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1971-03-19 第65回国会 衆議院 本会議 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年三月十九日(金曜日)     —————————————  議事日程 第十五号   昭和四十六年三月十九日    午後二時開議  第一 沖繩地域における産業振興開発等のた   めの琉球政府に対する資金の貸付けに関する   特別措置法の一部を改正する法律案内閣提   出)  第二 原子力損害賠償に関する法律及び原子   力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改   正する法律案内閣提出)  第三 放送法第三十七条第二項の規定基づ   き、承認を求めるの件  第四 理学療法士及び作業療法士法の一部を改   正する法律案社会労働委員長提出)  第五 国民年金法等の一部を改正する法律案   (内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  日程第一 沖繩地域における産業振興開発等   のための琉球政府に対する資金の貸付けに関   する特別措置法の一部を改正する法律案(内   閣提出)  日程第二 原子力損害賠償に関する法律及び   原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部   を改正する法律案内閣提出)  日程第三 放送法第三十七条第二項の規定に基   づき、承認を求めるの件  日程第四 理学療法士及び作業療法士法の一部   を改正する法律案社会労働委員長提出)  日程第五 国民年金法等の一部を改正する法律   案(内閣提出)  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提   出)の趣旨説明及び質疑     午後二時四分開議
  2. 船田中

    議長船田中君) これより会議を開きます。      ————◇—————  日程第一 沖繩地域における産業振興開発等のための琉球政府に対する資金の貸付けに関する特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出
  3. 船田中

    議長船田中君) 日程第一、沖繩地域における産業振興開発等のための琉球政府に対する資金の貸付けに関する特別措置法の一部を改正する法律案議題といたします。     —————————————
  4. 船田中

    議長船田中君) 委員長報告を求めます。沖繩及び北方問題に関する特別委員長池田清志君     —————————————   〔報告書本号末尾掲載〕     —————————————   〔池田清志登壇
  5. 池田清志

    池田清志君 ただいま議題となりました沖繩地域における産業振興開発等のための琉球政府に対する資金の貸付けに関する特別措置法の一部を改正する法律案について、沖繩及び北方問題に関する特別委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  御承知のとおり、現在、琉球政府及び沖繩市町村公共施設整備等のため必要な資金については、琉球政府資金運用部資金を充てるほか、沖繩市中銀行資金を借り入れる方法による以外に道がなく、本土復帰を控えて増大する琉球政府及び沖繩市町村資金需要に応ずることは、きわめて困難な状況にあります。  本案は、このような事情にかんがみ、琉球政府及び沖繩市町村公共施設整備等に寄与するため、本土財政投融資資金琉球政府に貸し付けることができるように、所要の規定整備を行なわんとするものであります。しこうして、本案は、昭和四十六年七月一日から施行することとされております。  本案は、去る三月九日本特別委員会付託され、三月十一日山中総務長官より提案理由説明を聴取し、自来、慎重に審議を行ない、三月十八日質疑を終了し、討論もなく、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  6. 船田中

    議長船田中君) 採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第二 原子力損害賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出
  8. 船田中

    議長船田中君) 日程第二、原子力損害賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。     —————————————
  9. 船田中

  10. 渡部一郎

    渡部一郎君 ただいま議題となりました原子力損害賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、科学技術振興対策特別委員会における審査経過並びに結果について御報告申し上げます。  本案は、最近における原子力開発及び利用の進展にかんがみ、原子力損害賠償に関する制度整備しようとするものでありまして、そのおもな内容は、  第一に、外国原子力船運航者原子力損害賠償に関する法律の対象に加えるとともに、外国原子力船運航者が、国際約束基づき三百六十億円を下らない損害賠償措置を講じて、本邦の水域原子力船を立ち入らせる場合においては、その損害賠償責任は、当該国際約束で定められた額を限度とするものといたしております。  第二には、損害賠償措置額の五十億円を六十億円に引き上げること。  第三には、損害賠償補償契約の締結及び国の援助の規定適用期限を、昭和五十六年十二月三十一日に延長することといたしております。  第四には、原子力船外国水域に立ち入らせる場合には、政府は、責任保険等で不足する額についても補償契約を締結し得るものといたしております。  本案は、去る二月十七日西田国務大臣より提案理由説明を聴取した後、熱心なる質疑が行なわれ、参考人から意見を聴取する等、慎重なる審査を重ねたのでありますが、その詳細につきましては会議録に譲ることといたします。  かくして、三月十八日、本案に対する質疑を終了し、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  なお、本案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党共同提案にかかる附帯決議提出され、全会一致で可決した次第であります。  その内容は、陸上原子炉原子力船米国原子力軍艦による損害は同じ原子力損害でありながら賠償金額が異なる場合があるので、被害者の保護に万全を期する観点から合理的統一をはかること。特に米国との外交交渉においては、本法に比し被害者が不利にならないよう昭和三十九年八月二十八日の閣議了解の線の実現をはかること。陸上、海上における原子炉等による損害賠償の差別をなくするため、ブラッセル条約検討等国際条約確立のため早急に努力すること。原子力損害の発生を防止する監視機関を設置するとともに、住民の代表、学識経験者等、第三者の参加をはかり、その民主的な運営をはかること。原子力事業従事者が受ける損害及び損失については、新たな補償措置を講ずるとともに、一般住民に対しては、退避体制等確立など万全を期することであります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  11. 船田中

    議長船田中君) 採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第三 放送法第三十七条第二項の規定基づき、承認を求めるの件
  13. 船田中

    議長船田中君) 日程第三、放送法第三十七条第二項の規定基づき、承認を求めるの件を議題といたします。     —————————————
  14. 船田中

  15. 金子岩三

    金子岩三君 ただいま議題となりました放送法第三十七条第二項の規定基づき、承認を求めるの件に関し、逓信委員会における審査経過と結果とを御報告申し上げます。  この議案は、日本放送協会昭和四十六年度収支予算事業計画及び資金計画について、国会承認を求めようとするものでありまして、その収支予算は、事業収支一千九億七千万円、資本収支三百三十三億八千万円の規模となっており、また事業計画は、テレビ、ラジオ両放送網の建設、放送番組充実刷新等の諸施策実施することとなっております。  逓信委員会におきましては、二月十九日本案付託を受け、数回の会議の後、三月十八日討論採決を行なった結果、全会一致をもって本議案はこれに承認を与うべきものと議決した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  16. 船田中

    議長船田中君) 採決いたします。  本件委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。よって、本件委員長報告のとおり承認するに決しました。      ————◇—————  日程第四 理学療法士及び作業療法士法の一   部を改正する法律案社会労働委員長提出)  日程第五 国民年金法等の一部を改正する法   律案内閣提出
  18. 船田中

    議長船田中君) 日程第四は、委員長提出議案でありますから、委員会審査を省略するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。  日程第四、理学療法士及び作業療法士法の一部を改正する法律案日程第五、国民年金法等の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
  20. 船田中

  21. 倉成正

    倉成正君 ただいま議題となりました理学療法士及び作業療法士法の一部を改正する法律案趣旨弁明を申し上げますとともに、国民年金法等の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、理学療法士及び作業療法士法の一部を改正する法律案趣旨弁明を申し上げます。  昭和四十年に理学療法士及び作業療法士法が制定され、理学療法及び作業療法による医学的リハビリテーションを行なう理学療法士及び作業療法士資格制度が発足いたしましたが、その際、経過的特例として、同法施行の際、現に病院、診療所等において医師の指示のもとに理学療法または作業療法を行なっていた者については、一定の要件のもとに、昭和四十六年三月三十一日まで国家試験受験資格を認めることとされました。  この経過的特例により、理学療法士または作業療法士の免許を取得した者は現に医療に貢献しているわけでありますが、理学療法士及び作業療法士充足状況を見ますと、まだ十分とは言い得ない現状でございます。  本案におきましては、このような現状にかんがみ、受験資格特例が認められる期間を三カ年間延長し、昭和四十九年三月三十一日までこの特例を認めようとするものであります。  何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次に、国民年金法等の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、福祉年金児童扶養手当及び特別児童扶養手当受給者福祉の向上をはかるため、支給金額引き上げ等改善を行なおうとするもので、そのおもな内容は、  第一に、年金額等引き上げについてでありますが、福祉年金については、老齢福祉年金現行月額二千円から二千三百円に、障害福祉年金月額三千百円から三千四百円に、母子福祉年金及び準母子福祉年金月額二千六百円から二千九百円に、それぞれ三百円引き上げること、児童扶養手当及び特別児童扶養手当については、児童一人の場合の手当月額現行の二千六百円から二千九百円に引き上げることであります。  第二に、福祉年金戦争公務による公務扶助料等との併給について、准士官以下の旧軍人等にかかるものであるときは、福祉年金が全額支給されるよう緩和することであります。  第三に、老齢福祉年金支給開始年齢を、法別表に該当する障害者については、六十五歳に引き下げること等であります。  本案は、二月五日本委員会付託となり、昨十八日の委員会において、質疑を終了し、採決の結果、本案原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  なお、本案に対し、附帯決議を付することに決しました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  22. 船田中

    議長船田中君) これより採決に入ります。  まず、日程第四につき採決いたします。  本案を可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。  次に、日程第五につき採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明
  25. 船田中

