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1971-02-17 第65回国会 衆議院 大蔵委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月十七日(水曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 毛利 松平君    理事 宇野 宗佑君 理事 上村千一郎君    理事 丹羽 久章君 理事 藤井 勝志君    理事 山下 元利君 理事 広瀬 秀吉君    理事 松尾 正吉君 理事 竹本 孫一君       奥田 敬和君    木野 晴夫君       木部 佳昭君    木村武千代君       佐伯 宗義君    坂元 親男君       高橋清一郎君    登坂重次郎君       中島源太郎君    中村 寅太君       原田  憲君    坊  秀男君       松本 十郎君    森  美秀君       佐藤 観樹君    中嶋 英夫君       堀  昌雄君    貝沼 次郎君       古川 雅司君    小林 政子君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省銀行局長 近藤 道生君  委員外出席者         大蔵省銀行局中         小金融課長   結城  茂君         自治省行政局行         政課長     遠藤 文夫君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      河野 通一君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 二月十六日  厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五五号)  昭和四十二年度以後における国家公務員共済組  合等からの年金の額の改定に関する法律等の一  部を改正する法律案内閣提出第六二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  預金保険法案内閣提出第一三号)  貸付信託法の一部を改正する法律案内閣提出  第一四号)      ————◇—————
  2. 毛利松平

    毛利委員長 これより会議を開きます。  預金保険法案及び貸付信託法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。佐藤君。
  3. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 この預金保険法案の出てくる環境と申しますか、何といってもいまの物価が高くなってくる中で、ほんとう預金者保護ということを考えるならば、当然これは物価の問題とも関係してきますし、その他この預金保険の出てくる環境についてはさまざまな方がいままでの委員会で質問されてまいりました。ですので、その環境については、まわりの情勢については、ただ一点だけ、金融機関支払い準備その他が非常に低いという点、これについて一点だけ私お伺いをして、法案の中身に触れたいと思うのです。  この答申にもありましたように、預金保険についていろいろ問題があるけれども、その根本となっているのはやはり金融機関支払い準備が非常に少ないことじゃないかと思うのです。この答申にもありますけれども、「金融機関の自主的な預金者保護態勢見地からすれば、現在わが国の金融機関支払準備率流動性資産比率自己資本比率はまだかなり低い。預金者保護見地から、これらの比率改善経営健全化正常化を図ることは、金融機関として当然の責務であり、」ということが書かれているわけでありますし、また提案理由の説明の中にも、「政府といたしましては、預金者保護のために金融機関経営健全化を一段と推進するよう、今後とも監督、検査権の適正な行使をはかってまいる所存であります。」こうあるわけです。  それでお伺いしたいわけですが、私は、この預金保険制度というものをつくっていく以上は、こういう支払い準備あるいは検査などが表裏一体となってなされなければ、預金保険というものはほんとうの意味を発揮しないのじゃないかと思うのです。それで、この支払い準備率あるいは流動資産比率自己資本比率、これらを高めるためにいままでもいろいろなことをやってこられたと思うのですが、一体いままでどのような行政指導をこれに対してなさってこられたのか、その点をお伺いしたいと思います。
  4. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいまお示しのございましたとおりに、預金保険制度というのは、いわば伝家の宝刀と申しますか、最後のよりどころでございます。その前の段階で自主的にできるだけ支払い準備率を高めるということが金融機関としてはぜひとも必要であると存じております。  そこで、従来もいろいろと指導を行なってきたわけでございますが、大筋を申し上げますと、まず相互銀行信用金庫信用組合、この中小三機関につきましては、いろいろと変遷はございましたが、現在の姿では要求払い預金の短期三〇%及び定期性預金の一〇%、この両方を一〇〇といたしまして、この一〇〇をできるだけこえるようにという指導を行なってきておるわけでございます。この根拠は、相互銀行法で申しますと、第十三条てございます。それから信用金庫で申しますと、三十四年八月十五日の通達でございます。信用組合の場合には、四十三年八月三十一日の通達でございます。そしてただいままでにかなり強力な指導を行なってまいりました結果、先ほど申し上げました比率を一〇〇といたしまして、それに対して相互銀行の場合は四十五年上期の平均残高でまいりまして一二四・四%、大体一〇〇に対して一二四・四というところにいっている。それから信用金庫の場合には一〇〇に対して一七七・〇、それから信用組合の場合には一六三・三というようなとこにまいっております。そのようなことで、過去においていろいろ問題を起こしております金融機関につきましては、できるだけ支払い準備を厚くするという指導を行なってまいっております。なかなか一挙に著しくこれを引き上げるということもむずかしゅうございましたが、徐々に厚くなりまして現在その辺でございます。なお、今後とも指導につとめてまいるつもりでございます。
  5. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 たとえば流動性資産について見ますと、大体行政指導としては三〇%ぐらいが適当ではないかといわれているわけですけれども、たとえば四十三年の都市銀行地方銀行でもまだ二四%という台になっております。それから相互銀行及び信用金庫について見ましても、相互銀行が約一九%、信用金庫が三〇%という流動性資産の内容になっているわけです。それから自己資本比率を見ましても、都市銀行で四・一%、地方銀行で五・二%、相互銀行で三・九%、信用金庫で六・二%になっているというふうに報告されているわけですけれども、これはアメリカ、西ドイツに比べると半分、日本の戦前に比べても四分の一にしかないという状況にいまだになっているわけです。いままで銀行局長さんがおっしゃいましたけれども、ではなぜ行政指導の目標とするような高い値にまで、いままでやってこられたことが効果があがらなかったのか、どこに原因があるとお考えになっているのか、お答え願いたいと思います。
  6. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいま御指摘のありました点につきましての一番基本的な原因は、金融機関所持率だけを取り上げて、これを改善することが非常にむずかしい客観的な経済情勢というものが存在いたしたという点にあろうかと存じます。それはやはり成長角度がきわめて高いという状態、したがってまた企業の借り入れ依存度が非常に高い、そういう状態におきまして、経済全体の構造が直ってまいりませんと、金融機関の、ただいま御指摘のありましたような所持率を急速に改善することがはなはだむずかしい面があったわけでございます。しかし、ようやく本年度あたり資金需要鎮静化の傾向を見せてきておりますので、ただいまお示しのありましたような諸点についての指導を一そう強化する好機であるというふうに考えておるわけでございます。
  7. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いまのお答えの中で、金融機関制度というか、それだけでは改善できないというおことばの中で、経済高度成長というか成長角度から、どうもその環境になかったというお話でございますけれども、しかし今年度の予算を見ましてもあるいは財政支出を見ましても、必ずしもその成長が鈍化、いわゆる銀行金融面において預金準備率を高めるなり何なりするような面にまで響くと思われるほど成長が鈍化するとは私は考えられないと思うのです。たとえば成長率にしましても、やはり本年度も一〇%ぐらいになるのじゃないかと思うわけですけれども、いま局長さんのお話では、そういう環境ができたとはおっしゃらない、できやすくなったとおっしゃいますけれども、じゃ今後準備率を上げていくのにどのような具体的な——環境は確かに今度の経済成長が鈍るといっても、私はそれほど大きな環境にはならぬのじゃないかと思うのです。その環境ができたとおっしゃるならば、今後この支払い準備率なりあるいは流動性資産比率を上げていくのに、具体的にさらにどういうふうになさっていくおつもりなのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  8. 近藤道生

    近藤政府委員 まさにただいまお話のございましたように、今年あたり好機とは申しながら、やや長期的に見ますれば、非常にむずかしい道であろうかと好じます。しかしながら、少しでもこの支払い準備率を高めあるいは流動性比率を高めるという方向指導をいたしますために、たとえば流動性比率、これを具体的に高めますためには、どうしても主として都市銀行などにおきまする預貸率の指導を厳重にやってまいる必要があるわけでございます。そこで、新規の増加分に対する預貸率、これらの指導を強化いたしまして、それによって流動性比率の引き上げという目的も達せられるように、そういう方向での指導を今後とも続けてやってまいりたいというふうに考えております。
  9. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 どうも私もわからないのですけれども、いままでこの支払い準備率なりあるいは流動性資産を上げる問題なり、ずっと銀行局としてやってこられたと私は思うのです。預貸率の問題にしましても、行政指導はいままでずっとやってきたわけですね。しかし、やってきたけれどもいまだに、先ほど私が読み上げたような低い数字になっている。これがやはり問題なんじゃないかと思うのです。行政指導をやってきたけれどもいまだに上がらない、さりとて環境としてもそれほどやりよい環境になっているとは私には思えない。そして預貸率を高める指導を強めていくというけれども、じゃなぜいままで強められなかったのか、どうしていままで効果があがらなかったのかということが、やはり私は問題なんじゃないかと思います。その辺がどうも私は納得ができないのですけれども、その辺、もう少し御答弁を願いたいと思います。
  10. 近藤道生

    近藤政府委員 長期的に見ますれば、かなりの改善は見てきておるわけでございます。たとえば預貸率でまいりますと、三十五年上期あたりからの数字を申し上げますと、まあ三十五年あたりは九九・三とか九九・四というような数字でございましたが、その後三十九年あたりになりまして一 ○七六というような数字にのぼりまして、それから四十年に一〇六あるいは一〇一・九というような数字、それから徐々に下がり始めまして四十二年の上期に九八・八、下期に九八・九、四十四年の上期に九六・七、下期に九七・二、そうして先ほどの四十五年の上期に九六・九、まあ一番高いところで一〇七・六というあたりがここ数年来のピークであったわけでございますが、それから九六・九あたりまで、預貸率指導の結果下がってはきておるわけでございます。  ただ、先ほども申し上げましたように、全般的な資金需要の旺盛さ、国際競争の問題、いろいろございまして、これを一挙に引き下げるということはたいへんにむずかしい情勢ではあるわけでございます。さらに努力してまいりたいと思います。
  11. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私は冒頭に申し上げたように、この預金保険というものを考える場合には、やはり銀行経営として支払い準備率なりあるいは流動性資産なりというものをしっかりしておかなければいけない。この預金保険とそういう銀行経営とは表裏一体なものであるというふうに思うわけですけれども、そういうことになると、今度の機構に、銀行支払い準備率あるいは流動性資産比率、そういうものに対して検査なり指導なり、そういうものをする権限が必要なのではないか、こう思うのですが、いかがでございますか。
  12. 近藤道生

    近藤政府委員 実は、昭和三十一年に預金保険制度法案提出を見る寸前におきまして、一番強い反対が業界から出ましたのもその点でございます。その点が一つの強い反対のポイントでございまして、法自身がいろいろ検査をするようなことにしないでほしいということが非常に大きな要望でもあったわけでございます。現実に大蔵省なり日本銀行検査というものが片方にございまして、それからまた一方、こういう種類機構はあまり大きなものにならないように、できるだけ簡素化してまいるということが必要でもございますし、また、それによって保険料を引き下げることも可能になるわけでございまして、いろいろな観点からできるだけ機構には最小限度の仕事、つまり保険料徴収保険金支払い、この二点にしぼった機能を持たせるという方向法案考えられておるわけでございます。
  13. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 銀行局長にたいへんな愚問を発するのですが、たとえばこの十年間をとった場合に、この預金保険なるものがどのくらい発動というか、発効というか、実際に出されるとお考えですか。たいへんな愚問ですが……。
  14. 近藤道生

    近藤政府委員 それは今後の十年は全くわかりませんが、たとえば過去の十年間を振り返りました場合に、この預金保険制度がもしあったとすれば発動されたであろうと思われます件数を申し上げますと、大体信用金庫が五年に一度、信用組合が二年に三度、そのくらいの割合で、過去における事跡をあらためて今度のこの法案でふるいにかけてみますと、大体そのくらいの発生率になっております。もちろんその間に行政指導検査等の強化によりまして、この件数は将来にわたってはさらに減らしていきたいというふうには考えておりますが、一応の目安として、過去を振り返りますとそういうことになっております。
  15. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 銀行局長がこれから数がふえるということになるとたいへんだと思うので、当然これはゼロにしなければいけないことだと思うのですけれども、その際、考え方として、銀行のほうから出していく保険料というのが、この数が減れば当然機構に集まる金というのはどんどんたまっていくことになると思うのです。それで私はこういうふうに考えるのです。たとえば十年間保険料を積み立てる。その際、一度も発動されないというのは当然あるわけですけれども、十年間積み立てた保険料をさらにまた同じだけ十年間やっていますと、非常に機構のほうに保険料がたまってしまうと思うのです。それで、たとえば十年間に何も起こらない都市銀行なら都市銀行に、前に積み立てた十年間のうちの前の五年分を戻す。何というか、還元金と申しますか、そんなようにして戻す。ただし、それはいわゆる融資のほうに回すのではなくて、私が最初に取り上げた支払い準備率なりあるいは流動性資産なりを高めるようにプールしておくということで行政指導なりあるいは法律というものをつくるという方向はどうでしょうか。一〇近藤政府委員 まさにおっしゃるとおりに、実際の事故率と絶えず見比べながら保険料率というものは考えていかなければならない、こう思っております。したがいまして、大体五年程度保険料率の再検討をやるということを考えておりますので、たまり過ぎるという事態はございません。したがってまた、保険料率をとらないということによって反射的に各金融機関内部における内部留保は厚くできるということにもなるわけでございます。
  16. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その点が私はちょっと違うんじゃないかと思うのですね。つまり、保険金を取らないことで内部留保ができるんだったら、私はいままででも内部留保はかなりできていたのではないかと思うのです。やはり強制的に取られ、そして機構プールされていかないと、銀行のほうとしてもいま言ったような支払い準備率なりあるいは流動性資産を高めるように経営を持っていくということはやれないし、やらないのではないかと思うのです。それですから、私が言うのは、機構のほうに吸い上げて、何も起こらないところにはそれを還元金として戻して、それを目的つきで戻すわけですね。単なる融資のほうに回すということではなくて、支払い準備率その他を高めるためにこれはプールしておきなさいということで戻す、そういう機構というのは必要なんじゃないか。それだけ強制的にやらないと私は上がっていかないのじゃないかと思うのです。保険支払い料率を下げると、自然にそれだけ内部留保ができるというふうにはならないで、やはり余った金は融資のほうに回して、依然として銀行経営健全化ということはできないんじゃないか。せっかくこういう機構ができるからには、そういうふうに使われない金というのはあまり機構プールしてもしょうがないですから、戻す。戻すけれども、それは支払い準備率なり流動性資産なりを高める目的に戻すのだ、これはあくまで内部留保しておきなさい、そういう目的をつけて戻すという制度をこの際一緒考えたらどうかと思うのですが、いかがでしょうか。
  17. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいまきわめて大胆に予想をいたしております保険料率というのは、昨日もお答え申し上げましたように、大体一万分の一以下十万分の六程度というものを考えておるわけでございますが、この保険料率というのは、償却前利益なり経費なり、そういうものと比べましても〇・四%ないし〇・三%くらいのもので、きわめてわずかな負担ということで考えておるわけでございます。したがいまして、それを強制的にプールしてみても、いわゆる内部留保改善にはほとんど問題にならない程度の少額の金額でしかないということで、本来、預金保険制度の全体の機構を、先ほども申し上げましたように最低限度の簡素なものにして、したがって保険料率最低限度の低いものにしていくという方向考えておりますので、それを強制的にプールをしてまいって、それによって金融機関内部留保を厚くするというほどの実は金額ではないということでございます。
  18. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 少し話を変えますが、この預金保険機構の基本的な性格なんですけれども、これはちょっと確認をしておきたいのですが、一つ銀行にとってみれば、それが積み立てた額以上に引き出すことというのは、この十年間というものをとって考えてみた場合にはないのですね。その銀行保険料率として機構に納める、その額以上に機構が万が一何かあったときに出すということはないですね。
  19. 近藤道生

    近藤政府委員 保険料を各金融機関が納めまして、それを保険機構プールをいたしておりまして、そこの法律に規定されておりますような保険事故がどこかの金融機関に発生いたしました場合、その保険事故は第一種、第二種と二つございますが、たとえば支払いが不能になった場合、それからあるいは破産の宣告あるいは解散の決議といったようなことが行なわれた場合、そのような場合にはその保険金当該金融機関預金者に直接支払われるということでございます。したがって、金融機関に支払われるわけではございません。
  20. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いや、預金者に払われるのはわかっているんですが、その総額というものが十年間をとった場合に、たとえば五年以後銀行が積み立てておいた総額よりも、いざ何かあったときに預金者に払う総額というのが、機構が支払うほうが銀行が積み立てた額よりも多くなる。つまり機構側としては持ち出しですね。そういうことというのはないわけですね、この機構制度からいって。
  21. 近藤道生

    近藤政府委員 機構が集めました保険料以上のものを一時的に支払って、それをたとえば日本銀行からの借り入れ金によって泳ぐという場合はあろうかと存じます。ただこの日本銀行からの借り入れ金は、その後機構が各金融機関から徴収をいたしました保険料によって補てんをするという形になります。
  22. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そのからくりはわかるのですが、そうじゃなくて、たとえば都市銀行でも相互銀行でもいいのですが、AならAの銀行があるといたします。それで五年間プールいたします。五年後に残念ながら経営破綻を来たしたとする。そのときに機構が支払う、つまりA銀行預金者に支払う保険金総額というものは、五年間にA銀行機構に納めた額の総額を上回ることはこのシステムとしてはないわけですね。そういうことなんです、私の質問は。
  23. 近藤道生

    近藤政府委員 当然ございます。それがこの保険機構の特質でございまして、第三者のためにする保険というのは、そういうことによっていざという場合の危険をカバーするということであります。したがいまして各金融機関が支払った金額を当然上回るというのが通常の場合でございます。
  24. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 しかしこの制度の中では、一預金者に対して支払われる保険金額というのは百万円までを限度としておりますね。そうした場合に、私もまだ試算はしてないのですけれども、それをオーバーする額になりますか。
  25. 近藤道生

    近藤政府委員 先ほども申し上げましたように、支払うほう、各金融機関保険機構に払います保険料の率は十万分の六というきわめてわずかな率であります。一方におきまして、いざ破綻を生じた際には預金者に百万円までを全部返すということになりますので、その金額通常の場合納めた金額よりもはるかに大きな金額になるわけでございます。
  26. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、この機構には、普通銀行信託銀行長期信用銀行外国為替銀行相互銀行信用金庫信用組合、これだけの銀行が入るわけですけれども、いままで過去にこれらの各種の銀行信用金庫信用組合も含めましていろいろ経営破綻を起こしたことがあると思うのです。そうすると普通銀行から信用組合までどの種類銀行が一番経営破綻ということになると多いですか、いままで過去の例からいって。
  27. 近藤道生

    近藤政府委員 先ほど申し上げましたように、過去の昭和三十年あたりからの実例を申し上げますと、信用金庫の場合に五年に一度ぐらい、信用組合の場合に二年に三度ぐらい、そういう破綻を生じております。それ以外の金融機関については、そういう事例はございません。
  28. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、やはり普通銀行から信託銀行からずっと相互銀行信用金庫信用組合ということを一緒に含めますけれども、預金者から見てみると、危険率というのは、こう言うと非常に語弊があるかもしれませんけれども、過去の例から見るならば、信用金庫信用組合が残念ながら一番経営破綻という面から考えるならば危険性が多かった。これからはどうなるかわかりませんが、多かったと言っても私はいいんじゃないかと思うのです。それを今度の機構の中で、全部一律の保険料率機構の中に入れる、これは一体いかなるものかというふうに私は思うのです。保険というものはやはりどんな保険でも、生命保険でもからだの悪いというか、それからたとえば自動車の保険にしましても、オーナードライバーではなくて専門のドライバーのほうが、保険料率が高くなる。それはやはりそれだけ危険性が高いから保険料率が高くなっているんだと思うのです。今度の機構ではこれが全部保険料率一緒である。これはどうもあまり納得がいかないのですが、その点はどういうふうにお考えになって同一保険料率というふうになさったのか、その点をお伺いしたいと思います。
  29. 近藤道生

    近藤政府委員 金融機関の場合におきましては、非常に特殊な事情があるわけでございまして、いわゆる信用秩序というものは、大銀行から小さな信用組合に至りますまで、全部が一体となって形成をされておるわけでございます。したがいまして、そのどの部分にかりに破綻あるいは取りつけ騒ぎ、そういったようなことが起こるといたしましても、それはやがては全般に及ぶというおそれが多分にある性質のものでございます。そこで、たとえば信用組合破綻あるいは信用金庫破綻というものは、その信用金庫なり信用組合だけの問題ではございません。広く信用秩序全般の問題であります。したがって、そういう意味では大銀行の問題でもあり、信託銀行の問題でもあり、地方銀行の問題でもあるというふうに観念ができるわけであります。しかもそれらはみなひとしく政府の免許もしくは都道府県の免許を受けて成立した金融機関でありますので、それらが一体となって信用秩序を守ってまいる、そのための保険でございますから、保険料率はすべてこれは一律に課するということで大銀行納得をいたしておるわけでございます。
  30. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 しかし、たとえば過去の十年間にこの機構があったとしたら、これは普通銀行から相互銀行までの銀行が、信用金庫なり信用組合破綻に対して保険料を、取られるというといろいろ語弊があることばになりますけれども、機構から信用組合なり信用金庫保険を出していただいたという形になっていたと思うのです。そうすると、いま局長さん言われることはわかるけれども、普通銀行にしても、何かやはり取られ損というか、自分たちは納めるばかりで——普通銀行破綻を来たすということになると、これはもう大問題になるわけですけれども、信用組合でも大問題で、その問題はまたちょっとあとからお聞きしますけれども、なるわけなんです。その辺のところがどうもあまり公平ではない。金融機関として一体であるということはわかるけれども、やはり危険性がそれだけ違うものを同じにしておくというのは、あまり民主的なことではないんじゃないかという気もするんですが、その辺のところはもう一度、いかがですか。
  31. 近藤道生

