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1971-01-30 第65回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年一月三十日(土曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 田中 正巳君 理事 坪川 信三君    理事 藤田 義光君 理事 細田 吉藏君    理事 大原  亨君 理事 田中 武夫君    理事 鈴切 康雄君 理事 今澄  勇君       足立 篤郎君    相川 勝六君       赤澤 正道君   稻村左近四郎君       植木庚子郎君    内海 英男君       小沢 一郎君    大坪 保雄君       大野 市郎君    大村 襄治君       奧野 誠亮君    賀屋 興宣君       川崎 秀二君    上林山榮吉君       笹山茂太郎君    田中 龍夫君       登坂重次郎君    中村 弘海君       中山 正暉君    西村 直己君       野田 卯一君    野中 英二君       松浦周太郎君    松野 頼三君       山下 徳夫君    渡部 恒三君       阪上安太郎君    辻原 弘市君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       原   茂君    細谷 治嘉君       安井 吉典君    相沢 武彦君       坂井 弘一君    二見 伸明君       麻生 良方君    岡沢 完治君       谷口善太郎君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 小林 武治君         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 内田 常雄君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  宮澤 喜一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君         郵 政 大 臣 井出一太郎君         労 働 大 臣 野原 正勝君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         自 治 大 臣 秋田 大助君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (科学技術庁長         官)      西田 信一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中曽根康弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         防衛庁長官官房         長       宍戸 基男君         防衛庁人事教育         局長      江藤 淳雄君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         沖繩北方対策         庁調整部長   田辺 博通君         大蔵省主計局長 鳩山威一郎君         大蔵省主税局長 細見  卓君         大蔵省理財局長 相澤 英之君         大蔵省銀行局長 近藤 道生君         大蔵省国際金融         局長      稲村 光一君         国税庁長官   吉國 二郎君         文部大臣官房長 安嶋  彌君         文部大臣官房会         計課長     須田 八郎君         文部省初等中等         教育局長    宮地  茂君         文部省管理局長 岩間英太郎君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省保険局長 戸澤 政方君         農林大臣官房長 太田 康二君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省蚕糸園芸         局長      荒勝  巖君         水産庁長官   大和田啓気君         中小企業庁長官 吉光  久君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         建設省道路局長 高橋国一郎君         建設省住宅局長 多治見高雄君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 一月三十日  辞任         補欠選任   足立 篤郎君     山下 徳夫君   小川 半次君     渡部 恒三君   小坂善太郎君     中村 弘海君   灘尾 弘吉君     野中 英二君   福田  一君     内海 英男君   森田重次郎君     中山 正暉君   大久保直彦君     渡部 通子君   正木 良明君     二見 伸明君   麻生 良方君     竹本 孫一君 同日  辞任         補欠選任   内海 英男君     福田  一君   中村 弘海君     小坂善太郎君   中山 正暉君     森田重次郎君   野中 英二君     灘尾 弘吉君   山下 徳夫君     足立 篤郎君   渡部 恒三君     小川 半次君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十六年度一般会計予算  昭和四十六年度特別会計予算  昭和四十六年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和四十六年度一般会計予算昭和四十六年度特別会計予算昭和四十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。麻生良方君。
  3. 麻生良方

    麻生委員 予算総括の第一陣に出るのは初めてでございますので、ひとつ実のある審議にさしていただきますように、関係閣僚の御協力をお願いしたいと思います。  さっそくでございますけれども、総理、いまベトナム状況現状等に照らし合わせまして、一体、一九七二年に予定されている沖繩返還までに、ベトナム戦争が終わっているといまでもお考えでございますか。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 なかなかむずかしいお尋ねでございまして、日本の場合は、戦争関係しておらないのですから、みずからやっておれば、どういうことになるかとかいうことの予想もつきましょうが、どうも外の事柄ですし、ただ、新聞その他で報道を見たり、あるいはその他外交ルートを通じていろいろ事態進展のぐあいを把握したり、また、そこにある程度の希望的観測をも含めて見るものですから、必ずしもそれが当たっているとは思いませんけれども、私は、いわゆるベトナミゼーションと申しますか、アメリカがだんだん撤兵をして、ベトナム自身がそれにかわると、こういう形になりつつあるということは、とにかくおさまりつつあるのだ、いわば、戦争状態が今度は内戦状態に変わるのだ、かように見ていいんじゃないだろうかと、かように実は思っております。ただ問題は、その不幸にして始まっておる戦争そのものが、パリの会談である程度話し合いが進んで、そうして何か明るい見通しでもあればけっこうですが、どうもそのほうはあまり進展がない。そこら事態を把握することが非常に困難です。まあ、最近私のほうの党員で出かけた者等から状態を聞きますと、たいへん南ベトナムは落ちついてきたと、かような話を聞くかと思うと、新聞では、いろいろの攻勢が出てきたとか、あるいはどこそこの飛行場がやられたとか、こういうよう状態ですから、なかなかわかりかねるのです。しかし、まあとにかく希望状況をまじえて、おさまりたいものだと、かように思いますし、これから先にお尋ねになろうというのが沖繩返還にも関係することでしょうし、そうい意味の私どもは希望を持っていることをつけ加えておきます。
  5. 麻生良方

    麻生委員 これは国際情勢推移でございますから、どういうよう見方をされるか、これはきわめて主観的な面もございましょう。しかし、もう一度私は総理に詰めておきたいのですが、第六十二臨時国会で、成田社会党委員長の質問に答えまして、そのときは、総理の御答弁は非常に歯切れがいい。もう一度ここに再録をいたしますと、「政府といたしましては、一九七二年まで、現在のような形でベトナム戦争が続いていることはあり得ないと考えております。」とこう明確に御答弁されている。いまの御答弁とは、かなり内容的にニュアンスの相違がございます。私は決して責めるつもりはございませんが、率直に、この時点でお見通しになった状態のまま現在進んでない。したがって、場合によれば、ベトナム戦争終結しないままで、沖繩返還を行なわざるを得ない情勢もあり得るというふうに理解してよろしゅうございますか。総理、その点明確にひとつ御答弁願います。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 なかなか明確にということはむずかしいですが、しかし、少なくともいま御指摘になりましたように、この前よりもやや停滞している、そういうことはいえるのじゃないかと思っております。しかし、私は、いまなお七二年までには何らかの処置というか、停戦というか、休戦の状態が実現するものだと、かように私は希望を持っておりますが、しかし、必ずそうだ、こういう歯切れよく言うことがなかなかできない。これは、私は性格でもありますが、とにかく当時者でないという、そこら一つの責任のがれではありませんが、やはりはっきり申し上げることが不可能なものがある、かように御了承いただきたい。
  7. 麻生良方

    麻生委員 総理、いま総理が言われたように、やはり一年前とはかなり情勢はきびしくなってきておる、お見通しとは。しかし、いま総理ベトナム問題は当時者ではないとおっしゃるが、もしベトナム戦争が終わってない状況の中で、沖繩返還があり得る可能性が出てきたとすれば、これは日本にとっては非常に重要な問題にならざるを得ない。これはあとで御質問いたしますが、米軍が、沖繩基地機能について、それぞれ有力者米議会筋で発言している内容の報告も詳細に届いておる。それを検討すると、沖繩基地というもののベトナム戦に果たしている意義というものは、非常に大きいということを米国はいっておる。そういう状態の中で、本土並み返還をさせるということは容易なことではなくなってくる。これは、終わっていればまことに佐藤総裁万々歳でございます。私も慶賀をする。しかし、私も国民の一人として終わることを希望しておるが、終わらない場合はたいへんだなと思わざるを得ない。  そこで、総理、まだ時間があるのでございますから、ベトナム問題の終結方について、もう一度あなたが渡米されてニクソンにお会いになって、何とかベトナム戦争終結に導くような御努力を、たいへん再三にわたって恐縮ですが、私は国民の一人として総理にお願いしたい。手おくれにならないように、まだ時間があるんだから。その御意思は全くおありになりませんか。やむを得ない情勢推移にまかせますか。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 麻生君から非常に積極的な御意向で、積極的にベトナム戦をやめさせるよう努力をしないか、こういうお話ですが、少なくとも沖繩に関する限り、ただいままでの折衝の段階では、危険なものは出ておりません。したがって、私は、ベトナム戦争は完全に停止するということはないにしても、沖繩返還には、ただいまのところは支障はないのじゃないか、かよう見通しをしております。そうして、先ほど来申しますように、ベトナム戦闘、最近はカンボジアまで入った。だから非常に激化したんだ、こういう見方もございますけれども、しかし、それがただ単に航空機による、空軍による攻撃という程度ならば、これは、どうも激化したとはなかなか見えないんじゃないか、かようにも私思いますので、ただいまの状況では、私がみこしをあげて出かける、こういうほどのことではないんじゃないか。ただいま御指摘になりましたように、この戦争が続いていて、そして沖繩返還に重大なる影響を及ぼした、こういうことがあれば、それはもうたいへんですから、そういう危険があれば、私が飛び出すことはこれは当然ですけれども、ただいままでの段階ではそのような心配はございません。その点をつけ加えさせていただきます。
  9. 麻生良方

    麻生委員 そうしますと、現在しばらく情勢推移を見たい。しかし、やはり重大な局面になれば、その時点になって考慮することもあり得る、努力はしてみたい、こういうよう解釈してよろしゅうございますか。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 さようにお考えになって差しつかえないと思います。
  11. 麻生良方

    麻生委員 そこで、その努力の結果がどうなるかということは、その推移を見なければわからないことでありますが、万が一、その努力にもかかわらず、ベトナム戦争が終わらないままで沖繩返還ということになった場合は、総理、御承知のように、あなたとニクソンの間の共同声明の中にある、ベトナム戦争が終わってない場合における内容が問題にならざるを得ないわけですね。これはきわめて客観的に見れば、そのときに、米国側がどうもベトナムが終わっていないから、沖繩返還について、あれは白紙に戻すということも可能性としてはあり得る。もう一つは、あのときはああいうことを言ったが、ベトナムが終わってないのであるから、本土並みではむずかしいから、新たな条件を加えたいという可能性もあり得る。あるいはまた、終わっていないけれども、とにかく約束したのであるから、本土並みの線でお返しするということもあり得る。その場合、総理はどれが一番確率が高いとお考えですか。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまベトナム戦争は続いている。しかし、沖繩自身基地として発進していたB52が沖繩にはいなくなった、こういう事実はお認めですね。したがって、少なくとも沖繩との関係、過去において果たしてきた役割り、それはよほど変わっている。この事実は、それなりに受け取ってしかるべきだ、かように私思います。したがいまして、あのニクソン大統領と私との間で取りきめをしたときから見ると、情勢がたいへん当方には有利というか、都合よく発展しておる、こういうことが言えるんじゃないかと思います。そういう事柄が、最近の日米交渉の上にも出てくるので、私はあまり心配しておらない、こういうことを先ほど来申しておるつもりでございます。しかし、戦争のことですから、大戦争になった場合に、あるいは沖繩といわず、本土に駐留する米兵それ自身にも動員が下る、こういうようなことがないわけでもないでしょう。しかし、いまの状態ならそういうような危険はないと私思いますので、いろいろ頭のよさから分析をなさいますけれども、そこまで分析をしなくていいんじゃないか。私は少し楽観過ぎるか知らないが、さよう考えておる。それは、いまのB52、その一件をとってしても、順次沖繩戦争で果たしておる役割りはよほど後退しておる、かように私は思っております。
  13. 麻生良方

    麻生委員 総理、その見解はいろいろ主観的な相違もありましょう。しかし、少なくともサイミントン委員会においてランパート中将証言しておる、その内容総理もお読みでございましょう。私はここでくどくど申し上げません。このランパート中将証言内容を見ても、現在とも、将来にかけて沖繩が果たしている基地役割りというのは、何もベトナム戦ばかりではないんだ、もっともっと広い範囲に及ぶ、重要な基地役割りを果たしておるんだということを、ランパート中将はこの証言の中で言っておるのですね。  同時にまた、戦争というものは、いまかりにB52は引き揚げておっても、またさらに米国自体の主観において、戦争遂行、爆撃をしなければならぬと考えれば、少なくともその基地を、B29の発進のためにまた使いたいという申し出がある可能性はある。また戦闘行為というのは、B29ばかりじゃございませんよ。この証言の中にも明らかなように、沖繩は、ベトナム戦において、初めに戦闘部隊を派遣をした第一線基地だという証言が出ておるのですから、このベトナム戦争の、そもそもの第一線部隊沖繩であったという事実は、これは否定できない。そういう観点からいきますと、総理のいまの御見解はきわめて甘い。私は決して追及するつもりではないのですよ。終わらないままで返ってくる。しかし、われわれはそれを受けざるを得ない。終わらないから沖繩は要らないんだという態度はとれないでしょう。終わらなくても、本土並みで返してもらわなければならない。そこで問題の焦点は、やはりその仮説実現性のある仮説として、政府はそろそろ対処のしかたを考えていただかなければならぬ、こう私は思うわけです。  そこで愛知外務大臣、あなたにお伺いをしたいのですけれども、いずれにしても、もしベトナム戦が終わってない状態のままで沖繩返還が行なわれた場合、その内容的な機能の大きさは別といたしまして、米国が、沖繩基地ベトナム戦のために使用する可能性はあると判断されますか。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 沖繩返還は、安保条約との関係がございますことは申すまでもございませんから、日本及び日本を含む極東の安全のために、返還と同時に安保条約の取りきめによって提供することになる施設区域が、その目的のために使用されることは当然あり得る、かように存じております。
  15. 麻生良方

    麻生委員 いずれにしてもその施設戦争目的のために使用せられる、こういうことになるという御答弁ですね。  そこで、その場合、当然それは事前協議対象になってくるわけでございますが、もう一つ、私はその場合の外務大臣の御見解を伺っておきたいが、たとえば、配備における主要な変更を事前協議にかける場合、そうなると思うのですが、そうですね。その場合に、戦術用核兵器持ち込み、これが一つ問題になる。これは日本としてはいやだといっても、アメリカとしては、別に沖繩に持ち込んではならぬという法律はないわけでありますから、アメリカ意思として、そういう意思が、もう一度日本にもたらされる可能性はございますね。それに対処する対処のしかた、これが一つ。それからもう一つは、B52等の戦略攻撃機及び戦艦の寄港、発進、これは当然のことでありますが、これが一つ問題になる。それから海兵隊陸軍部隊等の輸送、これも問題になる。このような点が問題になるということは外務大臣お認めになりますね。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いまおあげになりました、まず第一の核の持ち込みということについては、前々から申し上げましたから、詳しく申し上げる必要もないと思いますけれども、これは当然事前協議対象になる、その場合に、日本態度というものはきわめて明確になっております。これはノーということでございます。それから、航空部隊であろうがその他の部隊であろうが、戦闘作戦行動のために日本側が提供した施設区域から発進をする場合におきましては、事前協議対象になるわけでございます。その場合の日本側態度は、先ほど申しましたように、安保条約目的からいいまして、これが日本の国益からいって、どういう態度をとるべきであるかということにかかって、イエスもありましょうが、ノーもあります、こういうわけでございます。
  17. 麻生良方

    麻生委員 ちょっと御訂正をお願いいたします。  私は、先ほどB52と言うべきところをB29と言ったようでございます。ちょっと議事録から御訂正を願います。(「そんなのいいよ」と呼ぶ者あり)いや、あとに残されてはかなわぬ。  外務大臣、その場合、イエスもあり得るし、ノーもあり得るということは、イエスの場合は当然安保条約が発動するということになりますね。その事前協議にかける、そのかけ方の問題ですが、たとえばですよ、この中で一部隊、一個師団、兵隊の場合はこうなっておる、それが出るたびにケースバイケースでかけるのか、あるいは飛行機が出るたびにケースバイケースでかけるのか、あるいは包括的にそれを全部ひっくるめて、そういう戦闘行為自体事前協議にかけてそれを認めるか、つまりイエスと言うかノーと言うか、このいずれかの方法になるのですか。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは日本としては内閣が決定をいたすわけでございますが、これも従前からお答えいたしておりますように、一艦一機の発進ごと態度をきめることが妥当であるかどうか、事柄性質上。やはりこれは、そのときの状況によりまして、ケースバイケース考えなければならないと考えておりますが、同時に、その事柄は重要な事柄でございますから、なるべく限定的に扱うことが大切ではないかと思っております。
  19. 麻生良方

    麻生委員 イエスもあり、ノーもあるということになりますと、沖繩基地ベトナム戦争のために利用されることに合意をすることもあるわけですが、その場合、しばしば問題になる点ですが、もう一度外務大臣に詰めておきたいんだが、極東範囲というものとの関連はどうなってまいりますか。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これも御案内のように、極東という安保条約第六条に用いられていることばの解釈については、かねがね政府として統一解釈を申し上げております。そのとおりでございます。
  21. 麻生良方

    麻生委員 そうすると、極東範囲というのは、たしか岸さんだったと思いますが、統一解釈というのは、フィリピンそれから台湾、中国沿岸、こういう範囲極東範囲という解釈、これが政府統一解釈ではございませんか。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 念のためにもう一度繰り返して申し上げますと、極東というのは、別に地理学上正確に固定されたものではございません。しかし、日米両国が、安保条約に規定しておりますとおりに、共通関心を持っておりますのは、極東における国際の平和及び安全の維持ということであります。この意味で、実際問題として両国共通関心の的となる極東区域は、この条約に関する限り、在日米軍日本施設及び区域を使用して、武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域であります。かかる区域は、大体において、フィリピン以北並びに日本及びその周辺地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれているというのが、かねがねの政府統一見解でございまして、この点は、沖繩返還後におきましても変わることはございません。
  23. 麻生良方

    麻生委員 そうすると外務大臣先ほどあなたが沖繩米軍基地からの発進を認めるということになると、この政府統一見解からはみ出すということになりはしませんか。ベトナムは、いまの外務大臣統一見解範囲には、常識的に見れば入りませんよ。これは、常識的に見れば……。ラインを引いてみてください。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これもしばしば御質疑を受けておった点ですが、その次の統一見解を申し上げますと、この区域に対しまして武力攻撃が行なわれ、あるいはこの区域の安全が、周辺地域に起こった事情のために脅威されるような場合、米国がこれに対処するためとることのある行動範囲は、その攻撃または脅威性質いかんにかかるのであって、必ずしも前記の区域に局限されるわけではない、こういうのが統一見解でございます。
  25. 麻生良方

    麻生委員 外務大臣、そのあとに述べられた統一見解は、極東範囲についての見解ではない。そうですね。ただ安保条約、それが発動される場合、極東の安全が脅かされたと考えられた場合、極東範囲以外の相手国に対する攻撃もあり得るという意味として受け取れるものであります。そうすると、ベトナム戦争が、また北ベトナムが、日本にとって現実問題として脅威であるのですか、どうなんですか。日本が、北ベトナム脅威であると認めるなら、この解釈は適用されるかもしれない。はっきり答弁してください。北ベトナム日本にとって脅威であるのかないのか。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 日本及び日本を含む極東地域の安全を守るというのが、安保条約目的でございますから、日本及び日本を含む極東の安全のために脅威と感ずるような場合、その脅威に対して守るという必要が起こりました場合には、いま申し上げましたよう統一解釈の場合が適用されると思います。  なお、統一解釈には、あまり長くなりますからいまも読み上げることを省略いたしましたが、さらに、その次に第三段として、集団安全保障に対する考え方がございますることは御承知のとおりと思います。
  27. 麻生良方

    麻生委員 日本及び日本以外の極東の国々ということになると、想定されるのは、韓国とか台湾とかいうことになるんでしょう。そうすると、いまの解釈は、韓国、台湾が危機と感ずれば、危険だと感ずれば、われわれもそれに同意をしなければならないという解釈になると思いますが、そう解釈してよろしゅうございますか。
  28. 愛知揆一

    愛知国務大臣 しばしば申し上げますように、これは、日米安保条約の第六条の考え方でございまして、それに対する御批判は別といたしまして、第六条で規定されておりますことは、日本及び日本を含む極東の安全ということであって、日本自身の安全も、日本を含む極東の安全なくしては日本の安全というものは守り得ない、こういう考え方がこの安保条約第六条の考え方である、第六条を中心にした考え方である、こういうわけでございますから、中華民国の安全あるいは韓国の安全、こういうふうに、具体的に一つ一つをあげて論ぜられる問題ではなかろうと思います。
  29. 麻生良方

    麻生委員 いままでの段階なら、私は、一番初め外務大臣がお読みになった統一解釈で過ごしてこれたと思うんですよ。しかし、いまの段階では、現実にベトナム戦争が終わらない可能性が出てくれば、第二の統一見解、第三の統一見解の適用を考えざるを得なくなってきておる。これは事実だと私は思います。そうですね。一応は考えざるを得ない。その場合に、私は問題になる点を最後に指摘しておきますが、日本戦争を放棄しておるわけですよ。平和憲法を持っておるわけですよ。その平和憲法を持っておる日本に許されている一つの道は、自衛権の発動ですよ。この自衛権の発動というのは日本が直接脅かされる場合にのみあり得るというのは、これはもう常識的解釈ですよ。とすれば、もし安保条約が、いま愛知外務大臣が言われたような第二、第三の統一見解まで発展させて考えざるを得なくなってきているとすれば、それは実質上、当初の安保条約の性格が次第に拡大されていることを意味するし、同時にまた、そのことによって、きわめて微妙な点において日本国憲法に抵触する問題がおのずから発生しつつあるというふうに解釈されざるを得ない。これは私の見解であります。この私の見解について、外務大臣どうお考えでございますか。
  30. 愛知揆一

    愛知国務大臣 統一見解は、私、時間を節約する意味で一区切りごと申し上げましたから、第三項を読む必要ないと思いますから省略いたしますが、これは第二項、第三項と、質が違うのではなくて、全部ワンパックケージで安保条約に対する考え方を申し上げたものでありまして、沖繩返還に伴って第二項、第三項というふうに広がったものでは全然ございません。この点はよく御了承いただけると思います。  それから、日本だけのためというおことばがございましたが、ここがやはり率直に言って、多少御意見の違うところかと思いますけれども、政府考え方並びに安保条約考え方というのは、日本の、いわば日本列島だけの防衛ということでは日本国の安全を期し得ない、やはりこれは日本を含む極東の安全ということが十全を期し得なければ、日本それ自体の安全を守り得ないというので、安保条約の、特に先ほど来申し上げております第六条というものがある。これは考え方の相違でございますが、一部の方は、第六条は要らないではないかということが、有事駐留ということと関連して考えられておりますが、これには遺憾ながら、日本政府としては反対せざるを得ないわけでございまして、そういう点の意見の食い違いということを前提にすれば、いまお述べになりましたようなことが政府としての、これは事前協議全般に通ずる問題でございますが、十分戒心して、日本の国益に立ちましてその態度を決定しなければならない。その態度の決定についての御注意あるいは示唆、アドバイスという点におきましては、十分敬意を表して伺いたいと思います。
  31. 麻生良方

    麻生委員 まあ、私はここで、私の党の考え方を披瀝して議論をするつもりはございません。ただ、これは特に総理に御認識をいただきたいのですが、私は、ことによると、希望的観測にもかかわらず、沖繩返還時期にベトナム戦争が終わらない可能性がきわめて強まっておると見ております。しかし、それにもかかわらず、沖繩返還させなければならない。だから、それだけ政府はきわめて重要な課題をになわざるを得なくなってくる。いま申し上げたように、外務大臣答弁しておるように、——総理の腹の中だって、ベトナム戦争基地が使われたくないと思っておるのでしょう、総理自身は。どうですか、使われたいと思っておりますか。ちょっとそれだけ御答弁してください。
  32. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 本土返還された暁と、それからアメリカが施政権を持っておる沖繩と、これは区別して考えなければならないのです。本土に返った後は、沖繩とわれわれの住んでおる本土と、何ら区別するところはないのでありますから、これが、何度も繰り返して申します本土並み核抜き返還でございます。したがって、本土にいる米軍ベトナムに出かけることをわれわれは希望はしないし、そんなことはまた事前協議対象にもならないと思いますが、沖繩においても同様のことだと思います。だから、その点は十分区別して、返還前の状態返還後の状態と一緒にされないように、そこはせつ然と区別して考えていただきたい。
  33. 麻生良方

    麻生委員 申すまでもないことですが、総理自身も、できればベトナム戦争を終わらして沖繩は返してもらいたい、それから終わらない場合でも、やはり沖繩基地戦争に利用されないようにしたいとお思いになっていらっしゃる。いまの御答弁で推測できます。とすれば、これはひとつ一段と政府は腰を据えて、先ほど私が御提言申し上げたことも含めて、ひとつ、ほんとうに総理の、最後ですよ、これ。返してもらったわ、あとはしりが抜けていたわ、国民が迷惑するわ、これではたまったものじゃない。あなたは、もう六年総理をやられて、それでもう自分の仕事は終わったみたいなお顔をされているけれども、やはりそれじゃ困るのですよ。引き継がれた大臣が困る。総理大臣に福田さんがおなりになるか田中さんがおなりになるか知らぬけれども、これは総理、ひとつ私どもも、その点については、党派を越えて最大の協力をいたしますよ。どうぞひとつがんばって、ベトナム戦争終結させる努力、もしどうしてもできない場合でも、沖繩が他国に対する攻撃基地に使われないよう努力を、最大限していただきたい。そのお約束、御努力のお約束だけ最後に取りつけたいと思います。
  34. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 麻生君の熱烈なる御要望でございますし、日本の平和を保ちたいという、また、日本国民を不幸におとしいれないという、その念願からのただいまの御主張だと思います。私はそういう意味において、麻生君の御提案、これは私も十分理解して、その線に沿って最善を尽くすべきだ、かよう考えますので、お答えをいたします。
  35. 麻生良方

    麻生委員 次の質問に移らせていただきたいと思います。  総理大臣、これは全然別なことでございますが、いま国民は物価鳥にあえいでおるわけですよ。物価高の原因というものはいろいろあるでしょうけれども、土地の値上がりということが主要な原因の一つであるという点は、総理もお考えになっておられますか。
  36. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 土地の問題が一つの主要な問題だ。ことに都市に人口が集中する、こういう際におきまして一番問題になるのは住宅地、それが一番問題だ、かよう考えておりましたが、最近は、一半の対策が効を奏したというわけでもないでしょう、やや需要が衰えたとでも申しますか、やや停滞ぎみである。最近の状態はたいへん望ましい状況だ。しかし、こういう際にこそ、いままでいろいろ考えている土地対策、これに積極的に私どもの施策を伸ばしていかなければならない、かよう考えております。
  37. 麻生良方

    麻生委員 この土地問題については、特に政府の諸機関が、たとえば住宅を建てる、あるいは敷地が要るということで、土地を求めますね。そうすると、その周辺の土地が値上がりしてきているということは、これは実情で明らかですよ。だから、そういうことのないよう政府としては配慮しなければならぬ、これは当然だろうと思いますね。  それから、大蔵大臣にちょっとお伺いしたいのですが、政府の諸機関が土地を購入する場合、個人にその代金を立てかえさせて購入するということがあり得ますか。政府の諸機関、つまり国が土地を買う場合、その代金を個人に頼んで立てかえてもらうということがあり得ますか、全額を。
  38. 福田赳夫

    福田国務大臣 国の必要のために土地を買う、そういう場合においては、これは直接国が買う、これが原則です。ただ、間々その土地の購入が、何らかの都合で支払いの手段が国にないというような場合に、地方団体なんかがこれを一時買っておくというようなことは、あるいはあるのかもしれません。さように思います。
  39. 麻生良方

    麻生委員 私の聞いてるのは個人です。
  40. 福田赳夫

    福田国務大臣 さあ、個人の場合は、それは……
  41. 麻生良方

    麻生委員 ちょっと大蔵大臣、あなたが、政府が土地を買う、そのときに、私は個人ですね、ちょっと麻生君、すまぬけれども、数十億円の金なんだが、いずれ国が買うから立てかえておいてくれということがあり得ますかと聞いておる。
  42. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま、地方団体が買っておいて、そうして国に引き継ぐ、こういうようなことを申し上げましたが、また何らかの事情があって、国で取得したい土地なんだが、しかし、これを買うための準備、手段というものを持たない。この機を逸すると、この国の土地の取得が不可能になるおそれがあるというような際に、あるいは個人に頼んで、それをひとつ確保しておいてくれ、しかし、そのままの値段でまた政府が引き継ぐ、これはお約束はできないが、そういう腹づもりであるというようケースは、あるいはあるかもしれませんと思います。
  43. 麻生良方

    麻生委員 そうすると、大蔵大臣、そういうケースがあり得るとすれば、今後たいへんなことになりますよ。たとえば国が宅地をつくる、団地をつくる。それは予算をつくる。だから、予算で支出するまでは、少なくともあそこを買い取ろうときめてから若干の期間があることは、これは当然です。その間を個人が立てかえてもいい。大蔵大臣がそういうお考えだということになると、しかも個人が立てかえて——私がこれからお伺いするのは、いま大蔵大臣は、そのままの値段でと言われましたね、そのままの値段じゃない場合はどうなんですか、はね上がった場合は。
  44. 福田赳夫

    福田国務大臣 国は、あなた、麻生さんに土地の確保をお願いした、しかし、麻生さんから買い取るという約束はできないのです。約束はできないけれども、そういう腹づもりである、だからひとつ確保しておいてもらいたいんだ、よろしゅうございますといって麻生さんがその土地の確保をする、そういうケースは、あるいは、非常にレアケースになるかと思いますが、あり得る、こういうふうに思います。そういう際におけるその値段は、国損にならないような値段であなたから買い取らなければならぬ、かよう考えます。
  45. 麻生良方

    麻生委員 そうすると、大蔵大臣、もう一つ確認しておきますが、あり得るということ、これはそれでいいです、あり得るならあり得るで。今後、そういうあり得るという大蔵大臣の答弁が、土地問題をめぐる売買の問題にどういう影響を及ぼすかは、あすの新聞をごらんになったらおわかりになる。これは重大なことですよ、あり得るということを言えば。みんなそこに業者が入り込みますよ。しかも、買った値段に上積みをして買い取ることもあり得る——あり得るのですか。この点だけもう一度詰めておきます。立てかえ買いをさせた値段に上積みをして買い取るから、おまえ、立てかえて買っておいてくれということがあり得るのですか。
  46. 福田赳夫

    福田国務大臣 麻生さんが、あそこへ住宅公団が土地を買いそうだ、こういうことを見越しまして、そしてその土地を取得する、それを住宅公団が買い上げる、こういうようなことはあると思うのです。そのときの価格は、これは社会的な公正な価格である、こういうことかと思います。しかし、あなたから、麻生さんから買い上げますよ、ですから、あなた、あれを買っておいてくださいよ、そういうようなことはあり得ない。法律上の義務として麻生さんから買い求めるという前提のもとに麻生さんが土地を取得する、そういうようなことは、これはあり得ません。
  47. 麻生良方

    麻生委員 いずれにしても常識的に見て、私は、大蔵大臣、あなた、質問の内容をお聞きになって、苦しまぎれの答弁をされているだろうと思いますよ、率直なところ本心は。そんなことはまず原則的にあり得ないのです。あなたが初めに御答弁になったように、国が土地を買うときは国が直接買い取る、これが原則でしょう。たまたまその事件があったものだから、大蔵大臣としては、やむを得ずいまのよう答弁をされているんだろうと私は推測しますよ。それはそれでけっこうですよ。  そこで、これから事実関係をお伺いをいたしますから、関係大臣から御答弁を願いたい。  まず、昭和四十三年二月十九日並びに昭和四十三年五月二十五日の二回にわたって、文部省は横浜国立大学の敷地を買いましたね。事実だけ答えてください。
  48. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 買っております。
  49. 麻生良方

    麻生委員 その際の買い上げ総面積は約十万坪、間違いありませんね。
  50. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいまお尋ねの点でございますが、文部省は、四十三年二月十九日に約二十一万平米を加賀美氏から買い取っております。その後四十三年の五月に、同じく加賀美氏から約十三万平米を買い取っております。
  51. 麻生良方

    麻生委員 そうすると、いずれも加賀美勝という人だろうと思いますが、加賀美勝さんから、国は二回に分けてこれだけの土地を購入したという事実は明らかにされております。そこで加賀美氏は、私の調査によれば、それをさかのぼること一年有余前の昭和四十一年七月二十二日、国が横浜大学の敷地として買い上げ予定がすでに決定している土地を、個人の名義で約十三万五千坪買い取っているわけです。これは認めますね、文部大臣。
  52. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 四十一年の七月二十二日に四十四万九千平米を程ケ谷カントリー倶楽部及び程ケ谷林園株式会社から買い取っております。
  53. 麻生良方

    麻生委員 そのときの加賀美氏の買い取り価格は三十億円。それで、そのときの買い取り単価は、坪で申し上げますと、どのくらいになるのですかね。——約三万円くらいですか。
  54. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 平米当たりで申しまして、六千六百七十四円四十銭でございます。
  55. 麻生良方

    麻生委員 その加賀美氏の買った土地を国が買い取ったときの価格を明示してください。
  56. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 四十二年度、四十三年度とも、約七千六百六十四円でございます。
  57. 麻生良方

    麻生委員 そうすると、一平米当たり千円の上積みを乗せて買い取っているということですね、そうですね。
  58. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 そのとおりでございます。
  59. 麻生良方

    麻生委員 これは坪単価にすると、約三千円の上積みを乗せているということになりますよ、大蔵大臣。三千円の上積みを乗せて買い取っている。  それから、もう一つお伺いします。初め国立大学の敷地として買い取りを決定したのは、程ケ谷カントリー倶楽部の敷地を買うということが決定しておるのですが、加賀美氏がそれを全部買い取ったわけですが、その後文部省が買い入れた土地は全部ではない。加賀美氏が買った土地の中から買い取って、残余の土地が残っておるはずですが、その実情を明らかにしてもらいたい。
  60. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 残地は十万二千三百五十五平米でございます。
  61. 麻生良方

    麻生委員 約三万数千坪が残地として残っておる。買い取らないで残したという結果になっておる。この残地の所有権はだれになっておりますか。
  62. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 現在は新菱興産株式会社になっております。
  63. 麻生良方

