○河野参考人 お答えを申し上げます。
いま御
指摘のように、十三日にアメリカは、去年の十一月から数えて五回目の公定歩合の引き下げを行なったのであります。もっとも、これは当局が説明をいたしておりますとおりに、むしろ市中の短期金利が相当下がってきておる。たとえばBAにしてもTBにいたしましても、そういった市中金利の非常な低下の傾向に追随いたしたものであるということを言っております。またそのとおりだと思います。したがいまして、公定歩合の引き下げ自体が、実体的な問題としてそれ自体が
日本の
経済にどうという問題でなくて、公定歩合の引き下げということにあらわれておるアメリカの金利の低下の状況自体に実は問題がある。
お話しのように、だんだん
日本の
経済が国際化してきて、世界の中で相当な自由化というものが進んでまいりますと、世界じゅうの国で起こってくるいろいろな金融上あるいは金利上の問題が、従来と比べてわりあいキーンに
日本の
経済あるいは金融に影響してくることは御
指摘のとおりだと思います。したがいまして、アメリカの現在の公定歩合に象徴されておるような金利の低下が、
日本の
経済に非常に影響を持ってくることは否定できない。もっとも、これは御案内のようにヨーロッパと違いまして、
日本ではあまり、為替管理その他の関係でそれほどストレートに影響が及ぶということはないわけでありますけれども、それにいたしましても影響が相当くることは間違いありません。
いまいろいろな問題がございます。どういう点が問題になるかという御
指摘でありますが、これは
日本経済全体に広く影響がありますが、新聞等で
指摘されており、また、たびたび堀
委員から御
指摘もありますように、さし
あたりの問題はやはり、
日本の円金融によってまかなわれておったものが、向こうの金利が下がれば向こうのドルを使ったほうが業者としてもあるいは
銀行としてもそのほうがコストが安くなるということで、いわゆるドルシフトということばを使っておりますけれども、ドルへ移っていくという問題がさしあたってあると思います。この問題を私どもは決して無視するわけにいきませんし、
先ほど御
指摘のように、佐々木総裁から申し上げたように、われわれの公定歩合操作あるいは金融政策の基本というものは、基本的には国内の
情勢ということでありますけれども、さればといって、国外のそういう
情勢に対して目をつぶって、あるい軽視していいということでないことは御
指摘のとおりでございます。
しかしながら、いまのドルシフトの問題に限って申しますならば、これは輸出の面におきましても輸入の面におきましても、ことに輸出の面におきましてはアメリカの——これは金利は御承知のようにいろいろな要素がありますから、たとえば為替
銀行のマージンでありますとか、スワップをいたしますときのコストでありますとか、それをどういうふうに見るかということで的確には実は計算ができない、これは御承知のとおりでありますが、少なくとも輸出につきましては、BAが五%台になったらすでに計算上はこれはドルに移る
状態になる。輸入につきましては、これは御承知のように、去年の六月ですか、あのときのいろいろな事情で円金融に一部直したわけですが、これがやはりBAが大体四・二五——現在四・二五でございますが、四・二五というところが計算上は大体境のところだと思います。もっとも、
先ほど申し上げましたように、
銀行のマージンあるいはスワップのコスト等をどう見るかによって、その辺の若干の差は起こりましょう。そういう
状態でございますが、私どもは、いまの
状態におきましては、輸出におきましてはそう大したシフトが起こらないと思います。これはある
程度は起こるかと思いますが、大したものではない。輸入につきましてもいまのところはまだ、私ども聞いておるところでは、業者段階である
程度起こっておるかとも思いますけれども、まあたいしたものではないように思います。
かたがた、
日本の国際収支、ことに外貨準備がどんどんふえておる
状態のもとにおいて、これがまたドルシフトいたしますと、そういうことがさらに外貨の準備を増加していくことによって、
日本の
経済なりあるいはいろいろな問題を起こすおそれがあるという点から、いろいろこの点について非常に心配をされる方が多いのでございますけれども、私どもは、注意はしてまいらなければならぬと思いますが、いまの
状態においてそういったことがかりに起こっても、私どもはそんなに神経質に
考える必要はない。
したがいまして、基本的には、今後のアメリカのBAレートあるいはTBは、個人的な見方ですけれども、私はもうそんなに下がらないのではないかと思います。BAレートはあるいはひょっとしたらもう少しは下がるかもしれませんが、まあその
程度のところなら、いろいろな取引関係等を
考えてみまして、いまの
日本経済全体に決して悪い影響を及ぼすという心配はいまのところないと私どもは
考えております。
したがいまして、もちろんこれは御質問にはないのですけれども、そのゆえをもって
日本の公定歩合をさらに下げたほうがいいとか、これは下げることを考慮するかという問題は、いまのところ私どもはそういうことは全然
考えておりません。