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1971-02-20 第65回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会農林水産委員会商工委員会連合審査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月二十日(土曜日)     午前十時四分開議  出席委員  物価問題等に関する特別委員会    委員長 小林  進君    理事 青木 正久君 理事 砂田 重民君    理事 登坂重次郎君 理事 武藤 嘉文君    理事 武部  文君 理事 渡部 通子君    理事 和田 耕作君       江藤 隆美君    小坂徳三郎君       正示啓次郎君    粟山 ひで君       田中 恒利君    戸叶 里子君       松浦 利尚君    有島 重武君  農林水産委員会   理事 安倍晋太郎君 理事 三ツ林弥太郎君    理事 千葉 七郎君       江藤 隆美君    松野 幸泰君       山崎平八郎君    角屋堅次郎君       田中 恒利君    美濃 政市君       瀬野栄次郎君    二見 伸明君       和田 春生君    津川 武一君  商工委員会    委員長 八田 貞義君    理事 橋口  隆君 理事 武藤 嘉文君    理事 中村 重光君 理事 岡本 富夫君    理事 吉田 泰造君       石井  一君    稲村 利幸君       海部 俊樹君    神田  博君       左藤  恵君    坂本三十次君       始関 伊平君    石川 次夫君       松平 忠久君    近江巳記夫君       貝沼 次郎君    松尾 信人君       米原  昶君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         厚 生 大 臣 内田 常雄君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  宮澤 喜一君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     谷村  裕君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         行政管理庁行政         管理局長    河合 三良君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         計画局長    矢野 智雄君         大蔵大臣官房審         議官      吉田太郎一君         大蔵省主計局次         長       橋口  收君         大蔵省主税局長 細見  卓君         大蔵省関税局長 谷川 寛三君         大蔵省理財局長 相澤 英之君         大蔵省理財局次         長       小口 芳彦君         厚生省薬務局長 武藤琦一郎君         農林大臣官房長 太田 康二君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省農地局長 岩本 道夫君         農林省蚕糸園芸         局長      荒勝  巖君         食糧庁長官   亀長 友義君         水産庁長官   大和田啓気君         通商産業省通商         局長      原田  明君         通商産業省重工         業局長     赤澤 璋一君         通商産業省鉱山         石炭局長    本田 早苗君         建設省計画局宅         地部長     朝日 邦夫君         建設省都市局長 吉兼 三郎君         建設省住宅局長 多治見高雄君  委員外出席者         農林水産委員会         調査室長   松任谷健太郎君         商工委員会調査         室長      椎野 幸夫君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ――――◇―――――
  2. 小林進

    小林委員長 これより物価問題等に関する特別委員会農林水産委員会商工委員会連合審査会を開催いたします。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  昨日に引き続き質疑を続行いたしますが、質疑時間につきましては、昨日同様、関係委員長の協議により定められた時間を厳守していただきますようお願いいたします。  なお、政府委員の方々は、答弁の際、そのつど官職、氏名を委員長に告げて、発言の許可を求めていただきます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石田次男君。
  3. 石川次夫

    石川委員 昨日来の物価連合審査の中で、政府のほうから、総理大臣が、寡占体制のもとでの価格形成には政府が積極的に介入をせざるを得ない、行き届いた監視ができるようにするには、いまの独禁法だけでは不十分であるというような答弁がなされております。さらに、正しい行政介入のあり方については早急に検討するというような、福田大蔵大臣答弁もあったようでありますけれども、実はこの問題を受けて立つような形で、公共料金の問題も流通機構の問題も、あるいは特に生活に直接関係の深い地価の問題、地代の問題等についても触れたかったのでありますけれども、許された一時間という時間の中では、それらの問題に触れることはできませんので、ごく限られた、管理価格に対して、現在の独禁法を補完すれば、この程度政府としては当然できるんじゃないか、また、やらなければ国民に対して相済まぬのではないかということに限定をして質問をしたいと思っておりますけれども、いかんせん時間が限られておりますので、模範生試験答案のような答弁は必要ございません。枝葉を切り払って、ざっくばらんに簡明な答弁をひとつお願いしたいと思うのであります。  最初に、物価がなぜ上がるんだというような理論的な問題について、時間が許されればとことんまで論議をしたいのでありますけれども、これも時間の関係で省略をしないわけにはまいらぬことは非常に残念でありますけれども、ただ、私が思うのに、きのうの佐藤総理答弁の中で、経済成長が異常に高かった、したがってやむを得ず物価が上がったんだというような答弁があったようでありますけれども、しかしながら、所得倍増計画が軌道に乗り始めて、昭和四十年になりますと、経済学者は一斉に、いろいろなシミュレーション、モデルを使いまして、この所得倍増計画は必ず物価高を招来する、特に昭和四十一年でありましたか、国債が発行された翌年に法人所得税減税二%を行なったシミュレーションは、実に精密に行なわれておりまして、この二%の所得減税というものは大企業優秀企業合理化を促進し、成長格差というものをもたらしまして、それがいろいろな点ではね返って二%の物価高を招来するであろうということを、はっきりと警告をしておったわけであります。それらの警告というものはほとんど学者の定説になっておったのにもかかわらず、経済成長を重視いたしまして、物価というものを軽視して、したがって、経済成長をやったために生まれた結果としての物価高ではなくて、物価高というものを覚悟して、企業の側に立っての経済成長政策を強行してきたということの結果が、今日のような抜き差しならない物価高を招来したというふうに私は考えておるわけであります。  そこで、一点だけ経済企画庁長官に伺いたいのでありますけれども、商工委員会で一年ぐらい前、盛んにあなたは、物価高というものはデマンドプルというものが原因である、こういうことを強調しておったと思うのであります。最近は商工委員会がありませんので、私も直接あなたの御意見を聞くわけにまいらぬわけでありますけれども、新聞などに散見されるところによりますと、どうも供給側、すなわちコストプッシュだということのように、何か意見が変わってきつつあるのではなかろうか、こういう感じを受けるのでありますけれども、この点、どういうふうな心境の変化か、あるいは変わっておらないのか、簡明に御答弁を願いたいと思うのです。
  4. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 私の考えは、別にその点で大きく変わってはおりません。つまり、いま御指摘がございましたように、何といいましても、この五十八カ月にわたるところの長期の高度成長、非常な好景気、こういうものがやはり物価高の基本的な原因である、そして今日それがようやく鎮静化しようとする際に、そのツケが回ってきておる、そういう感じを私は深く持っております。そういう意味において、私はデマンドプルと申しておるのでございます。したがいまして、その高度成長の結果として、今度は、最近においてはそのツケが回ってまいりまして、賃上げというような事態になってくる。それが、中小企業その他におけるところの賃上げを通じて、価格に転嫁される現象も起こってきておる。そういう意味においてコストプッシュ的な様相も多少出てきておる。こういうことも否定できませんけれども、基本的にはそうした高度成長、それがやはり今日の物価高を生んでおる、こういう感じを持っております。
  5. 石川次夫

    石川委員 いまのデマンドプル的な基本的な姿勢というものは変わっておらないということになれば、あなたの意見が変わったとは思えないのでありますけれども、これはよくいわれるように、労働生産性格差というものが非常にはっきりしてきて、それが賃上げというものを物価に反映をさせるというものが大体物価高のおもなる原因である、こういうようなことが強調されることに伴って、とかく所得政策の窓口を開くということにいかざるを得ないという結果を持っておるのではないか、所得政策のことについては、私は申し上げる時間もありませんけれども、まあヨーロッパで、ドイツあるいはイギリスのあたりでもって、政府とあるいは労使と、財政政策から何からすっかり、いわゆるインカムズポリシーではなくて、インカムズポリシーを完ぺきなものにした上で行なっても、そういう土俵があった上で行なったものでも、インカムズ政策というものは失敗をしておるわけであります。日本にはそういう土台もない。しかも、いまのような労働生産性格差論というのは、デマンドプルという原因がなければ、こういうものは価格に転嫁できるという要素がない。われわれは、絶えず超過需要というものを前提としてものを考える習慣がついておりますけれども、これが逆に、全体としての経済機構というものは一体どうなっているのか。具体的には、全体として需給関係がどうなっているか、財政が非常に縮小されたとか、あるいはそれをささえる貨幣的な条件というものが一体どうなっているか。貨幣が非常に縮小される、インフレ的な要素ではなくて、デフレ的な要素というものが強くなってくるというような原因のもとにおいては、私は、いまのようなコストプッシュという様相は出てくる余地がないのではないかというようなことを考えるときに、やっぱり私は、デマンドプル要素というものはまだまだ日本の場合には支配的である、こう考えざるを得ないのであります。  こういう問題は、申し上げると切りがないのでありますけれども、そのデマンドプル一つの大きな要因として、やっぱり財政金融というものがあげられなければならぬと思うのでありますけれども、私は、財政金融というものそれ自体が物価に直接どのくらい影響があるかということになりますと、それほど基本的な重大な原因になり得るとは思いませんけれども、しかしながら、かなりの影響を与えるということは、たとえばフリードマンが日本へやってきまして、通貨の増発がありますと必ず物価が上がるではないか、こういうような因果関係が必ず見出されるということを言ったのに対して、これは、日銀あたりは反論が出て、成長通貨なんだというようなことを言っておりますから、これはいろいろな議論がありますから、その議論には触れたくありませんけれども、ことしの財政というものは、御承知のように、景気を何とか維持しなければならぬということで、総需要の抑制という物価対策の基本的な課題というものをみずから放置をしておるということが、どの新聞でも、社説としても大々的に取り上げられておる。こういう点で私は、やはりデマンドプル的な要素がことしの財政政策の面からくみ取ることができるのではないか、こう思っておりますので、私は今度の財政の中で一これは議論をいたしませんけれども、たとえば今度の不況というものは、意外に深刻だと思っております。たとえば家電などは非常な不況でもって、帰休が出ているというような状態ではありますけれども、私がはだに触れた感じといたしましては、設備関係がさらにまた、非常な打撃を受けてこれ以上であるというようなことからすると、所得というものは要するに消費につながる、あるいは所得の主導的な役割りを果たすのは投資でありますから、そういう点で、ことしの財政伸び、いわゆる自然増収というようなものが予期どおり期待できるかどうかということについて、私は非常に疑問を持っておるわけであります。そういう点で、この財政というものは景気を刺激するという姿勢をとるという意味も、わからぬことはありませんけれども、物価との関連においては、非常にこれは大きな問題になる。  そこで。念のために一つだけ伺っておきますけれども、大蔵大臣は、政府保証債は弾力的にこれを運営する、こういうことをおっしゃっておるわけでありますけれども、この弾力的に運営するという限界は一体どうなんだ、無制限というわけではないのだろうと思うのであります。この歯どめを一体どの程度考えておられるか。あるいは、税の自然増収というものを予定どおり、いまのところは確保できるというお見通しなのかどうか、私はどうもその点に非常に疑念感じておるのでありますけれども、その点、大蔵大臣の所見を伺いたいと思います。
  6. 福田赳夫

    福田国務大臣 まず、税の自然増収でございますが、税の大宗をなすものは、何といっても所得税法人税なんです。所得税のほうは着実に伸びる。何となれば国民消費ですね、これは非常に堅実な伸びをしておりまして、これが衰えることはまずまずない。しかし、例年のような伸びはあるまいというようなことで、そういう諸情勢を勘案しまして堅実な見積もりをしております。これが、いま見積もっておるものが実績として落ち込むというようなことはあるまいじゃないか、さような見方をしております。  それから、法人税はどうだというと、これはかなり窮屈になるであろうというふうに思いますので、これは例年とほんとにさま変わりというぐらい堅実な、控え目な見積もりをしておるわけです。ですから、まずまずこれも予定が狂うということはあるまい、さように考えております。  それから、財政規模、これが一体物価とどういう影響があるか、こういう問題、これは石川さんもいま御指摘のように、総需要が何といっても物価問題の基本問題であろうと思うのです。ところが、総需要の面で民間投資はちょっと落ち込みだ、こういう見通しでありますので、財政が若干ふくらみを持ちましても総需要にはそう影響はない、こういうふうに思うわけであります。大体私どもは実質一〇%くらいな成長、これが理想的だ、こういうふうに見当をつけまして、国民消費、それから設備投資、また財政需要、それの総和が一〇%成長になるようにという、そういう位置づけを財政に与えまして予算を編成したわけでありまして、まず適正なところであろう、これがインフレを刺激するというようなことには相ならぬ、かような見解でございます。
  7. 石川次夫

    石川委員 政府保証債弾力性については答弁がないようでありますが……。
  8. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府保証債につきましては、ただいま申し上げました一〇%見当成長ですね、これを大きく下回る、こういうような傾向が見えました際に、購買力を補強する、こういう意味においてこれを発動する。まあそんなことがないようにいけば一番いい。つまり財政上膨大な予算です。九兆四千百三十一億円、この膨大な予算を、あるいは繰り上げ支出をするというようなことも考えられるかもしれません。その程度景気調整ができるということであれば、政府保証債弾力条項を発動する必要はないのですが、そういうような予算運営上の配慮をいたしましても、どうもこれは景気が過当に落ち込むというような傾向が看取せられるという際におきましては、弾力条項を発動する、そして購買力の喚起に当たる、こういうことが必要であろうかと、かように考えております。
  9. 石川次夫

    石川委員 これも議論になりますから省略いたしますけれども、国債が発行される以前でも地方債があり政府保証債があり、これは超過需要ということでデマンドプル要因になっておったということは、否定できないと思うのです。景気が落ち込んだからといって弾力的に政府保証債を増額をするというような考え方をすれば、これはやっぱり、この面からの物価高を招来するという面は否定できないと思う。  あと一つ念のために伺っておきますけれども、一〇%の成長は、いまのところは大体社会ストックが、耐久消費財というようなものはおおよそ行き渡ってきたというようなことを前提として考えると、いままでのように一〇%以上の成長を堅持していくということは非常に困難な状態になってきている。したがって、一〇%ということをおっしゃっているのでございましょうけれども、今年に限り一〇%ということは、私の統計的な数字によったわけではなくて、はだで触れた現場の実態から見るというと、とうてい不可能ではないか、私はこういう感じがしてならないのであります。その点、やはり一〇%というものは絶対だいじょうぶだというお見通しを持っているのかどうかということが一点。  それから、これは大蔵大臣がおっしゃったわけではないのでありますけれども、与党の大幹部が、国債弾力性、これを考えるのだということを言っておったということを、新聞で私、見たことがある。しかし、この国債弾力性というのがいかなるものかということについては相当疑念があるわけなんですけれども、大蔵大臣としてはその点をどうお考えになっておるか、伺いたいと思います。
  10. 福田赳夫

    福田国務大臣 国債を幾ばくにするか、これは財政上非常に重要な問題でありまして、軽々にこれを結論を下すわけにはいかぬと思います。与党のほうで、そういう弾力的に国債を発行すべしというような議論があったことは、私は全然聞いておりません。それは何かの情報の混線があるのじゃあるまいかというふうに思いますが、ただ、国債を増発すべし――弾力条項じゃないのです。予算そのものの財源として、たとえば自動車新税はこれをやめて、置きかうるに公債をもってしたらどうだろうというような議論はありました。しかし、結局それは採用しなかったわけであります。そういうのがあったわけですが、政府保証債弾力条項というのを設けてありますが、それと同じ意味弾力条項としての国債発行、そういう議論はありませんし、私はそれには反対でございます。
  11. 石川次夫

    石川委員 一〇%の見通しの問題については御返事がなかったわけであります。
  12. 福田赳夫

    福田国務大臣 経済見通しで一〇・一という成長考えておるわけでございますが、まあ、ほっておきますると、これは一〇%をかなり下回る経済状態になるだろう、そういうふうにも考えるわけであります。というのは、国民消費は堅実に進む、これはおそらく一〇%どころの話じゃないと思います。しかし、設備投資が、ほっておきまするとかなり落ち込む状態であります。そこで、それを補完する意味におきまして、財政を従来よりも拡大をする。その総和は、いま一〇・一ということになるわけでございますが、大体、先ほど申し上げましたように、この予算が適当に運営される、また金融政策も相まって弾力的に行なわれるということになると、一〇%成長ということが実現される。また、ぜひ実現をしたいし、実現し得る、こういう見通しでございます。
  13. 石川次夫

    石川委員 いまのようなお話ですと、一〇・一%、まあ一〇%を堅持するために財政を運用するということになりますというと、物価の面から見ればますますデマンドプル要因を大きくするということにならざるを得ない。したがって、景気刺激に対しては、企業の側に立ってきわめて熱心な政府姿勢ではあるけれども、これに伴う物価対策は何ら行なわれない。たとえていうと、流通機構などの問題につきましても、GNPに占める卸、小売りの比重というものは、六〇年が一三・九%であったものが、六八年に一八・一%にものぼってしまう。あるいは商業マージンの占める割合も、一九・三%が最近は二五%にもなってしまうというようなことで、流通経費というのはどんどんふえていく。流通手段合理化というものもほとんど手つかずであるというようなことにかてて加えて、いまのようなデマンドプルという要素が加わりますというと、ことしの物価高の予想というものは、五・五%などというものはとてもお話にならない。不況の中にあってもそういう状態にならざるを得ないのではないかという強い懸念を表明しておくだけにとどめておきたいと思います。  それから、国債の問題は、現在のワクをはみ出すということがあっては困るのであって、これはひとつ厳にいまの約束を守ってもらいたい。  それから、いろいろ申し上げたいことはあるのでありますけれども、物価を動かす要因としては、非常に大ざっぱな議論として三つあると私は考えております。それは何かというと、まず第一に、生産性格差を解消するということを含めて、これを合理化をしなければならぬということがあげられるであろう。それから、競争秩序というものを整備しなければならぬということがあると思います。それからさらに、いま申し上げましたような財政の問題あるいは金融の問題、こういう政策がそれに伴ってどう運営されるか、この三つ要因が、大体物価を動かす大きな要因である。いずれも非常に重大な要因として、お互いにかかわり合って存在するわけでありますけれども、この三つ要因の中で、経済企画庁長官はどれが一番重要だとお考えになりますか。
  14. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 それぞれに重要だと思います。特に、最初格差の問題をお取り上げになりましたが、これもわれわれとして大いに頭に入れなければならない問題でございます。しかし、さればといって、競争条件の阻害という問題、これもやはり現実に存しておるわけでございまして、そうしたものをできるだけ排除しなければならない。これもその努力を怠るわけにはいきません。いわんや、財政金融政策というものをよほど円滑にうまくやっていかなければならぬ。これももとより重要なことでございますから、どれ一つというわけにはまいらぬと私は思います。今日の物価高というものは、それだけ、その意味においては複雑なものであると考えております。
  15. 石川次夫

    石川委員 これは商工委員会で、いずれゆっくりと議論をしたいと思います。きょうはとうてい時間がございませんから、この点についての議論はやめにいたしますけれども、しかしながら、私は当面なし得ることであってどうしてもやらなければならない重要な課題は、やはり競争秩序を維持する、いわゆる管理価格をなくするということがなければ、物価対策としては十分ではない。特に最近におきましては、資本資本を併呑をしていく。系列化を進めていく。それがしかも市場まで支配をしておる。たとえばビール会社は、ビール麦契約栽培をやって、買い取るほうまで価格をきめておる。売るほうはかってにどんどん上げていくというように、市場まで自分のものにしてしまいまして、そこで価格をきめてしまう。それから、消費者の嗜好まで、大規模な宣伝によってこれを誘発してしまう。それで、企業拡張の資金というものを自分で留保しながら、一種の計画性を持ってしまった。ガルブレイスのいうところのいわゆる産業国家的な色彩が非常に強くなって、いわゆる管理価格というものが大きな課題になって浮かび上がってきておるということは、否定できないと思うのであります。  そこで、私のきょうの質問の焦点は、この競争秩序の整備ということに関連をいたしまして――私は、初めは公共料金の問題も、地価の問題も、地代の問題も、いろいろな問題を取り上げたかったのでありますけれども、それは法律の改正としてもなかなか容易ではないし、根の深い物価対策に対処するためには十分な対策はとり得ない。したがって、政府が当面とり得るのは管理価格の監視、佐藤総理も再三約束をしております、そのための行政介入というものの限度は一体どうあるべきかということで、私のこれから御提案申し上げることは、おそらく自民党としても同調できるのではないかという、きわめて常識的な線で具体的に御質問を申し上げたいと思うのであります。  しかし、その前にお伺いしたいのでありますけれども、この管理価格とは一体何ぞや、この定義をひとつ簡明に経済企画庁長官から伺いたいと思うのです。
  16. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 独占禁止懇話会におきまして一応の定義をしております。これはわりあいに適当なものだと思うので申し上げますが、いわゆる独占あるいは寡占の状態がございまして、その状態の結果といたしまして、需要もしくはコスト、こうした関係に比較的影響されないで価格が形成されていくようなものでございます。ただし、もちろんこれには、いわゆる認められておるカルテルあるいはまた政府の指示価格というふうなものによって設定されたもの、これは除くのは当然でございます。
  17. 石川次夫

    石川委員 私も、独占禁止懇話会資料集というものも一応目を通しておりますから、大体定義らしきものはわかるのであります。しかしながら、これは御承知のように、ミーンズが最初に定義をつけましてから、管理価格というものは表面化されたわけでありますけれども、これはステイダラーという人が論駁をするとか、日本においても、学者が百人百説であります。懇談会におきましても、これにいろいろな異論というか、これから検討しなければならない要素をたくさん残しておるようであります。すなわち、これは企業がそれに対して介入をしたとか支配したということがない場合だってあり得るではないか。したがって、そういう条項ははずされておる。あるいはまた、管理価格というから一がいに悪いのだとは限らないんだ、あるいはまた、再販の問題は管理価格であるかないかという点についてはまだ未検討の余地が多いとか、いろいろな点で、きちっとした定義というものはまだできていないというのが実態であろうと思うのです。もしこれがはっきりしたものであれば、独占禁止法の中に管理価格というものを定義づけて、管理価格を監視するにはどうするかという対応策もすぐ出てくる。しかしながら、それができない限りにおいては、管理価格に対する規定というものを法律の中にはっきり明示することは不可能でしょう。したがって、管理価格というものをいかにして押えていくかというようなことを法律的に規定をしているという条項は、いまの独禁法には見当たらないと思うのであります。その点、ひとつ確認をしておきます。
  18. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 そう存じております。
  19. 石川次夫

    石川委員 そうなりますと、公取委員長に伺いますが、現在の独占禁止法では、管理価格それ自体を監視をする、押えていくことは不可能だ、法律的には不可能だということになるわけでありますけれども、しかし、間接的にというか、それに準じて何らかの措置は講じているはずなんです。また、講じなければならぬ責任があるわけです。それは大別して一これは詳しい説明は必要ございません。大別、要約してひとつ御説明を願いたいと思うのです。
  20. 谷村裕

    ○谷村政府委員 ただいま経企庁長官がお答えになったとおり、別にはっきりしたものがあるわけではございませんが、私どもの立場からいえば、本来自由な価格メカニズムあるいは市場価格を通じて価格が形成されるということに非常な注目をしているわけでございまして、それがうまく動いていかないとすれば、その動いていない理由なりあるいは状態なりは何であるかということを調べてみる、究明してみる、そういう意味において、私どもは、私どもに与えられた権限を行使して調査をすることはできると思います。
  21. 石川次夫

    石川委員 そういうことでなくて、もっと具体的なことが、ぼくは答弁としてほしかったと思うのです。それは公取の独禁法の中で私的独占というものを押えていく。これは寡占状態が生み出すような余地をなくするように、公取としては任務を果たさなければならぬという一つの大きな柱があると思うのであります。それから二番目としては、これは三条の後段になるわけでありますけれども、不当な取引制限というものを排除をする、こういう任務があると思うのであります。それから三番目には、不公正な取引方法というものを排除していく。そのほかにも、たくさんございませんけれども、大体この三つの大きな柱というものに準拠して、とことんまで現在の独禁法を活用して任務を遂行すれば、相当程度管理価格の排除というものは可能になるはずである、私はこう思っておるわけであります。  そこで、私的独占、三条の前段でありますけれども、この問題についていろいろ申し上げたいのでありますが、これはあとから中村委員のほうから質問することになっておりますので、私は大ざっぱに触れてしまいたいと思うのでありますが、とにかく管理価格というものは、独占体制ができるという状態が先行条件であります。したがって、独占というもの、寡占という状態をつくらせないようにするということのためには、具体的に何が必要かというと、大きな合併というものを食いとめていかなければならぬという任務が当然出てくると思うのであります。しかし、いままでそれをやってきましたか。全然私はやってこなかったと思うのであります。  たとえば、昭和三十三年に雪印乳業とクローバー乳業というものの合併を認めたというところから、もう独占禁止法の私的独占の禁止ということについては骨抜きになってしまって今日に至っておる。その次にも、中央繊維と帝国製麻の問題があるし、あるいは三菱三重工の合併の問題がありますけれども、全部これを無条件で認めておる。ごく最近でわれわれの関心の深い問題としては、新日鉄の誕生があるわけであります。これは第十五条が、昔は一定取引分野におけるところの支配的な地位というもの、これは正確な文は忘れましたけれども、支配的なものになるおそれがあるというものを、「こととなる」というふうに直したわけであります。おそれがあるという場合であれば、今度の合併なんかは、明らかにそういうおそれがあるということが言えるのでありますけれども、そういう「こととなる」ということになりますと、その先の見通しはだれもっけることはできないというようなことで、だれもが認め、だれもがこの合併は少し不当ではないかと思われる八幡と富士鉄の合併というものが、最終的には堂々とまかり通ってしまったというようなことからして、もはや公取の一番最初の任務であるところの、私的独占を禁止をする、抑制をする任務というものは放棄をした。最近になってから、減産というものが協定で行なわれたのではないかというようなことで、いろいろと調査をし始めたようでありますが、これは単なる警告以上の何ものにもならないと思うのであります。  この点について、今後はいままでと同じような形で、私的独占というものはほとんど無条件に野放しにしてしまうということにならざるを得ないと思うのでありますけれども、この点はどうお考えになっておりますか。
  22. 谷村裕

    ○谷村政府委員 御指摘のとおり、ただいまの独占禁止法では競争制限に実質的になることとなるというふうに、いまおっしゃった蓋然性を持った合併はしてはならないというふうにしてやっていかなければならないのでありまして、具体的にその競争を制限することになるかならないかという、そういう認定の問題が個別に、個々にあるわけでありますので、おっしゃるような意味で、今後はもう公取が従来の任務をすっかり放棄してしまったというようなことになるとは、私は思いません。  ただ、一言言わせていただければ、経済の実態と申しますものが、いま御指摘になったような合併等を通じて巨大な企業なり支配的な企業ができるということを防止するという問題はございますが、別にそういう人為的な方法を講じないでも、優勝劣敗の結果、ある巨大な企業、強い企業成長してまいるということはあるわけでございまして、そういうことが、たとえば独禁法について非常にやかましいアメリカなどでも問題になっているわけでございますので、御指摘のような合併問題は合併問題として、私どもは従来ともやってまいりました線をしっかりやってまいりたいと思いますけれども、それとは別に、そういった大企業成長していくという問題があるということを御承知いただきたいと思います。
  23. 石川次夫

    石川委員 いまのは私は単なる弁解だと思うのです。アメリカでは、これは日本とはだいぶ市場状況が違うのだという弁解はあるでございましょうけれども、合併訴訟は八百件に及んでおります。日本では、全然合併訴訟はやっておりません。それから二ールレポートれは四社以上が累積をしてシェアが七〇%以上に及んだ場合、これについては五〇%以上に下げさせる、こういうことになっております。ところが、ビールの価格の値上げの問題について、この前ビールの合併の問題のときに前の公取委員長が言ったのでありますけれども、アメリカのように分割をする、それを減らさせるということは、寡占状態ができた状態においては公取としては手が出ないのだ、こういうことを公取としては言っておるわけでありまして、アメリカの実態、あるいはイギリスあたりは、それほど寡占ということが問題になっておりませんのにかかわらず、一昨年の例によりますと、十三件の合併申請に対しまして四件が否決をされております。しかもその残る、十三のうち四件を除いた分に対しましても、強制的、制限的慣行というものを積極的にこういうふうに是正をしろ、こういう指示を出した上で合併を認めるということをやっておるわけでありますけれども、日本の場合には、ほとんどそれらしいことが行なわれておらない。でありますから、私はいたずらに公取を責めようと思っておるわけではないので、公取が持つべき、持たなければならない機能を現行法によっても十分に機能させれば、相当程度まで管理価格の存在というものを押えることができるのではないか。にもかかわらず、そうやっておらないんではないか、こういう点で申し上げておるわけでありますから、誤解のないように願いたいと思うのであります。  それから、これは、話が余談になってたいへん恐縮なんでありますけれども、一つの例を申し上げます。  それは、公害問題じゃありませんからあまり多く触れませんが、大気汚染、水質汚濁などよりも、人工添加物のほうがはるかに人類に対する影響が大きいのではないかということを、私個人としては懸念をいたしております。山紫水明のところにあっても、この弊害を免れることはできません。最近におきましては、昔なかったところの病気がたくさん出ております。若い人の肝臓病が多いとか、動物園にかたわが多いとかということもさることながら、具体的に出ておる例としては、四十歳以上で子供を産むと、一三%はかたわなんです。これは決して水質汚濁や大気汚染の影響じゃございません。私は、どう考えても人工添加物の影響であろうと思っております。  たとえていうと、パンの中に人工添加物がどのくらい入り得るか、三十七種類であります。それから、マーガリンの中には二十四種類であります。それから、みその中には十二種類、日本酒の中には二十種類、人工添加物が入り得るということになっておるわけでありますから、われわれは、知らず知らずのうちに百通り以上もの人工添加物を、ヘドロのように口の中に流し込んでおるという実態であります。  これが長年にわたったら一体どうなるかということに対処して、現在やっておることは何だといったら、一つ一つ検査して、微量に認めておるからそれでいいんだということでありますけれども、そういうものが重なり合ったら一体どうなるかということが、どこでも検討されておらない。相乗性の検討はされておりますけれども……。それからさらに、工場で製造している実態を踏み込んで検査するということも、やっておりません。人工添加物が幾ら入っておるかという表示も、全然なされておらない。全くの野放し状態であります。  それと関連して、公取委員会に伺いたいのであります。  前にも私言ったことがあるのでありますけれども、三大新聞に、一ページ大にコカ・コーラの広告が出ております。これは「コカ・コーラは従来よりチクロをいっさい使っていません」と書いてある。チクロがたいへん問題になったときでありますけれども、これは問題のすりかえでありまして、われわれは、コカ・コーラがチクロを使っておるなんということを言ったことは、ただの一度もない。しかしながら、添加物は、私の知る範囲において四通りぐらい使っておる。コーラが日本に輸入されるということを前提として、厚生省はコーラのために、燐酸を人工添加物として特別に許可しておるという事実が明らかにあるわけであります。そのほかにカフェインがあるし、桂皮アルデヒドがあるし、香料の中にもいろんな人工添加物、劇物が入っておるというようなことも、国立衛生研究所の副所長の本の中にもちゃんと書いてある。ところが、この中では、「コカ・コーラの原料はすべて天然で、「人工」と名のつくものは、いっさい使っていません。」だから「お宅でも安心してお飲みください」と書いてあるのでありますけれども、これは明らかに不公正な取引の中に入るし、虚偽の広告であります。これに対して、公取はどういう処置をとりましたか。
  24. 谷村裕

    ○谷村政府委員 私は、その実態について実はつまびらかにしておりませんが、そしてまた、その問題については、御指摘のように、かつて厚生省等においていろいろと御調査があったことを聞いてはおりますが、広告、いわゆる表示において実際のものと違う、それから、それが著しく優良であるかのごとく一般消費者を誤認させるような表示がもしありとしますならば、それは景表法の問題になるおそれがあるかと思います。
  25. 石川次夫

    石川委員 私は、このことについては、科学技術振興対策特別委員会警告をいたしました。さらに商工委員会においても、公取委員会に警告をいたしました。こういう虚偽の広告というものは許すべきではない。ところが、これに対して、勧告権があるにかかわらず、一ぺんの勧告もやっておらぬわけであります。公取は陣容が弱体ででき得ない面がたくさんありますが、このように、現状のままでもでき得ることをやっておらない。私的独占の場合でも、こういう虚偽の表示でも、やるべきことをやれば、物価の問題でも相当程度押え得るという権限を持っておるにかかわらず、やっておらないではないか。したがって、あなた方はその任務の重大性というものを――私は、独占禁止法の政策と産業政策金融政策というものは、経済政策の三本の柱だと思っております。谷村委員長が公取の委員長に就任されたときにも、いろんな点で発表されておりますが、競争維持政策と産業政策とは対立するものではない、競争維持政策、独禁政策というものを敵視するということは自殺行為にひとしいということまで、あなたはおっしゃっておるわけなんですけれども、そういうことばとはうらはらに、やるべきことをやっておらない面があまりにも多過ぎるのではないかということを、私は痛感せざるを得ないわけなんです。  そこで、行政管理庁長官に伺いたいのでありますけれども、公取は、いまのように、なすべきことをなしておらないという面はありますが、しかしながら、昭和二十三年に三百二十七名おった公取の職員が、現在、これだけ管理価格の監視ということがやかましくいわれ、佐藤総理も、監視機構を強めなければならぬし、独禁法もある程度手を加えなければならぬかもしらぬということを言っておる状態で三百五十名、本局員が大体三百名でありますから、十五年前から全然数がふえておらない。ことしは、調査課というものを分けまして、集中度や市場調査を進めるための一般調査課をつくる、それで調査課を一般調査課と価格調査課に分けよう、それから景品表示課というものを景品課と表示課に分けよう、こういうような提案がされておるのですが、これは全部否決になっております。いたずらに行政機構を拡大すべきではないというような御趣旨かとは思うのでありますが、しかしながら、このように国民生活に密接不可分に結びついておる物価という重要な問題に取り組まなければならない公取の強化というものは、当然私は、国民消費生活を守る立場からいって必要不可欠な基本的条件だと思うのでありますけれども、現状では、とてもそんなことは不可能であります。  いま言ったように、やるべきこともやってないというのは、ただ単にサボっているということだけではなくて、陣容がまことに弱体である。たとえていいますと、いま生産集中度の調査というものもやっておりますが、わずかに二百十一品目しかやっておりません。これは昭和四十一年度のもので、われわれの資料であります。ところが、アメリカではどのぐらい調べておるかというと、千七百品目調べております。生産集中度の調査というものはほとんど行なわれない、こういうような現状でありまして、これでは真剣に物価に取り組んでおるということは言えないのではないか。こういう点で行政管理庁長官の御意見を伺いたいと思うのです。
  26. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 大体少数精鋭主義で行政需要に応じていくというたてまえでおるわけでありますが、概略の事情を申し上げます。  公正取引委員会の機能の強化につきましては、その職務の重要性にかんがみまして、これまでも特に配慮してきたところであります。いまから十年前、すなわち昭和三十五年度の公正取引委員会の定員は二百三十八人でありましたが、昭和四十五年度においては三百五十一人であります。この間百人以上の増員を行なっている次第であります。また機構面においては、この十年間に、おもなものとして、昭和三十九年度に取引部の設置、昭和四十二年度において仙台及び高松の両地方事務所の設置、昭和四十三年度に事務局官房に企画官の設置、昭和四十五年度に官房に総務参事官の設置等を行なっております。機構の充実強化についても相当考慮を払っているわけであります。  昭和四十六年度は、定員については、いわゆる三年五%の定員減が四名、増員が九名で、差し引き五名の純増を認めておるわけであります。また機構については、経済部に価格調査課の新設、取引部景品表示課の景品課と表示課への分割を中心とする要求が提出されましたが、当庁としましては、機構面の拡充よりもむしろ定員面の充実をはかるほうが適切であると判断した次第で、先刻申し上げましたように五名の増員をはかっております。
  27. 石川次夫

