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1971-04-27 第65回国会 衆議院 大蔵委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年四月二十七日(火曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 毛利 松平君    理事 宇野 宗佑君 理事 上村千一郎君    理事 丹羽 久章君 理事 藤井 勝志君    理事 山下 元利君 理事 広瀬 秀吉君    理事 松尾 正吉君 理事 竹本 孫一君       奥田 敬和君    木野 晴夫君       木部 佳昭君    佐伯 宗義君       坂元 親男君    高橋清一郎君       登坂重次郎君    中島源太郎君       中村 寅太君    原田  憲君       福田 繁芳君    坊  秀男君       松本 十郎君    森  美秀君       吉田  実君    渡部 恒三君       阿部 助哉君    佐藤 観樹君       中嶋 英夫君    平林  剛君       堀  昌雄君    貝沼 次郎君       伏木 和雄君    和田 春生君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         労 働 大 臣 野原 正勝君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君  出席政府委員         内閣法制次長  吉國 一郎君         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省主計局次         長       橋口  收君         大蔵省関税局長 谷川 寛三君         大蔵省国際金融         局長      稲村 光一君  委員外出席者         日本専売公社総         裁       北島 武雄君         日本国有鉄道副         総裁      山田 明吉君         日本電信電話公         社副総裁    秋草 篤二君     ————————————— 委員の異動 四月二十六日  辞任         補欠選任   堀  昌雄君     八百板 正君 同日  辞任         補欠選任   八百板 正君     堀  昌雄君 同月二十七日  辞任         補欠選任   田村  元君     渡部 恒三君   西村 榮一君     和田 春生君 同日  辞任         補欠選任   渡部 恒三君     地崎宇三郎君   和田 春生君     伊藤卯四郎君     ————————————— 四月二十六日  個人企業税制改正に関する請願(大久保武雄君  紹介)(第四九七八号)  同(石井桂紹介)(第五〇二四号)  同(益谷秀次紹介)(第五〇二五号)  国民金融公庫融資取扱窓口の拡大に関する請  願(増田甲子七君紹介)(第五〇二六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  コンテナーに関する通関条約及び国際道路運送  手帳による担保の下で行なう貨物国際運送に  関する通関条約TIR条約)の実施に伴う関  税法等特例に関する法律案内閣提出第七三  号)  国の会計に関する件  金融に関する件      ————◇—————
  2. 毛利松平

    毛利委員長 これより会議を開きます。  コンテナーに関する通関条約及び国際道路運送手帳による担保の下で行なう貨物国際運送に関する通関条約TIR条約)の実施に伴う関税法等特例に関する法律案を議題といたします。  本案に対する質疑はすでに終了いたしております。  これより討論に入るのでありますが、本案につきましては討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  コンテナーに関する通関条約及び国際道路運送手帳による担保の下で行なう貨物国際運送に関する通関条約TIR条約)の実施に伴う関税法等特例に関する法律案賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  3. 毛利松平

    毛利委員長 起立総員。よって本案は原案のとおり可決いたしました。  おはかりいたします。  ただいま議決いたしました本案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 毛利松平

    毛利委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  5. 毛利松平

    毛利委員長 国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  6. 堀昌雄

    堀委員 本日は、公共企業体等給与の問題について少しお伺いをいたしますが、最初に法制局にお伺いをいたします。  財政法二十二条で予算総則内容というのがきめてありますが、第二十二条「予算総則には、歳入歳出予算継続費繰越明許費及び国庫債務負担行為に関する総括的規定を設ける」と、こういうふうにまず第一点あります。この総括的規定と現在の予算総則に書かれておりますところの「給与総額等」とはどういう関連にあるのか。法制局から御答弁をいただきたいと思います。
  7. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 ただいまの御質疑は、「給与総額等」に関する事項が、財政法第二十二条の列挙事項でございません歳入歳出予算等に関する総括的規定に入るかどうかということでございますが、この総括的規定のほうは、歳入歳出予算等に関します概括的な一般的事項を指称するものと存じますので、給与総額等に関する事項はこの中には入らないのではないかと思います。
  8. 堀昌雄

    堀委員 そうしますと、「設ける外、左の事項に関する規定を設けるものとする。」こうありまして、一、二、三、四、五までははっきり明定されてありますからこれには該当しない。そうすると、残るのは「前各号に掲げるものの外、予算執行に関し必要な事項」こうあるわけですね。そうすると、いまの「給与総額」というのはその「予算執行に関し必要な事項」ここですか。これに該当するのですか。大蔵省あとからゆっくりと聞きますから、まず法制局のほうの見解を。財政法に対する解釈
  9. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 この第六号の「予算執行に関し必要な事項」、これにつきましては、予算執行するにあたりまして、政府側が一定の事項に関しては予算総則をもって定めることが必要であるという認定をいたしましたものは、ここに規定を設けることを第二十二条は命じておるものと思います。「給与総額」は「予算執行に関し必要な事項」として総則規定されておるものと思います。
  10. 堀昌雄

    堀委員 ここで「前各号に掲げるものの外、予算執行に関し」とある、この「予算」は何を示していますか。
  11. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 これは予算全体を指称するものでございます。
  12. 堀昌雄

    堀委員 ここでいう「予算」は予算総則でものをきめる土台になる予算だ。予算全体ということにはならないのじゃないですか。予算総則というものは、いま私がここで触れたように、総括的部分個別的部分に分けまして、ここで予算総則を書けと財政法規定しておりますね。そうして総括的な部分ではないのですから、予算全体ということでなしに、それは要するにその執行規定する土台になる予算、こういうものになっていなければおかしいのじゃないですか。予算全体ということではないと私は理解をいたしますが。
  13. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 第十六条に「予算内容」を規定してございますが、予算総則は、予算全体にいわば総則として通則規定する事項である。その通則の中で「歳入歳出予算継続費繰越明許費及び国庫債務負担行為に関する総括的規定」がまず第二十二条の本文で出てまいります。そのかにやや個別の事項といたしまして、第一号から第五号までに規定を設けまして、さらにセービングクローズといたしまして、第六号で「予算執行に関し必要な事項」となっておるのでございまするので、この「予算」と申しますのは第十六条でいっております「予算」というふうに解するのが、第二十二条全体の解釈としては適当ではないかと思います。
  14. 堀昌雄

    堀委員 わかりました。第十六条で「予算内容」と規定しておりますのは、「予算は、予算総則歳入歳出予算継続費繰越明許費及び国庫債務負担行為とする。」こういうふうにちゃんと区別をして記載されておるわけです。これを区別して記載されておるということは——この中で、私が言っておる「継続費繰越明許費及び国庫債務負担行為」についてはいまの御答弁ですでに規定があるし、要するにこの予算総則というものは、この中の予算執行ということが予算総則内容なんだから含まれない。要するに予算総則というのは、予算総則以外の予算に対する規定だ、こういうふうに私は認識をしておるのですが、それはどうですか。
  15. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 予算総則を含まないということではないかというお尋ねでございますが、「予算総則」は予算総則自体執行するというような問題じゃございませんので、おっしゃるとおり予算から予算総則を除いた残りということになると思います。
  16. 堀昌雄

    堀委員 大蔵大臣、いまお聞きになったように、財政法二十二条の「予算総則」の項の第六号の「前各号に掲げるものの外、予算執行に関し必要な事項」というこの「予算」というのは、要するに第十六条の「予算内容」の中の「歳入歳出予算継続費繰越明許費及び国庫債務負担行為」こういうことになるといま法制局答弁をいたしました。  そこで大臣、よろしゅうございますか、そうなると、予算総則でものをきめられる範囲というものは、少なくとも歳入歳出予算にあるものについての執行をきめるのであって、ここで予算総則執行をきめ得ることは、いうなれば財政法の三十三条ただし書きにある——本来は予算執行に関し必要な事項例としては、三十二条からいきますか、「各省各庁の長は、歳出予算及び継続費については、各項に定める目的の外にこれを使用することができない。」第三十三条、予算の移用及び流用の制限、こういう問題に対していまの二十二条六号がそれを規定しておる、こういうふうにいまの吉國次長答弁からすれば範囲は限定される、こう考えますが、大蔵大臣いかがでしょう。
  17. 福田赳夫

    福田国務大臣 法制次長がお答えしたのですから、法的解釈はそうだと思います。思いますが、総則で、予算数字執行ですね、予算書数字執行だけに関連しているのか、それだけしか関連できないのかというと、そうではない。たとえば債務負担行為、これは予算とまた別ですね。当該年度予算だけじゃない。翌年度予算を拘束するようなそういう条項もあるので、大体そういう特殊なケースを除きますと、やはりいま法制次長がおっしゃったとおりと解釈します。
  18. 堀昌雄

    堀委員 いま大臣がおっしゃった国庫債務負担行為につきましては、私は前段で申し上げたように、財政法十六条でちゃんと予算範囲と認めておるわけであります。要するに、予算範囲と認めたのは「歳入歳出予算継続費繰越明許費及び国庫債務負担行為とする。」とありますから、大臣のおっしゃったいまのことは、私の言う予算の中に該当しているわけです。要するに、私のいま言っておりますことは、予算総則で書いたことを予算総則でもう一ぺん規定をするわけにはいきませんよ。だから予算総則では、要するに「歳入歳出予算」か、「繰越明許費」か、「国庫債務負担行為」か、「継続費」か、これだけについての使用に関して書くことができる、こういう財政法規定がある、こういうことだと思いますが、大臣、それでよろしゅうございますね。
  19. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういうふうに思います。
  20. 堀昌雄

    堀委員 実は私が本日この問題をやっておりますのは、予算総則でものを書ける範囲ということは、少しここを厳密にしておかなければならぬと思うのです。昨年までは私はこの問題を議論する必要はなかったわけです。昨年までの予算総則に書かれておることは、すべて予算のベースにあることが実は書かれておったのです。  労働大臣が、時間の制限があってお入りになりましたから、ちょっと話を中断をさしていただいて、労働大臣に、時間がありませんからお伺いをいたします。  実は昨年も私、大体この時期にいろいろ問題を提起いたしました。きょうは時間が非常に制約されておりますから簡単にお伺いをしておきたいと思っておりまするけれども、本年までの公共企業体等職員給与に関しましては、実は自主交渉段階で、昨年、有額回答が示されるようになり、さらにそれをもとにして、調停段階でも調停案によらないで、公労委委員長見解という表現のもとに、労使間においておのおの賃金に対する最終的な詰めが行なわれて、結果的には現行法律上のたてまえから仲裁裁定という形式をとりましたけれども、中身としては、昨年まではいま申し上げたようなことであったと了解をしておるわけでありますが、大臣もそのように御了解いただいておりますでしょうか。
  21. 野原正勝

    野原国務大臣 堀委員の御指摘のとおり、三公社現業につきましてはあくまでも自主交渉による円満な妥結を望んで今日まで来ておる、そのことが一番好ましいと考えております。
  22. 堀昌雄

    堀委員 昨年まではそうでありましたが、本年度に対する労働大臣の公式の見解をちょっと承っておきたいと思います。取り扱いの方向について……。
  23. 野原正勝

    野原国務大臣 本年も昨年同様、あくまでも自主交渉により当事者能力、誠意をもってお示しできるようにいたすべきだという観点からやってまいったわけでございますが、なかなかむずかしい問題も実はございますので思うように参りませんでしたが、あくまでもその筋だけは通したいということで努力してまいります。
  24. 堀昌雄

    堀委員 そこで私は、これは公労委の現状の問題についてちょっと労働大臣に私の意見を申し上げて御判断を少し伺いたいと思うのですけれども、大体、本来公労委というのは、考え方としては個別調停ということになっておったと私は思うのですね。大体賃金というものが本来個別の賃金でありますから、個別の賃金処理をするのならば当然個別調停ということが本来の原則だ、こう考えますが、大臣いかがでございましょうか。
  25. 野原正勝

    野原国務大臣 そういう点は御指摘のとおりだと思います。できるだけ個別に満足を与え、円満な妥結をするということが好ましいと思います。問題は、同じような三公社現業の場合、はたして個別の問題でいいかどうか。やはり共通した問題もございますので、その辺は十分に連絡を密にしていく必要があるんじゃないかというふうに考えております。
  26. 堀昌雄

    堀委員 おっしゃるように、確かに全体一つ法律で規制をされておることでもありますから、相関連するところは十分あると思いますが、たてまえは私はやはり個別調停であるのが本来の筋だろうと思うのです。そこでやはり私は、公労委のほうでもできるだけそういう趣旨を体した運営をひとつ今後やっていただく。もちろん公労委一つでありますから、運営をどういうふうにされようと、最終的な判断の中ではある一つ範囲でいろいろお考えになることは当然でありますけれども、取り扱い的には、たとえば調停委員長が個別に関係労使を呼んでできるだけその労使関係でものが処理できるように——いまの場合ですと、たとえば労働側委員を通じて労働者に、使用者側委員を通じて使用者に、というような形があって、非常に何段階かに問題が処理されるというような感じがいたしますので、これはひとつ調停委員長が、どこかの時点では一応労使を個別に呼ばれて、そうしてそれらの事情も踏まえた上で最終的なそういう見解等を出されることが、私はやはり個別調停という原則から見れば望ましいのではないか。調停委員長は一人でありますから最終的にそれが包括されることは当然でありますし、また調停委員会で合議もされていろいろ見解も出てくるのでありましょうから、経過としてはいま労働大臣後段でおっしゃったことは十分補完をされるのでありますが、やや後段の側に比重がかかって、前段のほうの個別的な調停という雰囲気が現在の仕組みでは必ずしも生かされていないという感じがいたすのでありますが、この点についてはひとつ今回はできるだけそういう方向処理がされるということを要望されるかどうか。これは公労委は独立しておるわけでありますから。いかがでございましょうか。
  27. 野原正勝

    野原国務大臣 御意見は非常に私ども賛成でございます。そういう方向につとめてまいるべきものとよく御意見のほどをお伝えいたします。
  28. 堀昌雄

    堀委員 そこでもう一つ、実はいまの委員の数の問題でございますけれども、たとえば労働側委員というのは三人出ていらっしゃいますが、実は八つも団体があるわけですね、三公社現業ですから。八つのことを三人で、ある時期に非常に集約的に処理されるということはやや問題があるんじゃないかと思いますし、またたとえば、私たちはどちらかというと総評に近いわけでありますけれども、やはりこれらの労働組合の中には同盟系のものもあると思うのであります。これらも勘案いたしますと、もう少し委員を増員されることが、よりいま私が申し上げたような個別調停をやりやすい条件に導くことになるのではないのか、こう思いますので、ひとつ公労委委員の数ですね、委員数をもう少しふやされても別に公労委の運用が障害を受けることがなくて、かえって、非常に多岐多様にわたっておりますから——たとえば一つ種類の業態なら別でありますけれども、もういまは三公社現業というのは実は極端に内容の違う業種がそろっておることでありますので、やはりその中におけるいろいろな特殊な条件もあるでありましょうから、それらを十分に公労委として処理をされるためには、私は特に労働側委員というものがもう少しふやされてもいいんではないだろうか。そのほうがいま私が申し上げたことをスムーズに処理するためにも役立つのではないか、こう思いますけれども、これについての労働大臣の御見解を承りたいと思います。
  29. 野原正勝

