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畑委員 いろいろ内容的なことについては
刑事局長もそれほど知らないことが多いと思う。あなたの
立場上やむを得ないと思いますけれども、そのほかいろいろ私こまかいこと若干申し上げます。
捜査がいかにやり過ぎであったかということです。
乱用であったかということ、
捜査権の
乱用、
見込み捜査、そういった点、
人権じゅうりんというような点を二、三申し上げたい。
米澤を
調べたのは
伊藤検事であります。それで、
逮捕をする前に各所を
捜索をしました。これは
捜索するのはあたりまえです、これはいいのです。ところが、その
捜索も程度を越えておると私は信じております。
やり方が少しきたない。
一つはこういうことがあります。
米澤が八月二十五日の午前六時、
任意出頭の当日、ちょうど自宅からもう出かけたときなんですね、
むすこしかいなかった。ところが、その
むすこが
米澤氏を隠したといって、
むすこを強引に
検察庁に
伊藤検事が同行をした。二時間ばかり取り
調べた。もちろん
調書はとっていないのでしょうがね、取り
調べた。ところが
米澤は、
むすこが
検事と
検察庁に着く
直前にもう出頭しておったのです。それだのに
ちようどたまたま
伊藤検事が
任意出頭を求めに行ったところがおらなかった、隠したのだろうというので、
むすこを引っぱっていって、それで二時間も
調べた。そのときには別のところに、もうその前に
検察庁に行っておった、こういうことがあるのです。これなどはずいぶんひどいですな。こういう事実があったのかどうか。こういう事実、ひとつメモにしておいてもらって
照会してください。ないと言うでしょうけれども、これはどうか。対質してもいいから、いずれ
あとでそういう機会もあろうかと思う。
それから同日、二十五日に
米澤の妹の宅の
田中とよみという、いいちゃんとしただんなさんがいるわけですが、そこの宅を
捜索しました。これなども私は普通の場合としては行き過ぎだと思いますね。どうして
捜索令状をとったのか、どうして簡単に出したのか、こういうことも私は疑問だと思う。それからもう
一つひどいのは、
上山田温泉の角八という
焼き鳥屋、これを強制
捜索した。その際、
検察のだれが行ったか知らぬけれども、
事務官か、
検事か、だれか知らぬけれども、開口一番、おまえは
米澤の二号だとどなった。角八のママから、失礼なことを言うな、私にもりっぱな主人がほかにありますと、こう言われて恥をかいてわびを入れた、こういうことです。さらに畳をめくって
調べるぞと言っておどかした、こういう事実は厳然たる事実です。
一体こういうことをしていいのでしょうか。大体角八という、そういった
——米澤も酒を飲んだりしますから、ときどき行くでしょう。そういうところを二号なりと断定をして、そこに金が隠してあるだろう
——どうもそうらしいのです。
預金通帳や金が隠してあるだろう。妹の
田中とよみさんの場合も同じです。
預金帳が隠してあるだろう、何でも隠してあるだろう。とにかく七千万円の着服横領したというのが
見込みですから、その
見込み捜査でやったのですから、こういうこともやりかねない。まことにお粗末だ。
それから
妹田中に対しては、いま言ったとおり、たくさんの金が
米澤から預かって
預金してあるので
調べると言って、
預金書類等を全部数十通押収していった。これは
人権じゅうりんですよ。
それからまた、
調べるにあたっても、
米澤は七月二十五日に
逮捕されたときの
調べで、
屋代用水の
敷地あとの一まず山分けをして
米澤の
名義になっていると
大声で追及した、これは
伊藤検事だ。私が黙っていると
——すなわちこれは
米澤の私に送ってきたものですが、
米澤が黙っていると、それみろ、ほんとうだから何とも言えないじゃないかと、五、六回おどかした。これはそのとおりですな。こういう事実もあります。それはどろぼうやなんかなら別だけれども、ちゃんと