    石川委員 いまのは、だれかの書いたメモをそのまま読み上げただけのようでありますが、五名の増員であります。私は五十名の間違いじゃないかと思います。こんなことで、ほんとうに管理価格の監規なんかできる道理はありませんし、いま二百十一品目の集中度を調べるだけで五年ごとに一回。三十五年度のものはおそらくあと一年以上かかるでしょう。そんな迂遠なことをやっておったんでは、もうすぐに物価対策をやらなければならぬというのに対応することは不可能なんです。それのできるような体制を、千七百品目とは言いませんけれども、二百十一品目を五年ごとにやっとやっと調べておるというような現状から脱却をするということこそが、消費生活を守るほんとうの行政管理庁の姿勢ではないか、こういうので、これは議論になりますから省略いたしますけれども、それはよくお考え願いたいと思うのです。  いまやっているのは、いまの独禁法の中で四十条、出頭、報告、提出の問題、あるいはまた四十三条、所要事項の公表の問題、四十四条、国会に対する報告、意見の提出、あるいは四十六条、調査のための強制処分というようなことがあるのでありますけれども、管理価格というだけでは、これは何もできないのですよ。四十六条の強制処分のごときは、事件にならなければ強制処分というものは何もできない、こういうようなことでありますから、ほんとうに消費者の立場に立って調査をするということは不可能な現状であります。  したがって、いま公取でお調べになっておりますが、アルミ地金、フィルム、中性洗剤は、すでにお調べが去年終わったようであります。ことしはグルタミン酸ソーダ、板ガラス、ピアノ、ビールというものについて調べておるようでありますけれども、どれを見てもいわゆる単品、きわめてわかりやすいものだけしかやっていないわけです。大規模企業の中の実態なんかはほとんど調べていないというのが現状であります。したがって、このような単品項目であれば、これは簡単なんです。しかし、これからほんとうに物価問題に取り組もうとすれば、もっと複雑な機構に対して突っ込んでいかなければならないというのに、一年間に三つぐらいずつきわめてわかりやすいものだけを調べる。  調べるだけならよろしいのでありますけれども、この調べた結果が一体どうなるんだというと、たとえばフィルムの問題でありますが、フィルムなどは、価格形成影響を与えている原因といたしましては、メーカー間で激しいリベート競争が展開されるようなこともなく、また流通段階で値くずれが生じたときにも、メーカーの実質販売価格はその影響を受けることが少ないというようなことが書いてあるし、それからまた、アルミ地金の問題なんかは、その一つ一つの四つのメーカーの下請の加工というものは全部きまっている。したがって、そのラインだけ見れば、これは寡占じゃなくて、ほんとうに独占になっているわけです。そういう実態が調べられておるわけです。こういうものも管理価格あるいは寡占価格といわないのであろうか、この点を、念のために公取の委員長に伺いたいと思うのです。
  28. 谷村裕

    ○谷村政府委員 先ほど石川議員が申されたとおり、そういうのを管理価格というか寡占価格というかという定義の問題は別として、そういう経済の実態になっているということ、そしてそれがいろんな影響を持っているわけでありますが、私どもの立場から見て、いわゆる営業は自由の原則でありますけれども、それが公正かつ自由な競争を意識的な形で阻害している姿となっているとしてとらえられるかどうか、そういうところに問題があるのではないかと私は思います。
  29. 石川次夫

    石川委員 公取委員長の御説明やら、あるいは経済企画庁の長官の話などを聞きまして私は痛感するのでありますけれども、調査はするのですね、調査はしても、これは管理価格らしいというような学問的な報告をするだけであって、何らそれに手を加えるということがしてない。まことに国民の側に立たない政治だといわなきゃならぬと思うのであります。  それで、私は、時間が非常になくなってきましたので、私の提案を申し上げたいと思うのでありますけれども、これは別にアメリカの二ールレポートをまねしたわけではございません。二ールレポートは、七〇%以上のシェアを占めたときには五〇%にしろ、それから八百件も合併を拒否するというような、きわめて強い権限を持っております。しかしながら、そういうふうな行政の介入の権力を強め過ぎるということも非常に弊害が出てくるのではないか、こういうことを私は考えましたので、われわれが提案いたしますことは、これは自民党の皆さん方といえども、ここまでおりてわれわれが提案をすれは、おそらく納得をしてもらえるのではなかろうかという一つの提案を申し上げたいと思うのであります。  それは大ざっぱに言いまして、管理価格という文字は使っておりません。市場支配的事業者の供給する商品の価格等の規制に関する法律というものを、要綱としていま提示をいたしておりまして、あと一週間ぐらいでこれが成案になると思っておりますけれども、その中でわれわれが考えましたのは、もろもろの物価に与える影響原因というものが複雑多岐にからみ合っておりますけれども、とにかく、管理価格という定義をつくったり寡占価格という定義をつくって、それに対してどうこうすることは不可能だということは、いまの質疑応答で明らかになったと思うのであります。したがって、現象的に見てこういう問題を調べようではないかという、調べる一つの根拠を、独禁法の改正ではなくて、独禁法の補完法という形でひとつ提示をしてみたいと思ったわけであります。  それはどういうことかというと、この法律において市場支配的事業者というものは、一つの商品について、その供給量の多い順に三つの事業者が百分の六十の支配を占める、または十の事業者が九割を占めるという場合に、その一つの商品が占める割合が百分の十、いわゆる一割を占めるというような寡占的な状態である場合には、これは管理価格になり得るという――これは全部管理価格だとは、もちろん申しませんよ。しかし、そういう根拠を与えれば、その問題については、業者から価格を報告させるということが必要ではないか。これは佐藤総理も、価格調査をやらなければならぬということを、一般質問の場でも答弁をしておられるわけであります。また、独禁法を何とかしなければならぬということを言っておられるわけであります。したがって、結果的にはそれを受けて立ったような、きわめてすなおな形になったわけでありますが、われわれ自身として考えても、これらのものについては、ひとつ価格の報告というものをさせてみたらどうか。  したがって、こまかいことは申し上げませんけれども、それが明らかに公正な取引ではなくて、不当な対価ではなかろうかという疑いのあるときには、一応勧告という手段をとったらどうか。いきなり行政的に、この価格を引き下げろという命令を出すということも、行政権限があまりにも不当に介入をするというそしりを免れませんから、一応そこで価格の届け出をさせた上で、違反事実があるかないか、あるいは不当な対価による取引であったかどうかというようなことを検討させる一つのきっかけ――いまは何にもできないのですから、報告をさせるという、調べるための一つのきっかけをこの補完法によって与えてみたらどうだろうか。そして、その報告を受けておかしいと思えば調べてみて、不当であるということがわかれば勧告をする。さらにまた、その業者から、原価の値引きというふうなこともありましょうけれども、さらに弁明の余地を与える申し立てをさせる。  そういうことを通じて、その結果によってどうしても不当であるというような認定がされた場合には、価格を表示するということだけで終わりであります。それ以上の不当な介入をさせようとは思いません。価格を表示させれば、原価と価格というものを表示させることを通じて、これは不当であるとか不当でないというような判断は、一般消費者国民みずからがするであろう。これはきわめて寛大なやり方であるし、きわめて合理的で、最小限の方法ではなかろうか。もっとドラスチックな考え方は幾つもあったのでありますけれども、現時点で政府のなし得る限界はこの程度ではなかろうかというようなものを勘案しながら、この案を出すわけであります。  私は、きわめて謙虚なこの案について、野党の皆さん方とも打ち合わせをしたいと思うのでありますけれども、自民党といえども、政府といえども、これは拒否できないのではなかろうか。もちろん、現在の独禁法でできればいいのです。現在の独禁法でもやるべきことでやらないことがたくさんあるということを私、先ほど申し上げましたけれども、寡占価格管理価格ということの定義がないのでありますから、直接そうだという断定をして踏み込んでいく、調べるということができないということになれば、こういう一応の目安を与えておいて、自動的に調べるということがなければならぬと思うのであります。この点について経済企画庁長官の御意見を伺います。
  30. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 寡占度、独占度というものを中心にして形式的に考えるということでございますが、もちろん御存じのように、価格が硬直的であるかどうかということが寡占度と比例しておる場合もあるし、比例してない場合もございます。非常に寡占度、独占度の高い商品であって、価格の上昇がきわめて低いものもございます。そういうことで、われわれとしてはその実態をよく究明したい。もしそういうことでもって、たとえば何かの意味で公取委員会の機能を強化して、そうしていまの調査機能をぜひ強化する、こういうような結論になった場合に、初めていま石川さん御提案のようなやり方も一つの技術的な方法ということで、あるいは有力な参考になるかもしれませんが、いずれにしても、目下政府といたしましては、その問題を、各機関を通じて実態をもう少し究明したい。一体独占価格、寡占価格がほんとうにあるのかどうか、そうしてそれがどのように価格物価影響しておるのか、こういう実態を十分究明したい、そういうことで、各機関を通じて調査もしておるようなわけであります。
  31. 石川次夫

    石川委員 いまの答弁でいいますと、百年河清を待つことになりますね。ということは、去年三品目を調べ、ことし四品目を調べることになっているけれども、結論はこうなんですよというだけなんです。寡占価格だという断定も何もしてない。調べたことは調べたけれども、価格形成の過程を公表したということだけで終わっているわけですね。私の言ったものも、全部これは寡占価格になるとか管理価格になるとかいうことを言っているわけじゃないのですよ。そういうものをめどにして調べてみて、それが寡占であるか管理であるか、これはいろいろ定義のつけ方はあるにしても、それをきっかけとして調べることができる。調べることによって寡占か管理かというふうな大体の見当がつく。不当な対価であるかどうかということを調べて、その上で勧告をし、申し立てを聞いて、原価を公示をする。これはきわめて私は常識的は案だと思うのです。これができないと、いままでのように価格形成の過程だけ追っかけているというのでは、いつまでたっても結論を出さないための口実であるとしか私には考えられない。  具体的に言って、この物価問題はもう緊急の課題ですよ。それをどう国民にこたえていくかということのために、いまの陣容で、いまのようなていたらくで調べていくということで、はたして国民の期待にこたえ得るかどうか、管理価という問題に真剣に取り組んだということになるかどうか、この点あと一回、ひとつ伺いたいと思うのです。
  32. 小林進

    小林委員長 石川君に申し上げますが、あなたの持ち時間は余すところ二分になりました。結論をお急ぎ願います。
  33. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 石川委員のおっしゃることもよくわかりますし、私たちは、むしろ基本的には、あなたがさつきから御指摘になっておる競争条件、 つまりできるだけ競争条件を実現していく、こういうことに、やはり方向として努力が向けらるべきである、こう思います。  価格の形成は、その業種により、そのときの事情により、非常に複雑でございます。いま申し上げましたように、先般も小さな調査をいたしてみましたけれども、たとえば寡占度の高いものについて、その価格の変動の動き方の度数というものがやや少ない、こういうことぐらいの認定はできましても、実際問題として、一体それがほんとうに高いのか低いのか、物価全体を見回してみますと、実はいわゆる寡占度の高いという商品がむしろ卸売物価等においてマイナスになっておる、こういうものも非常に多いのでございます。  そういう事柄もございますから、われわれとしてもこれを慎重に検討しておる、こういうことでございまして、もちろん、この価格対策上これが非常に大きな影響を持つという認識に立ちますれば、われわれとしてもそれに対して、たとえばいま御指摘のような点も考えながら十分に検討しなければならない。いわゆる公取の機能強化ということも、われわれはそういう意味において十分に検討に値すると実は思っております。現在そういう点を十分検討してみたい、こう考えておるわけであります。
  34. 石川次夫

    石川委員 きのうから、行政で介入しなければならぬ、あるいはまた、独禁法もこのままでは十分ではない、こういうふうな答弁が、政府のほうから何回もされておるわけなんですね。私はほんとうにへりくだって、このくらいのことは最低限やらなければならぬという、きわめて建設的な提案をしておるつもりなんですけれども、いままでのように、価格形成の過程で独占であるか寡占であるかというふうなことはなかなかむずかしいというふうなことで終始するならば、結論として、結局はやらぬということですよ。私は、この何らやらないということで、結果的にはこれは企業べったりの姿勢だという批判を受けても、甘んじて受けなければならぬのじゃないかと思うのです。  私は、これは、ドラスチックな案でも何でもないと思っおります。アメリカのように強権を発動しろと言っているのじゃないのです。この程度のことができなければ、もはや物価に対する政府姿勢を疑う。したがって、この問題については、あらためてほかの委員会でもって検討し、皆さん方の姿勢を追及したいと思いますけれども、きょうは時間がございませんから、これで終わりたいと思います。
  35. 小林進

    小林委員長 貝沼次郎君。
  36. 貝沼次郎

    貝沼委員 私は、これから原油値上げの問題それから、ただいまも議論のありました管理価格の問題、場合によっては物価指数の問題にも言及したいと思いますが一これは、これからの日本経済というものを考えて、やはり私たちは前向きの姿勢で真剣に取り組まなければならない。ことに、今回の物価の上昇という問題は、各党とも大きな物価対策を掲げているにもかかわらず、物価のほうはどんどんどんどん上がっていく。そして今回のこの物価連合審査が行なわれているわけであります。私は、こういうような審査が行なわれたことに対してこたえるためにも、真剣に討議をしてまいりたいと思いますし、また答弁の側も、ひとつ真剣にお答えを願いたいと思います。  なお、この原油の値上げ問題につきましては一言申し上げておきたいと思うのでありますが、今度の原油値上げによって消費者にそれが転嫁されるということを私は認めて、議論をするのではありません。あくまでもこれは認めてはならない、こういう立場から議論をいたしますので、その点を御了承願いたいと思います。  あのテヘランの会談以来、ずいぶんとにぎやかな放送等もあり、そして、いま日本の国においては、原油が値上がりし、そのまま消費者物価にはね返ってくるならば、これはたいへんなことになる、こういうことで、実は巷間は話が持ちきりであります。  そこで、いよいよ今度、この価格というものがはたしてどういう経路をたどっていくのか、このことが、わが国においては実は大事な本番となったわけでありますが、経企庁長官は、この原油の値上がりについて、国民生活にどれほど影響を与えるとお考えですか。
  37. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 いまの点、もちろん御指摘のように、これは一方において、エネルギーの中でもたいへん比重の高いものでございますし、それからまた、工業原材料というような方面からも、今日においては重要性が高まってきております。また、個人の消費生活にとりましても非常に重要度の高いものでございます。そういう意味におきまして、私たちも非常にこれを注目いたしておりますが、いま貝沼委員がおっしゃいましたように、まず、これに対して、日本企業側においてできるだけ相手の要求というものを強く拒否するように、そしてまた、そのあとの企業努力によって吸収するように、こういう立場に立っておるわけでございます。実際どの程度影響かということは、よく、たとえは二千億ぐらい――もしもいわゆる要望どおりであると、二千億ぐらいの影響を与えるであろうとか、いろいろいわれておりますけれども、これは御存じのように、どういうふうにアロケートするかとか、いろいろな前提がございます。でありますから、いまわれわれとして、幾ら物価影響するのだ、こういうふうに申し上げる段階ではない、こう思っております。
  38. 貝沼次郎

    貝沼委員 経企庁長官、物価指数のほうは計算されたことはありませんか、仮定のもとにおいて。
  39. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 いま申し上げましたように、形式的に仮定を置いて計算するということは不可能ではございませんけれども、それはやはり非常に形式的なものになります。政府がこのくらい上がるであろうということを申し上げるのは、もちろん適当でないと思います。万一いわゆる転嫁というようなことが行なわれれば非常に大きな影響があるであろう、こういうことは申し上げられると思います。
  40. 貝沼次郎

    貝沼委員 通産大臣にお伺いいたしますが、この原油を材料としてつくられている製品、これは非常に多いわけであります。     〔委員長退席、武部委員長代理着席〕 そして、もしもその消費者にどんどん値上がりが転嫁されるとするならば大きな影響があるわけでありますが、おもな製品をあげて、そして、どういうところに影響があるのか、その辺のところを答弁願いたいと思います。
  41. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはたいへん広範なお尋ねになるわけでありまして、たとえば電力まで入れろと言われますと、これはもうほとんどあらゆる面に影響いたしますし、石油化学のほうもたくさん影響がございますし、直接の製品だけ考えましても重油、灯油、軽油、ガソリン、ナフサ等々たくさんあるわけでございます。先ほど経済企画庁長官の言われましたような、かりに値上げが行なわれますときに、その開き方、アロケーション等にもよりますことで、ちょっと一がいに申し上げることは困難でございます。
  42. 貝沼次郎

    貝沼委員 通産大臣ははっきりおっしゃらないけれども、おっしゃらないなら私が申し上げたいと思うのです。  実は、ただいまお話がありましたように、原油を材料とするものは、たとえばガソリン、あるいは軽油、あるいは灯油、それからナフサとか重油A、B、Cがあるわけであります、大まかなところですね。  それで、たとえばガソリンが値上がりをいたしますと、自動車が金がかかるようになってくる。したがって、これはタクシー料金の値上げあたりの口実にされやすくなってくるわけであります。あるいは自動車の運賃も上がってくると思います。さらに今度は灯油の場合は、今後上がったとしても、あたたかいときはストーブなどあまり使いませんから、まだまだ、あまり感じはないかもしれませんけれども、来年の冬になったら、がばっと上がっていることがわかってくる。あるいは軽油であるならば、漁船であるとか、あるいはバスであるとか、あるいは暖房であるとか、こういうものが大体入ってくると思うのですね。重油のAであるならば、暖房、漁船の大きなものとかいろいろあると思うのです。あるいは重油のCあたりいったら、これは普通発電のために大体使われているようであります。  こういうふうなことを考えてみまして、それがまた波及をする。便乗値上げがある。さらに、いまちょっと申し落としましたが、ナフサに至っては、これは現在の化学工業が栄えているもとでありますけれども、二、三の例を上げますと、たとえば化学肥料とか、あるいは都市ガス、プロパンガス、アセテート、酢、ビニロン、ビニール、合成洗剤、化粧品、エンジンとか、あるいはダイナマイト、農業用フィルムとか合成材料、自動車部品、ラジオ・テレビ用部品、玩具及び造花、住宅資材、建築資材、接着剤、消毒剤、医薬品、農薬、消毒薬、化学繊維、その他衣料、ロープ、カーテン、寝具、化学調味料とか、いわば飛んでいる飛行機の中の材料から、かぶっている帽子、家、はいているくつ、そして道路のアスファルトに至るまで、原油を材料にしているものであります。これらに値段が幾らかでも上がる部分がかかってまいりますと、これは日本国じゅうたいへんな問題になってくるわけであります。  こういうことで、実はこの問題は重大な問題であり、物価考えるならば、まずこの問題をまっ先に議論をし、そして、ある程度の方向というものを示しておかなければならない、私はこう思うので実は議論をしておるわけでありますので、通産大臣といたしましても、先ほどの答弁ではちょっともの足りないのでありまして、たとえばバスとか自動車とか、こういうふうな業種が値上げをしようというふうになってきた場合、これを許可する考えがありますか、それとも阻止する考えがありますか、その点を伺っておきたいと思います。
  43. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 問題の重大さについての御認識は、まさしく言われましたとおりと私も考えておるわけでございます。そこで、昨日も申し上げたように、国際石油資本がいわゆるガルフの国々ときめたことをかってに日本側に持ってくるというようなことは、非常に迷惑なことでありますし、わが国の各需要界において、これに対しては、もし値上げというようなことになりそうでありましたら抵抗をすべきであるということを、昨日も申し上げました。  ちょうど、いま言われましたように、灯油は不需要期に入ります。ガソリンは、スタンドがあれだけございまして、しかも現在ガソリンの値段そのものに、御承知のように数円の開きがスタンドの間であるわけでございますし、軽油にいたしましても、これは大口の引き取りが多うございますから相当の交渉ができるはずでありますし、電力料金を値上げすることは、私は認めないということを申し上げてございますから、これは電力会社もよく御承知のはずであります。まあタクシーにしましても、相当ガスで走っているものが多いのでございますから、これを理由に消費者に転嫁をするといったようなことを腹に置いて今回の値上げ交渉に応ずるというようなことは、需要家はすべきでないというのが私の考えでございます。
  44. 貝沼次郎

    貝沼委員 この中でも、いま電力ははっきりおっしゃいました。これは、私はデータを調べてみましてわかったのですが、たとえば、去年の十一月値上がりをしておりますね、そのときには何が上がっているかというと、ガソリン、灯油、軽油なんですね。重油は上がってないです。ところが、電力会社というのは重油を使うのです。そこで私は、今回も、たとえばガソリン、灯油、軽油というふうなものにウエートがかかり得る可能性があるのかどうか、ここを伺っておきたいと思うのです。通産大臣いかがですか。
  45. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたのが私の基本的な立場でございますから、国内の精製業者は、それをひとつ頭に置いてメジャーとよく話をしてもらいたい、こう申しておるのでございますが、仮定の問題として、どういう場所に一番こういう場合の負担がかかりやすいかと申しますと、それは、需要者側がグループになって抵抗をする力の弱い場所に一番かかりやすい。それは一般的にそういうことが申せると思いますので、ただいま言われましたような危険が一番大きいということは、これは事実であろうと思います。
  46. 貝沼次郎

    貝沼委員 通産大臣、圧力の弱いところが値上がりしてもかまわないというふうな態度は、私は問題だと思うのですよ。これは、たとえば電力会社のように大きなバックを持っているものは値上げしなくても、消費者一人一人が黙っているようなところは値上げしてもかまわないみたいに聞こえるわけです、いまの答弁は。これは大臣のお考えですか。もし誤解がありましたら訂正していただきたいと思います。     〔武部委員長代理退席、委員長着席〕
  47. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それははなはだ迷惑なお尋ねでありまして、そういうふうにならぬのかとおっしゃいますから、私はそういうことは反対でございますけれども、危険というのはそういうところに一番あるでございましょうと申し上げただけで、そうでございますから、最初に、ガソリンスタンドの間で数円の開きがいまでもございますでしょう、そこをよく消費者はごらんになってくださいということを、実は申し上げたわけであります。
  48. 貝沼次郎

    貝沼委員 通産大臣が反対だということですから、私はさぞかしがんばっていただけると思うのですが、経企庁長官、ただいま通産大臣と議論をいたしましたように、このように重大な問題なんです。物価大臣といわれる経企庁長官は、これに対してどう対処されるお考えですか。
  49. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 いま通産大臣のお話がありましたように、できるだけ国際資本に対してしっかりと対抗してもらわなければなりませんし、そうしてまた、万一の場合におきましても企業の努力というものがあるわけでございますし、それから、原材料に占める割合というものもそんなに高いものでもございません。そういう際でございますからして、われわれとしては、直ちにこれによって値上げを云々するという考え方は持っておりません。
  50. 貝沼次郎

    貝沼委員 経企庁長官は総論的なお話をなされましたけれども、具体的に、たとえばガソリンが上がる。そうすると自動車の料金が上がる。あるいは軽油が上がってまいりますと、トラック、バス等の運賃が上がってまいります。そうすると運送費に影響してくるというようなことですね。あらゆることにそれが響くわけでありますが、その辺の値上げの要求があった場合――ぼつぼつ出ているようでありますけれども、経企庁長官としては、これを阻止するという考えはありますか。
  51. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 そういうことについて、具体的に運賃の値上げというようなことを私は目下考えていない、こう申し上げているわけでございます。
  52. 貝沼次郎

    貝沼委員 それでは、絶対に値段は上がらないとお考えですか。
  53. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 油の値上げというような理由だけでもって持ってきても、私たちとしては、目下上げる気はございません。
  54. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで、先ほど通産大臣並びに経企庁長官から、いわゆる国際資本に対する業界の働きかけ、これを強力にしなければならないというようなお話もありましたけれども、先般の新聞等を見ますと、通産大臣のお考えのようでありますが、政府がこの交渉に乗り出さなければならないというふうな意味にとれるような記事もありましたし、また、けさほどの新聞によりますと、業者が国際資本に屈して全部その値上げをのむようなことであるならば、あとはめんどう見ないというふうな記事もあったと思うのでありますけれども、この辺の真偽はいかがでしょうか。
  55. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いまの段階で私が申しておりますことは、先ほども申し上げましたように、安易に値上げをのんで、それを簡単にあっちこっちへ転嫁できるというふうに考えることは間違いである。また、政府も税金などで何かしてくれるんじゃないかというようなことを思ってくれることも間違いである。そういうふうにがけっぷちに立たされておるんだということをよく頭に入れて、メジャーと話をなさいませんと事は間違いますよ、と こういうことを申しておるわけでございます。
  56. 貝沼次郎

    貝沼委員 先日の新聞によりますと、たとえばただいま通産大臣がおっしゃったことと、それからさらに、このため政府としても業界に強く支援する考えであり、そのため具体的対策を用意している、そうして、政府がやはりその国際資本の国に対して働きかけるというふうな意味にとれるような部分があったのですが、そういうお考えは、通産大臣ございませんか。
  57. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いまの段階で、政府自身が出まして国際資本に働きかける、話をするという気持ちはございません。
  58. 貝沼次郎

    貝沼委員 通産大臣、それならば、これは現在、業界だけで大臣の思うようなことが実現できると思いますか。
  59. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは結局、わが国石油業界というものは、御承知のように経理的に相当苦しいわけでございますから、値上げをのみまして、そしてそれをどっかへおっつけずに済むかといいますと、なかなか済まないわけでございます。ですから、おっつけられるほうが、いやです、おっつけられませんということになりますと、業界としても、その間にはさまりまして非常に苦しむに違いないので、その苦しまなければならないというのが私の申しておることでございます。
  60. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこで、大蔵大臣にお伺いしたいのですけれども、いま業界が国際資本と交渉をしておるわけでありますが、これがうまくいけばいいと思うのですね。何も値上がりしたからといって、われわれのところにそういうものを転嫁するという考え、これは私は非常によくないと思うのですね。やはり国際資本はもうけているのだから、この国際資本に吸収をさせて、そして、なおかつ吸収できない分についてはまた考えるとか、こういう対策は必要だと思うのでありますけれども、この吸収させるということについては、通産大臣もいま、一生懸命やるということでありますから、もしも――これは、一〇〇%吸収はおそらくできないと思うのです。そうすると、大蔵大臣としては、ほかには何か考える、たとえば税制上の問題とか、そういうものは考えるようなお考えはありますか。
  61. 福田赳夫

    福田国務大臣 一部に、こういう事態に対して原油関税を下、げたらどうだ、こういうことを言う財界人がおります。しかし、私はそういう考えは持っておりません。その理由は、関税ばかりでこの問題は論ずべきじゃない。関税もあるし、消費税もある。たとえば原油から精製するガソリン、これは一番ガソリンが多いわけですが、ガソリンに税が一体どのくらい負担をされておるのか、こういう問題を見てみますと、日本は非常に少ないのです。アメリカよりは多うございまするけれども、一リットル当たりの税の負担、こういうものを小売り価格に比べてみますると、日本では六一%ぐらいになる。六一%の税を負担をしておる、こういうことになるわけです。ところが、諸外国じゃ一体どうだというと、大体七〇%から八〇%まで税を負担させておるわけです。決して税の負担が高いというわけじゃない。税負担、そういうことを関税を含めて考えまするときに、そう税が高いという状態でない。  そういう状態下において、この関税問題、こういう事態が起こったからこれを考え直すか、こういうことは、私は非常に消極的にならざるを得ないのです。のみならず、原油関税は御承知のように、石炭対策の財源に定着をしておるわけです。これが四十八年度まで、そういう体制を続けようということになっておる。この仕組みを変えるということも、これもなかなか困難なんです。  ですから、先ほど宮澤大臣やあるいは佐藤長官が言っておるとおり、やっぱり国際資本とうんと粘り強く交渉して、わが国に提供する価格をなるべく安いものにする、これが一番大事だ。それから、やっぱりいま、とにかく国際インフレ時代です。わが国以外の諸外国は、みんな卸売り価格つまり輸出価格が上がっておる。そのとき、輸出価格が上がりましたから、さあわが日本においても関税を引き下げる、つまり財政補給金を与える、こういうことですが、補給金を与えてまでこの物価対策をとるかというと、これは私は非常に問題だろう、こういうふうに思います。  そういうことを総合して考える際に、関税引き下げ論、これは私は賛成はできない、こういうふうな考えであります。
  62. 貝沼次郎

    貝沼委員 私は、賛成とか反対とか言っているのではなくて、大臣のお考えを聞いたわけであります。  先ほどちょっと議員のほうからも声がありましたので、誤解があるといけないので私は一言申し上げておきますけれども、いまの質問をしたからといって、私は、何も国際資本に対する働きかけを弱いものと解しているものでもないし、当然これでもって全部やらなければならないということは、これはもう大前提なんです。ただ、その場合、政府が本格的にそれを絶対にやってみせるというだけのその決意が、ほんとうにあるのかどうか、これが聞きたいところなんです。通産大臣いかがですか。
  63. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私どもといたしましては、業界に対して、そういう交渉についてのあらゆる援助を惜しまないということを申しておりますし、そのつもりであります。
  64. 貝沼次郎

    貝沼委員 それでは、国際資本に対して一〇〇%の吸収をぜひともさせるように、ひとつがんばっていただきたいと思います。  さらに、そう言ってしまえば、もう身もふたもないわけでありますけれども、実は、やはり巷間においてはいろいろな報道があるために、ひょっとすると上がるんではないか、こういう仮定があるわけであります。その仮定のもとに、これからちょっと質問をするわけでありますが、先ほどの通産大臣の答弁でも、たとえばガソリンとかあるいは灯油とか、こういうようなものにしわ寄せがされやすい傾向というか、そういうものが従来あるというふうな意味お話であったと思うわけでありますけれども、 こういう場合、そこまでは持っていかないといえばそれまででありますけれども、たとえばそうなった場合には、やはりこれは通産大臣、くどいようですけれども、絶対食いとめますね。その点をもう一度お願いします。仮定として、もしも上げなければならないというふうなことがあった場合ですね、必ず食いとめるということを、もう一度念を押しておきたいと思うのです。
  65. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういう仮定を設けてお尋ねになりますことは、これはもうしごく理解できることでございますけれども、政府としてそういう仮定のもとにお答えをすることは、どうもただいま適当でないと考えますので、その点は御了承願いたいと思います。
  66. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこで、これはちょっと話は変わってまいりますけれども、たとえば去年の十一月ごろ灯油の値上がりが、あるいはガソリンの値上がりがあったわけでありますけれども、このときのガソリンの値上がり状況を見ますと、これは別々に上がったのかどうかということが、非常に判断に苦しむような結果になっておるわけでありますけれども、このときはたとえば通産省が指導なさったとか、あるいは個別に上がったならば、こうこうこういうふうにして個別に上がったとか、その価格の上がり方、これについて大臣から説明をお願いしたいと思います。
  67. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨年の十二月ごろに軽油、灯油、それから重油の一部について多少の値上がりがございましたことは事実でございますけれども、どうもこれはタンカーのフレートが上がった、ずっと上がり続けておりますことをやや反映した結果ではなかったか、むしろそう見られますので、十一月におけるいわゆるイランの値上げというものは、現在各社とも、いままでの段階は仮の仕切りをしておるようでございまして、それがこの十二月末の一部の値上がりとどのような関係にあるかは、実は明白でございません。
  68. 貝沼次郎

    貝沼委員 この当時の値上がりは、いろいろなところを聞いてみますと、大体同じような時期に上がっているようであります。こういうような場合、非常に寡占化された業界でもあるし、また、だからといってカルテルかどうかということも、これはわからないわけでありますけれども、非常に何か、そういう疑いが持たれるような上がり方をしているんじゃないかと思うわけでありますが、こういう場合、公取としては、疑いがありそうだというふうなお考えはお持ちになりませんか。
  69. 谷村裕

    ○谷村政府委員 昨年のことにつきましては、当時、業界の動きをやや注目いたしまして、事情聴取等をいたしましたけれども、公正取引委員会として、これを事件として、たとえば立ち入り検査というようなことまでして問擬するというふうなことまでに進むほどの資料その他、いわば心証と申しますか、さようなものを得るには至りませんでした。
  70. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこで、私は、このような値上げ方というのは、これから非常に問題があるんじゃないかと思うのですね、何もこの石油にかかわらず。  そこで、これから管理価格の問題について、実は幾らか議論をしてみたいと思うのでありますが、その前に、この石油の問題には、ひとつ各大臣ともしっかり取り組んでいただきたい、これを要望しておきます。  管理価格の問題といたしまして、先ほども、経企庁長官から一応の定義が出されました。先日の予算委員会におきましては、民社党の竹本議員に対して、やはり定義らしいものが出ております。ところが、この両方を比べてみますと違いがございます。これはどちらのほうが正しいのでしょうか。
  71. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 竹本さんの定義を、ちょっと私、正確に覚えてはおらなかったわけでありますが、まあこの管理価格の定義は、いろいろとまだございます。先ほどの議論にもありましたように、別に定説がまだきまっておるわけではございません。そこいらに管理価格の問題の実態があろうと思うのです。そういう意味において、竹本さんの御意見十分知悉しておりませんが、数ある中でもって、先ほど申し上げましたのは独占禁止懇話会でもって出しておる見解でございまして、私どもは妥当な見解である、こういうふうに思っておるわけです。
  72. 貝沼次郎

    貝沼委員 実はこの予算委員会のときのものには、非常に独占状態であり寡占状態である、これが一つの問題ですね。さらに今度は、下方硬直性がある。下のほうに下がらない。さらに両者の因果関係ということがあるわけであります。ところが、きょうのはこの因果関係がない。私は実はこの因果関係が問題なんです。  そこで、きょうのが正しいとするならば、この因果関係がないわけでありますから、これはずいぶんと公取としてもやりやすくなるのではないかと思うのでありますけれども、これでよろしいですか。
  73. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 そういう意味でございましたら、もちろん因果関係がなければ問題になりません。あるいは私の表現が不十分でそういうお受け取り方をされたとしましたら、はっきり申し上げておきますと、もちろん寡占とか独占とかこういう状態がまずあり、それとの因果関係において形成されるところの価格に下方硬直性がある、こういうふうに私は実は申し上げたつもりでございます。
  74. 貝沼次郎

    貝沼委員 公取にお伺いします。因果関係ということでありますけれども、この因果を立証するのは公取だと思うのですが、間違いありませんか。
  75. 谷村裕

    ○谷村政府委員 御質問のように、因果関係と申しますか、これを調査するという問題は、必ずしも私のほうだけの問題ではないと思います。経済のメカニズムというのは非常にむずかしく、かつ複雑になっておりますが、私どもは、それが有効な競争条件を阻害しているかどうかという、そういう立場から見るのか、そういう意味においては、まさに私どもの仕事として、自由かつ公正な競争条件にいかなる姿が因果関係として起こっておるかということを見るという意味においてならば、私どものほうで見ますけれども、こういう問題は、私はやはり経済全体の問題として取り上げて考えるべき問題ではないか、かように考えております。
  76. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで、この因果関係を公取がやる場合、先ほども議論がありましたけれども、現在の陣容ではたしてできるのかどうか。たくさんの取引があるわけでありますけれども、その因果関係一つ一つ究明できるのかどうか、この辺の能力の問題につきまして、公取委員長、お願いいたします。
  77. 谷村裕

    ○谷村政府委員 何を目的として調べるか、あるいはそこから何を引き出し、どういう結論に持っていこうとするのかによって、私は問題が違うと思います。私どもの立場で、有効な競争条件という立場から問題を取り上げるというときには、必ずしもすべての業種について、すべての価格形成の内容をこさいに見ていくという必要も、あるいは必ずしもないかもしれません。しかしながら、もし別の立場で、物価とか、あるいはもっと広く言いますならば、先ほどからいろいろ御意見も出ておりますけれども、大企業等における価格形成のあり方とか、こういう付加価値の配分問題というふうなことにまでなるといたしますと、これは、問題としては非常に大きな問題になります。単純に利潤の問題であるとか、そういうことだけでない、付加価値の全体の配分問題というふうなところにまで踏み込もうということを考えますと、これはとうてい私どもの手に負えるところではございませんし、もっと私どもの仕事を越えた問題になると思います。  それから、なおもう一ぺん繰り返しますが、こまかい一つ一つの業種についての価格形成の問題を見ていきます上においても、私どもの現在の陣容だけでは不十分だと思います。そういう点については、関係各省とも、いろいろそういう問題の検討をしていただく体制をそれぞれにおいてとっていただくと同時に、経企庁を中心として、その辺は十分行政庁各部の間で相談をしてまいりたい、かように思っております。
  78. 貝沼次郎

