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1971-05-20 第65回国会 衆議院 内閣委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年五月二十日(木曜日)     午後五時四十二分開議  出席委員    委員長 天野 公義君    理事 伊能繁次郎君 理事 熊谷 義雄君    理事 佐藤 文生君 理事 坂村 吉正君    理事 塩谷 一夫君 理事 大出  俊君    理事 鈴切 康雄君 理事 和田 耕作君       阿部 文男君    加藤 陽三君       笠岡  喬君    鯨岡 兵輔君       辻  寛一君    中山 利生君       葉梨 信行君    山口 敏夫君       楢崎弥之助君    横路 孝弘君       伊藤惣助丸君    鬼木 勝利君       受田 新吉君    東中 光雄君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 内田 常雄君  出席政府委員         防衛庁衛生局長 鈴木 一男君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       大塚 俊二君         厚生大臣官房長 高木  玄君         厚生省公衆衛生         局長      滝沢  正君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省薬務局長 武藤琦一郎君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省児童家庭         局長      坂元貞一郎君         厚生省年金局長 北川 力夫君         厚生省援護局長 中村 一成君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部少年調査官 渡辺  宏君         日本専売公社理         事       稲川  徹君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十日  辞任         補欠選任   佐々木更三君     楢崎弥之助君 同日  辞任         補欠選任   楢崎弥之助君     佐々木更三君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  厚生省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第七五号)      ――――◇―――――
  2. 天野公義

    天野委員長 これより会議を開きます。  厚生省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鬼木勝利君。
  3. 鬼木勝利

    鬼木委員 まず設置法についてちょっとお尋ねをいたしたいのですが、今回、中央精神衛生審議会あるいは栄養審議会結核予防審議会伝染病予防調査会廃止する、新たに公衆衛生審議会を設置する、こういう法案のようでございますが、従来の審議会について今回こういうふうに統廃合されたということに対しては、これは私は賛成です。たいへんけっこうなことだと思うのです。行管のほうからこういう点について勧告があったかないか、そういうことは別としまして、われわれとしましても、ただいたずらに審議会をたくさんつくって、隠れみのみたいに――一般論としましてそういう傾向がある。厚生省関係はそういうとがあるかないか、そういうことを私は言っているわけじゃない。でございますから、今回こういう法案を出されたということに対しては、私は大いに賛意を表しますが、従来のこの審議会はどういうことをされたのか。またどういういわゆるメリットがあったのか。その実績について、少しお話をしていただきたい。なおまた、それを今回統廃合されたというはっきりした根拠ですね。大臣でなくても、どなたでもよろしいです。
  4. 滝沢正

    滝沢政府委員 ただいまお尋ね審議会統合予定以前の審議会四つございまして、栄養審議会結核予防審議会伝染病予防調査会及び中央精神衛生審議会四つでございます。これはそれぞれの関係法に基づきまして設置され、それぞれの活動をいたしております。  特に最近の例をあげますと、栄養審議会は、国民栄養所要量というものに対しまして、将来の見通しを含めまして、努力目標的な意味も含めた所要量を策定をする。それから四十五年に、国民栄養調査あり方というものについて、終戦直後のような栄養状態でない最近の国民栄養状況から、国民栄養調査あり方についても改定する必要があるのではなかろうか、こういうようなことを審議し、御答申をいただいております。  それから結核予防審議会につきましては、結核予防法治療費公費負担制度がございましたがこういう問題の医療内容改正等につきまして審議会におはかりし、答申をいただくことになっております。それから、昭和四十五年に結核対策拡充強化ということで意見具申大臣あてにいただきましたので、これは昭和四十六年、七年の予算要求の中に具体的に生かしていくということで検討し、なおかつ実施に入っているわけでございます。  伝染病予防調査会につきましては、四十五年、伝染病予防対策あり方及び検疫方法――これは外国から船が入ったりあるいは飛行機で外国から来られる方の伝染病検疫の問題でございますが、これが改正につきまして御答申をいただきまして、過ぐる国会無線検疫というものが実施されるようになりました。従来、船が港に入りますと、はしけで検疫職員が行って船の中を検査したというやり方でございますが、事前に十分船衛生状態を把握しておきますれば、無線によって検疫ができる、こういうような改正をいたしましたのも、この調査会からの御答申を中心にしたものでございます。  それから中央精神衛生審議会は、精神医療体系の現状並びに回復者社会復帰等について意見具申をいただいておりますし、今後の地域の精神衛生対策強化についても目下審議中でございます、  このような四つ審議会がそれぞれ縦割りで、自分の分野審議しか従来はできなかったのでございますが、行管からの行政簡素化という一般的な意味指摘がございますが、今回の公衆衛生審議会統合につきましては、厚生省みずからの判断に基づきまして、従来の審議会において審議できなかったような事項審議できるようにいたしたいという趣旨のもとに統合をはかった次第でございます。  審議したい事項でできなかったものに、国民健康増進の問題あるいは保健所あり方等についての体制の問題、あるいは成人病対策慢性疾患に対する事項等、その他公衆衛生各種関連共通事項というものは縦割り審議会ではできなかったという形のものを、公衆衛生審議会として審議できるようにいたしたい、こういう趣旨でございます。
  5. 鬼木勝利

    鬼木委員 従来縦割りではできなかった、あるいは国民健康増進あるいは保健所の問題、そういうことに対して四審議会を置いて、そうして出績をあげ得なかった、いまごろそういうことが皆さんわかったのですか。いままでできなかったことをずっとやってきておったということですか。厚生事務というものが非常に諸外国からおくれておるというのは、そういう点に起因しておるのじゃないですか、その点をひとつ……。
  6. 滝沢正

    滝沢政府委員 先生のおっしゃるとおり、そういう趣旨であるならばもっと早くにやるべきではなかったかということは、全くそのとおりであると思います。ただ、結核精神ともに最近それぞれ法に基づく施策も軌道に乗っておりますが、従来やはり率直に申しまして、このようなそれぞれの対策公衆衛生の中のきわめて重要な問題であり、ややそれに追われておったという感がございまして、それを決して軽視するという意味ではございませんが、それぞれの従来の審議会は、公衆衛生審議会になりましても、それぞれ部会として活動を願えるような仕組みになりますので、実質的には変わりがございませんので、軽視するわけではございませんが、その他のことも審議できるという方向にようやく踏み切ったというわけでございまして、先生指摘のように、もっと早くにこのような対策考えるべきであったということは、そうかと思いますが、それぞれに重要な課題をかかえていまの時期に至った、率直に申しましてそういう次第でございます。
  7. 鬼木勝利

    鬼木委員 じゃ大臣お尋ねしますが、いまむしろおそきに失した、そういう大事な国民厚生問題に対してなぜもっと早く手をつけられなかったのか。大臣も御就任されてもう一年も三年もなっておるのに、いまさらあわててこういうことをされる。これは根本問題として、私は先ほど申しましたように審議会統廃合されたということは大いに賛意を表する。その点は何も私、反対しているのじゃない。いかなる事情があって大事な国民の健康問題、そういう厚生、福祉の問題を今日までそんなにおくらしたのか。かねがね内田厚生大臣は非常に意欲満々な方のように私はお見受けしておるが、これはあなたに似合わぬ不手ぎわだ。その点、大臣はっきりひとつ……。
  8. 内田常雄

    内田国務大臣 政府委員から申し述べたとおりでございまして、これまでこの統合されます四つ審議会は、たとえば結核予防法でありますとか、あるいは精神衛生法でありますとか、栄養改善法でありますとか、そのときどきの必要に応じて制定された法律に属する事項をおもにその審議対象にいたして、そしてそれぞれの効果を、結核の撲滅にいたしましても栄養改善にいたしましても、あげてきておるわけでありまするが、この段階までまいりますと、これらの審議会を決してやめてしまう、縮小してしまうということではございませんで、この四つ審議会を合わせたのと同じ規模の大きさで、今度はその共通広場、今後の新しくわが国公衆衛生上向かうべき方途発見検討に関することもやれるようにしたほうがいいだろうという、私どもの前向きの姿勢をもちまして、こういう統合発展の道を選ばんとするものでございます。私が怠慢で今日まで怠っておったわけではございませんで、むしろ私の発見で、どうせ九十人ぐらいの審議会専門家お願いをするならば、それを分散してとらわれた範囲の御検討を願うよりも、九十人の皆さん方に一緒になって、共通広場分野における新しい問題を検討していただくほうが前向きの姿勢である、こういう発見をいたしましてお願いをいたしておる、このようにひとつ御了解をいただきとうございます。
  9. 鬼木勝利

    鬼木委員 なかなか大臣はうまいことおっしゃるが、あなたの発見はおそ過ぎたということを私は言っているのです。それから、いまちょっと私は理解しがたい点があったが、従来のこの四審議会統廃合する、ところが、従来の審議会は決してなくするんじゃないというようなお話をいまあなたはなさっておったが、それはあるんだ、じゃ従来の四審議会がある上にまた今度統廃合ということはおかしいじゃないですか。ちょっといまのはもう一度御説明を……。
  10. 内田常雄

    内田国務大臣 形の上では四審議会は全くなくなりまして、この法律上、公衆衛生審議会という共通広場を持った審議会になりますが、先ほど政府委員からも御説明申し上げましたように、その共通広場を持った今度の公衆衛生審議会の中に部会を置くことになろうかと考えます。その部会の形で、従来のこの法律上の審議会におきまして御活動を願われた分野というものは、それはやはり結核の問題にいたしましても精神衛生の問題にいたしましても、審議を願う、こういう趣旨でございますから、同じ九十人の委員方々にお働きを願うのに、局限された活動プラスのさらにより広い前向きの仕事もやっていただけるというところに今度の改正意味がある。同じ費用で、また、同じ優秀なすぐれた委員方々仕事お願いいたしながら、仕事対象としては今日的意味あるいは将来的意味を持った環境衛生事項の追及に当たっていただけるというプラスが私はあるものと考えます。  厚生関係仕事は、実は複雑多岐の面もございまして、私がいろいろな方面で追い回されておりましたために、就任直後こういう方途を選び得なかったことは、これは私の浅学微力のゆえんでありますことはおわびをいたさなければならないと思いますが、せっかくいいことを気がつきましたので、私の在職中にぜひやらせていただきたい、かようにお願いをいたします。
  11. 鬼木勝利

    鬼木委員 そうしますと、大臣が低姿勢で言われると私もそのまま引っ込まなきゃならなくなるのですが、従来の四審議会統廃合するということは、もっと具体的に私はお聞きしたいのですが、人員の機構とかあるいは組織においてどういうふうに形が変わったのか。いまの大臣の御説明では、全部そのまままとめてしまうようなお話ですが、審議会委員メンバーというようなことも、これは前向きであるならば――従来の審議会委員の方が悪いと私は申しませんけれども、そういう御無礼なことは申し上げませんが、少なくとも統廃合して前向きでいくというならば、これは当然、審議会委員の顔ぶれもあるいに変わるかもしれない。あるいはまた、四審議会プラスしたものと――じゃ、これは単なる横すべりであって、何も統廃合でもなければ事務簡素化でもないわけですね。あるいはまた、事と次第では多くなるかもしれない。単にそういう形はなくなりますけれども内容においてはいままでと少しも変わらぬ。それはむろん変わるわけはないでしょう。いままでやっていることが不十分だから、これをもっと強力にやるというんだから、それはやることは当然だと思う。その内容説明機構組織、すべてをどういうふうに統廃合、改革されたのか、それは何もこれに説明がしてない。その点もっと強力にやってもらわなければならぬですが、ただ形だけ塗りかえたんじゃ、看板だけかえたんじゃ、内容を十分に充実していただかないとね。その点、あなたはさっきえらいとうとうと述べておられたが、ひとつもう一度言ってください。
  12. 滝沢正

    滝沢政府委員 先生のたいへん具体的なお尋ねでございますが、従来、審議会委員先生辞令をお渡しするときには、それぞれ結核審議会委員あるいは中央精神衛生審議会委員という形のものをお出ししておったわけでございますが、今回この法案が成立いたしまして公衆衛生審議会が生まれることとなりますと、一たんおやめいただいて、今度新たに公衆衛生審議会委員という一本の辞令が出るわけでございます。それぞれ会長から分担を命ぜられまして、あなたは結核審議会部会を担当してください、こういうことでそれぞれの部会が、従来の四つ法律上必要とされておりますので、これは部会として成立するようにして活動していただきます。そのほかに公衆衛生審議会委員結核担当者あるいはその他の精神衛生担当者であっても、保健所の問題あるいは国民精神の問題を含めた健康の問題等増進をはかる部会を、われわれは従来は持てなかったのですが、今回の改正によりまして、かりに健康増進部会というものを設けるようにいたしますと、新たに委員の参加を願うこともありますが、従来の結核担当委員の方にあるいは精神担当の方に健康増進のほうの部会も担当していただくというようなことで、たいへん御苦労ではございますが、そういう活動分野も広げることができます。そのほかに、もちろん委員は定数で限られておりますが、臨時委員あるいは専門委員というような立場でそれぞれの方々に御参画願って御審議いただくということも可能でございまして、統廃合の廃はないのでございまして、統合という形でさらに発展させたい、こういうような趣旨にお受け取りいただきたいと思うわけでございます。
  13. 鬼木勝利

    鬼木委員 ところが厚生省設置法の一部を改正する法律案には「廃止統合」と書いてあるじゃないですか。廃止統合廃止はなくして統合だけだとあなたは言っても、「廃止統合」とはっきり明記してあるじゃないですか。いいかげんなことを言わぬで、もう少し適確説明しなさいよ。
  14. 滝沢正

    滝沢政府委員 ことばの順序が、廃止というのは確かに従来の四審議会廃止して、それで統合して公衆衛生審議会をつくるということでございまして、四審議会統廃合するということで、何か四審議会のそれぞれの審議会が実質的になくなるというような意味ではないということを申し上げようとしたのでございますが、確かにおっしゃるとおり従来の四審議会廃止し、新たに統合した公衆衛生審議会が生まれるということでございまして、先生のおっしゃるとおりでございますので、先ほど私が統廃合の廃がないというのは、あとのほうから統合されたものによって廃止される仕事の面あるいは審議会分野というものはないという意味でございますので、その辺のところを誤解があったと思いますので、御了解をいただきたいと思います。
  15. 鬼木勝利

    鬼木委員 そうしますと、大体いままでの四審議会を今回統合して結局全部そのままただ入れてしまう。結局看板だけ塗りかえる、こういうことと解釈していいですか。内容は少しも変わらぬ。仕事の面は変わっても人的機構の面なんかは一切変わらない。そのままそっくり入れてしまう。形が変わって看板を塗りかえる、こういうふうに解釈していいですか。
  16. 滝沢正

    滝沢政府委員 先ほどお尋ねの中でお答えが一つ落ちておりました。委員の取り扱いを具体的にどうするかということをお答えしなかった点が先生のいまのお尋ねになったわけでございますが、それぞれの審議会には任期がございまして、この法案が成立いたしませんと公衆衛生審議会発足はございませんが、発足して事務手続が完了いたします時期には公衆衛生審議会委員として新たに委員の発令をいたすわけでございます。その際、先生のおっしゃったように従来老齢等によって本人自身委員を辞したい、若手の推薦等もございますから、われわれもまたこういう審議会が長年同じメンバーで続けられるということについては確かに新風を吹き込む必要がございますので、こういう機会に、それぞれの四つ審議会部会の形で実質的に残りますが、その委員の入れかえ等につきましては、関係方面と慎重に検討の上にできるだけ先生先ほど指摘のような審議会の活発な審議お願いできますような方向に変えていきたいということを思っているわけでございます。  そして、何回も申し上げますように、四つ審議会四つ部会に変わるほかに、新たに部会活動というものを設けることができるというメリットが、この公衆衛生審議会になることによって新たに生じてまいるということに意義があるというふうに考えておる次第でございます。
  17. 鬼木勝利

    鬼木委員 大体それで全貌がわかったような気がいたしますが、これは先ほど大臣にも申し上げたように、私は、審議会統廃合するということは、これはたいへんけっこうなことで、ぜひそうしていただきたい。そして事務簡素化をはかるとともに能率をあげていただいて、前向きで強力にこの審議会が出発していくように、特にその点を要望いたしておきます。  次に、お尋ねをしたいことはたくさんあるのですが、時間がどうも制約されておるのではなはだ要を得ませんが、厚生年金改正でございます。  大臣にまずお尋ねいたしたいのですが、厚生年金も、これは社会情勢というものが刻々変わってまいりますし、経済情勢高度経済成長で非常に長足な進歩をいたしております。そこで昭和四十年の改正で一万円ベースということになって、四十四年には二万円に増額された、こうなっておりますが、現在の現実の問題として、いささか社会経済情勢にそぐわない点がある、このように思うわけであります。昭和四十五年九月の新規に裁定された老齢年金厚生年金、こういうようなのが私は非常に矛盾があるように思われるのですが、現在の物価から見た場合にこれで十分であるかどうか。だから率直に申し上げましてスライド制をとっていかれるところのお考えはないのか。他の恩給制度あるいは共済組合制度というようなのは、これはやはりスライド制をとっておるわけなのです、物価とにらみ合わせて受給者に対しては。そこで、厚生年金についてもスライド制をお考えになるようなことはないのか。それをひとつ大臣お尋ねしたい。
  18. 内田常雄

    内田国務大臣 お尋ねの御趣旨よくわかりました。私などの考え鬼木さんの考え共通するところもあるように私はお尋ねを承りながら感じるものがございます。私は、スライド制の問題とともに、厚生年金に例をとりましても、国民年金もそうだと思いますが、物価なり世の中の生活水準変動に応じてスライドしてまいるというよりも、もう一つ前にわが国一体年金水準というものはこれでいいのだろうか、こういう問題があること、これは鬼木さんもいまその点に触れられましたが、端的にいいますと、物価生活水準変動ということに応じて年金額を改める前にもっと底上げをしておいて、底上げされた年金というものがさらに時々刻々変わる、経済変動に応じてそれが調整されていくということが日本年金制度については必要だろうというような気持ちを持つものでございます。そこでたまたま御承知の年金につきましては、少なくとも五年ごとに財政計算期というものがやってまいりますので、厚生年金について申しますと、一昨年の財政計算期先ほどおっしゃったように一万円年金ベースというものを二万円年金ベース底上げをいたしましたものを、実は今回物価に対する調整などの意味も含めまして厚生年金法改正案国会におはかりをいたしたわけでございます。それは、いわばスライド制一つ発足、試みのように思いますが、ほっておきますと、財政計算期までは物価生活水準に応じた年金改正改善はないかもしれないことになっては状況に応じませんので、右のほうの手で私は年金財政計算期における全体としての見直しをし、底上げというものをやりながら、左の手では、いまおっしゃるように物価生活水準に応ずる一般的意味におけるスライド制をやってまいりたいという気持ちでございます。ただしそのスライド制には、自動スライドのような行き方と、それからまた行政スライドといいますか、政策スライドといいますか、そういう行き方があるわけでございますが、物価が何%上がったならば自動的に年金額が上がるというような方法はとりませんが、私どもが見ておりまして、物価生活水準に応じて財政計算期の中間において多少でもこれを直しておこう、こういう努力を続けたいと思いまして御趣旨のような意味から今度も厚生年金の一部引き上げというようなものをこの国会に提案をいたしておるわけでございますこれは恩給共済年金にはおっしゃいましたような、物価や給与の変動に応じて手直しをすべき旨の規定がございますが、年金法にも表現は少し偉いますけれども趣旨規定があることを私は根拠にとりまして、これから先も二年に一ぺんなり、また状況著しいという場合には、年とともに私はひとつのいわゆる行政スライド政策スライドというものの発動も考えなければならない事態もおるのではないか、こういうつもりでおるわけでございます。
  19. 鬼木勝利

    鬼木委員 いま大臣から底上げということを聞きましたが、私はそれが絶対大事なことだと思うのですよ。昭和四十五年の九月の新規裁定分の里子の老齢年金が、平均月額は被保険者年間二十年未満の場合には一万三千円、こうなっておるのですよ。事務当局の方、ひとつその点を――一万三千九百円となっておるのですよ。これは現在の物価から見たときに、これで老後の生活がはたして守られるのかどうか。私はその点が非常に心配でならない。いまも大臣からお話がありましたが、物価はますます上昇いたしますし、生活はますます苦しくなるのですから、年金の実質的な価値というものは私はずっと低下してくると思うのですね。そこでスライド制ということを私は申し上げたのですが、大臣底上げということが大事だからそういう点も考えておるというようなお話でございますが、そこで厚生年金給付あり方を根本的に本格的に改善すべきではないか。それはいま大臣のおっしゃるようにケース・バイ・ケースでおやりになることもけっこうだけれども、私はもっと根本的に給付について改善すべきではないか、こういうふうに考えますが、その点はいかがですか。いま大臣がおっしゃるような財政計算期なんというようなことを言っておったら、これは四十九年でしょう。だったらたいへんじゃないですか。いままだ四十六年ですよ。だからそんなのんきなことは言ってはおれない。どうでしょうか、その点ひとつ……。
  20. 内田常雄

