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1971-04-22 第65回国会 衆議院 内閣委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年四月二十二日(木曜日)     午前十時二十分開議  出席委員    委員長 天野 公義君    理事 伊能繁次郎君 理事 熊谷 義雄君    理事 佐藤 文生君 理事 坂村 吉正君    理事 塩谷 一夫君 理事 大出  俊君    理事 鈴切 康雄君       伊藤宗一郎君    加藤 陽三君       葉梨 信行君    堀田 政孝君       松本 十郎君    粟山 ひで君       山口 敏夫君    山下 徳夫君       吉田  実君    佐々木更三君       沖本 泰幸君    受田 新吉君       東中 光雄君  出席国務大臣         文 部 大 臣 坂田 道太君         国 務 大 距         (防衛庁長官) 中曽根康弘君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         外務政務次官  竹内 黎一君         文部大臣官房長 安嶋  彌君         文部省初等中等         教育局長    宮地  茂君  委員外出席者         外務省欧亜局東         欧第一課長   宮沢  泰君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 四月二十二日  辞任         補欠選任   阿部 文男君     粟山 ひで君   笠岡  喬君     山下 徳夫君   鯨岡 兵輔君     吉田  実君   中山 利生君     松本 十郎君   鬼木 勝利君     沖本 泰幸君 同日  辞任         補欠選任   松本 十郎君     中山 利生君   粟山 ひで君     阿部 文男君   山下 徳夫君     笠岡  喬君   吉田  実君     鯨岡 兵輔君   沖本 泰幸君     鬼木 勝利君     ————————————— 四月二十日  旧軍人に対する恩給改善等に関する請願(中曽  根康弘紹介)(第四七五九号)  靖国神社国家護持早期実現に関する請願外二  十七件(中曽根康弘紹介)(第四七六〇号)  同外二件(稲村利幸紹介)(第四八六一号)  同(上村千一郎紹介)(第四八六二号)  同外一件(佐藤守良紹介)(第四八六三号)  同外四件(進藤一馬紹介)(第四八六四号)  同(菅波茂紹介)(第四八六五号)  同外一件(松本十郎紹介)(第四八六六号)  靖国神社国家管理反対に関する請願外十五件  (木原実紹介)(第四七六一号)  同(小林信一紹介)(第四七六二号)  岐阜県白鳥町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(古屋亨紹介)(第四八六七号)  元満州拓殖公社員恩給等通算に関する請願外  三件(渡部恒三紹介)(第四八六八号)  岐阜県上石津町の寒冷地手当引上げ等に関する  請願武藤嘉文紹介)(第四九二三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  文部省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二一号)  国の防衛に関する件      ————◇—————
  2. 天野公義

    天野委員長 これより会議を開きます。  文部省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。大出俊君。
  3. 大出俊

    大出委員 大臣に承りたいのですが、国立特殊教育総合研究所をおつくりになる、こういうわけでありますが、ここに神奈川県横須賀市野比におつくりになる内容のパンフレットがございますが、五つの機能というのがございまして、特殊教育内容方法を改善するため、こうあるのですが、今日の特殊教育というのは、一体どの程度でどうなっているのかということ、それをどう改善しようとなされるというのか、これがポイントの一つだと思うのですが、そこのところを承っておきたい。
  4. 宮地茂

    宮地政府委員 現在、特殊教育につきましては、先生御承知のように、盲学校ろう学校については、戦前古くからわが国では特殊教育といえば盲学校ろう学校というようなことで、このほうは、ほぼ一〇〇%に近い盲ろう者についての学校ができております。ところで、いわゆる病虚弱、肢体不自由、精薄といったような養護学校対象になります子供たちについての教育は、きわめて新しゅうございまして、養護学校制度も戦後の制度でございます。こういうようなことから養護学校は、精薄を除きまして、病虚弱、肢体不自由児は三十県近くの県がまだ未設置でございます。そういうふうに非常に不備でございますが、このほうは政府として予算をもう少し努力するとか、いろいろ解決の方法もございますが、さらにこういう子供に対しまして、とりわけ最近自閉症の子供といったようなこと、これは非常に大きな社会問題にもなっておりますが、こういう子供教育の機会を与えようといたしましても、どのような教育内容教育方法をとるべきか、こういう障害児に対する科学的な研究が、正直に申しまして不十分でございます。そういったような点から、特に特殊教育研究所では、現在努力しつつございますが、まだ未開拓な分野、それを教育心理あるいは医学、工学、さらにもちろん特殊教育の面、いろんな学問の総合的な協力関係でこういう子供に対する適切な教育内容方法考えていきたい、こういうようなことが特殊教育研究所一つの大きなねらいでございます。その他もございますが、一応簡単に申し上げますとそういう趣旨でございます。
  5. 大出俊

    大出委員 実は時間が非常に限られておりまして、選挙をやっているさなかの委員会でもございまして、成立しないでやっているというようなことになっていますから——と言うと、そちらのほうはまずいのでしょうけれども、これは成立させていただきませんと、採決ができませんから、そのほうはひとつお考え願いたいのです。したがって突っ込んだ話になりますと、実は厚生省お出かけいただきませんと、大臣にそこから先を詰めるのは無理だと思うのです。  私も実はドイツあるいはスウェーデン、デンマーク等の幾つかの施設を見ておりまして、重症心身障害児あるいは障害者を守る会などができるころに非常に心配をいたしまして、特に当時は重度という制度しか法律的にはありませんでしたから、重症がない。ところが私の住んでおる横浜戸塚には松風学園なんていうのがございまして、重度なんですけれども、実際は重症の方も入っているような形になっております。そこまでいくと、これは教育のしょうがないのですけれども、せめてその間、ゆうかり園などに入っている人の場合は、もう少しやり方があるのではないかという気持ちを非常に強く持っておりまして、したがって、この指導者養成というのが二番目にあるのですけれども、ほとんど国が金を出してやっているところはないわけですから、そういう意味では、一番問題は金を出すということ、金をかけるということですね。そういう点では、これが一つのかたい壁に対する突破口になっていただければという気がする。そこで、この指導者養成するための長期宿泊研修、こういうのでありますけれども、これはどの程度の規模で、どういうふうにしようというお考えなのか、そこをまず簡単に承っておきたい。
  6. 宮地茂

    宮地政府委員 研修につきましては、いま一応予定いたしておりますのは、長期に一年近くをそこで宿泊して研修していただく先生を約五十人見込んでおります。それから、それほど長期ではございませんが、一カ月以上数カ月、こういった方々を百人ずつ三回転で延べ三百人くらいでございますので、大体三百五十人くらいの研修ということを見込んでおります。  それで、この施設におきましても、これはいま第一期工事でございますが、この年度二期工事に入りたいと思いますが、初年度、この十月から開設しますのは、もっぱら研究部門でございます。それで第二期工事研修施設を整えまして、来年の秋以後に研修ができると思いますが、その研修と、それから研修者宿泊、こういうものを二期工事でやりたい、研修関係が約三千平米でございます。
  7. 大出俊

    大出委員 その研究対象というのは、精薄あるいは肢体不自由というワク考えるのか、どこまでお考えになるのですか。
  8. 宮地茂

    宮地政府委員 研修は、一応現職研修考えております。いわゆる教員養成、こういう特殊学校先生免許状を持ちます教員養成は、現在のところ四十三の国立大学に五部門にわたりまして養成コースがございまして、そこを出ました先生——必ずしも特殊学級等は、そういう先生が行き渡っておりません、学校のほうは別ですが。特殊学級等先生は、そういう免許状もお持ちでございませんので、そういった方々で、一応重点養護学校関係重点になろうかと思いますが、盲、ろう精薄、肢体不自由、病虚弱の五部門に一応わたりたいと思っております。
  9. 大出俊

    大出委員 そうすると重度重症という段階のところまでは考えないわけですね。たとえば重症の場合には重なるわけですからね。私もずいぶん重症児をお持ちの御家庭を歩いてみたのですけれども、これは奥さんにすれば、ふろに連れていくったって、それがなかなか連れていけない。家庭で何かビニールを持ってきまして何とかして入れてあげる。手なんか曲がっておりますから、呼吸はしているのだけれども、何かが詰まってしまえばそれっきりだということですから、買いものに行っても、そういう子供さんだからよけい心配になって、おちおち買いものもできない。家の中は、ほかの子供さんもいるわけですから、およそ暗くなってどうにもならない。そういう子供さんがたくさんいるわけですね。それはそれなりの気を国が配らなければどうにもならぬ。それで相談員というものを自治体が置いてやっておりますけれども、これも十分ではない。どこかでそういう方々についての対策というものを、もう少し突っ込んで研究をする必要がある。盲、ろう精薄、肢体不自由、こうなりますと、つまり一番重度重症のところが残ってしまう、こういうふうに思うのですが、そこのところはどういうふうにお考えですか。
  10. 宮地茂

    宮地政府委員 実はこの研究所研究部門、これは大学研究所のような一応形をとりたいと思いますが、その研究部門が一応六つくらいございますが、その一つ部門として重複障害教育研究部、いま先生がおっしゃいますきわめて重度なもの、さらに盲、ろう精薄という二重苦、三重苦、こういったようなものの研究部を設けたいと思っております。したがいまして、いま先生がおっしゃいますようなきわめて重度重複、こういうものは研修対象にいたしたいと思いますし、さらに第三期の工事として附属学校のような——これを学校というかどうか、いろいろ検討しなければいかぬのですが、附属学校のようなものをもちまして、ここには非常に重度とか重複した者、都道府県内では十分研究もできないといったような者はこの研究所附属学校に入れ、それからこの研究所のいま申しました研修部門とタイアップしてそういう子供教育にも当たりたい。さらにそういう先生研修もしたいということでございます。
  11. 大出俊

    大出委員 ここまで聞くのはこの席で適当かどうかわかりませんが、たとえば診療X線技師学校など文部省所管で十ばかりおつくりになってやってきた経過などもあって、この教育課程を一年延ばすことについて毎年二人くらいずつ先生をふやされたいきさつもあるのですが、そこが文部省厚生省関係がありますので、両方でよほど相談していただかぬとあれはちぐはぐになるのです。しみじみそう思った時点もありましたが、障害と名がつくと、たとえばPTOTみたいな、フィジカルトラピストなどといわれる分野養成も必要になってくるわけです。たとえば函南に精神病院がありますが、あそこにおいでになるとわかりますが、つかむところから廊下を全部変えて、ぶつかってもころがっても傷にならないように、傷害にならないように相当な金をかけてやっているわけです。しかしあそこの院長さんに聞いてみますと、何としてもPTOTが足らないというわけなんです。アメリカのような教育課程を持ってやってきていないから、そういった分野をどうするのだという話がすぐ出てくる。したがってこれはやはり相当多角的にお考えいただきませんと、いまおっしゃるように五部門です、こう言うだけではこんなに金をかけてやる意味がないと思うのです。数がないのですから、せっかくおつくりになるなら厚生省相談をしてもっとワクを広げて、どうせかける金ならばやはりそれだけのことを、なるほどそこまでおやりになる気になったかというところまで入っていただきたいという気がするのですが、いかがですか。
  12. 坂田道太

    坂田国務大臣 ごもっともな話でございまして、実は私どもの気持ちといたしましては、このダブルハンディキャップ子供あるいは重症重度教育の限界といいますか、そこにボーダーラインのところがあるわけでございます。ところが日本の現在までのやり方からいうと、もはやこの人たち重症である、もう教育の効果はないものときめてかかっておる中に、そうではなくて、こまかい分析をやりますと能力はある、しかしながら目は見えない、耳は聞こえない、ダブルハンディキャップだけれどもこの人はやれる、そういうものを実はアメリカパーキンスあたりではとらえておるわけです。そういうことにかんがみまして、その判別方法すら日本ではまだ確立していない。いわんやそういうような三重苦子供たちに対してどういう教育方法をしたらよいかということは、率直に申し上げまして暗中模索である。これではいけないというのがそもそもこれをつくりました発想のもとになるわけで、むしろ先生の御指摘の点を踏まえまして、そこで研究成果を実際の子供たちにやってみて、そしてもしその教育方法が確立されると、いままでは重症あるいは重度でとても及ばないというものに対しましてもやる方法があるということが一つ。  それからもう一つは、従来はわれわれのアプローチは、特殊教育教育的観点だけでものを見てきたわけです。そうではなくて、医学的な立場であるいは精神衛生的な立場から、あるいは心理学的な立場から、あるいはもっと深く申し上げますと出物学的な観点から人間というものをとらえるというアプローチをやることによって、そういう恵まれない子供たちに光を掲げようという実は画期的な意図を持っておるわけでございます。  ただいま申しました部門は一応の部門でございますけれども、私は、せっかく特殊教育総合センター、そして日本では唯一のものでございますが、世界的に見ても、このやり方次第では相当ユニークな総合研究所になり得るというふうに思っておるわけでございまして、むしろ先先の御指摘を踏まえまして私たちはこれを拡充していきたい。そのためにはむしろ厚生省と一体となってやるべきである。敷地を久里浜の厚生省所管のところを拝借しました意味も、もちろん場所柄もいいということもございますけれども、将来行く行くは厚生省とも連絡をいたしまして、医学的な面はあちらのほうでもお考えをいただくという、これはこちらからの一つの希望ではございますけれども、厚生省御当局も一応はそういうものを頭に置いて考えていただいておることでございますから、この点につきましても先生方の御協力を賜わりたい、かように考えておる次第でございます。
  13. 大出俊

    大出委員 もう何年も前ですけれども、皆さんの党の神奈川からお出になった安藤覺さんが御存命の時代に、あの方の御親戚に関係の方がおるものですから、私と二人で神奈川県下の療養所院長にみんなお集まりいただいて、療養所は広いものですから何とか場所の提供をというのでずいぶんくどいたことがあるのですよ。ところが全部断わられまして、こんなにも非協力なものかと思って、しみじみ慨嘆をしたことがあるのです。いま多少変わってきましたが、その時代にいろいろドイツあたり研究成果その他を調べたりしたこともあるのですけれども、同じ重症でも母親が口に入れてやると食べるのですね。ほかの者がやったんでは絶対食べないのですね。つまり生物学的なというか、心理学的なというか、純医学的なというか、母親は無意識にやっておるわけですけれども、おかあさんならだいじょうぶ。そうすると施設をつくっても、おかあさんが入れたがらない。なぜならば、そこは自分子供ですから、他人のところに預けたら命がなくなるのじゃないかという本能的な心配がある。私のところに置いておけば食べる、ほかの人じゃ食べないから、ほかに連れていったらだめだろうということ。それらの外国の例を見るとこまかく分析したのがあるのですね。こういう子供はこうやれば飲むとか、そこまで研究しているのですね。そうなると、これは特殊教育といっても文部省だけの分野ではない。御説明のとおり、やはりそこまでワクを広げてお考えいただかぬと、せっかくつくる意味がないという気が私はするので、ぜひひとつそういう点は、いま御答弁いただきましたように三位一体のような形で進めていただきたいと思うのです。  それから時間がありませんから多く申し上げませんけれども、高崎の観音山、これは私の故郷ですけれども、ここに水上勉さんの長年の悲願であった、言うならば身障者等コロニーがようやくでき上がって、第一回として何人かがお入りになる。そこまで来た。これまた非常にいいわけですけれども、実は身障者村といえば、それはそれなり運営も諸外国の例からいってありますが、そうではなくて社会復帰という段階に、実際に身障者が集まっていろいろな援助者があって何か一つの団体をつくる、あるいは事業を起こすという意味共同出資をする。ところが、これを見ているとほとんどうまくいかないのですね。あるいは非常に特殊な方があって、自分企業に入れてあげようというので集団で入れる。それが新聞なんかに載りましてあとどうなるかと思って調べてみると、ほとんど途中でだめですね。だからそういうことになると、つまり教育分野では、まずどういうふうに教育するかということが必要なんですけれども、そこから先、社会復帰段階まで含めて道筋を考えていかなければならぬと思うのです。そこまで研究してあげなければならぬと思うのですね。  いまここに一つ例がありますが、これは横浜の例ですけれども、身障者浜焼き技能研究所というのがある。浜焼き横浜焼きものという意味です。横浜名物です。置き物だ何だというので焼くのですけれども、非常に歴史のあるものです。この身障者の方が三人ばかりで金を出し合って技能研究所をつくった。そこで焼きものを焼き始めた。そうして三十人収容できる建物なんですけれども、八人しか集まらない。それで八人で始めた。ところがどうしても行き詰まるわけです。つまり、技術を教えるやつは無料でやっているわけですね。色づけなんですけれども、それを無料で教えている。つまり、身障者方々ですから、普通の方じゃないから、研修費を取れないわけです。そうすると、これはもう全くの持ち出しで、つくったものを売るというわけなんですけれども、それはいまの世の中ですから、古い特殊なものをそう片っ端から買うわけじゃない。そういうわけで、実はこれは非常に経営難におちいっているわけです、これは最近の例ですけれども。  私なんかも、もう少しうまくいってくれればと思っていたのですが、うまくいかない。どうすればうまくいくかという問題があるわけですけれども、実は、横浜市なら横浜市、神奈川県なら神奈川県、国なら国、こういうところが公営でやってくれればやりようがある。ところが、全くの個人の集団でやるとなりますと、普通の営業のようなわけにいかない点がどうしてもある。だから、ほとんどこれはうまくいかない。これも、さてどうするかといういま段階なんです。私のおります横浜戸塚区なんですけれども、峠工房といって、身障者研究施設をつくった。いまのところは何とかうまくいっていますが、先々また心配な時期が来やせぬかと思っているのです。社会復帰ということを目標にして教育をなさる、そこまではいいのですけれども、ほんとう社会復帰できるのか。そこから先のところに一つの道をつくらぬと、これはせっかく教育をしたことが意味をなさない、実を結ばない。だからその面も、やはり国なら国が一つの大きな指導力をお持ちになって、使うところには金を使う。これなんかも、運営費なら運営費を補助するということで、ある一般企業で欠けている部分を何とかしてあげるということになれば続く。  これはこまかく申し上げているひまがありませんので、まことにどうも残念な気がするのでありますが、いまこの関係方々が、市なら市、県なら県で引き取って運営をしてくれ、公営にしてくれという陳情、請願をしていますけれども、ほんとうを言えば、実はそこまでお考えをいただけないかという気がするのです。
  14. 坂田道太

    坂田国務大臣 あとから局長からもお答えを申し上げたいと思いますが、私も神奈川県のろう学校を拝見させていただきました。その社会復帰の問題でございますが、神奈川県は珍しく、これは先生のほうがお詳しいと思いますが、横浜クリーニングが非常に発達をしているのでございますね。そういう関係からかもしれませんが、あのろう学校子供たちクリーニング職業指導をやっている。これなんか成功しているという一つの例です。  それから私は北海道へ参りましたが、北海道では、高等学校部門、つまり高等部心身障害者北海道全体で一つに集めまして、そうして北海道庁がかなり意欲的に取り組む、あるいは施設に対しましても相当お金を出す、あるいは先生も優秀な方をやって職業指導をやっておられる。そこで私感心しましたのは、最近若年労働者が足りなくなってきておる、特に単純労働というものは、一般の五体そろった人たちはなかなかやりたがらない、そういうことに着目をいたしまして、たとえば男の生徒に対しましては、ブロックの仕事をやらせる、あるいは何か規格された一つの箱をつくらせるとかいうようなことで、そうしてそれが現実に相当の給料をいただいてやっている。そうしてまた、これは全道から集めておりますけれども、その人がおのおのの地区に帰りますと一人歩きはなかなかできない、あるいは下宿はできない、こういう関係がある。そこで札幌市におきましては、そういう方々のための市営の寮みたいなものをこしらえて、そこから事業所へ行く。そうして、一年、二年、三年と持ったら、一年に返るか、または担当の先生に、一年はその学校ではなくて、むしろその寮とか社会復帰に出ていった子供たち指導を担当させる。たった一人の先生でございますけれども、教育長におきましてそれを配当しておる、こういうあたたかい方法で、やろうと思えばある程度できるなという感じがいたしました。  そういうことでございますから、この研究所におきましても、教育方法を見出しますと同時に、社会復帰のためにどのような職業が向いておるかということをまず見つけるということ、そしてそれが今度はほんとうに一人前にその職業にいけるかどうかというところは、また先生指摘のとおりに、ある程度国として、コロニーとかなんとかというようなやり方、あるいは準コロニー式やり方、それにはやはりある程度お金が要ると思いますけれども、そういうことをやることによって、普通の人たちとともにやれるような職業を身につけさせるということは当然起こってくるのではなかろうかというふうに思います。まだ具体的には私たちとして案はございませんけれども、行く行くはそういう方向までいかなければならないというふうに考えておる次第でございます。
  15. 大出俊

