○林(百)
委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となっております
地方自治法の一部を改正する
法律案に対して、反対の討論を行ないます。
第一に、本改正案によって政府が創設しようとする市町村のいわゆる連合は、市町村の自治権、住民の自治権をきわめて露骨にじゅうりんするものであるといって過言でないと思います。
連合において共同処理する事務が
関係市町村のすべてに共通する事務でなくても差しつかえないとすることによって、本来市町村が
地域住民の意思を十分に反映して行なうべき住民の日常
生活にかかわるすべての事務を、連合が自由に取捨して処理できることを可能といたします。これは政府の主張するように、連合が一部事務組合の単なる一類型などという、一部事務組合の手直し的なものではなく、市町村の上に立つ新たな行政機構であることを示すものであります。しかも、連合の共同処理する事務は、規約によって事前の授権をしておけば連合の議会の議決のみによって変更することができるとすることによって、従来、一部事務組合が共同処理する事務の決定、変更には、
関係自治体の議会の議決と、それに基づく
関係自治体の首長の協議を必要とするとしていた規定を無視し、
関係市町村の議会及び住民の監視をあらかじめ封ずることを意図するものであります。また、連合を構成する一部の自治体のみの共同処
理事務について、それらの自治体を代表する議員の議決権にウエートを置く特別議決の
方法の規定は設けられてはおるとはいえ、
関係市町村自体の自治権を侵すという性格には何ら本質的に変わりないものであります。かかる行政機構の創設には反対せざるを得ないのであります。
第二に、連合は少数者による非民主的、中央集権的な行政を強力に行なう広域行政機構であることであります。
本改正案では、連合の執行機関である
理事あるいは管理者とその議決機関である連合の議会の議員との兼任が許されており、これは従来の一部事務組合について、行政実例によって、不適当であるとされていた執行機関と議決機関の混同をあえて規定するものであります。このことは、連合の非民主的性格をきわめて明瞭に示すものであり、連合の創設によって
地方公務員の団結権、団体交渉権に
制限を加えるとともに、このような行政機構が
地域住民の意思を十分に尊重した行政を担当し得ないことは明らかであります。これが反対の第二の理由であります。
第三に、連合は
地方自治体を中央直結にさせる道を開く行政機構であることは明らかであります。
連合の事務局長の設置及び規約に定める以外の多くの事項については事務局長に委任することを常例とするという規定は、事務局長の地位を天下り人事によって占めることによって、住民の意思よりも中央の顔色をうかがうという
地方政治を行なわさせる危険を十分はらんでおるものであります。このことは今日の政府の行なってきた多くの実例からして容易に推察できることであります。このような
制度にわれわれは賛成することができません。
第四に、本改正案が憲法に規定する
地方自治、住民自治の精神を侵すものであることであります。
一部事務組合の一類型と称して創設されたこのいわゆる連合は、以上のように市町村の上に立つ新たな、強力な権限を持つ広域的な
地方公共団体であるにかかわらず、連合の議会の議員及び執行機関は、一部事務組合の議員と同様、住民によって直接選挙されるものではありません。これは、憲法第九十二条の「
地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、
地方自治の本旨に基いて、
法律でこれを定める。」同じく憲法第九十三条第二項「
地方公共団体の長、その議会の議員及び
法律の定めるその他の吏員は、その
地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。」という憲法の精神を明らかにじゅうりんすることになるものであります。
第五に、以上のように市町村の上に立つ非民主的、中央集権的な行政機構の創設を、
地方自治の本旨を侵してここに強行しようとする政府の真の意図は、大資本のためのいわゆる新全総に基づく国土再開発を推進するための広域行政機構を創設して、そのために桎梏となる市町村の自治そのもの、住民の自治そのものを破壊することによって、財界方面が強く要求しておる道州制への土台を築くことにもなります。
以上のごとく、本改正案は
地方自治のためにとうてい容認することのできないものであり、わが党は政府のかかる意図に反対します。
一言付言しておきますが、わが党は、広域的な行政については、あくまでも住民参加のもとに
関係自治体が民主的に協議して決定し、推進していくべきであることを主張いたします。また、一部事務組合については、組合議員の定数を増加して、
会議の運営、組合管理の民主化をはかり、事業計画、予算、決算などを
関係住民に公開をして運営すべきことを主張するものであります。
以上をもって、本改正案に対するわが党の反対討論といたします。