    内田国務大臣 私が申し述べましたとおりに御理解いただきまして、たいへん私もありがたいわけでございますが、年金底上げをしないで、たとえばいまおっしゃいましたように昨年の秋の裁定で在職二十年よりも少ない方の年金ベースというものが一万数千円、二十四年在職で初めて二万円というようなことになりまして、それをそのままにしておいて物価スライドをさせまして、毎年五%上げますか六%上げますか、それをしてもたいした老後のささえにはなりません。それもやるが、今回さっきも申しましたように一〇%ですか一五%上げをやる、底上げをすることでないと五%や一〇%、一五%上がったのではこれは置いていかれますので、次の財政計算期はこのままですと四十九年でございますが、それも一年ぐらい繰り上げて思い切ったいまの二万円ベースがさあ何万円ベースになりますか、やるということをやりながら、さらにその中間、ことしは四十六年でありますが四十七年でも四十八年でもいまおっしゃるスライドの意味を加味した行政スライドのようなこともやりまして、右手と左手で私は年金制度というものの価値の維持どころではなしに、それが生活保障としても今後の国民の老後をささえていくような、真に価値ある年金制度というものを打ち立てるべきだ、こういうことを私は申すわけであります。これに対してはもちろん抵抗もございます。国庫補助とか、あるいはこれは社会保険でありますから保険料の払い込み金額などの問題もございますから抵抗もありますが、私はそのくらいのつもりでおりまして、皆さんが何とかついてきてくれる、こういうふうにも考えまして、大いに声を大にしておる次第でございます。
  21. 鬼木勝利

    鬼木委員 これは大臣のそういうあたたかいことばを聞いたならば、皆さんどんなに喜ばれるかと思いますが、こういうことがあるんですよね。老人の生活保障策としてはさまざまな方法考えられるだろうが、最大の柱は年金制度である。ところが、わが国の場合まだ年金額も欧米諸国に比べて水準が非常に低い。ことにこういうことがあるんですよね。現在六十五歳以上の老人は十年前にスタートした国民年金対象からはずされておる。全国で三百万人にものぼるこれらの人たちの生活は特にたいへんなようだが、こうした老人間の格差に対しどのように対策すべきか、こういうような新聞記事も載っておるようですが、これはぜひひとついま大臣のおっしゃったように――しかしあなたが永久に厚生大臣をされるわけじゃないでしょうからね。しかしあなたはなかなか有力者で、しかも厚生行政に対しては非常なベテランだから、大臣をおやめになっても、なんて御無礼なことを言っては相すみませんが、また留任、留任と行かれるかもしらぬが、いずれにしましてもこの点はひとつ大臣も十分お考え願いたい、私はこのように思います。御決意はようございますか。これは全国民が聞いておりますからね。そうでしょう。いやしくも国会審議したことがから手形を出されたんでは困る。大臣は右手、左手の両刀使いでやろう、こういうまことにありがたい話なんですが、ただありがたいことばだけいただいて実際は何もいただかぬというのはぐあいが悪い。どうですか大臣、はっきりメモにでもつけておいてください。
  22. 内田常雄

    内田国務大臣 いま鬼木さんの御発言のとおり、十年前に相当老齢者であられても国民年金をかけられた方、つまりことし六十五歳になられる方に対しまして初めて拠出制国民年金が出されることになりました。年金計算は大体二十年ぐらいのかけ込みをたてまえといたしておりますが、十年前、制度発足当時に、十年たてば六十五歳になる方にも二十年も待たないで出せるようにしようということで非常に無理をいたしまして、五十五歳ぐらいの方まで経過年金、十年年金という制度を暫定的に経過的に設けたことは御記憶ございましょうが、そういう人たちがことしの五月から初めて年金をもらうことになります。それは十年年金でございますから五千円ではございますが、この五千円の経過年金、かけ込みの若い年金発足をいたしまして、それが六月二日の日に第一号の支給を受けられる人があるので、それはひとつ大臣の手から渡してくれ、こういう私にとってはたいへん光栄な話がございまして、六月二日に野球の始球式ではございませんが、国民年金支給式というのを私がやらしていただくことになりました。  ところが一方のほうの、十年前にそれよりももっと年をとられた方が拠出制の年金に入りようがございませんで、そういう方にはいわゆる福祉年金という掛け金のない年金制度が始められておりますが、その金額は御承知のように、これも今度の国会に若干引き上げ法案を出しておりますが、それができましても二千三百円ということでございます。そうしますと、一方は掛け金がないからあなたは二千三百円だということは、同じ老人として一むしろそういう人のほうが年をとり過ぎておった人でありますから、老人の実感としてまことになじまないものがあるということをしばしば聞かされておりますので、ことしは二千三百円、三百円上げに終わりますけれども、私どもは老人対策の一環として、この二千三百円を十年年金の五千円とあまり違わないようなぐあいにぜひひとつ来年から引き上げの努力をさせていただこうというわけで、厚生省のほうに老人対策プロジェクトチームというものをつくりまして、いま大蔵省に討ち入りの用意をいたしておる、こういうわけでございます。
  23. 鬼木勝利

    鬼木委員 厚生年金からいつの間にか自然に老齢年金に移ったわけですが、これはいま大臣のおっしゃるとおり三十六年に始まって、そしてことしの五月から五千円ずつ、こういうことになっておるようでございますが、三十六年の発足当時に五十五歳未満の方には特別措置がとられておる。これは皆さんのほうがお詳しいのですが、ところがいま私がお尋ねしておるのは、三十六年当時五十五歳以上で六十歳未満の方はまだ十年たたぬから、七十にならないから、こういうちょうどその途中の人は国民年金からもはずされてしまっているんですよね。ですから十年前にスタートしたときに五十五歳以上で現在六十五歳以上の老人が三百万人もおる。こういうわずかの期間のためにはずされた人、これは私は非常にかわいそうだと思いますが、これについて手は打ってあるのですか。
  24. 内田常雄

    内田国務大臣 そのお答えといたしましては、一般的には申すまでもなく七十歳以上の老人で拠出制の国民年金の支給を受けない方々に対しましては、所得制限はございますけれども老齢福祉年金を出すことにいたしておりますことは御承知のとおりでありますが、そうしますと六十五歳から七十歳までの間がすぽっと抜けてしまうことに相なります。そこでそれに対しまして、これは徒歩連絡になりますかバス連絡になりますか、その間の連絡方法を、実は乏しいながらといいますか最大の知恵を出しましてつけた面がございます。一つは、十年前に五十五歳で、そのときに十年年金に入ることをミスした方々のためには、五年でもいいから五年年金という特別の制度をやろうということで、五年間かければ三千円出します、こういう制度を開きまして、しかもこれは一回は加入期限まで延ばしまして呼びかけました。そういうことですでに拠出制の年金に入り得なかった方も、五年年金という制度で六十五歳から三千円の年金をもらい得る道を設けましたことが一つ。  それからもう一つは、金額は少のうございましょうけれども、老齢福祉年金を六十五歳以上の人に出すように年齢の引き下げをはかろうということを、私は昨年厚生大臣に就任いたしました後に国会における御要望にこたえました結果いたしました。もちろん老人でもからだに障害などがある寝たきり老人などにつきましては、これは障害年金というもので年齢に関係なく福祉年金が出ますけれども、そこまで至らない老人でもからだに故障のあられる方については支給年限を六十五歳に引き上げる。こういうことを今回の国民年金改正法におきましてやることにいたしたわけでございます。したがいまして福祉年金の七十歳を全面的に六十五歳までに引き下げたわけではございませんけれども、一部のからだに故障のある方については、いま申しますように障害年金までに至らない方でも二千三百円の福祉年金がもらえるようにした。こういう徒歩連絡かパス連絡のようなことを実は考えた次第でございます。これはこれから実施になりますので、その実施の状況を見まして、さらに私はこれらの問題につきまして、できる限り老人の中に甲乙がないような、同じ老人クラブの中でももらう人、もらわない人がないようないろいろの知恵を出してまいりたいと思っております
  25. 鬼木勝利

    鬼木委員 そういたしますと、三十六年当時五十五歳以上で六十歳未満であったという人は、十年経過して、いままだ七十にならないから、その人がはずされておる。それに対しては、いま大臣のおっしゃるように三千円ずつでも何らかの緊急処直をとって、全国に三百万からおるそういう人は漏れなく恩恵に浴する、こう解釈してよろしゅうございますか。そこをはっきりしていただかぬとその人たちは取り残されているのですよ。三十六年のときに五十五歳から六十歳未満の人は十年たってまだ七十歳になっていないから、全国に三百万からおるその人たちは取り残されている。これは計算で合っている。それ以前の人は任意加入ということで救われている。ところが、任意加入で救われていない人がいるのです。いま大臣のおっしゃったのは任意加入であって、しかも六十五歳にならなければもらえないのです。私は任意加入の人のことを言っているのではないのです。事務当局の方、私の言っていることがわかりますか。私の質問がわからぬのではおかしな答弁になる。そこをはっきりしてもらいたい。
  26. 北川力夫

    ○北川政府委員 先生いまおっしゃったとおりの状態でございまして、国民年金制度が発足いたしました当時、いわゆる高齢任意加入というもので入りました十年年金とか、あるいは前回の改正で行ないました五年年金という層があるわけであります。しかし、六十五歳から七十歳未満のところはやはりブランクでございまして、このところは先生おっしゃったとほぼ違わない三百万人をこえる数がございます。問題は、この階層につきまして新しく短期の拠出年金をつくるか、あるいはまた老齢福祉年金ということで七十歳の支給年齢を引き下げていくかという問題があろうかと思います。後段の老齢福祉年金のサイドで問題を処理するということにつきましては、いま大臣から申し上げましたように、特にからだの御不自由な寝たきり老人というふうな者を中心にして今回六十五歳まで年齢を引き下げまして老人福祉年金が出るようなかっこうにしたわけであります。ただ、それ以外の問題といたしまして、一般的にすべて老齢福祉年金のサイドから六十五歳以上七十歳未満について対象にするかどうかということになりますと、これまた先生御承知のとおり、老齢福祉年金というものが本来全額国庫負担でございますことと、それからいま先生から御指摘のあったように、二千三百円という額そのものを今後大いに上げていかなければならぬという問題があります。それから、現在行なわれております所得制限というものを相当大幅に緩和し、あるいは撤廃するということを目ざすというような問題もございまして、はたして額の増額あるいは所得制限の廃止あるいはまた支給年齢の引き下げというふうな問題をすべて国庫負担でカバーをするというむずかしい問題が出てまいるわけでございます。したがいまして、今後この問題につきましては、全額国庫負担の老齢福祉年金で行なうかどうか、老齢福祉年金の中では優先の度合いはやはり年金額の増額かどうか、あるいはまた所得制限の撤廃かどうか、こういう問題があるわけでございますから、そういう問題の一環として私どもは現在検討中でございます。特に国民年金のほうは、先生も御承知のとおり国民年金審議会という専門の審議会がございまして、そこで昨年の暮れから福祉年金につきましての小委員会をつくりまして、すでに前後数回にわたっていまおっしゃいましたような問題も含めて全体のことを検討いたしておりますので、その結論を待ちましてこの間の処理を考えてまいりたい。事務当局といたしましては、ただいまの問題は一応このようなかっこうで現段階では考えておる次第でございます。
  27. 鬼木勝利

    鬼木委員 だから私がいま大臣お尋ねしたのはその点をお尋ねしたので、大臣は任意加入なんということをおっしゃっている。それはわかっている。それはそれで救われているのです。任意加入している人は、先ほどおっしゃったように、六十五歳になったら五千円ずつもらえる。それは満期の人なんかにはそのような通知が来ています。それはわかっています。だけれども、いま大臣おっしゃったように、老人クラブなんかに行って、もらっている者ともらっていない者がいてはたいへんだ、そういうことはしたくないと大臣もおっしゃっているのです。私と同じ気持ちです。だけれども現実問題として、いまのあなたの御説明では、これから何らかの方法をとってやらなければなるまい。現実的にそれは取りこぼされているのです。大臣お尋ねしているのはそこですよ。私は全国的に三百万だ、ところがいまの御説明では事務屋としては三百万以上おります、こういうお話なんです。だから、それをひとつ大臣にお考え願いたいのです。いま大臣のお気持ちは、もらっている人ともらっていない人とあるのは気の毒だ。ところが現実にそういう面があるのだから、それを何としていただくか。いま老齢年金の詳しい御説明をいただいたのですが、その答弁は私のお尋ねしているところの焦点には、まだはっきりしたお答えが出ない。いまから手をつけて何とか考えようというようなことでございますが、いまから考えようじゃ――そんなことはもっと早くやっていただきたいと思うのです。これは一体どうしていただくのですか。大臣考えください。全国で三百万以上もこぼれているのです。これは私は大問題だと思うのです。佐藤総理のいつもおっしゃることは人間尊重であり、福祉なくして成長なし、たいへんうまいことをおっしゃる。ところが成長どころかみな困っている。取りこぼされている。これは最も御理解の深い内田厚生大臣に私は特にお願いしたいのですけれども、何とかしてこれは早急に救っていただかなければならぬ。大臣のおっしゃるとおりこれはたいへんなことだと私は思うのです。ですから新聞記事にも出ているのがし、私どもは、厚生大臣も御承知のとおり児童手当、老人対策として年金二万、こういうことを常常申し上げているのです。ところが全然取りこぼされている。この点について事務当局としてはいま単なる御説明にすぎなかった。はなはだ失礼なことを申し上げますけれども大臣、あなたが私と同じ気持ちだから申し上げているのです。老人福祉クラブなんかに行っても、もらっている人ともらっていない人が、あるいは高くもらっている人、低くもらっている人がいるのはほんとうにかわいそうだ、これはぜひ早急に手当てしなければならぬという、非常にあたたかい、温情ある大臣のおことばをいただいたから、こういう問題は一体どういうふうにしようということをいままでまだお考えなかったということは、いささか私は了解に苦しむ。大臣いかがですか。
  28. 内田常雄

    内田国務大臣 先ほど来私は鬼木さんと同じ気持ちを持ちまして申し上げているわけでありますが、国民年金発足いたしました際に、無拠出の七十歳以上の老齢者には掛け金なしで福祉年金を出す、こういう制度、そのときに七十歳、これは私がまだ厚生大臣に就任をいたします九年前にそういうことがきめられておりまして、拠出した者については六十五歳から出す、こういうことでございますので、したがって拠出した方と拠出しない方との間には、年金の呼び方は違いましょうが、また金額は違いましょうが、とにかく受ける人と受けない人があるということは、老人感情から考えまして鬼木さんのおっしゃるような気持ちになるであろうことを実は私も想定をいたしておるわけであります。でありますから、一方におきましては六十五歳になっても掛け金の掛け込み期間が少ないから年金がもらえないで、七十歳までは何にも受けることができないという方を少しでも少なくしようということで十年年金とか五年年金とかいう任意加入制度が設けられておりましたが、私は、今度は上のほうの七十もひとつなるべく六十五歳に近づけよう、これはできればみんな六十五歳にすればよろしいわけですが、まだ力がございませんで、からだの悪い人だけということで、今回そこまで下げることになったわけでございまして、これは私などがだんだん年をとってまいりましてやはりそういう気持ちがよくわかるようになったために、今度私どもが始めたことになるわけであります。しかし現実にはまだ三百万人も、六十五歳から七十歳までの間にあって何らの年金を受けられない方があることになるわけでございますので、これらにつきましてはひとつお互いに知恵を出し合って、どういう方法でやるのが一番いいかということを私ども検討を続けまして対処いたすべき課題であると私はひそかに思っておりましたところ、あなたからずばりとおっしゃっていただきまして、たいへん激励を受けた気持ちでございます。ありがとうございます。
  29. 鬼木勝利

    鬼木委員 どうも大臣の答弁を聞いておると私は催眠術にかかっているようです、あなたは答弁が非常に巧みだから。しかし実際問題としてこの点はひとつ早急に対策を講じていただきたいのです。あなたはここで即答でうんとおっしゃらぬだろうが、ぜひこの点については最善の努力をするというぐらいなことは御答弁できるでしょう。大臣どうですか。
  30. 内田常雄

    内田国務大臣 これはもうよろしゅうございますとも。これまでも最善の努力をいたしまして、とにもかくにも福祉年金というのは一部の人でありますけれども、六十五歳まで私がしたのです。私が引き下げまして野党の方々からも実は少しほめられておりますような現状であります。これからも努力を続けたいと思います。
  31. 鬼木勝利

    鬼木委員 いや、それは野党のほうからほめられようが、あるいは努力しておられようが、こういう大きなミスがあるから――ミスというと語弊があるかもしれぬけれども、手落ちがあるからこれでは国民は承知できない。  そこでこの老人対策に対して、私は、徹底的にに取り組んでいただきたいと思うが、これはかつて、内田厚生大臣の御発言であったかどうかわかりませんが、近い将来に老人局をつくる考えがあるというようなことを聞き及んでおりますが、その点どうですか。
  32. 内田常雄

    内田国務大臣 私もそういう話をどこからか聞いたことがございますが、その構想は、老人対策厚生省から取り上げて、昔青少年局が総理府にあったと同じような着想から老人局を総理府につくったらどうかというような意味合いもあったようでございます。しかし、これは私は別に所管争いのつもりではございませんが、それに反対でございまして、灯台もと暗しということばもありますとおり、総理大臣のもとで総理府に老人局をつくれば、それで非常に強力な老人対策が進むとは私は思いません。やはり社会福祉というものにまじめに熱心に取り組んでおります厚生省が中心になって、また老人対策というものは、これはたとえば年金につきましてはここに年金局長がいる、老人ホームにつきましては社会局がある、老人医療につきましては、これも大きな課題でございまして、私はぜひ公費医療を実現したいということをしばしば述べておるわけでありますが、これは保険局であるとか医務局とかいうようなことでございまして、厚生省の中でも分かれております。そこで老人対策のプロジェクトチームというものを各局を横に払ってつくらせまして、いま私が触れましたような点につきまして、この八月末の大蔵省に概算要求をいたしますまでの間にひとつ思い切ってりっぱな対策案を設けて大蔵省に攻め込む、大蔵省と戦争をする、こういうつもりで、また世論の御同調や国会の御鞭撻をもいただきたい、かように私は考えております。
  33. 鬼木勝利

    鬼木委員 その点については全く火のないところに煙は立たぬので、どこかでそういうお話があったことは、いま厚生大臣御自身がどこからか聞いたとおっしゃっているのだから、私の言ったことがまんざらでたらめじゃないということはおわかりだと思う。  いずれにしましても、大臣が、老人局をつくるということは別として、老人対策はおおよそ最善の努力をしておるから、いま老人局がどうだこうだというような考えはない、しかしこれに対しての対策は自分は十分やっておるということですから、それで私もけっこうだと思うのです。必ずしも老人局をつくれというのじゃない。つくったって何にもやらなければ何にもならぬ、つくらぬでもあなたのように一生懸命やれば大いにいいんだから。  そこで私は、時間があと十分しかない、一時間という約束です。  そこで内田大臣にまだたくさん御相談したい点があるのですが、最後にお尋ねしたいことは老人の医療の無料化です。こういう点について大臣はどのようにお考えになっておるのか。昭和四十六年度から地方自治体において老人の医療の無料化これは福岡、埼玉、愛知、そのほか十県ばかりありますね。これはわが国の人口構成から見ましても、昭和七十年度には六十歳以上の老齢者が総人口の一八%を占める。これはたしかあなたのほうの厚生白書に載っておった。あなたたちが出しているんだけれども、二千二百五十万に達する見込みだ、現在約千百万ばかりおる、こういうように白書に載っておるのです。こうなりますと、今後老人対策というものがわが国一つの大きな民族的課題になるのじゃないか、私はこういうふうに考えるのです。九人に一人の割合で六十歳以上の老人がいらっしゃるということになる。これは非常に大きいですね。しかもおたくの白書の調べによりますと六十五歳以上の老人の二割近くが病気しておる。しかも床につきっきりで休んでおるっですから、そういう重い病人以外のからだのぐあいの悪い、比較的軽い人も加えると、結局四〇%が健康でない状態にある。しかも六十五歳以上で死亡する老人のうち八人に一人は心臓病とかあるいはガンが原因になっておる、こういうふうに書いてあるのですよ。私は厚生白書も詳しく拝見させていただきました。よくあなたたちは勉強しておる。勉強だけはするけれども、あまり対策は4まくいっていない。こういうことになりますと老人の医療対策ということは大きな社会問題であり、国家的大問題だと私は思うのです。  そこで老人の医療対策ということに対して基本的にどういうお考え大臣はお持ちであるか、これの解決にあたって。そういうことをちょっとお伺いしたい。
  34. 内田常雄

