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1971-05-12 第65回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年五月十二日(水曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 小林  進君    理事 青木 正久君 理事 砂田 重民君    理事 登坂重次郎君 理事 松山千惠子君    理事 武藤 嘉文君 理事 武部  文君    理事 渡部 通子君 理事 栗山 礼行君    理事 和田 耕作君       小坂徳三郎君    正示啓次郎君       向山 一人君    田中 恒利君       松浦 利尚君    有島 重武君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     谷村  裕君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         農林省畜産局長 増田  久君     ————————————— 五月十二日  理事栗山礼行君同日理事辞任につき、その補欠  として和田耕作君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  物価問題等に関する件      ————◇—————
  2. 小林進

    小林委員長 これより会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  理事栗山礼行君から理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小林進

    小林委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  これより、その補欠選任を行ないたいと存じますが、これは先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小林進

    小林委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長は、和田耕作君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  5. 小林進

    小林委員長 物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。砂田重民君。
  6. 砂田重民

    砂田委員 公取委員長にお伺いをいたすのでありますけれども、再販売価格維持行意、この制度に乗った商行為にいろいろな弊害が見られる。そういうことをこれまでも当委員会では、公正取引委員会から資料をいただいて伺ってきたのでございますが、公取はこの問題と取り組まれて、先般、再販行為弊害規制等についての方針決定されたように伺っております。資料といたしましてはきょうの委員会に御提出をいただいたのでございますけれども、この機会に公取委員長から、この公取決定なさいました方針の大綱についてお述べをいただきたいと思います。
  7. 谷村裕

    谷村政府委員 再販売価格維持制度につきまして、かねてから、その問題になる点を私どもとしても検討しておったわけでございますが、問題は二つに分かれると思います。一つは、再販売価格維持制度ということが持つ法目的、あるいは法益と申しますか、そのようなことから考えて、現在独禁法に規定されているようなああいう姿がよろしいのかどうなのかという、いわば立法論的な考え方であります。これにつきましてはいろいろな考え方ができると思いますが、第二には、少なくとも現行法一つ法益を認めて、その法益に即した適切な運営をはからなければならないとしたならば、とりあえず、現在のそういった再販行為について何をどう対処していったらいいかという問題でございまして、これは弊害だけというふうなことではなしに、もうちょっと広い範囲で、現行法に基づいて、その法目的に従った適切な運営をはかるという観点からわれわれが何をなすべきか、こういう問題でございます。  そして、独禁懇等における御議論のいわばたた台といたしまして、昨年の十二月十五日に「再販行為弊害規制について」ということを書いたわけでございますが、今回私どもは、そこらで御議論がありましたことをさらに受けまして、公正取引委員会としての公式の考え方を明らかにいたしましたのが、四月十五日に私どもとして発表いたしました「再販売価格維持行為弊害規制等について」という文書で、それがお手元に差し上げたものだと思います。  ここに表題で「弊害規制等について」とございます。この「等」というところに実は意味がございますので、弊害規制だけでなくて、法に定められておるいろいろな要件を適切に運用していくためにはいかなることがあるかということで、必ずしも弊害規制だけが目的ではない。法の忠実な執行という意味でどういう考え方をするかということが、ここに書かれているわけでございます。したがって、独禁懇等におきまして議論にしていただくために出しました文書と、今回私どもが四月十五日に発表いたしました文書との関係は、あとのほうが再販行為そのものについての法目的に従った運営について公正取引委員会はどう考えるかという、そういう公式な決定であるというふうに御承知いただきたいと思います。それがまず第一でございます。  それから第二に、再販行為の問題については、いろいろと物価対策との関係から御議論がございました。私どもももちろん、物価という問題を頭に置かないわけではございませんが、基本的には私ども考え方は、いろいろな形で物価問題というものが、再販品あるいは非再販品、いろいろな品物について世上ございますけれども再販品については、物価との関係ももちろんございますが、物価をどうするという観点ではなくて、やはり私ども立場からすれば、競争維持政策という立場から、これが消費者立場を不当に侵害しないようにしなければならないとか、適切に運用されなければならない、そういう考え方に立脚しているわけでございます。それを第二番目に申し上げておきたいと思います。  それから第三番目には、私どもは、今般発表いたしましたもので、大きく分けて幾つかの点をあげておりますが、一つは、いわゆる消費者利益を不当にそこなうようなことがあってならないという立場から見ていく問題として、たとえばいわゆる販売促進費等の名において、消費者に獲元されないような費用がたくさん、メーカーから流通段階に出過ぎているというふうなことがあれば、それはやはり、再販の上に乗って不当に消費者立場をそこなうことになるのではないかという観点から検討をするとか、あるいは、これは自由な競争との関係もございますが、再販という制度の上に乗って不当に高い価格をつけて、またそれを維持することによってメーカーがもうけているというような場合にはどうかといったような、そういう点を問題にしているわけでございます。そしてそのメーカーが、たとえば不当に高い金を使って、消費者に還元されないような価格形成のしかたをしている問題には、販売促進費であるとか広告宣伝費とかいうふうな問題もその中に含まれてくる、そういうふうな考え方をとっているわけでございます。  それから第二のグループは、法律のほうでいわゆる「自由な競争が行なわれていること。」とか、消費者が日常使用するものであること、とかいう指定要件にかなっているかいないかという立場から、ものによってはこの際指定の取り消しをするということを考えた点でございます。それが第二のポイントになっております。  そして第三のポイントとしましては、再販の実態をより具体的に把握し、そしてそれに対処するような私どもの態勢をとりますとともに、場合によっては、その中から一般に公表するというふうな問題これはいわゆる企業の秘密の問題との関係がございますが、そうでなくて、再販制度全体の姿あるいはあるグループ商品等の姿について、場合に応じては公表するというふうな、そういう考え方をとっている点でございます。  そして第四番目に、一体どういうふうにしてそういうことを実際にやっていくのか。凡百のたくさんの品物、そしてまた多くの企業を相手にして、私どもはそれが弊害を起こさないようにしていかなければならないのでありますが、当然のことながら、まず企業がいわば社会的責任というものに立脚して、自分で正しい、間違いのない、これが消費者のためになることだという立場をとるならば、その上に立って適切に運用していただくことを望むわけでございますけれども、それだけでは十分でございません。当然のことながら、その次には、私どもが個別に、そういった行き過ぎがあると認められるようなものについては、何と申しますか、指導をすると申しますか、していかなければならないわけでございますが、そういういわば一種の個別的なスポット方式でもってやっていくことによって全体の姿勢を正していくという、そういうやり方をやりながら、基本的にはやはり法律に基づいて、法の二十四条に基づくところの措置をとるという、そういう原則をうしろに持ちながら、個別には指導を進めていくというふうなそういうやり方で全体の姿勢を正しいものにしていくようにやってまいりまいりたい、そんな考え方が、まず大きな意味での全体の姿でございます。
  8. 砂田重民

    砂田委員 私は、ごく短時間しか時間を持っておりませんので、一問だけ公取委員長に伺っておきたいと思います。  ただいまの御説明の中で、再販の問題を物価という角度から見る問題と、公正な競争を確保するという角度からと、むしろ公正な競争を確保するというほうに重点を置くというふうに、私はいまの委員長のお話を伺ったわけでありますけれども、おとり廉売というもの、これはいろいろなおとり廉売意味がございましょうけれども、世間いわれるおとり廉売というものは不公正な競争だというふうに、以前にも公取側は、そういう見解を表明されておりますけれども、おとり廉売防止するというのには、この再販という制度そのものにも、昭和二十八年、独禁法の中に二十四条の二の再販制度が組み入れられたときの考え方も、そういう考え方があったと思いますが、もしもおとり廉売というものが禁止ができるならば、これは再販という制度そのものもまた必要がなくなるのではないかという気が私はいたすのでありますけれども、不公正な競争であるおとり廉売というものを防止をする、排除をしていく、そういうことについて、公取はこれからも検討を進められるのでございましょうか、これを一点伺っておきたいと思います。
  9. 谷村裕

    谷村政府委員 私が公正取引委員会に参りましたときは、こういった問題について非常にしろうとであったわけであります。約一年、こういった問題について基本的に、いろいろの角度から勉強したわけでございますが、二十八年当時に法律改正が行なわれましたときの基本的な考え方には、二つ問題があったように思います。そしてその一つがおとり廉売ということに立脚しており、それに加えて、ある程度、たとえば小売り業でありますとか、あるいは中小の流通業者立場を保護するといった、そういった考え方もあったかと思いますが、その二番目の考え方も、実はそのうしろにやはり、おとり廉売から保護するという考え方があったかと思います。  そういうような意味で、いまの法律の不公正な取引方法として考えております顧客誘引等の問題の中で、いわゆる不当対価、不公正な取引方法一般指定でいえば五号に対応するような、不当に低い対価をもってやるということ、これは外国の立法例においてもかなりいろいろとあるようでありますし、二十八年に再販売価格維持契約制度を導入しましたときもそれがポイントでありますならば、おとり廉売規制ということをどういう形でするのが一番いいのかという、まさに立法論の問題になるのではないかと思って、ちょうどいま砂田委員が御指摘になったと同じような意味で、実は私ども考えたわけでございます。  これについていろいろこまかく申し上げますと、時間もかかりますが、さらに御質問があればお答え申し上げますが、基本的には、おとり廉売防止の問題として、いまの独禁法の体系の中からそれがやれるようなうまい姿が出てくるのかどうかというところに、まさに問題はかかってきているように思います。
  10. 砂田重民

    砂田委員 独禁法の中でだけお考えになることもなかろうという気がするのです。おとり廉売防止するための単独立法ということも、また御検討の対象には当然されるべきだろうと思うのですが、そういう意味を含めて先ほど伺ったので、独禁法の中でどうおとり廉売を取り扱ったらいいかということの検討をお尋ねしたのではなく、おとり廉売防止するためにはいまの独禁法では不備であって、新しい立法が必要だという結論が、あるいは公取で出るかもしれない。そういうことをあわせておとり廉売防止と立ち向かわれるお気持ちがあるかということを伺ったのです。いかがでしょうか。
  11. 谷村裕

    谷村政府委員 私もそのように考えております。
  12. 砂田重民

    砂田委員 もう終わろうと思ったのですが、委員長砂田君と呼ばれましたので、経済企画庁長官一つだけ伺っておきます。  非常に大ざっぱなことを伺うわけでありますけれども独禁法の二十四条の二の中でいわば企業に与えてある法益、そういう法益のもとにおける商行為であるのだから、姿勢を正した取引をなさるべきなんだ。そういう意味法益が与えてあるのだから、これだけの規制は当然やるんだ、そういう考え方は、私は公取考え方としてうなずけると思うのです。ただ、そうであるならば、物価問題全般ということを考えてまいりますと、経済企画庁長官には、その点の心がまえを伺っておきたいと思うのですけれども行政はまさに公正であるべきなので、独禁法法益が与えてある企業だから、再販指定商品商行為についてはこういうチェックをするというのであれば、法律上の利益ではなくても、国がいろいろ利益を与えてある企業が各種各様あるわけでございますね。  端的に一つ具体的な例をとって言えば、開発銀行特利のワクの融資をしている企業、こういうものについては、法律上の利益ではないけれども、まさに国が大きな利益を与えている。こういう企業価格推移については、やはりそういう利益が国として与えてあるのだから、それなりの姿勢生産をし、販売をされるべきだ。こういう角度から、法益が与えてあるからといって、これだけのこまかい規制再販商品については行なおうと、公取はしておられるわけですけれども物価担当大臣経済企画庁長官としては、そういった性質を持った企業生産する商品、それの流通等価格推移については、今回公取規制をやっていこうとしていると同じような経路の監督といいますか御研究をしていこう、こういうお考えにあるかどうか、お答えをいただきたい。
  13. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 御指摘になった点は、一応お気持ちはわかりますが、私のほうは特別に、開発銀行融資を受けたものとそうでないものと区々に分けて、物価対策上特別な対応のしかたをする、こういうことは、一般論としては私はないと思います。ただ、再販の場合には、これはいわゆる価格を形成する一つのプロセスの中における問題でございますから、そういう意味において、他のものと違って特に問題になってくるのじゃないか、私はそういうふうに考えています。  おおよそ政府が何らかの意味でもって助成をしたり利益を与えておるのは、もっぱら凡百のもので、間接的なものを含めれば、ほとんどあらゆるものに及んでいるのではないかと私は推察するのです。免税にしてもそうでございますし、いろいろなものがございましょう。あるいは融資の形のものもございましょう。そういうことで、特にそれらのものだけ物価対策特別扱いをする、こういうことではなくして、やはり全体としての価格水準をどう持っていくか、こういうのが私ども立場でございます。特に個々の商品についてやる場合においては、現在は主として行政指導においてやっているわけでございまして、それらも結局は、全体の物価水準ということにどのくらい寄与するかということを頭に置いての話であります。いまちょっと御指摘再販の問題とは、多少やはり違う面があると私は考えております。
  14. 砂田重民

    砂田委員 終わります。
  15. 小林進

  16. 武部文

    武部委員 企画庁長官にお尋ねをいたすわけですが、先日総理府統計局から、四十五年度消費者物価指数決定発表されました。当委員会で私どもはかねがね、長官年度の当初に発表されました目標四・八%ということをめぐって、いろいろと論争いたしてきたわけでありますが、最終的には七・三%という数字が出たわけであります。これはたいへんな数字でありまして、三十九年以降、このような大きな数字が出たのは初めてであります。もちろんこの原因については、いろいろここでやりとりいたしたわけでありますし、また、その責任は一体どのように負うべきかというようなことも、連合審査の際にも申し上げたつもりであります。したがいまして、このような異常な、三十九年以降初めてという数字が出たこの四十五年度を受けて、四十六年度目標は、五・五%という目標政府発表されたわけであります。私どもは、五・五%という数字がとても実行できるような数字ではないということをかねがね指摘をしてきたわけであります。  したがって、いまここでお聞きをいたしたいことは、この七・三%という四十五年度数字が出たわけでありますが、四十六年度に食い込むげたは一体どのくらいになっているのか、それを最初にお伺いしたい。
  17. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 二・三くらいになろうかと思っています。
  18. 武部文

    武部委員 その二・三という数字はいま初めてお聞きするわけですが、従来からのげた数字を見ると、この数字は若干低いように思いますが、しかし、企画庁としてそのように思っておられるなら、この際はそれでけっこうでしょう。  そこで、四十五年度上昇率の内容を、日本銀行なりあるいは総理府統計発表数字から見ますと、一番高い数字を示しておるのが野菜一九%、生鮮魚介一八・九、加工食品一六・四、くだもの一一・九、このように、上位四番までが野菜ないしは魚、くだものというような分類になっております。よく佐藤長官は、季節商品値上がり物価上昇の一番大きなネックになっているということを、何回か御答弁になったわけです。結果的にはこのように、生鮮食料品等が異常な値上がりを来たしておるわけであります。  そうなってくると、四十六年度のこれからの物価上昇の中で、こういうものがはたして四十五年度に比べて安定価格になるだろうか、下がるだろうかというような点に、私どもは非常に疑問を持つわけであります。早い話が、タマネギが輸入されたときのあの雲隠れ事件等の問題も、ここで取りあげられたわけでありますが、加えて本年は異常な低温状態で、冷害の気配が強いと報道されておるわけであります。そうなってくると、去年あれだけ大幅な値上げをした野菜等について、本年値段を下げることに一体期待が持てるだろうかというと、たいへん心配だ、そういう点。  さらには、私は先般埼玉県の野菜生産地に参ったわけでありますが、この間行政管理庁が調査結課発表しておりましたので、これはもう長官御存じのとおり。あの野菜に関する指定産地制度が全く有名無実になっておる。運用方法に大きな欠陥があるじゃないか。全国で五百九十一カ所の指定産地制度をとっておるわけでありますけれども調査の結果は約四割、四〇・五%というものは、全く指定産地制度というものの機能を失っておる。こういう発表行管からなされておるわけであります。  今後四十六年度物価見通しについて、経済企画庁としては一体どういう見通しを持っておられるのか。先般、新聞の値上げの問題をいろいろやりとりいたしましたが、結果的にはどうにもならぬという状態になったわけであります。これは消費者物価に〇・四%影響するということは明らかであります。加えて牛乳問題も、またさみだれ式に上がって、これは〇・二%消費者物価影響を与えるのであります。そうなってくると、いまげたを二・三というふうにおっしゃっておるけれども、五・五%の目標について、あなたのほうは一体どのような自信をお持ちなのか、今後の物価対策はどのようにお考えになっておるのか、この点が一つであります。  いま一つ卸売り物価の問題でありますが、卸売り物価は四十五年度は一これは日本銀行調査でありますが、この上昇率は、四月の上旬卸売り物価の場合に。前旬比〇・三%上昇しておりますね。そういう危険な様相を卸売り物価が示しておる。特に日本銀行調査によれば、先ほど私が申し上げた消費者物価の中の生鮮食料品と同様に、この卸売り物価の中の生鮮食品部門が、前年比二二・一%というたいへんな数字を示しておるのであります。こういう点について企画庁長官はどのようにお考えになっておるのか、これをお伺いいたしたい。
  19. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 先に卸売り物価のほうを申し上げますと、卸売り物価については、何といっても、目下のところ安定的な基調にあるといっていいと思います。これは、景気とも非常に密接な関連のある卸売り物価指数のことでございます。そういうことでございますから、今後、年度の後半にかけて逐次景気の回復ということを、われわれも予想はいたしておりますけれども、全体としての基調というものは非常に落ちついておると申し上げていいと思います。四十五年につきましても、非常にげたが高かったために上昇率は二・四ですか、相当高い結果にはなっておりますけれども年間においてはむしろ〇・七ぐらい下落をしておる、こういうことでございますから、いま御指摘のように、一部にまた一時的に多少の上昇かございますけれども年度間を通じて落ちついた動きを示すものと思われます。卸売り物価の場合には、特に国際的な物価という問題もやはり重要でございまして、この方面については、なおいろいろと予断を許さない要素もございます。われわれもこれについて注目していかなければなりませんが、今日の卸売り物価は、総体としてはやはり落ちついた動きを示しておる。そしてその中における生鮮食料品というものが、御存じのように昨年来の事実を反映して、いま御指摘のように高いものになっておるのでありまして、これは事実でございますが、そうしたものを含めまして全体として落ちついてきておる、そういうことがいえると思います。  それから、消費者物価につきましては、私たち五・五%という目標を立てたわけでございますが、物価指数扱いというものは、技術的にもいろいろ問題がありますけれども、まあ、先ほど御指摘があり議論もありましたげたというようなものを考えてみますと、二・三%というげたでございます。大体三・二%の余裕が五・五%との間にあるわけでございまして、ちょうど昭和四十五年度は、げたが四%でございまして七・三%の上昇率になりましたから、年間上昇三・三ということになっております。そういういろいろの状況等々にらみ合わせながら考えてみまして、しかも、いま御心配のありました季節商品を中心とするところの上昇について、去年一年われわれも苦しめられたわけでございまして、その結果として、農林省等体制もずいぶん私は進んでいるというふうに思います。行管から指摘を受けました指定生産地問題等、これは明らかにやはり問題でございまして、こうした点を手直しをして改善をしていくということこそ、これからのわれわれの非常に重要な問題でありまして、そうした点も、もちろんこれは農林省の重要な対策一つになってきているわけでございますから、そういうような意味で全体としての供給体制というものが、四十五年のあの当初における事情と比べましてずいぶん改善されてきていると見てよろしいと、実は私は思っております。もちろん季節商品のことでありますから、先ほど御指摘がありましたように、最近における北海道の低温というようなことが影響をするという点については、われわれも同様の心配をいたしておりますけれども、そうした特殊な要因、一時的な要因というものを相殺して余りあるような全体としての供給体制の安定化、こういうものが逐次進んでまいっておるというふうに考えております。  なおしかし、御指摘の点は、十分にわれわれとしても注意を要する点でありますから、今後できるだけひとつ御心配のないように、そうした方面の供給体制の安定、事態に十分対処し得るような体制、また、そうした国内の供給体制だけでなく、必要に応じて輸入をもっと活用してまいる。時間的な制約も作物によってはありますけれども、しかし、そうしたものを乗り越えて、できるだけ輸入というようなことによっても供給の安定性を補正していくことができるというふうに考えております。  季節商品以外のものについては、率直に申し上げまして、最近において相当強含みでございますが、これにつきましては、しかし一方においてやはり景気との関係もありまして、全体として落ちつきぎみの点が見られます。四月には、先ほど御指摘になりましたように、季節的に見てちょっと上がった点もございますけれども、以後基本的な条件というものはわりあいに落ちついておる。でありますから、今後個別的な価格につきましては、できるだけひとつ上昇が異常にならないように、われわれとしても十分に指導をしてまいらなければならない、こういうふうに考えています。  なお、やはりわれわれとしてはも春闘の結果というものには非常に大きな関心を持っておりまして、これが方向によって、秋になっていわゆる価格転稼が行なわれるなどのないことを、非常に期待をいたしております。この面は、何といいましても労賃問題について労使の自主的な解決に待つところが多いわけでございまして、いま政府が直接手を下すというわけにはまいりませんけれども、全体の経済の現状から見まして、やはり国民経済全体の様相に即応したような、いわゆる節度のある方向で解決が進むことを期待しておるわけでございます。  そういうことで、四十六年度は、五・五%という目標を大体そう大きな狂いがないところでもって、何とかこれをおさめてまいらなければならない、こういうふうに考えております。
  20. 武部文

