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1971-03-05 第65回国会 衆議院 文教委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年三月五日(金曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 八木 徹雄君    理事 久野 忠治君 理事 久保田円次君    理事 河野 洋平君 理事 櫻内 義雄君    理事 谷川 和穗君 理事 山中 吾郎君    理事 鈴木  一君       有田 喜一君    小沢 一郎君       塩崎  潤君    高見 三郎君       床次 徳二君    堀田 政孝君       松永  光君    吉田  実君       渡部 恒三君    川村 継義君       木島喜兵衞君    小林 信一君       有島 重武君    多田 時子君       山原健二郎君  出席政府委員         文部政務次官  西岡 武夫君         文部大臣官房長 安嶋  彌君         文部省大学学術         局長      村山 松雄君         文化庁次長   安達 健二君  委員外出席者         議     員 山中 吾郎君         文教委員会調査         室長      田中  彰君     ————————————— 委員の異動 三月五日  辞任         補欠選任   地崎宇三郎君     吉田  実君 同日  辞任         補欠選任   吉田  実君     地崎宇三郎君     ————————————— 三月四日  教頭職法制化に関する請願愛知揆一君紹  介)  (第一五五三号)  各種学校制度確立に関する請願天野光晴君  紹介)(第一五五四号)  同(天野光晴紹介)(第一七一九号)  国立大学授業料値上げ反対等に関する請願  (阪上安太郎紹介)(第一五八四号)  教員超過勤務制度確立等に関する請願青柳  盛雄紹介)(第一六六七号)  同(浦井洋紹介)(第一六六八号)  同(小林政子紹介)(第一六六九号)  同(田代文久紹介)(第一六七〇号)  同(谷口善太郎紹介)(第一六七一号)  同(津川武一紹介)(第一六七二号)  同(寺前巖紹介)(第一六七三号)  同(土橋一吉紹介)(第一六七四号)  同(林百郎君紹介)(第一六七五号)  同(東中光雄紹介)(第一六七六号)  同(不破哲三紹介)(第一六七七号)  同(松本善明紹介)(第一六七八号)  同(山原健二郎紹介)(第一六七九号)  同(米原昶紹介)(第一六八〇号)  同(青柳盛雄紹介)(第一七二〇号)  同(浦井洋紹介)(第一七二一号)  同(小林政子紹介)(第一七二二号)  同(田代文久紹介)(第一七二三号)  同(谷口善太郎紹介)(第一七二四号)  同(津川武一紹介)(第一七二五号)  同(寺前巖紹介)(第一七二六号)  同(土橋一吉紹介)(第一七二七号)  同(林百郎君紹介)(第一七二八号)  同(東中光雄紹介)(第一七二九号)  同(不破哲三紹介)(第一七三〇号)  同(松本善明紹介)(第一七三一号)  同(山原健二郎紹介)(第一七三二号)  同(米原昶紹介)(第一七三三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公立義務教育学校学級編制及び教職員定数  の標準に関する法律の一部を改正する法律案  (川村継義君外五名提出衆法第九号)  文化功労者年金法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二六号)      ————◇—————
  2. 八木徹雄

    八木委員長 これより会議を開きます。  川村継義君外五名提出公立義務教育学校学級編制及び教職員定数標準に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。
  3. 八木徹雄

    八木委員長 提出者より提案理由説明を聴取いたします。山中吾郎君。
  4. 山中吾郎

    山中(吾)議員 ただいま議題となりました公立義務教育学校学級編制及び教職員定数標準に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  公立義務教育学校学級編制及び教職員定数標準につきましては、すでに御承知のとおり、昭和三十四年度より同四十三年度までの間、二回にわたり改善五カ年計画が実施され、いわゆるすし詰め学級解消をはじめ、学級規模適正化教職員配置率改善が行なわれたのであります。  さらに引き続いて、第三次改善五カ年計画が策定され、一昨年度から複式学級編制改善並びに学級担任外教員養護教員及び事務職員配置率改善がはかられつつあるのであります。しかしながら、これらの改善措置も、僻地学校や人口の過疎地域及び産炭地域等に存する公立小学校及び中学校における教育実情に対応するものとしては、なお不十分な点が多々見受けられるのであります。  すなわち、現在、これらの地域においては、行財政の貧困もさることながら、住民の生活水準の低下に伴なって、いわゆるかぎっ子や非行少年等の問題児が激増しつつあり、かたがた多学年複式学級による教育は、児童及び生徒学習効果を著しく減退させ、かつ、教職員勤務量も増加の一途をたどり、過重な負担を余儀なくさせているのであります。したがいまして、これが対策として教職員配置充実をはかるとともに多学年複式学級編制解消につとめることは、目下の緊要事とされているのであります。よって、これらの必要やむを得ざる点を緊急に改善し、もって、義務教育水準維持向上に資するため、本案提出した次第であります。  以下、本案内容について御説明いたします。  第一は、公立小学校及び中学校学級編制改善であります。  すなわち、その一つは、僻地学校等教育水準向上をはかるため、小学校における三個学年複式学級解消するとともに二個学年複式学級編制児童の数の標準を現行の二十二人を十五人に改めることであり、その二つは、僻地学校等の同学年児童または生徒で編制する場合における一学級児童または生徒の数の基準を三十人とすることであります。  第二は、公立小学校及び中学校教職員定数標準改善であります。  すなわち、その一つは、小学校教育指導密度を高めるため、専科担当教員配置率を新たに定めること、その二つは、五学級以下の小規模学校及び僻地学校等について、それぞれの教育指導体制充実するため教員の数の加算を行なうこと、その三つは、特殊学級を置く小学校及び中学校について、特殊学級における教育効果を高めるため、教員の数を加算すること・その四つは、養護教育充実を期するため、養護教員配置基準改善し、六学級以上の学校及び僻地学校等について養護教員の数を加算すること、その五つは、学校事務の円滑な運営をはかるため、小学校及び中学校事務職員配置基準改善するとともに、学校給食完全給食実施校について、給食事務に従事する事務職員の数を加算できるよう新たに定めることであります。  第三は、その他関係規定整備を行なうことであります。  第四は、この法律は、昭和四十六年四月一日から施行することとしております。  以上が本案提出した理由及び内容概要であります。何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成くださるようお願い申し上げます。
  5. 八木徹雄

    八木委員長 これにて提案理由説明は終わりました。      ————◇—————
  6. 八木徹雄

    八木委員長 次に、文化功労者年金法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田実君。
  7. 吉田実

    吉田(実)委員 私は、この文化功労者年金昭和三十九年度に百万円ときめられまして、今回百五十万円に改められることは非常に適正だと思いますので、この法案には全面賛成をいたします。ただ、いろいろ少しこれに関連しましてお聞きいたしたいことがございますので、まず第一に、この文化功労者をおきめになりますときの選考基準と申しますか、あるいは内規的なものがありましょうか。
  8. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答えいたします。  文化功労者選考につきましては、選考審査会によってこれが選考されるわけでございますが、選考審査会委員は十名でございます。この十名の選考につきましては、人文科学自然科学芸術その他一般文化の各部門にわたりまして、それぞれの部門をさらに理学、工学、医学、経済学、法学、文学、美術、芸能その他に分け、一分野に偏することのないよう配慮をしているわけでございますが、それぞれの分野からそれぞれの分野権威者を選ぶようにしているわけでございます。この委員選考にあたりましては、公平な立場受賞者選考を行なえる者を選ぶように特に慎重に配慮しているわけでございます。この選考基準につきましては、この選考審査会委員自主性にゆだねられているというのが実情でございます。
  9. 吉田実

    吉田(実)委員 ずっと昭和二十四年度以降の、いま政務次官の御説明になりました選考委員の顔ぶれを見ますと、年によりましては一、二名のダブリがありますけれども、たとえば昭和四十四年度の選考委員と四十五年度の選考委員は全部違うわけですね。何も選考基準がないと——まあ選考委員の方はりっぱな方でしょうけれども、やはりいろいろな、ことしはたとえばこの人とこの人とかいろいろ論議され、この人にきめた経過だとかそういうものがやはりある程度委員の方に含まれておりませんと、毎年毎年これはほとんど新しい人が出ておるわけなのであります。そうしますと、選考委員会自主性もさることながら、やはりこういったものには、たとえば学術分野においても芸術分野においても、公平な選考をする上においては、ある程度委員というのも数名の方が前年度なり前々年度の経過というものをわかっておりませんと少しまずいのじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
  10. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 お答えいたします。  四十五年度の委員と四十四年度の委員を比較いたしますと、御指摘のとおり全部入れかわっておるわけでございますが、たとえば四十五年度の委員の中で兼重寛九郎氏、黒川利雄氏、渋沢秀雄氏、野尻清彦氏等については、過去数回選考委員をおやりになっております。そういうことで全体的に見れば全く新人ばかりということではないわけでございまして、従来の経過その他を十分御承知の上で審議に参加をしていただいている、こういう実情でございます。
  11. 吉田実

    吉田(実)委員 それではひとつお尋ねをいたしますが、選考基準も何も内規的なものはない、こういうことでございますが、四十五年度の文化功労者のある方でありますけれども、この方は、古美術海外流出の問題につきまして、輸出禁止を旨とする対重要美術品政策は、世界的立場から見れば単なる美術鎖国にすぎない愚劣な政策である、これは学士会の会報に書いておられる方なんですが、私は、この方の美術上における功労についてどうこう申し上げるわけではありません。しかし、御案内のように、古美術品海外流出というものは、極端な評論家は国滅ぶとまで言っておるような表現でいわれておる。これは昨年ですから、こういう時期に、その人のこういった思想なり行動なりというものが選考委員会で十分検討されて選考されておりますか、どうですか。
  12. 安達健二

    安達政府委員 選考にあたりましては、先ほど政務次官からお答えがございましたように、委員の間で十分な審議をされた上で行なわれておると思うのでございます。したがいまして、その方については、美術評論家として、また美術振興の面での功績を十分勘案された結果そのようになったと思うわけでございます。  それから、御質問の問題につきましては、現在の文化財保護法の四十四条の規定によりまして、「重要文化財は、輸出してはならない。但し、文化庁長官文化国際的交流その他の事由により特に必要と認めて許可した場合は、この限りでない。」この許可を行なっておりますのは展覧会等の……(吉田(実)委員「そういうことを聞いておりません。私の聞いているのは、そんなことを聞いておるのじゃない」と呼ぶ)いまおっしゃいましたそういう特定な人のあらゆる論文その他を読んで、それで決定するというわけにもまいりませんものですから、主たる大きな功績に着目いたしまして、そういう選考が行なわれているものと考えるわけでございます。
  13. 吉田実

    吉田(実)委員 私のお尋ねしたかったことは、昨年の選考会において、そのことが選考過程において論議されたかどうかということをお尋ねしておるのでありまして、何も文化財保護法条文次長さんに読んでいただこうとは思っておりませんから、その経過を少しおっしゃっていただきたいと思います。
  14. 安達健二

    安達政府委員 選考委員会経過について詳しく私どもが申し上げる筋合いではないと思いますけれども、いまの御指摘があったところの論文についてまでの論議は、なかったのではないかと私は考えます。
  15. 吉田実

