○竹入義勝君 私は、公明党を代表して、わが国の平和と
国民生活を守るために、
内外の諸問題について、
佐藤総理にその確固たる所信をただすものであります。
近代国家として新しいスタートをいたしました明治、大正のわが国の基本国策は富国強兵でありました。しかし、富国はそれほど実現せず、ただ強兵のみが着々と具体化し、ついに悲劇的な敗戦を招き、かつての先人が築こうとした富国強兵の栄光の夢は挫折いたしました。私は、このような強兵策が当然おちいるべき宿命であったと思うのであります。そして、敗戦より今日まで、
日本民族は再びししとして努力を重ね、新たなる
日本の建設を目ざしてまいりました。
国民の望んだものは平和と繁栄であり、
福祉であったことは言をまたないのであります。
思うに、今日までわが国は、
政治も経済も社会も、おおむね
昭和二十年ごろの占領時代に設定されたレールの上を、目標を物質的繁栄の一途にしぼり、ひたすら走ってまいりました。そして、そのレールでは、わが国の平和も
福祉も根源的に実現できるものでなかったという反省が今日求められていると思うのであります。(
拍手)
すなわち、形だけの
国民総生産は増大し、物質的繁栄は総体的に向上しましたが、それにもかかわらず、
物価の
上昇は
国民生活を破壊せんばかりであります。水と空気は汚濁し、
公害は民族の生存そのものにかかわるほどのしょうけつをきわめているのであります。壮麗なるビルはできました。しかし、通勤通学電車は殺人的混雑であります。密集住宅と街路の混雑、騒音、住宅不足、交通事故など、
国民の最低生活ラインすら保障されていないというべきであります。農村にあっても、未来をになう青年が定着せず、かつての村落社会は没落しつつあるというべきであります。
さらに、山積する国内問題に並行して、国際的にもエコノミックアニマルと嫉視され、イエローヤンキーなどと批判され、軍国主義の復活と脅威の対象として非難され、繊維、電気製品など、日米の経済的角逐も激しくなり、いわば
自民党政権にとって
唯一の友人でもあった
アメリカとの間にも冷たい風が吹いてきております。また、近隣最大の国家である
中国とは、頑迷なる
政府の
中国封じ込め方針により依然として途絶状態にあります。
七〇年代に入った今日、戦後二十五年を経た今日、このような
内外の情勢を冷静に分析するとき、かつてのわが国が、富国強兵の国策のもとに国家の栄光を夢みて、結局挫折してしまったごとく、今日の
自民党政権は、物質的繁栄、富国の名のもとに国家目標を見失い、
国民無視、生命軽視に堕落し、いまや
内外に大きなつまずきの
原因が累積していると言っても過言ではないと思うのであります。(
拍手)
今日こそ、人間のしあわせ、生きがいという原点に立ち戻り、人間性豊かな平和
福祉国家建設のため、これからの
成長と努力の正しい目標は何か、国家にとって正しい価値ある目標は何かを
考えなければならないときだと思うのでありますが、
総理の所信を伺いたいのであります。(
拍手)
さて、先日
総理の
施政演説を伺ったのでありますが、従来とかく小手先の弁解めいた話にとどまり、未来への展望を欠いたものに比べ、今回の七〇年代を展望されようとする姿勢は、一応前進らしいものと評価してよろしいと私は思います。しかし、この
総理の展望は、救いがたい楽観思想と自画自賛のひとりよがりにささえられたものであり、私が先ほど来申し上げた、戦後二十五年間の
自民党歴代
政権の物質的繁栄至上主義のもたらしたおそるべき弊害について何の反省もなく、ましてや、このような歴史のターニングポイントにさしかかった深刻な認識もありません。なぜわが国が今日国際的にも嫉視されることが多く、軍国主義の復活や経済侵略といわれねばならないのか。なぜアジアの平和と
福祉伸長のリーダーとして尊敬されることが少ないのか。なぜ豊富の中の貧困という現象をもたらし、不況感の漂う中での
物価上昇というふかしぎなる経済現象が生まれ、社会資本の飛躍的増大あるいは技術の進歩にもかかわらず、
生活環境がかくも悪化しなければならないのか。何ゆえ土地が上がり、
公害は解決しないのか。さらに、何ゆえ、
総理、あなたや
自民党政権が
政治不信の的となり、
政治公害のシンボルのごとく弾劾されねばならないのか。
総理、あなたにはこのような諸問題の本質に横たわるものは何かという、みずからの問いかけが欠けているのではないでしょうか。(