    貝沼委員 さらに公取委員長にお伺いいたしますが、要するに、これは能力の点で限度があるということですね。  次に、管理価格物価対策上どういう欠陥があるのか。害の点ですね、この点をお願いいたします。
  79. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 もちろん、先ほど申し上げました下方硬直性というところに大きな問題があるわけであります。
  80. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこで公取委員長、この管理価格に対して、現在の独禁法ではどこまで有効なのかという問題でありますけれども、たとえばやみカルテルに対しては、これは取り締まる方法はないわけですね。それについてお答え願います。
  81. 谷村裕

    ○谷村政府委員 おっしゃるようなやみカルテルという意味が――要するに私どもは、そういうものがかりにあるとすれば、できるだけそれを摘発し、それを排除すべくやるわけでございますけれども、先般もいろいろお話が出ましたように、情報化社会の進展等いろいろむずかしい環境になっておりまして、証拠その他を十分に把握することにはむずかしいという形はあると思います。
  82. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで、要するに寡占企業が、たとえば独禁法ができた時代と現在とを比べてみて、非常に経済状態が違うために、この独禁法の問題が実は議論されるようになってきておると思うのです。そこで、寡占企業というものがあまり存在しないときであるならば、これは問題はありません。しかしながら、現在はこれが非常に多くなってきております。しかも、その寡占といわれるような企業が、膨大なものがあるわけですね、大きさにおいて。そういうような場合は、だれが考えても、これは価格をきめるいわゆるリーダーシップをとっておるわけでありますけれども、そういう寡占企業に対して、これは当然一つにしておいてはうまくない、ある場合においては分割も考えられるのではないかと思うのですが、そういう分割権ということにつきまして、公取としてはどういうふうにお考えでしょうか。
  83. 谷村裕

    ○谷村政府委員 現在の独占禁止法にはそういう問題はないのでありますが、かつて昭和二十二年に制定されました当初の独禁法には、場合によれば企業に対して分割、営業の譲渡等を命ずることができるという規定もございました。  この考え方は、大体においてアメリカにおいていわれている考え方でございまして、先ほど石川議員が御指摘になりましたけれども、現在の法律ではそこまでいっておりませんが、アメリカで、寡占企業あるいは管理価格等の問題を討議いたしましたある委員会が、大統領に対して、企業の分割も考えるべきではないかという、そういう答申をした例がございます。  ただ、この問題は、考え方によっては非常にむずかしい問題でございますが、独禁政策というものの考え方からする一つの帰結としては、そういう答えも、あるいは出てくるかと思います。しかし、何ぶんにもなま身の企業に対して、それの分割を命ずるというようなことが、はたして経済政策として妥当であるかどうか。また、そのことが、かえって企業の日常の行動、活発にやれ、元気にやれと言っておいて、やらして大きくなったら、今度はおまえ分割だというふうなことで、企業がむしろ萎縮をしないか、さような議論も聞かれているようでございます。  私どもは、そういう問題についていまここで見解を申し上げる立場にございませんが、そういう問題が外国では議論されているということ、また独占禁止政策一つの問題として問題になっているということ、そのことは承知いたしておりますということだけを申し上げさしていただきます。
  84. 貝沼次郎

    貝沼委員 次に、独禁法の第十五条にあるいわゆる合併制限の問題でありますけれども、先ほども話がありましたように、この合併の問題は、いままであまりなされていないのじゃないか、そうしてないのじゃないか、こう思います。たとえば新日鉄の場合なども実は明らかであったと思うのでありますが、実質的には、これは非常にむずかしいのじゃないかと思いますが、公取としては、これはどうあるべきなのか、今後どうしなければならないのか、あるいは、必ずここまではできる、こういうふうなことについてどういう見解をお持ちですか。
  85. 谷村裕

    ○谷村政府委員 ちょっと御質問の趣旨がよく了解できなかったのでございますが、合併の問題につきましては、私どもは現行の十五条の規定を適切、厳正に執行してまいりたいと思っておりますけれども、恐縮でございますが、どういう趣旨の御質問であるかをもう一ぺんおっしゃっていただきたいと思います。
  86. 貝沼次郎

    貝沼委員 実は合併制限の十五条がありますが、実際には合併制限が行なわれていないということですね。今後は、これがほんとうにできるのかどうか、その辺の見通しなんです。
  87. 谷村裕

    ○谷村政府委員 これは個別の案件によって違うと思いますが、現在の法律のたてまえをそのまましっかりと貫いてまいります場合には、一定の取引分野において競争の自主的な制限が行なわれることとなる合併については、私どもは、当然これを阻止しなければならないと思います。ただ、具体的に、ではどういう場合が、どういう見地からそれに該当するかというのは、これは個々の問題になってまいると思います。そのことは、前の委員長が、新日鉄の合併をいわば同意審決という形で認めました際にも、はっきりと申しておることでございます。
  88. 貝沼次郎

    貝沼委員 しかし、現実になされていないところを見ると、私は、非常にこれは無理なんじゃないか。さらにまた、去年来、たとえばビールの値上げだけをとりましても、これはたった四社しかないのだし、また同じ金額も上がるわけだし、だれが見ても、これは管理価格の疑いがあったわけでありますね。ところが、公取のほうとしてもこれは調査を進めているようでありますが、こういう場合、四社が話し合って、そうして値上げをしましょうというふうな証拠がないと、これはどうしようもないわけですね。しかし、四人ぐらいで話し合って証拠など残すはずはないと私は思うのです、本気になってやるならば。したがって、そういう場合に公取が因果を証明する、こういういわゆる証拠主義でも公取が因果を証明するという行き方、これは非常に問題解決のためにはむずかしいのではないかと思うのでありますけれども、これに対しては公取委員長、どういう御見解をお持ちですか。
  89. 谷村裕

    ○谷村政府委員 おそらく、たとえば何か足並みがそろったような形になっておれば、それはいわば私どもでいう共同謀議があったと見て、そして問題として問擬し、そうでないんですという証拠をあげてきたときでない限りは、もうそれでもって排除してしまえというようなお話かと思います。一種の状況証拠というものをどの程度に活用するかという問題であろうかと思います。  私ども、たいへんこれは微細な問題になりますけれども、やはり現在の法治国家における法の執行といたしましては、たとえば広い意味でいえば人権の問題にもなり、私どもの対象からいえば営業の自由という問題にも踏み込んでいくわけでございますので、その辺の扱いはかなり慎重にしなければならない問題だと思います。私は、現在の法律のもとで、私がいま例にあげましたような形で、挙証責任を先方に回すということはできないと思います。国会がたとえばそういう立法もなさるということであれば、その立法の是非がおそらく非常に問題になるところではないかと思います。  すべてこういう問題は、どういう選択をするかという問題だと思いますけれども、行政府が、あるいは民間の自由な経済行動に対して力を加えていく場合に、それを民間の挙証責任のほうに転嫁させるということは、私は、かなり大きな問題として御議論願わなければならぬ問題じゃないかと思います。  私がいまの立場で申し上げることのできるのは、こういう程度だと思います。
  90. 貝沼次郎

    貝沼委員 いま挙証責任という話がありましたので、この挙証責任は、たとえばビールの場合に例をとりますと、四社が談合したその証拠がない、そういう場合に、たとえばこれは共同してやったんじゃないかという疑いが持たれた場合に、公取が証明をするのではなくて、私たちは相談をして値上げしたのではありませんということをちゃんと企業側に証明をさせる、それができないうちは疑うぞという意味のものでしょうか。
  91. 谷村裕

    ○谷村政府委員 いわゆるカルテル行為については、二つの私どもとして対処する道がございます。独禁法では、まず第一次には、そのカルテル行為の排除を命ずるわけでございます。それで、私どものほうが問題にして、おまえらのカルテル行為を排除しろという勧告をいたしますときに、まず勧告するについては、カルテル行為があったということがなければ勧告ができないわけでございます。これは論理的にそういうわけでございます。したがって、おまえらがないという証拠を持ってこない限りはおれのほうが言うぞと言ってみても、その言う対象が実はまだ確定していない。それで、ないのですと言えばそれでおしまいになってしまう。そのない証拠というのが一体具体的には何を意味するのであるか、これはたいへん個別的、自大体的な問題になりますけれども、非常にむずかしいことをお聞きになっていらっしゃるというふうに私は思います。
  92. 貝沼次郎

    貝沼委員 まあむずかしいけれども、しかし、そういうふうにでもしなければ、これは公取としても非常にお困りになるのじゃないかと思うんですね。三人や四人で話し合ってさっと上げられるでしょう。証拠といったって、証拠主義でいって、証拠がないから、みすみすながめながら黙っていなければいけない。こういうのは、そこにちゃんと法的なものを考えて、やはりつかまえるようにしておかなければならない。そのためには、先ほどのことばをおかりするならば挙証責任の転嫁というふうな、そういう考えのもとに、具体的にはどうするかという法律をきめるのは別としても、そういう方向で考えを進めるということは、私は意味のないことではないと思うのでありますけれども、公取委員長いかがでしょうか。
  93. 谷村裕

    ○谷村政府委員 私の現在の立場では、現在法的にわれわれが行政官として許されておることをしっかりと、その法律の最大限の効果の発揮を期待と申しますか希求しながらやってまいることであろうかと思います。しかし、御指摘もだんだんございましたような意味で、経済社会の変化に対応して、新しくどのような体制が必要であるかという問題については、これは先ほどから経済企画庁長官も御答弁になっておられますとおり、われわれ行政府全体が一つの新しく取り組むべき問題として検討しなければならない。その中で新しく、たとえば公取はどういう任務を持ち、またどういう独禁法のやり方を考えていくのか、さような問題であろうかと思います。
  94. 貝沼次郎

    貝沼委員 さらに、独禁懇の資料を見てまいりますと、たとえば価格監視機構というふうなものも話の中に出ておるようでありますけれども、こういうものをもし設けるというふうに考えるとするならば、これは現行法でできるのですか。それとも、これは独禁法を改正しなければならないのですか。また、改正するならば、どの点を改正しなければならないのですか。
  95. 谷村裕

    ○谷村政府委員 毎々申し上げておりますとおり、現在の独禁法考え方は、自由かつ公正な競争条件を維持するということが目的になっておりまして、物価そのもの、あるいは価格形成そのものについてタッチする立場ではございません。さような意味におきまして、私どもは現在、競争条件という見地からたまたま価格に触れている、かような形になっております。  もし価格形成全体の問題あるいは物価の問題、これは、先ほど私がちょっと触れましたように、もしいま物価の値上がり、特に消費者物価の上昇というふうな問題を取り上げて、そういう角度から考えるといたしましたならば、それは付加価値の配分の問題、すなわち賃金、利潤あるいは生産性上昇の成果を消費者に返せとよくいわれておりますような価格の問題、それが全部一丸となって考えられなければならない問題でございますので、おそらくそういう立場から、経済企画庁のほうも、物価安定政策会議の第二部会で、この問題をどう対処したらいいかとして考えておられ、また別の部会みたいなものもできて、お考えになっておられるのだと思いますけれども、私どもの独禁法のたてまえからしますならば、価格監視というたてまえでのものは独禁政策からは直ちには出てこない、かように私は考えております。
  96. 貝沼次郎

    貝沼委員 さらに、十二日の公聴会では、やはりこの問題に触れまして、企業への立ち入り検査権をも持たせて、経理内容を調査せよという意見もあったのでありますけれども、この見解については、公取委員長どのようにお考えでしょうか。
  97. 谷村裕

    ○谷村政府委員 もし御指摘の題問が物価とか価格監視とか、そういう意味合いからであるといたしますならば、現在の私の任務ではございません。
  98. 貝沼次郎

    貝沼委員 いままでずっと、いろいろな場合について公取委員長にお伺いをしてきたわけでありますけれども、しかしながら、現在の独禁法では、たとえば先ほど例に出しましたビールの例によりましてもおわかりのように、結局つかまらないわけですね。すぐそこに見えるような感じのものですら、みすみす逃がしていなければならない、こういうような事例が実はたくさんあるわけであります。こういうことは、私は非常に遺憾なことだと思うのですね。一体、こういうことが起こっているためにだれが困るのかといえば、これは一般国民も困るし、同時にまた、その中にはさまれている公取が一番お困りになるのじゃないかと思う。こういうところから、やはりつくられている機能は十分にこれは発揮されなければならないし、同時に独禁法の第一条の目的からも、たとえば「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。」と、こういうふうにありますので、これにこたえるためにも、私は、この独禁法をただちょっと手直しする程度ではなく、抜本的に、ほんとうに消費者のため、そしてまた実際にそういう公正な取引が行なわれるようなことを実現できるような、そういう独禁法に改正しなければならないと思うのでありますが、この点はいかがでしょうか。
  99. 小林進

    小林委員長 貝沼君に申し上げますが、あなたの持ち時間は余すところ二分になりました。
  100. 谷村裕

    ○谷村政府委員 お説のような問題は、確かに独禁法の領域に、あるいは独禁政策の領域に入っている問題もございます。また、それを越えている問題もございます。さような意味におきまして、先般総理がお答えになりましたのを受けまして、私といたしましても、実態を究明しながら、いかなる体制を行政府全体としたらとったらいいのかということを、経済企画庁長官その他と御相談して検討を続けてまいりたいと思います。
  101. 貝沼次郎

    貝沼委員 企画庁長官、長官の決意はいかがでしょうか。
  102. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 まあ率直に申し上げますと、今日の物価上昇、原因がいろいろございますけれども、御存じのように相当激しい上昇を示しております。その中において、一体この問題がどの程度の比重を持っておるかということになりますと、当面まだ、いわゆる季節商品の問題であるとか、あるいは公共料金の問題であるとか、そのほかいろいろと重要なものがあり、なさなければならないものがございます。そういう意味において、この寡占価格の問題というものは、実際はこれは大企業の製品が多くございまして、そしてしかも、それが物価の上昇において占めている比重はきわめてわずかでございます。主として卸売り物価関係がございます。  そういうようなことで、相対的に見ますと、これから起こってくる問題ではないかというふうに考えています。非常に高い成長期においては、どちらかというと技術革新その他によりまして、その方面のコストが下がり、したがって卸売り物価というものがあまり上がらない。日本の卸売り物価があまり上がってきておらないことは定評のあるところでございます。そういうこともございまして、今後成長が落ちてまいる場合とか、あるいは非常に不況になってくるとかいうようなときになって、この問題がいままでよりも重要性を増してくる段階があると私も思いますけれども、少なくとも今日は、いまいろいろと御議論もありましたが、非常に究明しなければならない点がございます。そういう点もございますので、私たちとしては、物価の安定対策会議等においてもこの問題を十分に究明しておるところでございます。  また、これは先ほど公取委員長の話にもありましたように、所得政策との関連もございます。  いずれにしましても、われわれとしては、なおこの点事態を十分究明して、そうして必要に応じた対策を考えるようになる。その際に公取委員会のいわゆる価格に対する監視的機能をさらに強化し充実していかなければならない、こういうような問題が出てくるかもしれません。われわれとしては十分それを検討したい、こう思っておるわけであります。
  103. 貝沼次郎

    貝沼委員 以上です。
  104. 小林進

    小林委員長 通産大臣と公取委員長に申し上げますが、答弁席までちょっと距離が遠過ぎますから、ひとつ席を近くのほうへ来てください。  中村重光君。
  105. 中村重光

    ○中村(重)委員 ただいま原油の値上げの問題について質疑が行なわれたわけですが、聞いておりまして、楽観に過ぎるのではないかという点を感ずることと、それから、非常に不安を感ずるのです。  ということは、大蔵大臣その他各大臣がお答えになりましたように、関税の引き下げであるとか、それから電力料金であるとか、あるいはまたタクシー料金、そういったものの引き下げ、あるいは引き上げを認めない――これはわかるのです。タクシー料金にいたしましても、いつまで上げさせないかわかりませんけれども、この原油の値上がりとは関連なく、タクシー料金の値上げは当分認めないのだという方針を政府は明らかにしてきたのです。電力料金にいたしましても、いままでの統計から見まして、三年ないし五年に一回くらいしか上げてないのです。ですから、これはそう簡単に値上げが認められるものではないのです。また、通産大臣お答えになりましたように、非常に力の強い石油化学関係等々、これに対してはそれ自体の抵抗もありましょうし、生産性を高めることにおいてこれを吸収するということだって可能だろうと思うのですよ。しかしながら、そのことが、かえって弱い企業にしわ寄せされるという危険性があるということです。それには、政府はこれを押えるというきめ手がないのじゃないでしょうか。私は、国民が一番不安に思っている点はそこであろうと思うのです。  それから、若干楽観に過ぎるのではないかと私が指摘をいたしますのは、通産大臣は、ガソリンの値段というものが価格差があるのだとおっしゃったのです。それから、灯油はいま不需要期であるとおっしゃった。私どもは、短期的にはこの問題を議論しようとは考えていないのです。それから、そのガソリンの値段の格差にいたしましても、安いのが上げることは十分考えられるのです。そういった安易な楽観的なことではなくて、  一番しわ寄せされるであろう、そしてそのことがまた、国民生活に一番重要な関係を持つものであるからして、これを上げさせないように、消費者物価にはね返らせないようにどうするかということに焦点を置いて、政府が積極的な対策を講じられる必要があるのだということです。そのことを私は聞きたかった。  それから、経済企画庁長官、どこに行ったのか見えませんが、長官来てからお尋ねしますけれども、宮澤大臣から、それらの点に対してひとつお答えを願いたい。むしろ私は、国民生活の問題ですから、これはあなたよりも佐藤企画庁長官から答えてもらわなければならぬ筋合いのものだろうと思うのですが、委員長、どうしたのです。
  106. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私の申し上げた部分についてだけお答え申し上げますが、中村委員がそういうふうに仰せられますことはごもっともであろうと思っております。私自身も、実は事態を決して楽観しておりません。が、ただいまの段階で申し上げるべきことと、それから、しばらく申し上げずにおいたほうがいいこととが、御承知のようにおのずからあるように感じておりますので、あのようにお答え申し上げておるわけでございますが、基本的に見まして、これはなかなか楽観していい事態でありませんことは、実はよく承知をいたしております。
  107. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは、鉄鋼の問題についてもお尋ねしたかったのですが、わずかな時間であります。党のほうから、再販の問題であるとか、あるいはまた、カラーテレビの行政指導の問題について、私が分担することを指示されております。そこでその点についてお尋ねをしなければなりませんが、ただ、私は、鉄鋼の問題について問題点を指摘をいたして、それで簡単に通産大臣と谷村公取委員長からお答えをいただきまして、具体的な問題は、商工委員会においてひとつお尋ねをし議論をしたいと思います。  ということは、八幡、富士が合併をいたしまして新日鉄が誕生いたしましてから、ちょうど一年経過をいたしました。いまの鉄鋼業界の中において、私は、新日鉄がいわゆる業界に対する調整機能というものを非常に強めてきたと思っております。現にいま業界で問題となっております設備調整の問題、これは一昨年各社で寄って五基つくるということを決定をいたしておりますけれども、新日鉄の稲山社長は、これに待ったをかけておる。それから、昨年の十一月でございましたか、  一割の粗鋼の減産をいたしました。そして、ことしの一月になってまいりますと、一番鉄鋼の中における主力製品でありますところの自動車専用の薄板、これをトン当たり千円、新日鉄は上げました。これに各社が追随をしてまいりました。  これらのことを考えてみますと、私は、新日鉄というものが鉄鋼業界における調整機能を強めてきたという事実が十分認められるし、また粗鋼の一割減産の問題、それに続いて価格の引き上げ、これは明らかに業者間におけるところの談合、共謀が行なわれてきた、これはいわゆる協定であって、独禁法違反であるのだという考え方を私は持っているわけです。この点に対して公取は調査を進めておるかどうかということをお尋ねをしたいことと、それから、設備調整に対しまして業界ではたいへん混乱をいたしておるようでございますが、通産大臣は、みずからこの調整に乗り出される御意思を持っておられるのかどうか、この点に対してお答えをいただきまして、次に進みたいと思います。
  108. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 お尋ねの点は、公取等において、もし疑いがあればお調べをいただかなければならないことでございますが、自動車の薄板の点は、御承知のように昨年の四月ごろ、市況が一時非常に高いときがございまして、それから落ちましたが、そのころから話のあったことのように承知をしておりますので、それが今回、数カ月かかって実現したというふうに聞いております。  それから、新日鉄の力ということでございますけれども、これは、設備調整のときに鉄連の会長がいろいろお世話をするということ、従来からさようでございますが、そういうものであろうと思っておりますので、新日鉄を背景にということではなかろうと見ております。  その設備調整の点でございますけれども、私自身は、あまりそういうことを好まないほうでございますので、役所として口を出したくないという気持ちでございます。
  109. 谷村裕

    ○谷村政府委員 鉄鋼の一口に言って業界の事情、生産から流通、消費に至るまでの事情を、一昨年でありますか、八幡、富士の合併ができたあとにおいてどのような変化が起こっておるか、どういう状況が具体的にあるかということについては、いわゆる疑わしい事件としてという意味ではなしに、一般的な経済調査という意味になってくるかと思いますが、少なくとも問題がそこにいろいろありはしないかという意味において調べることにいたしております。
  110. 中村重光

    ○中村(重)委員 原油の問題に対しては、これも鉄鋼とあわせて、商工委員会において十分議論をしてまいります。  いま通産大臣は、新日鉄の指導性というのか調整能力に対して、これを否定するように受け取れるようなお答えがあったように思うのですが、通産大臣は、設備調整に乗り出すことを私は大体好まないのだ、こう、いまおっしゃった。新聞記者会見かどうかわかりませんが、新聞に報道されたあなたの考え方――設備調整については、いま新日鉄という指導性のある企業が存在をする、したがっていま通産省が乗り出す段階ではないということを、談話としてあなたは語っておられるという事実であります。これは、あなたが新日鉄の調整能力をいかに否定されようとも、その短い談話の中に、あなたが新日鉄の力というものを十分認めておるという事実を物語っておると思います。したがいまして、この答弁は、商工委員会であれしていただきます。  次に、カラーテレビの問題でございますが、通産大臣は、カラーテレビの一五%引き下げについての行政指導をされたわけでありますが、これは適切とお考えになっていらっしゃいますか。
  111. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 お許しを得て、前の点につきましてちょっと申し上げたいと思います。  私は、新聞に間違って報道されたという経験をほとんど持っておりません。絶えず正確に報道してもらっておるように思いますので、いまの点は、したがって私がちょっと何か申し違ったのかと思いますけれども、そういうことを申した覚えはございませんでしたし、そうも考えておりません。  私の申しましたことは、鉄連の会長が中心になっていろいろ調整をされるのであろう、したがって、役所としてそういうことに乗り出す気はない、皆さんおとなだから、いろいろお話し合いになるでしょう、こういうことを申したつもりでございました。ただいまの報道がありましたことをよそからも注意を受けましたので、私の真意でございませんでしたことを申し上げさせていただきます。  それから、カラーテレビの点でございますけれども、現金正価というような、現金でも正価でもないおかしな名前のものをつくりまして、消費者を、言ってみればじょうずにあやつっておったというようなことがあったわけでございますから、そういうことははなはだよくない、正確な値段をつけるようにしたらいいではないかという指導をいたしました。それが事実上値引きになったわけでございます。ほんとうを申せば、そのような商習慣ができませんような体制にしておかなければならぬわけでございますから、外科手術のようなことをいたしましたのは、あまりほめられていい行政ではない、当面やむを得なかったとは思いますが、そんなふうな感じでおります。
  112. 中村重光

    ○中村(重)委員 不当表示防止の問題は、公正取引委員会が不当景品類及び不当表示防止法、いわゆる景表法第四条第二号によってこれは警告を発した、通産省はこれを受けられて一五%値下げの指導をなさった。しかし、あなたは、二重価格はおもしろくないじゃないか、そのことが結果的には実質的に一五%の値下げになった、こうお答えになった。実質的に一五%の値下げになりましたか。
  113. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一月中旬になりまして、現在までに十二社が、値下げをしました新機種を発表しているそうでありますが、それらはカラーテレビで十九機種、白黒テレビ十機種、冷蔵庫九機種、洗濯機十四機種でありまして、旧機種の価格に比べますと一〇%から三〇%強の値下げになっておる、こういうことを聞いております。
  114. 中村重光

    ○中村(重)委員 値下げになっていない事実を、私はあとで指摘をしてまいります。  そこで、公取委員長にお尋ねいたします。あなたは、ただいま私が申し上げましたように、いわゆる景表法第四条第二号を背景にしまして二重価格の撤廃を警告をし、これは成功した、私は、そのことは評価をいたしたいと思います。ところが、通産省が行なった一五%の値下げ指導は適切であったとお考えになっていらっしゃいますか。
  115. 谷村裕

    ○谷村政府委員 私どもが立っております立場は、ただいま中村議員が御指摘のように、実際の小売り価格、いわゆる実売価格というものが、いわばメーカーがつけた希望小売り価格と申しますか、昔は現金正価という名でいっておりましたが、それと著しくかけ離れてることを問題として、それを是正することを言っております。そして私が一番大事だと思っていることは、実勢価格、ほんとうの店頭での小売り価格はどうなるかという問題であろうと思います。そしてそれこそは、自由な価格メカニズムが形成するものであろうと思います。  通産省で御指導いただきました点は、そういう市場で取引されるであろうと思われる値段とあまりかけ離れない値段をちゃんとつけなさい、こういうふうに言われまして、新機種についてでありますか、少なくともいままでの流儀で考えればこの辺につけたであろうと思われるいわゆる価格を一五%下げさせたということで、その意味では、実勢価格に近づくであろう価格をつけるように指導されたという意味において、大体私どもとしてはけっこうなことであったと思っております。ただ、その値段が今後どうなっていくかということは、これまた市場の実勢の問題であろう、かように思います。
  116. 中村重光

    ○中村(重)委員 公取が調査をされた現金正価、それから実勢価格、その調査対象と申しましょうか、調査範囲、調査方法は、どういうことでお進めになりましたか。
  117. 谷村裕

    ○谷村政府委員 実はこの現金正価というものが、現実の小売り価格に対して非常にかけ離れたものになっているのではないかということに問題を感じましたのは、去年といいますか、あるいは、むしろおととしくらいであったかと思います。そこで、メーカー等にも質問をしたり調査をしたりしておったんでありますが、なかなかそれがうまく進まないでおりました。  そこで、公取といたしましては、妙なことでございますが、私どもがモニターとしてお願いしております全国約六百の方々に、調べていただくようにお願いしたわけでございますが、その前にもう一つ、委託調査というふうな形で、ある婦人団体にそれをお願いして調べていただいたことはございます。その場合は、まだ必ずしも全国的な調査というふうにはいえなかったのでございますが、そこで相当の実態を把握することができました。第二番目に、そのモニターによる調査をいたしまして、ある程度その実態がはっきりしてまいりました。それから三番目に、私どもの職員の手で、ある程度また裏打ちができるように調査をいたしました。  もちろんこの間通産省におきましても、いろいろの手を通しまして実態調査をしていただき、お互いにその調査の内容、情報を交換し合ってまいりました。  これが調査をいたしました姿でございます。
  118. 中村重光

    ○中村(重)委員 いろいろな御調査をなさったんだろうと思います。一番最後におあげになりました、私のほうの職員をもって調査をさせたというその調査でございます。それは、量販店と小売り店と二つに区別をして調査をさせたのではないでしょうか。量販店と申しますと、たとえば五十坪以上の面積を持っておる店、小売り店というのはそれ以下の比較的零細な店、そういうようなことで区別をして御調査になったのではないでしょうか。
  119. 谷村裕

    ○谷村政府委員 小売りの店については、そういうふうなところにそれぞれ当たってみたということはございます。
  120. 中村重光

    ○中村(重)委員 そこで、小売り店のうちに、いわゆる系列店と、それから現金決済をするところの自由販売店と、二通りあることは御承知でございましょうね。
  121. 谷村裕

    ○谷村政府委員 承知いたしております。
  122. 中村重光

    ○中村(重)委員 そうなってまいりますと、通産省が、新機種から一五%値下げということを実施させるという指導をなされるわけでありますが、この一五%が適当であったという判断基準というものは何か。これは先ほど通産大臣は、まあ二重価格はよろしくないぞと言ったところが、結果的にそうなったんだというようにお答えになったので、これは私が、一五%ということの値下げの判断基準と言っても、いや実は、それはそうやったのではないのだからというお答えが返ってくるのかもしれないのですよ。ところが、新聞に多く報道されておる事実を、あなたはまさか御否定にはならないでしょうから、次の新機種から一五%ひとつ値下げをしなさいというような形、それはいま結果としてお答えになりました、従来の流通あるいは在庫の製品の値下げというような形であらわれたとおっしゃるのでございますから、その効果をあなたは評価をしていらっしゃるのでしょうけれども、一五%の判断基準ということについて、一応お答えをいただきましょう。
  123. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一般に一五%といわれておりますことは、実際にはメーカーを何か四つのグループに分けまして、五%、一〇%、一五%、二〇%、おのおの以上といったような段階的な率を提示したものでございます。  そこで、私は、企業の原価というものはなかなかわかるものではない、また、役所がそれをわかろうとするということもあまり意味がないという、自分意見を持っておりますので、このパーセンテージというものがはたして議論の余地がないものかどうかということになれば、それはいろいろ私は議論もあろうと思っております。ですから、平均で一五%になりまして、これでもうたいへんにけっこうな、よろしいことでございましたというような感じは持っておりません。現金正価というようないいかげんなものをなくして、少しほんとうの価格に近づけていったということ自身はけっこうなことだと思いますけれども、一五%、これがもうぎりぎりで、これでいいところなんだというような評価をすべきものではないと、私自身は思っています。
  124. 中村重光

    ○中村(重)委員 この一五%の値下げということは値下げではないのだということ、それは現金正価と実勢価格というものの違いがあったのだから、実勢価格で販売をしておるのに、現金正価というものをつけて、あたかも値下げをするようなやり方でそういう表示をしていることが、いわゆる公正取引委員会指摘警告という形であらわれたわけです。したがいまして、現に売られておる価格が実勢価格であるから、その実勢価格に近づいたからといって、それが値下げということにはなりません。その点をどのようにお考えになっておるかということが問題であります。それから、そのことが及ぼす影響というものがいかに重大であるかということを、通産省はどのようにお考えになったのでしょうか。  私は、これらの問題が出始めた当時、これほど大きくクローズアップしなかった当時、宮澤通産大臣御承知のとおり、商工委員会で、公正取引委員会が二重価格を撤廃をさせるということは当然なんだ。これは景表法違反であるから、当然おやりになる必要がある。だが、しかし、通産省が行政指導されることは、その行政指導というものが通産省価格となり協定価格を生み出すおそれがある。そのことを慎重にお考えになって指導なさらなければいけないということを、私は御注意を申し上げた記憶があります。その際あなたは、すべての会社が話し合いをしてやるなんということはないでしょうと、きわめて楽観的なことでございましたが、残念ながら私は、そういうようなことになりつつあるということを申し上げなければならないわけでございます。  それは具体的な例でもってあとで申し上げますが、いずれにいたしましても、私の調査をいたしました点から判断をいたしますと、今回の通産省の指導というものは価格の下ざさえになった、そういう役割りを果たしておるという事実。それから、現金で仕入れて販売をしておるところの業者、この業者は、より安く売っておったものを安く売ることができなくなったという結果が生まれてきたということであります。これはむしろ値上げというような大きな役割りを果たしておるわけであります。先ほども私は公正取引委員長に、公取の職員が調査をした、いわゆる量販店と小売り店との調査に分けて調査をなさったのではありませんかと申し上げたのは、そのことなんです。むしろあなたのほうの調査が正確を期するならば、系列店と非系列店とどのような違いがあるか。いわゆる神田、秋葉原、ああいうところは非系列店でございますから、そこらあたりの実勢価格がどういうものであったかというような形で調査をされるならば、私がいま指摘をいたしておりますようなことが明らかになってきたであろうと思うわけであります。少なくとも五十坪以下であるとか五十坪以上であるとかいうような形でされたところに、系列店と非系列店というような形になりませんでしたから、正しい実勢価格というものの調査ができなかったという点は、一つの問題点としてあらわれ、そのことが弊害となってこれからかもし出されてくるということを指摘しなければならないわけであります。  そこで、先ほど通産大臣が表をもって、こういうものがこう下がったんだとおっしゃいましたから、それでは私も申し上げてみますが、具体的な例で申し上げますと、たとえば東芝の19型カラーテレビD5Dの現金正価というものは、十八万六千円でございます。系列店では、二二%のマージン、これに八%のリベートがございますから、これを差し引きますと、いわゆる仕入れ価格というものは十三万二百円でございます。ところが、実勢価格と称する小売り価格は十五万八千二百円でございます。一方、現金仕入れの自由販売業者の現金正価は、同じく十八万六千円でございます。仕入れ価格は九万五千円、現金で決済をするのでありますから、このくらい安いわけでございます。そこで小売り価格は十一万三千円、この格差は、何と四万五千二百円でございます。現金正価との開きというものが四〇%ある。一五%の値下げをなさいましたが、いま申し上げましたように、自由販売店と称するものは、四〇%の値下げをさせなければ実勢価格というものにならなかったということであります。  このように系列店と非系列店との違いがあるということを真剣にお考えにならなければ、一五%の値下げになったのだ、一五%の値下げになったのだと、あたかもほんとうに値下、げになったかのようなことでこのことを評価をする、こういうことでこの後の行政指導をするということに対しては、きわめて重大な問題点であるということを指摘しておきたいと思います。  それから、新機種としてこれから売り出されるのは、メーカーによって20型が主軸であるところもある、あるいは18型が主軸であるところのメーカーも実はあるわけであります。しかしながら、これから19型というものはどんどんなくなってまいりまして、大体20型がこれからの主軸をなすであろうということは間違いございません。同じく東芝の20型――この東芝というものは、現在全体のメーカーで月産五十万台くらい生産されておるのでありますが、そのわずか四%ないし五%というきわめて小量生産であります。その20型の現金正価は二十万五千円であります。系列店のマージンが、先ほど申し上げましたように、二二%と八%を含めますと三〇%の仕入れ価格十四万三千五百円、一五%の小売り価格は十六万四千円でございます。自由店の仕入れ価格は十一万八千円、小売りが十四万ないし十四万三千円でございますから、格差は二万一千円ないし二万三千円、実はこういうことになっておるわけであります。  ですから、このようなことを御調査になっておるのでございましょうか。私がただいま申し上げました、一五%、これは値下げではなくて、現に売られておる価格に近づけたにすぎないのだということが間違いでございましょうか。
  125. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いまでこそ皆さんも御存じでございますけれども、実は私、自分のことなど考えますと、現金正価とあれば、それでやはり自分は買っておったのじゃないかと思います。世の中にはそう気の強くない方がたくさんおられますから、それで買っておられた方も相当あったのではないだろうか。そういう上げ底というものがいけませんということで、上げ底を、あまりひどうございますから取っ払ってもらいましたわけで、その結果あらわれました底が、これがほんとうで、もういいんだというようなことを、実は私ども申したつもりではなかったわけであります。先ほど、外科のような行政で、あまり感心したことでない云々と申し上げましたのも、実はいま中村委員の言われましたように、それならば、それだけ引いたならばこれでもういいのかということになりますと、そういうことを言ったつもりではなかったので、上げ底はやめましょう、そういうおかしな習慣だけはやめてもらいたいということを申したわけでありまして、その結果あらわれました値段が、もうこれ以上動かないもので、企業努力がもう完全なパーセントそこに入っておるものだとかなんとかいう、そういうことを逆に立証するというような印象になれば、これは私どもの行政のねらったところではございません。
  126. 中村重光