県会議員を何期もやっている人です。良識ある人です。そういう人に対して、
幾ら検察官といえども、言うべきことばでしょうか。こういうおどかしはきかないのです。かえって逆になるのです。したがって、私はそんなことは知らない。私の
名義があったら、具体的に
場所を示せと、逆に迫った。それはそうですよ。
検事も困って
ハッパをかけただけだ、
検事は法律によって
ハッパをかけてもよいことになっていると釈明して
あとは語らず。
検事が黙秘だ。茶を飲めと言ってごまかした。それで
米澤は、
事件が終わってから明らかにしてみたいと申し込んだが、
検事黙して語らず、こういうことなんです。
で、いま
裁判所へ行って逆の
立場になっています。この間、
意見陳述の際も、
被告人から
検事は目の前でやられました。これはみっともないですよ。私はそれで
検察官の
あり方について、その
立場でぼくは言うのですが……。
それから、
最初に
中村技師という人の
任意出頭を求めてきたときなども、たくさんの人を連れてきて、それで
検察事務官が来て車で連れていった。あたかももうそのとき
逮捕状でも持っているかのごときようなかっこうで、それで連れていった。一時間ばかり
調べて帰して、
調書もとらずに、ただ
大声をあげてどなっただけだ、こういうことです。それから、会計主任の人も
勾留して、
一カ月近く毎日九時から午後七時ごろまで
調べられた。これなどもうそではないはずです。で、すっかり疲れちゃって病気で倒れたということも言っております。
ともかく、この
事件によってだれも損をしていないのですね。みんな感謝しておるのです。
道路も、こういうりっぱな
道路ができる、町道ができたわけです。それから
水路もりっぱな
水路ができる。で、余った
土地は
改良区の財産としてそれを公売にして、
埋め立てをして、それで各人に売っておるわけなんです。それは約七千万円、ちゃんと
預金をしてあります。大体動機がないのですよ。
詐欺、横領といったって動機がない。ところが
検察官は、しいて動機は、退職金規程というのを改めるという考えがあった、だからそれだけもうけておいてそれを退職金に充てるつもりだった、だから動機があるんだ、こういうことを言っておる。こんな動機は私は考えられない。大体そういう点も十分に考えてやるべきだ。
捜査の途中で、これはぐあいが悪いと思ったらシャッポを脱ぐべきだ。それを
最後までかかわってやるのは私はどうかと思う。かえって
検察側が不信を買うだけだというふうに思っております。こういう点もひとつ
調べてください、さっき言ったいろいろな事実をですね。あなた、いまここで私が言っても、そういうことはありました、なかったとは言えないでしょう。とにかく一応そういうことがあったかなかったかということをひとつ
調べてもらいたいと思います。
それからもう
一つ、ほかの
被告の
宮入やなんかでありますが、いろいろ同じようなことを言って、
坂口主任
技師に対しても先ほど申し上げましたようなおどしを使って、もうおまえの
弁護士は手を引いたと言って、うその重圧を加えて
自白を強要したというようなことですね。こういうこともひとつよく
調べてもらいたい。それからそれの訂正を申し入れた。これも
弁護士の
立ち会いで、
弁護士も行っております。ところが、
坂口に対してはとうとう訂正の
調書はとらなかった。
坂口は途中それがわかったわけです。
あとでそういううそは訂正してくれ。
弁護士と相談の上で、申し入れろ、こう言った、申し入れた。確かにメモか何かに書いたそうですが、とうとう訂正の
調書はとらなかった。
調書には出ていない。それはうそのそういう
供述ですということを訂正をしてくださいと申し入れたが結局
調書にはとらなかった、こういう事実。とってあればとってあったでそれがまたこちらの
被告の
一つの有利な
証拠になるんだが、それがなければそれきりなんだ。
それからこういうこともあります。
宮入被告が
