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1971-05-14 第65回国会 衆議院 内閣委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年五月十四日(金曜日)     午前十時十二分開議  出席委員    委員長 天野 公義君    理事 伊能繁次郎君 理事 熊谷 義雄君    理事 佐藤 文生君 理事 坂村 吉正君    理事 塩谷 一夫君 理事 大出  俊君    理事 鈴切 康雄君 理事 和田 耕作君       阿部 文男君    伊藤宗一郎君       加藤 陽三君    笠岡  喬君       辻  寛一君    中山 利生君       葉梨 信行君    堀田 政孝君       山口 敏夫君    上原 康助君       川崎 寛治君    木原  実君       楢崎弥之助君    横路 孝弘君       伊藤惣助丸君    鬼木 勝利君       樋上 新一君    受田 新吉君       東中 光雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         外 務 大 臣 愛知 揆一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中曽根康弘君  出席政府委員         内閣官房長官 木村 俊夫君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         防衛庁参事官  高瀬 忠雄君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁長官官房         長       宍戸 基男君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      江藤 淳雄君         防衛庁衛生局長 鈴木  一君         防衛庁経理局長 田代 一正君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁総務         部長      長坂  強君         防衛施設庁総務         部調停官    銅崎 富司君         防衛施設庁施設         部長      薄田  浩君         防衛施設庁労務         部長      安斉 正邦君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省条約局長 井川 克一君         外務省国際連合         局長      西堀 正弘君  委員外出席者         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 五月十四日  辞任         補欠選任   鬼木 勝利君     樋上 新一君 同日  辞任         補欠選任   樋上 新一君     鬼木 勝利君     ————————————— 五月十三日  靖国神社国家管理反対に関する請願谷口善  太郎紹介)(第五三九五号)  同(東中光雄紹介)(第五三九六号)  同(松本善明紹介)(第五三九七号)  同(米原昶紹介)(第五三九八号)  同外二件(曽祢益紹介)(第五四二四号)  靖国神社国家護持早期実現に関する請願外一  件(阿部文男紹介)(第五四一九号)  同外四件(田中六助紹介)(第五四二〇号)  同外十六件(早川崇紹介)(第五四二一号)  同外九件(林義郎紹介)(第五四二二号)  同(坊秀男紹介)(第五四二三号)  同外四件(中村弘海紹介)(第五五七五号)  同(村上信二郎紹介)(第五五七六号)  旧軍人に対する恩給改善等に関する請願渡辺  肇君紹介)(第五四二五号)  特定郵便局長恩給通算に関する請願外一件  (赤城宗徳紹介)(第五四二六号)  同(左藤恵紹介)(第五四二七号)  同外一件(水野清紹介)(第五四二八号)  同(倉石忠雄紹介)(第五四二九号)  同(金子岩三紹介)(第五四三〇号)  同外四件(森山欽司紹介)(第五四三一号)  同(安田貴六君紹介)(第五四三二号)  同(上林山榮吉君紹介)(第五四三三号)  同(篠田弘作紹介)(第五四三四号)  同(菅太郎紹介)(第五五七七号)  同外一件(木部佳昭紹介)(第五五七八号)  同(藤井勝志紹介)(第五五七九号)  同外一件(毛利松平紹介)(第五五八〇号)  新潟県の寒冷地手当引上げ等に関する請願外九  件(渡辺肇紹介)(第五四三五号)  元満州拓殖公社員恩給等通算に関する請願  (倉石忠雄紹介)(第五四三六号)  一世一元制法制化に関する請願外三件(早川  崇君紹介)(第五四三七号)  同(坊秀男紹介)(第五四三八号)  職務関連罹傷病者に対する恩給実現に関する請  願(瀬野栄次郎紹介)(第五五八一号)  は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出第一七号)      ————◇—————
  2. 天野公義

    天野委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。大出俊君。
  3. 大出俊

    大出委員 たいへん総理お忙しいところを御出席いただきまして、ありがとう存じます。  四次防の防衛庁原案が出されまして、たいへんな議論を各方面で呼んでいるわけでありますが、そのまた論議のさ中に、これまた世の中がたいへん心配をする御発言総理みずからがなさったという点で、その真意のほどを承っておきませんと、ちょっと四次防原案、これは総理意思ではなくて中曽根さんのほうだとおっしゃるかもしれぬけれども、やはり事の筋道上困るわけでございます。  そこで承りたいのでございますが、皆さんの党の党議決定である、党議決定がいろいろたくさんあるけれども、その最大の問題は自主憲法制定という党議である、これが実はにわかに、じゃやれるかというとできないけれども、しかし党議決定最大の問題である自主憲法制定、このために改憲勢力を確保するという意味における参議院勢力をふやさなければならぬ、だから大いにひとつがんばってふやしてくれ、こういうふうに総理お話しになったというわけであります。私案はその場に出席をなさっておった記者の数人の方に承ってみたのでありますが、まさかこんなことを不用意にうかうか言うはずはないのじゃないかと思って調べましたら、そう各新聞がでたらめ書いたのじゃないのだ、ほんとうなのだ、こういうわけでありまして、ほんとうだとするとこれはまさに重大問題でございまして、総理真意を承っておきたいと思うわけであります。そこでこれは過去の例がありまして、四次防ではございませんが、その前の防衛力整備の段階で、戦力論争がだいぶさかんに論ぜられまして、どうやら押えかかえならぬということになると憲法改正という問題が浮かんでくるというのが過去の先例でございます。ようやく佐藤総理もここに至ってその気におなりになったか、こう私実は思っておるわけでありますが、もう率直のところ、ひとつ総理真意を御披瀝をいただいたほうがいいのじゃないかと思いますので、そういう意味で御質問申し上げる次第でございます。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の発言が、これは党の参議院選挙対策、その席上での発言がただいま問題になって、たいへん関心を持っていただいて恐縮に存じます。いまお話にありましたように、私ども党基本方針として自主憲法を持つ、これはもう党ができてから一貫した基本的な方針でございます。自主憲法を持っていく、そういう立場でいろいろ議論はしておりますが、私はかつて、私の在職中にはさような問題にはなりません、こういうことを実は申し上げたのであります。これは申し上げるまでもなく、一党でそういう問題を取り上げましても、これはなかなか容易にできる問題ではないし、憲法改正というような問題になりますと、もちろん国民とともに取り組むという重大な問題であります。ところでその意味から見ましてもいまの参議院勢力ではだめじゃないか、これはだれでも考えることでありまして、そういう意味で大いにハッパをかけたと御理解いただければいいのじゃないか、私皆さんから誤解はないだろう、かように実は思っておりました。しかしただいま言われますように、どうもそんな席ででも言う腹の中は改憲じゃないか、かように言われますけれども、これは私が改憲だということよりも、自民党自身党議、党の基本的方針だ、そこに自主憲法という問題があるのだ、これだけはひとつ改めて自由民主党を認識していただきたい、かように私思います。  それから、いまの四次防の問題、これはいろいろ議論されておるようでありますが、実はまだ国防会議にもかけないし、また私自身も詳細について伺っておらない。ここに中曽根君がおりますけれども、いままでの問題が、政府の案がきまらないうちに国会論議になっておる。これは私悪いというわけじゃありません、政府の案をきめます前に各党意見が率直に述べられることは大いに有効だ、かように思いますが、ただ、いまの改憲の問題、自主憲法の問題とそれを一緒にして議論されると、これは基本的な考え方にも相違がくるようでございまして、その点は気をつけていただきたい。自主憲法、これこそは党の結党のときの基本的な考え方でありますし、またそれがいま直ちにやれる、かように私は考えておらない、そのこともはっきりいままでも申した。また四次防計画はそれに関連を無理やりにつけないで、四次防としてひとつ取り上げていただく、こういう意味皆さん方からいろいろ御批判をいただくこと、これは政府決定の上においてもたいへんけっこうなことだ、かように思っております。
  5. 大出俊

    大出委員 総理、話が逆でございまして、四次防というものの原案が出ている、各党から意見をいただく、これはいいことだ、それと憲法改正意思というものとを一緒論議されては困る、こういうお話、これは逆でございまして、私どもは四次防という原案をながめて、これはとてもではないが旧来論争からいって明確に憲法の認めざるところの戦力であろう、だからこれは憲法違反、とんでもない話だと思って論議をしようとしているやさきに、総理自身——いや私はあのときは総裁の資格でしゃべったとおっしゃるかもしらぬ、しかし総理自身が、その論争のやさきに、国会では国民世論というものを前提にして、佐藤内閣というこの内閣の続く限りは憲法改正はしないのだということをおっしゃっておった。ところが、さてこの発言は、憲法改正はやりたいのだ、党議決定でやりたい重大問題なのだが、わが率いる党は改憲発議に足る議席を持っていない、衆議院はたいへんたくさん議席があるのだけれども参議院はないじゃないか、改憲に要する数が足らない、だから憲法改正発議ができないのだという意味発言をなさるということになると話が逆でございまして、お気をつけいただかなければならぬのはあなたのほうでございます。こういう時期だからこそ不用意に言われては困る。しかし私は結論を申し上げますと、不用意におっしゃったのじゃないと思っている。ほんとうのことをおっしゃったのだと思っている。いまもまたお話ほんとうのことをおっしゃっている。  そこで承りたいのでありますが、最近総理のところにいろんな方々が、世の中憲法改正しろと言って渦巻いているんだから、総理その点は御決断をというような意味お話がいろいろいくような話までぼくの耳に入る、皆さん関係方々から。だから総理は、そこらのことも考えて——にいさんが何と言っているかといいますと——私も兄貴がいて、兄貴は別なほうだから兄弟でも腹は違うというのかもしらぬけれども、ここにこう書いてある。憲法記念日三日の日に、世の中諸悪根源現行憲法であるとおっしゃったんだ、おにいさんは、事もあろうに。私はこれはどうも不穏当な御発言だと思う。いまの世の中諸悪根源現行憲法である、こういうことを自主憲法制定会議お話しになっては、これはいささか行き過ぎだと思う。そのあとにまた皆さんのほうの憲法調査会皆さんが、何とこの改憲要綱、つまり憲法改正案要綱なるものを年内にまとめたいなどというふうなことを表に出されるというさなかに、その直後に総理がその話を始めるというとなると、これは憲法改正論議づいたという感じであります。これは総理真意だろうと私は思う。改憲勢力が足らない、だから実は憲法改正発議はできないのであって、憲法改正をしたいのだというのであれば、というように明確にこの際しておいていただきたいのであります。四次防との関係も必然的に出てまいりますので……。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 結論から申せば、先ほどのような考え方憲法に対する考え方、党の基本方針にそういうものがあっても、私の間はやらない、これはもうはっきりしております。またしかし、私自身がいまの自民党勢力を見ましたときに、いかにも改憲を提案するような、そんな力もない、それじゃ情けないじゃないか、かようにも思っておる。これはもう先ほどの選挙対策の各支部の連中を集めた際に私が発言したということでございます。しかしそれより以上に出ておりませんから、在来の主張に変更のないこと、これは再確認していただきたい。
  7. 大出俊

    大出委員 となりますと、憲法改正はやりたいがやれない、なぜならば数が足りない、だから改憲の数をそろえればやるんだ、それが総理意思である。いま数が足らないから、いまはやれない、しかし早く改憲勢力をとってやりたい。もう一ぺん言いますが、やりたいがやれない、早く数をとってやろう、こういう御意思だということになる、よろしゅうございますな。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は改憲したいとまでは言っておらない。私どものいま所属しておる、また総裁をしておる自由民主党基本方針には、ちゃんと自主憲法を持つ、こういうことが言ってあります。したがって、これは私忠実に党員としても、また総裁としてもやることが当然だ、かように思っております。しかしいま私はやるという、そこまで踏み切っておらない。これが先ほど来申し上げておりますように、私の在任中はそういうことはない、こういうことであります。
  9. 大出俊

    大出委員 くどいようですが、佐藤総理としては、やりたいとまでは言わない、しかし自民党総裁としては、党議決定であり、最大の問題であるから、当然これはやりたい、こういうことになりますな。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 当然そのものを守っていく。いわゆるやりたいという、そういうような積極的な意思はない。これは幾らやりたいと申しましても、情勢がかもし出す、そういうことですし、国民とともに改憲問題と取り組む、そういう姿勢でなければならない。一部には、積極的に国民的な先頭に立ってでもやろう、またやるべきだ、こういう主張もございます。しかし私はそれらの点については慎重だ、この点は誤解のないようにお願いいたします。
  11. 大出俊

    大出委員 やりたいとまでは言わないが、その手前だ、表現をすれば慎重である、こういうわけですな。大体そのやりたいのと慎重の中間ぐらいに総理の腹があるようでありますから……。  そこで私、実は詰めてものを申し上げたいのでありますけれども、四次防をめぐる戦力論争高辻さんといたしましたが、私一番最初のころの当時の吉田総理の御発言を引用いたしましたところが、それはすぐ変わったんだ、こういう御発言があった。いや、そんなにすぐ変わっちゃいない、こう思いましたが、私は憲法自衛隊関係と申し上げたのだけれども、御用意がないとおっしゃったから、その点を私追及を避けた。責任ある答弁をいたしかねるとおっしゃったから、責任ある答弁をいたしかねると発言をされる方に、こっちも責任ある御質問はできないというので切ってあります。しかしこれは高辻さんじゃなくて、総理に承りたいのですが、時間がありませんから、若干の経過を申し上げます。  ここに私は資料を持っておるのでありますけれども、一番基本になりますのは、吉田総理お話しになったのでありますけれども昭和二十一年の六月二十六日でございます。これは衆議院お答えになりました。昭和二十一年六月二十六日、ここで吉田総理が言っておりますのは「憲法の第九条第二項に於て一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争も、又交戦権も放棄したものであります。従来近年の戦争は多く自衛権の名に於て戦われたのであります。満州事変然り、大東亜戦争亦然り」こういうふうにお答えになって、だから自衛のための戦力も否定された、この時点は。これが二十一年六月であります。このあと論議が幾らかかわされてまいりましたけれども、当時のマッカーサー占領軍最高司令官の二十五年六月二十五日、朝鮮戦争のころでありますが、四、五年たちまして、昭和二十五年六月二十五日の警察予備隊をつくるといういきさつ、これを前にして二十六年の年頭所感というところでマッカーサー司令官が、ここで日本人が日本の国を守るということにしなければならぬということになるだろうと思うという意味の、相当前に出た年頭所感をお出しになった、マッカーサーが。これを受けて、その後吉田総理が少し前に出た言い方をした。つまり自衛のための戦力というものはあるのだという意味のそういう言い方をした。さあ、これが大問題になった。大問題になったあと法制局内部統一をして、いままでの論議を集約して統一見解を出した。この統一見解が、一つは、侵略目的たる自衛目的たるとを問わず、戦力の保持を禁止している。これが現行憲法である。これが一点。侵略自衛、いずれも戦力は否定をしている。これが一つ。「右にいう「戦力」とは、近代戦争遂行に役立つ程度の装備編成を具えるものをいう。」これが戦力の定義。そしてその次に「「戦力」の基準は、その国のおかれた時間的、空間的環境で具体的に判断せねばならない。」と言っておいて、「「陸海空軍」とは、戦争目的のために装備編成された組織体をいい、「その他の戦力」とは、本来は戦争目的を有せずとも実質的にこれに役立ち得る実力を備えたものをいう。」つまり吉田総理の言ったこと等をここに集約して、軽く暗にこれを否定した、こういうかっこうになった。そこでこの筋に従っていまの佐藤人事院総裁が、当時法制局長官でございますが、非常に重要な答弁をされた。どういうふうに答えたかといいますと、つまりこの時代装備編成、つまり「只今の自衛隊そのもの装備編成を結合したものが未だ戦力に達せずという趣旨において憲法には違反しない、」こう答えた、ときの自衛隊をとらえて。その次に、アメリカが支援してくれるのだけれも、そうではなくて「このアメリカ陸海空軍の御やっかいにならずに日本で独自の防衛力を持つというようなことができるようなそういう時期ということになればこれは戦力でございましょう」こういう答弁が出てきた。そして近代戦争遂行能力ということをとらえても「第九条第二項の戦力の判定を基準としては、これはむしろ任務の問題であって」つまり陸軍、海軍、空軍という名前の問題ではない。その差、実力がということになるのだというふうに答えたという実は佐藤法制局長官答弁が続いた。これが鳩山さんの時代に入って、鳩山さんが、この時点で座して死を待つから始まりまして、こんないいかげんな憲法九条二項の戦力なんていうのはまずい、だから、ここで憲法改正すべきなんだということを鳩山さんがおっしゃった。これは鳩山さんの改憲論吉田総理も一言言っておりますけれども改憲論が三つ続いた。吉田さんのおっしゃっているのは、「内外の事情に即応して制定せられるべきもの」こういう前提で「憲法改正という考え方事情の変化に応じて国民としてまた国として考えるべきであります。」つまり自衛力はふえてきた。それが論議される。情勢が変わったんだから憲法改正ということも論議しなければならぬと言った。鳩山さんがこれをお受けになって、自衛隊軍隊じゃない。だがしかし、軍隊だと疑う人もたくさんいる。それは憲法九条がそうさせるんだ。「第九条があれば自衛隊法に言うところの防衛力軍隊にあらずという議論を言う人もありますから、それでそういう不明瞭なあいまいな法規は改正すべきだと思うのであります。」ここまで自衛隊が大きくなった、いろいろそういう議論を呼ぶ、こういうあいまいなものは改正して、九条を取り除く、こうすべきだ、こう言われた。鳩山さんの改憲論——時の三十年衆議院選挙、三十一年参議院選挙佐藤さんの内閣以前に、最大多数を取っていた鳩山さんの時代でありますから、だから憲法改正をするんだということを前面にスローガンに出して総選挙をおりになった。その次に参議院選挙をおやりになった。が、いずれも時の議席後退をした。後退をした結果、憲法調査会をおつくりになった。これが過去の経過です。以来、おにいさんの岸さんの時代になりましたが、岸さんの時代鳩山さんの解釈を少し拡大をされただけであります。池田さんの時代にはこの論争はありません。あと佐藤総理時代です。そうなってまいりますと、私はこの際はっきり申し上げたいのは、四次防というものの防衛庁原案をながめたときに五兆八千億、給与の上がり分を除いて五兆一千九百五十億。これは最終年度をながめますと一兆数千億になってしまう。この正確な数字もここにございますけれども、この数字はどうなるかというと、諸外国の、しかも外国のだれがながめてもこれは相当な国だといわれるところの戦力に並んでしまう。念のために申し上げますが、いまの四次防の原案が通ったとすれば、五十一年度の防衛予算というのは、四次防の最終年度は一兆六千億をこえる。そうすると、米国、ソビエト、西ドイツと並んで、西ドイツが二兆二千億、フランスが二兆一千百四十六億、イギリスが二兆五百六十三億、毛沢東の中国が一兆七千五百億、その次に来る。だから新聞も七番目と書いている。このことが四次防というものがきまってしまえば明確に確定するわけであります。そうなると、ここまで来ると、先ほど、時の佐藤法制局長官が言っておりますように、中曽根さんなりあるいは防衛庁事務当局責任者方々の御発想も、ニクソンドクトリンというものを前にして、大きな支援というものを期待できない。つまり来る場合もあるでしょう。あるでしょうけれども、その前提になるものは、実はみずからが国を守るという形の自衛隊にするんだという発想なんですね、この四次防は、念を押してありますが。そうすると旧来のこの法律論争戦力論争というものの、憲法改正をしなければそれ以上行けないんだというぎりぎりに来ている。その時期に総理改正発議に類する御発言をなされた。私は経過からすれば当然な御発言だと思う。だからむしろ私はこの際、四次防というものは九条二項の禁ぜられた戦力に該当する。だから憲法改正はすべきなんだというふうにはっきりなさったほうがいい。四次防はだれが何と言っても明確に戦力です。この点は明確にすべきである、私はこう考えるわけでありますが、経過を踏まえて、その上で総理の御見解を念のためにもう一ぺん承りたいのであります。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 だいぶ法律論ですから、法制局長官のほうがいいかと思いますが……(大出委員「いえいえ、いいです。法律の理屈を聞いているわけじゃありませんから」と呼ぶ。)そうじゃなしに、私のことを聞かれますから……。そこで、先ほど自主憲法についての話は、これでもう御理解いただいた、かように私は思いますし、あるいはなお納得はいかないけれども佐藤はこう言っているということで御理解していただきたい、かように思いますし、自主憲法のほうの話には触れない。またわが国の自衛力整備についても、経過はただいま言われたように、私からそれについてとやかく申し上げる余地のないまことに正しいものであります。  ただ一つつけ加えておけば、占領当時吉田さんはマッカーサーと交渉した場合に、むしろ警察予備隊よりも戦力を持てというマッカーサーの提案に対して、強くそれを排撃して、日本はやらない、そうして平和憲法を持った。この平和憲法の九条の意味rるもの、これは二つありますね。一つ戦争放棄と、もう一つはただいまの戦力を持たないということ。そういう経過でございます。したがって自衛権そのものを否定したような最初の議論でありましたが、そのうちに、自衛権は否定はしない、これは独立国家として当然あるのだ。これは大出君もそうだろうと思います。自衛権を否定するというものではない。したがってわれわれが持つものはいわゆる戦力ではない、自衛力です。自衛権です。自衛権の発動、その意味に事足りるものです。これがこちらの主張だった。だから当時、最初は自衛権議論から、そのうちには戦力議論にまで変わってきた。その経過はいま大出君が詳細に報告されたとおりであります。  したがって私は、いまの平和国家として日本が立っていく、こういう場合に、国際交渉の場においていわゆる戦争を放棄するかどうか、そういう問題が一つ残っておると思います。しかしこれは今日も、幾ら改憲論者といえども戦争放棄、これを改める、国際紛争を戦争の手段に訴えるのだ、ここまで議論を進めておる者はないように思っております。だからそこには誤解のないように願っておきたいと思います。  またもう一つ戦争を放棄しているという立場から、いわゆる仮想敵国は持たない、こういうものもあります。この二つがいま自衛権自衛力の整備の場合に一つの限界があるのだ、かように私は理解しております。そしてやはりみずからの国は自分たちが守るのだ、これが、自衛力の範囲で守る、そういうものではないかと思います。どうも外国に依存しておる自衛権あるいは自衛力、こういうものはまことにもの足らない、かように私は思っております。だからそういう意味の範囲のものであるかどうか、四次防がそういう意味で理解されるかどうか、ここに問題があるのではないだろうかと思っております。もちろん皆さん方の御意見もそういう意味に集約されるのではないだろうか。これが世界七番目であろうが何番目であろうが、ここに戦争は放棄している。また同時に外敵に対してこの国を守るんだ、集団防衛体制というものもあるけれども、そうではなくて、やはり中心をなすものは自分たちの力なんだ、こういう意味で整備していこうというのがこの中曽根案ではないかと思っております。そういう点をわれわれも国防会議やまた国内問題としてもっと十分取り組んで、皆さんが納得のいくようなものをつくりたい、かように私は思っております。
  13. 大出俊

    大出委員 総理が四次防をとらえて、国民に対して納得のいくようにという御説明をいまここでしょうとしても、それだけ時間がかかる。つまり世の中は、四次防は疑いなくいわゆる戦力である、つまり内容というものは、装備予算を含めてNATOの中心勢力西ドイツ、核を持っておるフランスというような国々と並んでしまう予算なんですね。それをいまだに過去の、いま私が申し上げた経過がある上で、憲法九条二項が禁止している戦力ではないと言い張るに及んでは、これはたいへん苦しいだろうと思う。笑っておられるけれども、苦しいときは笑うということもある。  そこで総理総理はみずからの参議院選挙のハッパと称してついことばが走ったのだろうという人が、皆さんの党の中で大多数です。そういう心境におありになる、そのことを私はここで感じたということを申し上げておきます。そして総理は、憲法改正したいとまでは言わない、が、しかし、慎重に、党議決定でございますから。たいへん今回は積極的に改憲のほうに意思表示をなさった、こう受け取らざるを得ないわけであります。時間がありませんから多く質疑応答はいたしませんが、憲法改正したいとまでは言わない、こういう御答弁でございました。  そこで次に、問題は中国との問題でございますが、昨年のちょうど四次防の論議のときに、中曽根長官もおいでになったのだけれども、私は、今日の日本の防衛問題を語るについては、中国との国交回復なり修交なりというものを抜いて論ずるわけにはいかない、こういう前提で、私が覚え書き交渉をめぐる中国の周恩来氏の日本に対する軍国主義批判というものを取り上げたところが、総理は何と言ったかというと、大出君、君社会党じゃないか、社会党のくせに何で周恩来の肩を持つんだ、こういう話が出てきて、たいへんおおこりになった。が、しかし、私はあのときにずいぶん総理とぶつかり合って言いましたが、一年たった。ずいぶん変わりましたね。これは総理、ニクソンさんとお話しになっておるのだけれども総理とニクソンさんと会って、両政権が続く間は中国問題は現状でなんということになって、翌々日にチャウシェスク氏が行って、中国の毛沢東への書簡をニクソン氏に頼まれていれば世話はない。だから、私は、旧来のいろいろなことにおこだわりにならずに、ここて中国問題を前向きに−きのう愛知さんが何かほかで少しお答えになったようだけれども、もうものを言う時期である。そのことが、私は、沖繩返還をめぐっても、中国とのことをひとつ念頭に置いてものをお考えいただかないと困る時期にきているんじゃないか、こう思いますので、昨年の論議の上に立って、私は総理に、中国との関係をどうお考えになるのか、率直にお伺いしたいわけであります。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 中国の問題を——ことばじりをとるわけじゃないですよ、考えないで、それは日本の国益を増進あるいは守るというようなことはできません。これはもうはっきりしている。ただ、ただいま急に、昨今中共問題がやかましくなっている。しかし、これはそんなものじゃないので、戦後ずっと引き続いてきている問題ですから、そういう経過もあり、今日これと取り組んでいる姿勢、これは相当情勢の変化にも対応していかなければなりませんが、それで基本的なものがまだ変わるという結論には出ておりません。せっかくいま御指摘になりましたように、この大陸のものを忘れないで日本の国益さらにまた平和維持ができるんだろうか、こう言われることはもっともしごくでございます。私は、そういう意味で、この問題をどうしたら一番いいのか。いままでの友好親善関係を続けておる諸国とその関係を維持し、そして新たに中国問題をどういうように解決すれば、羊、れが国際的にも道が開けるのか、こういうようなことをいま探究中であります。
  15. 大出俊

    大出委員 総理のお立場がありますから、いまお話しになっていることは私もそれなりにわかる。きのうの愛知さんの御答弁の中に、特に国連一に対して忠実な加盟国をどう取り扱うかは、重要事項として考えるべきことであると思うという一項がついているのですね。これは台湾の側をさしておられる。いま総理も、友好を深めてきた国の扱いということをどうしたら一番いいかということをいま念頭に置いておる、こうお話しになった。愛知さんの言っていることと軌を一にする同じお考えである。当然だと思いますが、それにもかかわらず、アメリカのやっておりますことを見ても、これはまたきのうの新聞に出ておりますけれども、エドガー・スノー氏のお書きになった文章の中に、二年間にわたるアメリカの対中接触の中身が載っておりますが、フランスの国会議員の皆さんが中国を訪問するというやりとりの中で、いみじくもエドガー・スノー氏が言っているのが全部表に出てきている。その記事も載っている。こういう時期。しかも、フルブライト氏まで含めてアメリカの国会議員諸君が中国に行きたいということで、日本の政治家に橋渡しをという話まで新聞をにぎわせる、これがマンスフィールド書簡という形になっている、こういう時期でありますから、それだけに、私は、やはりここで愛知さんが言っておられる、政府も決意のときである、決断を下すべき時期に来ているということをこの中に述べておる。総理もこの点は、私は、検討中である、考えている最中だ、こうおっしゃるのですが、中国問題について決意をしなければならぬところへ来ておるということはお認めになるでしょう。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 きょうあすというように結論を出すのか、あるいはいわゆる七〇年代は中国問題だ、こういうようなもう少しゆとりのある考え方で取り組むか、これは別といたしまして、政府は、いままで言っておりますのは、七〇年代こそそういう年代だ、こういうことを言っておる。そのいわゆる七〇年代はというと、いかにもゆっくりしておるようだけれども、最近の情勢から見るともっと早いのではないか、こういうように結論を出すべき段階に来つつある、かように私も考えております。
  17. 大出俊

    大出委員 どうもさっきから少しずつ違うんですね。憲法改正したいと言うのじゃないのかと言うたら、したいとまでは言わぬ、慎重にと言う。決断のときに来ているのじゃないかと言ったら、来つつある。どうも少しずつ違うんですがね。そう何も一つずつ違えなくたって、決断のとき至る、こういうことだろうと私は思う。来つつあるわけでありますから、来つつあって、あした来るかもしれぬわけでありますから、そういう意味で、私は、これはこまかい中身に触れてものを言っておる時間はないわけでありますけれども、私がなぜ特にこれを取り上げたかといいますと、沖繩問題の返還交渉が続いておるわけでありますが、この扱いなどもアメリカが二年間にわたってやってきたことを考えてみると、相当慎重にそこらのことが十分考えられての配慮だなということがわれわれの側にもわかるような、そういう皆さま方の、特に総理のお考えが必要なんじゃないか、こう実は思うので私は申し上げておるわけなんであります。  そこで、時間の関係もございますから先に進めさせていただきますけれども、沖繩の問題をめぐりまして、総理国会で幾つか答弁をされておりますが、特に核の問題について、点検をする、調査をする、いろいろやりとりが旧来からあるのであります。私は、中国問題というものを一つ頭に置いて考えれば、二つ、三ついまの段階でもなおかつやっていただきたいと思うことがある。それは共同声明の八項に関連をいたしますけれども、核抜き本土並み、こう言ってこられたのだけれども、共同声明の中で、核兵器は抜くのだ、ないのだということを明記させる必要があるのではないか。その趣旨のことは、ことばの表現はともかくとして、八項にあるわけでありますから、このことを明記する、この必要が私はどうしてもあるのじゃないか。  もう一つは、アメリカの沖繩に置いてあるものの中心は、前線基地であるといわれるだけに、対中国というものが配慮されている。だから、質的に日本の国内にある兵力とはあるいは武器とは違ったものがある。だから、その意味では、安易な肩がわりということはしない、この必要が私は強くあるというように実は考えておるわけであります。そのあたりをまず明確にする。基地の返還の問題でも、返還即肩がわりということにならぬように、やはり沖繩県民に返すべきものは返すという、つまりアメリカの側に寄った形の解決ではなくて、そういうところは明確にけじめがついていかなければならぬ。アメリカと中国の関係じゃありませんが、百幾つもあった難問を、ワルシャワあたりで一つずつ二年余にわたって解いてきておる。たいへんな努力だったろうと私は思う。三百五十何回も話し合っておるわけでありますから。いまになって表へ出た。そうすると、いまやらなければならぬことは、そのあたりをきめこまかに慎重に、対中国政策というものを頭に置かれた日本の自主性というものが貫かれたということにならなければならぬと私は思うのであります。そういう意味で、この点の御配慮のほどを承りたいわけであります。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままでの話でも、大出君と私との間に表現がわずかずつでも違う、こう言われるように、それぞれの党の考え方もありますから、それはしかたがないといたしまして、ただ、沖繩の場合に、非常に基本的に誤解があるのではないか、かように私思っておる事柄があります。これは必ずしも社会党というわけじゃありません。それは何かというと、沖繩が本土並みになるのではなくて、沖繩並みに本土がなるんだ、こういう一部の考え方ですね。これがただいまのお尋ねのうちにもちょくちょく出ているんじゃないか、かように実は思うのです。今度沖繩が祖国に復帰する、こういえば、本土に行なわれている日米安保条約、そのワク内に沖繩のアメリカの機関というものがとどまるわけですね。変わるわけですね。そこらに問題がある。ところがいままでも、沖繩は返還するが、アメリカがいままでの考え方は変えないとか、またそれを了承しているんじゃないか、こういうことがあるので、いかにも本土が沖繩化するんじゃないか、こういう議論が出ておる。これが私、非常に心配なんであります。とにかく、いまのところ、本土に返れば、これはもう日米修好条約をはじめ日米安保条約、日米間の諸条約が沖繩にもそのまま適用されるんだ、こういうことを考うべきなんで、沖繩が施政権下にあるその状態に本土もなっては、これはたいへんですよ。そこの根本のところがよくわかっていると、いまのような点も誤解なしに解明されるんじゃないか、かように私は思います。もちろん、いままでは沖繩でアメリカのプレゼンスというものがやはり戦争抑止力になっておりますから、これは中共に対する問題だとか、ソ連に対する問題だとか、かような意味を具体的に言うわけじゃなくて、これはもう抽象的に戦争抑止力だ、それがやはりアメリカのプレゼンスだ、これが沖繩にいることが中心だ、かように理解していいのですが、今度沖繩が祖国に復帰した、その暁には一体どうなるのか。やはりアメリカ軍が駐留をするということは、やはりプレゼンスは安全確保のために役立っているだろう、かように思います。しかし今度は本土並みになるんだから、その意味において沖繩に膨大なる兵力は必要ないだろう、あるいは基地はもっと整理されるべきだ、あるいはまた日本内地における施設の提供の用に順次変わっていくだろうとか、いろいろ問題がある、かように思いますので、その点は別に私は問題にしなくても心配ないんじゃないだろうか、かように思っております。  そこで、肩がわりということばが出ました。アメリカのかわりに自衛隊が肩がわりする、こういう問題がありました。しかし、これは強力なもので、非常に強大なものをやる、まあ昔の軍隊というようなことになるとこれはもう基本に触れる問題だから、さようなことはございません。肩がわりと申しましても、治安維持上の問題が主たるものだ、かようにお考えいただいていいんじゃないだろうか。だから、そのことばどおりの肩がわり、それなどはできるはずはありませんし、またそれをする考えもありません。そこに誤解のないようにいたしてもらいたい。あるいは中曽根君が肩がわりという表現をしたかもしれませんが、そこらに自衛隊の持つ本来の任務があるから、その点でおのずから限度があるんだ、かように御理解いただきたいと思います。
  19. 大出俊

    大出委員 沖繩の現状、つまり今日あるべき姿、こう言ったほうがいいと思うのでありますが、この中には、たとえばSR71を一つ取りましも、先般外国の放送が伝えておりますように、黒いジェット機、U2型機などよりもはるかに高空を飛ぶ、早いもの、これが中国の上空なり朝鮮の北のほうの上空なりを飛んだという報道なども伝えられている。ある意味の特殊部隊という形でグリーンベレーがあってみたり、VOAがあってみたり、二百六十七部隊、毒ガス管理部隊から、いろいろなものがある。これがほとんど片づかぬ、こういう現状にある。特にいまの問題、どうされるおつもりか。こまかくはいいですが、一括して、これどうされるおつもりか。どうしてもどけろとなぜおっしゃらないのかという点が一つ。それらの基地は増強されているのですから。期限を切ってみたって、現実は増強されているのですから、だから、なぜやはりそれをどけないのか、どけろ、こうおっしゃる筋合いなんです、これは。それが私は日本の自主性だと思っている。なぜそれを強引におやりにならぬかという点が一つ総理が前へ出ていっても私はやるべきだと思う。なぜそれをおやりにならぬかという点。特に核の問題ですけれども、これは中曽根さんの——私はいささかその点は不満なんだけれども、核の扱いについては対アメリカという形でやりとりをする場面が二つ三つあると思っている。だから安保条約が適用されてから随時協議で、というようなものの言い方というのは不満なんです。なんですが、それでも点検を口にされた。ところがそれをどんどん総理が消してしまうんでは国民的納得が得られない、私はこう思います。だから、数ある中で特に核の問題等については国民が納得するように、点検するならする、調査するならする、どけろと言うなら言う。これはやはり国民の前で表に出してこれを明確にしていただくという、しかも返還協定に立てていただくという、そこまでやっていただかなければならぬ私は性格だと思う。特徴的に言って、それが私は日本の自主性だろうと思っている。だから、相手のあることはわかっています。なぜそれをおやりにならぬかという、ここに私はどうしても納得いたしがたい沖繩問題の扱いの一つ基本がある、こう実は思うのでありますが、そこのところ、ひとつお答えいただきたい。
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いずれこの沖繩返還、祖国復帰交渉の中間報告、これはもう明日やることになっております。おそらくただいまのような点が主たるものであろうと思います。いろいろアメリカの施政権下においてやっておること、これが急に日本の施政権下において許せないものである、またしかし、ある程度経過を見詰めざるを得ざるもの、こういうものがあるだろうと思います。それらの点はいずれ明日十分御審議をいただきたいと思っております。  そこで一施設あるいは区域、そういうものの返還の状況、これはやはり段階的にあるだろうと思います。だから、それもあした十分に納得のいくように説明されるだろう。  また、核そのものについて。これはもう本来なら核抜き本土並み、こう言うことはダブっているので、言わなくてもいいことなんですね。本土並みだと言えば、これはもう当然、本土にも核はないし、また非核三原則をわれわれ主張しておる。アメリカもそれを了承しておる。こういうことだから、その点は、七二年本土並みに返ると言えばもういいはずなんだが、特に核抜きと言ったのにはそれだけの意味があるわけです。これは、やはりアメリカの施政権下でどんなことをやっておるかわからない。これはもうはっきり、返ってくる限りにおいては、本土並みだけでは足りない。核抜きだ、こういうことでございます。したがって、ただいまの点では、やはり安全保障条約を締結している、そういう間柄であるし、本来の基本的な信頼なくしてそんな安全保障条約の締結、できるはずはございませんから、そういう意味で、そんなに一々何もかも点検しろ、点検の結果をだれにもみんな明らかにしろ、こう一言うのは少しどうかと私は思うのであります。基本的に、相互に深い理解のもとに初めてこのことは可能なんだ、かように思っておりますので、私はいまの七二年、また核抜き本土並み、この取りきめ、これで事十分だ、かように思っております。  そうして、その上で、ただいまの米軍に提供している施設あるいは基地の態様その他の問題などが、本来日本の本土内で行なわれているその目的と合致すること、またその域を出ない、そういうようにあるべきだ、かように思っておりますので、この点が返還に際して取りきめるべき第一の問題だ、かように思っております。私は、それは実現の時期までを約束しているわけではありませんが、その基本的な問題をやはり完全に了解されて、しかる上で返還という問題が実現される、かように実は思っております。  とにかく、いずれにいたしましても、返還という大事な大きな問題をかかえて、戦争で失った領土を平和のうちに返してくるのですから、いろいろの不満の問題もございましょう。それらの問題を乗り越えて、とにかく返還をまず第一にすること、そうしてその他の問題のどうも納得のいかない問題、それをできるだけ早く解決すること、そういう素地をつくること、それに支障があるような取りきめはしないこと、それが皆さんから感謝される基本的な態度じゃないか、かように考えます。
  21. 大出俊

    大出委員 これは総理、リチャード・ハロラン記者がニューヨーク・タイムズに書いている通過協定などという問題も表に出てきている。否定をされておりますけれども、しかし現実にこの間私この席で、外務省の皆さんもおいでになっている席、防衛庁方々もお見えになっている席、官房副長官木村さんにもお出かけをいただいて、横須賀に入ってまいりました原子力潜水艦、この問題で三十九年に、議席を得たばかりでありましたが、私はずいぶん長い論議をしたのです。その記録も全部洗ってみまして、それ以来私も選挙区が近いものですから、ずいぶん調べ続けてまいりました。そうして四十数隻の原子力潜水艦、この中で艦名別に見ると、十五隻しか入っていない。そこでアメリカの発表を見ると、今日原子力推進の原子力潜水艦攻撃型というものは、私の記録では四十四になっているのですが、防衛庁は四十七隻というふうに発表になったという。私のは少し古い。では四十七隻という発表でサブロックなる核爆雷を積んでいる船はといったら三十四隻。私の記録にも、四十七隻のうち三十四隻のサブロックを積んだ船があることは、アメリカが発表している。常時積んでいる。改装した時期もわかっている。積むことにきめた時期もわかっている。ところで四十七隻のうち三十四隻が常時サブロックを積んでいるのですから、皆さんのおっしゃることをそのまま受け取っても、残り十三隻が積んでいないことになる。算術計算で申し上げても、つまりサブロックを積んでおると防衛庁がお認めのものが十五隻入ってきているということになると、その間、積んでいないのが十三あったから、十三差し引いてみても、二隻はダブっている。入ったことになる。私は現地でいろいろ調べて、乗ってきた乗員にもいろいろ話も聞いている。だからそこまでよっぽど言おうかと思ったけれども、そうしなくても、数が合わぬのですからだれが考えたってわかると思って、そういう論議にいたしました。木村さんは、防衛庁、外務省その他と相談をして調査をされる、こういうふうになっているわけでありますから。私はこの問題も決着はつけていただきたいし、何が一体隘路かというと、点検ができない、チェックができない、ただ信頼をしろ、こういうことだからそうなる。この真疑のほどについて私どもが調べて知っている限り——木村さんだって事実は認めるとおっしゃる。これは認めざるを得ないのです。事実は認めるが、そのときに積んであったかどうかはわからない、こう言う。それでは困るのですよ。その調査結果はどうなったか、答えた方は副長官ですから、これはやはり総理に承りたい。そういうことだからこそ、二番目の問題でありますが、沖繩の問題も、総理が答えておる前回の議事録をここに持ってきておりますけれども、二年前に総理お答えになっているのは、沖繩に核があるかないかということ、これは事前協議の対象じゃない、こうお答えになっている。ないところに持ち込むというならこれは事前協議だ、そうじゃない。現在ある姿、この中を、だから調査をするとおっしゃっている。どういう形で調査をするのかといったら、返還交渉の過程で調査をする、調査をしてどうもまずいなということになったらどけてくれと言う、あなたはこうお答えになった。議事録を読み上げてもけっこうです。ところがそれから二年足らず、たったいまの御答弁というのは、まるっきり前のお考えと違うじゃないですか。どうしてそこまで後退しなければならぬのですか。事、核という問題でこれだけいろいろ論ぜられている。十六戦闘部隊なんかのF105サンダーチーフだって核を積んでいる。知っている人はたくさんある。ここまできているのに、総理はいつも、核兵器と申しますものはあるかないかわからないのが核でございまして、したがって私にもわかりません、それでは総理答弁にはならぬですよ。そうでしょう。だから総理、そこはやはり明確にしていただかぬと、点検とせっかく長官がおっしゃったのに水をかけてつぶしてはいけませんよ。御再考いただきたい。
  22. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの、常時核を積んでいるとか、平時においてもそういう装備をしているとか、これは一つの問題だと思っております。しかしそのことは、私どもがとやかく言えないのじゃないか。ただ、われわれはアメリカに対して核の持ち込み、これはごめんこうむるとはっきり言っているのですから、そしてその考え方にはアメリカも同調する、こういうように言っております。積み込み得る状況、また核弾頭をつけ得る状況、こういうことをもって直ちに核弾頭がついているとか、あるいはいつも核装備しているとか、こう言ってしまうことはどうでしょうか。そこらに私は食い違いがあるのではなかろうか、かように思っております。いまのその重要なる質問ですが、私、まだ木村副官房長官からも聞いておりません、結果はどういうふうになっている、かように聞いておりません。私の判断するところでは、平常時にそういう状態にいつも核そのもの装備して行動している、かようには私は考えておらない、こういうことだけ申し上げておきます。  また沖繩の問題について、やはり先ほど申しますように、ニクソン大統領と私との取りきめは、これは特別なものです。特に先ほど申すように、本来なら本土並み、それだけで事足りるのを、核抜き、本土並み、かように言っておるところに重点がある、かように御理解いただいています。それでそれをアメリカ政府も、最高責任者の大統領が了承した、こういうことを御了承いただきたい、かように私は申し上げます。そうして、これはもうアメリカの国内法ですけれども、国内法でも核の存在、どういう形のもの等々については、これはきわめて限定した範囲でなければそれについての発表はだれもできない、こういうことのようですから、それらの点も十分御勘案の上、ただいまニクソン大統領と私とが取りきめしたことにどういうような意義があるかということも御理解いただきたいと思います。
  23. 大出俊