拍手)
総理は先日の所信表明で、
日本列島の
未来像についてるる語られました。その内容は、一見雄大であり、
バラ色であり、
日本の経済、社会のバイタリティーをあらためて再認識するほどでありました。また、そのように建設と発展が進まねばならないと思うのは私一人ではありません。しかし、私たち
国民の生活感情から見て、いかにもきれいごとの印象をぬぐい得なかったのであります。
昨日、わが党は、かねてより全党的エネルギーを結集して取り組んできた住宅総点検、すなわち民間木造賃貸アパートの結果を公表いたしました。そこには、わびしい、悲惨な、恵まれない庶民の
政治に対する不満と衝突が色濃くにじみ出ているのであります。詳細は当該委員会での質問に譲りますが、おもなる特徴を申し上げれば、居住世帯の五一・二%が一部屋であります。一人当たりの畳は二・八畳、台所を炊事場と洗たく場に併用しているのが三〇%、全く太陽の当たらない世帯は二四・八%、火災のとき逃げ場がないと答えた世帯が六〇%、話し声が隣に聞こえる家族が三分の二、子供が生まれたらアパートを出なければならない世帯が二〇%、家賃が平均収入の二〇%以上の世帯が一七・五%、関東では二三・一%、契約期間が二年という短期が約五〇%、二年たって契約更新料をとられたのが三〇%、そのときの家賃を上げられたのが四五%など、列挙すればきりがないので省略しますが、これほど今日なお
国民が住宅に困窮し、最低ぎりぎりの生活を強要されているということを具体的に如実にこの総点検は物語っているのであります。(
拍手)
総理がいかに美辞麗句を並べ、
国民総生産第二位を誇示されても、いかに雄大なプロジェクトを説かれても、われわれ庶民の生活感情は今日の
政治を許そうとしないでありましょう。
総理は、この
国民の訴えをどのように受けとめられるか。ほんとうの
未来像は、
物価に苦しめられ、
公害に痛めつけられ、住宅に困窮する
国民の悲しみと苦しみと対話し、ともに涙するヒューマニズムがなければ、全
国民的共感を得られないと思うが、
総理の確たる所信を伺いたいのであります。(
拍手)
このことは、さらに老齢人口の増大が急速に進むことによって、重大な社会問題、
政治問題になっている老人
福祉問題にも言えるのであります。老人
福祉年金は、月二千円を、たった三百円の
増額でお茶を濁し、特に寝たきり老人やひとり
暮らし老人に対する
福祉は、きわめて冷淡なものといわねばなりません。これらの施策を充実、向上するのは何よりも重要といわねばならないのであります。さらに、働く意欲を持つ老人に対する職業のあっせん、老人医療の無償化、老人ホームの増設等、今日の社会の発展、繁栄をもたらすために第一線に立って働いてこられた老人に、生きがいと希望を与える老人
福祉対策について、
政府は今後どのように力を入れていく決意か、お答えを願いたいのであります。(
拍手)
また、懸案の児童手当は、四十六年度末から不十分ながら実施される運びとなり、小さな一歩を踏み出したのでありますが、私は、これを評価するのにやぶさかではありませんが、当初
国民が望んでおった義務教育終了前の全児童を対象とするものと比較すれば、きわめて小範囲のものであります。
政府は、今後これを拡大充実する
考えを明らかにしていただきたいのであります。
さて、
昭和四十六年度
予算について、福田大蔵大臣は、景気動向に留意した、
公害対策と
物価対策に重点を置いたなどと説明をされております。景気動向に意を用いたことは、
財界から、財政がやや刺激的色合いが出ており、たいへんよろしいとおほめの
ことばがあったぐらいでありますから、確かにそのとおりだと思います。
しかし、これを裏返せば、とりもなおさずきわめて景気刺激的インフレ
予算であることを物語っております。特に、
財界、大
企業からの強い要請による財政の弾力的運用と称する
政府保証債発行の弾力条項、予備費と
国庫債務負担行為の
大幅増額等、まさにインフレ助長の
予算運用が財政民主主義を踏みにじって行なわれようとしているのであります。これは、明らかに
国民生活の安定や
物価の安定等を犠牲にした産業第一、景気刺激優先の
政策となり、
国民無視がきわめて露骨にされております。
公害にも力を注いだと言われておりますが、
一般会計九百二十三億円の
