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1971-04-28 第65回国会 衆議院 大蔵委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年四月二十八日(水曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 毛利 松平君    理事 宇野 宗佑君 理事 上村千一郎君    理事 藤井 勝志君 理事 山下 元利君    理事 広瀬 秀吉君 理事 松尾 正吉君    理事 竹本 孫一君       奥田 敬和君    木野 晴夫君       木部 佳昭君    佐伯 宗義君       坂元 親男君    登坂重次郎君       中島源太郎君    中村 寅太君       福田 繁芳君    松本 十郎君       森  美秀君    吉田  実君       阿部 助哉君    角屋堅次郎君       佐藤 観樹君    平林  剛君       堀  昌雄君    貝沼 次郎君       坂井 弘一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      荒井  勇君         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省主計局次         長       竹内 道雄君         農林省農地局長 岩本 道夫君         食糧庁次長   内村 良英君  委員外出席者         食糧庁業務部長 中村健次郎君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 四月二十八日  辞任         補欠選任   中嶋 英夫君     角屋堅次郎君 同日  辞任         補欠選任   角屋堅次郎君     中嶋 英夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公聴会開会承認要求に関する件  食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五四号)      ————◇—————
  2. 毛利松平

    毛利委員長 これより会議を開きます。  この際、公聴会開会承認要求の件についておはかりいたします。  すなわち、内閣提出自動車重量税法案について、公聴会を開きたいと存じます。  つきましては、公聴会開会につき議長の承認を求めたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 毛利松平

    毛利委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、公聴会開会日時は、来たる五月十日午前十時とし、公述人の選定その他の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 毛利松平

    毛利委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  5. 毛利松平

    毛利委員長 食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、去る三月二十三日、提案理由説明を聴取いたしております。  資料要求の発言を許します。広瀬秀吉君。
  6. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 農林省資料提出要求をいたしたいと思います。  今回の食管特別会計法の一部を改正する法律案は、要するに、今日過剰米といわれているものを処分をしていくために特別会計に所要の改正をしようというものでありますが、その基礎になる数字があるいは七百三十万トンともいわれ、あるいはまた六百五十四万七千トンというようないわゆる過剰米推計量というものも出ておるというようなことがあり、また新聞等によりますれば、四十六年の十月くらいになるとおそらく八百万トンをこえるのではないかというたいへんな数字になっておるわけなんですが、今回の過剰米処理の対象にしなければならない数量というのが一体どれだけあるのかということがよくわからない。したがってこの分について、現在一番近い時点で、三月末でいいでしょう、三月末現在の在庫量というのは年次別に、何年度産分というものがどれだけあるのか、この数量をはっきりさせてもらいたいということ。そしてそれが具体的にどういう倉庫にどれだけということで、これは全国委託倉庫まで含めるとたくさんの数になると思いますが、これを倉庫別に、年次別に、これは相当詳しい資料になると思いますが、これだけのことをやるのですからその程度の資料はもうそろっているに違いない、こういうように思いますので、それを早急の間に提出をしていただきたい、これが第一であります。  それから第二に、これからの生産調整を含めた生産額の見込みと過剰米処理の関係とを対比させながら、この過剰米処理というものを何年間にどれだけの費用を使ってやるのか、この総額についてひとつ詳細な資料提出していただきたい。  これはこの法案審議するにあたって欠くことのできない資料だと思いまするので、以上二つの資料をまず要求をいたしたいと思いますが、いかがでございますか。
  7. 中村健次郎

    中村説明員 御要求資料を早急につくって提出したいと思います。しかし、倉庫別資料につきましては、何ぶん膨大でございまして、倉庫の数は十万近くございますので、これは個々の倉庫ということではなくて、中間的に県別等でお許し願いたいと思います。
  8. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いま県別ということなんですが、県別資料もけっこうである。しかし、大体過剰米というのが一体どれだけあるのだということが、いろいろな新聞の報道なりあるいは当局者の言明においてもまちまちで、三月末現在で一体どれだけ余っているのだということがつかめなければ、この過剰米処理基本というものは非常に問題なんですね。それで、もうほぼ一年分の配給数量をこえるようなものがあるのだとするならば、これはどこの倉庫一ぱいでなければならないはずであり、一ぱいであふれ返るというような状況だと思うのでありますが、それぞれ現地に当たってみますと、この倉庫もあいている、この倉庫もかなりあいているというようなところがわれわれのところにも来ているわけです。そうすると、これは相当特定の意図を持ってこの過剰米数量を水増ししているのではないかという疑問も、率直にいってわれわれにはあるのであります。したがって、その確定数字というものを調べるのには、やはり倉庫ごとでなければほんとうのものはわからないのであって、それはもうこの法案の一番基本の問題であります。一体幾らあるのかもわからないでこの法案審議に入るなんということはできないはずだ。来月の七日には採決までこぎつけたいという気持ちを持っているのだけれども、その資料一つ出ないということになるとまた条件は変わってきますから、そういうようなことを踏まえて、この間かなり日数もあるのですから、それの確実な数字をひとつお示しいただきたい。
  9. 中村健次郎

    中村説明員 在庫数量自体につきましてはすぐできますが、倉庫別につきましては、御趣旨に沿うようにつくりたいと思いますけれども、何ぶん膨大でございますので、若干の時間の余裕をいただきたいと思います。
  10. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 御趣旨に沿うようにというのだけれども、大体こういう法案を出してくるにはそれくらいの数字というものはきちんとそろえておいて、それで出すのが当然じゃないでしょうか。過剰米数字というのが、これはもうどの新聞を見ても違うし大蔵調査室からいただいた資料によりましても、現在保有するものは七百三十万トンだといわれるし、また、過剰米推計量としては六百五十四万七千トンというような数字が出たり、新聞等では八百万トンをかなりこえているのではないか、八百四、五十万トンになるのではないかというような数字もちらほら出る。その基礎が、どのくらいほんとう過剰米というものが存在するのであるかどうかということがしっかりつかめないではこの法案というものはやはり実のある審議というものはできないわけであって、国民に対して相済まないことだと思うのです。だからひとつその点、はっきりした資料提出の約束をしていただきたい。
  11. 中村健次郎

    中村説明員 過剰米数量は私のほうではっきりつかんでおりますので、これは直ちに提出する準備ができますが、倉庫別につきましては、伝票で私どものほうに参っておりますけれども、これを集計し印刷するということについては多少の時間をいただきたいということでございます。  なお、倉庫別と申しますと、過剰米につきましては、これはそのもの過剰米かどうかということはさまっていないものでございます。と申しますのは、四十四年産米あるいは四十五年産米につきましてはまだ配給に使っておりますので、これらのうちのどのものが過剰米になるのか、数量的にはつかみかねます。したがって倉庫別には、そういう四十四年産、四十五年産のものを過剰米として区分して出すことは困難でございます。
  12. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 もう一つ資料は、最近米の消費がぼつぼつ上向きになっているという状況に聞いておるわけでありますが、これは良質米生産というようなことであるいはそういうことがあるのかと思うのですが、ここ三年ぐらいの毎月の配給数量をずっと一覧表にして出していただきたい。昭和四十六年になってからはひとつ各月別に出していただきたい。それ以前のものについては年間平均でけっこうでございます。  それから、自主流通米総額、ことしは百八十万トン以上になっているようでありますが、その前から始まったわけですから、始まって以来の自主流通米の問題についてひとつ資料提出していただきたい。  以上です。
  13. 中村健次郎

    中村説明員 ただいま御要求資料は直ちにつくって御提出いたします。
  14. 毛利松平

    毛利委員長 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。  阿部哉君
  15. 阿部助哉

    阿部(助)委員 大臣要求してあるのですが……。大臣でなければ質問したって意味をなさないので、大臣が来るまでちょっと待ちます。
  16. 毛利松平

    毛利委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  17. 毛利松平

    毛利委員長 速記を始めて。  広瀬君。
  18. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 食管特別会計法の一部を改正する法律案について若干の質問をいたしたいと思いますが、まず最初に、食管特別会計法を改正して過剰米処理をいたさなければならないことに相なった原因は一体どこにあるのか。私ども、これはまさに政府責任であって、政府農政そのものの間違いではなかったのか。つい二、三年前まで米増産のために大車輪をかけてきた。開田事業あるいは陸田による米の栽培というようなことを盛んに奨励をしてきたのはつい三年ほど前まで、こういう状態があるわけです。そういう点で米がどれだけ増産され、このような過剰を生ずるであろうというようなことはもう数年前にわかっていなければならなかったにもかかわらず、米増産対策農政の主眼を置いてきた。そういう農政基本的な姿勢に間違いがあったのではないか。私は、こういう今日の米過剰問題をめぐって、あたかも農民自身責任があったような言い方をして、政府自身責任をのがれているような立場に今日政府があるんじゃないかと思うのでありますが、そういう問題について一体政府はどういうように考えるのか、この点をまず明らかにしていただきたいと思うわけであります。
  19. 中村健次郎

    中村説明員 このような過剰米が多量に出るようなことになったことにつきましてはまことに遺憾に存じておりますが、何しろ生産が、四十二年産米の千四百万トンをこえる生産、四十三年、四十四年産米というふうに千四百万トン台の生産がございまして、一方需要のほうはだんだんと減ってくるという事態が出ました。そういった事態に備えて四十五年産米からは生産調整をお願いする、こういう手段をとったわけでございます。三年間の累積によりまして多量の過剰米が出てきたという事情でございます。
  20. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 まあそういう事務的な答弁で片のつく問題ではないだろうと私は思うのであります。われわれが農業基本法審議する段階においても、少なくとも米だけではなしにその他の主要農畜産物、こういうものに対して価格の問題についてやはりしっかりした価格支持制度というようなものを設けていくべきである。いまになって皆さんは総合農政とかなんとか言っているけれども、米だけに依存するものではいけない。バランスのとれた主要農畜産物全体が伸びていくように、当時畜産三倍、果樹二倍というような合いことばのようなものすらあったわけです。しかしその畜産などについても、価格不安定ゆえに非常に伸び悩んでいる。そういうようなものなどをもっと早い時期にやっておったならば——わが党が出した農業基本法精神をしっかりくんで、政府のいわば宣言的な、抽象的なものでなくて、政府責任というものも明確にした、わが党の農業基本法案のような精神というものを農政の中に生かすかまえがあったならば、こういう事態にはならなかったろう。そしてもっと日本農業というものはバランスのとれた、米だけに依存する農業形態から、そういうものではない畜産果樹、そういうこれからどんどんふえていく、需要の増加していくものの生産というようなものにドライブをかけていく、インセンティブを与えていくというような政策がとられればこういう事態はまずなかった。ところが先ほども申し上げたように、数年前まで米の増産奨励、そして開田。せっかくの山林をつぶしてどんどん開田をやったのはついおととしあたりまで続いておった、そういう状況。しかも各地において米増産競争。その中ではいわゆるおいしい米というような観点は比較的無視されて、多収穫、こういうようなことで五百キロをこえたから表彰するというような、そういうことで県段階で千名も二千名も農民を集めて、知事みずからが、そして食糧庁長官なりあるいは全国農協中央会長などの名によって表彰をするというようなことをやったんじゃありませんか。そういう根本的な問題についてあなた方はいまどういう反省をしておるのか、まずその点をお聞きしたい、こういうことであります。
  21. 中村健次郎

    中村説明員 御承知のように、米の消費につきましては、三十七年をピークにいたしまして逐次一人当たり消費が減少いたしておりますが、政府自体需要としましては最近まではやや横ばいの状態をとっておりましたし、生産も三十七年の豊作ピークにいたしまして伸び悩みの状態をとっておりましたので、その当時には輸入米等々入れまして、足りないという状態でございましたので、増産に対していろいろな奨励をいたしまして、わが国で米が自給できるようにという努力をいたしてまいったわけでございます。四十二年産米が、天候その他のこともございまして、非常に飛躍的な大豊作になりました。しかしそれが四十三、四十四年と続くものかどうかというふうな点につきましては、その時点ではなお見通しのつかない問題でございましたので、四十三年産の趨勢を見ながら問題を考えてきたわけでございます。しかし、こういった高い水準の生産が持続され、かつ消費もだんだん減っていくということがはっきりしてまいりました、その後におきましては、過剰な生産をつくらないようにいろいろな手段をとりまして、四十五年産米あるいは四十六年産米については生産調整というふうな非常手段をとらざるを得ない、こういう状態になっておるのでございまして、おっしゃいますようなその他の産物に対する農政上の措置を講じまして、総合農政を展開していくというのが政府の考え方でございます。
  22. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 三十七年をピークにして米の消費が減ってきた、そういう段階でなおかつあなた方は米の増産、しかも面積をどんどんふやす開田政策水田造成に拍車をかけてこられたのであります。そういうことをやって米がふえるということは、当然もう予想される事態。これはもう土地改良をどんどんやる、あるいは開田をどんどんやるというようなことによって、米の増産がどんどんふえるに違いない。しかもかって麦の作付を減らそうということまで、特別法を出してそういう政策までやった。水田裏作で麦をつくっておるということになれば、水田のいわゆる米の収量というのは裏作をつくった分だけ、少なくとも一割や二割の収量減というものにはなるわけだけれども、それを今度は一毛田で裏作に麦をつくらないということになれば、その分だけでもこれは相当米増産に結びついてくるのだということだって、これは当然、あなた方くろうとだから、われわれしろうとよりもその辺の分析だってしっかりできていたはずだ。しかもその上にこの開田事業をどんどん奨励しドライブしてきた。  しかも一方において、もうすでに十年以上も前から少しずつ米の消費が減退している。そういう面について米の消費を増大させる方策。これは余ってきたら輸出という事態も考えられるが、その輸出に対してどういう努力をしてきたか。この点もほとんど見るべき努力はない。さらに学校給食は依然として脱脂粉乳と、アメリカあるいはオーストラリアの小麦あるいはカナダの小麦でまかなわれている。こういうことでその分の転換をはかろうという努力も何らしたためしもない。しかも工業用にどれだけ米が有効に振り向けられるかというような点などについても何らの努力が見られない。こういうようなことで、米の消費が減るにまかせて、しかももうその数字がはっきり出ているにもかかわらず一方において増産を続けてきた。こういうような責任というのは一体どこが負うべきなんですか。その点、これは大蔵次官に聞かなければわからないだろうと思うのだが、あなたもかっては有名な、天下に名をはせた議員であられたわけだけれども、いま立場を異にして政府の一員になっているのだけれども、一体その辺のところを、農政基本問題についてどういうような責任政府側として感じておられるのか、その点を伺いたい。
  23. 中川一郎

    中川政府委員 広瀬委員指摘のとおり、ここ二、三年で過剰米が出てきた。それには増産の問題もありましたし、消費の減退、これが二つ重なったものですから、急に過剰米の問題がクローズアップされてきた。  そこで、政府のとってきた増産政策または消費拡大ということについて、誠意が足りなかったんじゃないかという御指摘でありますが、私どももざっくばらんに言ってそういう感じがいたします。もっと手があったのではないかということを考えるわけですが、何ぶんにも増産も、ここ二、三年天候がよ過ぎたという、予測しがたいことが一つございます。それから消費も、拡大についてずいぶん努力いたしました。たとえば学校給食に振り向けてはどうかということで、テストで、あれは国から補助金を出してやってみるくふうもしたのですが、何ぶんにも手数がかかる。パンと牛乳でありますと簡単に食べられもするし、あと始末もいいということで、なかなかなじまない点がありまして学校給食に持っていくことはなかなかむずかしい。もう一つは、外国の粉ミルクをやっているという御指摘でありますが、これも酪農品にかえようということで、たしかあれは来年か再来年には完全になま牛乳にかわる。なま牛乳のほうの消費拡大という要請も一方ではございますし、それを押える結果になっていくという相矛盾した問題もあるということで、消費拡大についていろいろくふうしましたが、なかなかきめ手になることはない。また、外国への輸出についてもずいぶんくふういたしましたが、これも価格差があまりにも大きいという問題が一つと、もう一つ日本の米が南方の人にはなじまない。こちらの人が向こうの米を外米といいますが、こっちから入っていく米が外米的な、嗜好に合わない、あるいは品質が赤道を越えると瞬間に変わるというようなことがあって、輸出拡大もむずかしいというようなことでございまして、努力が足りなかったという御指摘、これは率直に認めざるを得ませんが、努力だけはわれわれも、党も政府もずいぶんひねりにひねってまいりましたが、今日七百万トンに近い過剰米をかかえるに至った。そこでこの際はひとつお許しをいただいて、これは可能な限りすみやかに処分をして、今後は一切過剰米の生じないようにということで、いま減反政策あるいはほかの作物への転換ということについて思い切った政策を施しておるというわけでございます。  蛇足になるかもしれませんが、なぜこんなに米がふえたか。私たちの北海道をとりましても、実はここ一、二年前まではどんどんと米がふえていった。酪農もつぶれていく、畑作も減っていくという転換をいたしましたのは、やはり米の値段がほかの作物に比較して非常に農家収入がいいというところに原因があったようでありますが、最近は米の前途というものを考えまして、だいぶ農家の方々も、米へ転換するというよりは、逆に米をやめてそういった方面に力を入れる傾向が出てきました。よって、これらの政策を今後強力に進めていけば、こういった間違いは二度と起こらないだろうし、起こらないように全力を尽くしていきたい、このように考えているわけであります。
  24. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 開田事業、新しく水田を造成する事業について国の補助金はいまでも出されておりますか。ここ五年ぐらいの間、開田事業に対してどれだけ補助金を出してきたか、その概要を明らかにしていただきたい。
  25. 中川一郎

