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田部参考人 田部でございます。
私は、
牛乳が
値上げをされるたびに、
皆さんからいろいろなことを言われる、一体
牛乳というのはそれだけ言われなければならぬのかと、販売業者だけの
立場に立ちますと、そういう考え方をするのであります。
と申しますのは、今日の
日本の政治が
生産者中心に行なわれて、末端の流通に対して何の手だてもしてないじゃないかということが第一でございます。
牛乳の末端の
値上げを
お願いするときには、そのたびごとに、すべての責任が小売り業者にあるというような
消費者の考え方で、非難をされてまいったのであります。
生産者の分、
牛乳会社の分、私らがわずかいただく分をひっくるめて、私らがその責任を持ってきたということで、いつまでも
牛乳屋がいろいろな面において、対
消費者の問題では矢面に立たされてきたじゃないか。最近の
牛乳の
値上げの問題につきましても、四円とか五円とかいう話がいろいろできまして、過去二十
年間の
値上げの経過は、ほとんどの場合、
生産者の
値上げがあり
乳業会社の積み重ねがあり、その上に、お前らもこれぐらいはどうかということできまってまいります。これが過去の実態でございまして、一時期だけは、小売り屋がしんぼうができないので、小売り屋主導型といわれるような形の
値上げがたった一回ございます。その場合でも
牛乳販売店は、三円を
お願いしたときに、その一円九十銭までは
乳業会社にお渡しをして、非難を浴びながら一円十銭だけをもらってきたというのが実態でございます。
いつも私は思うのでございますが、こういう形で
生産者が
値上げを
お願いされると、非常にもっともな場合が多うございます。
乳業会社も、
合理化の極点にあるから、どうしても
値上げをしなければいかぬということは、いま
瀬尾社長のお話のとおりでございまして、
皆さんも、
雪印乳業の
資料をごらんになって、もっともだというお考えになるか、どうも合点がいかぬというお考えになるかは、あとで
皆さんのほうの御質問を受けるようでございますが、一応はそういう形で、最も零細な何万かの小商人は常に、
値上げをしろと言われてきたわけでございます。
今回私
どもが、四円、五円の
値上げの風潮に対して、私はそれはきらいだ、もうこの辺で――
生産者は、法律の保護のもとに多元集荷、一元販売ができているのだ。ところが、私らの場合は何にもないから、せめて今日の時点で
消費者に
お願いをするとするならば、特に関西地区におきましては、BHCとかいわゆる農薬の問題で
消費者に多くの御迷惑をかけているので、できるだけ
値上げはしたくないという考え方でおります。私
どもは、そういうことの安全宣言を厚生省なり農林省の大臣がして、
消費者が安心できるようになった時点で
消費者に
お願いするのが筋だということで、二月二十三日に大阪府におきましては、御堂会館で全員総会を開いて、われわれの考え方はこうだということを発表をいたしてまいりました。私
どもは、四円とか五円とかいうのがいろいろな
新聞あるいはテレビ等で出されるたびごとに、そういうムードにひっかき回される
牛乳販売店に対しては、できるだけ今回はわれわれの力で、
乳業会社のいうとおりの
価格は絶対聞かないのだ、われわれは一回は
消費者に対して、
利益を無視してでも還元したいという気持ちが強うございましたので、私
どもはどうしても、そういうような高価な
値上げをすることはできないということと、
日本の
乳業界が積み重ねだけでこれからいったら、一体
牛乳は何ぼになるのだろうか、私
どもはそれを考えるときに、はたしてわれわれ
牛乳屋が、世間から何ぽかでも御苦労さんと言っていただけるような状態にはならぬものだろうかということを考えて、私
どもは、四円あるいは五円説に対して、まっこうから反対をしてまいったのであります。そこで、われわれが自主的に、これ以上は