公害対策費の三分の二は下水道整備の補助金であり、純然たる
公害対策費は皆無にひとしいのであります。また、残りの三百億円のほとんどは大
企業に対する補助であり、
公害被害者の極端な冷遇といわれてもやむを得ないと思うのであります。
前
臨時国会で、野党が、
公害を撲滅し、生命を守り、自然環境を整備するための追及をいたした際、与党推薦の参考人ですら、野党の案が正しいと評価されておるのであります。(
拍手)
環境保全基本法ほか一連の対案には
政府は一顧だにしなかったのであります。無
過失損害賠償
責任制度についても、本
国会で何らかの結果をわれわれは期待しておりましたが、口をぬぐって全く無視しておられます。
総理は、無
過失責任をどう制度化するよう
考えておられるか、重ねてお伺いをしたいのであります。
われわれは、前
国会で成立した十四法案が、数多くの欠点、つまり大
企業への遠慮と、生命軽視の傾向が濃厚であったことをいろいろな角度から批判し、その代案を提出いたしました。さらに、このような法案が、
予算の十分な裏づけなしに実施されることになれば、地方公共団体への
負担限度をはるかに越えた財政的しわ寄せとなり、
中小企業の死活にかかわる
負担になることを憂慮いたしてまいりました。
今回、
予算案を見たとき、
公害対策推進のため、
政府は一体どれほどの誠意をもって臨んだであろうか。何の誠意もないといわざるを得ないのであります。(
拍手)また、地方公共団体にはどれだけの財政援助をされましたか。このような貧弱な
予算でほんとうに
公害がなくなると
総理はお
考えでしょうか。しかと伺っておきたいのであります。(
拍手)
次に、
国民生活の優位を確保するために最も重要なことは、
物価の安定であります。
四十六年度の
政府の経済
見通しは、
経済成長を名目一五・一%、実質一〇・一%とし、これに対し、
消費者物価騰貴を五・五%としております。しかし、四十六年度
予算案で見る財政
政策が、どこから見ても
企業の救済と景気刺激の要素に偏重していることから、今日すでに七%をこえた
消費者物価の騰勢を鎮静し、五・五%に押え得る
保証は見当たらないと断ぜざるを得ないのであります。
政府の
経済成長政策によって高進されてきたわが国の異常な
物価高騰が、
国民生活の上では、むしろ
経済成長の代償としてマクロ的な
国民所得の向上の中で吸収されるという
政府の甘い
考えの中で騰勢を強めてきたことは、いなめない事実であります。経済最優先の
政策による
物価の高騰が、
国民大衆の生活の物心両面に重大なる被害を及ぼし、また
物価の高騰は、
住宅建設や
生活環境の整備をおくらせ、行政需要の消化を停滞させ、ひいては今日の三K問題にまでも及ぼしていることを
政府は深刻に反省をすべきであります。
そこで、
物価対策予算を見てみますと、前年より二〇%増の千二百五十億円となっておりますが、その大部分、すなわち一千億円以上も公営住宅
予算や地下鉄工事費が
物価対策の名で計上されているごまかしであって、何ら
物価対策に見るべきものがないのであります。小規模な個別的
物価対策の寄せ集めにすぎないものであり、
物価対策の具体的きめ手である低生産部門への集中投資、流通コスト低減の抜本
対策などは、何ら手をつけられていないではありませんか。ましてや、独占的
管理価格を取り締まるための、有効かつ積極的な独禁法の
適用のため必要な改正も提案されていないのであります。昨年来、経企庁長官が公共料金凍結の提案をされ、われわれは重大な関心を持ってこれを見ておりました。結局、厳に慎むというしり抜けの申し合わせにとどまり、郵便料金、
電報料金、医療費などの値上げが確定的となってしまっております。しかも、全国
消費者の激しい反対にもかかわらず、
消費者米価を抑制してきた
物価統制令の
適用をはずして、
消費者米価の
値上がりを黙視していることは許せないことであります。
総理は、
物価の安定を何ら真剣に
考えていないと非難されてもやむを得ないと思うのでありますが、どのように
物価を抑制される決意がおありか伺いたいのであります。
さらに、経企庁長官は、とかく
所得が増大すればよいといろ
所得至上主義から脱却せよ、
所得水準の
上昇が早過ぎることに
物価上昇の一因があったと先日申されましたが、今日、賃金
上昇が
物価騰貴の
原因であり、