    野原国務大臣 委員全体として、これはバランスの問題もございます。御承知のとおり労働組合関係等もいろいろ複雑でございますので、いまのところ考えておりませんが、将来、今後そういったことについても一十分な注意を払いまして、できるだけその意見が公正に反映できますように十分研究を続けたいと思います。
  30. 堀昌雄

    堀委員 私が申し上げておりますのも労働側委員だけふやせと言うんではありません。当然使用者側委員も同じ問題があるはずでございます。要するに私が申しておりますのは、企業体の数が多くて、種類が違うのでありますから、使用者側委員も当然数がふえて相当であるし、労働側委員もまたふえていいんではないか、こういうことでありますので、それはそういうふうに御理解いただいて、やはりできるだけこの問題がスムーズに、そして合理的に処理が行なわれることを私どもは期待いたしております。その点については政府、要するに労働大臣考えもそんなに差はないと思うのであります。そういう意味で、私が申し上げましたことについてひとつ御配慮をいただきたいということを御要望申し上げまして私の労働大臣に対する質疑を終わりまして、関連質問に移っていただきたいと思います。
  31. 毛利松平

    毛利委員長 労働大臣に対する関連質問を許します。広瀬秀吉君。
  32. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 労働大臣に、時間もございませんので端的にお伺いをするわけでございますが、今次春闘で公労協の各組合代表者と会われた際、表明をされました。それから四月二十一日の閣議のあと記者会見で発表されたことを確認いたしたいと思うのでありますが、実は公労協は御承知のようにそれぞれの企業体において経営格差が非常にあるわけであります。赤字財政のところもあるし非常に健全な経営もある。こういう中で労働大臣の立場において、その赤字のところであろうとそうでないところであろうと格差をつけるべきではない、こういう意見を少なくとも今年に入ってから二度ないし三度公式に表明をされておるわけでありますが、この委員会におきましてもそのことを確認してよろしいかどうか。あなたのお気持ちをお聞きいたしたいと思うわけであります。
  33. 野原正勝

    野原国務大臣 私は、各企業間において当然のことのように格差があるということ、これは疑問に考えております。大きな格差があってはならぬ、本質的にそういうものであろうと思います。それは物価とかいろんな経済上の事情等、あるいはまたそこに携わっておる勤労者の方々の年齢構成であるとか、いろいろな関係がありまして多少の格差はあるにしても、本来そうした大きな格差があっていいものじゃないというふうに考えておる一人でございます。たまたまそういう問題について御意見がありますときに、私はそう大きな格差があることは好ましくないということを何回か申したことがあるわけであります。そういう心境で、賃金問題等につきましては各企業体等によって大きな格差があることは好ましくないことであるというふうに考えております。
  34. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 もう一つ、大きな格差があるのは好ましくないとおっしゃられたわけですが、私が端的にお聞きしたかったのは、昭和四十六年度における賃上げの際にも格差を設けるということについては好ましくない、このようなお考えである、そう承知してよろしゅうございますね。
  35. 野原正勝

    野原国務大臣 そのとおりでございます。
  36. 堀昌雄

    堀委員 引き続き先ほどの論議に戻ります。  そこで、予算総則専売公社に関する部分にはこういうことが書かれているわけです。「(給与総額等)」「第八条 専売公社法第四十三条の二十二第一項の規定により、」こういうふうに書かれております。法制局もよく聞いておいてください。その第四十三条の二十二の一項には「公社は、その職員に対して支給する給与について給与準則を定めなければならない。この場合において、この給与準則は、これに基く一事業年度の支出が国会議決を経た当該年度予算の中で給与の額として定められた額」こう書いてあります。「をこえるものであってはならない。」というのは別で、「額」です。  そこで予算総則にまず「専売公社法第四十三条の二十二第一項の規定により、」と、こう書いてある以上、まず予算総則を書く前に専売公社法第四十三条の二十二の一項が先行する、こう考えますが、法制局次長どうですか。
  37. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 そのとおりだと思います。
  38. 堀昌雄

    堀委員 予算総則のこの規定の働く前に、四十三条の二十二の一項でいう「給与の額」、この給与の額というのは歳入歳出予算規定をされた給与の額である、こうなりますね。
  39. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 その専売公社法第四十三条の二十二の第一項におきまして「予算の中で給与の額として定められた額」といっておりますところの予算が、歳入歳出予算でなければならないとはいえないのではないかと思います。
  40. 堀昌雄

    堀委員 どうしてですか。私がいま先に、予算総則の前に——いま予算総則にはこう書いてある。「専売公社法第四十三条の二十二第一項の規定により、」と先に書いた以上、それからあとに書いてあるものを——専売公社法第四十三条の二十二の一項の規定が優先するといまあなたが答えた以上は、この規定が優先する以上は、そのあとに書いてあるものを逆に持ってくることはできないんですよ。まず、そこの予算総則のこれから書くものの前にあるもので規定しなければならぬ。そうすれば、それは予算歳入歳出事項規定された額がまず先に優先して、その「規定により、」であとのことを書くということにならなければ、この予算総則の書き方のたてまえとしてはおかしいじゃないですか。
  41. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 どうもただいまの御質疑趣旨を私取り違えたかもわかりませんが、予算総則の第八条で「専売公社法第四十三条の二十二第一項の規定により、」云々といっておりますのほ、専売公社法第四十三条二十二の一項で「国会議決を経た当該年度予算の中で給与の額として定められた額」というものを主張しております。その「額」というのはこの第八条でこうこう規定するよということをいっているのだと思います。
  42. 堀昌雄

    堀委員 大臣、私が予算総則のそこにいま触れておりますのは、これまでは予算総則の中で書く額というのは、少なくとも歳入歳出予算の額を土台としたものが書かれているわけです、すべて。  主計局の次長にお伺いをいたしますが、予算総則の中の数字予算歳入歳出の項の規定にある数字以外の規定が最初にくるもの——あとにくるのは別ですよ。最初にくるのがありますか、予算総則の中で。
  43. 橋口收

    ○橋口政府委員 堀先生の御質問の御趣旨が十分理解しかねる点もあるのでございますが、ただいま御質問のありました専売公社について申し上げますと、予算では「給与其他諸費」というふうにして金額が上がっているわけでございます。さらに、それに対する参考表といたしまして「給与総額」というものを明定いたしております。そしてそれにはいわゆる給与改善に関連しての措置、五%相当額の金額は含まないということを予算書の参考書類に明らかにいたしているわけでございます。
  44. 堀昌雄

    堀委員 いや、私がいま聞いているのはそうではなしに、要するに、いま五%分というのはすでに給与の中に組み込まれておるから、これは歳入歳出予算としては国会の承認を得ているわけですから、歳入歳出予算としては確定をしておる。五%分の給与の入ったものが確定をしておる。そこで、歳入歳出予算給与の額として確定したものを、予算総則で別個の額をここに規定するということが、いまの財政法上正しいかどうかということをいま私は議論しているわけです。財政法からきた予算総則で私がいま議論してきたのは、予算総則が受けるものは何か。予算総則が受けるものは、さっき吉國次長が答えられたように「歳入歳出予算」「繰越明許費」それから「継続費」「国庫債務負担行為」と、これだけです。予算総則が受けるのはこれです。こうなって、そして予算総則の中で、それでは総括でしょうか「そうではありません。個別事項でしょうか、そうではありません。六号で、要するに「前各号に掲げるものの外、予算執行に関し必要な事項」だから、その「予算執行に関し必要な」というならば、その土台予算はあくまでも歳入歳出予算だ。こうなれば、給与の額を「給与総額」で変更することは問題がある。要するに、これまでも歳入歳出予算における給与の額と、それから給与総額で書いた予算の額と、それは同じだ。ただその中で基準内外を区別するということについては、予算執行上の問題だから区別できた。しかし土台である歳入歳出予算に明定をされておる給与費そのものを、予算総則給与総額はこれだと一方的に規定しているのは財政法違反だ、こういうのが私のいまの考えです。
  45. 橋口收

    ○橋口政府委員 ただいま堀先生がおっしゃいました前段につきましては、われわれと意見の相違がないかと思います。御指摘のようにまさに歳入歳出予算給与の総額をきめておりますので、それはまさに給与の歳出額であることは間違いございません。ただ財政法第二十二条が予算総則の根拠規定になっておりますが、その第六号は先ほど来御指摘がございましたように「予算執行に関し必要な事項」というふうにきめておるわけでございます。つまり「予算執行に関する事項」というふうに限定的な規定はいたしておりません。したがって「予算執行に関し必要」と目される事項につきましては、かなり広範囲規定できるというのが従来からの確定された解釈でございます。したがいまして、ただいま御指摘のございました前段の、歳入歳出予算の中の給与支出額というものは、まさに御指摘のように国会の御承認を得た金額でございます。しかしながら、それに対しまして予算執行の別途な要請から給与総額という一つのワクをはめておるというのも、これまた財政法の第二十二条の解釈として適当な措置であるというふうに考えておるわけでございます。
  46. 堀昌雄

    堀委員 別途の必要からという答弁がいまありましたね。ではどういう必要でしょうか。これまでは私が前段で申したように、総則給与総額歳入歳出予算給与総額は同一でありますから、要するに予算執行に関し必要な規定として基準内外を分ける。その流用を禁止した。大体この第六号というのは主として流用に関する部分規定する、あるいは限界を規定するということであって、予算の額そのものを変更した額を給与総額書くというのは財政法趣旨ではない。もしそんなことなら、予算総則で何でもきめれば、歳入歳出予算はどうでもいいということになりかねないじゃないですか。だから、法制局次長に聞きますが、この今度のことはこれは初めての例ですから、やってもらったことは私が要請してやってもらったことで、中身の話としてはこれは賛成だ。しかし私はこういうことを期待して実は要求しておったわけではない。当然、歳入歳出予算に計上することは給与総額においてもそれと同じものを計上して、基準内外の区別をするというなら相当である。しかしこれでは、要するに予算総則の中で政府歳入歳出予算の計数を一方的に恣意的に行なうことができるという、こんなばかなことはないのじゃないか。歳入歳出予算の権威というのはないのじゃないか。それじゃどっちが優先するのか。大蔵大臣どうです。政治的な判断を聞きますから、大蔵大臣ひとつ……。きわめて政治的な判断だから、私のほうで大臣答弁を求めているのです。
  47. 橋口收

    ○橋口政府委員 財政法二十二条第六号の解釈の問題に関連いたしますので、一応私からお答え申し上げたいと思いますが、ただいま御質問の中にもございましたように、「予算執行に関し必要な事項」でございますので、予算執行に関し必要な事項として要請がございますれば、予算の額について変動が生ずることはあり得るわけでございます。いわゆる弾力条項、収入金支弁の弾力条項あるいは借り入れ弾力等いろいろございますが、収入金支弁の弾力等について見ますと、この予算総則規定によりまして弾力条項を設定いたしておりますので、予算の額そのものが異動するわけでございます。したがいまして「予算執行に関し必要な事項」という規定内容といたしましては、予算の額の変動を予定しておるということを申し上げておきたいと思います。
  48. 堀昌雄

    堀委員 ではあなたの、「関し必要な」というのはどういう必要があるのですか。これをこういうふうに区分けをした必要は、法律的根拠か何かありますか。これまでは、予算総則で皆さんの書いてきたことは、公社法やあるいは国の経営する企業に勤務する職員給与等に関する特例法を受けて実は予算総則は書かれておったわけです。だからこの限りでは、私はこれまで、要するにこれらの公社法のある限り問題の解決はできない、こう思っておったけれども、今度は、これらの公社法その他一連がいっていることは、予算の中の給与の額として定められた額をこえてはならない、こうなっておるのですから、これを一方的に皆さんが恣意的な判断で、あるワクの中に押え込むということは、これらの公社法及びいまの特例法の定めておる法意をはずれておるのですよ。あなたの言われる弾力条項その他の問題は、それは二次的に起こる問題であって、これは恣意的な判断できめた考えですよ。おまけに公社法その他の精神はここで完全に切れているわけですよ。どうですか。「必要」とは何ですか、その必要の額というのは。その「必要」に関し答えてください、根拠になるところを……。
  49. 橋口收

    ○橋口政府委員 ただいま堀先生は給与総額に関する規定前段だけをお読みになったわけでございますが、後段にただし書きがございまして、中途は省略いたしますと「公共企業体等労働委員会の裁定があった場合において、その裁定を実施するために必要な金額を、予算の定めるところにより、大蔵大臣の承認を受けて、給与として支給するときは、」この限りでない。つまり制約をはずす、こういう規定でございます。この「予算の定めるところにより」というのは、まさに予算総則内容をなしておるわけでございます。したがいまして、先ほど来御説明いたしておりますように、別途の考慮から給与総額というものは予算総則規定をいたしまして、国会の御承認を得ているわけでございます。
  50. 堀昌雄

    堀委員 いまの後段の話は、公社法その他はいずれも、要するに歳入歳出予算に書かれたものの範囲をこえてはならない、こういうことを規定しておるのですよ。あなたがいまおっしゃったように、規定されたものと給与総額できめるものとはこれまでは同一だったわけですよ。法律解釈としてはそれでこれまでずっと来ておったのです。今度は初めて、あなたのほうがいま言っておられるように、公社法の歳入歳出額と給与総額を書いてきたわけです。これまで一般会計においてもあるいはこれらの三公社現業においても、四十五年度予算まではこの法律どおりで来ておったわけですから、二つに読みかえる必要はなかったわけです。今度はこの予算というのは、歳入歳出予算とも予算の定めるという——予算が定めておるのは何も給与総額だけを定めておるのじゃなくて、歳入歳出予算も定めておるわけです。  法制局次長伺いますが、予算の中で、そうしたら予算総則とこれらは対等の原則じゃないですか。要するに、総則のほうに書いたことだが、常に最優先するということなのか。歳入歳出予算総則はそういう形では同一であるから、そういう問題は公社法その他にぴしゃっと合ってきているからこれまで議論はない。その部分については議論はないからこっちを直してきたけれども、私は少なくとも今年度のこの取り扱いはどう考えてもおかしい。だから、こういう必要に応じてという根拠法規になるものが私がいましておるこれだけれども……。なるほどそれは後段のほうで仲裁裁定で動かすことができるとなっておるけれども仲裁裁定で動かすとなっておるのは、歳入歳出予算の額に設けられていないものを支出しようとするときに裁定が必要なのであって、そこに設けられておるものを使うときに裁定が必要だとは私思っていないわけですよ。だから、少なくともそういう意味では、給与総額をこういう形で限定するのは予算の正当な使用法ではない。そこまで私は当事者能力の問題について——法律的には当事者能力なんというのはどこにも書いてないのですからね。これの基本になっているものは公社法であり特例法なんです。その特例法と今度の問題を見れば、必要に応じての「必要」の土台になるものはないですよ、大蔵大臣。私はこれは間違った予算の提案のしかただ、こう思いますが、大臣どうですか、これは。
  51. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまさら間違ったと言われることは意外だと思いますが……。これは堀さんはじめ当委員会皆さんの間から、一般会計の措置、あれに準ずべきじゃないか、こういう御意見があって、そのとおりにしたのです。それをいまさら妥当でないというふうな御所見には、どうも私も納得できない。これはあくまでも皆さんの議論を参酌いたしまして、財源をここで確保しておく、そして給与改善の便益に資す、これがスムーズにいくようにしよう、こういうことなんです。財源はここにこういうふうに確保してあります。いままで財源がなかった、それを新たに改善をいたしたわけでありまして、どうも、おほめにあずかるだろうと思っておったところ、まことに意外な感を抱くわけであります。
  52. 堀昌雄