    内田国務大臣 どうも私と鬼木さんが年齢が近いからというわけでもないでしょうが、私が構想をしたり憂えておりますことを同じ思いであなたはいらっしゃって、まことにどうも攻防ができないでたいへんやりにくうございますけれども、今後の日本における老人層が、世界のこれまでのどの国にもないほどのスピードをもって、ここ二、三十年の間に厚くなってまいるということは、何しろ厚生省に人口問題研究所を持っておるくらいでございますから、私どもはだれよりもそのことにつきまして認識し、これの対策について構想いたすわけでありますが、その際やはり老人医療というものは一番大きな問題の一つでございます。  結論だけ急いで申しますと、老人に対します医療を、両三年前まで考えておられたようでありますように、健康保険をもって、十割保険給付をもってやるのがいいのか、あるいはそうではなしに、いまは老人はおおむね家族でございます。第一線を引いてそして家族になっておりますから、国民健康保険でもあるいは社会保険におきましても、家族といたしまして国民健康保険では七割給付、また社会保険では五割給付、残った三割ないし五割というものは自己負担になっておりますので、その自己負担の分を保険ではなしに公費医療として国なり公共団体なりが今度の児童手当と同じような意味の構想をもちまして公費で負担する。老人はいつでも必要なときには、根っこになる部分は保険の部分がございますけれども、その上積みの部分は公費を持っていくわけでありますから、いずれにいたしましても直接御本人の負担がなしで無償といいますか、要するに現金を持たないでも医療が受けられるような、そういう制度にするのがよかろうということを、厚生省のプロジェクトチーム、先ほど申しましたプロジェクトチームの構想につきましても私は主唱をいたしておるわけであります。  これは今度の健康保険法の改正にも一部つながる問題もありますけれども、まあこのことはきょうは申しませんけれども、そういうような、あなたと同じことを私は考えつつ進まんといたしております。
  35. 鬼木勝利

    鬼木委員 そこでいま大臣がおっしゃっているお気持ちを私は実現していただきたいと思う。社会保険は五割それから国保が七割、ではあとの五割、三割は自己負担ということになるから、それではいけない。できましたら――できましたらじゃない、ぜひひとつお願いしたいことは、ですからいかがですか、老人には老人福祉手帳というようなものを皆さんに差し上げていただきたいと思うのですがね。そうすればいま大臣のおっしゃっているように、手帳を出せば全額国庫負担で無料で治療が受けられる。老人なんかは、もう非常にお年寄りに、そんな国民健康保険の手帳をどうだこうだ言わなくても、福祉手帳を差し上げれば、それで汽車にでも乗るときには私は全額無料で乗せてもらいたい。そういう老人手帳というもの、これは労働省の管轄ですけれども、失業者には黒手帳というようなものをあげてやっておる。だから老人手帳というようなものを出す。そうするとはっきりするですよ。これは手続の心配もないし、どうだこうだということは心配は要らないのだから。老人手帳だけ持っておれば、運転手諸君が運転免許証をいつも持っているように、老人の方はいつも懐中に手帳を持っていらっしゃれば、どこへでもそれで行かれる、別に重たいものじゃないんだから。そういう便宜をはかっていただいて、そして老人を大事にする。そうすれば直ちにこれは解決しますよ。そういうお考えはございませんか、大臣
  36. 内田常雄

    内田国務大臣 それは私は鬼木さんからいま初めて教えられたような気持ちがいたしますが、それは考えられる構想ではないでしょうか。と申しますのは、厚生省におきましても妊産婦手帳というのでしょうか、母子健康手帳というのでしょうか、母子保健法の運用に関連いたしまして、おかあさんが妊娠をされますと、市町村役場でございましょうか、保健所からそういう母子保健手帳というものを出して、そして一般健康診査や精密診査をする際の手段にしたり、また生まれた赤ちゃんのいろいろな記録を載せるようなことをいたしておるはずでございますし、また身体障害者についても身体障害者手帳というものができておるはずでございますので、いままでのように老人の医療などについて特別の措置が講ぜられておらなかった際は、いまの御構想も生まれてこなかったかとも思いますが、私どもやあなたがかように老人の無料医療というようなものを考えるような段階になりますと、あなたの御構想もっともだと私には思われますので、前向きでひとつ検討させたいと思います。  ただこれは、さっきの年金ではございませんが、国民健康保険に入っている老人は保険で七割給付でありますから、自己負担が三割分、それを公費で見る。いまの健康保険のほうの家族である老人は、これは五割給付でありますから、五割の自己負担を持っている。それを今度は公費医療でやるとかいうことになりますと、同じ老人でありながら、青い色の手帳と黒い色の手帳と二つ持たせるようなことになりまして、はなはだ複雑であるので、今度の健康保険法の改正などには、そういうことになりませんように健康保険、社会保険におきましても七十歳以上の老人については七割給付にしょう、そして下をそろえておいて上の三割について公費医療を進めよう、こういう実は構想をもって国会におはかりをいたしておるわけでございますので、この構想につきましても御賛成をいただきますように、あわせてお願いを申し上げます。
  37. 鬼木勝利

    鬼木委員 私の申し上げたことをたいへん名案だ、いい案だ、大いに前向きで検討しようというお話を承りましたので私も大いに満足ですが、いずれにいたしましても、三割自己負担、五割自己負担ということがあるのですから、それを国庫負担で出していただければ、一律に全部、国保であろうが社会保険であろうが、とにかく六十三歳以上、大体いまのところ六、七十歳、地方は七十歳になっています。だけれども、これも大臣お話を承ると全部六十五歳あるいは六十歳にしたいというお気持ちですから――間違っておったら訂正しますけれども、あなたはなかなか前向きにそういうふうにやっていらっしゃるのだから、それは六十五歳でもいいですから、結局国庫によって支給するということになれば、青手帳とか赤手帳にする必要はないのだから、全部一律に老人福祉手帳というものを渡していただくということになりますと、全部簡単に解決するのですよ。でございますから、前向きで検討をするということで一応私は了解します。ぜひその点は今後真剣に御研究いただきたいと思います。大臣、よろしゅうございますか。大臣のお気持ちは非常にありがたいけれども、実際それを形にあらわしてもらわぬと、これは絵にかいたもちじゃ話にならぬから、その点を申し上げておきます。  私の気持ち大臣はよくおわかりいただくと思います。老人は国の宝ですよ。老人あってこそ初めて日本があり、家庭があり、村があり町があり市があるのです。老人を大事にしないということは、いずれの時代においても、民主社会であろうと何社会であろうと、いずれの国、いずれの時においても老人をたっとぶということは一番大事なことだと私は思う。いかがですか、大臣、最終にひとつあなたの名答弁を……。
  38. 内田常雄

    内田国務大臣 十分御意見を承り議して大いに私も肝胆相照らすところがございますので、御激励を心から御礼申し上げます。
  39. 鬼木勝利

    鬼木委員 ではこれで終わります。
  40. 天野公義

    天野委員長 受田新吉君。
  41. 受田新吉

    ○受田委員 御苦労さま。私、厚生省設置法の一部改正案内容関係する質問をまず一、二点申し上げまして、引き続き厚生行政に関連する重要な問題点を取り上げてお尋ねをさしていただきます。  いま鬼木委員からお尋ねのあった四つ審議会を一括するこの改正案の中で、特に中央精神衛生審議会の果たした役割りがどうなっているかということに関係する質問をいたします。大臣、率直にお尋ねしますが、身体と精神は車の両輪のようなものである。健康の条件は身体にも精神にも同様にかけられるものでございます。ところが身状障害者の福祉法は誕生しているが、精神障害者の福祉法ができていない理由はこれいかに、お答えを願います。
  42. 内田常雄

    内田国務大臣 お説のとおりでございますが、そういう見地から先般の国会で議員提案がございまして、心身障害者対策基本法というものを各党共同で実はつくられましたことを受田さん御承知でございましょうか、これは心身障害ででございますから、身体障害ばかりでなしに、心のほう、精神のほうも車の両輪としてこれの福祉をはかるべきであるという趣旨法律でありますから、いままで欠けておったことが昨年の国会以来各党一致でその方向に向かったと私は考えております。
  43. 受田新吉

    ○受田委員 それは御答弁が片手落ちであって、基本法はその線で出ておるわけです。しかし福祉法は身体障害者福祉法しか出ていない。精神障害者福祉法というのはないがこれいかにと私は問うておるので、基本法と福祉法と混同して御答弁になっておるところに問題がある。福祉法の精神から、身体障害者には福祉を目的とした法律があるが、精神障害者には福祉がないのか、こういうことです。
  44. 内田常雄

    内田国務大臣 受田さん何もかも御承知で私に詰め寄っておられるようで、私もお答えに窮するわけでありますが、そうおっしゃられますと、精神薄弱者も私は精神障害者の広い意味では一環だと考えまして申し上げますと、精神薄弱者福祉法というのがございますし、また精神衛生法というのがございまして、これはもちろん主として社会防衛的な見地からの法律でございますが、これもまたその反面は精神障害者のために、それの治療なりあるいは中間的なリハビリテーションをも講ずるという面をも近来は考えてまいりましたので、おっしゃられるとおりぴったりする法律ではございませんけれども、いままで私が申しました基本法も加えまして、まあ三つの法律をもってこの精神障害者の福祉ということも進めてまいりたいと思います。
  45. 受田新吉

    ○受田委員 私はこの精神衛生法を読むたびにしみじみと感ずるんでございますが、精神の障害患者というものは非常に不幸な立場にあると思うのです。いわゆる精神障害者には福祉がないという印象を与える点がある。治療、医療をやる、医療と福祉の間の谷間が陥没しておる、これが精神病患者の一番不幸なポイントであると思うのです。精神病患者たちのあと保護の施設が一カ所ほど今度厚生省考えて実現を見たようでございまするが、このあと保護の福祉問題というものを精神障害者の場合にはどう考えておられるのか、お答えをいただきます。
  46. 内田常雄

    内田国務大臣 精神障害者の治療に当たりますとともに、昔は精神障害というものはもうなおらない、これはまあ監禁同様に病院に置いておくというようなことだけ考えておった古い時代もあったようでございますが、今日では精神障害はなおるんだ、なおる過程において社会復帰の訓練などをする十分の価値があるのだというようなことになりまして、病院の措置入院患者でありましても、ある程度まで回復いたしますと自宅通院を認めて、それに対しまして公費助成、公費補助ということも、これは数年前の精神衛生法改正でいたすようになりましたことも御承知のとおりでございます。また昨年来、いまもお触れになりました同じ趣旨から精神衛生センターというようなものを熱心な地域には国も助成してつくらせるということで、川崎市につくっていただくことになりまして、かなりの金額の補助も計上いたしており、運営費の補助もいたしてまいっておるのでございますが、これなどはパイロットの施設としまして、今後これを普及させていい施設のようにも私には思えます。しかし私はまあその方面専門家でもございませんし、もとより頭も悪いほうでございますから、これ以上のお答えはできませんので、あとからの御質問は政府委員に、専門の医学博士がおりますので、答弁させることをお許しいただきたいと思います。
  47. 滝沢正

    滝沢政府委員 ただいま大臣からお答えがございましたように、わが国精神衛生法が、確かに先生指摘のように、率直に申して医療を中心とした法律だけしかないというような感じでございますために、医療というものが不可能と思われたような時代から可能な時代に入りまして、やや政策的に社会復帰対策がおくれておることはいなめないと思うのでございますが、先ほど大臣からお答えしましたような政策をただいま着手いたしましして、これが運営がどういうふうに可能になるかしかしながら社会復帰あるいは福祉と申しましても、たとえば精薄のように生まれつきある程度固定した形の――精薄にも医療がございますけれども、従来の考え方からいくと、精薄は一つのある程度固定した考え方から、精簿福祉法というような考え方が出てまいりましたけれども精神のほうには医療の可能性というものが出てまいると同時に、医療から切り離せない要素というものが常に一つある、こういうようなことを含めまして、全く一般的な意味の福祉だけではなくて、医療と福祉が常に密着した姿で患者に及んでいかなければならぬ、こういう問題がございますので、私どものほうの現状の対策といたしましては、社会復帰センターあるいはデイ・ホスピタル、あるいはデイ・ケア・ユニットというような、精神障害者が夜は家庭に本拠を置いて、親との接触、兄弟との接触をしながら、昼間通ってきて、そこで自分のできるだけの仕事なり、あるいは集団的にある一定の工場等で働く、こういうようなことがだんだん具体的にされていかなければならぬ。そういう具体的なものをはかるときに、福祉法の必要性と申しますか、そういうものが具体的に必要になれは――私は率直に申し上げまして、そういう精神衛生法とあわせた意味で必要であろうというふうに考えますが、現状は医療と福祉といって、医療はいいのだ、医療はしなくても福祉だけはかっていればいいのだという純然たる姿が精薄にはございましたが、精神障害者の問題には、その点が必ずしもまだ十分熟していない点がございますので、確かに将来の検討事項であり、福祉対策強化していくことはわれわれとしても精神衛生全体の対策強化のために必要である、こういうふうに理解いたします。
  48. 受田新吉

    ○受田委員 公的病院で精神障害者、患者を収容する病院が幾つありますか。
  49. 滝沢正

    滝沢政府委員 ただいまの病院の数は千四百くらいございまして、そのうち私的が九百くらいございます。正確な数字は、いま担当がおりますのであとでお答えいたします。
  50. 受田新吉

    ○受田委員 精神病院というものはまじめにやったら、良心的にやり過ぎると成り立たないといわれておる。いわゆるごまかしがあるのではないかという懸念さえ持たれるほど、精神病院というものにはどこかに暗い影がとかく伴う。そして監置されなければならない重症の人たちに対しては、私も何回か過去において、そういう民間の病院の中で留置的な立場に立つ患者、暗い部屋で牢獄の中に監置したような状態のものを幾つか摘発して、県の衛生部長をお呼びしてこれを救済した事例が幾つもあるのです。私は十年も十五年も前ごろから、こういうものに真剣に取り組んでやってきたけれども精神病院にはどこかに暗いものがある。そして精神病院の患者はごまかしがきくという意味で、医療というものに対してもその実態がはっきりしないという危険もある。食費だけでかせいでいく。入院しておっても食費だけでかせぐのだというような、点数の計算のしかたなども十分議論をされるような問題がある。良心的にやったのでは成り立たぬというような精神病院であってならないと思うのです。もうすでに社会復帰が認められ、遺伝性でない――遺伝性も一部あるが、精神障害者というものは遺伝ではないのだというアメリカの学説も相当広く取り入れられているという段階で、社会復帰が可能であるということになるならば、医療と施設の谷間をつくってはいけないと思う。したがって福祉法がここに必要である。つまり精神病の患者を一人持つとその家庭は暗黒になる。そしてその経費負担、長期にわたって一生涯をめんどう見るとするならば、一家は破滅するというふうな家庭が幾つも出ておるじゃありませんか。こういう種類の病気を国家がめんどう見る、公費負担が八割ということになっておるが、公費負担が八割ということになっておっても、二割は自己負担だ、こういうことになってくるならば、その負担においても精神病の患者を持つ家庭はたいへんであるということにもなる。しかも他の結核とかその他の病気と違って、遺伝病などという銘を打たれることによって、その一家が受ける打撃はたいへんなもので、対外的な心痛というようなものも容易でないと私は思うのです。そういうところを国家は十分配慮して、国家は精神病患者はなおり切るまでめんどう見ましょう、もしなおり切らない場合は、その人を一生めんどう見てあげましょうというような――これは他の結核とかそういう病気と違った、その家庭にとっては深刻な悩みも一方にあるということを、私は幾つもの事例を知っておるし、厚生省もそういうことをよく知っておられるわけです。そういう愛情のある精神病患者の救済をはかる、愛情ある厚生行政が必要であると私思うのですが、御答弁を願いたい。
  51. 内田常雄

    内田国務大臣 一般的なお答えになりますが、私も同感に思います。それはたとえば、同じ病気とも申せませんが、ハンセン氏病患者、これはらい患者のことでございますが、これなどにつきましては、どういう法律の構成、どういう名前の法律か知りませんけれども、治療と同時にかなりの福祉的な面も取り入れられているように私には思えます。あなたのお話を聞いておって、私はそのらい患者の施設における処遇のことを連想いたしたわけであります。しかし、このほうは最近もう数が非常に少なくなってまいりましたけれども精神障害者は、やはり数からいいますとおそらく百万以上の数にもなりますので、おそらくなかなかおっしゃるような意味において手がつけられなかった。しかしそれは数の問題ではなしに、また数が多ければ多いほど、おっしゃるような意味でのその福祉援護を見なければならないということにもなりましょうから、あなたのおっしゃることを私は銘記をいたしまして、ひとつできるだけの検討をしてもらうようにしたいと思います。それ以上のことはまた局長から答弁させます。
  52. 滝沢正

    滝沢政府委員 先ほど失礼いたしましたが、全精神病院が千三百六十ほどございまして、国立六十、都道府県六十四、市町村立八十一、日赤、済生会等の公的関係が五十五ということで、私立が千百で、千三百六十の大部分が私立であります。病床数にいたしまして約九〇%、八五%が私立で占められ、残りが公的な病床であるというところは、関係者がよく言いますように外国とちょうど反対の数字でございまして、外国精神病床は大部分が公的なものであって、私的なものは少ない。ここに今後のわが国精神病院運営の問題に非常に大きな問題点を含んでおるということが率直に言えると思います。
  53. 受田新吉

    ○受田委員 私は、そこを指摘したわけです。つまり公的責任をもってこの不幸な精神病患者を守ってやるという愛情が国に要るのだ。民間にその精神病の不幸な患者をまかせて、しかも良心的にやっては経営ができないというような形のそういう病院を国がめんどう見ることが薄いということに一つの問題がある。これは私がいま指摘した点を十分大臣考慮されまして、いま局長がはっきり言われた、つまり、アメリカその他と反対の傾向がある、国のめんどう見が少なくて民間へ委譲しておる、こういう精神病患者の医療制度というものに一つの大きな欠陥があることをいま局長みずからが仰せられたわけでございまするから、ひとつ十分大臣が配慮されて、精神衛生審議会が今度一本になってくると、公衆衛生審議会四つ審議会を持たれて、軽くなってきてはたいへんだと私は思うのです。むしろ、その家族や周辺の人が一番気にする精神病の患者を国が最も大事にしてあげるように、そして早く社会復帰をして、社会の第一線で再び苦労してもらえるように、国が愛情を持ってやってあげる、そういう手を使うべきであり、治療費にしても、私がいま指摘した、その患者が一生なおらぬ病人であったとしたならば、最後にその人を残して親やきょうだいが死んでいったときに、その本人もたいへん不幸、家族も不幸、社会も病院も不幸なかっこうになるわけでございまするが、それを国がはっきり最後までそのとうとい生命のともしびが消える瞬間まで一切国がめんどう見ましょうというような制度をつくっておけば、精神病患者を残して死んでいく家族にしても安心できると私は思うのです。そういう家庭がたくさんある。私は、あまりにもたくさんそれを知っている。あまりにも不幸な家庭、精神病患者を持っているために――結核の患者がおるから親が死のうとはいたしておりませんが、精神病の患者の子供を持っているために親が自殺している数がずいぶんあるのですよ。そういう事例がたくさんある。それだけにこれは深刻な問題なんです。大臣、ひとつ思い切って、四つ審議会を一本にされようとするその陰に精神衛生審議会が埋没せぬようにひとつ十分配慮してもらいたい。法案に直接関与する問題としていまお尋ねしたのですが、御答弁を願いたい。
  54. 内田常雄

