運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1971-05-19 第65回国会 衆議院 農林水産委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年五月十九日(水曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 草野一郎平君    理事 安倍晋太郎君 理事 小沢 辰男君    理事 仮谷 忠男君 理事 丹羽 兵助君   理事 三ツ林弥太郎君 理事 千葉 七郎君    理事 斎藤  実君 理事 小平  忠君      稻村左四郎君    江藤 隆美君       鹿野 彦吉君    熊谷 義雄君       佐々木秀世君    坂村 吉正君       田澤 吉郎君    高見 三郎君       中尾 栄一君    別川悠紀夫君       松野 幸泰君    武藤 嘉文君       森下 元晴君    山崎平八郎君       渡辺  肇君    角屋堅次郎君       田中 恒利君    芳賀  貢君       長谷部七郎君    松沢 俊昭君       美濃 政市君    瀬野栄次郎君       鶴岡  洋君    二見 伸明君       合沢  栄君    津川 武一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         農林大臣官房長 太田 康二君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省農政局長 中野 和仁君         農林省蚕糸園芸         局長      荒勝  巖君         通商産業省企業         局長      両角 良彦君         通商産業省企業         局参事官    増田  実君         労働省職業安定         局審議官    中原  晁君  委員外出席者         労働省職業訓練         局訓練政策課長 森川 幹夫君         参  考  人         (財団法人日本         工業立地セン         ター常務理事) 飯島 貞一君         参  考  人         (農林中央金庫         理事)     菊池  弘君         参  考  人         (全国農業協同         組合中央会常         務)      吉田 和雄君         農林水産委員会         調査室長   松任谷健太郎君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十九日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君     田澤 吉郎君   白浜 仁吉君     武藤 嘉文君   瀬戸山三男君    稻村左四郎君 同日  辞任         補欠選任  稻村左四郎君     瀬戸山三男君   田澤 吉郎君     赤城 宗徳君   武藤 嘉文君     白浜 仁吉君 五月十八日  BHC等有機塩素系農薬全面禁止に関する請  願(自浜仁吉紹介)(第六八八二号)  狩猟者団体法制定に関する請願石橋政嗣君紹  介)(第六八八三号)  同外六件(竹下登紹介)(第六八八四号)  同外七件(野中英二紹介)(第六八八五号)  同外二件(羽田野忠文紹介)(第六八八六号)  同(廣瀬正雄紹介)(第六八八七号)  同外一件(渡部恒三紹介)(第六八八八号)  同外一件(小沢辰男紹介)(第六九五七号)  同外一件(大村襄治紹介)(第六九五八号)  同(金子一平紹介)(第六九五九号)  米価物価統制令適用廃止反対に関する請願外  七件(二見伸明紹介)(第六九五六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農村地域工業導入促進法案内閣提出第七七  号)  野菜生産出荷安定法の一部を改正する法律案起  草の件      ――――◇―――――
  2. 草野一郎平

    草野委員長 これより会議を開きます。  農村地域工業導入促進法案を議題といたします。  本日は、本案について参考人から意見を聴取することといたします。  本日御出席参考人は、財団法人日本工業立地センター常務理事飯島貞一君、農林中央金庫理事菊池弘君、全国農業協同組合中央会常務吉田和雄君の以上三名の方々でございます。  参考人各位には御多用中にもかかわらず、本委員会に御出席をいただきましてまことにありがとう存じます。ただいま本委員会におきましては、農村地域工業導入促進法案について審議をいたしておりますが、本案につきまして参考人方々の忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じます。  なお、は衣はだかつてでありますが、参考人各位からの御意見開陳はお一人おおむね十五分程度にお願いすることとし、その後委員からの質疑があればこれにお答えいただくことにいたしたいと存じます。  御意見開陳飯島参考人菊池参考人吉田参考人の順序でお願いいたします。  それでは飯島参考人にお願いいたします。
  3. 飯島貞一

    飯島参考人 私、日本工業立地センター飯島でございます。ただいま委員長からの御指名によりまして、この法案について私のつたない意見を申し述べさせていただきたいと思います。  私、地域開発の仕事をやっておりまして、特に工業のことを中心地域開発を進めております。しかし私どもが念願しておりますのは、工業地域調和のとれた開発をしていく、こういうことを願っておるわけでございます。今回、農村地域工業導入促進法案審議されておりますけれども、これは農業工業調和への一歩かと思いまして、私どもたいへん喜んでおる次第でございます。こういうことから地域調和のとれた開発ということに進んでいくということを信じておるわけでございます。私どもは、具体的に各県、各市町村、こういったところで、すでに農村地域工業化がどうあるべきかという具体的な計画を依頼されまして、幾つかやっております。そういう実態中心にしてこれからお話を申し上げたいと思います。  工業がこれから三十年間に工業用地として必要とする量は、大体二十万ヘクタールあるかと思います。この二十万へクタールのうち、臨海部で十万、内陸部で十万、こういう数字が一応見通しとして出ておるわけでございます。特に農村地域と関係のある工業用地は、主として内陸部でございまして、この内陸部には主として機械工業中心とした内陸性工業がこれから発展をしてまいります。一方、このような工業用地は非常に膨大なものでございまして、この膨大な工業用地を、単に工場住宅都市の間にばらばらに入っていく、いわゆるスプロール化現象で今後工業開発内陸で進むとすれば、これは地域開発の中で非常に大きな問題として残されてまいります。残念なことに、いままでの工業発展は、非常にこのスプロール化という現象が多いということを、私どもは非常に問題としております。  そこで、これから工業内陸で非常にばく大な用地を求める場合に、私どもとしてはどうしても工場を集約した工業団地、こういったものを中心に進めてまいりたいと思っておるわけでございます。諸外国にいろいろ例が見られますように、きれいな内陸工業団地インダストリアルパークといっておりますけれども、こういうインダストリアルパークという形で進めていく、これが一つ重要な点かと思います。しかしこれは非常に大きな団地もあり、中規模団地もあり、非常に小さな団地もあり、とにかくまとめて団地化するということが、地域開発の面、都市計画の面、環境保全の面で非常に重要な点でございます。ただし工業業種によって、地域によっては、いままでどおり個々企業個々に入っていく、個別立地、これも当然残らざるを得ないと思います。形としてはいま申し上げた四つの形になるかと思います。  一方、私どもが具体的に農村工業化計画を立てますときに、農村地域農業形態、これも非常に大事な点として私どもは考えております。私ども農業についてはしろうとでございますが、私どもから見ました農業地域の形としては、一つは非常に大規模農業経営形態方式がございます。有明の干拓、八郎潟、北海道、こういった非常に大規模な、高度な農業地域もございます。一方、都市近郊で、だんだん市街化されていくような農村地域もございます。それからもう一つは、いわゆる山村地域、段々畑、こういった小規模農村地域がございます。それからさらに、日本では最近高速道路といったものがどんどん出てまいりますけれども、いわゆるなだらかな丘陵地域住宅地にも利用され、蔬菜、果実その他の農業をやっておられるような丘陵地域、こういったところがございます。私どもは、このような農業形態工業団地化、それからもう一つは、これから二十年間に計画をされていきます国の交通ネットワーク、それから都市の配置これを重点として、一つ条件として考えた場合、工業農業と、そのような立地条件を組み合わせた形で、各地域農村工業化をどうはかるべきかということを、具体的にいろいろな地域でやっております。佐賀県で一つの例を申し上げますと、佐賀県は非常な農業県でございますが、知事さんも農村工業化については非常に熱心な方でございまして、私ども農村工業化計画をいまやっております。その場合に、佐賀県では、先ほど申し上げました都市としましては、佐賀市とか鳥栖市とかいうところがございます。この都市近郊をどう考えていくか。それからもう一つ佐賀県は有明海に向かって、いままでずっと干拓をしておられます。この干拓地のような大規模農村地域をどう考えるか。それから、佐賀県は玄界灘に面しまして、いわゆるリアス式の地形がございます。ここには唐津とか伊万里とか、少し臨海性工業の入るような地域がございます。それから九州の横断道路鳥栖から佐賀をかすめて長崎のほうに入ってまいります。これは先ほど私が申し上げました丘陵地域を通ってまいります。そこにはそれぞれインターチェンジができまして、これに応じて佐賀県でも、私が先ほど申し上げました大規模ないわゆるインダストリアルパークというようなものを計画をしておられます。  もう一つ最後に残りますのは、そのほかの山村地域でございます。このような地域にそれぞれ大規模、小規模中規模、それから個々企業立地、これをうまく当てはめてまいりますと、佐賀県全体としての非常に調和のとれた地域開発というものが出てまいります。  現在、佐賀県の労働力、そういったものを求めてそれぞれ個別の企業が入っておりますけれども、これからはもう少しまとまったきれいな形で農村工業とを中心にした地域開発というのが佐賀県でも進められていく。この場合に、私どもは、農業でやっておられます圃場整備とかその他のかん排事業とかこういうものと地域全体が一体になって計画をつくっていく、これが農村工業化重点かと思いますし、そういう広い意味で県全体を考えたときに、いい意味での地域開発計画をつくっていけば、この農村工業化というものもその中にうまく当てはまっていく、こういうことを実際に私どもはプランを立てまして経験をいたしております。こういう点からも、農村工業化というのは地域計画のまず第一歩である、農業工業との調和のとれた土地利用という面で進んでいくだろうというふうに私は考えております。  簡単でございますが、私からの御意見を終わらしていただきます(拍手
  4. 草野一郎平

    草野委員長 次に、菊池参考人にお願いいたします。
  5. 菊池弘

    菊池参考人 私たちは、農業団体といたしまして、従来の無秩序な農村への工業の誘致に対する心配と、それからやはりいまの農業を取り巻く環境の中における農家の他産業並み賃金収入の確保ですか、この辺の調和をどうとるかということをたいへん頭を痛めておったわけでございますけれども、この法案を拝見いたしますと、やはりそういった反省から、計画的に周辺農業振興地域住民との間の調和を強調されていることは、地域開発に対する新しい方式でございまして、特にわれわれ農業サイドとそれから工業サイド、これの要請調和されておりまして、たいへんそういう意味で有意義なことではないかと考えておる次第でございます。  また、工業計画的に導入を実施されると、それから実施計画段階におきましても、導入工業業種それから就業目的土地利用等農業構造改善公害防止等が検討されておりますことは、地域社会における工業活動調和を十分御配慮願っているものと考えられる次第でございます。  われわれ農業サイドから見ますと、現在の総合農政展開過程で、米の生産調整とそれから米価据え置き傾向、こういった中で農業所得だけで他産業従事者と匹敵する所得をあげ得ない兼業農家が圧倒的な多数を占めているというのもこれは現実ございます。最近では、これがインパクトによりまして長期的な出かせぎという形をとりまして、社会的な問題に発展しているというのは皆さま御承知のとおりでございまして、これらの農家計画的に現地における適正な就業機会を確保することは、われわれとしましても、やはり重大な課題ではないかと考える次第でございます。  今回の法制改正によりまして、次のような農政上の施策に寄与できるのではないかということを考えております。  第一の点といたしまして、農業者の出かせぎの解消、それから過疎地域振興対策を通じまして農業所得の増大がはかられるのではないか。  第二の点といたしまして、農業従事者の転職を援助しまして、農業構造改善をはかりつつ農業構造改善に寄与する道を開くのではないかと考えられます。  ただ、この際、十分政府の案で御配慮されておるようではございますけれども、第一のお願いといたしましては、この制度の中でも御配慮をされておりますけれども、さらに御配慮を願いたい点は、やはり緑の農村に対する公害問題が起こらぬように特に御指導願いたいということ。それから第二点としましては、内陸部立地します企業は無計画立地することなく、本制度に基づきまして計画的に立地されるよう弾力的、強力に御指導いただきたいとともに、進出する企業が優良な企業が入ってくるように御誘導願いたいということでございます。  私たち農業系統機関の立場としましては、この法律総合農政一環としまして、工業導入農業並びに地域住民調和の中で考えられているために、農林中央金庫をはじめ農業系統金融機関としましては、農政上の協力という観点に立ちまして、融資面で協力すべきもの、そういうふうに考えておる次第でございます。幸い系統全体といたしましては、資金面に余力もございますし、農村社会の繁栄に寄与するという観点から、微力ではございますけれども、銀行はじめ一般民間金融機関、それから政府系金融機関と協調いたしまして努力していきたい、このように考えておる次第でございます。
  6. 草野一郎平

    草野委員長 次に吉田参考人にお願いいたします。
  7. 吉田和雄

    吉田参考人 時間もないようでございますので、要点のみを陳述いたしたいと思います。  まず結論から先に申し上げますと、本法案については、私どもとしては基本的に賛成でございます。  その理由の第一といたしまして、大づかみに申し上げますと、非人間的と申しますか、人間疎外といいますか、統計上では四十万七千人、実態は六十万人といわれております出かせぎがこれによって解消への道が開かれる、いわゆる在宅通勤が可能になるというようなことが第一でございます。  また、法の運用が適切を得るということが要件でございますけれども、そういうことになりますれば、現在農村で非常に中高年齢層農業者がふえておりまして多いわけでございまして、統計上では、農業就業人口一千二十五万人のうちの六百八十万人と、約六七%にのぼる中高年齢層がおるということでございますが、これらの人たちは出かせぎの機会さえもないというような状況でございますので、こういう中高年齢層農業者雇用所得機会が与えられるという道もまた開けるという希望があるわけでございます。  第三点は、やや消極的でございますけれども、従来見られましたように、農村に対して企業のほうが非常にアウトロー的に進出をいたしまして、そのために農村が非常に波乱を招き、いろいろ公害等弊害をもたらしております。こういうものが、この法律ができることによりまして、一定の秩序と計画性のもとにやられるのではないかということでございます。  以上が理由でございますけれども、しかしながら私どもといたしましては、農村への工業進出をそれならばただ手放しで安易に受け入れるという態度ではございません。経過から申しますと、私ども農協と申しますか、全中といってよろしかろうと思いますが、この農村への工業進出問題にタッチをいたしましたのは、私の記憶では四十五年度の政府予算編成の際に、米の生産調整が最大の施策として問題になったわけでございますが、このときは百五十万トンの減産をやる、結果といたしまして、百五十万トンのうち百万トンは減反という形でやる、五十万トンは地方公共団体等による水田先行取得をやっていくのだということで、十一万八千ヘクタールというものが政府の責任においてこれはやるのだということになったのでございますが、その水田先行取得一環として、水田工場敷地転用促進をしてはどうかということが、当時政府与党のほうから出されたわけでございます。そのとき、私ども全中としましては、水田工場敷地に使うということにつきまして、原則的には反対ではない、しかしながら、その場合においては次のことを条件として厳守をしてもらいたいということを申し入れた経緯がございます。  その第一点は、農地法による農地転用基準をいたずらにゆるめるということは問題である、水田工場敷地として使うならば、農地有効利用を阻害せず、自然との調和がはかられるように、計画的に転用を実施するということを要件として、それを確認をして転用を認めるべきである。  それから第二点は、大気汚染あるいは水質の汚濁、騒音、このような公審を発生し、ない工場限定をしてもらいたいということをその際御要請申し上げた経緯がございます。  さらに、四十五年の十月に第十二回の全国農協大会が開かれたわけでございますが、この際におきましても、農協自主建設路線一環といたしまして、生活基本構想、表題は「農村生活課題農協対策」という見出しでございましたが、生活基本構想がこの大会で決議をされたわけでございます。この生活基本構想の中におきましても、いま申し上げました要請にさらにつけ加えまして、第三点として、その地域において就業を希望する組合農家、特に中高年齢層雇用、適正な賃金労働条件が確保され得ること。  もう一つ第四点として、堅実で安定的な工業であり、農協の諸事業地元産業との協調がはかられるものであることというようなことをつけ加えまして、この生活基本構想におきましてもずっと確認をされております。  このように、私どもとしてはこの農村に対する工業導入の問題につきましては一貫した趣旨でもっていままで貫いてきておるというような次第でございます。またこの生活基本構想におきましては、農村工業導入される場合におきまして、農協としては、これを地方公共団体市町村にゆだねるというような態度でなく、積極的にこれに対処して、対策を講ずべきであるということもあわせてうたっておるというような次第でございます。  以上の経緯観点に立ちましてこの法案を通観いたしますと、農業ないしは農村地帯工業導入であるというような基本線は一応貫かれておるのではないかというふうに思います。私はあまり役所をほめたことはございませんけれども、この法案に限っては農林省がかなり苦労したのではないかというような、苦心がにじみ出ておるのではないかというふうに考えております。企業側が求めております安い土地、安い水、あるいは安い労働力というものに迎合しておるのではないということだけは、法案をながめました場合に理解できるのでございます。  しかしながら、私どもとしては、かつて農村工業導入された場合にはいろいろの弊害が数々生まれてきておる。たとえば農地価格が値上がりして規模拡大の障害になるおそれがあるとか、あるいはそのために生産意欲が減退をするとか、さっき申しました公害が発生するとかいうことを見ておりますので、この法律がもし成立した場合におきまして、その運用については多くの懸念を実は持っておる次第でございます。したがいまして私どもとしましては、この法律がその目的に反して乱用されて、そういうことはないと思いますが、農業者主体とする農村地域住民の意思に反してまで企業サイドから天下り的に工業導入されるということは、絶対に私どもとしては容認し得ないところでございます。したがいまして、このようなことにならないように、まず中央都道府県市町村という各段階におきまして、この法案によりますと中央では基本方針を定めることになっておりまして、都道府県では基本計画市町村では実施計画というようなことになっておりますが、それぞれの段階におきまして生産者の代表が、あるいは主たる地域住民である農業者が、これらの基本方針なりあるいは計画の策定に積極的に参画し得る道を開くということがまず大事であるというふうに存じます。  次に対象地域のことでございますが、この法案によりますと、この対象地域農業振興地域なり、あるいは山村、あるいは過疎地域ということに限定をされております。私どもとしてはそういう地域主体になるということについては異存がないわけでございますけれども、しかしながら実態を見てみますと、たとえば新産都市などにありましても、かなり新産都市という区域が広くて、その中には純農村的なものもかなり含まれておる。そういう特に新産都市の一番端にある辺境地域におきましてはおよそ工場らしいものがないというようなケースが多いようでございます。したがいまして地域指定はこれは政令によることになっておりますが、政令につきましてもこの辺を十分に配慮して、あまり画一的になりませんように御配慮をお願い申し上げたいというふうに考えます。  さらに、いささかこまかいことにわたりますけれども、税金の問題でございます。法の第十条に「政令で定める地区」というのがございまして、工業導入地区の一部分に税の軽減の問題が限定をされておるというようなことは、どうもほかの同じ種類の法律、たとえば新産都市建設法等との均衡を失しておるのではないかというような点も実はちょっと目につくわけでございます。  最後に、この法案目的には「これらの措置と相まって農業構造改善促進するための措置を講ずることにより、農業工業との均衡ある発展を図る」ということが書いてございますし、また、農村地域工業導入基本方針の指針の三としまして「農村地域への工業導入と相まって促進すべき農業構造改善に関する目標」ということが書かれております。工業導入される場合に、それならば政府はそこの地域においていかなる農業というものを描いているのか。もっと具体的に申しますと、農村における農業工業との立地をどういうふうに位置づけていくのか、また、工業導入農業経営規模拡大という関連を一体どういうふうなプロセスでもって達成するのか、この辺のところが法案を見た限りでは実は明らかでないわけでございまして、どうかこういう点につきましては、審査の過程におきましてできる限り明確にしていただければというふうにお願い申し上げる次第でございます。要するに、換言いたしますと、法律が成立いたしますと、役所法律をかってに曲げて独善的に運用する傾向がいままでややもするとあるのでございますので、この法律につきましてはそういうことにならないように、先ほど申し上げましたように、特に民意を尊重するような仕組みを各段階におきまして何らかの形でとっていただきますように特にお願い申し上げたいと思います。  以上をもちまして、簡単でございますが、意見の陳述を終わりたいと思います。(拍手
  8. 草野一郎平

    草野委員長 以上で参考人の御意見開陳は一応終わりました。     ―――――――――――――
  9. 草野一郎平

    草野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。別川悠紀夫君
  10. 別川悠紀夫

    ○別川委員 私は、農林中央金庫理事菊池参考人に対しまして御質問を申し上げたいと思います。  このたび立案をされておりますこの法律がその所期の目的を達成いたしまして、円滑に運営をしてまいるというふうなためには、何と申しましても、これに直接関係をいたします国あるいは県、市町村というふうな公共団体に限りませず、これに関連をいたしますもろもろの関係団体の皆さん方の御協力、とりわけ系統農協の皆さん方の大きな御協力にまたねばならないところが多いと思うわけでございます。特に、法律の第十三条に規定をいたしておりますように、これに必要な資金を融通をしていただきます農林中央金庫さんには格段の御配慮をいただかねばならないと思うわけでございます。  そこで、第十三条には、中央金庫が必要な資金を貸し付けることができる、このような規定になっておるわけでございますが、中央金庫のほうにおかれましては、一体どの程度の金額、また、それを貸し付けます場合にどのような条件、具体的に申し上げますれば金利でございますが、そういう点についてお考えになっておられるのか、お聞かせを願いたいと思います。
  11. 菊池弘

    菊池参考人 お答えします。  金融につきましては、先ほども系統全体として資金的な余裕があるというようなことを申し上げたのですけれども、初年度は特にこれら計画の浸透状況によって資金需要が出てくると思います。系統全体として年間の余力は千五百億から二千億ぐらいのものが系統運用の資金需要に応じられるのではないかというふうに考えております。  それから、貸し付けのレートについて特に勉強しろというような御趣旨だろうと思いますけれども、御承知のとおり、農業金融機関は、一般金融機関と同様、大衆預金を基盤にした資金ファンドによって成り立っておるわけでございますけれども、やはり企業金融、市場の金利ですか、それに順応した金利で処理していきたいと思います。できるだけの勉強はしていきたい、こういうふうに考えております。
  12. 別川悠紀夫

    ○別川委員 非常に積極的な御協力のお考えをお聞かせいただきまして、感謝をいたしておるわけでございますが、しかし、中金にいたしましても、これはやはり大事な農家からの貯金を預って運用しておるわけでございます。したがいまして、貸し付けをなさいます場合の心がまえでございますが、やはりある程度の経済ベースというふうなものにのらない限り、無理な融資を求めることも無理だろうと思うのでございます。しかしながら、一方におきましては、この法律に基づく政策的な配慮というふうな形で、ある程度無理をしてでもお願いをしなければならないというふうな場合も多分に今後出てくるのではないかというふうにも推測するわけであります。そこで、そのような場合、過去におきまして、中金さん非常に専門家の方がそろっておられますけれども、一般の金融機関と比べてみますと、どうしても商売がへただというふうなことで、私の心配いたしますのは、焦げつきができるとか、そういうふうなおそれも多分に将来出てくるのではなかろうかというふうに心配をいたします。そこでこの機会に、これは一応の政策金融でございますから、この債権というものを保全する意味合いで、何らかの債務保証の方法というものを考えてしかるべきではないかというふうに私は思うわけでございますが、そういう点について中金さんはどのように考えておられるのか。また、何らか積極的に国に対してこうしてほしいというふうなことがあるならば、その点について、ひとつ遠慮せずにおっしゃっていただきたいと思います。
  13. 菊池弘

    菊池参考人 進出企業といたしましては、従来取引銀行おのおのメーンバンクがあるわけでございまして、私たちも金庫の金融的な観点からのリスクということだけではなくて、農村進出してくる企業が経済的な基盤が弱いと、途中で倒産とか閉鎖とかそういうことで一せっかく農村に出てきましても、農家に迷惑をかける、そういう企業は困るというような観点でございまして、先ほども政府にお願いをいたしましたのは、出てくる企業は、やはり優良な、しかも安定的な企業であってほしいということをお願いしております。それから、そういう観点でいきますので、私たちは金融的なささえというより、やはりほんとうに農村のためになる、永続的に繁栄する企業というものが出てきてほしい、こういうふうに考えております。
  14. 別川悠紀夫

    ○別川委員 もう一歩踏み込んで、債務保証というふうな制度的なものをこの際に考えるというふうなお気持ちはないわけですか。
  15. 菊池弘

    菊池参考人 繰り返しになりますけれども、やはりささえがなければ金融できない、そういった弱い企業といいますか、それは将来の農村のためにはならない。やはり通常の金融ベースで金融ができる、それだけの力のある企業、それから業種的にもそういった発展性のある企業、そういうものが来てほしい、こういう観点で対処していきたい、こういうふうに考えております。
  16. 別川悠紀夫

    ○別川委員 非常にもの足りない感じがいたすわけでございますが一そういうことではたして今後どんどん積極的な融資をし、積極的に工業導入をはかっていくことができるかどうかということにつきまして、私はいささか不満足であります。  なお、立ちましたついでに二、三お聞きいたしたいわけでありますが、今度のこの法律ができましてすぐに問題になってまいりますのは、新たに入ってくる企業に対しましてはいろいろと法律の上で規定された恩典と申しますかメリットというものがあるわけでございますが、といたしますと、すでに現存をする既存の工業であって、しかもこの法律が所期いたしておりますと同じような目的、同じような社会的な機能というふうなものを果たしておる工業が現在幾つかあるわけであります。こういうものは、全然何らの手も打たれない、こういうかっこうになりますと、もうそこに非常に不均衡というふうな感じが深くなるわけでございますので、やはり将来新たに入ってくる企業であっても、この法律目的といたしておりますような機能なり役割りを果たしておるような企業に対してもひとつ拡大をして、これに類したあるいは同じような条件で中金さんに融資をしていただけるというふうなことが非常に好ましいと思うわけでございますが、これが一つ。  それからもう一つは、実は私昨日の質問で農林当局に御要望いたしたいと思ったわけでございますが、単に外部から企業を入れるというふうな形でなしに、これは私の前々から持っておりました理想でございますが、私は農村工業というふうなものについての夢をいままで持っておったわけでございます。昭和四十年にそういう角度から県にもいろいろと御協力をいただきまして、電子関係の部品をつくる工場農村地区に入れました。その入れる形といたしましては、もちろん下請でございますので、親工場それから地元の町村並びに地元の農協、この三社が共同出資をいたしまして、そうしてその地区労働力を使うというふうな形での農村工業というものを導入をいたしまして、おかげでこれが非常にうまくいっておるわけでございます。なお、これと似通った形で、違った町村ではございますが、やはり親企業とそれから町村とそれに農協とその町の商工会、こういうふうな四者の共同出資というふうな形での工場もでき上がりました。非常に成績がよくて、その後さらに三つの工場ができたわけでございまして、現在五つの工場があるわけでございます。そういういきさつがございまして、私もいろいろ寿世話いたして知ったわけでございますが、その場合に私のお手伝いのできるせいぜいの範囲は、信連に御無理を申しまして信連から運転資金を融資をしていただきたいというだけでございました。非常に意義のあるこういった一つの形であるにもかかわらず、制度的には何ら恩典というものがつくられていないというふうなことで、私は非常に不満足に思っておったわけでございますが、こういう面について私は、農林省のほうにおかれまして、将来もっとひとつ進んだ姿でお考えを願いたいと思うわけでございますが、こういうふうなものに対しましてもひとつ中金さんのほうから何らかの形で御融資をしていただくというふうな道をもつくっていただけないかどうか、こういうこと。  さらにもう一つ無理を申し上げますと、農家が転業するというような場合でございます。もちろん完全に転業するという場合もございますが、やはりある程度の兼業というふうな形を残しておきながら、たとえば小さな自分の納屋を改造いたしまして、そこで小さな工場と申しますか、下請的なものをやるとか、そういうふうなこと、あるいは簡単な電気の配線工事をやるとかあるいはコンクリートをつくるとかいうふうな、そういうふうな転業資金というものが必要な場合、ひとつそういう面についても今後系統金融として新たな角度から制度というふうなものをつくっていただけないだろうかどうか。こういうことでまことに欲ばった要望でございますが、こういうことについてひとつお考えをお聞かせいただきたいと存じます。
  17. 菊池弘

    菊池参考人 先生の御趣旨は、何といいますか、既存の工場であっても、指定地域の中で増設資金が融通できないかというようなお話だろうと思いますけれども、私たち、それは対象になりますので、十分おこたえしていきたいと思います。  それから農協の組合員の小規模なそういった工業の設備の投資、それに対する資金需要に対してどうこたえるかということでございますけれども、これは系統段階としまして十分積極的に応援していきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  18. 別川悠紀夫