    堀委員 いや、私は財源に計上したことはたいへんけっこうですと、さっき前段に言ったのです。ただ、それはいまの財政法なりこういう公社法なりの関係から見たら、財源には計上したけれども予算としては使わせませんという発想はおかしいと言っているのです。少なくとも歳入歳出予算に計上したら、五%ふやしたなら、そこまでは公社現業の長が使い得る範囲内にしたっておかしくないじゃないかということですよ。それを使っていかぬということなら、これは私おかしいと思うのですね。皆さんのほうで当事者能力という表現をよく使われるけれども法律にはどこにも当事者能力なんということはないのです。次長、どうですか、当事者能力ということが法律、どこかにありますか。ちょっと答えてください。
  53. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 法律上、別段さような規定はございません。
  54. 堀昌雄

    堀委員 これに関するものは、要するにいまの当事者能力という問題は、国有鉄道法四十四条、専売公社法四十三条の二十二、電信電話公社法七十二条に関連があるのではないですか。違いますか。ちょっと答えてください。
  55. 吉國一郎

    吉國(一)政府委員 おっしゃるとおり、たとえば日本専売公社法では第四十三条の二十二に関連してくる問題でございます。
  56. 堀昌雄

    堀委員 だから、その場合には予算の額なんですよ。これまでは歳入歳出予算の額をこれらで受けて処理しておったのです。それを、せっかく財源をそれだけ見たのならば、それは歳入歳出の額を給与総額のところに書いたって、大臣、ちっともかまわないじゃないですか。法律考え方に何ら接触するところはない。時間がないから私一応これでやめますけれども財政法二十二条第六号で「執行に関し必要な」と、こう書いてあるわけですよ。「必要」といったって、法律規定もないところに必要も何もないじゃないか。一方的に大蔵省が何でもできるということじゃないのですよ。やはり関連法規の中で、関連法規を受けて処理する場合が「必要」なのであって、私はちょっとこの処置は納得できないのです。ですからことしは、いまできていることはしかたがないですけれども、あわせて来年はひとつ大蔵大臣——画竜点睛を欠いておるのですよ。せっかく私どもがここで論議をし、大臣も前向きにやっていただいて、こんなこともう一ぺん言わなければならぬような処置をされておるということはゆめにも思わなかった。ところが、調べてみたら全く画竜点睛を欠いておるのですがね。大臣、ひとつ来年はこういう給与総額を一方的に限定するのをやめて、歳入歳出に計上した額だけは一応給与総額のところに書いて、そこまでは、言うならば各公社法の定める範囲内での処置を公社総裁現業の長にまかしたっていいじゃないですか。そんなにいまの公社総裁、いまここに来ておられるけれども、大蔵省は信用できないですかね。そんなことないでしょう。いずれも良識を持って処置をされる総裁なり長を政府は任命しておるはずです。その政府が任命しておるものを、ここまでこまかい細工をする必要は私はないと思います。大臣、この答弁を伺って私は終わりますが……。
  57. 福田赳夫

    福田国務大臣 給与総額の中にはこの五%分は含まない。これは堀さんがいろいろ指摘されるように、むずかしい議論のあるところであろうと思います。しかしそういうふうに政府としては統一的な法的な解釈をしておるわけなんです。そういうわけでありますから……。なお検討はしてみます。
  58. 堀昌雄

    堀委員 ひとつ前向きに、あまりこんなしちくどい議論をしなくても済むように、もうちょっと三公五現の長の当事者能力で、五%分ぐらい回復したってどうということはないと思うのです。そのときになって、五%が行き過ぎだというなら、物価も安定して成長も非常にスローになってきたら三%でも何でもいいです。私は五%にこだわっておるわけではないのだ。要するにこれらのベースアップその他の処置をするときに、もう少し、去年私が委員会企業のいろいろな性格について議論をしましたように、企業の長が給与その他についてのフリーハンドが持てるようにすることが私は本来相当だ、こう考えておりますので、ひとつ前向きの御検討をお願いして私の質問を終わります。
  59. 毛利松平

  60. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 続いて公労協賃金問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  先ほど労働大臣に対しまして、堀さんの関連質問でお聞きをしたわけでありますが、今度は大蔵大臣にお伺いをしたいのです。  公共企業体、これはそれぞれに企業内容経営の状況、経理の状況というものは非常に差があります。その最たるものは国鉄であるわけですが、昭和四十六年度におきましては、そのままでいけば償却前赤字が八百四十億にもなる、こういうような状況でいろいろ苦心をして、ある程度収入等についても、これはかなり困難と思われるような数字を出して、収入予算に目一ぱいの計上をやった。これはむしろオーバーな収入見積もりではなかったかと思うようなことまでやった。そのほか、いろいろ復活折衝等の段階で、債券、補助金の増額等もあってようやくつじつまは合ったけれども、しかし今度は一方を見てみますと、それだけの増収をあげるために何らの予算の増額もされないというような矛盾に満ちた、大蔵大臣の言い方をすれば、ほんとうにこれは本格的な財政再建の予算ではない、いわばつなぎみたいなことだというようなお話だったわけですけれども、そういう状態である。また郵政におきましてもかなりの赤字が見込まれる。一部郵便料金の値上げをもってこれに対処はしたけれども、必ずしも万全の策ではないだろうというように考えられるわけです。また、専売あるいは電通等においては、そういう意味でのいわゆる財政の逼迫、困難というようなものはない企業であるというように考えられるわけであります。そこで、そういう場合に、少なくとも労働問題をあずかっている労働大臣としては、この賃上げに格差を設けることは好ましくない、すべきではない、こういうことをしばしば表明をされておるわけであります。大蔵大臣としてはこの労働大臣考えというものをそのまま受け取って対処されるのが当然であろうと私は思うわけでありますが、大蔵大臣のその点についての所見をお聞きをいたしたいと思います。
  61. 福田赳夫

    福田国務大臣 けさ、労働関係の閣僚が集まりまして、目下進行中の交渉にどういうふうに対処するか、こういう話し合いをしたのです。結局、いま民間賃金の状況は昨年の状況よりは非常にきびしい状態にある、その状態も公労協の場合においてにらまなければならぬ。それから各企業の経理の状態も十分検討しなければならぬ。そういうような土台の上に立って各企業ごとに有額回答を行なう、目下そういう段階に来たのではあるまいか、そういうふうな判断をいたしたわけでございます。  これは誤解ないように申し上げますが、この賃上げにつきましては、各企業それぞれ特色があるわけでありまして、これは一律に統制的にやるということはもとより妥当じゃない。これは広瀬さんも十分御了解がいくだろう、こういうふうに思います。しかし、いま賃金改善の率というか度合いをどういうふうに扱うか、各企業間のバランスをどういうふうにとるか、これが広瀬さんの御質問の趣旨だろう、こういうふうに思いますが、これはやはり労働大臣がお答え申し上げましたように、あまり企業間に格差ができるということは好ましくない、基本的にはこういうふうに考えます。ただ、企業間の経理の内容というものもありますから、多少のニュアンスの違いが出てくる、これもやむを得ないとしなければならぬ、こういうふうに思いますが、とにかく私の気持ちとしては、業績が悪いからおまえのところはどうもぐあいが悪いのだ、こういうようなことを終始貫くという行き方はいかがであろうか、かように考えます。
  62. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 大臣答弁も私どもとそう違わない、そういうふうに受け取ったわけであります。私どもも特に公共企業体ということで、どの企業体も同じ賃金でなければならないということを主張しているわけではないし、みんな公共性というものを持っている企業なんですから、そういう点で、国民に向かってりっぱにその職責を果たし得るだけのものがそれぞれの労働の質と量に応じて与えられる、そういう意味でのある程度の格差ができるということは、これは伝統的にもそういうことになっているわけでありますが、今日の段階において経営格差というものによって縮める考えはないという気持ちは表明されたと私理解をするのです。  そういう点では、たとえば国鉄の場合に例をとりますと、国鉄の経営が一体なぜ悪くなったのかということについて十分検討されなければならない。国鉄の職員がなまけておったんであるとか、あるいはよその企業と比べて労働の質と量に対応しないとんでもない高給を取っておったんだ、こういうようなことがもしあるとするならば、これはある程度その引き直しというようなこともあっていいかもしれないけれども、そういうことは全くない。むしろよその企業よりも労働の質と量においては高いというようなことがあるにもかかわらず、経営の状況が悪いということでむしろだんだんよそと差が開いてくる、こういうようなのが国鉄の職員の現状でもあろうと思うわけなんです。だからそういう中で、特に国鉄の職員あるいは国鉄の経営そのものについてとんでもない誤りをおかして経営が悪化したということでもないとするならば、やはり政府みずからの責任ということが出てくるわけでありまして、今日の国鉄の経営の悪化という問題の中にはいろいろな問題がありますけれども、たとえばこの経営の面からいうならば、赤字線なんかはそれぞれの審議会で答申をしたように八十三線区二千六百キロというようなものをすぐにぶった切る、そういう乱暴なこともやったほうがいいかもしれない。しかし、それはやはり国民の生活の中に溶け込んで、どうにもこれを廃止することができないという状況であり、またそれだけにやはり地域の生活圏の中にちゃんと組み込まれて役割りを果たしておるという段階で、それはできないのだ。あるいはまたそのほか、厚生省の関係で言うならば、厚生省の予算をもってやるべき身体障害者の運賃割引であるとか、あるいは国会議員等の無賃乗車であるとか、こういうようなものなんかについても、国鉄が企業体で、あくまで経営中心、赤字を出さない企業としてやっていくのだとするならば、そういう公共負担——総括的には公共負担ということばでいわれますが、そういうものなどを企業体に押しつけているというようなことなんかでも間違いであるし、あるいはそのほか通勤割引であるとか通学割引であるとか、文教政策の中で当然処理すべきものが、国の責任として処理すべきものが企業体である国鉄にやらされているとか、いろいろな問題点は数え上げたら切りがないわけであります。そういうような中からできた赤字である。しかも国鉄の場合に大きい問題は、やはりスクラップ・アンド・ビルドというものの中で、スクラップができないでビルドだけ、新しい時代に即応した新幹線のごときものがどんどんふえてくる、それに対する投資が巨額に及んでいる、それが全部他人資本に依存してきている。こういうようなところからやはり経営赤字の大きな問題点があるとするならば、これは国民の財産でありますし、国の責任においてそういう面でもっともっとこれを投入されなければならなかったのを国自身がやらなかったということにもなるのであって、そういう問題について大蔵大臣はどのように国の責任をお感じになるか、この点をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  63. 福田赳夫

    福田国務大臣 国鉄につきましては、ただいまけさの閣僚会議のことを申し上げましたが、これはいま合理化交渉が労使間で行なわれておる、そういう段階でありますので、国鉄だけはまだ有額回答段階には来ておらぬ、こういうことなのでございますが、いずれそういう段階が来るだろう、こういうふうに思います。そういう際の考え方といたしまして、広瀬さんがいろいろ述べられましたが、各企業ともその給与の体系にいろいろな問題があるだろう。それに、政府もなすべきことをなさざるとか、いろいろ問題があるだろうと思います。ことに国鉄がいま再建途上であるということもまた考えなければならぬものだろう、こういうふうに思いますが、とにかく先ほど申し上げましたように、私は気持ちといたしましては、その経理内容がどうだこうだということでそう大きな差が出るということは好ましくない、そういうふうに考えるのです。ただ、だからといって各企業一律だ、そういうのも正しくない、こういうふうに思います。その辺は、ただいま申し上げましたような考え方に従いまして妥当に処理しなければならぬ、かように考えます。
  64. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 また国鉄の再建問題については別な機会に十分大臣とも議論をしてみたいと思うわけでありますが、いま最後のところでおっしゃったように、国鉄の経営が悪いゆえに、あるいは郵政関係の経理状況が悪いということによって、特段の差別を設けるようなことはしたくない、こういう気持ちに了承してよろしゅうございますね。——その点、大臣も深くうなずかれたので、次の質問に移ります。  いま四十六年度産米の米価の審議会が始まったわけであります。これも今日、米過剰という問題の中で非常にむずかしい問題ではあろうと思いますが、大蔵大臣としてはあくまで米価を三年連続据え置く考えであるか。諸物価が非常に高騰するのですね。これは米価がある程度物価値上げの元凶ではないかという宣伝なども一部行なわれた時代もあったわけですが、二年間生産者米価を上昇させなかったということになっておるわけであります。にもかかわらず物価は、四十五年度大体七・四あるいは七・七%というような数字もありますが、そのくらい上がった。米価を押えてなおそういう値上がりをする。そうしますと、農民の消費経済というものはそれだけ大きな圧迫を受けるわけであります。しかもそこへ今度は生産調整、減反ということで、これはストレートになかなか転作指導というものがうまくいっておりません。具体的に何に転作をしてその減収の分を補てんしなさいという指導がなされていない。なるほど生産調整補助金が出ておりますけれども、それではまかない得ない。農村の所得の減というものは歴然たる事実になってあらわれておる。物価は依然として上がる。そういう中で生産者米価をやはりことしもまた据え置く、こういう決意なのか。そこには何らかの農民を納得させ得るだけのものが米価の問題について考えられるのか。その点、大臣の基本的な考えをひとつお伺いいたしたいと思います。
  65. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、国による管理、統制、こういう制度は、大きな経済原則に乗っておらないとこれは実行できない、ひずみを生ずる、こういうふうに思うのです。つまり、いま米価の問題につきましては需給の問題がある。いま非常な生産過剰である、そういうようなことで生産調整をする。人為的なそういう措置を講じてやっと均衡をとる、そういうような状態です。しかも、そういう政策をとってもなお従来からの累積過剰米、余剰米というものがたいへんあることは広瀬さんも御承知のとおりであります。そういう需給状態からいうと、今日の米価というものはどうしても下げなければならぬというぐらいになるのです。それから同時に、いま減産政策をとっておる。そのためには、ここで価格を上げるということになりますとこれはまた減産政策に相反する、こういう結果になる。しかしまた一方、農家のことも考えなければならぬ。これが価格が下がりますという状態、これは私は妥当でない、こういうふうに思うのです。  そういう経済の中の総合的な判断といたしまして、予算編成時におきまして米価の水準はこれを据え置く、こういうふうにいたしたわけであります。同時に、国会においても皆さんに、総理大臣から米の価格の水準はこれを据え置きますということを言明いたしておるわけでありまして、そういうようないきさつも考えなければならぬ。そういうことを総合いたしまして、米価はとにかく据え置きということが妥当である、かように考えております。
  66. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 農林省がいままでの方式で計算をしてみるということになれば、百五十キロ当たり二万三千六百十四円になりますということをちゃんと出しているわけですね。これもなかなか出さなかったのを出したようでありますが、これに対して今日、百五十キロ当たりのものが二万円ちょっとであるというようなことで、少なくとも三千円以上の開きが出ている。生産費におけるこれだけの開き、まあこれは生産調整でその分は休耕なりあるいは転作なりということになれば問題ないけれども、大部分、八割、九割というものはやはり米をつくっているわけです。生産費を償わないでその残った分はやはりやっているということが言えるわけですね。しかも消費者物価はどんどん上がっている。とにかく米が過剰であるという、経済上需給均衡という問題を考え、そういう中から価格は形成されるのだという、古典的な経済学の理論からすればそういう論理もできるかと思うのですけれども、しかし今日の福祉社会というような観点、こういう現実があるとするならば、やはりそこには何らかの政治的な——食管制度がある以上、これについての生産費が上昇をして、しかも買い上げ価格との間に石当たり三千円以上の乖離ができているということについては、これはやはり農民を非常に苦しめることになっている。この現実はおわかりだと思うのですが、その点いかがでございますか。
  67. 福田赳夫

