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1971-05-15 第65回国会 衆議院 内閣委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年五月十五日(土曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 天野 公義君    理事 伊能繁次郎君 理事 佐藤 文生君    理事 坂村 吉正君 理事 塩谷 一夫君    理事 大出  俊君 理事 鈴切 康雄君    理事 和田 耕作君       阿部 文男君    伊藤宗一郎君       加藤 陽三君    鯨岡 兵輔君       國場 幸昌君    辻  寛一君       中山 利生君    西銘 順治君       葉梨 信行君    森  美秀君       森下 元晴君    山口 敏夫君       上原 康助君    木原  実君       北山 愛郎君    楢崎弥之助君       横路 孝弘君    伊藤惣助丸君       宮井 泰良君    受田 新吉君       東中 光雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中曽根康弘君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制次長  吉國 一郎君         防衛庁参事官  高瀬 忠雄君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁長官官房         長       宍戸 基男君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      江藤 淳雄君         防衛庁衛生局長 鈴木 一男君         防衛庁経理局長 田代 一正君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁総務         部長      長坂  強君         防衛施設庁総務         部調停官    銅崎 富司君         防衛施設庁施設         部長      薄田  浩君         防衛施設庁労務         部長      安斉 正邦君  委員外出席者         大蔵省理財局国         有財産第三課長 楢崎 泰昌君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十五日  辞任         補欠選任   笠岡  喬君     西銘 順治君   篠田 弘作君     森  美秀君   古井 喜實君     國場 幸昌君   堀田 政孝君     森下 元晴君   川崎 寛治君     北山 愛郎君   鬼木 勝利君     宮井 泰良君 同日  辞任         補欠選任   國場 幸昌君     古井 喜實君   西銘 順治君     笠岡  喬君   森  美秀君     篠田 弘作君   森下 元晴君     堀田 政孝君   北山 愛郎君     川崎 寛治君   宮井 泰良君     鬼木 勝利君     ――――――――――――― 五月十四日  靖国神社法案成立促進に関する陳情書外二十  件(第二  四九号)  同外二件  (第三〇四号)  靖国神社国家護持早期実現に関する陳情書外  六件  (第二五〇号)  旧軍人に対する恩給改善等に関する陳情書外三  件(第二五一  号)  恩給等受給者処遇改善に関する陳情書  (第二五二号)  自衛隊高蔵寺弾薬庫撤去に関する陳情書  (第二五三号)  厚木基地跡地利用に関する陳情書  (第二五四号)  同和対策事業推進に関する陳情書  (第二五五  号)  台湾残置私有財産の補償に関する陳情書  (第二五六号)  岐阜県上石津町の寒冷地手当引上げ等に関する  陳情書  (第二五七号)  大久野島周辺海域に投棄された毒ガス兵器引揚  げに関する陳情書  (第二五八号)  靖国神社国家管理反対に関する陳情書外一件  (第三〇三号)  地震防災対策に関する陳情書  (第三〇六号)  国家公務員労働基本権確立に関する陳情書  (第三二五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出第一七号)      ――――◇―――――
  2. 伊能繁次郎

    伊能委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が所用のためおくれますので、委員長の指名により、暫時私が委員長の職を行ないます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴切康雄君。
  3. 鈴切康雄

    鈴切委員 昨日は総理をこの内閣委員会にお呼びいたしまして、かつて自民党の参議院選挙対策委員会全国会議発言されました改憲問題についていろいろ御質問いたしましたけれども、時間の制約がございまして、なかなか思うような質疑ができなかったのでございます。  きのうの総理発言から感じますことは、自主憲法を改正することになりますと、ますます一つの歯どめがなくなってしまうような感じを受け、非常に国民が危惧する方向へと進んでいくのではないか、かように思うのであります。従来のようななしくずしの考え方、そしてそれに既成事実を加えて、その上においていろいろと憲法拡大解釈をしてきた、そういうことはもはや許されることはできないと私は思うわけであります。  きょうは、私はそういう意味から、自主防衛における自衛力限界にもやはり憲法限界というものがあろうかと思うのでありますが、その点についてどのように判断をされておるか、まずお伺いする次第でございます。
  4. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 憲法上の限界と申しますと、やはり前文、九条、そのほか憲法全般のニュアンスというものから考えまして、日本防衛力は衛自権を保障するに足る最小必要限度の専守防衛の力である、一般的にそう言われると思います。そういう面から、装備におきましても、核兵器あるいは攻撃的兵器他国脅威を及ぼすような攻撃的兵器を持つことはできない。   〔伊能委員長代理退席委員長着席〕 それから、徴兵制度はわれわれの解釈ではやはりできないものと心得ています。多数説がそういうことであるそうですから、多数説に私は従います。海外派兵はもちろん同様であります。そういうような基本的な考えに立ちながら、非常に大事なことは、運用の問題があると思います。  運用の問題につきましても、いまのように自衛権を保障するに足る必要最小限度運用方針をもってまた臨まなければならない、過剰防衛は許されない、そういう考えに立ってやらなければならぬと思います。
  5. 鈴切康雄

    鈴切委員 憲法の許す必要最低限自衛力、これは許されるというわけでありますけれども、しかし非常に抽象的であります。その点、相手方対応条件によって自衛力限界としての考え方が変わってくる。そうなりますと、非核であった場合、許される憲法上の限界というものはどう考えておられるか、その点についてお伺いをします。
  6. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはり防衛というものはある程度相対性を持っておるものでありますから、日本列島防衛ということがその眼目であり、日本列島防衛について必要最小限度ということになりますと、原則的には本土並びに列島それからその周辺海域というようなことがわれわれの関心対象でなければならぬと思います。
  7. 鈴切康雄

    鈴切委員 ちょっとこれは話が変わってまいりますけれども、外務大臣は、日本の国はもう三海里説の時代ではない、いわゆる今度の世界会議においては十二海里説を支持する、このように発言をされているわけでありますけれども、防衛庁長官はどのようにお考えになっていますか、その点について。
  8. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は運輸大臣のころからそういう考え方を持っておりましたが、その考えがやはり妥当ではないかと思います。
  9. 鈴切康雄

    鈴切委員 そうなりますと、領海領空権というものもおのずと三海里説とは変わってくるわけであります。現在、四次防あるいは想定される十年間のいろいろの一貫した考え方というものは、すべて三海里説というものを一つ限度として装備考えられているのではないかと思うわけでありますが、そうなりますと、十二海里説というふうになりますと、しょせんはそれに対する装備というものはより以上密度を濃くし、そして現在の防衛をしていくという観点に立つならば、十二海里説を結局支持をしたという時点になれば、しょせんは私は四次防、そして並びにこれから予想される五次防等考え方もおのずと変わってくるのではないかと思うのですが、その点についてお伺いいたします。
  10. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 三海里説というものは、私はよく知りませんが、昔聞いた話では、昔の大砲を撃ったときの弾着距離、そういうものが基本で三海里説が発達したということをたしか国際法のときに聞いたことがあります。現在のようなこういう段階になりますと、三海里、十二海里というものは防衛装備等においてはそれほど大きな影響を与えないのではないか、ただし、防衛方針運用等につきましては、やはりわれわれがいろいろな点において変化が出てくるということを考えなければならぬと思います。
  11. 鈴切康雄

    鈴切委員 三海里説領海を守るために、要するに今度のこの四次防は、憲法の許す最小限度のいわゆる装備というものを想定をされているわけであります。今度十二海里というものを領海に持った場合、おそらく膨大な日本周辺防衛というものは、もうおのずと現在の最小院度装備力でこと足りようとは私は思いません。そうなりますと、十二海里というものになったとたんに、現段階の四次防というものの手直し、そしてそういうものを考えていかなければ、十二海里も六海里も三海里も同じだというようなものの考え方というのは成り立たないのではないか、そのように私は思うのですが、その点についてお聞きしたい。
  12. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、装備においてはそれほど影響を受けるものではないと思います。航空機にしても艦艇にしても、そのほかの諸般の防衛装備にいたしましても、そう影響は受けないと思います。ただ運用におきまして、いままでよりは注意するということは出てくるだろうと思います。
  13. 鈴切康雄

    鈴切委員 それほど影響を受けないであろうというけれども、やはりまるっきり三海里と十二海里と同じ取り扱いということは、もうこれは防衛考えられるはずはないわけであります。しょせんは幾らかの手直しというものはおのずと必要になってくる。またそれに対するところの領海、さらに周辺海域、そしてまた制海制空権を確保するということになれば、当然また範囲は広がってくるわけであります。そうなってきた場合に、三海里と十二海里が同じなんということは、これは常識的に考えられないことですが、もう一度防衛庁長官にお伺いいたします。
  14. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 防衛庁よりもむしろ海上保安庁とか水産庁かなり影響があるのではないかと思います。防衛庁のほうは装備におきましてほとんど影響を受けることはないので、先ほど申し上げましたように、運用上の方策において影響を受ける、そういうことであると思います。
  15. 鈴切康雄

    鈴切委員 海上保安庁とかそういうところに影響があるといって、防衛庁で海のほうも空のほうも全然影響がないなんということは常識的に考えられないのですね。沖繩だって今度返ってきて、三海里で守っておったのが今度十二海里になってまいります。あるいは今度北のほうは場合によっては競合するような場所が出てきます。それにもかかわらず、現在の装備でできるなんということになれば、それはもはや最小限度装備より以上の装備を予定をしているというふうにしか私は考えられないわけであります。その点についてもう一度防衛庁長官にお伺いいたします。
  16. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 現在の航空機とか艦艇とかそのほかは、三海里、十二海里という程度の変化については、それほど特に影響を受けるような装備ではございません。みんなそれよりも長距離のものを持っておるわけでございます。内火艇とかあるいは小舟艇についてそういうことがあり得るかもしれませんが、それにしてもそれほど影響は受けないと思います。なるほど競合する場所も出てくるでしょう。それは現在においても、三海里においてもそれはもうすでに出ている場所がございます。そういう部面がふえるという可能性北方方面においては多少あるかもしれません。しかし四次防に影響を及ぼすというような大きな影響はないと私は思います。
  17. 鈴切康雄

    鈴切委員 領海領空が三海里が十二海里になってまいりますと、おのずと周辺のいわゆる制海権、制空権というものも、現在考えられておられる制海制空権よりも、やはり広範囲な幅を予想されなくてはならないと私は思うのですけれども、その点について公海あるいは公空の上におけるところの、いわゆるこちらの制海制空権というものは三海里よりより以上広く必要である、そのように判断をされているかどうか、この点についてお伺いいたします。
  18. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本防衛に必要な自衛権行使の許される最小必要限度というものがやはり基準になっておるのでありますから、三海里が十二海里になっても、そういう範囲はおのずときめられておるので、したがって影響はないと思います。それよりも領海が広がれば、海賊行為とか交通管制とか、そういう面で海上保安庁とかあるいは水産庁でいろいろな影響を受けるのではないかと思っております。
  19. 鈴切康雄

    鈴切委員 いま言われましたように、三海里も十二海里も、海里説が変わっても、その周辺制海制空権というものは変わらないのだ、つまり基準があるというふうにいま言われたわけでありますけれども、その基準というものはどこにしかれる基準でしょうか。その点についてお伺いいたします。
  20. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 つまり日本列島防衛に必要なために自衛権を発動する必要最小限度のそういう良識と申しますか、国際的にも妥当であると考えられる、そういうエリアと申しますか、そういうものがその場合にケースバイケース考えられるわけです。そういう意味判断基準、つまり自衛権発動を許される必要最小限度の局面、そういう意味基準を申し上げておるわけであります。
  21. 鈴切康雄

    鈴切委員 それではケースバイケース考えられるということは、相手方領海領空のきわまでは公海あるいは公空ということになるわけでありますけれども、少なくともケースバイケースということになれば、その時点まで考え防衛力整備計画であり、そして制海制空権であるかどうか、その点についてお伺いしたい。
  22. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 原則として日本列島防衛ということであるから、日本の近海、領海並びにその周域、そういうことを申し上げている考えは変わりません。
  23. 鈴切康雄

    鈴切委員 ずいぶんおかしな話で、意味が通じないわけでありますが、それ以上やっても水かけ論になりますので、次に進みます。  他国脅威を与えないという意味は、攻撃的な兵器は持たない、他国脅威を与えるような攻撃的な兵器は持たないというわけでありますけれども、具体的にはどういう意味であるのか。攻撃的兵器防御的兵器区別はどこでするのか、それについてお伺いいたします。
  24. 久保卓也

    久保政府委員 まず攻撃的兵器防御的兵器区別をすることは困難であるということは、外国専門家も言っておりまするし、われわれもそう思います。なぜかならば、防御的な兵器でありましてもすぐに攻撃的な兵器に転用し得るわけでありますから、したがいまして私どもが区別すべきものは、外国脅威を感ずるような、脅威を受けるような攻撃的兵器というふうに見るべきではなかろうか、そう思います。そういたしますると、脅威を受けるような、あるいは脅威を与えるような攻撃的兵器と申しますると、たとえばICBMでありますとか、IRBMでありますとか、非常に距離が長く、しかも破壊能力が非常に強大であるといったようなもの、あるいは当然潜水艦に積んでおります長距離弾道弾ミサイルなどもこれに入ります。また米国の飛行機で例を言うならば、B52のように数百マイルもの行動半径を持つようなもの、これも日本防衛力に役に立つということではなくて、むしろ相手方に戦略的な攻撃力を持つという意味脅威を与えるというふうに考えます。
  25. 鈴切康雄

    鈴切委員 なかなか攻撃的兵器あるいは、防御的兵器というものの区別はむずかしいというわけでありますけれども、先ほど言われておりました兵器の中で、科学の発達、そして技術開発によって、今日の攻撃的兵器というものはあすの防御的兵器となり得るかどうか、それはわれわれが考えたときに流動的に考えていいのか、それとも固定的に考えるべき問題であるのかどうか、その点についてお伺いいたします。
  26. 久保卓也

    久保政府委員 それもたいへんむずかしい問題でありまして、たとえば現在偵察衛星というものが飛んでおります。これは一国が核ミサイルを発射するのを探知して、それに対する防御考えるわけでありますが、しかし偵察は同時に相手の地形その他の偵察も可能でありまするので、攻撃の用途にも役に立つということで、一がいに申せません。たとえばICBMをわれわれは相手方脅威を与えるような攻撃的兵器というふうに申しましたけれども、レアード国防長官は国会の中で、自分は防御的な兵器であると考えるというふうな言い方もしております。したがいまして、一般的な議論であるよりも、日本の立場においてどういうものが相手脅威を与える攻撃的な兵器であるかというふうな判断に立つべきであり、またただいまの御質問については遠い将来、八〇年代のことについてはちょっとわかりにくいと思います、といいますのは、八〇年代になりますと相当科学進歩が今日よりも異質的に進歩しそうであるというような前提で考えますると、大体七〇年代ぐらいの見通し、今後十年ぐらいの見通しであれば、ただいま私が申し上げたような区別で一応間に合うのではなかろうかというふうに思います。
  27. 鈴切康雄

    鈴切委員 そうしますと、この防衛白書に出ております、「B52のような長距離爆撃機攻撃型航空母艦ICBM等は保持することはできない。」というふうに書いてあるわけでありますが、これは要するに攻撃的兵器であるからというので例をとられたのではないかと思うわけであります。しかしそれも、七〇年代においては確かにこれは攻撃的兵器だというふうに名前があがるけれども、しかし八〇年代においてはこれが防御的兵器に変わるかもしれない、そのように言われたと判断してよろしゅうございますか。
  28. 久保卓也

    久保政府委員 いま例示されましたものが防御的兵器になるかもしれないということを私が申し上げたのではございません。一応十年後ぐらいまで見通せばいまのような区別で間に合うと思いますけれども、八〇年代になるとどういうふうになるかわかりませんので判断がつきにくい。しかしいまの私の知識からするならば、それもやはり比較的、何と申しますか科学進歩といいましても、偵察衛星とかそういった式のもの、あるいは核の相当進歩したものと違ったいわゆるコンベンショナルな、通常兵器的な分野にも属しますので、おそらくはやはり戦略的な、あるいは相手方脅威を与える兵器であるというものにはただいま例示されたものは入るだろう、八〇年代をこえても入るだろうという感じはいたします。しかしそれに例示されていないような、どういうものが上がってくるかわからない、そういうことについて防御攻撃かなかなかむずかしかろうということを申し上げたかったわけであります。
  29. 鈴切康雄

    鈴切委員 いまの御答弁でまいりますと、やはり科学進歩技術開発によって、対応条件によっては攻撃的兵器防御的兵器に変わり得る流動性を持っている、そのようにいま私は判断をしたのですが、固定的として考えていいのか、流動的として考えていいのか、その点について、そのことばのところだけひとつ言っていただきたい。
  30. 久保卓也

    久保政府委員 あとでまたひっかかるかもしれませんけれども、むしろそういった科学的な進歩見通しというものは流動的に考えるべきなのが本筋だろうと思います。しかし、どういうふうになるだろうかということについての知識の持ち合わせはございません。
  31. 鈴切康雄

    鈴切委員 そういうふうになりますと、要するにここに書いてあります防衛白書の中の攻撃的兵器も、いつの間にか相手対応策によって防御的兵器だというふうに拡大解釈されていくおそれが多分にある、だから私は非常に危険だ、そのように思うわけであります。日本を取り巻くアジア諸国から、日本の国は軍国主義化してきた、そのように盛んに言われるわけであります。日本の国は脅威を与えてない、脅威を与えてないと実は言っているわけでありますけれども、日本を取り巻く発展途上国並び共産圏諸国においては、日本軍国主義はいまや現実の脅威であるというふうに事こまかく各国では言っているわけであります。そういうふうなことを考えたときに、やはり私は脅威を全然与えていないなどということは言えないのではないか。かなり大きく脅威を与えている、そういうふうに思うわけでありますが、その点について……。
  32. 久保卓也

    久保政府委員 軍事的脅威というものは科学的に冷たい目でもって計算されるものだと思うのです。またわが国周辺諸国は、当然わが国防衛力をそういう意味で冷たく計算をして考えているはずであります。しかるに、なぜ軍国主義ということばが起こるかということは、私はむしろ軍事的な面で見るのではなくて政治的に見るべきであろう。もちろん私が申し上げる筋合いのものではございませんけれども、やはり経済進出をすればあとから軍事が出てくるというのが第二次大戦以前の大国の例であります。これは歴史がそういうふうに証明をしておるわけであります。また日本がその例をたどったわけでありまして、そしてその被害を受けたのが東南アジア諸国であります。そうすると、経済が非常に進出あるいは日本経済が発展して海外にも出ていくということになれば、あと軍事能力がついてくるであろう。しかもその軍事能力というものは強大な力を持っているはずだ。過去日本はこういうことをやった、外国もまたああいうことをやっている、したがってこうなるであろう、そういった懸念がある。言うならば日本の業といいますか、そういうものをわが国はになっているわけで、そういう歴史的な所産、政治的な見通しというものを踏まえての軍国主義化あるいはその懸念ということでありまして、軍事的な能力という面から見ればそういうものはほとんどない。たとえばソ連が日本防衛力について軍国主義化ということを新聞、ラジオなどで言っておるでありましょうけれども、しかしその首脳部考えておりますこと、これはいろんなときに演説などで意見を発表しておりますけれども、彼らの脅威考えているのは米帝国主義であり、NATO侵略主義であり、西独軍国主義である。こういうものを脅威として考えておりますけれども、日本のことは全然あげておらない、そういうように私は思います。
  33. 鈴切康雄

    鈴切委員 それはあなたのほうの一方的な見方であって、他国はそういうふうな見方をしていないのであります。すなわち、中曽根長官の訪米の結果を総合し、それを四次防計画と比べてみると、日本支配層自衛隊量的増大最新兵器による装備と並んで、将来日本アジアにおける米国軍事冒険に直接加わるための準備を進めていることがはっきりわかるとか、あるいは自衛隊量的増大と戦力の増強とともに日本支配層核兵器に引かれているということがますますはっきりしているとか、日本軍国主義復活脅威はもはや討論の対象ではない、そのように相手方のほうは非常に脅威感じているということであります。あなたのほうは軍事的脅威というものはほとんどないのだ、こういうふうなお話でありますけれども、実際には軍事的な脅威感じているわけであります。その点やはり日本の国のひとりの言いのがれであっていいであろうか、私はそれを非常に心配をするわけであります。  それでは、抑止力というものの定義はどういうふうに解釈されましょうか。
  34. 久保卓也

    久保政府委員 抑止力というものについて定義を私は見たことはありませんけれども、一般的に申せられることは、一応の防衛力——防衛力というよりも安全保障力といったほうが正確でありましょうが、安全保障力を持つことによって相手国の自分の国に対する侵略を思いとどまらせるという意味での力、安全保障力を持っているということであります。いま安全保障力と申しましたのは、軍事的な防衛力以外に、たとえば国民の決心であるとか知性であるとか、そういったいろいろなものを総合しての意味であります。
  35. 鈴切康雄

    鈴切委員 抑止力にも顕在的抑止力と潜在的抑止力があるわけでありますけれども、その点のたてわけはどういうふうにお考えですか。
  36. 久保卓也

    久保政府委員 私はそういった区別を存じませんが、そういった区別をするならばこうだと思います。潜在的な抑止力というのは、たとえば他国に侵略を許さない、そのために国民が一致団結をし防衛に当たるという、そういった強い国防の意識というもの、これは中立諸国のスイス、スウェーデンあたりが特に強調しているところでありますが、そういったようなもの、それからたとえば法制、法律制度、そういったような防衛基盤といいますか、そういうようなものがそろっているというようなこと、民防なんかもそうでありますし、あるいは工場などが地下に入っているというようなスウェーデンのあり方、こういうものはおそらく潜在的なものでありましょう。顕在的なものというならば、これは軍事的な能力というものを中心にして考えたものではなかろうか。区分は存じませんけれども、あえてその区分に従って分ければそんなふうに感じます。
  37. 鈴切康雄

    鈴切委員 そうですね。顕在的抑止力というのは要するに軍事力、それから潜在的抑止力というのは先ほど言われましたように国防の意識あるいは外交、経済、それが総合的に加わって一つの安全保障というものができているわけであります。そうなると、どれもこれも離すわけにはいかないわけであります。  そこで顕在的な抑止力、すなわちそれは軍備、防衛力だということになるわけでありますけれども、それはしょせんは相手方脅威を与えているからこそ、それが言うならば抑止の役目を果たしているのじゃないでしょうか、どうでしょうかその点。
  38. 久保卓也

    久保政府委員 その点は違います。たとえばスウェーデンについてどの国が攻めてくるであろうか、スイスについてどこの国が攻めてくるであろうかということは、それぞれの国の人は明言をいたしません。公式には明言をいたしません。しかしながら内心では、つまり内輪では、自分はたとえばソ連だというような言い方をいたします。そうすると、ソ連はスウェーデンについて脅威感じているかというと、おそらく、私はソ連の立場にありませんからわかりませんが、脅威を感ずるはずがない。これはサーブ37とか、相当日本よりも空軍など強力なものを持っております。あるいはまた地下壕その他で防衛能力というものは完備しておりますけれども、ソ連が脅威を感ずるはずがないと思う。しかしながら、ソ連がスウェーデンを攻略することは可能であろう。しかしながらなかなかめんどうであるということはいえるわけです。つまりライオンとヤマアラシとどっちが強いかというと、それはライオンが強いと普通いわれるのですが、ライオンがハリネズミをやるということはなかなかたいへんなものであるから、そういうものは見のがしている。あるいはスカンクというものは弱い動物だから、これはかなわぬから逃げていきます。そういった戦わずして脅威を感ずることもあるわけで、確かにソ連があそこを侵略すればいろいろめんどうといいましょうか、なかなか困難が多いということで侵略を思いとどまるということであります。そういう意味からいうと、ある程度相対的なものがありますけれども、その相対制を高くする、それが抑止力を高めるということであって、私は脅威があるということと抑止力があるということとはイコール、同じであるというふうには思いません。
  39. 鈴切康雄

    鈴切委員 ずいぶんおかしな話ですね。防衛庁長官、安全保障力というのは総合的な一つ抑止力であります。その中に顕在的な抑止力というようなことばが入っているわけであります。純軍事的に見た場合に、やはり軍事力というものは相手方脅威を与えているがゆえに、それが抑止力になる、そのように私は判断をしないわけにはいかないわけであります。脅威がなかったならば、何もそんなものをつくる必要もなければ何でもありません。そういうことを考えてみますと、やはり少なくとも兵器というものはそれなりの脅威相手方に与えているということは私はいえるんではないか、そのように思うのですが、その点についてはどうでしょうか。
  40. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 抑止力にはいろいろな種類のものがあると思われます。たとえば米ソの関係においては、やはり脅威を与え合っているから抑止力が成立している、これは鈴切委員のおっしゃるとおりであると思います。原爆、ICBMを中心にするものが戦えば、モスクワ、ワシントンがすぐこれは壊滅される。そういう脅威を与え合って、それで帳消しになって中立、中和状態が続いておるわけですね。確かにおっしゃるとおりでありますけれども、しかし日本のような場合は、そういうような脅威相手に与えているのではなくて、むしろ日本相手が上陸しようとする場合にひどい目にあう、そういう意味において手控えさせる。そういう意味の、別の意味の、これも一種の意味においては侵略抑止力といえましょうが、戦争抑止力といえるかどうか、ともかく抑止力においてはいろいろなニュアンスのものがあって、そういう意味日本については侵略抑止力とはなるだろうと私は思います。
  41. 鈴切康雄

    鈴切委員 相手方日本の国を攻めてくるということについてこっぴどくやられるということは、要するに相手方脅威感じている証拠じゃないですか。また、いま米ソ間におけるところの核の均衡というものも、核があるということで一つはお互いに脅威感じているから抑止力になるわけであって、全然まるっきり日本の、言うならば防衛力相手方脅威を与えていないなんという、そういう詭弁は許されません。だから防衛白書の中に脅威を与えないなんという、こういう語句を使うということ自体が、私は非常に誤解を招く。自衛権があるということについてはだれしも否定をするものではありませんが、もはや第四次防のこれだけの装備を言うならばつくろうとしている現在において、全然それに対して脅威が与えられないなんということはあり得ないと思うのですが、その点もう一度……。
  42. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 脅威ということば解釈や定義によるのでありまして、日本のような場合に使われる場合には、これは脅威と一般には解されないわけであります。まあしいて脅威ということばを使えば、防御脅威という意味はあるかもしれません。しかしそういうものは一般には脅威とはいえないと思うのです。だから防御的実力という意味においてはいえるかもしれません。ですから脅威ということばをどういうふうにお使いになるかというそのニュアンスによって違うわけで、来たらこっぴどくやられるというのは、確かにそういう威力があるからなので、それは脅威ですけれども、しかしやはり相手が来なければそういうものは発動しないし、また日本に侵略という上陸その他の本土を中心にしたそういう行為が行なわれではじめてそういう相手方判断が生まれるのであって、こちらから能動的にそういうものを与えようとかなんとかというものではないわけであります。ですから、これは解釈や字句の使用の用法上の問題だと私は感じます。
  43. 鈴切康雄

    鈴切委員 核兵器については、小型の核兵器が自衛のため必要最小限度の実力以内のものであって、他国に侵略的脅威を与えないようなものであれば、これを保有することは憲法上可能であるか。非核三原則によって、政策としては持たないということを明らかにしているわけでありますが、非核三原則では、つくらない、持たないは憲法上の問題であり、持ち込ませないは政策上の問題というように聞いておりますが、政策が変われば当然持ち込みはあり得ると判断してよいか。
  44. 久保卓也

    久保政府委員 文字からいけばそうなろうと思いますけれども、佐藤総理が何べんも繰り返して申しておられますように、見通し得る将来においてそういうことをされることはなかろうと思います。ただ私が申してはあまりなんでありますから、政治的なことは佐藤総理の御判断の問題だと思いますけれども……。
  45. 鈴切康雄

    鈴切委員 防衛庁長官、ひとつこれについて……。
  46. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 政党政治でありますから、政党の考え方によって政策は動いていくものと思いますが、まあ自民党のいまの皆さんの考えを聞き、国民の世論の動向を見ますと、いまの政策がずっと継続されていくだろうと思います。さもないと選挙で負ける危険性がありますから、やはり政党というのは民心を中心に動いていくのが政党で、そこに主権在民、国民の歯どめというものがあるだろうと思います。
  47. 鈴切康雄

    鈴切委員 それが実は非常に危険なわけであります。きょうの新聞発表においても、海外派兵というものに対しての憲法を改正するというような意味のことも書いてありましたし、そういうことは政策上の問題でありますが、政策が変われば当然核の兵器というものは持ち込むというそういうおそれは多分にあろうかと思われるわけであります。保有ということばにもちょっとまた問題があろうかと思うのですが、たとえば持ち込んで持つというのと、それからつくって持つというのは、憲法上においてはどういうふうに判断されましょうか、法制局のほうに……。
  48. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 日本国でみずから製造して保有するのでありましても、外国で製造したものを輸入して保有するのでありましても、憲法上は同じく評価されるものと思われます。憲法上は同じように評価されるものでございます。
  49. 鈴切康雄

    鈴切委員 いまそういうふうにおっしゃいますと、たとえばこういうことになりますね。持ち込まないというのは政策上の問題だというわけですけれども、持つということについては、たとえつくって持つのも相手方から持ってきて持つというのも、これは憲法上許されない、こういう御解釈ですね。
  50. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 先ほど非核三原則としておあげになりました、わが国核兵器を保有せずと申しますのは、みずから製造して保有する場合も入りますし、他国の製造したものを輸入してみずから保有することも、いずれをもさしていっておるわけでございます。
  51. 鈴切康雄

    鈴切委員 わかりました。  それではちょっとお尋ねしますけれども、やはり国防白書の中に、中国の核装備の云々ということが書いてあります。またこの新防衛力整備計画についてもそういうふうに書いてありますので、中国の核装備の進展がアジア情勢に影響があるといっておられますけれども、中国の核装備の現状と近い将来の見通し、それからアジア情勢にどのように影響があると判断をされておりましょうか。
  52. 久保卓也

    久保政府委員 中共が核爆発の実験をやりましたのは一九六四年でありますが、昨年の十日末までで十一回実験をいたしております。それでその実験をいたしました大きさは、弾頭が二十キロトン、これは標準原爆でありますが、それから二百キロトン、それから水爆である三メガトン級、この三種類であります。  そこで、現在の段階でどの程度生産をしかつ保有しているかということは明確ではございません。多くの説の中には、核分裂物質を百発分持っているであろうという情報がわりあいにございますが、確認はもちろんされておりません。  そこで、これらの運搬手段でありますけれども、現在小型の原爆でありますと、中共が持っております中型爆撃機TU4、あるいはTU16、これは少数しかありませんが、それとIL28という軽爆撃機で運搬は可能であります。  それからミサイルについて特にIRBM、MRBMあるいはICBMについてどうかということでありますが、MRBMにつきましては、たしか一九六七年に一応開発が済んでいるというふうに見られていると思います。ところで現在の配備の見込みについては、MRBMはいつでも配備することが可能であるけれども、配備されたという確証はまだない、その陣地はどうもあるらしいけれどもといったような情報が比較的高い確度としてございます。それからICBMについては、それの実験に着手したというふうにいわれておりますけれども、これの配置見通しというものには若干の説がございます。レアード国防長官がこの春に国防報告を出しましたが、その場合にはこういうことを言っております。中共のICBM開発は進展しているが、その本格的な実験が行なわれたかどうかは明らかでない。またこれが実戦能力を持つに至るのは一九七四年、七五年ごろになる可能性が強いという趣旨のことを申しておりますが、そのあとで統合参謀本部議長ムーラー大将が、これは国会での証言でありますが、申したところによりますと、早い時期で七三年から七四年、おそい時期で七五年から七七年ということで、大体七五年前後にICBMを十発ないし二十五発配備するであろうというようなことを申しております。したがって、七四、五年から七六、七年という時期が一応の見通しであります。アメリカの見通しは従来ずいぶん変わって、間違ってきてはおりましたけれども、大体そんなところが、現在われわれが想像しましても常識的なところではなかろうかというふうに思います。
  53. 鈴切康雄

    鈴切委員 米、中、ソの核戦略の将来の姿、どのように動いていくかということについての御判断はどのようにお考えでしょうか。
  54. 久保卓也

    久保政府委員 御必要であれば数字はあとで申しますけれども、現在の段階で数量的及び核弾頭の威力の大きさからいいますと、そろそろソ連はアメリカに追いついて、おそらく七四、五年ごろには、米側か対抗策をとらない限りは米側を凌駕するであろうというふうに見込まれております。これは数量的な問題であります。ただ、質的な問題につきましては、たとえばICBMのMIRV化、つまり幾つかの弾頭が一つのミサイルに積まれているわけでありますが、それを誘導化し得るという技術については、現在米側のほうが進歩いたしておりまして、すでにミニットマン及びポラリス三型にそれをつけているということがいわれて、今後さらにそれが進展していくであろう、しかしソ連は、実験はしておるけれどもまだ実戦配備までは至っていないであろう、しかし一、二年のうちに追いつくであろうということでありますから、おそらくここ二、三年の間には質、量的に両方が匹敵し、もしくはソ連が進んでいくということで、従来の趨勢をたどっていけば、七〇年代後半になればソ連のほうが核能力といいますか、核戦力というものはアメリカよりも強大になるであろうという見通しがあります。しかしそれはことし行なわれておりますけれども、まあ先年からでありますが、SALTの成果いかんにもよってまいります。米側はだいぶそれに依存をしておるわけでありますが、それがうまくいかなかった場合には、米側としても核戦力に対する何らかの対抗措置をとらざるを得ないということをいっておるわけであります。したがって私は、数字の上で両方の多い少ないというものはありましても、いわゆる第二撃能力——第一撃でやられてもなお残存核戦力が残って、第二撃で相手方をやっつけ得る、それによって相手方の政治的、経済的な力あるいは国民の意志というものを粉砕し得る、そういった意味での第二撃能力は、これは数字だけでは比較できない。米側のことばでいえば十分性というもの、この十分性というものは双方の核戦力に若干の違いはありましても、十分性ということではアメリカもやはり保っていくであろうということであります。したがって、そういう意味での核戦力の均衡というものは、七〇年代を通じて米ソ間については変わらない。  中共については、いま申し上げたように、非常に少ない量であります。しかし、それが七〇年代の後半になってだんだんとふえてきて、相当程度の米側に対する抑止力というものにはなるでありましょうけれども、ことしのSALTの成果いかんによりますが、ABMを米側が整備することによって、米側の見方としては、中共の核による脅威をそこで防ぎ得るという見通し米国のほうでは持っておるようである。しかし、八〇年代ごろになって相当なものが配備されてくれば、また別の時代がやってくるかもしれません。しかし、生産し得るということと相当量を配備するということは、経済的にもたいへんな違いがありますので、八〇年代に中共がどの程度配備し得るかということは非常に問題であるというふうに思います。
  55. 鈴切康雄

    鈴切委員 わが国は非核三原則によって核兵器は持たないといっているが、一般に純軍事的に考えて、核兵器の区分についてはどのようにお考えになっているか。たとえて言うならば、戦略核あるいは戦術核、戦場核、このような専門的な区分があろうかと思いますが、その戦略核、戦術核、戦場核の中にどういう兵器が区分されて入っているか、それについてお伺いいたします。
  56. 久保卓也

    久保政府委員 戦略核は、言うまでもなく、ICBMでありますとか、IRBMでありますとか、あるいはポラリスのミサイルでありますとか、そういったものは戦略核兵器であります。それから、B52に搭載し得る爆弾も、B52を含めて戦略核兵器ということが言えようと思います。  それから戦術兵器の場合には、従来でありますと、数百キロ程度の射程以下のものをいうと思います。そうしますと、たとえば米側の兵器でいえば、パーシングとかサージャント、古いものではランスとかあるいはオネストジョン、リトルジョン、いろいろなものがございます。小さくいえばナイキハーキュリーズに核弾頭をつけたものもやはり戦術核になります。ソ連にもそれに対応するものはそれぞれございます。  それから戦場核というのは、最近あまりそういうことばを使わなくなりましたが、数年前まではヨーロッパ、NATO諸国で戦場核ということばが使われました。これはNATO戦略にも関連することであるのですけれども、そしてまたその当時こちらから出張した人が幾らか調べました。あまりはっきりしたことばわかりませんが、大体たとえば核地雷でありますとか、それから一、二キロトン前後の非常に小さな、たとえば大砲から打つようなもの、そういった核弾頭のものを総合して戦場核、これは比較的早い時期に使えるものというような考え方が当時あったらしくて、戦場核という分野を一応考えておったようでありますが、最近はどうもその区別をなくしたのか、あまり使われておりません。
  57. 鈴切康雄

    鈴切委員 純軍事的な見方をもってしますと、たとえば戦略核それから戦術核、戦場核の兵器攻撃用核、防御用核、こういうふうに分けた場合に、どういうふうな色分けになりましょうか。
  58. 久保卓也

    久保政府委員 ICBMにつきましても、先ほど申し上げたように、レアード長官は、わが国にとってはこれは防御的兵器である、つまりアメリカという国を守るためにはこれが必要なんだ、相手を侵略するために使うものではないというふうに、両方の面から防御兵器というふうにレアード長官は申しました。そこで純粋に防御的と申しますと、核弾頭をつけておりますABMあるいはボマークという対空の兵器でありますが、数百キロ飛ぶものであります。このボマークは古い兵器でありますが、まだアメリカで配備されております。あるいはナイキハーキュリーズの核弾頭のついたもの、こういうものは純粋に防御的といえようかと思います。ほとんどミサイルでもって飛行機を落とすというふうに、局部だけをとれば攻撃的かもしれませんが、全般的にいえば純粋に防御的と申せようかと思います。しかしその他のものについては攻撃的とも防御的ともいえませんので、ある客観的な科学的な兵器というものがあって、それが防御的に使われるか攻撃的に使われるか、その用法の相違であろうと私は思います。
  59. 鈴切康雄

    鈴切委員 そうしますと、この防衛白書の中に、たとえば「核兵器に対しては、非核三原則をとっている。小型の核兵器が、自衛のため必要最小限度の実力以内のものであって、他国に侵略的脅威を与えないようなものであれば、これを保有することは法理的に可能ということができるが、政府はたとえ憲法上可能なものであっても、政策として核装備をしない方針をとっている。」こういうことがありますね。だから非核三原則によって政策的には持たないのだというわけでありますけれども、いわゆる小型の核兵器防御用の核兵器であるならば、政策が変われば持つことができる、こう判断しているわけですね。
  60. 久保卓也

    久保政府委員 これは法理論でありますから、防衛庁が法制局と協議をした説明といたしましては、純粋に防御的にのみ使われる核兵器であるならば、これは憲法の禁ずるところではないというふうになっておりますので、持とうと思えばそういうものを持てる、少なくとも憲法違反ということにはならないということで、持つかどうかは当然政府なり国会なり国民なりのきめるところであろうと思います。
  61. 鈴切康雄

    鈴切委員 そうしますと、先ほど防御的な核兵器というものに対しても、ABMとかホークとかナイキとか、そういうふうなものが防衛的な核兵器だということをお話しになりました。それからまたいわゆる戦場核というのは、おそらく自動小銃あるいは核地雷、一キロトン以下の大砲とか、そういうようなものは防御的兵器のほうに入ろうかと思うわけなんですが、それは憲法上において、要するにこれは法理的には可能である。ただ非核三原則の政策上持てないのだということになろうかと思いますが、その点についてお伺いします。
  62. 久保卓也

    久保政府委員 純粋に論理的に申せばそういうことになろうかと思うのですが、あとは政治問題であろうと思います。ただ一キロトン前後でも、もし非常に足の長いような長射程のものがあれば、それは他国脅威を与えるような攻撃力に転用されますから、そういうものはいけない。せいぜい数十キロ以内のものであれば、憲法で禁じてない核兵器である。防御的なものであればそういうことは言えると思います。
  63. 鈴切康雄

    鈴切委員 そうしますと、法制局のほうにお伺いしますが、保有するという見解の中に、核兵器をつくって持つということも、また相手から、どこかから購入して持つということも、どちらも憲法上これは許さるべき問題ではないと先ほど答弁されましたけれども、少なくともこの国防白書の中においては、それまで、先ほど言いましたように防御核兵器までは法理論的には決して制限するものではないということを言っているわけですが、あなたの論理は食い違いがあるじゃないですか。その点について……。
  64. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 先ほど私が申し上げましたのは、いわゆる非核三原則において申しております。わが国核兵器を保有しないと言っております。その保有と申しますのは、みずから製造して保有することも、それから他国の製造したものを輸入して保有することも、いずれをも指称すると申したわけであります。この点は前から申しておりますが、わが国は固有の自衛権がございまして、自衛の目的達成のため必要な限度内における実力は憲法第九条第二項の禁止する戦力ではないということでございまして、核兵器でございましても、たとえば防衛庁から申し上げましたように、そのような自衛のため必要な限度内にとどまるものでございまするならば、これを保有することは理論的には憲法の禁止するところではないということを前々から申し上げておるわけでございます。
  65. 鈴切康雄

    鈴切委員 先ほどその問題について法制局は、核兵器を保有するということについて二つの場合がある。わが国でつくって核兵器を持つ、それからあるいは持ち込んで核兵器を持つ、これはどちらも憲法上許さるべきものではないとあなたはおっしゃったわけですよ。ところがいまはもう後退をしまして、言うならば、これは防御的な核兵器であるならば法理的には可能であるというふうに後退をされたわけでしょう。このように、言うならば防衛庁考え方も法制局の考え方も、憲法の問題についてそのときそのときの考え方によって変わってくるなんということになれば、こんな危険なことはありませんよ。その点どう思いますか。
  66. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 先ほど申し上げましたように、非核三原則において核兵器は保有しないと申しておりますのは、その二つの場合を指称するということで先ほど申し上げましたつもりでございます。もしもただいま御指摘のようなことがございましたならば、それは私の言い違いであったわけでございますが、そのように申したつもりはございません。再三申し上げますように、核兵器でございましても、自衛のため必要な限度内にとどまるものであるならば、これをみずから製造して保有することも、また他から輸入をして保有することも、理論上は憲法の禁止するところではないということは、この国会で衆議院においても参議院においても、何回となく法制局当局からお答え申し上げておるところでございます。
  67. 鈴切康雄

    鈴切委員 これまたおかしいですね。ちょっとおかしいですね。持ち込まないというのは政策的だというのですね。つくるとかつくらないとかいうのは憲法上の問題だというのでしょう。ところがいまあなたは、その許される範囲内であればつくってもかまわないとおっしゃったですね。それでいいのですか。
  68. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 保有と申しますのは、みずから製造して保有することも、また他から輸入をして保有することも、いずれをも包含するものであるということは、先ほど来お答え申し上げているところでございます。製造につきましてもいま申し上げたのと同様でございます。ただ、いま鈴切委員が持ち込みということをちょっとおっしゃいましたが、この持ち込みと俗に言われておりますのは、持ち込ませないということで、これは日本自体が持ち込むことを言っておるのではございませんで、わが国の場合でございますと、わが国におります米軍が持ち込むことを持ち込ませないという表現でいっておることをつけ加えておきます。
  69. 鈴切康雄

    鈴切委員 これはものすごく問題なんですね。いままで政府は非核三原則の分類として、つくるという問題と、それから持つという問題と、それから持ち込ませないというこの問題はたて分けをいたしまして、一つは政策的な問題であり、こちらのほうは憲法上の問題で歯どめがあるんだ、こういうふうにお話があったのです。それがきょうは新しい見解が出されまして、いずれにしても核兵器をつくるということも、持つということも、また持ち込むということも、非核三原則という政策のもとに持てないということに新しい見解が出ましたね。その点について。
  70. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 全く新しい見解じゃございません。先ほど来申しておりますように、自衛のため必要な最小限度内にとどまるものでございまするならば、保有することは憲法の禁止するところではないということを言っておるわけでございまして、そのような限度をこえるものについては憲法上その保有が許されないことは言うまでもないところでございます。
  71. 鈴切康雄

    鈴切委員 だから、要するに自衛のためであれば結局保有をする。先ほど私が保有をするということについて、つくって持つのとそれから持ち込んで持つのと、こうある、こういうふうに私は申し上げたところが、そうだというお話であって、言うならばその両方とも自衛のための核兵器であるならば、これは憲法上可能である、ただ政策上持たないんだ、こういうふうなお考えだということにいま私は判断をしたわけでございますけれども、それでいいですね。  わが国に対して、昨今、軍国主義化の道を歩むのではないか、軍事大国になるのではないかと諸外国から懸念をされております。その中に、原因の一つとして取り上げられるのは、先ほど言いましたように、わが国が核武装をするのではないかというおそれを抱いている。長官は非核三原則で核兵器は持たない、アメリカの核のかさの中に入っているというけれども、純軍事的に見てわが国の核武装の意義をどのように考えられているか、その点についてお伺いします。
  72. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は意味のないことであると思っております。
  73. 鈴切康雄