    ○別川委員 終わります。
  19. 草野一郎平

  20. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 本日は当面議題になっております農村地域工業導入促進法案審議の重要な参考として飯島さん、菊池さん、吉田さんのおいでを願いまして、それぞれ貴重な御意見を拝聴いたしましてまことにありがとうございました。それぞれの参考人に数点お尋ねをいたしたいと思います。  まず、飯島参考人でありますが、私ども承知しておるところでは、飯島参考人は産業構造審議会産業立地部会農村工業化委員会の専門委員として今回の法案の問題について産業構造審議会の中で専門的に十分論議をされてきた経過があるというふうに判断をいたしております。その審議の結果につきましては「農村地域工業開発の考え方と施策についての中間答申」ということで四十五年の九月一日に産業構造審議会から答申があったわけでございますが、この議論された答申と今回出されました法律案の提案までには各省間の折衝その他もありましたけれども、これは議論された内容というものがおおむね本法案の中に織り込まれておるというふうに判断をされておるかどうかという問題が第一点であります。  そこで、具体的な内容をずっと中間答申の中身を見てまいりますと、細部の点は別として、たとえば「開発の推進母体の検討について」ということで、ここでは「農村地域工業開発事業団(仮称)の創設を検討する必要がある。」という意見を提示されたわけです。この点について、御承知のように今回は農村地域工業導入促進センターという形で発足しようとしているわけですけれども、これらの問題についても議論した経過と関連をして御意見があれば出していただきたいと思います。  それから飯島さん自身は、肩書きを見ますと財財団法人日本工業立地センター常務理事、ですから、農村工業導入の問題について直接関係しておられる専門的な立場にあられると思うのですが、この法案の論議の場合に、今度の法案を見てみますと、たとえば国のほうで基本方針を立てる、県のほうで基本計画を立てる、県と市町村実施計画を立てるという形で下へおろされてくる。いわば全国的レベルにおいてそういう基本方針基本計画そして実施計画という形で下におろされるわけですが、農業振興地域ということになりますと、農林省の資料によりますれば、全国で三千百十一というふうに予定地域数ではなっておるわけですけれども、実際に先ほど来吉田さん等からも御意見がありましたような形で出かせぎの解消とか、あるいはいろんな意味構造改善を要する地域に対する農村工業導入によっての農業それ自身の構造改善をやろうという趣旨から考えております地域というものは、企業側からして経済合理主義の立場から見ると、積極的に入り得る地帯あるいは積極的には入り得ない地帯、こういう企業サイドから見るとそういう問題があると思うのですね。これから、ことし百五十市町村を指定していこうということで考えているわけですけれども、いわゆる太平洋ベルト地帯の集中的な工業開発に見られるように、この法案で全国的な立法体系をとりまして、いざ実施になると、実際はこういうところからまず始めていきたいというところで企業側が積極的に入り込むかどうかという問題の懸念が率直にいってございます。しからば、そういう点に国際的ないろんな事例等も見て、そういう一定の条件を備えたかくかくしかじかのところには一般的な施策以上にプラス、こういうものまで考えてやるという努力がやはり配慮されてしかるべきじゃないかという意見も出てまいるわけですが、そういう問題等についても、まあ飯島さんの日本工業立地センター等でも検討されておることだと思いますが、あまり次から次へ質問しても答弁に困るかもわかりません。以上三点まずお答え願いたい。
  21. 飯島貞一

    飯島参考人 ただいま御質問のございました第一点、私、通産省の産業構造審議会の専門委員としていろいろ意見を申し上げましたけれども、それは先ほど私が御説明をした農村への工業導入農村工業化というのは、地域開発一環でまず農業工業調和をいまとってこの法案ができ、さらにそれは地域開発の全体の計画にとけ込んでいくんだという思想は、私いまでも変わっておりません。ただ、このような農村工業化を進めていく場合にも、地域開発を進めていく場合にも、私は一つのまとまった形で工業がある程度団地化していく、この場合に資金も要るし、いろいろな点でそういう事業団的なものができれば、たいへんけっこうだということが、この中ではうたわれて知ったかと思います。そのあとの経過につきましては、その後この法案になるまでの点でございまして、残念ですが、この事業団は今回は入っていない。しかし、いろいろ農村への工業化を進めていく上に、そういう情報センター――最近は情報化時代でございまして、どうしてもそういうようなうまく両方をつなぐ情報機関というものがつくられる。これで当面やっていかれることは、たいへんけっこうだというふうに考えております。  それから三番目の企業の合理主義から、そういう地方と申しますか、農業振興地域のようなところへ企業が入るかどうかいう御質問だと思いますけれども、私どもだんだん日本も情勢が変わってまいりまして、日本工業は、すでに自分の思ったところに好きな時期に好きなところへ行けるという時代ではもうないということを痛感をしております。このために地域がある計画を立てて、それに工業が入ってくる、こういう姿勢でないと、これからの地域開発はうまくいかない。現在、日本工業労働力の不足、それから一方交通条件が非常によくなってまいりまして、新幹線計画高速道路計画、さらに地方空港、こういうものが整備されてまいりまして、全国的に企業の入る条件というのは、非常に均衡されてきていると私ども見ておるわけです。そのために、こういう団地化なり導入も、全国同じレベルですでに考えている。大事なのは、地域計画に合わせて企業がそこに入るということを守っていくといいますか、それを進めていく、これさえあれば調和のとれた工業導入ができるんだということを私は信じておるわけでございます。
  22. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 最後に述べられた点は、いまお話のような点でいけば、それはけっこうでありますけれども、たとえば北海道とか東北とかあるいは南九州とか、そういう地帯に工業企業側が全国的なレベルで実施計画等を立ててくる場合に、関東であるとか中部であるとか、あるいは近畿であるとか、いずれかを選択するということになれば、経済合理主義の立場から見た場合に、政策的にはまず東北なり北海道なり、あるいは北陸なりというところで進めたいと思っていても、必ずしもそういうようにならぬという障害条件というものはあり得るのではないか。これは経済の常識として私はそう思う。そういうものを、やはり政策的な補強によって、当初ねらっているような方向の遂行に当てるということのためには、全国的なレベルのこういうブランと同時に、そういう配慮が必要であろうというふうに私自身は考えているわけであります。  次に、吉田さんのほうにお伺いをいたしたいと思うのですが、これは戦後の食糧増産で農業諸団体あるいは私ども農林水産委員会、いろいろ議論してきた当該委員会でありますけれども、この当該委員会農村工業導入の議論をしなければならぬ、いわば、これは商工委員会ならともかくも、工業サイドの問題をこの委員会で議論しなければならぬ、税金をどうしろとか、あるいは融資の面をどうしろとか、もっと範囲を拡大しろとかいうふうなことをやらなければならぬというのは、これは時代の変遷だと思いますけれども、感慨なきを得ないわけです。まあ、そういうことは別にしまして、たとえば農村地域工業導入促進法によって農村地域工業が入ってくる、それは単に企業サイド工業が入るというだけではなしに、農業団体自身も農村工業として積極的にみずからも取り組むという姿勢があるのかどうかということの問題であります。これは先ほども御質問がありましたけれども、十三条によって、いわゆる農林中金の系統資金をこれに活用しよう、本来系統資金の性格から見て、農業関連産業以外の企業系統資金を活用する問題それ自身については、議論の存するところだと思うのですが、しかし農業団体自身も本法に基づくところの工業導入の重要な一翼をになうという積極的な姿勢があるのかどうかというところが、私は一つの問題点だと思うのであります。これは今日できております農業基本法の第十二条の関係において、御承知のように「農業協同組合又は農業協同組合連合会が行なう販売、購買等の事業の発達改善、農産物取引の近代化、農業関連事業振興農業協同組合が出資者等となっている農産物の加工又は農業資材の生産の事業の発達改善等必要な施策を講ずるものとする。」こういうふうに農業基本法の第十二条では、農産物の流通の合理化等ということで書かれておって、農業団体自身もこういう問題に取り組むということが基本法ではうたわれているわけでありますが、必ずしもこの面が政府の積極等な指導があったとも考えませんし、また農業団体自身がこの問題に真剣に取り組んできたとも私、必ずしも看取しないわけですけれども、今回のこの法律の提案を契機にして、農業新聞等で拝聴いたしますと、積極的にこれらの検討にも取り組むようでありますが、その間の考え方についてひとつお伺いいたしたい。
  23. 吉田和雄

    吉田参考人 いま言われるとおりでございまして、私どもとしましては、もう御承知かと思いますが、昨年の十月の第十二回全国農協大会におきまして、画期的なものとしまして、先ほど自主建設路線と申し上げましたが、具体的にいいますと、総合三カ年計画を樹立して、これを運動として実行していこうということを決議いたしております。この総合三カ年計画は、柱として七本ぐらいございまして、先ほど申しました生活基本構想というのもその一本になっておりますが、一番このうちでトップになっておりまして、一番中心になっておりますものが、農畜産物の生産、販売一貫体制をつくっていこうというのが、総合三カ年計画のうちでも最重点事項になっております。これは私ども農協としましての反省がございまして、いま申されますように、いままで農協は、ともすれば集荷の段階までしかやっていない、あと、加工なり販売なりを他にゆだねる、集荷の段階のシェアさえ確保すればいいのだというような点にとどまっていた傾向が実はございます。そういう加工、販売への出おくれと申しますか、これをどうしても矯正していかなければならぬ。特に農畜産物の流通問題物価問題等がやかましいおりでもございますので、われわれとしては、加工なり販売なりに積極的に進出をして、消費者との距離を縮めていこうという意図でございまして、大会が終りました以降、中央段階におきましても、各県段階におきましても、三カ年計画の推進委員会というようなものが設けられまして、三年間にこれだけのことをやっていこうというようなことで手をつけております。品目としては、私ども考えております最重点品目はやはり米でございます。米もいままでは集荷段階までしかやっていなかったわけでございますが、積極的にひとつ販売段階進出していこうということでございますが、これには一つのネックがございまして、東京、大阪等大消費土地の都府県におきましては、農協に卸売りの認可がもらえていないというような一つの政治的なネックがございますが、これもひとつ打開をしていきまして、やっていきたいというふうに考えております。  さらに、牛乳あるいは食肉、それから青果等につきましても、ただいま具体的な計画をつくりまして加工を――いままでの農協系の加工事業というのは、ともすれば孤立分散してやっておったものを、これを統合しましてやっていきたいというふうに考えております。販売につきましても、いま全国連におきましても配送センターなり集配センターなりの設置計画をもう進めておりまして、すでに土地買収等にも実は入っておるというような状況でございます。したがいまして、この法案の趣旨に基づきまして、われわれ農協としては、自主建設である三カ年計画とのタイアップにおきまして、積極的にこれには対応していきまして、農村にわれわれの手からなる工場をひとつつくっていこうという気がまえでございます。
  24. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 最後に、菊池さんに一点だけお伺いしておきたいと思いますが、これは今回の法律では十三条で農林中央金庫からの資金の貸し付けということで、限定された条件でございまするけれども、農林大臣及び大蔵大臣の認可を受けて、資金の貸し付けができるようになっておるのであります。まあ農村地域工業導入促進法案に基づいての資金としては、たとえば日本開発銀行であるとか、北海道東北開発公庫であるとか、あるいは中小企業金融公庫であるとか、いろんな政府関係の制度金融といいますか、そういう式の性格のものも含めて資金的な手当てが考慮されるわけでありますが、その中での農林中金との交通整理というものは、これは私、法文上できておると思うのでありますけれども、農林中金側では、第十三条に基づく資金というものの貸し付け、これ以上に――今後農林中金法の改正等の問題もありますけれども、さらに踏み込んでいきたいという考え方であるのか。系統金融の性格その他から判断して、この程度のお手伝いはいたしたいという気持ちであるのか。その辺のお考えについてお伺いしておきたいと思います。
  25. 菊池弘

    菊池参考人 お答えします。  私たちの、先生の御指摘のいままでの企業金融につきましては、農業に関係ある農産物の加工とか、農業関係に資材の供給をする、そういった会社に対する金融が余裕金等運用として認められておるわけです。要するに、農村をいかに繁栄させるか。農村のためになる、そういった業種について金融を認められておる。この農村工業導入法につきましても、やはり総合農政一環としての、農業をいかに構造改善に持っていくべきか、農村をいかに繁栄させるか、そういう趣旨でございますので、性格的には――法律の中身としては違うと思いますけれども、性格的には同趣旨である、そういう理解のもとに協力していきたい。そういうふうに考えております。
  26. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、以上で終わります。
  27. 草野一郎平

  28. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 当委員会で目下審議をいたしております農村地域工業導入促進法案について飯島参考人菊池参考人吉田参考人から、それぞれ貴重な御意見を述べていただき、ありがたく感謝いたします。この機会に若干のお尋ねをいたしたいと思います。  最初に、全国農業協同組合中央会常務の吉田参考人にお尋ねいたしますが、生産調整による稲作減反で労力と土地が余り、現金不足で困っておる農村工場計画的に進出させる、また工業側も求人難、用地難や都会の過密、公害を緩和するばかりでなく、零細農家の離農と専業農家の経営規模拡大を促し、おくれている日本農業構造改善に役立たせる、こういったねらいを持った今回の農村地域工業導入促進法案ともいえるわけでありますが、東北、北海道、山陰――これは全国的にそうでありますけれども、特にこういった地方では、農工一体化とか、農工両全というような合いことばでたいへん期待をしていることは御承知のとおりであります。しかし、経済の高度成長の中でオール兼業化というような道をたどってきたともいえるわけでありますが、これら日本農業の現状から踏まえまして、はたしてこの法案によって、現在総合農政の展開を進めておるわけでありますけれども、近代化され、農工一体化が実現するかどうか、こういったことについては、かなりけわしい道である、こういった意見も多々あるわけでございます。こういった点から吉田参考人としては、どのようにこれを見通しておられるか。これに対する御意見をひとつ最初に承りたい。かように考えます。
  29. 吉田和雄

    吉田参考人 言われるとおりでございまして、私どもも先ほど意見開陳のおりにその点を実は懸念をしております。ただ、実態といたしまして、農村には、先ほど申しましたように、中高年齢層労働力は実は余っておるわけでございまして、そういう人たちにやはり安定した雇用所得機会が与えられるということは、実態論としては一つの方向であるというふうに考えています。  ただ、西ドイツで行なわれておりますようなオール兼業という形にもっていっては私はならないというふうに考えております。先年、西ドイツのバイエルン州からガイエル・パーカーという人が来られました。彼の意見を聞きますと、まさにオール兼業論でございました。しかし、日本は西ドイツと違うわけでございます。私どもとしては、三十六年以来、営農団地の造成ということがこれからの政府でいう農業構造改善の唯一の方途ではないかというふうに掲げまして、進めております。これは専業も兼業も含めた一つの集団的な生産組織をつくっていって、そして規模拡大をやっていく。従来のように自立経営農家というかっこうで個々農家をとらえてやっていきましても、なかなかいまのように土地の値段が高い、農地の資産的保有の傾向が非常に強いというような段階におきましては、実は困難であると思います。やはり一つ道程を経なりればならない。端的に申しますと、請負耕作だとかあるいは借地農というようなかっこうで、農業でめしを食っていこうという人たち兼業農家と十分に話し合って規模拡大していく。兼業農家のほうでは、どうしても農業だけでめしを食っていけないということになりますと、どうしても農外に就労せざるを得ない。その農外に就労する機会がなかなか農村にはなくて、大都市に行かなければならないというところに問題があるというふうに私どもは感じております。したがいまして、この法の運用については十分留意する必要があると思いますけれども実態としまして、基本的には、先ほど申しましたように、この法律がそういうような出かせぎというような人間疎外形態を幾ぶんでも直すことになりますればということで、希望を持っておるというような次第でございます。
  30. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 吉田参考人にさらにお尋ねをいたしますが、農村への工業導入政策は、農業工業両サイドの共通利害に立つ政策としながらも、運用次第では工業に偏しかねない要素を持っているとも言えるわけであります。昨日もいろいろと当委員会審議をしてまいったのでありますが、この辺の調整機能をどう適切に行なうかということがたいへん心配されるわけですが、この点、全中としてはどのような御見解をお持ちであるか。いろいろ検討されておられるとすれば、ひとつこの機会に御意見を承っておきたい、かように思うわけでございます。
  31. 吉田和雄

    吉田参考人 先ほど申しましたように、この法案をながめますと、当初いろいろと農林、通産の間で経過があったようでございます。たとえば事業団をつくるとかいう経過があったようでございますが、私どもとしては、そういう事業団をつくることについては絶対反対であるという態度を貫き通してまいったわけです。それは、結局そういうものをつくるとどうしても天下り式になるわけでございまして、われわれとしてはこの法案は、農業サイドから見た工業導入であるというふうに私どもは解釈をしております。そういう意味でこれは賛成をしておるということでございます。あくまでもそういう法案の趣旨を運用にあたっても貫き通してもらいたい。そういうことになりますと、具体的には、先ほど申しましたように、やはりこの基本方針を立てるなりあるいは計画をつくる段階におきまして農業者側の意見を、むしろ一緒に参画するというようなかっこうで意見を十分反映させる、また現地におきましては現地の地域の住民といいますか、そういう公聴会を開くとかいろいろ方法があると思いますけれども、そういう方法によりまして意見を十分に取り入れる。もし公聴会を開いて農家の間で、そういうものはごめんだということなら、そういうところに無理に導入する必要はないというふうに私どもは考えております。  そういう具体的に法律を施行する場合の運用というものが非常に大事であるというふうに考えております。
  32. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 もう一点、吉田参考人に伺っておきますが、本法案で、工業導入農業基盤の整備、また人の問題、こういったことが非常に問題となるわけでございますが、職業訓練のことについて御意見を承りたいと思うのです。  政府が四十五年度から始めた工業導入就業対策というものは、お役所のセクト主義で空転している、こういうふうに私たち見ているわけですが、言うならば米の減反政策で、兼業所得を求めて出かせぎをする農家を、深刻な手不足で労賃の値上がりが続く中で、技能労働者に仕立てて出かせぎを助長するような職業訓練、こういうふうにいえるわけであります。   〔委員長退席、三ツ林委員長代理着席〕  すなわち、職業訓練の業種内容というものが、左官、溶接、塗装、建築、配管、板金といったようなもので、農村への工業導入につながる職種とはほど遠いようなものが多い、こういうように思うのでありますが、この職業訓練と就業対策について、将来、本法案の施行に伴ってどうあるべきか、どのように希望されておられるか、この機会にお聞かせをいただきたいと思います。
  33. 吉田和雄

    吉田参考人 職業訓練の実態についてはつまびらかに存じておりませんけれども、いろいろ聞きますと、たとえば埼玉県等におきましては、県で農民の職業訓練の場所を設けたところが、さっぱり応募者がいないというような、一つのナンセンスに近いような状況も実は聞いております。先生の言われますようなことが実態でありますれば、私どもとして十分に、職業訓練の面につきまして農協としてもっと突きささっていきたいというふうに考えております。  また、先年来、職業の紹介と申しますか、そういうものにつきましても労働省側とも話し合いを行ないまして、農協に職安の事務の一部を委託してもらいたいということを、いままで言ってきております。実現しましたかっこうといたしましては、農協にその相談員を置くというようなかっこうで実現をいたしておりますけれども、まだちょっと何かあき足らないような実は感じでございまして、農村へ行ってみますと、なかなか職安がある町というのは農村から非常に遠いのでございます。やはり近場で、実際に農家が職業の紹介をしてもらうというようなことが非常に大事だと思います。そういう意味で、なお、政府に対しましては、いま申し上げましたように職安の事務を農協に委託してもらいたい。われわれとしましては、そういう米単作地帯においては従来から農外就労対策部あるいは兼業係というようなかっこうで、専任職員を置くように極力指導してまいってきておるというような次第でございます。
  34. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 では最後に、財団法人日本工業立地センター常務理事飯島参考人吉田参考人にも若干の意見をあわせてお伺いしたい、かように思います。  当委員会で昨日私が経済企画庁並びに農林省当局にも質問いたしたわけでありますが、新産都市の指定が全国十五地区、三百二十市町村と、広範な指定が行なわれておることは御承知のとおりであります。これらの新産指定市町村の中でも開発が進まず取り残されている市町村が多いこともいなめない事実でありまして、このような状態については新産都市関係の主管である経済企画庁でも認めておりますし、新産都市といえども税金を平均に返すのではなく、その地域中心となる拠点以外はむしろ開発を抑制しようという考え方がその根底にあるようであります。したがって、新産都市に指定されているにもかかわらず開発が抑制されている市町村都市計画区域の指定を受けている市町村は、開発の谷間に放置されているわけでございまして、この点を昨日いろいろ指摘いたしまして、いろいろと政府の答弁をいただいたわけでございますが、御承知のように、北海道、青森、宮城、秋田、福島、長野、新潟、富山、鳥取、島根、岡山、徳島、愛媛、福岡、熊本、大分、宮崎と、中でも福島県はほとんど全域、熊本県もほとんど全域に近いという、実に対象から除外されているという問題があるわけです。農林省当局も昨日の答弁で、再検討する必要がある、農林省としても政府内での相談をやりたいと、また経済企画庁からも実情を十分伺って処置をする、こういうふうなことで、るる答弁をいただいておりますが、この点につきまして、工業立地センター常務理事をしておられるその方面の専門である飯島参考人にお考えを承りたい。なお、全中吉田参考人にもあわせお考えを伺いたい。  以上、お願いをいたします。
  35. 飯島貞一

    飯島参考人 ただいまお話しの新産業都市、全国で工特も合わせますと二十幾つになると思いますが、この中で内陸地域として指定されているのは松本・諏訪地区だけでございまして、そのほかは昭和三十年代から四十年代にかけての臨海性の基幹産業を中心とした開発をはかり、それに伴い、その地域全体を調和がとれて開発をしていくということが主体かと思います。  もちろん臨海工業というものの立地場所を中心にして開発が進められておると思いますけれども、その地域の中は、これは内陸性の工業地帯も十分入っておるわけでございまして、それは新産業都市計画の中で一応考えられてよろしい地域かと思います。で、いまお話のございましたように、相当山村地域もございます。したがって、私が一番最初に御説明申し上げましたように、農村工業化というものの考え方は、やはり全体の地域開発計画の中で考えられないとこのように矛盾が出てくる。したがって、それは新産業都市法律の中での施策を強化するのか、この法律に取り込んでその中でおやりになるのか、この辺は今後政府機関が協議されると思いますけれども、これはいずれにせよそういう指定地域というのは、どうしても制限がございますけれども、中身としてはどうしてもやらなければいかぬ、こういう現実は全国的に同じだというふうに私は考えております。
  36. 吉田和雄

    吉田参考人 先ほど陳述申し上げましたように、対象地域の問題につきましては、農業振興地域だとか、あるいは山村地域過疎地域主体になるということにつきましては当然であると思いますけれども、私どもとしてはそこにだけ画一的に限定をするということはどうかという考えでございます。したがいまして、たとえば都市計画法第七条に必ずしなければならないという市町村があるわけでございますが、そういうところは除くといたしましても、新産都市とか、あるいは工特地域であっても、いま言われましたように、工業がほとんど入らないでおるところもございますので、そういうところは対象に加えたらいいではないかという考えを持っております。
  37. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 貴重な御意見を拝聴いたしましてありがとうございました。  以上で質問を終わります。
  38. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 田中恒利君。
  39. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 三参考人にそれぞれ若干ずつ御質問をいたします。  最初に飯島参考人に御質問いたしますが、これまでの工業立地実態は大体どのようになっておるのか、団地造成という形で入ったもの、単独で入ったもの、これでけっこうでありますが、その割合をおわかりでございましたら、お知らせをいただきたいと思います。
  40. 飯島貞一

    飯島参考人 ただいま手元に数字を持っておりませんので、単独と団地の割合についてはちょっとお答えできませんけれども、現在工業団地は、政府機関である住宅公団、それから公害防止事業団、それから産炭地域振興事業団、これが国の機関、それから地方公共団体みずからやっておるもの、それから地方公共団体がつくっております公社のやっておるもの、それから民間と地方公共団体の共同、こういう形で団地化が進められております。  単独立地につきましては、特に東京とか、大阪のような大都市周辺に相当単独立地が多いわけでございますが、団地のほうも最近ふえてまいりまして、工業団地の中に工業が入っていく、こういう形態がだんだんこれからふえてくるというふうに私どもは考えております。  数字につきましては、もしなんでしたら、あとで……。
  41. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 私どもも正確な内容、数字を握っていないわけですけれども、大ざっぱに、どうも現在までの状況ではやはり単独で企業が特に農村地域等には入っていくケースが多くて、せっかく団地をつくっても団地に入らないものも相当あるし、団地自体がそのまま荒廃をされておる、こういう話をよく聞くわけであります。  そこで、この問題の御専門でありますので、お尋ねをいたすわけでありますが、この工業団地というものの意味でありますが、本法におきましても単に工場用地と、こういう観点で考えておる答弁が昨日来なされておるわけでありますが、昨日の農林商工の連合審査会におきまして、質問の中にもあったわけですけれども、単なる工場用地というだけでは、団地というものではないのであって、本来であるならば、工場が建つことに伴う住宅の問題、あるいは学校であるとか、保育所であるとかという、こういう施設、こういうものが全体的に組み合わされないと、工業団地とはいえないのだ、こういう意味の御質問もあったわけであります。私もそうではないかと実は思うわけでありますが、この点は団地というものを今日の時点においてどういうふうに組み立てられようとしておるのか、この際、ひとつお教えをいただきたいと思うわけであります。
  42. 飯島貞一

    飯島参考人 工業団地というのが工場用地と違う、これは私ども違うと思います。なぜ違うかといいますと、団地というのはある意図及び計画が入っている、これがなければ団地と私どもは言えないと思います。これはなぜかと申しますと、工業自体からいえばそこに集まることによっての一つの利益がある。それから団地をつくるということはまとまって土地を使いますので都市計画とかその他の土地利用から見て一つのまとまった形で地域指定がしやすい、それからまとまることによって共同の施設が使える、それから最近問題になっております公害対策、これは個々企業個々にやる場合に非常にむずかしい問題がございます。この場合に共同をして排水処理をする、騒音防止をする、緑地をつくる、こういうことができるわけでございます。  一方地方公共団体なり国から見れば、ある程度まとまったところに工業が入ればそこにいわゆるインフラストラクチュアと申しますか道路とか水道とか電気とかガス、こういったものをまとめて引いてやることができる。ばらばらに工業が入ってまいりますとここへも水をつけ、ここへも道路をつけという非常にむだなことがございますので、一つ団地という以上私ども計画及び意図があるということを考えております。  それから日本では工業団地といいますと非常に製造業が入ったものを工業団地といっております。しかしこれはだんだん製造業だけ団地をつくってみても非常にかたわな状態が出ております。そこには流通施設であるとかトラックターミナルであるとかストックヤードであるとか、こういうものがまず必要になります。さらに一つ団地というものが意図されたものである以上、そこの団地に対しての住宅はどうするか、それからショッピングはどうするか、郵便局はどうするか、こういった問題も出てまいります。諸外国ですでにこういう例はたくさんございますけれども工業団地住宅団地と、先ほど申しましたいわゆる都市機能に当たるようなもの、それから特にこれからはレジャー施設、公園、スポーツセンター、こういったものを一体としたニュータウンとしていわゆる総合団地という形が非常に望ましいと私どもは思っております。  それを促進する要因としては、高速道路でだんだん非常に条件がよくなった地方に対してそういう大きなかたまりができて新しいニュータウン、工業ニュータウンができる、これを私どもは考えております。これがその地域の高年齢層も含めた雇用促進すると私どもは考えておるわけであります。
  43. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 私どももそういうことだろうとおぼろげながら思っておるわけでありますが、そこで実は本法で団地を拠点地区開発方式のところでは採用するということになっておるのですが、その団地というのは面積で二十ヘクタール、こういう答弁がなされておるわけでありますが、私はそういう程度のもので団地というのはできるのかどうか実は疑問を一つ持っておるわけです。やはり先進的な臨海工業地帯等の動向を見ましても、まず第一に労働力の移動が周辺相当距離を通じて行なわれてまいります。それから農業生産の立地移動がやはり行なわれてきます。当然農村の集落が移転をしていく、こういう形になっていくわけですね。相当広範囲な形でこの中心になる工場中心としてその地域全体が変わっていく、こういうことをいま御答弁になったと思うのですね。そういうことになりますとこれは農工両全とかいうことでなくて、私は団地構想というものは本質的にはやはりその地域工業化というルールにつながる性格のものでなければならい、こういうように思っておりまして、本法で出されておる団地造成というものは何か中途はんぱなような感じが実はしておるわけです。こういうことについての御意見はもう時間がありませんので承りませんが、やはり本法の場合はそういうねらいよりもむしろ農業工業の関係をどうしていくか、こういうところが焦点であるので、そういうものに類した工場用地の造成等をはからなければならないのじゃないか、こういう気が私自身はしておるわけでありますが、いま一つ飯島さんにお尋ねをしておきたいのは、私ども農村工業を入れる場合に一番魅力になるのは何といいましてもいま農業の経営構造の一つの大きな問題になっております中高年齢者層の雇用が確保されていく、先ほども参考人の中からそういうことに期待する意見があったわけでありますが、この点でありますが、現実に中高年齢層雇用企業がやはり求めておるのか、これまでの導入過程で実際にそういうことがで建ておるのか、この点についてお教えをいただきたいと思うのです。
  44. 飯島貞一