    吉田(実)委員 政務次官にお伺いいたしたいと思いますが、今日、流出の問題は二つあると思うのです。一つ頭脳流出の問題であり、一つは古美術品海外流出の問題だと思います。頭脳流出ということは、申し上げるまでもなく将来の日本にかかわる問題でありますし、古美術品流出というのは、日本歴史と伝統にかかわる問題だと思うのですが、私はこの方の先ほども申し上げましたいろいろな功績は深く多としますけれども、やはり文化中枢部におる方ですから、この方の思想行動というものは美術品海外流出に大きな役割りをなすものと判断しております。  しかし、この問題はきょうはこれ以上申し上げませんけれども次官に、頭脳流出と古美術品流出の問題について、根本的に日本文化政策の上でどのようにお考えになっておるか、ひとつお伺いいたしたいと思います。
  16. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答えいたします。  先生指摘のように、現在わが国において、文化財流出の問題と頭脳流出の問題が、大きな国家的な問題であることは御指摘のとおりでございます。これにつきましては、文化財国民のとうとい遺産であるという観点から、私どもはこれを子孫に残していく義務が当然あると思うわけでございます。そういう意味からも、文化財国外流出については現在の流出実態、これまでの流出の現実の姿を見まして、私どももこの対策が不備であったという点を深く反省いたしまして、今後、これからの流出というものを事前に防止するという的確な措置をとっていきたい、かように考えているわけでございます。  具体的なことを申し上げますと、昭和四十六年度の予算の中で、文化財流出につきましてこれを抜本的に流出防止対策を立てたいということで、新たに五カ年計画でいろいろな対策を今後実施していきたい。その一年目といたしまして四十六年度の予算で百九十万円の予算を組みまして、具体的な、たとえば現在日本にある文化財実態を調査するという基本的な問題から始めまして、各都道府県の教育委員会関係職員、また税関等関係職員についての文化財に対する認識を深めるための講習会等も今後実施していきたい、かように考えているわけでございます。  また一方、頭脳流出の問題につきましては、これは先生も御指摘のとおり非常にむずかしいものでございますし、頭脳流出実態というものを正確に把握することが困難な面もあるわけでございます。たとえば一九六八年から六九年にかけまして、アメリカ研究教育の用務で滞留をいたしております学者研究者教育者の数は、これはアメリカ国際教育協会資料によるわけでございますが、全体で一万二千百人という数字が出ております。そのうち日本人が千二百六十二人となっているわけでございます。この千二百六十二名のうち、どの程度が実際にアメリカ永住をしてしまうかということは、これも非常に把握が困難でございます。大体世界的な傾向として、一〇%程度永住をするという過去の傾向になっているようでございます。しかし、その中でも日本人の場合には、特に国民性の問題、ものの考え方、そういった点から若干その率が少ないというのが実情でございます。この頭脳流出につきましてはいろいろな見方がございまして、学術振興のためには国際的な交流を盛んにするということは一方きわめて重要なことでございますが、また反面、優秀な研究者わが国を離れていくということはわが国学術振興のためには当然マイナスでございますし、これらを防止するためには、やはり今後私どもが、わが国研究施設充実、また研究のそれぞれの条件の整備等に格段の努力をしていく以外にはないのではないか、かように考えております。
  17. 吉田実

    吉田(実)委員 ただいま政務次官から基本的な考え方がございまして、私も全く次官の御意見と同感でございますが、ただいま御説明のありました頭脳流出の問題で、いろいろ非常にこの問題自体がむずかしい問題ですが、たとえば具体的に、日本から向こうに行っておる学者向こうパテントを取ったというふうな場合に、どのようにこれは扱われておるのでしょうか。こういった点は、具体的には非常にやっかいな問題だろうと思うのです。
  18. 村山松雄

    村山(松)政府委員 特許の問題は、本人が特許権を設定する場合とそれから機関として設定する場合とがございます。海外に行っておる者がどの程度そのような特許に関与しておるかという実態はつまびらかではございませんけれども特許という事柄の性格からいたしますと、個人が設定する場合には、海外におってもそれから日本におりましても、その個人特許権という形で財産化するわけであります。したがいまして、さして問題なかろうと思います。それから機関としての特許権設定に参画するということであれば、外国機関でそのような特許権が設定された場合には、当然日本人たる個人研究外国のために貢献するという結果に相なろうかと思います。
  19. 吉田実

    吉田(実)委員 頭脳流出の問題は、いずれにしましてもなかなか実態を正確につかむことが困難かと思いますが、先ほど次官の御発表の数字向こうで調べた数字でございまして、ひとつ手数がかかると思いますけれども文部省におかれても実態を把握していただきまして、いま大学局長から特許の問題につきまして御説明がございましたが、私が聞いております範囲では、企業等技術者向こうで取ったパテントについてはなかなかやっかいな問題が実情として発生しておるようでありますから、いまの御答弁のような簡単な実情ではないと思いますので、こういった点について、もう少し詳細にお調べをいただきたいと思います。  そこで二番目の質問美術海外流出の問題について、しばらく与えられた時間の範囲内で御質問いたしたいと思いますが、先ほど次長さんは、法律条文を読まれて、いがにもその法律日本の重要な美術品を食いとめておるかのような御答弁をなさいましたけれども、一体いままで文化財保護法というものの罰則が適用されたことがありますか、ありませんか、あるいはまた、適用されようとしたことがありますかどうか。
  20. 安達健二

    安達政府委員 文化財保護法が制定されまして以来、ただいま読み上げました規定に違反して重要文化財輸出をして、それによって罰則を科せられたという例は聞いておりません。ただ、そういう輸出の際に、それを食いとめるようなことをするということでございますれば、輸出を防止する段階でそういうことをしたこともあるわけでございます。
  21. 吉田実

    吉田(実)委員 先般学研が「在外秘宝」という三冊の非常にすばらしい豪華本を出しましたが、あの中だけでも明らかに二点の重美が出ておるわけですね。罰則は行なわれない、きちっとやっておるとおっしゃいますが、大体文化庁で、いま推定されます国外流出した少なくとも重美以上のものは、どの程度あると推定されておりますか。
  22. 安達健二

    安達政府委員 戦前に流出したものに非常に貴重なものがあるということはもちろんございますが、文化庁で確認いたしました重要美術品等で、海外流出をしておると確認できるものが六点ほどございます。最近のものでございますと、パリのギメー美術館に入っておりますところの尾形乾山の六曲のびょうぶがその一つだろうと思います。
  23. 吉田実

    吉田(実)委員 こういった流出の過去の問題を幾ら追及しておりましても切りがありませんので、ひとつ美術品の扱いの問題についての根本的な考え方をお聞きしたいと思いますが、その前に、非常に国の美術品買い上げ費用だとか、ことしはわずかに二億一千万円ですね。この二億一千万円では、いますでに文部省がお約束になっております十二点の四幅、これが一億二千万円かかる、それから蜂須賀侯爵家の「紫式部日記絵詞」八千万、こういうふうなことですと、あと一千万か二千万しかことし新たに買う費用がないわけですね。もちろんこれ以外に美術館等の買い入れもあると思いますが、ひとつどなたでもいいですから、最近ヨーロッパあたりからいろいろな洋画がたくさん入ってきていまして、これがまた非常にヨーロッパあたり価格の数倍あるいは数十倍で売られておる。その中には、先般これは御承知国立西洋美術館で購入したドランの「ロンドンの橋」あるいはデュフィの「アンジュ湾」、これはこの二点で二千五百万円で買われておりますが、これは国会でも論議されて、そのときには本物だと答弁されたようですけれども、これはいまや世界じゅうがにせものだと認めておるのですね。こういうふうに非常に国外のものが高い、その反面日本のものが安く行って、一般的にアメリカに行くと三倍になるといわれておるわけです。そういう流れ方をしておるのですが、どうでしょうかね、これについてもっとやはり日本のものを大事にすべきだ。いままで国宝あるいは重美、重文というふうに指定されておりましても、大体時代からいいますと室町以前のものが多いわけなんです。江戸時代というものは非常に抜けておるわけです。ですから、江戸時代の特に文人画だとかそういうものをねらって、いま外国にどんどん出ておるわけです。それから、いままで一ぺんある作者のものがこういったものに指定されると、その後さらにりっぱなものが出てきても何となしに指定しようとしない。そういうものがどんどん出ていってしまう。私は大体、二億一千万などということしの文化財買い上げ費は非常に不満なんです。この問題はあとで触れますが、同時に、これは国民の税金で買うものですから、国立美術館等で買う場合にもっと——先ほど例にあげました洋画なら洋画について、たとえば日本で、だれが見ましても硲伊之助が一番洋画はよく見える、こういわれておるのですね。たとえばあの人のような人に相談してこういう美術館が買うとかいうふうな方法は考えられないのですか。その問題と、ひとつその指定範囲拡大についての意見をお聞きしたいと思います。
  24. 安達健二

    安達政府委員 指定拡大の問題につきましては、ただいま御指摘のとおりでございまして、一つの点は、従来の指定がやや美術に偏重して、政治、経済技術等に関する歴史資料に対するものの配慮が必ずしも十分でなかったかという反省が一つ、それから、いま御指摘のございました中世以降のものについての指定がおくれておるという問題がございます。これはたとえば、御指摘になりました文人画等指定がおくれていることは全く事実でございます。これは研究面がおくれているとか、あるいは真偽、あるいはにせものが相当多い分野になるというようなところで、勢い慎重になるというようなことでおくれてきておるわけでございますけれども、これはやはり最近こういうものに対する海外での評価要望等が多くなってくるだけに、よけいこの面での指定の促進をしなければならない、かように考えておるわけでございます。  それから、こういうものを買う場合につきましての手続につきましては、まず第一番目に委員会を設けまして、購入委員会においてこういうものを買うべきかどうかということをまず十分検討する、それからその次に、価格評価委員会というものをつくりまして適正なる値段を見出す、こういうような二重の手続によりまして、この買い上げにつきまして慎重なる手続をとっておるというのが実情でございます。
  25. 吉田実

    吉田(実)委員 わかりましたが、ただいまの答弁の中で、政治、経済あるいは産業等に関する資料指定したい、これは私も全面賛成です。ぜひそうやっていただきたいと思います。ただ、美術に片寄っておってといういまの御発言でしたが、美術でもその周辺がなければわからないのですよ、資料がなければ。たとえば光琳なら光琳派というものは、光琳だけを指定しておってもしようがないので、光琳を取り巻く、あるいは光琳派というものを形成したもろもろの絵かきの重要な作品というものはやはり当然指定すべきであって、美術においても資料分野というものをひとつ十分御配慮いただくようにお願いいたしたいと思います。  それから、先ほど国立西洋美術館にせもの二点買ったことに対して例をあげましたのは、もっと野にすぐれた鑑定象がおるわけなんです。ほんとうの眼、目を持っている鑑識者というものが野におるわけですよ。たとえば洋画については硲伊之助だとか、あるいは文人画については山中蘭渓だとか、あるいは仏教美術については藤田青花だとか、こういった人は評論家学者よりももっと実力があり、もっといい目を持っているのです。そういう人を今後もっと、せっかく国民の税金を使ってお買いになるのですから、そういう人を鑑定家として、いやしくも国が買うものについて真贋を云々されるようなものは買っていただかないように、これはひとつお願いいたしたいと思います。  そこで、大体いまの次長さんのなにで、指定拡大ですね。拡大の方向はわかりましたが、先ほど次官からも御説明をいただきましたけれども、今後指定拡大するについても、いろんなことをするについて調査が必要だと思うのです。調査を、一体どういうふうな五カ年計画を具体的におやりになる御計画でございましょうか。
  26. 安達健二

    安達政府委員 第一番目は、所在を確認するということが一つございます。現在重要美術品で七千件ほど認定されておりますけれども、戦後の混乱でもって二千点くらいが所在がわからないというのがございます。これを早く確かめるということがございます。それからなお、第二番目は、そういうものに、重要文化財指定されあるいは重要美術品に認定されていないようなもので価値のあるものをさがす、それについてはどういうものがあるかということの資料を調査しまして、それからさらに、それの所在を確認して、そしてその中で重要なものを選んでリストをつくっていく、そのリストを税関等に配付していく、あるいは関係の博物館等に配付していく、そういうことが現在の大事なことだろうと思うわけでございまして、一つ指定されていないものを、いかにしてこれをまた流出を防止するかという次のむずかしい問題が出てくるわけでございます。そういうものにつきましては、その輸出の段階で、これはすでに国内に保存すべきものとしてリストにあげられているものであるならば、それがなお指定されてないものならばこれをどうやってするかといえば、あるいは博物館なり国においてこれを買い上げるとか、あるいは公立美術館で買ってもらうとか、そういうようなことで事実上売れないようにする、こういうような方策を考えなければならぬ、あるいはそういう方策だけではなお不十分であるとするならば、それについての仮指定の制度とか、そういう新しい方向をも検討していかなければならないだろう、かように考えておるわけでございます。
  27. 吉田実

