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松村参考人 全国農協中央会の
松村でございます。
現在本
委員会で審議されております
地方税法の一部を改正する
法律案につきまして、私は主として、
政府の改正法案の附則第十九条の二以降に追加されました「
市街化区域農地に対して課する
昭和四十七年度以降の各年度分の
固定資産税の特例」という事項について
意見を述べさせていただきたいと思います。
私
ども系統農協の基本的態度ということをまず申し上げてみたいと思いますが、私
どもはかねてから、
市街化区域内の
農地の
固定資産税については、現に
農業生産の用に供せられている
農地については、転用、潰廃の届け出がなされるかあるいは
農業生産以外の用に供されるに至らない限り、
固定資産税、
都市計画税の
課税にあたっては、
宅地並み課税は行なわないよう主張してまいったものであります。したがって、今回の改正案につきましては基本的には賛成いたしかねるというの、が、われわれの基本的態度でございます。
私は税の専門家でもありませんので、税理論はよくわかりませんが、本来
固定資産税というものは
収益的財産税であるということで、やはり税を負担し得る能力、すなわち担税能力に応じて課せられるべきものと
考えております。つまり
土地については、その
土地を使用することによって何らかの
収益を生みます。その
収益力に応じた
課税がなされるべきだというふうに
考えております。しかしながら、現行の
地方税法では、
固定資産税の
課税標準となる
価格は、三十九年度の改正以降いわゆる「適正な時価」によることとされております。ところが、
農地については、その低
収益性と、三十九年の
評価がえの際
宅地に比べて地価の上昇率が低かったという理由で、特例措置として三十八年度の
税額が据え置かれてきておりますことは御案内のとおりでございます。このため、最近世論の
都市地域の
農家に対する風当りがきわめてきびしくなってきていますが、
市街化区域内に入れられても、自分としてはどうしても
農業を継続していきたいという
農家もたくさんいることは、先ほどの
梅原参考人の具体的な例についてもおわかりのように、はっきりしていると思います。
農家はいま非常にきびしい状態に置かれておりますが、そういう
農業を続けていきたいという
農家については、
農地は
農業の
生産手段でございますし、
農民の
生活源でございますので、
土地が幾らに
値上がりし、
評価額が幾らに
値上がりしようとも、
農業生産を続ける
農民にとっては実際関係ないわけでございます。そして、
農家がよけいに
土地を持っているということは、これは
農民である以上、
農家である以上、やむを得ない当然の結果でございます。したがって、実際実現しない利益を基準にして一般の
宅地と同じような
課税をしているということはやはり不合理であって、
農地として使用されている限り、現行の特例措置は継続されるのがやはり基本的
立場ではないかというふうに
考えております。
しかし、私は一方においては、税の公平な負担ということについての税理論というものを全面的に否定するものではございません。
農地といっても、地価の
値上がりを期待して、荒れほうだいに放置して、いわゆる擬装
農地とわれわれは申しておりますが、そういうような
土地まで優遇してくれというようなことは絶対に申しません。そういうことが
一つございます。
それから、基本的な態度は別としても、現在
政府の
法律案が提案されている現段階においては、われわれとしても、この改正法案について具体的な問題の指摘ということをやはりする必要があると思いますので、いまからその問題について触れていきたいと思います。
政府の改正案によりますと、
市街化区域内
農地を、すでに市街化されたところの
農地と、市街化が進みつつある
農地、そしてまだほとんど市街化されないところの
農地というふうに、A、B、Cの三つのランクに分けてございます。そして市街化の進展の度合いに応じて、その負担の激変緩和の調整措置がとられるというようなことは、かりにこの税法が実際施行される場合には、やはり必要な措置ではないかと思います。
また、この改正法案の中で明確にしていただきたい点並びに問題に思われる点についても若干申し上げてみたいと思います。
まず第一点でございますが、
一つは、
市街化区域の
農地の
評価の問題でございます。
市街化区域農地については「状況が類似する
宅地の
価格に比準ずる
価格によって
評価を行なう。」こととし、この場合「造成費に相当する額を控除する」というふうなことで書いてあるようでございますが、この場合、いわゆる状況が類似する
宅地の
価格でございますが、どうやって求めるかということがきわめて重要な問題になると思いますので、この点を明確にする必要があるのではないかと思います。実際具体的な例等をとっていけば、
梅原参考人からも申し述べられましたけれ
ども、これを抽象的に
考えてみましても、
A農地のように市街化が進んでいるところは、
比較的近傍の
宅地の
