○宮井泰良君 私は、公明党を
代表いたしまして、ただいま御
説明のありました
昭和四十五年度
中小企業の
動向に関する
年次報告並びに
昭和四十六年度において講じようとする
中小企業施策を通して、
政府の
中小企業政策全般に関して
総理並びに関係
大臣に所信をお伺いします。(
拍手)
今回の
中小企業白書は、
高度成長により大型化し、環境の激変と
構造の変動にゆれ動く
日本経済の中での
中小企業の位置づけと、今後の
発展の方向を探ろうと試みております。二重
構造の
変化、
労働力不足の進行、
物価問題と
流通、公害問題等々、
中小企業が当面する問題を意欲的に分析し、急激に
成長してきたサービス業の
動向を取り上げ、さらに
事業転換の追跡調査を行ない、その結果をまとめておられる、その
努力を買うに私はやぶさかではありません。しかし、
白書はただそれだけにとどまっております。問題解決の具体的な掘り下げの甘さと、大きく変わりつつある
産業構造に即応した新しい
中小企業政策が示されておりません。
そこで、私が本日お尋ねすることの
一つは、
中小企業の基本的政策路線についてであります。
今日、景気の停滞下にあって、
政府の
中小企業近代化政策の有効性が再び問題となってきていることは、
総理もすでに御承知のところであろうと思います。
政府の
中小企業政策のあり方、なかんずく
近代化政策の有効性ということについては、昨年度の
中小企業白書に対する
質問でわが党がすでに指摘したところであります。それぞれの業種で、製品と市場の
多様化が進み、
企業類型も
多様化している今日にあって、なお従来と変わらぬ
近代化方式に固執している
政府の姿勢は、明らかに
現状認識に背を向けるものであると思うのであります。
すなわち、
政府は
中小企業近代化の唯一のきめ手として
構造改善政策を
昭和三十年代より今日に至るまで一貫して強力に推進してこられた。
企業集約化によるスケールメリットをひたすらに追求する政策をとってこられております。そして今日、
白書によると
中小企業は大
企業との格差を縮小して、二重
構造は大きく
改善され、
中小企業はもはや保護されるべき
経済的弱者としてとらえることは妥当ではなくなったと見ておられるようであります。
しかし、これは一方的で非常に甘い見方であると思います。
賃金及び
付加価値生産性格差の縮小にしても、過度の
労働力不足とそれによってもたらされた高
賃金によるところが大きいのであって、必ずしも
高度化政策の成果ではないと申し上げたい。今日もなお、
企業倒産は毎月一千件近くの高い水準で発生しておるのでありますが、
倒産原因は非常に
多様化してきているといわれております。従来のごとき、単なる
構造倒産論では割り切れない面が多く出てきております。
倒産状況を見たとき、そこにはこれまでに見られなかった全く新しい
産業構造の上での
変化があらわれておるのであります。この
変化について、
白書も指摘しておりますが、
政府が従来講じてきた
近代化方式に疑問が持たれるゆえんはこの辺にあると思います。(
拍手)
すなわち、
企業集約化によるスケールメリットの追求によって、量産体制の確立と
企業規模の拡大をはかろうというのが
政府の
中小企業政策の基本路線であり、最も力を入れておられる
構造改善政策であろうかと思います。しかし、今日においてはこのような路線は
昭和三十年代的な発想であるとさえいわれております。確かに、ある時期においてはかなりの成果をあげ、あるいは今日においても
業種業態によってはなお有効必要な政策であることは私も認めるものであり、必ずしも全面的に否定するものではありませんが、
昭和四十年代の後半に入った今日、事情は大きく変わってきております。このことは
総理も認められるところであろうかと思います。
今日、脱工業化社会ということばが広く用いられていますように、
産業社会は量産型重化学工業の成熟によって、研究開発あるいはデザイン開発等々の特徴を持つノーハウがリーリングポイントとなって
中小企業の
成長パターンを激しく
変化せしめつつあります。そして、そこに知識集約型
産業というか、頭脳会社的性格の強い
企業——既存の
産業分類では割り切れない
企業の台頭が見られるようになったのであります。
このような
経営資源の時代的
変化という認識に立つならば、単純なマスプロを追求するスケールメリット論的な政策はもはや一〇〇%有効な政策とはなり得ないと思うのであります。
政府は、もはや
規模の概念が
企業の優劣と結びつく時代ではなくなったとの認識の上に、長期的展望に立って適切な基本路線を打ち出すべきであろうと思います。私は、
中小企業が適正に
発展していくための有効な政策を早急に検討し、明示しなければ手おくれになると断言したいのであります。
総理及び
通産大臣はどのようにお考えになっておられるのか、
産業構造審議会で新しい
通産政策が検討されているやに聞いておりますが、そこに示された基本姿勢とあわせて
所見を伺っておきたいのであります。
質問の第二は、
中小企業にとってそのいずれもが古くて常に新しい問題でありますが、中でも特に
中小企業金融、
労働力確保、貿易政策、
事業転換対策、
公害対策などについてであります。
最初に
金融対策についてでありますが、
政府は
中小企業施策に占める
融資対策の位置づけをどのように見ておられるか、
総理に伺いたいのであります。
近年の激しい環境の
変化に対応するための
中小企業の
努力は、並々ならぬものがあります。
政府は、
企業の自助
努力ということを強調しておりますが、従来のような
中小企業金融のあり方では
努力のしようがないのであります。そこで、現在多く存在する
中小企業金融問題点の中から、