    吉田(実)委員 御案内のように今日、日本ほど古美術流出の楽な国は世界じゅうにないといわれておるのですね。たとえば中国は、七十年以上たったものはすべて古い文化財として一切輸出を禁止していますし、韓国のごときは、これはもう日本人でも何人かの人があそこから持って出ようとして懲役刑を食っておるというような実情なんですね。先ほど次長のお話にあったように、わが国文化財保護法は、そういう罰則が適用されようとしたことも一度もないとわれわれは聞いておる段階です。  それはそれとして、このように諸外国が国をもって美術を守ってきておりますが、日本の古美術というのは、われわれの祖先が、個人が幾多の戦火や天災から守ってわれわれに伝えてきたものなんです。そのためにまた一面、公開することを、あるいは自分が所有していることを公表することをきらう傾向も一部の方にあるわけですね。これは、一つは税法上の問題なんです。おそらくアメリカを例にとるまでもなく、世界の先進国で古美術に対する税法上の優遇措置と申しますか、それが日本ほど行なわれていない国はないわけなんですが、文化庁は、今後古美術を守っていく上で、税法上の問題についても大蔵省当局等と十分話し合いする用意がございますか。
  28. 安達健二

    安達政府委員 個人所有の美術品等につきまして、相続税とかそういうようなものについてまで配慮するかどうかについては、税の問題としてなかなかむずかしい問題だろうと思うわけでございますが、私どもがさしあたり税の上で考えておりますのは、国とかあるいは地方公共団体、公立の博物館等で買い上げをする場合に、贈与税その他の点について配慮してもらいたいということは、かねがね大蔵省等に申し入れているところでございます。
  29. 吉田実

    吉田(実)委員 私立の美術館なり博物館についてのお考えはないわけなんですか。法人組織になっております私立の……。
  30. 安達健二

    安達政府委員 公立美術館と簡単に申し上げましたけれども、その場合に、いわゆる財団法人等によって設立されて健全なる運営がなされているもの等についても、やはり公立美術館に準じた扱いをすべきものだろうと考えております。もしそういう措置が実現できるならばということですが……。
  31. 吉田実

    吉田(実)委員 日本の国立なり公立美術館の購入費は限られているのですね。先ほど、国宝、重美等の買い上げに国はわずかに二億一千万なんですから、やはりこれには今後もっと予算をふやしてもらいたいと思いますが、いま古美術品を保有してもらうところは私立あるいは企業の美術館ですね。こういったところでうんとこういったものを持ってもらうためには、いまの説明を聞いておりますと従たる考え方なんですね、次長考え方は。国立、公立を主として、これに準ずるものというふうな考え方なんですね、企業なり私立なり……。そうじゃなしに、それを逆にして、ひとつ考え方を逆にして進めていただきたいものと思います。  そこで、文化財保護法というものが施行以来、先ほどのような全くのしり抜けだとは申しませんけれども、また文化庁なり京都の博物館でたいへんお骨折りをいただいておりますけれども、これはそういったものの約八割程度というものは幾ら出ていってもいいものなんですよ。外国人、特にアメリカ人が来まして、思い出のために買っていくようなものは、日本輸出許可があれば向こうの税関で何にもかからぬ、こういうことで、やたらに持ち込んできて忙しい方々をわずらわしておるわけですが、とにかくこういった扱いなり何かを含めて、いまの文化財保護法というものはもっと簡素化する面は簡素化する、もっと重点化するところは重点化しなければならぬものと私は考えておりますが、どうですか。文化財保護法というのは、もうずいぶん長い間、しかもこれはわれわれの先輩が議員立法によってつくられた。当時の文化庁の中枢部には、先ほど例にあげたような本年度の文化功労者として受賞されたような人もあったので、われわれの先輩が見るに見かねてこれは議員立法でつくられたものと私は聞いておるのですけれども、もうすでに二十年もたちまして、その後第三番目の大量流出時代に入っておるわけですね。オリンピックあるいは万博を機会として、これでは、十年か十五年たったらしまいにはわれわれの扱うものは何もなくなるだろうと一流の骨とう屋が言っておるわけです。また現に私が知っている限りでも、現に日本に四人ぐらいの、アメリカはじめフランスだとかオランダとかイギリスだとか、こういう方面の骨とう屋が常時滞在しておる。それから日本ブームと申しますか、日本ブーム研究のために来ている研究者あるいはバイヤー、こういった者によって持ち出されているものが非常に多いわけなんです。こういう危機ですね、明治の十年、それから敗戦直後、そうして今度の三番目のこの危機の時代にあたって、文化庁ではこの文化財保護法の改正、いまの法律でいいとお考えか、もっと改正すべき点があるとお考えか。
  32. 安達健二

    安達政府委員 ただいま御指摘のとおり、現行の文化財保護法は二十年前に制定されたものでございまして、その当時と現在とでは社会、文化の事情がたいへん異なっておるわけでございます。したがいまして、文化財保護法につきまして改正を要すると思われるところもだんだんと出てまいっておるのは当然でございまして、ただいま御指摘の点、あるいは史跡等の保存の面におきましていろいろ検討すべきところがあるだろうということで、現在部内で検討を続けておるところでございます。
  33. 吉田実

    吉田(実)委員 現在の事情にかんがみまして、ぜひひとつおやりいただきたいと思います。  最近、昨年あたりから地下にありますものの文化財の保存の機運というものは国民の間にも非常に盛り上がってきましたし、また予算的にもそれぞれ措置されてまいりました。しかし、大ざっぱにいえば、日本じゅうの重美の中には貴重なものがあるわけなんです。これは今後とも保存するように努力しなければなりませんが、少なくとも万博やオリンピックをやるといって外国から日本のものを借りてこなければやれないということでは、われわれ非常に残念なことだと思いますので、ひとつ法の改正を含めて——特に私は文部省の要求予算が少ないと思うのですね。二億数千万、要求は三億ほどされたのですか、少なくとも、国なりあるいは国立の美術館等買い上げるべき買い上げ費と申しますか、そういうものは四次防の一%くらいあってもいいと私は思うのです。それが文化国家なんですよ。そういう意味で従来の何割増しなどというようなものではなしに、来年はぜひ思い切った買い上げ費も計上していただきますとともに、ぜひことしの百九十万を有効に使っていただきまして——御案内のように、これをお役所的にさがそうと思ってもさがせませんよ。もっとやはり個人個人のうちに入り込むくらいのことをしておやりにならぬと、なかなか——いま次長は、戦前の重美で約二千点くらいが行くえ不明だとおっしゃいましたが、そういうものをさがすのには、やはり個人のコレクターのうちに入り込むくらいの努力までお払いにならぬといけないと思いますので、最後にひとつ次官に、来年度はぜひこの五カ年計画の調査費についても、百九十万ではどうにもならぬと思うのです、いま申し上げましたように。買い上げ費についても、ひとつ多額のものを要求する決意をお聞きいたしたいと思います。
  34. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答えいたします。  先生指摘の御趣旨に沿いまして、文部省といたしましても、五カ年計画の二年度の予算につきましても飛躍的な増額をはかりたいと考えております。また文化財買い上げ予算につきましても、いま四十五年度の一億八千万から四十六年度の二億一千万とわずか三千万円の増額になったにすぎないのでありますが、これまた飛躍的な増額をはかるように、文部省といたしましては努力いたしますことをお約束をいたします。
  35. 吉田実

    吉田(実)委員 ぜひそのようにお願いをいたしたいと思います。  どうもありがとうございました。
  36. 八木徹雄

  37. 川村継義

    川村委員 議題になっております文化功労者年金法一部改正、私、きょうはこの法案に直接関連する問題を一つお聞きをいたしまして、あと文化庁長官お見えになっておりませんか。——文化振興について簡単にお尋ねをしておきたいと思います。  いま、文化功労者として年金をお受けになっておられる方が何名おられるでしょうか。
  38. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 百九名でございます。
  39. 川村継義

    川村委員 それは生存をしておられる方ですね。
  40. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 そのとおりでございます。
  41. 川村継義

    川村委員 小さいことですけれども、大臣の提案理由の中には、文化功労を受けられた方が二百二十八名、こう説明をしておられます。ところが、文化庁が発行しておられます月報の十一月号には二百二十六名、こう書いてある。これはたった二名じゃないかということになりますけれども、これはやはり非常に大事な問題ですから、ひとつ注意をしておきたいと思います。  生存をしておられる方は百九名、そこで昨年の十月には二名の方が文化勲章をお受けになって、それから文化功労者として麻生先生はじめ八名の方がお受けになった。そこでお伺いするのでありますが、この文化勲章をお受けになった方は、自動的に文化功労者年金としてまたおきめになる選考をなさるのですか。もちろん私は、文化勲章の選考功労者の選考は別個のものであると考えておりますが、やはりこれは文化功労という立場から、文化勲章をお受けになった方は当然功労者として選考なさる、こういうような基準でもお持ちになっておるのですか、おわかりですか。
  42. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 憲法におきましては、御承知のとおり、栄典はいかなる特権も伴わないという規定がございます。したがいまして、文化勲章を受章されたということによりまして、当然にと申しますか自動的に文化功労者に選定されるということはございません。ただ、実際問題といたしまして文化勲章を受章なさいました方は、文化の発達に関し功績の顕著な方であるということは言えるかと思いますので、実際上の取り扱いといたしましては、すべてが文化功労者に決定をされておるということでございます。
  43. 川村継義

    川村委員 そこで、文化勲章をお受けになった方は、いろいろ選考のたてまえ、基準はありましょうが、文化功労者として年金も当然お受けになる、そのような受賞該当者となる、こうなっておるということでございますね、念のために。
  44. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 文化功労者年金法の第一条におきましては、文化功労者は、「文化向上発達に関し特に功績顕著な者」というふうな規定がございます。一方、文化勲章令におきましては、「文化ノ発達ニ関シ勲績卓絶ナル者ニ之ヲ賜フ」という規定があるわけでございますが、お尋ねの趣旨とやや広がった御説明を申し上げることになるわけでございますが、「勲績卓絶」と申しますのは、私どもは、独創的、画期的な芸術上、学術上その他の功績をあげられたというふうに理解をいたしておるわけでございます。功労者年金におきまする「向上発達に関し特に功績顕著な者」というのは、文化勲章令の「勲績卓絶」よりもさらに広い意味合いであろうというふうな理解をいたしまして、文化勲章受章者は功績顕著な者として文化功労者に含める、含めて差しつかえない、あるいは含めるべきであるというふうな考え方選考いたしておるわけでございます。
  45. 川村継義

    川村委員 先ほどちょっと資料をいただきましたが、いろいろ十分見る時間がありませんでしたが、文化勲章をお受けになった方がいままで何名おられますか、そして、現在生存しておられる方方は何名おられるでしょう。
  46. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 文化勲章受章者の総数は百五十二名でございます。現存者は六十五名でございます。ただし、このほかに、例のアポロ関係の三人が外数としてございます。
  47. 川村継義

    川村委員 なぜ私がこのことを確かめておるかと申しますと、昨年十月二十八日に文化勲章をお受けになった冲中先生、棟方先生、二名おられました。そのときに、政府の発表では、文化勲章はこの二名であるし、文化功労者は麻生先生はじめ八名である、こういう発表がなされておりましたので、実は自動的にいくのかどうかということでお尋ねしているわけです。ところが、きょういただいた資料を見ると、昨年度十名の文化功労者が書いてある。そこで、やはりこれは憲法のたてまえ上からも、文化勲章受章者と文化功労年金受賞者とのこれが、全く自動的にいくということになるとちょっと疑問になると思ったので実は確かめたわけです。それは先ほどの官房長のお話のように、必ずしもそうじゃなくて選考は別だけれども、これはやはり同じ文化功労者として遇するんだ、こういうようなたてまえにしておるという、その辺のところで大体了解をしたいと思います。  そこで、いま一点お聞きしますが、文化功労者選考なさる場合——文化勲章はきょうはお聞きしませんが、これにはやはり年齢的な基準というものがございましょうか。
  48. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 年齢的な基準はございません。  ただ、御参考までに申し上げますと、昭和二十六年から四十五年までの間に文化学者として決定された方の年齢を平均いたしますと、約七十三歳でございます。決定当時の最高年齢者は、昭和二十六年に田中館愛橘氏が九十五歳、決定当時の年齢の一番若い方は、昭和三十二年の小平邦彦氏の四十二歳というのがございますが、ただいま申し上げましたように年齢的に特に基準はございません。
  49. 川村継義