価格はとりやすいようですが、市街化が全く進んでいないところの、状況が類似する
宅地価格をどうして求めるのか。その場合は、その
農家の住宅の敷地
価格に比準ずることになると思われますが、その
農家の住宅が遠く離れていて、しかも
比較的条件のいいところで正常
価格が高い場合は、かなり不合理な結果が生ずるというようなことに結局なるわけでございます。したがって、
評価にあたっては、実情に即したきめのこまかい行政措置というものが必要かと存じます。また、そのために関係
農業者の意思を反映させるとともに、
評価の公正を期するため、固定資産
評価員には
農業者、
農業団体の代表を加えていくようにぜひとも指導していただきたい。そういうことによってそういう先ほど申しました不合理を解消していただきたい、そういうように思います。
また、
評価の際の差し引かれる
土地造成費のことでございますが、これについても幾つかの問題がありますが、特にこの場合は、
土地区画整理の場合に減歩が生じますので、この分もやはり造成費の中に加えていただくということが適当であろうかと存じます。
第二は、
農地区分の問題でございます。
A農地については、いわゆる
既成市街地としての条件が整備しているところというふうに思われますので、原則として、これを実行する場合はある
程度やむを得ないと
考えますけれ
ども、
B農地につきましては、
宅地の
平均価格の二分の一以上で
平均価格未満の
農地でありますから、必ずしも市街化が進行しているとは限らないところまで含まれることになる危惧がございます。これは大いに危惧がございます。したがって、据え置き期間を一年ぐらい延長して、
昭和四十九年度から出発するというような形をとっていただくことが適当ではないかというふうに
考えます。それから
C農地につきましては、五十年まで据え置きとされておりまして、五十五年度で
宅地並みにするということであり、しかも自治大臣の助言による減免措置も講じられておりますので、現段階では問題はないようでございますけれ
ども、この場合でも、自治大臣が助言する場合の客観的な基準を設定する必要があると
考えるわけでございます。この場合、当然
市町村長からの状況の報告に基づいて適切な助言をすることになると思われますが、それについては、
市町村長の政治的判断に支配されて
地域によって不公平が生ずることのないよう、たとえば
市町村長の諮問機関のようなものを設置して、この中に
農業者、
農業団体の代表というものを加えて、民主的に措置してもらいたい、そういうふうにされることが適当ではないかというふうに
考えております。その場合
市町村にとりましては
税金が減るわけでございますので、そういう場合には、場合によっては財政的な配慮というものも若干必要になってくるのではないかと思います。
第三には、基準年度における
評価がえの問題でございます。現行法では
土地、家屋については原則として三年ごとに
評価がえを行なうこととされております。次は四十八年度が
評価がえの基準年度ということになりますが、負担調整措置がとられている間は、さらに
評価がえをするといたしますと、一そう仕組みが複雑になり混乱を招くおそれがございますので、負担調整措置がとられている十年間は、極端な特別な事例がない限り
評価がえは見送るということが適当かと
考えます。
また、改正法案附則第十九条の三の第三項では、特別の事情がある場合は、基準年度においてA、B、Cの
農地区分を変更することができることとされておりますが、一たん区分したものについて、
C農地であったものを
A農地なり
B農地に変更することは、
農家を困惑させることになりますので、極端に
課税上の
均衡を失するような特別の事態が生じない限り、極力これを変更しないようにするのが適当だと思います。
第四には、
昭和四十七年度以降に
市街化区域農地になった場合の取り扱いの問題でございます。現在
都市計画区域が設定され、市街化
調整区域に入っているところが、
農家が希望しないのに
市街化区域に編入されたとか、あるいは
都市計画区域の変更によって、すでに決定されている区域が拡大して
市街化区域になった場合は、一挙にA、B、Cの各年度の負担調整年度に適当させて
課税するとされておりますが、極端な場合、四十九年度以降において
市街化区域に変更せられ、それがしかも
A農地に該当されたとすれば、負担調整措置が全くないまま、すなわち
宅地並み課税になるということも
考えられる問題でございます。
課税技術上複雑な問題もあるかもしれませんが、これはやはり、新たにこういうことのないような措置が適当かと思います。したがいまして、改正法案附則第十九条の三の第四項の場合の、新たに
都市計画の
都市区域設定がされて、
市街化区域に線引きされた
農地の場合と同様に、その年度を四十七年度と読みかえて、A、B、Cの各
農地の据え置き期間及び負担調整措置というものを適用さしていくべきであろうというふうに
考えます。
第五には、A、B、
C農地という
農地区分についての不服申し立ての問題でございます。
