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大出委員 やりたいとまでは言わないが、その手前だ、表現をすれば慎重である、こういうわけですな。大体そのやりたいのと慎重の中間ぐらいに
総理の腹があるようでありますから……。
そこで私、実は詰めてものを申し上げたいのでありますけれ
ども、四次防をめぐる
戦力論争を
高辻さんといたしましたが、私一番最初のころの当時の
吉田総理の御
発言を引用いたしましたところが、それはすぐ変わったんだ、こういう御
発言があった。いや、そんなにすぐ変わっちゃいない、こう思いましたが、私は
憲法と
自衛隊の
関係と申し上げたのだけれ
ども、御用意がないとおっしゃったから、その点を私追及を避けた。責任ある
答弁をいたしかねるとおっしゃったから、責任ある
答弁をいたしかねると
発言をされる方に、こっちも責任ある御質問はできないというので切ってあります。しかしこれは
高辻さんじゃなくて、
総理に承りたいのですが、時間がありませんから、若干の
経過を申し上げます。
ここに私は資料を持っておるのでありますけれ
ども、一番
基本になりますのは、
吉田総理が
お話しになったのでありますけれ
ども、
昭和二十一年の六月二十六日でございます。これは
衆議院で
お答えになりました。
昭和二十一年六月二十六日、ここで
吉田総理が言っておりますのは「
憲法の第九条第二項に於て一切の軍備と国の
交戦権を認めない結果、
自衛権の発動としての
戦争も、又
交戦権も放棄したものであります。従来近年の
戦争は多く
自衛権の名に於て戦われたのであります。
満州事変然り、大
東亜戦争亦然り」こういうふうに
お答えになって、だから
自衛のための
戦力も否定された、この
時点は。これが二十一年六月であります。この
あとで
論議が幾らかかわされてまいりましたけれ
ども、当時の
マッカーサー占領軍最高司令官の二十五年六月二十五日、
朝鮮戦争のころでありますが、四、五年たちまして、
昭和二十五年六月二十五日の
警察予備隊をつくるといういきさつ、これを前にして二十六年の
年頭の
所感というところで
マッカーサー司令官が、ここで
日本人が
日本の国を守るということにしなければならぬということになるだろうと思うという
意味の、相当前に出た
年頭の
所感をお出しになった、
マッカーサーが。これを受けて、その後
吉田総理が少し前に出た
言い方をした。
つまり自衛のための
戦力というものはあるのだという
意味のそういう
言い方をした。さあ、これが大問題になった。大問題になった
あと、
法制局が
内部統一をして、いままでの
論議を集約して
統一見解を出した。この
統一見解が、
一つは、
侵略の
目的たると
自衛の
目的たるとを問わず、
戦力の保持を禁止している。これが
現行憲法である。これが一点。
侵略、
自衛、いずれも
戦力は否定をしている。これが
一つ。「右にいう「
戦力」とは、
近代戦争遂行に役立つ程度の
装備、
編成を具えるものをいう。」これが
戦力の定義。そしてその次に「「
戦力」の
基準は、その国のおかれた時間的、
空間的環境で具体的に判断せねばならない。」と言っておいて、「「
陸海空軍」とは、
戦争目的のために
装備編成された
組織体をいい、「その他の
戦力」とは、本来は
戦争目的を有せずとも実質的にこれに役立ち得る
実力を備えたものをいう。」
つまり吉田総理の言ったこと等をここに集約して、軽く暗にこれを否定した、こういうかっこうになった。そこでこの筋に従っていまの
佐藤人事院総裁が、当時
法制局長官でございますが、非常に重要な
答弁をされた。どういうふうに答えたかといいますと、つまりこの
時代の
装備編成、つまり「只今の
自衛隊そのものの
装備編成を結合したものが未だ
戦力に達せずという趣旨において
憲法には違反しない、」こう答えた、ときの
自衛隊をとらえて。その次に、
アメリカが支援してくれるのだけれも、そうではなくて「この
アメリカの
陸海空軍の御やっかいにならずに
日本で独自の
防衛力を持つというようなことができるようなそういう時期ということになればこれは
戦力でございましょう」こういう
答弁が出てきた。そして
近代戦争遂行能力ということをとらえても「第九条第二項の
戦力の判定を
