまいらないのです。つまり、これは政府内部の予算折衝の勝手元というか、お台所の作業でありまして、これをもとにして御議論を願うということになると、いろいろ誤解なんかも生ずるというおそれもありますので、これは出さないことにいたしております。そうでなくて、楢崎さんがその概算を要求するときに、防衛庁なり建設省でいろいろ資料を添えて出します。その資料を提出せよ、こういうようなお話でありますれば、それは秘密にわたらないもの等につきましては、お求めに応じて提出することは可能でございます。
  183. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 とにかく私が予算委員会を迎えるにあたって、何回もやりとりしたんです。説明資料というのはわかりしわかりやすいのですよ。私は去年のものは持っておるのです。これは時間があればあとでやりますけれども、秘密なことは何にもないのです。防衛庁がどういう方向に向かっておるのか、どういう兵器をなぜほしがっておるのか、これは国民も知りたいところです。もう五兆八千億の四次防が待っておるのですから。それで、要求すれば御説明になりますなら——そうでしょう、総理もそううなずかれましたから。それでは私はいまここで申し上げるから、ひとつ明らかにしてもらいたいと思うのですね。つまり、各年度の、たとえば四十六年度の防衛庁予算、これは大きな防衛力増強の一里塚なんですね、一こまなんです。だからそれだけを審議しようといったって、ほんとうの審議は実はできないのです。だから、できれば全過程を明らかにしてもらって、その中においてこの四十六年度の防衛予算の位置づけは一体どうなっておるのか。これは私は、だれに聞いても楢崎の言うことはまともなことだ、こうなるんだと思うのです。そうしないと、ほんの一こまだけ見せてもらったって、私はまともな審議ができないと思うのです。それで、もうこれほど膨大な防衛費を要するようになった  のですから、ある程度姿をお出しになっていいんじゃないか。いかにもあの警察予備隊から今日の自衛隊に至るまで、既成事実をずっと積み重ねて  こられたし、いいことばではありませんけれども、日陰者といわれた、何かそういう根性がまだ残っておるんではなかろうかと思うのですね。私は、こういう根性は、もし御自身、自信がおありなら、もうこの辺で払拭されて、ひとつ明らかにしてもらいたい。つまり手のうちを知らしてもらいたいと思うのですよ。いよいよ四次防五兆八千億、これをどうするかという決定がこの秋には控えております、ちょうどその本年度の当予算委員会であります。総理佐藤榮作首相、防衛庁長官は中曽根さん、質問しておるのはこの楢崎、ちょっと役不足ですけれども、大体よかとこじゃなかでしょうかね。大体もう舞台はそろっておるんじゃないですか。明らかにしてもらいたい。  そこで私はお伺いしたいのは、一体防衛力の限界はどうか。これは何回も、わが党の成田委員長も質問しましたけれども、これについてはもうこの辺でおおよそのところを言ってもらいたいと私は思うのです。  そこで、小幡防衛事務次官は、昨年の四月二十八日に工業倶楽部に行って演説をされたわけですが、その中で小幡次官はこういうことをおっしゃっているのです。「自分たちが希望しておるものの何割ぐらいまで三次防末まで実現しただろうかという疑問が起こるかもしれない。」それに対して答えておるのですね。「非常に大ざっぱな試算を申しますと、陸と空は大体半分程度までいっておるのではなかろうか。海は三分の一くらいではなかろうか。その足らざるところ相当まだ米軍にたよる。」こういうことを言っております。つまり、ここである程度その計数が出てきておるのですね。大体三次防末で海は三分の一、陸と空は半分程度、それから今度は四次防原案を発表されるときに、中曽根長官なりあるいは防衛庁の幹部は大体四次防達成の段階においては、陸は八〇%、空は七〇%、海は六〇%の体制が整う。あるいは陸は八合目ぐらいまで行っておる、空は七合目ぐらい、あるいは海は六合目。問題は、NHKのある愛宕山の八合目なのか、あるいは富士山の八合目なのか。国民はそれを知りたいわけです。  そこで大体五次防末——この小幡次官の演説の中にあるのですけれども、大体今度は四次防といわずに新防衛計画というものにした、「新」をつけておる、それはおおむね十年ぐらいの中の前半の五年間であると。だから大体十年ぐらいの姿というものはあるわけです。お手のうちが中曽根長官にあろうと思うのですね。おおよそのところを、この機会でございますから、もう明らかにされたらいいんじゃなかろうか。私はぜひそれをお願いしたいと思います。
  184. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 防衛力の整備の大体の目標についての御質問でございますが、われわれもできるだけその線を出しまして国民の皆さんに御理解をしていただくようにしていきたいと思っております。ただ、防衛力という場合には、客観情勢の変化あるいは科学技術の進歩あるいは国内における国民世論の変化等によって変動していくものでありますので、これを数量的に出すということは非常にむずかしいのであります。  それから私たちが一番大切に考えておるのは国民全体の気持ちが那辺にあるかということでありまして、国民のいわゆるナショナルコンセンサスが失なわれれば防衛の大半は失なわれる、そのように考えておりまして、現状からかんがみ、社会保障費あるいは公共事業費あるいは教育、科学研究費等の伸長ぶりをよく見まして、それを妨害しない範囲内において防衛力を漸増していく、こういう基本的観念に立っておるわけであります。大体新防衛力整備計画というものを基本にいたしまして、これが実現した上に次の段階でどの程度さらに漸増していくかということは、かなり節度をもって考えなければならぬ段階ではないかと思います。  そういうことで、次のいわゆる、おっしゃいました十カ年計画につきましては目下検討している最中でございまして、数量的表現は御勘弁願いたいと思うわけであります。
  185. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大体八合目とか七合目とか六合目とか言われましたから、大体私は計算できるのですね。それで私が、その中曽根長官なりあるいは小幡次官が何%とか何合目とか言われた、それに基づいておおよその姿をいってみますから、大体そういうところだかどうか、あとで御意見を聞きたいと思うのです。  まず三次防末の姿をまず明らかにする必要があります。それで、空のほう、航空自衛隊のほうから行きます。いまはF86、これが三隊、F104が七隊、計十隊。これが、三次防——まあ四次防にかかるわけです、食い込みますから、つまり計画された三次防の達成の段階においては、F86がなくなって、F104が六隊、F4EJが四隊。機数をいいますと、F104六隊は約百五十ぐらい、F4E四隊は約八十ぐらい、飛行機全体の数は約九百五十ぐらい。ナイキが、これは発表されていますが、四隊。ホークが四隊。これはおのおのどちらも五隊になるわけですけれども。それからレーダーサイトは二十五。これが大体三次防末の姿ではなかろうか。それから海のほうは十四万五千トンですね。  それから今度は四次防末、これは長官なり次官から出されたパーセンテージを基礎にすると、F4EとF104の隊の数が逆転して、F4Eのほうは六隊、約百五十機。F104が四隊、約百二十から百三十。ナイキが七隊、ホークが八隊、計十五隊。レーダーサイトは沖繩が返ってきますから二十八。それから海のほうは二十四万五千トンばかり。  それで、いよいよ五次防の終末の映像、つまりいま政府で考えられておる、計画されておる十年後の防衛力増強の終末の姿、映像。これについては、三次防が海のほうは年間一万トン建造ベースですが、四次防では二万トン建造ベースを望んでおられるから、大体四次防末では二十四万五千トン。これはその調子でいきますと、海のほうは大体三十五万トン前後。それから五次防に入ると、次のFXの選定が始まる。そしてこの第一線の戦闘機は大体三百機ないし三百五十機。それから、これは隊に直しますと、戦闘機は三次防、四次防は合計十隊でしたが、五次防では十二隊ないし十三隊。それからナイキ、ホーク、これは四次防末は十五隊ですが、大体十七隊ないし十八隊くらいになるのではなかろうか。飛行機の五次防末の総数は大体千機くらいではなかろうか。陸上については、十八万ベースが四次防段階も続くが、五次防段階では二十万前後ではなかろうか。  大体三次防の現在行なわれておる姿それからパーセンテージからかけてみての、これは私の想像でございます。つまり十年後の防衛力終末の映像でございますが、御意見を承ってみたいと思うのです。
  186. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、防衛力の整備につきましては、国内のほかの国策との調和ということが非常に重要なファクターであります。したがって、公共事業費や社会保障費や科学研究費、教育費等がどういうふうに動いていくか。それをやはりよく見なければなりません。それは景気の変動値にもかかることでもあります。それからもう一つは、客観情勢がどういうふうに推移していくか、国際関係の兵器の進歩あるいは日本を取り巻く環境はどういうふうに進歩していくか、そういう度合いにもよります。そういうような点を踏まえてみますと、数量的に表現することははなはだ危険であり、かつまたなかなかできない条件下にあります。  そこで、私が以上のようなそういう非常に変動的な要件が多いということを前提にいたしまして、自分の感触を個人的に申し上げれば、これは国民の御理解をいただくために申し上げてみたいと思うのでありますが、次のようなものではどうであろうか一とうであろうかということで、こうしますというものではありませんが、大体考えておるポイントは個人的には次のように思います。  それは四次防が終わった五次防、つまりこれからの十年後を見た場合に、日本の防衛力というものはどの程度のものになるかという意味の輪郭あるいは努力目標とでもいいますか、まず陸上自衛隊につきましては、いまの十八万体制でいいんではないか、予備自衛官が次の防衛計画で六万人にふえますが、これが大体有事の際の警備力を担当してもらう、あるいは補充の勢力としてなってもらう、そういう構想のもとに六万くらいでいいんではないか。現在の五方面十三個師団十八万体制、大体これでいいんではないか。日本産業構成等を見ましても、人的限果がすでに近づきつつあると思いますので、まずその中で質的充実をつとめる。それから機械化によって省力化を促進していく。そして機動力とそれから集中力を陸上自衛隊内部で高めていく。こういうことがわれわれの次の目標になるのではないか、そういうように思います。  それから航空自衛隊につきましては、御指摘のように、いろいろな機種を集めて大体千機くらい一ではないか、これは御指摘のようだと思います。しかし、機種の内容はいろいろ変わり得ると思いますが、機数にすれば大体そんなことではないか。  それで、航空自衛隊で大事なことは防空能力を非常に高めるということでありまして、要するに壁を強くしておく。そういう意味において、ナイキ、ホークは次の防衛計画で十五隊になりますが、これが少しふえるのではないか。言いかえれば、私は日本の防衛はハリネズミとウサギの長い耳とそれから日米安保体制だ、こういうことを言いましたが、ハリネズミという意味において防空力を強める。それば主としてナイキ、ホークのようなミサイルによる防空力を強める。これが専守防衛に徹した防衛体系になるんではないか、そういうように思いまして、それを少し強める必要があるんではないか。  それから、沖繩が返ってまいりますから、沖繩に関する防衛については、復帰後そのときの時点に立って、情勢を見ながらこれは流動的に将来考えていく必要があるように思います。  それから、われわれが今後防空関係で考えなければならぬのは、支援戦闘機の問題とさらに偵察機の問題であります。米軍が日本におりましたときには、この部面をかなり受け持ち、かつまた偵察方面においてもかなりの機能を持っておりましたが、将来図を考えてみますと、やはり偵察あるいは支援戦闘機の面において日本が多少力を入れていかなければならぬ情勢が出てくるんではないか、このように思います。  それから、海上勢力につきましては、これは非常にデリケートなところでありまして、海上勢力が極端にふえますと、すぐ外国の勢力とこれは接触いたします。昔砲艦外交とかいろいろいわれましたが、その意味において海上勢力の増強についてはわれわれは非常に慎重に対処する必要があると思います。そういうわれわれの心がまえをもちましてこの海上勢力の問題を取り扱ってまいりたいと思いますが、現状はいかんとも微弱でありまして、現在はようやく練習単位ができたという程度であると思います。  それで、三次防の末においては約十七万トン整備される予定です。今日の時点においては十四万トンでありますが、いま築造しているものができますと約十七万トンぐらいになるわけです。そして次の新防衛計画の終年は二十四万トンぐらいで、これが約八万トン程度ふえるという計算になります。われわれとしましては、護衛隊の数、それから潜水部隊、それから高速ミサイル艇部隊、こういう点において漸増を要する部分があるように思います。しかし数量をふやすというよりも機能を充実させる。電子化しあるいはロケット化し、そのような機能を充実させるという面が非常に重要であると思いまして、数量的に見れば、第三次防から新防衛計画に移行する程度の数量が大体見当として目算されるんではないか、このように思います。ともかく海上兵力の増強については外国と接触する部面が出てまいりますので、これはきわめて慎重に考えてやる必要があると思っております。  そのほか、海上の問題については、航空部隊あるいはその他についても、やはり耳となりあるいは対潜掃討という意味においてわれわれとして力を入れなければならぬところはあると思います。当面われわれが特に考えなければならぬのは、日本近海における潜水艦の跳梁を許さない、そういう緯度の力でありまして、南西諸島から沖ノ鳥島、南鳥島をめぐる以内の地域においては相手の潜水艦の跳梁を許さない、そういうぐらいの力を整備していきたい、このように考えておるわけであります。  以上申し上げましたような大体の数は私の個人的な目算でございまして、科学技術や客観情勢や国民世論や景気変動や、その他いろいろな条件によってもちろん変わり得るものである、ということをこの際付言しておきたいと思います。
  187. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いままでその程度でも言われたことはなかったわけですが、やや明らかになったのですけれども、私が申し上げた大体の映像も私は大体間違いないと見ております。  そこで一点つけ加えておきますが、AEW、早期警戒機、これはあれですか、大体二十機弱、四グループないし五グループくらいに分けて、点ということばがつくから四点ないし五点でしょうが、大体二十機弱くらいで常時警戒体制をとる、そう考えておいていいのですね。
  188. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 AEWという飛行機は、超低空で侵入する敵機を捕捉するために必要で、現在の二十四カ地点のレーダーは、高空における敵は識別できますけれども、低空で侵入するものを識別できない。そういう意味からAEWの必要は起こっているわけです。しかし、私はこれをいま検討しておりまして、空幕のほうでも最終報告をまとめるという段階になって、慎重にやっておりますが、これは非常に慎重を要すると実は思っております。日本のようなこういう国柄で、そういう高いお金のつく飛行機を、一機や二機で済まぬのでありますから、やはりある単位をもって周期的に飛行して、常に一機、二機は上空におってその用意をしていなければならぬ、そういう体系の飛行機でありますから、機数も若干要るし、お金も非常に高くかかる。そういう場合に、日本のようなこういう防衛体系をとっている国において、小学生にダイヤモンドの指輪をはめさせるようなことになりはしないか。そういう観点からの批判もわれわれは考えなければなりませんし、それから、その機能につきましても、たとえば哨戒艇を海の上へ置いておいて代用できないかとか、そういうあらゆる部面を考えた代替機能をよく考慮した上でこれは判定しなければならぬ。新聞におきましてはもうすでに買うようにきめられて報道されておりますが、必ずしもそういう段階ではありません。私は、日本の財政能力や防衛体系、効率性というものを考えまして、慎重に検討してまいりたい、このように思っているわけであります。
  189. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 まあ大体映像がおぼろげながら出てきたと思うわけであります。そこで、防衛白書の中にも専守防衛、ただいまの長官の御答弁の中でも専守防衛ということが言われますが、私はいま自衛隊の現実にやっておることを見れば、どうも専守防衛というのは欺瞞ではないかというふうに思える数々の事実があるわけであります。  時間がだいぶん切迫しましたから、もう省略をして少しばかりお伺いをしてみたいと思います。  そこで、総理大臣は、三自衛隊がいろいろ演習をやっております、こういう作戦とか演習とかいうものは、やはり日本のこの法律に従って、国内法の範囲でやられるべきものである、そのように——当然だと思いますが、どうでしょうか。
  190. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大体そのとおりだろうと思います。
  191. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大体という意味はどういうことでしょうか。これは大事な点ですから、ひとつ明確にお願いをします。
  192. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大体が気に食わなければ、そのとおりでございます。
  193. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あたりまえな話だ。そこで航空自衛隊の教範ですが、総合運用教範、指揮及び幕僚業務、この取り扱いは何になっておりますか。
  194. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 政府委員をして答弁せしめます。
  195. 久保卓也