    川村委員 実は、昨年の文化功労者の八名の皆さんは、全部七十歳以上の年齢になっておりますね。文化勲章をお受けになった冲中先生、棟方先生は六十八歳、六十七歳、こういうことになっております。そこで私がお聞きしたのは、文化功労者として文部大臣が決定なさる分については七十歳をこえておらなければならぬのか、こういう疑問があったからお尋ねしたわけですが、文化勲章をお受けになった沖中先生、棟方先生もまた文化功労者として受賞をしておられますから、いまの年齢についての基準はないということは理解がいきます。しかし、何といっても二十歳、三十歳代でそういう功績が顕著であるとはまあまあ考えられないので、相当高年齢の方がそういう方になられるだろうということは、これは常識的にも考えられるわけであります。  そこで、先ほどの点でありますが、文化勲章をお受けになった方は文化功労者として遇しておられるのですが、昭和三十七年に文化勲章をお受けになった平櫛先生は、文化功労者としては賞してございますか、ございませんか。いまいただいたこの資料をめくりながら、ちょっとその点が疑問になるのです。もちろん、前に文化勲章をお受けになって、年齢を下がって功労者としてまた決定なさっている方もおられます。しかし、この三十七年十一月に文化勲章をお受けになった木彫の芸術院会員の平櫛先生は、文化功労者になっておられますか。
  50. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 平櫛先生は、二十九年にすでに文化功労者として決定をされております。
  51. 川村継義

    川村委員 わかりました。二十九年に文化功労者として決定をされておって、文化勲章の受章はおくれておる、こういうことですね。私の資料の見落としでなかったかと思います。  そこで、少し急ぎますけれども、この文化功労者年金予算について確かめておきたいと思います。  ことしの予算は一億八千万円、昨年は一億一千七百万円でした。そこで六千三百万円の増加要求がなされておる。おそらくこれは、法案にございますように、提案理由にあるように、いま百万円差し上げておるのを百五十万円にしようということだと思いますが、百九名が文化功労者の方であれば、五千四百五十万円プラスをしておけば足りるわけですね。六千三百万円要求してありますのは、四十六年度に考えられる文化功労者選考の員数を考えておられるのではないかと私は思うのでありますが、その六千三百万円増加をして要求しておられます根拠をちょっと言ってください。
  52. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 文化功労者は年に七、八名から十名程度指定をいたしておるわけでありますが、予算といたしましては毎年十名を上積みをしております。先ほど申し上げましたように、現在の生存者は百九名でございますが、実は予算決定当時の生存者は百十名でございます。その間一人、ことしの一月に喜多六平太さんがなくなられております。したがいまして、現在員は百九名でございますが、予算決定当時に百十名でございまして、それに十名新たに上積みいたしまして百二十名、百二十名に対して百五十万円を支給するため、計一億八千万円の予算を計上しておる、こういうことでございます。
  53. 川村継義

    川村委員 そうすると、百二十名予定をしておられるならば、五十万円増加ですから六千万円あればいいわけです。大体六千三百万円ですから、それはとやかく言うべき筋合いじゃないかと思いますが、その点はわかりました。これは決算上の問題がありますから、あとでお聞きいたします。  それから次に、関係をする問題で日本芸術院の年金についてちょっとお聞きしておきたいと思う。  芸術院の会員の皆さん方はいま何名おられるか、それが一つ。年金は幾らであるか。それから、芸術院会員については予算上は年金ということばを使っていないが、それはどういう意味なのか。それからいま一つ続けて聞きましょう。芸術院会員で文化功労者となっておられる方は何名おられるか。この四つ聞いておきましょう。
  54. 安達健二

    安達政府委員 芸術院の会員は、ことしの二月十五日現在で百六名でございます。会員の年金は八十五万円でございます。
  55. 川村継義

    川村委員 次長さん、私は百七名と聞いているんですが、百六名、まあそれでいいでしょう。年金は八十五万ではないでしょう。七十万円でありませんか。
  56. 安達健二

    安達政府委員 実は四十六年度と間違えました。現在は七十万円でございますが、四十六年度予算で八十五万円に増額の予算を御審議いただいておりますので、現在と明年度予算を取り違えましたので、お許し願いたいと思います。
  57. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 文化功労者日本芸術院会員を兼ねる者の数は三十九人でございます。
  58. 川村継義

    川村委員 いま芸術院会員は、芸術院令の二条に、会員は百二十名以内とするとこうなっておりますが、百二十名一ぱい一ぱいでなくて、御答弁によると百六名おられる。いままでは七十万円を年金として、これは予算書には「手当」と書いてあるが、出しておられる。それをことしは八十五万円差し上げていきたい。もちろんこれは院長さんとちょっと違いますね。院長さんは現在百万円、それを今度の予算では百十五万円にしたい、こういうことでしたね、これはまたお答えが出ておりませんが。文化功労者芸術院会員の中には三十九名おられるという。  そこでお尋ねするのですが、文化功労者年金の従来の百万円、それから芸術院会員として受けられる従来の七十万円、これは併給されておるのですか、あるいは文化功労者年金を受けられる方は、芸術院会員の年金はそれだけプラスマイナスするのですか、どうなんですか。
  59. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 併給されております。
  60. 川村継義

    川村委員 併給ということは、私はここで併給がよいとか悪いとかを申ん上げたいとは思いません。ただ、国民一般のいろいろな年金関係の支給では、小さい国民年金であるとか障害年金であるとか、こういうものが併給を拒絶されておる例がたくさんある。私は、この大事な大事な文化功労の方々の年金が百万円であっていいとかあるいは百五十万円であっていいとか、そういうことを申し上げようとは思わない。これが併給されておるということは、私はたいへん望ましいことだと思います。ちゃんとそれだけの厚遇をしてやられる考え方はいいことだと思います。しかし、それならば政府としては、よほど一般国民に対するところの併給ということも考えなければならないという問題が、別途やはり存在するということを私は指摘をしておきたいと思います。  そこで、今度は芸術院会員の予算についてちょっとお尋ねをいたしますが、先ほど申し上げましたように、芸術院会員には年金を支給すると書いてある。ところが、予算書には年金ということばが出てこない。「日本芸術院会員手当」として出ている。ことしは一億三百三十五万円要求をしてある。昨年は八千五百二十万円であった。そこで一千八百十五万円の増加要求がなされておる。これはいまお話しのように、七十万円を八十五万円にするということでございますから当然の予算措置だと思うけれども、現在おられる百六名分で予算要求は百二十名分以上してある。百二十名以上増加してある。これは、芸術院会員は、ことしは百二十名在職願えるという見込みで予算要求してございますか、あるいは芸術院令に百二十名とあるから百二十名の計算で要求してあるのですか、ちょっと明らかにしておいていただきたい。
  61. 安達健二

    安達政府委員 芸術院の会員につきましては、これは選挙によって会員の過半数を得た者が会員になるという制度でございまして、したがいまして、百二十名ぎりぎりまではなられる可能性があるわけでございますので、予算といたしましては最高額を計上する、こういうことでございます。  なお、年金につきましては、会員の分は、先ほど申し上げましたように、明年度は八十五万円でございますが、部長につきましてはこれが九十五万円、それから院長が手当として百五万円というようなことになっておりますので、予算的にはいま申し上げましたような額の要求をいたしておる、こういうことでございます。
  62. 川村継義

    川村委員 昨年度の予算を百二十名で計算しても余りがあるわけですね。そうなると、残額は不用額として決算されると思いますけれども、その辺の金額の取り扱いは、これはあとでまた決算上ちょっと申し上げますけれども、十分御注意をいただきたい。  それから、もう一つお尋ねをしておくことは、芸術院会員は、芸術院令の第四条によって、「会員は、終身とする。」と書いてある。「ただし、会員が退任を申し出た場合には、総会の承認を経て、これを認めることができる。」とこうなっておる。そうなると、これはあとの学士院会員とちょっと関係してまいりますが、日本芸術院会員は、退任を申し出たということになると、その方々は当然この年金というものは返上されるべきものでございましょうね。「会員は、終身とする。」と書いてある。しかし、退任を申し出て認められた場合には、年金はくっつけてやるのじゃなくて、当然その限りで返上される、こう解釈していいでしょうね。
  63. 安達健二

    安達政府委員 ただいま御指摘のとおり、退任すれば会員でございませんので、会員でない者には年金は支給されないので、当然だと思います。  それから、先ほどちょっと説明が不足いたしておりましたが、実は芸術院の院長が現在会員ではないわけでございます。高橋誠一郎さんは芸術院会員ではないのでございますが、選ばれて院長になっておられます。したがいまして、その分だけは追加といいますか、会員以外の分として百二十一名分というもので積算されておるわけでございますので、先ほどのところにそれを追加していただきますと、予算としてはちょうど合う勘定になるということでございます。
  64. 川村継義

    川村委員 それは小さいけれども、あまり簡単過ぎる。私が計算しているのは、ちゃんと院長の百万円分、あるいはことしの百十五万円分、これを引き去って計算をしているわけなんだから、それはやはりさっき私が指摘したとおり——これはもうごたごた申し上げませんよ。これはこまかく計算してある。  いまの退任の問題等につきましては明らかになりました。そこで、これは日本学士院のあれと関係するのだが、これは学士院の中で聞くわけだけれども、学士院法には「定員は、百五十人とする。」そして「会員は、終身とする。」と書いてある、退任の申し出云々という条項がない。そうすると、学士院会員になった者はどうなるのですか。
  65. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 日本学士院法には芸術院令のような規定はございませんが、学士院の会則第三条におきましては、「会員が辞退を申し出た場合には、総会の承認により、これを認めることができる。」という規定がございまして、そうした場合を取り扱っておるのでございます。
  66. 川村継義

    川村委員 そうなると、官房長、いかに学士院会員になったからといって、なった以上は終身だ、これは私もあまりにもひど過ぎると思うのです。辞退させてくださいといったら、やはり辞退する方法が考えられてしかるべきであるし、いただいておる年金はもうそれで返上する、こういうふうになるのが当然だと思うのです。そうなると、やはり学士院法に何か芸術院令みたいな条項というものが必要ではないか。ただ会則に云々では、これは何かちょっと問題がすっきりしない、こう思うのですが、そういうことを検討する御意思はございませんか。これはひとつ次官からお聞きしましょう。
  67. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 確かに先生おっしゃるような点が一つ問題点かと思いますが、そもそも日本学士院につきましては、会員の身分が特別職ということになっております。これに対しまして芸術院におきましては、会員の身分は一般職ということになっております。そうしたところから、学士院会員の身分につきましては、これは文部大臣の発令行為がございません。芸術院につきましては、選挙という手続は経ますけれども、文部大臣の任命行為があるわけです。学士院にはこれがございません。会員は、日本学士院自体が選定をいたしましたときに、学士院会員としての、特別職としての身分を自動的に保有するということになっております。その辺が基本的に違うわけでございます。学士院法にそうしたただいま先生が御指摘のような規定がないというのは、身分的に基本的にそうした違いがあるから、私はそうした辞退の規定が法令に規定されていないのだと思います。しかし、川村先生がおっしゃるような点も一つ問題点だというふうに私自身考えます。十分検討させていただきます。
  68. 川村継義

    川村委員 そこで、日本学士院法についてあと二、三お聞きしますが、定員は——これは定員と書いてある。定員は百五十人ということは、いま欠員はありませんか、ありますか。これが一つ。  それから年金は、日本芸術院会員と同様にいままでは七十万円である。今度おそらく八十五万円に予算上考えておられるだろうと思いますが、そのとおりですか。院長さんは、これも芸術院会員と同じようにいままで百万円であったけれども、今度は百十五万円にしようとお考えになっておると思いますが、そのとおりですか。これが第二点。  第三点、文化功労者の方々は日本学士院会員として何名おられるか。そしてこれも芸術院会員と同様に、その方々の文化功労年金と学士院会員としての年金、この年金はやはり併給になっておりますか、どうですか。  三つ、四つ続けて伺います。
  69. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 最初に日本学士院の現員でございますが、現員は百三十九名でございます。  それから、学士院会員で文化功労者である者は五十名でございます。これはいずれも併給を受けております。  それから学士院会員の年金でございますが、一般会員につきましては七十万円を八十五万円、部長につきましては八十万円を九十五万円、幹事につきましては九十万円を百五万円、院長につきましては百万円を百十五万円というふうに、四十六年度におきましてそれぞれ増額するよう予算にお願いをしておる次第でございます。
  70. 川村継義