    ○中村(重)委員 だから、あなたがおっしゃるような点があることは事実です。やはり現金正価というものがついておりますと、これが価格だろうなというようなことで、あるいはそれを買った人があるかもしれません。そのことは、私は率直に認めたいと思うのです。しかし、それは公取が職権でもっておやりになった、二重価格を廃止する、それで用は足りたわけです。あなたのほうの行政指導というものは、公取が現金正価を撤廃させた、いわゆる二重価格というものを撤廃させたのだから、それに一歩進んだ形で、実勢価格からより価格の下がるようなことについて研究くふうをされて、そして効果をあげるような方法をおとりになったのであるならば、私はそれなりに評価をしたいのです。ですから、何もうろたえてあのような対処のしかたをされるのではなくて、もう少しより根本的な検討をされて、そしてより効果をあげるような方法をおとりになる必要があったのではないでしょうか。それだけの余地があったのではないでしょうか。私は、それを非常に残念に思うのです。  同時に、ここでかもし出されてきたことは、私どもがいつも言う、公正取引委員会にいまのような権限範囲ではなくて、実際に価格の構成がどうなっておるか、そういうものを調査する、監視する、そういう権限というものを強めなければならないのだ、そして初めて管理価格というものをなくすることができるのだ、このような弊害をなくすることができるのだということを、いまにして政府がほんとうに、管理価格があるとかないとかというような議論をするのではなくて、現実の問題としてあるのだから、そこに力点を置いて対処をしていくということでなければならぬと私は思うのです。ところが、いまずっと答弁等聞いてみますと、寡占体制である、そこから管理価格が生み出されておるのだ、これを直さなければならぬのだというようにおっしゃいますけれども、また一方において、管理価格というものがほんとうに存在するのかどうか、これはまあたいへん複雑なむずかしい問題だというように、あたかもこれを否定するようなことばがまた飛び出してくるわけです。  今回の経験に照らして、公正取引委員会佐藤経済企画庁長官はどのような見解をお持ちになるのか、あるいは構想をお持ちになるのか、お答えをいただきたいと思います。
  127. 谷村裕

    ○谷村政府委員 再三申し上げておりますように、私どもに現在与えられております任務は、自由かつ公正な競争条件を維持するということでございます。そして、もし物価という問題からいろいろ、特に大企業でありますとか、あるいは市場支配的な力を持っているかに思われますような企業群の行動を見ていくという話になりますれば、これは、私どもの領域にも関係する分もございますし、また、私のいま預かっております仕事の領分を越えたことにもなる、かように思っております。  たいへん抽象的に申し上げましたが、しかし、問題がそこにあるということは、私もよく了解いたします。
  128. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 まあ寡占価格の問題いわゆる管理価格の問題といわれておりますものが、物価対策上どの程度のウエートを占めますか、これは、先ほどから申し上げておりますように、われわれとしては非常に重要視して検討はいたしております。そういうことで、その検討の結果を待って十分適切に対応策を考えなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  129. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは通産大臣、これは経企長官も公取委員長もお聞きをいただきたいのですが、この後どのような推移をたどっていくであろうかということです。  いま私が調査をしたところによりますと、先ほども申し上げましたように、大体新機種は20型が中心になっていくであろうことは間違いないと思います。ところが、いま小売り価格というものが、十六万円台ということに実はなってきているわけです。十六万円から十六万五千九百円、これは各社が一斉に発表いたしました。これは御承知であろうと思うわけです。ところが、いままで現金仕入れをいたしまして、系列店よりも安く売っておりました店も、締めつけを受けております。十六万円台で売らなければいけないわけです。各社が一斉に、通産省のいわゆる指導ということをてこにいたしまして、足並みをそろえてこの管理体制というものを強化しようとしておるという事実であります。この点はひとつ真剣にお考えいただきまして、これに対して適切な指導あるいは警告を、公取委員長、それから通産省は、どういう形でなさるのか。弊害のある指導は困るのでありますけれども、あなたのほうの指導が悪用されておるというこの事実に率直に着目されて、適切な措置をおとりにならなければならない。  また、経企庁長官も物価対策という面から――ともかく業者は商魂たくましいです。法律ができたならば、あるいはいろいろな制度ができたならば、これをいかに有利に自分が活用していくか。ですから、ともすると法律が、あるいは制度が、もろ刃の剣という役割りを果たすという点があるわけでありますから、その点を真剣にお考えにならなければいけないと思います。  実はいま、この自由販売店と消費者の方々が反発をいたしまして、近く組織をつくろうとしております。遠からず相場委員会という組織をつくりまして、すべての品種の価格を公表しようという準備をいたしております。もうすでに私はこの表を持っております。これが近くそういう動きをされるであろうと思います。これは明らかに通産省の指導というものからもたらされた弊害に対する抵抗であるということをひとつお考えいただいて、ただいま私がいろいろと申し上げましたことに対してどのように対処をされるのか。時間の関係もありますし、再販にも触れたいと思いますので、簡潔にひとつお答えをいただきたいと思います。
  130. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先般の行政指導の結果がいま言われましたようなことになっておるといたしますと、これは私どもの意図したところと全く異なるわけでございまして、何か私どもが公定価格のようなものを公認したというようなことになりますれば、それは全く私どもの意図ではございません。よく実情を調査し、また公取等とも御連絡いたしてみたいと思います。
  131. 谷村裕

    ○谷村政府委員 おっしゃるような意味で、もし、メーカーのつけた新しい価格を末端で開かないように守ってもらわなければならない、こういうような締めつけだの何だのがあるとすれば、それは私どもとしてはむしろ逆だと思います。その点は特に、この前もメーカーあるいは小売りの方々によく御注意申し上げておいたところでございます。
  132. 中村重光

    ○中村(重)委員 単に小売り店を締めつけるといったようなそういうことだけでなくて、明らかに業界が足並みをそろえる、通産省の指導というものを悪用して価格協定等々いろいろな取引協定をやるということは、これは明らかに独禁法違反なんです。もっと積極的な調査をおやりになるのでなければ、あなたは、あなたに対する国民の期待にこたえることにはならないということです。そのことを真剣にお考えをいただきたい。  次に、再販の問題についてお尋ねをいたしますが、物価安定政策会議の提言に対しまして、佐藤総理大臣は、メーカーが小売り価格をきめるというやり方は好ましくない、これをやめさせなければならぬという意味の発言をされたことを記憶をいたしております。それから経済企画庁は、物価高の犯人は再販であり、カルテルであり、輸入制限であるというようなことでもって、具体的な品目等、これは新聞報道で私は承知をいたしておるわけでありますが、指摘をしております。佐藤長官はこれに対してどのように――いや、この事実をお認めになるかどうか。  それから、委員長にお願いをいたしておきます。  三時から総理大臣が見えられますから、この物価安定政策会議の提言に対して、総理大臣が私が申し上げましたような発言をしたのでありますから、いまもその考え方に変わりはないのかどうか、どう対処しようとするのかということに対して、お答えのみをひとつ総理大臣からしていただきたいと思います。
  133. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 いま中村さんのおっしゃいました点で、ちょっと私の捕捉しにくかった点もあるのでありますが、もちろん物価高原因、いろいろ私たちは言っております。その中において、生産、流通を通じていわゆる自由な競争ということをできるだけ実現し、それによって自由な価格の形成が行なわれるようにする、これも長期的な重要な物価政策一つでございます。そういう意味で、提言にもその点に当然触れておるわけでございまして、われわれもその方向を実現しなければならない、こう考えておるわけでありまして、その観点から見まして現在の再販制度その他の問題、これが現状が、再販制度の認められたところと一体背馳していないかどうか、行き過ぎがないかどうか、いわゆる流通その他価格の機能を阻害してないかどうか、こういうような点を十分検討しなければならない。これも一つ物価政策の広い意味の一部である、こういう意味で申し上げてあると思います。
  134. 中村重光

    ○中村(重)委員 新聞報道はそういうことになっておりませんが、議論をしますと時間がありません。  公正取引委員会は、再販に対する弊害規制という考え方を固められて、いま作業を進めていらっしゃるようであります。結論はいつごろ出るのでございましょうか。
  135. 谷村裕

    ○谷村政府委員 主として消費者の利益を不当にそこなわないようにしなければならないというような意味における再販の弊害規制の一番大きな問題は、メーカーが不当に高い値段をきめているのではないか、たとえば同じような製品について、たとえば薬でいったような場合に、医家向けの場合と一般向けの場合との間に大きな格差というようなものがありはしないかどうかといったようなポイントが一つ。それから、たとえばまた、薬の場合にもその話が出たことがございましたが、非常に巨額なリベートとか現品添付とか、そういうようなものをつけて小売りに販売のしりをたたき、最終の価格というものは再販によって押えておく。いわば流通段階の利益が消費者に還元しないというふうな問題、これも一つのポイントではないか。これが実は三年くらい前から、問題になったときから指摘されておったのでございますが、ただいま私どもとしては、そういう点について具体的なある線を考えてみたいと思っておりますので、いつごろになるかという御指摘でございますが、こういう問題は早いにこしたことはないのでございますけれども、いろいろ実態との関係もございますので、一月ほどの時間はあるいはかかるかもしれないと思っております。御了承いただきたいと思います。
  136. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは、三月までには結論は出ると理解をしてよろしゅうございますね。
  137. 谷村裕

    ○谷村政府委員 具体的な問題でございますので、いろいろの角度から検討しなければならないと思いますが、私といたしましてはぜひそういうくらいにはしなければ、まあ申しわけないということばはおかしいのですが、ならぬのじゃないかと心がけております。
  138. 中村重光

    ○中村(重)委員 まあ弊害規制をするということは、再販を維持するということを意味することになります。そうなってまいりますと、私は、公取委員長が、再販制度というものをつくった、いわゆる適用除外の要件とか、あるいは指定要件というのがあるわけですが、その前提はくずれてないという考え方、弊害はあるけれども前提はくずれていないという認識に立っているというように感じられるわけです。私は、その前提はく、ずれているという認識に立っております。時間がございますと、詳しく私の考え方を申し上げたいのですが、時間もないようでございます。  ところが公取委員長、正直なところ、もうその前提はくずれた、これははずさなければならぬ、こうお考えになっていらっしゃるのじゃなかろうか。だが、しかし、メーカーであるとかその他の関係方面の抵抗が強い。だから、やむを得ず弊害規制でいかなければならぬな、こういうことでいま弊害規制というものに取り組んでおられるのではなかろうかという感じがするわけです。それを裏づけするようなことにもなるように思うのですが、あなたのところに主婦連が陳情に参った。そのときあなたは、メーカーに対する説得が必要だというように語っていらっしゃるのです。再販をはずすのにはメーカーに対する説得努力が必要なんだ、これが案外、正直なあなたの心情じゃないでしょうか。  まあ、しかしながら、時間もありませんから、あとで一緒にお答えをいただきたいと思うのですが、昭和二十八年、この再販制度が生まれたわけです。いまは大蔵大臣でいらっしゃる福田さん、当時大臣ではいらっしゃいませんでした。この再販問題に強く抵抗なさって、今日かもし出されている弊害を、あなたはいみじくもそのとき指摘をしていらっしゃる。あなたの先見の明というものに、私はほんとうに敬意を表しているわけです。いまあなたにどう思いますかと私がお尋ねをすることは、閣僚の席にいらっしゃるから少し酷であろうと思いますので、御遠慮申し上げなければならないと思うのでございますが、ともかく、当時それほど問題があったという事実を真剣にお考えにならなければいけないというように私は思います。  そこで、前提がくずれておるということは、ともかくメーカーが同一品種であるかどうかということがわからない。もうわからぬようになってきた。それから、これは自由競争が前提でありますけれども、これもくずれてきた。いろいろなメーカーのやり方によってくずれてきているわけです。  まず第一にあげられるのは過大広告でございましょう。薬の場合なんか言えることは、ともかく同じような原料である。しかも品質は同じなんだけれども、ともかくものすごく金をかけて広告をするものですから、消費者はやはりものが違うんだなといって、案外同一品を違ったもののように実は受け取って、これを買いそそりをさせられているということが現実でございます。したがいまして、この点の要件もくずれてきた。  それから自由販売。化粧品の場合におきましては資生堂が、これは鉄鋼の場合におけるところの八幡、富士、いわゆる新日鉄のような相当大きい指導性を持っております。資生堂のすることに右へ習えであります。リベートの問題しかり、それからマージンの問題しかりであります。若干リベートには違いがありますが、マージンが二五%、化粧品の場合みんな同じだ。それから取引要件というものも同じであります。  時間がございませんから、私は実は調べたのをここで申し上げますが、マージン二五%、リベートが平均一〇%から八%、五、六%ということになってまいりますから、その平均は大体八%くらいがリベートのようであります。石けんのマージンは二〇%、化粧品が二五%、石けん洗剤には、これはリベートはない。  それから、問題点としては、リベートに対しての累進制、それからノルマ制というものがあるということがたいへん問題だと思います。クォータ制といいますか、一年の初めに、化粧品は何々が必要でございますといって注文をとるのじゃないのですよ。おまえのほうはこれだけ売りなさいといって価格をきめられる。価格をきめて、年の初めにきめたその価格に従って、毎月メーカーがかってに全部の製品を組み合わせて送りつけてしまうのです。ただ違うのは時期によって違う。だから、北海道と南のほうは時期が違うけれども、送る品物はみんな同じです。メーカーがかってに送りつける。その送りつけられたものは、売りたくないけれども、これはもうやむを得ないのですよ、受け取らなければならない。ところが、送ってきた品物の、いいところで七〇%程度しか消化ができません。三〇%程度はストックです。一年間それをストックしてまいります。どうにもならないという状態にあります。だけれども代金の決済は、これは品物を送ってまいりましたときに決済書が入ってまいります。したがいまして、それはその翌月に払わなければなりません。リベートは、年に二回仕切って、その成績によって払う。だから、その支払いが一回でもおくれたら、リベートはだめなんですよ。実にかって気ままなやり方を今日メーカーはやっておる。いわゆるメーカーの完全な支配であります。それから、自分はこういう化粧品を売りたいといってかりに資生堂に申し込みをいたしましても、売らせない、いわゆる系列化という形が出てまいっております。  こういう状態の中で、どうして自由競争があるでございましょうか。それから、取引上の正当行為というのが、いま私が指摘をいたしましたようなことで、どうしてこの正当な行為ということがございましょうか。このようなことの生み出されるものは、いわゆる再販をてこにいたしましてメーカーは超過利潤をあげますけれども、ともかく二五%とかあるいは八%というような、そういうリベートを合わせまして大きいようでもありますけれども、相当な経費がかかる。それから、そういうストック商品を出さなければならないということになってまいりますと、小売り店というものはわずか五分程度の利潤、純益が残るにすぎないということです。そういうように小売り店は締めつけられ、今度はいわゆる適用除外に対しましては、消費者に対するところの利益を不当に害しないことということになっておりますけれども、これは完全に消費者は不当に利益を害されております。こういう問題をあげただけでも――もっとたくさんありますけれども、これをあげましただけでも、いわゆる適用除外の指定要件がくずれてないということが言えるでございましょうか。どのようにお考えになりますか、公正取引委員長
  139. 谷村裕

    ○谷村政府委員 たいへん実例をあげて、また剴切なるポイントをおつきになりましたことに敬意を表したいと思います。私どもも、実はそういうところにいろいろ問題があることを承知いたしておりまして、いかにその弊害を是正するべきかということを考えているわけでございますが、いま御指摘になりましたところで、三つほど私がお答えを申し上げたいと思います。  まず第一に、この法律あるいは条項が持っております法益、すなわちおとり廉売を商標品について防止する、そしてそれがすなわち消費者にも、あるいは小売り店に対してもむしろいいことなんであるというその考え方、そういった商標品があるという問題についてはこれは変わっておりませんし、おとり廉売があるという問題としては変わっておりません。それに対応する手段としてこの再販売価格維持契約が行なわれることを、独禁法上例外として認めたわけでございますけれども、そういう制度が根本的にいまのあり方でいいかどうかということは、これは私は別個に考えていかなければならぬ問題だと思いますし、そのために新たな法制上の措置も必要といたしますし、そのためには各方面のコンセンサスが必要である。私は別に、メーカーだけのことを申したわけではございませんので、こういった全体としていろいろ利害相錯綜する問題についての一つの問題の解決には、行政官庁が間に入って調整をしなければならないけれども、それはそう簡単なことではないということを申したことは確かにございます。しかし、私は別に、メーカーがこわいからとかメーカーにどうだからとかいう、メーカーだけのことを申したわけでは決してございません。  それから第二に、そういったことを基本的に考えながら、いま運用しております法律の中でいかに弊害を規制していくかということについては、いまおっしゃいましたような再販制度というものをてこにして、場合によれば必要以上に一種の締めつけと申しますか、系列メーカーによる流通支配と申しますか、そういうことがあって、それが行き過ぎではないかという、いわゆる正当な行為の範囲を逸脱しておるかどうかという問題もございます。これについてもいろいろ御指摘がございましたが、私どもとしても考えている面がございます。  それから、さっきちょっとお触れになりましたいろいろな広告の問題といったようなことも、確かにございます。しかし、どこまでが公正な秩序あるいは消費者の立場を守らなければならない線として私どもは考えるか、どこまでは企業の自由な営業活動の問題として考えるかというところのいわば調和の問題でございますので、私は、できるだけこういう問題について国民が御理解いただくということの必要もあると思いますし、また、メーカーの方々がこういう問題についての、何と申しますか国民への理解を求める態度、特に自分たちの経営状況なり何なりについていわば社会的な責任を感じて、これをむしろ進んで出していっていただくというふうな気持ち、そういうようなことまで含めてこの問題は進めていかないといかぬのではないかと思っております。  だんだん御指摘になりましたような点につきましては、いずれ具体的に、私どもがどう対処するかということを申し上げることになると思います。
  140. 小林進

    小林委員長 中村委員に申し上げます。あなたの時間は余すところ一分になりました。
  141. 中村重光

    ○中村(重)委員 それで、二十八年当時の、この制度をつくりましたときの趣旨説明があります。この中に、おとり廉売の問題と小売り店の問題倒産の問題があるわけです。確かに小売り店は、メーカーの締めつけのためにまだ弱い、おとり廉売の危険性というものがあり得るというようには私は考えます。そういう意味において、小売り店がこれに期待をしておるというようなことを、これも理解を持たないのではございません。しかし、何といってもこれをてこにして、踏み台として横暴をきわめているメーカーを徹底的にこの際反省をさせなければならないということ、それに取り組んでもらいたいということ。  それから、この制度を維持するならば、全体として物価政策安定会議の提言、衆参両院の決議、これを尊重する、これを実行するということでなければならぬと思います。あなたのほうで、弊害規制ということにつきましてのいろんな誇大広告の問題、マージンの問題、いろいろあげておられます。なるほど問題がありますが、いかにこのとおり実行し得るかということはたいへんな問題であろうと思う。こういう意味においても、あなたのほうの権限強化、いわゆる単なる不当取引だけの問題ではなくて、価格の形成その他、あなたのほうの権限強化というものは絶対必要である。このことに対しては佐藤長官は、ともかく真剣に公取の権限強化――政府自体におきましても、いろいろな権限を強化するような考え方をおとりになることはけっこうでございましょうが、ともかくそれを必ず実行する、こういうことで臨んでいただきたいということを申し上げ、これに対して簡潔に、佐藤長官と公取委員長にお答えをいただきまして、私の質問を終わります。
  142. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 いろいろと新しい事態が出てきておる際でございますし、物価政策の見地から、やはり公取委員会の機能の強化ということは、われわれも最も期待しております。
  143. 谷村裕

    ○谷村政府委員 私どもに与えられました任務をできるだけしっかりとやってまいりたいと思います。どうもありがとうございます。
  144. 小林進

    小林委員長 午後二時再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時八分休憩      ――――◇―――――     午後二時二分開議
  145. 小林進

    小林委員長 休憩前に引き続き連合審査会を開きます。  質疑を続行いたします。和田春生君。
  146. 和田春生

    和田(春)委員 本日は、総理の出席も要求いたしましたけれどもお見えになりませんので、同姓のよしみをもって、総理の分も一緒に佐藤長官からお答えを願いたいと思います。なお、持ち時間がたいへん限られておりますので、簡明直截に要点的にお答え願うことを、特に要望いたしておきたいと思います。  ところで、昨日から本日にわたりますこの連合審査会におきまして、野菜の対策、流通対策等々、現象面に対する物価安定の諸問題についてはかなり議論をされておりますけれども、なぜ物価が上がっていくのだろうか、現在の佐藤内閣の政策の基調をもってしてほんとうに物価の上昇を食いとめることができるのであろうかどうか、こういうような物価上昇のメカニズム、そういうものについての掘り下げた質問はあまりないように思いますので、その点に重点を置きましてお伺いいたしたいと思います。  実は、佐藤長官御記憶と思いますけれども、前の第六十三国会本院の予算委員会第四分科会におきまして、昨年の三月十六日、物価問題を中心に私は質問をいたしました。  その際、当面の物価対策として、四十五年度の施策の目玉は何かということをお伺いしたことに対して、長官は、総需要の抑制ということで、全体の基調をそこに持っていきながら個別対策をやろうということである、こういうふうにお答えになりました。いずれにしても高い成長の過熱状態を冷やしていくということが今後物価対策をやる上の大前提である、これは議事録に載っておりますけれども、そういうお答えを受けたわけでございます。これに関連していろいろ質問をいたしまして、四十五年度の物価上昇率の見込みの論争をいたしました。その際私は、昨年の三月の段階で、すでに政府物価上昇の見通しを修正せざるを得ない要因が出てきているのに、これを修正せずにそのままでいくのか、あるいは修正をしなければならぬというふうに考えているけれども、いま政府見通しを修正すると混乱を起こすので修正をしないでおいておくおつもりかということを、質問の最後にただしました。それに対して長官は、修正するつもりはありません、もろもろの施策を講ずることによって四・八%という政府見通しの範囲内に入ると私は考えております、こういうことをはっきりお答えになったわけであります。その際私は、もし見込みが違ってくると、この質問の続きを次の国会でやらしていただきます、ということを申し上げているわけです。  そこから始めたいと思いますけれども、明らかに見込みが違いまして、四・八%が七・七%というふうに、三%近く政府見通しを上回って、物価が上がったわけであります。  そこで、端的にお伺いいたしますけれども、この物価上昇の見込みが違ったという理由は何によるのか、それは、政府の施策はよかったけれども不測の事情が生じたためか、あるいは、政府の対策が約束どおり行なわれず、きわめて不十分であったためにこれほど大きな食い違いを起こしたのか、それとも、小手先の施策では押えきれないような物価上昇の原因が、現在の佐藤内閣の政策の基調の中にあるとお考えになるのか、そのいずれであるかを端的に、まずお答えを願いたいと思います。
  147. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 御存じのように、ちょうど和田さんの御議論がありましたときには、季節商品を中心にたいへん大きな値上がりがございました。そこで、私どもも非常に心配をいたしたことは事実でございます。ただ、従来のいわゆるそうした季節商品の価格の動き方というものを見ておりますと、比較的短期的であることと、それから周期的である、そういう意味におきまして、私どもは、これは異常な事態であろう、少なくとも四十五年度に入ってからはもっと落ちついてくる、安定してくる、ちょうど一年非常に高いと次の年には落ちるというような従来のサイクルというものも頭に入れながら、それを相当計算の中に入れておったことは事実でございます。そうしたこともあり、また一般に非常な高度成長が続いておりましたからして、そういう意味におきまして、いわゆる引き締めということによって総需要の対策が徐々に実効を奏してくる、そうしてやや経済が鎮静化が行なわれてくるのではなかろうか、そういうようなことを頭に置いてああいう数字を出してみたわけであります。  その後、率直に言いまして非常に見込み違いがあったと思いますのは、一つは生鮮食料品を中心とする季節商品の動きでございまして、この点は、異常な天候というようなことを農林省も説明しており、そうしたことも頭に入れておりましたが、実はその間に都市化の現象、労力の不足等による野菜生産における大きな構造変化があった。そういう点十分に見通しが行なわれなかった、見落ちがあったのじゃないかということを、私たちもいま反省しています。  それからもう一つは、この高度成長の引き締め、いわゆる総需要抑制によって抑制していく。で、鎮静化してくるのはいいのですが、全体の景況というものが鎮静化してきても、今日においてはそれが価格に、少なくとも消費者物価影響するには相当のいわゆるタイムラグがあるということの点の見落としがあったと、私たちは考えています。そういう点の見通しのしかたについてある程度の見落ちがあった。特に御存じのように、四十五年当初は実はいわゆるげたと称するものを一・五と見ておったものが、四・〇になった。そういうようなことが重なりましてこういうことになったと思います。
  148. 和田春生

    和田(春)委員 ただいま、見通しの狂った大きな原因として季節商品、主として生鮮食料品でありますけれども、物価上昇の見込み違いということでございましたけれども、それなら四十五年中の八%に近い消費物価の上昇に対して、これらの季節商品の寄与率というのは何%でございますか。
  149. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 これが、いわゆるウエートからいいますと一割ちょっとでございますけれども、寄与率としてはやはり二割五分から三割近くになっていると思います。
  150. 和田春生

    和田(春)委員 そういたしますと、季節商品の上昇に対する政府の見込み違いがなかったとしても、四・八%の間にはおさまらなかったということは、いまの長官の御答弁の数字で明らかなのであります。  そこで、昨日来の連合審査のやりとりをいろいろお聞きいたしております。新聞の論評等も、政府はのらりくらりである、やる気がない、そういう批評が強いわけですけれども、そのことは裏返しますと、政府がやる気があって、流通対策とかいろいろな面において手を打てば物価上昇を食いとめることができるんだ、それは国民大方にとって、承認できるといいますか、あまり気にしなくてもいい程度物価上昇に食いとめることができるんだ、という期待感があると思うのです。  確かに、昨日からいろいろ議論されているような点で、政府の手抜かりの点を補強をしていきますならば、ある程度現象面において物価上昇を抑制することはできると思います。しかし、私は、現在の佐藤内閣の経済政策に対する基本的な基調というものが変わらない限り、国民の期待にこたえるような物価の安定という状況は出てこないのではないか、そういう疑問を持つわけでございますけれども、昨年の経済演説、本年国会の冒頭におきます首相の施政方針演説、長官の演説、これらを通読いたしてみますと、どうも政府は、インフレは成長と完全雇用のコストである、そういう考え方を根本において持っているけれども、それは表に出さない。そして、ある程度成長のもとでは物価上昇は避けられないというような間接的な表現で考えているのですが、経済的なそういう政策関係で、インフレは完全雇用と成長のコストであるというふうに理論的にお考えになっているのかどうか、その点を端的にまずお聞きしたいと思います。
  151. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 コストという表現はともかくといたしまして、今日において、経済成長物価というものにいわゆるトレードオフの関係がある程度あるということは、一般に認められておることと思います。
  152. 和田春生

    和田(春)委員 現在の物価上昇というものは非常に大幅で、国民生活を圧迫をしておるわけです。どこに行きましても圧倒的に、物価上昇を何とか食いとめてほしい、こういう国民の世論が一方にあるわけです。  そこで、重ねてお伺いいたしますけれども、物価上昇と成長の間にある程度トレードオフの関係がある、それは一般にいわれているわけでありますが、政府政策の基調として、物価上昇というものは社会悪であるから、インフレを食いとめるということに政策の最重点を置くという姿勢であるのか、あるいは、やはり成長のほうにウエ一トを置いて、ある程度のインフレはやむを得ないというところにウエートがかかっているのか、その点がはっきりしないわけであります。  といいますのは、いま、トレードオフの関係成長物価の間にあるということを長官おっしゃいましたけれども、国会冒頭における施政方針演説等におきましては、物価安定と成長が両立するような均衡ある経済発展をとりたい、そういうことを繰り返し強調をしておるわけであります。そういたしますと、物価安定と成長が両立する、そういう可能性がある、いままでの佐藤内閣の政策においてそれが実現できると考えておられるのかどうか、その辺が疑問になると思いますので、その点端的に、そうである、そうでないということをお答え願いたいと思います。
  153. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 何と申しましても、ここ二、三年来の実質成長一三%、これは、かりに成長ということを考えましても過大でなかったか。あまりにもスピードが早過ぎる成長である。そこで、私どもといたしましては、これをいわゆる安定成長のラインにぜひ乗せなければいけない。そういうことで、一〇%そこそこくらいのところの成長にまず持っていく必要がある。そして、そのラインに経済全体が適応し定着するように考えなければならない。もちろん、一〇%の成長というのは世界的に見れば非常に高うございます。でありますから、一〇%でも高度成長じゃないかという議論はもちろんありますけれども、そこはわれわれもある程度、できるだけの欲を出しておるわけでありまして、むずかしい点もございますけれども、一方において成長をそんなには下げないで、そしてある程度成長は維持しながら、その上に立って、しかも物価というものをできるだけ抑制をする。この両立をはかっていく。そこにくふうも要るけれども、努力すべきところだ、こういうような考え方で、結局両立ということを言っておるわけであります。
  154. 和田春生

    和田(春)委員 その点につきまして私は重ねてお伺いをいたしたいと思うのですけれども、去年の私の質問に対するお答えで、総需要を抑制するということがすべての物価対策の大前提であるということを、長官はおっしゃったわけです。そういたしますと、最近日本成長率が多少鈍化をした。そのために、国際的に比べれば不況とまではいかないかもしらぬけれども、長い間相当高度成長が続いてきたという中で、不況感というものが日本の産業界あるいは国民の上にかなり重い影となってのしかかってきているわけであります。いまの状態は、先ほどのことばをかりますと、総需要を抑制する、成長にブレーキをかけるという佐藤内閣の政策が成功をしたからこういう状態が起きたのであって、この事態が再び成長が上昇するような方向に転化しないようになお続けていくことによって物価の安定ができるというふうにお考えになっているのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  155. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 私たちは一応一〇%ぐらいのところの成長をさしあたってのめどに考えていることは、御存じのとおりであります。もちろん私たちは、あまりに一挙に成長が落ち込むということは、よく指摘されるようにスタグフレーションの原因にもなりかねない。そういう意味において、一挙に急角度に落ち込むことについては、同時に警戒を持っております。したがって、安定成長というものは徐々に達成していくものである。しかし、一応一〇%ぐらいのものはぜひ定着させてまいりたい、こういう考え方を持っております。
  156. 和田春生

    和田(春)委員 その点につきまして、日本は統制経済ではないわけでありまして、自由にして民主的な運営をたてまえにしているわけでありますから、政府の計画ないしは政策誘導というものについても、おのずから限界があると思います。そこで、民間におきます産業界のものの考え方といいますか思考というものが、政府の計画を狂わせるかうまくいくかということに、たいへん大きな影響を持ってきておると思います。  また、最近は、長官は御存じだろうと思いますけれども、有名な経済学者であるミュルダール博士等におきましても、インフレの抑圧ということを、むしろ経済的なものよりもたいへん心理的なものに求めまして、所得政策が成功するかどうかは教育の効果いかんによるというようなことまで言ってきているわけでございますけれども、これは最近の資本主義社会において、やはりかなり重要な要素だと思うのです。  こういう点に関しまして別の角度からお伺いしたいと思うのですが、政府や財界の方々は、しばしば所得政策を口にしておられる。そして賃金が上がるから物価が上がるのだ、賃金と物価の悪循環があるので、賃金を節度ある賃上げに押えないとこの問題は断ち切れない、こういうふうなことを、いろいろそういうニュアンスを持った発言をされているわけですけれども、長官は、その点どう考えておられますか。
  157. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 所得政策というものの考え方でありますけれども、よくいわれておりますように、やはり完全雇用と、それから相当程度経済成長と、それから物価安定と、これを両立させる。ある程度欲の張った話ですが、そういうことがどうしてもこの際、今日における経済政策の眼目になる。そういうことになると、やはりそれは所得政策に通ずる。所得政策というものの必要性がどうしても出てくる、こういうふうにいわれていると思います。そういう意味におきましては、今後物価の抑制と、それからある程度の高い経済成長というものとを両立させる意味において、当然今後も、これは議題になってくると私は思います。  ただ、いまお話がございましたように、私どもは、賃金が物価を上げているのだ、そういう一本調子で言っているわけではございません。いずれが先であるかあとであるかということはともかくといたしまして、今日の事態まできてみますと、いわゆるここ続いてきたところの高度成長、その結果のツケが回ってきておる。そのツケとは何であるか。やはり高度成長の結果としての労働力の需給の逼迫、それに基づく、当然のことながら賃金の上昇がある。そうして、その転嫁ということが物価問題上大きな一つの問題になっている。この点は確かである。そういう意味において、賃金上昇がいわゆるコストアップの一つ原因となっているという意味において賃金の問題を指摘しておりますけれども、いま和田さんがおっしゃったようなトーンでは、ちょっと私は強過ぎると思っております。
  158. 和田春生

    和田(春)委員 この点につきまして、一般に伝えられ、私たちが聞くニュアンスでは、政府や財界筋では、賃金が上がるということのほうに物価上昇の主犯といいますか、おもなウエートを置いて発言をしている。労働から言わせると、物価が上がるから賃金を上げざるを得ないんだというところにウエートを置いております。どちらにも理屈がありそうなんですけれども、今日の佐藤内閣のこれまでとってきた経済政策というものと関連づけてみますと、もっと違った要因があるのではないかという気がするわけであります。  それは、かつての古い資本主義の時代において、いわゆる資本家側は極大利潤を追求していく。これは労働側にとってはマイナスの要素になるわけでありまして、そこで産業が発達をしていくビッグビジネスの分野では、労使の鋭い階級的対立というようなものが出てくる、そういう要因があったと思うのです。  ところが、最近、いわゆる経営技術者というものが経済を支配するようになってくる。そうすると、極大利潤の追求というよりも、むしろ成長というそのこと自体を追求する姿勢が非常に濃厚に出てきているのではないか。それは、成長することによって自分たちの社会的地位が上昇をする。あるいは収入をふやすチャンスがある。あるいは名声を得ることができる。あるいは個人的生活の上でプラスになる、一言でいいますとかっこうがいい。そういういろいろな要因があると思うのです。  一方、そういうところに働いている大企業の労働者あるいは、成長産業の分野の労働者にとってみましても、成長ということはマイナス要因ではないわけなんです。成長によって、その見返りとして高い賃金水準あるいは高い賞与等を追求していく可能性がある。従業員がどんどんふえることによって、諸君は昇進するというチャンスが出てくる。世間的にもこれまたかっこうがいい。  こういうようなことになりますから、そういう産業界を支配するような企業の中において、昔のような利潤の追求とそれに対抗する労働者という形の階級対立ではなくて、むしろ労使の間には共通の要素というものが、成長というものを一つの軸にしてだんだん進んできているのではないか、そういう要因というものが産業社会にずっと出てきた。これは池田内閣から佐藤内閣へ続けまして、日本政府が一貫してとり続けてきた超高度成長政策というものが、日本人の勤勉と結びついて、そういう風潮をつくっていった。そういう中で、幾ら政府が、成長物価上昇とのバランスがとれるような経済政策をとりたいとか、実質経済成長率が一〇%をこえるというようなことはむずかしいから、これを押えよう押えようといいましても、結局それをはね返す力が出てくるという形になって、政府のその政策が成功する可能性は、従来の姿勢をとり続ける限り私はないというふうに考えるのですけれども、それにもかかわらず、あるとお考えですか、どうですか。
  159. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 成長成長といいましても、先ほどから議論がございますように、これは程度によって違いがあります。いわゆるポテンシャルな成長力を著しく越えた過度なスピードの成長、こういうものは長続きするはずはないのでございます。そういう意味におきまして、この一三%台の成長というものも、ここでもってとがめを受けたわけでございます。今後はできるだけ安定的な成長のほうに持ってまいる、そういうことでございます。そういうことでありますれば、十分それの両立ということの可能性が考えられるわけであります。  先ほどの、最近における資本と経営の分離ということの結果として、いわゆる高度成長がどんどん進められてきた、これは確かでございましょう。しかし、それだけに、たずながとかくゆるみがちになってきたという一面があるわけでありまして、それに対して私どもは、やはり何とか安定成長に持っていくべきである、こういう考え方を持ち、その上に立ってすべての経済の運営が行なわれるようにしてまいりたい。そうすれば物価に対する圧力は非常に違ってくるわけでございます。
  160. 和田春生