    内田国務大臣 たいへんよく御趣旨は傾聴をいたしました。いまも政府委員から御答弁申し上げましたように、これらの病院についても民間のものが大部分というような状況についても考えさせられる面がありますが、これは昨年来国会でもたびたび問題になっておりますが、精神病院のあり方そのものについても、世の批判を受けているような問題が起こっていることは、すなわちまた患者の不幸でもあるわけでありますが、民間の病院の改良などにつきましても、たとえば医療金融公庫は、他の融資申し入れに優先してこれを取り上げるようなことをもいたしております。また、一般的に、私なども一、二現地を見たことがございますが、先ほどおことばにもありましたし、私もそういう観念も持ってきましたけれども、現に行ってみますると、昔のように牢獄のような病院ではなしに、精神病院のあり方というものを非常に開放的で明るくするような方向に最近は向かってきている面もありますので、それだけ、そのことに対する受田さんをはじめ世の中の意識というものが非常に向上してきていると思いますので、そういう世の中の意識の向上に厚生省対策が取り残されないようにいたしたいと思います。
  55. 受田新吉

    ○受田委員 そういうことで、私もある医系出身の議員さんから、かつて、精神病患者というものはなかなかその実態がつかみにくいんだ、代議士諸君だってよく見ると精神病患者のようなのがたくさんおるんだ、そういう発言をしてくれたことがあって、お互いいろいろ考えさせられる問題があるわけなんですが、もう精神病患者という銘を打たれると、本人はほんとうに社会的に不幸になってくる、そしてその家族が不幸になってくる。だから、それを早く解除してあげる努力を国がしてあげる、その経費負担をできるだけ国がめんどうを見る、こういうことをお願い申し上げておるわけです。  質問を続けていきますが、さっきの鬼木さんの質問で、私、質疑通告をしてないことですが、ちょっと関連してお尋ねしておきたいことがあるのです。  昭和三十四年に国民年金法ができた当時、老人福祉年金を千円でスタートした。自来百円ずつ小刻みに上がって、ようやくことし二千円から三百円上がったというかっこうである。法律ができて満十二年にして、ようやく二倍と三百円くっついたという程度、文明国の中にこれほど低額の福祉年金――これは福祉年金だけに例をとりますが、大臣は、一般の五千円のところまで福祉年金のほうをもっていくようにしたいと、いまお話がありましたが、現実に社会保障の進んだ先進諸国家に比べたら、GNP自由世界第二位という国にしてはあまりにも残酷な国民年金である。ヨーロッパの先進諸国家を見るときに、日本の金に直して大体二万円から三万円です。大体老人福祉、身体障害、障害福祉年金及び寡婦年金等はその辺にある日本はその十分の一、GNP自由世界第二位が、国民年金においては先進諸国家の十分の一であるという、これいかにということになるわけです。これについてお答えができれば、どなたかから御答弁を願いたい。これいかにが多過ぎると思う。
  56. 内田常雄

    内田国務大臣 いまお話がございました――子の前に、私は、年金制度というものの効用といいますか、社会福祉施策における意義を高く評価-ておるものでございますから、これは厚生年金弔あれ、また国民年金であれ、今後のあり方としてはさっきもお答えを申しておるとおりでありますしかし、わが国におきまして年金制度というものが実質的に発足したのは戦後でございます。厚生年金というものが戦前ございましたけれども、これはことばは忘れましたけれども、何か労働者年金というようなことばであったはずでございまして、ブルーカラーのみを対象としておりましたために、ほんとうの意味厚生年金は戦後でございますし、また国民年金についてもそのとおりであります。でありますから、今日、おおむね掛け金二十年の期間というようなものに達しておる厚生年金方々も非常に少ない。国民年金は十年年金がこの六月初めて発足するというような状況でありますから、いわばまだ成熟をしてない段階でございまして、国民年金の二万円年金といいましても、だれももらった人はないわけでありますから、私は、これはほんとうにもらうときにはもっと大きいものになってもらえるようにしたいと思っておるわけであります。  ところで福祉年金は、年金制度発足が十年前でございますから、そのときにもう年金制度に加入できなかったお年寄りの方々に対する当面の措置でありますから、いずれはこれはなくなってしまう。七十以上の人がだんだん減ってきてしまいますからなくなってしまうわけのものでありまして、外国には――いま比較論を述べられましたが、わが国の二千三百円福祉年金に比較し得るような年金ではなしに、比較するとすれば、いまの厚生年金国民年金の二万円ベース外国とを比較するということになると思います。  それはともかく、老齢福祉年金というものは暫定的のものでありますので、つなぎのものでありますので低かったのでしょうが、また逆から考えますと、幾ら多くいたしましても、ますます対象がふえる一方で国がつぶれてしまうというような性質のものじゃないと思いますときには、私は、これは思い切って引き上げられないか、百円、二百円、ことしの三百円ということではなしに、もっと大幅な、千円単位をもって引き上げるようなことができないかというわけで、先般来五千円、六千円というようなことを申して、なるべく大蔵省に聞こえるように申しておるのもそういうことでございますので、御趣旨は十分私は含んでその面の努力はいたします。
  57. 受田新吉

    ○受田委員 北欧の国々にしても、西ドイツにしても、イギリスにしても、私がいま申し上げているのは、大体物価日本と同じぐらいの基準に換算をして、収入なども大体日本と同じぐらいにバランスをとった場合に二万ないし三万毎月もらっている。したがって未亡人になっても、自分でちょっとかせげば、もう未亡人の家庭が成り立つようになっている。わが国は三千円前後の寡婦年金、母子福祉年金をもらって、子供をかかえては成り立たないようになっている。悲惨な未亡人になるのです。いま基本的に日本はGNP自由世界第二位を誇っておりながら、人間を大事にする一例を国民年金にとれば、たとえばそれが福祉年金という制度にせよ、現実の問題として現にもう向こうは相当毎月もらっているが、現に日本はその十分の一しかもらっていない。したがって、未亡人になったらたいへんな不幸な状態が日本にはある。未亡人になった悲しさというものはヨーロッパの先進国に比べたら比較にならぬほどである。身障者だって同様、お年寄りの方だって同様です。そこにそうした社会福祉問題というものが著しく陥没しているという現状にあることは、これはすなおに大臣認めなければならぬと思う。漸次直そうとしても現実はそうなっておる。これはちょっと年金局長から御答弁していただきたい。現実に年金関係で先進国と比較した場合に、日本は著しく低水準にあることは局長お認めになるでしょう。
  58. 北川力夫

    ○北川政府委員 ただいま大臣からも申し上げましたが、また先生も御指摘のとおり、先進諸国に比べまして現実の問題としてはかなり低位でございます。これは経過から申しましても、日本年金制度発足がおそかったことと、したがいまして現実には五千万から五千二、三百万人の被保険者でございますが、受給者はたかだか七百万ぐらいでございまして、特に厚生年金あるいは国民年金の場合には非常に少ない。国民年金のほうは初めて経過的な福祉年金受給者が出るというような状態でございまして、要するに未成熟であります。したがって、確かに先進諸国に比べて低位にあることは仰せのとおりでございますけれども、問題はこれをいかにして底上げをして、また成熟の度合いを深めるかということが今後の課題でございますので、一応の制度の水準から申しますと、前回改正の二万円年金ということで、そこに先進諸国の水準に比べて非常に大きな格差があるとは思いません。しかし現実は未成熟でございますから、今後の問題としてはいかに成熟を早めるか、また底上げをするか、こういう問題が残っていると思います。
  59. 受田新吉

    ○受田委員 いまの毎月二万円支給をいつからなさるわけですか。
  60. 北川力夫

    ○北川政府委員 二万円と申しますのは、先ほどの御質疑にも出ましたけれども、昨年の九月の裁定の受給権が発生いたしましたもので、大体被保険者期間が二十四年四カ月というもので、加給金を入れまして二万円、こういうモデルでつくったわけでございます。したがいまして、ならしてフラットで申しますと、現実には昨年の九月で大体平均で一万四千円程度でございます。今後そういう点はますます改善をしなければならぬと思っております。
  61. 受田新吉

    ○受田委員 現実に現時点において、ヨーロッパは二万ないし三万の間で年金が支給されている。現時点で日本が支給する金額というものは一万四千円にもなりません。ことしに例をとるならば、どの国もその支給金額は漸次上がっていくわけですからね。先の話をしておるわけではないのです。私はことしを例にとった場合の比較をさせていただいておるわけなんです。そういう意味からその比較の時点が違っておる。それから福祉年金と一般年金との比較がむずかしいのじゃないかという意見があるが、現実にその年金をもらっていることは間違いないんだから、したがって、未亡人も年寄りも、現実に一応年をとっても、未亡人になっても、日本に比べたら数倍のしあわせを経済的には得ておるということは局長さんもお認めになるでしょう。
  62. 北川力夫

    ○北川政府委員 現段階を比較いたしますと、確かに仰せのとおりであります。ただ、私が申し上げておりますのは、西欧先進諸国は歴史が非常に古くて、年金全体がいわゆる成熟の段階にある。したがってそういう状態でございますが、日本の場合には制度上は一応レベルはかなり近づいておりますけれども、いわゆる未成熟状態でありますから、やはり相当政策的に成熟度合いを深め、あるいはまた年金底上げというものを早めていく、こういうことをして追っつきたいということを申し上げておるわけでございまして、現実の姿だけを申し上げますと、確かに先生おっしゃるとおりかもしれません。
  63. 受田新吉

    ○受田委員 そのとおりなんです。大臣、経済大国になった誇りを持つと同時に、日本の現実の足元を見て、日本はお年寄りを大事にし、未亡人や身障者を大事にしなければならぬ。お年寄りを大事にし、御主人を失った未亡人を大事にし、身障者の方を大事にするという基本的な愛情が日本では現実に欠けているのです。これはきわめて明白に欠けているということを指摘しておきます。その点はもう御答弁になったから、これ以上追及申し上げるよりも、早急に大幅に措置することに力点を置いて、厚生省というのは、人間を一番喜ばせる、生を厚くするという役所なんです。各省の中で厚生省は一番人間を喜ばし、人をしあわせにする役所でなければならない。厚生大臣になる方は、最も善根を積んだ人間が厚生大臣になるわけです。したがって、その善根を積んだ人が厚生大臣になったという観点から、あなたはしっかり在任中にひとつがんばってもらわなければいかぬと思いますので、人を喜ばす役所の大臣として命をかけていただきたい。  次に移りますが、一時間ということでありますからなるべく時間を守ります。各局に質問の通告をしておりますので、簡単な質問の形式をとりますので、簡明にお答えをいただきたいのですが、私今度は一般的な問題として、たばこの問題を取り上げてみたい。一般的な問題、つまり法案に直接関係しない問題として。これは十七日に東京都の衛生研究所から発表されたたばこの害について、私も残念ながらたばこというものは何とか撲滅する方向へ持っていけないものかなあという感じを濃厚にしたわけでございますが、この東京都の衛生研究所が微量分析部で分析をした結果を発表した例の農薬汚染に伴うところの、たばこの煙の中にそっくり残留するところのDDT、いわゆる空気中の許容量としてDDTが持つ基準というもの、あの許容量を三倍も上回っておるという危険信号を発表した。この問題は厚生省も十分研究をされたのかどうか。また、この発表は間違っているというのかどうか、御答弁を願いたい。
  64. 滝沢正

    滝沢政府委員 この問題の研究そのものは直接厚生省のほうではいたしておりませんで、専売公社、あるいは今回の東京都の発表によって、東京都がされたことを承知したわけでございますが、その内容についてわれわれの立場からいろいろデータの数字、その他を検討させていただきましたが、非常に一般的な申しようで恐縮でございますが、数字、その他の点について、著しくおかしな点はないというふうに考えております。
  65. 受田新吉

    ○受田委員 東京都の衛生研究所というものは、やはり人材もそろっておるし、研究にも熱心である、そういう役所であって、そこで研究した結果は、厚生省もそう間違いのあるものでない、数字も大体正確なものである、こういうことになると、そこで一つ問題が起こるのですが、残留した農薬をどういうふうに見ていくかということでありまして、その残留した農薬が煙とともに体内に吸い込まれる。その間に冷えてそいつが固体となってくる。そしてさらにこれが肺に蓄積して脂肪に溶け、血液に流れ込むというような順序を踏むことによって、たばこの中にある従来のニコチンとかタールとかいう影響のほかに、農薬の弊害というものがきわめて明白に、日本外国のたばこそれぞれに出された。この結果を見て、たばこは新しく農薬の影響によるおそろしいものであるという結論を、厚生省は持ったのかどうか、お答え願いたい。
  66. 滝沢正

    滝沢政府委員 ただいま先生お話しのように、DDT等が肺の中に吸収されあるいは血液の中に入る、こういうメカニズムそのものが、私まだ不勉強ではございますが、それがそのようになるのだというようなことについても、われわれの承知している範囲では明確なメカニズムが必ずしも解明されていないというふうに思うわけでございます。しかしながら、一般的な意味で従来たばこがニコチン、タールを問題にして有害表示の問題が取り上げられ、さらにこの農薬が問題になるということによって、健康上の問題について、従来厚生省は、長期多量の喫煙あるいは若年者の喫煙等は健康に悪い影響があるのでという通知を都道府県に申し上げまして、それぞれの立場から対策を講じていただき、またわれわれの成人病週間等のパンフレットにも明確にそのことを書きまして、厚生省は従来ともたばこは健康に悪い影響があるのだという見解だけは明確にいたしております。ただ、WHOの勧告と申しますか、WHOが取り上げました問題をたばこに表示するかしないかという問題は、直接的には厚生省自体の問題ではございませんけれども、従来とも、三十九年のアメリカのたばこ問題の発表以来、厚生省としては、健康の問題については悪い影響があり得る、それは条件的にあり得るので、そういう点について、今後とも従来と同様、新しい事実の発生はさらに加えて、これは国民に対して啓蒙することはしていきたいというのが従来の立場でございます。
  67. 受田新吉

    ○受田委員 公衆衛生局長にはっきり言っていただいたわけでございますが、このWHOのきめたDDTの一日当たりの摂取許容量というものから見た今度の検査の結果というものは、数字としては別にこれを否定するものじゃないということでございますし、またニコチンとかあるいはタールのほかに農薬による新しい弊害がこれにつけ加えられたということで、過去においてもすでに通知を出しているが、今度も新しく通知を出すのかどうか。
  68. 滝沢正

    滝沢政府委員 今回の東京都の研究の結果の発表について、専売公社等からも御見解の御発表があろうと思いますが、今回の発表は、われわれの日常生活のたばこの喫煙がWHOのきめておるDDTの許容量と比較した場合、相当の極端な大量でありませんとそのような数値に達しないということでございますので、この点また東京都もさらに引き続き――一回だけの調査では十分でないという見解も明らかにしておりますし、専売公社等の御研究もあるやに承っておりますし、また専売公社の公式な見解は私まだ正式には聞いておりませんが、これらのものを勘案いたしまして、従来のニコチン、タールの上に、さらに農薬を禁止することによってこれが解消されていくとか、いろいろな問題が期待できる面もございますので、これらの点も含めまして、事実を明らかにする必要があれば、厚生省としては一般保健衛生の指導の立場から、都道府県その他の団体等に対する指導にさらにつけ加えていくことを考えたいと思いますが、現実ではそのような問題に私はまだ至っていないというふうに考えております。
  69. 受田新吉

    ○受田委員 われわれも、たばこを耕作する農家をよく知っている。たばこも農作物ですから、私たちの周辺にはたくさんたばこを耕作している。このたばこは乾燥した後に使用するのであって、ほかのなまの野菜等とは違う、また特別の弊害が伴う危険があるわけなんです。いませっかく国民の保健衛生を担当する厚生省公衆衛生局長が、このたばこは有害であるということを十分理解させなければならぬというので通知も出してあるということでございますが、専売公社と厚生省と比べると、こういう保健衛生の面で、たばこのほうの研究という点でどっち側の人材がそろっておるのかはよくわからぬですが、専売公社としては、たばこに対するニコチン、タールの有害性というようなものについては、有害でない、たばこを吸ってもたいした弊害はないというように解しておるのかどうか専売公社から御答弁を願いたい。
  70. 稲川徹

    ○稲川説明員 ただいまの御質問は、ニコチン、タールの問題についての有害性というようにとってよろしゅうございましょうか、それともいまの有機塩素の問題……。
  71. 受田新吉

    ○受田委員 両方の立場で。
  72. 稲川徹

    ○稲川説明員 ニコチン、タールを主とした有害性につきましては、先生も御承知だと思いますが、大蔵大臣の諮問機関である専売事業審議会が半年以上にわたりまして御審議いただきまして、各専門の先生方の御討議を経て答申が出ております。これは大蔵省から後ほどお話があるかと思いますが、御答申が出ておりながら、実はまだ国会開会中ということであろうと思いますが、国会でもいろいろな御議論がございまして、大蔵省からの御指示をまだいただいていないわけでございます。そういうことで、非常に近い時期に大蔵省の御見解がはっきりするのではないかと思っております。  それから第二の有機塩素の問題でございますが、実は私ども非常にうかつでございましたが、都の衛生研究所でこのような御研究をなさっていること自体を存じなかったわけでございます。実は私どもといたしましては、先年来有機塩素の有害件の問題が騒がれ始めてから、相当期間にわたってこの問題をチェックをいたしてきております。その段階での私どもの見解は、こういうことでございます。たばこという、薬品でもない非常に特殊な商品についての、この種の有機塩素剤のスタンダードとなる非常に的確なものがないわけでございます。やむを得ず都衛生研でお使いになりました環境衛生の基準らしきもの、これはアメリカのものでございますが、それと、それからもう一つはADIと申します摂取許容量と申しますか、この二つを参照する以外に手がなかったわけでございます。その二つを参照しながら製品の分析を続け、検討いたしました結果は、あとで申し上げ出すが、都の衛生研究所の御発表の数字を拝見いたしまして、いま公衆衛生局長さんから御答弁のありましたとおり、私どもの分析結果とあの結果とは、分析結果そのものは大体一致しております。ただ、衛生研究所の御発表だけでは御意向が詳しくはわかりませんが、得ました印象から言いますと、そのデータの読み方について私どもの判断と少し違っているのではないかという気がしております。本日も衛生研究所の方と技術的なディスカッションのスタートを切っておりますが、その違いは何かと申しますと、あの基準と申しますのは作業場における環境衛生上の基準でございます。したがいまして、空気中に含まれるDDTの含有量の許容限度を示したものでございます。私どもがこれを拝見しますと、中等程度の作業をする作業場でおそらく一日八時間くらいの労働をして、それで摂取される空気中からのDDTの量であろうというふうに判断をいたしました。そういう判断と、それからたばこの分析から出てまいりました数字、その数字が一体どの程度人間の肺に吸い込まれるものであろうかという勘定をして比較をしたわけでございます。その比較をいたしますと、御承知のように、たばこは口から吸いましたときに、まず最初に吸い込む前に半分くらいは出てしまいます。それから空気で非常に希釈されて肺の中に入ります。そういうものを一切無視しまして、煙が全部吸い込まれるという勘定をいたしまして、平均的に一日二十本吸うであろうということで計算をいたしますと、あの基準の一日量との比較では約千分の一くらいになるようでございます。  それからもう一つは、先ほど申しましたもう一つのスタンダード、ADIのスタンダードのほうから申しますと、これもやはり千分の一とか八百分の一とかいうような数字になります。そういう判断で、なるほど分析ではDDTは検出できるけれども、いま直ちに非常に危険な状態であるとは思わなくていいなという判断をしてきたのでございます。ただ、有機塩素剤と申しますのは、御承知のようにいろいろな角度からいま日本の人間のからだに入ってくるわけでございます。したがいまして少しでも減らす必要があるということで、もちろん一般の農薬の規制以前に私どものほうで規制をいたしまして、たばこの耕作に使わないようにしております。それから先生も御承知のとおり、たばこの葉は、収穫いたしましてから二年間ストックをいたしております。したがいましていまかかえているストックについての手の打ち方というのはやや問題がございます。しかも、それもいま申しましたようなことで、いま直ちに非常に危険だというふうな数字ではないというふうに実は判断をしておったわけでございます。そこで衛生研究所のほうとの技術的な御議論といいますか、それを実はすでにスタートさせております。その上で都のほうの御意見も十分伺いまして、なお万全を期するつもりでおります。  以上でございます。
  73. 受田新吉