    中川政府委員 数字的なことはあと竹内次長から御説明させますが、原則としては四十六年度からは国費でやる開田はいたさない。過去若干ありましたのは継続事業でやっておったもので、何ともやめられないというようなものについて若干ありましたが、ここ三年ほど前からは新規開田の抑制ということについては全力を尽くしてきたつもりでございます。
  26. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 それでは数字あとで示してください。  農民がなぜ水田耕作、米の増産に片寄るようになったのか、その点についてどういうようにお考えですか。
  27. 中村健次郎

    中村説明員 稲作につきましては、労働単位当たりの報酬が他の作物に比べて比較的高いということと、稲作に対する技術が長い伝統の積み重ねで非常に進んでまいりまして、非常につくりやすい、日本の国土に適した作物である、こういうことであると思います。
  28. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そういうこともあったでしょう。しかしその上に政府みずからが開田事業インセンティブを与えるための補助金をずっと出し続けて増産奨励をやってきたわけですね。農民自身も、なるほどほかの畜産なりあるいは果樹なり野菜なりというようなものをやりたくとも、ときにはたいへん野菜が高値を呼ぶが、それでたくさんつくれば、もうめくら生産ですから、次には町の八百屋さんを呼んできて、おまえさんたち、もうただでいいからかってに持っていけ、こういうようなことまでやるというような、肥料代にもつかない、種代にもつかないというような事態が繰り返し行なわれてきている、そういう点について何らの手も打たれない。米は安定作物だということで、これはもう農民が飛びつくのは当然のことだ。しかもそれに国が政策として助成をしてきた。そういう先の見えないことをやっておって、いまやそのしりぬぐいを完全に農民の犠牲だけにおいてやろうとする。生産調整しかりであります。生産調整をすればその分だけ収入が減少する。なるほど生産調整補助金は出すけれどもそれでは追っつかないわけであります。そういうことをやって農民の所得がそれで減る。  しかも農村でも、昔はなかなか機械導入が困難なものは水田作業だといわれておったのだけれども、その後の技術の発展によって農機具がどんどん入るようになり、比較的いわゆる省力栽培というものが水稲にもなじむようになってきた、こういうようなことなんかもあるでしょう。というのは、やはり大きな立場でいえば、日本高度経済成長政策というものが農村から働き手をどんどん吸収してしまっている。よりよき職場に、土とどろと汗にまみれている農業よりは、ブルーカラーになってもホワイトカラーになっても、そのほうが人間らしい生き方ができるということから、農民がそういうところに飛びついていくのもこれまた自然の理であるし、その間この十年間に高度経済成長政策が幾らでもそういう面に農村から労働力を吸収している。そうすればもう手間のかからない米にやはりたよらざるを得ないということになる。そういう面でも国の高度経済成長政策というものは農民にしわを寄せたということが考えられるわけであります。  そういうようなことを考えれば、これは単に技術的に日本農業に一番なじみやすい水稲の栽培という形態であったということでこういう事態が起きたというような考えはかなり大きく改めなければならない。そういう部分もなるほどある。しかしそれ以上、国の経済成長発展の姿というものの中で農業がのみ込まれてしまっていたというような大きい問題もある。これはやはり国の政策なんです。そういう政策は池田さん以来の所得倍増政策高度経済成長政策というものを推し進めて、いやおうなしに農民がその方向に吸収されていかざるを得ないということの中からやはりそうならざるを得なかった。米をつくる以外には手がなかった、農業所得をふやすためには手がなかったということがある。しかも、その他もっと米以外に有利な作物だってあるはずなんだけれども、それは手間がたいへんだという問題がある。しかも価格においてきわめて不安定であった。暴落するかと思うと暴騰するというような繰り返し、その谷間にいつもちぐはぐになる農民が非常に多かったということで、暴落のときにいつも野菜をつくってしまったというような人たちがある。そういうような面での価格安定政策というものが何も行なわれない。かろうじて幾らか価格安定のための経費を市なり県なりで助成しようかというようなことがぽつぽつ、これは自衛的に行なわれたけれども、国はそういう点では何らの政策も持たなかった。こういうようなことを考えると、今日の米過剰の問題はまさに政府責任であると私は思うのでありますが、これは次官、いかがでございますか。
  29. 中川一郎

    中川政府委員 御指摘の点はごもっともだと結論的には認めざるを得ないと思います。しかし本質的な原因は何かというと、やはり日本では経営面積が少ない。一戸当たり一町歩という狭小な面積で農業を続けておった。そこでいままで、昭和四十三年までは、高度経済成長によって他産業が伸びる、これに合わせて所得が伸びていくためには価格政策にたよらざるを得ないということで、毎年平均で大体九%、たしか昭和三十九年でありましたか二%の米価アップをやった。その結果、農業をやる限りにおいては米が一番有利な作物だというので、価格政策にささえられた米に依存をしてきた。ところが四十三年から米が余るというところまでふえてまいりました。そこで今度は急にあわてて、と言ったら言い過ぎかもしれませんが、これはたいへんだということに気づきまして、ほかの作物への農政転換、それから米価の据え置き——価格による刺激、増産意欲を押えようということから据え置きを、ことしやれば三年という異常なことをお願いしなければならない政策をとりつつあるというのが現状であります。  御指摘のように、高度経済成長政策のしわが農村に、そうして政府もそれに気づくのがおそかったということは、しかられてもしかたがないんじゃないかと見ております。ただ私どもとしては、そういう事態がありましたので、例の農地管理事業団をお願いしたのは経営規模拡大、そして経営規模拡大は、どうしても農家の人で離れる人は離れてもらわなければ経営規模が拡大できないものですから、ああいう政策も出してみましたが、国会の承認が得られないままに今日を迎えたというかっこうであります。  御指摘の点は十分われわれ考えておりまして、たとえば、そういう事態があるにもかかわらず土地改良の予算をつけておったじゃないかといわれればそれまででございますが、しかしこれも継続事業、その他、地方の農民からいうならば強い要請があって、国がこれをやれやれといった時代ではなくて、農家の強い要望、かねて増産政策をやってきて、それをストップかけるのになかなか一ぺんにはストップがかからなかったという、これは農家からの強い要望もあってこういう事態を招いたわけであります。その点は率直に反省をしておるところでございます。
  30. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 つい三年ほど前に開田をした、昨年からとたんに生産調整だ。農民自身の自己負担分も一反歩当たり場所によっては十万円もかかるところもある。少ないところで十アール当たり二、三万はかかっておるわけです。そういうものがとたんに生産調整になった。新規開田のところは地味もそう肥えていないというようなことで、まずそういうところを生産調整をするというようなことで、開田のために借金をかかえている人たちというのが非常に多くなっておるわけです。こういうようなものに対して何らか農林省は対策をとりましたか。これに対する援助というものを何かやりましたか。政府の方針、奨励に従って開田をやった、ところが自己負担分がかなり借金になって残っている、こういう農家の人たち。しかもその後の情勢は生産調整と米価据え置きだ、こういうことで収入、所得は減るばかりである、こういう状態に対して国の施策は何かありましたか。あったらそれをこの際明らかにしていただきたい。
  31. 中川一郎

    中川政府委員 具体的なことにつきましては、いま農地局長見えておりますから、自己負担分の補てんということについての農林省の考えはあれしますが、私どもとしてはあの生産調整金をはじきます場合に、農家の支出、収入を計算をいたします場合にその土地改良による自己負担分というものは頭の中に置いて、負担金が納められるという考え方のもとにあの生産調整金をはじいておる。それから公庫資金その他についても配慮しておるところでありますが、その点は農地局長から答弁させます。
  32. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 米の生産調整に伴いまして休耕あるいは他の作物転換をいたします場合には、生産調整奨励金を支出することにいたしております。この生産調整奨励金の中身は、生産費計算上、水利費に当たる分も含まれておりますので、農家生産調整に伴いまして休耕あるいは他作物への転換をやりまして生産調整金をもらうわけでございますので、そういう地域が土地改良の地域内に含まっておりましても、それによって通常の償還金が支払えるわけでございまして、そういう方針で運用してまいっております。ただ、土地改良事業に基づく償還金等は地域によって非常に違いがございまして、非常に高額の償還金の支払いの必要がある場合、あるいは転用等によって地区除外になって独自に負担を決済をするという必要がありますような場合には多額の資金が必要でございますので、その場合には従来の負担金を自作農維持資金で借りかえるという措置を講ずることにいたしておりまして、負担の軽減をはかることを考えております。
  33. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そういう土地改良事業で、集団で土地改良をやっていったというような場合はそういう扱いを受けるでしょう。しかし国の方針が、水田開田事業に対してずっと補助を与えてきたというような中で、個人の立場において経営面積を拡大していこうというようなことで自己所有の山林を開田したというような者の場合には補助対象にもならない、そういうような人たちなんかが非常にいま深刻な事態にあると私は思うのです。これもやはり国の指導方針なり農政というものがそういう方向だと農民は考えて、まだ増産段階だと考えてそういうことを三、四年前にやった。そして開田がようやくできた、ところが生産調整だということで、まるまる自己負担がそのまま借金として残る。農協から借金をしてやったのがそういう事態になってくる。しかもそのあと生産調整米価据え置きという条件を迎えて所得がどんどん減っている。そういう中でこれを払うにも払えないというような深刻な事態に対しても何らかこれは政府責任として、政府農政の失敗を率直に先ほど中川政務次官も反省をしているということを言われておるわけなんだけれども、そういう者に対しても何らかの援助の手を差し伸べる必要があるだろうと私は思うのです。そういうものをむしろ奨励しておったという段階においてそういうことを農民がやった場合、この点を実は伺ったわけなんです。
  34. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 個人が自己資金をもちまして、あるいはどこからか借金をして開田をした場合の問題でございますが、この場合におきましても先ほどの土地改良事業地区と同じように、生産調整によりまして休耕したりあるいは他作物に転作をいたす場合には生産調整奨励金が出るわけでございまして、その中で負担分を織り込んでございますので問題は同じであろうかと思います。ただ将来こういう人たちが永久に他作物転換をいたしますような場合につきましては、借金の返済の問題を御心配になっておられると思いますが、たとえば農協等の高い利子の金を借りていますような場合には、先ほど申し上げましたような自作農維持資金のような安い金利への借りかえというようなことを考えて、できるだけそういう負担の軽減に資してまいるようにしたいと考えております。
  35. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 大体そういう面積はどのくらいあると見られますか、いま後段において答弁された問題。そしてその負債額、そういう意味で背負うた農民の負債額というものは全国でどのくらいありますか。
  36. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 土地改良事業によります補助金の出ましたもののほかに、農家が個々で開田をしているものがあるわけでございますが、これはなかなか統計的な把握がむずかしゅうございまして、どの程度あるか、それに伴う資金源として自己資金がどのくらい、それから借り入れ金がどのくらいというのは統計的につかまえておりませんので、いまここではっきりしたことを申し上げかねる次第でございます。
  37. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 これは統計的になかなかつかまえられないというのですが、大体そういうところは生産調整の対象になっているはずであります。これは農民の傾向としましておおよそそうなんです。そういう生産調整で、これはいつ開田したのかということなんかはそれぞれの農協なり役場等ではちゃんとつかんでいるはずであるから、それらの問題を十分把握して、これはひとつ十分手当てをしていただきたいということをお願いする。  それで、生産調整は去年とことしと二年続いたわけですが、何年間生産調整を続ければこの米の問題は解消するのか。そして生産調整補助金をほぼ現状どおり、去年あるいはことし並みにやるとして、何年間生産調整補助金を出す用意があるのか、その辺のところをひとつ明らかにしてもらいたい。
  38. 中川一郎

    中川政府委員 ほんとうの意味の生産調整はことしからです。昨年は完全な生産調整でありませんで、ことしから本格的な生産調整に踏み切ったわけですが、政府としては五年間かかって過剰米のできないところまで持っていきたい、こういう計画で初年度をスタートした、こういうことになっております。
  39. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そうすると政務次官、五年間は生産調整補助金もずっと続けて出す。金額も現在のこの基準の設定によって三万五千円とか四万円とか、あるいは三万円以上というようなことになっているわけだけれども、平均して三万五千円くらいと思うんだけれども、十アール当たりの米作所得といいますか、それに対する何らかの割合としてそういう数字が算出されたと思うけれども、この五年間にわたってはおよそそういう基準で、いままで算定したと同じような基準で五年間続けるのである、こういうことに了解してよろしいでしょうね。
  40. 中川一郎

    中川政府委員 いまのところの考え方としては、転作、ほかの作物に永久にかわっていただく方には五年間、いま申し上げたとおりですが、単純に休んでおってまた米をつくるかもしれないぞというような人への奨励金は三年で切り上げたい。転作のほうは五年間続けていきたい。いつまでも休んでいる人に金を払っていくという政策は国民からの批判も強いだろうということで、転作に重点を置いて、奨励金も御承知のように三万五千ないし四万、二とおりありますが、そういう金額にいたしております。  そこで、五年間連続してそれだけの金額を払うのかということでありますが、この点はなかなかむずかしいところでございまして、いまわれわれとしては、早く御協力いただいた人には分厚く、あとから来た人は少し安くなるぞというようなことができまいかという考え方は持っておりますが、その点はこれからの転作の状況等を勘案して対処していきたいということになっておるわけでございます。
  41. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 五年間続ける、しかも転作に重点を移していく、こういう意向のようでございますが、これは半ば農民の自発的協力という形をとるけれども、これだけ巨大な過剰米圧迫という中で、食管もあぶないぞというような状況をちらほらさせながら農民の上にのしかかっていけば、たいがい農民も涙をのんで生産調整を引き受けざるを得ない、協力せざるを得ないという形をとっているのが実態だと思いますね。したがってこれらの配慮というもの——日本の歴史始まって以来、初めて米をつくるなということを強制して、それに対して補助金を出すというのは、われわれの目から見てもだれの目から見てもまさにさか立ちの状態だということなんであって、しかも転作というものに重点をおきたいというのだが、転作をする場合に一体どういう指導方針というものをもって具体的に指導をするつもりなのか。この点と、農業分担区域というものが先ごろ農林省から発表されました。しかしこの目的というものが必ずしもすっきりしたものではない。この問題との関連というものは一体どうなっておるのか、この点を農林省からお伺いをしたい。
  42. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 先ほど農林省では農業生産の地域指標を公表したわけでございますが、これは今日のような農産物の需給事情を念頭に置きまして、かつ米の生産調整をやらなければならぬという情勢のもとにおきまして、地域的に農業生産の重点をどこに置くかというようなことを計数的に明らかにして、農業の地域的な生産活動の指標として、誘導方針として公表したのでございます。したがいまして、今後米の生産調整を考えてまいります場合にも、あるいは米から他の作物への転換、あるいは他の園芸作物、飼料作物等の生産につきましても、この地域指標を一つの指針といたしましてその方向へ誘導すべきことは当然でございまして、生産調整もそれを配慮しまして、地域指標を一つの勘案要素として織り込んだ上で生産調整の実施に当たっておる次第でございます。
  43. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この農業生産地域指標というんですか、この指標は、いま農地局長の答弁によると、これは誘導、指導の方針として発表したんだ、こういうことなんだけれども、単に農林省がそういう計画を出して指導をしたいというこれはいわゆる指標であって、そういう方向に誘導をしていきたいという気持ちの表明をしたにとどまる。これをやはり総合的な農産物の需給状況というものを踏まえた上で——ときには野菜が足らなくなって暴騰をするというようなこと、ときにはまたつくり過ぎて暴落をするという、そして豊作貧乏ということで農民が泣く、こういうような繰り返し、暴騰したときにはほんとうに一部の人たちがつくったにすぎないというようなことで、そういうことの繰り返しを今日までずっとやってきておる。たとえば都市近郊の場合には、その指標の中でも畜産重点であるとかあるいは野菜、果物、こういうようなものを重点にやるというようなことがうたわれている。これはまあきわめて常識的なことであって当然なんだけれども、そういう指導方針というものが誘導政策として出されるならば、その誘導にふさわしい裏づけ、農民にとってメリットとなるような政策が用意されていなければ、今日までの農林省の指導方針というものは、指導方針に従ったら必ずひどい目にあうのだというのが農民の中にもう定着して、農民の腹の中に、胸の中に抜きがたい不信となってあらわれている。こういうようなものを根本的に、この指標のように計画どおりに農民を誘導していくためには、どういう裏づけというものが用意されておるのか。この点なしにはこの農民の不信というものは抜きがたいものがあるし、あのような指導なんかはほんとうに絵にかいたもちであって何らの意味を持たないとすら極言できる。その裏づけとなるべきしっかりした価格安定政策というようなものなどについて、あるいはまた国の予算上のメリットなりそういうようなものとか、あるいは税制金融面におけるメリットをつけるとか、そういうものの裏づけなしには、あんなものを出したところで、農民がついていくと思ったらこれは大きな間違いである、こういうように言わざるを得ない。そういう点で、その裏づけの問題については一体どう考えるのか。これは農林省と、それから大蔵省はその問題について、そういう指導に対してどういう要請を農林省から受けているか、この両者から答弁をいただきたいと思うわけです。
  44. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 最近の農産物の需給事情、特に米の需給事情にかんがみまして生産調整を実施し、米から他の作物への転作を推進することといたしております。昭和五十年度におきましてはおおむね五十万ヘクタールにつきまして転作が行なわれることを目途といたしまして、今後需要の伸びが予想される野菜果樹、飼料作物、大豆等への転作を行なうことにしております。その転作を行ないます場合の地域的な指針として、地域指標を誘導指針として考えておるわけでございますが、その他、この転作に伴う生産調整奨励金の交付のほか、裏づけとして、土地基盤の整備、農業近代化施設の導入、野菜価格安定対策等の助成措置を今後五年間にわたりまして講ずることといたしております。従来、土地基盤の整備につきまして水田に重点があったことは、昭和二十年代、三十年代の傾向でございましたが、今日の需給事情のもとで、やはり米から他の作物への転換ということを念頭に置きまして生産基盤の整備をすべきことは当然でございまして、そういう方向に進むようにこの土地改良等の事業の実施あるいは補助金の制度の運営等も考慮しておるところでございます。今後、農産物の需要の動向と地域の特性に即した稲作転換を推進いたしますために、そういうふうな基盤から考え方を転換をしてかかる所存でございますが、特に野菜果樹等の問題については価格の問題も非常に重要でございますので、価格安定対策につきましても力を入れてまいりたい、かように考えております。
  45. 中川一郎