    議長船田中君) 内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案について、趣旨説明を求めます。厚生大臣内田常雄君。   〔国務大臣内田常雄登壇
  26. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  医療保険制度抜本改正につきましては、つとにその必要性が指摘され、政府といたしましても、鋭意検討を進めてまいったところでありまして、一昨年、すなわち昭和四十四年に、社会保険審議会及び社会保障制度審議会抜本改正諮問を行なったところであります。しかしながら、御承知のとおり、この問題はきわめて広範多岐にわたるため、両審議会の熱心な御審議にもかかわらず、なおその結論を得るに至っておりません。  しかしながら、政府といたしましては、さき本法改正の際、二年後には抜本改正の第一歩に着手すべき旨を明らかにいたした経緯もあり、また一方、政府管掌健康保険財政状況は、この間にも悪化の一途をたどり、このまま放置することが許されない事態となっておりますので、昭和四十六年度から抜本改正の方向を含みながら今回の改正に着手することといたしました。  すなわち、老齢者に対する医療を中心として給付漸進的改善をはかるとともに、抜本改正にあたっては避けて通ることができない政府管掌健康保険多額累積赤字処理につきまして、これを健康保険負担外にたな上げするという思い切った措置を講ずることとし、また、今後は、新たに国庫補助定率制を導入するなど、財政の長期的安定を確保するための対策を含めて抜本改正の第一着手を行なうこととし、ここに健康保険法等改正案提案いたすこととした次第であります。  以下、その内容について概略を御説明申し上げます。  まず、健康保険法改正について申し上げます。  第一は、退職者継続医療給付制度創設であります。すなわち、健康保険に十五年以上加入していた者が、五十五歳以後に退職した場合には、退職後少なくとも五年間は従前の健康保険に引き続き加入し得るものとして、退職前と同様十割の療養の給付を行なうことができることとするものであります。  第二は、七十歳以上の被扶養者給付割合現行の五割から七割に改善しようとするものであります。  第三は、埋葬料につきまして、一万五千円の最低保障額を設けるとともに、家族埋葬料の額を現行の二千円から七千五百円に引き上げ改善しようとするものであります。  第四は、十割給付を受ける被保険者本人につきましては、再診を受ける際に百円の一部負担金を六カ月間に限り支払うこととするとともに、入院時一部負担金を、現行の一カ月間一日当たり六十円から六カ月間一日当たり百五十円に改めようとするものであります。  第五は、標準報酬制度合理化措置であります。すなわち、現行標準報酬区分は、最近における給与の実態と著しくかけ離れているのみならず、高額所得者保険料ほど実質的に低率となる不合理を生ずるに至っておりますので、給与の実情に即してその区分を改めるとともに、前年に支給された賞与の一部を報酬月額に加えて標準報酬を決定することとするものであります。  第六は、社会保険庁長官は、昭和四十七年度以降、政府管掌健康保険事業に要する費用に過不足を生じたときは、社会保険審議会意見を聞いて、千分の八十を最高限度として、保険料率を弾力的に調整できることとするものであります。  第七は、先にも申し述べましたとおり、政府管掌健康保険に対する従来の定額補助のたてまえを改め、画期的な財政措置として、新たに定率制国庫補助のたてまえを法律上導入することとしております。  次に、船員保険法改正について申し上げます。  船員保険につきましても、健康保険制度改正に準じて、退職者継続医療給付制度創設、七十歳以上の被扶養者給付割合改善を行なうほか、健康保険の例により、再診時一部負担金及び入院時一部負担金の設定、保険料率弾力的調整標準報酬月額の上限の改定等を行なうこととするものであります。  次に、厚生保険特別会計法改正について申し上げます。  この改正は、先にも述べましたとおり、政府管掌健康保険におけるこれまでの多額累積赤字昭和四十六年度限り保険負担外にたな上げ処理し、これを一般会計からの繰り入れによって補てんするための処理、並びに新規の借り入れ限定等措置規定せんとするものであります。  なお、この法律実施時期につきましては、昭和四十六年十月一日からとしております。ただし、保険料率弾力的調整及び厚生保険特別会計法に関する改正は、昭和四十七年四月一日からとしております。  以上が健康保険法等の一部を改正する法律案趣旨でございます。(拍手)      ————◇—————  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  27. 船田中

    議長船田中君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。田邊誠君。   〔田邊誠登壇
  28. 田邊誠

    田邊誠君 私は、日本社会党を代表いたしまして、公約を無視して提案してまいりました健康保険法等の一部改正法案について、国民の願いを込めた具体的意見を提示しながら、総理並びに関係閣僚の明確な所信を問いたいと思います。(拍手)  佐藤総理、私があなたに真意をたださんとする第一の事柄は、社会保障制度確立に向ける政治姿勢についてであります。  去る一月二十二日の施政方針演説において、総理は、「社会の健全な発展と国民福祉を確保するためには、社会保障体制整備をはからなければならないことは申すまでもありません。」と述べられたのであります。社会保障制度の中で、所得保障と並んで重要な柱である医療保障の理念は、国の責任において国民にひとしく、よい医療を無料で保障することにあることは言うをまちません。わが国の皆保険下にある医療保険制度保険方式をとっていても、あくまでも社会保障制度の一環としての位置づけを持っていることも明らかであります。「福祉なくして成長なし」をスローガンにする佐藤内閣が、国の施策として解決をしなければならない社会保障の課題を、ひたすら国民の犠牲と負担のもとにその打開を求めんとする態度との間にある矛盾は、どう解すべきものでありましょうか。総理政治信条をしかと承りたいのであります。(拍手)  総理にお伺いしたい第二の点は、医療保険抜本改正に対する公約を再三にわたって実行できなかった佐藤内閣政治責任についてであります。  四十二年の特別国会臨時国会を通じて強行成立したこの法律改正は、国会の議決で、二カ年の期限を付した特例法となり、佐藤内閣は、この間に抜本改正の成案を得ることが義務づけられたのであります。しかし、この期限切れまでに、抜本改正への何らの道筋も明らかにできなかった政府は、国民世論の反対のもとに、四十四年の通常国会に、再び特例法の二カ年延長を提案せざるを得なかったのであります。  総理、あなたは、よもやお忘れではないでしょう。国民の反撃をおそれ、公約違反に恥じ入ったか、一昨年の五月八日、本会議における法案趣旨説明に先立って、異例のことでありますが、あなたは特に発言を求め、「二カ年の時限立法として制定された健康保険特例法制定経緯から、抜本対策への結論を得るに至らなかったことは、まことに遺憾に存じます。政府は、抜本対策早期実現を期する決意であります。」と陳謝を述べられておるのであります。  当時、審議過程特例法は廃止され、本法に繰り入れられたとはいえ、政府への再度の公約実施を求める国会意思国民世論は、厳として存在しておるのであります。しかるに、今回の政管健保赤字対策の域を全く出ない提案をしてまいりましたことは、三たび公約を踏みにじったものであり、佐藤内閣政治責任は、まことに重大といわなければなりません。(拍手)  国民への公約は実行しない、国民意思に反したことは黙って強行するといわれる現政府政治のやり方に対して、国民の国政に向ける憤りと不信感を一体どう受けとめているのか。一昨年の国会におけるように、公約違反国民の前にわびる謙虚な気持ちも失われておるとするならば、国民は、佐藤政治に絶望する以外にはないのであります。総理の心からの態度を表明していただきたいと思います。  私が総理にお伺いしたい第三の問題は、今回の改正案提出が、法律事項である政府諮問機関意見を全く無視し、また、じゅうりんしていることであります。  前二回の改定にあたっても、政府態度をきびしく批判してまいりました社会保険審議会社会保障制度審議会は、今回の大改悪案については、全く前例を見ない痛烈な政府弾劾を行なっておるのであり、政府の考え方は認められない、としておるのであります。「鋭意抜本改正審議を行ない、近くその結果を得る段階において、本案諮問をされるに至ったことはまことに遺憾である」とする社会保険審議会各界一致答申の中身も顧みず、さらには、「政府の希望した期日を考慮しながら抜本改正審議を続けているやさきに、かかる姿で諮問をしてきたことはまことに遺憾であり、政府の再考を求める」と、全く考慮の余地のないほど明確に出直しを求めた社会保障制度審議会答申を無視して、政府の当初の考えどおり法案提出してまいりましたことは、まさに抜本改正に向ける国民の悲願を踏みにじったものであり、断じて許すことはできません。(拍手諮問機関答申は必ず尊重すると言い続けてきた政府の立場を没却したこの措置について、法の施行責任者たる総理所信を承りたいと存じます。(拍手)  このように、公約違反の悪法であり、国会提出の手続にも適格性を欠くこの法案は、この際、国民各階層の大きな憤りを受けて、いさぎよく撤回すべきであると思うのであります。総理憲政史上最も長続きをした内閣となろうとしている佐藤内閣が、後世の国民から、最も大きな、誤った具体的施策として指弾されることを免れるためには、この道を選ぶ以外にはありません。総理に最後に残された政治的良心ありやいなや、政治家佐藤総理所信を問うゆえんであります。(拍手)  次に、内田厚生大臣福田大蔵大臣にお伺いしたい。  今回の改正法案の目的は、政管健保財政対策にあることは言うまでもありません。しかし、赤字の原因がどこにあるかという究明なしに、単なる帳じりを合わすだけの対策では、当面を糊塗するにすぎないのであります。  国民保険下各種保険制度の比較から見れば、千三百万の中小零細企業に働く労働者を対象にした政管健保では、病気になりやすい、労働条件がきわめて悪いという職場のため、受診率も高く、医療費支出がかさむのは当然であります。  しかし、この赤字要因を持つ政管健保においてすら、四十二年以降をとってみれば、受診率、医者にかかる日数、ともに横ばいの状態であり、ただ診療に要した費用のみが、三カ年に平均五〇%以上かさんでいることから明らかなとおり、赤字増大の主要な原因は、医療費増加にほかなりません。ここ十年間に八次に及ぶ医療改定が行なわれたことは、一面、人件費、物件費の上昇からやむを得ないものもありましたが、反面、診療報酬体系の適正化、合理化に対して、政府がこの間何らの手をつけていない怠慢のそしりを免れることは断じてできません。(拍手)  現在の医療保険体系では、薬や注射を使えば使うほど医者がもうかる出来高払いの仕組みであり、良心的な医師がかえって収益が少なく、長い経験を持つ医師も、なり立ての医師も、同じ扱いを受けているのであります。この際、大部分の良心的医師の倫理を確認するためにも、不正請求、水増し請求には徹底した監査を行なって、これが発生を防ぐとともに、薬剤点数システムを変え、技術料中心に改編することが第一に必要であります。  第二には、薬について徹底的にメスを加え、薬効判定によって整理し、原価公表、広告禁止と再販制度改革によって、大衆保健薬の値下げを断行するとともに、医師向け薬剤を、現品添付物の厳禁と相まって実勢価格に見合うものに改定して、薬価基準の大幅引き下げを断行することにより、薬剤供給が直ちに医師の収入に結びつく売薬医療の弊害を克服し、医療費の値上げを最小限度に食いとめることができるのであります。(拍手)今日、この矛盾に満ちた、むだの多い保険制度の改革への努力なしに、国民負担増による赤字対策を口にすることは、断じて許されません。  この赤字克服の前提となるべき問題について、政府は一体いかなる具体的対策実施し、どのような実効をあげてきたのか。現在、中医協の医療担当者側総引き揚げの事態に対し、どう打開のため対処してきたのか、厚生大臣の、納得のできる回答を求めるものであります。  医療費の増大によって、政管健保赤字が急速に増加してまいりました。しかし、この間において、政府は一体どのような財政的手だてを講じてきたのでありましょうか。  労使による保険料負担は、四十二年度に対して四十五年度は五〇%以上もふえているのに比べて、国の補助は、四十二年度から四年間同額の二百二十五億円を支出しているにすぎないじゃありませんか。したがって、全保険財政に占める割合は、四十二年度の六・三%に比べて四十五年度三・八%と低下している現状であります。今回、国庫補助五%定率に直したことなどは、四十二年の補助割合にも及ばない低率なものであり、四十六年十月法改正実施を見込む財政的効果では、国民負担増三百二十六億三千万円に比べて、国庫補助はわずかに従前の五十億増加にとどまっていることから明らかなとおり、国の責任を全く回避しているといって過言ではありません。さらに、この程度の補助では、四十七年度以降は行政による弾力的運営と称する保険料の値上げ、総報酬制の全面実施によって赤字を出さないで済むと言っておりましても、四十五年度末累積赤字一千九百五億円のたな上げ分の具体的措置が明示されない以上、完全な赤字解消にはなりません。  したがって、私は、ここに具体的に提案をしたい。政府は、四十六年度一〇%を起点とし、三カ年計画をもって政管健保への国の補助を二〇%まで引き上ぐべきであり、その結果は、相当な給付改善を行ない、中小零細企業の事業主負担の軽減を国の措置によって行なっても、なおかつ赤字を完全に解消することができるのであります。国民健康保険に対する四五%、日雇い健保に対する三五%の補助から見て、この措置は当然と思いますけれども、真の赤字対策を国の責任において断行するために、この私の提案を受け入れる用意があるかどうか、大蔵大臣の所信を承りたいと存じます。  さらに、厚生大臣にお伺いしたいことは、欺瞞に満ちたこの改正案の中身についてであります。  その第一は、今後保険料引き上げを、社会保険庁長官の手でなし得ることとした国会無視の考え方についてであります。  去る四十四年八月、医療保険制度改革要綱試案を両審議会諮問した際、当時の斎藤厚生大臣は、「保険料の増減は、被保険者、事業主に重大な影響を与えるものであり、その方式については、国会において決定していただきたい。決して恣意にわたるようなことがあってはならないと考える」と説明しておるのであって、今回の提案に見られるごとく、国会の議決なしに、官僚の独断によって、国民生活に影響を与える事項が左右されることは、決して許容さるべきものではなく、国の独占的事業の料金決定権は国会にあるとする財政法第三条違反の疑いすら持たれると思うのであります。  その第二の問題は、ボーナス導入による総報酬制の採用についての疑問であります。  当面三分の一の算入も、近い将来全額繰り入れに通ずるのでありまして、また、このような方式の採用は、当然年金などの他の社会保険に及ぼす影響も見のがすことはできないのであります。私は、この問題について政府の考え方をただすと同時に、このようなこそくな手段によることなく、保険料率標準報酬によって格差を設ける提案をいたしたい。たとえば、三万円未満千分の六十、三万円以上五万円未満千分の六十五、五万円以上十万円未満千分の七十、十万円以上十五万円未満千分の七十五、十五万円以上千分の八十とする段階制を設けて保険料を徴収いたしますならば、低所得者の負担を軽減する所得再配分の原則は貫かれ、あわせて賃金引き上げによる保険料の自然増収がはかられる一石二鳥の結果となると思うが、厚生大臣の同意を求めたいと思うのであります。(拍手)  改正案の中身のうち、再診料百円の新設、従来の十五倍の負担に通ずる入院時一部負担の増額のごときは、病気で健康を取り戻す医療において取り入れるべきでないところの受益者負担の原則を適用せんとするものでありまして、患者の負担増と医療担当者の事務の繁雑化を招くとともに、過去の実績に照らして明らかに受診抑制につながるものでありまして、国民医療確立とは全く相反する方向を差し示し、政府の考え方がさか立ちをしている証左以外の何ものでもないのであります。  改正案のうちで、当然の措置は除き、唯一の改善といわれる老人に対する七割給付も、すでにおそきに失した施策でありまして、私たちはすべての家族に八割給付を要求するとともに、七十歳以上の老人、三歳未満の乳幼児については全額公費負担医療とすべきことを提言するものでありまして……
  29. 船田中