    ○受田委員 ちょっとお尋ねしたいんですけれども厚生省の薬務局長もおられることだし、いま稲川理事さんからの御答弁とあわせて、ちょっとごく具体的な質問ですが、いまここで坂村先生がたばこをお召し上がりになる。そうすると、いま稲川先生が、全部入らぬで、半分は出るのだ、この半分出たのを私がちょうど隣で吸いますね。そうすると、私も、吸わなくても、たばこをたくさん吸う部屋におると、そのたばこの影響が多少こちらにくるかどうか、ちょっと医学的に答弁をしてください。
  74. 滝沢正

    滝沢政府委員 まことに具体的なお話でございますが、確かに部屋全体の環境の汚染という問題が重要な課題であることは、これはいなめないと思います。ただ先生のいまおっしゃったようなことが、実験研究的に具体的にそれが出されたデータを私は承知をしておりませんので、それが本人とその周囲何メートル以内にいた者とには何%程度の影響があるというようなデータは、私も全然不勉強で現在のところわかりません。しかしそういうことをこういう問題を考慮するときに無視していいということはないということは、われわれの常識として考えていいと思うのでございます
  75. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、これは具体的な例で、この部屋でもう各所でたばこを皆さんがお吸いになる。そうすると、いまのように、たばこは半分は口から出る。半分しか入らぬ。半分出た分は部屋に紫煙となって流れる。皆さんがもう自由にお吸いになると、この部屋はたばこで汚染される。いま局長がおっしゃいますように、汚染された部屋になる。そうすると、決してそれはいい部屋の空気ではない。つまり研究はまだしてないが、非常に汚染されるたばこ汚染、それはやはり公害の一つということですね。  したがって、それほどたばこというものはいろいろなところに災いを残しておるので、ちょっと余談になるわけですけれども委員長、これは議員各位にも別に私が押しつけるわけじゃないけれども、一応いま厚生省の衛生の一番中心にあられるドクターですね、ドクターがおっしゃる、つまり、部屋でどんどん皆さんがたばこを吸うと、そのたばこによって部屋が汚染される。そのデータはとってはいないが、それがやはり相当の悪影響があることは間違いないという意味の答弁があったわけなんです。それほど、たばこというものは環境を汚染することにもなる、健康にも害があるということになる。  そういう意味で、実はこれは先生方、聞き流していただいておいていいのですが、そこまでたばこの害がはっきりしてきた以上は、タールやニコチンの有害性というものを表示せよという三月の例の専売事業審議会答申に基づいて大蔵省が年を打たなければいけない段階がきておる段階で、これは国会の問題なんですが、本会議場はたばこを吸ってならぬことになっている。同様に委員会もたばこを吸ってはならぬ、それから灰ざらも置かない。灰ざらを置かなければ、灰ざら事件も起こらない。私は一つの問題として考えてみたのですが、衛視さんはたばこを吸えないそうです。しかし他の職員は吸える。それから議員さんは吸えるが、傍聴人は吸えない。つまり、この部屋でもそういう意味で不公平がある程度あるわけです。政府委員の人は吸いとうてならぬけれども、さっきから吸うておられない。大臣だけがお吹かしあそばしていらっしゃる。(内田国務大臣「いや、私も遠慮して吸っておりません」と呼ぶ)ああ、お吸いになっていない。政府は非常にまじめです。まじめと言っていいかどうか……。  そうなってくると、坂村先生は別に何という意味じゃないが、私は健康上の問題として考えてみたのですが、こういう受田発言がまじめな委員の提案として委員会であって、本会議場がたばこを吸っていないから、委員会でも委員各位が吸いたいときは喫煙室で吸う、こういう本会議場と同じようなかっこうでこの委員会が運用されるようにしていく、こうなれば、傍聴人も議員も平等であるという形になるし、人間の保健衛生をあずかる厚生省公衆衛生局長もドクターとして、いま、お互いが吹かしたたばこの害があるということを一応判断されたわけですから、政府委員も安心してこの委員会に来られる、こういうことにもなるわけでございますので、こういう発言があったことを常任委員長会議にでもまた提案をして、本会議場と同じように委員会も喫煙の部屋を別途設けて、そこで吸って、せっかくたばこの害がこれだけあることがわかったから、ひとつみんなが生命の温存をはかるためにやろうじゃないかという提案があったことを、ひとつお取り次ぎを願いたい。(「反対」と呼ぶ者あり)  いま、話がちょっと余談になったのですが、そういうことで、たばこの害というものは異常なばかりに弊害があることがはっきりしたわけですが、いまの有害であるという表示は、大蔵省はいつ指示をされるわけですか。そういうふうにたばこの包装紙に有害、つまり例の専売事業審議会答申に盛られた、ニコチン、タールの表示をするというこの措置は、いつ大蔵省は指示されるのですか。
  76. 大塚俊二

    ○大塚政府委員 専売事業審議会答申でございますが、ただいま先生指摘のとおり、ニコチン、タールの銘柄ごとの数量を表示をし、問題になりましたのは、現在アメリカでやっておりますような、シガレットを吸うのはあなたの健康に害があるという、そういった文言の表示をするかどうかということが問題になったわけでございますが、専売事業審議会答申はそこまで触れませんで、銘柄ごとのニコチン、タールの数値を表示しろという答申でございます。その後今国会でも、各委員会でたばこの有害問題というものが議論になりまして、いろいろ諸先生方の御意見を聞いてまいっておるわけでございます。  それから、たまたま五月四日からWHOの第二十四回の総会がジュネーブで開かれておりまして、この総会で、やはりたばこと健康問題が議題になって、現在これが審議されておる状況でございますので、その審議状況も見まして、専売事業審議会答申刀とおり、ニコチン、タールの数値の表示だけでいいかどうか、あるいはもう一歩進んだ何らかの対策をすべきか、そういうことを判断いたしたい。  なお、専売事業でございますので、大蔵委員会のほうで御審議になる事項かと存じますが、大蔵委員会のほうでもこの問題について一度十分審議をしたいというような委員の方の御意向もあるようでございますので、そういった機会が今後あるかと存じますので、そういう場でまたいろいろ御意見あるいは御審議内容、そういったものを受けまして、最終的にこのたばこと健康の問題に対する方策を定めたい、かように考えておるわけであります。
  77. 受田新吉

    ○受田委員 監理官、少し消極的過ぎますよ。もうアメリカが、あなたのヘルスに害があるとはっきり包装に書いておる。そして、今度は近く害があるだけでなくて生命に危険があるという文句まで書こうという動きさえあると聞いておるわけです。それからペルーも有害表示をしているわけですね。オーストラリアの一部にもそういうところがある。もうすでに世界の先進諸国家の中には、勇敢にたばこの有害性を表示して、その危険をあえておかしてまで吸うかどうかは国民の選択の自由だということまでやっているわけでございますが・もう少し早く勇敢にやってはいかがですか。大蔵委員会の意向も確かめてということでございますが、審議会答申が一応出ておる。それに対しての結論を大蔵省が出されていいわけでありますし、これをはっきり示していただいたほうが大半の国民は喜ぶわけです。その点は、これを書かないほうよりも、有害であるということを書くほうが国民的であり、お役所として敢然と手を打つべきだと思うのです。答申が出てもなおこれに対する措置をしないというのは大蔵省が非常に怠慢だと思うのですが、どうですか。
  78. 大塚俊二

    ○大塚政府委員 専売事業審議会答申は、いわゆるアメリカ式の文章による有害性を書くということはしない。たとえばピースでございますと、ピースの箱にニコチン幾ら、タール幾らと、その煙の中の数値を表示するのが妥当だろうという答申でございます。その答申でいいかどうか、最近の世論と申しますか一般の関心、そういった面から考えましても、ニコチン、タールの数値の表示だけでいいのかどうか、その辺実は私ども現在検討をいたしておるところでございます。
  79. 受田新吉

    ○受田委員 その数字を示しただけでは意味がないのです。これは許容量から見たらどうだとかという点まで親切に書くべきで、アメリカをたいてい学んでこられた大蔵省としては、アメリカでやっているこの点ぐらいはむしろいち早くまねたほうがいいですよ。アメリカが全部のタバコに書いている有害注意を日本は勇敢に採用していいですよ。厚生省がもう弊害があると言っておられる。公衆衛生の最高責任者が、これは有害であるということを地方にも通知をしておる、こう言うておられるので、大蔵省は専門家にまかされたらいいと思うのです。内田大臣、ひとつ勇敢にやられて、大蔵省へ注意されて、国民の健康上に有害であるという注意を書かせるのは、むしろ厚生省のほうから出されたほうがいいと思う。逃げを打ってはいけませんね。つまり証拠がなければ罰せずというようなかっこうでなくて、いろいろな脅威があって、二十万の人たちがガンにならぬためにも、ひとつ皆さんそういうことで協力してほしいと私は思うのですが、そういうことに厚生省が熱を入れてもらいたい。  最後に一つ、この問題で若い者に非常に害があるといま局長が言われた、つまり若年者には特別に害が大きい。ところが、日本には明治三十三年にできた未成年者喫煙禁止法という法律があるのですが、この法律はそういう健康上のためからできたということが立法趣旨にあるかどうか、風紀上の問題であるのかどうか、警察庁から御答弁願いたい。これは未成年と知りながら喫煙をとめなかった者には「一円以下ノ科料二処ス」というのが、例の罰金等の法律で一円というのは一体いまどうなっているのか。白い一円玉を払えばいいというわけにいかぬので、これは千円以下という例の罰金等の法律でいくのかどうか、現在の罰金はどうなっておるのかもあわせて伺いたい。  つまり、未成年者がたばこを吸ってはならぬというのは、いま公衆衛生局長から、たばこは健康上非常に害がある、若年はすぐ影響を受けやすいという意味の御発言があった。その若年には特に害が響くという意味から、未成年者はどうかたばこを吸わぬように、これは青少年問題審議会等も十分骨を折り、閣議でも大臣は十分発言して、青少年のりっぱな体位を守るためにも、たばこの害から彼らを救ってやろうじゃないですか。そして、いまごろ若い者が、高等学校でも自由にたばこを吸って、たばこ遊びをやっておる。こういう者に対して、警察のほうでは一体この未成年者喫煙禁止法をどう扱っているのか。未成年で喫煙をする者に対してこの法律を適用したのが何人おるのか、そして現実に子供がたばこを吸って遊び歩いているのを見たときに警察官はどう注意しておるのか、また、親が親権者でありながらこれを見のがしたら「一円以下ノ科料二処ス」と書いてあるが、親が科料に処せられたのが何人あるか、これの数字を示していただきたい。  私は、これだけその害がはっきりしたたばこについて、未成年者だけは敢然とこの法律を守り、法治国であるのだから、法を犯してまでたばこを吸うのは許さぬというような立場で、みんなが未成年者を守ってやりたいと思う。そういうものについて警察庁はどう扱っておられるかを私はお尋ねしたいと思うのです。若い者ほどたばこの害の影響力がある。年をとられた方はわりあい影響が薄いそうですが、未成年者の場合には特に害が大きい。法律を犯してまで、健康をおかしてまでたばこを吸うことは、学校も禁止しなければいかぬし、道徳的にもこれを守っていかなければならぬということで、国をあげて未成年者喫煙禁止法を守るようにしたい。未成年者飲酒禁止法というのが大正十一年にできたが、酒とたばこをなぜ国が法律でとめておるか、この趣旨とその実態とをあわせて御答弁願って、私は質問を終わりたいと思います。警察庁に関連の御答弁を願います。
  80. 渡辺宏

    ○渡辺説明員 お答え申し上げます。  立法の趣旨につきましては、先ほどからお話のございますからだに対する有害の問題と、それから風俗の問題の両方の観点から取り上げておるようでございます。当時といたしましては、やや風俗の矯正ということのほうが強かったように立法趣旨に見られるようでございますが、いずれにいたしましても両方の観点から取り上げておるようでございます。  それから、取り締まりの実態でございますけれども、少年の喫煙というのは一般に不良化の第一歩というふうに考えられますし、少年の健全育成という観点から考えましても好ましくないことでございます。したがいまして、先生指摘のような未成年者喫煙禁止法におきましては罰則こそ設けてはおりませんけれども、第一条で未成年者の喫煙を禁止いたしております。したがいまして、警察といたしましては、それを根拠といたしまして少年のたばこを吸っていること自体を補導の対象として、主としては街頭などにおきましてそういう少年を発見して、そして本人やあるいは保護者などに必要な注意なり助言、指導なりをいたしております。この数字は、昨年、四十五年の例にとりますと、延べ約二十五万六千人に及んでおります。  それから、そういう少年を補導してまいりまして、そのたばこの入手先などについて調査してまいりますと、少年が吸うということを承知しながら売っておる、こういう業者であるとか、あるいは吸っておることを知りながら制止をしない保護者であるとかあるいは監督者であるとか、こういうものについての取り締まりなどをいたしておるわけでございますが、昨年の例にいたしますと、両方合わせまして千五百五十二人ほど一応検挙いたしております。そのうち約二百人ほどは最も悪質なものとして検察庁のほうに送致をいたしております。そういう実態になっております。
  81. 受田新吉

    ○受田委員 私、いまの御答弁でもう一つだけお尋ねしておきたいのですが、私はいまのお話を聞いて、二十五万六千人も補導を加えたのがたばこだけであるということですが、酒はどうなっているのかも聞きたいし、それからもう一つ、たばこ屋が少年に対して、吸うということを知りながらたばこを売っておる。そういうところからは器具を取り上げるとか、たばこを取り上げるとか、親権者から一円以下の科料――いまごろ一円以下の科料というのはどうなっているのか。あの法律の一円以下というのはどういうふうになっているのですかね。一円以下の科料を取った者は何人おるのか。  それから、できればたばこやの店頭に、未成年者は未成年者喫煙禁止法でたばこを吸うことはできません、またその人にたばこを売ると違反になりますというような文句を書いて、ぜひ法律をお守りくださいというようなのをたばこ屋にみんな表示する。そうしてまた、一般的にも未成年者のたばこを吸うことが害があるような、たとえば外部で交通上のいろいろな注意をするようなかっこうで、もうおとなも忘れている者がおるし、学校の先生もいまごろ子供がたばこを吸うてもしからぬ先生がたくさん出てきた。そういうものはタブーだということになっておる。そういうときにやっぱりみんなが、国民が、青少年の風紀と健康を守るという両方からそういう表示をするということはどうですか。専売公社として、そういうたばこ屋に、未成年者がたばこを吸うことが禁止されております、法律によってとめられておりますから御協力ください、こういうようなのを全国のたばこ屋の店頭に表示することによって、青少年の健康の強化育成に非常に貢献すると思うのですが、それだけは、専売公社がたばこ屋に指示される。また一般の社会などでもそういうのをみんなで宣伝してあげる。私は、次代を背負う青少年のからだをむしばませたくない。風紀的にも青少年が、未成年者がたばこを吸うことはよろしくない。これを守るためには、まずたばこ屋の店頭にそれを掲げるだけでもたいへんな効果があると思うのですが、稲川先生、英断をおふるいになるか。警察もそういうことをどうお考えになるか、最後に伺って質問を終わります。
  82. 稲川徹

    ○稲川説明員 私、担当でございませんけれども、承知しているだけ御答弁申し上げます。  未成年の喫煙防止法につきましては、特に最近専売公社では意を用いましていろいろなことをやっております。先生も御承知だと思いますが、小売り店の店頭に、健康問題がやかましくなりまして以来、ニコチン、タールの量の表示を全部いたしております。その表示のステッカーにも未成年者喫煙防止法のことを書いて、少年は吸ってはいけないのだということを知らせております。それから自動販売機等よく問題になるのでありますが、これも残らず表示をしており、それから、これはどうも販売の担当でございませんので決定的な御答弁はできませんけれども、小売り店の指導というのも相当緻密にやっておりますが、その段階で相当きちんとその点を指導いたしておるというふうに思います。
  83. 渡辺宏

    ○渡辺説明員 酒の同じような数字でございますが、補導いたしました少年は、昨年に例をとりますと、三万一千人ほどでございます。  それから少年が飲むことを知りながら少年に酒を売った、あるいは飲ましておって制止をしなかった保護者、こういうものに対する検挙でございますが、約一千二百人ほどになっております。  それから科料の問題で、ございますが、先ほど先生指摘になりましたように、罰金等臨時措置法によりまして、科料の場合には千円以下の科料ということになりますし、罰金の場合は二千円以下の罰金、こういうことになります。で、現実に取っておるかどうかという点につきましては、私ども、これは先ほど申し上げました数字は検察庁に送致をした数字でございまして、これは御承知のように少年法によって家庭裁判所が扱う事件になっておりますので、家庭裁判所は少年の保護について非常に厳重に考える立場でございますので、相当これは実際の処分を受けておる、かように承知をいたしております。  それから表示とか、あるいは未成年者にたばこを吸わせないようにすることについてどう考えるかということ、いま専売公社のほうからもお話しございましたけれども、私どもの立場からいたしましても、少年が酒を飲んだり、たばこを吸ったりするということはよろしくないことでございますし、そういうことが少年の非行防止と大きなつながりを持ってまいりますので、私どもといたしますと、学校と警察との連絡協議会であるとか、あるいは職場と警察との連絡協議会であるとか、あるいは地域におけるそういう少年補導の組織などにそういう問題を訴えておりますが、なおこういう問題で一大キャンペーンが行なわれることはたいへん望ましいことだと考えます。
  84. 受田新吉

    ○受田委員 稲川先生、私は小売り店でいまお説のようなものをまだ見たことがないのですが、たばこは二十歳未満の者は吸ってはいけません、未成年者喫煙禁止法という法律、それによって罰せられますとか、してはなりませんとか、健康のために、また法律を守るために皆さん御協力くださいというようなのをすべての小売り店にこれがさっと出されるようにしていただくとありがたいと思うわけです。  それで質問を終わります。
  85. 稲川徹

    ○稲川説明員 いまのステッカーに書いてあると申し上げましたのは、私の記憶、間違いないと思います。担当でございませんので、正確に申し上げられませんが、間違いないと思います。
  86. 受田新吉

    ○受田委員 それはどこへ。
  87. 稲川徹

    ○稲川説明員 小売り店の店頭にニコチン、タールの銘柄ごとの量を表示したステッカーを張ってございます。これに書いてあると私思いますが……。
  88. 受田新吉

    ○受田委員 見た人がありますか。
  89. 大塚俊二

    ○大塚政府委員 ステッカーに表示をいたしております。未成年者は法律によって喫煙が禁止されておりますという表現で、ステッカーの下のほうに書いてございます。
  90. 受田新吉

    ○受田委員 きょうさっそく拝見することとして、たいへん皆さんに失礼な発言もきょうありましたが、お許しをいただいて、これで質問を終わりますが、あえて保健衛生のための発言でございます。どうぞひとつ……。
  91. 天野公義

    天野委員長 東中光雄君。
  92. 東中光雄

    ○東中委員 審議会統廃合について一点だけお聞きしておきたいのですが、これは行管からの指示でやられて、結局この統合された、たとえば結核予防審議会あるいは伝染病予防調査会中央精神衛生審議会、これは統合されるとそれぞれの法律とは直接結びつかなくなってくるわけで、構成は、審議会委員は前と同じそのまま横すべりされて、むしろ統合の後にふえるということでありますけれども審議会の独自性が失われて、重要な、たとえば結核予防の問題あるいは伝染病予防の問題等々の軽視が実際に起こってくるのではないかというふうに思うのですが、その点どうでしょう。
  93. 浦田純一

    ○浦田政府委員 この点につきましては、確かにそれぞれの法律に基づきまして審議会がございましたものを、先生方に御提案申し上げている、資料としてもお配りしてございます法案、今回の設置法によって、それぞれの法律の中に公衆衛生審議会と変えるわけでございまして、実際には、先ほどもお答えいたしましたように、審議会に、結核予防審議会結核予防部会として残し、委員公衆衛生審議会委員という辞令が出るわけでございまして、そのことが実態的には発展的な、一度解消し発展させるというような意味で、先ほど統廃合とかいろいろなことでいろいろ御意見がございましたが、そういう意味でございますので、結論的に申しますと、それぞれの審議会が弱体化する――部会長は独自に、独立して部会長として結核審議会を統括され、委員は、先ほど御質問にございましたように、高齢その他で御引退の方も含めて、この機会に若干われわれとしては、意欲的に審議会委員の交代刷新をはかりたいという気持ちもございますので、各部会がそれぞれに意見を出しました場合、部会の意見をも審議会の意見とするというふうにすることができますので、また、部会の意見をもう一度公衆衛生審議会にかけて、そこでまたチェックされるということで独自性がなくなるというふうに理解される面があろうかと思いますが、そういうことのないように、各部会の意見を十分尊重して審議会の意見とする、こういうふうな取りきめで参るつもりでございますので、形の上では部会という一段下がったようなかっこうに考えられますけれども内容的には一向に従来の審議会に変わらず、さらにこの機会に委員等を刷新して強化していきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  94. 東中光雄

