○原茂君 まず
佐藤総理、今回
政府提出の
予算三案は、
景気に対する中立でありますとか、あるいは
刺激を与えるとかに明け暮れいたしているだけでございまして、端的に言いますならば、まさに
財界予算と感ずるのであります。
国民がいま切実に悩み、苦しみ、解決を求めている
生活とは全く無
関係の、これまた端的に言わしていただくなら、
国民生活無視の
予算でございます。
したがいまして、私は、
日本社会党を代表いたしまして、
政府の
予算案に
反対し、私ども三党
共同による北山議員提案の
予算の
編成替えを求める
動議に、確たる自信のもとに
賛成の意を表明いたすものであります。(
拍手)
ただいま、藤田議員から熱意ある
討論をお伺いいたしましたが、どうか三
党共同提案、具体的な施策を含めまして、すでにプリントを配付いたしておりますので、もう少し勉強をしていただくように、この際、
要望を申し上げておきたいと思うのであります。(
拍手)
第一に、本
予算案には明確な理念がないことを指摘いたします。
七〇年代に入り、日本の
経済と産業構造は歴史的曲がり角にきておりますことは、御
承知のとおりであります。当然
政府の
財政は、それに対しリーダーシップを発揮しなければなりません。しかるに、ひずみの解決というだけであって、
日本経済発展のパターンをきめていくような
財政政策は、遺憾ながら明示されておりません。これまでのような型の成長では、
国民生活を破壊する結果を招いていることを、
政府自身が身にしみて認めておるところであります。
本
予算案は、昨年に比べまして、
一般会計で一八・四%、
財政投融資計画一九・四%という
予算規模拡大の内容は、これまでの高度
経済成長
政策のパターンとほとんど変わるところはありません。これでは、ていさいのいい増税や
物価高、交通災害や
公害によって生命の安全をすら脅かされている
国民は、相も変わらずやり場のない不満と、言いようのない不安におののき暮らすほかはございません。大根一本を、目刺し一くしを恨めしげにながめる主婦たちは、ますます
政治不信へとおちいっていきます。(
拍手)若い青年男女が、
住宅がなく結婚できずに、性の混乱と過激な行動へと走ることを私は悲しみます。
佐藤さん、これは一国の宰相たるあなたの
責任なんです。修身を説き、道徳を説くことで解決されるものでは断じてございません。事態の解決には、まさに総理の勇断と、実のある
財政の基本的大転換が求められています。いまからでもおそくはありません。一つ、無過失の
賠償責任を含む
公害の規制をしなさい。二つに、無
計画な土地利用と民間
資本の手当たり次第の
開発にブレーキをかけなさい。三つに、流通機構を
改善する手を打ちなさい。四つ、全国の市長を集めて、都市改造の方法について相談をしなさい。これらの手を打てば、そうして、
予算案を文字どおり
社会資本増大の方向に切り変えることができますならば、少なくとも
経済発展のパターンを変えていくことが可能なのであります。
法務大臣が
国会軽視の発言をしまして、大臣のいすからすべり落ちました。この
国会軽視は、
予算審議においても、
財政投融資計画に対し
国会の
審議議決をさせない
政府の態度にも示されておるのであります。
財政投融資の額は総
予算の半分にものぼっております。
国民の貴重な保険、貯金等を集めておいて、それをかってに大
企業本位に使うということは、
国民にとって心外きわまりないものであります。(
拍手)
政府がこのような態度をとるからこそ、出先の
政府機関が
企業と癒着するということが、たとえば石原産業のごとく、または北海道農地の不当な買い取りのごとく、数多くの不正が恥もなく行なわれているのであります。(
拍手)全く残念なことです。
本
予算案は美辞麗句に包まれておりますが、巧言令色仁少なしということをまのあたりに示してくれました。(
拍手)心からの怒りを込めて、この
国民生活不在の
予算の組み替えを求めるものでございます。
第二に、健康保険問題の処理に対する姿勢を改めることを求めます。
根本的には
保障の理念、福祉の精神から後退してしまいました。
昭和四十二年以来、
抜本改正を行ないますの公約は、口をぬぐい通しではございませんか。そうして今回、