    近藤政府委員 過去におきましては、それらの破綻の事例がございました場合には、個別的に近隣の大きな金融機関が救済に乗り出すといったような方法で、いろいろな手段がとられてきたわけであります。ところが、そのような手段というものがだんだん無理がきかなくなってきたということが申せるわけであります。特に、最近のように非常に各種の金融機関の間の連携が密になってまいりますと、一ところで起こりました破綻は直ちに他に波及するというようなおそれも非常に強くなってまいっております。それからまた、従来近隣の金融機関がその破綻に瀕した金融機関を救済するという場合におきましては、その金融機関自身、やはり何らかのメリットがなければ、そこの金融機関の株主に対して申しわけがないという点もございまして、あるいは店舗行政というような面での特別の取り扱いということが若干行なわれざるを得なかった面も多少あるわけでございます。ところが御承知のように、最近数年間、金融機関の体質強化、効率化というような方向に沿いまして、店舗行政などもだんだん弾力化されてまいっております。したがいまして、従来のような個別的な救済方法によっていくのはだんだんむずかしくなってきている。それを補いますために、たとえば業界での自助体制、相互援助制度、こういうものも大いに拡充をしつつありますし、また、してもらうように私どももつとめてはおりますが、それだけでは不十分な、最後の最後はやはりこの預金保険機構ということにたよらざるを得ない。その預金保険機構のたてまえというものは、やはり金融制度全体としての秩序の保持ということにございますので、これは大銀行も、昨日申し上げましたように、一番大きな大銀行保険料は一億五千万ぐらい、一番小さな信用組合においては千三百円ぐらいというほどの開きはございますけれども、それだけの保険料を払っても、なおかつ信用制度の保持育成にはつとめるべきであるということが大銀行側の考えでもございまして、これが先般参考人の意見としても述べられたところであるわけでございます。
  32. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それから、この預金保険が発動されるときのお話ですが、これは四十九条に書いてあるわけですけれども、いわゆる「金融機関預金等の払戻しの停止」、これが第一種保険事故ですね。それから第二種保険事故というのは「金融機関の営業免許の取消し(信用金庫にあっては、事業免許の取消しとし、信用協同組合にあっては、解散の命令とする。)」、こういうふうになって、それと「破産の宣告又は解散の決議」、これが第二種保険事故となっているわけですけれども、これを判定をするのは、機構委員会がするわけですね。
  33. 近藤道生

    近藤政府委員 第一種の事故の場合におきましては、一カ月以内に委員会が支払うかいなかを決定する。それから第二種の場合には、自動的に直ちに機構が発動するというたてまえに相なっております。
  34. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その場合に、第一種の保険事故の場合に、これは一カ月間以内に委員会がきめるとなっておりますが、それは、発動するかいなかという判定にそれだけ時間がかかるということですか。
  35. 近藤道生

    近藤政府委員 そのとおりでございまして、一カ月以内に当該金融機関がはたして再建が可能かどうか、そこを十分見きわめました上で、再建がおぼつかないという場合に発動するというたてまえになっております。
  36. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ここで問題になってくるのは、この前のいわゆる富士銀行の十九億円事件。これは富士銀行でしたからつぶれませんけれども、十九億事件やら、あるいは各地で起こっている、信用組合信用金庫理事長が二千万、三千万持ち逃げする、あるいは背任行為をするというような場合が、不幸にして現実にあったわけですけれども、そういうような、個人の故意というか、あるいはそういう背任なんかによってつぶれた場合ですね、経営破綻を来たした場合にも、この保険機構は発動されますか。
  37. 近藤道生

    近藤政府委員 そのような事実があったかどうかという問題は一応別といたしまして、現実に窓口からの支払いが行ない得なくなったかどうか、その時点をこの法律ではとらえておるわけでございます。したがいまして、第一種の保険事故は、いかなる原因なり内容によるかは別として、とにかく現実に窓口で預金者に対する支払いができなくなった、それが第一種の保険事故でございます。それから第二種のほうは、もうはっきり破産の宣告とか営業免許の取り消しとか、そういうことでございますので、これはもうきわめて明々白々たる事実として天下に知れ渡るわけでございますから、その場合はもう自動的に発動する。第一種の場合には、いま申し上げましたような、その原因のいかんを問わず、とにかく現実に支払いができなくなった時点、この時点をとらえまして、それから一カ月以内に運営委員会におきまして機構が発動すべきやいなやを決定いたすわけでございます。
  38. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、たとえば信用組合理事長が二千万、三千万を背任、横領したということでつぶれたという場合を仮定しますと、その際に、その信用組合理事長というのは、もちろん刑事的には責任を問われるし、民事的にも責任を問われるわけですけれども、機構に対して、これは責任というのはどういうふうになりますか。
  39. 近藤道生

    近藤政府委員 その点を、今度の機構は全く簡素化いたしましたのは、そういうことと全く無関係に動く。機構に対する責任というようなものは一切ないわけでございまして、ひたすら預金者保護という目的だけのためにこの機構ば動くというたてまえをとったのが今回の預金保険制度の案の特色でございます。
  40. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうすると、経営の放漫とかあるいは経営が悪かったという責任に関しては、この機構は関係なく発動されるわけですね。それは預金者保護あるいは直接預金者保険金が出されるという点からいくと当然だと思うのですが、この機構がそういう、放漫な、ということは非常に法律的な用語じゃないですからだめですけれども、いわゆる背任、横領、こういうものをして銀行をつぶした場合に、その理事長に対してこの保険機構が何らかの、やはり民事上の責任というものをとらせる必要があるんじゃないかと思うのですけれども、いかがでございますか。
  41. 近藤道生

    近藤政府委員 それを政府のほうで行なうということにいたしまして、機構自体は、先ほど来申し上げておりますように、最低限度の民主的かつ簡素な組織にとどめるということでまいっております。
  42. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ちょっと聞き取りにくかったのですが、その責任については政府自身がやるということですか。機構がやるという、その前段がちょっと聞き取りにくかったのですが。
  43. 近藤道生

    近藤政府委員 当該金融機関に対する機構の請求権、求償権、これは相変わらず残ります。それは経済的な問題として残るわけでございますが、たとえばその金融機関破綻せしめるに至った経営者の責任の追及であるとか、そういうことにつきましては、銀行行政の問題として政府がその責めを負うというたてまえでございます。
  44. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、民事上と申しますか、その背任、横領した額なり何なり、当然保険機構としてはそれだけ出費になるわけですけれども、そういう民事上の責任というのは、その背任、横領した場合に、理事長というのは機構に対して何にもとらなくていいわけですか。
  45. 近藤道生

    近藤政府委員 金融機関理事長の間に民事上の問題は当然に残るわけでございまして、金融機関はその背任、横領等を行ないました理事長に対して求償権を持つことは当然のことでございます。そしてさらに機構はそれを回収をするということは当然のことであります。ただ、その前段階といたしまして、銀行行政としてそのようなことを取り締まり、かつ、万一不幸にしてそういう事態が起こりましたならば、その責任を追及するというのは、銀行行政なり、あるいはさらに刑事問題があれば司直の手によって責任が究明される、そういうことに相なるかと思います。
  46. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それから、この保険というのは預金者に直接出されるわけですけれども、これは、万が一破綻があった場合に、預金者機構に対して請求するのですか。それとも機構のほうで、破綻があったのでというふうに預金者に通告して、いまの額では百万円ですけれども、百万円出してくれるというふうになるのですか。そのあたりはどういうふうになるのですか。
  47. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいまおっしゃいました前者のほうでございます。
  48. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、やはりこういうことは一般の預金者に私は知らせなければいかぬと思うのです。私も預金していたとしても、この場でこういう問題が出されなかったら、こういう機構があるということはおそらく知らないだろうと思うのですね。そうしますと、やはり預金の証書か何かに、こういう万が一当該金融機関破綻した場合には、これだけの額がおりますというようなことは書いていく必要があるのじゃないか。さらにやはりPRしていく必要があるのじゃないか。そうしないと、やはり普通の預金者というのはわからないんじゃないかと思うのですが、その点のほうはいかがでございますか。
  49. 近藤道生

    近藤政府委員 五十七条にございますが、「機構は、次に掲げる場合には、すみやかに、委員会の議決を経て保険金の支払期間、支払場所その他政令で定める事項を定め、これを公告しなければならない。」ということになっております。したがって、この規定によりまして公告をするわけでございます。
  50. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いや、私の言っているのはもっと前の段階で、たとえば預金証書の裏に、万が一当該金融機関経営上の破綻で、さっき申しました四十九条ですか、破綻の条件が書いてありますけれども、そういうふうになった場合には、おたくには百万円までは保険としております、つまり、この五十七条というのは、そういうことがあった場合、破綻ということが起こってしまった場合にこういうふうにしなければいけないということが書いてあるのであって、その前に、こういう預金保険機構なるものがあるんだ、おたくのたくわえておる預金は、万が一その金融機関破綻を来たした場合には、ちゃんと百万円までおりますよということを、定期預金なり何預金だかわかりませんけれども、その預金証書のどこかにやはり書いていくようなことが必要なんじゃないか。そうしないと、この五十七条があるといったって、普通の預金者というのは全然知らないのが普通じゃないかと私は思うのです。その辺のところをどういうふうにお考えになっているかということなんです。
  51. 近藤道生

    近藤政府委員 これは破綻が起こりましてからは公告の必要性があるわけでございますが、平生から預金証書にそのようなことを書くのは金融機関としては最も恥ずべきことでもございますし、そういうことは絶対に避けるというつもりで運営をいたすべきことであろうかと考えます。
  52. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 確かに法律の体系からいくと少し次元が違うことなんで、この法律の体系には入らないかもしれないですが、そうすると、預金保険機構ができた場合に、こういうふうに制度がありますということをPRするなり何なりということになるのでしょうね。
  53. 近藤道生

    近藤政府委員 そのとおりでございます。
  54. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私の質問はこれで終わります。
  55. 毛利松平

    毛利委員長 竹本君。
  56. 竹本孫一

    ○竹本委員 私はまず最初に二つの点を伺いたいのです。  一つは、預金者保護、非常にけっこうなことでございますけれども、預金者保護のためには、同僚議員からいろいろ御意見が出、質問もありましたように、内部的な体制を強化確立するということが根本だと思うのです。保険の事故ができてしまってからではもうおそいので、そういうことがないようにしなければならぬ。これは政務次官にもちょっと基本的な考え方でひとつ御意見を承っておきたいのですけれども、たとえば今度の商法の改正でも、取締役がしっかりしなければならぬ、取締役が粉飾決算だとか何だとか問題を起こさないように、ぴしっと内部的に自主的に体制を強化していかなければならぬのに、そっちのほうは極端にいえばそのままにしておいて、監査役のほうだけ今度は厳重にしていこう、こういうことですね。商法の改正はぼくはその意味においてどうも順序が逆ではないかと思うのです。それと同じように、今度の預金保険の問題も、保険事故の起こる前に内部の体制を確立するというふうにいかなければいけないのではないか。そういう意味からいうと、最近ややもすれば政府の姿勢の中にはもとを正さずに外ワクのほうから固めていこうというような考え方があるのはむしろ順序が逆ではないかと思うが、この点についてはどうかということをひとつ伺いたい。
  57. 中川一郎

    ○中川政府委員 先ほど佐藤委員から、保険でお払いするのは最後のとりでであって、それ以前に、そういうことができない内部固めをやることが根本的に必要だという御指摘もありました。先ほど銀行局長から、支払い準備率あるいは流動資産の比率自己資本比率を高めることに万全を期していきたい。従来もやっておりましたが、今後もそういうことを進めて、まずもって保険機構が発動できない体制を固めるという姿勢が必要であろうと存じますし、そういう方針でやっていくつもりであります。
  58. 竹本孫一

    ○竹本委員 だから商法改正の場合も同じような立場でひとつ再検討してもらいたいとぼくは思うのですが、これは本委員会と直接関係ありませんから、希望を申し上げておきます。  そこで銀行局長にお伺いしたいのは、この前富士事件が起こりましたときに、そういう内部体制確立の一つの手段として銀行の内部の監査を強化してもらいたい、そういう立場から私は強制休暇をひとつ考えてみたらどうかということを提言をいたしまして、聞くところによれば、その後その考え方を取り入れていただいておるように思うのですけれども、それはどういうふうに今日進展しておるか、経過を聞きたい。
  59. 近藤道生

    近藤政府委員 御提言の趣旨にかんがみまして、その後全銀協におきまして業務管理等改善委員会というものが設けられまして、四十五年の十月十三日付をもちまして業務管理等の改善についての申し合わせが行なわれたわけでございますが、連続休暇制度についてもその一環として検討しょうということにまずそのときになったわけでございます。そうして検討を続けました結果、十二月二十二日付をもちまして、各銀行がこの連続休暇制度を採用して、おそくとも四十八年度までにはこれが定着するように努力するということを申し合わせまして、各銀行に通知をした、そういう報告を受けております。  連続休暇制度の採用についての全銀協申し合わせという文書は四十五年十二月二十二日に出されておりますが、中身は、「全国の銀行は、全行員を対象とする一週間の連続休暇制度を採用するものとし、各銀行はこの制度の可及的速やかな実施をはかり、遅くとも昭和四十八年度には定着することを目途として努力するものとする。」ということになっております。  それからその実施の状況でございますが、まず都市銀行につきましては、大半は四十六年度中に実施に至る見込みでございます。富士銀行は四十六年の四月から実施の予定で、現在協議中でございます。それから地方銀行は二、三行が四十六年度中に実施に至る見込みでございます。信託銀行は全行すべて四十六年度中に実施に至る見込みでございます。
  60. 竹本孫一

    ○竹本委員 御努力を高く評価したいと思いますが、先ほどもほかの問題で出ましたが、こういうこともやはりそういうような連続休暇制度が取り入れられたというふうに、銀行も富士事件にかんがみて、姿勢を変えたんだということを銀行さんの立場からも大いにPRしたほうがいいだろうし、事故防止の意味からいえば、そういうことを大いにPRして、変なことが銀行の内部で行なわれないようなムードをつくるということが大事だろうと思うんですね。そういう点からいくと、ちょっとPRが足らないと思うものですから、やはりそういう世論をかき立てる努力をしていただいて、みんなの力でそういう事故が再び繰り返されないようにしてもらいたいと思いますので、今後の御努力を要請しておきたいと思います。  次に、今度保険機構という、ちょっと変わったものができるわけですけれども、保険機構というような、「機構」といったものの例はわが国ではいまどういうものがありますか。
  61. 近藤道生

    近藤政府委員 公式のもので「機構」という名前をつけたものはほかにはございません。
  62. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで、「預金保険機構は、法人とする。」と書いてあるけれども、一体どんな法人ですか。
  63. 近藤道生

    近藤政府委員 特別法に基づきます特別法人でございます。
  64. 竹本孫一

    ○竹本委員 社団法人的なものか、財団法人的なものか、あるいは会社のようなものなのか。もっとも初めての機構ということでございますので、理解するのになかなかむずかしい思うのでございます。特別法人ということは当然でありますけれども、一体どういう法人か、もう少し掘り下げてお伺いしたい。
  65. 近藤道生

    近藤政府委員 この法律に基づきましての特別法人でございますので、特別のものではございますが、ただいま幾つかおあげになりました中では、性格といたしましては財団法人に近い、社団法人ではないということを、しいて申し上げれば申し上げられると存じます。
  66. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで財団法人的なような感じもするし、そうでない面もあるからお伺いするわけですが、まず基本財産というのを政府なり日銀なり金融機関なり、それぞれ一億五千万円ずつ出すということですね。その場合に、これは機構の本来的な意味から言うならば、むしろ全額政府が出資して、厳正中立な立場でやるということのほうがもっと本来の趣旨に合う、すっきりした姿ではないかと思いますが、その点についてはいかがですか。
  67. 近藤道生

    近藤政府委員 そういうお考えも当然あり得るかと存じます。諸外国におきましてもそのような例が確かにございます。ただ、わが国の場合、特にこの機構をつくります際の金融制度調査会の議論その他を通じまして、非常に特徴的でございました点は、できるだけ民主的な制度にしたいということであったわけでございます。民主的かつ簡素な制度にしたいということが、今回の機構をつくりますにあたっての非常に特徴的な議論であったわけでございまして、したがって、まず信用秩序の保持育成ということになりますと、第一次的には民間金融機関自身が責任を持つべきである、第二次的には中央銀行である日本銀行が責任を持つべきである、それから究極的には政府が責任を持つべきであるということで、そこでこの資本金につきましても三者均等というたてまえがとられたわけでございます。諸外国におきましては、一種の政府機関的なものが多いわけでございますが、この点この預金保険制度は、政府機関ということではなしに、非常に中立的、自主的な色彩、性格を持っておる点が特徴であろうかと存じます。
  68. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまお述べになりましたその三つの段階といいますか、考え方の最後ということになれば、私はやはり政府全額出資のほうが筋が通ろではないかということを特に強調したいわけでございますが、局長がいま御指摘になりました第一、第二の考え方ですね。ほかのことばで言えば、従来はどういう自主的な共済制度があったか、それからあるか。それでは間に合わないので今度は三者平和共存の機構をつくるということになるわけでしょうが、間に合わない点はどういう点であったか。
  69. 近藤道生

    近藤政府委員 従来ございました自主的な各組織についてまずお答え申し上げますと、相互銀行の場合で申しますと、全国相互保障協定、これが昭和三十年三月一日に成立をいたしております。制度の内容といたしましては、各相互銀行が幹事銀行に有価証券を預託いたしまして、自分の預託額の十倍まで融資を受けられるという制度でございます。預託の現在高は十六億余円でございます。それから各地区ごとにもございまして、これは三十四年二月以来関東地区ほか七地区でやっておりますが、これが現在合計百六億円。なお、昨年十月に全国の相互保障協定の強化がはかられまして、四十六年四月から四十九年三月までに、この総額を二百五十億円まで持っていくということで、現在鋭意努力をいたしております。  それから信用金庫につきましては、振興資金というものと支払準備預金、それから振興基金というものがございます。振興資金は三十一年十一月に成立いたしまして、二十億円を限度として融資するたてまえでございます。支払準備預金は、三十七年五月に成立いたしまして、三十七年三月の預金の千分の十の百二十九億八千八百万が積み立てられております。原則として各金庫にその預金の十倍まで融資する。それから振興基金、これは三十五年五月に成立いたしまして、制度の内容といたしましては、毎年度剰余金の一部を基金として積み立てて、この運用益を利子補給とする低利貸し付けを行なうという制度でございます。積み立て額は二十三億円になっております。なお、昨年十一月、全信連機能拡充委員会というのがございますが、その答申によりまして本年五月からいま申しました振興基金と支払準備預金とを合体いたしました制度を創設いたしまして、四十八年の九月末までに五百億円を積み立てる予定でございます。  それから信用協同組合の場合には、全国信用組合保障基金機構というものがございます。昭和四十年に発足いたしました全国信用組合保障基金の二十億二千五百万円が新機構に引き継がれ、四十四年七月に成立しております。これは支払い準備所要額の二〇%の範囲内で、運営委員会が定める額を定期預金として預入いたし、原則として融資限度額は設けておりません。現在の積み立て額が五十億円、積み立ての目標額は四十七年度末までに二百億円、四百七十六組合が加入いたしまして、保障基金と称しておりますが、そういういままでにすでに三組合について発動をいたしております。  このようなものが現在自主的な各業界内部における相互保障協定でございますが、これらにはやはりそれぞれの運営上の問題もございますし、また限度もございますし、できるだけこれらを充実していってもらうことが必要ではございますが、最後のよりどころと申しますか、伝家の宝刀としてやはり預金保険制度が必要であるというふうに考えておるわけでございます。
  70. 竹本孫一

    ○竹本委員 それぞれの金融機関で自主的にやっておられる、当然のことでございますが、そうすると最後の保障というか一種の再保険みたいなつもりで今度の制度考えた、こういうことですか。
  71. 近藤道生

    近藤政府委員 再保険と申しますと語弊がございますが、相互保障協定は保障協定でできるだけ充実はいたしますが、やはり最後のよりどころというような意味で預金保険制度預金者そのものを救済する制度——いままでの相互保障協定のときには、預金者そのものを救済するという場合よりも、やはり金融機関を援助するというほうに、どちらかというと力点が置かれた面もございます。それらの点を踏まえまして、預金者自体も直接救済できる制度ということで考えられたわけでございます。
  72. 竹本孫一

    ○竹本委員 次に、いま財団法人的という話はその辺で終わりますが、今度の保険機構への加入の問題ですけれども、加入してもらわなければ話にならぬが、加入は一体強制加入であるのかないのか、それから信用組合等についてはどういうふうになるのか、その辺をちょっとお伺いしたい。
  73. 近藤道生