    議長船田中君) 田邊君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
  30. 田邊誠

    田邊誠君(続) 政府の確約を求めるものであります。  以上、私は、医療保険制度の根幹に触れて前向きの提案をしてまいりました。  そこで、最後に、総理の勇断を求めて、お伺いしたい。  今日、わが国の医療制度は、まさに混迷をきわめているといえましょう。分立する健康保険制度、医師、看護婦など医療従事者の不足からくるサービスの悪化、最近の不正入学に暴露される矛盾に満ちた医学教育、国民を食いものにせんとする製薬資本など、国民の生命と健康を守るための医療には、解決を迫られている重要事態が山積をいたしております。  わが党がさきに発表した医療基本法案要綱は、健康増進、疾病予防、あと保護を含めた医療全般に対する国民の要求にこたえるためのものであることは当然であります。  政府には、いまこそ、この医療問題の抜本的改革に乗り出すべき七〇年代最大の政治課題が負わされていると思うのでありますけれども、総理医療制度全般に対する抜本改革への決意と構想を明らかにしていただくことを強く要求し、国民的合意を得られる誠意ある回答を求めまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  31. 佐藤榮作

    内閣総理大臣(佐藤榮作君) 渡邊君にお答えいたします。  私は、かねてから……(「田邊、田邊」と呼び、その他発言する者あり)失礼いたしました。失礼いたしました。田邊君です。田邊君にお答えいたします。  私は、かねてからの主張である人間尊重の政治実現のためには、経済成長の成果を、成長に取り残されやすい階層分野の方々にまで行き渡らすことが何よりも必要であり、まさに社会保障の任務だと、かように考えております。  ただ、わが国の近代国家としての立ちおくれから、これと並行して社会資本の充実にも大きな力をさかなければならないところに問題のむずかしさがあります。次のゼネレーションに引き継がれる遺産ともなるべき社会資本の充実も、国力の基礎を形づくるものとして重視せねばならないことは申すまでもありませんが、私は、当面の国民生活の安定と福祉の向上に直接寄与する社会保障の充実には、今後とも全力をあげてまいる決意であります。「福祉なくして成長なし」、かように申したのもこのような気持ちからであります。経済成長は手段であって、目的ではない。あくまでも目的は国民福祉の向上にあるのだ、これが政策の基本であります。福祉内容は、その意味において行政、政治のすべての反映でありますが、中でも社会保障こそその中核ともなるべきものと考えます。これが社会保障に取り組む私の基本的姿勢であります。(「答弁が違う」と呼ぶ者あり)最初に私の基本姿勢を聞かれましたからお答えした。よくお聞き取りいただきたい。(拍手)  次に、健康保険制度抜本改正の問題はきわめて広範多岐にわたるほか、根深い問題点を有しており、かつ利害関係がふくそうしているだけに、問題の解決が容易でないことは田邊君もよく御承知のとおりであります。一昨年の改正に際して、お許しを得て抜本改正検討のため若干の余裕をいただき、現在関係審議会にも鋭意御研究いただいているところでありますが、今回は、四十四年の改正に際して四十六年度から抜本改正に着手することをお約束した経緯もあり、再び応急対策を繰り返すことなく、公約どおり四十六年度から抜本改正に着手することとして改正法案提出したものであります。  なお、今回の改正にあたっても関係審議会審議は難航をきわめ、公益代表、事業主代表、被保険者代表のいずれからも完全な御満足をいただけなかったことは御承知のとおりであります。問題の困難さを率直に示したものであります。私は、率直に申しまして、審議会からの全面的な御支援を得られなかったことはたいへん残念ではありますが、この案は現状においても最善のものであり、この際一歩でも前進することは、抜本改正の基礎を固めるものとしてそれなりの評価はいただけるものと確信しております。そこで、以上のような論点で私は提案いたしたのでございますから、本案を撤回しろという田邊君の要求に対しましては、私はこれを撤回する考えはございません。どうか十分御審議をいただきたいとお願いをいたします。  最後に、医療制度全般の抜本改正について意見を求められました。今回の改正抜本改正の第一着手として行なわれるものであり、今後改革していくべき問題が多いことは御指摘のとおりであります。  健保の抜本改正については、今回の措置のみにとどまることなく、診療報酬体系の適正合理化、さらには、医療制度、公費負担医療等の関連諸制度改善、充実についても、関係審議会の御協力を得て積極的に対応してまいる決意であります。問題が問題だけに、その前途は決して容易ではありませんが、医療保障社会福祉の根幹ともいうべき重大な問題であります。国民の健康を守る、その適切な制度を築き上げていく、こういう見地から、国会におきましても建設的な御助言を期待してやまない次第であります。  以上、お答えいたします。(拍手)   〔国務大臣福田赳夫君登壇
  32. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 田邊さんにお答え申し上げます。  田邊さんにおかれましては、政府提案の定率五%、これを取り下げて当面一〇%、さらにこれを二〇%にという御提案でございます。これはにわかに賛成いたしかねるのでございますが、今回五%ではありますけれども、定率化をした。昨年、というか四十五年度、これを率で見ますれば、三・八九%になる。それを今回は五%の定率化、こういうのであり、定率化でありますから、将来の保険財政に対しまして非常に弾力性を与える、かように考えておるのであります。  しかし、こればかりじゃないのです。問題は累積赤字のたな上げ措置なんです。四十六年度末になりますると、二千五百億円くらいな累積赤字になります。その損失に対しまして政府財政負担をする、そういう形でたな上げをいたそう。これは保険財政に対しまして非常に大きな効果がある。利息一つをとらえてみましても、たいへんな負担軽減に相なるであろうということは御理解願えるだろうと思うのであります。しかし、それだけでは足らないので、ここで料率の改定でありますとか、あるいは一部負担等の御審議をお願いをするということになっておるのでありまするが、この国の施策ともろもろのそれらの対策、これが相並行して行なわれるということになりますれば、私は、保険財政というものは、四十六年度はなかなかむずかしかろう、しかし、四十七年度以降におきましては必ず安定をする、さように確信をし、極力この案を支持してまいりたい。よろしくお願い申し上げます。(拍手)   〔国務大臣内田常雄登壇
  33. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 田邊先生にお答えを申し上げます。  政府管掌健康保険につきましては、過去三回にわたりまして臨時応急の財政措置をやってまいってきたわけでありますが、いまから二年前、昭和四十四年の法改正の際に、私どもは、この国会におきまして、四十六年度から段階的に抜本改正に着手をいたしますことを言明をいたしまして、また、それに従いまして、御承知のとおり、関係審議会に対しましても抜本改正についての諮問をいたしておるわけでございます。  しかし、この問題は、広範多岐な問題を多く含んでおり、また、利害も対立をいたしておりますので、関係審議会から最終的な御答申をいただくに至っておりませんけれども、政府といたしましては、政府の約束に従いまして、この四十六年度から抜本改正の第一着手をぜひいたしたい、こういう考え方から、先ほど申し述べましたような抜本改正への第一着手案を提案いたしたわけでございます。  また、この改正は、田邊さんから御指摘がございましたように、健康保険制度だけの改正をもって足れりとは、私どもはもちろん考えません。診療報酬体系の合理化とかあるいはまた適正化、さらにはまた、それ以前の医療制度全般についての問題をもあわせて解決すべきであると考えておることはもちろんでございまして、診療報酬の適正化につきましては、すでに昭和四十二年、昭和四十五年の診療報酬の改正のときからこの問題に踏み込んでおりますけれども、さらに今回は、各方面から診療報酬の適正化に関する懸案を中央医療協議会に持ち込みまして、これの総合的な検討を加えようといたしておること、御承知のとおりでございます。  また、そのことは同時に、最近における医療費の増高の傾向に対処いたしまして、御指摘のように、監査の励行でありますとか、あるいは薬の措置とかいうようなことも、私どもはほんとうに力を入れておりますことも、私がしばしば関係の委員会で御答弁を申し上げているとおりでございますし、薬につきましては、現に、おまけといいますか、添付の禁止でありますとかというようなことも踏み切りましたし、また、薬価基準もこのところ毎年改定をいたしまして、薬を実勢価格に近づけてまいるというようなことを行ないまして、医療というものが薬だけにたよる、医療費の非常に大きな部分が薬で占められるというようなことにつきましても、同時に検討を加えようといたすものでございます。  また、今回の法律改正に含まれておりまする保険料率の弾力条項のことについておしかりがございましたが、これは田邊さんも御承知のとおり、すでに健康保険組合とかあるいは各種の共済組合等については、この弾力調整条項というものは現存をいたしておりまするし、また、政管健保におきましても、昭和四十一年の改正のときまではこの制度が生きておったわけでございます。元来が短期保険のことでございまして、単年度収支を弾力的に調整をするという必要性もある性格のものでございますので、また、この条項を生かさせていただきたいと思うわけでございますが、これらにつきましては、私どもは国会の授権の範囲でやるつもりでございまして、国会の権限を侵犯するようなつもりは毛頭ございません。  また、家族の給付、老人給付などについていろいろの御意見がございましたが、私どもは全く田邊さんと同じように、老齢対策、また幼児対策等につきましては、医療保険の内外を通じて深く心に期するものがございます。その一端といたしまして、今回の健康保険法改正につきましても、退職者に対しまする継続給付の問題とか、老齢者家族に対する給付率の改善というようなことも組み入れてございますので、高く評価をしていただきたいところでございます。  また、ボーナスの一部組み入れに関連いたしまして、この健康保険保険料率についても一種の段階的料率の制度をとったらどうかという前向き、積極的な御意見がございましたが、健康保険というものは相互扶助をたてまえとする保険制度でございますので、たとえば税金のような累進料率といいますか、段階料率というものをつくりますことについては、これまたいろいろ問題があろうと考えますけれども、積極的な御意見でございますので、私どもこの点についてはさらにひとつ研究をさせていただきたいと思います。  以上をもってお答えとさせていただきます。(拍手)     —————————————