    和田(春)委員 たいへん抽象的なお答えで、したいと思うということでございますけれども、いままで佐藤内閣がとってこられました経済政策の基調、これは皆さんよく知っているので、私はここで繰り返して申し上げませんけれども、その考え方を推し進めていくと、本院の国会冒頭の佐藤首相の施政方針演説がいみじくも示しておりますように、総需要のある程度高い水準を持続していくことが、成長と雇用拡大の機会を続けていく一番重要な要件であるという形にならないのか。長官がこの前おっしゃったように、総需要の抑制ということが物価対策の大前提であるというそのことばとちょうどうらはらで違った考え方というものが根底になっておって、そういう中からいろいろな費用をひねり出して政策を続けていこうという方向を向いているんではないか。また、そう考えるのが正しいと思う。そうでありますと、政府がいうところの、もちろん流通対策とかいろいろな現象対策で、思惑による物価の値上がり、あるいは不当な暴利をむさぼっているという値上がり、そういうものはカットすることができても、相当高い定期預金の利息を食ってしまって、貯蓄をしている者では、金を持っておるほうが損であるという程度物価上昇というものを、それ以下に下げることはできないと考えるほうが論理的ではないかという気が私はするのですけれども、それをお認めになりませんか。
  161. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 これはもちろん、成長程度というものはその国の実情によって違うわけでして、われわれがよく適正成長とかあるいはポテンシャルな成長といっておるその力というものが、国によって違います。それに応じて、その成長というものが無理であるかどうかの判断が行なわれるわけでございます。日本は、現在までの経済の体質から見まして、ある程度高い成長に十分耐えていかれる構造を持っておる、こういうことも頭に入れて考えていいんではないかと思います。その上に立って判断いたしますれば、まず私たちは一〇%くらいの成長考える。そうして、従来の高い成長による圧力というものをできるだけ退けていく。これがやはり物価を安定させる大きな基本的な線であるという点は、少しも変わらないわけであります。
  162. 和田春生

    和田(春)委員 与えられた時間が三十分でございまして、ほんとうは二時間か三時間やりますと、具体的な数字をあげながらだいぶんやれるわけでありますが、持ち時間の範囲内で結論を急ぎたいと思うのですけれども、私は、また次の国会でこの次、続きをやるということを約束しておいていいと思いますが、いまの政府政策基調が変わらない限り、私の見通しのほうが当たるであろうということを、私は断言して差しつかえないと思います。  その点で政府に、最後に政策の基調をお伺いしたいのでございますけれども、こういう状態が続いていきまして、かりに七%、八%というべらぼうな物価上昇がないにしても、五%も六%も物価が上がり続けるという形になりますと、このインフレによって、たいへん悪い意味所得再配分というものが行なわれるようになってくると思います。成長する分野によって分け前にあずかれるという者は、労働者の場合にしてもよろしいわけでございますけれども、たとえば年金生活者であるとか、あるいは老齢で貯蓄で食いつないでいる者であるとか、母子家庭であるとか、あるいは非常に再就職が困難な者であるとか、あるいは身体障害者等で就職の機会が非常に限定をされている者であるとか、あるいは病人で寝たきりの者であるとかいうところについては、結局どんどん、その人たちの配分は相対的に減っていくという形になるわけでありまして、そういう点で、インフレというものは非常に悪い意味所得再配分を進めるという形になりますと、物価対策という形でいろいろな費用を、今日の政府予算には総花的につけているわけです。その総花的につけている予算というものは、もっぱら生産の対策であり、流通の対策であるという形で、結局そういう生産部門にばらまかれているわけですけれども、もしこのインフレ的な物価上昇を食いとめることができないとするなら、日本経済体質がある程度の高成長に耐えるとしても、政策の焦点を変えなくてはならぬと思う。  それは、私がいま申し上げたような、たいへん分の悪いところに置かれる者に対してうんと資金を投入して、疎外をされないようにしてやるということです。生産関係について総花的に金をばらまくということは、結局分け前を成長によって多く取れるところに、ますます日本の資金ないしは政策の重点が傾いていくということになるのではないか。そういう点で、もし従来の政策の基調を続けるとするならば――いい悪いの批判を私はここで言おうとしておりません。するとするならば、予算の配分におきましても、いまのような物価対策というのは、わけのわからぬ、物価を押え得るかどうかわからぬところに金を突っ込むのではなくて、物価が上がっていくことによって割りを食う社会の下積み、疎外をされている民衆の方向に、いまよりもはるかに多くの予算措置をつけなくてはいかぬのではないか、こういうふうに私は考えるわけですけれども、最後は、その点のお考えを長官と大蔵大臣からお伺いしたいと思います。
  163. 小林進

    小林委員長 和田君、あなたの時間は一分になりました。答弁も簡単に願います。
  164. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 非常に高い物価上昇を予想されての御議論のようでありますが、私たちは、本年は五・五という目標を出しておりますが、決してそれに満足しないで今後やっていかなければいけません。しかし、先ほど申し上げましたように、ちょうど高度成長ツケの回っている時期でございます。それだけにいまのようなお気持ちが強い、現実の姿もまた根強い上昇にあることもわかりますけれども、それを何とか押えていく。決してこれはあきらめてはいけないわけでございまして、そういうことを前提にしての上のいまの御議論でありますれば、これから大蔵大臣からの答弁があると思いますが、私どもは、いわゆる成長の路線に乗れない方あるいは恵まれない方、こういう方に対する所得再配分というか、いわゆる社会保障政策を中心にして、これは十分考えなければならないことであります。  くれぐれも申し上げますが、私は、高度成長を今後も続けていくという意味ではなくして、いまわれわれが目標としている程度のことを前提にして申し上げているわけであります。
  165. 福田赳夫

    福田国務大臣 成長政策をやめてしまって、そして物価の安定いちずに行く、こういうことを指向するということになれば、物価問題はそうむずかしい問題じゃない。これはそう考えますけれども、まあ程度問題で、成長物価安定の調和点をどこに求めるか、こういう問題だろうと思います。  そうすると、物価がある程度上がることはやむを得ない。これは和田さんも御了解願えるのじゃないかと思いますが、そういう際に、所得再配分にゆがんだ影響が与えられる、これは私もそう思います。でありますから、それを矯正する手段は何かというと財政になる。そこで、財政はどうかというと、これは予算で圧倒的に多いのは人件費です。人件費において年々是正をしていく。それから社会保障費、政府人件費にあずからない階層、そういうものに対しましては社会保障費をもってこれを償う。こういうことで、とにかく九兆四千億予算の中で一兆三千億円をこれにさく、こういうことも、そういう考え方を一方においてとっておる、こういう御理解を願いたいと存じます。
  166. 和田春生

    和田(春)委員 私の質問に的確にお答えになっていないのはきわめて遺憾であるということを申し上げておきたいと思います。
  167. 小林進

    小林委員長 有島重武君。
  168. 有島重武

    ○有島委員 私は、先日来、何軒かの家電の小売り店をたずねまして、いろいろ話をしてきたのでございますけれども、店主の方々が異口同音に言われますことは、どうも最近の消費者運動や政府のやり方というのは小売り店いじめばかりやっているのじゃないか。カラーテレビの不買運動以後、リベートはカットされて、荒利益が非常に少なくなっている。メーカーのほうからは、値引きすると公取からにらまれるというようなニュアンスのことを言われる。お客さんはもっと値引きしないかと言う。全くやりにくくて、店をたたみたいくらいだというようなことを、何人かの店主さんが言っておられました。  それから一方、一般の消費者の方々とお話をするチャンスのときに言われますことは、テレビが安くなる安くなるというふうにいっていたので買い控えていたんだけれども、最近になって行ってみると、店では値引きなんかあまりしてくれない。前のほうがかえっていろいろな買い物がしやすかったのじゃないか。どうも政府のやっていることはよくわからない、そういうふうに言っております。  こうした消費者と小売り店の、立場の違った方々からのお話を私は聞いておりまして、戦後最大の消費者パワーなどといわれておりましたにもかかわりませず、問題は解決していないんだ、消費者運動はまだほんのその緒についたばかりであって、今後ますます健全な運動を展開しなくちゃいけないんじゃないかということを感じました。  特に従来、ややもすれば価格問題に片寄っておった。あるいは品質の問題で見ますと、これはおもに食品の毒性であるとか、そういった方向にあって、価格と品質というものが、いままでややばらばらに論じられていたように思いますけれども、今後は品質と価格価格と品質という、こうしたフィードバックを詰めていくということ。それからもう一つは、いままではコストアップの牽制ということにやや重点があったのじゃないかと思いますけれども、それはもちろん、コストアップの牽制とともに物価の下ざさえとなっている要因をきびしく追求していく。こういったところに、さらにこれから強力に運動をしていかなければならないのじゃないかということを私は感じましたけれども、経済企画庁長官に、こういった点についての御意見を先に承っておきたいと思います。
  169. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 先般のテレビ問題は、通産省の指導もあり、先ほどもいろいろと質疑がありまして私も聞いておりまして、ある程度の目的は達したと私は思うのでありますが、しかし、いずれにいたしましても、いわゆる管理価格的な問題、これについては、いわゆる競争条件が自由な状態になっておるかどうか、そういう点の認識の問題でございますから、これについては、政府も必要に応じて調査をいたさなければなりません。いずれにしても、そういうことを通じて自由な価格形成が行なわれる基盤をできるだけつくっていく、これが物価政策一つの目標でございます。われわれもそうした方向で、いまの問題もそれに沿っていけるかどうか、十分実態を把握しなければならないもの、こう考えています。
  170. 有島重武

    ○有島委員 カラーテレビの二重価格の問題は、今年の一月十四日ですか、公正取引委員会事務局長通達第一号というので一応の決着を見ているようにいわれておりますけれども、私は、この連合審査の席でもって、新しい消費者運動という立場でもってこの通達をもう一ぺん検討してみたほうがいいのじゃないか、そういった立場から、公正取引委員長にしばらく質問してみたいと思います。  まず第一に、この通達では、たとえばカラーテレビの希望小売り価格の一五%以上の値引きをするものが全国の小売り店の三分の二以上に達した場合、あるいは希望小売り価格よりも二〇%以上の値引きをする店が全国でもって過半数を占めた場合には、不当表示防止法によって禁止される不当表示になるおそれがあるものとして取り扱う、こんなふうにあったと思うのですけれども、そのように理解してよろしゅうございますね。
  171. 谷村裕

    ○谷村政府委員 いわゆる表示してある価格と実際の売り値との開きが、ある部分だけではなくて、いわば全国的に、しかも長期間にわたって相当程度開いた場合、こういうことになるわけでございますが、それを、ある程度数字がないとわからないという意味において、いまおっしゃったような二つの懸隔がはなはだしい場合ということをあらわす意味において使ったわけでございます。
  172. 有島重武

    ○有島委員 ところで、ここで考えなければなりません問題は、一五%以上の値開きのある小売り店が全国の三分の二を占める場合とか、それから二〇%以上の値開きが全国の過半数を占める場合とか、そういったような条件、この条件は、またあとでもって問題にしますけれども、こうしたことを実際的にどのように具体的に把握していくのか。だれが、どのような方法でこれを把握していくのか。このことがはっきりいたしませんと、ネコの首に鈴をつけるというのはいいけれども、一体だれがつけに行くのか、どうやってやるのか、こうした話と同じようになってしまうと思うのですけれども、この点の具体的な措置はどのようになさるのですか。
  173. 谷村裕

    ○谷村政府委員 私どもの気持ちといたしましては、業者は常に消費者に対して正直であっていただきたい、そういうつもりがございますので、第 一次的には、メーカーの方であれ、あるいは小売りの方であれ、常に、自分たちのやっておることがお客さまに対して迷惑をかけていない姿であるかどうかということを把握していただく、そういう体制をとっていただくことが必要であろうかと思います。  また、販売政策市場管理政策と申しますか、 マーケッティングといいますか、そういったような立場からも、当然、自分たちの品物がどの程度に、どういう状況にあるかということは、メーカーとしても関心を持っていただいていいことであると思います。しかしながら、そういうことが客観的に、一つの事態としてどうやって把握できるかということになれば、私どもも、少ない人数を使うことになりますけれども、これは先ほどちょっと他の議員の方にもお答えいたしましたように、いろいろな角度からやはり常に調査の体制を整えておくということ、公取だけでなしに、政府全体としてそういう体制を整えておくということが必要ではないかと思います。
  174. 有島重武

    ○有島委員 一向に具体的でないお答えなんで、私は、どういうふうにやって、この二〇%以上がどのくらいである、一五%以上が全国のどのくらいである、こういったことを捕捉なさるのか、いまのお答えでは全然わからないのですけれども、これに関連いたしまして、どうして公取は、全国の小売り店舗の三分の二であるとか、全国の小売り店舗の過半数であるとか、こういった条件をおつけになったか。たとえば東京一円ないしは大阪あるいは北九州、こうした一定地域の中で、こうした条件を満たした場合には不当表示として排除命令が出せるというような方法が、どうしてとれなかったのか、私はたいへん不審に思うわけなんです。この点では、公取委員長いかがですか。
  175. 谷村裕

    ○谷村政府委員 おっしゃるように、商品の値段というものは、なるほど一物一価の法則というものはございますけれども、地域により、時により、また扱う店により、自由な価格メカニズムの中で形成されるわけでございますから、差があることもまた当然だと思います。  そういう意味において、家電等、ああいうふうに全国にわたって、メーカーが責任をもってその商品の広告をしたり販売をしたりしているときに、全国一律のいわば希望小売り価格といったようなものがついていること、それ自体が一つの問題であるという御指摘になるかとも思いますが、たまたま今日の日本のように、わりと情報化と申しますか、交通手段等も発達いたしました現在では、全国一円の一つの希望小売り価格というようなものをつけた場合、それが、ある一部分の地域でもって必ずしもそのとおりになっていない、かなり離れておったとしても、そのことをもって直ちに非常に価格が懸隔しておる、離れておるというふうにいって、私どものほうの是正命令をするのには、いささか実態とどうであろうか。全国的にわたってそういうかけ離れた価格の形成が行なわれているような状況になったときに、やはり不当表示の問題が出るのではないか、かように考えまして、事柄の性質上、全国的にそういう事態が起こっている場合というふうに申したわけでございます。しかしながら、全国的にといっても、どこか山の中の小売り店が一軒だけぽつんとあるというのじゃそれはおかしいですから、やはり、たとえばもう二割ぐらいの開きが全国でもう大体半分ぐらいはなってしまったといったようなときだったら、もうそれはそれでいこうじゃないか、そういういわば一つの腰だめみたいなかっこうにはなりますけれども、そういう考え方になるわけでございます。
  176. 有島重武

    ○有島委員 企画庁長官に伺いたいのですけれども、私も、新聞業の特殊指定の中に、地域によって価格が差別されることは不公正な取引方法に当たる、こういった内容のあることは承知しておりますけれども、これはメーカーが意識的に、ある地域に限って価格を操作して差別をする、こういった場合なんであって、この家電の場合はそうではない。それで、むしろある一定の地域、東京なら東京、大阪あるいは北九州というような地域において、先ほどの一五%なり二〇%なりの値開きが一般的になってきた、こういったときに排除命令を出せば、その地域だけに限っても、これは価格を下げざるを得ない。そのことが周辺に波及するであろう、だんだん全国にそうしたことが波及するのじゃないか、そうした効果を望むということは、これはもう私が申すまでもなく、競争というのは、本来品質と価格の競争といえるわけでありますから、ある地域においてその品質と価格の競争の結果、価格が引き下がった。これがその地域からその周辺へ、そしてまた全国へと波及していくことは、これは当然望ましいことなんじゃないかと私は思うのですけれども、企画庁長官いかがですか。
  177. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 まあその実態について、私は十分認識がないかもしれませんが、やり方につきましては、今日において一種の、いわゆる行政指導による限界とか、いろいろあろうと思います。  具体的な点は、ひとつ通産大臣からお聞き取りを願いたいと思います。
  178. 有島重武

    ○有島委員 企画庁長官に伺ったのは、原則的なことなんですよ。一カ所に限っての一つ価格形成ということが周辺に、そして全国に波及していくということは、これは当然望ましいことではないか。全国一律に、ある一定の条件がこなければ、公取としては発動しないというようなお話であったので、私はそれを不審に思って伺ったわけなんですけれども、そうした物価の引き下げということが波及していくことは非常に望ましいことではないか、そう伺ったのですよ。
  179. 谷村裕

    ○谷村政府委員 企画庁長官から御答弁していただくのにお役に立つかと思って、私が一応申し上げることにいたしますが、有島委員よく御存じのとおりでありますが、たとえばある地域に価格が形成されて、そういうことが実勢価格としてだんだんに波及していく。たとえば、ことばはおかしゅうございますが、昔は家電は、デパートでは定価売り、いわゆる現金正価売りであり、たとえば秋葉原というふうなところへ行けば安かったとか、あるいは量販店でかなり安く売られていたが、一般の系列店ではそうではなかったとか、先ほど御指摘があったとおりでございますが、そういう実態が価格メカニズムというものの中でだんだんに波及していきまして、ついにデパートにおいてすら、値段は御相談の上とか、定価いわゆる現金正価の札ははずして、そのデパートの名においてこういう値段をつけるとかいうことで波及していくことは、有島議員のおっしゃるとおり、私は、一つ経済の動きとしてけっこうなことだと思います。ただ、私どもが不当景品類及び不当表示防止法に基づいて、その値開きがあること、いわゆる二重価格、表示価格と実際の売り値との開きがあるところを行政的に直さしていくということをするのには、一つ考え方として、ある地域にそういう事態が起こっておって、やっていけないということはございません。それはやり方の問題でございますが、私は、現在のやり方でメーカーが全国一律につけた表示価格が、実態が、どういうふうに各地で行なわれているかという見方をするので、いまの段階ではよろしいのではないか、私はかように考えて御答弁申し上げた次第で、あとは経済企画庁長官がきっと御答弁になると思います。
  180. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 いろいろな事情が、価格の問題には複雑に総合化されて出てくるわけであります。でありますから、行政的な誘導というものにはどうしても限界がある。それが非常に無理なものである場合には、一カ所だけ幾ら詰めようと思っても、そういう意味の波及効果の少ないものもあろうと思います。ですから、やはりよほどそうした事態、現実をよく直視した上で、どうした方向によってやるのがいいか、そういうことによって、また、そのものにもより、いろいろ違う場合があると思います。  一般的に言えば、それはいわゆる一物一価といいますけれども、実際は、いま委員長の言われましたように、いろいろな価格最初あるわけですから、それがお互いに波及し合いながら一つのものになっていく、こういう過程でありますから、できるだけ目的に沿った誘導を行なっていく。それは局部的に行ないましても、それに効果を持つものも相当あろうかとは思われます。
  181. 有島重武

    ○有島委員 家電の場合にはそういうような効果があるんじゃないかと私は考えるものなんですけれども、これは研究していただきたい。そうして、この通達の中の全国のという文字は、むしろ削除すべきじゃないかと私は思います。  それで、次の問題ですけれども、全国の小売り店舗、三分の二とか過半数とかおっしゃいますけれども、カラーテレビ、白黒テレビ、電気冷蔵庫に洗たく機ですか、この四種目に限っても、この四種目を扱っている店舗が全国に一体どのくらいあるんですか。これをしっかりつかんでなければならないと思いますけれども、大体どのくらいの軒数があるんですか。
  182. 谷村裕

    ○谷村政府委員 私どもが聞いておりますところでは、約三万五千くらいだそうでございます。
  183. 有島重武

    ○有島委員 三万五千と言いますが、これは相当な数でございます。あるいはそれ以上あるのじゃないかと私は思っておりますけれども、こうした何万軒かの店も一軒一軒調べなければならないという、これは字づらからいけば、この通達はそういうことになります。実際は抽出になるんじゃないかと思いますね。時間がありませんから、いまうなずいていらっしゃるからそうだと思いますけれども、そうなりますと、サンプリングの方法によりまして、調査の結果というものはだいぶふらつくわけです。ある場合には業者に不利になり、ある場合には有利になる、そういうことも起こってくるわけでありますね。  それから、先ほど調査の人員はどうかということになりますと、これは公正取引委員会の手持ちの人員もあるし委託もあるということになる。委託の中でも、業界に頼むようなこともあり得るようなお話でございました。こうなりますと、消費者としては、そういった数値をどこまで信用していいのかわからないというような不安も出てくるんじゃないかと思うわけであります。  いずれにいたしましても、こうした調査は、基本調査のまた基礎データになるわけでありますから、慎重の上にも慎重にやっていただきたい。これもお答えを抜きます。  それで、先ほどの二つの条件でございますが、一五%、二〇%以上の値開きが出てくる、こうした店が多くなると不当表示になるというわけでございますけれども、たとえばカラーテレビの場合なんか、カラーテレビのすべてのメーカーのすべての機種に関して、これを全国何万軒かの店においてそうした値開きが出なければ、こうした排除命令が出せないのか。そんなばかなことはないと私は思いますけれども、この通達を見る限りそのようにとれないこともないわけなんです。  そんなことはないと思いますから、こうじゃないかと思うのです。あるメーカーの特定のタイプに関してさきの要件を当てはめればこれは排除命令が出せる、そのように受け取ってよろしゅうございますね。
  184. 谷村裕

    ○谷村政府委員 ある品物についてそういう事態が起こっていれば、その品物についてはやはり不当な価格表示が行なわれているということになると思います。
  185. 有島重武

    ○有島委員 なると思いますじゃなくて、なります、こうしっかりやっていただきたいのです。  きのうの二月十九日付の毎日新聞の社説でございますけれども、こんなことが出ておりました。「こうした消費者運動の意味について、カラーテレビ問題では消費者からの攻撃の矢面に立った当の松下電器の松下幸之助会長が「結果として、われわれ経営者にとってもよかった」と注目すべき発言をしている。」こういったことが出ておりました。  これは、私は二通りに考えられると思うのです。ごくごく善意にこれを解釈いたしますれば、消費者運動の高まりによって、企業の経営者が新しい時代の到来を正しく受け取った。それで消費者意見をも受け入れて経営の上に反映していくようなことができるようになった、そういうふうに受け取ることもできるわけでございますが、もう一つには、この発言は、カラーテレビの問題の結果、卸や小売りに対するリベートをカットすることが非常に当然化された、そして一五%、二〇%というような一つの値幅が示されたものだから、この公取の通達をうまく利用する、あるいは悪用すれば実質的な再販を可能にすることができる、だからたいへんよかったというような、経営者としての計算高い発言とも受け取れるわけだ。先ほど冒頭に申しましたけれども、小売り店主のお話やあるいは消費者の方々のお話と符合してみると、どうしてもこの第二の解釈のほうが当たっているのではないかと思われる節があるわけであります。  私が最も危惧するところは、公取のこの通達、この第一項しかいまやっておりませんけれども、第二項、第三項ずっと一つずつ問題を追っていきたいのですけれども、こういったものについて公取が善意でやっていることとはうらはらに、むしろこれ以上値引きすると公取からにらまれますよというような形でもって小売り店の値引きを妨げる。すなわち、やみ再販のかっこうな材料にされているというのが実情としてある。  こうした実情にかんがみて、公取がこの通達の運用にあたってもちろん十分な配慮をされるとは思いますけれども、いままでのこうしたごくごくわずかな一部分の質疑でも明らかなように、こうした問題については、およそこの通達は完ぺきとはいえないと思うのです。ですから、近い将来にこの通達の一部改正をなさるなり、あるいは全く新しい方向を打ち出されるなりすべきであると思うのですけれども、そうした御用意はありますか。
  186. 谷村裕

    ○谷村政府委員 私どものやっております仕事のこまかいところに、たいへん御親切な御注意いただだいてありがたいのでございますが、私どものいわゆる二重価格不当表示、市価ではたとえば千円だけれども、特別にこれは五百円で売りますといったような二重表示についての一般的な通達は、昭和四十四年の五月に出していることは御承知のとおりでございまして、それが一つの運営の指針となっております。今回出ましたのは、特に、先ほど御指摘のあった四品目につきましての考え方を申したわけでございまして、必ずしもこういうことがすべての一般ルールということではなくて、たとえばそのほかにも、ものによって妙な二重価格表示をするようなものがあれば、それに対してどうするのかということを、そのつどそのつど考えなければならない問題であろうかと思います。  そして御指摘の点は、私ども、ほんとうにそういうことになるといけないと思いまして、さっき通産大臣も、それは全く自分たちの意図するところと逆だとおっしゃいましたが、まさしくそれが心配でありましたために、希望小売り価格市場価格から著しくかけ離れると困るといって、業者が協議したり、販売を拘束したりすることをしたら、これはいけませんよ、独禁法違反になりますよということも特に注意しておいたのでありますが、なお世間ではさような誤解を持ち、あるいはそういうふうに悪用されるということがあるといたしますれば、私どもは、なおこの点について十分注意を喚起していきたいと思います。
  187. 小林進

    小林委員長 有島君に申し上げますが、あなたの持ち時間は二分になりました。
  188. 有島重武

    ○有島委員 委員長から御注意があったので、最後の一問になりますけれども、この通達の、中は飛ばしまして第五項に、こうした不当表示となるおそれのある二つの要件にもかかわらず、小売り業者が希望小売り価格から値引きして販売をすることは全くの自由である。また、希望小売り価格と比較対照価格にして二重価格の表示をしても、これも全くの自由である。このことを公取は強調しておりますね。そのあとまたただし書きがあるので、これが小売り業者を非常に神経質にしておりますけれども、こうした公取のもとの趣旨を、これを曲げて、誤解し、あるいは悪用するというようなことが、どうやったら防止できるのか、この通達をどうやったら貫徹できるのか、この辺をしっかりとやっていただきたいわけなんです。大体、小売り店主の方々というのは、こういった通達というのは――これ、私が読んでも非常にわかりにくい。これを、今度はこうなったよというふうにいわれますと、これはうっかり値引きするとにらまれるんじゃないかというニュアンスに、どうしてもとります。  それで、これは通達でございますから、これでもって通じた、これでもって達したのだ、そのように言われますが、ちっともこれで通達になっていないのですから、先ほど通産大臣も、こうはやったのだけれども、意図と全く違いましたということがありましたけれども、これはまだ一月のことでございますから、大きくエラーの出ない間に適当な処置をおとりにならないと、このせっかくの通達が、通達は出してあるんだからいいんじゃないかと、これは国民を半分安心させるような、何というのですか、これ自体が一種の不当表示になるような、そういったぶざまにならないようにひとつ努力していただきたい。その点について公取委員長の御決意を承っておきたい。
  189. 谷村裕

    ○谷村政府委員 やはりこういうことについては、その衝に当たっておられる方々が十分に御理解していただき、また、みずからも慎んでいただくことが大事だと思いますので、私どもは、直接に小売りの団体の方々にもさような書面を、もちろん総括団体を通じてでございますけれども、差し上げてございますが、なお今後とも、通産省のほうとも御相談いたしまして、十分その趣旨が徹底いたしますようにつとめてまいりたいと存じます。
  190. 小林進

  191. 小坂徳三郎

    ○小坂(徳)委員 関連質問の要求があるので、その問題を先に取り上げたいと思いますが、いま非常にまじめに生活している人が一番絶望的に感じておるのは土地の値上がり、これはもう長いこといわれていることなんですが、政府は最近、昨年の八月に地価対策の統一的な見解を発表して、今年度の予算でも、それの一部を逐次実施していると思いますけれども、私はもっと政策的なことで、これは総理にも伺いたいと思うのですけれども、土地の借り上げであるとか、あるいは公有地をもっと確保する、こういうことをやはり全面的に打ち出す姿勢政府に積極的にないということが、またこの土地の値上がりというものに、市民、特に大都市周辺に住む人々の絶望感を深めているのではないかと思うのです。  これについて、大蔵大臣、最先任でいらっしゃいますから、あなたの考えをひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  192. 福田赳夫

    福田国務大臣 土地の値上がりを是正するという問題は、これは非常に困難な問題でありますが、また反面、最も大事な問題であると思うのです。結局これは土地の需給の問題になってくる、こういうふうに考えます。  需要としては、住宅需要また企業需要、こういうものが加速度的にふえていく。それに対する造成、これが足りない。そこに土地が価格騰貴を来たす、そういう根本的な原因がある。こういうふうに見ておるわけでありまして、土地の供給をどうやってふやすか。これは交通、そういうような問題が大きいと思いますが、そういう努力もいたしておるわけです。同時に、税制におきましても多少のことはできないかというような考え方のもとに、短期保有の土地の投機売買、これに対しては重課するけれども、長い間土地を持っておった、売りたいが税金が高いというような方に対しては特別の配慮をする必要があるのではないか、そういうようなことも考えまして、長期保有の土地を手放す場合には、これはひとつ税金を軽課しよう、こういうような措置をとるとか、いろいろ手を講じておるわけなんです。  しかし、やはり一番根本は交通の整備、たとえば新幹線が成田にできますということになりますれば、あの辺は東京の住宅地帯としての任務を持つというようなことになる。そういうようなことはずいぶん響いてくるのではないか。総合的にそういうものを見まして、いま国土対策というものを進めておるというのが現状でございます。
  193. 小坂徳三郎

    ○小坂(徳)委員 私の聞きたいのは、私有的なものでなしに、むしろ公的な土地ということ、特に公的な土地についての借り上げ制度という案が出ておるわけですが、これはどんなプログラムで進めようとしておられるのですか、担当の閣僚でもけっこうですが、大蔵大臣でもけっこうです。
  194. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 一応私が、地価対策の一応のまとめ役になっておりまするので、地価問題について申し上げますが、御指摘のように、あらゆる物価のうちで、地価が一番高くなっています。これまた、国民経済に及ぼす影響も非常に深刻である。しかも、この原因は非常に複合的な現状なのでありまして、一つの手だけで明確に解決することは困難であろうということから、やはり総合的な施策をやらざるを得ないと思います。  特に、これは小坂さんが御承知のように、世界でこんなに土地の上昇の高いというところはないわけでありまするが、しからばなぜそういうふうになったかというと、特に戦後日本において農地法を制定して、農地というものを宅地並びに工場用地に転換することを、実質上これは禁止したと同じようなことになった。これが大きな原因です。今回、今回というか、先般農地法の一部を改正すると同時に、都市計画法において、市街化区域に入ったところは自動的に農地法を排除した。これが今度相当大きく私は影響すると思います。  それからもう一つは、公共用地を取得するにあたって土地収用法があるわけですが、実質上戦後、これはほとんど実行しておりません。というのは、日本において土地収用が一番最初に行なわれたのは、いわゆる軍事用地です。そうすると、軍事基地反対という勢いが出てきまして、物理的抵抗が猛烈に行なわれて、そのために必然的にこれは高くせざるを得なくなった。こういうような問題が出てきておったわけであります。したがって、こういう問題が昨年の国会で相当明確になると同時に、従来収用法を強化することに反対し、これを適用することに反対であったところの野党の方々も、むしろ収用法をもう少し強化して公共用地を取るべきだというような意見も出てきている。一つ条件が変わってきました。  それからもう一つは、従来、大規模の土地供給のための開発がなかなか出ていかなかったところがございます。これの大きな原因は、水と交通の問題です。ところが、従来――これは私も、ひとつ建設省反省しなければならぬと思っておりましたのは、住宅政策は住宅局と公団だけがやっているというふうなことで、水や道路のほうがうまく連携がとれていなかったのです。運輸関係とも連携がとれていなかった。現在では、東京周辺でもかなりの土地がございます。開発すべき大規模なもの、そういうものがあると思いますし、そのときに一番大事なのは水でございまして、この水の供給、これが水利権とまた関係します。これも現在農林省と合意を進めておることでございまして、そうしたものをだんだん整備しつつ、それから、先ほど大蔵大臣がお答えになりました税制が、これまた土地を持っておったほうが何に投資するよりも一番利益があるということが、過剰の仮需要となってあらわれた、これがあるのでありまして、そうしたものを総合的にやると同時に、公的所有については、御承知のように地価公示法、これもようやく発足したばかりです。これを拡大していきまして、公共用地取得のときには公示価格で買い取るというようなこと等を進めて、地価対策を真剣に進めてまいりたいと考えている次第でございます。
  195. 小林進

    小林委員長 関連質疑を許します。正示啓次郎君。
  196. 正示啓次郎

    ○正示委員 関連でございますから、一問だけお許しをいただきたいと思います。  今日、物価対策は、きめ手を見つけてこれを実行する段階だ、こういうふうにいわれております。そこで、私は、当面最も大事な野菜対策、それからいま小坂委員が言われた地価の問題、これにしぼって、一間でひとつ閣僚のお答えをいただきたいのです。農林大臣、建設大臣、わざわざお見えをいただきましたが、時間がございませんので、次の総理大臣という呼び声の一番高い福田大蔵大臣に――総理もいまお見えになりましたが、私は、ひとつ総理にかわってお答えをいただきたいと思います。  いまの問題、これは二つとも東京都が一番おもでございます。そこで、先日来の議論をお聞きになりましても、東京都がこの野菜問題に真剣に取り組んでいくということが、私は非常に大事だと思うのであります。生産政策にいたしましても、物価の美濃部さんといわれるのでありますが、これは、物価を上げる美濃部さんじゃなくて、物価を安定させる美濃部さんでなければならぬはずでございますから、そういう美濃部さんは、きのうの市場の問題ばかりじゃございません、契約栽培、契約出荷、これをいわゆる指定産地との間に強力に契約をいたしまして、膨大な財政力を持っておるのでございますから、種類別、時期別にこれだけのものをつくってください、こういうふうに出してください、そして市場をこうしますということで、きめ手をそういうふうにやれば、私はこれはできると思うのです。そして、どうしてもそのときに国の力が必要だ、あるいは法律、税制その他が必要だというなら、これは東京都知事として政府の代表である総理大臣のところへ来て、あるいは大蔵大臣のところに来てお願いをすれば、たちまちこれ実行できるはずだ。だから、ひとつ東京都知事に私がなったとして、そういう御相談に来たときに、大蔵大臣は建設大臣、農林大臣とも相談をして、ぜひこれを聞いていただきたいということをお答えいただきたいことが第一点。  第二は、いま問題の国有農地の問題です。  これは、この次の知事だといわれているわが秦野候補は、地震の問題を非常に重視いたしまして、ロサンゼルスまではるばる見学に行っておるというのだ。ところが、この地震が――多少自信過剰だということばがあるかもしれませんよ。しかし、とにかく地震という問題に対して備えなければならぬということは、これは委員のどなたも異議がないと思う。  東京都の、われわれのいよいよ万一の場合の地震に対する備えをするということになりますると、これは建物を疎開したりしてでも必要なる避難の場所、空地をつくっていかなければならぬということは、だれが考えたって明らかなんであります。この最高裁判所の判決のとおりに合法的に農地問題を処理しなければならぬことは、これはもう当然であります。そこで、一たん農地のもとの所有者に返ったものを、地震の防災計画をつくって建物の疎開をしてまで空地を確保するのでありますから、こういう土地は、最優先的にこれを地震の避難場所として確保するということをするために、必要な場合には、大蔵大臣あるいは建設大臣のところへ参って、そういう地震対策としてこういう空地を確保することが必要だ、こういうことをお願いしたときには、私は、これもひとつ政府のほうで当然支持していただきたい。  それで、コロンビア・ディストリクトのようなことになれば一番よろしいのでありますが、なかなかそうはまいりませんでしょう。しかし、これをも参考にしつつ、いまの二つの問題について、大蔵大臣から代表して御答弁をいただきたい。
  197. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま都市の、特に大都市の食料問題、生鮮食料品問題、これが非常に重大だ、契約栽培方式は取り入れられないか、こういうお話です。  この生鮮食料品の問題につきまして、その生産、流通過程がそれぞれありますが、生産過程につきましては、従来、これは政府というか農林省と生産者つまり農業団体また個々の農民、そういうものの系列でずっと処理されてきておる。そこで、地方公共団体がその生産段階に介入をするというチャンスがなかったのが実情なんです。しかし、いま正示委員から御指摘のように、そういう前例も打ち破って、地方団体もこれに介入していく、契約栽培をするということ、これは、いま伺っておりますると、一つの大きな研究課題ではあるまいか、そういうふうに存じます。もしそういう案ができまして、地方団体においてそういうことをやる、こういう場合におきましては、政府においてもできる限りの御協力をいたす、さような考えでございます。  なお、いわゆる被収用農地の返還問題に関連いたしまして、私も正示委員と同じような感じがする。ああいう土地があるなら、ちびっ子広場とかずいぶんできるんじゃないか、あるいは地震の際の避難緑地、そういうふうにもなるんじゃないか、そういうふうに考えるわけです。しかし、残念ながら最高裁の判決は、個人にお返ししなければならぬ、ここういことになっているので、その旧所有者にお返しをするということになるのじゃないか。いまいろいろ検討が行なわれておりますが、そういうふうな気がします。  その際に、正示さんは、東京都がそれを買ったらどうだ、こういうお話でございます。あるいは他の地方公共団体が買ったらどうだ、こういうお話でございますが、それも、私はたいへんけっこうなことだと思いますが、もしそういうことを地方団体が計画された場合におきましては、起債等の面において国はお手伝いができるであろう、かように考えます。
  198. 小坂徳三郎