    鈴切委員 いま現在はアメリカの核の中に入って、日米安全保障条約のもとに、もし核攻撃があるならばそれはアメリカの核によって対処をしてもらうということでありますが、だんだんと中曽根長官も、これが七五年以降になると日米安保条約もやはり必要がなくなってくるんじゃないかということになりますと、日米安保条約がなくなった場合、これは裏を返せば核武装をしなければならないんじゃないかというふうに疑われる点があるわけでありますが、そういう点についてはどうでしょうか。
  74. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 現在の国際情勢が続く限り、アメリカの核抑止力がまた機能している限り、日本は核武装をする必要はない、こういうことを従来から申し上げているとおりで、そういう情勢がずっと続くだろうと私は思っております。
  75. 鈴切康雄

    鈴切委員 長官は軍事的にも意味がない、それから政策的にも意味がないというふうになれば、核武装については将来ともやはり持たないと判断してよろしゅうございますか。
  76. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大体いま世界戦略的に、また世界歴史的に見ますと、核武装というのは第二次世界大戦の戦勝国の業になってきている。ああいうものをつくってしまいましたからなくすわけにいかぬ、相手が持っている以上は少し優越したものを持っていないと不安である、そういう世界に入り込んでいって、やむを得ず苦悶してSALTをやるというような形になってきておる。それで、私は戦勝国の業であろうと思っております。戦敗国である日本がそんな業にのこのこ入っていく必要はない、そんな考えを私は持っているわけです。
  77. 鈴切康雄

    鈴切委員 核武装の中にも攻撃的核武装というもの、それから防御的核武装というものがありますけれども、その点について、核武装というものに対してはナンセンスだ、すなわち、たとえどうあろうとも防御的核武装もしないんだ、そのように判断してよろしゅうございますか。
  78. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう考え方でいます。
  79. 鈴切康雄

    鈴切委員 沖繩防衛構想について少々お尋ねいたしますけれども、沖繩返還に伴って本土並みに返還をされると、沖繩に配置される陸海空の部隊の編成、装備、任務等については具体的にはどのようになりましょうか。
  80. 久保卓也

    久保政府委員 沖繩に配備いたしまする部隊は、当初半年ぐらいの間と、それから第二段階として一年前後の間に配備するものと、二つに分けられます。  そして第一段階に配備いたしまするもので、陸上自衛隊で見ますると、普通科の中隊を二個、それから航空隊を一個、それから施設中隊を一つ、それから支援部隊あるいは地方連絡部というものがございます。この場合の装備としましては、バートル107連絡機でございますが、それから中型のヘリコプター二機ということであります。火砲はちょっと手元に資料がございませんが、合計で千百人であります。  それからこれが完成をいたしました場合、つまり一年後ぐらいに配備いたしますものが、ホーク部隊、これは米国のものを引き継ぐわけでありまして、これと、それからあとヘリコプターの若干の増を加えまして千八百人、それから海上自衛隊は、部隊としましては掃海隊、輸送艇隊、飛行隊そのほかの後方支援部隊、これが編成的なものであります。これが第一段階。  第二段階については、佐世保にDDK護衛艦二隻を配置いたしまして、こちらのほうに哨戒を担当させるということを新たにつけ加えるということのほか、装備といたしましては、第一段階で支援船が三隻それから掃海艇が二隻、小型の輸送船が三隻、これは第一段階。それからP2J哨戒機、人員としまして約七百人ぐらい、それから第二段階の場合に、支援船が七隻にふえ、掃海艇は同じでありますが、小型の輸送艦を一隻加える。それから哨戒機を六機ふやすということで、合計約千百人であります。  それから航空自衛隊が、飛行隊といたしましては、F104の部隊を一個中隊、そのほか航空警戒管制部隊、これが若干名、装備といたしましては104J二十五機、MU2、固定翼機ですが二機、それとバートル、これは救難用でありますが、人員としまして千四百人、それから完成時におきましては、第二段階におきまして航空警戒管制部隊の人員を全部常置するということ、それからナイキの部隊が当然整備されるということが編成の主たる装備でございまして、あとは救難用の飛行機が若干ふえるという程度で、人員にしまして三千九百人、それぞれの任務は陸海空によって違いますけれども、陸上部隊といたしましては、一応国権の象徴といいますか、そういった意味での普通科中隊を二個配置をいたします。それから施設中隊の場合には、これは災害派遣、その他本島といいますか、沖繩におきますいろいろの施設工事、部外におけるいわゆる民生協力に協力するというようなことであります。そのほかヘリコプターなどについては、やはり同じ災害救助等の民生協力に当たるということになります。全般的には、陸の場合には、沖繩本島における全般的警備という任務になろうかと思います。  海上の場合には、近海における哨戒ということで、領海を侵犯されないように、あるいはまた災害が生じた場合に救難におもむくというような任務になります。  それから、航空については、当然、沖繩におきまする米軍の要撃部隊というものはいずれなくなります。そういうことで、沖繩の防空そのものはやはりわが国が担当するという意味で、防空部隊が配置される。ナイキ、ホークも同じ意味であります。
  81. 鈴切康雄

    鈴切委員 これらを統括する司令官でありますけれども、これは陸海空の統合司令官がこれに当たるのか、あるいはまた別々に、それぞれに責任者を立てるのか、指揮命令系統はどうなるのか。また沖繩米軍との指揮のからみ合いはどうなのか、その点についてお伺いします。
  82. 久保卓也

    久保政府委員 現在考えておりますのは、指揮系統は陸海空一応別々にしようということであります。したがいまして、航空であれば航空総隊とか、海上では佐世保地方総監部、陸の場合は熊本の西部方面隊の下に入るということになろうかと思っております。  統合司令部をつくるべきではないかという意見も実はないではありません。しかし、発足当初におきましては、それぞれの自衛隊におきまして内部固めやいろいろな準備をするということで、一応別個の系統をしておる。これは本土におきまする各隊と同じ体制にして、本土並みということになりましょうが、ただ非常に海上を遠く離れておりますので、統合司令部設置ということもあるいは将来検討しなければならぬじゃないか、これは私個人的に思っております。  それから、米側との関係は、これは本土でもそうなんでありますけれども、陸海空の部隊がそれぞれ対応するところに連絡しております。しかし、沖繩には米軍の統合司令部は若干名ではありますがございます。そういったところについて窓口を一本にする。たとえば募集事務の窓口を一本にするというような場合においては、募集は陸が担当するから、琉球政府に対する窓口を陸に一本化する、あるいは米軍統合司令部に対する連絡は空が担当するということは考えていかなければなりませんが、今後のわれわれの課題だと思っております。
  83. 鈴切康雄

    鈴切委員 日米共同防衛のもとにおける派遣部隊、それから極東戦略の中核をなす沖繩米軍との防衛任務の分担関係というものは、どのように理解をしたらよろしゅうございますか。
  84. 久保卓也

    久保政府委員 ちょっとむずかしい質問でありますが、沖繩に派遣いたします自衛隊の部隊の任務は、あくまでも沖繩及びその周辺防衛であり、警備警戒であるということになります。したがいまして、沖繩の地勢的な意義から申しますと、沖繩は言うまでもなく極東の安全と平和に貢献をしておるということからいたしますと、そういった分野における任務というものは、これは米軍の担当ということになります。ですから、沖繩の純粋の防衛は米軍はもちろんやりません。日本本土と同じでありますから、米軍の関知するところではさしあたってはない。これは安保条約が発動されれば別でありますが、任務分担としては一応関知しない。しかしながら、極東の平和と安全に寄与する分野については、今度は自衛隊のほうが関与しないで、あるいは間接的には、あるいは抽象的にはそういう分野もあるかもしれませんが、直接的にはこれは米軍が担当するというようなことになろうかと思います。
  85. 鈴切康雄

    鈴切委員 もちろん沖繩にも自衛隊の飛行場等もできるでありましょう。そうなった場合に、緊急発進の場合、これはアメリカとそれから日本と同時に緊急発進をするというような、そういう形になりますか。
  86. 久保卓也

    久保政府委員 日本本土からF4の部隊が沖繩に参っておりまして、数はあとでちょっと調べればわかりますが、今日から来年——これはまだ正確にはきまっておりませんけれども、来年ぐらいまでの見通しとしては、要撃部隊と支援戦闘の部隊を両方米側が持っておるはずであります。ところで、それからF102の部隊がまだ残っておりましたが、これは純粋に要撃部隊でありましたが、このF102の部隊はごく最近解体したと聞いております。そうしますと、F4の部隊が要撃任務に当たる、緊急発進、スクランブルはおそらく今日の状態ではF4の部隊がやっておるだろうと思います。そこで来年以降変更になりました場合には、F4の部隊が参りますので、米軍の部隊は要撃部隊はなくなって、支援戦闘機の部隊に変更するだろう、これはわれわれが見込んでおります。そうすると要撃は米側がやらない、ですから緊急発進はわがほうが担当するということになろうと思います。
  87. 鈴切康雄

    鈴切委員 長官、沖繩はやはり米軍の極東戦略の重要な地位を占めているだけに、よほど注意をしないとそれに巻き込まれてしまうし、近隣諸国からはアメリカの片棒をかついだようにもとられる。またしいて言うならば、アジア情勢についても悪影響を及ぼすおそれも、その運用によっては多分に出てくるのじゃないか、このように思うわけでありますけれども、その点について長官はどのように配慮なさるでしょうか。
  88. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 沖繩日本に復帰しました暁におきましては、以上のような国際関係も考慮して、われわれとしては慎重に措置していくべきものと考えます。
  89. 鈴切康雄

    鈴切委員 もうすでに返還も軌道に乗りつつ、最終段階を迎えようとしているわけでありますが、返還にあたって、防衛二法の手直しをしなければならないところが出てくるのではないかと思うのですけれども、具体的にはどのように検討されていましょうか。
  90. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 まだ具体的に検討する段階ではございませんけれども、大体推測いたしますと、まず考えられますのは増員であろうかと思います。四次防の中に大体の構想が入っておりますが、それを来年度以降逐次実現する場合に、法律に関係が出てまいるかと思いますけれども、増員関係は、御承知のように陸海空とも多少でも増員があればみんな法律の改正をお願いしなければいけません。それから編成組織のほうですと、現在の体系で、たとえば陸ですと師団とか、あるいは空ですと航空団とかいうふうなものをかりにつくるとすれば法律改正を要しますけれども、先ほど防衛局長の言うように師団をつくったりするようなことを考えておるわけではございませんので、その編成の規模によって法律改正の内容が変わってくる、こう思います。
  91. 鈴切康雄

    鈴切委員 ナイキハーキュリーズ等の兵器の肩がわりということがだいぶ問題になっております。米軍との買い取りの現状はどのようになっておりますか、その点についてお伺いいたします。
  92. 蒲谷友芳

    ○蒲谷政府委員 現在沖繩にありますナイキ、ホークにつきましては、現在のスタンスは、米側としては、日本側が希望すれば売る意思がある、日本側としましても、現実にありますものと、われわれが希望する価格であれば買ってもよろしいというところで、近いうちに非公式な交渉に入りたいというように考えております。
  93. 鈴切康雄

    鈴切委員 値段によっては折り合いをつけようというわけでありますけれども、その値段等も、返還のこの時点になりますと、相当煮詰められてこなければならぬわけでありますけれども、国産の場合と比較してどのようになっているのか。また一個大隊どのくらいの値段で交渉をされるつもりでいるのか。わが本土における一個大隊の国産の値段はどういうふうになっているか、その点についてお伺いします。
  94. 蒲谷友芳

    ○蒲谷政府委員 全般的に申しまして、国産する場合よりもはるかに安いと思います。いまわれわれの考えておりますのは、米側から有償援助で買う場合、この場合は国産よりも安いわけでございます。この有償援助で買う場合に比較しまして、中古でございますし、われわれはそれに応じた減価があるはずだということで話をする考えでございますし、それは向こうも当然わかると思います。いま国産の場合の価格、一個大隊の場合の価格については資料を持ち合わせませんから、全般的なお話をしまして、もし必要がありますれば調べて国産価格を御報告いたします。
  95. 鈴切康雄

    鈴切委員 それでは、あとでその値段についてはお知らせ願いたいわけでありますけれども、国産について、中古品であるから安いんだというお話でありますけれども、幾ら幾らということがちょっとここでは言えないでしょうから、大体何分の一くらいだというふうにお考えになっているか、それについてお伺いをいたします。
  96. 蒲谷友芳

    ○蒲谷政府委員 実は、その点につきましても、非公式に交渉に入る段階でございまして、日本側がどの程度考えているかということについては、ある程度交渉に支障を来たしますので、この際、その数字、考え方につきましてはお許し願いたいと思います。
  97. 鈴切康雄

    鈴切委員 買い取る場合ですが、アメリカのナイキハーキュリーズは、核非核両用であります。そういうことから考えますと、当然本土並みということになりますと、核使用の部分については何らかのやはり改良をしなくちゃならないんじゃないか。その改良をするにしても、またすぐに核兵器が使えるような改良をしてもこれは問題になろうかと思うわけでありますけれども、ナイキJに改良するお考えがあるかどうか、その点についてまずお伺いします。
  98. 蒲谷友芳

    ○蒲谷政府委員 もし沖繩にありますナイキを買うとしますれば、当然そういうことになります。現在沖繩にありますものはナイキハーキュリーズでございまして、米側のものは、核非核両方がつけられるというものでございます。それで、現在国産しておりますナイキJは、ハーキュリーズを核がつけられないような機構に変えております。今後の交渉によりまして、もし沖繩のナイキハーキュリーズをそのまま買うとなりますれば、当然ナイキJ化をいたすということでございます。
  99. 鈴切康雄

    鈴切委員 沖繩にはオネストジョンとナイキハーキュリーズの核兵器があるといわれておるわけでありますけれども、沖繩の返還にあたっては、全部本土並み返還、核兵器は撤去されるということになっているわけでありますけれども、しょせんは買い取りについて、ナイキJに変えるのは沖繩返還後であるか、返還前になるのか、その点についてお伺いします。
  100. 久保卓也

    久保政府委員 返還以前は防空任務は、返還以後も当分はそうかもしれませんが、米側が持っておりますので、結局予備弾薬庫などから逐次こちら側が改修を加えていくということになれば、返還後でないと事実上できないんではなかろうかと思います。
  101. 鈴切康雄

    鈴切委員 返還後ということになりますと、返還のときにすでに本土並み、核兵器の撤去ということになりますと、そして返還後に改良するということになりますと、その部分だけは本土並みにならないということですね。これはそうなるのですね。
  102. 久保卓也

    久保政府委員 厳密に申すとこうなろうかと思います。もしそれがまずければ再検討しなければいけないわけでありますが、まず返還以前に核弾頭のついたハーキュリーズミサイルが撤去されるであろう、これは当然だろうと思います。そうすると、返還後に改修すると私は申しましたから、返還後に核弾頭でない通常弾頭のミサイルがある、しかもそれがナイキJに改修されていない通常弾頭のミサイルがあるというような状態が存続するということは、厳密に申せば内地とは違うかもしれません。
  103. 鈴切康雄

    鈴切委員 一部返還後核兵器の改良、ナイキJに改良していくというふうになれば、これは当然返還の時点においてはその部分だけは少なくとも残された返還である。それは使用することがあるということはとうてい考えないにしても、事実上そうなってしまうと私は思うわけでありますが、いまその答弁でいいですね。
  104. 久保卓也

    久保政府委員 いま予想されるのはそういうことであります。ただ、具体的にまだそこまで話が進んでおりませんので、確定的なことを申し上げたわけではございませんで、私のいまの想像であります。
  105. 鈴切康雄

    鈴切委員 きのうもちょっと質問がありましたけれども、沖繩の核の総点検について質疑応答がなされましたけれども、よほど確認をしないと、核の地下貯蔵庫ということもあるので、非常に国民に不安を持たせることになろうかと思うわけであります。長官は、御答弁については、前向きの姿勢で努力をするというふうに言われました。これは私は非常に評価に値するおことばではないかと思うわけでありますが、実際沖繩米軍基地の核のあるないという総点検は、これは努力をするという以上に私はむずかしい問題ではないか、こう思うわけでありますが、具体的にどういう方法でおやりになるのか、その点についてお伺いします。
  106. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 われわれは、政治家として、一億同胞の中に沖繩の県民諸君をお迎えするというにあたりましては、やはり本土にある国民や政治家の気持ちというものを、その誠意を最大限沖繩の県民の皆さんにお見せし、かつお分かちするということが非常に政治家として必要であると思うのです。そういう国民的な熱望あるいは要請というものは、アメリカの国益もあるでしょうけれども、日本側の必死のそういう念願からすれば、はるかにアメリカの国益をオーバーするぐらいの大きな仕事であるように私は思うのです。ですから、アメリカが沖繩において基地を保持して日本国民や沖繩の県民と仲よくお互いに機能を分担し合いながら共存していくというためには、やはり沖繩の県民の皆さんの協力なしには長く永続的に成果をあげることはできない。そういう面から見ても、沖繩の県民の皆さんの心に深い疑念や疑問が残っているという状態がもし続くならば、それは日米両国のためにとらないところでもあります。そういう点については、日本の政治家は勇敢にアメリカの政治家と話し合って、虚心たんかいに、先方の気のつかないところは気をつかせるということが、国民代表である政治家の責任であるとも考えている。われわれは、日本の国を愛し、かつアメリカとの協力提携を深く念願している一人でありますけれども、言うべきことはやはりはっきり率直に言うことがお互いの友人の関係でもあると思うのです。そういう意味において私は、政治的判断として、いま申し上げたような返還後の沖繩の核の問題についてそういう政治的配慮を行なう。あと技術的問題でありますから、そういう原則的な考えさえ米側と一致すれば技術的な問題は解決するだろう、そう思います。
  107. 鈴切康雄

    鈴切委員 私は政治家として当然そうあるべきだと思うわけでありますけれども、しかし現実には沖繩返還まであと何日もないわけです。この日程の中に、防衛庁長官として、具体的なスケジュールによって、どのような方法でこの核の総点検について具体的な考え方を持っているかということ。確かに政治家としてそういうふうにあるべきだということは、これは私も同感でありますけれども、少なくとも防衛庁長官というのはそれを率先実行する立場にあるわけでありますから、そういう総点検について、具体的にここはこういうふうにやっていくというふうな御試案があれば、そのことを聞かしていただきたいです。
  108. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは返還後にそういう行動を開始しようという考え方で、いままで申し上げたとおりであります。
  109. 鈴切康雄

    鈴切委員 そうしますと、返還のときは、要するに米軍を信頼をして返還をしてもらう。だから、言うならば取り除かなければならないのに案外と取り除かないままに返還をされるということも予想されるわけでありますが、返還後といっても、そうしますとそこにまた核抜き本土並みという問題についても非常に疑惑があるわけであります。少なくとも返還をされた時点においては日本の国の沖繩ということになるわけでありますから、日本としては当然返還時において基地の総点検を一応やって、そしてそこにおいて真新しい状態において日米安保条約というものについての基地の態様というのが私は理想的な一つの姿ではなかろうかと思うわけでありますけれども、返還後、返還後といいますけれども、具体的に返還後いつおやりになるのですか。
  110. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 返還のときは日米相互信頼と総理大臣並びに大統領との公約に基づいて、核はございません。私が言うのは、だから確認ということばを使っておるのであります。万一でも不安が残っていてはいけないでしょうから、その不安をなくすという意味において確認をやってみたい、そういうことなのであります。
  111. 鈴切康雄

    鈴切委員 そうしますと、返還をされたそう長くない将来において米側と話し合って、その点については確認をするというお考えであろうかと思うわけでありますけれども、それは要するに私は、少なくとも返還をされてそれから話し合うというのでなくして、基本的な姿勢としては、この際中曽根長官がはっきりと米側のほうにお話しになって、返還されるときは確かにお互いに信頼を持ってその点についてはやりますけれども、返還をされたら、少なくとも国民の感情として心配が残るから確認をさせてもらいたいという申し入れをされますか。
  112. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういうことは外務大臣の所掌でありますが、私は外務大臣ともそういうような話をしていることは事実です。また機に触れ、おりに触れてアメリカの人たちにも、私はこういう一般的考えを持っておるので、予告編みたいな話はしてあります。
  113. 鈴切康雄

    鈴切委員 私、時間の制約もございますので、きょうはこれくらいにとどめておきたいと思います。たいへんどうも御苦労さまでした。
  114. 天野公義

    ○天野委員長 受田新吉君。
  115. 受田新吉

    ○受田委員 中曽根防衛庁長官、国務大臣としての立場からの御意見と合わせて明快な御答弁を要請したいと思います。  私、まず基本的に中曽根さんはわが現代日本における最も将来を期待される有力な政治家であり、閣僚中総理としての将来に夢を自他ともに認めるという立場のお一人であるという意味において、いまから、中曽根長官が過去において夢を持ち、現になおその夢を持続しておる重大な国政に関する基本問題のその内容について、この時点で大臣として、また防衛庁長官としてお答え願いたい点があります。  あなたはかつて首相公選論を唱えられました。現時点においてこの夢を捨てておりませんかどうか。まずお答え願いたいのです。
  116. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国民の大多数の支持を得れば、これは実行したいと思っております。
  117. 受田新吉

    ○受田委員 そのためにはまず憲法を改正しなければならない。憲法改正構想の中の自主憲法の主軸に首相公選が入るのでございますか。
  118. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 憲法改正については、私は端的にそういうことを言っておらないのです。七五年以降において、戦後三十年の日本の民主政治の、政治、経済、文化、教育、宗教、そういうあらゆる分野についてひとつ点検を行なって、そうして二十一世紀に向かう準備をしよう。その中にはもちろん憲法もあるいは安保条約の問題も含まれるでしょう、総点検というのですから。そういう意味のことを申してまいってきておるので、改正するというところまでは私は言っておらない。その前に国民に、国民がどういう気持ちを持っておるか、どういうふうに現代を評価し、現代というものの善悪を国民はお考えになっているかということをお尋ねすることが先である、そう私は思います。しかし、民主政治の基本的原理からしましても、大衆的民主政治の時代にいまや入り、主権在民ということを的確に保障するということを考えますと、全国民ができるだけ直接に政治に参画するという方向に国政を持っていくことは民主政治の理想に一歩近づくことである、そういうふうに考えております。
  119. 受田新吉

    ○受田委員 中曽根さんの構想の中に、一九七〇年代の中期から後期にかけて世界的な政治的な変化、そしてそれに対処する日本のあり方というものの中に安保条約に対する構想がおありだったと思います。現在の安保条約は昨年自動延長されておりますけれども、この日米安保条約が一九七五年、その時点から七〇年代の後半にかけて、あらためて国民からこの安保条約のあるべき姿を再検討する必要があるという御意見がかつておありだったと思いまするが、その点についても御答弁を願いたいのです。
  120. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 戦後の三十年の日本の総合点検の一つとして、安保条約の問題も当然これは含まれるべきものであると一般的に考えておるわけです。しかし私は防衛庁長官としまして、日米間の安保体制は、現在の日本が核を持たず、攻撃的兵器を持たないという原則を維持して米国抑止力に依存しているという以上、半永久的に必要であると思う。ただし、安保条約というものは個別論であって、それは時代によって変わっていくべきものであろう。現に二十七年、三十五年、四十五年、みんな内容は変わってきている。そういうように時代とともに変わって、改善されていくべきものがあれば当然改善されていくべきものであろう、そう考えます。
  121. 受田新吉

    ○受田委員 長官の一九七五年という時点をとらえた発言が、憲法に対する国民の認識の調査あるいは安保条約に対する再確認、こういう問題で、あなたの脳裏の中に一九七五年という年に非常な力点が置かれているのでございますが、これは一九七〇年代の中期の拠点に、何かアジアにおける情勢の見通し、国内における政治情勢の動き、こういうものを何かの御判断の基礎にされた発言ではないかと思うのでございますが、お教え願いたい。
  122. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それはまず第一に、戦争が終わってから三十年たちます。三十年というのは一世代でありまして、終戦のときに生まれた子供が三十歳になれば子供一人や二人は持つということにもなって、その人たちが文字どおり日本の中堅になる時代でありますから、その新しく出てきた戦後の人たちの意見を大いに尊重して聞いていくということは政治の上で非常に大事なことである、そう思っておりますので、ちょうど七五年はそういう時代にあたるということで、一つ基本です。それから第二番目には、世界情勢も変わっていくであろう。それはおそらくリーダーの交代ということがアジアにおいても考えられる。中国においても台湾においても、あるいは日本においてもそういう情勢は出てくるだろう。というのは、現代は非常に激しく動き、変動しておりますから、したがって時代時代に民衆の意識が強くなってきて、そうしてリーダーが変わるかあるいは対応していかなければならぬという新しい時代に入っていくだろうと思います。それから経済関係においても、国際経済環境が変化する、特に日本の場合にはいまのペースでいけば大体四千億ドル経済が実現いたしまして、この経済的に大きく膨張した日本は、自分の身の振り方に困ることもあるでしょうし、また外国から期待されることもあるでしょうし、この膨大な国民のエネルギーをどういう方向に向けていくかというところに、日本国民の世界及び日本国民に対する非常に大きな責任が出てくる段階に入ります。また、場合によっては中国にICBMが実戦配置されるという可能性も出てきましょう。ECにおいてもヨーロッパ統一国家へのストライドがかなり伸びてくる。英国もECに入る可能性も出てきておりますし、通貨の統一あるいはヨーロッパ議会の設定という方向に進むという可能性考えられる。大体八一年にそういう方向で進もうという約束で彼らはいま進んでおるわけでありますから、そのめどもだんだんついてくる。そういう意味において、七〇年代後半というものは世界にとっても、二十世紀において非常に重要な時代に入るだろうと考えております。
  123. 受田新吉

    ○受田委員 私は国際情勢、国内情勢、戦後三十年の時点に大きな変化が起こるであろうという予想をしておられる中曽根さんにあらためてお尋ね申し上げたいんでございますが、この内外における変化というものの中に、リーダーの交代ということもいま御指摘に相なったわけでございます。現在三百三名の与党の勢力、一九七五、六年といえば、もう二回の選挙を経た時点の状態ということに大体なると思うのでございますが、その時点でリーダーの交代として中曽根内閣総理大臣の出現が一九七〇年代の後半に期待されるという夢も、私あながち夢ではないと予測するものの一人である。そういう意味において、私はあなたに、そういう時代に総理になったという気持ちでいまからお答え願いたいことがある。三百三議席の多数の上に豊かなお暮らしをしておられる、安らかな夢をむさぼっておる与党の皆さま方のこの姿が、一九七五年以後に引き続きこれが予測されるかどうか。そういう姿は私は好ましいものでなくて、できれば二大政党が交互に政権を授受し合うという、みがき合い励まし合い、国民の批判にこたえて十分勉強していくというかっこうの姿が好ましいと思っておりますが、中曽根さん、あなたはそのことについてひとつ次の点についてお答えを願いたい。  現在の安保条約がこのままの形で長く続くことを期待されるか。できれば平和外交においてアジアの国々とも新しい平和が確立し、ソ連、中共とも新しい平和状態が生まれ、そしてアメリカとの安保条約でなくて、アメリカとの新しい経済、文化等中心の友好関係の条約が生まれるなどの形において、日本アジアの灯台として平和外交裏に繁栄する姿というものをあなたは期待するかしないか、お答え願いたい。
  124. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 リーダーの交代ということを申しましたが、七五年ぐらいまでには故西村委員長の念願が実って、革新再編成が成功して、革新派のほうがリーダーとなって日本を統治する時代が来ることを、私は日本の民主政治がうまく交代して切磋琢磨していくという意味からも期待をしております。どうぞしっかりがんばっていただきたいと思います。  それから安保条約の問題につきましては、これは基本原則はいま申し上げましたように日米提携によって太平洋を平和な海にしておくということが、日本生存上のバイタルな問題であると思いますから、その日米提携の一つ基本には安全保障上の提携ということが独立国家相互の基盤に存在するので、そういう関係は永続すると私は思っております。しかし安保条約の内容についてはいろいろ時代とともに変化があり得る。私が頭の中にありますことは、日本防衛という政策はそういうような非常に大きな世界戦略的な外交戦略の上に立たなければ成り立たないということであります。そういう観点の一つとして考えておりますことは、やはりアジアにおける平和を維持していこうと思ったら日本、アメリカ、ソ連、中国、この四つの大きな柱がアジアにおける平和を持続するための何らかの国際協調なりあるいは了解をつくっていく。それがどういう形のものに出てくるかは、まだ予断を許しません。がしかし、そういう方向に努力をして、極東における永続的平和の基礎を形づくっていくということが私らの大きな責任であり、日本の目標になるであろう、そういう気がしまして、そういう方向に向かって努力をしていきたいと思うわけであります。
  125. 受田新吉

    ○受田委員 日米安保条約という現在の条約の状態が、法律的には一方の通告で一年の期間を設けてこれは廃棄できるように、もうなってしまっている。現時点ではこれはいつでも廃棄できるんだ。だからアメリカがそのニクソンドクトリンを推進する上において、日本は自主独立の防衛をすべきだという立場で安保を廃棄していくという気持ちが政治的に決定すれば、アメリカからも通告して一年後にこれが廃棄されるということも法律的には考えられます。また日本もいま急に、たとえば安保条約を即時廃棄する、社会党の内閣が選挙の結果生まれたとする、そうすればこれを一年の予告期間を通じて廃棄通告ということも法律的には可能である。そういう状態に現にこの安保条約がなっているわけです。したがって私、この日米安保体制というのは、できれば平和外交を推進して、日米の軍事同盟条約によってアジアの国々の脅威を排除して、日本国というこの新しい国の構想の中には、平和へ徹した崇高なものがひそんでいるんだということを各国に与えるという意味から言うならば、安保の駐留なきかっこうへ持っていくというわれわれのこういう構想も、これをひとつ当然国罠に期待していただくべきであり、またさらに進んで安保条約の廃棄という方向へ進んで、平和外交によるアジアの灯台としての存在意義を満たすというかっこうも考えられる。そういう方向へ漸次この安保の体制を進めて、国連による平和機構への前進という形を、すなおな気持ちで平和を願う国民なら求めていくと私は考えるのですが、あなたの一九七五年時点以後における日米安保体制への新しい夢というものは具体的にはどういうものであるのですか。国民にあらためてこれを問いただすべき時期が一九七五年以降にあるべきだと考えておられる具体的な安保に対する内容の変更その他の構想を伺いたいのです。
  126. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日米安全保障体制、日米協力体制というものを基礎にしながら、中国、ソ連との間においてもそういう共存関係を確立していく、それを確立していくためには太平洋の平和が一番根本で、太平洋の平和が、日米の提携というものがわれわれにとってはやはり基本であると思う。したがって日米提携を基本にしつつソ連、中国との間においても共存関係を確立していく、そういう関係になると思うわけです。ですからやはり安保体制というものは基礎にあって、それがほかの中国、ソ連との共存関係を確立していく上にどういう変容を遂げていくか、どういう調整行為が行なわれていくか、これは将来の課題として十分検討していくべきものであるかもしれません。現にアメリカにおいてもマンスフィールドなどは、かつて日本へ参りまして日米中ソの提携を説いたことがございます。また最近ニクソン外交白書におきましても、いまの四カ国を四つの大きな柱としておりますし、中国における最近の周総理等の発言等を見ましても、やはりその四つの国を大きな柱にしております。そういう認識が各国に次第に生まれてまいりますと、やはり国際協調によってアジアにおける平和を維持しようという英知が働いてくると思うので、日本は積極的にそういう一つの力となって動くことは好ましいと思っております。
  127. 受田新吉

    ○受田委員 そういう四つの国の新しい平和への動きというものに対処して、日米安保条約の現在の内容をどういう形に切りかえたのが好ましいとお考えになるか、安保条約に対する新しい国民の意思がそのころに求めらるべきであるという御意見に基づいた御答弁を願いたいと思います。
  128. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは将来のことでありますから、いまのところは予測できません。しかしこれは相互的なものであって、中国やソ連の出方がどういうふうに出るかということを見ながらやるべきでありますが、相互的な原則のもとにやはり軍事的要素を少なくして、そのほかの友好提携関係をふやしていくということが歴史の大勢であるだろうと思います。
  129. 受田新吉

    ○受田委員 わが国が急激に経済成長を遂げて、今日GNP自由世界第二位の強大国にのし上がった。これに対して世界の国々は非常に脅威感じているという現状である。おそらくこの伸び方、それに伴うてまた四次防に見られる人件費を加えて五兆八千億円のこの膨大な予算要求というようなものを見ると、そこにまたこの五年間の比率の高まりぐあいなどが一八・八%という比率を持っているなどということから見て、さらに大きな脅威を感ずる。こういうふうなわが国における異常な経済成長と、そしてこれを基礎にしてさえも、なお比率の上でGNPとの関係からいっても、非常なテンポで防衛費が高まっていくというこの姿を見たときに、世界の国々の、第四次防完成時において十二位から第七位にのし上がるこの防衛国家日本に対する脅威というものは決して私ゆるがせにできない。われわれから見たらば脅威感じなくても、外国から見たら日本に対する非常な脅威である、相手のほうから見れば確かに大きな脅威というものになると思うのです。十二位から世界第七位の防衛国家になるという、その時点から見ただけでもこれはたいへんな脅威を与えるということ、アジアの灯台としての平和への姿でなくして、アジアのトラとしての脅威を感ずる、シャパニーズタイガーに対する強大な恐怖がわいておるという感じを、私、おそれる国々に決して杞憂などといってこれをなだめすかすわけにいかない背景があると思うのです。  そこで、いまから掘り下げてお尋ねしたい具体的な問題がございます。憲法解釈論をいまからお尋ねしたい。  私は長い間当委員会で論議された憲法における第九条の戦力解釈で、なお釈然とせぬ点がありまするので、きょうは法制局も次長においでいただいておるから、法制局の見解も含めて御答弁願いたい。近代戦を遂行するために、あちらから侵略してきたその侵略部隊に対処する日本自衛権の発動に基づく戦力というものに対して、憲法の第九条により現在の自衛隊の持っている戦力は、この近代戦遂行に対して十分条件にかなった戦力というわけでないので憲法違反でない、こういう解釈は今日依然として変わっていないのかどうか。
  130. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 ただいま受田委員の仰せになりました近代戦遂行能力という用語を使って憲法第九条第二項の説明をした時代も古くはございましたけれども、現段階において政府の見解として、憲法が保持を許しておりまする自衛力限度というものは何であるかということにつきましては、自衛のため必要な最小限度のものだということで説明をしておりまして、現在の段階の問題といたしましては、第三次防で言っておりますような通常兵器による局地戦以下の侵略の事態に最も有効に対応し得る力と申しますか、そういうようなものが少なくとも憲法の許容する限度以内であろうということで今日まで説明をいたしております。
  131. 受田新吉

    ○受田委員 その通常兵器による防衛という意味で、わが自衛隊というものは憲法違反の戦力でないという説明をしておるということでございますが、近代戦というこの用語の中身から明らかにしておきたい点があるのです。近代戦というのは防衛庁は一体どういうふうに考えておられるか、お答え願いたい。
  132. 久保卓也

    久保政府委員 なかなかむずかしいことでありますが、要するに今日の情勢下における第一線兵器、あるいは一流の兵器といいますか、そういうものが使われての戦争様相である。したがってたとえばゲリラ戦でありますとか、あるいは旧式な火砲たとえば小火器類でありますとか、小口径の大砲でありますとか、あるいは非常に古い、ちょうどベトナムで練習機が支援戦闘機に使われて行なわれたような、そういったような戦争というものは——これはベトナム戦そのものを言うわけではありませんが、私はいまあげましたような事例での戦争というものは、これは近代戦争とは言いにくいのではないか、そういうふうに思います。
  133. 受田新吉

    ○受田委員 近代戦という中に、核兵器を用いる内容のものをどう考えておるか。
  134. 久保卓也

    久保政府委員 近代戦争といいます場合に、これはさっき申し上げたように確たる定義が実はあるわけではございませんので、私もなかなか言いにくいわけですが、しかし少なくとも核兵器が使われなければ近代戦争でないということは申せません。つまり核がなくても近代戦争ということがあり得るというふうに言えると思います。
  135. 受田新吉

    ○受田委員 当然そうあるべきだと私は思うのです。だから、近代戦に対処し得る通常兵器による防御能力というもので、この自衛隊の戦力を憲法違反でないという解釈が成り立つと了解してよろしいかどうか。
  136. 久保卓也

    久保政府委員 私がお答えするのが適当かどうか知りませんけれども、近代戦争を遂行し得る能力というような表現で説明された時期におきましては、各国におきまする兵器進歩の度合いというものもまだ非常に低水準にあったような時期だと思います。しかし、その後各国とも非常に兵器進歩してまいりました。これは中流国家においても、あるいはもっと小さな国においてもそうでありますが、そうしますと普通に予想されます戦争事態というのは、たとえばゲリラ戦が戦われるようなアフリカの事態もありまするけれども、通常、国対国での戦争という場合には、ほとんどのものが近代戦争になってしまうのではないかということで、おそらく法制局のほうではそういう文言を改められたのではなかろうかというふうに思います。ただし法制局長官は実質的には同じだということを言われましたから、私が申し上げたような意味で同じだということを言われたのではないかと思います。
  137. 受田新吉

    ○受田委員 法制局長官にかわって吉國次長さん、近代戦という用語の内容で、それを適当にごまかして憲法解釈をしていただくと困るわけでございますが、近代戦は、いま久保防衛局長のお説のような意味で、核を含んだ近代戦、含まざる近代戦、いずれもあるのであって、近代戦といえば核を包含するというような解釈は現在の情勢の中では採用しないのだという立場を法制局として言明できるかどうか、お答え願いたい。
  138. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 近代戦遂行能力という用語を使ってその問題を最近検討しておりませんので、また近代戦ということばが確立した用語でもございませんので、そこに含めることが妥当であるかどうかということをこの場ですぐお答え申し上げることは非常に困難でございますが、要するに憲法第九条の第二項で戦力ということをいっておりますが、この戦力につきましてはいろいろな意味づけができると思います。簡単に申すならば、これはその字句から申しまして、戦いに役立つ力、こういうことも言えると思います。こうなれば、警察力のようなものも入ってしまう。しかしながら、憲法第九条第二項が第一項と関連づけて解釈をしております以上は、第一項で自衛権は否定されておらない。そのために、そういうことからいって、自衛権範囲内における行動は認められておる。そうするとその裏づけのための、つまり自衛のため必要な最小限度における実力を持つということは、憲法第九条の禁止する戦力ではないというのが現段階のと申しますか、ずっと前からの政府側の見解でございます。その戦力ということば憲法上にはっきり用いられておりますので、そのように御説明を申し上げることができると思います。
  139. 受田新吉

    ○受田委員 私は非常に理解に苦しむ。ことばの遊戯であっては困ると思うのでございますが、自衛権限界というものをはっきりしておいていただきたい。つまり防御的兵器をもって不正の侵略に対処する、攻撃的兵器を一切用いない、そしてそれは自衛のためにやむを得ざる最小限の措置である、そういう立場の戦力ならばこれは認めるということかどうかです。
  140. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 自衛権の発動の場合の三要件というものが従来いわれておりますが、ただいま受田委員がおあげになりましたような状況で、そのために必要最小限度のものは憲法の認める範囲内のものであるということでよろしいと思います。
  141. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、そういうもの、いま指摘したような点は憲法で容認される戦力である、つまり、自衛のためやむを得ずとった最小限度の措置としての戦力である、現在四次防までの計画は、その限定された自衛権範囲を逸脱していないと防衛庁長官はいまお考えになっておられると私は思うのです。そうしますと、ここに戦力ということばを用いていいことになっておる。つまりいまの自衛隊は最小限の戦力である、こういう形をはっきりいっていいのかどうか、長官どうですか。自衛戦力……。
  142. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 どうぞ法制局のほうにお尋ね願いたい。われわれは自衛力といっておるわけです。
  143. 受田新吉

    ○受田委員 それでは法制局、いまの自衛戦力……。
  144. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 憲法が禁止しておりますような戦力と申しますのは、先ほど申し上げましたような自衛のため必要な最小限度を越えるものである、このような戦力を保持することは憲法が禁止しておるということに相なると思います。それでは憲法の許容する範囲内のものは、しからば、いわば自衛戦力とも呼んで差しつかえないかということになるかと思いますが、これはことばだけの問題でございますけれども、やはりいま中曽根大臣が言われましたように自衛力と呼ぶほうが用語の問題としては妥当であろうと思います。
  145. 受田新吉

    ○受田委員 これはことばのごまかしなんですよ。自衛のためのやむを得ずとった措置は、それは憲法で否定する戦力ではないということで、そういう戦力はいいんだといま法制局次長は言われたわけです。ただ用語として「戦」という字を使うといかにもびくびくする。ここに私ごまかしがあると思うのです。そういうつまり自衛のためにとった最小限の措置、防御兵器によって自衛権限界を越えない範囲内でとった措置は、「陸海空軍その他の戦力」の中へ入らない戦力だ、自衛戦力だ。ところが「戦」の字を使うと、どうも用語として適当でないから「戦」をはずして自衛力、こういっておる。私はもうこのあたりですかっと筋を通すべきだと思うのです。びくびくしておる。何か長官自身も「戦」という字を使うといかにもびくびくするけれども、かつて参議院で陸軍、海軍という用語を発言した大臣がおって、びくびくしてそれを言い直したということがある。そういうことから、もういまの自衛隊そのものは、すでに陸上自衛隊とか海上自衛隊とか航空自衛隊とかいうふうなむずかしいことばではなくて、現にかつて特車といっておったのがいまでは戦車といっておる。それから海軍は「艦」の字を使っておる。艇じゃない艦。艦というのは辞書を引くといくさぶねと書いてある。艦、軍艦です。そういうものが現に用いられておる。かつての師団がすでに名前を出しておる。大将、中将、少将と名称を変更する用意がすでに何回か防衛庁の中で繰り返され、国防省の構想も何回か用意された。こういう時点で、自衛戦力といいたいけれども、ちょっと外部的に当たりさわりがあるので、「戦」の字をはずして自衛力という、こういうことに了解してよいかどうか、長官御答弁を願いたい。法制局は最初、大臣が答弁されるまではそういう自衛戦力は認められる、こう言ったのです。ところが私がそれでいいかと言ったら、大臣が法制局に聞けというから聞くと、今度はあなたは「戦」の字をはぶいて自衛力、こう言った。法制局と長官との意見の相違ができた。それを長官が言われるから、今度は法制局が、それじゃ私も「戦」の字を省く、これじゃ政府の間に見解があまりにもあいまいもことして自信を喪失する。自信喪失の自衛隊というものは国民は安心ができない。国民に安心してもらう自衛隊ということであれば、自衛のためには最小限の防御的兵器をもって、その限界を越えざる防御にあたる力というものは戦力、つまり憲法でいう戦力ではないが、自衛のための、自衛権の力としての戦力である、こういうことはすかっと言うていいのではないか。そういうお答えがさっきあったのです。それを言い直しておる。
  146. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 私が先ほどお答え申し上げましたのは、憲法第九条第二項でその保持を禁止しておりまするところのいわゆる戦力と申しますものは、日本の自衛のために必要最小限度というその限界を越えるものをいっておるということを申したわけであります。憲法わが国の保持することを禁止しております戦力とはこういうものであるということを申し上げましたつもりでございまして、憲法第九条第一項で日本自衛権を認められておる。したがって、自衛のために必要な限度内の措置をとることを認める、そのために必要な実力を備えることも差しつかえないであろう、そのようなものは憲法第九条第二項で禁止するいわゆる戦力ではない、いわば自衛力とも呼ぶべきものであろうという趣旨を申し上げたつもりでございます。したがって、先ほどの答弁で、熟語として自衛戦力というようなことばを使ったことはございません。そういうことでございます。
  147. 受田新吉