    飯島参考人 先ほどの点で誤解があると申しわけないのですが、非常に大運な団地というのはある地域で限られて幾つかにしぼられる、しかしそのほかに小さいものとかそれから個々立地は当然ある、これが農村工業化に結びつく問題でございまして一般的な工業団地の姿として私最初御説明したと思います。  それから企業中高年齢層に対する要求でございますけれども、最近では特に中学卒というのはウエートも少なくなってまいりましたし非常に期待しにくい。それから高校も大学への進学率もふえてまいりまして、現在のところ高校出の労働力を求めておるわけですけれども、さらにそれ以上に地方へ工業がいって主婦のパートでございますとか一般の中高年齢層を求める姿がすでにたくさん出てきております。ただ私どもはその工業の一面から申しますとやはり工業にすぐに役立つといいますか工業を理解してもらえるような労働力、これにどう対処するかという問題が残っております。このために中高年齢層の職業訓練とかいろいろな問題が先ほどから出ておりますけれども、なかなかむずかしい問題が出ております。そこで、必ずしも工業がいったからといってそこの工業に働かなくても、工業がいったことによって誘発されるいろいろな施設、そういったものにその労働力が利用される、使われる、そこにつとめられる、こういうことは工業開発が大きければ大きいほどチャンスはたくさん出ておるという形で、いま住宅だけの非常に大規模団地をつくっておられますけれども工業だけの団地がかたわであるように、住宅だけで数十万の団地をつくるのもこれは将来かたわになるだろう、そこには働く場所と住宅とが一体になってその地域の若年から高年から全部を含めての雇用効果が出てくる、これが非常にいい姿であると私どもは考えております。
  45. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 農林中金の菊池参考人に御質問をいたしますが、今度関連企業だけではなくて農村導入される企業に対しても中金が融資をするということになったわけでありますが、しかし農林中金の性格からいたしましてその融資がその地域農業の伸展に結びついていくという要素をやはり融資を通してなしていく、これは企業に金を貸すわけでありますから、企業全体が、そのことによって企業も伸びるし地域の経済も伸びるということになるわけですけれども、私はやはりこの融資条件というものに対して農林中金は農林中金らしい条件というものがあってよいんじゃないか、こういうように思うのです。昨日来からいろいろ審議を通して、一体どの程度この農村に対する工業進出に必要な資金が要るか、こういう質問に対して、まだはっきりした数字ではありませんが、大ざっぱに大体六兆円内外の資金が必要なんじゃないか、設備資金とか運転資金とかいろいろ種類をいわれておったのでありますが、系統資金は千五、六百億というのでありますから、系統資金が果たす役割りというのは、全体から見るとさほど大きいとはいえないのであります。しかし系統が、中金なり信連なりが融資をする場合の融資条件というものは、農村企業が入っていく、その企業のどの部分について融資をしていくのかということについて、もし中金のほうでお考えになっているような点があったら、この際お示しをいただきたいと思うのです。たとえば土地を整備する事業であるとか、あるいは労働者を雇用していく場合の、これは運転資金になるわけでありますけれども、そういうものとか、そういう融資事項というものを、ある程度農協としてはこの法律を通して一番問題になる点にしぼって、していくことがやはり私は必要じゃないかと思うのですが、そういう点について、何か御意見や、御検討をしておられるようでありましたら、この際お聞かせを願いたいと思うわけであります。
  46. 菊池弘

    菊池参考人 ただいまの質問でありますけれども、もちろん農林中金としては、先ほども申し上げましたとおり、系統金融全体といたしまして、その地域発展に資するためと、それから総合農政一環として、その地域農業構造改善のためと、こういう前提でものごとを考えております。したがいまして、いま先生御指摘の、どういう分野に融資するかというお話でございますけれども進出した企業の、その土地で必要とする設備資金、つまり土地、建物、機械、それに加えまして、その進出した工場の必要な運転資金、こういうふうに考えております。
  47. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 吉田参考人に御質問いたしますし、同時に農林中金のほうにも、御答弁は要りませんが、ひとつぜひお考えをいただきたいと思うのですが、先ほど吉田参考人のほうから御答弁がありました趣旨でありますけれども、私も、こういう本法の内容等を見まして一番強く感じますことは、やはり農村工業が入っていく場合に、農村外の企業が、いろいろ言いましても、利潤追求という基本的な目標に向かって農村進出してくるということは、これは資本主義の世の中である以上、否定することはできないと思うのです。農村では、やはり農業に役立つという側面があるので、私は、ぶつかり合う面がたくさん出てくると思うのです。そういう問題をできるだけなくしていくためには、やはり企業の経営主体というものを農村側が持つ、この状態ができないと、できない。だから、先ほどの委員の意員の中にもあったわけでありますが、やはり農協等が関連企業に対して相当出資もしております。農業関連企業に対するいろいろな援助をしております。こういうものを全国的に、いわゆる農村地域に配置していくという意味の御答弁があったのでありますけれども、こういうものはやはりもっと本格的にやっていくということが当面重要である。あるいは現在農村における企業の――実は、農家が一番農業外の収入で得ておるのは、この法律で対象になるようなものじゃないのですよ、これは事情を御調査になったらわかると思うのですけれども。この法律では、いわゆる拠点開発で二十ヘクタール、それから市町村単位で十ヘクタールから三ヘクタールぐらいというのですね。最低三ヘクタールの工場敷地といっておるのですね。雇用の人数がどれだけになるか、はっきりしてないようでありますけれども、現実にいま農村で、農業のいわゆる兼業収入の非常に大きなウエートになっておる企業というのは、二十人とか三十人とか、五十人とか百人までですね、大きいところでも、これがおそらく九〇%くらいまであると思うのです。こういう零細な企業というものに対して何らかの手を打たないと、実質的に兼業収入をふやしていく、出かせぎをやめていくということは、私は、できないと思うのです。こういう点を、この法律は対象外にしておるわけであります。こういう点は、私はやはり、何らかの形で、結びつけられれば結びつける必要もあると思うし、むしろこういう方面については、やはり農協等か中心になって、自主的にそういう企業を養成していく、つくり上げていくという努力をすべきである、こういうように思うわけであります。こういう点につきまして、全国農協中央会でありますから、農業協同組合のいわゆる最高の意思決定機関であり指導機関でありますので、この際吉田参考人のほうからこれについての御所見を承りまして、私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  48. 吉田和雄

    吉田参考人 もう、言われるとおりでございまして、私どもとしても、農村工業導入するといっても、いろいろ工業の種類があって、やはりわれわれとしては、できるだけ人手の要る、たとえば木工業みたいなものが望ましいと思います、公害のない。そういうものになりますと、いま言われますように必ずしも大規模なものでなくて、中小企業と申しますか、零細なものが多いと思います。そういうものにもこういう法律が適用されるということが望ましいというふうに考えております。ただ、先ほど申しましたように、無法状態でほうっておきますと、もういろいろと弊害ばかり起こってきて、始末がつかないというようなことになりますので、このような法律は、万全なものとは私は考えておりませんけれども、これは一つ法律をつくって、農村工業が入る場合にはこういうルールでやっていくんだという、一つのルールをこの際確立する、これが一つの端緒になれば、というふうに私は考えております。
  49. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 以上で、参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ長時間にわたり御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  午後一時三十分に再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      ――――◇―――――    午後一時四十三分開議
  50. 草野一郎平

    草野委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  午前の会議に引き続き、農村地域工業導入促進法案に対する質疑を続行いたします。美濃政市君。
  51. 美濃政市

    ○美濃委員 いままでずっとこの法律案の質疑を聞いておりましたが、私の聞いている範囲ではこの答弁がすっきりしないので、最初にお尋ねしたいことは、農村地域工業導入促進といいますけれども、これは一体具体的にどういういうふうになりますか。過密公害等が出ておりますから、過密公害地帯から工業が移転するものが主になるのか、それとも何か製造を企画して新たな――新たといっても製造する品目が新たという意味ではないわけですが、工業製品が増加する方向で工業建設を行なわれるのか、この見通しをはっきりしてもらいたいと思います。いわゆる過密地帯からの疎開、移転が主なのか、それとも過密地帯の工業工業として、新たに工業製品が製造される、建設が主なのか、どちらになるのか、見通しをはっきりしてもらいたい。
  52. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 この法案を考える場合に、いろいろな立場でそれぞれの希望をお持ちになるだろうと思うのであります。いま、なるほど通産、労働、農林三省共管でやるわけでありますが、私どもが主としてねらっておりますのは、しばしばお話がございましたように、わが国の人口分布その他いろいろな経済産業状態を考えてみますと、やはり農村地域においては過疎の問題等もあり、それからいまの農業基本法に基づく農政を推進してまいるにつけても、兼業というものがかなりの部分わりあいに長期間存在するであろう。われわれといたしましては、農業の体質を改善して農業の力をつけるということはもちろん大事でありますけれども、現在多くあらわれております農村の余った労働力また新しく出てくる労働力をもっと地元で合理的に活用することによって人口の分布が平均化されるし、農村の荒廃も防げるし、所得も増大していくことができる機会があるのではないだろうか、そういうことを考えてみますと、やはり田園工業都市的な構想、これは私どもが発明するまでもなく、イギリスなどヨーロッパ諸国では前々からかなりそういう構想でやってきておりますが、私どもにとりましても、また農業家自身がお考えになりましても、新しい産業が地元に出てくること、同時にまた地元の地場の産業が土地の余った労働力、新しい労働力を吸収することによって所得を増強していくということが望ましいことである。いろいろそういう考え方が一致いたしまして、今度のような法律の考えになったわけでありまして、この法律によって新しく進出されようとする方々は、いまのお話のようにこれはおもしろい構想であるというので、増産の計画をお立てになる向きもあるでありましょうし、新しく進出するものもあるでありましょうし、こういうことでありますので、どちらが主であるというふうなことをちょっと判断しかねるのでありますけれども、要は私どもの立場からは農村を主にして考えておるわけであります。
  53. 美濃政市

    ○美濃委員 通産省にお尋ねしますが、日本工業製品は現在国内需要と輸出量を合わせて、ものによっては不足するものもあると思うが、工業を体系的に全体を見た場合に、設備能力は不足なのか、多少上がるのか、全体をさしてお答えを願いたいと思うのです。部分的には、たとえば繊維の規制があれば繊維が余るということで損失補償をしなければならぬというような問題も出ております。しかし全体をさして現在の輸出量はどうですか。額はこれからもうインフレですから、額的なものは別なんでありますが、量です。現在の輸出量、それから国内需要、これに対する生産設備は不足なのか、大体需給均衡なのかそれとも多少余る状況なのか、どういう状況にありますか。
  54. 両角良彦

    ○両角政府委員 わが国の産業全体といたしまして、現在の輸出、内需を合わせました需要に対して設備能力が過剰か不足であるかという点につきましては、景気の動きというものがたいへん影響を持っておりますので、なかなか断定的には申しかねる点もあるのでありますが、おおむねの傾向を申し上げますと、昨年までのいわゆる好景気の時期におきましては、各業種を通じまして設備の稼働率はおおむね一〇〇%に近い数字でございました。ということは、設備能力として需要をフルにまかなうに足るだけの回転をしておった、こういうことでございますが、その後の状況から申しますと、やや稼働率が落ちてきておりまして、私は現在のところはおおむね九割前後の稼働率というふうに理解をいたしております。ということは、能力か需要に対して多少過剰気味の分野も出てきておるということでございます。しかし、これは今後の景気の推移によりまして、また異なってまいることになります。
  55. 美濃政市

    ○美濃委員 いまお話を承りますと、現在の需要に対する設備は大体十分である、こういうふうに一口に言えると思うわけですね。景気がよくなっても景気が沈滞しても平均九〇%ぐらいの稼働だというのであります。どうでしょうか、この上農村地域工業導入促進法によって、いま農林大臣の言うように新たに工場のふえるものもあるんだ、しかしこれはこれから先もおそらく需要の変化によって、新製品と旧製品の問題はあるであろうけれども、しかし現在の状況から見ると、設備能力十分ということになって、これが移転するというふうに考えますと、いわゆる過密対策あるいは公害対策として分散政策というふうに考えると、これは農村導入というけれども、分散に伴って、やはりそこで働いておる人は、ある程度その工業の移動によって都市から――いままで非常に過密して大気汚染が起きたり、交通事情も東京あたりはこういうふうになっておるわけですから、これが分散すると、その人はその工業についていかなければならない。そうすると都会にかなりの失業が起きるのじゃないですか。人手不足というけれども、人手不足というのは、新しい学校の卒業者の就職状態を見ておっても、特に男子あたりの卒業者が、生涯の仕事として安心して就職できる場所は人手不足じゃないんですね。やはり求人に対して希望は上回っております。ただ、いまどういうものか、消費の動向から見れば、私は消流関係あるいはセールス関係なんか西欧諸国と比べても非常に多過ぎると思うんですね。非常にサービスの要ることはわかるけれども、そのために、全部とは言いませんが、物価高の一要因もそこにあると見ているわけです。学校を卒業した初任給は払われるけれども、妻子を持って将来の仕事としてはとても期待できない。世帯を持った従業員をかかえるだけの力はない。一時的にそういう賃金の安い労働力がほしいんだ、そういう関係で、求人に対して希望が整わないという一面は確かにありますけれども、その関係では手不足だってやるんですね。就業状況から見たら私は過剰と考えておりますから、過剰傾向部門の低賃金で若い人を一時的にだけ使って、将来の保障ができないというところが手不足だというようなものの動きがありまして、ほんとうに将来の仕事として、安心して就業できるということであれば、これはことしの学校卒業者を見ても求人よりも希望が上回っておるという状況ではないかと見ておるわけです。そういう状況であるとするなら、工場が移動するのであれば、それに伴って就業者は移動していかなければ、いまそういう人手不足だなどというところで、安心して生活できないようなところでは生計は成り立たぬわけですし、一家の生計を立てるということにならぬわけですから、いま人手下世といっておるところで就職をしても家の生計を得られるようなものではないと私は見ております。そうすると、農村導入ではなくて、農村を吸収するというけれども、そうじゃなくて、一部は吸収されるかしらぬけれども、基本的には過密現象解消する分散となるのじゃないですか。そうじゃなくて、新たにこういう計画を立ててどんどん工業を新設するのであれば、その製品は一体どうなるのですか、それはどこへ売るのですか、その辺の国策上の考えはどうなっておるのですか。
  56. 両角良彦

    ○両角政府委員 現在の状況がこのまま固定的に将来も続くわけではございませんので、少なくとも通産省といたしましては今後数年の間に、たとえば昭和五十年という時点をとって考えますと、四十三年の時点の約倍くらいの工業生産ということが、一応需要の積み上げからして推定をされておる次第でございまして、したがいまして、産業活動というものもやはり国内の需要の上昇あるいは輸出の上昇に見合って、それなりの規模拡大ということを、長期的な観点から考えていく必要があろうか、かように存じておる次第でございます。
  57. 美濃政市

    ○美濃委員 輸出の上昇ということばがありましたが、輸出の上昇はあとから申し上げます。私はよくわからぬからお尋ねするわけだけれども、いま、これだけ日本も文化生活をしておって、これから昭和五十年までに日本国内の工業製品で倍の需要が起きるというのはたとえばどういうものですか。総括して倍の需要が起きる、これは衣料品が倍になるのか、食料品が倍になるのか。人間生活の中で、工業製品についても食料消費についても、カロリーも、大体日本人の体質に合う、百%に近いカロリーが摂取されておるのだが、経済が発展して食料消費が倍になるということも考えられないし、人口が二億にでもなるというならこれは別でありますが、そう人口は伸びないのでありますから、何が倍になるのか、ちょっとお聞かせ願いたいのであります。何がどういうわけで倍になるのか。
  58. 両角良彦

    ○両角政府委員 現在の一応の推算でございますと、工業製品のわが国におきます出荷額が、四十三年で四十八兆円ということになっておりますが、これが昭和五十年におきましての見通しを申し上げますと、八十兆円ということでございます。それがほぼ二倍近い上昇を示しておるわけでございます。なぜそうなるのかという御指摘でございますが、これは、毎年経済の規模というものが、いわゆる安定成長というたてまえをもちましても、なおかつ一割以上のテンポで拡大をしてまいるわけでございまして、その場合には財政の規模もふえましょう。公共投資も、道路、港湾等に資金がたくさん投入されることにもなると思います。また、御指摘のように、個人の消費支出も拡大をしていく、あるいは個人の住宅投資というものがより活発に行なわれるであろう、さらには輸出も世界貿易の拡大に応じまして、わが国からの売り上げがふえていくだろう、こういったいろいろな要素が重なり合いまして、私どもとしては工業生産全体が、ただいま申し上げたようなテンポで上昇をしていくというふうに想定をいたしておる次第でございます。
  59. 美濃政市

    ○美濃委員 私は、最初に申し上げたのは、量を言っておるのです。こういうふうに年率八%も物価が上がっていくのでは、額で言うと錯覚を起こすのではないですか。額は、年率八%もものが上がっていけば、五年もたてばかなり上がるわけですから、額じゃなくて、量ですよ。額を言うとちょっとわからないと思うのです。はたして八%で推移するのか、それとも緊縮財政をとって経済を横ばいにするかということで、額で現在五十何兆円のものが八十兆円になるだろうといっても、それは年率八%と見て物の価値が変わっていくのでは、量ではないわけですから、製造量ではないのですから。私は量的にどうなるのかということを聞いておるのであって、額は、そういうことをいっても、今後の経済の推移では額的なものはわからないのではないですか。倍の量を消費として必要とする条件はどこにあるのかということを聞いておるわけです。
  60. 両角良彦

    ○両角政府委員 多少説明が不足いたしておりまして恐縮でございますが、ただいま申し上げました数字は、現在の時点における価格で表示いたしましての数字でございますので、先生の御指摘の、額に当たるものあるいは量に当たるものということでございますが、実質価値として、現在の四十三兆に対しまして、そのような五十兆なら五十兆、六十兆なら六十兆という数字は、将来の想定としての実質価値でございます。
  61. 美濃政市

    ○美濃委員 これはあるなしの問答になりますから、私はそういうふうに実質価値で倍の工業製品の国内需要が上昇するとは考えませんけれども、あるなしの論争をしてもこれは水かけ論になりますから……。  そういう見通しが将来とも的確であればいいけれども、かなり見通しが誤っても、日本の政治というのは無責任でありますから、そのために責任をとったということはないわけでありますから、その程度にしておきたいと思います。  私は昭和五十年までの間に、これは食料品全部を含めてで申し上げておるわけですけれども、これだけ文化生活が発展した過程において、この上工業製品が倍の消費量になるとは、そういう想定はちょっと過大な見積もりではないかと思います。  しかしそれはものの見よう、見方でありますから、それはそれとしまして、輸出も伸ばすということですね。輸出を伸ばすと何が――いわゆるガットのシステムで輸出を振興して伸ばすということになる。おおよそ想定される、それにかわるべき輸入は何が入るのですか。何を計画しているのですか。工業製品を売って工業製品を買うのか。そうじゃないでしょう。輸出を振興すれば、その見返りにやはり何か入るでしょう。何か買う約束をしなければ輸出振興にならぬでしょう。金で決済をしてくれというのではお互いいやがるわけですから、また保有外貨を何ぼためても、一定量の保有外貨は必要だけれども、保有外貨がたまったってそのことだけでは繁栄とはならぬわけです。具体的に、経済というものは物の交流、物が適確に動くところに経済の発展があるのであって、一定額の外貨は国際収支上必要であっても、無限大に外貨が、受け取り手形がたまってみたって、そのことだけで繁栄とはいえないわけですから。またそれは、各国間で一方的にそういう状態が起きるということは、ガットの輸入国樹からも非常に非難されるわけですから。輸出を振興すれば何が入るのかということです。
  62. 両角良彦

    ○両角政府委員 御指摘のように、輸出がふえてまいりますと当然輸入もふえるわけでございますけれども、輸出の増大と輸入の増大とがリンクをしていくわけではございません。輸入がふえますのは、日本の経済の規模拡大をまかなうために必要な原材料をよりたくさん買わなければならないという意味において輸入がふえてまいることになるわけでございます。たとえて申しますれば、原油でございますが、現在二億キロリットル以上の原油を輸入しております。こういうものは、おそらく昭和五十年には四億キロリットルに近い量を輸入しなければならないであろう。あるいは原料炭にいたしましてもあるいは鉄鉱石といったわが国の製鉄原料にいたしましても、膨大な量が輸入をされてくることになるわけでございます。そのほか、さらに非鉄金属でございますとかあるいは小麦でございますとか家畜のえさでございますとか、そういったような経済の拡大に応じてそれをまかなうに必要な原材料をよりたくさん買ってまいる、こういうことに相なる次第でございます。
  63. 美濃政市

    ○美濃委員 原材料が増大するということはわかりますけれども、原材料の増大と、もう一つは、製品にして売るわけですからその差額が出るでしょう。貿易額でその差額が出てくると思うのですよ。工業製品が売れるという条件の国は、工業化していないから売れるのでしょう。たとえば日本からECCには、現在の実績でも日本工業製品はあまりいっていませんね。工業水準の高い国には工業製品はいかないですよ。工業化していない国へ工業製品が売れるのでしょう、向こうに需要があるから。そうすると、工業化していない国から何を買うか。原材料は一部あります。しかし原材料だけ買ったのでは、いわゆる保有外貨がたまって受け取り超過になります。そこのところは間断なく――いまグレープフルーツなんかをどうだこうだ言っておるけれども、結局は農産物です。そういう工業化していない国は、まあ出すとすればやはり農産物です、第一次産業製品ですから。それが入るんじゃないですか。一定以上の工業日本に伸ばして、それでかなり輸出振興をはかるということになると、それは国内農産物の自給面とは全く正面からぶつかってくると思うのですよ、自立経営を促進するとかなんとかいっておったって。よく経団連や何かが言うように、高い農産物はどうでもいいじゃないか、もうてん菜糖の生産もやめたらどうだと堂々と出てくるじゃないですか。そんなものはみなやめてしまえ、結局はそういう考え方が強くなって、その方向へじりじりと行くのでしょう。農業といっても二種兼業農家はそんなことを心配しておりません。それはもう賃金がその家庭をささえる、まあ工業だけじゃないですが、主として賃金主体所得構成になっておりますから、二種兼業農家というのは心配しておりませんよ。米を多少つくっても、飯米農家ですから……。しかし専業農家はいまそこに大きな不安を持っているわけです。米づくり農家にしてもあるいは畑作農家にしても、この間のお話で専業農家が十六五%というと、大体八十一万戸くらいですね。この農家は行き先がどうなるのかということに対して心配をしておるわけです、経営拡大よりも何よりも。一体いつ、おまえらやめろと言われるのか。農業生産がじゃま者みたいなことをあちこちで言われるのでは、それは後継者も農業生産に対する長期的な意欲を失ってしまうということになるわけですね。そこらの見解がはっきりしないと、こういう法律をつくってどうだこうだと言ってみても、いつまでたってもものごとは解消されぬわけですね。  今度の米価で新聞に出ておりましたが、与党内部でも、もううそつきはごめんこうむる、うそを言うなというようなことが新聞に書いてありました。これはどうだったか私はよくわかりませんけれども、新聞では、うそつき農政はもうやめなければいかぬというふうに出ておりましたね。結局うそつき農政になってしまうんじゃないですか。行き当たりばったりで、アイデアみたいなことを言っておるけれども、起きてくる現実は全部うそになってくるわけですから申し上げざるを得ないということになる。これは大きな長期展望の見通しですから、あんまりその時点その時点で気休めの表現で、実際に起こってくる現象は別な現象が起きてくるんだという政策をとることは私は問題だと思うのですね。どうですか、その点は。やっぱり単にこの法律だけの問題じゃないですけれども工業をそういうふうに推進する、農業地帯も工業化すると、こういうのでありますから、その点はやっぱり気休めや何か言わないで、日本の将来の方向はこうなんだということをしないと、この法律をつくって、質疑中で聞いておった話の範囲内でいま私が質問しても、これでどんどん工業をふやすんだという意図によっていくと、それはどんな表現をしたって、そして輸出を振興するんだということになれば、その裏に対する専業農家の経営意欲というものはもうなくなってしまうということははっきりしておるわけですね。安心して設備投資を、ものを借りて経営拡大なんかできっこないのですよ、いつどうなるかわからぬのですから。その点の関連はどう考えておるか、これは農林大臣からひとつきちっと説明してもらいたいと思います。
  64. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いろいろ美濃さんの御意見を拝聴いたしたわけでありますが、輸出が増大すれば農作物の輸入が当然にふえてくるんだという、そういう御意見については私どもはにわかに賛意を表するわけにいきません。なるほどそれは、われわれが比較的開発のおくれておる国々に物資を輸出いたした場合に、この人たちは支払い外貨をとるためには自分の国で一番大きい一次産品を輸出した代金で支払うかもしれません。しかしわがほうがわがほうの農業政策上必要と認めないようなものは入れる必要がないのでありますから、御存じのように、一番のサンプルは米であります。米をわれわれは特殊な事情で日本にないようなものて、たまに若干のものは許可をする場合もありますが、いま日本人の主食としている米の自由な輸入ということをだれも考えてはおらないでしょう。いまグレープフルーツのお話がありました。私どもは、わが国のかんきつの生産にどのような影響を持ってくるかということを考慮しながらこういうものの自由化についても判断をしていくことは御存じのとおりであります。  私は先ほど来お話を承っておりまして、わが国の生産というのは、まだやっぱりここしばらく一〇%程度の経済成長率を見込んですべての計画を立てておるのでありますから、ただいまここで企業局長がお答えいたしておりましたように、国全体としては一定の計画のもとに生産を上げようとしておるわけでありますことはいま答弁のありましたとおりであります。したがって、われわれはそういう経済の進歩していくテンポの中で農村というもの、農業者というものを考えて、みた場合に、これはもう少しやはりその労働力を活用することが相互に利益ではないか。さっき御質問の中にありました新学卒が求人より求職者のほうが多いというお話、私聞き違いかどうか知りませんが、きょう労働省がおれば数字をもってお答えできると思いますが、そういうお説は私ただいま初めて承ったんでありまして、まだまだ中学、高等学校、ことに高校の卒業生につきましては、ことしすでに新卒についての求人と求職の割合の数字も発表されておりますが、そういうことにつきまして、私どもはむしろそういう農村から出ていく労働力というものは太平洋メガロポリスといわれるような地域、これがだんだん大きくなっていく、そしてわれわれから見ればそういう地域にぜひ集まっておらなければならない必要性のない企業がかなりこういう密集地帯に集まってきております。そういうようなものはなるべく地方に分散するほうがいいんじゃないか、これは地方の農業団体等でも昨年本委員会農協法、農地法の御審議を願ったときにも農業団体等は言っておられました。またこの現在御審議願っております工業導入化の法律案に対しても農業団体等は私どもに盛んに声援を送っておりますゆえんのものは、私がいま申し上げておりますようにやはり米を中核にいたしまする米生産につきましては、この農業生産につきましては私どもは自由化などを考えておりませんし、基本法に基づいて規模拡大をし、自立経営農家を育成していくというたてまえに何らの変化がないのでありますからして、こういうことは当然お認めいただけることでもあり、また御賛成をいただけることでもあると思いますが、その他の農産物につきましては、しばしばここでも政府側からもお答えいたしておりますように、私どもが国民生活上必要であり、また国内で生産することが望ましいと思われるような農作物につきましては、あらゆる手段を講じて援助をいたしておることは御存知じのとおりであります。そういうものに競合してくるであろうと思われる低開発国からの輸入、向こうからいえば輸出、そういう希望に対しましては、しばしば申し上げておりますように、関税制度であるとかあるいは課徴金制度を弾力的に適用することによってわが国の農産物の生産を援護していく、こういうことは政府もしばしば申し上げているとおりでありますので、まあ経団連とかそういう財界のお話がありましたが、経済合理主義だけで農政がやれるならばきわめて楽なものでありますけれども、私はそういうものではないのじゃないかと思うのです。これは日本だけじゃございません。どこの国でも農作物につきましてはある程度の保護政策をいたしながら、自分の国の人々の食べる食糧その他につきましては格段の保護政策をとっておるのでありますから、そういうことについて私どもは別段うしろ暗いところは国際的に見ても何もないわけであります。ただ、いま申し上げておりますように、私どもが米及びその他われわれの必要とする、しかもわが国の農村で生産してもらうことがきわめて妥当であると思われるようなものの生産には全力をあげてやりますが、なおかつしばしば申し上げておりますように兼業が八割もあるのでありますから、その中の二種兼業の人々はやはり出かせぎをなさるとか、あるいはまたそういう機会がなければむだに労働力を使っておられるわけでありますので、そういうものをできるだけ効率的に活用することによって所得がふえるようにしたらどうだろうか、こういうことを考えておるわけであります。  それから最初お話のありました新しくそこに出てくる労働力につきましては、こういう空気の悪いところへ集まるのでなくて、なるべく自分の家から通勤できるようなふうに産業を分散いたして、自宅から通勤できるようになれば、やはり過疎の問題も逐次解決していくのではないだろうか、そういうことで、この産業をなるべく平均化して分散していこら。それは先ほど申し上げましたように私どもは新しい設備が出てくることでもよい、増産しようとする産業が出てくるのでもよろしいし、地場の産業が拡大していこうとする計画でも歓迎するのでございまして、いま申し上げましたように、やはりできるだけ労働力を効率的に動かして農村所得を増強すると同時に、やはりそれと並行して構造改革等をいたしまして農業生産をもあわせて増強していくことが本法のねらいであるということは提案理由の説明にも申し上げておるとおりであります。
  65. 美濃政市