    ○小坂(徳)委員 総理がお見えになりましたので、時間ももう非常にないので、総理にだけ御質問を申し上げたいと思います。  御承知のように、もう繰り返して申すまでもなく、現在の物価問題は、社会にすでにひずみが起こっておる。また同時に、非常な不平等感というものが、いろいろな所得階層の違いの中に浸透してきている。このままでいきますと、もうすでに社会問題であるが、同時にこれは大きな日本の政治の問題だということは、総理もお認めになると私は思います。それで、国民はいま、佐藤さん御自身のニュー佐藤ですね、新しい佐藤といいますか、そうした面を早く打ち出してほしいということを非常に要望しておると思います。  それで、端的に私質問をいたしますけれども、きのうの本委員会でも総理が繰り返し言っていらっしゃいましたが、物価問題は台所の問題なんだ。つまり台所の物資というものが高くなって、これを押えなければいかぬ、これは、日本の国内の供給が現在の国民の食べる量をまかなえないような生産になっているとは思わないけれども、それがなかなか出回らない。しかし、ただこれをほっておいてはならないので、やはりここに輸入をしなければならぬ。そして、昨年の六月には閣僚協議会で、生活必需物資の全消費量の二%は自由化しようということをきめておられるわけですが、この自由化しようということがきまっただけであって、私はあまりそれが実際的な発動になっていないと思うし、また、関税の引き下げについても三十八品目をきめられたけれども、この三十八品目をずっと拾って見ると、どうも台所の物資があまり入っていない。引き下げるというかけ声であるが、実際の食生活にはあまり関係がないというふうに考えられるわけです。  私は、ここで総理に、非常な大きな政治的な決意として――もちろん、自由化を簡単にやることは、国内問題として重大なことはわかります。しかし、一方、生産者といえども消費者だというのは総理が始終言うことであって、その消費者がいま困っているということ。しかもひずみが出てきているということ。やはり自由化を促進するということが非常に重大なことだと思うのですが、総理の決意をまず伺いたいと思います。
  199. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん消費者物価の問題で、輸入政策を取り入れることによって解決するものもございます。しかし、輸入政策も簡単にはできない面があります。ことに、ただいま言われますようにわが国の農産物、ことに台所で使われる消費者物資、こういうものは、いわゆる小規模の小農がやっている場合が非常に多い。大農の場合には大体まかないはうまくつきますけれども、小規模の小農がやっている場合、そういうものに対して生産者保護、これに力をいたさなければならないというのがいままでのやり方であったと思います。したがいまして、そういう意味から農業の適正規模というものの育成も積極的にはかってまいりますが、そういうところに保護政策を向けていかなければならないと思いますが、同時に、ただいまのように消費者物価が高くなってまいりますと、急場の間には間に合いません、さようなことを言ったのでは。したがって、そういうものに対してはこれは緊急輸入をする、そして物資を豊富にする、そういう政策をとる。これがいま政府が取り組んでおる政策であります。  しかし、基本的に申しますと、ただいまのような小農、小規模の農業で供給されておるもの、そういうものに対しては、もっと品物が豊富になるような、いわゆる市場にのぼし得るような規模にまで育成強化すること、これが必要なのではないだろうかと思います。昨日も議論がありました三浦大根、これは三浦半島一円が三浦大根の産地だ。そういうことでこれは相当の数量がある。しかし、昔われわれの耳に残っておるのは練馬大根、東京の近くでさようなものがとれたというんだけれども、その辺ではもう大根はできなくなっている。そういうようなことを考えると、やはり大規模の生産地、いわゆる指定農業産地というもの、これを育成強化していくといういまの制度が本筋の制度であろうと私は思います。  しかし、緊急施策として、何ものにもかえられない消費者を保護する、そういう立場に立つと、思い切って輸入政策もとらざるを得ない、かように私は思っております。その政策は、ただいま御指摘のように簡単なものではない。しかし、政府自身は、その時と場合によってはその決意をせざるを得ない、このことをはっきり申し上げて、御了承を得たいと思います。
  200. 小坂徳三郎

    ○小坂(徳)委員 いまのような立場は結局農林省の問題になると思うのですが、農林省は、やはり一方では生産者保護をやらなくちゃいけない。これは昔からの方針、そこへ持ってきて全然逆の消費者保護をやらなくちゃいけない。私は後ほど申し上げたいと思うのですけれども、行政機構そのものが、消費者対策を打っていくのにはまことに不適当だと思う。私がいま総理にニュー佐藤ということを申し上げるのは、現在の行政機構の中では、生産をふやさなくちゃならぬ、片一方においては消費者を保護しなければならぬ、全然逆のファンクションを一つの省の中でやって、しかもそれを一人の大臣が担当するというようなことが、やはり国民は、これでは何も進まないのじゃないかということ。片一方でいいことを言うが、片一方ではその足を引っぱるというような、こういうような二律背反が常住行なわれておると私は思うので、この点について、総理は、そういう行政機構の改革までも、物価のために、大ぜいの消費者のためにやるというようなお気持ちはないかどうか伺いたい。
  201. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん行政機構の改革も必要だと思いますが、基本的にはやはり取り組む姿勢、一体だれのために行政が行なわれるのか、最終の消費者、最終の利益者、受益者、それは一体だれなのか、だれのためにやっておるのだ、これをやはりはっきりさせなければいかぬと思います。私は、その表現があるいは適当ではないと思われる節はないわけでもありませんが、公害問題では、福祉なくして成長なし、こういう表現をとっております。これはやはり行政をやる以上、そういう気持ちが、ただ公害だけではなく、生産の面においてもとられなければならない。その姿勢が正しければ、いま言われるような矛盾、不都合は必ず生じないと私は思います。  過去の行政で一つの例をとってみる。新しく労働省ができた際、労働災害については労働省で専管しろ、いわゆる生産を扱うところから労働問題だけ切り離せ、こういうことが言われ、そして大部分がそうなりました。しかしながら、事業そのものをよく知っておるのは、やはりその生産を担当しておるところだろう、こういうような意味から、石炭関係の保安官は依然として通産省にある。その結果、これがいいとか悪いとかいろいろの批判はございます。しかし、最後に人間の生命を守るということに徹するならば、これは別に矛盾はないと私は思っております。  これは小坂君も、自分で事業をしていらっしゃるからおわかりだと思うが、生産もあげるが、だれのために生産をしておるか、社会のため一般人のため、また働く人そのものも生産者であるが、同時に消費者だ、かように考えると、やはり帰一するはずなんです。二律背反、そういう形でなくて、一本にしぼり得るはずだ、それがいわゆる私どもいままで取り組んでいる姿であります。しかし、その点では、いま言われるように、与党のうちからも批判があるように、この問題にはもっとわれわれも真剣に取り組んでみて、そして一方に片寄らない、ことに生産者側に片寄る、そういうような行政をするならば、これは明らかに非難に値する、私はかように思います。国民のため、また消費者のため、そこに重点を置いて政治をする、このことが大事ではないか。行政もそういう意味でただいま取り組んでおる、かように思っておりますので、ものによりますから、直ちに行政機構に結びつけてこれを切り離せ、こうなると、かえって分けたことによる繁雑さ、官僚の悪いところが出てくる。そこらも考えなければならない、かように私は思います。
  202. 小坂徳三郎

    ○小坂(徳)委員 いまの総理の御答弁で、行政機構の改革はまだ時期ではない。しかし、大衆のために、物価の安定ということについては非常な熱意を持つと同時に、そういうことが阻害されるようなことが各省の中にあれば、それは非難に値するのだということをはっきり言われたと思いますが、そのとおりでしょうか。
  203. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりです。
  204. 小坂徳三郎

    ○小坂(徳)委員 もう一つは、昨日来の委員会でも、またあらゆるところで総理は、台所の対策として、消費者生活協同組合を大いに伸ばしたいというお話なんです。これは現実には、いま厚生省が担当しているようなんですが、生活課というところ、これは部落問題と売春関係の仕事をやっているところに、込みでこの生活協同組合の仕事が入っている。何か全部で十何人かいる中で、七人ぐらいが当たっているそうです。二千万円ぐらいの貸し付け金を運用しているのがいままでの実情。つまり、こういうような生活協同組合というのは一種の反体制だという感覚が、まだ政府の中に根強いのじゃないか。こういうところに押し込めておくということが、やはり生活協同組合なるものが、本来は、これからは大切な働きをするのに、やや小売り業との対立という面からいってこれを反体制の運動だというふうにきめつけておったところがあるので、私はぜひ、この小売り業の対立ということを解消する新しい法改正をしてもらいたいのです。  私は、ここで総理に言いたいことは、小売り業といえども、消費者に一番直結した、また、消費者になくてはならないのが小売り業だと思う。私は、小売り業なるものの社会的な機能というものを重視して、次の改正においては、できるだけその地域の組織に協同組合の運営を直すような方向で、小売り業者も参加できるというような方向に変えなければならぬと思うのですが、総理のお考えを聞きたいと思います。
  205. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままでのような流通機構そのものが維持されるとは、私は思っておりません。もうすでに御承知のように、卸商というそういう範囲が非常に狭まっておる。そういうことを考えると、卸ばかりではない、やはり末端の小売り商だって、世の中が変わっていく、それに対応ができないようになれば、当然変わるべきだ、かように思います。  私、最近どういうように理解すればいいのか、いわゆるスーパーマーケットにしても、その中に小売り業者自身が入っていくというか、とけ込んでいく、そういうことが考えられるのじゃないか。いままでのような個々の店舗を持つことによって小売り業をやらないで、やはりスーパーマーケットの一員として自分たちが商売を続けていく。これはやはり新しい世の中の変化に対応する流通機構じゃないか、かように思います。  したがって、いまの生協、これを小売りと対照して、何か小売りはどこまでも育成していかなければならない、生協は反体制だ、かように断ずるところに私は気に食わないものがありますし、必要だから生まれてきたのだ、こういう時代になってくれば、当然自分たちの生活擁護の立場から生協は生まれてくるだろう、かように私は思いますし、また、それに対応して、やはり生産者側も、いままでのような仲買い人を使うということでなしに、みずから自分たちが立ち上がって生産者組合ができるという、そこにやはり新しい流通機構が生まれてくるんじゃないか。相対取引ということを盛んにいわれますが、中間マージン搾取されることなしに、生産者から消費者に直結するような組織がこれから先は生まれてくるんじゃないか、また、そういう意味でわれわれも新しいものを考えてしかるべきだ。またいままでのものがみんな悪いからといって見放すということでなしに、このよさはやはりよさとして助けていくが、どうもいままでのところで不十分な点、これは直していく、これが新しい時代の変化に伴った進歩じゃないだろうか、かように私思います。
  206. 小坂徳三郎

    ○小坂(徳)委員 いまの総理の御答弁は、新しい世代に弾力的にいこうということで、私も満足です。  そういう問題をとらえる中でやはり物価というものが、いまの政府の努力にかかわらず、なかなかうまくいっていないと私は思う。これは何も、物価がうまくいっていないということをここで大きな声をして非難するわけじゃないので、うまくいかない理由が国民にはよくわからない。たとえばタマネギの緊急輸入があったとしましても、出回ったときには、たいへんおくれた。どうしてそんなからくりなんだろうか。国民は、緊急輸入というから、すぐあした台所に入るのだろうと思って喜んだら、なかなかそれが大都市では出回らなかった。そういうからくりがわからないので、非常にみんないらいらしているのです。総理もよく、いら立ちがあるといって非常に心配していますね。やはりこういういら立ちをとめるためには、こういう国会の場を通じての討論ということはもちろん非常に大事だと思いますが、それ以上に、もうひとつ政府がここで踏み切って、政治と生活を対話させるということを考えてほしい。これには、私は物価白書ということを、あまりことばは好きでないのですが、つまり政府がいままでやったこと、やろうとしていること、そしてやった結果はこうなんだという決算書を、半期に一ぺんかあるいは三カ月に一ぺんぐらいずつ国民に出してみる。そして、やはりこの点はまずかった――今度の、三百六十品目を調査して一割以上上がったものは百七十品目だという発表を、なぜ政府がしないで物価安定政策会議が発表したのか。国民の目から見ると、それは、確かにあれは政府一つ機構であるかもしれないが、何か責任のがれをやっているのじゃないかというふうに受け取るわけです。やはり私はそこのところを、心理的な安定感というものを早くもたらすために、悪いところは悪い、男らしく、だめだった、しかし今度はこれをこうしょうという考え方を、これは物価白書という形で公表する気持ちを伺いたいのです。
  207. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの政治、もちろんこれは国民のものですから、国民の要望に沿わない限り、われわれは支持は得ない。そういう意味で、国民の意向に沿い得るように絶えず対話もし、またその要望にこたえる。これがなければ民主主義の政治家とはいえない、かように思います。ただいまの物懇あるいは物価政策会議その他でも、やはりそういう意味で各方面からの意見を取り入れております。また、伺っております。しかし、その範囲が非常に狭いという一どうも政府は宣伝べただ、こういうことはもう言われつけておりますが、私は宣伝べただからそういうことを言うわけでもありませんが、もっと積極的に政府はやれとおっしゃることについては、これは私は最も大切なことだと思います。ここに国民との対話がないと、どうもうまい政治にはならないし、また国民の理解は得られない、かように思います。ただ私、先ほど来から物価の問題をいって――どうも時間のないのに長い話をして恐縮ですが、いま物価の問題が、台所物資が中心にいろいろ議論をされております。しかし、最近の物価の値上がりは台所物資ばかりではございません。そういう意味で正しい批判も、きびしい批判も受けておる、かように私は思いますから、その全貌をやはり明らかにする必要があるのじゃないか。個々の品物をつかまえてどうこうという訴え方よりも、その全貌について、その需給の関係から、やはり基本的なものを考えていくのが本筋じゃないだろうか、かように私は思います。  そこで私、過去のことを申してまことに恐縮ですが、過去は、私ども苦い戦争の経験をなめた。あの戦争時代にたいへんな物資の窮乏があった。またその前には、わずかなことで米騒動、それを経験した。私の人生から申せばそういう時代もあった。また、最近のように、物資が不足すると、ポーランド、あれだけの統制力を持った国でもやはり暴動が起こる。そういうことを考えると、これは中央政府の責任もさることだが、地方自治体としてもたいへんな問題だろうと私は思いますね。私どもが過去において苦い経験をなめたといって先ほど言おうとした、いわゆる戦争中、物資不足の際に、各自治体はどういうようにして物資の窮乏、それを救ったか。わざわざ東京からたばこだとかあるいはお酒を持って、そうして地方の者の歓心を買いながら、どうか物を出してください、米を出してください、あるいは野菜を出してください、こういう直接行動に訴えてまで実は地域住民の利益をはかった、生活を守った。この経験が、私にはいまなおよみがえってくるのであります。  昨日もお話がございましたように、産地においてはずいぶん安く扱われておる。それが小売りにおいては三倍にも四倍にもなっている。私は、きのう戸叶君から、キャベツ、ハクサイの値段を知らないといって笑われましたが、私、きょう鹿児島の人が来ましたので、その人に、桜島大根は一体幾らすると思っているか、せんだって見ると、一個千九百五十円という値段がついていたよ、おそらく二千円するんじゃないかと思う。――そういうことを考えて、鹿児島の人はどういうように思うだろうか。幾ら東京で二千円で売られる桜島大根でも、おそらく産地では三百円以上には売られていないと思う。そういうことを考えると、われわれがもっと広域に物資を集めることにくふうをすればいいだろう。いまもちょうど私入ってきたばかりのところで正示君が、産地と直結するような方法はないか、そういうことを福田君に聞いておりましたが、そういうことをこれからは中央政府も手伝いはするが、地方自治体におきましても積極的にやるべき事柄じゃないだろうか。私は先ほど、生協というものも、イデオロギーにとらわれないで、そういうものを積極的にお進めなさい、また産地でもそれに対応するような生産者組合ができますよ、こういうことを申したのも、ただいまのような観点から申し上げたのでございます。  これは必ずしも小坂君のお尋ねの点にぴったり答えてないかしれませんが、私は、いままでのやっておる事柄を見ながら、あちらにも欠陥があり、こちらにも欠陥がある、そういうようなものを、とにかくぐずぐずしてはおれないような気がどうもする。早く解決すること、そうしてめどをつけてあげることが、国民の皆さん方も安心されるゆえんではないだろうか、かように私は思う次第であります。
  208. 小林進

    小林委員長 小坂君に申し上げますが、あなたの持ち時間は二分になりました。
  209. 小坂徳三郎

    ○小坂(徳)委員 いまの総理の物価に対する基本的姿勢は、いまやり方の中でいろいろまずい点もあるけれども、全力をあげて、三百六十五日不眠不休でやろう、そういう決意に承ってよろしいわけですね。それであるならば、われわれとしては、ただその方向がこの際大いに議論になると思う。  たとえば、いま地価の問題で、総理のいらっしゃる前に質問をしていたのですが、わが党からも田中案とか瀬戸山案とか出ております。読んでみますと、大体大都市周辺のところではやはり公的な利益を優先して、私権をある程度制限したらどうかということが出ているわけです。私はやはり、これから物価というものがなかなか安定をしないで、上がったり下がったりしながら苦労して進むと思いますが、その間に、そういう市場の自由な価格決定のメカニズムにほっておいていいものと、いまの土地のような私権の制限という――これは私は、資本主義、自由主義というものに対しての根本的な一つの挑戦になると思うのですが、そうしたようなことも含めたような問題も出てくる。管理価格もまたしかりと思う。そういうものをやはりこの際仕分けをする必要がある。この問題についてはこっちの方向がいいんじゃないか、そうしてそれを国民に質問していく。この問題はこういう方法がいいんじゃないかということをやはり仕分けをしていかないと、みそもくそも一緒にしてがたがたにして、ただそのときどきの行政の感覚でそれを処理するということは、私は非常な混乱を招くのではないかと思うので、ぜひそうしたことを考えるいわゆるシンクタンクを内閣の中に置かれたらどうかというふうにも思います。しかし、総理はなかなか機構いじりはお好きでないのであれですが、やはりそういう仕分けをするということが、一つ国民物価に対する感覚というよりも、社会秩序の上でめどがつくんではないかというふうに思いますので申し上げます。  最後に私、結論を申し上げますけれども、いまニュー佐藤という一つの方向は、行政全般にわたって、国民を人間として――これは総理も始終言っておられることで、人間として尊重するということ、これはつまり不平等感に悩まされたり、あるいはまた苦しんだりしている弱い人や小さな者を守るという方向に、大きくこの際施策、発想を切りかえていくことではないかというふうに私は思うわけです。そしてそれを行動に移していく。私は、この物価こそ、二百年の歴史の中で恐慌と失業を突破してきたわれわれが、いままたこの物価というものでぶつかって、そして非常な挑戦を受けておると思います。そうした中でだれもはっきりした責任を持たない。端的に言うと、何か総理だけが責任を持っておられるというような形では、何ともしかたがないのであります。そしてまた、みんなが不満、失望、そうしたことをわれわれは考えておりますので、総理がいまの私の認識に対してどのようにお考えになるか、簡単にお答え願いたいと思います。
  210. 小林進

    小林委員長 小坂君、あなたが一番持ち時間を超過いたしました。総理、簡単に御回答願います。
  211. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま御意見を述べられた点は、実は一番むずかしい問題でございます。私が申し上げるまでもなく、土地の問題、これの問題が片づかないのも所有権という制度、これが一体どういうようにわれわれを守るか、それとの調和をどうすればいいかということでありますし、また、物価決定の場合におきましても、われわれは、自由経済のもとでできるだけ政府介入しない、おのずから道ができておさまるのだ、こういう仕組みをとっております。  そういう態度でございますから、一番むずかしいことでございます。その基本的な問題を、わずかの間に結論を出してみろといわれても、これはできない事柄でございます。これはしかし、ただいま御指摘になりましたような、むずかしい問題だといってほうってはおけない時代にはなっておる。政府としてはこれと取り組まなければならないというのが今日の課題だろう、かように思います。  そうして、御指摘になりましたように、人間尊重、その人間尊重も、強い者の味方ばかりじゃなく、弱い者も落後者も起こらないようなそういう世の中をつくる、そのために取り組め、これは御鞭撻をいただいた、かような意味で、ひとつ与党の小坂君ですから、特にお願いもしながら、私の答弁といたします。
  212. 小林進

    小林委員長 この際、午前中の中村重光委員の質疑にありました再販問題について、総理大臣の発言を求めます。佐藤内閣総理大臣
  213. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私がかつて、メーカーが末端小売り価格を維持することは好ましくないと発言いたしたようだが、その考えはいまも変わっていないか、かようなお尋ねに対しまして、お答えをいたします。  メーカーが末端の小売り価格をきめ、これを維持させることが、ややもすれば流通機構の効率化を阻害し、小売り価格を高位に維持するおそれがある点で、物価対策の上から問題があります。したがいまして、やみ再販行為を独禁法違反としてきびしく取り締まる必要があることはもとより、制度的に認められたものについても、弊害が生じた場合にはこれを是正していくことが必要である、かように考えます。
  214. 小林進

    小林委員長 松浦利尚君。
  215. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は、いまから住宅問題、地代、土地問題について質問をする予定でありますが、その前に、昨日の質問の経過を振り返ってみまして、農林大臣にぜひ御答弁をいただきたいと存じます。  それは、おそらく農林大臣の本意ではなかったかと思いますが、何か東京都における中央卸売市場等の改築、拡張等について、東京都が消極的であるかのごとく受け取れる発言があったわけでありますが、現在東京都ではプロジェクトチームをつくって鋭意努力中だというふうに、われわれは聞き及んでおりますが、その点、私の聞き間違いだったと思うのでありますが、大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  216. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまお話のございました大井市場の整備につきましては、四十二年の中央卸売市場審議会の答申に基づきまして、四十三年に大井市場対策協議会を設置し検討を行なうとともに、一方東京都は、四十四年プロジェクトチームを編成いたしまして、基本計画の策定等について具体的な検討を行なっておるようであります。政府としては、今後東京都の計画が固まり次第、大井市場対策協議会の検討に乗せ、着実な実施が見られるように努力いたしたいと考えております。
  217. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 わかりました。  さらに、農林大臣に追加をして御質問をしておきたいのでありますが、昨日の六人の質問者を通じまして、流通機構の整備、特に卸売市場の整備等について政府考え方が述べられたわけであります。ただ、わが党の美濃委員の質問に対しまして、現在供給が不足しております野菜対策につきまして、現状の市場卸売り価格七カ年平均による蔬菜の保障という行き方で、農民が意欲的に生産拡大をするというふうに理解をしておられるのか。私が承るところによると、モデル価格等をつくって農民の生産意欲を高めるのだというようなことを漏れ承っておるわけでありますが、その点についての大臣の考え方を述べていただきたいと思います。
  218. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いまお話のございましたように、私ども、七カ年の平均を抽出いたしまして、そういうことを基礎にいろいろ検討いたしておる。それはきのうもお話がありました。そこで、さらになるべく実情に接近させることが必要であろうということで、それを短縮して、なるべく実情を把握して、その基礎資料をつくってやっていくほうがいいのではないかという方向について、ただいまいろいろ検討を進めておる最中でございます。
  219. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 この際、総理大臣にお尋ねをしておきたいのでありますが、野菜の問題は、確かに流通機構の問題、いろいろ改善されましても、供給が不足をすればやはり高値ということになってくるわけであります。そういった意味では、生産対策というものについて、この際、総理大臣の明確な御答弁をいただきたいと思います。
  220. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま御指摘のように、需給の関係で高値になる。したがって、緊急の場合には輸入政策もとりますということを申しました。  そこで、いま農林省を中心にして指定産地、そういうものを指定して、そういうところで数量を、作付をいろいろ検討さしておるわけです。問題は、安くなった場合にどうするか、高くなった場合にどうするかと、二つの場合があるだろう、その対策が十分安心がいくような状態でなければ、作付指定産地という制度は成功しないだろうと思います。しかし、私は、いま農林省が取り組んでおるその態度には全幅の力をかすつもりでございますし、また産地におきましても、先ほどもちょっと触れましたように、消費者組合ができると同じようにやはり生産者組合、そういうものが積極的にできて、取引も相対取引ができる、こういうようにもなれば、よほど事情は変わるのじゃないか。また、そこらにこれから変えるべき方向を見つけるべきじゃないだろうか、かように思います。  私は、おかしな話ですが、バナナの問題で、バナナのできない日本から、農林省の役人をフィリピンに派遣してことがあります。これはフィリピンの大使が、自分のところにも非常においしいバナナがある、ぜひそれを買ってくれ、台湾よりもうまいよ、こういう話があったのです。なるほどおいしいバナナがあります。しかしながら、それはいわゆる数量としてきわめてわずかだ。だから、やはり生産指導することによって一定の量が確保できるような、一つの船に載せて送り得るような、そういうものでなければならないと思います。  昨日もいろんなお話が出ておりまして、規格をできるだけ少くし、上中下三段くらいに分けるようにすれば取引も非常に楽になるのじゃないか、こういうような示唆も、皆さんのほうからも出ております。私は、これなどはたいへんかっこうなお話だと思います。いまのフィリピンの話も、そういう意味で大量にバナナができるような指導をした、こういう経験があります。それをやはりやらないことには、実際の生産にはならない。ただ、いまのところ供給地がずいぶん拡大されている。北海道から九州まで、これがまた、さらに今度沖繩が返ってくれば、そこにも野菜の作付が伸びてきやしないか、かように考えますと、供給のほうの範囲が非常に拡大される。それにまた隣国――台湾、韓国等からも入ってくるというふうになれば非常に拡大じゃないか、かように思います。このことは、私が申し上げるまでもなく、アメリカの大陸で、西海岸でできたものが東海岸でみんな消費されておる。そのことを考えると、これは容易なことだ、かように思いますし、それと取り組まなければならぬ、かように私は思っております。
  221. 小林進

    小林委員長 この際、質問なさる委員の方に申し上げますが、お約束の時間を十分間オーバーいたしております。これを取り戻すために、お約束の時間を三分ずつこれから節約させていただきます。  あわせて政府側に要望いたしますが、答弁は、簡明直截にひとつ御答弁してくださることを、くれぐれもお願いいたします。
  222. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 簡明直截にお答えをいただきたいと思います。  いま総理がいろいろと言われましたが、先ほど小坂委員からも質問がありましたが、タマネギを緊急輸入いたしまして、それが行方不明になったわけであります。農林省が追跡調査をしたが、農林省のほうでは全く追跡調査ができなかった、こういう状態があるわけです。  ここで、私は一つの提案でありますが、台湾から輸入する。一番近い距離にあるわけでありますから、しかも、タマネギが非常に豊富なわけでありますから、緊急のときには台湾から輸入するのですが、そういう場合には通産大臣は、たいへん申しわけないのですが――現在のそういう台湾からの輸入については通産省の所管になっておる。しかも国内の輸入業者の割り付けも通産省だというふうに聞いておるのです。これをこの際、緊急輸入についてのみ農林省がこれを国内に割り付ける、輸入をする、こういうことをすれば、農林省ペースで行政指導ができる、ちゃんと市場に出せるように指導ができる、このように思うわけでありますが、これは農林大臣と通産大臣のなわ張りの関係でありますから、総理大臣のほうからお答えいただきたいと思います。
  223. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん通産省は、通産省だけではやりません。農林省とよく相談をした上で――輸入問題ですから通産省が扱いますけれども、しかし、その取り扱いの問題については、これまた通産省でかってにはいたしません。農林省と十分協議をして扱うわけです。
  224. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は、土地問題と家賃等でやるつもりなんですけれども、いまの問題非常に大切だと思うのです。それなら、この前緊急輸入をいたしました九千トンのタマネギが行方不明になるはずがないのです。しかも、輸入して、そのタマネギが投機的な手段に使われておる。市場に出てこない。こういうことについて農林省はタッチしておらないのです。全然農林省は知らないのです。おそらく通産大臣も、投機的にそういうことをするところまでは、これは追跡しないし指導しないだろうと思うのです。いま言われたように、確かにルール上はそうなんです。ルール上は農林省と通産省が相談をして輸入をきめて、そして農林省と通産省が割り当てをしてこうする、これは一つのたてまえなんですね。しかし、たてまえと実態が違うという現実が、国民の大きな批判として今日出てきておるわけでありますから、やはり総理大臣が、こういう過去の経験を踏まえて、こういうものについては、過去のそういう前例にとらわれずに、前向きで、農林省なら農林省が明確に、輸入から国内における消費まで担当するのだ、これくらいのことは言われていいんじゃないですか。またぞろこういう結果が起こったときにどうしますか。
  225. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 こういう問題は、いまこの席ですぐ結果を私云々いたしませんけれども、ただ、いままでのように両省で十分協議を遂げてやるのですから、それが途中で行方不明になるはずはない。それが行方不明になった、こういう事態をもっと取り調べろ、かような御注意として伺っておきます。
  226. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 だから、消費者が非常に不満に思うのです。たくさんの物価の中で、たったタマネギ一つのことを追跡調査してみたけれども、全然結果はわからないのですよ。ところが、朝日新聞等によりますと――新聞社のほうは追跡調査して、卸売会社が自分のところに隠しておったとか、そういった事実は、新聞社によって国民の前に明らかになってくるのです。国民はそういう点について非常に歯ぎしりをして、政府は何をしておるのかという不満が出てくると思うのです。そう事実があった上に立って――総理は、そういうことはなかった、こう言われたいのでしょうけれども、そうじゃないのでしょう。だとすれば、私はもっと前向きに、そういう事態が起こらないようにするためにはどうするのかという、総理としての答弁があってしかるべきだと思うのです。
  227. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国民ばかりじゃございません。歯ぎしりしているのは私も同じです。これが十分わからなければ困るのです。したがって、それが総理の責任でもあるから、また私にお尋ねになったのも、両省にまたがることだから総理から答えろとおっしゃったのだと思います。私はそういう意味で、これを追跡調査するということを申しております。いままでのたてまえが悪いからということではなくて、扱い者にどこかにミスがあるのだ、かように私は思いますので、よく調べます。そうして、どうしてもいけなければ、ただいま言われますように、将来の問題として考えます。
  228. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いま総理の前向きのそういうことを期待をして、もう二度とこういうことが国会で質問をされない、こういうことを申し上げて、総理のそういった答弁を私は見守っていきたいと思います。  さて、私はいまから、私に党のほうから与えられた質問をいたします。  実は、私のほうに党のほうから、質問をせよといって、具体的に資料もたくさんいただいたわけでありますが、時間がありませんから簡潔に質問をして、簡潔に答弁をいただきたいと思うのです。  いま国民は、衣食住の住に非常に困っておるのです。この総理府の統計によりましても、二千五百五十九万一千戸の住宅戸数のうちに借家が四〇%を占めておる。その四〇%の借家のうち、七〇%が民間木賃アパートなんですね。この状態を見てみますと、東京都の昭和四十三年の実態調査によりますと、炊事用の流しが共同だというのが一七・七%、便所が共同だというのが七〇・四%、こういう状態が統計上明らかに出てきておる。  確かに、いま根本建設大臣もおられますが、第一次住宅五カ年計画、そしてまた四十六年度から始まる第二次五カ年計画、六百二十万一尺九百五十万戸と、なるほど数字はたくさん出てくるけれども、国民の実感としては、一つもよくなっておらないというのが現状なんです。こういう状態について、総理大臣はどのように考えておられるか、また、これをどうしようと総理大臣は思っておられるのかを、大臣から御答弁いただきたいと思います。
  229. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのような点が実は問題でございますので、今回の住宅五カ年計画、そういうことを十分考えながら、低所得層――ことばは不適当ですが、まだ非常に若い方が借家さがしや、あるいは間借りさがしでむだな時間をつぶすことのないように、とにかくもっと住宅をたくさんつくろうということで、ただいま建設を計画しておるわけであります。これができ上がれば、ただいま御指摘になりますような、いわゆる中以下のところの方が必ず潤うだろう、私はそのほうに力を入れたいと思います。  また一面に、持ち家も一いつまでも借りてもおれない、こういう方もあるようでございますので、その辺のところの持ち家住宅もつくるということではございますけれども、何よりもただいま不足をかこっておる夫婦もの、あるいはちょうど婚期を前にしている、いわゆるベビーブームのときの人たちが、いまようやく家庭を持つような時期になっておりますので、特にそれに対する対策が必要だ、かように思っております。
  230. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 建設大臣、さらに総理にぜひ知っていただきたいのですが、いま東京都内で木賃アパートに入ろうとすると、礼金を払わなければならない。敷金を払わなければならない。前家賃を払わなければならない。紹介手数料を払わなければならない。一軒の家に若い夫婦が入ろうとすると、六カ月分の前払いをしなければならぬのですね。しかも、東京で調べますと一畳が二千円なんです。若夫婦で六畳のアパートを借りようとすると、一万二千円の金が要るのです。それの六カ月分ですから、約七万二千円の前家賃を払わざるを得ない。そういう金を非常に苦労して出さなければならないという今日の状態なんですね。  しかも、まだひどいのです。いまの民間の契約というのは人数制限があるのですよ。家を壊さないように、人数は二人だ。二人でこれだけです。もし一人ふえたら出ていってください。ところが出ていく公営住宅もない。公団アパートにももちろんはいれない。やむを得ない若夫婦は、人工流産をする。子供が一人生まれたらアパートから追い出されるから、やむを得ず人工流産をしてそのアパートにとどまらざるを得ない。こういう状態が今日のほんとうの実態なんです。  そういうことを考えてまいりますと、口で公営住宅をたくさんつくりますとか、こう言われてみても、こういう人たちは一向に救われないという現実が、今日存在をしておるわけです。  私はこういったことを考えると、こういった民間アパートに入る場合に一これは民間で、政府の手は届かないでしょう。しかし、契約の中にこういう人道的な問題を含めるということについては、きびしい法的な措置が必要だと思う。また、あの地代家賃統制令の中には、権利金等は取ってはならないと書いてあるのですね。確かに権利金というものは、民法上はこれは契約事項です。しかし、建設大臣が知っておられるように、今国会に提案になりました農住構想による家賃につきましても適正公正な家賃、こうなっておるのですね。だとするなら、権利金あるいは権利金にかわるようなものは一切これを取ってはならないのだ、こういう法律をつくってやるということは、今日、全体の国民のために住宅が完備されておらない状態の中で、法制化が必要ではないか、私はかように思うのでありますが、根本建設大臣並びに総理大臣の御見解を承りたいと思います。
  231. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 御指摘の点は、非常に深刻な問題で、私も真剣に考えています。ただ、私はここで――松浦さんとはだいぶ建設委員会で話したのでありまするが、なぜこういうふうになるかというと、結局大都市における絶対的な家が足らないということです。しかもその大部分の原因は、みんなが持ち家を持ちたいけれども持ち得ないということです。  そこで、私が数年来主張しておるのは、日本の各企業の収益状況からすればどんどん二〇%近く賃金が上がっているのです。ところが家を持てないから、これが全部今度は購買力にくる。ますます今度は物価を高くしている。そこで私は、企業自体が自分の社員、従業員に対して持ち家政策をやりなさい、それについては税法上の緩和をしよう、大蔵省もその姿勢があるのだ、そうすれば両方とも助かるじゃないか、こう言っておるのです。  そうしておいて、各企業でどうにもならない、ほんとうの低所得者、これについては公営住宅を貸してあげる。ところが、いまやすべての人がみんな公営住宅をねらってくるというところに問題があり、そこに行けない人が民間の木賃住宅に行く。木賃住宅は今度は、需要者があるものだからそういうふうになってくるということで、この根本原因をまず是正するということです。  その上に、いまの権利金その他――はたして私のほうの立法でこれが制限できるかどうか、これはかなり微妙な点があるのです。民法上の自由契約について、そうしたものを完全に法的に規制できるかどうかについて非常に疑問があります。しかし、あなたの提案したところの発想は、私も実は非常に共鳴するところが多いので、検討はさせております。今後ともいろいろお知恵を授けていただいて、これはともどもにこの問題を検討していきたいと思っている次第です。
  232. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私からつけ加えることはないようです、ただいま建設大臣からお答えしたように。ただ問題は、私にもそれが耳に入っております。どこそこでうちを借りたら子供が生まれた、出てくれと言われる、これでは実際困るのだ、何か方法はございませんか、こういうことが訴えられておる。また、いま敷金を取るのは普通といたしましても、礼金その他の名目によるいろいろな出費がかさむ、こういうようなお話も聞いております。したがって、こういう事柄についてわれわれがどういうように法的に取り扱い得るかどうか、ただいまも前向きで建設大臣からお答えをしたのでございますから、そういう点をよく検討してみたい、かように思っております。
  233. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 前向きの発言ですから、たいへんありがたくお受けしたいと思います。  ただ、ここでぜひ大臣にも聞いておっていただきたいと思うのでありますが、公団住宅をつくりますと、私の調べによりますと、千葉県の我孫子市で二DKに四・八倍人が殺到するのですね。千葉市で三十・二倍、埼玉県で五十二倍ですね。宝くじに当たるよりもむずかしいというのが、今日の公団アパートに入る条件なんです。しかも東京亀戸などは、三DKで二万九千八百円ですね。二万九千八百円という家賃ですと、約四倍の収入がなければならぬ。公団の規定上そうなっておるのですね。これを二万五千円と計算をいたしますと月に十万だ。十万の収入のある人は一体どれだけおるのかということを、総理府の統計で調べてみましたところが、都市勤労者の六五%の月収は十万円なんですね。しかも、公団家賃というのはどんどん高くなっていくのです。なぜ高くなっていくのかということを調べてみますと、財投からの借り入れに対する金利負担というのが非常にしわ寄せされてきておるのですね。これはもう建設大臣御承知のとおりなんです。  ですから、公団アパートをつくることはけっこうです。しかし、公団アパートをつくったからそれでいいというものじゃないと思うのです。やはりその公団の家賃をできるだけ安くする、できるだけ庶民が入りやすくするような政治的な手だてというものは、私はしなければならぬと思うのですが、大臣のお考え方を承りたいと思います。
  234. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答えします。  そのとおりです。そしてこの最大の原因は、まずやはり土地が上がるということです。土地が上がるということにプラスして、最近では地方自治体が公共、公益事業について公団で負担しろ、こういう要求が強い。それが結局はね返ってくるのです。  そこで私は、公団のほうはどうしてもそうなるから、いわゆる地方自治体でやる公営住宅をできるだけふやすということを、いますすめておるわけです。そうしてその際に新たなる発想として、きょうもある県の知事が来ましたので、このごろ農業がだいぶ転向してきたから、買わずに借りてやりなさい。借りてやるとすれば、そこによほどコストに対するプッシュが軽減してくる。これはあらゆるくふうをしなければならぬと思います。  それからもう一つ、何と申しても、このように大都市に住宅が要求されるというのは、産業が集中するからなんです。そこで、特に東京都圏と申しますか首都圏では、これから北関東に相当産業その他を配置する必要があると思います。しかも、いまそれは一つの転機にかかっている。水がない。それから公害だ。住宅がない。そこで、この点を含めていかないと――こうした現実に起こっている問題を非難することは簡単だけれども、具体的にやるとなるとなかなかむずかしいので、そういう意味で御指摘の点、私もよくわかっておりますので、十分に配慮して、これは着々と解決に努力してまいりたいと思っております。
  235. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 着々ということばが非常に都合のいいことばで、どう着々かわかりませんが、現実はそういう状態なんです。ですから、一年一年解決されるように着々と進んでいただきたいと思うのです。  いま建設大臣は土地の問題を言われましたし、先ほど小坂委員も土地問題について御質問がありましたが、先ほど大蔵大臣は、宅地造成、宅地を解放するために税制の改正をなさった、こういうふうに言われたのです。確かに税制の改正をなさったことは事実だと思います。ところが、どういう結果が起こったかということについては、もう大蔵大臣御自身がおわかりのように、いままで長者番付けの一番だった松下幸之助さんが、四十五年の発表では第八位に落ちまして、上のほうは全部土地成金というものが占めたのです。一番トップの人が、実際の譲り渡し所得が二十一億七千五百万、払った税金が二億一千七百万、軽減された税金が五億八千九百万、非常に軽減されたから、土地をどんどん手放したわけですね。  その土地を手放した先は一体どこに行ったと思われますか、大蔵大臣。こういう人たちがどんどん土地を売って手放したのは、国民の前にその土地があらわれたでしょうか。大蔵大臣、あらわれたと思われますか、どうですか。
  236. 福田赳夫