    ○受田委員 ちょっと次長さん、私が指摘したのは憲法第九条の後段の規定によるところの「陸海空軍その他の戦力」という仲間に入らない戦力として、自衛のためにとったやむを得ざる措置は、それは入らない戦力かと言ったら、それはそのとおりだとあなたははっきり言われた。速記録を見ればわかる。  そういうことであって、戦力ということばがタブーになっているというところに一つの問題があるわけです。その戦力の戦がそれだけ戦々恐々、薄氷を踏む字であるとするならば、武力ということばはどうですか。
  148. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 先ほどお答え申し上げましたのは、憲法第九条第二項では陸海空軍その他の戦力を保持することを禁止しております。その保持することを禁止している戦力というものはこういうものである、そういうような力に達しないもの、いわゆる限度内の必要な措置をとる、そのために実力を——実力と申しますか、そういう実力を持つことは、憲法が禁止しているようないわゆる戦力ではございませんということを申したつもりでございます。もし私が言い方が間違っておりましたら、つつしんで訂正をさしていただきます。したがって、そのようなものを——それはことばだけの問題でございますから、先ほど受田委員のおっしゃいましたように戦力という論理の熟語をつくることも可能であるかと思いますが、いやしくも憲法では「陸海空軍その他の戦力」ということをあげていっておりますので、それを戦力とわざわざ呼ぶことは適当でないのではないか、やはり憲法でそのような実力になってまいりますと、それは戦力と呼んで、こういうものは持ってはいけない、そこまでは至らない、自衛のため必要な最小限度内の実力、いま受田委員が武力とおっしゃいましたが、武力でもよろしいと思いますが、その武力のことは自衛力と呼ぶほうが適当であろうということでございます。
  149. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、戦力の戦の字をやめて武力と呼べばよかろう、こういうことになれば、これはもう同じことであって、戦力であろうと武力であろうと、戦いということばが出るとタブーになるというような、非常に戦々恐々としていらっしゃるところは、国民をごまかすことにもなるのであるから、もうはっきりと自衛のための最小限の自衛権発動としての実力、すなわち、その戦力は憲法第九条後段の「陸海空軍その他の戦力」の戦力ではない戦力だ、こうはっきりされたらどうなんですか。私この機会に明確にされたほうがいいと思うのですよ。(伊能委員「賛成だ、賛成だ」と呼ぶ)それでは、賛成という前長官の御発言もありまして、非常に穏やかなうちにこれが決定したようでございますので、さよう決定したことにして話を進めさしてもらいます。  私はここで一つ新しく問題を提起したいのでありますが、中曽根先生、あなたは自主憲法総理と御一緒に提唱される自民党の党員でいらっしゃる。そうするとこの自主憲法を制定されたいというお気持ちの中には、現在の憲法自主憲法でないという判断があるかどうか、御答弁願いたい。
  150. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 制定手続の過程においては、私は完全なる民主的、自主的憲法としては瑕疵があると思っております。
  151. 受田新吉

    ○受田委員 国会を通じて国民の代表者による審議の結果生まれたという点においては、これは手続上の点においては瑕疵はない、しかしそれが占領軍によって提案され、押しつけられたものだという形において瑕疵があるという意味でございますか。
  152. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのとおりでございます。制定手続というのはことばが間違っておりまして、制定手続は旧憲法の条章に従ってできておりましょう。しかしその制定される過程における政治的諸般の情勢等におきまして、必ずしも民主的につくられたものではなかった、占領軍の非常に大きな影響を受けて、場合によっては圧力もあると思われてつくられた憲法であったと思います。
  153. 受田新吉

    ○受田委員 私は圧力が加えられ——場合によっては加えられてつくられた憲法だ、したがって瑕疵ある憲法ということである、そういう見方防衛庁長官がされておるわけでございますが、この憲法の制定手続等においても、平和を愛好する国の新しい国づくりの基本法として、その盛られた精神の平和に徹し、基本的人権が重んじられ、民主主義が基調になっておるというこのりっぱな内容において、そうした手続上の瑕疵というようなものをなお排除して、この憲法は自民党今日の繁栄を築いた大事な憲法でもある。あなた方の立場からいってもそういう声が出ると私は思う。そうして野党のそれぞれが平和憲法と称して、これを今日日本の国が生まれ変わる立場、今日を築いた大事な憲法だ、その中に徹底した平和主義というものに対して、われわれは非常に大きな自信を持ってこの憲法を見てきたわけです。あなたにちょっとお尋ねしたいのですが、その与えられた、押しつけられたという考え方の中に、憲法第九条の戦争放棄の規定を改めなければならないのだというお考えが長官にあるかどうか、お答え願いたい。
  154. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 個々の条文に対する意見の表明は私は差し控えております。きのうも申し上げましたとおり、制定の過程においてはいろいろ問題点がございますが、その中身につきましては非常に評価しているし、これができましてからの経過についてわれわれもいろいろ反省もさせられ、また新しく目を開かされたところも多々あります。特に平和主義、民主主義、国際協調主義、基本的人権の尊重、そういう部面については、国民がこれを放さないという考え方は非常によくわかるのであります。そういう点はわれわれとしてはきわめて高く評価して、これを護持していかなければならぬと思っております。ただあれが制定されました当時の状況等を見ますと、これは受田議員も御同感であると思いますが、あなたと私と一緒になって、国家公務員法をあのときつくりましたが、あの国家公務員法をつくって、マッカーサー司令部へ何回か通って、二人で字句の修正を頼みに行きました。あのとき法制局はなかなか文章や何か固くて、昔の古い型の文章をつくっておったのを、あなたが何々したり何々したりということを入れたわけです。それ以来日本の法律に何々したりということばが入ったわけです。あなたはその創始者です。そういうことも一々向こうへ行って許可を求めてきて、そうしてできた。憲法の条文についてもまた同様でありました。また政治的決定の過程においても、当時は夜中の十二時の近くになって時計が動かなくなったということもございました。そういういろんな経過を考えてみると、やはりつくられるときには非常な無理があったと言わざるを得ないと思います。そのことを私は指摘しておるのであります。
  155. 受田新吉

    ○受田委員 長官のそうした懐古談、私はいま聞いて感無量のものがある。当時の国会法制定当時、まだ三十代の若い議員であった私たちが、大いに張り切ってやった時代をいま思い起こしますが、一々占領軍のオーケーを取らなければならぬという時代の憲法であるという意味においては、私はそれは肯定します。しかし一度でき上がった憲法として、しかも二十五年間国民の中に定着した今日、そしてこの憲法によって祖国が繁栄したという段階で、この憲法についてその基本的な長所というものは十分認める、しかしその他の問題は改むべき点があるんだ、こうお考えになっておるようでございますが、二十五年たって国民の中に定着した時点において、どこを改めたらいいかというような点の新しい疑惑の起こることがあるが、それは基本的な平和思想、基本的人権、民主主義というようなそういう大根っこのものの変更でなくして、たとえば総理の公選をやるというような問題、それはなかなか私はおもしろいと思うのですが、これは中曽根構想は前からおもしろいなと思った一人ですが、そういうようなものが自民党の中から出されるというような形であれば、私もある程度の興味を感ずるのですが、平和主義に徹する、戦争放棄の規定の改定などということにねらいがあるとすれば、これはたいへん私は不安を伴うわけなんです。長官は、具体的な条文については見解を表明しない、しかし第九条については、防衛庁長官として仕事を進めるのに非常に困る規定だと思うかどうか。これはすなおに御答弁を願いたい。
  156. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 別に困る規定だとは思いません。
  157. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、長官、第九条の改正は、自主憲法を制定する際にも別に改めなくても、これはそのまま生かして自衛力を増強していく手があるという御判断であると了解してよろしゅうございますか。
  158. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は内閣の憲法調査会の委員をしておりましたが、その最終意見表明の際に、第九条はこのままでよろしいだろう、ただ国民投票をやる際に解釈を確定する必要があろう。というのは、無限大に膨張した解釈をされる危険性がないようにしておく必要がある。そこで現在自衛権がある。自衛権を保障するために、必要最小限度自衛力は認められる。その自衛力として自衛隊がある。そしてそれは海外派兵、そのほかいままでいろいろ言われました制限の範囲内においてこれは行なわれるべきものである。その制限の範囲内において国民的承認を解釈としてその際確定することが、摩擦もなく、かつまたいろいろ違憲論争や何かが起きているものを解消して、国民的エネルギーの浪費がなくなるんじゃないか。大体国民の大多数は、現在の自衛隊を肯定しておるわけですから、そういう現在の解釈範囲内において、そういう国民的支持を求めたらどうかという意見を表明したことがあります。
  159. 受田新吉

    ○受田委員 防衛庁長官としては、自主憲法の改定については、構想としてはそう激しいほうじゃないんですね。(中曽根国務大臣「私はハト派です」と呼ぶ)まあそれはそれとして、その点はそこで一応おくとして、そういうことであれば、一つ私はここで提案したい。二十五年ということになると、憲法が生まれて四分の一世紀、これは人間の結婚でいうならば銀婚式。国会でも二十五年たてば永年勤続表彰を受ける。大体二十五年ということになれば、被選挙権を与えて、一人前だということになるわけです。この機会に憲法制定二十五周年記念を閣僚の一人として、この秋の公布の日あるいは来年の実施の日、いずれかに二十五年たったこの憲法の、国民に大きく貢献した基本法の制定を祝福する記念式典を、これは時期としては、まさに四分の一世紀でちょうどいい。この記念式典を閣議の中で提唱され——私きのう総理にもそのことも要求しようかと思ったのですが、きのうは遠慮申し上げた。国務大臣として、憲法制定二十五周年記念式典を国家行事として行なう、これはだれもはばかる者がないし、各党とも野党はみな賛成であるという立場で、与党も反対ができるわけじゃない。五年までは記念式典をやったですね。これは長官御記憶のとおりです。あの記念式典、あの国家的行事に非常な私たちは共感を覚えている。この二十五年記念式典、これがたとえ与えられたとか押しつけられたという要素が一部あろうとも、今日の繁栄の基礎を築いた、そう見られている立場のあなた方、われわれはこの憲法をあくまでも擁護していきたいという立場、その両方が一緒になって、憲法の繁栄のもとに長期政権をやる自民党も、そういう意味憲法を祝福し、われわれが憲法擁護という線で祝福する記念式典をやろうじゃないか。これを御提案なさるかどうか、御決意のほどを承りたい。
  160. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 受田委員のせっかくの御提言は、よく研究してみます。もっとも、政界においては勤続二十五周年でこういうように額が上がりますと、もうそろそろ引退しろという問題が出てくるわけで、政界とは違いましょうが、よく研究をしてみます。
  161. 受田新吉

    ○受田委員 これは憲法が二十五年で一人前になったのだという意味で祝福してあげる、これは憲法という国の基本法に対する権威ある意味で、ぜひひとつ閣議でがんばってもらいたい。研究と同時に、これはあなた自身が提案されて——これはだれもおこる者はいない。党内でもそう反対をする先生はいないでしょう。ぜひやっていただきたい。これはぜひ私はお願いしたいと思う。つまり野党からお願いすることはめったにないが、この際憲法二十五周年記念祝典、私は中曽根長官の朗報を待ちたい。  あなたは時間ですから、あなたに対する質問はこの程度にしておきまして、それでは法律論で、九条関係でもう一つ自衛隊法との関係をお尋ねしたいことがあるのです。それから安保条約第五条の関係等でお尋ねしたいことがある。外部の武力攻撃に対して自衛隊が対処をするために行動を起こす七十六条、それから七十八条には治安出動がある。治安出動と防衛出動と、その手続上に一つ差があるのです。これは防衛局長から御答弁をいただかなければならぬので、先にお答え願いたいのですが、自衛隊法第七十八条、治安出動の規定がありますね。七十六条に外部武力攻撃に対する防衛出動がある。その手続上の相違点をまず取り上げてみたいのですが、外部の武力攻撃に対して対処する場合には国会の承認という前提が一つある。事後承認は副的なものである。ところが治安出動になると、もう国会が開かれておろうとおるまいと、すぐ出動していいようになっておって、総理防衛庁長官がここで決意をすれば、総理が長官に指示してすぐ出動できる。つまり二十日以内に国会の承認を得るというちょっとおかしな規定があるのです。   〔委員長退席、塩谷委員長代理着席〕 これは自衛隊法ができてもうすでに二十年近い今日でありますから、これは自衛隊法の改正をしなければならぬ規定だと思うのですが、今度の防衛白書を拝見しても間接侵略に力を入れるようなにおいがしておるわけでございますが、治安出動ということになれば間接侵略をどう処理するかというための出動だ、こういうことになってくるとすると、二十日以内に国会の承認を得るということでなくて、国会の承認を得て治安出動にするという規定に改めるべきではないか。法律ができて二十年近くになってくると、情勢が変わってきておるのです。当時は直接侵略というものに重点があったから、間接侵略というものはあまり強く考えなかった。しかし防衛白書でそういう間接侵略に一つの新しい方向を見出そうとするようなものが書いてあるような段階になってくると、このあたりで——治安出動というものの意義が非常に重大であり、治安出動のための演習というものに国民が注目をし、また油断をすると総理の独断で国民の大多数が反対しているような治安出動をする危険もある。そういう意味で、国会の事前承認規定にこれを改める必要があるのではないかと思うのですがね。
  162. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 防衛出動というような場合が起こる場合には、わりあいに緊急性を持ったときも出てくるだろうと思うのです。そういう意味において、国会を一々召集してその事前承認を求めるということになると、非常に機を逸するという面も出てくると思います。そういう意味から、行政権の中にある程度国会がまかしていただくということが必要ではないかと思います。
  163. 受田新吉

    ○受田委員 ちょっと大臣、治安出動は。治安出動は行政権にまかせて……。
  164. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 治安出動の場合は、これは国内的な諸問題でありますけれども、やはり国会に一々御承認を求むるというような性格を持っているかどうか。つまり内閣が国家の治安を維持するという責任を持っておるわけでございます。そういう意味において警察行動を支援、後拠するという形の場合が多いので、その程度のことも同じように、やはり行政権を持って国家の治安を維持する責任をしょっておる内閣総理大臣にまかせておいていただいたらいいのではないか、そういうふうに思います。
  165. 受田新吉

    ○受田委員 これはたいへん大きな過誤をあなたはおかしておられるわけですが、治安出動をしたならば二十日以内の国会の承認事項になっておるのです。だから事後承認ということになる。国会が承認しなかったらその出動した部隊を引き揚げなければならぬということになっておるわけでございますが、その二十日以内に国会の承認を得るという規定があることが行政権にまかしてある意味ではないわけなんです。行政権にまかしておるなら、この二十日以内の承認は要らぬわけなんです。国会の承認を必ず必要とするという、この二十日間のゆとりを持っておるところに問題がある。どうせ国会の承認をとるなら、国会閉会中ならばやむを得ないけれども、開会中ならば出動することを——これはもう事態が変わっている。法律ができたときと今日と二十年のズレがきておる。この時点で、間接侵略というものに対する新しい脅威を感ぜられるような防衛庁とされましては、国会承認によって、国会の責任でわれわれは出動したんだということで一つ安心感と、そして責任のゆるやかさというものもおありなんでございますから、国会事後承認規定を事前承認規定に改められるべきじゃないか。長官、現実にこれは事後承認と書いてあるのです。
  166. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 防衛出動並びに治安出動、ともに最終的には国会の承認を必要としておることはお説のとおりでございますけれども、治安出動のような場合でも、不祥事件というようなものが突発的に起こる場合があるわけであります。いまはそういうものはないでしょうが、昔二・二六事件があったり戒厳があったりいろいろありました。そういう突発的な事件が起こるという場合もあり得るので、そういう場合に備える意味において、やはり機を逸せず処置するということが治安問題等については大事であると思うので、法律を改正することはいまのところ適当でないと思います。
  167. 受田新吉

    ○受田委員 これは二十日以内という日数を限った理由はどこにあるのか、事務当局調べたことないのですか。いいかげんな扱いでは困ると思う。
  168. 久保卓也

    久保政府委員 私、必ずしも調べたわけではありませんが、この種のもので二十日になっている例がほかにもたしかあったと記憶いたしておりますが、ちょっとどの法律であったか覚えておりません。
  169. 受田新吉

    ○受田委員 治安出動して二十日間も後になって——「以内」ということが書いてあるわけなんですが、国会の開会中は治安出動をする必要があるかないかはやはり国会にはかる。自衛隊の出動という点においては当然国民的規模における出動ということになってしまうのです。そういう意味で、そうした重大な自衛隊を動かすという大事件に国会がノータッチというようなことは、これはとるべきでない。大臣は、この規定は非常にけっこうであって、国会をなめるのに都合がいい規定だという意味で、二十日後くらいでいいのだというお気持ちを変える意思はないということでございますので、私、国会軽視の思想をあらためて確認をさせていただくことにして、この規定に対する熱意がないことにきわめて遺憾の意を表明して、間接侵略に対する非常な独裁的な、独断的な行動が制約されないかっこうのままでこの規定が生き残ることを残念に思うわけでございます。  もう一つ基本的な問題として、外部の武力攻撃があった場合の安保条約第五条の規定に関連したお尋ねをいたします。  自衛隊法第七十六条の防衛出動とそれから日米安保条約に伴う共同行動との関係で、最近自衛隊の行動についてまず自主防衛の立場から、外部の武力攻撃があったならばできるだけ自衛隊が先頭に立つ、日本側が先頭に立つ、そうして第二次的に、副次的に安保を適用するという立場に変えられました。第三次防の初めまでは、安保条約を基本にして日本自衛隊の行動は副次的であるということになっておったのが、途中で有田長官のころからこれが変わってきたわけです。この変わった現時点においてはっきりさせておいていただきたいのは、自主防衛の立場から外部の武力攻撃に対して安保条約第五条の発動の前に防衛出動で処理できることと、日米安保条約の共同行動に移ることと、その間の関係をはっきりさせていただきたいのです。外部の武力攻撃に対する防衛出動、これは日本自衛力でやれるのだという判断、いやこれは日米安保条約の共同行動にしなければならぬのだという判断、これはどこでやるのですか。
  170. 久保卓也

    久保政府委員 まずこの第七十六条と安保条約の関係で申しますと、武力攻撃のおそれのある場合に防衛出動命令が出されます。この場合には現に武力攻撃が発生していない、ただしその発生のおそれのある場合でありますから、防衛出動命令は出せますけれども、いわゆる自衛権の発動はできない。したがって武力行使そのものはありませんので、日米安保体制はまだその時期では働かないわけであります。  ところでもう一つ条文に即して申しますと、昨日も条約局長が申しましたが、安保条約によりますと「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、」云々、こう書いてあります。したがって施政のもとにある領域でない地域におけるたとえばわが商船、わが艦艇に対する武力攻撃、これについてはわが国が自衛をしなければならない。その場合には日米安保体制は働かないということであります。これは法律あるいは条約に直接関連した問題でありますが、もう少し具体的な事案になってきますと、日米安保体制のもとにおいて日本側が第一義的に対処するという場合に日米がどういう関係を持つのかということになりますと、これは態様いかんによるわけであります。つまり、たとえば小規模な上陸作戦が行なわれるというような場合におきましてはわがほうの力だけでやれる場合もありましょう。そういう場合には、日米安保体制があるからといって、必ずしもアメリカに協力を頼まないこともあり得ます。しかし、規模が大きくなって、たとえば日本に侵攻してくる艦艇をアメリカ側からも攻撃してもらったほうがよろしい、わがほうの兵力は足りないというような場合もありましょう。あるいは場合によっては、相手国の基地をたたいてもらったほうがわが国防衛するには非常に都合がよろしい、そういう必要性のある場合もありましょう。そういう場合には安保体制に基づいて米側に協力を依頼する。やはり態様によりまして米側に協力を依頼する度合いが違ってくるというふうにいえるのではなかろうかと思います。
  171. 受田新吉

    ○受田委員 その態様の状態によって、これは自主防衛でやる、これは安保に基づく米軍の協力を求めるという判断日本の内閣総理大臣がやるということになるのか。その際に、外部の武力攻撃があった場合に日本が要請して共同行動をするのか。武力攻撃があったら双方は直ちに共同行動に着手するのか。安保条約第五条は、日本の要請に基づいて共同行動に移るということになっているのか。
  172. 久保卓也

    久保政府委員 条約の上でも、武力攻撃があった場合に「共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」というような言い方で、いまの御質問に対しては必ずしも明白になっておらないと思います。しかしながらその是非を決定するのは当然内閣総理大臣でありますから、米側と協議するでありましょうが、私は、つまりこのやり方についての打ち合わせといいますか協定といいますか、そういったようなものは今日ございません。したがって、私が想像し、かつ考えるのには、日本側がやったほうがよろしいと判断すべき場合があろうと思うのです。つまり米側が自動的に介入してくるということは、そのときの情勢で必ずしも好ましくない場合もあり得るかもしれないということを考えれば、内閣総理大臣が決心して米側に要請するということのほうが望ましいのではなかろうかという感じがいたします。  また一般的に申せば、これはアメリカ側の立場で申しますと、ニクソンドクトリンの姿勢というものは、やはり現地国の要請に基づいて自分が動くんだということをこのニクソンドクトリンのほうではいっております、安保条約ではありませんけれども。そういうことを総合して考えれば、日本の利益のためにもやはり内閣総理大臣が決心をし、要請するという形が好ましいのではなかろうか。これは私の考え方であります。
  173. 受田新吉

    ○受田委員 安保条約の第五条の規定は宣言規定だ。それから自衛隊法第七十六条は防衛出動、内閣総理大臣の命令で出動するという規定なんです。おそれがある場合というのはカッコの中に書いてある。武力攻撃があった場合というのが第一義的なもので、おそれがある場合というのは第二義的なものだ。したがって私が指摘するのは、おそれじゃないのです。外部の武力攻撃があった場合、防衛出動の第一義的な防衛任務を必要とする時点日本自衛力を動かす態様をどうすべきかということをいまお尋ねしておるのです。それは、かつては第三次防までのあの目標であった日米安保を基本にした構想からいうならば、日本のかってな防衛出動ということは、ほんとうにどこかへギャングが乗り込んで、ゲリラが上がってきたというくらいの程度のもので、普通は、外部の武力攻撃があれば日米共同出動というような印象をわれわれは受けてきたわけだけれども、自主防衛が第一で安保は副次的なことだという、百八十度の転換を見た今日、このあり方をはっきりしておかなければならない。だからアメリカの責任者との間で内閣総理大臣がどういうかっこうで話すのか。つまり安保条約第五条の発動を要請したいというので日本側が要請するのか、あるいはアメリカが判断して、おい、ここへこういうやつが来たぞ、やろうぜということをやってもいいのか、日本側からの要請か、アメリカ側からいってもいいのか、偶然の一致でもいいのか。それからもう一つ日本がかってに局部戦あるいは限定戦、こういうかっこうで、北海道へあるいは九州へ不届きな外部の武力侵略があった、すぐこれを排除した、排除したがやり切れぬから助けてくれというふうに、あとから追いかけてやるのか、そういうようないろいろな態様があると私は思うのですけれども、ひとつはっきりしたことをお答え願いたいのは、外部の武力攻撃があった場合に、内閣総理大臣がこれに対して、限定戦として、局地戦で日本自衛力で対処し得ると判断すれば、日本自衛隊だけでこれを排除する。もしこれが強大な部隊らしいといって米の共同行動を要請したい場合には、総理がだれにどういうかっこうで——大使を通じていくのか。こういうことは間髪を入れずやらなければない。あるいは太平洋軍司令官に要請するのか、在日米軍司令官に頼むのか、差しあたりどういう手続をとって日米共同行動に移るのか。手続的な方法など——いま長官はここでこうしておられるが、北海道にいまにでもどこからか大部隊が来た、九州に来たとなれば、あなたはすぐ命令を下さなければならぬ。総理の指示を仰いで防衛出動をぱっとやらなければならぬ。ここでこうして答弁しておられるが、いまでもあなたはそういう責任ある立場にいらっしゃる。大襲撃が北海道へ、九州へという事態が起これば、あなたはすぐ自衛隊を動かす責任者になられるわけです。国会の答弁をほって、直ちにあなたは実戦部隊の総理補佐の最高責任者になられるという責任のあるお立場だが、この安保条約第五条の発動に関して、自衛隊法第七十六条との関係を明確にしておいていただきたい。自主防衛を中心にして日米安保を副次的に考えた現時点において、そういう扱い方について明確な御答弁を願っておきたいのです。
  174. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう事態の際には当然閣議が開かれますし、その前に国防会議も開かれまして、そういう手続を経た上でおそらく外務大臣を通じてアメリカの大使に対して要請をする、こういう手続が行なわれるだろうと私は思います。われわれのほうからすぐ米軍司令官とかなんとかにいくべきものでなくて、そういうものは外交チャンネルを通じていくべきものであろう。それは閣議の決定によって外務大臣が執行すべきものである、そう思います。
  175. 受田新吉

    ○受田委員 閣議を開くゆとりのない——大体近代戦というのは、普通は時間的に非常に急迫した事態で、急迫不正の侵害ということになるのです。さあどうするかというふうなゆとりを持って閣議を開くほどの時間的ゆとりがない。これが近代戦の様相であると思うのですけれども、総理とあなたとで直ちに決断をしなければならぬということが私は起こると思うのです。閣議を開くうちにもう完全にお手上げになっておるという、こういう場合は一体どういうふうになるのか。
  176. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 必要最小限閣議は開かなければならぬものです。それは、財政については大蔵大臣が関与し、あるいは物資の輸送その他については農林、運輸あるいは通産大臣、みな関係するわけでありますから、当然閣議を開かなければならぬことであります。国防会議も法律上の手続がございますから、やはりやらなければならぬと思います。
  177. 受田新吉

    ○受田委員 大臣があちらに行かれる時間が来ておりますが、これだけお答えしていっていただきたいのです。  私はここで大事な問題として提案したい。たとえば朝鮮海峡で事件が起こった、紛争が起こったというときに、自衛隊はどういう役割りを持つかにこれはすぐ関係するので、予算委員会で去年三月にもちょっと論議されておったことなんですけれども、私、その論議で未解決の問題が残っているのをお尋ねしてみたい。いいですか。  たとえば米軍と韓国が共同作戦して在日米軍基地から米軍機が出動して韓国へ行った。ところがそれを今度は敵が追跡して、それを今度日本自衛隊が、わが領内に入ってきたのでこれを迎え撃った。そして防空識別圏を越えてくると、今度は領空外でも攻撃できるという御答弁が当時あったようでございます。そういう事態が起こったとき、それは安保条約の第五条の発動ではない、自衛隊の外部の武力攻撃に対する防衛出動でもないような形態のものが閣議の前まではあり得る。つまりスクランブルでその侵入した敵機を撃ち落とすというような事変的なものが途中であるのかどうか。つまり閣議以前は、日本防衛出動する以前のスクランブルによる、緊急発進による侵入敵機の撃墜あるいは艦船の撃沈、こういうようなものは、防衛出動以前のそうした不正の侵略に対する緊急措置というものが考えられるのかどうかです。
  178. 久保卓也

    久保政府委員 長官申されましたように、防衛出動のためには法律的には国防会議が開かれないといけませんし、また閣議が当然行なわれましょう。したがいまして、その以前の段階では防衛出動は許されておりません。そうしますと、領空侵犯の措置であるか、あるいは純粋の正当防衛の措置であるかのいずれかでなければなりません。そこで領空侵犯の場合には部内で手続をきめておりまするけれども、正当防衛以外の場合には相手方攻撃してはいけないとなっておりますので、これはそういった事態が出てこなければ攻撃することはあり得ない。それから、その他の場合におきましても、たとえば艦艇についての攻撃も、正当防衛に当たる場合でなければ防衛出動以前にありましては砲火を交えることはできない、こういうことになっております。
  179. 受田新吉

    ○受田委員 こういう事件、紛争は間髪を入れず起こるのです。したがって、いま大臣が閣議を開き国防会議の承認を経て出動の承認を得るという手続をするのには、閣僚が電話で集まるとしても、夜でも——こういうことは夜と昼とないんだ。夜寝ておった。総理も腹が痛うてきょうは重体だ。副総理もぐあいが悪い。そうすれば閣議へ集まる者は半分くらいしかおらぬ。過半数に達しない閣議なんかも予想されることもある。国防会議の構成員も十分でないというようなときがあり得るのです。そういうときに、それまでにとった措置というものは、つまり敵機が侵入した、それを撃ち落とした、スクランブル、緊急発進で撃ち落とした、向こうは爆弾を投げたから。閣議決定以前の行為、そういう行為は事変的行為というものかどうか。つまり向こうがこちらに攻撃を加えても、座して死滅を待つわけにいかぬのですからね。閣議はまだきまらぬ。しかしもう非常なスピードで朝鮮海峡の事変が、紛争が進んで、米韓の共同行動の結果、向こうから米機が追われて日本の基地にかけて戻る——かけて戻るというか飛んで戻る。それを追っかけてくる。それを日本のスクランブル二機がすぐ出て撃ち落とす。その撃ち落とすのは、撃ち落とせという命令を下したわけじゃない。まだ閣議で決定していない。そういう行為は一体何か。事実これはあり得る。事実問題としてあり得ることなんですが、閣議決定をするまで及び国防会議の承認を得るまでに行なわれた行為というものは、防衛出動以前の行為で、しかも防衛出動と同等のもう激戦をやっているという状態は一体どうなるのか。
  180. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは正当防衛権の行使で個個の場合には認められております。すなわち急迫不正の侵害があって、ほかに救済すべき手段がないという場合に、必要最小限の対抗措置を講ずるということは、飛行機の場合でもあるいは自衛艦の場合でももちろん認めてあります。したがってその場合には自力救済をしなければならぬと思います。
  181. 受田新吉

    ○受田委員 長官、あなたのお呼び出しの時間、これは非常に大事なところですが、これは保留しておきますから、お約束の時間にどうぞ。いまの問題は長官帰られてからもう一度やることにして、今度は長官がおられなくてもいい問題をやっていきます。こういうことは審議の協力を惜しみなくやらしてもらいます。防衛局長で大体間に合うと思いますが、吉國先生、すまぬが最後までおってください。きょうはよい御答弁をいただきたいのです、御迷惑ですが……。  私ここで今度は四次防の構想と、それから具体的に法案の改正につながる問題に触れていきます。この法案の改正にも直接触れていきます。  まず陸の構想を承りたい。北海道に北部方面隊というのがあって、総監がおる。五方面隊、十三師団というのが日本の陸上自衛隊。北海道にそのうち四師団ある。十三師団のうちで北海道に四師団あり東北に二個師団あるというと、その他を合計して七個師団しかない。半分が東北と北海道に陸上の師団があるというこの現実は、戦略的に見てどこにその根拠があるかをお示し願いたいのです。
  182. 久保卓也

    久保政府委員 理由は二、三あろうかと思いますけれども、まずわが国脅威考える場合には、地勢的な面から考える必要があろうと思います。そういたしますると、当然仮装敵国とかなんとかいうことを考えませんで、純粋に客観的な地勢的なことを考えてみますると、日本の土地が外国に接している地域といえば、西部と北部しかございません。したがって西部と北部に重点を置くという考え方を陸上自衛隊の場合にとるのが、これは理の当然であろうと思います。中部地域については、これはたいへん日本海も太平洋も広い海域を持っておるわけであります。ところで西のほうにつきましては韓国という国があります。これは日本が提携をしておる米国ともまた提携をしておるということは、言うなれば友好国であるということは間違いない。ということになると、ある程度そういう点では勢力をやや緩和してもよろしいということで北部重点になっているというのが、これは自衛隊発足当初のおそらく思想であったろうと思います。  もう一つの理由は、これは自衛隊が新しく基地を求めて施設をつくったということは比較的少ないはずでありまして、旧軍の施設を利用した。原則的には警察予備隊からしばらくの間米軍の施設——米軍といいますか旧軍の施設が米軍に引き継がれ、またそれを自衛隊が引き継いだというかっこうになっているところが多いと思うわけです。ところが当時の米軍、いまはだいぶすいてまいりましたが、北部方面、東部方面に相当にあいている施設が多かったということで、その施設を利用したということがいわれております。したがって、現在ある師団司令部なり連隊のある場所が戦略、戦術的に見て最も適切であるという判断でそこに配置をしたというよりも、従来の施設をなるべく経済的に活用したいということの配慮がそれに加わったというふうに考えてよろしかろう、そういうふうに思います。  それともう一つは、いま日本全土を五つの方面隊に分けておりまするけれども、これに一つの方面に二個師団ずつ配置をし、北海道と中部地区については非常に範囲が広いという意味で、北海道については二つ、中部については一つをプラスした、そういうようなことが総合的に現在の配置にあらわれていると思います。
  183. 受田新吉

    ○受田委員 旧軍施設を利用したとかいうようなことはあまり意味がないと思うのです。施設の利用などということは戦略防衛の点からいって、古い建物があったから利用したとかいうことよりは、もっと基本的な問題があると思うのですが、北海道へ四個師団というこの数は、北海道のような他国に接している地域には力点を置くということでございましたが、それにしても北海道に四個師団あって九州には二個師団しかない。これいかに。
  184. 久保卓也

    久保政府委員 これは航空の面から見ると非常によくわかるわけですけれども、九州は外国といいますと韓国ですが、韓国以外は相当遠く離れております。ところが北海道の場合は非常に接近をいたしております。それと本土との連絡からいいましても、九州のほうが比較的やりやすくて、北海道のほうが本土との連絡がやりにくいということで、ある程度の独立性を持たせる必要がありますし、それなりの防衛力というものを強める必要がある。これは地図をごらんいただければ一目りょう然でありますが、そういう点から考えると、やはりその力というものは北海道に相当程度重点がかかってまいる。結局日本防衛考える場合に、相手がだれであるかということではなくて、地勢的に見て日本のウイークポイントは何であるか、そのウイークポイントについて力をよけいに集中するということが通常の考え方であろうと思います。
  185. 受田新吉

    ○受田委員 つまり仮想敵国は考えないで、ポイントをどこに置くかという問題が大きいと思うのですけれども、ウィークポイントの置き方を、北海道へ四個師団も置くほどのポイントというのに、私は理解に苦しんでおります。四個師団でなくして、せめて三個師団か、あるいは二個師団で適当ではないか。私たちの郷里の中国地方には一個師団しかないわけです。四国には師団がない。中国地方には侵略の懸念なしと見られますか。
  186. 久保卓也

    久保政府委員 いずれの地域についても侵略の懸念なしと申すわけにはまいらないと思います。ただ先ほど申し上げましたように、客観的に見て、地勢的なウイークポイントはどこにあるか、各国ともみなそれを考えるわけでありまして、そこでそういったウイークポイントに備え、かつそれだけの兵力を集める。たとえば内地でありますと、鉄道が使えるかどうかは別にしまして、一応陸続きでありますから、輸送その他が相当楽でありますけれども、北海道の場合は、当然海がありますし、海峡がそう自由に使えるわけではない。そうすると、ある程度の独立性を持っての戦闘能力を付与しておかなければならないという判断が入ろうかと思います。
  187. 受田新吉

    ○受田委員 私は、いま交通機関のことを持ち出されましたから、お尋ねするのですが、交通が不便であるから部隊が多いという理屈は成り立たないと思います。産業、交通、文化、そういうものは国の政治の上で十分直していくべきで、防衛でそれを支配するという、つまり部隊の配置でそれを動かすということ、それは筋が逆じゃないか。つまり交通が十分でなければ交通を十分にすればいいのだ、社会福祉が豊かでなければ豊かにすればいい、間接侵略で、どうも内部で反乱を起こしそうだというようなのは、生活苦に追われている人が多いからだし、生活苦を排除するには貧困を防ぐ政治をやればいい。政治の悪さでいろいろな条件が起こってくる懸念があるわけですから、防衛庁は他と一緒になって考えていくべきだ。それで、たとえば防空につきましても、道路の建設で、ヘリコプターや練習機その他の陸海空の戦闘機等を含めた飛行機がそれぞれ活動を敏速にするために、高速道路がそのまま滑走路になるような配慮も、建設省と防衛庁が一緒になって、いざというときの非常事態に対する構想も練っていくべきである。そういうようなものを他の政治と十分打ち合わせていってこそ、国民とともにある自衛隊になる。自衛隊だけがそういう内政と一切離れて、かってな計画を立てて、かってに運営するということでは、これは国民的規模における自衛隊ではない。武者小路実篤が、ナスとキュウリを並べて、されど仲よきと書いている。それぞれは違いますよ、されど仲よいというのは、この絵をときどき出してみておもしろいなと思っておりますが、各省ともそういうふうにかってな行動をしても、されど仲よきというかっこうに防衛の場合にはなりませんな。やはり国政の上に自衛を生かしていくための努力が要る。これは長官のお仕事になるわけですが、防衛庁として、そういう意味で今度の四次防を計画される際にも、各省との連絡が十分とられ、むしろ国政全体の上から四次防が生まれて、防衛庁がそれに協力していくというかっこうのほうがよかったのじゃないか、こういうふうに私思っているのです。防衛構想を進められる上に、防衛庁単独の計画でなくて、国民とともにある自衛隊という立場から、他の行政部門との連絡を十分にとって、そしてそこで国費をむだにしないように、高速道路なども、ほんとうは非常事態に際して高速道路をそのまま滑走路に使っていいような計画というものが、当然防衛庁と建設省でされていいと思うのです。そういうような相互の連絡というものは一体どうできておるか。  それからもう一つ、陸上自衛隊のついでにやります。陸上十八万、現に十七万九千人というこの人員が、第一次防からずっと踏襲されている。あまりにも陳腐である。しかも現実に十七万九千の中で十五万七千しか陸上自衛官はいない。そしてその自衛官の三万の交代のためにも、防衛庁は四苦八苦して募集にあたっておられる。涙ぐましい努力をしていながらも、その補充が十分でない。この現実は一体またどうしたことか。局長さんにお尋ね申し上げましょう。これはあとから長官が来られたら基本的な質問をやらしていただく、その事前の準備をあなたにお願いしておきたいと思うのですが、十八万構想を変更して、十三万ないし十五万というふうに兵員を思い切って減らす、そして少数精鋭主義に切りかえるという構想はできないか。十八万を後生大事に、この念仏をずっと四次防まで続けて、そうして人員は二万以上不足しながら、今日まで四苦八苦して募集にあたっておられる。隊員も、世論調査などを見ると、国と国民を守るための意欲に燃えた隊員の数は非常に少ない。二年ないし三年の、隊員である期間中に、感激をもって国と国民を守るという隊員が非常に少ないというような事態は一体どうしたことか。このマンネリをどうして排除して、希望多き自衛隊、少数精鋭の質的向上をはかっていくかという重大な関頭に立っているのが現時点だと思うのです。四次防を始めるにあたりまして、ひとつ十八万構想を変更して、十三万ないし十五万構想——七千師団と九千師団がある。七千師団、九千師団で間に合っているわけでありますから、七千師団でも六千師団に変えて、優秀な、熱意ある隊員を、五倍、六倍という多数の志願者の中からすぐって隊員にするというような形をとることはできないか。人数だけでいくのは烏合の衆である。かつての軍人勅諭の中にも烏合の衆の批判をされたことばがありましたが、私たちは、やはりこの機会にいたずらに金を食う隊員の人数ばかりをふやすのでなくて、少数精鋭に切りかえて、一騎当千の自衛隊によって、国民に信頼される、また自衛隊員自身が国民の信頼にこたえるりっぱな自衛隊をつくるべきだと思っておりますが、ここで以上の前提のもとにお答え願いたい第一は、師団の数を、九千師団と七千師団の二つがあるわけですが、七千師団ないし六千師団に切りかえることが可能かどうか、また、現に隊員の募集についてどのくらいの経費がかかり、それにあたっている自衛隊員はどのくらいおるのか。そして、どのくらいの競争で選考しているのか。そして、入隊した者が、調査にあたって、希望を持って、私は自衛官であることをありがたく思っておるというのがどのくらいの比率になっておるのか。そして、昭和四十六年の予算要求の中には、その退職時における退職金の思い切った引き上げ、あるいは殉職者に対する厚い待遇などを考えておられたが、そういうものは最終的には日の目を見ないで来たようでございますが、これは私自身も、自衛官の処遇改善ということは、多年、野党ながら陣頭に立って訴えてきた問題でありますが、そういうものがどうして削られていくような運命になっているのか。そういう問題でお答え願いたい。  そして、もう一つつけ加えてお答え願いたいのは、自衛官が宿舎で寝起きしておるわけですけれども、その宿舎が、あの自衛官の重い使命に比較して、あまりにも哀れである。また九州から北海道などへ、郷里を離れること遠きところに勤務する皆さんなど、下士官、准尉以上の将校に、幹部になって後の宿舎の割り当てがないのが多い。上級の将校には割り当てが全員あるが、下級将校以下にはその四割とか三割とかいう非常に少ない割り当てで、高い家賃の宿舎に入っていなければならぬというような事態が起こっている。これでは士気はあがらないです。祖国日本を守る、国土、国民を守る自衛官として、陸上の自衛官がその生活に不安を感じ、除隊して後の不安を感じ、そして待遇の悪さに対して不平をかこち、反戦思想を起こすとかいうような、そういう形で十八万を守り抜く必要はどこにもない。このあたりで、結論として十三万ないし十五万の少数精鋭の質的向上をはかる陸上自衛隊に切りかえるということについて、以上質問の問題点を中心に御答弁願いたいのです。
  188. 久保卓也

    久保政府委員 定員問題について、私からお答えを申し上げたいと思います。  現在の陸上自衛隊は十七万九千人でありますが、予算的には十五万六千人ばかりついておるようであります。したがいまして、すでに定員から二万三千人分は予算そのものがついておらないわけであります。そこで、三万人を削ってみたところで、予算的に浮くものは七、八十億という金でありますから、金の面では必ずしも三万ということではプラスにならない。十万とか十三万とかいうことになりますと、経費的には浮いてくる。また質的によりよく、いい質の者が集まるということで、そういった御意見は部外にはございます。以前からそういった御意見もありまして、傾聴に値すると思うわけですが、しかし、私ども、戦略と申しますか戦術と申しますか、そういう面で見ると、十八万というのは単に頭数だけではありませんで、要するにそれは扱う装備を代表する者、装備を扱っている者の合計が十八万になるということでありますから、十八万というのは小銃の十八万ではなくて、結局、戦う力という意味での戦力の合計ということをあらわすわけであります。  そこで、私どもの検討によりますと、限定されたような侵略事態でありましても、数個師団のものが相当の兵力を持って、あるいは装備を持って上陸してくる場合には、本土内における後詰めも考えてみますと、やはりどうしても十八万で代表されるだけの戦う力というものは必要になってくる。しかも、これは予備自衛官というものを約六万人ばかり計算をしておるわけでありますが、これでもそう長期間自給できるということではない兵力である。そうすると、限定された侵略事態であり、しかも長期間自給できるものではない。少なくとも米国の支援をもって初めてある程度の期間の自給ができ、かつまた相手方を排除し得るというような、そういった限られた規模のものを考えてみましても、十八万人くらいはやはり要るということで、そういう意味で、この十八万というのは、私どもの戦術的な要請からすると欠けるわけにはまいらないという問題がございます。  そこであとは、どういうふうにして、いい質の者をたくさん集めるかという問題が残るわけであります。その一環として、減らす場合には、たとえば九千師団を七千に、七千を五千なり六千にという問題もございます。これは師団の規模をどの程度にするのがよろしいかという問題があるわけでありますけれども、七千ないし九千というのは相当勉強した結果であります。また外国でも、たとえばソ連なんかで見ますと、師団の規模及び質の面から見ると、A、B、Cというふうに三つぐらいの段階に分かれておりまして、言うなれば、打撃部隊と申しますか、そういうものは装備を厚くする、人員もしたがって多くなるというような部隊と、それから後詰めといいますか支援部隊といいますか、そういうものと、二段階に分けるという思想はやはりあり得るのではなかろうか。そうしますと、一個連隊戦闘団というのを二千名程度の規模に考えております。これは具体的に日本の地理を検討した結果出てきた数字でございますが、そういった連隊戦闘団を二千程度と考えますと、これまた戦術的に最小限三つの単位というものが戦闘隊員になります。三つないし四つという考え方になります。そうしますと、やはり七千ないし九千打、撃部隊ということを考えれば九千ぐらいがどうしても望ましいということになりまして、私どもの現在までの研究から申せば十八万というものも必要でありますし、九千なり七千なりというものは必要な戦闘隊員であるということに技術的にはなっております。
  189. 受田新吉