    大出委員 うしろのほうから申しますが、私もこれは調べてみた。あなたのおっしゃるマクマホン法、これは関係条項、三つ、四つあります。ありますが、これはいまだれもできないとおっしゃるが、ニクソンさんはできますよ。専権事項ですよ。これは総理と同じ立場のニクソン氏ならできる。これは明確になっている。そのほかの人はできない。愛知さんが相手の国の法律だから関係ないとおっしゃったが、そうではない。明確に関係はある。あるが、ニクソン氏ならできる。これだけ何べんも総理はニクソン氏とお会いになって話してきておられる。国民がこれだけ心配するのははっきりしている。だとすれば、返ってくるのですから、そうならば、ニクソン氏にそれだけあなたは御自信をお持ちになっておられるなら、なぜ明らかにしろとおっしゃらぬのですか。そのくらいの信頼関係なら、そのくらいできるはずじゃないですか。原子力潜水艦が入ってきたときのエードメモワール、これを読んだって、日本国民の意に反することはしないということを明確にしている。日本国民の意に反することになりやせぬかとみんなが心配しているというのに、そのくらいのことできませんか。いかがですか。
  24. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま私が申し上げますように、最高責任者、それと私とで約束をした、そうして本土並み、核抜き、こう約束したのだということをつけ加えて、いまのお尋ねに対する私の答弁といたしますから、その権限のある者と私が約束した、そこに意味があるのでありまして、権限のない人と約束したのとこれは別ですから、権限のある人と約束したことだ、かように御理解いただきたい。
  25. 大出俊

    大出委員 時間の関係もございますからかけ足に質問しておりますが、この点は私はそう簡単ではない。確かにサブロックの問題をめぐりましても、これはアメリカ側の発表も幾つもあります。ありますが、常時核を積んでいる、サブロックを積んでいるように改装して就航したというふうに発表している。積んでいる。記録がちゃんとある。アメリカ政府が発表しているのですから。あなたはいま積めるようになっているけれども、常時積んでいるかどうかわからない、わからなくはない。アメリカ側が常時サブロックを積んでいる、こう言っている。サブロックには型が幾つかある。ホーミングを使ってないのもある。だがしかし、それは明確になっている。その船が入ってきていても——パーミット号も現に入ってきている。この点は、防衛庁はそれがサブロックを常備している艦であることはお認めになっている。なっているんだが、しかし信頼関係だということで、これは常に伏せられてしまうということでは国民が納得しない。あなたは権限のある人と話したんだというけれども、それでは納得しない。ほとんど、町の人に聞いてごらんなさい、どうせ持っていくんだろうという。あたりまえのことだ。にもかかわらず、なぜ日本国民に、ニクソン大統領の了解を得て、返還交渉の過程で調査団を派遣して、言わなくたって調査をして、その結果心配がないならない、これを明確にしなければ、何が出てくるかわからぬといわれている沖繩じゃないですか、あとで大きな問題になれば国際的な問題になる。だから、その辺のところは、総理、あなた自分でお答えになっているんだから、返還交渉という過程で調査をするんだ、あったらどけろというんだ、こう答えて、二年足らずたったらなぜそう変わるんですか。そのくらいのことは総理、信頼をしろというだけではだれも納得しないんだから、せめてその一点ぐらい明確にする責任があると私は思うのです。もう一ぺんくどいようですけれども聞きます。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は前言を取り消したというつもりはございません。また、いま新しい全然別なことを言っているわけでもありません。その点の誤解がないようにお願いさえすれば、それでけっこうでございます。
  27. 大出俊

    大出委員 前言を取り消したとおっしゃらぬというならば、返還交渉の過程で調査をする、こうおっしゃっているわけですから、それはよろしゅうございますか。
  28. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 返還交渉の場合には、もちろん現地においてすべてのものを引き継ぐという、そういう引き継ぎは必ず詳細にやりますから、それにまかしていただきたい、かように思っております。
  29. 大出俊

    大出委員 日本側が引き継ぐ場所に核があるとは思えない。つまり、核があるかないかという焦点は、返還をされた、米軍の基地はそのまま残る、そこに問題がある。大浦湾のほうだって、最近原潜の沖繩那覇に入ってくる入り方が違ってきているということが外電にある。日本新聞も書いている。そういうところは引き継ぐのではない。まさに現状あるがままの姿で残るということになる。だから、これは返還交渉の過程で、沖繩が日本に返るんだから調査をする、そういうものは好ましくない、じゃあどけろと言う、こうお答えになったその前言をお取り消しにならぬというなら、引き継ぐところというのでは筋が通らぬので、つまり、返還にあたって米軍基地の中に核があるかないかということを調査をして、あればどけろとおっしゃるというのが筋だ。そうでなきゃ前言をお取り消しになったことになる。いかがですか。
  30. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 前言を取り消すつもりはございません。そうしてまた、いまの引き継ぎというのは、自分たちが現実に引き継ぐ範囲、また、いまあるアメリカの基地の態様そのものを十分調べるという、それで初めて引き継ぎできるわけですから、そういうことをも含んでのこと、かように了承を願います。
  31. 大出俊

    大出委員 アメリカの基地の態様、いまあるアメリカの基地を含んで調べる、こういうお話でございますから、それがどういう形であと伝えられるかということは残ります。残りますが、時間の関係もありますから、いまの論点はその辺のところにいたしますが、いずれにしても、私は、いま取り上げました憲法の問題あるいは対中国の問題あるいはこれと大きくからむ沖繩の問題あるいは国民的心配という意味における核の扱いの問題、これは非常に大きな問題だと思っているのでありますが、特に沖繩の問題は明日報告というのですけれども、私も、私どもの党の沖繩対策のほうに籍を置いておりますけれども、まことにどうも時間的にも短い時間の報告になってしまう。したがいまして、私はこの際申し上げておきたいのは、さっき申し上げた、七〇年代ということばを総理お使いになりましたが、まさに私もそうだと思うのでありますが、この時期における対中国という問題は、これは中曽根さんもそういう意味の御答弁をいただいておりますが、やはりこれは日本の防衛を論ずる場合のポイントだろう、これを抜いて論ぜられないだろうと思うわけでありますから、そういう意味で、昨年だいぶおおこりになりましたから、あまり総理が御立腹にならぬようにいま申し上げておるのですけれども、沖繩返還というものをめぐって新たな問題提起にならぬような、つまり対中国問題を解決する方向へという、そういう含みでひとつ対処されるということを私は特にお願いを申し上げたいわけであります。
  32. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 とにかく大事業です。沖繩返還という、これはもう過去の戦歴をごらんになると、これはたいへんな問題だ。そこに非常なむずかしさも残っている。ことにいままで沖繩が米軍のアジアにおけるかなめ石的な役割りを果たしている。それだけに非常にむずかしい問題が幾つもございます。ある程度は、ものによっては時期をかさざるを得ないものがあるのではないか、かように私心配しておりますが、しかしとにかく祖国復帰、これは何よりも祖国復帰を妨げないようにすることが、まず第一に考慮を払うべき事柄じゃないだろうか、かように思っております。しかしこれは何でもかんでも向こうの言いなりになってでも祖国復帰をしろ、こういうような意味ではございません。私どもも国益の確保、その大局的見地に立ってのただいまの願望でありますから、そういう意味で、これはやはり一党だけでできるような問題ではない。各党の御協力がぜひとも必要だ、かように思いますので、そういう意味政府自身考えの足らない点、こういうようなものは皆さんの御指摘を得まして、御鞭撻を賜わって、とにかく無事に祖国復帰ができる、そうしてわれわれもしんぼうして、あと本土並みに持ち上げていく、こういう努力を払うべきではないか、かように思っております。何とぞよろしくお願いします。
  33. 大出俊

    大出委員 国民的心配でございます沖繩の米軍基地に核がある、これを点検あるいは調査をすべきである、こういう広範な意見がございますが、いまの御答弁で、返ってくるアメリカの基地を含めて調査をなさる、こういう確たる御答弁でございますから、ぜひその方向に、そしてまた対中国問題につきましても決断の時期に来つつある、こういう御答弁でございまして、旧来の親交を重ねたところ等についての方法をどうすれば一番いいかということ等が、いまの考えている問題の焦点なんだというお話でもありますから、ともかくこれも決断の時期が来つつあるという方向を、一日も早くそっちの方向に持っていく努力をいただきたいし、憲法の問題などにつきましても、これは時間が足らなくて中途はんぱになりました感じがいたしますが、総理の考えておるお考えは明らかだ。四次防というものをめぐりまして、これも対中国等考えれば原案そのままというのではなしに、やはり専守防衛の防衛力整備というものを対中国の修好、国交の回復という形の観点からとらえて、むしろ漸減をするというのが筋だろうと私は思うわけでありますが、そういうところ等をぜひひとつお含みいただきまして、御努力をいただきたいと思うわけであります。  以上で終わります。
  34. 天野公義

    天野委員長 鈴切康雄君。
  35. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先ほども同僚議員から、首相の改憲発言という問題で話がありました。憲法の問題は事が重大だけに総理にいろいろ御質問をしたい、このように思っております。  佐藤総理が十日、自民党参議院選対会議が持たれて、参議院選に大勝利をするために、党議できまっている自主憲法制定したいという、そういう旨の発言があった。憲法の危機が叫ばれている時期だけに、各社一斉にこの問題を取り上げたのは当然ではないかと思うわけであります。なぜならば、かねてから国民的合意の上に成り立っておる現在の平和憲法について、従来からとってきた歴代保守党内閣の平和憲法無視の姿勢は、第一次防、第二次防、第三次防とまず既成の事実をつくって、次に憲法の拡大解釈をはかりそれを国民に押しつける、実質的な平和憲法の形骸化を行なっているような気配がするのであります。四次防がここまできてしまうと、憲法の拡大解釈の限界にもやはり限度がきてしまった。だから、今度の事件は衣の下によろいが出てきたといっても過言ではないそのように思うのであります。防衛白書や四次防原案には、防衛力の限界について憲法上の限界を至るところに宣伝をしてきておるわけであります。それにもかかわらず、総理発言は、ただ一つの歯どめをもはずそうとしているということに大きな問題があろうかと思うのであります。今度の総理発言は、たてまえと本音が出てきたものであり、そういう総理の不信感のある発言では、今度の防衛法案の論議をしても、憲法上の限界云々と口では言うけれども、それは空虚な論議にすぎないのであります。  総理、あらためて憲法に対する基本的な態度と、そしてまたこの間の発言真意についてまずお伺いをいたします。
  36. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま憲法と現状の自衛隊、これの関係を云々されましたが、私は憲法は、第九条は積極的に日本自衛力、それを否定しているものである、かように私は思っておりません。これも解釈の途中においていろんな議論のあったところで、これは憲法のあるなしにかかわらずいろんな議論があったことは、大出君が先ほど説明されたとおりであります。そういう議論をたどってきておる。ただいまの自衛隊ができておる、これは独立国家として当然のことだ。自衛権を持つ、自衛権の発動、それはあり得る、さような意味において、これがいままでも日陰者になっていることについて非常な議論がある。私は、多数の方々が国のために御奉公していらっしゃる、何かよけいな制度だ、かようなものが一部で考えられている、これは自衛隊方々に対しても申しわけのないことだ、かように思っております。したがって、憲法自衛隊の存在することの関係においては誤解のないように願いたいと思います。私はいまのものが憲法違反だ、かように考えておりませんから。またそれは鈴切君もそこまではおっしゃらない、かように思っております。  ただ、私自身考え方あるいは自民党自身考え方憲法を非常に拡張し過ぎた解釈をしているのじゃないか、こういうような意味の御批判だろうかと先ほどの御発言をとりますが、私はまあそういうことのないように、これがいま自民党が置かれている立場だと思っております。  ところで、この自衛隊関係はそれでいいと思いますが、いま問題になりましたのは、私の最近の発言、これは申し上げるまでもなく、先ほどもいろいろ大出君に詳細にお答えをしたのであります。私は、過日の選対の各県から出てきた諸君に話をいたしました。これも否定するものじゃありません。そうして、わが党が自主憲法を持つのだ、これが党議、党の基本的な考え方でもある。これも否定はいたしません。これはもう明らかにしておるところでありますから。しかし、いま直ちにこれの改正と取り組む、こういう考え方でないことも、これも先ほど大出君にお答えしたとおりであります。基本法律憲法、これは何と申しましても国民とともに改正するという、制定するという、こういう考え方でなければできないのであります。それにしては、最近どうも衆議院の大勝の結果、党がゆるんでいるのじゃないか、かように思うものですから、私は大いに奮起を促した、かように思っております。せっかくきめられた状況でも、いまのような勢力ではどうしようもできないのじゃないか。これは私、総裁として当然の発言だろうと思います。しかし、私はこの問題が数をそろえたから直ちにできる、そういうものではない。衆議院のほうの問題は、これはときに解散がございますけれども参議院の場合はとにかくその力が三年間これを動かすことができないのでありますから、そういう意味で、この参議院選挙に臨む党員の態勢をつくった、かように考えていただきたい。だから、新聞に書かれておる点も否定はいたしませんが、しかし必ずしも私の真意そのものを如実に伝えたとは思いません。ここにたくさんいまメモをとっておられる新聞社の諸君も、どういうようにこの点を聞き取っておられるかと思っておりますが、私自身が過日党本部で発言したこと、これを否定するものではない、しかしそれは必ずしも私の真意そのものではない、こういうことを申し上げておきます。
  37. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理が言われた自衛権に対しての問題については、これは否定するものではありませんけれども、しかし、おのずとやはり憲法にもそれなりの限界があるわけであります。その限界を通り越して、すでに四次防ではもうその限界の限度に来てしまった、そういう考え方が、国民の多くに疑惑の目で見られている現在における総理発言というものは、いかにも憲法改正して、そして言うならばその点を改正をするという意図が含まれているかのような発言に聞こえるわけであります。それだけにまた事は大きいと私は思うわけであります。  先ほど大出議員のときに御答弁になりました、改憲はしたいとまで言わないが、党の綱領で決定であれば総理としては当然それを支持することになる、在職当時は憲法改正はないというが、将来条件が整えばこれは改正をする、そのように判断をしてよろしゅうございますか。
  38. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりです。私も自民党員ですからね。総裁であると同時に自民党員。その自民党員が、党の基本方針を無視しちゃいかぬ。それはもうはっきり、それは尊重するのはあたりまえです。
  39. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先ほど、あなたのおにいさんの岸さんの発言をとって大出議員が、世間のいろいろの問題の諸悪根源憲法にある、このように言ったという発言が取り上げられましたけれども総理は、おにいさん発言に対して、どのようにあなたとしてはお考えになっておられますか。
  40. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも兄貴議論を私が批判するのはどうかと思っておりますが、私ども自由民主党は、ずいぶん幅広い政党で、自由濶達にみんなに議論さしておりますから、それはあまり批判しないほうがいい。
  41. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは、批判をしないということはけっこうでございますが、総理としては、そういうものが憲法にあるというふうにお考えになっているか、その点についてお伺いいたします。
  42. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま憲法の問題そのものについては、私はいろいろな見方があると思います。これはいろいろな新聞、雑誌その他単行本等にも出ておりますから、それはやはり各人によりましてそれぞれの問題があると思う。ことに最近一番目について問題になるのは司法権の独立をめぐっての問題だと思います。これはもう現に国会におきましてもいろいろ論議されている最中であります。私どもも、これはやはり行政府の長といたしまして、これには非常な関心を持っておる。どういうところに落ちつくかなと、かように見ているような次第でございます。それほど、憲法には明確であるはずのものが、なかなか明確でないかのような印象を与えられておる。こういうことはございますから、先ほど大出君も、そういう意味から、もっと明確にしたらどうだ、こういうお話をされた、かように思います。
  43. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日本憲法第九十九条には、憲法尊重、擁護の義務があります。このことを最も忠実に守らなければならないのはやはり政府であり、また総理自身ではないかと私は思っております。あなたは、公僕の中においても最高、国家公務員として法律を守る立場にあるわけであります。にもかかわらず佐藤総理は、総裁総理の両面を持っておるだけに事はめんどうになってくるわけであります。自民党の会合とはいえ、このような改憲発言をするということは、国民はもう、総理としての立場を考えて、改憲をするのではないかと非常に危惧を感ずるわけであります。だから、総理発言は、むしろ私は、そういう意味でいうならば、非常に不謹慎であると思うのですが、その点について総理はどう思われますか。
  44. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 不謹慎というおしかりで、これはあるかと思いますけれども、先ほど申しますように、総裁とはいえ私も党員ですから、党できめている基本方針に忠実であること、これは当然だと思います。また憲法を守るべき責任、これは各人ともみんな同じだろうと思います。しかし憲法にも改憲の方法というものはちゃんときまっておるはずです。だからそういうことを考えると、憲法時代におくれないように絶えずいろいろな検討がされること、それをもって直ちに憲法を守らないのだ、こういって断じてしまうのは行き過ぎじゃないでしょうか。私はそれにはちょっと賛成しかねます。
  45. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理としては現行憲法を守る、そしてその憲法をしっかりやっていく、こういう面を持っているわけです。ところが総裁としては党是すなわち綱領のもとにおいて憲法改正していく、しかもその推進役を買っているのが佐藤さんであります。そうなりますと、ほんとうに二つの面があるわけですね。これが幹事長という立場で話をされたというならまだ話もわかるわけです。ところが総理総裁という二面を持ったあなたが発言をされたということに大きな問題がある、こう私は思うわけであります。権力を持っているあなたですから、そういうことを発言するということは非常に不謹慎だ、私はそういうふうに思うわけですが、それ以上は言いません。  憲法の問題が出たのであらためてお聞きしておきたいと思いますが、六〇年安保国会で岸元首相は、憲法上海外派兵はできない、将来も絶対に起こらないと言い切っております。ところが佐藤内閣は海外派兵と海外派遣を区別して、海外派兵は違憲だけれども、武力行使を伴なわない海外派遣はできるという解釈をとっております。またさきに外務省でも、その日に備えて検討済みだというふうにいわれております。また公海、公空上での防衛を意図しているということになると、勢い海外派遣から海外派兵へとエスカレートしていく危険性が出てくるのではないかと思うのであります。海外派兵と海外派遣の区分について具体的にどういうふうに違うのか、その点がまず第一点。それから、たとえばいわれておりますポストベトナムの休戦監視委員会というものがかりにできた場合、これに参加できるかどうか。できるとすればどういう形態のものが考えられるか。憲法の立場からいうならば自衛隊の派遣は憲法違反である、私はそのように思うわけでありますが、その点について具体的にお伺いをいたします
  46. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 鈴切君、これはまあなんですな、海外派遣とかあるいは海外派兵ということばが使われている、また国連への協力が一体どうか、こういう問題ですが、とにかく私ども基本的な態度は、国際紛争を戦力によって解決しない、戦争によって解決しない、これはもう基本考え方ですから、それに抵触するようなことはない。それはどんな形であろうが、それに抵触したら元も子もなくなるのだから、それはしない。こういうことからものを考えたい、かように思っております。いまお尋ねになりましたのが、どういう点を海外派兵といい海外派遣というか、そういうような問題はむしろそのもとに返って、われわれが避けなければならないものはここなんだ、これをひとつ十分理解していただきたいと思います。  国連に協力すること、これはいろいろあるだろうと私は思いますけれども、いまのような戦争に介入するような形での国連への協力、それもどうも許されてないのじゃないか、かように思います。そういう意味からも戦争に介入するような危険のあることは厳に慎しむべきじゃないか、私はかように思っております。
  47. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国防白書の中で、憲法上の限界の項に「いわゆる海外派兵は行なわない。」こう書いてあります。これは政策でございます。憲法上海外派兵は行なえない、これが憲法の見方じゃないかと思います。私はそういうふうに理解していいんじゃないかと思うんですが、その点についてお伺いいたします。
  48. 高辻正巳

    高辻政府委員 おっしゃいますとおりに、海外派兵は行なわないといえば意図の表明でございまするが、その意図の表明が憲法からきているとすれば、そのバックには憲法の理論というものが働いているということは申してもいいんではないかと思いますが、いずれにいたしましても、先ほど総理から大体のお話がございましたが、海外派兵というか海外派遣というか、ことばの上だけで議論をすることなしに、もう少し実態についてお話をしてみますと、例の憲法九条は国際紛争を武力で解決するということを禁止しておりますから、これがいかなる場合でもそういう事柄は、海外派兵になるかならぬかを論ずるまでもなく憲法に違反するということが明瞭に言えると思います。で、主として海外派兵というものが論ぜられるのは、国際紛争を武力で解決するというのではなくして、外部からの武力攻撃に際してわが国の国民の安全と生存を保持するためにやむなく武力を行使して抵抗をするという場合に、これすらも憲法が許していないとはわれわれは解しておりませんが、そういう場合でも自衛権の行使の限界というものを非常に重大視しておるわけで、それを越えるような、たとえば海外に対する派兵というようなことになりますと、自衛権の限界を越えるがゆえに憲法に違反するという考え方を持つわけです。したがって、先ほどちょっと総理がお触れになりましたが、何か国際の一種の集団に対する——それを意図されておっしゃったかどうか知りませんが、そういう場合であっても、国際の協力関係であっても、国際紛争を武力で解決するというものであれば、わが国がこれに参加することは絶対に許されないという考え方をわれわれは堅持しておるわけであります。
  49. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 自衛権の範囲を越える派兵は、これはもう当然あり得ないのだというわけでありますけれども、それじゃ自衛権の範囲を越えない海外派兵というものは考えられますか。
  50. 高辻正巳

    高辻政府委員 海外派兵というのは、これはいつも自衛権の行使の限界論でよく出てまいりますように、これは領土、領海、領空に限られるのではないか、いや公海、公空まではいってもかまわないのだというような議論の展開でおわかりになりますように、通常敵国の領土に兵力を派遣しまして、そうして事実上兵力による制圧の状態をそこに確立するというのはいわゆる海外派兵なり自衛権の行使の限界を越えるというのが普通の姿だと思いますので、それらは許されないと考えるのが当然であろうと思います。
  51. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 徴兵制の問題でありますけれども、防衛白書原案にあった徴兵制はとらないという字句が削除されたのはその伏線ではないかというふうに追及されたとき、高辻内閣法制局長官は、平時に国民を強制的に徴し、軍隊に編入して訓練し、戦時に備えるものが徴兵制であるとすれば憲法の許容するところではないという答弁昭和四十五年十月二十八日の内閣委員会でされております。これを言いかえるならば、有事徴兵制は違憲ではないというふうにもとれますが、平時、有事を問わず徴兵制は違憲であると思いますけれども、その点についてはっきり……。
  52. 高辻正巳

    高辻政府委員 いわゆる徴兵制度といわれるものについては、私は当時いろいろ調べてみましたが、徴兵制度というものは、当時御答弁申し上げたようなものであるのが通常の姿のようであります。いろいろ調べてみましたが、そういうことであります。そういうものがわが憲法上許されてないことは明白であるということを断言をいたしました。それで十分ではないかと思いますが……。(鈴切委員「有事、有事」と呼ぶ)有事の徴兵制度。有事における徴兵制度というようなことが徴兵制度の概念に入るものかどうかというのが、私がいろいろ調べました結果として疑問を持たれるわけでありますけれども、何と申しますか、国民がもうせとぎわに立った、そういう場合に国民がこぞって防衛に当たるというようなことが許されるものか許されないものか、そういう問題の論議の余地はあるのではないかと思います、正直に申し上げて。しかし、それこそそういう場合のことは特別、特異の場合でございますので、いまこれをどうかと言われて、私が御答弁するような自信を持っておりませんが、たとえば災害がある場合に、近在の住民がみんなで寄ってたかってそれを防衛するというようなことが災害関係の諸立法にございます。国会制定をされた立法にございますが、そういう意味合いにおいて、あるいはそういうことも許されるのかもしれないというような気はいたしますけれども、それはおよそ徴兵制度というものとは概念が違うものではないかというような気がいたします。
  53. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま、誤解がないと思いますけれども高辻君が言った最後のことば、それが徴兵制度というものかどうか、そこに重点を置いていただきたいと思います。平時においてそんな徴兵制度は採用しない、これははっきりしている。戦時下において徴兵制度、これまた憲法のもとにおいて、徴兵制度という限りは、これはもう違憲だ、これははっきりしておる、かように思います。だから、いま高辻君が言うのは、全部の人たちが立ち上がって国を守るという、それがいわゆる徴兵制度となるかならないか、それは別ですよ、こういう言い方ですが、制度という限りにおいては、徴兵制度は、現行憲法は平時だろうが戦時だろうが区別なしにそんなものは採用しておらない、はっきりしております。
  54. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 わが国の軍事的な政策の最も基本的なものとして、いわゆる防衛白書というものが出たわけでありますが、提出の際の長官談話の中で、非核中級国家としての提唱がされました。これは是非は別といたしまして、一つの中級というめどをつけられたと私は判断しておるわけであります。軍事的には非核国の中の中級の国家としての目標を設定されておるというふうに思っておりましたところが、どういう理由か知りませんけれども、非核専守防衛国家に改められてしまったわけであります。それについて、どうしてそのように改められたか、総理にお伺いをいたします。
  55. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは中曽根君には中曽根君の言い分があるだろうと思います。中級国家は軍国主義じゃない、こういう言い分だろうと思いますが、私は、核を持たない、これは国民とともにわれわれが約束したことですから、これはよろしいわけです。核を持たない。軍国主義化という批判をいま非常に受けている際でございますから、中級国家ということでは、その軍国主義化、これに答えておらないじゃないか、だから軍国主義でないこと、これをはっきりすべきだ、これが専守防衛国家、こういう形になった、かように私は理解しております。
  56. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、中曽根長官はいろいろの構想を持って非核中級国家というふうに言われた。総理は非核中級国家というのはあまり適当なことばじゃない、非核専守防衛国家のほうがよりベターである、そういう判断のもとにそういうふうな取り扱いをされたか、あるいは非核中級国家も非核専守防衛国家も内容的には同じであるというふうにお考えになっているか、その点についてお伺いします。
  57. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、非核専守防衛国家、そういう名前が適当だとは言ったわけではありません。ただ、中級国家というのでは、こういう誤解を受けるおそれがある、そこで、中曽根君、十分考えたらどうか、こう言った結果、中曽根君が大体同じ力を持つ専守防衛国家、こういう表現に変えた、かように御理解をいただきたいと思います。私はそこまでは指図しなかった。中級国家というのは、これはいかにも、弱い軍国主義化ではないか、こういうような批判を受けやすいから、そういう誤解のないようにひとつしなさい、こういうことを申したわけであります。
  58. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 非核専守防衛国家というのは、非常にばく然とした表現に変わってきているわけですね。中級国家というのはそれなりにやはり上限が位置づけられておるわけです。専守防衛国家は、相手の対応によって変化してくるとなれば、おのずと中級国家以上の対応策を講ずるということも考えられるという意味は、少なくとも意味においては変わってきている、私はそう判断せざるを得ないのですが、だいぶ変わってきた。ですから総理が、ただ単にことばの上だけであるというふうなとり方でなくして、非常に変わってきた。むしろ総理は非核中級・国家ということが気に食わない。だから非核大国専守防衛国家としての位置づけをされようという意図があるんだ、そういうふうに受け取ってもしようがないと私は思うのですが、その点どうでしょうか。
  59. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いまの状態を、これは鈴切君にこちらから聞いても答えられぬでしょうが、いま日本が一番当面しているこの状態でも軍国主義化した、こういうことで盛んに日本の膨張を驚異のまなこをもって見ている。これにやはりこたえることが必要なのじゃないか、かように思っております。私は、日本自身は仮想敵国も持たないし、防衛についての自衛力の整備はするけれども、それより以上他国に脅威を与える戦力は持たない。これは日本のあり方だと思っております。したがって、ただいまのような御議論がありましても、専守防衛、それに関する限り説明のつく、またそれが本来の日本のあり方じゃないか、かように私は思っておりますので、そういう方向でいくべきだ、かように思っております。  なるほど、中級だといえば上限があり下限がある、こういうことを言われますが、中級だと幾ら言ったからといったってやはり四囲の状況、情勢の変化では中級もやはりだんだん大きくなるのじゃないか、かように思います。だから私は一番いかぬことは、皆さんも指摘されておるように、軍国主義化するという、ここに幾ら文民統制だと言ってもやはり武官が力を持ってくる、そういうような軍国主義のあり方、これはわれわれは厳に戒めなければならぬ、かように思っております。その誤解のないことを選ぶべきだ、中級だというだけではそれに答えておらないように思う。だからその点を特に取り上げた。しかし情勢の変化ではやはり防衛にいたしましてもその力を整備する。大部分を外国に依存していた戦争直後の状況から、今日はやはり日本自衛力というものは、自分たちがまず守るんだ、そういうところにこそ初めて外国の援助を求め得るんだ、こういうように変わってきておりますから、それらの点も十分御理解いただいて、日本がよけいな誤解を受けないようなわれわれは平和国家で進む、その道を守りたい、かように思っております。
  60. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 要するに日本が軍国主義化をしてきているというような誤解を実は受けているわけでありますけれども、そういう意味において、これのあらわす表現というのは実に非常に重大な意味があろうかと思います。佐藤総理は、非核中級国家というものはベターじゃない、十分にあらわしていない、こういうお話でありますけれども佐藤総理が言われている非核専守防衛国家ですら私はその全部をあらわしているとは思わないのです。よい悪いは別といたしまして、たとえば非核中級専守防衛国家、こういうふうにされれば、お二人の合作が立っていくわけですから、その点どうお考えになりますか。
  61. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへんいい表現をされましたが、こういうものはできるだけ短いほうがいいと思います。そこで実は私が、中級国家では不十分だ、こういうことを指摘はいたしましたが、先ほども申しますように専守防衛とははっきり言ったわけじゃございません。だからこの点はもう防衛庁長官にまかせてしかるべきだ、しかしあまり長い、一ぺんに即座に言えないようでも困るから、まあできるだけ……。
  62. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 時間の関係がございますので、伊藤議員が関連質問をされるといいますから、この点で私は質問を終えておくわけでありますけれども、一字や二字くらい多かったからといって、決して語句が多いとかなんとかというものではないのです。それだけのものがやはり十分に表現をされておるならば、それはもう最高のベターだと私は思うのです。いまも言われましたように、中曽根さんの言われたところの中級国家というものが、どちらかというと非常に総理のお気に召さなかった点があるならば、総理中曽根防衛庁長官との合作というものは、これは明らかに日本の国の姿というものをあらわす、それはよい悪いは別にしまして、それのほうがよりベターだと私は思うのであります。
  63. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 関連で二、三問、佐藤総理並びに法制局長官に質問したいと思います。  先ほど来から質問を聞いておったわけですが、大出委員さらに鈴切委員に対しても、佐藤総理は、総裁として自主憲法制定に関しての発言はそのとおりだ、こういうことでありますが、そうなりますと、今度の参議院選挙憲法改正の是非を問う選挙である、このように考えていられるかどうか、明らかにしていただきたいと思います。
  64. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そこまでは考えておりません。
  65. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私はそのように感じて、その点もう一回念を押して、それならそのようにわれわれも参議院選挙佐藤総理考え方をまず国民の前に明らかにしながら、ともに参議院選挙にがんばろう、このように考えておったわけであります。  さらにもう一つ聞きたいことは、自主憲法の、五月三日に行なわれた岸元総理発言でありますが、諸悪根源は現憲法にある、このように判断しているわけであります。先ほど総理は、兄貴発言についてはとやかく言いたくないと言いましたけれども、私は平和憲法は非常にいいと思っております。しかしこういう有力な方が、この憲法諸悪根源であると、非常に現憲法を悪いんだときめつけているわけでありますが、総理はどう思いますか。
  66. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど私に批判を求められましたが、私は、言いたい点、また特に自民党として主張したいことは自主憲法制定、こういうことにあるように思います。だからその点をはき違えられないように、兄貴がどのように表現をしたか私は聞いてもおりませんし、また新聞に書かれた点も実はあまり読んでもおらないのです、不熱心ですが。しかしただいまのような自主憲法、そういう範囲のものはぜひ持ちたい。これは自民党として——自民党はかりじゃなくて、おそらく国民そのものとしても、自主憲法は持ちたい、そういうような気持ちがあるのじゃないか、かように思っております。しかしそれも総裁総理として私が発言したということではなしに、個人的な感想だ、かようにお聞き取りいただきたいのですが、どうも自主的でなかったということは、幾ら説明してもどうもなかなか納得がいかない。しかし私はかつてこの席でも申したのですが、とにかくこの憲法が表明している自由あるいは平和、そういうことは国民の血となり肉となっているらか、そう簡単に改正できるものではない、かように実は申しております。それらの点もよく勘案して、しかるべく対処していく。しかし先ほど申しますように、自由民主党員である限りにおいては、自由民主党の掲げておる基本方針、それを否定はできませんから、その点もこれまた私がいかにも二枚舌、三枚舌を使っている表現のようにお聞き取りですが、そうではない、これも御理解願いたい。
  67. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私が聞いておるのは少し違うのです。自主憲法云々、総理の、私もまた自民党員であるという、そんなことを聞いているのじゃない。現在の憲法についてどう評価し、どう思っているのかということです。それを総理に聞いているわけです。
  68. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま申しますように、ただいまの憲法、この諸条章は国民の血となり肉となっている。そういうものであるから、そう簡単にこれを批判し、また批判して悪いとなったら直ちにこれを変えるとか、そういうわけにはいかぬ、こういうことをただいま申したばかりであります。御理解願います。
  69. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 総理としては当然きめられた法律また憲法を順守する、またはそのワク内で政治を行なう、これが総理の行き方だろうと思うのです。  関連質問で時間がありませんから次に質問しますけれども一つは、現在の憲法では決して自衛力は否定はしていない、先ほどそのように総理も言いました。しかし憲法第九条にある戦力不保持の精神、戦争放棄という一つの面からいいましても、おのずから自衛力にも限界がある、こうわれわれは思うわけです。自衛力の限界についてはいままで何回となく法制局長官また総理からも伺っておりますが、非常に抽象、あいまいであります。確かに明確にすることはむずかしいかもしれません。しかしながら一番国民が心配している点は、特に今度の四次防というものは三次防の二・四倍、国民一人当たりの負担が五万数千円、国民の世帯数にすれば一家族が二十二万円ぐらいの大きな税金の負担になる。しかもそれが限界がどうかわからぬ。戦力は持たないといいながら自衛力というものの限界がわからないままどんどんそういう防衛力というものは整備されていく。そこに大きな不安と危惧を持っているわけであります。  そこで伺いたいのですが、自衛力の限界はそんな抽象あいまい、また客観情勢だとか国際情勢なんかによらなくて、量的、質的、しかも地域的な防衛の限界はある。これはもし法律上においてそれができないとすれば、やはり政府は政策的にその限界を明確にすべきだ、私はそう思うのです。その点についていかがですか。
  70. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 防衛力というものは四囲の情勢の変化に対応していくものですから、自分だけがその限界を定めるということはなかなかむずかしいです。しかしながらもうすでに明確にしたものもあります。最もはっきりしているのは非核三原則、これはもう日本はそういうものは持たないとはっきりしていますね。つくらず、持ち込みも許さない。これは非核三原則です。さらにまた他国を攻撃するような兵器は持たない。これもはっきりしている。また自衛の範囲ではあるが、武器輸出はしない。武器輸出の三原則、これなどもありますね。だから全然ないというわけでもないので、具体化し得るものは具体化している。しかし中身の問題は、先ほどは中級ということで表現しろという御意見が伊藤君の同僚鈴切君から出ておりますが、そういうような表現も私はこれは抽象的で必ずしもはっきりしないと、かように思っておりますが、事柄の性質上どうもできにくいのじゃないか。ただしかし皆さんからこういうことをやれ——先ほども出ているような徴兵制、これは日本はやらない。これなども一つの限度でしょうね。そういうような限界的なものはそれぞれあると思います。それからまた、兵力は一体十八万がいいのか十七万がいいのか、あるいは自衛艦は何トンがいいのか、航空機の数は幾らがいいのか、こういうような問題もありましょうが、しかしそういう事柄は国会の場を通じて十分御審議をいただく。さらにまた統率の方法等につきましても、自衛力という限りにおいては、これは軍部の独断は許さない。いろいろ方法があると思います。それは抽象的でよくわからないと言われるが、私は国民の希望しているものにわれわれもあらゆる努力をするつもりでおりますから、ただいまのもので大きな点は大体明確になっておる、かように思っております。御理解いただきたいと思います。
  71. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いろいろ話したいのですが、時間がありませんから……。  総理のいまの発言の中で、他国に脅威を与えない、これも限界である、こういうことを二番目におっしゃいましたね。そこで、四次防の兵器の装備を見てまいりますと、明らかに周辺諸国がその動きによって脅威を受ける、またはそのことの動きが一つは軍国主義の台頭であるというような論評を加えている国もあるわけですね。ですから、私は、他国に脅威を与えないということも憲法の限界であるならば、やはり兵器の面においても、もう少し明確に、こういうものは持ってはいけないという、政策的な一つの規模といいますか、これは限界を明確にする必要がある、そう思うわけです。それで、その点ひとつ答弁願いたい。  それからもう一つ、海外派兵について、先ほど同僚議員から質問がありましたが、さらに、私はもう一歩進めて聞きたいのですが、大体海外派兵というのは何が問題になるかというと、自衛力の限界を越えた海外での武力行動、これが一つは問題である。したがって、海外派遣といえども、この自衛力の限界を越えればいけないんだ、こういうことですね。そうしますと、まず考えられることは、航空自衛隊だとかあるいは海上自衛隊、これはもう派兵なんということはあり得ない、必ず派遣である、そのとおりだと思う。ところで、その海外派兵でありますが、今回の兵器の装備あるいはまた艦艇の建造等は、よく見てまいりますと、たとえばヘリコプター六機を積むことのできる大型護衛艦、マスコミではヘリ空母なんと言っております。そういうもの、それから新型ターター、これは艦対艦のミサイル、こういう兵器、いままでのものよりも距離が二倍以上飛ぶというようなそういう兵器、こういうものを持ちながら公海においてもしか活動するようなことがあれば、それは、先ほど総理がおっしゃるような、非常に他国に脅威を与えるようなものになる。したがって、ここで伺いたい点は、公海での遊よくは憲法上どうなるか。また、海外、いわば国から出ればもう海外派遣といいますか、平和的ならばこの問題は何でもないという法制局長官答弁もありますよ。時間がありませんから、きょうは言いませんけれども、しかし、一説には、公海上における防衛、公海上における遊よく、それは一種の自衛力の限界を越えたいわば海外派遣である、あるいは海外派兵と同じ意味のこれは限界を越えている、こういう説が、説というよりもそういう人がいるわけです。そういう点について明確にしておいていただきたいと思います。
  72. 高辻正巳

    高辻政府委員 私もただいまの御質問に対して、従来お答えしたことがありますので、一応また先ほど御答弁申し上げたこともございますので、多少つけ加えて申し上げたいと思いますが、憲法との関連における海外派兵の問題、これは国際紛争を武力で解決するというふうなことになりますと、これはいずれにしても憲法九条一項が明白に禁止しているものでありますから、これに当たるものは海外派兵になるかならぬかなんということを論ずる余地もなしに、これは憲法に違反するということになることは先ほど申し上げたとおりであります。  ところで、ただいま御指摘がありましたように、海外派兵の問題になるのは、他国からの武力侵害を受けて、わが国の国民の安全と生存を保持しようという必要が生じたので、やむなく武力を行使して抵抗するという、そのやむなく抵抗するという限界というものがやはりあるだろう。先ほど委員は、自衛力の限界があるということをお仰せになりましたと同じように、自衛権遂行についても限界があるだろう。その限界の必要性は、他国の領域において生ずるということはあり得ないにしても、それは領土、領空に限られなければならぬという理屈も同時にないと思われるのであります。したがって、防衛のために必要であれば、領空のみならず公空にも及ぶし、領海のみならず公海に及んでも、それは御指摘のような御疑問を生ずる余地はないのではないか。それが他国の領土、領海に及べばこれは問題でありましょうが、防衛の必要のためにそこまで手を伸ばすということも、自衛という必要上の範囲内のものであれば、憲法違反の問題は生じまいということがいままで一貫して御答弁申し上げていたことであります。
  73. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 高辻君の話は話として、私からも答えておきますが、他国に脅威を与えない。しかし日本がそれだけの配慮をしても、他国は、脅威だ、こういうふうに感ずるということは、これは他国のことだと思います。しかし、私ども自身が、他国に脅威を与えない、いわゆる戦争的な態度はとらない、侵略的な態度をとらない、みずから自制する、そういうことが一番大事なことではないだろうか。また他国がとやかく申しましても、みずからがちゃんとその態度に限界を設けておる限り、われわれがその態度を変える必要はないのじゃないか、かように私は思っております。われわれがそれだけ注意しても、ただいま日本は軍国主義化した、あれだけの経済力を持っていて軍国主義化しないはずがない、そういう議論だけでは、幾ら攻撃いたしましても、私は日本は動ずる必要はないのだ、心配なのは、国内で、どうも日本が軍国主義化したのだ、とんでもないことを政府はやっている、こういうことになると、それこそ、外国日本に対する批判と一緒になりまして、政府がたいへん困るような状況だと思います。したがって、私は、やはり日本国民は、何といいましても、日本の態度、それがしゃんと限度を越さない、そこにあるので、そこを他国が何と言おうが、お互いに私どももその線を踏み越すつもりはございませんから、また踏み越すおそれがあれば、その際に皆さんからもおしかりを受ける、こういうことであってほしいと思います。  そこで、もう一つの問題で、いまの海上自衛隊並びに航空自衛隊、これがいわゆる領海、領土内だけで行動するというものではない、これは御理解がいただけたと思いますが、しかし、それが非常に領空を越してどこへでも行く、あるいは他国の領空を侵害するというようなことがあれば、これは必ず批判を受けることですし、またそれは慎まなければならない。また、海上自衛隊にいたしましても、これが至るところで猛威をふるうというかあるいは示威運動をするとか、こういうことがあってはならないと思います。しかしながら、海上自衛隊を設けたゆえんは、やはり私どもは領海だけを守るというような、そんな狭い意味のものではない。ただいまの状況で、三海里だけを守るという、そういうわけのものではないという、そのことは御理解いただけると思う。(「何を守る」と呼ぶ者あり)だから、それはやはり国土を守る。そういう立場で、これは別にシンガポールなんかの制海権、これを確保するのだ、こういうような飛躍した議論は慎むべきだ。(「そんなこと言ってないよ」と呼ぶ者あり)それはおっしゃらないが、そういうことはないのだということを申し上げているのです。それは誤解がないことはたいへんけっこうです。そういうことですから、伊藤君にお答えするが、海上自衛隊あるいは航空自衛隊のその限度、これにやはり問題がある、かように思います。  それから具体的な装備等の点については、これは私も知らない点がございますから、そういう点はあとで補足してもらいますが、とにかく他国に脅威を与えない、こういうことが望ましいことである、かように思います。
  74. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 もう委員長から、関連質問だから結論を出せというあれがありますから、最後に一問だけ総理に伺います。いまの総理答弁を聞いて、言いたいことはたくさんございますが、またの機会にこれは言わしていただきます。  それで、一つだけ申し上げたいのですが、国連警察軍として、日本がたとえば国際協力のために参加してほしいといわれた場合、たとえば自衛隊員が個人としてそこに参加する場合は憲法に抵触しないかどうか、その点伺いたいと思います。
  75. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 自衛隊員が個人の資格でという、そういうものは考えられぬ、かように私は思います。なお法制局長官からつけ加えて申し上げます。
  76. 高辻正巳