    川村委員 そこで、先ほどと同じように予算のことでちょっと確かめておきたいのですが、現在は百三十九名おられる。ちょっと欠員があるのですね、十一名ばかり。ところが、学士院会員のほうは百五十名という定員の中には院長も含まれる。芸術院会員とちょっとそこのところが違う。含まれる。そこで、四十五年度の予算はちょうど百五十人分見てある、院長を含めて。それにしてもちょっと余るのですよ。ところが実際は百三十九名であるというから、相当これは不用額というか、何に流用されるか知りませんけれども、それが余る。四十六年度は一億二千八百二十万円要求してあるが、これが大体やはり百五十名で要求をしておられる。これは七十万円を八十五万円にする、院長の百万円を百十五万円にする、こういう計算でやられているようであります。そこで、これらの予算の運用については、欠員等が相当あるんだから、十分気をつけていただかなければならぬと思います。これはあと文化功労者年金日本芸術院会員の年金、いまの日本学士院会員の年金、それの決算上の問題でちょっと指摘をしたいと思います。  その前に、一つお聞きをしておきますが、先ほどの日本芸術院のほうは、日本芸術院令というものが文化庁所轄になっておる文部省設置法、これは二十四年の五月にできた法律文部省設置法によって日本芸術院令というのが二十四年の七月につくられておる。文化功労者年金法は、昭和二十六年の四月にこの法律ができておる。いまの日本学士院法は、昭和三十一年の三月にできておる。そこで、日本芸術院会員に年金を出すようになったのは、芸術院令制定当時からやっておられるのか、あるいは文化功労者年金法ができたあと芸術院会員に年金を出されるようになったのか、日本学士院会員のほうは、文化功労者年金法芸術院令を受けて年金を出されるようになったのか、その辺の法律制定の経過と年金支給の経過をちょっと説明してください。
  71. 安達健二

    安達政府委員 芸術院の年金、芸術院会員に対する年金が支給されましたのは、昭和二十一年に十二万円が支給されましたからで、現在までに年金の額については改定ございますが、年金を支給するということは昭和二十一年以来でございます。
  72. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 学士院会員に対する年金の支給は、明治十二年以来行なっております。
  73. 川村継義

    川村委員 わかりました。  ずいぶんこれは、終戦後というよりも古い時代からこういうのがあった。それを受けて今日、年金支給が整備されていると思いますが、そこで、これは政務次官か官房長かからお聞かせをいただきたいと思いますが、日本学士院法は単独法で行なわれておる。私は、日本芸術院のほうも、文化庁文部省の外局として機構改革があったのですから、この年金を支給するなどという立場からすると、日本芸術院令のほうも単独法に変えて明らかにしたほうがいいのではないか。もちろんそれは学士院の使命、目的、日本芸術院の目的、使命、違うと思いますよ。しかし、何といってもどうもこの辺のところに手抜かりというか、考えが少し不十分な経過がありゃしないかということが考えられます。そこで、日本芸術院のほうも学士院みたいに一つの単独法として整備するお考えはないかどうか、この際ちょっと聞かせておいていただきたい。
  74. 八木徹雄

    八木委員長 先ほどの質問に対する答弁残があります。答弁させます。
  75. 安達健二

    安達政府委員 年金の支給が始まった時期が少し違っておりますので、調べておりますから……。
  76. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 学士院と芸術院の法制的は違いでございますが、これは沿革的な歴史をちょっと御説明申し上げたいと思います。  戦前は、芸術院、学士院ともいずれも、これは勅令であります官制で規定されておったわけであります。学士院につきましては、明治三十九年の勅令百四十九号の日本学士院規程というのがございまして、それが戦後まで続いたわけでございますが、昭和二十三年に日本学術会議が発足いたしましたときに、日本学術会議法の中に、日本学士院に関する規定が取り込まれたというような経過がございます。その後三十一年に、日本学士院法という単行法ができまして、日本学術会議法から日本学士院に関する部分を引き抜いたわけでございます。そのとき文部省設置法に移して、いまの芸術院と同じ規定のしかたをするということもこれは考え得たわけでございますが、当時の山田三良学士院長以下会員多数の非常に強い御希望がございまして、日本学士院法という単行法の形でこれが設置されたということになったのが経過でございます。ところが一方、日本芸術院につきましては、昭和十二年の日本芸術院官制が戦後までずっと続いておったわけでございますが、昭和二十四年に文部省設置法が制定されまして、その際にこの日本芸術院官制を廃止して、それを文部省設置法の中に取り込んだというような経過でございます。これは仮定の問題になるかとも思いますが、日本学術会議法の中に学士院に関する規定が取り込まれなかったというようなことであれば、おそらく同じ経過をたどったのではないかとも思いますが、いま申し上げましたような特別な沿革がございまして、学士院だけが単独法を持つという事情になっておるわけでございます。
  77. 安達健二

    安達政府委員 先ほど芸術院会員の年金が初めて支給された時期を昭和二十一年と申し上げましたけれども、それ以前にも、もちろん従来のものとして支給されておったようでございまして、それにつきまして詳細に調べました上でお答えさしていただきたいということをお許し願いたいと思います。
  78. 川村継義

    川村委員 そこで、いまの文化功労者年金日本学士院会員の年金、日本芸術院会員の年金、まあ私小さいことは申し上げたくありませんが、何といってもやはり国民のお金からこういうりっぱな偉い方々に対する功労として出ておるのですから、その使途については十分誤りないように願いたいと思います。  そこで、昭和四十四年の文化功労者年金の決算を見ると、これは先ほど昭和四十五年現在で、百十名文化功労者の方々がおられたわけでありますが、昭和四十四年には、私の計算では百十五名おられることになっておる。ところがこの資料を見ると、どうもこの数が少しあやふやなんです。しかも使ったのは、二十五万円の不用額として決算上あがっておるが、その中でも百十五名分としても別途七十五万円余る、こういう計算ができる。それから日本学士院年金のほうは、これもちょっとばかり不用額が出ておるんだけれども、これも百三十七名分の額であって、これはまあ大体、四十四年度はこれぐらいの会員がおられたと私も推測します。これも少し余る。それから日本芸術院会員手当のほうは、これはもちろんその中で少しばかり超勤手当に流用してあるんだが、不用額はもちろんないと出ておる。これもしかし、長を含めて百九名分の支出になっておる。そしてこれにもそのほかにまた、不用額がないとあるんだけれども、百九名を含めてもある程度の残額が出ておる。こういうのが決算書の上で出てくるわけですね。これは、この決算についてこまかいこと言いませんけれども、やはりこれらの運用については、一体年金額といわれたものの中から超勤手当に流用可能なのかどうなのかという問題等もあると思う。そこで私は先ほど聞いたように、日本芸術院会員のほうは、予算上は年金といわぬで手当という名前で出しておられるのではないか、こういう疑問がちょっと出るわけですね。私は、年金としたならばちゃんとした支出で、不用額が出たらちゃんと不用額を決算する、それを超勤手当に流用などということは、年金であればこれはよく考えなければならぬ問題があるのではないか、こう思って、まあ小さいことかもしれませんが御注意を願いたい、こういうことであります。  そこで、第二点の問題。時間がございませんからちょっとはしょりますが、私はこれは順序が少し逆になるかと思いますが、文化庁文化財保護事業について、ことしは飛鳥の文化保存の事業等に非常に御努力いただいた、その努力を高く評価しております。が、その文化財保護事業の中に重要無形文化財保存特別助成金というものがある。これは予算補助になっておりますね。これは三十九年度から実施しておられる。この重要無形文化財保存特別助成金、これは、私が申し上げるまでもなく、重要無形文化財のその方々の技術は実に重要なものがあると私は思う。また、その後継者といいますか、あとを継ぐ伝承者といいますか、そういう方を育てるには実に重要な、日本文化振興一つの柱をなしておると考えても過言ではないと私は思います。その重要無形文化財保存特別助成金が実は非常に少ないと私は見るのですよ。そこで、四十五年度、三十五万円一人当たりお出しになったのと五十万円お出しになったのがありますね。四十五年度、認定者数は一体総計幾らだったのか、三十五万円をお出しになったのは何人か、五十万円をお出しになったのは幾つか、これを初めにちょっと聞かしていただきたい。
  79. 安達健二

    安達政府委員 三十五万円を差し上げた方は三十七人、それから五十万円を差し上げた方は二十四人でございます。
  80. 川村継義

    川村委員 そうすると合計六十一名の方に出ておる、こういうことですか。
  81. 安達健二

    安達政府委員 さようでございます。
  82. 川村継義

    川村委員 そこで、先ほど私は文化功労者の年金のことをお尋ねいたしました。確かめました。併給されていることも明らかになりました。日本文化財保存、こういうことを考えると、この重要無形文化財保存特別助成金を三十九年度から出していただくことになったのは、私は非常に高く高く実は評価しているわけです。いまも申し上げますように、日本の芸能あるいは工芸技術、そういうような現状を分析するとき、くどくど私申し上げません、今日の経済、社会の状態等考えてみるときに、その人たちの持っておられます高いところのわざというものを高めていくあるいは保存をする、伝承者をつくり上げるということは、非常に大事じゃないかと思うのです。そういう意味においては、この三十五万とかいうようなものはあまりにも低過ぎる。これが本年度の予算は二千六百五十万円、昨年度同様であって、これには少しも手が触れられていないですね。私は、功労者年金等々を引き上げてくださるならば、当然こちらも引き上げてくださったものと思っておったが、引き上げてない。これはいかがでしょう、お考えをお聞きすると同時に、その御意思はないのか、聞かせておいていただきたい。
  83. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答えいたします。  先生指摘のとおり、重要無形文化財の保持者に対する助成につきましては、なお文部省としても十分の措置ができるように努力しなければいけないと考えているわけでございます。四十六年度の予算につきましても、当初、文部省といたしましては、これを三十五万円のところを五十万円に増額をいたしまして予算要求をしたわけでございますが、努力が足りませんでこれが実現をいたしませんで、予算総額といたしましても四十五年度並みと結果的にはなってしまいまして、私どもも残念に思っているわけでございます。もっとも、この問題につきましては、御承知のとおり特別助成金でございまして、これは伝承者の養成、本人のわざの練摩のための経費の一部である、それを助けていくものであるという内容でございまして、他の顕彰のための年金とか優遇のための年金とは若干性質を異にしているわけでございますけれども、もちろん私どもは、今後さらにこれらの特別助成金の増額のために努力しなければいけないと考えているわけでございます。
  84. 川村継義

    川村委員 ただいま次官からお話しいただきましたように、なるほど年金とこれとは性格を異にします。しますけれども、やはり日本文化振興という観点から見ても、文化財の保存あるいは文化財を伸ばしていくというような点から考えましても、こちらが助成じゃというような見切りをするような考え方でなくて、ぜひひとつこれを高めていただく。むしろ私はそちらのほうも、そういう方々の今日置かれておる条件を考えると非常に大事じゃないかと思いますから、これはぜひ努力をいただきたい、こう思うのです。  少し急ぎますが、文化庁にちょっとお聞きしておきます。実は文化庁予算内容についてちょっと聞かなければなりませんが、時間が迫っておりますから大ざっぱに聞きます。科目別に文化庁予算を見てみると、文化振興費というのがある。そこで昨年度よりも、地方文化振興費補助金が一千万増あるいは芸術関係団体の補助金四千万増、地方文化施設整備費の補助金三千万増、こういうようにいろいろ項目が出ておりますが、私はいま申し上げたようなものこそもっと増加されるのが文化振興のねらいではないかと思っておりましたけれども、その中で一番増加しておるのは庁費ですね。もちろん私は庁費も大事だと思います。そこで、この庁費は一体どういうものなのか、人件費だけなのか、これは本年は大きく八千二十五万円も増加しておる。これはちょっと疑問に思います。これは必要なことだとは思います、しかし、ほかがあまりにもさみしい。そこでお聞きするわけでございますが、庁費の内容、それからいまの振興費についての考え方、ちょっと聞かしてください。
  85. 安達健二