    ○久保政府委員 私は実はそのものを見ておりませんが、秘の程度であろうと思います。
  196. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もっと明確にしてください。
  197. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 すぐ調べまして答弁せしめますから、どうぞ御質問をお願いいたします。
  198. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それではこの点ちょっとおきまして、先に進みます。  実際にやられておる演習、これは図上演習ではないのです。実際にやられておる演習、数々あります。有名なやつでは飛鳥演習、あるいは一昨年の「やまと一号」あるいは「はぎ」、 いろいろありますが、一つだけあげておきます。  これは私も不勉強かもしれませんが、私が調べた演習の中では初めての、自衛隊が自衛隊法七十六条による防衛出動下令下における演習ですね。これは私の住んでおる佐世保の海域でやられておる。これは一昨年昭和四十四年度海上自衛隊演習、四十四年九月二十九日から十月五日まで七日間、目的は「防衛出動下命事態の初期段階における各指揮官の部隊の指揮運用、各部隊の協同連係等について綜合的に訓練する」、海域「おおむね呉及び佐世保地方隊の警備区域」、参加部隊「陸上自衛隊及び航空自衛隊の一部、自衛艦隊、呉、佐世保各地方隊の大部分」、参加艦艇等「艦艇約九十隻、航空機約七十機、人員約一万五千」、艦艇九十隻の中には護衛艦十六隻、潜水艦四、掃海艇二十四、その他となっております。  まず想定であります。どういう想定で防衛出動が下令されたか。「(1)昭和四十四年五月以降、極東の情勢は緊張の度を加え、これが青国にも波及して、国内の反戦運動、デモ、ストが続発し又南シナ海及び東シナ海において青国船舶に対する妨害行為が増加し、行方不明漁船の発生、原因不明の水中爆発による貨物船の沈没等が続発した。(2)青国政府は、極東における諸紛争は依然継続し、事態の推移は予断を許さないものがあり、これが青国への波及の度を重ねるものとの情勢判断に基づき、九月中旬防衛出動命令を発した。」こうなっておりますね。まだ、想定は三番目もあります。  そこでまず、この程度の事態で——いいですか、事態は国内で反戦デモ、反戦運動、ストが続発した。行方不明の漁船が発生した。原因不明の水中爆発による貨物船が沈没した。どこの国かわからない。そこで、日本は、極東における諸紛争は依然継続するものとして、事態は予断を許さない、これが日本への波及の度を重ねるものとの情勢判断に立って、防衛出動を下令した。これは昨年、覚えておられるでしょう、高辻さんも覚えておられるでしょう、私が自衛権発動の条件としてあのハワイ空襲を例にあげた。ところが、統一見解があとで出されたけれども、とにかく武力攻撃の着手があればいいのだと、さっぱり具体的に私に答えてくれなかった、三つ例にあげたけれども。そうして、佐藤総理は先制攻撃はしないのだ。これはまさに先制的自衛権の発動じゃないですか。どこに武力攻撃がありますか、どこに武力攻撃の着手がありますか、高辻さん、簡単に言ってください。想定はそれだけです。いいですか、もう一ぺん言いますよ。とにかく国内のデモ、スト、反戦運動が盛んだ。そうして行方不明漁船の発生、行方不明ですからこれはわからないのだ。それから原因不明の水中爆発、これも原因不明ですから、どこの国だかわからないのですよ。それに対して、とにかく情勢は何となく日本に影響があるだろうということを情勢判断して、防衛出動を下令した。まさに私が昨年指摘したとおりなんです。実際にやられておることはこうなんですよ。これは武力攻撃の着手と思われますか。こういう判断で防衛出動が開始されるんですか。これは図上演習じゃないんです。実際の演習です。もう演練からすでに作戦に入っているんですね。
  199. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 自衛隊法等によりますと、直接間接の侵略に対して日本の平和と独立を守るというのが自衛隊の任務でございまして、そういう意味において、直接侵略、間接侵略あるいはその結合、おのおのについていろいろな想定をもってこれに対する演習を行なうというのは、自衛隊としての当然の責任であります。その点に関する所見は、楢崎さんとわれわれとは、見解の相違であると思います。  ただいまの想定は、たとえば船が国籍不明の国の所為によって沈没させられるとか、あるいは爆発が起こるとか、漁船が行くえ不明になるとか、国内において反戦デモやその他が起こって、私らが前に申し上げましたように、国内的に内乱騒擾の状態が起こり、それが外国勢力の干渉その他を誘発して、そうして日本の独立、平和が侵害される、そういう場合に自衛隊は発動する。しかし、それを発動するについては、国防会議もございますし、あるいは国会もございますし、内閣の閣議もございます。そういういろいろな段階のふるいをかけることによって国民意思を決定するというわけでございますが、自衛隊の内部においては、そういう非常に深い政治的考慮等はなく、彼らは技術的演練を目的としているのでございますから、彼らの目標は潜水艦に対してはどういうふうに防ぐか、そういうような技術的なものを中心にして演習というものはできておるのでありまして、そういう高度の想定については、これは若干万全を期してない点もあるとは思います。しかし所期するところはその技術的演練ということにあるのでありまして、私は、そういうことをやることは決して当を得ていない……、むしろ彼らが責任を遂行していることだ、そのように思います。
  200. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 総理はどう思われますか。いまの長官のとおりだと思われますか。
  201. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、先ほどあげられたその例で、直ちに防衛出動したと、こういうことだと、これはいろいろ批判があることだと思います。まあしかし、ただいま防衛庁長官からよく説明を聞くと、そういうものでもないようですから、防衛庁長官答弁でお納得をいただきたい、かように思います。
  202. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、こういう作戦をやっているということ、実際の演習をやっているということは、これは重大だと思うのですよ。この程度の想定でもし防衛出動が発せられてごらんなさい、一体どうなるんですか。そうすれば、相手国も、こちらが防衛出動すれば当然対抗して攻撃してくるでしょう。このようにして戦争というものはエスカレートするんですよね。だから、こういうことは厳重に——私は、長官は想定の場合も言って聞かせにゃいかぬと思うのです、こういうときはだめだぞと、防衛出動は。チェックする必要があると思うのです。——先ほどのあれ、わかりましたか。なぜそういうことが行なわれておるかというその思想が、いま私がお伺いした点に出てくるんですよね。
  203. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 防衛出動の下令は、内閣総理大臣が責任を持ってやることでありまして、これは政治家の任務でありまして、内閣が責任を持ってやり、国会に責任を持ってこの処理を、判断を願う、そういう政治の場の仕組みになっておりまして、制服の自衛官が行なうというものは、これは技術的な分野にとどまるわけであります。  ただいまの想定につきましては、私は、御指摘のとおり、遺漏な点があると思います、これは政治的観点から見ますと、彼らは、政治的に未熟でありますから、また、楢崎さんの前の御質問のような、非常に精緻な議論が国会で行なわれなかった前のことでもあります。以後大いに注意いたします。
  204. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 注意をされるということですが、いま長官の御答弁の中に、政治的な配慮がない、未熟である。未熟である人が武器を持っているのですよ。そしていざというときの判断は、あなたがするんじゃないですよ。いざというときの、緊急の場合の武器使用の判断は、自衛隊法にあるでしょう、この前も御答弁いただいた第一線部隊の責任者が、指揮官が判断するのですよ、武器の使用については。答弁したじゃないですか。だから重大なんです。間違いが起こるのですよ。こんなに未熟だから、それはまあしようがないというふうには済まないのです。しかし、これから注意されるということです。  そこで、先ほど私がお願いした点を明確にしてもらいたい。
  205. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 もう少し御猶予を願いたいと思います。
  206. 中野四郎

    中野委員長 楢崎君、先ほどの田辺調整部長の細目にわたるものは、いま要りませんか。——楢崎君、質問をお進めください。——調べてすぐ報告させますから、質問を続けてください。
  207. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは、いまやりとりを総理とし、長官としたことに関係する重要な資料なんです。だから、これが出てこないと進めません。
  208. 中野四郎

    中野委員長 調査せしめてすぐ報告せしめますから、質問を御継続願います。——もうお約束の質問時間がわずかですから、どうぞ御継続願います。
  209. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 ただいまの書類はあるそうです。秘の扱いは受けていないそうであります。
  210. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは出せるわけですね。私も持っておりますから、あるということを確認すれば私はいいのです。あなた方はすぐ、どこからそれを手にとったかと言われますから、——いままで言ってきたのです。どこからそれを手に入れた、機密漏洩とかすぐ言われたじゃないですか。いいですか。総理、 この教範は、「平時、戦時を問わず、すべての航空自衛隊の部隊の指揮官及び幕僚の業務遂行とその教育、訓練に関して適用する。この教範の適用に当たって現行の法規と抵触する事項は次によるものとする。」、もしこの演習とか訓練をやる際に、その法律と違反する場合は次によるものとする。「(イ)作戦及びそのための平時における教育、訓練においては、たとえ法律違反しておっても、この教範による。(ロ)平時の管理事項については、現行法規の定めるところ。」つまり、総理は、演習は法律の範囲内でやる、そのとおりだとおっしゃいました。そのときは、大体を抜かれました。ところが、実際に教範を見てみると、法律と違反するような場合はこの教範のとおりやるのだ。この教範が優先するのです。こういう教範によって訓練していいですか、総理
  211. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その内容をよく私調べまして、いずれ御答弁申し上げます。
  212. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃ、その点は保留しておきます。これは重要ですから、この教範を廃止するかどうか、その点は重要なんです。実際に演習をやっているんだから、教範によって。  時間が最後少なくなったのですが、私は地位協定との問題で特に基地、土地の問題、それから空の問題を取り上げようと思っておったのです。そのうち空の問題、これはいざというときには日本の空は日本のものでなくなる、そういうことを実証したかった。ところが調べておるうちに、実はこの日本の空がまあ政府・自民党の空でもあるという事実を私は見出したわけです。つまり電波の問題であります。  それで、もう簡単に申し上げますが、電波の問題、電波の中でも特に放送に用いられるチャンネルは、放送というものが言論、表現の自由を効果あらしめる重要な機能を持っておるわけですから、もし一党一派に偏したり、あるいは官僚の支配下にあるということになるとたいへんだと思うのです。つまり電波というのは国民共有のものであるはずであります。ところが現実に行なわれておるのは、残念ながらそうではないのです。そこで、これからCATV、有線放送、あるいは放送大学等がメジロ押し、いわゆる情報化時代の問題として国会にも出てまいりますから、いわゆる政府の姿勢を正す意味でもひとつこの問題をはっきりしておきたいのです。  実は株式会社FM東京の問題であります。これは昨年も法務委員会あるいは逓信員委会、あるいは決算委員会で、民社党なりあるいは公明党の同僚議員が追及しておりますから、大体郵政大臣はおわかりのことであろうと思うのです。そこで私はいままで出た問題はもう出しません。これはたかだか二億円ぐらいの会社です。ところが重役は二十人ぐらい、従業員はたったの六十人、しかも重役は、もう日本の財界のそうそうたる人の名前が出ていますね、足立前日商会頭、あるいは植村経団連会長、あるいは岩佐富士銀行頭取、そういう人たちがずらっと並んでおる。どうしてこれほどの会社について、設立について問題があったのだろうか、これは内容を言えばまだわかりますけれども、要するにその設立の過程において、プロセスにおいて非常に不明朗なところがある。そこで昨年これは国会で取り上げられた。そうして、それは結局は調査してみますで終わって、依然として今日まで不明朗さは続く。つまり黒い霧は晴れていないわけであります。それで、その後調査されたところによって、大臣は、FM東京の設立について、これは正当で、あるという結論は出ましたか、簡単にひとつお願いします。
  213. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 予備免許、続いての本免許、これを通じまして適法になされておるわけであります。ただおっしゃるように、日本の各界の人々が関係しておるということでございますが、これは申請者というものが何十というほどございまして、それが総合調整されたという結果、それぞれ有力な人々がそれに顔を出すように相なった、こういうことでございます。
  214. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それじゃあなたはまだ真相を十分調べてないわけです。証拠はたくさんここにあります。それで六十六社申請しておったのが、結局教育あるいは放送関係の人がまずふるいにかけられて保留になって三十五社、残ったのは三十一社、それがいま大臣がおっしゃったように、一本化されてFM東京になったとおっしゃっているが、実はこれは中央FMという会社が申請したものをそのまま横取りして、それに申請訂正書というものだけ付して、そしてFM東京が成立した、しかもこの一本化についても問題がいろいろあります。証拠があります。時間がありませんから、一つその設立についての問題点を言っておきましょう。  これは十五年間、もうFMの申請者が全国で五百、東京だけでもさっき言った六十六、もういまかいまかと許可のおりるのを待っておったのです。ところが、このFM東京というものが突如としてそういう横取りをして、そうして文書を偽造して——私文書偽造、公文書偽造だ。そうして四十四年の十二月十八日にその訂正ということで設立を届け出た。ところが、それが出るやいなや、あくる日にこの会社、FM東京に許可がおりた、たった一日で。いままでずっとほったらかされて、三十一社、とにかく一日も早くと待っておった。しかも実は十八日に届け出て一日でおりておるのに、その書類をやはり——これは石橋質問とその点は一緒ですが、郵政局の職員が印を改ざんして日にちを一日前にして、そうしてわざと二日間だけは余裕があったような形にしておる。ここに証拠写真があります。そうして書類の写真がある。改ざんされた印の写真もある。どう書いてあるかというと、なぜ十八日に届け出たやつを一日早めにしたかというと、いま言ったような理由があるからです。これはどこが指示したか。これを改ざんしたのは関東電波監理局なんですね。その名前が出ておりますが、これは言いません。これに書類がつけられて、副申として「本件は事務処理上の都合により昭和四十四年十二月十七日付決裁で処理のこととしたい。(本省指示)」ですよ。本名が指示しておるのです。こんなことが許されていいのですか。これは後ほどお見せしてもよろしゅうございますけれども。そうして、その点についてこういう非常に問題がありながらできた会社なんです。ところが、いろいろ問題がある経過の中に、実は驚いたのですけれども佐藤総理のことが少しばかりからんでおるわけであります。これは別に私、不正ではないと思うのです。不正ではないと思うが、しかしからんでおる。これはFM東京がつくられる前に、一本化するためと称して、おもに郵政出身の人を中心にして、それから財界の人を入れて、調整するための委員ができております、有志会という。これが調整するどころか、その人たちが結局自分たちで会社をつくったのですね。そうしてほかのものは全部インチキで取り下げさせた。圧力をかけて、郵政省の職員をして取り下げさせるようにして回って、結局調整どころか、この人たちがFM東京をつくったのですね。そうして、これは四十四年十一月十二日、東京地区FM放送設立有志会会議録、これは録音もありますので立証できるわけですが、佐藤総理は、あるHという、これは政治の大先輩です、この人が前回の選挙で落ちられたので、また吉田元首相の側近でもあったし、浪人中だから何とか適当な職をと考えられてお世話をされた。私はそのこと自体は美談だと思う。ところが、あなたがそういうことを言ったために大混乱になったのです。その経過はあなたは御存じないと思うから私は申し上げたいのであります。  これは前田さんですね。出席者の名前がありますが、前田さんがこの中でおっしゃっておるのです。「私はなぜそれじゃ小林君」——小林君というのは、当時の郵政大臣のとき関係されておるのですね。そしていまは法務大臣ですが、「私はなぜそれじゃ、小林君が私を社長で林屋会長をきめたのに、何おまえは黙っているんだ、ばかじゃないかと言われるかもわからぬけれども、裏を見てみよ」といってずっとくるわけですね。そして「いままでは波は」——電波です。電波は全部自民党でとってきたわけです。いい悪いは別ですがね。「自民党で確保してきておるのに、ここにひとつそういうものが何かに突っ込まれると困るので、われわれはいま自分の欲を言うべきときじゃない。」と、こうずっと続くのです。そしていいですか、このHという人は、自分はもう総理からお墨つきをもらったのだ、だからFM東京の社長になるんだと自分で言っておるものだから、ここへ不満が出てきておるのですね。「先ほど藤井さん」——これは新日鉄の副社長です。「先ほど藤井さんがおっしゃるように、総理からもらったんだ。冗談じゃない。私と小林君と総理がいて、じゃあ」——今度は総理が言うのです。「じゃあ前田社長、林屋会長」——これは名前が出ました。「林屋会長で、前田君、林屋を見てやってくれ、こうおっしゃっておる。それで帰ってきたのです。いつでも言うけれども、今日自民党、佐藤をいささかでも弱めることはいけないから、言いたいことも私は言いません。」いいですか。それからずっとあるのです。「いま自民党内閣で何かが出てくると困る。黒い霧が出てくると困る。他党——社会党にしても民社党にしても公明党にしても、電波は、全部民放は自民党に独占されているというこどに対して、非常に何かのすきがあればということで待っておる。だから、こういうことが出てくると困るのは佐藤さんでしょう。自民党を痛めるということですよ。」これでこの林屋さんが結局会長になられた、あなたのおっしゃるとおり。そうして資料がありますが、この役員人事について郵政省が提案しておるのですね。何でこういうことをするのです。  それからまた私が明らかにしたいのは、佐藤総理はよく御存じないかもしれないが、こういう人事に佐藤総理がくちばしを入れる権限は、電波法ではないのです。ないのです、あなたは。それにあなたはくちばしを入れているのですね。これは郵政大臣にしかないのです。だから、いま言いましたように、公務員が文書を偽造して、印を改ざんして、いかも本省指示によってそれがやられておる。私はこれは徹底的に究明する必要があろうと思うのです。そしてもしこれがこの資料のとおりであれば、このFM東京というのは免許取り消しになるはずであります。しかもFM東京には自民党の政治家の人も入っておられますね。だから、これは政治の姿勢としてでも、与党のためにでも、明確にする必要があろうと思うのです。  そこで、郵政大臣、あなたは電波法によってこういうことが、つまり一本化について不正はなかったか——一つだけ聞いておきましょう。つまり中央FMがFM東京にかわるについて役員をかえていますね。それを実証する資料がその改定書についていましたか、それだけ聞いておきましょう。
  215. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 これは私の就任する前のことでございましたが、私の知る限りにおいては、適法になされておるということでございます。しかし、先般逓信委員会においてもこれが問題になったことがございまして、引き続きその点は当時の書類等にさかのぼって検討をしておるというところでございます。
  216. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなた、昨年の五月の逓信委員会でこの問題を公明党の同僚から出されておるのですよ。そしてあなたはそのとき、これは電波法の根幹に触れる問題だから、早急に調べるとあなたはおっしゃった。それじゃ、あなたは、十分調べた結果——いろいろ指摘されておるでしょう。一本化についても不明朗なところがある。それから中央FMのをすりかえてFM東京になったんだということも指摘されておる。それらも調べた上で、なおかつあなたは適法だとおっしゃるのですか。
  217. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 そういう点も当時指摘されましたが、いま楢崎さんのお示しになりました資料も私仄聞はしておりますけれども、そういうものとも彼此対照をする、こういうこともございまして、まだ十分はかっておるということでございます。
  218. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それではこれだけ見てください。これはおたくの文書です。改ざんされた文書です。委員長、ちょっと大臣に見ていただきます。
  219. 中野四郎