    ○美濃委員 いま大臣のお話聞いておりまして、それは私も全然やっていないとは言いませんけれども、しかし反面、たとえは輸入につきましても、農産物の輸入が年々増えておることも事実ですね。それでまた国内生産が一部の面では破壊されておることも事実ですね。一部の面では、昭和三十年にかなりの生産のあったものが、そういういまの経済状況から生産が破壊されて、ほとんど輸入でまかなわれる状態の起きておる農産物のあることも事実です。ですからどういっても、そういう事実のある限り、やはり専業でやっておる農業者の不安というものは、もう少しそこの政策がはっきりせなければ払拭されないわけですよ。それは価格政策もやっておりますし、あるいは輸入に対するお話しのような措置がとられておることも十分承知しております。しかし片や一部の農産物は、国内には旺盛な需要があるにかかわらず、生産を放棄せざるを得ない状態が起きて生産がなくなってしまった、一〇〇%じゃないけれども。たとえば大豆のごとき、四十万トン、五十万トンの生産があったものが六万トンくらいに減少して、消費がなくなったのかというと、消費は増大しておる。こういう一面が出てきますと、やはり深刻に考える人は、そういう状況はいますぐは起きないということはいえるのですけれども、たとえば乳製品等についても、将来そういうことが絶対ないという保証がない、起き得る危険性があるということになると、これはもう農業投資なんか安心してできない、こういう一面不安があるわけです。まあ米は政府買い入れで、輸入していないことは事実でありますから、これはこれで別ですが、他のものに、現実にそういう問題が起きてきておる。それでまあことしも現実に起きたわけですが、これはちょっと参考のために大臣にこの際意見を承っておきたいと思いますが、あの米審へたくさん農民が出てきますね、大臣に出てきて方針を聞かしてくれと。あれはどうですか、大臣としては煩瑣だと思いますか。あそこへああいうふうに出てくる農民はどういう農民が出てきておるのか御存じだろうと思うのです。米審会場へ米作農民がたくさん押しかけてくる。これはいい現象なのか悪い現象なのか。大臣は、会ってくれといってもなかなか会いたがらぬですが、ああいう現象をどういうふうに見ておりますか。
  66. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 米審においでになる方は種々雑多な方がおいでになっている。これは地方の農協のほんとうの生産者の方もおりますし、東京においでになってよそへつとめていらっしゃる方もおいでになったり、それからいろいろな方がおいでになりますが、私どもはそういうことの分析よりも、米価決定でありますから、農業をしていらっしゃる方の集まりであるという感じでお目にかかってお話をしているのでありますが、私どもとしてはああいうところに出ておいでになられる方々の御主張を承ってお気持ちはよくわかるわけでありますが、先ほど来、あなたのような農政に明るい方のおことばとしてはいかがかと思われるように、農林省農政というのはまるでお先まっ暗みたいなふうに御批判をいただいておるように聞いておったのでありますが、私は、なるほどそれは生産調整をこれで二年も続けてお願いしているのでありますから、生産調整はやっていただくが、農業はこういうふうに方向づけをしていくのであるということをもっと早くから一般の方々に御説明申し上げることが必要であった。これは当然でありまして、私どももそういう不満を持っておりました。ですから、農林省は鋭意そういうことについていろいろいたしまして、いまでは、発表いたしました「地域指標の試案」に基づき、将来の展望についてはこういう方向でいきたいのだ、「総合農政の推進について」という方向も示しておりますし、御決定を願いました四十六年度予算で農林予算を詳しくごらんいただければ、われわれが世の中に発表しておる構想というものは何であるかということを十分理解をしていただけると思うのであります。しばしば各新聞社などあるいは放送局などが主催して、私ども農林省で協賛、後援をしてやっておるものでも、たとえば全国から若い後継者たちが将来の新しい農業計画を立て、それを発表されて、授賞式など行なわれておりますが、そういうところへ参加してみて、これらの若い、将来の農村をになって立つ人々、あるいは養鶏に関し、あるいは養豚に関し、あるいは米づくりに関し、ずいぶんいろいろな抱負を述べておられますし、とうとい経験を発表されております。われわれはやはりそういうように私どもの考え方に理解を持っていただき、将来に楽しみを持って農業にいそしんでいただく大ぜいの方に御期待申し上げているのでありまして、したがって、わが国における農政というのは、いま御審議を願っております工業導入化のようなことをやってまいりましても、農業の政策の基本については一向変化はないのでありまして、私は両方とも並行していくことが、かえって農村に住んでいらっしゃる多くの人々に喜んでいただける結果を招来するのではないだろうか、こういうことを考えながら御提案申し上げておるわけでありますが、どうぞひとつ、そういう点でわれわれの気のつかないようなことに関しましては御遠慮なく十分に御批評いただいて、施策の上に参考にいたしてまいりたい、このように考えておるわけであります。
  67. 美濃政市

    ○美濃委員 立場上の違いはあると思いますが、すなおに――私がいま申し上げたことは現実に起きておることですから、これ以上しつこく言いませんけれども、しかし大臣のほうでも、いま申し上げたことは、みずから農業をやって農政を考えておる者がわからぬかというようなお話ですけれども、これはもうわれわれにしてみればわからぬ問題がたくさんあるわけですから、そういうふうに立場上の違いで、やはりいろいろ農政の問題は大事ですから。  それから米審の話、もう一回しますが、あそこへ来ておる人は、東京へ来てつとめておる人がと言うが、そういう人をかり出しておるわけではないのですね。食管連といって食糧関係に働いておる人が若干応援に来ておりますけれども、農民から頼んで出てくるわけじゃない。あそこへ来る人は米づくり専業農家であるということですよ。二種兼業農家は一人も来ておりません。それから、雑多な人が来ておると言うけれども、それは百人のうち二人か三人そういう立場の人あるいは農協の職員等が入ってきておりますけれども、大宗をなすものは専業農家である。どうですか、大臣、ああいう人が来なくなるほうがいいのか。やはり米審会場へ来てああ言われると、多少大臣としては煩瑣であるけれども、やはり日本農業の将来として、ああいう行為がやむを得ないのだ、やはり立場上で農民にしてみればやむを得ないというあたたかい理解心を持ってああいう行為を見ているのか。それともああいう行為をする農民はいなくなったほうがいいのか、どうお考えになりますか。やはり立場上の扞格があって、大臣として、政府としてのいろいろな考えはあるだろうけれども、しかしやはり日本の将来のためには、ああいう行為はやはり立場上の違いで――なくして、黙って米をつくればいいかもしれぬけれども、そうもいかぬわけです。ほんとうに煩瑣でいまわしいものだと思う。やはりああいう応援があっても、ああいう行為があって、自分の立場を主張するのは国民のために、専業農家として米をつくるのは大切なんだというお考えなのか、どうお考えになりますか。
  68. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これは農業をじみちにやっていただき、米の生産にいそしんでいただいていらっしゃる方々には、私は心から敬意を表するわけでございますが、そういう方の御懸念というのは謙虚に承って、われわれの施策の参考にしなければならない、こう思っているわけです。
  69. 美濃政市

    ○美濃委員 次に、最近何か考えると、均衡ある発展とか調和とかいうのですが、これは確かにこの法律をつくって、いまいわゆる政府当局がいわれておることもわかります。ですから、この法律が全部だめだという意識で私は質問をしているわけではないけれども、いろいろ大きくどう取り組むのかということを一応聞いたわけです。  その中で、私は、農業についてはよく大臣もいわれております自立経営の基本というものを明確にして、そして農業の位置づけを明確にすべきだ。一次産業の農業と均衡ということばを第一条で使っておりますが、「農業工業との均衡ある発展」こういっておりますけれども、しかしそういう兼業農家の新しい働き口を農村に求めるとか、そういうことは一つ施策であり問題点であって、農業というものと工業というものと均衡という表現を使う、この均衡ある発展というのは、将来ともどういうところで均衡をとらなければならぬのか。均衡というお考えは何をさして均衡と考えておるのか。また言うならば、農業工業との均衡という考え方が必要であるかどうかということですね。どういう点が均衡なのか、具体的にひとつ均衡の考え方をこの際明確にしておいていただきたい。   〔委員長退席、三ツ林委員長代理着席〕
  70. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これはこの法律を制定することによって、どちらに一体将来ウエートがあるのかというふうなことについていろいろ御議論があったり、またお疑いを持たれることはこれは好ましくないことであって、両方とも発展していくように期待いたしたいのだ。それからまた相互に、この法律にも書いてございますが、私ども工業導入と並行的に大体二十町歩程度の広域営農団地といった構想で、構造改善事業圃場整備等をやりまして、そして並行して農業振興もやってまいりたい、こういう考えがあるものですから、そこで調和ということをいっているわけで、均衡のとれた発展を期待する、こういうことであります。
  71. 美濃政市

    ○美濃委員 次にお尋ねしておきたいことは、いままでの質疑の中でも出てきておりますが、農産物の加工体系です。これは日本の場合、原料が特別重量になる。てん菜のようなものは重量ですからそのままやっておるけれども、たとえば先進諸国から比較してみても、日本の農産物の加工というものはほとんど原料で都会へ持ち込まれてきてやっておる。そうすると、わりかたそれから出る飼料等をまた農村に還元するのに、こういうきわめて悪い交通事情の中でしておる。そういうものもあるわけですから、この計画の中で、前質問者からもそういうお話が出ておりますが、農産物の加工体系を製造過程で、いわゆる俗なことばでいえばかすですが、まあえさにならない加工のかすもありますけれども、一円含めて農産物の加工体系ということを考える以上は、原料を他から持ってくるよりも、原料は農村にあるものを第一義的に考えることがスムーズにいくのではないかと思うのですが、これを進めるにあたって、そういう点に政策的な配慮を特別にしようとしておるか、それとも、そういう点はそういう点で、企業の体質や、導入についても企業がいやだといえば、ただ法律をつくってみておざなりにやっていくのだというお考えなのか。どういう計画に基づいておるか、お尋ねしておきたいと思います。
  72. 中野和仁

    ○中野政府委員 農村で原料がつくられまして都市に出てくるというようなことも非常に多いわけでありますけれども、先ほど大臣もちょっとお触れになりました広域営農団地の構想におきましても、これは生産から流通まで一貫した体系をつくりたいということで、すでに昨年度からその構想を明らかにし、また四十六年度の予算では畜産関係、園芸関係、あるいはそういうものを総合いたしました広域営農団地の整備事業というものを興しております。そういう面で、農家がつくりましたものが共同体を中心にしまして、そこで加工されていって販売されるということが第一義的に必要ではないかと私は考えております。と同時に、この法案との関連におきまして、農村でそういう加工業を興すという企業がありますれば、当然それはこの計画の中に組み込んでいってやるべきだと考えております。
  73. 美濃政市

    ○美濃委員 そうすると、十三条だったと思いますが、農林中金からこれに対する償還十年以内の貸し付けを行なうことができる、こうなっております。これは従来のそういう、全体計画は聞いておりますが、やはり関連産業としてのものですか、それとも何にでも貸せという考えに基づくこの十三条の農林中金資金を使うということですか、考え方はどこにあるのですか。資金量にもおのずから限度がありますから、お話を伺った範囲の全体計画と、中金の大体これに振り向けられるだろうという資金量とにはかなり差があるわけですね。全部をまかなうということではないのですから。そうすると、やはり従来の関連産業という考え方で、中金資金も部に充当さそうというのか、それとも、そうじゃなくて、関連性はなくても、たとえばどういう企業であろうと中金資金を使わすという考えなのか、これはどうなんですか。
  74. 小暮光美

    ○小暮政府委員 今回御提案申し上げております法案で農林中金の融資に触れておりますのは、これまで関連産業につきましては現行の農中法で一定の規制のもとに貸し出せるということになっておりますが、関連産業という範疇に入りません製造業一般につきましては、現行の農中法では余裕金運用としての貸し出しの道がありませんので、今回の工業導入計画により認定を受けた導入企業に対して、農林中金の融資の道を開くというのがこの条文の趣旨でございます。
  75. 美濃政市

    ○美濃委員 これは大臣にお伺いしておきますが、農林中央金庫の体質はああいう体質ですから、非常に率直に申し上げて、市中銀行よりも政治的な圧力に弱いということが言えるわけですね。農林中央金庫の体質、理事長以下ああいう体質ですから、政治的な圧力に弱い。それは市中銀行はぴんとそろばんを持っておりますから、金を実際に貸借で動かすということになると、政治的な依頼や政治的な圧力が加わってもなかなか金は動かしませんけれども農林中央金庫は政治的な圧力に弱いと私は見ております。役員構成が弱い、こう見ておる。そういう中で、これは何にでも貸すということだったら、やはりこういう制度に乗って下請企業や何かというところに不良貸し付けが起きた場合は、農林中央金庫の損ですか。それとも損失補償の道でも講じようというのですか、どうですか。私どもこれに対して、実際に金をこれからどうするかという腹ぎめをせぬければならぬ。そんな不安定なものに何でもかんでも――あの体質の弱い農林中央金庫理事長以下がこづき回されて、変な金を出して、農民の血とあぶらの蓄積が使われたのじゃかなわぬですからね。どうせ資本主義社会ですから、私も北海道の信連の理事であるし、単協の組合長ですから、どうせ資本主義ですから、思い切って割り切って、信託銀行にでも何だったら入れたほうがよい、そういう気持ちが起きるわけですね。そんな変な貸し方が起きてくると、その辺のけじめをどうつけてくるのか。私どもは率直に言って、中金の管理機構は政治的な圧力に弱いとはっきり申し上げられます。役員機構が弱いのですから、弱いと申し上げて私は過言ではないと思うのですよ。それでは貸し倒れが起きた場合、その損失はだれがしようのですか。
  76. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農林中金のような特殊な金融機関は、これはできるだけ間違いのないようにするように私どもも望んでおるわけでありますが、いまいろいろお話がありましたが、政府はいままで農林中金にそういういわゆる圧力というようなものをかけていることはありませんし、理事長も、御存じのように自主的に最近は関係団体でお選びになっておる次第であります。今回のような場合におきましては、農林中金は一般市中銀行と協調融資をいたすわけでありますので、したがってそういう安全性等につきましては、中金が全部そういうことをするということでなくて、他の金融機関と協調でやるわけでありますので、そういう点は私は金融機関の常識に信頼してもいいのではないか、このように考えております。
  77. 美濃政市

    ○美濃委員 時間の関係で大体持ち時間ですけれども、しかし農林大臣は圧力をかけぬでも、農林中金には政治的な圧力による融資というのが従来かなりの額あるわけです。これは御存じだと思う。それは大臣の立場で、あるとはいえないでしょうけれども、いろいろ問題が起きておる関係がありますね。そういう問題で、こういう法律までつくってこういうことをやることについて、かなりの危険性を私はいま感じておるわけです。ですから、大臣がないというなら絶無を期してください、あった時点でわれわれは考えますから。あるかないかわからぬものを、あるという想定のもとにあまりしつこく言うのも失礼にあたりますし、大臣にもまた中金にも失礼にあたるので、ないのだという前提に立っておるのです。しかしあった場合には承知ができないということです。従来それがあったわけです。何件もあったわけです。政治的な圧力によって金が動いて、それがほとんど取れずにまるまる損をした実績があるわけですから、私もないことを言っているわけじゃないのです。あるから心配して言っておるわけですから、絶無を期してもらいたいと思います。出たときに言います。出たときは承知できない、こう考えております。  以上で質問を終わります。
  78. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 合沢栄君。
  79. 合沢栄

    ○合沢委員 農村地域工業導入促進法案に関連しまして私も質問します。昨日来この法案についてはずいぶん質疑をやっておりまして、おもな論点については尽きたようでございますが、私はまた別な角度というか、あるいはまた大事な点については重複するかと思うのでございますが、御質問申し上げたいと思います。  まず第一条に関連してでございますが、この法律農業工業の均衡ある発展をはかるということになっておるわけでございます。しかし私は、はたして農村地域工業導入されて、農業工業との均衡ある発展がはかられるであろうかという心配を実は持つわけなんです。確かにわが国の経済の急激な発展農業のほうの近代化が立ちおくれている。そういうことで農村地域からずいぶん都市に対して出かせぎが出ていく。都市に人口が流出しているということで、農村においては過疎化していく。私たちも過疎化された地域の町村長とかあるいは農協長から、何とかしてこの過疎化された地帯に工場等の導入はできないものかという相談もあるわけです。今日農村にそういった工業導入することを地域の住民は非常に期待しておるだろうと思う。そういう点では私たちもこの法案全体については賛成なんです。ただ心配されるのは、そのことによってはたして農工並進というか、農工が均衡ある発展を遂げるであろうか。むしろ農業の健全なる発展が妨げられるのではなかろうかという不安を持つわけです。一部には、このような法律でもって工業がはたして農村に入るかという不安もあるようでございますが、最近既存の工業地帯における状態というものは非常に過密化してきている、用地もなかなか確保が困難だ、労働力の問題にしても水の問題にしてもそうだ。そういうことからして、今日の日本工業発展するためには、農村に入っていく以外には発展の余地がないというようなことからして、私は相当数の工業がこの法律によって入っていくだろうと思う。もちろんそのためには整備しなければならぬいろいろな問題がたくさんあろうかと思うのですが、いずれにしましても、こういった法律によってずいぶん入っていくだろうと思うのです。確かに兼業の機会が多くなるわけですから、農家所得はふえるであろうが、はたしてそのことによって農業発展が期せられるかどうか。特に規模拡大というようなことが可能かどうかということでございます。工業が入っていくことによって一番心配になる要素は公害等もございますが、何よりも大きなものは、私は地価が上がるという問題じゃないかと思う。地価の抑制ということ、地価の対策ということが十分でないと、これは規模拡大も伴わないし、むしろオール兼業化というようなかっこになっていくのじゃないか。ことに従来農村工業が入ったところを見てみましても、なかなか農地の流動化なんということはかえって困難になってきているし、また工業都市近郊農村の姿というものはそういった状態を呈しているわけでございますので、農村への工業導入ということはむしろ兼業化を促進し、農業規模拡大には反対となって、農業発展を困難にしていくというような心配を持つわけなんです。昨日来農林大臣は農村の田園工業都市といったようなことを言っておられましたが、確かに農村における田園工業都市的なものはでき上がったと思う。そして農家所得はふえていくだろうと思うのですが、私はそういった一まつの不安を持つわけでございます。この点について特に地価対策、これをどうするのか、この点についてのひとつ明快な御答弁があればお願いしたいと思う次第でございます。
  80. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私どもも本法律案の途中でただいま合沢さんのおっしゃいましたようなことについて同じような心配を持っておるわけであります。この法律を施行してまいりますにつきましてもそれぞれいろいろな思惑を腹の中に、同じ政府部内でも担当部門によっては考えていらっしゃると思うのでありますが、私ども農業サイドで考えまして、実はいま御指摘になりましたようなことについて、ことに取り返しのつかない大事な農地スプロール化するようなことのないようにしなければならないが、そういうことについて、基本計画及びその実施計画を立ててまいります市町村等ともそういう点は十分連絡し合って、われわれの心配しておるようなことがないようにひとつぜひやっていきたい、こういうことを、本法成立後のことをつくづく考えているわけでありますが、ただいまお話しのようなこと、これは実際われわれが十年前に本院で農業基本法制定当時みんなおられたわけでありますが、あの当時やはり今日のような急速なわが国の経済成長、同時にまたそれに伴う地価の高騰を予測した方はおそらくあまりいなかったのじゃないか。あの当時の記録を見ましてもあまりそういう点について言及されておりません。私はおそらく学者先生方でもそうではないかと思うのですが、したがっていま一般には普通に無計画に産業が農村進出していこうとすると、やはり土地を持っている人自身もつり上げる傾向がありますし、また中間業者等も入ることによって地価のつり上げ等が行なわれるようであります。しかし今度はこういう法律に基づく計画を立ててまいりますので、これは先行投資、つまり道路を拡張いたしたりなんかしていく場合に、自治体が先行投資などする場合のようにやはりある程度計画を立てまして、その計画に基づいてそれを実施いたしていく段階においてできるだけ地価の高騰を防ぐような措置をとることが大事なことではないか、こういうことにつきましては、昨日の御答弁でも事務当局のほうからいろいろ話があったようでありますから、そういう方の答弁もこれから私に続いてできればしていただきたいと思いますが ただいまおっしゃいましたような点につきましては十分われわれも心配をいたしておるところであり、どのように対処したらいいかということを検討してやってまいりたいと思っております。
  81. 合沢栄

    ○合沢委員 昨日のこの問題に対する当局の答弁も、私は何らなかったと思うのです。せいぜいこっそりやっていく、公にしないというようなことであったと思うのでございますが、これは国が基本方針を示し、県が基本計画をつくり、さらに実施計画等もやっていく、わけなんで、これはもう隠そうにも隠せないわけです。計画的にやっていくということになりますと、いよいよ輪郭ははっきりしてくるわけなんです。そこにもう道路もつくられ通信網が整備され、そうなってくれば当然これは地価は上がっていくと思う。地価が上がって、農業サイドから見て、農業工業が均衡ある発展といっても、農業の面においては非常にこれは困難になっていくのではないか。私は何としても有効な地価対策のない限りにおいては、農業発展ということはかえって妨げられるんじゃないかという心配を持つわけなんです。同じような考え方は大臣もされているようでございますが、この地価対策についてひとつ何か当局のほうで考え方があればお示し願いたい。
  82. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいまの地価問題でございますが、非常に私もむずかしいと思いますけれども、従来の農村工業が入っていく場合には、場所の選定その他いろいろな話し合いの上で入ってこようかと思います。しかしまた、その次に工場が来るんじゃないかという意味で地価が上がる場合が多いわけでありますが、今回は昨日から申し上げておりますように、具体的な場所をきめましてそこへ工業を入れる、それ以外のところには入ってこないということでございますから、それとの関連におきまして、農業生産をやっておる農地の価格がそれにつられて上がるということも若干はあろうと思いますけれども、場所をはっきりさせるわけですから逆にほかは農業をやっていくのだということにしますれば上がらないということで、今回は構造改善等とも結びつけながら計画制度をとったということでございますので、従来よりはこれは一歩進めたことじゃないかというふうに私は考えております。  それからもう一つは、昨日申し上げたわけでございますが、土地改良法の改正が成立いたしますれば、創設換地制度なりあるいは異種目換地制度を使いまして工場用地をそれに提供する、その分は農家が時価として企業体に売るということに結果-としてなるわけでございますが、こういう制度を使うことも可能になってくるわけでございます。それからまた売るのではなくて、あるいは異種目換地をやりまして、一カ所に非農地を集めましてそれを工業側に貸す、すでにそういう例も出てきておりますので、そういう制度を活用する在りいたしまして、できるだけ周辺に及ぼす地価の影響ということはないようにすべきだというように考えております。
  83. 合沢栄

    ○合沢委員 工場用地の問題については、それは創設換地なりまたはそういった制度によって工場用地の問題は私は解決つくと思うのですが、問題はこの工業導入によって農業発展をはかろう、それは規模拡大をやろうということにつながると思うのです。そういった規模拡大というものを妨げられる、流動化を妨げられるということなんです。そのことによっての農業発展が非常に困難になってくる要素を持つということを申し上げておるわけなんです。そこでやはり一つ工場が入れば次々に入ってくる可能性もあると思うのです。それを抑制することはなかなか困難になってこようと思うのです。地元のほうがさらに要求することもあろうし、それを何で抑制できるか。特に関連する企業等が入ってくるということもあると思うのですね。あるいはそのことが企業としては必要だということになってきて、一工場が入ればまた次の関連企業も入るということがあると思うのですよ。だから当初入ってそのままだということはあり得ぬと思う。そういうことで、私はそのような非常に簡単な答弁では済まされない。地価の高騰は避けがたいものになってくるだろうと思う。非常にむずかしい問題でございますが、そういう点には特に考慮して、今後善処方というか研究していただきたいということを申し上げておきたいと思うのです。  それから次に、この農村工業導入法案というものは、重要な総合農政の柱をなしていると思うのです。従来、総合農政の柱として、農地法とかあるいは農協法とかあるいは農民年金とか、また国有林野の活用法案といったような、一連の重要な総合農政に関係する法案が整備されてきたと思うのです。まだこれ以外に大臣として総合農政についての重要な法案を考えておられるのかどうか、ひとつお聞きしたいと思うのです。
  84. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまのところは別に法律案を考えておるわけではありませんが、前に申し上げております「総合農政の推進について」という政府の方針を逐次具体化いたしてまいるために、引き続いて検討してまいりたいと思っております。
  85. 合沢栄

    ○合沢委員 大体総合農政についての柱になるような重要な法案というのはほぼ出尽くしたのじゃなかろうかというふうに私も考えるのでございます。そこで、この辺で私は、総合農政についてもう少し突っ込んだというか、財政的な裏づけを持った庫次計画というようなものが提示されてしかるべきじゃないかというように考えるわけです。特に、大臣もしょっちゅう言っておられるように、一億の国民の食糧の八割くらいは何とか維持していこう、しかも日本農業を国際的なものにしていこうとするならば、これはそう簡単にできるものじゃないと思うのです。特に工業がどんどん発展していくという中で、農民が減っていく中で、八割程度の食糧を確保していくということは容易なことではなかろうと思うのです。しかし、一億の国民の食糧の八割程度のものを安定的に確保していくということは、私は国土防衛と変わらない、より以上に非常に重要なものだろうと思う。そういった意味で、防衛の四次防と同じように、いろいろな法案等も、重要な総合農政についての柱となるような法案も整備されたのだから、この辺でひとつ財政的な裏づけを持った、そういった年次計画をつくって、そしてそういったものを農民に示し、ほんとうに今後の農政の方向というか、そういったものを示すことが非常に大事なことじゃないかというように考えるわけでございますが、そういう点についての見解をお聞きしたいと思うのです。
  86. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お説のとおりであると思っております。したがって、「総合農政の推進について」という政府の方針をお示しいたしておりますし、またその後「地域指標の試案」等も発表いたしております。したがって、ああいうものを織りまぜまして、これからの方途については逐次世の中に示して、そして農業者も安心して政府の方針に協力していただけるように仕向けてまいりたいと、こう思っております。
  87. 合沢栄

    ○合沢委員 次に進みますが、この第二条に、農村地域の指定のことが出ておりますが、この指定の内容については、昨日来ずいぶん論議がございました。なるべく対象地域については推移を見ながら地域の指定のことが出ておりますが、この指定の内容については、昨日来ずいぶん論議がございました。なるべく対象地域については推移を見ながら広げていきたいというふうな御答弁もあったと思うわけでございますが、この点は非常に希望の多いところでございますので、いす二度この対象地域を広げる問題についてのお考え方をひとつ明確にしていただきたいと思います。
  88. 中野和仁

    ○中野政府委員 昨日来、農村地域の考え方を申し上げたわけでございますが、この第二条の考え方は、農業振興地域を含む市町村、それに、はずれておりますけれども振興山村過疎地域とを含めるということで、これによりますと、三千百六十三町村ということになりまして、日本の大部分の町村が入るわけでございます。ただ、すでに新産都市その他工業開発が行なわれているところについて、その他首都圏近畿圏等で、もう都市開発工業整備が行われているようなところは、農村地域ということはいえませんし、現にそういう工業開発が行なわれておりますので、そういう地域六百三十八を除きまして、現在の計算では二千五百二十五ということでございますから、相当広範囲な地域にわたってこの農村工業導入計画が立ち得るということでございます。
  89. 合沢栄

    ○合沢委員 その中で、地域は弾力的に考えていかれるということでございますが、ただ、二千五百の町村に全部入るということはないだろうと思うのですが、特に、たとえば一市町村実施計画の場合でも、それがその町村だけじゃなくて、近隣の町村の労働力を吸収するということを考えて実施計画をつくられる場合もあろうと思うのですね。そうなりますと、オールとはならぬと思うのですが、その点はどうですか。全部の各町村にやっていくと考えるか、それともやはり一つ地域、何カ町村かに一つつくる――県の拠点開発構想じゃなくても、市町村計画の中においても、やはり隣、両隣とかあるいは三つ、四つの町村にまたがったような、そういったものになる可能性もあるわけですか。
  90. 中野和仁

    ○中野政府委員 町村に工業導入いたします場合に、その導入する規模によりまして、たとえば三ヘクタールとかあるいは二十ヘクタールとか、いろいろな規模工場ができると思うのです。たとえばかなり大きな規模のものということになりますと、そこに何工場が入ってくる、それに雇われる就業者ということになりますと、その村だけに限らないと思います。あるいは隣村、もう少し遠くから通勤ができるということもあろうかと思いますので、そういうような場合には、当然工場が入ります市町村長は周辺の市町村長と協議をすべきだと思います。そういう点につきましては、具体的な指導方針といたしまして、そういう場合には当然隣接の市町村長とも協議をするというような指導をいたしたいと考えております。
  91. 合沢栄

    ○合沢委員 そうすると、拠点開発構想でなくして市町村実施計画の場合でも、数カ町村を対象にして考えた工場導入があるということだと思うのですが、そういう場合には、その町村におけるところの農業構造改善事業が当然実施計画には乗ってくると思うのですが、周辺の関係する地域構造改善事業というのはどうなるのですか。
  92. 中野和仁