    麻生委員 その残地の所有者は会社の名義に一なっておる。その会社の代表者は加賀美勝氏ですね。
  64. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 そのとおりでございます。
  65. 麻生良方

    麻生委員 そうすると、ここに事実をもう一度、大蔵大臣、整理してみますが、国が程ケ谷カントリー倶楽部の敷地を横浜国立大学の統合敷地として買い取ることがきまったときは、その所有権はなお程ケ谷カントリー倶楽部にあったということです。その後国が——私がこれからあとで申し上げますが、ある事情によって、加賀美氏がその敷地を一時買い取った。その買い取り価格が全額で三十億円。それから一年余を経て文部省はその買い取りを行なったが、その買い取り価格が総額で二十六億円。しかも買い取り金額は、坪単価において、加賀美氏が買ったときの単価に三千円上積みして国が買い取ったということであります。しかも、なおかつ、全部買い取らずに三万余坪を残地として残して、それを加賀美氏が社長をしている会社の名義にした、こういう事実関係であります。よろしいですか。事実はおわかりになりましたか。  そこで、この事実関係に即して、私はこれから申し上げることを問いただしていきますから、関係者から御答弁願います。わからないならわからないでけっこうです。事実なら事実でけっこうであります。  この横浜国立大学の敷地を国が買うことに決定する以前に、横浜国立大学を中心として敷地統合委員会というものが設立されております。その事実は、文部大臣御存じですね。
  66. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 承知いたしております。
  67. 麻生良方

    麻生委員 その横浜国立大学の統合委員会、正式には横浜国立大学統合委員会の役員を御存じですか。
  68. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 承知いたしております。それで、事実関係はいまおっしゃったとおりですが、しかし、何といいますか、全体のことを申し上げないと誤解される……
  69. 麻生良方

    麻生委員 いや、事実だけ聞いているんだから、あなた、御存じか御存じないか……
  70. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 あとでまた、私からもお話しを申し上げます。
  71. 麻生良方

    麻生委員 あとで必要になれば、その役員を私からも発表さしていただきましょう。  そこで、以上の事実を前提として私がこれからお伺いするから、イエスノーか、事実かいなかだけ答えていただきたい。  「横浜国立大学工学部は、総合的な研究設施を設立して、高度の技術の研究開発を充実させ、さらには大学院設置に備えて広く各界の協力を得るために、工学部施設拡充後援会を昭和三十六年十二月一日より発足させた。」この事実。時間がありませんから、わからなければわからないで……。
  72. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 文部省側に記憶がございませんが、そういうことはあり得たかと思います。
  73. 麻生良方

    麻生委員 どうぞあなた、一々出たり入ったりしなくてけっこうですから、そこへ立っていてください。  「工学部施設拡充後援会の募金活動が、早稲田大学の施設拡充のための募金活動に貢献のあった新菱冷熱工業株式会社加賀美社長に対して、旧知の工学部機械工学科の黒川教授から相談があり、加賀美氏は、早稲田大学の募金局長寺沢某氏を紹介、早稲田大学の募金体制を説明、激励した。」これが経過であります。  そして、そういう後援会の設立の過程をたどりまして、「横浜国立大学工学部施設拡充後援会の募金によって建設された研究センターの増設予算について、昭和四十年十二月十八日、会長代理加賀美勝氏は、石橋湛山会長の代理として、河東工学部長、飯島教授と同道の上、文部大臣中村梅吉氏に陳情した。文部大臣は、同大学の施設拡充整備に対する同後援会の努力に謝意を表し、工学部を現在地において拡充整備するより、むしろ同大学の統合用地として程ケ谷ゴルフ場が望ましいと考えている旨を述べられ」文部大臣がですよ。「この実現に加賀美会長代理の協力を求められた。」  「昭和四十一年二月二十三日、参議院常任決算委員会において、日本社会党岡三郎議員より横浜国立大学の統合問題について質問があり、文部大臣はこれに対して、同大学は目下新コースへ移転中の程ケ谷ゴルフ場を買収して、三学部を統合移転する方針であると答弁された。」この答弁記録は間違いございませんか。
  74. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 大体そのとおりでございます。
  75. 麻生良方

    麻生委員 大体じゃない、全部そのとおりです。  「昭和四十一年三月一日、前記常任委員会の答弁に関連し、文部省としては直ちに予算措置をとることもできず、その解決の方途に困窮し、中村文部大臣は、これを打開するため加賀美会長代理と会談し、同氏が程ケ谷ゴルフ場を買収し、一定期間加賀美氏個人が所有されるように要望した。」この事実について……。
  76. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 速記録は読みましたけれども、その事実の有無については、確かめておりませんからわかりません。
  77. 麻生良方

    麻生委員 確かめてないものは、あとで資料要求いたします。調査要求いたします。  さらに「昭和四十一年六月二十日、文部大臣中村梅吉氏は、横浜国立大学統合委員会の会長をはじめ顧問全員を赤坂プリンスホテルに招待、横浜国立大学の統合に関して協力方を要請された。」顧問の中には国会議員数名含まれております。名前は申し上げません。  「昭和四十一年七月二十二日、三井銀行本店において会長加賀美勝氏は、程ケ谷カントリー倶楽部理事佐藤一郎氏と、同ゴルフ場の土地約十三万坪、建物及び借地権の売買契約を取りかわし、代金三十億円を支払った。なお本契約は、加賀美会長個人の責任において全額支払い、契約は、程ケ谷カントリー倶楽部理事長並びに程ケ谷林園株式会社代表取締役千金良某氏と加賀美勝氏との間で行なわれ、加賀美氏個人の名義にて仮登記した。」この事実は……。
  78. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 そのような仮登記があったということを聞いております。
  79. 麻生良方

    麻生委員 「昭和四十一年七月三十日、文部省管理局長宮地茂氏より横浜国立大学長中村康治氏に対し、統合用地として程ケ谷ゴルフ場を確認する通牒があり、中村学長は直ちにこれを加賀美会長に説明し、今後の協力を要請をした。」事実は……。
  80. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 七月に管理局長名をもちまして保土ケ谷に横浜大学を統合するということを決定をいたしておりますが、ただそのことは、次年度予算において予算が成立するということを条件にいたしております。
  81. 麻生良方

    麻生委員 「国立大学の統合用地内に私有地のあることは統合に支障があるので、加賀美会長は、中村学長並びに評議会の依頼により、自民党幹事長福田赳夫氏及び副幹事長西村英一氏と懇談し、統合用地内の私有地買収の予算措置について協力の確認を得た。」これは大蔵大臣、あなたのことですから、あなたが御答弁をしてください。
  82. 福田赳夫

    福田国務大臣 どうもはっきりした記憶がございません。
  83. 麻生良方

    麻生委員 あとで御調査願います。  「昭和四十二年十月十六日、加賀美会長は、文部大臣室において、神奈川県自由民主党代表藤山愛一郎氏、参議員議員内藤誉三郎氏、日本社会党議員岡三郎氏及び中村学長、鬼山事務局長」これは大学の事務局長「同席のもとに、文部大臣剱木氏より、統合用地内の私有地の買収を依頼された。」この事実は……。
  84. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 お答えいたします。  依頼されたという話でございますが、大学側から、統合を促進してもらいたいという陳情があったというふうに伺っております。
  85. 麻生良方

    麻生委員 「昭和四十三年二月十九日、加賀美会長は買収土地の内実測六万四千坪を十六億二千万円にて横浜国立大学に売却した。なお用地内のクラブハウスその他は無償にて譲渡した。」これは事実ですね。
  86. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 事実でございます。
  87. 麻生良方

    麻生委員 「統合用地内の私有地は、当初程ケ谷カントリー倶楽部より買収した地価より高価なため、差額は文部省が加賀美会長に支払うことを保証したので、会長は差額を立てかえ、私有地約一万六千坪を買収した。」これは文部省が保証したと書いてあるが、この事実……。
  88. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 保証した事実はございません。
  89. 中野四郎

    中野委員長 ございません……。
  90. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ございません。
  91. 麻生良方

    麻生委員 あとでもう一度調査してください。  「昭和四十三年五月二十五日、加賀美会長は買収土地の内実測四万一千坪を十億四千百六万円にて売却し、私有地一万五千五百三十二坪を、文部省の買収予算金額との差二億七千七百十九万五千円を負担して、六億七千七百五十一万円にて買収し、横浜国立大学へ売却した。」この事実は……。
  92. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいまお尋ねの点は、四十三年五月二十五日に間宮五兵衛氏から約二万五千平米、遍照寺からは約七千平米でございますが、この土地を加賀美勝氏を代理人といたしまして国が買い取っておりますが、その買い取りの価格は、平米当たり七千六百六十四円でございますが、そのほかに、ただいま御指摘の約二億七千万円を加賀美氏がそれとは別個に支払われている、その分を文部省と申しますか横浜大学に支払えというようなお話があったことは事実でございます。
  93. 麻生良方

    麻生委員 確認しておきますが、加賀美氏個人はここで二億数千万円を、立てかえ金になったまま、そのまま文部省にその損害賠償を請求している、こういうことであります、現状において。いまの答弁に注釈を加えておきます。  「昭和四十四年三月十一日、横浜国立大学統合委員会は、国立教育会館において委員会を開催し、横浜国立大学統合用地の買収については、所期の目的を達成したことを確認した。」なお、残余の土地とありますのは、程ケ谷カントリー倶楽部の敷地全部を国が買わないで、どういう理由か知らないが、三万余坪を残した。この「残余の土地については、横浜国立大学鬼山事務局長より文部省が買い上げ打ち切りと決定したとの報告があった。」よろしゅうございますか。確認します。事実ですか。
  94. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 残地を買い取るという約束をしたことはございません。
  95. 麻生良方

    麻生委員 約束したのじゃないんだ。逆だ。いいですか、もう一度言うよ。「なお残余の土地については、横浜国立大学鬼山事務局長より文部省が買い上げ打ち切りと決定したとの報告があった。」こういうのです。
  96. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 そのとおりでございます。
  97. 麻生良方

    麻生委員 文部省は全部買わないで、わざわざ三万余坪残したわけです。いいですか。「昭和四十五年一月二十日現在、統合用地内の私有地買収に負担した買収差額二億七千七百十九万五千円は未決済のままになっている。」これは先ほど答弁したとおりであります。未決済になっている。  それから「国立大学の統合用地内に私有地のあることは統合に支障があるので、加賀美会長は中村学長並びに評議会の委嘱により、自由民主党幹事長福田赳夫氏及び副幹事長」……。これは失礼いたしました。先ほどの点であります。同じものをもう一度質問しようとしました。  以上、大蔵大臣、事実関係が明らかになりました。そこで、この事実関係をもう一度整理をいたしますと、問題は、加賀美氏個人に立てかえを依頼したのは文部大臣であったという事実であります。よろしゅうございますか。そしてもう一つの事実は、立てかえ買いをさせた金額に坪当たり三千円の上積みをして買い取ったという事実であります。同時に、全部買い取らないで、理由は別として、結果的には三万余坪を残したということであります。その残した土地の処分については、統合委員会の了解を得て加賀美氏がそれを一時自分の所有地にした。さらに加賀美氏はそれを会社の社有地に登記がえを行なったという事実であります。もう一つ、私はここで事実をお伺いするが、このような土地売買に関しては、当然課税の対象になりますね。個人が所得したのでありますから、大蔵大臣、なりますね。どうぞ御答弁してください。
  98. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいまのは、いろいろな前提条件がございますけれども、ちょっと補足して申し上げますと、(麻生委員「いや、課税の対象になるか、ならないかだけ……。」と呼ぶ)その課税の対象になる前提として、加賀美氏個人とずっとおっしゃっておりますが、加賀美氏は横浜国立大学統合委員会の会長として、ただこれが人格なき社団でございますので、登記名義等は個人でやっておりますけれども、課税上は人格なき社団の横浜国立大学統合委員会がやっておるというふうに見られるわけでございます。その場合に、土地の単なる買収でございまして、一回の買収並びに譲渡でございますので、収益事業に該当しないという結果になります。その結果として現在課税にはなっておりませんが、はたしてこれが個人であるということならば別でございますが、現在のところは課税問題は起きておりません。
  99. 麻生良方

    麻生委員 そうすると、答弁の趣旨を私が整理すると、これは横浜大学の敷地を初めから国が買うというためにできた統合委員会が買ったものであるので、課税の対象にはしなかった、こういうことが一つです。  それから、いまなお加賀美氏の会社の社有地として残っている分については、きょう現在なお課税してないという事実が残っています。いまの御答弁では、そうですね。
  100. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 残地につきまして、ただそれを名義がえをしただけではなくて、形式上は委員会から新菱興産、加賀美氏が社長をしておりまする会社に売ったことになっております。どういう価格で売ったかということは問題でございますけれども、現在は新菱がなお所有している段階でございますので、これについての所得の実現がございません。新菱がこれを新しく売ればそこに課税関係が起きますけれども、現在まだたなおろし資産として持っておる段階でございますので、その点ではまだ課税は起こっていないというのが事実でございます。
  101. 麻生良方

    麻生委員 要するに、現在まだ課税してないのです。しかし事実は、加賀美氏の社長をしている会社の名義に登記されているんだろう、またいるという事実関係であります。  そこで、この事実関係をもう一度整理をいたしますと、いま事実関係の問題点だけを私は指摘した。もう繰り返しません。最後に私が指摘したいのは、この残地であります。残った土地であります。残った土地がどこであるか、いまちょっと地図を大蔵大臣にごらんに入れましょう。大蔵大臣これです。ちょっとごらんください。——いや、国有財産です。この赤地が残されている。これは、いいですか、この土地が約二万数千坪、これだけ残されておる。これをひとつ念頭に置いて御答弁願いたい。  そこで、私はもう一度事実だけを申し上げますと、この残った土地は、結果的にはどういう理由があるにせよ、個人の所有を経て、その個人が社長をしている会社の所有に移った。それは程ケ谷カントリー倶楽部の敷地のあとであり、その二万数千坪は、いいですか、飛び地ではなくてまとまった土地であります。私が調査をした、不動産売買業者から正式に調査した時価価格、三万坪全部を平均して坪当たり二十万円は下らない。したがって金額に換算をいたしますと、三万坪と仮定して六十億円の金額になります、売買をして。そのために加賀美氏が立てかえ金と称しておる金は六億二、三千万円であります。この六億二、三千万円の金で加賀美氏個人及び加賀美氏の社長をしている会社は六十億円の利得を得た。差額だけでも五十数億円の利得を得た。この利得を妥当なものと大蔵大臣は思いますか。当然だと思いますか。
  102. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 残地が約十万平米あることは、これは事実でございますが、当初の計画といたしましては、この残地は、国道一号線の北側地区に散在をいたしまする個人有の土地のかえ地として用意したわけでございますが……。
  103. 麻生良方

    麻生委員 その経過を聞いてない。私はその利得が妥当な利得であると考えるかどうかを大蔵大臣に聞いたのです。
  104. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 事柄の経過から申しまして、やむを得ないことであるというふうに考えます。
  105. 麻生良方

    麻生委員 大蔵大臣、同じことを答弁してください。やむを得ないですか。いいですか、もう一度申し上げますよ。国に頼まれて、所管大臣から頼まれて立てかえして買った。そして国がどういう理由からか、残土を残した。その残した土地が、その立てかえをした者の個人名義、正確に言えば会社名義に移った。その結果、立てかえた者はわずか六億数千万円の立てかえ金で、いいですか、時価計算して少なくとも数十億円に近い利得をあげたという事実、この利得をやむを得ないといま答弁したが、大蔵大臣同じ答弁をしてください。
  106. 福田赳夫

    福田国務大臣 文部省が必要とする土地を買ったのだろうと思います。必要としない土地は買わなかったのだろうと思います。(麻生委員「そんなことは聞いていない」と呼ぶ)その必要としない土地をその所有者が幾らで売ろうが、これは政府の関知したところじゃないんじゃないか、さように思います。税金だけはちゃんといただきます。
  107. 麻生良方

    麻生委員 大蔵大臣、その答弁でいいですか。大蔵大臣いいですか。しかもこの利得の発生の原因は文部大臣の委嘱にあるのですよ。こう考えてください。関知しないと言われたが、初めに程ケ谷カントリー倶楽部を文部省は買い取りたいが、いま支出ができないから立てかえてくれという注文が発生になっているのですよ。そして立てかえさせておいて、あとで文部省の都合で買い取り敷地を残して、残したものを立てかえさせた者の個人名義にさして、その結果利得が生まれたのはやむを得ない。初めからこの加賀美氏が自分の意思でこれを買収してしまった、そのあとから文部省が買ったというなら、これはやむを得ないでしょう。買い上げ目的が違ってきているのですよ。私は、大蔵大臣がそういう御答弁をされるなら、まず第一に加賀美氏の会社が、それから統合委員会の決定というが、これの全貌を明らかにしますよ。そして私は一市民として告発しますよ、この問題は。加賀美氏の会社は土地会社じゃないんですよ。冷熱工業株式会社ですよ。しかも大蔵省はそれに課税をしてない、いま現在。私は市民としてこんなことを許しておけない。毎日月給の中で働いている市民の立場になってごらんなさい。数億円の金で数十億円の利得が黙ってころげ込んで、それはやむを得ないのだ。しかもそれは全部政府がなれ合いでやったことじゃないですか。きのう石橋君は、公害問題についても政府がなれ合いでやっておると言っているじゃないですか。土地問題の価格つり上げ、土地問題の不当収益も政府は全部なれ合いじゃないですか。そんなことは私は許されない。本気で大蔵大臣がいまの答弁を繰り返すなら、私は対決します。告発します。よろしいか。もう少し良心的な答弁をしてもらいたい。
  108. 福田赳夫

    福田国務大臣 文部省が必要とする土地は買う、これはいいと思います。しかし必要でないという土地を買う、これは逆に大蔵省としては反対せざるを得ない、こういうふうに思います。
  109. 麻生良方

    麻生委員 問題の所管は文部大臣です。文部大臣もこれはやむを得ないですか。
  110. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 統合委員会で、一応十三万坪が現在の大学拡充としては必要であるということで話がまとまったわけでございます。それで、それ以上いろんなことが行なわれたという結果になったわけですけれども、その後大学でもう少し必要であるとかなんとかいうなら別でございますが、ただいまのところはやはり大蔵大臣がおっしゃるとおりじゃないかというふうに思うのです。
  111. 麻生良方

    麻生委員 それではもう少し突っ込みましょう。文部大臣は当初全部を買い取る方針であったことは事実なんです。程ケ谷カントリー倶楽部の敷地は買い取るのでありますから。直接文部省が買っているとすれば、残余の土地を残すことには程ケ谷カントリー倶楽部は同意しなかったでありましょう、全部を買い取るという方針が決定しているのでありますから、またそういう方針を文部大臣は決算委員会で報告しておるのでありますから。ところが、途中から方針が変更されて、残すことになった。その残すことになった過程の中で何らかの人為的作用が及んでいた事実が出たら、大蔵大臣どうしますか。読み上げましょうか。地元出身国会議員に協力依頼のために持った会合費はほぼ四百五十万円である。何の協力依頼をし、だれが出て、何が依頼されたか、調査いたしましょう、そういうことになりますね。大蔵大臣もう少し、私は何もあなたを追及しようと思っていませんよ。私は総理大臣に初め聞いたのは、国が土地を買う姿勢というのは、基本姿勢です。その基本姿勢の中に、いやしくも一個人や一企業がそのために不当な利得を得るような行為があってはならないでしょう。やむを得ないのですか、それは。もう一度言ってくださいよ。
  112. 福田赳夫

    福田国務大臣 あなたから御質問があるというお話なので、大蔵省としてはこれを調査したのです。大蔵省は、これは、文部省からこういう計画があるがというその計画について協議を受ける、その協議に対して賛成をしたわけであります。この賛成をしたいきさつにつきまして精細に調査したところ、万遺漏なし、こういう結論です。いまあなたが問題にしているのは、三万坪を残した、どうか、こういう問題なんでございますが、これは文部省がこれだけの土地を買いたい、その買いたいということについて予算を承認をする、これは私は正当なことであると思います。文部省から申請のない三万坪、これに対して予算を大蔵省が積極的に出す、そんなことはあり得ないことなんです。
  113. 麻生良方

    麻生委員 わかりました、大蔵大臣。では文部大臣に聞きましょう。  いま大蔵大臣が言うのは、文部省としては当時、初めの目的は全部買い取る目的であった。ところがその後、これだけで済みましたといって、大蔵省に報告した。それっきり大蔵省には、あとの土地を買い取りたいという相談もなければ、申告もない。だから、大蔵省としては、それで済んだのかという判定だ、こういう大蔵大臣の御答弁、これは私はごもっともだと思う。  そこで問題は、今度は文部大臣だ。あなたが文部大臣当時じゃないですから、よくおわかりにならぬと思うが、どうですか、あなた御自身として残しておくことが好ましいか好ましくないか。残した結果において数十億円の不当利得を個人が占めることが好ましいか好ましくないか、この見解だけ文部大臣述べてください。
  114. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 まあ見解だけも申し上げますが、その前に、一応あそこのカントリー倶楽部を買うということで進めたわけですよ。ところが、土地はなかなかこのごろ買えないわけでしょう。また売らない者も出てきたわけですよ、事実は。それが結局こういうふうに、残地が残るということになったわけなんで、初めは、その私有地があったところは、かえ地をこちらが用意して、それでかえようとしたのだけれども、その本人たちがどうしてもそれにがえんじなかったから、加賀美さんがおそらくそれを何としてでもひとつ国立大学のためにということで、立てかえでお金を払われたと私は思うのです。そういう事情で、その残地が残っておる。しかしながら、現在国立大学としては当初の計画である十三万坪というものは確保できたのだから、現在の段階ではこれで大蔵省にその残地を買えとは言えない。しかし、やはり大学のキャンパスは、社会の要請にこたえまして、ある程度拡充されることもあり得るわけでございます。そういうようなことがあった場合は、またその時点で私は考え、措置をしたいというふうに思うわけでございます。
  115. 麻生良方

    麻生委員 大蔵大臣、文部大臣、私はこれを事件にしようと思って質問しているのじゃないのです。しかし私は、一市民として、法律がどうであろうと、国が依頼して買わしておいて、国の都合で全部を買わないで残した土地が結果的に個人の財産になり、その財産が不当利得と思われるような財産になるということ自体好ましくない。なぜそうなったか。文部省の方針が変更されたからですよ、途中から。そうでしょう。当初の予定どおりに買っておけば何でもない。加賀美氏も売らないとは言ってない。いいですか。売らないとは言っていない。買っておけば何にもない問題だ。わざわざ買わない。その買わない理屈をごたくを並べたって、結果的には買わなかったということですよ。文部省の方針が途中で変更されたということですよ。なぜ変更されたかというところが問題なんです。しかし、私は、きょうはそれは詰めますまい。文部大臣、もう一度加賀美氏と話をして、この残余の土地についてあらためて用途の方法を考えられて、買い上げの方針を御検討されるかどうか、もう一度御答弁なさってください。
  116. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 その辺は非常に、私からいうと御質問の趣旨がどういう意味なのかがよくわからないわけですね。加賀美氏をかばっておられるのか、それともそうじゃないのか。(麻生委員「そんなことはどっちでもいいです。事実を言っている。」と呼ぶ)いや、よくわからないのですよ。実を申し上げますと、よくわからないのです。私はよくわからないから、わからないと申し上げているわけなんでございまして、それはやはり不当利得をするということはよくないかもしれないけれども、われわれとしては、とにかく一生懸命に買おうとやっていただいた人ですよ。そうしてまた国立大学の敷地が十三万坪確保できたわけですよね。しかし、それだからといって、そのあとの残地をまた買えというふうに大蔵省に——いや、それは事情があってこの世の中で売らないというような人が出てきたわけでしょう。こっちとしてはかえ地までして何とかやろうとして努力したのだけれども、できなかった。それを加賀美さんは一生懸命になってこれを、あなた、確保してくれたわけですよね。そうぼくは思う、すなおに考えて。ですから、大蔵大臣がおっしゃるのもほんとうで、大蔵省としては十三万坪だったじゃないか、それ以上十八万坪も買えというのはどうかとおっしゃるのも、大蔵大臣としてはもっともな話だと思うのです。だけれども、私のほうは先ほどからちゃんと申し上げておるように、最初はいまの坪数でいいとは言いましたものの、横浜大学として、これからもう少し拡充をしたい、こういうような話があったときに、そうですなあ、それはひとつ考えて検討して、また大蔵大臣とも相談するというようなことは、絶対にないとはいえないわけでございます。そういうことを私は申し上げて、すなおにお答えをいたしておりますから、御了承を賜わりたいと思います。
  117. 麻生良方

    麻生委員 文部大臣はたいへんすなおでいらっしゃいます。まあ、大蔵大臣のことを御弁護されて——私も大蔵大臣のことはさっきの質問よりそれ以上追及しませんよ。大蔵大臣としてはやむを得ないことでしょう、文部省がそう言ってきたの、だから。  そこで、いまあなたは前任者か、前々任者か知らないが、文部大臣のときにおやりになったことだ。別に悪意でおやりになったのじゃないかもしれない。しかし結果として個人がそのことのためにこういう不当の利益をあげることは好ましくない。これは常識ですよ。だれだってまともな商売やって一割か二割もうけたというなら話はわかる。しかし数億円で数十億円がもうかっちゃ、これはぬれ手にアワですよ。それの加担を政府がしたということは、道義上、政治姿勢の上から好ましくない、こういうことを言っているわけ。なぜそうなったかということは、文部省の方針が途中で変更された。変更された事情はいやというほど聞いた。しかし、それはまたあなたがいま答弁されるように、また変更しないでもない、将来必要になれば。それなら問題を残されないように、その姿勢で御検討されて、あとは——大蔵大臣どこかへ行っちゃったな。——じゃあ、総理、私は初めから政治姿勢として、お尋ねしている。
  118. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの事実関係をそれぞれから伺いまして、それぞれ別に問題があったとは思いません。しかし一番最初に返ってみると、そこに問題があるようだ。一番最初は非常に膨大な地域を総合国立大学の用地として必要だ、かよう考えた。しかしその後いろいろ担当者から見ると、それほどは必要なかった、こういうことでございますから、しかもその間に入っておるのが特別に特定の業者、特定の個人に利得を得させようと、さよう意味で問題を扱ったことは全然ないようでありますし、そこには不正はないようだ、いわゆる政治姿勢としてはとやかくいわれることはない。むしろどちらかといえば、その土地を買った方はもうかった、もうかるだろうと、かようには言われますが、ずいぶん御迷惑な次第で、必要でもないものを、いま土地を持っている、こういうこと。また逆にいえば、そういう善政が利得をもたらすということにもなろうかと思うのですが、まあいずれにしても、私は、いままでの関係では、文部省は必要な土地を確保できたし、大蔵省はその要求どおりの予算を計上した。しかし残地が現実に残ったことは事実だ。しかもその保有しておる会社は本来の土地ブローカーの会社ではないのだ。さようなことを考えると、ずいぶん御迷惑のことであるのではないか。あるいはその土地の利用方法が、先ほど来からも話されるように、大学の敷地というものは現在は十分でも、これから先拡大されないと、かようなものでもないから、またそこらにも考える余地があるかなと、かように思いますが、特別な者がもうける——もうけるというか、利得を特別な人に与えるものではなかったことだけ、これだけはひとつ御理解をいただきたいと思うし、そういう意味で、麻生君からもたいへんな好意あるサゼスチョンがある、将来の問題についてもう一度話をしてみる考えはないかという、そのお話ですから、これはそのまま受け取って、文部省においてもう一度研究してみるのも一つの方法かと、かように思います。
  119. 麻生良方

    麻生委員 いま総理答弁を聞いておりますが、大蔵大臣、文部大臣は、いまは必要ないが、しかし大学の施設であるから、将来また何らかの形で拡充する必要もあるかもしれない、そのときは、検討したし そのときにはまた大蔵省にお願いする、こういう答弁ですが、そういう依頼があった場合、大蔵省としては、こういう背景がある問題でありますから、ならば、これを買い上げてしまえば問題点は残らないわけですから、大蔵省が妥当と思えば、その相談に応じますね。相談に応じますね。
  120. 福田赳夫

    福田国務大臣 文部省から要求があれば、その要求が妥当であるかどうかを審査いたしまして、結論を出します。
  121. 麻生良方

    麻生委員 まあ一応この問題はこれ以上質問はいたしません。その結末を、推移を見て再度——しかし、私はこれにまつわる問題はまだたくさんあるんですよ、その過程の中で一つ一つ取り上げると。しかし、それはここでは申し上げないことにいたします。その良識ある御善処方を、特に文部大臣——あなたどっちを向いているの、こっち向いていなければだめですよ。いいですか、文部大臣、あなたの責任じゃないといったって、やはりあなたがいま現職の文部大臣なんですから、佐藤内閣における文部大臣なんですから、あなたも中村前大臣も、やはりこういうことのないように御善処されるように、これは要望いたしまして、しばらくその御善処の推移を見守ることにしてこの質疑は打ち切ります。  次に、物価問題で少し御質問したいと思います。農林大臣おられますか。——おかぜを召しているようでありますから恐緒ですが、昨年の七、八月ごろ農林省は一部野菜の廃棄処分を行政通達で出したことがありますか。     〔委員長退席、坪川委員長代理着席〕
  122. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 四十五年度予算で、金額ははっきり覚えておりませんが、四千数百万円とりまして、非常に野菜の暴落いたしましたようなときに、それを産地で破棄してしまう、そして価格をある程度維持しょうということを考えて、予算を編成いたしました。そのときにその趣旨の次官の通達を出しました。
  123. 麻生良方

    麻生委員 その通達の自後のてんまつはどうなっていますか。
  124. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 取り消してはございませんで、そのままになっております。
  125. 麻生良方

    麻生委員 そのままになっているということは、その必要がなくなったということですね。
  126. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 その制度はまだ残っておりますし、その通達はそのまま生きているわけであります。
  127. 麻生良方

    麻生委員 通達のことじゃないのですよ。つまり廃棄処分にする必要がなくなったわけですね、事実問題としては。
  128. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 そのとおりでございます。
  129. 麻生良方

    麻生委員 そうすると、やはり農林省というのは相当見通しに間違うことがあるのですね。余り過ぎると思って廃棄処分にしろという通達を出しておいて、別にすぐその直後で廃棄処分にする必要がなくなったということは、見通しが間違ったということですね。
  130. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 こういうことをやれということではありませんで、麻生さん御存じのように、野菜つくりの農家の人たちは、ことしうんと野菜ができて暴落いたしますと、来年それをうんと減産してしまうわけです。そうすると、翌年うんと暴騰いたしますので、これは外国でもやっている措置でございますけれども、非常にそういうおそれのあるときには、そういうことをやり得る制度で、ただいま申しましたように四千数百万円とりまして、いざというときにはやるつもりでおったが、実はそういうことが問題になりましたときに、佐藤総理からもそういう棄却してしまうことはもったいないではないか、それより老人ホームといったよう施設に無料で配給でもしてあげるというほうが親心があっていいではないかというような御注意もありましたので、いま申しましたように廃棄措置はやらずにおいた、こういうことであります。
  131. 麻生良方

    麻生委員 総理、野菜の値上がり、これはなかなか下がらないわけです。いろいろ御努力はされておると思いますけれども。これからもう少し農林大臣、経企庁長官との間でいろいろ御意見をお伺いした結論を総理にもあとでお求めしたいと思いますから、ひとつお聞き取りをいただきたい。  農林大臣、先ほどの話で、指定産地の野菜を廃棄処分にした場合、その補償費というのですか、それはどのくらいの比率になっているのですか。
  132. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 それは、いまあなたがお尋ねになりました具体的な問題は指定産地ではありませんでした。大体高原野菜を考えておったわけです。
  133. 麻生良方

    麻生委員 それはそれでいいのですが、廃棄処分にした場合の一般的な問題として、その補てん措置がありますか。
  134. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 野菜価格安定法がございまして、それぞれの場合にそれぞれ適用して保護するようにできております。
  135. 麻生良方

    麻生委員 私が聞いているのは、つまりどういう基準でどういう金額を補てんするかということです。保護するかということです。あなたがおわかりにならなければ……。
  136. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 個々のケースはよく覚えておりませんので、事務当局から御報告いたします。
  137. 荒勝巖

    荒勝政府委員 お答えいたします。  四十五年度の予算で約四千二百万円の、一部キャベツにつきましていわゆる廃棄の実験事業を仕組むということでいたしまして、制度的なものではございませんで、あくまで実験的にやってみようということでこういう予算をいただいたわけでございます。その趣旨につきましては、ただいま農林大臣からお答えがありましたように、廃棄する過程におきまして、何ぼ何でも全部廃棄してしまうのはどうかということで、一部は老人ホームとか社会施設に寄付するということにいたしましたが、その廃棄の予算の仕組みました基準単価といたしましては、キャベツで作型別には夏秋キャベツだけを限定いたしまして、全部ではございませんが、一応いわゆる廃棄に要する単価の、まあ交付金の単価でございますが、一キログラム当たり五円三銭、こういうことになっております。
  138. 麻生良方

    麻生委員 それから農林大臣、いま野菜の産地で、これは農協等を通じて予約出荷があると思うのですが、この予約出荷は大体予約出荷どおり出荷されておりますか、見通しどおり。
  139. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これは御承知のように、農林省が指定産地としてやっておりますのが、大体今年度拡張しまして全国で六百四十カ所ぐらいあるわけであります。それぞれやっておりますけれども、何しろ六百四十カ所もあるわけですからどこと申すこともできませんが、若干私どもにとってはこういう時期にこういうものが出るはずであると思っているものが出ないようなものがございます。そこで先般私どものほうで全国の主たる野菜の産地七県の担当者を集めまして、それらのことについてずいぶんいろいろ追跡調査をいたしましたが、お話がございましたように、出るべきものが停滞をいたしておったというふうなことはあったようでございます。
  140. 麻生良方