    大出委員 時間がございませんのでそのくらいにいたしますが、これは一人や二人でできることではなくて、やはり各方面の方々相当力を入れなければならぬ分野でございますから、ぜひひとつそういう方向でお進め賜わりたいと思います。  そこで、時間がないところを恐縮ですけれどももう一つだけ承りたいのです。それは夜間中学の問題です。ここに夜間中学校の入学募集の書いたものがありますが、これは実をいうと、もう少し宣伝をしてもらうと入る人はたくさんある。実は横浜教育長なんかに聞いてみても、やはり金の問題等がありまして、ささやかにやっているんですね。だから伝え聞いて入ってくるということなんです。そうでなくて、これはやはり表街道からもう少し積極的に、教育を受けたらどうかという呼びかけのほうがむしろ必要だという気がする。ところが文部省の行き方は、そこに局長さんおいでになりますが、全く逆でございまして、つまり義務教育を受けない人間をまずなくすことが先決だということで、いままでほっておいたわけですから、今度は何がしか調査費みたいなものをお組みになったようですが、予算的には幾らでございますか。
  16. 宮地茂

    宮地政府委員 約二百四十万円でございます。
  17. 大出俊

    大出委員 どうも局長てれくさそうに二百四十万円とお答えをされましたから、たいへんりっぱな予算でないということはお感じになっているのだと思います。それでも多少、うるさいからということなのかもしれませんけれども、あっちからもこっちからもいろいろなことを言うからしようがないから組んだということもあるかもしれぬと思うのですが、夜間中学校なんか要るもんかということを書いたシナリオ作家の深沢一夫さん、この人が、文部省夜間中学の存在にほんとうに目を向けたんですかねという質問に対して、とてもじゃないがそう思えない、二百万円かけて調査したら、やはり必要なかったということになりやしないかということを言っておりますけれども、この辺であまり局長さんも我を張らないで——局長さんの言っていることがここにありますけれども、文部省宮地茂初中局長は、夜間中学は一日も早く解消すべきだが、原則論ばかりでは現状にそぐわない。つまり夜間中学というのは一日も早くなくせ。だけれども、原則論ばかり言ってはいられない。十五歳までに中学を卒業できなかったから、それは時効だとほっておくわけにもいかないから、教科内容をどうしたらいいか取り組むことにした、こういう局長の談話が載っているのです。この談話の中身——これはよくあることで、言ったとおり新聞が書いたかどうかということはありますよ。しかしここに出ている談話からいうと、どうも話はうしろ向きで、一日も早くなくしたいというのが先にあって、世の中がうるさくてしょうがない、だから二百万ばかりかけて調査をしてみようという程度のことに受け取れるんですね。ところが現実はそうではないと私は思うんですよ。ここに横浜市だけの夜間中学の開設場所、生徒の数、それからどういうふうな人たちかというようなことが全部ある。それを見ますと、ともかく問題の中心は教育権にからむのです。つまり教育権という権利は、教育を受けさせてもらうのではなくて、受ける権利が国民の側にあるわけですから、そうすると義務教育だから受けなかったほうが悪いんだということでは済まない。基本的権利である限りは、受けなかったら受けなかっただけの千差万別の理由があるわけです。受けられなかったという部分があるわけです。そうすると受けられなかったということになると、国の責任がきわめて大きなことになる。義務教育である限りは、教育権という権利主張からすれば、逆に国の責任問題になる。そうなると、やはり今日夜間中学というものはもう少し積極的にやる必要がある、千差万別の理由をもって受けられなかったという人たちなんですから。さていま世の中変わってきましたから、あらゆる資格要件、許可要件がみんな中学卒以上になっている、義務教育だから当然ですけれども。その資格に適合しない、だから五十になってあるいは六十になって夜間中学に通っている人はたくさんあるわけです。やはりそこに焦点を置いて、もう少し前に出てものごとを進めるということにしてもらわぬと、どうも宮地さんがおっしゃっている談話を読むと、うしろを向いて逃げたい感じの談話になっている。もう少し前を向いてやる気になっていただきたいと思うんですが、どうですか。
  18. 宮地茂

    宮地政府委員 実は夜間中学につきましては、先生特に御承知のように、現在六つの都府県に二十一校ございます。もっともっと入りたい希望者、それは一応詳細につかみ得ませんが、在学しておる子供は七百名ばかりございます。先ほど私の申したことをおっしゃられましたが、実は小学校、中学校の義務教育は、昼間勉強させる、それが国の義務でもありますし、親の義務でもあるということで、今日九九・九何%という、世界に誇るような就学率を見ておりますが、しかしその〇・〇幾つかの子供の中に、現在夜間中学に来ておられる方々も入っておるわけで、実はそういうような観点から、行政管理庁のほうでも、中学校の学齢生徒が、十五歳未満の子供夜間中学に行くということは、昼間働かしたりいろいろしておるんだろう、だから筋としては学齢生徒を収容する夜間中学は解消すべきであるという勧告を実はいただいておるわけでございます。その面から見ますと、当然夜間中学というのは解消しなければいけない。ところで今日の実態は、先ほど申しました七百人のうち九一%というものは十六歳以上の方なんです。一割に満たない学齢の生徒が行っているわけでございます。したがいまして、この夜間中学を学齢生徒に認めるということになりますと、昼間働かして夜の中学に行かせるという不心得な父兄も出てこようかと思います。したがいまして、そういう面では解消したいんだ。しかし学齢を過ぎた方々が、いろいろな理由で義務教育を受けておられなかった、こういうものに目をつむって、学齢生徒と同じような扱いではいけないということで、私どもの気持ちは非常に前向きでございます。しかし十五歳以下の子供を夜の中学へ入れるということは反対でもございますし、そういうものは解消したい、そういう意のあるところはひとつ御了承いただきたいのです。ただ一般の中学校と同じ法律的な意味夜間中学というのはどうしてもぐあいが悪い。しかし現実には、夜間中学制度的にもこういう方々に向くような内容にして、今後積極的にやっていきたいということで、わずかでございますけれども、いままではどうも夜間中学というものは法的に認められてないということで、若干私生児的な扱いをしておりましたが、しかしいま申しましたような現状に目をおおわない、そういう意味では今後積極的にやりたい、そのためには調査をしたい、こういうことでございますので、御了承賜わりたいと思います。
  19. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま局長から申し上げたとおりでございますが、私といたしましても、一応学齢の人たちに対しては鋭意普通の義務教育に通わせるという最大限の指導と努力をいたしたい。そうではございますけれども、しかし千差万別の理由によって行かれない人がたくさんおるわけです。しかしその人も何か機会があったら受けたいと思っておる。ところがこちらのほうが消極的であるがゆえにそれが受けられないというようなこと、これは教育の機会均等という意味からすれば問題があると私は思います。したがいまして、十分調査しました上で、その点においてやはり法令はわれわれは守らなければなりませんから、特例というようなものも設けましてでも、そういうような人たちに対する教育の機会均等を与える、あるいは法律改正等もまた御審議をわずらわさなければならぬという段階になるかもしれませんが、とにもかくにも、やはり世の中のことでございますから、何でもしゃくし定木にはいかない。そのしゃくし定木を貫くがために、そういう機会均等を失った年齢の人たちの希望が達せられないということであってはいけない。特例の措置というものを考える必要があるというふうに私は思います。先生の御指摘もさることながら、ほかの委員会におきましても同様の御質問を実は受けておりまして、私どもといたしましても、まじめにこれを検討いたしまして、これに善処をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  20. 大出俊

    大出委員 宮地さんはそうおっしゃるわけですが、横浜なんかの場合には教育委員会に問い合わせがくるわけです。義務教育を受けそこなった。ところが一つの資格をとろうと思ったら資格に適合しない。だからいまからでもやりたい。ところが学校の数が少ないから通えないのです。それがたくさんある。だから全国でどのくらいあるかといえば、ここに資料がありますが、二十万人というのは、おそらくおたくで調べているのでしょうけれども、推定でしょう。その二十万という数は一億の国民から見ても決して少ない数じゃないのです。そうすると、二十万の方々が、ほんとうをいえば、義務教育の筋からいけば、ではなぜ義務教育を受けられなかったかという追跡調査をやって、もっともな理由が一々あるならば、二十万の人に、義務教育の筋からいけば、いまからでも教育を受けてもらわなければいかぬのですよ、国民の権利なんですから。受けさせてもらうのではない。受ける権利が国民の側からすればあるのです。だからやはりそこにポイントを置いていただいて、その権利を充足させる責任を国が持つ。いま夜の話がありましたが、ここに通っている人の言っていることが載っておりますけれども、昼間では先生に相手にもされなかったというのです、一校当たり約三十人くらいの小規模だから。ところが夜間になったら親身になって教えてもらえる、やっと自信がついたという、これは荒川九中の十五歳の三年生です。こういう人も出てくるのです。だからやはりそこのところは前向きに、なぜそういうことになっているかという原因探求が必要だろう。そしてこうすれば受けられるということである限りは、そういう方法を講じて受けさせる、これが私は筋だと思う。実はたくさん資料を集めましていろいろございますけれども、あまり時間がありませんのでこの辺にしますが、直接通っている人に聞いてみた結果、いろいろなものがあるのです。どういうわけで受けなかったかとうと、これは聞くにたえぬようなことがある。やはり世の親ですから、普通の常識ならば、子供さんに義務教育を受けさせないようなことはないのです。実際にはやむを得ない事情があるのです。中には自転車から落ちて後頭部を打って、しばらくもとへ戻らぬで、四、五年寝てしまったというのもある。だから受ける機会がなかった。これは事故ですからしょうがない。こういう中身ですが、ずいぶんいろいろあります。したがっていま看護婦さんにしろ、美容師にしろ、理容師にしろ、あるいは製薬関係のところにしろ、全部資格要件がありますから、どうしてもいま受けなければならぬというので受けている人もいるわけですから、いま大臣がお話しのように、これはどうかひとつ前向きにお考えをいただいて、二百四十万というのはどうも、私もそれでもないよりはいいかもしらぬというような気にはなるけれども、もう少し、うしろを向かないで前を向いて進んでいただきたいという気がします。  時間がありませんし、もう皆さんお集まりで、せっかく採決に加わろうという御意思のある方々ですから、この辺で打ち切ります。
  21. 天野公義

    天野委員長 本案に対する質疑は、これにて終了いたしました。     —————————————
  22. 天野公義

    天野委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  文部省設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  23. 天野公義

    天野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、ただいま可決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 天野公義

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  25. 天野公義

    天野委員長 次に、国の防衛に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  26. 大出俊

    大出委員 中曽根長官に承りたいのですが、自衛隊機のソ連艦を誤爆という問題にはなっておりますが、それに類する行為があったのだということになるのだと思います。これは起こったのは三月十日ということになりますと、新聞によって九日と書いた新聞もありますけれども、たいへん以前のことでございます。これは、東京新聞が書かなければ、発表もされなければ、やみからやみへ、こういうお考えだったわけですか。
  27. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 この問題は、三月九日から十日までの間、対馬周辺海域において、海上自衛隊沿岸防備共同訓練を実施したわけでございます。そのときに起きた演習の誤認事件でありますが、事件後、私は直ちにその報告を聞きまして、これはソ連側に陳謝し遺憾の意を表しなければならぬというので、直ちに外務省に連絡しまして、ソ連側に当方の誤認及び遺憾の意を表明させました。ソ連側からは、そのとき何ら応答がなかったわけです。それで約二十五日たってから、四月五日になって、モスクワにおいて当方の参事官に対して、ソ連側から、誤認であることは了解したが、将来よく注意してもらいたい、そういう話がありまして落着したわけでございます。  それで、あの事件が起きた当座、これを発表すべきかどうかと思っておりましたが、ソ連側から何ら応答がない状態でありますから、ソ連側の態度の表明を待ってこれはやったほうがいい、こういう考えもありまして発表はしなかったわけです。それから四月五日にそういう意思表示がございましたけれども、まあ、時間もずいぶんたちまして、率直に申し上げますと、先方がそれほど強く意思表示しているわけでもないので、一応落着したものであるから、これはこの程度でそのまま済ましてよろしい、そういう考えがありまして閣議にも報告もしなかったわけでございます。  以上のような実情であります。
  28. 大出俊

    大出委員 これは長官らしくないと私は思うのですよ。シビリアンコントロールを強調される長官らしくない。順次承りたいのですけれども、私はこの扱いについて非常に疑問もありますし、率直に言って、実は、まことにもってこれはけしからぬという考え方を持っております。これだけのことを伏せておくというふざけた話はないと思う。いま長官の話を聞きますと、九日から十日にかけて演習をやった、直ちに陳謝し云々、こうおっしゃるけれども、私が電話をかけて聞いた限り、外務省のほうは、いや、それはもう前から知っておりましたと言っておりましたけれども、私も妙なことを耳にしておった。聞いてみると、十日にこの事件があった、それで外務省のほうが在日ソビエト大使館の参事官を呼んで、つまり東欧一課の官沢課長さんがこの話をしたのは何日かと聞いたら、十九日だと言う。あなたは十日に直ちに陳謝したとおっしゃるけれども、外務省がソビエトの在日大使館の参事官にお話したというのは、私が電話で聞いたら十九日だ、それじゃ、その間どうしたのだと言ったら、防衛庁がその事実その他についていろいろ調査をしておった、こう言うのです。そうすると、十日にあったのが、なんで一体十九日に外務省はソビエト大使館の参事官を呼んだのか、この九日間のブランクは一体何なのか。私は直接電話で聞いたんだから間違いない。外務省、そこのところはどうですか。
  29. 宮沢泰

    ○宮沢説明員 ソ連側に申し入れました事実につきましては、ただいまおっしゃいましたとおり三月十九日でございます。
  30. 大出俊

    大出委員 これは長官、一体どういうことですか。いいですか、つまり私が類推をすれば、そう  いう事件があった、あったんだが、何とも言ってこなければほっぽっておこうというので、あなたは黙っていたのかもしれない。十九日になってから申し入れる、これも大使館から参事官を呼んで、そうして外務省は、その参事官にこういう事実があった、しかしこれはあくまでも誤認なんだからという話をした。それで、聞いてみると、ソビエト側は誤認だというんならばというんで抗議はない、こう言っているけれども、在ソビエト日本大使館の参事官を呼んでソビエト側がものを言っている中身は、やはり厳重注意ですね、非常にきびしい中身を言っている。そうして、東京新聞が最初書いた中には、これは相当はっきりものを言っていると書いている。この中には「抗議の内容はきびしかったが……」「ソ連、穏便な処理」、こういうのですね。向こうの言い分は抗議に類す刷るのですよ、中身は。長官、私はそういう意味でも納得できない。十日にあって、何で十九日になったのか。その間防衛庁長官は調査したんだと言うのだが、何の調査をされたのか。
  31. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 防衛庁は外務省の欧亜局東欧第一課に対しまして、三月十一日に本件の内容を説明するとともに遺憾の意を伝え、本事件は操縦者の目標誤認に基づく偶発的なものであり、何ら他意のないものであることを連絡し、速急にソ連側と折衝されるよう依頼する、そういう事後処理をやったわけです。その後は外務省内部でこの問題をどういうふうに扱うか検討した結果、いまのような処理になったんだろうと思います。そういう対外的な意思表示というものは外務省の仕事でありますから、外務省にまかせた次第であります。
  32. 大出俊

    大出委員 ということであれば、その点は了解しましょう。十一日とおっしゃる、そうですね。  そうすると外務省は、十一日から十九日まで一体何をやっておったのですか。
  33. 宮沢泰

    ○宮沢説明員 最初にこの事件の御通報を受けましたのは、実は十日の夕刻でございまして、私の自宅に防衛庁の運用課長から、そういう事件があったときわめて簡単にお知らせをいただきました。そしてさらに詳細に翌十一日御通報をいただきました。そのときに防衛庁内部では、直ちにソ連側に釈明してもらいたいという一部の御意向であるというふうにあわせて伺いました。それに基づきまして、私どもは外務省内部ではかりまして、事柄は重大でございますから、公文でもって御通報をいただきたいということと、さらにソ連側に説明いたしますためには、どのようにしてこういう事件が発生したか、具体的な内部の当時の状況等をさらにお調べを願いたい、こういうことをお願いいたしまして、その結果、さらに外務省の幹部に了承を得ますなどの時間を要して、十九日にソ連側を呼ぶに至ったわけであります。したがいまして、御通報を得ましてから七、八日間は外務省で費やしたものでございます。
  34. 大出俊

    大出委員 その間、これは閣議にも報告されていない、しかも外部にも、国民にも何も知らされていない。これは私はそう簡単なことじゃないと思うのですね。たまたまいま日本とソビエトとの関係は、シベリアの共同開発とかいろんな面で、ソビエトに行っておられる外務省の大使がおっしゃっておられるように、政治的にはこれほどいい時期はないと言われるくらいいいわけです。片っ方に中国の動き等もありますから、よけいそうなんだろうと思いますが、そういう時期でありますから、あるいは政治的配慮も手伝ってその間表へ出なかったのかもしれない。かもしれないけれども、そう簡単なことではない。そうでなくたって日本が軍国主義だ云々だとか、いろんなところで騒がれているいまの世の中に、何でまた七日間も——七、八日とあなたはおっしゃったけれども、その七、八日間というものは一体何をやっておったのですか。通常この種のことがあって陳謝するなら、早く陳謝しなければ陳謝にもならぬ。向こうから文句言ってきてからあらためてあやまってみたってしょうがない。そこまでいくと宮沢さんだけでは話のしょうがないが、どういう配慮を外務大臣はおとりになったのですか。どういう理由で七、八日延ばしたのですか。
  35. 宮沢泰

    ○宮沢説明員 最初御通報を得ましたときに、私どもはソ連側の反応が直ちにあるものと考えまして、即日モスクワに訓令をいたしまして、ソ連側からこの件について抗議が行なわれた場合には、これは日本側の誤認に基づくものであるということを釈明しておくようにと、とりあえず訓令をいたしまして、さらに東京におきまして、ただいま御説明申し上げましたように、どのようにしてそういう誤認が起こったのか、ソ連の艦艇がその辺にいることがどのようにして事前に十分に通報されていなかったのかというような趣旨のことをお調べを願いたい、また片や私のほうでは、このような趣旨でソ連側に釈明をするということにつきまして、外務省の幹部の了承を得るために書類をつくっておりまして、そのようにして時間を費やしたわけでございます。
  36. 大出俊

    大出委員 そうすると、外務省の姿勢というものは、防衛庁は釈明をしてくれ、こういうふうに言ったにもかかわらず、皆さんのほうは釈明をするという姿勢じゃない、ソビエトから抗議が出てきたら、それは誤認だと答えろ、こういう姿勢になる。違うじゃないですか、防衛庁が考えたとおり外務省は運んでいないじゃないですか。
  37. 宮沢泰

    ○宮沢説明員 当方から釈明すべきものと考えましたけれども、ただ、釈明いたしますためには、十分に事情の解明も必要と考えまして、最初ないし二日目くらいにちょうだいいたしました情報では、必ずしも一般の人々に納得のできるようなことではございませんでしたので、さらにお調べを願ったわけであります。
  38. 大出俊