    ○受田委員 あなたのいまの御答弁の中で、ちょっとふに落ちぬことが一つあるのですけれども、私自身、人間を戦略的に十八万必要とするんだということはどうもふに落ちぬ。何となれば、最近における陸上部隊の装備なども近代化されて、数でこなすよりも機械でこなすし、近代化された装備でこなしていく。これはどの実社会でもそうですけれども、経済界においてもオートメ化されて少数で機械が動く、そういう時代が来ておる。だから頭数でこなしていく時代ではなくて、そういう兵器装備の近代化によって少数精鋭主義でこれをこなしていく人々をつくっていくということで、従来二人でかかえておった兵器を一人でかかえていける。下士官だけで済む、あるいは将校だけで済むような装備もある。通信その他の機械なども人数が大幅に減っていいような機械が出る。こういう時代が来ておるので、十八万はあくまでも守らなければならぬという戦略的な要請というものは、人間でこなすのではなくして、そういう近代化され、しかも技術化された装備でこなしていくということができないのですか。
  190. 久保卓也

    久保政府委員 もちろん、いまおっしゃったような方向で進んでいるわけです。これは陸のみならず陸海空ともにそうであります。ところで、陸の場合について、たとえばホークの数が非常にふえております。あるいは戦車その他の装備数もふやしつつあります。しかし、そういうふうに将来の装備定数の増加を考えても、十八万でとめようというのは、そこに相当な省力化が行なわれている証拠だと思います。十八万というのは、御承知のように二次防のときから十八万でありますから、その当時の装備と四次防、五次防の装備と比べると、おそらく数からいってもだいぶ違うにもかかわらず人数は同じであるということでありますから、おっしゃるような省力化ということが進められている。しかし、たとえば戦車は四人乗りますが、これは二人にはどうしてもなれないといったようなミニマムな限界というものもございますので、一般的には先生のおっしゃるような方向で進んでおる、しかしそれにもかかわらず、たとえば十年ぐらいの先を見通し兵器を扱う人間の数というものは十八万ぐらい、こういう結論になるわけであります。
  191. 受田新吉

    ○受田委員 私は、十八万に固執しておられる局長さんのお気持ちがかわいそうなほど痛わしいのです。それは、よし十八万を固執されたとしても、現実に募集状況などが、これだけ骨を折って、これだけ金を使うても人が集まらぬ。集まった者の中で、国土、国民を守るんだという気持ちの比率が調査によっても十分でない。そういう現状を見たときに、その人員を減らすことに大転換をする時期が来ておると思うのです。それを、十八万で省力化された人間で押えているんだということで、現実に十五万七千しかおらぬ部隊をあえて十八万に固執し続けるあわれさというものに私は非常に悲劇を感じているのです。日本の陸上自衛隊の悲劇ですよ。人がおらぬ、かき集めていろいろ無理な募集をして、もう浅草その他の町まで行って、いかに人を集めるかの苦労をしておられる。通りがかりの人をつかまえてやるという、この悲壮な御努力にかかわらず、そうはいかぬ。結論は簡単に出ると思う。つまり待遇をうんとよくして、それで自衛官というものに喜びを感ずるような空気をつくってあげる。それをとるために何はさておいて、十五万では意味がない。十三万。私は十五万ないし十三万と申し上げた。十三万の線をひとつおとりになって、十三万として、これは多少のズレがありますから、五千や六千の幅はいつも用意せねばいかぬから、そういう十三万でけっこうです。十五万ないし十三万という、十八万に対して現在よりも約二万七千ほど減るわけです。約三万減らして、ここで精鋭をすぐって教育していく、こういうかっこうにしていくと、自衛隊に活気があふれると思うのです。私自身もわりあいそういう自衛官などと個人的に話をする機会が多い。各地の部隊をわりあいよく歩いて、そして私曹士の声も聞いておる。そういうことをわりあい忠実にやっている。父兄の皆さんとも話をするような、そういうことはわりあいやっておるのですよ。やっておる私が見て、自衛隊の隊員がほんとうに職務に希望を持ってやっていけるようなかっこうの自衛隊であるべきだ、こういう形で、私たちは別に自衛隊を敵視していまお話しておるのじゃないから、これは十分含んでおいてもらいたい。自衛隊はほんとうに国土、国民を守るための自衛隊として立つべきであり、隊員が希望を持っていくべきである、こういうかっこうで当たってみるところによると、いま指摘したような希望を持った隊員が少ない。二年ないし三年後をどうしようかということを考えておる。そして社会復帰しても、自衛隊というのはいいぞ、行けよ、諸君も昔徴兵検査があったときと比べたら、いまごろは自由が十分にあっておもしろいぞという宣伝をしてくれなければいかぬけれども、この宣伝をしてくれる自衛官が少ないですよ。自衛隊というのはあまりいいところじゃないぞ、窮屈なところだぞというようなことでは困るわけだから、除隊した諸君が第一線で自衛隊に魅力のある発言をして、それぞれの地域社会で予備自衛官などとして喜んで参加できるようなかっこうに持っていかなければいかぬじゃないですかね。そのためには人員にとらわれないで、質的向上に力点を置く。  もう一度、募集費はどれだけかかっておるか。そして隊員一名に対する陸上二年間——三年間のほうは抜きにして、陸上二年間の経費がどれだけかかるか。装備その他を抜きにして、自衛官一人当たりの直接に人間につながる経費をちょっと数字でお示しいただければお示し願いたい。
  192. 田代一正

    ○田代政府委員 ただいまの御質問で、一人当たりの維持費が幾らになっているかということでございますが、陸上自衛隊の自衛官で一人当たりの維持費、四十六年度の予算をベースにした数字を申し上げますと、人件費、糧食・被服費、医療費、営舎費、その他維持費的な経費を含めまして一人当たり一年間百二十四万円でございます。ですから二年間で申しますと二百四十八万円ということになります。
  193. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、この三万人を約二百五十万と計算して、その経費の一人当たりの節約をしますると七百五十億という節約ができるわけですね。これは非常な節約になる。その七百五十億分を、残った十三万の皆さんに振り割りする。  ちょっといまついでにお尋ねするが、募集費はどれくらいかかっておるか。
  194. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 昭和四十六年度における募集費は、予算要求額におきまして四億九千万でございました。大体これで三万人余りの募集をやっております。
  195. 受田新吉

    ○受田委員 募集担当職員の数は。
  196. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 大体地方連絡部関係の職員は常時異動いたしますけれども、一般的に勤務しておる人員は約三千名程度が募集に動いております。
  197. 受田新吉

    ○受田委員 そうしてその募集の宣伝、それから募集にあたっておる三千人の人々、こういうものはあまり無理をしなくて隊員が、昔のように志願者が、——陸海の志願者というものは、昔はあまり無理をしなくて、志願兵、こういうものがあった、徴兵でなくて、充足するほどの陸海の志願者というものがあったのです。あまり宣伝しなくても志願者が来ておったものです。それに比べると、いまこれだけ無理をして人を集めなければならぬというこの悲劇は、自衛隊に対する待遇、隊員の待遇の問題と、自衛隊に対する魅力、日陰のものという感じはおそらくもうなくなっています。そういうものをわれわれ国民で感じる人はほとんどなくなった時点で、もうわれわれは国土、国民を守る自衛官であるという希望に燃えている人が大体大半であろうと思いますから、そのほうの問題は一応おいて、同時にいまのような処遇の改善、そして職務意識に対する感謝、希望、こういうものを持たせるような努力がこれから要るわけです。  以上申し上げた点で、長官が帰られたらさらにその結論をお願いしたいと思います。  次に今度は空の問題でお尋ねしてみたいのです。この陸海空の増員計画の中で、パイロット養成という方式、つまり優秀な操縦者を養成することについてお尋ねをしたい。戦闘機の優秀な操縦者を養成するコースをお示し願いたい。
  198. 高瀬忠雄

    ○高瀬政府委員 航空自衛隊のパイロットの養成の状況を御説明申し上げます。  現在パイロットのソースは一般の大学から入ってくるもの、それから防衛大学を卒業したもの、それから高等学校を卒業しましていわゆる航空学生といいますか、そういう形で入ってくるもの、そういったソースがございます。それでそれぞれ防衛大学なり一般大学を卒業した、それから航空学生によりましていろいろ違いますけれども、防大と一般大学卒につきましては、幹部候補生学校へ行きまして、これは奈良でございますが、そこで語学等の教育を行なう。それから航空学生からまいりますものにつきましては、航空学生教育隊、これは防府でございますが、ここで航空学生の基礎課程の教育を行なう。   〔塩谷委員長代理退席、委員長着席〕 それから第一初級、第二初級、基本操縦というような課程を、それぞれT34練習機あるいはT1ジェット練習機、T33ジェット練習機、こういった課程を経まして、それから現在はF86Fの戦闘機の操縦士を養成しまして、それから部隊に勤務いたしまして、部隊でもってジェット機の飛行経験が五百時間以上ある者につきましてさらに転換教育を行ないまして、F104のパイロットを養成する、こういうような課程でございます。  それから新しいF4Eファントム戦闘機につきましては、四十五年に二名、四十六年に八名、四十七年に八名、おのおの米留させまして、米国でパイロットの教育を受けさせております。四十七年からそれらの者が教官になりまして、F4Eのパイロットの教育をする、こういう経過を経まして、航空自衛隊の戦闘機のパイロットの養成をしておる、かような状況でございます。
  199. 受田新吉

    ○受田委員 三つのコースからパイロットが養成されておるようです。ファントムの場合などアメリカにまで派遣されておるようです。  ひとつ数字ではっきり示していただきたいのですが、戦闘機パイロット養成のために、一人前のパイロットとして仕立て上げるまでに国費をどれだけ使うか。コース、コースでもいいし、代表的なものでもいいから、お答え願いたい。
  200. 高瀬忠雄

    ○高瀬政府委員 航空学生の出身者につきまして、これが一番長いので、これを申し上げたいと思いますが、F86Fの操縦士になりますのに標準養成機関は三年六カ月、養成経費は六千三百万余でございます。それからF104の操縦士につきましては現在五年三カ月ほどの養成機関を必要といたしますが、これに要する経費は八千万余でございます。
  201. 受田新吉

    ○受田委員 三年なり五年なりの間に最高八千万もかかって養成をして、パイロットというものができ上がる。この菊づくりまでの骨折りは国費を使ってたいへんなものです。ところがその養成されたパイロットが民間航空へ三十人ぐらいずつ流れていくようになっておる。この実情はどういう意味ですか。
  202. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 民間航空が異常な発達をしまして、御承知のように現在パイロットは、外人パイロットまで招聘して月給五十万も払わなければならないような実情になっております。したがいまして、そのような異常な民間航空の発達に伴いまして、わが自衛隊もこれに協力せざるを得ないわけでございまして、多分に公的性格の強い民間航空というものでございますから、運輸省を中に入れまして民間航空と十分年間の割り当て計画をきめて、三十名余り割愛いたしております。これまですでに割愛しました人員はこの五年間で大体百九十人でございます。
  203. 受田新吉

    ○受田委員 民間航空は公的性格を持つということですが、民間航空のパイロットを、自衛隊が高い国費を費やして養成したそこからスカウトせしめる、こういう形というものはちょっと異常なかっこうだと私は思うのです。つまり民間航空が異常な発達をしたので、そこで防衛庁から名パイロットを配給する。こういう国土、国民を守るために養成した名パイロットを、企業の収益があがる民間会社に配給するというのは一体どういうことかというので、私非常な疑義が起こってきておるのですが、長官、このことを何か研究されたことがありますか。ありましたら、どういう理屈で解釈したらいいのか、こういうことは好ましいことではないとお考えかどうか、御答弁願います。
  204. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 好ましいことではございません。そこで運輸大臣にも私からときどき話を持ちかけまして、運輸省系統の航空大学校を拡充して運輸省あるいは民間航空から金を出して、共同でりっぱなパイロットの大量養成にかかりなさい——そういう方向でいま運輸省は踏み出し始めまして、それができるまではある程度自衛隊としても協力せざるを得ぬだろう、こう思っています。
  205. 受田新吉

    ○受田委員 パイロット養成に涙ぐましい努力をして、せっかく一人前になったものを、しかも年齢的にも練成された、人格もよく練れた人を民間航空へ持っていくということ、私はこの事実がほんとうは理解に苦しむのです。つまり国土、国民を守るための人材がそれだけ減ってくるわけです。そしてその分だけ余分にまた養成しなければいかぬということになる。防衛庁は一人養成するのに八千万円かかる。その分だけ防衛庁費がふえておる。いかにも防衛費がふえたように見えるが、その分だけは損害賠償を要求しなければいかぬ。  問題が一つある。これは一般行政との間で連絡協調を欠き、防衛庁が犠牲を受けているという問題があると思うのです。ここで中曽根先生、防衛庁という役所は一方で非常に損をする役所である、差し繰られる役所であるということを指摘したいのですが、あなたの防衛庁は、内局の局長さん、参事官を見ると、いろいろの省から来ておられるのです。通産省から装備局長、衛生局長は厚生省、大蔵省から経理局長、スタートから大体そうなっている。その他、警察官僚の方が内局の参事官、局長たち、つまり各省の寄り合い世帯、そして二年か三年たつとさっさと本省へ帰りていかれる。つまり防衛責任に事を欠いているわけだ。おれは防衛庁職員として、防衛庁の幹部として、かばねを埋めるのだという決意で防衛庁へおいでにならない。ここに悲劇が一つあると思うのです。いまのようなこともそういう意味で、一番いいところだけは運輸省が持って逃げる、それから他の省から、かすと言うといかぬけれども、悪いところは防衛庁が引き受ける、こういうようなかっこうでは、防衛庁はほんとうに国土、国民を守るための防衛庁長官を長としたお役所として力が抜けると思うのです。もっと防衛庁を愛し、防衛庁のために、防衛の任務を遂行するためにかばねを埋めるという高級官僚を歴代の長官がかかえるというかっこうが好ましいと思いませんか、話は余談になりましたけれども。
  206. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まさに御指摘のとおりのところもあります。しかしまた防衛庁は国民的視野に立った、非常に幅の広い考え方を持たないといけませんので、防衛庁独善を排するという意味においては、各省から俊秀が集まっているということはまたけっこうな要素でもあります。しかし中軸になる者は子飼いでなければいけません。したがいまして、昭和三十年代の初めから子飼いの高級幹部を養成すべく、採用もし、いまやらしております。これらが育っていきますと御期待に沿うようになると思います。あまり各省から侵略されないように、専守防衛につとめたいと思います。
  207. 受田新吉

    ○受田委員 心がけ、もって壮とすべきものを感ずるのですが、警察の官僚の方々——長官もかつて警察官僚でしたか。
  208. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は政党人です。党人派です。
  209. 受田新吉

    ○受田委員 そうした警察官僚の方と各省から来られた方々が防衛庁の内局の有力な参謀でいらっしゃる、こういう形を、各省から精鋭が来るにしても、また何年かすると去っていくという形でなくて、防衛庁のはえ抜きの、いま子飼いというお話をされましたが、子飼いがどんどん大飼いになっていくように育てていく必要があると思いますので、そういうところを、御配慮を引き続いてお願いしたい。  ついでに、お話がそれに入りましたから、私あわせて長官構想を伺いたいのです。  シビリアンコントロールの問題がすでにわが党の和田委員からも出ておりますので、あえてこれに深入りしませんけれども、内局の皆さんが長官を補佐して制服を十分リードするというこのシビリアンコントロールの形の中で、また一方では制服をあまりにも悲しませて、希望を失わしめて、第一線で苦労する自衛官たちに、内局の者がわれわれをかってに支配するんだというような印象を与えないための内局の配慮というものが要ると私は思うのです。その間のコントロールはたいへんむずかしいと思いますが……。  長官、そこで、一佐以上の人事は内局がやることになっている。したがって、自衛官も一佐以上になると、内局のきげんを損じては昇進の道がふさがれるという意味で、こびを売る、あまり言いたいこともよう言わぬというようなことも起こると思うのですが、このシビリアンコントロールを進める上で、制服の意見をどういうふうにシビリアンは採用しておるのか、お答え願いたいのです。
  210. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は、政策、人事その他につきましても、内局のしかるべきつかさつかさの者が、それに相応する各幕のつかさつかさの者と内面的に相談をいたしまして、人事にいたしましても、各幕の要望原案というものを聞き、見、そうしてそれをいろいろ検討して、その両方の意見を私のところに持ってくるわけであります。それを私が裁断をいたしております。政策につきましても、いろいろ技術開発装備等について各幕の要望、意見をよく聞いて、そうしてもしそれが消化されない場合には、そのまま私のところに持ち上がってきて私が裁断をする、そういう形になっておりまして、すべて私のところにおいて統合する、調整するということが終局的になされております。
  211. 受田新吉

    ○受田委員 民間の意見をいれるという意味から、実際は国防会議などに民間人の優秀な人材を入れて、幅の広い視野から国防会議を推進すべきだという意見を私は前から持っている。鳩山内閣ではそういう構想で、あなたも御存じのような時代があったのです。長官はその点では、国家安全保障会議などの新しい構想、かつてあなたが就任直後に私がお尋ねしたことに対して、その構想を、米国の国家安全保障会議方式というようなものを参考にしながら、現在の国防会議のあり方を、もっと民間の意見もいれた雄大な構想をもってやろうとしておられる。この間もそういう御答弁をされておったようだが、この民間人を入れるということについては、長官としては、国防会議の構成を新しくやり直すまでもなく、現在において国防会議の構成をもし直そうとするならば、民間人の優秀な人材を一人か二人は入れるという構想は、あなたは民間人を入れる必要はないというお立場で拒否されるのかどうか。国防会議の現時点における矛盾はないか。つまり、民間人の優秀な意見をいれたほうが、国民的に見て、国民が安心すると思うのです。閣僚以外の民間議員……。
  212. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それも一案でありまして、国防会議というものの中身を充実させるという有力なお考えだろうと思います。しかし当面は現状維持でいいんではないか、そう思います。
  213. 受田新吉

    ○受田委員 それで今度、国防会議からも、この防衛庁の四次防案が国防会議のほうへ御相談なしに発表されたといういきさつなども聞いておるわけでございますが、私としては国防会議で、事務局などがある程度の原案をつくる、防衛庁もつくる、そうして十分各省の、大蔵省の金の関係、それから経済企画庁等の経済構想等を織りまぜたものを最後に世間に発表するという行き方が、ほんとうは筋としては国民的規模の防衛構想として国民の共鳴を得られるのではないかと、いまにして私は思うのでございますが、いかがですか。
  214. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国防会議にはそういう原案をつくる能力はございません。国防会議は各省大臣が列席している合議体が国防会議で、その事務局に各省から参事官が出ておりますけれども、別に手足を持っているわけではなく、制服に対して直接指示する権限もない状態でありまして、とてもそういう原案をつくる能力はないと思います。結局、私が前に申し上げましたように、いままで防衛庁独自の防衛戦略体系とか防衛構想とか防衛政策というものが鮮明でなかったと思うのです。そういう意味で、今回はわがほう独自の思想、見解をもってつくりまして、それを今度は国防会議へ持っていき、内閣へ持っていき、大蔵省へ持っていき、国民の皆さんにも批判してもらい、その集中砲火の中に四次防をつくっていこう、そういう方法をつくりましたので、少しいろいろ摩擦はあるかもしれませんが、こういう方法は責任内閣制のもとにおけるいいやり方じゃないか、私はそう思います。
  215. 受田新吉

    ○受田委員 今度あなたの有力な部下になられた久保さんも、かつて国防会議の参事官です。そこで、各省から出た優秀な参事官として、ある程度の基本構想というものは、国防会議の事務局でも、それは詳細な具体的な問題としてでなくして、ある程度の構想としては、各省から出た参事官たちの英知をすぐることが私はできると思うのです。それができぬような国防会議の事務局では、これは茶くみ程度の局長にしかならぬという危険があるわけです。やはり国防会議というものはそういう権能を持つものでないと——これは久保さんどうですか、いまあなたは防衛局長をされておるのですが、国防会議との連関において、国防会議に注文があればちょっと言ってくださいませんか。
  216. 久保卓也

    久保政府委員 率直な話を申せば、政府がなるべく国防会議を使うということであればますます力は上がってまいりますけれども、アメリカの安全保障会議というのは、大統領がどういうふうに使うかによってその機能というものはずいぶん違っております。つまりそれは法律制度以前の問題であるわけですけれども、そういう意味において、現状ではなかなか国防会議が活用されませんし、事務局というのは国防会議、つまり閣僚のいわばスタッフでありますから、各省に対する調整権はございません。これは制度上そういうふうになっておりますから……。したがって、そういう法律制度上にもやはり問題がある。したがってまた、そういう組織でありますから、あるいはそういうまた立場にありますから、何といいますか、組織が非常に小さなものでありますので、いま御期待になるようなことはやはり現状では困難ではないかと思っております。
  217. 受田新吉

    ○受田委員 法制局は、この国防会議その他の防衛庁関係の立法にはそれぞれ関与しておられるわけですね。
  218. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 政府提出の法律案でございますれば、必ず関与します。
  219. 受田新吉

    ○受田委員 あなたは国防会議の構成法というものに対して、非常に短い法律でございますけれども、この権威を高めるために法制局として検討されたことがおありかどうか、御記憶があれば御答弁願います。
  220. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 法制局独自の立場で検討したことはございません。
  221. 受田新吉

    ○受田委員 長官、そこでもう一つ、あなたの御所管の中で、もっと機能を発揮しなければならない機関を指摘したい。それは統合幕僚会議です。この統合幕僚会議という機関があるわけで、これはあなたにとっては、直接陸海空にあなたが指示される、そうすると三幕の長はあなたの指示に基づいて隊務に精励するというかっこうになっている。ところが統合幕僚会議の議長と議員の三幕の長との間における上下関係というものは法律的に明白でない。指揮権が議長にない。つまり議員の責任者としての権能があまりにも薄い。そこで、私この前誤射事件のときにもちょっと指摘したのですが、統幕会議の議長は、三幕の間で意見が十分合わぬときには、議長がその間の調整をはかり、また議長の決断でこれがきめられるという形のものへ振り向ける法改正あるいは規則の改正というものは要らないものか。すでに統幕会議の議長たる将は、つまり自衛官の最も高い地位にある者という形になって、年齢も他の自衛官よりも二歳ほど定年が延ばされておるという現状において、統幕議長に対する権能の強化というものの必要はないのか。つまり三幕の連絡調整がいささか欠けるきらいがある。つまりあなたに直属している三幕長の議長である統幕議長というのは、その中の連絡調整役みたいなもので、さっぱりおもしろみがないのじゃないかと思うのです。つまり最先任の地位であるだけに、もともと制服の皆さんはとかくいばってみたいのに、部隊の責任者はいばることに一方で一つの責任を感ずるわけなんです。いばらして同時に責任を感じさせることはないかどうか。
  222. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いまの三自衛隊の状態を見ますと、基本は三自衛隊おのおのの自衛隊であって、それがうまく機能的に統合されるかということに次の問題がかかってきているように思います。したがいまして、この三自衛隊の上にさらに位する指揮官というものは、これは防衛庁長官でいいのじゃないか。その間に中間介在物を置くということはどういうものかという気がいたします。この統幕会議をつくるときに、受田さんも御存じのように、防衛庁設置法自衛隊法、いろいろ議論が出て、ずいぶんいろいろ議論の結果、総合調整機関としての議長制度を置いたので、そのことの実態を見てみますと、さほど弊害とか足りないところがあるというふうには思いません。もうしばらくこれで運用してみるべきではないかと思っております。
  223. 受田新吉

    ○受田委員 さっき長官御不在中に、久保局長と大いに議論したのですが、日本の陸上自衛隊というものを私たちは十八万という定数にこだわり過ぎて、少数精鋭の実績を積むことで国民に信頼される自衛隊ということの配慮が欠けておる。無理をして募集し、しかもそのために非常に悪評さくさくたる影響が隊員のほうへ伝わっておるということをいま指摘したわけでございまするが、三幕のうちで、陸上自衛隊は人間にとらわれ過ぎてきておる。つまり十八万人に最初から固執し過ぎておる。こういうときに、陸海空の中で海空に力を入れて陸を粗末にしようというような印象を、あなた及びあなたの先任のころからそういう空気が出てきたわけなんです。三幕のバランスの問題、つまり空と海とに力を入れて、陸はそのままにしておくというかっこうが出てきたわけです。こういうものは統合幕僚会議一つの議題としてどう取り扱ったらいいかという問題があったと思うのでございまするが、それは長官の指示でやるべきであって、統合幕僚会議の議長の権能ではない。つまり三幕の連絡調整は長官がやるんだ、議長ではないんだ、つまり実際的な部隊の運営の問題だけであって、いまの兵員をどうふやしたらいいか、どこへ装備を強めたらいいかというような問題は、統幕会議の議長は実際問題として権能がない、こういうことになるのですか。
  224. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 総合調整という意味の権能はございますけれども、指揮命令の権能はないと思っております。これは防衛庁長官が持っておる。やはりいまの情勢から見ますと、自衛隊が発育してきたいろいろな過程の問題も考え、当分これでやってみて、弊害が出てきたら直す。まだそういう弊害が出てくるという段階に私はきていないと思っております。
  225. 受田新吉

    ○受田委員 私、陸がちょっと粗末にされてきた傾向が最近あると思うわけです。そこでちょっと申し上げます。十八万という人員にとらわれずに、十三万ないし十五万に陸上を減らして、そして優秀な自衛官を募集して国民の信頼にこたえよ。そしてその三万節約することによって七百五十億という予算が節約できる、それを残された隊員の処遇改善に振り当てる。長官自身もずいぶん努力されて、隊員の宿舎あるいは殉職者の待遇改善、それから退職時の待遇改善など、ずいぶん予算的に骨を折られたようだが、これが実を結ぶのはなかなか骨が折れるということを考えて、陸上十八万を十五万ないし十三万に減らして、隊員の処遇改善に振り向ける、そうすればりっぱな部隊ができるのじゃないか。少数精鋭によって優秀な部隊ができるということに切り変えられたらどうかという基本的な考え方に、いかなる御判断をされるかをお答え願いたいのです。
  226. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは一つの御発想でありますけれども、現状から見るとかなり困難があると思います。配置計画を見ますと、五方面十三個師団、そういう体制で、各師団の北海道から九州に至るまでの配置、連隊の分布を見ますとぎりぎりの最小限の状態で、今度は予備自衛官をもって警備連隊をつくろうという必要やむを得ざるそういうところまできておるわけでありますから、人員をこれ以上減らすということは非常に無理です。いかに機械化しても、陸上自衛隊の場合には人間がある程度基幹になるということがありまして、そこは飛行機や船と違う要素があります。そういう意味において、十八万の体制というものを削減をすることは困難であると思います。  待遇改善のお話は同感でございまして、その体制の上にさらに待遇を改善する、そういうことで努力してまいりたいと思います。
  227. 受田新吉

    ○受田委員 予備自衛官のお話が出たからちょっとこれでお尋ねするのですが、予備自衛官の現状及び増員の理由、今度の法案に出ておるその理由を明確にしていただきたい。
  228. 久保卓也

    久保政府委員 予備自衛官は陸で三千名、海で三百名の増員要求をいたしておりますが、増員といたしましてはこれが三千名が単年度に充当されるというよりも、三次防期間中に所要の三万九千名、陸上自衛隊については三万九千名でありますが、それの内訳といたしまして、既存の部隊に対する充当分として約一万二千であります。それから新しく部隊に充当するものといたしまして約一万六千人、これは後方の警備部隊関係、これは各師団が第一線に派遣されました場合の後詰めになる部隊であります。それが一万六千、それから損耗補充充当、これが一万一千名と見ております。この数字は第一線部隊が戦闘時損耗するであろうから、その損耗分として一万一千を見る、合計三万九千、その三万九千を三次防期間中に平均に割り振って、それの最終年度が三千名であったということであります。  それから、海上自衛隊につきまして、これは海上自衛隊の有時にどれだけの人員が必要であるかということを見ます。それから、現在予備員つまり学校などに入る予定の者を引き当てにして余分につけてある定員がございます。そういうものを有時の場合には充当いたします。そこで、有時に必要な総数とそれから既存の部隊の中から、あるいは学校等から転用し得る人数、そういうものを差し引いて計算をいたしましたもの、それを一応頭におきまして、これのいわば内数ということで、三次防期間中には六百名でございましたか、そのうちの四十六年度分が三百名ということであります。
  229. 受田新吉

    ○受田委員 私は、予備自衛官というものをあまり簡単に考えられても困ると思うのです。これは自衛隊法の第百十九条、われわれいつも気にかかるのですが、防衛招集に正当の理由がなくて集まらなかったならば三年以下の懲戒または禁錮に処するというなかなかきびしい制約を受けている。これは昔の兵役法に似たようなものです。予備役の軍人が兵役法で処分されるようなかっこうで、防衛招集に正当の理由がなくて応じなかったら三年以下の懲役にするというような、こんなきびしい予備自衛官、しかも待遇は、今度六百円上がって一千五百円が二千百円になる。あまりにも哀れな待遇で、中曽根先生、これは懲役三年にするんですからね、おそろしい話ですよ、防衛招集に応じなかったら。あまりにもきびしいじゃないか。これは見方によると昔の徴兵の兵役法の適用を受けるようなきびしい内容を持った罰則がある。それで、予備自衛官がどういう使命を持ってくるかについてよほどよく検討されないと、予備自衛官が最後にはもうしっぽを巻いて応募者が減ってくるというような危険もある。応募状況は一体どうなんだ、そういうことを含めて、あなたがいま予備自衛官の警備連隊の構想など、まことにけっこうだけれども、それは一つ問題が残っている。予備自衛官には限界がないかということ。よろしゅうございますか。それとあわせて御答弁を願いたいことは、私が非常に懸念をしていることに、陸上自衛隊の隊員の一番足りないのは、幹部でもなければ准士官でもなければ下士官でもない。士です。曹でなくて士だ。士が下士官とほとんど同じくらいしかいまおらぬ。これは隊員のいない、指揮官ばかりおるような部隊になっている危険があるのです。つまり、なぜ士がおらぬか。防衛庁から資料をいただいたのによると、ほとんど曹と士が同じ数字になっているという、このバランスのくずれた形というものが好ましいのかどうか。こういうことも含めて、自衛隊の募集に関係する予備自衛官の今後の見通し及び士がこれだけ減っていることにおいて、士をもっとふやせ、あなたのほうで、曹や士を大いに優遇したいという人間尊重構想を長官が出されたことで、川柳の大会をあるところでやっておられるようでございますが、その入選作の中に、長官賞をもらった佐伯一尉の川柳は、人間尊重で士を大いに優遇するという立場からいくと、「佐官泣き尉官黙して二士笑い」こういうのがあなたの長官賞をいただいておる。人間尊重の政策を進めることによって、士が一番喜んで、そして尉官は黙っておるが、佐官はきびしい待遇になるので泣くんだ、私はこれはいいことだと思うのです。これにひとつ力点を置いて、この川柳に長官賞をやられた、こういう調子であなたはやっていただきたい。募集の難点を解決するにはこれは非常にいいことですよ、この長官賞は。これに基づく御答弁。
  230. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう川柳にも出るように、われわれのほうは年じゅうきびしく下に厚く上に薄くということをやっておるのでありまして、そこで一等の長官賞を得たのだろうと思います。それを選抜しましたのは記者クラブの皆さんでございます。また、それをやれという記者クラブの御意思であるかもしれません。それは国民的共感を得ていることであると思いますから、今後ともそういう政策を推進してまいります。しかし、幹部、曹、士のバランスを見ますと、先進国家におきましては、大体幹部が一〇%から二〇%の間、それから曹、士が四〇、四〇くらいの比率でおるようです。国によっては曹のほうが多い国もあります。また三幕の中で、海のようなものは日本でも曹のほうが多いわけです。それは非常に技術化し専門化してまいりましたから、長年いて腕にみがきをかけた連中でないと、レーダーやその他の操作ができなくなる、そういう意味で曹が多くなってくるのはあたりまえであります。いまのバランスは私はそう間違っておるとは思わない、そう思います。ただ陸の場合は確か四〇対四五くらいの比率になって差が多うございます。これは当然のことであります。  それから、予備自衛官に関しましては、お説のとおり、いま千五百円という程度でこれだけの拘束を与えておくということは、まことにこちらとしては申しわけない次第であります。彼らの愛国心にたよって実はやっておるような状態でありますが、今後待遇をさらによくしていくようにつとめてまいりたいと思います。
  231. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 予備自衛官の充足率でございますが、過去三年間を見ますと、四十三年度が九九・三%、四十四年度が九八・一%、四十五年度が九九・六%ということになっておりまして、予備自衛官の募集に関します限りそれほど困難を来たしておりません。
  232. 受田新吉

    ○受田委員 時間が進んで割当てよりちょっとはみ出かけてまいりましたので、非常に急いだ質問をいたします。  私は、航空自衛隊を中心として飛行機の犠牲があまりにも大き過ぎるのではないかという懸念を前から持っておるのですけれども、練習機を含めて、自衛隊が創設されて以来の墜落飛行機数と殉職者の数をちょっとお示し願いたいのです。
  233. 久保卓也

    久保政府委員 発足以来ということでありますから、二十九年からでありますが、昭和二十九年から四十六年五月十四日現在までで、二百五十五機が墜落をして、百五十一名が殉職をいたしております。
  234. 受田新吉

    ○受田委員 この機数はもちろん戦闘機もヘリも入っておるのですね。そういう種類はいろいろあると思いますが、現に就役しているところの戦闘機数、これはどれだけか、F86をはじめとしてお示し願いたい。
  235. 久保卓也

    久保政府委員 就役しております数字でありますが、F86Fが二百七十四機、F104Jが百八十一機、それからRF86Fが十八機、戦闘機のタイプは以上であります。
  236. 受田新吉

    ○受田委員 この墜落しておる数字の趨勢から見て、この二百七十四機、百八十一機等がどういうかっこうで過去において減少してきたか、お示し願いたい。過去三年くらいでけっこうです。
  237. 久保卓也

    久保政府委員 いま戦闘機だけの数字を手元に持っておりませんが、各種の飛行機を全部含めました場合には、たとえば一番多い時期が、十万時間当たり事故率が三十九年、四十年あたりが四・一でありまして、ずっと漸減をしておりまして、四十四年が三・三、四十五年三・〇というふうになっております。
  238. 受田新吉

    ○受田委員 墜落事故を防止するための配慮が十分されて、効果が出ておると了解してよろしゅうございますね。
  239. 久保卓也

    久保政府委員 もちろん人命に関することでもあり、また非常に高価な航空機の破壊、損失ということでもありますので、非常な努力を続けられております。しかし、なお航空機事故というものはあとを断たないのを非常に残念に思っておるわけですが、外国に比べますとわりと成績はよろしい。最近の西独の国防大臣が議会で申したところでも、ごく最近でありましたが、過去一週間にF104が七機落ちたということで、西独ではたいへん問題になっておったようでありますが、相当効果を発揮しつつある。海上自衛隊の場合には、昨年は航空機事故は、大事故はゼロであったということも報告されておりますので、ぼつぼつは効果を発揮しておりますが、なかなかまだ所望の域には達していないのではないかというふうに思っております。
  240. 受田新吉

    ○受田委員 長官、私、自衛官に対して特別の措置をして、決して国民がそれに不公平だといわない理由に一つあげたいのは、自衛官の場合には法律で特別の制約を受けている。いま申し上げたような、防衛招集を拒否した人間は三年以下の懲役にされるようなきびしい法律もある。それから非常に激しい訓練に参加して、そうして戦闘機の搭乗員が殉職していくというような事件、これは他の職種に見ることのできないきびしい制約を受けている職種が自衛官であると思うのです。そして二十四時間勤務になっている。こういう自衛官に対する人権尊重の行き方をとる新しい道はないのかをお尋ねしたいのでございますが、まずその中で、殉職自衛官に対する処遇改善構想を長官はお持ちのようでございまして、これは他の職種に見ることのできない危険が十分予知される中を、あえて国土、国民のために行動している、そういう隊員に対する処遇改善ということは、これは私、国民が納得すると思うのです。その遺族に対する気持ちなど、これは他のどの職種よりも危険をあえて押して朝出てタベ帰らざる人となっているという隊員に対する処遇改善に対して、あなたの構想はどうだったのでございますか。
  241. 江藤淳雄

    ○江藤政府委員 その問題につきましては、四十六年度予算におきまして賞じゅつ金並びに特別弔慰金の引き上げを行なっております。大体最低の額は五十万でございますがこれを百万に上げております。最高の額は二百五十万でございますが、これを三百四十万に上げております。大体一・五倍ないし二倍の引き上げをはかっております。
  242. 受田新吉

    ○受田委員 それだけでなくして、その遺族の補償、遺族の子弟の教育、そういうものなども、特別の使命を持って勤務した人の場合のことも一緒に十分考えてあげるということを配慮してもらいたい。  最後に長官、私非常に懸念されることは、日本の防空体制というものの中に、不正急迫の侵入してきた敵機とミサイルとの地対空の応戦などの結果、撃ち落とした敵の飛行機が密集した都市に墜落するとか、あるいは炸裂した爆弾の破片が落ちてくるとか、こういうようなことに対し、あるいは核攻撃を加えられたときのその核防除の防護対策というものは実際に考えられているかどうか。そういうものに配慮されておるのかどうか。つまり核攻撃が加えられ、あるいは不正侵略があって、これを防空体制によって撃墜する、そうしたときの防空防護構想、こういうものを実際自衛隊として考えてあるのか。自衛の問題だけをやって、そういう問題は一般的な国の行政ということでほってあるのか、お答え願いたい。
  243. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 目下のところは民防体制というものもございませんし、自衛隊が特に民間のそういう個々の防衛あるいは援護というものについて手当てをしておることはございません。核攻撃に対する防除というのは、専門家によって汚染の除去であるとか、そういうような意味における研究はやらしておりますけれども、これも研究という程度でございます。
  244. 受田新吉

    ○受田委員 これはそういうところにまでひとつ構想を練っていくべきであるということと、それはやはり防衛庁が中心になって、そうした場合の構想を練らなければならぬ。長官、私さっきあなたがおられぬときにも申し上げたのだが、防衛の問題は国全体の問題として、たとえば有事に備えて飛行機の発着のために高速道路を利用するというような道も開くべきである。そうなれば防衛庁だけでなくして建設省とも話をして、わざわざ飛行場をつくらなくても高速道路を利用するということによって国費を節約できるわけだ。できるだけ国費を節約して、そして防衛庁の目的を果たすようにしていく、原子力その他の平和利用というものに重点を置いて、軍事利用にこれを持っていかぬというふうにしていく、そして防衛庁の予算をできるだけ減らしていく、こういうふうにすべきだ。あなたは昨年九月にアメリカを訪問されて、レアードさんやロジャーズさんとお会いになって、例の濃縮ウランの事業団の設立の提案をされたとかいうことも聞いておるし、また先般三月に房総沖で原潜と合同訓練を海上自衛隊にさせておる。こういうことで、科学技術庁長官としての歴史を十分生かされるあなたの御活躍を漏れ承っておるわけでございますけれども、そういうようなことは油断をすると、その原子力というものが軍事利用へこぎつけをして、中曽根長官はやがてそういうものを核装備へ発展させる構想があるのではないかなどという、やっかみな気持ちの人も出てくる危険があるわけなので、ほんとうの平和利用そのことに徹するように、つまり軍事というところから平和というところに、予算の獲得なども防衛庁が平和利用のほうを十分生かして、防衛庁予算でなくして他の省の予算で、よそのゴボウで法事をするような勉強をされる、研究開発をされるとか、こういうふうにされる必要はないか。これはあなたはその科学技術の責任者でもあったわけでございますから、そういう間違った核への転進、ナイキJがやがて核装備をするのではないかというような危険を感ぜさせないような配慮を常にしておかれないと、第四次防がそういう意味自衛権範囲を逸脱するという懸念を、国民にも対外的にも与える危険があると思う。私のこの平和利用に徹し、そして防衛庁予算で節約をしながら、他の省の予算要求するものを平和利用の目的のもとに大いにけしかけて、そしていま申し上げた人のふんどしで相撲を取る防衛構想をあなたはお進めにならぬか。ちょうどいい、両方にまたをかけられた方でありますので、私、提案をしたいのです。いかがでしょう。
  245. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 平和利用に徹してやりたいと思います。御助言は大いに検討いたします。
  246. 受田新吉

    ○受田委員 私、それを聞いて一応安心させてもらうわけですが、いま一つ、さっきあなたが行かれる前に議題にした問題を締めくくりさせてもらいたいのです。  今度四次防が進むに従って、昭和五十年、五十一年という時点、そのころは国内、国外とも政治的な、あるいは軍事的な情勢の変化がある時期である。そういう時期を前にして、朝鮮との間の関係というものは決してこれはゆるがせにできない。南北朝鮮の間で、たとえば北鮮から南鮮に一時的にぱっと出てくる、しかしそれは大戦争に至らずしてまた局部に解決するというような、局部戦で対外的に影響がないかっこうで始末がされるようなことも一応予想されると思うのですけれども、一番身近な問題として、四次防進行の過程において朝鮮半島に紛争が起こるということは、これは沖繩の問題とあわせて国民すべての一番心配する点でございます。この朝鮮半島の紛争の際におけるわがほうの出方というもので最後にお話を結ばしてもらいたいのですが、いかがでしょうか。  いま申し上げた朝鮮半島で紛争が起こった、それに対して在日米軍が行動する、ほんとうに危険の問題が予想される。それは、すでに昭和四十四年に佐藤総理がアメリカで例のナショナルプレスクラブの演説で、朝鮮半島の韓国に対する武力攻撃が発生するようなことがあるならば、この際においては事前協議によって前向きに、かつすみやかな態度をもって日本政府としてはその方針をきめたいというきわめて具体的な演説をされていることは、あまりにも有名なんですが、そういうものにもかね合わせがありまして、朝鮮半島の紛争だけはわれわれは気にかかる。朝鮮から漸次米軍が撤退しておる。そしてそれに肩がわりするのにどうするか。日本はいろいろな鉄鋼、特殊鋼その他の工場をどんどんつくっている。そういうところから民間の防衛産業が朝鮮に進出する。兵器がそこでつくられる。韓国では弾薬しかつくっていないのです。日本から進出した産業から出たそういう材料を使うて今度韓国が兵器をつくっていくということになると、もう直接韓国の防衛産業に協力するということにもなる。そういうものが積み重なってくると、朝鮮紛争に拍車をかける危険もある。兵器がどんどん海外に輸出されるほど、日本の三菱グループをはじめとして兵器産業はばく大な兵器生産能力を持つに至っているという、こういう情勢の中で、韓国、朝鮮問題ということは、私は決して対岸の火災祝するような問題ではなくて、わが国の当面する問題では一番大きな問題だと思うのです。朝鮮半島の紛争に対して日本の基地から出動する米軍、そして米韓共同作戦ということが起こる。起こったときに、出動した米軍が向こうさまから攻撃を受けて、日本の基地まで戻ってきた。そのときに自衛隊が、さっきお話のあった自衛のために、正当防衛のために立ち上がったというときは、これは自衛隊として正当な防御、正当防衛であったという形で処理をするということで片づく問題かどうか、それがあとから防衛出動にならなかったという場合に。その解決策としてはどういう解決策があるのか、お答えを願いたいのです。
  247. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 朝鮮戦争といいますか、朝鮮半島で異変が起こった場合に米軍が出動するということは事前協議の対象でありますから、そのときそのときの情勢によって判断さるべきものであると思います。  また自衛隊は、もちろん出動いたしたり関与することはいたしません。あくまで本州、四国、九州というような本土の防衛に限局されて、節度ある防衛行為を行なうべきものであると思っております。
  248. 受田新吉

    ○受田委員 そこのいまのかね合わせの問題なんです。つまり、私がいま指摘したような事例が起こってきたときに、日本自衛隊が、日本の戦闘機がこれに参加してきた場合に、事前協議の対象として出動したというかっこうになるか、そういうことでなくて、正当防衛として出動して敵機を撃ち落としたというような場合にはどうなるかという問題です。
  249. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本の基地に対する攻撃があれば、これは当然わがほうも反撃してその攻撃を封ずることになります。安保条約が発動されるケースもありましょう。それから正当防衛権を行使してやったという場合は、これは個々のケースでありまして、その正当防衛行為がはたして正当防衛であったかどうかということを審査して、それがそうであればよし、そうでなければそれを矯正する、ただす、そういう形になると思います。
  250. 受田新吉

    ○受田委員 これで質問を終わります。
  251. 天野公義

    ○天野委員長 東中光雄君。
  252. 東中光雄

    ○東中委員 沖繩への自衛隊の配置の予定といいますか、簡単に予定とその予定地ですね。
  253. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大体いまの計画では、本土復帰から半年ぐらいの間にたしか三千百名程度、それで最終的にはたぶん六千人から七千人程度までいくのではないか、そう観測されております。  場所については、陸海空おのおの一応めどをつけるべくいま話し合いを進めておりますが、大体陸のほうはいわゆるホイールエリアといわれておるところ、それから海のほうはホワイトビーチの一部、それから空については那覇空港の一部等を当方としては要望しておる次第であります。
  254. 東中光雄