赤字のしりぬぐいを
患者、被
保険者に押しつけてまいりました。病にかかった人をこそあたたかく包むのが
政治のあり方ではございませんか。病人に
赤字のしりぬぐいをさせることが、総理の言う
人間尊重だったのでしょうか。
日本の
社会保障の水準は、西ヨーロッパに比べまして、はるかに貧弱でございます。
国民所得の中の
社会保障給付の水準は六から七%、西欧の二分の一から三分の一でしかございません。この姿を根本的に変えていく長期展望を持たないで、ただ合理化し、
赤字をなくし、帳じりを合わせるというのが
政府のやり方でございます。しかもなお、病にかからないように、予防を一体どうするか、
社会復帰をどう
考えてやるか、老人、心身障害者の保護、公的施設をどのようにして早急な手当てをしてあげるかなど、このような差し迫った課題をもなおざりにしているこの
予算にどうして
賛成することができましょうか。(
拍手)真の
国民保険の問題を、いまのこの
赤字をどう解決するかという絶好のチャンスをとらえて、逆に包括的に取り扱うことこそ、調和の精神を説いてきた総理の絶対的任務ではないでしょうか。
国民の健康の調和をどう果たしていくか、そのためには健康保険
制度の抜本的
改正を断行しなければだめなのであります。わが三党組み替え案は、
人間尊重を実現し、
国民、私たちの健康を確実に私たちの手にすることができることを示しております。
第三に、
公害を追放してみせるという強い姿勢が
予算案の中にございません。
佐藤総理、あなたはひいき目に見て、せいぜいハムレットであります。
公害追放の
国民の総意と、それにほおかむりを志す
企業との間にはさまれまして、右に傾き左にゆれております。宇都宮での一日内閣で、総理は、無
過失賠償責任の
立法を
考えると言いました。ところが、
財界の圧力の前にこれを放棄し、ただ
予算案で、下水道
計画の六百六十五億を含めて九百二十三億円のわずかな
公害予算で済ませてしまいました。この姿勢はハムレットそのものではないでしょうか。東京都の美濃部知事は、二兆円を投じて
公害追放十カ年
計画を策定し、今回の
公害関係予算は千二百八十億円であることは御
承知のとおり。(
拍手)東京都より少ない国の
公害予算、私はハムレットのあなたに同情の念を禁じ得ません。しかし、それを許すことはどうしてもできないのであります。(
拍手)
第四に、米に対する
政府の無
責任さを問題にします。
政府は、食管
制度の根幹を堅持し、
消費者の
負担を
増加させないと明言いたしてまいりました。
消費者の
負担は一体どうなりましたか。お米は安くなりましたか。また、農家も食管
制度のなしくずし
廃止という
現実の前に立たされておるのが現状であります。米の買い入れ制限と大幅減反は、まさに農政の失敗であるという厳粛な事実がここにあるのであります。失政のなおこの上に積もれかしといわんばかりの本
予算案に、どうして
賛成することができますか。
反対です。
第五に、都市改造に積極的に取り組む時期であることを訴えなければなりません。
都市への人口
集中は、目をみはるものがございます。東海道メガロポリスと呼ばれ、
人間はこの地帯にあふれてしまいました。これはすべて高度
経済成長
政策がもたらしたものであります。
こうした中で、
国民の
生活構造は大きく変化しました。一例をあげるならば、レジャーを求めて週末には人口の大移動が行なわれています。レジャーでなくても、毎朝毎晩、郊外から都市
中心部へ、
中心から郊外へと、たいへんなエネルギーの放出を行ないながら移動いたしております。かつて四世紀に、ゲルマン民族の大移動が始まり、ヨーロッパの地図が塗りかえられましたとき、その移動は数万人だったというのですから、おそろしいばかりの変化が今日行なわれているわけであります。
このような変転に目をつぶり、
政府の高官が
政治駅をかってにつくるという次元の低い姿勢で交通問題などにも取り組んでおります。これでは交通体系革新の道筋を示すことはとうてい不可能であり、
国民生活構造の変化に対応できないのもしごく当然のことといわなければなりません。(
拍手)ましてや、都市問題の解決とはおよそほど遠い施策であります。