物価対策に名をかりた賃金抑制をもくろむ危険な動きが
政府部内にあるといわざるを得ません。また、
財界はこれに大いなる期待を寄せているのであり、このように、大型景気の挫折、景気停滞からの脱出を、安易なインフレ
政策と
所得政策に依然として求めようとする
財界人の姿勢は許されるものではありませんが、このような
所得政策に
総理はどのようなお
考えをお持ちか、しかと伺いたいのであります。
日本経済が今後安定した発展を遂げていくためには、先に述べました基本的な問題をはじめ、
公害防止、
物価問題、都市問題等の
国民の生活と生命を守る重大な課題を解決していかなければなりません。また、それと同時に、抜本的な解決を引き延ばしている
農業の
構造改善、国鉄の合理化、行財政改革などの問題にも、根本的に取り組まなければならない段階にきております。
これらは、いずれも単なる
予算編成上の課題というよりも、国としての基本
政策をいかに進めるかというものであります。
政府は、国の基本
政策を明確にせず、大きな問題に取り組むことはすべて回避し、きわめて不合理な
予算案となったことについて、私は、
政府の
責任を追及するとともに、
総理の
責任ある
答弁を求めるものであります。
昨一九七〇年は、激動と変革の七〇年代の幕明けにふさわしく、
内外とも波乱に満ちた重要諸問題が提起されました。中でも、
中国の国際社会に投げかける
影響力はますます増大し、いまや、
中国を抜きにして世界の
政治、国際
政策の立論が困難になってきたのであります。わが国といたしましても、少なくとも、アジアにおけるあるべき平和な国際政局の理想像を明確に打ち立て、しかも、国際社会のメカニズムを踏まえた、現実的かつ具体的な外交
政策をもって対処していかねばならない時期が来ているのであります。
しかるに、過日の
施政方針演説の中においても、何ら前向きに現状を打開しようとする意欲も方策も見当たらず、いたずらに日米協力体制の強化をうたい上げ、従来の
アメリカ追随、主体性なき外交、すなわち、
中国敵視、締め出し
政策から一歩も前進していないことは、もはや無策を越えて、
日本の将来にとって重大なる
政治的
責任というべきであろうと思うのであります。
それは次の事実によっても指摘されるのであります。すなわち、
総理は年頭の記者会見において、
日中国交回復を議題として大使級会談を引き続き呼びかけていく旨を表明されました。ところが、
総理は一月四日の記者会見において、
中国問題は二国間での処理はできない、韓国、
台湾、
アメリカ、ソ連などの意向がきまらないと
中国問題は片づけられない、と後退し、さらに一月十一日発行のビジネス・ウイークによれば、
中国との正式
国交回復問題について、私が
政権を握っている間は変化はない、と国論に逆行するごとき発言があったと報ぜられております。
このように、
総理の
考えが変転する、しかも、そのたびにうしろ向きになっていくということは、今日わが国外交の最重要課題を解決する能力もなければ、
国民世論をまっこうから受けとめる誠意もないと断定せざるを得ないのであります。これらの発言について、その真意を端的に伺いたいのであります。
さらにその反面、一見前向きのごとき印象を与える対
中国との経済その他の
交流などの発言もあり、
総理は、対
中国政策に何らかの実質的内容を持った変更のための検討を始める決心がおありかどうか、お答えをいただきたいのであります。もし検討されるおつもりありとするならば、どういう点をどのような方向で検討されるか、御説明願いたいのであります。
この大使級会談の呼びかけは、呼びかけるだけでは何の
意味もないし、実現もされないでありましょう。そのためには、わが国
政府の
国交回復のための基本的
立場を明らかにしなければなりません。その基本的認識で重大なことは、
中国の
正統政府は
台湾であるか、
中華人民共和国政府であるかについてであります。
総理は、
中国を代表する
正統政府は
中華人民共和国か、
台湾か、どのような認識を今日持っておられるか、お答えをいただきたいのであります。客観的にも、また国際的にも、
中華人民共和国が
中国を代表する
正統政府であることは、もはや自明のことと思うのであります。
佐藤総理が
中国との国交正常化に踏み切ることのできない
理由について、具体的にお尋ねをしたいと思うのであります。
それは、