    ○東中委員 予定しておられる、あるいは防衛庁として要望しておられる基地というのは、もちろん民有地、公有地がずいぶんあるわけですけれども、これの取得の計画についてお聞きしたいわけです。どういう方針で臨んでおられるか。
  255. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは当方がそういう地点を目下要望しているというので、先方とまだ正式に妥結したわけではございません。したがいまして、その後の先の具体的計画については、まだないと思います。
  256. 東中光雄

    ○東中委員 現在の自衛隊の基地は何カ所あって、総面積どのくらいありますか。
  257. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 ちょっと統計が古いのでありますが、昨年の三月末現在の件数が二千三十三件、面積が約九億四千百十九万平方メートルということであります。
  258. 東中光雄

    ○東中委員 その基地取得の方法は、契約によるものあるいはその他どういう方法がありますか。
  259. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 自衛隊関係の施設を取得いたします場合には、原則的には買収をするということで臨んでおるはずでございます。ただ、臨時的な施設あるいは所有者等が買収に応じないで賃貸借でやってくれ、こういう意向があります場合には、例外として賃貸借契約によって使用しているというのが現状でございます。
  260. 東中光雄

    ○東中委員 買収にしろ賃貸借にしろ、いずれにしても契約でありますが、契約以外の方法で基地を取得したものはないのですか。
  261. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 契約が協議が相ととのいませんで、しかし自衛隊としてはぜひその土地が防衛上必要であるというふうな場合には、現在の法制上は土地収用法による使用、収用という手続がございますが、今日までこの土地収用法を適用したという事例はございません。
  262. 東中光雄

    ○東中委員 土地収用法による収用が法的にはできるという見解だけれども、実際にはやった例はない。そのほかに小笠原関係では別の取得の方法がとられたと思うのですが、それはどういうことですか。
  263. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 小笠原関係では、御承知のとおり当時、戦前にありました公簿が散逸いたしまして、土地の所有者が確定できない、不明であるというふうなことで、通常の方法では取得が困難でございましたので、小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律の規定に基づきまして、自衛隊の施設として必要な区域を公示いたしまして、その使用権を取得いたしたわけでございます。
  264. 東中光雄

    ○東中委員 防衛施設庁の告示第九号で、いわゆる告示によって取得されたということなんですが、その取得する土地の区域を告示で示していますけれども、この区域は実際に現地に当たって測量して、そうして示されたものなのかどうなのか、その点いかがでしょう。
  265. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 戦前からの小笠原諸島におきます土地の公簿、公図というものがはっきりいたしておりませんので、当時告示いたしましたときにも、厳密にそういう意味で実測をいたしまして、その上で使用権を取得したということではないようでございます。当時ございました資料に基づきまして公示している、こういう実情のようでございます。
  266. 東中光雄

    ○東中委員 資料というと、どこに存在する資料ですか。
  267. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 当時東京都にありました図面でもって図示をいたしたわけでございます。
  268. 東中光雄

    ○東中委員 それはちょっと違うのじゃないですか。この告示を見てみますと、防衛施設庁告示第九号、昭和四十三年六月二十六日付の施設庁長官の告示ですが、これの三(一)の「ア 所在地 東京都小笠原村(父島)」、その次に「イ 区域 別図3の斜線で表示する部分」そして「(区域A−点(イ)(建物Iの東側の外縁の延長線と道路の南側の線との交点)、点(ロ)、点(ハ)、点(ニ)、点(ホ)(建物IIの東南の角から三十メートルの距離にある道路の東側の点)及び点(ヘ)(建物Iの東側の外縁の延長線上(イ)から七十メートルの点)を結ぶ線に囲まれる部分」こうなっています。これは東京都にある図面というふうなものでわかるわけのないことですね。使用する物件の特定の方法としてその区域を示すということが書いてあるわけですから、区域を示すのには当然いま書かれておるような方法をとらなければいけないし、その方法は実際に当たらなければわからないことではないですか。その点はいかがでしょう。
  269. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 東京都にありました図面をもとにいたしまして、その図で海岸のたとえば一定の地点、それからある一定の地点まで、こういうふうにして、その点に関する限りは現実の地点をもとにしてこういう図面をつくったということのようであります。
  270. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、要するに現実に現場に行って、そして図面を基礎にして実際にはかつてその区域を表示した、こういうようにお聞きしていいわけですね。
  271. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 そのとおりでございます。
  272. 東中光雄

    ○東中委員 それは先ほど言われた暫定措置法の趣旨からいって当然そういうふうにしなければならないということで、現地まで行って現地の物件に直接当たって特定をされた、こういうことになるわけですね。
  273. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 使用権の設定取得でございますので、できるだけ現地の図面を必要といたしますが、当時としては完全な図面はなかったと思いますので、東京都の図面を参考にいたしまして、そして現実にある山とか海岸とか、そういう地点は書いてありますので、それをもとにして実測をした。当時施設庁から専門家を派遣いたしましてその測量をいたしておるということのようであります。
  274. 東中光雄

    ○東中委員 防衛庁が契約によって買収または賃借りする場合にも、公簿だけではなくて、当然、日本の登記制度は公信力がありませんから、その現場に当たって実際に特定してそれによって契約を結ばれる、こういうことになるのではないですか。
  275. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 原則的にはそのとおりでございますが、小笠原の場合には先ほど申しましたように、そういう正確な実測図面というものがなくて、一応東京都にあります図面をもとにしておりますので、実測いたします場合と完全に合致しておるかどうか、その辺は若干問題になるところもあったかと思います。
  276. 東中光雄

    ○東中委員 土地収用法による収用をやる場合にも土地調書、物件調書、要するに立ち入り測量、そして実際の測量図に基づいて収用手続をとる、こういうことになると思うのですが、防衛庁はやられた経験はなくても、施設庁としては、やるとすれば当然そういう方法でやるわけですね。
  277. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 土地収用法に基づきまして使用、収用します場合には、当然それぞれの条項を忠実に守りまして適用していく、こういうことになるわけであります。
  278. 東中光雄

    ○東中委員 いま、沖繩自衛隊を派遣する、配置するという方向で、これは米側との基地返還といいますか、あるいは基地提供を現在の基地で、しかも基地を提供しない範囲をどうするかという交渉をしておるというふうに、そういう中でいずれにしても自衛隊沖繩へ出ていくという方法をとられるわけですけれども、その場合に、沖繩県民が基地提供を拒否した場合ですね、契約をしないというふうにやった場合には、自衛隊としてはどうされるのか、どういう方法をとられるのか。
  279. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 自衛隊が展開いたします施設の場所、これがまだ明確でもございませんし、またその施設の場所が国有地、県有地あるいは民有地、それぞれどういうことになるのか、その辺もこれからの問題でございますので、もし民有地でございましたならば、できるだけ民有地の持ち主との協議によってその土地を取得するということでまいるわけでございます。まあ実際問題としては、できるだけそういうふうな方法で円滑な処理ができるような取得をいたしたいというふうに考えますが、万一どうしても自衛隊の施設として必要な場所で、そこの土地の持ち主が契約に応じないというふうな場合につきましては、やはりこれも何らかの措置を講じなければなりませんので、それをどういうふうにするか、まあ最悪の場合には立法措置ということも考えなければならぬかもしれませんが、そういう問題については、いまいろいろと部内において検討いたしておるという段階でございます。
  280. 東中光雄

    ○東中委員 そうしますと、現行のわが国の法律でいけば、土地収用法を適用するか、あるいはいままでそれを適用したことはないので、契約でいく。契約が成立しない場合は収用法を適用するか、あるいは基地を断念するか、現行法上はそれしかないわけですね。その点いかがでしょう。
  281. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 米国の施政権下にある段階、つまり復帰以前におきましては、これはそういう収用法の適用ということはもちろんあり得ないわけでございます。復帰後に本土の収用法が適用されるというふうな場合の問題でございますが、その場合に、契約かあるいは土地収用法か、いずれかの方法によるということになろうかと思います。
  282. 東中光雄

    ○東中委員 そのどちらの場合でも、復帰が実施されたそのときから実際の現地に立ち入って、そして実測をして、そしてこの物件を特定して買うか、あるいは収用するか、話ができなければ収用をする、こういう方法をとらざるを得ないと思うのですが、その点いかがですか。
  283. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 そういう行為が当然必要になってまいりますので、それをいつの時期に行なうかということが問題でございます。復帰後に自動的に自衛隊がその施設を使うというふうな場合には、当然事前にそれだけの準備の行為をしなければならない、こういうことになろうかと思います。まだその辺は部内でいろいろ協議、検討しておるという段階でございます。
  284. 東中光雄

    ○東中委員 そうしますと、アメリカの施政権の中にある時期ですね、復帰前であるか、あるいは復帰後であるか、いずれにしろ、現在のアメリカ軍の基地の中に入って、そして実際に買収なり賃借りなり収用なりする物件の実測をする、そういうことは間違いないわけですね。
  285. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 自衛隊が復帰と同時に円滑に展開をするというためにはそれだけの準備行為が必要でございまして、それについては米軍と十分話し合いながらそういう準備行為を進めていく、こういうことになろうかと思います。
  286. 東中光雄

    ○東中委員 アメリカの施政権下にある間は米軍と話し合いをして、話し合いがつけば、中へ立ち入って、そしてやるということになりますね。そうですね。その点いかがですか。
  287. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 大体そういうことでございます。
  288. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、米軍と話し合いがつかなかったら、今度は復帰後にそれをやらなければいけない、こういうことになるわけですか。
  289. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 まあ理論的にはそうなりますが、実際には米軍との話し合いは十分つけられるというふうに考えております。
  290. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、理論的にはいずれにしても立ち入って——米軍と話し合いがつかない場合は、もはや施設でない、返還された、沖繩県民に実際に引き渡された物件について立ち入って、測量をする。そういうことにならないように、今度は復帰前にアメリカ軍と話し合いをして、米軍の基地の状態のままで立ち入って、そしてそこで測量をするようにたぶんやれるだろう、そういうつもりでおる、こういうふうに聞いてよろしいわけですね。
  291. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 自衛隊が展開します部隊の施設は現在米軍が使用しております区域、それを原則といたすわけでございますので、事前においてはもちろん米軍との話し合いができますし、事後におきましても、そこが提供されておるという区域であれば、それは当然米軍と話し合いができるだろう、こういうふうに考えます。
  292. 東中光雄

    ○東中委員 契約をするか、あるいは土地収用でやるか、いずれにしてもそれは土地所有者との関係で賃借りなり買収なりする物件の特定ということでやられるわけですから、それならば土地収用法の場合はもちろん土地所有者の立ち会い権といいますか、これがあるわけで、これは保証されている。買収するためにはもちろん土地所有者が立ち会って一緒にやらなければ、つくった書面は認めないということを当然言う権利があるわけですから、だからいずれにしても、いま言われた実測してそして特定するこの作業には、土地所有者は必ず立ち会いをするということに当然なると思うんですが、その点は土地所有者の立ち会いを認めますか、認めないか、その点いかがでしょう。
  293. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 自衛隊の施設の利用と申しますか設置につきましていろいろな形態が考えられますので、ただいま先生のおっしゃいましたような条件のもとにおいて、もし民有地の所有者が応じない、これを自衛隊が使用したい、こういうときには、手続的にはそういうことになろうかと思いますけれども、米軍の施設を自衛隊が一時的に使用するというふうな形態も考えられますので、その辺は必ずそういうふうに実態的にはなるのだということを私は申し上げておるつもりはございません。あくまで理論的な問題として申し上げておるわけでございます。
  294. 東中光雄

    ○東中委員 理論的には土地所有者が立ち会いをすることになる、そうしなければならない筋合いのものだ、これは認められるわけですね。それを念を押しておきたいのですが。
  295. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 まあ法律の適用上はそういうことになると思います。
  296. 東中光雄

    ○東中委員 法律の適用上そうなる。法律を無視してやるというようなことはできませんから、当然そういうことになるということでありますが、それができない場合には、いま、自衛隊の配置は米軍の基地のままで自衛隊が一時使用する、要するに今度は地位協定でやっていく、こういうふうなことを言われたわけですけれども、これはたいへんなことをおっしゃったと思うのです。自衛隊の基地にしたいんだ、米軍は返すという話はついているけれども、今度は土地所有者等の関係で、法律上、理論どおりにやらなければいけないけれども、それがやれないようになったら、今度はアメリカの基地にしてもらってその一部を借りる、こういうふうにいま施設庁長官言われたわけですが、そういうことをお考えなんですか。
  297. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 その問題は、実際的にどういうふうに自衛隊の施設を設置するかということはこれからの問題でございまして、まだ具体的にどこにどれだけの規模のものが施設を使って展開するかということが明確になっておらない段階でございますので、その辺いろいろな実際的な措置が考えられますから、われわれとしていろいろ検討いたしておるところでございますが、こういうふうな方向でいくという方針をいま申し上げる段階ではございません。
  298. 東中光雄

    ○東中委員 実際にやるとどういう結果が起こるかということではなくて、これからやっていく上からいえば、どういう方法があるかということでお聞きしているわけです。そうしたら、土地所有者からの買収あるいは賃貸借あるいは土地収用及びいまおっしゃった米軍の基地のままで借りる——米軍の施設のままにしておいて一時使用という方法をとれば、自衛隊としては実測し調書をつくる、そういうことはやらなくてもいいんだ、それ以外のときはやらなければいけないんだ、こういうふうにはっきり先ほど言われたわけですが、それ以外の方法があるのですか。
  299. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 いろんな方法につきまして理論的に考えてみますと、いま先生が整理されたようなことになろうかと思います。
  300. 東中光雄

    ○東中委員 それ以外にはないということだと思います。ところが今度は復帰後は、常識的にいえば残っておる、しかし法律的にいえば米軍基地として提供するという、こういう提供行為があらためて要るわけです。その場合は、きょう午前中の愛知外務大臣の合同委員会での説明でも、「政府としては、沖繩県民の要望を常に念頭に置き、基地の整理統合に真剣に取り組んでいる次第でありますが、安保条約第六条の規定に従い、必要な施設、区域を米国に提供することは、これまた当然のことであります。」こういうふうに言っています。要するに安保条約第六条の規定に従って施設、区域を米国に提供する、こうなっているわけですが、この場合は、提供するために今度は施設庁としてはその施設区域を取得しなければいかぬわけですね。その方法はどの法律に基づいてやられるのですか。
  301. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 一つは所有者との契約、一つは現在ございます特別措置法。もし特別措置法を適用いたします場合に、やはりそこに一定の手続期間というものが必要となりまして、現実にブランクになるおそれがあります場合には、これに対する必要な補完的な措置、こういうことになると思います。
  302. 東中光雄

    ○東中委員 特別措置法というのは、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法、このことをおっしゃっているわけですね。
  303. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 そのとおりであります。
  304. 東中光雄

    ○東中委員 この特別措置法によりますと、結局は土地収用法の適用、したがって、土地調書、物件調書作成、したがって、現場への立ち入り、土地所有者の立ち会い権、これは全部保証されることになっています。そうでございませんか。
  305. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 原則的にはそのとおりでございますが、実際的の措置としてはいろいろこれからの検討すべき問題があると思います。
  306. 東中光雄

    ○東中委員 原則じゃないですよ、法律ではそうなっているのではないのですかと言っているのです。法律に従わないでかってにやってしまうというなら別ですよ。法律に従って行政をやるのでしょう、法治国家なんですから。それに従ってやる限りは、土地所有者の立ち会い権を認め、立ち会いを認める、立ち会いする権利を拒否できない、そして収用すべき土地、提供すべき施設、区域の特定をするために、土地調書、物件調書、現実の実測図面、これを作成しなければならないということになっておるのではないでしょうか、いかがですか。
  307. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 収用法の適用を行なっておる面につきましては、土地収用法の手続に従って実施をする、こういうことになるわけでございます。ただ収用法の中にはいろいろ手続の簡易化に関する規定もあるようでございますので、そういう点もこれは当然法律の適用として可能でございますから、先生がおっしゃいましたように、すべてその原則に従ってやらなければいけない、こういうことにはなっておらないわけであります。
  308. 東中光雄

    ○東中委員 土地調書をつくるときに、立ち会いをさせた上で署名をしろ——署名を拒否すれば簡易な方法というものがあります。しかし立ち会いを求められれば拒否できないことになっているのではないですか、また土地調書をつくらなければいかぬことになっているのではないですか、つくりに行くことを妨害しない限りは。その点はいかがでしょうか。
  309. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 そのとおりでございます。
  310. 東中光雄

    ○東中委員 そうしますと、現行の安保条約に基づいて施設、区域を提供する、いま日本の国にある安保条約及びそれに関連する地位協定その他の取りきめに従って基地提供をするのは当然であります、こういうふうにきょうの愛知外務大臣の説明では出ているわけです。それに従ってやるのは当然だ、こう言っているのですよ。それに従う限りはすべての基地について、知花でもあるいは辺野古のあのサブロックのあるといわれているその基地でも、その土地所有者が立ち会い、そして土地調書をつくる、物件調書をつくる、そういうふうにしなければいけないというふうにこの法律ではさまっているわけですがね。そのきまっていることをやられるのかやられないのか、その点はどうでしょうか。
  311. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 施設、区域として提供する、米軍側に使用させる施設、区域につきましては、国内的な措置としましては、ただいま申しましたようないろいろな措置があるわけでございまして、特別措置法を適用いたします場合には、それぞれの条項に従ってこれを適正に適用していく、こういうことになるわけであります。
  312. 東中光雄

    ○東中委員 そうしますと、話し合いで買収する場合にも、国内で実際にいままでやってきたようにやるとすれば、要するに本土並みでやろうとすれば、当事者の納得を得て実測をし、要するに土地所有者の納得を得て図面をつくるか、あるいは土地収用手続でやるとすれば、法律できまっておるように、相手方の立ち会い権を認め、基地の中に入って土地調書、物件調書、これを全部つくってやっていく、それ以外に現行法上は方法がない、こういうふうにお聞きしてよろしいわけですね。
  313. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 そのとおりでございます。
  314. 東中光雄

    ○東中委員 それをいつやられるということになるのですか。もう見通しとしては作業を進めなければいかぬわけですが、いつやられるのですか。返還後にやられるのですか、返還前にやられるのですか。
  315. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 それはというのはどういう……。手続でございますか。
  316. 東中光雄

    ○東中委員 施設を提供するための準備行為、したがって実測図面をつくったり土地調書や物件調書に相当するものをつくる。その作業はアメリカの施政権下にあるいまの状態でやられるのか、復帰後にやられるのか。復帰後にやられるとすれば一応一切の基地がなくなってから、基地でない状態でやるということになるわけですが、いつやられるのか、こう聞いているわけです。
  317. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 先ほど申しましたように、原則的には所有者との賃貸借契約を締結をして、そして復帰の時点において提供する、こういうことになるわけです。どうしても契約に応じられないというふうな場合におきましては、国内法、本土の法を適用しますれば先ほどの特別措置法が適用になりますが、それの手続にも一定の時間を要すると思います。そうなりますと、提供すべき施設が提供できなくなる。たとえば一つの面積の中で八〇%の方あるいは九〇%の方は契約を締結し終わった。その中に一部どうしても契約に応じないというふうなことがある場合には、実際上はその施設、区域としては提供できなくなります。そこでやむを得ざる措置といたしまして使用権を設定するという暫定的な措置が必要ではないかということで、いま検討いたしておるところでございます。
  318. 東中光雄

    ○東中委員 そうしますと、買収する場合には、あるいは賃貸借の契約を結ぶ場合、要するに土地所有者が承知をする場合ですね。承知をする場合には実測図面も何もつくらないでやってしまう。本土ではそんなことはしてないけれども、沖繩に関しては何もつくらぬでやってしまう、こういうことになるわけですか。
  319. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 小笠原の場合と違いまして、沖繩の場合におきましては一応公簿がございます。したがいましてそれに基づきまして契約をするということでございます。
  320. 東中光雄

    ○東中委員 あなたは公簿でやるのですか。日本の公簿というのは、土地台帳といったって、これは所番地、その物件の存在を特定しますけれども、物件の土地の区域、これは特定しませんね。これは御承知だと思うのです。だからこそ、土地収用をやる場合にはわざわざ土地調書をつくらなければいけない。三里塚だってそうでしょう。これはどこでもそうやっていることじゃないですか。建設省が話し合いで道路敷地を買うという場合だって、全部実測でやっているじゃないですか。フランスなどのように公信力がないわけですから、登記があっても公簿があっても、そのことによって物件は特定しない。これは日本の制度上当然のことじゃないですか。そして実際に本土ではそれをやっているじゃないですか。沖繩ではそれをやらない、そういうお考えなんですね。どうでしょうか。
  321. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 買収の場合と賃貸借契約の場合とでは本土でも手続が違っておるようでございまして、本土のほうにおいても、賃貸借契約の場合にはそういう実測図面がなしに賃貸借契約を結んでおるということがございます。大体いま沖繩の場合には買収というよりも賃貸借契約でございますので、その手続でやれるものと考えております。
  322. 東中光雄

    ○東中委員 どの物件をだれから借りているかということは現地でわかりますか。沖繩ではいま軍用地問題については非細分地といわれているところがあります。これはどういう土地なのか、なぜ起こってきた土地なのか。施設庁としてはもう調査に行っておられるわけですから、どうお考えですか。
  323. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 非細分土地と申しますのは、実際に実測図とそれから公簿上の図面とがそこに差異がありまして、それが特定をできないということで非細分になっているわけでございますが、実際になわ延びがありますとかあるいは持ち主が過少申告をしているとかそういうことで、どこの土地か特定ができないけれども、とにかく全体の面積の中からそれぞれの各人の持ち主の面積と比べてみますと、そこに数量的な差異が出てくる。そういうものを非細分土地といたしましてその市町村が管理をして、米軍が市町村に賃貸借料を払っておるというのが非細分土地であります。
  324. 東中光雄

    ○東中委員 日本の土地はどこへ行ってもそうでありますけれども、なわ延びのない土地というのはない。太閤検地でずいぶん測量したりなどして苛斂誅求をやったというので、いろいろ問題がある。大阪の場合だったら心斎橋のどまん中だって、あんな一万円札を並べたほうが土地の面積よりまだ広くなるというくらいの土地の高いところでもなわ延びというのはあります。私は弁護士をやっているからよく知っているのです。それはしかし公簿は公信力がないのだから、実際のやつでいくわけでしょう。これは日本の法制のたてまえです。それは沖繩県民の所有権が実際の境界の中にあるわけです。それをアメリカが一方的な布告で全く強奪してしまったのですね。そういう中から非細分地なんかを、いわば個人の土地を無番地だと称して取り上げてしまった、そういう結果が起こっているわけですが、そういう状態で、そのままの調子で施設庁はやっていこうとされているのか。それを是正しようと思ったら、本来の土地所有者の権利を本土並みに認めようということになれば、ちゃんと実測しなければ出てこないわけですよ。そういう実測をやらないで、沖繩県ではアメリカが一方的に軍政をしいてやった、土地を取り上げた、それをそのまま受け継いでいくという方式をいまとられようとしているのじゃないかというふうに思わざるを得ぬのですが、その点どうですか。
  325. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 沖繩の土地問題は御指摘のように戦後非常に複雑な、またむずかしい状況下において今日まで至っているわけでございます。したがいましてこの処理につきましては非常にむずかしい問題がたくさんあるわけでございます。そこで米国の施政権下におきましても昭和二十五年ごろからですか、土地所有権の確認行為というものが行なわれまして、所有者と隣接の数名とが一々現地につきましての立ち会いをしまして、そこで一応所有権の確認をやりまして、その所有権確認に基づく一つの社会的な秩序と申しますか法的な秩序というものが今日まで継続いたしているわけでございます。そこで、また実際問題として琉球政府の土地調査庁で実地の調査をやっておられますが、その調査もかなり進捗いたしておりますけれども、まだ相当残っておるというふうなことでございますので、そういう意味で非常にむずかしいわけでございます。やはり現行の今日までに築き上げられました一つの社会秩序、法秩序というものをもとにしてこの土地問題を処理をしていかないと、今日の時点においてすべて実測をし直してすべての土地問題を処理するということになりますと、これはたいへん大きな混乱を招くわけでございますので、一応われわれとしてはそういうすでに打ち立てられました秩序の上に立って処理をしていく。そしていろいろそういう不合理な点がございますれば、それは今後復帰後の段階において精密なる調査をやっていく、こういう方法が一番現実的であり、また望ましい、こういうふうな見地でわれわれとしてはこの問題の処理をしていきたいというふうに考えているわけであります。
  326. 東中光雄

    ○東中委員 本土でやっておるような実測はしない。米軍がやったといわれるその内容の結果は、非細分地という個人の土地かだれの土地かわからぬような結果が起こっている。だからこれは明らかに個人の土地がそれだけ権利を侵害されているのだということ、その結果が非細分地の存在という形であらわれているわけですから、明らかに違うということがわかっておっても、本土で実際にやられている方法をとらない、米軍が軍政下でつくり上げたその秩序に従ってやっていくのだ、こういうふうにおっしゃっているわけですね。
  327. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 非細分土地の問題は非常に特殊な制度でございまして、この処理につきましてはまた別途われわれとしても検討いたしておりますが、少なくとも土地の所有者につきましては、一応公簿、公図というものがあり、それに基づきまして現に賃借料を支払っておるわけでございます。それが長年そういう状態が継続いたしておりますので、やはりそれをもとにして使用権の取得なりあるいは賃借料の算定なりというものをやっていきませんと、とてもそういうことはできないということで、われわれとしてはその秩序は十分尊重して現実的な方法でやっていきたい、こういうふうに考えております。
  328. 東中光雄

    ○東中委員 私、この間伊江村へ行ってまいりました。一九五五年、本土ではいわゆる講和後です。その段階での土地取り上げで、米軍がはえているキビにガソリンをまいて火をつけた。家にも火をつけた。そしてここが基地だといって囲いをした、こういう土地の取り上げ方をしているのですよ。そして土地を取り上げられたから商売ができない、農業ができない。賃料を払いますということを言うてきたら、それで生活ができなくてもやむを得ず、何かの足しになる、飛びつかざるを得なかった。あとはたま拾いでもしなければ食っていけない。こういう状態でその賃料を受け取っていたのです。そして賃料を受け取ったから、それで契約ができたんだということになっている。その秩序をいまそのまま引き継いでいくのだ、こういうふうに施設庁言われていることになるのですが、本土並み、安保条約及び地位協定その他関連の法律に従ってやっていく、本土並み返還だというのはそういう意味のはずなんですけれども、それは全然違うわけですね。そのまま残しておくということになっていく。その点どうでしょう。
  329. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 その土地問題につきましては沖繩の地主連合会からいろいろな要望が出ておりますが、その要望の一つに、要するに、軍用地の賃借料と、それから一般の土地の賃借料との間に非常に差がある。一般の土地は、たとえば山林が宅地になったりする。したがって、その土地の評価額も上がる。しかし軍用地の場合は地目をその後変更いたしておりませんので、その賃借料も非常に安いということで、その差額を補償してくれ、こういうふうな要望がございます。しかしながら、現在の中央の公簿、公図につきまして、これは全くでたらめであるから全部やり直すべきである、それに基づいて賃借料を算定せよという、こういうような要望はないという状況でございまして、それはもちろん占領統治下におきまして、いろいろな悲惨な状況なりあるいは不合理な状態があったと思いますけれども、しかしながら、今日の段階におきましては、少なくともそういうふうな形で現在の秩序というのは一応認めて、その上に立っての賃借料の増額なりあるいは補償というものが出てきておるわけでございますので、われわれとしては、その現行の秩序というものをくつがえしていきますと、いろいろな土地問題がありますので、その基礎がくずれますとこれはすべてくずれるということになりますので、やはりこういう点につきましては現状というものを十分われわれとしても——もちろん地元の方々の要望は尊重いたさなければなりませんけれども、現状そのもの、秩序そのものをわれわれがくつがえすということはこれは適当でない、やはり現在の秩序というものの上に立って仕事をしていく、これが非常に必要じゃないかというふうに考えております。
  330. 東中光雄

    ○東中委員 地主連合会に私たちも行ってまいりました。賃料の交渉、それをやっていることは事実です。非常に安いから上げろということを要求していること、これも事実です。しかし施設、区域に提供する、要するに、賃貸借なりの契約をするかしないかということについては、地主連合会は何にもいうてないですね。あの十七項目を見たって、そういう契約の締結をするとはいうてない。那覇市の場合をごらんなさい。全部開放せいといっているじゃないですか。契約をしないとはっきりいっているじゃないですか。だから問題は、額の問題が出てきているということ、そのことがあるからといって、本土でやっているように、立ち入って実測図面をつくるということを沖繩ではやらない、こういうふうに賃貸借契約の場合はやらない、現在の秩序を尊重するという、そういう立場でやるというようにいま長官言われたと思うのですけれども、しかし今度契約をしないということになれば、あの特別措置法に基づいて土地収用法によることをやろうと思えば、これはどうしたって立ち入る権利がある。そして土地所有者が立ち入って、立ち会って物件調書、土地調書をつくる権利がある、つくらなければならないというようになっているんですから、それはやらなければいかぬでしょうね。その点はどうなんでしょう。
  331. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 法律の条項につきましては、これを十分適正に適用していくというつもりであります。
  332. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、嘉手納基地の中へも土地所有者が立ち入る権利がある。本土並みの法律を適用していく限りはあるということをいま認められたわけです。しかし手続の期間がかかりますから特別の処置を検討しているとこうおっしゃったんですけれども、その特別の処置というのは小笠原でやったみたいに、一片の通告ないし告示で賃借権、使用権を設定してしまう、こういうやり方ですか、その点どうでしょう。
  333. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 その立法の内容につきましてはいろいろいま検討しているわけでございますが、一つの方法として、一定の期間を限りまして使用権の設定をするということになりますれば、これは小笠原の方式ということになろうかと思いますけれども、小笠原の場合と沖繩の場合とではいろいろ事情も違いますので、小笠原のあの条項をそのまま沖繩にも立法化すべきである、そのほうが適当であるというふうには申し上げられないのでありまして、まあ一定の期間そういう使用権を設定する、そういう立法措置がどうしても必要になる、それはやむを得ざる措置としてとらざるを得ないという事態が考えられますので、それで検討いたしているところでございます。一定のそういう期間を設定するということになりますと、小笠原方式ということになろうかと思います。
  334. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、土地所有者の現在の法律による権利を認めておったのでは、アメリカに基地提供ができなくなる。だから今度は小笠原方式のような形で、一定期限を切って一方的に告示してやっちゃう、そうならざるを得ないだろう、こういうふうに聞いてよろしいんですか。
  335. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 地主の方々との交渉を全然やらないで、いきなり使用権を設定するという考え方は毛頭持っておりません。やはり原則はすべての地主の方と協議をととのえるということで進むわけでございますが、どうしても契約に応じない、それに基づきまして施設、区域の提供ができない、こういうことになりますれば、やはりそのために何らかの措置が必要であろう、こういうふうな見地から、いまそういうことを検討いたしているわけでございます。
  336. 東中光雄

    ○東中委員 小笠原方式でやっても、一番最初にお聞きしたように、区域は小笠原では実際にいって家の門と道路とを結ぶ線、こういうふうに実際にあたって図面をかいて物件を特定した、そしてその区域を公示した、こうなっている、先ほどそうおっしゃった。私、本土並み返還ということを言ってきた政府のたてまえからいえば、沖繩でそういう一方的なことは絶対にやるべきではないと思うのですが、かりに小笠原方式でやるとしても、基地の中へ入ってそういう特定する方法——嘉手納の基地へ私行きました。辺野古崎へ行ったら、ノーパーク、ノーストップ、ノースケッチ、写真とったらいかぬ、ものを一切書いたらいかぬ、こう書いてある。三重網の、サブロックが置いてある基地がある。そこの土地を持っている人は、その区域を特定してもらう、そのためには、小笠原方式でもそういうことをやらなければいかぬことになるのですが、施設庁としては当然そういう何を借りるのかということを特定する、これは近代法の一番基礎ですよ。何かわからぬけれども、とにかく取っちゃう、借りちゃう、こんなことはできやせぬのですから、その特定するための処置、これをやるためには基地へ入らなければいかぬのですけれども、基地へ入ること、そういうことをやるということで検討されているのかどうか、どうでしょう。
  337. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 通知なりあるいは告示をしなければなりませんので、一応そういう特定ということは必要になってまいりますが、沖繩の場合におきましては、現在の公簿、公図をもとにしまして通知なり公示をやるということになる。現在の公簿、公図をもとにいたしまして所定の手続をとりたいと考えております。
  338. 東中光雄

    ○東中委員 そうしますと、公簿、要するに帳簿づらでいく——沖繩県においても本土においても、公簿は、登記は公信力がないのだから、そしてなわ延びがあるということは認めておられるとおりなんだから、特に山林、原野なんかになれば公簿の数倍から十数倍、あるいは数十倍というような土地だってたくさんあるわけですから、それを公簿でやっちゃう、それは本土ではあり得べからざることです。それをやってしまう。こういう方針でおる、そういうことでございますか。
  339. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 その方針でございます。
  340. 東中光雄

    ○東中委員 まさに非常にファッショ的なやり方ということにならざるを得ぬわけですが、そういう方式をとったのはいままであの戦時中の国家総動員法、これだけですよ。小笠原は人がおらなかった、確かにそうですよ。いま沖繩県には確かに人がおる。公簿もある。土地もはっきりしている。所有者が権利を主張している。そういう状態で、あの戦時中の国家総動員法と同じ考え方でやっていく、そしてアメリカに基地提供をする、こういう方向をとられておる、こういうように確認していいのですか。
  341. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 施設、区域の提供問題については、外務省におきましていろいろ外交折衝せられておるわけでありまして、基本的には不要不急の土地、あるいは民生なりあるいは経済開発等の観点から返還を求めたり、あるいは移転を求めたりする土地もございますので、そういう点につきましては、いま外交折衝でできるだけそういう方向に努力をしておられるわけでございます。これは返還後といえどもその必要性等から考えまして、やはり整理、縮小ということも当然考えられるわけで、したがいまして、提供することによります地域はやはり日米安保条約の第六条に基づきまして米軍に使用させるという土地でございますので、これはわが国の安全ということに非常につながってまいりますし、提供すべき土地として指定されたものにつきましては、やはりそういう国内的ないろいろな方策をもってその円滑な処理をはかっていくということがわれわれとしては必要であるというふうに考えておるわけであります。
  342. 東中光雄

    ○東中委員 安保条約に基づくアメリカとの折衝、交渉についていま施設庁にお聞きしているわけではないのです。それは施設庁の関係のことじゃないわけですから。問題は、安保条約に基づいてやられる国内処置、それについて聞いておるわけですよ。国内処置だから、それが、現行の法律でいけば、先ほど来言われたように立ち会い権を認める、立ち会う権利があるのですから、物件調書をつくらなければいかぬということになるわけですから。  それで、もう一つお聞きしておきますが、土地調書だけではなくて、そうすると物件調書もつくらなければいかぬわけですから、法律的には返還されると同時に、たとえば知花にあの毒ガスを格納している倉庫があります。あるいは知花基地から見えるところにそういうものがたくさんあります。きのうも当委員会で核の貯蔵庫なり毒ガスの貯蔵庫、室ということが問題になりましたけれども、これが撤去されないで返還されると、それは土地施設の定着物ということになると思うのですが、その定着物は、結局特定するためにアメリカとの関係でもあの協定の中に入れなければいかぬし、収用する場合にもこれは話し合いできめる対象になると思うのですが、そうではありませんか。
  343. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 施設、区域の提供と申しましても、主たるものは土地でございまして、米側がドルで建てました施設、工作物等については、これは提供の対象にはなりません。
  344. 東中光雄

    ○東中委員 施設、区域を提供するときには、その施設、区域に現存する設備、備品及び定着物を含むというふうに地位協定にははっきり書いていますね。だから、米軍がつくったのであろうがなかろうが、法律的には一たん返還された物件、それの定着物というのは、兵器なんかのことを私は言っているのではないのですよ。そういうものは含めて提供するという提供物件になるのではないですか。
  345. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 本土の場合におきましても、建物、工作物で接収されたものをその後引き続き米軍が使用しているということがございましたけれども、提供したものは土地でございます。そういう建物を提供したということは、過去においてはない。条文的にはそういうふうになっております。したがいまして、沖繩の場合におきましても——失礼しました。日本側の財産につきましては提供いたしておるわけです。したがいまして、ただいまの弾薬庫におきましても、これは米軍が施設をしたというものでございますので、これはその処置をどういうふうにしますか、とにかく沖繩が返還になりましてもそれを提供するという、その対象ではない。
  346. 東中光雄

    ○東中委員 じゃ次の問題に移りますが、この前、施設庁長官が二月二十三日の衆議院の沖特で言われておるわけですが、個々の基地についてはまだ一部しか調査をしていないけれども、要するに「一部不要不急ということを申し上げましたけれども、それが現実にどこであるということでなくて、やはり大きな基地でもありますので、中にはそういうものもあろうが、もしそういうものがありとすれば、これは調査を要する、」そして不要不急の基地はとにかく提供しないようにするという趣旨のことを言われておるのですが、不急不要の基地というものについて調査をその後どういうふうに進められているか、どうなっているか。
  347. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 米軍の基地につきましては、過去何回かの調査団を派遣いたしまして、その実態の把握につとめたわけでございます。また本年になりましてからも、四月から二十名の職員を対策庁に派遣をいたしておりまして、その中のものがその実情の把握につとめておるわけでございますが、そういう調査の結果からしましても、いろいろわれわれとしましても考慮すべきようなものもございますので、そういうものにつきましては、いま外務省を通じましていろいろ折衝をやっていただいておるわけでございます。その具体的な場所がどこであるかということについては申し上げられませんけれども、そういう方針でこれまでもまいりましたし、今後もそういう考え方で臨みたいというふうに考えておるわけであります。
  348. 東中光雄

    ○東中委員 わが党がほかの委員会でも申し上げましたが、沖繩にある米軍専用娯楽施設の一覧、これをいろいろ調査してまいりました。私も行ってきたわけですが、こういう問題について、これは不要不急のものだというふうにお考えになっているのかなっていないのか、いかがでしょう。
  349. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 まあいろいろゴルフ場、ボーリング場あるいは劇場等が御指摘になったようにございますが、ゴルフ場あるいはボーリング場、劇場というものが一つの単独の施設として、それが娯楽施設として提供されて現在存在するということではなくて、一つの基地の中の一つの施設として、しかもそれはいずれもまあ福利厚生施設でございますが、そういうものとして存在をするわけでございますので、そういうものが直ちに不要不急であるというふうには私どもは考えておらないわけでございます。たとえば飛行場のいろいろな制限区域下にありますところの土地をゴルフ場として使っておるというふうな場合に、それが直ちに不要であるというふうには言い切れない。しかもそれが現に軍人の一つの福利厚生施設として使用されておるという場合におきましてはそういうことでございまして、ゴルフ場なるがゆえにあるいはボーリング場なるがゆえにそれが不要不急であるというふうには私どもは考えておりません。
  350. 東中光雄

    ○東中委員 たとえば劇場は十五カ所あります。それ以上あるかもしれませんが、私たちのほうでわかっているだけでも十五カ所ある。劇場はどう思っていらっしゃるのですか。
  351. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 劇場はこれは本土の米軍基地にもございます。これは娯楽的な面もあるかもしれませんけれども、その基地内の子弟の教育用に使っておるという場合もございまして、劇場直ちにこれが不要であるというふうにはわれわれは考えておりません。それが一つの基地外におきまして独立しておるというふうな場合には問題だと思いますけれども、基地内におきましてそれがそういうふうな目的に使用されているという場合におきましては、これが不要不急であるというふうにはならないというふうに考えております。
  352. 東中光雄

    ○東中委員 劇場については、私いま判決を三つ持ってきているわけです。昭和二十八年六月二十四日の判決、二十九年一月二十日、同年一月二十六日、この三つの判決を持ってきていますけれども、いずれもあの地位協定に基づく土地収用のための特別措置法、これをめぐる判決でありまして、劇場のような娯楽施設あるいは慰安施設、こういうものは米軍が要求をし、あるいは米軍にとって便宜であっても、それに提供するために土地を取り上げるというのは明らかに違法だというふうに判決を下しております。三つもあるわけです。そういう判決いかんにかかわらず、とにかくそういうものは必要なんだ、こういうつもりでいかれるわけですか。
  353. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 これはそれぞれのケース・・バイケース考えなければならない問題でございまして、たとえばアーニパイル劇場の場合において確かにそういう判決があったということはわれわれも承知いたしておりますが、基地内に劇場があります場合に、それが直ちに地位協定上問題であるというふうにはならないことでございまして、これはそれぞれのケースケース考えるべき問題ではないかというふうに考えております。
  354. 東中光雄

    ○東中委員 基地の中に劇場がある、こうおっしゃったけれども、区域、施設として劇場を収用したのですよ。だからもともと基地の中のものとして問題になっているのであって、あなたのおっしゃっているのはきわめて詭弁に属するわけですね。基地として提供することがいいか悪いかということが問題になっているときに、基地の中のものだったらいいのだ、これは何も説明したことにならぬわけです。ただ独立しておる問題という点で言うならば、たとえばハーバービュークラブは約五千坪あります。これは独立しています。賭博場もある。これはまさに慰安のためのものですね。これが施設区域ということになっているのですが、これもやはり基地の中のものだから、それは基地だとして取っているわけですから、これも不要不急でない、こういうふうにお考えですか。
  355. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 その問題はいま外交レベルにおいて協議中の問題でございます。
  356. 東中光雄

    ○東中委員 私は土地所有者との関係で施設庁にお聞きしているわけですよ。土地所有者にそういうための土地を提供せいということが現行法からいって日本政府としては言えるのか。裁判所は言えないと言っているんですよ。だからそういう立場をあなたのほうではっきりされて、外交レベルで交渉するのは、これはアメリカと交渉すればいいのです。こちら側の立場なんですよ。アメリカの便宜、要請いかんにかかわらずというふうに判決文の中に書いてあります。合理的かつ適正なものでなければいけない、こういうふうにはっきり書いてある。そういう点でどうお考えなのか。
  357. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 私としましては問題の施設であるというふうに考えております。
  358. 東中光雄

    ○東中委員 さらにビーチがございますね。那覇空港内のフィッツ・ウェッピ・ビーチというのですか、これは施設庁長官がおっしゃる基地の中の娯楽施設かもしれぬけれども、あとの三つはそれ自体が独立した基地として娯楽施設になっている。私この間奥間ビーチまで行ってまいりましたが、ずいぶん広いですね。十三万八千八百三十六坪、遊びに来るための小型飛行場までつくってある。ずいぶんぜいたくなものですよ。隣ではVOAの電波のために電線も引かれないという沖繩県民の家がたくさんある。こういう状態なんですが、こういう広範な海浜地域、これは不要不急の施設があれば調査してからとおっしゃっているのですから、そう思っておられないのですか、どうですか。
  359. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 海水浴場として提供しているものの中にやはり不要と思われるものもございますし、必ずしも不要ではないと申しますか、提供してしかるべきものと思われるものもございまして、そういう点についてはわれわれとしてもいろいろ外務省のほうには意見を申し上げて、いま折衝をやっていただいておるところでございます。
  360. 東中光雄

    ○東中委員 不要なものもあるとおっしゃったのですが、いわゆる米軍専用の海浜保養所というのは石川ビーチ、屋嘉ビーチそれからいま申し上げた奥間ビーチそれから那覇空港内のビーチ、この四つしかないと思うのですが、不要なものもあると思っている。どれが不要なんですか。あるいは全部なんですか。その点どうでしょう。
  361. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 どれがどうであるかということはいまちょっとはっきり記憶いたしておりませんが、中には問題のところがあるように私は記憶しております。
  362. 東中光雄

    ○東中委員 二月二十三日の沖特の中では、そういうものがあったら提供しないようにするために調査をしているんだ、まだ進んでないので鋭意調査をしているんだ、こうおっしゃっているんだから、鋭意調査をしたらそれを明らかにされたらいいんじゃないかと思うのですが、できませんか。
  363. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 いま外交折衝中の問題でございますので、具体的な個所につきましては私申し上げることを差し控えたいと思います。
  364. 東中光雄