    高辻政府委員 憲法のことでありますから、国家が介在をして、そして国際協力活動にせよ、要するに武力行使を中心とするものに参加をするということがあれば、先ほどの第一段で申し上げましたように、やはりそれが国際紛争を武力で解決するということになる以上は憲法に違反するということを申し上げましたが、国民個人がこれに参加することは、少なくも国家の介在なしに国民個人が入ることについては、憲法が直接問題になる問題ではないと思います。ただ、いまおっしゃいましたのは、自衛官がというようなことをおっしゃったのかと思いますが、自衛官が自衛官でありながら……(伊藤(惣)委員「個人として」と呼ぶ)個人として、自衛官が自衛官としての身分を保有しながらそれに参加するということは、自衛隊法上あり得ないことだと思っております。
  77. 天野公義

    天野委員長 和田耕作君。
  78. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 総理、私どもがいまここで議論をしている問題は、そうにこにこして話し合う問題ではないような感じが私はするのです。というのは、私は代議士になってからもう大体満五年になろうとしておるのですけれども、私は総理の口から憲法改正するという、そのようなことばを聞いたことがない。むしろだんだんと憲法というものが国民の中に定着をしておる、そういう感じで、憲法改正、部内にいろいろな意見があってもそういうふうな考え方は持たないような、そういうふうなおつもりであるような印象を私は受けてきた。そういうことを前提にして私どもは防衛論議に携わってきた。私ども民社党は、憲法を擁護するということは党の綱領ではっきりきめております。そのきめた場合に、最少限の自衛措置、そのための自衛力、当然それは戦力であってもそういう自衛隊というものは必要である、こういう考え方を持っております。おそらくこの考え方自民党総理がいままでしばしば言ったことばとそう違わないと思います。そういうことを前提にして私どもはこの防衛の議論をやってまいりました。総理にも何回か御質問をいたしました。中曽根長官にも質問をいたしました。そのつど、かなり熱意をもって憲法を守るという答弁を私いただいておりました。つまりこういうふうな理解のしかたで憲法論議をするということは、現在の日本自衛のための必要上自衛力を持つ、当然それは戦力である。あってもいい。しかし、将来に向かっては必ず日本は平和国家として軍縮その他の方法を講じて国際緊張の緩和の政策をして、そして日本の立場を守っていくんだ、武力をだんだんと漸減させていく、そういう条件をつくっていくんだ。つまり平和を求め、平和憲法の精神をいつの日か実現しようと思っておるんだという、この確信に立っておると私は思っておった。ところがさっきからの大出君あるいはその他の委員の質問に対して——私は総理の十日の発言はことばの走りであってほしい、そう思っておりました。しかしどうも走りではないらしい。その点について総理の気持ちをもう一ぺんお伺いしたい。
  79. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 わが自由民主党基本的な党の方針とまた過日の私の発言と、ここに関係なしとは申しません。しかし、私がいま現実の問題として改憲と取り組んでいる、こういう姿勢でないこと、これまた先ほど申したとおりであります。ただいまのような状態のもとにおいて改憲を考える、こういう状況でないことは御理解をいただけた、かように思っております。
  80. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 先ほど総理は、総理としてはそういうことを軽々にやるべきではない、そう考えているというお話だった。しかし、自民党総裁としては、自民党の党できめておる方針と違った考えを出すわけにいかない、こういうふうなお答えもあった。いま伊藤君か鈴切君の話に対しては、自民党の党員としての考えはこういうことだというような考え方もあった。いずれがほんとうですか。
  81. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どれもみんなほんとうです。別に矛盾していると私は思わない。
  82. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 総理はいままで五年間、あるいは総理総理になってから、憲法改正をしないという発言をしてきたのですけれども自民党総裁は、そのときから総裁になっている。総裁としてはこうだ、そういう発言をしたことがありますか。
  83. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、私の総理時代には改憲はない、こういうことは申しました。しかし、党議を無視したことはございません。
  84. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 この際に、自民党総裁としての意見をかなり大きく強調した理由はどういう理由ですか。いままでいろいろ言わなかった。
  85. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はただいまの参議院選挙、これがたいへん重大な意義を持つ、そういう際に、党の基本方針を実現しようとすればやはり大勝する以外にないだろう、やはり三年間はそういう勢力が続くわけですから、そのために奮起を促した、かように思います。
  86. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いままで何回か総選挙をやった。今度の参議院選挙よりももっと重要な選挙があった。そのときでも総理は言わなかった。言わなかったですね。今回初めて総理が言った、この前十日の日の新聞記事を見まして、私は、ああ総理やめるのだな、こういう感じを受けました。考えてみれば、おやめになるつもりなのか、あるいはそれなら筋は若干通ります。いままでは憲法改正をしない、こう言ってきた。そしてここで自民党のために、改正をするというだけ言い残してそしてやめるのだ、こう思ったのだけれども、こういう考えはありますか。
  87. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御批判はいかようにでも御批判をしてください。しかしただいま申し上げますように、私は、いま党員として、また党議としてきめたこと、これはやはりいつの日にか実現すべきことだ、かように思っております。やはりその情勢ができてないときに、そういう問題をひっさげてそして走り回ること、これはあまりりこうなことではない、かように思っております。
  88. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 情勢のないときにあえてこういうことを言うことはどういう意図かということを私どもは考える。というのは、憲法に対する理解が私どもにとってはこの防衛法案の審議の前提だからです。私ども憲法に対する理解は、防衛庁のいろいろな法案に対しての審議の前提なんです。自民党の中にもいろいろな意見のあることは承知しておりますけれども総理としては、次第に日本憲法というものは定着をしてきている、これをいまさら変えるといわなくても、多少の拡大解釈はあってもそれでいける、そのほうが日本にとって正しい、こういうふうに考えておると私どもは判断をしたから、そういう立場でこの防衛の問題についていろいろ議論をしてきたのです。この際何の必要があって、今度の防衛法案が通るか通らぬかという時期に、また四次防がいろいろ議論されておる時期に、なぜこのような議論をしたのか、きょう私は総理答弁を聞いておりましてびっくりしたのです。ほんとうにびっくりしたのです。もしそれが総理の本心であれば、いままでの総理になってからの発言は内容的にうそを言ったことになる、私はそう思うのですけれども、そういうふうに考えませんか。
  89. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はさように考えません。
  90. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 中曽根長官、この十一日の日に私は長官に重ねて質問をいたしました。憲法をお守りになりますか、誠実に守ります、こうお答えになった。長官、そういうお考えですか。
  91. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 もちろん憲法は誠実に守っていく所存であります。
  92. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 総理、どうですか。
  93. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私も同様であります。
  94. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 そういうふうな国の基本になる憲法の問題を、そうことばのあちこちで扱うべき問題ではないじゃないか。総理、これはほんとうに大事な問題だと私は思うのですよ。私の個人的な総理の気持ちの判断からすれば、現在の国際のいろいろな兵器の主戦兵器は核兵器である。核兵器は日本は持たない。あるいは現在の日本は世界の中の日本であって、平和なしには生きられない、その状態はますます加重してきておる。日本は平和なしには生きられませんよ。日本の生命線を守ろうといったって、マラッカ海峡からアメリカ、アフリカの果てまで日本が守るわけにはいかない。平和なしには生きられないという状態がだんだん重なってきている。核兵器は持っていない、また核兵器が主戦兵器である、こういうふうな時期であるから、平和憲法が戦後しばらくの間はこれは意味のない、これは何とかしなければならぬなという感じを持った人がたくさんあると思いますけれども、そういう人でも、だんだんとこの平和憲法というものは日本国民のしあわせにとって重要な意味を持ってきたんだ、そのことを総理はだんだんとお考えになって、正しい方向でこの憲法の問題を解決していかれるのだなと、私はこう考えておった。総理が十日以後に言っておられるこの問題は、国の運命にとって非常に重要なこととお考えになりませんか。
  95. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私も同感でございます。重要なことだと思います。憲法改正、これはもうもちろん、基本的な国の法律ですから、その改正は簡単に取り上げるべき筋のものでない、そのぐらいのことは私も知っております。
  96. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 それならなぜ——総理総裁との使い分けをすることは、これは意味があることかといったら、意味のないことだ、実際上は。この時期になぜ党内で、そういう新聞の全部の方が報道なさるような、ああいうふうな発言をなさったか、重要な憲法改正の問題を。現在われわれもそういうふうに、まさかそうじゃないだろうと思っておったのに、どうもそうらしい。そういうふうなことをなぜこの時期に、重大なこの問題をお述べになったのか。だから私は先ほど言ったように、直観で、あ、総理はもうやめるのか、選挙はまた早いなという、こういう感じを私は受けた。私はこの前申し上げたとおり、衆議院の任期はもっと尊重されなければいかぬ、こう考えておる一人なんですけれども、そういうふうな問題をなぜこの時期にお述べになったのか。あるいは今後総理は、やることはいろいろなことをやってしまったのだから、もう一ぺん政権を担当して新しい魚度からやっていこうというふうにもとれる。そうなると、いままでの発言とは違ってくる。したがって、このあたりで発言を変えておいて、そして憲法改正をまともに取り上げた政治をやっていこうというふうにもとれる。そのいずれですか。できるだけ近い機会におやめになって、人にかわってやらすために、違った人がやりやすいような道を開かれようという気持ちなのか、あるいは自分が今後引き続いて政権を担当してやっていく気持ちなのか。個人としての考えでけっこうです。
  97. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 個人としても公人としても、私の答えはその二つではございません。はっきり申し上げます。
  98. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 自主憲法をつくるという党議に従わなければならないということですけれども総理が考えておる自主憲法の内容はどういうことですか。おも立ったことでけっこうです。
  99. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まだ私その中身まで考えておりません。
  100. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 そうであれば、ますますこれは不謹慎な発言だと言わなければならない。中身も考えてない。しかもこういうふうな発言の持つ政治的な意味はきわめて大きい。外国に対しても大きいでしょう。国内に対しても大きいでしょう。不謹慎じゃないですか、これは。
  101. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 他党から不謹慎と言われるかもしれませんが、わが党の諸君はよく理解しております。
  102. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 あなたはいま総理大臣ですよ。ここで私は総理大臣としての佐藤さんに話をしている。総理大臣としての佐藤さんに質問しているのです。自民党の一党員としての佐藤さんに質問しているわけじゃない。しかも、総理大臣で自民党総裁であると、こうおっしゃる。しかしそれは意味のあるようでないようなことばなんです。ここではあなたは総理大臣として御出席になっておられるでしょう。総理大臣としてどう思われるのか。あなたは総理大臣として自民党参議院の集会で発言をなさった。よくその内容はわかっている。総理大臣としては当然答えるべきことでしょう、憲法改正の問題重要な問題について発言をなさったのですから。
  103. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 総理大臣としては先ほど来答えております。だから、したがって、ただいま私が改正と取り組んでないということ、そのことは御理解いただいている。しかし、私、総裁として、先ほども申しますように、わが党の諸君に奮起を促した、こういう状態だということであります。これがただいま国会の問題だ、かように言われますけれども、私はさようには思わない。これは私ども純然たる党内の問題です。はっきり申し上げておきます。
  104. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 しかしこれは、そういうふうな態度でこの問題は言い逃げする時期じゃないと私は思うのです。私が先ほど申し上げたとおり、防衛の問題に対する私どもの立場ははっきりさしております。こういうことは総理国民だれが聞いても納得できることじゃないんですよ。私はいまでも総理は、あの発言は、自民党憲法改正のちょっと強そうなのが前におるから、ちらっとそういうようなことばが出たのだ、こういうふうに言うてもらいたいんだ。それをしかし何か居直ったようなかっこうで、一ぺん言うたことは取り消してはぐあいが悪いということでいろいろ言っておるが、言うたびにことばが強くなるような感じがするけれども、劈頭申し上げたとおり、これはにこにこ笑って応答している問題じゃないんです、総理。もっと真剣に答えてもらわなければならないし、もっと真剣にこの問題は考えてもらわなければならない。日本総理大臣です、佐藤さんは。もう一ぺんその問題について佐藤さんのほんとうのところを聞かしていただきたい。私は善意に解釈いたします。悪意にあげ足をとろうなんという考えは、こればかしもありません。
  105. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 善意に解釈していただけばわかるだろうと思います。私は先ほど来申しますように、ただいま憲法基本的に改正するという、そういう問題は考えておりません。このことはもう何度も、私の在任中はさようなことはないということを申しております。しかし私ども所属している政党、これはもう総裁といえどもやはり党議は尊重しなければならぬ、これはあたりまえだと思っております。だから党議できまっておる、これは結党の基本方針でもあります。その自主憲法を持つということ、そういう形のものを持つということ、これはもう自民党基本的な主張であります。これを否定するわけにはいかない。しかし私は現在の状態から見まして、いまのような状態で、この憲法基本的な条章も自分たちの力でどうしようもできないだろう、こんなことではだめだと、大いに党員の奮起を促したつもりです。そのことがいま皆さんからいろいろ批判を受けておるということでありますけれども、私はもうそれなりに御理解をいただきたい。またそのことがけしからぬとおっしゃれば、これはまた別のことですが、私は自民党の党員に奮起を促した、その立場にある。これは私は理解されるだろう、かように思っております。
  106. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 中曽根長官に御質問しますけれども中曽根長官も、総理がいろいろお答えになっているようなお気持ちと同じですか。
  107. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は憲法の問題については、佐藤内閣が続く限り憲法改正しない、そういう考えに全く同調しておる人間でございます。  それから一般論といたしましては、一九七〇年代の半ばごろ、特に沖繩が復帰したあとにおいては、沖繩の民衆に対してもまた全国民に対しても、憲法についてどうでしょうか、このままでよろしいでしょうか、あるいは変える必要があるとすればどこかありますか、そういう意味の再確認行為というものをすることが政治的に適当ではないか。戦争が終わって三十年もたって、昭和二十年に生まれた子供が子供を二人くらい持つ、ワンゼネレーションたちますから、特に百万の沖繩同胞は憲法をつくるときには参加しておらなかったわけでありますから、そういう意味で、復帰後は一応そういうことをお尋ねするということが政治として適当ではないかということを申したことはあります。その考えはいまでも政治家として持っております。
  108. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 この憲法制定されたのは昭和二十一年の十一月三日、実施されたのは二十二年の五月ですけれども、ようやく二十五年になろうとしております。この二十五年になろうとしているときに、私ども総理にかなり盛大な、憲法の意義を国民に徹底さしていくための何か行事をしてもらいたいのだ、こういうふうなことを私は申し上げようと思っておった。また四次防の問題も、単に今年や来年の問題ではありません、五年間続く問題。こういうふうなことを審議する場合にも、憲法改正するというような、そのような気持ちを持ってこの案を立てる立場と、憲法改正しない、何とかして将来とも日本憲法の精神が生きるような、外交的なあるいはその他の政策をとっていこうとする立場でこの四次防をつくる場合と、全く違った立場になる、そう思いませんか。
  109. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 四次防策定についてのただいまの御進言というか御意見の開陳、私もさように思います。これはたいへん重大な意味を持つ、かように思いますから、これは真剣に取り組む、長期計画にしろ、よく考えて決定をする、かように考えております。
  110. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 この十一月に憲法の記念をして、何か集会を持とうという気持ちはありませんか。
  111. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままでも五月三日というか、憲法記念日、これは私自身も一、二回参加したことがあります。これは改正のほうではありません、間違いのないように。しかし、そのうちに政府自身がこの行事をしないようになった、こういうことで、これはしないことが一体どうなのか、こういうことですが、それほど国民憲法が定着している、こういう見方もあろうかと思います。またその中身にしても、先ほど来申しますように、いわゆる国民の血となり肉となっている、かような状態でありますから、憲法改正、こういうことについてはよほど基本的に取り組むことでない限り、そう簡単に憲法改正、これを口に申しましたからといって、できるものでもないだろうと思います。  ただ、いま自民党の中で、この十一月時分に一案を出したい、こういうような意見があるやに聞いております。まだ私自身の指示を受ける状態にまでなっておりません。しかし、これがただいまのようにお尋ねがございますから、三役等にも、その後の取り扱い方について、党としての態度をもっと積極的に私自身きめざるを得ないのじゃないか、かようにも思いますが、私まだそこまでは聞いておりません。したがって、まことに不熱心きわまると言われてもしかたがありませんが、その程度に改憲の問題には私自身が態度を明確にしておらない、いままでのところはしないという、そういう方向で来ておる。とにかく佐藤内閣自体はそういうような状態である、かように御理解いただきたいと思います。
  112. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 念を押しますけれども、十一月に自民党の中でそういうふうな意見があるというのは、憲法の意義をたたえるというか、この定着しつつある状態を確認する、将来もこれを伸ばしていくという意味の計画ですか、あるいは改憲じゃないでしょうね。
  113. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そこがどうもよくわからないのです。何か改正意見の要綱を出す、こういうような考え方があるかに聞いております。私は、いまの憲法そのものをもっと理解するという、そういう意味の運動なら、これはもう五月三日でしかるべきなんで、その他の時期を選ぶべきではないだろう、かように思います。さように考えております。
  114. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 自民党の中でそういうふうな有力な意見があればあるほど、これは私はあげ足をとるつもりじゃないのですけれども総理があのような発言をするということは、私はほんとうにこれは大事な問題を言ってくだすった、何とかこれはことばの走りであってほしい、これはこの内閣委員会皆さんにきのうもおとといも言った。皆さんも、たぶんそうだろうと言っておった。走りだろう、こう言っておった。だけれども、きょうの総理のいろいろな答弁を聞いておりますと、どうも走りじゃないらしい。しかし、総裁として言った、個人として言った、だんだん後退している感じもあります。総理の気持ちはわからぬじゃありません、わからぬじゃありませんけれども、しかしこの問題は、きょうは私はもっと四次防の問題について質問をしようと思ったのですけれども、私どもはこの問題については、防衛の問題の審議の前提なんです。この基本的な前提がくずれてきますと審議が全くできない、いままでの態度では。私どもはこの自衛隊が必要でないということを前提に立って審議しているわけじゃありません。最小限度の自衛措置は必要である、またそれが認められるような憲法解釈をしておる、先ほど申し上げたとおり。しかし一番大事なことは、国の政治をあずかる総理としては、できるだけ近い将来に平和憲法の精神を実現できるような国際緊張の緩和をはかる、軍縮をはかっていく、この目標に向かっての前進の政府の姿勢をくずしてもらっては困るのです。これをしっかり持っておられれば、現在ある程度の、四次防を持とうと、戦力でないと言わなくてもいい、私は戦力であると言っていいと思う。持とうと、それはそれでいい。ただ国の政治の大きな目標の平和への姿勢がく、ずれたのでは、これは問題にならない。また、これは日本国民のしあわせにもならない。そういうことに関連したことを総理はお触れになっておられますよ、いまの発言は。総理はそういう気持ちでなくても、そういうふうな議論に発展していく議論なんです。したがって今後とも、もし総理お答えになるようなことであれば、もっとこの問題については慎重な、国民のために——日本は平和なしには生きられないのだ、全くそうですよ、戦争前の日本戦争なしには生きられなかった。満州を取り、中国を取らなければ日本の拡大はできなかった。戦後の日本はそうじゃない。平和なしには文字どおり生きられない、そういう大事な政治を総理はあずかっておる。したがって今後は、平和に向かっての政府の諸施策は、現実のいろいろな矛盾をこなしながら平和に向かって前進するという、この大きな方向を変えてもらっちゃ困るのです。そのことをひとつ、そうするという答弁をぜひともいただきたいと私は思う。
  115. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 種々御親切な御提言、ありがとうございました。厚くお礼を申し上げておきます。
  116. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 終わります。
  117. 天野公義

  118. 東中光雄

    東中委員 先ほど総理は、いまの憲法を忠実に守る、こう言われたわけですが、いまここに文部省が「新しい憲法の話」ということで、昭和二十二年の八月に出したパンフがあるわけですが、ここでは戦争放棄を示す絵というのをかいて、炉の中へ軍艦や飛行機や大砲や戦車を全部焼いている、そうしてあとは下から民生のためのいろいろなものが出てくる、こういう絵をかいて、兵隊も軍艦も、およそ戦争するためのものは一切持たないのだ、こういうパンフレットがずいぶん文部省から出されたわけです。いま三次防に続いて四次防あるいは五次防をも含むような内容のものが出されている、軍備増強を急速にやられているわけですが、憲法を忠実に守るといわれたことと、二十二年のころのこの文部省の国民に対して出されたこれとは、まるっきり正反対に動いておるわけですが、どういうふうにお考えになるか、所見をお聞きしたい。
  119. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど大出君がたいへん歴史的に、経過的に説明してくれた、かように思っております。先ほどマッカーサー司令部、マ元帥と吉田総理との間で、どうも日本は再軍備すべきだ、こういうようなマッカーサーからの話があったが、吉田さんは頑強に、日本は再軍備すべきでない、こういう主張をされました。当時いろいろ、その場合に日本の協力なしにはどうもアジアの平和は維持できない。それじゃ日本の軍事工業力、それを動員したらどうだ、こういうようなやりとりがあった。これは私吉田さんからも直接伺っている。そういう当時の所産と、それから後に憲法ができた後の所産と、いろいろあるだろうと思いますし、また憲法ができましても、経過のうちにだんだん変わってきている。そこらのところも十分御理解いただいて、そうして過去の問題は過去の問題として、現実の問題が憲法違反でないんだ、そういう立場に立ってやはりものごとを見ていただきたい、かように私思います。
  120. 東中光雄

    東中委員 憲法が同じ憲法で、二十二年のときに政府が言っておった方向とはまるっきり逆の方向へ行っている。確かに変わっているということはいま首相の言われるとおりですが、まるっきり逆の方向へ行っているということについて、憲法を忠実に守るといわれる首相の考えといいますか、それをお聞きしたいわけであります。
  121. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 自衛権を否定しているものではない。いやしくも独立国家である以上、みずからの存立を守る自衛の力、これは当然もう基本的にあるのだ、こういう考え方でございますから、いわゆる憲法の考えと矛盾はしない、かように私ども考えております。
  122. 東中光雄

    東中委員 四次防の考え方として、今後、ニクソンドクトリンが出されて、それに基づいて同盟国に対する自助をアメリカ側は要求している、そういうことの要請にもこたえるということを含めて、この四次防の策定というのがあるというふうに防衛庁側では言われているわけですが、実際航空自衛隊がファントム中心に増強されることによって、米第五空軍に一部肩がわりをしている、こういうふうに質的に変わっていく面がありますし、海上自衛隊はヘリ空母や対艦ミサイルあるいは高速ミサイル艇、こういうことで沿岸警備から米第七艦隊の対潜掃討、極東防衛の一翼を分担するようになってきた。あるいは陸上自衛隊も在韓米陸軍の戦略予備としての役割りを果たしている。こういう質的な強化がされていると思うのですが、ニクソンドクトリンとの関係での一部肩がわり、安保体制、安保条約のアメリカとの軍事同盟の中でのそういう一部肩がわりという方向での大きな増強というふうに考えるわけですが、その点どうでしょうか。
  123. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 東中君、どうでしょうね。日本の場合アメリカの肩がわり、先ほどもちょっと触れましたが、肩がわりのできる面もありますけれども、もう全然できないものがある。できる、できないでなくて、禁止されているもの、こういうものもあるんじゃないでしょうか。私はその点がたいへん重大な意味を持つんだ、憲法の持つものはそこにあるんだ、かように理解しているわけです。先ほど憲法を守る、こういう意味お話をしました。あるいはさらにもっと突っ込んでのお話があるのかと思ったらそのまま過ぎて、ここでちょっと誤解を受けても困るんですが、専守防衛というか、日本が侵された場合に初めてわれわれが自衛力を働かすのでありますから、したがってアメリカの持っている兵力と日本自衛隊自衛力、これはもう活動の範囲でも性格が違うわけです。こういうことをやはり前提にしなければならない。したがってその意味では肩がわりができないということであります。私はただ単に核兵器を持たない、つくらない、持ち込みを許さない。こういうばかりでなく、やはりわれわれの自衛力の活動の範囲、非常な消極的なものだ、こういうことを忘れてはならない。したがってアメリカの肩がわりというそういうものも限度がある、このことを忘れてはならない。かように思っております。
  124. 東中光雄

    東中委員 限度はある。しかし肩がわりのできる分は肩がわりをしていく、こういうふうにいま言われたようにも聞こえたのですが、そういうことですか。
  125. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本の国土防衛というか、日本侵略された場合に自分たちの力でこれを排除する、そういうことはアメリカにたよらないで日本自身でやったらいい、かように思っております。しかしアメリカの兵力というものはいわゆる戦力であり、それはいわゆる戦争抑止力にはなっておりますけれども自衛自身が強大になって戦争抑止力にまでなる、こうはなかなか言えないのではないか。私どもは、現実に侵害を受けた場合に自衛力を働かす、こういうことであります。そうしてこのとうとい、またわれわれに忘れることのできないわれわれの祖国は、われわれの力で守る、こういうことでありたい、かように思うのであります。その意味においての自衛力の整備、これはやります。そのことが同時に本土における駐留軍、アメリカがだんだん兵力を減らしたゆえんでもあります。またそういうことが、同じことが、祖国に返った後の沖繩においてもあってしかるべきだ、かように思いますが、そこらに誤解のないようにお願いします。
  126. 東中光雄

    東中委員 自衛隊の行動の範囲なんですけれども、いま自衛権の範囲ということで国土を守る、こういうところから出発するようにいわれておるわけですが、いままで公海、公空での自衛隊の行動については、たとえば一九六〇年の安保国会での、当時の岸総理答弁では、わが国の領土を出て他国の領土に行くことは絶対にない。ただ海と空の関係においては、領海や領空を出て公海や公空の一部に出ていくというようなことは、実際問題としてあり得ると思う。一部に出ていくというようなことは実際問題として起こってくるという程度の二とを言われておるわけですが、六九年になりますと、当時の有田防衛長官は、領土を守るためには公海の上でも侵略を阻止することは当然なことではなかろうか。少なくとも日本並びにその周辺近海あるいはその上の空あたり、公海、公空で、できるだけ領土、領海の外で排除するほうがいいんだ。今度はできるだけ外へ出ていくんだということ、公海、公空で、こういうことになった。ところが中曽根長官は去年の三月の予算委員会で、日本周辺における制空権あるいは制海権の確保ということを言われて、日本の防衛に必要な範囲、非常にばく然と言われておったわけですが、ことしの二月一日の予算の答弁では、当面われわれが特に考えなければならないのは日本近海における潜水艦の跳梁を許さない程度の力、南西諸島から沖ノ鳥島、南鳥島をめぐる以内の地域において相手の潜水艦の跳梁を許さない、そういうぐらいの力を整備していきたい、こういうふうに言われているわけですが、日本海岸側のほうは言われておりませんけれども、いずれにいたしましても南西諸島から沖ノ鳥島あるいは南鳥島、ずいぶん広いわけです。西太平洋の北部全体になるわけですが、潜水艦の跳梁を許さないということになれば、いま原子力潜水艦はずいぶん深いところを、しかも五十ノットで走る。二カ月間も潜航する、これを捕捉するだけだってたいへんなことだと思うのですけれども、うんと軍備を増強せなければいかぬと思うのですが、ところがその跳梁を許さない程度の整備をしていきたい、こうなってきているわけです。四次防で出されている方向というのは、長期の目標ということで今度は七〇年代全体の、さらに拡張していく方向というものも出されているようであります。そうしますと、四次防を終わるいわゆる五カ年計画、その次の五カ年計画を入れれば、一部でいわれているようなマラッカ海峡あるいはオホーツク海というようなところまで、どこまでいくのかわからないということになると思うのですが、公海、公空上における航空優先、制海権の確保、そういった面での範囲、そのめどというふうなものを自衛隊一つの行動の限界としてどういうふうにお考えになっているか。
  127. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 なかなかむずかしい限界を提案されました。私は、問題はやはり日本の防衛、専守防衛といいますか、そういう範囲で国益をどの辺で守り得るか、こういうこともありますが、一方でやはり日本の経済的な、財政的な限度もありますし、そう簡単にいまここで議論いたしましても、それはきまるものじゃない。ただ、いまいずれ近く第四次防衛計画が出るでしょうが、その際に御審議をいただきたいと思いますが、いま四次防衛力計画も、大体これで質問が終わったというようになってはたいへんだろうと思いますので、問題を掘り下げていいんじゃないかと思いますが、ただ、私いまの事柄も、二百海里領海説を私どもとりませんけれども、とにかくいままでの三海里領海説ではどうも不十分なように思う。これはもっと広げないといかぬのじゃないだろうか、かように思いますから、国際学会でいずれはそういうものがきまるだろうと思いますが、そういう際にやっぱり漁業関係、これはもう国防上の問題よりも漁業関係が主でしょう。海産資源の問題が主でしょうが、そういう意味からも、領海の範囲ももう少し拡大されるだろう、かようなことを予想しながら、ただいまのような御議論に対処してまいりたいと思います。ただいま、マラッカ海峡あるいはオホーツクあるいは日本海云々、そういうところの防衛線が賜るとは私ども考えておりません。しかしながら、とにかく外交そのものから申しまして、平和外交、これは一体各国の共感を覚えるような、そういう方向で進むべきじゃないだろうか。それが主としていままでのところは、国連の場においてなされてきた。しかしやっぱり国連の場だけではいけない。やっぱりそれぞれ相対の関係で話をつけていく、そういうような状態だと思っておりますので、日本の置かれている立場から見まして、これは日米、日ソ、日中その他の関係が円滑にいくようにあらゆるくふうをすべきじゃないか。ただ防衛力だけを増大するのが能ではない、かように私、思いますから、いわゆる平和外交を展開することによって金のかかることも押え得るんじゃないだろうか、かように思います。
  128. 東中光雄

    東中委員 時間がございませんから……。ただ、公海、公空へ出ていく、そういう能力を持つ、その範囲が広くなっているという方向が、先ほど申し上げたように、六十年からこの十年余りの間にどんどん進んできているということとの関係で、防衛力を伸ばしていくめどを首相はどう考えておられるかをお聞きしているわけですが、今度の防衛庁原案には五カ年計画と、それから長期の目標があって、その長期の目標の中に——素案には数字も入っておったけれども、さらにいわゆる四次防五カ年計画に続いて五次防も同じ程度の伸びが数字では、素案では出ておったのが、総理の周辺からやめたほうがいいだろうというような意思表示があってやめたんだというような新聞報道があるわけです。ですから、この五カ年計画じゃなくて、さらに七〇年代十カ年計画というような方向での増強計画をお考えになっているのかどうか。制空、制海権の拡大の経過とにらみ合わしてお聞きして、質問を終わりたいと思います。
  129. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの日本の新しい戦後のあり方として、特に私どもしばしば強調するのは、仮想敵国を持たないということですね。これはもうはっきりしている。仮想敵国を持てば、どこそこの国に対してあれだけの力があるから、それより以上にやれるんだ、こういうような考え方が当然生まれてくるだろう。この仮装敵国を持つという考え方は持たない。これはもうはっきりしている。しかし自分たちの祖国、この国土は自分たちの力で守りたい、これはどこの国よりも日本の場合には非常に強くその点が出ていると思います。  私はかつてドゴールさんに会ったときに、ドゴールさん自身が、自分はだれよりもフランスを愛する、だからフランスの安全確保のためにあらゆる考え方をする、おれより以上にフランスのことを考える人はないはずだ、それが他国の大統領のポケットのキーでこの国の安全が確保される、情けないことじゃないか、こういう話をされたことがあります。これは私は直接ドゴールさんから聞いたのです。その結果、ドゴールさんは核武装に踏み切った人であります。しかし私は、日本はそういうようなことはしない、核武装には踏み切らない、これは非核三原則ではっきり出している。同時にまた、日本自衛力、いわゆる国際紛争を武力によって解決するというような国柄ではない。これはまた歴史的にも新しい進路であります。そういう意味で、それはまわりの国とは違う。ここにわれわれの行く道があるわけであります。だから、私は国を愛するというか、自分たちの国はどこまでも守る、自分たちの力で、かようには申しましても、これはおのずから限度がある。やっぱり違う道を選ばざるを得ない、かように思っております。だからこそ日本侵略された場合に、局地戦に対して、通常兵器に対する侵害に対してはこれを排除する力を持とう、これがいまの防衛の基本方針だと思います。その範囲でやってまいりますが、しかし世の中が進むに従って、いわゆる局地戦にしろ、いろいろ相手の力が強くなる、それを考えざるを得ない。そうすると日本自衛自身も、やはりそれに対応して強化せざるを得ない、かように私は思います。そこで、それが際限なく、四囲の状況の変化だということでやられては日本国民は困る。野党側からもいろいろな主張もある。先ほどから、あるいは中級国家でいけ、あるいは専守防衛だけでは不十分だというような議論まで展開されたのも、そこにあるだろうと思います。政府自身がそういう羽目をはずすような考え方は毛頭ございませんから、この具体的な案については十分御審議をいただきたいと思いますが、しかしいまの基本的な考え方は、ただいま申し上げたとおりであります。私はそういう意味で、ひとり武力には武力をもってする、そういう限られた関係日本の国の安全を確保するということでなしに、やっぱりあらゆる交渉その他をもって日本の安全を確保すべきじゃないか。そこに外交の持つ価値もあるわけであります。外交の余地のない武力だけによって安全が確保される、そういうものじゃないのだ、だから、やっぱり外交——これは広い意味ですよ。狭い意味の外交ではなくて、広い意味の外交、そういうものもその国の安全を確保するに非常に役立っている、こういう意味で大いに伸ばすべきではないか、かように思います。したがって、あらゆる面でその国の安全は確保していくが、そういう場合に、やっぱり気をつけなければならないのは、力に対しては力、こういうように限られた考え方でやると、憲法の精神にも反するし、また同時に、それはわれわれの国の安全を確保するゆえんでもない、かように私は思いますので、誤解のないようにお願いいたします。
  130. 東中光雄

    東中委員 時間がありませんので、終わります。
  131. 天野公義

    天野委員長 この際、暫時休憩いたします。本会議散会後再開いたします。    午後一時休憩      ————◇—————    午後二時四十九分開議
  132. 天野公義