一つは
アメリカ、
一つは
台湾に対する顧慮があり、その根本にあるものは、
アメリカに対する最も強い追随にあることは、
施政方針演説においても明らかであります。
したがって、質問の第一は、対
中国関係の現状打開は、
アメリカの対
中国姿勢の変更のない限り
日本独自の日中友好
関係はあり得ないのかどうか。
さらに第二は、
日華条約締結に際して、
中華人民共和国を捨てて
台湾を選んだ一九五一年のダレス大使あての吉田首相の書簡の効力について、現在
政府はどのような位置づけを行なっているか。また、これが、わが国の
中華人民共和国承認の阻害要件となり得るものと思うのでありますけれども、どのようにお
考えになっているか、御説明を願いたいのであります。
これとともに、輸銀使用取りやめの張群あての
吉田書簡に対し、
日華条約の補完文書であるとの価値づけをした
蒋介石の発言に、
政府はおろかにも現在まで同調しているとしか思えないのでありますが、これを明確に否定を表明される気持ちがあるかないか、伺いたいのであります。
佐藤総理は、日台間に結ばれている
日華平和条約をもって、日中の
戦争状態は終結したと説明しているのでありますが、すでに
日華平和条約締結の時点において、
中国大陸において
中華人民共和国が樹立されておったのでありますが、わが国は、ダレス・
アメリカ大使のどうかつ外交に屈服して、
台湾との平和
関係を結びました。しかし、この
アメリカの圧力のもとで、吉田元首相のその最低限度の抵抗とも見られる
条約締結の
交換公文においては、
蒋介石政権をもって直ちに全
中国を代表する
政府とはみなさないことを確認しているのであります。これは吉田首相の
国会答弁にも明らかであります。にもかかわらず、その後、
自民党歴代
政権は、
台湾を全
中国の代表とみなす虚構の上に立って、次々と
中国との対立を深める外交
政策をとり続けてきたのであります。
それを列挙するならば、一九五七年岸訪台の際における
蒋介石総統の
本土反攻を激励、また、日中
貿易を困難ならしめている
吉田書簡、
国連における
中国代表権問題でのたな上げ論や
重要事項指定方式など、
中国締め出し
政策を積極的に推進し続けてきた態度、さらには、
佐藤・ジョンソン並びに
佐藤・
ニクソン共同声明など、一連の
中国敵視の事実は否定することができないと思うのであります。
今日の日中問題をいたずらに複雑ならしめている
原因は、あげて歴代
自民党政府の、現実を無視した、これら虚構の上に構築してきた対
中国政策にあることは明らかだと思うのであります。(
拍手)
私は、わが国がいま最も
確立をしなければならない問題は、これらの虚構をすみやかに放棄し、
中国を代表する
正統政府は、
台湾ではなく、
中華人民共和国であるとの方向を明確にすることであり、最も急がねばならないのは
中華人民共和国の承認であり、もはや論議の段階から、実行するべきときにきていると思うのであります。
ここで私は、いま直ちに実行可能な若干の提案をいたしたいと思うのであります。
その第一は、
国会において次のような宣言ないしは決議を行なうことであります。
初めに、今日日
中国交正常化を望む声は、与野党議員を問わず、すでに
国民的要請となりつつあります。いまこそ、
中国を代表する
正統政府は
中華人民共和国政府であり、これと国交正常化を急ぐべきであるとの内容の決議案を本
国会で採択されることを、われわれは期待しているのであります。(
拍手)
次には、
中国国民に対し、また
中国国民がつくり上げている国に対し、わが国は絶対に武力を行使することがないという宣言を行なうことであります。わが国の平和憲法の精神からいって、侵略のための武力行使を放棄しているのであるから、その必要はないと言われるかもしれませんが、
日本からの長い侵略の歴史を経験してきた
中国にとっては、武力不行使の宣言は、将来
平和条約締結に際しても当然要求するでありましょうし、わが国は、国是としての武力不行使の宣言は、重複してもそれを行なって決して不都合なことではないと信ずるのであります。(
拍手)しかも、
中国をはじめ、東南アジア諸国、
アメリカでさえ危惧するわが国の軍国主義復活のイメージを払拭する機会でもあると思うのであります。
その第二は、内政不干渉の原則を確認し、それを明確に意思表示することであります。