    中野委員長 よろしゅうございます。     〔楢崎委員資料を示す〕
  220. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いま大臣は、自分が監督すべき立場にある関東電波監理局のこの書類を確認されたわけです。これはやはり重要な問題ですね。こういうことが簡単に行なわれて、結局、政府・自民党の手にそれらがあると指摘しているのだから、これは私は明確に調査をした上、本院に御報告をいただきたいと思う。これはちゃんと印を押した人の名前、課長さんの名前もはっきりしております。部長さんの名前もはっきりしております。これは現物ですから、どうしようもありませんね。これが明確になった後に私はまた質問を続行したいと思います。
  221. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 いま写しの写真を提示されましたが、私もよく、原書類といいますか、そういうものに立ち戻って一ぺん検討をさしていただきます。
  222. 中野四郎

    中野委員長 楢崎君、すでにお約束の時間が経過しております。もう一問だけに……。
  223. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 わかっております。  いまの点について、私がいま言いました訂正申請書、これの現物を一ぺん持ってきてください。そしてこれが合っているかどうか、これは照合すれば直ちにわかることです。ぜひそれをお願いをし、そして質問はそれから先続けたいと思います。
  224. 中野四郎

    中野委員長 先ほどの楢崎君より御要求がありました操典の問題について、防衛庁長官より発言を求められておりますので、この際これを許します。中曽根防衛庁長官
  225. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 調査いたしましたところ、三十五年作成の古い草案にそういう文章があるそうです。それに類似の文章のようであります。しかし、それは教範にはならないで、資料として保存してありました。いま新しくそれを練り直しまして私の裁可を得ようとしておる原案には、そういう文章はないようであります。
  226. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あの当時はそれによってやっておるのでしょう。そういう思想でやっておるのです。そして、これが国会で問題になると、もうつくり直しますとか言われるのですね。いつもその手なんです。そういう点に対して国民はやはり疑問を持つのです、不安を持つのです。いま長官のお答えだと、これを破棄し、そしていま新しくつくり直しておる、こういうことでございますね。  そこで委員長、先ほどのこのFM東京の問題については、問題が残っておりますので、あとの取り扱いについては、理事会でひとつ御検討をいただきたいと思います。
  227. 中野四郎

    中野委員長 理事会でというよりも、すでにあなたの御約束の時間はもう済んでおるのです。ただ、御要望でありましたので、御発言を許したのですが、理事会でこれは相談する問題ではないと思うので、 これで……。
  228. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私も時間を守りたいと思うから——これほどの問題を中途はんぱで、時間がきたから、問題はもうそれでおしまいだというのじゃないでしょうね。
  229. 中野四郎

    中野委員長 理事会で相談する問題ではないと思うのです。  これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  次に、細谷治嘉君。     〔委員長退席、坪川委員長代理着席〕
  230. 細谷治嘉

    ○細谷委員 最近のある経済雑誌に「転換期にきた経済社会の課題」、こういう表題で書かれてありました。そのエキスの部分を私が申し上げますので、総理から感ずるところをひとつお答えいただきたいと思います。  世界で一番大きい会社は、GMでもATT会社でもなく、日本株式会社だという説がある。外国からの学者やジャーナリストは、結局のところ、巨人会社の組織にしかたとえようのない、政界、財界、官界からなる三位一体の統一体の存在を、半ば驚嘆のまなざしでとらえている。  予算案編成の動きが活発になり出した十二月二十日付の新聞には、「首相、財界も了承」という二段見出しの記事が出ていた。内容は、蔵相が経団連首脳に来年度予算編成について、その方針を説明して、要望を聞くとともに、そのあと首相にも説明した、というものだ。  首相と経団連とが、予算編成問題で同格の扱いをうけていることが、異常ではないか。なぜ蔵相は、予算編成をすすめる公けの活動として、経団連幹部に了解を求めなければならなかったのか、そこがおかしいポイントであり、この本来、異常な事柄が、さりげなく日常茶飯事のように新聞紙上で扱われているところが問題だ。  この蔵相の動きは、政府と大企業体とが利益共同体のように一体化していることを証明しており、日本株式会社の存在証明にもなっている。経済界の中枢部と政府との間には、本質的に利害の一致していることが、暗黙のうちに前提されていない限り、こうはいかないであろう。  公害問題の深刻化は、このような現状にゆさぶりをかける有力な契機をつくり出している。物価問題もそうだ。政府の役割は、利潤追求に目のくらんだ産業界の行動を押えることに向けよという声は、日増しに強まっている。  昨年末、アメリカ議会で可決された公害車をなくす法案は、七五年までに、有害な排気ガスの九〇%をなくすことを求めている。これは自動車でない自動車をつくれという要求で、技術的には展望のない革命である。現代資本主義のチャンピオンである自動車産業に求められている社会的要請の意味するところは大きい。生産技術は、広く科学は、人間の要求に奉仕しなければならないことを示唆している。」こういう意味の巻頭言があります。これについて総理、いかがお考えですか。
  231. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 細谷君にお答えいたします。  私は、その記事をつまびらかにいたしておりません。しかし、言われたように、日本株式会社というか、政府と民間経済界、これがたいへん緊密な連携をとっておる。そのためにたいへんうまくいっておる。各国でしばしば指摘されるのです。日本はどういうわけであんなに経済成長をするだろうか。これは政府と民間とがお互いに理解し合い、お互いに協力し合っておる、その結果だ、こういって各国ではうらやましがっておるその一つです。その点が、いかにも悪いというようなお話ですが、細谷君も、いま日本はどういうわけでこんな経済成長したか。その基本的原因はどこにあるのか。これは国民自身の勤勉さ、それがフルに運転しておる、そういうところに政府は乗っかっておる、こういうところにあるのだ。これはやっぱり率直に認めていただきたいと思います。そうして私は、日本株式会社というような、どうも気に食わない表現はありますが、しかし、その外国自身が、日本成長については非常にうらやましく思っておる。このことを申し上げておきます。  そうして、大蔵大臣が経団連と総理と両方同じように扱っておる、こういうお話がありましたが、これはたいへん大きな誤解だと思います。私は、大蔵大臣が各方面のいろいろの意見を聞かれる、またそういう際に考えておられることを率直に説明されること、これは望ましいことだと思っております。どうもないしょにすることはございません。しかもこれは野党の各派に対しましても、しばしば必要があれば説明会に臨んでおる、かように私は思っておりますし、また与党にも、これはもちろん十二分に与党との連携は緊密にしておる。ここいらに政府、与党との関係もありますから、私は、別に総理を軽んぜられた、かようには思っておらないのです。たいへんけっこうな大蔵大臣がいてくれる、かように思っておりますので、(「おかしい」と呼ぶ者あり)私は、どうもちょっとおかしいので、より以上におかしいような気がいたしますので、その点を申し上げておきます。
  232. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は経済雑誌と申し上げましたけれども、これは一月の五日・十二日合併号として出された毎日新聞のエコノミストの巻頭言であります。  私は、問題は——総理と財界を同列に扱った大蔵大臣が悪いというのがポイントのように書いておりますけれども、問題は、私は、やはり予算編成のあり方、そういうような問題。確かに経済が高度成長しましたけれども政府がひずみといっておる公害の問題なり物価の問題というのは、単なるひずみの問題ではなくて本質的な問題である、こういうことを指摘していると私は思うのであります。しかし、時間もありませんから、これはこの程度にしておきたいと思います。  そこで、次に大蔵大臣にお尋ねしたいのでありますけれども、この予算委員会でいろいろと議論されましたが、せんじ詰めますと、大蔵大臣は四十六年度の予算というのは、経済が過熱しては困る、冷却し過ぎても困る、そういうことで中立機動型の予算を組んだんだ、こういうことでありますが、今日、この段階において、経済のパターンといいますか、そういうものがおおよそ三つに分けられておると思う。  昨年の暮れ以来、最後には三菱銀行が経済の見通しを発表されたわけでありますけれども、一つは、現在の景気下降局面は四十五年度一ぱいで底入れし、四十六年になると再び本格的上昇に転ずる。二番目ば、一と同様で、四十五年度一ばいで底入れは終わって四十六年度に回復に転ずるが、その回復のテンポがきわめてゆるやかである。三番目は、現在の景気下降局面は四十六年度上半期まで続くが、下半期に入ると本格的上昇に転ずる。大蔵大臣は、せんだって、曇り後薄日、こういうように経済の見通しを表現されたのでありますけれども、大蔵大臣は、一体この大別した三つのうちどういうパターンに属するのか。  こういうことを経済企画庁長官にもお尋ねしたいのでありますけれども、時間を節約するために、一の場合でありますと、大体設備投資の伸びは二〇%以上だ、実質成長率は一二%をこえるだろう、こういうふうに専門家は見ております。二番目の、回復はするけれども、来年度になるとテンポは緩慢である。こういうことになると、設備投資の伸びば一〇から一六%ぐらい、実質の成長率は一〇から一一でありますから、今度の予算の基礎になっております経済の見通しとこの成長率とが合います。三番目でありますと、設備投資の伸びは一〇%以下、実質成長率も一〇%以下、明けて発表されました三菱銀行の経済見通しがただ一つのこれに属するわけでありますけれども、一体この三つのうちのどういうパターンなのか、大蔵大臣経済企画庁長官にお尋ねしたいと思う。
  233. 福田赳夫