一つの問題を指摘したいと思うのであります。
それは、歩積み・両建てなどの拘束預金が依然として巧妙に行なわれているということであります。拘束預金の自粛通達は、これまでに幾度か出されており、年ごとに漸減してきているとはいえ、四十五年十一月においては、
貸し出し額に占める拘束性預金の比率は、
中小企業が一五・三%となっており、大
企業の一・六%から見ても、
中小企業が不利な
条件にあることが明らかであります。また、信用保証協会が保証した貸し付けですら拘束預金を強要する
金融機関があることも耳にしております。
独占禁止法では、特定
分野における特定の不公正な取引方法を指定しておりますが、その中に銀行業における不公正な取引方法を定めて、拘束預金を禁止する方向に持っていくべきであると考えます。この点について
政府はどのような
措置を講じられるつもりか、
大蔵大臣、
通産大臣並びに公取
委員長に
所見を伺いたいのであります。
次に、
労働力確保の問題であります。
中小企業の
労働力不足は、かねてから労働集約的である
中小企業にとって、最も重大な問題であります。
白書でも指摘されているように、
経済の大型化と
産業構造の
変化の中で、特に若年
労働力や熟練
労働力の
確保は、今後一そう深刻化すると予想されております。このような
現状に対して、
政府はどのような
対策で問題解決をはかろうとされておられるのか、
総理並びに
通産大臣に伺いたい。
白書によりますと、労働問題解決策の
一つとして、パートタイマー及び家内労働者の利用を示唆しておられますが、今後の方向についての
所見を伺いたい。
さらに私は、人材銀行をもっと
充実強化するとともに、システム化による有機的運営をはかっていくことを
提案したいと思いますが、関係
大臣の
所見をお伺いします。
次に、
事業転換の問題についてであります。
中小企業の転廃業は、
国際化の進展とともに、静かに拡大し、特に転出専業の軽工業部門に多いといわれております。留意しなければならないことは、
中小企業にとって、この
事業転換が、きびしい
経済環境に
適応し生き延びていくための余儀ない方策であり、そしてまた、一般的には、
転換企業は新規開業の
企業よりその業績が劣るという結果が出ているということであります。したがって、
政府はこの問題に本腰を入れて取り組むべきでありますが、その考えがおありかどうか、基本策並びに具体例で示していただきたい。
政府は、
昭和四十六年度において講じようとする
中小企業施策の
特恵関税対策の中で、わずかに
転換企業に
金融、
税制、
指導等の
助成措置を講ずることにしておられますが、その内容はいまだ不十分といわねばなりません。
事業転換はあくまでも
企業の自発的な意思によるものであり、政策的に推進することには検討の余地があろうかと思います。
転換を望む
事業に対しては、的確な
情報を提供するなど、適切な方向性を
指導することは必要であります。また、政策
金融の
拡充と廃業者に対する保障
制度の
充実を強力に推進すべきであると考えますが、
所見を伺いたいと思います。
次に、貿易政策について一、二の点をお尋ねいたします。
わが国の貿易は、今後ますます大型化し、新
経済社会
発展計画によると、
昭和四十五年から五十年における貿易の伸びが、年率七・五%になることが予想される中で、
わが国の輸出の伸び率は一四・七%となっております。
政府は
中小企業の輸出をどの辺まで伸ばそうと考えておられるのか、今後の
中小企業貿易の基本政策とともに伺いたい。
また、最近の米国における保護主義の台頭と、
発展途上国との米市場における競合問題などにより、
わが国の輸出市場も再検討の必要に迫られております。そのような意味から、通商立国として、
わが国が長期的に見て今後さらに貿易を
発展させていくために、
共産圏貿易を含め、どのような
具体策を持っておられるのか、
所見を承りたいのであります。
次に、
中小企業の
公害対策についてであります。
最近の公害意識の高まりの中で、
中小企業は
公害防止対策を講ずる必要に迫られ、多額の
資金負担に追われていることは、
白書も指摘しているところであります。
しかし、その
資金調達はきわめて困難であり、金利負担などの点からも
対応策をとり得ない状況にあって、
政府の抜本的な手厚い支援を必要としております。
政府は
中小企業の
公害対策について、特に
資金面、用地の取得、
技術開発等の援助の面から、どのような
施策を講じていくつもりなのか、
総理大臣及び総務
長官の所信をお伺いしたい。
また、
白書では、
公害防止対策の有効な方法として、共同
公害防止事業を示唆しておりますが、
政府はこれらの
事業を
助成するため、いかなる
施策を用意しておられるのか、
通産大臣にお尋ねいたします。
以上、
中小企業が当面する諸般の問題について伺いました。私どもがこれまで機会あるごとに幾度となく
政府に申してきましたことは、政策の一貫性ということであります。いまさら申し上げるまでもなく、一個の
事業活動は点の連続ではなく線であり、
一つの流れとしてとらえるべきであります。したがって、
一つ一つの政策がすぐれており、それを講じたとしても、そこに一貫した流れが存在しなかったならば、真の効果は期待できないのであります。
このような観点から、この際、
政府はあらゆる
施策を総点検し、総合的に整理するとともに、その
施策が
中小企業者にどれだけ普及、浸透しているか確かめる必要があろうかと思いますが、
政府はいかなる
努力を払っていかれるつもりか、最後にこの点をお伺いして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