  34. 船田中

    議長船田中君) 渡部通子君。   〔渡部通子君登壇
  35. 渡部通子

    ○渡部通子君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のございました健康保険法等の一部を改正する法律案について、総理をはじめ関係大臣に質問をいたします。  まず佐藤総理、このたびの政府提出法案に、国民世論はまたまたあげて反対をいたしております。この声が総理のお耳には一体届いているのかどうか、どう聞いておられるのか、そのお気持ちを最初にお聞かせいただきたいと思います。  このいわくつきの法案は、過去において幾度か、総理御自身が医療制度抜本改正公約されたいわゆる暫定法であったはずであります。四十二年しかり、四十四年しかり。しかも、政府は常に多数横暴を象徴する強行採決という手段で、国会審議を軽視し、国民のひんしゅくを買ってまいりました。そして、いま再びここに、またも抜本改正の肝心な点には目をふさいで、健保の赤字を一方的に国民に転嫁する今回の改正案提案したのであります。国民が断じて納得できないのは当然ではありませんか。(拍手)  しかも、こうした間に、阪大入試の不正事件に見られるように、病める医療界の氷山の一角はついに火をふいております。複雑な利害のからみ合った、その底知れぬこんとんぶりは、国民はすでによく承知をいたしております。だからこそ、その根本になぜ政府は誠意をもってメスを入れようとする態度をお示しにならないのか、いつまでこんな張りこう薬的な法案で横車を押そうとなさるのか。いまや、国民政治不信もその頂点に達しております。  この際、総理並びに厚生大臣のこの点に対する御見解をしかと承っておきたい。あわせて、政府公約抜本改正も一体いつまでにおやりになるおつもりなのか、その見通しもお示しいただきたいのであります。  そもそも、抜本改正というのは、申すまでもなく、医療保険とあわせて医療制度も車の両輪のごとく改革されねばならないことは当然のことでございます。すなわち、国民の健康増進という観点から見れば、予防と治療及びリハビリテーションの一元化をはからなければならないし、また、それを監督指導する医療行政機構の改組も考えられなければならないと思うのであります。また、医療機関の偏在是正、医師や看護婦の養成など、あわせ強力に推進しなければならない。このように山積する諸問題に、一体政府は打つ手をお持ちなのかどうか。また、全国に散在する無医地区の悲惨な実情をよそに、医師の都市集中現象がどこに基因するものなのか。  こう考えてまいりますならば、現行の診療報酬制度の改革にこそ、早急に政府は着手しなければならないはずです。医師の頭脳、技術を全く尊重しない点数単価による出来高払い制度を改めて、この際、保険医に対しては、その治療技術を正当に評価し、人頭割りに基づく保健活動に対する報酬を考慮すべきだと思います。この診療報酬体系の適正化が実現すれば、租税特別措置法における免税措置などは自然解消されるでありましょう。  すなわち、昭和二十九年租税特別措置法改正の際の本院大蔵委員会附帯決議は「本法律案は、社会診療報酬の適正化の実現までの暫定措置であるから、政府は速に之が実現をはかるよう善処せられたい。」と述べております。また、従来から税制調査会でもこの特例措置は廃止すべきだと認めているところであります。税負担の公平という意味からも、また、国民の重税感をなくす意味でも重要な問題なので、この点、総理、大蔵、厚生大臣の責任ある御答弁を求めます。  また、現行医療制度のもとでは、薬の被保険者に対する過当投与は目に余るものがあります。しかも、それが直接医療保険財政にはね返ってくる。したがって、わが国では総医療費に占める薬剤費の比率は何と四〇%にのぼり、このままでは赤字額は増大の一途をたどることは必然であります。それでいて国民一人当たり医療費はといえば、年間一万八千円程度。これはアメリカの十万円、イギリスの二万九千円など、先進諸国に比べてまことに僅少であります。その中で薬剤費が四〇%を占めるとなれば、国民医療の実態はまことにお寒い限りであります。医薬分業のたてまえをどう確立されようとするおつもりか。これらのことを前提とする抜本改正をたな上げした、対症療法的に赤字解消を国民にしわ寄せする本改正案提案は、断じて認めるわけにはまいりません。(拍手)  次に、審議会に対する政府態度について申し上げたい。  これまで政府は、審議会答申及び勧告については十分尊重すると、繰り返し言明をしております。しかし、本法案につきましては、社会保険審議会が、その答申で、抜本改正審議が軌道に乗りつつあるときに、一方的な意見を再諮問されたことははなはだ遺憾であると述べております。また、社会保障制度審議会においても、いまだかつてない強い態度で、諮問内容そのものを再考するよう政府に迫っております。にもかかわらず、あえて本法案を今回提案されたことは、明らかに審議会軽視、答申無視であります。あまつさえ、答申後わずか二十分で法案提出ということ自体、初めから政府審議会の存在を無視していたのではありませんか。社会保障制度審議会は、過去二度にわたって、英国の王立委員会のような制度機関の設置を答申しております。また、わが党が今国会提出した社会保障基本法案の中にも、総理大臣の諮問機関社会保障制度審議会の改組を主張しておりますが、政府審議会の機構改革及び権限を強化させる考えがあるかどうか、この点総理、厚生大臣の見解を承りたいと思います。  次に、法案内容について四点お尋ねいたします。  第一に、被保険者の一部負担増について。厚生省は、再診は医師の指示で行なわれるから受診抑制ではないといって、再診時、入院時の被保険者の一部負担の新増設をはかっております。理由は、診療を始めて六カ月間の月平均の再診回数は三・七二回だから再診料もたいしたことではないというのです。しかし、病人は平均回数で通院をしているのではございません。月に十回、二十回、あるいは毎日治療を必要とする人だっているのです。たとえば十六日間通院し、あと半年入院する人があったとすれば、いままで二千円で済んでいた費用が、何と今回ならば二万八千七百円、十四倍もの負担増です。病の重い人にこそ厚い保護を与えるのが皆保険の本旨であるのに、まるで逆です。これでは貧乏人は医者にかかるなという結果になるではありませんか。  第二点は、保険料率引き上げと弾力条項の問題です。ボーナスまで入れた総報酬制をとる上に、千分の十を保険庁長官の自由裁量にゆだねるということは、明らかに値上げを認めたことであり、議会軽視ではございませんか。  第三は、国庫負担額を五%に定率化したことであります。これを政府改善点として大いに宣伝をなさっておりますが、しかし、定率補助といっても、五%では低くてお話にならない。大体今日の累積赤字の根本は、国庫負担額があまりにも少なかったからではないでしょうか。ならば赤字を補うだけの予算措置は当然です。社会保険審議会答申は二〇%、わが党の主張は三〇%であります。総理、厚生、大蔵大臣の御決意を伺いたいと思います。  第四は、給付内容です。もはや老人医療十割給付は当然の御時世であります。今後予想される定年制の延長や年金等を考え合わせて、少なくとも六十五歳以上は無償とすべきであります。  ともかく改正案では、政府の増収分はざっと七百三十七億円、それに比べて国民へのサービスはたった八十六億円であります。とんでもないごまかしではないでしょうか。さらに出産給付も、現行の二万円ではあまりにも実情にそぐいません。当然健保でまかなうべきだと思いますが、もしできない事情があるのなら、わが党提出の母子健康保険法改正案のごとく、別途出産費の支給もすべきだと思うのであります。  以上四点、明快な御答弁をお願いいたします。  最後に、ある一村長さんの話を総理にお伝えしたい。  先般、私は、群馬県の小さな、保健管理のよく行き届いた村をたずねました。その村では、母子健康センターで二人の医師が定期健康診断をしておりました。一人は大学の教授、一人は村の開業医でございます。ところが、月日がたつうちに、子供を抱いた母親たちはだんだん大学の先生のほうへ集まるようになってしまったというのであります。ふしぎに思った村長さんは、静かに観察を続け、そして一つの大きな原因を発見したのでした。それは、開業医師がどうしても注射や投薬にたよってしまうのに対して、大学教授のほうは母親の栄養とか離乳食などの健康相談、指導ということが主体になっていたためらしいというわけでございます。村長さんは、もっともなことだとも思いました。また、人間性のない、対話もない現行医療制度の欠陥をまざまざと感じたと言っておりました。この村長さんの率直な意見総理はどうお受けとめになるでしょうか。いまこそ総理の勇断をば、私はこうした国民のための健康保険医療制度抜本改正に行使していただいて、そうして本法案はいさぎよく撤回されることを強く強く要望し、質問といたします。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  36. 佐藤榮作