    福田国務大臣 景気がいかなる時点で上昇過程に転ずるか、これはなかなか予測は困難だと思います。しかし、私の政治家としての、また財政家としての勘からいいますと、そう時間はかからないで底入れをするであろう、こういうふうに見ております。成長の速度からいいますと、あなたのおっしゃる第二の場合と第三の場合の中間、つまり一〇%前後、これが昭和四十六年度の経済の推移としてあらわれてくるのじゃないか、そんな見方をしております。またそうさせるように財政金融政策を運営していきたい、かように考えております。
  234. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 いま大蔵大臣が述べられたとおりであろうと思います。御存じのように、われわれも見通しとしまして一〇%前後という成長率を考えております。ただ、この景気の見通しにつきましては、もちろんこれからの政策運営の態度にかかるところが大きいのでございます。今日、民間設備投資は非常に意欲が冷却しておるといわれております。私たちは経済の成長を安定的に持っていくように、そうした環境整備したいと思いますが、また同時に、あまり激しく落ち込むことを極力避けなければならない。そうした目途のもとに弾力的な財政金融をはじめとする政策運営がなければならない。そうしたことを頭に置きながら、大体一〇%前後の成長になっていくであろう、こういうふうに考えておるわけであります。
  235. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いま大蔵大臣は、大体経済のパターンというのは、私が申し上げました二と三の間だろう、それが曇り後薄日、こういう表現になっただろうと思うのですけれども、その際の有力な条件として、予備費はふやした、それから政府保証債はふやした、債務負担行為はふやした、そうして弾力的機動型にしたんだ、こういうことが加えられておるわけでありますけれども、私は、率直に申し上げまして、この予算というのは、予想以上にどうも不況対策の名でインフレを促進するのじゃないか、あるいは物価高を進めるのじゃないか、こういう感じがいたしております。  そこで、具体的な点を一つお聞きしたいのでありますけれども、あとでまた予備費等には関連が出てまいりますが、債務負担行為二百億円が今度三百億円にふえているわけですね、この非指定のやつは。これは財政法十五条の二項によりますと、災害その他緊急の場合というのですから、この百億は一体どういうふうに使うつもりですか。
  236. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま問題にしておる債務負担行為は、その使途をきめない債務負担行為——使途をきめまして債務負担行為ということは、たとえば防衛庁の予算なんかには相当あるのです。そうじゃない。それはそれで在来のとおりやっておりますが、災害なんか、何か異常な事態があったという際に備えまして、使途をきめない債務負担行為、これがなし得ることになっておるわけであります。従来二百億円であった、それをふやすわけであります。これは使途をきめないわけでありますから、異常な場合、非常な場合、そういうような際に、現金の支出は伴いませんけれども、発注を行なう、需要を喚起する、そういう効果を持つのでありまして、これはもう日本経済たいへんだという際には、これを発動させたい、かように考えております。
  237. 細谷治嘉

    ○細谷委員 百億なんですよね。異常というのは一体何ですか。災害その他緊急というのですけれども、何ですか、これは。債務負担行為というのはきわめて具体的なものなんですね。十五条の一項に基づくもの、十五条の二項に基づくもの、きわめて具体的なんですよ。十五条の一項のもの、一覧表が出ているでしょう。十五条の二項の問題については災害その他緊急のものに対処するというので、これはもうそのものをいえばずばりに災害ですよ。それが二百億が百億ふえたわけです、今度三百億になったわけですから。いまの大蔵大臣答弁では、こういうことでは財政民主主義、財政の公開主義というものから、非常に重大な問題をはらんでおるのではないかと私は思うのです。再答弁を願います。
  238. 福田赳夫

    福田国務大臣 予備費がありますですね。予備費は、これは四十六年度の予備費でありますれば、四十六年度中に支出ができるわけなんです。しかし、予備費と同じような効果を持つと思ってもらえばいいのでありますが、これはどうも実額支出をする必要はない。ないが、しかし物財の需要を喚起する効果はある、そういう性格のものが債務負担行為だ。予備費だって別に使途をきめておるわけじゃありません。災害の場合にもいろいろの支出に充てられるわけでありますが、支出を伴わないで予備費と同じような目的にこれを使用する、これがただいま私どもが考えており、御審議をお願いしようとしておる債務負担行為、それの増額であります。
  239. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いまの答弁では、私は今後やはりこの財政民主主義という点、これは非常に重大な問題でありますだけに、今度は百億でありますけれども、私は納得いたしません。  そこで、次にお伺いしたいのでありますが、今度の予算の性格は昨四十五年度の警戒中立型から中立機動型とこういうふうになったわけですが、機動型というのは債務負担行為でありあるいは予備費であり、そうして政府保証債の公団公社等に対する増額だ、こういうことになっておるわけですけれども、今度の予算編成にあたっての編成方針、閣議決定の編成方針、これは昨年とたいへん大きく変わっております。昨年の財政制度審議会の建議、それに基づいての政府の予第編成方針、今度の四十六年度の場合とは——第一に、予算の規模と性格では、去年は総需要を適度の水準に保って、景気に対して警戒型にしろ、こういうふうに財政審も指摘しておりますが、今度は予備費、財投を通じ弾力的な予算の規模をつくれ、これが第一であります。それから、去年は国債については削減をすべてに優先してやれ、こういっておりますが、今度はそれについてあまり触れないで、結果としては横すべり。第三番目は租税負担の調整、そういう中で、昨年は法人税の付加税を新設しろと明記してありましたが、今年度は財政審なり政府の方針については新税のことは書いてありません。ところが自動車税——後ほど少し詳しく触れたいと思うのでありますが、自動車税の新設というのが突如としてあらわれてきておる。四番目、これはまあ大蔵大臣が常に言っておって、そしてこ二年常につぶれてきた問題でありますが、昨年、おととしは総合予算主義、こういうものが予算の前面に出てまいりました。その内容というのは、義務的経費の過少計上を避けなさい、たとえば予想される人事院勧告等については五%の五月からと、こういう去年は組み方もし、ことしもそういう組み方をなさっておるようでありますが、そういうのは過少の計上ではないか、適正な組み方をしなさい、災害等に対処するため予備費を計上しなさい、——昨年は千百億円をそのために計上したわけですね。補正要因を解消しなさい、交付税の年度間調整をやったらどうか、こういうことであります。今度は予備費の増額と適正な交付税の調整措置を今後検討しよう、このことだけで総合予算主義の「そ」の字もないわけですね。もう二年間やって失敗したんで、総合予算主義というのは放棄したのか。今度のこの予算には、必然的に景気とも見はからった上で補正予算という事態を考慮されておるのかどうか、この点をひとつお聞きしたいのであります。
  240. 福田赳夫

    福田国務大臣 財政制度審議会の答申の概要につきましては、いま細谷さんからお話しのとおりであります。その中で、この予算の性格につきまして、いままでは警戒ということをいっておったが、今回は警戒という字は使っておりません。それは私は正しいことだ、こういうふうに思いまして、この財政制度審議会の答申に従うということにしたことは御承知のとおりであります。  それから、したがいまして、公債、これはいつもでありますと減らせ減らせというのが審議会でありますが、先ほど申し上げましたような景気情勢にかんがみまして、公債は横ばいにするという結論をとったわけです。  それから税につきましては、この前は、お話しのように法人税の増徴、つまり警戒型でありまするからそういうふうな結論になってくるわけでありますが、景気情勢の現段階においては法人税の増徴ということをいわれない財政制度審議会の考え方、これも妥当なことである、かように私は考えたわけであります。  それから、いずれこれは御質問があるから詳しくは申し上げませんが、自動車新税、これは別途の見地から政府においてはこれを創設する、こういうふうにいたしたわけであります。  それから総合予算の方針は捨てたのか、こういうお話でありますが、この方針は捨てておりません。つまり、総合予算編成方針というのはどういうことかというと、補正要因をなるべくなくす、こういうことであります。この二、三年間総合予算方針をとってきたのです。補正要因というものは、なるべくなくすような予算の編成をやってみました。しかし、その後におきまして異常な事態、非常な事態が起こっておる、そういうようなことから補正を組まざるを得ないし、また現にこの予算委員会におきましても補正予算の御審議をお願いせざるを得ないようなことになったわけでありますが、しかし、補正を組むのだという前提の予算、これは私はよろしくないと思います。あくまでも総合予算編成の方針、補正要因をなくすのだという考え方は、これは長くとり続けていかなければならぬ財政の基本的な考え方であると、かように考えております。
  241. 細谷治嘉

    ○細谷委員 総合予算主義、予算をつくるからには年度間、これはすべてを計上する、これはたてまえでありますが、総合予算主義をことさら鳴りもの入りで唱えた四十四年、四十五年はみごとにくずれたわけですね。何がくずれたかといいますと、これは今日のような物価高の中において人事院勧告が行なわれるのは当然なことで、財政審は、そういうようなものについての過少見積もりの計上はやめなさいといっておるにかかわらず、そういうことをしてないところに問題があったのであって、これは予測されないものじゃないわけですね。今度に限って——これは三度目ということでありますけれども、もう二度くずれたので、今度は、総合予算主義なんといったってうそつくことになるから、もうやめた、こういう気持ちで総合予算の「そ」の字もないのですね。財政制度審議会の建議の中にもないし、政府予算編成方針の中にもないわけです。しかも経済はかなり流動的である、こういうことでありますから、私は、今度の中立機動型の意味することは、当然大蔵大臣の頭の中には、必要に応じてこれは補正予算というものが起こってくるということが、去年以上に頭の中に濃くあるのではないか、こう思うのでありますが、いかがですか。
  242. 福田赳夫

    福田国務大臣 何回も申し上げておるのですが、総合予算主義というのは補正要因をなくそう、こういうことなんです。しかし、これは国の政治は生きものであります。また国の経済も時々刻々変化、流動するものであります。それに応じまして財政が妥当な活動をしない、総合予算方針だから補正は組まない、必要があるのに組まない、これは私は財政の本義にもとると思います。ですから、いつも言うのですが、補正要因はこれをなくしますけれども、異常の場合、非常の場合において補正予算の編成を排撃しておる、そういう意味じゃない、こういうことでございまして、四十六年度予算も補正要因はなるべくなくしていきまするけれども、予備費なんか今度ずいぶんふやした、そういうようなことでかなり弾力のある予算でございまするけれども、万一非常、異常の事態が起こる、財政が補正予算を組まなければこれは政治がどうにも動かぬというような事態がありますればこれは補正予算を組む、これは当然のことだと思います。
  243. 細谷治嘉

    ○細谷委員 必要とあれば補正予算を組むことがあり得る、こういうことでありますので、そこでお尋ねしたいのでありますが、今回の予算に計上されております租税及び印紙収入、八兆五千三百七十一億ということでありますけれども、これについて年度間を通じて、昨年はもうこれ以上取れないだろう、いや今度の景気から見てこれは相当の自然増収があるでないかとわれわれは主張しておりましたけれども、今度の補正で三千十一億円という自然増が補正の中に出てまいったわけでありますが、自然増収は期待できるとお思いかどうかお尋ねしておきます。
  244. 福田赳夫

    福田国務大臣 この数年間は予算の見積もりよりも実績が上回りまして、補正財源というものが求められるような状態でありましたが、どうも経済情勢が激しくいま流動中であります。つまり、超高度成長から安定成長路線へ移そうという経済情勢、そういうさなかにおいての租税収入の見積もりでありますので、なかなかその見積もり方がむずかしい四十六年度予算であります。したがいまして、企画庁で作成する経済見通し、これを基盤にいたしまして見積もりをするのでございますが、個人所得なんかの伸びはかなり見られる、こういうようなことで所得税はずいぶん伸びるのです。しかし法人税に至りましては、なかなか従来のような伸びは見られないだろうというので、かなりこれはかためな見積もりをいたしておるのであります。そういう数年間の予算の編成に比べますと、大きな変化がありますが、大体この程度は確保し得るという確信を持ちながら編成をいたした次第でございます。
  245. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大蔵大臣の見積もりではこの程度は間違いない。そこで私はここ三年ばかりの国税の中のおもなものを拾ってみました。たとえば源泉所得税は今年度は給与総額が一七%伸びる、こういう前提に立ちましてこの計算がされております。四十五年度は幾らかといいますと、これは一六%であります。四十四年度は一四であります。四十三年も一四であります。ところで経済成長率の関係から見ますと、四十五年度は一五・八の成長率に対して税収の伸びは二〇・八、こう見られた。これも減税等の規模もありますけれども、四十六年度は一五・一という伸びに対して、経済成長率に対して、二〇%の全体としての増収を見ておるわけですね。私は奇態に思いますのは、源泉所得税と給与総額が一七%伸びるというのでありますけれども、一方経済企画庁から出ました四十六年度の経済見通しでありますと、雇用者所得というのは一七・一なんですね。これはほぼ合っております。法人税はどうかといいますと、ことしは総合で一二%伸びる、こういうことでありますけれども、経済企画庁の経済の見通しからいきますと法人所得は一〇・九%しか伸びない、この辺に私は従来の各税目の算出の伸びの根拠、数字等を比較してみますと、どうも一貫性がないじゃないか、こういう感じがいたします。一貫性のないということは、どう理解するかといいますと、どうもやはり自然増収は伸びるのじゃないか、あるいは従来の例からいいますと、景気後退等がありますと、自然増収は期待できない。そういうことになりますと、四十年度にあったような四千三百億の国債というものが今度は赤字公債を出して補正予算を組む、こういう事態も起こり得るのではないか、こういうことがいろいろと考えられますから、あえてお聞きしているわけです。もう一度お尋ねいたします。
  246. 福田赳夫

    福田国務大臣 租税の見積もりは経済見通し、これにのっとってやっているのです。その成長率やあるいは企業の所得あるいは個人の所得、それと租税収入の全体、また法人税また個人所得税、こういうものとの伸びの違いがあるのはおかしいじゃないか、こういうお話でございますが、この経済成長率、それを税法に当てはめてみますると、その間おのずから税法に基づく違いというものが出てきております。一部弾性値、こういうふうにいわれる要因もあるわけでございまするけれども、必ずしも個人の所得の増加率がイコール個人所得税の増加率というふうにはなりません。しかしこれは十分な関連をとりながらやっておるわけでありまして、違いがあるからと申しまして関連が全然ないのだというのではなくて、緊密なる関連がある、完全な関連がある、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  247. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は新聞等の四十六年度の大蔵の予算編成にあたっての税収の推移等を見てみますと、大体昨年の十月の下旬ごろから十一月の中旬くらいまでは、大蔵当局は一兆六千億くらいの四十六年度の税収が見込まれる。ところがだんだん減って、予算編成期になりますと一兆四千億円くらいまで下がってきた。これは予想以上に下期の景気後退というものを考慮してそうなったのではないかと思いますけれども、どうもこの辺大蔵当局は技術的にわれわれをごまかそうというようなあれがあるのではないか、こう思いますけれども、時間がありませんからこの程度の指摘にとめておきたいと思います。  そこで私はお聞きしたいのでありますけれども、いつも経済の見通しに関連しておくれてくるのは政府の財貨サービス購入、これで、従来はこれがその経済の成長率を上回っておらぬからインフレじゃない、インフレであるとかいろいろな議論がありましたが、私がお尋ねしたいのは、政府の財貨サービス購入の半分は政府です。半分は地方なんですよ。そこで自治大臣、地方財政計画はまだ出ていないわけですね。出てないのにこの政府の財貨サービス購入だけはちゃんと計算されておるわけですね。あとでまたお聞きしますけれども国民所得に対する租税の負担率、これも説明がありました。これも四十五年度の決算見込みと同じ一九・三%になっております。ところがその一九・三%と出した、地方財政計画が出ておらぬわけですから、地方税が幾らになるのかわかりませんよ。ただ結果だけある。大蔵省は知っておるのでしょう。自治省は知っておるのでしょう。ところが私どもには地方財政計画なんというのは出ておらぬわけですから、てんで手さぐりであります。こんなことでは国会審議はできないと思うのでありますが、一体地方財政計画はいつ出るのですか。
  248. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 なるべく早く提出すべくいま事務的に処理を急がしておりますので、ごく最近のうちに出させるようにいたします。
  249. 細谷治嘉