    大出委員 そこがちょっとわからないのですが、さっき長官の御説明によればきわめて明快なんです。いま課長の答弁によれば、一般方々に御説明できるような内容じゃない、こう言う。釈明のしょうがない内容だ、どうしてそういうようにおとりになるのですか。何が食い違っているのですか。
  39. 宮沢泰

    ○宮沢説明員 私ども常識的に考えますと、防衛庁の方々はソ連の艦艇が日本近海におるということは当然よく御承知であると考えております。それから演習をなさる場合には、当然その目標を十分確認されてなさるのが当然であろう考えております。最初に御通報を受けましたあたりでは、誤認によって爆撃訓練を行なった、しかもそれはパイロットが帰着してから調査してみてわかったことである、したがって、これは誤認であるから、ソ連側にそのように釈明してほしいというようなお話でございましたが、私ども考えますと、最初に申し上げましたように、どうしてソ連艦艇と誤認するような事態が起きたのか、そういうようなことは、やはりしろうととして必ずしも十分にのみ込めない点が幾つかございましたので、さらにお調べを願ったわけでありまして、この点を調査いただきますためには、防衛庁のほうでも多少の時間はおかかりになったようでございます。
  40. 大出俊

    大出委員 そうすると、これはますますわからないのです。帰着してからわかった、こういうのですけれども、この新聞記事など見ると、そうなっていないのですね。つまり二回目の低空水平飛行をやったときに、煙突の型、艦尾、こう立っているのとこうなっているのとの違いから、ソビエト艦、リガ型というものがそれでわかった、こうなっているのですね。おまけに、いまのお話を聞いていると、外務省で了解ができない、わからないようなことが現実に起こっている、防衛庁の言っていることはわからないという、そうなると、これはもう一ぺん防衛庁に承りたいのですが、ソ連艦がいることは常識的にわかっている、だから誤認なんてばかなことは起こるはずがない、しかも起こったという、しかもそれはパイロットが帰着してからわかったという、外務者としてはその事情がのみ込めない、わからない、こういうことになったというわけですが、長官、ここのところは一体どうなっているのですか。
  41. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私の記憶では、その日の夕方でありましたか、事件のあった夕方、私のところにすぐその報告があって、私は、これはすぐ外務省に連絡しておけ、そして、当方の落ち度であるから遺憾の意をすぐ表したほうがよろしい、そういうことを言った。おそらく即日運用課長は電話でとりあえず連絡したのであろうと思いますが、そのときの報告でも、帰着してから、飛行場に帰って着いてから、どうもあれは日本の船ではなかったような気がする。というのは、あの訓練は沿岸防備訓練で海空で共同でやったのでありますが、一面においては海上自衛隊の護衛艦が飛行機の襲撃を受けた場合にどういうレーダー操作をやるか、どういう回避運動をやるか、そういう護衛艦自体の訓練という要素が私どもには非常にあって、その航空機は目標機として作動したという点が多いのです。それで、おそらくはかの海上自衛隊の護衛艦については回避運動をしたりいろいろな反応動作があったのでありますけれども、しかし、ソ連の軍艦の場合にはそういう反応動作がなかった。それから煙突の大きさが大きかった。そういうところからこれは日本の船ではなかったのかもしれぬぞというふうに気がついて、そして、とりあえず航空自衛隊を通じてわれわれのほうへ間違ったかもしれぬという報告があったわけです。事実はそういう状態でございました。
  42. 大出俊

    大出委員 そうすると、外務省がこれは常識でのみ込めぬから調査をいただきたいと言った、その調査の要点は何だったのですか。
  43. 宮沢泰

    ○宮沢説明員 先ほど申し上げましたように、ソ連艦艇の存在というものを防衛庁が事前にどのように把握しておられたかということ、それから、爆撃訓練をするにあたりましてそのような艦艇の存在がパイロットにどのような形で通報されておったかということ、それから、元来当然目標とさるべきものであった日本の舟艇がその際どこにいたかというようなこと、そのようなきわめて私どもは常識人として疑問に思った諸点でございます。
  44. 大出俊

    大出委員 これに対して防衛庁はどういうふうに回答されたのですか。
  45. 久保卓也

    ○久保政府委員 十日の夕刻におきましては、いま先生が御疑問に思われましたように、私も非常にあり得べからざることだという印象を持ちました。しかし、内容といたしましては一応概要を外務省に連絡したわけでありますが、十一日の現在では同じような状況のもとにおきまして一応事実関係は申し述べました。しかし、どうにもわからない面がずいぶんありまして、数日間状況の調査のために時日を費やしました。その内容をもし御質問があればもう少し詳しく申し上げたいと思います。
  46. 大出俊

    大出委員 内容の調査というのですがね、事はきわめて簡単なんですね。つまり、自衛隊の船だと思ってスキップボミングをやったのかどうかという点は、これは長官の談話からいけばやったようになっているのだけれども、松尾さんというのですか、幕の方からすればやってない、こういうのだけれども、私がある人に聞いてみたら、マストすれすれと言っちゃどうも極端だけれども、それに近いような低空飛行、水平飛行をやったのだというような話が私の耳に入っている。どれがほんとうかわからぬ。わからぬけれども、事の中心は何かというと、間違って爆撃行為をとったということだけは間違いない。そうでしょう。そのことは艦の回避行動もやらなかったということですから、形が違うということに気がついたということですから、これはいとも単純明瞭にわかっているはずです。おまけにこの水域にソビエトの船がいることは常識だということになっている。これは防衛白書なんかでもソビエトの海軍が出てきているということは書いてある。そうなると、演習をやっているときには必ずいるということも旧来の慣行では例である。そうすると、間違ったということは、これはいとも簡単にわかっているはずなんですね。じゃ一体どういう方法でパイロットの方は間違ったのだと言っておられたのですか、おられなかったのですか。
  47. 久保卓也

    ○久保政府委員 新聞の図面でごらんになりますと、ポイントはきわめて明瞭であります。ところが、いかに対馬海峡が狭いとはいいながら、海洋はやはり広いのでありまして、航空攻撃をやるときはピンポイントであります。したがいまして、ソ連の艦艇がいるということは常識でありますけれども、どこにいるかということは、これはわからない。当然ソ連の艦艇も遊よくをしておるわけでありますが、ピンポイントを攻撃をやる場合にどこにいるかが明瞭でない。  それともう一つ遺憾であったと思いますのは、海上自衛隊のほうから航空自衛隊の西空方面隊司令部には連絡が行っておったわけでありますけれども、西空方面隊司令部から航空隊のほうに連絡はついてなかった。これは基本的にまずかったと思います。したがって、パイロットはどこにソ連艦艇がいるかということを、知らなかった、それが一つのポイントと、それから、したがいまして、この航空隊に与えられた課題は、対馬海峡周辺に自衛隊の艦艇がいる、発見次第攻撃せよという命令を受けている。その頭の中には海上自衛隊の船しかない。したがって、商船でない船は海上自衛隊のものであるという先入観があったわけであります。これがやはり人間の心理の誤謬と申しますか、これだと思ったら、それ以外のことは考えないというような欠陥がそこにあらわれたのだろうというような点でパイロットの誤認になったという点であろうと思います。
  48. 大出俊

    大出委員 いま御答弁いただいたのがさっき言った調査の内容ですか。
  49. 久保卓也

    ○久保政府委員 どうしてもなぜ誤認をしたのかということがわかりません。そこでそういった誤認に至った事実、それから連絡状況、パイロットがなぜそういうことになったのか、海上艦艇の行動概要、そういうものを調べて外務省のほうに御連絡したわけであります。
  50. 大出俊

    大出委員 それはいつですか。
  51. 久保卓也

    ○久保政府委員 日にちはわかっておりませんが、十日は一応の概要の連絡でありまして、十一日以降数日間にわたって御連絡申し上げました。
  52. 大出俊

    大出委員 外務省はいつ受け取ったのですか。
  53. 宮沢泰

    ○宮沢説明員 ただいまおっしゃいましたように、何日間かにわたってこの報告についてお話を承りました。
  54. 大出俊

    大出委員 そうすると、これは陳謝したことにはならぬのですね。十九日までそのままにしておいたわけですな。結果的にそうなりますね。そういうことでしょう。
  55. 久保卓也

    ○久保政府委員 事実関係がどうであれ、誤認であり、またわがほうが陳謝すべき事態であるということは私どもわかりましたので、十日一応口頭で御連絡申し上げました。十一日付の書類で十二日に外務省のほうに御連絡を申し上げました。しかし、外務省のほうもおそらく、対外関係で十分自信を持って陳謝するということが必要であろうと思われたのでしょう。したがいまして、事実関係をきわめて明確に把握して後にそういう行動をとられたということだろうと思います。
  56. 大出俊

    大出委員 九日も十日もたった事情はよくわかりませんけれども、いずれにせよ、これは長官、こうこうしかじかかくかくのことがあって、たいへんどうも国民の皆さんに御心配をかけるけれども、実情はこうなんだ、だから、そういう意味では国際関係においてこれはだいじょうぶなんだということを、やはりいずれの機会か、とにかくこの間に明らかにする必要が当然私はあったと思うのですよ。そうでなくて、いきなりこれを新聞が取り上げた。あわててその日になって夕刊に載っかるように皆さんが内容を発表する。この扱い方というのは、いかにもどうも私どもにすると納得しかねる。こんなことでは自衛隊は何をやったってやみからやみで、国民はつんぼさじきで、そのままにされたのじゃあぶなくてこれは見ちゃいられない、そういう印象をきわめて強く受ける。これは一つか二つの新聞でも社説を書いていますけれども、やはりそこでも心配していますけれども、たいへんなショッキングなことだという、この辺の扱いについてどういうわけでこういう結果になったのか。
  57. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 やはりこういう問題は、落着したときに国民に対して、こういうことがあって遺憾でありましたと、そういうことを言うべきだったと思います。今後は大いに改善いたします。
  58. 大出俊

    大出委員 長官、あっさりそうおっしゃるから深追いしませんが、そこで幾つかこれに関連して問題があるのですけれども、これはこういう政治的な国際関係、特にソビエトの関係だからいいようなものの、ある新聞が書いておりますけれども、どうもこれはプエブロの事件もあったり、いろいろするのですけれども、国際関係というのはむずかしいのですけれども、二回にわたる爆撃行為をとった。もし逆に向こうから応戦でもされた日には、これはとんでもない結果になった。という意味で事は簡単なことじゃないと思うのでありますが、そこで三点ばかり承りたいのですが、長官のほうのものの判断として何でこういうとんでもないことが起こったのか。こんなことが将来ともに起こるとすれば、これはたいへんなことで、自衛隊は専守防衛と長官式におっしゃるけれども、そのことが国際紛争を緊張の方向に導く、あるいは逆にそのことが紛争の種になるということになったのでは、これはえらいことになる。重大な責任問題になると思います。したがってこれはどういうことで——人間がやるのだから間違いがあるとおっしゃるかもしれませんが、それだけで事は済まない、こう思います。将来そういうことがないようにしたい、こういうことを言っておられるけれども、それならばそれで、こうやればないようになるということをこれまた国民に了解を求めなければならない。私はそういう意味の責任、これがあると思いますから、そういう上に立ってひとつその点についての御答弁をいただきたい。
  59. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 一つは自衛隊内部において連絡が不徹底であった。航空自衛隊、海上自衛隊おのおのの内部、特に航空自衛隊の内部において不徹底であった。第二は、艦艇の誤認ということ、これについて識別の教育が足りない。そしてそういう海上において演習を行なう場合の他国の艦艇に対する配慮が足りない、これが第二であります。それから第三番目は、われわれのほうの取り扱い方の問題であります。やはり落着したら経過を国民に報告すべきである、そして遺憾の意を表すべきである、そういう点は今後大いに改善したいと思います。やはり新聞にもありましたが、お粗末な一席ということでたいへん遺憾に存じておりまして、今後は繰り返さないようにいたしたいと思います。
  60. 大出俊

    大出委員 これは長官はお粗末な一席と言うが、お粗末な一席、それでおしまいだということになると、これはそう簡単じゃない。私は決してこれはお粗末じゃないと思うのですよ。つまりその背景は、やはり幾つか考えなければならぬと私は思っている。そこで承りたいのですが、ソビエトの艦船が日本海等に常時何隻かいる、演習をやると必ず出てくる、こういう形になっている。おまけに防衛白書を見ますと、「ソ連海軍の進出」というものを、特にアジアからアメリカが引いていく、英国も引いていく、そこにソ連海軍の進出がこう出てきたということを一つ入れて、「今後の紛争生起の可能性」という問題をとらえて防衛白書はものを書いている。そうすると、このソビエトの艦船が出てきていることに対する予測が一つここに入っている。そこのところを一体どういうふうにとらえてお書きになっていますか。ソビエトの最近の海軍の進出ということばをここに使っておりますけれども、これはどういうふうな防衛の見地からお考えになっておられますか。
  61. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 ソ連海軍が昨年はオケアン演習をやったり、大西洋、地中海、インド洋そのほかに進出してきておる。あるいはキューバにまで出てきておる。こういう現象を国際政治的にとらえまして何を意味するか。まあたぶんいまのところは政治的な行動であろう、軍事目的を貫いた純粋な軍事目的だけの行動ではないだろう、そういうようにわれわれはとって防衛白書にもたしか書いたのであります。いままでの例を見ますと、日本本土周辺にはかなりソ連の艦船が出入しておりまして、対馬海峡の辺については特にいままでもひんぱんであったようであります。それから津軽海峡等についても通過する度数がかなりございました。そういう点はわれわれとしてはやはり安全保障そのほかの面からも注目しておかなければならぬ一つの要点でありまして、そういう点は今後ともわれわれは注意していくべきであると思いますが、しかし、誤解を与えたり摩擦を起こしたり、わがほうの平和的意図が誤解されるような行為をしてはならない、こういうふうに戒めたいと思います。
  62. 大出俊

    大出委員 このアメリカとの関係を踏まえた防衛庁の戦略的な配慮の面からいきますと、三海峡防衛というものの考え方がある。これはきょうは時間がありませんからこまかくは申しませんが、私は松野さんが防衛庁長官のときに長い論争をしたことがあるのでありますけれども、ウラジオストックにソビエトの基地がある。ここに百隻前後の潜水艦がいる。そのうち三十隻前後は原子力潜水艦であろう。これが当時のザブロッキー報告その他を踏まえての松野さんの答弁であった。これが太平洋に出るとすれば、昔の間宮海峡はいま埋まってしまって走れない。したがって、そうなると三海峡しかない。宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡しかない。そうすると、アメリカの戦略的な配置からいって、ポラリス潜水鑑というものがあるわけでありますから、そうなると三海峡防衛というものはソビエトの艦船、特に潜水艦等を太平洋に行かさないという意味ではたいへん重要なことになる。こういうものの考え方が実は当時松野さんから述べられている。裏を返せば、ソビエトの側の戦術的な、戦略的な目標というものはやはりその辺に焦点が出てくるわけですね。そうなると、いまの自衛隊の考え、これは常に明らかにされていないのだからしようがないけれども、ものの考え方とどこでぶつかるかという問題が一つ出てくる。当然あるわけです。ということになると、単なる政治的なソ連艦艇の動きだと見るべきなのか。特に対潜作戦をやるという場合には必ず出てくる。しかも接触事故までかつてあった。こういうことになると、そこにやはり相手方の意図があるはずだ。そこらのところをどういうふうにおとらえになっているか。これは、これから四次防というところに入っていくわけでありますから、たいへん気になるところです。それをどうおとらえになっておるかという点を聞きたい。
  63. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 ソ連の極東における体系というものは、ソ連自体の防衛を主とした体系であるだろうとわれわれは認識しております。ですから両方自分の国の防衛のみに限定して節度を持ってすれば摩擦は起こり得ないし、それが最も大切なわれわれの行動であるだろうと思うわけです。しかし先方もいろいろ世界政策とか外交政策とかの関係もあり、あそこの対馬海峡をソ連の艦艇が通るということは、公海でありますからこれは自由であり、また当然考えられることでもあります。それを一々気にしていたら、政治も国際関係も成り立たないので、あまり気にしないで、やはり友好関係を盛り上げていくという積極面をわれわれに気にしたほうが賢明ではないか、そう思います。われわれのほうは、要するに日本列島を防衛するということだけを考えて、外国に誤解を与えることのないように専心戒めていくように、いままでもそうでありますが、今後もそうしていきたいと思うわけです。
  64. 大出俊

    大出委員 長官の時代になる少し前の有田さんの時代から、防衛庁のものの考え方が順次変わってきているわけです。一つは領海、領空防衛考えてきた。ところが、それがその周辺という考え方にまず変わった。領海、領空その周辺。それが今度公海防衛という形に変わってきた。有田さんの時代です。その公海防衛というのは中曽根長官になってから非常に大きく表に出されてきた。その中から出てきたことばの中に制海権、制空権ということばが出てきた。制空権は航空優勢と改められましたけれども、そういう変化が出てきている。それに合わせて最近の動向というのは、いろいろなものが伝えていますけれども、つまり公海における特に支援戦闘機による艦船攻撃、これが演習回数その他を含めて非常にふえてきている。こういう進み方をしているわけですね。それとの関係というのは一体どういうことになりますか。これは新聞などもとらえていますけれども、最近における中曽根さんの防衛姿勢と申しますか、制海、制空ということをしきりにおっしゃった。そういろ形の中で行なわれてくるいまの訓練のあり方、だから指揮系統からいって命令が下まで徹底していなかった、こういうふうにさっきおっしゃっている。徹底していなくて末端のほうで、言われたとおり、とにかく制海、制空だということでそういう認識を強固に持って行動するとなれば、そのコントロールができなければ末端が独走する、暴走する、こういうことはあり得るわけでありますから、そこらのところはどういうふうにお考えですか。
  65. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 国土防衛を全うするためには、本土周辺における必要な範囲の制海、制空ということは防衛のイロハでありまして、それまで拒絶することは私は適当でないと思っております。しかし、やはりそういうような日本近辺の洋上における防衛措置を講ずるという場合は、洋上飛行という問題が出てきている。日本のいまの航空自衛隊あるいはパイロット諸君は必ずしもそれに慣熟していない。だから今回のような間違いも出てくるわけであります。今度のような場合でも、大体高度二、三千から下の艦艇を見ますと、まるで人間のほくろくらいの大きさしか識別ができないわけです。両方で演習しているから、演習の判定をする場合に、どっちが先に察知してレーダーでかけるとか、あるいはロケットでしかけてくるとか、それに対して自分のほうが防衛しなければならぬというので、パイロットは識別と戦闘行為と操縦と三つ一人でやらなければならぬ非常に高度の技能を要するわけです。それでずっと突っ込んでいってだんだん船が大きくなってきますけれども、やはり軍艦であるならば大体同じようなかっこうをしているものだから、よほど注意して見ないといけないわけです。そういうような訓練もやはりやっておかないと、いま申したような本土防衛のための周辺海域における防衛措置が全うされない。今度ある意味においてはそういう訓練が未熟であるということも示しておる。私はそういう必要範囲の訓練は行なうべきである、そう思いまして、そういうパイロットの練度を上げることもやらしていきたいと思っております。
  66. 大出俊

    大出委員 一つは米軍の日本からの撤退の問題等とからむ、つまりこれは白書にもありますけれども、どうもいままでのたてといわれる体制から少しワクが広がっていく感じがする。  そこでいま言われる制海、制空、航空優勢でもいいですが、この範囲を一体どの辺に考えておられるのかということ、これはかつて予算委員会の論争等もあります。ありますが、もう一ぺんあらためて長官の制海、制空と言われているものの範囲、どの辺までをどう考えておるのかということをこの際明らかにしていただきたい。
  67. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これは本土防衛に必要な範囲内であって、そしてまた自衛権の発動する範囲内である、そういうように一応思います。
  68. 大出俊