    中川政府委員 農林省においての方針を受けて、大蔵省もあの指標を基礎に、伸ばさなければならぬ農作物と、米については減らしていただく指標ができておりますから、土地改良のみならず、農業構造改善あるいは近代化施設、いろいろな農政上の手を加える問題がありますが、予算の配分にあたってはあの指標に従ってそういう方向への重点配分をして伸ばしていきたい。特に御指摘のありました、たくさんつくって安くなるという問題は野菜が一番顕著なものでございます。野菜において非常に過剰生産の場合に暴落をするということがありますので、野菜価格安定基金という制度がございますが、これの地域を拡大するとか、あるいは対象品目をふやすとか、そういうことをやりましたが、またこの制度そのものについてもできればひとつ今後強化の方向で検討したい。このようにいろいろと配慮を加えまして、広瀬委員指摘のように、絵はかいてみたけれども実効があがらなかったということがないようにつとめてまいりたいと考えておる次第でございます。
  46. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 実効のあがるようにやるというその気持ちはたいへんけっこうなことなんだが、先ほども申し上げたように、農林省の指導に従ったら損をしたというこの繰り返しをやってきた、そういう農民の不信をぬぐうためには、そうして日本のこの農業生産というものが、やはり貿易自由化の段階においても、この農産物の特に生鮮野菜、果実というようなものについてはやはり自由化にも限度があることだし、しかもそういうことで遠いところから船に載せて持ってくるというようなことは、これは国際的にもやはり不経済なことだ。したがって、この農産物の自給度というものはかなり、八五%ぐらいまでは国内で自給してまかなえるというような状況というものがそれぞれの県においてでき上がるのが望ましい姿だろう。これは八〇%程度が適当なのか八五%がいいかということはいろいろ議論はあるにしても、食糧の自給というものはかなりのウエートを置いて考えていかなければならないことでありますから、そういう問題を含めて、十分そういう指導というものが農民に喜んで受け入れられるような裏づけというものについては一そうの努力をしていただきたい、このように考えるわけであります。  ところで次の質問に移りますけれども政府はずっと一貫して食管法のいわゆる根幹を堅持をする、こういうことを言っているわけです。ところがきのうあたりの参議院の農林水産委員会ですか、あるいはその前かもしれませんけれども、根幹というのは一体何かという質問に対して明確なお答えを農林省からついに得られなかったという新聞の記事があるわけであります。食管制度の根幹というのは一体何ですか。この点、明らかにしていただきたいと思います。
  47. 中川一郎

    中川政府委員 食管の根幹は非常に議論の多いところでありまして、農家の皆さんからいうならば、適当な所得補償方式による全量買い上げが根幹だ、こういうふうに解釈をされておりますが、政府としては法律のたてまえからいって、国民食糧の安定的供給というところが根幹であるというふうに解釈をして、今後国民の食糧が安定的に供給できることを主眼としつつ、また一方では農家経済の安定ということも考えなければいかぬということで、両面立つように鋭意努力をいたしておるというところでございます。
  48. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この問題を中川さんとやりとりしても片のつく問題ではないと思うので次の問題に移ります。  これもまた問題なんですが、財政制度審議会ではその最近の答申の中で、いわゆる三K問題を中心にした答申が出ているわけなんだが、その中で米はやはり間接統制に移すのだということを言っているわけです。その移行に備えて自主流通米数量拡大、あるいは政府の買い入れ数量を減少させていく、また過剰米を処理をする、こういうようなことを答申しているのですが、そうなりますともう食管制度というものは、間接統制移行の段階にはこれはなくなるわけでなんだけれども、その点は一体どうなんですか。食管制度を廃止して間接統制移行ということを考えているのかどうか。
  49. 中川一郎

    中川政府委員 その点についてはまだ議論の段階でございまして、政府としては食管を改正して間接統制に移るというようなことはまだ決定をいたしておりません。ただいまの食管制度で問題になる点は、いい米が生産されない。等級間、品質問、銘柄間、そういう各いろいろな段階での、いい米をつくった人が価格の上で恩恵にあずかれない。一方消費者のほうにおいてはいい米が食べれないということで、食管制度が、今日過剰米を生じておる段階では問題があることは事実でございますので、食管制度を改正しない範囲内において自主流通米というものを育てることによって、いい米をつくった人が高い値段で買っていただける。またおいしい米を食べようという人は自主流通米の制度で恩恵を受けておるという程度だけは、食管制度の範囲内においてやってきております。そこで今後はどうなるかということでありますが、そういう制度がいまの中で育っていく、自主流通米がどんどんと伸びていくという姿でいけるならば食管を改正しなくてもいいのではないか。しかし自主流通米の制度がなかなかうまくいかないということになった場合にはさてどうするかという問題は、今後やはりくふうしていかなければならないのではないか。この辺は皆さんからもいろいろ議論をいただいて、今後慎重に対処していかなければならぬ重大な課題であり、今後の推移は慎重に見守らなければいけないという段階になっておると存じます。
  50. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 自主流通米がどんどんふえてくる、自主流通米が現在の配給数量を侵食して、ほとんど配給というものが形骸化して、空洞化して、自主流通米がずっとそれに入ってしまうというような伸び方をしたらどうなるのですか。この食管制度というものは事実上は意味がなくなってしまうわけですね。自主流通米の伸び方いかんによって食管制度の存廃がきまるんだというあなたのお考えはそういうことになるわけですね。その辺のところはどうなんですか。
  51. 中川一郎

    中川政府委員 その辺が非常にむずかしいところでございますが、ことしの米価がいろいろ議論を生んでおりますのは、生産調整の実効があがるか。先ほど御質問のありました生産調整をやらなければならない絶対使命がある。もう一つは、いい米をつくった人が得をする、悪い米をつくった人が若干犠牲を受けることになろうと思いますが、いずれにしてもいい米が流れる制度がどこまで伸びるか。ことしは百八十万トン程度を予定しておりますが、これが全部自主流通米になって食管法が形骸化してしまうというところまではむずかしいところですから、この辺は今後の推移について、農家の皆さんも自主流通米制度のほうがいいのではないかという喜び方をするか、いやそれは困るというかっこうに農家に影響を与えるか、今後の見方、農家の方々の受け取り方あるいは消費者の方々の受け取り方を見つつ、この制度を伸ばすか、ある程度押えるかということになっていくのではないかというように考えております。   〔発言する者あり〕
  52. 毛利松平

    毛利委員長 お静かに願います。
  53. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 だいぶうしろからやじが飛ぶように、たいへん混迷せる答弁をしておられるわけなんだが、政務次官、自主流通米制度というものを伸ばしたいとあなた言われた。そうすると、自主流通米がどんどん伸びていくということになると、政府が直接買い上げて配給していくという数量はどんどん蚕食されて小さくなっていくわけですね。それはもう食管のない事態と同じようなことになるのではないですかということを聞いておるのですが、どうなんですか、端的に答えてください。
  54. 中川一郎

    中川政府委員 その辺はどういう伸び方をするかを見なければわかりませんが、私どもの考え方としては、自主流通米ですから、いい米を食べたい人あるいはいい米で勝負したいというのは、そこにおのずから限度があって、全量が自主流通米に行くようなことにはなるまいという見方をしておりますが、農林省から補足して考え方を御答弁させます。
  55. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 お答え申し上げます。  自主流通米の出荷経費につきましては、産地、消費地、銘柄等によってさまざまでございますが、いわゆるうまい米といわれております優良品種二十六銘柄が自主流通米として流通しておるわけでございます。そこで、これらの自主流通米につきましては、現在食糧庁を通ぜず、集荷団体から販売業者のほうに売るということになっております。先生御承知のとおり、現在政府米の配給につきましては、いわゆる生産価格消費価格との間に財政負担がございます。したがいまして、自主流通米として流れるものは財政負担を乗り越えるようないい品種でなければならない。すなわち東京では大体十キロ当たり千九百五十円から二千円ぐらいで売られております。その辺が消費者としていい米に払い得る限度でございます。自主流通米の場合もいろいろ販売に要する経費がかかりますので、その場合に生産者の手取り価格政府に売る価格よりも若干高くなければ、農家政府に売るわけでございます。したがいまして自主流通米というのは、いわゆる現在食管の財政負担がございますので、よほど消費者に好まれる米でないと千九百五十円から二千円の価格ではなかなか売れないという問題がございます。そこで、食糧庁といたしましてはこの制度を伸ばしていこうというふうに考えておりまして、現在金利、倉敷の補助をしたり、いろいろな措置をとってやっておるわけでございますが、何しろ消費者のほうが千九百五十円ないし二千円で買う米をつくらなければならないわけでございます。したがいまして、自主流通米の育成につきましては、まずつくるほうでいい米をどんどんつくっていかなければならないわけでございます。そこでわれわれといたしましても、やはり消費者に好まれるような米をつくりたいということで良質米の奨励はやっておりますが、土壌の関係その他の関係で、必ずしも全国どこでもササニシキをつくれるわけではないということでございますので、ある程度数量的な限界がそこには当然あるというふうに考えております。
  56. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 食管制度の根幹のとらえ方というものはいろいろ議論があるところだというのでありますが、われわれはこの食管法を読んでみまして、これは政府が無制限に買い入れるんだということが一つ。それからもう一つは、その政府が買い上げた米を消費者に別な角度で、消費者の生活の安定というものを旨として定める消費価格によって配給をしていくのだということ。そういうことはやはりいわゆる米の二重価格制というものが食管制度の出発の当初から予定されて、このゆえに生産者自身もちゃんと所得が補償されるということになり、米の再生産がそれで確保されるということになって、戦後あのたいへんな食糧危機の時代を克服して、一億四百万の国民が今日何ら主食の問題について心配のない食生活を送っている、こういう点ではまさに食管制度の果たした役割りというのは非常に大きいし、またそういう食糧についての危機というようなものが何らないという形の中で、時に応じては野菜の暴騰というようなことで問題はあったにもせよ、主食の問題については少なくともずっと戦後一貫して困難なしにやってきた。むしろ経済成長をささえた功績は根源的にここにあるのじゃないかということもあるわけだ。そういうようなことを考えると、自主流通米制度をどんどん入れていくということは、食管制度をその部分だけくずしたということになるのだ。しかもそれは政府の財政負担もない。なるほど財政負担がなければ政府食管による赤字もその分だけは減るわけだ。そういうことはわかるけれども、その分今度はいい米だという形において価格が高いものになってくる。貧乏人は配給米、裕福な、所得の高い者は自主流通米、こういうことになっては、まさに国の政策がそういう面でくずれて、国民に不平等な格差を設ける。こういうことになるわけであって、そういう意味では自主流通米がどんどんふえるということは、そういう方向へ行きたいんだ、うまい米を食べさせたい、高く売りたい、こういうことで、財政面の配慮だけやりながらやるということは、一体食管制度の根本にかなうものであるかどうか。すでに根幹をくずしておることではないか、こういうように考えざるを得ないわけなんですが、いかがですか。
  57. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 お答え申し上げます。  現在の自主流通米はいわゆる配給制度の中に入っております。政府が売る米と自主流通米を合わせまして、配給制度の中の米ということになっておりまして、自主流通米は、いわゆる自由米と同じように完全に食糧管理法のワク外の米であるというふうにはなっておりません。したがいましてわれわれといたしましては、先ほど中川政務次官から御答弁がございましたように、食管の根幹とは、要するに国民食糧の確保に必要な米を政府が確保して、これを配給していくということになっておりまして、したがいまして自主流通米については金利、倉敷の補助とか、いろいろの補助を行なっているわけでございまして、配給制度のワク内の米でございます。   〔発言する者あり〕
  58. 毛利松平

    毛利委員長 本会議散会後直ちに再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      ————◇—————    午後三時四分開議
  59. 毛利松平