    麻生委員 結論的にいうと、予約出荷が見込みどおり出ないということが間々あるということだろうと思いますが、その原因ですね、これは答弁でもなんだと思いますが、途中で農家が売り先を変えてしまう。昔流の、米でいえば青田買いというんでしょうね。まあ米じゃないから何というのか知りませんが、その実情がわかりますか。
  141. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 大体把握いたしておりますけれども、どこがどうという何か特定のお尋ねがございますれば、それの調査のところを申し上げますが、いまお話のございましたように、こちらが——たとえばこの間大根がだいぶ問題になりました。そこで大根がはたしてないかということを、先般つくりました対策本部も省内にございますし、われわれのほうから係官をして調査いたしましたところが、ありました、現実には。しかし、相手がやはり野菜をつくっておられる農家にしても、それから仲買い人にいたしましても、商売ですから、まあ新聞等にもいろいろ書かれ、国会等でも問題になりますと、これはこの品物がないなというようになってまいりますと、若干それを出し惜しみするという傾向、そういう傾向は現実にあるわけでありまして、そういうものをどういうふうにうまく出させるかというふうな商売人的なことが、私どもの役所のほうでも最近は非常に必要なことになっておるわけでありますが、現在で申せば、白菜などが最もその例ではないか、こう思っておりますが、各地に手分けをいたしまして、いま督励をいたしておる最中であります。
  142. 麻生良方

    麻生委員 総理、きのうですか、おとといですか、松野さんの御質問の中で、統制令から米の値段をはずしたときに、やはり何らかの歯どめの策が、コントロールが必要である、場合によれば、直接政府が米を買うような場合も考えなければならぬというような御答弁をされておりました。私は、やはり野菜も米に準ずる重要な需要にあると思うのです。いまわれわれなどは、米を食わずに野菜を食えと言われておるのですから、米を食うと太り過ぎますから、だから野菜が主食になりつつあるわけですよね。そういう意味で、野菜の価格の安定ということは、米以上に、特に都市生活者にとっては非常に重要な問題になってきている。  そこで、大蔵大臣、総理が米の場合にお考えになり、御答弁されたような何らかの歯どめ、たとえば指定産地をふやして、そこで最悪の場合、うんとでき過ぎた場合の補償基準を引き上げる。やはり農民のためにはそれはやらなければならない。同時に、それだけの補償をする以上は、やはり出荷義務というものもある程度は負ってもらわなければならない。補償はするわ、出荷のときは義務はない、予約しておいてもキャンセルは自由だというのじゃ、これは片手落ちで、農民過保護だといわれてもやむを得ない。だから、やっぱり一補償のときの基準も引き上げ、農民が安心してその義務が遂行できるような仕組みを御検討になるお考えはございませんか。
  143. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お話しのとおりでございまして、実際このごろは、毎年米の消費量は減って、逆に野菜がふえていくわけです。そこで、ただいま私が申し上げました全国の六百四十カ所の指定産地、これはそれぞれ価格保障もいたしておりますし、それから、義務的にはその生産物の二分の一は指定した場所に送らなければならないとか、いろいろ制約がございます。それからして、いままでは、果樹園などにはスプリンクラーなどをつけるところがありましたけれども、いまはやはり野菜の産地に、そういう施設をどんどん希望もあり、やってまいりますので、それなりにやはりいろいろな義務づけをいたしておりますので、ただいま御指摘ような、こちらが希望する場合にその地域に向かって、いわゆる指定消費地に向かって出荷を渋るというふうなことは、まず指定産地の生産者たちにはあまりないようでありますが、やはりどうしても中にいろいろ商売人が入る場合に若干のことはあるようでありますが、御指摘ような点について十分気をつけてやってまいるつもりであります。
  144. 麻生良方

    麻生委員 この野菜問題を取り上げますと、一つは生産地の対策、それからもう一つはやっぱり流通機構。流通機構は、今度市場法の改正が出されております。これはその改正案の検討の中で十分に当該委員会で審議されると思いますが、この二つにやはり中心があることは否定できない。要はこれは実行あるのみだと言われておりますが、佐藤経企庁長官、おいでになりますね。——あなたは、われわれが聞いてもなかなか卓抜した御意見を持っておられるのですね。「夕刊日曜」という新聞で、あなたは上坂冬子さんと社会党の松平忠久代議士と、この野菜問題について御討論になったことがおありですね。その御討論を私読んでいまして、実にあなたの御意見に私も敬服するのですが、参考までに御意見をちょっとここで披露さしていただいて、それに対しての農林省の御見解を聞いていきたいと思います。     〔坪川委員長代理退席、委員長着席〕 ちょうど上坂さんも傍聴席に見えておりますから、これはやはりあなたが市民に対談してお答えになったことですから、責任のある御見解だと思う。  この中で、上坂さんはこういうことを言っている。佐藤長官にお会いするたびに物価はどうなのですかとお尋ねしてばかりいる。何度伺ってもだめだ。どうでしょう。七一年は多少明るい見通しですか。こういう質問に対して、佐藤長官はこう答弁している。農林大臣に会うたびに食料品の値上がりを何とか押えようと話をするのですが、値上がりの根本理由は供給不足なのですよ。供給が不足すれば物価が値上がりすることも当然だし、それ以上に食生活が脅かされる。なぜそうなったのか。私はやはりこれまでの政府の政策に甘さがあったと思う。政府批判をされておる。この御見解は変わりないですな。
  145. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 別に見解に変わりはございません。
  146. 麻生良方

    麻生委員 二面において需要はどんどん伸びており、その需要がどんどんふえているということが十分に認識されていなかった。——総理、それを一緒にお読みになりながら聞いていただきたい。もう一つは、基礎的な対策に怠りがあったことが指摘できる。そういう政策の甘さが、いまになって明らかになってきているのが供給不足、大幅な値上がりなのです。この見解はやはり農林省にとって一つの批判だろうと私は受けとめますが、この批判に対して、農林大臣、やはりこれはまともにお受けとめになりますか。
  147. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 佐藤エンベエ……(笑声)失礼いたしました。企画庁長官とはしょっちゅう話をして打ち合わせておりますし、御指摘新聞も見せていただきまして、おおむね妥当なところだ。それで、ことに甘かったとおっしゃるところは、私どもも実はどうも最近は需要に見合う供給という点から申しますと、確かに企画庁長官の言われますように、足りないことを痛感いたしておりますので、たとえばただいま米の生産調整をやるかわりに野菜等をふやす、それも当初の計画よりも約一万六千ヘクタールくらい増強しようとかいうふうなことを、これはやはり企画庁等とも相談してやっておりますので、佐藤さんの言われておるところは、私どもも大体において同じよう見方をいたしております。
  148. 麻生良方

    麻生委員 そこで、さらに佐藤長官は追い打ちをかけるわけなんですが、間違いだと気がつけば早く直せばよろしいのですが、そこの回転があなたは十分間に合わない、タイミングを失している、こういう追及がさらにあるわけですが、これはどうですか。
  149. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いろいろ観測がありますけれども、私ども農林省といたしましては、やはり、さっきもちょっと触れましたように、ことし増産で暴落いたしますと、来年はがたっと生産が減りますから、そういうことがありませんように、まず生産者を十分めんどうを見るということ、そしてまた、価格安定してあげなければ翌年への生産意欲がないものですから、そういうことでありますけれども、いま申しましたように、基本的には、やはり需要に見合う供給をしなければならぬということで、農林省には、次官を本部長にいたしまして、しかも、さっきここでお答えいたしました蚕糸園芸局長の主管でございますけれども、役所全体として取り組むことにして、いま統計調査部の者は地方にずっと一般におりますので、そういう人たちにも、単なる統計だけでなくて、現実に出荷の世話をさせるというふうな、現場まで派遣するようにいたしまして、要するにいま私どもが、いままで足りなかったと思うところに重点を置いてきておるわけでありますから、これは企画庁においても十分そういうことは理解しておられると思います。
  150. 麻生良方

    麻生委員 農林省というのは、ずうたいが大きいですからね、なかなか回転がむずかしい点もあるし、それにお米にばかり目が向いておったということは事実だと思います。しかし、いま言ったように、やはり近代社会、特に都市生活者の観点はもう違ってきておるわけですよ。だからそこの回転が鈍い、鈍いことが、プランはわかっていながらそれを実行する力が出てない、だから実行あるのみだ、こういうことになるわけですね。その実行の御決意等は、昨今農林大臣もかなり積極的な姿勢を示されていますから、私は期待をいたしますが……。  もう一つやはり問題点として上坂さんが指摘しているのは、生産性を高めるということは集約化、集団化、機械化で人手を省くというようなことになるのでしょうか。——これは上坂さんはしろうとでございますからこういう表現でございますが、これはやはり一つの問題点をついた質問だと私は思います。  それに対して佐藤長官は、野菜は流通面にも大いに問題があるが、それも生産がばらばらな面から生じている。したがって、野菜づくりは大きな集団農業にならなければいかぬ、こういうことを言っておりますね。この集団農業にならなければいかぬということを長官、もう少し具体的にこれを進める場合どういう方策になりますか。
  151. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 これは農林大臣からお答えするほうがいいと思うのでありますが、農林省でもこの方向で、いわゆる出荷安定供給のための特別の法律もすでにつくりまして十年以来やっておられるわけです。ですから、それをもっと徹底してやっていく。現在そういう方向あるいは体制ができているのですから……。もっともそれを妨げる要素は御存じのようにいろいろとございます、労力の不足であるとかいろいろございます。その困難な条件を克服してやはりそれを進めていかなければならない。それから、やはり都市近郊農業というものは、いろいろな障害にあって減少しつつあります。でありますから、多少の輸送費の犠牲を払っても、やはり遠隔地に大量のものをつくっていく、こういうようなことが必要になってくる、こういうことであります。
  152. 麻生良方

    麻生委員 さらには佐藤長官は、お米づくりのたんぼをどんどんつぶして、野菜づくりの畑に転換させることを進めるべきだ、こういう見解を表明していますが、そうですね。—これは農林大臣どうですか、これを具体的に推し進められますか。
  153. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 まことにそのとおりでございまして、ことしこの国会で予算審議をお願いしております中の予算にも、十分そういうふうなことを計上いたしてあるわけであります。その点は全く同感でございます。
  154. 麻生良方

    麻生委員 さらにその細部は、農林委員会あるいは物価委員会等で十分に御検討願いたいと思います。  ただ長官最後に、ことしの夏の初めに、農林省が、このままでは野菜ができ過ぎるからあまりつくらないようにという通達を出したがとんでもない話だ、こういう批判を経企庁長官はされておりますね。  それで私は冒頭にお聞きしたんだが、全体的に見て最初に私が申し上げたように、やはり野菜は米に見合う、米以上の重要な主食になりつつあるという認識のもとに、生産地対策、それはやはり農民を保護すると同時に農民にも義務を与えていく、このバランスをじょうずにコントロールするということ、それから流通機構では、いまの市場を徹底的に近代化する、結局この二本に尽きるということですが、総理、お聞きのとおりの議論が、あなたの内閣の内部でもこういう見解が表明されておるわけですから、ひとつ農林大臣と御相談をされて、一日も早く野菜の値が安定するような実行を、これはお願いをいたします。その御努力を一言だけおっしゃっていただきたい。
  155. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま麻生君から、農林大臣並びに佐藤経済企画庁長官に対していろいろ御意見を述べられました。私も、最近の世相から見まして、野菜不足、野菜高値、そういうものに非常に頭を悩ましておる一人でございます。政治の問題もいろいろの問題がありますが、内政の問題でほんとうに取り組まなければならない問題はこの物価問題、しかも、その生鮮食料品、そういうところにある、かように思いますので、これにはお話しになりましたような点もいい参考でございますから、この上とも一そう両省を督励し、また関係省を督励して、そうして十分成果があがるようにいたしたいものだと思っております。
  156. 麻生良方

    麻生委員 時間がございませんので、野菜の問題、まだまだ聞きたいことはたくさんありますが、物価問題はこれで打ち切ります。  あと若干の時間の中では、若干詰めが無理かと存じますけれども、日台、日中問題で一つ二つ総理に所見をお伺いしたい。  総理は、昨日の石橋、正木両代表の答弁の中で、この日華条約の中の第一条、この効果は中国本土全域に及ぶのである、つまり終戦処理ですか、あるいは終戦宣言ですか、しかし第四条、第七条、第八条、第九条は、交換公文中にある申し合わせに基づいて、それは蒋介石政権の主権の及ぶ範囲である、こういう御答弁をされておりますが、これは確認してよろしゅうございますか。
  157. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  158. 麻生良方

    麻生委員 そうしますと、その確認の上に立って、総理が言ういわゆる国際上の信義、こういう点を考えますと、この確認の上から出発している、こういうことになるだろうと思うのです。私は、きょうは私の党や私の見解は一応たな上げいたします。あなたが御答弁されているその出発点から、私は若干質問したいと思うんですが、そうしますと、現在蒋介石政権は、その主権は中国本土には及んでない、これはお認めですな。——おもうお立ちにならぬでけっこうです。お認めになるとすれば、将来その主権が中国本土に及ぶと総理はお考えですか。それをちょっと答弁してください。
  159. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 なかなかむずかしいことだと思います。
  160. 麻生良方

    麻生委員 まあ国際上の問題もありますから、むずかしいと思うという御答弁、私もそれはそうだと了承します。しかし、常識的にいえば、それは非常に困難なことだ。とすれば、中国本土に、現実に事実関係として主権の及ぶ政府があることもお認めですね。
  161. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりです。
  162. 麻生良方

    麻生委員 そうすると、もうそれから二十数年たっていて、なおかつ蒋介石政権の主権が中国本土に現在なお及んでない、また近い将来も及ぶことはきわめて困難だという考え方に総理がお立ちになるなら、当然いま中国本土に主権の及んでいる北京政府との間に、少なくとも日華条約中における第七条、八条、九条及び通商条約等に該当する条約の取りきめは必要だとお考えになっていますか。
  163. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 中華人民共和国もまた国民政府も——中華民国も、二つの政府がそれぞれの範囲に自分たちの主権を及ぼしている。もちろん中国大陸、あの広大な地域に施政権を持っている、及ぼしている中華人民共和国、これも台湾には一指も染めることができない。ましてや台湾が中国本土に及んでおらないこと、これは事実でございます。そのとおりですが、しかし、どういうわけか、その二つの政府が同じように、われこそは中国の正統政府なり、かように主張している、そこに問題の解決のむずかしさがあるのであります。しかも、私どもは過去二十年前に中華民国、国府を代表者として選んで、そして平和条約を締結した、そういういきさつがあるし、その後引き続いて国府との間の親善友好は続いておりますし、また国連の場におきましても、中華民国が中国を代表する政府として常任理事国の一員でもある、そういうところに一つの問題があるわけでございます。これが将来改善されない。だから、きのうも言うように、とにかく両者で話し合うことができないのか、こういうような話にも展開されるわけであります。なかなかむずかしい問題です。
  164. 麻生良方

    麻生委員 そうすると、政府のお考えの中には、両者で話し合いをして、そしてそれが合意に達するという解決の方法があれば、将来考えてもいい、こういうことですね。
  165. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、両者の間で話し合いができて、そしてそれがまとまればそれに越したことはございません。第三者のわれわれがそれをとやかく批判することはないと、かように思っております。
  166. 麻生良方

    麻生委員 しかし、現実には、両者の間の話し合いの場はきわめて困難である、そこに佐藤政権としてのこの日台、日中問題の取り組み方の基本姿勢が生まれると思いますが、これはやはり何とか解決しなければならぬとは総理も思っているのでしょう。——思っているのですね。思っていれば、やはり多少は実行しないとまずいでしょう。
  167. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、現在の状態でいいとは思っておりません。したがって、これが改善されることを心から願っております。いま唯一の、政府関係するものではございませんけれども、両国間の民間交流あるいは民間貿易、それなどは順調に拡大されている、これなどはたいへん喜ぶべきことだ。また、昨日報道されたように、日中覚書貿易協定、これがまた再開される、こういうことでありますから、これなどもたいへん私は歓迎しておる。また、わが党の藤山愛一郎君が訪中する、こういう記事も昨日見たばかりであります。これなどもたいへんけっこうなことだ。とにかくお互いに交流し合うこと、そういう機会にお互いの理解を深めること、これが何よりも大事なことじゃないだろうか、かように思っておりますので、私、努力しないわけじゃありませんが、まだ目に見えた政府サイドとしてのものが何ら出ておらないじゃないか、かようなおしかりを受けるようないまの状態でありまして、私はまことにこれは残念に思っております。
  168. 麻生良方

    麻生委員 どうも初めからおしかりを受けるよう状態だと、こう総理が言っておられるので、それではこれはとても質疑討論にはならぬのですよ。そうじゃなくて、もう少し前向きで取り組んでいただきたい。いまの総理答弁では、第三者がやるのは大いにやってくれ、しかし、まだおれの動くべき段階じゃない、こういう趣旨なんだろうと思いますが、やはりそろそろお動きになるべき段階が来ている。たとえば岸前総理、あなたのおにいさんなどの御発言も、きのうきょう、決して日中との国交を阻害するつもりはない、しかし問題は、台湾への国際上の信義というものを重んじながら、それを解決することが問題だ、こういう御発言もされておる。そういう情勢がいろいろな面から来ておるわけなんですから、やはりこれは前向きで取り組んでいただきたい。  そこでもう一つ、現在台湾との間に日華条約に基づくいろいろな事実関係ができておりますね。この事実関係、その中には一つは経済関係があります。この経済関係は今後どういうふうになる見通しか。特に最近台湾政府から——わかりやすく私は台湾政府と申し上げますが、円借款の申し入れなども来ているやに聞き及んでおりますが、これらに対してさらに政府はそれを推し進めるお考えがあるのかどうか、その点ちょっとお伺いしたい。
  169. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の先ほど答弁で誤解を受けては困りますが、積極的に政府は日中改善をしたい、この気持ちはございますから、いままでもしばしば大使級会談等を提唱しているというか、そういう発言をしばしばしております。またその他の事柄についても、相手方が了承するならば、いつでも、どこでも会談することについてやぶさかでない、これは積極的な態度のあらわれだ、かように理解してもらいたい、かように思います。  ところで、本来の、いまのお尋ねの台湾に対するこれは借款といわれるものでございますが、これは民生の安定に協力する、あるいは経済の発展に協力する、こういうような立場から有効な話し合いができるならば、そのものを具体的に考えていこう、こういう立場でございます。いわゆる政府そのものについての直接の援助、こういうものでないことだけ、これははっきり区別してお考えおきいただきたい。
  170. 麻生良方

    麻生委員 民間企業がいろいろな形で提携を深めていくということは、これは政府としてはとやかくくちばしをはさむことではない。ただ政治的配慮を考えれば、いま台湾と日本との間には相当の経済関係が現にある。これは私自身もやはりそこなうべきではないと思いますよ。しかし、それをさらに政府がうしろだてになってさらに深めていくということは、一方中国に対して相当の刺激要因になるということも否定できない。したがって、日台の関係政府がうしろだてになってこれ以上推し進めることは、この段階では手控えることが、総理考える日中関係の打開にも間接的に大きな影響を及ぼしてくるという判断を私はしますが、その判断についての総理見解は別に答弁の必要はありません。必要ないが、この問題をめぐって調査団を政府は台湾に派遣するのですか。
  171. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまのところ、台湾に政府の経済調査団というようなものを派遣する計画はございません。
  172. 麻生良方

    麻生委員 それはそれでけっこうでございます。  それから最後に、この間、本会議で自民党の総務会長の鈴木代議士が具体的な一つの提案を行なっているわけです。その提案内容は、ともあれ結果的に常識的に判断すると二つの政府があるではないか、その二つの政府があることの認識の上から日中問題を解決する道を探ったらどうかという趣旨に、私は翻訳かもしれないが受け取ったのですが、この二つの政府があるではないかという認識には総理もいま御同意されますか。
  173. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 同意するというか、そういうことを否定するものではございません。
  174. 麻生良方

    麻生委員 そうすると、この事実の上に立って、一方はもうすでに国交が回復されておる。一方はできてないとすれば、やはり一方と国交を回復する道を、あるいは何らかの条約を結ぶ道を検討しなければならぬわけだが、それには、総理が言う国際信義を重んずる立場に立てば、台湾政府の同意を必要とすると思われますか。
  175. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 厳格な意味において私どもが自主的に自立的にわれわれの外交を伸ばしていけばいい、かように思います。思いますが、少なくとも関係国は一応了承しておる、こういうことが望ましいのではないでしょうか。そういうことの考え方を全然無視して、どう考えようとそれはその国の御自由です、わが国はわが道を行く、こういうのではおさまらない、かように私は思います。
  176. 麻生良方

    麻生委員 私は、それはごもっともだと思います。とすれば、せっかく自民党の代表として国会の本会議で自民党が提案されたのですから、どうですか、台湾政府に使節を出して、そのことを台湾政府の合意を得られるように外交努力を行なってみるおつもりはございませんか。
  177. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろくふうしてもけっこうですが、しかし、そういう事柄は実ははっきりしている、かように思いますので、いまさらあらためて相談をする必要はないだろう、かように思います。
  178. 麻生良方

    麻生委員 ちょっとその御答弁の要旨が、そういうことがはっきりしておるというのは、何がはっきりしているのですか。
  179. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いま中国大陸そのものが、北京政府そのものが日本が持つような柔軟性を持っておればけっこうですが、柔軟性がない、この状態でただいまのような話が進むとは思わない、私はかよう考えておりますので、いましばらくその問題は預からしていただきたい、こういうのでございます。
  180. 麻生良方

    麻生委員 そうすると、自民党の党を代表しての提案もしばらくお預かりということですか。それならそれでけっこうなんです。
  181. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 党を代表しての質問で、総裁との話し合いが十分ついておると普通に考えるのがあたりまえかわかりませんが、そういうものでない。これは意見でございますから、私が特別な考え方を持って、ただいまの考え方ではちょっと直ちに賛成すると、こういうわけにいかない。しかし、私はその問題を拒否したわけではありません。だから、そういう状態ができるならたいへんけっこうだがと言うのは、そういう意味でございます。
  182. 麻生良方

    麻生委員 それでは最後に、総理がとにかく現実に二つの政府があるという認識についてはお持ちになっておられるとすれば、いまのその現実の認識の上で、その認識を国連の場において権威づける、そういう御努力も含めてその考え方を預かる、こういう意味でございますか。
  183. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの御意見はどういうことかと思いますが、あるいは誤解があっては悪いのですが、いまの日中問題、中国大陸との問題、これはやはり多数国の了承を得るという、そういう意味では、ただいまの国連の場というのが一番の適当な場だ、かように私は考えております。
  184. 麻生良方

    麻生委員 日中問題でそれぞれ党の立場を出したら、なかなか解決しない。台湾をどう見るかということは、社会党、公明党、民社党それぞれの見方がありましょう。しかし、私は、佐藤総理の手で日中問題の打開を一歩でも進めてほしい、こういう見解に立ちましたので、総理の御認識の上に立って、それを一歩進めるにはどうしたらいいかということを考えてほしい、こういう御要望を申し上げたわけです。その点を御理解いただければ、きょう私はそれ以上にこの問題を詰める時間がございませんので、またの機会に譲らしていただきたいと思います。  そこで最後に、大蔵大臣、あと三分か四分でございますので、御答弁はっきりさせていただきたいのですが、いわゆる自動車新税、これは自民党の総務会で、来年度のことですけれども、総合交通特別会計にして、そして云々という決定が、発表か漏れたのか知りませんが、出ておりますね。これは自民党が総務会で来年度の方針についていろいろ御相談されて決定される、これはもう別問題です。しかし、そのことに大蔵大臣は合意をお与えになったのですか。
  185. 福田赳夫

    福田国務大臣 与党自由民主党の御要請でありますので、私は、これを前向きで検討いたしたい、さような気持ちでおります。
  186. 麻生良方

    麻生委員 そうすると、その総務会決定は、今後政府を拘束するものではございませんね、検討の対象ではあるが。
  187. 福田赳夫

    福田国務大臣 拘束するものとは考えておりません。
  188. 麻生良方

    麻生委員 それでは、重ねて大蔵大臣にお伺いするが、私は、やはり国鉄も含めまして、とにかく日本の交通関係を近代化していくための財源というものが必要だということは認めています。しかし、それにはおのずから筋道というものがあるので、道路の整備、これはやはり自動車を持っておる者が基本的に負担するということは私は当然だと思います。自動車を持っておる者でも、その道路をやはりわれわれの手で負担しなければならぬということが納得できれば、決して反対するものではない。しかし、それが他の交通関係、たとえば国鉄とかその他の財源になるということになると、これは税制上の問題としてではなしに、国民感情としてそれは別個ではないかという感じが起こるのは、これまた当然だと私は思う。だから、総合会計という形で考えるなら、その財源の一部に、特に道路を目的とした財源の一部にこの自動車の新しい重量の税金を考えるというのは、私は決して反対ではない。しかし同時に、国鉄その他の交通機関の財源は、私は別個に求めるべきだ。そういう立場で大蔵当局としては、もう一度この総合交通対策の財源を、自民党総務会の決定もさることながら、独自な立場で新たな財源も対象にしながらお考えになるおつもりはございませんか。
  189. 福田赳夫

    福田国務大臣 麻生さんのおっしゃるような議論があるわけなんです。これはごもっともな議論だと思う。そこで、自動車新税をどういう性格のものにするか、その使途をどういうふうにするかということ、これはなかなか考え方のむずかしい問題だというふうに思っておるのです。  そこで、昭和四十六年度におきましては、これを特定財源といたしておりません。これは一般財源、そういう取り扱いをしておるのです。総合交通政策、こういうものを四十六年度中には立てまして、さてその上に立って財源をどうするかということで見直しをしてみたい、かよう考えております。
  190. 麻生良方

    麻生委員 この問題では、まだ税制上いろいろ議論したい点もございます。しかし、十五分までという時間の通告が来ておりますので、理事会の御決定の模様でございますから、私の質問はこれで打ち切らせていただきたいと思います。  最後に、総理、いろいろきょう申し上げました。しかし、私は結論として申し上げますけれども、いずれも政府をただいたずらに追及したり、あげ足とりをしたりしたつもりは決してございません。ただ、とにかく土地の問題にしても、物価の問題にしても、私はやはりここで質問する立場は、佐藤政権にやってもらいたいのです。いまの段階ではとやかく理屈を言ったってしようがない。政治的にはあなたの政権を倒したい。しかし、国民の一人としては、あなたにやってもらう以外にはないのだ。だから、私は語気を強めたこともございましたけれども、土地の問題もあえて取り上げた。こういうこともやはり庶民感情としては許しがたい感情が残ります。そういう点も含めて、日台、日中の打開、あるいは物価問題、あるいは土地問題、ひとつもう一度総理は新たにこれから総理を十年続けるという決意でやっていただきたい。どうせおれは来年やめるのだなんというお考えでやられたのでは、迷惑するのは国民でございますから、あなたの命の続く限りやるのだという決意でひとつもろもろの問題に対処していただきたい。  これについての所感を最後にお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  191. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来、麻生君の質疑を通じて、私は静かに聞いておりました。特別なあげ足とりの御議論ではなくて、建設的なお尋ねでございました。私もたいへん示唆に富んだお話、御意見、これなどはこれから参考になることだと、かように思いますし、それぞれ取り上げられた問題が刻下の、ただいまの一番大事な問題ばかりでございます。それらについて、政府がやっていることがどうもなまぬるいという感じを持たれながら鞭撻された、かように思います。  私の任期はそう長くいつまでもあるわけじゃございません。しかし、私は他の場所でも申しましたように、私がいる間それはもう全力を尽くす、そういう立場で政治を担当する。できるだけの、御期待に沿うようにこの上とも努力してまいるつもりでございます。
  192. 麻生良方

    麻生委員 どうもありがとうございました。  大臣各位にことばの点でいろいろ行き過ぎがありましたことはおわびを申し上げます。
  193. 中野四郎

    中野委員長 これにて麻生君の質疑は終了いたしました。  午後は一時より再開することとし、この際、暫時休憩をいたします。     午後零時十八分休憩      ————◇—————     午後一時四分開議
  194. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  総括質疑を続行いたします。辻原弘市君。
  195. 辻原弘市

    ○辻原委員 主として私は政府の財政、経済の運用に関する基本的な問題、並びに、本会議の代表質問以来議論をせられておりまするが、一つ具体的な物価の対策について、ささやかな私の提案を含めながらお尋ねをいたしてまいりたいと思います。  また、その他政府が自画自賛をなさっておられまするいわゆる高福祉、高負担という、これらの内政の重要な点について、総理、大蔵大臣その他関係大臣の具体的な所見を承っていきたいと思います。  総理に最初に伺っておきたいと思いますが、それは国会の予算についての審議権という問題であります。この件につきましては、すでにしばしば当委員会でも、また衆参の本会議等でも議論をせられてまいっておりまするが、そのつど総理のお考え方は多少変化があります。したがって、あらためて国会に予算についての修正権が明確にありやなしやという点についてお尋ねをいたしておきたいと思います。
  196. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 予算の編成権、これはわが国憲法の命ずるところで政府にありますが、審議権はこれはもう国会にあること、これは私どもが申し上げるまでもないことであります。その意味において審議をお願いする。その場合に一つ問題になるのは修正権、こういうような問題だろうと思います。しかしいままでのところ、特に問題をかもし出さないで国会の審議権は十分尊重されてきておる、かように私は考えております。
  197. 辻原弘市

    ○辻原委員 後段で総理がおっしゃった特に修正権について、これは政治運用の、何といいまするか、政治的な立場における総理見解というものを一応別にいたしまして、私はまず法理論的に修正権というものを完全に総理はお認めになりまするかどうか。この点を……。
  198. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま総理が、提案権は政府にある、こう申し上げたわけですが、修正権が国会にあるのかどうか、これは提案権を阻害しない範囲における修正は、これは国会において可能である、かよう解釈しております。
  199. 辻原弘市

    ○辻原委員 だから、私はしばしば総理答弁が違ってきておるということを先ほど申し上げたゆえんのものは、いま大蔵大臣が答えられた点と、総理が昨年の参議院で明瞭に答えられておる点とも非常に違っております。私の見解は、憲法四十一条におけるいわゆる国の唯一の立法機関であるという立場において、審議権は完全なる修正権をも含む、いささかの修正権についての制限はあり得ない、こういう前提を持っております。そのことについて総理は、ここに実は速記録がありまするが、昨年の通常国会の冒頭におけるわが党の成田委員長に対するお答えは、いささかただいま大蔵大臣が述べられたような、修正権が若干制約されるという範囲においての答弁であります。その後参議院のわが党鈴木委員なりあるいは木村委員から、これに対してさらに具体的な質問が行なわれており、総理は、それに対して明瞭に答えられておるのであります。私は、それを若干御披露申し上げますると、これは古い話でありませんので、そういうふうに毎年毎年こういった大切な問題の見解が違うなどというようなことではたいへんなことでありますから、ひとつ大蔵大臣、出番がなくて申しわけないが、この件に関する限り、ひとつ総理からお答えを願いたい。  鈴木強君がこう質問をしているのであります。「佐藤総理は、二月十七日の衆議院の本会議におけるわが党の成田委員長の質問に答えて、予算の修正権は国会にないのではないか、こういうふうにとれる御発言をされておりますので、この際、ひとつ明確にしていただきたいと思います。」こうやっておるのであります。総理はそれに対して、時間がかかりますから全文は読みませんけれども、こう言っております。「私の発言が誤解を招いておるようですが、私も、もちろん、いまの国会が国政の最高機関であり、予算修正権がないなどと、かよう考え方は持っておりません。修正権のあることはもちろんでございます。」 こう言っておるのであります。さらに、木村議員がそれに対して昭和二十三年二月二十六日の両院法規委員会における決定を披露されて質問したのについて、重ねて総理はこうお答えになっております。「木村君から重ねて私に教えていただきました。その点は、もう異存のないところでございます。」こう明言されているのでありまして、ただいま大蔵大臣が提案権を制約しない範囲云々といったようなことは、これは総理も毛頭触れられておらないのであります。したがって、総理のこの際におけるお答えは、私がいま申し上げた憲法第四十一条の唯一最高の立法機関であるという趣旨と、それからいま一つは、学者の間にも議論がありまするけれども、少なくとも修正権ことごとくが国会にあるとこう主張しておられる学者が引いておる、いわゆる財政の議決がすべて国会の議決権にゆだねられておるという憲法の条章から、何らの制約がない、こういうふうに私はこの総理のお答えを速記録で読んで承っておるのであります。いま一度総理から、その点は私のこれからの質問に重大な関係がありまするので、お答えを願っておきたい。
  200. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げましたのは、予算編成権は政府にある、こういうことを実は申し上げたのであります。したがいまして、修正する場合に、予算編成権をそこなうような、害するような修正はあり得ない、かように私は思っております。いままでも言ったように、増額修正はできないのか、こういうと、それは差しつかえないんだ、しかし新しく項を設けるとかいうような、予算編成権に触れるようなことはできない。これはまあこまかい議論にもなってきまして、大蔵大臣の言っていることと私の言っていることは別に矛盾はしておらないので、これは参議院における説明もただいま申し上げるような趣旨でございます。この点は誤解のないようにお願いしておきます。編成権のないところに、その編成権をそこなうような修正権のあろうはずはございません。だから修正するにしても、編成権は政府にあるんだ、その範囲内において修正が行なわれるんだ、かよう考えていくのが当然だろうと思います。
  201. 辻原弘市