    大出委員 私の手元にある議事録からいきますと、これは南のほうを中心に言っておられるわけでありますが、日本近海における潜水艦の跳梁をまず許さない、海上の問題について触れまして、「航空部隊あるいはその他についても、やはり耳となりあるいは対潜掃討という意味においてわれわれとして力を入れなければならぬところはあると思います。当面われわれが特に考えなければならぬのは、日本近海における潜水艦の跳梁を許さない、そういう程度の力」を考えている。「南西諸島から沖ノ鳥島、南鳥島をめぐる以内の地域においては相手の潜水艦の跳梁を許さない、そういうぐらいの力を整備していきたい、」、こう言っておられるわけですね。日本海というのは、そうすると当然日本海と名がついているとおり潜水艦なり艦船の跳梁を許さない、そういう意味の制海、制空をお考えでございますか。
  69. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それは自衛権並びにさっき申し上げた本土防衛に必要な範囲内で節度ある限定されたものであるだろうと私は思います。さっき申し上げましたように両方で摩擦や誤解を起こすということは、両方のためによくないことであり、決して両方のプラスになることではないことでございます。そういう意味において、できるだけ節度あるという原則に立って両方が行なうことが望ましいと私は思います。しかし、日本側は外国領土、領域については非常に神経質になって非常に節度を持っておりますけれども、ソ連側はわりあい勇敢に日本の領土近辺に出没いたしまして、演習をやっていれば必ず——必ずとは言いませんが、ソ連の艦艇が追尾してきたり観察したり、ある場合には夜間演習をやっているときに艦艇のまん中にソ連の艦艇が無灯火のまま入ってきて、そして国籍不明でわからないから照射を浴びせかけたら黙ってじっとしている、そういう事態もありました。無灯火で入ってくるということは、これは船舶航行上からも問題のあるところでございますけれども、そういう例もかつてはありました。そういう中に日本が国民世論の支持を得て必要最小限の防衛措置及び防衛の力を維持していくということはなかなかデリケートなことでありますけれども、われわれは本土防衛に必要な範囲ということは、やはりこれはわれわれの責任において確保しておかなければならぬことである、そういうように思います。
  70. 大出俊

    大出委員 日本海の例をとると、本土防衛に必要な範囲というのは日本海のどの辺までを考えているのですか。つまり防衛庁の幕の方の談話の中には、ソ連の船がどうも南のほうに来過ぎる、そんな玄関口まで来られちゃ困ると言わぬばかりの内容になっている談話がありますが、日本のほうも、いま言われる本土防衛に必要な範囲、こう言われるのですけれども、日本海を例にとれば、さっき長官は沖ノ鳥島だなんだ、南のほうについてはだいぶはっきりものを言っておられるわけだけれども、北のほう、つまり日本海のほうについてはどの辺までをお考えですか。
  71. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 どの辺と線を引くことはむずかしいと思います。太平洋の場合は非常に広大無辺でありますから、まあこの辺の見当、そういう意味で申し上げましたけれども、日本海は太平洋に比べれば湖水みたいなものですから、どの辺というように線を引くことはちょっとむずかしいでしょう。しかしいま申し上げましたような原則でわれわれは扱わなければいかぬと思います。
  72. 大出俊

    大出委員 この日本海は日本の海だと考えておられるわけですか、いまは線を引くのはむずかしい、湖水のようなものだと言うんだから。そんな小さいものなら日本の海だ、日本海だから、こういうことですか、全部が入る……。
  73. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 太平洋に比べれば湖水のようなものだという意味で申し上げたので、あれは湖水じゃない、日本海という、海という名前がついている海である。日本海という名前はこれは国際的なそういう地理学会か何かで公認された名前なんでしょう、世界の地図に載っておりますから。日本海海戦という名前もすでにあるぐらいですから、別にそんなことを気にする必要はないと思うので、お互いが公海としてお互いの権利義務を守って共用していくべき海である、そういうように思います。
  74. 大出俊

    大出委員 支援機としてF86Fを使っておられるわけですね。これについて二つ久保さんに承っておきたいのですが、前にあなたのほうで私どもと話をしているときに、制空権と航空優勢ということは違うということをおっしゃったですね、あなた。どうも制空権というと航空優勢よりももう少し先にある、そういう概念なんだということですね。そういうものの考え方をおっしゃっている。これは考え方によっては非常に重要なことなんですね。いま日本海というのは太平洋に比べると湖水みたいなものだ、こう言うのですが、これは制空権というのをどこまで考えるかによって考え方が変わってくる、基本的に。四次防の問題もけさの新聞に出ておりますから、いずれまた御質問しなければなりません、それもからみますから。そこのところの考え方をひとつ明らかにしていただきたいのと、もう一つ、このF86Fという支援戦闘機を——まあこの間のやつはF86Bかもしれませんけれども、ただ懸吊装置その他あったのかどうかわかりませんけれども、この辺を将来に向かってT2、これを改造、開発をして支援戦闘機を強化する、こういう方針になっているようですね。これは強化する。相当強化されると今回のような演習がますます強化される、一つ間違うとこれに類することが起こりかねない、そういう気も実はする。そこで、どの辺どういうふうに強化をされるおつもりなのか。いまのF86FあるいはBと、それからT2との関係、この辺をどういうふうに使い分けておられるのか。
  75. 久保卓也

    ○久保政府委員 この前先生に、制空権あるいは制空ということばと航空優勢ということばの違いを私の解釈で申し上げたわけであります。防衛庁に帰って聞いてみますと、現在は制空ということばは使わないで、航空優勢ということばを使うそうです。私はわりとことばに厳密なものですから、制空というのと航空優勢というのは違うのだという感じがする。というのは、制空というのは、常に航空において相手方の跳梁を許さないという感じが非常に強い。そこで、制空権ということばが出ると思うのでありますけれども、ところが、現在の日本立場からいきますと、そういった圧倒的な優勢さというものは保ち得ないと思うのです。したがいまして防衛庁では、航空優勢ということばを使っておりますのは、あえて海上は制海であって、航空は優勢ということばの使い分けをしているそうですけれども、その優勢というのは、聞いてみますと、必要のつどこちらのほうが相手方の行動を制約し得る程度の能力を持っておるということのようであります。したがいまして、たとえばノルマンディー作戦などにおきましては、ドイツの飛行機はほとんど飛べないというような状況、こういうようなときは、相手方、ヨーロッパといいますか、自由圏側が制空権を持っておった、こういうふうにいわれておりますけれども、日本の状況においてはそういった意味での制空権は持ち得ない。この前の予算委員会でも申し上げましたが、彼我の被害状況が、常にこちらのほうが有利になる程度、そういう意味での航空優勢ということばに使っているようであります。これはまた御議論があればお答え申し上げたいと思います。  それから、F86Fにつきましては、大体四次防段階でなくなってまいりますので、T2改にかえてまいりたい。そこでT2改につきましては、いまF86Fの支援戦闘機は四スコードロンがあります。T2改についても対地支援戦闘機でございます。これは百二十機ばかりの四スコードロンを整備したい。したがって、総数からいえば同じ程度、しかし、能力的には相当に優秀になるということであります。
  76. 大出俊

    大出委員 つまり、いまの二つの制空権、航空優勢をなぜ聞いたかというと、これはほんとうに中曽根長官が言ったのが制空権の意味ならば、常時これは確保しなければならぬことになる。それこそあらゆる跳梁を許さないということになる。そういうことでないんだというならば、長官がさっき言ったように、つまり日本の領海、周辺、専守防衛という立場に立って、それに必要な限度、こういうことになる。だから、その限度を押えるというんですね。そして末端をコントロールするという。こういう方向にいかなければ、末端というのは、いま演習しているが、有事のときだって、その演習が慣性になっているわけですから、そのとおり走るわけですから、コントロールがさいていなければこれはどうなるかわからぬ。そういう意味ではこれはそう簡単なことじゃない。だから、そういう角度からとらえるならとらえるで、明確にこれはやはりしておいていただきたいと思うのが一つ。  それからもう一つは、T2になったら、いまの御答弁では、だいぶ能力が上がってくるということ。つまり、一つ防衛の範囲をきめてあっても、日本の自衛隊の持つ近代兵器の前進のし方によっては、たとえばF4Eファントムにかわるべき104も、能力が高まるわけです。海上においても大きな艦船をつくるということになれば、これはまさにマラッカ海峡防衛論じゃありませんけれども、いま日本の自衛隊の艦船ではそこまで行けやしないということになっているけれども、能力が高まればそこまで行こうということになるのはあたりまえのことなんだ。そういう点で、非常にこれはむずかしいと思うのです。  そこでこのいまの二点と、それからもう一つ、四次防の基礎構想がどうやらできて、これから皆さん折衝に入られよう、こういうわけでありますけれども、この際、外務省の政務次官がお見えになる前にちょっと承っておきたいのですが、まず、限定局地戦ということばを使っておられますね。この限定局地戦というのは一体何か。いまの点はひとつ長官に承りたいのですが、この限定局地戦、旧来とだいぶ違ったことばが出てまいりましたが、この限定といっておるのは一体何かという点についてちょっとお答えいただきたい。
  77. 久保卓也

    ○久保政府委員 実は、四次防の最終段階を迎えてはおりますけれども、まだ長官のところでの最終審議に入っておりませんので、そういったことばについて必ずしも十分に長官に御進講申し上げていないように思うものですから、私から申し上げたいと思います。  二次防、三次防の段階では、通常兵器による局地戦ということばを使いました。そういたしますと、局地戦という範囲では内容は無制限であります。したがいまして、二年戦争をやろうが、三年戦争をやろうが、それも入ります。それから、北海道から九州までどこに敵の兵力は上陸するかわかりません。そういった事態は、七〇年代においては考えにくいのではなかろうかということで、通常兵器による局地戦という二次防、三次防の構想に対して、もう一つしんにゅうをかけて制約をしたということであります。と申しますのはなぜかと申しますと、第二次大戦以後の国際情勢あるいは通常戦争を振り返ってみますると、第二次大戦のような無制限的な戦争というものはない。少なくとも核兵器は使われない。あるいは戦争の形態というのは国内戦争、あるいはベトナムの戦争あるいは朝鮮の戦争といった国内戦争である。国内戦争であれ、聖域ということばが使われたごとく、あるいはイスラエルの戦争のように六日戦争といわれたように、第二次大戦のあとの戦争というのを考えてみると、目的でありますとかあるいは戦争の態様でありますとか手段とか、そういうものは限定されているのではなかろうか。したがいまして、二次防、三次防におきますように、通常兵器における局地戦というような事態はもう相当なくなっているのじゃないか。そういうふうな事態は起こり得ないし、そういうものに対処する防衛力は持ち得ない。そこでわれわれは、防衛力として持つのはもう少し限定された防衛力ではないか。そういうことで防衛力を整備する。もしその予想がはずれた場合、その防衛力をもってしては対処し得ないのであって、それを国連なり国際世論なりあるいは外交手段なり、そういうようなものによって対処をする。一応防衛力というのは、どのような国でありましても一つのかけでありますから、われわれとしては、あり得そうなものに対して防衛力を持つ、そういうような程度でよろしいのではないか、そういうふうな判断に立ったわけであります。それが限定的な侵略に対する、こういうことであります。
  78. 大出俊

    大出委員 非常に重要な答弁をいただきまして、いままで私も長い間かかって防衛力の限界というものをずっと歴代の長官に承ってきた。松野さんのごときは、向こう岸が高くなればこっちの岸も高くなる、こういう御答弁のしかたもされる。これはまことに不可解千万なんですけれども、そうではなくて、やはりシビリアンコントロールを強調される長官の立場からすれば、シビリアンコントロールというのは最終的には国民なんですから、私はそう思うから、そうなれば、さっきの問題も、国民に向けて、こういうことがあったということをフランクに言う立場が必要なんだ。その国民のそういう受け取り方の上に立って、長官が、末端の隊員の皆さんが独走をする、走り過ぎるという形は、自衛の名においてとめなければならぬということになると思うのです。常時そうでなければならぬ。そうでないというと、とんでもないときに勇み足が出てくるということになりますと、自衛ではなくなってしまう。だから、そういう角度からすれば、やはり一つの限定が、日本の自衛隊の考える限度というものが明確にされなければならぬと私は思う。そういう意味で、前回三次防決定のときに、私は増田甲子七さんに本会議で質問しましたら、この通常兵器による局地戦以下の、これは一体何だ、説明してもらいたいと言ったら、通常兵器による局地戦というのは、通常兵器による局地戦ということですと答えた。大騒ぎになりまして、そんな答弁があるか。そうしたら、再答弁をする。何かと思ったら、コンベンショナルウエポンによるパーツの戦闘と言った。ふざけるなと言ったら、いや、そう書いてあるのだと言うのですよ。そうすると、私も常識的に判断すれば、米軍と話し合っていくわけでありますから、三次防ができた、話し合っていたんでしょう。英語で書いてあったんでしょう。コンベンショナルウエポンによるパーツの戦闘と書いてあるんだ。それじゃ限度も限界もヘチマもない。シビリアンコントロールといったって、国民の受け取りようがない。そういう意味では、限定局地戦というものの考え方というのは私は前進をしていると思うのですが、それだけに、あり得そうな、つまり現実に起こりそうな、あり得そうなところを踏まえていま限定局地戦とおっしゃるわけですね。そう理解していいのですね。そうすると、あり得そうなというのは一体何があり得そうなのか。たとえば日本の航空なら航空を例にした場合に、こんな縦深の浅い、横に長い日本列島、攻められたときに一体守れるか。守らなければならぬじゃないか、いまの航空勢力で、という人もいる。しかし、よく考えてみれば、中国は一体どのくらい航空力を持っているかといえば、迎撃戦闘機が主ですよ。そうすると、足の長いというのにも限度がありますから、中国はあれだけの大国でもなかなか日本に入ってこられない。北朝鮮は、航空兵力はそうたいしたものではない。ソビエト、これはたいした航空戦力を持っている。しかしあとの戦力は、ということになると、おのずから限界がある、現在わかっている限りでは。だからそういうふうに考えていけば、確かに現在起こり得る範囲というものはきめられそうに思う。したがって、その起こり得る状態というものをどういうふうに想定されて限定局地戦ということばをお使いになろうとしているのかという点を承りたい。
  79. 久保卓也

    ○久保政府委員 私のところにアメリカの専門家が参りまして、私の意見を申しましたら、大体賛成をしましたので、こういう申し方をしてみたらどうかと思うのですけれども、脅威の中にプロバブルな脅威とポッシブルな脅威があるのじゃなかろうか。プロバブルというのは、何か紛争の原因が現実にある。したがって、現在は戦争はないけれども、起こる蓋然性というものは多分にある。ということは、たとえばヨーロッパがそうでありましょう。これは国境その他問題があります。それから台湾がそうでありますし、朝鮮がそうでありますし、アラブ諸国がそうであります。これは何らかの紛争原因がある。これは起こり得るかもしれないということでプロバブルである。したがって防衛力というものは相当十分に整備しなければいけない。ところが、そういうプロバブルな脅威というものがない諸国においてはどういう考え方をするのかというと、近隣諸国に軍事力があるし、それらの軍事力というものは、自分の国に向けられるかもしれない。それはポッシブルである。可能性がある。現実に起こるとは限らないけれども、そういうポッシブルに対しては対処しなければいけないのじゃないだろうかという考え方をとる。したがって、わが国がGNPに対して一%にも満たない防衛費を費やしているというものは、プロバブルでない、ポッシブルなものに対してやはり持っていなければならないという防衛力じゃないか。したがって、ヨーロッパは三%、五%の防衛力を持っているから、わが国も持つべきではないかということはとるべきではなかろう。ポッシブルなことに対して、われわれは持てばいいんじゃなかろうかと思う。そういう考え方、それが一つの前提。  それからもう一つは、先ほど限定的と申し上げましたが、たとえばわが国の周辺には実は相当強大な国があるわけでありますが、それらの国が全力をふるってわが国を攻めてくるとすれば、わが国の対処のしょうがないと思います。これはいかにアメリカが背後に控えていようとも対処し得ない。しかしそういう事態は考えられない。たとえばヨーロッパでも力と力の対峙がありますし、そういう力の対峙を無視して、わが国に兵力を指向するわけにはいかない。あるいは中ソ対立というものもありますし、これは当分の間解決するということはあり得ないでありましょう。そうすると、そういう兵力を転用して、こちらに向けることもあり得ない。あるいは米国の存在というものも周辺諸国には一つの重圧になっているかもしれない。それに対する配慮をやはり考えておかなければいけない。そうすると、わが国に指向する兵力というものはおのずから限られるのじゃないか。そうすると、それらの兵力というものを日本全土にわたって第二次大戦中にわれわれが受けたような、そういう事態は考えにくいのじゃないかということで、相手方の兵力というものもある程度限定し、したがって、彼らがとるであろう、われわれがポッシブルと考える戦略もある程度限定し、それに対する防衛というものを考えてはどうだろうかということを、新たな防衛力整備計画のほうでは考えてみたい、こういうことであります。
  80. 大出俊

    大出委員 委員長、政務次官に、事が事ですから、責任ある人に聞いておきたい件がございまして、これは向こう側の回答、それをどういうふうに受け取っているかということですが、沖特に出ていて、もう十分くらいかかるということですが、お見えになったらすぐその質問をして終わります。  わかります、いまおっしゃっていることは。そうだとすると、つまり限定局地戦というもののとらえ方は、概念としてはわかる。しかしもう少し具体的にものを言ったら、つまり四次防、五次防を踏まえて、おおむね十年かかるわけであります、いまの流れなら。そうすると、四次防、五次防を含めて、陸、海、空大体どのくらい、ことに陸は十八万体制で、あるいは質的に、あるいは省力化というのですか、長官の発言にありましたが、この海、空含めて、どの辺のところまでをお考えなのかという点が一つなければ、いまの点についての理解に一つ欠ける。そういう意味で、どういうふうに考えておられるか、そこのところを……。
  81. 久保卓也

    ○久保政府委員 確かにおっしゃるようなことがございまして、もし限定的な侵略事態に対処するのではないというふうに申し上げれば、兵力は、やはりたいへん必要になってまいります。通常兵器による局地戦事態以下の事態であっても、相当の兵力が要ります。しかしいま申し上げたような意味で限定してまいりますと、おおよその見当がついてまいります。そこで長官は、この前の予算委員会で申されたのは、陸上自衛隊が十八万、航空機が約千機、それから海上自衛隊については四次防とほぼ同じ努力を五次防において行なえば大体そんな数字になるんじゃなかろうかということを申されましたが、事務的に検討してまいりますと、大体そんなことでよさそうであります。
  82. 大出俊

    大出委員 機種その他いろいろありましょうが、おおむねの見当として千機、そう考えている、こういうわけですね。  竹内さんに、お見えになったから承りたいのですが、いまの誤爆、と言い切っていいのかどうかわかりませんが、誤爆行為になるのかどうかわかりませんが、長官うまいことを言っておられますが、忘れておりますので、間違いがありましたら……。
  83. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 誤認動作。
  84. 大出俊

    大出委員 その長官の言う誤認動作に対して、ソビエト側の——日本の大使館から参事官を呼んでものを言ったそうでありますけれども、宮沢さんからの話を耳にしましたが、大体中身はどういうことを言っているわけですか。
  85. 竹内黎一

    ○竹内(黎)政府委員 ソ連側は、この種の事件の危険性を指摘するとともに、ソ連外務省としては、このような事件、誤認行為ですか、誤認行為の結果であるという日本外務省の説明を了解し、日本側が今後このような事件を反復して行なわないよう必要な措置をとることを期待するということを言明しております。
  86. 大出俊

    大出委員 そうするとそれは、この間ちょっと電話で宮沢さんに聞いたときには、やはり何か、厳重に注意をするということが口の端にありましたが、いまのは正式な向こうの内容ですか。
  87. 竹内黎一