    天野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。伊藤惣助丸君。
  133. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 毒ガスの質問に入る前に、先ほど総理並びに防衛庁長官から憲法問題をめぐりましてるる発言がございました。その中で同僚の和田委員からの発言に対して、防衛庁長官から、沖繩返還後の七五年ごろ憲法について国民にこれでいい、だろうかというようなことをはかったほうがいいのではないか、そういう発言があったのでありますが、もう少し具体的に長官答弁を伺いたいのです。
  134. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は防衛庁長官になる前から、政治家といたしまして日本の民主政治の基本的なあり方をいろいろ研究してまいりましたが、自民党のわれわれの同志の研修会等におきましてそういう問題にも触れまして、たしか三年くらい前から日本憲法については軽々に着手したり改正云々を論ずべきものではない、非常に慎重なる配慮を必要とする、それで、七〇年代後半になれば戦争が終わって三十年以上もたつから、そしてそのときには沖繩も返還されるであろうから、沖繩が返還されて以後、国民に対して過去三十年間の政治を総ざらいして、あるいは政治のみならず、政治、経済、文化、宗教あらゆるものを総ざらいしてみて、どこか間違ったところはないか、あるいは戦後出てきたものでいいところは何か、改むべきもの、直すべきもの、新しく創造すべきもの、そういうものをみんなで一回反省してみて点検してみることは意味のあることだろう。その中には憲法も含まれるであろう。そして国民に対して国民意思を聞いてみる。これでいいですか、あるいはどこか新しくつけ加えることがありますか、あるいはどの条章、どの原則が国民の血となり肉となっている、それを尊重すべきであるとか確認すべきであるとか、そういう自由な国民発想に基づく意思を聞くということは、日本の民主政治を強めていくために非常に枢要なことである、意義のあることである、そういうことを私申しました。そういう意味のことを先ほども申し上げたのでございます。
  135. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そのことは佐藤総理とも話し合っておることですか。
  136. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 全然話し合っておりません。
  137. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうしますと、これは長官個人として、または自民党の議員としてのお考え方であろうと思いますが、そうした場合に、憲法のどこをどのように問題にすべきだというふうにお考えですか。
  138. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は個人としまして、現在の憲法につきましては過去にいろいろ考えを持っておりました。率直に申し上げて、私ら復員軍人で第一線で戦争してまいりまして、帰ってまいりましてからマッカーサー司令部のもとに日本人が自由を失って、憲法も含めて当時法律制定について一々GHQの許可を求めなければできない。ある場合には時計をとめて時間をかせいで法律を通したということすらございました。そういうような経験をしてみて、民主政治というものはどういうものであるかということを考えてみた場合に、やはり完全な自由意思のないところにはほんとう意味の独立もないし民主政治もない。民主政治の基本は人民の自由の意思である。そういう基本的観念に立って、いまの憲法制定の因縁についてはいろいろ問題があると実は思っておったわけです。それで占領下、戦後にかけては、そういう制定に瑕疵があると思われるものは制定の瑕疵を直すことは民主政治として当然ではないか。そういう考えで憲法改正ということを唱えたことがあります。その主たる原因はいまのような制定手続に関する民主的見解から来ていることでありました。しかし憲法調査会の中に入っていろいろ勉強もし、その後、日本の経済成長につれて厳然として市民社会もここに育成されて、また自民党憲法改正を考えてもなかなかできない、非常に大きな市民社会の壁ができていることを厳然と見まして、そして非常に反省したわけであります。これだけの大きな壁ができているということは、われわれの知らない何ものかが戦後ここに生まれている。それが何であろうかということを考えると、私たちは戦争へ行くまでは戦前の教育を受けたし、戦争中はまた軍の教育を受けたし、戦後はまたマッカーサー司令部というものに対する憤激があったりして、そういう抵抗的な感覚からものを見てきたけれども、そういうものを離れまして、厳然として出てきたその事態を公平に人間のあり方や社会のあり方という面からすなおに見た場合に、やはり非常に貴重なとうといものが実は生まれてきているのではないか、そういう反省を実はしたわけです。それがいまの憲法と合致するものが非常に多いわけです。平和主義、国際主義、民主主義、人道主義、そういう点についてはやはり国民が特に——国民といえば統治されるほうですから政治に引っ張られるほうですね。統治されるほうの身になってみればようやくこういう自由を得たものを、また統治するほうの側からかってに動かしたり何かしてはいかぬ、そういう厳然たる意思があったと思うのです。私らは、大体、戦争へ行ったりあるいはそれから国会議員になったり、どっちかといえば統治する側の立場で来たわけです。だからわれわれが無意識にやっておることも、そういう統治する支配者の立場の意識が非常に強かったんだろうという気が実はしておるわけです。支配される側の、統治を受ける側の国民の立場というものをもう一回見なければならぬ。そこで、やはり日曜になれば家族で自動車に乗って近所へ行くとか、私らがドイツやイギリスへ行って戦後見たありさまが日本にずっと出てきたわけです。なるほど、こういう市民社会の平和というか、生活の幸福というものを大事にかかえて、これをみんな放すまいとしておるんだ、そういうことが非常に如実に、反省しながらわかってきたわけです。そういうような戦後の新しい価値というものについては国民が放すはずはないし、われわれも賛成である。われわれが考えておる民主主義というものはそういうものであったわけです。そういうものが現に生まれておることと、われわれが、戦後出てきたその衝動的な感情というものが非常に科学的に分析をされないで、無意識のままに対立している形で遊離しておったのではないか、自民党議員の中にはいまだにそういう遊離した状態の者がかなりあるのではないかということを実は考えております、特にお年寄りの中には。そういうようないろいろな反省をしまして、しかしやはり手続に関する問題というのは国民の心にまだ残っておるわけです。その点は、中身はいいのですけれども手続に関する問題というのは国民に聞かなくちゃいかぬのではないか、そういう気持ちがしておりましてそういう発言になったわけであります。新しく生まれたそういう貴重な価値まで失おうとは断じて思いません。
  139. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうしますと、自民党のいわゆる自主憲法制定の動きを大別いたしますと、四つほどありますね。その直そうとする考え方中曽根個人の考え方は一致しておるのですか。
  140. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 自民党側でどういう点を直そうとしておるか、私まだ知りません、最近の党の動きはよく存じませんから。しかし憲法調査会長の稻葉さんは私の親友であり、非常に尊敬している先輩でもありますから、私は稻葉さんに個人的に、憲法問題にいろいろ手をつけて、いろいろ世上に騒がれるようになるのはまだ過早ではないか、少なくとも沖繩が返ってきてから以後のことにすべきではないか、それが沖繩の皆さんに対するエチケットではないかということを申し上げて、自重を促したことはあります。
  141. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 要するに佐藤総理発言といい、あなたの発言といい、問題は憲法改正したい、または改憲勢力をとるんだというその発言の裏には何があるかということを国民は聞きたいわけです。ただそれを言われただけではわからぬわけです。いま長官が、長官というよりも個人として見解を述べられたわけでありますけれども、その考えが党を離れてのあなたの見解なのか、また党に沿った一つ自主憲法制定しようとする骨格の四つの範疇を出ておるのか、その中のものなのか。政府委員の方で、自民党において基本的に憲法改正しようという提案があったわけですよ、私も知っておりますけれども正確にどなたか答弁していただいて、それについて長官にまたどう思うか聞きたいと思います。
  142. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私がいま沖繩が返ってきた以後ということを申し上げたのは、すぐかけるという意味じゃないのです。少なくとも自民党はそういうことについて研究しだすとかあるいはそういう憲法問題に着手するとかなんとかいうことを発動するについては、少なくともそれ以降であるべきではないか、そういう意味に解していただきたい。もう返ったらすぐやるべきだという意味にとられては困ります。だから私は七〇年代後半ということを、ずっと前から申し上げております。  それからもう一つ、四つの項目というのは、どういう項目ですか。もしお知りでしたら、おっしゃっていただきたいと思います。
  143. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それを、だから聞いているわけですよ。自民党さんのおっしゃっている憲法改正の中に、国際的な平和をうたうとか、それから現在の自衛隊を省に昇格するとか、あるいはまた自衛権としても、まあこれは法律になるかどうかわかりませんけれども、何らかの方法でやはり徴兵制度ということも、その憲法解釈の中から可能な方向の改正のしかた、こういったものが盛り込まれているわけですよ。それはもう長官よく御存じだと思うのですが、まあこれは話はとても飛躍しているわけですけれども、私は少なくとも先ほどの総理答弁を聞いた中では、どこまでも言ったことについては発言を取り消しておりません。総理としては現在の憲法を守る、総裁としては改憲勢力をつくるんだという発言は、取り消してないわけです、結論的には。そしてその先には何があるかということについては、何ら一ぺんも触れられなかったわけです。さらに、いま長官に聞いたのは、先ほどおっしゃったことが非常に気になるものですから言ったわけです。何も急にやるのかやらないのか聞いているわけじゃない。やはりそういうふうに考えられているその王手は、何を国民に問題として問いたいのかということなんですよ。私たちは自民党のそういう憲法改正の動きも知っております。また党にあるそういった自主憲法制定の動きも知っておりますけれども、われわれは少なくとも平和憲法はいいと思っております。公明党は平和憲法はどんなことがあっても守りたい、この平和憲法を守りながら、必要最小限の自衛力というものはやむを得ない。違憲性ということはあるかもしれませんが、必要最小限に押えていこうという考え方はあるわけですか。ですから、私はそういった一つ憲法の見方をしているわけでございますけれども長官がもしそういったことについて国民の前に問題を提起して、そして考えてもらうというのならば、それ相当にずいぶん前からこういう方向で行くべきじゃないのかという具体的なことを言われなければ、むしろ現在のような四次防が五次防と大きくなり、あるいはまた自主憲法を改定するんだという動きが党内にずいぶん出てきておるというようなことから見ますと、非常に私たちとしてはその点を危惧するわけです。そこで聞いているわけです。
  144. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私が言っているのは、その手続上の問題を言っているわけです。中身については賛成だ。特に平和主義、民主主義、国際協調主義、人道主義、基本的人権の尊重、こういうようなところは、もう全面的に賛成です。それで問題にしているというのは、ちょうど昭和二十四年であったと思いますが、鈴木法務大臣、当時法務総裁といいましたが、あのころ、憲法が施行されてからマッカサー司令部から、この憲法を再点検してはどうかと、当時二十四年に言ってきたことがあると思います。憲法調査会の調査でそれがあったことが、私の記憶に残っております。ところが当時は、そう問題にすることもなく、当時はもう食べるほうが忙しかったのです。もう食糧がなくて、米国から食糧を輸送してもらうことが、われわれ政治家の非常に大きな仕事で、何十万人と飢餓することを防ぐということに専心的に取りかかっていた時代で、憲法どころの話ではなかったのが、実際の社会的情勢でした。それで国会は、まあいいじゃないかということでそのままにしたことがあったわけです。そういうことが私頭にありまして、やはり三十年くらいたった今日こそ、いままでの過去の経験をもう一回反省してみて、そしていいところは伸ばし、もし悪いところがあればためる、日本がもっと二十一世紀に向かって前進するだけの基礎工事を、三十年というゼネレーションがたったら、政治、経済、文化、社会、芸術全面に向かってやったらどうか、そういう気持ちがあったということです。いま申し上げたように、いま私が憲法の非常な長所であると申し上げたところは、やはり厳然として守るべきである、そう思います。
  145. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 手続の問題で七五年ごろにやってはどうかという発言ですが、これはまた……。
  146. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 半ば以降ということです。
  147. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうなりますと、やはり沖繩返還の七二年から完全に沖繩の態様が本土並みになるようなとき、やはり中ごろになるのではないか、私はそう思います。  それで手続の問題がそうですから、それ以上進みますと、また飛躍した質問になりますので、その問題はまた別の機会に議論することにしまして、本来の質問に入りたいと思います。  まず毒ガスの問題ですけれども、六十三国会において、たしか沖繩に初めて毒ガスがあるということが明らかになりまして、これが大きな議論を呼び、そしてもし沖繩にそういう毒ガスがあるならば、これはもうたいへんなことだ、当時屋良主席は、その毒ガスが沖繩にあるということについて、世界最悪の基地である、こういうふうに発言をしたことを私は覚えております。そこで、その毒ガス問題については、その後いろいろな角度から質問されまして、そして結局は沖繩からその毒ガスを撤去させるというふうになったわけであります。しかし、これがもし沖繩ではなくて本土であったら、たいへんな問題になるわけであります。返還前の沖繩であったために、しかしそうであったとしても、非常に大きな問題になったわけであります。そこで、この毒ガスの問題について、当時外務委員会内閣委員会、予算委員会等々において質問をしておりますが、それを見てまいりますと、毒ガス兵器というものは、安保にある事前協議の対象ではなくて、その毒ガスのそこにあること自体が、もう問題なんだということで、きわめて強い調子で愛知外務大臣が答弁している議事録もございます。そこで外務省にまず伺いたいのですが、この毒ガスの問題については、一九二五年ジュネーブ議定書の審議が行なわれた際に、いろいろな観点から毒ガスに対しての政府考え方が明らかになっております。そのジュネーブ議定書に禁止されている毒ガスは、昨年の四十五年五月六日外務委員会に提出されました「ジュネーブ議定書によって禁止されている化学、細菌兵器」という表が出されたわけです。そしてその中にいろいろな問題があるわけですが、まずその点から、外務省に毒ガスに対する見解、そして議定書によって禁止されている化学、細菌兵器についての答弁を願いたいと思います。
  148. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 ただいま伊藤先生がおっしゃいましたように、一九二五年のジュネーブ議定書で禁止されておりますところの化学、細菌兵器につきましては、当時五月六日付で表を御提出申し上げましたが、もちろんそのとおりでございまして、今日もわれわれはこの解釈で間違いないと存じております。申し上げますならば、ジュネーブ議定書が禁止の対象としておりますところの化学、細菌兵器は、ガス状たると液状たると固体たるとを問いませず、直接的な毒作用によって敵の兵士を殺傷するための化学物質をさしているわけでございます。その種類といたしましては、まず第一に肺に障害を起こし、窒息によって死を招くところのホスゲンなどの窒息性ガス、それから第二には血液組織の酸素利用を妨害いたしまして死に至らしめる青酸あるいは塩化シアン等の血液ガス、それから第三には皮膚にやけどのような発ぽうをさせるマスタードなどのびらんガス、それから第四には神経系統をおかしましてすみやかに死に至らしめるところのGB並びにVX等の神経ガスであります。またそのほかに毒素兵器といたしましてボツリヌス毒素も含まれております。これらは化学兵器と呼ばれるものでございますが、さらにこのジュネーブ議定書は、細菌兵器といたしましてたとえばコレラ菌とかペスト菌とか野兎病菌など、これらが含まれていることは、さきに五月六日付の表で御提出申し上げたとおりでございます。
  149. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いまの説明ですがね、国連局から出した四十五年五月六日の、これと同じものだと思いますが、例示のほうを少し明確に読んでいただきたいと思います。
  150. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 ただいま申し上げました化学兵器のうちで窒息剤、これはここに例示しておりますとおり塩素、ホスゲン、ジホスゲン、血液剤といたしましては青酸、塩化シアン、びらん剤といたしましてはマスタード、それから窒素マスタード、ルイサイト、それから神経剤といたしましてはGA(タブン)、それからGB(サリン)、あるいはGD(ソマン)、VX、それから毒素といたしましては先ほど申し上げましたポツリヌス毒素、それから細菌兵器でございますが、これはコレラ菌、ペスト菌、炭疽菌、鼻疽菌、それから類鼻疽菌、それから野兎病菌でございます。
  151. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうしますと、このようなジュネーブ議定書にある毒ガスというものはたいへん危険なものであり、こういうものが日本の国はもちろんのこと沖繩にもあってはならないという強い見解を示しているわけですが、このことについて、昨年社会党の楢崎先生やあるいはまた樋上委員等が質問しております。その中で確認をしておることは、日本本土にガス兵器がありますか。これに対して当時の東郷政府委員は、「いまのオズボーン公使の話は、致死性ガスはないということでございます。」ガスはないとはっきりしているわけであります。その点いかがですか。
  152. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 これはないことは確かでございますけれども、私は主管の局長でございませんので、むしろ防衛庁のほうからお答えいただきたいと思った次第でございます。
  153. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 防衛庁どうですか。
  154. 久保卓也

    ○久保政府委員 従来本土にはガスはないというふうに聞かされておりますし、私もそう確信しております。
  155. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 もう一回念のために聞きますけれどもアメリカ軍がそういう毒ガス兵器を持ち込んでいないというお答えはまあ公式の発言ではしておりますけれども、もしこれが国内に持ち込まれておった場合にはどういうことになりますか、国内法上どうなりますか。
  156. 久保卓也

    ○久保政府委員 国内法と直接関係がないのではないかと私は思いますが、確信持てません。
  157. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 外務省どうですか。
  158. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 これは国内法上の問題でございますから、私は何とも責任を負っての御説明を申し上げられませんけれども、少なくともジュネーブ議定書に関します限りは、これで禁止の対象といたしておりますのは、いま申し上げましたような化学兵器及び細菌兵器でございます。それの戦時における使用を禁止しているのがジュネーブ議定書でございますから、したがいましてこのジュネーブ議定書の問題にはなり得ないわけでございます。
  159. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いまの答弁ちょっと問題がありますが、では戦時以外にはいいのですか、平時には。
  160. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 戦時のときにいい悪いの問題と申し上げますよりは、このジュネーブ議定書の禁止しておりますのは、いま申し上げました化学兵器及び細菌兵器の戦時における使用を禁止しているわけでございます。先生のただいまの御質問と対象が違うわけでございます。
  161. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうじゃないですよ、ぼくが聞いているのは。戦時における使用の禁止でしょう。でも平時にはあってもいいということですか。
  162. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 平時にあっては、何と申しますか議定書上は一こう差しつかえございません。
  163. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは、現在沖繩にある毒ガスは平時じゃありませんか。あっていいということになるじゃありませんか。
  164. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 繰り返して申し上げますけれども、あっていい悪いの問題ではなしに、ジュネーブ議定書上は、これはたまたまアメリカはジュネーブ議定書をまだ批准いたしておりませんけれども、かりに批准いたしたといたしましても、何ら違反になるわけではございません。
  165. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ちょっと要領を得ないのですが、たそれじゃ外務大臣が答弁した議事録を読んでみいと思うのです。ここにもおりますが、わが党の樋上委員がこういうふうに質問しているのです。「政府は、アメリカ軍は日本本土にBC兵器を持ち込んでいないとはっきり御答弁ができますか。」こういう樋上委員の質問に対しまして、外務大臣はこう答弁しております。「これは昨年来申し上げておるとおりでございます。そして先ほど楢崎さんからも御質疑がございましたが、たまたまというと、また問題が起こるかとも思いますけれども、この条約議定書の対象として使用禁止になっておりますこういう種類のものは、日本本土に米軍としても保持していない」ちょっとあといろいろありますけれども、そういうふうに申されております。間違いありませんか。
  166. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 そのとおりだと思います。
  167. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは申し上げますが、私はここに神奈川県の相模原兵器補給廠に、この議定書にある、先ほど国連局長が読み上げました議定書の中にあるガスがあることをこのとおり写真にとってまいりました。この写真を防衛庁長官に見てもらいましょう。  そこで伺うわけでありますけれども、外務大臣が日本本土にはガスはない、こういうふうに言われておりますけれども、実際には相模原兵器廠にはちゃんと厳然とそこにある、こういう事実がはっきりしたわけでありますが、それについて政府はどう考え、どう処理されますか。
  168. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 詳細に詳べてみます。ただBC兵器ではないのじゃないか。塩素ガス、こう書いてありますが、これは警察や何かがときどき使ったりする、そういう意味の基地を警戒したりするために必要なものではないかと想像されます。しかし詳細は調べてみます。
  169. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いまの長官答弁には私は承服しかねます。なぜかといいますと、先ほど申し上げましたとおり、ジュネーブ議定書にあるそのガスは日本にない。その例示の中にちゃんと塩素と書いてある。これは塩素ガスのことですよ。あるいは私の質問に対して、これは爆弾じゃない、だから違うなんというようなことがあるのじゃないかと思いまして、私はいろいろな面から調べてきました。しかしジュネーブ議定書にあるとおり、これは明確に塩素ですよ。しかも大量にそこにある。この問題を後ほど調査して明らかにするということについては私は納得いかない。すぐ調べてほしいと思うわけです。
  170. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いま電話で問い合わせておりますから、後ほど……。これは場所はどこですか。
  171. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 相模原総合補給廠です。
  172. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いま国連局長の話によりますと、ジュネーブの議定書で禁止されている化学、細菌兵器の表の中には「化学兵器」という項があって、その中に「剤の種類」ということばがありまして、その中に「窒息剤」というのがあって、その窒息剤の構成要素の中に塩素、ホスゲン、ジホスゲン、こういうようなのがあるのだそうです。これはそれをつくるための一つの要素であって、それがガスそのものではない。そういう窒息剤としてのガス、精製されたもの、それ自体が禁止されているので、こういう個々の要素それ自体とは直接関係がない。そういうことをいま国連局長は言っていました。  それから第二に、ジュネーブ議定書というのは平時と戦時の差があるのだそうです。これは戦時についての規定であって、平時はそうではないということを言っておられたので、外務大臣がどういう意味で表明されたのか知りませんが、いまのような意味において平時と戦時の問題を言ったのではないか。それから剤としての問題とエレメントとしてのものは直接関係がない、そういう意味で言ったのではないかと思われます。外務省の国連局長から聞いてください。
  173. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 ただいま防衛庁長官からお答え申し上げたとおりでございまして、おそらく外務大臣がおっしゃった意味は、要するに塩素を剤としたところの化学兵器たるガスはないものと了解する、こういう意味で言われたものと存じます。  それからもう一つ申し上げておきますけれども、あくまでもジュネーブ議定書が禁止しておりますことは戦時におけるこれらの剤の使用でございまして、理屈を申しますならば、かりに戦時において貯蔵しておりましてもちっともさしつかえないわけでございます。ましてや平時においては全然関係がない。これは議定書をごらんいただきましてもはっきりいたしますので、繰り返し申し上げます。
  174. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いままでの答弁では納得できませんよ。実はこの問題はわが党の総点検のときにも問題になったのです。昭和三十八年にあの付近には塩素ガスのために被害があったのです。そういう実態もつかんでいるわけです。しかもその当時に総点検したことは、防衛庁の要求があって五十冊ほど行っております。だから私は知っているものだと思っておった。それからずっと見ておりました。しかしながら一向に変わらない。あの辺は非常にきびしい監視があったわけでありますが、最近たまたまある人が写真をとれた。したがってこういう問題が出たということなんです。こういう被害がない、あるいは何でもなければ問題にしませんよ。三十八年からずっとある。被害もあった。それについて政府は何もしなかった。したがいまして、この問題はいますぐはっきり確認していただかなければ私は次の質問に入れないと思います。いま国連局長からいろいろな話が出ましたが、六十三国会でも毒ガスの問題についてはあらゆる解度から検討したのですよ。材料が毒ガスとして精製をされていないから違うんだ、いいんだということならどうなるのですか。大体毒ガス兵器なんというものはすぐにつくるものじゃないんですよ。そういうものを貯蔵しておいて、一たん有事のときあるいはそういう態勢のときに化合し、つくるわけですよ。それはあまりにも兵器の性質を知らない国連局長の無責任な答弁ですよ。しかもこの基地は、ベトナムから戦車を持ってきたり、また持っていったり、弾丸を運んだり、補給する最大の基地ですよ。そんないいかげんな答弁では私は納得するわけにいかないし、はっきりしてもらうまで、私は次の質問はやりません。
  175. 天野公義

    天野委員長 いま外務大臣を呼びに行っていますから、もうすぐ入りますから、御質問を続けていただけないでしょうか。
  176. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 伊藤委員からのお尋ねの件につきまして、米軍に照会いたしましたところ、ただいま返事がございました。お尋ねのようなボンベ入りの塩素ガスは所有している。それで、それらは、目的は殺菌用並びに消毒その他防除用に使っている、こういうことでございます。本件は四十四年八月四の楢崎議員の質問書に対する答弁でもお答えしているところのもので、その楢崎議員の御質問のときには、三十九年八月、相模原市補給廠の某所に貯蔵されていた一トン・ボンベ入りの窒息性ガス(塩素ガス)が漏洩し、作物に被害を与えたが事実か、こういう御質問に対して、事実はあった。その塩素ガスは飲料水滅菌用及び消毒用のものである、こう答えてあります。これと同じものであると思います。
  177. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いまの答弁で、いままでそういうことを言ってきたわけですよ。ところがその問題をいろいろ調べたわけでありますが、御存じのように相模原総合補給廠というのはベトナムに常時出入りしているわけです。ベトナムに運ぶものを補給する日本唯一の最大の基地です。したがってどうしてそんな大量に、写真にもありますように大量に塩素ガスが必要なのか。私はその疑問が解けないわけです。それからもう一つは現に被害が出ておる。最近は住宅難でああいう地域にも非常に住宅ができております。現に百五十メートルのところにも住宅がある。二百メートル及び三百メートルくらいまでのところには、たいへんな住宅街があるわけであります。しかも先ほど長官が申しましたように実害も出ているわけです。このボンベがいつ、どんな形で運ばれ、いつ、どんな形で使われるか、それはわからない。説明はどうにでもできます。確かに塩素ガスはそういうものに使われるでしょう。しかしながら現実問題として被害があった。しかもまたいつ起こるかわからないという危険な状態にある。それがまず第一です。私は日本の平和と日本人の命を守る立場から、これをこのまま放置することについては、断じて認めることはできないと思うのです。したがいまして私はこの問題については、大量にあるガスボンベ、そして常時ベトナムに補給されている一つの実態から見て、このことについてはそういう説明ではなくて、たとえば国民の命を守る立場から前向きで善処されたい。しかも先ほどから申し上げますように、外務大臣、そしてまたオズボーン公使の答弁にも日本本土にはそういうものはないと言っている。そしてまた、もし信頼を裏切るようなことがあった場合、先ほどは申し上げませんでしたけれども樋上委員の質問に対して——樋上委員は念を押しているわけです。そして、政府は信頼を裏切った行為に対してどのような責任を持たれるのか、このことについて愛知外務大臣は、その点については御信頼をいただいている次第でございますから、もしそういったことがあった場合にはりっぱな態度で善処したいと思います、こういうことも念を押した質問に対して外務大臣は答弁しているわけです。ですから、私は長官というよりむしろこのように前向きで答弁した外務大臣の出席を要求しますし、外務大臣からの答弁を受けてさらに質問を進めたいと思います。
  178. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いわゆるジュネーブ協定の対象である生物化学兵器ではないということは明らかであります。大体これをそういう弾薬的な人畜殺傷用のために使うというのは、いままでのケースでは液体にしておきまして、それを弾薬に詰めて使うというのが、いままでの弾薬の使い方だそうであります。こういうガスボンベにしておくという場合は、大体消毒用その他に使っておるのが通例で、こういうふうに野積みにしているというようなことは、そういういま申し上げたような消毒用に使っているのであると十分推察されます。ただ、御指摘のように周囲に対して被害を起こすということは、これはいけないことでありますから、われわれのほうで重ねてそういうことを起こさないように注意をいたしたいと思います。
  179. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 正式な答弁は外務大臣に伺いたいと思っております。もちろんいま連絡しているところですからそのうち参ると思いますが、中曽根長官がそうおっしゃいますから私も申し上げますけれども、あなたがおっしゃっているのは想像の域を出てないでしょう。事実そういう操作を見たわけじゃないでしょう。それは無責任ですよ。  それでもう一言言いたいことは、私も専門家に聞きました。たとえば化学兵器をつくる場合に、じゃどんどん化学兵器をつくっていくのか、そうじゃないと言う。やはり非常に危険なものだからそれはその前の状態で別々に保存する。たとえばガスというものについては厳重なボンベに入れる。兵器としてすぐ破裂するようなそんな入れものには入れておかない。米軍の弾薬の保管のしかたについては全部私は知っております。記号まで知っております。その化学剤を化合させないように別々にそれぞれ厳重な場所に、また厳重な入れものに入れて保管してある。それならばいいと言い、またそれを認めておったのでは、日本にVXという強力なガスを持ってきても認めることになる。しかも前回楢崎さんの質問に対しても、注意すると言っておるはずです。しかも答弁に出ております。現状何ら変わるところがないじゃありませんか。注意したことは結果としてあらわれていない。三十八年当時よりもあの地域の環境は変わっております。当時は農作物に被害程度で済みましたけれども、今度起きればそうはいかぬと思います。そういう点からいきましても、外務大臣が来られまして、外務大臣から答弁をいただいておいて、さらに積極的な前向きの解決策を示していただかない以上は私は質問できません。
  180. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 わがほうのそういう生物化学兵器の専門家にいまの問題について聞きましたら、弾薬、人畜殺傷用に使う場合には、ただいま申し上げましたように液体にしておいて、そしてそれを弾薬にするときに気化させる、そういうことでやっておるそうでありまして、こういうボンベに入れておるものはそういう消毒用その他にしておくものだ、そういうことであります。いまの被害の面につきましてはさっそく調査をいたしまして、もし被害が出ておるようでありましたら厳重に注意をいたしまして、戒めていきたいと思います。
  181. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 愛知外務大臣には、お忙しいところたいへんに緊急においでいただきまして、ありがとうございます。  きょう実は、そこにも写真がございますように、日本の相模原補給廠に大量の塩素ガスがあることが、前回からもわかっておったわけでありますが、さらに明確になったもので質問をしているわけです。  そこで、ジュネーブ議定書によって——いろいろ問題はございます。いろいろな解釈はあります。しかし外務大臣が昨年の五月六日か八日ですか、そのときに楢崎委員及び樋上委員の質問に対しまして、きわめて強い態度で、こういう毒ガスのようなものについては持たないし、また持ってはならないし、あってはならぬというようなことを答弁なさっていらっしゃることは、大臣よく御存じのとおりだと思うのです。特にここで議事録を読み上げますけれども、公明党の樋上委員の質問に対しまして、このように答弁なされているわけです。樋上委員がまず質問していることは、「政府は、アメリカ軍は日本本土にBC兵器を持ち込んでいないとはっきり御答弁ができますか。」ということに対しまして、外務大臣は「この条約議定書の対象として使用禁止になっておりますこういう種類のものは、日本本土に米軍としても保持していない」こういうふうに外務大臣が確信をもって答弁いたしております。ところでその前に東郷政府委員は、オズボーン公使からも聞いたけれども、オズボーンの話では日本にガスはない、こういうことを言われているわけです。そして楢崎委員の質問、致死性ガス、致死性の化学兵器以外の化学兵器があるかないか、在日米軍が持っているかどうか明らかにしてください、こういった点についても、ない、このように答弁されております。議事録を私読んでおりますけれども……。そして、そのあと樋上委員の重ねての質問に対してこういう答弁をしているわけです。「政府を信頼いたしますが、しかし、もし信頼を裏切るようなことが起きた場合、政府は信頼を裏切った行為に対してどのような責任を持たれるのか。最後に大臣にお伺いしたい。」これは日本にガスがあったということに対してどういう政府は責任をとるかということに対して質問したわけですね。それに対しまして外務大臣は、「その点につきましては、政府は御信頼をいただいている次第でございますから、政府としてはその御信頼にこたえるようなりっぱな態度で善処したいと思っております。」このように大臣が申されているわけであります。  そこで、そこにごらんになりますように、大量の塩素ガスがあるわけでありますが、このとおりになったわけであります。それについて外務大臣としてもどのように考え、またどのような善処をなさるのか、伺いたいと思います。
  182. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私の前の答弁申し上げましたことについては、私は、今日におきましてもそのとおりに考えております。いま突然のお呼び出しでかけつけてまいりましたので、あらためて十分の用意をしてまいりませんでしたから、いささかお答えが的をはずれるかもしれませんけれども、ジュネーブ協定で禁止されておりますガスの種類は、あの議定書の御審議を願いましたときにも、詳しく資料等において御審議をいただいたとおりに、致死性のガスということで、その範囲というものは国際的に認められているものを列挙して御説明したと思いますが、その中に入っておりますような致死性のガスが日本の本土内にたくわえられておるとは私は思いません。それからその点は、当時私どもとしては米側にも確かめて御返事をいたしたわけでありますが、しかしあらためてこういう事態、これはあの致死性ガスの中に入るものではないかというようなお疑いがあらためて出てきたといたしまするならば、さらに私といたしましても、私は現在でもそのとおりに信じておりますけれども、私としてはとるべき新たな調査なり聞き合わせなり、そういうことについては十分いたしたいと思います。
  183. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうしますと、大臣の答弁はそのとおりだとおっしゃいますし、私も、そうおっしゃることが当然でありますし、そうでなければならぬと思います。ですからこの問題を先ほど防衛庁長官にも質問したわけでありますが、これは前にもう指摘された点だということも言われたわけです。そしてだいぶ前でありますが、社会党の楢崎先生から質問されて、政府答弁書を出しております。その答弁書によりますと、これは滅菌といいますか、飲用水の殺菌用に使うのだという、そういう説明が政府答弁として出ているわけです。それはここにあります。しかし相模原兵器補給廠というところは、これは御存じのようにベトナムヘの日本最大の補給基地であります。そして常時こわれた戦車を再生さしたり、または武器弾薬を輸送する本拠地でもあるわけであります。決してそういうものを使うところではないというふうに考えられるわけです。私はこの防衛問題を数年やってきておりますけれども、やはり化学兵器というものは、使う前までは化学剤を別々に貯蔵するのだ、そして使う場合には、それを化合するなりまたは容器に移すのであるということも専門家に私は聞いております。大体兵器の容器というものはきゃしゃでありまして、これはすぐに爆発するとかまたすぐこわれるものでなければ兵器にならぬわけでありますから、当然私はそうであろうと思っております。したがいまして、私としては、たとえ政府のこういう答弁書があったとしても、これは納得がいかぬと思うのです。そこで前には防衛庁がこういう指摘に対しまして、厳重に注意をするということで現在まで来たわけであります。わが党が米軍基地の総点検をやったことで御存じだと思いますが、そのときも防衛庁には、米軍基地の総点検で五十冊ほど無料で提供いたしました。別にそんなことはかまいませんけれども。その中にもそういった事実も指摘して書いてあります。三十八年にこの塩素ガスの事故のために農作物に被害があった、こういうことも指摘しております。現在に至るまで私もそういったことを通してずっと見てまいりました。たまたま最近見張りもいなくなった。あるいはまた調査しなかったのかもしれませんけれども、厳重な見張りがあるところです。軍用犬もおりますし、普通では見えるところではありません。しかしたまさかその日行った人がとってきた。それを見ているうちに、だんだんとこれはたいへんなことだと思ったわけでありますが、だいぶ前に指摘したことについては何ら変わった様子がない、一つは。もし事故が起きればたいへんなことになります。最近御存じのように、住宅難という一つの面もありまして、あの近所にはたくさんの住宅ができているわけです。このときは非常に畑が多かったけれども、現在ではすぐ百五十メートルくらいのところに人家があります。事故が起きてからではこれはたいへんな問題になります。したがいまして、この政府答弁書では私は納得いきませんし、しかも政府が言ったことについて何ら変更がないという事実をもってしても、私はこれに対して何らかの積極的な、前向きな厳然たる政府の態度あるいはまた米軍に対するこういう問題の解決に確答がなければ、私としては承服することはできない、こう思うわけであります。その点について……。
  184. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私は先ほど申し上げたとおりに現在も考えておりますけれども、しかし、非常に国民的な心配の的であるところの問題が、こうして写真もお示しいただき、またそれぞれの方々のそれなりの御調査でたいへん御心配をおかけいたしておる、このことは政府といたしましても誠実に対処しなければならない問題である、かように存じます。したがいまして、私といたしましても誠意をもって善処いたしたいと思います。すなわち、調査をするなりその他の方法によりまして十分善処いたしたいと考えます。
  185. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 外務大臣、国民のために前向きで善処すると、きわめて誠実なお話がございましたけれども、しかし残念ながら私は、いままでの米軍の基地の実態やまた米軍のそういう問題でのわれわれに対する態度というものについては、いろいろな面から信用ができないのであります。したがいまして、先ほどの防衛庁長官のおっしゃる答弁からいきますと、向こうにいますぐ電話をした、これは兵器ではない、消毒用なんだ、これは前に言ってある、だからここに置くのだ。私は現在のままではそういう状態にしかならないと思うのです。またそれ以上のものを期待することはできない。たとえば米軍にはいままでいろいろな秘密兵器があった。顕著な例としてはU2という黒い飛行機もあった。しかし見つかるまでは、写真が示されるまでは明らかにしなかった。そういう態度を私はいままで見てきております。したがいまして、私はこの問題を外務大臣がおっしゃる答弁だけでは、決して外務大臣を疑っておるわけではありませんが、もう一ぺん米軍に対してさらに強い、また改める態度をどうしてもしない限りは承服することはできない、こう私はいわざるを得ないのであります。  そこで、防衛庁長官が相模原兵器廠の方に聞いてきたというのですが、私は大きな疑問を持っております。その点で防衛庁長官に伺いたいのですが、まず、だれがだれに電話をして確認したのか、それと何ぼ現在あるのか、どういうような形で詰められているのか、さらに三十八年当時指摘したわけですから、その後の使用状況なり、そういったものを明確にしていただきたい。
  186. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 陸幕化学課の担当から在日米軍司令部連絡部にやりました。当方は大河原二佐というのが電話をかけました。そうして先方は先方内部で連絡をとりまして、補給貯蔵局の係の将校、氏名は不詳であります。その補給貯蔵局の責任者局長はシンプソン大佐であります。そこからの正式な返事でございます。それからさらに別のルートからもやらせましたら、陸幕化学課長あてに相模原補給廠の副司令官バーニー大佐からの通報もまた参りまして、それは水資源浄水用、殺菌用、虫害防除用、先ほど申し上げましたような用途に使っているという同じ返事でございます。それで数量はいまのところまだ不明でございます。  以上であります。
  187. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私はそういう通り一ぺんの返答では承服いたしかねます。といいますのは、いままでもこういう問題は何回か質問が出ております。しかしながら全部いままでのような形で答弁され、いままでと同じような形で放置されてきている、これは事実です。したがいまして、防衛庁が前に、注意します、それも何ら効果なく現在まで放置されている。私は事故の前にこのように言いますからまだ問題は出なかったかもしれません。これがたとえば災害や地震やその他の事故で塩素ガスが漏れたときはどうなりますか。しかもこの答弁書によると「二時間ごとに点検し、ガスの漏洩している不良ボンベを発見するとコンベア……」そんなことはうそです。この写真をとる人は、それを目てから何日間か行っているはずです。現にこういう政府答弁にあるとおりならば問題はないかもしれない。現に違う。いままで指摘してきても全然変わっていない。あなたのいまの答弁の中にだって大事な本数だってはっきりしてない。責任者がだれで、しかもまた使用状況、どこに使ったのか、もし減った場合。これは一部の情報でありますけれども、ベトナムではたくさんの枯れ葉剤といいますかそういうものが使われてきた、そういうことだって言ってきております。現に作業員の中からも、あれはたいへんなものなんだ、わかったら大ごとになるということをだいぶ前から言っておったそうです。もしほんとうに消毒用であり、殺菌用であったならばそんなことは問題にならぬはずです。防衛庁長官答弁では納得できません。もう少しこれを詳細に明らかにできるものはしていただきたい。
  188. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 相手の責任者は先ほど申し上げましたようにシンプソン大佐という者であります。数量はわかりませんが、ともかくいわゆる生物化学兵器ではない、またいわゆるジュネーブ協定の対象になるようなそういう種類のものではない。そういう殺菌、消毒用のもので、それでその管理の問題についてはしかしわれわれも今後大いに注意しなければならぬと思います。何本ぐらい、その管理がはたして適正に行なわれているかどうか、今後のそういう見通しはどうか、そういう問題については精細に調査いたしたいと思います。
  189. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いま長官答弁を聞いてそのまま私が引っ込んだらこれはちっとも変わらぬと思うのですよ。そこで私は、先ほど言いましたように、日本の平和と日本人の命を守るためにこの問題については断じて追及する、そう申し上げているわけです。  そこで、ジュネーブ議定書にある兵器ではない、こうおっしゃいますが、議定書の致死性ガスの中に「塩素」とあるじゃありませんか。もしこれが化学兵器になっていないから持ち込んであってもいいんだということであれば、たとえばVXガスが日本にあっても問題にならない、またマスタードガスがあっても問題にならない、沖繩だって問題にならないはずじゃありませんか。しかしながらこういった化学兵器というものは、別々に分散してあるのです。しかも政策論の上からいっても、愛知外務大臣は前向きにこういうものはあってはならぬ、事前協議の対象どころじゃない、その毒ガスそのものが問題なんだ。私は塩素ガスが致死性のガスの中でも一番軽いことは知っております。だけれども、これがこのまま漏れれば、人間はやはりそれに触れると死にます、致死性のガスですから。兵器でなかったらいいんだ、塩素ガスそのものはいいんだ、こういう一つのまやかしの理論では私は世間には通用しないと思うのです。そういう答弁をすればますます米軍は、防衛庁長官の言うとおり、あったって何でもないじゃないかということになります。口実を与えます。そうなると沖繩の毒ガス撤去もおくれるかもしれませんよ。いま長官がおっしゃいましたけれども、その長は何とかという名前を言いましたね、それから聞いたんじゃありませんか。途中の将校に聞いた、不正確な情報じゃありませんか。そんなことじゃ承服することはできないですね。   〔「何本ぐらいあるんだ、量が問題じゃないか」と呼ぶ者あり〕
  190. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 何本ぐらいあるか、また管理状況が正しく管理されているかどうか、将来そういう危険性があるかどうかという点につきましては重ねて精査をいたします。そうして万が一にもあやまちのないように、これからつとめていきたいと思います。
  191. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それじゃ私は率直に申し上げますけれども、そういう危険な基地はなくすべきだと私は思います。しかももしその塩素ガスが事故でも起きたときにはたいへんなことになります。あの付近一帯は風の向きかげんにもよるでしょうけれどもたいへんな被害を受けることは、これはだれでも毒ガスのおそろしさを知った人であれば了解できます。したがってその塩素ガスをあすにでもすぐ撤去する、そういう危険なベトナムの補給基地として使っている基地なんかをそのまま放置しない、そういうことを防衛庁長官並びに外務大臣がここで明確に答弁されれば私は質問をやめます。
  192. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 塩素ガスは浄水場でも使っておりますし、また漂白その他にも使われているだろうと思うのです。問題は要するにその管理状況が正しいか正しくないか、被害を及ぼすおそれがあるかないかということなんで、工業用にも使われていることは御承知のとおりであります。そういう面から見まして、管理が適正に行なわれているかどうかということを私どもは精査して万が一にもあやまちのないようにいたしたい、こう申し上げておるのでございます。
  193. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 その塩素ガスがたとえ百歩譲って長官のおっしゃるとおり水道の殺菌用であったとしても、なぜそんなに大量にあるのかという疑問がどうしても消えない。しかも、あなたいま電話ですぐ聞いたようでありますけれども、もう一回私は確認してもらいたい点は、前回事故が起きた、それが起きてないからいいじゃないか、それは理由にはならない。ましてや外から堂々ととれる場所にある、まあこれは千ミリぐらいの望遠レンズでとったのでしょうけれども。しかも近くには人家が密集してきている。そういう中で、注意するとかまたは管理上問題をなくすればいいじゃないかということでは納得することができない。もう一回電話していま私が言ったことについて確認してください。
  194. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 要するに管理の問題でありますから、われわれのほうの係官が先方と話し合って、現場を見て、適正に行なわれているやいかんということが問題でありますので、できるだけ早期にそういう実行をいたしたいと思います。
  195. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 納得できません、それじゃ。−それでは、いま非公式ではありますが、外務大臣あるいは防衛庁長官からも、前向きで調査して、またそのことについて報告するというお話がございましたので、最後に外務大臣及び防衛庁長官の、国民に対して前向きで、この問題についてどのような態度で臨むか、その答弁を承って、私は質問を留保してやめたいと思います。
  196. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほど申し上げましたように、これは国民的な非常に心配の問題、対象であると思いますから、外務省といたしましても、誠意を尽くしてひとつ調査をいたしまして、その結果を御報告いたしたいと思います。
  197. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 外務省と協力いたしまして、両方で現地を実地調査いたしまして、適切な処理をいたします。
  198. 天野公義

    天野委員長 上原康助君。
  199. 上原康助

    ○上原委員 私は、まず最初に、防衛庁が今度案として作成しております第四次防衛力整備計画について、若干最初に質問をいたしたいと思います。  これまでも先輩あるいは同僚委員方々からいろいろと質問がございました。重複する面もあろうかと思いますが、たいへん重要な原案でございますので、最初に防衛庁長官あるいは防衛庁考え方というものをあらためてお伺いをしたいと思うのです。  まず、立案の趣旨の中ですが、「最近の国際情勢からみて、わが国に対して差迫った脅威があるとは考えられないが、武力紛争が跡を絶たない国際政治の現実にかんがみると、防衛力は、国家の安全を確保するための最後の砦として万一の事態に備えてこれを保持しなければならない。」こういうような書き出しからなっております。これまでも説明は大臣なり防衛局長のほうからあったわけですが、一体万一の事態に備えて保持をするというこの表現、たいへん抽象的で、どうにも解釈できるわけです。差し迫った脅威があるとは考えられない、しかし万一の事態が起きるかもしれない、そういう意味防衛力は整備をしていくんだ、拡大をしていくんだ、というふうに受け取れるわけですが、その点について、まず最初にあらためて大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  200. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大体防衛に関する考え方は、二年とか五年とかという短期のスケールで考えないで、やはり十年、二十年、三十年というような非常に歴史的な視野で見なければならぬと思います。特に最近は兵器が非常に進歩したり国際情勢が急変したりあるいは国内情勢についてもさまざまな要素が生起しております。そういう面からいたしまして、かなり長期的展望のもとに諸般の施策を整えていくべきであると思います。そういう考え方の上に立って、ある程度の力を蓄積して、自衛権を発動するという場合に、必要かつ相当の自衛力を持ってその自衛権発動の目的を遂げる、そういうような考え方でやる場合には、最近の兵器の進歩やあるいは科学技術の進歩や要員の訓練というものは、やはり相当の時間がかかるということも考えられるわけで、そして少なくとも五年ないし十年単位で一つの時間を区切って、それが何回か移動していくという形で見なければならぬと思うのでございます。  それで、周囲の情勢を見ますと、大戦の危険性というものはないと思います。しかし局地的にどういうことがあり得るかということは、ちょうど天気予報のようなもので、気圧がどういうふうに配置になっているかというようなことによって、台風の目ができたりあるいは不連続線ができたりしないとも限らない。そういう考え方に立ってやはり防衛も考えて、国力、国情にふさわしい措置だけはとっていかなければならぬ、そういう考え方に立っているわけであります。  こまかい点もし御質問があれば防衛局長から御答弁させます。
  201. 上原康助

    ○上原委員 この間も大臣の御答弁の中に、いまのような話があったわけですが、議論はだんだん深めていくということにいたしまして、万一の事態に備えたい、確かに、おっしゃるように、防衛力の整備というものあるいは国の防衛というものは、ある程度中期ないし長期の展望を持った計画なり考え方というのも必要かもしれません。大戦の危険性はないという考えに立ちながらも、ではこの万一というのは対外的に重点を置いておられるのか。気象状況みたいに、台風の目みたいに、国内で問題が起きるかもしれない、だから、防衛力をもっと強化をしていかなければいけないということなのか、ウエートの置き方はどちらに向けておられるのか。その点についてもう少し説明をいただきたいと思います。
  202. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは双方であります。しかし日本のような場合を考えますと、わりあいに両方が牽連関係を持って整備する場合が一番可能性があるように思います。たとえば国内情勢が非常に不安定になって騒乱が起こるとかあるいは内乱状態が起こるとか、そういうことは外部からの侵入を誘発する、そういう形が考えられると思いますが、そういうことが一たん起きると、今度は外部からの侵入というものが正面に出てまいりまして、それに対応する力もまたいまからも整えておく必要がある。そういう意味において、やはり両方牽連を持ちながら両者に備えるという考えがよろしいと思います。
  203. 上原康助

    ○上原委員 きょうは一応今後の議論を深めていくという立場で、ここで出されておる案についてできるだけ長官なり防衛庁方針というものを理解をしたいという立場で質問をしておきたいと思うのです。次に、さらに「わが国の防衛力は、もともと皆無の状態から」云々と始まって「必要な防衛力の蓄積がいまだ不十分であり、防衛力として所望の域に達していない。」そういう立場で四次防というものを立案をしたんだということだと思うのです。一体どこまで達成すれば所望の域に達するというお考えなのか。あるいはまた、現在そういう域に達していないというのは、具体的には中身としてどういうお考えなのか。その点の説明を賜わっておきたいと思うのです。
  204. 久保卓也