    ○辻原委員 いまの御答弁は、私はあとで速記録を見て正確に一度解釈をしてみたいと思うのでありますが、少し総理は混乱をされているように私は思う。そこで、わかりやすくといっては失礼でありますが、具体的に伺っていきたいと思います。  いまの総理のお答えによりますると、増額修正はよろしい、ただし、款項目をふやしたり減らしたりするのがいかぬ、という発想は一体どこから出たのかと私はふしぎに思うんです。従来議論されているのは、むしろ増額等の修正は、これは旧帝国議会当時においては一つの、何といいますか、原則的なものがあったように承っております。したがって、そういうような旧憲法時代の思想というものが受け継がれて、増額修正についてとかくの議論がある、しかし款項目その他の異動あるいはそれの増減ということについてはあまり議論がない、というのが修正権についての従来の経過ではなかったかと私は思う。しかも先例はそれらいずれをも含んでおるのであります。例を引きませんけれども、これは新憲法下、現在の議会制度になりましてから以来、私がいま指摘をしておりまするような修正権を制約するようなそういう学者の一部意見はあります。あるいは政府当局の意見はあります。しかし現実に国会において行なわれておりますることは、何にも制約はありません。したがって総理がおっしゃった点は、いささかその先例をも否定するものであって、もし総理のおっしゃったとおりであるとするならば、これは従来の議会の運用の中においては、憲法上非常に誤ったことを国会がやってきたということにもなりかねぬ。私はそういうことはあり得ないと思うので、したがってここで総理は、参議院において申されましたとおり、少なくとも憲法上修正権というものは厳に存するという明快な御答弁を重ねてここでお答えになることが正しいのではないか、こう思うんです。なぜかといいますると、私は、あなたの政治家としてのあるいは一党の総裁としての政治判断はあとでお伺いすると申しております。そういう範囲でもう一度明確にひとつしていただきたいと思います。
  202. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、編成権——御審議を願っておる以上、修正権はある、そうしてその修正権が、減額修正だけが許されて増額修正が許されないと、そういうものではない、しかし予算の編成権に支障を来たすような、項をふやすとか、こういうような問題は、これは国会といえども、最高機関といえどもなすべきことではない、かよう考えておる。全然修正権なしと、かように申すわけではありませんし、その修正権も、ただ減額修正だけが可能なんだと、こういうように限定もいたしておらない、このことを明確にしておきます。
  203. 辻原弘市

    ○辻原委員 明確じゃありませんが、あまりこれに時間をとるわけにまいりません。ただ私は、増額ができてあるいは減額ができて、款項目の異動ができないなんという珍解釈は、これは成り立たぬと思っております。ただ総理が後段に言われましたことは、それは運用上配慮の問題であって、さっき大蔵大臣も言われた、要するに作成権、編成権というものはこれは政府に専属しているわけですから、そういう意味での編成権に介入しないといったことの配慮、これは運用上考慮すべき問題であって、法制上の解釈云々の問題ではない、こう明瞭に分けているのであります。だから総理はそれをごちゃごちゃにして言われておりまするから話がややこしくなって、至るところで総理答弁が違っております。私は、そういう違っておる点を追及するのがいまの主題ではありません。ただ私はここでこの問題をあえて持ち出しましたのは、これは総理、ひとつ十分お聞き取りを願っておきたい。総理も私も議会政治の中の一員であります。いま国民が議会政治に対していろいろものを申しておる。ものを申してくれている間はまだまだ私どもはだいじょうぶだと思うのでありまするが、だんだん議会政治というものについて国民、特に若い世代が関心を持たなくなる。これは議会政治の将来に対して深くわれわれは心しなければならぬことであります。そういう点をなくして、国民に、若い世代に対して大いに議会政治というものに対して関心を抱かしめるための努力というものは、今日議会政治に携わっておる者の大きな責任ではないか、こう考える。  そこで私は、国会における審議権のあり方、同時に政府に専属している予算の編成のあり方というものを、この際じっくり考えてみる必要があると思うのです。ここ十数年、私も政府予算の編成をやられてきておる様子を客観的に拝見をいたしてまいりました。巷間いわれまするように、一つの形式ルートができ上がってしまっておる。そうして政府が決定する以前に、悪いことばでありまするけれども、いろいろ各方面の圧力団体といわれるものがこれに介入をしてくる。まだそれだけならばよろしい。私はここで特に指摘をしなければならぬ問題というものは、それは政党政治であり議院内閣制であるのでありまするから、一体、与党というもの、あるいは党に所属される議員の諸君の、政府の編成権に対する介入というものはどの程度に制約をしなければならぬものかということを、これをひとつ総理みずからも十分御検討願いたいということであります。特に最近におきましては、政府の決定以前に与党が介入する度合いというものはあまりにも強過ぎるのではないか。これは私一人の議論ではなくて、国民の心ある人々はそう申しておるのであります。その結果どういうことが起きるか。それは、本来いま申しましたよう予算についての審議権というものは、これは議員個々の権限に属しているわけであります。したがって、与党、野党いずれにかかわらず、議員固有のこの審議権というものを発揮する場は、少なくともこの国会の場である、この国会の場でなければならぬ、これが私は本来のあり方であると思う。しかしすでに実際問題としては、与党はその編成の過程において逐一それに介入するものでありまするから、政府案が決定した瞬間において、これは失礼でありまするが、一つの錯覚が起きる。すでに予算というものを、十分これに対してタッチをした。審議をしたことにはならぬがタッチをした。したがって、予算委員会が開かれましても、残念ながらここで本格的な予算審議というものが与野党を通じて行なわれないという結果になる。これを見ておったならば国民はどうなる。あれは形式的だ、こういうことで、ことばは語弊がありまするけれども、国会審議というものがいわば空転をするのであります。空洞化するのであります。これが私は将来の議会政治の立場から与野党ともに心すべきことである。特に政治運用の責任者である総理は、国会のことでありますからあずかり知りません、予算編成権が私のほうにありまするから、与党でありまするから多少のことはけっこうでございます、なんということをいっておりますると、佐藤さん、あなたは六年間という前人未踏の長期政権を継続担当せられてきた、あとどのくらい担当されるかはちょっと私には判断つきかねまするけれども、しかしそう長くはおやりなさるまいと思う。とするならば、ここらでやはり議会政治のために佐藤内閣当時こういう新しい発想のもとにりっぱな議会政治擁護の方策が生まれた、私はこのぐらいのことがあってしかるべきではないか、ないということをあなたのために惜しむのであります。したがって、政治運用の基本としてひとつ私のいま申し上げました憲法論、政治論、これに対して明確な御所見を承っておきたいと思います。
  204. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 憲法論は先ほど申したとおりでございますから重ねて申しません。あとは政治論について申し上げます。  私はいま辻原君の名論を聞いていて、何だかここでやっておる予算審議は意味がないんだ、サル芝居だと言わぬばかりのような言い方をされたように思うのです。はたして皆さんもそうお考えでしょうか。私は少なくともさようには思っておらない。与野党ともに審議については最善を尽くしておる、私はかように思っております。だからこそ、こうして政府も、総理をはじめ、各大臣が壇上に立ち、皆さん方の質疑にお答えしているのだと思っております。そうして、その介入の度合いがどうも与党の場合は事前にすでにその話が漏れている、したがって与党との場合だと、どうももう話はついているんだ、こういうようなつもりで審議にかかっている、こういうことはたいへん残念だ、かような点を御指摘になったように思います。  私は、政府がどこまでも責任をもって予算を編成するのである。そういう意味からも与党の意見ももちろん聞けば、圧力団体というような名前で呼ばれましたが、他の民間諸団体の意見も十分聞いております。またことに今回などは予算編成に際して、聞く聞かないは別ですが、野党の三派からもこういう点を予算に盛り込んでくれ、こういうような御要望すらもございました。私はそういう意味では議会政治はやはり定着しているのではないか。そうして別にここでやっておる審議そのものについてこれを軽視する考えの毛頭ないこと、これも御理解いただき、各党ともそれぞれの主張を忌憚なく、ひとつ政府の政治姿勢から始まって政治の個々の施策にまで及ぼしていただくように、この機会にお願いをするのであります。私は、いまの政治論から申せば、大体うまくいっているんじゃないだろうか。どうもいまのように言われると、何だかちょっと困るような・・・・・・。
  205. 辻原弘市

    ○辻原委員 話半分に聞いてもらっちゃ困りますよ。私は予算審議が無意味だなんというようなこと、一言も速記録にはないはずです。ただ問題は、本来審議をすべき場所において与野党が堂々と審議をするという、その体制をより高める必要があるということを一点主張しているのです。同時に総理はいままことにあちこちの意見も聞いておる、また野党の意見も十分尊重いたしました、またいたしますとおっしゃる限り、今国会等におきましてもわれわれは建設的な修正をこの予算に試みたいと考えている、そういう点については謙虚に耳を傾けられますか。あなたがそれを実行されるならば私はあなたの言を信じましょう。ただしかし、ことばの上で意見を聞きましたけれども素通りいたしましたじゃ、困るわけであります。十分尊重をしてくれるかどうか、そういう点をもう一度伺っておきたいと思います。
  206. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私があるいは話を半分聞いた、こういうところで速断した点があろうかと思いますが、しかし与野党の間に十分に審議を尽くすんだ、こういう観点に立ち、またただいまお話しになりましたように、建設的な意見も遠慮なしにやるからそういうものは取り上げてくれるだろうな、こういうようなお話、これは私ども理解のできる事柄、またそういうものを取り入れなければならないと、かよう考えればこれを採用するにやぶさかではございません。しかし先ほど申しました、予算の減額ばかりが修正ではない、増額またあり得る、しかしやはり基本的には政府の編成権をそこなわないその範囲でやらるべきだ、かように私は思っておりますので、重ねてその点をお答えいたしまして何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。
  207. 辻原弘市

    ○辻原委員 十分尊重をして予算の修正等についても謙虚に耳を傾けます、こういう趣旨に受け取りました。これは私は単に野党的な立場でのみものを言っているんじゃありません。先般の六十四国会における公害問題に対する審議のあり方は、これは国民はすべてこれが本来的あり方だと、いま山中長官首を盛んに振られておりますけれども、まさにそう受け受っておるのであります。私はそういうあり方をも予算審議の中で生かしていかなければならぬ、そういう発想から特にくどいようだけれどもその点を冒頭に総理に注文を申し上げ、総理の見識を承ったのでありますから、この点はこの程度にいたしておきたいと思います。  そこで私は本論に入りたいと思うのでありまするが、本会議また当予算委員会のきょうまで、総理、大蔵大臣また経企庁長官のそれぞれ財政についての演説、方針、詳細に承りました。そこで私が非常に疑問に思いますことは——その前に政府の財政方針の基本的な方向というものを私なりに要約いたしますと、一つは七〇年代というのは、これは高度成長から安定成長路線へ定着させたい、なお本年度もいわゆる安定成長へ定着の努力をしたい、こういうことであります。間違いございませんですな。——いや、けっこうです。そこで私の疑問というのは、ちょうどいまから六年前この席上で佐藤総理に私は同様なことをお尋ねしている。ちょうど池田内閣からかわられて初めての予算審議のときでありました。私はどういう質問をしたかというと、これは目新しい問題じゃない、ただあなたが当時池田さんと総裁を争われたときの財政方針の基本というものが、高度成長をまっこうから否定をされて安定成長へ持っていきたいんだ、こういう議論をなさっておられた。そこで私は、それじゃ一体安定成長をいつごろ定着させる、いつごろ安定成長路線に切りかえられるつもりか、こう私は質問いたしましたならば、総理は、たしか四十年の予算審議であったと思いまするが、大体秋ごろだというお話がありました。これは一つの話としてその当時も承っておったのでありまするが、しかし、その当時においても、あなたはそういう意欲でお話をなすった。ところが、それから六年たっておる。福田さんも私はそうだと思うのですよ。あなたも、いま初めて大蔵大臣になられて、まあふなれな大蔵大臣であるならばそういう質問はいたしません。しかし、総理は六年間、大蔵大臣も何回目ですか、二回目でしょう。同じことを繰り返してきているのですよ。だから、まことに国民もふしぎに思っている。一体いつまでなんだろう、ほんとうにこれは佐藤さんが御在任中にそういうことになるのだろうか、あるいは福田さんになるのか、だれになるのかは知りませんけれども、ずっとそれを継続する意味において、継続審議の意味でそういうことを言われておるのか、やはりこれは非常に国民は疑問を持っている、極端にいいますると口先だけじゃないか。  だから、私はここではっきりお述べをいただきたいことは、一体いまの経済というものは、依然として高度成長のレールの上を走っておるのか、それともあなた方が願望されておる定着路線というものにもうすでに切りかわっておるのか、あまり多くのことをおっしゃらずに、ひとつ総理、その辺のあなたの経済に対する現状判断をお聞かせ願いたい。これをひとつ総理にお願いいたしましょう。前にあったのですから。
  208. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 きわめて最近の経済は御承知のように安定成長路線に向かっている、かように思います。
  209. 辻原弘市

    ○辻原委員 大蔵大臣、いま総理の言われたとおりですか。最近の経済は安定成長路線である、そうですか。
  210. 福田赳夫

    福田国務大臣 総理のおっしゃったとおりに考えております。またそうしたいと思って……(辻原委員「それは大いに違いますよ」と呼ぶ)もろもろの施策を行なっております。
  211. 辻原弘市

    ○辻原委員 日本語というのは便利でして、ちょっとうしろへつけるのとつけぬのとでは、話がまるきり違ってくる。そうでしょう。総理は安定成長路線でございます、大蔵大臣はそのうしろにちょっとつけ足した、そう願っておりますと、こう言う。話はだいぶ違いますよ。基本的な問題なんです。安定成長路線だといえば、私の議論がまた違ってくる。しかし、それを単なる願望ということであれば、また私の質問の、議論の角度が違うのだ、だからその点を念を押して聞いておる。思想統一ができてないじゃないですか。
  212. 福田赳夫

    福田国務大臣 辻原さん、私は願っておりますとは言っておりません。向かっております、またそれが実現するように全力を尽くします、こう申し上げているのです。
  213. 辻原弘市

    ○辻原委員 それでは、ひとつ向かっておるということを前提にして議論を続けましょう。総理のあれは速記録に残っておりまするから、これはひとつ総理の所信として承っておきましょう。後日——時間がありませんから……。  いま大蔵大臣が、向かっております、こう言ったのですね。そうすると、いま盛んに不況だ不況だと、こういわれております。大蔵大臣が、安定成長路線に経済が向かっておるということになれば、その不況というのは安定成長路線の中の単なる一時的な不況、こういうことに理論的になりますね。そうですか。
  214. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのとおりでございます。
  215. 辻原弘市

    ○辻原委員 その場合の経済成長率というのは、あなたのを、新聞から本会議からその他の答弁から、全部寄せ集めて一言で言うと——成長率だけで議論するということは適当でないという私は考え方を持っておりまするけれども、一つの目安として申しましょう。おおむね一〇%内外、こう言っていますね。確かにそのとおりなんで、例の新経済社会発展計画では一〇・六ですか、去年のあれでは一〇・八ですか、ことしは一〇・一、おおむね一〇ぐらいと、こう言っておりますね、それが安定成長路線ですか。
  216. 福田赳夫

    福田国務大臣 私の言う安定成長路線というのは、量の問題もあるし質の問題もあるのです。  まず量の問題、つまり成長の高さの問題ですが、ここ数年の動きは一三%成長というような動きであったわけなんです。しかもそれがだんだんしり上がりになってくる、これはたいへんなことになるというので抑制政策をとり出した、だんだんと下がってきております。昭和四十五年度の上半期あたりは一二%という辺に来ているのじゃないか、こういうふうに見られるのでありますが、さて下半期、昨年の十月からことしの三月の時点の成長の高さ、つまり量の問題です、これはどの辺に来ておるのか、これは経過中でありますので判断はできませんけれども、だんだんと秋から下がってきておる、その平均がかりに一〇%になるにいたしましても、三月の時点のいわゆる瞬間風速、これはかなり低いところに来ておるのじゃあるまいか、そういうふうに思います。私は、景気が再び過熱をする、超高度成長になる、これはほんとうに困る事態になると思いますから、そういう傾向があれば水をかける、そういう努力をします。しかし、逆にいま一〇%をかなり割り込むような傾向にありますので、その下ざさえをしなければならぬかなあというふうな感じをしておるわけなんでありまして、とにかく当面一〇%内外、この辺に経済の量的な成長の高さ、これを落ちつけてみたい、かよう考えながらかじ取りをしていこうと思っております。  それからもう一つは質の問題がある。質の問題は、量的の問題が解決しないと解決しない問題ですが、幾ら量的に高い成長をしても、内容が不均衡である、欠陥があるというのではいかぬ。内容とは何ぞやといえば、物価の問題である、公害の問題である、あるいは社会資本の充実という問題、あるいは社会保障、これの充実というような問題、そういう問題は量の問題と並んで並行的にやらなければならぬ問題でありますが、量、質ともに安定して均衡のとれた成長発展をする、これが理想的な経済運営の指針でなければならぬ、そういうふうに考えておるのです。かようなことを申し上げておるわけであります。
  217. 辻原弘市

    ○辻原委員 あなたのお話、どうもことばの上の表現と実態というものが非常に違っておる。これは私だけじゃなくて、国民もそう思っておる。安定成長へ向かっておるとあなたは言われた。総理のことばじりはつかまえません。ともかく、しかしあなたは、大蔵大臣は、安定成長へ向かっておるとおっしゃった。そうして、その安定成長というのは質と量がある、それは当然でしょう。その中で特に物価の問題をあげられた。私は、少なくとも安定成長へ向かっておるという限りにおいて、その質が改善をされておらなければ、あるいは改善をされておる曙光、徴候が明瞭に見えなければ、向かっておるという表現は使えないはずだと言っているのです。もう一ぺん、大蔵大臣。
  218. 福田赳夫

    福田国務大臣 徴候はだんだんとあらわれてきておるのです。つまり、特に重要なのは卸売り物価、これは先進諸国の中で、わが日本の卸売り物価の状態というものは飛び抜けていい状態なんです。きわ立っております。これはたいへんな成果である、こういうふうに考えております。これはやがて消費者物価にも時間をおいて影響してくる、こういうふうに見ております。需給の関係、そういうようなことで生鮮食料品なんかの高い状態が実現しましたが、これはそういう需給の問題というようなところから来た問題だ。しかし、基本的には消費者物価に対しましてもかなり強い影響力を持つであろう、こういうふうに考えております。また、社会保障あるいは社会資本の充実、そういう方面、これもずいぶん進んでおるわけでありまして、こういう安定した成長の高さでありますと、反動は来ない、反動不況というものが起こるケースが非常に少なくなる。そこで引き続いて息の長い成長が可能になる、こういうふうに見るわけでありますが、もし二二、四%成長を続けておった、こういうふうにしたらどうなるだろう。これはいまごろはたいへんなことになっておったと思うのです。ところが、引き締め政策をとったというので、これでやっと景気は息長い成長をなし遂げ、その上に立っていま申し上げたような諸政策を進める基盤ができた、こういうふうに見ておるわけです。
  219. 辻原弘市

    ○辻原委員 大蔵大臣から財政の講義を受けておるのじゃありませんから、ひとつ私の尋ねたポイントをかみ合わしてお答え願いたい。しかし、長長やりますと、幾つもあなたのおっしゃることに疑問があるんですよ。たとえば実績があらわれておると、いま卸売り物価を例にあげられましたね。卸売り物価が鎮静してきたならば、やがて消費者物価も鎮静するだろう。それは過去の例をあなたは無視しておりますよ。かつて日本の物価の中で卸売り物価が安定をして、けれども消費者物価はずっと上がりっぱなし。現在の、きのう発表された指数を見てごらんなさい。卸売り物価は鎮静してきておる。ところが、消費者物価はどうなんですか。卸売り物価にかみ合っていますか。かみ合っていないところが問題なんですよ。見てみなさい。物価は、あなた方が本年度の当初見積もり四・八%ですか、それを七・三に修正された。ところが、きのう総理府から発表されたあれを見ますると、驚くなかれ年間上昇率ははるかに上回って、全国平均が七・七、東京では七・八、十二月は八・三でありまするか、ともかく朝鮮事変以来だと新聞には書いてある。まさに物価はあなた方が言っているようなのんきな状態じゃない。卸売り物価が多少影響するくらいのことは私も知っておりますよ、部分的に。しかし、かみ合っておらぬところに問題があるわけであります。だから、われわれはいかに安定成長路線をあなたが強調されても、それはそのまま受け取りがたいというのはそこなんです。  問題は、経済の質が一向に安定成長路線に乗っかっていかないところに、私は今日の物価なり経済のメカニズムというものにどこかに欠点があるんじゃないか、どこかに方向が間違っているんじゃないか、こういうことを思うんです。だから、安定成長路線とはいうものの、実際結果を振り返ってみたならば、これは池田さんが昭和三十六年からやられておる高度成長の政策、いわゆる民間主導による設備投資拡大、大資本中心、こういった高度成長の姿とちっとも変わっておらぬというところに、私は財政運用の基本の問題がある、こう言うのであります。間違っておりますか、もう一ぺんお答えを願いたい。
  220. 福田赳夫

    福田国務大臣 辻原さんのおっしゃる話は、私は間違っておらぬと思います。しかし、私どものやっていること、これは辻原さんが御批判されるようにまたこれも私は間違っておるとは考えません。私は、いま日本の経済というものを安定成長路線に乗っけなければこれはたいへんなことになるんじゃないか。つまり、ある程度の成長はさせなければ、日本国民の生活も、あるいは世界における日本の地位、立場、これだって向上はしません。やっぱり成長政策はとらなければならぬ。しかし、行き過ぎた成長の速度、これが国内にいろんなアンバランスを生ずる、これを問題にしているんです。つまり、そういうことを総合して、安定した高さを持って、また均衡のある内容を持った経済成長、これを目標として進む、これが私は日本の経済政策の指針でなければならぬ、こう申し上げておるわけなんです。
  221. 辻原弘市

    ○辻原委員 それじゃもう一度、私はその高さという議論について、あなたの見解をもう一ぺんただしておきましょう。高さをはかる一つの目安が成長率にあるとするならば、先ほど私が申し上げたように、一〇%という高さは日本経済の今後の運用の、これは一つのレベル、こう受け取ってよろしいか。
  222. 福田赳夫

    福田国務大臣 いままでの勢いですと、一三、四%、これを別のことばでいうと、五年ぐらいで日本の経済の規模がまた倍になる、こういう速さなんだ。これはとてもそんなことではいかぬ。そこでそれを低くしよう。諸外国じゃ、いま非常に低いです。アメリカなんか横ばい、あるいはマイナスである。ヨーロッパ諸国でも一、二%、まあ三、四%というと高いほうなんです。わが日本は、一〇%といってもこれは一三%から一一%に移るのですから、そこでこれは、私はちょっと心理的な問題が多分にあると思うのですが、不況感というものを訴える声が多くなってくるわけなんです。あるいはもっと低いのがいいかもしらぬかとも思いますけれども、そういうことを考えますと、急にこの高さを下げるということは、私は適当でない。まあ当面——当面です、当面一〇%という辺を目標にした経済運用をやってみる。そうしてこれで、資源の問題から見て、あるいは輸送力の問題から見て、あるいは労働力の問題から見て、どうもこれじゃちょっと耐えられないというときには、また考え直したらいいじゃないか、当面はとにかく一〇%だ、こういう考え方の一〇%であります。
  223. 辻原弘市

    ○辻原委員 それじゃ大蔵大臣、あなたの当面といわれる意味は、これは経済問題ですからそう私もしゃくし定木に議論をするわけじゃない。しかし、やはり今後の経済についてのあなた方のお考え、またわれわれが考える、ないしは国民なり、すべての経済に関与する人々が考える場合に、これは重大な一つの目安、ファクターであります。したがって、私はその点を確かめておくのでありますが、当面といわれる意味は、いわゆる新経済社会発展計画というのは、これは四十五年から五十年の年度を期して、それにはいまあなたの言った一〇%ということを明記してある。したがって、そこいらあたりまではそういくけれども、その後についてはもうちょっと下げる、あなたはこういう考え方を持って運用されているのかどうか。そこを、もう余分なことは要りませんから、その点だけをはっきりしておいてもらいたい。
  224. 福田赳夫

    福田国務大臣 新経済社会発展計画は、一〇%じゃないのです。一〇・六なんです。それを私は、いま一〇%、一〇%と申し上げましたが、新経済社会発展計画は、昭和五十年までを展望しておるわけでございますが、あれはあれで、私はいいと思うのです。とにかく、あれを目標にした経済運営をやっていく。しかし、その中には多少の波は立つ。昭和四十六年という年を立ててみると、一〇・一というよう見通しになるわけなのでありますが、あるいは多少それをこえる時期もあるかもしらぬ、平均して一〇・六だ、こういうのが新経済社会発展計画でございますが、それでやってみる旧そうしていろいろまたこれでひずみが出てくる、あるいは制約条件も立ちはだかる、こういうよう事態でありますれば、私はそうこだわることなく、これを修正するという態度でいいと思います。
  225. 辻原弘市

    ○辻原委員 大蔵大臣の腹の中にあることは、大体私もわかりました。  そこで、いままで高さ、低さの問題についての私とのやりとりの間でも一つ明瞭になったと思うのでありますが、いま一般にいわれている不況というものについての現状認識は、これは一時的なものだ、こう言われた。もちろん私は、あなたのその説をまっこうから否定するものじゃありません。しかし、いろいろな構造的変化、質的変化、それは部分的にあります。たとえば今日の不況の原因が、いままでいわれた循環的なもののほかに、たとえば大企業の経営者の経営態度というか、経営者それ自体のビヘービアとでも申しましょうか、その行動の中から問題にされている点、たとえば家電にあらわれている、自動車にあわられている二重価格等の問題、あるいはまたアメリカの経済状態から来る輸入制限の動き等々、いろいろなものが今日的問題にからんでおるでありましょうけれども、しかし、大ざっぱにいって、あなたの説を肯定したといたしましょう。不況は一時的なものである、そうだとするならば、最近とられておる一連の景気対策というのは、これは一体どうなんだかという問題であります。  時間の関係で、その詳細を聞くことは省略をいたしまするけれども、公定歩合の操作を除いてみたといたしましても、現在政府が明らかにしておるいわゆる財政てこ入れというものの内容はばく大なものであります。そうだとするならば、このばく大なものが一時的な景気に対してどう作用をするのかということを考えてみなくちゃならぬ。私は、先ほどあなたが言われましたように、実勢は一〇%以下、かなり落ちているのじゃないかということを申されておりましたが、これも一つ聞いておかなきゃならぬと思うけれども、一体、三月末なら三月末にそれじゃどの程度まで落ち込むのだ、この程度まで落ち込むからこれだけのものをてこ入れするのだということなら、またそれは話は少し変わってきますけれども、しかし、一応一時的なものに対してやるという対策としては、これは私はどう考えても過度なものだ、こう考えます。さらに、予算についてもそうなんです。ふれ出しは、中立予算だ。内容の吟味は別として、機動性という意味は、これは私は理解ができる。しかし、これだけの予算が景気に対して中立型だというのは、これはどうも受け取りかねます。一般予算にしても、財投にしても、おそらく最近の比率から見ますと、伸び率はまことに大幅なものでしょう。きわめて大きなものでしょう。てこ入れに本予算の波及率、この財政あるいは金融、政府の支出の波及率というものはばく大なものだ。とするならば、一体、これは一〇%に落ちつけるためのはたして安定成長路線の政策であろうか、ここに疑問があるのであります。どう判断されますか。
  226. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、いま日本の経済は安定成長路線のほうへ向かっておると申し上げましたのは、ほうっておいてそういうふうになるというのじゃないのです。これはいろんな政策効果を含めてそういうふうになっていくのだ、こういうことを言っておるわけです。ほっといたらおそらくずいぶん落ち込みの状態が出てくるのじゃないか、そういうふうに見ます。現在、鉱工業生産、これなんかにいたしましても、十二月までしかわかっておりませんけれども、前年に比べて一〇%を割ると、こういうよう状態になっておるのです。十一月に比べますと、少しの改善はしましたけれども、とにかくそんな状態です。そういうような傾向というものを判断しますと、これはちょっと落ち込み過ぎになりはしないか。私の言う安定成長というのは、過熱でも困る、しかし、これが全国黒い雲がおおいかぶさるというようなそういう状態もまた困る。その中間です。つまり私はよく、ことしは曇り後薄日と、こういうふうに申し上げておりますが、その薄日状態、これを政策的な努力も加えて実現をいたしたい、こういうふうに考えておるわけでありまして、景気が過熱状態にあるときにこれを抑制する、そういう働きは、私は、金融に非常に大きな力があると思うのです。ところが、下降状態にある、沈滞が行き過ぎようとしておる、そういうときに、この景気の下ざさえをするとか、あるいは景気に浮揚力を与えようという力は、これは金融のほうには私は多きを期待することはできないと思う。つまり、金融はこれは受け身の立場にある、こういうふうに思うのです。その浮揚力のための力はだれが出すかというと、これは財政だ、こういうふうに思う。  その財政の運営、いまの時点に立っての経済を見ましての立場、そういうものは、過熱になっても困るが、しかし落ち込ませては困る、そのために財政が作用する、そういう意味を込めて中立といっているのです。しかし、景気が非常に落ち込みが激しそうな勢いだというときには、機動的にこれが作用して、下ざさえの役目をする、浮揚の役目をする、そういう意味を含めてまた機動型、こういうふうに申し上げておるわけでありまして、総合いたしまして、中立機動型である、かようなことであります。
  227. 辻原弘市

    ○辻原委員 わかりませんね。私は、景気がある程度下降時点において、ある程度のてこ入れというものは、これは当然やらなければならぬ。しかし、それには一定の限度が必要だということは、私は、いまの状態だけを見て議論しているのじゃないのです。すでにずっと池田さん以来高度成長があって、佐藤総理が就任以来、それを手きびしく批判をされた。     〔委員長退席、坪川委員長代理着席〕 福田さんのこの間の財政演説なんていうのは、私はこれ詳細読んでみましたが、これは手きびしいものですよ、高度成長批判。しかし、目くそ鼻くそということがありまして、きたないことばで恐縮ではありまするけれども、しかし、このあれを読んだら、御自身がやってこられたことをもう一ぺん今度は頭を自分でたたいているような感じです。そうでしょう、一三%といって続いたこの高度成長というのは、池田さんの時代じゃないんです。昭和四十二年からそうでしょうが。反省としてならば受け取ります。しかしそれを、安定成長路線へ乗っかっているんで、しかも、それには質量とも改善されてまことにけっこうな経済状態でございますなんていう、そういう御説明は受け取りかねますと言っているんです。たとえば、先ほど私の質問に対してあなたは、不況の質という問題については、一時的でありますとおっしゃった。一時的であるということは、日本経済にまだ上向く可能性を残しておるということなんです。同時に、まだまだ改善の曙光が見られないとあなたはおっしゃっておるけれども、けさほどの新聞でありましたか、十二月の鉱工業生産指数その他のいわゆる経済指標のすべてではありませんが、ある程度の指数が述べられております。それを私は逐一見てみましたけれども、やや改善をされてきているじゃありませんか。三カ月ぶりとあるが、三カ月ぶりにすでに将来を占う指標がある程度改善せられておるということは、これは一体どういうことなんだ。さらにどんどん落ち込む、暗い谷間へ経済が引っ込んでおかれる、そういう危険が大いにあるということであるならば、それは財政、金融すべてをあげてやらなければならぬでしょうけれども、もうすでに三カ月で回復のきざしが見えておるというときに、これからやるんでしょう、弾力条項までつくっててこ入れをやる、あるいはかつてやっておられぬような債務負担行為の指定外の問題も含めて一斉に、まあいえば、てこ入れをやるというのですね。これが一体どうして安定成長路線かと私は重ねてあなたに疑問を発するんであります。どうでありますか。
  228. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、だから機動的、弾力的に財政を運営していきたい、こういうことを申し上げておるわけです。つまり過熱の勢いがあれば、これは財政はもとより金融も相ともに火消しの役目をする、こういうことです。しかし、これは経済の先のことだからそう的確にはわかりません。そこで、もし落ち込みというよう事態がありますれば、これもまた、そのときは、機動的に財政が主力になってその下ざさえ、浮揚の役割りをしなければならぬ、こういうふうに言っておるのです。それで、さあ、それじゃ、財政を機動的にするにはどうするかというと、多少ゆとりのある予算を組んでおかなければならぬでしょう。そういうゆとりのある予算でありますれば、もしこれは非常な過熱状態になりそうだというんなら、これを支出を抑制するということは可能になってきます。しかし、逆に、これは財政からてこ入れをしなければならぬというような経済情勢である場合にどうするかというと、ゆとりがあれば、さあ、支出の促進でありますとか、あるいは繰り上げ支出でありますとか、そういうことが可能であります。しかし、万一、それでも足らぬというよう事態に対して備えるところがなければならぬ、そういうふうに考えまして、私は予算外において、政府保証債の権限、また金融公庫の買い入れ権限を拡大する、そういうような用意までしておきたい。現在の景気情勢、ずいぶん皆さんが心配しておる、この情勢下において、大蔵大臣が、これは心配ないですよ、インフレの心配はあるが、景気がどうなるか、そんなことは心配せぬでもいいですよという態度をとったら、一体全国民は私をどういうふうに批判するか。私は、全国民の私に期待するところをようく見てやっております。
  229. 辻原弘市