    ○中野政府委員 普通の場合は、町村に入ってきますのは比較的規模が小さいわけでございますので、その入ってくる工場用地との関連での非常に直接的な構造改善事業というのは、その町村単位で大体できるんではないかと思います。ただ、もう少し広い意味構造改善を、就業構造改善まで含めてものを考えますと、そういう観点からの、関係市町村長との相談ということも必要ではないかと思いますし、また、別途農林省のほうといたしましては、構造改善事業を二千何百地区やるつもりでございますので、それとの関連がございますれば、そちらのほうに優先的にそういう事業を持っていくということも考えなければならぬことだと思います。
  93. 合沢栄

    ○合沢委員 そういう点がこの法律では明確になっていないわけですね。非常に大事な点じゃないかと思うのです。拠点開発構想と市町村開発構想、その市町村開発構想が、各市町村に三ヘクタールとか十ヘクタールとかいったようなものがくまなく入っていくということが前提であれば、いまのような私の質問も必要ないと思うのです。ただし、それがやはりそうじゃなくして、おそらく三ヘクタールとか十ヘクタールといったようなものが相当大きな人を要するというような規模、内容の場合には、近隣の町村まで含めるということになると思うのです。そういう場合に、かってにその町村が、近隣のいろいろな構造改善なり就業構造なり――そういうかっこうはいかぬと思うのですが、そういったものの協議だとか、あるいはそうなれば当然その地域だけに工場が入ってくるといろいろな恩恵がある。ところが近隣は少ない。特に大事なこのことによって構造改善をやっていって、そして農業発展をはかろうというような場合に、その近隣の町村は構造改善もないというようなことにもなろうかと思うのです。その間、近隣の町村との関係が非常に大きな問題となって出てくるのではなかろうかというように考えるわけです。この点はもう少し明確にこの法律の中でも、あるいは何かで明確にしておく必要があるというふうに考えるわけですが、どうですか。
  94. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、市町村長が計画を立てるのは、これは一人の市町村長でございます。しかし周辺に影響があるという場合には、その周辺の市町村長に協議をいたしますように国として、また県の基本計画を立てる場合にもそういう注意事項を留意事項として指導をいたしたいと考えております。
  95. 合沢栄

    ○合沢委員 非常に大事な問題でございますので、その辺特に指導をあやまたないようにお願いしておきたいと思うわけでございます。  次に、基本方針でございますが、基本方針の中で導入の目標とか、あるいは就業の目標とか農業構造改善事業の目標とかいうようなことが出される、これが最も柱になっていくと思うわけでございますけれども、その際、昨日来の御答弁を聞いておりますと、導入の目標は一カ年に三千ヘクタールくらいを考え、五年くらいでは一万五千ヘクタールというような御答弁があったかと思うのです。それから就業の目標については、私はっきり記憶していないので、もう一度お願いしたいと思うのです。さらに農業改善のそういった目標というようなものはどのくらいの規模なり、またどのような財政的な規模を考えておられるのか、できるならばこの辺をひとつ明確にお示し願いたいと思います。
  96. 両角良彦

    ○両角政府委員 五年間の目標といたしましては、生産出荷額では大体十兆円というものを想定いたしております。今回の措置によりまする導入企業の生産が十兆円、それは五年後の全国の総出荷額の約一割ということになるかと思っております。また、これによりまする雇用は百万人、そして用地造成、用地が、これによって手当てすべきものは、ただいま御指摘の一万五千ヘクタール、こういう目標でございます。
  97. 中野和仁

    ○中野政府委員 導入されます企業についての規模等、いま企業局長がお答えになったわけでございますが、これに関連しましてどの程度農業構造改善事業をやれるか、これは入ってきます企業用地面積その他との関連が非常に出てきまして、それとの関連で土地改良事業をやろうと考えております。来年度でございますと、補助額にいたしまして六億五千万円でございますから、事業費にいたしますと、直接的な土地改良事業費としましても十四、五億円ということを考えておるわけでございますが、その上に近代化施設を乗っけたり、あるいはもう少し広い範囲での補助整備事業もやりたいと考えておりますので、農業構造改善の面からの積算というのはもう少し計画が具体化した上で策定をいたしたいと考えておるわけでございます。
  98. 合沢栄

    ○合沢委員 それから四と五ですが、この「前三号の目標を達成するために必要な事業の実施に関する事項」とかあるいは「工業導入に関する重要事項」というのが基本方針の中で示されるということですが、この実施に関する二つの項は具体的にどういうことをさしておるのか、少し御説明願いたいと思います。
  99. 中野和仁

    ○中野政府委員 工業導入の目標あるいは就業の目標、農業改善の目標というのをつくりますと同時に、それをどういうふうにしてやっていくのかというのが第四号の「実施に関する事項」であるわけでありまして、具体的に申し上げますと、工場導入に伴います産業基盤の整備でございますから、あるいは道路、必要ならば排水、そういうようなものの関係、あるいは公害防止関係、また農業基盤整備事業といたしまして、どういう事業を考えるかという事業の内容でございます。それからまた就業との関連におきましては職業の訓練、紹介、それから税制、金融上の措置をどうするか、そういうような具体的なことを考えておるわけでございます。なお地区によりましては水の問題が起きてまいりますので、その場合にはこの五番目のその他重要な事項ということでいろいろなことを考えたいということでございます。
  100. 合沢栄

    ○合沢委員 この基本方針の策定ができると、これによっていろいろな今後の農村における工業の展望というか、関係する農業の問題も検討できると思うのです。そういったことで農業のサイドの面から「農産物の需要と生産の長期見通し」の関係とか、また昨年「農業生産の地域指標の試案」というものができております。そうしたものとの再検討というかそういうものが必要になってくると思うのでありますが、もちろんそういったものを検討しながらあるいは基本方針をきめられるのではないかと思うのですが、こういったものとの関連はどのように考えておるかお聞きしたいと思います。
  101. 中野和仁

    ○中野政府委員 昨年の秋、農林省といたしまして十四地域地域分担をお示ししていろいろ御意見を伺っておるところでございます。いずれこれが確定いたしますれば、農業生産としてはそれぞれ適地適産の方向に沿ってやっていくわけでございますが、そこへ工業導入が入ってまいりましても基本的にその地域分担をいまのところ変える必要はないのではないかと思います。しかしながら工業が入ってまいりますとその地域地域社会の構造がかなり変わってまいりますので、いずれ遠い将来になるかと思いますが、また検討を要するということもあり得るかと思います。
  102. 合沢栄

    ○合沢委員 次に四条、五条ですが、この中ではそれぞれ基本計画あるいは実施計画が県や市町村でつくられるということですが、大事なことは住民の意思の反映するような方法をどうするかということなんです。法案の中にそういった規定が全然ないわけなんです。ほんとうに意思が反映されることがスムーズに農村工業導入されてくるゆえんだと思う。そういった意味ではこの法案の中に住民の意思の反映されるよう表そういった機関の設置がぜひ必要ではないかというように考えるわけです。特に農村工業導入審議会というようなものが予算では組まれておるようでありますが、これらはひとつ法文で明らかにして県や市町村にも住民の意思が反映するというような方向にぜひお願いしたいものだというように考えるわけでございます。そういう点については今後ひとつ十分検討をお願いしておきたいと思います。  それから四条の基本計画の中で三に構造改善に関する目標というものがあって、また今度七に、構造改善促進するために必要な農業生産の基盤の整備及び開発その他の事項とあるというようなことで、三と七に同じような類似の項目があるわけなんです。これについて少し説明を願いたいと思います。
  103. 中野和仁

    ○中野政府委員 三のほうは目標でございますので、たとえばある地域工場が入ってくると同時に、その周辺の構造改善を考えた場合に専業農家がどの程度になって、離農者がどの程度、兼業農家がどのくらい、それぞれ所得水準をどの程度に想定をするか、あるいはそれとの関連におきまして、規模拡大の方向をどう持っていくかというような目標を掲げるわけでございます。そういう目標につきまして、今度は七号におきまして、それを実現するための生産基盤の整備、土地改良事業等をどういうふうに具体的にやるか、あるいはそのほかの構造改善事業でございますから、近代化施設をどの程度に整えるか、こういう具体的な事業をこの七号であらわしたいというふうに思っておるわけでございます。
  104. 合沢栄

    ○合沢委員 それから、五条の四ですか、この四におきましては、「農地保有の合理化が図られると見込まれること。」というようになっておるわけですね。これは最初に質問した事項と非常に関係があるわけですが、はっきりこのように法律農地保有の合理化が見込まれることというのが条件みたいになっておると思うのですね。これは非常に大事な問題じゃないかと思うのですが、このことが前提となって、そして実施計画というものがつくられなければならぬ。ところが現実には、いろいろな従来の農村工場が入ったような例、あるいは工業近郊農村の例から見て、それと反対傾向が非常に出ておるわけなんです。これはむずかしい問題だと思う。厳密に言うと、もし見込まれるというようなことを考えると、これは将来のことですからどうでもいいようなものでございましょうが、五年先、十年先に農地保有の合理化が少しも進まずして、反対農村工業が入ったほうが合理化が進むというようなこともあろうと思う。そういうふうに進まなかったような場合にはどういうふうになるのか。そういうことを前提として実施計画がつくられ、それらに対していろいろな補助金とか融資とかができると思うのですね。できなかった場合どうするのか。そういう点についてひとつ見解を聞かせてほしいと思う。
  105. 中野和仁

    ○中野政府委員 まだこれから計画を立ててやっていくわけでございますから、われわれといたしましては、従来のように単なる工業の誘致ということでありませんで、それに結び合わせまして、就業改善構造改善をやっていこう。これから具体的な計画を立てるわけでございます。その中の一つといたしまして、やはり規模を大きくしていく農家土地が集まって、農業から離れていく農家土地をできればその工場用地のほうに向けていくというふうなことも含めまして、いわゆる農地の保有の合理化ということをいろいろ考えておるわけでございます。そういうことのために構造改善事業等もあわせて事業をやれますならば、やりたいと考えておるわけでございますが、ただ、いまお尋ねのようにそれが失敗したらどうなるのかというようなことでございますが、その点につきまして、その場合に町村が責任をとるとか、あるいは国が責任をとるとか、そういうふうな問題にはならないのではないかというふうに思います。
  106. 合沢栄

    ○合沢委員 局長どうお考えになりますか、従来の例から見て、農村工業が入った場合には、かえってここに書いてあるような農地保有の合理化は進んでいない、むしろ反対傾向にある。また市街地等工業の近くの近郊農村においては、農地の保有は、零細なものを持って、なかなか離さないという傾向があるわけなんですね。このことはお認めになろうかと思うのですが、同じようなことが、これから農村工業導入すると起こってくると思うのですよ。それにもかかわらずどういうふうな方法をすれば一体農地保有の合理化が進められるのか。たとえ構造改善が進んでも、構造改善が進めばこの農地保有の合理化ができると考えるのは、私は大きな間違いだと思う。そういう点で具体的に農地保有の合理化が進められるという論拠が何かありますか。
  107. 中野和仁

    ○中野政府委員 非常にむずかしいお尋ねでございますし、また現実の問題としての御指摘、そういう場合が非常に多いわけでございます。今回われわれがこういうふうに考えましたのは、先ほども申し上げましたが、単に工場が入ってきてそのためにいろいろな変化をその村に及ぼしておることも確かでありますけれども、今回はそういう工場が入りましたのを契機にしまして、ただいま御指摘のような非常にむずかしい問題も含んでおると思いますけれども工場導入を契機にしましていろいろな農業構造改善事業もあわせてやれば、いままでよりははるかに、農地保有の合理化を含めまして、農業構造改善がやれるのではないかと思っておるわけであります。  そこで、若干具体的な話になるわけでございますが、その一つといたしまして、今度土地改良法の改正がもし成立いたしますれば、異種目換地制度あるいは創設換地制度等を活用いたしますと、ただいまよりは一そうそういう農地保有の合理化の事業が進むのではないかというふうに考えておりますし、計画の中にはできるだけそういうことが織り込まれていくようにいたしたいと思っております。
  108. 合沢栄

    ○合沢委員 まあその程度のことではきわめて困難だというように考えられますが、私はこの法律そのものに反対しているのではない。そのことによって大臣が言うような、ほんとうに専業農家ができていって、農地保有の合理化も進む、そして農業工業に劣らぬようにというか、工業に追いついて均衡ある発展をしていくかということが非常に心配でありますので、特にその点を強調し、今後注意願いたいと考えるわけでございます。  次に、公害防止についてでございますが、これは昨日来随所でもってこの点の指摘があっておるわけでございます。特に農村地域というものは、たいてい川の上流にあって、そこから公害でも流すと下流に及んでくるというようなことで、ますます過密都市公害を全国にまき散らすということになって、農地、特にまた農村地帯が食糧を生産する地帯であるという面から見ても、水の問題、空気の問題、もちろん騒音等も含めても公害の問題はたいへんな問題だというように考えるわけでございます。そういう点では、公害に関係のないというか、公害の少ない企業を好んで導入するというようなことのようでございますが、特にそういう点については厳密な選別をしていただきたいというように考えるわけでございます。この点については昨日来の御答弁で十分注意するということのようでございますが、さらに注意を要請しながら、次の質問に移りたいと思います。  次は、一番工業導入を望んでおるのは過疎地帯ではないかと思うのです。過疎地帯は早く工業が来てほしい。ところが一方、そういう地帯は、企業側にしてみれば採算の面から見てなかなか入りづらいというか、一番最後になるというように在ろうかと思う。そうなると、そういう地帯では市町村長等が無理をして、財政的な無理も起こる、さらにまた、企業の選別の面においても無理な企業選別が行なわれるのじゃないかというように考えられるわけです。受け入れる側として最も来てほしい、早く来てぜひひとつ過疎を食いとめたいというような地帯があと回しになる、あと回しにならぬとするならば、おかしい企業が入ってくる、さらにまた、地方の財政を圧迫するというような問題が起こる可能性があるので、こういう点、特に過疎地帯におけるところの企業導入という問題については、よほど特別な対策がないと――農村側としてみればぜひ入ってほしい地帯には入らずして、そうでもないところにうんと入ってくるという可能性、そういう点についてはよほど注意を要するので、特別な対策が必要じゃないかと思うのですが、この点についての見解を聞かしてもらいたい。
  109. 中野和仁

    ○中野政府委員 先般、過疎地域振興法が成立いたしまして、これはすでに自治省が中心になりまして各省が協力してやっておるわけでございます。最近の国勢調査の結果、約一千くらいが過疎町村だということになりました。その中で大部分は今度の農振地域に含まれておりますので、もちろんこの工場導入の対象になるわけでございますが、この条文にもございますように、過疎地域におきましては農村工業導入の具体的な計画を立てて、それがあわせて議会の議決を経れば、町村の場合は過疎振興計画にもなるということまでこの法律に書いてございます。われわれといたしましては、ただいま実際の問題としてなかなか企業がどんどん過疎地域に行くというような実情ではあるいはないのかもしれませんけれども、できるだけそういう点にも配慮をいたしまして、この工業導入計画を立てる方向で運用いたしたいと思います。
  110. 合沢栄

    ○合沢委員 何か質問に対する答弁になっていないような感じがしたのですが、私は、過疎地域が最もこの法案の成立を望み、一日も早く企業導入を待っていると思うのです。ところが、そういった過疎地域企業の側からすると採算に合わない。遠くなる。交通なりまた通信なり、すべてが整備されていないということで最後になるんじゃないか。そうすると、そういった過疎地域の町村長は無理をして企業を誘致しようとする。企業の選別等も、もっとしっかりした企業に来てほしいといっても、なかなかそういった企業は来なくて、劣悪な企業を誘致するというようなことにもなろうし、また、その間地方の財政――そうでなくても苦しい過疎地域の地方財政を圧迫するというようなことにもなってくると思うのです。そういう点で、過疎地域等に対する農村工業導入については特別な対策在り特別な施策が必要ではないかということを申し上げておるわけなんです。この地域が今度の対象地域になっておることはわかっておるわけなんですが、そういう点で特別な施策なり対策というものの用意があるかどうか、どのように考えておるかということをお聞きしておるわけなんです。
  111. 中野和仁

    ○中野政府委員 この法案に関する限りは、過疎地域市町村とそれ以外の農村地域市町村とは税制あるいは金融の面におきます措置は同様でございます。先ほどちょっと触れました過疎地域振興法では別途財政的な援助もあるわけでございまして、自治省当局とも相談をいたしまして、また、先ほどちょっと触れましたこの計画を一本にしたのも、過疎地域に何とかもっていけるようにしようじゃないかということを、自治省とも相談いたしておるわけでございまして、われわれもその点に配慮をして運用いたしたいと考えております。
  112. 合沢栄

    ○合沢委員 ぜひひとつそのようなことで、過疎地域なりまた積雪寒冷地帯については格別な配慮を願いたいというように考えるわけでございます。  それから税のことでございますが、税の優遇措置でございますが、この所得税の軽減等は農用地について所得税の優遇措置があるようですが、工場用地は農用地だけでないと思うんで、たとえば林地とかその他のものはどうなるのか。また工場用地以外の敷地もあろうかと思うのですね。こういったものはどうなるのか。この法ではそういったものが含まれていないように読んだんですが、七条には「工業導入地区内の農用地等を実施計画で定める工業用地の用に供するため」となっておるわけですね。だから工場用地以外は対象にならないということ、それから農用地等とあるのですが、林地なり雑種地なり、そういったようなものは含まれていないように思う。当然こういったものはひとり工場用地だけでなくて、やはり容易にするために必要があるんじゃないか、この点についての見解を聞きたいと思います。
  113. 中野和仁

    ○中野政府委員 御指摘のように、今回の法律では「農用地等」ということになっておりまして、この「農用地等」は農振地域法律を引っぱっておるわけでございますので、農地と、それからもう一つは採草放牧地までは入るわけでございます。したがいまして、この二つを売りました農家について譲渡所得税が軽減になるわけでございますが、純粋の林地を売りました場合には、これは譲渡所得税の軽減の対象にはなりません。それから売る工場用地でございますが、たとえばその工場に伴います工員住宅とか、そういうような付帯施設についてもよろしいというふうな取り扱いになるわけでございます。
  114. 合沢栄

    ○合沢委員 法律の内容はそうなっておるのですが、やはり農用地だけでなくして、工場用地に限らず、関係用地について、農用地、放牧地だけでなくして、もっとそういった対象に含めておくのがいいんじゃないか。というのは、農用地もあるし、隣に山林もあるとか雑種地もあるという場合があろうかと思うのです。そういう場合に一方のものは所得税の軽減になり、一方はならない。そういった不公平が起こってきようかと思うのです。これはここで急にこの内容を変えるということも困難かと思うのですが、将来の検討事項としてぜひひとつ検討願いたいというように考えるわけです。  それから、労働省来ておられますか。――ちょっとお聞きしたいのですが、農村工業導入によって農村における労働事情というものがずいぶん変わってこようかと思うのです。特に職安の関係とかそれから職業訓練の関係、そういったようなものが今後強化されると思うのです。その際、農村については何といってもやはり農家方々はほとんど農協の組合員でございますし、そういった職安あるいは職業訓練等について、その地方の農業協同組合との関係をつけていくということが最も効果をあげるのではないかというように考えるわけなんです。先ほど別川委員からもこれに触れた御意見が出ておりましたが、私も全く同感なんです。この点について今後どのように考えておられるか、御意見をお聞かせ願いたい。
  115. 中原晁

    ○中原政府委員 いまの先生の御指摘の点は、私どもといたしましても、非常に配慮している問題でございまして、職安の従来の形だけでは農村関係の離転職者の問題は不十分でございますので、昨年以来、農村人材銀行というものを、たとえば農業会議所でありますとか、農協等々に御協力いただきまして百カ所以上設置いたしました。また、農業者の転職相談員というような人を今年度はさらに増員して七百名置きまして、こういう相談員の方にも、そういう農業に御経験の深い方を委嘱いたしました。それから職業訓練にいたしましても、普通の職業訓練でございますと、かなり長期にわたって本格的にやるということでございまして、農業者の離転職者の場合にも、そういうような、多少時間がかかっても本格的にやりたいという方には、もちろんそのような道も開いておりますが、あるいは非常に忙しいので、短期間のうちに覚えたいというような人のためには、農業者の場合には特に機動的な簡易な職業訓練でありますとか、さらには事業所に委託しまして、一定期間そこで仕事をしながら訓練をしていく。訓練を終わったらそのままその事業所で雇っていただくというようなこともやっておりますが、今後とも御指摘のよう主点を参考にいたしまして、さらに一そうそういう点につきまして充実してまいりたいと思っております。
  116. 合沢栄

    ○合沢委員 最後に御要望申し上げておきたいと思うのですが、この法案の作成というか、過程においても、農林省だけでなくして、通産省あるいは労働省等、たくさんの関係各省があってずいぶん苦労されて出来た法案だろうと思うのです。苦労されてできた法案でございますが、これが今後成立して運用する場合に、また各省のなわ張り根性が出てきて、せっかくの法律目的を達せないというようなことでは困ると思うのです。特に私が最初から心配し、また大臣も若干御心配のようでございますが、そのことによって農業工業が均衡ある発展ということではなくなって、農業がそのことによって発展を阻害されるというようなことのないような法律運用をお願いして、私の質問をこれで終わります。
  117. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 長谷部七郎君。
  118. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 私もこの農村地域工業導入促進法案につきまして、若干の御質問をいたしたいと思います。いままでの質疑を通じまして大かたの問題点につきましては出尽くしたという感がいたしますけれども、特に観点を変えまして二、三お尋ねをいたしたいと思います。  その第一点は、先般来の質疑の中にも明らかになっておりますように、この法律が成立をいたしまして運用に入った場合に、今後五年間でおおよそ百万人の農村の余剰労働力を吸収するのだ、こういう御説明があったわけであります。そこで、私その百万人と言われる労働力の確保がはたして可能なのかどうかという問題でございます。特にいま統計などを調べてみますと、農村就業人口は約一千万だ、こう言われておるわけでありますが、この中で六十歳以上の就業者は約二百七十六万八千人、約二百八十万でございます。さらに女子の場合は、五十歳以上というともうほとんど完全な労働力はございません。その五十歳以上の女子就業者は約百二十四万、こういうぐあいになっておるようであります。したがいまして、一人前の労働力を持つ農村就業人口というものはおおよそ六百万程度と見込まれるのではなかろうかと思うわけであります。その中から季節の出かせぎという形で約百万をこえる出かせぎが出ておる。また別の角度から申し上げて、現在の農家構成を見ますと、専業農家が約八十三万戸、第一種兼業が約百八十万戸、第二種が二百七十万戸となっております。われわれの見るところ、この第二種兼業というのはおおよそ飯米程度の農家でございまして、大部分は生業を持っておると見ていいのではなかろうかと思います。したがって、工場が新たに導入されたからといって、この第二種兼業から労働力として吸収可能なものはあまり期待できない。したがって、今後労働力として期待できるのは、専業の八十三万戸と第一種兼業の百八十万戸を合わせた二百六十万戸の中から確保しなければならぬということに相なるわけでございます。そういう場合に、そういう面から見ますと、この五年間に百万戸の労働力確保という問題はきわめて困難な問題を含んでおるのではないか、かように実は考えるわけでございますが、まずひとつこの点から見解を承りたいと思うわけであります。
  119. 両角良彦

    ○両角政府委員 五年間で百万人という見込みを立てておりますが、この見込みの基礎といたしましては、ただいま御指摘のような専業あるいは兼業農家の離農をされる方々が、導入される工業雇用される場合に約四十万ぐらいの数字になるのではないかということが一つでございます。  もう一つは、現在の農家におかれて労働力として新規に参加をされる方々が、かかる工業に就職されるのが約二十万くらいあるのではなかろうか。残りの四十万はこういう農家からの流入ではなくして、それ以外の地域、あるいはそれ以外の産業あるいは職業からの流入ということになろうかと思っております。
  120. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 ただいまのお話によりますと、農業者から離農するものが四十万人、これから新しく労働力を持たれるものが二十万人、これでまいりますと、六十万、あとは農業以外から吸収する、こういう御答弁でございます。  そこで農林省にお尋ねしたいのですが、よく農地の流動化を促進して自立経営農家を育成するんだ、こういうことを強調されております。だとするならば、私は向こう五年後なりあるいは十年後の長期構造政策の見通しというものをやはりこの際明らかにすべきであろうと思うのです。たとえば十年後のわが国の未来像が、自立経営農家はどれくらいになる、そして現在の農家のうち工業労働者として離れていく者はどれくらいなんだ。さらに一歩進んで、日本の食糧の自給率はかくかくしかじかで、これに対する生産計画、こういった――通産ベースでは約六十万の労働力農村から吸収する、こういう御答弁が出ている以上は、少なくともわが国総合農政の未来像というものがあわせてここに出されなければ、私は調和のある発展ということにはならぬのではなかろうか、かように考えますが、この点ひとつ承っておきたい。
  121. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいまの今後の見通しでございますが、われわれといたしましても、しばらく前に農産物の長期需給見通しの作業をやりまして御発表申し上げた際の労働力の見通しといたしましては、昭和五十年に約六百万人、当時は九百万人でございましたので、それだけが他産業に出ていくのではないかという想定をしておるわけでございます。また社会経済発展計画におきます五十年度の見通しにおきましても、第一次産業はたしか六百七十万ということになっておりまして、農業からそういうふうに他産業へ従事していく人が、先ほど申し上げました数字では三百万近くあるというようなことでございます。これが全部工業にいくということではもちろんございませんけれども、そういう見通しを一方持っておるわけでございます。  それからまた、今後の自立経営の目標といたしましても先般こういう目標を立てるということで、現在の物価にいたしまして約二百万円の収入があげられるのはこういう形態水田の場合はこの程度、それから酪農、果樹それぞれについて類型等もお示しをして、農林省といたしましてはできるだけそういう経営をつくっていきたいという努力をする一方、先ほど御指摘もありましたように兼業農家が非常に多いわけでございますので、その兼業農家もやはり専業的な農家を中核にいたしまして、その周辺に集団的な生産組織その他のいろいろ協業的な形態を考えまして、できるだけそちらの農業生産のほうにも寄与していただく。と同時に、農村にありまして他産業と匹敵した所得ということになりますれば、兼業の安定ということをはかる必要があるわけでございます。その一助としまして、なかなか入りにくい農村のほうに工業を持っていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  122. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 今後、農村から三百万人の就業人口が新たに流出をするんだ、この点はわかりますが、いまお話のあった自立経営農家は、昭和五十二年の目標では何戸になるのですか。
  123. 中野和仁

    ○中野政府委員 経営類型をいろいろお示しして、われわれとしましてはできるだけたくさんつくりたいということでございますが、自立経営農家だけで日本農業の大部分のシェアを占めるというのは、なかなか困難ではないかというふうに思います。現在は、一割前後が自立経営農家の水準にあるということを言われておるわけでございます。それの耕地面積なり生産量、販売量からいたしますと、約三割程度になっておるわけでございます。それを少しでも伸ばしていきたいと考えておるわけでございます。
  124. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 要するに自立経営農家と、それを中核とした協業組織によって、農業所得で暮らせる農家というものはどれくらい見込んでおるんですか。農業所得だけで暮らせる農家というものは、将来どの程度日本農業の中に残していくか、こういう御計画なんですか。
  125. 中野和仁