坂口から十日近くおくれて八月十一日
逮捕されたが、面接早々雷のような
大声で、
理事会で説明したとおりもう一度ここでうその説明をしてみろと言われた。黙っていると、私の目を見すえて、おまえもおれの目をじっと見詰めていろ、目をそらすようだとおまえはうそを考えている
証拠だと言われた。私は何も
検事さんとにらめっこに来たわけではありませんと目をそらすと、それみろ、おまえの心臓は早鐘のように速くなっている、耳たぶもまっかになっている、そこの鏡を見てこいと言われて見たけれども、
一つも赤くはなっていなかった。まあこの六十何歳の老人が、しかもこの地方としては相当教育もある人です。こういうことを言われた。明治三十九年生まれの老人を強盗や放火、殺人犯でも扱うような
態度であり、何か催眠術でもかけられるような気持ちでした、こういうことを述懐して私に書いてよこしております。
水を一ぱいいただきたいと言っても、取り
調べ中はだめだと言って水さえくれなかった。朝早く朝めし一ぜんだけで
任意出頭で出てきたものだから、のどがかわいて声にならない、水を一ぱいいただきたいと言っても取り
調べ中はだめだ。しかもこれはまだ
逮捕状が執行される前の
任意調査の
段階です。
それから取り
調べ中、
連合会の職員から便法で登記を済ませるよりしかたがないという話を聞きましたが、差しかえなどということは全くしろうとの私は知らないことですと言いましたところ、それ見ろ、問いに答えず語るに落ちるとはこのことだ、ちゃんと差しかえということを知っていたではないか、うそというものは隠せるものではない、こう言って大喝した、こういうやりとりがあるのです。
それからまた、さらに
一つ驚いたことには、こういうことなんですね。取り
調べ中の
検事が
被疑者を前にして、
事務官がたまたまいなかったのだそうですが、深々といすに寄りかかり約一時間も居眠りを続けていた、こちらから注意することもないので、はっと目をさまして、これは失礼とは一体どうしたことだ、こういうこともある。それは連日無理しる疲れているからそれもわかります。わかりますけれども、大いばりするからにはこういう失敗はしないほうがいい。やるとまずいですね。いばらなければいい。いばってやって、しかもこういう失敗をしておるわけです。これではやはり威信に関すると思います。
それから
供述書等も、
宮入被告の言うには、読み聞かせたのはただの二回だけだ。読み聞かせることになっているのに、一々読み聞かせないでもよいことになっていると説明したそうであります。こういう事実があると言っておるのですが、これはどうも私の心証としては心証十分なんですが、まあ
検事はだれもそれに立ち会っておりませんからそうでないと言うかもしれませんけれども、私はこういう
態度は非常にけしからぬと思う。
検事の思い上がった
態度、ここでひとつ締めておかなければならぬというのが実は私のきょうの
質問の趣旨であります。これは必ずしも
長野県だけではないと思う。ほかにもあろうと思います。やはり
検察官はえりを正して
検察の
仕事をやるべきだ。それでなければやはり信頼を得られないと思っております。
それからもう
一つ、この北信ニットの
起訴です。これも私は非常に問題だと思う。これは北信ニットの場合、実はこれから二年、三年くらい前、
昭和四十一年くらいのところに
専務理事が横領したのですね。五百万ばかり横領したのが
あとでわかった。
昭和四十三年ごろわかりまして告訴をしました。それでその結果その
専務理事が
起訴をされて、結局結果的には二百五十万ばかり金をつくって払い、
あとの残りはかんべんしてやって、そして執行猶予になっております。当時の
専務理事の岩井常樹という人です。この
事件のときに、たまたまその金を一体どうしたのだといったような、どこからあれした金だというようなことから、さっき
起訴になっておる事実、すなわち中小企業の近代化
資金を無利子で借りた、そういうことから出てきたのだと思いますが、そのときにそういったうその