    ○辻原委員 大蔵大臣に大いに心配してもらわなければならぬ点は、それは経済成長率に対して全く従来とは変わらぬような——いわば景気刺激ということは、これは民間の設備投資を旺盛にするということなんです。私は予算内容は逐一議論する時間がないようでありますけれども、結果としては再び民間設備投資が大幅にふえていくということなんです。そうして従来とちっとも変わらないようないわゆるインフレ的要素を大いに含んだ経済成長がわが国に行なわれるという結果になるから、それを指摘しているんだ。大いに心配してもらいたいというのは、そういうような、過熱をすれば引き締める、引き締めて、それが少し落ち込みになると、あわてて今度は上昇政策をとる、こういう波型の経済がどこに一体とばっちりがいっているかというと、最も至近距離は中小企業なんです。だから、そうでしょう、あなたが言われるように、ごく一時的な今度のいわゆるリセッションとまでいえぬような景気調整においても、四十年不況よりは今度のほうがはるかに中小企業倒産件数が多いでしょう。しかも金融が締められたら一番最初に中小企業はアップアップさせられる。ゆるめるときは一番その効果がおそい。そうして犠牲になっている。あなたが言われたように、卸売り物価だけを見詰めて経済運営をなさっているのかどうか知りませんよ。知りませんけれども、あなたのお説をかりて言うならば、卸売り物価は鎮静してきても一向に消費物価は下がらぬ。そうでしょう。過去の例をずっととってごらんなさい。景気がよくなったといっちゃ物価が上がり、不景気になったといっちゃ物価が上がる。その証拠が昭和四十年の不況なんです。これはしかし六・六%上がっているじゃありませんか。また、いま鎮静下にあるといいながら、これもまさに開闢以来の物価騰貴になっているじゃありませんか。こういうことをなくしてもらいたいということなんです、基本は。しかしながら、これ以上は私はこの問題についての議論は時間の関係で省略をいたします。問題のポイントはそこにあるのです。  それから私は、いまの不況という問題は、実はずっと去年の半ばごろからあなた方のおっしゃること、経済界の動きをしさいに見てまいりました。当初は、きょうは日銀総裁お見えになっておりませんけれども、日銀にしても、あなた方政策当局すべてを含んで、そう景気は落ち込む心配はないと言っていた。予算編成のころから、今度は年が明けたらにわかにこれは相当心配だ、心配だ。案の定あらわれた予算はまことにでっかいものだ。そして数えあげてみれば数限りないてこ入れ政策、これなんです。しかも日銀総裁のごときは、いまもう一たび公定歩合を引き下げるかもしれぬというようなことをにおわしているというのです。そういう政策がまっとうのものかと、私はこう言いたい。どうもそこらあたりのいわゆる財界が不況だと言えば、あなた方も態度を豹変して不況だと言う。その不況不況と言う、オオカミが来たオオカミが来たには、何か目的があるんじゃないか、ねらいがあるんじゃないか。これはやはり勘ぐりたくなるのが人情ですよ。どうも春闘対策あたりじゃないか。しかも財政演説を聞きますと、総理をはじめ経済閣僚といわれる方々の演説には必ず物価と賃金という問題を述べられておる。だから私はこの際その点について若干承っておきたいと思う。一体、いまいわれておる所得政策というもの、これは経済企画庁長官も否定をされておる。労働大臣も否定をされておる。もちろん総理は導入される考え方はない。これを重ねてひとつ承っておきたい。
  230. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いわゆる所得政策をただいま直ちに導入する、こういうことはございません。これだけははっきり申し上げておきます。また所得政策とは一体何ぞや、それからがわが国の場合においては問題だ、かように思いますので、さような問題と取り組むつもりはございません。
  231. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこで、私は時間があればこの問題についても少し議論をいたしておきたいのでありますが、ただ必要なことは、胴をつかまえたり頭をつかまえたりしっぽをつかまえたり、いろいろな議論が今日行なわれておる。一体所得政策というものは、いま総理も言われたようにどういうことをもってそのことばを使われておるのか、ひとっこれは総理、それから担当はどなたですか、経済企画庁ですかそれとも労働大臣ですか、政府の統一された所得政策というものの概念を、私はこの際聞いておきたいと思います。総理おわかりであればお答え願いたいと思います。
  232. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 所得政策には、御存じのように概念がいろいろ使われています。広い意味でも狭い意味でもいろいろございます。一般的に常識的に考えられておりますのは、もちろん経済の成長をはじめあらゆる経済の指標間のバランス、このバランスというものがとれるような成長をはかっていかなければならない。したがって所得間のバランスということも当然その重要な中身を占めるわけであります。そしてその所得の伸びのバランスというものを考える過程において、いわゆる所得政策、賃金あるいは非賃金の各種の所得というものがバランスがとれるようなふうに実現されることが最も望ましい状態である。そしてそれには特に労使双方が非常に関係が深いわけでございますから、個々の企業のいわゆる賃金あるいは利潤の決定に際しまして、全体の経済のバランスを考えた上でもってその行動が行なわれることが望ましい、こういうような要請が当然社会的、経済的に出てまいるわけでございます。そうしたものを考えておるわけであります。
  233. 辻原弘市

    ○辻原委員 かりにいまそういう経済企画庁の長官の述べられた概念であるとするならば、これは政策といえるものじゃありませんね。一つ考え。だから、もしそういうことをあなた方が積極的に持たれるとするならば、一体政府考える所得政策というものは一体何だという見解の統一をやはりやっておいていただく必要があると思う。  それから、いま企画庁長官がべらべら言われましたが、特に私はその点、あなたの談話も新聞紙上で聞きましたし、また財政演説の中でもそれは触れられておる。いわゆるアメリカ的スタグフレーションではない、こう言われているのですが、しかし絶えず賃金と物価、生産性と物価なんということばをよく使われておる。私は、あなた方のその考えの根底が間違っていると思うのです。なぜかといえば、それは最近の雇用の分配率を見てごらんなさい。賃金が上昇しているというけれども、しかし実際の労働大衆の取り分というものが逐年下がってきておるのです。ただ部分的にいわゆる低生産部門といわれる中小企業その他の賃金が全体に影響する、ある部分が影響するから、生産性を若干上回る場合も、これは計数的には出てくるけれども、全体として日本の賃金水準というものは、これは国際水準の比較をとってみても決して高くない。  もう一つ私があなた方が誤っている点というのを指摘をしておきたいと思うのは、不景気になっていわゆる生産性というものがある程度下がってきた、そうすると絶えずそういう議論が行なわれるのです。過去の例を見たって、景気が悪くなって生産性と賃金がすれすれになったとか、オーバーしたとかという議論から、賃金というものは大幅に上げちゃいかぬのだ、こういう議論をやっている、これが間違いなんです。国民、雇用所得で生活する人は、不景気になろうが、あるいは景気がよくなろうが、生活のかてである賃金というものは、不景気になったから安上がりで、景気がよくなったから金がよけい要るというものじゃないはずなのです。賃金というものは、少なくとも生活をささえるものなんですから。少なくともそういう前提を持たなくては私は賃金の議論をしてもらいたくないと思うのです。ただ景気とか不景気とか、あるいは企業の収益とかというような御都合主義でそういうことをやられることは間違いだ、このことを企画庁長官考え方の中に私は指摘をしておきたいと思います。いかがですか。
  234. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 最初の、いわゆる所得政策というものが政策であるかないかというお話でございますが、いわゆる統制的な意味での行政介入を行なわない、こういう意味においての御指摘であろうと思います。いわゆる所得政策というものはいろいろございまして、相当直接統制的な色合いのものもございますが、しかし行政介入まで至らない、そういうものも所得政策と呼ばれておるわけでございます。政府の期待、要望あるいはアナウンスメント、あるいはまた最近ニクソン政権がとりました警報的な措置、警告を発する警報措置、そうしたものがございます。いずれにしましても、労使双方のいわゆる市場支配力というものに期待して、この両者に一種のそういう国民経済的な観点からの行動を求めるということにあるわけでございまして、それはいろいろな方法があるわけであります。  それから労働分配率の問題は、これはもちろん国によって水準が違います。それからまた、いわゆる景気が上昇局面におきましては、当然のことながら労働分配率は下がり、不景気になりますと労働分配率は高まってまいります。しかし、総じて一国の労働分配率というものは、その国の経済的な構造と密着いたしておりまして、そういう意味において急に上がったり下がったり大きく変動するたぐいのものではないと思われます。そういう意味においてわが国は、いわゆる高度成長的な構造、体質を持っておりますために、労働分配率が先進諸国よりも低い、これは明らかでございます。そのかわりと申しますか、高い経済成長率を実現してまいりましたために、逆に賃金の上昇率というものは最も世界で高いのでございます。その結果といたしまして、最近ではイタリアを抜きフランス並みの賃金になった。つまり、ある一定の最近の期間をとりますと、日本の賃金ぐらい高く伸びたものはございません。これは労働分配率が低い、そうして高度成長経済を実現したことによって、この高い絶対額を確保することになったわけでございます。そういう意味におきまして、私は、いま直ちに労働分配率の議論をここで取り上げても、あまりそういう意味においての実益はないのではないかと思っておりますが、いずれにいたしましても、いわゆる分配率を抑制するとか、抑圧するとか、そういう考え方は所得政策の中には含まれておりません。それだけははっきり言えると思います。
  235. 辻原弘市

    ○辻原委員 最近の賃金上昇をえらく強調されますが、それは今日のGNPと国民所得とのバランスから見る日本の特異性、こういうものを見ただけでも一目りょう然であって、いわば国民所得が低い、日本の賃金水準というものは諸外国に比べて低かったから上がる率が——しかも日本の経済成長というものは、先ほどから議論をいたしておりますが、急角度に上がったわけでしょう。これは企画庁長官よく御存じのはずなのです。過去から今日までの経済成長率と賃金の伸びを見てごらんなさい。ここ一、二年の伸びは賃金のほうが少し上かもしらぬけれども、全体として大体成長率程度の伸びなのです。特に私が指摘をいたしておりまするのは、雇用者所得の分配を見ましても、昭和四十年から四十五年まで、昭和四十年は簡単に言って五六・六、逐年下がって四十五年の見込みでは五四%に下がっているじゃありませんか。しかも一方において不況だ不況だと財界はラッパを鳴らしておるけれども、一体その不況がどこに具体的な姿として——確かにそれは一時的な金詰まりという形ではあらわれておるかもしれぬ。しかし最も端的にあらわせる配当率を見てごらんなさい。これは私が大蔵省からいただいたのでありまするが、四十三年十二月末が六百八十一社の上場会社の配当率平均が一二・三三%、四十四年六百九十三社一二・八六%、不景気だと強調されているいま現在、十二月末は七百三十六社が二二・二八%の配当率を保っておるのです。保っておるというよりも、配当率平均としては増加をしているのです。こういう中に私は、所得政策めかしき賃金問題を持ち出すということは全く誤りである、こう指摘いたしておきたいと思います。
  236. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 三十年代のたとえば後半を例にとりますと、三十五年ごろのいわゆる好景気のときには、法人利益率は賃金の上昇率を上回っております。また三十年代の末になりますると、今度は逆に法人の利益率は著しく下がり、そうして賃金が上昇しております。いわゆる景気の局面に応じまして法人の利益率と賃金の上昇率というものが交錯をいたしております。そういう意味におきましても、私はそういう意味の議論をするというのは、景気の変動ということがその局面に入るわけでございますから、いまそういう事実だけを申し上げておけばいいと思います。そこに問題がありますのは、利潤率というのは景気の調節と並行して動いてまいります。一方賃金はどうしても硬直化してまいります。そこには生活的な内容もございますし、一度上がりますと、率直に申しまして、国民経済全体が鎮静化したからといって直ちに鈍化するとは限らないのでございます。それがいわゆる諸外国で人件費によるコストプッシュ、こういわれておるものであろうと思います。そこのところをみんなが問題にしておる。われわれがいわゆる安定路線というものを考えて一三%の実質成長を一〇%前後に持ってまいる、そういう際に、やはり全体の成長が落ちてまいれば所得全体が落ちるわけでございます。でありますから、その際にバランスある所得の安定、これは上昇そのものは国際的にも相当高いのでございますから、上昇そのものを否定するのではございませんが、安定的なものに持っていく、そういう問題であります。もしその点が実現できませんとどうしても物価高にはね返ってまいる、そこのところを物価政策の見地から私たちとしてはやはり重視をせざるを得ない。率直に申しまして、今日物価の大半である一方の卸売り物価は、需要供給によって非常に左右されやすい性格があることは今度の景気の局面でもはっきりいたしましたが、消費者物価には次第にコストプッシュ的な要素が濃くなろうとしております。そういうことで、特にいま辻原さん自身が御指摘になりましたように、景気の局面が下降してまいりますと、いわゆる生産性が下がってくる。そうすると、どうしてもコストプッシュ的な要素が強まってまいります。そういう意味において、今後われわれとしてもそういう点を十分注目しなければならない、そういうふうに考えておるわけであります。
  237. 辻原弘市

    ○辻原委員 企画庁長官の言われた個々の部分について私はいろいろ議論がございます。しかし時間がかかりますから、私は他日もう少しあなたとその辺の議論をしてみたいと思います。  そこで大蔵大臣、先ほど要するに安定成長路線に向かっているのだ、それは高さと質的な問題だと言われた。その中で、質的とは一体何であるかということの中で、最も重視すべきは物価対策なのだ、こうおっしゃいましたね。そのほかに私は、これはもうあなたにお尋ねするまでもなく、たとえば景気変動がきわめて小部分に終わる、あるいは昨日も問題になりました公害をなからしめるとか、いろいろな要素がいわゆる経済の安定の中に含まれるでしょう。しかしなかんずく、あなた自身も認められたように、この物価の安定は安定成長路線へ向かっておるとあなたは言われまするけれども、一番大切なその物価は、先ほどから私が申し上げるように少しも安定の方向には向かっていない。しかし私は、向かっていないじゃないかとあなたに詰め寄ることがきょうの主題じゃありません。いかにすれば少しでも国民の期待にこたえて物価が鎮静する方向へ持っていけるか、こういうことを真剣に考えるがゆえに若干のそれらの問題についての見解をただすと同時に、提案をしたいと私は思います。  先刻、民社党の麻生議員が野菜の問題に触れられました。その野菜の議論の中で、私はちょっと聞いておったのでありまするが、農林大臣おかぜを召してはなはだ申しわけありませんけれども、あなたのおっしゃった、これはまことに小さいような問題でありまするが、総理も先般言われたし、わが党の成田委員長も本会議で、大根が年末、正月にかけて一本二百五十円なんという、まことに破天荒な値段を示して消費者困っているじゃないかと言われた大根の問題。あなたはその大根その他の野菜の問題は、出し渋っているから高いんだと簡単に言われましたが、私はそう簡単に片づけてもらっちゃ困ると思うのです、主管大臣。たとえば大根を先ほど議論になりましたが、大根は出し渋っておるからああいう高値を必ずしも呼んでおるのじゃありませんぞ。大根の需給を見てごらんなさい。ほかの野菜は別として、大根の生産というものはだんだん落ちてきているんです。そういうところにも問題がある。一体どうなんですか。
  238. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先ほどのお答えであるいはことばが足りなかったかもしれませんが、出し渋っておるので高いんだと言ったわけではないのでありまして、大根の話を例に引いたわけでありますが、どうもおかしいと思っていろいろ調査せしめてみましたところが、大根はやはりそんなに減っておらなかったのだ、こういうことを申したわけであります。  そこで辻原さん御存じのように、いままでは都市近郊が野菜を主としてやっていただいておったわけでありますが、このごろはやはりほかにいろいろな仕事がたくさん出るようになりまして、特に根の深いようなああいうゴボウだとか大根だとかというものは手間がかかるものですから、えてしてその値段のわりあいにつくりたがらないという傾向がたくさんあることはあります。したがって、私どもはどうもそういうことから考えてみますというと、やはりある程度の価格というものを維持されるようにしなければこういうような労力のかかるものは出ないのかな、こういうふうなことを考えておるわけでありますが、先ほど私が申しましたのはそういうことでありまして、誤解がありましたら御了解を願いたいと存じます。
  239. 辻原弘市

    ○辻原委員 野菜の問題について、去る十四日に価格安定対策本部をつくられたようであります。その際にあなたが発表された談話も私は詳細に拝見いたしました。また五日の閣議で総理が特にこの問題を取り上げたことについてもまことに適切であった、その意味においては私は総理の機動性には敬意を表しておきますが、ただ、いろいろ取り組んでおられるが、その対策はどうも間延びがしておる。先ほど麻生委員指摘をされておったように、いままでの農林行政の中で、野菜なんぞというものは、農林行政のいわばある程度らち外に放置されておったんではないか。これは天候に支配されるいわばばくち的な農業なんだから手がつけられない、お天気まかせだなんという考え方が従来の農林行政の中にあったんじゃないか、私はそういう見方をしておるのであります。農林大臣、所管大臣としていかがでありますか。まっとうにやっておったと自信を持って言い切れますか。
  240. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 申すまでもなく農家のほうで一番所得の安定いたしたものは米でありました。したがって米はどんどん生産される。しかし、それにもかかわらず昭和三十九年以来その米の消費のほうが逓減してきて、逆に野菜、くだものが逓増してまいりました傾向にかんがみまして、法律までつくっていただきまして、いまではそれに六百四十カ所の指定産地というようなものをつくって、またその価格の安定策も種々講ぜられるようになってまいりました。過去の歴史を考えてみますと、ただいま御指摘ような傾向は一時的には若干あったかもしれませんが、現在ではもうそうではありませんで、農林省の非常に大きな仕事の一つとして野菜の政策に取り組んでおるわけであります。
  241. 辻原弘市

    ○辻原委員 野菜の問題で私は二つに分かれると思います。一つは、一体流通がどうなっているんだろうか、また消費者の動向がどうなっているんだという、もっぱら消費者の買うという行為を含めての流通の問題と、それからいま一つは、量を確保するという意味における生産、出荷、この体制がはたして農林省あたりが数字の上で、行政の中で見ておるよう状態なのか、こういった点について問題があろうと思います。  まず第一、先ほども議論がありましたけれども、昭和四十一年の安定法以来あるいは三十八年の指定生産地制度以来とってきた、いわゆる共同出荷体制というものが計画どおりあるいは法律の趣旨どおり行なわれておるかどうか。ここにひとつ私は問題点を掘り下げてみたいと思うのです。  ここに茨城県を調査した資料があります。その中で、まあいろいろ野菜の品目がありまするけれども、かりに白菜を例にとってみましょう。その場合に、茨城県の白菜の——これは指定産地でありまするが、そこの共同出荷体制が一体現実どうなっているかという調査であります。共同出荷の比率をずうっと個別に当たった調査でありまするが、その結果、これは茨城県の結城市でありますが、共同出荷は約三八%、しかもこの中には仲買い人が出荷団体である農協の名で、いわゆる名義を農協にかりて出荷している部分が含まれておる。それを差っ引くならば大体共同出荷の比率というものは一〇%程度ではないか、こういわれておるのであります。  これをひるがえって法律を見てみますると、四十一年の生産出荷安定法、その法律によれば、これはお尋ねするまでもなく指定消費地に対して二分の一の出荷を確保しなければならぬでしょう。それからそれに対して今度は指定作物ですかの共同出荷比率というものがそれの三分の二以上でなければならぬ。だからそれを計算をすると、二分の一の三分の二ですから、ひっくり返すと四分の三ですか、すなわち七七%が共同出荷でなければならぬ、こういうことに法律上はなっているんですね。  ところが、現実にこの一地域の例をとってみても、形式的な共同出荷量というものが三八%だという。ここにいわゆる出荷体制というものが非常に落ちてきている、こういう現実があるのであります。こういう事実をあなたはどうお考えになりますか。
  242. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 最近私どものほうで地方の農政局長会議をいたしましていろいろな報告を受けました中に、関東農政局長の報告の中に白菜についての報告がございました。そういうことの中にもやはりただいま御指摘ような出荷の状況のあらましについて、そのとおりではございませんけれども、そういう点も指摘されておりました。私どもといたしましては、したがって、いませっかく法律で、しかも価格安定施策を講じて成り立ち得るように、財政的にも援助いたしておるわけでありますから、私どもの期待いたしておるような出荷をし得ないところに対しては、従来のような保護はいたさないというきつい態度をとるようにいたしました。私どもといたしましても、十分そういうことについて注意をいたして、消費者の御期待にそむかないように、なお地方の担当者を督励してやらせるつもりでやっておるわけであります。
  243. 辻原弘市

    ○辻原委員 これは総理もひとつよく聞いておいていただきたいと思うが、農林大臣、法律に定めたとおり出荷をしないところに対しては、法律どおりやれ、やらなければ補助しないという、そういう措置をとるとあなたは先ほどからしばしばおっしゃっておる。それだけでいわゆる出荷量がふえるとあなたはお考えになっておりますか。なぜ一体そういうふうに共同出荷の比率、共同出荷というものの体制がだんだんくずれてきて、出荷に大きな影響を及ぼしてきているかを検討されたことがありますか。なぜ一体下がってきているのか、その点はどうお考えになりますか。
  244. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御存じのように、地場に買いに出る業者がかなりおります。そしてまた私どもといたしましても、全くの全部の統制でないものでありますから、いまお話のございましたように、四分の三以上のものにつきましてはそれぞれ自由な消費もできるのだ。したがって、なかなかこちらが全部期待いたしておるように集出荷が行なわれておるかどうかということについては、なおこれからも注意いたしますけれども、大体においてこのごろ一般的な傾向といたしましては、どうも供給が需要に見合わないのではないか、そういう感じがいたすわけであります。  したがって、私どもは、いまあります指定産地の、先ほど新年度で六百四十と申しましたけれども、そういうところの生産状況と一般の指定消費地の需要との関係を見て、さらに増産の対策を講じていかなければ間に合わないものもあるのではないかということで、そのほうに力を入れようとしておるのが、現在の状況であります。
  245. 辻原弘市

    ○辻原委員 なぜ供給が需要に見合わないかという点を私は尋ねておるのです。ただ、転作で反別だけをふやせば供給が確保できるともし考えられておるならば、これはとんでもない誤りであります。農民がつくらなかったならば供給はふえません、これは単純なんです。どうして意欲的につくらせるか。これは、あなたが言われたように、統制経済じゃないのですから、だから、生産は農民の意欲にまたなければならぬ。だから、最近の生産、供給あるいは需要動向、こういうものの変化に対応した対策が必要だと私は言っているのです。  まず第一に、最近農村では、私が申し上げるまでもなく、だんだん、特に都市周辺では人手不足が深刻になっております。三ちゃん農業です。ましてや野菜というものは季節的なものですから、もうかるときはやるけれども、もうからぬときはやらない。しかも共同出荷なんというしちめんどうなことをやって、わざわざ農協まで運んで持っていく。一体、一日がかりで持っていって、はたしてそれだけの手間賃があるのか、またそれだけの持っていく労働力があるのか。ここまで掘り下げてこれらの問題を検討しないと、あなたが言われる、需要に追っつきませんのじゃということだけでは、これは対策にならぬです。  そこで、私の提案というのは、まずそういったメカニズムを十分われわれが細部にわたって検討して、少なくともこれならば効果があるという点に力点を置いた対策をおとりなさい。たとえばさっきも議論になりましたけれども、いわゆる安定法の趣旨というものは、そういう基準を設けてそれに対しては補助を与えるということだけれども、しかし、わずかばかりの補助をもらって、そうしてでき過ぎたら価格の下がるような野菜をつくるよりは、町の近くなんだから、それよりも賃金の得られるような労働をやったほうがはるかに生活は楽になる。こういう傾向をどうして防ぐかということなのです。だから、野菜をつくっても価格は安定いたします、決して損はさせませんという政策的な保障がないと、これは野菜はつくりませんよ。  そこで、いまの共同出荷の中で問題は、この仲買いの横行なんです。もちろん法的に規制する何ものでもありません。そういうことを言うのじゃありませんけれども、仲買い人が自由に行って買えるような素地が指定生産地においてもあるいは共同出荷地帯においてもだんだんふえているのは、いま私が指摘したように、それはもう出荷するよりも仲買いさんに青田で売ったほうがはるかに便利であり、実質的な収入が得られる。だから、もう自分ではそういうことをやりません。この傾向を防ぐ手だてを一体農林省は考えておりますか、どうでしょうか。
  246. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 四十六年度の予算で、野菜対策全般について大幅な拡充強化をはかることといたしておりますが、そういういまお話しのございましたようなこともわれわれは考えて、たとえば野菜指定産地の拡充、これはさっきお話ししました。それから、いままでは露地野菜について——果樹園等については畑かんのような事業はかなり行なわれておりますけれども、いままでほとんど野菜づくりはそういうことを希望しませんでしたが、露地野菜が干ばつ等によって阻害されることを考えますと大事なことでありますので、本年度の予算では、畑地かんがい施設の積極的な導入を野菜にいたします。それから集中管理施設、これはいまお話のございましたような集中的なことをやらなければなりません。それから野菜の集送センターを設置する。  こういったようなことで、私ども需要に見合うだけの供給をいたしますために、六百四十個の指定産地に特に稲作から野菜への集団転作の積極的推進をはかる考えで、先ほどもお話のありました、生産者が安心して生産を拡大できるように野菜の価格補てん事業を、いまもありますけれどもこれを拡充してまいる。同時にまた、今年度の予算では、都道府県が同じようなことをいたすために約二億円の助成をいたす基金も予算に計上いたしてあるような次第でありまして、そういうものを今度は安心して消費地に直結できるように、流通対策についていま御審議を願っております卸売市場法案、こういうものはいま私が申しましたようなものに直結をいたしまして、じかに消費者にできるだけの便宜を与えられるよう考え方でこの法案を御審議願っている、こういうようなことで、いまお話のございましたような野菜づくりが、けっこう野菜をつくっていることによって安定しているのだという考えを、米にかわって安心してやってもらえるような方策を講じなければならない、そのよう考えで対策を講じていっているわけであります。
  247. 辻原弘市

    ○辻原委員 いや、その一般的な対策は、まあ農林大臣がお述べになったようなことでしょう。問題は、私はそれがうまくいっていないのは一体なぜなんだということをお尋ねしているのですよ。共同出荷がうまくいかないのは、どこに一体原因があるのか。私も若干の指摘をしました。それを改善するためにはこうするんだという対策がなければ、幾ら指定生産地をふやして——いま現に六百幾つですか、四十足らずでしょう。それをさらにことしはふやす、こういうのでしょう。あるいは稲作転換で六万ヘクタールですか、これをふやすという。ふやしたって、その根本的な出荷体制がとれなければ、依然として供給が需要に追いつかぬというのです。追いつかせるために積極的な対策をとりなさい。  まず第一に、出荷体制がくずれているのは、農民が自分で共同出荷を意欲的にやらないで、仲買い人にゆだねるということ、それをなぜかと、こう疑問を発してみたらば、それは共同出荷するには人手がない。あるいは、たとえば、これはある一つの調査でありまするが、共同出荷の場合の一日当たりのいわゆる出荷手当といいまするか、そういうものは千五百円ぐらいしか当たっていない。     〔坪川委員長代理退席、委員長着席〕 それではいかにも安過ぎる。そんなことをやるよりは仲買いに売ったほうがこれは得だ、こういう原因があるのであります。だから、私は少なくとももう一ぺんそこのあたりに、これは総理にも聞いておいていただきたいと思うが、スポットを当てて、ただ反別をふやす、ただ指定産地をふやす、言うことを聞かなければ取り消すなんという、そういういわゆるお役所的仕事ではなくて、もっと深いメスを入れてもらいたい。たとえばその場合、そこに多少の補助金をあれして、共同出荷した者には報償金を出すとか、いろんな手だてがあるでしょう。そういうことも一つのくふうです。それから私はもう一つ、ここに資料がありますが、これは申し上げるまでもなく、この第二をごらんいただけば、野菜というものがいかに上がったり下がったりするものであるか、これは一目瞭然でしょう。高くなればつくるけれども、しかしながら安くなれば翌年はやめる。これをどうしてやめさせるか。どうして安定した、コンスタントに農民につくっていただくかということの対策。  それに私はただいまの安定法にも非常な疑問があるのです。いわゆる不況時の対策として価格補てん事業というものをやっておりますが、その価格補てん事業の補てんする金、これは本年度追加して、私ははしょって言いまするけれども、合計して三十七億円あるそうであります。先ほども議論がありましたように、それを廃棄するなんという乱暴なことは、これはだれがそんなことを考えついたのか私は知らぬけれども、まことに乱暴きわまる。そんなことをやらぬだって、活用する方法は幾らでもある。その問題は別としても、いわゆる不況時の対策補てん費としてそれだけの金があるわけなんです。ところが、農民は大喜びでこの金をいただいているとは私は考えられない。なぜかといえば、その補てんをする基準が、どだい私は間違いだと思う。簡単に言いますれば、市場価格というのがあるでしょう。これは卸売り市場に来て、せりによってきまる値段だ。それの過去の平均をとったものがいわゆる基準価格。そうして市場価格——いま現にきょうは幾らしておる、これを差っ引いて、それにある係数をかけてはじき出した、いわゆるスタンダードというものが市場価格なんです。これは農民の生産費用というものとは全く無関係。ここにありまするように、高い、安い、こんなものの平均なんですから、市場価格というものは農民のいわゆる生産費というものとは無関係である。ここに問題があるのです。なぜ一体、下がったときの不況対策であるならば、少なくてもお百姓がつくるその費用に見合うものを基準にしないか。ここなんです。  総理、私の申し上げていることはおわかりいただいたと思うのですが、この考えは間違いでしょうか。いま市場価格はせりによってきまる。市場法の改正をおやりになるというのです。これは議論すれば相当の問題があります。きょうは少しお尋ねしたいと思ったのだけれども時間がないので……。幾ら市場法を形式的に改正してみても、いわゆるこの卸の中のメカニズムというものが合理的に行なわれなければ、価格というものは正当に決定されません。その疑問のあるいわゆる市場価格、これを基準にして農民補償をやるというのですから、納得しないのもあたりまえです。だから、そんなものの金を少々もらったって、不況時につくったらばたいへんだ、損だというのが現代の生産農民の考え方だ。だから、せめてそういう心配をなくするために、少なくても私は改正できる点は改正しなさい。私の考え方は間違いでしょうか、総理
  248. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 辻原君から、いままでは農林大臣にお尋ねだと思って私は実は涼しい顔をしておりましたが、急に私のほうに質問が向いてまいりました。私は、ただいままでの野菜、それに集中してものごとを考えた場合に、やはりわれわれの考え方が近代的にまだでき上がってないのじゃないだろうか。とかく野菜というと安いものだ、かよう考えている、そこに問題があるのじゃないだろうかと実は思います。まあ最近はたいへん園芸蔬菜が発達してまいりましたので、そのほうにはずいぶん力を入れております。農林省にも特にそういうほうを担当する局まである。しかし、そんな園芸蔬菜ばかりでわれわれは生活しているのじゃないのだ。露地野菜、これはやっぱり問題なんだ。そういうところへ新しく目をつけなければならない。ただいま当面しておるのはそこの問題のように思います。しかも、その露地野菜をつくるのには、簡単に計画生産ということを言いますけれども、計画消費が立たないうちに計画生産だといっても、長続きはなかなかしないだろう。過去においても、生産はずいぶん推奨してくれたので、せっかくつくったらどうも過剰生産で、需要が対応しないから安くて損をした、どうも農林省の言うことを聞かないほうがいいようだというような結果にもなっている。だから、その生産の面から見ると、計画消費がない限り計画生産をやったってこれはあまり意味をなさない。消費と生産とが対応することが必要だろうと思う。  そうして、蔬菜、露地の場合はどうしても畑づくりだ、かようになりますが、畑というものについてわれわれははたして十二分に意を用いているかどうか。言いかえるならば、ちょっと干ばつだと、畑では何にもできない。ただいまは、いわゆる害虫の駆除はできるようですが、しかし、かんがいが十分できるよう状態ではない。だから、畑地栽培を進めれば、どうしても畑地かんがいをやらなければならない。ところが、いままでのところ見ていると、畑になっているところは大体米づくりのできない水の便の悪いところだ。そういうようなままでその畑で栽培している。そういうところに一つの問題があるのじゃないかと私は思います。しかし、最近のようにやかましい状況になりまして十分その点を考えようになっておりますから、これから先露地野菜、これは積極的に生産のほうにも力を入れるようにつとめます。  もう一つの問題は、この野菜は、そういうようになってくると、相当の値段のかかるものだということもやはり消費者も気をつけてもらいたいと思いますが、同時に、市場を制圧するだけの力を持つためにも、もっと広範囲から品物を集めてこなければならない。そうしてやっぱり品質が均等であることが必要だと思います。どうも大量にさようなものが集まらない。そこに生産者としても非常な苦労がある。もしも大量に集められて消費より以上のものを供給すれば、安くなる、買いたたかれる、だから途中で仲買いに売ったほうがいいというような話にもなる。しかし、私どもは考えるのに、近代都市の形から見ると、最近の輸送形態なども変わってまいりましたから、もっとフェリーなども十分使って、あるいは北海道あるいは九州等から東京の蔬菜が供給される。おそらく辻原君のところのものはいままでは関西に限られているだろうと思います。しかし、過去においても、紀国屋文左衛門は紀州のミカンを江戸へ持ってきて、そうして商いをした。そういうこともございますから、私は、そういうようにやっぱり供給の範囲をだんだん拡大してしかるべきじゃないだろうか、かように思います。  私自身よくこのことで考えますのは、たいへん長い話をして相すみませんが、アメリカ自身において東海岸で消費される蔬菜は、西海岸でできたものが東海岸に送られておる、あるいは東海岸で消費されるくだもの、これがやっぱり西海岸やテキサス。ずいぶん日本の場合とは違って遠距離にわたってそれが輸送されて、そうしてそれらのものが消費されておる。そういうことを考えると、野菜というものは、いままでわれわれが考えていたような、もともと安いものだ、そうして楽に手に入るものだ、そういうものじゃないのです。そういうことも十分理解して、生産者の立場も考えてやらないことには、消費者の立場だけでは問題は解決しないように思います。  最近は、生産者のほうのは、ただいま御指摘になりましたように、農協等においていろいろ出荷をまとめる、こういうようなこともありますし、その間に立って仲買い人も出てくる。同時にまた一方、消費者のほうから見ると、自分たちの暮らしを守る意味において、生協などの活動もなかなか活発であります。私はそういうようなことが、いままでの官僚機構で考えられなかったものを突き破りつつ、新しい取り引き形態をいま生みつつあるんではないだろうか、かように思って、必ずしも悲観するものではございませんが、この際にわれわれも頭を切りかえて、そうして野菜というもの、これができるまでにはどれだけの苦労をしておるか、生産者の立場も十分考えるし、また今日のわれわれの生活も野菜なくしてはいかぬのだ。もう年を取ってくると、野菜を食べろ野菜を食べろと言っている。そういうようなことを考えると、これについても、われわれもう少し考えなければならぬ。  たいへん長いお話をして、まとまりのないお話のようですが、それらの基本的な考え方の切りかえがまだできてない、こういうところにも問題があるのじゃないだろうか。この点を一言申し上げます。
  249. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は総理に具体的に伺ったつもりですが、総理はべらべら概論を並べられて、まことに不本意であります。おっしゃることは理解はできても、もはや、あなた、この間おっしゃったように、お互い理屈の段階じゃなくて、何をどうするかという問題なのです。だから、私は、いま一つには生産者の生産意欲によって需要に見合う供給を確保しなければいかぬ、だから、出荷体制をもう一度見直して整備しよう。もう一つは、不況時における価格対策に真剣に取り組め。この間新聞で見たのでありますが、農林省はモデル価格というようなことを検討している。私はそれが、私がいま言った生産費に見合う価格であるならば、大いにけっこうだと思うのです。ほんとうにやる気があるのかないのか。政府が金を出して、国が金を出して、生産者に、消費者のためにつくってもらおうとやっているわけだが、それがありがたがって受け取ってもらえないということでは、これはどうにもならぬ。だから、少なくとも合理的なものに改めなさい。どうですか、農林大臣、その点について検討されますか。
  250. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先ほどちょっと私、あなたのお話の理解が乏しかったようですけれども、お話を伺っておりまして、私どもの考えていることと同じことが出てきましたが、それはいまお話がございましたように、野菜をつくる農家の人々がコストを計算してみるというと、自分の働いておる労働力を計算してみれば千円か千五百円にしかならないというふうなことでは、ほかのものに持っていってしまうではないか。これは私どものほうでも十分そういうことに気がついておりますので、最近始めましたのですが、そういうことについての経験者や消費者代表なども集まっていただいて、実はそういうことについての調査会を緊急に始めることに一もう始まったと思いますが、やらせることにいたしまして、いまお話しのように、野菜をつくることがけっこう合理的であり、経済的にそれを継続することがいいんだという考えを生産者に持っていただくためには、どういうふうなことをやったらいいかということについて検討を始めておるわけであります。御指摘のことと同じことを考えて、それに努力をしてまいるつもりでおります。
  251. 辻原弘市