    近藤政府委員 強制加入のたてまえでございまして、信用組合も含まれております。
  74. 竹本孫一

    ○竹本委員 そうしますと今度は、信用組合なら信用組合の今後における監督行政の問題ですけれども、いままでのやり方との関係において、監督行政が重複したり混乱したりあるいは監督責任があいまいになったり、そういう点についてはどういうお見通しでございますか。
  75. 近藤道生

    近藤政府委員 その点は御指摘のとおり、私どもも一番意を用いている点でございます。現在、御高承のように、信用組合は都道府県が直接の監督責任者に相なっております。したがいまして、この監督をさらに強力なものにするという方向で、ここ二、三年来着々と、たとえば協議の事項をふやすとかそういう形で手が打たれてまいってはおりますが、なお御指摘のように不十分な点もございますので、今後これらにつきましては、できるだけ強化拡充をはかってまいる。それによりまして信用組合もやはり信用秩序の一環としてぜひこの秩序を維持しなければならない分野でございますので、この面における指導監督の強化がぜひ必要であるというふうに考えております。
  76. 竹本孫一

    ○竹本委員 次に保険料率の問題について伺いたいのですけれども、生命保険や損害保険の場合と違いまして、今度の場合はいわゆる保険数理というものがあるわけでもないということになるのでしょうが、その辺はどういうたてまえになるのか。また、保険料率が初めの考えよりも変更されて少し緩和されたというのですが、そういうことはどういう根拠に基づくものであるか、そういう点をひとつ伺いたい。
  77. 近藤道生

    近藤政府委員 この点も御指摘のように、厳密な保険数理に基づくものではございません。したがいまして、金融制度調査会の答申におきましては、保険料率、大体一万分の一くらいという予想でおったわけでございますが、その後過去の破綻の事例をつぶさに分析をいたしまして、将来この程度のものはおそらくは預金保険機構の発動にまで持ち越さずに妨げるであろうというようなものを分析をいたしまして見通しを立てました結果、これはいずれ運営委員会がおきめになることでございますが、私どもの見方といたしましては、大体十万分の六程度で問に合うのではないか。それからまた、万一不足いたしますれば日本銀行借り入れという手がございますので、そういうことでやや当初の見込みよりは少な目な線を目下考えておるわけでございます。
  78. 竹本孫一

    ○竹本委員 各金融機関の払い込み保険料は、それぞれの規模によって大きく違うだろうと思うのですけれども、最高最低、格差ができ過ぎはしないか。一体最高はどのくらいに押えておられるのか、最低はどのくらいになるのか。その点の格差の問題をひとつ伺いたいと思います。
  79. 近藤道生

    近藤政府委員 これは一番大きなものが年間一億四千万円くらい、一番小さな信用組合で千三、四百円というようなところでございまして、確かに格差が非常に大きいわけでございます。ただ、先ほどお話が出ましたように、この機構というものは、信用制度の保持育成という共通の目的に向かって全金融機関が一致して構成するものがこの機構であるということでございますので、保険料率は、預金の残高に対しまして一律に十万分の六なら十万分の六ということで徴収をするというたてまえをとっておるわけでございます。
  80. 竹本孫一

    ○竹本委員 もう一つ伺いたいのは、この保険保険料を負担するということが貸し出し金利に響いてくるという心配はありませんか。
  81. 近藤道生

    近藤政府委員 この点は、十万分の六というのは、貸し出し金利に響くほどのウエートはおそらくは持つまい。と申しますのは、償却前利益に対しまして大体〇・四%くらい、あるいは経費に対しまして〇・三%くらいという感じの数字でございますので、貸し出し金利のほうにはね返ってくるというほどの負担には当然ならないというふうに考えておりますし、また、万一そのようなことが起こるような場合には、当然当局といたしましても監視を怠らないでまいりたいと思っております。
  82. 竹本孫一

    ○竹本委員 これはちょっと重要な問題でございまして、いまパーセンテージで見れば、ウエートはたいした問題ではないと私思うのです。ところが従来の銀行のやり方を見ておると、銀行というものは、御承知のように公定歩合を二つ合わせまして二回で〇・五%下げた。現在幾ら下がっておりますか、そういうことを考えてみると、こういうのがまた貸し出し金利を下げない一つの理由に悪用される危険は絶対ないとはいえない。金融機関は公定歩合の場合でも、上げた場合にはすぐ上げるけれども、下げた場合には半分も下げない。いまだにろくに下げていない。こういうはなはだわれわれの期待に沿わない運営を現にやっておる。そこへもってきて、ここにこれだけの、極端に言えば、いい口実ができたということになって、金利低下がまた浸透しないというような問題はないかと思われるので、積極的にその点は指導される必要があると思う。その点についてもう一度お伺いをいたしたい。
  83. 近藤道生

    近藤政府委員 その点はお示しの線で積極的に努力をいたしたいと思っていますが、なお、預金コストの減少率から見ましても、年平均で大体〇・二二七%くらい、たとえば信用組合の場合下がっております。都市銀行の場合に〇・〇四%、地方銀行で〇・〇八三%といったようなことでございますので、ただいまの十万分の六と申しますと〇・〇〇六%でございますので、ただいままでの預金コストの減少率、この中に十分吸収される程度のものではあるというふうに考えております。しかし、ただいま御指摘のありました点につきましては、十分配意をいたします。
  84. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまのは重大な問題ですから、ひとつ積極的な御指導を要望しておきたいと思います。  それから、この保険機構の資金の借り入れの問題や余裕金の運用の問題がありますけれども、一体資金の運用に対する見通しはどういうふうに見通しておられるかという点について……。
  85. 近藤道生

    近藤政府委員 運用方法につきましては、国債等の方法によるということになっておりますが、これは、機構の資金が、多数の金融機関が拠出したものでございまして、安全、確実かつ流動性の高い資産に運用される必要があるということからでございます。ただ、このワク内で具体的にどう運用するかということは、機構が自主的に定めまして、予算、資金計画におきまして大蔵大臣の認可を受けるというたてまえをとっております。
  86. 竹本孫一

    ○竹本委員 ちょっといま聞き漏らしたのですけれども、私が聞きたいのは、特に金はどのくらいこの機構の中に集まってくるのかという問題をひとつ……。
  87. 近藤道生

    近藤政府委員 これは、事故がどの程度、何年目くらいに起こるかということによってまるきり変わってまいりますので、幾らぐらいが集まりますかということは、全く大胆な試算をしてみないとわからないわけでございますが、たとえば、先ほど申し上げましたような信用金庫が五年に一回ということで、今後五年間のまん中あたり一つ事故が起きた、それから信用組合が一年間に一・五件、つまり二年に三件くらいの割合で事故が起きたというような事例を想定いたしまして、きわめて荒っぽい試算をいたしますと、ピークで二百五十億円くらいの金を要することになるわけでございますが、これはもうほんとうに大胆な、幾つかの仮定に基づく試算でございますので、そのつもりでお聞き取りいただきたいと思います。
  88. 竹本孫一

    ○竹本委員 先ほどもちょっと質問をし、局長からも御答弁をいただきましたけれども、ウエートはわずかだけれども、銀行に悪用される心配はないかといった問題、並びに、それをそうさせないように行政指導をどうするかといった問題、それから、この前公定歩合を二回引き下げたのに、現実にはその金利引き下げがどこまで浸透しておるか、いまも御答弁がありましたけれども、問題にならない。いつまでにどうして金利引き下げを浸透させるかという問題については、大臣がお見えになるまで、その点だけは質問を保留いたしておきまして、あらためて質問をしたいと思いますので、御了解をいただきたいと思います。  それから、もう一つだけ伺いたいのですが、この対象の問題ですけれども、農協や労金というのがいろいろありまして金を集めておる。そういう問題については、この保険機構は全然関係がないのかあるのかといった問題をひとつ……。
  89. 近藤道生

    近藤政府委員 農協と労働金庫とは、この保険機構では対象外といたしております。
  90. 竹本孫一

    ○竹本委員 銀行局の監督行政の範囲からいえば確かにそうだろうと思うのですけれども、問題が起こるのは一体どこであるか、都市銀行が問題を起こすということもないではないけれども、一番心配なのは、信用組合だとか信用金庫だとか、あるいは農協だってときどき問題を起こしておるといったような問題がありますが、それらの問題については銀行局のレベルでなくて、政府としては一体どういうことをお考えになるつもりであるか、もう一ぺん伺いたい。
  91. 近藤道生

    近藤政府委員 農業協同組合につきましては、実は、もうすでに御高承のとおりでございますが、農民及びその団体、農業法人等に組合員たる資格が限られておりまして、いわゆる不特定多数の大衆の預金を取り扱います大衆金融機関とはやや性質を異にしておるということ、それからまた、法律上、信用事業のほか購買、販売、共同利用施設、共済などの事業をあわせ行なっておりまして、純損益に対する貢献度から申しましても、信用部門の黒字で他の事業部門の赤字を埋めるという形になっております。このような点で、一般金融機関のように兼業が禁止されておりますものとは異質でございまして、その破綻をほかの金融機関の負担で補うということには問題があろうかと考えられるわけでございます。それからまた、同時に、他種金融機関破綻が及んで信用秩序に直接影響を与えるという度合いも少ないのではないかというようなことから、特にこの対象外とされたわけでございます。  それから労働金庫につきましては、これももうすでに御高承のとおり、労働金庫法の十一条の一項で、原則として団体を会員とするということになっておりまして、例外として個々の労働者会員にも認められるということになっております。  そこで、これらのものは、ただいま預金保険法の解釈といたしております金融機関とは、ややその性格を異にするということ、そのようなことから、労働金庫協会自体も、この制度に加わることについて消極的であるそうでありますが、政府としても、これに対しては消極的な態度で臨んでおるわけでございます。
  92. 竹本孫一

    ○竹本委員 これは政務次官、ひとつ要望ですけれども、いま銀行局長の立場で銀行局長の御答弁があったわけだけれども、いわゆる事務的レベルから考えれば当然な御答弁だと思うんですね。しかし、国民的な立場で考えると、やはり預金者を保護するとかあるいは信用秩序を維持するということになれば、それぞれの分野を総合して問題をとらえなければいかぬ。おれのなわ張りはこの範囲だからこの範囲だけ考えておくというのでは、それこそ農地の売り戻しみたいに、事務的に説明すればそれで一応筋は通るけれども全体としてみればおかしなことだという問題にもなりかねない問題でございますから、特に全体的な預金者保護なり信用秩序の維持なりということを考えてもらいたいと思いますが、いかがでございますか。
  93. 中川一郎

    ○中川政府委員 農協も、あるいは労働金庫も、日本人でありますし、当然保護されなければならない範疇の方々であります。ただ、今回は、大衆投資家が預金する専門機関の保護をまずはかっていくことが必要だということから、信用組合以上のものを対象といたしまして、労働金庫あるいは農業協同組合については、特に兼業による被害までも投資者保護でいくのはどうかというようなことで除外はしてございますが、政治の目はそちらを除外していいという性質のものではありませんで、それらの方々の保護についても、政府としては、当然配意してまいりたいというふうに思います。
  94. 竹本孫一

    ○竹本委員 最後に貸付信託の問題について一言だけお伺いしたいのですけれども、資金需要が多様化した、それに伴って国民経済的推移の要請に即応するというお考えだけれども、一体「資金需要の多様化」とはどういうふうになったことをさしておられるのか。「国民経済的推移の要請」とはどういうことをいっておられるのか。その辺の実情をひとつ簡単に御説明をいただきたい。
  95. 近藤道生

    近藤政府委員 多様化の最たるものといたしましては、流通部門に対する資金需要あるいは生活関連部門に対する資金需要、いわゆる従来のような緊要な基幹産業に対する融資というようなことだけではなしに、生活に関連する、福祉に関連する部門、そういう部門に対する資金需要が非常に大きく、かつ緊要になってまいったということであろうかと存じます。それからさらに個人住宅の資金需要、そういうようなものも非常に強くなってきているというのが最近の特色であろうかと存じます。
  96. 竹本孫一

    ○竹本委員 これで終わりますが、中小企業に対する融資の面で、今後貸付信託としてはどういう御努力をなされるおつもりであるか、その点について、また積極的な御指導はどういう点を考えておられるのであるか、これを伺って終わりにしたいと思います。
  97. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいまも申し上げましたように、かつては重点産業、いわゆる「緊要な産業」ということで、基幹産業中心であったわけでございますが、今回法律改正によりまして、「国民経済の健全な発展に必要な分野」ということになりますれば、当然中小企業が含まれる範囲が広くなろうかと存じます。そこで中小企業に対する融資もできるだけ充実をいたし、拡充をいたしますように、私どもといたしましても指導につとめてまいり、さらには、先ほども申し上げました個人の住宅等につきましても、十分融資できる体制に持ってまいりたい、さように考えておるわけでございます。
  98. 竹本孫一

    ○竹本委員 それでは、先ほど質問を留保した点を除きまして、以上で終わります。
  99. 毛利松平

    毛利委員長 関連質問を許します。藤井君。
  100. 藤井勝志

    ○藤井委員 先ほど竹本委員からの預金保険制度に関連した質問の中で、金融機関預金者に対して、この保険制度をよりどころに預金金利をできるだけ上げるサービスをしない、逆にいうと、今度は貸し付け金利は高くする、こういうふうなことになってはいけないが、一体銀行局長大蔵省はどういうかまえでこれを指導するか。これに対して一応お答えがあったわけでございますけれども、ただ抽象的な精神規定といいますか、行政指導では事はおさまらない。これは庶民の感覚から見て、絶えず当委員会においても意見が出ておりますけれども、もともと金融機関というものは産業に奉仕すべきものである、それがいわゆる金融資本と称して産業を系列化していっているというのは争えない現実なんです。しかも信用が必要であるから、豪壮なる建物の中で、大衆に頼もしさを与えるという意味でしょうか、他の産業の視野から見ればいささか行き過ぎた虚勢といいますか、むだな経費がそこに使われておる。これはもう一般が認めておる現実だと私は思うのです。こういうことに対して、もっともっと大蔵省銀行局行政指導を徹底すべきである。いまはさか立ちをしておる。  私がこれを痛感するのは、私的なことを持ち出して恐縮ですけれども、昭和初頭ごろ、たまたま私のおやじが銀行家だったのです。孫子の末まで銀行家にはならせたくないという、茶の間での会話であったけれども、そういう話があった。まあ、そのときは非常に苦労しておったのですね。よき貸し付け先をさがし、預金者に金利を払わなければならぬ。いまは逆になっています。金融王国、これがいろいろな不祥事件にもつながってくる温床、背景ではないかと思う。  そこで私は、先ほどの竹本先生の提案に対しては、ひとつ行政指導の具体的な方策についてよく考えていただきたい。これをお願いをいたして、関連質問というよりもむしろ要望を申し上げて、質問を終わらしていただきます。
  101. 毛利松平

    毛利委員長 竹本君。
  102. 竹本孫一

    ○竹本委員 私はきわめて簡単に要点だけ、先ほど留保した点について大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思うのですけれども、時間の関係がありますから、ポイントを全部言ってしまいます。  一つは、保険料負担というものが貸し出し金利にはね返る心配はないか。なるほどパーセンテージからいえば幾らでもないと思われますけれども、銀行のあり方、やり方を見ておると、これをひとついい口実にしてまた貸し出し金利を下げないとか上げるとかいうことになる心配はないか。この点について大蔵大臣としては非常に積極的な御指導を願いたいと思うのだけれどもどうかということが一つのポイントであります。  一緒にまとめて申し上げます。二番目は、大体銀行がこの前公定歩合を二回下げられたわけだけれども、その何%をいま現実に下げておるか。大体上げるときにはすぐ、何カ月もかからぬうちに上げてしまいますけれども、下げるときには、金融緩和の浸透というのははなはだスローだという点から、今回の場合幾らになっておるか。また、いつまでにこの金利低下というものの浸透ができるように政府指導されるつもりであるか。この二つであります。  関連してついでに一言。三番目に、貸し倒れ準備金をいま数千億ということでございますが、これも極端に申しますと、中小企業にはあまり金を貸さないので、貸し倒れ準備金をとりこわす必要がないような場合が多い。したがって、どんどんたまっておるというようなことでございますが、これは今後の指導としてはどういうことを考えられておるか。以上の三点であります。  同時にあわせて、これは銀行局のほうにお願いをしたいと思うのです。資料要求でございます。最近における銀行の半期の利益金は幾らあるかということについて、あとでひとつ資料を要求いたしたいと思います。
  103. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 第一点の貸し出し金利引き上げにならないかという御質問、これは御提言のように、そういうふうな関係が生じないように行政指導に当たっていきたい、かように考え、また金融機関当局におきましてもそのように応対をしてくれるというふうに考えております。  それから第二点の公定歩合、最近二回にわたって引き下げが行なわれましたが、それに市中金利が順応しないじゃないかというような御所見でございます。私も公定歩合につきましては、市中金利がこれに追随するようにと念願をいたしております。この間日銀総裁にもそのお話をいたしたわけでございますが、日銀当局の答えは、昨年秋の引き下げの影響、これは非常に緩慢であった、そういうふうに見られます、引き下げ幅が御承知のような小幅であったこともあろうかと思うが、今度続いてまた再引き下げが行なわれた、この段階になると、かなり急速に市中にも響いていくのではあるまいか、また、そういうふうに指導したい、こういうふうに申しておるのであります。大蔵省といたしましても、同じ考え方をもって指導に当たっていきたい、かように考えております。  それから貸し倒れ準備金、これにつきましては、税法との関係のお話かと思いますが、これは先般当委員会においても私からお答えをしておりますが、銀行検査官の貸し倒れ認定、これが非常に窮屈になっておるわけです。したがいまして、準備率、組み入れですね、この組み入れ率が、税と実際とが非常な乖離を生じておる、その点を少し検討してみようじゃないか、こういうので、銀行局におきましてはその辺を調べております。調べをまちまして、実情に合うようにこれが修正をいたしたい、かような見解でございます。この修正は四十七年度税制においてこれを行ないたい、かように考えております。
  104. 竹本孫一