    福田国務大臣 農家の所得は一体どうなるか、こういうことでございますが、いま農家所得の、これはまあ平均しての話ですが、大体半分くらいは農外所得、半分くらいが農産物からの所得のようであります。そのうち約半分弱が米からの所得である、こういうふうに見ております。そういうウエートの問題としてまず考えておく必要があるだろうと思うのですが、ただいま申し上げましたように、いま米が生産過剰であるという状態下において、米の値段が上がるとますます生産過剰を刺激する。国民の多額の税金を投じましていまその調整をやっておる、そういう政策と矛盾しやしないか。広瀬さんどうおっしゃるかしれませんが、これはどうも矛盾だ。もしそれだけの金があるならば、そういう価格のほうに使ってはならぬ。価格じゃなくて、いまおくれておる農業の生産性を向上する、あるいは過剰である米じゃなくて、ほかの作物に転換をする、こういうふうな考え方、そういう方向に金を使うことこそがもう当面の問題じゃないか。少し長い目の問題として農家のことを親切に考えるというために必要じゃあるまいか。いま米の値段を上げてやりますというのは、私はこれは農家に対しまして親切なやり方じゃない。そうじゃなくて、同じ金を使うならば、ほんとうに先々農家に役に立つような金の使い方があり得るじゃないか、そういうふうに考えておるのであります。価格問題は、先ほど申し上げましたような事情からどうも私は賛成できない、こういうふうな状態でございます。
  68. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この問題はまた大臣のおっしゃることに反論をしていきますと総合農政全般に触れていかなければなりませんが、とにかく農業所得というのは最近では農外所得と大体フィフティー・フィフティーくらいになっているということだけをいま言われたわけでありますが、そういう状態になっても、このように生産費とその売買価格、生産者米価というものが乖離をしておるというようなことにより所得がだんだんだんだん減ってくる、こういうことを通じて農村の生活水準というのが低下をする。また、これは絶対的な低下ではないにしても、相対的にどんどん他産業あるいは労働者との格差が開いてくるというようなことは、やはり非常に問題があると思います。そのことだけを指摘をして、十分この問題についても配慮をしていくべきである。最後のところでちょっとそれらしいことを言ったわけだけれども、農民には必ずしもそういうものが身にこたえるような喜びとして受け取られていないものなんですね。昨年二百三十八億、優良米奨励金だというようなことで出したけれども、またおそらくこういう政治加算という形でそういうものが考えられるのだろうと思うのですが、そういうものについても、明確に農民がほんとうに満足を持って受け取れるような施策というものをやるべきであるというように考えます。  それから関連して、消費者米価はことしはもう一切上げないということは明確にお約束できますか。
  69. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは明確にお約束ができます。
  70. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 それでは次に問題を移しますが、輸銀の対中国向け使用の問題についてお伺いしたいのです。  中国の卓球代表団の中で来られた副団長の王暁雲さんが、日本の財界とも活発な折衝をし、またこれは日本の財界からの要請に応じてそれぞれ会見をし、会談をし、将来の日中貿易、経済交流、こういう問題についてかなり活発な動きが出てまいっております。これはたいへんいい傾向である。私ども大きな政治問題として、これはもう当然いい方向へ進みつつあるということを考えるわけです。そういう中でやはり輸銀の問題というのが、この前もお伺いいたしましたが、これはもうどこの国も差別なしにケース・バイ・ケースである、こういうお答えがあったわけでありますが、中国の場合に、いままでも日立造船からのプラント、船の輸出というような問題をめぐったり、そのほか幾つかのプラント輸出について輸銀使用が認められなかったというような実例が実は日本にはあるわけです。先行きケース・バイ・ケースなんだ、これはどこの国とも差別はないのだといっても、それはいままでの実績に照らして、よその国にはケース・バイ・ケースでやっておるけれども、中国についてはビニロン・プラントがたった一つ認められただけだ。そのあとは全部一貫してケース・バイ・ケースでノーであった。そういう状態になっているということは、いわゆる吉田書簡というものがやはり絶えず問題になっている。これは私信であるとかなんとかいっても、これを中心にしながら台湾政府との間の関係というものが非常に憶病にしておると思うのであります。  そこで、最近輸銀法の改正という問題が、そういう中からいわば苦肉の策として出ておる。海外援助的な部分も輸銀が扱っておる。それと、純粋なコマーシャルベースで貿易金融あるいは輸出入金融、経済的なベースでの金融というものとを分けたらどうだというようなことは、私ども日中問題改善の基本問題から考えれば、まさに小手先の議論だというように思うわけです。そういうものがあってなおその中で一歩を踏み出すということが実は日中改善の基本的な立場なんであって、そういうように分離した中で、これは純経済ベース、商業ベースでいくというようなふうに分けてそっちでやったって、中国はちっともほしくもないし、ほしがりもしないだろうと思うのです。だから、そういうようなことであるから、やはり日本の政治的な基本的な立場というものを明確にするという中で、こういう小手先のことなんかやったってそんなものは何の役にも立たぬ、まあそういうことを私ども考えるわけなんです。この点について大臣はやはりこういう立場で輸銀法の改正——これは通産省あたりから出ておるようでありますが、輸銀法をそういう形で、対中国関係の打開の一つのきっかけになるのではないかというような立場でこういうことを考えられているかどうか、その点お伺いいたします。
  71. 福田赳夫

    福田国務大臣 日中貿易、これを改善するという意図をもちまして輸銀法を改正する、これは考えておりません。日中貿易は現在の機構でケース・バイ・ケース、そういう考え方でやっていくので、その機構上何の支障もないのです。ただ考えておることは、その問題とは全く別の問題、つまりこの間の国会におきまして当委員会で御決議がありまして、そして輸銀と基金との関係の調整をはかれ、こういう御決議があるわけなんです。これは御決議をまつまでもなく、問題があるんです。そういうようなことを踏んまえまして、輸銀と基金との関係をどういうふうに調整するか。これは国会の御決議だから、検討しないでほうっておくわけにいかぬ、そういうことで検討を命じております。しかしこれは日中貿易にはいささかも関係はない。日中貿易はあくまでもケース・バイ・ケースと言ったように御了承願います。
  72. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 もう少しその問題も詰めたいのですが、約束の時間でございますのできょうはこれで終わります。
  73. 毛利松平

    毛利委員長 松尾君。
  74. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 私もいま広瀬委員から質問がありました輸銀法の改正を中心にして、日中問題について伺いたいのです。  いま広瀬委員からお話がありましたように、最近の卓球外交をきっかけにして、アメリカをはじめ世界的に対中友好ムードというものが高まってきているのは、これは御承知のとおりであります。特に先般、昨年の十二月に毛主席と会見をしたアメリカのジャーナリスト、エドガー・スノー氏の手記等が報道されておりますけれども、これによると、毛主席はアメリカのニクソン大統領とも会いたい、こういうような意向まで明らかにしている。したがって、わが国でも財界を中心にして、もう積極的に対中貿易折衝の動きが出ているわけであります。こういった中で、いま大臣の話を聞いていますと、日中貿易関係には一切関係がない。ただここで決議したので、基金と輸銀の関係を調整するんだというお話でありますけれども、この問題についてはやはり、こういうムードの中で相変わらずケース・バイ・ケースでということで、吉田書簡そのまま一点ばりで対中国貿易が閉ざされておるということは、これは許されないところにきているんじゃないか、こういうふうに私ども考えているわけであります。一体大臣は、この日中貿易に入る前に、日中関係についてはそういうような情勢の中で基本的にどう考えておられるか、これをひとつ伺いたい。
  75. 福田赳夫

    福田国務大臣 日本と中国は、これは隣同士ですから仲よくしなければならぬことはもう当然です。これはもう一点の疑義もないことだと思います。隣同士が会いましても、朝夕のあいさつも気持ちよくできないという状態は改善しなければならぬ、そういうふうに考えます。ただ、これは相互内政不干渉、これはどうしても前提にしなければならぬ問題だ、こういうふうに思います。当面一番大事なことは、お互い刺激し合わないことである、こういうふうに思いますから、そういう状態において日中間の問題に一つ一つ対処していく、これが私の当面中国に対する考え方でございます。
  76. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 隣同士の国だから当然仲よくしていかなければならないということはしごくもつともなことなんですけれども、それが現実には行なわれていない。中国はわが国に対してはいろいろな条件を課している。これは御承知のとおりで、政経不可分、政治三原則、貿易三原則、周四条件、こういったいろいろな条件が課されておるほか、さらに、仲よくしなければならないはずの中国においては、貿易関係はもちろん毎年毎年会談をしてそしてコミュニケを発表する。さらに報道の自由を持つはずの日本人の新聞記者の行動にさえ制約が加えられている、こういった点を見ますと、仲よくしなければならない、互恵平等でなければならないはずの中国との関係が非常にほど遠い状態にあるということは御承知のとおりだろうと思うのです。それで、大臣が言うように仲よくしなければならない、けれども刺激してはいかぬと言われたのですが、いま輸銀法をせっかく改正をして、それで業界等でも経済面あるいは人事面で何とか交流をはかろうというときに、中国の貿易に関しては今度の輸銀法の改正は全然別途だ、どこまでも従前どおりケース・バイ・ケースだ、こういうことでいま広瀬委員に話があったのですけれども、ずっとほかの国には輸銀その他がケース・バイ・ケースで使用されている、中国に対してはほとんど使用されない、こういうことはかえって中国を刺激することにならないか。大臣はいま刺激しないようにしていきたいという発言があったのですけれども、その裏でこういうことは刺激するのではないか、こういうふうに考えるのですけれども、その点はどうでしょう。
  77. 福田赳夫

    福田国務大臣 輸銀法を改正しないことが中国を刺激するというふうには毛頭考えません。いまの機構でケース・バイ・ケースで十分やっていけるのです。ただそのケースが出てこなかったというのが今日までの実情なんで、またそのケースにつきましてほかの国が一体どうなんだ、こういいますと、ほかの国のケースが全部この輸銀ベースで承認されたかというとそうじゃないのです。これはプロジェクトとして要請されたものが、そのうちの一部分が取り上げられておる、こういう状態でありまして、基本的に輸銀法を改正しなければ日中貿易問題は解決されないという、そういう筋合いじゃないですから、何か少し誤解があられるんじゃないか、こういうふうに思います。とにかく輸銀法でケース・バイ・ケース、そういうような方式で、機運が熟しますればこれは処理できる問題である、こういうふうに考えております。
  78. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 そうしますと、最近産業界から中国向けプラント輸出という問題で相当輸銀資金の使用の要望が強いということが数多く新聞に報道されておるわけです。具体的にはここに持ち合わせがないのですけれども、こういった問題については明らかに新しく起きてきたケースだ、こういうふうに私ども考えるのですが、具体的に産業界等からプラント輸出に対する要望等があった場合には、これはケース・バイ・ケースでいままで他国にとったと同様に扱っていくということについて、具体的にはどうですか。
  79. 福田赳夫

    福田国務大臣 それはしばしば申し上げておりまするとおり、どこの国に対しましても、さあケースが出てきたからすぐオーケーだ、こういう状態じゃございません。同様に中国に対しましても、そのケースにあたりましてはケース・バイ・ケースで判断をする、こういうことでございます。
  80. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 どうも、最初の絶対仲よくしなければいけないということと、いまの経過を見て、大臣答弁を聞いたんでは納得できないのですが、これはもちろん中国側でも納得できないと思うんです、おそらく。先般閣議で、この際、米中の雪解けムード、こういったときに、ひとついままでタブーになっているところの輸銀資金の使用を中国貿易にも認めるべきだ、そうして日中間の関係を改善するようにしたほうがいいというようなことが論議された。そのときに福田大蔵大臣は、日ソ間にも日米貿易経済合同委員会のような経済関係閣僚の定期的な協議の場を設けたほうがいいじゃないか、こういう意見がなされたというんですね。そうすると、一方で同じ閣議でそういうふうに、輸銀の使用を中国貿易に認めてとにかく促進すべきだという意見があるときに、大臣は当然これは同調なさっていいと思うのですけれども、一方ソビエトに関して経済閣僚会議の場を設けるべきだというような発言をなさっているということについては、どうも少し中国との間に、仲よくしなければならないと言いながら、何かあるのではないかという感じがするのですけれども、この閣議の模様あるいはこの考え方はどうなんでしょうか。
  81. 福田赳夫

    福田国務大臣 閣議で輸銀の問題が出たことは最近ありませんです。全然ありません。これは何か誤伝だろうと思います。日ソの問題は出ております。これはいまちょうどカニ交渉が行なわれておる。ソビエト側が非常にきびしい条件を押しつけようとしておる。そこで私は、これはカニだとかニシンだとか、そういう一つ一つの漁業問題として処理すべき問題ではない。そういう一つ一つの漁業の問題として処理するという際はわが国は不利な立場に立つ。やはりソビエト側からも頼まれることがあるのです。あるいは港をつくりたい、あるいはこういう資源を開発したい、シベリア開発、そういうものについて日本側に対して協力を求める。こういう問題もあるので、もう少し漁業一つ一つの問題よりは、高い角度の会談において漁業問題を解決するという仕組みを考えなければならぬ時期に来ているんじゃないかな、こういうことを申し上げておりますので、それと関連して中国の問題が出た、閣議で話に出た、これは一切ありませんから、それは誤伝であるというふうにはっきり御了承願います。
  82. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 そうすると、中国問題がここに出たということは、これは誤報だということでよろしいのですね。
  83. 福田赳夫