    ○久保政府委員 「所望の域に達していない」と重いてありますが、所望の域というのは将来特定の時期におきまする日本周辺にある潜在的な脅威、これを軍事的な能力ということばでこの前御説明いたしましたが、そういったものに対応して考えまする場合に、今日の防衛力ではまだ不十分である。したがってそういった時期に応ずるわがほうの兵力というものは、防衛庁長官が先般の予算委員会で申し述べましたように、大体航空機が千機前後、艦艇が三次防と同じ努力をもう一度続けるというような程度、それから陸上兵力でもってほぼ十八万程度といったようなものが、数的に、量切に見た場合には一応の所望の兵力、所望の域でありますが、当然科学兵器の進歩に応じまして内谷の充実、近代化というものはこれに伴ってまいりねばならぬ、そういうものを所望の域というふうに考えております。
  205. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、かりに四次防が計画どおり実施をされる、向こう五カ年でやっていくという場合は、いま局長答弁の所望の域に達するわけですか。
  206. 久保卓也

    ○久保政府委員 量的に、たとえば陸の場合には変わりありません。空の場合には現在は約九百機前後でありますから、九百機をこえる程度でありますが、一千機前後というふうに申し上げましたように、今後もう少し検討をする必要があります。それから艦艇につきましては、三十万トン、おそらく先ほどの計算からいえばこういことでありましょうから、いまの新防衛計画からいえばまだその所望の域に達しない。ただ先ほど申し上げたように、量の問題であるよりもさらに質の問題が重要であります。したがって陸が十八万であるから三次防あるいはこの次の新防計画でおしまいということではなくて、やはり内容つまり装備の近代化あるいは定数の変更、定数の充実というようなこともあわせて考えていかなければいけないという点については同じであります。したがって次の五カ年で所望の域に達するという意味ではございません。
  207. 上原康助

    ○上原委員 防衛力の質の強化あるいは装備の質の強化ということは、具体的にどういう意味ですか。
  208. 久保卓也

    ○久保政府委員 たとえば陸上自衛隊で申しますと戦車を整備しようとしておるわけでありますが、新型の戦車でもって定数が約一千百両ないし二百両ぐらいを目標にしておりますけれども、新防計画では九百両程度にとまっておる。したがって旧来の戦車もまだ残っておるということで、新しい兵器に切りかえて、しかも定数をそれだけ持つということであります。あるいは航空自衛隊で申しますと、次の計画でもって新しい国産いたしますC1という輸送機を三十機ばかり買うことになっておりますが、この数字は所望のほぼ半分ぐらいであるというようなことであります。個々のそういったものの積み上げが所望の域に達するということになります。
  209. 上原康助

    ○上原委員 どうもいまはむしろ量の御説明をなさったような御答弁ですが、防衛力の質の強化あるいは装備の質の近代化という場合に、やはり想像できることはいろいろあるわけです。しかしきょうはそういった各論についての議論までは入りませんけれども、少なくとも質の強化ということを強調する面においては、やはり今後の防衛力というものあるいは装備というものを近代科学兵器、戦術兵器等、核兵器等を含めて装備をするという展望を持っておられるのじゃないかという印象を強く受けるわけなんです。その点についてはどうなんですか。
  210. 久保卓也

    ○久保政府委員 私どもは世界の兵器の進歩というものを忠実に着目をいたしておるわけであります。したがいまして通常兵器におきますものでわが国の国情に適するようなものは、なるべく採用してまいりたいと考えております。しかしながら核装備については、これはもう政治的な問題でもありますし、あるいはさらにその上に憲法上の問題もありますし、そういった制約のもとに考えるべきであって、私どものスケジュールの中には全然そういうものは組んでおりません。
  211. 上原康助

    ○上原委員 核の問題につきましてはさらにあとで質問をいたしたいと思います。さきの質問と関連することですが、いわゆる防衛力を整備をしていく上においては「所要経費の面において他の重要な国家諸施策との調和に留意した」ということが書かれております。五兆二千億円、人件費を含めて五兆八千億円という多額の予算を出支をする、使う、そのことが、他の重要な国家施策との調和という面で留意をされているのか、単に数字の比べ方じゃなくて、政治的に国民に与える印象等の立場において調和がとられているという御判断をお持ちなのか、その点について見解を賜わっておきたいと思います。
  212. 久保卓也

    ○久保政府委員 現在の新防計画での毎年の予算の伸びが一八・八%と想定いたしております。もちろんこの数字、人件費を含めましての五兆八千億という数字がそのまま政府の案になるとは考えておりません。大蔵省はじめいろいろな関係からそれぞれ検討が加えられ、適当な額に落ちつくと考えておりますけれども、かりに一八%前後のものでありましても四十六年度予算で見ますと防衛関係費の伸びが一七・八%であります。ほかの主要な、これは対前年比でありますが主要な項目、たとえば社会保障費が一七・八、文教及び科学振興費が一六・五、公共事業費が一八・幾つ。ほぼ一七、八%のところで伸びております。特に防衛関係費は、たとえば社会保障費に比べますと、GNPの中に占めまするシェアがちょうど半分ぐらいになっております。  そこで主要項目に比べ、つまり諸施策に対して調和のとれた防衛関係費という観点から、過去十年の防衛関係費及び主要項目の増減がどうなっているかということを調べてみました。過去十年の間だけをとってみましたが、そういたしますると社会保障費が三十七年から少しずつふえて四十年でピークになって、以後一四%台の予算の中の割合を占めております。それから文教及び科学振興費は四十年の二二%がピークで以後漸減をしておりまして、四十六年における予算の中のシェアが一一・五%と、ピーク時に比べて減になっております。公共事業費は四十年から四十二年がピークで、以後一二・四とピーク時に比べて漸減いたしております。防衛関係費が、これはむしろ当初のほうが非常に多くて、過去十年ずっと漸減いたしております。そこでピーク時に比べる減少の度合いというものは一七・四%に減っておるということで、主要項目に比べると過去の趨勢というものは防衛関係費が一番減っているということになっております。  そこで今後の見通しでありますけれども、この主要項目についてそれぞれどの程度認められるかということがわかっておりません。したがって正確な予想はできませんけれども、そういったような事柄を当然財政当局も考えながらおおよその防衛費の見当をつけられ、さらにまた政府の中でしかるべき調整が加えられるであろうということで、いま申し上げたような情勢からするならば、防衛関係費つまり新防計画の総予算額というものが必ずしも国民に受け入れられない、非常に非常識な数字になるということは、とうてい考えられないところであるというふうに思っております。
  213. 上原康助

    ○上原委員 私があらかじめ申し上げましたように、単に数字の比較ということではなしにということを含めて質問をしたわけですが、いま社会保障費やあるいは文教費、公共事業費等との比較をいろいろ御説明ありました。その数字については具体的にこの案が出た段階でもっと詰めていきたいと思うのです。   〔委員長退席、坂村委員長代理着席〕 ただ現段階で指摘ができることは、いわゆる国民の生活、経済的なメリットから考えてこれだけの多額の防衛費を注ぎ込んで四次防というものをやっていく、やらなければいけない、その必要性がそんなにあるのかという疑問を持つのは必ずしも私一人じゃないと思うのです。多くの国民がその点については疑問を持っておられる。また四次防の原案を四月二十七日ですかに発表なさった後のマスコミを見ても、新聞紙上の論調を見ても、再検討の必要があるんだ、政府の部内においてすら批判的空気が強いという論調も種々出ております。  そういう面から、重要な国家諸施策との調和に留意をしたんだということで、ことばとしては非常にきれいだが、そのことについてはいまここで示されているような中身じゃない、あるいはまた国民全体の受け取り方というのはそういう印象を持っていないということを指摘をしておいて、局長にいろいろ述べていただいた点については、さらに各論なり今後詰めていく中で、もっと議論を深めていきたいと思うのです。  次に、いまのこととも関連はいたしますが、これは大臣のほうからお答えいただきたいわけですが、整備された防衛力が有効に機能を発揮するためには、国民の十分な支持と協力が必要であることは言うまでもない、これはもっともだと思うのです。しかし先ほど申し上げましたように、これまでも防衛力整備予算というものは第一次から第三次まで大体倍増で増加をしてきている。さらに四次防において五兆二千ないし五兆八千億の予算を注ぎ込もうとしておられる。そういう防衛のあり方あるいは防衛力整備計画というものが、ここでいっておるように、ほんとう国民の十分な支持と協力が得られたという判断でとらえていらっしゃるのか、またどういう意味から、どうすれば国民の十分な協力と支持が得られるということをお考えなのか。これは非常に重要な個所だと私は思いますので見解をお聞かせ願いたいと思うのです。
  214. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 過去の努力を見ますと、いわゆる一次防のときにおきましてはGNPの一・一二%でございます。二次防になりまして〇・九四%、それから三次防で〇・八一%、今度は〇・九二%というぐらいの数字になる見込みです。GNPその他の関係がどう変動するかわかりませんが〇・九%前後になるんじゃないか、一応そういうふうに想定されます。  一次防は三十三年から三十五年前後でありますが、このときは日本の国力もまだそう十分でないときでありましたけれども日本防衛力をゼロから造成するという意味において、そしてアメリカに大部分依存した兵器類その他を更新していく、そういうような時期でもありまして、それでパーセンテージからいうと一・一二%という、いまから見れば非常に大きな数字になっております。  それでそのころの各年次別の数字等を見ますと、やはり一%をこしているときがある程度続いておりまして、三十六年から〇・九二%、〇・九九%、〇・九七%、〇・九五%という数字で来ております。四十年も〇・九四%というような数字で、三次防になりましてから〇・八%台に落ちたということでございます。  それで現在の内外の情勢を見ますと、ここでまた一息、少し汗をかいていただく段階である。というのは、安保条約も自動継続になりましたし、またアメリカニクソンドクトリン等の情勢変化もございますし、かつまた日本の国力もかなり伸びてまいりました。そういう諸般の情勢を考えてみますと、多少ここで汗をかいていただいてその次の段階で楽をしていく、ちょうどそういうアクセントを入れる段階に入ってきた。私はよく申すのでありますが、いま子供が大学に入るときでちょっと苦しいけれどもがまんしていただいて、それから少したてば楽になります。そういうアクセントの入れどきであると思うわけであります。そういうお考えで国民皆さんにもよく理解していただきまして、過去においてもこういう数字で来ておりますから今回もお願いをいたします、できるだけ御説明申し上げまして御納得を得るように努力をしていきたいと思っております。
  215. 上原康助

    ○上原委員 私がお伺いをしていることは、単にGNPあるいは予算に占める国防費の比率なり年次的なアップ率なりという経緯じゃないわけです。それだけ説明をされますと確かに国防費というのは一%にも足りないというような印象で、どんどん拡張、拡大をされていくという——まあ数字はごまかしもありますのでね。そのことじゃなくして、自衛隊というものあるいはいま計画を立てておられる四次防計画等を含めて、国民の十分な支持と協力がなければ、防衛力が有効にその機能を発揮し得ないんだということを言っておられるわけです。そのことについてどういう立場で——国民の世論の問題だけじゃないのです。防衛力を含めて支持と納得と協力を得ようという立場なのか、あるいは現在政府が進めようとしておられることに国民は十分な支持と協力をする立場にあるとお考えなのか、その点をもう少し明らかにしていただきたいということなんです。
  216. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 防衛力の整備は、諸国策の中の一つの要素でございまして、ほかの国策との調和も必要でございますが、また防衛力自体も国の存立上必要なものでもあります。そういうわけで国力、国情等をよく説明申し上げ、また防衛の必要も説明申し上げて、国民皆さんの理解をいただく、そういうことで誠心誠意やってみたいと思っておるわけであります。
  217. 上原康助

    ○上原委員 まだ十分納得はいきませんが、一応そういう立場でおやりになろうとしているんだということで、次に議論を進めていきたいと思うのです。  情勢判断のところなんですが、先ほど少しお触れになっておったわけですが、六八年七月ですか、ニクソンドクトリンが打ち出されて、その後米軍のアジアからの撤退ということが、かなり現象としては進められている。しかし軍事力あるいは反共政策という立場でのアメリカの姿勢というものは、ちっとも変わっていないとわれわれは見ているわけです。その見方は別といたしましても、ニクソンドクトリンの及ぼす影響、ニクソンドクトリン日本の今後の防衛ないし防衛力の整備という、それとの関連でどうとらえておられるのか、その点少し説明をしていただきたいと思います。
  218. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は防衛庁長官になる前から、いわゆる自主防衛ということを必要と考えておりまして、一面においてはアメリカの在日米軍基地を整理統合すべきであるということと同時に、自衛隊があまり過度に米軍に依存するということを好まないということを言ってまいってきたわけです。そこで、そういう方向に政策を推進してまいります過程にアメリカ側からニクソンドクトリンが出てまいりましたが、これは、たまたま私の考えている方向とある意味においては一致しているところもあります。そういうことで両者の認識も考え方もある程度同じに合致するところがありまして、それが昨年の十二月二十一日の日米安保協議委員会結論にもなったところであります。それで、いまその政策が推進されておる。私はそういう政策を今後ともある程度国情をよく見ながら推進していくべきである、こう考えております。
  219. 上原康助

    ○上原委員 防衛庁長官の自主防衛論ということには、必ずしも同意できないわけですが、ただ、いまニクソンドクトリンの話が出たついでに一点だけお伺いをしておきたいのですが、アメリカがなぜニクソンドクトリンを打ち出さねばならなかったのか、その原因はどこにあったのか、長官としての見解を承っておきたいと思うのです。
  220. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 アメリカ流の理想主義に燃えて、外に過大に力を使い果たしたのが、国内の反応を巻き起こして、ああいう結果になってきたんだと思います。
  221. 上原康助

    ○上原委員 そのアメリカが理想的な方向で防衛力というものを拡大している、しかし現実的にはベトナム問題を見ても、あるいはラオスの実情を見ましても、軍事力、力だけではどうしても解決できない、平和というものが確立できないということは、私は実証されていると思うのです。そのあやまちを——おそらくそういう気持ちはない、あるいはそういう考え方でやっているんじゃないということをおっしゃるかもしれませんが、現在国内においても、国外においても日本の軍国主義復活ということ——もちろん私も現実に軍国主義になり切っているということにはとらえません。しかし少なくともそういう芽があり、国内外の批判なり日本の今後の防衛力ということに対する関心というものが深まっている、アメリカにおいてさえ、そういう国民世論があるということは御承知だと思うのです。そのことと四次防を計画なさる、専守防衛、自主防衛という立場でやっていくということとのそこに、やはり論理的に矛盾を感ずるわけです。その点についてはいかがですか。
  222. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 アメリカやあるいは外国の一部に軍国主義という声がありますが、これは日本を正確に見ていない人たちの発言で、日本を正確に見たら、その考えの間違いであることがわかるだろうと思います。最近は漸次そういう軍国主義という声は、少なくとも自由圏からは影をひそめてまいりまして、アメリカのクリスチャン・サイエンス・モニターを見ても、ニューヨーク・タイムズを見ても、ワシントン・ポストを見ても、主要紙はそういう考えをすべて引っ込めてしまっております。共産圏の一部にまだそれがありますけれども、それもいろいろなニュアンスをもって言っている、また特別な意味をもって言っているようにわれわれは解されます。したがいまして、われわれ自体としては、海外から日本がどういうふうに考えられているかということは、よほど深く反省しながら進まなければならぬと思いますが、いまやっていることについて疑問を持つ必要はないし、われわれが萎縮する必要もない、十分反省をしながらわれわれの国策をやはり確信をもって進めていくべきである、そう思っております。
  223. 上原康助

    ○上原委員 いまの御答弁からいたしますと、日本が今後軍国主義化されるという危険性はない、あるいはまた、そういう立場で防衛というものはとらえない、推進をしていかない、そういう立場ですか。
  224. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 現在、日本の内外を見渡して軍国主義的要素というものは、私はほとんどないと思います。日本のまわりにはアメリカやソ連や中国のような原爆や長距離弾道弾を持っている超大国が控えておりまして、日本はその谷間にほとんど裸でいるようなものじゃないかと思います。しかし、それもまた意味のあることでもあります。しかし最小限の守る力だけは持っておかなければならぬ、自衛権を保障するに足るだけのものを持っておこう、そういう考えで進んでおるのでありますから、日本の実態を見れば、明らかにそのことはわかると思います。だが、しかし大東亜戦争の記憶がまだありますし、日本の潜在力やバイタリティーを見てみれば、ドイツがヨーロッパでおそれられているように、日本も潜在的に国力あるいは日本人のバイタリティーについておそれを抱かれている。われわれの反省しなければならぬところもあると思うのです。そういう反省を行ないながら、われわれは現在やっていることについて確信をもって進んでいこう、こういう考えでございます。
  225. 上原康助

    ○上原委員 国力の充実化あるいは経済の伸びということを踏まえながら、軍備というものを考える一面には、そういう理屈というものも成り立つかもしれません。しかしそのことに多くの国民が疑惑を持っている。経済大国から軍事大国にテンポを早めるのではないか。また国内のいろいろな憲法改正論を見ましても、その他の動き等を見ても、平和を守る、あるいは現在の民主主義、人権尊重の立場というものをもっと国民の底辺に定着させるということよりも、何か国力の充実というもの、経済力の成長というものを軍備と結びつけて考えたがる風潮が決してないとはいえないと私は思うのです。そういう側面がある中で、こういう四次防の大規模な計画というものが出される。そのことがやはり内外に今後の日本の進路というもの、再び第二次大戦に犯した戦争の罪悪を犯しかねない、その危険性というものが十分あるということを、政治家としてあるいはまた防衛を担当する長としてもとらえなければいけないと思うのです。  そこで質問をいたしますが、専守防衛の限界というもの、あるいは専守防衛ということを基本構想としてこれは出されているわけですが、そのことは日米安保条約、安保体制とどう関連するのか。専守防衛そのものは安保条約は災いにならないのか。あるいはまたあくまでも安保条約を堅持する中で専守防衛をやっていくということなのか、そこらについて見解を聞かしていただきたいと思うのです。
  226. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本の防衛はいまの日本憲法を守って厳然と行なわれなければなりません。それが大多数の国民意思であります。そういう面からもちろん核兵器は持たないし、あるいは攻撃的兵器も持たない。これらは日米安全保障体制を通じて米国側に期待をする。それ以下の水準で自衛権を行使するに必要な範囲内の最小限の防衛力を整備しよう。どの程度であるかということは、国際情勢や科学技術の進歩や、そういう客観情勢によってきまるので、一がいに数的に表現することはできませんが、一応現在の情勢が維持されるものとすればかくかくであるというのは、先ほど申し上げたとおりでございます。そういう基本観念に立脚して必要最小限の範囲というものをきめていきたいと思っております。
  227. 上原康助

    ○上原委員 何回も聞いた答弁ですが、専守防衛の限界、いわゆる必要最小限度の防衛力を保持していくんだ、整備をしていくんだということなんですが、量的あるいは質的に現段階でいえるのは、どういうのが最小限度の防衛力なのか。あるいは科学技術の進歩に応じて今後もやっていくということになりますと、限界なり歯どめというものがどうもわれわれにはわからない。私は国民が知りたがっているのはその点だと思うのです。憲法の精神にのっとっているとか、憲法の範囲でということをおっしゃいますが、第九条にしたってもうその趣旨というもの、精神というもの、ほんとうに条文そのものが生かされているとは私は思いません。学者や法律家のモルモット的な解釈で変質変化してきている。防衛力も、ことばではそういう立場でおっしゃっても、政治家や大臣が何を言うのかでなくして、何をなさるのかをいま国民は知りたがっている。その限界はどこに求めるのか。四次防がかりに完備した場合、さらにまた第五次防というふうに発展をしていく。一体何次防まで計画をなさるつもりなのかも、この時点でその大筋というものを国民の前に明らかにした形で四次防というものを議論しないと、国民大衆はますます防衛力の拡大ということに疑惑を持つと思うのです。そこらの見解について、これまで多くの委員からも御質問があったと思うのですが、防衛庁長官という立場での御見解をあらためて承っておきたいと思います。
  228. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いままで申し上げましたように、この次の新防衛力整備計画は、わりあいに力を入れる場面に入ってきておる。しかし、その次の段階になればその途中でトーンダウンをする可能性がありましょう。それは国際情勢、客観情勢にも依存することでありますが、現在の情勢が続くものとして考えればそういうことがいわれましょう。したがって、無限大に防衛力をふやそうなどとは毛頭考えません。日本としてまずこの程度のものがあればよろしいという程度の、一応の所望の域に達しますれば、情勢に変化がなければあとは更新あるいは内部の充実という形に変化してまいりまして、いまのような防衛力整備計画、力の入ったやり方というものは調子が下がっていくものと思います。そういう一般的見通しをもって無限大に伸ばそうという考えは毛頭ないということをここで申し上げたいと思います。
  229. 上原康助

    ○上原委員 それを量的にはいま説明いただけないということですか。
  230. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 量的に説明することは非常に困難であると思います。それは客観情勢あるいは科学技術の進歩、そのほかに相対的に動くものでございますので、申し上げることはちょっとむずかしいと思います。
  231. 上原康助

    ○上原委員 先だっては量的に一応説明しておったと思うのです。陸上自衛隊については十八万台を維持する、航空機千機内外、さらに海上においては三十三万ないし三十五万トンである、その構想は変更なさったのですか。
  232. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは予算委員会におきまして楢崎委員から執拗な御質問がありまして、それに対して私案でもいいから言えということでありますので、これくらいの条件でありますならば、私の感触として一応この見当であると思っておりますと、そういう私の感触を申し上げたのであります。
  233. 上原康助

    ○上原委員 私は執拗ではありませんけれども、必要だと思いますので、感触でなくて、量的な今後の防衛力の限界というものをぜひ明らかにしていただきたいと思うのです。と申し上げるのは、確かにおっしゃるように国際情勢の推移なり客観情勢、科学技術の進歩というようなことは、これはごく常識的なことで、そういうことだけでは納得いかないわけです。中曽根さんが代議士になって大臣になられて、やがて総理大臣になろうとしている。そういうようなことで、軍備力というのも一定の段階まで行ってトーンダウンするという御説明ですが、もっと新しいもの、もっと質のいいものと、そういうのが私は人情だと思うのですよ。日本刀でも切ってみたいということで、戦争も始まったわけでしょう。そういうことがあるのじゃなかろうかということで国民の不安なり不信を払拭をする、国民ほんとうに理解をする、絶えずおっしゃるようにコンセンサスを求めるという意味でも、量的に、ある時点においてはこの程度が自分の感触だ、しかし、いまはまたいろいろ党内が少しうるさくなっているから言えない、ということになれば、ますます疑惑を持たざるを得ないわけです。現段階でも楢崎委員に予算委員会で御答弁なさったことは、中曽根さん、大臣の頭の中あるいは腹の中に生きているのか。その程度は答弁できるのじゃないですか。
  234. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あれは厳然として生きております。
  235. 上原康助

    ○上原委員 私は防衛力そのもの、あるいは四次防計画そのものに同意をするというような立場でございませんが、一応限界というのは大体その程度だというような立場で、今後の防衛力の整備計画というものは、もちろんそれから質的な変化なり、いろいろな若干の情勢の違いは出てきても、大体ピークに達するという受けとめ方でいいですか。
  236. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私が先般来申し上げたことは、現在の防衛庁長官の得ている感触であると御理解なさってけっこうでございます。
  237. 上原康助

    ○上原委員 どうもいまの感触ではあまり御自信のないような感触で、たいへん納得いかないわけですが、このことについては一応この程度にしておきたいと思うのです。  次に承りたいことは、防衛の基本構想について、けさの総理大臣の答弁の中でも憲法問題との関連で若干出たわけですが、いわゆる七〇年代の中期ないし後半においては、憲法あるいは安保条約そのものについて再検討をしなければいけない段階じゃないのか、さらにまた、今回の第四次防衛力整備計画を立案なさる段階においても、防衛基本構想そのものにも検討を加えたいという大臣の考えがあったやに聞いております。この防衛基本構想の改定ということについて、どういう考えを持っていらっしゃるのか。先般防衛庁長官が改定の構想というものを打ち出した。そのことについて、四次防との関連づけでどう考えておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  238. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国防の基本方針につきましては、先般来申し上げましたように、軍国主義の非難や誤解の歯どめとして整備をするという考えもございまして、たとえば日本の防衛は憲法を守り、文民統制のもとに行なうとか、そういう所要の、いわば私が前に申し上げた自主防衛五原則の趣旨をできるだけ生かした改定をしたいと考えておりますし、また、安保条約の取り扱いにつきましても、やはり外敵の侵入に対しては国民がまず守る、そして外国に依存するのは第二義的なものであるというような思想を入れたい、そう考えておるわけであります。しかし、国防の基本方針は非常に大事なもので、内外に及ぼす影響もありますから、これは国会やあるいは国民に十分御論議を願って、成熟させつつ提示をしていくのがいいと思いまして、私は、自分で格別あせってやろうと思っておりません。
  239. 上原康助

    ○上原委員 国防の基本構想の改定ということは、現段階で考えていらっしゃらない。またそういう構想はないというふうに受け取ってよろしいですか。
  240. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やりたいと思っております。そしていまのような内容の改定をしたいと思っておりますが、あせってやろうとは思いません。
  241. 上原康助

    ○上原委員 どうもそこらがあまり理解できないわけですが、この基本構想とも関連をいたしますし、四次防計画原案とも関係いたしますが、この四次防の案を見ましても、いわゆる今後の兵器等の生産については、国際軍需でというよりも、国内の軍需産業との提携によってやっていくのだという方針を出しているわけです。この構想が変わったのはどういう理由なのか、また今後国産軍需ということを考えていく場合に、先ほど議論をしてまいりました防衛力の整備、拡大ということと、軍国主義化という国民の批判等との面において、影響はないのかどうか、その点について説明をしていただきたいと思うのです。
  242. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本の経済力がまだ微弱であり、技術力も不足しておりましたときには、やむを得なかったことでありますが、ややもすると防衛庁の内部では外国の兵器のカタログを見まして、手ごろな、入りやすいものを手に入れるという傾向があるように思いました。しかし、これだけ経済力もでき、技術力も蓄積されました今日におきましては、やはり重要なものや、できるものはできるだけ国産でやって、どうしてもできないという部分だけ外国に依存するというのは、正常な姿であるだろうと思います。私は、着任以来そういう方向に方針をきめて、徐々に切りかえつつあるところであります。しかし、これがためにいわゆる軍需産業と政治の野合といいますか、いわゆる産軍コンプレックスなるものができてはいけませんから、そういう点につきましては厳重に規制を行ないながらやっていきたいと思っております。
  243. 上原康助

    ○上原委員 ここに新聞記事もございますが、四次防原案が発表された段階で、すでに「業界、受注合戦に手ぐすね」、「国産化へ技術開発」、そういう面で、いまおっしゃる大臣の姿勢としては私は一応理解いたします。しかし、今後五兆円余りの金を注いだ整備計画となりますと、やはり軍需産業そのもの防衛庁なりあるいは政府との癒着というものが、いま大臣がおっしゃるような姿勢だけで防げるか、私は非常に疑問を持つ。公害問題を見ても、政府はいかに業界と癒着をしているか、その事例というのは方々にあるわけです。特に軍需産業というものが頭をもたげる力を持って、それと政府権力が一体となるということが軍国主義への第一歩で、第一歩どころかもう十歩も二十歩も進んでいってしまう。その面は、予算的にはどうなんですか。国産の兵器というものをお使いになるのと、外国から買うという場合と、支出の面においてはどうなっていくのか、現段階において、あるいは将来においてどう変わっていくのか、説明を賜わりたいと思います。
  244. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 価格にもよりますけれども、できるだけ国産でやるというのが正しいやり方であるだろうと思います。私は、科学技術庁長官をやって、研究開発の問題についていろいろ検討したことがございますが、やはり研究開発においては失敗の歴史がとうといのであります。むしろ失敗したレポートのほうが価値のあるものなのであります。その上に立って新しい開拓とか創造が行なわれるので、それで初めて自主的技術というものは開発されていくのであります。失敗をおそれたら新しい技術の開発はできませんし、失敗の責任の追及ばかりしたら、新しい創造はできません。そういう失敗をおそれさせたり追及したりすると、きびしくやり過ぎますと、技術者が萎縮してしまいまして、自分で開発していくという意欲を失っていくものであります。私は、そういうことが一般的に科学技術の開発の面については大事であると思いまして、多少お金の要ることもありますし、あるいは結果的には多少浪費も出るかもしれませんけれども、しかしできるだけそういうものを出さないように、それと同時に、いわゆる産軍コンプレックスというようなものができないように、厳重に規制しながら、いま言った自主開発の努力を積み重ねていくべきである、そう考えております。
  245. 上原康助

    ○上原委員 まあ失敗は成功のもとかもしれませんが、個人的にはそういうことを言えても、事、国の政策なり防衛という問題で失敗を重ねておっては、それこそ平和と安全も脅かされることになりかねないですね。「防衛庁また甘い見積り、一台一億円オーバー、世界一高い製作費」こういうことも現にあるわけでしょう。ですから私がお伺いしたいのは、四次防をかりに推進をしていく、計画を進めていく上において、すべて国産でまかなっていくんだという場合に、いま長官がおっしゃるような形、姿勢だけで、はたして企業との癒着なり、こういった国の予算というものがむだづかいされるという危険性、国民のまた不信、疑惑というものが払拭できるのかという疑問を持つわけですね。現にあるわけですから。その点についてもう少しはっきりした答弁を賜わっておきたいと思うのです。
  246. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 開発の具体的なやり方につきましては、局長をしていろいろ具体的に御説明を申し上げさせます。
  247. 蒲谷友芳

    ○蒲谷政府委員 いま先生御指摘の、すべて国産でやるという考えはとってはございません。大臣がお話しになりましたように、やはり国防という考え方日本というものの防衛を考えた場合、必要な装備についてはできるだけ国内で開発し、生産するということが望ましいという立場をとっております。ただ現在日本の産業、工業力は大きいものでございますけれども、防衛生産技術につきましては戦後の長い間の空白のためにおくれております。そういう意味では、技術の内容なり価格面を考えて、できるだけそういう国内で研究し、生産するという体制は考えますが、必要なものにつきましては必要な技術導入も考えなければいけませんし、またそうした面から見て効果のそう多くないものにつきましては、必要な輸入を考えるということも必要と思います。そういう考えで個々の問題についての具体的な計画を進めてまいりたいというふうに考えております。
  248. 上原康助

    ○上原委員 少なくとも国民の疑惑というもの、あるいは企業との癒着ということで、権力と軍需産業というものが結びついていくような方向というものをぜひとも食いとめていく、そのき然たる姿勢というものを強く要求しておきたいと思うのです。  次に、四次防と沖繩の施政権返還、あるいは沖繩への自衛隊の配備との関連について、これまでも二、三回見解を賜わりましたが、現段階でその関連づけ、位置づけ、さらにまた自衛隊配備計画というものがどうなっているのか、作業の進みぐあい等を含めて聞かしていただきたいと思うのです。
  249. 久保卓也

    ○久保政府委員 沖繩に配置いたしまする部隊の計画については、大体新防計画中に考えていること以外にはまだないわけでありますが、この期間中に考えておることを二つの段階で分けて申しげますと、返還時から半年くらいの間及び一年前後の間という二段階に分けます。  そこで陸上自衛隊についてまず御説明申し上げますと、第一段階で配置されますのが、普通科中隊二、それから施設中隊その他若干の部隊ということで、人員で千百人。第二段階で配置されますのが、たとえば飛行隊の若干の増強、それから後方関係の部隊の若干の増強ということで、千八百人くらいになる予定であります。  それから海上自衛隊で申しますと、第一段階が掃海艇、それから上陸支援船の合計で五隻、それからP2Jという哨戒機が六機、人員が、これは機体も入りますが、そういったものと後方関係の支援部隊を含めまして人員が約七百人であります。それから第二段階で見ますると、輸送艦の小型の永のを一隻増強いたします。それからP2J、先ほどの哨戒機を六機から十二機にふやします。そういうことで千五百人ばかりになります。この人員の中には、佐世保に護衛艦を置きまして、沖繩周辺を哨戒する二隻の護衛艦も含めておりますが、その人員四百人を入れて千五百人ということであります。  それから航空自衛隊は、第一段階でF104Jの一個スコードロン二十五機でありますが、それと若干のレーダーサイトの要員を含めて千四百人であります。  なお申し落としましたけれども、陸上自衛隊の場合にホークの要員が、第二段階のときに入る予定になっております。  したがいまして航空自衛隊の場合も、第二段階の場合にナイキの部隊がこれに加わります。またレーダーサイトの要員がこれで全部入ります。そういう関係で第一段階は航空自衛隊は千四百人でありますが、第二段階で三千九百人。  合計いたしますと人員で第一段階が三千二百人、第二段階が六千八百人、なおこの期間中、つまり新防計画期間中におきまする総額経費は約千百億くらいを見込んでおります。
  250. 上原康助

    ○上原委員 もちろん私は沖繩の例の自衛隊配備に同意するものではありません。反対いたします。  それ以後の計画もありますか、いま説明なさった第一、第二以降の件。
  251. 久保卓也

    ○久保政府委員 現在のところは全く考えておりません。
  252. 上原康助

    ○上原委員 大臣にお伺いいたしますが、沖繩への自衛隊の配備ということについては、県民は必ずしも反対をしていないのだというような大臣の御発言、あるいはまた現在各団体の要路の方々政府にいろいろ要請に来ております。そういう方方に対しても、声なき声は自衛隊に反対していないのだというような御発言もあったというような報告もあります。これだけの自衛隊を配備をするという、まあ沖繩の局地防衛だということでまた御答弁なさると思うのですが、はたしてほんとうに沖繩を防衛をするために自衛隊の配備ということが必要なのか、むしろアメリカの軍事基地を守ってあげるために配備をするようなものじゃないのか、私はそう思うのです。アメリカから配備をしてくれという要請があってやったのか、政府が自主的にそういう方針でやろうとしているのか。またなぜそれを県民が要求していない、強く反対をしている自衛隊の配備というものを、復帰の時点、復帰の前後六カ月ないしその後一カ年の間に六千名余りを配備をしなければいけない理由はどこにあるのか、あらためて見解を明らかにしていただきたいと思います。
  253. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 沖繩が返還されますれば、日本憲法が通用する日本の主権の領域に入ります。したがいまして、日本国民が沖繩をみんなで協力して守るということは当然のことであります。そういう観点に立ちまして、自主的に日本政府決定して、沖繩を防衛するということをきめたので、自衛隊は沖繩を防衛するために置くのであります。
  254. 上原康助

    ○上原委員 県民が自衛隊配備を望んでいない、強い反対の意思表示があるということについては、どうお考えですか。
  255. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 一部にあることはよく承知しておりますが、それが必ずしも大多数の県民の声であるとは私理解しかねます。現においでになる方の中には自民党支持者の傾向の方々は必ずしも反対をしておりませんし、琉球新報の世論調査を見ましても、去年の秋の世論調査では自衛隊が来ることに賛成のほうが反対より少し多くなっていたことを私見たことがあります。したがいまして、心の底にあるものははたして労働組合の一部の皆さんのおっしゃるようなことであるかどうか、私は疑問に思っておるところもあるのです。しかし第二次大戦の最も悲劇的な島でありました沖繩のことでございますから、われわれとは違う感情をお持ちになっていることも十分理解されますので、われわれといたしましては最大限努力をして御理解をいただくように誠心誠意つとめつつ、沖繩の皆さんの御理解をいただいたその雰囲気の中で自衛隊を進出させよう、そういうふうに努力していくべきだと思います。
  256. 上原康助

    ○上原委員 別にことばじりをとらえる気持ちはございませんが、労働組合の一部の役員とかあるいは労働組合だけが自衛隊配備に反対をしているのじゃなかろうかという情勢判断はきわめて甘い。さらにたいへん残念なことばですが、自民党の中には自衛隊を歓迎する向きもあるんだ。確かにそれはあるでしょう、それぞれ見方もあり、考え方も違うわけですから。しかし絶体多数の県民が自衛隊の配備に対して強硬に反対をしているという答えは、復帰に向けてあるいは現に出ておる。そのことは大臣といえども理解をしなければいけないと思うのです。  そこで沖繩の基地問題についてお尋ねいたしますが、すでに返還協定も調印の段階に来ている。あるいは明日中間報告をやる、中身のあるのが出るかどうかわかりませんが、そういう段階まで来ておるのは大臣も御承知のとおりでございます。沖繩の現在の軍事基地について実態把握なり状況把握というものを防衛庁としてどう見ておられるのか。できれば米軍駐留の実態あるいは基地の実態等含めて説明をいただきたいと思います。これは必ずしも大臣でなくてもよろしいですから、関係者から……。
  257. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 沖繩の軍用地の総面積は約三億平米でございます。これは沖繩全島の面積の一三%弱であります。また沖繩本島の面積に比べますと二三%程度でございます。本土における米軍の基地に対する比率からしますれば、沖繩の軍用地はかなり率が高いということはいえるだろうと思います。
  258. 上原康助

    ○上原委員 軍用地の面積等についてはいま施設庁長官答弁のようにこれまでも明らかにされているわけですが、施政権返還に伴っていわゆる軍用地の取り扱いについて、防衛施設庁はこれまで現地のほうに調査団を派遣したり、あるいはまた現に沖繩事務所に職員何名か行っていると思うのです。その調査団がおやりになった調査報告というのはまとまっているのか、あるいは具体的に軍用地の地主との折衝なり今後軍用地の取り扱いというものをどういう立場でおやりになっていこうとしておられるのか。単に面積とかそういうものでなくて、具体的な作業の進みぐあいは一体どうなのか、そこらについて説明をいただきたいと思います。
  259. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 沖繩におきます米軍に提供すべき施設、区域につきましての使用権の取得につきましては、私どもとしてはあくまで地元の地主の皆さん方との円満な話し合いによりまして契約を締結する、こういう基本方針でおるわけでございまして、従来からいろいろ地主会の連合会の皆さん方のわれわれに対する御要望も十分承知いたしております。それにつきましての基本的なお話し合いもしばしば行なっておるわけでございますが、御承知のとおり四月になりまして、現地に二十名の者を対策庁の職員として派遣をいたしております。それらの者が地主会連合会の方々とも絶えず接触を保ちながら地主会連合会の御提出になりました諸条件につきましての調整をはかっておるというのが現状でございます。  そこでわれわれの基本的な態度としましては、あくまでそういうふうに円満な話し合いでこの問題を解決したいという基本方針のもとに、地元の土地所有者の皆さん方のいろいろな御要望につきましては、できるだけその線に沿ってわれわれとしても努力したい。ただ御承知のとおりに米国の施政権下におきますいろいろな土地制度その他が本土と非常に違った特殊な制度でございますので、そういうものをいかに調整をしていくかということにつきましてはいろいろ問題がございますが、基本的にわれわれとしてはできるだけそういう要望の線を生かすように努力しまして、この復帰問題が円滑に処理できるように強く念願をし、またその努力を続けておるというのが現状でございます。
  260. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、いまの御説明からはあくまでも今後地主と個別契約方式をとる方向で話し合いを進めていくということですか。
  261. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 そのとおりでございます。ただいろいろ地元からの御要望がございまして、たとえば賃借料の適正化をはかる問題その他いわゆる黙認耕作地をどうするとか、細分土地、所有者不明土地、こういう土地についてどういうふうにしてほしいとか、各種の補償についてどういうふうにしてほしいとかいろいろ御要望がございます。それについてわれわれとしてまだ意見が固まった段階ではございません。いろいろ地元の御要望を聞きながらわれわれとしていまいろいろ検討をしておる、こういう段階でございまして、基本的には先ほど申し上げましたようにあくまでも円満な解決をはかる、こういうことでございます。
  262. 上原康助

    ○上原委員 先ほどの長官の御答弁にもあったわけですが、政府は沖繩軍用地地主連合会というものを軍用地地主の絶対唯一の代表機関と見ておるのか。軍用地地主連合会を通して今後地主個々との契約なり話し合いを進めていくおつもりなのか。あくまでいま御答弁いただいた個々の地主との話し合いの中でやっていくおつもりなのか。お聞かせいただきたいと思います。
  263. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 もちろんこの問題は琉球政府なりあるいは市町村等との話し合いが必要であることは申し上げるまでもありませんが、幸いに地主会の連合会がございまして、しかもその組織がかなり進んでおるように思われます。そこで、いろいろな基本的な諸条件につきましては、できればそういう地主会と——個々の地主を含めまして、地主会としてのいろいろな条件につきましての話し合いというものをまずやりまして、その上に立って個々の地主の方々との契約を締結する、こういうふうな基本的な方針で考えておるわけでございます。
  264. 上原康助

    ○上原委員 土地問題で話し合いを進めていく、あるいは地主との契約交渉をおやりになっていくという場合に、琉球政府との関係はどうなりますか。
  265. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 いろいろ土地制度そのものにつきまして、琉球政府が関与しておられることは、言うまでもございません。また現に、琉球政府がみずから管財人として管理しておるという土地もあるわけでございますので、そういう諸問題につきましては、当然琉球政府と話し合っていく。ただ個々のいわゆる民有地と申しますか、そういうものを提供する場合には、個々の地主との契約ということが最後の措置になりますので、そういう個々の地主の連合会との密接な連絡を持っていく、こういう考えでおるわけでございます。
  266. 上原康助

    ○上原委員 現在琉球政府ともこの土地の契約問題について話し合いなり、あるいはまた具体的に進めておるのかどうか。進めておるとすれば、どういう面をお話し合いしているのか、中身まで含めて説明していただきたいと思います。
  267. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 現在、現地に行っております二十名の職員は、琉球政府とも絶えず連絡をとりながら、いろいろ賃借料の算定その他に必要な資料を琉球政府からいただいておるということでございます。またそういう基本的な考え方につきましても、琉球政府のほうにも十分御説明をしながらやっておるわけでございます。
  268. 上原康助

    ○上原委員 大体アウトラインはつかめるような気がいたしますが、問題は、しからば地主が契約に応じない、どうしても返還してもらいたいという土地も相当あるのです。これについてどういう取り扱いをするのか。これまでも沖特なり、あるいはこの委員会でも聞いたかと思いますが、二、三回質問をしておりますが、なかなか明確な御答弁がいただけない。おそらくこの段階のところまで来ると、個々の地主で契約を拒否する方々について、どういう方向で進むかは、もうすでに皆さんがお考えになっておると思う。また差し迫った段階で、そういうものもないままに話し合いが進んでいるのだということになると一そうみんなが一〇〇%納得いくようなことじゃない、沖繩の土地問題というのは。そこいらも重々おわかりかと思うのです。拒否する地主については、どういう方針政府は臨んでいく立場をとっていらっしゃるのか。その点についてできるだけ具体的に、明確に説明をしていただきたいと思います。
  269. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 この土地問題の処理が沖繩の返還、復帰という問題の円滑な処理ということに非常に重大な影響を及ぼすわけでございますので、私どもとしましては、先ほど申しましたように、地元の地主の方々との話し合いを通じてその円満な解決をはかっていく、こういう方針で進んでおるわけでございますし、また琉球政府あるいは地主会連合会等もそういうお気持ちであろうかと思います。しかしながら、現在米軍が使用しております土地につきまして、契約というものではなくて、米側自体が収用した土地もあるわけでございます。したがいまして、われわれとしても、今後やはりそういう事態が絶無であるというふうには考えるわけにはまいらない。しかしながら、米軍に対する施設の提供につきましては、何らかの使用権を設定いたさなければなりませんので、そういう場合には、やはり何らかの法的な措置が必要であるというふうに考えます。ただ、これは最後の最後の措置でございますが、やはりどうしても応じられないという場合には、そういう措置も必要かと思いまして、その立法措置の内容につきまして、いろいろいま部内で検討いたしておるわけでございますが、何ぶんにも使用権の設定という問題でございますので、慎重にこれは検討いたさなければなりません。いろいろいま現在部内で検討しておる、まだ成案を得るという段階には至っておらないというのが現状でございます。
  270. 上原康助