    内閣総理大臣(佐藤榮作君) 渡部君にお答えいたします。  まず、抜本改正をたな上げして改正法案提出したのではないか、かようなおしかりであったと思いますが、政府抜本改正をたな上げするつもりは全くありません。抜本改正そのものにつきましての決意と方向は、さき社会党の田邊君にお答えしたとおりであります。多くは申しませんが、抜本改正は複雑多岐にわたる問題でありますので、一挙にすべてを解決するわけにはまいりませんが、やり得るものから段階的に漸進的に実施するという趣旨におきまして、抜本改正の第一段階として今回改正法案提出したものであります。過去の巨額の赤字をたな上げし、国庫負担も大幅に増額して、単年度収支の均衡をはかりつつ、一方において退職者の継続医療給付制度創設し、七十歳以上の被扶養者給付率の引き上げをはかるなど、積極的な制度改善への努力につきましては、率直にお認めいただきたいと思います。  また、渡部君は、国民世論こぞって反対と言われましたが、この問題は関係者の利害がきわめて錯綜した問題であります。それだけに関係者全員の一致した御賛成を得ることは至難のことであり、政府としては、その中から現状に即した、かつ一歩でも前進できる案を策定したものであります。苦心のあとをおくみ取りいただきたいものと考えます。  次に、現在の診療報酬体系の合理化が必要であり、これが抜本改正の重要な課題であるという渡部君の御意見は、私も同感であります。御意見の方向に沿った改善につき今後一そう努力してまいります。  また、社会保険診療報酬課税の特例についても、従来から批判のあることは私も十分承知しております。何ぶんにもこの制度がいわゆる診療報酬の単価との関連で設けられた経緯もありますので、診療費体系整備との関係におきまして、その改善につき十分検討してまいりたいと思います。  また、答申無視と言われましたことについても、さきに田邊君にお答えしたとおりであります。政治は議論だけではなく、実行であります。関係者の意見が相対立したままでは、事態の進展は全く期待できません。多くの議論の中から現実に即した最善の可能性を見出していくことが政治の使命であります。そのような大局的な判断をぜひお願いしたいものと考えます。  関係審議会のあり方につきましても、種々の御意見があることは私もよく承知しております。皆さま方の御意見も伺った上で、なお十分検討させていただきたいと思います。  最後に、抜本改正はいつまでに行なうかとのお尋ねでありましたが、本格的には四十六年度から着手するつもりであります。御理解いただきたいことは、今回の改正も単なる臨時応急の財政対策ではなく、抜本対策の第一着手たる内容を持つものであることであります。さような意味合いにおきまして、この法案現状において妥当かつ必要な改正であると、かように私は考えております。  そこで、群馬県下のある村における診療の実際についての実例をおあげになりました。やはり医は仁術なりとでも申しますか、もっと心の通った、またあたたかい気持ちのもとで診療が行なわれない限り十分な効果があがらないとおっしゃることは、これはもう私もたいへん胸を打たれるものがございます。しかし、きょうだだいま提案をした法案でございますから、それはそれとして、ただいまの法案は撤回はしない、十分御審議をいただきたい、かように思い、お願いをいたします。(拍手)   〔国務大臣内田常雄登壇
  37. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 渡部さんにお答えを申し上げますが、私が先ほど提案趣旨で御説明申し上げましたこと並びに総理からお答えのございましたことを省略させていただきたいと存じます。  ただ、この保険制度改正というものが、おっしゃられますとおり診療報酬体系の適正化ということといわば車の両輪だと申されることは、私どももよくよく了解をいたしておるところでございまして、診療報酬体系の合理化につきましては、先ほども申し述べましたように、これまでも昭和四十二年の診療報酬の改正、四十五年の改正の際にもすでに踏み出しておることではございますけれども、今回はさらにそれを総合的にやろうということで、各方面のこの問題に対する意向を、いいものも悪いものも集めまして中医協で審議をしていただこう、こういう体制をとっておるわけでございます。むろんその中には御指摘の医療技術の適正評価ということも入っておるわけでございます。  御指摘がございました薬剤の多用化を改めよというようなことにつきましても、異存はございません。添付の禁止とか、あるいは薬価基準の改正とかいうようなことにつきましても、十分私どもは善処をいたしてまいります。  なお、この社会保険診療報酬に対する租税特別措置のことについて厚生大臣も一言言えというようなことだったと思いますが、私は大蔵省ではございませんので、厚生省とすれば、またやや違った考えもございまして、今日の税制が複雑過ぎますし、医者が保険のもとにおいて診療報酬を請求しますのにも非常に複雑な過程を経ておりますので、税金などは公平でなければなりませんけれども、しかし税金のはじき方というものは、なるべく租税単純の原理というようなものもくんでいただかなければならない、こういうようなことを厚生大臣としては一言申し上げておきます。  それから、審議会軽視、無視、こういうお話でございましたが、これにつきましては総理からもお話がございましたが、何ぶんにも、御承知のように、今日の審議会は、その構成が各方面の代表から構成をされておる、かつての米価審議会のようなところもございまして、各側の意見が分かれておりまするし、その全部を取り上げるということもできません。さらにまた、今回の答申政府の考え方を絶対に否定するというものではございませんので、私どもはいろいろの見地から今回の原案国会に出しまして、皆さま方の御批判と御協力を得たい、こういう次第でございます。  英国の王立委員会の話も承っておりますので、これも今後の研究課題とさしていただきたいと思います。  それから、再診料につきまして、患者の一部負担の問題につきまして御批判がございましたが、これにつきましては、医療費が増高し、また、保険料負担もふえております際に、保険給付を受ける人と受けない人との間の負担の均衡というようなことも考えてまいりますと、また諸外国の例などを見ましても、私は今度の程度のことはやったほうがいいということで、提案をいたしたものでございますので、ぜひに御理解をいただきたいと思います。  国庫負担を五%でなしに、二〇%、三〇%にせよということも、これは、私はできましたらば、医療なんというものは、将来二十年、三十年の後には国民全部ただにしたいぐらいに考える厚生大臣でございますが、(笑声)そうもまいりません。医療をただにいたしますと、厚生省も建設省も農林省も、みんなつぶして、その金をつぎ込んでもまだ足りないというようなことでございますので、まあでき得る限り大蔵省の理解を得まして、いままでの握り金というものを定率制にしまして、医療費がふえるに従ってこの定率補助もふえるような方向に思い切って踏み出すことについて総理大臣、大蔵大臣も非常な御理解をいただきましたので、これは今後の成長を楽しみにいたしておるわけであります。  以上であります。(拍手)   〔国務大臣福田赳夫君登壇
  38. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。  まず、診療報酬に対する課税の特例に関する問題でございます。これは、いま総理からもお話がありましたが、私としては、これは、制度として何とかこれを一般化したい、さように考えておるのです。ところが、この沿革というものがありまして、これは昭和二十九年、各党の議員立法によってできたものでありまするが、自来定着化というか、そういうようなかっこうになってきておる。これが診療報酬とひっからまりを持っておるわけでありまして、この問題の適正な解決、これと関連してくるのです。つまり診療報酬の適正化、技術料を正当に評価する、こういう問題は、これはやはり医療保険制度抜本改正といわれますが、そういうところに根深く原因をしておるわけでありまして、そういう問題の処理と並行しないと、根本的な改革はむずかしいのじゃあるまいか、さように考えておりますが、医療抜本改正ともにらみ合わせながらこの問題を処置してまいりたい、かように考えます。  それから、五%の定率補助、これについてみみっちいというようなお話でございます。しかし、こればかりをごらんにならないで、総合的に事を見てもらいたいのです。先ほども申し上げましたが、累積赤字をたな上げをする、これは大きな財政措置です。これは、私としてはかなり思い切ったつもりの措置でございます。これによる財政効果、これは大きなものがあろうと思うのでありますが、それと今回御提案をいたしておりまするもろもろの措置とが並行して進められるならば、私は、これは四十七年度には必ず財政問題の解決ができる、かように考えておる次第でございます。(拍手)     —————————————
  39. 船田中