    福田国務大臣 それでけっこうです。そのとおりなんです。
  84. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 そうしますと、最近毎日のように新聞報道で、いま輸銀法の改正ということを中心にして政府首脳の言明その他報道されているわけです。この中に、これは二十五日の新聞ですけれども、「大蔵省は政府首脳の意向を受け、輸銀および海外経済協力基金のあり方を改正する具体的検討を開始することになった。」「八月末までに、具体案を固めたい」こういうことで、こうなったことは結局「事実上吉田書簡を廃棄する必要に迫られたわけで、国府への刺激を、できるだけ少なくしながら対中貿易拡大の道を開くためには輸銀法自体を改正し、政治性をなくす以外に方法はないという政治的判断」から生まれたものであろう、こういうような報道があるわけです。そうするとさっき広瀬委員に答えられたことも、いま私に答えられた大臣答弁も、相当食い違いがあるように私は思う。この輸銀法の改正というのはこれは一切中国貿易には関係がないんだ、こういうことを大臣は言っていますね。ところがずっと、新聞を全部持ってこなかったですけれども、ほとんどがもう、この日中貿易関係というものが、雪解けムードの中で日本がおくれちゃならぬということは国民全体が考えているわけですけれども、その中で大臣はひとり、いやそれは全然関係ないんだ、議会で決定されたからやるんで、どこまでも中国問題は従来どおりケース・バイ・ケースなんだということになりますと、これは、仲よくしなければならないということを強調しておりながら、いままでと同じく何の前進が見られないというふうに考えられるのですけれども、そうじゃないでしょうか。
  85. 福田赳夫

    福田国務大臣 現在の輸銀法で、そのケース・バイ・ケースに妥当すれば十分解決できる。解決できるのみならず、いま輸銀法の改正案がありますね。輸銀はどうも政治的色彩のものは基金のほうに移すべし、こういうようなことなんです。そういうことからすると、輸銀のほうには多少政治性もあるわけなんです。その政治性も含まれておる輸銀の機構の中で解決ができるんだ、私はそう言っているのですよ。かなり積極的に言っているわけなんです。ただし、これはケース・バイ・ケースの判断の問題である、これはどこの国に対しましてもそうだ、こういうふうに申し上げておるわけなんです。いま新聞の報道がどうだこうだと言われたが、私は輸銀法を改正する主管大臣です。主管大臣として、日中問題があるから輸銀法を改正するなんということを事務当局に一言も言っておりません。私はあくまでも当委員会の御決定、これを尊重いたしまして、そして検討を命じておる。これははっきりそういうふうに御了承願います。
  86. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 わかりました。それでは、ここで輸銀法の改正のときに、この基金の問題と、援助の問題と輸銀の扱いをはっきり立て分けよ、こういう決議がついて、これに基づいてやっておるとうふうに了解したわけであります。しかし報道ではこれについては、その内容についてはまだ検討段階ですからいろいろ報道されておるわけでありますが、輸銀の扱いと援助の扱いははっきり立て分けていこうという方針でありますね。
  87. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま輸銀と基金の現在の制度でどういう支障があるだろうか。まあ現在の制度の利害得失をまず検討してみてくれ。そしてどうも害のほうが多いということでありますればこれは改正しなければならぬ。利のほうが多いんだということであれば現在の機構を存続しなければならぬ。こういうことになりますが、まだそういう利害得失論の段階でありまして、それをどういうふうに、今後害があった場合に改正するかということにつきましては固まった方向を出していない、こういう段階でございます。
  88. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 中国向けに対してはケース・バイ・ケースでやる、条件が備わった場合にはケース・バイ・ケースでやるということでありますけれども、経済界からの強い要望等がありますので、おそらく具体的なケースが出てくるとは思います。かりにその一つのケースが生まれた場合、これを認めた場合に、これについてはいままで問題になっている吉田書簡、この問題がからみますけれども、これについては、必要が生まれたときにはこの書簡は問題ない、こういうふうに大臣考えておられるのか。
  89. 福田赳夫

    福田国務大臣 吉田書簡というのは、政府側が、ここ何年になりますか、もうずいぶん長い間これを取り上げておりません。吉田書簡というのは皆さんが、野党のほうで吉田書簡、書簡、こうおっしゃる。そこで問題なんですよ。政府のほうは吉田書簡というようなことを言っていない。あくまでもケース・バイ・ケースだ、こう言っておるので、それをたてにどうのこうのということは考えておりません。
  90. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 大臣は野党がそういうふうに吉田書簡を持ち出しているのだと言うけれども、台湾政府ではこの吉田書簡というものを非常に重視しておって、これが廃棄されるようなことがあれば日華条約を廃棄するというふうにまで解釈しているわけです。したがって、いま大臣から、仲よくしなければならないので、輸銀とは関係なしに、そういうケースが起きてきたならば検討してやりたい、こういうことなんですけれども、従来のこの行きがかりを見れば、ここで詳しく申し上げるまでもなく、非常にこれは中国関係の友好を阻害する原因になっている一つであるということは言えると思うのです。したがって、この問題については場が違いますが、一応国務大臣として、財政を握る主管大臣として伺ったわけでありますけれども、自民党からも野田さんを中心にして使節団を送ろうというようなときだけに、もっと前向きな答弁がなされていいのではないか、考え方が明らかにされていいのではないかというふうに私は感じます。  それからもう一点最後に、この輸銀と基金扱いを一応立て分けした場合に、いわゆる対外援助、対外公約でありますGNPの一%ということが一九七五年ですか、これが約束されておりますけれども、これをはっきり立て分けた場合に、このGNPの一%がはたして基金だけでまかなえるかどうかということが一つ心配されるのですけれども、この点については大臣はどうお考えでしょう。
  91. 福田赳夫

    福田国務大臣 一九七五年GNPの一%、これは当初相当の努力を要するかなと思ったのです。ところがすでに四十五年において、一九七〇年においてもう量的に〇・九三まで来ている。そういうような状態でありますので、これはもうそういうことを見ますと、量的にGNP一%という姿勢が実現をされるというようなことについては、今日いささかの心配も持たないのです。ただ、その内容をもう少し検討しなければならぬ段階に来ておる。つまり私は、物量を開発途上国にぶち込む、これはそうむずかしい問題じゃない、こういうふうに考えますけれども、それだけではたしてこの対外経済協力という崇高な使命、これが実現できるかというと、私はそうじゃないと思うのです。もう少し受ける国と与える国との間に心と心とのつながりを植えつけていく必要がある、そういう方面で非常にくふうをこらす必要がある段階に来た、こういうふうに考えておるのでありまして、この資金の問題、そういう量的の問題につきましてはいささかも不安を持つことはないのじゃないか、そういうふうに考えております。
  92. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 いま内容については検討ということで、これはほんとに同感です。それからもう一点、非常に大きな額になるわけでありますけれども、わが国の福祉面が相当立ちおくれている、公共事業その他福祉面が立ちおくれている場合に、これとの関係考える必要が十分あるのではないか、こういうふうに考えるわけでありますけれども、これは一応国際間の信義、公約したことでありますから、これらを兼ね合わせてひとつ十分考えてもらいたい。  もう一点、中国問題にこれは関連するのですけれども、きょう四次防についてのあれが発表される、こういうことでありますが、非常に大きな額で、やはりこの軍事力の強化という面がわが国と中国との関係をある程度阻害している一つの原因だということもいわれております。したがって、大臣はこの防衛費、第四次防についてはどういうふうに考えておられるのですか。これはもう、わが国の財政の中で福祉面その他が非常に立ちおくれておる。国際水準から見て、経済力はありながらしかし立ちおくれておる。こういう現況から見て、四次防に対しては適当だと考えておられるのか、あるいは何とかこれは考えなければならないということもお考えじゃないかと思うのですけれども、その点を一点だけ伺って終わりにしたいと思います。
  93. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまのわが国の安全保障、これは米軍がなおわが国にたくさん駐留しておる、こういう状態、経済力がここまで来たわが日本が他国の力で防衛される、こういうような状態は改善をしなければならぬ、米軍には逐次これを引き揚げてもらう、そういう考え方が私は妥当ではないかと思います。そういう考え方に立ちますと、私はいまの自衛隊は漸増をする必要がある、こういうふうな考え方をするわけでございます。しかし、さらばといってこれをむやみに膨張させるということについては、私は慎重なかまえであります。つまり国力、国情と申しますか、いま松尾さんは国内の諸施設の整備ということを申されましたが、国の他の諸施設とのバランス、こういうものを十分考えて最終的な決定に持ち込まなければならぬ、かように考えておるわけでございます。けさ閣議で防衛庁長官から、各省に防衛庁の考え方を開陳しますから御協力願いたいという話がありました。いずれ大蔵省にも持ってくるだろうと思うのです。そういう際には慎重にこれを検討する。ただいま申し上げましたような国力、国情、また諸経費とのバランス、そういうものを厳重に審査の上、大蔵省としての態度をきめたい、かように考えております。
  94. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 これで終わりますが、四兆六千億ですか、額は示されたわけですね。防衛は漸増ということを言われましたけれども、四次防の経費というものは漸増ではない。大幅増になる。したがって、国内の福祉面等が国際水準から見て非常に立ちおくれているという点——大臣はよく言われます。とにかく老人対策等については十分考えたい、こういうことを言われておるのですけれども、しかし前年度の六十歳以上のお年寄りの自殺者が五千人近くある。ことしはさらにこれが数を増すのではないかということがいわれておるときに、ここで、この委員会で一国の大蔵大臣が、ほんとうに立ちおくれた施設あるいは老人福祉面等について、年寄りについて全力を注いでいきたいということと、防衛については漸増は考えるけれども慎重に検討する、こういう発言を合わしたときに、四兆六千億というものがこれは相当大幅で、もっと国内の福祉面に向けるべきだ、こういう発言等があって、お考え等が十分そこに表現されていいのではないかというふうに考えるわけです。したがって、大臣の頭の中には、慎重に検討すると言いますけれども、四兆六千億というものが、一応福祉面その他と比較したときに多いのか少ないのか、適当な額なのか、現状でこれは必要か、こういった点だけでも伺って終わりたいと思います。
  95. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま防衛庁から示されようとする案はかなり膨大なものだというふうに見ておるのです。それに対しまして大蔵省としては、今後の経済は五カ年間でどうなるだろうか、またそれを受けて財政は一体どうなるのだろうか、そういう場合に防衛費の伸び率は一体どういうふうなかっこうになっていくか、それからまた諸経費等の間のバランスが当を得たものになるであろうかどうか、その辺を十分検討したいと思うのです。私は福祉政策は強力に進めたいと思っております。それとのバランス、これは非常に重要なことだろうと思います。その辺は、大蔵省ですから慎重に検討いたしまして、誤りなきを期していきたい、かように考えます。
  96. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 終わります。
  97. 毛利松平

  98. 和田春生

    和田(春)委員 本日の質問は、三公社現業賃金改定に関する交渉並びにそれに関する政府それから当局の態度、お考え方等を中心にいたしましてお伺いをしたいと思うのです。  例年のことでありますけれども、民間の団体交渉がかなり進んでいるにもかかわらず、三公社現業関係におきます団体交渉はなかなか進みません。もうすでに四月も下旬になっているわけですけれども、いまだに組合側に対して検討に値する具体的な金額を示した回答は全然出ておらないわけであります。新聞紙上あるいは団交の席上で当局側から説明をされた内容等については私も伺っているのですが、基本的な問題として最初に大蔵大臣にお伺いしたいのですけれども、三公社現業におきます賃金改定をめぐる団体交渉の場合に、当局側が回答する、あるいはそういう賃金の具体的な額を提示するという場合の決定の主体は当局にあるのでしょうか。それとも政府、大蔵省がおきめになっているのでしょうか。その点をはっきりお伺いしたいと思います。
  99. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは自主交渉で片づけばたいへんけっこうなんです。ところが実際問題とするとそういうわけにいかないので仲裁裁定というふうになるわけで、これが従来の実態でございます。仲裁裁定を尊重するかどうか。これは尊重しないというような際には国会の承認を要する、そういう事態になるのだろう、こういうふうに考えておりますが、結局交渉に当たるものは政府じゃないのです。三公社現業経営当局なんでありますが、それをオーケーするかしないかという問題になりますと、財源の関係等もありますので政府にある、こういうので、どっちがどうというわけでもないのです。
  100. 和田春生

    和田(春)委員 いま大蔵大臣の御答弁一つ先へ進み過ぎたと思うのですが、もちろん、仲裁裁定が出まして、それを実施する段階予算上、資金上の問題があれば国会議決を経なければならないことは当然であります。これは法律のたてまえがそうなっておるわけであります。しかし当局のやりくり、あるいは政府の措置の範囲内で処置する場合には、対処できる場合には別に国会議決を求める必要はないわけであります。  ただ、私たちが理解しているのは、仲裁裁定というのは、いいか悪いかは別にいたしまして、公労法で関係労働組合のストライキを禁止しているわけであります。団体交渉権は認めているわけですけれども、団体交渉を推進する有力な手段である争議行為が禁止されておる。それに対するかわりの措置として仲裁裁定というものが与えられておりまして、仲裁裁定が出た場合には当局も組合も従えというたてまえになっておると思うのです。ですからいままで仲裁裁定でずっと解決をしてきている。その仲裁裁定を最近におきましては政府も当局も尊重して、解決をしているというのはそれなりに一つのよいことだと私ども考えているわけです。しかし、でき得べくんば仲裁になる前に自主的に解決をするのが望ましいと思うのです。民間であればストライキになってから解決をする、あるいはストライキにならない前に解決をする。二つのタイプがあるわけです。     〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕 三公五現はいつの場合でも仲裁裁定でないと賃上げ問題は解決をしていない。しかし筋からいきますと、そこまでいかないうちに自主的な当局と組合との交渉によって解決をするのがたてまえである、と言うと言い過ぎかもわかりませんけれども、たいへん望ましい行き方だと思うのです。  そういうことを考えました場合に、その前提になるのは、組合側は具体的な要求を提出をしているわけですから、当局側がやはり具体的な回答をしなければならないと思うのです。私がお伺いしたのは、当局側がその具体的な回答を団体交渉の席上でするという場合の、回答内容についての決定の主体は当局にあるのか。政府がその決定権をお持ちになっておって当局に指図するといいますか、当局のお答えを縛っていくのか。どちらかということをお聞きしているわけです。
  101. 福田赳夫

    福田国務大臣 形式上は三公社現業当局にある、こういうふうにまあ御理解願っていいんだろうと思います。ただ実際問題とすると、財源の問題とかいろいろありますから、これはうかつなこともできない、こういうのが現況か、こういうふうに思うわけです。あくまでも形式的には三公社現業当局にこの交渉権がある、かように御理解いただきたいと思います。
  102. 和田春生