    ○上原委員 何らかの措置を講じたいということは、これまでもしばしば御答弁があったわけですね。知りたいのは、その何らかの措置とは何ぞやということなんです。反対をしておる地主の方々に何らかの措置をとる、その措置というものを地主も知りたがっているし、みんな明らかにしていただきたいと言っているわけなんです。  そこで、話が関連いたしますので、アメリカ局長いらっしゃいますね。——お尋ねいたしますが、いわゆる施設、区域の提供問題と関連いたしまして、どうしても土地を返してもらいたいという地主の取り扱いですね、あるいはもうあした中間発表をおやりになるという話ですが、あとでたくさん聞きたいことがございますが、現に返還を求めておる区域なり基地なりというものは、どこどこなのか。これからの議論を進めていく意味で必要になりますので、アメリカ局長の御答弁をこの段階でひとつ賜わっておきたいと思うのです。
  271. 吉野文六

    ○吉野政府委員 ただいま御質問の、いかなる基地が返還されるかということにつきましては、実はまだ米側と目下交渉中でございまして、ここで申し上げるわけにはまいりません。まず、第一に、この問題については、日米まだ合意ができておりません。第二は、大きな問題につきまして、依然として双方の主張が対立しておるような状況でございます。したがって、この点について、いまここで申し上げるわけにはまいりません。
  272. 上原康助

    ○上原委員 あした中間発表をなさるという段階までもまだ合意に達していない。しかも難航しているのだ。皆さんがおっしゃるように、きわめて順調に進んではいないわけなんですね、返還準備というものは。これはあたりまえだと思うのです。しかし、どうしても返してもらいたいという軍用地なり基地というものの取り扱いというのは、これは日米両政府だけの意思ではきめてはいけないことなんですね。先ほどの防衛施設庁長官の御答弁では、地主の意見というもの、立場というものを尊重して、できるだけ個々の地主の方々と契約を結んでいきたい。万一御納得がいかない場合には、何らかの措置を講ずるということなんですが、何らかの措置というものをきょうはどうしても聞きたいわけなんです。お尋ねしておるのは、どうしても返してもらいたい土地について、外務省としてどのようにアメリカ側とお話し合いをしようとしておるのか。また地主が拒否をした場合に、その土地の取り扱いについてはどうな去ろうとするのか。やはりこの段階では明らかにしていただかないと困る。まだ、具体的にこの基地を返す、この基地を返すということは、なかなかいま明らかにできないかもしれません。しかしその基本的な姿勢というもの、そのことについては、私は明らかにできると思うのです。いま一つ答弁を賜わっておきたいと思うのです。   〔坂村委員長代理退席、委員長着席〕
  273. 吉野文六

    ○吉野政府委員 すでにわがほうの基地返還に関する基本的な態度につきましては、たびたび委員会でも御説明したとおりでございますが、われわれといたしましては、なるべく多くの基地を返還してほしい。ことに沖繩住民の民生安定、経済発展に寄与するような基地につきましては、特にこのような要素が強いわけでございますから、その意味で、そういうラインに沿いまして交渉してきたわけでございます。また、米側といたしましては、いろいろの基地を引き続き使用しなければならない理由もございますが、再三にわたりまして彼らの基地の今後の使用見込みにつきまして検討いたしまして、多少そこに返還の可能と見られる基地も出てきたわけでございますが、いずれにせよ、これらにつきましては、まだ最終的に日米間で合意に達していないのみならず、先ほど申しましたように、二、三の大きな、われわれとしては重要性を特に持たせておる基地についてまだ合意ができていないわけでございます。したがって、これらについてなお交渉を続けているというのが現状でございます。  なお、地主が使用権を提供することを拒むような場合の取り扱いについてどうするかという御質問につきましては、先ほど施設庁長官が御答弁になったとおりでございます。
  274. 上原康助

    ○上原委員 局長の立場でなかなか御答弁をやりにくい面もあるというのは理解をいたしますし、また非常に困難な面、相手のあることだということも理解をしますし、その心中は察するにやぶさかではございません。これまでも私は具体的な例をあげて、返還を求めているのかということをお尋ねしてまいりましたが、最近VOAのことが非常に前面に出て、あとのことはあまり表立って取り上げられていない節もあるわけです。  那覇軍港の取り扱いについて、那覇軍港を返せという要求をおやりになっているのかどうか、那覇軍港の取り扱いをどうしようとしているのか、そこらについて、現段階まで相手側と話したこと、あるいはまたどういう話し合いをおやりになっているのか。少なくとも、今後の沖繩の経済開発なりいろいろな面から考えて、那覇軍港の民移管というのは、もう単に革新とか保守とかいうようなことではなしに、県民の偽らざる強い要求なんです。しかしこのことについては、新聞紙上なりこれまでの政府答弁の中からはほとんど出てこない。二、三の重要な問題についてまだ合意に達していないという中に入っているのかどうか、その点を明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  275. 吉野文六

    ○吉野政府委員 那覇軍港の返還につきましては、これも先ほど申しましたように、われわれとしては、沖繩住民の経済発展に非常に裨益するところがあるという見地から、強力に交渉してまいりましたが、何ぶんあの地域におきましては、那覇軍港に匹敵するような良好な港湾施設がない、こういうような事情で、米側は依然として返還に反対しております。したがってこの問題は、二、三の残された重要な基地の交渉と同じように、いまだ日米間で懸案となっております。
  276. 上原康助

    ○上原委員 だんだん後退といいますか、中身が出てくるわけですが、そうしますと、明日の中間報告というのもたいした意味がないのではないかという気もいたしますが、あとでまた請求権等の問題については聞きます。  いまは軍用地の問題にしぼってお伺いいたしますが、ここでなぜ私が、地主の反対をする、返してもらいたい土地というのをあくまで返せ、このことを強く主張するかというと、これは一つの例ですが、こういうのを見れば、いかに基地の中に沖繩があるかということがわかるかと思うので持ってきました。これは北谷村の例です。御案内のように、この赤い線が全部軍用地、村の八〇%も軍用地に取られているわけです。そうして現に地主あるいは村当局は、せめてこの黄い部分は返してもらいたいと、政府に対してもアメリカに対しても要求をしているわけなんです。おわかりでしょう。みんないいところは取られて、人間というのはみんなすみっこのほうに追いやられている。占領当時そのままの地形で、いまアメリカがかってほうだいに使っている。これは大臣がいるところで見てもらいたかったのだが、こういう実態というものをぜひわかっていただいて、沖繩の軍用地の問題というものを取り扱ってもらわぬと、安保条約の目的とその趣旨に照らせば全部必要だから、施設、区域の提供は全部やらなければいけないという考え方、概念では県民は救われない、また地主も納得しない。この返してもらいたいというこういう土地に対して、ほんとうにどうなさるおつもりか聞きたいわけです。  そこで、施設庁長官にまた質問が戻りますが、何らかの措置を講ずるということは、特別立法、強制収用をおやりになるという腹づもりでそういうことをおっしゃると思うのですが、その特別立法というものはどういう中身なのか。小笠原返還の場合も特別立法があったかと思うのです。あるいは地位協定の中でいう土地収用法令なのか、それとは別に新たに立法を考えているのか。これは外務省とも関連するかと思う。その点についてぜひ明確に答えていただきたいと思います。
  277. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 その立法措置につきましては、先ほど申しましたように、いま部内でいろいろ検討いたしておるわけでございまして、これは相当慎重を要する問題でございますので、まだ成案を得ません現段階において、その中身についてここで御説明をするということは差し控えさせていただきたいと思うわけでございますが、やはり使用権を設定をするための特別な立法、こういうものを考えているわけでございまして、これは国内法として権限を取得するための特別立法、こういうような形になると思います。
  278. 上原康助

    ○上原委員 一応部内で検討をお進めになっている、検討をやっていらっしゃるのだが、いろいろ波紋もあるかもしれぬから中身については言えないということですか。新聞報道によると、外務省は、特別立法をやるならば五年ぐらい、かなり長期なものをやって——これはもう法律上どうあろうが強制接収ですよ。アメリカがかってに取り上げたものを、また施政権者がかわって、政府という立場で、きわめて非合法的なものを合法的にやろうとするのが特別立法。これは地主の意思とはかかわりないわけですから……。そういうことではあまりにも県民の願う、あるいは期待をする、要求をする復帰にはならない。特に軍用地の問題というのは、いまさっきの図面を見てもおわかりのように、これは北谷村の例ですが、那覇市においても三〇%が軍用地ですよ。先ほど那覇軍港あるいは那覇空港、牧港サービスエリア、いわゆる上之屋といわれている付近、あるいは与儀のガソリンタンク、そういう部門についてはぜひとも返還をしてもらいたいという強い要求が出ているわけです。そこを、アメリカとの交渉がうまくいかないからということで特別立法で片づけるということは、悪い表現をいたしますと、これは沖繩県民の側から言わすと、もう踏んだりけったりです。これではいけないと思うのです。検討している中身というのはどういう形の立法を考えておられるのか、もう少し明らかにできませんか。
  279. 大出俊

    大出委員 関連して。さっきからがまんして私も聞いているんだけれども、いまのような答弁のしかたでは論議になりませんよ。アメリカ局長は、さっきどういう基地が返ってくるのかと言ったら、これは大きな面で対立する面もあるからいえない、こういうわけだけれども、わがほうとしては、どことどことどことどこを返せといっているのかというくらいは言わなければ。いま対立している問題の焦点はどうしても言えぬというものがあってもいい。いいけれども、大体のところ、こういうところを返してくれといっているんだというくらいのことは、結果はどうなるかわからぬけれども、言わなければ論議のしょうがないでしょう。  もう一つ、島田さん先ほど来やけにお答えになっているけれども、これも私がここで質問したときに、外務大臣は明確に、私は小笠原方式を例にとって、これはお認めになった。小笠原方式をお認めになれば、小笠原は返還協定というものが現に存在している。この中で引き続き使用をするという継続使用の原則を協定書に明確にうたっている。そうしてそれに基づいて国会が特別立法をこしらえた。暫定措置法をつくった。今度暫定措置法というのは、土地の使用に関する暫定措置法だ。この土地使用に関する暫定措置法で委任に基づく政令をつくった。その政令の中で、いま硫黄島にあるロランの基地というのは五年なんだ、一般の基地というのは三年なんだというふうにきめたはずです。そうでしょう。そうすると小笠原方式をお認めになった限りは、現に先例がそこにある。そうするといまの質問に対して、少なくともそれに類する概略のことは皆さんのほうで話をしなければ、たとえば三年ないし二年、二年ないし一年かそれはわからぬかもしれない、やりとりしているのですから。皆さん方にすれば少ないほうがいいとお考えかもしれない。さて個別、一括いずれの方式にしろ、将来どうなるかという展望もあるかもしれぬ。そこにその機微に触れるところは言えないかもしれないけれども、もうちょっとそこのところを、論議してきた経緯があるんだから、現在沖繩返還の交渉が続いている、それに即してずっと質問を続けてきている段階と経過があるんだから、そこまで捨ててしまってものを言ったのでは、選挙区を沖繩にかかえている上原議員の立場からすれば、私どもとは違って実際に沖繩というものを知り過ぎて質問をしている。論議がかみ合わないでしょう。そういう答弁のしかたというのは私はよくないと思う。だからもう少し、どうしても言えない点があったにしても、焦点ははっきりさして議論をしていただかないと、時間ばかりかかるだけですよ。そこらを明確にしてください。
  280. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 これは外務省の問題にもなりますが、前から外務省からもいわれておりますように、岡崎・ラスク方式というものは、外務省としてはこれによらないということでございます。したがいまして、その種の協定はおそらくないだろうと思います。しかしながら、御承知のとおり、現在駐留軍の土地に対する臨時措置法というのがございまして、この土地も復帰になりますれば当然現地にも適用される、こういうことでございますが、この特別措置法に基づきましていろいろ手続をとります場合、その間たとえば土地収用委員会の認定なりあるいは裁決、こういう問題が出ますと、そこにある程度の年月がかかる。その場合にやはり使用権を設定しておきませんと、その間にこの土地がブランクになる。地主の契約が得られない土地がありますれば、そこはブランクになるということで、提供事務が円滑にいかない。こういうことになるわけでございますので、いわば小笠原につきましては、御承知のとおり三年ないし五年の間の使用権の設定に関する規定がございますが、基本的にはやはりそういうことでいかざるを得ないのではなかろうかという感じがいたしておるわけでございます。そういう点で検討しておりますけれども、小笠原の場合と沖繩の場合とはまたいろいろ土地の実態その他が違いますので、その辺の技術的な問題についていろいろ検討していきたい、こういうことでございます。
  281. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほどの大出先生の最初のほうの御質問にお答えいたしたいと思いますが、基地返還の問題は、これが公になりますといろいろ及ぼすところが大きいものですから、かつまた相手方もあるものですから、われわれとしてはいかなる基地の返還を先方に要求しているかということは申し上げるわけにはまいりませんが、先ほど話題にのぼりました与儀のガソリンタンクとか、那覇の軍港、空港、上之屋の住宅地域、こういうものはもちろんわれわれの返還要求リストの中には入っております。
  282. 上原康助

    ○上原委員 入っておるのはおるわけですね、那覇軍港も。相手がなかなかはいと言わない場合もアメリカに返してくださいと言ってくださいよ。  軍用地の問題でさらに議論を続けていきますが、特別立法の中身については、現段階ではなかなか明らかにしていただけないようでたいへん残念で不満なんですが、ではこの特別立法が必要とされるという場合はいつごろまでに明らかにするのかあるいは返還協定が調印をされる段階なり、沖繩臨時国会といわれる秋の臨時国会等には提案をなさるつもりなのか、そこらの見通しについては一応御説明いただけるわけでしょう。
  283. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 沖繩の返還批准国会におきまして提案をいたしたいというふうに考えておるわけでございまして、そのための準備をいたしております。
  284. 上原康助

    ○上原委員 それと、土地問題であと二点ばかりですが、現在政府は沖繩の軍用地の問題で何を最も重点に検討しておられるのか。もちろん地主との個々の契約ということもあるでしょう。しかし返還をしてもらいたいという土地なりあるいは賃貸料、地目の変更等とかいろいろな面であると思うのです。そういう面で、まず具体的に重点にあげると政府が御検討なさっているのは幾つくらいになるのか、もし明らかにできましたら明らかにしていただきたいと思うのです。
  285. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 昨年地主会連合会から提出されました要望事項が十七項目ございます。その中に軍用地の問題に関するいろいろな土地制度の問題についての御要望がございます。したがいまして私どもとしましては、その各項目について検討いたしておりますが、一番大きな問題は、何と申しましても賃借料を適正に算定するという問題でございます。これが円満に処理できるかどうかということに非常に大きなかかわりを持つわけでございます。それ以外に特殊な問題といたしまして、黙認耕作地の問題あるいは非細分地の問題あるいは所有者不明土地の問題、それから各種の復元補償の問題あるいはつぶれ地の問題あるいは滅失地の問題、こういういろいろな問題がございますので、そういう問題について検討いたしておりますが、やはり一番大きな基本になりますのは賃借料の問題だ、こういうふうに考えております。
  286. 上原康助

    ○上原委員 黙認耕作地の取り扱いについては、現在本土のほうとは違っております。その件はどう取り扱うつもりなのかひとつ聞かしていただきたいと思うのです。
  287. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 黙認耕作地につきましては、まだ実態が必ずしも十分把握されておりませんので、いま鋭意その調査中でございますが、御承知のとおり、基本的には現在沖繩におきましては賃借料の一〇〇%を支払っておるわけでございます。ただ地主が自分で耕作をしているものあるいは第三者が耕作しているもの、いろいろ形態がございます。したがいまして、それにつきましてそれぞれ検討いたさなければなりませんが、本土の場合におきましては、大体最低賃借料の一〇%程度を払っておるわけでございまして、そこに大きな開きがございます。したがいまして、これをどうするかということはいま非常にむずかしい問題で、検討いたしておりますけれども、われわれの基本的な考え方は、先ほど申しましたように、地主の要望につきまして十分これを尊重していく、こういう方針で処理してまいりたいと考えております。具体的にどの程度の補償になるかということについては、もう少し検討させていただきたいというふうに考えております。
  288. 上原康助

    ○上原委員 この問題だけであまり時間をとるわけにもいきませんので、最後にあと一つありますが、土地問題というのは賃借料の問題あるいは黙認耕作地の問題ももちろん重要です、これは個々の地主の立場からしますと。ただ、一部に賃借料を少々上げれば返還を要求している地主の方々も何とかまあ説得できるんじゃないかという甘い見方なり姿勢というものがなきにしもあらずという感もしないでもない。私は沖繩の軍用地の問題というのは、過去の歴史で、不法不当に接収された、ほんとうに目の前でブルドーザーで次から次へつぶされていった。そのなまなましさというのは沖繩県民なら忘れられない。だから返してもらいたいという土地に対する愛着も、あるいはいろいろな面で土地問題の根の深さというのがあるわけです。そういう経緯というものを踏まえた形で今後の土地問題というものをぜひ考えていただきたい。特別立法で、拒否する人々を権力でもって、法をつくって縛っていくというような、アメリカがやった二の舞いを踏まない、その姿勢だけはぜひ日本政府は堅持してもらいたいということを強く要求をしておきたいと思うのです。  そこで、軍用地の問題とは直持関係ございませんが、御案内のように旧日本軍が使った土地というものがあります。いわゆる宙に迷っているような土地、まあこれがいままで解決されていないところにも戦後処理がなされていないという一つのサンプルがあるのです。国家総動員法によって接収されて、その後米軍が管理をしている土地、これは国有地がほとんどですが、この取り扱いについてはどうなさるのか。現在小作をしている人々にお返しになるのか。あるいはまた、本土でも国有地の払い下げというものがあったわけですが、そういう方法で関連小作人なり地主使用人というものに返還をしていくつもりなのか。どのような取り扱いをやろうとしているのか。また具体的にお調べになっているのかどうか、資料等が整っているのかどうか、明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  289. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 これは国有地の問題でございますので、現在大蔵省におきましていろいろ検討されておるというふうに聞いております。
  290. 上原康助

    ○上原委員 これは防衛施設庁じゃないのですか、どうも失礼しました。じゃ防衛施設庁はあとでまた軍雇用員の問題がありますので、しばらく休んでいただいて、今度は対米請求権の問題と基地問題についてお尋ねをしたいと思うのです。  これまでもいろいろ土地問題なり対米請求権の問題、あるいは基地の取り扱い等については政府答弁等も賜わってきたわけですが、特に軍用地の問題と関係をするのが、対米請求権というのは御案内のように多いわけですね。大臣もこの委員会でもあるいは沖特でも、対米請求権については大体十項目に分類されているのだということは何回か御答弁があったと思います。どうもいまの返還交渉というものあるいは報道されている返還協定の中身というものは、アメリカの資産を買い取る、あるいは有償で引き継ぐというようなことについては非常に好意的に、額は最終的に幾らになるかわかりませんが、少なくとも三億ないし五億前後だといわれておる。しかし沖繩県民の対米請求権にいうものについては、講和条約第十九条(a)項で放棄をしているんだということで、具体的にどうなるのか。返還の時点で万一アメリカがどうしても出さないという場合、その責任の所在、義務というのはどこにあるのか。そこはどうしても返還協定の中で明確にしていかないと、これは県民の不利益というものはもうばく大なものになる。その返還協定の中で対米請求権の取り扱いというものについて具体的にどこまで煮詰めていらっしゃるのか。また十項目の対米請求権というものに対する政府の御見解というものはどうなのか。あらためてお伺いしておきたいと思うのです。
  291. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この請求権の問題もまだ実は日米双方の間に煮詰まっていない大きな問題の一つであります。しかしながらいずれにせよ日本側といたしましてはわれわれの要求が正当なものだという信念に基づきまして、依然としてわがほうの立場を主張しているわけでございますし、また米側においても、請求権の一部につき多少彼らもわがほうの主張の正当性を認めては来ております。しかしながらさらにその上で幾らをどういうような方法で支払うか、こういうようなことになりますとまた問題が出てくるわけでございます。そういうようなことを含めまして目下まさに交渉中でございまして、いまのところこれ以上何とも申し上げることはできないのが残念でございます。
  292. 上原康助

    ○上原委員 まあ苦しいお気持ちはわかりますが、これじゃますます県民不在の復帰返還協定だというのを証明するようなものだといわざるを得ません。  そこで、施設庁長官とまた関連するわけですが、軍用地の適正補償ということでいろいろ問題がある。現在琉球土地裁判所へ異議申し立てされている事案というのはどの程度あるか、資料を持っていらっしゃるか。——時間の都合もありますので、私のほうから言ってもいいですが、七〇年五月現在で軍用地の適正補償を要求をして異議申し立てをして裁判所に召喚されているのが九千六百十八件もあるわけですね。一万七千八百七十八筆。こんなに膨大なものなんですよ。これが復帰の時点において、アメリカも責任持ちません、講和等約十九条をたてにとって。アメリカというのは法律や条約ということについては非常にしつこい連中なんです。そうなりますと、これがどう取り扱われるかということは県民の——単に聖だけの問題じゃないですよ、これは。さらに海上演習等に伴う漁業補償の問題、これは講和前のものについては御案内のように布令六十号によって補償されております。しかし講話後のものについては全然補償がなされていない。一九七〇年五月末現在で米国民政府土地裁判所に異議申し立てされている召喚中のものが十七件、補償要求額が一千六百四十万ドル。しかしその後の年間の要求というものが一千万ドルづつ、これについてどうなさるのか。こういうようなものが対米請求権の一例ですが、法的に十分根拠のあるものについてという抽象的あるいはあいまいな表現だけで片づけられる問題じゃないと思うのです。もちろんこれは賠償要求額ですから、その額そのものが一〇〇%通るとは言わないにしても、少なくともそれだけの県民の被害があるということ、損害があったということだけは事実なんですね。これを適正に補償する義務は、われわれのほうからいうと、アメリカが当然やるべきだと思う。しかし、講和条約十九条で対米請求権を放棄したのは、沖繩県民にはかかわりなくして、日本政府なんです。その面からすると、いずれかの政府にぜひ補償してもらわなければいけない、責任を持ってもらわなければいけない筋合いのもの、このことについてどうしていかれるのか、もう少し施設庁なり外務省の御見解を賜わっておきたいと思うのです。
  293. 吉野文六

    ○吉野政府委員 対米請求権問題につきましては、われわれとしては、まず米国側と交渉いたしまして、できるだけ先方に支払わせる、こういう方針でいま交渉しているわけでございます。ただし、すでに上原先生も御指摘のとおり、平和条約十九条のような条項がございまして、根本的には日本政府は、国民アメリカ政府に対する請求権を放棄しているわけでございますから、この点理論的にもなかなかむずかしいものがあるわけでございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、あるものについては先方もわがほうの主張の正当性を認めつつあるように見られるわけでございますが、さりとて、それではそれをどのように実質的に解決するかという問題が残っておるわけでございます。さらに日本政府といたしましては、対米請求権の実態の把握にさらにつとめておりまして、それらの最終的な処理については関係省が協議している次第でございますから、いずれは何らかの解決あるいは処理の方法があるかとは存じておりますが、何ぶん目下交渉最中でございますから、これ以上のことは申し上げるわけにまいりません。
  294. 上原康助

    ○上原委員 次に復元補償の問題について、これもいわゆる米軍の接収によって形質変更された軍用地の問題ですが、御案内のように、布令六十号で、一部講和前に補償されたものもあるわけです。しかし、その後返還されたものについて、あるいは今後返還されるもの——現に返還れつつございますが、しかし、復元補償というのが全然なされていない。もともと畑であったあるいは林野であったものを、アメリカさんがかってにつぶして、そのまま返されたのでは、軍用地代は入らない、さて農作しょうにも農作のしようがない。これじゃあまりにも無責任過ぎる。道義的にも問題だと思うのです。この軍用地の復元補償の取り扱いについて、先ほどちょっと答弁があったわけですが、どういう姿勢で考えていかれるのか。もっと詳しくいいますと、講和前のものについては一部アメリカが見舞い金という形で出した。その後のものについては出さない。これは平和条約十九条をたてにとって……。あるいは、復帰した時点で返される土地については、復元補償が現在なされているわけです、本土の法律を適用すると。そうすると、一部は補償され、一部は全然されない、今後はやられるということに対しては、これは全く不平等。だから、その責任の所在というものはどちらかが持っていただいて、協定の中で明確にする。あるいは附属文書の中で、単に法的に十分根拠のあるものという表現ではいけないと思うのです。また、見舞い金の形でもいけない、あくまで賠償を要求する権利が県民にあるのだということをもう一度確認をした形での対米請求権というもの、補償というものを考えなければいけないと思うのです。この復元補償の問題や軍用地の取得に伴う通損補償の問題、あるいは先ほど出ました軍用地の賃借料の増額要求、入り会い権、講和後の人身及び物的損害等の補償、これもまだ未解決のものがあるわけです。こういういろいろなものをあげていった場合に、もちろん現在トータルで幾らになるかは、数字的にはなかなか算出しにくい面もあるわけですが、少なくともアメリカの資産を買い取るということにも反対いたします。もともと買い取るような筋合いのものでない。だが、どうしても政府が有償で引き継ぐということ、かりに三億ドル払わなければいけないということであれば、そのうちの一億ドルないし一億五千万ドルが県民の対米請求額であるとするならば、出すのは日本政府だから、差し引いてアメリカにやるぐらいの姿勢というのが出てきてもいいと思うのです。その点についてもう一度外務省なり施設庁の見解を賜わりたいし、特に軍用地の問題と関連する面においては、大臣の御見解も賜わっておきたいと思うのです。
  295. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 いまの形質変更されました土地の復元補償につきましては、先ほど来御説明がありますように、請求権の一環として現在対米交渉中ということでございます。そこで、その交渉のいかんによりまして今後の取り扱いというものを私どもとしてはきめていかなければならないというふうに考えておるわけでございますが、先ほど来一貫して申し上げますように、そういう土地所有者の方々の御要望というものをできるだけ尊重してまいりたいというふうに考えております。
  296. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほど来たびたび申し上げたとおりでございますが、いま上原先生のおっしゃられた点は、われわれも同じような論法で先方を責めているわけでございまして、その趣旨でまだ先方と交渉している次第でございます。
  297. 上原康助

    ○上原委員 それじゃ、これらの請求権の問題につきましては、軍用地問題あるいは人身損害等について県民の要求、県民の損害、被害というものが無視されない形で米国政府と交渉する。万一政府が要求をする、あるいは県民が要求していることがいれられない場合には、日本政府として、これらの賠償要求額に対してはこたえていくという姿勢がおありなのかどうか、そのことは返還協定の中で明確にできる部門については明確にし、できない部門については、日本政府として県民の要求に何らかの形でこたえていくという立場で解決していくという理解の受けとめ方でいいのかどうか、あらためて答えを賜わっておきたいと思います。
  298. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 ただいま申し上げたとおりでございまして、請求権の交渉の内容いかんによりまして、その取り扱いが変わってまいります。しかし、われわれとしてはできるだけの努力をしたいというふうな基本的な考え方でございます。
  299. 上原康助

    ○上原委員 アメリカ局長どうですか。
  300. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほどから再三申し上げておりますとおり、われわれとしては目下アメリカ側に対して請求権の支払いを要求しているわけでございまして、その後の処理につきましては、これはその後に考えていかなければならない問題だと考えております。
  301. 上原康助

    ○上原委員 どうも自信のない御答弁で、ますます不安を抱かせるような御答弁で納得いかないわけですが、いまさっき私が具体的に事例をあげて、額等を明示できる点もあげたわけですね。それに対して、できるだけ努力をする。これは当然の答弁ですよ。私だって答弁する側でしたら、努力すると言いますよ。これは、根拠というのは平和条約十九条で放棄をしているんだからもうできませんとアメリカは言っているわけでしょう。放棄をした政府はだれなのか。われわれはいまでもアメリカが補償すべきだと思っていますよ。そこいらについては両方とも、単に努力しますというようなことだけでなくて——請求権と基地の問題というのは、軍用地の問題を含めていま県民の最も重大な関心のあることなんです。もう少し前向きの、沖繩県民に納得できるあるいは国民がなるほど政府もやっている、やっているんだが、相手のあることでなかなかいかぬ面もあるんだ、という理解のしかた、その面から私は協力という面も出てくると思うのですよ。どうですか、そのあたり。
  302. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 具体的にまだ申し上げる段階でございませんが、対米交渉の結果いかんによりましては何らかの国内措置を講じまして、できるだけ御要望の線に沿っていく、こういうことしか現在私たちは申し上げられませんので御了解願います。
  303. 大出俊

    大出委員 関連して。筋道がどうもはっきりしないのですね。まず、幾つもありますが、私関連ですから多くは申し上げません。たとえばいま十九条の話が出ておりますが、十九条で請求権を放棄するという基本的姿勢というのを何回か外務大臣から聞かされてきたのですね。つまり返還協定にその点はうたいます、これまた小笠原方式。ただ沖繩の場合は少し事情が違うのですね。この平和条約を締結する以前に沖繩は占領されていた。これは事実です。つまり施政権は実質的にはそのままアメリカ側にあった。そこで将来国連の信託統治を予測した形における三条に基づいて平和条約というものは結ばれた、こういうわけですね。一方へーグの陸戦法規などからいっても、四十六条には明確に個人の私有財産の尊重がうたわれていて、接収の禁止がうたわれている。この国際法規がどう生きるのかという問題、国際法規的に沖繩を孤児にしたんだということになるとすれば、これは日本政府に責任があるということに戻ってくる。学者の間でもここのところはいろいろ異論がありますけれども、なかなかこれはむずかしい。だが一つだけ言えることは、沖繩の皆さんが何と言っているかといえば、日本政府がかってにやってくれた、そしてまた今度かってに放棄をしてしまう、それでいいのか、というこの一点だけは間違いない事実なんだ。そうすると、その責任を一体どこが負うのかと沖繩県民が言ったときに、だれが一体どう答えるのかという問題がある。ここのところをはずすと、これは沖繩の諸君にとっておさまりがつかぬ問題になる。明確にすべき問題なんですね。こういう点についての基本的な考え方を明らかにしてくれなければ、何のための一体本土復帰なのかということになる。こういう点は事務的に素通りじゃ困る。この点、私はいまの答弁はそういう意味で非常に無責任過ぎるというふうに思う。だから、そういうふうにものごとを分けて進めていただきたい。  もう一つ、たくさん申し上げたいのだけれども多く申しませんが、先ほど上原委員からものを言いましたように、これは皆さんが調べて、防衛庁、長い資料をつくって持っておられるでしょう。明治の時代に、いま二カ所しか残っておりませんが、大蔵省の事務所をこしらえて土地の台帳をつくった。戦災によって本島その他なくなってしまっている。だがしかし、明らかなことは、米軍が入ってきて、収容所に沖繩県民を収容した。そうしておいて、かってに個人の私有地は全部いただいた。だからさっきおっしゃったつぶれ地もあれば滅失地もある。こういうかっこうにしておいて、そのあいたところに、さあ、おまえたちはここに住めと言っておっ放したわけだ。現地でいろいろ諸君の話を聞いてみると、いまでも岡村さんなら岡村さんという方の土地があって、ここの土地に全部で住めと言ったんだ。いまそこに住んでいる人に、あなたの土地はどこですかと言ったら、山のかなただ。山のかなたのどこだと言ったら、基地の中だと言う。だから、みんなが歩いている道路がある。あるけれども、ここの地所はほとんどその岡村さんの地所だから、そこをみんな歩かしていただかなければならないというので、その道路を全部が使っておるのだからということで、分担して地主さんに使用料を全部払っている。だからその方々は、じゃ本土に返ったらどうなんだという問題が起こってくる。そうすると、淵源をずっとたどっていくと、その方々はどきたくもないのに収容所に入れられて、自分の土地は召し上げられておって、あいているところに来て、ここへ一括あなた方何百人は住めというのだ。自分の土地ではないところに来て、そこで住まなければならぬ。だから、自分の土地を返してくれればもとに戻って、責任の所在を明らかにして請求と言えるけれども、現状のままで行ったんじゃ、これは責任がどこにあるんだという問題になる。普通なら、日本の本土の場合ならば、これはみんなが歩いているのだから公道じゃないか、実際は道路じゃないか、だから実際に移管をするということで事は済む。そうじゃないんですね、沖繩の場合に。そうすると、そこまでさかのぼって実は請求をしなければならぬという問題が実際にはある。だから通り一ぺんに、通損補償はこうですとか入り会い権、漁業補償はこうですとかということではなしに、十をあげている外務省の請求権の中に、どういう枝葉があってどうなっているとかということに触れて、一番その根っこから解決するという姿勢をとらなければ、これは沖繩の皆さんが要求する請求権の解決方式にはならぬのですよ。そういうところは全部なくなっちゃっていて、事務的な答弁だけしているというんでは、やはりせっかく質問をしても、質問者の立場からすれば納得のしょうがない。だから、言えない点は言えないでいいけれども、やむを得る点があったにしても、もうちょっとそこらのところは前に出てものを言うようにしてくれなければ、何のためにこの時間にこういう審議をしておるかわからないです。もう一言、先のほうを答えてください。
  304. 吉野文六

    ○吉野政府委員 ただいま大出先生の言われたことは、われわれとしてもよく理解しておるつもりでございます。また、平和条約二条、三条、それからヘ−グの陸戦法規その他の関係につきましてもいろいろ意見があり得、かつそれぞれに根拠のあるものだと思う次第でございます。そういうものを踏んまえてわれわれは目下米国と交渉しているわけでございますが、しかしながら交渉は交渉で、いろいろほかの要素も入ってまいりますから、今後どうなるか、いまのところ見通しつかない次第でございますが、それとは別に根本的な、先ほど大出先生の触れられたような問題がいずれは問題になってくるのじゃないかと考えておる次第でございます。しかしながら、これはわれわれ役人のとうてい決定し得る政策ではございませんから、この程度でひとつ答弁をかんべん願いたいと思います。
  305. 上原康助

    ○上原委員 まあ理解するということは納得するということじゃないのです。それは局長がそういう答弁をなさることは答弁としては理解できても、それがそのまま納得というわけにはいきません。しかしかんべんしてくださいという方にこれ以上追い打ちをかけても失礼かと思うし、また立場も理解しないわけではありません。ただ私がきょうかなり具体的に申し上げましたが、従来政府の御答弁をいろいろ賜わっておりますと、ほんとうにこういういろいろな具体的な問題というものは、確かに資料として政府ですから持っていらっしゃると思う。しかし、沖繩県民の立場に立ってこういう問題を解決していく。どれだけそういったアメリカの軍事支配の中で不法不当にしいたげられてきたか、犠牲と差別をしいられてきたか、何も私は感情論で言っているわけじゃないのです。人間の財産、生命というものをかってに奪われて、豊かな返還をするという立場をいう政府の姿勢からしたら、少なくともこういう問題だけでも県民の要望にこたえるその政治的姿勢というものはぜひ最後まで貫いていただきたいし、そのことをのまないアメリカに対してなら、基地も返しなさい、おまえたちも帰れ、というくらいの積極的な政治姿勢というのがあっていいと思うのです。これ以上お伺いいたしませんが、特に対米請求権の面あるいは基地の問題等についてぜひ県民の立場というものを御理解をいただいて、たいへんつらい面あるいは困難な面、むずかしい面もあろうかと思いますが、その点は理解をいたします。きょう具体的に提示をしたことは、土地問題も含めて県民の要求がいれられるように最後まで努力を賜わることを要求いたしまして、対米請求権は打ち切ろうと思うのです。  最後に基地問題、特殊部隊の問題をまだお尋ねいたしますが、時間がだいぶたちましたので、防衛施設庁に基地労働者の問題を二、三点お伺いをしておきたいと思うのです。これまでも現地の沖繩の軍労働者の問題あるいは本土における駐留軍労働者の問題等、大出先生あるいはまた私からもいろいろ質問いたしましたが、まず間接雇用の問題について復帰の時点では移行するんだということはたびたび答弁いただいたわけですが、具体的にどういう作業を進めているのか、まずその点から聞かしてもらいたいと思うのです。
  306. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 労務問題につきましては、先ほど先生から御指摘のように、復帰時点におきまして間接雇用制度に移行する、こういう基本線でいまいろいろ作業を進めておるわけでございます。昨年われわれのほうとしても実情を把握いたしますために第一回の調査団を出しましたが、そのときには必ずしも十分な満足すべき資料の収集ができませんで、先日第二回の調査団を出しまして、これはまだ帰ってまいりません。そこで、いろいろ労働条件の問題なりあるいは給与の問題あるいは職種の問題、こういう点につきまして検討すべき資料を現在集めまして、その実態の把握につとめておるというのが現状でございます。米側ともいろいろ話し合いをいたしておるわけでございますが、いろいろ基本的な問題について必ずしもまだ意見の合わないところもございます。しかしながら、少しずついろいろな面で前進しておりますので、今後はそういう具体的な給与体系あるいは給与の金額あるいは労働条件等の問題につきまして検討して折衝していきたい、かように考えておる、これが現在の段階でございます。
  307. 上原康助

    ○上原委員 米軍側とまだ意見の合わない部分もある。具体的に言うと、たとえばどんなものですか。
  308. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 まだいま協議中でございますので、その中身についてはちょっと遠慮いたしたいと思います。
  309. 上原康助

    ○上原委員 どうも政府の御答弁も、知りたいのは中身であって、それ以外はわれわれも大体わかっておるわけですよ。そんなにぼんくらじゃないです。知りたいのは、どういう点で意見が合わなくて問題になっておるのか、そこが知りたいところでありまして、その知りたいところを答弁なさらないではほんとうにますます人間というのは知りたがるわけです。  そこで、具体的に作業を進めておるということですが、一点確かめておきたい。沖繩の基地労働者が間接雇用に移行する場合に、現在の基本労務契約、船員労務契約、諸機関労務契約というものを適用するわけでしょう。
  310. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 復帰になりますれば、当然本土と同様にそういう諸契約で契約いたすはずでございます。
  311. 上原康助

    ○上原委員 その場合は基本労務契約そのものは何ら変更なしに適用されることになりますか。
  312. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 大部分の者につきましては本土の契約方式でいけると思いますが、いろいろ特殊な問題もございましょうから、その辺は全面的にそのまま適用できるかどうかについてはちょっとまだ申し上げられないのでございます。
  313. 上原康助

    ○上原委員 問題のあるところですが、それと関連して、せんだって沖特のほうでもお伺いをいたしましたが、第四種の雇用員の取り扱いについていわゆる現在の離対法が適用されていない。しかしせんだっての沖特での質問に対しては調査の上で前向きに検討していくという御答弁だったと思うのです。その後調査をし検討していただいておるのか、その可能性なりめどというものはあるかどうか、承っておきたいと思うのです。
  314. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 第四種の問題につきましては、本土にそういう類似のケースがございませんのでいろいろ問題がございます。現在その実態の把握につとめておるというところでございます。
  315. 上原康助

    ○上原委員 離職者等臨時措置法の適用の問題についてはまだ具体的に御検討していないですか、四種について。
  316. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 四種につきましては、いまその実情を把握するということが先決でございますのでそれに努力しておるわけで、また措置法がそのままそれに適用されるかどうかということに  ついてはいま申し上げる段階ではございません。
  317. 上原康助

    ○上原委員 この基地労働の問題につきましては、施設庁に対しても資料なりあるいはまたこれまでもたびたび要請書等も提出してございますので、あまり深入りはいたしません。しかし実際問題として、現地の大量解雇の状況なりその後の再就職の問題、あるいは今後どう沖繩の基地というものが変化をし、雇用計画というのがどう変化していくのかということについても全然明らかにされていない。これはあと防衛庁長官にお伺いをいたしますが、その面からしてそういういろんな問題があって、特に四種の問題や間接雇用への移行という問題は何回となく議論をされてきたことでありますが、−先ほどの御答弁のように、聞きたい中身についてはまだ言えない段階だ……。早急に基地労働者の要求というものがいれられるよう、第四種の問題を含めて御検討していただくように、重ねて強くここでも要求しておきたいと思うのです。  沖繩との関連もございますが、昨年の十一月以来本土において人員整理をされた駐留軍労働者という面についてはどうなっているのか、具体的に説明していただきたいと思うのです。
  318. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 本土におきます離職者の数でございますが、昨年一年間で約五千五百名、ことしの一月から三月までの離職者が約二千四百名という状況でございます。
  319. 上原康助

    ○上原委員 そのうち再就職をした人数なり率というのは、おおよそ幾らですか。
  320. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 まだ五千五百名、二千四百名のうち就職した人が何名であるかという統計はございませんが、最近の離職後の帰趨につきまして調査を行なったところによりますれば、昨年の一月から七月までに離職を余儀なくされました者の十一月における状況は、就職、就業が六〇・八%、こういう状況でございます。
  321. 上原康助

    ○上原委員 やはり本土においても、駐留軍の基地労務者の問題というのは、絶えず大量解雇が出る。今後とも出ると思うのです。したがって、沖繩を含めてこの基地労働者対策というものは、従来の離職者対策臨時措置法の域を越えた抜本的な方針というものを打ち出す段階に来てるんじゃないかと思うのです。  では、基地労働者が解雇された、その基地そのものは本土においてもやはり返還されていないわけでしょう。基地そのもの自衛隊が使う、あるいは国が使う。基地そのものは残っておる。しかし労働者そのものは整理されて切られていくというような状態。本土の場合に、現にその基地が辺還されたのはどの程度ですか。
  322. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 昨年の十二月二十一日の日米安保協議委員会で協議せられました五つの施設のうち返還されたものはございません。たとえば横須賀地区におきまして解雇せられる、あるいは三沢地区において解雇せられるという解雇の状況でございますが、これは米軍の移動に伴い、いろいろの業務量が縮小したことに伴いますところの離職でございまして、そういう離職者が出たことが、直ちにその基地が辺還になったということはまだございません。個々のこまかい基地につきましては、離職者が出まして、その後辺還になったという個所はございますが、五つの基地につきましてはただいま申し上げたとおりでございます。
  323. 上原康助