    議長船田中君) 田畑金光君。   〔田畑金光君登壇
  40. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は、民社党を代表し、ただいま趣旨説明のありました健康保険法等の一部を改正する法律案につき、佐藤総理ほか関係閣僚に対し、数点にわたり質問を行なわんとするものであります。  この法案について、世論は、この国会における最大の与野党激突法案であるとし、野党三党はこの法案成立阻止に立ち上がるであろうと報じております。なぜこのような見方が出てくるかと申しますならば、この法案は、佐藤内閣の数々の公約違反の中でも最も悪質なものであるからであります。  五十六国会は、健保特例法採決に衆議院本会議は実に四泊五日を要し、六十一国会は、再度提案された健保特例法採決をめぐり、これまた三泊四日の徹夜国会でようやく与党修正法案の可決を見たのであります。そして、法案採決の記名投票の最中に異例の起立採決に切りかえたことが発端となり、石井議長、小平副議長の辞任に発展したのであります。先ほども指摘されたように、六十一国会は、健保特例法審議する本会議の冒頭、佐藤総理は陳謝されたのであります。総理大臣が陳謝し、弁明し、釈明しなければ法案趣旨説明すらできなかったことが、すでに異例でありますが、しかるに、その後医療保険制度抜本改正はどうなったでありましょう。ここにまたまた単なる財政対策法案により当面を糊塗しようというのであります。  佐藤長期政権は、すでに七年目に入っておりますが、政治資金規制、公害、物価、そして医療問題については無為無策に終始し、人間軽視の社会風潮をつくり上げ、医療の混乱を招いたことは九仭の功を一簣に欠いた佐藤内閣の最大の失政と申し上げたいのであります。(拍手)あらためて佐藤総理の陳謝、弁明を求めますと同時に、今後、医療問題の解決にどう取り組むのか、あらためて所信を承りたい。  先刻来政府は、今回の法改正抜本改正の一歩であると答弁しておりますが、詭弁を弄するもはなはだしい。社会保障制度審議会は、この法律案諮問に対し、抜本改正の一部を含むと称する医療保険改正案諮問してきたことは遺憾である、政府の再考を求めると、鋭くその怠慢を責めております。この法律案は、権威ある審議会答申を完全に無視したものであります。医療問題の解決には長い道のりが必要であり、関係審議会の協力なしにはできないはずであるが、それを百も承知しながら、あえて答申を無視して、かかる悪法を提出した理由は何かを明らかにされたい。  なるほど、今次改正案には被扶養者給付改善国庫補助の定率化など、見るべきものもないではないが、しかし、全体を通じ、あまりにも被保険者や事業主の負担による収入増対策に傾いております。単年度収入増七百四十億に対し、支出増わずか八十億強、年間六百五十億余の増収により収支の均衡をはかろうというのであります。累積赤字をたな上げするかわり、今後は政管健保赤字が生じても、資金運用部資金からの融資は一切認めない、いわゆる弾力条項を発動して保険料引き上げによりまかなうべしというのが、この法律案のねらいであると考えますが、大蔵大臣の所見を承ります。  この法律の対象である政管健保は、本来が中小企業に働く労働者の保険であります。収入面から見ましても、平均標準報酬月額は、組合健保のそれに比べて約一万三千円低いのであります。しかも罹病率は高い。今回、従来の定額補助方式を改め、給付費の定率補助に切りかえたことは前進でありますが、しかし、先ほど来指摘されておるように、国保四五%、日雇い健保三五%の国庫負担に比べると、あまりにも低過ぎると思う。私は、将来は、五%についても弾力的に措置すべきであると考えますが、大蔵大臣の見解をいま一度伺いたいと思います。  抜本改正の一環として、老人医療についてお尋ねいたします。  わが国は、この十年来急速に老人国家化しつつあります。今日、六十五歳以上の老人は七百三十万、人口の七%を占めておりますが、昭和七十年にはいまのスウェーデン並みに、人口の一四%を占めると見られております。労働能力を失った老人は、年とともに所得は低下し、反面、有病率は高まり、医療費はますますふえてきます。他面、核家族化の進行とともに、孤独な老人世帯はふえてまいります。六十五歳から七十四歳の老人層の有病率は、二十五歳から三十四歳の青壮年層に比べますると、約五倍にのぼっておるけれども、受診率は一・五倍にすぎません。これは現行医療保険制度のもとにおける三割ないし五割の自己負担が重荷であり、病気にかかっても医療にかかれない老人の貧困を示すものであります。国のおくれた施策にしびれを切らして、多くの地方自治体が、すでに老人医療無料化の方向に踏み出しておる。政府施策はあまりにもおそ過ぎはしませんか。この際、老人医療の無料化ないし公費負担について、いつから、どんな制度、どんな内容のもとに発足させようとするのであるか、この際、特に私は佐藤総理大臣からお聞かせいただきたいと思うのであります。  次に、目下社会的注目を浴びておりまする中医協をめぐる動きについてお尋ねいたします。  先般、診療報酬体系の適正化についての審議用メモがきっかけとなり、両医師会は中医協から全委員を引き揚げ、さらに関係十四審議会からも総引き揚げを行なったと伝えられております。診療報酬体系の適正化を求める声は、ほうはいたる世論であり、国民の強い期待であるだけに、中医協の機能が失われ、問題解決の機会を失することは遺憾であります。  社会経済構造の変化に伴い、老人病の増大、交通、公害病の頻発、医療技術の進歩、新薬の投与、人件費、物件費の値上がりなどにより、医療費の増大は当然であります。われわれは、医療費の増大そのものを憂えるものではなくして、医療費の急上昇の原因は何かということであります。  わが国の社会保障費の中に占める医療保障費は、五三ないし五五%であり、医療費は年々一五ないし二〇%の伸びで、国民所得の伸びを越え、欧米先進諸国並みに、国民所得の四・五%が医療費であります。しかし、医療費中に占める薬剤費は、ヨーロッパ諸国は二〇%以下であるのに、わが国のそれは平均四〇%、外来は実に五〇%が薬物であります。すなわち、医師の高度な技術が正当に評価されないまま、薬剤や注射を多用するほどに医師の収入がふえる診療報酬のあり方は、何としても合理的解決を急ぐべきであり、この解決なしには、国民のための医療確立することは断じてできないと考えます。  そこでお尋ねいたしますが、中医協の混乱を収拾するため、政府はいかなる努力を払ったか、再開の見通しはあるのか。診療報酬体系の適正化について、政府はあげて中医協にあずけるのか。政府みずからも、この問題解決に力をかすのか。現在、物価、人件費にスライドした診療報酬の緊急是正の要求が医師団体等から出されておりますが、これが処理についての政府の方針をお示し願いたい。  次に、薬価についてお尋ねいたします。  自由企業である医薬品産業保険医療を結びつけているのは薬価基準であります。この薬価基準価格と実勢価格の格差を是正することにより、保険財政の安定をはかりつつ、他面、医師の技術料の増大、診療報酬の引き上げに充当すべきであると思います。そこで、本年度の薬価調査、基準価格改定の時期はいつであるか、厚生大臣、明らかにされたい。  薬価基準をいまなお九〇%のバルクラインに維持しておるが、これは医薬品を不当に高く据え置く結果を招いております。これを引き下げ、下げた分は医師の技術料に振り向ける措置をとるべきであると思うが、厚生大臣の見解を承りたい。  次に、医療費不正請求問題についてお尋ねいたします。  国民保険下の今日、このような問題が少数とは申せ発生しておることは遺憾であります。架空請求、水増し請求など、医療費膨張の一因をなしておる不正を排除することは当然のことであります。  昭和三十五年、厚生省と両医師会の申し合わせにより、監査は、個別指導を中心にして、直接監査はやらない慣行になっておりますが、慣行を尊重しながらも、事故防止にはもっと積極的に取り組むべきであると考えるが、どうか。  ことに理解しがたいのは、医療費について府県別に著しい開きがあることです。昭和四十四年、被保険者一人当たり医療給付費は、政管健保の場合、京都府は東京都の二倍にのぼっておるのであります。このような、はなはだしい地域格差が生じた理由は何なのか、説明を願いたい。あわせて、今後の指導、監査、審査業務の運営について、厚生大臣、答弁を願います。  次に、医師不足問題についてお尋ねいたします。  医師不足とその偏在は、医療制度の危険信号であります。いまや公的病院、自治体病院すら深刻な医師不足に悩み、反面、開業医のみふえております。昭和四十四年わが国の医師総数は十一万五千九百七十四人、すなわち、人口十万に対し百十三人で、西欧諸国の中程度でありますが、アメリカの人口十万に対し百五十人に比べますと、まだまだ立ちおくれております。ところで、わが国でも七大都市は人口十万に対し百五十人であるが、町村部はわずか六十六人、著しい偏在であります。医師は都市に集まり、無医地区は全国二千九百二十カ所にのぼり、保険あれども医療なしというのが僻地僻村の実情であります。秋田自治相のいわゆる医専構想は、医師不足に悩む地方の切なる訴えを代弁したものにすぎません。医師偏在にどう対処するか、僻地医療をどう確保するかは緊急の課題でありますが、同時に、医師の絶対数不足もまた事実であります。  過般の大阪大学医学部不正入試問題も、医師不足の一面を持っておるだけに、これは社会問題であると同時に政治問題であります。文部省は、昭和三十七年以来定員増で医師不足に対処してまいりましたが、今後もこの方針を踏襲するだけなのか、医大、学部の増新設も計画的に進めるのか、国公立大学だけでなく、私立大学についてもこれが拡充、強化、新設などを認める方針なのか、文部大臣の答弁を求めます。あわせて、医師の確保、適正配置について厚生大臣の所見を承ります。  以上、私は、医療をめぐる当面の問題についてお尋ねをいたしましたが、医療保険制度の抜本改革は、長期展望のもとに計画的かつ段階的に取り組む以外にないと思います。病気の予防、治療、リハビリテーションを通じ、一貫した健康管理体制の確立医療機関の機能の分化など、医療供給体制の整備、医薬分業など医薬制度確立、公費負担医療の拡充など、抜本改革に至る道は広範であり、また複雑であります。同じ国民でありながら、保険料負担医療給付も相異なる制度のもとにあること自体が矛盾であり、不合理であります。事が国民の生命と健康にかかわる問題であるだけに、これが解決にじんぜん日を過ごすことは許されないのであります。すみやかに両審議会答申を求め、医療保険制度抜本改正に取り組むことが政府のとるべき道であって、このような片々たる財政対策法案で当面を回避しようとすることは断じて許されるべきでありません。いさぎよくこの法案を撤回するか、あるいはこの国会では無理をしないで、次の国会にまともな抜本改正につながる法案を再提出することが賢明であると私は考えますが、佐藤総理の御見解を最後に伺って、私の質問を終わることにいたします。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  41. 佐藤榮作