    ○東中委員 本案直接については、いま申し上げた点で私たちとしては非常に了承できない問題を持っておるわけですが、これに関連しまして、森永砒素ミルク中毒事件についてお聞きしたいと思うのですが、現在でも多くの被害者が後遺症のために悩んで、脳性麻痺、言語障害、弱視、難聴、知恵おくれ、ずいぶん苦しみ抜いているようでありますが、厚生省はこれについてどういう対策をとられてきているか。昨年の三月七日、大阪府議会が決議をして、厚生大臣にその決議を府議会代表が持ってきて、私ども立ち会ってお渡ししたと思うのですが、厚生省としてどのような対策をとられたか聞きたいと思います。
  95. 浦田純一

    ○浦田政府委員 一昨年の秋の岡山におきます公衆衛生学会の席上、大阪大学医学部の丸山教授その他の方々から御発表のありました、森永乳業の砒素中毒の患者さん方のその後の結果につきましての問題は、学会で非常に重視されるとともに、もちろん厚生省としてもこの点について非常に重大な関心を持ったわけでございます。  その対策といたしましては、やはり厚生省といたしましても、国民保健の全般の立場から、あるいは特に森永砒素中毒の患者さん方の置かれております地位、そういった方々の健康の実態を知ることが必要であるという判断で、これは昨年春でございますが、当時の砒素中毒の患者さん方の記録、名簿、その他が比較的よく保存されておりました岡山県に着目いたしまして、研究費を、これはそのときの額で百三十万円というわずかな額でございますけれども、研究費を計上いたしまして、検診の実施をするように、実態の把握につとめるようにスタートしたのでございます。研究班長といたしましては、岡山の済生会の病院長であります大和先生お願いしてございましたが、その後実際のこの検診の実施にあたりましては、いわゆる子供を守る会のほうとの調整その他のこともございまして、実際に検診を開始いたしましたのはことしの二月からでございます。それで、現在、四月末までに約四百名の方々の検診を実施いたしております。  その結果につきましては、まだ最終結論を得るに至っておりませんし、また検診そのものもまだ半ばでございますので、中間的ではございますが、研究班の中にそれぞれ専門委員会を設置いたしまして、いろいろと検討いたしているところでございます。  なお、検診につきましては九月までに完了することを一応の目途としております。
  96. 東中光雄

    ○東中委員 岡山県に出された百三十万の研究費で、岡山県衛生部に調査委員会が設置された。設置されるについて、いわゆる守る会の調査研究班、専門家の人が入っておられるのですが、県衛生部長との間で八項目の確認事項がつくられたと思うのですが、厚生省は御承知ですか。
  97. 浦田純一

    ○浦田政府委員 承知いたしております。
  98. 東中光雄

    ○東中委員 その八項目の確認事項は、全部いま二月から動いておる委員会で守られておるということになるのですか。
  99. 浦田純一

    ○浦田政府委員 おおむね守られておるはずであると思います。ただし、いわゆる公開という点につきましては、委員長の判断によりまして運営委員会の意見に従うということでもって、その点だけは条件がついておると思います。
  100. 東中光雄

    ○東中委員 この問題が起りこましたときは、御承知のように三十年の六月から八月、原因が砒素ミルクだということが明らかになって、すぐ厚生省は、当然のことながら飲用の中止と販売、操業停止措置をとられた。そしてあと、厚生省が被害者認定について府県に通達を出された。各府県がそれに基づいて調査をやったはずであります。一万二千百三十一人、厚生省が発表された最後の被害者数はそうだったと思うのですが、そのうち百三十人が死亡しておる。世界的にも珍しい非常に大きな不祥事件だったわけですが、これについて厚生省が五人委員会をつくられて、補償に関する意見書が出された。三十一年段階で厚生省も全員治癒だ、後遺症なしという発表をされているようですが、経過はそのとおりですか。その点どうでしょう。
  101. 浦田純一

    ○浦田政府委員 当時いわゆる後遺症に対する考え方につきましては、その当時の治療に当たられました先生方の中でも全然関心がなかったということじゃなくて、むしろ後遺症につきましては、また例の五人委員会におきましてもあらかじめその点について考慮はなされておったようでございます。しかしながら、事実問題といたしまして、一年たちました後に、事実上中毒の子供さん方の病院に通われることも、臨床上ではすでに治癒といったようなことでもございましたし、またさらに引き続き少しでも異常を訴える、あるいは後遺症のおそれのあるといった方々につきましては、病院のほうに、あるいは医療機関のほうに来られるように、その旨お知らせしておったところでございますけれども、事実上そういった方々もなかったということで、後遺症の問題は立ち消えになったといったのが事実ではなかったかと思います。
  102. 東中光雄

    ○東中委員 そうではなくて、たとえば昭和三十五年の九月二日に厚生大臣あてに、精密検診と被害者救済についてという陳情書がこの中毒の子供を守る会から出されています。また、それに対しての回答がないままに、四十二年になって自主的にこの会として精密検診を実施せざるを得なくなってきた。そういう経過があるのではないですか。三十五年九月二日厚生大臣あてに出された陳情書、それについての処理はどうなっていますか。
  103. 浦田純一

    ○浦田政府委員 確かに三十五年の九月に守る会のほうからそのような陳情書が出ておるということがございました。それで、これにつきまして岡山県のほうで後遺症の検診をしたいという計画を持ったようでございますけれども、事実上それが何か守る会のほうとのお話し合いがつかなくて、結局実施されなかったというふうに聞いております。
  104. 東中光雄

    ○東中委員 厚生省としては、この陳情書に対してどういうふうにするということをきめて指導されたのですか。岡山県がかってにやったということじゃなくて、厚生省はどうでしょう。
  105. 浦田純一

    ○浦田政府委員 一番問題の核心でございました岡山県をまず中心に考えまして、そこで実施したらということでもって、県のすることについてこちらとしては指示し、あるいは協力するという立場でございました。
  106. 東中光雄

    ○東中委員 いま守る会の人たちは、被害者の名簿あるいはカルテの写しをぜひほしい、先ほど申し上げましたように、当初厚生省が指示されて各府県が一斉に調査をした資料があるはずなんですが、厚生省としては、その被害の実態、後遺症の実態を明らかにしていく、こういう観点から見て関係者、特にその専門の医師にそれを示すということをやられる意思はないのかどうか、その点をお聞きしたい。
  107. 浦田純一

    ○浦田政府委員 事件発生後、先ほども多少触れましたが、いわゆる後遺症の有無について全然関心がなかったわけではございませんで、その旨、五人委員会においても特に触れておったところでございますけれども、事実上、その一年後以降はこのようなことでもってお医者さんを訪れる方々がなかったということでございまして、カルテその他の保存の期間というものもございまして、一昨年、丸山教授その他の方々によって問題が指摘され、その段階におきましてさっそく当時の記録について、厚生省といたしましてもその保存の状況、さらにそれらの取りまとめということについて関係の都道府県に依頼し、通知したところでございます。しかしながら、残念ながらそのようなことでもって事実上記録がほぼ残っておったというのは岡山県にとどまったのでございます。また、森永乳業株式会社のほうにも、当時の記録、ことに患者の方々の名簿といったものについて残ってないかといったようなことについて問い合わせもしたところでございます。しかしながら、これは一応は患者さんのほうの御了解といいますか、いわば個人の秘密に属するということもございまして、森永のほうも遺族の方々にその点の御了解を求めたといったようなことで、ある程度の数の名簿は公開したといったようなことでございましたけれども、全数を明らかにするということはいまになってはあとうべくもないということでございます。厚生省といたしましてもその点については極力努力いたしているところでございますけれども、以上のような時日が経過したという点とそれから個人の秘密に属する点もある、一人一人の御了解を得なければならないという点もございまして、その点については慎重に考えてまいるべきことだと考えるのでございます。
  108. 東中光雄

    ○東中委員 厚生省にあった記録はどうなっているのですか。
  109. 浦田純一

    ○浦田政府委員 厚生省には詳細な、患者さんのいろいろな記録をとどめた書類はございません。
  110. 東中光雄

    ○東中委員 関係の記録はいまもあるわけですか。
  111. 浦田純一

    ○浦田政府委員 当時の事件の概要あるいは当時出しました通知その他の行政上の記録が残っております。
  112. 東中光雄

    ○東中委員 府県の関係でいいますならば、現に厚生省に対して三十五年の九月に陳情書を出して、そして岡山県でも動いているし、要するに後遺症は一応ないという発表を厚生省がされて、しかし五人委員会も必ずしもそれを断定しているのではなくて、少しはあり得るということをほのめかしておった。そういう状態で、現実に三十五年にそれがきておるわけですから、そうしたら関係のところでは当然、たとえば十年の保存期間といっても、それからまた少なくとも十年保存しておくということにならなければ、後遺症が起こってきたときに現に前の状態がわからなくなってしまう、いまそういう事態が起こっているわけですけれども、そういう非常に不都合な結果になるわけですけれども、なぜそんなものは廃棄されたりなくなったりするのですか。実際はあるのじゃないのですか。
  113. 浦田純一

    ○浦田政府委員 後遺症に対する見解は、確かに五人委員会でもその点をほのめかされておられるわけでございますけれども、当時の小児科医のほうの専門の方々の御意見、また実際にそれを診察し、治療されたお医者さん方の御意見、当時の医学界での御意見というところの結論といたしましては、まことに遺憾なことでございますけれども、当時の知見といたしましては、後に丸山教授の指摘したような事実が実際上起こり得るというふうなことについては、いわば多少配慮が足りなかったということで、記録は確かに、医療法にどうなっておりましょうと、あるいは行政上の記録の保存期間というものがどうなっておりましょうと、保存するにこしたことはないのでございますけれども、当時といたしましては、その点に対する配慮がなされなかったままに、普通どおりの書類の保存様式に従って保存され、処分されたということでございまして、また名簿につきましては、当初から厚生省のほうには残っておりませんので、何も隠しているということではございません。
  114. 東中光雄

    ○東中委員 森永の会社のほうには名簿はあるはずで、厚生省としては、現に守る会を通じて、守る会と交渉しながらそういう後遺症についての調査をやっておる、この段階で、被害者側の団体に対してそれを提示して協力してやっていくべきだというふうな方針を、あるいは指導を森永に対してやっておられるのか、おられないのか、その点どうなんでしょう。
  115. 浦田純一

    ○浦田政府委員 森永のほうに対しましてそのような照会をいたしたことはございます。しかしながら、先ほど申しましたように、全般の名簿を機械的に取り扱うということにつきましては非常に問題があろうかと思います。それで当時は、一々森永のほうからこの該当の方々の御了解を得て、その上で発表したといったようなことになっておるわけでございます。厚生省といたしましては、機械的に全部これを公開するというふうに持っていくことについては、いささか問題があろうかと思います。
  116. 東中光雄

    ○東中委員 ここに、昭和四十六年二月二十一日の岡山県中央労働会館における森永ミルク中毒の子供を守る会と森永乳業株式会社との第三回交渉の確認議事録があるわけですが、この中でいわゆる守る会のほうが、両当事者間で交渉をしてこの話し合いは進めていくべきであって、厚生省その他拘束介入は受けないという原則を確認しようじゃないかというふうなことを提案したのに対して、森永としてはそういう確認はできないというふうに言っているのですね。だからいま厚生省が拘束介入をやっているというふうにとられている節が非常に多いわけです。いまの記録の問題にしましても、昭和四十五年の二月二十六日に厚生省が出されておる守る会への回答では、厚生省自身の考えとして森永にカルテの写しを提出するようなことは指示しないという回答を守る会にしておられる。後遺症が出てきてずいぶん問題になっている、それを何とか解決しなければならないという立場にある厚生省が逆の方向に進んでおられる。こういう回答を現に出されておるわけですね。こういうことで、いま拘束介入をしない、排していくということを、森永としてはそういう確認はできないという議事録を確認議事録の中に書いているわけですが、厚生省は一体どういう態度でこの問題について接しておられるか、お聞きしたいわけです。
  117. 浦田純一

    ○浦田政府委員 そのとき森永さんがどのようなことで答えを拒否されたか知りませんが、厚生省といたしましては、全般的な国民の健康、保健に関連するという立場から、たとえば後遺症が実際にあるのかどうか、またあるとすればどういったような形であるかといったような事実については、それは当然行政責任として調査すべきものと考えております。しかしながら、現に起こりました中毒患者に対する補償といったようなことになりますと、これはやはり当事者の間でもって対々でお話し合いになることでありまして、私どもとしてこれに介入するということは、これはいかがかと考えております。
  118. 東中光雄

    ○東中委員 しかし、先ほども申し上げましたように、この事件が起こったときの経緯からいえば厚生省が直接介入されて、そして各県に指示を出されて五人委員会をつくって、そこで後遺症なし。一斉検診も厚生省の指導で、しかもその診療の基準も厚生省の介入といいますか行政指導でやられておるという状態で進んできているわけですから、いまになったら、一般的な問題だけであって、この問題については関知しない、こういうふうな答弁は全く無責任きわまりないということになるわけです。  それで、私お聞きしておきたいのですが、緊急に介護を要する症状重篤な被害者に対して直ちに救済措置をとらるべきだ。次々に死んでなくなっていかれる方がずいぶんあるわけです。ここに学会で出された「森永ミルク中毒の子供たちの現状」というものを私読んでみましたけれども、ずいぶんこれはなまなましくて、ほんとうに十五年間全く苦しんできた人たち、その中でなくなっていっているという状態が次々に報告されているわけです。こういう状態について、緊急な介護を必要とするそういう症状重篤の被害者に対して直ちに救済措置をとらるべきだ、私は当然のことだと思うのですが、厚生省はそういう点、この事件についてどういうふうにお考えになっているか、お聞きしたいと思います。
  119. 浦田純一

    ○浦田政府委員 これが直接森永の砒素ミルクによる中毒患者並びにそれに伴うところの後遺症であるということでありますれば、もちろんその線でもって、ことに森永が第一次的な責任を負って、医療もまた生活も、また慰謝と申しますか、そういった辺のところの補償もすべきであると考えております。また、一般的にそのような病人がおられるということは、それぞれの医療補償あるいは公費負担あるいはその他の形でもって医療あるいは生活上のめんどうが見られるものと思っております。
  120. 東中光雄

    ○東中委員 今後全被害児が安心して検診、治療、養護などが受けられるような恒久的な措置、これも当然確立されなければいかぬと思うのですが、その点厚生省はどうでございましょうか。
  121. 浦田純一

    ○浦田政府委員 ただいま岡山におきまして、当時の中毒患者の方々の検診を実施中でございます。丸山教授も明確にこれが後遺症であるというふうな表現はしていないのでございます。医学的にその辺のところも明確にしなくてはなりませんし、この検診が、守る会の方々、またそちらのほうからの御推薦の専門の先生も入れて実施されておりますので、公正な結果が出るものと思いますが、それを待って考えるものと思います。なお、現在までのところ、検診実施数は四百一名でございますが、その中で異常を認められた方は七名でございます。しかしながら、これはいずれも、たとえば尋常性白斑、あるいは急性腎炎、白癬、つまり水虫、あるいは異型肺炎、尿路感染その他でございまして、いまのところ後遺症の有無とは関係ないのではないか、後遺症というふうにはいえないのではないかということでございますが、これらの異常のある方々につきましても受診するように現在手配をいたしておるところでございます。
  122. 東中光雄

    ○東中委員 時間がありませんので、最後にもう一点だけお聞きしておきたいのですが、森永乳業が守る会に出した文書の中にこういうのがあります。  これは一月三十日付でありますが、昭和四十四年十月後遺症問題が提起された、そういう中で、「幸いに、厚生省が再検査に踏み切られ、モデルケースとして岡山県を指定されましたことは、ご承知の通りでございます。厚生省の監督をうけている幣社といたしましては、一存で事を処理することは許されないのは申すまでもなく厚生省が岡山県に検診の実施を委嘱された以上、この問題に関する限り、弊社としましてはすべて岡山県を通じことを運ばねばなりません。岡山県協立医療陣の先生方のご検診は、岡山県調査の一環のお仕事としていただくよう希望しております。また岡山県以外の自主検診に関しましては、厚生省からご指示をうけておりませんので、幣社が厚生省をさしおいて直接交渉をすることはいたしかねます。」、こう言っているのです。厚生省がまるで縛りをかけているみたいなことになるわけです、百三十万出したということで。これは森永会社がそう言っているわけです。厚生省はむしろ後遺症がなくなったということを発表したりしているんだから。それが、いま起こっているといって学界で大きな問題になっている。現になまなましい被害が一ぱい出て、新聞だってずいぶん報道しています関西関係では、四国、中国、近畿全体にわたる大きな問題になっています。それが、岡山県以外は厚生省が――これだと、御指示を受けておりませんので、当社としては何ともいたしかねます、こういう答弁になっているのですが、厚生省、そういう態度をとっておられるか、むしろ積極的に後遺症問題についての実態を究明し補償すべきものは補償する、そういう指導をされていないのか、その点いかがでしょう。
  123. 浦田純一

    ○浦田政府委員 森永のほうがどのような意図でそのようなことを申したか知りませんが、厚生省は、事実問題として、まあその事件のいわば震源地が岡山であった。それからまたいろんなその当時の記録もよく保存されておる。また、その後の体制も非常にほかに比べまして整っておるということで、岡山県に委嘱して後遺症の判定、それらの有無につきましての検診を行なわせているところでございます。もちろん、その他のところにつきましても、決して精密検診あるいはさらには中毒患者の後遺症の有無ということについて、調査をし研究することについてやぶさかであるわけではございません。しかし、これは何ぶん医学的な問題でございますし、その点でいわば最もいろいろな条件のそろっておる岡山県でもって、ひとつ精細ないわゆる診断基準と申しますか、そういったようなものをつくりまして、その結果でこれを全国的な問題として考えていきたい、こういう順序でございますので、いたずらに岡山県のみに限局して問題を解決しようとするものではございません。
  124. 東中光雄

    ○東中委員 どうも言われることがよくわからないのですが、資料が整っておるところではさしあたりそれは進める、しかし散逸しているところのほうがむしろ被害者がやみからやみに葬られていくということになりかねないわけですから、それだけによけい対策考えなくてはいけないという筋合のものだと思うのです。なるほど、さしあたり取っかかっているのは岡山県ですけれども、むしろそれ以外のところに対してこそよけいそういう指導がされ、進められなければいけない、こういう性質のものだと思うのです。森永は厚生省がワクをはめているように言っているけれども、それは事実ではないということの確認とあわせて、そういう方針をはっきりしておいていただきたい
  125. 浦田純一

    ○浦田政府委員 この後遺症の問題は二つの面があろうかと思います。一つは、いかにして当時の患者さん方を発見するかということでございますそれから一つは、当時のそういった患者さん方を発見した上で医学的な精密検診、診断、調査をするということだろうと思います。  前者につきましては、かねて、一昨年来、ことに丸山教授の指摘がございましてから、いろいろ県を通じてお願いしているところでございますけれども、少なくとも記録からの患者さんをさがし出すということについては、これは大きな壁にぶち当たるということで、むしろ積極的に声をかけて患者さん方のあるいは家族の方々のほうからの申し出をいただくことをお願いするということが考えられるわけです。これは別途十分に考慮しなくてはならないことであろうと思います。  もう一面は、やはりしかるべく条件の整ったところで、いわゆる診断基準と申しますか、そういったものも確立して、全国一斉に同じ目で見ていくということが、医学的には非常に大事なことであろうかと思います。それにつきまして岡山がいまその問題の解決で検査を進めておる、こういうことでございます。
  126. 東中光雄

    ○東中委員 いま言われていることは、診断基準というのは前の五人委員会のあとつくられて、それで後遺症がないということになって、ずいぶん問題になったわけです。そのこと自体についていま大きな問題があるのだ、学界でもそれについていろいろ批判的な意見が出、学界自身が自主的に進んでいるという問題があるのだということ、これを第一点として申し上げておきたいのと、もう一つは、「岡山県以外の自主検診に関しましては厚生省からご指示をうけておりませんので、弊社が厚生省をさしおいて直接交渉をすることはいたしかねます。」、直接交渉することは厚生省との関係でぐあいが悪いのだというふうに森永が言っているのですけれども、そういう立場に厚生省はあるのかないのか、その点を端的に答えていただきもい。
  127. 浦田純一