    毛利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。角屋堅次郎君。
  60. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 午前来、同僚の諸君が福田大蔵大臣並びに倉石農林大臣に出席要求をいたしておりました。午後福田大蔵大臣が出席されましたので、きょうは委員各位のお許しを得て、当委員会で食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案に関連をいたしまして、若干御質問を申し上げたいと思うわけでございます。倉石農林大臣おいでになりませんので、農政に関連する部分もございますけれども、国務大臣立場で総括的に大蔵大臣からもお答え願いたい、こういうふうに思います。  ことしは、御承知の米価の問題について、例年は七月がシーズンでありますけれども、四月の下旬、二十六日から米価審議会が開催をされ、そして政府としても早目にことしの生産者米価をきめたいということで進んでまいっておるわけでございますが、二十六日からの米審が大臣御承知のような状況で、正規の審議会が、ことしのいわゆる試算米価に対する生産者代表の反発というふうなことから難航しておるようであります。ことにまたきのうは、私が所属しております衆議院農林水産委員会で、福田さんの信頼される倉石さんからまた例の失言が出てまいりました。本会議後陳謝これつとめるということになっておるようでありますが、しかし、直接責任の衝にある倉石農林大臣の報道されておりますような失言、これは生産農民ばかりでなしに、政治的にも私ども許せないというふうに思っておるわけであります。  最初福田大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、次期総理を目ざすあなたが大蔵省の台所を預かっておって、一番財政の中心におるあなたのときに、四十四年、四十五年、だれよりもだれよりも農民を愛すと言ったあなたのもとで、米価の据え置きをやってきたわけですね。ことしの場合は、三年も据え置きは断じて許せないという農民諸君のほうはいたる全国的運動が起こったわけで、自民党の良識ある方々も、三年据え置きというのはこれはもうわれわれとしても了承できないという形で動いておるわけであります。米価審議会が当面どういうふうになるか別として、場合によっては答申不能という事態もあろうかと思いますが、ことしの生産者米価に臨む大臣の心境いかんということをまずお伺いしたいのであります。
  61. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま激動する日本の社会経済の中で、私は、日本が国をあげて工業化という勢いが進んでおる、そういう中において農村をどういうふうに守っていくか、非常にむずかしい問題に当面しておる、こういうふうに思うのであります。しかし私は、農村というものは日本社会の大きな基盤である、これが崩壊をするというようなことは断じて許すべきではない、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、そういう前提で米作農家のことを考えてまいる、こういう際に、米作農家というものが、これは食管制度の根幹を維持するということに強い期待を寄せておる、こういうふうに見ておるわけであります。ところが現在はどうかというと、米の問題には量の問題と価格の問題が出てきておる、こういうふうに考えられるのであります。つまり量的には異常な過剰な生産が行なわれるような状態である。これを輸出するわけにはいかぬ。そこで農林省はいろいろ頭を悩ましておりますけれども、あるいは飼料にまでしなければならぬというような状態、そういう状態の米作である。また価格の問題はどうだ、こういいますると、これが生産過剰という問題と深いつながりを持っておる。そういうような状態においてとにかく米の需給の均衡、これはどうしてもやっていかぬと、農民が期待を寄せておるところの食管制度自体もこれは維持することができなくなる、こういうところに追い込まれておる。それをどういうふうにさばいていくかというのが当面しておる課題だろう、こういうふうに思うのです。  そういうところから、とにかく需給の均衡ということで生産調整をする。それからまた過剰在庫米につきましてはこれが計画的処分を考える。多額の国費を投じましてそういうことをする。一方において食管制度を維持しなければならない。そういうことになりますればこれはどうしても、食管制度というものはこれは、管理、統制の仕組みではございますけれども、大きな経済原則に乗っていかなければならぬというふうに考えます。つまり、過剰の場合におきましては過剰が調整されるように、価格が下がらなければならぬ。また生産が足りないという場合には、これは均衡を回復するために価格が上がらなければならぬ。これは経済の大原則であります。そういうことと大きくかけ離れる米価、これは何といいますか、食管自体に対して非常に大きな悪い影響を及ぼす、そういうことになりはしないか、そういうふうに考えるのであります。当面の問題といたしますと、そう物価が上がるのに米価が上がらない、そういうナイーブといいますか、考え方、これが存在すると思いまするけれども、ここは少し長い目で農村ほんとうに健全に育てていくという見地からすると、米価はむしろ据え置いて、米価を引き上げた場合に必要であろうというお金は、これは農家の先々の経営が安定するように、そういう方向に投じていかなければならないだろう、こういうふうに考えまして、政府といたしましては予算の編成に臨み、また国会に対する総理の施政方針演説等におきまして米価は据え置くと、こういう方針を打ち出したわけであります。もとより米価は米価審議会の意見を受けた上これを決定するということになっておりますが、米価審議会に臨む政府の姿勢といたしましてはただいま申し上げたような方針を打ち出しておるわけであります。まあ、いろいろむずかしい問題に当面しておる、私も苦慮しておりますが、政府がまずとにかく国会において内外に声明いたしましたこの姿勢、これを根本からくつがえすというようなことはとうてい政治行動としてでき得ない問題である、さように考えておる次第でございます。
  62. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、福田大蔵大臣のおことばとも思えぬような御答弁を実はいただいたわけであります。昭和十七年に食糧管理法ができて今日まで相当の年数がたっておるわけですけれども、特に敗戦後の海外からの大量の引き揚げ、食糧の異常な不足状態という中で、農民諸君がジープ供出や強権供出にたえて食糧増産に励み、底米価の中でそれを乗り切って、いわば今日の日本経済の発展の大きな原動力をつくってきたということはまぎれもない事実だと私は思うのであります。しかも、たとえばいま大臣からお話しの量と価格の問題ということ、量の問題一つを見ても、数年前までは八十万トン、百万トンという、世界第一位の米の輸入という事態が続いたわけですね。そこで農林省政府も一俵増産運動、農業団体もこれに協力するということで米の増産を精力的にやって、結局四十三、四十四、四十五と、いわゆる千四百万トン台の生産能力というところまで一挙に引き上がったわけですね。それで数年前に二百六十五万トンの在庫が出た。いわゆる生産調整というのは去年は百五十万トン。実際に農民諸君に要望するのは百万トン、転用で五十万トンというやり方をやりましたが、その一年前は一万ヘクタールとか五万ヘクタールとかいう形の生産調整を試みにやるという事態の判断といいますか、そういう点にも打つべき手が積極的に打たれなかった。ようやく去年百六十万トンの生産調整。ところがことしの二百万トンの生産調整ということになってくると、私ども農政を十数年、これは国会でも担当してやってまいりましたが、第一線の農業団体に聞いても農民諸君に聞いても、ことしの生産調整はとてもじゃないが過酷で、快くこれを受けられぬ。しかも去年は食管を守るというにしきの御旗のもとに農業団体やあるいは知事、市町村長が農民諸君の協力を要請した。農民がこれに応じた。ことしは、むずかしい議論をするまでもなしに、買い入れ制限問題あるいは物統令廃止、あるいはことしも三年続きの据え置きをやろうとする。一体食管どこへ行ったのかという事態の中で、従来以上の生産調整を要請するということで、はたしてこれができるのかどうか、私は率直にいって、この生産調整は見切り発車したという事態の問題もありまして、はたしてこれが七割にいくのかあるいは六割台にいくのか、あるいは八割までいくのか。少なくとも一〇〇%をこえる事態というのは、今日の情勢下では率直にいって予想できないというふうに思うわけであります。     〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕  そういった生産調整の問題もこれから五カ年間にわたって——休耕は三年、その他のものは五カ年ということで、五カ年間引き続きやっていかれようというわけですけれども、たとえばこの奨励金問題ですね。これは去年より若干、基準反収に対するキログラム当りの価格を引き上げたわけでありますけれども、逐年下げていくということなのか、あるいはことしの奨励金の水準というのは五年間は引き続き維持していくということなのか。これからの生産調整等に対する財政的な問題について大臣からひとつお答えを願いたいと思います。
  63. 福田赳夫

    福田国務大臣 ことしの生産調整二百三十万トン、これはぜひひとつ御協力を願いたいと思うのであります。この生産調整が米価問題を円満に解決していく、また農家経済を安定さしていく私はかなめになる、こういうふうに思っております。それはことしばかりではない、来年も再来年も、またその次もその次も、とにかく五カ年間にわたっては必要である、こういうふうに考えておるわけでありますが、これができてほんとうに食管制度というものは正常に運営できる、こういうふうになっていくんだろう。どうも飼料にまでしなくちゃならない、そういう米を生産する、これは私はもう農家としても張り合いのない仕事をすることだ、こういうことになるのじゃないかと思います。そういうふうに思いますが、生産調整はどうしてもやっていかなければならぬ。生産調整をやっていく、それに対しては生産調整金を支払う、これはそういう考えでございますが、ただ、さあその生産調整金をずっと払っていって、ああ三年だあるいは五年だという段階でぴしゃっとこれがなくなっちゃう、こういう事態も、その時点のことを考えてみますると問題があろうか。私個人としては、そう急にというわけにはなかなかいかぬと思いますが、なだらかにこの生産調整が終わるんだという方向に価格の面でも推移するというのが妥当じゃあるまいかというような感じがするのでありますが、これは私はそうこだわっていない。そのときの時点でどっちの方向がいいのかということをきめていけばいいんではないか、さように見ております。
  64. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いま大臣は、食管問題、食管問題ということで、何か御答弁、お話しを聞いておりますと、食管を守るという強い気持ちを持っておるやに判断をされるのですが、必ずしも政府全体としてはそう見てない。申し上げるまでもなく、いわゆる食糧管理制度の根幹なんというのは、なくなった池田さん以来ずいぶんいろいろな機会に私どもはやってまいりました。最初堅持と言っておったのが維持になり、最近はそういう根幹問題が非常に怪しくなる。先ほども同僚の広瀬君が中川さんと盛んに根幹問題でやり合っていましたが、中川さんの答弁を聞いても、従来は米価でずいぶん動いた人だけれども、だんだん答弁が後退しておる。内容に触れませんけれども、とにかく昭和十七年以来の食糧管理制度、少なくとも数年前まではいわば完全直接統制方式というふうな性格を持っておったと思うのです。四十四年に自主流通米が発足してから、いわば不完全直接統制時代に入った。ところがことし、買い入れ制限、あるいは物統令廃止、あるいは第三条、第四条の働き方に対するチェックというふうな問題が出てくると、これはまた新しい局面を迎えつつある。しかも大蔵大臣のいわば配下にあります財政制度審議会なんというのは、早い機会に間接統制に切りかえろなんという提言をやっているわけであります。大臣はそれをどう受けとめているか、次の答弁の機会にさらに触れていただければけっこうだと思いますが、いまの進みぐあいを見ておると、いわば七百万トン以上の過剰在庫というものを、短期間に需給の均衡のバランスをとりながら過剰処理をしていって、そして正常状態に返すのだという御答弁のように伺えるわけですけれども、そうではなしに、むしろ生産調整にいたしましても、五カ年間というめどの中でいまの自主流通米をもう少し拡大をしていく。拡大をするためには、生産者米価を押えたほうが自主流通米拡大がより容易であるというふうないろいろな配慮で、幾つかの問題に対する手を打ってきているのじゃないか。はたして食糧管理制度そのものに対する基本的な性格はあくまでも堅持するという考え方が大蔵大臣自身にあるのかどうかということを率直に私は疑っておるわけであります。この際ひとつそういう問題に対する大臣のお考えを承りたい。
  65. 福田赳夫