    ○竹内(黎)政府委員 文書ではございません。口頭ではございますけれども、そのようなことでございます。
  88. 大出俊

    大出委員 そこで外務省としては、この問題の、つまり落着、決着をどういうふうにおとりになっておられますか。私は、これは、いまのような政治的にいい時期にあるから、ソビエトにおいでになる日本の大使がおっしゃっているように、いまだかってなく、たいへん日ソ間というものは政治的にはいい状態にいまある、こういう時期だから事なきを得たような感じがするのですが、国際的には一つの借りだと私は思うのです、これはこっちが陳謝しているわけですから。釈明しているわけですから。したがってその辺のところを、政治的にはどういうふうに受け取られておりますか。
  89. 竹内黎一

    ○竹内(黎)政府委員 確かにこれはこちらのほうのこういう誤認行為でありまして、私どものほうに遺憾の点があるわけでございます。ただ私どもとしても、ソ連側がこちらのそういう態度を納得していただいたということは、先生指摘のように、現在の日ソ関係の状態を反映したことだと思います。貸し、借りという、こういう表現が妥当かどうか知りませんが、私どもといたしまして、別段こっちのほうで借りたからどちらでどうという気持ちはございませんけれども、政府一般的な方針としましては、現在の日ソ間のこの良好な状態は引き続き維持してまいりたいと思っております。
  90. 大出俊

    大出委員 そこをはっきりしておきませんと、やはり国民にとっては一つのショッキングな事件ですから、そういう意味で承ったのであります。  では、結論をここで出させていただきますが、いまの久保さんの御答弁を一つ前提にして、長官、この四次防というものについて、国防の基本方針、これは非核三原則等の問題も含めて、改定のつもりがあるのかないのか、それをひとつ承りたい。  それから、この非核中級国家という概念について、だいぶこれは妙な論争が予算委員会で、総理の言い方とだいぶ違った形のものが出たような気がいたしましたが、ここらの理解について、非核専守防衛国家というふうに改めたように見えるのでありますけれども、ここのところは一体どうなっているのか、四次防を踏まえまして、近く予算等の関係の折衝その他をおやりになるそうでありますから、そこらを承りたい。  それから、今後この四次防というのはどういう手順で進んでいくのかという点ですね、これもあわせて承っておきたいのであります。  それから最後に、沖繩返還の際における米軍の特殊部隊駐留について、これは日本国内にも一部分あるわけでありますが、これを基本的にどういうふうにお考えになっているのか。  最後に、AEWを買うがごとく買わざるがごとく、国産するがごとくせざるがごとく、子供にダイヤモンドを持たせるようなものだという答弁が出てきましたけれども、昨年私が質問をしたときには、一機七十億と答えたが、今度は八十億と言ってみたり、さっぱりわけがわからぬわけでありますが、事これを開発するとすれば相当な費用が要ることは間違いない。そこらのところは一体どういうお考えなのか、締めくくりの意味でお尋ねします。
  91. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 国防の基本方針は適当な時期に変えたいと思っております。  非核中級国家という表現は非核専守防衛国家という表現のほうが適当であると思いまして、そういう表現にいたします。  四次防につきましては、今月一ぱい中くらいにぜひまとめて発表できるようにしたいと思います。  沖繩の問題については、これは外務省にお聞きを願いたいと思います。  それからAEWについては、四次防の中において国産自主開発を原則的に推進していきたい、このように思っております。
  92. 大出俊

    大出委員 二点について再質問をいたしますが、適当な時期に変える、こうおっしゃるのですが、前にもそういう答弁が何回かあったわけでありますが、どういうふうに変えるおつもりなんですか。それともう一つ、いまのAEWでありますが、このAEWについて国産開発をする。大体何組くらい、つまり合計何機くらいで、どのくらい国産でやるとかかるのですか。
  93. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 基本方針の改定の内容につきましては、軍国主義といわれる歯どめになるように、そういう考えも入れまして、たとえば憲法を守り文民統制のもとに行なう、そういうようなアイデアを持っています。それからAEWにつきましては、国産自主開発で四次防中に開発を行なって、五次防期間に実用機を取得する。何機になるかということは次の防衛計画の問題になりますので、いまから予測できない状態であります。
  94. 大出俊

    大出委員 潜水艦がだいぶふえるように書いてありますけれども、原子力潜水艦の開発というのはどういうふうにお考えですか、四次防、五次防というとらえ方をして。
  95. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 四次防においては考えていません。五次防については前から申し上げますように、原子力推進の船舶がどの程度普遍性をもつか、そういうことを考慮しながら考えるべき問題であると思います。
  96. 大出俊

    大出委員 外務省、特殊部隊のことをひとつ……。
  97. 竹内黎一

    ○竹内(黎)政府委員 いわゆる特殊部隊につきましては、ただいま外務省は防衛庁のほうとも連絡いたしながらまず実態把握につとめている最中でございます。そうしまして、いわゆる安保条約の目的並びに私どもは県民感情というものを十分に体した上で、実態把握の上で適当な処理をしたいということで、ただいままだ実態把握中でございますので、これ以上答弁できないことを御了承願います。
  98. 大出俊

    大出委員 結論として、あってはならないことがあったわけでありますから、末端に、そういう演習その他を通じて行き渡らないという形のことが常時行なわれておりますと、先ほど申し上げましたように、そういう慣行が生まれてしまう、そういう危険もあります、新聞等も指摘しておりますが。また防衛それ自体の姿勢の問題とからんでどうやら制空、制海なんかの問題が出てまいりますから、どうしてもこちらのほうに行きかねない。つまり勇み足が出かねない零囲気ができ上がる。いまの久保さんの答弁等で、ある意味での限界を明らかにしようという努力が見えておりますから、そういう基本的な姿勢についてもこの際やはり十分御検討いただいて、再びこういうことがあったのでは、国民の単なるショッキングな事件では済まなくなります。お粗末ということでは済まなくなりますから、そこらのところについて十分御注意いただきたい、こう思うのであります。
  99. 天野公義

    天野委員長 鈴切康雄君。
  100. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 このたびの自衛隊機のソ連艦を誤認攻撃したということは、非常に重大な問題だと私は思います。そこで先ほど御答弁を伺っておりますと、どうして誤認をしたかわからない面があったという内容の御答弁がございましたが、全く私はその意味が実はわからないわけであります。そこでこの訓練に対する内容について少々私は御質問を申し上げたいと思います。  まずどういう範囲内においての訓練であったのか、どういう艦艇が目標であったかということ、それから攻撃は何回行なわれる予定であったか、訓練の行程はどういう行程で行なわる予定であったか、当日の視界としてはどういう視界であったか、またどういう訓練の指令を出されたか、訓練の目的は何であったかという問題についてこまかくお聞きします。
  101. 久保卓也

    ○久保政府委員 三月九日から十日にわたっての海上自衛隊の訓練でありますが、これは沿岸防備訓練でありますけれども、その際にあわせて艦艇にとりましては防空の訓練、航空機にとりましては対艦船訓練ということを行ないたいということであります。  そこで訓練の形といたしましては、対馬から壱岐にかけまして艦艇が何隻か配置されておる。たとえばDE、護衛艦が四隻、それから魚雷艇が四隻、それから掃海艇が四隻というようなことでこの海域に配置されている。その間に場所を明示しないで航空機による攻撃をせよということであります。通常の訓練とちょっと違いまして、普通でありますと、艦艇と航空機と通信連絡をしながら、また艦艇のほうに航空幕僚を乗せて訓練を行なうわけでありますが、今回の場合には少し高度の訓練を行なう、そういう意味で艦艇と航空機の連係なしに、艦艇を見つけ次第攻撃せよという命令が航空部隊には出されておったのであります。そこで先ほど申し上げましたように、航空隊のほうではソ連艦艇がほぼこの地域にいるという意識がないままに、船を見つけたらこれは海上自衛隊の船であるということを考えて攻撃したというところに誤認の原因があったということであります。
  102. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 このときにF86Fの行動の概要といたしまして、護衛艦と駆潜艇と掃海艇がその対象の船になっておるわけでありますけれども、それの当時、誤認攻撃をしたときの護衛艦並びに駆潜艇、掃海艇の位置はどこにあったか、その点についてお伺いいたします。
  103. 久保卓也

    ○久保政府委員 駆潜艇は対馬と長崎の間くらいにおりました。これを攻撃をいたしております。それから対馬の北方に護衛艦がおりましたけれども、この場合には飛行艇が付近におりましたので攻撃をいたしておりません。それから壱岐の南のほうに駆潜艇がおりまして、これに対する攻撃を行なっております。さらに護衛艦がまだ壱岐の東方、若宮島と申しますけれども、若宮島の東方にあるはずだということで、それに対する索敵を行ない、見つけたと思って攻撃をしたということでありますが、それは護衛艦ではなかったということであります。
  104. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 要するに護衛艦が若宮島の東方にあるということは全くの誤認であって、当時は護衛艦が全然いないわけでありますが、結局築城を立った飛行機は約七千フィートあるいは九千フィートの高さをもって、三百六十ノットの早さで野母崎を通過して第一回の攻撃訓練を、対馬の近海で掃海艇を行なって、そしていまあなたがおっしゃるように、宇久島の先に護衛艦がいたのを実は見過ごしているというか、UF、哨戒機がいたために危険だという判断に立って実はそこを通り越しているわけでありますけれども、その後壱岐のほうへ行って、第二回目の攻撃訓練として駆潜艇を二回にわたって行なった。それの時点において、すでにもう実際に護衛艦というものは若宮島のほうにはいないという現実はわかっているわけであります。そうなったら、すでにこの場所に来たならば、もう築城に戻るように指令を出すべきが当然ではなかったかと思うのですが、その点の配慮がなされていない。ゆえに、まだいるのではないかということで、第三の攻撃訓練としてソ連艦をやってしまった。これは福岡から北北西三十二海里、五十九キロの場所で東経百三十度十分、それから北緯三十四度四分という場所には全然護衛艦はいないわけです。護衛艦がいないのにこういうふうな攻撃をした。それは私は、こういうふうなソ連艦がいるであろうと思われる公海においての配慮が非常に足りなかった、このように思うのですが、その点いかがですか。
  105. 久保卓也

    ○久保政府委員 結果的に見れば、護衛艦がいなかったということは当然わかるわけであります。ところがこの訓練の想定と命令というのは、九州北部海面において海上自衛隊の艦艇が遊よくしている、したがって、艦艇を見つけ次第攻撃せよということでありますから、これは航空機といたしましては、燃料の許す範囲内において索敵をしなければならない。攻撃だけではありませんで、索敵も今回の訓練の中に入っている。したがいまして、ほかにどこかいないかということでさがすのは、一応当時の状況としてはやむを得なかったのではなかろうかと思います。
  106. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 九州北部方面というばく然たる範囲内においての索敵という問題は、これは非常に配慮が足りなかったんではないか。少なくともこういうふうな艦艇とこういう艦艇がいるんだ、しかもUFが哨戒をしているときには、そういうところを見過ごしていっているわけですから、当然そのところにおける自衛艦というものは、もう対象に入らないわけですから、そういう点の配慮がなされておらなかったところに私は大きな問題があろうかと思うのです。  そこで、こういうふうな問題について、先般の日米の共同演習がございまして、房総半島の沖に原爆を対象とした潜艦訓練を行なった。そういう際に長官は、訓練計画についてはどの程度知らされておったかという問題。それからまた今度の問題についても、だれが計画して、そして実施を命じ、どういう流れの指揮系統をもって伝わっているのかということについてお伺いいたします。
  107. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 房総半島南における米原潜との訓練につきましては、私は事前にその承認を与えております。  それから今度の訓練につきましては、海上自衛隊の年次計画、業務計画の内部で幕僚長指揮のもとにいろいろ計画立案されたものだと思っております。
  108. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 自衛隊が動くというのは、決して私は小さいことではないと思います。平時ばかりでなく、有事のときのことも考えてやらなければならないことになれば、事はやはり重大になってこようかと思います。そういう点について、やはり今度のこういうふうな問題も、空幕あるいは海幕だけの訓練過程でなくて、少なくともシビリアンコントロールという立場であるならば、そういうことについての逐一の報告、それから承認、それに対するところのやはり国際情勢を踏まえた防衛庁長官の適切な指示、それから配慮がなされなくてはならない、私はこのように思うのですが、その点いかがでしょう。
  109. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 大方の演習を行なうときには、私のところへ上申がありまして、一々指示し、また承認を与えたり、あるいは訂正を命じたりいたします。この程度の演習は、業務計画の内部で幕僚長が西空方面に指示して行なっておるもので、一々この程度のものまで私の承認を得るということは必要ないのではないかと思います。それらは、すべて幕僚長のところへ報告は来、その検閲を受けて行なわれるものであると思っております。しかし大方のものにつきましては、また国際関係等を顧慮しなければならぬもの等につきましては、もちろん私がよく目を通してやらなければならぬと思います。
  110. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 どの程度というふうに言われておりますけれども、実際に現実結果としては、たいへんな問題を引き起こした問題であるので、この程度と見のがしている防衛庁長官のものの考え方、それがシビリアンコントロールを大きく逸脱していくような形になろうかと私は思うのです。要するに今度の誤認攻撃の直接の原因というのは、どういう点が直接の原因だというふうに判断されておりますか。
  111. 久保卓也

    ○久保政府委員 一つの原因は、ソ連の艦艇が壱岐の周辺海域を遊よくしているということは、海上自衛隊も知っておったわけでありまして、この訓練に際しまして、西部航空方面隊司令部に連絡をいたしております。ところが西空のほうで、この点を航空団のほうに連絡していなかったというとが、まず第一の原因であります。  それから一般的には、あの海域にソ連艦がいるということは、自衛艦としては常識として了承しておりましょうけれども、特定のポイントについてのもちろん認識はありません。いま申し上げましたように、連絡が航空団のほうに行っておりませんでしたから、ポイントについての認識がなかった。そこで、あの海域について、九州北部海面について、遊よくしているのは海上自衛隊である、しかも命令が、先ほど申し上げましたように、海上自衛隊の艦艇を発見次第攻撃せよという一般的な命令であるということ、それから通常の訓練よりもやや高度にしまして、連絡を断って、連絡なしに、とにかくパイロットの視認によって発見すれば攻撃せよということがあったということが、やはり原因ではなかったろうか。もう一つは、艦型が、商船とはずいぶん違いましょうが、艦型が比較的わかりにくい。ちょうど写真を持ってきたので、御披露申し上げますと、これが海上自衛隊の船でありまして、この船ではありませんけれども、大体同じ艦型の船であります。いまそちらからごらんになって、どの程度区別できるかわかりませんけれども、これが五百フィート以上、つまり上空で五百フィートですから、接近するときは、もっと何千フィートというか、何マイルも向こうから、三百六十ノットの早さで上空を通過する場合に、これとどういうふうに区別できたかという問題、これは区別さるべきであるし、区別されなかったということは、技術能力がまだそこまで練度が至ってなかったということでありますが、少なくともそういう状況において、この程度の船の視認を間違えたということであります。  もう一つは、ちょうどカメラでとっておりますけれども、こういうふうに写っております。よくおわかりになるでしょうか。要するにいまの距離でおわかりにならない程度に航空機では船の艦型がわかりにくかったのであろうというふうに私は推察をいたしております。
  112. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 もともとこの問題については、すでに海上自衛隊はもう知っておったわけです。それを、要するに航空自衛隊のほうに連絡して、航空団に微細な注意がやはりなされなければならない問題なのです、実際言って。その写真を見て、これがわかりますかというふうにあなたが言われたって、私にはそれはわかりません。わかりませんけれども、少なくとも攻撃を加えようとする——専門家であるならば、当然それだけの教育がなされなければならないわけです。それをなぜ怠っているのですか。それで、これに対して事故再発防止のためには、いかなる具体的な案をお持ちであるか、その点について……。
  113. 久保卓也

    ○久保政府委員 おっしゃるとおり、パイロットは専門家でありますから識別すべきであります。したがって、私は識別できなかった原因がどこにあるかということを申し上げただけでありまして、彼らパイロットの行為歩正当であったということを申すつもりはさらさらございません。そこで、従来航空機の攻撃訓練と申しますのは、対地攻撃、つまり地上に対する部隊の支援攻撃訓練というものが主でありまして、日本に上陸してくるであろう艦艇に対する攻撃というものはやはり不十分でありました。したがって、当日についても海上自衛隊の船の艦型については一応のブリーフィング教育はやっておったようでありますし、通常のパイロットに対する訓練におきましても、一年間十時間以上はこの艦型の識別について訓練を行なっている。しかし、それが不十分であったということは認めざるを得ないと思っております。そこで、こういうことにつきまして、やはり訓練の度合いが少し早過ぎたということが反省されます。と申しますのは、いま申し上げたように、通常の海上自衛隊の訓練では、航空機と艦艇とで通信をやって、それから攻撃する。それからまた海上の艦艇のほうに航空幕僚を乗せて、それで注意をさせながらやらせるというのが普通の訓練のようでありますが、今回はそれをやっておらなかったということで、これはやはり通常のルートに乗せて安全を期すべきであろうという問題があります。それから、もちろんこういうことは私どもあるいは幕僚監部も予想もしておらなかったのでありますので、海上自衛隊と航空自衛隊の連絡をもっと密にするということ、それからこれらの訓練についてはソ連艦艇が周辺海域にいるということを前提にして訓練をしなければいけないということ、それからいま申し上げた艦型の識別というものをもっと訓練すべきであるということを、航空幕僚長から航空総隊に、航空総隊から各航空団に通達をいたしております。  なお関係者は、懲戒ではございませんけれども、口頭で厳重な注意が与えられておるということであります。
  114. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま言われたように、今度の訓練は九州北部方面の海域に対するところのいわゆる敵艦の攻撃というふうなことでありますけれども、実際には、飛行機が敵艦を発見した場合に、東経何度、北緯何度、時刻は何時で、発見したから直らに攻撃するというふうな連絡をしながら攻撃をかけるということは当然の常識になっているわけです。それを、とにかくさがしてこい、さがして戻ってこい、こういうふうな行き方であるところに大きなミスを生じたのではないかと思います。それで、連絡をとれば、その緯度について非常に違っておる場合には、直ちにその攻撃は中止をせよ、こういう配慮がなされるべきであった。ところが、艦とも飛行機とも全然そういう連絡がとれていなかったというところに大きなミスが生じた、そういうことで、こういう問題についての訓練に再検討を加えるべきではないか、私はそう思うのですが、その点についてお聞きしたい。
  115. 久保卓也

    ○久保政府委員 一応おっしゃるとおりであろうと思います。なぜ一応と申し上げたかと申しますと、戦闘訓練というのは、最も不利な状況においても戦闘に参加せざるを得ないということでありまして、わがほうの有利な条件の場合にのみ訓練をするというのは、初歩の場合には当然そういうことをやりますが、だんだん練度が高まってきますと、条件の悪いときにやらなければならない。ですから、民間機に比べて自衛隊機がわりと落ちるのは、航空気象が悪いときでも飛び出さなければいけないという問題があるわけであります。そういう意味からいって、一応こういう想定のもとに訓練をすることが一がいに悪いとは言えないと思います。しかし、先ほど申し上げたように、いまだそれほど識別する能力がすぐれていないのに、そういった前提で訓練をするのはまだ早過ぎるということで、いまのような訓練は必ずしも適当でない。おっしゃいますように、訓練計画、訓練内容というものは再検討すべきであろうと思います。
  116. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日本海、特に三海峡、対馬、津軽、宗谷等のソ連艦艇の動向についての現状は、どのように判断されておりますか。
  117. 久保卓也