    和田(春)委員 そういたしますと、いま大蔵大臣も強調されたんですが、当局が持っている交渉権というのは形式的なものであって、そういう形になっているけれども、実際には自主的に解決をする当事者能力というものはないというふうに判断できると思うのです。  そこでそういう前提に立ちまして大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思うのですけれども、これは新聞の伝えるところによりますと、四月二十日に労働大臣が、おそくとも月末までには有額回答をさせるようにしたいということを、組合側との話し合いの席上でですか、言った、あるいはそういう意思表明をしたという新聞報道の記事が出ておるわけですけれども、いつ回答をなされるおつもりですか。
  103. 福田赳夫

    福田国務大臣 けさ労働関係閣僚が集まりまして、有額回答をいつするか、どういうふうな考え方でするかということを相談したのです。その席上、有額回答はもう直ちにしてもしかるべき段階に来ておるんじゃないかという判断をしたわけであります。その有額回答内容は、各企業の経理内容等を慎重に検討し、なお民間の状況等も勘案して妥当な線での回答であるべきである、こういう申し合わせをいたしたわけであります。したがって、おそらくきょうにでも有額回答をするところが出てくるだろう。ただその場合に国鉄だけは、いま合理化交渉が先行して進められております。     〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕 それで国鉄はおくれるんじゃないか、こういうふうに思いますが、その他は逐次やっていく。早いものはきょうでも有額回答があるであろう、かように考えております。
  104. 和田春生

    和田(春)委員 まあ国鉄の場合はおくれるかもわからないけれども、他の、というと二公社現業になるわけですが、これはきょうじゅうにでも有額回答を出されるというお話ですが、その有額回答内容について幾らかとか、どんなものかというのをこの席上でお伺いするのは不穏当だと思いますけれども有額回答を出す場合の考え方について少しお伺いしたいと思うのです。  大蔵大臣はいま、各公社現業の経理内容を検討する、それから民間の賃金の動向等を勘案をして、それぞれ慎重に検討したものを出したいという意味のことを言われました。第一の各公社現業の経理内容を検討するという意味は、それぞれの企業ないしは現業経営内容が悪ければ賃金にある程度差ができる、つまり低いことがあり得る。よければ、ゆとりがあれば色をつけて高い金額を出し得る、そういう意味でしょうか。その辺をお伺いしたいと思います。
  105. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ二つあるのです。一つはいま経済界が不振である。したがってその不振な状態を受けまして民間の賃上げ交渉は非常にきびしいわけです。きまったところもかなりきびしい線が出ておる、こういう状態です。それも考えなければならぬ。同時に各企業一律というわけにはいかぬ。各企業それぞれ違った性格を持っておりますから一律じゃございませんけれども、各企業ごとに経理内容なんかをよく検討した上、誠意を尽くして案をつくり、これを回答すべきである、こういうことを申し合わせたわけでございます。  具体的にどうなるか、これはわかりませんが、大体昨年の回答の額、これが一つの目安になっていくのじゃないか、私はそんな感触です。それぴっしゃり、こういうふうにも思いません。思いませんけれども、それが一つの目安になって回答が行なわれるんじゃないかというような推測をいたしております。
  106. 和田春生

    和田(春)委員 昨年の回答の額が目安でございますか。解決ですか回答ですか。
  107. 福田赳夫

    福田国務大臣 回答でございます。
  108. 和田春生

    和田(春)委員 昨年の回答の額でございますね。それを目安にして回答が出るのではなかろうかということで、おそらくおきめになっておると思うのですけれども、その金額まではお伺いいたしません。  そこでちょっと疑問に思うのですけれども、経理内容の問題についてあとからまた重ねてお伺いいたしますけれども、民間の賃金の動向、こういう場合に、いままで、特に昭和四十年代に入りましてからの調停ないしは、ほとんど仲裁裁定ですが、仲裁裁定で示された妥結した賃上げ幅というものは、民間の大体の、部分的なものは別として、大どころも含めました大かたの賃上げの結果というものを踏んまえ、一体どれだけ団体交渉ないしは争議を通じてでも民間で賃金を上げたか、その上げ幅というものを踏んまえて民間賃金の動向というものを考え、その上に仲裁裁定を出してきているわけです。  ことしの春の賃上げ状況を見てみますと、民間で大どころというのはまだ解決していないところが非常に多いわけです。それから回答も昨年と比べますとかなり出方がおくれておるといってもいいのが一般的な状況だと思います。しかし大体第一次回答というものは出てきているわけです。そこで、民間賃金の動向ということ、今日の状況で政府当局がお考えになるときの動向ということは、民間のいまの状況における回答の状況ということなんでしょうか。それともすでに妥結をした内容というものをある程度踏んまえながら今後の見通しを立てるという意味でしょうか。それとも、たぶんこの辺に落ちつくだろうという、ことしの賃上げの大体妥結額というものあるいは妥結の率というものの見通しの上に立っての民間賃金の動向というお考えなんでしょうか。動向といってもいま流動的なんですよ。七、八〇%がセットされたという状態においては、一体幾ら去年に対して上がったかという形で、民間がこれだけ上がった、それと比べて三公五現の賃金はこれだけ引き上げる必要があるとかないとかいうことが言えるのですが、まだ流動的なんです。その動向というのは何をさしておられるのかということを伺いたいと思います。
  109. 福田赳夫

    福田国務大臣 民間賃金の動きについて非常に大きなウエートを持つ鉄、これにつきましては二十一日でしたか、すでに回答があったわけであります。その他につきましてもきまったものもあるようであります。それから目下、回答はしたが妥結に至らぬというものもある。そういうような情勢下において政府がどういう態度をとるか、こういうことでありますが、大体回答とすると、各企業の経理内容、それから各企業妥結されたもの、また妥結には至らないけれども回答を行なって賃金交渉に臨んでおるその態度、そういうものを総合的に勘案いたしまして対処しなければならない、そういうふうな考えであります。
  110. 和田春生

    和田(春)委員 端的にお伺いしますけれども、そういたしますと、きょうじゅうにも出るという回答の内容は、それで即妥結を目標とした回答ではなくて、民間が一応第一次回答という瀬踏みの回答が出ておる、そういうものとの見合いのものであるから、それは最終的な意思ではない、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  111. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府側としては、二次回答という問題がありましょうが、これは予定していないのです。ぜひこの辺でひとつ了解してもらえぬか、こういう線になるわけであります。したがって、諸般の状況を勘案いたしまして、誠意を尽くして、これが妥当である、こういう性格のものを提示する、かようなことに御理解を願いたいと思います。
  112. 和田春生

    和田(春)委員 せっかくの福田大蔵大臣のお答えでございますが、私はそれでは誠意を尽くしたことにならないと思うのです。民間の賃上げ状況というのは、よく御存じのように、第一次回答即最終妥結内容、こういう形をとっているのは大どころでは鉄鋼労連以外にはないわけですね。鉄鋼関係の賃上げは俗にいう一発回答、ことしもおそらくそれで妥結をするであろう、こういうふうにいわれております。もちろんこれは示された金額そのものが具体的な賃上げの実態を示しているわけではございません。いろいろ関連した要素がつけ加わって金額はふくれ上がりますけれども妥結の形式としては、一回の回答で妥結内容とするというのはまず鉄鋼関係というのが代表的なもので、ほかにはあまりありません。その鉄鋼関係の回答を見ますと、鉄鋼産業は現在必ずしも他の民間産業に比べまして業績がよいとはいわれておりませんけれども、金額について、定期昇給分も含めて昨年同額プラスアルファになっているということは御存じのとおりだと思います。そういたしますと少なくとも、この鉄鋼のいまの回答で妥結をするかどうかはまだ未定でありますけれども、かりに妥結したといたしましても、金額的に見れば上げ幅が昨年よりも若干のプラスアルファになっているということが言えると思います。民間のほうは一般的に第一次回答で——第二次、第三次と出ているのもありますけれども、まだ妥結に至らない間にだんだんこういうふうに上がっていくわけであります。  そういうような一般の民間の状況というものを考えた場合に、いま大蔵大臣が第二次回答をしようとは考えていないという政府筋の御見解をお述べになったわけです。そういたしますと、かりに民間に例をとれば、きょうじゅうにも出すという回答はいわば一発回答的性格を持っているという形になると思うのです。そういたしますと、それでもちろん組合側は要求するほうですから不満を示しますし、あるいは拒否するかもしれませんが、きょう回答する金額で妥結してしかるべしという自信がなければ政府として非常にまずいと思います。先ほど大蔵大臣は昨年の回答並みということをおっしゃったわけでありますけれども仲裁裁定は昨年の国の回答よりもだいぶ上回ったことは御承知のとおりであります。そういたしますと昨年の妥結内容よりも低い金額が出てくる。その低い金額で第二次回答は考えず、できるだけそれで解決をしてもらいたい、それで誠意があるというのは、どう考えても私は結びつかぬと思うのですけれども。第二次回答をお考えにならないならば、少なくとも昨年の回答ではなくて、昨年の妥結額から出発いたしまして、それに民間の賃金の動向を見ながら考えるというのが、いわゆる使用者側としても当然常識的な態度ではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  113. 福田赳夫

    福田国務大臣 ですから、先ほどから申し上げておるのですが、民間の動向等も考えなければならぬ。それからいままで妥結になったものも考慮に置かなければいかぬ。そういうものを総合いたしまして政府が例年有額回答をする、その額はいかがであるべきか、こういうことなんです。私は昨年並みというふうに申し上げておるのじゃないのです。昨年並みになるのじゃないかと予想をしております、こういうことを申し上げておるわけなんでありますが、どうもそういう雲行きのようだ、こういうふうに察知しておるわけなんであります。とにかくそれで片づかなければまた公労法に定められた措置をとらなければならぬのじゃないか、かように考えております。
  114. 和田春生

    和田(春)委員 そこで最初にお伺いをいたしましたことで、一体決定をする主体ほどこにあるのであろうかということにつきまして、大蔵大臣は、形式的には当局にあるけれども予算関係もあるので実際上は政府の意向というものできまっていくという趣旨のことをお答えになったわけです。いまになりますと、私はよくわからぬのだけれども、たぶんなるであろうというのは、その一番かなめでさいふのひもを握っておられる大蔵大臣としては、ずいぶんあいまいもことしたお答えです。おそらく数字はきまっておって、そろそろプリントでも出回っておるころじゃなかろうかと私は思うのです。  そこで、私が問題にしておるのは、昨年の回答の額程度ということをおっしゃったので、それは誠意があるということと結びつかないのですが、それではとうてい解決するはずがない。もし仲裁裁定という機構がなければ、そして三公社現業に争議権が認められておれば、まずこれは争議になることは必至だということになると思います。第二次回答、第三次回答があれば別ですよ。まず瀬踏みですから、一般の民間の賃上げもわりあいに低いところから出発しておる。だからこの辺で第一次回答、交渉の経過を見ながらさらに上積みをやっていくのだという方策が政府並びに当局におありになるならば、いわば最初の小出しという形で、いいか悪いかは別としてそういう賃金の交渉慣行があるわけです。第二次回答は考えていないという形になりますと、一発回答、言うことを聞け、いやならストライキをやれ、こういうことになるのです。したがって、これは公労法によって争議権が制限をされておる、歯どめがあるけれどもあと仲裁裁定なりを考えておるのでそういうたいへん安易な態度がとれるのです。もしこの三公社現業に争議権が与えられておれば、政府のそういう態度はストライキに追い込むのと同じ態度になる。これは決して誠意ある団体交渉の態度ではない。第二次回答を用意しないというのであるならば、やはりこれで妥結してもおかしくない一もちろん組合の要求したも一のには幅がありますけれども一、少なくともそういう幅の中で、これで妥結してもおかしくないという数字をおつくりになるのが適当ではないか。もし現在の民間の状況、一般の経済状況から見てそこまで、これでもう解決して妥当だという自信のある数字が出せないというならば、やはり第二次回答、あるいは第三次まで行くかは別として、動向を見て団体交渉の席上さらに考え直す余地があるというようなゆとりを持つというのが、自主的交渉を進展させるという上で妥当な態度だというように、私たちは労働問題を通じて考えるわけですけれども、その点ひとつ大蔵大臣の御所見を伺いたい。
  115. 福田赳夫

    福田国務大臣 どうも民間と三公社現業は非常に違うのです。違いますのは、どうしても三公社現業は、これは皆さんに御審議いただいた予算、これに大きく制約を受けるわけであります。五%という財源を留保してあるわけでございますが、そのほかに何か、こういうせっぱ詰まった際でもありますので、財源がない限りこういうようなことも考える必要があろうかと思います。その辺に、民間のように自由に当局が動けない、そういう理由があると思うのです。そういうようなことではありますけれども、そういう制約下において自主的に政府考え得る最大限のものは何だというと、誠心誠意、誠意を尽くす。こういうことで、はじき得る最大限は一体どこであるか、こういうことを私は誠意を尽くしてと、こういうふうに申し上げておるので、その辺は民間とたいへん事情が違うんです。あと、どうしても政府の案を修正しなければならぬということになると、政府はなかなか修正できない。やっぱりこれは仲裁裁定というような仕組みに待つほかはないんじゃないか、さように考えています。
  116. 和田春生

    和田(春)委員 十分私は民間との違いというものを踏んまえてお伺いしているつもりであります。私自身、公労委委員といたしまして仲裁、調停をずいぶん手がけてきておるわけですから、民間と同じ考え方で御質問しているわけじゃないのです。ただ私がタッチをしてきた仲裁裁定の経過を通じて見ましても、団体交渉の席上で当局側が政府の承認を得てといいますか、あるいは政府の指図を得て出した金額、これ以上のことはできません、あとはひとつ公労委仲裁裁定におまかせします、こういうことを言うのですけれども、今度はさて仲裁裁定が出たといたしますと、できませんと言っておったのにできなかった例はないのです、最近。予算上、資金上不可能であるといって、仲裁裁定実施できないから国会で承認をしてくれとか、あるいは予算の組みかえをやるとかいうことが出てきた例はなくて、いつも経常経費のやりくりないしは内部における費目の移動その他で仲裁裁定を消化してきたというのがこれまでの実績であるわけです。これはもう大蔵大臣よく御承知のとおりなんですね。そうといたしまするなら、仲裁裁定が出てからそれができるぐらいなら、なぜ仲裁裁定の出る前に団体交渉の席上でそこまでおやりにならないのか。それがぎりぎりの誠意というものではないかと私ども考えるわけです。これは何も労働側に立っているわけじゃない。客観的に見てそうじゃないでしょうか。  それが、仲裁裁定は出たけれども、民間賃金の相場もにらんで出した仲裁裁定は高過ぎる、とてもじゃないが政府としては応ずることができない、そこで国会へかけるなり何らかの措置をしなければならぬということなら別ですよ。やはり既定のワクの中でやりくりをして消化をしてきた、こういうのが実態で、苦しい苦しいといわれた国鉄さえもそうだったわけですね。たとえば国鉄の場合には工事費から削ってこれを転用するとか、あるいは経費節約分で幾ら浮かすとか、いろんなことをやって、ともかく仲裁裁定実施してきたわけです。ことしは国鉄については多く問題があるというので、これは最後に別にお伺いしたいと思いますけれども、ほんとうにいい労使慣行をつくろう、そして自主的に解決をしていくということをやろうとすれば、くどいようですけれども仲裁裁定が出てから政府がおやりになれる程度のことは団体交渉の席上でその誠意を示す、それで初めて、争議権が制約されているという労働組合との間における正常な労使関係をつくるという上に、私は妥当な態度ではないかと思うわけです。それをある程度小出しにしておいてあと仲裁裁定だ。その回答よりもかなり上積みさせる仲裁裁定が、できないできないと言ったのが、出たらとたんに一日か二日のうちにできるようになってしまうということは、結局政府なり当局に対する不信感というものを関係労働者ないしは第三者にも与えることになる。そういう点についてやはり大蔵大臣の所見を伺いたいと思う。
  117. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほどから私は、三公社現業の問題は、これは予算的制約があるんだ、こういうことを申し上げているわけなんです。これを政府のイニシアチブでできる限りのことはやってみる、これが誠意を尽くすということなんです。ところが、政府が誠意を尽くしてやった、そのワクをこえまして裁定があったという際に、無理のことでもやらなければならぬ、こういうのが裁定の趣旨だろうと思う。そこで裁定が出た場合と、裁定が出ない、政府が自主的にやる場合には大きな違いがあるんだろう、こういうふうに思うのです。予算国会で慎重に御審議をいただいてきめられたものです。それをめちゃくちゃに政府のイニシアでやっていく、それは政府としてはできません。そこに民間と三公社現業との間に大きな違いがあるのだ、こういうことを申し上げておるのです。
  118. 和田春生