    福田国務大臣 食管制度の根幹は、これを私は維持していきたい、こういうふうに思います。つまり国民生活の安定、その安定の前提として国民に必要な食糧の供給、消費者、生産者の両面にわたって政府が食糧行政として米の問題に介入する、この仕組みは残していくべきものであり、残していきたい、私はこういうふうに考えます。  ところが、私はあえて根幹と申し上げましたが、このやり方についてはいろいろあると思うのです。いま国民の間に不満がある。その一つの不満は、うまい米を食いたい、うまい、自分の選好する米が手に入らぬ、そういうような不満もあるわけです。まあ広く大きく言いますれば、そんなに過剰な米をつくってもいいものかどうかという問題もありけれども、一人一人の消費者をとらえてみるとそういうふうな種類の問題、その他もいろいろ出ておるようであります。そういう点はこれは改革をしていく、時勢の流れに応じまして改革をしていく。それで初めて農民の期待し、希望するところの食管制度、その根幹というものが維持されるのだ。その条件を維持しないで、時代は大きく転換をしておるそういうときに、旧態依然の制度そのままを運行していこう、これはもう無理があり、立ちおくれになり、そしてついには世の流れに押し流されてしまう、そういうおそれを感じるので、早目に、この制度につきましては、根幹、これは維持しつつもいろいろの手当てをしていかなければならぬだろう、こういうふうに考えております。     〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕 そういうことがこの制度のいろんな運用に出てきておる。出てきておるが、あくまでも根幹につきましては維持していきたいものだ、私はそういうふうに考えておるのであります。
  66. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いま大臣は食糧管理制度の根幹というものを維持するということを言われるのですが、それは財政制度審議会あたりでもいっておる間接統制の移行ということも含めて、根幹の維持の中に入ると考えておるわけですか。
  67. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ理屈をいえばあるいはそういうことが考えられるかもしれませんけれども、私は、いま角屋さんからお話がありましたが、だれよりも農村を愛する、農民を愛する、こういう気持ちですよ。農民がそういうことを希望するならば、私は、決定的な欠陥があるというのでなければその根幹を維持するという態度、姿勢でいいのじゃないか、こういうふうに考えておるのです。しかしいまのままで一体これが維持できるかというと、維持できませんね。とにかく七百万トン、八百万トンの過剰米が積み重ねられる、そういうような状態なわけです。それをどういうふうに処分をするか。外国に貸してやる、貸してやるといったってただみたいな貸し方、あるいはくれてやる、あるいは飼料にします。飼料はあまりだけれども、そういうような状態でこの食管を維持せいといったってこれは無理なことじゃないか。そういうような、制度に合理性を与えるということはみんなして考えていってしかるべき問題じゃないか。私はそういうふうに考えまして、逐一そういう手を打っておる、こういうふうに御理解願いたいのであります。
  68. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 食糧管理制度そのものは、現状においても何か古い性格を持っているというふうには私必ずしも思わない。要するに、過剰在庫の問題がありますけれども、これは多くを議論したくはありませんが、積極的な消費拡大の問題なりあるいは外国からの小麦その他の輸入をもっと削減をする。四百万トン台の小麦輸入というふうなものを押えていく。米についてはこちらの過剰在庫が出てくるとともにこれをチェックして、ほとんどゼロに近い数字にしておるわけですけれども小麦等についてもそういうことによって米食率の向上をはかる。あるいは学校給食そのものについても九十二の実験校を始めたり、もっと積極的に数年前からこういうものに乗り出しておったらどうか。あるいは夜間の定時制へ行っている育ち盛りの学生諸君が、夜むすびの三つでも四つでも当たるとか、そういう米があるならあるなりに、いろいろ低所得層なりあるいはそういう勤労学生なりあるいは学校給食、いろんな面にもっと時宜に適した積極的消費拡大ということを考えながら、ことしの場合でいえばえさに百四十万トン振り向ける前に、もっと有効な使い方がなかったのか。外国からの輸入食料の問題も国際的な問題ございますけれども、やはり小麦等についてはもっとチェックする、コントロールするということは、私しばしば予算委員会あたりでも言ってきておることなんですけれども、そういうことをそのままにしておいて、そしてこれが五百万トンなり六百万トンなり七百万トンになってきたというだけでは、政府責任を果たしてきたというふうに必ずしも言えないのではないかと思うのですが、そういう総合的な問題も含めて、今後どうしていくのかということについてもひとつお答え願いたい。
  69. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはまさに角屋さんのおっしゃるとおり、米の問題は米という視角の問題だけでは解決できないと思うのです。やはり広く農業全体をとらえていく、さらには農業ばかりでない、農業外の諸問題もとらえまして、そして解決しなければならぬ問題であるというふうに考えます。そういう意味において政府努力が足らなかった——政府努力をしてきておるのです。おるけれども、足らなかったというおしかり、これは甘んじて受けなければならぬし、また反省もし、さらにいろいろな手を尽くしていかなければならぬと思いますが、手を尽くしてみましても、いままでの食糧管理体制のもとで一体この米の問題が解決できるか。これはできないと私は思うのです。つまり、幾ら余ってもどんどん高い値段で買いましょう、こういう仕組みじゃこの米の需給問題というのは私は絶対に解決できない、こういうふうに思うのです。やはり米の需給というものを回復して、そうしてその上に立ってもろもろの施策を考えていく。農家の考えるところも十分これに取り入れていくという考え方、それは学校給食の問題もありましょう、あるいは麦の奨励の問題もありましょう。ありましょうが、しかし麦の奨励の問題は直接に米には関係してきませんが、しかしこれは幾らしたって知れたものです。わずかのものはしないというわけではない。これから大いにしなければならぬけれども、問題はやはり価格の問題、数量の問題、この二つの問題について妥当な解決策が進められなければこの問題は解決しない、こういうふうに考えますが、なかなか頭の痛い問題であるこういうふうに考えておるわけであります。
  70. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 国際的に米の生産あるいは輸出、輸入の関係という問題にもやはり頭を入れておく必要がある。FAO等、国際食糧の今後の動向はどうかということが国際会議その他の舞台で判断等も出ておるわけでありますけれども、これは生命のかてでありますから、いま余ったということであまりこれに目を奪われて手を誤れば、今度は逆に、数年前は上昇傾向の動向にあったのが、これを押えて心理的にいろいろな面で下降傾向になった。これが地すべり状況を起こすようになると、いずれかの機会にもう一回姿勢を変えなければならぬという場合に、国際的な米の生産あるいは輸出入の状況はどうかというものを考えてみると、世界の米の総生産量なんというのは、一九六九年の数字で見れば二億九千五百四十三万六千トン、これは米穀のもみの生産でありますけれども、そういう中で生産では中国が第一位にある。これは九千万トン台、次いでインドが六千万トン台、さらにパキスタンが二千万トン台、その次に日本が大体千七、八百万トン台、これはもみの関係でありますから、いまの国内でいっておる数字よりちょっと上回っておりますけれども、とにかく千七、八百万トン台、それからインドネシアが千六百万トン台、そのあとタイが千三百万トン台、こういうアジアのそれぞれの国が米の一位から六番目まで占めておりますね。日本もまさに米食国であり、米の生産国であるわけです。ちょうど数年前の米の輸入の状況を見てみますと、一九六五年、一九六六年は九十六万七千トンあるいは八十一万二千トンというようなことで、世界の最大の米の輸入国になった時期があるわけです。米の輸出状況で見れば、アメリカがつくっておるうちのほとんど半分以上外国へ出しておるという点で、米の生産量はたいしたことはないのですが、アメリカが米の輸出では世界第一位、その次がタイ、そして中国。中国とタイは若干年次によって違うこともありますけれども、大体タイ、中国、こういう形になっておるわけですね。この国際的な米の生産あるいは輸出入の状況は、大体輸出の場合も輸入の場合も六百千トン台ですね。だから日本が非常に米が下降傾向をたどってもう一回巻き返そうといったときは、これはなかなか巻き返しはきかない。じゃ外国から期待できるか、どっこいそう外国に過剰な米があるとは必ずしもいえないという事態を想定して、やはり為政者は先取りする判断をしておかなければならぬ、こう思うのです。そういう点は大臣どう考えておられますか。
  71. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま日本の総食糧の需給状態は七五%から八〇%くらいの間を往来している、こういう状態ですが、その中で米だけが百十数%という需給状態であります。これを、いま日本が持っておる米の生産力を、日本農家はたいへん米ができるんですから、これを一〇〇%までに持っていくんだというところまで落とすんだ、こういうような考え方がありますが、いまや角屋さんの御指摘のように、勢いというものは非常におそろしいものです。それは景気だってそうですね。上がるとなるとばかに上がる。下がり出すとこれはまた思い及ばざるところまで下がっていく、こういうことがある。これは米作の問題にもあると思うのです。ですからその辺はよく注意深くにらんで対処していかなければならぬと思いますが、しかしともかく恒常的に二百三十万トンだ、二百五十万トンだと、大量の米が余る状態、しかも非常に高くついておる米ですから、外国に売るというわけにもなかなかいかぬ。外国の米の二倍以上の金のかかっておるものですから、だから輸出というわけにもいかぬ品物です。ですから、そういう状態はどうしても是正しなければならぬ状態じゃないか。しかし御指摘のとおりです。勢いというものがありますから、その勢いの推移につきましては十分配意していかなければならぬ、かように御理解いただきたいと思います。
  72. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私がそれを言うのは、大臣のおられる時間がたしか一時間くらいでまた御用があられるということで、あと事務当局なり何なりは引き続きやりますから、そう深くそういう点に触れませんけれども、農地転用を今度は緩和するわけでしょう。町村道までとにかく伸ばしていって、そして本来ならば農林省が領土宣言していったはずの農業振興地域でも、今度新法で農村地域工業導入促進法案というのが出ておりますが、農工一体で農村に工場を持っていく。土地改良でもそういう構想で一部改正をやる。農地の転用もひとつ緩和をしようということで、これからの農業の近代化から見て道路沿いの二百メートルぐらいのところをずっと、条件の点から見ていい条件のところをそういう範囲に入れる。そういうことで百万ヘクタールくらいが、それが直ちに転用されるということでなくても、対象は百万ヘクタールにも及ぶんじゃないかということになると、水田にいま米をつくっておる対象は三百万ヘクタールをちょっとこえる程度ですね。だから、そういう面でいまのように農地転用の緩和、いままでは国道筋の、しかも一定の条件のものだけで、優良農地は要りませんよといっておったのが、今度は市町村道まで範囲を拡大しようという形でくる。あるいは農工一体で工場の導入をやろうという。それに、いままで水田だったところを林野庁では、林野庁といっても政府ですけれども、八千ヘクタール今度は造林のものに助成を出そう。あるいは水田だったところを畑にするのに助成を出そうということで、田畑輪換でなくて、水田から畑にかえていく。八郎潟みたいに膨大な金をかけたものでも今度は畑の経営のほうを考えようというので、どんどん急ピッチで脱米穀政策といいますか、そういうふうなことをやっておって、それじゃスピードが速まり過ぎていったときに、はてこれは困ったという時期がこないのかどうかということを私は非常に心配をする。米は何といったって日本の主食である。それは若干粉食その他も入ってきておるといっても、依然として米は主食の地位を保っておるだけに、国際的な米の生産量その他から見ても、政府が財政負担軽減の立場から水田をつぶすことに相当きゅうきゅうとしている感じが率直にいってしなくはないのですが、そういう総合的な点を、大臣は頭いいんだけれども、全体をにらんでいるのですか。財政負担が軽ければいいということで大いに奨励しているのですか。どうですか。
  73. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は大蔵大臣ですから財政のとも考えます。しかし、それよりももっと大事なことは食糧政策そのものだと思うのです。食糧政策の見地から過剰なものができて、そうしてその処分の当てもない、こういうふうな状態がはたして妥当であるかどうかという問題ですね。私はいま角屋さんのお話しの国際の食糧状況、こういうものをよくにらんでいかなければならない、これは全く同感でございます。ですから、この進みぐあい、このテンポがどういうふうにいくだろうかということは大局的に考えなければならぬ。その辺は政府として十分配意していきたい、かように考えております。
  74. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 米の量の問題ですね、これは私どももここまで過剰が来るとは、この道十何年と言っていばっておるけれども、これは確かに消費の面でどうするかという問題を抜きにすれば、こういう事態に来るということはおそらく大かたの者は予想しなかったと思うのですね。同時に、逆にいえばこれから、早まったというふうなことにならない手を十分考えていかなければならぬというふうに思うわけです。  それから価格の問題について若干、法案に入ります前に触れておきたいのですが、これは食糧庁でけっこうですけれども、すでに昨日の委員会でも同僚の諸君から質問をやったわけで、私も若干知っておるわけですが、私が米価審議会におった当時、昭和四十二、三年、あの時代の、いわゆるワン・シグマが採用されておった当時の価格でことしの米価を算定をする、そういうことにおいて価格は去年と比べてどれくらいのアップになるか。あるいは去年の要するに平均反収になっちゃったあの形で計算をした場合の結果が、昨年のいわゆる政府米価と比較をしてどうなるかという点について事務的に説明を願いたい。
  75. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 お答え申し上げます。  昭和四十二年産米穀の政府買い入れ価格の算定と同じ方法によりまして昭和四十六年産の米価を算定いたしますと、ウルチ一−四等の平均包装込み生産者手取り価格は、玄米百五十キロ二万八千六百八十六円となります。それから、昭和四十五年産米穀の政府買い入れ価格の算定と同じ方法によって計算いたしますと、同じウルチ一−四等平均で玄米百五十キロ二万三千六百十四円という一とになります。
  76. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いま食糧庁の次長からお話しのように、昭和四十二年当時の計算方式によれば、四十五年産の米の決定価格に対しては百五十キロ当たりで八千五円アップしなければならぬ。三八・七%アップということなんですね。去年の例の平均反収という、だいぶ値切ってしまって、限界反収から、あるいは生産性向上メリットの二分の一とか、いろいろないままであった、積み重ねてきたものを全部裸にしてしまった去年の算定方法を持ってきても、四十五年産の米の決定価格に対して二千九百三十三円、約三千円ですね、一四・二%アップをしなければならない、こういう事態にあるわけですね。したがって、素朴な農民諸君からいえば、ことしの政府の試算米価を見た場合に、結局据え置きということに前提を置いて、反収についても計算の方法を変えていく、あるいは労賃についても計算の方法を変えていく。反収を変えれば、これは分母なんだから、反収が大きくなればしたがって価格はそれだけ少なくなる。いろいろ計算機を回せば、とにかく東大を出たような諸君が頭をひねれば幾つでも案が出てくる。そしてちょっと計算が安くなり過ぎたものだから、八百七十七円、調整額だ、そういうやり方では、素朴な農民諸君にしてもあるいは農民の指導者である農協の諸君にしても、これは結論がはっきりしておって、それにこじつけた計算方式であるという強い反発と批判は当然出てくるだろうと思うのですね。私は大蔵大臣と算定方式の問題で議論しようとは思わない。これはむしろ農林大臣とやるべき筋のものだと思うのですからやろうと思いませんけれども、しかしこれは閣議にもかかるわけですね。したがって、数学にも相当知恵の働く福田大蔵大臣あたりとしては、これはちょっと理屈の通らぬ計算ではないか。それは、大蔵大臣は据え置きにしたいという気持ちは財政上の理由からあるかもしれませんが、それにしてもこれは知恵のない算定の方式ではないか。生産代表が米審の中でも、こんなごまかしのものは変えてこなければ米価審議会の審議に応ずるわけにはいかぬと言うのは私は当然だと思いますね。かって私ども米審におる時分に、大臣も御出席願ったことがございますが、あの時分には指数化方式とかいろいろな議論をしましたけれども、同じ生産費・所得補償方式という看板だけは看板をあげておって、看板に偽りありというようなこういう計算方式は政治の不信を買う大もとになるのではないかと私は思うのですよ。算定方式について大蔵大臣としての所見があったらひとつざっくばらんに承っておきたい。
  77. 福田赳夫

    福田国務大臣 これを従来の方式でいけばことしはどうなるだろうか、これはいま事務当局からお答えを申し上げたとおりであります。しかし、米が一方においてたいへんな過剰状態になっておる。これを是正することが食糧政策を円滑に実行していく基本であるというために、一方においては生産調整金を出す、また過剰米の処理対策費を出す、そういうようなことでたいへんな財政支出をしているのです。私は大蔵大臣ですから財政のことも考えますよ。しかしそうじゃない。問題の根本は財政以前の問題なんです。一体食糧政策はこれでいいのか、こういう問題なんですね。そういう際にまた従来の算定方式というか、それで米価が激増したということになると、まさに生産調整対策だとかあるいは過剰米の処理対策だとか、これとまっ正面からぶつかる、こういう問題になってくるわけなんです。そういうことを考える。それから、やはり統制というものは大きな経済原則に乗っていかなければ運営できない。やはり過剰のときは安くなる、また足りないときには高くなる、これがある程度働くような統制でなければもうやっていけない。これはいかなる統制でもそうだろうと思う。そういうことを考えたときに、算定方式としてはいろいろな御意見があろうと思う、私もそれは十分理解できますけれども、結論といたしましては、ここで、米価の値上げをこの過剰状態下においてするという考え方、これはなかなかむずかしい考え方じゃないか、そういう感じがいたすのでございます。
  78. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いまの大臣立場からいけば——農林省でも幾つかの案を考えたときに、需給係数というやつを考えたのですね。算定方式の中で一つの方式として需給係数というものを考えた。需給のことを盛んに言われる。労賃とか地代とか、いろいろ幾通りも計算してみて、こういうやり方をして、労賃がどんどん上昇しておる中で労賃のダウンするような算定方式をとるということでは、いかにしたって素朴な農民は理解しませんよ。そういう点でこの算定方式そのものが矛盾撞着、結果からはじき出したものであって、論議の対象にならぬとざっくばらんに私は思っておるのです。  それはそれとして、とにかく生産者米価問題についてはきのうも農業白書に関連して総理から大蔵大臣、農林大臣、それぞれ御答弁がございましたが、実際には、大蔵大臣は米価を上げるということについては最後まで反対するわけですか。米審なり全体の情勢なり、あるいは政党政治ですから与党の意見なり、そういうもので、三年据え置きというのは非情きわまるからことしはある程度上げなければならぬ、上げ幅は十分御期待に沿えないかもしれないけれども、とにかく去年のように二百三十八億のつかみ金というものはちっともありがたがってもらっておらぬ、むしろ同じ金を出すのなら基本米価できちっとしたほうがいいということを腹の中で思っておられるのですか。これはもう上げることは矢が来ても鉄砲が来てもそれは受けられぬということですか。そういうかたくなな態度ではないと思うのだけれども、どうですか。
  79. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま米価を引き上げることは、生産調整をしている、また過剰米を処理する対策をとっておる、こういうこととまっ正面から矛盾する施策じゃないか、そういうふうに考えるのです。米を上げますと、これは米は非常に有利だというのでまた米づくりが始まっていくというような勢いになってくるだろうと思います。そういうことを考えまして政府は据え置くという方針を内外に発表しているわけであります。私も内閣の末座に列しておるわけでございまするから、これは内閣の方針に私がたがうというわけにまいらない。これはどうしても水準を据え置くという方針を堅持しなければならぬ、かように考えております。
  80. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これはきのう倉石さんとのやりとりのときも、あれはあくまでも予算米価である、実行米価は米審の審議、答申を得て、そして最終的に諸般の情勢を判断して政府としてきめるのだ。実行米価の点はこれからであるというふうに分けて言っておられるわけですね。趣旨としてはそういうことじゃないですか。
  81. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府は米の価格の水準を据え置く、こういうことを申しておるわけでありまして、その中身のこまかいことを申しているわけじゃないのです。水準を据え置くということは、私がるる申し上げている考え方、つまり大きな経済原則、需給原則というものに乗らなければならぬという立場、それから過剰米対策、生産調整対策、そういうものと相協力し合うような効果を生む施策、そういうことでなければならぬ。そういうたてまえから水準据え置き、こういうことになっておる。お話しのとおり実行米価というか、実際農家から買い入れる米の価格は、これは米価審議会の御意見を伺いました上で政府として最終的にきめる、こういう性格のものであります。
  82. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 ざっくばらんに聞きたいのですけれども大臣としては去年やったような、二百三十八億の金を出しましたね、いわゆるわれわれの言うつかみ金というのですけれども、ことしは米価の水準を据え置いて、こういう別途の方法についてやろうとしておるのですか。それとも、同じそういうつかみ金を出すのなら価格のほうでやろうというのですか。その辺のところはどうですか。
  83. 福田赳夫

    福田国務大臣 きのう本会議でもそういう御質問がありましてお答え申し上げたのですが、つかみ金というか、きのうは政治加算と、こういうふうに申されましたが、この加算方式についていろいろ御批判がある、こういうことは私もよく承知しておる。しかしさらばといって、加算方式をやめて米価そのものを引き上げするかということになりますと、これはなかなかむずかしい問題で、そう決着はつかぬ。政府としてももうつとに内外にその方針を宣明しておる。これはむずかしいですよ。私の立場もその間の困難な問題と当面いたしまして非常に苦しい立場である。御理解願いたい、御同情願いたいという陳情をいたしたわけでありますが、どうかひとつさように御了承をお願いいたします。
  84. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は今日の時点で、台所を預かります福田大蔵大臣から、米価について政府決定の際には、ことしは三年据え置きは不当だから値上げを考慮しておりますという答弁を引き出すことは、これはなかなかむずかしい点だと思います。腹の中をまつ二つに割って見抜くわけにいきませんから。いずれにしても三年据え置きは私どもとしては無理である、また不当である。したがって、これはあと幾日間かのうちに政治判断をしなければならぬ政府責任の衝にあるわけですから、農民状態も考え、農業の将来も考え、さらにまた政治判断等も加えて、われわれ自身も、福田さんも三度目ではなるほど血も涙もある手を打ったというふうな手をひとつ見せてもらいたいということを率直に希望しておきたいと思います。  そこで生産調整と関連をしてもう一つお聞きをしておきたいのは、いわゆる第三の米といわれておる問題ですね。政府の買い入れ米五百八十万トン、自主流通米の予定が百八十万トン、それ以外に場合によっては売買の市場にのぼってくるであろう第三の米というものが予想される。ことしの政府の買い入れが非常にダウンしておるだけに、生産調整の二百三十万トンもございますが、そういう問題に対してはいままで大蔵大臣も農林大臣も非常にあいまいにしておられるわけです。いずれ取れ秋になると、この問題に対してはもっと明確な政治問題の爼上にのぼるかもしれませんが、現時点では大臣はどう考えておられるのですか。
  85. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまお話しの第三の米とおっしゃる問題は、異常な事態が起こらなければ起こらない、そういうふうに考えております。つまり、いま政府では、平年作であれば千三百九十五万トンできる、二百三十万トンの生産調整をいたします、農家が自家用として四百五万トン使用します、そうすると残りが七百六十万トンということになるわけですね。その七百六十万トンのうち百八十万トンが自主流通米で処理されるということになれば、政府の買うのはおのずから出てくるわけです。その額を買いましょう、こういうのです。しかしその第三の米が出てくるケースがあるのです。そのケースは何かというと、その中で四百五万トンは私はそう動かぬと思うのです。多少の動きはあってもそうたいしたことはない。四百五万トンの農家の自家消費、これは動かぬと思うのです。そうすると問題は、二百三十万トンという調整ができないので余るという事態。私どもはそれは困るのです。その調整がうまく進まなかったから余りました、それは政府で買いなさい、こうこられたのでは、いま進めておる構想全部が破綻におちいってしまう。そういう米は買う意思はございません。しかしもう一つそういう第三の米の出てくるチャンスがありますのは天候です。あるいは異常に技術が進んだ。そういうような特殊な事情によりまして千三百九十五万トンマイナス二百三十万トン、それをこえて米が生産されましたという際には、それだけ米が余ってくるという事態になる。その米につきましては、そういう米の過剰がどうして出てきたのかという事情をよく判断しまして、その時点において農協等の意見も聞きまして善処をいたします、こういうことを言っておるわけで、そのとおりにただいま考えております。
  86. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 大臣も時間ですから、最後にちょっと一点だけ法案に関連して、あとは残っておる人にお聞きしたいと思うのです。いずれまたほかの委員のほうから、出席の際に内容についても質問があろうと思います。  御承知の七百万トン近い過剰在庫といわれるものをこれから処理をしていこう、そのための食管特別会計法の一部改正をやろう。本年度は二百万トンの特別処分をやろう、そのために三百二十二億本年度分として予算的な裏づけをする。そこで、一般原材料用にいたしましてもあるいは飼料用にいたしましても——輸出用は外国に出ていくわけですから別としても、一般原材料用あるいは飼料用という問題については、政府の予算米価からいけば売り渡し価格はトン当たり十二万二千九百四十七円、大体そういうことになっておる。それが資料によりますと、一般原材料用ということになれば五万四千六百十五円、大体この辺のところを予算単価にしてやっていこう。あるいは飼料用にいたしますと二万三千五百三十三円というふうなところを予算の単価の基準にしてやっていこう。これは若干振幅はできるようですけれども、やはり相当な売り渡し価格と違った安い状態。これは当然そうやらなければならぬからやるのですけれども、しかもその量は、えさにしても百四十万トン、大量に。だから食糧管理運営の立場から見ても、あるいは政府の財政支出というものの公正を期する立場から見ても、不正の介入する余地がないように、監督指導からいろいろな点についてきちっとやらないと、これはもう国民の指弾を受けるということになりかねないんですね。時価相場で、ちょっと安い程度で払い下げていくというならそういうことは起こり得ないのですが、非常に安い価格で、しかもそれは食べようと思えば食用にだってできるんですね、それは過剰在庫の処分のためにやむを得ずえさに回そうというのですから。その辺のところの政府の監督指導等についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  87. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘がございましたように、非常に価格に差がございますから、横流れの防止につきましては私どもといたしましても真剣にこれを行なっていくつもりでございます。そこで、どういうことをやっているかと申しますと、まずえさ用につきましては、これをまるのままで売りますとそれが横流れするおそれがあるということで、変形加工いたしましてこれをえさ会社に売るということにいたしますと、それがまる米として食用に還元する二とはない。ところが変形加工工場までの間において不正が起こるのじゃないかということでごいますが、変形加工をいたします原料米につきましては政府運送を行ないまして、引き渡しの場合には食糧事務所の職員が立ち会うというところまでやっておるわけでございます。えさ用に売却する場合につきましては、その前に試験的にまる米自体をえさ工場に売ったわけでございますが、その場合におきましても一々食糧事務所の職員が立ち会うということで処置しております。
  88. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 事務当局からお話がございましたが、そういう点については、これは直接は農林大臣のほうがむしろ主たる責任かもしれませんけれども、財政支出の立場大蔵大臣もあるわけですから、特にそういう面で国民の指弾が出ないように十分な監督指導、適切な措置等もやってもらいたい、こういうふうに思います。大臣、お仕事の関係があるそうですので、大臣は退席されてけっこうです。
  89. 福田赳夫