    ○中野政府委員 まだ農林省の作業としまして、昭和五十年あるいは五十二年に何万戸に自立経営農家を持っていきたいというところまで作業をいたしていないわけでございますので、いまここで何万戸程度になるということは申し上げかねるわけでございます。
  126. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 私はやはりこれからのわが国農業のあるべき姿、未来像というものは、総合農政をうたう以上は、当然展望を明らかにすべきではなかろうかと思います。そういう中でこれだけの余剰労働力というものは他産業に配置をして、農業を営むよりもより安定したより豊かな生活を保障するという点を明らかにしない限り、私はこの再配置計画というものは成功しないんじゃないか、かように実は考えるわけですが、この点もう一回お尋ねしておきます。
  127. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほど申し上げましたように、五十二年には、主として農業に従事する者は六百万人というふうに推定をしておるわけでございます。それに対しまして、専業的な農家でその中で自立経営農家を一体何戸にしたらいいかということになりますといろいろな見通しをつくらなければなりませんので、いろいろな作業を内々はやったことはあるわけでございますが、まだ何万戸に自立経営農家がなるというところまで作業は進んでないわけでございます。
  128. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 いま六百万人を残す、こう言われますね。現在の就業人口が一千万人ですよ。四十五年現在で一千二十七万人、その中で六十歳以上の者が男女約二百七十六万八千人、これを差し引きますと七百四十八万四千人、さらに女子の場合は、農村婦人は五十歳を過ぎると完全なる労働力を保持しておるということは言い得ません。したがって現在すでにもうこの五十歳以上の女子就業者が百二十四万四千人おるんです。これを差し引いただけで現在すでに六百二十万、男女合わせて六百二十万の就業人口しか見られないんです。それなのに、昭和五十二年に六百万の就業者にするなどということは、これはあくまでも紙の上の数字であって、私は農村実態というものをつかんだ上の議論じゃないと思うのです。こういう中ではたして六十万という就業人口を工業へ吸収するということがはたして可能なのかどうか、私はきわめて疑問なわけなんです。もう現在六百万しかおらぬのです。五十二年にならなくとも、ほんとうにまともな一人前の労働力を持つ農業就業者というものは、六百万人しかおらぬのです。
  129. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいまお話しになりましたのは、一九七〇年のセンサス、これは農業就業人口といたしまして、自家農業をやっている人と、それから自家農業と兼業双方をやっている人の合計でございまして、年齢別に御指摘になりましたのは、私もそのとおりだと思います。しかも現在の農業就業人口の中身を見てみますと、四十歳以上で大体六七%でございます。中高年齢層三十五歳以上だということになりますと、これは八割を占める。それに対しまして、他産業ではその中高年齢層が少ないということになっておるわけでありまして、御指摘のように農業就業人口の中の基幹的な労働力がだんだん減ってきており、女性化も進んでおるということでございますが、やはり相当程度の生産を維持していく上におきましては、基幹となる就業人口が幾らかということは、先ほど申し上げました六百万ではなくて、もう少し少ないのではないかというふうに私は考えますけれども、このまま放置いたしますれば、あるいはどんどん減っていくということもあり得ますので、農林省といたしましては新規学卒を農村へ残ってもらう後継者対策、そういうものを含めまして、われわれとしては基幹的な労力、そして自立経営農家、それに類するような農家の労力というものは残していく必要があるということでいろいろ努力をしなければならぬというふうに考えております。
  130. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 農業というものはあくまでも荒廃させてはなりません。日本農業というものを守るという観点から総合農政を展開していく以上は、おおよその五年後在り十年後の農村のあるべき姿というものについてはこれはもっと細部にわたって展望を明らかにすべきではなかろうか、私はかように考えております。通産省のほうでは、農村から新規の労働力も含めて六十万を吸収する、こういうはっきりした目標も持っておるのです。これに対応する農村としては、自立経営農家はかくかくしかじかで、それを中心とする兼業農家の協業化によってこれこれの就業人口は確保するのだ。そうした場合にどれくらいの余剰労働力が見込まれるかというようなことを明らかにしていかなければならないのではなかろうか、私はかように考えておるわけでありますので、これはひとつ御注文申し上げておきたいと思います。  次にお尋ねをいたしたいのは、ただいまも合沢議員から御指摘があったようでありますが、この法案につきましてはその成立を一番強く望んでおるのは、出かせぎ多発地帯あるいは過疎地帯、さらにいままで大きな工場立地が見られなかった積雪寒冷地帯、こういうところであろうと思うのであります。しかし反面、企業側の立場から考えますと、こういった積雪寒冷地帯や過疎地域ではなかなか採算ベースに合わぬということで、いままでもそうであったし、これからも工場進出というものがあまり期待できないのではないか。せっかく法律はつくられたけれどもその実効があがっていかないのではなかろうかという懸念が実はあるわけであります。先ほど合沢議員に対しては、十分心得てこの法律運用の面で配慮していくのだという御答弁があったわけでありますが、これでは私はきわめて抽象的だと思います。あくまでも農村地域過疎地域、積雪地域工場導入するためにはやはりそれなりの積極的な政府施策が相伴わなければならないと私は思うのです。また企業側に対する規制というものも当然必要となってくるのではないか、かように考えておるわけであります。ただ単なる、いままでのようなおざなりのやり方をもってしては、せっかく法律をつくってもその実効があがらぬのではないかという懸念がありますので、この際、遠隔地域である過疎あるいは出かせぎ多発地帯あるいは積雪寒冷地帯に対してどういう形で企業を入れていくかということについて通産省のお考えをひとつ承っておきたい、こう思うわけであります。
  131. 両角良彦

    ○両角政府委員 ただいま御指摘をいただきました、過疎地域あるいは出かせぎ地帯に対して工業導入が特に必要であるという点は、私どもも全く同感でございます。当省が調べております工場立地動向調査というものを検討いたしますと、いわゆる過疎地域あるいは出かせぎ多発地帯の多い東北地方、北陸地方、山陰地方の推移を申し上げますと、東北地方におきましては、工場の新規の進出が漸次ふえております。また北陸地方におきましては、それが相当著しい増加を示しておる。しかしながら山陰地方は、むしろ漸減の傾向が見られるといったような、地区によりましてやや異なった動きを示しておる次第でございます。したがいまして、われわれといたしましては、この農村工業導入基本方針基本計画実施計画一の各段階におきまして、かかる過疎地域に対する企業導入を積極的に誘導するように今後とも心がけたいと考えますが、特に山陰地域には最も力を入れて、実施計画の面でも、当省の行政指導の面におきましても、あるいはいわゆる導入センターの活動の面におきましても、優先的に企業導入をはかるように実際上の努力を払ってまいりたい、かように考えております。
  132. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 太平洋ベルト地帯から遠隔の地域になりますると、原材料及びできた製品の輸送にいたしましても、コスト高になることは当然であります。また積雪地帯におきましては、半年という間雪の中にありまするので、交通を確保するにもかなりの費用がかさむわけであります。また夏場は従業員も通勤可能でありますけれども、冬季間は寮生活をやらなければならぬというような問題も出てくるわけであります。したがいまして、東北、北陸、山陰の過疎地域工業を入れるということになると、全体的な優遇措置、全国的なペースにおける優遇措置以上に何らかの特別な優遇措置を国家の段階で考えていただかない限り、私は先ほど申しましたように、過去の轍を踏むのでは互いか、かように実は心配をしておるわけであります。そういうようなわけで、農林省も通産省も、一番強くこの法律の成立を望んでおる方々の期待にこたえるためにも何らかの特別措置を今後考える用意がないかどうか、ひとつ承っておきたい、こう思うわけであります。
  133. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほど御指摘がありました東北、北陸あるいは山陰というところは相当広い町村が広がっておりますし、また、その町村は過疎地域の指定がありますか、あるいは低開発地域の指定があるのが多いと思います。低開発地域あるいは過疎地域になりますと、そちらの法律からの援助もあるわけでございまして、われわれとしましては、この法案の中で差別といいましょうか、そういう特別の優遇措置を講じられるかどうか、まだ検討はしておりませんけれども、今後の問題として研究させていただきたいと思います。
  134. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 私は秋田でございますが、内陸工業団地の造成などということで、この法案が上程になる前から、実は県としても積極的に取り組んでおるわけです。そのために国の起債あるいは県の自己資金等も投入いたしまして、工場団地の造成も、一カ所はもう完成をいたしましたし、引き続いて、もっと大規模団地造成を県自体としても考えて着手をしておるわけであります。せっかく造成はいたしましたものの、工場立地がなかなかはかどっておらないというわけで、先行取得、先行投資をして団地造成をやってはおりますけれども、思うように企業進出が行なわれてないというのが実態でございます。したがって、そういうやさきにこういう法案が通過をしますと、かなり期待されるものがあると私は思っておったのですが、いろいろ考えてみると、ただ単にこの法案が通っただけではいままでと何ら変わらぬのではないか、かように思わざるを得ないような状態でございます。せっかく、地方府県においてそういう取り組みもあるわけでありますから、そういう過疎地域方々にこたえるための措置を私はこの機会に強く御要請を申し上げておきたい、こう思うわけであります。  なお、時間がございませんので、もう一、二点お尋ねしますが、土地の取得並びに造成あるいは企業の建設ということで、先ほどの御答弁では、約六兆円という資金量が必要である、こういう御答弁であったようでございます。これに対して、農林中央金庫、いわゆる農協系統資金を年間千五百億投入する、そういう御答弁もあったわけであります。私承っておきたいことは、年間三千ヘクタールというこの造成は、工場用地だけなのか、それとも関連施設といいますか、道路とか緑地帯あるいはレクリエーション施設とか住宅、そういった関連施設をも含めた面積になっておるのか、この点を承っておきたいと思うのです。
  135. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほどから農林省あるいは通産省からも申し上げております数字はわれわれの一応の推定でございますが、その際は、過去の工場団地の大きさその他からいろいろ推定をいたしまして三千ヘクタールときめたわけでございまして、いま仰せのような関連します道路とか、そういうような面積は入っておりません。
  136. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 拠点開発方式でいくと二十ヘクタールということになりますと、それだけに関連施設というものが当然伴ってくると思うわけであります。ですから、そういうものも、事業主体である県の開発公社が、あるいはその県によって違うかもしれませんが、いろいろ先行取得をしなければならぬということになるわけです。したがって、そういう資金等も当然合わせた形で手当てをしていただかないといけないのではないか、こう思っておるわけなんですが、この点いかがでしょうか。
  137. 中野和仁

    ○中野政府委員 その点はまさに仰せのとおりでございます。先ほどから申し上げております数字は一応の試算でございますが、この法律が成立いたしますれば、関係各省と相談して国の基本方針を立てるわけでございます。その際にはそういう点を頭に置きまして国の基本方針を立て、そして県の基本計画、それから末端の実施計画に反映させるようにいたしたいと考えます。
  138. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 そうしますと、各県で用地の取得あるいは造成、そういう費用につきましては全額国が手当てをしてやる、こういうぐあいに受け取ってよろしゅうございますか。
  139. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほど申し上げました六兆というのは、用地費なりあるいは設備投資費、運転資金等でございますが、これの大部分は都市銀行、地方銀行その他の民間資金でございます。ただ、現在制度的にいろいろ準備をしておりますのは、今回の生産調整との関連におきまして、政府といたしましては地方債を発行させるあるいは貸し付けをするということで、一千億につきましては利子補給をいたします。これは全部工業用地にはあるいはならないかもわかりませんけれども、その一千億は四千ヘクタールぐらい考えておるわけでございますが、それの相当部分につきましては系統融資をつぎ込みまして、それの利子補給を国で考えるということもあるわけでございます。その他、あるいは通産省から御答弁いただいたほうがいいかとも思いますが、東北開発公庫なりあるいは開銀なりの企業に対する融資につきましては、それは土地の取得費等も含むのではないかと思うわけでございます。若干の程度はもちろん国の機関が融資をいたしますけれども、相当部分は民間に期待をするということになろうかと思います。
  140. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 この場合、各県、各市町村先行取得をして、造成をして各企業に分譲するまでの間というものは、要するに自治体がこれを立てかえ、一時借り入れをして事業を推進しなければならぬことになっているわけであります。御案内のとおり、各市町村あるいは県財政とも余裕があまりありませんし、一年、二年と眠らせておる金というものはそんなに余裕がないと私は思うのであります。したがって、できる限り先行取得をする資金量については国から御配慮願う、こういうことにしなければ進んでいかないのではないかとも考えますが、この点はいかがでしょうか。
  141. 両角良彦

    ○両角政府委員 団地造成のための先行取得としましては、私どもの推計では大体平年度ベースで年間全国で六百億円ぐらいの資金が必要かと思っております。それに対しまして、地方債のワクといたしまして、将来は少なくとも三百億程度、半分程度は地方債をもってカバーをできるようにいたしたい。さらにその残りは農林中金あるいは農協系統資金というものの導入、あるいは進出すべき企業からの協力的な資金の調達、あるいは地方の金融機関からの資金の調達というようなものをあわせて資金対策を講じてまいりたい、かように考えております。
  142. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 時間が経過しておりますので、結論をお願いいたします。
  143. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 わかりました。  それからいま一点は、今度の拠点開発方式によりますと、二十ヘクタール、かなりの大工場進出を予定されておられるようであります。そこで考えさせられることは、われわれの地方ではいま工場誘致もかなり力を入れております。一町村一工場などというスローガンのもとに進めておりますけれども、今日まで進出をされました企業を見ますと、大部分が従業員三十人未満のいわゆる零細企業でございます。ほとんど女子労働力を相手にしてやっておる。しかも最近の傾向といたしまして、経営不振になりましてどんどん倒産をして、いつの間にやら姿をくらましておる、こういう経営者も中にはございます。したがいまして、残された従業員としては、いろいろ賃金の問題もありましょうし、将来の問題について大きな打撃を受けておるというケースが非常に多くなっております。ですから、今回の法案は、こういったすでに誘致された既存の地場産業の救済というものは一体どのようになるのか、これは私は、やはりいままで誘致された企業等につきましても、農村地域への工業導入でありますから、当然これから対象にして救済をしていただくという必要があるのではないかと思うのですが、これが一点。  第二点は、今度のこの法律農林省、労働省、通産省の三省共管になっておりまして、県や市町村がそれぞれ導入実施計画を立てました場合に、事務的に非常に繁雑になるというおそれがございます。一カ所に行けばいいところを、農林省へも行かなければならぬ、通産省へも行かなければならぬ、あるいは労働省へも行かなければならぬということになってはたいへんでありますので、三省共管ではありますけれども、その責任の窓口は一体どこにされるのか、この際承っておきたいというのが第二点。  第三点は、今度工業導入促進のためのセンターができますが、これはいろいろ企業側の動向なりあるいは情報なりそういうものをキャッチして、適切に各県や市町村に情報を提供していただくという意味では非常にけっこうなことだと思いますが、昨日も議論があったように、お話を承りますと、わずか要員としては二十人そこそこだ、こういうお話もございましたので、これは全く情報網を持たない各市町村や県としては大きくその役割りを期待をしているのでありますから、ひとつ今後充実強化をして、各府県自治体の期待にこたえ得るようなものにしていただきたいということ、この三点をお尋ねをいたしまして、私の質問を終わります。
  144. 両角良彦

    ○両角政府委員 地場産業の点でございますが、御指摘のように農村地区工業導入をはかりますにあたりましても、単に新しい企業、新しい工場進出促進するということだけではなくして、その土地の伝統あるいは自然条件等を生かして育っております地場産業自体の振興をもあわせてはかってまいるということが最も肝要な点でございまして、私どもとしましては進出企業と地場産業とが共存共栄できるような形での振興計画実施計画というものを樹立をしていくべきものと考えております。さらに、これら進出企業あるいは地場産業に属する企業が安定的な経営が行ない得るように、中小企業施策全般をかかる中小企業に対して適用することによりまして、農村地区への工業導入目的を達するというふうにつとめてまいりたいと思います。
  145. 中野和仁

    ○中野政府委員 第二番目のお尋ねの共管との関連の問題でございますが、今回の法律は全くこの三省共管で仲よくやろうということで発足してただいままで来ておるわけでございます。その精神を失わないで運用いたしたいと考えておりますが、特に御指摘の事務の問題でございます。確かに御指摘のようにばらばらに書類を出すというようなことがあっては困りますので、この点につきましては三省よく相談をいたしまして、実施までの間にはそういう末端のほうが戸惑うということがないようにいたしたいと考えております。  第三点のセンターの問題でございますが、昨日申し上げましたように、発足当初は二十人で非常に少ないという御指摘でございます。これにつきましては、情報の収集、提供ということで末端との関係が非常にございますので、われわれといたしましてはその拡充を今後はかっていきたい、まずことしはその第一歩だというふうにお考えいただきたいと思うわけでございます。
  146. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 鶴岡洋君。
  147. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 私は、農村地域工業導入促進法案について若干の質問をしたいと思います。いままでたくさん質問がありましたので重複する点もあると思いますので、それを了承していただいて答弁をお願いしたいと思います。  最初に、農村地域工業導入誘致する、こういう問題は、現在経済成長が非常に著しく発展しているわけです、それに伴って起きてくるいわゆる農村の過疎対策、それから出かせぎ対策農業構造改善対策、さらに昨年、ことしと米の生産調整が引き続き行なわれておるわけですけれども、これによるいわゆる農家収入の減少対策、こういう考え方があるのではないか、こういうふうに思われます。もちろんこれを問題にしての工業導入であるということは否定しませんが、これは、これらの問題だけでは解決策ということではなくて、これに関連して、拡大していえば日本全体の地域開発、国土開発、また産業発展、さらに日本の将来の農業がどうあるべきかという問題になってくると思います。したがって、政府が、本法案のできるまで、各省にまたがっての法案でありますから、調整するのにたいへん苦労された、こういうことも聞いております。また、その経緯についても複雑な点がたいへんあったように伺っております。  そこでお聞きしたいのは、この法案ができた段階では、三省のいわゆる共管ということになっておるわけですが、ここで各省の立法の精神、これを各省から農林サイド、通産サイド、労働省サイドでお聞かせ願いたい。
  148. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 本案農政上の目的は、総合農政一環として、農業従事者に対して地元における雇用機会を提供することによりまして離農を援助促進したり、それからまた中高年齢層を多数かかえました農業就業構造の改善をはかることを一つの考え方に持っております。また、農家の安定的な所得の確保を期待いたします。それから、工業導入と相まって農業生産基盤の整備、農業経営の近代化のために施設の整備等の事業を実施いたしまして、農業構造改善をはかってまいりたい、こういうことも考えておるわけであります。  それから工業立地政策の観点からは、最近における大都市及びその周辺地域における過密等の弊害による生産効率の低下などの事態に対処いたしまして、内陸工業立地を円滑にするための対策として重要な位置を占めるものであると考えております。  それからまた雇用政策上の目的といたしましては、農業従事者の希望と能力に従った離農を援助、促進いたしまして、労働力有効利用をはかって雇用構造の高度化に資することに努力をいたしたい。いままでいろいろな方の御質問に対しまして政府側から申し上げておりますが、概括して私どもはこのように考えておるわけでありますす。
  149. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 きのうも連合審査等で話がありましたけれども、この立法の精神からいくと非常にメリットがあって理想的である、このように思われますけれども、その反面デメリットも多いのではないか。  それで最初に、第一条ですが、本法の目的の中に、「農業工業との均衡ある発展を図る」とありますけれども、あの有名な鹿島の臨海工業地帯、あれも農業工業いわゆる農工両全と銘打って企業誘致をしているわけです。ここで土地改良がされ、いわゆる整然と区画された農業団地で近代農業を営むという構想であったわけです。あの茨城県知事も用地買収のときの説明会で、もしかりに工業を誘致することによって農業が滅びるならば、それは開発の根本理念を失うことだとも言ったと私聞いております。もちろん今回の法案ができて農村工場導入されるわけですけれども規模は違うとは思いますけれども。そこで、この鹿島臨海工業地帯を見ていくと、現実はどうか。一部の農業団地ではすでに農業は滅び、土地を売る農家企業へ大量の若年労働力が吸収され、そこに盛り場等ができてくる。これはいわゆる人間の弱さといえばこれでおしまいですけれども。  そこで、農業工業のいわゆる均衡ある発展、こういう姿というのはどういう姿なのか。この点についてどうなくてはならないか。いかがでしょう。
  150. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいま鹿島の例をあげてお話があったわけでございます。鹿島につきましては私どもいろいろ話は伺っておりまして、せっかく茨城県の知事さんを中心にいろいろおやりになった点について、いろいろ問題も出ているという話も伺っております。  ただ、今回の農村地域工業導入ということを考えましたのは、ああいう大きな臨海工業地帯と農業との関係よりも、むしろもっと純農村の中へ、規模としてはもっと小さいわけでございますが、そういうものを導入しますのを契機にいたしまして、そこへ中高年齢層あるいはそれ以外の女子労働も若干は入ってこようかと思いますが、そういうものが雇われることによって農業としての就業の構造が改善される。あわせまして、残った農業については農業改善事業をこれに結びつけてやろうということを考えておるわけでございまして、ただいま御指摘のような、鹿島にいろいろ問題があるとすれば、われわれはその点を勉強いたしました上で、農業工業とが両立するというような考えで今度の基本的な考え方を持っていきたいと考えておるわけでございます。
  151. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 さらに簡単にお伺いします。この農工両全ということですが、資本力の現代社会においては工業のほうがどちかというとやはり資本力においてまさるわけです。どうしても農業を圧倒して工業が成長してくる。これは歴史を見てもはっきりしているところでございますけれども、これを均衡させるには、やはりここに何らかの法的な処置が必要ではないかと思うわけでございます。これをやらないと、いま局長のおっしゃったいわゆる理想的な農業工業の共存する、調和ある体制というものはできないのではないか、こういうふうに思うわけですけれども、この点いかがでしょう。
  152. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいま申し上げました均衡という点に関しまして、これは基本計画実施計画の中でできるだけそういうことがはかられるようにわれわれやっていきたいと考えているわけでございまして、御指摘のようにその場合に工業を何らか抑制をするという措置を法的に講じろということは、私はなかなか困難ではないかと思います。やはり実施計画を適正に立てまして、その中で農業工業との両方の発展ということを考えるべきだと考えます。
  153. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 今後農村地域工業化を具体化していくことによって、これも先ほど話に出ましたけれども、当然地価水準は高騰するでしょうし、それから労賃の基準も上昇してくると思われます。そこで、農林省サイドから見た総合農政のいわゆる農業経営規模拡大、それから自立経営農家をふやす、こういう関係になりますと、そこに障害が起こるのではないか。これは一番心配されるところですが、この点いかがでしょうか。
  154. 中野和仁

    ○中野政府委員 御指摘のように、工業が入ってきますと同時にいろいろな変化がその村に起きまして、その一つとして地価が上がるということもあるわけでございますが、これは従来のように村長さんがどんどん工場を誘致してくるということになりますと、また続いて入ってくるというようなことで、農家からも農地が値上がりするのじゃないかという期待感、それがまた名目的な地価上昇ということにもなろうかと思います。そこで、今回は初めから導入する企業をどういうふうにするかということを前提といたしまして、農工一体的な実施計画を立てまして、それから直後すぐにまた別の工場を入れるというようなことはいたしませんで、入ってくる工業用地とそれから残った農地構造改善でいろいろな手を打つということでやっていきたいと思いますので、従来に比べまして、この計画がうまくいきますれば、期待的な地価値上がりということは避けられるのではないかということを考えておるわけでございます。  それからまた、経営規模拡大につきましても、先ほども御指摘がありましたように、工業が入ると同時に経営規模拡大するのは非常にむずかしいと私は考えます。そうでありますけれども、今後の農業生産ということを考えていく場合には、個人の自立経営農家としての規模拡大ももちろん必要でありましょうし、それから兼業的な農家をあるいは零細な農家を集めました集団的な生産組織を地域によりましては育成していく。そういうことで経営規模あるいは作業単位を拡大しまして生産性を上げるということも必要でありますので、今回は工業導入を契機にいたしまして、両方の計画を立ててみよう。非常にむづかしいことではないかと思いますけれども、ひとつそういうことをやってみようというのが今度の考え方でございます。
  155. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 もう一つ懸念されることは、農業労働力の老齢化が現在進んでいるわけです。これに加えて、先ほども話がありましたけれども工業導入が進行すれば、さらに農業生産のための労働力不足に拍車をかけるわけです。農業生産のいわゆる粗放化といいますか、それから農業をやるというよりも工場につとめたほうがいい、こういうことになって、いわゆる兼業収入の増大に伴って農業生産意欲の減退が出てくるのではないか、こう心配されるわけです。これが一つ。もう一つは、、この促進によって産業公害、これもお話がありましたけれども、十分デメリットの中で考えられるわけです。これらの悪影響がなければいいわけですけれども、この点についてどういうように対処していかれるのか、お伺いします。
  156. 中野和仁

    ○中野政府委員 御指摘の点はよくわかるわけでございまして、今回もわれわれの計画におきましては、末端の実施計画を立てます場合も、労働力の需給の調整それから農業従事者工業への就業をどういうふうに円滑にやるかということも、実施計画の中で村々につきまして具体的な計画を立てた上で対処をしたい。したがいまして、その村の労働力をみんな工業に吸収してしまうというような計画は立てないつもりでおります。  それからまた、公害問題につきましても、昨日からいろいろ御指摘があるわけでございますが、できるだけ公害を起こさないような企業をまず入れるということが第一番でございます。しかし、工業が入ってくると何らかの公害があり得るわけでございます。その点につきましては、具体的に実施計画の中で公害に対する防止対策をどうするかということを、具体的な企業との間でいろいろな話をしました上で、そういうことを明確にしたいというふうに考えておるわけでございます。
  157. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 いま公害の話が出ましたので、この第四条の第二項も五ページの最後ですが、八号「農村地域への工業導入に伴う公害の防止に関する事項」これがありますけれども、先国会で公害関係の十四法案ができたわけです。これ以外の何か考えているのかどうか、その点どうでしょうか。
  158. 両角良彦

    ○両角政府委員 御指摘のように公害の防止はきわめて大切な問題でございますので、公害の防止に関する事項を基本計画実施計画等で定めまする場合には、この七月から全国にわたりまして大気汚染、水質汚濁等につきましての基準が適用に相なる予定になっておりますので、この基準の完全実施ということをたてまえとして推進をすべきものと考えております。さらに、各府県の実情によりましては、さらにこの全国的な基準を上回るよりきびしい基準を課することが必要な場合もあり得るかと思いますが、そのような場合は、この基本計画実施計画におきましてもそのような基準を受けとめまして、企業に対して要請を加えていく、こういうふうに運用をいたしたいと考えます。
  159. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 そうすると、あの十四法案にあるのを基準にして県条例等でそれに上乗せした条例をつくる、こういうことも考えられるわけですけれども、その場合に各省にまたがっているわけです。大気もあるし、河川の汚染もあるし、悪臭もあるでしょうし、いろいろあるわけです。その場合には各省を通じてそれぞれに立法に上乗せするような県条例をつくれ、こういうふうに指示するのか、それともまとめて――主務大臣が三名ですから、まとめてそれを指示していくのか、この点どうなんでしょうか。
  160. 両角良彦

    ○両角政府委員 全国基準に上乗せをいたしまするのは各都道府県知事の独自の判断の問題でございまして、この点につきましては、中央から特別指示をいたすというようなことは考えておりません。
  161. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 農林省の見解として、農村公害とオール兼業化から守る歯どめとして、農業構造改善に役立つ工場だけ選別して、また税金の面などで優遇する法案だ、こういうふうにいっておるわけですけれども、本法を見てみるとわかるように、肝心の工業の選別についてのきめ手がないように思われるわけですが、実際の運用の面でオール兼業化を防ぎ切れないおそれがあるのではないか、こういうように考えるわけです。たとえば工業化のおくれている先ほどの過疎地帯の出かせぎ地帯、そういう市町村の中には、いわゆる人口の流出を防ぐだけの工場があればいい、こういう考え方のところもなきにしもあらずなんです。人口が流出しなければいいだろう、だからどんな工場でもと、そういうところがあると聞いております。そうしてみると、オール兼業化を防ぐ歯どめが働かない場合が出てくるのではないか、この点どうなんでしょうか。
  162. 中野和仁

    ○中野政府委員 御心配の点は私もよくわかるわけでございますが、先般農林省で調査をいたしましたその一つの結果でございますが、今後一体工場導入農村における指導者としてどう考えるかという調査をやったわけでございます。それの結論として、六割の村長さんは、農業振興と両立する限り工場導入をしたい。積極的に何が何でも入れたい、それがそういう意味であったかどうかよくわかりませんが、そういう積極的に入れたいと言われた方々が二十数%でございまして、われわれはその点にも非常に期待を持っておりますので、今回、従来のように単なる工場誘致でなく、先ほどから申し上げておりますようなことを実施計画の中に十分織り込みまして、オール兼業化だけに走らない計画に持っていきたいと考えております。
  163. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 次に第四条の第三項のこころでありますけれども、ここに、基本計画は、基本方針に即するとともに、国土総合開発計画、三圏整備計画、それから北海道総合開発計画云々とたくさんありますけれども、それに加えて本法案ができるわけです。   〔三ツ林委員長代理退席、委員長着席〕 ここで言っていることは、これら法律の規定による「地域振興に関する計画及び道路、鉄道等の施設に関する国の計画並びに都市計画との調和」を保たねばならぬと、こういうふうになっているわけです。それよりも何よりも、この幾つかのすでにできている法律が現在まで計画どおりに進行していればこれは問題はないわけですけれども、この地域指定が単なる計画区域の指定だけに終わってしまっているところも非常に多わけです。またそのようなところは地域指定だけで今回の法案の対象外となっている、こうなるわけです。かえって本法案ができることによってそこの部分に弊害が起きるのではないか、こういう心配がなきにしもあらずですけれども、この点はどうでしょう。
  164. 中野和仁