    ○浦田政府委員 厚生省はいたずらにこのようなワクをはめるという立場にはございません。
  128. 東中光雄

    ○東中委員 時間がありませんから、質問を終わります。
  129. 天野公義

    天野委員長 横路孝弘君。
  130. 横路孝弘

    ○横路委員 時間もだいぶおそくなりましたし、このあと楢崎先生の質問もありますので……。  いま森永の砒素の事件が議論されていたわけですけれども、私、サリドマイドの関係について、ちょっとこれからの対策についてお尋ねをしてみたいと思うのですけれども、その前に、一体いまサイドマイド児といわれているものは何名いるのか、厚生省のほうでどのように把握されているのか、その点からお答えいただきたいと思います。
  131. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 二百名と聞いております。
  132. 横路孝弘

    ○横路委員 従来、この森山報告によりますと、百九十七名ということでしたね。その父母の会の調査ですと二百名をこえて二百七名ないし八名といわれておる。これはおたくのほうではどのような調査をやられておるのか、その辺のところをきちんと実態を確認されておるのかどうか、その辺はどうですか。
  133. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 私どものほうは森山調査を従来から承知しておりまして、それによっていろいろ実態を把握しているつもりでございます。ただ、先生のおっしゃるように、父母の会と、あるいは他のいろいろ情報によりますと数字が一致いたしません。そういう点は今後の精密な調査が必要であると私ども考えております。
  134. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、その精密な調査というのはこれからおやりになるわけですね。
  135. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 必要性は認めております。
  136. 横路孝弘

    ○横路委員 大臣、その必要性じゃなくて、これはもう発生してから森永事件と同じように相当たっている事件ですね。それで人数さえわからないというのは、これは一体厚生行政として何をやっているのかということを言いたいわけですがその必要性があるということをおっしゃった。いま裁判が進行しておりますね。そういう過程の中でもやはり厳密に皆さん方のほうは因果関係を争っておられるわけですけれども、因果関係を争うにしても、とにかくいろいろいわれている人がどうなのかというふうにまず調査しなければならぬということが一ぱいあるわけでしょう。森山調査というのは回答を求めているだけで、それについて一人一人当たって確認したわけじゃないわけですね。ですから、やはり必要ありと認めていただくならそれをさらに調査をする。これはいずれ裁判の状況によってはそういう事態というのはどうしても必要になってくると思いますので、その点明確に調査をされて人数を確定されるという作業を厚生省としてやるということを明確に御答弁いただきたいと思います。
  137. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 先生がおっしゃいましたように数字がいろいろございます。これにつきましてはいろいろサリドマイド児の実態があるのだろうと思います。それからまた個人のいろいろの家庭の状況あるいはプライバシーその他の問題があるので、いろいろな調査をすればいろいろな数字が出るということはわかりますけれども先生がおっしゃったように、やはり裁判の成り行き、私どもは現在和解の申し入れを裁判所にいたしておりますが、そういうものも進展によりましては先生のおっしゃるように調査が必要だ、かように考えております。
  138. 横路孝弘

    ○横路委員 その対策の面ですけれども、園田厚生大臣の当時に一応その対策の概要というのができたわけです。あれから三年ほどいままで経過をしているわけですけれども、実際やってきたことは何かということになりますと、四十三年から四十五年までに千二百万電動義手の開発のためにということでお金を投ぜられた。しかしこれは四十六年度以降は打ち切りになっていますね。一体サリドマイド対策としていままで厚生省は何をおやりになってきたか簡単にお答えいただきたい。
  139. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 サリドマイド対策としての特別対策は、いま仰せのように研究費を予算に計上しまして、それに基づきます電動義手の開発でございます。したがいまして、そういう電動義手というものを今日まで予算に計上してそれを交付しているわけでございます。ただ四十五年度でそれが一応打ち切られたというお話でございますが、四十六年度におきましては科学技術庁のほうの特別研究費というような形で、現在科学技術庁と相談いたしまして四十六年度も新たな形で動力補装具というものを開発するようにいま準備を進めているところでございます。
  140. 横路孝弘

    ○横路委員 四十三年の六月一日におたくのほうでサリドマイド対策の概要というようなことを発表されたでしょう。そのときに項目が幾つかあったはずです。その項目についてはどうなのですか。
  141. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 補装具の研究開発が一点でございます。  それからもう一つは、補装具を研究開発いたしましても、それの装着訓練なりあるいは機能訓練なり、そのような機能訓練等の訓練をやる施設が実は十分でないわけでございます。したがいまして、そういう機能訓練のセンターというものをつくるということで、すでにこれは東京と徳島県のほうに二カ所すでにでき上がっているわけでございます。
  142. 横路孝弘

    ○横路委員 それだけじゃないでしょう、そのとき発表された概要というのは。しかもいまその訓練センターだって全国八カ所ということじゃなかったのですか。
  143. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 あの当時の発表はそのとおりであります。機能訓練のセンターというものを大体各ブロックごとにつくっていくということでございました。それが現在まで二カ所でき上がっているわけでございます。そこで今後の対策の中にその残された分が当然入ってくる、こういうように私どもは思っておるわけであります。
  144. 横路孝弘

    ○横路委員 今後の対策とおっしゃったって、四十三年のときにそういう概要の柱というものを立てて対策をきめたわけでしょう。きめたわけですね。その八カ所の残りの六カ所というのはいつまでにそれをつくるのか。それから、さらに就学資金や技能習得の資金の給付というようなこともその項目の中に入っているわけでしょう。問題になったときだけ適当なことを言って、あとほうっておくなんてそれはだめですよ。それはきちんといつまでにおやりになるのか。裁判は裁判でこれはいいわけですよ。皆さんのほうは、裁判が起きたからというので、あとおれのほうは知らぬ、裁判で決着がつくのだといってほうっておられる。しかしそうじゃないのですね。行政の責任者としては、これは明確に責任があるということを何べんも答弁されておるわけですね。しかも、こういう対策概要まで発表されていながら、それが現在まで実現をしていないというのは、私はやはり役所の姿勢として、行政として許されることではないと思うのです。その辺のところどうですか。厚生大臣、そういう事情おわかりですか。
  145. 内田常雄

    内田国務大臣 私はあまりよく事情を存じませんけれども、しかしそれはおっしゃるとおりでございまして、薬の副作用どころではない、毒性でこういう不幸なお子さん方が生まれましたことは、国の一般の心身障害児対策にさらに私は特別の考慮を払うべきような大事件であると思いますので、当時国が対策として取り上げんとしたもので残されたものがありますならば、それは可能な限り実施の方向に向かって努力すべき事柄であると思います。
  146. 横路孝弘

    ○横路委員 この問題が明らかになって以来、各厚生大臣というのは必ず、これは法律的にはむずかしい問題であるけれども、政治的、道義的には責任を痛感しております、何とかしますという答弁、いままで何回も繰り返してきたわけですよ。そうして四十三年のときに、園田厚生大臣がじゃやりましょうということになって、おたくのほうで発表されたわけですね、対策の概要というものを四項目。そのうちやったということは何かといえば、一項目目の千二百万円ほどお金を出して電動義手を開発する、これもまだ実用化するところまでなかなかいっておらないし、いろいろ問題点があるように指摘されておるような現状です。それでほかの問題についてどうなのかということ。いつまでにやられるのか、あるいはやられるような計画をお持ちになっておるのかどうか、それをやはり明確にしてもらわないと、問題になったときだけ世の中にちょこっと発表して、あとは知らぬよというのでは、これは許されることじゃないと思うのですね。どうですか、その辺もうちょっと明確にお答えいただきたい。
  147. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 確かにあの時点で四項目の発表をいたしているわけでございますが、そのうち現在まででき上がったものを先ほど申し上げているわけでございます。残された問題点は、まだあの発表以外に幾らかの問題はございます。したがいまして、私どもといたしましては、あの当時の発表と、それからその後の諸外国の動静、それからいわゆるサリドマイド児の保護者の方々のニード、こういうようなものを考え合わせまして、新たな時点で対策を現在考えている、こういう段階にきておるわけでございます。たとえば先ほど申し上げましたように、施設をつくって施設に収容するという行き方では、どうも諸外国の例を見ましても問題があるようでございますので、やはりできるなら家庭に置いて、そうしていろいろ家庭の立場においてやっていく、相談をやっていく、訓練、そういうようなものをやるような体制というものを今後やっていくのが保護者のニードにも合うのじゃないか。また諸外国の先例からいってもそういう方向に今後持っていくべきだということで、現在新たな観点で対策をいま練っているところでございます。
  148. 横路孝弘

    ○横路委員 そんな抽象的な答弁ではなかなか納得ができないのでありまして、じゃ一体サリドマイド児の父母というのは国に対して何を要求しているのかというのは御存じですか。それは何を要求しているのか。施設に入れるのじゃなくて、自分の子を普通の子供と同じように教育も受けさせたいし、訓練もさせたいというのも一つの要求ですね。あと、皆さん方対策の概要として発表した中にも、いまこの父母が要求している事柄がここにあるわけでしょう。サリドマイド児の父兄の方々はいろいろ団体をつくって活動されているが、何を一体いま国に望んでいるというように皆さんのほうではお考えでしょうか。
  149. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 公式的には聞いておりませんが、私どもがいろいろな会合等で関係者等の意見をいろいろ聞いているところでは、やはりいま私が申し上げましたように、巡回相談体制というようなこと、巡回療育相談体制、こういうようなものをもうちょっときちんとしてもらいたいというような声が非常に多いわけでございます。それからやや卑近な例としましては、たとえばいわゆる他人の手を借らないで、自分だけの力で用を足せるような、そういう携帯式のトイレ、そういうようなものをいろいろ要望をしておられるように聞いております。
  150. 横路孝弘

    ○横路委員 そういう要望のほかに、皆さん方がその対策の概要として発表された中の資金の問題ですね。就学資金なり技能習得資金なりの資金というものを皆さん方発表されているわけでしょう。このこともまた、いま父母にとっては一番大きな要求の内容になっているわけですね。そうすると、確かに新しい要求が出てきている、いま指摘された点がそうだと思うんですね、そういうものと、いままですでに発表されているようなこと、これはまたやはり要求に合う方向であるならば――私はどうも厚生省の腹の中というものは、とにかく裁判で何とか決着をつけようという腹があって、それまで対策のほうはほうっておこうということが基本的な姿勢としてあるようにどうも感ずるわけでありますけれども、ほんとうにサリドマイド児を皆さんのほうで責任を感じてやられようという姿勢があるならば、いまの時点で、ことしの予算だってこの問題はほとんど解決されていないわけでしょう、具体的な内容をやはり明確に明示すべきじゃないかと思うのです。その裁判の中で和解の申し入れをしているということでありますけれども、テーブルにつけと言ったって、具体的ないままでの行政に対する不信感というものがやはりあるわけです。四十三年にこういう発表をされながら、いままでその一部分しか実現していないそういう国の行政に対して、とにかく、ただテーブルに並べ並べと言ったって、これはなかなかそういうわけにはいきませんよ、という不信というものがサリドマイド児の父母の方たちに強くあるわけですよ。その不信をまずなくすことからやらなければならぬ。それは皆さん方行政においてきちんとそういう姿勢を示すことだと思うのです。いま抽象的にいろいろお話しになりましたけれども、それはいつまでどういう展望をもってやるのか。厚生省のほうで検討されているというお話ですけれども、一体どこでどのように検討されているのか、もうちょっと具体的な中身というものをお話しいただきたいと思うのです。
  151. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 諸外国の先例がございますので、そういう諸外国の例等もいまおりおり視察をして調べている段階でございます。したがいまして、そういう新しい情勢に基づきまして、わが国のサリドマイド対策というものをどうするかということをいま省内において検討いたしているわけでございます。決して私どもも、この問題を先に見送る、そういうような気持ちでやっているわけではございませんので、いずれ早急に成案を得たい、こういうふうに考えております。
  152. 横路孝弘

    ○横路委員 厚生大臣としての、この問題についての今後の基本的な方向なり姿勢というものをひとつ明確にお答えいただきたいと思います。
  153. 内田常雄

    内田国務大臣 私は、昨年厚生大臣に就任をいたしたものでございまして、従来の経緯につきましてはつまびらかにいたしておりませんが、しかし私が承知いたしておりますところによりましても、これは薬の安全性の問題として、こういう不幸な子供たちが生まれておることと、また、原因は何であっても、現にその子供たちがまことに気の毒な、手足の不自由な状況を生じておるというこの二点に着目をして厚生省行政を進めるべきだと思います、これは抽象的といわれるかもしれませんが。したがって、第一の点に対しましては薬の有効性、安全性というようなことにつきまして、十分その承認などの際における準備の資料を申請者をして整えしめ、あるいは厚生省みずからがやれることはやり、さらにまた薬を承認した後における副作用報告というようなものも、いまは、あの事件後、新しい薬などにつきましては継続して提出せしめる仕組みになっておるようでありますが、再びこのような不幸な事態が起こらないように、薬事行政というものを注意深く施策を進めることと、それから心身障害を起こしたこういう子供たちの幸福を増進するための施設や仕組みを充実することが、私は厚生省の当然なすべき仕事であると思います。そのほか、こうしたお子さんを不幸にして持たれるに至った親ごさんの気持ちなどにつきましても、十分私はそれをおもんぱかって、所要の、でき得る限りの措置を進めることが厚生省の当然の役割りだと思いますので、これまでになし得なかったものにつきましては、いま聞いておりましても、関係局長もたいへん苦しい答弁をいたしておるようでございますが、私は、一そう督励をいたしまして、それが有効なこと、でき得ることにつきましては、進めさせるようにいたしてまいりたいと思います。
  154. 横路孝弘

    ○横路委員 時間がございませんので、もうあと一、二点だけお伺いしたいんですけれども、このサリドマイドを含む薬ですね、これについては厚生省としてはどのような措置をおとりになったわけでしょうか。
  155. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 昭和三十二年にこの製造を許可しておりますが、事件が起きました直後、三十七年九月に回収しております。
  156. 横路孝弘

    ○横路委員 それは、厚生省として回収されたんですか。
  157. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 大日本製薬に回収を命じたわけでございます。
  158. 横路孝弘

    ○横路委員 薬そのものについてはどうなんですか、製造、販売とか。製造そのものについてはどういう措置をとられたわけですか。
  159. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 製造許可は二年ごとに薬事法で行なっておりますので、当然、いまは製造許可はしておりません。承認は、薬事法上は、このまま形としては残っております。
  160. 横路孝弘

    ○横路委員 形としてはまだ残っているわけですね。これはどうして取り消しをなさらないわけですか。
  161. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 従来から、回収をしましたりあるいはメーカーが製造しない場合は、従来からずっと、承認の形はそのまま残っております。
  162. 横路孝弘

    ○横路委員 薬事法上の解釈の問題としては、一応承認の撤回なり何なりという形で取り消しできるということがあるわけですね。それはもっぱら裁判のためだけじゃないのですか。そうじゃないのですか。いまもなおかつそのサリドマイドを含む薬というものは取り消しされないで残っているわけでしょう。これはほかの、キノホルムを含むものについての関係も同じですね。その辺のところはやはり少し、そういう薬というものについて整理をする、いまもいろいろ審議会等で検討されておるようですけれども、やはりそういうものはできるだけ明確に取り消しなら取り消しをしてしまうということが必要じゃないかと思うのですけれども、それは取り消しなさらないのはどういう理由なんですか。
  163. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 製造許可なりあるいは実態上の措置でいろいろ措置がなされておりまして、承認がそのままになっておりましても別に問題がないのでそのままになっているわけでございますが、そういう点は大臣のほうからもいろいろ指示がございまして、先生がおっしゃいましたようないろいろな法律の運用あるいは解釈ということも可能なようでございますので、今後は薬効問題の整理等ともにらみ合わせまして整理をいたしたいと考えております。
  164. 横路孝弘

    ○横路委員 薬事法そのものに非常に大きな問題があると私は思うのですけれども、次の機会にその点は質問したいと思います。
  165. 天野公義

  166. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、厚生省設置法の一部改正内容になっております公衆衛生審議会、これは四つ審議会廃止して統合するわけですが、その中の伝染病予防調査会と関連をして、実はいまから三十三年前の大牟田における爆弾赤痢と呼ばれる世界でも二つの大事件に数えられる問題について質問をいたしたいわけであります。  なぜ三十三年前のこの種の事件を取り上げるかと申しますと、私は二つの点でこれを取り上げたいわけであります。一つはこの集団赤痢の原因が、真相がいまもって不明であると私は思うからであります。したがって、この歴史的な事実の真相を明白にすることは、これは主として乳幼児あるいは子供がほとんどでありますが、七百名の死者と一万二千名の罹患者が出た事件でありますが、これらの遺族の方々に対してもその真相を明白にする必要があるし、また誤った原因説のために何らかの形で犠牲を受けた人あるいは迷惑をこうむった人、こういう人たちのためにもこれを明らかにする、それが一つの問題点であります。  いま一つは、この事件が実は今日的な意味を持っておるという点であります。私は、いまから二年前に、昭和四十四年八月四日、国会法に基づいて「在日米軍及び自衛隊における化学・細菌作戦に関する質問主意書」を提出したのであります。この年は七月二十一日に例の沖繩のGBサリンの事故を契機として、沖繩の毒ガス問題が世界的な関心を呼びました。もちろんわれわれとしても国会においても取り上げましたし、そして沖繩における毒ガス撤去の問題は今日まだ尾を引いておるわけであります。このときに私は、ここ数年いわゆる生物化学兵器、CB兵器の問題についていささか勉強してまいりました。で、この沖繩の事故があった段階で、その前の問題点をまとめてみて主意書として出したのであります。この質問の中に当委員会で最近問題になりました例の塩素ガスの問題も入れておったわけであります。私は、自衛隊が人体実験をしておるのではないかという問題をこの質問主意書の中に取り上げております。昨年予算委員会において、厚生大臣も御案内のとおり、武山の例の十三名の犠牲者を訓練中出しました少年工科兵、あの学校でアジュバントワクチンの実験が行なわれておる、これを取り上げた。これは大臣御案内のとおりであります。  この二年前の主意書で取り上げたのは、陸上自衛隊の勝田部隊の隊員に対して、「成人集団人体実験による赤痢及び食中毒予防効果の追跡」という目的で実験が行なわれておる、その実験の期間は昭和四十二年六月一日から昭和四十二年七月三十一日まで。試験に使われた材料は株式会社ミドリ十字で開発した乳酸菌製剤ポリラクトン、これであります。私はきょう直接この問題には触れません。  この説明だけしておきますと、千六百名の自衛隊の隊員に対してポリラクトンを赤痢の予防効果をためすために使ったわけです。実験した。赤痢予防効果を実験するには当然赤痢が起こるということを予想しなければならない。ところがちょうどたまたま、これは偶然ということになっておるが、赤痢患者が自衛隊の中から出たのであります。そしてこれまた偶然その実験期間中に大量の食中毒事件が自衛隊の中で起こったのであります。だから非常にぐあいよく、このポリラクトンの実験の効果がうまいところ出たということになっておるのであります。そこで私は、私の疑問とする点をいろいろここに出しておりますけれども、この食中毒の点、これはいわゆる細菌戦、生物兵器の戦争では食中毒菌ポリスチヌ菌をどう使うかがいま世界的な課題になっておると思います。ポリラクトンは食中毒予防効果をためすわけでありますから、この人体実験をしたとすればちょうど食中毒が起こった点はたいへん怪しい、あるいはその実験の効果を大ならしめるためにその種の菌が使われたのではないかという疑いを私は持っておるのであります。  そういう疑いをなぜ私が持つか。過去旧日本軍はその種のことをやっておったからであるという推定のもとに、私はここで有名な石井部隊、第七三一部隊の問題、それから昭和十二年九月末から起こった大牟田の爆弾赤痢の問題を書いておるのであります。ところが内閣の出された私に対する答弁書を見ると、この大牟田の赤痢の問題については一言も触れられていない。念のためにここだけ読んでみます。   「大牟田市の集団赤痢事件の教訓――かつて昭和十二年九月、大牟田市で集団赤痢発生事件がおこった。(患者総数一万二千三百三十二人、死者七百十二人)   当時、この事件の調査団(内務省、予防局防疫課、県衛生課、医学陣、陸軍省医務局のほか久留米十二師団軍医部が参加)は約五十日間にわたって調査し、「水道の汚水以外にはとうてい考えられない」と原因を推論した。このため大牟田市の当時の水道課長、塚本久光氏は引責辞職をしいられた。   しかし、(1)水道から赤痢菌は検出できなかったこと。(2)水道汚染説の決め手となった水源井の番人の幼児、田中広稔ちゃん(昭和十一年二月生れ)は赤痢でなく、消化不良であったことが診療医師の署名押印した診断書、カルテに明記されていること。(3)水道水を飲用している全家庭から患者が発生しておらず、三井三池染料工業所(七月二十三日、衆院外務委員会で、わたくしが指摘したベトナム戦争枯葉剤二四五TCPを製造している三井東圧化学の前身)の周辺の住宅街に患者が集中していること。   以上から水源汚染説には今でも疑問をもつ人人が多い。塚本課長の当時のメモによれば、「真相は赤痢爆弾の爆発によるものではないか」と疑問をなげかけている。   塚本メモは憲兵隊や陸軍小倉工廠の情報として、九月二十二日、二十五日、二十六日の三日間に三井三池染料の秘密工場、N工場(硫化染料工場)で爆発事故がおこっており、負傷者は羽犬塚伝染病院に運ばれたらしいことを指摘し、メモ用紙の余白には「特に秘」と記入して「十月二十五日、憲兵ノ言ニヨレバ、赤痢菌弾ヲ三井染料工業所ニオイテ、目下、海軍関係八割、陸軍二割、製作シツツアリ。戦地二使用中ナルコト。ナオ赤痢菌弾ノ件ハ小倉工廠調査ノ結果ナル旨聴取セリ」(メモ原文のまま)と添えられており、当時の彼の疑惑の目がここにむけられていたことがわかる。   以上の事実は細菌戦用としてすでに赤痢菌弾が日本で製造されて日支事変で使用されていたことを立証するものであり、細菌研究部隊第七三一石井部隊の活動といい、C(化学)兵器開発の元祖はドイツであるが、B(細菌、生物)兵器開発の元祖は日本であったことが明らかである。この大牟田市における集団赤痢発生事件と、この園田、時岡研究論文とは果たして無縁のものであろうか。 これが私の質問主意書のこの件に関する全文であります。そこでこれについての政府の答弁書は何も触れていないわけであります。  で、念のために聞いておきますが、私の質問書の中でこういう点があるわけであります。「昭和六年「関作命第三九八号其一」によって(旧)ハルピン郊外の平房につくられた第七三一部隊、いわゆる石井部隊(部隊長、石井四郎)関係者は現在、防衛庁、自衛隊関係機関に何人就職しているか。」  この質問書に対して政府答弁書は、「現在の防衛庁職員のうち、いわゆる石井部隊(旧陸軍の関東軍防疫給水部)に勤務した経験のある者は二人である。」、こういう答弁をいただいておるわけであります。  このお二人のいまの役職と申しますか、どういうところにおられるか。
  167. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 お二人のうちお一人は、現在防衛大学校の教授をなさっておられまして、防衛学を担当しておられます増田美保先生でございます。さらにもう一方は、現在陸上自衛隊の衛生学校長をしておられます園口忠男陸将でございます。
  168. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで本論に入りたいと思います。  厚生省には、この事件に対しての正式の記録はございますか。
  169. 浦田純一