    武部委員 五、五%について自信をお持ちのようでありますが、私は非常に危険だと思います。基本的条件が整っておる、落ちついておるというようなお話でありますが、これはいずれ月を追って具体的になってくるわけでありますから、いずれまた論争しなければなりませんし、春闘の問題は、同僚委員からあと質問があるようでありますから、そのことに触れません。  四月二十八日に、NHKの総合テレビが物価問題で一時間、非常に興味のある報道をいたしました。長官、忙しくて、おそらくごらんになっていないと思うのであります。これは非常に反響を呼んだのでありまして、私自身も一時間、非常に興味を持って見ました。私はここにその全文の速記録を持っておりますが、この週刊誌も読んでみました。この報道がなされましてから、この週刊誌がただ一つだけ取り上げたわけでありますが、これは同時の放映でありますから、NHKの二十台の電話機に一万通の電話がかかってきておるようであります。そういう内容をずっと読んでみまして、やはり国民がこの物価高、これの原因等について非常に大きな見解を持って、放映に対して反論をしておるという事実を報道番組から見たわけであります。  きょうは、そのことにはあまり触れたくないわけでありますが、ただ一つだけ、これは本人の名誉のためもありましょうし、企画庁という名前が出ておるわけでありますから申し上げておかなければならぬ。  というのは、この一時間の放映で、御承知の下村治博士でありますが、この方がおっしゃったことについて反対だという電話が約八割、その場でかかってきておるわけです。そのことについて、ここに企画庁の二名の方の見解が載っておるのであります。これは非常に内容が重要なので、私は、きょうおいでいただこうと思ってお呼びいたしましたところが、自分は全然会ったこともなければ、そういうインタビューに応じたこともないし、知らぬ、こういうお話でございました。ここにはたまたま企画庁幹部A氏というのが一人と、経済企画庁調査局参事官宍戸駿太郎氏とはっきり名前が載っておりまして、そうしてこの人が言っておることは、これが事実ならばたいへんだと思って、ここへ御出席いただこうと思ったわけです。それは「外国にくらべて、成長のわりに物価は上がっていない、といわれているくらいなんですよ。物価が高い、というのは主婦のアレルギーにすぎないのではありませんか。公害だって、GNPを高くしなければ防止費用ひとつひねり出せませんよ。今後十年間、下村さんの高度成長論は日本にとって必要だろうと思います」、こういう談話が、経企庁調査局参事官宍戸駿太郎となって載っておるわけですね。あなたが御答弁になったことと、これは全然違うわけですね、いままでのここでの論争と。そこでお伺いいたしましたところが、そういうことは全然知らぬ、身に覚えがないというふうにおっしゃったので、きょうはおいでをいただきませんでした。  しかし、経企庁の幹部A氏と宍戸さんの名前がここに出ておるわけだが、やはりそういうようなことか何らかの形で——これは経済企画庁の幹部の方ですから、そういうようなことが外部に報道され、こういうときに利用されてくるわけですよ。そういう点については、私も意見があるわけであります。きょうはそういうことで時間がありませんし、私も真相よくわかりませんから、これ以上追及いたしませんが、いずれにしても、物価問題をめぐって国民というものがたいへん大きな関心を持ったということは事実なのです。そして高度成長か安定成長かということについて、あるいは貯蓄の問題等について、賃金の問題等について、所得の上昇がある以上物価上昇は当然だ、こういうような議論が堂々となされておる。この人は御承知のとおりの人であります。したがって、この点についてあらためて論議をいたしたいと思いますが、いずれにしても経企庁の幹部の名前か、こういうように週刊誌に堂々と載ってくるというようなことになると、やはり何らかそこにあったのではないかと思われるので、この際私は、一つだけこのことに触れておきたい。答弁は別に要りません。  そこで、先ほど砂田委員から質問のありました再販の問題についてお伺いをいたしたいのであります。  そこで、このことに触れる前に、与党自民党の皆さんが、再販問題についての見解を発表されました。それは四月十四日であります。私、この内容をここに持っておりますが、もちろん、与党の皆さんがいろいろ御見解をお持ちになりますことも自由でありますし、この内容等を見ますと、いろいろ私ども考えさせられるものもございます。また、これに反対の意見も持っております。ただ、この中に、再販商品というものは物価とは関係がない、こういうようなニュアンスが書かれておるのであります。  先ほども、このことについて公取委員長の答弁もございまして、公正な競争を確保するということをおっしゃったわけでありますが、物価という角度、さらには公正な競争を確保するという二つの面があるけれども、具体的に言うと——あとで触れたいと思ったわけですが、今度の公正取引委員会のお出しになった規制考え方、あるいは先ほどお述べになったものの考え方から見ますと、物価問題ということにはあまり関心を持っておられない、このように私は受け取りました。また、この与党のお出しになったものによると、再販商品価格推移を見たり、あるいは再販行為が不当に価格上昇させているとも思えない、また消費者物価指数を押し上げる強い要因ともなっているとは思えない、こういう文章になっておりまして、最後に、この推移を示すグラフが載っておるのであります。  このグラフはどのような資料に基づいて出たのか知りませんが、なるほどこのグラフから見ますと、再販指定の四品目というのは、五年間に六、七%しか上がっていないということになっています。これは若干私ども資料とは食い違っておるのでありまして、こういう点についてお伺いをいたすわけでありますが、その前に、確かに再販商品というものがどんどん物価を上げておるという原因には、なるほどほかの上昇率から見ると非常に低い数字かもしれませんが、少なくともこの再販制度というもののために、下がるべきものが下がっていない。先ほど自由な競争ということをおっしゃったけれども、下がるべきものが下がっていない。これは物価問題にとってはたいへん重要な要素だと私は思うのです。そういう面で、一体企画庁長官は、この再販の問題が物価とどのように関係があるとお考えになっておるのか。  たまたま連合審査の際に佐藤総理が答弁をいたしておりますが、それによりますと、「メーカーが末端の小売り価格をきめ、これを維持させることが、ややもすれば流通機構の効率化を阻害し、小売り価格を高位に維持するおそれがある点で、物価対策の上から問題が」あるということを連合審査の際に、はっきりと答弁をされておるのであります。今日消費者団体が、公正取引委員会に申し入れをいたしたり、あるいはいろいろな不買運動をやったりしているわけでありますが、私どもは、明らかに物価問題として再販商品というものをとらえていかなければならぬ要素を多分に持っておる、このように思うわけですが、企画庁長官なりあるいは公正取引委員長は、この問題についてどのようにお考えになっておるのか、それをお伺いしたい。
  21. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 前段の問題は自民党からお答え願ったほうがいいかもしれませんが、物価問題という見地からこの問題を取り上げるということになりますれば、これは当然一つの重要な項目であるというふうに、われわれとしてももちろん考えております。先ほどの現状における上昇率その他ということもございますけれども、やはり今日の物価問題というのは、現在特に非常に上昇率が高まっておるというものだけを取り上げて問題にはしておりません。全体としての、いわば今日の高水準の物価高というものを通じて、日本の経済のいわゆる効率化が全体として落ちつつあるのではないか、こういうことをやはり考え、そして結局そのことが、消費者利益と相反する結果になっておる、こういうことでございますから、一方においてある程度上がらざるを得ない実情のものもあれば、またこの際合理化を進めて、そしてできるだけ上昇をとどめていくというものも必要である。経済全体としてのいわゆるバランスの上に立ってこれを考えなければならないことでございます。そういう意味において、たとえば先ほどから議論がありましたように、過大な流通マージンをどうするかとか、そうしたことはやはり物価問題の重要な一環でございます。特に価格の形成される段階において特別の法益を与えられているという意味において、先ほど私御答弁したのですが、そういう意味において、ほかの場合と違った、また特殊な物価問題との関連性があるということでございましょう。そういう意味においてわれわれも、再販制度運営のされ方というものについては、物価政策上も重要な関心を持って臨む、こういう考え方でございます。
  22. 谷村裕

    谷村政府委員 私も、決して物価問題を等閑に付する意味ではございませんし、また、物価問題との関連において再販問題というものがあるということも認識いたしております。しかし、物価問題全体というものはいろいろな他の要因というものがある。再販品であっても、あるいは再販品でなくとも、およそ競争条件にいろいろ不完全な問題があれば、それが価格メカニズムをゆがめ、したがってまた物価影響を与える、そういう問題として考えております。したがって、私どもは、物価庁では、ございませんし、個別に物価の問題に立つということではございませんが、競争維持政策という立場を通じての物価という観点から、再販問題か物価関係するという意味において重要な意味を持つことはもちろん承知いたしておりますし、そういうことは考えておるわけでございます。
  23. 武部文

    武部委員 一応見解だけお聞きいたしておきます。  そこで、本論の弊害規制についてお尋ねをするわけでありますが、この問題は、四十二年に原則禁止主義を一応提案しようとした公正取引委員会動き、これは当時私どもは、公正取引委員会検討された内容を承知いたしまして、その文章もここに持っておりますが、当時の内容を見ますと、指定にあたっての公聴会の問題あるいは事前審査、契約の内容の一般的な閲覧、あるいは小売り価格の表示、こういうように原則禁止主義をうたっておった抜本的な改正が用意されておったわけであります、これは翌年の四十三年に、ついに公取は、単独立法を断念したということをはっきり言明されました。昨年の暮れに、十二月の十五日ですか、弊害規制の問題について、独禁懇にああいうようなことをお出しになった。こういうように、四十二年以来再販に対する公正取引委員会の態度というものは、私どもから見れば徐々に後退をしてきた、このように見ておるわけであります。  そこで、このことについてお尋ねする前に、これは報道があったので、私は報道で知ったわけでありますが、公正取引委員長の一応の見解を承らなければなりませんが、発表された十五日の二日前の十三日に、谷村委員長が自民党の政調会長を訪問されて、この案に対して了承を求めたと報道があったわけであります。これは新聞によっては、若干ニュアンスが違う報道もいたしております。私は、新聞でそれを承知をいたしました。その後この問題をめぐって、消費者団体から何か公正取引委員会にも、おかしいじゃないかというような意見があって、委員長も釈明されたということを聞いておりますが、一般的な見方とすれば、公正取引委員会というのは全く中立であって、少なくともこういう問題について事前に与党の政調会長に了承を求めるというのはおかしいのではないかという一般的な見解が出てくるのは、私は当然だと思うのです。こういう点について、その経過をひとつお聞きをいたしたい。私ども、誤解であれば、誤解として解消しなければなりませんから。
  24. 谷村裕

    谷村政府委員 たいへん適切な御質問をいただきまして、ありがたいと思います。  私ども行政官庁としてではございますが、法律に基づく一定の権限を与えられておりまして、その権限の執行にあたっては、厳正に委員会として執行してまいるわけでございますが、同時に、いろいろな問題につきましては、やはり各方面に必要な御説明も申し上げ、御理解もいただいておくということは大事であると思います。そういうような意味で、結論から先に申しますと、私は決して了承を求めたり、また了承していただいたりしたことではございません。そのことは、他の新聞の報道に対して、私は重ねて、その記事が誤報であることを申し上げた点であります。  再販問題に限りませんで、たとえは去年、管理価格問題といったようなことを私どもが問題にいたしましたときにも、私はやはり党の政調会長のところに伺って、問題の内容、何が問題であるのかといったようなこと、そして公取としてはいろいろこういう点をいま問題にしているというふうなことを、御説明したことはございます。これは何も与党だけに限りません。必要があれば他の党の方のところにも伺って、御説明も申し上げます。また民間の団体の方、消費者団体の方あるいは学者の方、そういった方々にも、何が問題で、どうしてこういうことにいろいろとわれわれは考えておるのかという御説明を申し上げておるところでございます。  そういうふうな意味におきまして、再販問題については、与党の自民党といたしましても、政調会の内部でいろいろ御検討になっていらっしゃるというふうにも聞いておりましたし、また、それについても何べんか事務当局が伺って御説明をしているということも承知しておりましたが、最後的に私どもが、こういう考え方でいたしますということを腹をきめましたときに、政調会長のほうに、私としては御理解をいただく意味で御説明に参った、かような次第でございます。
  25. 武部文

    武部委員 私ども公正取引委員会に、内容の御説明をしてもらいたいという要請をしたこともございますし、その際は、来ていただいて説明を受けたこともございます。ただ、この規制問題というのは相当重要なことでありまして、すでに前日の十四日には、先ほど申し上げたような自由民主党、与党の見解が発表されておる。その前の日の十三日に、委員長が政調会長のところに行って説明になっておる。こういうような点を私は申し上げこのであって、そういう点については、やはり一般の人があの報道を見たりすれば、公正取引委員会というものは一体何だというふうに思うのも、私はしごく当然だと思うのです。そういう意味から、ああいう消費者団体がこの問題に触れたのではないかとも、推測をいたしました。いずれにしても、こういう重要な問題について与党の政調会長だけに一いまお聞きいたしますと、何も向こうから求めがあったわけではないようですし、そういうことについて理解を求めるというような報告をおやりになるということは、むしろ無用の誤解を生むようなことになりはしないか、私はそのように思います。むしろこの委員会でも何回か取り上げ、あるいは連合審査会でも各党からそれぞれ、この再販問題については意見の出たところでありまして、総理自身も、再販の問題について見解を述べられた。したがって、もしあなたのほうがそういうことならば、各党に全部、われわれはこういう見解を固めたということをおやりになってしかるべきではないか、そのほうが、方法としては一番いい方法じゃないだろうか。私のほうに別にあなたの説明がなかったからけしからぬとか、そういうことではなしに、やはりそういうようなことをおやりになったほうが、一般的な見方からいっても筋が通っておるのではないか、そのことを私の見解として申し上げておきます。あなたに反論があれば、お述べになってもけっこうですが、そういうような私の見解だけ申し上げておきます。  そこで具体的な問題に入りますが、先ほど砂田君の質問にお答えになって、十二月十五日の独占禁止懇談会に対して、「再販行為弊害規制について」ということを提案された内容——あの際に、私どもは皆さんから、今後このことについて十分検討して態度をきめたいという説明を受けたわけであります。今度出されましたこの四月十五日の、いただきましたこの内容と十二月十五日のこの内容を見ますと、ほとんど変わりはない。もちろん字句には若干の相違はありますが、この二つを比べて見ますと、ほとんど変わりがない。それならば、この四ケ月間、この独禁懇に出した見解とこの見解との間に一体何があったのだろうかというような点を、非常に疑問に思うのですが、先ほどお述べになったことで、私ちょっと理解ができないので、十二月十五日のあの見解と今度の四月十五日の見解について、委員長の見解をもうちょっとお伺いしたいと思います。
  26. 谷村裕

    谷村政府委員 去年一年間だいぶ勉強いたしてまいりましたが、なかなかこれは具体的に、ある企業の行動について、しかも営業自由の原則のもとにおいて活動しております企業の行動について、別の立場から個別に、ことばは悪うございますが、くちばしをいれていくわけでございまして、実態的にやり方がなかなかむずかしい問題であることは、私はよく承知しております。そして、去年の十二月十五日のと今回と、どういう点がおまえら違っておるのか、あまり違っておらぬじゃないか、かようにおっしゃいますのもごもっともかと思いますが、形式的には、去年独禁懇に出したのは事務当局の一つの整理した文章であり、今回のは私ども委員会として考え方をきめた、そういう差がございますが、たとえばその内容で見ますと、去年の十二月十五日のときには、リベート等の規制につきましては、「このような観点から、再販商品についての過大左マージン(実質的にマージンとみられるリベートを含む。)を規制することとし、その運用の基準を明確にする。」かようなことを昨年はいっておったわけでございます。ところが、その後いろいろ内部で議論してみますと、個別的にいろいろ差がございます。業種、業態につきまして、何か画一的左一種の利潤統制のよう女形における基準というようなものを立てることが、はたして可能であるかどうかということが——おまえらがやることじゃないかとおっしゃるかもしれませんが、議論し直してみますと、やはりいろいろとございまして、そういうような点から、私どもは、やはり個別的に一つ指導をやっていくという考え方になりますために、新しい四月十五日のほうでは、一般的に、全体として何か基準をきめるというふうな考え方ではなくて、個別的に一つ一つ当たってやっていこう、ただその基本には、全体としての同種あるいは類似の商品の流通マージンというようなものを頭に置きながら、しかし個別的に、個々にやっていこう、こういう考え方に変わっているわけでございます。それがたとえば違う点というふうに申し上げることができると思います。  しかし、そのことは決して、十二月のときが何かきびしくて、四月のときが後退しているという意味ではなくて、より具体的な検討をしました結果の私どもやり方としては、何か一律な基準をつくるということでないほうがよろしい、そういう考え方をとったからでございます。
  27. 武部文

    武部委員 私は、実はそれを触れたかったのです。いままで皆さんと論争をしてきた中で、いまのレベート、マージン、現品添付、そういうものの具体的な資料をお出しいただいた。これはたまたま四十三年のことでありましたから、あるいはその後変わりがあるかもしれませんが、いずれにしても、百二十五なんというようなものが出ておったのですね。あのときには、現品添付、リベート、マージンで百二十五、七十五、こういうようなたいへんなことがあるというようなことから、一体それがこの規制法律とどういうふうに関係するのか。したがって、ここに書いてある運用の基準を明確にするということをおっしゃっておったから、われわれは、少なくともマージン、リベート、現品添付の基準というものは明らかに在るだろうというふうに考えておったら、四月十五日に出たのでは、いまおっしゃったように、そのことはむしろ個別的な問題として解決をするというふうになっていると、あなたは後退でないとおっしゃるが、いままでの言明から見ると後退ではないだろうかというふうに思っております。しかし、いずれにしても、あまり大きな差がないじゃないか、そのように私は思っております。ただ、具体的にはこれから聞いてみなければわからぬですから、お聞きをいたすわけですが、その点の委員長考え方を最初にお伺いをいたしたかったわけであります。  そこで、時間の関係で飛び飛びになってまことに恐縮でありますが、二、三お伺いをいたしたいのであります。  その第一点は、先ほどの砂田君のお話にございましたように、現在の再販法の弊害を、いまの法目的に従って一体何をなすべきかということについて考えるのが一点、それからいま一点は、制度そのものがこれでいうのかどうか、こういう点について、いわゆる立法論的な検討も必要だ。しかし、当面これをお出しになったのは、その前段の考え方が出ておるわけでございますね。それで、あなたがお述べになっておるいろいろなところを聞いてみますと、現在の制度でいいかどうか、こういうことについて、やはり何がしかのお考えもあるようであります。私どもは、四十二年のことをいまさらとやかく申し上げませんが、そういう面で一体どういう内容を検討されるのか。立法論的にこれは一体いつごろなのか、あるいは、そういう考え方を独禁懇におかけになるという用意があるかどうか、お考えがあるのかどうか。そういう点はいかがでしょうか。
  28. 谷村裕

    谷村政府委員 物特の委員会というところで、公正取引委員会委員長に公式にお尋ねでありますと、私は、非常に、そういった問題についてお答え申し上げにくいのでございますけれども、私は、いろいろな意味から考えまして、昭和二十八年に、いまの二十四条の二という形で一つ制度として、おとり廉売防止のための方式というものをああいう形でとったことが、今日の現段階においてはたしていいかどうかということは、やはり再検討してしかるべきものだというふうには思っております。ただし、これは別に、いま委員会でそういう結論を得たとかなんとかいうことではございません。私どもいままで、過去一年余りの議論をしてまいりました中では、私はそういうふうに考えております。  しかし、それはたとえば、昭和四十二年のときに考えたようなあの姿がいいのかというと、私は、必ずしもあのときの立法考え方が、それでいいかどうかということについて、まだ疑問を持っております。そうでなくて、むしろ、先ほど砂田委員からも御指摘がありましたが、おとり廉売防止という、これはたとえばフランスでもそういう制度がございますが、そういう観点から自由な競争と公正な競争とをどう調和さしていくかという問題として、新しく考えねばならない問題であるというふうに私は考えております。そこで、たとえば一つ制度としてでなくて、あるおとり廉売とか不当廉売とかいうふうなことがあった場合に、それに関係する当事者がどうやって対抗措置をとるかというふうなこと、その二つが自由な競争と不公正な競争との対立する問題として、どっちをどう見ていったらいいのか、そういう問題として考えなければならぬということで、私はすでに去年から事務当局に検討を命じておりまして、各国の立法例、それから不当廉売に対する扱い方、そういうことについての検討も進めさしております。いずれにせよ不当廉売防止という考え方から、いかなる対応と申しますか、やり方ができるかという、その問題についての事務当局の検討をできるだけ早い機会にまとめさして、一つ考え方あるいは試案というようなものを出すべきではないかと思っておりますが、それについての具体的なスケジュールというものは、いまのところ、まだ申し上げられるほどには実はいっておりません。しかし、そういうことについて基本的に考えようと思っておることは、私は心のうちに持っておるということを申し上げておきます。
  29. 武部文

    武部委員 この問題は、これ以上ここに触れません。  いただきましたプリントの二ページの左の上のほうに、過大なリベートあるいはマージン等の是正という点で、先ほど申し上げるように「原則として、同種または類似の日用商品の通常の販売利益の程度に留める」こういうようなことにお出しになったわけですね。それで私どもは、特に私はそうなんですが、数字を示すべきではないかということを何回か言いましたですね。そうしたら、その数字はなかなかむずかしい、どこで線を引くのか非常にむずかしいという答弁を、何回か委員長しておられましたが、今回はっきりと、この具体的な数字をあげなかった。具体的な数字をあげなかった理由をひとつ端的に述べていただきたい。  それからいま一つ、さらにその二番目の「メーカー等の不当に高い出荷価格の是正」ということでいろいろ書いておられますが、諸経費等の内容を調査する、不当に高い価格で出荷していると見られる場合にも、その価格について調査をする、というようなことがここに書かれておるわけですが、現在のような自由経済の中で、価格に対する介入がはたして可能だろうかという疑問を持つのですが、この点についてひとつ公正取引委員長の見解。あなたは、そういうような中でもこういうことを断固やるというお考えなのか。その二つ、最初にお伺いしたい。
  30. 谷村裕