    ○中野政府委員 国土総合開発計画をはじめいろいろな計画があるわけでございます。そのそれぞれの計画農村地域工業導入計画とをどういうふうに関連させるかという問題でございますが、ここにあります計画の多くは、国土総合開発計画にいたしますれば国全体としてのいわば大きな進め方でございますし、それ以下の地域的な計画にいたしましても、どちらかといいますと工業的な都市をつくっていこうというような意味の、新産都市工業整備特別地域あるいは首都圏はじめ三圏のよりも大きな都市をつくっていこうかということでございますので、抽象的に申し上げますと、そういう計画からはずれたような農村について今度のようなことをはかりたいということでございますが、やはりそれぞれの計画との間の接点があると思います。たとえば昨日からも御議論がありましたように、新産都市計画がありながら進んでいないところはどうするのだというような問題等ございます。それにつきましては、昨日申し上げましたように、新産都市の中でも都市計画が立っていないような部分については農村工業導入計画で対処いたしたいということも考えておりまして、われわれといたしましてもそれぞれの計画が先行しておりますので、それとの調整をとりながら今度の計画を進めていきたいと思います。
  165. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 話はわかりますけれども、私の言っているのは、要するにあとからあとから法律ができて、現在ここに六つか七つあるわけです。そういうふうに網をかけてそのままにしないで、あとからできるやつはできるだけ――大規模なものもあれば今度のように部分的にやるのもあればいろいろあるわけです。ですから、そういうものができてきたならばこの法律の趣旨に従って、いま最後局長がおっしゃったように、足らない部分はどんどん促進していく、こういう姿勢でやっていかなければ、幾ら何回も何回も網をかけてもその中に残ってくるものがある、これでは困る、こういうことを言っているわけです。その点を留意して、今度の法案については残っておるところを促進するように、この法案促進することももちろんですけれども、すでにできている法案促進するように、これは通産省、農林省、労働省すべて関連のある法案ですから進めていただきたい、こういうことを言っているわけです。  次に四十六年度の予算において、本法の実施につき四十二県百五十市町村で実施するための必要予算が計上されているわけですけれども、この四十二県というのはわかりますけれども、百五十という市町村、これはもうすでに内々きめてあるのかどうか、この点どうでしょう。
  166. 中野和仁

    ○中野政府委員 まだ百五十市町村をどの地域にやるかということはきめておりません。これからこの法案が通りましたあと具体的に作業をいたして、先ほども御議論のありますように、できるだけほんとうの意味農村に持っていきたいということを考えておるわけでございます。
  167. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 きめてないようですけれども、すでにこの法案ができるということはみな承知しておるわけです。どういう経過でどのような基準で、もちろん法律政令、これに対照してその場所は設定されると思いますけれども、現在までそういう話がある、まあ陳情等があるというような点はまとめられておると思いますけれども、どのくらい申し込みが現段階においてあるか、この点説明できたらお願いしたいと思います。
  168. 中野和仁

    ○中野政府委員 実施計画を立てます場合に、県でお立てになる場合と市町村で立てる場合とございますが、われわれといたしましては国の基本方針を立てた上で、それから具体的には県知事さんの基本計画によりまして、いろいろな考え方がきまってこようかと思います。まずやはりそういうものの考え方を先行させました上で、付帯的に選定すべきではないかと考えますので、まだどういう希望があるかということを正式に農林省なり通産省からは出しておりませんので、いろいろ若干の話は伺っておることもあるようでございますけれども、ただいま申し上げましたように正式にはまだ希望をとっておりません。
  169. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 そこで第五条の工業導入実施計画の点でございますけれども都道府県の定める実施計画市町村の定める実施計画、この関係についてですけれども、たとえば一つの町へ工業導入する場合市町村としては町の北部のほう、それから県の意向としては町の南部方面という食い違いが出た場合には、どっちを先行され奨励していったらいいのか、この点はどうでしょう。
  170. 中野和仁

    ○中野政府委員 いまのお尋ねはこの席で、県のほうを優先するとかあるいは市町村のほうを優先するとかいうことはなかなかきめかねると思います。やはり市町村計画を立てます場合は知事に協議するということになっておりますので、知事と市町村との間で十分御協議をいただき、またその間必要がありますれば中央のほうからもアドバイスをするということで対処いたしたいと思います。
  171. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 実施計画についてですが、その内容には上下水道、住宅等のいわゆる生活環境、この整備に関する事項が除外されているように思われるのですが、この内容についてどうしてこの事項が除外されたのか、この点はどうなんでしょうか。
  172. 中野和仁

    ○中野政府委員 この実施計画におきまして、必ず計画の中で立てていただくことが一から九まで書いてあるわけでございますが、お尋ねのようなそれに関連いたします生活環境等の整備につきまして、ある村の工業導入地区につきまして、あるいはある県のある地区工業導入計画につきましてそういうことが必要であります場合は、この「その他必要な事項」というところで法文としては読みまして、関連的にそういうことを計画を立てていただいても差しつかえないと考えております。
  173. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 それではあと二、三点ですけれども、先ほども話したように労働力の問題ですが、現在の農村労働力を見てみると若年労働力は非常に少なくなっておるわけです。残っておるのはいわゆる高年齢層、婦人労働力ということになっているわけです。ここで、この法案の適用によって工場農村進出することになるわけですけれども、いわゆる高年齢層、婦人の労働力だけの吸収ならともかくとして、それに加えて将来農業を背負って立ついわゆる数少ない貴重品、貴重品ということばはいかぬが、貴重な若年労働力、このところまで吸収されていくのではないか、こういう心配があるわけであります。そうすると、いわゆる成長農産物の生産がこれによって妨げられる。後継者なんというのは現在も非常に少ないわけです。そういう点、懸念されるわけですけれども、この点についてはどういうふうに考えておられるか。
  174. 中野和仁

    ○中野政府委員 御心配の点は、農林省としても常々それを心配しているわけでございまして、現状を申し上げますと、新卒五十数万の中で、農業としてとどまっておる者がたしか三万七千だったと思います。これで足りるか足りないかといういろんな議論があるかと思いますが、農林省といたしましては、相当数の後継者が残りますようなためにいろいろな政策をとらなければならぬと同時に、直接的にやはり後継者対策をいろいろ充実いたしまして、できるだけ農村にあと取りが残っていくようにいたしたい、そういうふうに考えておるわけでございます。
  175. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 農林省は、先般、四十五年七月、全国四十三都道府県の五百九十一市町村のいわゆる三百十三万人を対象として実施した「農業者転職対策推進調査」、 この結果を発表をしたようですけれども、それによると、いわゆる他産業への転職希望者が全体の二%ですか、百五万人、こういう数字が出ているわけです。これら転職希望者は地域的にかなりの差があり、いわゆる東北、北陸など、地元に就職する機会の少ない地域には多く、また三十五歳以上の中高年齢に集中しているということですけれども、これらこの数字、百五万人といいますと、きのうからいろいろ話が出ているいわゆる五年間に百万人という数字に大体合致してくるわけです。この百万人のいわゆる転職希望者を考えているといわれますけれども、この前の質問で、いわゆる若年労働力、これが吸収されては困るという、こういう話を私しましたけれども、この百万人の就業者の年齢について、大体何歳ぐらいからはどの程度、また何歳から何歳ぐらいまではこの程度、そういう割合、それは考えられないのかどうか。高年齢ばかりでも困るし、また、いま言ったように若年労働力ばかり吸収されても困る、こういうことで、一応の目安として百万人の割合ですか、これは考えられるかどうか、
  176. 中野和仁

    ○中野政府委員 御指摘の百五万人といいますのは、実はわれわれが今度三百十三万人の調査をいたしましたものを全国に延ばしたらちょうど百五万人になったわけでございまして、正確に申し上げますと、農業従事者の中で一四%程度が他産業へ、いいところがあれば就職を希望したいと言ったわけでございます。そのときに、年齢別の調査をとっておるわけでございますが、その他産業へ希望すると言った数は約二十四万人でございます。その中で、男子は三十四歳以下が三万三千、三十五歳から五十四歳までが六万五千、五十五歳以上が一万八千ということになっております。それから女子は合計しまして十二万一千、他産業へ就業を希望したわけでございますが、三十四歳以下が三万六千、三十五歳から五十四歳までが七万三千ということで、年齢層が三十五歳から五十四歳までが最も多いわけでございますが、やはり三十五歳から五十四歳までが絶対数としては多いようでございます。
  177. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 その調査の数字を私は聞いているんではなくて、調査の数字が百五万と出た。それで、農林省のほうの考え方として、五年間この計画を進めていくと、大体百万になる。大体同じ数字が出ているわけです。その百万を今度の工場進出に就職をさせる。片寄って高年齢層ばかり就職させてもしかたがないし、若年労働力を吸収してもしょうがない。そうすると、このいわゆる五年間の計画のその百万を、割合を考えているのかどうか、これを言っているわけです。その調査に出た数字そのままを考えて充当するのかしないのか、そういうことじゃないのです。
  178. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいま申し上げましたような現実の希望というのは参考にすべきだと思いますが、現在では、若年労働者をそれでは百万のうち何人ぐらい、それから中高年齢層を何人ぐらいというところまで考えておりません。今後具体的な方針を立てます際に検討いたしたいと思います。
  179. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 時間が来ましたので終わります。
  180. 草野一郎平

  181. 二見伸明

    二見委員 関連して、通産省にまとめて二、三点お尋ねしますので、お答えをお願いしたいと思います。  この法案の、農村地域工場導入するということの背景に、通産省サイドから考えると、現在たとえば東京であるとか大阪であるとか工場の過密地帯があるわけですね。そこでは工場を地方に分散すべきだという有力な議論もありますし、通産省としてはそういう立場からもこの法案にはかなり積極的なんじゃないかと思います。その場合、通産省として、企業局としては、そうした工場の地方分散あるいは事業所を地方に持っていくということについてどの程度の見通しを立てているのか、それが一点。  それに関連して、今度農村地域工場導入する場合に、公害がないという大ざっぱな考え方ではなくて、具体的にどういう業種農村地域導入したほうが望ましいと通産省としては考えているのか、その点をお尋ねしたい。  もう一点は、先ほども御質問がありましたけれども、地場産業の育成の問題ですけれども、宮澤通産大臣も地場産業がつぶれないようにするという本会議での答弁もあります。具体的にどういう措置をとられるのか。新規に入ってきた企業に対しては、今度の法案でもって数々の優遇措置がとられているけれども、それに見合うだけの地場産業に対する育成策というのは、具体的にどういうふうにとっていくのか。それからたとえば地場産業が工場を拡張しよう、事業拡大しようとした場合に、この現在審議されているこの法案でもって特別の処置がとれるのかどうか。たとえば第九条では、減価償却の特例として、「又は増設した者がある場合には、」というようなことばもありますので、地場産業が事業拡大をした場合にもこの法案の適用を受けるのかどうか、その点について通産省としての御意見を伺いたいと思います。
  182. 両角良彦

    ○両角政府委員 お答え申し上げます。  工場の地方分散ということは、御指摘がございましたように、過密対策公害対策といった面からも必要でございますし、同時に地域格差の是正あるいは全国的な地方開発というものの効果も期待をしておる次第でございまして、通産省としましても、これを政策的に推進をいたしておるわけであります。これがどの程度実際に今後行なわれていくかという的確な見通しはなかなか困難でございまするが、少なくとも農村地域への工業導入法律が成立をいたしまして、そして各府県であるいは市町村計画が立てられる場合には、これに乗りましてこの地方分散が軌道に乗ってまいるということは期待されると思っております。  次に、どういう業種がこのような農村地域への導入の適格業種であるかというお尋ねでございますが、私どもとしましては公害を発生しない業種あるいは成長性の高い業種、こういったものを選ぶべきであろうかと思っております。具体的には、たとえば機械関係の業種あるいは電気機械関係の業種あるいは繊維の加工関係の業種ないしは食品加工等の業種、こういったものが一応考えられるかと思っております。  最後に、地場産業との関係でございまするが、再三申し上げておりまするように、この農村地域への工業導入にあたりましては、地場産業との共存共栄のたてまえで計画を立て、実施に移していくべきである。したがいまして、地場産業を特に育成をいたすというような特別な方策は別といたしましても、少なくとも実施計画基本計画の中では地場産業との共存共栄が可能のような方向において計画が作成されるべきであると考えております。同時に、地場産業の育成という面では、一般の中小企業施策というものの適用によりましてこれをはかっていくことが妥当ではないかと考えております。さらに、かりに地場産業がある実施計画の中において導入すべき業種として選定されるならば、その地場産業の拡張にあたりましても当然本法に予定する優遇措置が適用される、かように考えております。
  183. 草野一郎平

  184. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 農村地域工業導入促進法案につきまして、重点的な問題を若干御質問申し上げたいと思います。  本法案は新法でありまして、昨日来連合審査も含めて精力的な質疑が展開されてまいりました。本来ならば各項目について十分論議したいということでありますけれども法律案の処理の関係で三十分ということでございますので、質問も簡潔にやりますし、答弁もポイントを踏まえて御答弁を願いたい、こういうふうに考えております。  本法案については、党内においても十分論議をしてまいりました。幾つかの修正点あるいは法案に対する注文等についても真剣な議論をしてまいりました。大局的な判断に基づいて本法案については大筋として賛成をするという立場をきめておるわけであります。ここでまず農林大臣にお伺いをしたいのでありますが、農村地域工業導入促進法案、これはいままで農林省サイドでもあるいは通産省サイドでもそれぞれ持っておる審議会あるいは農林関係の諸団体においてもこの問題の議論が行なわれてまいりまして、それを踏まえて本法案の提案になった経緯がございます。そこで大臣にお伺いしたいのは、本法律案の農政上あるいはまた産業立地政策上あるいは雇用政策上の位置づけをどう考えておるかという点について、大臣からまずお答えを願いたいと思います。
  185. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 本法の農政上の立場から申し上げますならば、総合農政一環として、私どもは一農業従事者に対して地元における雇用機会を提供一いたしますことによって離農を援助促進し、そうして中高年層を多数かかえました農業就業構造の改善をはかると同時に、農家所得の安定を確保することに資したい。同時にまた、工業導入と相まって農業生産基盤の整備、農業経営の近代化のための施設の整備等の事業を実施いたしまして農業構造改善を同時にはかってまいりたい、こういうわけであります。  また、工業立地政策上の観点からは、最近における大都市、それからその周辺地域における過密の弊害による生産効率の低下等の事態に対処いたしまして、内陸工業立地を円滑にするための施策として重要な地位を占めるものであると考えております。  また、雇用政策上の目的といたしましては、農業従事者の希望と能力に従った離農を援助促進いたしまして、労働力有効利用をはかり、雇用構造高度化に資することができるであろう、こういうようなことを目標にして立案をいたしたわけであります。
  186. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 本法の第二条の農村地域の問題に関連をしてでありますけれども、第二条第一項第一号、第二号、第三号、これの該当市町村というものについて、これは局長から御答弁を願いたいと思います。
  187. 中野和仁

    ○中野政府委員 第二条の第一号につきましては三千百三十二町村でございます。それから二号の振興山村につきましては大部分、ただいまの三千百三十二の農業振興地域とダブっております。それからはずれておりますものは十四でございます。それから過疎地域振興法に基づきます過疎地域といたしまして、やはりいま申し上げました二つからはずれたものが十七でございます。合計いたしまして三千百六十三ということになります。
  188. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 結局第二条第二号の点は、振興山村を含む市町村数として全体では九百十二、これは農業振興地域との関連において結局該当する町村が十四、第三号の関係は全体の過疎地域市町村数としては一千四十九、一、二以外ということで第三号に該当する市町村の数としては十七、こういうことに相なるわけですが、そこで、第一号の農業振興地域の整備に関する法律に基づいて昭和四十四年以来本年度の予定も含めてすでに指定を終わった、それからこれから指定のプラン、こういう問題について御答弁を願いたいと思います。大体、農業振興地域及びその予定地域地域数は三千百十一というふうにいわれておるわけでありますが、すでに指定をされたものあるいは本年度の指定をするもの、それから今後の指定プラン。
  189. 中野和仁

    ○中野政府委員 御指摘のように、われわれ農業振興地域の予定地域といたしましては三千百十一でございます。その中で振興地域を四十四年に指定をいたしましたのが三百九十六、それから四十五年は六百、合わせまして九百九十六でございますが、四十六年度、ただいま作業を進めております地域は約八百でございます。したがいましてあと四十六年を含めますと三年ないし場合によっては四年かかるということでございます。
  190. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 そこで第二条の関係は、今日までの議論の中では与野党を通じて、要するに新産都市の関係あるいは工業整備特別地域整備促進法に基づく工業整備特別地域の関係、こういう問題で各県、各地域からの要請もあって、これが政令の関連で問題になっておるわけであります。これはいままでの議論の中でも答弁があったわけでございますが、最終的に確認をいたしておきたいと思います。そこで新産都市を考えてみますと、該当の地区は十五であります。それから工業整備特別地域は該当の地区は六であります。そこで新産都市の関係市町村数は全体として二百七十一、そこで都市計画市町村数で線引きの行なわれておるものが百十九、無線引きが六十五、都市計画のない市町村数が八十七、工業整備特別地域の関係においては関係市町村数が九十五、都市計画の線引きの行なわれているものが六十三、無線引きが十四、都市計画のない市町村数が十八というふうに承知しておるわけですが、政令をきめます場合に、いままでの答弁でも明らかなように、この新産都市においても工業整備特別地域においても、都市計画のない市町村については本法が適用される対象になる、こう理解をしていいわけですね。
  191. 中野和仁

    ○中野政府委員 御指摘のとおりでございます。
  192. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 都市計画市町村数の中で線引きの行なわれておるものは本法の対象外になる。問題は無線引きの問題の取り扱いを政令をきめます場合にどうするかという問題が、まあこれから政令をきめるわけですけれども、考え方として無線引きの問題については本法の対象内へ入れるというお考えでこれから進められると思うのですが、その点を明確にひとつ答弁を願いたい。
  193. 中野和仁

    ○中野政府委員 昨日申し上げましたように、立案の段階では企画庁が所管庁でございますので、いろいろ御相談申し上げました結果、先ほど申し上げましたように、都市計画のない市町村だけを農村地域とするということにいたしたわけでございます。昨日からいろいろ御議論がございますので、政令をつくる段階におきましていま一度企画庁ともよく御相談をいたしたいと考えております。
  194. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 その点は都市計画のない市町村については問題はなく、本法の対象の問題とする都市計画市町村の中の無線引きの問題がやはり非常に地域からも問題として強く要請されておる点だと私ども判断をしておるわけですが、与野党を通じての審議の姿勢というものを十分判断をして善処願いたいと思います。  そこで、今回の農村地域工業導入促進法のいわばおもなる対象の舞台というのは農業振興地域である。これがいいか悪いかという問題は本法、農業振興地域の整備に関する法律を制定する当時は、これは農業生産の相当部分の生産確保の農林省としては領土宣言、いわばここを拠点として農業生産の維持増大をはかっていくという思想で、農地法の適用等についてもこれにきびしい制限を加えるという形を考えておったわけでありますが、そういうところへ新しい時代の変遷というものが起こって、農村地域工業導入をこの振興地域にもやっていこう、これがいわば相当なウエートを持つ地帯になってくる。ここは議論の存するところでありますけれども、そういう場合に、前の西村農林大臣当時に農業振興地域において日本農業生産の生産シェアとしては七割以上を確保したいということを言われた。ここへ今度は工業導入されてくるという場合に、生産シェアの確保問題ということと関連をして、どういうふうに今後農業振興地域の生産の向上のために対処するか、こういう点についてのお考えを承っておきたいと思います。
  195. 中野和仁

    ○中野政府委員 農業振興地域制度を現在いろいろ進めておるわけでございますが、もうすでに農用地区域の設定を終わっているところがございます。農用地区域の設定をいたしましたところにつきましては、その農地はやはり農業生産のために使うべきだという原則は今度の工業導入との関係におきましても変える必要はないし、また変えたくないわけでございます。ただ計画をつくりましてから何年かたってまいりますと、それぞれの地域の情勢が変わってまいりまして、かつて農用地区域にしたところにつきましても、その後新しく道路が入ったとかなんとかいうことでこの辺は工業用地でいいじゃないかという場合があり得ます。その場合はわれわれといたしましては、農振地域法律のほうで計画変更した上で農用地区域から除外をいたしまして、この農村工業導入に対処いたしたい。農業生産の場であります農用地区域はあくまでそのまま存置をするという考え方でやりたいと考えております。
  196. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 問題は、国が定める基本方針、県が定める基本計画あるいは県、市町村が定める実施計画、いわば基本方針から基本計画実施計画、上から下へおりてくる形をとるわけであります。従来の県あるいは市町村地域工業導入する場合は、やはり地域住民の理解と協力という形ではなしに日本の経済の高度成長の波の中で地方自治体は工業導入工業導入ということに専念する、そういう形が無計画工業導入あるいは公害列島の今日のような状態を惹起した経緯であろうと思うのです。工業導入をする場合のたてまえとしては、方針を国がきめ、県が基本計画をきめ、あるいは県、市町村実施計画をきめるというたてまえをとっておるわけですけれども、いかにしてこういう問題に地域住民の理解と協力を得るか、あるいは基本方針基本計画実施計画を含めていわゆる関係諸団体なり関係の筋の意見をいかにして積極的に吸い上げていくかということが、この問題を円滑にやるために非常に重要な要素だと思うのであります。国の基本方針の場合も、私どもはその一つの方法として農政審議会の意見を聞くということを配慮すべきであるというふうに考えましたし、また基本計画実施計画については、これは予算的には裏づけをしておりますけれども法文上明記してなかった審議会についてもこれははっきり確立すべきであるという考えをとっておりましたが、県あるいは市町村審議会をつくるにいたしましても、審議会オールマイティであるということではなしに、工業導入に伴う関係者の意見をいかにして聞くか、今日は住民パワーといわれる時代でありまして、円滑に推進をするためにはそういう点についての十分の配慮がなければならない。この点について今後の法の運営上どう考えていかれるのか明らかにしてもらいたいと思います。
  197. 中野和仁

    ○中野政府委員 工業導入にあたりまして、またそれに伴います農業構造改善をやるにあたりまして、民意を反映させる必要があることはまさに御指摘のとおりでございます。われわれといたしましてもすでに予算措置を講じておりまして、中央におきましては、昨日御批判もあったわけでございますが、離農円滑化協議会等、これは各方面の方々が入っておりますので、それぞれの意見を十分に拝聴をいたします。と同時に、県の段階におきましては、県に協議会あるいは審議会を置くという前提で予算措置を講じております。それからまた町村段階におきましても、町村に協議会を置かせるということで予算的に措置を講じておりますと同時に、具体的な工場導入にあたりましてはいろいろ入ってくる企業の調査等もやる必要もありましょうし、また部落の意見を聞かなければならぬということから、部落座談会事やるというための予算措置を講じておるわけでございまして、御指摘のように十分民意を反映させるような運営をいたしたいと考えております。
  198. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 第三条の「農村地域工業導入基本方針」この中には、工業導入の場合の一番重要な社会問題であります公害という項目について第三条第二項の各号の中には明記してなくて、「その他農村地域への工業導入に関する重要事項」の中で片づけようとする。これは法文のあらわし方上、基本的には私は問題だと思う。  第四条の「農村地域工業導入基本計画」の中では、第四条第二項の第八号のところで「農村地域への工業導入に伴う公害の防止に関する事項」ということで、これは明記されておるわけでありますし、「農村地域工業導入実施計画」の第五条関係でも、この点については第五条第二項第九号のところで「工業導入に伴う公害の防止に関する事項」ということで明記されておるわけでありますが、私は基本方針のところになぜ公害の防止に関する事項というのを掲げなかったのかという問題が一つありますし、またこの基本方針基本計画実施計画を通じて、各セクションで公害防止に関する条項というものは具体的にはどのような内容で下までおりてくるのか。それから導入企業と県及び市町村との町に、やはり重要な企業が来る場合においては、公害防止協定というものを結ばれるように積極的に指導を行なうのか。それから公害防除施設等を設けるというような必要のある企業が当然予想されるかと思うのでありますけれども、その場合には公害防止事業団とのタイアップというような面をどう今後考えていくのか、これらの点について明らかにしてもらいたいと思います。
  199. 両角良彦

    ○両角政府委員 基本方針におきまして公害防止に関する事項ということを特掲をいたさなかった次第でございますが、これは全国にわたりまする総合的な方針を示すわけでございまして、公害問題はむしろ業種が具体化し、あるいは地域が具体化した場合に、それぞれの具体的な内容に即して考えてまいることが妥当ではなかろうか、こういう見地から、基本方針の中に抽象的な公害の防止に関するいわば取りきめというものを掲上することはあまり具体的な効果がないのではないか、こういう判断をいたしました次第でございますが、しかし、問題の緊要性にかんがみまして、必要に応じましてはその他の事項というところでこれに関する大綱を抽象的にせよ示すことは考慮されると思っております。  それから次に、公害防止に関する事項ということはどういう内容のものであるかというお尋ねでございまするが、これは私は具体的には各府県あるいは市町村のそれぞれの業種もしくは地区の実情に応じて定められるべきものであると思いますけれども、当面予想されまするのは、大気汚染あるいは水質汚濁に関しまする国の定める全国基準というものを少なくとも完全に達成するようなそういう工場計画でなければならないといったようなことを要請をいたすべきかと思っております。また府県の実情によりましては、それよりきびしい要請を加えることも考えられると考えます。  次に、公害防止協定についてのお尋ねにつきましては、私どもは本来基本計画あるいは実施計画におきまする公害の定め方は、やはり法令に準拠した一般的な基準というものを要請することが妥当ではないかと考えまするが、しかし、個々企業計画の内容のいかんによりましては、当該地方公共団体企業との間で公害防止協定を結ぶことも当然考えられると思っております。  さらに、公害防止施設につきましては、事業団の活用ということは、共同の公害処理施設等につきまして事業団の資金を運用をしてまいるということは当然考えておる次第でございます。
  200. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 さらに通産省のほうにお伺いしたいのですが、農村地域工業導入される場合に、今後の見通しとして、新規に工場農村地域に来る、あるいは既存の工場が移転をして農村地域に入ってくる、特に既存の工場が入ってくる場合でも、いわゆる第八条との関係で、「農村地域以外の地域にある事業用資産を譲渡して工業導入地区内において製造の事業の用に供する事業用資産を取得した場合には、」ということで、「事業用資産の買換えの場合の課税の特例」というのが御承知のようにございますが、要するに、農村地域以外の地域にある企業農村地域工業導入計画に基づいて入ってくる、種々さまざまの場合があると思うのですが、全体の見通しとしては、いわゆる新規に工業が入る、あるいは既設のものが農村地域から移動して入ってくる、あるいは農村地域以外から農村地域へ本法に基づいて入ってくる、全体的な見通しとしては大体どういうふうな状態になると判断をしておられるのか。  同時に、私は第八条の関係で、農村地域以外の地域にある事業用資産の譲渡として、工業導入地域において製造の事業の用に供する事業用資産を取得した場合の恩典という問題については、いわゆる農村地帯の既設の工場でも、騒音その他いろんな関係で、農村の、いわゆる集落の中心部のあるものが新しい団地に移動したい、あるいは他の市町村にある既設の工場計画された当該市町村地域に入りたいという場合においては、この第八条の関係は、農村地域以外の地域にあるものについてだけ恩典が与えられるということで、いわば農村計画、あるいは積極的に快適な環境を整備するという趣旨等から考えても妥当なのかどうかという問題は、本法で直ちにここでというのには、大蔵委員会その他の租税特別措置法等すでに通った法律との関係で、ちょっと同一国会ではどうかと思って控えたわけですけれども、こういう問題も考えなければ、農村地域にはやはり工業導入され、適正に配置をされる、しかも農村地域においていわゆる快適な条件が整備されるということになり得ないんじゃないか、その点は一体どう考えておるのか、あわせてお答え願っておきたいと思います。
  201. 両角良彦

    ○両角政府委員 農村地域への企業進出あるいは工場の建設が、新規のものかあるいは分散進出といった形態のものかという点につきましては、的確な見通しは実はわれわれもたいへん困難であろうかと思っておりますが、おそらく大部分は新規の立地ということになるのではないかと思っております。したがいまして、事業用資産の買いかえ特例というものは、その新規以外の一部の立地の場合に適用され得る可能性がある、かように存じております。  ただ、御指摘がありましたように、当該農村地域の中で移動するような場合にも、このような税制上の特例を認めてよいではないかという御意見は、私どもは御趣旨はよく理解するのでございまするが、元来この資産買いかえの特例の税制上の目的は、いわば特定の地区への企業導入、誘致ということにございますので、その地区内での移動というものにつきましては、この税制上の措置は適用されないというたてまえに従来相なっておりまして、たとえば新産、工特といった法律でも、その地区内での移動については資産買いかえの特例がないということになっておりますので、今回もその前例に即してその取りきめをいたした次第でございます。
  202. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 ただいまの点は、同一市町村内でなくて、同一市町村内ならもちろん含まれるわけですけれども、他の市町村からの計画のある、いわゆる農村地域工業導入として入ってくるという場台も含めて考えておるわけですけれども、まあこの問題は農村地域工業導入する場合の具体的な計画の推進の立場からいえば、農村地域以外の地域からの事業用資産の買いかえの恩典だけではなしに、やはりそういう問題も今後の問題として真剣に考えることが実態に即するであろうというふうに考えておるわけであります。  それから労働省にお伺いをしたいのでありますけれども農村地域工業導入される、そこでやはり農業構造改善に資していくというためには、同僚議員からもいろいろ質問がありましたように、誘致された工場で専念できるという、そういう賃金なり雇用なく労働条件なりが整備されるということが、農業構造改善の立場からも望ましいと思うわけでありますが、かねてわれわれが言っております最低賃金の問題、あるいはまた工場を誘致する当該県あるいは市町村が誘致される企業との間で、いわゆる地場労働力をどこまで雇用してもらいたいとかいろいろな意味におけるところの雇用協定といいますか、そういう問題も含めてどういうふうに指導上は今後考えていかれるのか、その点明らかにしてもらいたいと思いますし、同時にやはり中高年を含む農民諸君が新しい工場に入っていく場合には、労働省でも真剣に考えておりますように、職業訓練その他の諸手当て等を整備してまいらなければならぬ。その場合に現場に近いところで、しかも新しい工場に行って十分働ける技術訓練というものを身につけていかなければならぬ。それらの問題については今後どういうふうに指導していかれるのか、あわせ簡潔にお答えを願っておきたいと思います。
  203. 中原晁