    福田国務大臣 高額所得者が土地の関係でできた、これはそのとおりなんです。これはまた税法がねらっておったところなんです。つまり、そういう人が出てこないようでは、この税制改正の目的は到達されなかったのです。これこそ、よく着実に効果が出てきた、こう見ております。  そこで、手放した土地が一体だれに行ったかというと、個人が非常に多いのです。その個人がどういうふうに使ったかというのは、まだ把握がうまくできておりませんけれども、とにかく個人。それから、会社がかなり使っております。会社は数が少ないものですから、これは調査もしてみましたですが、大体土地を造成をしておるとか、あるいは転売しておるものもあります。しかし、これは相当税がかかるわけですが、それをあえて転売をしている、そういうものもありますが、まあかなり土地の造成、つまり住宅用地とか工場用地とかそういう方面に使われたもの、こういうふうに見ております。
  237. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 もう時間がだんだんなくなったのですが、実は国税庁のほうで調べていただきました。ところが、この人たちが売った先は全部不動産屋ですね。不動産屋がほとんどなんです。いま個人が多いと言われましたが、これは大蔵省から出た書類です。この「昭和四十四年分の譲渡所得に係る総収入金額が三億円以上の個人で百万円控除の適用を受けた者五十一人について調査したもの」が大蔵省から、おたくから出ておるのです。それを見ますと、八十件は法人に行っておるわけです。個人に行ったものは四十件、地方公共団体が五件なんですね。実に法人組織というものが、解放された土地の大部分というものをかかえ込んでしまっておるのですよ。しかもそれが投機的に使われておるということを、大蔵大臣は知っておられるはずです。あの私鉄運賃を値上げするときに、この物特の委員会で議論があったのです。そのときに、あの私鉄の運賃に対して企画庁長官が、この持っておる土地を売買する益によって赤字を埋めていけばいいのだ、こういうことも議論されたことは、企画庁長官がよく知っておられるところなんです。今日の土地の騰貴というのは、解放された土地を法人が握り締めておるところに最大の問題があると思うのです。  そういうことを見越して、これは根本建設大臣だったかどうか知りませんが、昭和四十二年の十月六日、「土地関係税制の改善について」というのを、建設省が内閣に建議しておるのですね。その建議した内容を見ますと、「法人税にあっては、他の損益と分離して土地の譲渡差益に対する課税が適正化される。」ことが必要である。ちゃんと見越しておるのですよ。  建設省は、宅地造成という立場からそれを見越して、当然そういう土地の譲渡については分離して税金をかけろ。ところが、そういう税金を全然かけずに、全体的な収益の中で土地益というものも考えるという現実のやり方をしておりますから、たくさん解放されて、自分が取得した土地を投機的に売っておる。せっかく大蔵大臣にいいつもりで、したけれども、いいつもりで、したものをそういうふうにしたというのは、悪用した人がおるということですね。政府考え方を悪用した人がおって土地が安くならない、われわれに回ってこないという現実があるのです。  そういう意味で、この法人が持っておる土地に対して、安く都民のために、国民のために解放させるようにするための税制措置というものは、大蔵大臣考えておられますか。その点どうでしょう。
  238. 福田赳夫

    福田国務大臣 税制から言いますと、個人の場合のように、法人の持っておる土地を売った場合にその税を安くする、こういうことかと思います。いま法人税とすると四五%かかっているわけです。それを個人同様にすれば一〇%、こういうことにするわけですが、さて、法人の持っておるどういう土地が好ましからざる売買になるのであるか、その好ましい好ましくないという基準が非常にむずかしいのです。しかし、とにかく区分をせぬでも四五%の税がかかっておるという状態でありますから、私は、この問題を取り上げて税の改正をしましても、実益のほうはそうはないのじゃないか、そういうふうに見ておるのです。しかし、好ましい好ましくないという基準がはっきり出る、こういうことになれば考えてもいいんじゃないかと思って、目下検討中である、かように御了承願います。
  239. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 もう時間がなくなりましたが、総理、やはり土地の高騰ということは非常に物価にはね返ってきておると思うのです。もう時間がありませんからくどくどとは申し上げませんが、きのうの広告から分譲住宅を拾っていったのです。ところが、実際に入ろうとすると相当の金が、最低七、八百万の金がなければ入れない。ちょっとした家なら一千数百万かかる。ここに政府委員の人がたくさんおられますが、こういう人たちも、おそらく高過ぎて、入れるような状態の家ではないと思うのです。そういうことを考えてまいりますと、今日こういう法人がたくさん投機的に所有しておる土地というものについての措置、解放させる方法、そういうものについてぜひ考えていただきたい。そういう方向について総理のお考え方を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  240. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお話のように不動産屋――ひとり法人といいましても、直接工場をつくるというような建設の用地もございましょうし、また不動産屋が買ったという場合もありましょう。そういうところに問題があると、かように私考えますので、ただいまも大蔵大臣からお答えをいたしましたが、そこらのところもよく考えて、せっかく旧地主が手放しはしたが、その土地が、われわれがねらったように公共の用あるいは一般に解放されたかどうか、不動産屋が取得したものはその後どうなっておるか、その辺はもっと追跡しないと実情はつかめないのじゃないか、かように私は思います。これらの点は、先ほどのお話もありましたから、これはひとつ大蔵大臣にしばらくまかしていただいて、十分この次には話ができるように材料を集めさせたいものだと思います。
  241. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 ありがとうございました。
  242. 小林進

    小林委員長 渡部通子君。
  243. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 私は、再販問題について先ほど総理から御答弁がございました、あれを前提として少し質疑を行ないたいと思います。  物価問題が騒がしくなってまいりますと、いつも再販ということがかかわり合って出てくるわけでございますけれども、その物価サイドにおける総理の再販に対する基本的な御見解というものは、先ほど御答弁をいただきました。再販制度というものは、価格を高位に決定するおそれがある。それで、やみ再販はもちろんのこと、制度的なものまでも検討するという御答弁をちょうだいいたしましたので、その次に質問を移させていただいて、昨年の十二月十五日に公取委員会は、この再販制度の弊害規制についてという考え方をお示しになられました。すなわち過大なリベートやマージンは規制しようとか、あるいはメーカーの出荷価格の高位なものを規制しよう、あるいは広告宣伝の適正化、こういったような内容を含んでおりますけれども、消費者の利益を不当に害すると見られる弊害を規制しようとするこの公取の考え方に、総理は全面支持でございますね。総理大臣にひとつお願いをいたしたいと思います。
  244. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどもお答えしたとおりに、これを適正に扱うことが必要だ、かように思っております。
  245. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 それで、いま問題になっております再販の弊害ということでございますので、私は具体的な例をもって、ひとつこれを説明させていただきたいと思っております。  ここに持ってまいりましたのは、まず、これは某医薬品メーカーの胃腸薬と、それから某医薬品メーカーのドリンク剤でございまして、まずこれを説明させていただきますと、これが従来の製品、こちらが新胃腸薬ということになっております。これを比較してみますと、古いほうが四十五錠入り百四十円、これは一錠当たりの単価にいたしますと三円十銭ということになります。新しいほうになりますと、二十七錠で二百円、単価を計算しますと七円三十銭、こういうことになっております。  私は、この価格を単純に比較するということはあえてしたくはないことではございますけれども、一錠当たりの単価を比較してみますと、これは二・三倍ということになっております。もちろん医薬品というものは、成分内容が必ずしも同一ではございませんから、単純に価格を比較することはいけないことだということは私も重々承知しておりますけれども、やはりどう考えても少し高過ぎるのではないか、値上がりしているのではないかということは疑いない、すべての人が認めざるを得ないところではないか。  もう少しこれを比較をいたしますと、ケースの色、それから名称、効能、用法、これは全く同じでございまして、やや違う点は成分内容が若干追加をされているということ、それから錠剤の数が半分であるということ、それから包装がたいへん、三倍ぐらい大きくなっている。いわゆるケース三倍、中身半分、値段二倍強、これが新薬と比較した場合の結果となって出てくるわけでございます。  私は、これがほんとうに法律で認められた再販商品として市場に出回っているということは、やはり消費者の選択する側にとってみると、たいへん不親切な話だし、惑いの根本ではないか。やはり新しいほうがいいような気がいたしますし、一々数など勘定するわけでもございませんし、やはり少し高いものを売られているような、推奨販売にあっているような気がいたします。  もう一つここで例をあげさせていただきますと、このドリンク剤も、キャップの白いほうが百円でございまして、スーパーという金色になってまいりますと二百円でございます。やはり値段は倍で内容が若干追加をされている、こういう事実でございます。  公取の方針によりますと、今後は再販商品における不当な値上げは厳重にチェックすると言っておりますけれども、少なくとも今後は、こういう安易な、しかも消費者をごまかすような感じのする、モデルチェンジに類するような値上げというものに対しては、公取委員長としてはチェックをなさるおつもりでございますね。
  246. 谷村裕

    ○谷村政府委員 御指摘のような事例がございますし、また、その事例について考えた場合に、やはりおっしゃったように、品質あるいは効能等においてどの程度の差があるかという問題はございましょうけれども、かりにもそういうことが消費者に対して不信を招き、あるいは消費者の利益をそこなうというふうなことであれば申しわけないことでありますので、私どもとしても、そういう再販商品の問題について、そういうことがあればよく注意してまいりたいと思いますが、同時に、薬それ自身についての所管をしておいでになります厚生省のほうにおかれましても、十分にその点は、今後とも民生の立場に立って御指導いただくことが肝要である、かように考えます。
  247. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 厚生大臣に一言、これに対する御所見をお願いしたいのですが……。それは直接この管轄下ではないとおっしゃるかもしれませんけれども、もうごくごく常識的な問題でございますし、いま御説明をした範囲において公取委員長からもお話がありましたもので、一言御見解をお願いいたします。
  248. 内田常雄

    ○内田国務大臣 渡部先生がお尋ねのようなことを、私も自分の家内から、最近ときどき言われるようになりまして、これはいかぬ、 こう思います。  そこで、私が考えますのに、そもそもその再販維持契約というものは、これが薬であれ、化粧品であれ、それらの対象につきまして自由な競争が行なわれて、再販価格に付せられているものを買わなくても選択の自由のあるような、そういう場合においてのみ再販制度というものはあるべきはずだと私は思いますので、薬などにつきましても、再販で値段を縛られたものを買わざるを得ないという状態にあるとすれば、そのことは私どもも公取委員長ともよく話し合いをいたしまして、消費者が安いもので品質のいいものを自由に買えるような状態の中において、再販というものは、もし必要があるならば置いておくというようなことにすべきであると思います。  それからもう一つ、私どものほうの関係では、たとえば値段がきめられておりますと、次に新しい薬、新しい薬とつくりまして、古いものの値段は安かったけれども、新しいものは新なんとか、強力なんとかということで値段が高くなるというようなことを、私も女房から言われるものですから、同じものは、なるべく新しい薬は許可しないでいいじゃないか。こういう同じものを、値段を変えるために許可するようなことがあってはならぬ、こういうふうに私は考えまして、薬務局長にも申し渡しているようなわけでございます。
  249. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 私、もう一つ例を出させていただきたいのです。  ただいま厚生大臣からお話がありましたけれども、化粧品でございます。ここへ持ってまいりましたのはある化粧品会社の一つの例でございまして、みんなどこでも同じような販売方法をやっていると思うのですが、たまたまこの一例を取り上げさせていただきます。  これは普通の製品で二百円、それからデラックスになって八百円、だんだん値段が変わりまして、その次スペシャルになりまして千二百円、それから二千五百円、五千円という順序で、これは同じ栄養クリームでございます。  私、説明のためにちょっと表をつくってきたのですけれども、これによりますと、これはクレンジングクリーム、これは女の化粧品の名前ですからおわかりになりませんが、石けんがわりのクリームです、化粧落とし。その次にありますのがコールドクリーム、マッサージ、次に塗りますのが栄養クリーム、こういう、ごくごく基礎美容料ということになっております。そのほかメイクアップとか、いろいろな化粧品が山ほどありますけれども、ごく基礎的なものを三系列とってまいりました。  このクレンジングに例をとりましても、一般という商品は三百円、ドルックスになると六百円、スペシャルになると千円、プリオールになると二千円、クインテスが千三百円――これはあまり高過ぎて売れないで、ちょっと下げたという話も聞いたのですけれども。コールドにおきましても三百円、六百円、千二百円、二千円とこうなっておりまして、その下に書いてありますのがグラム数でございます。グラム数はほとんど変わりありません。栄養クリームも、いま申し上げたように二百円から五千円に至るまで、赤で書いてございますのがグラム単位のお値段でございます。これも決して私は、単に単純グラム単価を出せばそれでわかるということではございませんが、わかりやすいために一応こうしてみました。そうしますと、いま市場に出回っておりますこういう化粧品の中で、同じクレンジングの中で、グラム単位にいたしますと、一番安いものと高いものでは十八・三倍のお値段のお開きがございます。  私が申し上げたいのは、一体これだけの値段が変わっていて品質はどうなのかということを申し上げたいわけなんでございますが、コールドにおきますと、グラム単位三円三十銭から見ると、一番高いのは二十八円五十銭、十八・六倍、栄養クリームになりますと、何と三円と二百五十円のグラム単位の開きがありますので、八十三倍、こういうお値段の開きがある。これは一覧表にしてまいったので、あとでどうぞごゆっくり……。  ですから、いまここで説明しやすいように、一番極端な例をとらしていただきますけれども、この栄養クリームの一般商品の二百円と、それから一番高級のクィンテス、五千円でございます。これが同時に市場に出ている。お店先にあるわけでございますけれども、それをお値段で単純に比較をいたしますと、こちらのほうが八十三倍ということになります。  私、一般に競争というものは、品質と価格が同時に競争されて初めて競争と言えるのではないか、こう思うので、そういう点から考えますと何としても納得がいかない。さあ、どれほどよくなったかわからないけれども、はたして八十三倍ものお値段をつけてもいいものなのかどうか、これは私一人の疑問じゃなくて、世の奥さま方みんなの疑問なんです。化粧品は買いに行くたびに高くなりますというのが、皆さんの実感でございます。やはり女の心理というものは高いものを買いたいんだけれども、はたしてそれだけお値段を払ってもいいのかしらというのが皆さん方の疑問でございまして、私は、こういう点を明らかにするというのがこれからの消費者行政でなければならないのではないか。五千円だって、ほんとうにきけばちっとも高いとは、価格面でいえば言えないと思います。しかし、品質面でいって高いと言えないかどうか。  総理大臣いかがでしょう、御所感のほどは。ごくごく常識的にお考えになって……。奥さま使っていらっしゃいますか。私は百円化粧品なんです。いかがでしょう、常識的な御判断で。
  250. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはどうも、男の化粧品なら私、すぐ判断いたします、私は使いますから。婦人のは、私、使わないからわからない。まあ御使用なすっていらっしゃる方にその感じを聞くよりほかに方法ないと思います。まあ先ほどのように厚生大臣はなかなか奥さんの言うことをよく聞くようですから、厚生大臣は、何か奥さんから訴えられているかもわかりません。私のところはもう老妻ですから、さようなことはございませんので……。どうもいまの、これはたいへんふまじめな答弁のようですが、そうではなくて、事実私は、実際にそのとおりでございますからわからないと申し上げる。厚生大臣は案外知っているかもわかりません。
  251. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 総理大臣おわかりにならない。お使いにならないのであたりまえかと思いますが、これは、先ほど私が申し上げましたように、主婦のお方たちの一様の疑問であるということでひとつお答えにさせていただきたいのです。これだけのお値段をはたして出していいだけの値打ちがあったかどうかということ、世の女性がみんな疑問を持っている一番である。価格面においてはそれは安いでしょうけれども、いまは高級品が一ばい出ている時代ですから、安いと思われる方もいるでしょうけれども、品質面でいったならば、私はここに大きな問題があるのではないか、これだけをひとつ述べさせていただきます。  そこで、やはり考えてみたいことは、なぜこういう二百円、三百円というものと、それから二千円も三千円も五千円もする、こういう品物が同時に市場に、しかも多種類にわたって、しかも同一メーカーから出ることが可能なのだろうかということでございます。これは再販ということで、小売り価格が保証され、固定をされておりますので、そういうことができるのじゃないか、私はこう考えざるを得ません。もし再販がなかったと仮定してみましたならば、再販をてことした系列支配とか、あるいは広告宣伝あるいはセット販売、こういったものができなかったならば、こういう価格差というものはとうてい維持できないのじゃないか、こう考えざるを得ないわけでございます。もしもこれが、原料の値上げだとかあるいは人手不足の経費増だとか、こういったことで値上がりをせざるを得ないとおっしゃるのならば、二百円のものが二百五十円になった、あるいは二百七十円になった、これなら話はわかるのでございます。消費者も納得がいきます。しかし、不当と思われるほどの価格というものが再販をてことして、品質の向上がそれほど、価格の向上ほど見合わなくても、心理的イメージアップというものをねらって価格の引き上げをやっているんではないか、これは再販の弊害の典型ではないかと、私はこう断ぜざるを得ないわけでございます。  そういう意味で、ここに三つの例を取り上げたわけでございますけれども、こういう手段で、法律で認められた再販商品の価格というものを実質的に引き上げるという、こういうことに対して、公取委員長の御意見を伺いたいと思います。
  252. 谷村裕

    ○谷村政府委員 新製品を、中身をほとんど変えずに出しまして、そして、これは新しいものだから高くするというふうな形でやっておりますれば、いろいろ問題があるかと思いますが、消費者の好みに従って、安いものから高いものまで幾つかの品種のものを並べて、そして客の選択にまかせるということは、これは商売としてもあり得ることであり、また一方、それを消費する側の立場としても、私は男でありますからよくわかりませんけれども、やはり何となく自分のはだに合ったこれがいいとか、いろいろお化粧品というものはむずかしい好みがあるようでございますが、それはまたそれなりに、消費者の自由であろうかと思います。ただ、いけないのは、先ほどからも御指摘がありましたように、そういう上に立って、たとえばある商品だけをうんと押し込むようにして売らせるようにしてみたりするとか、不当な拘束をそこに加えていくというふうなことがあれば、私どもとしては行き過ぎがあると思います。しかしながら、そうでない限りは、みな選択の自由というものがあるわけでございますから、その中でいかに消費者が賢明になるかということも、一つ考え方ではないかと思います。  しかし、再販制度だけがそういった化粧品の、いろいろと数ある、高級品から普通品までのものをやっているためのたてであるかてこであるかというふうにおっしゃいますが、そういう面が全然ないとは申しませんけれども、化粧品というものについていろいろの差があるということは、これはある意味では化粧品の本質であり、また、化粧品を愛用される女性の本質ではないかというふうにも思うのでございます。
  253. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 いま、再販だけをてことしているというお話でございました。決してそうではありません。きょうは再販のことを取り上げましたもので、再販がその一つとなっているという私の立場、これだけは聞き直していただきたいのです。訂正をし直していただきたいわけです。  それから、いまの御答弁でございますが、これは私は、少し弱い者いじめじゃないかと思うのですよ。と申しますのは、商品の選択の自由といいましてもわからないです、値段以外には何も書いてないんですから。どれを見ましても一これ、あとで読んでいただけばわかりますけれども、全部、これをつけるとすてきになりますというようなムードが書いてあるだけでございましてね、これは私は、女性侮辱になると思うのです。もしも選択の自由にまかせるのだとおっしゃるのならば、私は品質表示を指導すべきだと思うのです。だって、この競争というものは、最初から私申し上げておりますように、価格と品質というものが同時に並行されなければ、これはいけないわけです。知らせないでおいて、知らないほうが悪い――値段しか判断のしどころはないんです、いまの消費者には。私はこんな不親切な行政というものはないと思うのです。その点をひとつお改めいただきたいのです。  これはちょっと余談になりますけれども、きのうの通産大臣の砂田重民氏に対する御答弁の中でも、消費者は包装を買う、デラックスに包装してくれたほうを喜んで買っていくから、やはり包装代は高くついてもそうなるという御答弁でございましたけれども、私はこれも違うと思う。消費者は、いま、この包装はサービスですよといって与えられる。サービスだと思って買ってくれば、それは全部コストに返っている。この包装は全部コストの中に入っていますよということがわかっていれば、裸でもけっこうですと言います。安いほうがけっこうでございます。そういう意味で、先ほどから念を押して申し上げておりますように、品質と価格という競争が行なわれているのか、これが私の疑問の最大の根底であることを了解していただけば、高いほうがいいだろうというような選択にまかせる、それで消費者を優遇しているというような行政態度というのは、私はけしからぬと思うのです。  だから公取委員長、公取御自身が示された規制の御意見の中でも、品質、価格ともに規制をするとおっしゃっていますよ。では、一体やっていただけるのですか。この品質表示をやっていただけるのですか。
  254. 谷村裕

    ○谷村政府委員 私も先ほど一部分だけ申し上げまして、消費者の選択が有効にできるようなための適切な表示が必要であるということを申し添える機会を逸しましたが、まさに御指摘のとおり、それは大事なことであると思います。しかしながら、私、非常にむずかしいと思います。品質というのがどういう成分であるかということを書いてみても、それがどういう効能を持つかということについてうまく表示ができるのかどうかという、いろいろなむずかしい問題があるかと思います。私どもはできるだけいわゆる虚偽、誇大な広告にならないようにしなければならないと思いますけれども、二千円の化粧品はどういう効能があり、百円の化粧品だったらどういう効能があるかということは、成分だけが書いてあってはたして主婦の方々がおわかりになるのかどうか、その辺はもう少し、表示の内容をできるだけ消費者の方によく御了解いただくようなくふうを、私どもはしなければならないだろうと思っております。そういう意味で、いま直ちに成分だけを書くということでいいのか、もう少しわかりいいような表示の方法があるかということを研究さしていただきたいと思います。
  255. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 ここで委員長にひとつ資料請求をお願いしたいと思います。  いま弊害問題というものを扱っておりますので、この実態がわからなければ弊害規制もできないのではないか、こういう立場で、再販の実態を明らかにするために、次の点について資料を請求したいと思います。  内容は、四十五年一月から十二月までに公取に届け出られた再販商品のうち、値上げされた商品名、値上げ額及び値上げ率、おもな値上げの理由、そのメーカー名、これを一覧にして御提出願いたいと思います。委員長、お願いします。
  256. 小林進

    小林委員長 承知いたしました。
  257. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 次に問題を移します。  公取はやはり弊害規制の中で最も重要な点を、過大なマージンやリベート、これを規制するという点に置いていらっしゃると思います。その場合、販売業者に対する現品添付、あるいは販売業者を連れてハワイに行ったりヨーロッパに行ったりする招待旅行、あるいは景品つき販売、こういったものも当然禁止なさるんでございますね。
  258. 谷村裕

    ○谷村政府委員 消費者のほうに利益が還元されないというような意味における中間マージンあるいはリベート、あるいは現品添付、その他景品の添付、そういうことについて行き過ぎがあるのを直していきたい、そして直した分だけできれば価格、品質がよくなって消費者のほうに還元されるようにしてほしい、こういう気持ちでおります。具体的には、どういう程度にそういう規制と申しますか、適正な形でのマージン等の割合が出てくるかということを、ただいま具体的に検討しているところでございます。
  259. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 ところで、そのリベートの中で、リベートというとさまざまな態様を持っていると思うのですが、私は、消費者にとって最も利益を害するリベートというものは、累進リベートではないかと思うのです。この累進リベートが、消費者にとっても小売り店にとっても、いろいろな意味で足かせになっているということは大方の意見だと思うのですけれども、公取委は、これに対して当然規制処置はおとりになりますね。
  260. 谷村裕

    ○谷村政府委員 おっしゃるとおり、リベートの中にも、日本の商習慣としてきわめて普通のマージンにプラスになったような形のものもございますれば、ややことばは極端ですが、あめとむち式なものもあるやに聞いております。こういった流通業者に対するメーカーのやり方において、私どもの立場から見まして行き過ぎがあると思われるものがございましたならば、それが再販商品であれば、特に、やはりただいま御指摘のように問題になるわけでございますが、再販商品以外のものにおきましても、もし不当なメーカーからの小売り業者等に対する拘束があれば、やはり同じような意味で問題になることがあり得る、かように考えております。  当面は、いま御指摘のように、再販商品についてそういうものが行き過ぎであるかどうかを具体的に、ある程度検討しているところでございます。
  261. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 ここでひとつ、公取委員長にもう一つ確認をしておきたいのですが、メーカーによる小売り店支配、セット販売、こういったものはノルマ化をして、非常に小売り店に対しても御迷惑なことが多いと聞いております。いまも公取委員長、あめとむちというお話がございましたけれども、やはりこの不当なリベートというものは、馬の鼻づらにニンジンをさげられて、それでパカパカパカパカと、それにつられて小売り店も走らなければならない。いわゆる実態としては店舗を貸してしまうような小売り店も出てくる、こういう意見もいま出ておりまして、長期的に見て、やはりリベートの弊害というものは、小売り店に対しても決していいものではない、小売り店に対してもおそれのある問題なんだ、こういう認識でございますね。
  262. 谷村裕

    ○谷村政府委員 再三そういう御質問もありましてお答え申し上げているところでございますが、自由な取引という、いわば企業の創意くふうによる活発な活動ということと、それが公正に行なわれなければならないという、自由と公正というものをどう調和させていったらいいかという問題でありまして、ある意味では、いろんな刺激がなければ経済というものは動かないわけでごいざますけれども、その辺は基本的にやはり不公正な取引、たとえば優位に立つ者が力の弱い者に対して、その優越した力を利用して拘束を加えるといったようなこと、そういうのをどの程度具体的な問題として、不公正な問題として排除するかということでございますので、リベートにつきましても、基本的には、いま申し上げたような線を頭に置いて具体的に考えてまいりたいと思っております。
  263. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 公取委員長に集中するのですけれども、その規制のガイドラインのようなものを、運用基準のようなものを設定するという、こういうことがやはりこの中に書かれておりますけれども、ガイドラインを引くということは、具体的にはどういうふうに作業なさるのでございますか。
  264. 谷村裕

    ○谷村政府委員 再販売価格維持制度というのは、一つの業界における秩序というような形で、それが最終的には消費者のためにもなるという考え方でいまできておると思いますが、それは必ずしもメーカーやあるいは販売業者に過大な利益を約束する、そういうものであってはならないわけでございます。これは御指摘のとおりであります。したがって、一般のそういった小売りのマージンとかあるいは卸売りのマージンとかリベートとか、そういったようなところから考えて適正と思われるもの以上に出るようであれば、それは消費者の利益を害するものとして規制していきたい、そういう気持ちでございますが、それではどの程度がはたしていいぐらいのところであるか、この辺が実にむずかしいところでございまして、ただいまその線を検討しているところでございます。
  265. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 たいへん抽象的な御答弁で、はなはだ不満足ですけれども、ガイドラインを引いて、それで過大なマージンやリベート等の規制を行なうという公取の御意見でございますので、私、若干そこに疑問と、提案をいたしたいと思うわけでございます。  確かにそういう形でマージン、リベートを正す方法も一つだとは思います。ですけれども、四十一年の物懇においても指摘されておりますように、再販制度にあっては登録とか閲覧でございますね。こういう第三者が自由にわかるようなシステム、すなわちメーカーの出荷価格、卸価格、小売り価格、それぞれのマージン等のすべての取引条件、こういうものを公開する方向に向かったらどうか。公開したら困るというような企業は、私はもともと不明朗だと思うのです。再販という恩恵を受ける以上は公開して、ガラス張りにして、そして正直なメーカーが栄えていくようなそういう制度にするのが――総理大臣うなずいていてくださるのですけれども、そういう競争状態に置くということが当然なことだと私は思います。これがやはり、消費者への不当な侵害というものを最小限にとどめるということに対しては有力な手段ではないか。むしろこの公開登録制という方向こそが、弊害規制の根幹になると確信をいたしておりますけれども、ひとつこれは総理大臣に、この方向についての御意見、御見解を伺いたいと思います。総理にぜひお願いをいたします。
  266. 谷村裕

    ○谷村政府委員 総理が御答弁になる前に、私どもが検討しております問題の一つとして、ちょっとお答えを申し上げておきたいと思うのでありますが、いまおっしゃいましたように、この制度が消費者のためになるのだ、あるいは乱売を防ぐのだ、そういうことで、一つもそれでもうけているのではないんだという確信があれば、もちろんメーカーのほうでも消費者側のほうの御希望があれば、近ごろのような世の中でございますから、むしろ積極的に御自分のほうで、そういうことをPRなさりあるいは公開なすってもいいことでありましょうし、また私どもといたしましても、再販問題等における一つの疑問は、何やらメーカーがつけてきた値段でそのままおれたち――女の方はおれたちとおっしゃらないのですが、自分たちは買わなければならないのかというふうな、そういう一種の御不満な気持ちがあると、私も思います。そういう意味で、メーカー等が積極的に、御自分でそういうことをお考えになるということのもう一つの担保として、私どもも、問題によっては何か定期的に、こういうふうになっておりますということを消費者の方々のために、公取の権限として公表するということも考えてみてはどうか、そういうことでいま検討しているところでございます。
  267. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 総理大臣、お願いします。
  268. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 少し質問のもとへ返りますが、同じ化粧品が二百円、それから五千円、それが好みによって選択される。しかも選択のしようがない、選び方がない。値段が高ければいいんだろう、あさはかな考え方、みんなそういうように思うだろう。何か香水でも入っていればかおりが違いますから、こういうのなら比較的わかりがいいのですが、その点が、先ほど来言われるように、再販価格の前に、同じような品物にそれだけ値段の差がある。そういうものが許されて市販されておるというところに、実は私は非常に意外に感じたのでございます。それが再販の制度からスタートしておるとすれば、もちろんこういう点は十分監視しなければならない。そういうところに問題があるんじゃないだろうか。  そうして、消費者にもわかりやすいような品質の表示、これはなかなかむずかしいことで、先ほども言われたように、その品質はどういうような効果があるかというようなことはわかりませんけれども、好みで一番わかりいいのは、かおりがどういうふうについているか、それだけはわかる。また、有毒物が入ってないとか鉛が入ってないとかいうようなことなら、これもわかりますが、しかし、その他の点になると、分析表を並べただけではどうもわかりかねるんだろう。そこらもやはり消費者のわかりいい表示をすること。  それで、渡部君からもいろいろ言われるのが、その原因は再販にあるんだろうというようにも受け取れるわけでございます。その点について公取委員長も、公開主義に必ずしも反対ではないようでありますし、公取委員会も、このものが公正取引に十分役立つようにその道を考えられること――どうも一番私どもしろうとにわからないのは、同じような、顔につけるものが二十倍も三十倍も差があるという、そこらに非常にわかりにくいものがありますから、そういう点がもう少し消費者にもわかりやすいように、もっと指導すべきじゃないだろうか、かように思います。
  269. 小林進

    小林委員長 渡部君に申し上げますが、あなたの時間はもうなくなりました。これ一問で終わりにいたします。
  270. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 では、あと一間でございますが、いま公開登録制の道も考えられるという御答弁でございました。  先ほどからずっと公取委員長の御答弁を聞いておりますと、品質表示もむずかしい、リベート規制もなかなかむずかしい、ガイドラインを引くのもむずかしい、公開も、メーカーの自粛をやってくれればいいがというような、やりにくい、むずかしいという一貫した姿勢でございます。したがって、これが行政指導でうまくいってくださればけっこうなんですけれども、いまの公取の体制としてははなはだ疑問でございまして、こうなった場合、行政指導でうまくいかない場合は単独法なり、そういった別の道を考えられる御意思があるかどうか、最後に総理に御質問いたします。
  271. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろんその弊害によりまして、この弊害は見過ごせない、こういうような事態になれば法の改正も必要だろう、かように思いますし、あるいは新しく立法も必要になるだろう、かように思います。ただいま並べられたところでは、いきなりそこまで踏み込むのはどうかな、かような感じがいたします。
  272. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 終わります。
  273. 小林進