    谷村政府委員 数字につきまして言いますと、現在私どもは、再販商品として指定されております商品についての平均的な——先ほど例にあげられました異常な現品添付とか特売期間のリベートとか、そういうものを抜きました平均的なものがどうであるかということは、一応把握しているわけでございます。そして、それはたとえば、小売りではございませんが、流通段階全体といたしまして、リベートから現品添付から、いろいろ合わせました大体のマージン、これは個別的には、個別商品では把握しておりませんけれども、——把握と申しますか、個別的にはいろいろになってまいりますけれども、平均的に申しますと、石けんや洗剤などでは、いわゆる値幅再販をしておりますことを考慮に入れまして大体二割、二〇%くらいであったと思います。それから歯みがき、これがやはり値幅再販をやっております関係も含めまして二五%くらいであったと思います。それから化粧品や医薬品では、大体三五から四〇%くらいな数字だというふうに、いままでの調べで出ております。特異な例は除きます。  かような数字に対して、個別的に、おまえのところはこれだ、おまえのところはこれだという言い方がいいのか。これはみな、商品回転率等もだいぶ違うようであります。そこで、一つ一つのこういった品物について、たとえば現状がこうだからこれにしておけというふうなものの言い方をするというのも、一つの行き方かと思います。そうでなくて、やはりここにも基本的左考え方が書いてございますように、再販の上にあぐらをかいて過大な流通経費をとるようではいけないという考え方になりますと、やはり同種の商品以上に、個別の特別の理由がなくてもうけてはいけない、こういう考え方になるわけであります。  そうすると、何が同種であり、どの程度にどうかということを、一つ一つやっていくというわけにはなかなかまいりませんので、それを具体的に示すことは避けたわけでございますが、実は私ども、中小企業庁のほうの調査が三月の末に出るのを、ある程度待っておったわけでございますが、そういったのが、四月の末に中小企業の経営指標として発表されましたものから見まして、他の業種のものとどうかというふうな見方をする際に、たとえば医薬品とか化粧品とかいうふうなものが、身の回り品であるとか、はきものであるとか、あるいは金物、荒物、文房具類であるとか、そういったところとどういうところになるだろうというふうにして見ます。あるいは石けん、洗剤等はどういうことになるだろうということで見ます。  私は個別的に申し上げるつもりはございませんけれども、大体中小企業庁等の調査によりますと、三五から四〇くらいの間に、やはりそういった商品についての流通マージン、これはある程度のリベート、ある程度のさらにそれ以外のボーナスも含まれているかと思いますが、大体そん左ところではないかというふうに見ております。ただ、そのことから直ちにそれが基準だというふうには、私は言い切れない。それは個別にそれぞれのものを見て言わなければならないし、また品物によっては、商品回転率等の関係から、それではどうにもならないものもあるかもしれないし、あるいはもっと安くてもいいものもあるかもしれない、さように考えております。
  31. 武部文

    武部委員 時間がだいぶ経過したようですから、私はあと数点で終わりますが、いまの答弁で出荷価額是正の問題がないので、これからの質問と一緒に言ってください。  三枚目に、日常使用されているものという点について提起がございますが、今回十二品目ですか、はずされた中に、この日常使用されているものである、これに抵触をしてはずされたものが一つもないわけですね。ございません。そういうように私は理解いたしますが、この点について、一体高額商品というものに対する考え方はどうなのか、これがまず一点です。  それから、その下のほうに自由な競争問題で「上位企業のシェアーがきわめて高いものとして、」五つの品目を削除いたしておるわけでありますが、このシェアーがきわめて高いといってはずした五つは、一体何%くらいのシェアーを占めておったのか。その基準、この五つはなぜ、どういう基準ではずしたのか、この点が関連がありますから、先ほどの点とあわせて御答弁願います。
  32. 谷村裕

    谷村政府委員 どうも先ほどは、答弁を漏らしまして失礼いたしましたが、不当に高価な価格を設定し、かつ、これを拘束して維持させているということ、これを私どもは、消費者利益の不当な侵害という立場から、ある程度それを是正していただかなければならないというふうに考えておりますが、論理的に申しますと、本来自由な競争があれば、再販指定になっておりましても、再販価格の維持ということが左かなかむずかしくて、結局は、自由な競争のもとに再販価格というものを是正していかざるを得なくなるのだというのが、二十四条の二の立法のときの考え方であったわけであります。  ところが、現実には自由な競争が行なわれていないというふうに断定するわけにもいかないけれども、さりとて、そこで価格競争が必ずしもりっぱに行なわれていないというふうな状態になってまいりますと、再販という制度も一役買いまして、そこにある程度価格を高位に維持するというふうなことが起こらないでもない、そういう事態が考えられるわけであります。これはまさに、自由な競争との関係においても問題にしなければならないのですが、一体おまえは、そんなら価格に一々立ち入ってやることができるのか、また、やるつもりか、こうおっしゃいますと、私は、基本的には、自由な市場メカニズム、あるいは価格機能というものを生かして、そこで価格形成が行なわれ、そうしてそれで全体が調和されていくというのが本来の姿であると思いますけれども、たとえば、ある程度自由左競争が実際問題として制限されているようなことが起こっておりますようなときには、やはりそれなりの一つ行政当局のかまえというものがあるべきではないか、そういう考え方を持っております。そういう意味で、再販商品というものとして特別の法益を受けているようなものは、それが消費者のために本来役立ってもらうという前提からあるわけでありますから、私どもの責務としては、それが不当左価格になっていないかどうかを調べていく必要があると私は思います。  やれるかどうかという問題でございますけれども、私どもは今後、そういった企業についてのいろいろな経営の資料を徴収いたしまして、その中で、たとえばいろいろな企業の経営分析というのがございまして、大体において売り上げ原価はどのくらいであるかというようなことも、平均的に出ておりますが、たとえば全産業平均でいえば、八割くらいが売り上げ原価である、あるいは製造業平均でいえば、たしか七割くらいが製造原価であるというようなときに、ある種の再販業種では製造原価がそんなに高くない、たとえば五割を割っておるというふうなときには、製造原価が五割であれば、それ以外には、一体何がそれだけかかっておるのか。一般管理費と称せられるものの中には、販売促進費もありましょう、広告宣伝費等のものもありましょう。そういったようなものは一体どれだけの意味を持っているのか。そういうふうなことも私は調べてみる必要があると思っておるわけです。  そうして、それこそ統制経済をやっているわけではございませんけれども、たとえばイギリスで、洗剤について、あるいは写真のフィルムについて、独占委員会が当該企業に対してよく商務省と話し合って、値段をもう少し是正したらどうかというふうに慫慂したような例もございますが、決して、いまの経済体制のもとにおいて利潤を得ることが悪いという考え方をとる必要はなし、むしろ利潤は追求すべきであると思いますけれども、それが一つの与えられた制度に乗って、しかもそういうことが許されているとすれば、それは行き過ぎでないかというふうな個別の指導として、それに入っていかなければならないと思います。そのことは、たくさんの企業を相手にしてやるということではなくて、やはりある程度スポット的に指導していくことによって、全体の姿勢を正していただくのに役立てることになれば幸いだというふうに思いますし、そういうことをされないでも、もし企業のほうで、進んでそういう点について、自分としての態度はこういうふうにしたいというふうに改めていただければ非常に幸いだ、かように思います。  あと二つございました。  一つは、日常使用ということで今回はずしたものがないのではないかと申されるのでございますが、ちょっと範疇がおかしいのでございますけれども、輸出用カメラというのは、私ども消費者部分と直接関係の、ないものがたまたま再販制度の上に乗っかっておりましたので、これはいろいろと御意見もございましたけれども目的が別であるからということではずすことにいたしました。それ以外に、日常使用という観点から今回はずしたものは——業務用の歯みがきでちょっと落としたものがあるようでございますが、これはたいしたことはないので、もっと別に、法目的から考えて、日常使用という観点からどういうふうなものがあるかということは、今回の措置ではとっておりませんが、なお今後検討したい、こう思っております。  その中で、たとえば高額な商品というものがあるではないかという御指摘がございまして、これも私ども、過去における議論の中でありますけれども、一体そういうものをはずすということそれ自身がどれだけの意味を持つのか一たしか、いつかここでお答えをしたような気がします。おまえ、点数かせぎにただはずすだけになるのかというふうなことを言われたようなことも、ここじゃございません、別のところだったかもしれませんが、そういうようなこともございましたし、今回は見送っておりますが、一つの課題ではあると思っております。  それから、自由な競争という点で、特に上位企業のシェアが高い、あるいは二社くらいでもって、これまたほとんど独占しておるというふうなものを、おまえはどういうふうに具体的に考えたかということでございますが、この間、何品目でしたか、五品目はずしたものは、これはどこから見ても自由な競争がないということが明らかに言えそうだというものを、データに基づいてやったわけでございます。
  33. 武部文

    武部委員 もう時間がありませんから一つだけ。  これは「シェアがきわめて高いもの」というふうに、抽象的になっていますね。シェアがきわめて高いものというのは、何か基準がなければはずすわけにはいかない。現実に五つはずしているのですから、それは一体基準があるのか。あってはずしているのでしょうけれども、それは大体何%くらいがシェアと見たのか。これは現実にあるのですから、それをお聞きしたい。
  34. 谷村裕

    谷村政府委員 そこらがなかなかむずかしいところなんですが、確かにあるわけです。私ども、たとえば大体三分の二というのを一つの線として考えてみたわけです。そして、かりにそこをオーバーしているものがあったといたしましても、それが続いているのか、それとも変動しているのか、それから、その動きが今後ともまだ流動的であるのか、といったようなことも見なくてはならないわけです。  たとえば、非常に簡単なことを申しますと、ある化粧品は、去年の調査、ということは要するにおととしの実態でございますが、それによりますと、シェア三分の二以上を占めているものはなかった。ところが、去年一年間に、何やら新製品が出たためにそれが爆発的に売れたとかいうので、シェアが高くなって出てきておるのがございました。しかし私は、そう言ってはなんでございますけれども、ある程度商品にもそういういろんな流動性流動しておる状態があると思いますので——たまたま去年調べただけでもそうだというだけではおかしいじゃないかというふうな議論もございましたが、さような意味で、一応その辺を見当にして、それが一つの基準というわけではなくて、その辺を見当にして、個別に商品ごとに、これはどういう状態になっているだろうということを、ある程度沿革的にも見まして、それで処理した、かようなわけでございます。全く基準がないというわけでもなし、具体的に何かばっとするものがあるという、そういうわけでも実はない。そこらが非常にむずかしいところだと思いますが、これが一つの例にはなったと思います。
  35. 武部文

    武部委員 あなたのおっしゃることは、非常にむずかしく言われますのでよくわからぬのだが、大体五つはずした。それは非常に高いシェアだ。それは大体三分の二ということを一つの基準にして一さっきは何か、勉強のためとおっしゃっておったけれども、現実にはずしたわけですね。ですから、三分の二ということが一つの基準であるということについては、別に間違いはないことでございましょうね。その点はよろしゅうございますか。
  36. 谷村裕

    谷村政府委員 それは基準という意味いかんによりますので、それを越えたら直ちにいかぬという意味でもないし、要するに、自由な競争が行なわれていないと認めるに足るものをその辺から見ていこう、こういうことになるというように申し上げていいかと思います。
  37. 武部文

    武部委員 時間がありませんが、私、まだちょっと疑問がありますから、もう一ぺんお伺いしたいと思うのです。  先ほど砂田君の発言にありましたおとり廉売のことですね。これは一般指定の十一号の五、六の不当廉売なり不当誘引という——現行法規制の中では、どうも不当廉売ということとの関係が非常に不明瞭だというふうにも思えますし、与党のほうからも具体的に提案がされまして、公正取引委員会はおとり廉売等の不公正取引の定義を明確にし、これが規制をきびしくすべきだ、という自民党の決定もあるようですね。ですから私どもは、おとり廉売規制されてなくなれば、再販というものの存在は必要なくなってくるのではないかという砂田君の意見は当然だと思うのです。私もそう思うのです。そういう面で公正取引委員会は今後検討するとおっしゃったわけですが、それは間違いございませんね。
  38. 谷村裕

    谷村政府委員 そのとおりでございます。検討し、できるだけ早く私どもはそういうことについての考え方を、特に流通問題はやかましくなってきておりますだけに、しなければならぬと思っております。
  39. 武部文

    武部委員 終わります。
  40. 小林進

    小林委員長 渡部通子君。
  41. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 私は、いま手元にいただきました、四月十五日に公取発表になられました再販行為弊害規制等についてという——別に立法するかなどという議論は別といたしまして、これを公取が実行なさるという、実行段階においてものを考えまして、それを前提として、内容について少し伺いたいと思っております。  いま武部委員のほうからお話が出まして、マージン、リベートの問題というのは大体のことはわかったのですが、確かに武部委員の発言にもございましたように、この前、十二月十五日の見解のときには、規制の運用基準を明確にする、こうございますが、先ほどの委員長のいろいろの御答弁にありましたけれども、やはり後退の感を免れないのじゃないか、こういう感を私も同様にいたしたわけであります。しかし、大体のお話を伺っておりますと三五%からせいぜい四〇%、そのくらいに数字もおあげになりましたので、その点についての質問を省きますが、たとえばすでに三〇%なり四〇%なり、流通段階のマージンが不当左パーセントになった場合に是正をはからせる、こういうことでございますが、それは勧告措置をおとりになるのか、あるいは指導なさるのか、あるいは取り消しまでもなさいますものか、その点をひとつはっきりしていただきたい。
  42. 谷村裕

    谷村政府委員 たくさんの業者が、そのときそのときに、いろいろなことを活動してやるわけでありますが、私どもといたしましては、私ども考え方に従って業者がまず、再販商品消費者のために自分たちはやっているのだというふうに日ごろからいっておりますならば、それだけに関係メーカーも、また小売りの方々もそういうつもりで、まずみずからの姿勢の問題としてそうやっていただきたいと思います。そして、そういう事例が具体的に発見されましたときには、私どもは、ここに書いてございますように指導してまいりたいと思いますが、いわばこういった問題は、営業活動に対して行政官庁がいろいろ手を出しますというのは、初めはやはり、いきなり法律上の措置をもってやるというよりも、指導でやっていくということが私はよろしいと思います。しかし、その指導によって、大体全体としてのルールなり考え方ができました後は、それに違反するようなものについては、場合によれば法的措置をもっていかなければならないかとも思います。そして、出だしのところで、私はできるだけそういう風潮な考え方なりを業界のほうにもとっていただきたいと思っておるわけでございますが、いろいろ指導もいたします。個別に話を詰めていくというふうなやり方もすると思います。しかし、それを聞かないというふうなときがあれば、それはどちらが正しいかといういろいろな議論になってまいりましたときには、それは場合によれば法律上の問題として扱っていくほうが、かえって公正であるとも思います。  そして、いまちょっと取り消しの問題にお触れになりましたけれども、いまの制度は、個別にAならAという企業について指定したり認めているものではなくて、商品について認めておるという姿になっておりますから、その商品指定を、ある企業が何か規制のワクを越える——ワクを越えるといってはおかしいですが、不当なことをやったためにその商品全体を取り消すという問題ではございませんで、当該企業のやっていることが、独禁法の適用除外からもう一ぺん、除外ではなくなって、不公正な取引方法に該当することとして、私どものほうの排除命令の対象になる——排除命令ということばはありませんが、排除措置の対象になるということになると思います。したがって、その排除措置に対して先方が同意をしてくれれば、それはある意味での勧告審決というような形にもなりますし、審判手続までいって同意したということになれば、同意審決という形にもなるかと思いますが、そういう法律上の扱いの問題は、指定の取り消しというようなことではなくて、おまえは不公正取引をやっておるぞという指摘のしかたになるわけでございます。
  43. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 この不当な流通段階のマージン、リベートを縮めていただくということは、たいへんありがたいことなんですけれども、こうなってくると、小売り店が、いままでそれだけ利益があったわけですから、たいへん苦しくなるんじゃないかということが考えられます。そうしますと、一番心配左のは、むしろやみ再販に移行してしまうのではないか、こういう懸念が出てくるわけでございます。ですから、こういう議論になっていくと、当然薬なんかですと、どうしても医薬分業などという話もまた起こってくるのではないか。やはり処方せんを薬局のほうへ回さなければならないのでは左いかというような考え方も出てくると思うわけです。したがって、マージン、リベートの規制はたいへんけっこうなんですが、やみ再販が出てくるのではないかという懸念に対しての対策なり何らかのことをお考えであるかどうか、お伺いいたします。
  44. 小林進

    小林委員長 ちょっと公取委員長に申し上げますが、あなたの御答弁、非常に懇切丁寧でけっこうでございますけれども、まだ質問者もあとに控えておりますし、時間の制約もございますから、簡単明直、かつ、わかりやすく、ひとつ御答弁をいただくようにお願いいたしたいと思います。よろしくどうぞ。
  45. 谷村裕

    谷村政府委員 再販商品についてのみでなく、  一般にやみ再販が行なわれるということについては、私どもは厳重に規制をしていきたいと思います。
  46. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 流通段階のマージンを詰めた場合に、その分、メーカーの出荷価格を下げさせる、あるいは小売り価格も下げさせる、それは当然でございますね。
  47. 谷村裕

    谷村政府委員 そういうふうに指導するつもりでおります。
  48. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 次の点でございますが、そういう公取規制のワク内の販売利益の範囲内であっても、リベート及び現品添付については、支払い留保期間が長期にわたるもの、それから累進度が高いもの、それから支払いまたは添付基準があらかじめ明らかにされていないもの、これについて是正をさせると述べておりますけれども、支払い留保期間が長期にわたるもの、あるいは累進度が高いもの、これをひとつ具体的に、簡単でけっこうでございますが、どんなものがあるか、何を意味していらっしゃるのか、御説明いただきたいと思います。
  49. 谷村裕

    谷村政府委員 政府委員から答弁させていただきます。
  50. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 お答えいたします。  まず第一の、支払い留保期間が長期にわたるもの、これはどの程度のものをいうかという御質問でございますが、公正取引委員会としましては、リベートは、マージン的なものは容認されますが、それ以外のもので流通支配的なものは、これはいろいろ問題がございますので、規制されるべきじゃないかという考え方を基本にしております。で、支払い留保期間が長期にわたるものというのは、いま申し上げたようなそういう方針から規制を加えていくというつもりでおります。したがいまして、リベートについて、販売代金の決済手段と同じ取り扱いで、通常の支払い準備期間後に直ちに支払われるというようなものは一応妥当と考えられますけれども、支払い留保期間がそれ以上の長期にわたるというような場合には、これは原則的に問題があるのではないかというふうに考えます。  それから、次の御質問の累進度が高いもの、これは一体どの程度以上のものをいうかという御質問でございますが、累進度が高いというのは、その累進度に合理的な理由が認められない場合に規制を行なうという意味でございまして、どの程度であれば累進度が高いかということは、一がいに申し上げられないわけでございまして、具体的な事例に即して、個々のケースごとに判断していくべきではないかというふうに考えます。
  51. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 その辺、より抽象的でわかりにくいのです。それはけっこうです。  それで、こういうものはやはり直販メーカー等がよく使う手でございまして、リベートなどを積み立てておいて、あと払いでございまして、その間に安売りなどがあると没収してしまう、こういった傾向をよく耳にいたしておりますので、大いにきびしくやっていただきたいと思うのです。  その次の、支払いまたは添付基準が明らかにされないものという、これは非常にまずい商習慣ではないかと思います。こんな閉鎖的な、前時代的なやり方はないという感をいつも持っております。これで損をするのはいつも卸屋さんと小売り屋さんでございまして、これはひとつ再販品に限らず、こういう不明朗な取引というものは摘発すべきだと思います。そういう意味では、再販品でなくても、不公正な取引方法として、公正取引委員会取引部として今後どしどしやっていただけるか、この点、一言御答弁いただきたい。
  52. 谷村裕

    谷村政府委員 政府委員からお答えいたします。
  53. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 いまおっしゃいましたことは、場合によりましてはこれは優越した地位の乱用行為、つまり一般指定あるいは不当な差別的取り扱い等の不公正な取引方法に該当する場合も考えられますので、その場合は法に従って適切な処置をとりたいというふうに考えます。
  54. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 次に、不当に高い出荷価格の是正ということでございますけれども、結論から言いますが、かりに是正をした場合、出荷価格が値下げになった場合に、卸も小売りも当然引き下がる、これをひとつ確約をしていただきたい。
  55. 谷村裕