    内閣総理大臣(佐藤榮作君) 田畑君にお答えいたします。  まず、抜本改正をたな上げして、審議会答申を無視したとの御批判でありましたが、先ほど来繰り返しお答えしたとおりでありますので、これは答弁は省略させていただきます。批判は容易でありますが、実行はむずかしい、健保の問題は、まさしくその顕著な事例であります。建設的な御意見と積極的な御審議の上に、一歩でも制度改善を進めていただきたいものだと私は考えます。  お説のうちにもありましたように、この健保の問題はやはり長期的な観点に立って、やりやすいものから取り組んでいけという、計画的に進めていけとか、また医薬分業その他にもお触れになりましたが、まさしくそのとおりだと思います。したがって私は、今回提案いたしましたもの、これは十分審議を尽くしていただいて、ただいまのように、はたして私どもが主張するようにこれは抜本的の問題の第一歩であるかどうか、その点を十分御審議いただき、そうして御賛成が願えればぜひとも成立を期していただきたいのであります。  なお、厚生大臣からも説明するだろうと思いますが、これからは老人医療の問題が最も重要な課題だ、かようになると思います。最近は地方自治体におきましても、独自の医療負担を行なうところが逐次拡大する傾向にありますが、私もかような意味におきまして、この問題を当面の社会保障の中でも最重点課題の一つとして取り組んでまいる決意でございます。この私の決意だけを披露いたしまして、いまのお尋ねにお答えしておきたいと思っております。(拍手)   〔国務大臣内田常雄登壇
  42. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) お答えを申し上げます。  今回の健康保険法改正が、決して単なる赤字対策であるとは私ども観念をいたしておりませんので、二年前のお約束を実行するためにも、どうしてもここで抜本改正に取りかからなければならないという考え方のもとに、老人医療対策を含んだり、また、政府財政についての基本的な考え方の変更等をも取り入れまして、この案をつくりましたのでございまして、この案がなければ今後の抜本改正に私は踏み入ることができないと考えますので、非常に御理解の深い田畑先生の、どうかひとつ一そうの御理解をお願いいたすものでございます。  このことにつきまして、診療報酬体系の問題について重ねてお尋ねがございましたが、これについても先般来お答えを申し上げているとおりでございまして、診療報酬体系につきましては、もうすでに過去二回、昭和四十二年と四十五年のこの報酬改正の際にも一部踏み入っておるわけでありますが、今回は、各方面からのこのことについてのいろいろな課題を中医協に集めていただきまして、それをたたき台として検討を始めるというようなことにいたしておりますこと、もうすでに御承知のとおりでございます。  これに関連いたしまして、中医協で、これは各側の委員が代表されておる協議会でございますので、いろいろ意見もございましょうし、動きもあったわけでございますけれども、私はこの審議会が十分自重せられまして、そしてこの問題の審議が早晩、また一日も早く開始をされることを期待し、信じておるわけでございます。その際、お尋ねがございましたので申し上げないわけにはまいりませんが、一斉休診とか、保険医の総辞退というような話も出たように伝え聞いておりますけれども、私どもはそういうことがないように、最善の努力をいたしておるわけでございますから、よろしく御協力をお願い申し上げます。  また、この医療機関の不正請求のチェックの問題などがございましたが、これは私も申し、また委員の皆さま方も委員会で申されておりますように、こういう不正事件がありますのは十二万の医師のうち、ほんとうにごく一部分でありまして、そういう方々のために信用の高い医師全体が迷惑するというような形にもございますので、そういうことに対する国民の理解を高めるためにも、私どもは必要な監査はこれを励行する。また、日本医師会も、そういう趣旨で地方の医師会に通達も出されておりまするし、ひどい場合には、医師会を除名するというような通達をも出されておるようでございますので、このことにつきましては私どもも遺憾なきを期する考え方でございます。  また、薬価基準の問題につきましてもお尋ねがございました。これにつきましては、実勢価格というようなものを把握いたしまして、それに薬価基準を合わせるという努力をもちろん今後も続けます。この二月に薬価調査をいたすことにいたしておりまして、手配も済んでおりますが、それよりも先に、先般も申しましたように、添付の廃止というようなこともやっておるわけでございまして、医療費が薬だけのアブユースメントによって増高するというようなことがないように私どもはやらなければならない当然の責務があると考えておることを申し添えます。  老人医療のことにつきましては、総理大臣からもお話がございました。これはもう一厚生大臣だけの課題ではなしに、政府全体の大きな課題として、老人対策の重要な問題として取り組んでまいります。でございますから、その一環といたしまして、今度の健康保険法改正の中にも、会社に長年つとめられた方がやめる場合には、やめた後におきましても十割給付の継続給付を受けられるような、そういう制度、これはもうほんとうに皆さんが望んでおる制度でございますので、そういうものも取り入れてございますし、また、一般の家族は五割給付でございますけれども、七十歳以上の両親その他お年寄りにつきましては、七割給付改善するというようなことも取り入れておるわけでございますが、それだけにとどめません、これからまた皆さま方のお知恵も拝借いたしまして、何を医療保険でやり、何を公費給付でやるか、また、その折衷でどういうふうにやるかというようなことも、深刻にこれはひとつ検討をして進んでまいりたいと存じます。  医師の不足の問題につきましては、文部大臣からお話もございましょうが、私どもは、やはり絶対数におきましても若干不足である。アメリカ、ソ連並みにまでもいかなくても、英国、フランス並みぐらい、つまり人口十万人につきまして百五十人ぐらいまでは、ここ十年か十五年ぐらいの間には持っていくことがいい、こういうことで医師の養成、これも正しい基盤のもとにおける医師の養成ということを、文部省等にもお願いし、打ち合わせております。  また、ただ医師をたくさんつくりましても、配置が不適正でありますと、いまの僻地医療の問題等になりますので、相対的な地域的な配置の適正化ということにつきましても、皆さま方のお知恵を拝借しながら、十分善処をしてまいりたい、こういう考え方でございます。(拍手)   〔国務大臣坂田道太君登壇
  43. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 今回の不正入試事件と医師の不足とは、本質的には別個の問題であると考えますが、現在医師の絶対数が不足していることは事実でございます。このため文部省といたしましては、昭和三十七年度以降、逐年既設医学部の入学定員の増加をはかってまいりましたが、昭和四十五年度におきましては、国立の秋田大学医学部を新設したほか、私立大学でも三医学部が増設をされ、入学定員は四千三百八十人になっております。昭和三十六年度に対しまして、約千五百四十人の増でございますけれども、御承知のように医師養成にはかなり時間がかかります。したがいまして、この千五百四十人の増は、実際現在では、わずかに四百人ぐらいが増加しておるわけでございまして、昭和五十一年度になりますとこの千五百四十人がお医者さんになるわけでございまして、人口十万人当たり、いま百十三が百二十五ぐらいになるわけです。ところが、いま厚生大臣からおっしゃいましたように、百五十ぐらいまでは持っていきたい、こういうことでございますから、そういたしますと、あと千五百人ばかりの増員計画を立てなければならないわけでございまして、私は、昭和四十七年度以降、国立医科大学または医学部増設等を含めまして、国公私立の定員増あるいは私立医科大学の若干、という医師養成計画を立てましてこの千五百人を確保したい、かように考えております。  しかし、私立医科大学をつくります場合には、やはり人間の生命を預かる職業でございますから、十分の医師養成がなければなりませんし、また、医学部を、あるいは医科大学を私立でおつくりになる場合には、相当の資金というものがなければやれるものではございません。これに対しまして、国といたしましても、思い切った助成策を考えますと同時に、私学側におきましても、社会正義にもとるような、寄付金の強制というようなことがないような歯どめ策をもあわせ考えまして、この長期医師養成計画の具体案をいま練っておるところでございますが、いずれ皆さま方に御報告する段階に至ると思います。(拍手)   〔国務大臣福田赳夫君登壇
  44. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お答えいたします。  将来、保険財政赤字が出た場合に資金運用部から金を出さぬ、これが今回の提案のねらいではないか、こういうようなお話でございますが、ねらいは、保険財政を安定させまして、健康保険制度国民に十分なサービスができるようにというところにあるわけでありまして、金を貸さぬ——それは今回の措置を総合的に円滑に運営いたしてまいりますれば、これはもう結果として金を貸さぬでも済むようになる、そういうようなことでありまして、ねらいは、あくまでも健康保険制度抜本改正の一つの大きな柱である財政確立というところにある、かように御承知願いたいのであります。  それから、先ほど皆さんからもお話がありましたが、健康保険に対する五%の定率補助を、弾力的に考えたらどうだ、こういうお話でありますが、先の先まで考えておるわけじゃございませんけれども、まあこの五%というところで、当面、私は、保険財政の運営が可能である、こういうふうに考えておるのでありまして、いまここで、これを近い将来において改正するというようなことはお約束いたしかねます。(拍手)     —————————————
  45. 船田中

