○小宮
委員 私は最初に畜産公害問題について質問したいと思います。
御存じのように、公害問題は社会問題として非常に大きく取り上げられておりますし、また昨年も、公害
国会といわれるくらいに臨時
国会が開かれたわけでございます。しかし被害の大きい公害についてはマスコミも大きく取り上げ、また世間も非常に騒ぎ立てるわけでございますが、被害の少ない公害については、ややもすると世間から忘れられたまま泣き寝入りするというようなケースが非常に全国的に多いのではないかということを私は懸念をいたしております。したがいまして、私が最近知り得た公害紛争に関して、その事件の概要を説明して、そして総理府及び
農林省当局に見解を求めたいと思います。
この紛争というのは長崎県内に起きた問題でございますが、ある町の部落でございますが、そこの部落は戸数がわずかに三十三戸、そして人口が百三十名くらいの小さな部落でございます。事件の発端は、この部落の人たちが長い間使用してきた簡易水道の水源池の上流に、昭和四十二年ごろ某物産会社が大規模な養鶏業を始めたわけでございます。それで現在三万羽くらい飼っておりますが、将来は十万羽くらいまでする予定だそうですが、その養鶏場の公害防止施設が全然施されておりません。したがって、その汚水がその水源に流れ込んで、四十五年の六月に県の保健所に水質検査を依頼したところ、人命に危険があるということで飲料水としては使用してはならないということが
指摘されたわけでございます。
そこで、部落の人たちは水源を他に求めたのでございますが、その際使った、たとえば土地の買収費、水利権の買収費、揚水タンクの設備など、こういうようなことを入れますと約百六十万円くらい要しているわけです。それで、その費用を各家庭に、三十三戸ですから一戸当たり五万一千円ずつ割り当てて負担させたのでございますが、そのために、部落の中には生活上支障を来たすというような家庭も出てまいっております。
そこで、部落の人たちは相談をしまして、この某物産会社に百六十万のうち五十万くらいを何とか補償してもらえぬだろうかということに話がきまりまして
交渉に行ったところ、何回行っても全然
交渉に応じてくれません。そこで、そこの町長そして助役に頼んで
交渉に行ってもらったところ、大体十万円ぐらいまでは出そう、しかしそれ以上は一銭も出さぬというような回答がありまして、それでその部落の人たちは現在も
交渉を続けておるわけですけれ
ども、全然
交渉が前進しないという
現状であります。
それで、四十五年の十一月二十一日に、公害紛争処理法に基づいて知事あてに和解の仲介申請を行ないました。さらに十二月十六日に県議会に
請願するなど、いろいろな
努力を続けておりますけれ
ども、全然話が進展せずに今日に至っておるわけでございます。私もこの某物産の方々とも部落民ともいろいろ話をしてみましたけれ
ども、某物産の方々は不
誠意きわまる話で、私すら憤りを感じるような内容であったわけでございます。
もし、この部落がいまの三十三戸が三百三十戸であり、また人口が百三十人がもし千三百人であったら、私はこのような問題は大きくマスコミも取り上げて、やはり大きな会社の問題になったであろうということを考えますけれ
ども、そういった小さい公害というものが全国的に非常に多く存在しておるのではなかろうかということを、私はこの事実から見て判断をしておるわけでございます。そこで、こういったものをやはりなくさなければなりませんし、特に前回公害十四法案ができましたけれ
ども、あのような法案だけでほんとうにこういった公害がなくせるものかどうかということを、私は率直に疑問に思っております。
そういった意味で、根本的な問題は別としまして、私はこの問題について、たとえばこの事件を見ました場合に、この部落の人たちが補償金を請求する権利があると思うのかどうか、あるいは補償金の五十万円は不当だと思うかの、それとも
——相手はもう金がないという一点ばりで十万円以上はびた一文出さぬというようなことを強硬に言っておるわけでありますから、こういった問題について現在ただ県の調停
委員がやっておっても何の法的拘束力もないし、ただ調停をしておるだけでいつまでも現在のような
交渉を続けておったのでは解決する見通しはいまのところありません。そういった意味で、こういった問題の具体的な解決策というものはないものかどうか。いろいろなこういう一連の事件に関連して、まず
農林省当局からひとつこの公害問題についての所見を求めたいと思います。