    谷村政府委員 それは、そうでなければ意味がないわけでございまして、私どもとしては、もしそういう状況であれば、当然そこまでいかせなければうそだと思っております。
  56. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 ここで、その不当ということをどういうことによって判断するかということが、やはり一番問題になると思うのですが、これは先ほど武部委員の質疑にも出ましたし、非常に理論的にはむずかしいことかと思いますが、武部委員の際のお答えで次を急ぐことにいたしまして、その項の中に、価格引き上げ、新製品の価格設定についても、必要に応じて同様のチェックをする、こうございます。この新製品の価格設定の場合ですが、私どもの知るところでは、モデルチェンジですね、量目をちょっとふやしておいて価格は倍くらいになる。ちょっとかっこうが変わって価格が上がる。こういったことをたくさん見聞するわけです。そういったものを新製品の価格設定というものに準じて、やはりチェックをするのかどうか。
  57. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 そういう場合、やはり実態を見まして、名前だけ変わっていても、それは実体的には同一のものではないだろうかという場合には、やはりチェックをすべきではないかというふうに考えます。
  58. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 私、その点で以前、公取にその資料を要求したことがあるわけなんです。過去一年間あたりのモデルチェンジとその価格推移という資料要求をした際に、それは公取としては、非常に品目が多過ぎて全然つかめない、そういうお答えで、資料がいただけなかった覚えがあるのです。そういうふうに考えてまいりますと、実態を調査してといういまのお返事でございますけれども、はたしてその実態調査ができるのかどうか。もし行なえるのでしたら、私この際、過去一年間くらいをきちっとお願いをしたいと思っております。
  59. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 たくさんある商品の一々について実態を調査するというのは、非常に困難だとは思いますけれども、これはぜひともやらなければならない問題だというふうに考えております。  この前御要求のありましたあれは、やってはおりますけれども、まだなかなか結果が出てきておりませんので、これはでき次第、できた範囲内でお届けをしたいというふうに考えております。
  60. 小林進

    小林委員長 いまのお話のとおり、ひとつ、できた範囲内において、すみやかに国会に御提出願いたいと思います。
  61. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 この前、連合審査の際に要求いたしました資料によりますと、四十四年十二月から四十五年十二月までに、再販商品のうちの化粧品の値上がりが大体四・三%、医薬品が六・四%、歯みがきが二・〇%、こういう値上がりをしているわけです。この値上げ理由は、下に、人件費とか原材料費とか運送費等の高騰と出ておりますけれども、かなりの値上げ率になっておりますが、公取は、妥当な理由としてこれを御判断なすったのでしょうか。
  62. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 まだ具体的に、これが妥当かどうか検討しておりませんけれども、これから検討いたしたいというふうに考えます。
  63. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 それはこれからやろうという規制についての見解をお示しになったのですから、そう言われてしまえば終わりなんでございますけれども、大体の常識として、この辺は、この値上げ理由で大体妥当だというふうにお考えにはなりますか。いま、この時点で、常識的に伺うのですが。
  64. 谷村裕

    谷村政府委員 どうも、そこまで言われますと、私は何とも言えないと思うのでございます。一般的にいって、日本のいまの経済成長下におけるいろいろな物価上昇の問題が片方でありますし、片方では、こういった商品の中にも、合理化、いわゆる生産性向上によって、本来もっと下げ得る余地があったと見られるものもあるかもしれませんし、はなはだ残念なことでございますが、従来は届け出を受けているだけで、その内容について一々検討をいたしておりませんから、大体妥当と思うかどうかというお話について、ちょっと私はお答えいたしかねると思います。
  65. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 では、それはけっこうでございます。  また、ちょっとひょんな質問ですが、リベート、マージンの過大な商品またメーカー出荷価格等の不当に高いもの、こういった問題は、全部是正をされてまいりますと、これは当然なことですけれども、そうすると再販から離れていく商品、あるいはそういう考え方を持つメーカーが出てくるのではないか。再販を離れて安くなるならけっこうですが、むしろ、高い価格を設定するようなものが出てくるのではないか。こういう懸念に対しては、どういう対策なり見解をお持ちでいらっしゃいましょうか。
  66. 谷村裕

    谷村政府委員 これは一般的にいって、いまのような経済のもとで、たとえばメーカーなりあるいは販売業者なりが、自由な経済活動ということを前提として、どこまでそういう一種の市場支配的なことができるかという問題になってくると思います。再販商品でありますからこそ、私どもはある種の規制をするわけでございますが、それをはずれて、一般に自由な経済メカニズムを前提としておきながら、なおかつ、そこで自由にやらずに支配的なことができるという問題については、私は別の角度から考えなければならないのではないかと思っております。
  67. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 広告宣伝の適正化ということが次にあげられております。これもたいへんむずかしい問題だと思うのですが、これは全部、個別のメーカーの自粛。いままでは、個別に是正をはからせるとありますが、さらにここでは、個別のメーカーの自粛を促す。こうなってまいりますと、政府としては非常に他力本願的な感じがしないわけでもないわけでして、規制としては、少し弱いんじゃないか、こういうことを考えざるを得ません。広告宣伝の適正化のことについて、その辺をどういうふうにお考えになっているのか。あるいは一般消費者利益を非常に害するような、そういう誇大広告等過大なものに対しては、どういうことの措置を公取として考えておられるのか、お伺いいたします。
  68. 谷村裕

    谷村政府委員 広告の問題は、質の問題と量の問題とがあるわけでありますが、質の問題につきましては、ただいまお触れになったように、誇大広告でありますとかあるいは不当な表示でありますとか、そういうことについては、私ども規制すべきだと思います。ただ、量的な規制ということになりますと、これは自由な企業の活動に対して、どこまでそういったいわば広告活動、宣伝活動というものをこの辺でというふうにいえるかという、さらに非常にむずかしい問題になるわけでございまして、たとえば私どもの手元にあります、たいへんこまかくなって恐縮でございますが、日銀の主要企業経営分析等を見ますと、大体において製造業の平均で、売り上げ高に対する広告費というものの割合はほぼ一%ぐらいであるというのが、全体の例であります。ところが、再販品ではありませんが、ここにちゃんとありますから言ってもかまわないと思いますが、たとえば写真のフィルムといったような例になりますと、売り上げに対する広告費の割合は八%ぐらいというのが表に出ております。医薬品、化粧品等について、あるいはその他石けん等、いわゆる再販品について量的に広告宣伝費、あるいは別の形でも、いろいろな販売促進費といったようなものが多量に出ていることも、実はわかっておるのです。それをどの程度にという一つの基準を立てるということは、なかなかむずかしいわけでございまして、やはりこれはマージン、リベート等の問題よりさらにそこらがむずかしいという意味において、実は、個別に自粛をしてもらうというような表現になっておるわけでございますけれども、これもやはり、それぞれの企業とのある程度話し合い——話し合いというとことばが悪いのですが、対話と申しますか、個別の指導の問題として解決しなければならぬというふうに思っております。
  69. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 これはこれ以上無理だと思いますので、今後そういう個別な事例が出てきた場合に、またここで議論をさせていただきたいと思っております。  その次に、指定要件から適否を検討していらっしゃいますけれども、この日常使用という観点でございますね。これは先ほど武部委員のほうからも質問が出ましたけれども消費者八団体が公取に御注文申し上げた中で、千円以上の化粧品をはずすべきだという御意見が出たようでございますが、これに対しては、公取委員長はどういうお考えをお持ちになっていらっしゃいましょうか。
  70. 谷村裕

    谷村政府委員 日常使用というのが、多数の人によって使用されているという意味にとるか、あるいは、とにかく消費者が日常、いろいろもより買いするような品物というふうなものであればそれに該当するかというふうな、いろいろ解釈論もございましたし、また、おとり廉売に使われるという立場から考えてみれば、そういうふうなものは必ずしもおとり廉売ということになるのではないのじゃないか、むしろ安い商品のほうが、おとり廉売問題になるのではないかというふうな考え方もできれば、またその逆の考え方もできるという中で、大体価格帯がずっと、同じ石けんなら石けんにしましても、五十円とか百円とかだんだんにつながっていって、どこが一番多いということはわかっておりますが、それ以上のものは日常使用していないというふうに、はたして言っていいのかどうか、そんな議論が実はございました。  長くなりますから、議論の内容はこれ以上申しませんが、一つ検討すべきものではあると思っておりますけれども、先ほど答弁いたしましたように、今回はそれを取り上げ左かったわけでございます。しかし、検討する問題ではあるかと思います。
  71. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 日常使用にいろいろな解釈はあるかと思いますけれども、やはり私は、千円とは言いませんけれども、この前サンプルで持ってまいりました五千円の化粧品ですね、ああいったものが、一体日常使用というものでとらえられるかどうかということ。それから、この前うちの物特委員会で視察に参りましたデパートで、二万円というクリームもありました。私がこの間サンプルでいただいた二十グラムのクリームは、三千円という定価がついておりました。そういったごくごく高級品、これはもう常識でだれが考えても、再販商品あたりからは当然はずしてしかるべきではないか。むしろ海外旅行向けカメラだとか今回はずされた歯みがき等、そういったものよりもぴんとくる。いま再販に対して、主婦が非常に大きな関心を持っておりますけれども、非常にぴんとくる問題ではないかと思うわけです。私は、消費者団体のように千円とは言いませんけれども、こういう超高級化粧品等についての御見解はいかがでございましょうか。
  72. 谷村裕

    谷村政府委員 何べんも申し上げましたように、考え方としては、そういうものも指定しておくのはおかしいじゃないかということがあり得ると思います。しかし、まだ私どもとして、いまここで、それを直ちにはずしますという答えにはならない状況であります。
  73. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 では、それをなるべくすみやかにやっていただきたいということを、私は要望いたします。  そこで、せっかく経済企画庁長官がお見えでございますので、ひとつ非常に常識的な見解を伺いたいと思っておりますが、最近百円化粧品というのが話題になっておりまして、今度全国のデパート、スーパー等におめみえをするという話でございます。私、信用第一といわれるデパートあたりがこの百円化粧品を置くということになるのは、やはりそれなりに、すでに商品として認められた、こういう認識を持つわけでございまして、そうなりますと、いま一番関心が持たれております、一体百円化粧品はだいじょうぶなのか、ほんとうにいいものなのか、高いものと変わらない内容なのかということが一番問題でございまして、この際、品質と価格というものを国民の前に明らかにすべきではないか、こう思うわけです。  それから、こういうものが世の中に通用するようになりますと、いままで化粧品は、ムード商品として夢を売るんだ、あるいはムードを買うんだといって、そういう意味価格が多分にきめられておりました。そうしますと、ムード商品、ムード販売をしてきたのですから、二百円だの、いま残っております三百円だのというのは、かなり値下げができるのではないか、こういう考えを持っております。この辺に対して長官の御意見を承りたいと思います。
  74. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 もちろんそういう商品で、しかも一流のデパートで売られるのですから、そういいかげんなものが売られるわけのものではないと思います。そういう意味において、やはり従来から、どっちかというとむしろ高いほどいいんだという消費傾向がありまして、いたずらに高きを競うという傾向が一面にあったわけでありますが、そういう点の是正にもなりますし、とにかくそれだけ、全体としての水準を押えるのに非常に大きな効果を持つ、私はそれを期待しております。
  75. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 公取委員長、この百円とあるいは千円のクリームの成分内容、製造原価等、こういったものがおわかりでしたら教えていただきたいのですが、もしわからなければ、これは資料として要求をいたしたいと思います。
  76. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 ただいまのところ、まだわかっておりません。
  77. 小林進

    小林委員長 これは公取に申し上げますが、こういう化粧品の五千円とか百円とかいう問題は、いま初めてではありません。当委員会でももう半年も前から論議されたことですから、まだ資料がないということは、ぼくは、公取のこの問題の取り組み方が不まじめか、われわれ委員会を軽視されているのじゃないかという感じを持ちますが、早急にひとつ資料をお出し願いたいと思います。
  78. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 もう一点、自由な競争が行なわれているかという観点でございますが、ここで五品目を削除なさいましたが、この浴用化粧品、化粧紙、半練り歯みがき、子供用歯みがき、住居用洗剤、この五品目について、どのメーカーの何という商品、それから何%のシェアを持っていたものなのか、それを具体的に示していただきたいと思います。
  79. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 今回削除されました五品目の商品名、それからシェア、メーカー名でございますが、メーカー名、商品名等につきましては、本日準備が間に合っておりませんので、後ほど資料として提出いたしたいと思いますが、その一例をあげますと、住居用洗剤につきましては、花王石鹸のマイペットというのがございます。これは一例でございます。
  80. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 花王石鹸のマイペットのシェアはどのくらいでございますか。
  81. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 シェアは後ほど提出いたしたいと思います。
  82. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 この公取の今回の見解では、最後のほうに、「随時公表する。」という、そこまで出ているわけでございますので、今回削除したものについてのはっきりしたことくらいは、私はすでにおわかりになっているのではないか、当然のことではないかと思っておりました。公表するといっている限りにおいては、私は、これは現在公表できてしかるべきではないかと思うわけです。用意がないとおっしゃいますから、ないものを聞こうたって無理な話でございますので、これも早急に出していただきたいと思います。  ところで、消費者八団体の要求を見ておりますと、シェアを四〇%、これで自由な競争はない、だからはずせ、こういう要望のようでございます。先ほど公取委員長の御答弁では、勉強のラインとして三分の二、こういう御見解でございました。三分の二というと大体七〇%、そうすると消費者団体との間に非常に格差があり過ぎるように思うのですが、その点に対する御見解をお願いします。
  83. 谷村裕

    谷村政府委員 私、直接消費者団体のほうの方と、この点でお目にかかったことはございませんし、なぜ四〇%というところで自由な競争がないというふうに言われたかを存じませんが、これもまた、小林委員長から公取的だというふうに言われるかもしれませんが、四〇%というラインをもって自由な競争がないというふうに言い切れるかどうか。それはやはり、個別的に見なければならない問題がそれぞれにあると思いますので、場合によれば、それは四〇でも、勉強の対象の線としては考えますけれども、それを一つの基準としてすべて指定を取り消すというふうなことは、必ずしも実態的、具体的なことじゃないのじゃないかというふうに私は思っております。やはり個別的に見るべき問題だろう、私はかように考えております。
  84. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 これは見解を伺うにとどめます。  次に、「流通支配の手段とされているものがみられる。」と、やはり公取規制についての中でおっしゃっております。「みられる。」のではなくて、現実にたくさんございますが、この中で、販売業者の事業活動を必要以上に拘束している、あるいはメーカー間の公正な競争を阻害している、この二点があげられておりますが、どんなものが予想されるのか、どんなものが現在おありなのか、その点を伺いたいと思います。これは今後も、再販をてことして流通対策というものが考えられますもので、この点をひとつお願いいたします。
  85. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 まず第一の御質問の「再販制度が認められている趣旨を逸脱して、販売業者の事業活動を必要以上に拘束し、」という点でございますが、具体的には、再販契約違反者に対する制裁措置の行き過ぎ、いえば違約金をとほうもない金額を取るということ、それから責任販売高制、それからセット販売、クォータ制等があげられると思います。  それから、次の御質問の「正常な競争をそこねることによって公正な競争を阻害し」ということについてでございますが、これはたとえば一店一帳合い制、それからテリトリー制等があげられると思います。また美容部員、販売部員の派遣あるいはコーナー制なども、場合によっては問題になるのではないかと思います。
  86. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 私のほうからも二点お伺いしたいと思っております。これは名前は出しませんけれども、注文に単位がきまっているのです。再販品については、少ない注文は受け付けない。これは薬についてでございますが、ある小さな薬屋さんがこれで非常に泣いておりまして、資料を見せてくれたわけですけれども、製薬会社から注文単位表というものが出ておりまして、十ケースとか三十ケースとかで、五個とか二十個とか三十個とか、それ以下のものについては注文を受け付けない。それが各製薬会社から全部出ております。五個、十個注文するのはあたりまえじゃないかとおっしゃるかもしれませんが、小さい薬屋さんなんか、各メーカー品物を取りそろえようとすると、これが非常に苦しい。注文単位仕入れに対するこういうものも、流通支配の手段に入るのかどうか。  もう一つ、あるチェーンメーカーは、新しくチェーンに入りたいといった場合に、その地域のチェーン店の了解を必要とさせる。ちょうどお酒の距離制限みたいに、その地域の同じチェーン店の同意を必要とさせている、そういった拘束ですね。この二点についてやはり流通支配の手段とされる、こういう見解をおとりいただけるかどうか、公取委員長にお伺いいたします。
  87. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 初めの御質問の点でございますが、一定量以上の注文量がないと取引しないというようなことでございますが、メーカーや卸が、取引量が少ないために、運送コストでございますとかあるいはそのほかの点を考えまして、その小売り店と取引しないということがありましても、これは取引先選択の自由というのが営業の自由の原則でございますから、必ずしもそれが独禁法に違反するというふうには考えないわけでございます。しかし、従来から取引していた小売り店が一定の基準に達しないということを理由にして取引停止をするような行為は、問題がないということは言えませんので、今後実態を十分把握するようにつとめますとともに、問題点について検討していきたい。もし違反になるようなことがあれば、指摘してまいりたいと考えております。  第二点は、了解の点でございます。これはなかなかむずかしい問題でございまして、それが違反になるかどうかということは十分検討してみなければわからないと思いますが、好ましい行為ではないというふうには思っております。
  88. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 公取委員長にも、ひとつこれに対する見解をお述べいただきたいと思います。
  89. 谷村裕

    谷村政府委員 基本的に申しますと、自由な営業活動ということと、それの行き過ぎの問題、特に行き過ぎた場合に相手方を不当に拘束する、あるいは不当に差別するといったような形になってまいりますが、その接点をどこに置くかということで、私は一がいに、そういう行為それ自体がすべて独禁法の不公正取引に該当するとは申せないと思います。しかし、問題は個別的に見なければなりませんが、行き過ぎたものがあれば、やはりそれは独禁法立場からみて不公正なやり方であるというふうにいうものもあり得ると思います。私、抽象論しか答弁申し上げられないのですが、御了解願いたいと思います。
  90. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 調査及び監視体制を強化するというこういう御見解でございますが、届け出規則、これを内容の拡充強化をはかる、こう述べていらっしゃいますけれども、この拡充強化の内容について簡単にお願いいたします。
  91. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 届け出関係の内容強化でございますが、これは現在も規則に一応とってはございますけれども、もう少し長期的にさらに実態を詳しく、ある程度まで詳細にとって、実態の動きというものも十分監視してまいりたい、こういう見地から、規則を必要があれば改正して、届け出事項の範囲を拡充したいというふうに考えております。
  92. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 どうもいまの御答弁わからないのですけれども公取委員長、この届け出制度というものが、いまの法律では二十四条の二の六項で、契約成立以降三十日以内、こういうことになっております。これが何の意味もなさないのではないか、こういう気がいたします、再販契約ができてから届け出るのですから。何とかこれを事前に届け出をさせる、再販契約が成り立つか成り立たないかということを事前にチェックができる、こういう方向に——これは法律ですから、そう簡単にはいかないとおっしゃるかもしれませんけれども、ここは私は、非常にざる法的なものを見るわけです。これを何とか事前にチェックできる方向にするお考えはないかどうか。
  93. 谷村裕

    谷村政府委員 さっき申し上げましたように、どうもただいまの再販契約制度再販制度というのは、一つ商品についてその類型をきめ、あとはそれを自分がやるかやらぬかということを選ばせてやった場合には、その内容が間違いなければそれでいいという行き方になって、個別にチェックする体制を従来とっていなかったと思います。そこに二十八年後の改正の、ある意味での御指摘のような不備があったんではないかというふうにも私は思います。そういう意味では再販制度というものを、むしろ個別の企業体制の問題としてチェックしていくという考え方に切りかえるのが一つの行き方ではないかという立法論が、私はあると思います。いまの問題も、それとのからみで四十二年、法改正を考えましたときにも出てきておったと思うのでございますが、いまのままでありましても、出てきたあとで、これはもう一ぺん、年に一ぺんずつ報告をとるという形に実はなっておりますが、その届け出と、それから年一ぺんの報告ということと、それから場合によれば随時報告をとるということ、それらを全部ひっくるめまして、そのやり方が適正であるかどうかということを監視する方法は、私はいまできると思っております。したがって、事前にやれるにこしたことはないのでございますが、いまの法律に基づくやり方でも、そのやり方についてあとから注文をつげる結果にはなりますが、私はそれでも、ひとつそこでそういうやり方をすれば、やはり業界でも、もし行き過ぎたものがあれば、それを自分の手で直すという形になると思いますし、私はいまの法律のもとでも、私どもがしっかりやる気になればやれる問題だというふうに思っております。
  94. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 やる気になれはそれはおやりになれるでしょうけれども、事前にチェックできればそのほうがいい方法だ、こういう御意見もおありのようですが、では、すぐにとは言いませんけれども、将来の問題として事前チェック制をお考えになるかどうか、一言……。
  95. 谷村裕

    谷村政府委員 これはさっき御答弁申し上げましたように、再販制度全体の立法論の問題の中の一つとして、さっきも触れましたとおり、個別的な扱いのできるような姿にすることは一つの問題であるというふうに考えております。
  96. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 最後に、再販行為弊害規制調査を始めるということでございますが、再販実施全事業者に調査票を送られたのかどうか、それを伺っておきたいと思います。
  97. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 お答え申し上げます。  調査票はまだ送っておりません。近日中に発送する予定でございまして、大体今週中に調査票は発送できるというふうに考えております。
  98. 渡部通子