国連憲章並びに万国国際法のたてまえからいっても、内政不干渉の原則は当然であり、わが国が他国よりの内政干渉を拒むのは当然であると同時に、他国への内政不干渉を明確に意思表示すべきであります。
第三は、
国連における
中国代表権問題について、事実上
中国の
国連復帰を妨害する
重要事項指定方式等の小手先の詐術的技巧を排することであります。少なくとも提案国となったり、一切の妨害工作に参加しないことであります。
第四は、輸銀使用を取りやめた
吉田書簡を廃棄し、日中
政府間
貿易の方途を早急に開くべきであります。
第五には、
台湾に対する
借款供与を取りやめ、民間投資を制限する行政指導等を行ない、これ以上
台湾との
関係に深入りしないことであります。
第六には、
日中国交回復の機運に対し、何らかの制約を加える等の
政治的工作を弄しないことであります。議員連盟参加の与党議員に対する何らかの制限的行為をはじめ、
中国との人的
交流に対して大幅な門戸開放などがその一例であります。
政府は
中国の要人来日を歓迎する用意があり、わが国政界首脳との会談をも考慮していると伝えられますが、
中国要人の来日が与党ないしは民間団体の招聘によるものでも大幅に許可を与えるかどうか、お答えをいただきたいのであります。(
拍手)
かくて醸成された日
中国交正常化の機運は、必ずやアジアにおける
日本の
立場を
国民的に自覚させ、
中華人民共和国との
国交回復は急速に達成されると思うのであります。
以上、私の提案について、
総理の所見を伺いたいのであります。
総理は、
アメリカや
台湾の意向を気にしておられ、たてをついてはいけない、それが今日までの
自民党政府の外交論理だったと思われるのであります。それが追随、盲従と批判されるゆえんでありまして、主体性なき外交は結局
国民によって葬られてしまうでありましょう。
私は、
アメリカのすることにいろいろな注文はある、要求もある。しかし、
アメリカという名ですべてを悪と決定するかのごとき反米主義者ではありません。
国民もそれを望んではいないと思います。しかし、
総理はあまりにも無定見、無原則に盲従しているとしか私どもは言えないのであります。(
拍手)むしろわが国が米中和解の橋渡しをすることこそ真の平和への貢献だと確信するものでありますが、
総理の信念を伺いたいのであります。(
拍手)
次に、日米安保並びに
防衛問題についてお伺いいたします。
ニクソン・ドクトリンに基づく昨年十二月の日米安保協議委員会での在日
米軍の撤退、在日
米軍基地整理の発表は、
アメリカの
極東戦略体制と対日
政策の変化を示すものであります。
そこで、お伺いをするわけでありますが、
政府は一連の
米軍の撤退をどう
考え、将来の方向性をどのように判断しているかを説明されたいのであります。
政府は、これまで自衛の名のもとに、わが国憲法の精神を無視して、三次にわたる
防衛計画を強行し、さらに
国民一世帯当たり二十数万円もの
負担をしいる、実に五兆八千億円にものぼる第四次
防衛計画を策定し、これを
昭和四十七年度より実施しようとしているのであります。いままた
米軍の撤退を
理由に、さらに大幅の軍事力の増強を
国民に押しつけるのではないかと危惧するのは私一人ではありません。わが国の軍事力はすでにアジアにおいてはトップクラスであり、軍事費としても
世界有数の国家となりつつあることは、これまで数多くの人が指摘をしておる次第であります。しかも、世界の趨勢は軍事費の削減の方向となっておる今日であります。わが国だけが、いかなる
理由によって、こうまで軍事力増強を必要としなければならないのでありましょうか。
佐藤総理は、経済大国にはなっても軍事大国にはならないと、昨年の
国連総会におきまして
演説をいたしましたが、すでに軍事大国になりつつあるとの非難があることを
総理はどのように
考えておられるのか。いわれなき誤解だと
総理は
考えておられるのか、伺いたいのであります。
私は、日
米軍事同盟体制のもと、
米軍のアジアよりの撤退の肩がわりとして自衛力の増強が行なわれるものと理解せざるを得ないのであります。そうでないと言われるならば、なぜわが国が軍事力をこのように強化しなければならないのかという、その具体的
根拠は何か、すなわち国際情勢の分析とわが国を取り巻く脅威の実体を明確にしなければならない