    ○辻原委員 農林大臣は、私の尋ねた質問に対して検討しているということですね。要するに、その価格保障対策として従来の市場平均をとるという考え方から、農民の所得を保障するという点における、要するに、価格決定ということを検討しているというわけですね。——そう承りました。  そこで他の問題もいろいろありまするが、もう一つ、消費者のためには産地直結ということをいわれて、それぞれこれは地方公共団体があっせんをしたり、あるいはそれぞれ生協あるいは団地、こういったところが生産地と直結してやっております。やった時点においては、いずれもが成功しておるのであります。ただ問題は、それをどう機構的にやるかということについての定まったものがないわけなんです。だから、私は、将来この産地直結というものを、もう少し歩を進める必要がある。そのために一つの手段として、ただ東京都があっせんをいたしました、あるいは横浜市があっせんをいたしましたということだけではなくて、消費者団体であるたとえば生活協同組合、こういったところをもう少し育成強化することによって、いまの流通というものを直結させるといったような心組みをしてはどうか、こういうことを考えるのでありますが、総理が盛んに頭を振っておられますので、これは簡単でけっこうでございますが、総理見解を一度伺っておきたいと思います。
  252. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほども申しましたように、生産者も保護するが、同時に消費者も保護しなければならない。それには生活協同組合、生協、これを育成強化する、たいへん適当だと思っております。
  253. 辻原弘市

    ○辻原委員 野菜の問題について、私は最後に農林大臣にももう一度お尋ねしておきたいのでありますが、いろいろ述べられました。それで、ことしの野菜に対する予算を見ますると、畑地かんがいという一般的な予算が別にあるようであります、十四億ですか。いわゆる純野菜対策としては二十五億ありますね。それからいわゆる稲作転換のあれが二十億。  そこで、私は、これは総理、農林大臣に要望でありますが、野菜は季節的商品であるという観念を改めさせるというために、ことしの予算一つのはしりとして私はこれはけっこうだと思う。ただしかし、たとえば長雨が続く、干ばつがある、そのつど需給がくずれてくる、これを防ぐのだといって干ばつ予算を組んでおりますね、ことしは。二億何がし組んでいる。しかし、その程度の予算で、はたして私は——指定生産地だけでも、本年度ふやして六百四十にするというわけでしょう。一体何ほどがこれに当たるか。先ほど総理は、私の郷里のおミカンの話をしてくれましたが、私の国のミカンの生産は、いわゆる近代化ということにおいて大いにミカンの生産体制というものは変わっておる。たとえばスプリンクラー一つわれわれが子供の時分はなかった。これができたことによって、いわゆるミカンの干ばつ対策というものはおおむね解消されておる。野菜にだってできないことはない。ただ問題は、予算が少ないですよ、これでは。昨年度から四〇%ふえたと喜んでいるようでありますけれども、しかし現実にほんとうに効果ある対策をやろうとするならば、かりに二億を、あるいはかりに二十億でもよろしい、あるいは二十五億の総予算を指定生産地だけに割ってごらんなさい。一体何ほどのスプリンクラーがつけられるか。何ほどのポンプが得られるか。何ほどのトラクターが得られるか。しかも畑地かんがいの経費というのは、あるいは畑作転換というのは、これは客土その他の農地改良でしょう。それじゃ間に合いませんよ。だから、ただ反別をふやして予算を投入する、その投入の角度なんです。  まことに大ざっぱなことを申し上げましたけれども、私はこまかいことを申し上げる時間がありませんから……。申し上げる趣旨は、一つ天候に支配されないいわゆる野菜農業をつくりなさい。そのために、総理、どうですか。私は予算が少ないと思う。予備費からでもよろしい、出す決意がありますか、お伺いしたいと思います。
  254. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 直ちに、予算が少ないといって結論を出されても、私は適当な状態だろうと思いますが、とにかく多いに越したことはございませんが、少なければ少ないだけにまたそれを有効適切に使うところ、そこに台所を担当するものがある、かように思いますので、ただいまこれは少ないから直ちに予備費から出せ、かように申されましても、この機会に、はい承知しました、かようには答えるわけにまいりません。十分御審議をいただきたいと思います。
  255. 辻原弘市

    ○辻原委員 それは公式答弁として私は受け取りますが、ただ問題はそういう型どおりのお答えじゃなくて、総理、問題は、だからそのことが適切であるかどうか、もう一度検討されるお考えがあなたにありますか。もう一度十分検討してください。私の言うことが必ずしも間違いないことがわかります。逐一当たってごらんなさい。これは農林大臣にも要望いたしておきますが、決してこれでは実効があがりません。
  256. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 おっしゃることよくわかりまして、私どももそういうつもりでやっておるわけでありますが、いまおくにのほうのスプリンクラーのお話がありました。さっきもちょっとお答え申しましたけれども、野菜つくりの地域ではスプリンクラーはいままでもかなりすすめたようでありますが、なかなか乗ってきませんでしたが、今回四十六年度予算でできるだけそれを獲得いたしましたところが、全国で非常に喜んで謝意を表しております。したがって、私どもは、施設もの以外にはできるだけこのスプリンクラーをやりまして、干ばつ等によって被害を受けないような措置をなおひとつ最善の努力をして拡大してまいりたい、このように思っておるわけであります。
  257. 辻原弘市

    ○辻原委員 私の持ち時間が参っておりますので、さらにこの問題についての詳論はまた他日具体的にもいたしたいと思いますし、また、私は一つの物価対策の例を野菜にあげたのでありまして、公共料金の問題あるいは地価対策、こういった具体的問題が山積しております。われわれも真剣に建設的な意見を出します。総理並びに関係各大臣も真剣にひとつこの物価対策にだけは取り組んでいただきたい。  最後に、総理の具体的な建設的意見というものを、われわれの意見も十分くみ入れて、今後検討するかどうかの決意を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  258. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来私も謹聴してお話を承っていたものでございます。これらのことが必ず予算執行にあたりましては十分生かされる、かように思いますので、辻原君も同時に、審議も審議ですが、予算の執行がどういうようになるか、これらの点についても十分御鞭撻を賜わりますよう、この機会にお願いしておきます。
  259. 辻原弘市

    ○辻原委員 最後に、一問だけお許しを願いたいと思いますが、文部大臣にお尋ねをいたします。  昨日も議論されましたように、公害に関する立法がいよいよ実行段階に入るわけであります。文部省はそれに対応して去る一月の二十日でありましたか、いわゆる公害教育についての指導要領の改定をされて、同時に、あわせて教科書の必要な個所の改定を指示されたようであります。  そこで私は文部大臣に伺うのでありますが、公害法の基本というものは、国が一般的基準をきめたものであって、それぞれ各地域における公害の状況に見合って、いわゆる地方の裁量余地というものを残しておるのであります。したがって、今後公害教育をやるについては、少なくともこの公害立法の趣旨並びに指導要領というものの性格から見て、私は地方独自で取り上げる公害教育については、いわゆる地方のカラーといいますか、あるいは地方独自の取り上げ方というもの、それに対して中央が規制を加えるということはまことに好ましくないと思う。したがって、それに対する文部大臣の見解はどうであるのか。  それからいま一点は、最近この公害問題がやかましくなりましてから、積極的に教育の面でも教育者が取り組んでおる。あるいは学校で公害に関する展覧会を一つのサークル活動としてやる、あるいは学校の一つのホームルームとしてやる、こういう際に、企業側からすでにそういった公害問題の扱いについての何がしかの圧力といいますか、セーブというか、そういうものが起きている事例があるのであります。まことに私は遺憾千万だと思うので、この機会に大臣の考えをひとつ承っておきたいと思う。
  260. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 さきの国会で公害対策基本法の一部を改正する法律と公害に関する諸法律が制定されたことにかんがみまして、小学校及び中学校におきます公害に関する指導がその趣旨に即して適切に行なわれるようにするために、それぞれの学習指導要領の社会科の内容の一部を改定いたしました。すなわち従来学校教育におきましては、公害の問題については必ずしも十分に指導がなされていなかった面がございました。またこの問題につきましては経済と福祉との調和という従前の法律に従って考えられておりましたので、これを改めまして、今回の法改正の趣旨を十分尊重して、それに即して各学校において公害教育が適切に行なわれるようにしたのでございます。また来年度使用の教科書についても、それの総点検を行ない、修正することにいたしました。  さらに文部省としましては、今回の学習指導要領改定の趣旨が学校、現場に十分生かされるように、すでに都道府県教育委員会等に通知を行ないましたが、今度はこの問題の徹底を期するために、小中高を通ずる公害教育に関する教師のための指導資料を秋ごろまでに作成し、配付する予定でございます。  このように文部省といたしましては、公害に関する問題につきまして、国民の生命や健康の保護、適切な生活環境の保全などを中心として、人間尊重の立場に立って指導を行なうことといたしております。すなわち、具体的には、社会科においては人間尊重の立場に立って、国民の健康の保護や生活環境の保全をはかるため、公害を防止することが重要であることを指導し、保健体育科においては公害と健康の問題を取り上げ、公害が心身の健康に及ぼす影響等について理解をさせ、また道徳の時間におきましては、自他の生命や健康をとうとび、社会の一員たるにふさわしい公徳心の伸長をはかることとなっておるわけでございます。  それから文部省は、教師が各地の、実情に合った公害教育を自主的にやれるよう配慮すべきで、一律に否定すべきではないと思うがどうかというお尋ねだと思うのでございます。その地域社会における実情が私は非常に違うと思うのでございまして、お説のとおりに、やはりその点につきましてはこういう指導要領なりあるいは教師の指導書等に基づきまして、教師それ自身の自主性というものでやっていただきたいというふうに思います。それは先生方の良識と、あるいは常識と申しますか、そういうことを踏まえてやっていただけるものだと私は確信をいたしておる次第でございます。
  261. 辻原弘市

    ○辻原委員 終わります。
  262. 中野四郎

    中野委員長 これにて辻原君の質疑は終了いたしました。  次に原茂君。
  263. 原茂

    ○原(茂)委員 昭和四十一年でしたか、本会議の代表質問で初めて総理に経済、財政の問題をお伺いしました。当時から回顧しますと、ちょうどいままた同じような経済あるいは財政のある種の転換期に来ているように思うわけであります。きょうは、そういう中でも中小企業問題を中心にその立場になり切っていろいろな問題をお伺いしたいと思うのです。  最初に総理の今回の施政方針演説、あれをお聞きいたしましても、最近、四十二年、三年、四年、五年とも定例国会の施政方針で、総理が中小企業の問題に触れなかったのは今回が初めてなんです。大蔵大臣も、いまおいでになりませんが、触れていないのであります。いままで定例国会の施政方針で、総理なり大蔵大臣が中小企業問題に相当の字数をさいているのでありますが、今回に限っては一言も触れておいでにならない。経済企画庁長官だけが、中小企業など、一文字だけ口に出しただけなんです。どうもいまの中小企業の置かれている立場に対する認識がちょっと軽いのじゃないだろうかという印象を受けたわけであります。しかし何といっても中小企業は全国で大体四百七十七万、しかも就業人口というのは三千五十万いるわけであります。この中小企業のいわゆる施策がどうあるかによりまして、いろいろなわが国の国政全般の基本というものが出てくると思うのであります。就業人口三千五十万の中小企業に対する施策のいろいろな予算上の問題がございますから、きょうは各般の問題に関して各閣僚に、総理を中心にお伺いをしたいわけですが、問題をしぼってみますと、われわれがいろいろとお伺いしたいなと思うものが二百幾つあるわけです。とてもそんな時間はありませんが、二、三の問題にしぼりましてこれからお伺いをしたいと思うのです。  いま申し上げたような中小企業をどうお考えになっているかという点で、施政方針の総理と大蔵大臣の演説の中に中小企業の出てこなかったという珍しいことしの本会議の演説を考えまして、総理の現在の産業構造あるいは経済の中における中小企業の位置づけというような問題に少し言及をしていきたいと考えていたわけでありますが、辻原議員がすでに経済を中心の問題をいろいろと論議しましたので、補足もと思いますが、時間の関係でそれを省かしていただきますが、かつて総理のライバルといいますか、池田さんが有名なことばを残したわけですが、貧乏人の一人や二人、中小企業の一人や二人という名言をはいたわけであります。貧乏人が麦を食う事態になったのかどうか知りませんが、食生活が変わってまいりまして、いまは大体麦のほうが多くなってきたようであります。しかし中小企業の一人や二人というのがだんだんまるがついてけたが多くなって心中、自殺がたいへん多くなっているのが現状だと思うのです。こういうときにやはり佐藤総理のいまのお力をもっていたしたら、ここで施政方針で中小企業に触れなかったことに関連しながら最初にお伺いしたいのは、むしろ決意を、池田さんとは違って、中小企業の一軒といえども殺さない、死なさないということが、いまこそ中小企業に聞かせる大事な時期だと思うのであります。ことほどさように現在置かれている中小企業の立場というものはなまやさしい状態ではないのでありまして、先ほど大蔵大臣のお話を聞きましても、確かにいわゆる安定成長に向かっていると思いますが、向かっていこうとする過程における大きな犠牲者は、数においてやはり中小企業が圧倒的なんです。しかもまあ気の毒に数多くの自殺者、心中をするなどという事態までたいへん多く続出をしているわけでありますから、現在もそのような危険な状態にさらされている数多くの、経済の変遷期における犠牲を背負わされようとしております中小企業に対して、やはりはっきりと総理から、まず冒頭に池田さんとは違うのだ、中小企業の一軒といえども殺さない、死なさない、倒産をさせない決意でやるということを施政方針にからめてまず中小企業にお聞かせをいただきたい、こう思います。
  264. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 原君にお答えいたしますが、私どもの施政演説、これで中小企業の扱い方を軽視したのではないか、こういう御指摘でございます。しかし私はあのことばの中、あの演説の中に一つのパラグラムこそ出してはおりませんが、中小企業の構造改善ということばには触れておる。だから全然書いてないというのではない。とにかく中小企業は、いつも念頭を離れないで私の政治の中にあるという、そのことをはっきり申し上げます。そうしてことに私のかねての主張である人間尊重、そういうことこそこの際に特に考えなければならないものである。もちろん弱い者についての心からの同情、弱い者についての力を与えること、それこそは私に課せられた政治課題だと、かように実は思っておりますので、この点では誤解のないようにお願いをしたい。私は中小企業の一軒や二軒倒れてもしかたがないというようなことは申すつもりは毛頭ございません。またすべての方が、中小企業といわずまた零細企業といわず、すべての者が住みいい社会をつくる、豊かな社会をつくる、こういうことであるべきだと、かよう考えておりますので、私の政治理念としては、すべてがしあわせになること、そこにねらいを置いておるのですから、ただいまのようなきつい御批判をなさらないようにお願いしておきます。
  265. 原茂

    ○原(茂)委員 決意の一端をお伺いできたわけでありますが、現在の産業構造の中から中小企業の位置というものを一応考えてみる必要があるわけです。内閣の、大体あすの中小企業に対する構想が、せんじ詰めてよく見ますと、新経済社会発展計画の中にあるわけであります。これは五カ年向こうの施策の方針なんですが、それを見ますと、現在まで中小企業に対する保護主義が少し過ぎていたのではないか、これを改める必要があるとおっしゃっている。それから現在までやってまいりました一つの適応政策といいますか、これもほんとうに自主能力のある者が生存できるよう状態に持っていく必要があるという意味で適応政策への転換ということを二つ目にうたっておられる。三つ目には中小企業のカルテルというものに論及をして、これを廃止するという方向が示されているのであります。この一つ一つをとっても現在の中小企業に対する政府考え方というものがいろいろな角度から批判ができると思うのですが、きょうそういうことにも触れている時間がないようでございますから、わが党が考えております中小企業対策なりあるいはこの個々の重要な問題に対する問題等はやがて他の委員会なり分科会あたりでもう少し掘り下げるということにしたいと思いますが、宿題のようで恐縮ですが、私は、たとえばいまの中小企業のカルテルなどに対する廃止という意向に関しては断固反対なんであります。独占企業の場合には独占価格というものを中心にしたカルテルが相当大きく物価にも影響しますし、生活への影響が強大になってまいりますが、中小企業にはそれがないのでありますから、このカルテルというのは違った理由から行なわれている。これを廃止して大企業と中小企業を同じ土俵に持っていってすもうをとらせようというような新経済社会発展計画の中小企業に対する考え方に対してはたいへんな問題があるし、疑義を持っておりますということだけ、これは総理大臣あるいは大蔵大臣、通産大臣にもお考えおきをいただきまして、別の機会に一点、一点掘り下げるようにこれからはいたしてまいりたいと考えます。  きょうは、これから何を皆さんにお聞きをしたいかということだけ先に申し上げておきたいと思うのでありますが、まずいま申し上げましたような中小企業の置かれている現状の中から、すべてその立場になり切って、健保の今回の改正に対する中小企業の負担が一体どの程度になるかということを、お考えにはなっていると思うのですが、たいへんな負担が中小企業にかかるのであります。これが一つ。  それから、自動車新税ですが、これも中小企業に対しては、たいへん大きな負担として新たにのしかかってくる重圧の一つなんであります。  その次は、やはり特恵関税の問題があります。この特恵関税は、これからいよいよ実施されていくわけでありますが、この過程におきましては、逆にわが国の資本が外部に出てまいりまして、そこからまた日本に逆輸入をするということまで含めた特恵問題というものは相当慎重に考える必要があると思いますし、やはりこれも中小企業にとっては死活問題と言うこともできる部分が非常に多うございますので、この問題もお聞きをいたしてみたい。  次に、公害の問題でございますが、この公害というのは、実は中小企業に対する公害の施策が、あるいは予算があることになっているのでありますが、何とかして防止をするための施策をしたい、設備をつくりたいと考えましても、なかなかにその金が、大企業のほうがスムーズに入りやすくて、中小企業のほうが入りにくいという状況があるように思うのでありまして、こういう点を、そうでなく、中小企業がもっと借りやすく、もっといい条件でできるように、しいて言うなら、私は、この中小企業の公害というのは、メッキを中心にきょうはお伺いをしてみたいと思うのですが、ずっとやってまいりましたメッキ工場ならメッキ工場、そこに公害が起きた。公害が起きることを承知の上で新たにこれからメッキ工場をつくるのじゃない、やっているときにいきなり起きてきた、零細企業の上に、小企業の上に。言うなら一種の天災と同じよう考え方を、真に中小企業を思うなら考えてやる必要がある。自力でこの排水等の除去なり浄化ができない、その施設をする金を借りる条件もないというようなところに対しては、いわゆる天災救助法ではありませんが、心持ちとしては、ある種の天災にあったと同じよう考え方での手当てというものが必要ではないかと  いうことを、ぜひ考えていただきたいと思うので、これに触れるわけであります。  なお、中小企業の問題で人手不足の問題、非常に大きな問題であります。この労働力を確保するという問題が、単に賃金の条件が云々、企業の大中小が問題だというばかりではないのでありまして、やはり働く労働者の環境の整備をする必要があるという問題で、住宅の問題に触れたりしてお伺いをしてまいりたいと考えるのであります。  このような中小企業の重圧の、もう一つ間接的でございますが、全国にあります消防、火を消す消防団でありますが、この消防団員というのは、これはたいへんな数あるのですが、これに対する手当てというのは、たいへんな義務を負わしておきながら、一年間千円から千七百円ぐらい。一年ですよ。出動しても、手当てを出すところ、出さないところ——出すところでも百円ぐらいのもの、こんな状態で、たいへん重労働というよりは、大きな公共的な義務を負っているのですが、これがまた中小企業に間接に大きな影響を与えています。これに対する待遇をもっと引き上げる、妥当なものにするための地方自治体への援助というものが中央から行なわれるようにしなければいけないのではないかということに触れてまいりたいと思うのです。  次いで、沖繩の中小企業の現状と、やがて返還後における中小企業を一体どういうふうに指導をしよう考えておいでになるかをお聞きをしておきたいのであります。  それから日中国交回復の問題、これがいまたいへん大きな論議になっているわけでありますが、現在この中小企業が、日中の国交回復が行なわれたときには新たな市場を確保できることは間違いない。この道をまた開く義務が中小企業対策の一つとしてあるのではないかというアングルからお伺いをしてみたい。  次いで、流通機構特に中小企業の中の小売り店、販売店でございますが、これが流通機構としては不可欠のものなんであります。現在物価が上がる、値上げをするというと、おろおろしておる間に販売店、小売り店に対してただ消費者の目が向けられて、いかにも消費者の敵ででもあるような感じを何となく中小企業、特に小売り、販売店に向けられていく危険がある。私は、妥当な小売り店、販売店のマージンというものを確保してあげることが国の不可欠な流通機構としての小売り、販売に対する義務だと思いますので、この点相当時間をかげながらぜひ私の提案を受け入れていただくようにお願いをしてみたい、こう考えます。  同じく中小企業の新しい市場をつくるという意味で、対外援助の直接投資の中に、中小企業が新しい分野を開く道があるのじゃないだろうか。対外援助の内容についてお伺いをしながら、この直接投資の中に中小企業を誘導していく道がないかということをぜひ御検討を願いたいと考えるわけであります。  それからもう一つは、防衛庁のいままでずっと装備されました兵器でありますが、飛行機その他を中心の兵器が、これはもう当然兵器である限り、われわれ一般の企業が償却をする年度で償却をするはずがない。たいへん短い年度で償却をするだろうと思いますが、機種別にその年度をお伺いしながら、今日まで相当多額ないわゆる廃棄処分なりあるいは使用不能という処分をされているに違いないのでありますが、これの処分をされる経路、この中にまた中小企業は新たに自分たちの産業分野を発見できるのではないか。ここにやはり新しい分野をつくってやる必要があるのではないかという角度からお伺いをいたしますので、あらさがしや何かではございませんから、そのつもりでこの問題にも皆さんの御審議をちょうだいいたしたい、こう考えるわけであります。  それから大蔵大臣に円切り上げの問題でちょっぴりお伺いをし、最後にソビエトに対する総理の姿勢についてお伺いをして終わりたいというのが私のきょうの予定でございますが、いままでお聞きしておりますと、たいへん総理以下の答弁が質問者の言っているよりも長い場合が多いのでありまして、とてもじゃありませんが、この二時間の間に全部審議がし切れませんので、どうかひとつ、私も簡潔にお伺いいたしますし、いまのように玉手箱ではありませんが、これだけ申し上げますということを全部申し上げましたので、あらかじめ御用意をいただけると思いますので、どうか簡潔な御答弁がちょうだいできるようにお願いをしておきたい。かように思うわけであります。  そこでいまの中小企業に対する一番大きな問題は、やはり何といっても金融でございますために、金融の問題から先に入っていきたいと思うわけであります。  金融といいましても、金融全般について論ずることは、先ほど言ったようにいたさない予定でございますが、たとえば今回の予算の中に中小企業対策費というのが五百七十九億円一般会計で組まれているのであります。この一般会計で五百七十九億円というものが組まれておりますほかに、財投からも六千七百億ぐらいですか、これが見込まれておるのであります。ただ中小企業対策費というのを、中を見たり、今日までの実績を見ましてちょっとふしぎに思いますのは、これは大企業のことを言っては、少しいきなりとっぴな論理になるかもしれませんが、少なくとも金融という点からいいますと、政府の対策費のこればかりではなくて、もっともっと大きな資金を金融機関から仰ぎたい実情にあるわけなんです。そのときに大企業が占めている金融を受けている割合と、中小企業が受けております割合というものの比率なんですが、たいへんこの点は、これはもう専門の皆さんですから、あえて資料で数字を申し上げなくてもおわかりだと思いますが、一つの例でいいますと、たとえば輸銀なり開銀なりの大口の貸し出し先の一、二件をとってみましても、今日、たとえば八百億円ですとか千五百億円、一企業に対してだけ貸し付けが行なわれているのであります。四十六年度の中小企業に対する一般会計の予算というのを見ますと、先ほど言った五百七十九億円、四百七十七万戸、三千五十万人も就業している中小企業に対する国の一年間の対策費よりも、一社に融通されている政府機関からの金融の額のほうが倍あるいはそれに近く一社にだけ出されている。あえて、その企業がどこだという名前もここにありますが、それはきょうの目的ではありません。こういうよう考えてきますと、何か中小企業に対する金融というものが、少し政府の指導の力が足らないのじゃないだろうか、もう少し力を出していただく必要があるのではないかと思いますので、私のほうから申し上げるよりは、これは大蔵大臣から、中小企業に対する金融の基本的な指導方針というものを、いまの大企業に対するのと対比してひとつ御見解をお伺いをしたい。
  266. 福田赳夫

    福田国務大臣 中小企業につきましては、金融ばかりじゃございません。あらゆる施策におきまして、中小企業のその弱い立場というものを踏んまえまして特別の対策をとっておるわけです。  いま当面、金融のお話でございますが、中小企業はこれはどうしても特別な金融を要するという見地から、中小企業金融公庫などのいわゆる政府三機関というものがあるわけでありまして、これらはもっぱら中小企業の金融に当たっておる。それから普通の金融機関にいたしましても、たとえば銀行に例をとりますと、これは四三、四%になりますか、この額が中小金融と見ていいものでありまして、だんだんとその全金融における割合も向上してきておる、こういうふうに思います。そういうようなことで、金融面におきましてはかなり手厚い対策をとっておるというのが現状であります。  ただ、その弱い立場にある中小企業というものは、経済の変動がある。たとえば景気の変動ですね、あるいは政策的に公害という問題が大きく浮かび上がってくる。そういうような際におきましては特にその受ける影響が甚大でありますので、そういう景気変動に対しましては特に中小金融というものに注意をいたしますとか、あるいは公害という問題がありますれば、これは税のほうでもそうでありますけれども、金融におきましても特別ワクをそれぞれの金融機関に設けまして、その金融が円滑にいくとか、そういうきめこまかい配慮をいたしておるわけです。ただ、経営が放漫である、そういうようなものに対しまして、これは打つ手がございません。しかし、ほんとうに健全な経営をしておる、またまじめな経営態度をとっておるというものに対しまして、不測の災いがあってはならぬ、そういうようなことで、何かそういう企業家に対して問題が起こるという際におきましては、その地区地区の通産局、財務局また日本銀行が、最近におきましては、名古屋のタイル、これが輸出不振で非常に困っておる、こういう事態がありますれば、直ちに参集してその対策を講ずる、こういうようなことで、特に配意をいたしておるということだけを申し上げさせていただきます。
  267. 原茂

    ○原(茂)委員 大蔵大臣はそうおっしゃるに違いないと思うのですが、全般の問題を論ずる時間がありませんので、たとえば、さきに金融二法が成立したわけですが、最近の、いまだんだんふえている民間の中小企業に対する資金の供給状況を見ますと、何といっても、例の信用組合あるいは信用金庫、相互銀行というのがだんだん多くなってきまして、政府機関は別にしておきまして、やはり都銀全国銀行というものが、だんだん中小企業に対する貸し出しの率は減ってきているのが数字の上に出ているわけですね。これは自然の傾向で、かえって私は地場産業育成を中心にする組合とか公庫みたいなものがだんだんに中小企業に対する融資を多くすることはいいことだと思うのですが、ただ、こういう点で、もうずうっと昨年まで論議をされ尽くしてきたのですが、金融二法の性格というものがいまこれにブレーキをかけている心配はないかという点なんであります。だんだんに中小企業に融資がどんどん向くいい傾向になっているわけですが、その資金を集めながら中小企業にをも供給していこうとする信用金庫なり信用組合という、こういう小さな企業中心の融資機関が、金融二法を中心にしてだんだんにその供給能力を狭められていくような、ひいて言うなら合併を奨励し、だんだん大銀行に吸収合併をされるような方向にあの金融二法というものがなっていく傾向がすでに出てきている。そういう指導をしているんじゃないでしょうけれども、結果的にはそうなるような金融二法の性格であり、今日までの経過だというふうに私は思うのであります。このことは早くそうである、ないをやはりお考えを願って、ここらで相当の手を入れていただきませんと、単に金融のいわゆる自律性だけを考えた二法の精神だけを生かしてまいりますと、中小企業に対する、地場産業育成という本来の趣旨に沿うこの信組なり信金なり相互なりというところが、だんだんに大きなものに、吸収したり合併したりして、大きくなっていって、いまの全国銀行なり都銀なりと同じような中小企業に対する貸し出しの非常にむずかしくなるような方向に行きつつあるか、行くおそれがあるのではないか。こういうことがあると、いまの時点考えてさらに重要ではないか。いまの中小企業の置かれている立場を考えると、このことに早く、もう御存じかもしれませんが、目を向けていただいて、何らかの措置を、あるいは行政指導がされないといけないというように思いますので、金融二法をあらためていま論議しようというのではありません、いま言った私の趣旨に大蔵大臣がどうお考えになるかをお伺いしておきたい。
  268. 福田赳夫

    福田国務大臣 金融二法は金融機関の体質の強化改善をねらっておるわけでありまして、大企業金融を強化しようというような意図はないことは、これは申し上げるまでもないわけでございますが、まああの立法のもとに、またこれと並行した行政指導のもとに、合併という傾向ですね、これはだんだんと強まってくるであろう、こういうふうに思います。それは同種金融機関内の合併、これが、あるにいたしましても大部分で、異種の、つまり大銀行と小さな金融機関との合併、こういうものは非常にまれなケースかと思いますが、そういう場合におきましても、それが直ちに中小金融の場面を狭めるんだ、こういうふうになるとは私は存じません。しかしたいへん大事な御注意でございますので、そういうことのないように注意してまいりたい、かように存じます。
  269. 原茂

    ○原(茂)委員 この問題は、いまの金融二法にからめた中小企業の立場でそういう不安を持っておりますので、いまの御答弁にありましたように御注意をいただきながらなお検討を深めていただき、私もまた他の委員会、分科会では、この問題はやはりもう少し金融二法を中心にひとつ論議さしていただきたいと思いますので、御検討おきをいただきたいと思う。あと金融の問題は、ちょいちょい中小企業のいろいろな問題から出てまいります。どうかそういう点は、そのつどまたお答えを願うということにしたいと思うわけであります。  それから、先ほどちょっと触れましたように、大企業に対する貸し付け高の非常に多くなっているという点ですね。政府機関の金融機関からの大企業に対する貸し付けの多くなっているという点、先ほどちょっと私触れたのですが、そのことをちょっと問題にしたいと思うのですが、こういうものに対しては、今後も、上限といいますか、限度はもうないというふうに見ていくべきなんでしょうか。政府がめんどうを見る全体のワクはきまっているわけですね。そのワクの中からこの大企業に対する貸し付けがどんどん出ていきますと、どうしても出ていった分が、中小企業に回してもらおうと思っても、それが減ってくるんじゃないか。こういう中小企業の立場では疑いを持っているわけです。したがって、大企業といえども、やはりせめて政府関係機関からの貸し付けというものは、ある上限を設けるというようなことがあっていいんじゃないだろうか。中小企業には、御存じのように、資本金が幾ら、おまえのところの担保力はどのくらい、いろいろな条件で、金融機関によってなかなかに借り入れが困難なんです。大企業もやはりそういう何か中小企業と全く同じ条件があって、それに見合って政府機関からの大企業融資というのが行なわれているにしては、少し多過ぎるのじゃないだろうかという感じを持つのですが、この点は、そんなことはない、ちゃんと中小企業と全く同じ条件で考えていくんだ——ただ私の心配するのは、中小企業も疑いを持っているんですが、やはり大企業という目に見えない大きな信用というものが中心になって、ここに出ていくお金というのは、どうもあまり上限というのがない、ここまでだというのがあまりなくて、どんどん出ていっているような感じがするわけですね。これはまあ差しつかえないから言ってもいいんでしょうが、たくさん出ていますけれども、銀行別融資の普通の銀行の融資を見てもそうですし、政府機関のほうがきっと弊害がなくていいんじゃないかと思うので、たとえば輸銀の例をちょっととってみましょうか。石川島播磨重工業に、去年の三月末の貸し付け残額ですね、いわゆる融資額ですが、幾らかといいますと、これは千六百九億、それから三菱重工に百億ですか、それから開銀のほうを見ますと、日本郵船に九百十四億円ですか、それ以下ずっとあるのですが、大体百億以上というところが数十社ありますね。それから輸銀の場合にも百億以上が大体十何社ありますね。都市銀行のやつも、これもまた相当大きなものがあるのですが、これは現在の資本主義機構の中でどう扱おうと自由だろうと思いますが、私はやはり指導的な立場にある政府の金融としては、政府機関のこの輸銀、開銀あたりが出している、この一社に対してこれほど行っているというのに、何か上限といいますか、何か設けないといけないんじゃないかという感じがするわけですね。同じ政府の金が出てくるのに、中小企業のほうには、いろんな中小企業のための三機関、その他ありますよね、三機関の融資総額を見たってとても及びもつかないでしょう。しかも数は幾らかというと、五百万近くの中小企業の数がある。それに対する比率と見たらもう話にならないですね、少な過ぎて。だんだんそういうことをふやしていかなければ困る時代になってきておるのですが、ふやそうとするのに、どうも政府関係金融機関の大企業に対する融資が野方図にぐんぐんと増額されていったのでは、こっちへ回ってくることが少なくなるのじゃないだろうか。こういう心配ですが、何か上限を設ける必要がないか。こう思うのですが、いかがでしょう。
  270. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話しのように、これは政府金融におきましてはその原資において制約があるわけで、袋は一つなのです。それを分け合う、こういうことになりますので、普通の金融機関に割り当てる額が多ければ、中小のほうに割り当てる額は少なくなるわけなのですが、実際はそうはしておりません。これはちゃんとバランスをとりまして、量においてもバランスはとりますが、特に、その質ですね、金利だとかその他の条件、そういうものにつきましては、中小金融に非常に有利なよう政府資金を使用しておる、こういう状態でございます。  ただ、どうも原さんのお話、中小企業に非常に熱心なお話でございますが、伺っておりまして、ちょっと私感想を抱きますのは、大企業、大企業とおっしゃいますが、たとえばいま開銀のお話がある。開銀から出るお金、これは一体、大企業がおもでございまするけれども、その大企業は大体においてトンネルみたいな役目でありまして、その大企業が支払う先というものは何だ、こういうと、これは大体において中小企業と、こういうことになるのです。そういうようなことで、あんまりどうも大企業、中小企業というものを対立的な立場でお考えにならないほうがいいんじゃないかな、そこには深い関連があるんだな、ということを前提といたしましてこの問題は論ずべきじゃないか、こんな感じを持ちましたことを申し添えます。
  271. 原茂