    福田国務大臣 十分気をつけてまいりたいと思います。
  90. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 引き続きと思っておりましたが、佐藤君からの質問が引き続きあるわけですので、それじゃ私、一応佐藤君にバトンタッチをいたします。
  91. 毛利松平

    毛利委員長 佐藤君。
  92. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 まず確認のために、前の御質問者から何度かありましたので少しダブるかもしれませんけれども、確認のためにちょっとお伺いしたいのですけれども、四十年以降の米の生産量と消費量、五年間でございますけれども、ちょっと数字をあげていただきたいんですが……。
  93. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 まず生産量から申し上げます。昭和四十年産は千二百四十万トンでございます。それから四十一年が千二百七十四万トン、四十二年が千四百四十五万トン、四十三年が千四百四十四万トン、四十四年が千四百万トン、四十五年は千二百二十二万トンでございます。  次に消費量でございますが、農家消費も入れました食糧としての総消費量でございますが、四十年が千百二十一万トン、四十一年が千九十六万トン、四十二年が千百十七万トン、四十三年が千百七万トン、四十四年が千八十七万トンでございます。これは内地米だけでございまして、四十年以前におきましては外米の消費がございますが、この数字は入っておりません。
  94. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 いま食糧庁の答弁からわかりますように、生産量と消費量との差が出てきたのは大体四十年以降と見てよろしゅうございますか。
  95. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 消費量のほうで、四十一年までは外米の量が五十万トン以上ございます。しかし四十二年以降非常に生産量が上がりまして、輸入米の消費は非常に減ってきたということで、四十二年以降でございます。
  96. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 それでお伺いしたいんですけれども、この過剰米の問題を考えるときに、現在七百二十万トンあるわけですけれども、どうして四十二年度で現在のような生産調整あるいは買い入れ制限、予約制限、こういうようなものができなかったかという問題なんです。四十二年、四十三年、四十四年、四十五年と、四年間というもの、できただけ全部買い入れてきたということですね。それでこれはたいへんだというので、最近になって買い入れの予約制限をするということを言ってきたわけなんですが、どうして四十二年からできなかったのか、その点をお伺いしたいと思います。
  97. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 四十二年から米の生産が千四百万トン台に上がったわけでございます。御承知のとおり、農産物でございますから、年々の豊凶のフレというものがあるわけでございます。そこで、四十二年、四十三年は、四十四年もそうでございますが、非常に天候がよかったということが一つございます。それからさらに最近における農業技術の進歩ということで、労働時間も減っておりますし、いろいろな資料についていいものができているということで、農業技術の進歩が非常にあった。四十二年の段階においてはそれが一時的なものであるかどうか、農作物でございますから翌年の作がわからぬ、四十三年も非常に天候がよかったわけでございます、ということがございまして、ある程度、米作の技術水準から考えて非常に米の生産が上がってきたということはあるわけでございますが、先を見て四十二年の段階において生産調整をやる、四十三年からやるというところまで、まだ確信を持って判断できるというところまで米の生産の見方がかたまっていなかったという事情があるわけでございます。
  98. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そうしますと、そのために今日まで四年間というもの——また法制局が入ったらちょっと食管法の第三条についてお伺いしたいわけですけれども、今日まで四年間というもの、できただけ買い上げたということになりますか。つまり、天候の事情あるいは今後の生産技術について自信が持てなかった、こういうわけだから今日までこれが放置されたというか、全部買い上げてきたというふうに考えでございますか。
  99. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 ただいま申し上げましたように、必ずしも生産量が千四百万トン台で確定するということは考えてなかったわけでございまして、従来のとおり、政府は、農家がつくって政府に販売を希望するものはこれを買い入れてきたということでございます。
  100. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 ここでほんとうは法制局に食管法の第三条について一応確認をしたいのですけれども、まだ法制局いらっしゃっていないようなので、ちょっと話を変えますが、本年度の生産調整これは各都道府県に一カ月くらい前に通達が出ていると思うのですけれども、その結果というのは出てきておりますか。
  101. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 私、食糧庁でございますから、生産調整の進行状況については必ずしも完全に正確なことを申し上げることはできませんけれども、私のほうで予約限度数量というものを指示しておるわけであります。大体同時におりているところとそうでないところもございますが、予約限度数量のほうから見ますと、三月末現在で大体三分の一くらいのものについては各農家までおりている、それから残りの三分の一強について市町村までおりている、あとについては県と市町村と話し合いということで、さらに四月になってわりと順調に進んでいるというふうに聞いております。
  102. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 これは取り入れ時期にならなければわからないということも、天候の事情その他である程度あると思うのですけれども、その予約限度数量がどのくらい、農林省が考えている生産調整を達成できるのかどうかということは、ある程度作付のときにわかるのじゃないかと私は思うのですが、それがわかってくる段階というのは何月ごろですか。
  103. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 作付の時期につきましては、東日本から西日本までございまして、シーズンが若干違います。したがいまして、完全に作付の結果がわかるというのは六月末か七月初めではないかと思います。
  104. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 それでお伺いしたいのですが、農林省あるいは食糧庁の方々は、今度は過剰米が出ない、つまり生産調整がぴったりうまくいくと、過剰米が出ないということは自信ございますか。
  105. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 目下一生懸命に努力しているところでございます。
  106. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 いまこの法案そのもの過剰米の処理の問題なんですけれども、その前提として、この法案は今後過剰米を出さないという前提でものを話している、あるいはその処理のやり方を考えているわけですけれども、まだ本年度過剰米が出るといった場合にはこれはどうなりますか、お伺いしたい。
  107. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 今後過剰米をさらにつくり出すということは、財政上あるいは国民経済上も非常に問題がございますので、二百三十万トンの生産調整を達成するように一生懸命やっているところでございます。
  108. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 それでお伺いしたいのですが、昨年の、予算編成期に宮脇農協会長と倉石農林大臣の間で、ある文書が交換された。その文書というのは、日本語の最も悪文だと思うのですが、「やむを得ざる事由により予約限度数量を越えて生産されたコメで、調整保管されたものが万一売れ残った場合には、農業団体等の意見をも聴取したうえで、生産調整を阻害しない範囲でその取扱いを定めることとする」こういう文書が、倉石農相と宮脇会長との間に取りかわされているということは私はあったと思うのです。それでその内容は、簡単にいうならば、何とか生産調整を全部やってくれというたてまえと、何らかの事情によって出た場合にはその場で余剰米を政府が買い入れることもあり得る。その前に農協が自主的に販売する第二自主流通米の問題もありますけれども、それでも売れないものは政府が買い入れることもあり得るという内容だったと思うのですが、その点はいかがでございますか。
  109. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 まず第一に申し上げたいことは、新聞報道では文書が交換されたというふうになっておりますが、農林大臣と宮脇さんの間で文書は交換されておりません。ただいま先生がおっしゃいましたような、いわゆる余り米と申しますか、それの扱いについては、ただいま言われたようなことで国会で農林大臣が答弁をしておられます。そこで、私ども事務当局でございますので、ここにその答弁以上のことはちょっと、はっきりしたことを申し上げるポジションにございません。
  110. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 おそらくその答弁というのは、私は参議院の予算委員会であったと思うのですけれども、その答弁では、農林大臣は、余剰米が出ない、過剰生産はあり得ない、もうそのことばで終始されてしまって、万が一出た場合のことについては結局何も答えられていないと思うのです。現在過剰米の処理の問題、七百万トンというばく大にのぼっている過剰米でございますので、今後も過剰米は出ないということも前提にしなければいけないし、出た場合にははたして財政上どういうふうにしていくのか、またその責任というものは一体どこがおとりになるのかということもはっきりしていかなければ、この法案について審議を尽くしたことにはならないと私は思うのです。その点で農林大臣の答弁ではどうも満足がいかない。その辺で大蔵政務次官いかがでございますか。万が一過剰米が出た場合に、それは農協でも売りさばけないという場合には一体どうするのか。やはり国が買い上げるについては、それは一体どのくらいの価格で買い上げるのか、その辺のところはどういうふうにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。
  111. 中川一郎

    中川政府委員 食糧庁から答弁いたしておりますように、国が計画をいたしました生産調整に御協力をいただくならば、これは過剰米ができないというふうになっております。ただ、もし万一というお話でありますが、これは天候その他で異常な増産になったような、農家の力、努力の及ばないところで発生したような場合には、ひとつその時点で相談しようということでありますけれども、かりに若干ふえましても、また翌年の生産調整ということを通じてやっていって、長期的に、こんな七百万トンとか膨大な過剰米ができないようにしていかなければならないということでございます。もし万一また、現在法律をお願いするときに、今後できたものもいまのような制度でやるということでは、これは国民に対して申しわけない。姿勢としてでも、何とかして今後は過剰米はやらないというふうにあるべきではないかというふうに考えておるわけでございます。
  112. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 私はどうもその辺が、現在の農業政策は場当たり的だと思うのです。万が一出てきた場合には——天候の事情もありましょうけれども、ある程度、このくらいコンピューターの発達した時代でございますから——私はこの四年間、五年間というものがそのまま放置されて、今日まで七百万トンたまるような一つ政策というか、無政策だと思うのですけれども、をしてきたことについてはやはり問題があると思うのです。それでこれだけ多くかかえて、今後も出さないという前提でこの法案はものを考えるのだけれども、やはり天候の事情で出てきた場合には一体どうするのか、そういう明確な方針というのがなくて、そして昨年度は米価の据え置きをして、政治加算をしてお茶を濁す、そういうことでは農家のほうはたまらぬと思うのです。  話をもとに戻しますが、法制局にちょっとお伺いしたいのですが、食管法の第三条「米穀ノ生産者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ生産シタル米穀ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノヲ政府ニ売渡スベシ」、これは第三条の第一項でございますけれども、この解釈はずっと昔から、昭和の十七年にできている法律でございますけれども、十七年から、政府が全部買い入れなければいけないというふうに解釈してこなかったものですか。それとも、これだけ過剰米ができたので、この法律をよく読んでみると、必ずしも政府は全部買い入れなくてもいいのだ、そういうふうに読めるということで、最近五年間に変わったものですか。法制局の御見解をお伺いしたいと思います。
  113. 荒井勇

    ○荒井政府委員 この食糧管理法弟三条第一項の規定がどういう趣旨からできているかという点、制定時以来のことでございますけれども、それを考えますと、その手がかりになるものはこの法律の第一条の規定であろうというふうに考えられるわけでございます。第一条には「本法ハ国民食糧ノ確保及国民経済ノ安定を図ル為食糧ヲ管理シ其ノ需給及価格ノ調整並ニ配給ノ統制ヲ行フコトヲ目的トス」と、こう書かれておりますので、この三条の一項の規定によって米穀の生産者が政府に売り渡し義務を課されるところの米穀というのは、国民食糧の確保及び国民経済の安定をはかるという目的を達成するための食糧管理をするについてどうしても必要な米穀というものは、そういう数量政府に売り渡すべきである、売り渡し義務が課される、そういう対象になるのだということをいっているのでありまして、その点は制定以来一貫してそのとおりであるというふうに考えるわけでございます。その制定以来二十年以上の期間、食糧の不足ということが客観情勢としてきびしく存在したということでございますので、国民食糧の確保及び国民経済の安定をはかるというためには全量買い上げに近いような形で、この一条及び三条第一項の規定というものが運営されざるを得なかった。そういうふうに、そういう目的のための食糧管理上どうしても必要な数量の買い上げを制限するということは考えられなかったということでございますが、しかし現実に国民食糧の確保及び国民経済の安定をはかるというために必要な数量をこえる数量というものが、そういう米穀が現実に出てきたという状況になりますと、このこえる数量の買い入れ制限というのは全然できないということにはならないということで、それは制定以来、第一条の目的に照らして一貫してその運営はされてきている。食糧管理の目的、これに必要な限度でこの売り渡し義務が課されるということだと思います。これが、たとえば当委員会で所管しております法律でいえば、たばこ専売法の第五条でありますとか、あるいは塩専売法の同様の規定では、公社はすべての葉たばこを収納するとか、あるいは塩製造業者の製造したすべての塩を収納するということを書いてございますが、この三条一項は「其ノ生産シタル米穀ニシテ命令を以テ定ムルモノ」という規定がついている点からいって、法律的な差異というものは明らかではなかろうかというように考えるわけでございます
  114. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そういう御見解だと、今度は施行令のほうなのですけれども、これは何条で、また今度から、四十六年度から買い入れ制限をする場合に、施行令のほうはどういうところを直さなければいけなくなりますか。
  115. 荒井勇

    ○荒井政府委員 食糧管理法施行令の規定を今後改正しなければならないということはございませんで、現在の食糧管理法施行令第五条の五の規定でありますとか、あるいはそのうらはらの第六条というような規定によりまして、「米穀の生産者は、その生産した米穀を売り渡す場合には、政府に売り渡す場合」これが典型的なものとして第一にのぼっております。「その他農林大臣の指定する場合を除き、命令の定めるところにより指定業者に対し」「自主流通に係る販売のための売渡しの委託をしてしなければならない。」という、食糧管理法三条一項の規定に基づく命令というものが出ております。そういうことで、政府に売り渡す場合、それからそれ以外のルートが食糧管理法の規制を受けながら流通させるという方途が講ぜられておりますので、今後この規定を改正しなければならないということはございませんで、現にそのようになっているということでございます。
  116. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 しかしそれはちょっと違うのじゃないですか。本年の二月五日に、政府に売り渡すべき米穀に関する政令と、食糧管理法の施行令の一部を改正しているはずなんですよ。官報をきょう読んできてないものだから、どこのどこがというふうに言えないのが残念なんですけれども、いまの御見解ですと、私は、前から食管法の第三条がそういうふうに読まれているのだったら、施行令のほうも何も改正する必要はないと思うのです。ただ最近あまりにも米が余る、余るというものだから、少し買い入れ制限をするために法的に制度化しなければいけないということで、食管法の施行令と、政府に売り渡すべき米穀に関する政令の一部を改正せざるを得なくなったということを、私は二月五日の新聞で見ているわけなんですけれども、そういうことになると、どうも食管法の第三条というのは、事実のほうが先に出ちゃって、米が余ってくるものだから、余るというものだから、その施行令のほうを変えて何かつじつまを合わせなければいけないというふうにどうも私は読み取れるわけなんです。その辺のところをもう一度調べて御答弁願いたいのです。
  117. 荒井勇