    ○久保政府委員 極東にありますソ連艦艇は、最近非常に活発化しております。これは全世界的なことでありますけれども、それらを行動の類型別に若干の件数を申し述べてみますと、沿海州の基地とカムチャッカの基地との往来というものが各海峡百隻近くありまして、年間合計二百数十隻であります。それから米艦艇が日本海で行動するときの追尾監視行動、あるいは日米が共同演習をやります場合の追尾監視行動、それから海上自衛隊だけの訓練におきます追尾監視行動、そういったものを合計いたしますと、年間約二十隻ぐらいということであります。それから、日本海及び太平洋におきます海洋調査というものが十数回、これは日本の港に寄港したものだけを拾ったものでありますが、寄港しないものはおそらく常時であろうと思います。これは、ソ連艦艇は、全世界的な規模において行なっております。それから、対馬海峡と宗谷海峡については、常時遊よくいたしておるというような状況のようであります。
  118. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 対馬海峡においては常時遊よくをしているという状況下にあって、しかも海上自衛隊はこのソ連艦の存在を認めているわけでありますから、そういう点において、私は現実の状況下にあってやはりその配慮がなされなかったというところに、大きな、根本的な問題があろうかと思うのです。そういう点について、今後やはり十分に注意をしなければ、再度そういう問題が起こる可能性も十分含まれている、そのように思うわけです。  そこで、海上自衛官の幹部の中には、旧軍の海軍航空隊的なものをつくれという意見もあるようでありますが、将来そういうものをつくる計画がおありであるかどうか。
  119. 久保卓也

    ○久保政府委員 海上自衛隊におきましては、海洋における哨戒のためにP2J、あるいは古い型でありますが、S2Fという固定翼機と、それからヘリコプターを持っているわけでありますが、理論的に申せば海上を侵攻してくる艦艇を攻撃するための航空機というものは、外国で申せば海軍のほうがなじみやすいという考え方もあることでありましょう。理論的にはそうでありますが、わが国としましてはやはり少数の飛行機をいろいろな分野に活用しなければなりません。海洋だけでなくて、やはり陸地にもし上陸してくれば、陸地の支援戦闘もやらなければいけないということで、同じ飛行機をいろいろな分野に活用するという意味で、航空自衛隊に所属させて、それをいろいろな方向に活用するということがしかるべきであると思いますので、海上自衛隊について、そういう意味での航空部隊というものを持つ考え方は全然ございません。
  120. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 四次防では八千トン級のヘリ搭載護衛艦を二隻建造する計画があります。これがエスカレートして、ヘリ空母なりあるいは戦闘機搭載の空母への発展ということも考えられるわけですけれども、そういう意図は全くございませんか。
  121. 久保卓也

    ○久保政府委員 四次防を検討する場合、先ほども申しましたように、一応十年くらいの将来を見通して検討しておるわけであります。そのスケジュールの中には、いまおっしゃったようなものは全然載っておりません。
  122. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今度の誤認攻撃ということが及ぼす影響というもの、これは重大な影響を持っているわけです。今度の場合、誤認攻撃があって、幸いにして相手方がそれに対して穏便な処置をとってきたわけでありますけれども、実弾による対応処置がとられることになれば、日ソ間あるいは国際問題として大きな影響を及ぼす結果になります。また、相手に対してわがほうが挑発しているといわれてもしかたがない軽率な行為であり、日ソ間の平和を阻害するものである、こういうふうに私は実は思うわけであります。この点について、長官はどのように今度の問題の重要性というものに対しての御認識、反省がおありなのか、お伺いします。
  123. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、当方の間違いからそのような誤解を与えたことはまことに遺憾でございまして、今後、自衛隊を引き締めまして、再びこういうことを起こさないように、よく注意してまいりたいと思います。
  124. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今度の場合はそれで済んだわけでありますけれども、誤認攻撃をした相手方がたまたま実弾による対応処置によりF86Fを落とした場合の防衛庁としての判断、そして現地部隊のとるべき処置をどのように判断されておりますか、この点についてお伺いします。
  125. 久保卓也

    ○久保政府委員 この艦艇につきましては、ソ連側に言わせますと、警報を発したということのようであります。警報といいますのは、一メートル四方の旗を二ないし四あげるということのようでありますが、どうもその程度のものでは見にくいそうでありまして、警報を発したということを現認しておりません。したがって、おっしゃるように、海上艦艇のほうから、自衛行為であるということで攻撃を受けた場合に、わがほうは当然退避するわけでありましまうが、これがいけないということは——私にもちょっとよくわからないので外務省のほうの御見解を伺いたいと思いますけれども、やはりわがほうに非があったということになるのではなかろうかという感じが、私個人はしておりますが、その辺の法律的な関係はよく存じておりません。
  126. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま私がお聞きしているのは、誤認攻撃をした相手がたまたま実弾による対応処置をとった、そうしてF86Fがそれによって墜落をしたという場合に、防衛庁としての判断と、現地部隊のとるべき処置をどのように判断をされるか、最悪の場合を私はお聞きしているわけです。
  127. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その場合は、やはりわれわれのほうで遺憾の意を表して、そうしてその後の処置については、外交交渉で、両国の良識に訴えて解決すべきものでありまして、国際法とかそのほかのいままでの関連法規あるいは慣習、そういうものがいろいろ参考になって解決策がとらるべきものであると思います。いまここで裁判の判決みたいに、こうだということはちょっと申し上げにくいことでございます。
  128. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 四次防においては空と海とを充実するということで、航空優勢、それから制海確保ということが打ち出されておりますけれども、具体的にはどういうことをやろうとされておるのですか。
  129. 久保卓也

    ○久保政府委員 いずれ四次防の内容が確定すれば申し上げたいと思いますけれども、制海という分野ではもちろん——確保とおっしゃいましたが、確保する段階にはまだまいりませんけれども、現在あります海上艦艇に対し、先ほどおっしゃいましたヘリを搭載する護衛艦二隻、その他艦艇の増強によって対潜能力をふやしてまいるということで、大出委員からも御質問がありましたような範囲内においてそれらの艦艇を遊よくさせて、制海の確保に努力するということであります。  それから航空につきましては、F4部隊が出てまいりますので、その能力、及びナイキ、ホークがそれぞれ七個、八個の団ができますので、これによって防空能力を相当に向上させる。ただし、これもまだ所望の域には達しないという段階でございます。
  130. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先ほど大出委員からもお話がありましたけれども、従来は領空、領海、いわゆるわが領土内における専守防衛であったわけでありますけれども、前長官においては、領空、領海、そしてその周辺、というふうに表現が変わってきております。ところが中曽根防衛庁長官は積極的に公海、公空防衛を打ち出してこられたわけでありまして、航空優勢、制海確保の構想が長官によって打ち出されてきておるわけでありますが、たとえば公海、公空といっても、やはり相手方の領海、領空のきわまでは公海、公空になるわけであります。観念上、制海、制空権を確保するというのは、どういう範囲までをお考えになっておるか、この点についてお伺いします。
  131. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 本土防衛に必要な範囲内、そして自衛権の行使が妥当であると許される範囲内で、節度をもって考うべき範囲と考えております。
  132. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 個人的な意見でもけっこうでありますけれども、すなわち本土防衛に必要な範囲内ということは、どの程度を示しているのか。先ほど私が言いましたように、公海、公空といっても相手方の領海、領空のきわまでが公海、公空になっているわけでありますから、そういう点も含めての制海、制空であるかどうか、その点についてお伺いします。
  133. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それはそのときの事態に応じて弾力的に判断さるべきもので、いま一定してこういう範囲ということは申し上げにくいと思います。そのときのこちらの脅威の態様とかあるいは科学技術の進歩の度合いとか、そういうようないろいろな条件によって適正な判断がなされなければならぬ、そう思います。  ただ、申し上げられることは、やはり本土防衛の必要の範囲内で自衛権の行使が正当に許される、そういう範囲を頭に置いてこれは行なうべきものであると思います。
  134. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 相手方の対応処置、それから諸情勢において考えらるべき筋合いであるということになれば、結局はそれも含めて今後は考えていかなければならない問題であるかどうか、この点についてお伺いします。
  135. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いまの、それを含めてというのは、どういう意味でありますか。
  136. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それを含めてということは、要するに公海、公空、それが相手方の領海、領空のきわまでは公海、公空でありますから、当然そこまで力が及ぶ範囲内、そこを一つの目途として、もちろん諸情勢もあるにしても、それもやはり含めた制海、制空権というものを考えていかなければならないということになるのでしょうかということです。
  137. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 さっき申し上げましたような本土防衛の必要性、それから自衛権行使の正当性ということを考えてそれを行なうべきで、そういうような必要性が疑われるような事態のもとに他国に脅威を与えるようなことは、厳に慎むべきであると思います。
  138. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 沖繩が返還されると、沖繩、小笠原、本土を含めて防衛区域は広がってくると思いますけれども、それに伴って制海、制空の地理的範囲も当然広がってくると思います。大体そういうことから考えた場合、どの範囲を制海、制空権の範囲としておさめておきたいという構想がおありであるか、その点についてお伺いします。
  139. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いま申し上げましたような一般的、抽象的な考え方で基準をつくって、そして具体的な範囲というものはそのときの情勢によって考えらるべきもので、いまから申し上げにくい問題であると思います。
  140. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 具体的な問題はなかなか言われないというようなお話がありましたけれども、先ほど大出委員から話がありましたように、衆議院の予算委員会において防衛庁長官が「日本近海における潜水艦の跳梁を許さない、」「南西諸島から沖ノ鳥島、南鳥島をめぐる以内の地域においては相手の潜水艦の跳梁を許さない、そういうぐらいの力を整備していきたい」というふうに言われておるわけでありますけれども、そういう潜水艦の跳梁を許さないということは、要は制海、制空権をそこに範囲を置くというふうに考えていいかどうか、この点お伺いいたします。
  141. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 制海、制空権ということばがどういうことを意味するかによってこれは違うので、そういうことばを使うことが適当であるかどうかも私は疑問であると思います。それで、あの範囲内のことは、一般的に大体この見当というのを、本土防衛及び日本に対する物資補給あるいは輸送、こういう面から重要と思われる地帯についてそういう考えを表明したのでございまして、その範囲を全部カバーしてしまって完璧を期してアリ一匹も入れないというような、そういろかたいものではないのじゃないか、一般的に見当として、あれは申し上げた発言なのであります。
  142. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先ほどもお話がありましたように、三月の十日の水曜日に誤認攻撃をされて、三月の十一日の木曜日に防衛庁より外務省に連絡をしたわけでありますが、三月の十九日にソ連大使館の参事官を招致して、そしてその釈明を行なった、こういうことでありますけれども、私は、とにかくこれが誤認攻撃であったということは、もう明らかになっておるわけであります。とするならば、当然これは早く意思表示をすべきではなかったか。どうして十一日から十九日の間までほうっておいたか、その意味がわからないわけでありますが、その点についてお伺いします。
  143. 宮沢泰

    ○宮沢説明員 先ほどすでにその点につきまして多少御説明申し上げたつもりでございましたが、ただいまおっしゃいましたように、私どもといたしましては、これが挑発であるというふうに先方にとられるようなことはどうしても避けたい。そのためには、確かにこれが誤認であったということを私どもとしては十分に確認したかったわけでございまして、その点を相手に十分な説得力をもって説明し得るためには、防衛庁のほうでどのような経緯でこれが起こったかということをさらに十分に御解明願う必要があると考えましたので、そのために時間を費したということでございます。
  144. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 当然これが誤認攻撃であったということがわかったならば、早く意思表示をすべきが、要するに私はそれが国際間の通例だと思うのです。それを一週間も八日もほうったらかしにして、そしてしかも、ソ連大使館の参事官を呼んで話をするというのでなしに、こちらから向こうへ行ってあやまってくるのが当然じゃないですか。それが私は礼を尽くしたことになろうかと思うのです。それを、向こうの出方を云々ということを言われておるわけでありますけれども、やはりそういう点についても、私は、ソ連に対する陳謝のしかたが、あまりにも日本の外交として処置が手ぬるかった、そのように思うわけです。  それから、ソ連の外務省は四月五日にこちらに対する抗議を出されて、四月の二十日に初めてある新聞がこれを取り上げたことを契機として、この問題が明らかになったわけでありますけれども、こんな重大問題をはらんだ問題は、やはりミスはミスではっきりと国民の前に早く明らかにすべきじゃないか、少くとも四十日間もこの問題をほうっておいて、そしてある新聞がこれに対して書き立てたということで、驚いて防衛庁として見解を発表するなんということは、私は、まことにその防衛庁のベールに包まれた内容、それを非常に心配するわけであります。かつてそういうふうな、過去においても知らされないで、しかもいつの間にか軍部が戦争へ持っていったという、そういう苦い体験を持っているだけに、私はミスはミスではっきりすべきではなかったか。それを発表することによって、国民もともにその問題について、やはり誤認攻撃であったとするならば、それは私どもとしても、国民としても、ソ連にあやまらなければならない点はあやまらなければならない、こういうように思うのですけれども、長官はどのようにその点についてお考えになっていますか。
  145. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、国民の皆さま方にこういうことを報告をすることは大いにこれから気をつけてやりたいと思います。
  146. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 時間が迫ってきておりますので、先ほど四次防の原案がいろいろ出されて、ここにある新聞が取り上げて「原案固まる」というふうに出ておるわけでありますけれども、今度の四次防の原案は、さきに四次防の素案が出ておるわけでありますけれども、それとどのように変わったかということが一つ。それから、先ほど国防の基本方針、これは改定するというふうに言われておるわけでありますけれども、改定をされるとなればいつごろ改定をされるか。当然国防の基本方針がきまって四次防というものの大綱がきまってくるわけですから、そういう点について、いつごろその改定をきれるかという問題。それからまた、四次防の原案が固まっておるというけれども、実際に四次防の原案をいつごろ発表できるかという問題。また国防の基本方針の中でどの点が一番一つのポイントとして改定をしていかなければならないかという具体的な問題。それから国防白書でございますけれども、国防白書についてはすでに第一回が出されました。その内容については決して満足のいける内容ではなかったにしても、国民の立場としては、一応国防白書を出されたということについてはこれは期待を持っておるわけでありますから、そういう点について、今後国防白書については、具体的にどういうふうに取り組んでそうして発表されるかという、そのことについてお伺いいたします。
  147. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 国防の基本方針につきましては、私は四次防が正式に決定する前後に改定したいと希望していますと申し上げました。(鈴切委員「それはいつごろですか」と呼ぶ)いつになるかわかりませんが、夏ぐらいまでというふうに一応考えております。次の新防衛力整備計画を国防会議で正式に決定するときということでありますから、その前またはあと、前後という表現を使っております。  内容は、さっき申し上げましたように、軍国主義そのほか海外からいろいろ誤解のことばも多少ありますから、そういうことの歯どめとしての意義も非常に重要視してやりたい、そういう意味で、日本の国防ということは、憲法を守り、文民統制のもとに行なうというような、そういうような内容を入れることもまた適当ではないかと思っておるわけです。  それから新防衛力整備計画は、目下詰めの作業をやっておるので、前とどこが違うといわれれば、前と一体でありますが、いろいろ出入りがあるわけです。そういう意味では、どこが違った、どこがどうなったということは、いまのところそういう具体的な問題まで申し上げる段階に至っておりません。しかし、今月中に詰めを終わって、できるだけ早目に発表するようにいたしたいといま努力させております。  白書につきましては、毎年出すのが適当であるかどうか、これはもう少し検討を要すると思います。そういう必要が起きたときにやることが好ましいのではないか、私はそのように考えております。
  148. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国防白書については、そういうふうなお考えだということでありますけれども、少なくとも、私は、今度四次防が組まれるときには、国民の皆さん方に知らせるという意味においても、いままでとは全然状態が変わってくるわけでありますから、そういう点について国防白書をお出しになるかどうか。それから四次防が来年度から予算化されるとなれば、少なくとも先ほど言われたように、夏くらいまでには大綱が決定しなくてはならないと思います。そうなりますと、国防の基本方針はそれ以前に決定をしておかなければいけないのじゃないか。現在どことどこが窓口になって、国防会議にかけるのはいつとスケジュールを組まれておるのか、当然防衛庁としてはそういう日程を組まれてやっておられると思いますけれども、その点について最後にお伺いいたします。なお、防衛二法を今後審議する過程において、四次防等についてはまた詳しく追及をしていくつもりでおりますけれども、いまの点について……。
  149. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 白書につきましては、国民の皆さま方に御理解を願うという趣旨が非常に多いのでございますので、そういう必要性が出てきた場合にはできるだけ積極的にやるほうが、私は好ましいと思います。  いまの御指摘の次の新防衛力整備計画につきましても、その内容をお知らせするということは非常に意味のあることであると思いまして、検討してみたいと思います。  それからもう一つは、スケジュールはまだきまっておりません。これは詰めが終わってから今度は大蔵省に交渉して、大蔵省、関係各省の議が固まって、それから国防会議へ上がってくるものですから、その間の窓口とかなんとかという、そこまでまだ議が至っていない状況でございます。
  150. 天野公義

    天野委員長 受田新吉君。
  151. 受田新吉

    ○受田委員 私は今回の誤射事件に対しまして、外交上及び防衛上の両面からきわめて端的に問題点をしぼってお尋ねします。  まず、事件の内容については、先ほど来の論議である程度全貌が明らかにされましたようです。したがって、冒頭にお尋ねしてみたのですが、ここまで誤射であることが明白になった事件を四十日も無視してきた理由はどこにあるのか、またこの発表を四十日も控えた責任は防衛庁がになうのか外務省がになうのか、その立場を明白にお示し願いたいと思います。
  152. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、外交問題というのは非常に慎重に取り扱わなければならぬところであり、事態が起きてその直後に、私はこれは非常に大事であるから、対ソ関係については直ちに当方としての措置をとる必要があると判定しまして、外務当局に連絡を命じ、われわれとしてはいろいろ外務当局に資料も出したりしたわけです。しかし外務当局は、やはり国際関係というのは非常に慎重にやらなければならぬこともありましょうし、資料も集めるし、部内の会議もありましょうし、それからいままでの国際慣例とか日本とソ連との関係とか、そういういろんな問題を調べて最終的判定を下して、しかる後に外交関係というものは発動していくべきものであろうと私は思います。そういうことで先方に対して意思表示が行なわれ、先方もまたおそらく調査をしたと思いますが、二十五日たって、四月になってからいまのような報告の事態があったわけです。それで、そういうような先方と交渉している間は、これは発表すべきものではないだろう、落着したときに、こういう経過でこういうことがあったということを発表することが適当であるように思います。今後はそういう点は大いに反省をいたしまして、改革してまいりたいと思います。
  153. 受田新吉

    ○受田委員 防衛庁長官と私は見解を異にいたします。つまりこういう重大事件の発生に対処して、事件が落着して後に公にすべきであるというただいまの防衛庁長官の御意見は、これこそ秘密外交に通ずるものであって、外交上の秘密として外務省が考えている問題とは別の問題である。外交上の秘密と秘密外交は相違すると私は思うのですが、竹内政務次官、私の見解にお答えを願いたい。
  154. 竹内黎一

    ○竹内(黎)政府委員 私どももただいま防衛庁長官から述べられた見解と同じでございます。  ただ、この際一言釈明を許していただけば、私どものほうのアクションをとるまでに若干時間があった。これはいろいろと私どもとしても防衛関係に事実を確認する等、あるいはいま申し上げたような国際的な反響等を検討する等、若干の時間を要したわけでございまして、何か都合が悪いから特段伏せた、こういう他意はなかったということを、ひとつ御了解いただきたいと思います。
  155. 受田新吉

    ○受田委員 こうした事件は、おおむね最後に落着して後にというときには、非常に悪い事態になっているか、円満に解決している事態しかないわけです。これが日米関係、日ソ関係という、そうした立場上の防衛関係する問題であるだけに、非常にデリケートな要素をかかえていると私は思うのですけれども、事件が起きまして、直ちに防衛庁はこういう事件が起きたと天下に公表すべきである、そして外務省はこの事件の処理に当たって直ちにソ連政府に陳謝の意を表明した、こういうことを——事件が十日に起これば、翌日は新聞に政府の見解が表明され、国民はまたソ連に対して誤射事件を発生したことを深くわびる気持ちに、国民の感情もわき立つようにすべきだ、そういうところに外交上のうるわしさがあり、また外交の成功があると思うのです。私は竹内さんにお聞きしたいのですが、この種の事件を今日まで延ばしたことは、外交上の秘密の立場からやられたのか、いわゆる秘密外交と称せられる部類に入るものと思われるか、そのいずれかという点でお答え願いたい。
  156. 竹内黎一