    ○細谷委員 できるだけ急がしているというわけですが、五日になったら、もう総括質問は済んでしまうわけですよ。予算の重要な基礎、言ってみますと、国は税金を国民から七〇%取っているのですよ。地方は三〇%取っているのですよ。しかし、国のほうが使う分は、七〇%取りますけれども、実際は四〇%しか使っていない。三〇%分というのは地方にいくわけですよ。ですから、結果としては、税は地方が六割使って、そして国は四割しか使っていないというのですよ。そういう状態であるこの国の予算審議の際に、地方財政計画が出てこぬというのは、総理、ことしは十二月の末に予算がきまったのですよ。もはや今日何月になるか、二月に入っておるのです。三十日以上になるのに、重大な審議の一この予算関係法案は五日までに出る、こういうことであります。それ以上にこの予算審議には重要なものがこれほどおくれるということは、私はたいへん問題があろうかと思うので、ひとつ、自治大臣、できるだけ早くということでは困りますから、一体、いつ国会に出せるのか、何日何時何分なんていうことを聞いておりません。おおよそのめどははっきりしてもらわなければならぬ。  それから、もう一つ、この際注意しておきたいのでありますけれども、この地方財政計画というものは、これは地方交付税法に基づいて国会に出す義務があるわけですね。その地方財政計画は、当然なこととして、四十六年度の県や市町村の予算編成の基礎になるわけです。その基礎になる地方財政計画と実績とが毎年毎年二割も違っておる。こんなことでは、地方財政計画が地方の予算編成の尺度に、総理、ならないのですよ。これは、国の予算よりも、地方財政の計画の規模がふえますと、地方は豊かになったなんてすぐ大蔵大臣言いますから、あるいはマスコミもどうもそれに同調するような書き方をするものですから、ことさらわざと地方財政計画実態と離れたものにしていると理解する以外にない実情であります。これはやはり改めるべきだと思うのでありますが、自治大臣から、いつ出せるのか。総理計画と実績がそんなに狂ってはいけないのでありますから、ありのままの計画を今後つくるように努力すべきだと思うのでありますが、この点についての総理の御答弁をひとついただきたい。
  250. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 五日までにというお話でございますが、それを目途に努力をいたしますが、あるいは五日をおくれるかもしれませんが、しかしながら、それから去ること決して遠くないなるべく早い期日に出したいと懸命に努力をさしております。  なお、計画と実際の決算額との乖離の問題につきましては、昨年もお話しがございました。やむを得ざる点もございますが、極力この乖離をこれまたとどめるように、事務当局には指示し、またそのことを実行いたしたいと期しておる次第でございます。
  251. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 細谷君のただいまの御要望について、私自身も自治省、自治大臣を督励いたしまして、できるだけ早く出るようにいたします。
  252. 細谷治嘉

    ○細谷委員 なるべく早くはいいですけれども計画と実際がたいへんな大きな乖離がありますから、これはやはり直していただかなければいかぬと思うのです。これ、いかがですか。
  253. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そういうことを含めて計画を出すわけです。十分御審議をいただくようにお願いいたします。
  254. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そこで、高負担、高福祉と大蔵大臣は言っておりますけれども、最近の新聞等によりますと、「高負担がまず実現」、こういう見出しの新聞が多いですね。私どもの成田委員長は、「高負担、低福祉じゃないか」、こういうふうに申し上げました。ところが、四十五年度の決算見込みで、租税の国民所得に対する負担率というのは一九・三だ。当初予算は一八・八です。上がっておるのですね。そうして大蔵省の言いわけは、いや、四十五年度の決算見込みは一九・三%になりますから変わりません。いつも当初予算と、補正がありますと、決算というのは、必ずこれが税は実績より上回った負担率になっておるのです。ことしはこれがもっと上がります。ですから、「高負担だけが先行しておる」、こういうふうに新聞が書くのも当然でありましょうし、私どももそう思っております。これはいかがですか。
  255. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま細谷さん御指摘のように、四十六年度の租税負担率は一九・三%になっています。これは、高負担、高負担と言われますが、先進国社会におきましては非常な低負担なんです。大体三〇%、これが普通です。わが国はそれが二〇%にならぬ、一九・三だ、非常な低負担だ、こういうふうに私どもは考えておるわけでありまして、先ほど細谷さんから、四十六年度はどうも経済情勢からあるいは収入欠陥が出るかもしらぬなというような御意見もありましたが、四十五年度は幸いにして自然増収がありましたので、まあ負担率がふえた結果になりましたけれども、四十六年度は大体一九・三というところで、結果におきましても推移するのじゃあるまいか、そんなふうに見ております。しかし、決して高負担という日本の社会じゃございませんから、どんどんと福祉社会建設の方向は進められておりまするけれども、それでもとにかく負担率は横ばいである。私は、たいへんおほめ願ってもいいような状態じゃあるまいか、こういうふうに考えております。
  256. 細谷治嘉

    ○細谷委員 ほめられないですよ。ここ四十年以降をとってみても、一九%という負担率を記録したことはないのです。大蔵大臣がほめてくれと言ったって、数字がほめられないわけですから、私はむしろ注意を促したい、こう申し上げておきます。  そこで、負担ということをマクロにつかまえたわけですけれども、少し、ミクロとは申し上げませんけれども、階層別の負担の状況を見てみますと、GNPに対するいわゆる個人消費支出というのは、昭和四十年度の五六・六%から五一%と、こういうふうに四十年度から四十六年度の間減ってきておるのですね。もう一つは、給与所得者の所得に対する税の負担というのは、このあなたのほうから出しておる財政金融月報の租税特集の中から拾ってみますと、四二・二%というのが四十三年度に記録されておるわけですね。そういうことでありまして、これをずっと歴史的に見ますと、これが負担が上がっていっております。法人税を見ますと、法人所得は四十年度は税が三四・五%でしたけれども、四十六年度は二八・一と、こうなっておるわけですね。私は、税の負担といった場合には、水平的に公平が保たれておるのか、垂直的に公平が保たれておるのか、これは二つが重要な尺度でありますけれども、前提はやはり水平に保たれておるというのが一つの前提になると思うのですよ。そういうことを見ますと、私は、この負担というのが、今日の推移をながめてみますと、クロヨンとよくいわれておりますけれども、水平的にも不公平であるし、垂直的には不公平がいよいよ拡大している、こういうふうに申し上げなければならぬと思うのでありますけれども、いかがですか。
  257. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま私は、わが国は低負担状態だというふうに申し上げましたが、お話しのように、これはマクロの話なんです。これをさらに分析してみます場合にどうであろうか。法人税と個人所得税、これは大体同じような額で伸びておるのであります。大体肩を並べております。これは数字にはっきり出てきておるわけであります。ところが、この両者を合わせますと、つまりいわゆる直接税、これの租税収入全体の中における比率がだんだんと高まっておるのであります。そこに一つ大きな問題があるだろうと思う。戦前は三分の二が間接税で三分の一が直接税であったのが、全く今日逆転をいたしまして、三分の二が直接税で三分の一が間接税だ、そういうようなことから負担感というものが訴えられるという大きな理由をなしておる、こういうふうに見ておるのであります。  したがいまして、私は、低負担社会であるわが国ではありまするけれども、負担感というものについて是正をしたい、改善をしたい、こういうふうに考えているのです。そういう意味で、直接税中心主義を間接税中心主義に持っていこう、こういうような考え方はしておりませんけれども、もう少し直接税中心を間接税のほうへ移行をさせる必要があるんじゃあるまいか、そういうふうに考え、四十六年度におきましても所得税減税を行なう。その所得税減税も給与所得者を中心とした減税にするというような方針をとる一方において自動車新税を創設する、こういうような考え方をとることにした。低負担の中においてもいろいろ問題はある、こういうことだけをお答え申し上げます。
  258. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いま大蔵大臣から直間比率の問題、昨年来から強く主張している問題が出ましたけれども、あとでこの辺は少し議論していただきたいと思う。  飛んで、中曽根防衛庁長官にお尋ねします。中曽根防衛庁長官は自動車重量税については賛成ですか、反対ですか。どちらですか。
  259. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 内閣と自民党の党議に従います。
  260. 細谷治嘉

    ○細谷委員 内閣と自民党の党議に従うと、こういうことでありますけれども予算が閣議決定されたのは十二月の三十日ですよ。四十六年の一月という日付で私あてに自動車重量税案反対陳情書、こういうものが私のところへ来ているのですよ。そしてその内容は、自動車重量税絶対反対ですと、こうきていますよ。そして全国自家用自動車協会会長中曽根康弘と書いてあるのですよ。どうなんですか。閣議に反しているじゃないですか、あなたの行動は。閣議に従う、自民党の党議に従うということであれば、こんな陳情書は出せないはずですよ。いかがですか。
  261. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そのとおりであります。その私の名前で出したのは、何かの間違いではないかと思います。
  262. 細谷治嘉

    ○細谷委員 間違いといっても、中曽根康弘というのはそうたくさんおらぬでしょう。  総理大臣、ちょっとお尋ねしたいのです。この陳情書を見ますと、日本トラック協会会長塚原俊郎。全国通運業連盟会長細田吉藏。何かの間違いじゃないですよ、これは。総理として、総裁としてどうお思いですか。閣議不統一、党議不統一ですよ、これは。いかがですか。
  263. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そういう団体からの反対陳情があったとは私は存じませんでした。閣議では閣僚全員でちゃんと決裁をいたしました。署名もちろん賛成、だれも異議なしに原案作成されております。同時にまた、党におきましてもやはり政府案、これを自民党の政調会も賛成だと、こういうことでまとまっております。あるいはいろいろの経緯もあろうかと思いますが、最終的に、ただいま申し上げるように別に閣議がどうも不統一だとかあるいは党の統制ができてないとか、さような問題ではないように思います。
  264. 細谷治嘉

    ○細谷委員 少なくとも閣議決定なり党議決定した段階で、影響力の大きい人でありますから、これは今後十分に配慮をしていただきたいということを私は申し上げておきたいと思う。  そこで、自動車新税について若干お尋ねしたいのでありますが、自動車新税というのは先ほど申し上げましたように、財政審の建議の中にもありませんし、税制調査会の答申、これもまた抽象的なことばなんですね。一体目的税にするのか、普通税にするのか、どの程度取るのかも税調が書いておりません。そして突如としてこの自動車新税というのができてきたわけです。突如として出て、あわてふためいてできたものですから、この自動車新税というのは現在ある八つの税の中のどれと比べてどこが違うのかというようなことについて、私はもうどうしても理解できません。その税の性格なりその税の規模なりあるいは税の配分なり使途なり、そういう問題について私はこれはもう全く納得できない、こう思うのであります。大蔵大臣、いかがですか。
  265. 福田赳夫

    福田国務大臣 この自動車新税は突如として出てきたわけじゃないのです。いま細谷さんは財政制度審議会の建議の中に一言も触れてないというお話でございますが、触れておるのです。つまり、こういうことがあります。「租税負担の調整」という題目のもとに「間接税の割合が低下する傾向にあることなどにかんがみ、長期的な視点に立って、税体系の在り方について検討すべきである。」これは先ほど私が申し上げたことなんですが、「また、」と次にあるのです。「社会資本の充実を推進するため、自動車関係諸税の新設または拡充に努めるべきである。」とはっきりそう言っている。また税制調査会におきましても、自動車新税の創設を答申をいたしておるわけであります。これは答申も答申でございますが、しかし、私どもはもう一年くらい前からこの問題は考えてきておる問題でございまして、つまり四十五年度予算におきまして十兆三千五百億円にのぼりまするところの新道路計画ができた。そこで皆さんからその財源はどうするんだというお話がありまして、それは実は三千億余りまだ用意がないんですというお答えをいたしましたところ、それは充実しなければならぬじゃないかというお話がありまして、それに対しまして四十六年度予算の際にはっきりその財源は全部充足するようにいたしますというお答えをいたしたわけです。  そういう経過をたどりまして、私ども大蔵省といたしましては、どういう充足のしかたをするかということを考えてきたわけでありまするが、やはり道路財源でありまするから、道路に対しまして負担をかけるところの自動車関係にこれを求めることが適当であろう。そこでまたいろいろなかけ方について構想がありまして、あるいは蔵出し段階においてどうでしょう、あるいは物品税というような形はどうでしょう、あるいはこれに関連をするガソリンというような形はどうでしょうというように、いろいろな構想がありましたが、結局自動車の社会負担を及ぼすその影響は何ではかるかというと、自動車のその重量においてはるということが適当じゃないか。そこで重量を基本にいたしまして課税をするという方式の課税方式、これを採用すべきじゃないかというふうな結論に到達いたしまして、自動車重量税ということになったのです。その重量というところにウエートがあるという点が、在来の自動車関連税制と違った特色と申し上げて差しつかえない、かように存じます。
  266. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大蔵大臣、たいへんきれいごとを言っておりましたけれども、いままでの税制調査会というのは、一体所得税の課税最低限等をきめる場合に扶養家族は幾らだ、妻の座は幾らだ、こう具体的にやって、今度のような抽象的な答申をしたという前例は私はないと思うのです。これは私がないと思っているばかりではなくて、政府におるその方面の関係者が現に雑誌等に書いてありますよ。それを見ても、やはりあわてふためいてとっさにできた税だ、こういっております。そして新聞等にも書いてありますように、税制調査会の権威はいまや地に落ちた、全く自主性がない、こういうふうにいっております。私もそう思います。  そこで、総理、お尋ねをいたしますが、ずいぶん昨年も批判されましたが、今年は決定的な批判を受けた税制調査会の自主性のなさ、こういう点と、もう一つやはり各界各層の代表という意味において、その構成を再検討すべきじゃないか。たとえば労働関係者からは二人しか出ておりません。三十人のうち二人、財界からは十人以上、それから農業団体なり中小企業団体からは一人も出てないわけですね。こういうような構成が——しかもその中には旧大蔵官僚がおる。こういうところから、独自の自主性がある答申が行なわれないのが今度きわまれりという、こういう事態になっておると思うのでありますから、税制調査会の構成をやはりもっと国民の各層を代表するように改めるべきだと思いますが、いかがですか。
  267. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 各種審議会の委員の選定、できるだけ各方面の意見を徴し得るような、国民各界を代表するような、そういう組織にしたい、これが私どもの念願であります。しかし、ただいま御指摘になりましたように、特殊なものについて、あるいは特別な知識を必要とするとかいうようなことで、必ずしも国民全般の意見を聞かれておらない、こういうようなうらみもなきにしもあらずです。しかし、ただいま御指摘がありましたとおり、これから先われわれができるだけ、審議会その他の委員会は、国民の各界を代表する、そういう適当な人を選ぶ、こういうような努力をする、これをお約束しておきたいと思います。
  268. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そこで、先ほど大蔵大臣答弁したのに私はもう一度お尋ねしたい。  十二月の十八日大蔵省が、税制調査会も抽象的だ、自民党の中もいろいろもつれた、そこで大蔵省一つ案があったら出してみぬか、それをたたき台にしようということで出された案が新聞に出ております。それによりますと、第一に自動車トン税、これを創設しよう。それは総合交通政策の観点から交通資本の整備充実に資するために、性格は普通税だ。それから第二番目は、重量に比例して出そう。ただし、自動車等はまたいままで問題がありますけれども、その点は是正されておりません。それからその四分の一は市町村の道路財源にしよう、こういっております。ところが大蔵省としては、明年度に限っていえば、道路分の財源不足について新税を起こす必要がないが、五カ年計画として見た場合には、三千ないし三千五百億円程度不足し、他方若干の市町村道路財源が不足するからやるというわけですね。あなたのほうは、四十六年度に限っていえば、財源不足はないのだというのですよ。そしてできたものはどうかといいますと、四十七年度から本格的になるというのですから、何も今度あわてふためいて自動車新税を設ける必要はなかったのではないかと私は考えております。  自治大臣にお尋ねいたしたいのでありますけれども、自治大臣、第六次の道路整備計画に基づきますと、一体特定財源は国は幾ら持っているかといいますと八〇%ですね。正確に言うと七九・七。都道府県が六九・八、市町村が一六・五であります。ずばり言いますと、国は八〇%の特定財源を持っているわけですから、二〇%の一般財源を出せばいい。都道府県は七〇%の特定財源を持っているのですから、三〇%出せばいい。市町村は一六・五%しかないわけでありますから、八三・五%の一般財源を出さなければならぬ。しかも第六次の道路整備計画というのは、八十五万キロを持っておる市町村——道路の大半、八割以上というのは市町村道ですね、それの整備に重点を置こうというにかかわらず、こういう財源状態でよろしいと思うのでありますか。私が申し上げた特定財源のウエートば正しいかどうか、今度の百億円が一部来ますが、それでやっていけるのかどうか、この点についてお答えいただきたい。
  269. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 地方、ことに市町村の特定財源比率というものは、ただいま先生御指摘のとおり、はなはだ低うございます。したがって、財源率のみならず改良率、舗装率等、国道及び県道と比較いたしまして市町村道は非常に低いのであります。これをぜひ整備してもらいたいという地方住民の要望は熾烈なものがあり、また当然であろうと思う。したがいまして、一般財源の充実を道路整備にはかってまいりましたが、今後この自動車重量譲与税の創設によりまして、五カ年計画の円滑な推進をはかっていきますけれども、さらにこの点につきましては検討を要するものがあろうと存じております。また検討をさらに続けたいと考えております。
  270. 福田赳夫