    ○竹本委員 では、終わります。
  105. 毛利松平

    毛利委員長 広瀬君。
  106. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大臣にお伺いしたいのですが、いま竹本委員からもお話があったわけですが、最初に日銀の公定歩合引き下げが昨年の十月二十八日、ことしの一月二十日と二回にわたって〇・五%引き下げられたわけでありますが、これに対して、十月当時、たとえば都市銀行で平均約定金利が七・四五五%である。それが十二月の現在では、七・六九三%と逆に上がっているのですね。それで、ごく一番最近で見ますと、都市銀行で見れば十月からは〇・〇〇七下がった、こういう結果になっておるわけでありますが、前回の四十三年の金融緩和時期では三カ月後に〇・一二下がっている、こういう状態があるにもかかわらず、今日こういう非常におかしな状態が出ておる。信託銀行などでは〇・〇〇一くらいだ、長銀あたりでも〇・〇〇四くらいしか下がらない。〇・一二%下がったという状態から見ますと、これはやや異常ではないか。しかもこれらは日銀の貸し出しを現実に受ける金融機関なんですね、都市銀行にしても信託銀行にしても長銀にしても。こういう状態になっているにもかかわらず、こういうことである。しかもこの四十六年の一−三月で九千億も——日銀の貸し出しは残高が二兆三千億ちょっとだと思いますが、これにそれだけプラスされると、これらの銀行の貸し出し総額からいえばこれはわずかだということかもしれないけれども、それにしても、前回から比べてあまりにも下がらな過ぎる。しかも、貿易関係の制度金融が一兆五千億もあるというのですが、これも海外金利が、特にアメリカの金利等は、かつて戦後一番低かった時期と同じになった。ここ相次いで数カ月の間に五回も下げるという異常な引き下げがある。そういうものなんかも輸出金融などでも利用できる。そういう業種であるにもかかわらず、日銀のそういう公定歩合の引き下げというものが直接響く、そういうところについてもそうは下がっていないというようなことについては、私どもたいへんおかしく思うわけです。こういうようなところで銀行が大衆の信頼を失うというか、やはり公益というよりは、みずからもうけている、もうけ過ぎている、また銀行行政における過保護というのがこういうところにもあるのではないかという不信の原因にもなる、こういうように思うのでありますが、その辺のところを、少なくとも四十三年当時くらいの約定金利の引き下げが実現できるように、どういう方策、どういう対策をもって指導されるか、この点をもう一ぺんお聞きしたい。
  107. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 広瀬さんのおっしゃるように、今回の公定歩合の引き下げに伴いまして、市中がこれに追随するぐあいが非常に少ない、そのとおりなんです。それはどういうことかというと、金利は資金の需給関係、それからコストの関係、両面できまるわけでありますが、コストとすると、確かに公定歩合の引き下げがあった、市中銀行なんかはそれだけの影響を受けるわけなんです。ところが資金需要、需給の面からいいますると、昨年の第四・四半期、これの状態、これなんかはうしろ向きの金融需要が非常に多いわけです。滞貨金融でありますとか、そういう種類のうしろ向きの決済資金の需要というものが非常に多い。そういうような関係がありまして、私はその金利が前ほど市中において下がらないという理由は、その辺にあるのじゃないかというふうに思います。ただ、ことしになりましてから、公定歩合の引き下げが行なわれる、それと並行いたしまして、日本銀行は量的規制の緩和、これを一段と進める、こういうことにいたしましたので、これはかなり市中金利に影響を持ってくるのではあるまいか、そういうふうに見ておるのでありますが、日銀総裁が、昨年の秋の引き下げはこれはあまり響かなかったように見られるが、これからは着実に引き下げが行なわれるであろうという観測をしておるのは、その辺を見通しておるのではあるまいか、そういうふうに思います。しかし、日銀当局にもお願いをいたしますし、また大蔵省といたしましても、追随して市中金利の引き下げが行なわれるように、極力努力いたしてみたい、かように考えております。
  108. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 時間があまりありませんから、この問題の突っ込んだ議論はできないと思うのでありますが、アメリカなどでプライムレートを下げるという場合には、これは市中金融機関がまず約定金利を下げていくというような事態に、むしろプライムレートを下げるというのが追随するような形も第四弾目のその切り下げあたりには出ておったわけです。今度の五弾目は、むしろ金融政策当局がさらに景気浮揚等の立場で、そういうことをやったと思いまするけれども、そういうようなことだ。ところが、日本ではまず政策的に公定歩合を下げながら、なおそれに追随しないという、そういう状況というものは、なるほど需給が非常にタイトであり、逼迫しているということはわかるわけですけれども、そういう中においても、銀行の資金コストの問題ももちろんあるでしょうが、利ざやというものを依然としていつまでも同じように銀行がかせいでいこうという、そういうマインドというものが強いのではないか。そういうような問題については、やはり金融機関に対して、公共性にかんがみて、特に金融制度調査会でも、この委員会銀行局関係の二法、預金保険法、貸付信託法の改正に伴って、銀行局長もその点を非常に強調されて、公共性というものがやはり重視された答申を得たのだという立場において、預金保険法なりあるいは貸付信託法の一部改正というものも出しているのだということが、一番問題点としてクローズアップされてきているわけです。そういうようなことからすれば、やはりここらに日本の金融の一番大きいゆがみがあるのじゃないかということで、この問題についてはさらに積極的に取り組んでいただきたいと思うわけであります。  次にお伺いいたしたいのは、今度の預金保険法が創設され、預金者の保護を大いにやろう、こういうことは、われわれが前から金融の効率化問題と関連して取り上げてきた問題であって、預金者保護の立場において一歩前進である、こういう評価を私どもいたすわけでありますが、そういう中で、しかしそうはいっても本来のねらいは、この金融効率化というもののために、預金保険制度というものがあれば金融効率化をかなり強力に進められるのだ、そして、効率化を達成するためには金融再編成である、こういうことで、ねらいはほんとう預金者保護という立場でなくて、この制度を出したのも実はこの再編成、効率化——効率化ということも、いろいろ金融機関の実情に即して、イコールフッティングを考えながらきめこまかくやって、その果実が国民大衆、預金者に還元されるというようなシステムであるならば、まあ効率化は少なくとも金融の面においては反対する理由はないわけですけれども、それが今度はスケールメリットと結びついた、あるいは銀行の同質化の方向だとか、そういう方向とスケールメリットというものを中心にした再編成の方向の地ならしなのか、こういうような基本的な問題にぶつかっておるわけなんです。これらの問題について、この預金保険制度というものをてこにして効率化をさらにかなりラジカルに進めたり、あるいは金融再編成というものを進められるお気持ちがあるのか。そうして金融再編成における再編成の構想といいますか、そういうものを大臣としてはどういうような方向で描いておられるのか、そういう点について、大臣の基本的な御所見を伺いたいと思います。
  109. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 まず、この預金保険は、これは預金者の利益を保護する、こういうことがねらいでありまして、それに関連していろいろの問題があるいは出てくるかもしれませんけれども、この立法のねらいとするところは預金者の保護ということに徹しておるわけなんです。いま金融機関の状況を見ると、金融機関ではずいぶんいろいろな不祥事件なんかも出てきまして、経営の紊乱というような問題が指摘されるケースが多いわけでありますが、いやしくも、金融機関であればどういう経営をいたしましても、終局的にはこれが何らかの手段によって救済されるのだ、こういうような状態にいつまでも置くということは、これは金融機関として積極的な使命を達成することはできない、こういうふうに考えます。そういう面から見ますときに、何といっても金融機関の効率化、また自由競争原理の導入、これも非常に大事だと思いますが、そういう金融機関本来のあるべき姿、そういう問題にも結果として裨益するとこはあろう、こういうふうに考えておるのです。  それから第二点の、金融機関再編成についてどういうふうに考えるかというお話でございますが、これは政府として、金融機関の再編成に介入をするということはいたさないという方針であります。ただ国際競争下の日本金融、その体勢は強固にしなければならぬということは当然であります。そういうようなことで、金融機関の間で再編成の動き、そういうものが持ち上がってくる、それが不純な動きであるというようなことであればともかく、これが妥当な動きであるという場合におきましては、これは歓迎するという姿勢を持って見守っていきたい、かように考えております。
  110. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 政府は金融再編成の問題については介入をしない、金融業界の自主性にまかしている、しかし不純なものでない、国民的な利益と相反しないような方向であるならば、それは歓迎する態度でいきたい、こういうことだけきょうは確認をして次に進みたいと思います。  今度の預金保険法案で——従来、昭和二十六年以降、信用組合が、直接の監督が都道府県知事に委譲されてもう二十年を経過するわけでありますが、今度こういう金融関係の法案として、都市銀行その他長期銀行、地銀、相銀、信用組合、そういうように全部入ったわけですね、こういう状態になった。しかもこれは具体的に考えてみましても、また過去十年間の実例を見ましても、銀行局長の答弁で明らかになっておるわけですけれども、信用組合では二年間に三回ぐらいの倒産、いわゆる預金保険法の中における保険事故に該当するような事例があるということであり、五年に一ぺんぐらいは信用金庫にもある、こういうのが実態だ、その他の金融機関にはない、こういうようなことなのですが、そうしますと、預金保険制度ができて、やはり一番体質の弱い信用組合、こういうようなところに、やはり現実的に考えますと保険事故が起きる可能性が一番強い。このことは否定できないだろうと思うのですが、そういう状態になる。この信用組合、特に最末端の、しかも都道府県知事に監督権をゆだねている信用組合、また、これは大蔵省が直接担当はしているけれども、非常に数も多いし、体質の問題からいけばかなり発展をし、業績をあげ、しかも経営状況もよくなっているけれども、信用金庫がその次にはやはり体質が弱いのではないかというように常識的に見られるわけです。そういうようなことから問題を考えていかなければならない面があるのではないか。  そこで、特に信用組合の場合に、今度の制度都市銀行と全く、仲間入りをして同列の取り扱いを受けていくわけでありますが、こういう問題を通じて金融面における行政の監督権といいますか、そういうものが、私どもの立場からすれば、この信用組合というのはやはり都道府県の監督のもとに非常に地域性の強い特別な金融機関として保護助成し、振興さしていくことが、いわゆる地域開発、今日政策の中でも非常に重要視されている地域開発というような問題との関連においても重視されていかなければならない問題点を持っている。そういうような立場からするならば、やはりこの信用組合というものにかなり思い切った育成策を講じていくということが、預金保険制度とも関連をして必要なことになるだろうと思うのです。俗なことばでいえば、金は出すがその監督権は従前どおり都道府県知事にまかしていくというきちっとした考え方、こういうもので割り切っていくおつもりであるのか。さらにいろいろな介入や支配というような形を信用組合にも強化をしていく方向にあるのか。この点についての大臣の御所見をまず伺いたい。
  111. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 信用組合は、中小企業ということばがありますが、金融機関の中ではどっちかといえば小企業という系列のものかと思うのです。そういう金融機関に大銀行と同じ預金保険を適用する、これはどういうものだろうかという疑問、これは一応皆さんが提起された問題なのです。ところがその信用組合自体がどうしても預金保険に他の金融機関並みに参加をいたしたい、こういう強い希望がありましたので、これを取り入れるということにいたしたのですが、私は、結果においては妥当な行き方である、こういうふうに考えています。それで、信用組合お話しのように、同士相寄るというか、それぞれの地域社会あるいはそれぞれの業種社会におきまして有志の人が集まってつくった組合組織の金融機関である、こういうような性格があります。この性格は私は尊重しなければならぬというふうに考えておるわけであります。ただ非常にその数が多いものですから、とても大蔵省だけの管轄ではやり切れないというので、大部分の監督権を都道府県知事に委任をいたしておる、こういうのが現状でありますが、信用組合預金保険に入ってくる、これは一つの段階かとも考えますので、これからも信用組合指導育成ということには格段の配意をする。そのためには、いま権限の地方への委譲をやっておりまするけれども、地方団体と大蔵省との関連、これをますます緊密化いたしましてその指導育成に遺憾なからしめたい、こういうふうに考えております。
  112. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 地域にとって、また地域における中小企業等にとってはやはり非常に親しみやすい、いわゆる株式会社その他の金融機関とは違う共同の組織であるというような点でも非常に特色のあるものであるし、しかも今日若干、数も減る傾向にはある。大体最近では五百ちょうどぐらいにはなったという数字のようでありますが、資金の面などにおきましても、預金量で大体六億程度というようなものがまだ——数字はあとで明らかにしていただきたいのですが、三百億以上は一つしかない。四十四年はそうであったが、四十六年には五つになった。二百億以上ということでとっても十一くらいしかない。しかも一億未満というのが六つもある。これは四十四年の三月と四十五年の三月で大体同数ですから、変わってないのじゃないかと思います。あるいは若干減っておるかもしれませんが、そういうものである。こういう資金力においても非常に弱い立場にある。しかしながら、いま大臣がおっしゃったように、非常に地域に密着した、地域開発のためにも非常に貢献しなければならない運命を持っておる、地域社会としては非常に大事な金融機関だし、お互い同士が相寄るということで非常に地域性も高い。そのことによるまた事故なども、往々にして非民主的な運営、ボスの支配というようなことも間々あるわけでありますけれども、いずれにしても地域社会にとっては重要な、中小企業にとっても重要な金融機関である。ここでやっぱり事故が一番多い。こういう状況を金融行政全般の最高の責任者の大蔵大臣として、これを育成強化する方策を持っておられる、そういう考えであるということを示されたことは力強い限りである。  ところで、こういうものに対して具体的にどういう強化育成の策を講ずるかという点はいろいろな問題点があろうと思うのですが、私ひとつ提案を兼ねて聞くわけでありますが、これはあとで自治省も呼んでおりますので、それらの問題について明らかにしたいと思うのですが、市町村の預託金というようなものが、どうしても地域のそういう地元の金融機関を育成するという立場でやらない。そうしてある程度地銀あたりのかなりしっかりしたところにやってしまう。まるっきり見放しているというような状態もあるわけであるから、そういうようなものに対してもっと預託金などを増大さしていくというようなことを考えていく。そういうようなものと同時に、国の財政資金、財政投融資というようなものがこういう面には全然入っていないというようなことになるわけですね。したがって、少なくとも大臣、そういう場合に、預託金をかなり増額をしていくというような場合に、それに見合う、こういう金融を強化するという面でかなりの金を出しておるというようなものに対しては、起債のワクをそれに見合うようた形で市町村、県等に認めていくというようなことを通じて、やっぱり財政投融資資金がこういうところにも入って、ほんとうに強化されていくというような方向などは考えられないものかどうか。こういう点についての——これはいろいろ検討すべき問題はあるだろうと思うが、やはり財政資金をもっとふやしていく、投入する方法というようなものについて、やはりこういう一つのチャンスです。この預金保険法の中で、今度は信用金庫も大銀行もみんな一緒になって、金融機関全体としての立場において、預金者保護というものに徹底していこうというそういう場合に、そういうことも考えていったらどうか、こういうような考えを私ども持つわけなんでありますが、この点について、どういうように大臣お考えになっておられますか。
  113. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いま地方団体の金庫というか、地方団体からの預託、これは一部にはあるそうでございますが、まだ非常に広い範囲だというふうにはなっておらぬように聞いております。これは今度預金保険制度ができた、こういうようなことになりますると、これは、こういう問題が信用組合に対して拡大されるころにはいい影響を持つのではあるまいか、そういうふうに考えます。地方自治団体の経理運営、これに政府が介入するのも、これもまた別の角度から問題がありますので、これは都道府県、市町村の自主性に待つほかないと思いまするが、今度のこの制度信用組合に対していい影響を持つであろう、こういうふうに考えております。  それから、政府資金を信用組合強化に大いに活用するということですね。これは私はそういうことは妥当だと思います。そういう考え方でまたやってきておるわけであります。たとえばいま政府には八金融公庫がありますので、公庫を通じまして財政資金が中小企業に金融のために貸し出されるわけでございまするが、その各種の公庫の代理店というような意味合いにおいて信用組合がずいぶんこれは活用されるようになってきたと思います。そういう方向はぜひまた進めていきたい、かように考えております。
  114. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 中小公庫なり商工中金なり国民公庫なりというようなところに財政資金が入っていることは当然だし、そういうようなことで代理貸し業務を信用組合がやるというようなことだけじゃなしに、私が言っていることは、都道府県知事の監督下にある信用組合にも、財政資金が、間接ではあるけれども、ワンクッション置いた形でやはり入ってくるんだ。そしてその資金量を充実させ、その経営ポジションをよくするというような、そういうものにやはり財政資金というものを投入されていいのではないか、こういうことを申し上げているんで、政府金融機関三公庫に対してその代理貸し程度ということでは不満なのでありまして、この点何とかひとつそういうようなワンクッション置いた起債の形というようなものが、預託金見合い等において、そういうものについては弾力的に認めていくというようなことは、やはり検討さるべき一つ方向ではないのか、このことを伺っておるわけです。  続いて質問いたしますが、時間があまりありませんので、あと信用金庫から、住宅供給公社とか地方に設けられました地方開発公社、こういうようなところを金庫の融資先として指定してもらいたいという要求が最近出されておるように伺っておるわけでありますが、これについてどういう態度をおとりになられるおつもりなのか、そういう点についてもあわせて伺いたいと思います。
  115. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 信用組合政府資金を活用する、これはもう代理店方式は非常にいいんじゃないかと思います。これは有効に働いている、そういうふうに思うのです。広瀬さんもよく承知されているんじゃないかと思いますが、代理店業務をやっておりますと、代理店のほうからも貸し出しをします、組合のほうからも固有の貸し出しをしますというようなことで、固有の貸し出し自体をその代理店貸し出しで非常に補っておる、こういうようなことにずいぶん役立っておると認めるわけでありまして、どうも五百もある信用組合政府資金をじきじき散布する、こういうことは実際問題としてなかなかむずかしいのではないか。いまの代理店というものの方式を拡大していきますと、政府資金を組合に活用するという問題、これはもう大半私は片づいていく問題じゃないか、そんな感じがしますが、なお広瀬構想は詳しく承る機会を得まして考えさしていただきたい、こういうふうに考えます。  それから御指摘の住宅供給公社とか地方のお話がありましたが、そういう方向考えていきたい、かように思います。
  116. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大臣も忙しいのでこれ一問でとどめますが、またあと午後引き続いて銀行局長中心にやるわけですが、預金保険法ができまして、銀行局長の御答弁によりますと、大体預金残高に対して十万分の六ぐらいの保険料を積み立てる。これは一説によると平年度年間三百億ぐらいにもなる、こういうことになるというような新聞報道などもあるわけでありますが、これはどのくらいになるのか。あとで銀行局長にその数字だけ、そういうことで試算してどのくらいになるかということをお聞きしたいのですが、しかもそういうことですから、五年ぐらいでその料率は見直したいということであります。そういうことでありますが、いずれにいたしましても大体どのくらい、絶対どこがどうなっても少なくともいま約束している預金者一人当たり百万円は保障しますということで、どの程度まで資金量が、保険機構の資金が充実したらいいんだというめどというものはどの程度のものを構想されておるのか、この点を一ぺん大臣にお伺いします。
  117. 近藤道生

    近藤政府委員 平年度でまいりまして、十万分の六として大胆な試算をいたしますと三十数億円ぐらいのものと考えております。そしてまた、これもきわめて大胆な試算をいたしますと、五年間に、ちょうどまん中あたり信用金庫一つ、それから毎年信用組合が一・五というようなことでまいりますと、ピークで二百五十億円ぐらいというものが考えられております。
  118. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 時間の関係でこの程度にとどめておきます。
  119. 毛利松平

    毛利委員長 午後二時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時四十八分休憩      ————◇—————     午後二時四十一分開議
  120. 毛利松平

    毛利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。広瀬君。
  121. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 自治省にまずお伺いいたしますが、都道府県知事に監督権が委任をされている信用組合の問題についてまずお伺いしたいのです。  この信用組合は、今日預金は一兆七千億をこえ、また貸し出し額も一兆五千億程度になっている、こういう状況で、これが非常に地域性の強い金融機関として地元の中小企業等の融資に対して非常に大きな役割りをしていると思うわけであります。しかしながら、今度この委員会でいま論議をいたしております預金保険制度がこれから創設されようとしておるわけでありますが、過去十年間におきましても大体五年に三件ぐらい、当時預金保険法があったとすればいわゆる保険事故に該当する倒産その他の事故があった、こういうことになっとるわけではありますが、こういう問題に対して自治省としては都道府県知事を通じてどういう指導をなさり、また今日この信用組合の育成強化に対してどういう施策を積極的に進められておるのか。その点についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  122. 遠藤文夫

    ○遠藤説明員 行政課長でございますが、いまの御質問につきまして、都道府県知事が指揮監督しているという御指摘があったと思うので、そのような知事の仕事としてどういう指導をしているかという御質問かとも思うのでございますけれども、実は、これは御存じのことと思いますが、地方自治法上、都道府県知事の仕事につきましてはおそらく国の機関として行なっておるという形じゃないかと思います。この場合におきます都道府県知事は、たしか主務大臣たる大蔵大臣の指揮監督のもとにおける知事だと思うのでございますので、その場合の指揮監督ないし指導の責任というものは大蔵大臣の、主務大臣のほうでおやりになっておるということでございまして、私のほうとしまして、知事に対するその立場からする指導監督というのは特にいたしておりません。
  123. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 二十六年に都道府県知事に信用組合に対する監督権というものが委譲されているはずでありますね。主管大臣は、なるほどこれは金融全般の問題として大蔵大臣である、そういうことでいま答弁があったわけだけれども、そういうように自治省はやはり地方自治全体、その中で都道府県知事がそういう監督権を委譲されている、これについて、これは大蔵省主管のことなんだ、こういうように言われておる。この辺のあいまいさというか、この信用組合の健全な発展あるいはまた事故の絶滅というようなものとのかかわり合いは、非常にその辺のあいまいさの中にあるのではないかと思うのでありますが、この点についていかがでございますか。
  124. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいま自治省側からも御答弁がございましたように、たてまえといたしましては、都道府県知事が所管行政庁となっております場合は、法律的には国の事務が都道府県知事にいわゆる機関委任をされております。したがって大蔵大臣は、国家行政組織法十五条、それから地方自治法第百五十条の規定によりまして、主務大臣として都道府県知事を指揮監督するというたてまえでございます。  ただ、いまお話のございました御趣旨は、そういうことでほんとうにはっきりした、かゆいところに手の届くような指導監督が信用組合に対してできるのかというような御趣旨であろうかと存じますが、その点につきましては、御説のように、従来とかく統一的な指導監督が行なわれていなかったという点もございますので、四十三年の八月に各知事あてに信用組合基本通達と呼ばれるものを出しまして、そうして統一的な基準のもとに運用がなされますように、業務運営、資産運用、決算などについて指導方針を示しまして、特に信用組合の新設、支店設置、それから営業区域の拡張などの重要事項につきましては、事前に大蔵省に協議をしてもらうというたてまえをとったわけでございます。  さらに本年の一月二十七日に、信用組合経営健全化について特に次のような点を重点といたしまして指導をするように通達を出したわけでございますが、それは、第一点は法令等の順守、第二点は内部管理体制の強化、第三点は役員の専業体制の確立と経営責任の明確化、第四点が検査の励行と充実ということで、特に指導の強化をはかってまいっておるわけでございます。
  125. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 自治省としては、なるほど主務大臣は大蔵大臣であるというようなことで、都道府県知事あるいは市長、こういうような人たちは少なくとも一般地方行政の関係においては当然自治大臣の指揮監督の中にあるわけだけれども、この信用組合の問題については全くそういう権限が委任されている、機関委任をされているというようなことになっているが、その点については全くノータッチで何のかかわり合いもない、こういうように考えておられるわけですか。知事の場合であっても委任事務になっておるわけですね。そのことについてはどういうお考えですか。
  126. 遠藤文夫