    ○竹内(黎)政府委員 いわゆる秘密外交に属するものだということで、私どもの行動を起こすまでに若干時間的なあれがあったというわけではございません。先生指摘のように、秘密外交だからこっそり事を運んだ、こういうことではございませんが、先ほども申し上げましたように、事実関係防衛庁さんに問い合わせしたり、あるいは部内の会議等に若干時間を要したわけでございまして、決してぐあいの悪いことだから、できるだけ伏せておこうという意図ではなかったことは、御了解いただきたいと思います。
  157. 受田新吉

    ○受田委員 このことを通じ、防衛庁長官がかかる事件が起きてたいへん申しわけないと天下に宣言をし、外務当局は防衛庁長官のこの意思に基づいて、誤射事件が起こった処理を外交ルートを通じてソ連政府に陳謝を申し入れた、直ちにこれを国民に知らしめるという措置をなぜとらなかったかを聞くのです。
  158. 竹内黎一

    ○竹内(黎)政府委員 ただいまも申し上げたように、私どもは別段他意がなかったわけですが、事実関係から先生指摘のような疑念がこれまた当然出てくるものだと思いますので、今後このよりな事件がたびたびあっては一番困ることですが、そういった発表の関係につきましては、また先生  の言わんとするところを十分体しまして、わが外務省としても反省してまいりたいと思います。
  159. 受田新吉

    ○受田委員 防衛庁長官、これは私非常に懸念するのですが、外交上の秘密はわれわれも一応認め  てあげなければならぬと思うのです、外交の技術上の秘密は。しかしいわゆる秘密外交は外交を暗くする。その意味でわれわれはとるべきでないと考えております。国務大臣として秘密外交というのは排除される立場に立たなければならない。外交上の秘密は尊重するが、秘密外交というのは排除する。そういう意味から、今回おとりになった措置は秘密外交の部類に属する残念な現象である、かように私は思うのです。特にこの事件はソ連が好意をもって迎えてくれたから済んでいるけれども、先ほどからの質疑応答で明白に示されたように、もしソ連の軍艦が、攻撃行動に移った、その形を攻撃と認めて、個別的自衛権の発動の意識をもってこれに応射してきたとしたならば、いかなる事態が起こったか、はかりしれない一大事になったと私は思うのです。法律上、攻撃姿勢に移った日本のF86Fを向こうの艦長が撃てと命令を下すことは、絶対に私は不法行為でなくして、これは法律的には自衛権の発動だと思うが、法律解釈でどう思いますか。
  160. 久保卓也

    ○久保政府委員 私、必ずしもよくわかりません。ただ申せますことは、たとえば艦艇、軍艦——領土の延長でありますが、日本の領空に外国機が来た場合に、わがほうは正当防衛として直ちにこれに応射いたしません。わがほうが攻撃を受けた場合に正当防衛という考え方に立っております。共産主義諸国では領空を侵犯した場合にすぐに射撃をした事例がありますが、私どもの立場からしますれば別に紛争要因があるわけでもなし、日ソ間で交戦状態になっているわけでもございませんから、飛行機が来たからといってすぐに攻撃を艦艇側から加えることは、私どものことばから言えば過剰防衛になると思いますけれども、しかし国際関係というのはたいへん複雑なものでございまして、お互いにすきなことを申しますから、彼らのほうで自衛であると申せばなかなかこれは解決のしにくい問題ではないだろうかというふうに思います。
  161. 受田新吉

    ○受田委員 局長さん、わがほうが攻撃態勢に移っている、爆弾こそ落とさないけれども、向きを変えて艦に向かっている、その場合に、爆弾を落とそうと落とすまいと、爆弾を落とす可能性も予知されるわけでございますから、これに対して自衛権の発動として撃ち落とすということもあり得ることだ。プエブロ事件も現実に起こっている。そういう意味で、この場合に誤射であるから撃たないであろう、もし撃ったら向こうは情勢判断を誤った形だというような解釈は成り立たないと思うのです。これに応射した場合には不法行為ではない。法律的には攻撃姿勢に入って、突入する飛行機を、爆弾を投げようと投げまいと、もうすぐに爆弾を投げる態勢で入ってくるのを撃ち落とすということは当然あり縛ることなんだ。だからこのソ連艦が攻撃態勢に入った日本のF86Fを攻撃機と認めて未然に、爆弾を落とす前に撃ち落とすということは法律的にこの場合許されると私は解釈するのです。不法な応射ではない。法律論として私は成り立つと思うのですが、いかがですか。
  162. 久保卓也

    ○久保政府委員 国内の法規の解釈にしましても、いろいろな学者により、裁判官により解釈が違ってまいりますので、一がいに私は否定いたしません。しかし私どものほうでは、たとえばかりに外国の飛行機が攻撃態勢でわが領土に入ってまいりましても、撃ち落としたり、あるいはナイキを発射したりすることはありません。私どもの解釈では自衛あるいは正当防衛というのは、相手方がまさに、たとえば弾倉を開いたというようなことが視認されたり、そういうようなきわめて客観的な事実があって初めて応戦するということを正当防衛あるいは自衛と解釈いたしております。しかしながら、先ほど申し上げましたように広く解釈することも可能であり、ことに国際関係というものはきわめて不明瞭でありますから、そういうような自衛の発動であるという態度に出られた場合に、わがほうも対応はなかなか苦労するであろうというふうに思います。
  163. 受田新吉

    ○受田委員 日本の自衛隊の緊急発進などの場合における考え方をいま言っておられるようでございますが、しかし現実にわがほうの飛行機がソ連の軍艦の上に攻撃姿勢に入っているという形は、爆弾を積んでいようといなかろうと、攻撃という形に解釈できると私は判断するのです。幸いソ連はこれに応射してこなかった。ほんとうに不幸中の幸いだと思うのです。もしこのときに応射した——私、仮定論ではなくして、現実にあり得る問題にぶつかったからお尋ねしておくのですが、防衛局長としても十分心得ていただきたい。こちらが誤ったにせよ攻撃態勢に入った、向こうはそれを攻撃と見て撃ち落とした、そうしたらあとに続く別のF86Fがまたこれに入ってくる、それを撃ち落とされる。こういう情勢を見て現地の航空司令官が、ソ連艦によってわがほうがどんどん飛行機を撃ち落とされた、直ちにこれをたたけということで、一応中央へ上申してやるという時間的余裕がない、緊急避難の立場、正当防衛立場から現場でこれを処理するという場合が起こり得る可能性もあるのです。つまりたたかれても黙って見ておるという形ではなくなる事態が起こると思うのです。そういう事態が予測されるようなかっこうで今回の事件が起こっておる。そうすると今度は、わがほうが領海でやるわけでなくして公海でやるわけですから、その公海に対して出動して敵をたたくようなかっこうで攻撃を加える。その日本の自衛隊機に対して日米安保条約というようなものがどういうふうに動くかというようなことも、問題が起こるわけです。わが日本の施政の及んでおる領域でなく、公海で起こった事件に米軍が出るとは私は思いません。けれどももう中曽根長官が、公海でこれを迎え撃つ、これは防衛だという解釈をとっておられる以上は、公海で起こった事件に対して米軍がどういう形をとるべきか。つまり領域に対する侵犯の危険が増大したためという形で公海でこれを処分しようとしているという場合に、米軍の行動についても非常なデリケートな問題が起こってくるというような事件が発生する可能性がある。私はそういう事態が予測されるような今回の事件だと思うのです。ソ連は国連憲章五十一条の個別的自衛権の発動としてこれを応射して撃ち落とした、こう解釈する。そうしたら今度わがほうは日米安保条約の発動を要請するとかいうような、不測の事態が思わぬところから起こる可能性がある。特に日ソ間の関係が非常に悪化した事態などではそういうことが予測されるわけです。いま国際情勢が非常によい、日ソ間の情勢がよいという前提で、比較的そのことを軽く考えておられるけれども、そういうことは常に深い配慮をして誤りなきを期さなければならぬほどこれは重大な問題です。竹内次官、そう思いませんか。事件の内容を非常に重大だと思いませんか。
  164. 竹内黎一

    ○竹内(黎)政府委員 今回のわが自衛隊機による誤認攻撃につきまして、ソ連側が非常に善意をもってわがほうの説明を了承してくれたわけでございまして、これはまさに私は両国の親善関係の結果だと評価しております。かりにソ連艦船のほうから応射があった場合はどうかということですが、私はちょっとその場合は研究しておりませんので、きょうは答弁を保留させていただきます。
  165. 受田新吉

    ○受田委員 この事件は非常に重大な要素をはらんでいるわけです。一歩誤れば日ソ間の戦闘状況をかもし出す危険がある。そして日米安保条約の発動を誘発するような危険も考えられるような形の事件です。それをソ連の好意で押えられておることでこれは済んでおるわけでございますが、法律論争でいったら、そのときに日本の飛行機を撃ち落とされた、それに対してわがほうがこれを攻撃に行った、それが今度は米国への協力要請につながってきた、というようなところへ発展することは全然ないという問題でない可能性を生ずる問題なんです。そういう重大な問題です。非常に深刻な問題である。  私は防衛庁長官にちょっとお答えを願いたいのですが、さっき大出さんにも鈴切さんにも答えておられたようだが、この問題は非常に軽微な問題のような扱いをしておられるようです。しかし一歩誤れば重大な国際問題になり、安保条約の発動にもつながる危険がある。そういう状態の誤射事件である。私はこの責任はきわめて重大であって、軽視すべき軽微なる問題ではないと思うのです。幸い日ソ間の関係が好転している時点において起こって、ソ連の非常に好意的な出方によって救われておると思うのですが、むしろ私はこういうときにこそこういう問題の責任の処理を明確にしていただかなければならぬと思う。第一線のパイロットが能力がなかったなどという軽微な問題で片づけるべき事件ではないと思うのです。F86Fというのは一人しか乗れない飛行機です。ファントムのような二人の者が搭乗している飛行機じゃないのです。一人で操縦もやらなければならない、偵察もやらなければならない、判断もしなければならないという、高度の知性と行動を必要とする最も重大な責任を持って、重荷を背負って一人乗りをしているのがこのF86Fです。したがって、そのパイロットに、おまえたちの技術能力、判断能力が不足したなどといって、しかりとばすような問題じゃないのです。少なくとも命令が下達していない。そういう非常に不用意な訓練が行なわれておる。一体、西部航空方面隊の司令官や第八航空団の責任者たちに注意をするというくらいの問題じゃないですよ。これはゆゆしい外交問題がひそんで、四十日間も無視して秘密外交のそしりを受けておる大事な問題であるのですがね、長官。かつて早川自治大臣が大使館事件で責任を負ったことがあるのですけれども、日ソ間の好転した外交の中で起こった事件とはいえ、防衛庁の中に、自衛隊の指揮系統の中にどこかにたるみがある。抜かっておる。抜かっているからこそ、あのパイロットの一人が判断を誤ったようなかっこうでは済まされないような大事件が起こっているのです。これは自衛隊という権力団体としては最高の団体の中に、上は長官から下は一兵卒に至るまで、その責任の所在を明確にし、その連絡協調をはかる統合幕僚会議というものが、このときは陸海の連絡あるいは海空の連絡を密接にやって、ただ航空幕僚長だけの責任でもなければ海上幕僚長だけの責任でもない、統合幕僚会議の議長が責任を負うべき問題であり、同時に長官自身が責任を負うべき問題であると思うのです。空と海の連合訓練ということでございますから、その間の海上の伝達が航空の末端に及んでいない。そういうものにたるみがある。そして、一歩誤れば安保条約の発動にまで危険が及ぶという可能性さえ生ずる事件が起こっておる。私は、中曽根長官は将来を期待される大政治家であり、あなたにその将来を期待する野党の議員の一人として、こういう事件の責任の所在についてこそ、名長官として、その政治家としての判断を誤らないで、責任の所在をどうするか、そしてその責任の処置をどうするか。こういうことについて長官が、私の関与するところじゃない、末端の事件などといま仰せられたのを聞いて、はなはだ残念に思うのでございまするが、かかる重大な事件が起こっておる、四十口無視して国民に知らされない、秘密外交のそしりを受けているこの問題の責任者として、長官、責任の所在とその処置についてお考えを承りたいし、私は、特に長官自身がそのたるみの責任を負っていただくことによって自衛隊は新しい態勢に入ってくれる、長官たるの責任をすかっとおとりになることによって、むしろ自衛隊の内部が一そう結束して優秀な自衛隊の指揮系統ができ、かかる事件を必ず未然に防止し得るりっぱな自衛隊になると思うのでございまするが、私の考えが間違っておれば間違っておると申していただきたいのです。
  166. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 御意見はつつしんで拝聴いたしました。今後大いに参考にして深く戒めてまいりたいと思います。こういうような過失を再び繰り返さないように自衛隊を引き締めまして、国民の皆さんの期待にこたえる自衛隊に成長発展させたいと考えております。
  167. 受田新吉

    ○受田委員 私の質問の責任の所在とその処骨について、注意をしたという程度のお話でございますが、長官を含めての責任というものは一体どうなるのか。末端の一兵がちょっと行進中にたいした影響力のない事件を起こしたという程度のものとは違った、国の基本をゆさぶる大事件になっておる。だからこそ四十日も外交関係の努力もし、秘密外交もやられて、国民の前にこれを知らしめなかったわけですから、非常に重大な事件です。この事件のウエートの置き方を、大臣非常に軽く見られておるようでございまするが、外交的に見て外務省だって、竹内次官、あなたは四十日間これを隠して公にすることのできなかったこういう事件は、外交の事件としては重大事件に入るか軽微な事件に入るか、あなたは政務次官として大臣にかわって御答弁願います。
  168. 竹内黎一

    ○竹内(黎)政府委員 私どもは今回のこの事件が決して軽微なものだとは考えておりません。ただ事実関係におきまして、私どもが行動を起こすのに若干の時間を要したことは、いま御批判をいただいておるわけですが、それはある意味においてはごもっともと思いますので、今後このような事件の処理にあたっては誤解のないようにしてまいりたいと思います。
  169. 受田新吉

    ○受田委員 これは非常に大事なことだからもう一ぺん外務省を追及したいのですが、このたびの事件は、外務省がこういう経緯をもってかく落着した、こういう発表をすべき筋のものではないのか。防衛庁だけではなくして、外務省も一緒に発表すべき性質のものではないかと思いますが、いかがですか。
  170. 竹内黎一

    ○竹内(黎)政府委員 通常ですと、この場合は防衛庁も関係しておるわけですから、外務省、防衛庁一緒に発表という形態をとっております。
  171. 受田新吉

    ○受田委員 このたびの事件は、仰せのとおり両方が同時発表になっておるわけですか。
  172. 久保卓也

    ○久保政府委員 考えてみますると同時発表がよかったと思いますが、たしか私どものほうだけで発表したように思います。
  173. 受田新吉

    ○受田委員 事重大な外交問題なんです。そこに外務省が責任のある外交の役所として、こういう事件の処理についてはその陳謝並びに結果の発表をなさるべきである。責任がどっちにあるかということになってくれば、当然やったことは防衛庁がやったのであるが、外交の結果は外務省が発表すべきことである。同時発表のほうがよかったと局長がいま仰せられたとおり、私がさっき申し上げたのは、今回の事件の引き延ばしは外務省に責任があるのか、防衛庁に責任があるのか、その理由はどこにあったかという冒頭の質問が、結論としていま局長によって双方の責任であるということで、つまり引き延ばしの責任は両方が負うべきであるという局長の答弁と了解してよいかどうか、竹内さん。
  174. 竹内黎一

    ○竹内(黎)政府委員 ただいま防衛庁のほうからもお答えがございましたように、共同の発表が最も好ましい措置であったと思います。そういう意味におきまして、今回のこの事件について、わが外務省のとった行動におきましても遺憾な点があったことを率直に認め、今後はこの種のようなことのないように反省してまいりたいと思います。
  175. 受田新吉

    ○受田委員 私はもうそういうことで追及を避けますが、結果的に見てということでなくて、今後の外交は国民の協力を得なければ勝利は得られないのです。外交の勝利は国民の世論を盛り立てる。これを即時天下に防衛庁が発表し、外務省がソ連にいま陳謝を申し出ておる、こういう形を天下に宣言して、国民は悪かったなということで、それで国民の中に分裂するというような世論というものはあり得ぬことで、悪いことは率直にわびるという国民性を持っているわけですから、そういうところに国民の支持を得るような外交を進めていくべきである。これが幸いこのような結果になったからよかったが、重大な結果でも起こって安保条約の発動などに及んで、アメリカまでこれに乗り出すような事件になるという、予測してはならぬようなことの可能性を生じている。いまそういうことは法律的にもとてもあり得ぬのだという御弁明はないと私は思うのです。そういうことはあり得ぬと弁明ができれば御答弁願いたい。長官、これは法律論ですからあなたに明確な御答弁を願うことはむずかしいかもしれませんが、ちょっと関連することですからお尋ねしておきますが、今度の事件は公海の上で起こった事件だ。ところが日米安保条約は日本の施政のもとにある領域において武力攻撃が加えられたときに共同行動をすると、こう書いてある。長官は制海権、制空権は公海のもとにおいても確保されなければならないという御意思でありますので、公海の上で起こった事件ということが、今後当然限定戦の立場においても、武力侵略ということに対処する立場で行なわれる可能性があるわけです。そのときに公海の上で事件が発生した、たとえば今回のように、たまたま今回は演習であったからよかったが、海上から艦艇が日本を侵略する、それを公海で迎え撃つというときに、領域の内部まで事件が及んでいない場合は日米安保条約の発動はない、つまり公海の段階では日本の自衛隊だけで単独でやるんだ、領域に入って初めて日米安保条約の米軍の協力があるという解釈であるのかどうか。公海問題が長官に非常に重大な問題として考えられているだけに、今回の事件を契機にして、公海上で起こった侵略、それに対するわが国の攻撃的防御、防御的攻撃といいますか、それはどちらでもいいが、公海まで出かけてやるわけですから、そういう意味で索敵して、敵の軍艦はおらぬか探り回るのが今度の演習の目的であったといま局長いわれておったのです、目標艦はおらぬかと敵の軍艦をさがしていたら、ちょうどそこへいいえさが来た。それやっつけろという、いささか攻撃精神を発揮しろというパイロットの精神もあったと思いますが、やっつけろというこういう気持ち、そういう気持ちをわき立たせるというような今度の演習目的ということを聞き、敵を求めよという指示があったと聞いたのです。おそろしい攻撃精神ですね。そういうことを私は考えていくときに、非常に危険な考え方が一つひそんでいるのは、公海の上で敵を求めてこれを処分するということは、領域の外の事件として起こったものであっても日米安保条約の発動の対象になる問題になるかどうかをお答え願いたいのです。
  176. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いまの安保条約の解釈の問題は、私はよくきわめておりませんので、政府委員あるいは外務省からお聞き願えれば幸いだと思います。
  177. 久保卓也

    ○久保政府委員 公海におきましてのわが艦艇あるいは商船に対する攻撃は、必ずしも日本に対する攻撃とは認められないだろうと思います。日本に対する直接攻撃があったかどうかということは、やはりいろんな条件を考慮して考えなければいけない、これは政府なり国防会議なりが御決定になることだと思います。したがいまして、単純に、たとえば潜水艦による攻撃があった、あるいは機雷によるわが商船の触接があったという場合にも、たとえば海上警備行動というのもあります、防衛出動でない海上警備行動というのもあります。したがいまして、単純にそういった事件がわが国に対する直接攻撃と認められるか認められないかはやはりその条件次第でありまして、一般的にいえばある一隻の船が攻撃されたからといって、わがほうはおそらくは直接の日本に対する攻撃があったとは認めないでありましょうし、したがいまして米国と協議して日米安保条約が発動するということではあるまいと思います。  なお、公海における艦艇攻撃と申しますか、非常にアブノーマルなふうにお受け取りのようでありますが、われわれのほうの艦艇に対する攻撃というのは、あるいは索敵といいますのは、日本に対する上陸作戦があった場合に、日本に上陸した後にたたくよりは、日本に上陸する前にたたいたほうがいいのは理の当然であり、したがいまして、そういう日本の領土に接近をしてくる艦艇に対する攻撃をするということであります。したがって、先ほどの公海論争なんかもその辺からおよその感じは出てくることであろうと思います。
  178. 受田新吉