    福田国務大臣 今度の新税が四十六年度は要らないのじゃないかというお話でございますが、これは四百億円の収入があるわけです。四百億円というとなかなか予算編成上たいへんな金でありまして、ことに編成が最終段階にいくに従いまして大きなウエートを持つわけでありまして、四十六年度においてこれが必要はないのだということは申し上げたこともありませんし、また、これがなかったら予算編成は非常な窮屈なものになる、さように考えております。それから四十七年度においてこれは本格化するわけでありまするが、四十七年度では、おそらくこれが千二百億ぐらいになると思います。これらが主として道路財源に充てられるわけでありますが、これで、昨年の国会において私どもがお約束をいたしました新道路計画の道路財源は全部充足できる、かように考えております。
  271. 細谷治嘉

    ○細谷委員 四十六年度は必要ないなんということを言った覚えはないと言うけれども、これは、私とも新聞——例をあげましょう。日本経済新聞の十一月二十三日号には、大蔵省としては新税は見送りだ、四十六年度は新税創設の説得力はない。二番目は、総合交通政策が確立していない、税制調査会にも、新税創設は時期尚早との空気が強い。そうなんですね、事実。そういうことで、大蔵省としては、四十六年、四十七年度は新税創設を見送ろうという態度だったんでしょう。四十八年度ぐらいから何とか、税をやらなきゃならぬというのが報道されておりますよ。新聞がほんとうなのか、あなたの言うことがほんとうなのか。これは、そんなことありませんよ。ずっと流れを見てきますと、大蔵省は消極的だったじゃないですか。  そこで、それ以上争っても、時間がもったいないから、総理にお尋ねしたいのですけれども、いま私申し上げましたように、道路をやっていく場合に、今度の六次計画というのは、地方道にある程度重点を移そうということであります。ところが、国の特定財源は八〇%であります。都道府県の特定財源は七〇%であります。市町村は一六・五であります。そこで、スズメの涙のような、今度は百億が来たわけですけれども、この辺は、私は、市町村としては御期待に沿えないんじゃないか。ひとしからざるを憂えると書いてありますけれども、文字どおり、こういうものは憂えない程度に是正すべきではないかと私は思うのでありますが、この点をお尋ねしたいと思う。
  272. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 現在のところ、御指摘のような心配がないわけではございません。しかし、御承知のように、地方道から国道に昇格し、あるいは市町村道をでき得るだけ重要地方道等に指定する等の措置を、年々これはやっておるわけでございます。そういう要請も非常に強いので、そうした弾力的な運用をする予定でございます。  なおまた、市町村道につきましては、従来非常に延長の長いというのは、これは、主として人馬が歩くのが昔から多いのでございます。これが、最近のモータリゼーションによって、市町村道にどんどん車両が入ってくる。これを一挙にやることはなかなかむずかしいのでございまするので、建設省といたしましては、自治省その他と連携の上、いわゆる生活圏構想なるものをつくっているのでございます。そうして、市町村道のうちに、その地方地方の産業、文化等の今後の発展状況を見通しして、そうして道路のネットワークをつくっていかなければ、急激にはできないというような形でやっておるのでございます。  なおまた、国の特定財源からは地方には補助金、あるいは負担金等でやっておりまするので、市町村道は自己の特定財源もしくは自己の一般会計だけで道路をやっておるのではございません。そういう点は実情に合うように今後とも配慮してまいりたいと思っておる次第でございます。
  273. 細谷治嘉

    ○細谷委員 時間がたつばかりですから、次に、いろいろ問題点がありますけれども、租税特別措置、これについて一、二お尋ねしたいのであります。  予算委員会が始まる前に、四十六年度の租税特別措置というのは一体どのくらいの額に達しておるかという資料を要求しておりましたけれども、いまだに出ておりません。四十六年度の租税特別措置は幾らなのか。
  274. 細見卓

    ○細見政府委員 租税特別措置につきましては、御承知のように、特別償却とかいろいろなものが、当初予定いたしておりました規模よりも大きくなって四十五年から四十六年度へくるわけです。そういうものを調査いたしましてことしの新しい増減税を加算するということになりますので、いま一生懸命作業はいたしておりますが、いましばらくお待ちを願いたいと思います。
  275. 細谷治嘉

    ○細谷委員 この租税特別措置というのは、私は税体系をぶっこわしている税だと思います。それから、やはり負担の公平原則を破っているものだと思う。しかも、これが既得権化しているところにたいへん大きな問題があると私は思っておるのです。  そこで、交際費については若干この損金不算入額等について手直しをするわけですけれども、これもだんだんだんだんと細ってきて、そして今度の結論もきわめて細っております。税調の態度もだんだんだんだんもう腰がなくなった。たとえばこの四百万円プラス千分の二・五、こういうものについても触れよう、こういうことでありましたけれども、この辺も触れない、これはまことに遺憾であります。  それともう一つ、政府から出る租税特別措置については、全体を見ますと、四十五年度は、地方税も加えて六千五百二十一億円というばく大なものをやっているわけですから、四十六年度はもっと多額になっているでしょう。しかもその中を見ますと、その他の内訳に、交際費にはたいへんな特別措置をしているのに、これはプラスで数字を作用しているのだ、これはごまかしですよ。この辺もひとつ検討をして、できるだけ早くこの委員会に出していただきたい、こういうふうに思います。  税についてはいろいろありますけれども、時間がありませんから、次に移らしていただきたいと思う。  労働大臣、去年の予算委員会でも問題になったのでありますけれども、労働省の予算というのは、何千万の労働者に対しては、国の予算というのはまことに情けないじゃないか、言ってみますと、一般会計やなにかのやつは千億円をちょっとこえた程度、あとは全部、労働者の福祉というのは失業保険とかそんなものから出しておる金なんですね。これではまことに恥ずかしいと私は思うのでありますが、労働大臣はいかにお考えなのか、総理としてどうお考えなのか、まずお尋ねしておきたいと思います。     〔坪川委員長代理退席、委員長着席〕
  276. 野原正勝

    ○野原国務大臣 御指摘のとおり、労働省関係の予算というものは非常に少ないのでございます。四十六年で、一般会計ではわずかに千二百八十七億円、勤労者三千万人の対象としてはきわめてどうも少額であるという点で非常に遺憾に考えておりますが、しかし、これは特別会計その他でやっておりますので、必ずしも仕事ができないというものではないのでございます。特にことしは、新たに勤労者財産形成の政策を推進する、あるいは働く人々に適切な職場についていただくための前向きの雇用政策を推進するとか、あるいは技能労働者の養成確保、労働災害の防止、中小企業労働者、婦人及び勤労青少年といったような福祉対策等につきましても、かなり前向きの予算を計上しております。  実は非常にじみな役所でございまして、その点では必ずしも十分ではないのでありますが、しかし、与えられた予算を十分に活用いたしまして労働行政を円滑にやっていきたい。将来は必ず労働省側の要望は達成せられるであろうということを期待しております。一般会計は少ないのですが、御指摘の特別会計その他を入れますと、全体では七千五百五十九億円余りになっております。それらを含めまして、きわめて効率的な労働行政を進めたいというふうに考えております。
  277. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私はもっとやはり一般会計で、人のふんどしで相撲をとる、こういう予算のあり方が問題であろう、こう申し上げておるわけで、これは総理のお答えは要りませんけれども、ひとつ十分に労働者福祉ということは、これは当然なこととして私は一般会計で負担していくべきじゃないか、こう思います。いろいろな福祉センターができても、これはみんな失業保険金とかそんなもののもうけ出したやつからやっているわけですから、これはおかしいのではないかということだけを指摘しておきたいと思います。  そこで、昨年、労働省が各工場の有害物質取り扱い事業場総点検、こういうものを労働基準監督官も動員してやられました。けさも公明党の大久保委員からカドミウムの安中の問題が指摘されておりましたが、これを見ましても労働環境というのがこれはたいへんな事態にある。しかも工場等から出るたれ流しというものがたいへんなものだということを、私は驚きました。そこでこういう問題を迎えて、一体労働省としてはどう対処していこうとするのか、まずお尋ねしておきたいと思うのであります。
  278. 野原正勝

    ○野原国務大臣 御指摘の公害対策等につきましてはきわめて重大な関連を持っております。そこで、昨年の九月に全国の一万三千六百ほどの工場につきまして総点検を実施をいたしました。その結果、かれこれ千六百ほどの工場について改善の命令を発しましてやっておるわけでございますが、そういったことで、これからはそこに働く勤労者の健康の保持という問題のみならず、そこから排出しますさまざまな有害物質のたれ流しというふうなものを今後はひとつ労働行政の一環として最も力を入れたいということで、そのための監督指導をしっかりやっていこうということに改めまして、いまやその体制を整えて今後進めていこうという段階でございます。
  279. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は、職場の労働環境というもの、いわゆる労働環境におけるもろもろの有害物質の許容量という問題と、それから工場外に出るたれ流しの問題、これは私は一体のものだと思うのですね。工場内部だけやっておって、それでたれ流しができてくるというものじゃないと思う。やはり労働環境整備される、いろいろな有害物質の許容量というものがきちんとされておる、そういうことになれば、私はたれ流しというものは起こらないことになろうと思うのですよ。ところが、労働省の資料によりますと、業務上の疾病の推移というものを見てみますと、三十五年から四十四年まで見ますけれども、残念なことに毎年のようにふえておるわけですね。しかも、私はあとからちょっとお尋ねいたしますけれども、けさの新聞にも出ておりましたけれども、新公害、石綿粉じん、いわゆる石綿によって肺ガン等ができてきている。これはけさの新聞にも出ておりました。こういう問題は隠されがちなんです。たとえば工場医が真相を言わないで、そしてほかの病名でやっておりますから、事態はきわめて危険な状態にあると私は思うのです。私も二十二年工場につとめておってよく知っているのですから。いままでの労働省の基準監督官として行政上足らない点があったのではないか。私はこう思うと同時に、今日のこの面に対する労働基準法を受けての安全衛生というものの法律そのもの、規則そのものも、今日新事態に対応する内容を持っておらない、時代おくれのものだ、私はこういうふうに申さざるを得ないと思うのであります。たとえばいまの安全衛生規則等から、具体的には有機溶剤についての中毒の予防をしよう、四アルキル鉛の中毒予防をしよう、鉛の中毒の予防をしよう、これだけなんですね。あと何にもないでしょう。ところが、これはたいへんなものでありまして、たくさんの有害物質があることは御承知のとおり。そこで、すでに労働衛生研究所あるいは日本産業衛生協会許容濃度等に関する委員会の勧告も出ておることであります。これはいろいろな物質の許容濃度、騒音、それから高温、こういうものに分けて、この勧告の前文の精神を尊重して各工場等許容量をきめてくれと出ておりますが、そういうものに基づいていまの安全衛生規則等、基準法の問題にも関係しますけれども、積極的に今日のこの事態に対処するための規則改正なりあるいは規則の充実なり、あるいは労働基準法という問題はなかなかなんですけれども、安全衛生規則というものについてもっと抜本的に触れる必要があろうと思うのでありますが、労働大臣いかがですか。
  280. 野原正勝

    ○野原国務大臣 労働安全基準に対するさまざまな政策につきまして、必ずしも十分でないことは承知しております。そこでただいま御指摘のございました四アルキル鉛の中毒の問題、あるいは有機溶剤等の問題につきましては、それぞれの予防規則等がございます。しかし、これがどうも必ずしも十分ではない。最近の状況等から考えましてこれは急速にひとつ改める必要があるのではないかということで、いま検討しております。  そこで、いろいろな関係方面の御意見等をできるだけ早く聞きまして、それによって労働者の健康を保持する。同時に、公害対策に万全を期するという点で、これらの規則等を改正いたしたいと考えておるわけでございますが、まあ労働基準法全体の改正までにはいかないと思いますけれども、とりあえずそうした衛生関係の規則だけは至急に改定をいたしたい。その方針で進めております。
  281. 細谷治嘉