    ○東中委員 次の問題に移りたいと思います。中曽根長官は、自衛隊はウサギのような長い耳を持って情報機能を高めなければいかぬということをずっと言われてきたわけでありますが、情報機能強化のためにいまどのような処置をとられておるのか、どういう方針で臨んでおられるか、お聞きしたいと思います。
  365. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 海外関係のアタッシェへの強化及び三幕の防衛機能の促進等々であります。
  366. 東中光雄

    ○東中委員 長官就任後に、情報機構改善に関する委員会が事務次官を長にしてつくられたというふうに聞いておるわけですが、昨年四月に中間報告も出された。そして、その方針がきめられたように聞いておりますが、具体的な内容についてお聞きしたいと思います。
  367. 久保卓也

    久保政府委員 次官を中心にするところの情報の検討の委員会をつくりまして、中間報告も出し、さらに最終的な結論を出して新防衛計画の中に織り込んでおるわけでありますが、この内容と申しますのは、現在の情報の収集、整理及び評価の体制におきまして、各幕僚監部、内局及び統幕に分かれております。それぞれ分かれるゆえんのものもありますけれども、しかし特に戦略的な情報と申しますか、広い高度の立場からの情報の整理及び評価というものは一本にまとめないと、長官の直接のスタッフとしては適当でないという判断のもとに、統合幕僚会議に情報本部というものを付置をする。その所掌はいま申し上げたようなことで統幕及び内局、各幕からいま申し上げたような分野の情報については人を集めて、かつ若干の増員をいたしまして、およそ百名くらいの人員でもってやる。長をシビリアンに、文官にいたしまして、文官と制服としかるべきコンビネーションを考えた組織を整備するということで考えております。四十七年度から人員を少しづつ増員をしまして、四十八、九年度ごろには建物ができたところできちんとした情報本部というものが設置できるだろうと思っております。
  368. 東中光雄

    ○東中委員 現在まで情報専門の部隊といいますか、統轄機関としてはどういうものがあるのですか。
  369. 久保卓也

    久保政府委員 情報関係の部隊としましては、資料隊というのと調査隊というのがあります。資料隊というのは、交換資料の、特に外国の資料の翻訳をし整理をし頒布をするということでありますし、調査隊のほうは国内の情報の整理ということで、これは主としてそれぞれの基地の防衛といいますか、防護、警備に直接かかわり合いのある情報をたとえば警察機関からもらい、いろんな情報を集めて、その基地の警備に資するというふうなことをやっております。その二種類の部隊があります。
  370. 東中光雄

    ○東中委員 中央資料隊というのは、防衛庁内にあって二百五十人ぐらい、いまもあるのですか、どうなんですか。
  371. 久保卓也

    久保政府委員 中央資料隊に、人数はちょっとはっきり出ておりませんが、おそらくその程度の人員が現在の防衛庁の施設内におります。
  372. 東中光雄

    ○東中委員 中央調査隊は市ケ谷基地の中に五十人おるということでございますか。
  373. 久保卓也

    久保政府委員 中央調査隊は市ケ谷の駐とん地で、人員は約六十名であります。
  374. 東中光雄

    ○東中委員 それと統轄機関といいますか、陸幕の第二部、海幕の調査部、空幕防衛部の調査第一課と第二課、これは今度の情報本部との関係はどういうふうになっておりますか。
  375. 久保卓也

    久保政府委員 各幕僚長が持っております情報機能というのは、幕僚長がそれぞれの陸海空の自衛隊運用するに必要な情報、ことばをかえて申しますると戦術情報というふうに申しておりますが、そういった制服の部隊を直接運用するに必要な情報というものは、各幕僚監部に残されるということになります。そこでそういった戦術情報というものを各幕僚監部が直接に収集をするということと同時に、先ほどの資料隊というものを、これは防衛部でありますとか調査部あるいは第二部というところが監督をして、その部隊が集めましたあるいは整理しました資料を利用しまして評価をするということになっております。したがって繰り返しますと、各幕僚監部の二部系統のところは自分でも集め、かつ部隊から上がってきた資料も合わせて総合的に評価をする、こういうかっこうになっております。
  376. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると先ほど申し上げた陸幕の第二部、海幕の調査部あるいは空幕防衛部の調査第一課、第二課、そういう組織は、そのままその形で残るということですか。
  377. 久保卓也

    久保政府委員 従来、いまおっしゃった三つの部のうちで、海と空についてはいわゆる戦略情報というものをやる余地があまりありませんでした、これは人員が少なかったものですから。しかし若干二、三名の者はそれを担当しておったと思われますし、それからそういった分野、わりと広く行なっておりましたのは陸でありますから組織としては残りまするけれども、そういう広い立場での戦略情報を集めておった者は、定員をはずして統合幕僚会議に付置される情報本部のほうへ持っていくというふうに計画をいたしております。
  378. 東中光雄

    ○東中委員 先ほど陸上の資料隊、調査隊の話がありましたが、従来から海上、航空でもそれぞれ作業隊あるいは調査隊というのがあって、これもそのまま存続されていく、こういうことでございますか。
  379. 久保卓也

    久保政府委員 調査隊は、空は調査隊というものがありますが、海はございません、人員が少ない関係もありますが。そこでこの調査隊のものは、いま申し上げましたように局地的な基地の警備に必要な情報を収集するということでありますので、今回の統合の中には入っておりません。  なお先ほどちょっと申し落としましたけれども、統合的な情報本部ができます場合に陸海空の資料隊、この大部分というものは統合して一本化したい。それは情報本部が直接に統制あるいは調整をしていく。しかし実態的には、たとえば身分的なものについては陸上幕僚長が監督をするというかっこうにしてまいりたい、機能的な分野について情報本部が統制をするという意味で陸海空の資料隊は一本化する。これは先ほどの情報本部と一貫した措置でありますので念のために申し添えます。
  380. 東中光雄

    ○東中委員 そのほかに、各自衛隊の各種通信系を含む全国的な統合自営骨幹通信網を建設する、新防計画の中にそういうのがありますが、この全国的な統合自営骨幹通信網というのはどういう内容を考えていらっしゃるのですか。
  381. 久保卓也

    久保政府委員 現在の通信回線は電電に依存をしておるところでありますが、一つには情報機能の抗堪性と申しますか、つまり一つのルートがたとえば災害であれあるいは本土防衛の戦闘の場合であれこわれた場合に他の線が生きているというふうに、抗堪性と申しておりますが、そういった性格機能を持つことが望ましいということで自営マイクロ回線というものを幹線については自衛隊としては持っておりたい。そこで北海道から鹿児島までの骨幹の通信線を確保しまして、さらに陸海空のたとえば師団司令部でありますとか地方総監部の場所でありますとか、そういった一定レベル以上の司令部にはこのマイクロ回線がそれぞれ連結をするというふうに、主要な駐とん地について自営のマイクロ回線を設置したい、これを次の計画の五カ年間にわたって行なってまいりたいという趣旨であります。
  382. 東中光雄

    ○東中委員 現在は電電公社のマイクロウエーブを使っておられるんだと思うのですが、専用回線というのは持っておられるわけですか。
  383. 蒲谷友芳

    ○蒲谷政府委員 骨幹回線としましては電電公社のマイクロウェーブを使っておりますが、たとえば東京と横須賀というようなところにつきましては、部分的には専用回線を持っております。それから現在東京と大阪の間には専用回線を持っております。
  384. 東中光雄

    ○東中委員 東京−大阪間だけですか、そしてそれは一回線だけですか。
  385. 蒲谷友芳

    ○蒲谷政府委員 骨幹的なものとしましては、いま申しましたように東京−大阪間だけでございます。一回線という意味でございますけれども、百二十回線という一つの束を持っております。
  386. 東中光雄

    ○東中委員 北海道のクマステーションのことですが、キャンプ千歳から、ことしの三月末に閉鎖をされて、その後自衛隊が東恵庭通信隊から約百人ぐらいを移して、これの軍事衛星なりミサイル追跡識別ステーションを開設する準備をしておられるというふうにいわれておりますが、その経過、現状をお聞きしたいと思います。
  387. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 クマステーションにつきましては、米側がこれを機能を閉鎖するという方針がきまりまして、それから日米間でいろいろ協議をしてきたわけでございますが、四月の八日に合同委員会におきまして、そのクマ基地の一部の自衛隊による共同使用が合意をされたわけです。その共同使用の範囲は、土地につきましては約五百七十一万平方メートル、建物が約四万一千平方メートル、棟数にして九十五棟という形になっております。今後米軍の専用駐とん地として残るのは、土地につきましては約五十四万平方メートル。  それでその目的としましては第一には東恵庭通信所の代替施設、この通信所が非常に老朽化しておるというようなこともありまして、ここに移転をする。それから二番目に東恵庭の駐とん地の隊舎等の施設がこれも非常に貧弱である、かなり古いバラックであるというようなことからここに移転をして生活環境の改善をはかりたいというような、こういう二つの目的から自衛隊が共同使用に入る、こういうことでございます。
  388. 東中光雄

    ○東中委員 いわゆる軍事衛星の追跡識別、これはやられるのですか、やられないのですか。
  389. 久保卓也

    久保政府委員 米軍でそういうような機能をやっているということは私どもでは承知いたしておりません。米軍がやっておるのは、米側からの連絡によりますと無線中継と通信保全と電子現象に関する研究ということであります。で、いま東恵庭の部隊が移転するというふうに申しましたとおり、従来の東恵庭の部隊が建物の老朽その他の関係で狭隘でもありますので、他の陸上自衛隊の部隊と一緒に広い千歳の基地を利用するというだけでございます。したがって従来の機能を変える計画ではございません。
  390. 東中光雄

    ○東中委員 通信情報の専門の自衛官二十五人がそのクマ基地あるいはキャンプ千歳でいろいろな新しい、いままで自衛隊としてはやっていなかったことについての特別の訓練を受けるというふうに聞いているのですが、そうじゃないのですか。
  391. 久保卓也

    久保政府委員 私どもが聞いておりますのは、現在は二十名ということでありますが自衛官が現地に派遣されております。それは電子現象に関する研究をやっているということで、電子現象に関する研究というのは何かと申しますと、たとえば北海道に——北海道といいますか上空に飛んでいるレーダー波を分析しまして艦艇とか航空機の種類とか行動を知る方法である、もちろん艦艇航空機は短波、長波いろいろなレーダーを出しておるわけでありましょうが、しかもそれを分析することによってどういう種類のものであるかということがわかる方法だそうであります。そういうことをやることについての研究を現地で行なっているということであります。
  392. 東中光雄

    ○東中委員 先ほどもちょっとお聞きしたのですが、偵察衛星あるいは探知衛星、ベラ衛星それから測地衛星、こういった軍事衛星の追跡識別とあわせていま言われたような、たとえば飛行機あるいはミサイル、こういうものの追跡識別をやる。ここでは、クマステーションとしてはそういうことをいままでやってきた、それを日米で共同でやっていくということではないのですか。
  393. 久保卓也

    久保政府委員 クマ基地で米軍がやっておりますのは、先ほど申し上げたような業務でありまして、偵察衛星といいますか軍事衛星といいますか、そういったものの追跡調査をやっているという連絡は受けておりません。なお、米軍はこの六月ごろまでに、たしか通信関係は一部を除いて閉鎖をする予定でありますが、わがほうは従来の自衛官を派遣しての研究というのは、いま申し上げたような艦艇とか航空機のレーダー関係の勉強であるということであります。そしてこの基地を東恵庭の部隊が使うようになれば、従来の東恵庭の部隊の任務を遂行するということになるわけであります。
  394. 東中光雄

    ○東中委員 じゃ、もう一つだけお聞きしたいのですが、予備自衛官の増員に関連してお聞きしたいのですが、警備連隊をつくっていくという構想があるようにいわれておるわけですが、長官、それはどういう構想でしょう。
  395. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 次の防衛力整備計画の中の一部でございますが、もし防衛出動とかあるいはそのほか出動する場合に後方関係が手薄になる、そういうことも考えまして、警備連隊的なものをつくってみて、そして後方の充実、警備関係、それからそのほか前線の減耗補充とかあるいは事務、通信系統の仕事を行なうとか、そういう意味で予備自衛官をふやそうと思っております。
  396. 東中光雄

    ○東中委員 それは予備自衛官だけでの連隊ということになるわけですね、その構想は。
  397. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 予備自衛官に現在の自衛官とミックスして、まあ比率は、現在の自衛官の比率は下がりますけれども、ミックスしていくという考えております。
  398. 東中光雄

    ○東中委員 それは構想としては、たとえばどういうものをつくろうとされているのですか、どの程度につくろうとされているのですか。
  399. 久保卓也

    久保政府委員 部隊そのものとしましては四十一個連隊、四十一個の単位部隊をつくる計画にしております。そして長を一佐にするわけであります。まだ具体化はいたしておりませんが、四十一の単位部隊については若干の上級司令部も必要ではなかろうかというふうに考えております。  なお、現在の自衛官もこの中に含めるわけでありますが、詳細な計画というものはこれからの問題だと考えております。一応そういう程度でございます。
  400. 東中光雄

    ○東中委員 それで予備自衛官のことに関連してお聞きしたいのですが、先ほど受田委員も言われておりましたが、予備自衛官は自衛隊法の七十条によって防衛招集を受ける、これに応じないと三年以下の懲役というふうになっているわけですが、先ほどのお話では、昔の兵役時分と非常によく似ている、こういわれたわけですが、実際はよく似ているんじゃなくてもっと非常に強力なんですね。従来の戦時中の陸軍刑法によりますと、二年の禁錮ですね。それから海軍刑法でも二年の禁錮なんです。しかも五日間という猶予期間があるわけですが、自衛隊法では三日間、しかも三年以内の禁錮じゃなくて懲役も含む、非常にきついわけですけれども、この点で、防衛招集を受けた場合にそれを拒否する行動の自由というのは、刑罰による苦役に服さない限りは、本人の意思が変わっておる場合でも、意思に反してこの招集命令に従わなければならない、これは大きな強制力を持っているわけですが、これが先ほど来論議されております憲法の十八条なりあるいは十三条、こういった苦役に服させられない基本的人権あるいは個人の尊厳の原理というものからいって、これはまつ正面から違反する、憲法違反の問題ではないかというふうに思うわけですけれども、そういう点についてどうお考えになっておられるか。
  401. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 先ほど受田委員からも御指摘がございましたが、先ほどはお答え申し上げるまでに至らないで済んでしまいましたが、予備自衛官と申しますのは、現在の自衛隊法の第五章「隊員」の章の中に第五節「予備自衛官」として規定をされております。予備自衛官も自衛官と全く同様に、自衛隊法の第五十二条の規定によりまして「(服務の本旨)」という規定がございますが、その規定によりまして、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託にこたえることを期するものとする。」ということになっておりますし、また予備自衛官が採用されますのは、その自発的な意思によるものでございますが、その採用にあたりましては自衛隊法第五十三条の規定によりまして、「隊員は、総理府令で定めるところにより、服務の宣誓をしなければならない。」、この総理府令によりまして、予備自衛官は採用に際しましては予備自衛官たるの責務を自覚し、防衛招集に応じては自衛官としての責務の完遂につとめるということを宣誓をいたしております。  先ほどの御指摘のございましたように、国民の基本的人権の一つでございます、自己の意に反する苦役からの自由という問題につきましては、これが国政の上で尊重されなければならないことは当然のことでございますけれども、他方国民の自由及び権利が憲法第十二条の規定によりまして常に公共の福祉のために利用されなければならないということになっておりますし、特に予備自衛官は、憲法第十五条でいっております公務員として全体の奉仕者たる地位も持っております。そういうこともあわせ考えますならば、このわが国防衛の任に当たる職責を持つところの予備自衛官がその任務を完遂することは、むしろ当然の義務というべきでございまして、これを意に反する苦役と見るのは当たらないのではないか、したがってこの正当な任務を遂行することを怠ったことに対しては、第百十九条の規定によって刑罰をもって臨むこともまた当然のことではないだろうか。先ほど陸軍刑法なり海軍刑法なりのお話がございましたが、陸軍刑法、海軍刑法は、先ほど問題にもなりました徴兵制度の上に立っての規定でございまして、今度の自衛隊法の第百十九条、そのよって立ちます第七十条の規定は、いわばその自由意思に基づいて予備自衛官という地位についた者に対する規定でございまして、陸軍刑法なり海軍刑法なりの規定ともちろん類似はいたしておりますけれども、直接比較することはやや違う点があるのではないかというふうに考えておりますが、まだその辺まで深く研究したわけではございませんので、ただ徴兵制度の上にのっとって陸軍刑法なり海軍刑法なりができておるということだけを申し上げておきたいと思います。
  402. 東中光雄

    ○東中委員 陸軍刑法なり海軍刑法なりが、いわゆる在郷軍人あるいは現役でない兵役に服する人を強制的に、刑務所がいやなら、いわば戦場へ来い、こういうことがいえるその根処は、それは兵役の義務があるからなんです。ところが、日本憲法にはそういう兵役の義務はないわけですから、ないのに、刑務所か、しからずんば治安出動しなさいという、そういう強力なことができるのは、一体どこにどういう根拠があるのかということをお聞きしたいわけです。
  403. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 その点は先ほど端的に申し上げましたように、一つは予備自衛官が自衛官と全く同様の具体的な職責を持つということ、しかも、自衛官も同様でございますけれども、予備自衛官としてその地位につくのは、その本人の自発的な意思に基づいておるということからいたしまして、先ほど申し上げましたような職責の内容とも照らし合わせて、このような規律に服することも憲法に違反するものではないということであろうと思います。
  404. 東中光雄

    ○東中委員 自発的な意思に基づいておるということは、結局一種の契約行為ですね。近代法でいう一つの契約行為なら、その不履行だと契約解除というのが最大の処分なんです。だから、予備自衛官でない一般公務員の場合、全体の奉仕者だ、先ほど次長があげられたいろんな条項はみんなかかってくるわけです。非常に重要なときに応じなかったからといって、それは首を切られる、あるいは具体的な損害を与えたら損害賠償という問題が、故意過失があれば起こるかもしれぬけれども、しかし、それを、憲法の十八条が書いている、刑罰による場合以外には苦役に服させられないという、まさにその刑罰によって苦役に服させられる、それがいやなら来なさい、こういうふうにいえる根拠は一体どこから出てくるのかということをお聞きしたいわけです。
  405. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 予備自衛官ではない一般の自衛官についても、この百二十二条以下に以上のような規律がございまして、予備自衛官については、その防衛招集に応じないという段階で罰則を設けることにしておるわけでございまして、一般の公務員とは違って、自衛官なり予備自衛官なりの職務の内容というものに徴して、このような罰則が設けられたといえるのではないかと思います。
  406. 東中光雄

    ○東中委員 その職務の内容が憲法十八条でいっておる苦役、それに照応する程度のものを強制しておることになるわけですね。刑務所がいやならここへ来なさい。こういうふうになっておるわけですから、特に自衛官の場合は問題が複雑になるので、私、いま予備自衛官のほうが問題の本質がわかりやすいと思うからその問題で言っておるわけですけれども、招集ということについて応じなかったら処罰するということ、それは先ほどの次長の話では、個人の基本的人権も憲法十二条によって公共の福祉に適応するようにする制限がある。だから、苦役に服するようなことであってもそれはできるんだ、こういうような説明をされたのですが、そこに根拠を置かれているわけですか。
  407. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 先ほどいろいろな論点を申し上げましたが、職務の内容としては一般の自衛官と同様に自衛隊法の五十二条に書いてございますような重要な職責を持っておるということ、自己の自発的な意思に基づいて採用されたものであるということ、その採用に際しては先ほど申し上げたような内容の宣誓をしてまでその任についておるということ、また、一般的に公務員としての全体の奉仕者であるということもあわせ考慮いたしまするならば、予備自衛官が国の存亡を賭してその任務を完遂するということはむしろ当然の義務であろう、したがってその義務の履行を担保するために相応の刑罰を設けることも当然の問題でないだろうか、そういう論理構成であります。
  408. 東中光雄

    ○東中委員 義務だといまおっしゃったのですが、確かに義務だと思うのです、そういう契約をしているわけですから。ただ、その契約をしているからというて、義務があるからというて、その義務が強制されている、刑罰によって強制されている。それができるのはどこから来るのかということなんです。ほかの公務員だってみな義務を負うているわけでしょう。国民全体の奉仕者としていろいろ宣誓をします。それはいいかげんなもので、どうでもかまわぬということではないはずです。公務員の場合でいえば、みな非常に重要な問題ばかりです。しかしそれは刑罰によって拘束されない。これが刑罰によって拘束される。それだけの強力な力を持っているのはどこから来るのかということをお聞きしているわけです。
  409. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 一般の自衛官につきましても、先ほど御指摘がございましたように、自衛官については問題が複雑になるかもしれませんが、自衛官についても、いま御指摘のような問題と申しますか関係が生じ得るはずでございます。自衛官については、百二十二条の規定によって、さらに重い罰則をもって律しているわけでございます。予備自衛官についても、自衛官についても、契約によってその地位についたのであるから、その契約上の地位違反に対しては、契約解除が一番重いいわば制裁ではないかというのが、御指摘の端的な趣旨だろうと思いますが、その契約に基づきましても、特定な地位に立って、その地位に立つということについて継続的にその契約当事者としていわば包括的に承諾をしておるという場合、その地位に対して一定の公法的な規律が及ぶということは、他の法律関係についてもあり得ることだと思います。予備自衛官が、第七十条の規定によって防衛招集を受ける地位にある、第七十条第一項の規定によって、防衛招集を下令されるべき地位にある。そして第三項の規定によって、防衛招集を受ければ自衛官と全く同じ立場に立つ地位についておる。その地位についておることについて、何らそれに反する意思を表示しない場合に、その地位にあることについて、公法的な規律があることもこれは法制的には考えられることであると思います。それは、その地位にあることについて、地位につくときといわば意思を変更したという場合には、それ相応の措置をとればよろしいわけでありまして、その地位を変更する措置をとらない以上は、依然として自発的な意思に基づいて、そのような第七十条第一項の規定により防衛招集を受ける、防衛招集に一定の期間内に応じなければ一定の刑罰を受けるという、その地位を了承して現在の状態になっておるわけでございますから、それがその意思を変更した場合には、その変更するだけの措置をとればよいわけです。その措置をとらない以上は、その地位のまま一定の公法的な規律に服するということになると思います。
  410. 東中光雄

    ○東中委員 時間があまりないのですけれども、私の聞きたいのは、あなたのおっしゃっているのは義務があるということ、義務を解消することができるのだ、解消できるのだけれども解消しないのだから義務が残っている。そんなことはもうわかり切っているのです。そこを議論しているのではなくて、その義務がある場合に、義務を果たさなかったら、憲法十八条でいっている苦役、それに相当するものを国が加えるということができるのかどうか。それはそういうことができるという根拠が要るのじゃないか。あなたは十二条に先ほど根拠を持ってこられたようなのです。そうならそうだとはっきり言うてもらえば法制局の考え方がわかるわけなのですが、その点どうでしょう。
  411. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 十八条の苦役からの自由、奴隷的拘束からの自由の規定でございますが、刑罰の場合はこの苦役の規定そのものに触れるものではないと思います。したがって、刑罰に処せられることがなければ、防衛招集によって招集せられ、一定の部隊としての拘束を受けるというその地位につくことが意に反する苦役であるかどうかということだろうと思います。その点につきましては、結局はこの憲法の十二条の規定から申しましても、国民の自由及び権利は公共の福祉のために用いられなければならぬ、その公共の福祉の考え方としてこのような地位、予備自衛官という制度を置いて、その予備自衛官というものを防衛招集をかけて国の防衛の職につかせるということが公共の福祉にかなうという説明のしかたになると思います。
  412. 東中光雄

    ○東中委員 刑罰の内容がその意に反する苦役であるということは憲法の十八条の規定のしかたから見てはっきりしているわけですね。だからこそ犯罪による処罰の場合を除いてはその意に反する苦役に服せしめられない、こういう自由があるのだ。こういうふうに言っているわけですから、その意に反する苦役を制裁にして防衛出動させるというのは、単なる義務の問題ではなくて、拘束、強制の問題なのですね。人身の自由に対する拘束の問題なのです。そういう強い権限が出てくるのは防衛出動という公共のためとあなたはおっしゃった。防衛出動は公共のためなのだ。その場合には個人の自由は拘束できるのだ。そして基本的人権はとめられて十八条の苦役に相当するものも強制されるというお考えに立っておられる。そういう論理構成になっておるわけです。それだと契約の理論じゃなくて、一般国民に対しても公共の利益と称する防衛出動ということで法律をつくれば、憲法十八条なり十三条なり徴兵制をつくれないという根拠になっておるそういう条文の制限はなしに、強制的に招集に応じさせることができる。有事の強制兵役というか、そういうものができるという論理に立っておられるのじゃないか。そういう論理に立たない限りはこの予備自衛官の応召しかなかったことを刑罰で処罰するという自衛隊法が合憲だとはいえなくなる。こう思うのですが、いかがでしょう。
  413. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 先ほど申し述べましたように、憲法第十二条の規定だけを援用したわけではございませんで、その地位につくことが自発的な意思に基づいておるということが一つのポイントであるということを申し上げた、その職責の内容を申し上げましたが、これは憲法十二条の公共の福祉というものの説明でいく一つのよすがになると思いますが、予備自衛官になるについては、その自発的な意思に基づいてその地位につくということが一つの要点になると思いまして、そのポイントもあわせ踏まえた上で、この説明をいたしたつもりでございます。
  414. 東中光雄

    ○東中委員 そういう説明ですと、そうすると日本憲法では国民は国土防衛の義務を負うておるというふうには解釈されていない、こういうことに聞いてよろしいですか。
  415. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 国土防衛の義務という問題、ときどき法制局にお尋ねございますけれども、そんなことは全く考えたことも実は私自身はございませんで、検討いたしておりませんが、そこまでまいりませんで、たとえば災害対策基本法であるとか水防法でございますとかいうもので、一定の災害がございました場合に、その土地の住民等に対してその災害救助であるとか災害対策の一定の事業に従事すべき義務を課することがございます。これはたとえば災害対策基本法にそういうのがございますが、これについては前々から憲法十八条のその意に反する苦役というようなことではないという説明をしておりますし、国会でもその点は御了承になっておると思います。ただ国土防衛の義務などというものについて、いまここで申し上げるだけの検討はいたしておりません。
  416. 東中光雄

    ○東中委員 西ドイツでは基本法の解釈規定として、国土防衛の義務があるという、そういう規定をやった。御承知だと思うのですが、日本憲法では、内閣法制局は国土防衛義務が日本国民にあるというふうには解釈していない、こういうふうに聞いていいわけですね。
  417. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 国土防衛の義務がこの苦役であるとかないとかいうことを、いまここで結論的に申し上げる立場にはないわけであります。
  418. 東中光雄

    ○東中委員 そうしますと、日本国民は国土防衛の義務があるという、そういう解釈をとるようになるかもしれない。そういう余地がある。いまはそうは考えてないから、予備自衛官の問題についても、非常に持って回った契約説で強制の根拠を説明、これは論理的な説明ができておらないですけれども、説明しておられる。こういうことになるのですか。その点もう時間がありませんから、最後にお聞きしておきます。
  419. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 国土防衛の義務は憲法十八条の苦役であるかどうかということ、この点については私どもの前の前の長官が一ぺんお答え申し上げたことがございますが、そういう問題については検討したこともないのでお答え申し上げる段階ではないと思いますが、いまの長官が、苦役ではないという解釈ができないわけではないというような趣旨の答弁をしたこともございますけれども、私自身はまだそこまでほんとうに突き詰めて検討もしておりませんので、そう解釈することもあり得るなという御質問に対しては、ないともあるともまだ申し上げられないという状況だと思います。
  420. 東中光雄

    ○東中委員 終わります。
  421. 天野公義

    ○天野委員長 大出委員
  422. 大出俊

    ○大出委員 外務大臣がたいへん連合審査でお疲れのところをお呼び立てをいたしまして恐縮でございますが、こちらも実は締めくくりだけはしておかないとぐあいが悪いと思いまして、あえてお出かけをいただいたわけでございます。  そこで、前回当委員会におきましての私の質問につきまして、原子力潜水艦をめぐるサブロック搭載云々という問題を承ったんでありますけれども、どうも明確な御答弁がいただけない。木村官房副長官は、外務、防衛両省と相談をして調査をしたい、その上で何らかの御回答を申し上げたい……。私はその席でもう一ぺんその点について明確にしていただきたいということを申し上げておいたんですが、昨日、私のところに木村官房副長官から直接、回答といえるかどうか疑義がございますけれども、それでもまあ形の上では回答と考えなければならぬ文書をいただきました。そこで実は私、これをめぐって幾つかの疑問点がありますので、含めてお伺いをしたいのでありますが、そこで、まず第一に戦略空軍ということばがございます。あるいは戦術潜水艦、こういうことばが実は使われておる。これ、実はどういうふうにいま外務省等は受け取られるのか。これは私は非常な重要な問題なので、これを取り上げるのですが、アメリカ議会で証言をいたしておりますですね。その証言の中に戦略空軍は、あるいは戦術任務についている攻撃潜水艦は、つまり戦術潜水艦はとか、こういうことばがいろいろ使われているのであります。つまりいまアメリカの陸海空三軍が動いておりますが、その動いている形の一つ一つをとらえてアメリカ議会で証言をしているのであります。したがってその辺はいま申し上げた戦略空軍あるいは戦術潜水艦といったふうなものをどう理解をしたらいいのか。まず意識を統一しておきませんと質問にそごがまいりますから承っておきたいと思います。
  423. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 あるいは私のお答えが的はずれになるかもしれませんけれども、一般的に戦略と戦術ということばを分けて考えれば、戦略というほうが幅が広いんじゃないかと思います。それから戦術といえば、対象や規模が小さい、何といいましょうか第一線部隊とでも申しましょうか、大きな戦略的な体制ではない場合をいうんではないかと思いますけれども、しかし軍用語はいろいろ専門的に使われますから、ことに米軍の場合、そうして潜水艦等の場合にどういうふうな用語の使い分けをしておりますか、これはちょっと自信を持ってお答えできません。
  424. 大出俊

    ○大出委員 私も実はだいぶ時間をかけて調べたのでありますが、日本の近海を遊よくしておると考えられる原子力推進によるいわゆるアタックサブマリン、こういつておりますものはどういう任務についているのかという点、ところがこれは戦術任務についている原子力推進によるアタックサブマリン、こう解釈していい表現になっている。あまりここで詳しく申しますと、その論争だけでまた長くなりますから省略して言うのでありますが、つまりアメリカ議会で証言を求められて、アメリカの制服の皆さんが、あるいはまたこれは場面場面を申し上げなければなりませんが、あるいは国防省の皆さん方が答えている。その中にこのことばが出てくる。そうすると戦術任務についているアタックサブマリン、これは原子力推進による、こういうかっこうになっております。つまり日本の近海、日本の横須賀から出航した原子力潜水艦沖繩に行った。沖繩に行った原潜スヌークが横須賀に来た。これはすぐ日本の新聞に載る。きのう横須賀を出航した、あした沖繩に着いた。きのう沖繩を出航した、きょう佐世保に着いた。常時そうであります。これは一体どういう任務なのかというと、この証言によるとつまり戦術任務についている原子力推進による攻撃潜水艦、こういう解釈になる。意識の統一の上で解釈をしてまいりますと、たくさん証言があります。この攻撃潜水艦が出始めて最初のころは、ギルパトリック氏が国防省の次官であった。彼の証言などもあります。というのは、ずっと経過を調べてみますと、これは実はいみじくもになりますけれども、三十九年にも原子力潜水艦が入ってくるので大騒ぎになって、エードメモワールができて、私どもいただきました。ここにありますけれども、ときたま椎名さんが外務大臣で愛知さんが科学技術庁長官でおいでになった。椎名さんと愛知さんにお並びいただいて、私、議席を本院に得て間もなくでありますが御質問を申し上げた時期があります。したがいまして、以来ずいぶん時期がたったわけであります。ところで当時のいきさつからいたしますと、防衛庁の側は、一年間という猶予期間をもって、攻撃型原子力潜水艦というものにサブロックを搭載をする、それを二十五隻搭載をする。しかしそれは一年間期間がある。こういうことで、まだサブロックを搭載するというのが来年なんだ、だから、ということで疑問があったけれども、ノーテラス型といったりリスレッシャー型といったりしたんだけれども、疑問があったけれどもわれわれはまあしかたがないということにしたんだ。これは御記憶だと思う、お読みになったんですから。その後政府は何らの措置をおとりにならない。小泉防衛庁長官が一年間猶予がございますからと言った。じゃ二十五隻積むようになったということになった場合にどういう措置をとるかということを追及をしたら、一年間あるのだからと言った。それきりになってしまった。だから私はもとへさかのぼって調べてみた。そうしたら先ほど愛知さんが私に、どういうことですかという御質問ですから、それは私が申し上げましょうと申し上げたのですが、だから私のほうから御説明しなければ申しわけないので御説明しますけれども、実は私の調べた限りは、これは当時のエードメモワールでありますが、これによりますとずいぶんだくさん入ってきた。これは締めくくりでありますから正確に申し上げますが、一番最初に入ってまいりましたのはソードフィッシュという船名の、これは艦船番号SSN五七九、原子力推進によるアタックサブマリンであります。これは一九五五年にできた船であります。そのあとサーーゴ号という船が入りまして五八三という艦船番号であります。そのあとシードラゴンが入っているのであります。それからスキップジャックというのが入りました、これが五八八、スカルピン五九〇、スヌーク五九二、ここまでが一九五七年までにできた艦であります。そしてスヌークの次に、これは入ってきておりませんけれども、御存じのスレッシャー号が建設された。これが五九三という艦船番号だった。このスレッシャー号は沈没した。深海潜航訓練をやっておって沈没をしてしまった。そこでこのスレッシャー号以下、この次にできたのがパーミットという原子力潜水艦でありますが、この艦船番号が五九四であります。このパーミットができたときに大きな改装をいたしました。両方に反対側に回るような装置をこしらえて、つまり減速装置をはずすというようなことにしてまん中にランチャーを置いて、ソーナーを前に置くというかっこうにして、つまりそれによってサブロックが積めるように改装した。こういうわけでありまして、ここでサブロックを積むようになった、アメリカの記録を調べてみますと。このパーミット、実はこれは、私はこの間この席で防衛庁に質問いたしましたら型が三つあるとおっしゃった。しかしその中で二つを最終的にはお答えになりましたが、パーミットという型、これはつまりサブロックが積める型である。それからもう一つスタージョンという型がありますが、スタージョンという型以後、これまた改装されてサブロックが積める型である、このことを明確にされた。そこでパーミット号というのはサブロックを積んで横須賀、佐世保に入ってきている。この型がさらにその次に引き続いてプランジャー、バーブ、こういうふうに続けて入っておりますが、同じような型であります。そうしてさらにその後フラッシャーという船が入っております。それからハドック、さらにはトートグ、トートグというのはスタージョンという型の、つまり改装サブロックがちゃんと積んである。アメリカの記録によればそうなっておる。そのあとにクイーンフィシュ、あるいはガーナード、アスプロ、こういうような船がずっと入ってきておる。これは私は実は取り上げまして、この席で申し上げた。かくて結論を申し上げますれば——全部調べてありますけれども、まだこちらにもありますが、これは最近のものを調べたのでありますが、鉛筆書きで持っている。これが政府の皆さんの記録の中にまだ入っていないものでありますからそれも調べてみました。その結果私は、四十何回も入ってきてはいるけれども、船名でいったら一体何隻なのかという点を突き詰めてみた。明確になりませんので私のほうから申し上げましたが、船名で申しますと十五隻の船が入ってきておる、こういうことになる。そうすると残る問題は何かというと、アメリカ側の発表では、サブロックを搭載している潜水艦が何隻だ、こういうふうに発表している。そこで私は、現在サブロックを搭載している攻撃潜水艦はアメリカの発表では何隻なのか、私の記録では四十五隻になっているんだがという質問をいたしましたら、皆さんの側から四十七隻であるという答弁が実は参りました。だから現在アメリカの攻撃潜水艦は四十七隻ある。そうして四十七隻のうちサブロックを積んでいるものは一体何隻なんだと聞いたら、それは三十四隻である、こういう答弁があった。そうすると四十七隻の攻撃型原子力潜水艦、つまりアメリカが持っておるアタックサブマリン、原子力推進によるもの、こういうふうに書いてあるものが総計四十七隻、そのほかの潜水艦を入れますと百三隻になりますが、原子力潜水艦だけでいえば四十七隻、もう一ぺん申し上げますが、その中でサブロックを搭載している原子力潜水艦は三十四隻である。そうすると、回りくどいことは申しませんが、最後に、木村さんですから専門家でございませんので、御本人もそうおっしゃるので、算術計算で言いましょう。原子力潜水艦が四十七隻あって、そのうち三十四隻サブロックが積んである。積んでないものは差し引き十三隻しかないはずだ。そうすると、横須賀、佐世保に十五隻入ってきている、十三隻しかサブロックの積んでない船はない、アメリカはそういって発表している、そこへ十五隻入ってきちゃっているわけですから、最低限度二隻の船はサブロックを積んでいたことになる。算術計算上。数字は正直なのですから。そうしたら木村副長官は、その事実は認めるとおっしゃった、最終的に。ただしかし、事実は認めるがそのときに、つまり日本の港に入ったときにサブロックを積んでいたかどうかはわからない、こう言う。そんなことを言えば、だから点検しろということになるのですけれども、そこで私はしからば御調査を願いたい、もっとこまかく調べてありましたからこの間こまかく理詰めに詰めましたけれども、きょう愛知さんのほうで御答弁いただくということですから簡単にいま申し上げたのですが、実はそういう経過がございました。  そこで私は前提といたしましていま戦略、戦術の話をしましたが、つまり戦術任務についている原子力推進によるアタックサブマリン、これが日本にやってきている。アメリカの議会の証言からすると、そうしてギルパトリックの証言以来それはサブロックを常時積んでいる。最初は二十五隻積んでいたものがだんだんふえてきた。そうして私はこの間国会図書館でこれを借りてきて——これは皆さんがお認めになりますから。私が何べんか引用したときに間違い、印刷ミスが一ぺんしかなかった。それは何かというと、空対地のブルパップが、ここの防衛年艦には核と書いてあった、ところがこれはTNT火薬のものもあるのだということが落ちていたということをおっしゃった。あとはいままで長い間に間違いがない。そこで皆さんが一番のみ込みやすいから私これを取り上げたわけです。別な資料もありますが。これを念のために見ると、私時間がないので先によけいしゃべっておきますが、四十五年度の防衛年艦四一〇ページの下段のほうに(3)というところがございまして「潜水艦百二隻(ポラリス潜水艦を除く)=このうち四十隻は原子力推進攻撃潜水艦うち二十七隻はサブロックを積載している」明確に書いてあります。  もう一つ取り上げますが、ことしの三月末に出されました本年度の防衛年艦にも同じような表現で書いてありますが、隻数がさらにふえております。つまり先ほど申し上げましたギルパトリックが二十五隻を載せると言っておりました時代からだんだんふえてきた。この本年度の、つまり一九七一年度の防衛年艦によりますと、ページ数にいたしまして四〇六ページの下段のほうに、これはアメリカの海軍ですが「潜水艦百三隻(ポラリス潜水艦を除く)=このうち四十四隻は原子力推進攻撃潜水艦」原子力推進によるアタックサブマリンですね。「うち三十四隻はサブロックを積載している」、ぴしゃっとここで切ってあります。つまり昨年の二十七隻が本年は三十四隻になっている。見ていると、ギルパトリックが言っていた二十五隻というのが年々だんだんふえていってここまで来た。いずれも積載しているんです。しかも議会の証言でも、戦術任務についている原子力推進による潜水艦は常時サブロックを搭載しているということになっている。これは明確な事実です。どうも最近は避けておられるようですけれども昔は防衛庁の慣習になっておりまして、防衛庁の政府委員室の方々に私はちゃんとお届けをいただいているわけです。  いま四十五年、四十六年を取り上げましたが、ここにも明確になっている。ただここで一つ違ったのは、防衛局長さんが、その後できた船があった、だからここには四十四隻になっているけれども、攻撃型原子力推進の潜水艦は三隻ふえて四十七隻が現在の数だ、四十七隻のうち三十四隻はサブロックが積載されているんだ、こういうふうにお答えですから、総数で三隻ふえている、こういうことになりますか。  だからここまで明確なものを、私は三十九年に愛知さんに質問したのにいままでおっぽっておかれて、いまこれを取り上げられて、しかも私は時間をかけて戦略戦術まで調べているわけでありまして、それを簡単に、それは事実は認めます。——それは算術計算で子供だってわかるんですよ。積んでない潜水艦が十三隻しかないのに十五隻入ってきているんです。ないものはないんだから、だれが考えたって最低限度二隻は積んであったはずなんです。これは間違いない。それを、入ってきたときには積んでなかったかもわからぬというようなことで事が済む筋合いではない。私はその点をまず愛知さんに承りたいのであります。
  425. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 確かに御指摘のように、三十九年当時のことを私もよく覚えておりますしただいまのお話もずっと傾聴いたしましたが、それはこういうことではないでしょうか。計算をずっとおやりになってまことにごもっともだと思うのですけれども、結局サブロックを搭載し得ないものと申しましょうか、これがスケート型とスキップジャック型ですね。これは古い型です。このうちで艦名にしてシードラゴンをはじめ六つほどが本邦にも入港してきたからこれは一応間違いない。それからあとのサブロックを装備し得るものがパーミット型とスタージョン型で、そのうち艦名にしてパーミット以下いまおあげになったものがまさにサブロックを搭載し得るもの、しているといわれているものなんです。それが現実に日本の港に入ってきたときにサブロックを搭載していたかどうか。私も政府の立場において木村君の言われたことをそのとおりだと思いますが、要するに可能性の問題と現実性の問題、こう思います。  そこで、今度はニューヨーク・タイムズのハロラン君の記事。これもすっかり御承知のこととは思いますが、一応私のほうから立場を申し上げますと、実はハロラン君がこういう記事を書きそうだということで国務省が気がついたらしいです。そして国務省がハロラン君に対して、一時トランジットの許可を日本からもらっているなんということは全然ないんだということを重々話しておきましたということを、国務省から駐米日本大使館を通じまして直ちに私のほうに連絡がありました。それで、そのときは当然のことでございますから私どもは気にとめずにそのまま過ぎたことだと思いましたところが、それからちょっとたちましてからニューヨーク・タイムズにそういう記事が出ている。そしてハロラン君の記事も、国務省も日本政府も否定しているけれども疑わしいというような記事であったように記憶いたします。  日本政府といたしましては、前にF105の問題のときにもございましたように、一時トランジットの寄港のときにも事前協議にかかりますし、またそういう協議があったこともないし、認める意図もございませんから、日本の港へ入ってきておりますときには、横須賀の場合におきましてもサブロックははずしてきているものと、日本政府としては確信しているわけでございます。それが日本政府の立場でございます。
  426. 大出俊