    安達政府委員 芸術文化振興につきましては、一つは、広い意味におきまして文化財の保存に力を入れるということと、新しい芸術文化振興をはかる、こういう観点で両方とも必要だと思うわけでございます。  それから、庁費として一億三千万円になっておるわけでございます。その大部分を占めますのは、移動芸術祭経費約七千五百万円ということになっておるわけでございます。移動芸術祭というのは、現在芸術祭が東京でのみ行なわれて、地方で十分に行なわれていないということに着目いたしまして、全国四カ所で中央の芸術祭に匹敵するようなものをやると同時に、その往還の途上の府県におきまして必要な公演をする、こういう関係でこの移動芸術祭経費七千五百万円が新しくふえたのが一番大きいのでございます。これは実際上の使用といたしましては、それぞれの劇団とか楽団とかそういうところに払うという形で支出されるわけでございまして、直接本省で使用するというものではないわけでございます。
  86. 川村継義

    川村委員 わかりました。文化財保存事業費、これについてもう時間がありませんからお聞きいたしませんが、ことしは十二億七千万、十三億ばかり増加していただいて、平城宮とかあるいは飛鳥文化保存等々について非常に努力をしていただくことになっておりますが、こういうのもひとつ特段の努力を願いたいということだけを申し上げておくと同時に、先ほど申し上げましたように、重要無形文化財保存の特別助成金、これを何とかひとつ増額していただくということを、特に文化財保存事業費については指摘をしておきたいと思います。  実はこれから少しお聞きしておきたいと思いましたが、時間がありませんから、はしょって聞きます。  実は私、昨年文化庁からいただきました「文化財保護の現状と問題点」をちょっと一読させていただきましたが、この文化財白書といわれるこれが出たころ、いろいろとあちこちから批判を受けている面もあるようですね。それを私ここでるる申し上げませんが、名ばかりの文化国家じゃないかというような痛烈な批判も出たようです。経済の高度成長による日本文化破壊を訴えておるというような指摘もなされたようであります。そのほか、一体何のために文化財を保護するのか、哲学を抜きにした文化庁の行政姿勢に問題があるのではないか、こういうような指摘も、これが発行された当時なされたことがあります。  これについて、文化財保護の問題、文化保存の問題、いろいろと大きな問題があると思うんだが、その中に一つ指摘されておるのは、文化財等についてもいわゆる調査、発掘という大きな仕事が残るんだが、学術的にやらねば困る、だからいまでも絶対手を触れさせていないところの天皇さまの陵、天皇陵等も思い切って発掘、調査して、日本歴史的なあるいは文化的なそういうものを解明すべきだという議論も出たことを記憶します。そういうようないろいろな問題もあります。特に最近は、天然記念物の保存について力が抜けておる、今日の経済、社会情勢を考えるときに、もう少し文化庁は腹をきめて建設省、林野庁、農林省、関係の各省の先頭に立って、各省をむちうちながら文化財の保護に力を尽くせ、こういう激励の意見等も出たことがございます。くどくど申し上げませんが、そういうようなことでございますから、いま文化庁文部省も一生懸命にこの文化財保護ということについては力を入れていただいておりますが、やはり識者の眼からするとまだまだというような感じがあるようでありますから、この点はひとつぜひ一そうの御努力をお願いしなければならぬと思います。  そこで、「文化財保講の現状と問題点」、これでもいろいろな問題点が指摘されるわけですが、きょうはそれらをお尋ねすることは差し控えますが、芸術文化振興ということについてどういうような基本的なお考えを持っておられるのか。もちろん文化財保護ということも大事でありましょう。しかし、これから七〇年、八〇年代と日本歴史を切り開いていく中に、一体どういうような位置づけというものがあるだろうか。どういう芸術文化振興というものがそこには構想されねばならぬであろうか。きょうは長官が御病気でございますが、芸術文化振興ということについて、ひとつ次官なり次長からその所信をお聞かせおきいただきたいと思います。
  87. 安達健二

    安達政府委員 第一点といたしましては、日本文化というものの世界にすぐれた特殊性というものを一つ考えなければならないと思います。それは、わが国の現在の文化の状況を見ますと、明治以降に取り入れましたヨーロッパ的な文化が世界的水準にまでだんだんと達してきておろうということと同時に、明治以前から存在したところの伝統的な文化、これが単なる遺物ではなくて、生きた形で、能、歌舞伎、文楽にしましても日本画にしましても、これが現存しておる。こういう、世界的に見ても非常に特異な文化の状況にあるということでございます。  これによりまして、したがいましてわが国文化政策といたしましては、この伝統的な文化財と新しい芸術文化振興の問題とを、両者均衡をとりつつ、そしてさらに、両者を総合した新しい文化の開花を促すような施策が考えられなければならないということでございます。  それから第三点といたしましては、芸術文化というものは従来はぜいたく品であるというように考えられておるわけでございますが、これはぜいたく品ではなくて生活必需品になりつつあるという観点によりまして、これは単に民間の手でそのままにしておけばいいというものではなくて、必要な場合においては、国なり地方公共団体等がその芸術文化振興という面、と同時に、ときにはその普及面におきまして特に力を入れなければならない。芸術家の活動はそれぞれ独自の創作活動でございますから、これに干渉することなく、でき上がった成果を普及するということが大事であろう。その面におきますると、それは単に中央だけではなくて、広く日本国民すべてにこれが行き渡るようにしなければならない。教育の機会均等ということがいわれるわけでございますけれども文化享受の機会均等が新しい課題とならなければならない、おおよそ以上のような点を考えておるわけでございます。
  88. 川村継義

    川村委員 ありがとうございました。  先ほどもちょっと申し上げましたように、何のためにと、こういう一つの大きな命題を考えるときには、文化振興といっても非常にむずかしいものが出てくると思う。そこで、一つ文化振興、その中の一つである文化財保護等についても、その理論——先ほど哲学とか言いましたが、そういうような理論をぜひひとつきちっとして、いずれの機会にかわれわれにお示しいただきたい。われわれも勉強をするつもりでおりますけれども、なかなか不肖なものでございますからよくわかりませんので、この点はぜひお願いをしておきたいと思います。  ただ、文化財保護にしましても、一般観光業者が何かもうけるために見せものにするようなことにだけならぬように、今日、明日香村でもちょっと問題を起こしておりますが、そういうような小さい配慮も必要になってまいりましょう。いま次長からお話がございましたように、ひとつ芸術文化日本文化を、あるいは来たるべき世代に起こる文化はどうするかというような問題もあると思います。それから、いま町にはんらんをしておるようなあのいわゆる雑誌類とかいうような——私がこんなことを言うと若い者からしかられるかもしれませんが、ちょっと俗悪的な、ああいうものがあまりにもはびこり過ぎておる。こういうものに対する対策、指針というものも、これはやはり憲法上いろいろ問題がありましょうが、野放しにしないで、何とかやっぱり手を打っていかなければならぬのではないかと思います。各種の問題があろうと思いますが、ぜひひとつ芸術文化振興に対する一つの哲学的なもの、理論的なものあるいはその指針となるものをお示しいただくようにこの際あわせてお願いをし、またいずれかの機会にか、それらについていろいろと聞かせていただきたいと思います。  以上、最後はたいへんはしおりましたが、きょうこの法案に対する私の質問を終わります。
  89. 八木徹雄

    八木委員長 有島重武君。
  90. 有島重武

    ○有島委員 議題になっております文化功労者年金法の一部を改正する法律案、この審査にあたりまして、基本的なことを少しお聞きいたしたいと思います。大体、いままでの御質問たくさんございましたので、同趣旨のものはもうなるべく避けたいと思います。  最初に、先ほどもお話が出ておりましたけれども文化勲章とそれから文化功労者の関係でございますけれども文化勲章令が昭和十二年に、「文化勲章ハ文化ノ発達ニ関シ勲績卓絶ナル者ニ之ヲ賜フ」、こういっております。それから文化功労者年金法のほうは、第一条に「この法律は、文化向上発達に関し特に功績顕著な者に年金を支給し、これを顕彰することを目的とする。」とあります。戦前の文章のスタイルと戦後の文章のスタイルの差はあっても、これはほとんど同じだと思うのですけれども、これは所管も違うし制度が違うのは承知しておりますけれども、これを選択する上の基準と申しますか、選択するからには一つ基準があると思うのです。その選択の基準内容にどこか違うところがあれば、その基準の違いを教えてもらいたい。
  91. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 先ほども川村先生にお答えした点でございますが、文化勲章令の「文化ノ発達ニ関シ勲績卓絶ナル者」というこの意味につきましては、私どもは、独創的、画期的な業績をあげた者ということが主眼でございます。それから文化功労者のほうの、文化の発達向上に関し貢献があった者という点につきましては、それより多少広い意味を含めまして、もちろんその学術芸術に関する功績ということも重要でございますが、そのほかに多年後進の育成に当たって功績があった方、あるいは学界の取りまとめ役といったようなお立場で、何と申しますか大御所的な意味における功績のあった方々、そういうことも含めて、やや広く文化功労者につきましては理解をし扱っているということでございます。そうした程度の区別がございます。
  92. 有島重武

    ○有島委員 文化の問題を論ずる場合に、やはり独創性ということと、それからそれをより多くの人々に鑑賞をさせていくなりあるいは利用させていくなり、そういった問題が絶えずあると思いますね。そういった二つ立場があるということははっきりいたしましたけれども文化について法律上定義づけられておりますのは、文部省設置法第二条によりますと、「「文化」とは、芸術及び国民娯楽、文化財保護法規定する文化財、出版及び著作権並びにこれらに関する国民文化的生活向上のための活動をいう。」こういうふうに定義されているわけでございますけれども、この法案に関連して伺っておきたいのは、芸術とそれから国民娯楽ということの関係性ですね、このことを伺っておきたいと思うのです。  娯楽と申しますと、たとえば落語、講談、漫才、浪曲、演芸、新劇もありますし歌舞伎、能、狂言もございますね。それからもう少し広げていけばパチンコや玉つきなんかもそうですし、競馬、競輪、競漕、碁、将棋、マージャン、花札、トランプ、歌謡曲、それから華道、茶道というようなもの、まだあると思うのですけれども、そういったものが一般に娯楽といわれておると思いますが、特に国民娯楽となるとどの辺までしぼっていくのか、その辺はいかがでしょうか。
  93. 安達健二

    安達政府委員 まず、芸術ということでございますが、芸術として一体どの程度までが芸術に入るかが一つあるわけでございます。これは実定法上からいいますと、文部省組織令で「文学、音楽、美術、演劇、舞踊その他の芸術に関し、」ということでございますから、芸術というものはいま申し上げましたような分野のものが入り、そしてそれに近いものが入るであろう、こういうふうにお考えいただいたらと思うのでございます。それから、芸術といえども、何といいますか常に心を楽しませる要素があるわけでありますから、その意味では娯楽的要素が常にあるわけでございますけれども国民娯楽といいますると、そういう芸術には入らないけれどもやはり国民を楽しませる、国民の心を豊かにする、なごやかにする、こういうようなものが、芸術ではないが国民娯楽というようになると思います。  それから、一体娯楽と国民娯楽とはどう違うかということになるわけでございますが、国民娯楽といっておりますとやはり国民が楽しむ、それが一つありますので、その範囲といいますか、非常に一般性があるというようなことではないだろうかと思います。それで、現在、一体国民娯楽としてどういうものを文化庁で取り扱っておるか——取り扱っておると申しましても特別にやっておるわけではございませんが、財団法人などの認可の場合、要するに所管事項であるかどうかというところで、現在たとえば囲碁、将棋というようなものは、いわば国民娯楽という観念でとらえておるわけでございます。それじゃマージャンはどうかということになりますると、これはやや、国民娯楽といいましても——国民でマージャンを楽しんでいる者は多いわけでございますけれども文化庁なりがタッチしていくべき筋合いのものであるかどうか、これは奨励するものであるかどうかということになりますると、囲碁、将棋は非常に格式もありまするし、いいと思いますが、マージャンとなるとややその点の疑問がございまして、マージャンについての財団法人の認可申請もございましたが、それについては国がこういうものに関与していくものかどうか、これは民間の自由で楽しんでもらったらいいのではないかというところで、現在はそれを取り扱っていない。そういうところで大体芸術国民娯楽、それ以外の娯楽というようなものを私どもは理解しておるわけでございます。
  94. 有島重武