    ○受田委員 領域に入って領域に攻撃が加えられたときに、日米安保条約は発動するわけですね。そうらやんと日米安保条約五条に明記してある。公海の上で攻撃が加えられるというようなことはどこにも発見できない。そうすると、領域に攻撃が加えられない、まだ加えられていない、しかしいま加える目的をもって来ておるのを公海でたたくのは、日米安保条約の領域の中における攻撃と同じに見ると解釈していいのですか。明確にしていただきたいのです。
  179. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 第五条では「日本国の施政の下にある領域における」というふうに書いてあります。その施政のもとにある領域という概念がどういう概念であるか、これは条約局長なり法制局とよく打ち合わせて、そして的確な御答弁をしなければいかぬと思います。
  180. 受田新吉

    ○受田委員 私の質問時間がないようになっておるようですから、私、結論をもう一つお尋ねしておきたい。この問題はいずれ、四次防を中心とした防衛質問が近く展開されるわけでありますので、きょうはその誤認射撃事件だけに限定してお尋ねをもう一つしておきたいのです。  私はさっきちょっと触れましたが、海と空の合同対艦攻撃演習というような関係になっておるようでございますが、海と空の自衛隊の協力関係、また陸を含んだという合同演習、そういう場合に、その統合幕僚会議あるいは二つの幕僚長たちの連絡調整、そういう機関は一体こういう場合にどういうふうに動いているのか、ただ連絡をするだけになっているのか、こういうことをやろうと思うからよろしく頼むということになるのか。あるいは双方が入り込んでこういうことは命令下達を徹底してほしい、こういうときはこういう装備をしてほしい、そうして隊員の訓練上はこういうところへ注意してほしいとかいうような非常にこまかいところまでやらなければ、陸海空三幕がばらばらになる危険があるのです。そうしていまでも世間でいわれている、日本の航空自衛隊は、かつての陸上自衛隊あるいは陸軍機の塔乗者が責任者になっているのが多いといわれるほど、陸上航空自衛隊のような印象を与えておるとかいう批判も出るほど、海に対する認識が薄い。せっかく長官が海、空をねらっておられて新しい構想をお練りになっておっても、そういう陸海空の三つの特色を生かしながら三幕の性能を最も高度に発揮することが、しつけがしてない以上は、効果をあげるということは非常にむずかしいと思うのです。統合幕僚会議の議長というものがあって、今回でも、陸上は関与してないけれども、海空の二つの幕僚長と統合幕僚会議の議長とが相談してもいいわけです。そういうものを考えておかれて、長官自身の補佐役が大局を常に把握しておるように、長官は末端の事件といえども、こういう事件は事外交に関するおそれがあるのですから、公海上の訓練といえば当然予想される事態があるのですから、そういうところに終始留意しておかねばいかぬ。そういう統合幕僚会議と各幕の連絡、合同訓練の性格、その間の指揮系統をどうするかという問題等を明白に示していただきたいし、それで私の時間が終わるわけです。
  181. 久保卓也

    ○久保政府委員 統合訓練計画は、統合幕僚会議が作成することになっております。したがいまして、各幕僚監部を統幕で調整するようになっております。さらにこの同じ統合訓練あるいは個別の訓練について、防衛局も所掌をいたしております。ただし今回のケースにつきましては、先ほど長官も申されましたように、地方隊レベル、つまり佐世保地方総監部あるいは西部航空方面隊司令部といったような地方隊レベルのものにつきましては、一応、総隊あるいは自衛艦隊にまかせられる。あるいは地方総監部といったようなものにまかせられておる。で、地方総監部が二つにまたがるような場合、そういったような場合には幕僚長が指揮をし、当然長官の承認を受けてそういった訓練が行なわれるということで、私どもの従来の認識からすれば中規模もしくはそれ以下の訓練であった。したがいまして内局あるいは統合幕僚会議、したがいましてまた長官のところには達しておらなかったということでございますが、先ほどの御指摘もありますように、少なくとも統合幕僚会議なり私どものほうとの連絡関係をどうするかということは、一つの課題として与えられたというふうに認識をいたしております。
  182. 受田新吉

    ○受田委員 おしまいです。長官、私、御注意だけ申し上げておいておしまいにしますが、先般せっかくこういう事件が起こって、長官責任をお持ちの段階で、私の郷里の岩国へおいでになられて特定候補の応援をなさった事態があるわけです。これはやはり防衛庁長官という立場で非常に対外的に影響力があるので、地方の市長という選挙などで長官御自身が応援にお立ちになるというようなことは、長官に好意を持っている市民は二分されるわけで、小型の市町村の選挙には防衛庁長官はお立ちにならぬほうがいいと思うのです。これは御注意しておきたい。
  183. 天野公義

    天野委員長 東中光雄君。
  184. 東中光雄

    ○東中委員 今度の事件が起こった訓練は、航空自衛隊が海上自衛隊と直接の連携をとらないで索敵し対艦攻撃をやるということが、いま明らかにされたわけですが、その索敵、それから対艦攻撃訓練というのが最近非常に激しくなってきているということがいわれているわけですが、いつごろからこういう訓練が始められておるのか、また年次計画でやっておるといわれておるのですが、どの程度やられておるのか、これを明らかにしていただきたい。
  185. 久保卓也

    ○久保政府委員 F86が装備されましたのが三十一年でありますが、一応そのころからぼつぼつと訓練が始められております。本格的になりましたのは三十七年に海空で協定をいたしまして、それ以降訓練が続けられておる。しかし、先ほども申し上げましたように、当初はF86の任務というものは主として陸上支援戦闘というところに任務があったわけでありますが、加えて海上における艦船攻撃ということにも力を入れなければいけないということは、はっきりした年次はわかりませんが、ここ数年特にそういった意識のもとに訓練をしておるということであります。
  186. 東中光雄

    ○東中委員 海上での索敵、対艦攻撃ですから、これはまあ索敵とあわせて海上訓練であることは明らかなので、ここ数年来とおっしゃるのですが、今度の訓練の場合、索敵区域、これはあらかじめきめてやっておられると思うのですけれども、それはどういうふうにきまっておるのですか。単に北九州海域というだけではどうかわかりませんから、どういうふうになっておるのですか。
  187. 久保卓也

    ○久保政府委員 北九州北方海域、主として壱岐及び対馬周辺ということであります。
  188. 東中光雄

    ○東中委員 日米共同声明が出されて、朝鮮半島を日本の生命線とみなすという一つ方向が出されておる。防衛白書でわが国及びその周辺の海域や空域における航空優勢、制海の確保につとめるということが出されておる。長官も何回も言われておることですが、対米従属の軍国主義復活や強化策の中で航空優勢、制海確保のための公海上における索敵、対艦攻撃訓練が強化されておる、こういわざるを得ないのですけれども、その場合に防衛水域を一方的に設定する、こういう計画で進められておるということ、いまそういう訓練がやられておるのかおらないのか、この点を明らかにしていただきたい。
  189. 久保卓也

    ○久保政府委員 韓国が、李大統領のころに、そういった水域を設けたことがあります。理論的にはそういう考え方も成り立ち得ますけれども、いまのわれわれの防衛行動の訓練あるいは構想といったようなものの中には載っておりません。つまり現在われわれはそういったことを考えてないということであります。
  190. 東中光雄

    ○東中委員 昭和四十三年海上自衛隊演習という名前の訓練が行なわれたと思うのですが、航空自衛隊、陸上自衛隊も加えて、山本啓志郎自衛艦隊司令官を統裁官にして、艦艇約八十隻、航空機七十機、兵員一万五千、非常に大規模な演習でありました。第一期の実際演習は、四十三年の九月二十七日午前零時から十月二日正午までやられている。続いて第二期として、十月二日から十月十二日まで研究会がやられた。  この演習で、対馬海峡、津軽海峡をはじめ佐世保、関門西港、それから舞鶴、新潟港など、主要港湾の防護ということで、北九州周辺海域を含めて日本海沿岸全域の海域にわたって、艦艇の潜入、物件の搬入を阻止するということで防衛水域を設定する。防衛水域について一定の海域から一切の艦船を締め出すかあるいは自衛隊の制圧下に置いている。こういう制海権確保といいますか、そういう訓練を現にやっておるようですけれども、いま訓練では、理論的には成り立つけれども、防衛水域ということについてはやっていないようにおっしゃったのですが、四十二年の海上自衛隊演習ではやっているのじゃないですか。いろいろ論議をされて検討されているのじゃないですか。
  191. 久保卓也

    ○久保政府委員 いま申し上げましたように、防衛水域ということは理論的には考えられまするし、防衛上はそのほうが便利であるように私も思います。しかし、われわれの防衛構想の中では、そういう考え方は取り上げておらない。訓練の中で便利であるためにそういった水域を設けてやるということはあるいはあるのかもしれません。私は、いまの訓練の想定を存じておりませんけれども、そういうことはあるかもしれませんが、防衛庁レベルで考えられている防衛構想の中にはそういった問題はない。しかも、この問題を取り上げるとすれば、これは国際的にもいろいろ問題があるわけでありまして、部隊側で考えているようにそう容易にできるものではなかろうというように思います。
  192. 東中光雄

    ○東中委員 いま理論的には成り立つし訓練の中ではあるいはやっておるのかもしれないと言われた防衛水域構想といいますか、これはどういうものなんですか。
  193. 久保卓也

    ○久保政府委員 防衛行動のときに非常にむずかしいのは、たとえば潜水艦なら潜水艦というものが、どこの国のものであるか、当然わからないわけであります。ところが、どこの国の潜水艦かわからない船からわが商船が攻撃を受けるということに対して、どうして区別をするかという問題がたいへんむずかしいわけであります。そこで、先ほど理論的には考えられると申し上げましたのは、特定の防衛水路を設けて、その中に入っている艦艇は、たとえば浮上は必ずしなさいというふうに義務づける、あるいはその水域に入っている潜水艦はわがほうはどこの国であろうと攻撃を加えるというような問題が、これは理論的な問題でありますが、起こり得るわけです。そのほうが防衛がしやすいという問題があるということであります。しかしながら、わが国は、国際親善といいますか国際協力ということで方向は進んでおるわけでありまして、そういった水域を設けることが防衛上容易であるからといって、一体国際上適当であるかどうか、これはまた別問題でありまして、防衛というものは必ず政治に従属するものでありますから、防衛上容易であるからといって、そういった方向はむずかしいのではないか。しかし理論的にはそういった問題が考えられるということであります。
  194. 東中光雄

    ○東中委員 理論的な問題だけではなくて、たとえば三矢研究の中で、「日本間接防衛作戦」という項目のうちの「朝鮮作戦の作戦区域について」という項目の中でこういうことをいっておりますね。米国側が「日本および朝鮮に対する近海の海上交通保護作戦、対島、津軽、宗谷の海峡封鎖作戦、米海軍基地の港湾警備等に対しても積極的に協力を要望した。」これに対して日本側は「防衛出動以外のあらゆる権限を行使して、積極的に協力し、情勢推移の勘案の上必要ある場合は速かに防衛出動を下令し協力する旨回答。」それに対して米国側が「朝鮮作戦支援のみならず、日本に対する輸送支援等にも直接的に影響するので、防衛出動下令困難な場合は、防衛水域、空域等を指定して共産側の行動を制限することについて提案があった。」こういう記載が、国会に出された資料の中にあります。このころからすでに防衛水域という問題が具体的に検討の対象になっているし、四十三年の訓練の中では出ている。今度の場合も、対馬海峡、あの水域を広範にとにかく索敵して攻撃をする、こういう非常に侵略的な、攻撃的な性格を持っているというふうに私は思うわけですけれども、こういった、単に局長の言われているような理論的な問題だけじゃなくて、実際にそういう方向で進められておるのではないんですか。
  195. 久保卓也

    ○久保政府委員 先ほども申しましたように、防衛は外交なり政治なりに従属すべきものであって、単純に、技術的に便利だからといってそれを取り上げるべきものではなかろうと思います。  それから、いま三矢研究内容を読み上げられましたが、もしそのとおりであるとするならば、たいへん不都合な事柄であります。私どもがチェックしておれば、そういった書き方はされないだろうと思います。  それから、いま索敵ということが攻撃的だとおっしゃいましたけれども、訓練の任務、目的というものは、何べんも申し上げましたように、日本に上陸してくるかもしれない相手国の艦船を攻撃するということでありますから、当然日本本土に接近した艦艇ということであって、日本に上陸してくるであろう艦船を攻撃するということは、それは攻撃的であっていけないということはちょっと通らない議論ではなかろうかと思います。
  196. 東中光雄

    ○東中委員 制海権を確保する、あるいは航空優勢を確保するという日本周辺の海域、空域、要するに公海、公空ですね、その範囲が、たとえば防衛水域という形で、あるいは海峡の閉鎖という形で広げられていっている。どこまで行くんだということが非常に問題になるわけですが、その点で一つ長官にお伺いしておきたいのですが、そういう範囲を明確にきめないで索敵し、あるいは敵を見つければ攻撃するというのが今度の事件で起こっているわけですから、どこまで広がっていくのか。そういう限度をどう考えているのかということですね。それを明らかにしていただきたい。
  197. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 防衛水域というようなことは考えておりません。
  198. 東中光雄

    ○東中委員 公海上で制海権を確保する、航空優勢を確保するといっているその範囲は、それはどうなんですか。
  199. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それは、そのときの客観情勢、あるいは科学技術の進歩、兵器の進歩、あるいは国際的な世論、あるいは国民的な世論の背景、あるいは日本防衛するに必要なものがどういう範囲、限度であるか、自衛権の正当な行使というものはどういう体系で行なわれるべきであるか、そういう総合判定のもとに、ケース・バイ・ケースで考えらるべきもので、いまから、かつて韓国がいったような防衛水域というような特定の海面を考えるというようなことはやりません。
  200. 東中光雄

    ○東中委員 相手国の——公海上の制海確保あるいは航空優勢ということは、結局日本の周辺地域で、その範囲が明らかにそのときの情勢で変わってくる、こういうことだと、公海、公空というのは、結局相手国の領海、領空に接するところまで行くわけですから、そこまで進んでいくことになると思うのですが、いま防衛庁が防衛識別圏を発表されておりますね。この防衛識別圏の日本の航空情報区、東京FIR、この範囲を越して、ソ連が航空管制権を持っている地域にまでずっと入っていっていますね。いままではソ連は航空管制権を持っていなかったけれども、今日では持っている。ここに図面がありますが、この斜線のしてある部分、これだけソ連の側へ入っております。これはFIRについて国際的な条約でつくられている航空管制権の範囲内です。日本の範囲がここまでで、そこから先はソ連が飛行機をコントロールする。航空管制をやっている。だから日本はわからないわけです。ところがその中で防空識別圏をつくっているということになると、本来日本がわからぬ状態の中につくっているわけです。入っていっているわけです。そしてその識別圏を越せばスクランブル態勢に入るということになると、これは非常に重要な問題になるんじゃないか、こう思うのですが、どこまで広がっていくのかという限度がわからない。いま現に国際条約上のそういう範囲を越したところへ行っているという点について、長官、どうお考えになっておりますか。
  201. 久保卓也

    ○久保政府委員 ICAOのほうの協定による区域というのは、これは航空路管制をやる区域でありまして、世界的に協定されたそれぞれの責任分野が認められているということであります。ところがADIZという、防空識別圏というのは、航空自衛隊の便宜のために、自分の便宜のためにやっている、と申しますと誤解が出るかもしれませんけれども、わが自衛隊機がこの地域を出入りするときに自衛隊側に連絡する、サイトのほうに連絡をするということでありますし、民間機につきましても、一般の通報、フライトプランというものはもらっておりますから、そのフライトプランに載ってない国籍不明の飛行機が出た場合には、一応その方向、それから高度その他、行動の推定によりまして、こちらは領空侵犯するおそれがあるかもしれないという意味でのスクランブルをかける。これは年間四百回くらいにのぼるわけで、これはそれぞれの国が、万一のことを考えて、つまり本土の主権というものを守るためにそういった防空識別圏というものをつくっているわけで、その点はおそらく外国にしましても、たとえばソ連であれ、韓国であれ、中国であれ、あるいは台湾政府であれ、それぞれそういった防空識別圏を持っている。その点は交差しているに違いないと存じます、外国のことは存じませんけれども。というのは、ごらんになればわかりますように、それぞれわりあいに外国に接近しているわけですから、それぞれの国がまた自分の国のために防空識別圏をつくるというのもやむを得ない。そういうのは、現状ではないんではないか……。
  202. 東中光雄

    ○東中委員 スリップをもらうのは、日本の航空管制、東京FIRの範囲内のものについてもらうので、ソ連のFIRの中に入っているものについてはそういう情報は入らないわけでしょう。その情報の入らないところで、ソ連のコントロールしているところで、今度は日本防衛という立場で、その航空管制権とは別に、一方的に判断してスクランブルをかけていく、こういうことになるわけですね。これで、挑発的行動だということで抗議を受けたりしたことはないのですか。
  203. 久保卓也

    ○久保政府委員 いまお示しの図面の赤線の入ったところのことをお聞きのことだろうと思いますけれども、赤線のところに飛行機がこつ然としてあらわれるわけではないので、ソ連のほうから来た、かりにソ連のFIRのコントロールでそこに来て、そこで引き返すということであれば、これは航跡が当然出ますから、そういった問題はない。ところがその赤線の引っぱったところから日本のほうに入ってくるようになりますと、普通の民間機であれば、日本の東京FIRの範囲に入ってくるものであれば、これはフライトプランがあるからわかるということで、一応区分がつくわけでありますから問題は生じないと思いますし、現実にそういった抗議その他の問題は生じておりません。
  204. 東中光雄

    ○東中委員 防衛識別圏の中へ入ってくる、しかし東京FIRに入らないという部分は、フライトプランは来ないわけですね。だから防衛識別圏を越して入ってくる飛行機はソ連のコントロール下においてあるわけです。そういう場合にスクランブルはかけるのですか、かけないのですか。
  205. 久保卓也

    ○久保政府委員 いま申し上げましたように、その赤線の引いてあるところに入って引き返すような航跡があれば、スクランブルはかからないわけであります。たまたま方向日本のほうを向いており、それからフライトプランもなし、そしてその赤線に入っているということであればスクランブルはかかるかもしれません。しかし、もし日本のFIRに入ってくるものであれば、これはフライトプランがあるはずだし、ないものについてはスクランブルがかかる。これは当然である。フライトプランのないやつで日本に来るものは、あるいは国籍不明機で上空侵犯するかもしれぬということで、スクランブルがかかります。もしその飛行機が途中で引き返せば引き揚げる、スクランブルの飛行機も途中で引き返すということで、問題はないと思います。
  206. 東中光雄

    ○東中委員 本会議の時間が来ましたので質問をやめますが、いずれにしましても、防衛水域を設定してその訓練をやっていく、そういう中で索敵、対艦攻撃というものが起こっておる。それが最近非常に激化しているという中でこういう事件が起こったので、自衛隊のあり方として、いまの防空識別圏がFIRを越しているということも含めて、非常に危険な方向に向いているということを私たち指摘し、事件が起こったときに、こういう演習をやらないようにということを強く要請して質問を終わります。
  207. 天野公義

    天野委員長 次回は、来たる二十七日火曜日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後二時一分散会