    ○原(茂)委員 いま大蔵大臣がおっしゃるようなふうには考えておりません。決して対立的な立場で考えようともしていませんし、またそうすべきものじゃないのです、おっしゃるとおりに。大企業と中小企業、下請、こういうものはやはり有機的につながっていかなければ、一国の経済がここまで発展しなかったのですから、GNP世界第二位なんていっておりますけれども、これにはやはりいま言った対立がないし、そうじゃなくて、むしろ一貫性があるところに今日の経済力のいわゆる向上があったわけですから、そういう意味では対立的な感情とか、そういう観点からお伺いをするのじゃないのであります。ただ中小企業が素朴に心配をしておる、いまおっしゃったようにワクが一つなんだからこっちが減るんじゃないか、こういう単純なことに対しては、先ほど全般には御答弁があったわけですからそれでいいんですが、大企業に金が行ったやつが結局は中小企業に行くんじゃないかという論理は、ストレートに政府の金融三機関から中小企業へ来る場合と、大企業を通して下請へくる場合とは、金融プロパーで考えてみますと、たいへん違うんですよ、中身が。条件も違えば、えらい違いがあるわけですよ。これは、実際の仕事に目を向けてごらんになっておいでになると思いますから、あえて言いませんが、たいへんな違いがあるのです。ですから一がいに大企業に行くものは中小企業に結局行くじゃないかという考え方だけでは割り切れない、そういう考えは乱暴だ、こういうように思うのです。なお、大企業には、必要があると、いまの政府機関から何百億、何千億という借り入れができるほかに、自分でやはり債券を公募してみたり増資をやったり、いろいろな手がありますよね。ところが中小企業にそれがないわけです。これも一つのギャップなんですね。大きなギャップなんです。たとえば、公害の問題一つ例にとりましても、公害防止事業団ですか、こういうものから金を借りようということになると、中小企業、大企業もこれは同じなんでしょうが、たとえば一例ですけれども、担保はどうだろう、こう来るのです。やはり第一担保でなければいけないとは言わないのですけれども、第二担保だってかまわないが、担保に余力があれば、これは当然でしょう。しかし先ほど私がちょっと触れたように、公害というものはやはりある意味では中小企業にとっては天災のように、最近設備をしろ、しろと言われてどうしようかと言っているのが実情なんですね。もう最初から公害が出るということを承知の上でその設備をしないで今日まで十年、二十年経営をしてきた企業というのはない。公害というものにほとんど大衆の関心もなかったし、国家的な大きな問題にもならないずっと前から公害をたれっばなしでやってきたわけですね、残念ながら。これをいきなり余力がない中小企業に、たとえばメッキ工場なんかが設備をしろと言われたときに、じゃ防止事業団で借りようということになったら、さあ担保はどうだ——これは一例ですよ。担保はどうだろうと言われてみると、さて、第一担保でなければいけないと言われたと同じように、第二でも第三でもいいんだけれども余力がなければだめだ——これは当然だと思うのですが、しかし災害救助法の適用すら考えていいんじゃないかという気持ちですよ、災難を救うという意味で。しかも国家のいわゆる金融が発動しようというときには、民間の金融機関とは違って、ここに多少の配慮があっていいのではないか。それが担保の余力がない、これでもうアウトなんですね、中小企業は。そういうようなことがたとえば信用保証協会にもある。いまの公害の例でいう防止事業団にもある。もう一つ信用保証協会なんかで余力のない中小企業、零細企業が借りたいというときに、無担保、無利子でというようなことがあると、五十万円の限度で信用保証協会でやるわけですね。東京都なんかはそれじゃいかぬというので、限度額を引き上げて百万円、京都は百五十万円ですか、何か自治体が独自に利子補給を含めて限度額を引き上げている。東京、京都あるいは秋田ですか、どこかにもまだたくさんあるのですが、五十万円以上というものを無担保、無利子でも保証するという制度がとられている。五十万というのが国の制度、地方自治体のほうはそれをもう飛び越して幾つか百万という例が出ているときに、国が、いまだに無利子、無担保といえば五十万が限度だ、こういったような中小企業に対する金融のあり方が現在の産業構造の中における中小企業のたいへんな困難に逢着している事態からいうなら、私はここで思い切って金融そのものをもう一度洗い直して、バランスのとれたものにするという考え方をしていただく必要があるんじゃないか。たくさんの政府三機関の例がここにありますけれども、それを一々言っている時間はありませんし、そういうのが目的ではないのであります。賢明な、次期総理大臣といわれる福田さんですから、もう言わなくてもよくおわかりになると思うのですが、そういったことに対する洗い直しといいますか、もう一度中小企業の立場で金融機関というものを、政府がかかわりを持つ金融に対して、地方の自治体がやっているのとせめてバランスをとってやるというところを第一段階考える、その次にはやはり民間の銀行とは違う、政府が多少の危険を負担しながらも、公害なら公害対策における担保の問題等も考慮してやるというようなことが必要だと思いますし、そういうことをひとつ提案をし、お考えをいただいたらと思うのですが、この点いかがでしょう。
  272. 福田赳夫

    福田国務大臣 ごもっともなお話と存じます。特に当面しておりまする公害の問題ですね。これは中小企業にはたいへん当惑した事態になるんじゃあるまいか、さように存じます。そういうようなことから、ただいままでありまする公害防止事業団ですね、この融資は強化することはもちろんでございますが、そのほかに開発銀行、中小企業金融公庫、また国民金融公庫、そういうようなところに特別ワクを設けまして、重点は中小企業のさような困惑した事態対処よう、こういう考えでございます。また金融機関全体のあり方といたしましては、大蔵省でいま金融制度調査会というりっぱな調査機関があるわけです。これに逐次お願いしているのですが、次の段階のテーマとしては中小金融、こういうふうに考えております。そういう機関なんかの意見も聞きまして中小金融のあり方、これをどういうふうに改善するかというようなことを真剣に取り組んでまいりたい、かように存じております。
  273. 原茂

    ○原(茂)委員 それでおわかりいただいたと思いますし、中小金融を中心に審議をしていただくというのですから、その促進をはかってもらいながら、その内容によってまたあらためてお願いをしたり提案をしていきたいと思うのですが、とにかく現時点で具体的にそういう問題では非常に矛盾があるし、困っているのだという点があらゆる行政の場において指導的に配慮をされるような、いまできることからやっていただくようなことをぜひ考慮していただきたい。そうでないと血が通わないわけです。  それからもう一つ中小企業の金融で問題になりますのは、いわゆる設備資金なんですね。これは近代化、合理化いろいろ言っているのですが、中小企業はやはりいよいよ完全な貿易の自由化に対処していこうとしてみたり、あるいは特恵の影響をはねのけていこうというようなことになってきますと、設備というものの重要性がたいへんな問題になるわけですね。先ほど言った労働力の確保からいっても、単に人を雇うのではなくて、労働装備率を高めていかなければこれから近代企業競争なんかできないわけですから、労働装備率を高めよう、いい機械を入れようというとやはり設備資金というものが何としても必要になってくる。その設備資金も、これも一々申し上げませんが、たいへんむずかしい条件があるのです。一般の金融機関と変わらないのが一つ政府機関の場合ですよ。それからもう一つは、こういうものに限って、なおかつもっと担保などというものがうるさいのです。中小企業に対しては保証人もうるさい。民間と違う。中小企業に対しては、こういう問題に関して、相当程度同じような配慮をしていきませんと、いまのままでいきますと、残念ながら中小企業は自然淘汰を待っているのだ。とにかくでき過ぎた、だからむしろなくなってくれたほうがいいのだというようにすら、中小企業者の立場では怨嗟を込めて考え始めているのです。いまの政府の姿勢というのは、もう中小企業というのは自然になくなってくれ、こういっているのではないか、こんな感じすらもう持ち始めているのが現状です。政府がそうだというのではないのですよ。ただ私は、現在急速にいま言った金融というものが、何といっても中小企業にとっての一番重要ないわゆる血液の補充源ですから、これに対する政府の姿勢、考え方が、現在の条件だけで押し通していったら、これは間違いなく去年のいまごろよりは、あるいは年末よりは、これからどんどんもっと当分の間中小企業というものはつぶれていくのではないかと思うのです。中小企業というのは、この数字に書いてあります三千四十六万人あるいは四百七十七万戸なんというものも、いわゆる五人以下の零細企業というものはオミットしているのです。もっと悪いのは、最近は家庭の内職というのが非常に行き渡っているのです。家庭工業といっていますが、これは昔でいう内職です。しかしこれがやはり相当地域によって、だんだんにほんとうの家族の奥さんが子供相手にやっているのではだめだというので、近所の人を三人、四人、五人と集めまして、大体少ないところで五人、多いところでは三十人くらいが家庭の内職だと称してやっている、企業の形態をなしているほんとうの零細のものが数多くそのほかにあるのです。いま不況不況といわれていますが、いわゆる安定成長へ向かう途上における過熱を防いでやっていこうとする現在の傾向の中で、一番先の犠牲者になっているのが、この家庭の内職者といいますか、これどうでしょう、全国でずいぶんおるのじゃないでしょうかね。まあこの数は調べようがないのですが、私の地元だけでも大体人数にして八千人くらいいますね。ほんとうの私の住んでいるところだけでも八千人くらいいます。ですから、全国にいったら相当あるのじゃないでしょうか。これがもうすでにほとんどだめになりまして、近所の商店も、奥さん方ちっとも買いものに来ない、どうも不景気だ。商店に影響するのはあたりまえですよ。うまく一生懸命かせいでは自分の好きなものを買うというようなことが相当行なわれてきたこの四、五年だったんですが、そういうものがいきなりばたっと去年の暮れあたりからなくなってきまして、ずいぶん商店などの売り上げにも響いている小都市がたくさんあるわけなんです。というほどに大きな影響をもうすでに受けています。  そういう意味では、少なくとも中小企業の諸君がいま考えているような、政府はほんとうにおれたちのことを考えていない。こういうものがある、ああいうものがあると言うけれども、行ってみれば、みんなぶつかるじゃないか。それも、政府の機関でありながら、民間の金融機関と同じような条件で排除されるじゃないか。これで一体ほんとうに、中小企業、中小企業といっているけれども、三千万になんなんとする従業員を持つ中小企業に対するほんとうの政治と言えるか。もう自然にとにかく淘汰されるのを待っているのだ、なくなっていくことが望ましいのだといっているのじゃないかと彼らは疑いを持っているわけです。正直に持っている。ますますその感がこれから強くなるわけです。もちろん、そんなことはないとおっしゃるにきまっていると思うのですが、この点をひとつ、そうではございません、あらゆる手を尽くしてこれから中小企業に対してよりベターな政策をやっていく、金融に関しても特段の考えられるものから手をつけていくのだということをひとつここでもう一度、今度は総理からちょっとその決意をみんなに聞かしておいてやっていただきたい。
  274. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ中小企業の問題について、熱意を込めて政府の姿勢をただされました。私自身も中小企業の出でございます。つくり酒屋でございますが、これはもう典型的な中小企業でございます。その悩み、子供の時分から経営しておる者がどんな悩みを持っておるか、よく私自身も経験してきたところであります。  先ほど来言われるように、大企業と中小企業は、直ちに比較するという、これはちょっと当たらないことでありますが、全然大企業の系列に入っていない独立した中小企業、それがただいま原君の言われる特にめんどうを見なければならない部類ではないか、かように思います。そういう経験を持つ私でございますから、その苦しい立場について理解は十分しておるつもりであります。したがいまして、それが、いま言われる金融もさることだが、同時に税も同じように問題でございます。これらの二つの問題について、ことにそれが弱いものである中小企業であるだけに、特にめんどうを見なければならないと思います。ことに、最近のごとく、都市集中が行なわれたその結果、産業構造にも非常な影響を与えておりますから、地方の中小企業というものが、もうそれだけで取り残されている感が一そうするだろうと思いますが、特にそういうことも含んで、この中小企業に対する対策、きめこまかなあたたかい手をとらなければならないものだ、かように私も思います。  ただいまのお話に答えて、私の経験も述べさせていただいたような次第でございます。
  275. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで最初に申し上げたように、もうこれ以上これは深入りできませんから、ほかの機会にやりますが、健康保険の今回の改正の問題についてお伺いをしたいのです。  これも簡単にお答えをいただきたいのですけれども、私の試算によりますと、今回の健保の改正によりまして、政府管掌の保険がおもなんですが、組合管掌のほうは別にしまして、大体大ざっぱに中小企業、大企業というのを分けてみますと、政府管掌の保険に入っているのが大体中小企業なんですね。大企業といわれるものは、大体組合管掌のいわゆる健康保険で現在の運営がされている。そうでないのも多少ありますので、大体二割ぐらい、中小企業というのを二〇%数を減らしたくらいの計算にしましても、今度のいわゆる健保の増収というのを中小企業と大企業に分けてみると、どうもそれにしても中小企業のほうが一カ月当たり相当大きな出費、負担をさせられていく、こういうふうに思うのです。これは私の試算の数字を必要があればこれから申し上げるのですが、一体そんなふうに私は考えておりますが、当たっているかどうかをひとつ、これは厚生省ですね、どうぞ。
  276. 内田常雄

    ○内田国務大臣 健保改正の件でございますが、今度の改正で一番いい影響を受けるのは、私はいまお話しの政管健保だと思います。それは、時間がないから申しませんが、いろいろの事情で、御承知のように、政管健保は毎年数百億の赤字を出してまいりまして、四十五年度末ではおおむね二千億円くらいの累積赤字が残りますが、それを全部保険外のいわば政府の一般会計で処理してたな上げしてしまうということに私どもはあの計画をいたしておりますので、したがって、中小企業を多数に含む政管健保の保険勘定が将来この問題を心配することがなくなるということが一つと、もう一つは、いままでは、政管健保でも保険料は御承知のとおり事業主が半分負担しておりますので、そこの点が国民健康保険と違いますので、国からは十分のお金の補助といいますか国庫負担をやれませんでした。定額でしかやれませんでしたのを、今度の改正に関連いたしまして、定率の国庫負担をいたすことにいたしております。これから、政管健保だけではございませんが、医療水準が上がるに従って、保険給付は多くなると思いますが、そういう場合に定率の国庫補助制をとりましたことは、大部分はこのはね返りは政管健保にまいると思います。  そのことを頭に置いていただいて、しかし一方、御承知のとおり標準報酬の改定をいたしたり、あるいは前年度の賞与の三分の一くらいを報酬に計算するということもいたします。これは一般論として組合健保のほうにも影響あることになりますが、いまたとえば五万円、六万円の俸給をもらっておる人の報酬を引き上げるということではございませんで、実際十五万円、二十万円の月額報酬をもらっておる人が、現在では標準報酬十万四千円で押えられておりますのを、これを実態に応じて標準報酬を改定するということでございますから、その影響もやはり原さんがおっしゃる組合健保のほうが実際問題として私は多かろうと思います。保健がカバーしておる人員は政管健保のほうが一千三百万人くらい、それから独立した組合健保のほうが九百万人くらいでございまして、数は若干組合健保のほうが少ないのですが、給料は私は組合健保のほうが、ここで詳しい数字は申し上げられませんが、その頭数に比例して少ないということではないので、二十万円近い高額所得者があることを考えますと、今度の改正の影響も、むしろ政管健保のほう——これは負担が減ることではございませんけれども、負担の影響の受け方は私は多くはない、こういうふうに理解をしていただいていいのではないかと思います。
  277. 原茂

    ○原(茂)委員 厚生大臣、いまおっしゃった二千億円ですとか、それから二十万に引き上げたりボーナスの三分の一を入れたりというようなことはいいのです。みんなわかった前提で話をしていただきたいと思いますね。いまお話しになりました組合のほうが一人当たり多いだろうというのですがね、確かに一人当たりの負担分は組合のほうが多くなるのですよ。これは千円ぐらいの違いがあるのです。ただし全体の数量から——数、人数ですね、数量といってはおこられますが、数からいきますと、このほうがやはり率としては少し低いんじゃないかと思うのですよ。政府管掌の場合には、いまおっしゃった確かに政府管掌が中心で赤字が出ているのですから、その赤字をなくすという国家的な見地からいくならこれは悪いことじゃないのです。ただ中小企業の業者の負担分は、十万を二十万に引き上げた、あるいは一時金の三分の一を入れたといっても、中小企業者の負担はあるわけなんですよ。そうでしょう。こういうものがいままでよりふえますねと言っているのです。いいですか。それが月当たり大体六十八億ぐらいふえるのです。一月ですよ、六十八億。これはまああとでそちらが専門に計算してもらう。私のこれは試算ですからね。一月に六十八億円負担分がふえる。こういう計算をしているわけです。これは中小企業の思わぬ負担ですよね。しかし、国家的な見地からいく健保の赤字解消というのは、これはもう大きな題名ですから。しかし、中小企業には月にこれだけの負担があるのだということだけは、一つの圧力として、また困難な上になおさらに中小企業には健保の改正によって加わってくるんだよということを申し上げたいわけです。このことが内閣全体の姿勢として中小企業に対するいわゆる考え方を、なるほどそうか、また一つたいへんなものが加わったんだなという感じになっていただくために言うだけの問題で、数字を論議しようと思ったり、あるいは赤字解消もいいか悪いかを言おうとしているんじゃない。中小企業にはこれだけの負担がありますよ、新たに加わりますよという意味ですから、これならよろしいでしょうね。
  278. 内田常雄

    ○内田国務大臣 健保の赤字問題ばかりでなしに、将来に向かって私は、国民の医療需要というものを健康保険制度なり、あるいは場合によっては、あるものによっては公費で負担しても国民の健康を保つべきだという、これは私は厚生大臣でございまして、大蔵大臣ではございませんから、それだけのことを考えるわけでございますが、その場合の一環として今度のことをやります。その場合に、いま中小企業の事業主とあるいはまた被保険者を含んで、月に六十八億円の負担増と申しますか、保険料の増額というものになることは、これは何か数字の違いでございまして、今度は十月から途中実施でございます。途中実施で負担になるのが全部を含めまして二百億とちょっとぐらいでございますし、それから平年度にいたしましても五百億内外でございます。そういうことになります。そこで月に六十八億ということになりますと、それを十二倍いたしますとたいへんな、何百億になりますが、そんなにはならない計算でございます。これはまたいずれ詳しい数字をもって御説明いたしますが、保険の改革につきましては、先ほども申しますように、中小企業の立場を十分考慮をして、その立場に立っての改正、しかも保険の利益を受ける被保険者が医療給付を受けます場合には、中小企業をやめられた方は今度はもうその保険に入らなくなって落っこってしまいますので、それをつないであげるとか、あるいは老齢家族の給付をよくするというようなことも考えまして、そういうフェーバーができる限り中小企業に及ぶようにという配慮をいたしております。
  279. 原茂

    ○原(茂)委員 この健保の問題、これから自動車新税のことを申し上げるのですが、佐藤さん、外国のあちこちでもうそろそろ日本のことを、日本株式会社なんというのが出てきているのですね。これはどうしたのだろうと思うと、御承知のように財界、官僚、いまの自民党政府、この三つが癒着をして、いわゆる国家的に企業というものを盛り上げてきたんだというさかしらな言い方をしているわけですね。私はそのことのよしあしや何かを言うのじゃない。やはり日本人としては、ふざけるな、日本株式会社ということばを聞いていい気持ちはしません。しかし、いま中小企業の問題を言って、健保なら健保で中小企業に負担がこれだけありますよなんということをこれから論議しますのは、やはり日本の国を現在指導的に政治をやっておられる佐藤さんが、日本の、会社でいうなら社長で、大蔵大臣が専務というのでしょうがね、あと閣僚が取締役ぐらい、こんな感じになって、内閣全体が中小企業の問題を真剣に考える必要があるし、その時期が来ているんじゃないかという意味で、中小企業の立場でのこうした試算をいろいろとやってみたわけです。そのことをこれから申し上げるわけですから、どうかひとつ一そうかといって、この日本の中小企業、日本佐藤社長なんという会社が世界的な大企業だとは思わない。むしろ中小企業の上ぐらいのところじゃないかと思うのですが、そういったほんとうに御自分自身も中小企業に、先ほどお話のあったように、身を置いた立場で一緒にひとつ検討をする、そうしてできるだけのことはやっていくんだという考え方が内閣全体のものになってほしいという、そういうたてまえですから、そのつもりでお答えを願っていきたいと思うのです。  それで、自動車新税をその次に考えてみるのですが、この自動車というのは大企業と中小企業で何台ずつかというのを調べようと思って一生懸命にやったわけです。ところがとても、これは内閣で調べればわかるのかもしれませんが、私どもではとうてい調べられないのです。たいへん大まかな調べ方をしたわけですけれども、大体試算をしまして、大企業の持っているだろうという数が約三十六万一千四百二十台、これはまた私の乱暴な試算ですよ。で、中小企業の持っているであろうものが千七百七十万九千五百八十台。この試算も、先ほどの健保じゃないがたいへん乱暴だ。この根拠はいま説明をいたしませんが、乱暴だということになると思うので、これもひとつ二割ぐらい引いてやろうというので八〇%ぐらいに見たわけです。中小企業の持ち分というのを八〇%ぐらいに見た。計算をし直しました。これを今回約三百二億円ですか、増収見込み、幾らでしたかね、こういうものをまた平年度千二百億と書いているところもあるし千億以上だといっておるところもあるからわかりませんが、大体この自動車新税の中小企業が新たに負担をさせられるであろうと思うものを、いま言った単純計算で概算してみますと、大体二百三十八億五千八百万円というものが、これも新たに自動車新税によって中小企業が負担増になる分、中小企業に対する重圧の一つだ。こういうふうに、いかに単純計算でも八〇%に下げていますから、皆さんが計算してもおそらくそう大きなあやまちはないというふうに私は思いますが、これもどうかひとつ皆さんの手であらためて計算をして、なるほど中小企業に、ただ自動車新税、新税といっているが、中小企業という立場で見ると、これだけの、あるいは幾らぐらいの負担があるものかということだけは考える思想性というものが内閣全体にほしいという意味であります。そういう意味で申し上げているのであって、これがいいとか悪いとかいうのじゃない。中小企業というのは知らない間にこうした負担増が、皆さんのおきめになるいろいろな施策の中にあるいはその裏で思わぬ負担を、本人は知らないんだがかけられているんだということのいわゆる例証を私がただしてみたい、こう思っただけなんです。  私のいまこう申し上げているような数字があまりにとっぴだ、何か運輸省で自動車を考えてみたときに、そうじゃない、こうじゃないだろうかという数字が概算ででももしおありだったらちょっと聞かしていただくと私も参考になりますから、ひとつお答えをいただきます。
  280. 細見卓

    ○細見政府委員 私も自動車の専門ではございませんが、手元に保有台数をいろいろ車種ごとに分けたものがございます。四十四年の内訳があるわけでございますが、四十四年でございますと千五百八十三万台あるわけです。そのうち中小企業が普通持っておられると思うのは、一番多いのが軽トラックじゃないかと思うのです。これが約二百九十万、三百万台。そのほかの一番多い乗用車が五百五十万台あるわけですが、これとなりますと、これは中小企業であるのかあるいは大企業であるのか、むしろそういうところの従業員あるいは農民といったような人も多分に持っておりますので、これを企業のものというふうに割り切るのはちょっと無理じゃないかと思います。トラックが約五百万台ございますが、これもどちらかといえば営業用のトラックがかなりございますので、これも大小企業というふうなカテゴリーにならずに、むしろこの自動車税が運賃にどうはね返ってくるかというようなのが問題じゃなかろうかと思います。それからバスその他は、したがいまして大企業、中小企業というようなものでなくて、営業用の車というふうに考えるべきじゃないか、かように思います。
  281. 原茂

    ○原(茂)委員 いまのあなたのやつ、ちょっと古いのですね。実際の総台数は千八百七万台、三百万台違うのです。それから説明のありました軽四ですとか軽三輪もやはり入れなければいけないのです。それから小型四輪というのがあるのです。小型三輪も別にある。ですから、単にいまの軽トラだけを考えて三百万台というのではなくて、小型四輪、小型三輪あるいは小型三輪トラック、それにあなたの言った軽四輪トラックなどを合わせてごらんなさい。これでもうすでに八百万台になる。そのほかに二輪車というのがあるのですよ。これもまた相当の台数あるでしょう。それからまたいまの貨物、大型貨物は別ですが、普通の貨物が中小企業に全然ないことはないですからね。これだって半分は見ていいんじゃないですか。それから普通乗用車だって、中小企業と大企業と比べたら半分見たって絶対間違いないです。というように積算を一応直してもらって、あなた方のほうでも一度出しておいてごらんなさい。そして、中小企業分が一体どのくらい自動車新税で負担になるかを計算してごらんなさい。そういう角度から、とにかく五百万になんなんとする中小企業者の施策というものに対してはもうちょっときめこまかな血の通った角度から各省が検討する習慣をつける。そうでなければ、総理がどう言っても、中小企業というものを考えたことにならない。そういうために申し上げているのですから、この数字なんかで言いわけなんかするのじゃなくて、いまお話のあった数字を聞いただけでも、もうちょっと親身に調べていないからそうなるんです。もちろんその習慣がなかったんだからやむを得ない。中小企業という立場でこれから調べていただくようにお願いしたい、こう考えるわけです。  次に、時間がなくなりまして、特恵に入ると相当これまた時間がかかっちゃうものですから、特恵で一つだけ……。これはいろいろ特恵の品目がもうすでに発表になったわけですけれども、その特恵のいわゆる除外品目というのが七品目あります。この除外品目というものはこれから追加になるのかならないのか、現在の七品目の除外品目だけで終わりなのか、これを追加して除外品目がまだふえるのかどうかだけ一点お伺いしておきたい。
  282. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 すでに政府として七品目を決定いたしましたし、また御承知のとおり、これは先進国間で各国の方式をバランスをとった関係もございますので、ふやすつもりはございません。
  283. 原茂

    ○原(茂)委員 これはこれからの各国間のバランスをとったんですし、協議の上きまったのだからやむを得ないのですが、現状が固定的なものだという考え方でなくて、これに対する変更を必要とする、あらためてもう一ぺん検討したときに変更を必要とするときには、やはり会議に出してその了解を得るというよう態度をこれからおとりになりますか。そのことはもうないのだ、これでもうずっと固定なんだ、一切、これからどんな状況の変化があろうと、どういう事情があろうとも、この七品目以外には除外はしない、これでもう固定だ、こういうことになるのでしょうか。
  284. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実はその辺もかなりよく考えまして品目を選んだつもりでございますので、政府の方針といたしまして現在ふやすという考えは持っておりません。ただ、各国で相談をいたしまして、やがて法律案の御審議をいただくわけでありますが、法律上は緊急の場合には何らかの処置をとり得るということにはいたしておきたいと思います。
  285. 原茂

    ○原(茂)委員 後半のほうがちょっぴり期待にこたえていただいたわけですが、それと特恵が及ぼす重要な問題というのは幾つかあるわけですね、中小企業に対して。これはもう死活問題ですから。いま特恵はもうだれもが論ずる問題ですし、別の機会にやる以外にないと思いますが、ぜひひとつ特恵というものは、それこそ特別に中小企業に対する影響を配慮した上でこまかい手当てをしていただくように、これからのいわゆる考え方なり施策をお願いしておきたいと思うのであります。これは相当きめこまかにやっていただきませんと——どういう手当てをどういう業種に対していつの年度で、どうしなければいけないかというスケジュールがぴちっと出てきませんと、特恵をむやみにやられたらこれはたまったものではありませんから、そういう点のこまかい問題に関して、これは逐次またお伺いをしたりやっていきたいと思いますが、これはお願いだけ申し上げておきたいと思うのであります。  先ほど公害について融資の問題を少し申し上げたわけでありますが、今回の財投を見まして、公害対策の大きな問題で、私どもが考えて、うんと高い金利のつくようなものばかりどうして公害対策の中小企業への三機関の資金にするのだろう。むしろ産業投資特別会計、こいつを中小企業の公害対策の融資に向けるようなことが配慮されていいのじゃないかと思うのだが、それはできないものなのか、そういう配慮がされれば、ずいぶん公害対策でもあるいは中小企業金融対策でも助かるのじゃないかと思うのですが、産投というものをそういう面に使うという考え方はできないものかどうかを……。
  286. 福田赳夫

    福田国務大臣 産業投資特別会計はその資金を、産業投資自体が具体的なこまかな処置に使うという運用をいたしておりません。つまりこの会計から出資をする必要があるというような際に、政策機関に対しまして出資を行なうとか、そういうようなことなんです。この会計は金融機関自体じゃないのでありますから、したがってお話しのようなことはこの会計としては考えられない、それぞれの金融機関を通じて考える、こういうことになります。
  287. 原茂

    ○原(茂)委員 そのおっしゃることそのとおりわかるのです。だから、いまの中小企業に向く公害の融資であろうと——あるいはおもにいっておるのはやはり三機関ですね。中小の三金融機関ありますね。その三機関と、いまの公害防止事業団だとか、そういったところに回す、金融の機関に対して。いままではこれはできないのはわかっているのですよ。それを産業投資特別会計の資金をそちらのほうに回すようにできないか。これから配慮することができないか。全然だめなものかどうかお伺いしたい。
  288. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは全然できないというわけじゃありません。要するに、たとえば公害防止事業団、これの資金コストをどうするか、産業投資特別会計から金を入れる、出資でもするということになれば、ただの金が入るのですから、それだけ資金コストが安くなる、そういうようなわけでありますが、各金融機関、特に政府金融機関間の貸し出し条件、そういうようなもののバランスを見まして決定すべき問題である。理論上これはできないという性格のものじゃございません。
  289. 原茂

    ○原(茂)委員 わかりました。できないものじゃないので、できるような配慮ができるだけ早い機会にされて、そうして資金コストが安いもので中小企業が使えるようにしてもらいたい、できるだけ金利の下がるようにしてもらいたいという意味ですから……。  それから先ほどちょっと触れました信用保証制度の問題なんですけれども、現在の保証の限度額が大体二千三百万円ですかね。これが五千万円ぐらいに限度額を引き上げてもらわないと、ちょっと現在の中小企業金融に適さないのですね、二千三百万では。この限度を引き上げるような考慮が大至急にされないと困る。ですから、こういう面ではたいへん使いたい、使おうとした、しかしそれが中途はんぱで、そっちへ担保を持っていかれるとだめだから使えなかった。金利は高いけれども三千万借りるためにほかへ持っていっちゃったというようなのがずいぶんあるのです。そういうことのないような配慮をするとすれば、いまの時点でいうなら、この限度二千三百万というのは低過ぎるので、五千万ぐらいに引き上げるということが急速になされるべきじゃないかと思う。この点どうでしょうか。
  290. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど無担保、無保証のお話、五十万円のお話がございました。その点とただいまの点と、これは結局信用保険公庫が保険でとります限度と関連いたしますので、今回ある程度の引き上げをいたそうと実は考えておるわけでございます。御指摘のところまでいけるかどうかはまだはっきりいたしませんけれども、その方向で御審議を願おうと思っております。
  291. 原茂

    ○原(茂)委員 それからこの保証制度を利用できない業種というのがあるのですね。利用できる業種と利用できない業種があるのです。利用できない業種の中に不動産があるのです。それから保険、茶道の学校ですとかあるいは自動車学校、こんなのが利用できないことになっておるのですね。いまだんだん社会福祉だ何だということをやかましくいうようになっているこの政治の中で、この業種がこの制度を利用できないということにずっと前からきまっておるのですが、これからもしておいていいのかと思うのですが、この利用できない業種というやつをもう一ぺん洗い直して、利用できる業種に組み入れるようなことを大至急に検討するようにしていただきたいのだが、どうでしょうか。
  292. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまの制度はかなり以前からそうなっておるわけでございますけれども、これは法律事項ではございませんので、また御意見も伺いまして、政令の内容を改める必要があればそういたすことも可能でございます。
  293. 原茂