値上げをしてはならぬのじゃないかというような考え方でいろいろと情報を集めまして、傘下の組合に対しては情報を流してまいりました。
それで私
どもは、どうしても最終は最小限度におさめるということになりますと、最終の決定と申しますか、いわゆる
乳業会社対
メーカー団体いわゆる系列の団体との話し合いで、ある
程度の合致点にはなりましたけれ
ども、当初に
乳業会社からの
お願いが、二円五十五銭というのが出たわけです。そうして四円、五円の説が出てまいったのでございます。それに対しては、私
どもはそういうような大幅な考え方で、
牛乳不信が――現在において、何かどこかで、ちょっとだけ安心やということだけでございます。私は、厚生大臣が、安心なら安心と言いなさい。農林大臣が、安心なら安心と
消費者にどうして言わないのだ。先だっても民社党の佐々木良作先生が、いま
牛乳を飲んでいいのか悪いのかわからぬじゃないかということを、放送の討論会でおっしゃっております。ぼくはそのとおりだと思う。
牛乳屋さん、この
牛乳を飲んで子供はだいじょうぶですか、私は妊産婦で、もう一本飲みたいと思うけれ
ども、奇形児が出るようなことがないかという質問があったときに、だれがないと言ってくれる。いままでないから飲んだらどうだというようなことで、
日本政府の行き方が、私は当然問題だと思うわけでございます。
BHCの問題についても、一昨年の暮れから始まっている。私
どもは、BHCについては、
乳業会社は
生産者に強い姿勢で当たってもらいたい。同時に
日本政府に対して、これをどうするんだということを強く要請をしてくれと、ぼくらは言ってきた。ところが、
現実はいままでかかって、いまなお大臣がはっきりしないじゃないか。世界各国にそういうような統計がないからどうもできないんだということであるなら、何でもアメリカに統計を頼むのかどうか。アメリカがくしゃみしたら
日本人はみなくしゃみしなければいかぬのか。こういうような形の行政は私
どもを不幸に追い込んで、私
どもの販売はかなり減退をいたしたのであります。
この責任は、私、遠慮なく言うならば、
乳業会社のだらしのない態度もあります。
生産者はそれを知らなくて、
政府がもっと強く、こうするべきだという決定を早くどうして出せないか。出せばいいじゃないか。われわれがBHCを
牛乳に入れておるわけでもないし、
乳業会社も入れておるわけでないし、農林省が、この農薬がいいと言うてすすめた中に入っていたということなんでしょう。それなら私
どもは、もっと早く
皆さんに
お願いをして、早く安全基準を出すようにしていただいたほうがほんとうはよかった。私はいろいろと
皆さんに
お願いをいたしまして、
乳業界全体があげて請願をいたしまして、諸
先生方の
努力によって製造、販売、使用の禁止が一応通達をされるようになりましたが、なぜもっと早くしてくれないか。私らがあれだけ頼んでいたじゃないかということを、ほんとうはいまでも恨みに思うわけでございます。東京に参りまして、いろいろと官庁にお伺いいたしましても、きわめて無責任だとぼくは思う。小商人がなまいきなことを言うようだけれ
ども、私らは
消費者あっての
牛乳屋なんだから、
消費者が
牛乳に不信を抱いているのを、どうしてもっと積極的に取り払ってくれなかったか。なお今日、厚生大臣も何も言わないじゃないか。だれか課長くらいが、もういいんでしょうくらいしか言ってないじゃないか。農林大臣も何も言ってないじゃないか。なぜ言わないのだ、ぼくはそう思う。もし言うてくれるならば、いままでBHCを心配してやめた大事なお得意が、ぼくは帰ってくると思う。
だから、私は、いまの時点で
乳業会社がいろいろな計算をお出しになるけれ
ども、
牛乳はもっと売れるという考え方でお考えになっているのか、もう
牛乳はこれが頂点だというお考えになって、自分らのいわゆる卸売り
価格をわれわれに要求されたのか、それが知りたい。私は、BHCの被害が非常に大きい地区でございましたので、この安全宣言があるなら、