    ○遠藤説明員 実は地方団体に対しますところのいわゆる国のほうの指揮監督といいますのは、先ほど指摘がありましたように、地方自治法百五十条で国の機関委任事務に対します国の指揮監督というもののほかにつきましては、指揮監督権というのは実は私どもにはないわけでございます。私どもの立場からいいますと、地方行政全般につきましてのいわゆる運営指導というものを、たとえば財政運営の指導というようなことで財政局の担当というようなことでやっておるわけでございますけれども、こういうような形の地方行政全般の見地からするいわゆる指導というようなもののほかには、実は関係各大臣で所管になっております機関委任事務がたくさんあるわけでございますが、この一つ一つにつきまして、その一つ一つをどうするかということにつきまして、全部につきまして目を通しているというようなことはやっておりません。
  127. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 自治省の立場において、少なくとも都道府県知事が機関委任を受けて信用組合に対する監督をやっているわけだけれども、それについては全くノータッチの形なんですが、この点について自治省として、地域社会の発展、そういうような問題について、その中で重要な地位を占めている信用組合というものに対して、やはりこれの育成強化というようなことについて、たとえば県なり市町村なりで預託金をそういうところにやるというようなことを通じて、地域社会発展のために金融面から協力を大いにしてもらいたいというような考え方、そういう程度考え方でよろしいけれども、権限の問題やなんかは、法律上の見解ではなしに、地方自治全体、そして地域社会を発展させていく、地域住民の福祉を向上させていく、あるいは地域における産業を開発し発展させていくという立場で、これは大蔵省の関係なんだということで、自治省としてはそういう面については何の考えも持たない、そういう立場で今日までも来ておるし、これからもそういう立場なのか、この点について伺っておきます。
  128. 遠藤文夫

    ○遠藤説明員 基本的に申しますと、たとえば御指摘にありましたように、当該一つの団体がどのような形でもってお金を保管するというようなこととか、どういうような形の地域振興策を講ずるかというようなことは、そのこと自体がむしろ地方団体が住民の批判のもとに決定するというのが地方自治としての望ましいあり方だという形にいたしておりまして、そのような具体的な地方団体が行なう行政の内容につきましては、先ほど申しましたように行政運営の一般の見地からする、たとえば法律的にということはございますけれども、具体的にその内容まで立ち入るということはなるべく差し控えるということのほうが、これは原則としてでございますけれども、私どもの立場からいえば望ましいあり方ではないか、かような考え方で一般にはおります。
  129. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 行政課長とやり合っておってもちっともらちがあきませんから、これはこの程度にしておきます。  そこで本題に入りますが、この二法案について審議を始めましてから、特に預金保険の問題について先ほど大臣にも質問をしたわけですけれども、やはり預金者保護という問題に徹底してやるという答弁があったわけでありますが、しかしそうはいっても、国際化の進展あるいはその他もろもろの経済情勢の目まぐるしいような進展ということに応じて、やはり金融機関自体も効率化をしていかなければならないし、そういうものに対応する再編成というようなものもはかっていかなければならない。そういうためには、やはり効率化の大きな柱は競争原理の導入だ、こういうような問題が当然考えられておるわけでありますが、その中の預金者保護預金保険制度の創設、やはりこういうことになろうと思うわけであります。そこで金融再編成ということは一つのポイントになるわけだし、あるいはまた大蔵省の末端行政の財務局あたりで、この再編成というものをスケールメリットと同義語に解しているかどうかは別として、そういうような方向でかなり強い指導もなさっておるという面もぼつぼつ聞かれるわけです。そういう中から、いま銀行局として考えておるこの効率化の問題を中心にし、また競争原理の導入というものを中心にして再編成、この再編成にも、効率化において言われると同じように、金融機関そのものの効率化あるいは金融政策の効率化、また金融機関の効率化ということが言われるわけでありますが、再編成構想でもやはりそういう三つの面があるだろうと思うのです。そういうようなもので一体再編成というものはこれから先どういう方向でなされるのか。この点をひとつ銀行局長考えをこの際お聞きいたしたいと思うわけでございます。
  130. 近藤道生

    近藤政府委員 金融再編成につきましては、御高承のとおり金融制度調査会におきまして最も難論がたくさん出た部分でございます。その際に再編成の中身として論じられましたことは、主として金融機関の合併及び金融機関の業務提携の問題であったわけでございます。  まず合併の問題につきましては、国民経済的観点から見まして、規模の利益を生かし得るような合併は望ましいということが結論として出されました。ただその場合にはあくまでも金融機関の自主的な判断にまつべきである。これは先ほど大臣からも特に強く御答弁申し上げましたとおりに、金融機関の自主的判断ということがあくまでも最初になければならないということがいわれたわけでございます。それからさらに合併につきましては、寡占化が進んで有効競争が阻害されるような弊害があってはならないという条件が強くつけられたということと、もう一つは、系列化があまり顕著にあらわれるようでは困るという、この二つの条件がつけられたわけでございます。それから、結局金融機関といたしましては、公共性の自覚のもとに、合併の効果を国民経済全体の利益に還元するように配意しなければならないということが最終的に結論としていわれております。  もう一つの問題でございます金融機関の業務提携の問題でございますが、これは預金業務とか電算機活用というような面で業務の提携をはかってまいるということは、これは合併よりもさらにいいことであります。これによって、人事とか給与にまつわる問題を回避しながら経営の効率向上をはかる方法であるから、さらに望ましいという結論が出されております。  このようなことで、金融の再編成についての金融制度調査会の議論は一応結論づけられたわけでございますが、私どもといたしましても、金融機関同士の競争というものは、一般企業の競争とはやはりいろいろな面で違う面がある。特に現在の日本におきまする金融機関の一般企業に対する力関係等から見まして、取引先に対して非常な影響力を有するというような特殊な状況から見まして、この金融機関の間の競争というものには、特に公共性という観点が顧慮されなければならないということを痛感いたしております。したがいまして、この再編成の過程におきまする競争も、「適正な競争原理」ということを特にうたっておりますが、公共性の立場に立脚した適正競争が行なわれて、金融再編成が自発的に、自主的に進められるということが最も望ましいことであると考えておるわけでございます。
  131. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 それで、もうすでに合併転換法はつくられて、自主的な立場でのスケールメリット、正しい意味での、適正なというか、そういう意味でのスケールメリットを追求する場合、いまおっしゃったような形での道は、もう合併転換法でつくられておるわけですね。  そこで、その際にも議論になりました、当時銀行同質化論、均一化論というようなものもありましたし、そういう再編成の一つのポイントであろうと思うのですが、金融機関全体が同質化するあるいは一般化する、こういうような方向と、非常に特殊な中小企業専門金融機関として、相銀、信用金庫が指定をされている、そういうように機能分化がなされたといいますか、そういうことになっている。その他の金融機関は、長期信用銀行なり興長銀さらに信託銀行、こういうようなものは一そうそういう方向において進められていくものなのか、都市銀行都市銀行としてどうあるべきなのか、こういう問題は再編成の中でこの先どういうように考えられるべきものなのか。さらに、それらの中小企業専門機関の残った銀行が、金融機関が、同質化していくような方向に再編成の方向、これは一つの面ではあるけれども、その辺のところ、それからさらに信託関係は信託で、特にいわゆる信託財産を預かって信託者に受益を与えていく、こういうようなものを考えていくのか、その辺のところはどういう方向でいこうとなさっておるのか。
  132. 近藤道生

    近藤政府委員 この点につきましては、金融制度調査会の議論に、当初のころと終わりのころとでだいぶんあるいはニュアンスの相違が見られたかとも思うのでございます。あるいは個人的な差であったかもしれませんが、一時は全面的ないわゆる相互乗り入れというようなこと、それによってただいま御指摘のありました同質化という方向に向かうかというような議論もかなり盛んに行なわれたわけでございますが、結局答申の段階におきましては、部分的な相互乗り入れという形になったわけでございまして、その表現は、「各種金融機関の専門的機能については、今後ともその役割に期待するところが大きいので、専門金融機関の根幹に触れ、あるいはその存立を脅かすようなことは避けるべきであり、各種金融機関がそれぞれの主たる業務分野で役割を果たしながら、その周辺分野については適正な競争原理が導入されることによって、全体としての健全な発展がなされることが望ましい」という結論になったわけでございます。
  133. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そうしますと、この金融機関の特殊性あるいは専門性というようなものは、大体今度の貸付信託法の一部改正でも、住宅ローンもやれるとかあるいは流通機構改善のためにも貸し出しができるとか、そういうようなことでこれの方向一つとられるわけです。そういうことになりますと、若干相互乗り入れ的なものはあるけれども、この辺のところで大体この問題について、同質化論あるいは特殊性、専門性というようなものについての一区切りといいますか、そういうものについての銀行行政としての、金融行政の一つのあり方として、そういう面での再編成という問題としてはもうこの程度で、いまのところは大体一つの段階として落ちついた形だというような状態であると考えてよろしいわけですか。
  134. 近藤道生

    近藤政府委員 大体におきましてそのようにお考えいただいてけっこうかと存じますが、ただ、ただいま読み上げました文章に盛られております趣旨は、専門性、特殊性というものは十二分に尊重はするけれども、そこに安住しては困る。やはりそれぞれの専門性、特殊性を発揮しながらも、それ自体の体質改善、そのための適正な競争というものは絶えず行なわれてまいらなければならないという趣旨でございますので、ここで完全にストップという趣旨ではございませんで、そういう意味からの見直しというものあるいは各業界相互間の刺激し合いあるいはこの業界自体の自粛自戒、そういったようなことが絶えず繰り返し行なわれていかなければならないという趣旨が一方にあるわけでございますので、今後ともその方向での動きは、緩慢ではございましょうけれども、進むべきものであると考えておるわけでございます。
  135. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大体わかりましたが、スケールメリットの問題が過度に追求をされていくという中では、やはりこの中小企業金融機関、まだ体質の弱い信用金庫というようなところは、やはりこのスケールメリットの追求という面ではマイナスになっていくということもあるわけですね。したがって、これは相対的にでありますが、そういう面もあるというようなことから、特に最近中小企業の長期資金を安定的に供給する方策というものが非常に重要視されて、需要も増大をしている。しかし資金力がなかなかこれに伴わぬ。これにやはり効率化をさせていく、あるいはまたイコールフッティングの上に競争原理を適用していくというのは、これは公平の原則から当然のことだと思うのでありますが、そういう面でややハンディキャップを負っている今日の実態の中で、この信用金庫等に対する長期資金供給、需要というものが非常に強くなってきているということに対して、この委員会でもこの法案の審議を通じて、少なくとも信用金庫債ぐらい出せるような環境というものをつくったらどうか、そうしてそういうことを実現させてやるべきではないのかというようなことが言われておるし、さらに財政資金を信用金庫にも投入をするというような道を開いたらどうかというようなことが一つ言われておるわけです。この点についてのどういう前向きのお考えがあるのか、このことをお聞きいたしたいわけであります。  河野副総裁がお見えになりましたものですから、ついでに伺っておきますが、この信用金庫を対象にした日銀の取引ですね。これなどにつきましても、かなり弾力的に今後取引をし、また日銀から信用金庫も貸し出しを受けられるというような方向に何らか道を開いて当然いいのではないか、この辺のところを河野副総裁からもひとつお聞きをいたしたいわけであります。
  136. 近藤道生

    近藤政府委員 中小金融機関につきましては、昨日の本委員会における質疑の際にも御答弁申し上げましたように、いろいろときめこまかい配慮をいたしておるわけでございます。ただいま御指摘のございました全信連の債券発行の問題、これにつきましては、他の債券発行銀行との関連とか、それから全信連のあり方の問題、債券発行の具体的メリットの有無というようなこと、いろいろ問題もございますので、金融制度全体の中で慎重に検討する必要がございまして、早急に結論を出すことは困難であると存じております。  それから財政資金の預託につきましては、先ほど大臣から御答弁を申し上げたとおりでございます。  なお、あるいは日本銀行からお答えいただいたほうがいいかとも思いますが、信用金庫日本銀行との間の預金取引、貸し出し取引、いずれも中小金融機関の取引の数はたいへんふえてまいっておりまして、たとえば相互銀行で申しますと、四十年、四十一年ぐらいが大体五十行台でございましたが、ただいまは六十八行、それから信用金庫が四十一年、四十二年ごろ大体三十四とか四十八とかいう数でございましたが、現在は百十四行の預金取引にまで拡大されております。貸し出し取引につきましても、相互銀行の場合現在二十二行、信用金庫も全信連を含めまして三金庫ということに相なっております。
  137. 河野通一

    ○河野参考人 いまお尋ねの点につきましては、銀行局長からお話がございましたことと大体同じでございますが、信用金庫を含めて中小企業の全金融機関につきましては、私どもとの取引は実体の成長に伴いまして逐次これを拡大いたしてまいりたい。単に預金取引だけでなくして、いまも局長から御説明がありましたように、貸し出し取引につきましても、相互銀行信用金庫——信用金庫は連合会を含めてでございますが、逐次これを拡大いたしてまいりたいと考えております。どのくらいのテンポでやっていくかということは、これはこれからの実情に沿ってでございますけれども、だんだんお話のような方向で逐次着実に進めてまいりたい、かように考えております。
  138. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 あまり時間がありませんし、質問もあらかたはもう出ておるわけでありますが、今回の預金保険機構の出資金が四億五千万円。アメリカの預金保険会社の場合には政府と連銀の出資が三億ドルで出発をした。三億ドルというと、三百六十円レートで考えればこれは一千八十億という膨大なものになるわけですね。まあアメリカ経済日本経済の、特に金融面での差もこれほどはないだろうと思うのですが、いささか出資額が少な過ぎるではないかという感じがあるわけです。さらに保険金限度額、これが百万円までということになる。これも向こうでは一万五千ドルということで、まあこの点はやや経済規模に比例した、バランスしたものがあるかと思いますが、しかしこういうのをつくるからには、やはり零細な預金者、大衆預金者といいますか、そういうものが、日銀の調査にいたしましてもまた企画庁あたりの調査にいたしましても、もうすでに——一世帯当たりで考えていいだろうと私は思うのですが、そういう中でもう百四十万であるというようなことにもなっておりますから、もちろんこれは一人当たりということですから、場合によってはそれ以上にもなるわけですけれども、こういうことで、百万円というものについてはやや少な過ぎる感じがするわけですが、この点についてもう一度伺っておきたいと思います。
  139. 近藤道生

    近藤政府委員 アメリカの場合に比べまして、たとえば出資金等はこれはだいぶ古いころの出資の額でございますし、それからもう一つは、今回の日本預金保険制度の非常に大きな特色は、たびたび申し上げておりますように極力簡素な組織にいたしまして、保険料徴収保険金支払いのみに仕事を限るというたてまえでございますので、その意味から資本金につきましてもできるだけ少ない額ということで発足をいたしたわけでございます。  次に、百万円という限度額でございますが、これは全体の預金者のうちの、個人で申しますと九七%までが百万円以下である。金額にいたしまして百万円以下の金額が全体の八三%であるというようなことからまいりまして、大体万一の場合にほとんどの者の預金を返せるということではなかろうかということから定められましたわけでございます。さらにアメリカの一人当たりの金融資産保有額あるいは日本の保有額との比較が、大体現在六・六対一くらいでございますので、そのような面から見ましてもまずまず百万円程度でいけるのではなかろうか。ちなみに、御高承のとおり、ドイツでも邦価換算九十八万円ということで現在この制度が動いておるわけでございます。そういったようなことで、いまのところは、当分の間は百万円で十分であろうかというふうに考えるわけでございますが、ずっと将来、まあ御指摘のような事態を生ずれば、そのときには十分検討をいたしたいと考えております。
  140. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 けっこうです。  それから、阿部委員の質問でしたか、銀行局長は、架空名義や無記名預金、こういうものに対しては一切やらない、こういうようにお答えになったと思うのでありますが、十一月段階の新聞によりますと、架空名義や無記名預金も百万円以内ならばこの対象にするのだというような記事が出ておったわけであります。その点は間違いなく、架空名義の場合と無記名の場合、その取り扱いに差があるか。その点を再確認の意味ではっきり御答弁をいただいておきたいと思います。
  141. 近藤道生

    近藤政府委員 これは政令でこれから定めますところでございますので、おそらくはお目に入りました十一月段階での記事は単なる推測記事であろうかと存じます。架空名義預金と無記名預金というものは、これは真の預金者がだれであるかということを明確にすることが技術的に困難でございますから、もし保険金支払いの対象にいたしました場合には、保険金限度額を設けた趣旨が全く没却されるということになるおそれがございます。したがいまして、無記名預金、架空名義預金は政令によって保険金支払いの対象から除外をいたすつもりで現在準備を進めております。
  142. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 この問題はあまり議論をしたくありませんけれども、架空名義預金であろうとあるいは無記名預金であろうと、預金をしている事実には変わりないんですね。その者が、実はこの無記名の分は私なんです——銀行でも、現在の銀行のビヘービアの中から、匿名でもいいのですよといままで指導してきたようないきさつがあるわけです。そういうものが惰性的にあるのだ。そういう場合に、そのものをぴしゃっとやって、法律上の争い——まあ制度としてはそういうものをつくることができるかもしれないが、これが民事上の裁判段階に移行するというようなことになってはたしてどうであろうかというような点については、もっと煮詰めて、それが完全にその本人であるということがその無記名預金について確認をされるということになるとすれば、少なくともその一口の無記名——たくさんやっているといううな場合には、それはそのほかのものはいまおっしゃった趣旨によってかまいません。しかしながらその一口についてはこれは入ったってやむを得ないのじゃないかということに、最終的には今度の農地の問題と同じように、最高裁判決ではそういう軍配があがる可能性もあるのじゃないかということを考えますと、その点はやはり慎重に取り扱っていただかなければならないだろうという問題だけきょうは指摘しておきます。  もう一つ、これはだれも触れられなかった問題として、前から社内預金というものがあって、これがなかなか保護されないということでありますが、この問題についてはどういう扱いになるか。これは一切対象にならないのか。これがやはり一兆円をおそらく軽く突破しているのが現実だろうと思うのです。数年前にも一兆円になんなんとするという議論をしているのですが、いま現実に数字はつかんでおりませんが、そういう状態にある。しかもこれが、こういう金融がかなりタイトのときにはふえる傾向にある。そういうような中で、倒産をした会社で従業員がみんな預金をしておったものが何の保険もないのかどうか。この点についてどういうようにお考えか。
  143. 近藤道生

    近藤政府委員 社内預金につきましては、従来から私どもの基本的な考え方といたしましては、二つの点で望ましくないと考えておるわけでございます。一つは、金融調整のうち外にある金と申しますか、うち外に立つものであるということでございます。もう一つは、銀行行政の一番の目的でございます預金者保護という考え方からまいりまして、この債務者預金は、いざという場合に預金者と申しますか預託者に払い戻せないおそれがある。その二つの点から好ましくないという基本的なたてまえをとってきておるわけでございます。今回の預金保険制度の対象にはもちろん入れておりません。
  144. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 好ましくない社内預金が逐年どんどん増大しているというような現況にあるわけでありますから、これについて何らか預金者を保護する施策というものを考えていかなければならない。これはその企業の内部ベースでやっていることですから、全体の金融行政にはなかなかなじまない面があるけれども、これに対する何らかの保全の策を講ずるか。これは一歩引き下がった形だけれども、そういう社内預金をなくするといっても、前に田中大蔵大臣とこの問題で論議したことがあるのですが、もうすでに一兆円に近いようなものをいまにわかになくするということは、日本の企業に及ぼす影響がまことに甚大であるというようなことでなかなかむずかしい、こういうことでそのままになっておるわけでありますが、この点について、当時はこういう一般的な金融機関における預金保険制度というものはなかった、そういう中からもこの問題が出て、これに対する何らかの預金の保全対策というものを講ずべきであるというような議論はずっと続いておるわけでありますが、これについてはさらにひとつ、何らか善意の預金者を——従業員預金者であるけれども、企業倒産と同時にみんな不払いになる、こっちは全くあれだからということで、この制度をつくることによって社内預金がだんだん減るということにあるいはなるかもしれないけれども、それでもなおかつならぬというような事態も予想されるわけであります。企業一家、企業意識というようなものが非常に日本の従業員の場合に強いわけでありますから、おそらくそれほどのシフトがこっちに来るということにはならない見通しである。そういう面についての配慮というものを、この預金保険制度を一般的につくった段階において、さらにその保護に対する何らかの措置というものを、もう一ぺんひとつ積極的な立場で検討をしていただきたいと思うわけであります。  時間がございませんので、私の質問はこれで終わります。
  145. 毛利松平

    毛利委員長 堀君。
  146. 堀昌雄

    ○堀委員 最初に、日銀副総裁はお時間の都合もありましょうから、日銀副総裁に関する部分から質問をさせていただき、そのあとで政府に対する質問をまとめて行なうようにいたしたいと思います。  まず最初に、十三日にアメリカの公定歩合の引き下げが再びまた、再びと申しますか、また行なわれたわけであります。この前佐々木総裁に御出席いただきました際にも、アメリカの最近の情勢を見れば近いうちにまた公定歩合の引き下げがあるだろうと思う、こういうふうに私の考えを述べたのに対して、総裁もそういうことがあり得るだろう、こういうお話でございました。その際、それでは日本の公定歩合はどうなるだろうか、こういう問題については国内の情勢を十分見きわめた上で判断をしたい、こういうお答えでございました。確かに、公定歩合の問題というのは海外的な要因もさることながら、本来的には国内的な問題だと私も考えておりますので、その御答弁はそれでいいと考えておるわけでありますが、ただ、このアメリカの公定歩合の引き下げは、今後いろいろの面でやはり日本の通貨関係あるいは為替の関係には影響を与えずにはおかないだろう、こういうふうに実は判断をしておるわけであります。そこで、国内問題はさておきまして、国際金融上の問題として予想せられる各種の問題があると思いますけれども、これらについて当面日本銀行としてお考えになっておる、予想せられる問題点及びそれに対処する対処のしかたについて、最初にちょっと伺っておきたいと思います。
  147. 河野通一