市街化区域農地をA、B、Cランクに格づけされるわけでございますが、納税者がそれに対して不服がある場合、改正法案では、現行
地方税法第四百三十二条によって固定資産
評価審査
委員会に審査の申し出ができないようなふうになっているようでございますけれ
ども、A、B、Cのランクづけにあたっても、当然審査請求ができるよう措置すべきであると
考えます。またA、B、Cランクづけにあたっては、事前に関係
農業者に十分周知徹底させるよう取り計らっていただくことが適当かと存じます。
第六は、先ほど
金子参考人のほうから申し上げたことにも関係ございますが、
市街化区域といえ
ども、
生産緑地なるものを
都市施設の一環として積極的に残していくという施策がとられるべきだという点でございます。いわゆる
市街化区域における
生産緑地の問題でございます。
市街化区域といえ
ども、意欲的かつ高水準の
農業経営がかなり比重を持っていることは、先ほどの
梅原参考人の例においてもおわかりだと思いますが、
都市開発の現況から見て、なお相当期間
農地が存続するものと
考えられます。
都市地域の
農業が、
都市住民に対する生鮮食品の供給、
都市における
緑地機能の保全、さらには防災、公害防止等にきわめて重要な役割りを果たしてきている現実を無視するわけにはまいらないと思います。現在NHKで大地震が来たときのことについて取材しているようでございますが、実に身ぶるいするような問題でございまして、こういう防災の問題というようなこと
一つ考えましても非常に大きな問題があると思います。特に現在の大気汚染をはじめといたしまして、
都市環境は年々悪化してまいっております。そういった中で、
都市の中に花卉、花木、植木、
野菜、そういうような
緑地の保全、これは市民農園というようなものでもいいと思いますが、そういう集団、
一つの固まりを、
緑地として残すということは、
都市のサイドから見ても絶対に必要になってくると思います。したがいまして、
市街化区域の
農地は、単にこれは消してしまって家を建てるのだということを期待するだけではなく、むしろ積極的に
生産緑地として位置づけていく施策がとらるべきであろうと
考えます。そして、これによって自然の保全を行ない、
都市と
農業との調和をはかりながら、住みよい良好な環境のもとでの健全な
都市づくりを進めるということが必要であると
考えます。したがいまして、そのためには
生産緑地は極力集団化して大きいものにすることが望ましいには違いありませんが、
農地の交換分合等による集約化はなかなか困難でございますので、おのずから限度もあります。したがって十ヘクタール未満でも、
農家が希望する以上、極力これを認めて、その立地、作目につきましても、
都市側と
農業側が協調する形で選定し、
都市施設の一環として助長育成していくという積極的な姿勢が必要ではないかと思います。公園設置の最低基準は四ヘクタールであると聞きますが、
神奈川県では、現在四ヘクタールというようなことでこういうことを進めている実例もございます。したがいまして、とにかくぜひともこういうことを積極的に
考えていく必要があると思います。
また、
政府与党においても、昨年の十二月二十一日の税制調査会で、農住構想を推進するというようなことがございました。四つの点がございましたが、そのうちの四番目が農住構想を推進するというようなことでございましたけれ
ども、それは明らかに、いま私が申し述べました農住構想の農の部分が
生産緑地に該当するものでございますので、発想は全く同じでございます。したがいまして、特にこの点につきましては
農地としての
考え方を貫いていただく。そして、一たん緩急ある場合には、そこに逃げ込むというような体制が必要ではないかと思います。したがいまして、税制面から
農業を締め出そうとするのではなく、
都市計画の具体的な方針がまず明示され、マスタープランが明示されまして、一方において
政府が、
都市農業のあり方、それに対する施策を明らかにするのが先決であり、税はあくまでそれらの施策の補完的役割りを果たすにとどめるべきであろう、そういうふうに
考えております。税はあとからついていくものだ、まず施策があるべきだ、そういうふうに
考えます。
第七番目には、高圧電線下の
農地の
課税問題でございます。これは申すまでもございませんが、高圧電線の下にある
土地は補償を受けているわけでございますが、そういう
土地は建築が制限されており、
農地としてしか利用ができないところもありますので、これらの
農地については、
市街化区域といえ
ども、
農地としての
課税が継続されるべきだと
考えます。
第八には、
都市計画税についてでございますが、
都市計画税は原則として
市街化区域において
課税することとされていますが、特別の事情がある場合においては、市街化
調整区域においても条例で定める区域内において
課税することができるとされております。市街化
調整区域は、本来市街化を抑制する区域でありますから、少なくとも市街化
調整区域の
農地については、いかなる場合でも
課税をしないということだけは、この際はっきりすべきが適当であろうと思います。
以上で私の陳述を終わります。(拍手)