○小林(政)
委員 次に入りたいと思います。これは国税庁にお伺いをいたしたいと思います。私は具体的な事例をあげまして少し御質問したいと思いますけれ
ども、
税務署が
納税者に対して一体どんな態度でもって臨んでいるのか、私は大きな疑問を感ずるわけでございます。これは、多くの
納税者の
方々の中にはさまざまな人たちがいるわけでございます。たとえばからだの不自由な人、身体障害者の
方々、あるいはまた地域の中で
税金の申告のやり方などわからないような人まで含めて、非常にさまざまな
納税者の人たちがおるわけでございますけれ
ども、昨年の十月二十日、神奈川県の厚木
税務署が全盲のはり師をしている村井さんという方のお宅の調査を行ないまして、そうして四十三年、四十四年度の期限後申告に判を押した、こういう問題があったわけでございます。
そのときの調査のやり方をつぶさに私は調査もいたしましたし、話を聞いてみますところによりますと、
収入認定について、家の門のところでたずねてくる患者の数を調査し、そうして玄関のはきものの数を数えて、そのことから患者は一日
平均七、八人
程度だということを推計をした。そうして
本人がそのことについて否定をいたしますと、帳簿をつけているか。もちろん奥さんも全盲の方でございますので、この
夫婦が帳簿をつけるなどというようなことは実際にはできない。こういう状態のもとに置かれている方でございますけれ
ども、全盲のためもちろん帳簿はつけておりません。そうしたら、貯金通帳があるだろう、貯金通帳を見せてほしい。そうしてその貯金通帳に十五万円の額が載っていた。この十五万円、ずっとおろしてないけれ
ども、十五万円おろしてないということは
生活にある
程度ゆとりがあるから貯金にまで手をつけないでやっていられたのだろう。しかし三十年もその仕事をしていて十五万円くらいの貯金がなければ不安でたまらない。もうとらの子のようにして手をつけないようにしているのだというので事情等も述べたそうでございます。そうしたら、治療室を見せてほしい、こういうことで治療室に入りまして、そうしてあの戸だなをあけて見せてくれ、あるいは引き出しをあけて見せなさい、そこにあるかばんの中をあけて見せなさいと、約三時間近くの相当の長時間にわたっていろいろと調査をしたわけでございます。
それでその結果、おたくは年額九十万円の
所得ときめる、こういうことを言われたので、
本人はびっくりいたしまして、いろいろとその実情等について述べると同時に、たとえばげたの数だけで調べられたのじゃ困る。玄関が
一つしかないから近所の人や知人や親戚の人もそこから出入りしているし、それに一番患者の数が調べた日が多いような、そういう日を基準にされちゃ困るのだ。たとえば雨の日などには一人も見えないときもあるし、せいぜい一人くらいのときもある。また特に寒い日などには午前中はほとんど一人も来ないときもある。こういったような非常に不定期な状態であって、それをげたの数がいま調べたら何足あったというようなことで認定をされたのではたいへん困る。またその中には、お年寄りなんかの場合には付き添いで家族の人がついてくればげたの数もふえるのだというようなこともいろいろと述べて、実態も訴えられたそうでございます。しかしいろいろとひどい長時間にわたって、
本人はものすごく何か、目も見えないし、初めてのことでもあったので、不安を感じて、そしてとてもそんなに
収入はないんだということを事実をあげて説明すると同時に、九十万なんと言われても困るからもう少し何とかしてくれないかということで、結局は、それじゃ八十万にしようということになったそうです。
そうしたらすぐにその
税務署の
職員が、書類をつくってくるから判を押してください、こういうふうに言われて、修正申告に
本人は、持ってこられたそれに判を押したそうでございます。たまたまその晩娘さんが帰ってまいりまして、その話をしたときに、八十万ということで判を押したという話をしてそれを見せたところが、
本人は総
所得が八十万だということを力説したつもりであった。ところが
税務署は
所得が八十万ということで、じゃあそれでもって修正申告してください、こういうことになって、実際にその書類を見た娘さんによって総
所得百二十万、すなわち
経費その他を引いて
所得八十万、こういうようなことが目の見える娘さんによって明らかにされたわけでございます。
本人は
税務署にだまされた、
自分は事実をずっと訴え述べて、そして総
所得というものが八十万ということで言っているのに、それでいいでしょうということで、総
収入が年八十万でいいでしょうと言ったのが
所得になって、
所得が八十万だというようなことで、修正申告を
自分が自主的にしたようになるわけですから、そういう形で判を押させられたということに対して、非常に強い、だまされたという怒りを持っているわけであります。
私は、
税務署が、この身体障害者で、しかも不自由なからだだからこそよけい人さまに迷惑もかけないようにということで努力をして、まじめに働き、しかも何とか自力で
生活をささえようと努力しているこれらの人たちにとって、このような打撃的といいますか、こういうひどい態度で臨むということが、いまの
税法のもとで許されていいのかどうなのか、この点についてまず明確な御答弁をお願いしたいと思います。