    ○大出委員 リチャード・ハロラン氏のニューヨーク・タイムズの論文、これは愛知さんも御存じだと思いますが、佐藤さんとニクソンさんの会談で共同声明が出された。その翌朝のニューヨーク・タイムズに大きな論文を出しましたが、リチャード・ハロランの署名入りであります。その後私はあの人の書いたものはいろいろ見ておりますが、PATO構想をお出しになった。PATO構想の前後のいきさつをここで申し上げる時間はありませんが、一言申し上げておけば、あれは前後の経過を調べてみて国務、国防両省との関係を持った記者であることはだれが見たってわかる。荒唐無稽なものを書く人ではない。しかもそのハロランの記事の中で——私は実はニューヨーク・タイムズを読んでみようと思ったところが、国会図書館の本館には四月二十七日までしか来ていないので残念ながら私はまだ見ていない。だから朝日新聞が訳したものしか見ていない。ところがその訳したものの中に何と書いてあるかというと、サブロックを搭載した、つまり核を搭載した攻撃型原子力潜水艦日本の港に何回か寄港している。——過去の表現をつかっている。朝日新聞がまさか過去形と現在形を間違えて訳すはずはない。つまり、あの中身を詳細にお書きになっているのはその辺なんですね。確かにそういう言い方には一理ある。私はたまたま原子力潜水艦問題を調べておりましたから、いや、これは積んで来ている、こう確信を持った。私の選挙区は横須賀の隣ですからね。私自身が年百年じゅう横須賀に出入りしている。お隣は小泉さんがおいでになった選挙区だ。町の方々は非常に敏感で、私は愛知さんに幾つも質問をいたしましたが、例のSRFの問題、艦船修理部の問題、第七艦隊の問題、あれなども愛知さん自身はわからぬわからぬとおっしゃっているのに、横須賀の町はまるっきり明るくなってしまってすっかり元気一ぱい。聞いてみると、いや、一年延期ですよ先生というわけですよ。なぜかというと乗っている人がおりてきて町にいるのですから、原子力潜水艦で入ってきた人が町で休養しているのですから、だから横須賀の町でいろいろ出てくる問題というのはいつも政府よりも的確だし、いつも政府よりは早い。異常放射能が出て私が愛知さんに質問したときに、あのとき横須賀へ行っていろいろな角度から検討した。相手の兵隊さんの名前までわかっている。階級までわかっている。あのときには記者が船へ乗り込んで艦長とやりとりをしている。サブロックがここにあるんですかという質問をしている。それは言えないことになっていると答えている。ところが、えらい人はそうして責任を持つけれども、もう少し下の人は町へ行って平気でそれを話す。こういう事情にある。あのときにも私は申し上げましたが、それをさっき申し上げた算術計算からいったって積んでないものは十三隻しかない。入ってきたものは十五隻だから、最大限十三隻分は積んでないものを入れたにしても残る二隻は積んでなければならないことになる。アメリカ議会で証言しているのですから。そうでしょう。それを、はずして入ってきたものと思いますということでは、これは私は引き下がるわけにはいかない。数字というのは強いですよ。だからこの回答文を見るとわざわざここにサブロックを搭載し得るもの——アメリカにも日本の代表は行っておるわけでしょう。あるわけでしょう。防衛庁からだって行っているわけでしょう。この議会の証言なんというのは幾らでも手に入るでしょう。日本と違いますから、ずいぶんされていますよ。それをわざわざアメリカ側がサブロックを搭載をしたということにちゃんとしているのに、しかも戦術任務についておる原子力推進のアタックサブマリンはサブロックを搭載している、その数は三十四隻だと言っているのです。単に遊んでいるわけではない。直接戦術任務について動いていて、補給と休養に来るのです。そうでしょう。それをわざわざ外務省は——外務省と言っては申しわけありませんが、木村副長官が、サブロックを搭載し得るもの、というふうにカッコしてわざわざ書いて、それが二十一回、パーミットが二回、プランジャーが六回、バーブが三回、フラッシャーが二回、ハドックが二回、合計十五回。つまり木村さんの表現でいえば、サブロックを搭載し得るもの、これがパーミットほか十五回入ってきている。だからアメリカの議会の証言でいえば、これは戦術任務についているのですから、サブロックを常時搭載している。これが何と十五回入ってきている。スタージョンが一回、ガーナード一回、アスプロ一回、トートグ三回、合計六回。こういうことで合計二十一回、木村さんの表現によるとサブロックを搭載し得るものが入ってきている。私の調査に基づく、先ほど御質問いたしましたアメリカ議会の証言でいえば、戦術任務についているサブマリン、つまりアタックサブマリン、攻撃型原子力推進によるもの、これは四十四隻あって、そのうちの三十四隻はサブロックを搭載している。こうなっている。大臣、これをあなたがおっしゃるような程度で事を済ますわけにはいかない。長い論争でございましてね。三十九年のときもあれだけ私は念を押した。ここに議事録を持ってきておりますが、慎重にやります、二十五隻に積載するとアメリカは発表しているのですから、一年間まだありますけれども、そういうものは入れないようにちゃんとアメリカと取りつける、こういう趣旨の答弁をしておられる。何にもしないで今日まで来てしまったというその事実は、リチャード・ハロランじゃありませんが、何かそこにトランジット協定みたいなものがなければならぬことになる。いかがですか。
  427. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まず第一に、先ほど来の積算の根拠や足し算引き算の話はともかくといたしまして、木村君からお答えしているように、サブロックを搭載し得るものですね。それは全部で二十一回あるわけですね。これは艦名その他、入港のたびにこちらからあれしておりますから、非常に確実なわけです。要するに、これはサブロックを搭載し得るけれども搭載してなかった、こういうふうに政府としては見ているわけです。そこが問題点だと思います。そして、こういう次第だからトランジットの何か協定が秘密にあるだろうという御質問ですが、これはないのです。全くございません。全くございませんから、またそれから御質疑がいろいろ出てくるのかとも思いますけれども、こういう秘密の協定というものは全然ない。これはもうはっきり……。
  428. 大出俊

    ○大出委員 大臣、トランジット協定、つまり通過協定というものは、この間私はここで詰めようと思ったのです。詳しいところを質問したらアメリカ局長がお答えになった。私は条約局長をお呼びしたのです。そしたら、条約局長がおいでになったと思ったらいなくなってしまったのです。答弁がおかしいからひょっと見たらアメリカ局長なんです。答弁は責任を負えるかと言ったら、実は条約局長じゃないからとおっしゃる。そうでない方に質問をしても妙なことが議事録に残りますからやめた。たまたま昨日楢崎君が質問をいたしまして、私はその先の質問がありますけれども、それをやっていると、最終の私の質問が締めくくりの質問になっておりますから、時間の関係で……。  そこで大臣、このトランジットの協定のほうはきょうは時間がないと思いますから避けますけれども、いま前段でお答えになった事実については、これはそう簡単に見過ごすわけにはいかないと私は思っているのです。前からの議事録に愛知さんの答弁もたくさんある。小泉さんの答弁もたくさんある。防衛庁の海原防衛局長の答弁も長々とある。その海原防衛局長の答弁の中にも、議事録をここに持ってきておりますが、一々読み上げませんが、サブロックというものは全部核である。昨年アメリカが試験をしてみて、やってみて、現在、艦隊が大きくなっておる、他の原子力潜水艦に対して核でなければ対抗できないのだ、こういうふうにちゃんとお答えになっておる。しかも二十五隻常時積載するんだという趣旨。ただそれはいまはない、来年やるんだということを言っておられる。そこから常時積載が始まった。だからただ一言いえることは、もしそんな魔術ができるとすれば、沖繩へ来た、沖繩の場合は日本じゃないのですから、サブロックを積んでおったっていいのですよ。そうすると沖繩から日本へ一日で来ておる。新聞にちゃんと出ておるのですよ。原潜何々が沖繩から来ると通知してくるのですから、皆さんのほうへ。横須賀じゃそのたびに集会を開いておるのですよ。敏感なんですから。横須賀へ沖繩からやってきた。沖繩は積んでいいはずなんです。積んでいいでしょう。それが横須賀に入ってきた。じゃその間どこへおろしたのですか。沖繩に核爆雷、サブロックの集積の倉庫がなければ置けないでしょう。こんなものを海の中へほうり出すわけにいかないでしょう。あなた方はそれを否定しておきながら、昨日、条約局長がお見えになったけれども、まさに副長官と一緒に、核の貯蔵庫があるという前提のとおりになってしまう。愛知さんの言うことは、それなら沖繩にサブロックをおろして沖繩の核貯蔵庫に入れて、からで出てきた、こういう結果になる。それ以外に方法はないでしょう。何べんも沖繩から来ておるのですから。佐世保に行き、横須賀に来ておる。それは人間の能力ですから、ほかに考えようがないわけでしょうが。
  429. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 それは、沖繩はともかくとして、ほかにも寄港しておるのかもしれませんし、考え得ることはたくさんあると思いますけれども、とにかく日本に入港しておるときには搭載していないということを日本政府としては確信しているわけです。というのは、一時寄港ということも認めるような協定がないのですから、日本政府としてはそう信じております。
  430. 大出俊

    ○大出委員 それはだめですよ、愛知さん。私、それは木村さんに廊下でいただきましたから、ちょっと木村さん、おかしくはないか、これは搭載し得るもの、まずここから違うんだが、これをかりにこのまま聞いておくとしても、搭載し得るもの、こんなに二十何回も入ってくるものが全然積んでないでいつも入ってきた、そんなばかなことは常識で考えられないんだが。実は私も原子力潜水艦の構造というものをいろいろ調べている。じゃ一体あと現状はどうなって入ってきておるのか、サブロックがなくなったあと。そうしたら、いや、こうなんだ、私も驚いたというのです、木村さんは。サブロックを発射したあとへ海水を入れたんだという。海水を入れてバランスをとる、そうすれば潜航もできるし、走れるのだそうです。これは木村さんのおっしゃられた言い分だ。木村さんの言い分によればサブロックはどこかで発射してきたことになる。十発載っておる。二十一回来ておるから二十一回かける十発で二百十発核爆雷、サブロックを発射して、水を入れて入ってきたことになる。そんなことをやったらそこら辺の海の魚は原子力公害です。そんなことをやったら、食えやしないですよ。しかも愛知さんもう一つだけ言いますけれども、ギルパトリック証言でも、戦術任務に就航している攻撃潜水艦は常時サブロックを積んでおって、あらゆる事態に対処できるようにしてあると言っている。そうすると、沖繩日本周辺をうろうろしているときに何か起こったときには、あらゆる事態に対処できないでしょう。そういう答弁をされても、それは無理だ。ただ愛知さんが知らなかったということであれば、木村さんとの関係が、話し合いがなかったのだというならば、これは非公式だけれども、私はこれ以上申し上げるのは酷なのかもしれない。
  431. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 御満足がいかないかもしれませんし、それから木村君と打ち合わせたわけでもございませんから、その点は御了解をいただきたいと思いますが、ただ先ほど私率直に申しましたように、ハロラン記者の記事が出たその前からのいきさつがございましたから、私としては、やはりこれについては非常な関心を持っておった。そこで、だれがだれに聞いたかということもまたいろいろとお尋ねがあるかもしれませんが、米国側の責任者は、サブロックを搭載して日本に入るということであるならば、これは当然日本側にしかるべき措置をとらなければならない。なぜかならば、特別の協定というものはないのだから。ということは向こうは事前協議ということでしょう。したがって、日本に寄航するときにはサブロックを搭載していない、これが米国政府筋の日本政府に対する確言でございます。このハロラン記者の記事問題が出てからあとにおきまして確かめたところの先方の回答といいますか、オーラル、口頭の回答でございますが、それをもとにいたしまして先ほど御答弁申し上げたわけで、本日のところはそれ以上申し上げる資料はないわけなんです。どうぞその点を御了解願いたいと思います。
  432. 大出俊

    ○大出委員 これは大臣、幾らあなたが資料がないとおっしゃっても、私のほうには資料があってこの間から質問しているのです。この間ちゃんと御説明して、その御回答を私はいただいたのだ。お調べになったはずなんです。それは御回答をいただいたら二十一回入っているということなんです。しかも二種類に分かれている一両方ともサブロックを搭載できる。これはアメリカ側は、戦術任務についているものには搭載してある、あらゆる事態に対応できるようにしてある、こう答えている。ギルパトリック以来ずっとそうなっている。それがふえてきている。今度は何隻になったという。だから通過協定があるなんて書くのはあたりまえだ。  そこで、いま大臣が言っていることからすれば、日本に入るときどこかに置いてきたか、木村さんが言うようにどこかで発射したかということになる。そんなばかなことが、子供じゃあるまいし、二十一回も入ってきて、そのつどそこらへ発射してしまった。十発も積んであるたいへん大きなものを、そんなはずがないじゃないですか。しかも沖繩という前線拠点、前線攻撃基地、そこから日本に入ってくるたくさんの例があるのに、はずすとすれば当然沖繩からはずさなければはずせやしない。沖繩は持って入っていいのだから、日本沖繩から入ってくるから問題になる。メースBだって沖繩に核の貯蔵庫がなければはずせない。ここまで明確になっているものを、資料がございませんからお答えできませんといったって……。この長い間一ぺんもアメリカと日本とこの問題で点検しようともなさらない。やっておられれば答弁が出てくるはずだ。三十九年以来今日まで何にもしないでそのままにしてきた。国民の核に対する感情を御存じであって、そういうことでは事は済みませんよ。
  433. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これはたとえばサブロックを搭載しないで普通の魚雷を置くということだって考えられるわけですし、それから沖繩あるいはそれ以外で装置をすることだって私は具体的に可能だろうと思います。  それから点検したらわかるはずだと言われますけれども、これは点検は私はできないと思うのです。これはかりに日本の海上自衛隊の軍艦が他国の港に寄港したときに点検が実際できましょうか。これは国際公法上の一般原則からいっても、そういう艦船に対して他国の権利として検査するということは、私はできない。そこでやはり日米両国の関係においては外交交渉のチャンネルによって、そうして先方が確言することについては日本政府としてこれを確信をもって信ずる、これでなければいけないと思います。
  434. 大出俊

    ○大出委員 それじゃほかにも非核三原則なんて政策を持っている国があるのですか。
  435. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 それとこれとは別問題だと思います。
  436. 大出俊

    ○大出委員 点検できないといったって、ほかの国は非核三原則を持っているわけではないでしょう。
  437. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 安保条約で事前協議の規定を置いて、そこで核弾頭の装置については持ち込みを禁止している。これはアメリカの最高方針として日本との間に合意ができているわけですから、こういうことはほかにはあるかないかは別として、日米の間はそれでやってきているわけです。
  438. 大出俊

    ○大出委員 つい先般SRFの問題をめぐっての国と国との共同コミュニケを出している。これはアメリカ大使が外務省に強く要請をしたというので最後に入れられた。ところが第七艦隊は佐世保に行く、こうなってきた。国と国とが約束したってそのとおり行きはしないじゃないですか。あなたは国と国との間でそうなって信頼しているのだといったつく事実問題は一々違うことは幾つもあるじゃないですか。これだけ大きな問題をあなたはなお、非核三原則があって云々、持ち込むなら安保条約に基づく事前協議がございます。いまだかつてただの一度も事前協議したことがないじゃないですか。それを信用しろといったって……。私はものごとを理詰めに話している。あなたのおっしゃっていることは、きわめて非科学的ですよ。
  439. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 きょうのサブロック問題に対しまして、大出委員からたいへんおしかりをいただいて恐縮に思いますけれども、これはやはり国民的な疑惑の問題ですから、政府といたしましては、米側によく照会をし、また申し入れをいたしまして、慎重に扱い、かつ報告をいたしたいと思います。
  440. 大出俊

    ○大出委員 三十九年に問題が提起されまして、先ほど冒頭に申し上げましたように、当時も私実は心配をしていろいろ質問を申し上げたわけでありまして、以来今日までずいぶん気にしてまいりまして、それだけに調べもしたわけであります。したがって、やはりこれは世の中ここまで進んでいるわけでありますから、もう少し科学的に御調査をいただいて、政府が交渉をやってやれないことはないわけでありますから、そしてこれから先の問題、できてしまったことをとやかく言ってもしかたがないのですから、これから先の問題としてその心配があるのかないのか、政府にやはり責任をお持ちいただくという、ここらを明確にいたしませんと、しかも当時のエードメモワールには、日本政府の意に反することはやらないと書いてある。そうでしょう。こういう大きな疑惑を生むということは、日本政府の意に反するということをひとつおっしゃっていただきたい。エードメモワールにありますとおり、アメリカは日本政府の意に反することはしないと約束しておるわけですから、そこをとらえて、これだけ大きな疑惑を国民に持たれるということでは困る、だから、そこのところをやはり明確にされたい、という形でしていただいて問題を詰めていただきたい。こう思うわけですが、よろしゅうございますか。
  441. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 よく承知いたしました。
  442. 大出俊

    ○大出委員 問題が問題でございましたので、たいへんくどい質問になって恐縮でございますけれども、事の性格上、行政府は否定されておりますけれども、リチャード・ハロラン氏の記事まであるわけでありますから、お許しをいただきたいのでありますが、それでは時間の関係もありますので、いまの点は通過協定の点まで触れないで、そのほうは後刻ひとつ質問をさしていただきたいと思います。大臣の最初の時間がたいへん延びましたので、この辺で大臣に対しましては……。  高辻さん、お見えになりましたので、問題の焦点だけ幾つか簡単に承っておきたいのですが、なお多くの論戦が残ると思いますけれども、それは後刻またさしていただきたいと思います。  この間すでに私は総理の質問のときに、ちょっと触れましたけれども、昭和二十一年の六月二十六日の吉田総理の戦力に関する答弁、また自衛権に関する答弁、長い答弁でありますが、このことに触れて申し上げましたら、長官は、確かにそういう答弁があったように記憶する、私も戦力の論争には最初からタッチしてきたから。しかし金森さんであったかと思うけれども、それは直ちに変わっているというお話をされた。私も実はずいぶん調べてみておりますけれども、そう直ちには変わっていない。人間ですからニュアンスの違いがある、違いがあるが、基本的には変わっていない。たくさんの事例を私も調べてみました。当時調べてきておったのでありますけれども、長官が責任ある御答弁をいたしかねるということですから、私もやめたわけでありますが、これの一つの大きな変わり目は、マッカーサーの年頭の書簡、これが私は実は非常に大きな契機になっていると見なければならないと思うのです。これは昭和二十六年に元帥の年頭の書簡が出ている。この年頭の書簡で「自由を尊重する他の人々と相携えて、国際連合の諸原則の枠内で力を撃退するに力を以てすることが諸君の義務となるだろう」こう言ったんですね。「力を以てすることが諸君の義務となるだろう」と言った。これが実はそのあとの国会で吉田さんが——これはほかの人が変えたのではない。吉田総理自身が答弁を変えた、こう見なければならない。これは前に議事録に残っておりますから、金森さんが変えたという話になっておりますから、そうではない点を、あらためて御訂正を願いたい。
  443. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 先般の御質疑の際に、私も実は十分な調べもございませんでしたし、資料も持ち合わせておりませんでしたために、その辺全く責任を持ったお答えができなかったのですが、その後宿題みたいなかっこうになりましたので、私のほうも十分にその当時のことをもう一ぺん復習をいたしてみました。私のほうの調べでは、御指摘の吉田総理発言は、たしか六月二十七日だと思いますが、これは、どちらでもたいした問題ではありませんが、そのころの発言、その当時はむしろこういう防衛権と申しますか自衛権すらも何か新憲法が否認をしているのじゃないかと、見ようによってはそういうようなニュアンスもあるようにさえ見えた発言として、有名な発言でございました。その点については私確かに覚えが、どなたかということははっきりいたしませんでしたが、当時金森国務大臣はやはり自衛権は否定されていないんだということ、これは同じ年の七月十日でございますが、そういうことを言っておられます。が、しかし、何よりも御本人がどういうふうになっておるかといえば、まさに御指摘のとおりに昭和二十五年の一月一日ですか、マッカーサーの年頭の辞がありまして、この「憲法の規定はたとえどのような理屈をならべようとも、相手側からしかけてきた攻撃に対する自己防衛の侵しがたい権利を全然否定したものとは絶対に解釈できない。」というような趣旨の年頭所感というようなことでありまして、その後に吉田総理が、戦争放棄の趣旨に徹することは、決して自衛権をも放棄することを意味するものでない旨を、これは二十五年一月二十四日ですか、ここで述べておられますが、実はそうたくさんないのかもしれません。私がただ一つ見つけておりますのは、二十四年の十一月二十四日でございますが、これは吉田総理が第六回国会の衆議院の予算委員会で、「戦争に訴えざる範囲内の自衛権は、独立国家である以上、これを持っているということに解するのが常識である」というふうな発言もしておられるようであります。つまり吉田総理の、当時の自衛権すらも否認されたかのように——これはおそらく吉田総理、大いにそこを強調された、そこをといいますか戦争放棄ということを強調されたせいだと思いますけれども、とにかくそういうふうにもとられる発言でありましたために、やはりその発言をめぐって真意はそうであるかというようなことがありまして、二十五年の一月一日の前後において、必ずしもあとばかりでなしに、自衛権というものが否認されておらないのだという発言もありましたことを御報告申し上げます。
  444. 大出俊

    ○大出委員 二十五年といいますと、それにしても二十一年から二十五年ですから、すぐということでもない。その間に相当な期間がたった、国情も変わった、情勢が変化した、こういうことだと思うのです。いずれにしても決定的なのは、当時占領中でございますから、マッカーサーの年頭の所感というものが大きく前に出た。その後の答弁を見てみますと、幾つもありますが、大きく変化をしている。ところがこれは国会でだいぶ問題になっているのです。議事録を見ますと反応がこれに対してうんと出ているのです。  そこで次の場面は、この間申し上げましたように二十七年の十一月二十五日、内閣法制局が——この間は長官は、内部的にいろいろ問題が出てきたから、戦力、自衛力というふうなものを含めて意思統一してみる必要があるという意味での話し合いを記憶しておる、こうおっしゃっておられるわけです。それがあって、二十七年の意見はいろいろな書物に出ておりますよ。  私は、長官の立場ですから、あえて、だからどうだということは申しませんが、当時法制局がまとめたのはある意味で定説になっていて、いろいろな書物に引用されております。私が持っているものだけじゃない。だからこういうものがあったことだけはお認めになっているのですから、それでいいと思うのです。  そうすると、この中身がいまの一番大きな問題でありまして、つまり「憲法第九条第二項は、侵略の目的たると自衛の目的たるとを問わず『戦力』の保持を禁止している。」これが一つある。そして二番目に「右にいう『戦力』とは、近代戦争遂行に役立つ程度の装備編成を具えるものをいう。」だからこのあたりからあとの佐藤達夫さんの答弁は、近代戦争遂行能力、これがやたらと出てくることになっておるのです。それから「陸海空軍」というのは一体どうなんだというのと、それから「その他の戦力」というのはどうなんだ。これに対して「『陸海空軍』とは、戦争目的のために装備編成された組織体をいい、『その他の戦力』とは、本来は戦争目的を有せずとも実質的にこれに役立ち得る実力を備えたものをいう。」だから陸海空三軍を放棄したという、名前じゃない、つまり実体、こういう趣旨のこと。これもあとで佐藤法制局長官の答弁に出てまいります。そのあとの五項目、これがまたあとで使われておりますが、五項目は「『戦力』とは、人的、物的に組織された総合力である。」これもばらばら出てまいります。「従って単なる兵器そのものは戦力の構成要素ではあるが『戦力』そのものではない。」こういうふうに、あと幾つかありますが、中心点はこの四つなんですね。これがおのおのの答弁の中に相当出てくる。こういう経過を踏んでおるわけです。  ここで私がこの間も申しましたが、長い時間かけませんが、私が先に言ってしまいますけれども、昭和二十九年五月二十日の佐藤達夫さんの答弁です。「軍事目的をもっておるような戦力、この戦力はもとよりいかんことであるが、なお軍事目的を持っておらなくても、およそ一定規模のいわゆる近代戦遂行能力という規模になっての戦力、こういうものはいかん、即ち、目的、任務の如何を問わず、一定の規模に達した実力はいけない、かように解しているわけです。」というのが一つあります。  もう一つ申し上げますが、戦力そのもの、つまりさっき五項目に申し上げたところに論拠を置いたとらえ方をしておる佐藤さんの同じ答弁でありますが、昭和二十九年五月二十日のもう一つの答弁があります。これは「あくまでもその結合された実力が戦力に達するか否か、客観的の基準によって判断すべきものと考えておりますからして、只今の自衛隊そのものの装備編成を結合したものが未だ戦力に達せずという趣旨において憲法には違反しない」これは達したら違反だということになるという答弁が続いているのですね。それからその次に「アメリカの陸海空の三軍によって守られている。このアメリカの陸海空軍のごやっかいにならずに日本で独自の防衛力を持つというようなことができるようなそういう時期ということになればこれは戦力でございましょう」、いままさに四次防というのはそういう意味では……。だから一番冒頭に防衛局長さんと中曽根長官が記者会見をしレクチュアをしたという中で、グアムドクトリン、ニクソンドクトリンにもそういう意味で支援を期待できないという一線を引いちゃって説明をした。いいのか悪いのかということがあった。そのことをとらえて私は実はあとからものを申し上げたかったので、前段に宍戸ざんの話を引用して恐縮だけれども、久保さんの隣にいた宍戸さんがそこまで言っていいんですかと言ったら、こうこうこの辺のところは明確にしなければいかぬとおっしゃったというのですね。やりとりまで実はこの間例をとったのは、そこらのところが一つ問題になると思って申し上げたわけなんです。長官はあとからそれをだいぶ手直しをされてものをおっしゃったわけでありますけれども、その意味ではこの戦力論争はぎりぎりに来ておる。私はいまの四次防構想というものはこういうとらえ方だけはする必要がある、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  445. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 大出委員がいろいろ御指摘になった事実、これは私ども記憶に照らして申せば事実であったことは間違いないと思います。  ただ法制局のいわゆる「『戦力』に関する統一見解」なるもの、これは前にも申し上げましたが、これがどこの新聞でしたかに実はすっぱ抜かれたのは事実でございまして、そういう意味で前に公表したことはないということを断言いたしましたが、それは全くそうなんでございます。ただこれまた非常に顕著に目立つものでございますので、それがいろいろな本に取り入れられていることも事実でございます。  それからまた、そういう段階における一つの説明ぶりとして、というといかにもぐらぐらしているようでありますけれども、その中身が当時佐藤法制局長官の口を通じて出たことも、これは事実です。しかし、そういうものがある時期における一つ考え方であったことは確かですけれども、やはりその後に二十七年、二十八年、二十九年あたり、ずっと検討の対象がございまして、それでその検討の結果が、鳩山内閣のときにいまの考え方として固まってきたというのが、これまた率直に申し上げて事実でございます。それでいまの考え方というのは、くどくど申し上げる必要もありませんが、何か戦力というのは近代戦争遂行能力なりという、全く宣言的に申しておること、これは少し説明が要るのではないか。前に説得力が、いまでもないとおっしゃいましたが、どうも戦力とは近代戦争遂行能力なりというのは、いかにも宣言的であって、少し説明が不十分ではなかろうか。やはり憲法九条の一項が自衛権というものを否認しておらない。そうしてわが国が武力攻撃を受けた場合に、わが国の国民の安全と生存を維持するためのぎりぎり一ばいの火の粉を払うということは、よもや憲法がこれを否認しているものといえまい。だからそういうものに見合う限度のものであれば、これは憲法が否認する戦力ということはあるまい。むろんそれを越えれば憲法の禁止する戦力を保持することになりますから違憲でありますけれども、こういう考え方が、鳩山内閣が、これは二十九年でございましたが、もう十数年になりますが、それ以来一貫してその考えをとってきておりますので、願わくは過去のいろいろなこともございますが、いまのこの十数年来の考え方に即してひとつ御批判を願いたいものだと思います。
  446. 大出俊

    ○大出委員 あなたは法制局長官ですからね。そこで私は申し上げているのですが、いまのような言い方をしますと、これは亡くなった樺美智子さんのおとうさん樺俊雄さん、大正大学の哲学の先生をやっていらっしゃる。哲学は、時代の精神じゃないけれども、真理というのはその時代時代に代表されるものが真理だということになりかねない。それでは困ると思うのですよ、事、憲法となると。だから国民一般が持つ不安というのを意識しているといないとにかかわらず、皆さん方の側におられる方々も含めて、三島由紀夫さんみたいな方も含めて、何といういいかげんなことを言っているんだ、これだけ明確に解釈してきた日本憲法というもの、戦力というもの、それをいまのように、だからこそうしろからこの間五百何とかいうような発言が飛ぶようなことになるんだけれども、みんな国会に議席を置いて、古い方もたくさんおいでになるのだから、こういう論争をしてきた方が現におられるのだから。そうでしょう。何も百年も二百年もたったのじゃない。四半世紀しかたっていない。その間にここに議席を持っておられる方が、そういう論争をしてきた。国民に皆さんが国会の確定解釈を出してきた。それを片方が何次防、何次防ということで、ふくれていくものですから、やむを得ずそれは内閣の法制局長官だから、時の内閣の意思に従って少し理屈をつけようとする。はみ出しちゃうのですね。それが鳩山内閣なんです。とうとうはみ出し過ぎちゃって、そのこまかい解釈でおさまらなくなっちゃって憲法改正が出てきた。鳩山さん自身が言っているじゃないですか。あまり解釈がいいかげんだ、こんなことではまずい、だから憲法を改正しなければならぬ。鳩山さん自身、御本人がおっしゃった。鳩山さんは正直な方ですよ、いまの佐藤さんよりもよほど。それが三十年の衆議院の選挙に憲法改正をうたっておやりになった。そうでしょう。三十一年の参議院選挙に憲法改正をうたって選挙をおやりになった。たいへんに後退をした。その決着が憲法調査会です。そうでしょう。その歴史的経過をながめてみて、いま四次防という原案を目の前に見て、矛盾を感じなければ感じないほうがおかしい。そういう時期に来ている、だからどういう意識を佐藤総理がお持ちかどうかそれは知らぬ。知らぬけれども、昨日ここで取り上げたような改憲勢力という、その結集という形の御発言が出てくる。おにいさんの岸さんが、尾崎記念館で、事もあろうに憲法記念日三日に、自主憲法制定国民会議という名のもとにお話しになっている。中身を調べてきておりますけれども、これは五つあげているのですね。諸悪の根元は現行憲法だという。諸悪の根元という言い方は不届きだと思うのですが、そこに事もあろうに植木法務大臣が、現職の法務大臣、そういうふざけた話はないでしょう、その席上法務大臣が出て、法の番人が出ている席上で、諸悪の根元は憲法でございます、法務大臣席を立って帰ったかと聞いたら、ちゃんといたという。それはいけませんよ、諸悪の根元を相手にしちゃって。  そこで何を直すんだといったら、岸さんの言い分は、まず天皇の地位の問題。それは上御一人と言う方もいますけれども、天皇の地位の問題、ここからまず始まるのです。軍備。その次が何かといったら、国民の権利。どうもいまの世の中かってなことばっかりやっていていかぬというわけですよ。そんなことをいったら戦後民主主義はなくなってしまう。中曽根さんはいみじくも、みんなが外国へ行って、家族団らんでマイホームでやっているのを見て、いまになって考えれば、ようやく日本もそうなった、戦後民主主義、憲法というものが定着をしているとおっしゃったのだけれども、それがいけないということになる。その最後に出てくるのが国会の制度というんだ。これは戦後民主主義の中心になっている新憲法下の議会制度、これを変えろという。そこまでのことをおっしゃる人が出てくると、これは私はもう少し皆さん方が、法制局の方が、法律の番人の方がしっかりしていただいて、時の政府の政策があっても、これだけの論争をしてきているのですから、一つ限界というものは、憲法解釈、戦力の解釈で設けておいていただかぬと。四つ私はあげました。法制局の意識統一をあげました。それがいまに合わないとおっしゃるなら合わないように、いまあらためて統一見解をお出しになったっていい。いいが、少なくとも現行憲法というものを、きのうあとから中曽根さんがお話しになったようなことを考えておられるなら、その時点に合わせてやはりあなたのほうは統一見解を出していただかなければならぬ。国民みんながながめてみて、そんなにいいころかげんなことを言ってごまかしているのじゃないのだという。そうすれば実をいえば四次防というものは消えていかなければならぬ。そうでなければ憲法改正を発議すべきなんだ、佐藤さんが言うように。そうしないから混乱が起こる。自衛隊の皆さんにも、意識の上で迷惑をかける。三島氏みたいなものが出てくる。こういうことになるのですよ。そうでしょう。  ここらのところを、法律の御専門でおやりになっている高辻さん、私の人生の先輩ですから、どうも私も口があまりよくないほうで恐縮だけれども、言いたいのはそこを言いたい。答弁を願います。
  447. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 いや、おっしゃることは一々ごもっともだと思います。この前も申し上げたと思いますが、法制局が内閣のたびに議論を変えるということは、性格が合わないわけですね、本来。したがって私は戦力の解釈ということを御質疑をいただいたときも、いままでの解釈を申し上げまして、私はまたこの解釈を少しも変えようとは全然思っておりません。ただ、私がたった一つ解釈を変えたことがございますが、これは全く一つでございますが、これはあるいはおしかりをいただくかもしれませんが、文民の解釈であります。要するに当時の憲法制定の由来は御承知のとおりで、とにかくわからぬことが実はあったわけです。たとえば文民、シビリアンというのは一体何であろうかというようなことがわかりませんので、とうとうそのときの解釈は、旧職業軍人で軍国主義的思想に染まった者以外の者ということに解しておりましたので、おのずから自衛官は文民であるということになったわけです。これは旧職業軍人で軍国主義に染まった者もいたかもしれませんが、自衛官だから文民にあらずということにはならない、自衛官もまた文民であるという解釈で来てしまったわけですね。これは私はたいへんおかしいのじゃないだろうか、やはり国政が実力を事としておる勢力によって支配され、国民の信託を離れて運営されるというようなことになることは、やはりこれは解釈が間違っていたのではないかということで、私はたった一つ、自衛官は文民にあらずという解釈を、変えた解釈をお示ししたことがございます。たったそれ一つでありまして、もう少し長官、新しい考えを持ったらいいではないかとおっしゃる方もいるかもしれませんが、私はやはりそういうものはきわめて限定されたものにとどめるべきであろうということで、戦力論につきましても改める気はさらさらございません。いまの考え方でどうかということになるかと思いますが、四次防については「通常兵器による局地戦事態における侵略に対処しうる専守防衛の態勢を確立する」ということでございます。実力の内容がはたしてそれに見合うか見合わないか、御議論があってふしぎはないと思いますが、もしその限りのものであればいままで申し上げた憲法が否認する戦力ではない、理論的にはそうなるのではないかと解するわけです。
  448. 大出俊

    ○大出委員 結論を出しますが、さっき鳩山さんのところまで申し上げました。憲法改正を出して衆議院、参議院の選挙をおやりになって、後退されて、憲法調査会に切りかえた。鳩山さんはそれでも憲法改正の意思を捨てていないのですよ。つまり戦力解釈というものは間違っている。陸海空軍、三つの軍隊である。にもかかわらず、それを自衛隊と称して自衛力という名のもとに、しかもそれは戦力に至らざる自衛力である。最後に戦力という名前を使う場合になったら、必要かつ相当な戦力という名のもとに——必要かつ相当な戦力、それはただ単に戦力じゃない。それは憲法九条二項にいう不保持の戦力ではないという解釈をしている。そのワクの中に、いまの陸海空三軍、皆さんのいう自衛隊を閉じ込めようというところに無理がある。それが鳩山さんの時代に次々に出てきた。それでこれではたいへんだということで、それならば憲法改正だということになってきた。そういういいかげんな解釈はいけないと鳩山さんははっきり言っている。私は過去の歴史がそうなっているということをまず指摘しておきたい。鳩山さんはここでこう言っております。「自衛隊法の兵力を軍隊と言ってもだれも疑う人はないのであります」。はっきり言っておる。鳩山さんは正直なんです。高辻さんよりよっぽど正直だ。ここではっきり言っている。「自衛隊法の兵力を軍隊と言ってもだれも疑う人はないのでありますけれども、あの第九条があれば自衛隊法に言うところの防衛力は軍隊にあらずという議論を言う人もありますから、それでそういうような不明瞭なあいまいな法規は改正すべきだと思うのであります。」と言い切った。この法規はいけないと言うのです。いまだってあなたが、変えたのは文民解釈だけだとおっしゃるならば、あなたの持っておられる基礎は、論理的に変わっておらない。そうすると、あなたは専門家ですから、口ではいろいろおっしゃるけれども、あなたの腹の中にだって不明確さというものがあると思うのですよ。私にだってある。それを時の総理鳩山さんが正直にはっきり言ったにすぎない。だれの頭の中にもある。雑談すればみんな出てくる。そうでしょう。それでいいのかという問題ですよ。  そこで、次に憲法調査会のあと、岸さんになった。岸さんは鳩山さんが憲法改正の発議の前に言っておられたことを多少拡大ぎみに言った。言ったが、基本は変わっていない。そして岸さんのあとは池田さんの時代。低姿勢でおいでになったのですから、池田さんの時代というのはあまり戦力論争の出てくることはないのですよ。そうすると変わっていないと見なければならぬ。そのあとは佐藤総理なんです。佐藤総理におなりになったときに私は国会に議席を持っておった、私は池田さんのときからおるのですから。そうすると知らないことはあまりない。一つや二つあるかもしれぬが、ほとんどない。そうすると、あなたがまさにおっしゃったように、戦力解釈というものはさっき申し上げた統一見解のワクからそう出ていない。出ているのは戦力ということばを使っているけれども、それは必要かつ相当な戦力であって、九条二項にいう不保持の戦力に行っていない戦力、そういう解釈をしている場面はあります。  一例だけ申し上げておきます。つい最近のことをあげておきますが、これは真田内閣法制局第一部長さんの御発言です。これによりますと、「わが国が保持することのできる戦力の範囲いかんという問題であるが、政府の解釈としては、わが国には主権国としての固有の自衛権があり、その自衛権を行使するための必要かつ相当の範囲内の戦力であるならば、これは憲法も許している。」——必要かつ相当の範囲内の戦力、それは不保持の戦力ではない、もっと小さいのだということを言っているわけですね、戦力ということばを使った場合でも。それはことばは違うけれども、法制局が——まあこれはすっぱ抜かれたかもしれません。しれませんが、当時混乱をした時代に意思統一をされた、そのワクをそう出ている解釈ではない。そうすると、さて問題が残るのは、四次防の原案が出てきた。くどいようですけれども、最終年度五十一年に一兆六千億だ、七千億だとなるとすれば、これはアメリカ、ソビエトを除いて、フランスだの、イギリスだの、ドイツなど——ドイツはNATOの中心軍隊でしょう、フランスは核を持っているでしょう、中国、これと並ぶところまで行ってしまう。あっちはあまり伸びてない、フランスもドイツもイギリスも。イギリスは逆に減らしてきている。その中に入っていってしまうという予算規模、今日そこまでのものになってきている。それをいまの憲法解釈、戦力解釈のワクの中に押し込んでおこうというところにどだい無理がある。だからそこのところを国会の責任ではっきりしなければならぬのじゃないか、こう思う。この点についての御見解をいただきたい。
  449. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 私どもは、憲法九条の問題について国会で論争があること、これは憲法九条のむしろ存在意義と言ってはあるいは語弊があるかもしれませんが、国会で大いに議論されること、これはまさにあるべき姿であろうとほんとうに私は思います。先ほどの戦力の必要、相当な限度というのは、実は近代戦争遂行能力とあまり違いはないのじゃないかという趣旨からのお話もあったように拝聴いたしましたが、私どもはやはり内閣がかわって根本的に変わるのはどうかという気もいたしまして、あの当時はむしろ、こまかいことを言うといろいろお話ししなければなりませんが、法制局としては、どうしても必要な限度といいますか、相当な限度というか、そういう意味最小限度というか、それに非常にこだわっていることは事実であります。自衛権の行使の限界とか限度論を非常によく言うのはそのとおりでありますが、そういう意味合いで国会でこの点についての論議が非常に盛んに真摯に行なわれることはきわめて自然の姿だと私は存じます。
  450. 大出俊

    ○大出委員 そこから先は時の政府の意思と国民の受け取り方、国会の審議権、こういうところにからむ問題であります。しかし私がさっき申し上げたのは、私も日本人なんですから日本憲法というものを考えながら進めているわけです。その限りでものを言うと、四次防というものの構想は発表されたけれども、これはいままでのつまり戦力解釈のワクに入れるのには、客観的に見てもいささか骨が折れる時期に来ている。だからこそ国民一般に、新聞論調を見てもそうですけれども、歯どめがないじゃないか、限度がないじゃないか、世界の七番目になるじゃないか、だからその点の限界という努力は何となく見えてもしかし限界がない。だから国会は責任をもってこれを審議せよということまで社説が書くことになっているわけでしょう、いまの世の中は。その意味で言うならば、諸悪の根源は憲法かもしれぬ。だからそういう意味で私はこの際、この点はもう少し法的に——旧来の解釈が生きているわけですから、そうするといいかげんな解釈はしないでいただきたい、こう申し上げておきたいわけでありまして、これを長官に言えば長官と私の間は政治論争になります。そこらは前にさんざん承りましたから言う気はありません。長官とのやりとりが中断されておりましたから、そこのところだけ明確にさせていただきたいと思って申し上げたわけであります。  ところで、大蔵省楢崎さんにお見えいただきましたので、防衛庁の参事官鶴崎さんのほうと、この間すでに質問の中身は申し上げてあるつもりなんでありますが、例の沖繩における原状回復という意味での原形復帰の要求書等も軍用地についてたくさんあるのでありますけれども、同じ意味でその中の一つに入るような形にもなるような横浜の返還後の現況道路になっておったり、いろいろする個人所有地の問題、この決着をぼつぼつつけていただきませんと、これもどうも何年にもなるわけですから、したがって個人の私権とのぶつかり合いで、非常にいまたくさんの方々が市にも県にも陳情したり、国にもいろいろものを言わにゃという形になってきているので、これについての御見解を昨年私は一ぺん質問いたしましたが、それは何とかその話し合いの糸口をつくってあげたいという気持ちの質問だったのです。一年たちましたので、あらためて承りたいのですけれども、これはこの間、中身は差し上げてあるつもりでありますので、ゼロックスをとっていただいたと思いますから、そういう意味で、まず質問の要旨もすでに差し上げてある。そこらのところを時間がありませんので、皆さんのほうからお答えをいただきたいのですが、大蔵省の方が来ておりますから、わからぬところもありますので、ちょっと一点だけ申し上げます。  つまり問題の焦点は、この間電話で一ぺん私、直接どうお考えですかという——予決令九十九条二十二号の例の問題とからむのですけれども、横浜市の山手地区とか根岸地区というところに米軍住宅がたくさんあった。さてそれがだんだん接収解除になってきた。そこには百坪、二百坪、三百坪という個人所有地がたくさんあって、接収されていた、あるいは使用料をもらいながら本人が所有権を持っていた土地です。それをお返しいたします、こうなった。ある地主はそうですがといって判こをついた。そして返してもらったが、自分の土地に行って見れば、道路になって車が走っている。まさかバリケードを張れない。一・八メートルの幅のところを五メートルに米軍がふやした。ふえた分は個人の所有地になっておるわけでありますから、全部それは個人所有地になって、いまでもある、それを返してもらった。しかしそれは道路である。いまさら一・八メートルに減らすわけにはいかない、道路を車が通れない、こういう問題が起こった。ところがその中で、判こをついて返してもらった人は、私道になっているほうの一部の土地について、まだ使用料ももらえないでいたわけです。ところが復元要求をして、判こをつかない人の場合は、いまだに使用料をもらっておる。こういうばかげたことがたくさん起こってしまっている。横浜ではこれに手をつけて区画整理をする、あるいは移管を受けて市道にして管理をしたり、県も何か似たようなことを考える。しかし問題の所在が明らかにならない。そこで私の言いたいのは、接収という事態が起こったのは国の責任なんですね。そうすると、これは楢崎さんのほう、大蔵省になりますけれども、国にこの際買い取ってもらい、そうしてそれを市なら市に移管する。そして道路で、あとは全部金をかけて舗装してりっぱなものにして、そしてこの接収された地域のそういう意味での便益をはかっていただきたい。これが解決の方法だろうと実は私思います。  ところがさて、いま問題の一つは、こうなっている。つまり国も金を出したくないから市と県というふうなところへ陳情が行くわけですから、話し合いをなるべく詰めて——防衛施設局が中に入っていて、施設局としては、県や市にお願いをして復元に要する費用は幾らかというような計算をして、このくらいだという金を出して、それを見舞い金で差し上げよう、そういう考え一つあるのです。あるけれども、地主にすれば、接収されて、かってに道路をつくられて、自分たちに返っても道路である。納得できないですよ。それじゃ片づかない。だから、その意味ではやはり国が責任をもって解決に当たっていただくことが、しかも接収されてきたのですから、防衛施設庁が責任をもって解決していただくことが問題の焦点じゃないかと思いますので、その点について、ここに質問書を、この間ゼロックスをとっていただいて差し上げてありますので、そういう点を、これを全部読みながらいたしますと時間がかかりますから、お答えいただけないか、こう思うわけであります。両方からお答えいただきたいのですが……。
  451. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 先般御質問の中で、いまの沖繩返還問題にからんで、一般論として御質問でございましたので、一般的にお答え申しましたが、横浜の山手住宅につきましては、確かに御指摘のような事実があるわけでございます。従来からその私道関係につきましては、横浜といろいろ協議してまいりましたけれども、意見が一致しませんで未処理になっておるということでございます。そこで私どもの考え方としましては、私道化したということでございますが、その原状回復につきましては、横浜が私道の現状を変更することをお認めにならない、道路はそのままにしておきたい、こういうことでございますので、結局そこの原状回復をいたしますけれども、原状回復の経費を最高額とした、いわば減価補償といいますか、そういう処理をしたらどうかということが一つ考え方でございます。  それから私有地につきましては、やはりそれが一般の公共用の道路になっておりますし、まあ非常に一般の市民が利便を感じておられることもございますので、これは所有者の意向も聞きながら原状回復の補償をする、こういうことはどうだろうかということをいま考えておるわけでございます。ただ、ここの従来から返還になりましたのはごく一部でございまして、まだ大部分が残っておりますので、全部が返還になることも考えられますので、その時点に全体としてこれを処理していったらどうかということで、いま検討しておるというのが現状でございます。
  452. 大出俊