    ○有島委員 こうしたものは一義的には言えないわけですね。時代とともにずいぶん違ってくるのではないかと思うのですよ。それで、現在をどうとらえるかという問題だと思うのです。そういったこともやはりこの辺でもう一ぺんお考え直しになるべきじゃないか、そう思うのです。  それで、名簿を拝見しておりましても、華道や茶道の方、入っておられないようですね。それから、いま芸術の中に音楽が入るというのですけれども、歌謡曲、俗に流行歌といわれておりますね、そういったようなものが一体どういうふうになっていくのか。大体功労者の中には音楽家はきわめて少ないようでございますが、絵かきさん、それから小説や詩や評論、それから童話ですか、歌、俳句などを含んで文学関係の方、これが三十何名いらっしゃって、日本画、洋画、版画、これがやはり三十数名いらっしゃるようですけれども、音楽のほうはずいぶん少ないようですね。それで、いまの国民娯楽などという、ほんとうに国民大衆が非常に広く楽しんでいるということは、これはクラシックなんかの音楽よりも歌謡曲のほうがずっと広い範囲であると思うのです。これは文化庁長官がいらっしゃったら少し御意見伺いたいと思うのでございますけれども、いわゆる芸術といわれる、一つの格式といま次長おっしゃったけれども、格式というのは歴史的に残ってきたというようなことなんであって、これも時間的な要素が非常に多いと思うんですね。いわゆる古典といわれているものでも、それがなまにどんどん活躍していた時代には、やはり流行歌的な国民娯楽のようなものが基盤であったに相違ないと思うんです。それで、そういう御配慮をなさったほうがいいんじゃないか。結論的に申しますと、文化功労者だとか文化勲章だとか申しましても、肝心の文化の意味が、先ほども川村先生からお話がございましたけれども国民にあまりのみ込めてないんじゃ、審査もお金の問題だけのことになってしまうし、それからまた範囲の問題ですぐに行き詰まるんじゃないか、そう思うわけです。それで、文化という概念そのものを明確にしなければならない。  それからもう一つは、そういったものに現状をどうきめていくか、そういった問題について、これは研究費を出して、そしてどこかで研究させる必要はないのか、そういったお考えはありませんか。これは政務次官に伺っておきましょうか。  文化保護ということもございますけれども文化そのものに対して現在はいろいろなことばが、ただことばだけであって、中身がわからなくて空転しているものがたくさんあります。教育という問題だってそうだし、学習という問題だってそうだし、一つ一つが中身がよくわからなくなってきておりますね。文化というのが、また非常に広範なことでもありますから、そういったことをどこか委託研究させるなり、そういったことを研究しているところには研究費を出してあげる、そういうようなことを積極的になさるべきじゃないか。そうでないと、先ほども川村先生がいつか教えてくださいと言われても、これは困ると思うんですよ。そういったお考えがあるか。
  95. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答えいたします。  先生指摘文化とは何かという問題については、これは多分に哲学的な意味も背景にあるかと思うわけでございます。したがいまして、文部省として文化一つの行政の対象として考える場合に、文化とは何かという観点から研究する必要があるという点は多分に御指摘のようにあろうかと思いますが、現在のところ、文化とは何かということを取り上げて委託研究等をすべきであるということでは、問題がちょっと違うのではないかという感じがございます。
  96. 有島重武

    ○有島委員 問題が少し違うとおっしゃる、それをもう少し説明していただければありがたいんですけれども、いままで大体行政の上でもって扱っていく文化はこの範囲であるということ、自明のように私たちも考えておりました。ところが時代の変わり目もございます。こうした問題が起こるたびに、いまの娯楽、国民娯楽、芸術なんということでも、ちょっと突っ込んでみると何もわからなくなっちゃうわけですね。そういったことをもう少しはっきりおきめになるようにしないと、この先持たなくなるんじゃないか。いまのうちにどこかにそうした研究をさしておいて、一つ文部省文化庁の見解をもを一ぺん詰めてお考えになるべきじゃないか、そういう意味なんです。いかがでしょうか。
  97. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答えいたします。  先生の御指摘の意味は、いろいろな内容を含んでいると思うわけでございますが、もちろん行政の対象として文化をどのように考えるかということは、当然文部省といたしましても文化庁といたしましても、これは常に社会の動向等もにらみ合わせながら、文化行政の範囲、対象というものは、十分検討していかなければいけない問題であろうかと思います。そういう意味において、あらためて文化とは何かということを文部省としても取り組んでみるという意味においては、先生のお考えに全面的に賛成するものでございます。
  98. 有島重武

    ○有島委員 最後に、これもちょっと先ほどと重複するようでございますけれども、重要無形文化財、いわゆる人間国宝のことですね。人間国宝といわれるような方は大体何人くらいいるのか、そしてその中でもって六十一人だけを押えていらっしゃるわけですけれども、何人くらいいらっしゃるのでしょうか。
  99. 安達健二

    安達政府委員 重要無形文化財の保持者として認定されている方々は、先ほど申し上げました六十一名でございます。
  100. 有島重武

    ○有島委員 だけれども、潜在的に六十一名を選択する分母になっている部分はどのくらい押えていらっしゃるのか。
  101. 安達健二

    安達政府委員 重要無形文化財は特に貴重なるわざでございまして、このわざも人を離れてはないということで、そういう重要無形文化財としての持っておる人はいまの六十一名であるということでございまして、どういうような人がほかにあるかといえば、たとえば芸能でございますれば能、歌舞伎、文楽等をやっている方々、その中で特定な人が個人指定されておるわけでございます。そういう方々、あるいは工芸の部面にすれば、現在伝統工芸展というのをやっておりますが、そういうところに出品している方々、こういう方々が重要無形文化財保持者とまではいわないけれども、無形文化財の保存のために力を尽くしていただいている方である、こういうふうにいえると思うのでありますが、いまここで数として明確にお示しするだけの用意をいたしてまいっておりません。
  102. 有島重武

    ○有島委員 潜在的にどれくらいあるのかということも大切なことじゃないかと思いますので、そういったリストアップは、直接お金でもって扱うのではなくても、御用意なすったほうがいいのではないかと思います。  ことばの問題でございますけれども、特別助成金ということになっておりますね。これも文化功労者のほうでもってよくいわれることでございますけれども、絵かきさんなんかの場合、小説家なんかの場合は、勲章をいただいたりそれから功労者になったりすると、原稿料や絵の値段が上がるのですね。そういった現象が起こって、金をもらった以上の何か余得がずっと出てくるわけです。それに比して学者のほうはそれほど影響はない、付帯的な、波及的な現象はないということがいわれておりますね。  それから助成金というと、何か国家から助けてもらっておるのだという印象が非常に強くなるわけですね。それで、もともとの趣旨は、そういったものをますます腕をみがいていってもらいたい、それから国民としての一つの古い伝統を残していきたい、そういったことにあると思うのです。ですから、助成金というようなことばの中に奨励していくというか、やはり賞するということばが入るようなそうしたことばのほうがいいのではないか。非常にこまかい問題でございますけれども、かなり気むずかしい名人はだみたいな人がおるわけです。ほんとうはもらうべき人なんですけれども、お断わりしておる方も、文化功労者の中にはいらっしゃるはずです。それから人間国宝のほうも、これはずいぶんこまかい話かもしれないけれども文化庁は血の通った文化をやっていこうというのですから、そういった配慮も一ぺんお考え直しになってみたらいかがか、その点だけちょっと伺っておきたいのです。助成金ということばをお考え直しになってみませんか。
  103. 安達健二

    安達政府委員 この制度が始まりましたのは昭和三十九年でございますが、その根拠といたしましては、文化財保護法の五十六条の六というところで、重要無形文化財の保存のため必要があると認めるときは、その伝承者の養成その他保存のため適当な措置を行ない、また保持者に対してその保存に要する経費の一部を補助することができる、この規定なり精神によっておるわけでございます。  そこで、ただし、いま先生のおっしゃったようなところはたいへんごもっともな点でございますので、したがって補助金ではあるけれども、それが補助金適正化法の適用を受けまして非常にこまかいことを言ってはかえって失礼になるから、あるいはかえって技術の練摩や後継者の養成に差しつかえるという意味では補助金適正化法の適用を避けてという意味で、特別助成金というふうに配慮をいたしておるわけであります。ただし、いま先生のおっしゃったような、将来の問題としてこういうものを年金というような賞といいますか、栄誉的な意味も含ませるかどうかということについてはなお検討の要があると思いますけれども、現在の考え方は、そういうわざを練摩していただいたり、後継者を養成していただくことによって無形文化財が保存され、伝えられていくそのための経費でございますからどうぞお使いください、こういう意味でございまして、あなたはたいへんりっぱなことをやられたからほうびを上げますという思想とはちょっと違うところで、いまのようなことになっておりますけれども先生のお話でございますので、将来の問題としてはいろいろな点を考えて検討してまいりたいと思う次第であります。
  104. 有島重武

    ○有島委員 文化財保護法範囲でございますが、確かにいま次長のおっしゃったとおりなんですけれども文化財を残していく、そうするとやはり人間が物扱いされておるということは、あちらには少しは感じられるらしいのです、もらっておるほうは。そんなことは昔はそれほど問題ではなかったのだけれども、現代は人間が人間扱いをされるかされないか、そういった議論が非常にやかましくなっておりますね、そういったことに関連して申し上げたわけです。どういう結論がお出になるか知らないけれども、再検討していただきたい。  以上で終わります。
  105. 八木徹雄