    ○細谷委員 最後に一点お尋ねしたいのでありますけれども、こういう問題に関連していわゆる石綿、アスベスト、これで肺ガンになる。現に和歌山県ですか、大阪のほうでは七、八人も死んでいるという実例もあるわけですね。もう一つは染料工場なり有機薬品工場で芳香族アミンによる膀胱ガンという問題もあるわけですね。ところがこれはみんな伏せられております。そうして各工場から調べたものも的確じゃない。調べたものも労働省はなかなか外に出さぬということでありますが、昨年の四月の三十日に労働基準局長から各都道府県の労働基準局長に通達が出ておりますよ。私は、労働省がおざなりだという一つの証拠であろうと思いますから指摘しているわけですが、この指摘の中に、尿路発ガン性物質の製造、取り扱いに関する業務というのがあります。この具体的な詳細な指示事項の中にどういうことが書いてあるかといいますと、少しこまかいことでたいへん恐縮でありますが、これはしかし政治の姿勢に関係しますからね。アルファナフチルアミン製造の際の最終製品は、ベータナフチルアミンの含有率が一%未満のものが多いのだ、こういうことを前提としてあなた方通達を出していますよ。ところがアルファナフチルアミンというのは、これはたいへんな発ガン性を持っている。アルファナフチルアミンそのものは発ガン性はないわけですけれども、その中にベータナフチルアミンというのが入ってくるわけですよ。それを一%以下ということを前提にしているわけですから。現実はあなたのところの労働衛生研究所の詳しい報告では四%と出ておるのですよ。それなのに一%だということになりますと、あなたのほうの指導によって膀胱ガンを引き起こさせるという問題が起こると思うのですよ。こんなおざなりの通達を出してはいかぬ。あなたのほうの機関に労働衛生研究所があるでしょう。そこに詳しい報告が出ておりますよ。そういうことからいって、私は、あなたの労働省も、労働者の衛生、健康を守るという意味においてどうも企業サイドに過ぎておる、だからこんな通達が出るのだと、こう申し上げざるを得ないのでありますけれども、簡単にひとつ労働省の態度をお聞きしたい。
  282. 野原正勝

    ○野原国務大臣 発ガン性物質等いろんな問題があるわけでございます。それにつきましては、特にベンジジンやベータナフチルアミン等につきましては、これはきびしく監督指導をしておるわけでございますが、こういった問題につきましては、特に従業員の特別健康診断を実施をしておりますし、またそういった対策につきましても遺憾のない措置を講じたいというふうに考えまして、特にこうした有機化合物やいろんな発ガン性物質にかかわりのある工場等につきましては、特別の対策を講じてまいりたいというふうに考えておりますので、公害問題に関連のあります問題は、いままでもやっておりましたが、今後は特に厳重にこれを指導監督して、災害の起きないように計らってまいりたい、そう考えております。
  283. 細谷治嘉

    ○細谷委員 労働大臣、私は、工場でできるものは発ガン性の非常に強いベータナフチルアミンというのは一%以下なんということはないんだ、あなたのほうの研究結果もやはり必ず四%ぐらいある——特別な方法でつくる以外には、一般の工場でできるものはもうあるのですから、そうしますと、これはもう普通のものの十六倍もの発ガン性があるということを、あなたのところの研究所の人が言っているわけですから、それをちゃんと尊重して、研究と労働行政とは、研究を生かす。おざなりのことをやったのがいままでの労働省なんですから、バンドを締め直してやっていただかなければならぬじゃないかということを申し上げておるわけです。  そこで、時間もありませんから、ひとつ公害問題についてお聞きしたいのでありますけれども、せんだって山中長官、問題になっております無過失責任については、毒物、劇物等の個々についてひとつ検討をして、これが無過失責任賠償制度に持っていくか、あるいは挙証責任の転換ということで、来月の十五日までを目途にして法案を出せるように努力をしたい、こういうことをあなたおっしゃっておりましたね。ところがあなた知っているように、毒物、劇物というのは急性中毒の薬なんですね。問題は、やはり公害というのは、急性中毒もさることながら、慢性中毒あるいは今日問題になっておる発ガン性等があるかないか、あるいは発ガン性どころじゃなくて最近は、次の時代の子供たちにも、大きく染色体が変化して遺伝をするというようなたいへんな問題を持っておるわけでありますから、これはあなたの言う急性中毒を対象にした毒物劇物法では、その一品目ごとにつかまえて無過失責任賠償制度をつくるなんていっても、私はこれは山中さんらしくないと思うのですね。あなたの一刀両断に断つような性格からいくならば……。私どもはせんだっての国会で、環境保全基本法に基づいて、それを受けて出しましたので、まあ今度は基本法が修正されてできましたから、基本法何条を受けて、私どもの出したのには物件も入っておりました。しかしまあその物件をはずすことにいたしましても、公害基本法を受けての典型公害、こういうもので無過失の事故が起こったらば、これはやはり賠償するというのが筋であって、一品目ごとに法律をつくるなんというのはおかしいと思うのですよ。ですから、公害基本法の典型公害でそういう事態が起こったならば、これは過失であろうと無過失であろうと、民法の例外として無過失責任制度を確立するということをぜひ今国会でやるべきである。まあ私どもがせんだって出したあの見本のうち、基本法を受けるということとそれから物件の項を除いたら、これはどなたも異議のないことだと私は思うのですけれども、この点についてひとつ長官の御意見を伺いたい。
  284. 山中貞則

    山中国務大臣 私が先般答弁いたしましたのは、毒物劇物取締法の品目に従って無過失賠償責任ないし立証責任転換の法律をつくろうという検討をしておるという意味ではありません。それらに掲げられてある物質の中、たとえば水銀も掲げてありますね。そういう問題等にかかって、ただいま言われた基本法の典型公害という現象が起こった、そういう起こった場合には今後は挙証責任の転換もしくは無過失賠償の対象になるのだという法律ができるかどうかという検討、あるいはまた現在の各種規制法の中で、鉱業法等に準ずるようにその法律によって生じた被害の賠償については無過失であるというようなことができるかどうか、これらの問題をいま事務的に検討を命じて、私も一緒に作業をしております。ただし、締め切り日が一般法については二月の十六日という一応の国会との申し合わせ等があるように伺っておりますので、それまでに間に合うように努力をいたしたい、こういうことを答えたわけでありますが、しかしながら、事、今日の状態のような典型公害訴訟みたいなことが今後起こってはいけませんので、そういうことを踏まえて、できればそういう日にちにこだわらずに、もし法律ができ上がったならば御審議を願いたいという意味のことを松野委員の質問に対して答えたわけでございますから、ただいま言われたような趣旨とは少し違うわけでございます。
  285. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は、これは非常に重要な問題でありますから、広範な、単にいわれておる公害という形、そういう問題でとらえるのは問題があろうと思うのですけれども公害基本法を受けて大気汚染防止法、水質汚濁防止法あるいは農薬取締法と、いろいろな法律ができておりますね。その法律の個々について無過失責任賠償制度を確立すればいいじゃないか。あるいは毒物劇物なりあるいは薬事法なり、あるいは食品衛生法なり、そういう個々の法律について無過失責任賠償制度を確立しておくことがよろしいのじゃないか、そういうふうに私は思っておるのです。いかがですか。
  286. 山中貞則

    山中国務大臣 そのことも含めて検討しておるという意味であり、すなわち原子力損害賠償法、鉱業法等に準ずるような、なじむ法律があるかどうかというのは、ただいま申し上げました公害に関する各種取り締まり法規に対して、その法規に反したことによって損害が起こった場合における無過失賠償というものを検討しておるということであります。
  287. 細谷治嘉

    ○細谷委員 これはまあ昨年の九月の二十一日ですか、一日内閣で総理が宇都宮で言った。それからまあ検討、検討となっているのです。しかし、この問題なしには、やはり私は公害問題の解決はあり得ないと思っているのですから、私は申し上げたし、またそういう方向でも検討をしておるということでありますから、個々の法律について必要な無過失賠償責任制度を確立していくべきである、こういうことで早急にひとつ検討をして、できるものから今国会に出していただきたいと思うのでありますが、総理、一言、この問題、重要でありますから。
  288. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 山中総務長官の先ほどの答弁どおり政府としては考えております。
  289. 細谷治嘉

    ○細谷委員 次にお尋ねしたい点は、今度の予算編成では、大蔵大臣が物価と公害だと言っていましたけれども、開いてみたところが、まあ物価もあまり実がない。公害については、予算は一八・四しか伸びてないけれども、三十何%伸びた、だからおおばんぶるまいだと、こう言ってておりますけれども、おとといですか、発表されましたニクソンの予算教書を見ても、公害関係は一七〇%ですよ。環境保護局関係のものは一九三%です。下水道処理関係は二一三%と、公害関係の予算が伸びておるわけでありますから、私は、大蔵大臣、いばるようなものじゃないと思うのですよ、これは。一億円が二億円になればこれは二倍ですよ。十億円が二十億円になったら二倍ですよ。そんな率の問題じゃなくて、私は量の問題、今日の公害の量に対応するやはり予算が必要である、こういう点ではどうも大蔵大臣のことばと内容とは違うのではないか。しかも尊敬されておるニクソンは身をもってこの点について予算をつけていますよ。きわめて不満でありますが、まだ大蔵大臣、これは重点だと思っているのですか。
  290. 福田赳夫

    福田国務大臣 今度の予算の精神として、ねらいをつけておるものは物価と公害なんです。これは変わりはございませんです。公害はとにかくだれが対策をとるかというと、まずその企業家です。公害をもたらす企業家がもたらさないような負担をする。これは私試算をしてみようと思ってみたのですが、なかなかこれは膨大なものでありまして、とても手に負えそうもないのでございますが、これはもうほんとうにたいへんな額が公害に投ぜられるだろうと思います。その企業企業のやり切れないものを地方公共団体が中心になってやります。地域社会の問題だと、こういうことです。そこで、その額がどうなりますか、これは地方財政計画が作成せられるという段階において総額は明らかになりますが、その地方団体の行なう公共事業に対しまして国は助成をするわけなんです。国が行なうのはその助成の仕事と基本的な諸問題ということになりますが、それがまあ国の一般会計、特別会計を合わせての負担として九百三十億円になる。しかしこれはそれだけじゃないんです。財政投融資、これが千何百億になりますか、千億ちょっとこえる額が公害対策として使われる。それからさらに減税の計画の中にも公害、これは重点項目として入っておるわけです。また関税におきましても、御承知のように、重油脱硫に対しまして軽減措置を講ずるとか、あるいは新たに低硫黄の輸入促進のための関税軽減を行なうとか、いろいろ措置をとっておるわけであります。総額にいたしますと大体三千億ちょっとこえる、こういうことになるので、公害対策予算という名実相伴わぬというようなものとは決して考えておりませんです。
  291. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大蔵大臣は、内心はこれは呼び出しと内容は違うのだと思っておるでしょうけれども、ここではそう言わざるを得ないでしょう、しかしニクソンの予算教書と比べれば天地霄壌の差がある、こういうふうに、少し大げさでありますけれども、言ってよろしいんじゃないか、こう思うのです。  そこで、この前の国会でも問題になりましたし、また参議院の段階で、国と地方との関係でたいへん問題になって山中さんが再三にわたって統  一見解という名で出したわけでありますけれども、この点についてまず自治大臣にお尋ねします。  基本法十九条に基づく内閣総理大臣が指定した仕事、これについては内閣総理大臣公害の激しいところについて公害防止事業をやると指定したわけだね。それが、すでに指定されておる三カ所、市原、岡山、四日市等で地方負担が六百十億円になるのですよ、あなた方の許可した事業計画。去年のものについては、東京、神奈川、大阪は、まだどうなるのか、許可にもなってない。この辺で、この間出ました公害防衛計画という東京都の関係についても詳しくお聞きしたいのでありますけれども、時間がありませんからお聞きしませんが、何といいましても二十条に基づく国の財政的な責任、二十三条に基づく国の財政的な責任というのは、今国会で解決しなければならぬと思うのでありますけれども、どうなっているのですか。
  292. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 ただいまお話しのとおりでございまして、この点につきましては関係方面と、ただいまこう言っておる段階においても、国の特別の財政上の措置を講ずべく、特別措置法を出すべくせっかく検討をいたしております。すなわち、これらの事業のあるものにつきまして、財政上の補助金のかさ上げその他地方債の適用範囲の拡大及びその充実、その他これが地方債の元利償還に対する地方交付税に関する基準財政需要額への算入というような点につきまして、せっかくいま検討をいたし、いろいろ御相談を申し上げて、これが成案を得ました暁においては、なるべく早く提出をして御審議を願いたい、こういう作業をいたしております。
  293. 細谷治嘉

    ○細谷委員 時間がありませんから要望だけしておきます。  自治大臣、あなたは十九条に関連する二十条の措置だけ考えておる。これはよろしくない。やはり前国会の答弁を通じて二十条の措置と二十三条の措置をすべきである。山中長官は二十三条も含めて検討すると、こうおっしゃっておるわけですから、これをひとつ当然のこととして、二十三条も含めてやっていただかなければならぬということが一つ。  それからもう一つの問題点は、せんだってできました事業負担法。事業負担法というのは、これは国なり地方公共団体の責任というのは明確じゃありませんから、いわゆる公害防止事業法というようなものが当然私は必要になってくるであろうと思うのであります。  それからもう一つ、二十条の関連について、大蔵大臣はどうもお得意の地方団体に補助をやる場合に財政力指数というのを持ち出すだろうと思うのでありますが、地域開発ならともかく、うしろ向きのこれを前向きにしようという公害防止事業については財政力指数なんという変なけちくさいことは持ち出すべきじゃない、やはり積極的に公害に取り組むべきだと私は思うのでありますが、この辺についてひとつ山中長官、ずばりお答えいただきたいと思う。
  294. 山中貞則

    山中国務大臣 自治大臣から御答弁がございましたが、ただいま考えております範囲は、公害基本法第十九条の公害防止計画に伴う事業については、それぞれ二分の一を下らざる補助率を想定をしてただいま検討中でありますが、中には廃棄物処理等について補助率の実際上確定いたしておらないものの確定、これは屎尿とかごみだけについてございますので、新たに方針を変えまするし、あるいはいままで補助がございませんでした緩衝緑地等の事業についても、これを定めてまいりたいと思います。  さらに、ただいま御指摘になりましたその他の全国いずれの地においても施行が予想されまする範囲のもの、たとえば河川の汚泥しゅんせつ事業、港湾汚泥しゅんせつ事業、その他公害防止機器の整備に対する補助、それらについてもやはり二分の一を下らざる、すなわち統一見解の、国が財政的な一義的な義務を負うという形を遂行できるようにしたいと考えております。  さらに、これは自治大臣専管のことでありますが、公害債ともいうべき起債のワクを設定いたしまして、これによって起債を起こしやすくすると同時に、交付団体についてはその五〇%を元利補給をもって交付税で補てんをするという措置、並びに不交付団体については、これの起債の条件その他について別途配慮をしようということでただいま検討を進めておりますが、ここ一両日中にその結論が出るものと思いますので、それらを含めた特別立法を提出する予定でございます。
  295. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そこで山中さん、野党から出しましたこの二十条、二十三条を含めての地方財政措置というのは、あなたが苦労してつくられた過疎法案、できましたね。あれのタイプをそのままとって、あなたのまねをして出した法律なんですから、あなた異議ないと思うのですよ。早急にひとつ出していただきたい、こう思います。  次に、環境庁というのができたのです。アメリカが環境保護局、私どもが出したのは環境保全基本法というのですから環境保全庁、アメリカは環境保護局あるいは環境保全庁かになるんですけれども環境庁という名前になったのですが、こんなことを議論してもしようがないけれども環境庁ということでそのいろいろな問題点がありますけれども、ここでひとつ承っておきたい点は、環境庁ができた以上は当然それは環境保護の役割りをするでしょう。環境保全の役割りをするために専任大臣ができるわけでありますが、伺っておきたいことは、こういうようになった場合には、やはり工場立地というものについて規制をしていかなければいかぬ、公害の立場から。いわゆる工場立地規制という形の法律をつくる必要があるのではないか。それから、千葉県やあるいは神奈川県では、国会の審議の状況を見まして、公害対策条例のほかに、もっと次元の高い環境保全条例というものをいまつくろうとする動きがあります。まあ政府のこの間できた基本法というのは、当面の公害に対することだけでありますから、環境庁ができた以上は、環境保全の、あるいは環境保護基本法なりあるいはこの工場立地について、公害の立場から規制していくということについて、やはり環境庁は当然責任をもって対処していかなければならぬと思うのであります。  もう一つの問題は、行管の長官もおりますけれども環境庁のことでいろいろ縦割りでくすぶっておりますね。アメリカのこの環境保護局というのはずいぶん思い切ってできておりますよ。これは公害教書を見ればはっきりする。その辺でどうもたいへんけちくさいと私は思うのですよ。り行政の弊が依然として残っておるという感じがいたします。この辺についてひとつ長官なりあるいは行管長官の簡単な答弁をお聞きしたい。
  296. 山中貞則