    和田(春)委員 これは見解の問題になってまいりますので、大臣のいまの御答弁もそれは一つのお考えだろうと思います。しかし、それを推し進めていきますと、小さな問題で、当局の権限内だけで処理できるような苦情処理に類することであるとか、あるいは労働条件でも主体をなさない非常に付随的な小さなものの場合は別といたしまして、いま言っている団体交渉ないしは公労法のたてまえというものは全くの擬制であって、当局には当事者能力はない、極端にいえば政府にも当事者能力がない。そういう中で団交をやらしているわけですから、全くこれは芝居をやっているだけのことであって、団体交渉を一生懸命にやろう、自主解決に努力しよう、こういうまじめな意図というものをやはり踏みにじってしまうことになるように私は思うのです。ぜひそういう点は、政府にも基本的な姿勢について考え直していただきたいと思います。そうでないといつまでも無責任な出まかせの労使慣行というものが続いていく。極端にいえば当局側も親方日の丸、組合側も親方日の丸、いいかげんなことをやっておいて、あと仲裁裁定でケリがつくだろうというような形では、まじめにやろうとしている組織、まじめにやろうとしている組合、まじめにやろうとしている当事者というものについて誠実にこたえることにならないと思いますので、限られた時間内でここでやりとりはいたしませんけれども、これはぜひ大蔵大臣、といいますよりも内閣のナンバーツーの実力者といわれる福田大蔵大臣に十分ひとつお考え願いたいということを要望いたしたいと思うのです。  関連して最後に国鉄関係についてお伺いしたいと思うのですが、国鉄の当局来ておられますか——。いま大蔵大臣のほうからのお答えの中に、国鉄の場合には合理化問題が加わっているので一緒にいかぬ、こういうお話なんですけれども、その合理化問題をからめた国鉄当局の賃上げに対する姿勢というのは、一口で言うとどういうことでございますか。
  119. 山田明吉

    ○山田説明員 国鉄の問題、昨年のベースアップのときにも非常に議論になりまして、御承知のように他の関係現業よりも経営内容が非常に悪うございます。それでその問題に取り組んで、いわゆる再建計画をやっている最中でございます。  ベースアップに対する合理化との関係でございますけれども、一応ベースアップをことしやりますものは長期にずっとそれが残る。残ると申しますか、長期の問題になってくるわけでございまして、それで国鉄の長期経理の見通しの中でどの程度のベースアップができるか。これは端的にいって合理化だけではベースアップの財源は出せませんけれども、少なくとも人件費の高騰が非常な負担になっている経理内容におきまして、合理化によってできるだけそういう赤字の原因を少しでも軽くしていく、その見通しを立てるのが先決であるということで、合理化の問題にそれはもう数年前から精力的に取りかかっているわけでございます。現在も案件を約九つにしぼりまして、目下精力的に団体交渉をやっておるわけでございます。
  120. 和田春生

    和田(春)委員 そういたしますと、賃上げをやろう、あるいはそれに回答を出そう、解決の努力をするという前提は、国鉄の合理化問題ということについて組合側が承認をすることが前提だというふうにいまの御説明を受け取ってよろしゅうございますか。
  121. 山田明吉

    ○山田説明員 その前提ということばの解釈でございますけれども、私どもはそれが少なくとも同時に並行的に解釈されない限りは、はっきりした数字の回答はできない、このように考えております。
  122. 和田春生

    和田(春)委員 その国鉄の合理化問題というのは、当局の考えているとおりの合理化内容組合賛成しろということですか。それとも、国鉄の今後の経営考えた場合には合理化ないしは生産性向上というのはたいへん重要だから、その原則について認めた上で当局と話し合うという、そういうことについての条件というふうに考えておられるのか。どちらでございますか。
  123. 山田明吉

    ○山田説明員 合理化の案件はもう非常に過去にさかのぼりましても多うございますし、ごく最近では、御記憶に新しいかと思いますが、機関車乗務員の一人乗務の問題で、一昨年国民の各位にたいへん御迷惑をかけるような事態まで起こしました。したがいまして、それと同じような内容の合理化案件が今後出てくると思います。もちろん、原案は当方から示さないとこれはもう話の糸口になりませんので、合理化の原案はこちらから提示をいたしますが、団体交渉でございますので、それを一言一句曲げないでそのとおり実行しなければというような性質のものではございません。
  124. 和田春生

    和田(春)委員 そういたしますと、合理化問題についてそれぞれ労使の立場があるわけですけれども、お互いの立場に基づいていかなる方法で合理化をやるか、それのよって生ずる問題をどういうふうに処置するか、そういう問題について当局と交渉する、そういうことを組合側がはっきりすることが必要なんだ、それを拒否されている状態のもとでは賃上げをしろといわれても困るのだ、こういう意味ですね。当局のいうとおりの合理化を全部のめ、それが条件だということではないわけですね。
  125. 山田明吉

    ○山田説明員 大体お説のとおりでございまして、いま私ども、三組合ございますが、三組合とも一応交渉の場にはのぼっております。
  126. 和田春生

    和田(春)委員 そういたしますと、たとえば、これは団交の席上でも言われているということを私は聞いて知っているわけですけれども、鉄道労働組合の場合には合理化問題は否定をしない。原則的に認めている。どういうやり方をするかということについては、もちろん当局の言いなりになるわけにいかないけれども、交渉しよう、こういうことで来ているわけですね。そうすると国鉄だけ回答をおくらせることはないじゃないか。回答の中身は、先ほど大蔵大臣は各三公社現業の経理内容も勘案をしてと言っておりましたから、いいか悪いかは別として、中身について多少の違いがあり得るにしても、国鉄だけおくれるということはないのじゃないでしょうか。示していいのじゃないでしょうか。なぜ国鉄だけおくれるのですか。
  127. 山田明吉

    ○山田説明員 先ほど申しましたように、合理化の事案が一言一句守られなければ、必ずしもそれが条件ではないと申しましたけれども、現在団体交渉の中身になっております合理化の事案の交渉がまだ煮詰まっていないと私ども考えておりますので、まだ具体的な数字を出す段階まで来ていない、こういうことでございます。
  128. 和田春生

    和田(春)委員 そうすると、合理化問題の交渉が煮詰まっていないから賃上げの数字が出せないという形になると、むしろ合理化問題を団交できめることが絶対前提だということになってくるんじゃないですか。それを貫きますか。また貫けるとお思いですか。
  129. 山田明吉

    ○山田説明員 過去にも数回、数十回、そういう経験がございます。ですから、私先ほど申しましたように、合理化の事案の進みぐあい、解決の方向が、われわれも納得し、また組合の協力も得られるという見通しがつけば、それが過去の例からいいましても交渉の糸口にはなり得るわけです。
  130. 和田春生

    和田(春)委員 過去の例といいますけれども、それはどういう例をさしているのか知りませんけれども、いままで団交の席上で国鉄当局はそういうことをよく言われるのです。ところがいろいろ公労委調停から仲裁の段階へ進むということになりますと、国鉄当局の責任者が公労委の場へやってきて、国鉄当局としては数字は言えないけれども、賃上げはぜひほかの三公社現業と足並みをとってしかるべくよろしくお願いしますということを頼んできているのが過去の例でしょう。合理化の問題が煮詰まらなければ当局としては絶対に応じられません、仲裁裁定が出てもそれはのみません、あるいは仲裁裁定をおくらしてくれ、まず合理化問題を詰めるのが重要だといってやられてきたのなら、賛否は別ですけれども一つの筋の通ったことだと思う。団交の席上ではそう言っているけれども、いつも最後の詰めの段階になると、私のほうは言えませんけれども、皆さんと一緒にどうぞ公労委でよろしくお願いをいたします、こういう形に書きつけを持ってきたりしてやられるのが実態でしょう。それなら、やはりそこへいく前に団体交渉の席上で、それは苦しいから出せないということはあるでしょう、組合側がそれを賛成するかしないかは別として、やはりちゃんと数字をお出しになるのがいいんじゃないでしょうかね。いつも終点は同じ時期で同じようなんでしょう。そういうことをやるのが、合理化問題そのものを解決をしようという場合にも、まじめにこれを煮詰めていこうとしている人々に大きな不信感を与えるのではないかと思うのですが、その点ひとつはっきりしていただきたいと思います。
  131. 山田明吉

    ○山田説明員 実際問題といたしまして、先ほども申しましたように団体交渉の相手が三つの組合でございます。それから合理化事案も、従来からの引き続きのものもございますし、新たに提案したものもございます。それで団体交渉に非常に時間がかかっているのは、これは事実でございます。しかしその間に現実に他の民間も大体きまってまいります。二公五現もきまってまいるという状況で、組合のほう、あるいはうちのほうで調停なり仲裁という段階にタイミングとして入っていくわけでございます。その際に、先生いまおっしゃいましたように、私どもも、うちの職員にはやはり人並みの賃金は上げてやりたい気持ちは持っております。それを仲裁の席上で申し上げているのが昨年の実情でございまして、ことしはそういうことにならないように、できるだけ早い機会に、認められる自主交渉の中で具体的な線まで詰めたいとは思っておりますが、昨年はそういう事情でございました。
  132. 和田春生

    和田(春)委員 最後に一問、大蔵大臣にこれはお伺いをし、また念を押しておきたいと思うのですが、いまのことに関連して言いますと、ほんとうに合理化問題を真剣に考えておられて、それが賃上げ解決の絶対とまでは言わなくても、非常に重要な条件である、こう言うならその態度を貫くべきであるし、そして仲裁裁定になればもうどうせ五月の中ごろで、あと二週間か三週間でケリがつくのですから、その間にこんなあたふたとして、合理化問題はさておいて、大詰めの段階でどうぞ皆さんと一緒にしかるべく御裁定をと言うくらいなら、やはりいまのうちにほかと足並みをそろえて、やはり国鉄なりに誠意を示すというのが私はいい方法だと考えるわけですから、それは一つ申し上げておきたいと思います。  大蔵大臣に最後に一つ伺いをしたいのは、まとめのあれですけれども、いまこういう状況、いま質疑の中でもお考え願った点があると思うのです。ほんとうは労働大臣がいらっしゃるといいのですけれども、三公社現業の賃上げ、労働条件の問題の解決というのに、公労法というもののいまのあり方は必ずしも適切なものになっていない。よき労使慣行をつくる上において、当事者の責任を回避させるといいますか、無責任体制に持っていく、こういう要素もかなりあると思うのです。公労法ができましてからかなり長い間運用されてまいりました。そういう中においてどこをどう改正するというのは、それを論議する場ではございませんけれども、この際、公労法を土台としている労使関係というものに抜本的にメスを入れて、やはりもっと近代的な合理的な労使関係ができ上がるように持っていくというお考え政府にはおありでないのか、おありなのか。はっきり答えられなければ、検討するなら検討するでもけっこうでございますから、締めくくりとしてお伺いをして、質問を終わりたいと思います。
  133. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま御指摘の問題、またさっきからお話のある当事者能力というような問題、これは非常に大事な問題であるが、同時にむずかしい問題でもあるわけなんです。公務員制度審議会にこの問題をおはかりいたしておるわけなんでありますが、なかなかこれがむずかしい問題であるだけに結論も出ません。そういうような状態でありますが、なお公務員制度審議会にはかった上で、この問題をとにかく改善することができるならばたいへんけっこうなことだ、かように考えますので、その方向で対処したいと思います。
  134. 和田春生

    和田(春)委員 終わります。
  135. 毛利松平

    毛利委員長 堀君。
  136. 堀昌雄

    堀委員 総務長官の出席時間が限定をされておりますので、ちょっとその間三公社にお伺いをしたいのですけれども、先ほど最初に私がやりました問題ですが、専売公社法でも実は「予算の作成及び提出」として三十四条の二「公社は、毎事業年度予算を作成し、これに当該事業年度の事業計画、資金計画その他予算の参考となる事項に関する書類を添え、大蔵大臣に提出しなければならない。」こうありますね。先ほど私が議論いたしましたのは、公社のほうにもちゃんと予算総則というのがあって、これは財政法二十二条を受けたものでもあるわけですが、公社が提出をされた予算の中に、このように予算総則を書いて提出されたのでしょうか。
  137. 北島武雄

    ○北島説明員 さようでございます。毎年予算の形式はきまっておりますから、それに基づきまして、専売公社として法律規定に従いまして提出いたしております。
  138. 堀昌雄

    堀委員 ここには「大蔵大臣に提出しなければならない。」「大蔵大臣は、前項の規定により予算の提出を受けたときは、これを検討して必要な調整を行い、閣議の決定を経なければならない。」こうなっておりますから、私は、公社がみずから拘束するようなかっこうの予算総則をつくって出されるはずはないだろう。どうも考え方としてみると、公社としてはおそらく歳入歳出予算の五%部分が入ったもので出された、こう思うのですが、しかしそれを大蔵省としては、いまの大蔵大臣の調整の中で、予算総則でそれをまたもとへ戻したということなら、この公社法と予算の取り扱い上、私は筋道が通ると思うのですが、公社がみずからやられておるということではないのではないか。それは、こういう公開の席上でそういうことを総裁にお伺いするのはたいへん酷な話かもしれませんが、しかし形式的にはそうなっておりますね。公社が提出する、それを大蔵大臣のほうで調整をして、大蔵大臣に手を入れられる余地があるわけですから、大蔵大臣が手を入れて閣議決定、こうなるのですから……。私はさっきも触れておりますように、せっかく予算で財源がこれだけ認められて、なおかつ当事者能力を押えなければならない理由は一体どこだろうかという疑問が非常にあるのです。そこで、よもや公社でお書きになって出しておられると私は思わないけれども、三公社を代表するというとおかしいですが、一体財源があっても使えないようにするというのはどういうことでしょうか。ちょっと専売公社総裁にお伺いしたい。
  139. 北島武雄