    ○荒井政府委員 先ほど御説明をし、実質的にほとんど読み上げました食糧管理法の施行令五条の五というものは、この二月八日の政令改正をした後の姿のものでございます。ただ、その改正をする前も、これは本文とただし書きと両方がございまして、ただし書きで「米穀の生産者は、」「命令の定めるところにより指定業者に対し」「自主流通に係る販売のための売渡しの委託をして売り渡す場合その他農林大臣の指定する場合は、この限りでない。」というのは、政府以外のものに売り渡してもよいという意味のただし書きがございます。政府に売り渡す場合としからざる場合、そういう原則に対する例外というものが両方並んでおったわけでございます。その立て方を若干改めたという点はございますけれども政府に売り渡すだけが唯一の道であるというふうに改正前もなっておりませんで、そこの本質は前後を通じて変わっておらないというふうに存じます。
  118. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 どうも私の調べてこなかったのが悪いのですが、私のいま見ているのは四十四年の十一月三十日の発行のやつなんです。それはいま法制局の方が言われたように、ちゃんとそういう条文で書いてあるわけなんです。これは四十四年ですから、本年の二月五日のが載っているわけがないわけです。この新聞報道その他が、私ももう一度確めますけれども、どうもその辺、施行令及び政府に売り渡すべき米穀に関する政令ですね、これが直されたということは——条文自体を私自身持っていないので、もう少し御質問するわけにいかないのですけれども、その辺のところが直されているということは、どうも食管法の第三条がだんだん読みかえられてきているんじゃないかという気がするわけなんです。その辺がどうもはっきりしないので、これは私自身が官報を見て、二月五日の閣議できまったものがどういうふうになっているか、調べてこなかった落ち度がございますので、一度また何らかの形で関連質問でもやらせていただきたいと思いますので、法制局のほうもひとつ調べておいていただきたいと思います。  それから、輸入米についてちょっとお伺いしたいのですけれども、四十三年に三十一万トン、四十四年に六万九千トン輸入米を輸入しているということを私は見ているのでございますけれども、これは何か特殊な用途の米なのか。またどういう用途に使われているのか。その輸入米についての過去の、四十年以降でけっこうでございますので、用途と大体の数量をちょっとお教え願いたいのです。
  119. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 米が四十二年以降余ってまいりましてから、輸入米を輸入しておりますものは大部分モチ米でございます。モチ米は国内米で供給が足りませんで——これはおせんべいとか、いろいろそういうような、むしろ工業原料用に使うわけでございますが、足りなかったものでございますから輸入したわけでございます。用途によりましてはウルチからはできないということでございますので、モチ米を主として輸入しているわけでございます。
  120. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そうしますと今後とも、モチ米に関しては輸入は四十六年度もあり得るということでございますか。
  121. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 そのような需給状況であったわけでございますので、農林省といたしましてもモチの生産を非常に奨励したわけでございます。モチは御承知のようにウルチに比べて反収が低いものでございますから、農家があまり作付を好まないわけでございますが、そういった需給事情でこのように米が余っているときに、モチ米たりとも外米を入れるというのはおかしいということで、昨年あたりから奨励いたしまして、ただいまのところでは需給がとんとんくらいになっております。したがいまして四十六年度の予算には米の輸入は一銭も組んでおりません。
  122. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 その次に過剰米の処理についてお伺いしたいのでございますけれども、たしか昨年度もある程度過剰米について、これは試験的かもしれませんけれども、処理をされたと思うのですが、その実績について簡単に御報告を願いたいのです。
  123. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 過剰米の処理につきましては、まず最初に輸出でその処理を始めたわけでございます。そこで、四十四年度につきましては四十三万二千トン、これを輸出に使っております。それから四十五年になりますと、輸出以外に工業用にも九万トン使いまして、輸出には七十九万九千トン使っております。それから四十五年度はさらにえさにつきまして四十五万トンの計画を進めていたわけでございますが、いろいろな事情がございまして実績はただいまのところ約二十五万トンにとどまっております。
  124. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そこの、いろいろな事情がございましてというのがちょっと問題だと思うのですね。本年度の過剰米の処理方法というのは、大体飼料用が百四十万トンですが、それから工業用が二十万トン、それから輸出用が四十万トンということになっておりますけれども、これは全部こういうふうに大体はけますですか。その見通しはございますですか。
  125. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 私どもといたしましてはそのような計画で仕事を進めまして、大体達成できると思っております。と申しますのは、何しろ米をえさ用に使うということは初めてでございます。それから、先ほど大蔵大臣に対する御質問のときにお答えいたしましたように、まる米で出しますとこれは横流れ等大きな社会問題を起こすということもございますので、これを加工してえさ業者に売るということにしたわけでございます。そこで加工するにつきましていろいろな事務的な問題があったのでございます。たとえば精麦工場でこれを圧ぺん加工する。そうすると、そこからえさ会社に売るというような結びつきをつけなければならぬ。あるいは製紛工場でこれを砕きまして、それを砕いたままではさらに砕米として流れるおそれがありますので、そういったことを防ぐためにはどうしたらよいかということをいろいろ研究して、その結果、紅がらを入れて売ることにしたわけでございます。そういったように事務的に、初めてのことでございますのでいろいろな問題があったということで多少計画がおくれたわけでございます。しかし昨今はそういった問題すべて片づいて流れ出しておりますので、大体百四十万トンの飼料用売却というものはできるというふうに考えております。
  126. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 横流しの件についてはもう少しあとでお伺いしたいのですが、値段の問題なんですけれども、飼料用はトン当たり二万三千五百三十三円ということでございます。もちろん御存じだと思うのですけれども、輸入のほうが安いのだそうですね。アルゼンチン産のマイロで五千円安の二万五百円、米国産のトウモロコシで四千円安の二万三千八百円ということでございますので、これは当初の見通しの予定価格の飼料用二万三千五百三十三円では、これだけの量及びこの値段ではなかなか売れないのじゃないかということを非常に心配するのですけれども、その値段の見通しはいかがでございますか。
  127. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 先生御承知のとおり、マイロとトウモロコシの場合には非常に価格のフレがあるわけでございます。たとえば昨年はアメリカでトウモロコシの病気が出まして、これが非常に暴騰した、その結果大麦その他の国際価格が非常に上がったというようなことがございまして、非常に価格のフレがございます。そこで、現在のところ二万三千円より、トウモロコシ、マイロについては若干価格が下回っておるケースもございます。これはその着いた船によっていろいろ価格が違いますので、必ずしも平均的なことは私も申し上げることはできませんが、しかし安いものがあることは承知しております。そこで非常に下がってくる、それが恒常的に下がるのだというようなことになりますれば、やはりこれを使いますえさ会社のほうもそろばんで仕事をしておりますので、過剰米処理に協力するために使ってくれということをやりましても限度がございますので、そういう場合には価格をある程度調整する必要が起こり得るというふうに考えております。
  128. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 ということは、この予定しておる価格よりも安く売られることも、アルゼンチン産あるいはアメリカのトウモロコシ等の価格の変動によってはあり得るということですね。そう見てよろしゅうございますね。
  129. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 御承知のとおり、えさ用の米の価格はピーターソン方式ということで、えさの栄養価によってこれをきめておるわけでございます。したがいまして、非常に下がってしまった、トウモロコシやマイロが非常に下がって、ある程度恒常的に続きそうだというような見通しのときには下げざるを得ないかもしれません。それから一方、昨年のごとくトウモロコシが非常に上がったというような場合には、過剰米の売り渡し価格についてこれを上げませんと、今度は米に対する需要が非常に強く出てまいりますので、百四十万トンという計画もございますから、上げることもあり得るわけでございます。
  130. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 私が売れるかということを心配しておるのは値段の問題なわけですね。それだけの変動をして安く売った場合には、またこれは財政支出として、簡単に百四十万トンというけれども、一万トン当たり幾らか違っても百四十万でございますから百四十倍しなければいけないわけです。たいへんな額になるわけですね。その辺のところで非常に心配をしておるわけなんです。  それからもう一つは、これは、買い入れたというのはあくまで国有財産だと私は思うのですね。国有財産だけれども、残念ながら食糧に使えないのでこういう形で放出するわけです。その場合の横流しの問題なんですけれども、過去の横流しについて、過去といっても私は昨年一年間しか実例としてはないと思うのですが、その実例というのはどういうふうになっておりますか。
  131. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、政府といたしましてもこの横流れには非常に重大な関心を持っておりまして、そういったことがあってはならぬということで、政府が、たとえばえさ用の場合に、製麦工場とか製粉工場で委託加工で変形するという場合には、工場まで一々政府運送いたしまして、そこで食糧事務所の職員が引き渡しの場所に立ち会っております。それから出すときも一々看貫して立ち会うということで、きわめて厳格にこれをやっております。米につきましては御承知のとおり自由米がある。場合によっては配給業者から米が流れているというようなことが新聞報道等に出ておりますが、この変形加工に関する限りは、ただいままでのところそのようなことはないというふうに私どもは承知しております。
  132. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 いまの御答弁にあったように、変形加工に関しては横流しはある程度防除できる。ただし、売るときに、過去一年間というのは売り渡している量がけたが違うわけですね。昨年度で過剰米を売り渡している量は九万トンぐらいですか。今度は一けたも二けたも量が多くなるわけですね。その際に、変形加工の場合に、ではそれだけの目が届くかどうかという問題に関してはいかがでございますか。
  133. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 私どもといたしましては、変形加工の工場の指定等につきましても非常に苦心しておるわけです。そういった、取り締まりというわけではございませんが、監視の能力ということも考えて工場を指定しているわけでございます。したがいまして、たとえば製粉会社の代表的な、日本製粉とか日清製粉とかいう会社がございますが、そういった大きなところで大量にやるということもやっております。人間のやることでございますから、完全に、水も漏れぬようにできるかということになるわけでございますが、私どもといたしましては今日までのところ別にそういった問題を起こしておりませんし、今後も同じようにやりたいというふうに考えておる次第でございます。
  134. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 もう一つ。まるのままのものが非常に問題になると思うのですが、たしか私の聞いたところでは、変形していない、まるのままの過剰米については、横流しをした場合の保証金を取っていると思うのですが、トン当たりどのくらいの額を取っておりますか。
  135. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 トン当たり五万円前後の保証金を取っております。それは、たとえばみそにつきまして、いわゆる砕け米ではみそができない。こうじみそというのはまる米が入っていないと製品にならぬわけでございます。そういったものとかあるいは玄米茶とか、非常に限られた用途についてトン当たり五万円の保証金を取っております。
  136. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 それで、そのみそとか玄米茶は現在は需要が非常に多いのですか。まるのままほしいという要求は多いのですか。
  137. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 従来、そういった用途につきましては、いわゆるコスト価格と申しますか、食管でかかった経費を全部掛けまして、そういった価格で売っていたわけでございます。したがいまして横流れの問題がない。ところが昨年から、まずみそから始めたわけでございますが、過剰米をそういった工業原材料に使う。そうなると、いままでみその場合には輸入の外米を使っていたわけでございますが、それがなくなってきたということで、古米を砕米にしているということで、安い価格で売っております。しかしながら、値段を下げたから原材料用の需要が急増したということはございません。というのは、みそ自体の需要にはある程度の限度がございますし、玄米茶というのも限られた用途でございますから、原材料の値段を下げたからそれに対して需要が非常にふえたということはございません。
  138. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 私はやはり、これは正直言って残念なことでございますけれども、これだけとにかく国庫のほうにお金を入れてもらわなければ——これはやはり国民の税金から全部出ているわけですから、正直言って、なるべく多くもとへお金が戻るようにしてもらいたいと思うわけなんです。それで、いろいろ話を聞いたところでは、みそにしろ玄米茶にしろ、これはたしか県のほうの指定というか、許可が要るんだったと思います。そうすると、聞いてみるとある程度需要のほうはあるのだけれども、やはり横流しということが非常に問題になりますので、売り渡しの限度を押えているということを聞いているわけなんです。それは横流しがされないようにするために、監視をしなければいかぬことはもちろんでございますけれども、ある程度保証金を上げるとかそのほかの点で、とにかく監視の能力の限界もございますけれども、なるべく高く売れるようなものについてはなるべく多く売っていく。これは残念なことだけれども、この古米の処理にあたってやはりそういうことをしていかないと、幾らかでも国庫のほうに、国民の税金の赤字が少なくなるような方向でものを考えていかなければならぬと思うのです。その際に、横流しはもちろんいけませんけれども、その監視体制を整えるとともに、なるべく高く売れる売り方に関しては、やはり要望があるならば出したほうがいいのじゃないかと思うのでございます。その辺のところはいかがでございますか。
  139. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 私ども、ただいまの先生の御意見に全く同感でございまして、米がたくさん余っているわけでございますから、なるべくこういうものを早く売りたいということは全く同感でございます。ただ、御指摘のございましたように、横流れの問題とか、いろいろ値段が違うものでございますからいろいろな問題がある。その辺のところを十分検討しながら、なるべくたくさんそういった点で処分していくようにしたい、こう思って鋭意部内においてもいまいろいろ研究中でございます。
  140. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 ちょっと聞き忘れたのですが、みそと玄米茶の売り渡し価格は、私もはっきりした数字をいま覚えていないのですが、幾らでございますか。
  141. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 価格を申し上げますと、これは米でございますから一等から五等まであるわけでございます。(佐藤(観)委員「平均でけっこうだ」と呼ぶ)平均も、ちょっとこれは加重平均になるので、それを出しておりませんので、ちょっと申し上げますと、一等が玄米でトン当たり七万九千円、二等が七万七千円、三等が七万五千円、四等が七万三千円、五等が六万八千円になっております。実際に使う場合にはこれは精米で使いますので、大体八万四、五千円という値段になっております。
  142. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 玄米茶のほうは資料ありますか。
  143. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 玄米茶のほうは玄米ですから、ただいま申しました玄米の値段になるわけであります。
  144. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そうすると、もちろんこれは工業用よりも高いのですが、これはまるのままだということがその理由ですね。  最後に、私もいま申しましたけれども、これは要望があるならば——ないならしょうがないけれども、あるならば、やはりみそなり玄米茶なり、幾らかでも国庫にお金が返るようなやり方で、ひとつ横流しその他は保証金なり、あるいは県の許可をそういう悪質な横流しをした場合には取り上げるというようなことでも考えて、なるべく高く売れるもので——需要がないならしょうがないですが、どうもいろいろ聞いた話では需要がかなりあるようなので、そういうものにはそちらに流してもらいたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思うわけです。
  145. 毛利松平

    毛利委員長 竹本君。
  146. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は簡単に二、三の点について伺いたいのですが、最初に印象を申しますと、いまの政府には農政というものははたしてあるのかどうかということに非常に疑問を持つということであります。次には、もしかりにあるとしても、それはたいへん思いつき農政ではないか、行き当たりばったりではないかという感じを非常に強く持つ。特に食管の問題等を見ておりますと、自由経済的な発想、あるいは資本主義的な発想、それから社会主義的な発想といえるかどうか、そういうようなものが全く雑然と共存したり混乱したりしておるというふうな感じをぼくは非常に強く持つ。  そこでどういうふうに考えるのか。それぞれの党の立場もあるでしょうから特に申しませんが、かりに政府・自民党さんで自由経済の発想によるのだといっても、一〇〇%の自由経済ということはあり得ませんから、それに別途の考え方を取り入れるということは必要だろうと思いますが、その場合にでも、原則は何で例外はどの程度にどういう形で取り入れるという位置づけがなされなければならぬと思うのです。それもどうもあるかないかわからないということで、私の結論を簡単にいえば、自由経済的発想なら発想で、いいとか悪いという私の立場もきょうは申し上げませんけれども、もう少し交通整理をしたらどうか。あまりにも雑然、混然とし過ぎておるではないかという点を非常に強く印象づけられるのですけれども中川政務次官、いかがですか。
  147. 中川一郎

    中川政府委員 確かに御指摘のように、農政、非常に混然としていることは事実だと思います。たとえば補助金の制度、あるいは土地改良制度、構造政策、いろいろな面、あるいは農業金融、すべてにわたって、農政費として約一兆円出ておりますが、非常に混然としておることは事実であります。今後これの整理統合ということが重大な課題であろう。しかし実績を持ったいろいろな制度でありますから、これに改廃を加えて整理統合することもなかなか容易でないということも事実であります。しかし今後努力して整理統合というものに持っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  148. 竹本孫一