    ○中原政府委員 ただいま先生から御質問がありました、農業転職者が進出企業等に就労していく場合の労働条件、労働環境等の問題でございますが、これは非常に大事な問題でございます。先ほどからいろいろお話ございましたが、一番大事なことは、導入される工場なり企業の性格というものがそういう地域農業者実態にふさわしいということは、企業としても安定性がある、それから危険が少なくて安全が確保される、それから工場内の衛生状態がいいというようなことが、非常に大事であろうかと思いますので、そういう点をまず導入するにあたりまして十分考慮していく。しかしながら導入されたあとにおきましても、こういう労働環境の面とあわせまして、先ほども御質問ありました最低賃金その他労働条件賃金の面につきましても十分指導いたしまして――私どものほうの調査もいろいろございます、農業転職者の賃金状況等も見ておりますが、これもまあまあではございますが、まだもう少し十分この労働条件等につきましても改善していく必要がある。それからあわせまして、先生から御質問がありました職業訓練等の問題、こういう点につきましても、そういう地域の実情に即しまして、理屈はいいけれども、実際通勤の問題その他期間の問題等で効果があがらないということでは何にもなりませんので、そういう点希望者の実態等、希望に応じまして、われわれもそういう需要に応じた体制がとれるように、きめのこまかい施策を詳細に行なっていきたいというふうに存じておるわけであります。
  204. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間の関係もありますので、最後一点にいたしたいと思います。  同僚の美濃委員からも言われておりましたが、第十三条で、農林中央金庫からの資金の貸し付けということを新しくやられるわけでありますが、本来農林中央金庫系統金融という性格からして、農林漁業者あるいはまた農林漁業の関連産業というものに対してやはり融資を行なっていくというのが本則であります。まあ、総合農政一環という意味を前提にして、いわば、必ずしも農林漁業の関連産業といえない新規の企業に対しても貸し付けをやろうという道を開かれるわけでありますが、今後、農林中央金庫法の一部改正とも関連して、いわばこれが突破口になって、本来の本則というものがはずれて無原則状態になっていくということについては、私どもは必ずしも賛成できないという立場をとらざるを得ないわけですが、この問題と今後の農林中央金庫の資金貸し付けの原則ということについては、大臣はどうお考えでございましょうか。
  205. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いま御審議願っております法律のねらいが農村地域への工業導入を積極的かつ計画的に促進して当該地域農業就業構造の改善を通じて農業構造改善をはかってまいろう、こういうものであります。したがって、このような趣旨のもとに導入される企業等に対して、農林中金を含めて金融を考えてもらうということが必要ではないかというので、先ほども美濃さんに御説明申し上げましたように、これは四十八年にはこの農林中央金庫法を改正するかしないか、とにかく期限が来るわけでありますので、根本的にそういう法律を動かさなければならぬわけでありますが、その間において、私ども農協系統の資金が有効に活用されるということはその導入の円滑化に資するためにきわめて有意義なことであると考えておるわけであります。したがって、農林中央金庫は申すまでもなく系統金融機関の中央機関として相当量の資金を有しておることは御存じのとおりであります。そこで、その資金の貸し付けば、所属団体に対する貸し付けのほか、余裕金の運用として農林水産業に関する事業を営む法人、いわゆる関連産業に対する貸し付けをすることができることとなっております。したがって、本法で申します金融のほうも、やはり農林中金にあります余裕金の範囲内でそういうふうなことをすることがよいではないかということで、本法で、農林中金に関する法律をその部分だけ修正したい、こういう考えを持ったわけであります。
  206. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 大臣の答弁、私の質問の今後の考え方という問題に対して、必ずしも明確でありませんが……。
  207. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 今後の方針につきまして、実は先ほど申し上げましたように四十八年が農林中金法の期限でありますので、もはや目前に迫っておりますので、私どもといたしましても諸般のその後の推移を勘案いたしまして、いま本法、農林中金の法律をどのように持っていくべきであるかということを鋭意検討中でございますので、その後の創設以来の状況の推移にかんがみて判断をしてまいりたい、こう思っております。
  208. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 まあ本法は今国会で成立をするという形になりますが、農林省は、本来農政の立場に立ってこの問題を受けとめるということが当然のことでありますので、今後の本法の運営にあたって農政上誤りのないように対処してもらいたいということを強く希望いたしまして、質問を終わります。(拍手
  209. 草野一郎平

    草野委員長 津川武一君。
  210. 津川武一

    ○津川委員 まず、私たちの立場から申し上げてみます。  日本の大資本が、アメリカに従属して、わが国の資源、労働力、国土を、自民党政府を代理者としてわがもの顔に使用し、対外援助を拡大し、軍需産業を強化し、日本公害列島にしております。独占資本は、またこのように工業に片寄った政策をとりアメリカの言うままに農産物の輸入を増加させ、米の作付制限を押しつけ、食管制度を改悪し、農地をつぶし、農民経営と日本農業をゆゆしい状態に追い込んでおります。ために、多数の農民は出かせぎを余儀なくされております。こうした状態に対して、私たちは、自民党政府が進めている新全国総合開発計画や高度経済成長政策をやめさせて、産業発展計画を民主的につくり、大企業もこれに従わし、京都がやっておるように地方産業や中小企業や農漁業などにもっともっと資金と資材と技術などの援助を与えていこうと思っております。  産業についていえば、地域の経済、労働力、水資源、文化的歴史的伝統など多面的に開発する民主的総合的国土計画を進め、過疎地域にも平和的な公害のない産業の新しい基地、新しい都市をつくり、それによって過密を解消しようとしています。  農業についても、外国農産物の輸入を押え、主要な農産物の価格を保障し、土地基盤整備や機械化などを援助し、肥料や農機具などの価格を引き下げるなどして民主的な自主的な総合農政を打ち立てようとしております。  それに対して今回政府が提案してきた本法案は、公害都市から追い立てられ、労働力と水資源と工場用地にことを欠いた資本の求めるところに従って、上から天下りに農村企業を押し込み、土地と水と労働力を独占本位にかき集め、公害農村にまで持ち込み、農村から農業後継者を奪い取るばかりでなく、地方自治体の費用で工業のための基盤まで整備しようとしております。また、これによって出かせぎの解消どころか、日本の労働者の低賃金にまで道を開くものであり、かてて加えて農村の後継者確保まで困難になってまいります。こういうわけなので、賛成するわけにはまいり一ません。  そこで、この立場から若干の質問を試みてみます。  まず地場産業、中小企業などを中心とした新しい産業基地の建設でございますが、全国至る地方にはそうした地場産業と中小企業がありますが、自民党政府の独占本位、大資本本位の経済政策のために経営が行き詰まり、破産しています。地方産業と中小企業をまず盛んにすることから、農村労働力の利用拡大をすることが必要かと思うのでございます。例を私たちの青森県の弘前中心にとりますれば、ここにはウルシを中心にした塗りもの産業がございますが、資金と団地と技術にことを欠いております。ここで団地をつくり、技術的な指導を求めております。資金を求めております。  もう一つの問題はリンゴ加工でございます。政府はこの間三億円の設備にものぼる加工業を補助したのでございますが、一つ一つ企業は自分の企業に技術の援助と資金と資材、そういうものを要求しておるのであります。  またここでは国有林野がたくさんあってパルプ資本に独占されておる資材を地元の中小企業で木材、木工などにやろうと思っております。あのブナからブナコというりっぱな容器ができておりますが、これに対する資金や資材や技術の援助にもこと欠いておるのでございます。  そこで質問でございますが、こういう企業をその工場団地をつくるために土地をあっせんし、このために技術を提供し、このために資金を、税金の免除などということをやる。ここにこそほんとうの私は農村工業導入して農工一体の道を開かれる道があると思うのでございますが、先ほどからのいろいろなことによりますとこの道は閉ざされておるようでございます。  そこでこの道がありますか。農林省と通産省、こういう技術の援助、こういう技術者を養成する職業訓練は労働省に。学校も同じなのでございます。工業試験所に行ってみますと、こういう木工をやるところの工業試験がほとんどやられていない。そこの地域の高等工業学校にはこういうカリキュラムがない。求めておるものはこういう教育であり、技術の援助であり、工場団地を形成するための土地であり、資金であり、租税の援助なのでございます。この点まずお答えいただきます。
  211. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 津川さんの御演説を拝聴いたしたのでありますが、十分拝聴いたしましたが、御質問のことは先ほど通産省の政府委員もお答えいたしておりますように、地場産業についても同様に私どもは本法によって保護ができるのであります。
  212. 津川武一

    ○津川委員 通産省。
  213. 両角良彦

    ○両角政府委員 ただいま農林大臣のお答えと全く同じ考えでございます。
  214. 森川幹夫

    ○森川説明員 職業訓練につきましては、当該地元の産業やあるいは転職希望者等の希望を十分尊重いたしまして実施をいたす方針でございますし、従来からもその方向でございますし、今後転職希望者につきましては、特に中高年等の特性を考慮いたしまして十分適切に配慮し実施する方針でございます。
  215. 津川武一

    ○津川委員 この弘前付近に昭和三十四年から今日まで誘致した企業の数が十七、そこで働いている労働者の数が千六百五人、三十四年からいままでかかって十七企業を誘致して昨年の一月から中小企業の破産が三十二件なんです。したがって私はここのところを中小企業中心にして今度の法案の目ざしておるものをやるべきだと思うのですが、農林大臣はそれでいいと言っておるのですが、企業局長は地元の地場産業はそういう一つ団地をつくるときに付属的に考えてみる意味のことがいわれております。私はそれが主になっていかなければならないと思うのでございますが、もう一度通産省の答弁を。
  216. 両角良彦

    ○両角政府委員 農村地域への工業導入をはかるにあたりましては、地場産業との共存共栄が実現できるような計画を推進してまいりたい、かように御答弁申し上げてまいりました。
  217. 津川武一

    ○津川委員 次は農業後継者の維持でございます。これは公明党の委員も質問しておりますので、繰り返しませんが、農業基本法における一つの大きな問題は、農業後継者を育成、確保するということであります。各県は農業大学をやったり外国に留学までさせて勉強させていますが、この中から農村の中枢的な後継者として残らないでほかのほうに転じてしまっておる人たちがあまりにも多いのでございます。そこで農業基本法が目ざしたものがなぜできなかったのか。これから具体的にどうしてやるのか。本法案によってこちらに工業ができるとその人たちがそちらに走っていって、さらにまた困りはしないか。  そこで、具体的ないままでの理由と今後の方針を、そして労働省には、農村にだけでなく中小企業にもいなくなってきた、この大事な青年の労働者が大企業中心に来ている。これは日本の経済全体を考えたときに、この青年労働者を、働き手を各業種に確保することが必要なのでございますが、労働省の対策も聞かしていただきます。
  218. 中原晁

    ○中原政府委員 労働力につきましては、大企業中小企業を問わず、国の経済のため、国民生活に大事な職場には労働力をお世話することが必要であろうかと存じております。中小企業につきましては、特に各般の福祉施設その他につきまして考慮しておる次第でございます。
  219. 中野和仁

    ○中野政府委員 農村におきまして後継者がなければならぬということはそのとおりでございます。そこで、われわれといたしましては、御承知のように、農業者年金制度の創設、それから農村青少年研修事業というものを非常にたくさんやっておりますし、また後継者育成資金というのも七十億も貸し付けをやっておるわけでございます。また、農業者大学校をつくりまして後継者を育成しておるところでございます。
  220. 津川武一

    ○津川委員 労働省に重ねて聞きますが、職安に行きますと、大企業に青年をあっせんすることは一生懸命やっておるのです。地方の中小企業にすすめることはほとんどしていない。ここらあたり、あなたはやっていると言うけれども、具体的な職業紹介の行政がこうなんだ。こういう点をどう考えているか。農林省には農業大学まで設けてやっておる。だが卒業した人たち農業につかない。これはどういう意味か。もう一回農林省と労働省に答えていただきます。
  221. 中原晁

    ○中原政府委員 職安が中小企業には冷たいのではないかというお話でございますが、そういう事実はございません。たとえば職業訓練校の卒業生を見ますと、大半は中小企業のほうにお世話しておりますので、そういうととはないと存じます。
  222. 中野和仁

    ○中野政府委員 農業者大学校の目的は後継者を育成するということでございまして、いい経営者の卵を養成しておりますから、どんどん外に出ていくということはございませんし、また県の伝習農場等でやっておりますのも、一部御指摘のような他産業にかわる人もありますけれども、大部分は残っておるはずでございます。
  223. 津川武一

    ○津川委員 次は出かせぎの問題でございます。この法案を通過させて法律を実施すると、どのくらい出かせぎが減ると考えておりますか。
  224. 中野和仁

    ○中野政府委員 出かせぎの数はいろいろいわれておりまして数十万に達しておりますので、この法案が実施されましたら、すぐに全部解消する、そういうようなことはございません。順次解消する部分はあろうかと思っております。
  225. 津川武一

    ○津川委員 そこで出かせぎの実態ですが、田植えをして稲の収穫を終わりますと、出かせぎに出ていく、冬からの出かせぎが一番多うございます。これは半農、半労働者でございます。こういう出かせぎをしなければならない状態の人、半年は農民、半年は労働者、これをこの法律企業は吸収してくれますか。これを、この法律で出ていく企業に、どのようにして就職をあっせんするつもりでございますか。
  226. 中原晁

    ○中原政府委員 地元に安定した雇用機会が増大するということは、出かせぎ問題のためにも歩大きく前進することになろうかと思います。それから職業あっせんの問題でございますが、基本計画実施計画、そういう具体的な計画の中におきまして、農村実態に即したきめのこまかい職業あっせんを通じまして、この結合というものをはかっていきたいと存じております。
  227. 津川武一

    ○津川委員 じゃ、もう一つ実例をあげます。  リンゴの包装でございます。十二月から四月差で、あの地方の農村の婦人はずっとリンゴの包装の仕事をしております。そのほかは今度は農業でございます。この半分労働者で半分農民である人たち、出かせぎと同じこの人たちが、この法律で労働者になって工場につとめるようになったら、私は問題が解決すると思うのですが、このことを聞いているのに対して、労働省も農林省も答えてくれないのです。これをどうするのですか、農林大臣。
  228. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいま弘前地方の御指摘があったわけでございますが、もし弘前地方に農村工業導入計画が立つということになりますれば、いまのような実態も踏まえまして対処いたしたいと考えます。
  229. 津川武一

    ○津川委員 それから出かせぎに出ていくのは、機械を購入したための借金、うちを建物共済で建てたための借金を返さなければならぬ、したがって高い賃金を求めております。いま私たちの弘前で日魯漁業などが来てやっておりますが、一日八百円から千百円。出かせぎに行きますと二千六百円から三千四百円。したがって、全部企業が出かせぎと同じような収入が入らないと出さない、出かせぎは解消できない。これが現実の姿なんです。  したがって、もう一回聞きます。半農半労働者、この男、リンゴの詰めに五カ月働いておるこの女子労働者、女子農民、この賃金をどうするか。これを克服して、今度の導入される農村工場にこの人たちを採用する、出かせぎをなくする、過疎をなくする対策を具体的に教えていただきます。
  230. 中原晁

    ○中原政府委員 出かせぎにつきましては、都会等に行きますので、確かに賃金等は、一日だけをとりますれば、場合によりましてはそういうこともあろうかと存じますけれども、生活が二重になるとかいろいろな面もございますので、やはり家族と一緒に働くという点のプラス、マイナス、いろいろ考えなければなりません。私どもの調査をとってみましても、農業転職者、農業からかわった人のあれを見ましても、昨年のことでございますが、建設業五万四千円以上、それから製造業四万八千五百円程度ということになっておりまして、この法案の期待するところが進んでいきますれば、出かせぎにつきましても大きなプラスになるであろうと存ずる次第でございます。
  231. 津川武一

    ○津川委員 事情を知らない労働省と議論してみてもしかたがありません。一日三千六百円もらっている人は三千三百円おくっています。  そこで最後に農林大臣に、こういう三つの私があげた事例というものを踏まえて、農村工業導入してこの問題の解決をはからなければならないと思いますが、農林大臣としてできると思うか、どうしてやるつもりか答えていただいて、質問を終わります。
  232. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先ほど津川さんは、何か大資本にどうとかこうとかいうお話でありましたが、私どもは、農業基本法の趣旨でこの立法をしているのであります。あなたは御存じのように、農業基本法第二十条には「農村地方における工業等の振興、社会保障の拡充等必要な施策を講ずるものとする。」というのが末尾にありまして、やはり十年前に農基法をわれわれがつくりました当時の国会議員さんたちは、もうすでにだんだんに日本経済が今日のようになっていくことを予見しておっただろうと思います。大財閥がどうだとかこうだとかいうことは、われわれには全く関係のないことであって、したがって、この法律に基づいて、農基法の精神から地方に工業を分散していきたい、こういう考え方なのでありますから、いまさっきからいろいろ御配慮いただいておりますようなことは、当然これを解決するということが行政当局の理想でなければならない、こう思っている次第であります。
  233. 津川武一

    ○津川委員 大臣が農業基本法の第二十条を読んでくださったので、私はきのうも問題になりました経団連の月報の二月号を読んで、大臣にこれだけ指摘しておきます。  日鉄の藤井副社長が、「公害問題一つをとってみても、もはやどうにも解決しようがないようなことになるし、好むと好まざるとにかかわらず、やはりこの際、逆に企業農村のほうに進出していかなければいけない」、こう言っているので、これに負けないようにひとつ大臣にお骨折り願いまして、私の話を終わります。
  234. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 きのうも連合審査で、林君がその文章を読んで、そして答弁は要らぬ、答弁は要らぬと、こういうわけで、一方交通で言いっぱなしであります。いま私が申し上げておりますように、私どもいまお読みになったようなことは全然知りませんが、農業基本法は十年前に国会で制定されているのでありますから、経団連だか藤井君だか知りませんけれど、われわれはそういうものの関係があってやっているわけじゃないのでありまして、法律に基づいて農村工業導入することに努力をする、こういうのであります。
  235. 津川武一

    ○津川委員 終わります。
  236. 草野一郎平

    草野委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  237. 草野一郎平

    草野委員長 この際、本案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党共同提案により、別川悠紀夫君外三名から修正案が提出されております。     ―――――――――――――    農村地域工業導入促進法案に対する修正案  農村地域工業導入促進法案の一部を次のように修正する。  第十八条を第十九条とし、第十七条の次に次の一条を加える。  (都道府県又は市町村審議会)第十八条 基本計画及び実施計画の作成その他農  村地域への工業導入促進に関する重要事項  を調査審議させるため、都道府県は、条例で、  審議会を置くことができる。2 実施計画の作成その他農村地域への工業の導  入の促進に関する重要事項を調査審議させるた  め、市町村は、条例で、審議会を置くことができ  る。3 前二項に規定するもののほか、都道府県又は  市町村に置かれる審議会の組織及び運営に関し  必要な事項は、都道府県又は市町村の条例で定  める。     ―――――――――――――
  238. 草野一郎平

    草野委員長 提出者より趣旨の説明を求めます。別川悠紀夫君
  239. 別川悠紀夫

    ○別川委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表して、農村地域工業導入促進法案に対する修正案の趣旨について御説明申し上げます。  修正案は、お手元に配付してあるとおりであります。朗読を省略して、以下修正の趣旨を簡単に申し上げます。  修正の内容は、都道府県または市町村基本計画または実施計画の作成その他農村地域への工業導入促進に関する重要事項を調査審議させるため条例で審議会を置くことができることとしたことであります。  以上が、修正案の趣旨であります。  何とぞ全員の御賛同を賜わりますようお願い申し上げます。(拍手
  240. 草野一郎平

    草野委員長 以上で趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  241. 草野一郎平

    草野委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  まず、別川悠紀夫君外三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  242. 草野一郎平

    草野委員長 起立多数。よって、別川悠紀夫君他三名提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  243. 草野一郎平

    草野委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  244. 草野一郎平

    草野委員長 この際、本案に対し、角屋堅次郎君外三名から、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。角屋堅次郎君。
  245. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 ただいま修正議決されました農村地、域工業導入促進法案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党を代表して、附帯決議を付すべしとの動議を提出いたします。  まず、案文を朗読いたします。     農村地域工業導入促進法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法が総合農政の推進上に占める重要性にかんがみ、関係各省との密接な連携のもとに本法を適正に運用し、農村地域への工業導入を積極的かつ計画的に行なうとともに、とくに併せて一体的に行なうべき農業構造改善の積極的な推進を図るため、具体的な施策の拡充に努めるほか、左記の事項の実施に十分留意すべきである。         記  一、 農村地域の範囲については、地域の実情に応じ、適正なものとなるよう設定すること。    この場合、とくに新産業都市の区域または工業整備特別地域の実情に十分配慮するものとすること。  二、 基本方針基本計画および実施計画を樹立するにあたっては、地域住民の総意に基づいたものにするよう関係の農業団体、商工団体、下請等関連企業、学識経験者等の意見を広く徴する等によりその運営に万全を期すること。  三、 基本方針基本計画および実施計画の策定および実施に際しては、とくに次の点に留意すること。   (1) 導入される工業は、成長性が高くかつ安定的なものであるとともに、その安定的発展を図るため、積極的な指導および助成に努めること。   (2) 導入される工業は、公害をもたらすおそれのないことを旨とし、公害防止対策に万全を期するほか、農地スプロール化、不当な地価の上昇等の弊害を招かないよう努めること。   (3) 農業従事者のうち中高年令者の雇用促進のため、職業紹介、職業訓練等に努めるとともに、これらの者の長期的かつ安定的な就業条件を確保するため適切な措置を講ずること。     なお、これと関連し、中高年令者の雇用促進するため、これらの者を雇用する企業に対する特別な配慮を行なうこと。   (4) 工業導入促進するため、周辺における道路、交通、通信網、リクリエーション施設等の産業関連施設の整備を拡充するとともに、あわせて農村地域の生活環境の整備の促進を図ること。   (5) 進出企業と地場産業との相互協和を図るとともに、当該地域発展に貢献してきた地場産業の育成につき、十分な配慮をすること。     なお、とくに農協系統中心とした工業の積極的な導入とその育成に努めること。  四、 法第十条の地区限定する政令は、他の地域開発制度との均衡等に十分配慮し、所期の工業導入が図られるものとなるよう努めること。  五、 積雪寒冷地帯の工業導入については、特殊事情を考慮し、その円滑な導入が図られるよう配慮すること。  六、 農村地域工業導入促進センターの規模および事業内容の充実強化に努めること。   右決議する。  附帯決議の内容は以上でありますが、趣旨その他については、すでに質疑を通じて明らかになっておりますので、これを省略いたします。  何とぞ全員の御賛同を賜わりますようお願い申し上げます。(拍手
  246. 草野一郎平

    草野委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  本動議に対し、別に御発言もありませんので、直ちに採決いたします。角屋堅次郎君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  247. 草野一郎平

    草野委員長 起立総員。よって、本案に附帯決議を付することと決しました。  この際、ただいまの附帯決議について政府の所信を求めます。倉石農林大臣。
  248. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまの御決議に関しましては、その趣旨を尊重いたしまして善処してまいりたいと存じます。     ―――――――――――――
  249. 草野一郎平

    草野委員長 なお、ただいま修正議決いたしました本案委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  250. 草野一郎平

    草野委員長 御異議なしと認めます。さよう決しました。よって、     ―――――――――――――   〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  251. 草野一郎平

    草野委員長 次に、農林水産業の振興に関する件について調査を進めます。  この際、野菜生産出荷安定法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。  本件につきましては、先般来より理事会におきまして御協議を願っていたのでありますが、本日その協議がととのい、その草案がまとまりましたので、その内容につきまして、便宜委員長から御説明申し上げます。  近年、国民の食生活が高度化するに伴い、主要な野菜の消費量は著しく増加しております。現在、大消費地域中心として、主要な野菜を安定的に供給することができる制度として、野菜生産出荷安定法が施行されておるのでありますが、現実に消費に見合う生産出荷が確保されるためには、天候等の要因により価格が大幅に変動し農家所得に及ぼす悪影響を防止して、生産農家の再生産意欲を阻害しないよう措置することが必要であります。このため、野菜生産出荷安定資金協会の業務の対象と在る野菜の価格の著しい低落があった場合において、生産者に交付する生産者補給金の額は当該野菜の生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮し、当該野菜の生産及び指定消費地域に対する出荷の安定をはかることを旨として定めることとしようとするものであります。  以上がその内容でありますが、その詳細につきましては、案文により御承知願いたいと存じます。
  252. 草野一郎平

    草野委員長 本起草案について発言を求められておりますので、これを許します。角屋堅次郎君。
  253. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 ただいま委員長から御提案になりました野菜生産出荷安定法の一部を改正する法律案に関する委員長提案に関連をいたしまして、数点農林大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  まず、本法が委員長提案になりますまでの段階におきまして、御承知のように、日本社会党、公明党、民社党の三党で、今回の国会に対しまして、当面の大きな問題であります公害対策としては公害四法、物価対策としては物価二法を三党の共同提案として提示してまいりました。本来、議会は議員立法というのを尊重すべきものだと考えておりますが、本委員会に該当いたします野菜生産出荷安定法の一部を改正する法律案についても、すでに三党共同提案として、私が提案代表として提案をしてまいりました。今回、与野党の話し合いによりまして、議員立法の趣旨が尊重され、委員長提案となりました過程におきまして、特に与党の関係者の努力に対しましても深く敬意を表しておきたいと思います。(拍手)  この委員長提案に関連をしてお尋ねをしたい第一点の問題は、御承知のことしの年度当初の野菜の非常な不足、それに伴います価格の暴騰ということで、大きな社会問題になりました。本委員会でもしばしば取り上げられた問題でありますし、同時に予算委員会、特に今度の国会においては物価問題に集中した議論が、総理の出席を求め、経済閣僚の出席を求めて、それぞれ各党から真剣な論議が展開をされてまいりました。その論議の焦点の一つに、野菜の問題に対する万全な対策をどう講ずるかということがあったわけでございます。やはり野菜の生産出荷の安定をはかるためには、野菜農家が安心をして野菜生産ができるような価格政策というものが、現行体制よりももっと強化された段階において整備されなければならない、こういうふうに考えますし、その意味において三党提案の中でも第十五条を三項として特に次の一項を加えるということで、第二項の点にいわゆる「協会は、対象野菜の再生産を確保することを旨として、前項第一号の規定による生産者補給金の額の算定の基準を定めなければならない。」というのが私どもの考え方でございましたが、与野党合意に基づいて、現行体制よりは一歩前進をする法律の修正が委員長提案としてなされてまいりました。この際、野菜の価格問題について今後一そう整備強化をしなければならない、こういうふうに私どもは考えておりますが、その点について農林大臣としては今後どう対処をしていかれようとするか、まずこの一点をお伺いをいたします。
  254. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいま御指摘のような点につきましては、政府においても、ほかの委員会たとえばいま御指摘の予算委員会等においても、価格補てんについての方式等について十分な検討をいたしたいということを声明いたしておる次第でありまして、いまお話しの点は改正案にも盛り込んでございますので、私どもといたしましてもそういう趣旨でやってまいりたい、こう思っております。
  255. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この委員長提案の修正案については、私どもとしてはこれを貫く考え方として、いわゆる再生産というものを十分中心にした形で価格対策を整備してもらいたいというのが私どもの考え方でございます。  そこでもう一点は、野菜生産出荷安定資金協会に対する政府の補助金の問題でありますが、これは現行の法律では明文化されてない問題でありまして、事実上は政府が補助を行なっておる問題であります。これはやはり明文化することが必要ではないかというふうに考えて、私どもの三党の修正案の中では第五十八条の二としてこれを明記したわけでありますが、与野党の話し合いの中でこの点については法律改正というところまでは至らなかったわけであります。これは実害は――法律改正をしても法律改正をしなくても政府として事実上やっておる問題でありますが、私どもとしては公的に明らかにするということが必要であるというのが主張でございました。  それはともかくといたしまして、この協会に対する政府の補助金の問題については、現行の二分の一補助金をさらに前進をさせるということで、積極的に政府としても予算措置を充実すべきじゃないかというのが私どもの真意でございますが、これらの問題については農林大臣として今後どう対処されるのか、お考えのほどを承っておきたいと思います。
  256. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 資金の予算につきましては、その編成にあたりましてさらに努力をいたしてまいるつもりであります。     ―――――――――――――
  257. 草野一郎平

    草野委員長 引き続き採決いたします。  おはかりいたします。お手元に配付いたしております野菜生産出荷安定法の一部を改正する法律案の草案を本委員会の成案と決定し、これを委員会提出の法律案といたしたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  258. 草野一郎平

    草野委員長 起立総員。よって、本案委員会提出の法律案とすることに決定いたしました。  なお、ただいま決定いたしました本案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  259. 草野一郎平

    草野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は明後二十一日に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十分散会