    ○河野参考人 お答えを申し上げます。  いま御指摘のように、十三日にアメリカは、去年の十一月から数えて五回目の公定歩合の引き下げを行なったのであります。もっとも、これは当局が説明をいたしておりますとおりに、むしろ市中の短期金利が相当下がってきておる。たとえばBAにしてもTBにいたしましても、そういった市中金利の非常な低下の傾向に追随いたしたものであるということを言っております。またそのとおりだと思います。したがいまして、公定歩合の引き下げ自体が、実体的な問題としてそれ自体が日本経済にどうという問題でなくて、公定歩合の引き下げということにあらわれておるアメリカの金利の低下の状況自体に実は問題がある。お話しのように、だんだん日本経済が国際化してきて、世界の中で相当な自由化というものが進んでまいりますと、世界じゅうの国で起こってくるいろいろな金融上あるいは金利上の問題が、従来と比べてわりあいキーンに日本経済あるいは金融に影響してくることは御指摘のとおりだと思います。したがいまして、アメリカの現在の公定歩合に象徴されておるような金利の低下が、日本経済に非常に影響を持ってくることは否定できない。もっとも、これは御案内のようにヨーロッパと違いまして、日本ではあまり、為替管理その他の関係でそれほどストレートに影響が及ぶということはないわけでありますけれども、それにいたしましても影響が相当くることは間違いありません。  いまいろいろな問題がございます。どういう点が問題になるかという御指摘でありますが、これは日本経済全体に広く影響がありますが、新聞等で指摘されており、また、たびたび堀委員から御指摘もありますように、さしあたりの問題はやはり、日本の円金融によってまかなわれておったものが、向こうの金利が下がれば向こうのドルを使ったほうが業者としてもあるいは銀行としてもそのほうがコストが安くなるということで、いわゆるドルシフトということばを使っておりますけれども、ドルへ移っていくという問題がさしあたってあると思います。この問題を私どもは決して無視するわけにいきませんし、先ほど指摘のように、佐々木総裁から申し上げたように、われわれの公定歩合操作あるいは金融政策の基本というものは、基本的には国内の情勢ということでありますけれども、さればといって、国外のそういう情勢に対して目をつぶって、あるい軽視していいということでないことは御指摘のとおりでございます。  しかしながら、いまのドルシフトの問題に限って申しますならば、これは輸出の面におきましても輸入の面におきましても、ことに輸出の面におきましてはアメリカの——これは金利は御承知のようにいろいろな要素がありますから、たとえば為替銀行のマージンでありますとか、スワップをいたしますときのコストでありますとか、それをどういうふうに見るかということで的確には実は計算ができない、これは御承知のとおりでありますが、少なくとも輸出につきましては、BAが五%台になったらすでに計算上はこれはドルに移る状態になる。輸入につきましては、これは御承知のように、去年の六月ですか、あのときのいろいろな事情で円金融に一部直したわけですが、これがやはりBAが大体四・二五——現在四・二五でございますが、四・二五というところが計算上は大体境のところだと思います。もっとも、先ほど申し上げましたように、銀行のマージンあるいはスワップのコスト等をどう見るかによって、その辺の若干の差は起こりましょう。そういう状態でございますが、私どもは、いまの状態におきましては、輸出におきましてはそう大したシフトが起こらないと思います。これはある程度は起こるかと思いますが、大したものではない。輸入につきましてもいまのところはまだ、私ども聞いておるところでは、業者段階である程度起こっておるかとも思いますけれども、まあたいしたものではないように思います。  かたがた、日本の国際収支、ことに外貨準備がどんどんふえておる状態のもとにおいて、これがまたドルシフトいたしますと、そういうことがさらに外貨の準備を増加していくことによって、日本経済なりあるいはいろいろな問題を起こすおそれがあるという点から、いろいろこの点について非常に心配をされる方が多いのでございますけれども、私どもは、注意はしてまいらなければならぬと思いますが、いまの状態においてそういったことがかりに起こっても、私どもはそんなに神経質に考える必要はない。  したがいまして、基本的には、今後のアメリカのBAレートあるいはTBは、個人的な見方ですけれども、私はもうそんなに下がらないのではないかと思います。BAレートはあるいはひょっとしたらもう少しは下がるかもしれませんが、まあその程度のところなら、いろいろな取引関係等を考えてみまして、いまの日本経済全体に決して悪い影響を及ぼすという心配はいまのところないと私どもは考えております。  したがいまして、もちろんこれは御質問にはないのですけれども、そのゆえをもって日本の公定歩合をさらに下げたほうがいいとか、これは下げることを考慮するかという問題は、いまのところ私どもはそういうことは全然考えておりません。
  148. 堀昌雄

    ○堀委員 いまお話しのように、ドルシフトの問題というのは、私もそう神経を使うことはないと思っておるのであります。外貨準備のドルがふえたということだけが問題ではないと思うのでありまして、特に日本の場合には、輸入数量に対する外貨準備の比率というものはまだまだ西独その他に比べれば問題にならないほど小さいのでありますから、私はそのシフトの問題はあまり気にしていないのですが、今度のニクソンの教書その他によっても、結局アメリカの側で言いたいことがどうも二つある。一つは、黒字国はもうちょっと考えろという問題と、もう一つは、為替変動幅の拡大をやりたいのだ、こういうことが二つ出ているわけですね。この黒字国の問題というのはわれわれは別の問題として考えなければなりませんが、私は、いまのような低金利政策をアメリカがとっておる限りは、アメリカのドルは、まあ最近は直物はみんな天井にきているわけでありますけれども、そういうことにならざるを得ないのじゃないか。そうすると、これまでの日本政府日本銀行もそうだったと思いますが、この為替変動幅拡大には、日本は御承知のように反対してきているわけですね。しかし私は、どうもここまでくるとそれはどういう形になるか、クローリングバンドのようになるのかどうかわかりませんけれども、やはり為替変動幅拡大の問題というのはこの次に当然出てくる問題だと考える必要がある、こう考えますけれども、これは副総裁いかがですか。
  149. 河野通一

    ○河野参考人 お話しのように、今後アメリカがいまのような政策を続けていく、おそらく私は当分続けていくのじゃないかと思いますが、そうした場合に、為替変動幅の拡大という問題が起こってくるではないかという御指摘だと思います。おそらくそういう問題が起こってくるかもしれないということは、私どもも考えられます。ことに最近は、御承知のようにEEC諸国で通貨統一という問題に関連して、少なくとも統一通貨ということがいつできるか、これはわかりませんけれども、その域内通貨の変動幅を縮めていこう、このことだけはおそらくある時期にはできるのではないか。なぜこういうことが起こってきたかといえば、これは御承知のように、アメリカのいまの政策に対する一つのやはり自衛という立場が非常に強いと思うのであります。こういう問題がだんだん熟してまいりますると、これは何をねらっているかといえば、結局域内の通貨の変動幅を縮めるということは即域外に対しては弾力的に考えようということだと私は考えるのでありますが、そういうことがだんだん起こってくる。  そういたしますと、日本だけがいつまでも固定相場でいけるかどうかという問題はなかなかむずかしい問題を持ってくるおそれがあるということは言えると思います。ただ、現在におきましては、まだこれらの問題がどういうふうに推移していくか、私どもは見きわめがはっきりつきません。いろいろ、こうなるのじゃないか、ああなるのじゃないかということは推定はいたしておりますけれども、まだはっきりしたことはつかめない。したがって、今後の推移に対して、あらゆる場合に処してこれらの問題にどう対処したらいいか。いままではただアメリカとの関係、ドルとの関係だけをどうするかということが主たる考え方でありましたけれども、今後はそういったヨーロッパの通貨というものが一種のブロック——若干の変動はあるけれども、とにかくブロックをしていこうという状態になってくると、このヨーロッパにおけるブロックされた通貨と、アメリカのドルとそれから日本の円というものは、三角といいますか、そういう関係の問題として今後考えていかなければならない。いま私どもは別に、いままでとってまいりました国際通貨に対する考え方を変えるということは考えておりませんけれども、そういった今後の情勢の推移に対して、できるだけ適応していけるような対策は常時準備をし、研究していかなければいけない、かように考えております。
  150. 堀昌雄

    ○堀委員 いま、まだ二月でありますから、急にこの問題が具体化してくるとは思いませんが、やはり十一月ごろになれば、このドルの問題はかなり問題になる時期が来るのではないだろうか。カナダは御承知のようなかっこうになっておりますし、私はどうせ日本も、いまは固定相場だといってがんばっておりますけれども、やはり変動幅拡大に踏み切らざるを得ないところに来るのじゃないだろうか、こう思うわけであります。そういう意味では、今後も国際会議がいろいろ行なわれるわけでもありますから考えていただきたいわけですが、どうも私の感じとして、行く末を見ておりますと、ドルシフトが起きて外貨準備がぱっとふえたから問題が起きるのじゃありませんけれども、おそらく前段に変動幅拡大が来て、その変動幅拡大の、日本は常に強いところにくっついちゃって動かなくなるということになれば、これは当然日本考えるべきだ。これは単にアメリカだけの問題ではなくて、要するにグローバルな問題として考えなければならぬ時期が来るんじゃないだろうか、こう思うのですね。  その際に、私はちょっと感じるのですけれども、最近ドルを持っておる国の中でも、西ドイツはそうでありませんけれども、オランダとかベルギーだとかはけっこう金にかえていますね。日本は御承知のように、こんなに金を持っていない国はないのですよ。そしてまたずいぶんドルがある。少しは金にかえたらどうか。あまりドラスティックにかえるのはこの際ですからあれですけれども、世界的なそういう展望が私はやはり避けられないだろうと思うのです。避けられない理由は、やはり日本の輸出競争力が強いという問題にあるわけですから、そこを避けられないとすれば、まるまる損をしなくても、少しは金にかえるということも考慮していいのじゃないか、こう思うのですが、日本銀行はどういうお気持ちでしょうか。
  151. 河野通一

    ○河野参考人 なかなかお答えが、デリケートな問題なものですから的確なお答えは差し控えさせていただきたいと思うのでありますが、お話しのような方向はわれわれとしてもだんだん考えていかなければならないし、現に考えてきております。ただ、問題は程度問題であるし、対外的方向等も考えなければなりませんし、しかも現在、名目的にいえば金と通貨というものは必ずしもそう密接な関係でもございませんしいたしますので、私どもはいまの状態が非常に悪い状態日本の金の状態が非常に悪い状態だとも考えておりませんが、そういう配慮は今後頭の中に置いていかなければならぬと考えております。
  152. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に、金の問題は多少問題が起きてきたとしましても、確かにまだアメリカはSDRの引き出し権なりIMFのゴールドトランシュなりで、三十五億ドルくらいありますから、そう急なことが起きるとは思わないのですが、ちょっとここで一つ伺っておきたいのは、私どもの党は実はSDRの創設に反対をしておったわけですね。特に私は強く反対をしておったわけでありますが、その理由は、結局SDRができてきた経過というのは、なるほど、世界的な流動性に対して、こう言われておりますが、実は私はやはりドルに対する補強だと思っておりましたし、ドルに対する補強をこういうペ−パーマネーでやるということは世界的なインフレを起こす非常に大きな原因になるのじゃないかということで、私は賛成しなかったわけですが、ずっと全体の経過を見ておりますと、どうもこの制度は、ドルを補強はしても限界があることを——おそらく、私は、このSDRの問題は、これ以上引き出し権をつくるようなことにならないのじゃないか、世界的に見てもそういうことにならないのじゃないかという気がしておるのでありますが、今日的段階におけるSDRの評価といいますか、私が申し上げているようなことは、それは違うのだというようなことなのか、多少はそういうこともあるなということか、これもちょっと微妙でありますが、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  153. 河野通一

    ○河野参考人 どうもこの問題もなかなか微妙な問題でございまして、的確にお答えを申し上げかねると思います。しかし、そういった問題をだんだん再検討しなければいかぬという空気がヨーロッパの一部に出ていることは御承知のとおりであります。ことにフランスのジスカールデスタン蔵相は、去年、SDRというものはどうしてできたかというと——SDRにつきましてフランスの立場というのは御承知のとおりでありますが、これは要するに、アメリカが国際収支を改善していくならば国際流動性が欠けてくるおそれがある。したがってそういうものを補強するためにSDRというものは考えられてきたのだし、自分たちも賛成した。しかしアメリカが相変わらず国際収支を赤字にしていくのでは、国際流動性というか、そういうものはどんどんヨーロッパへ入ってくるのではないか。それじゃSDRをつくった当時、要するに国際収支をアメリカがきちんと改善をすると流動性が足りなくなる、それを補う意味においてつくったという、その本来のもとに戻って一ぺん再検討をする必要があるのではないかということを、公の席上で言っておることは御承知のとおりであります。そういったことをみんなが言っておるわけではございませんが、そういう空気もある。その空気があるということだけを御紹介申し上げることでお許しをいただきたいと思います。
  154. 堀昌雄

    ○堀委員 副総裁の御発言、影響するところが大きいと思いますからその程度にとどめておきますけれども、要するに、私どもはこの問題を考えるときには、どうも率直にいって私は、世界がやや対米追従といいますか、そういう傾向が強かった。しかし、今日私どもはアメリカに対して言うべきことを言わなければならぬところに来ているのではないだろうか、御説ごもっともでいくことが必ずしもアメリカのためではないんじゃないかという気が実は非常にしておるわけであります。しかし、そうは言っても、ある程度のといいますか、国際協力というものを無視していいと私は申しておるわけではありませんけれども、今後のそういう為替変動幅の問題にしても、各種の問題というのが実はどこから来ているかといえばアメリカから来ておるという点については、ひとつ政府当局及び日本銀行としても十分——日本の言うべきことをフランスが言っているから、まあ黙っておってもわかるだろうという話でないような取り扱いをしていただく時期が来るのではないかと思いますので、その点は特にそういうことでお願いしておきたいと思います。  今度は国内問題でございますが、実はこの前に佐々木総裁がお越しいただきましたときに、日本銀行がいま通貨供給手段としてとっておられるところのオペレーション政策のオペ種がどうも不足をしてくるのではないか、少し検討が必要でしょうという問題提起をいたしました。総裁も全くそう考えておる、こういうお話でありましたが、最近新聞が伝えるところによりますと、確かにそういう、特に都市銀行にオペ種が不足をしてくるということで、優良手形を買いオペの対象にしたいということが日本銀行でかなり固められつつあるという報道が伝えられておるわけですね。これは一体そういうふうにすでに検討を進められておるのか、お考えが固まりつつあるのか、この際ちょっとこの問題を明らかにしていただきたい。
  155. 河野通一

    ○河野参考人 金融調節のやり方につきましては、たしかあれは三十七年でありますか、十年ばかり前に始めましたあの方式の基本は、いま私どもは変えるつもりはございません。しかし、いま堀委員から御指摘になりましたように、いまのところ当分は別に差しつかえないのでありますけれども、いまやっております方式でいきますと、いま御承知のようにオペレーションの対象は国債と政保債でやっておりますが、量的に若干窮屈になる、足りないというところまでいきませんでしょうが、窮屈になることは確かでございます。  これを補う方法として幾つも考えられるわけでありますが、一つは市中に対する貸し出しの限度を拡大するということ、もう一つは有価証券の売買の対象を拡大するということ、それからもう一つは、御指摘になりましたような手形の売買という形でそういうことがやれる、この三つのことをいろいろ検討いたしております。  手形の売買によって金融の調節を行なっていこうということは、いま申し上げましたように一つの案として、考えられる方法として、私どもの検討の対象にはなっておることは事実でございます。しかし、これはなかなかいろいろ問題がございます。たとえば市場の問題、一番いいのはやはり、かりにやるとしても手形市場というものがあったほうがいい。その手形市場というものとコール市場というものとどういうふうに考え、どういうふうにそれを処理していったらいいかという問題、これはまたコール市場自体の正常化の問題とも関連いたしてまいりますし、まあそういったいろいろな問題がございますので、まだ的確な結論は実は得ておりません。  したがって、先ほど来申し上げましたように、いま一両日中にきめなければならぬ問題でもございませんし、やはりそういったことをやっていきますためには、市場の各方面のそういった問題に対する考え方、あるいはまた、かりにやるとすれば整備をやらなければならぬ問題等もございますから、いま三つの問題をもうしばらく時間をかけて検討いたしたい。検討の対象になっておることは事実でございます。
  156. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、要するに対象債券の拡大の点は、少なくともかなり公的なもの、たとえば電力債であるとか金融債であるとかあるいは公募地方債、この範囲はけっこうだと思うのですね。ただ、いまの手形問題というのは、これはちょっと問題があると実は思っておるわけです、第一点は。というのは、いまお話しのように、市場ができておれば価格をきめることは簡単でありますけれども、一体手形の価格をどうするか。市場もないのに日本銀行が一方的にきめるなんということは、これは私は非常に問題があると第一考えておりますし、またそこまでしなくてもほかに方法があるだろう、こう思うわけでありますが、いまお話しのように手形割引市場などというものがそう簡単にできる性格のものだとは私は実は考えておりません。これは毎々私は当委員会で申しておりますように、金利がほんとうに自由化をしてまいりましたならばこの問題はきわめて簡単でありますけれども、私は何回か声を大にしてやってきましたけれども、まだ公社債市場すらできない状態で、一挙に手形の割引市場などをつくろうと思ったってできる性格のものではないだろう、私はこう考えておりますし、いまお話しのようにコールが——これからこれを少し伺うのですが、コールそのものがこれまた、かつてはフリーなマーケットであったものがフリーでなくなっておるということから見ましても私は手形割引市場なんというものはなかなかできるとも思わないし、そういう無理な問題をあまりそうしないほうが——私はやはり経済というのは自然にものが処理されるように、あまり人為的な方法を考えるというのは適切でないと第一点考えております。  もう一つは、いまのオペレーションというのは、多少ほかにもありますけれども、主として都市銀行だけが対象になっておるわけでありますね。そこで、これは実は預金保険にも関係するのでありますけれども、この間も参考人のおいでになったときにちょっと大蔵省に伺ったのでありますけれども、現在の都市銀行の預貸率ですが、そのときに大蔵省お話しになったのは、都市銀行上位行は九五・五%の預貸率、中位行が一〇一・七%の預貸率、下位行が九四・二%で、平均して九六・九%というのが都市銀行の預貸率だ、こういうふうになっておりますね。実はいまこの中でちょっと伺いたいのは、この中位行一〇一・七%となっておるのは、これはクレジットラインをこえているのがあるということか、クレジットライン以内でこうなっておるということなのか。そこのところを最初にちょっと伺いたいのでありますが、どうでございましょうか。
  157. 河野通一

    ○河野参考人 クレジットラインということばは実は非常に俗語でございまして、この各銀行ごとのクレジットラインということは、貸し出し限度——私どもは貸し出し限度は御承知のようにしょっちゅう動かしております。それからこれは大体対象貸し付けということばを使っておりますが、御案内のようにたとえば輸出入関係の、まあことばは非常に適当でないのですけれども、制度金融といわれているものは、このクレジットラインからはずしてございます。そういうことを含んで考えますと、もちろんクレジットラインをこえた貸し出しというようなものはないのでありまして、金額としては、それは日本銀行の貸し出しはこえておるかもしれませんが、それは先ほど来申し上げましたように対象外の貸し出しがふえておる。クレジットラインをこえて貸すということはいたしておりません。
  158. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、実はこういうような預貸率になっておるところが預金保険に入るというのはどういうことかという問題が一つあるのですが、と同時に、私は通貨供給の手段をもう少し範囲を広げたらどうなんだろうか。要するに地方銀行なりその他の範囲に——もう実は国債なり政保債を持っているわけですから、ここでひとつオペレーションをやって資金を供給して、しかし向こうは資金を供給されたからといってすぐそれが貸し出しに回るようにならないわけですね。大体地方銀行あたりの預貸率というのは八五・七くらいですから、そういうことでやっておるわけですから、それを指導によってこれはひとつコールに回してきて、そのコールを都市銀行、とるならとりなさい。  どうもずっと見ておりますと、いろいろな金融政策というのは都市銀行にフェーバーが少しあり過ぎるような感じがしましてね。それはいまの債券のうちはいいのですが、ともかく債券種がなくなったら手形でもとってやろうと言う。よそは債券があってもおまえのほうは知らぬぞ。要するに都市銀行だけは手形でもとるのだという発想は、私は地方銀行その他の、都市銀行以外の金融機関にすれば、どうして日本銀行というのはそんなに都市銀行のめんどうを見なければならないのか。少なくとも日本銀行というのは日本金融機関の中央金融機関ではないのか、こういうふうな声を私はよく聞くわけですよ。日本銀行というのはいま見ていると、あれは都市銀行のための中央銀行であって、それ以外の金融機関にとっては——さっきいろいろやっていくんだと、こうお話がありましたが、現実にその他の金融機関は、日本銀行都市銀行の中央機関だと、こう考えているのも事実なんですね。私はやはりここらは、そろそろいろいろな諸般の情勢考えながら、日本銀行がやはりほんとうの意味の日本の中央銀行になる方向を少し考えてみる必要があるのじゃないか、こう思うのですが、その点いかがでございましょうか。
  159. 河野通一