    ○渡部(通)委員 終わります。
  99. 小林進

  100. 栗山礼行

    栗山委員 きょうは主として、経済企画長官に所得政策論についてお伺いをいたしてみたい、こういうことでございましたが、その以前に公取委員長に、その以外の問題の一点についてお伺いをいたしてまいりたい、こう考えております。  小林委員長からお話がございましたように、きょうは理事会で、所要時間はそれぞれ約四十分の限度内でという一つ決定をいただいたようでございます。私は、経済企画長官には十八問をお尋ねをいたしてまいりたい。したがって、一分間ずつ往復いたしましても二分でございますから、たいへんな時間になってまいるというようなことでございまして、私もそのワク内でお尋ねをいたしてまいり、御答弁をちょうだいする、こういうことにお願いをいたしたい。特にそういうことでお願いを申し上げたい、かように考えます。  公取委員長せっかくおいでいただいたので、お伺いをいたすのでございます。  私は勉強が足りませんので、はなはだいかがなものか、こういうふうに考えておるわけでございますが、最近御承知のとおりレジャーブームでございまして、多くの問題がございますが、町の中にパチンコ屋が非常に多くございますことは、御承知のとおりでございます。あなたは、われわれと違って住宅街というようなことで、庶民の町をお歩きになったかどうかわからないのでありますけれども、非常に大規模なパチンコ屋が各所にございます。このパチンコ営業というものは、風俗営業等取締法の第一条七号に指定業種として入っておりますことは、御承知のとおりであります。  私、この中でお伺いをいたすのでありますが、最近統一的見解のような感じと思われる広告があるわけであります。それは一つは、本日開店ということでございます。本日開店が適当いたしておるかどうかということが疑問に思われる内容がございます。本日開店とは今日であって、明日では本日開店にはならない。第二番目には新規機械の導入、第三番目には大出血サービス。これは組合もございまして、ほとんどそういうような類似的なものがございます。新規機械の入れかえというようなことはいろいろございましょうが、大出血サービスというぎょうぎょうしい宣伝をいたしてまいっておる、このことでございます。私、パチンコは、ああいうことはいやなものでございますから、よく存じないのでありますが、パチンコの好きな友人に相当調べてもらいました。その結果、大出血サービスということになると、たまを何割かサービスするのか、あるいは景品についてサービスするような、平常と異なったサービスをいたすのかということを、私、パチンコ好きな友人に伺ってみたのでございますけれども、決してさような内容はない。特に、二十個が何円といたしますと、二十何個をサービスしておるということではない。定数のものである。景品も、特に内容が高額のものをあげるというようなものではない。こういうようなことを伺うので、私は少し誇大広告といいますか、こういった範疇に属する広告やに理解をいたすのでありますが、公取委員長は下々のことはわからぬ、こういうことになるか、あるいはもし私が申しますような内容であるとするなれば、これは公取としてどういう見解をお持ちになるか、これに対処をいたしてまいります一つの手段というものが、どういう公取としての内容をお持ちになるかということをお伺い申したい。
  101. 谷村裕

    谷村政府委員 私もパチンコをやったことがございませんで、よく存じませんが、そういう広告が出ていることは、よく見かけて知っております。業種業態によって、広告のしかたが消費者の選択を誤らせないように、わりと厳格でなければならないものと、その広告にある程度誇張があっても、ある意味では社会常識としてまあまあといわれるような、そういう業種とがあるかと思いますが、いまのような問題は、ある意味では、個別に二、三の例を見ていくということによって実態を知らなければならないというのが第一。第二は、もしそういうことがあって、それが利用者を非常に迷わせている、選択を誤らせているというような実態があるとするならば、業界における公正な競争のしかたというものについて、業界としての一つの規律と申しますか、公正競争規約のようなものを考えていくというふうな、さような問題になるかと思います。いずれにいたしましても、私、実態をよく存じませんので、御指摘のような点について、事務局のほうにひとつ勉強さしてみたいと思います。
  102. 栗山礼行

    栗山委員 どうでしょうか、公取委員長。事務局のほうに勉強さしてみたいということは、それなりの理解ができるのでありますけれども、やはり少し問題点があり過ぎるのじゃないか、こういう理解を私はいたしておるのです。御承知のとおり私どもは、いろいろ大阪市内、特に選挙区を広く歩きますので、一番目につくのは、ここにもパチンコ屋ができた、ここにもパチンコ屋ができた——こういうふうな異色ある業質でございますから、目につくわけなんであります。したがって、そういう四囲の状態をよくわかることが、きわめて目につく感じが深いわけでございます。これは誇大広告的要素のものかどうかということも含めて、可及的すみやかにこれを調べられて、検討を要する問題であれは検討する、こういうお考えがおありかどうか。それから、特に皆さんの所管の範囲に属する問題と、一つは大衆娯楽でありますけれども、射幸心をそそる業質でございますことは、これは否定のできない内容を持っておる、かように私は理解をいたしておりますので、それを含めまして、勉強さすというよりも、調査検討をすみやかにいたしてまいるというお考えがおありかどうか、これをひとつ……。
  103. 谷村裕

    谷村政府委員 勉強ということばを使って失礼いたしました。国会の委員会の席上で議員の方からそういうお話を承った以上、そういうことについての実態を知る、把握するということが必要であると思います。
  104. 栗山礼行

    栗山委員 公取はもうそれでけっこうでございます。  佐藤長官に……。  御承知のとおり、いろいろ長官がお骨折りになり、去る六日にようやくにいたしまして、天下に経済企画庁の取り組み方あるいは見解を、事務次官を通じて発表なさいました新聞料金の値上げの問題について、私どもは参考人の意見を徴してまいりました。これもいろいろ問題点がございますが、その中で私は、こういう質問を国民生活局長にいたしてまいったのです。現在、新聞料金は認可制ではない。しかし、これだけ国民的なシニアにおいて、報道紙として多くの国民消費を持っておるという一つの事実にかんがみて、新聞講読料金の認可制に取り組んでまいるという検討の用意があるかどうか、こういうことを私お尋ねを申し上げたのです。実はこれは行政の分野でなくて、政治的分野で検討を加えてまいる問題だと私は理解をいたしておるのでありますけれども、あいにく長官が留守でございまして、それなりの諸種の問題を含めて検討を新たにいたしてまいりたい。討論は避けまして、その範囲の御答弁を伺った。  長官が見えたのでありますから、私は重ねて、なぜ重ねてと申し上げるかといいますと、読売新聞からお見えになりました参考人は——私は、経済企画庁としての見解を伺って、参考人としての意見をお伺いをいたしたわけではないのであります。それにつけ加えまして、参考人が憤然といたしまして、言論の自由、報道機関の講読料についての認可制料金は、断固として反対する。——少し勇み足だ。私は討論いたしません。参考人の御意見を徴しておるものでございませんので、承っておきましょう、こういうことで終わったのであります。  私はやはり非常に問題点は大きい、検討を要すべき問題だ、かように考えておりますので、本論に入る前に、それらの経過を申し上げて、長官の簡明な御見解をちょうだいいたしたいと思います。
  105. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 御存じのように、現在政府の認可を要する料金というのは、ほかの理由もありまして、一つの事業統制というか、事業監督というか、そういうような法律的な基礎がございまして、それに基づくところの料金認可、それをまた、いわゆる今日のような物価の情勢でございますから、それをよすかとして、政府行政指導する際に一つの手段にしておる、こういう向きがあると思います。そういう意味において、確かに新聞事業というようなものについては、いわゆる言論の自由というような問題とも関連するわけでありまして、それに対する事業法をつくるかどうかという問題は、これは大問題でもあり、慎重でなければならぬと私は思います。率直に言って、いま通産省が所管とかいうことになっておるのですが、それもはっきりしないくらいに、今日事業面においての行政指導というものは行なわれていない。事柄の性格上そうなんでありますが、そうなっておるのは御存じのとおりであります。  でありますから、問題は、もしも御指摘のような認可の問題というようなことになりますと、もっと物価政策一般として、特定の料金について、物価政策の見地からの料金統制というものを行なうかどうか、こういうことでございます。今日、物価問題は非常に重要ではございますけれども、同時にまた、いわゆる統制物価というか、物価統制法的な構想はまだ持っておりません。できるだけ従来の手法によって何とかおさめてまいりたい。また、過去において物価統制の経験をわれわれは持っておりますけれども一つのものをやれば、次のものにまたその必要が移行するということで、結局凡百の物資すべてにわたって政府が介入するというような成り行きになるのが従来の経験であります。それだけに行政能率の問題から言いましても、はたしてそのことが経済統制として適当かどうかという基本的な疑問を、やはり私は持っております。それだけに、そうした意味物価統制というような問題については、いささか私は慎重でございます。  ただ、最近論議になっておる管理価格というような問題との関連において、これが管理価格的な様相が非常に強いものかどうか、そうしてまた、管理価格というようなものがかりにどの程度に存在するか、それに対してどう処置するか、こういうことについては、これはまた十分、今後物価政策上検討を要する問題であります。ただ、この問題も、率直に言いまして相当メカニズムの解明がむずかしい問題ですから、われわれは別に時間をそれに籍口しているわけじゃありませんけれども、いま物価安定政策会議において、特にその部門を設けて検討いたしております。運用のいかんによっては非常に問題の多い問題であるだけに、これもよく研究いたしまして、そして取り上げるべき適当な時期を見て取り上げなければならぬという考えを実は私は持っておりますが、そういう角度からかりに新聞料金というようなものを取り上げるかどうか、これは十分問題になり得ると思います。  ただ、従来の言論界の立場からいたしますと、たとえば警察の問題にいたしましても、その他いろいろな角度から、これはしばしば問題になっている問題でありまして、かりに料金を管理価格的な見地から取り上げるといたしましても、やはり新聞経営の自由を束縛するんだという見地から、さっきお引き合いに出されたような議論は、私は十分また起こってくる可能性はある、こう思われます。ちょうど国会の予算を行政府が拘束してはいかぬとかいう議論とちょっと似たようなことがありまして、やはり料金の収入というものは自由な経営の大前提になっているわけでありますから、そういう意味において当然議論は起こると思いますから、これはやはり新聞事業という特殊な性格からくるものであろうと私は思っております。  目下確たる結論を持っておりませんから、その程度しか申し上げられませんが、十分そういう問題として検討に値する、こういうふうに考えております。
  106. 栗山礼行

    栗山委員 御意見を拝しておくということで、重ねてこの問題には質疑をいたしません。  ただ、これに関連いたしまして、ちょっと長官お触れになりましたように、新聞値上げというものの理由づけを伺ってまいりましたときに——憲法に許されておる言論機関、言論の自由というもの、同時にこれは大きな世論の喚起機関でございます。俗にいう公器とも称して、一つの高いプライドを持っておる、こういうことであろうかとも思うのですが、私自身は、その値上げの理由を伺ってまいったときに、経済サイドのみによって新聞の値上げの理由づけをされて一おる。社会性及び公器たる本質とは何か、こういうことは、残念ながら一点もお伺いすることができなかったわけであります。  経済企画庁長官の談話の内容を見ますと、単なる物価政策の一環でなくて、報道機関の特質にかんがみてもこれは強く撤回を求める、明らかにこういう内容のものであったと思うのでありますか、ただ、読売の人が代表されたと理解をいたすのでありますが、言論の自由の問題と報道機関の問題は——明らかにこれは私企業であります。したがって、私はもう一点お尋ねを申し上げたいのです。  少なくとも大きな国民的公器の役割り、それから、あまねく全国民が購読するというものであるとするならば、私企業といえども一つの財政的措置をする、あるいは税制上の特例的な一つの処置等も行なってものを運んでいくということも、検討を進めてまいらなくちゃならないのでないか、こういうふうな質問も、私は展開をいたしました。  そこでお伺いをしてまいりたいのですが、将来財政的援助をするか、あるいは税制上の処置をするかというようなことについての見解は重ねて問いませんが、これに関連してお尋ねをいたしたい要点は、元来言論機関、報道機関というものは、憲法や、いろいろ自由が存するところでございまして、したがって、これに触れてまいることは、やはり行政の分野において、あるいは政治的にタブーなものである。私なんかは新聞に載りませんけれども長官のごときは毎日新聞に報道される、こういうようなことで、いろいろな影響がございますこともよく承知をいたしておるのでありますが、言論機関なるがゆえに料金制度もまた自由なんだ、こういう問題とが何か並行してものの考えが発想されておるやに、新聞社の御意見を私は理解をいたしたのであります。言論機関たる一つの経営の問題と報道機関の任務づけは、明らかに別なものだ、私はこういう見解を持つのでありますが、関連いたしまして、ひとつ長官の重ねての見解をこの点についてお伺いを申し上げます。
  107. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 自由というものをどういうふうに解するかという話でありまして、これはよく言論問題なんかでは、見解の相違がいままでも、ほかの問題でも、しばしば対立を来たしておるのは御存じのとおりでございます。そこを、どこらのところでもって仕分けるか、これは私は定説はないと思うのです。そういう意味において、この問題の処理は、もし具体的に日程にのぼった場合に、それについてあらためて検討をする、こういうことだろうと私は思うのです。いま私は、料金の統制というものが言論の統制に連なるかどうか、直ちに即断することはできないんじゃないかという程度の考えを持っております。
  108. 栗山礼行

    栗山委員 たいへん本論がおくれましたが、御承知のように所得政策は、わが国におきます大きな政治課題の方向に進んでまいっておる、こう理解をいたしておるわけであります。したがって、うんちくを傾げられる経済企画庁長官の所見をひとつ端的にお伺いいたしたい、こういうことなんでございます。  まず、わが国の物価上昇の主なる原因はどこにあるかということが、私の問いの一点であります。  第二は、物価上昇の原因については、非常に広範な面からこれを究明いたしてまいらなくちゃならない、各論の問題では解決つかないものだと理解をいたしておるわけなんであります。特にわが国におきましては、あまりにも経済成長のテンポが早過ぎた、こういう一つの問題もございましょう。あるいは、ゆえにこそ公共投資かおくれてまいって、そして階層間、地域間の所得格差の増大、こういうような結果になってまいっておる。こういうことにつきましては、長官もしばしば言明されておるとおりでありまして、私もそういうふうに理解いたすのですが、ほかには、やはり海外インフレの要因も、これ、ございましょう。確かにその一点もございます。第二番目には、やはり需給構造のアンバランス、こういうふうなものもあろうかと思うのでありますが、私は、やはりその中で特に日本の産業構造、経済構造が今日のような様相になってまいって、生産性の向上の著しい一つの格差増大、こういうようなものも物価上昇の主なる、とは申しませんけれども、大きな要因の一つになってまいったのじゃないか、こういうふうなきわめて大ざっぱな見解を述べて、ひとつ長官、私のお問いする限度においての御見解を承りたい。
  109. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 今日の物価問題はきわめて錯綜した原因によると、私も思っております。これが一つ、これは主たる原因であると言われるかどうか相当問題だと思っております。何といいましても、世界的なインフレの基盤の上に立っておる。特にわが国が自由化が進めば進むほど、わが国の国外との関係というものは密接になります。そうして、その海外の世界的な、今日世界的といっていいこのインフレの影警というものを免れないということが、私はやはり基本にあると思います。それでありますから、今日通貨問題も非常にやかましくなっているようなときでございますが、同時にまた、わが国独特の問題がございます。  いま、高度成長を急ぎ過ぎたというお話にあらわれておるところの、確かに日本の極端な重化学工業化の今日までの進みぐあいというものが、一方において卸売り物価の安定をもたらしておる。すなわち、重化学工業部面におけるところの需要に対する供給力というものを非常にふやしてい一これは設備投資の続行によって、当然のことですがもたらされてきている。そして、今度またその反面といたしまして、国力に限界があるわけでございますから、どうしても消費財生産部門というものがどちらかというとあと回しになった。これはあたかも社会主義国における様相といささか似ておると、私は思うのです。こうした点があったんじゃないか。そうして一方において、基礎的な重化学工業化が進めば進むほど名目所得の増大をもたらし、それによる需要の喚起というものがあったわけでありまして、それに応ずるところの消費財生産部門の供給というものが、必ずしも消費の変化に対応し切れなかった。そういう意味において、やはり高度の成長と、それからその成長のあり方というところにやはり基本的な問題があった、私はこういうふうに考えております。  その間にあって、当初の約束は別といたしまして、結局物価上昇と賃金の上昇というものを今日もたらしました。今日になってみますと、御指摘のように、生産性の格差ということがいわゆる日本の特殊な一つの原因となって、卸売り物価が安定しておるにかかわらず消費者物価がなぜ安定しないのか。諸外国においては、逆に卸売り物価上昇率のほうが消費者物価上昇率よりも高い国が、むしろ相当多いわけでございまして、それらの国と比較いたしましても、日本の物価上昇は特異だ。そこにやはり日本における生産というものが必ずしもまだ組織化されていない。中小企業の比重が高い。それからまた、雇用者に対する事業主の比率が高い。個人営業者の比率が高い。そういうふうなところにもあらわれておるところは、やはり未組織的な要素が多分にある。そこでいわゆる生産性の格差というものがそこに存在しておる。そのことがやはり、互いに物価上昇に拍車をかけている。これも私は、長期的な観点からいうといえると思います。今日はむしろいわゆる格差論よりも、直接の賃金コストの上昇ということがもうすでにあらわれつつありますから、それによるところの価格上昇影響のほうがさらに大きくなりつつあると私は思いますけれども、御指摘生産性格差という問題が、やはり今日までの物価上昇に、消費者価格上昇に相当影響してきているものだということは、私ははっきりいえると思います。
  110. 栗山礼行

    栗山委員 次の、三問でございます。  現在の賃上げ方式ですね。よく、春闘中心に行なわれておる、こう一般論でいわれておる、こう思うのでございます。いまの春闘のあり方というものについて、長官どのようなお考えを持っていらっしゃるかということであります。  賃上げの方法といたしましては、私も若干海外の視察及び若干のものを調べておるのでありますけれども、欧米諸国ではいわゆる長期賃金契約制度、こういうシステムによって行なわれておることも承知をいたしておるのであります。こういうシステムをわが国にひとつ積極的に導入してこれを助成する、こういうような見解がおありかどうか、こういう点が私の次の質問の要点でございます。
  111. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 日本におけるところの春闘の役割り、これはなかなかむずかしい問題だと思います。これは賃金の決定という賃金問題としての問題のとらえ方と、また、これと物価との関係、それぞれ違うかもしれません。しかし、いずれにいたしましても、高度成長が打ち続いてまいりまして、そうして労働力の需給というものが非常に逼迫度を加えつつある。ちょうどそういうときに労働組合運動というものが、やはりその段階としての特殊な役割りをになってきている、私はこう思います。そういう意味においては、物価の問題からいえば、これは非常な一つ決定的な、左右する力になってきております。そしてまた一面において、雇用者所得の上昇あるいは雇用者所得の平準化、こういう観点からいえば、一つの役割りを果たしてきているというふうにいえるかもしれません。しかし、それでも、どちらかというとわが国の春闘は大企業中心でございますから、中小企業との賃金格差をかえってはっきりさせてきているんではないかという批判さえもあるということを、私は耳にしますけれども、いろいろそういう意味で、所得あるいは賃金の観点から問題がございます。  そしてまた、何といいましても今日は、賃金が経営者と労働組合との間の交渉によって自主的に決定されるという意味において、春闘のような横断的な広い組織というものが活用されるということになりますと、ある意味において、その支配力というものが少しづつ強まってきておる。賃金市場における支配力というものか徐々に強まってきておる。これはもちろん、賃金の御存じのような形態であるとかあるいは契約の方式であるとかによって、日本はまだ諸外国ほどではございませんけれども、しかし、逐次そういう様相が加わりつつある。そこで、何といいますか、わが日本は、そういう意味においては、非常に組織化された国からいえば未組織的であるし、そしてまた、完全な自由主義的な決定という見地からいえば、そういう意味の支配力がちょうど高まりつつある途中の段階であろうと思います。そういう意味において、私は、今日非常にこの問題の扱い方がむずかしく とかく中途はんぱになりがちな点があると思うのです。もっと市場支配力というものが強まってきますと、一そう責任が重くなり、そして国民経済に相応したところの賃金上昇のあり方というものがどうあるべきか、そうして、それに携わる春闘というもののあり方というものがもっとはっきりと出てくると思うのでありますけれども、まだどうもその点が、必ずしも明確になってない。ちょうどそういうような段階にいま日本の春闘があるのではないか、こういう感じがいたします。ですから、賃金の上昇を通じて物価問題に非常に大きな影響力を持っておる。したがって、この賃金の上昇というものが、いわゆる経済の成長なり国民の所得の上昇というものと無関係的に行動するというようなことがあれば、これはやはり非常に問題である。そういう意味において、われわれとしてもこの春闘の行動というものについて非常に注目をしておる、こういうところが実際のところだろうと思います。  それから、長期の問題ですが、これは率直に言いますと、最近いわゆる賃金爆発ということばが欧米先進諸国にも、御存じのようにございます。そして、組合のリーダーがいろいろとやっても、なかなかそのとおりにならない。結局、そのこととこの長期賃金契約というものとが、必ずしも無関係でないように思われます。一体日本のように毎年交渉するのと、三年とか五年とかの長期契約をやってやるのと、いずれがいいのか、これは私は、物価問題としてもそうですけれども、賃金問題としても、その利害得失は、よほど比較検討を慎重にしていい問題である。そう軽々の結論は私は出せない、こういうふうにただいまは思っております。ヨーロッパでも三年あるいは二年の契約がずいぶんございます。三年目の賃金上昇率というのは、物価の見地からいえば非常に高くなってそして、そのことがまた非常な反作用をもたらしているというようなことも、私は聞いておりますそういうようなことで、この利害得失というものは、いわゆる雇用者の立場物価政策の立場、いろいろの角度がありますから、必ずしも断定はできない。  ただ、最近、いわゆる長期の契約という意味ではなくして、何といいますか、長期賃金構想といいますか、先のほうを見通して一定のビジョンというか目標を立てて、それに応じて単年度の行為をやっていく、こういう問題がございます。これは私はある程度いいことじゃないかというふうに実は考えております。もちろん、それがやはり国民経済全体の視野においてつくられることが当然期待される、そういう前提に立ちますならば、これは一つの進め方ではないかという感じもいたします。
  112. 栗山礼行

