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松尾正吉君 私は、
公明党を代表して、ただいま
議題となりました
自動車重量税法案について、
反対の
討論を行ないます。
まず最初に申し上げたいことは、先般の
大蔵委員会において、
公聴会、
連合審査を含め正味七日間、実に延々三十数時間に及ぶ各
委員の真剣な
質疑にもかかわらず、この間に
政府からは、何
一つ納得のいく答弁が得られなかったということであります。このことは、今回
政府から提案された
自動車重量税法案に対しては、全く
国民的合意が得られなかったものであるということを、私は断言しておきたいのであります。
さらに、
自動車重量税法案は、
現行税体系をますます複雑なものにするばかりでなく、
税負担の不公平を増長し、
大衆課税を招く以外の何ものでもありません。憲法第十四条には、すべて
国民は法のもとに平等である、このように明記されておるのでありますが、
自動車重量税は、この憲法の平等の
原則を侵す危険さえはらんでいるといわざるを得ないのであります。
現在、
自動車は大衆化しており、
現行の
自動車諸税においてすら、
自動車保有者の
税負担は非常に過重になっております。さらに、自家用
乗用車の保有状況を見ても、実に、現在四世帯に一台の割合で普及しており、さらに保有者の所得階層は、年間所得百五十万円以下の人が七十数%を占めておるのであります。一方、購入価格五十万円の大衆車を五年間保有すると、購入価格にも匹敵する
税負担となるのであります。その上、現今の物価高の影響で維持費の増加を見のがすことができません。さらに今回のガソリンの値上がり等を考え合わせますと、自家用車を保有することは、たいへんな
経済負担になっているというのが実情であります。にもかかわらず、
政府は場
当たり的に
新税を課することは、こうした
国民の実情を無視した、きわめて無謀な
政策であるといわざるを得ないのであります。これが
反対の第一の
理由であります。
第二に、
自動車に対する
税金は、
現行税制だけでも、
物品税、
揮発油税、
自動車取得税等八種類もあり、複雑多岐にわたる
自動車諸税を洗い直すことなく、
財源調達のために性格のあいまいな
新税を課することは、税理論上からも矛盾するものであり、断じて
反対せざるを得ないのであります。(
拍手)
第三に、この
新税は、
経済力の弱い中小
企業、農業、勤労所得者等に重くのしかかってくるということであります。すなわち、全
企業の
自動車保有台数を見ますと、中小
企業は実に九〇%以上に達し、農家における普及状況は、農家全体の五〇%にも達しているのであります。このように農家、中小
企業の過半数が、車の便益性によって生活を営んでいる現状を考えれば、
自動車重量税は、結局、
経済力の弱いところにしわ寄せをもたらすことは明らかであり、とうてい
納得できるところではありません。
第四に、現在、
トラック、
バス、タクシー等の各業界は、経営困難に窮しているような状態であることは周知のとおりであります。こうした経営状態にある
バス、タクシー等に追い打ちをかけるような
新税を課することは、必然的に公共の
輸送料金に影響をもたらし、
運賃、
輸送料金等の値上げという形で、
国民生活をさらに圧迫する
危険性が十分に含まれておるのであります。
政府は、
自動車重量税の創設によって
輸送料金等の値上げは許さない、このように言明しておりますが、これは過去の例から見ても、とうてい信ずることのできないところであります。先日の
公聴会においても、公述人は一致して、もし
新税を創設するならば
輸送料金の値上げは必至である、このような見解を表明しておりました。物価高騰の抑制は
政府の重大な課題であるにもかかわらず、この
新税創設は、さらに物価上昇に拍車をかけることは明らかであり、物価
政策に逆行する
措置である、このように私は断言せざるを得ないのであります。(
拍手)
第五に、
総合交通政策も明らかにしないで、
財源だけを先に調達するということは、
国民を欺く
措置であるといわなければなりません。
政府のとってきた
交通政策、都市
政策の失敗は、過密過疎現象を生み、その結果として公害問題、交通地獄を現出させて、
昭和四十五年度の
交通事故による死傷者の合計は、実に九十九万七千人余りとなっていることは周知のところでありますが、
政府は、この現状を反省するどころか、
総合交通政策、目的、構想も明らかにしないまま、明らかに
大衆課税である
自動車重量税の創設を強行しようとする政治姿勢に対しては、
国民は、単に
納得できないばかりでなく、大きな憤りさえ感じているところであります。(
拍手)
第六に、
新税による税収の使途についてでありますが、
法案の
趣旨は、
道路その他の
社会資本の
充実等という、きわめて不明確なものであります。さらに、
受益者負担の
原則からいうならば、この使途は
道路に限るべきものであるにもかかわらず、国鉄の赤字の穴埋めや
地下鉄の増設などにこの
新税を
使用することは、税の秩序を乱し、特に鉄道への
使用はイコールフッティングに反するものであり、とうてい
賛成できるものではありません。
第七に、
自動車重量税を創設しなければ、新規
財源の調達が不可能なものでありましょうか。
現在
わが国の外貨保有高は六十五億ドルにも達しておるにもかかわらず、なお大
企業優先の
輸出振興税制をはじめ、悪評の高い
交際費課税等、不公平の典型である租税特別
措置の洗い直しや法人税の引き上げ、さらには、決算において見られる純剰余金によって得る
財源を確保すれば、
新税法案による
財源、平年度一千二百五十億円は十分に捻出できるところであります。その上、今年度は一兆五千億円を上回る自然増収が見込まれておるにもかかわらず、
所得税減税は、わずかに一千六百億円という超ミニ減税にとどまっておりますが、この自然増収分からも、容易に
財源は確保できるはずであります。
以上のように、矛盾をはらんだ税体系、財政支出のゆがみを改めずして、安易に
新税を創設しようとする
政府の姿勢は、厳格、慎重であるべき税法を大きく誤らせるものである、こういわざるを得ないのであります。
政府は、高
福祉高負担を強調しておりますが、
自動車重量税創設の経緯から見るならば、ただひたすらに高
負担のみを指向しているものであり、
国民を無視した悪税であると私は断ぜざるを得ないのであります。(
拍手)
以上、税の性格、目的、使途等がきわめてあいまいであり、とうてい
国民の合意を得ることのできない
政府提案の
自動車重量税法案に強く
反対の意を表明して、私の
討論を終わります。(
拍手)