    ○上原委員 時間がかなりたちましたので、ちょっと話をしぼりますが駐留軍離職者対策ということで、これは本年二月十九日ですか、駐留軍関係離職者対策の大綱についての中央離対協議会の決定事項が出されております。離者者の再就職のための措置とか職業訓練の拡充、その他いろいろあげております。こういう中央離対協議会の出す方針というものは具体的に効果をあげているのか。対策そのものは出すのだが、それがどうも十分功を奏していない。あるいは大量整備が出るので、何とか駐留軍なり国民向けに対策を出さねばいけないという立場でやっているのではないかという節も感じられるわけですね。この方針が実を結んでいるとお考えなのか、また現にどういう方法でお進めになっているのか、承っておきたいと思うのです。
  324. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 各基地ごとに相当数の離職者が出ました場合に、その人たちの再就職という実績は、まだ必ずしも満足するところまでは行っていないというふうに考えております。しかしそれぞれの現地の県なり市におきましては職業相談所を設け、あるいはいろいろ求人、求職の情報を交換し、またあっせんを行なう等、かなり積極的な努力をしておられるということは、われわれとしても十分認められるところでございます。しかしながら、その土地土地の実情に応じまして、必ずしも就職先が多くないというふうなところにおきましては、本人の希望どおりのところへ就職できないというような事例もかなりございますし、そういうものは労働省を通じましていろいろ広域的な職業紹介もやっております。また解雇者の方々の結成されますところのいろいろな企業等につきましては、その企業の組織化の問題あるいは金融措置の問題、各省それぞれの主管に応じまして努力をしていただいておりますが、結果は必ずしも数字的に非常に満足する状態ではないというふうにわれわれとしては考えております。さらに今後も引き続き努力をしなければならぬというふうに考えております。
  325. 上原康助

    ○上原委員 いろいろと御努力をいただいている点については理解をしますし、またぜひ前向きに今後もやっていただきたいと思うのです。  そこであと二点ばかりこの基地労働問題でお伺いをいたしますが、ここで大臣にお尋ねいたしますけれども、要するに基地労働の問題というのは、アメリカ側の都合だけでどんどん切られていってはいけないと思うのですね。沖繩の返還を含めて、今後米軍の基地がどう縮小され、やはりそこには雇用計画なり中期あるいは長期の見通しを立てた中での基地労務者対策あるいは社会開発計画を含めてやらなければいけない問題だと思うのですよ。そうせぬと、アメリカの都合だけで切られてから後手後手に対策を講じようといったって、一度に何千名の労働者が切られた場合は、たとえ本土だっていろいろ問題があるわけです。再就職の問題は雇用の条件が違う、あるいは長い間つとめてきた職場から新しい職場にかわるということは、人間の生理的、心理的にも非常に大きな問題、そういう面からしまして、今後の基地問題とのかね合いで、アメリカ側はどう変化していくのかという具体的なプロセスというものを立てて対策を立てる、完全にそのことがつかめないにしても、見通しというものは、やろうと思えばできないことはないのではないかと私は思うのです。その点についてどういうふうにお考えなのか、またいま私が申し上げたようなことについて、御見解があれば承っておきたいと思うのです。
  326. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まさに同感であります。従来のアメリカ側の例を見ますと、なかなか見通しは立てにくいようでありますけれども、沖繩のいまの人口収容力あるいは職業付与能力というものは、本土と比べれば非常に少ないわけでありますから、経済や民生に及ぼす影響は非常に多いのでございます。そのことをよく考えまして、よく協調して、一定の計画のもとに住民の不安ができるだけ起きないように措置していかなければならぬと思います。
  327. 上原康助

    ○上原委員 私がいま申し上げたのは本土を含めてのことですので、沖繩だけのことでないということをひとつ御理解いただいて、ぜひそういう方針というものを立てて、基地労務者対策というもの、あまり防衛力ということだけ考えずに、人間を大事にする方向をひとつぜひ立てていただきたいと思うのです。  そこでそういった見通しと計画を立てる等の問題を含めて、防衛施設庁が離職者対策の重要な柱として、特別休職者制度というものについてこれまでいろいろ御検討していただいたわけです。今年度もそれを制度化していくという形で予算確保ということも施設庁なり防衛庁としては御努力いただいたと思うのですが、まだ実現を見ておりません。これについて今後、というより現段階においてどういう御検討をなさっておられるのか、見通し等について承っておきたいと思うのです。
  328. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 特別休職手当につきましては、雇用安定の一つの有力な方策として、また政府の独自の考え方として、実は四十六年度に予算要求いたしましたが、残念ながらこれが認められずに終わったわけでございます。この問題につきましては、労働制度全般の上においてこの特別休職制度というものがどういうふうに位置づけさるべきか、また直接使用しております米軍が解雇した者については、雇用者としての国がそれに対して休職手当を支給できるかというような、いろいろな理論的な問題もございまして、これは実は実現できなかったわけでございます。しかしながら一面、おっしゃられたように、解雇につきましては、その九十日の予告期間というものをわれわれのほうでは米側に話をしておりまして、九十日をかなり最近守ってくれておりますけれども、まだ一部九十日未満で予告が渡されるという例もございます。したがいまして、そういう雇用の安定ということにつきましては、われわれとしてもいろいろ今後理論的な面あるいは実態的な面、いろいろな角度から検討いたしまして、予算の要求をはかりたいということでいま検討しておるということでございます。
  329. 上原康助

    ○上原委員 きょうの私の質問の中で、あまりいい答弁は出なかったわけですが、せめてこの一つだけはぜひ、約束という言質を取るという立場ではありません、本土、沖繩の基地労務者を含めて、そういった特別休職手当制度というものを積極的に制度化していく、その予算化というものをやっていくということを答弁いただきたいわけです。次年度においてはこれを必ず制度化していくのだ、雇用安定という問題、いろいろな問題、大蔵との折衝等むずかしい面がありますが、しかし先ほど申し上げた基地労務者の問題というのは非常にむずかしい問題があるし、雇用安定、再雇用の面から考えても、政府が積極的に、政策的に対策というものを立てない限り解決できない面があるわけですから、ひとつその点については、この特別休職手当制度というものを制度化していくということを防衛庁としてぜひやっていくということを、これは大臣のほうからひとつ御答弁をいただきたいと思うのです。
  330. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大蔵省にことしも要求いたしまして、ことしから実施しようと思っているところでもありました。今後ともこの制度を実現するように努力していきたいと思います。
  331. 上原康助

    ○上原委員 ぜひそれが制度化されて、早急に実現するようにひとつあらためて要求をいたしまして、この基地労務者問題については終えます。  最後になりますが、沖繩の基地の問題について。防衛で始まりましたので基地の問題で締めくくりたいと思うのです。  まず特殊部隊の取り扱いについて、この間沖特でおあげになりましたが、実態の掌握ができていない、十分調査をするということでした。その点、その後どうなっているのか、ぜひあらためて聞かしていただきたいと思うのです。
  332. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この前沖特で御説明いたしました、いわゆる沖繩における特殊部隊につきまして、その際まだ実態掌握ができていないと申し上げました二、三の部隊につきましては、われわれもその後さらにいろいろの方法を使いまして実態掌握につとめておりまするが、いまだに御満足のいくような回答ができないのを残念に思っております。
  333. 上原康助

    ○上原委員 この間、具体的に申し上げますと四月二十二日の沖特で、局長は六つほど特殊部隊としてあげたかと思うのです。これらの特殊部隊、まあそれ以外にもあるかもしれませんが、返還協定の中ではこの取り扱いはどうなるのですか。
  334. 吉野文六

    ○吉野政府委員 たびたび愛知大臣も御説明申し上げておりますように、沖繩返還後は安保条約及び地位協定その他の関連取りきめをそのまま適用することになるわけでございます。したがって、これらのいわゆる特殊部隊もすべて安保条約のワク内において行動することになりますし、その目的もその範囲内に限られるわけでありますから、その限りにおいては、特にいま本土におる各部隊と異なることがないことになるだろうと思われます。
  335. 上原康助

    ○上原委員 安保条約のワク内あるいは関連取りきめ、地位協定を適用することになるから本土並みになるのだということです。じゃ、その中の一つの例だけをとりますが、第七心理作戦部隊というのはどういう部隊なのか、説明をしていただきたいと思うのです。
  336. 吉野文六

    ○吉野政府委員 第七心理作戦部隊につきましては、先般御説明したと思いますが、これは太平洋陸軍司令部に所属しておりまして、一九六五年十月設立されたわけでございます。いまの司令官はベンツ陸軍大佐でございまして、その任務は沖繩内外の部隊の心理作戦上の指揮、統制、それから心理作戦出版物の作戦、太平洋軍に対する心理作戦上の助言、支援等を行なっております。構成人員は六百八十六名、うち文民は二百七十九名、これが一九七〇年度の構成員でございます。それから沖繩のほか日本、韓国、台湾、ベトナム、タイ等に分遣隊を持っておりまして、その沖繩における使用施設は牧港サービス地区でございます。
  337. 上原康助

    ○上原委員 私がお伺いしているのは、そういういつできて、どこにどうだというようなことじゃないのです。その中身を知りたいわけです。沖繩内外の心理作戦、情報提供ということですが、一体この第七心理作戦部隊がやっている仕事の中身というものはどういうものなのか、御存じかということ、本土にもそういう分遣があるから本土並みになるのだということを言いたくてとは申しませんが、そういう気持ちで言っておられるかもしれませんが、第七心理作戦部隊の本部が沖繩にあるのはこれはおっしゃるとおり。しかしそれが果たしている役割りというのは、中身は御存じですか。
  338. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほど申し上げましたように、沖繩内外の各部隊に対する心理作戦上の指揮、統制、それから心理作戦出版物の作成、それから太平洋軍に対する心理作戦上の助言とか支援、こういうことでございますが、いずれにせよ部隊でありますから、それぞれの任務ないしは機能があるわけでございますが、これらはすべて安保条約のワク内に復帰後は入るわけでございますから、結局わが国の国内における部隊と同じに規制されるわけでございます。
  339. 上原康助

    ○上原委員 安保条約のワク内に入るということは撤退をするということですか、それともその心理作戦部隊の何らかの機構か、やっている中身というものを変更することによって安保のワクにはめるということですか、それともそのままであっても安保のワクになるということですか、そこいらを明確にしてくださいよ。
  340. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この点につきましてはなお先方といろいろ事態を詰めておるわけでございますが、根本的には、安保条約のワク内に入る限りわれわれとしてはこのような部隊がそのワク内で活動することを制限するわけにまいりません。  なお、心理作戦部隊と申し上げますと、何か非常に忍者的な作戦行動をとっておられるように考えられるかもわかりませんが、これは単なる名称でありまして、言ってみれば、広報部隊というようなものとわれわれは理解しております。
  341. 上原康助

    ○上原委員 私が言わんとするところもだんだん言ってもらっているわけですが、そうおっしゃるように、これは広報部隊じゃないのですね。これはサイミントンの議事録の原文ですが、沖繩に本部があって、そのもとに第十五心理分遣、さらに第十四、これも沖繩、第十六のほうも沖繩、第十八のほうも沖繩、さらに心理作戦部隊のプリンティング・カンパニー、これも沖繩、台湾は台北ですね、ベトナムはサイゴン、タイはバンコク、さらにおっしゃったように韓国、もちろん本土にも文献、これをおもに印刷している、そういうのがあるわけですね。しかし実際にやっている仕事そのものは北朝鮮、北ベトナム、そういう方向に向けての心理作戦をやっているわけですよ。まさしくおっしゃるように謀略部隊、忍者部隊ですよ。しかも月の印刷物は幾らですか。この第七心理作戦部隊が印刷しているいろいろな印刷物は、月大体幾らですか。
  342. 吉野文六

    ○吉野政府委員 サイミントン議事録によりますと、第七心理作戦部隊の印刷中隊所属在日米軍印刷出版センター及び在マニラUSIA地域センター発行のリーフレット月刊十億部、雑誌その他月刊七十五万部ということが報告されております。
  343. 上原康助

    ○上原委員 その他リーフレットは幾らですか。
  344. 吉野文六

    ○吉野政府委員 雑誌その他の月刊リーフレット七十五万部……。
  345. 上原康助

    ○上原委員 こういう部隊が沖繩復帰後そのまま残る。これは一例ですよ。あるいは撤退をされないということは本土並みになるわけですか。基地の態様、またどういう影響をこの第七心理作戦部隊がアジア全地域に与えているのか、そのことを十分つかんだ上でないと沖繩の特殊部隊ということ、あるいは沖繩の軍事基地の実態ということはなかなか理解できないと思うのです。ことばだけ本土並みということであれば何でも通るということじゃないと思うのですね。そこはどうですか。
  346. 吉野文六

    ○吉野政府委員 われわれといたしましても、沖繩復帰後におきましては、これらの部隊の活動が全部本土並みになるように先方と折衝するつもりでございます。
  347. 上原康助

    ○上原委員 それは実際的に実現可能ですか。
  348. 吉野文六

    ○吉野政府委員 そのためには、まずもってもう少し第七心理作戦部隊の活動の実態を把握する必要があるものと考えております。
  349. 上原康助

    ○上原委員 どうも納得いかないのです。  ここで写真を見せますが、実際この心理作戦部隊が印刷しているパンフレット、リーフレットというのは、北朝鮮並びにベトナム、そういういわゆるアメリカと紛争している地域に対して、こういうことでみんなやっているわけですよ。これはおわかりでしょう。全部朝鮮語で書いたりベトナム語で書いたり、一体こういうことが復帰後の沖繩の基地からどんどんどんどんなされるということは、現在の日中国交回復問題を含め、アジア近隣諸国との日本の立場というのはどうなるんですか。だから私は、本土並みの基地の形態、態様というものについてこれまで何回かお尋ねしたんだが、安保条約の目的あるいは関連取りきめを適用することが本土並みということになると、これは子供だって、安保条約の拡大解釈になるし、質的変化になるということを理解しますよ。まあ写真を見せれば一番いいと思って、私はきょうは第七心理作戦部隊だけ取り上げましたが、グリーンベレーにしてもそうでしょう。陸軍情報学校にしてもそうでしょう。そこらの点は、やはり具体的に中身というものをおつかみになって、ほんとう日本国民全体がこういうことをわかって、共産圏諸国に、アメリカを正当化させるための謀略宣伝をやっているということがわかった場合に、一体どうなるのですか。先ほどのガスの問題、塩素ガスの問題にしても、ないないと古いながらあった。もちろんそういうガスが本土にあっていいとは私は言いません。しかし、沖繩の軍事基地というものは実際それどころの話じゃないのです。そういった面について、特殊部隊の取り扱いのことを、返還協定の中で具体的にそれが撤退をしていく、撤去されるという約束がない限り、われわれは本土並みの基地になるという答えは絶対出ない。これはあらためて外務大臣にもお伺いをいたしますが、その点、局長の御答弁を承っておきたいと思うのです。
  350. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほど申し上げましたように、われわれといたしましても、安保条約のワクからはみ出るような一切の行動その他は制限する、あるいはやめてもらう、こういうラインで交渉している次第でございます。
  351. 上原康助

    ○上原委員 安保条約のワクからはみ出ないようにというが、すでにはみ出ているのですよ、沖繩というのは。  じゃ、現在、アメリカが沖繩基地を中心に結んでいる条約というのは幾つありますか。
  352. 井川克一

    ○井川政府委員 アメリカが沖繩基地を中心に結んでいる条約というお話でございましたけれども、そのような条約はないのです。
  353. 上原康助

    ○上原委員 アメリカがアジア地域諸国と結んでいる条約は幾つありますか。
  354. 井川克一

    ○井川政府委員 日米安保条約、米韓相互防衛条約、米比相互防衛条約、米華相互防衛条約。日本の近隣諸国はそのぐらいだと思います。
  355. 上原康助

    ○上原委員 日米安保条約を筆頭にそういういろいろな条約があるわけですね。  そこで、今度は大臣にお伺いいたしますが、これらのいわゆるアメリカとの二国間条約、そのことと沖繩の軍事基地ということ、これまでアメリカが排他的に沖繩の軍事基地を持ってきた、それとの関係というのは、軍事的に見てどうお考えですか。
  356. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 沖繩がアメリカの施政権下にある場合には、その条約の適用区域に入っているのもあったと思います。それがどういうステータスになるか、それは専門家の条約局長がせっかく来ていますから、そっちのほうへお聞き願いたいと思います。
  357. 上原康助

    ○上原委員 じゃ、専門家の条約局長の御答弁を……。
  358. 井川克一

    ○井川政府委員 米韓条約では、行政的管理のもとにある領域における締約国に対する太平洋地域における武力攻撃、となっております。米華相互防衛条約では、西太平洋地域においていずれか一方の領域に対して行なわれる武力攻撃、この領域とは、中国については台湾及び膨湖諸島をいい、米国については、その管理下にある西太平洋の諸島をいう。米比条約では、太平洋地域における締約国に対する武力攻撃、太平洋地域における締約国の管理下の島または軍隊、公船、航空機を含む。ANZUSでは、太平洋地域における当事国に対する武力攻撃、太平洋における当事国の管轄下にある島または軍隊、公船、航空機を含む、というふうになっておりますが、米韓、米華条約上は、行政的管理下にある領域、管轄のもとにある西太平洋の諸島というようになっておりますが、沖繩が本土に復帰いたしますと、沖繩はそういうものではなくなります。また、この米韓、米華両条約にはいわゆる軍隊、公船及び航空機に関する規定はございませんので、この両条約と沖繩との関係は消滅いたします。米比、ANZUS条約上は管轄下にある島ではなくなりまするが、軍隊、公船、航空機規定がありますので、在沖繩米軍は、在本土米軍と同様でございまするけれども、それに対する武力攻撃は条約発効原因となっております。SEATO条約は関係ございません。  以上でございます。
  359. 上原康助

    ○上原委員 いま御説明あるように、アメリカが米韓あるいは米台、そういう諸国と結んでいる条約というものは、条約論からいえば、沖繩は施政権返還後は日本の施政権下に入るわけですから、その条約の拘束を受けないということになるわけです。そのくらいなことは、私だって条約はわかりませんが、理解します。しかし問題は、米韓、米台、アジア諸国とアメリカが結んでいるその条約、いわゆるかなめになっている軍事基地というのは、沖繩を中心にしてやっているわけでしょう。だから、沖繩は太平洋のキーストーンだとアメリカは言っている。そのことと、日米共同声明でいう台湾の防衛あるいは韓国の平和と安全というようなこととかみ合わない場合に、先ほどの謀略をする心理作戦部隊なり特殊部隊というものを残した形で沖繩が返還をされる。しかし、アメリカそのものは実際問題として拘束されないわけですよ。アメリカは、台湾や朝鮮に、韓国に紛争が起きた場合に、沖繩を中心に二国間条約でも出撃態勢ができるということなんです、アメリカの立場からいうと。それがいまの沖繩基地なんだ。そういう面もかねて沖繩の本土復帰ということと基地の態様というものを考えていただかないといけないのではないか。その点はどうですか。条約論ではなくして軍事的な面から……。条約論でもいいですよ。
  360. 井川克一

    ○井川政府委員 軍事的な面は私お答えする能力を持っておりませんが、この沖繩が本土に復帰いたしまして後は、安保条約が全面的に適用になるわけでございます。したがいまして、その安保条約の第六条の規定に従いまして施設及び区域を提供するわけでございまして、これはあくまで安保条約上の施設及び区域でございます。さらに、その事前協議云々というものにつきましては、戦闘作戦行動のための直接発進などは事前協議の対象となるわけでございます。その間、米韓条約があり、米台条約があって、その条約によって相互援助義務があるからといって、日米安保条約の条文から、あるいは事前協議からはずれるというふうなことは、条約的には全くないわけでありまして、本土にある施設、区域と全く同じになるわけでございます。
  361. 上原康助

    ○上原委員 時間がありませんので、そういった条約論で事前協議の問題を含めてここで深く議論はできませんが、しかし沖繩がアメリカの施政権下において排他的に軍事基地がつくられた、その基地をかなめに、西太平洋全地域にわたっていつでもどこでも自由に出撃できるのが沖繩基地でしょう。その面からすると、よしんば条約論ではそういう解釈というものができたといたしましても、基地の実態論からいうと、そういう面は出てこないわけです。そうしますと、さっきアメリカ局長がおあげになった特殊部隊というのは完全に撤退されるのですか。私は、安保条約というものを厳密に解釈するとそういう解釈も出てくると思うのです。そうでなくして、特殊部隊そのものも残して返還をされたという場合は、安保条約の拡大解釈によっていつでもどこでもどういうことでもできる、そういう解釈にもなるわけでしょう。その点はどうですか。
  362. 井川克一

    ○井川政府委員 私ども、返還交渉につきまして仕事を分けておりますので、実は私は特殊部隊についてはタッチしておりませんけれども、先ほどアメリカ局長が言っておったとおりだと思います。いずれにいたしましても安保条約のワク内に入るということは当然のことでございます。そのための話し合いを行なっているとアメリカ局長答弁いたしておりましたけれども、私はそのとおりだと思います。
  363. 上原康助

    ○上原委員 それではあらためてアメリカ局長に承っておきますが、安保条約のワクに入るという場合の沖繩基地の態様、実態というのはどうあるべきだとお考えですか。
  364. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは端的に申し上げまして、本土における基地と変わりない、こういうことになるものと考えます。
  365. 上原康助

    ○上原委員 本土にある基地と変わりはないということは、特殊部隊とか核兵器、化学、細菌兵器、毒ガスを含むそういうものはあってはならないという解釈でしょう。そういうように理解していいですか。
  366. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほど申し上げましたのは安保条約の見地からでございますが、一方特殊な兵器、先ほど御指摘になりました核だとか毒ガスとか、こういうものにつきましては、すでに御承知のとおりわれわれはその撤去を求めておるわけでございますし、これらについては返還前に全部撤去されることになっておりますから、この点については本土と全く同じ形になるわけであります。
  367. 上原康助

    ○上原委員 時間が来たようですので、これ以上深めませんが、まだ納得いきません。特殊部隊あるいはそういうアメリカが自由に出撃できる態勢、基地というものが依然として残るという、機能からいっても、性格からいっても、そのことを議論をしていただかないと、安保条約のワクとかあるいは施設、区域の提供ということになると、これはまさしく安保の質的変化なんです。後日またいたしますが……。  そこで、去る五月二日にB52が沖繩に再び舞い戻ったわけですが、四十八時間前後居すわった。それについては本土政府アメリカ側から何らかの通告なり連絡を受けたのかどうか。今後もまたB52が飛来するのかどうか。
  368. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先般のB52の飛来につきましては、われわれはこれは台風を避難するために沖繩の基地に来たんだという趣旨の通報を受けております。
  369. 上原康助

    ○上原委員 台風避難ということですが、これもサイミントン委員会で非常におもしろおかしく言っておりますよ。B52は沖繩によく台風避難で行くようですね、また行きますか。——それくらいアメリカだって信用していないんだ。あとで詳しく申し上げますが、そういうようなことじゃ理解できないわけですよ。  そこで時間が参りましたので、最後に大臣に締めくくっていただきたいのですが、これまで大臣は沖繩の基地の総点検構想というものを考えておられるようです。なかなか政府部内でも意思の統一はまだなされていないようですが、私もこの構想には疑問もありますが、あらためてここで伺っておきたいと思います。中身を言いますと、沖繩返還後は米軍基地の核あるいは毒ガスが撤去されたかどうか、自衛隊の要員を派遣して確認をしたい。海兵隊の第一緊急派遣部隊や第七心理作戦部隊など安保条約の範囲を逸脱する任務を持った部隊を中心に基地の点検をやってみたい。それがほんとかどうかも含めて。三点目に、近く外交防衛連絡会議を開いて政府方針というものを確認をするように首相、外相にも提案をしたい。——これが大体参議院の予算委員会なりこれまで新聞報道でなされた中曽根構想だ、大臣のお考えだと私は思うわけです。この構想というものを現在でも持っていらっしゃるのか。また外交、防衛の関係者と、おっしゃる総点検を進めていくということで話し合いをお持ちになったのかどうか。かりに点検をするという場合はどういう方法でやるのか。そこいらを含めてお聞かせを願いたいと思うのです。
  370. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 きょうは上原さんの非常に痛切な迫力のある御質問を拝聴いたしまして非常に感銘した次第であります。あなたのおっしゃったことばの中には、沖繩県民の皆さんの痛切な願いが込められていると拝聴いたしました。われわれも今後とも皆さんの気持ちにこたえて誠意をもって努力したいと思います。  それからいまの三点は、私は考えは変わりません。そして核の総点検ということばをお使いになりましたが、私は確認ということばを使っておるわけです。つまり沖繩の返還後ナイキの接収あるいはそのほかの機会に要員を派遣するとかその他の方法によって、先方の合意を得て、技術的にそういう問題を究明しながら、県民の皆さんの御期待に沿うように確認をしてみたい。こういうことでありまして、このことは実行してみたいと思っております。それでこのことは総理並びに外務大臣等とも閣議の前後に話しておりまして、そういう技術的な確認という方法について復帰後ひとつ検討してみよう、こういう話をしております。
  371. 上原康助

    ○上原委員 その可能性についてはどんなものですか。
  372. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 アメリカも、沖繩の県民の協力なくしては沖繩の基地を維持することはできないと思います。そういう点からも大乗的、大局的見地に立ったら、沖繩県民の協力を得るような姿勢と態度をとることがアメリカのためでもあって、そのことをよく先方にも説得してやるつもりであります。
  373. 上原康助

    ○上原委員 まだおっしゃっておる姿勢が、それがほんとうに実現をするというめどがあれば確かに前向きで、ぜひまたそうあってもらいたいわけですが、しかし先ほどの特殊部隊の問題等を含めて、なかなかアメリカの姿勢というものが、対米請求権とか返してもらいたいという基地についても非常にがんこな姿勢をとっている。その中で、ましてや戦術、戦略の重要な武器なり施設というものの点検、確認というものができるかどうか、非常に疑問もあります。しかしその点についてはひとつ積極的に構想を実現する。ただ政治家の国民世論の操作という立場であっては、これは大きな罪悪になりかねない。その点は強く指摘をしておきたいと思うのです。そういう意味でこの構想が実現をすべく、さらに積極的に進めていただきたいと思うのです。  そこで、最後に締めくくるわけですが、けさ総理大臣がお言いになった中で、七五年には、沖繩が返還されるので沖繩県民を含めて安保条約やあるいは憲法というものを再確認——確認ということばが非常にお好きなようで、再確認をする必要があるのじゃないかということでしたが、沖繩県民はいまの憲法を変えてもらいたいなんて、おそらく革新のみならず保守を含めて、決してそう願っていないと思うのです。ほんとうに平和と民主主義と人間尊重の憲法のもとにおける復帰というものを要求している。そのことをぜひ念頭に入れていただいて、憲法の改悪とか、これ以上日本の平和が侵されない——平和以外に生きる道がないというのがけさの議員の方々の御質問にもございました。経済大国、福祉国家としてもほんとうに人間優先の政治というものができ、その中での防衛というものを考えていただいて、沖繩問題というのも解決をしてくださるように要求いたしまして、私の質問を終えたいと思います。長時間どうも。
  374. 天野公義

  375. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 外務省は時間を急いでおられるようですから、ちょっと関連があるので、先に聞くことになりますが、やむを得ないわけです。それで、あとで訂正したり取り消したりしないように。すぐ帰しますから……。じゃ先に聞きます。  安保条約第六条にかかわる岸・八一ター交換公文、条約第六条の実施に関する交換公文ですね。この中に事前協議にかかる問題として「合衆国軍隊日本国への配置における重要な変更、同軍隊装備における重要な変更」、この「同軍隊装備における重要な変更」の「同軍隊」、これは英語で言えば「ゼア・エクイプメント」、こうなっておりますね。この「同軍隊」は合衆国軍隊をさすのか、それとも日本国へ配置された合衆国軍隊をさすのか。
  376. 井川克一

    ○井川政府委員 合衆国軍隊をさします。
  377. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 間違いありませんか。
  378. 井川克一

    ○井川政府委員 間違いないつもりでございます。
  379. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしたら、合衆国軍隊が核装備をしているのは全部事前協議にかかりますか。
  380. 井川克一

    ○井川政府委員 本交換公文は日米安保条約に基づく交換公文でございます。したがいまして、日米安保条約に関心がないよその合衆国軍隊とは関係ございません。
  381. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういうことになっておるのですか。それは間違いないですか。
  382. 井川克一

    ○井川政府委員 私の記憶が確かでございまするならば、その点は安保国会におきまして、当時の高橋条約局長がそのように答弁していると思っております。
  383. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もう一度言いますよ。「同軍隊」というのは、合衆国全部の軍隊装備における重要な変更ではなしに、この「ゼア・エクイプメント」というのは、日本国に配置された合衆国軍隊の重要な装備の変更と、こう来るのじゃないですか、もう一ぺん。
  384. 井川克一

    ○井川政府委員 そうではなくて、合衆国軍隊装備の重要な変更、こういう解釈でございます。
  385. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃ、たとえば第七艦隊が核装備をするというときには、一々かかるのですか、事前協議に。
  386. 井川克一

    ○井川政府委員 先ほど申し上げましたとおり、これは日米安保条約のもとの交換公文でございます。したがいまして、日米安保条約、特にこの交換公文の趣旨は、日本国に対する核の持ち込みあるいは戦闘作戦行動あるいは配置の変更というふうに、日本国に関係してくるものだけに問題となるわけでございます。
  387. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、くどいようですけれども、重要なところですからあとで問題を展開しますが、これは日本国に配置された合衆国軍隊装備における重要な変更ではなしに、合衆国軍隊そのまま、合衆国軍隊装備における、このような見解ですね。
  388. 井川克一

    ○井川政府委員 先ほど申し上げましたとおり、当時安保国会におきましても、当時の高橋条約局長はそのように答弁申し上げているものと記憶しております。私も同意見でございます。
  389. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは次に移ります。  安保条約の第五条、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」、この場合「日本国の施政の下にある領域」の中に、公海上にある日本自衛艦、商船が含まれますか。
  390. 井川克一

    ○井川政府委員 含まれません。
  391. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 安保条約でいう日本に配置された軍隊、その配置という概念を頭に置いて、沖繩返還後沖繩に配置される米軍の部隊はいまつかめておりますか。安保条約の配置というところのその概念に基づく米軍の残留部隊。
  392. 吉野文六

    ○吉野政府委員 いま部隊の数かと思いますが、約五万と考えられております。
  393. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは返還協定ができた後、つまり沖繩が返還された後に沖繩に配置される米軍の部隊ですか。安保条約にいう配置ですよ。
  394. 吉野文六

    ○吉野政府委員 いまの兵力五万というのは、いま現在いる兵員でございまして、今後沖繩の基地において部隊の交代その他ございますから、実際に返還のときに日本に配置される、つまり沖繩に配置される兵員の見通しはいまのところ持っておりません。
  395. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、返還時には安保条約にいう配置に該当する米軍の部隊は明確になりますか。
  396. 吉野文六

    ○吉野政府委員 そのころになりますと当然そういうことになると思います。
  397. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そのころになると当然そのようになる、非常にあいまいですね、あなたは。そのころとはいつごろですか。
  398. 吉野文六

    ○吉野政府委員 復帰時になりますと、そのときに配置される部隊、こういうことになります。しかしながら、この兵員というのは、いずれにせよしょっちゅう変わっておるものでございますから、正確な数字がはたしてつかめるかどうかということはわかりません。
  399. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 念のために申し上げますが、安保条約における配置のときには、あなた方は非常にきびしいです。あとで問題にしますけれども、配置ということに対して非常にきびしい条件をつけてますね。いいですか。それを私は頭に置いておるのです。だから、単に沖繩におる残りの部隊はどのくらいかということを聞いているのじゃないですよ。安保条約における配置の概念に該当する、それを聞いているのです。それは返還時に明確になりますね。
  400. 井川克一

    ○井川政府委員 その部隊の数等はアメリカ局長の領分でございますけれども、安保条約は現在沖繩に適用になっておらないわけでございまして、したがいまして、安保条約は復帰時に適用になるわけでございます。したがいまして、そのときにおける状態、それが、あるいはこれはちょっと先にお答えすることになって恐縮かと存じますけれども、それが五万であれ三万であれ、その配置における重要な変更にはならないというのが私どもの解釈でございます。
  401. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたは、私が質問すると、何かほかのことを考えているのではないですか。何もそんなことを聞いてないですよ。たとえばエンタープライズ入港の問題を国会論議したときに、配置された軍隊というのはわれわれは非常に論議を重ねましたね。そしてあなたたちは非常に条件をきびしく見ておる。だから、それに該当するいわゆる配置されるアメリカの部隊というのは、当然返還時には明確になりますねと聞いておるのです。
  402. 井川克一

    ○井川政府委員 私が間違いでございました。申しわけありません。アメリカ局長が申しましたとおりに、そのときには明確になると思います。
  403. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 よろしゅうございます。  佐藤総理がきょう午前中お見えになりまして、時間が短うございましたから、佐藤内閣見解を述べてもらうということで官房長官か副長官にお願いして、木村副長官に来ていただいた、そういう立場でひとつ以下の御答弁をいただきたいと思います。  佐藤内閣の言っておる非核三原則、そのうち、持ち込まずというのは、どういう状態のことを言っておるのですか。
  404. 木村俊夫

    ○木村政府委員 表現の問題でございますが、正確に申しますと持ち込ませないこととわれわれは言っております。したがいまして、これは外国軍隊が核兵器をわが国に持ち込む場合、それを持ち込ませないという内容でございます。したがいまして、また憲法あるいは原子力基本法の法的規制を受ける範囲ではございませんので、わが内閣の政策の決定としてそういう原則を打ち立てておる、こういうふうに御解釈願いたいと思います。
  405. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私の質問がちょっと足らなかったと思うのです。持ち込むというこの状態は、ことばとして非常にあいまいになります。そこでことばをかえてお伺いします。日本国に核を貯蔵することは、この持ち込むという概念に入るわけですね。
  406. 木村俊夫

    ○木村政府委員 貯蔵するのに二通りあります。わが国が核兵器を保有する形態における貯蔵と、それから外国軍隊がわが国に持ち込んだことによって生ずる貯蔵と、この二つがあると思いますが、いま御指摘の点はおそらく持ち込んだことによる貯蔵と思いますので、これは当然持ち込ませない原則に入るわけであります。
  407. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はいま、持ち込ませないでもいいのです。日本が持つとか、それを言っているのではないのです。アメリカが持ち込む場合のことを言っているのです。貯蔵させないということは入る。配備をさせない、これも入りますか。
  408. 木村俊夫

    ○木村政府委員 当然含まれます。
  409. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そのほかにありますか、持ち込ませないという概念の中に。
  410. 木村俊夫

    ○木村政府委員 貯蔵という継続的な意味以外に、たとえば一時的にこれを持ち込むという形態もあろうかと思います。
  411. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは佐藤内閣の三原則のうち、持ち込まずを、持ち込ませない、これは貯蔵、配備。それから一時通過、それも含めておるわけですか。
  412. 木村俊夫

    ○木村政府委員 そのとおりでございます。
  413. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 非核三原則を一昨年佐藤総理はニクソン大統領と話をして説明をされた。それを中心にしてニクソン大統領は、日本国民の感情をよく理解した。その際に非核三原則の持ち込ませないという、それを正式に向こうに説明する場合の英訳はどうなっておりますか。
  414. 木村俊夫

    ○木村政府委員 英訳は手元にございませんので、外務省の事務当局から説明させますが、「核兵器に対する」というのがよく誤解のもとになっております。これは明らかに「アデンスト」ということだけを申し上げておきます。
  415. 吉野文六

    ○吉野政府委員 その三原則につきまして、実際に通訳がどういうことばを使ったか、われわれも承知しておりませんが……。
  416. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それじゃ答えぬでおってください。
  417. 吉野文六

    ○吉野政府委員 よろしゅうございますか。
  418. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 正式に非核三原則をアメリカに説明された、ニクソン大統領は理解したというのだから、どのような説明をされたか、非核三原則について。それは当然正式に英訳されてなされるものと思います。なぜ私がこれを言うかというと、その内容いかんによってアメリカ側の理解が違うかもわかりませんから、私はこれをくどく言うのです。もし正式にこれを英訳して説明する場合のあれがありましたら、ひとつ御提出をいただきたい。
  419. 木村俊夫

    ○木村政府委員 お答えには該当しないかもしれませんが、共同声明の第八項に「核兵器に対する」——これは「アデンスト」でございますが——日本国民の特殊な感情及びこれを背景とする日本政府の政策」、これが非核三原則であるという説明を総理からいたしております。
  420. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはわかりました。  それで非核三原則の場合、先ほど私が言うように、いま初めて、持ち込ませない場合は、貯蔵、配備、一時通過を含む、こういうふうに一応はっきりしたのですけれども、それをひとつありましたら、英訳文も明確にしていただきたいと思うのです。それはよろしゅうございますか、どういう説明になっておるか。  では引き続いてお伺いしますが、事前協議の「装備における重要な変更」、これのゼントルマンズ・アグリーメントによる日米了解は「核弾頭及び中、長距離ミサイルの持ち込み並びにそれらの基地の建設」、こうなっておりますね。このときの持ち込みという、日米了解になっているこの持ち込みというのは、これは口頭の了解ですか。いわゆる非常に重要な、条約に匹敵するこれは重要なところだけれども、これは口頭、ゼントルマンズ・アグリーメントになっている。これは英語でどうなっているか。(「英語の試験みたいだ。」と呼ぶ者あり)あとで私が言う意味はわかります。
  421. 吉野文六

    ○吉野政府委員 おそらくイントロダクションということばを使っているだろうと思います。
  422. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 イントロダクションですか。イントロダクションという英語の中には、木村官房副長官お答えになったような貯蔵、配備、一時通過、それが含まれるという概念になっていますか。
  423. 吉野文六

    ○吉野政府委員 そのとおりでございます。
  424. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはどのように立証されますか、すみませんけれども。それはあれですか、アメリカとの間にそこまで詰めてやっていますか。詰めてやっていれば、それを証明するものがありますか。
  425. 井川克一

    ○井川政府委員 従前から申し上げておりますとおり、この「装備における重要な変更」ということ、これはもっぱら核の問題を考えてこのようにいたしたわけでございまして、そしてその場合に、その内容、つまり核とこの「装備における重要な変更」というのは、何と申しますか、離れられない、そのものぴったりの問題なわけでございますけれども、その場合に、日本の主権のもとに核弾頭が持ち込まれ、あるいは中、長距離、ミサイル云云というこの三つの、口頭了解と申されますが、そのようなものが入るということがこの事前協議の対象となる、こういう了解のもとにおいてなされているのでございます。しかしながら、かねがね申し上げておりますとおりに、この点につきましては何らの文書はないわけでございます。
  426. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうもあなたのいまの答弁はよくわからないのです。  そこで、もう一ぺん返りますけれども、木村副長官よく聞いておっていただきたいのです。岸・八一ター交換公文の「同軍隊」、これはあなたの先ほどの説明によると、安保条約にかかわる、関係のある軍隊、こういう表現ですね。これは安保条約第六条の交換公文だから、安保条約六条の米軍、だ、こういうお答えでしょう。
  427. 井川克一

    ○井川政府委員 私は実はそう申し上げたつもりはないのでございまして、先生が、日本国内に配置されたアメリカ合衆国軍隊であるかあるいは単なるアメリカ合衆国軍隊であるかという御質問だと私は了解いたしまして、後者であるという御答弁を申し上げましたところが、それではよそにある、日本関係のないものでもそうかという御質問でございましたので、そうではございません、これは安保条約の交換公文でありますので、安保条約と関係がある、日本国と関係のある状態においてのみその合衆国軍隊に対する日本側の関心というものが出てくるわけでございますから、たとえばヨーロッパにある合衆国軍隊などというものは全く問題にならない、こういうことを申し上げたわけでございます。
  428. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうするとあれですか、六〇年安保の論議の際に指摘された考え方を私も知っておりますから申し上げます。在日米軍は二つの概念がある。一つは、いわゆる日本に配置された軍隊、いま一つは、日本の基地を使っておる米軍、この二つをあげられましたですね。二つあげられた。そうすると同軍隊の重要な装備の変更というのは、その二つの軍隊をどちらもさしておる、こう見ていいわけですか。
  429. 井川克一

    ○井川政府委員 仰せのとおりその二つをさしておりますが、私いま承っておりますところでは、まだそれだけでも足りないのじゃないかという気がするわけでございます。たとえば領空を通過しておりますアメリカ軍隊、それを、基地を使っているという状態ではないと思いますが、それも入るわけでございます。
  430. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大体明確になったと思うのです。私はその点のいまの御答弁はわかります。しかし、あなたのいまの了解というのは、アメリカが了解しているかどうかについて疑問があるのです。アメリカのほうが、いいですか、アメリカのほうが「同軍隊装備における重要な変更」という場合に、日本に配置された軍隊と、もしそのように解釈をしておるとすれば、つまり配置されていない軍隊、たとえば第七艦隊、たとえばポラリス、たとえば大出委員が問題にしましたような、サブロック搭載の攻撃型原潜、こういうものが日本の港に一時寄港する、こういうことは事前協議の対象にならないということになりますよ。もし私が言っているようにアメリカが解しておればですよ。だからそこに、その点は事前協議の対象にならないのだ、一時通過といいますか、日本に配置されてない軍隊の一時通過は事前協議の主題にならない、そうすると大出委員も問題にしましたとおり、例のリチャード・ハロラン記者の一時通過に対する了解と申しますか、秘密とまでいわなくてもけっこうです、了解というものがあるのじゃないか、こうなってくるわけですね。だから「同軍隊装備」という、この「同軍隊」の了解が、日米の間で、そのようにいま条約局長お答えになったように、それはそれこそ日米了解されておるのですかね、その点は。
  431. 井川克一

    ○井川政府委員 そのとおりだと思います。また先ほど来申し上げておりますように、私の記憶に間違いなければ、安保国会においてすでに高橋条約局長がその点を明確に答弁いたしております。
  432. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、日本側の答弁はいいのですよ。あなたの答弁でもいいのです。アメリカとの間にそういう了解になっておるかどうかというのを私は問題にしているわけです。
  433. 井川克一