    栗山委員 若干私もそれについて意見があるんですが、きょうは討論ではございませんから、御見解を承ることにとどめておきたいと思います。  次の問題は、必ずしも明確なものではないわけでありますけれども、最近の賃上げの上昇過程というものを見てまいります場合において、一つはやはり景気の変動ということが、一つの作用的なものがあるのじゃないか。いわゆる景気がいいという場合については、賃上げの上昇率が高まってまいる。それから、景気が下降線をたどりますと、賃上げもまたややダウンの傾向になる。こういう傾向が特徴的に見られると思うのですが、この点は長官、どういうふうにお考えになりますか。これは私の見方でございまして、長官の見方をひとつ………。
  113. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 自由主義的な資本主義の経済体制でありますから、景気の変動というものは、これはある意味において当然ある。また、それがいわば今日の経済体制のいろんな問題をある時点において整理しながら、この体制が進んでいく、こういう一つの重要なポイントになるんだろうと私は思います。ただしかし、景気変動が非常に大きいために、また経済全体としてのロスをあまり大きくするということを極力避けなければならないということを、われわれは過去の経験によって学んだわけでありまして、したがいまして、第二次大戦以後の経済政策は、この景気変動の幅をいかに小さくするかということが一つの大きな目標になっておったわけでございますから、そういう意味において、景気変動の幅をできるだけ小さくしながらやっていく。そしてまた賃金についても、そのことがやはり、賃金上昇の安定性というものを確保する一つの重要な手段になるというふうに私は考えます。もし景気の変動が非常に大きいということになりますれば、どうしても賃金もその影響を受けざるを得ない。しかも、その影響の受け方というものは、賃金はまた、いわゆる経済の変動と違う硬直的な性格を持っておりますだけに、対応のしかたがぎこちなくなる。そのために非常にギャップが出まして、そして問題を生ずる余地が多いわけであります。それだけにまた、われわれは景気変動というものをできるだけ少なくしていきたい。いわゆる安定成長ということも一つ、そういう考え方に立っておるわけであります。
  114. 栗山礼行

    栗山委員 大体了承をいたしました。やはり景気変動というものについては、賃金上昇に無関心たり得ない要因の一つになっている、こういう、私のとらえ方とややニュアンスは別にいたしましても、御同意をいただげるような御見解をちょうだいいたしました。  そこで、私の持っている資料によりますと、四十四年は一五・八%アップであった。これは、私のったない資料によりますと、そうなっております。四十五年は一八・三%アップ。金額にいたしまして四十四年が六千七百九十八円、それから四十五年が八千九百八十三円。これも経済の変動、だけではなくて、雇用構造の変化等もございましょうけれども、大体景気変動との関連で否定することのできない要素の内容を持っている、こういうふうな理解を私はいたすのであります。したがって、ことしのいわゆる内外の経済の諸条件を客観的に見てまいりますと、若干ことしの賃金アップというものが低下をたどらなければならないのではないか、こういう論理的な一つの見方もできるわけなんでありますが、ことしの春闘の賃上げ率は、客観的に見ておおむねどの程度のもので——これは予測の問題でございますから、非常にむずかしいと思うのでありますけれども長官はどういう予測をされているか。  それからもう一つは、やはり平均賃上げ額というものをどの程度に、日本経済の諸要因をながめて落ちつげるべきが望ましいのか。たいへんむりな難題をぶっつけるわけでありますけれども、これはもう予測も入れましての一つの客観的な問題でございますが、お伺いいたしたい。
  115. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 春闘問題かどうなるか、これはなかなか私にも判断できません。今日、率直に言いますと、例年よりおくれておりますね。まだ鉄鋼、造船というところで、これからいろいろとあるようでありますから、そう軽々には私は申し上げられない。業種別によって多少それぞれ景気のよしあしもございましょうし、そういうことで、伸び率がいままでと同じというようなことは、今日の景気、昨年の後半、秋以来の今日の状況、風速六・七%といわれている経済成長の今日でございますし、伸び率が同じになるということはないと思いますけれども、しかし、その成り行きというものは、まだまだ予断を許さないわけでありますから、いま申し上げるわけにまいりませんし、それからまた第二の問題も同様に、これはよくございますように、経済の見通しや、それから長期計画などで数字が計算上出てくるものはございますけれども、しかし、いまそれ以上にお求めのような意味での数値ということになりますと、ちょっと私は、手元にそういうものがございません。
  116. 栗山礼行

    栗山委員 理事会で御了承を求めてまいりましたように、きわめて短かくやってまいりたいと思いますが、まだ十八問に達しておりませんので、御了承をいただきますればもう少し時間をちょうだいいたしたい、御配慮をお願いいたしたい、かように考えております。  賃金決定要因の考え方基調といいますか、質問でありますが、その一つは、やはり労働の需給関係、こういう雇用構造の問題がありましょう。第二は、やはり春闘相場によります波及効果というものも、これは否定することのできない要因になってまいる。三点は、企業側の支払い能力というのが問題の要因の一つになってまいりましょう。第四は、やはり物価上昇推移というようなものも一つの原因になっているかと思うのですが、要約いたしますと——理論的には、これの順位をどう見るべきかという一つの見方もございましょう。しかし、これらの要因をきわめて計数的に、あるいは科学的に把握するというような作業は一体行なわれておるのかどうか、この点でお尋ね申し上げたい。
  117. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 賃金の変動がいわゆる労働力の需要供給によるのか、あるいは春闘のような、組合の一種の支配的な力か作用するのか、企業の支払い能力によるのか、あるいはまた、物価上昇がどれだけ影響するのか、率直に言いまして、それぞれのウエートをきめることは非常に無理じゃないかと思っております。最近、物価と賃金との関係というようなことで、その間の関係について、企画庁でもよく数値を発表しておることもございます。しかし、これなんかもまだ試算にすぎません。そういう意味において、むしろまだ十分に数字的に申し上げる段階ではない。しかし、これらいずれもが、総合的な深いからみ合いの上で影響しておるということしか申し上げられないと思います。
  118. 栗山礼行

    栗山委員 次の問題は、御承知のように最近日経連は、所得政策の一環といたしまして、生産性基準原理の導入を唱えておるやに私は理解をいたしておるのです。しかも、これも、春闘の賃上げ対策の一環としてものをながめておるような感じがいたすのでありますが、生産性基準原理について、一体長官はどういう御見解をお持ちになっていらっしゃるか、端的にお願いします。
  119. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 これはほんとうは生産性本部に聞いたほうがいいのだろうと思いますが、中身は必ずしもはっきりしない点もあると私は思います。一応の目安として、経営者の立場から賃金はこうあるべきである、こういう見解を出した。そしてその際に、その生産性というものは、業種別の生産性というものをよりどころとして、一番手近に求め得る数値でもあると思います。そういう意味において、それを一つの目安にしておる。しかし、それを絶対的にそれだけできめるというわけではない。一つの目安である、標準である。そしてまた、それには企業あるいはその業種における特殊の事情というものもありますから、そこを非常に流動的に扱っておるものと私は思います。ですから、よくそのことで、業種別の賃金格差を固定させるものでないかというような批評もございますけれども、もしそこまでやるということになりますと、これでもって経営者の間に当然意見の対立が生まれることになるわけであります。そこいらをまるめて一応やられておるわけでありますから、そこまで硬直的な主張でないように私は受け取っております。  私も中身を十分知悉してないのですけれども、経営者の立場から一応の目安としてやっておるんだということで、やはり生産性ということが、ほかの問題とともに、賃金問題の一つの目安であることには違いありません。そういう経営者の立場というものとして理解しております。
  120. 栗山礼行

    栗山委員 いろいろお伺いいたしました。これは生産性本部の問題でありますけれども、いわゆる経企はこれをどう把握するか、こういうことでお尋ね申し上げたわけでございます。  生産性基準原理は、メリットの面もございましょうし、デメリットの面もあり、両面の内容を持っておる。しかも、生産性の測定というものはなかなかむずかしい一つの問題だ。お説のように、業種別の生産上昇率、こういうものもなかなかむずかしい問題でございます。しかし、問題は、生産上昇に見合う賃上げ率を設定して、そしてそれを貫いていこう、こういう固定化論の要素の一つがあるように私は見受けるのです。こういう考え方でいきますと、労使間並びに業種間に、お説のように各種の格差を固定化する、こういう決定版に推理としてながめてまいらざるを得ない、こういう見方も私はあると思うのです。特にそういう固定化というものについては、賃金の固定化につながる最も大きな要因の一つだ、こういうふうに考えるのであります。それから、対策上の問題をお持ちになるかということはいかがなものかと思うのでありますけれども、ひとつ私の質問の要旨にだけお答えをいただいたらけっこうだと思います。
  121. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 何といいましても現在春闘というものが行なわれておるわけでございまして、そのときに、一方のサイドである経営者の立場からの一つの戦略的な主張であるという前提があるわけでございます。それに対して、われわれがとやこう言う筋でもないと私は思っております。ただ、国民経済的に、もしくは第三者的な観点からそうした問題を取り上げるというチャンスも十分あり得るわけでありまして、それはもっと高い次元からそうした問題を検討するということになろうと思います。これについては十分議論を尽くしてないと思いますけれども、御説のように、それぞれ業種別にやるということには、いい点もあると思います。それから、固定化とか、いろいろの議論を誘発する意味において、デメリットもございます。しからば、全産業一本の生産性で考えるべきか、これにはこれで、また別の問題がございます。そこらは今後やはり十分議論を重ねませんと、結論の出ない問題じゃないかというふうに考えておりますが、しかし生産性ということが、賃金問題についての一つ角度での取り上げ方であるという抽象的な意味においては、これはやはり私は十分議論になる、こういうふうに考えております。
  122. 栗山礼行

    栗山委員 もうあまりたくさんございません。  次に、一般的な所得政策論をお伺いいたしま丸  端的に申し上げまして、いま熊谷報告と大川報告と申しますか、こういうものがございます。いろいろ私も勉強させていただいたのでありますけれども、非常に肯定的要素を含むものと、あるいはやや否定的要素を含むもの、こういうふうな考え方に私は受けとめておるわけなのでありますが、長官これをどうお考えになりますか。
  123. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 まあ熊谷報告は、今日は、私も直接聞いておりませんが、いろいろと熊谷先生のお書きになっているようなものを見ると、所得政策を行なうべきであるという御主張のように——これは正確でありませんか、私かいま伺っておるところでは感じております。しかし、熊谷報告を出されましたころには、まだ熊谷先生は、別に一定の結論をお持ちだったわけではないと私は思います。むしろ企画庁の委嘱を受けまして、委員会の活動としてあの問題を検討されたわけであります。全く理論的な研究に終始された。そして各国の制度等を研究されたわけであります。したがって、所得政策というものはこういうもんだということだけをおっしゃっておりまして、具体的な、今日の日本において所得政策がどうあるべきかということまで結論を出しておられません。そういう意味においても、われわれは理論的な研究というふうに受け取っております。  大川さんの報告も、いろいろ議論があると思います。いわゆる資源配分論というか、生産性格差論というか、そうしたものに相当重点を置いておられまして、私は、これは長期的な問題としては一つのりっぱな取り上げ方であるというふうに思われます。ただ、その中には、賃金分配率が恒常的に低下しておるとか——結論から見ると、立証するのが困難である、現実の数字と必ずしも合っていない、こういうように思われるものもあり、あるいはまた、データ不足というような感じのものもあります。そういう意味において、その中身についてもそれぞれございますから、一がいなことは申し上げられないと思いますけれども、しかし、生産性の格差という問題を取り上げられている点においてはりっぱな卓見であろう、こう思っております。
  124. 栗山礼行

    栗山委員 これも日本の所得政策論ということになりましょうか、こういうふうに限定してながめました場合に、主として賃金だけが所得政策論の重要な問題として論議されておるように、私も理解をいたしておるのです。所得政策論というものは、やはり利子の問題、配当の問題社内保留金の問題、企業利潤の問題、こういうよなものをやはり入れなくてはならぬのでありますけれども、故意にこれを無視された賃金論的所得政策論、私の飛躍か存じませんけれども、そういうような一面をながめてまいりました。所得政策論とは、やはりそれらを含めました総合的な一つの所得政策論というような方向の論でもってまいらなければ、所得政策論としての内容にならないのじゃないか、私の書生論でありますけれども、こう感ずるのでありますが、長官の御見解をひとつ……。
  125. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 御存じのように、わが日本の雇用者比率は、諸外国に比べましてまだそう高くございません。したがってまた、よくいわれる雇用者所得のウエートというものも、相対的には諸外国ほどは高くなっておりません。そういう意味におきまして、雇用者所得と物価との関連の度合いというものも、よその国よりは多少ウエートが低いと見ております。そういうことから考えましても、大体所得政策というものは、雇用者比率も相当高まり、分配率も高まっている国において取り上げられると思います。  そういうことをいろいろ考えますと、それだけに、今日、いわゆる理論としての所得政策論というのは日本でもずいぶん行なわれておりますけれども、現実の政策ということになると、まだ時期尚早であるという声が支配的に強いというのも、そこいらに原因があろうと思います。そういう意味において、われわれとしては、まだまだ十分に勉強をしておる段階である。いますぐという問題でございません。そして、所得において利潤の占める割合が相当高いだけに、当然所得政策の実施条件の一番の前提である国民的なコンセンサスというものを達成するということになりますと、雇用者所得だけを取り扱って済むはずのものではない。日本のいわゆる雇用者所得のウエートが低いだけに、これは当然他の所得とあわせて議論しなければ、所得政策が現実問題としてなかなか成り立ちにくいのじゃなかろうか、こういう感じをいま持っております。
  126. 栗山礼行

    栗山委員 労働分配率というものは、やはり諸外国に比べまして非常に低いという長官の御意見でございます。私も全く同感なんであります。むしろ最近、長期的な傾向としては、労働分配率というものは低下の傾向を示しておるのじゃないか。私はいま数字を持ち合わしておりませんけれども、概念としてはそういうふうに把握をいたしておるわけなのであります。  イギリスの問題でございますけれども、かつての労働党内閣で所得政策の導入を行なったということでございますが、イギリスにおける所得政策の導入の一つの基本的なものは、単なる物価政策の問題ではなかった、こういう一つの見方が成り立ちます。利子の問題をどうながめてみるか、配当などに対する厳たる規制等も行なって、税制上では所得に対する累進課税的な一つの問題も、もしくは社会保障の充実強化をはかっていく、端的に言うならば所得再配分政策、こういう内容を持っておったやに私は理解をする。私の論で言うなら、所得平等化政策の一環として導入されたのではないかというような私の受けとめ方をいたしておるわけでございますが、この点について長官の御意見解を承りたい。
  127. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 労働分配率の問題は非常に議論が錯綜しておりますし、必ずしも定説はないと私は思います。その国の経済条件、その国の歴史によっていろいろと違っております。概して言えることは、わが国が国際的に諸外国よりやや低いであろうということがほぼいわれています。これは先ほど申し上げました、雇用者比率がまだ低い、むしろ小さな事業主というものの比重が相当高いということをやはり示しておりまして、雇用者比率が低い現状において、これは雇用者所得の分配率が低いというのは当然やむを得ないところでございましょう。それからまた、ただずうっと分配率が低下しているという結論は、軽々にはとれないところであろう。われわれがただわかっていることは、いわゆる景気がよくなっておるというときには分配率が低下し、景気が悪くなると分配率が上昇する。こういう傾向は、過去のわれわれわれの数字から十分うかがい知ることができますけれども、これを恒久的に分配率か下がってきておる、こういう結論は、私はちょっと慎重を要することであろと思います。  最近、経済の成長も減速する、伸びが縮まってくるとかいわれておりますけれども、今日までは確かに非常な高度成長であった。その高度成長が何によってもたらされたかというと、外国のように自己資本を中心にして高度成長が行なわれないで、主として他人資本を中心にした高度成長であった。そのために、付加価値を資本に配分する率というものがどうしても高からざるを得ない。こういう急激な資本蓄積の過程というか、こういう急激な高度成長の過程においては、どうしても分配率というものがある程度押えられる傾向が出てまいる。しかし、同時に、また所得の上昇というものがそれを補って余りあるわけでありまして、所得の上昇すなわち賃金の上昇でありますから、獲得するところの賃金の絶対額そのものは、労働分配率が多少押えられても、結果的には高いものを手に入れることができる。今日、またたく間にフランス、イタリア並みの賃金ベースというものを日本経済が獲得したのも結局その結果でございますから、そういう意味において、労働分配率を云々するということは、それぞれの国々におけるところのいわゆる与えられた経済条件というふうに考えていいし、それから労働分配率というものは、そんなに大きく変化するものではございません。たかだか一%、そういうたぐいで動いている話でございますから……。ただ、一番影警するのは雇用者比率の増大でありまして、今後日本も——まだ六割五分にようやく達するかどうかという雇用者比率であります。新経済社会発展計画でこれが七割をこえるかどうかというところでして、諸外国のように八割であるとかそういう高いものと違いますから、そういう意味において、今後の成り行きを注目するということが必要であろうというふうに考えております。  それから、第二の問題は英国の問題ですね。しかし私は、ウィルソン内閣も、実際は必ずしもそうだと思っていないのです。やはり物価政策が中心であったと私は思います。第一その証拠には、ウィルソン内閣が最初に凍結したときには、賃金だけ凍結したのです。そうして、賃金だけの凍結ではやはり世論がやかましくなって、次の年から他の所得の凍結をはかるようになってまいりました。そういう意味からいいましても、やはり物価政策というものが中心で考えられている。しかし、価格と賃金、生産性というものを押えれば、当然再配分の問題に触れるわけですから、そういう意味においては、私はやはり物価政策として取り上げたにおいが強いとは思っていますか、まあこれは見解の問題でございます。
  128. 栗山礼行

    栗山委員 最後にお伺いをいたしまして、そして要望になりますか、あるいは確たるひとつ内容のほどをお伺い申し上げたいと思うのであります。  所得政策論を論議するのはいま時期ではないというお話もございます。あるいは反対をするということ、これはまあともかく将来の課題の問題であろうか、私もそのように理解をいたしております。ただ残念なのは、おしかりを受けるかもしれませんけれども、その基本になる統計が日本にはない。あるのは一つ、日本生産性本部だけが、労働生産性の指数についてこれを持っておる、こういうような理解を私はいたしておるのです。どうしてもやはり労働生産性の基本的な一つ統計も必要ではなかろうか、こういうふうに私は思います。しかも、それは御説でございましたように、労使双方が得心する、あるいは国民的コンセンサスを得られるような権威ある一つの構成をもってひとつ統計をつくり上げていくということが、日本の行政分野に欠けておる一つの最大のものがあるのじゃないか、私はこういう見解を持つのでありますが、長官として私の見解、それから特にそういう統計を、ぜひひとつ国民的コンセンサスを求める統計を、各界の権威を集めてつくってまいるというお考えがあるかどうか。これはひとつ厳として御答弁をお伺い申し上げて私の質問を終わりたい、かように考えます。
  129. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 おっしゃることはよくわかりまして、私まことに同感でございます。やはりしっかりした数字をもとにして議論しませんとから回りしますし、お互いに納得しにくいわけですから、そういう意味においても正確な数字をいかにしてそろえるか、これはわれわれとしてもできるだけ今後、経済政策の運営の上においてもぜひ詰めなければならないことでありますし、御指摘になったことは特に重要な項目ですから、ひとつ経済企画庁としても、格段にその点については留意してまいりたい、こう思っております。
  130. 栗山礼行