    ○河野参考人 いろいろな御指摘はごもっともな点が多いと思います。ただ、私どもは先ほど、それは言いのがれだと言われるかもしれませんが、オペレーションは何も都市銀行に限ってやっておるわけではございません。それからいま一般の財界、経済界等ではやはり日本銀行の貸し出しをもう少しゆるやかにしたらいいじゃないかという議論も実はございます。これは金融調節方式の問題にも関係いたしてまいりますけれども、私どもは必ずしも貸し出しの限度を拡張することがいいとは思っておりません。このこともいろいろな理由がございますけれども、その幾つかの理由の一つは、やはり都市銀行に偏重するおそれがあるという問題も頭の中にあるわけでございます。ただ、資金が偏在していると申しますか、資金の需要が非常に都市銀行を中心にして旺盛であり、しかもその資金の源である預金を中心にした資金の吸収ということがそれに追っつかないという問題の解決の方法は、これは別途にいろいろ考えなければならぬ。この問題の一つの解決方法は、私はやはり基本的には、御指摘のように社債市場、資本市場というものをもっと弾力的にし、これを育成し強化し、そして金利というものをできるだけ、自由化ということばがいいかどうかわかりませんが、弾力的に、実情に合うようにしていくという方向へ、一挙にはまいりませんけれども、こういうことをやりながら、有価証券市場における証券の売買を通じてその資金の偏在を解決していくのも一つの方法。  それから、先ほどちょっと御指摘がありまして、あまり御賛成はいただけなかったのですけれども、手形市場というものがほんとうに割り引きずるようになれば、この手形市場の手形の売買を通じて資金の偏在というものはある程度調整できるわけです。そういった問題を一つだけに限らないで、やはりいろいろな手を使って、そういったいわゆる俗なことばでいわれておる資金偏在というものを調整していく方向は、一挙にはなかなかいきませんけれども、忍耐強く着実に一歩一歩進めていけば相当改善できる道があるのではないかと私は考えております。したがいまして、そのこと自体から直ちにいまの問題について、オペレーションの範囲をもっと都市銀行以外のものに多く拡大したらどうかという意見については、いまにわかに賛成の意を表するわけにはまいりません。しかし、御指摘のような点についていろいろ考慮しなければならぬという問題があることは十分承知いたしておりますので、今後金融調節方式についていろいろな検討をいたしてまいります場合には、そういった問題も十分頭に置いて考えていかなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
  160. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、今度はコールにちょっと入るのですが、いまコールの利率をきめているのはどういうことになっておるのでしょうか。実は私が聞いておる範囲では、都市銀行とそれから短資望者と日本銀行とですか、三明会というのですか、何かそういうところで話がきまっているのじゃないかというように聞いているのですが、ちょっと私も実情をつまびらかにしておらないので、ちょっとその点を伺いたいのですが……。
  161. 河野通一

    ○河野参考人 コールの金利は、三明会といいますか、名前はちょっと忘れましたが、当時者が話し合われて、金融情勢その他資金の需給状況を見てきめておられるようであります。私どもはもちろん中央銀行として、情勢の報告は常に受けておるわけでございます。もちろん当然その問題についての情勢なり報告は聞いておりますけれども、日本銀行が直接、金利自体を具体的にきめるためにタッチしておるということはございません。
  162. 堀昌雄

    ○堀委員 ただ、いまのきまり方が、聞くところによりますと、取り手と仲介をしておる者だけがきめて、出し手はそこへ入ってないという話ですね。これはどうも事実のようですが、いかがでしょうか。
  163. 河野通一

    ○河野参考人 出し手の代表をだれにするかという問題もございますし、その出し手のほうの立場は、やはり短資業者がよく出し手のほうの情勢を見て、取り手のほうと相談をしている。短資業者は、その出し手の立場なり出し手の希望なり出し手の条件なりというものを頭に置きながら、そこでいろいろ、ネゴシエーションということばがいいかどうかわかりませんが、話し合いが行なわれると承知しております。
  164. 堀昌雄

    ○堀委員 私が聞いておる範囲ではどうもそうなってない。要するに出し手の代表をそこへ出すべきだということがかなり強い意見として実は聞いておるわけですね。ですから、これは私、ものごとをきめるときに取り手だけのほうが短資業者と話をしてきめるということは、これまたどうも都市銀行向けにフェーバーがあり過ぎるような気がするのです。これは農林中金でもいいですし、どこでもいいですけれでも、やはり出し手を一枚そこへ出して、出し手の意見と取り手の意見を短資業者がまん中にあって処理するということは、やはり仕組み上当然じゃないかと思いますけれども、その仕組みについてはいかがでしょうか。御賛成なら御賛成だとお答えいただきたい。
  165. 河野通一

    ○河野参考人 実は私はあまりこまかいことを承知いたしておりません。おりませんが、私の承知いたしております限りにおきましては、いまの出し手のほうの利害なりあるいは条件なりあるいは希望なりというものは、十分短資業者によって代表されておりますということは聞いておりますが、詳しいことは存じませんからいま的確に堀さんの御質問にお答えがはっきりできませんけれども、もう少し実情を調べまして、また必要に応じて改善をする必要があるようでしたらそういうことも考えてみたい、かように考えております。
  166. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵省はいまの問題を承知していますか。
  167. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいま副総裁からお話がございました程度にしか承知をいたしておりません。
  168. 堀昌雄

    ○堀委員 きょうは副総裁においでいただいておりますから、技術的なことも問題があろうかと思いますが、私が聞いております範囲では、出し手の強い意見です。どうかこの点は、私はこういう問題はフェアにやるべきだ。私はその話を聞いて、それは問題がありますね、ですからそれはフェアにやるべきだと私も思っておりますので、フェアにやることについての御反対はないと思いますから、どうかひとつ実情をお調べの上、やはり問題はそういうフェアなところできまるようにしていただきたい。それにしても、実はいまお話を聞いておりますと、何か日本銀行はたいへん御関係がないように聞こえるのですが、私どもの感じでは、率直に申し上げてそういうふうには感じておりません。何とかひとつそれが日本銀行の副総裁がおっしゃったようになるように、関係がなくて自然の成り行きで実際の経済条件にマッチしてきまるように、ひとつ御努力をいただきたい、こう思います。  そこで今度はちょっと預金保険の問題で少しお伺いをいたしたいのでありますけれども、日本銀行法案第二十条には「日本銀行ハ左ノ業務ヲ行フモノトス」とございまして、その二項に「手形、国債其ノ他ノ有価証券、地金銀又ハ商品ヲ担保トスル貸付」こういう一項がございますね。これは日本銀行の貸し付けに際してはすべてこの条項が働くと思うのでありますが、副総裁、それでよろしゅうございましょうか。
  169. 河野通一

    ○河野参考人 他の条文によってそれを排除したものがございます。たとえば大蔵大臣の認可を受けてやる場合におきまして、特別な場合におきましてはこの条文によらないでやるものもございますが、そういうもの以外につきましてはこの条文に従ってやっております。
  170. 堀昌雄

    ○堀委員 今度の預金保険法第四十二条は、「機構は、保険金の支払に関し必要があると認めるときは、政令で定める金額の範囲内において、大蔵大臣の認可を受けて、日本銀行から資金の借入れをすることができる。」二項「日本銀行は、日本銀行法第二十七条の規定にかかわらず、機構に対し、前項の資金の貸付けをすることができる。」こうなっておりますね。そこで認可を受けるほうは、実は機構が受けるんですね。第四十二条で、「機構は、保険金の支払に関し必要があると認めるときは、政令で定める金額の範囲内において、大蔵大臣の認可を受けて、日本銀行から資金の借入れをすることができる。」とありますから、まず機構は認可を受けて借り入れをします。ところが「日本銀行は、日本銀行法第二十七条の規定にかかわらず、」とこうありますね。二十七条は他業の制限ということで、「日本銀行ハ本法二規定セザル業務ヲ行フコトヲ得ズ但シ日本銀行目的達成上必要アル場合ニ於テ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ」こうありますが、このコ一十七条の規定にかかわらず、」ですから、「規定にかかわらず、」ということは、ここの「但シ」の項目を含めてこれには該当しないんですよ、これ以外にやれますよと、こう規定したわけですね。そこでこれに関係しない。そこで「前項の資金の貸付けをすることができる。」こうきていますね。そうするとこの「貸付け」は、この法律の条文からくれば第二十条の貸し付け以外に日本銀行の貸し付けばあり得ない、こう考えるのですが、そうすると保険機構からこれは担保をとることになるのじゃないか。担保をとらなければ日本銀行法に抵触することになるのじゃないかと思いますが、これは大蔵省が出している法案ですが、日本銀行としてはどうお考えになるか、ちょっと伺いたいのです。
  171. 河野通一

    ○河野参考人 実はこの法案作成者じゃないものですから、私、的確にお答えができませんが、おそらく、私なりの読み方は、いま堀委員がおっしゃった読み方と違う読み方をしていいんじゃないか。この二十七条というのは、本文で「本法ニ規定セザル業務ヲ行フコトヲ得ズ」ということは、二十条のあの規定をも含めて、本法に規定しておる業務以外のことをやっちゃいけない、こういうことですね。二十条の各項の規定も含めて、その業務以外のことをやっちゃいけない、こういうことですね。それを「かかわらず」で排除すれば、二十条にかかわらずということになるんだろうと——私は法律はあまり得意じゃこざいませんが、しろうと考え考えます。それから二十七条のただし書きは、大蔵大臣の認可を受けてやればこの限りでないということですから、その規定も「かかわらず」で、認可を受けないで、しかも必要があれば担保をとらないでやれるということをこの規定は示しておるのではないかというふうに考えております。もっともこれは政府法案ですから……。
  172. 堀昌雄

    ○堀委員 政府法案ですから、ただ日本銀行としては、ということですから……。  それから、これは副総裁が理事長に就任されることに法律できめておりますので、その理事長としてのお考えを——まだ理事長になっておりませんが、理事長になられた際におけるお考えをちょっと承っておきたいのですが、実はこの法律の五十八条に「機構は、保険金の支払をしたときは、その支払金額に応じ、預金者等が金融機関に対して有する当該預金等に係る債権を取得する。」こう書いてあるのですね。ですから、確かに債権は機構にくるということになるんだと思いますが、あとその債権というのを一体どうするのかという問題は実はこの法律に書いてないのです。何も書いてないのですね。ですから、そうすると、当然理事長が運営委員会にはかっておやりになるのかどうかわかりませんが、こういう法律政府が出しております以上、理事長としては、そうやってつぶれてしまった銀行の債権は機構が取りました。ただ債権を取っただけではこれはどうにもなりませんから、やはり債権を取った以上、その債権を何らかの形で行使をするというのですか、しなければならぬと思うのですね。何も書いてないのですけれども、こういう機構でそういう債権の行使等を、一体どういうふうにしてつぶれたやつのをやるのか。そこらがちょっと、破産の宣告とか、たいへんはっきり問題が提示されておることなものですから、どうかなと思いまして、当然理事長がそのときにはお考えになることだと思うので、これは本来政府に聞くことですけれども、副総裁でお答えいただければひとつ……。
  173. 河野通一

    ○河野参考人 まだ法律が通っておりませんし、施行されておりませんし、私まだ理事長になったわけでもございませんので、実はそういう答弁を求められて非常に当惑いたすわけでございますが、おそらくこれは、一般の取引の場合によくあります、債権が代位されて、そうすればその清算になる場合もありましようし整理する場合もありましょうが、そういうことの一環としてこの債権を、残余財産の分配にあずかる。たとえば、その当該取りつけを受けた銀行がつぶれれば、その残余財産の清算の過程においてその残余財産の分配にあずかる。そういったことを、機構自体も少人数でやることですからとても物理的にできないじゃないかという問題もございましょうが、それはいろいろな規定で、金融機関とか私ども日本銀行等が事務の委託を受けてやることになっておりますから、私どもいま法案の審議の途中においてどうするかといわれても非常に困るのですけれども、何とかいくんじゃないだろうかと思います。
  174. 堀昌雄

    ○堀委員 日本銀行副総裁への質問はこれで終わります。
  175. 毛利松平

    毛利委員長 河野参考人には御多用のところありがとうございます。厚くお礼を申し上げます。どうぞお引き取り下さい。
  176. 堀昌雄

    ○堀委員 預金保険の問題を引き続き政府にお伺いをいたします。  実はこの前土屋参考人からも、今度の預金保険機構の中に信用組合を含めることについては疑義がある、こういうお話がありました。実は私も、信用組合というのは本来のたてまえが、その他の不特定多数を相手にしておる金融機関とは著しく趣を異にしておりますから、この点については問題があるというふうに感じておりましたけれども、法案の中に出ておりますから少しお伺いをいたしたいのであります。  信用組合が過去五年間に新設をされたのは一体幾らあるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  177. 近藤道生

    近藤政府委員 信用組合の過去五年間におきまして新設されました数は二十五組合でございます。
  178. 堀昌雄

    ○堀委員 都市銀行地方銀行相互銀行信用金庫を含めて、過去五年間に新たに免許の与えられた金融機関は幾つありますか。
  179. 近藤道生

    近藤政府委員 ほかの金融機関には新設は全くございませんで、転換を認められましたものが長野相互銀行一つあるだけでございます。
  180. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのように、片方は不特定多数を相手にした金融機関として、そうして大蔵省銀行行政としては、現在日本金融機関は決して少な過ぎるということはない、どちらかというと少し多過ぎるということが私は合併転換法その他をもたらした一つ原因であると考えておるのでありますが、片や大蔵省の監督権外にあるというせいでありますか、信用組合については過去五年間に二十五もできておる。年度別には最近どういうことでできておるのでしょうか。
  181. 結城茂

    ○結城説明員 私からお答えいたします。  四十一年度が十組合でございます。四十二年度一組合、四十三年度四組合、四十四年度七組合、四十五年度三組合、計二十五組合でございます。
  182. 堀昌雄

    ○堀委員 現在信用組合の数が五百三十六ですか、ずいぶんあるわけですね。これはもっともっとふやしていいという考え方に大蔵省は立っていたんでしょうかね。私が承知をしておる範囲では、昭和四十年ごろにこの問題を伺ったときには、大蔵省としては信用組合の新設には反対でございますということをたしか伺ったように承知をしておるのでありますが、この点大蔵省の方針はどうなっているのでしょうか。
  183. 近藤道生

    近藤政府委員 その点はただいまお示しのとおりでございまして、大蔵省といたしましては信用組合の新設については原則的には抑制の方向で臨みたい。ただ特殊の職域のもの、たとえば医師信用組合というようなものでございますとか、あるいは韓国人等を対象といたします信用組合、これらのものにつきまして、基本的な抑制的な態度は堅持しつつも、例外的にこれを認めるという方向で臨んでまいっております。
  184. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、いまの二十五件をその例外的要素でちょっと区別してもらいたいのですが。
  185. 結城茂

    ○結城説明員 二十五件のうち、ただいまの韓国人とかそういう三国人関係の組合が十四組合ございます。それから職域組合、これが三組合でございます。それから業域が四でございます。あと地域の組合が四組合でございます。
  186. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、いま局長お話しになった特例的なものというのは十七ですか。あとの業域、地域というのは、これは特例的なものにならないのじゃないですか。あとの八というのはどうですか。
  187. 結城茂

    ○結城説明員 信用組合の設立につきましては、四十二年の十月、中小企業金融制度のあり方に関する答申というものがございまして、金融二法がそれに基づいてできたわけでございます。それからの信用組合の設立あるいは信用組合に対する監督というのは、たとえば大蔵省が基本通達を出しまして、信用組合の設立につきまして、要するに事前協議というような形で、地方自治体が自由に設立することはないようにという、こういう指導をいたしております。で、それからの設立ということになりますと、地域組合は一件も認めてございません。いずれもただいまの三国人関係の組合とか、あるいは医師組合というような、一般の金融機関ではなかなか信用をつけがたい、こういう場合に限って認めている、こういう状況でございます。
  188. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、これからはそういう地域組合等の新設はないと見てよろしいでしょうか。その点をちょっとお答えをいただきたいと思います。
  189. 近藤道生

    近藤政府委員 その方針で臨むつもりでございます。
  190. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に、最近の解散した信用組合、これは一体幾つくらいあるわけですか。その解散をするに至った経緯を、簡単にひとつお答えをいただきたいと思います。
  191. 近藤道生

    近藤政府委員 過去五年間に解散をいたしました組合は四つございます。その経緯につきましては担当課長からお答えいたさせます。
  192. 結城茂

    ○結城説明員 解散の四組合でございますが、長崎中央信用組合、徳島中央信用組合、大成信用組合、和歌山県警察信用組合ということで、一つ一つにつきましては実は私も現在はっきりした経緯を持ち合わせませんが、たとえば、長崎中央、徳島中央というようなところにつきましては、確かに大口の貸し出しというようなことから金融が困難になった、あるいは導入が若干あって、経営が困難になったということで解散に至ったように記憶しております。
  193. 堀昌雄

    ○堀委員 実は、これまではそれで済んだと思うのですよ。しかし、預金保険機構をつくって、国が出資をし、法律をもってこういうことを定める以上は、少なくとも預金保険をつくったから、信用組合が解散になっても心配ないのだということに私はならないと思うのですね。要するに、預金保険をつくることは、さらにこれまで以上に金融機関が過誤を起こさないような指導監督を行なうことでなければならぬ、こう私は思うのですが、政務次官、その点どうでしょうか。
  194. 中川一郎

    ○中川政府委員 そのとおりだと思います。
  195. 堀昌雄

    ○堀委員 実はこの四つの信用組合ですね、まあいまのお話からすれば、これは過去に起きたことでもありますけれども、十分精査がされていないと思うのです。これは私、信用組合法をずっと読んでおりましても、貸し出しの限度というのはちゃんと、出資金及び積み立て金ですか、何かの二〇%というふうに規定されておる。信用金庫も施行令で二〇%になっておる……
  196. 結城茂

    ○結城説明員 本法でございます。五十四条の二にございます。
  197. 堀昌雄

    ○堀委員 私の見間違いでした。——この際、相互銀行は一〇%に押えてあって、これは少し相互銀行は問題にしておるわけですが、この信用組合の二〇%というのが今後、はたしてこのままでいいのかどうか。これはかなり古いことだろうと思うのですが、本来なら、この信用組合にしてもそうですし、信用金庫でもそうですけれども、性格が協同組合組織なんですから、できるだけ多数の人に小口で貸すというのが本来のたてまえではないのだろうか。そうなると、相互銀行のほうは実は協同組合でも何でもない。株式会社ですからね。株式会社のほうにきびしく協同組合のほうにゆるいというのも、何だかこの点はちょっと逆なんじゃないだろうかという感じが私はするわけであります。この問題については、特に信用組合の今後の管理の問題というのは、五百もあることですからなかなか大蔵省は目が届かないと思いますが、それならそれで少しルールをきちんとしておくことも必要ではないか。ましてや相互銀行を一〇%といっている以上、信用組合の取り扱いが二〇%そのままでいいのか。いまお話を聞いていると、大口の貸し出し等によって解散がもたらされたというような例もあるように聞いておりますので、この点についての今後の対策はいかがかということをちょっと伺いたいと思います。
  198. 近藤道生

    近藤政府委員 この点につきましては、御高承のとおり、金融二法制定の際にたいへんいろいろと議論されました結果、中小金融機関を全部統一するというたてまえで現在の規制が行なわれたわけでございますが、先ほどお話しのとおりに、今回預金保険機構の御審議を願い、これが成立を見ました暁におきましては、やはり信用組合について従来以上に経営の監督その他各般にわたって再検討を考慮すべき点があろうかと存じます。そのような見地から、実はことしの一月二十七日に通牒を出して、従来以上に監督を強化するということで、たとえば法令の順守、内部管理体制の強化あるいは役員の専業体制の確立と経営責任の明確化、それから検査の励行と充実というようなことについて通達を発したわけでございますが、なお指導監督につとめてまいりたいと存じております。
  199. 堀昌雄

    ○堀委員 この信用組合検査権というのは、これはやはり認可をしておる都道府県知事にあるのだと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  200. 近藤道生