    ○浦田政府委員 当時の公式の記録は厚生省には残っておりません。
  170. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 厚生省の水道課は、水道汚染による伝染病集団発生の事例集というものを編集されたことがありますか。
  171. 浦田純一

    ○浦田政府委員 昭和三十七年に、水道課の内部の教育資料と申しますか、それを編集いたしまして、日本水道協会でもって発行しておるということがございます。
  172. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この疫病の流行事例の第一にあげられておるのは、この大牟田市の爆弾赤痢である。そしてその原因は水道汚染であったということがその中に書かれておる。ということは、厚生省としては水道汚染説をとっておるということになるわけですね。
  173. 浦田純一

    ○浦田政府委員 当時は内務省でございまして、厚生省はその後に発足したのでございますが、仕事厚生省に引き継がれたわけでございます。この大牟田の集団赤痢の原因につきましては、これは公衆衛生といたしましてもあるいは水道学会といたしましても非常に関心の高い事件でございまして、公式の記録は残っておりませんけれども、当時の関係学会には詳細にこの種の記録が残っております。しかしながら、厚生省といたしまして正式に、この原因が何であるかといったようなことについての見解は発表してはおりません。当時のこの資料集は、いわば当時の学会誌等の記録をもとにして編集いたしましたものでございます。
  174. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 しかし厚生省の水道課が、この疫病流行の事例集を編集して、その第一番にこの大牟田をあげて、つまり水道汚染による伝染病集団発生の事例なんですから、それの第一にあげておるのですから、だから当然厚生省としてはこの水道汚染説をとっておる、だれが見てもそう思うのは普通じゃございませんか。
  175. 浦田純一

    ○浦田政府委員 もちろん水道課の編集いたしましたものでございますし、これは当時行なわれました疫学的調査に対する考察からいたしましても感染経路は水道によるものが妥当であるというふうに判断いたしております。
  176. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この水道犯人説と申しますか、水道原因説に対して、それは違うのだという異論と申しますか、異論が正式に提出されたか、あるいは厚生省が編集しておるその事例集のそのときの公式記録の訂正または再調査を、だれからか要請された事実がありますか。
  177. 浦田純一

    ○浦田政府委員 当時の水道課長の塚本さんの御子息の方から、水道水原因説についての異論が出されております。これに対しまして、厚生省の、先ほど指摘の水道課編集の資料の訂正並びに事実の再調査ということについての要望書が出されております。
  178. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは正確にはいつですか。
  179. 浦田純一

    ○浦田政府委員 昨年の九月のことでございます。
  180. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それに対して、厚生省はどのようにこれを取り扱うことになりましたか。
  181. 浦田純一

    ○浦田政府委員 当時の調査団に参加された方々のいろいろなお話、それから関係各学会の記録その他を収集し、さらに、もしあればということでもって当時の内務省の記録の発見などにもつとめておるところでございます。ただいまのところ、最終結論は得ておりません。したがいまして、まだ塚本さんのほうには御返事は差し上げておりませんけれども、私どものいままでいろいろと調査いたしましたところからは、やはり感染経路は水道によるものであるというふうに判断するのが妥当であろうかというふうにいまの段階では考えております。
  182. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それではただいま塚本氏の提出された問題点について調査は継続中であると、それは確認してよろしゅうございますね。
  183. 浦田純一

    ○浦田政府委員 何ぶん現在より三十数年の前のことでございまして、いろいろとむずかしい点はございますけれども、幸いにそのときの調査に責任ある地位で参加されました医学者の方もおられますので、その方々になお詳しくお話をお聞きしたいという機会を近々もつ。いままではその方からの電話その他のお話でございましたけれども、特に問題が問題でございますので、さらにそれらにつきましては検討してまいりたいと思っております。
  184. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その異論を提出された塚本という方はどういう方か御存じですか。
  185. 浦田純一

    ○浦田政府委員 詳しくは存じません。が、たしか学校の先生をしておられるというふうに聞いております。
  186. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この点は本件にとっては重要でありますから若干紹介をいたしておきます。  この事件当事大牟田市役所の水道課長をされておりました塚本久光さんのお子さんでございます。この塚本さんは水道原因説がとられたために引責辞職をされておる。もちろん市長も助役もやめられました。三名やめられた。しかし当時塚本久光さんは三十九歳の若さでありました。非常に有能なもちろん水道の技術者であります。そこで塚本さんは嘱託として市の水道課に残られまして、そして自分の信じておるその原因の調査に対して努力をされました。しかし当時は御承知のとおりの日支事変が起こって三カ月日の事件であります。当時の情勢の中では、この塚本さんの努力というものは実らなかったわけです。もちろん塚本さんの口も封じられたわけであります。戦後塚本さんはこの爆発事件の真相を市民に訴えるために市会議員の選挙に出られました。しかしこれは落選されたわけであります。そしてこの塚本さんは、昭和二十七年に真相を明かし得ないまま残念だということを一言残してなくなられたわけですが、このお子さんが唯義さんでありますが、唯義さんがいま言った異論を提出されておるわけです。お子さんの立場としては、父親の遺志を継いでこの真相究明に当たられておる、こういう関係になっておるわけであります。  そこで、この水道原因説というのは、時間がありませんから簡単に言うと、第三水源井、つまり第三の水源井の番人であった田中という方のお子さん、当時二歳が赤痢になっておって、そしてお母さんがおしめを洗たくをして、そのおしめを洗たくしたところがその井戸水であったというふうなところから、そういうふうにきめつけて水源説をとったわけですね。とすると、もしそれが事実ならば、田中さんはいわば七百名の犠牲者を出したその爆弾赤痢の重大な責任を負う元凶ということになるわけですね。ところが、この田中さんが水道事業に功績が非常に大であったということで表彰されておりますね。これは御存じですか。
  187. 浦田純一

    ○浦田政府委員 田中さんの表彰されたということは承知いたしております。これは日本水道協会が永年勤続者ということで、はなはだことばは不適当かとも思いますが、いわば一律の基準でもって表彰の選考をしておられるといったことで、表彰を受けておるというふうに聞いております。
  188. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ここにその表彰の写しがあるのです。「田中喜代太殿 あなたは三十年以上の久しきにわたり水道事業に精励されその進歩発達に尽されました功績はまことに顕著であります よって日本水道協會表彰規程により勤続賞を授与しこれを表彰します 昭和三十七年十月十七日 日本水道協官長東京都知事東龍太郎」、こうなっておる。これほどの、この事件の不始末をやった、子供が大部分である七百名の死者を出したこの事件の原因をなした井戸の番人の、自分の子供の、家族の不始末でそれほどの死者を出したということが真実であれば、幾ら長年つとめておっても、こういう表彰状を出すことはおかしいじゃないですか。逆にいえばこういう表彰状を出されたということは、この水道汚染説なるものがただ推定だけの問題で、ほんとうはそうでなかったかもしれないという問題がある。だから表彰状も出されておるのではないか。これは私の推論ですが。だからこういう点についても一応常識的には疑問が出てくるわけですね。  そこで話を進めたいと思うのですが、結局あなたも御承知のとおり、学者から、いろいろな点から今日その第三水源井の井戸のポンプの構造等も資料として出てまいって、それで検討した結果、全然あのパイプから、バキューム式ですから、真空式ですから菌が入りようがない。だから多くを言いません。少なくともこの第三水源井で田中さんの子供が赤痢であったからということで爆弾赤痢が起こった、そのことだけは完全に否定されるわけですね。多くを言いませんけれども否定される。第一、田中さんのお子さんを見たお医者さんは、これは北里研究所に行かれておって非常に有名な先生なんですよ。その人が責任をもって赤痢じゃないということを診断しておるのです。そして菌もこの段階として発見されていない。それはともかくとしてポンプの構造自体もそうなっていない。入りようがない。そこでこの点は水掛け論になるかもしれませんけれども、権威ある学者の人もそれを証言しておるので、これはひとつまじめに取り組んで検討してもらいたいと思いますね。  そこで、じゃ一体何が原因なのかという問題が出てくる。そこで、その次に問題になるのが、私の質問書でもいっておりますとおり、ちょうどそのときに三井三池染料工業所のN工場で爆発事件が起こった。この爆発事件と何らかの関係があるのではないかという一つの疑問が出てまいります。そこでもしそうでないならばそうでないといつ反証が要る。  そこでお伺いをしたいのですが、この三井三池染料工業所N工場、爆発事故があったことは認めております。一体何の爆発があったのか。N工場は一体何をつくっていたのか。化学兵器との関係はどうであったのか、こういう点について何か掌握されておる情報がありますか。
  189. 浦田純一

    ○浦田政府委員 当時大牟田市にありました三井三池の染料工場、現在の三井東圧化学でございますが、当時そこで何をつくっておったかということで、通産省のほうを通じまして当該会社に照会いたしましたところ、当時、当該工場は各種染料や火薬中間物の塩素化、いわゆるクロリネーションの工程を行なっていた模様でございます。そのとき扱いました製品名その他につきまして、詳細にございますが、よろしかったらお答えいたします。
  190. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間がありませんから、いま私が申し上げた点は別途資料としていただきたいと思います。  そこで、このときに爆発事故による負傷者をすぐ隔離したわけですね。塚本メモによるとこうなっております。「八女郡羽犬塚町某所二至リ調査セルニ現在二十三名病臥セルヲ以テ何故カヽル所二来テヰルカ及其此処二至リ度ル理由ヲ聴取セルニ対シ病人日ク我々ハ確ク三井ヨリ秘密ヲ命ジラレ申上グル事ヲ得ズト返事セルラ以テ憲兵ノ職権二於テ取調ベル旨ヲ宣シ取調ペタル結果其ノ申立タル所我々八二十五日夜爆発ト同時二人事不省トナリ気付キタル時ハ防毒面防毒衣ノ人二依リ「トラック」二搬入サレ当所二運ビ来ラレ療養ヲ受ケヰル旨申立当初即死一名ト現在ノ二十三名ナル旨聞知セリ」、この某所がどこであるかということは羽犬塚伝染病院の疑いがある、こうなっておる。  そこでまた御調査をいただきたいのは、この爆発事故によって、その当時三井三池染料工業所がどのような処置をとられたかという点もお願いしたい。そして二十三名となっている死傷者の住所、氏名、よろしゅうございますか、これをぜひ御調査をいただきたいと思います。  そこで、赤痢菌弾ではないかということを塚本メモは指摘をしておるわけですが、この赤痢菌弾に関係をして若干聞いておきたいことがあるわけであります。それは、先ほど申し上げた第七三一部隊、石井部隊、これはわりといろんな書物によって、その内容は世間に知られておるが、そのほかに第一〇〇部隊というものがあったはずであります。この第一〇〇部隊は一体存在をしておったかどうか、存在しておったとすればどういう任務を持った部隊であったか、防衛庁のほうからお答えをいただきたいと思います。
  191. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 先ほど申し上げました第七三一部隊におられました増田教授並びに園口陸将からいろいろ事情をお聞きしましたが、第一〇〇部隊の内容については全然承知しないというようなことでございました。
  192. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ここにこういう資料があるのです。「細菌戦用兵器ノ準備及ビ使用ノ廉デ起訴サレタ元日本軍軍人ノ事件二関スル公判書類」、これはハバロフスク裁判であります。この中に 当時の関東軍司令官山田乙三の尋問調書があります。この中にいまの一〇〇部隊に触れられております。「細菌戦準備関係ノ第一〇〇部隊ノ業務二関シテハ、謀略工作、即チ流行病細菌ニヨッテ牧場、家畜、貯水池、河川ソノ他ヲ感染サセル等ノ任務が第一〇〇部隊二課セラレタトヲ言ワネバナリマセン。之レニ関シテ第一〇〇部隊ハ、其ノ業務上関東軍司令部情報部ト密接ナル関係ヲ保ツテ居マシタ。第一〇〇部隊ノ一般的任務二鑑ミ私ハ、同部隊ニ於テ細菌兵器ノ製造並ビニ其ノ用法ノ研究ニ関スル然ルベキ業務が行ワレテイタ事ヲ知ッテ居りマシタ。」ずっとあります。このような部隊であったわけです。  なぜ私がこれを申し上げるかというと、この上牟田事件は、第三水源汚染説が否定されれば、じゃ一体何が原因なのか。そうすると、このN工場の爆発と関係があるのではないか、これが一つ出てくる。しかし学者の指摘するところでは、あれほど急激に赤痢患者が発生するということはやはり水道以外にない、これは常識的な推論である。私もそうであろうと思います。そうすると、第三水源が原因でなかったらどうなるかというと、もう時間がありませんから、私の推理を結論だけ申し上げますが、実は毛利恒之という放送作家がおりまして、この方もたいへん熱心にこの問題の研究をしておられます。これは大牟田出身の方でありますが、この方の推論もそのように思われるわけですけれども、このN工場の爆発物が、赤痢菌弾といわないまでも、何らかの形で毒ガスと関係があったのではないか。そして、その事実を隠蔽するために何らかの工作が行なわれたのではないか。つまり毒ガスの爆発であっても――これはS・ローズの「生物化学兵器」という本でありますが、この中で、ベトナム戦争において、この種の毒ガスでも、これを汚染されれば特に幼児は非常な被害を受けるわけでありますが、「南ベトナム解放民族戦線の一地方病院の医療責任者である女医のツイバー博士は、彼女が治療したある幼児の死亡例について語ってくれた。化学薬剤で汚染された果実を食べた五歳の男の子が、病院にかつぎこまれてきた。その子ははげしい腹痛を訴え、吐き、出血をともなった下痢をおこし、つづいて虚脱状態に陥り、ついには死亡した」、つまり疫痢の症状なんですね。このとき、あの爆発が起こってすぐの状態は赤痢菌があったかどうか調査されていないのです。いま言ったような疫痢の状態であった。これは、あなた首を振られるなら、いまからやりますよ。資料をこんなに持ってきている。だから、あなたが首を振るなら、その資料を整えてお答えください、きょうでなくていいから。  そこで、これは私の推理です。この爆発は、赤痢そのものとは関係なかったが、疫痢状態の病状と関係があったのではないか。そのときは、どんどんなくなってお医者さんもその原因を追及するなんというひまはなかったのです。だから赤痢菌を検出するというようなことは行なわれていない。その直後、九月二十五日の段階では、だから疫痢状態であったかもしれない。だから、そういう戦争に使ってはならない化学兵器をN工場でつくっておったというようなことが国際的にばれる。日支事変も始まった直後だから、それを隠蔽するために赤痢菌が水道のどこかで入れられたのではないかという一つの推理が出てくる。そういうこととも関係がありますから、これは原因がわからないのですけれども、しかし七百名死んでおるという事実は厳然としてあるのです。これははっきりしなければならないのです。だから、きょう申し上げたいろいろな点で、ぜひこの大牟田の事件については可能な限り真相を究明し、歴史的な事実を明らかにするのは当然ですよ。真相究明をぜひやっていただきたい。この点について最後に大臣のお考えを聞いておきたい。
  193. 内田常雄

    内田国務大臣 話を私初めて承りましたが、厚生省が設けられます以前のできごとでもあり、その当時の資料があるかどうか私も確信は持てませんけれども、水道というのは厚生省の事業でありますから、将来水道汚染等の参考になる場合もあるでしょうし、資料が得られます限り調査の御協力はいたして、そして、先ほどの水道課長さんのお子さまもたいへん御熱心だということでございますので、何かお役に立つことがあれば御協力を申し上げるのがよかろうと思います。政府委員の諸君も聞いておりますので、できるだけの資料をさがして、いままでは水道説だということになっておるようでありますけれども、何かまた違った資料が出てくれば、それはそれなりに御報告を申し上げたい、かように考えます。
  194. 大出俊

    ○大出委員 関連して一言だけ……・。実は私時間がないので遠慮いたしましたが、中国紅十字の李徳全女史が日本にお見えになったとき、重慶の遺骨問題で遺族の方々が集まって資料をつくった時代があるのですけれども、問題は、遺族のみなさんにすると、ちょっと究明不完全なままでいたし方がないというわけにはいかない気持ちがあると思うのですよ。ですから、いまの大臣お話は、わからぬわけではありませんけれども、サリドマイドの話もそうでありますが、遺族の皆さんのお気持ちというのは、やはり可能な限り聞いてあげて、可能な調査はしてあげておきませんと、やはり私どもとしても心残りになりますので、ぜひひとつ前向きで御調査をいただいて、機会を改めまして文書でもけっこうでございますから、御納得のいくような、最大限の御措置をいただきたい。この点お願いでございますが、ぜひひとつお願いしたいと思います。
  195. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、この真相の究明いかんによっては、国家犯罪ということが考えられるのです。だから、厚生省は人ごとのように、塚本さんが出てきたから可能な限り調べるなんていう、そういう軽い事件じゃないのですよ。これは国家犯罪の可能性があるから、厚生省としてこれを調査する責任がある。私が疑問を提出しておる以上やってください。そうしてこの問題は、いまの大臣の答弁は前向きの答弁と私は承っておきますから、ひとつ責任をもって調査をいただきたい、そういう点で問題を残しておきたいと思います。
  196. 天野公義

    天野委員長 本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。
  197. 天野公義

    天野委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、これより採決に入ります。  厚生省設置法の一部を改正する法律案を採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  198. 天野公義

    天野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、ただいま可決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  199. 天野公義

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――   〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  200. 天野公義

    天野委員長 次回は、明二十一日金曜日午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後十時五分散会