証拠や何かをつけてやった
詐欺ですね。そのことも同時に
供述したそうです。その人の判決があったのはこの
事件の一年以上前です。二年近くになる。その時分に
調べた事実で、しかも当時岩井
専務についてはその事実については
起訴いたしておりません。
詐欺、横領だけで
起訴しまして、そのことについては
起訴しておりません。その当時
米澤にも聞いておりません。それを今度の場合にいわゆる突っかい棒
起訴だ、それで
米澤にも前にも聞いておらない。それでずっと前の、いま言った
事件で岩井常樹と共謀の上というので
米澤嘉久太が
起訴をされておるのです。
これは明らかに
米澤をねらったということ以外に考えられない。
米澤一人なんです。
米澤一人でもぐあいが悪いから
宮入もお供をさせられた。
専務理事と二人で
起訴になった。この前の
用水の問題でも本来の
実行正犯は
連合会の職員二人ですよ。ほかの、この
改良区の
理事長なんか知るはずはないわけです。それだのにそれをねらって下からずっとやっていった。一番
最初は大体うそのでっち上げだ。でっち上げ
供述。それがもとになってだんだん次々と無理な
自白を強要していって、
最後に
米澤をしとめたと思ったら、あまり
弁護権の
侵害によってとうとう
裁判所は釈放してしまったので、その目的も達しないで終わった。それで
起訴するかしないかというようなことの
段階になって、
最後にとうとう
起訴したのでありますが、この
最初の突っかい棒
起訴についてはどう思いますか。私はこういうのはまことにきたないと思う。前の
事件でこちらは被害者だ。そういうときの
供述でもとっておってするのなら別なんだが、ところがその当時そうだとすれば、そのとき
米澤を
起訴しなければならない。ところが、その当時
米澤を
起訴しない、本人も
起訴しない、その事実については。それを
あとでこの問題のときにつけ足しに、ああいう
供述があったわいということで、岩井の
供述、それを
証拠に持ってきて、それだけで
起訴しているんですね。本人はもちろん
自白なんかしていません、事実そうでないんだから。それでもあえて
起訴しておるのです。そういうことなどは実にきたないと思う。
最初の
改良区の
事件なども、一体平地に波乱を巻き起こしたのはどちらだと私は言いたい。この間私、
意見陳述のときに申しましたけれども、それはとりもなおさず
検事じゃないか。それが無効だということになったら大混乱が起きるじゃないか。一体無効だということがあるのかどうか。
検察庁に民事
事件も起こりましょう。そのままになったら一体どうするんだ。これでも無効だということになれば、法律的にはあるいはそういうことになるかもしらぬけれども、みんなが満足して、みんなは幸福なんだ。金も一銭もふところにしていない。これこそ
起訴便宜主義で、
起訴しなければよかったと私は思う。しかも先ほど言ったとおり、
最初の
実行正犯は
起訴しない。それから
坂口技師も
起訴しない。そこで一番最高峰のやつだけねらった、こういうことであくまでやはり
米澤をねらう。したがって、県知事選挙にまつわっておるというようなうわさがもっぱらのことは、これによってだれでもわかる、こういうように思うのです。
まあ、先ほどの例の突っかい棒
起訴のことだけについてちょっとお聞きしたい。あるいはまた、その後のいま言った
土地改良区の問題について、平地に波乱を巻き起こすようなことになったと思うのだが、そういうときこそ
検察官としての大きな
立場から、これは
起訴すべきか、これはもう行政指導で足る問題だ、無理して私は
詐欺、横領で
起訴すべきではないと思うんですね。
詐欺、横領で
起訴したって、いま言ったとおり本人は知らない。一番
実行正犯は、文書偽造については少なくとも
連合会の職員ですから、それがくずれてくれば全部くずれるということになりますよ。その辺どう
検察の
立場として扱うべきだったか、これでいいと思うかどうか、これをひとつ
刑事局長にお伺いしたい。