    小林委員長 吉田泰造君。
  274. 吉田泰造

    吉田(泰)委員 二十分の割り当てが三分削られて十七分。したがってお願い申し上げておきます。簡潔に要点だけひとつお願いいたします。  まず、総理にお尋ねいたします。  九日の衆議院予算委員会で、わが党の竹本委員の質問に対して総理がお答えになりました、寡占価格の問題でございます。そのときに、企業に正確な資料提出の義務を負わせよう。また独占禁止法改正の意図を、初めて前向きに御答弁なさいましたね。それを受けて公取委員長が――公取委員長にも簡単に御答弁願いたいと思うのですが、翌日の定例記者会見で、現在の独禁法では寡占価格は値下げはできないというような御趣旨の記者会見がございました。私は、そのことにつきまして総理にお尋ねをいたしたいのです。  最近、この委員会あるいは物価委員会、予算委員会で、いろいろな問題でビールの問題が非常に話題をにぎわしました。時間もありませんのであえて繰り返したくはございませんが、どうしても国民が、大企業製品価格といいますか、それが――ビールがチャンピオンみたいな形になって出てきました。いみじくもいろいろな、ほんとうに共通した問題を含んでおると思うのです。国民消費者が納得できないことがたくさんございます。  まず第一点は、ビールについていうならば、自由価格であるべきはずであるのに、同じ値段で売られている。これは国民がなかなか納得できない。その次は、値上げを各社とも発表をした。時期はいろいろな差がある。差があるけれども、末端小売り店で売られたのは同じ日にちなんです。これもわからない。ところが、寡占のビールの会社、各社とも値上げの確固たる理由があるかといって見てみますと、配当は非常によろしい。利益も非常に出している。各社違いがありまして、時間がありませんので数字を示そうとは思いませんが、これは竹本委員からお聞きになったとおりでございます。そうすると、メーカー側に、値上げをしなければならぬ何の理由もない。多々ますます弁ずで、余分にもうけようというだけのことですね。もう一点、これはその当時、経済企画庁長官も通産大臣も大蔵大臣も、みんな、値上げは好ましくないといって勧告をなさった。にもかかわらず、値上げというのは現実に行なわれた。  こういういろいろな点を見てみて、国民は、大企業製品価格といいますか寡占価格に対して、われわれのどうしても手の届かないところだというような印象を受けていると思うのです。そういうときに九日の総理の前向きな御答弁、これは国民は、物価対策等にからんで非常に喜んで受けとめておると思います。非常に注目しておると思います。  したがって、そのことはけっこうでございますよ。ただ、国民の疑問にこたえるのは、二日間この委員会でいろいろ審議されましたけれども、結論的にいうならば、検討づくめの二日間ですね、何でも検討いたしますと。検討すると前向きの姿勢を総理がお出しになるのが、すでに九日でお出しになったけれども、喜ばしいことであるけれども、時期はおくれたのです。したがって、実行段階を国民は注目をしているのです。どういう内容で検討しようとし、いつやられるかということは、国民が知りたがっているのです。総理、どうですか、総理が絶対的な権力を持っておられて、いついつまでに努力目標をやれといって指示なさったら、私はできないことはないと思うのです。いつやるかということをひとつ言えませんか、お伺いいたします。
  275. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへんな期待をしていらっしゃるようですが、なお検討中でございますから、この点は、まあ検討、検討と、検討で二日過ぎた、こういうように言われますけれども、検討するということが前向きに取り組んでおるという、その姿勢もやっぱり評価していただきたい。ただいたずらにその場のがれの検討でないことだけ御了承いただきたいと思います。
  276. 吉田泰造

    吉田(泰)委員 いまの総理の御答弁で、検討が、決してその場のがれな御答弁だというふうにはわれわれ聞いておりません。ほんとうは、この速記録を読んでみますと、事の重要性を非常によくわかりましたということで、非常に積極的な態度を総理がお示しになっておられる。ところが、やはり国民が知りたいのは、たとえば来年の国会に提出する用意があるのだとかなんとか、具体的なことを聞きたがっていると思うのです。そうしなければ、検討する、いつやるんだ、ということでは、これは何にもならない。出さなければいけないということもわかっておる。しかし、いつ出すんだ。その間に寡占価格はどんどんまた上がっていく。これは物価対策、なってないじゃないですか。物価対策は、よくいわれるように、議論の時代じゃないのです。もう実行の時代に入っているのです。したがって、総理に実行するめど、努力目標でもけっこうです。それがないことには――これは言いわけであるとかないとかいう問題を、私は論議しようとしているのではないのです。どうですか、いつの国会に出そうとなさっておるのですか。
  277. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げたとおりですから、いましばらく待っていただきたい。
  278. 吉田泰造

    吉田(泰)委員 独占禁法改正でやるか、あるいはまた、単独立法を考えるか、その内容とかいろんな検討の時期は、確かに要ると思います。しかし、物価対策問題として二日間、やはり野菜の問題、管理価格の問題 一番質問、論議が多かったようでございます。一本の柱でございます。いろいろなむずかしい問題がわかるだけに、どうか総理が具体的な努力目標の指示を示していただいて――そうしなければ、私は実行の段階がならぬと思います、いわゆる検討して終わったと。時期を明示をなさる。それから閣議に指示をなさる。そういうことを、ここで何ぽ私が問うてみても、いつやりますということは、総理、なかなかおっしゃらぬであろうと思っておりましたけれども、ほんとうは言ってほしかったのです。国民は聞きたかったのです。そうすると安心をすると思うのです。まかしておいてとおっしゃいますが、安心できないのです、国民は。いつまでにやろうとなさるのか。来年ぐらいの国会には、総理、提出の用意ありませんか。再度お願いします。
  279. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 法律改正、これはいま国会が開かれておるのですから、できるだけ早いがいい。来年まで待たないでも、準備できれば、もちろんこれはやらなければならない、かように私は思っております。  ただいま、いつやるかということを盛んに言われておりますが、政府にも、まだもう少し準備をしなければならないものもありますから、その点はお許しを得まして、来年と言わないで、この国会でやれ、こういって政府を鞭撻していただくほうが、むしろ私は望ましいように思います。
  280. 吉田泰造

    吉田(泰)委員 どうも私が遠慮しながら、むずかしかろうと思って、検討の期間を遠慮しいしい来年と申し上げたのです。そうすると、総理答えていわく、もう少し、ことしじゅうにやったらどうなのだ。というのじゃなくて、国民はもう少し――ほんとうに真剣に知りたがっていると思うのです。手の届かない管理価格、これは現在の政府で、閣僚が全部がそろって勧告しても、好ましくないと思っても、だんだん値は上がってしまったじゃないかというもどかしさ、いら立たしさ、それがあると思うのですね。だから、何かそういう御答弁では、私は実際、ちょっと不本意なんです。もう少し気まじめな御答弁が私は望ましいと思います。どうですか。
  281. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも私があいそうがいいので、不まじめな答弁をしておるように言われること、まことに申しわけなく感じております。もちろん、この問題は重大な問題でございますし、この二日間も管理価格に集中されたといってもいいし、もう一つは野菜の問題だった、かように思いますので、これは政府といたしましても、また国民といたしましても、この放送を通じても十分期待をかけておると思います。皆さん方のほうからここで発言されたことについては、十分責任を持っておられることだと思うし、政府もいいかげんなことを言っているつもりじゃございません。どうもあいきょうがいいと、不まじめじゃないかと言われる。また、むずかしい顔をすると、そうおこらないでもっとあいきょうよく答えろ、こう言われがちなのですが、その辺は、私はいいかげに話はしておらないのですから、どうぞ御了承いただきたいと思います。
  282. 吉田泰造

    吉田(泰)委員 寡占価格のことで話しておりますと、時間がほとんどなくなってしまいますので、総理、私の希望といたしまして、できるだけ早い機会に管理価格について、ひとつ真剣に検討と同時に、実行の段階に移っていただきたいことを心から希望いたします。時間がございませんので、まとめてひとつ総理、あとで御答弁願いたいと思います。  農林大臣に一点だけ。先ほど同僚委員から質問がございましたが、表示の問題と消費者価格の問題について、具体的な事例で一つだけ農林大臣にお伺いをしておきます。  その問題は、しょうゆの問題でございます。過去にも委員会で問題になりましたが、この間宮澤通産大臣の発言の中で、米とか、しょうゆとか、みそは、価格は安定すべきであるというような発言がございました。私も、そのとおりであろうと思います。ところが、先ほどと同じようなことなのですが、品質の表示とコスト、しょうゆというのは非常にむずかしゅうございます。家庭必需品でございます。ところが、現在、七月の十五日ですか、農林省から示達が出ましたね。それで、一月一日からJASが行なわれております。ところが、そのJASでは上級ということばと、本醸造というのが区分されただけです。  それともう一つ、時間の関係でまとめてお伺いしますけれども、構造改善計画がございますね。構造改善計画を農林大臣、手元にお持ちですか。ねらいの一つは適正規模ということ、もう一つはコストの引き下げなのです。ところが、コストの引き下げは、四十四年度の基準価格を目標年度に維持しようということですね。それで百四十一億をお使いになっているわけです。ところが、すでにもう去年三十円上がっておるわけです。これはどうなんですか。その計画は、それほどずさんなことが一つ――どういうことなんですか。計画を立てているときにすでに三十円上がっている。コストを維持するために、金を出して構造改善をやっておるわけです。品質の表示は二つしかないですね、二種類しか。たとえばアミノ酸を使っているのがどうだとか、私は消費者のために一これはテレビに映っておるそうですが、アミノ酸が悪いというのではないのです。正しい混合組成を明らかにして、必需品だから、消費者にわかるように、そういうことが望ましいのですが、そういう農林行政が行なわれてないじゃないか。品物をちゃんと区別したらいいじゃないか。そうしないから――醸造過程でいろいろな種類があります。本醸造とか半醸造とか新式二号だとか、あるいはアミノ酸を添加したのだとか、いろいろな形があっても、消費者はわからない。  もう時間がないそうですから、簡単に頼みます。
  283. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御存じのように、しょうゆの製法には現在大体四つあるようでありまして、お話しの本醸造、それから新式二号と本醸造を混合いたしたもの、アミノ酸液と本醸造、モロミを混合いたしたもの、アミノ酸液と本醸造を混合する方法、この四つあるようであります。この四つにつきまして農林省でも、いろいろ担当者がそのコストについて調査をいたしましたが、それほどこの四つについての差はないようであります。  ただいまお話しのございましたようなJASにつきましては、あの法律御審議のときもはっきり申し上げておりますように、消費者が安心してその品物を購入し得るためにああいうものをやったわけであります。したがって、私どもといたしましては、醸造法については、大体JASのマークをつけても支障がないと思われるものにはJASをつけておるわけであります。  そこで、御承知のようにこれは大きいのもありますけれども、大体において何千とあります中小企業でございますので、そういう中小企業という立場でできるだけコストダウンするように、われわれも協力いたしておるわけでありますが、ただいま値上げのお話がございました。そのときに、実は私どもも――四十二年の十月ごろ値上げされた価格がそのまま据え置かれておったわけでありますが、人件費、運賃等の製造コストの大幅な上昇を理由に、四十五年七月にメーカー側に大幅な値上げの動きが出てまいりました。そこで政府は、物価対策上の見地から、人件費等の上昇分の製品価格へのはね返り分についても、極力企業内努力によって吸収いたしますように、そういうことを私どものほうで強く指導いたしました結果、四十五年の十月ごろに、二リットル一二%の値上げであった。これは私ども強制するわけにもまいりませんでしたけれども、できるだけの指導は行なったつもりでございます。
  284. 小林進

    小林委員長 吉田君、あなたの持ち時間は一分になりました。
  285. 吉田泰造

    吉田(泰)委員 だから、結論だけ申し上げます。いまの、消費者価格が表示をリードするということが非常にございますので、もう少し明確なる表示――値開きがないということでございますが、むしろ製造工程によって値開きがあってしかるべきだ、高いものも安いものもあってしかるべきだという考え方でございます。したがって、それは品質表示を明確にしなさい、いろいろな困難があってもしなさいということを、再度要望しておきます。  総理に、時間がございませんので、先ほどせっかく御答弁の機会を、私あとに譲っていただきました。どうか管理価格、寡占価格の問題、総理の決意のほどをお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
  286. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど発言しようと思ったのは、せっかく御意見を述べられたので感謝の意を表すつもりだったのです。  そこで、いま寡占価格、寡占というその状態をどういうように把握するか、問題はそこにあるように思います。まあビールはいま寡占の最もはなはだしいものだといわれておるし、その次が牛乳がそうだろうといわれている。また先ほど来売薬も出てきている。だから製薬もそのうちに入ってくるかもわからない。あるいはまた、報道関係でも、新聞などは寡占の状態にもあるのじゃないか。そういうことをまずいろいろ考えて、一体何が一番消費者として、国民としてその規格を必要とするものか。自由競争を一定のワクの中でやれないのか。寡占の場合に一番悪いのは、甲が上げれば乙、丙もついて、そこまではみんな同じような価格になる。どうも話し合いの上でやったとしか思えない。これはどうも納得いかないのだ。公取もそういう意味でいろいろ調べておりますが、なかなかそういう事実は見つからない。だけれども、いつの間にか同じ価格になっている。国民とすれば納得がいかぬ、そういうことでございますので、これは政府政府政府だけでものごとはなかなかきめかねるものでございますが、野党の皆さん方の御協力も得まして、私は寡占価格というもの、どういうものをまず取り上げるのか、そういう点についてのコンセンサスをつくることが必要じゃないか、かように思っております。  どうかよろしくお願いいたします。
  287. 小林進

    小林委員長 津川武一君。
  288. 津川武一

    ○津川委員 共産党の質問の時間になったとき総理が退席したことは、非常に遺憾に思います。  そこで、福田大蔵大臣にお尋ねいたします。  これは一月末でしたが、主婦の人です。五人家族で、夕食の支度に小学六年の女の子に二百円持たせ、買ってくる野菜のメモをさらに持たして八百屋にやったのですが、値段が高くなっており、母から言いつけられた半分も買うことができないといって、泣いて帰ってきております。  消費者が野菜の高値で泣くのには農政上にも問題がありますので、私たちこの間、タマネギの主産地の一つである淡路島に調査に行ってきましたが、そのとき会った農民は口々に、いまタマネギが高いといって、新聞社や議員さんがたくさん押しかけてきて、農民が不当にもうけているように見ているが、こんなときだけでなく、なぜあの暴落のときに来てくれなかったのか。二十キロ詰め一袋八十円にもならず、生産費も償うかどうか、暮らしさえ立たなくなったときにこそ来てくれて、対策を立ててくれるべきものを、そういう対策があったなら農民も安心して生産ができたし、いまどき品不足も高値もないんだがと、強く私たちに食ってかかったのでございます。  総理がいないから、大蔵大臣は、こうした主婦や農民の声を聞いて、何とかこたえてやらなければならぬと思うのですが、お答えいただきます。
  289. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま物価問題といいますが、一番問題は生鮮食料品の問題と思います。ことになま野菜、これなんかが問題になるんだろう、こういうふうに思いますが、まあ消費者物価問題は非常な国民の大関心事になってきておる、そういう事態を踏んまえまして、思いを新たにして、政府全体でこの問題の克服に取り組むべきである、こういう気持ちでやっております。  いま御指摘の野菜の価格問題、これなんか取り上げてみますと、いま価格安定対策をとっておるわけです。これからもその品目を拡大しようというような計画を持っておりますが、そういう方向を通じまして、何とかして国民が安心して毎日毎日のお食事が楽しめるという状態にしたいものだと、かように考えます。
  290. 津川武一

    ○津川委員 価格対策を安定するということで、私も非常にいい話だと思いますが、私たちは、国民が食べるに必要な分の野菜は、これは農民に生産してもらわなければならないと、第一義的にこう考えておるし、そのためには、農民に生産のために必要な援助をしてやらなければならぬ、価格も保障してやらなければならぬ、こう考えているわけです。  また、主婦の悩みをなくするためには、消費者に、その生活を苦しくしない値段で、必要なときに必要な分の野菜を供給してやらねばならないとも考えております。  この二つがやはり根本だと思うのでございますが、福田大蔵大臣は、いま生産体制だけに触れたわけですが、消費者に安く安定的に野菜を供給してやる点では、何かお考えがありますか、福田大蔵大臣にお願いします。
  291. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 野菜の生産対策と流通のことでありまして、どうも伺っておりますと農林大臣の仕事のようでございますから、お答えさせていただきます。  ただいま大蔵大臣お話がございましたように、やはり全体として、私どもはしばしば申し上げておりますように、需要と供給の見合う生産、消費が行なわれるように、これが前提でございます。そこで、若干オーバーのように見えても、やはりそういう場合に価格維持の政策がありますれば、安心してつくれるわけであります。これはよその国でもやっていることです。そういうことについて、できるだけ財政当局の御協力も願わなければなりません。  同時に流通対策は、これはいろいろな方に論議されておりますが、大事な問題でございますので、私どもは、中間のロスをできるだけ節約して、そうして適正な価格消費者の手に渡るように、こういうことで終始一貫して努力を続けておるわけであります。
  292. 津川武一

    ○津川委員 そこで流通機構ですが、この間の一月十九日、築地の中央青果と築地青果で、神戸から来たタマネギが十五トン、せりが終わったあと余ったわけです。その内訳は、中央青果のほうが十二トン、築地のほうが三トン、これが余っているのです。日報ではそんなことがないといっておりますが、これは明らかに神戸から入っていることは、あなたのほうの経済局の方たちも認めているのです。一月十九日といえば、タマネギのことで非常に皆さんが神経がとがっているときです。市場の業務規程では、当日入荷分の当日販売、それも全量のせり売りまたは入札売りを義務づけているのに、売り残されたタマネギは翌日回しとなり、相対売りで、しかも高値で処理されているんです。  こういう流通機構をこのままに置いていいかということでございますが、福田大蔵大臣でもよろしいし、倉石農林大臣でもよろしいです。
  293. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 市場の具体的な取引のことのようですから、事務当局に御報告させます。
  294. 小暮光美

    ○小暮政府委員 きわめて具体的なことでございますので、東京都のほうに担当の者から照会させました。とっさのことでございますから文書ではとってございませんけれども、このような大切な場でお答えすることであるということを念を押して、電話で聞き取ったことでございます。  その東京都の報告によりますと、御指摘の一月十九日に兵庫県から出荷されたタマネギの一部、二トンがせりの残品ということで、開設者に承認を受けて相対売りでさばかれたというふうに申しております。
  295. 津川武一

    ○津川委員 あとでまた、せりの残品を出していいかはもう一回問題にするといたしまして、そこで、こういう市場機構の不備は、後ほどまた皆さんと一緒に問題にしてみますが、一方、タマネギを生産している側でございます。農林省の資料によりますと、四十四年のタマネギの暴落のときでしたが、キロ十四円十銭でどうやら生産費が償うというのに、売り値は七円七十二銭、政府のやっておる価格補てん制度からの支給金が、一円七十九銭にしかなっていません。これは合わせて九円五十一銭。こんな補てん制度では、農民は見向きもしないのでございます。  大臣は、価格保障、補てん、支持、援助をするといっておりますが、こういう形では農民が相手にしないので、農民が喜んで生産できるような価格支持をどのように考えておりますか。
  296. 荒勝巖

    荒勝政府委員 農林省といたしまして、それぞれの作物につきまして価格安定制度を仕組んでおりますが、それは市場価格を、それぞれの中央の消費市場における過去七年間の野菜のそれぞれの平均値をとりまして、それにさらに日銀の物価指数で変更いたしまして、価格の基準を立てておる次第でございます。したがいまして、タマネギにつきまして、現在京阪神で、指定消費地域で出しておりますそれぞれの基準価格といたしましては、一応平均基準価格をまず出しまして、たとえばこの十一月-三月の値段でいきますと、四十九円九十六銭というのを京阪神で出しまして、それに四分の三を掛けまして、保証基準価格としましてキログラム当たり三十七円五十銭というものと、いわゆる最低基準額が二十四円九十八銭でございますので、三十七円五十銭と二十四円九十八銭のところへ価格が下がりますれば、それの八割分を支払う、こういうふうになっておる次第でございます。
  297. 津川武一

    ○津川委員 それはわれわれはわかっております。そのために一円七十九銭の価格の補てんにしかならないから、農民が、安ければタマネギを生産しない。そこで今度は生産が思うようにいかないで、いまみたいな状態になっているわけです。  そこで、私たちは、この野菜生産出荷安定法を根本的に改正しなきゃならぬと思っております。  先ほどから問題になっているように、消費地の市場と農家や農協との間の契約に基づく計画生産にして、契約に基づく出荷には必要な価格保障をしてやる。この場合、特に現在限られている指定野菜地、指定消費地をもっとふやし、基準価格をいま言ったように、農民が納得するまで、農民が生産できる水準にまで引き上げ、そしてそれをいつでも一〇〇%保障をしてやる。こうするならば、われわれは、野菜の需給も安定するし、消費者にも安定した価格で十分野菜を供給することができると思うのであります。こういう根本の問題ですので、農林大臣の答弁をいただきます。
  298. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 この前にもこの席で、きのうだと思いますが、お答えをいたしておりますが、価格保障というのは、野菜については私どもは非常に困難でありますので、そういうことは考えておりませんが、要するに、生産者が再生産の意欲を持ち得る程度にどのようにしてあげたらいいかということ、そういうことについては、御存じのように、それぞれの専門農協等がずいぶんいろいろ検討いたしておりますし、われわれのほうでも検討いたしております。それらのことにつきまして、やはり需要供給の関係もありますので、なかなかむずかしいわけでありますが、私どもとしては、再生産の意欲を持ち得るようにだけは何とかやっていくようにしなければならない、そういうことで努力しているわけであります。
  299. 津川武一

    ○津川委員 いま大臣が申したり、荒勝園芸局長が申したような状況で、四十四年は農民が打撃を受けて、四十五年、タマネギの生産ができなくなったので、これを直すことを私はいま話しているわけです。  そこで、いま私が述べたようなかっこうで、野菜の出荷価格を保障して、生産を保障するとなってくれば、生産費をいろいろ考えてみたときに、米並みにこれをかりに保障してみた、こういう場合でも、四十五億円ぐらいあれば間に合うと思うのですが、こういった保障のための財政に対して具体的に考えたことございましょうか、大蔵大臣にひとつ……。
  300. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 野菜について米並みの価格保障というふうなことは考えておりません。
  301. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういうことをすると、タマネギについて、第二の食管問題が起きてきます。
  302. 津川武一

    ○津川委員 タマネギだけでなく、私の言ったのは、いま国民の主食になっておる野菜全体に対してこのくらいあればいいというのであります。もう一度大蔵大臣答弁を……。
  303. 福田赳夫

    福田国務大臣 米並みの価格保障をせいと、こういうお話です。そうなると、また野菜全体が、食管問題で非常にいま困っている、そういう事態に相なる、かようなことを申して上げておるのです。
  304. 津川武一

    ○津川委員 その論はあとで農水で繰り返すことにいたしまして、流通機構に入ります。  いまいろいろなふうに野菜が高いことで、市場が悪い、仲買い人が悪い、小売り人が悪い、主婦がどうだとか、いろいろな立場から論ぜられておりますが、やはり市場機構、しかも中央卸売市場機構の卸が一番の根本になっていると思うのでございまして、これを民主化して、生産者と消費者の結合、つなぎにするという立場から問題にしてみようと思うのであります。  そこで、農林大臣に、生鮮食料品を公正に消費者に届ける立場からすれば、原則として卸売市場はせり売りがたてまえと思うのですが、いかがでございます。
  305. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 長い間の歴史を持っております市場、これは日本ばかりではありません、ずいぶん世界各国同じようなことを繰り返しておりますが、だんだんと研究いたしてみますると、やはりせりの妙味というものは、市場の大事な一つ役割りだと思っております。
  306. 津川武一

    ○津川委員 経済企画庁長官おりますか――。生鮮食料品を国民に安定的に供給する意味において、中央市場におけるせりというもののたてまえの意義、これを長官はどう考えておりますか。
  307. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 御存じのように、物価安定政策会議でも、これについての提言がございます。それで、結局、野菜の価格の問題について、一番流通問題として問題なのは、趨勢的にだんだん高くなるということも問題だけれども、これらは別の対策ができる。しかし、野菜というものは、あまりにも短期間に変化が激しい。この変化が激し過ぎると、消費者生活の設計が立たないし、生産者も来年一体どの程度のものを植えつけていいかの計画が立たない。しかも、その変化をする間にあって、結局、小売りマージンが高くなる。結局、小売り屋さんはできるだけ高いところで値をつけますから、そういう結果を招く。そういう意味で、短期間に変動するこの野菜の流通機構というものを検討しなければならぬ。そういう見地から今日の卸売市場制度というものを検討してみますると、やはりこのせり一本ということに非常に問題がある。そういう意味において、たとえば相対取引も十分に拡張していく。先ほどからも話を、私もずいぶんここで聞いておりますが、結局、相当コストのかかっておるものを七円の価格をつけるということ自体に私は問題があると思います。  そういう点において、いろいろと流通機構をある程度改善していかなければ、今日、これからの国民経済的要求にこたえられない。そういう意味で、私どもも、農林省が今般出しておられるいわゆる卸売市場法、これの成立に非常な期待を持っておりますし、それからまた、法律ができただけではだめなんでありまして、その法律をつくった趣旨に従って具体的な運用をはかってまいる、そういう方向で進むように、いま農林省とも御相談を申し上げておるというところであります。
  308. 津川武一

    ○津川委員 市場機構をもう少し具体的にしてみますが、築地市場の仲買人や市場の労働者が、繰り返し繰り返し私たちに訴えたところによりますと、荷主と卸の間の操作でせりどめが行なわれているのです。すなわち、せり値が荷主からのさし値や卸売会社でつける下値以下まで下がってくると、たとえ荷物が余っていても、せりどめをして、それ以上の売買をしないで翌日回しにしたり、相対売りにして値段を上げていくのですが、こうすることによって消費者だけが高いものをつかませられる結果になるのです。そしてさらに指摘されねばならないのは、入荷が少なく値が高いときほどせりどめが多く行なわれているのでございます。せりどめをなくして、さしあたりせりを軌道に乗せることは市場本来の任務と思うのでございますが、農林大臣いかがでございます。
  309. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いまお話のございましたような貯蔵性に乏しい生鮮食料品等につきましては、売り手、買い手の双方が納得のいく公開的な方法で価格形成をいたします。かつ、これを能率的に値さばきをいたすためには、いろいろ研究いたしてみましても、やはり委託によるせり取引が、中央卸売市場における売買取引の基本原則となるものとわれわれは考えております。  しかし、このせり売りの方法につきましては、生産から消費に至る構造的変化に即応をして価格の安定をはかるという上で、必ずしも十分でない面もございます。このために、今度御審議を願っております卸売市場法案におきましては、相対による販売を行なっても適正な価格形成に支障がなく、むしろ卸売り価格の乱高下を防止する。それから集荷力の向上、それからまた、取引能率に資すると認められるような特定な物品または特別のケースにつきましては、相対による販売を行なう余地を拡大することといたしておりますが、要するに、これはきのうも私は申し上げたわけでありますけれども、あの市場の取引を見ておりますと、やはり卸売りの立場、仲買いの立場、生産者の立場 消費者の立場から、それぞれのサイドで見ますといろいろな意見が出てまいります。それをできるだけ調整をいたしまして、しかも需要供給の関係がスムーズにいきますための市場の使命をどのように果たせるかということで、潤滑油のような役割りをすることが大事ではないか、こういうことで、合理化のためにも、われわれはさらに一そうの努力をしてまいるつもりであります。
  310. 津川武一

    ○津川委員 次は転送でございます。  先般、私たちも神田の市場に行ってみたんですが、朝の一時から三時の間、北海道、関東、東北のナンバーのついたトラックがどかどかやってきて、ばらばら無計画に 思い思いに転送しているわけです。市場に聞いたら、どれくらい入荷したかわからないそうです。転送した量もわからないそうでございます。こういった転送を容易にするために 卸は小会社を持って転送さしております。入荷量が一割減るとせり値が三割上るといっておりますが、この転送が非常にせり値を高めている要素になっているわけでありまして、この間に農林省の追跡調査でこの点どうつかまえたか、この転送に対して農林大臣はどうするつもりか、お答え願います。
  311. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 そのことについて、私どもでも調査させておりますし、だいぶ一般には誤解もあるようでありますが、ひとつ経済局長のほうからお答えいたさせます。
  312. 小暮光美

    ○小暮政府委員 転送の問題につきましては、これまでにもしばしば申し上げましたけれども、全く無計画にこれを行なうということは認めておりません。市場の中に一度正式に上場されましてからこれを市場外に持ち出すためには、それぞれの市場長があらかじめつくっております準則に従って、しかも事前に届け出た相手に対してこれを送る。しかもそれぞれの品目ごとに、そういう形で送ってよろしい数量の総ワクというものをあらかじめ相談してきめておくということになっております。ただ、産地からあらかじめ行き先を指定して持ってくる、それは東京経由、その北のほうにも持っていくようにということで来ているものもございます。  それから、数量についてのお尋ねでございますが、農林省の統計調査部の青果物卸売市場調査報告、これを使いまして、地方の市場の側から調べて――東京の市場から、東京市場の指定業者の名義で地方の市場に送られてきた荷物、それを受け口である地方の市場のほうから調べた数字がございます。これは昭和四十三年の例でございますが、一七%ほどそういう形で送りつけてきておる。ただし、大根とかキャベツといったようなものはおおむね一割前後、これは市場の中でさっき数量をきめておると申しましたが、おおむね一割という限度でございます。ただ、レタスとかあるいはピーマンといったような特殊な野菜がございます。こういうものにつきましてはきわめて限られた、たとえば東海地方の温暖の地帯から出てくるというような形でございますので、こういうものは一度東京に集まってから東北に流れていくというような形でございまして、三割、四割といったような数字が出ておるといったような品目もございます。
  313. 小林進

    小林委員長 津川君に申し上げます。あなたの持ち時間は一分になりました。結論をお急ぎ願います。
  314. 津川武一

    ○津川委員 その次は、買い付けでございます。具体的にいきますと、築地青果が十八日にオーストラリアのタマネギを百トン買い付けておって、きょうもきょうも上場しておりません。こういうかっこうで、買い付けによって、市場に上場量を少なくしてせり値を高くしておると思うのですが、これに対する農林大臣の方針を伺わしていただきます。
  315. 小林進

    小林委員長 答弁を簡単に願います。
  316. 小暮光美

    ○小暮政府委員 せりでやりますほかに、集荷の一つの方法として、できるだけ集荷量を高めるために、卸売り業者の責任において買い付けて集荷するということが、集荷量確保のために認められるケースがあるというふうに考えております。
  317. 小林進

    小林委員長 津川君、あなたの質問は、これ一問で終わります。
  318. 津川武一

    ○津川委員 その次、増し仕切りでございます。  八百円に落ちたものを千円と公表して転送や先取りの値段を高めておるし、出荷量を次にふやすために増し仕切りという行為が行なわれておりますが、これは農林大臣どう考えるか、ひとつ伺わしていただきます。  委員長から時間の終わりがきましたので、私たちの結論を申し上げて、農林大臣の答弁を聞いて終わります。  そこで、こういうふうにたくさんの不明瞭な問題があって、一生懸命せり値を高める方向にばかり中央卸売市場が動いております。そこで、私たちは中央卸売市場の民主化とそのための民主的監視機構を一貫して主張してきたのは、いま述べたような市場運営の実態を踏まえているからであり、そこで私は、次の点を具体的に提起して、大臣の答弁を求めて終わります。  その一つは、せり人やせりの機構組織を卸売り人から切り離さなければ、私はいけないと思うのです。これを独立させる腹はありませんか。  二つに、市場の運営を協議する市場運営協議会は学識経験者からなっておって、消費者も生産者も入っておりません。これに消費者と生産者の代表を加える御意思ございませんか。  三つ目には、こうして民主化された市場運営協議会に、下値やせりどめや転送や買い付けや増し仕切りを、規制したり、調査したり、必要な勧告をするような資格と能力を与えてみてはどうかということであります。  増し仕切りと、共産党のこの三つの提唱に対して、大臣の答弁を求めます。
  319. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いま御審議を願っております法律、すでに提案されておりますので、それによってひとつ御審議を願いたいのでありますが、あれは簡単でありますから、要するに卸、それから仲買い、せり、みな一体となってその機能をフルに発揮するようにしてもらわなければ能率はあがらないわけでありますから、いまのお話のように、これを切り離すというようなことは考えておりません。  それから、運営協議会については、学識経験者、学識経験者も消費の模様をよく知っていらっしゃる方たちでございましょうから、そういうことでもろもろの御意見を拝聴いたしまして、そして運営をやってまいる、こういうつもりであります。
  320. 小林進

    小林委員長 これで二日間にわたる連合審査会を終わるのでありますが、この際、委員長より政府に対し、一言御要望を申し上げます。  消費者物価の騰勢は、かなり激しいものがあります。  四十五年の消費者物価の上昇率は七・七%と、ここ十数年来見られなかった高い水準を記録いたしました。また四十五年度の物価上昇率も七・三%と、政府の当初の見通し四・八%を大幅に上回るものと見込まれる状況にあります。  このような高い物価上昇は、国民生活の安定にとって、まことに憂慮すべきことであり、物価の安定こそ、国民に対する政治の重大な責務であると考えます。  政府においても、総需要政策や構造対策、競争条件維持政策等々、各般の物価安定対策を進めていますが、必ずしも国民の期待に沿う効果があがっているとは認められません。  二日間の連合審査会を通じて浮き彫りされた主要な問題点は、  一、野菜の安定供給を確保するため、生産出荷の計画化、組織化を推進するとともに、生産意欲を高めるための価格低落時の価格補てん事業を一そう整備充実すること、情報機能の充実、活用をはかり、市場を整備すること、及び取引の公正化を確保することなど、流通機構の改善合理化を積極的に進めるべきであること。  二、寡占化に伴う価格管理的傾向のもたらす弊害を排除するための監視をきびしくし、適正な競争を実現するために独占禁止政策の厳格な運用を行なうべきである。さらに、再販売価格維持行為に伴う弊害の規制を進め、企業の流通支配化を防止し、消費者の保護に積極的な施策を行なう必要があること。  三、物価安定に対する政府姿勢を明らかにするためにも、政府が率先して強い決意を示し、現在の全般的物価上昇ムードを断ち切るため、便乗値上げを誘発する公共料金についてきびしい抑制方針をとること。  四、国民にとって切実な住宅問題も、近年地価の高騰がその解決をおくらせており、特に公営住宅と民間住宅の格差は大きい。よって政府は、公共宅地の開発及び公共住宅の建設等施策の推進をはかり、低廉な公営住宅を供給するとともに、民間の貸し家、貸し間等についても、権利金、礼金などの悪い慣習及び一、二年間で契約を更改して、そのつど金品を請求する等の不当な家主に対する取り締まりを強化することなど。  以上の諸点を中心とした論議がかわされたのであります。  以上はまた、国民のひとしく熱望するところでもあると存じます。  よって、政府は、これらの諸点に特に留意し、勇気をもって立法措置を要するものには直ちに着手し、行政措置によって行なえるものは早急に改善するよう強く望む次第であります。(拍手)  この際、これに対し政府から所見を求めます。佐藤経済企画庁長官
  321. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 二日間にわたりまして、物価問題の各般にわたり、終始たいへん熱心な御審議をいただきまして、また、ただいまは、委員長からも適切な御意見を承りました。ありがとうございます。  政府としましても、これらの御意見に対しては虚心に耳を傾けまして、改善すべきものはこれを改善したい、そしてこの重大な物価問題について、一日も早くこれの安定をはかるようにやってまいりたい、こう考えておる次第でございます。  どうもきょうは、ありがとうございました。(拍手)
  322. 小林進

    小林委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。  これにて散会いたします。     午後五時五十六分散会