    山中国務大臣 御意見のとおり、今回出発いたします環境庁の大半は、自然環境の保護ということに人員、機構、事業主体とも重点を置いておるわけでございます。さらに将来は、今後検討いたしつつ、全国の緑地その他の自然保護環境等についても取り組んでまいりたいと思いますし、鳥獣保護その他も今回は取り組んでおるわけでございます。将来の産業立地の問題として、産業立地の公害に関する分野については、全部新設の環境庁に勧告、協議の権限を持たしておりますから、一方的にこれが通産行政その他によってのみ立地されることはあり得ない形態になるものと考えております。
  297. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申します。  環境庁公害関係の行政の総合調整を主眼といたしまして、公害行政に関連する公害規制の問題を一元的に網羅しまして、強力な環境庁に育て上げたいと存じます。
  298. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そこで、ひとつ行管長官と農林大臣と厚生大臣にお聞きしたいのでありますけれども、一月の十八日に、農薬による危害の防止に関する行政監察結果に基づく勧告、私はこの勧告を読みまして、非常にりっぱな、ポイントをついた勧告だと思っております。これは早急にやらなければならぬ。そのためには行管長官が渋っておる人員の増加を、みずから研究員等の増加をやりなさいということもここに書いてありますよ。たいへんけっこうなことでありますが、行管長官はこれをどう推進していくのか。これを受けて、農林大臣と厚生大臣はこれからどうしていくのか。農薬汚染というのはたいへんな問題でありますから、ひとつお伺いしておきたいと思うのです。
  299. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまお話のございました行管の勧告を農林省は受けて、これを拝見いたしました。その内容はきわめて適切な勧告でございますので、私どもといたしましては、あの趣旨を尊重して、できるだけ早く体制を整備し、御期待に沿うようにいたしたいと思っておるわけでありますが、御存じのように、去る臨時国会で法律を成立させていただいた、改正案が成立いたしたわけでありますので、ちょうど私どものほうではその準備をいたしておる最中でございましたので、たいへん好都合であると存じます。
  300. 内田常雄

    ○内田国務大臣 農薬の問題に関する行政管理庁の勧告は、私は妥当なものだとすなおに受けとめております。御承知のように、厚生省でも、農林省が登録をいたしました既存の農薬のうちでも危険性が高いと考えておりますパラチオン農薬とかBHCとかDDTとか、あるいはドリン系の農薬など、かなりの範囲にわたる農薬とそれが使われておる食品等をからみ合わせまして、すでにかなりの残存許容量というものをきめてまいってきておりますけれども、そのスピードが十分でないと思います。これからさらに、ここ一、二年ぐらいの間に二、三十品目以上の食料品につきまして、またこれに配するに、新しい農薬等をも含めまして残存許容量をきめまして、しかも、その使用基準というようなものを農林省のほうに徴して、これを農薬使用の農家に十分指導していただくようなことをつとめてまいる計画でおります。ただ、人が少ないという点がございますので、これらについては私どもも十分人のことも考え、行管庁とも打ち合わせてまいる所存でございます。
  301. 細谷治嘉

    ○細谷委員 「農薬害とその対策について」、これを見ますと、最近できました日本の食品残留農薬許容量というのはたいへん不十分であり、たとえばアメリカでは、対象食品として、果実は四十一種類、野菜は八十四種類、穀類は二十種類、牧草が三十八種類それから乳類でも十八種類、そして農薬は百四十種類にわたって許容量を設けておる。ところが片や日本はたった十二品目、七農薬のみにすぎない。こういうことなんですね。ですから、これはたいへんなおくれでありますから、ひとつ早くこの問題について対処していただきたい。こういうことを強く要求をいたしておきたいと思います。  次に、厚生大臣、すっと突っ走って恐縮なんですけれども、あなたのほうでは、最近ネーダーさんが——ネーダーさんばかりじゃありませんよ、FDAが問題にしておるたとえば色素の問題とか、そういうものについて、アメリカのFDAの結果が出ているのに、心配だということは言ってあるのに、依然として許可は続けておる、禁止しない、こういう問題もありますよ。たとえば紫色一号、これなどもアメリカの研究、動物実験の結果は、少し危険がある、デラニー条項の精神でいけば、あぶないものはやめるということです。しかも、この間はまたアメリカのミカンのカビよけのジフェニールというものまで条件がついたのに、あなた許可したでしょう。そういうことでは厚生省の基本的な線からはずれているんじゃないか。こんなことでは食品行政をあずかる厚生省としてはどうも不十分じゃないかと私は思うのですよ。もっとはっきりと——薬が十万種類なんということも問題がいろいろとありますけれども、きょうは触れませんけれども、もっとやはり厚生省は、人の健康、生命を守るというのでき然たる態度を堅持すべきだと思うのです。ジフェニールもあぶないのですよ。紫色一号もあぶないのですよ。こういうのは早く、アメリカの実験結果もあるわけですから、禁止なさったらどうですか。業界から困ると言ってきたら、はいはいということ、アメリカからミカンを買ってくれといったら、ジフェニールでカビを防いであるそういうミカンも買う、こういうことではよろしくないと思うのですが、いかがですか。
  302. 内田常雄

    ○内田国務大臣 薬が多過ぎるというような問題、また食品添加物につきまして、私が就任をいたしました一年有余の間にかなり整理の方向に向けてまいりましたが、まだいろいろ御批判があるようでございますので、私は単に有害なものだけでなしに、無害であっても意味の乏しいものや無益なものは、みなこの際やめろというようなことで実は指導をいたしておりますので、細谷さんの御忠告は、私はすなおに受けて前向きでまいりたいと思います。  ただジフェニールにつきましては、御承知のとおりレモンが輸入自由化になっておりますけれども、ジフェニールという、レモンを日本に輸出してくる際の箱の中に入っている、一つの防腐塗料を塗った紙が入っているのでございますが、それを私どものほうは従来添加物としては指定をいたしておりません。そういうものが昨年十月入ってまいりましたので、私のほうの所属の食品衛生監視員が、これは指定外のものであるということで、このレモンの箱の中に入っているその紙の廃棄を指示をいたしましたために非常な混乱が起こってまいりました。そこで、調べてみましたところが、これはおことばを返すようで恐縮でございますけれども、ジフェニールを添加物として指定しておりませんのは、先進国では日本くらいのものでございまして、アメリカでも英国でもドイツでも、どこでもみなこれは指定し、またFAOとかWHOなどでも、一定の許容限度のもとにその使用を認めておるということがわかりましたので、近くこれは許可せざるを得まい、また許可をいたしましてもそれに対する危険はない、こういう慎重な考慮に立って処理しておるものでございますので、特につけ加えさせていただきます。
  303. 細谷治嘉

    ○細谷委員 許可するということは、どうも私は問題があろうと思うのです。カネミオイルのあの問題は、ジフェニールに塩素のついたやつで起こったのですよ。クロルジフェニール、今度はアミノジフェニールという、たいへんな発ガン性を持っているのです。ですから、あの学者が、あなたのほうの調査会の学者も、その骨格であるジフェニールというのについてはわざわざ三条件つけたでしょう。その三条件というのは、それは学者の条件であって、許可するほうは条件つきなんということはないのだ、こういうことで許可されることはたいへん私は問題があろうということでありますから、申し上げておきます。  そこで最後に、総理、私はやや心配している点は、ことしは一九七一年なんです。関東大震災というのがありましたのは大正十二年です。ところが、もう八年いたしますと、六十九年周期説、六十九年プラスマイナス十三という範囲内にこの五百年来の統計では九九・九%大地震が起こっているわけですが、その時が来る。震度六とかマグニチュード八・七とか、そういうものが起こっているわけですが、大正十二年のときとはがらり条件が変わっております。自動車はたいへんであります。石油コンロはふえております。ビルディングは木造からややじょうぶになったにいたしましても、これは自動車は多いし、ガソリンタンクは多いし、LPガスは多いのですから、たいへんな事態になるんじゃないか。それにはもうすでに危険区域にはあと七、八年で入ろうとすることでありますから、総理大臣を本部長とする災害対策本部でこれについて事前に備えなければ、忘れたころに来るんじゃないのですから、私はたいへんなことになろうと思うので、最後に一つこの問題について総理としてどう対処していくのか、どう推進していくのか、この点をひとつお尋ねをいたしましておきたいと思うのです。
  304. 山中貞則

    山中国務大臣 災害対策本部で、ただいま消防審議会の答申に基づいた各種問題点についてそれぞれ七つほどの部会を設けまして、どのような場合に対処すべき方策ありやを真剣に検討中でございますが、その過程で一々想定したものをそのまま発表いたしますと、これはやはりそのような場合における非常な人心動揺等も事故のもとになったり災害を大きくしたりする例をわれわれは知っておりますので、あまり公表はいたしておりませんが、各部会において慎重に詰めつつございます。空海陸ともに東京を中心としたこれだけの、すでに大正十二年とははるかに態様を異にした御指摘のような事態の中で、東京全体が、道路という道路が火の海にならないような措置がとり得るかどうか、これらも含めてよく検討いたしておりますので、総理のほうにもそれらの検討がまとまり次第御報告申し上げて、対処すべき方策をお願いをいたしたいと存ずる次第でございます。
  305. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 ただいま山中総務長官から申されたように、中央防災会議でいろいろやっておりまするが、建設省といたしましては、主としていま江東地区のように非常に密集して非常に危険度の多いところについては、特に本年から避難緑地の設定、それから防災建築あるいは都市開発等がそれぞれやっておりまするが、これは幾らそういうものをつくりましても、結局人間のそういう状態に対する対応の心得が非常に大きな問題だと思います。このためには、ひとつ大きな総合的な演習をやれという意見もございまするが、それをやるとただいま総務長官が言われた人心の非常な動揺があります。そこで、われわれは、東京都その他の地方自治体において、あんまり広範囲ではなく、せめて区程度の小範囲なところでいろいろと演習的な指導をしていく、一般の国民方々も対応する心がまえをつくっておくべきだということをお願いしている次第でございます。  道路、それから建築物については、それぞれ建築基準法も改正もいたしましたし、あるいは道路等についてもでき得るだけそうした事態に対応する最小限度のことはいたしますけれども、なかなかこれだけでは十分できませんので、ただいま申し上げたような総合的な御指導をお願いしている次第でございます。
  306. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 消防庁も関連をいたしておりますので、対策について考えているところを御参考に申し上げたいと思います。  こういう事態に対する消防力の強化ということにつきましては、逐年予算措置を通じましてこれが拡充強化をはかってまいりたいという基本的考えのほかに、さしずめ、大震火災発生ということをあまり申し上げて人心を不安動揺させてはいかぬということは十分考慮をいたしつつ、そういう事件発生のときの火災の発生の防止、初期火災避難誘導等、人命の安全確保をはかるための基本的な事項を盛り込みました大震火災対策指導要領というようなものもつくりまして、ブロック会議等を通じまして、人心に不安を与えないように全国の市町村を指導してまいりたいという点も考えております。
  307. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 過去の関東大震災、もうずいぶん古いことになりますし、まあ私くらいの年配だとちょうど大学在学中でございました。私には十分の記憶がございますが、しかしお若い方には関東大震災といってもなかなかわからないだろう。経験をした者から見るとたいへんな問題でございます。ことにその後の東京、たいへんに膨大になっております。いまの人口密度から、また建物も、ただいま御指摘になりました自動車も、もうあらゆる面で隔世の感があるというか、そういうようにものが変わっております。そういう際に過去のような大震災が起こればたいへんな問題になるだろう。だれでもわかることなんですけれども、ただ過去の経験を十分に生かすという人が、その経験のない者に幾ら警鐘をたたいても、これはなかなか納得ができない。わかりかねる。これだけ便利になってそんなばかなことがあるか、こういうような問題だろうと思います。で、最も大事なことは、先ほど来山中君が指摘いたしまししたように、これだけの都市に住んでおる人たちに不安を与えるようなことがあってはならない。そこが政府の重大なる責任でもあります。したがって、対策は綿密に立てていくけれども、絶対に不安を与えないようにしなければならない。そこでいわゆる流言飛語、これは慎まなければならない。しかし災害は忘れたときに起こる、やってくる、こういうことがしばしば言われておりますし、われわれは絶えずそういうものに対していかに処置するか、これは十分、腹づもりだけではなく具体的な計画をもって対処するようにしなければならない、かように私は思うのでございます。  ただいまの細谷君の御注意、しごくごもっともだと思います。問題は、政府の態度もさることながら、都民の皆さん方のこういう事態に対する心組み、心がまえができておらないと、意外な方向に走りがちではないだろうか。ことに最近一番困りますのは、自分のことは考えるが、他人のことは考えない、あるいは社会的なことは考えない、非常に個人主義的な考え方に変わっております。こういう問題が、ただいまのような災害が起きたときに、はたしてどういうような結果を生むだろうか。つい二、三日前、ゆうべでしたか、二十代の世論調査をしている。それに、一体生きがいがあるかないかとか、どういうように感ずるかというような問いを出しておる。その中でやはり出てくるのは、どうも他人のことにあまりかまっておれない、自分本位にものごとを考える、そういう形のものが非常に強く出ております。私は、そういうようなことがありますとたいへんな問題だろう、かように思いますので、政府の姿勢もさることながら、協力を得るような処置がぜひとも望ましい、かように思いますので、少し長くなってまことに恐縮ですけれども、具体的な問題については不安を与えないように取り進めなければなりませんし、また細谷君からも建設的ないろいろの御意見もあるだろうと思います。そういうものも、また他の機会に遠慮なしに政府を鞭撻する意味で教えていただたい、かように思います。
  308. 細谷治嘉

    ○細谷委員 備えあれば憂いなしということで、それにやはり積極的に取り組んで、不安がないように具体的に対処していくということが必要であろうと思いますから、ひとつ積極的に取り組んでいただくように強く要望して、私の質問を終わります。
  309. 中野四郎

    中野委員長 これにて細谷君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十五分散会