たちどころに一割や一割五分は帰ってくるのではないか。そうした上に立つならば、二円三十五銭とか二円四十五銭というものは、ちょっとだけ調子が悪いのではないか、世間もそれは聞きませんよということで、われわれの今後の
乳業界のあり方は、すべて
消費者を一応最大の考慮に入れていろいろな点を考えて、それぞれ三団体で自粛して
牛乳の
消費拡大に
努力をしていきたい、かように思うのであります。
詳しい
値上げの話の経過などは申し上げる必要もないし、
牛乳販売業者としても、
皆さんそれぞれ各地でベース
アップの要求がありますときには、私らの零細な小商人の中における従業員も、なお一そうおやじをおどかしておるというような形が多いのであります。
きのうも東京のある
乳業会社に行ったときに、帰りしなに、その会社のいわゆる争議をやっておられる、ベース
アップのなにをやっておられるのが、かわいい女の子もおっさんもみんな固まって、うろうろうろうろ何町も、要求貫徹をしましょうと言っておる。いまどれくらい出ておるのか私知りませんけれ
ども、おそらく一万円をこすだろうと思う。こさなかったらストをやるということが、はっきりしておるわけです。
一方で、ストをやらして一万何千円のベース
アップをして、片一方で、
牛乳は一銭も上げたらいかぬという話があるなら、こんなばかな話がどこにあるか、私はそう思う。一方も押えてくれて、一方も最小限度に押えたらどうだという話は、世間に通用する。片っ方は取るだけ取れとけしかけて、そうしていわゆる
乳業会社に対して、おまえのところは
合理化で何でもかんでも吸収せいと言われることは、これは今日の
段階では無理だと思う。
牛乳は毎年上がってきているけれ
ども、いつまでも上げるのかという御
意見もあろうかと思いまするが、私
どもは、この前の
乳価の
値上げ以来、協業化をやりたい。
一つの路地に、かりに明治さんも森永さんも雪さんも配るようなことのないように、一カ所におろして
一つの路地に配れるようにしたいと言ったときに――
瀬尾社長は、いま、
合理化に
協力してやるとおっしゃったけれ
ども、今日までは、
協力したことが一回もなかった。協業化をやったらつぶれ、またそれを繰り返して、いろいろと隔日配達を
お願いし、協業化に
協力していただけるんなら、私
どももそれなりの労賃が省略できるので、御
協力をいただきたい。社長の
段階では、いろいろとりっぱなお話があるけれ
ども、下のほうへいくと、二十年来同じ形で、おのれの系列
販売店が雑種になることを好まぬ
傾向があって、直接的に
牛乳を送入しないというんでなしに――この間私
どもが神奈川の地区でお聞きをしましたが、業者が集まって、大きな冷蔵庫をつくって協業化をしたいといって、それを旗上げをしたら、協業会社とは取引をしないんだから、従来どおり個々の
販売店に持っていって、そこからその大きいところへ運んで、それで配達をしているのが現状で、ようやく最近はつぶれなくなりましたというのが、つい先般の報告でございます。
だから私
どもは、毎年
値上げをするんでなしに、協業化に対して
政府も
乳業会社も、そして
消費者の御
協力をいただくならば、私
どもの配達の労賃が幾らか減ってくるならば、その点を
消費者に還元することができるじゃないか。
牛乳のいわゆる集金代を
消費者が郵便局に納めてくれるなら、その分も引こうじゃないか。私
どもは、何といっても
消費者があっての
販売店でございますし、その点十分考えて、私
どもは
合理化に
努力をしたい。ただ、
合理化をするのを妨げている要因を
皆さんのほうで排除していただくとともに、でき得ることなら私は、大阪でも特定の地区だけで、もし経済企画庁が許すならば、いわゆる
合理化カルテルを認めてやって、それでどれだけまで
合理化ができるかというテストケースをやらしてほしい、かように考えておるわけでございます。
時間がまいりましたので、また質問がございました機会に私
どもの希望を申し上げさしていただきたい、かように思う次第でございます。(拍手)