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前田参考人 そういう印象をお持ちになることも、私には理解できます。結論から申しますと、それが
NHKであると申してはおかしいかと思いますけれ
ども、要するにただいま、
国民全体と言わないまでも、私
どもの
契約世帯は二千万をこえているわけでございます。この二千万
世帯の方々、もっと端的に申しますと、人口一億をこえる中で約八千万以上の方々は一人一人異なった感覚を持っておると思います。これが、いわゆる新聞の社説であるとか民放の行き方との相違の
基盤はここにある。そういう意味では、私
どもは社説はつくらないという
考え方です。ただ、
判断の
資料はきわめて端的に、明快に、率直に提供するという
考え方であります。これが、さきに川上さんから
お答え申し上げた、私も法律家ではありませんが、
放送法の精神ではないかというように
考えるわけです。事実とはすなわち
資料を提供することである。現実に起こっておることは、これは報道すべきである。しかし、それがいいのか悪いのかという
判断は、最終的にはいま申し上げたような約八千万の、
契約してごらんいただいている方々の良識に従って御
判断を願うことが、より民主的ではないかという
考え方を持つわけです
たとえば、ただいま御発言の中に、
NHKはややともすれば
政府の御用
放送ではないかという印象を受けるような御発言もございましたが、このような印象を一部の方々が持っておられるかもしれないという推測は十分つきます。この点については、毎年
予算を御審議いただく過程で、衆参両院においてそれぞれ御質問をいただいたことがございます。一体、政党の活動といわゆる
政府の政策とをどう区別して
考えているか、具体的に言えばそういう問題になるかと思います。これは端的に申し上げて、各政党の方針は、これは私
どもは
政府、与党の方針と同時に公平に伝えていく必要があると思っております。その範囲を逸脱してはいけないと思っております。ですから、そういう点では公党、いわゆる公の政党としていろいろな政策をお持ちになっている点は、私
どもはすべて公平にこれを
国民に周知させる義務があるというように
考えております。
それならば、
政府の政策についてはどうなのかということになると思いますが、きわめて素朴な発言をいたしますと、要するに
政府の施策の根本となるものはおそらく
予算であろうと思います。それと関連して、あるいは
経済政策なり外交政策なり国内の政策なり、それぞれの政策の実施の体系が決定される。その票の中身は別としても、
国会がこれを通過させたという段階において、その
基盤に立って実施する
政府の政策は、当然
NHKはこれを周知せしめるべきものであるという
考え方を持っております。
したがいまして、私
どもといたしましては、先ほど御質問のあった第一条の二号と関連して具体的に申し上げるならば、自律と事実との
関係はそこから生じてくると私は
考えております。しかもこの第二号には前文がございまして、
社会の福祉を阻害してはいけないというのが大前提でございます。同時にその詳細については、基本的な行き方のひな形として、
放送法の四十四条に取り扱い方の原則を列挙いたしております。
NHKが少なくとも
放送法によってつくり上げられた言論機関であるとするならば、私は法律論ばかりではなく、やはりこの原則は尊重すべきであるという
考え方を持っております。ただし法律を離れて、
日本国民の大多数を
契約者としている
NHKとしての言論機関としてはどういう態度をとるべきかという問題が、表裏の問題として、われわれ自身がやはり
考えておかなければならない問題だと思います。この点につきましては、不偏不党はこれは政党的あるいは派閥的
表現でありますが、同時に私たちとしては、あらゆる思想からの自由を確保することが絶対的に必要であるという
考え方を持っております。いろいろな思想がございますが、個人としてはどの思想をとるか、どっちを選ぶかという気持ちは、私も
NHKの
会長として個人としては持っております。しかしながら、
NHKの言論機関としての立場を明らかにするためには、少なくともすべての
国民を対象とする、もっと具体的に言えば八千万以上の方々を対象にするという点においては、われわれの番組編成の基本は、同時にあらゆる思想からの解放という点に置かれなければならないというふうに
考えております。
そういう意味で、全体的にごらんになったときに、いかにもなまぬるいかの印象をそれぞれの立場でお持ちになるかと思います。しかし、今度は
社会全体の
発展あるいは政治の
発展、
経済の
発展、
国民全体の福祉と幸福のために、われわれはどうすべきかという具体的な問題に当面いたします。この点についてはわれわれはあらゆる専門家の見解、学問的見解を基礎として、
日本がよりよくなるためには、政治、
経済、あらゆる問題に関連して、特別の番組をつくるべきである、こういう
考え方を持っております。これが主として、実は
テレビジョンで申しますと、教育
テレビジョンの分野でわれわれが努力している
方向の
一つであります。当面、たとえば公害等の問題については、政治がどうごらんになるかは別として、人間尊重、人間の生命の尊重という点においては、私
どもは公害問題をやはり第一の問題として、これを取り上げていくべきである。どこに遠慮は要らない。人間のために、
国民のために、そしてもっと功利的な
表現をいたしましても、八千万のわれわれの
契約者のために、八千万の命を守る方法は明らかに追求していくべきだという
考え方を持っております。きわめて簡単でございますが、私としては以上のような
考え方で、
NHKに対して執行機関としての最高責任を実行してまいりたいという熱意を持っているわけでございます。