    ○井川政府委員 「同軍隊装備における重要な変更」につきましては、そのような趣旨でこれをつくったわけでございます。ややおことばをお返しするようでなんでございますけれども、もしそうでなければ密約というふうなものがあるはずがないとさえ思うわけでございます。
  434. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたの言うの、よくわからぬですね。何ですか、それが私におことばを返したようなことになるのですか。あんまりわからぬこと言わぬほうがいいですよ。  それで、木村長官、ハロラン記者のトランシット協定の問題。これは協定でなくてもそのような、ここ大事なところなんです、このようなゼントルマンズ・アグリーメントも含めて、そういう解釈、了解になっておった場合には、ハロラン記者の指摘することは非常に生きてくるわけです。それで私は持ち込まずという意味の内容をくどく聞いたわけです。  そうすると、貯蔵、配備、一時通過、すべて含まれる、こういう解釈でございますから、また、そういう立場でありますから、その点はよろしゅうございます。  そうすると、非核三原則の中に核貯蔵庫は含まれますか。核の貯蔵庫です。
  435. 木村俊夫

    ○木村政府委員 核の貯蔵以外に使用のない貯蔵庫ということになれば、当然これは含まれるのですが、いかなる設備の倉庫が核にのみ使用されるかという点は、技術的な面で私はよくわかりません。
  436. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、事前協議の、装備の重要な変更の中に核貯蔵庫は含まれますか。
  437. 井川克一

    ○井川政府委員 私もその核貯蔵庫というものがよくわからないわけでございまするが、御存じのとおりに、「同軍隊装備における重要な変更」とは「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持ち込み並びにそれらの基地の建設」の場合をいう、こういうふうになっておりますので、したがいまして、この基地建設の一部のような核弾頭の貯蔵庫というものの建設というふうなことになりますれば、この「それらの基地の建設」というのでひっかかってくると思います。私も、その核貯蔵庫というもの、どういうものだかよく存じませんで、ただいまのところそれしか残念ながら答えられません。
  438. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 木村長官にお尋ねします。  沖繩の核抜きという場合は、核貯蔵庫の撤収も含まれますか。
  439. 木村俊夫

    ○木村政府委員 全く仮定の問題でございますが、いよいよ沖繩返還が実現するその時期におきまして、当然核兵器は全部撤去されることになりますが、その時点において核爆弾その他がもうすでに撤去されたあとの貯蔵庫が、ある時期、時間、物理的に残るということは私は考えられることと思います。そういう意味におきましては、その核爆弾を全部撤去した、いわばからっぽになりました核貯蔵庫は、これは核兵器とみなさなくてもいいのではないか、こう考えます。
  440. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間的な関係で貯蔵庫が残ることはあるかもしれないがという話です。核抜きということは、核貯蔵庫も撤収をさせるということだと思うのです、いまもお答えのとおり核基地の概念に入りますから。だから、貯蔵庫も撤収してもらう、あるいはつぶしてもらう、なくしてもらうという方針だ、こう理解してよろしゅうございますか。
  441. 木村俊夫

    ○木村政府委員 私はそれは必ずしも断定できないと思います。と申しますのは、基地の建設といいましても、たとえは発射基地——発射設備その他を持つような基地が建設されるにおいては、おそらくいまおっしゃった場合に該当するだろうと思います。核を全部撤去したあとの単なる倉庫、これは私は核兵器設備でもなければ、またいま申し上げた建設の基地でもない、こういうふうな解釈が成り立つと思います。
  442. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 非常に重大なところなんです。いいですか、私はいろいろな資料を持っておりますが、核貯蔵能力をどんなに残すかということがいまアメリカで非常に問題になっておるのです。だから核貯蔵庫は核弾頭さえ入っていなければ問題にならないのだという解釈は、佐藤内閣の解釈ですか、沖繩核抜き返還に対する方針ですか、そう理解しておってよろしゅうございますか。
  443. 木村俊夫

    ○木村政府委員 要するに一切の核兵器を撤去する、これが基本でございますから、いやしくも核兵器の貯蔵あるいはこれに発射設備も含めましてそういう設備が残されることは万ないと思いますが、ただその撤去に時間を要する場合にはその期間残り得ることもある、こういうことでございます。
  444. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私がこれを繰り返すのは、愛知外務大臣からごまかされたからです。私はあとで議事録を読んでみたら、私はその核貯蔵庫も含まれておるという理解のもとに愛知さんも同意されたと思ってすっと過ごしたら、あとで読み返したら、うまく答弁されておるのです。核貯蔵はありませんという答弁になっておるのです。庫は落とされておるのです。これは大事なところですよ。  もう一ぺん聞きますが、発射設備とかそういうことを聞いておるのじゃないのです。核の貯蔵施設、核弾頭の貯蔵施設、これは当然あるわけです、核弾頭がある場合。これも撤去せしめるというのが核抜き返還の方針だとわれわれ思うが、木村副長官は、核弾頭さえなければ核の貯蔵庫は問題にならないのだ、そういう御見解ですか。
  445. 木村俊夫

    ○木村政府委員 これはあとでまた事務当局からあるいは補完的な説明があると思いますが、私の考えでは、核兵器のない貯蔵庫、核兵器を貯蔵しない貯蔵庫ということです。はたして沖繩に残す必要があるかないかということから考えれば、私は核兵器の貯蔵のみに使用される貯蔵庫というものは当然撤去されると思います。しかしながら、それが先ほど申し上げましたとおりほかの使用にも耐え得るような貯蔵庫であれば、これは残しても私は別に非核三原則にそむくものではない、こう考えます。
  446. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 われわれがこれを問題にしているのは、再持ち込みの危惧があるからです。再持ち込みをする場合は当然貯蔵庫を置いておかなくちゃならない。だから核貯蔵庫というのは非常に問題になるわけです。  もう一ぺん言いますが、核貯蔵庫については触れられませんか。核貯蔵庫も撤去せよ、これが核抜きの方針の中に含まれるとわれわれは理解するが、佐藤内閣は核貯蔵庫までは触れない、こういうことですか。もう一ぺんお伺いしておきます。
  447. 木村俊夫

    ○木村政府委員 もう一切の核兵器を沖繩から撤去するということが肝心なことでありまして、それを貯蔵する設備を残すか残さないかということは二次的な問題ですが、しかしながら、米軍といえども、もうすでに核兵器を貯蔵しない、その必要がなくなった貯蔵庫をはたして残すか残さないかということは、当然これは私は常識上考えられると思います。しかしながら、その貯蔵庫をも撤去せよとは、日本政府の立場としては言う筋ではないし、またそこまで言う必要はないと考えております。
  448. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、核貯蔵庫をつくるということは、非核三原則に触れる、さっきこういう御答弁があったですね、事前協議にかかる核基地の場合。——もう一ぺん言い直します。核基地の中に核貯蔵庫の問題が含まれませんか。
  449. 井川克一

    ○井川政府委員 あるいは私のことばづかいがへたであったかも存じませんが、私の申し上げましたのは、それらの基地の建設の場合、この三つの場合、これがいわゆる「装備における重要な変更」で、事前協議の対象となる。したがいまして、核基地建設の、私が申し上げましたのは核基地建設の一部として核貯蔵庫が建設されるような場合、核基地建設が装備における重要な変更になりますので、それ全体としてなりますので、したがって、核基地建設の中に含まれておりまするその核弾頭貯蔵庫でございますか、そういうものを一貫してつくるということは、この基地建設にひっかかる、こう私は申し上げたつもりでございます。
  450. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 非常にあいまいですね。私の質問に端的に答えてくれませんか。もう一ぺん言います。核貯蔵庫は非核三原則とは関係ない、これでよろしゅうございますか、木村官房副長官
  451. 木村俊夫

    ○木村政府委員 少なくとも核兵器を貯蔵する目的でつくり、またつくろうとしておる貯蔵庫というものは、私は、核貯蔵庫として当然これは撤去していかなければならぬが、しかし核兵器を撤去するという前提のもとにおるのですから、それに従って、あとに残った倉庫の機能というものは核貯蔵が目的じゃないのですから、それは私はその範囲に入らないと思います。
  452. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 くどいようですが、これは非核三原則は政策とおっしゃっているんです。だからアメリカは、これは私は内容は違うと思いますけれども、表面上はこれは政策だから変わり得る、そのときによってイエスもあり得る。これがジョンソン国務次官のアメリカにおける答弁ですよね、どうです。だから、もしイエスというときには、当然貯蔵庫が要る。だから核貯蔵能力だけは、もう一ぺん言いますけれども、沖繩に持っておきたいというのがアメリカの非常に軍事的な要請です。だから、私は核貯蔵庫を問題にしている。それについて、いまのような御答弁であれば、これはまた私は本格的な論議のときに問題にしたいと思います。  そこで、中曽根長官にお伺いしますが、先ほど上原議員は、沖繩の核抜きが行なわれておるかどうかの、核点検の問題を出されました。点検する際には、当然まず核倉庫が問題になる。核倉庫を点検される場合に、核倉庫の特徴というものを把握されておりますか。
  453. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は見たことはありませんから知りません。しかし沖繩返還後は、たとえばナイキを接収するという場合が出てきた場合に、もし沖繩のナイキが核弾頭を昔持っておったとしたら、それがもし倉庫として残っておればわかるわけですね、そのとき。こわしてしまえば別ですけれども。そういう機会を通じて先方と、もし向こうが核弾頭を持っていた場合には、改造したり何かしなければならぬ場合も買い取りの場合には起こるわけですから、引き継ぎのときにそういう問題はわかる。また、もしほかにそういうような類似の貯蔵庫とかそういうものが万一あるというようなことが、昔あったというようなことがあるとすれば、同じように先方とよく話し合って、合意の上で疑いを晴らすような措置を技術的に考えてみたほうがよろしい、そういう意味で申し上げたわけで、どれが核貯蔵庫であるというようなことは私はよく知りません。
  454. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 在日五空が「核の安全管理基準」というものを発行しております。御存じですか。
  455. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私はよく知りませんが、たしか何とかオフィサーというのがおって、これは核攻撃を受けたときのいろいろな防護関係の管理をやっている。そういう意味の配置事務というものはあるやに聞いております。
  456. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは、先ほども塩素ガスのときに、電話をされてすぐわかったわけです。確かめていただきたいと思います。「核兵器の運搬、貯蔵、機密保持、事故対策」こういうものがその安全管理基準の中に入っておる。十四ページといわれております。こういうものがあるかどうか、確かめていただきたい。
  457. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは日本にですか、沖繩にですか。アメリカにですか。
  458. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、アメリカの五空が発行しておる核兵器の安全管理基準というものがあるわけです。
  459. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは聞いてみましょう。
  460. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それで、念のために言っておきますが、たとえば内容は、貯蔵庫の設営については、「核兵器を貯蔵または一時集積、管理している場所は『第一級制限地域』として警戒を行なっておるかどうか」あるいは「核兵器貯蔵施設には囲いがされ、その囲いに近づこうとする人間を照らし出すための照明が備えられているかどうか」、「核兵器貯蔵施設の周囲に鉄条網でつくった囲いは七フィート以上の高さがあるか。その上につけられた有刺鉄線を加え八フィートの高さがあるか」、こういうことが書いてある。そうすると、あなたが提案されておるように、核点検の場合に、まず核貯蔵庫に行くわけでしょう。そして、中へ入れるかどうかは、これは全然わかりませんよ。おそらく不可能かもしれない。そうすると、まず核貯蔵庫のあるかないかから問題にしなければならない。そのときにこういう安全管理基準というものは一つの重要な目安になる。それで、その存在をひとつ確かめていただきたい、このように思いますが、どうですか。
  461. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 第五空軍は、日本、それから韓国、それから沖繩、向こうの施政権下にある沖繩を管轄地域にしておりますから、韓国などにはあるいは核兵器が行っておるかもしれません。ないかもしれません。だから、五空がそういうものがあるとしてもふしぎじゃないと思いますが、しかし日本に関してはそういうものを適用されるのはないと確信しております。しかし、いずれにせよ調べてみます。
  462. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 核兵器は日本にはない、これはわかりませんよ。これはいずれはっきりします。しかしいまの点は私の要求ですから、ひとつ確かめてください、そういうものがあるかどうか。十四ページといわれている。もう一度お願いします。
  463. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 調べてみます。
  464. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それではもう一つ、条約関係のことを聞いておきます。第五条に、先ほど申し上げたとおり、領域の中に日本の軍艦あるいは商船が入らないとすれば、さきの予算委員会で問題にした、たとえば四十三年度の海上自衛隊の演習の想定もそうですが、日本の軍艦なりあるいは商船が、たとえば公海において攻撃された、それだけでは日米安保条約は発動しませんね。
  465. 井川克一

    ○井川政府委員 第五条の発動原因ではございません。
  466. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、その段階では自衛隊だけの独自の対応になりますね。
  467. 井川克一

    ○井川政府委員 これは安保条約と関係がないことで、日本国の自衛権の問題だと思います。私の守備範囲ではございません。
  468. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは防衛庁長官
  469. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 もちろん正当防衛、緊急避難、自衛権の発動対象であるかということによって判定さるべきものであると思います。
  470. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは外務省はよろしゅうございます。  本題に移らしてもらいたいと思います。いまから順序立てて質問いたします。  きょう中曽根長官は、佐藤総理改憲問題に関連して、七〇年代の半ばには憲法について国民意見を求める必要があるのではないかという発言をされた。来年から始まります四次防は、四次防という呼び方をしてないわけですね。防衛庁のいままでの説明によれば、七〇年代約十年間の長期防衛構想のもとに、その前半を五年間限ってこういうことにしたい。大品委員も指摘しておりますとおり、私どもとしては、もう四次防の完成の段階においては、これは率直にいって、憲法にいよいよ触れる戦力だ。もう明確に、いかにごまかそうともそのようになってきます。その四次防の終わりの段階で、七〇年代の半ばということになりますと、ちょうどそのころですから、そのころ憲法に対する考えを聞くというのは、四次防完成時の、あるいは五次防を展望したそういう防衛計画も含めて、憲法との関係も含めて国民意見を聞いてみる必要がある、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  471. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 第四次防とはさらさら関係ございません。私がそういう発言をしたのはいまから三年ぐらい前で、防衛庁長官になる前であります。かつ、もちろん新防衛整備計画のつくられる前であります。
  472. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 きょう答弁されたことを問題にしているのです。現実の問題です。
  473. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは前に申し上げたことを確認しておるのであります。それで四次防とは関係ございません。政治家として前からこういうことを考えておりましたし、いまも前の考えと変わっておりません。こういうことを申し上げたわけであります。
  474. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 木村官房副長官にちょっと一言だけ最後に聞いておきます。いずれ明日また問題になると思いますが、きょう午前中の質問を終わりまして、われわれは川崎寛治外交防衛委員長大出委員と私と三名で佐藤総理にお会いしたわけです、この改憲問題について。そこで総理は、率直にいって、われわれに総理総裁の使い分けについて苦慮しておるということを話しました。それで参議院選挙総裁として選挙をする、それもおっしゃいました。そうすると総裁としての発言は、御存じのとおり、この前の自民党選挙関係のあの発言をきょうは再確認した上、もう少し明確に言われたわけですね。総裁として当然だと思います。そうすると、参議院選挙はそういう改憲について国民意思を問うという意味が当然含まれてくる。これはまた明日お答えになりましょうけれども。木村副長官としては、いま佐藤内閣ですから、総理として、あるいは総裁として、その国の基本にかかわる憲法問題についての二枚舌が使われましょうか、どう思われますか。
  475. 木村俊夫

    ○木村政府委員 私からお答えするのは適当かどうかわかりませんが、私の考えを申し上げれば、確かに自民党の綱領に自主的憲法制定というのがございます。したがいまして総裁として、綱領が存在する以上はそれに拘束されることは政党政治から当然でございますが、ただ佐藤内閣としては憲法改正は一切考えないということは、もうそのつど申しております。しかしながら、あの場で総裁として申しましたことは、改憲勢力ということばを使っております。直ちにこれが憲法改正の意識のもとに行なわれるかどうか。改憲勢力ということは、まあそういう場合にいずれの政党でもよく士気を鼓舞するしにおいて、三分の二の多数をとるというような士気の鼓舞上の表現だ、こう考えておりますので、佐藤内閣としては一切憲法改正等は毛頭頭に置いておりません。
  476. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 われわれも国民の代表として国会に上がってきております。そうしていろいろな論議をしておる。選挙は直接国民意見を聞く。その際に憲法問題に触れて改憲勢力を結集する、こちらのほうがより明確ですね。単に自民党の人を鼓舞するという意味合いと違いますですね。しかし私は、明日総理が御自身で答えられるそうですからくどくは言いませんが、さすが木村副長官のお考えも佐藤さんのお考えも全く同じだ、このように思います。これはいずれ私どもとしては重大問題として取り上げていかざるを得ない、このように思うわけです。以上、申し上げておきます。  中曽根長官にお伺いします。防衛出動下令の第七十六条は、国会の承認を要しますね。御案内のとおりであります。防衛出動下令を中止する場合の手続はどうなっておりますか。これは政府の専権事項でありますか。
  477. 久保卓也

    ○久保政府委員 内閣総理大臣が防衛出動の必要を認めなくなった場合に、防衛庁長官に対して出動の中止を命ずるということだと思います。
  478. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ちょっとよくわからなかったのですが、もう一ぺん明確に言ってください。
  479. 久保卓也

    ○久保政府委員 出動の必要がなくなった場合に、自衛隊の撤収を内閣総理大臣が命ずるということであります。
  480. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、内閣の専権事項ですね。
  481. 久保卓也

    ○久保政府委員 さようです。
  482. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 七十六条で国会の承認が得られた後防衛出動が行なわれる。これを国会の決議でやめさせることができるか、中止させることができるか。
  483. 久保卓也

    ○久保政府委員 手続としましては、内閣総理大臣は前項の出動を命じました場合に、不承認の議決があったときは自衛隊の撤収を命ずると書いてありますから、それは可能だと思います。
  484. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまの問題について、一つ国会でそれができますか。
  485. 久保卓也

    ○久保政府委員 先ほど私が申しましたのは、内閣総理大臣が出動を命ずる場合に国会の承認を得てやることになっておりますが、その承認について不承認である、この議決があった場合に撤収を命ずるということでありますが、一つの議会というのはどういうことでしょうか。
  486. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それじゃ私のあれをあなたが理解してません。国会で承認されたとしますね。それで防衛出動が行なわれた。ある一定の状態の変化が出てきたとき、これはやめさせなくちゃいけないと国会が判断し、国会の決議によって防衛出動をやめさせることができるかということを聞いております。
  487. 久保卓也

    ○久保政府委員 是非は別といたしまして、現存の法文からいけば、議決によって直ちに内閣総理大臣が命じなければならないということにはなっておりません。ただし議決されたことを内閣総理大臣が出動の必要がなくなったときと認めれば、それは自衛隊の撤収を命ずることになると思います。
  488. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それを聞いておるのじゃないのです。総理大臣がそう判断しない場合でも、国会がこれは撤収すべきだ、やめるべきだと判断したときに、国会の決議で防衛出動下令を中止させることができるかと聞いております。
  489. 久保卓也

    ○久保政府委員 ですから最初申し上げたのはそのお答えに当たるわけで、その法文から申せばできないことになると思います。
  490. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは国会は決議をもってしても防衛出動をやめさせることはできませんか。
  491. 久保卓也

    ○久保政府委員 この法律にはそういう手続は書いてありません。
  492. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はその実際を聞いておるのです。できないですか。
  493. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国会は国権の最高機関でありまして、内閣を監督しているところでもありますから、国会がそういう御決議をなされば、総理大臣はまず特別の事情のない限りは国会意思に従うと思います。しかしもし特別の事情がある場合には国会に対して相談をかけるということになるのじゃないかと思います。それはすなわち政治の運用の問題になると思います。
  494. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は当然だと思います。国会の承認を得て初めて七十六条が発動されるということ、その後の情勢の変化によって国会がまたそれをやめさせるということは、条文にはなくても当然私はそのことはこの法の概念として含まれると思うのです。  その際に、私がお伺いしたいのは、これは実際問題としてそういうことがないことを望みますけれども、演習はどんどんやっておるのですからね、防衛出動を頭に置いて。その際に一つ国会、三十九条の一事不再理という原則がある。一つ国会、大体百五十日ですが、延長延長ということもある。このときに、一つ国会の間にほかの法案と同じようにこの一事不再理の原則がここに適用されるのかどうか、それを私は心配している。
  495. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは法制局意見を聞かないとわかりませんが、私の判断ではそれは情勢が違うのであります。だから案件が違うと思うのです。ですから一つ国会で条件が、情勢が違えば何回でもできるのじゃないかと思います。
  496. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは法制局見解を、非常に重要なところですから、ひとつ有権的な見解を承っておきたいと思います。
  497. 真田秀夫

    ○真田政府委員 国会法の一事不再理の原則の適用の問題でございますので、これは実は国会自身の運営のあり方なんで、それをきめておる条文でございますので、実は国会でおきめになるべき筋合いだろうと思います。有権的に内閣の機関が国会のあり方についてできるとかできないとかということをどうも申すのはいかがかという気がいたします。ただ理屈は、じゃおまえはどう思うかということでございますれは、ただいま防衛庁長官がおっしゃいましたように、一事不再理の原則といっても、非常に事情が変わって新しい事態が出来すればまたそれを議決の対象にしてもいいんじゃないかという説があることをお伝えしておきます。
  498. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 見解として承っておきます。  そこで私はその四次防をどういうふうに判断するかということをよく聞かれます。私どもはこの四次防をこのように考えるのです。長官。二次防まではアメリカの兵器をもらって、だから一次防、二次防は、その防衛予算というものは主として隊員の給与なりあるいは衣料費なりその程度のことであった。三次防になってやっと国産化に踏み切って装備計画をもってやってきた。つまり長官も三次防までは単なる装備計画であるとあなたはおっしゃったことがある。四次防はそうではない。どういう点が違うかというといろいろあろうと思いますが、七〇年代の長期の防衛構想に基づいた戦略的な意図を持った装備計画である、このように思うわけです。  そしてこの七〇年代の長期の防衛構想とは何か。これは横路委員も問題にしたとおり、まず第一は、一昨年愛知さんが沖繩に行く前に、当時の有田防衛庁長官と話をされて発表された文書の中にある、いわゆる初動においてこれを撃破する体制、ことばとして出てきております初動撃破体制。それがさらに進んで公海、公空上における撃破、つまり洋上撃破体制。これは何かというと航空優勢、制海権、こうなってくるわけですね。文章を拾ってもそうです。そういう体制あるいは戦略に応ずるような装備体制をつくっていく。これが一つの特徴である。それから二番目は、これも横路委員が指摘したとおり産軍の関係であります。非常に財界主導型の装備計画になってきている。これもあとで指摘したいと思います。ただ問題は、この四次防の金額からいえば厚生省の統計からいっても、日本の一家庭と申しますか一世帯四次防に対して約二十四万円程度の負担をしなくちゃならない。そうなりますね、四・五くらいの家族構成にすれば。膨大なこれは負担であります。国民がいろいろ心配しておろうと思うのですが、一つはどこまで増強すれば気が済むのか、政府がいう守れるのか。もう一つは、はたして役に立つのかという心配もあろうと思いますね。これらの問題をすべて含んだ姿でこの四次防が発足していくだろう。その前提として、防衛白書にもあるとおり、私はいままでの再軍備過程において三つのタブーがあったと思うのです。憲法とのからみです。一つは核の問題であります。二つは海外派兵の問題であります。そして三つは徴兵制度の問題であります。ところがこの三つとも具体的な内容を問題にした際にこれは崩壊過程にある。だからわれわれはここで憲法との問題を論ぜざるを得ない。こういうふうになると思うのです。大体いま私が申し上げたような考え方、どうでしょうか。
  499. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 われわれの意図と違います。客観的にもそういうことではないとわれわれは信じます。これは専守防衛の戦略体系で、それを具体化したものが憲法の認める自衛権の範囲内の防衛措置であると確信しております。
  500. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは時間がありませんから、私も時間を気にしながら、はしょっておもなところだけしかやれないようになっておりますけれども、具体的な問題をちょっと聞いていきます。  まず第一番目に、海外派兵の問題と関連して、緊急時、例をあげますと、たとえば一九六七年の香港の暴動、あるいは南ベトナムのテト攻勢、かつては、参議院で亀田議員が朝鮮戦夢を例にあげられた。こういう緊急時に在留邦人保護のために、在留邦人を救出するといいますか、あるいは輸送する、そういう目的自衛艦なり、今度は六機のヘリを積む八下トンのヘリ護衛艦二隻を予定されておるようですが、そういうものを便って、そういうヘリ護衛艦なりあるいは輸送機等を派遣するということは、どう考えられますか。
  501. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 たしか楢崎委員の御質問だったと思いますが、あるいは参議院であったのかもしれません。法制局長官は、海外派兵とは武力行使の目的をもって兵力を外国に出すことです、つまり武力行使の目的でなくてそういう国民を救うというような場合は災害出動みたいなものに当たりましょうか、そういうことを言って、彼の見解は、それは海外派兵ではないように思う、がしかし、その辺はもう少し勉強してみる、こういう答弁であったと私は記憶しておりますが、いずれにせよ、そういう場合においても政府は目下のところ外へ出す考えはございませんとだけは答えたような記憶があります。それはもう一回よく調べてみます。
  502. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 具体的に聞きますから、前後はよろしゅうございます。時間が切迫しておりますから。  次に核の問題に入ってみたいと思います。私が佐藤総理に、三原則をばらして、持たずつくらずと、持ち込まずと二つに分けて質問したときには、持たずつくらずは憲法及び原子力基本法上の問題だという答弁がありました。ところが、今度の白書では三原則をひっくるめて憲法上の制約ではなしに、政策上の問題に落とされました。そこでこういう議論は省きますが、原子力潜水艦は通常兵器ですか。
  503. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本におきましては、目下のところは通常兵器ではないのではないかと思います。
  504. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 四次防の技術研究開発計画の中に原潜の問題が入っておりますか。
  505. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 入っておらないと記憶しております。
  506. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 原子力潜水艦の保有は、非核三原則との関係はどうなりますか。
  507. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 原子力商船が普遍化した場合には、それをつくるということは憲法違反にはならないという解釈だったと思います。しかしそういう条件は目下のところないし、次の防衛力計画の期間においてもないであろう、そういうふうに推測しております。
  508. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 原潜の保有は、原子力基本法との関係はどうなりますか。
  509. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あの基本法をつくりましたときに、私が提案者として説明したり答弁しましたが、そのときにはただいま申し上げましたように、原子力商船が通常化した、そういう場合には、これは自衛隊が持ってもつくっても基本法違反にはならない、そういう答弁をしたと記憶しております。
  510. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、ポピュラーにならない現段階では、原子力基本法に抵触するというふうに考えておられるわけですね。
  511. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 さようでございます。
  512. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは今日の段階あるいは当分見込まれる将来も含めて、原潜の保有は原子力基本法に反する、そう理解しておっていいですね。
  513. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 当分という予測の問題ではありますが、目下のところさようであると考えていいと思います。
  514. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 原子力基本法の解釈は、これは原子力委員会がやるわけですか。どうなっておりますか。
  515. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは、最終的にはやはり裁判所だろうと思います。
  516. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 とにかく今日の段階では原子力基本法違反だ、それが明確であればいいでしょう。念のために、これは、昭和四十三年五月二十三日、衆議院の科学技術振興対策特別委員会で石川委員が質問をしております。説明員として来られた原子力委員の有澤委員答弁をされている。それで、こう質問しております。「御承知のように、原子力潜水艦は明らかに軍艦です。軍用目的であることは、これは否定されないでしょう。軍用目的に原子力を使うということが認められるということは、明らかに原子力基本法の違反ではないか。これはどう考えますか。」こういう質問です。有澤廣巳委員は、「日本において原子力軍艦をつくれば、これは基本法に反すると思います。」明確に答えられておる。念のためにこれを申し上げておきます。  それでは、三番目の徴兵の問題について一、二聞いておきます。自衛隊法の百三条に備えて、該当者の訓練を平時に行なえるか。つまりこれは特定の職種であります。百三条に該当してくる者は、医者、看護婦あるいは土木建築関係、交通関係ですから、国鉄、私鉄、トラック、タクシー、こういう運転手が含まれている。どうですか。
  517. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 正確には政府委員をして答弁せしめますが、徴兵とはこれは関係がなくて、災害出動あるいは災害対策基本関係法律にもきめられているような意味のものではないかと私は思います。徴兵の場合は、いわゆる徴兵というものは、日本憲法のもとにおいては憲法違反であるというのが多数説のようでありまして、政府はその多数説に従う、そういうふうに言明しております。
  518. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は徴兵制度と関連して言ったから誤解があったかもしれませんが、それは徴兵下というふうな問い方をしているわけではないのです。つまり自衛隊法百三条によって、さっきあげた特殊の業種のもの、これを平時にこういう百三条に備えて訓練をすることができるかということを聞いているのです。こういう人たちに対してです。
  519. 久保卓也

    ○久保政府委員 特別の規定がなければ訓練はできないと思います。
  520. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 高辻長官は、徴兵制度の説明のときに、いわゆる戦時中のようなという、そういう表現を使われていますね。戦時中のような徴兵制度は憲法違反である。そうではない別の形、たとえば職種別あるいは選別的に徴兵的なものをやる。これは自衛隊法百三条でできますか。
  521. 久保卓也

    ○久保政府委員 高辻長官が言われましたのは、平時においていわゆる徴兵制度的なものをやることは憲法違反である、こう言われたわけです。その根拠は、おそらく、憲法に、たとえば苦役に服させられないとかあるいは職業選択の自由の問題なりあるからだと思うのです。ですから、特定の業務について、法律でこれこれの業務に従わねばならないということを平時から命ずるということは、これは法制局の正確な答弁が必要であろうと思いますけれども、やはり類推して憲法に支障があるというふうに私は解釈いたします。
  522. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 しかし、自衛隊法の百三条によれば、もう徴兵と変わらないようなことを、この職種に限ってはできるんじゃありませんか。
  523. 久保卓也

    ○久保政府委員 ですから、これは有事の場合ですね。有事の場合ですと、憲法のたしか十二条であろうと思いますけれども国民の福祉にかかわる場合に、個人の権利を制約することができるという趣旨の条文があります。これによって救われているんだろうと思います。
  524. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、有事の場合は徴兵的なものができるという解釈ですか。つまり、たとえば自衛隊法の七十七条なりあるいは七十六条の状態のとき。
  525. 久保卓也

    ○久保政府委員 それを先ほど午前中でありますか、法制局長官が、若干問題が残る、こう言われたわけです。しかし、これと、いまの有事における全般の国民を対象にすることの違いは、つまり国民の福祉にかかわることでありますから、特定の業務のものについては、少なくとも国民全般のためにこういう業務につかしてほしいということの、いわば相当因果関係といいますか、相当性といいますか、そういうものが、わりと立証されるのではなかろうか。しかし、それを一般国民に及ぼす場合に問題であるということを高辻長官が言われたんだろうと思います。
  526. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 しかし、百三条ではできるようになっているでしょう。読んでごらんなさい。私は特定の職種について言っているのです。
  527. 久保卓也

    ○久保政府委員 いま申し上げたのは、特定の分野については、有事の場合に、特定の業務につくことが国民の福祉のためには非常にプラスになる、貢献するという相当性というものは高いであろう。それを一般に及ぼすというのはどうであろうか。これは絶対だめであるとは申し上げませんけれども高辻長官が、そこが問題が残るということを言われた。私は同じことを繰り返しているのです。
  528. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は一般に及ぼすとは言っていないのです。その百三条の中に該当しておる職種の人たちにはできる、そういう解釈でしょう。その職種の者について徴兵的なものができるという、そうでしょう。
  529. 久保卓也

    ○久保政府委員 徴兵的なものとは申しておりまません。この百三条に書いてあることができるだろう……。
  530. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 徴用と言ってもいいです。
  531. 久保卓也

    ○久保政府委員 徴用とも申しません。この法律に書いてあるとおりのことができるであろう。これは法律にそうなっておるから、また憲法にかなうものとして国会がお認めになったことですから、私たちは国会のお認めになったことに従うわけです。
  532. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから、その法文をたてにして、あなたは徴兵とか徴用じゃないとおっしゃるけれども、その職種に限っては実際は徴用の形になると言っているのです。それを私は言っているのですよ。そうなりますね。
  533. 久保卓也

    ○久保政府委員 徴兵とか徴用とかいうことばの問題であろうと思いますけれども、私どもは、ことばを発展させませんで、法律に書いてあるとおりのことができるであろう、そういうふうに思うわけです。
  534. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ばかばかしくて、そういう答弁は……。  もうはしょっていきます。中曽根長官にお伺いします。  制海権、航空優勢の問題に関して、三矢研究では、朝鮮戦争が起きた場合、日本政府は防衛水、空域を設定し、宣言するとなっているのです。これは三矢研究ですから、そのとおりおやりになるんじゃないかということを私は言いません。しかし、こういう考え方があるわけですね。だから、いわゆる制海権なりあるいは航空優勢を確保する、そういう行動を起こす時期、これは横路委員の質問のときにも問題になったのです。あるいはもうちょっと詰めていきますと、長官の御答弁でいえば、自衛隊法に直すと、七十七条、防衛出動待機命令、この段階ではこの設定がある程度発動する、このように考えていいわけですか。
  535. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 具体的な問題は、やはりそのときの情勢でケース・バイ・ケースに判定さるべきもので、自衛権を行使するに必要な最小限度の行為として認められるかどうかということにかかっておるので、いま一般的に抽象的にお答えすることはむずかしいと思います。
  536. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この公空、公海上の撃破体制の問題に関連して、一九六〇年四月五日、岸総理大臣、安保特別委員会における答弁です。わが国の領土を出て他国の領土に行くことは絶対にない、ただ海と空の関係においては、領海や領空を出て公海や公空の一部に出ていくというようなことは実際問題としてはあり得ると思う、こういう御答弁であります。実際問題としてはあり得るであろう。これが九年たった一九六九年十月八日、有田防衛庁長官になると、領土を守るために公海の上でも侵略を阻止することは当然のことではなかろうか、そして「できるだけ領土、領海の外でこれを排除するというほうが国民も安心されますし、そういう考え方で進めたい」、こう変わってきたのです。結局この十年間に、最初の岸さんの場合の、場合によってはあり得るということから、有田さんになってくると、当然のことだから、できるだけ積極的にそう進めたいというふうに変わってきた。この変化は認められますか。
  537. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 自衛権に対する解釈というものは、ある程度時代によって変わってきているだろうと思います。私は、日本自衛権を行使するという意味において、必要最小限度の場合には、公海においてさような行為をすることも、あるいは公空においてさような行為をすることも認められると思います。
  538. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 法制局にお伺いしますが、自衛隊法七十六条、これは自衛権の発動ですか。
  539. 真田秀夫

    ○真田政府委員 自衛隊法の七十六条に書いてございますように、要件といたしまして、武力攻撃があった場合と武力攻撃のおそれがある場合、二つ並べてあると思います。前者のものにつきましては、武力攻撃があった場合でございますから、自衛権発動の要件も具備しておる場合ではなかろうかと思います。後者の場合は、まだ自衛権発動の要件を具備している段階とはいえません。
  540. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたのおっしゃる自衛権の発動とは、武力を実際に行使するという意味ですか。
  541. 真田秀夫

    ○真田政府委員 わが国が、わが国を防衛するために武力を行使するという意味で申し上げました。
  542. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、自衛権の発動というのはいわゆるセコンドブロー、そう考えていいのですか。
  543. 真田秀夫

    ○真田政府委員 楢崎委員もよく御承知と思いますが、自衛権の発動の要件といたしまして、いわゆる三原則なるものを考えておるわけでございます。その中にわが国に対する急迫不正な侵害が、攻撃があった場合と書いてございますので、おっしゃる御質問もその線で考えたいと思います。
  544. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ということは、セコンドブローである、こう考えていいわけですね。
  545. 真田秀夫

    ○真田政府委員 だんだん議論がきわどいところへ参りますので、注意してお答えしなければなるまいと思っておりますが、大体はそういう場合が多いであろうと思います。
  546. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは非常に重要なところです。大体はそういうところが多いということはどういうことでしょうか。大体はそういうところだけれども、そうでない場合もあるという意味の、大体はそういうところというのですか。
  547. 真田秀夫

    ○真田政府委員 自衛権発動の三原則のうちの第一原則であります急迫不正の攻撃があった場合、発生した場合というのは、わが国に対して侵害の実害が生じた場合には限らないというふうにいっておりますので、その辺を多少ゆとりを持たせて御答弁を申し上げました。
  548. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 やはりはっきりしないのですよ。だからここに問題がある。これがいわゆる洋上撃破体制と関連してくるのです。私はそれをいつも心配する。だから、この前みたいな対馬におけるソ連艦に対する誤認攻撃が起こるのです。実際に起こっておるでしょう。あれはセコンドブローを想定してやられておるのか、初動撃破というのか、やられたらすぐやるという意味なのか、その辺が非常にあいまいですね。ことばとしてはたくさん出てきておりますけれども。そして実際の自衛隊がどういう想定をしておるかというと、長官はそのときどきでなければわからぬとおっしゃるが、自衛隊が実際に訓練しておるのはこの前私が指摘したとおりです。国籍不明の潜水艦から撃沈された、あるいは爆雷に触れて沈没が多くなった、そういう情勢を見て防衛出動が下る、こういう想定なんですよ。あるいはこれからチェックすると長官はおっしゃいましたけれども、ああいうものを私ども見ますと、心配しないほうがおかしいですよ。一体どういうことを考えているのか。つまり先制的な自衛権の行使というものを常にぼくらはやはり心配するわけです。だから、この辺については高辻さんとやり合ったところですから、高辻さんがお見えにならぬと何ともならぬところです。  それでもうあと一、二問にしておきます。ちょっと急行で申しわけないのですが、皆さんお疲れでしょうから……。  今度の四次防の中で兵器購入に充てられるのは大体一兆五、六千億、そういうふうなワクですね。
  549. 田代一正

    ○田代政府委員 新防衛整備計画で、いわゆる装備費と称する部類に入る経費はおおむね二兆五千億くらいでございます。
  550. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 新兵器の購入に充てられる部分はどういうことになりますか。
  551. 蒲谷友芳

    ○蒲谷政府委員 新兵器という意味をどうとりますか問題でございますけれども、一応いま経理局長からございました二兆五千億というのは、全兵器に関係するものの調達予定額でございますけれども、その中から、いわゆる購入費、維持費というものを除きましたものを申しますれば、約一兆八千億ぐらいだと思います。
  552. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その中で、値上がり分は総額どのくらい見られておりますか。
  553. 田代一正

    ○田代政府委員 装備費全体で申し上げたいと思うのですが、装備費全体の中で値上がり相当額と申しますのは、大体二千億ちょっと切れる見当の数字になっておると思います。
  554. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 二年前にファントムは百四機購入するということをきめられた。そのとき、たしか大蔵省には百三十機当初要求されたと聞いておりますが、それが百四機に削られた。つまり、四飛行隊分、四個中隊分に削られた。間違いないですね。
  555. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 大体そんな数字だったと思います。大体百三十機だったと思います。
  556. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 間違いないでしょう、何回も確かめていますから。  今度沖繩返還ということで、沖繩防衛も含めて四次防で五十四機、また新しく要求されるわけですね。
  557. 久保卓也

    ○久保政府委員 さようです。
  558. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうでしょう。沖繩に配備を予定されておるのは何機ですか。
  559. 久保卓也

    ○久保政府委員 沖繩にはF104二十五機を持ってまいります。そこで、それは本土に配置をされておりますものを持ってまいりますので、その穴埋めをF4でやりたい、こういうことであります。
  560. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 二十何機ですか。
  561. 久保卓也

    ○久保政府委員 二十五機です。
  562. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 沖繩返還をてこにして五十四機要求されておる。二十五機ということになると、約三十機余る。そうすると、当初あなた方が大蔵省に要求された五個中隊、百三十にそろうじゃないですか。つまり私が言いたいのは、沖繩返還を理由にしてよけい要求して、それで当初の百三十に合わせる。これがあなたたちの魂胆ですか。どうですか。
  563. 久保卓也

    ○久保政府委員 私どもはそういうふうには考えておりませんで、当初の百三十機というのは私存じておりませんでしたが、当初の百三十機というのは、おそらく本土の防空に必要な機数であったろうというふうに思います。ところが、沖繩が返ってまいりますれば、沖繩の防空としてプラスアルファが必要でありましょう。そのプラスアルファがF104でいえば二十五機になりますし、その穴埋めがF4になった、こういうことであります。
  564. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから、算術計算でわかるでしょう。二十五機要求されればいいじゃないですか。五十四機とどうしてなるのですか。
  565. 久保卓也

    ○久保政府委員 それは五次防段階におきまするF104の消耗を見まして、F4を本土におきまして六個スコードロン維持するというために必要な機数ということであります。それを新防計画中に契約をしなければ五次防段階で六個スコードロンが維持できないという消耗の分であります。ですから、消耗の分と沖繩の穴埋めの分と合計いたしまして五十四機である、こういうことであります。
  566. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 四次防で五十四機でしょう。
  567. 久保卓也

    ○久保政府委員 五十四機でありますけれども、契約をするのが五十四機であって、出てまいりまする最終の年度は、一番最終に出てまいりますのは五十四年度であります。
  568. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 しかしそんな理屈つけられても、われわれから見るならば——もう一ぺん言いますよ。百三十機五個中隊を要求された。それが削られて四個中隊百四機になった。ところが沖繩が返ってくる。この際水増しして五十四機。沖繩には半分しか行かない。二十五機——大体二十一機と聞いておりましたが、二十五機ですか。そうすると結局二十九機余りますな。そうすると百四機を足して百三十三機になりますね。当初の大蔵省要求と一致するでしょう。そのように見ざるを得ないのです、われわれとしては。だから沖繩返還をてこにしてやはりあなた方は過度に要求を満たしていこうとしておる、こういうふうに見ざるを得ないということを私は言いたいわけです。
  569. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 前のいきさつがありますので、ちょっと私から補足いたしますが、百三十機を要求しましたときには沖繩のことは考えておりません。もっぱら本土だけで計算をいたしまして、いろいろなORなんかのことで要求をいたしました。政府全体では四個隊百四機にきまりましたのは、それはおっしゃるとおりでございます。沖繩のことはその後出てまいりまして、最初の話は三次防のときでございます。四次防の段階で沖繩のことが出てまいりましたので、新たに沖繩のことは考えました。それからもう一個隊はそれから数年たっておりますので次の百四機がずっと落ちてまいります、その補充をもう一隊考えた、こういう事情でございます。
  570. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 まだ戦略の問題から演習をずっと私ここにメモしておるのですけれども、時間がありませんからもうこれでやめます。これでやめますが、しかし四次防と憲法のかかわり合いの問題は今後ともずっと私尾を引くと思うのです。だから、きょうおっしゃいました中曽根長官の七〇年代半ばにおける改憲についての国民意見を聞くというあの発言については、非常にわれわれとしても問題にせざるを得ないと思うのです。以後機会を見てまた質問したいと思います。
  571. 天野公義

    天野委員長 次回は明十五日土曜日、午前十時委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後十時四分散会