    ○竹本委員 いま私が質問しましたのは、行政の施策といいますか、あるいは事務的施策というものがいろいろの種類のものがあるという意味で雑然、混然としておるのではなくて、まあ一つの言い方からすれば、政策路線というものが雑然、混然、混乱しておるということを言うのであるし、またもっと厳密にいえば農政という政治はないではないかという意味ですから……。もう一度御答弁をいただきたい。
  149. 中川一郎

    中川政府委員 政策路線としてはやはり自由主義競争下にだんだんとおりていかなければならない。しかし、戦争中の統制経済、社会主義的なやり方の姿がいまの食管制度として残っておるというところでありますが、食管を堅持していきたいという基本方針もあります。しかしだんだんとそういう方向に切りかえていくべきではないか。先ほど大蔵大臣も、法律に反しない程度でくふうをして、現在の実情に合うように改善していきたいと答弁したのもそういうことからではないか。そしてまたさらにつけ加えておりましたが、やはり何といっても過剰という事態を踏まえて、競争原理、物が余ったときには価格で抑制するといいますか、がまんをしてもらうという大前提は取り入れていかなければならないということを申しておったのも、そういう意味ではないかというふうに見ておるわけであります。
  150. 竹本孫一

    ○竹本委員 どうも時間がないのにこういう問題をやっていると切りがないんだが、もう一つだけ念のために聞きます。  自由経済路線ということになれば、プライスメカニズムというものが自由経済のエッセンスだ、バックボーンだ。そうすると、それ以外の考え方はだんだんに整理してプライスメカニズムの原則に立つという方向を指向していくのだということですか。
  151. 中川一郎

    中川政府委員 徐々にではありましょうけれども、やはりそういう方向に持っていくべきであろうということでございます。
  152. 竹本孫一

    ○竹本委員 なかなかむずかしい問題で、議論の多い問題ですが、一応の考えを整理した上で、それくらいにしておきましょう。  そこでひとつ需給のバランスですが、先ほども御議論が出ましたが、大体ことしは生産が千四百万トンくらい、消費量は千百六十五万トンくらいということですか。
  153. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 本年度の需給について申し上げますと、生産は千三百九十五万トンでございます。需要は千百六十五万トン。そこで、平年作で生産調整をしなければ千三百九十五万トンとれてしまう。ところが需要は千百六十五万トンということでございますので、二百三十万トンを生産調整する、こういうことになっております。
  154. 竹本孫一

    ○竹本委員 大体千百六十五万トンの消費ということですか。これで二百三十万トンの生産調整ということになるわけでしょうが、米価のほうは、いま米審でいろいろ言われておるのだが、政府の希望しておる米価というのは百五十キロ幾らになるのですか。念のために聞いておきます。
  155. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 ただいま政府が米価審議会に試算として出しております米価は一−四等平均二万六百八十一円でございます。これは百五十キロ当たりでございます。
  156. 竹本孫一

    ○竹本委員 二万六百八十一円というのは大体の値段だろうと思うのだが、プライスメカニズムでそれを調整するということになった場合に、幾らならば調整ができるのか、その計算をしたことがありますか。したならばその報告を聞きたい。
  157. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 プライスメカニズムということは、現在の米の流通は統制下にあるわけでございますが、それを自由にした場合幾らになるかという御質問かと思います。これにつきましてはいろいろな試算の方法もあるかと思うのでございますが、米の場合には過去三十年近く統制になっておるわけでございます。したがいまして、価格弾性とかあるいは需要弾性とか、そういうものは全然はじけないということで、数字はなかなか出しにくいということでございます。
  158. 竹本孫一

    ○竹本委員 時間がないから結論だけでいいのです。自由にしたら幾らになるかという問題の結論はわからないということですか。  それからもう一つ、千百六十五万トンの生産をする、そこまでの、生産コストの安いところだからといって切ってしまった場合はどのくらいになるかということをぼくは聞いている。
  159. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 実はただいま米価審議会に出しております試算の場合には、御承知のとおり、米につきましては生産費・所得補償方式で計算しておるわけでございますが、昨年までは五俵以上の販売農家生産費というものをとったわけでございます。ことしは七百六十万トン政府が買うわけでございまして、その政府が買う米の値段をきめるわけでございますから、過去三年の生産費のうちで七百六十万トンまでつくるために必要な生産費は幾らかということで一定の、四十三年の場合には一千万トン以上の政府買い上げがありましたから、七百六十万トンで七五%、四十四年は八〇%、四十五年は九〇%まで、そこまでとれる生産費をとりまして、それの平均で米価を算定しているわけでございます。
  160. 竹本孫一

    ○竹本委員 だから、もう一ぺん聞いておくのですがね。生産費・所得補償方式というのが、これはほんとうは幾ら資本主義でも当然の話なんだな。問題は、だから生産費のどの辺までをとればちょうど生産数量の千百六十五万トンくらいになる生産ができるのか、最底の。生産コストの一番高いところまでを補償しようとするから無理が起こる。自由主義経済の原則からいえばそういうことになると思うのだけれども、その辺についてもう少し具体的な御説明はありませんか。
  161. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 生産費、コストにつきまして農家別に非常に差異があるということはそのとおりでございます。そこで、生産費調査につきましては大体五千戸くらいの農家生産費を調べておるわけでございますが、それの生産費調査でもコストの高い低いがあるわけでございます。したがって、生産費調査の調査農家をコストの高さからずっと出しておるわけでございます。一般の農家が幾ら売っておるかという数字がございます。それをずっと出しまして、そこでただいま申し上げましたような数字のところまでカバーするという、調査農家の平均生産費ということで四十六年産米の米価は算定しておるわけでございます。したがいまして、まさに七百六十万トンつくるのに必要なコストと申しますか、その生産費の農家までの生産費調査というものを基礎にして米価を算定しておるわけでございます。
  162. 竹本孫一

    ○竹本委員 これはあと数字についてまた検討したいと思いますが、問題は、生産条件が違う、コストが違うものに全部つくれ、全部生産費プラス所得補償方式だというようなことになれば、いわゆるプライスメカニズム的な機能というものは全部死んでしまうわけだね。その辺を今度はどういう——先ほど中川次官の御答弁にもありましたように漸次生かしていくというのだけれども、どういう形で生かして、何年計画で生かしていかれようとしているのであるか、その辺はいかがですか。
  163. 中川一郎

    中川政府委員 こういうことになるのじゃないかと思うのです。価格生産調整ができる値段はどの辺なのかということになってくると、価格の競争になるのは、もう他作物にかわったほうがいいという値段はどの辺だろうかということになってくるのじゃないか。そこで、いまのままでほかの作物をつくれる値段ということになるとかなり低いものじゃないか。北海道などを例にとりますと、反当、米をつくりますと約八万円くらい粗収入である。そのほかの作物を現在つくっておると、反当三万円から四万円取るのが精一ぱいだ。言ってみれば、値段の上では半分くらいにならないとつり合いがとれない、他の作物にかわっていかないということに機械的にはなるのじゃないか。そこで、五年間にほかの作物を育成して、酪農なり地域特産、さっき言った指標でそれぞれの地域によって伸ばすべき作物がありますので、そのほうの育成をはかって、そちらに移っていくということを五年間にくふうをしていかなければいけないし、一方ではその間に農地転用の基準を変えまして、絶対量が、水田が少なくなっていく、この二面でもって生産調整をしてやっていかなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  164. 竹本孫一

    ○竹本委員 米審でいま御議論いただいておるのはことしの秋にとれる米の値段、こういうことでしょう。ところがいまの資本主義経済の中心であるプライスメカニズム、それをどの程度に生かすかという、程度についていろいろ問題はあると思いますが、ただひとつ私がおかしいと思うのは、いまごろ米審で議論してみても、価格を見て、それじゃ生産をやめようかといっても絶対間に合わぬじゃないか。もう田植えをしてしまったというときになって値段をきめる。その値段はもちろん生産費・所得補償方式だ。それでいて資本主義の特色である価格によって生産量をある程度調節もしようという考え方、何%かは別としてやはりそれが基本的な考え方だということになると「そこに大きな矛盾がありはしないか。大体価格をねらって考えて生産をする。生産しても引き合うと思うから生産をするということのためには、それこそもっと事前に予告するというのか知らせるというのか、やらなければ、価格制度なんかを考えた、あるいは価格による調節を考えたあり方というものには全然ならぬではないかと思いますが、その辺はどうですか。
  165. 中川一郎

    中川政府委員 御指摘のとおりでありまして、そのためにことしは米価審議会を早く開いて、そうして農家の方がどちらを選ぶかという判定ができるようにしたい。できれば三、四月ころにやりたいということであったのですが、従来が六、七月あるいは五月、去年も六月というようなことでありましたので、なかなか思うようにいかず、それでもことしは四月中にはきめたい。まだ東北方面、全国的に見るとまだ選択の余裕がある。長期的には御指摘のとおりでありますから、今後も、選択ができるように早目に米審を開いて決定をし、選択ができるようにしていきたいというふうにこれからも努力してまいる考え方でございます。
  166. 竹本孫一

    ○竹本委員 要するに、価格による選択というものは、選択の余地のないようなときになって価格を米価審議会で議論するということ自体が、それこそ、農林大臣じゃないが、精神が混乱しているじゃないかと思うのです。それでいま二カ月か早めたということだけれども、二カ月早めても間に合わぬと思うのですね。だからこれはもうちょっと、価格の機能が生きるなら生かすようにするためにはよほど抜本的にそのことを変えなければ、極端に言えば何年計画でこうなるのだというくらいのことを示さなければ、全く価格による生産調整というか、あるいは選択というか、そういうものの余地がほとんどない。これは大問題じゃないかとぼくは思うのです。  それからもう一つ、あわせて生産の問題にしても、きのうまで一生懸命奨励したのが今度はまた押えろとかいうことになっているのだけれども、これも先ほどの思いつき農政だからしかたがないといえばしかたがないわけだが、これももう少し、せめて十年の——百年の大計でなくてもいいが、十年の大計くらいの計画生産体制というものがなければうそではないか。特に最近千四百万トン——千三百九十五万トンというか、千四百万トンの問題も、生産というものも最近は、昔のようにことしは非常によくできたが来年は凶作だということはまずないというのが一つの実情でしょう。そういうふうになって、一方では消費がどんどん減っていく、一方では生産はどんどんむしろふえていく、あるいは昔考えたような凶作はない。だれかが言ったように、農政の根本は台風待ちだなんということでは全く話にならぬと思うのですね。そういうことから見ると、計画的なものがあまりにもなさ過ぎるではないか。十年の大計は少なくともなければうそではないかと思いますが、どうですか。
  167. 中川一郎

    中川政府委員 そのとおりだと思います。そこで五年計画でいまのところはスタートしておるということになっております。これとあわせてやはり十年計画というものも、今後いまの進め方を見つつくふうしてまいり、また見通しを立ててまいるようにしなければならぬというように考えているわけでございます。
  168. 竹本孫一

    ○竹本委員 これは前向きに取り組んでもらうということを要望して終わりますが、もう一つ、休耕奨励金あるいは生産調整奨励補助金、これはたとえば中小企業の場合なんか全く考えられないことだと思うのだけれども、いわゆる農民過保護になるのか、あるいはそのほかの場合にもこういう調整をやるのか。どういうふうに政府は受けとめておられるか承りたい。
  169. 中川一郎

    中川政府委員 確かに、生産調整責任はどこにあるのか。農家にあるのか政府にあるのかということでございますが、農家の側からいうならば、国がつくれといって指導のもとにつくってきたのだから、できた分の責任政府がとれということでございます。政府としてはいまのような値段、生産調整金ではなくて、もっと安いところで、政府も見るが農家の人もひとつ協力してくれということでありましたが、やはり現在の農家経済からいって、生産調整分、あるいは過剰米の処理はもちろんのこと、よけいできたものあるいはこれからできるものについては政府責任をとれということになりまして、いまのような、中小企業からいったら出し過ぎじゃないかというような議論も確かにあります。ですが、この際はひとつ、長年食管制度でなじんできた米でありますので、過剰米については少々思い切ったサービスをして農家の御協力をいただいておる。農家の側においても、いまだこれとても、全部政府がやったのじゃない、農家の犠牲においてなされておるという議論あるいは受け取り方もしておるというようなところからいけば、まあまあのところではないかというような考え方でございます。
  170. 竹本孫一

    ○竹本委員 まあ農民に対し、いろいろ政治的な従来の関係からの考慮もあってしかるべきだと思いますが、どうもアンバランスがあまり激しくては政治にならない。むしろ政治は調整であり、バランスであると思いますが、例の中小企業の問題との関係でいま言ったんですけれども、当面問題になっている織機の問題、繊維の自主規制、これも佐藤さんのしりぬぐいみたいなものだが、その繊維の自主規制の場合の織機に対する生産調整、これに対しては、政府の考えは大体農民の場合と同じようにやろうというような考え方に立っておるかどうか、これも念のために関連して承っておきます。
  171. 中川一郎

    中川政府委員 織機、繊維の方々が苦労をしておられる実情はよくわかりますが、これを決定するにあたって、米の処分の問題も配慮しなければなりませんし、石炭その他いろいろと中小企業の方々が方向転換する際にとった措置等もございますので、慎重にその辺はバランスがあまりにも失しないように十分配慮してまいりたいと存じます。
  172. 竹本孫一

    ○竹本委員 要望して終わりたいと思いますけれども、とにかく中小企業の場合にも公平にやってもらいたい。慎重にではなくて公平にやってもらいたいということが一つです。しかしそれがまた別途の観点からいえば、きょうは時間がありませんからあまり申しませんけれども、要するに先ほど申しましたように、どういう考え方というか、基本点に立っているのかわけがわからないし、農民パワーとか何とかパワー、いろいろありますから、突き上げられれば風のまにまに押しまくられていくのだというような政治のような感じもするし、筋が全然ないような感じがするのだけれども、ひとつ資本主義なら資本主義らしく、資本主義でだめだというなら社会主義らしく、とにかく少し路線を交通整理をしてもらいたい。いまのように雑然、混然として、たとえば資本主義でいくのだというならプライスメカニズム、これがプライスメカニズムなら価格で調節し価格で選択するんだといったって、調節の余地も選択の余地もないようにしてしまって何が価格機構であるかということになりますから、ひとつ交通整理を大いにやってもらいたいのだということを要望しておきます。
  173. 毛利松平

    毛利委員長 広瀬委員、あなたの質問に対してちょっと保留になっておることについてお答えしたいそうです。
  174. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 午前中に広瀬先生からお尋ねがございました過去五カ年間の開田関係の国家投資額でございますが、新規の開田につきましては、昭和四十四年度から新規の開田施策を抑制しております。原則として認めないこととしておりますので、最近におきましては開田につきましては、従来の工事に関連してどうしてもやむを得ずやらなければならないというところだけ取り上げて実施しておりますので、非常に限定されております。この開田抑制が始まります前におきます米に対する国家投資額でございますが、四十一年度から四十三年度までの三カ年間で約六百五十億円と推定されておりますので、年間で二百億円を上回るということでございます。別に統計のほうで水田の壊廃、拡張の状況を見ましても、昭和四十年ごろは拡張と壊廃とが大体とんとんでございましたが、四十二、三年ごろに非常に開田がふえた結果拡張が進みまして、水田がふえるという結果になっております。しかし開田抑制政策の結果、四十四年、四十五年とこれが逆転をしまして、四十五年におきましては逆に壊廃のほうが多いということで、水田が減るという傾向を示しております。具体的な数字で申し上げますと、昭和四十年の水田の拡張は二万二千ヘクタール、四十一年は水田拡張二万五千ヘクタール、四十二年が水田の拡張四万五千ヘクタール、四十三年四万七千ヘクタールということになって、年々ふえてきております。それが四十四年から減りまして、四十四年の水田拡張は三万九千、四十五年が二万というふうに減っております。一方壊廃のほうを見ますと、四十一年が二万二千でございますが、四十四年からふえまして水田の壊廃は三万四千、四十五年の水田壊廃が四万五千ということで、四十五年を見ますと、拡張が二万ヘクタールに対して壊廃が四万五千ヘクタール、こういうことになっております。  以上、口頭でもってお答えを申し上げた次第でございます。
  175. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 ただいま答弁された壊廃と造成、これをまとめて一覧表にして資料として提出をしていただきたいと思います。  それから、けさ冒頭、資料要求した分はいつ出せるか、ここで確約して、日にちを切っていただきたいと思います。
  176. 岩本道夫

    ○岩本政府委員 ただいま口頭でお答えしました水田の拡張、壊廃の年次別の推移を一覧にして、これはすぐ出せると思います。
  177. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 明後日提出いたします。ただし、米穀の倉庫別のものは非常にこまかいものでございますから、これは若干時間がかかります。
  178. 毛利松平

    毛利委員長 次回は、来たる五月七日金曜日、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十九分散会