    ○北島説明員 実は、給与総額がこういうことになったということは、私自身はあとで知ったわけであります。こまかいことは事務的に担当の理事処理しておりましたので……。
  140. 堀昌雄

    堀委員 私はこれは公開の席上ではっきり言っておいたほうがいいと思うのですが、ともかくほとんどの者が実はこれに気づいていなかったのじゃないかと思うのです。これに気がついておったのは、どうも私は大蔵省だけではなかったのかという感じが非常にいたしておるわけです。これは総裁どうですか。これは私がさっき大蔵大臣にも申し上げているように、少なくとも歳入歳出にきめた給与額は、そこまでは給与総額に書く、これは私は法律論としても、時間がありませんからあのくらいで済ましていますが、私は私のほうが正しいと考えています。吉國さんの答弁をずっと押していって、時間があればもっと詰めるけれども、時間がなかったから終わりましたが、だから公社総裁としても、来年度は、公社がもしお出しになるならば、今度は歳入歳出予算額と給与総額を合わせてお出しいただく。それが少なくとも現行の公社法を正しく生かしていくものだ。これをどうするか、これから総務長官とやりますけれども、そこのところはきちんとした答弁をいただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  141. 北島武雄

    ○北島説明員 なかなかむずかしい問題でございますが、給与総額の制度というのは、元来公社をして他の国家機関よりも企業性を発揮させよう、こういうことでできている。それとともに、のべつまくなしに自由かってにさしては困るということでできているわけですが、現在の給与総額制度の内容はやはり多少窮屈な点があると思います。また、基準内賃金と基準外賃金との間の流用を原則として禁止しているとか、それから一応総額を越えてはならないとかいたしておる、こういう制度がございまして、これは予算制度の関係からいろいろな問題もございましょうが、私どものほうからいたしますれば、当事者能力という点からいえば、できるだけ自主的に交渉をして事務的に解決をしたい、こういう線からいえば、これに対して弾力が持たれることが望ましい、こう考えております。
  142. 堀昌雄

    堀委員 もう一点だけちょっと三公社の責任者一人ずつに伺って総務長官の質問に入りたいのですが、先ほど労働大臣格差という問題に触れられて、大きい格差、小さい格差というようなことばがあったのですね。そこで、これまで出されておるいろいろなあれは格差賃金と見ておられるか、格差がない賃金と見ておられるか。これまでの回答を、ずらっとこういうふうに金額を申せば違いがありますね。言うならば、一つ一つを見れば格差があるわけです。あれは私はこう見たら格差があるのだ、こう思うのですが、あれが格差がないということなのか。あれが格差がないということは、何か土台のほうがこうなっているので、こうなったら格差がないということになるのか、ちょっとよくわかりませんので、専売公社総裁、それから国鉄副総裁、電電副総裁に、一体皆さんは格差というのはどういうものだと考えておられるのかをおのおのの立場からひとつお答えをいただきたい。
  143. 北島武雄

    ○北島説明員 一応表面的には金額が違うわけでございますけれども、これは公社の構成人員の年齢構成などがだいぶ違いますので、そういう点から起こってきたものだと存じております。そういう点から見ますとこれは格差がなく、均衡がとれている、こういう感じを私は持っております。
  144. 山田明吉

    ○山田説明員 いま専売のほうからお答えになりましたように、職員年齢構成、それから学歴、それから仕事の内容、これが違いますから、現実に予算上の平均単価が違っております。違っておりますが、端的にいいまして国鉄が一番高いはずでございます。なまの金額は高うございますが、それでもって格差があるという考えは持っておりません。一応それで均衡がとれている。それで、ベースアップの場合にやはり格差という問題が出てまいります。それは、最初は率が非常に大きなウエートを占めて、最近は率と定額部分がふえてまいりました。それで、そのベースアップ部分だけをとりますと、さっき大蔵大臣が言われたようにニュアンスの差の格差がついてきているような感じはいたします。
  145. 秋草篤二

    ○秋草説明員 ただいまの時点でいろいろ私どもを取り巻く格差というもの、いろいろとりようがあると思いますけれども、過去三年間、仲裁の裁定というものを一貫して皆さんそれぞれ努力してやっております。その過程を分析しますと、格差を是正するという御努力があったという歴史的また数字的な経過をたどっておるわけでございます。それは何か原因もあり、また魅力的な新しい給与のあり方を考えられた結果だと思っております。私ども公社のほうでも三十条に、給与というものはその職務内容と責任の度合い、それに能率を考えてきめなければならないということがございますので、この精神に経営者が見て沿っておれば格差はないというふうに考えるのが妥当だと思っております。
  146. 堀昌雄

    堀委員 確かにいまの問題、土台のほうがどうなのかという問題が一つあると思います。それでその土台の問題の中で、最近の賃金の傾向でありますけれども、だんだんと労働力が不足をしてきますと、これまでのような単純な年功加算賃金というような問題では解決がつかなくなる時期が非常に明らかになってきている。実は賃金のいろいろな性格が、年齢が高いから低いからという問題も確かにある。それは日本の長い年功加算的賃金考え方がありますが、だんだんそれが変化をしてくる情勢というものも一つある。また企業によって非常に多量の人員を採用しなければやっていけない企業と、比較的少数の者を採用することによってやっていける企業もありましょう。要するに、土台の側というものが今後かなり変化をする。固定しているわけではなくて、これは流動的に変化しますから、流動的な変化に対応するのがやはり相当であって、それに対応しなければ私は逆に格差になるのじゃないのかという気持ちを実は持っておるわけです。ですから、これらの問題、時間がありませんからもう触れませんけれども、どうかひとつ大蔵省及び各当事者においては、現在の流動的な問題にある程度歩度を合わせて、やはり長期的に将来を見通した上で問題の解決を合理的にはかっていただきたいということを、ひとつその点は要望しておきたいと思います。  総務長官にお入りをいただきまして、当委員会で総務長官に質問するのはこれが初めてでございますが、実は私ども公労協賃金問題を長も当委員会でやってきまして、いま一つの壁ににぶちあたっているのは、昨年も私はこの委員会で申しましたけれども、現在の公社法、それから公労法の定めに問題がある。要するに、日本国有鉄道法第四十四条、専売公社法四十三条の二十二、日本電信電話公社法七十二条、国の経営する企業に勤務する職員給与等に関する特例法、それと、それからそれに引き続いてこれを受けたとして行なわれておる現在の各三公社現業予算総則、その給与総額、これらをずっとながめまして、昨年こういう議論をしました。現在の仕組みであれば、要するに三公社現業職員は紛争を起こすことなくしては給与を上げることはできない。これは現在の給与規定はそうなっているわけです。要するに、特に今度私がいままで議論したのは、去年五%組んでくれと言って、五%組んでもらいました。私は、これは当然給与総額に入っているから五%だけ当事者能力を回復されたと思ったら、何のことはない給与総額には五%入っていないのです。歳出予算だけに入っておるということできょうはだいぶ議論をしたのです。そこで、そうするとこれは、いまの給与総額とは何かといったら、去年のベースアップで基本になった部分だけが給与総額に入っているのであって、定期昇給は入っているかもしれませんけれども、ですからそれらは、ベースアップは当然あるものとだれもが考えているわけです。これだけ物価が上昇し、民間の賃金が上昇しているのですからベースアップがあるものと考えている。しかし、上げるためには仲裁以外に出せないのだというふうに法律規定しておる。それなら紛争を起こさなければベースアップはできませんねと去年詰めてあるわけです。ところが答弁としては、それはいま公務員制度審議会でそれを検討していただくことになっておるので、その答申を待ってこれらの問題については対策を考えたいと、去年橋本運輸大臣労働大臣大蔵大臣、おおむねそのような答弁をされておるわけです。  そこで総務長官にお伺いしたいのは、このような非近代的な、そして合理性のないいまの法律体系を改めて、やはり仲裁裁定によらなくても執行できるように——要するに、言うなれば現在の公労法の定めによったってできるようになっているわけですから、もう少しそういう意味では、先ほども和田委員がちょっと述べておられましたが、私も長年の主張なのですが、もうちょっと近代的にやれ。そこで公務員制度審議会は総理府設置法第十四条で設けられておるわけなのですが、これを早急に、その人選その他を進めて、開いていただいて、そうしてこのいまの当事者能力の問題をすみやかにこの公務員制度審議会で検討を進めて、少なくとも現在の情勢に合ったような体系に改める結論をひとつすみやかに答申をしていただきたいというのが、実はきょう総務長官に御出席をいただいた私の趣旨でありますが、これらについてひとつ総務長官の見解をお願いしたいと思います。
  147. 山中貞則

    ○山中国務大臣 公務員制度審議会でそういうことを検討してもらうという答弁があったことは、私実は知りませんが、公務員制度審議会は今日までいろいろの問題を審議をしてはまいりましたけれども、三公社現業等にかかるそのような、たとえば仲裁に移行することは紛争である、紛争を起こさなければ結論が出ないのだというふうには実は私は受け取っていなかったものですから、そういうあり方そのものについて検討しろというようなことが、実は具体的に公務員制度審議会の審議の議題としては取り上げられていないのじゃないかと思うのです。主として公務員の争議権と申しますか団交権と申しますか、そういうものが中心に議論されております。近く御要望どおり、第三次公務員制度審議会を出発させたいと思っておりますが、地方選挙等でどのような知事さんが最終的に選ばれるか、やはり知事代表も要りますので、それらを待っておりましたが、大体これから具体的に人選に入れると思います。  当面、おそらく議論の対象になるだろうと思うものは、約束ごとでございますから、一応は紋切り型にいえば十二月で切れる専従問題ですね。これが実は、約束といっても十二月で、切ってもらっては困るという意見もあるわけです。そこらの問題で、最初に取り上げられるのはまず専従の期限の問題ではなかろうかという気が率直にいたします。でありますが、ただいまのようなことは毎年繰り返しておることでありますし、ことしなどは、ことに国鉄は当事者能力を能力として財政的に持っておるかどうかというのも非常に疑問のような状態の全体の経営の中で、かといって国鉄につとめている者についてはそういうような回答を金額で出せない、あるいは最終的に上げないということはできないところでありますから、これはやはり大蔵、運輸両大臣でよく財政運用の協議をしてもらわなければならぬところでありますけれども、それらの問題は重大な問題でありますので、当面のそういう専従の期限問題等の合い間、もしくはそれが一山越しましたならば、その問題も団交権等を含めながら検討してまいりたいと思います。
  148. 堀昌雄

    堀委員 実は長年にわたってこの問題を当委員会でやってきて、毎年少しずつ実は前進をしてきたのですが、もういよいよいまの公労法なり公社法、そういうところの壁に来て、率直に言うともう前進の余地がないというところへ来ているわけです。ですからどうしても一応これらの関係を整理をして、こう思うのです。一時各企業が非常に企業内容もよくて、やや企業が自主的に給与を上げた時期が過去にあったと思います。昭和二十八、九年ごろでしょうか、これらの法律の改正がみな昭和二十八、九年から三十年ごろにかけて行なわれておるわけですから。いまは当時と情勢が非常に変わっているわけですね。このごろは、私は率直にいえば、当事者能力を開放してしまって、当事者でどうぞひとつやりなさいときめたほうがもっと合理的な賃金になる。政府もそういう気持ちを持っているのじゃないか。かつてみなが自由なときに手綱をかけて、全部ワクの中へ入れて引き締めておったけれども、今日はそうなってないにもかかわらず、ワクがきめてあるからある程度やむを得ないけれども、いろいろな問題があとに残る、こうなっているのじゃないかという気もして、たいへん時代おくれになってきておる、私はこういう考えをいま持っておるわけです。  ですから、まず近代的な労使関係から見れば、さっきお話しになった公労法でも、現業であり公社ですから、争議権を認めて、ただし、要するに不当な不利益を国民に与えるところだけ何かひとつ制限があるという程度で、団体交渉権及びその争議権というものははっきり認めて、責任のある立場でおのおの団体交渉をして結論に達するということのほうが、私はより合理的な慣行、道を開くことになると思うのです。一ぺんにそこまで飛躍できるかどうかは別として、筋としては私はそういうふうに感じておるわけです。どうかひとつそういう問題を含めて、やはり問題は労使間で話し合ってきめるということを原則とするようにしませんと、私はこの前も言ったのですけれども、何か公労委なるものは、紛争の仲裁や調停の機関であるものが、賃金決定機関であるかのようになって変形してきておることはまことに適当でない、こういうふうに私も考えておりますので、ぜひこれらの問題を含めて、ひとつ第三次公務員制度審議会の中でサゼスチョンをしていただいて、来年の春闘の中に間に合うかどうかわかりませんけれども、やはり少しでも前進的な体制を考えていただきたいと思いますが、それについてのお答えをいただいて私の質問を終わります。
  149. 山中貞則

    ○山中国務大臣 堀君の御意見も私は一つの筋であり、そういう考え方も持っていいと思うのです、検討の材料としてですよ。ところが反面、いまの三公社現業というものは、そういう姿で、なおかつ三公社現業が国民のために必要としておるのかという疑問も、一方にはないとは言えませんですね。専売公社、ここにおりますけれども、これを民営論は暴論かといえばあながち暴論ではないかもしれませんし、あるいはアルコール専売というものも、いま実際上の国家、社会の要望に、国が専売でやらなければならないような必要性があるのかどうかというような問題等々の、反面においてはまた議論もしなければならない。また財政状況から見て、林野特別会計あたりもことしからいよいよ単年度赤というものを出すような状態になってまいりました。この原因の究明は別として、もうどうにもならない国鉄、事業費を食っていかなければならない国鉄というようなことなんかを考えますと、それを完全に当事者同士の間できめなさいというので開放するという考え方は確かにあると思うのですけれども、それをやった場合には、私の入ったときに議論しておられました、三公社現業それぞれ国の機関であるのに、その待遇はふところぐあいによってばらばらであるというようないびつな現象が起こって、また問題を逆に提起する結果になるおそれもあるのではなかろうか。そしてやはり当事者能力という面において、財政的に国がめんどうをある程度見なければならない場合等において、先ほど国鉄と大蔵と相談しなければならないということを申しましたけれども、そういう側面のいい意味の援助もできる可能性がいまあるわけでありますから、そこらのところは一つのお考えとして承って、私自身が決定するわけではありませんが、公務員制度審議会の事務当局にそのような点を審議していただく、その素材の一つにはしたいと思っております。
  150. 堀昌雄

    堀委員 終わります。
  151. 毛利松平

    毛利委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後一時三十二分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