○橋本国務
大臣 だんだんの
お話、たいへんけっこうでございますが、ただ、私はタクシーは大量交通機関だと思っておりません。いわゆる大都市交通における大量交通公共機関は国鉄、東京でいえば国電、それから私鉄、そして地下鉄、バスで、タクシーは補助機関である、こう考えております。これは世界の大勢であります。しかし現実は、もちろんおっしゃるように二百五十万の人を運んでいるのですから、大衆的な交通機関と扱われておりますが、そういう状態は無理なんです。これは私よりも
大出さんのほうが外国に行っている数が多いですから、経験はおありでしょうが、たとえばロンドンのような大都会でも、タクシーは八千台にすぎません。ニューヨークでもやはりその前後でございます。パリが少し多いのですが、それでも一万台。東京は、ロンドン、ニューヨークと同じ人口で三万台です。もしハイヤーを加えれば四万台という四倍に近い数なんですね。これはもちろん原因があります。
一つは、日本は地下鉄が非常におくれておったということ、それから道路事情が非常に悪い。道路事情が悪いのは、戦後初めて道路らしい道路をつくってきた。ロンドン、ニューヨーク、パリに至っては、百年前、二百年前から道路をやってましたから、したがって幹線道路は片道五車線以下の幹線道路はない。日本で幹線道路といえば大体四車線ですね。ですから、最近バスの優先レーンというものを言ってますが、優先というのは結局走れないということなんです。前にタクシーがおれば走れないのですから、したがって、外国でやっておるように専用レーンでなくては
意味をなさないのです。ところが、日本は道路事情があるからできない。また地下鉄が、御
承知のように、まだロンドンの十分の一という程度でありますから、これもまだ十分な機能を果たしていない。その
意味において、現在のタクシーというものがやはり大衆的な機関でありますが、これを生かす必要はあります。しかし、それはもう将来を考えますと、私は、タクシーというものはタクシー産業とは思っていません。ロンドンのごときはほとんど会社はありません。全く個人です。あっても、二、三十台ぐらい持っている会社が三つ四つあるくらいです。全部個人です。それはもう産業として成り立たないんですね。さっき
自動車局長も言ってましたが、
合理化の面がない。少ないと申しますが、ほんとうは全然ないのです。一台の
自動車を動かす場合に、これはもう半分の人間で
自動車を動かすわけにはいかないのですから、したがって、四人、五人乗りの
自動車は四人、五人乗りの
自動車で、十人乗りのタクシーはできてないですから、したがって、これはもう
合理化の余地はない。
実はタクシーが無線をやったときに私もちょっとお世話したのですけれ
ども、七、八年前ですが、これは、
関係者は、無線を利用することによって車の効率をよくしようというのが出発点なんです、遊んでる車がないように。ところが、情勢がこの七、八年間で変わってきまして、いわゆる通勤、通学というものは、東京都内に都市集中化といいますか、ことにセントラルのところに集中化してくる、住宅がどんどん外へ伸びていく、こういうことからして、いわゆる通勤、通学というものが大都会における——これは日本だけではありませんけれ
ども、日本は特にはなはだしい。東京、大阪では、いわゆる通勤、通学が輸送の大きな問題になってきたわけなんですね。ですから、いまタクシーのいわゆる乗車効率といいますか、実車率というものが大体六二%くらいだと思います。五〇%をこえれば必ず乗れない人が出てくる。これは原則なんです。五〇%をこえれば、いわゆる五台に一台、十台に一台ぐらいしか、から車がない。そして時間を考えてみますと、朝の七、八時から九時ごろまでは、もうタクシーを通勤用に使う人があるものですから、この時間には乗車拒否というのがある
意味においては行なわれる。最もひどいのは、夕方の五時から七時ごろまではタクシーがフルに使われますから、そこでタクシーが足りない。その間の昼間
期間はどうかといいますと、やはりタクシーに乗る人も非常に少ない。そうしても大体六二、三%であります。これはもう異常なる状態です。実際から言えば、タクシーがここちよく乗れる状態といいますか、円滑なる乗車効率というのは五〇%が限度だ、こう言われているんですね。ことに、いまのように通勤、通学というものを考えますと、それ以下でなければならぬのですが、まあまあ五〇%の乗車効率ならばスムーズにタクシーの乗車が行なわれるわけです。こういう状態から見ると、タクシーというものについて、私は世間の人とはちょっと違った見方をしているのです。大衆大量交通機関だというとらえ方をするなれば、これはどうにもタクシーというものの解決策がついてこない。たとえばタクシーに対して国がタクシー一台を買うごとに補助金を出せるかというと出せない。バスのような場合になりますと、これは大衆交通機関でありますから、純然たる通学、通勤用に使わなくちゃなりませんから、これなどは将来考えなければならぬ。たとえ私鉄であろうと国鉄であろうと、こういうものに対しては国が考えてやらなくちゃならぬ。バス一台の購入に対して国が安い金を貸すかもしくは補助金を出すか、地下鉄に対してやっているようなことをやって、そこで
料金を押える。ですから、純然たる公共大量交通機関は国が積極的に助成すべきだ。そのことによって