  106. 山原健二郎

    ○山原委員 たいへん時間がおそくなっておりますので、きわめて簡明に質問をいたします。  いまこの法案につきましては、私どもも、いろいろ意見はありますけれども賛意を表明したいという気持ちを持っておるわけですが、文化庁、それから西岡政務次官に対して最後に見解を伺いたい。  私も、話を最初に聞いていただきたいと思うのです。私どもも、もちろん文化財の保護あるいは史跡の保護などにつきましては、これは当然尊重すべきものでありますし、また、文化を推進してきた人を正しく評価して功労を表するということにつきましても反対をするものではありません。いま有島先生のほうから非常に高度な文化の論争がなされたのでありますけれども、私は文化と非文化の関係について一つの例を申し上げまして、最初に文化庁に対して質問をいたしたいのです。  それは姫路城の史跡の指定地域の問題でございますけれども、すでに御承知だと思いますが、この姫路城史跡指定地域内にある県立姫路ろう学校の立ちのき問題でございます。御承知かと思いますけれども、私がちょっと最初に説明したいのです。  この学校は、幼稚部、小学校部、中学校部、高等部の専攻科とありまして、百七十名の生徒がおる学校であります。ここに対しまして一九六八年の三月に地域指定の線引きが行なわれておるわけです。そして、この県立姫路ろう学校がその線の地域の中にあるということで、立ちのきの要請がなされておるのでございます。この学校をちょっと調べてみますと、これは地元の神戸新聞の本年一月二十七日の記事をおかりしまして申し上げてみたいと思うのです。また、いまから申し上げることの中には、この学校先生そして父母の方々の意見も多少入っておりますが、それを総合しますと大体こういうことでございます。  学校が始まってすでに二十年、この間に四回学校が転々といたしておりまして、今度立ちのき命令が出ますと五回目ということになるわけです。神戸新聞にはこういうふうに書いてあります。「教育をゆがめる“流浪の旅”はもうごめん。日陰者扱いにはこれ以上耐えられない。」と父母、先生が反発をしまして、文化庁、県や市に対して抗議をしたという記事になっております。どういう形でいままで四回も移転したかと申しますと、昭和二十三年の六月に学校が発足をしまして、当時は旧陸軍の兵器庫あと学校が設立をされたわけです。そしてその次には、野砲隊のあとに移転をいたしております。これはいわゆる自衛隊誘致という国や県の方針のもとで行なわれた移転でありますけれども、そのたびに、ここは永住の地だというふうにいわれて、しんぼうして移転いたしておるわけであります。その間、当時の隣接校でありますところの姫路東高等学校あるいは広嶺中学校、この隣接校はすでに整備が進められております。ところが一方、ろう学校につきましては暗い木造兵舎で勉強が行なわれてきた、こういう実情にあります。そして、その現在の状態を見てみますと、現在も古い兵舎のあとを使っておるようでありますけれども、ろうの、耳の聞こえない生徒にとりまして、頼みの綱であるところの光というものが入らない、これは目が悪くなるという状態が出ております。そして、雨漏りで授業にも支障を来たす。それから、ろうあ者にとって一番大切な防音設備も全くないわけです。一つも教室がありません。そして板仕切りの教室で勉強いたしておりますから、御承知のように、ろう学校では大きな口をあけて声を出す場合もあるわけですね、全く筒抜けであるというような状態が現在の状態です。さらに、寄宿舎に六十人の生徒がおりますけれども、この生徒たちの状態を見ますと、現在寒い冬の場合、各部屋に一つのホームこたつがあるだけでございまして、五名、六名の児童がこの一つのこたつに足を入れまして、そうして身を寄せ合う小鳥のように眠っていると新聞は書いております。黒板や机も古く、職員室では事務机にベニヤ板を張って使用している。最近では漏電警報機が理由のわからないまま鳴り出すというような状態で、昭和四十年の台風被害を受けまして隣接校におきましては整備がなされましたけれども、しかし、このろう学校に対しましては、四十六年より五カ年計画整備をするという回答がなされた状態であるわけです。ところが、そこへ文化財保護法による指定地域の問題が出てまいりまして、指定地域になっておるという理由で現地では校舎新築はむずかしい、こういうのが現在の状態であります。  この中で父兄、そして先生方の願いというのは、こういうふうな願いであります。  一つは、通学児童の場合、小学校の二、三年の生徒までは父母の送り迎えが必要である。ここは三歳児も入っておりますから、幼い子供たちがおるわけです。さらに卒業生にとりましては、ここはたった一つの母校でありまして、卒業生の事後指導の面から考えましても、あまり交通不便なところに行くことはできないというのが偽らざる感情であります。  二番目に、隣接の学校であります城南小学校、白鷺中学校、賢明学院、淳心学院、姫路東高等学校、これは当初は指定地域の予定の中に入っておったのでありますけれども、この学校はのけまして、ろう学校のみを指定地域の線引きの中に入れておるわけであります。したがって、これは全く差別行政ではないかという声が起こっておるわけです。  一方、別の県の発表しておる構想を見ますと、ここでは兼六公園の六倍の公園地帯をつくるということが発表されておるわけです。そして、姫路城周辺を日本一の公園にするという発表が行なわれておるわけであります。この私が申し上げました経過の中から見ますと、文化財保護あるいは史跡の保存という名前のもとに、言いかえるならば広大な地域を広げてそして公園地にするということ、もちろんそのこと自体反対するわけではありませんけれども、そういう名のもとに観光行政その他の中から、じゃま者は排除していくという考え方があるのではないかということを考えるわけです。  そこで、最近起こっております障害者の施設やあるいは学校というものを、人目につかない不便なところに移していくという傾向があるように私は思うのです。私自身そのことを経験いたしておりますが、たとえば奈良の盲ろう学校の場合あるいは大津の近江学園の場合、これは彦根城周辺からこれを排除して遠いところへ持っていっておるわけであります。さらに、施設の面から見ましても、文部省は、今回非常に心身障害児の教育を重視するということを言っておるわけで、その点は全く正しいことだと思いますが、しかし、最近施設の火災事故というものもずいぶん起こっておりますし、悲惨な事件が発生しております。また兵庫県と隣合わせておりますところの岡山県では、昭和三十年に御承知のように盲学校の火災がありまして十六名の児童が死んでいる。こういう経過を見ました場合に、また地図を私はここへいただいてきておるのでありますけれども、線引きをしておりますこの一角に何でわざわざろう学校を入れたかとふしぎでしかたがないのです。  私も文化財保護の幾つかの経験を持っておりますが、たとえばある一つの国宝の城址のことを申し上げてみたいと思うのですけれども、ここには国宝天守閣を中心としました史跡があるわけですが、その中に県庁のあるところもあります。ずいぶんりっぱな県庁が新しく建設をされておるところもありますし、またわざわざ城を構成しておるお堀を埋め立てておる、そしてそこを自動車の駐車場にしておるということも知っておるわけです。さらにまた、中には城内に料亭がある。これはいま問題になって排除することになっているそうですけれども、まさに国宝のすぐそばに料亭がつくられて、長い間置かれているというふうな状態もあるわけですね。一方ではお堀を埋めて駐車場にするという感覚の文化行政の中で、一方では非常に大きく拡大をして、そしてその中で選別的に線引きをするという、こういうことは絶対に許されないことだと私は考えておるのでありますが、もうすでにこの姫路城の問題につきましては文化庁もよく御承知のことと思いますので、私がいま申し上げました経過に基づいてどういうお考えを持っておるか、お伺いをしておきたいのです。
  107. 安達健二

    安達政府委員 姫路城は、御案内のとおり昭和三十一年に特別史跡になっておるわけでございまして、その指定面積は百万平方メートル、百ヘクタールに及んでおるわけでございます。この指定地域につきまして、これをできるだけ一般国民に広く理解され、親しまれる歴史的な広場とする、こういう考え方に立って、その整備方策につきまして昭和四十二年に建設省、大蔵省、文化庁、兵庫県、県の教育委員会、それから姫路市からなるところの特別史跡姫路城跡周辺整理促進連絡協議会というものをつくりまして、どの程度地域整備するかということについて非常に熱心に御審議をいただいたわけでございます。われわれといたしましては、この四十二年に立てられたものに基づいて文化財保護の方策を講じますとともに、新たな都市計画の立案も市、県等で行なっておられる、こういう状況でございます。  ところで、御御摘の県立のろう学校は、姫路城の中くるわをなすところの重要な地域に位置しておりまして、現所在地は、実はほかの面から考えましても児童生徒の通学上の安全、といいますのは、すぐ横に非常に自動車のひんぱんに通る道路があるというようなことと、現在の木造校舎は先ほど御指摘のとおりもうすでに改築の時期にある、そういうこと等を勘案いたしまして、連絡協議会では、やはりこれを機会に指定地外に移転することが適当であるという結論が出されたわけでございます。県当局は、この趣旨に従って新しい候補地を物色中であると聞き及んでおるわけでございまして、現に昭和四十五年の十二月五日の兵庫県の県議会の本会議におきまして、石井三郎さんという議員の方の質問に県の教育長は次のように答えております。「人間尊重の原点に立って考えるとき、貴重な史跡を国民の広場として保存することもわれわれの責務である。この見地に立って、特別史跡姫路城跡周辺整理促進連絡協議会で種々の点から検討した結果、姫路ろう学校を史跡指定外のよりよい環境に移し、理想的な特殊教育を施すことも人間尊重としてきわめて大切なこと」であるというふうに、県の当局はそういうふうに考えておられるわけでございます。したがいまして、われわれといたしましては、文化財保護の観点と、そしてまた特殊教育振興の観点から県の考え方というものと合わせまして、この問題の適切な解決方法をはかっていきたいという方針で来ておるわけでございます。
  108. 山原健二郎

    ○山原委員 いま校舎が老朽化しておるからこの際ということでありますけれども、これはもう前から校舎は新築しなければならないということで、地図を見たらわかりますが、ほかの普通学校は全部新しくしているんですよ。ここだけ何でいままで残したのですか。一番古い。私が先ほど申し上げましたような非常に劣悪な条件に置かれておる。同じ県立ろう学校でありながらいままで残しておいて、いまになって古くなっておるから別にかえたほうがいいのじゃないか、こういう論法は、教育の観点からするならば私は全く誤りだと思うのです。それでこの話し合いの席上、文化庁の古村記念物課長が出ておりますけれども、その中では文化財よりも人間を尊重するということを言われておるのです。また文化庁長官も、この間父兄の方々たちがお会いをしましたときには、これは何とか正しく解決しなければならないという余裕のあるお話をしておるようです。いわば無理をしないということと父母の方たちは受け取って帰っておるわけでありますけれども、いま次長が言われたことは、私は全く受け取りがたいんですよ。そのすぐ線外には神姫バスのアパートもありますし、あるいは建設省あるいは財務局のアパートなどもあるわけです。そして学校がずらりと横に並んでおるのです。しかもろう学校という特殊な学校ですから、父母たちが言っておりますように子供たちが通えるところ、しかもここに一つしかない学校ですから、なるべく交通の便利がよいところということを要求するのは当然のことであると思うのです。先ほど申しましたように、四十六年度の予算でもこの問題についての予算は増になっておりますけれども、その大半は、御承知のように特殊教育の総合研究所の問題に使われておるわけです。しかも文部省がこういう問題について非常に熱意を示しておるということは、これはもう一方に路線としてあるわけです。教育の観点からこういう教育を重視しようとしておる際に、幾ら文化財あるいは史跡の保護だからといって、差別的なことでこれを排除するなどということは許されない。それは差別ではないと言うかもしれないけれども、これは実際地図を見てもどこから見ても、明らかに差別だということは私ども客観的に見て言えるわけですよ。ましていままで長い間苦労してきたところの、しかも四回も移転をしてきたところの先生方や父母にとっては、私たちに対する差別だ、何でいままでりっぱな鉄筋を建ててくれなかったのだ、いままでほっておいていまごろ何でそんなことを言うのか、こういう考え方になるのは当然のことだと私は思うのです。だから、先ほど私は高知城のことを例にあげたのですけれども、最近まで料亭があったのですよ。いまも建物は残っていますよ。県庁が目の前にありますよ。しかもお堀を埋めて、その中には文化会館という高層な建物が建っておるのですよ。これはお堀を守るためにやろうとしているというお話のようでありますけれども、一方では堀を埋めて駐車場にしておる。文化庁がこういう感覚で取り扱うことについては私は納得がいかないわけでありますから、もう一度次長の回答をいただきたいのです。だから私の申し上げておるのは、こういうことを無理やりにやるのではなくして、十分父母の方たちや先生方の御意見を伺って、実態も調査をして、そして真にこれが正しい線引きであるかどうかということについて検討もし、また県や市とも十分話し合っていただきたいというのが私の考えです。これについてお答えをいただきたいのです。  それから次官にお伺いしたいのは、私が先ほど申しましたように、非常に劣悪な状態に置かれておる問題を早急に解決していくという態度をとっていただきたいと同時に、教育の観点からこの問題につきまして文部省としても調査をしていただいて、特殊教育を重視するのだという観点で、この問題に対する対処をしていただきたいと思いますので、最後にお答えをいただきたいと思います。
  109. 安達健二

    安達政府委員 このろう学校の移転の問題につきましては、先ほど申し上げましたような基本的な考え方に立って、一面では文化財の保存の面と他面では特殊教育をするための最も望ましい教育的な環境という両者を考えてやるべき問題であると思うわけでございます。ただ、現在のところ、まだ県として新しい地域についての明示もございませんし、そして私どもといたしましては、こういう問題はやはり皆さんの納得で、県も市もそしてまたその父兄の方々も納得されて、これが最もいいのだという方策をみんなで見つけていくということが基本でございますので、私どもといたしまして、その文化財保護と教育的環境は何がいいかという、そういう観点で今後とも十分ひとつ話し合いをして、みんなが納得できる解決をいたすべきものである、かように考えておるところでございます。
  110. 西岡武夫

    西岡政府委員 お答えいたします。  文部省といたしまして、特殊教育につきまして特に今後力を入れていかなければいけないという方針で臨んでいるわけでございまして、ただいまの姫路城の問題につきましては、移転を予定している土地を県がろう学校の関係者に明示されて、それがだめであるということになりますれば、この整備計画の中から文部省としてはろう学校地域を当然はずしていく、関係者が納得をしない以上ははずしていくという方向でこの問題は処理をしていきたい、かように考えております。
  111. 山原健二郎

    ○山原委員 終わります。
  112. 八木徹雄

    八木委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十二分散会