    ○原(茂)委員 それはありがたいですね。もう少しずつと申し上げておきますが、農林漁業はだめなんです。それから電気、水道、ガス供給業がだめ、観光あっせん業がだめ、ずいぶんあるのですよ、だめなやつが。はり、きゅう、マージャン屋もだめらしいですな。マージャンはいいかどうか知りません。それから消費生活協同組合なんかがだめなんですね。それから宗教法人関係がだめ。いろいろあるのですが、これは洗っていただきますと、相当、いま大臣おっしゃったように追加してもらえるだろうと思いますので、ぜひひとつ御検討願って追加していただき、限度額の引き上げもぜひおっしゃったようにやっていただきたい。  続いて、もう一つ中小企業が困っている問題に所管庁に対する手続が非常に複雑だ、難儀だという問題があるのですね。これは一定の用紙があるように見えているのですが、たいへんな違いがありまして、これを簡単にしろ、統一しろといってもなかなかにこれは実はできないのです。そういうことも大事なんですが、こんなことをいわれるのですね。三カ年の決算を出せ。これはあたりまえじゃないかといえばあたりまえなんですが、大体この中小企業、小、零細なんていう企業は、いまの四百万の大半は、そうなると一々金をかけて計理士にそれをつくってもらう。計理士の都合ではすぐにできないで一週間も半月もかかる。その上言いたいほうだいとはいいませんが、当然の報酬なんですが、金を取られる。まあここにまたそういう仕事をする人の生きる道もあるのでしょうが、これがやはり三カ年の決算を出せというのが中小企業にとってはいろいろな事情でたいへんやっかいなんですね。三カ年の決算を出すというのを、これは安全率を見るからそこまで見たいと思うのですが、中小企業ですから、この制度金融を受けたいなんていう企業ですから、三カ年というのを二カ年にしたり、できるなら一カ年、前年度というぐらいにしていいんじゃないかと思うのですが、そういった点の簡易化を少しはかっていただくようにしませんと、何でもないようですが、これが非常な重荷になっているということであります。とてもじゃないが、このための出費が多過ぎるということもありますから、どうかひとつこの点に関しても、三年というのをこれは統一して、ひとつ一年、前年度というようにしてもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
  294. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどから金融等とのお話がいろいろございまして、やはりいまの中小企業、ことに零細企業の一つの問題点は、政府側が助けようという態勢を気持ちの上ではいろいろ持ちましても、なかなかそれを受けられないといいますか、自分の企業の内容を計数的に、ただいま言われましたようなことでございますけれども、把握して持ってくるような姿にならないというところに一つ問題があると思います。そういう場合に計理士等の指導を受ける、これも一ついい方法でありますが、金がかかったりいたします。商工会の指導員といったようなものが指導しますことが一番コストもかからないし、有効でございますし、やはり零細企業といいますか、そういう企業が近代の制度に乗っていくのに、どうしてもそこのところは通ってもらいませんと、なかなか乗りにくい。構造改善の場合でもそうでございます。ただいま言われましたことの意味は、私わかり過ぎるほどわかりますので、決して不親切にしてむずかしくしてやろうという考えでおるのではございません。簡素にすべきところはできるだけ簡素にいたしたいと思いますが、同時に幾らか無理な注文ですが、零細企業の側でも自分の経営の内容を自分で計数的に把握するように、やはりそういう努力をしていただきたいし、また商工会などはそういう支援をするために活動しておるわけでございます。
  295. 原茂

    ○原(茂)委員 いま商工会議所なんかの専門指導員というお話があった。私も商工会議所の会頭をやっておりますのでよくそういう点はわかるのですよ。実際に指導もさせているのです。そういう立場で、あえてくどく申し上げませんが、実情を見ても三年というのは必要ない。三年が二年になったら危険率がどのくらい出るかというなら、私は私の地元で調べてみてもいいのですが、おそらくそんなにたいして危険率が増大するものとは思わないのです。二年のものを出せるようだったら三年は何でもなく出せる、いまおっしゃったようにそこまで零細企業も成長しなければいけないのですね。当然近代化するための経理なら、経理の業務というものを自分で修得しなければいけないことはわかっている。しかし二年ができるなら三年は簡単なんです。ですから、これは三年というのを、これ以上申し上げませんが、二年にしていい、もう二年が出せるなら三年も何でもないという観点が実際に見ている私どもの立場で、これは三年なんということは必要ない、こういうふうに感じているわけですから、あまり大臣が上のほうで見ていたのではわからないと思うのですが、こういう点もひとつお考えをいただきたい。  それから、次に中小企業で一番困るのは、いまの近代化、合理化、いろんなことをやろうと思いましても、基本的な技術指導の機関というものは国の立場で方々にできていますが、助成されていますけれども、こういう指導機関というものがもうちょっと数多くないと技術の指導を直接にしていけないわけなんですよね。ですから、長野県でいうと、一カ所長野市に何か下請企業振興会ですか、こういうのがあって、そこで技術指導をやることになっているのですけれども、どうもそれだけではとてもじゃないが、この数の多いいわゆる中小企業の技術指導という機関としては少な過ぎる、こういう点はいま予算も急にどうということはないでしょうが、近い将来の問題としてはその方向をひとつぜひ考えていただくようにお願いをしたい、こういうふうに考えるわけです。  時間がありませんからあまりやっていけないのですが、その次に公害相談所なんですが、さっきちょっと聞き忘れたのですが、全国に十三カ所つくられているのですが、この十三カ所、十万人以上の都市を中心に選んだらしいのですが、これはいまの公害対策を考えますと、特に中小企業からいうと、この公害相談所というのは全国十三カ所では少ない。一カ所の相談所が二つ、三つの県にまたがってやるということが可能だということになっているのですが、実務上から十三カ所というのはいま不便を来たしているのですが、この公害相談所というものをふやす。それから同時に、専門の技術員、指導員といいますか、それも数をふやし、予算づけを行なうというようなことが、ぜひ望ましいわけですが、こうしたことをやっていただけるかどうかをひとつお伺いをしたい。
  296. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 四十五年度の予算を編成いたしましたときに、大体三つの基準を置きまして、人口と事業者の数と、それから大気汚染、水質汚濁、騒音防止の三つの法律の中の二つの適用を受けているところという場所を選びまして、たしか全国で三十一であったかと思いますが、その中で、四十五年度に十三施行をいたしまして、そうして四十六年度であと十四ほどの予算の積算をいたしたわけでございます。そういたしますと、全部ではございませんが、先ほど申し上げました基準に当てはまるところをほぼカバーいたしますので、比較的好評のようでございますから、将来もっともっとふやしてまいりたいと思いますが、さしずめ緊要度の高いところからさようにいたしております。
  297. 原茂

    ○原(茂)委員 人員もですね。
  298. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 はい。
  299. 原茂

    ○原(茂)委員 けっこうです。また来年四十七年度できっと残りができるだろうと思うので、一県に一つくらいはぜひ急速につくるようにしていただきたい。  先ほど私ちょっと申し上げたのですが、メッキ工場の例なんですが、メッキを専門にやっている工場というのは全国に大体——これも調べた件数が違っているかどうかわかりませんが千八百三十三工場。これは現在、水域指定地域であろうとなかろうと全国一斉に公害は防止することになったわけですから、やがてこれは公害防止施設をやらなければいけないところが大半なわけですね。これがまた専門のメッキ工場といわれるところほど実は中小零細なんですね。したがって、ほとんど公害防止設備ができていないのです。これは大体私の積算ですが、設備を大体やるのに五百万は見なければいけない。五百万見ますと、全部やるとして九十一億ちょっとかかるわけですね。この金が、実際には自己資金でまかなう分野は、この人たちはほとんどないのです。大企業のメッキ工場はこれは別ですよ、これはやっておりますけれども、こういう中小が公害のたれ流しになるのですね。それで、公害は法律でいろいろとやかましくこれから押えよう、このことは大事ですからいいのですが、せっかくつくりました公害立法がほんとうに生きていくためには——これは一例を言っているわけなんですが、こうやって公害を発生しているところが一ぱいある、それをどうするかを全然考えないで法律が先行したという感じなんですね。私の言いたいのは、メッキ工場にいま手当てをしてもらわなければ困るのですが、どうこうしろということを、いますぐにそれを要求しようというのではないのです。法律、これはなければいけません。緊急に臨時国会でつくって非常によかったと思いますし、であればであるだけに、急速にこのようなメッキ工場と同じ——数を洗い出せばわかる、幾らかかるかもわかるというようなものが相当ありますから、しかも中小零細であるために手がつかないというものがうんとありますから、その工場が申請をして金を借りよう、何をしようというのを待っているのではなくて、私は国家の公害対策の行政指導としては、進んでわかり得る、把握できるこの種のものに関しては、積極的にこちらから手を伸ばして、どうだ、何が困難なんだということに対する指導がなされるようにしてほしいと思う。大至急にこれもやっていただかないと、本人の申し出を待っているというのではなくて、とてもじゃないが、おれのところは金が借りられないというので、あきらめ切って右往左往しているのが数が多いのです。たとえばみそ屋なんかもそうなんですよ。みそなんかも、御承知のように、これは私の地元なんか特にあるから関係者は御存じでしょうけれども、たいへんな問題になるわけですよ。これもいまみそづけをつくる小さな工場が一ぱいあるのです。これも同じような問題を起こしているのです。これが一体設備できるか、できないのですよ。借りに行っても、いまおれのところは二重、三重に担保が入っておる。この公害を何とか設備でよくしようと思っても、その金がとてもおれのところは借りられないというので、知っているけれども、たれ流しにしておるわけですね。良心があってもたれ流しにしておるわけです。というのが一ぱい把握できるのですから、できるものに関しては、国家が積極的にどんどん出ていって指導をするという行政的な姿勢がほしいと思うのですが、いかがでしょう。
  300. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは従来御指摘ように、公害防止事業団が仕事をいたしますときに、排水処理につきましては、水質のほうの指定地域あるいは近く指定をされる調査地域といったようなところに限定をしておりましたために、ただいま御指摘ように事実より法制が先行したというきらいがあるわけでございます。これはしかし放置できませんので、これからはもうそういう制約を設けませんで、主務大臣が必要だと思われる地域には助成できるということにやり方を変えてまいりたい、そういうふうにいたしたいと思っております。
  301. 原茂

    ○原(茂)委員 まだ公害の問題たいへんあるのですが、きょうそれをあまり触れている時間はありませんので、次に、労働環境を整備しませんと、中小企業の労働力の不足というのはなかなか解決できないわけなんですが、その前にひとつ聞いておきたいのですが、労働省が考えている労働力の流動性を高めるというわが国における労働力の流動性の向上というのは、どういうことを基本に考えているのか、ひとつお聞かせいただきたいのです。
  302. 野原正勝

    ○野原国務大臣 労働力の流動につきましては、特に中小企業は非常に重大であろうと思います。実は職業安定所の機能を、できるだけリアルタイム化を進めております。同時に必要とする各事業場に対してできるだけ多くの雇用者が充足できるように対策を講じておりますが、何としましてもその前提としまして、やはり協業化を進めるとか、あるいは企業の近代化を進めていくというような面や、あるいは人手に依存する経営から高い技術に変えていく、非常に生産性の高い企業に近代化を進めていく、そういうことのために実は企業内の職業訓練、共同訓練施設なども設けるように指導しております。そういった面で雇用が十分に充足できますように、ひとつできるだけ中小企業の対策を講じたい。ただその際においてやはり問題は、ときには相当の離職者が起きる。そういった場合においては離職者に対する対策であるとか、親切にそういう面の奨励の措置を講ずる、あるいは雇用条件を満たすために住宅をつくるとか、あるいは青少年のホームであるとか、いろんな中小企業が近代化をなし得る、あるいは魅力ある職場として若い人たちから喜んでいただけるような対策をあわせて講じていくというふうなところで、今後ますます進めていきたいと考えております。
  303. 原茂

    ○原(茂)委員 大臣の言われた後半の問題は、確かに環境をよくしないと流動性は高まっていかないわけですから、おっしゃるとおりなんですが、前段の流動性を高めるという基本は、やはり年功序列型の賃金体系にメスを入れていきませんと、いわゆる労働力の流動性というのは高まってこない。わが国は特に年功序列型賃金というのが基本になっておる。これは特長でもあり欠点でもあるわけですね。国際的にこれに批判が加えられて、年功序列型賃金がわが国の労働力の流動性を阻害しているのだとまでいわれる。ですから御存じで言わなかったのだと思うのですが、そういうようなことも検討をして、指導的な労働省としては、わが国の賃金体系、ほんとうの労働の流動性を高める賃金体系のあり方は一体どんなものなのかということは、これはまた別途検討するときがあると思いますが、大臣にもひとつ検討をしておいていただいて、後半の住宅その他労働環境の整備をするという点をぜひひとつ強力にお考えをいただく。そのことがやはり中小企業にとって非常に重要な問題ですから、じゃこの点はお願いをして終わります。  それから中小企業に間接的な影響のある問題として、先ほど消防団のことをちょっと申し上げたのですけれども、これは自治省になるのでしょうかね。これは相当の数が全国には団員として散在しているわけであります。これはたいへんな数ですし、たいへんな義務を負っているわけですね。団員の全体の数からいうと、これは幾らになるんでしょうかね。百二十四万ですか、全国の消防団員が百二十四万人。これも簡単に申し上げますが、これは消防団員だからというので、特に大企業にはやかましい規制がありまして、消防の出ぞめだ、あるいは何とかの訓練だなんといったって、冗談じゃないというのでぴしゃっと出ていけなくなっているのですが、中小企業の場合には、そんなやかましいことをいったら、じゃおれ、いなくなるというものが多いものですから、みんながまんして、きょうは消防の訓練だ、山火事だ、どこかに水防の何かがある、災害があったというたびに出て行くわけですね。そいつがだんだん有給になってきたわけですね。なぜそうなってきたかといいますと、もとは消防団員に対する手当が少な過ぎるのです。これは自治省のほうではきっと調べているから私が読み上げる必要はないと思うのですが、とにかく報酬が一年間一人大体千円から千七百円ですよ。一年ですからね。それでもって訓練はある、それ山火事があった、それ水害があった、何だかんだといったら、命がけで出動する義務を負う。公共奉仕なんですから、たいへんな義務を負っている。そして事実夜中でも何でも出ていくのですよ。それが一年間とにかく千円だ、あるいは千七百円だというのが大体平均なんですね。しかも百二十四万人もいるわけですよ。こういう人たちに、これは奉仕するんだからあたりまえなんだ、これは公共に対する奉仕なんだ。そういう精神に固まったのが消防団員だ。こういう訓練、教育もしているのですが、われわれだって、うっかりすると、そういう意味ではもう彼らに劣らないほど国家に奉仕するつもりで議員活動をやっているわけなんです。しかしわれわれにはちゃんと報酬がある。しかしこの消防団にはないのです。一年間千円だの二千円というものが報酬といえるかということですね。一回の出動に対して手当が百円だの五百円だの、出しているところはもうまれなんです。こういう状態を放置しておきますと、これが中小企業の立場で言うから少し片寄り過ぎるようにお感じになるでしょうが、きょうはあえて言うのですが、中小企業に間接的な圧力、重圧、不当な不利益をこうむらしているのです。こういうこともやはり自治省でしょうね。もう少し地方自治体に対する出資を考えてやって、何か消防団員の手当というものが正当な待遇ができるように、至急に考える必要があると私は思う。いつまでも続くものじゃないのです。だからだんだん若い青年が消防団から逃げ回っているわけですよ。村にいる限りは入らないと、村八分じゃないが、あのやろうといわれるものだから、しかたなしに百二十四万人が団員のはっぴを着るのです。それがいやなやつは、それも一つの原因でだんだん都会だ何だというところへ逃げていく。都会に住んでいる青年にはその義務がない。大都会にはないのであります。小都市あるいは農村へ行くと、青年が全部その義務を負っているのです。公平の見地からいったって不公平じゃないですか。こういうことをいろいろな角度から検討して、やはり至急に手当を、とにかく正当な手当が出せるように配慮をすることが私は必要だと思うのですが、自治大臣いかがでしょうか。
  304. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 消防団員の消防、防災に関する御活動及び御労苦に対しては心から感謝をいたします。これに対する処遇は改善をしなければならぬと考えております。出動手当、その他を中心といたしまして昨年来私は積極的にこれが改善に乗り出しているわけであります。自治省といたしましては、御承知のとおり地方交付税の措置を中心にして、処遇改善を考えておるわけでありますが、たとえば今年四十五年度でありますが、四十四年度に比較いたしまして、年報酬二千円であったものを、平団員、これは一番最低でございますが、五千円に増額を交付税措置ではいたしておるわけであります。それから、出動手当は五百円を七百円にいたしました。簡単に申し上げますが、今回もこの出動手当は少なくとも千円以上大幅に増額をいたしたい。そうして御労苦に報い、かつ中小企業に対するしわ寄せは緩和をいたす。積極的にとり運びたい。必ず実現するよう考えております。
  305. 原茂

    ○原(茂)委員 それはぜひひとつ積極的に、いまのような微々たる金額でなくて、もう少し常識的な金額に引き上げるように一そうの努力をお願いしておきます。  それから、流通機構と中小企業、特に小売り、販売業者のマージンについてなんですが、私は物価対策の一環として、先ほどもちょっと申し上げたように、どこから手をつけるかという角度からいいますと、これはもう中小企業に徹するのですが、その立場からいうなら、むしろ小売り業者、販売業者のマージンから手をつけていくほうが、物価に対する政府考えが浸透しやすい、手をつけやすいんじゃないかという考えがするわけであります。  これも時間がありません。あまり詳しく申し上げませんが、御承知だと思いますが、たとえば政府の専売である切手ですとか、あるいははがき、郵政関係ですね、あるいは塩ですとかアルコールというようなもの、それからタバコもそうですね。ああいうようなものに対しては、法律でマージンをきめてやっているのですね。ですから、物価を下げろ下げろといって大騒ぎになった論議の中でも、政府の専売品を扱っている販売業者は、自分のところのマージンが高い高いといわれたからといって、下げられるのは法律だと思って、安心している。いいことなんです、これは悪いことではない。ところが、そうでない小売り屋さんは、現在のように消費物価が上がる上がるといってどんどんやられますと、もう酒なんかもそうですよ、みんなとにかく小売りがまるで消費者の敵ででもあるように、どんどん小売り業者に消費者の目が向いていく、国民の目が向いていく。そういう傾向にブレーキをかける方法が現在どこにもない。私は、流通機構としては、小売り、販売というものは不可決のものだと思うのです。これがいま国家からなくなってごらんなさい。実際にメーカーが一々消費者にこれを全部配ったり何かという、直通なんかできっこないんだ。先ほど総理の、農業問題についていわゆる産地から実際の消費地へ、こういう計画的な考え方は当然であります。それもまたできる機構があります。ところが、いま小売りになっている、一般の消費者が使ういまのような生鮮食料品を含めた、いわゆる小売り商店におけるあの配置を、これを直接に何でも持っていこうということはできないのです。小売りというものは流通機構としては不可欠のものだ。これがいまのように消費者物価が高い高いというと、不当にみんな国民の目がそこに向けられていくようなままに放置しておいていいかという問題なんです。  なおかつ第二の問題は、冒頭申し上げたように、いわゆる政府の専売のものに関しては、法律でマージンがきまっている。ところが、酒なんかはこの地域で売ってよろしいという許可はありますけれども、マージンのいわゆる何らの指導がない。ですから酒、ビールなんかは、メーカーがどんなに利益があろうとなかろうと、なくてもそうなんですが、小売りがどんなに正当にあるいは不当に利潤を得ようとも、それに対する行政指導というものがなされていない。私、大蔵省の主計官ですか、松下さんという人が、ついこの間いわゆる米の物統令廃止を契機に、何か行政安定価格の導入を考えるというようなことを言ったのが新聞にちょっと出ていました。これを見て、なるほど米だって、私、これからの米を考えたときには、物統令がはずれた以上は、販売業者に対していわゆる安定価格の行政指導というものがあってしかるべきだ、なければ困ると思うのであります。これはたぶん農林省も経企庁も考えるだろうと思いますし、考えてもらわなければ困る。同じように、一般の小売りに対しても政府がやはり相当の機関で検討をして、家族で小さな企業としてやっている小売り業者が四人家族で生活をするのに、一体酒の販売屋としたらこれだけの収入がなければ生活ができない、あるいは生鮮食料品の魚屋、八百屋あるいは何屋にしたらこのくらいの収入がなければ生活ができないというようなことを、これは私自身は計算をしているのですけれども、その計算を基準に、ある程度のいわゆる安定価格の行政指導というものをするようにしなければ、私はほんとうの物価を考えたことにならないのじゃないか。同時に、この数の多い小売り業者、約百二十四万軒ですよ、この百二十四万の小売り業者の生活というものも考えなければいけないし、第三には、国家の流通機構として不可決のものなんですから、これが単にいまのような消費者物価が高過ぎる、値引きすべきだという空気の中で、不当に何か国民の目から敵視されているよう状態になっていることだけは、これを排除するというこの三つの大きな観点から、小売りマージンに対して——これに物価統制を行なってみたり、昔のような公定価格をつくってみたりというようなことをしろという意味ではありません、少なくとも、米に対していま一部お考えになっているよう考え方、あるいはその他にも考えておられるところがありますが、そういう安定価格の行政指導ということだけは全小売り人に対して考えようにしなければ私はいけないのじゃないか。  理由はいま言った三つなんであります。これはもういろいろな自分の計算したものを全部入れて申し上げたいのですが、時間がありません。したがって、申し上げませんが、総理から、何といっても今日思うことは何でもできるお力を持った総理大臣ですから、佐藤さんですから、ぜひひとつこのことは真剣にお考えになってやっていただく必要があると思いますので、これは佐藤さんの御答弁をいただきたい。
  306. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへんむずかしい問題を提供されました。御承知のように、片一方では自由経済のもと、これはお互いに競争し合う、そういうところで一つの価格形成のできる基準があるように思います。あまりマージンをきめてしまうと、自由競争というありがたみというか、よさがなくなります。また先ほど来のお話でも、中小企業がいま当面して一番困っておるのは人手不足だ、こういう問題であります。そこではもういまの高賃金というか、賃金の平準化が行なわれておりますから、中小企業であろうが、サービス企業であろうが、生産しなくても、どうしても人を確保するためには賃金を上げざるを得ないという、たいへんむずかしい問題だ、かように思います。その際に、ただいまのようにある程度のマージンをきめろ、かように言われても、ちょっとそれはできないことだ。私は、むしろこれはいままでいっているような自由経済、自由競争、そういうたてまえでひとつ経営者にくふうしていただく、こういうことが望ましいのではないか、かように思います。
  307. 原茂

    ○原(茂)委員 総理のお答えで少し突っ込んでいきたいのですが、時間もないようですが、一点だけ。  マージンをきめろと言ったのじゃないのです。いわゆる安定価格の行政指導というのは、おそらく案をお持ちだろうと思うのですが、幅を持ちまして、この程度が好ましいという、そういういわゆる試算、検討を行なって、そういうものを政府が責任をもって発表するというくらいなことがないと、私は流通機構、小売り、販売業者というものは非常に不安定で気の毒だと思うのであります。そういう意味が三つ目の私の理由ですから、お考え置きをいただきたい。  この問題と中小企業の問題であと三つばかり考えたいのですが、対外援助が今日、先ほど言ったように直接投資分で、まあ資料もいただきまして、私も調べてみまして、ある程度わかりましたけれども、いまそうでなくても中小企業というものはどんどんどんどん狭まって悪くなっていく状況なんですが、これに新しく分野を与えるようないわゆる余地がないのかということを、実は品種別に検討したかったのですが、簡単にそういう点をお答えをいただきたい。あるとかないとか……。  それからもう一つは、防衛庁にお伺いしたいのですが、いま防衛庁が今日まで、二十何年から設立以来兵器を購入していろいろな種類がありますが、やはり年限がきた、型が変わった、使用にたえないというので廃棄された、いま使用していないといういわゆる兵器があるわけです。それが、全体でけっこうですから、金額でどのくらいになるかということをひとつお答えをいただきましょう。あとはこれは別の委員会でお聞きをする以外にありません。  なぜ聞くかといいますと、これの廃棄処分がどういう手続で行なわれているのか、どういう状態で廃棄がされているのか、処理をされているのか。その中に、これもほんとうは時間をもう少しかけてお伺いをする予定だったのですが、ついにできないのですけれども、また別の機会にやりますけれども、中小企業がこの中で相当処理をする過程の中に入っていく分野がある。それをいまこそ真剣に考えていただかないと、中小企業が新しい分野を、市場を見つけにくいのであります。で、しかも防衛庁が指導してそれをやっていただけるなら、実はたいへんな大きな市場性がここにある。特に防衛庁——軍備といいますと、いかにも国民の税金をむだ使いしているようにしかわれわれにはとれないわけです。冗談言うなという皆さんの立場がある。私はむしろ、防衛庁が中小企業のこともこんなに考えているんだ。中曽根さん、特に中小企業のことをこんなに考えているんだというところを国民に見せる意味からも、いわゆる廃棄する兵器の処理の過程の中に中小企業が新たな市場として、これを持ち込む分野があると思いますから、その点を、時間の関係で、一々一問一答しないで、ひとつ恐縮ですが、ずばりお答えをいただきたい。
  308. 福田赳夫

    福田国務大臣 中小企業が海外にどういうふうに出ておるかというお話でございますが、これは私は、国内におきまして労働需給がだんだんと逼迫してくる。大企業の賃上げが激しい。それに対抗するためには中小企業も賃上げをしなければならぬ。ところが、それじゃとても採算が合わぬ。そこで、安い労働力を求めて海外で事業をするという傾向が顕著に出てきておるということを認めておるわけなんです。現に東南アジア諸国で、特に経済の安定した国々に対しましては、中小企業はかなり活発に進出をしております。で、海外投資につきましても百万ドルまでは自由にしておるわけです。そういうようなことも若干中小企業の海外進出に影響するんじゃないかと思いますが、労働問題、その需給の問題というのがかなり刺激となって今後もそういう傾向が激しくなる、こういう観測をしております。
  309. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 不用となりました艦船、航空機等の物件の処理は、総理府物品管理取扱規則第十六条によって不用を判定いたします。その基準は、供用ができない物品とか、あるいは修理改造に多額の費用を要する物品とか、そういう基準がございます。それで、不用になりました場合には、国有財産法令の定めるところに従いまして、大蔵大臣に引き継ぎますが、引き継ぎ不適当財産は、防衛庁で処分しております。そして、その処分につきましては、大体、入札によりまして最高価格者にこれを契約する、そういう方法でやっております。  それで、いままでの実績は、四十二年度におきまして、車両は九千二百七十三万、四十三年度が三千五百三十六万、四十四年度が六千八百二十五万。艦船が四十二年度百十二万、これは雑船四隻でございます。四十三年度は四百八十万、支援船一隻でございます。それであとは薬きょう等が四十二年度が一億一千二百四十九万、四十三年度が一億七千九万、それから四十四年度が二億九千五百十二万。その他が四十二年度が二億八百十九万、四十三年度が二億五千万、四十四年度が三億一千四百三十八万。大体四十四年度は六億七千七百万強でございます。それらの物品は大体仕切り屋とかくず鉄商とかそういうものに処分するのが多うございまして、大体中小企業でございます。
  310. 中野四郎

    中野委員長 原君、すでにお約束の時間が相当経過しましたから、結論にお入りください。
  311. 原茂

    ○原(茂)委員 それでは、時間がもうないようですから、総理と大蔵大臣に一つずつお伺いしておきます。  大蔵大臣には、円の切り上げは、これはここで審議をされましたから、わかりました。第一、円の切り上げなんかいつやるなんというのは、国際的にもうそを言うのが常識なんですから、こんなことをどう思っていたって、頭のすみにありませんと言うのがあたりまえで、これを言うのがおかしい。円の切り上げなんていまやるべきでない。私はそういう論者ですから、なおさらめったに言うべきじゃないと思います。ただ、円の切り上げを行なうときがやがて来るかもしれない。来るかもしれないそのときに、デノミを一体どう考えるか。円切り上げをもし行なうときが来たら、デノミは同時に私はやるべきだと思うのですが、同時といっても、一年くらいの予告がなければいけないわけですが、そのデノミをやはり一緒に考えますか。それとも円切り上げのことを言わないのだから、デノミのことも言わない、もしそうおっしゃるならそれでもけっこうですが、できるなら円切り上げをやるときが来たときにデノミは一緒に考えるかどうかということです。デノミの必要がないのかということを大蔵大臣に。  総理大臣には、これは総理はたいへん私たちと立場は違いますが、総理総理なりに沖繩で御苦労された。七二年返還内容その他について異論はあります。しかし、総理総理なりに御苦労されたことは認めます。御苦労だと思います。この沖繩返還に対する総理なりの熱意がこれで終わるのじゃなくて、私は中国問題が一ついま取り上げられていますが、これも大事ですけれども、ソ連に対する問題というものもこれは相当重要に考えなければいけない。特に北方領土を中心にして、安全操業の問題で一番苦しむのは、中小零細漁業なんです。ですから、これも中小の立場からいうなら、早期に安全操業という問題の長期安定した解決が何といっても望ましいわけであります。いまもやっていますが、なかなかむずかしい問題です。  しかし、一月の四日の伊勢もうでのときの記者会見か何かで総理が、いま外国へ行くとすればソ連だ、とにかくソ連の問題は大事だ、こういうようにおっしゃっておられるのですが、ことしはしかしとても行けそうもないとあのときおっしゃっておりました。訪ソを総理がなさってまでいまの問題が解決できるようにひとつお考えなのかどうか。おいでになるとすれば、私は早くソ連もおいでになったほうがいいと思うので、そのための訪ソの時期が、ことしじゃなければ、来年おやりになるのかどうか、その決意を総理からはあとでお伺いをしたい。
  312. 福田赳夫

    福田国務大臣 円の切り上げにつきましては、この間も申し上げたとおり、理論上も実際上もこれを行なうべき根拠はない、私は全然考えておりません、こういうことを繰り返して申し上げます。  したがって、デノミ論議というのがありますが、これは幽霊みたいな話で、いまデノミと円の切り上げを一緒にするかという話でありますが、幽霊のような話とデノミとがこうくっつくはずがない。これは同時に論ずべきものじゃないと思います。ただしデノミネーションにつきましては、私はいつの日にかこれはやるべきものである、こういうふうに考えます。つまり、いまアメリカのドルに対しまして三けたの数字になっておる国は、わが日本とイタリアだけなんです。私は、わが国の今日の経済の実勢から見て、円の、またわが国の経済の威信のためにもデノミ、これはやるべきである、こういうふうに考えます。また同時に、まあとにかく何兆円という数字を日常勘定する、こういうことは国民経済上事務的に非常に繁雑なことである、こういうふうに考える。そういう見地からもデノミはやるべきものである、こういうふうに考えます。  ただ、これはデノミネーションをやりますと、物価との関連で非常にデリケートな問題を引き起こすわけでありますので、物価が安定しなければこれはできない。したがいまして、今日のように物価情勢が流動しておるこの際に、これをいつ実行するというようなことは考えておりません。さように御了承願います。
  313. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ私のなすべき仕事は多いと思います。中国大陸との関係も、すでにこの場を通じてしばしばお尋ねがございました。これはなかなか当方で中国大陸との関係をいまの状態を改善していこうとしても、相手方もその気持ちになってくれなければできることではございません。  ところで、ただいまお尋ねになりましたソビエトとの関係、これは十分に両方でもっと話し合おうという、そういう気持ちが見受けられるのであります。国連の二十五周年記念の際も、実は出かけて、私、北方領土の問題にも触れ、その後外務大臣からもことしになりまして安全操業の点で直接交渉を持ちました、これはモスクワ。同時に、昨年は、万博のときでございましたが、イシコフさんが日本に来た際にも、安全操業についていろいろ話したことがございます。当方から申し入れて、どうしても安全操業の問題は解決したいし、イシコフ漁業相もそれは話に乗ろう、こういうことですから、冗談まで言って、ソビエトとの対談はとかく長引くのだから、あなたは話をつけるという以上帰れないことを覚悟しないとできませんよと実は冗談まで言えたのでございます。そういうこともありますが、私、北方領土の問題、安全操業の問題を解決したいと思いますのは、国交が回復して、そうしてお互いに行き来をし、大使の交換をしておりながらなおさきの戦争の終局がついておらない。これはソビエトでございます。  結局、これは北方領土問題が片づかないからだ。そういうことを考えますと、一日も早く何らかの結末はつけるべきだ、かように思っております。外務大臣同士の交互の協議は行なわれておりますが、昨年はソビエトから日本に来る番でありましたが、ソビエトからは結局出てこなかった。そういう状態ではありますが、しかし、その他の事項についてはシベリア開発とか、あるいはまた日本航空のシベリア経由の航空路開設だとか、ずいぶん画期的な問題もでき上がっております。最初シベリア航空路の話をいたしました際は、それは無理な話だ、このシベリア上空は戦時中でも同盟軍にも使用を許さなかった地域だ、それを日本に許す、こういうわけにはいかないよというのがソビエト側の言い分でございましたが、しかし、その後日本の飛行機がシベリア上空を飛ぶようにもなった。したがいまして、私は一般の関係はよほど改善された、かように思っております。  したがって、いまの北方の問題についてもっと話が詰まるといいますか、そういう見通しが立てば出かけるのに決してやぶさかではございません。せんだって行なわれました安全操業の問題にいたしましても、一応話は継続状態になりましたから、全然見込みのない問題だ、かようには申しませんが、しかし、あの程度で直ちに北方の安全操業、これが緒についたとかあるいは先はたいへん明るいとか、そこまでは言えないようないまの状態でございますから、出かけるならば、もう少し話が煮詰まった、しかる上で出かける、こういうことでありたい、かように思っております。  しかし、いずれにいたしましても、これは北方の漁民だけの問題ではございません。日本の漁業家の諸君が全部が関心の深い問題であり、この安全操業について非常に心を痛めておる、そういう問題でございますから、政府としてもこの問題を早く解決する、こういう意味でこれと取り組む。同時にまた、領土問題も、これはもう民族の悲願でございますし、そういう意味で、これもあわせて解決の方向へ持っていく、こういう意味で、いまのお尋ねに対しまして、いま直ちに出かけるとは申しませんが、そういうような時期が来ることを心から願っておるような次第であります。
  314. 原茂

    ○原(茂)委員 どうもありがとうございました。ただ私は、北方領土の問題を同時じゃなくて、安全操業問題にもう少し熱意をあげて、それだけでもひとつ総理の熱意のある努力をしていただきたい、早期にやっていただきたいという意味ですから、どうぞお願いします。  どうもありがとうございました。(拍手)
  315. 中野四郎

    中野委員長 これにて原君の質疑は終了いたしました。  次回は、明後二月一日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十七分散会