料金をある程度押えていく。これが全体のわれわれの国民生活の中で占める大きな比重になるわけですね。ところが、タクシーの場合は国が助成するといいましても、最近私は大蔵省と交渉しまして、開銀の資金で幾らか融通資金を出すことにした。この程度くらいしか実際はできないのです。助成金を出すということはむずかしい。その
意味において、タクシーに対しては適正な
料金、独立採算制で私企業としてやれる適正な
料金を考えてやるべきものであるというのが私の主張なんです。従来の
料金の設定のしかたか——たいへん
大出さんはタクシーに対する理解ある、愛情ある
お話でありまして、私もその
意味においては
大出さんの御意見に全く賛成であります。へたをしておくと、法人タクシーと個人タクシーとを問わない、これは非常な苦境におちいって、かえって現在の交通飽和の状態に拍車をかける結果になる。ただ問題は、現在の場合に物価問題その他がありますから、そこで思い切った措置がやれるか、適正
料金というものにある程度
料金改定ということを含めるなれば、そこに政治上の問題があるわけなんですが、ただ従来の
料金の
決定のしかたにおいて、先ほど来
大出さんからありました愛情のある措置がある程度配慮されておったかどうか。この点私も疑問の点が——疑問というと変でありまするが、もっといろいろな点を計算に入れて考えてやるべき点が多くあったのじゃなかろうか。ただ頭から削るばかりが能ではないという気がいたします。
それにいたしましても、やはり交通機関の重要な面をになっておることは事実でありますから、したがって、これは利用するほうもある程度利用しやすいように、かつまた経営する人も適正な経営ができるような措置は積極的に講じなければならぬと思います。最近ニューヨークにおいて七〇%の値上げをしたところが、結果においては減収二〇%になった、こういう例が報じられております。これなどはいろいろの事情がございましょう。感情の問題も利用者との間にあったのじゃないかと思いますが、そういう結果を来たしても
意味がありませんので、いろいろ
運輸省としてやる場合においては、十分に業者も積極的に指導をする、あるいはまた利用者に対しても理解を持ってもらうという点で、将来
料金問題は適正な措置を講じていく必要があろうと思います。ただ、いま御
承知のように物価問題等もやかましいおりからでありますから、なかなかその点についての別な
意味での配慮が要るものでありますから、いまここでそういうことについての明確なお答えもできぬことはまことに恐縮でありますが、
お話のようないろいろの理解のある、また一方においては使用者にも迷惑のかからないたいへんけっこうなことになりましょうけれ
ども、いろいろな点を考慮いたしまして積極的な指導をしてまいりたいと考えております。
なお、トラックの
料金問題で
お話がありましたが、御
承知のように路線トラックについてはせんだって
料金改定を行ないました。これについても御意見があった点は非常に傾聴すべき点があると思います。そこで残っておるのは区域トラックでありますが、私はこれも少し乱暴な
考え方かもしれませんけれ
ども、
運輸省は許
認可事項がある
意味においては少し多過ぎるのじゃないか。ことに区域トラックというのは小荷物を持って歩くトラックじゃないので、これはどっちかといえばいわゆるトラックごと物を運ぶものです。貨車と同じことです。こういう問題に対してどうして
認可制度があるのか。実は私自身、私がやっておったわけではないが、私の弟がだいぶ前にトラック業をやっておったことがありました。したがって、たまには話を聞く、最近はいやになってやめましたけれ
ども。区域トラックになぜ
認可を必要とするのか、十数年前に
料金を設定した当時、公定
料金ですね。公定
料金で運べるトラックは一台もありません。それを二割も三割も安くしなければ運べなかった。今日ではその公定
料金が今度じゃまになって、いま公定
料金で頼めるようなトラックは一台もない。路線トラックの場合は原則が小荷物を運ぶのです。もちろんそれ以外のものもあります、七割くらいは大量貨物のようでありますが、これは
認可制度があってもいいと思います、それは汽車等あるいはそういうようなものとの
関係もありますから。しかし、区域トラックの問題は、車を持っている人と契約者、いわゆる
荷主との
関係ですから、こういうものに原則として
認可制度は要らない。でありますから、もし車を持っておる人が高いことを言うなれば、ユーザー側で自分で今度はトラックを持つようになるでしょう。自然と需要供給によってこれはきめられるのでありますから、ほんとうは区域トラックなどは
料金制度は原則として要らぬのじゃないか、こういう気が私はするのですが、そこまでやると問題がありましょう。
そこで、検討の問題ではありましょうが、現在のところは路線トラックはなお
料金を
認可制度にしておりますけれ
ども、先ほど
お話がありましたように、こういう中小企業というより小企業あるいは個人企業と言ってもいい、こういう人には役所では計算できないいろいろな問題があるのです。私は弟がやっておりましたから、そういう点よく知っております。ですから、
政府できめた
料金だけで事が運ぶかというとなかなか運ばない、こういう点もあるわけであります。しかし、こういう
制度がある以上は、
お話のあったような点もはやり腹の中におさめて、
料金をきめるときにはきめてやらないと、先ほど来
お話のあるように、去年きめてまた今度は七〇%の値上げだ、こういうあほらしいことが起きてくるのであります。この点は十分に配慮して、今後これらの
認可行政についてはやってまいりたい、かように考えております。