    ○大出委員 楢崎さん、御意見ございますか。
  453. 楢崎泰昌

    楢崎説明員 ただいま御質問になりました山手住宅地区の現況道路の部分につきましては、道路敷の部分に一部国有地が介在してございます。国有地につきましては、御承知のように、運用方針基本といたしまして、国または地方公共団体の公用あるいは公共用に優先的に使用するという考え運用いたしておるわけでございます。現在、その現況道路の部分は、地方公共団体が道路法上にいう道路に認定した道路ではございませんが、もし地方公共団体のほうで道路法に基づく道路と認定し、道路管理者として、その国有地を道路敷として使用したい、こういう御希望がございますれば、それは優先的に道路敷として、根拠法としては道路法の九十条の二項ということになりますが、「無償で貸し付け、又は譲与することができる。」ということに法律上なっております。したがいまして、私どもまだ完全に実情を把握いたしておりませんが、お申し出に従いまして、検討の上、そのように処理したい、かように考えております。
  454. 大出俊

    ○大出委員 島田さんの第二番目の答弁がちょっとわからなかったのですけれども、これは非常に大きな問題で、しかもかかわりのある人が非常に多いのですね。今後基地が縮小になりますと、至るところにそういう問題が出てくるので、地元の問題で恐縮だけれども、取り上げたわけであります。  そこで一つ申し上げたいのは、もちろん拡幅されたものを狭くするという意味の原状回復ということは成り立たないわけです。世の中は変わっておりますから、それは地域住民の方々が承知するはずがない。バスが通ったり何かしておるのですから、通れなくなると路線変更をしなければならぬ。そうなると、その地域の人に、朝乗るときにたいへんなことになるという問題まで大きく含みますから、地域の現状からすれば、五メートルに拡幅したものを一・八メートルに戻すということはとうていできない。だれにやらせてもできない。国にやらせても全くできないのです。市がやろうとしたってできない。だからやれる方法というものは買うしかない。買い取る。その買い取る金の持ち方が全部国にといったって困るという話が出るかもしれない。だから、私は率直に、その中には一案と二案、こうあって、国がやったのだから出してくれ、こう横浜は言いたい、だから幾らか市が持ちますということは出さないでおきましょうということばで書いてありますが、めんどうくさいからそこまで差し上げた。市の腹もわかるのですね。そこらの大蔵省の所見をいただいて——というのは、国の用地になっているもの現にある。ところがこれは旧地主のものになっておるのです。区画整理法に基づけば、その中に強制権を考えておるから排除できるかもしれません、区画整理にかければ。だがそうではなくて、それを公共用地なんかに整理していきますと、じゃそれを払い戻してくれという請求が旧地主から出たときに、予算決算会計令九十九条二十二号で——あの近辺にいろいろそういう例がありますが、そういうのが出てくると、実際に扱えない、またそれだけの補償をしなければならぬということになりそうに思うのですが、そこらのところをできれば御見解をいただきながら、長い時間をかけません、こういういまの時点ですから、大体方向づけをお考えをいただきたいと思うのであります。
  455. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 いまその道路を市道に編入する場合もあり得ると思いますし、確かに、おっしゃいますように、拡幅したものをまたさらに縮めることは、すでに利用されておりますから、できないだろうと思います。したがって補償をします場合には、原状回復にかえて原状回復に必要な金銭をもって補償するということも考えられると思います。それからいまおっしゃいますように買収ということも考えられるということで、これは国有地の関係もございますので、大蔵省の当局と十分協議しながら進めてまいりたいと思います。
  456. 楢崎泰昌

    楢崎説明員 ただいま国有財産に関連いたしまして予決令の御引用がございました。一般的に申し上げまして、国有地のもとの所有者であるということだけの理由では、私どものことばで随契適格といっておりますが、それがあるというわけにはなかなかまいりませんで、その周辺の種々の事情、たとえばその近辺に自分の民有地があるとかいろいろな条件が重なりまして行なわれる場合がございますけれども、いま申されましたような状況では、一般的にすぐ払い下げの権利があるというぐあいにはとうてい言えないわけでございまして、場合によりまして検討しなければいけない問題でございます。一般的にはないということで御了承願いたいと思います。
  457. 大出俊

    ○大出委員 それでは、時間がかかりますので、ポイントだけはおわかりいただいたと思うので、いま薄田施設部長がおいでになりますからお聞きいただいておりますので、そこらのところを御勘案いただいて……。長過ぎるのですよ。それで、場所だ、数だというのはうんとありますが、ここにその所有者の名前までありますけれども、それがまだ宙に浮いていて受け取ってないのと判こをついたのと分けてありますけれども、それをここで申し上げてもしかたがないと思います。これはすでに前回一ぺん別な角度の質問をしておりますので……。これは古過ぎるのですよ。こういう私権にかかわる争いをあまり長く続けておくということは、やはりそれだけ不信が出てくるわけですから、そういう意味で、ぜひ前向きに御検討いただきたいということを要望申し上げまして、この件は終わらせていただきたいと思うのであります。  次に、簡単に承りたいのがもう二点あるのです。  一つは、地位協定の二条四項(b)、いまこの項を適用しておりますのは何カ所ございますか。
  458. 薄田浩

    ○薄田政府委員 ちょっといま資料を持ってまいります。
  459. 大出俊

    ○大出委員 時間がもったいないから、私のほうでもうちょっとつけ加えてからお答えいただきたいと思います。  お断わりをしておきますが、このことは、ニクソンドクトリンとの関係で基地が返ってくる。共同使用という問題の提起も一面ある。沖繩の場合でも、自衛隊が返してもらったところに入るという問題が出てくる。これは安保条約その他の関連取りきめが適用されるわけでありますから、全部そういうケースになっていくということでございます。そういう意味で、二4(b)というものの扱い方について疑問に思う点が幾つかある。また運用上いささかこれは間違いではないかということもある。だがしかし、私は、それを取り上げていま防衛庁に責任を負わせるべく詰めるという気はない、時間がありませんから。したがって、何カ所あってどういう形の扱いになっているかということだけをまずお答えをいただいて、そのあと私問題点を申します。
  460. 薄田浩

    ○薄田政府委員 地位協定二条四項(b)で米側にいわゆる随時使用を許しておりますが、それで申し上げますと、いわゆる自衛隊施設を二4(b)で提供しているのが五施設ございます。これは富士の演習場、長坂の小銃射撃場、それからキャンプ王子の一部、硫黄島通信施設の一部、南鳥島の通信施設の一部、それからもう一件は、運輸省の所管でございますが、運輸省財産を一カ所提供しているのがございます。これは神戸港湾ビルの一部、この六カ所でございます。
  461. 大出俊

    ○大出委員 いま硫黄島というお話が出たと思うのでありますが、この硫黄島の例からいきますと、取りきめのしかたがどうもちょっと明確ではないのですが、これは、出入権という考え方があるのではないかという気がするのであります。つまり、普通ならば何年何月何日から何年何月何日までという取りきめをする。あれは山の上にロランCの基地があります。小笠原返還協定できまっているのですから。小笠原返還協定に基づく暫定措置法に関する政令で、あそこの自衛隊がいま管理している飛行場にアメリカの飛行機がおりた、そうしてロランCの基地に——これは五年間有効になっていますから、まだ期限が切れない。そこに米軍のだれかが入っていく、こういうかっこうになっております。この取りきめのしかたはどうなっているか御存じですか。
  462. 薄田浩

    ○薄田政府委員 この二4(b)の場合の米側への提供といいますか、使用態様でございますが、大きく分けまして大体四種類ございまして、いわゆる長坂小銃射撃場の年間百六十日というきめ方、それから富士演習場のように、事前に日米双方で意思調整するとか、たとえば一月に何日、こういうきめ方、それから先生の御指摘の硫黄島とキャンプ王子のヘリポートでございますが、キャンプ王子あるいは硫黄島通信所は、いわゆる本来の米軍の施設に通行するつど、こういうきめ方をしております。
  463. 大出俊

    ○大出委員 時間がございませんから、要点を聞いて、あと後の論議の前提にしておきたいと思うのでありますが、この二4(b)で返してもらった基地を、自衛隊が管理権を持っていて、一定の期間ということで米軍に貸す、こういうケースですね。この場合に、皆さんのほうは官報に告示をいたしますね。そうでしたね。官報の告示の中で、地位協定の扱いがどうなっているかという点、御存じですか。
  464. 薄田浩

    ○薄田政府委員 ちょっと申しわけありませんが、現物を持っておりませんので、すぐ調べてお答え申し上げます。
  465. 大出俊

    ○大出委員 いまおっしゃった長坂の射撃場の件を一つ例にあげてみましても、この中にはたくさんありますが、必要なところだけ申し上げますと、防衛施設庁告示第十九号の長坂小銃射撃場と神戸港湾ビルの二つ、この中の、いまお話がございましたが長坂射撃場。このほうは官報の第一二八三〇号、昭和四十四年九月二十日、こうなっておりまして、この中に「四五九五」とこう書いて、その下に神戸港湾ビル、兵庫県何々と所在地が書いてありまして、この中にずらっと取りきめが並んでいる。その一番最後のところに、「合衆国軍隊の使用期間中は、地位協定の必要な全条項が適用される。」こう書いてある。地位協定の扱いはかくてきまっている。そうでしょう。これは非常に大きな問題でございますね。「合衆国軍隊の使用期間中は、地位協定の必要な全条項が適用される。」おわかりですね。  実はこれは、質問のしかたによりますとたいへんな事件が起こる中身を持っているのですが、また終わらなくなるなんというのでは困りますからそこまでは申しませんが、この必要な全条項の適用というのはどう解釈されるのですか。地位協定の必要な全条項、何と何が必要で、しかも全条項とはどれとどれとどれをさすのか。これはおたくの、防衛施設庁の告示ですからね。
  466. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 二4(b)の性格上、それぞれの適用条項をそこへ条件として入れるということになっていると思いますけれども、従来から、必要な全条項というようになっておりますが、それはそのケースケースに従いまして、必要な条項を適用する、こういうことで従来からまいっているのでございます。  そこで、これは外務省の問題でございますけれども、現在その適用条項の問題につきまして外務省としてもいろいろ検討をせられておるということで、まだ私どものほうには結論が参っておりませんけれども、それに基づきましてわれわれとしても今後検討していきたい、こう考えております。
  467. 大出俊

    ○大出委員 先ほど私、この地位協定、路線権等を含むのだけれども、御質問いたしますが防衛庁よろしゅうございますかと、ちょっと指摘、念を押したのですが、いまの御答弁ですとちょっと皆さんに承っても正確を欠く御答弁になりはしないかという気がするので、議事録に残りますので……。実は管理権という問題が非常に大きな問題になります。したがいまして、これはもうあとのこともありますから申し上げておきますが、実は必要な全条項の中に三条が入るのか入らぬのかという問題があります。必要な全条項なんだから、合衆国が必要だったら全部入ることになる、この条項もこの条項も。PXなんというのもありますけれども、この条項、この条項、合衆国が必要なんだといったら、全部入るんですよ。そうでしょう。この書き方は、専門家に聞きましたら、やはり告示の解釈はそうだ。三条まで行ってしまう。そうすると、貸している間は自衛隊には管理権が全くない。三条というのは管理権ですよ。そうすると、これはここから先申し上げますというと、これもちょっとやめられなくなってしまいますから、問題が出てきますから。そういう問題が実はある。そうすると共同使用云々という防衛庁長官中曽根さんのお話が前から出てまいりましたが、たいへんなことがいろいろからんでくる。したがいまして、まだたくさん事例はありますが、ここでこれから先申し上げませんが、そこらの解釈、外務省と防衛庁、施設庁の間で意識統一をしておいていただきたい、こうお願いしたいのであります。  そこで、厚木の飛行場の問題があります。厚木の飛行場というのは、前回鶴崎さんの御答弁によりますと、長官は否定をされましたが鶴崎さんはお認めになったのですが、百六十万坪のところに十万坪、五%ないし一〇%のところを残した、それは三条の米軍の専管地域である、そのほかは自衛隊に返した、という場合に、アメリカの飛行機が飛んできた、専管地域わずかのところ滑走路つくれませんから、ちゃんと自衛隊のほうの飛行場に着く。着いて、便益をはかるというかっこうの三条の条文の中身を適用して便宜供与、便宜を与えるということで、いわゆる出入権で入っていくということになるのかという問題がまた間違いなく出てきますね。ところが、これはさらに路線権という解釈ももう一つありますね。そうすると、ひとつ間違うとこれはたいへんな拡大解釈ができる。重大な問題ですよ。先般これは鶴崎さんがお答えになっていますね。そこで、長くなりますから、これもまたそこから先踏み込めませんから、一つだけ承っておきたいのは、現在の厚木基地というのは、ああいう話になって進んできた。外務省もいろいろ知恵をしぼっておった。そうして今度はあそこでまたおやめになる方々出てくるかもしれぬと思うのですが、そこらの問題を含めて厚木の場合は現状どういうふうに動いているのか、その一点だけお聞かせいただきたい。
  468. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 厚木の飛行場につきましては、現在米軍と自衛隊、それから運輸省、この三者の間で使用区分について具体的な協議を進めておるわけですが、まだ最終的な結論が出ておりませんけれども、いままでの協議の経過でおおむねまあこれは間違いなかろうという線を申し上げますと、飛行場の滑走路、誘導路、エプロン、これは地位協定の二4(b)によって自衛隊に移管になったあとも、米軍に使用を認める。それからその他の地域につきましては、米国の専用の区域もございますから、たとえば住宅の地区がございますが、これはその性格上共同使用ということにはなりません。当然これは米軍の専用施設である。それから隊舎とか庁舎、こういったものにつきましては、それぞれの必要度に応じて、ある建物は米軍が使う、ある建物は自衛隊が使う、それからさらにあるものは運輸省が使う、こういういわば一種の混在方式になる。しかしその地域としては、それは二4(b)であるというようなことで、現在具体的な詰めをしております。経過としてはそういうことであります。
  469. 大出俊

    ○大出委員 これまた論議のあるところでございまして、また時間がかかりますから、きょうは承ることだけにいたします。そこであと、いま、ついでというのはおかしいのですけれども、似たようなことがいろいろありまして、その後の経過がわからぬのがありますので、三点ばかりそれをお答えいただいて、そのあともう一点だけ承って終わりにしたいのです。  そこでまず富岡の倉庫地区ですね。これはいろいろ県市の立場があったり国の考え方があったりしておるようでありますが、その後どこまでどういうふうに進んでおるかということと、もう一つ岸根の病院ですね。閉鎖をしておるわけでありますが、その後これのリロケートの問題もあったようでありますが、どういうふうに進んでおるのかという点、この二つの点についてお答えをしていただきたい。
  470. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 富岡の倉庫地区につきましては、米軍はこれを使っておりません。そこであと地を自衛隊として使いたいという希望を持っておりまして、用途としましては、京浜地区に住んでおる海上自衛隊の職員の官舎が非常に不足しておるというようなことから、官舎用地としてこれを利用したいということを大蔵省のほうにも申し出ておるわけですが、片や地元では、市のほうとしては公園に使いたい、それから神奈川県警のほうでは訓練場がほしいというようなお話があって現在調整中でございます。
  471. 大出俊

    ○大出委員 病院は。
  472. 薄田浩

    ○薄田政府委員 岸根についてお答えいたします。  御案内のとおりいま停止いたしておりまして、遊休状態になっております。土地は御承知のとおり市有地でございます。それで昨年の七月、米側からはこれをリロケーションして所沢へ持っていってくれないかということであります。しかし施設庁としましては、遊休施設のリロケーションというのは受けられないということで、その後八月八日、それから同じく八月十八日、二十日、それからちょっと日付はわかりませんが昨年の暮れ、それから本年三月二日、そのうち三つは口頭でございますが、あとの二本は文書でもって申し入れしておりまして、これは大体調整部会にはかっておりますので、この点、調整部会は一週おきにございますので、会うたびごとに催促しておりますが、向こうからいわゆる単純返還の申し入れに対して考慮はしておるといいますが、回答も条件も現在のところ参っておらないということであります。
  473. 大出俊

    ○大出委員 最後に一つだけ承りたいのですが中曽根さんにこれを承りたいのですけれども、いままで長く相当詰めた。がまんをしていただいて、四次防をめぐるあるいは防衛二法をめぐる論議が続いたわけでありますが、さてそこで、こういう計画が出て、これから三次防から引き続き四次防になるのでありますけれども、そして中曽根さんのおっしゃるところによれば、周辺海域防衛を含めまして、相当なところまで行くだろう、こういうことなのでありますけれども、さて実際に何かが起こったら——これは防衛局長に私は何べんか質問いたしましたら、まあ全体としては起こらぬだろう、しかし何かが起こるかもしれない、こういうことなのでありまして、可能性が全くないわけではない、こういう御答弁であります。そうすると何かが起こるかもしれない、こういうこともあり得る。その場合予算を非常に大幅に見て進めていこうというわけでありますけれども、実際にそれで防衛になるかという問題が一つ残るのであります。たとえば幾つか例をあげますけれども、どこかへ侵攻があった、特定の地域を占拠されるということは排除しなければならぬ、そういう意味の上陸阻止をしなければならぬ、あるいは公海防衛に切りかえたのですから、そこからいろいろなことになってくるのだろうと思うのでありますが、そこでその場合に、自衛隊自身が防衛出動の命令が出てきて、あるいはその前の待機命令が出てきて、そこで何かやらなければならぬという場合に、あるいは陣地をつくらなければならぬことになるかもしれないという場合に、この土地を使わしてくれといった場合に、ぴしゃっと断わられたら使えるかという問題。さて輸送部面でも、トラックが大量に要るという場合に、使わしてくれといったらぴしゃっと断わられた。民有地について、いま申し上げたように、陣地その他が必要だという場合ぴしゃっと断わられる、輸送という面でこれまたびしゃっと断わられるということが幾つか出てくると、いまの自衛隊法その他のかね合いを含めまして、どういうことになりますか。
  474. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう件につきましては、自衛隊法等におきまして、そういう際の措置についての規定がございます。権限法規が与えられておりますが、しかしまだそういう緊迫した事態もないのにそういう立法をするのは、いたずらに人心を刺激するというので、われわれは自制をして、そういうことは目下やる意思はございません。おそらく日本が不法に外敵に侵略されるというときには、日本人は本質的に愛国者でありますから、政治が正しければ、みんな立ち上がって国土を防衛するという行為に出るだろうと思うのです。そういう意味において、私らはやはり国民の愛国心を期待するし、国民全体で防衛に関する正しいコンセンサスをつくっていって、そういう際にもまたわれわれが国土防衛の使命を果たせるようにつとめていきたいと思っております。
  475. 大出俊

    ○大出委員 これまた論議をし始めると切りのないことになるのでありますが、これは皆さんのところの計画番号の振ってある計画があるわけでありますが、この計画番号六、これなど中身を読みますと、アメリカとの関係で、兵力、物資の補給のための輸送が出てくる。他の地域から新たな戦場へ補給するために日本を中継基地とする、それでこの空輸には米側は、日米両国の民間パイロットを徴用する用意があるという計画がある。これは民間パイロットを徴用するといっても、いまの自衛隊法でそう簡単にできるかという、これは演習なんだからそうなっているんだというだけならばいいのですけれども、事実そういう計画をお立てになって、実際にはいろいろ方々でやっているんだと思う。そういうことになると、私はいま一つ例をあげたのですけれども、その種のことに対して何か皆さんのほうはお考えがなければならぬはずでありまして、日本人というのは政治がよければ、そういうときになればそう驚かぬだろうということだけで事済むのかどうかという点、やはりそれ相当の欠けたるところについてはどうするかという論議も必要であろうし、あるいは検討も必要であろうし、立案も必要であろう、こういうふうに実は思うのですよ。そういうことはおやりになっておりませんか。
  476. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 民間パイロットを徴用と申しますか、有事使用するという計画はございません。ただ自衛隊法に、たしか輸送従事者に対してある程度の強制措置を講ずることができるような条文があったと思います。それに該当するかどうか、これはもう少し正確に法規を検討してみないとわかりませんが、目下そういう考えはございませんし、準備もしておりません。
  477. 大出俊

    ○大出委員 これもきのうの楢崎質問じゃありませんけれども、百三条にかかわりますが、実はいろいろなことを防衛庁の皆さんは御検討になっている。数々の問題が実は検討されている。どこかできめられているのだろうと思うのでありますが、いまそういう計画はないとおっしゃるが、明らかにこれは輸送従事者です。特定の職種の人たちときのう楢崎さんは言っておりましたが、そういう点を皆さんは検討されている。私は実はどこまで検討されたかを聞きたいのです。それが長官の言うように、出す出さぬは別の問題ですが、三矢図上研究じゃありませんけれども、有事だからというので緊急に国会を召集して、一週間で八十からの法律を一ぺんに押し通したというので、あの図上研究は総動員方式じゃないのだというところまで発展した論争になった。だから皆さんが着着そういう準備を進めておられるという事実について承りたいのです。  それでこのやりとりから始まりますと、たいへん長い時間がかかると思いながら実はこの点だけちょっと聞いておきたいと思って取り上げたわけですが、その準備の程度、準備のほど、問題点の所在、こういうところについて何ら計画もない、立てていない、出しもしない。片や五兆八千億にも及ぶ四次防原案をつくって、こっちのほうはどんどんふやすのだ、これは妙な話だと私は思う。いま長官はそのときになればとおっしゃるけれども、ではそのときになるまで防衛庁は何もしないでいるのか、そこを承りたい。
  478. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 次の防衛力整備計画におきましては、一つの想定として、たとえば緊迫事態が起きるまでにはいろいろな徴候が積み重なってきて、大体一年くらいの予想ができるだろう、そういうような緊迫せる事態が的確に来つつあるという事態になれば、国民の皆さまもこれはたいへんだという意識も高まってきますし、どうすべきかというコンセンサスも次第に生まれると思うので、そういうような状態のときにそういう問題は具体的に出てくるのではないか、私はそういう気がいたしておりまして、みな平和を楽しんで生活を充実させようとしておるときに、そういう物騒なことは出さぬほうが政治として賢明なことである、私はそう思っておるわけであります。
  479. 大出俊

    ○大出委員 そこら辺をはっきり言っておいていただかないとうまくないと思って、短い時間でございますから、実はめんどうくさい論議に踏み込む気は正直のところないわけでありますが、そこらの念を押しておかぬと、陰の努力が皆さん方の中にありますので、その幾つかを私も入手しておりますから、そこで実は前段を承ったわけでございまして、先ほど東中君から質問がありましたけれども、政令、こういうことになっておりましても、その中身を検討していきますと、たいへんにこれは日本憲法に触れる問題も出てくる、主権という問題とのかね合いも出てくる、たいへんめんどうなことになる、こう私は思いましたので、いまここでそこまで踏み込む気はありません。採決にお加わりになるということでお見えになった方方もたくさんおりますから、長官がいまおっしゃる、そういう物騒なことはやらないほうが政治的にいい、こういう御発言でございますから、その点だけしかと承って終っておきたいと思います。  以上でございます。
  480. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 昨日の楢崎委員の質問にかかる核兵器安全管理基準について、第五空軍に照会いたしましたところ、作戦部長リンカーン大佐から次のような回答がございました。第一、米空軍は核兵器の安全等に関する規則等を制定している。第二に規則を持つことと核を持つこととは別問題である。以上。ということでございまして、やはり第五空軍も米空軍の一部として、そういう安全基準等に関する規則は持っているものであると思われます。ただしそれが日本核兵器、核爆弾が来ていることとは別の問題である。そういうことでありますから、御報告申し上げます。
  481. 天野公義

    ○天野委員長 楢崎弥之助君。
  482. 楢崎弥之助

    楢崎委員 安全管理基準のあることは明白であります。第五空軍は持っているわけであります。その内容について、私は昨日、私の承知している限りでは十四ページにわたるもので、と内容の特徴的なものをきのう申し上げたはずであります。内容についての照会をなさいましたか。
  483. 久保卓也

    久保政府委員 内容について照会いたしましたが、向こうでは該当のところがないということを、本日現在では申しております。
  484. 楢崎弥之助

    楢崎委員 該当のところがないというのは、あなた方は私の質問を聞き違えておる。私が十四ページにわたるパンフだと言ったのを、十四ページにそういうことが書いてあるという照会をしたのじゃないですか。だから、その十四ページにはそれは書いてないという返答があったはずです。そうでしょう。
  485. 久保卓也

    久保政府委員 その誤解はございました。しかし、当該十四ページだけを調べたのではない。しかし特に念を入れて十四ページは調べた。こういうことでありますから、一応全般的には調べたというように報告は聞いております。
  486. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そういう報告ではないでしょう。私はそれについて再調査をお願いしたはずですよ。十四ページにはそういうことはないとただ返事があっただけです。そうでしょう。
  487. 久保卓也

    久保政府委員 私は、私が申したように聞いておりますが、再調査のお話は聞いております。したがって、再調査をしておりますが、いままだ報告は参っておりません。
  488. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この内容は、長官は、きのうの私の質問にも申し上げたとおり、沖繩返還について、核抜きを明らかにするために国民を安心させるために点検をするという考えを、もう早くから出されている。きのうも佐藤総理は、その点について、最終的には大出質問について努力したいということを言われている。米軍基地を含めてですよ。その際に、核弾頭があるかないかは、まず核倉庫に行かなくちゃいけません。いいですか。これが核倉庫かどうかわからぬようなことで、何を点検するんですか。この倉庫はおかしいじゃないか。その際に、核貯蔵庫の特徴というものを明確に頭に入れなければ、点検のしょうがないじゃないですか。だから、その内容を明らかにするのは、中曽根長官のおっしゃる核点検と関連をして、私は重要な一つのポイントであると思うのですよ。もし真剣に中曽根長官考えておられるならば。単に国民向けの宣伝であれば別ですよ。当然、知る必要があると思うのです。長官、どうでしょう。
  489. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 お説のとおりでありまして、私もそういうふうに頭の中で思っておりました。
  490. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この安全管理基準の内容を米軍が防衛庁に明らかにするかどうかは私はわかりません。マクマホン法との関係についてその点を検討されたことがございますか、長官。
  491. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ありません。ありませんが、昨年私はアメリカへ行きましたときに、つとめてそのことを聞き出そうと思いまして、安全管理という問題について質問したりなんかしてきました。しかし、なかなかはっきりしたことは目下のところわかりません。しかし、沖繩が返還になった際には、それ以後いろいろ技術的な問題も検討して努力したいと申し上げております。技術的問題という中にはそういう問題も含まれるわけであります。
  492. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、失礼ですけれども、真剣にその点検のことをお考えになっておれば、当然それくらいのことは、私が質問しないでも、米軍にも照会なりあるいは御相談があっていようと思っておったのですが、そういう事実はないですか。
  493. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は、返還後ということを最初から申し上げておるので、まだ返還前の今日そういうことを手続しようとは思っておりません。
  494. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは、私は要求をしておるわけです。私はそれらしいものを持っておるので、らしいとあえて言っておきますが、これは重要な内容のものです。だから、きょうは土曜日で、何か向こうも記念日があったそうであります。来週早々私が要求したことについて御努力をいただきたいと思いますが、どうでしょう。
  495. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 努力いたします。
  496. 楢崎弥之助

    楢崎委員 米軍から、いま御報告のありました二項めの問題です。核があることと安全基準を五空が持っておることとは別だというのはどういう意味ですか。
  497. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 第五空軍とか第一空軍とか、アメリカの編成によりますれば、いずれ方々に移動したり編成がえがあったりするのだろうと思います。そういう意味で、軍一般として備えつけの規則類とかそういうものは一応みんな持っておるのではないかと思います。そういう意味で、五空としては一般的にそういう備えつけてあるという意味で持っておるのだろう。私の想像ですよ。ただし、そのこと自体は、原爆を持っておるか持ってないかということとは別の問題である、こういうように解していただきたいと思います。
  498. 楢崎弥之助

    楢崎委員 日本の本土に核貯蔵庫がありますか。そういう点について調査されたことがありますか。
  499. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ないと確信しております。
  500. 楢崎弥之助

    楢崎委員 では、長官の確信だけですね。
  501. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そうです。
  502. 楢崎弥之助

    楢崎委員 では、そのこともあわせてひとつ核貯蔵庫、核弾頭は置いてないということをはっきりアメリカが言ったかどうか知りませんが、核貯蔵庫が本土内にあるかないか、これもあわせてお問い合わせの上御返答をいただきたいと思いますが、どうですか。
  503. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのこともあわせて調査いたします。
  504. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私どもも、きょうの外務・沖特の連合審査でわが党の安井委員が表明しておりますとおり、沖繩返還にからんで独自の核点検をしたいという方針を表明をいたしております。日本本土も含めてそれをやりたいと思っております。もし私ども内閣委員会に所属するわれわれの有志が、三沢、横田、岩国の弾薬庫を見せてくれという見学の希望を出したら、あっせんしていただけますか。
  505. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう御要望はお伝えいたします。
  506. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは、ただいま二点について調査なり問い合わせをお願いしまして、次の内閣委員会がいつ開かれるかわかりませんが、次の内閣委員会が開かれるときにひとつ明らかにしていただきたい、このように……(「間に合わない」と呼ぶ者あり)もう間に合いませんか。
  507. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 間に合えば最も近い機会の委員会で御報告いたします。
  508. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは、その点だけ保留して終わります。
  509. 天野公義

    ○天野委員長 この際、委員長より防衛庁当局に申し上げます。  昨日の委員会で懸案になりました米軍相模総合補給廠塩素ガス問題につきましては、早急に調査の上、来週の委員会に報告されるよう要望いたします。  本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  510. 天野公義

    ○天野委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。木原実君。
  511. 木原実

    ○木原委員 社会党を代表いたしまして、反対の討論を行ないたいと思います。  この改正案は三次防の最終年度に見合う海空自衛隊の増強計画であります。しかもこの計画はさきに公表され、当委員会でも論議の対象となりました四次防、新防衛力整備計画につながっていく計画でもあります。いま防衛力の増強の問題はきわめて深刻な、しかも新しい問題を提起しているといわなければなりません。第一に、自衛隊二十年の歴史は憲法上の明確な制約と多くの国民の危惧にもかかわらず、まさに歯どめなき増強一途の歴史でありました。しかもその上にさらに新しい力を蓄積しようとする。しかもこの自衛隊増強の限界がどこにあるのか、いまだに納得のいく指標を示されておりません。限界なき軍事力の増強は、まさにただならぬ事態だといわなければなりません。あらためて憲法上の疑義やあるいはまた戦力についての解釈の問題が提起をされておりますのも、そのことと決して別のことではないのであります。しかも一体何のための武力の増強であるのか。これまた国民には不可解の一語に尽きます。さきに防衛白書が初めて公表をされ、わが国をめぐる軍事的な諸情勢なり、あるいはまたその他のことについての解明などがありましたが、さればといって、わが国が強大な武力を強めて対処しなければならないという情勢があるわけではありません。また武力によって守られる安全というものもあるわけではありません。世界の情勢の大きな流れは、平和の方向へ、そして軍備の縮小へと動いていることは、きわめて明らかでありまます。隣邦中国との関係について見ましても、明らかに潮の流れは変わり始めております。そのようなときに、アメリカとの関係のもとでひたすら自前の武力を蓄積しようとする努力は、それ自体が時代の流れにそむくものであり、いたずらに近隣諸国軍国主義復活の心配と非難を招くのは、これまた明らかなことであるといわなければなりません。  私は、この際防衛庁の当局者の皆さんに申し上げておきたいと思うのでありますけれども、防衛の仕事というのは、自衛隊の役割りというのは、他の行政部門とは違いまして、ただビジネスライクに、より強くより大きくと、こういうことを志向して動くということは本来の仕事ではないと思うのであります。むしろ世の中の姿、国民の動向を十分勘案をされて、必要なときにはみずからの仕事を制約をして、軍備縮小の見識を持つような仕事が望ましいと思うのであります。これだけの増強の計画を出す反面に、防衛庁の中から、自衛隊の中からみずからのコントロールを強化をして、自衛隊を縮小して国民の期待にこたえようとするような努力は一かけらもありません。軍備の縮小ということは、ただ外務省の仕事の一つとして、国際的ないわばかけ引きの場に人を送っておりますけれども、あなた方御自身の防衛庁の仕事として、みずからをコントロールするという見識のあるそういう方向が出たということが、残念ながらこれまでもないわけであります。増強するならば、プラスの面を考えていくならば、同時にマイナスの価値もあわせてまいりませんと、軍事の均衡というものはとれないわけであります。それだけの見識が皆さん方にいま望まれておる、そういう事態だと思うのであります。いたずらに経済力の成長あるいは予算の膨張に見合って、それに乗っかって軍事力を増強していこう、それが皆さん方の仕事である、こういうふうにお考えになったのでは、皆さん方は残念ながら近い将来において再び国を誤るようなことになるのではないかと危惧するわけであります。どうぞ、皆さん方のこれからのお仕事はほんとうに国民の期待にこたえるのだ、そういう形での良心のある仕事をしていただきたい、こういうこともあわせてつけ加えておきたいと思います。  長い間私どもは審議をしてまいりましたけれども、残念ながら、軍事力増強について、われわれは皆さん方の御答弁の中からも納得のいく理解を得ることができませんでした。私どもは断固としてこの法案に反対をし、引き続いて四次防計画等についてもさらに徹底をした追及をして、皆さん方とひとつやりとりをしてまいりたい。  以上のような理由で反対をいたします。(拍手)
  512. 天野公義

    ○天野委員長 伊能繁次郎君。
  513. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 私は、自由民主党を代表して、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案の内容について賛成の討論をいたしたいと思います。  本件については、去る四月二十八日からほとんど連日にわたって論議を重ね、日本防衛と安全、これに貢献する世界の平和問題について、各党からきわめて真摯な、しかも詳細な論議が展開せられました。この点は将来の自衛隊のあり方について大いに意義のあったものと私は信ずる次第でございます。  当面、本案は第三次防衛計画の仕上げともいうべきもので、内容自体は比較的事務的なものでありまするが、ただいま同僚委員からもいろいろ御批判がありましたが、どうぞ防衛庁におかれましては、今日まで展開せられた意見を十分参酌せられまして、日本の安全と日本防衛の確保について今後一そう精進せられんことを希望いたしまして、賛成討論といたします。(拍手)
  514. 天野公義

    ○天野委員 鈴切康雄君。
  515. 鈴切康雄

    鈴切委員 私は、公明党を代表いたしまして、今回提案されました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案につき、順次問題点を明らかにし、反対の討論をいたすものであります。  わが国の安全保障の目標は、憲法第九条の戦争放棄の精神と絶対平和主義に基づく国民的合意を確立し、全世界に平和憲法の精神を宣揚して、世界平和を目ざすものであると考えるものであります。したがって安全保障政策は、国際緊張を醸成している諸要因を除去するために、多面的な平和外交を最も重視しなければならないと考えるものであります。しかるに政府はこれまで、平和憲法の存在にもかかわらず、三次にわたる防衛力整備計画を実施いたし、軍事力偏重の増強をはかってきたのであります。昨年十月「日本防衛」いわゆる国防白書を発表し、明年度からは過去二十年間の自衛隊経費の累計額を大幅に上回わる総額五兆八千億円の第四次防衛力整備計画を行なおうとしているのであります。  国防白書において、わが国の安全保障にとって重要なことは、外交、経済、社会保障、教育など国内基盤の確立が大切であると述べております。真に政府がこのように考えるならば、現在山積みされている公害、物価、社会福祉など、火急で重要な問題解決が優先されなければならないのであります。いたずらに装備の増強、隊員の数量増員という軍事力偏重であってはならない。安全保障力の基盤は、国民福祉の生活最優先の政治実現がかなめであり、この基盤に立たない防衛自衛力は真の安全保障力とはなり得ないと思うのであります。しかるにわが国の急激な軍事力増強は、諸外国から日本軍国主義が復活したとの強い非難を受け、また、アジア諸国にも大きな脅威を与えているのであります。  今日の国際関係は、米ソの戦略兵器制限交渉など、米ソ間の平和共存関係は深められてきており、独ソ条約調印に見られるように緊張が緩和され、東西関係は従来の冷戦時代の軍事的性格のものから脱却し、新しく政治的な性格のものに移行してきているのであります。しかるに政府は、国際情勢を無視して、自主防衛の名のもとに、巨額の軍事力増強に片寄った政策をとろうとする意図に、国民の多くの不安が高まってきていることを第一に指摘いたすものであります。  第二は、自主防衛の名のもとにいまや戦争放棄、戦力不保持をうたった平和憲法をどこまで尊重するのか、はなはだ疑問であります。五月十日佐藤総理は、党議できまっている自主憲法を制定するために改憲勢力の結集をはかりたい旨の発言をされた裏面には、平和憲法をなしくずしに形骸化してきた政府の改憲への姿勢となってあらわれたことは、平和憲法の精神を全く踏みにじったものであります。  第三に、防衛白書は、専守防衛をことさらに強調しております。すなわち、わが国防衛は専守防衛を本旨とするとか、憲法を守り、国土防衛に徹するとか、四次防においては、新防衛力整備計画によって、専守防衛への態勢をさらに一歩前進する考えを明らかにしております。それであるにもかかわらず、防衛力限界について質量、地域的範囲を明らかにしないままに、自衛力の増強を四次防から五次防へと、歯どめのないまま進めようとしている危険性を指摘しないわけにはいかないのであります。  第四に、防衛費の増加は、防衛産業の拡大化を促し、早くもF4ファントムに続くAEW早期警戒機、新型戦車XT2等のずさんな開発計画に見られるように、防衛産業がいつしか防衛計画の内容にまで踏み込み、先取り的な現象さえ見せております。際限のない防衛費の増大化は、いまや産軍複合化となっていく危険性をはらんでおります。これは政府の防衛産業に対する基本的な方針が明確になっていないためであります。  第五に、基地問題であります。防衛庁長官は、昨年ワシントンでの演説で、在日米軍基地の整理統合後も、有事の際、米軍の基地の再使用を保障するような発言をいたしておりますが、在日米軍基地の自衛隊移管問題にしても、民間へのあと地利用についても、今日なお政府はその基本的政策を国民の前に明らかにしておりません。  以上、簡単に問題点を指摘いたしましたが、わが党は以上のような点から、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対して反対の態度を明らかにするものであります。(拍手)
  516. 天野公義

    ○天野委員長 受田新吉君。
  517. 受田新吉

    ○受田委員 私は、民社党を代表して防衛庁設施法及び自衛隊法の改正案に対して反対の意見を開陳いたします。  私たち民社党は、現憲法のもとにわが祖国日本の国土、国民を守るための最小限の自衛措置を肯定しております。しかしながら、その最小限の自衛措置を肯定する背後に、世界の国々との平和、友好関係を一そう積極的に展開するとともに、もっぱら守る立場の、一切の攻撃的性格を用意しない立場の防衛に徹底するとともに、国民の基盤の上に立つ防衛であらねばならぬことを提唱しております。同時に、日米安保条約を駐留なき安保として、米軍の駐留しない安保体制を提唱していることも御存じのとおりでございます。  そういう観点から、今回防衛庁が発表されました第四次防は、少なくとも私たちの願いをはるかに越えた、上限がどこにあるかわからないような防衛構想と断定せざるを得ません。同時に、その予算規模において国民生活を圧迫する懸念なしとせず、また対外的にはわが祖国日本軍国主義化が警戒せられ、同時にこれらの国々に脅威を与えるという姿を否定できないということを悲しむものでございます。  ただ、今度の二つの法案の内容は、防衛庁設置法におきましては千三百名の定員をふやすこと、また自衛隊法では三千三百名の自衛官を増強するにとどまるところのきわめて簡単な法案であります。しかしこの簡単な法案にも問題がある。先般来論議を通じてわが党の主張を申し上げたとおり、質的向上をはかるべきであって、人員をできるだけ削減して、それによって得た予算の余裕を隊員の待遇の改善に振り当てる、少数精鋭主義の自衛隊として切りかえてはどうかということを提唱したのでありますが、依然として人員を増強する。簡単と見えて実は雄大な防衛構想をはらむ法案であることを悲しまざるを得ません。  私、その意味におきまして、本二法案は私たちの願っている方向に逆行する人員増強法案という意味において、この法案二つに対してもここに反対の意思表示をする次第でございます。  以上、討論を終わります。
  518. 天野公義

    ○天野委員長 東中光雄君。
  519. 東中光雄

    ○東中委員 私は日本共産党を代表して、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案に反対するものであります。  佐藤内閣は、ニクソンドクトリンとそれに基づく日米共同声明の路線によって、日米安保条約の長期延長と沖繩施政権返還を結びつけ、サンフランシスコ体制を新たに再編し、わが国をアメリカのアジア侵略の最大の拠点にしています。自衛隊はアメリカのアジア戦略の一部に組み込まれながら、自主防衛の名のもとにいよいよ増強され、いまやアジア反共諸国の中で事実上最高の軍事力を持つ軍隊にまで強化されています。四次防は、沖繩施政権返還をてこに、自衛隊がアメリカの戦略分担を部分的に肩がわりしつつ、沖繩を中心とし、日韓台をカバーする強力な軍事力を保有することを目ざしています。航空自衛隊は米第五空軍が負っていた役割りの大部分を肩がわりし、海上自衛隊は米第七艦隊の対潜掃討能力を部分的に引き受け、陸上自衛隊は削減された在韓米陸軍の戦略予備としての役割りを期待されようとしています。公空公海における航空優勢、制海権の確保の範囲はさらに拡大され、局地戦の独力遂行能力の強化など、自衛隊はたてもやりも備えた本格的な他国への侵略可能な軍隊につくり上げられようとしています。  本改正法案はまさにこの四次防につらなるものにほかなりません。すなわち、今回の改正法案の第一は、自衛官の増員であります。海上自衛隊の艦船の就役等に伴う要員増二百七十六人、航空機就役等に伴う百八十三人増、第二潜水隊群の新編等に伴う二百四人増、及び航空自衛隊の第四高射群の新編等に伴う要員増六百四十三人並びに統合幕僚会議の統合情報機能強化のための要員増五人、合計千三百十一人の自衛官の定員増であります。わが党はこの自衛官の増員は、攻撃的兵器装備と相まって、自衛隊を量、質ともに一そう強化し、その侵略性と人民弾圧体制を一段と強めるものであり、一切の戦力保持を禁止した憲法第九条をまっこうから踏みにじるものだと断ぜざるを得ないのであります。  第二は、昨年度に引き続き、予備自衛官を陸上三千人、海上三百人増員し、その定員を陸上三万九千人、海上六百人とすることであります。予備自衛官は防衛召集命令に対して応召義務があり、第一線部隊の後方支援部隊に配属されます。予備自衛官による警備連隊構想がすでにつくられているように、予備自衛官はそれ自体としても漸次大きな戦力となりつつあり、国民皆予備軍化をはかる軍国主義的施策の重要な手段として重視せざるを得ません。  第三に、自衛隊離職者就職審議会の設置は自衛隊員の軍需産業への天下りを是認し、これを前提として設置されるもので、現状を改善する客観的保障はなく、一種の欺瞞的制度にすぎないのであります。  政府は、軍国主義復活強化という内外の批判をよそに、アメリカのニクソン新戦略に加担する立場から、対外侵略可能装備の一そうの増強と間接侵略を名目に、平和と民主主義を求める民主運動に対して、迅速かつ柔軟に対処するという、弾圧と国家総動員体制の確立などを進めようとしています。しかも佐藤総理はこの四次防原案が出された、まさにそのとき、参議院選における改憲可能勢力獲得の方向を公然と明らかにしました。  このような自衛隊の増強計画、改憲の策動は、ただに国民にばく大な犠牲と負担をかぶせるだけでなく、平和憲法をまっこうからじゅうりんし、これに排戦するものであり、日本アジアの平和と安全を脅かす対米従属の軍国主義全面復活に通ずる危険な道であります。わが党は政府のこのような危険な策動を断じて容認することはできません。  以上、わが党の本法律案に反対する理由を述べて、私の反対討論を終わります。
  520. 天野公義

    ○天野委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  521. 天野公義

    ○天野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、ただいま可決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  522. 天野公義

    ○天野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  523. 天野公義

    ○天野委員長 次回は、来たる十七日月曜日午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後七時三十分散会