    栗山委員 どうもありがとうございました。終わります。
  131. 小林進

    小林委員長 松浦君。
  132. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 理事会の申し合わせの時間が三十分、あとにまた質問者があるようでありますから、簡潔に質問をしますので、簡潔に御答弁をいただきたいと思います。  まず第一点は、御承知のようにこの第六十五通常国会は物価国会だ、こういう前宣伝のもとに、各議員あるいは政府物価対策に万全の努力をしてきたかどうか、そのことを本委員会の一議員として反省をいたしますと、まことにじくじたるものがあるわけです。一体これだけの物価上昇、こういった段階で、国会が国民のためにどういうことをしてやったのか、政府は一体国民のためにどういうことをしてくれたのか、お互いにどういう議論をし合ったのか、こういうことをいま、会期末にあたって反省をしてみますと、ただことばのやりとりだけ、その場限り、値上げをしようとする業種を、社長なりあるいは取締役を並べて、参考人の意見を聴取して、質問をしつばなし。政府は哀願をする、陳情をする、値上げをしないようにしてくれないかといって哀願をする。われわれのほうは、国会に出て口をとんがらかしてやかましく言うだけ。何にも打つ手はない。  私はこの際、物価担当の長官にぜひお願いをしておきたいのは、やはりもう口先だけの議論では、この場限りのお互いの討論では、物価という問題についてはもう国会の権威がなくなってしまう。今国会ではできなかったかもしれないけれども、そういった反省の上に立って、どうそれでは対処しようとするのか、そのことについて私は質問をしたいと思うのです。  まず第一点は、御承知のように、野党の各党首が佐藤総理に質問をしたときに、佐藤総理は、管理価格の問題については、現行法体系の中で取り締まることができるのです、こういう答弁をなさったのです。また、そういう答弁をなさったはずです。ところが、この第六十五通常国会を通じてみてもおわかりのように、ビールにしても、あるいは新聞にしても、管理価格、こういったものはどんどんと上昇して防ぎようがない。現在のこういう状態の中でも、依然として経企庁長官物価担当大臣として、現行法体系の中で管理価格は取り締まることが可能だ、こういうふうにお考えになるかどうか。もし、不可能だとお考えになるなら、将来どのようなことをしようとなさるのか、その点を明確にお答えをいただきたいと思うのです。
  133. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 総理も、現行法で全部できるとは言っておりません。独禁法等現行の体系をできるだけ使ってやれるものはずいぶんある、というふうに言っておられます。ですから、その後他の質問に答えて、やはりいろいろと管理価格議論も出ましたけれども、十分それについても検討の用意のあることを言っておりますし、われわれも、現在の独禁法その他の法律の体系の範囲内でずいぶんできるものがあると考えております。その限りにおいて、私はそれを運用してやってもらわなければいけない、こう思っておりますが、やはりそこに限界があるという点も、いろいろの議論を通じて明らかにされておるわけです。   〔委員長退席、武藤委員長代理着席〕  そういう意味において、管理価格問題か非常にやかましくなってきておることは、われわれも十分わかっておるところでございます。ただ、管理価格問題をどういうふうに取り扱うかということは、率直に言って、最もむずかしい経済問題の一つでございますだけに、われわれとしても十分に検討したいということで、現在安定会議の中でも、特別の部会を設けてこれを検討しているような際でございます。決してこれをなおざりにする、こういう問題ではない。ただ、日本の場合の管理価格の様相というものは、諸外国とは必ずしも同じでないだけに、十分検討したい、こういう気持ちでおるのでありまして、すぐ行政介入をして、そうしてぴしゃっと押えられない、こういうところの歯がゆさというか、私も松浦議員と同じような感想を持ちますのですけれども、それにはやはり、それに相応したものを検討した上でもって考えなければだめなのではないか。しかし、同時に現在は、よく消費者イズムというふうにいわれておりますけれども、やはり政府が警告をし、そうしてこれは、まあ政府が懇願をするのだというふうにおっしゃいましたけれども、私はそんな懇願というつもりではございません。それは警告を発するものは発する。これはこれでもってやはり一つ行政であり、力になっている、こういうふうに私は感じています。  しかし、いずれにしましても、昨年度御存じのように、特に季節商品を中心にあれだけ上がったわけでありまして、われわれとしてもこの方面については特に力を入れて、できるだけ供給安定の対策を講じつつあるわけでございますからして、まあできるだけのことをやっていく、こういうことだろうと思います。  管理価格の問題については、いまお話がありましたように、なかなかむずかしい問題もあることは、われわれも十分わかっておるつもりでございます。
  134. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 大臣、やっぱりことばだと思うのです。国民は、そういうことばはもう飽き飽きしておると私は思うのですね。いつ聞いてもそうなんです。ですから、やっぱり管理価格については何年までに目標を定めて、こういうものについては何年までには結論を出します、そういう一つの計画性を持った議論というものがないと、ただ議論をします、検討します、結論が出るまでですということであれば、同じことの繰り返しだと思うのです。この際思い切って、政府は自信をもって、それでは、管理価格については何年までには結論を出しましょう、それくらいのめどを与えて、物価対策に意欲的に取り組むべきだと思うのです。これは希望ですから、そのことについて大臣の御答弁をもらおうとは思いません。  一つの例ですが、大体再販規制の問題については、昭和四十二年に、御承知のように政府が単独立法を提案しようとなさって、そして実際には、周囲の情勢が悪くて、本問題については、現行の法制の運用の中でそういった再販弊害というものは取り除きます、こういうことを四十二年に政府発表しておるわけですよ。依然として再販問題は解決しておらないですね。しかも、公正取引委員会で、再販問題について具体的に一応弊害規制等という形で出てきたのは、四十六年四月十五日ですね。ここにもらっておりますが、そのときにそういう法律政府が出そうとして、その法律のかわりに、現行法体系の中で弊害規制しましょうといっておきながら、現実には依然として、この再販問題については何ら措置されておらない。再販問題が消費者パワーの前でやかましくなってきたから、申しわけ的に、こういったものが文書として出されてきておる。私はそういったあり方が、やっぱり政府物価に対する取り組みの姿勢というものをあらわしておると思うのです。  公正取引委員長、気分を悪くしないで聞いてもらいたいと思うのですが、実は私は、再販の問題について以前に資料を要求したのです。再販については認可だから、公正取引委員会資料があるはずだ、五千九百から六千の認可商品について、全部の商品名と価格を私に資料としてください、あるはずです、こういうふうにして事前にその資料の提出要求をしたら、何と答えたと思うのです。だれが言われたとは申し上げませんけれども、そういったものはありません、現在書類を整理して一表にしようとしておりますから、先生もうしばらく待ってください、こういう答弁です。現実的にそういう資料は、ここに要求しても出てこないのですね。こういう姿勢で、一体再販問題に取り組む姿勢があるというふうに国民が理解できるかどうか。当事者である公取委員長自体もおわかりだと私は思う。やっぱりことばだけのやりとりではだめだ、もうこの際実行すべき段階じゃないかと思うのですね。  私は一つの具体的な例として四十二年の問題を取り上げたのですが、長官、こういう問題をどうお考えになりますか。また、公取委員長は、そういうことができない理由は人が足らないのか予算がないのか、私はそういうことをこの際、国民の前にはっきりすべきたと思うのです。なぜそういったことさえできないのか。常識的にいえば一表にされておらなければならない再販商品一覧表というのが、なぜないのか。それは現在の公取の陣容では、なかなか六千の品目についてはむずかしいならむずかしい、そういうことを言うべきであって、ただできません、これから用意しますということでは、問題は解決してこないんじゃないかというふうに私は思うのです。この点について長官並びに委員長の御答弁をいただきたいと思います。
  135. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 松浦さんの御心配も、私もわからないわけではないのですけれども、しかし、管理価格の問題は、比較的最近やかましくなってまいりましたが、これをわれわれは、別に三年も五年も引き延ばそうという気でいるのではないのですよ。これはいま鋭意検討しているわけです。ですから、そういうむずかしい問題に対処するには、やはり十分な検討をして、そうして結論を出したいという気持ちを持っているだけでありまして、何もそういうものを何カ年計画というような、非常に長期のものではございません。われわれも、この問題をどう取り扱うかについては、やはり非常に頭を悩ましておるわけでございます。ただ、簡単でない問題であるだけに、これを検討しておる、こういうことでありますから、そういつまでもこれをじんぜんとして引き延ばす、こういう観点のものではありません。もしその結論が出、どっちの方向へ持っていくべきか、それがはっきりしたときに、政府としてはそれにかわるべき方策いかん、あるいはまた、どの方向で進むならばそれをどのようにやっていくか、そこいらの点を当然はっきりさせなければならない、こういうふうに考えております。
  136. 谷村裕

    谷村政府委員 二つお答え申し上げます。  第一点で現行法、特に独禁関係法律でもってどの程度にやれるかという問題、これはいろいろ御議論がございました。私どもは、できるだけ競争条件を整備するようにいたしたいと思いますけれども、現在の経済社会の情勢は、これは先進国が大体みなそのようでございますが、必ずしも競争条件だけではうまく動かない、そういう経済社会になってきております。そういう意味で、競争条件あるいは市場メカニズムを補完するものは何であるかということが、先進諸国、特にヨーロッパあるいはアメリカ等においても議論されている問題でありますし、また新しい意味におけるインフレ問題として、大きくクローズアップされている問題だと思います。いま経済企画庁長官御答弁になりましたように、私ども独禁法立場でやれるだけのことはいたしますが、それだけでは必ずしも万全ではないというときに、いかなる対策がとられるかということは、これはその簡単なものではない。先ほど伺っておりましたが、栗山議員と佐藤大臣との間でもやりとりがありましたようなことにまで触れませんと、なかなかむずかしい問題であるというふうに思います。  それから第二点、再販の問題でありますが、御指摘のように、私どもといたしましても、必ずしもスピーディーにきちんとやった、おほめをいただけるようにタイミングよくやったとは思いません。ずいぶん時間がかかりました。また、問題が片づくのではなくて、これからほんとうに私どもがやらなければならぬ仕事かうんとありますし、また基本的に問題として検討し直さなければならないこともある、これは先ほど、再三お答え申し上げたとおりであります。一つの例としておあげになりました再販の具体的商品名、たとえば歯みがきでいえばライオン歯みがきが、何という歯みがきの銘柄、名前でもってやっておるかというふうなリストを一表に調製することには時間がかかりますので、暫時御猶予願いたいということを申し上げたいと思いますが、少なくとも届け出してまいりましたことは事実でありますし、どういう商品名のものがあるかということも、私ども資料としては持っておりますのでも直ちにそういうものを一表のリストとして調製してお出しすることができなかったということではないかと思います。その点は、お気に入らなかったようでまことに申しわけないと思いますけれども、御要望に沿えるようになるかと思います。
  137. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 公取委員長、誤解のないようにしてください。気に入らないのではないのですよ。そういう状態だという経過の御報告を申し上げただけなんですよ。ただ問題は、公取委員長、直接見て、これは再販品目だということがわかりますか。われわれも、これが再販品目だということは全然わからないのです。ましてや国民は、五千九百から六千という品目、これが再販品目だということは全然わからないと思うのです。そういうことも、現実的に消費者の不満として起こってきておるのですね。ですから、そういったことはもっと的確にスピーディーにやれるのではないだろうか。そういうふうにして、国民から再販品目はどういうものかと聞かれたら、こういうものだということがすぐぱっと出るように、いま書類を全部繰らなくてもいいようにしておくことが正しいのではないか。もう再販問題は議論されて長いわけですから、そういうことを申し上げておるだけで、何も気に入らないというわけではない。公取はそういう状態だということがわかったということなんです。  もう時間がありませんから先に進みますが、私は、こういう意見もあると思うのです。  再販問題で、なぜ化粧品が再販がよくて、電気製品は再販いかぬだ、こういう質問を、ほんとうに素朴な国民の意見として出されたときに、一体現在の法体系の中でどういうふうに答えることができるのか、払は非常に疑問だと思うのですね。その点は、やはり再販規制する法律というものがないからなのですね。要するに、化粧品がよくて、なぜ電気製品が悪いのかと言われたときには、なかなか説明に苦しむというふうな状況があるわけなのです。これは先ほど、私の前の方がいろいろとお話しになったかもわかりませんが、原則的な再販規制法というようなことを考えるべき段階に来ておるのではないかということを思いますけれども、そういった質問に答える意味でも、その点公取委員長はどのようにお考えになりますか。
  138. 谷村裕

    谷村政府委員 原則的には、メーカーがたとえば販売業者にその販売価格を指示し、かつ、それを拘束するということはいけないのだということに、現在の独禁法ではなっているわけでございまして、わずかに二十四条の二の二項によって一定の要件を備えたものが指定されれば、それよって例外的に認められる、そのほかにまた、法律上当然に著作物等については再販維持契約が認められるということになっておりますので、原則は禁止というたてまえになっております。具体的に、なぜこれを指定し、なぜこれは指定しないかという問題は、これは、それがほんとうに再販の必要があるかないかということによってきめたということになるかと思います。
  139. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 そういう解釈は、法の運用解釈として存在すると思うのですね。ただ問題は、それでは、公取指定する商品とは何ですか、再販指定する商品とは何ですか、こういう質問に、公取委員長はどのように答えればいいのでしょう。
  140. 谷村裕

    谷村政府委員 私が公正取引委員会に参りましてまっ先に事務当局に質問したのが、いまおっしゃったようなことでございまして、要するに日常商品、消費物資であって、そうしておとり廉売に使われやすいもの、それが守ろうとする法益の対象となるところの再販指定商品になる、かように考えております。
  141. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それでは、日常商品で、おとり商品に使われるおそれのある商品というのは、どういう商品を言うのですか。
  142. 谷村裕

    谷村政府委員 法律に書いてございますように、いわゆるブランド商品であり、そうしてそれがちょうど持ち運こび、もより買いとしても手ごろなものであり、かつ、値ごろのものであるというふうなことで、そして過去においても非常にそういうおとり廉売等に使われたことが多かったような品物、かようなことで昭和二十八年に法改正がありましたときに、こういうものをそういうことに指定してほしいという要望が業界のほうから出てまいりましたときに、その中から審査して、そして指定したというふうに聞いております。
  143. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 二十四条二の一項のただし書きに、一般消費者利益を不当に害することというのがありますね。それは一体どういう状態のことを不当に害するというのか。消費者自身がこれは不当ではないか、こう言ったことをもって、その消費者利益を不当に害するという判断をするのか。それとも、消費者のほうがそういうことを言わなくても、公取のほうが一方的に不当であるという判断をするのか。それともその両方を兼ね合わせて不当というのか。具体的にどういうことを不当というのか、その点も具体的にひとつお答えいただきたいと思います。
  144. 谷村裕

    谷村政府委員 私どもが四月十五日に公正取引委員会の公式の発表としていたしましたところの前段に書いてございますが、要するに、再販売価格維持契約によって小売り店なりの販売価格メーカーか拘束すること、そのこと自体から起こる問題として、消費者利益侵害があるわけでございます。それは主として価格の問題になるかと思いますが、幾つかここに例があげてございますように、たとえば消費者に還元されないような不当に高い中間経費かそこに、再販のワクの中でもし与えられておるとすれば、それは行き過ぎであるというふうな問題があるわけでございます。そうしてそのことは、私どもはもちろん、消費者等からのお話によっても指摘を受けて動くこともございますし、そうでなくて、消費者のほうがかりに問題になさらないようなときでも、そういうことを見つければ進んでやるというふうに考えております。
  145. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 これは長官にお尋ねをいたしますが、いま消費者の中には、大多数の国民が、再販をもう廃止すべきじゃないか、この際再販はもっときびしく規制すべきじゃないかという意見が出されておるのですね。ところが業界のほうでは、中小零細企業の保護、あるいはダンピング、あるいはおとり、こういったおとり廉売等の関係で残すべきだということを言っておられますね。そうした場合に、消費者のほうは、消費者利益を不当に害するおそれがあるからこそ再販のあるものに反対をする。ところが業界のほうは、いや、その再販はおれたちのほう、中小企業なり零細企業を保護する意味で必要だ、こういった場合に、利害が対立します。そういった場合、法体系の中ではいずれを可としいずれを否としますか。物価担当大臣としてそれをお答えいただきたいと思うのです。このことは非常に重要な問題だと思います。
  146. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 法律上いずれが否であるとか是であるということは、法律から出てこないと思います。やはり政策判断の問題であります。一方において価格の混乱があり、そのことが経営の不安定をもたらしたという過去の経験というものを徴して、こういう制度ができておるわけでありますが、今日においては、物価問題という新しい角度からこれを見直さなければならないという新しい段階になってきておるわけです。そういう際には、先ほどいろいろと議論をここで伺っておりました、いわゆる過大なるマージンの問題であるとか、そうしたものを的確に運用によって排除していくということが、やはり問題なのじゃないかと思うのです。そういうことを運用によるのか、あるいは運用だけでなく法律によったほうかいいのか、そういう判断の問題はあるかもしれませんけれども、それをいま公取としてもできるだけ是正を行なおう、こう思っておる際でございますから、私もできるだけ公取委員会の運用を見守りたい、こういうふうに思っております。
  147. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 公取委員長にお尋ねをいたしますが、消費者が直接、このものについては不当だ、極端に言うと、この法文ただし書きの一般消費者利益を不当に害するおそれがある、害するものだというふうに公取に対して申告があった。ところが、片一方で業者のほうでは、いや、おとり廉売があるから、これはひとつ再販に認めてもらいたい。それがいま大臣が御答弁になりました、あるいは四月十五日の政策的に発表なさった三項目があろうがなかろうが、そういった話が出たときに、公取としてはどういう判断をされるのか。政策的な判断をなさるのか。そのことも、公取としての立場をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  148. 谷村裕

    谷村政府委員 消費者がどういうことが不当であるというふなポイントポイントが、やはりそこで客観的に立証されなくてはならないだろうと思います。消費者立場というのはいろいろな立場で、そしてまた、非常に即物的にいろいろなことをおっしゃることが多いわけでございますけれども、やはり私ども法律の執行をいたしておりますものの立場といたしましては、具体的な案件について、具体的にどういう意味で不当であるかということを見なければならないと思います。したがって、不当であるかなというお話がきましたときには、その内容をよく承りまして、そしてその個別個別の状況に応じてやっていくということになると思います。
  149. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 消費者のほうから申告のあったものを個別的に審査をなさる、そのことはよくわかりました。ただ問題は、抽象的にここに書いてある一般消費者利益を不当に害するということは、公取が判断をする。ところが消費者のほうが、公取がそういっても、こういう再販はもうやめてくれ、不当にはもう害しておるじゃないかという場合には、公取の政策的な判断というものが優先するということだと思うのですね。それは事実でしょう。その点どうでしょう。
  150. 谷村裕

    谷村政府委員 まさに私ども一般社会に対してそういう責任を持ち、またそれは、国民から負託された私どもの任務であると思います。
  151. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 だとすると、五千九百から六千に及ぶ再販指定商品についてこの三項目について調査をし、さらに、そういった商費者の苦情等についてチェックをするのは、全体の商品について再チェックをするということになるだろうと思うのですね。だとすると、一体それを全部チェックして終わるのに、どれくらいの期間を要するのか。そういう調査能力が現在の公取にあるのかないのか。なければ、どういうことを国会に要望なさろうとするのか。要望というのは予算とか人員のことだろうと思うのですね。そういう点について公取委員長から御説明いただきたいと思います。
  152. 谷村裕

    谷村政府委員 いろいろな意味での消費者の不満というものは、何も再販品に限ったことではなくて、かりに再販品でなくても、先ほど御指摘がありましたように、必ずしも完全な競争条件が整備されていないような経済社会におきましては、たとえば高いリベートのものもあれば、非常に巨大な広告宣伝あるいは販売促進のためのリベートを出すというふうなものもあろうかと思います。それこれ含めましていろいろな御不満があるうちで、再販という制度の上に乗っているものについてのいろいろなポイントポイントを、一体おまえは個別に全部見ていくのか、それだけの能力があるのか、やれるのか、こういうお話でございますが、やはりこういった問題はちょうど不当表示などと同じで、全体として私ども一つの方向を考え、それに即して個別的にスポット的にやってまいりますけれども、大きな一つの流れと申しますか動きというのは、これはやはり一つには、業界のほうのいわば自己責任と申しますか、あるいは自主的な努力によってそういう方向を、そういうスポット的なガイドに従ってやっていただくということになると思いますし、もう一つには、それぞれの物資を所管しておられる行政官庁においても、そういう方向で指導して、いっていただきたいというふうに思っております。しかし、私どもとしては、私どもとしてできる限りにおいて、それぞれの品目について問題と思われるよりな点を、やはり事に応じときに臨んでつっついてまいる。ちょっとことばが悪うございますが、そういうことで全体の姿勢を正していただきたい、かように思っております。
  153. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それを具体的にできる問題として、物特の連合審査のときに、渡部委員からも具体的に質問があったように記憶をするのですが、一つの手始めとして、これは再販品目であるという表示ですね。消費者に対して、これは再販品目ですよと、再販品目であるという指定をするような表示ですね。さらには、こういうものは再販品目ですよというメーカー名、あるいは期日ですね。いっしたとか、それから商品名、価格、こういったものについてオープンにするお気持ちはあるかどうか。その二つについて公取委員長にお尋ねしたい。
  154. 谷村裕

    谷村政府委員 再販品であるという一番大きなワクは、たとえば歯みがきであるとか化粧品であるとかいうことになっておりますが、それを今度はさらに指定で、詳しくはどういう口紅であるとか、何とかおしろいであるとか、ポマードであるとか、あるいは何とか薬であるとか、そういうふうにして書いておりますが、具体的に、店頭で売られている品が再販品であるか、あるいは再販品指定になっているけれども再販品であるかということは、これはわかりません、いまのたてまえ、姿では。そこで、そういうことがほんとうに必要であるならば、私どもそれを出すことは、何も一つ企業の秘密を侵すわけでもなければ、むしろごくあたりまえのことでございます、届け出てもらっていることでございますから。ただ、どうやって一般に知っていただくかということはむずかしいことかもしれませんけれども企業の名前、そして売っている商品の名前を公表することは、いささかもやぶさかでございません。
  155. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 表示についてはどうですか。
  156. 谷村裕

    谷村政府委員 これは、当該商品のたとえばケースなりあるいはその品物なりに再販品、非再販品と表示させる問題でございますね。
  157. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 そうです。
  158. 谷村裕

    谷村政府委員 それについては、そうしたほうが私はよろしいと思いますし、また業界もそれを拒む理由はないだろうと思います。あるとすれば、再販品だとボイコットされるからとかなんとかいうふうな話かもしれませんけれども、ほんとうに消費者のためにこれはやっているのだという自信があるならば、別に再販品であるということを表示なすって一向に差しつかえないと思います。ただし現在の法律では、それの表示を法律上義務づけるという形は、いまの法律でもってやれるかどうかという点については、まだ疑問がございます。したがって、かってお答えいたしましたように、できれば業界が自主的にそういうことをやっていただく。たとえば公正競争規約の中にでもそういうことをうたっていただくというふうにお願いしたいと思っております。
  159. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 公正競争規約等について、事前に公取のほうか、そういった行政指導をなさるという意思はありませんか。
  160. 谷村裕

