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辻原弘市君
寡占事業者の供給する
寡占商品の
価格等の
規制に関する
法律案につきまして、
日本社会党、
公明党、
民社党の三党を代表して、その提案の
理由を申し上げます。
とどまるところを知らない物価の高騰は、ますます
国民生活に大きな圧迫を加え、
わが国経済の基盤をゆすぶっていることはまことに重大と申さなければなりません。いまこそ効果ある
具体策を超党派の立場で実行することがわれわれに課せられた使命であり、また
急務たりと信ずるのであります。
従来、物価
対策について、
政府においても幾つかの試みを行なっておりますが、残念ながらその実効はきわめて薄いと申さなければなりません。特に、いわゆる
管理価格の打破が物価
対策上大きなウエートを占めていることが指摘されながらも、これにあえてメスを入れなかったことは、怠慢のそしりを免れません。
高度成長下における寡占化傾向、そして
寡占事業者の市場占有に伴う当該製品の価格の固定化とその上昇は、ますます物価騰貴の大きな要因となりつつあります。技術の進歩や設備の近代化に伴う大量供給態勢は、コストダウン、続いて販売価格の低下があってしかるべきにかかわらず、不急のモデルチェンジあるいは販売促進を名目とする諸経費等を隠れみのとし、かえって価格は年々上昇しているというのが実情であります。このような現状をそのままに放置することは、
国民生活擁護の見地から断じて許してはならないのであります。(
拍手)
したがって、その要因除去のため、
寡占事業者を
規制する方策については、あらゆる角度から検討されなければなりません。
直接的には価格統制あるいは
企業の公有化、細分化などの強い
措置も考えられますが、われわれ三党は、当面この直接的方法をとらず実質的効果をあげ得るとの確信のもとに、次のような現実策をとろうとするものであります。
すなわち、メーカーの不当な価格による
取引の
規制、過大な広告費、交際費の
規制、これに違反するメーカーに対する公正
取引委員会による必要な
措置をとるべきことの勧告、さらにこの勧告に従わない場合の原価などの公表
制度がそれであります。
以下、順次、
法案の概要を御
説明申し上げます。
第一は、
寡占事業者は、その生産し販売する
寡占商品の価格を不当な価格にしてはならないという
規制であります。
不当な価格とはどの程度であるかにつきましては、公取委の判断にまかせたわけでありますが、当該
事業者の商品の価格構成と他のメーカーの蔵出し価格及びその価格構成との比較、あるいは輸出価格と国内価格並びに国際価格との比較等を勘案してきめられるべきものと考えております。
第二は、
寡占事業者の
寡占商品にかかる広告費と交際費の
規制であります。
広告費と交際費は、その
内容から見ますと、狭義の製造原価に入れるべき性質のものではなく、市場開拓、販売促進を
目的とする経費であって、競争を助長するためには効果的な一手段ではありましょうが、反面、それらの費用はすべて販売原価に組み入れられ、一般消費者へはね返ってまいりますので、過度の支出を
規制しようというのであります。どの程度の支出が妥当なりやいなやにつきましては、公正
取引委員会規則で定めることといたしました。
第三は、以上申し上げました二点に違反をした
事業者に対しましては、公取委による必要な
措置の勧告を行なうこととした点であります。さらに、この勧告に従わなかった場合には、その
寡占商品の蔵出し価格など、必要に応じ原価をも公表することといたしたのであります。これらの違反に対して、罰則をもって強制するという方法をとらず、あえて勧告、原価などの公表という方法をとりましたのは、真実を一般消費者に知らせることにより良識による
国民世論を盛り上げ、それによってメーカーの自主的な
措置を期待せんがためであります。なお、公表する場合には、メーカーに弁明の機会を与えるなど、公正な
運用を期しております。
第四は、
寡占商品、
寡占事業者の定義についてであります。
一般にいわれている
管理価格の定義については、独占禁止懇話会などでも種々検討されているようでありますが、いまだその定説がなく、したがって、われわれも慎重な態度で臨み、
管理価格を形成する少数の
事業者が当該市場を占有しているという実態に着目し、
一つの商品について三年間平均の市場占有率が上位三社で六〇%、上位十社で九〇%以上であるものを
寡占商品とし、この商品を一〇%以上供給しているメーカーを
寡占事業者として本法の適用とし、あえて定義の定めがたい
管理価格ということばを避け、実質をもってこの
法律の
規制対象とした次第であります。
次に、どのような物品が
寡占商品に該当するかは、公取委の実態調査にまたなければなりませんが、一応想定いたしますならば、粉乳、バター、マヨネーズ、ビール、ウイスキー、合洗剤、フィルム、時計、ピアノ、カラー
テレビ、冷蔵庫、タイヤ、乗用車などの一般消費財的なもの、また板ガラス、アルミ板、合成ゴム、パルプ、新聞用紙などの原材料的なものなど二百品目前後となる見込みであります。
第五は、
寡占商品と
寡占事業者の公示と調査についてであります。
これらは商品の供給量の割合できめました関係上、全商品の供給量の実態を把握しませんとその割合がわかりませんので、毎年公取は、
寡占商品に該当するかいなか、
寡占事業者に該当するかどうかを調査し、その結果を毎年一回定期に官報で公示することといたしました。これにより各メーカーは、本法による
寡占事業者であるかどうかを知ることができる仕組みになっております。
第六は、
寡占事業者の価格並びに原価に占める広告費及び交際費の割合の
届け出制度であります。
第七は、この
法律の所管を公正
取引委員会としたことであります。このことは、あえて新しい
行政機関を
設置するという煩を避け、公取委の権限を強化し、必要な職員の増員によって行ない得ると判断いたしたからであります。
そのほか、調査の場合の
報告、違反事実のあった場合の
立ち入り検査など、
所要の
規定を設けました。
なお、施行につきましては、調査などの
規定は公布の日から一カ月後に、この
法律の主要部分の
規定は、調査の関係上、公布後一カ年内において、
政令で定める日から施行することといたしました。
以上が本
法律案の提案の
理由及び概要であります。
何とぞ慎重御
審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げて、
提案理由を終わります。(
拍手)
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