責任があると思うのであります。この点をあいまいなまま、果てしなき軍事力増強を実施することは許されないということを知らなければならないと思うのであります。(
拍手)いわば、まぼろしの脅威に対し軍事力を増強することほど危険なものはないということは、われわれ全
国民が数次にわたる悲惨な世界大戦の結果得た貴重な体験であります。
また、
米軍基地の整理縮小が急速に進められようとしております。しかし、これまで
返還された
米軍基地のほとんどは、自衛隊が継続使用するか、または
米軍の随時再使用の利用を留保したものとなっております。わが党が再三にわたって実施した
米軍基地の総点検の結果はすでに発表したとおり、
米軍基地返還後の民間利用度はきわめて大きいのであります。
政府は、
返還された
米軍基地は、自衛隊の継続使用とか
米軍再使用の条件つきではなく、
国民の利用に供すべきであると思うが、
総理の所信を伺いたいのであります。
さらに、地位協定の改定もなく、
基地使用権を保留し、常駐しない
米軍基地をそのままにしておくことには重大な疑問があります。自衛隊との共同使用ということとも性格が異なる事態であることは明らかでありますが、
政府は地位協定との関連をどう理解しているか、また地位協定の改正を
考えているかもあわせて承りたいのであります。
次に、
沖繩問題についてであります。
沖繩の一九七二年祖国復帰を目ざし準備が進められておりますが、約六百件以上にものぼる復帰後の
本土法の
適用、
基地の取り扱い、
アメリカの資産、
基地経済、通貨の切りかえ、対米請求権等々の困難な諸問題が山積されております。こうした中で、
県民の意思がはたして十分に反映されているかどうか疑問を抱かざるを得ないのでありますが、
沖繩県民が要求する平和で豊かな
沖繩県建設のための具体的な青写真がいまだ明確にされず、
沖繩県民は、祖国復帰に対し強い不安を持っているのであります。しかも、
コザ事件、
毒ガス移送問題に象徴されるように、
県民は抑圧された
米軍占領
政策に対する忍耐ももはや限界に来ております。まさに世界に類例を見ない長きにわたる異民族による
人権無視と、不当な軍人優先の占領
政策と、これを全面的に容認し、復帰を目前にした今日でさえ、何らこれを解決しようとしない
本土政府の
責任は、当然に追及されなければならないと思うのであります。私は、
政府に対し、復帰並びに復帰後の諸問題に対し誠意をもって当たるべきことを強く要求し、
政府の
責任ある
見解を承りたいのであります。
特にこの際ただしておきたいことは、
返還後の
沖繩米軍基地の自由使用についてであります。
われわれは、
基地の全面撤去を要求しておりますが、
アメリカ政府は、今回、
沖繩米軍基地を
返還後も自由使用できる取りきめを
日本政府に申し入れたと聞いております。これを裏づける、さきの米上院における
ジョンソン国務次官の証言、さらに、最近の米海兵隊司令官の談話等から
考えて、きわめて重大な問題であります。おそらく
政府はこれを拒否すると思いますけれども、
政府の
見解を明確にお示しをいただきたいのであります。
また、お尋ねしたいことは、
沖繩返還協定の調印、さらには、日米両国における
返還協定批准のための日米両
国会の審議の時期についてであります。
伝えられるところでは、
返還協定の
国会審議の時期は、
アメリカ国会の審議に先立って行なう予定であると聞くのであります。すなわち、
佐藤。
ニクソン共同声明に関する
アメリカ上院のジョンソン
米国務次官の証言問題等から見て、
沖繩返還に関する秘密事項が次々と明るみに出てくる心配があって、
アメリカ国会の審議より以前に
国会審議が行なわれるといううわさでありますけれども、このような事態が起こらぬというのであれば、日米両
国会並行して行なうようにすべきであると思いますが、
総理の
見解を承りたいのであります。(
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以上、
内外政の基本問題に関し質問をいたしましたが、
総理の明快なる
答弁を求めるものであります。
これをもって私の質問を終わらしていただきます。(
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〔
内閣総理大臣
佐藤榮作君登壇〕