    近藤政府委員 そのとおりでございます。
  201. 堀昌雄

    ○堀委員 都道府県ではどの程度これの検査を行なっておるでしょうか。
  202. 結城茂

    ○結城説明員 都道府県の検査でございますが、私どものほうでこれは四十五年に調べたデータでございますが、全国の組合五百四十、その当時の数字でございまして、検査を実施された組合、これは各都道府県がやったものでございますが、四十四年度が二百三十二組合、割合にしまして四二・九%、それから四十三年度は二百二十六組合、四一・七%、こういうふうな実績になっておりますが、定例的には一年ないし二年の周期で検査するようにということで通達で指示してございます。
  203. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで問題は検査なんですが、大蔵省の場合には検査官という十分訓練をされ能力のある人が検査しておりますから不安はないのですが、都道府県には一体ちゃんとそういう検査官というものがあるのでしょうか。  それから、都道府県がやっていることですから、四十幾つもあるのですから、一体その検査のルールなりいろんな問題というのが正確に行なえているのかどうか。特に、私どもが承知をしておる範囲では、最近はよく知りません、しかしかつては、知事がかわるととたんに信用組合の店舗がふえたりする、こういうことなんですね。どうも多分に信用組合の関係者とそういう政治的な知事等とのつながりもあるということを聞いておるわけですが、どうもそうなると、はたして検査が公正に行なわれておるかどうか。別に都道府県知事を軽視するわけではありませんけれども、やはり預金保険機構の中に入れる以上は、何かそこらに検査というものに対するオーソリティーがある程度確立をされていなければ、きょうは検査に行きますよ、はいどうぞおいでくださいなんて検査がやられていたのでは、検査をやったということにはならないと私は思うのですが、その点については大蔵省はどういう指導監督をしておられるか、ちょっとお聞きをしたいと思います。
  204. 近藤道生

    近藤政府委員 その点はまさに御指摘のような面が多々あるわけでございまして、ことしの一月二十七日の通牒の中でも、特に検査の励行と充実ということをうたっておるわけでございます。そしてその中で、「県によっては未だほとんど検査を実施していないものもあり、全般に検査の実施状況は十分とはいいがたい。検査信用組合の業務及び財産等の適確な把握を通じてその健全経営を確保し、ひいては預金者の保護をはかるものであって、信用組合基本通達の細目に沿って確実な検査の励行をはかられたい。また検査の充実についても、検査要員の確保及びその質的な向上について人事面その他で特別の考慮が払われるように配意されたい。」ということをうたっておるわけでございますが、かたがた毎年講習会を行ないまして、検査要員に対する指導、訓練等にもつとめております。もしこの預金保険法案の成立というようなことに相なりますれば、この点についてはさらに強化をいたしてまいりたいと考えております。
  205. 堀昌雄

    ○堀委員 協同組合による金融事業に関する法律という中では、大蔵大臣は実際に調べることができるようにたしか書いてあったと思うのですが、いまの問題はひとつ、ただ通達を出して処理をするだけではなくて、これを追認する意味で、年間に幾つかの信用組合大蔵省みずから検査をして、都道府県知事の行なう検査がはたして適正な検査であるかどうかを私はチェックをしていく必要があるのじゃないか、こう思うのです。これは現行法でできると思うのですが、どうでしょう。
  206. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいまの法律上のたてまえでは残念ながら直接の検査ができませんので、都道府県で行ないました検査の報告を財務局で詳細に受けることによりまして、そこで必要な指示等をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  207. 堀昌雄

    ○堀委員 私はそれじゃ不満ですね。やはりこの際預金保険機構に入れるのならば、これはやはり日本銀行大蔵省が責任を持ってやることになるわけでありますから、当然私は、何も全部をやるというのじゃないのですから、抜き取って、その検査が適正に行なわれているかどうかを追認する必要くらいは、法律を改正してでもつくるべきではないか。何も、大蔵省それでなくとも手が一ばいですから、しょっちゅうどんどんやれということは言わないのです。もし信用組合で事故が起きたときには、私どもこれは大いに問題にしなければならぬと実は思っておるのです、その検査は一体どういう検査をしていたのかということで。検査をしておったにもかかわらず解散しなければならぬような事故が起きたときに、一体どうなるんだという点については、都道府県知事の責任を追及するだけでは済まないと私は思うのです。どうかひとつ、前段でいま政務次官がお答えになったように、預金保険をつくることは、それによって安易に流れるということではありませんで、現在よりきびしく処理することが望まれるということは間違いのない事実でありますから、現行法で処理ができなければ、ひとつ法律改正を行なってでも信用組合に対する適正な検査が行なわれることを担保する必要がある、私はこう考えますが、政務次官どうですか。
  208. 中川一郎

    ○中川政府委員 確かに御指摘のように、こういった機構に入って国が乗り出すあるいは日本銀行が乗り出すということになりますれば、やはりそういった事故を起こさないだけの体制を整えるくふうは十分しなければならぬ。この法案が通りまして、しばらく推移を見た上で、そういう必要があれば法案の改正をして検査権を持つような方向に検討してみたい、このように存じます。
  209. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの御答弁ですが、そういう事故が起きてからではまずいのですからね。要するにこれが通ったらさっそくやってもらいたい。それをやることによって、都道府県の検査のあといつやられるかもしれない、追試験を受けなければならぬと思えば、やっぱり最初の試験はちゃんとやっておかなければならぬということになるので、何も必ずしも私は試験をやらなければならぬとは思いませんけれども、しかし検査ができるというチャンスが開かれていなければ、やはり検査が安易に流れるおそれがある。さっきお話しのように、検査をやっていない県の信用組合もここに入れるのですから、これは実はたいへんなことですよ。各種金融機関はそのために負担をするのですからね。だから、少なくとも信用金庫以上は大蔵省検査しておるわけです、免許制度でありますから。これについてはお互い金を出し合おうということになると思うのです。しかし信用組合で、検査もされていない信用組合まで自分たちの保険の金を使われるのだということになれば、これは問題があろうかと思うので、少なくともそれらの点については他の金融機関と同様の取り扱いが受けられるということが、他の金融機関にとってもこの預金保険法を生かすために非常に重要なファクターになるだろう、私はこう考えますので、ひとつこの際十分御検討をいただき、すみやかな処置を講ぜられることを希望いたします。  信用組合の問題とそれから預金保険は大体以上で、時間がだいぶきましたから、少し次に貸付信託法の一部を改正する法律案について伺っておきたいと思います。  まず、法律の点でありますが、今度は第一条は、「この法律は、貸付信託の受益権を受益証券に化体するとともに、受益者の保護を図ることにより、一般投資者による投資を容易にし、もって国民経済の健全な発展に必要な分野に対する長期資金の円滑な供給に資することを目的とする。」こう書いてあります。この「国民経済の健全な発展に必要な分野」というのはどういう分野になりますか。ちょっとそれを具体的にお聞かせ願いたい。
  210. 近藤道生

    近藤政府委員 「国民経済の健全な発展に必要な分野」というのは、従来から述べられておりました、たとえば緊要なる産業、その他の産業も当然含まれるわけでございますが、そのほかに住宅建設、用地造成、公害防止というような生活環境改善資金、並びに社会開発関連資金、それから商社、小売り業、集配センターなどの流通機構の整備に関連する資金、さらに自由化や産業構造の変化に対応して自動車ディーラー、情報産業、これは放送、印刷、出版等でございますが、そういう情報産業、それから海外資源開発、リース業等につきましても、前向きに資金供給が行なわれることを期待いたしております。
  211. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私ずっとお話を聞いていながら、出てくるかなと思って出てこないんですがね。実はこれまでの貸付信託がやっております中で、私もやはり非常に問題だと思うのは、「国民経済の健全な発展に必要な分野」という中の一番当面必要なのは、私は中小企業金融の問題だと思うのですね、実は。この間の金融制度調査会のいろいろな調査の中でアンケートをとられても、要するに中小企業が中期あるいは長期の資金を非常に要望しておるということは明らかになっておる。幸いにして貸付信託というのは、主として五年ものということでありますから、要するに中長期の資金を供給できるソースになっておるわけです。そのソースになっておるところが実際には一・八%ぐらいしか現在中小企業に貸していないということは、これは私は非常にいまの「国民経済の健全な発展」に役立っていないと思うのですね。それは確かにこれまでの「産業投資を容易にし、もって資源の開発その他緊要な産業」ということに引っかかって、この問題が置き去りにされるのではないか。しかし今日、いよいよ特恵関税を設けることになり、いろいろな世界的な諸情勢から見て、日本の中小企業問題というのはまさに国民経済の発展に必要な重要な部分になる、こう思うのですが、いまのは個別的なお話であったためにそうであったかもしれませんけれども、そういう感触が実は伺い得なかったわけですが、今後の貸付信託の運用に関する中小企業に対する配慮というのはどういう考え方で行なわれるおつもりかをちょっと伺いたいと思います。
  212. 近藤道生

    近藤政府委員 確かに、ただいま申し上げましたのは業種別に申し上げましたために、中小企業という感じがあるいは出なかったかと存じますが、今回の改正の一つの重点は、いままで「資源の開発その他緊要な産業」という表現で、基幹産業、重点産業、大企業というところに集中的に融資が行なわれておりましたものが、「必要な分野」という表現に変わりましたことによりまして、中小企業に対する融資が順便になるというところが一つの大きな改正の眼目でございます。さらに、これは副次的効果でございますが、有価証券を支払い準備等のために保有するという形によりまして、中小企業金融を安んじて行なって、委託者の利益を害さないで行ない得るということになりますので、そのほうからも中小企業金融が従来よりも円滑に行ない得る保障が与えられる。その両面からまいりまして、従来よりもはるかに中小企業金融が円滑に行ない得るものというふうに考えております。
  213. 堀昌雄

    ○堀委員 現在地方銀行は五〇%ですか、都市銀行でも二十数%程度中小企業金融があるのですが、貸付信託についてはいま申し上げた一・八%。今後どの程度のウエートで中小企業金融に貸付信託を——一ぺんにはいきません、年次徐々にふやしていくわけですが、どの程度までを期待しておられるのかをお答えいただきたいと思います。
  214. 近藤道生

    近藤政府委員 これは何%という数字をただいま的確に申し上げることはたいへんむずかしいわけでございますが、発足後の状況を見ておりまして、あまりこのパーセンテージが低いようでございましたら、一般的な基準もしくは指導、そういうことをあらためて検討いたしたい。とりあえず発足後の状況を見守ってまいりたいというふうに考えております。
  215. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでもう一つの第十三条の二項に「受託者は、前項の方法によるほか、支払準備その他の必要があると認められる場合には、貸付信託の信託財産を、有価証券の取得の方法により運用することができる。」こうなっておるわけですね。「支払準備」、これはわかりますが、「その他必要があると認められる場合」というのは、これはどういう場合を想定しておるのでしょうか。
  216. 近藤道生

    近藤政府委員 典型的な場合でございますと、たとえば金融緩慢の時期におきましてコールよりも有価証券のほうが有利であるというような場合、これは四十年、四十一年に実際にそういう事例もあったわけでございますが、そういう場合に、従来でございますと、有価証券のほうが有利であっても、これを持っておりますと今度金融引き締めになりました場合に、余裕金運用としてしか認められておりませんために、どうしても売却をいたさなければならないということに相なりまして、そこでいわゆるキャピタルロスを生ずることが多いわけでございます。したがいまして、そういう際に貸付信託の運営にあたります経営者といたしましては、受託者といたしましては、みすみす委託者の有利でないほうの、たとえばコールというようなほうに運用をせざるを得ないということになりまして、委託者の利益を守るということが十分にできないわけでございます。そういう場合には、やはり必要がある場合は有価証券を持ってよろしいということになっておりますれば、有価証券をその場合に受託者は保有をすることによって委託者の利益を守る。そのことがまた同時に金融政策としてはたいへんなメリットになるわけでございまして、もしコール等に回してございますれば、金融が再び締まってまいりました時期にこれが一斉に戻ってきて、新たなる貸し出しとして追加される、資金供給がブレが大きくなる、ふえ方が大きくなるということになりますが、それがそうでない形で、有価証券がそのまま保有されるということでございますれば、そのブレも少なくなるというようなこと、そういう効果も期待できるかと思っております。
  217. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、ちょっとこの貸付信託の中身の問題に入るのですが、実は貸付信託の委託者の分析を見ますと、個人と法人と無記名とに分かれておりますね。そこで法人が昭和四十四年で二三・二%という構成比になっておりますね。大体貸付信託を見ると、二年ものと五年ものを見れば、ほとんど五年ものですから、そうなると、一体法人が、大体みな相当多数の借り入れ金をやっておるものが、なぜ五年もの貸付信託を約一兆円近くも持っておるのか。これはどうも両建てではないのかという感じがするのです。貸付信託の両建て問題というのは実は私どもこれまで取り上げていないのですが、これは銀行勘定における問題と同時に、信託勘定においても私はこれは異常なできごとではないのか、こう思うのですが、大蔵省はこの点についてはこれまでどういうふうに見ておったのでしょうか。
  218. 近藤道生

    近藤政府委員 その点につきましてはいろいろ分析をいたしてみたわけでございますが、やはり共済組合などのいわゆる機関投資家の保有分が圧倒的に多いようでございます。
  219. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、いまの両建ての部分は貸付信託としてはないといっていいという程度でしょうか。
  220. 近藤道生

    近藤政府委員 分析の結果はそのとおりでございます。
  221. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に、実は銀行勘定と信託勘定との行き来の問題でありますけれども、信託勘定から銀行勘定貸しというのがありますね。見てみますと、信託勘定にも少し問題があると思うのは、実はこの前三菱信託銀行の千頭さんに参考人として当委員会の小委員会にお越しをいただいたときに私は触れたと思うのでありますけれども、信託勘定で一年未満の運用をされておるものがあるのはおかしいじゃないですかという問題提起をいたしました。そのときに、当行にはありません、しかしそれはあまり適当でないからやめるようにしたいというお話でしたけれども、ちょうだいした資料の中では、貸付信託は〇・一%程度のようでございますが、金銭信託その他信託勘定に三%の一年未満の運用が依然としてある。これは今後どういう形で処理をされるのか、お伺いしたいと思います。
  222. 近藤道生

    近藤政府委員 御説のとおりでございまして、これは本来の信託銀行のあり方から申しましても例外的なものとして整理をしてまいりたいと考えております。
  223. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に、今度は銀行勘定のほうであります。銀行勘定は本来いろいろと規定があって、普通の銀行預金の取り扱いとは違うようになっているのですが、この銀行勘定で一年以上というのが二七・八%あって、さらにその中で五年以上が一五・八、七年以上が六・〇ですか、そういうふうに資料をちょうだいしたわけですが、信託銀行はやはり信託をもって主たる業務として中長期の資金供給をやるべきもので銀行勘定というのは、そういう信託勘定を持っておるところと取引の都合上、預金を受け入れるということはわかります。わかりますが、少なくとも銀行勘定がこういう中長期の貸し付けをしておるというのは、その他の金融機関から見ますとちょっと問題があるというふうな感じを受けやしないかと私は思うのですね。やはり信託銀行は、少なくとも銀行勘定は短期運用にすべてを回すべきであって、信託勘定を中長期に運用するというのがたてまえでなければならぬ。見ておりますと、信託勘定を一年以下に回してみたり、あるいは今度は銀行勘定を五年、七年で回すなどというようなことが起きておることはまことにどうも適切でないような感じがするのですが、これについてはいかがでしょうか。
  224. 近藤道生

    近藤政府委員 実は従来のたてまえでまいりますと、信託勘定部門、特に貸付信託部門で住宅ローンはできないというようなこともございまして、銀行勘定で住宅ローンをかなりやっておりまして、ただいま御指摘銀行勘定における五年以上の貸し出しのほとんどが住宅ローンでございます。したがいまして、今度の改正案が御審議願えまして成立いたしますれば、銀行勘定における住宅ローンがかなりの部分貸付信託勘定において行なえるという形になってまいろうかと思っております。
  225. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に、見ていますと信託勘定の貸し付けというのはかなり満度に行なわれておるわけですが、それにもかかわらずその余裕金の一部が銀行勘定貸しになっていますね。昭和四十五年の九月末では余資の運用部分の三・一%、千二百九十二億円も信託勘定が銀行勘定貸しになっておる。ところが銀行勘定のほうはこれはまたかなり余資がある、余裕金がある、こうなっておるのですが、これはたくさんのトータルの数字ですから、個別な事情のあるところがあるのかもわかりませんが、一体どうしてこういうふうに信託勘定から銀行勘定へ持っていかなければならぬのか、その点をひとつ承りたいと思います。
  226. 近藤道生

    近藤政府委員 この銀行勘定に持っていっております部分のうちで、約九百億ぐらいのものが貸付信託の受益証券の中途解約の場合の買い取り資金として用意されております分でございます。流通市場その他の関係で現在買い取りの制度をとっておりますので、そのための資金手当としてこれが銀行勘定に持っていかれておるわけでございます。
  227. 堀昌雄

    ○堀委員 最後に、私は中小金融を少し拡大してもらいたい、こう申しているのですが、何さま信託銀行は店舗数が必ずしも十分にないわけですね。まあ大都市、主として県庁所在地程度ですか、非常に少ないのですが、中小企業金融をやるについてこれから何らか対策が必要になってくるのではないか、こう思いますけれども、これらについてのお考えは一体どうか、そこを承りたいのです。
  228. 近藤道生

    近藤政府委員 この点は、信託銀行につきましては貸付信託制度であるとかいろいろ特殊の制度を保有させております関係上、店舗につきましては一般の銀行とある程度の差別をせざるを得ないというようなことで、現在までのところ店舗数についてかなり限定的な、ただいまお示しのような方針をとってきておるわけでございます。今後中小企業に対する信託銀行融資の状況等をにらみながら、特に何らかの新しい手段を講ずる必要があれば、そのつど考えてまいるということで臨みたいと思っております。
  229. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  230. 毛利松平

    毛利委員長 関連質問がありますので許します。広瀬君。
  231. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 貸付信託法の一部改正について、先ほどの質問で河野さんの時間を都合しながらやったものですから大事な点を一つ忘れておりまして、この点について質問をしたいのですが、今日まで貸付信託法が、言うならば開発銀行融資と同じような、基幹産業、鉄鋼、電力、海運、運輸、通信、化学産業、こういうようなところに大衆の資金を集中して、産業投資の媒体になるというような形ででき上がったわけであります。そういうことで今日までずっと行なわれてきたと思よのですが、大体金銭信託あるいはその他の貸付信託、年金信託というようなことで大衆の預金が大部分であった。そういうようなものが大衆には還元されない、融資をされないできた。その貸し好けのシェアは、そういうような基幹産業向けにどのくらい使われておったか、この点をひとつ伺いたい。
  232. 近藤道生

    近藤政府委員 先ほど委員から御指摘のございました一・八もしくは一・七というようなところが中小企業に向けられました以外のものは、ほとんどみないわゆる基幹産業的なものであったわけでございますが、それをさらに分類いたしますと、四十五年三月現在で、いわゆる四重点産業が一九・六%、製造業が全部で六六・一%、運輸通信業、これは私鉄などが主でございますが、それが一二・三%、そういったようなところに相なっております。
  233. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そういうように非常に四大産業、そういうようなところに集中しておったわけでありますが、今回新たに、資金需要というものが多様化してきている、国民の必要とする資金需要というものが生活面にかなり強まっている、そういうようなところから、住宅にも融資をする道を開こう、あるいはまた流通機構改善など、そういう卸、小売り業というようなところにも貸していこう、こういうことになったわけでありますが、これは機械的に、それではいままでの大部分を占めておった貸し付け分野をどれくらい減らしてそういう方向に向けていくかということを、数字で何%どうするんだというようなことはなかなかむずかしいにしても、せっかく法律はつくったけれどもいままでと同じような結果が出るのでは、この貸付信託法を改正した最大の趣旨というものが生かされないわけですね。これについて具体的にどういう誘導政策というものを行政指導の中でやっていくおつもりであるのか、この点をひとつはっきり方針を伺っておきたいと思います。
  234. 近藤道生

    近藤政府委員 この点につきましては、すでに産業構造の変化その他の客観情勢に対応いたしまして、信託銀行自身が現行法のワクというものについて非常に窮屈さを感じておりましたことは事実でございます。したがいまして、法の改正が行なわれますれば、信託銀行が自主的に良識をもって相当、貸し付け、貸し出し内容の変更を行なってまいるというふうに考えておりますが、ただ、その状況を見守りながら、私どもといたしまして、もし必要な指導を行なわなければならないという場合になりましたらそういう指導を強力に推進いたしたいというふうに考えております。
  235. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 その点が私は今度の法改正において非常に大事な問題点であろうと思うわけでありまして、何年かの経緯を見ないとその結果はわかりませんけれども、私どもがまたここで、あのときにそういう問題点を指摘したのだけれども、個人住宅の需要が非常に強いのにもかかわらずどうも貸付信託法の中で信託銀行からなかなか金が借りられぬ、あるいはまた、卸、小売り等の今日物価との関連で問題になっておる、そういうような面の改善の資金としてあまり有効に働かなかったというようなことのないように、これはニードがあって、業界としてはむしろそっちの信託銀行のほうからそういう要望もあるということで、それにまかしておいても相当その需要にこたえるということが行なわれるのではないかという手放し的な楽観じゃなくて、この法律をつくったものというのは、そういう新しく住宅分野にも資金を供給しよう、あるいは流通機構改善の面についても、卸、小売り商などにも融資をしていこうということなんでありますから、そういうものが実現できるように、やはりこれは銀行局としてもある程度監視をし、指導をし、この法のメリットの一番大きい問題が、国民生活を、やはり貸付信託法においても信託銀行がそういう一翼をになって、そういう需要にこたえたのだというような結果が出るように、やはり積極的な指導というものが必要だ、このように考えるわけでありまして、その点強く要望をいたしておきたいと思うわけであります。  以上で終わります。
  236. 毛利松平

    毛利委員長 これにて両法律案に関する質疑は終了いたします。  次回は、来たる十九日金曜日、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時六分散会