東京では、ここ数年のうちに大地震が発生する危険があると警告されておることは御
承知のとおり。そのときには、東京の密集地帯の人口の大部分が悲惨な災害をまともに受けることは目に見えております。都市改造に金をかけるときです。
また、自動車の激増で、都市交通は麻痺してもおります。通学の子供が自動車の間を縫って学校に通っております。また、遊び場がなくて、道路で石けりやボール投げをいたしております。これは子供がいけないのですか。遊び場をつくってあげない
政府が悪いのではないですか。総理、そうでしょう。横浜の飛鳥田市長がちびっ子広場をつくりまして以来、燎原の火のごとく、全国の都市で子供の広場づくりがいま行なわれています。全国の市長に聞いてごらんなさい。もっともっと子供の広場をこしらえてあげたいのだが、国からのお金がこなくてと嘆いております。総理、あなたの耳にはその声が届いておりませんか。
大都市の膨張に対して、流通機構の整備が、施設の面でも、組織の面でもまさにおくれております。その上に、
政府は
公共料金の引き上げを行ないます。これらが、
物価上昇の最たる
原因であることを指摘しておきます。
私たちの組み替え案は、交通、
住宅、教育を、このような都市改造の観点から立てられたものでございます。
第六に、
防衛関係費を減らすことを主張します。
いまこそ、アジアの平和と
中国、ソビエトとの
関係の
改善に
わが国は積極的に取り組まなければなりません。このときにあたって、
防衛費を大幅にふやしていくやり方は、歴史の歯車を逆行させようとするものであります。
防衛関係予算六千七百九億円というのは、昨年に比べて一七・八%、一千億円の急増であり、来
年度総
予算中に占める割合は、実に約七・一%であります。これに四十七年以降先食いの
国庫債務負担行為と
継続費で認められた兵器発注三千七百億円を加えますと、一兆四百九億円の膨大なものになるのであります。これでは、日本軍国主義の復活だと世界の各国から冷たい目で見られることになるわけであります。日本の自衛隊について、攻撃兵器ナパーム爆弾を持っていることなど、数多くのおそるべき事実がサイミントン
委員会議事録についての討議でいまや明らかになりました。
国民が知らない間にあまりにも不当なことが進められ過ぎます。
児童手当、健康保険、お米、自動車重量税など、
中小企業を
中心にいつの間にか全く増税と同じ大幅支出増を押しつけられている
予算案、大
企業に比べ、まさに民主
政治の公平の
原則にもとる
政治ではありませんか。内に公平を欠き、外に対外
進出の姿勢、ことばをかえて言いますなら、右手に軍国主義、左手にエコノミックアニマルの旗を掲げて、はたして世界の人々から親しまれ、深い愛情のきずなで結び合うことができるでしょうか。
佐藤総理、われわれ三党の組み替え案は、日本の高福祉、世界の平和と友好、それへの第一歩となるものであります。(
拍手)
物価の
値上げは許さない、
公害は許さないという立場を貫いております。総理、あなたに心があるならば、いまこそみずから率先して
政府原案に
反対され、高福祉と平和の花束を両手に高く掲げる組み替え案に私とともに
賛成の立場に立っていただくことを心から
要望いたします。
最後に、
佐藤内閣の
政治姿勢につきまして、御忠告申し上げたいと存じます。
その第一は、いまのままの姿勢を続けるなら、いかに院内三百の大台に肩で風を切っても、院外
国民大衆の強力な倒閣運動なり、不測の事態の起きるであろうことを心に銘記すべきであると存じます。
その第二は、保守党内閣の姿勢を正すあかしとして、正しい
政治資金規正法の
確立を急速に行なうべきものと信じます。
三つ目に、最後に、
現行憲法は二百八十万同胞の命であがなった魂の安息所そのものであります。伝えられるがごとき自民党内の不遜な、この二百八十万日本人の魂を冒涜し、挑戦するがごとき改悪への動きなど断固排除し、改悪のための小選挙区制などに手を触れずに、平和を念願する全
国民、特に英霊の遺族とともに、
現行憲法第九条
中心の諸要件の擁護に
佐藤総理の命をかけた今後の施政を衷心から期待申し上げて、働く全
国民とともにする
討論を終わりたいと存じます。(
拍手)