基準としては、これはむしろ任務の問題であって」
つまり陸軍、海軍、空軍という名前の問題ではない。その差、
実力がということになるのだというふうに答えたという実は
佐藤法制局長官の
答弁が続いた。これが
鳩山さんの
時代に入って、
鳩山さんが、この
時点で座して死を待つから始まりまして、こんないいかげんな
憲法九条二項の
戦力なんていうのはまずい、だから、ここで
憲法は
改正すべきなんだということを
鳩山さんがおっしゃった。これは
鳩山さんの
改憲論。
吉田総理も一言言っておりますけれ
ども、
改憲論が三つ続いた。
吉田さんのおっしゃっているのは、「内外の
事情に即応して
制定せられるべきもの」こういう
前提で「
憲法改正という
考え方も
事情の変化に応じて
国民としてまた国として考えるべきであります。」
つまり自衛力はふえてきた。それが
論議される。
情勢が変わったんだから
憲法改正ということも
論議しなければならぬと言った。
鳩山さんがこれをお受けになって、
自衛隊は
軍隊じゃない。だがしかし、
軍隊だと疑う人もたくさんいる。それは
憲法九条がそうさせるんだ。「第九条があれば
自衛隊法に言うところの
防衛力は
軍隊にあらずという
議論を言う人もありますから、それでそういう不明瞭なあいまいな法規は
改正すべきだと思うのであります。」ここまで
自衛隊が大きくなった、いろいろそういう
議論を呼ぶ、こういうあいまいなものは
改正して、九条を取り除く、こうすべきだ、こう言われた。
鳩山さんの
改憲論が
——時の三十年
衆議院選挙、三十一年
参議院選挙、
佐藤さんの
内閣以前に、
最大多数を取っていた
鳩山さんの
時代でありますから、だから
憲法改正をするんだということを前面にスローガンに出して総
選挙をおりになった。その次に
参議院選挙をおやりになった。が、いずれも時の
議席は
後退をした。
後退をした結果、
憲法調査会をおつくりになった。これが過去の
経過です。以来、お
にいさんの岸さんの
時代になりましたが、岸さんの
時代は
鳩山さんの解釈を少し拡大をされただけであります。池田さんの
時代にはこの
論争はありません。
あとは
佐藤総理の
時代です。そうなってまいりますと、私はこの際はっきり申し上げたいのは、四次防というものの
防衛庁原案をながめたときに五兆八千億、給与の
上がり分を除いて五兆一千九百五十億。これは
最終年度をながめますと一兆数千億になってしまう。この正確な
数字もここにございますけれ
ども、この
数字はどうなるかというと、諸
外国の、しかも
外国のだれがながめてもこれは相当な国だといわれるところの
戦力に並んでしまう。念のために申し上げますが、いまの四次防の
原案が通ったとすれば、五十一年度の
防衛予算というのは、四次防の
最終年度は一兆六千億をこえる。そうすると、米国、ソビエト、
西ドイツと並んで、
西ドイツが二兆二千億、フランスが二兆一千百四十六億、イギリスが二兆五百六十三億、毛沢東の中国が一兆七千五百億、その次に来る。だから
新聞も七番目と書いている。このことが四次防というものがきまってしまえば明確に確定するわけであります。そうなると、ここまで来ると、先ほど、時の
佐藤法制局長官が言っておりますように、
中曽根さんなりあるいは
防衛庁の
事務当局の
責任者の
方々の御
発想も、
ニクソンドクトリンというものを前にして、大きな支援というものを期待できない。つまり来る場合もあるでしょう。あるでしょうけれ
ども、その
前提になるものは、実はみずからが国を守るという形の
自衛隊にするんだという
発想なんですね、この四次防は、念を押してありますが。そうすると
旧来のこの
法律論争、
戦力論争というものの、
憲法改正をしなければそれ以上行けないんだというぎりぎりに来ている。その時期に
総理が
改正の
発議に類する御
発言をなされた。私は
経過からすれば当然な御
発言だと思う。だからむしろ私はこの際、四次防というものは九条二項の禁ぜられた
戦力に該当する。だから
憲法改正はすべきなんだというふうにはっきりなさったほうがいい。四次防はだれが何と言っても明確に
戦力です。この点は明確にすべきである、私はこう考えるわけでありますが、
経過を踏まえて、その上で
総理の御
見解を念のためにもう一ぺん承りたいのであります。