    議長船田中君) 浦井洋君。   〔浦井洋君登壇
  46. 浦井洋

    ○浦井洋君 私は、日本共産党を代表して、健康保険法等の一部改正案について、総理並びに関係閣僚に質問をいたします。  この改正案でまず問題にしなければならないのは、その内容国民の期待に沿うものであるかどうかという点であります。先ほどからの論議でも明らかなように、この改正案赤字対策だけではないか、あるいは抜本的対策になっていないではないかなど、多くの批判がございます。これは、単に与野党間のやりとりというだけではございません。社会保険審議会におきましても、反対の意見が強くて、意見を一本にまとめて答申を出すことができなかったのであります。また、医療団体、労働組合など、国民各界、各階層が一斉に反対を表明しております。総理にはこれら国民の大多数の声に耳を傾け、この改正案を再検討しなければならない大きな責任があると思うわけでございます。  そこで私は、二、三、重要な点についてお聞きをいたします。  第一点は、この改正案実施されることによって、一体国民は病気になっても安心して医者にかかれるのかどうか、病気を完全になおしてもらえるのかどうかという問題でございます。  この改正案によりますと、医者に通うごとに百円ずつの再診料を払わなければなりません。これによって、労働者はますます医者にかかりにくくなることは明らかであります。健保特例法は、四十二年に自民党が多数をたのんで強行成立させたものでございますが、その結果はどうだったでございましょうか。薬代の一部負担のために受診率が減ったことは政府統計でも明らかでございます。これは総理も御承知のように、患者が減ったのではなく、患者が、金がかかるからということで医者にかかりにくくなったのであります。  さらに、改正案によりますと、入院の場合、現在最初の一カ月だけ千八百円払うものが、一挙に月四千五百円に引き上げられ、しかも、六カ月にわたって払わなければならないことになります。また、被保険者は、今後ボーナスにも保険料をかけられるなど、保険料が大幅に引き上げられます。そうでなくても国民は物価高で生活費を切り詰めざるを得ないのに、負担が一そう重くなり、病気をしてもますます医者にかかりにくくなるのであります。総理は、いつも高福祉負担を強調されていますが、この改正案では、高負担があるだけで高福祉は全く見当たりません。これでもなお総理は、この改正案が高福祉をはかるものだと考えておられるのかどうか、明確にお答えを願いたいと思う次第でございます。  第二の重要な問題は、これまで保険料率改定は法の改正による以外にできなかったものが、今後は国会審議にかけずに、政府の権限で一方的に実施できるようになるという点であります。  これは、赤字が出れば国会にかけずに保険料を大幅に引き上げ、被保険者の負担でこれを解消しようとするものであります。御承知のように、保険料引き上げ内容とする健康保険法改正は、そのつど国民の大きな関心を呼び起こし、国会でも重要な問題となってきました。国民生活に大きな影響を与える問題である以上、当然のことであります。こうした経緯からしても、保険料率引き上げの権限を政府が握ろうとすることは、まさに国会軽視、議会制民主主義無視といわなくてはなりません。(拍手)このような改正案をあえて国会提出したことについて、政府の最高責任者として、総理の見解を明確に表明されたいのであります。  第三に、私は健康保険財政のいわゆる赤字を解消する問題について、二つの点で質問をいたします。  その一つは、国庫負担を大幅に引き上げることであります。  一九六〇年以来、歴代自民党内閣が積極的に推進してきた高度経済成長政策によって、国民総生産は、なるほど資本主義国で世界第二位になりましたけれども、それは同時に世界一の公害大国、世界一の交通地獄、世界一の物価高などをもたらしたのであります。このため、控え目な政府の統計でも、この十年間に病人は二倍にふえております。この国民の健康破壊の責任は、当然政府と資本家にあります。したがって、医療費増加の責任政府、資本家にある以上、健康保険赤字の解決のためには、国と資本家の負担をふやすことがその根本でなければなりません。(拍手)  この改正案は、国の補助を定率にし、五%にするといっておりますが、これは四十二年度の国庫補助が六%、四十三年度の国庫補助が五・四%であったのに比べてみても、明らかに引き下げられるわけでございます。これを大幅に増加することは当然のことであります。政府政治姿勢を変えさえすれば、財源は十分にあります。私は、当面国庫補助を三割にふやすことによって、保険料引き上げずに、本人十割給付、乳幼児やお年寄りの医療の無料化を直ちに実施すべきであると思います。現に、イギリスやフランスでは、国と資本家の負担が七割から八割に達しております。これこそ、いま国民が要求をしておるところであります。健康保険法改正案とはこういうものでなければならないと考えますが、総理のお考えをお尋ねいたします。(拍手)  いま一つは、医療費の中で四割をも占めておる薬代を軽減することであります。そのためには、製薬会社の販売価格を引き下げなければなりません。製薬産業は、ここ三年来二〇%台の高成長を続け、四十五年度は一兆円の生産高をあげております。国民は、毎日大量の薬の宣伝広告に取り囲まれて生活しておるといっても差しつかえありません。そして、これほどの宣伝広告費を使いながら、なおかつ公表利益だけでも、昨年一年間で、武田製薬は百四十三億円、大正製薬は百一億円というばく大な利潤をあげております。  こうして国民保険制度の中で、医療保険や公費医療を通じて製薬大会社が大もうけしておるのを野放しにしておいて、赤字だから保険料や患者負担をふやすというこの改正案は、国民無視、大資本本位の政治姿勢のあらわれといわざるを得ないわけであります。(拍手)この薬の販売価格を二割引き下げるならば、いわゆる赤字はほとんど解消されます。総理は、薬の販売価格について、蛮勇をふるってこれを押えるべきであると思いますが、いかがでございましょうか。  以上の二点を実行するならば、いわゆる赤字というものは解消し、国民の健康を守るために健康保険の健全な運営をはかることができます。これらについて、総理並びに大蔵大臣、厚生大臣の明確な答弁を求める次第であります。  以上の点から、私は、政府国民を犠牲にする健康保険法等の一部改正案を直ちに撤回して、安心して医者にかかれる健康保険法の真の改正を行なうよう強く要求をして、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  47. 佐藤榮作

    内閣総理大臣(佐藤榮作君) 浦井君にお答えいたします。  まず、今回の健康保険改正案が高負担のみを迫るものだ、したがって、これを撤回しろと、こういうお話でございますが、原因、理由はともかくとして、先ほど来、しばしばお答えいたしましたように、これから御審議をいただくのでございまして、ただいま撤回する考えのないことをひとつ御了承おき願いたいと思います。  なお、今回の改正は、給付内容改善をはかり、定率制の国庫負担によりまして健保財政の健全化を進めたものでありまして、高負担のみを追及するとの批判は当たっておりません。このことはよく御理解いただきたいものと考えます。浦井君がお医者さんであるだけに、この点はよくおわかりだろうと思います。  次に、保険料弾力的調整は、短期保険のたてまえである単年度収支の均衡を確保するために必要な措置であり、健康保険組合、各種共済組合の保険料率につきましては現に認められているところであります。今回の改正によりまして、弾力的な調整をはかるといっても、その範囲については国会で御審議願うこととしておりますので、国会軽視の御批判は当たらないものと考えます。なお、この点につきましては、厚生大臣からつけ加える点があろうかと思います。  なお、国庫負担を増額すれば老人やあるいは小児、児童に対する治療は無料になる、これは金額をどの程度ふやせばという、そういう点にまでお触れになりましたが、私どもは、いま、今日の状況のもとにおきましては、ただいまの程度で国庫の負担、それは限度にきておると、かように考えております。  また、最後に薬の問題に触れられまして、二割下げるということを御提案になりました。私は二割が適当なのか、一割が適当なのか、三割が適当なのか、そういうことはよくわかりませんが、薬価の適正化をはかるということは、これは私どもの、本来政府責任だと思っております。したがいまして、薬価調査を行なって、その実勢価格に合わせて改定して、全般的には低下の方向に向かっておると私は考えております。大体、二月を基準にしてただいまも調査をしておるような次第であります。  その他の点について残っている点があれば、厚生大臣からお答えいたします。   〔国務大臣内田常雄登壇
  48. 内田常雄

    国務大臣内田常雄君) 浦井さんにお答えを申し上げますが、今回の私どもの改正は、抜本改正の第一歩であり、第一着手であり、また抜本改正の基礎構造でございまして、これなくして私は抜本構造はできない、こう考えますことは、先ほど来ことばを尽くし、また誠意を披瀝して御説明を申し上げているとおりでございます。  それから、患者の一部負担についての御批判がございましたが、御承知のように、医療費は年々増高いたしておりまして、それに対応して保険料負担も増加をいたしておりますわけでありますが、この保険医療について全額の給付を受けておられる方、今回の一部負担はそういう方だけについての問題でございますが、全額の医療給付を受けておられる方と、保険料は納めるが医者にかかる必要もない方との間に非常な落差、格差、負担の不均衡ができておりますので、患者の方にたえ得る一部の負担をしていただく、こういう趣旨でございまして、このことはもうソ連でもスウェーデンでもやっていることでございます。決して私どもは、受診制限をしようという意図ではございませんことをぜひ御理解をいただきたいと存じます。  保険料の弾力調整条項につきましては、もう総理大臣からお答えを申したことに何も私からつけ加えることはございません。あのとおりであり、先ほどから申し上げているとおりでございます。  薬剤費の問題につきましては、これも私から申し上げているとおりでございまして、薬剤費が医療費総額の中で非常に高い割合を占めるというようなことでいいのかどうかということにつきましては、いろいろ批判もあることでございますし、私どもも十分承知もいたしておるところでございますので、このことにつきましては、今回の抜本改正とあわせまして、できる限り必要な措置を講じまして、御理解もいただきたい、かようなことで進んでまいりたいと思います。(拍手
  49. 船田中

    議長船田中君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  50. 船田中

    議長船田中君) 本日は、これにて散会いたします。    午後四時五分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 内田 常雄君         郵 政 大 臣 井出一太郎君         国 務 大 臣 西田 信一君         国 務 大 臣 山中 貞則君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君      ————◇—————