    谷村政府委員 そういうことをいたしたいと思っております。
  161. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 三十分という指定時間でありますから、そのほか大臣にもいろいろとお尋ねしたい事項があったわけでありますが、時間がもう経過をしてきておりますから、ただ一つ大臣に、これは要望として、実現可能かどうか——事前に質問内容について御連絡をして一おらなかったので、唐突になって申しわけないかもしれませんが、実は米の問題ですね。消費者米価の値上げについては、これを抑制する物統令をはずしても、その問題については事前に米価審議会の議を経るというふうに、米価審議会で決定づけられて、政府のほうも、そういうふうに米価審議会に御答弁なさっておるのです。だとするなら、物価に関していろいろ議論をし、物統令についてもいろいろと議論をしてきた本委員会に、少なくともそういった問題が提案され、政府方針がきまった段階では、政府として本委員会に、そういった物統令廃止後の消費者米価の扱いについて、最終的な政府案をわれわれにお示しいただき、議論をする段階を経られるというようなお考えがあるのかないのか。非常に唐突で申しわけありませんが、お聞かせをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  162. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 いまの予定では、八月ごろに何か米審で議論をするようです。でありますから、そのときに国会があるかどうかにもよりましょうけれども、われわれとしては、できるだけ消費者米価が上がらないようにということで対策を講ずるのでありますから、それは皆さんの御批評は大いにけっこうであります。適当な機会さえあれば、そうした機会にその構想というものを表に出す。これは米価審議会におそらくかけて、そして当然表に出る問題でございますから、別に政府か秘密裏にやる問題ではございません。できるだけひとつ大方の意見も伺って、よりよい方法でやってまいりたい、こういうふうに考えております。
  163. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私の質問時間が過ぎましたので、これで終わります。ありがとうございました。
  164. 武藤嘉文

    ○武藤委員長代理 有島君。
  165. 有島重武

    ○有島委員 再販の問題については、いままで相当論議がかわされて、私も非常に時間が少ないらしいので、この問題はまた次のチャンスに譲ることにいたしまして、私は、具体的な牛乳の価格形成の問題を少し触れておきたいのです。  牛乳と一般的に申しますけれども、いわゆる市乳といっている、普通売っている牛乳でございますね。これは直接飲むために売っておる牛の乳である、こういうことになっておるようでございますけれども、加工乳と合成乳、こういうのがあるわけです。これは加工、合成して、牛乳と、見たところではほとんどわからない、飲んでもわからない、科学的に分折してもよくわからないというような乳製品が出回っておるようでございますね。加工乳のほうが、実は安上がりにできている場合がたくさんあるのに、高く売られているという場合が非常に多い。こういったような問題について、企画庁としても公取員としても、あるいは農林、厚生としても、どういうふうにお考えになっているか、こういったことを少し伺っておきたいと思います。  初めに厚生省に伺いたいのですけれども、市乳と称するものに加工乳が混入して販買された場合、法規上はこれはどういうことになるのか。いま混入して販買された場合なんて言いましたけれども、この具体例というのはたくさんあるのじゃないかと思いますが、食品衛生法七条の規格違反になるのかどうか。そういった例がいままでもあったと思いますけれども、現在も行なわれていれば、そういうことについて……。
  166. 浦田純一

    ○浦田政府委員 先生が御指摘のように、市乳にには、食品衛生法の根拠を置きまして、牛乳及び加工乳とあることは事実でございます。牛乳とは、もちろんなま乳をろ過あるいは殺菌しまして、それを区分けして密封して、そのまま直接飲用に供するというものでございますか、加工乳は、なま乳とか、あるいは牛乳またはこれらを原料として製造いたしました食品を加工または主原料として、牛乳に類似する外観を有し、これもまた直接飲用に供するということになっております。しかもこの加工乳の成分規格は、一般の牛乳と同じようにきめられておるわけでございます。したがいまして、この成分規格に合致する限り、また、直接なま乳あるいは牛乳をもととして製造した限りにおきましては、第七条の違反は成立しないというふうに、私どもは運用をいたしております。
  167. 有島重武

    ○有島委員 そういたしますと、いわゆる市乳、なま乳というのですか、市乳と加工乳とは区別しないでもいいんだ、いまのはこういうお話になりますね。
  168. 浦田純一

    ○浦田政府委員 市乳とは一般的にいっていることでございまして、あくまで牛乳は牛乳、加工乳は加工乳でございまして、その点は明確に標示するということになっておるわけでございます。
  169. 有島重武

    ○有島委員 そうすると標示の問題になるわけですね。そうしますと、都内で販売されております紫色のフードをかけたもの、これは市乳といわれておるわけでございますけれども、この中に加工乳が入っておるということ、これは大部分は入っているというふうに私は聞いているのですけれども、この事実についてはどうでしょうか。
  170. 浦田純一

    ○浦田政府委員 先ほども御説明いたしましたように、加工乳というものは、食品衛生法に基づいてこの成分規格が定められて、販売も許可されて認められておるわけであります。したがいまして、当然、市中に加工乳ということでもって出回っておることはふり得ると思います。
  171. 有島重武

    ○有島委員 そうすると、その加工乳、その合成されたものが、紫色のフードをかぶって売られていてもかまわないわけですね。
  172. 増田久

    ○増田(久)政府委員 私からお答えさせていただきたいと思います。  現在公正取引規約というのがございまして、その第三条で、要するに、いわゆる加工乳ではない牛乳につきましては薄紫色のフードをもちいる、そのほかのものはこれをもちいてはならないというようなことになっております。したがって、紫色はあくまでも普通のいわゆる牛乳でございまして、その他の色のもの、茶色とかなにかつけておりますが、あれが加工乳だ、こういうことに相なっております。
  173. 有島重武

    ○有島委員 厚生省のほうでは、そういうことはかまわない。だけれども農林省のほうの御見解では、紫色のフードはほんとうの、いわゆる牛からしぼったそのままの牛乳である、そういうふうになりますか。もう一ぺん厚生省からもお願いしたいと思います。
  174. 浦田純一

    ○浦田政府委員 紫色のものとは直接関係はございませんが、食品衛生法上では、牛乳または加工乳については明確に標示するということになっておりますので、それが混同されている、あるいは誤って混入されていることについては、私ども立場としてよろしいことではございません。
  175. 有島重武

    ○有島委員 これは実際にはほとんど常識的にといいますか、あたりまえのことになっておるようなんですけれども、紫色のフードのものが、実際に純粋な牛乳であるということはきわめてまれである。あるいはそういうのはほとんどないんじゃないか、そういうような現状は御存じでしょうか。るいはそういうのはほとんどないんじゃないか、そういうような現状は御存じでしょうか。  こういうことがあるのです。これは東京都の衛生局の勧告の中でもって、カゼインと乳糖、こうしたものを牛乳、加工乳に使用してはいけない、こういうことがあります。これは具体的な事実がございまして、仙台のほうから東京都に問い合わせがあって、大阪のある食品会社が「加工乳の素」というふれ込みでもって売り込みに来たというのです。それで、このことは都のほうに問い合わせがあった。そこで都が調査した結果、これは四国の高松の山奥にある製粉工場で——これはえさをつくっているのだそうです。そこで大阪の食品会社から委託加工を受けて製造していた。それで東京都は、こういうものを用いてはならないという勧告をした。こういったものについては、これは厚生省の所管ですから、厚生省は御存じですね。
  176. 浦田純一

    ○浦田政府委員 御指摘のカゼインあるいは乳糖類、あるいはその他のものを使用して牛乳らしく見せかけて売るということは、これは明らかに食品衛生法第七条の違反でございまして、私どもは、そういった事実があれば直ちに必要な行政措置、あるいは場合によりましてはさらに諭示措置をとるということを指示しておるところでございます。御指摘の東京都の件、私、詳しく事実については承知しておりませんけれども、このような事実については、かねて、遺憾ながらときたま発生するということで、一昨年の昭和四十四年の六月十二日は、特に牛乳等の指導、取り締まりについて、御指摘の点について重点を置いて、全国に通知したところでございます。
  177. 有島重武

    ○有島委員 それからもう一つ、これはもっと一般的な話なんですけれども、市販している牛乳ですね。これは市乳というのですか、これは薄めてあったり還元乳を加えているか、そういったような検査、実態調査をした結果、脂肪の率が大体そろって三%から三・一%となっておる。ところが原料乳というものは、春、夏、秋、冬全部脂肪は違うわけでございますね。それで大体三・三%くらいが平均になっておる。市販されている紫色のは全部三%になっておる。どう考えても、ずいぶん薄められている。あるいはなにか加工されてなければそういうことになりっこない。こういうことは、厚生省ではどういうふうに調査なさっていらっしゃいますか。
  178. 浦田純一

    ○浦田政府委員 牛乳につきまして、あるいは加工乳につきまして、脂肪率は三%以上あればよろしいという規格があることは、先生御案内のとうりでございます。また、それが季節的な変動をするということも事実で、ことに牛乳の場合には、それが季節的に変動するということも事実でございます。しかし、いずれにしましても、最終製品が脂肪率三%以上であるという規格は、厳として存在しているわけでございます。また御指摘の、水で薄める云々ということは、これは厳に法規をもってきびしく、違反であるということで取り締まっておりますので、もしもそのような事実が調査の結果でますれば、私どもとしてはしかるべき措置をとるということでございます。
  179. 有島重武

    ○有島委員 それからもう一つ。都内の主要工場八つばかり調べてみたら、その中でも、加工乳に目減りがある、ふえているというのですか、原料として入れたものよりもふえているわけなんです。これは一つの工場では〇・二ふえている、あるところでは〇・六プラスになっている、こういったこともございます。それから、調査してみて、そういうことがあればこれは重大だとおっしゃいましたけれども、たぶん御承知だろうと思うのですけれども、厚生省のほうの規約とすれすれにみんなつくってあるわけなんです。これは希釈してなければ、こういうふうにうまくそろうわけが絶対ないわけでございますから、これを厚生省としてしては取り締まることができるのかできないのか、その辺はどうなっておりますか。現在の厚生省の規約では取り締まることができないのか。
  180. 浦田純一

    ○浦田政府委員 生乳に手を入れまして牛乳として販売する場合、ほかのものをつけ加えるということは厳に禁止されているところでございます。水を加えるということも同様でございます。ただし、加工乳につきましては、原料からいろいろと牛乳類似のものに戻すという過程において水分が加わることはやむを得ないということで、これを認めておるところでございます。  御指摘のことは、おそらく牛乳についてのことであろうと思いますが、現在、私自身、製造工程をつまびらかに承知いたしてはおりませんけれども、専門家の話をお聞きしますと、むしろ脂肪の抽出、添加ということによって脂肪率が一定に保たれるように操作しているということでございまして、水分によって調整するということではございません。先ほどの、脂肪の濃い場合に多少抽出するという点については、これは現在の法規に触れるものではございません。
  181. 有島重武

    ○有島委員 その製造工程のことなのでございますけれども、私が手に入れました、これは四十四年六月十三日の東京都の衛生局長からの通達でございますけれども、いわゆる乳飲料と牛乳類との製造区分、調製する部屋ですね、これは明確にしなければいけないということになっているそうですね。いまのお話も、厚生省、さっそく調査なさって——そういったような事実かなければ、いまのような、三%にきちんとそろうということは絶対にあり得ないことでございますから、これは適切な処置をおとりにならなければならない。さっそくに処置をおとりにならなければならない問題じゃないかと思いますので、指摘しておきます。  今度は、こうしたことについて企画庁にもお伺いしておきたいのですけれども、原料乳の価格値上げが一キロ当たり七十五銭、加工乳の末端小売り価格が百八十CO当たり三円の値上げをしている。従来の不足払いというのは六円六十三銭で、四十三銭の不足払いが上昇して七円六銭、こういったことなんですけれども、これは、北海道において生産するメーカーと内地のメーカーとの間に価格の差が生じてもあたりまえなんじゃないか。内地のメーカーは特定の企業利益のために、何かこうしたことになっているのじゃないか。それと同じように、加工乳の末端小売り価格三円の値上がりというのは、価格協定の疑いが起こるのじゃないか。これは企画庁の前に公取に伺いましょう。価格協定の疑いになるのじゃなかろうか、そういう声があるのでございますが、公正取引委員会としては、このことはどうお考えになりますか。
  182. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 確かに全部が一斉にそろっておれば、これは価格協定のおそれはございますけれども、私、具体的に幾らくらいになっているかというあれをよく存じませんので申し上げられませんけれども、多少のばらつきがあるようでございまして、もしかりに協定によって価格がそろっているということであれば、確かに御指摘のことは独禁法上問題になるというふうに考えております。
  183. 有島重武

    ○有島委員 これは調べてください。  それから農林省は、四十二年以来、北海道の加工原料乳を乳製品として還元加工乳政策をとっておる、そう聞いております。これは一時的には成功なさっているようですけれども、これをこのまま続けていくお気持ちなのかどうか。これを続けていきますと、酪農振興をかえって阻害するような事態を起こすのじゃないだろうか。この農林省見通しを伺っておきたい。
  184. 増田久

    ○増田(久)政府委員 今回値上げがありまして、まことに遺憾なことだと存じておるわけでございますか、先生のおっしゃいますように、不足払いを中心といたしますいまの酪農政策というものは、立ちましてからすでに五年を経過してきているわけでございまして、その間にいろいろの問題点を生じていることも事実でございます。そういう意味で、われわれは、その酪農政策をもう一度抜本的に洗い直すということで、現在鋭意作業中でございます。そういうことで、われわれも、いまの制度をそのまま一本に持っていくということについては、まだ結論を得ておりませんけれども、酪農政策につきましてもう一度再検討したい、かように考えておるわけでございます。
  185. 有島重武

    ○有島委員 最近畜産振興事業団の脱脂粉乳の払い下げの入札のときに、一千トンの払い下げということに対して十五トン落札したと思うのです。これは事業団の払い下げの価格が結局輸入の脱粉と比較して高いということになっていたわけでございますね。それで、なま乳はどんどん増産する、加工原料乳を乳製品に加工しても結局コストが高くなっていき、乳製品がかえってだぶつくことになる、こういう事態が当然考えられると思うのですね。総合農政の計画によりますと、なま乳をどんどん増産する、それで昭和五十二年度には全国でもってなま乳が八百十五万トンですか、現在のほとんど倍になるというわけですね。そのうち北海道でもって二百五十万トンもつくる、こういったことを見込んでおるとすれば、年々増産するなま乳に対して、加工原料乳だけに不足払い制度をとる、こうした保護政策をいつまでも続けていくわけにはいかないように必ずなるのではないか。それで、ことしじゅうにでも酪農製品の貿易の自由化ということが当然予測されるのだと思いますけれども農林省経済企画庁——この酪農品か自由品目になるという実施の見通し、これについては経済企画庁長官、いかがでしょうか。
  186. 増田久

    ○増田(久)政府委員 先生すでに御案内のとおりだと思いますけれども、現在乳製品につきましては事業団によります一元輸入制、こういう貿易品目に相なっておるわけでございます。したがって、いまのいわゆる残存品目といいますか、あの品目の中からは除外をされておる品目でございます。われわれといたしましては、総合農政の中核的作目として酪農を考えておるわけでございまして、現段階では、とても外国に競争できるような段階ではございませんので、われわれとしては現段階で、いま直ちに自由化するということは全然考えていないということを、はっきりと申し上げておきたいと思います。
  187. 有島重武

    ○有島委員 以上いろいろ指摘いたしましたけれども、飲む側といたしましては、成分の上では、ほんとうのなま乳であろうとも、現在つくられておる加工乳であろうとも、被害を及ぼすとか金属が入っているとかいった問題とは全然違いますから、これはいいと思うのですけれども、国民は生活にとってなるべくいいものを安くというのが、もう大原則でございますね。それで昔からみな、なま乳を飲むという風習になっておる。それから加工乳も、なま乳に準じた形態でもっていま売られておる。これは加工乳というものがそれほどに違わないならば、加工するという操作を、何も工場でもって大量につくって、それをちゃんとびん詰めにして、それでもって宅送する、そういったような操作を経なくても、簡便に各家庭だってできるわけですね。そういった加工乳なら加工乳としてもっとはっきりすれば、しかも、これは牛乳と同じ成分といいますか、栄養があるものだ、効果があるものである、そういうことになれば、むしろいまのインスタントラーメンみたいなものを推奨していくということが、今後の牛乳についての政策の持っていき方じゃないか、そういうような意見を持っておるのです。これについて農林省はどうお考えですか。
  188. 増田久

    ○増田(久)政府委員 先生御指摘のとおり、これからの技術革新と申しますか、技術の発展ということかいろいろ考えられますので、現にアメリカ等におきましても、たとえば粉ジュースみたいな考え方だと思うのですけれども、それにお湯を入れればもとの牛乳になるというような研究を鋭意やっているところが、現実にございます。そういう意味で、そもそも牛乳というものは、びんに入って、白いものであるという既成概念だけでは、将来の形に応じきれない問題があるいは出てくるのかなということで、われわれとしても研究課題にはいたしておるわけでございますけれども、ヨーロッパを見てまいりますと、これはもり伝統的に、牛乳というものはなま乳である、こういう牢固たる食習慣の上に成り立っておりまして、そういう新鮮なものということを原則としてやっておるわけでございます。私のほうも、酪農振興というものを考えます場合には、現段階ではやはりあくまでもフレッシュなもの、自然食としての牛乳といったものを伸ばしていくべきものであるということで、実は考えておるわけでございます。  なお、加工乳の問題で先生にぜひ御理解を願っておきたいと思いますことは、先生御承知だと思いますけれども、牛乳というものは、生産にも需要にも、実は大きな季節変動というものが一つございます。それから、日本のように南北に非常に長い地帯にありまして、いわゆる太平洋ベルト地帯というところに大人口が集まって、そこに消費がある。こういうことになりますと、牛乳の地域的な需給のバランスをどうとるかという問題が、非常に大きな問題になってまいるわけであります。そういう意味で、現在鹿児島とか宮崎から、大阪のほうへどんどん牛乳が入ってくる。夏場には北海道から牛乳が入ってくるというような形にだんだんなりつつあるわけでありますが、現段階はまだそこまでいっていない。そういうもので、需給調整のために、そこに加工乳という形かどうしても一部出ざるを得ないような酪農の実態にある。そういう意味でわれわれとしては、加工乳というものは現段階では過渡期的なものとしてやむを得ないものとして思っておるわけでございますが、幸いにいたしまして、最近におきましては普通牛乳も、いわゆるフレッシュのほうの牛乳の消費が伸びてまいりました。加工乳の伸びは対前年度をを割るような状態になってきております。そういう意味で、われわれはこの方向をできるだけ伸ばすということを考えておるわけであります。
  189. 有島重武

    ○有島委員 いま御説明のあったように、フレッシュなものを飲むという牢固たる傾向がある。それに便乗して、加工乳をそれと同じような形態でもって——加工乳であれば、技術革新によってもっと安くできておるはずなのに、かなり高く売られておるという事実があると思うのです。これは今後の国民の食生活といいますか、経済生活につながる問題といたしまして、やはり加工乳と、ほんとうのなま乳なら生乳というものと、厳然たる区別をつけていくべきじゃないか。そして、加工乳は加工乳としての価格形成をするように指導しなければならないんじゃないか。いまはそれが非常に混同されていて、結局これは、一部の乳製品の業者を保護しているような形になっているんじゃないかと私は思いますので、今後こういった点について深く関係官庁から指導なさるべきだと私は思いますが、私の質問は、質問といいますか指摘というのはこれで終わりますけれども、最後に企画庁長官から、いまお聞きになっていることについて御見解を承っておきたい。
  190. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 いま聞いておりましても、私は、相当今日までの酪農政策の計画性の不足ということを痛感します。そして飲用乳が、確固たる習慣であるとかなんとかいいますけれども、実際われわれも飲用乳、新しいものを飲みたいわけであります。だから、地理的にも非常に不十分な、不都合があるわけでありますから、これも輸送の革新とかいろいろなことで、だんだんとマッチしやすくなる条件は生み出されつつあると思いますけれども、今日のように地域的なアンバランスが激しい、そこに、先ほどのお話ではないが、季節的なアンバランスもあるわけですし、これの調整のために一方ならぬ苦労する。そうして必要もない加工製品をどんどん出していく。こういうことから、それがまた市場の圧迫にはね返る。そして一方において、やむを得ない点もありますけれども値上げのために消費意欲を抑制して、へたをすると縮少再生産になりかねないということで、今日の牛乳行政については、私も、もうちょっと総合的にこれを見ていかなければならぬという感じをかねがね持っておりまして、そのことがすなわら物価対策に通することでもあるというふうにも感じておりますから、いまいろいろと御議論がありましたけれども、もう少し農林省にも——新しい考え方に立っていまやってもらっていると思うのですけれども、その方面の総合化を一そう促進してほしい、こう思っておりますし、それからまた、いわゆる有害じゃないけれども、国民が牛乳についての信頼感を非常に失っておる。薄いものを飲まされてもがまんせざるを得ない。値段だけは上がる、こういう不信感というものは私は相当広まっていると思うのです。これらについては、有害じゃないけれども、しかし、やはり国民の栄養という見地からさらにひとつ食品衛生、厚生省がやられることになるのでしょうか、厚生省は本来有害物質のことをやるのでしょうけれども、多少面が違うので、違う考え方が要るんだと思いますが、農林省と厚生省一諸になって、この方面もできるだけ理想的な方向に向けてもなうように、われわれもこれは深い関心を持って、なお両大臣にも強く要請したいと思います。
  191. 有島重武

    ○有島委員 終わります。
  192. 武藤嘉文

    ○武藤委員長代理 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。午後三時三分散会