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1971-02-10 第65回国会 衆議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月十日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 毛利 松平君    理事 宇野 宗佑君 理事 上村千一郎君    理事 丹羽 久章君 理事 藤井 勝志君    理事 山下 元利君 理事 広瀬 秀吉君    理事 松尾 正吉君 理事 竹本 孫一君       奥田 敬和君    木野 晴夫君       木部 佳昭君    木村武千代君       坂元 親男君    田村  元君       高橋清一郎君    登坂重次郎君       中島源太郎君    中村 寅太君       原田  憲君    福田 繁芳君       坊  秀男君    松本 十郎君       森  美秀君    吉田 重延君       阿部 助哉君    佐藤 観樹君       平林  剛君    藤田 高敏君       堀  昌雄君    貝沼 次郎君       古川 雅司君    小林 政子君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省証券局長 志場喜徳郎君         大蔵省銀行局長 近藤 道生君         大蔵省国際金融         局長      稲村 光一君         国税庁長官   吉國 二郎君  委員外出席者         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 二月九日  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出第三五号)  は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  証券取引法の一部を改正する法律案内閣提出  第九号)  外国証券業者に関する法律案内閣提出第一〇  号)  日本輸出入銀行法による貸付金の利息の特例等  に関する法律案内閣提出第一五号)  国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第一六号)  預金保険法案内閣提出第一三号)  貸付信託法の一部を改正する法律案内閣提出  第一四号)      ————◇—————
  2. 毛利松平

    毛利委員長 これより会議を開きます。  証券取引法の一部を改正する法律案及び外国証券業者に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。平林剛君。
  3. 平林剛

    平林委員 きょうは一般的な問題について、ちょっと最近の情勢を二、三お尋ねしたいと思います。  一つは、最近における証券をめぐる情勢が大きく変わってきておりまして、その中でも有価証券発行多様化というのも一つの特徴であろうと思うのでありますけれども、ここ二、三年来新たに株式時価発行という問題が行なわれるようになりました。大体今日まで、昭和四十三年ころの一社から始まって、最近ではだいぶこういう傾向がふえておるようなんでありますけれども、この株式時価発行について、最近の実情はどういう傾向にあるかという問題をひとつお話しをいただきたいと思います。
  4. 志場喜徳郎

    志場政府委員 ただいまお述べになりましたように、株式時価発行昭和四十四年一月に日本楽器が初めて実施いたしました。それ以来現在までに、会社の数にしまして二十六社、そのうち二社が二回実施しておりますので、時価発行件数と申しますか、回数と申しますか、としましては二十八件行なわれております。  その概要を年度別に申し上げますと、四十三年度が先ほど申した日本楽器一社、一件でございます。額面金額では三億円の増資でございますが、払い込み金額は二十一億円の時価発行が行なわれました。四十四年度件数は八件、額面金額十四億六千万円、払い込み金額百七十八億四千万円でございます。四十五年度でございますが、まだ年度は一月ばかりございますけれども、もう数字としましては確定したと思いますが、件数は十九件、額面金額七十四億九千万円、払い込み金額七百三十二億三千万円でございまして、四十四年一月に初めて行なわれまして以来今日まで、合計二十八件、額面金額九十二億五千万円が、払い込み金額九百三十一億七千万円という状態での時価発行が行なわれておるわけでございます。
  5. 平林剛

    平林委員 ただいまお述べになりましたような数字は、全般の増資有償増資分に対する割合というものはどんなふうになっておりますか。
  6. 志場喜徳郎

    志場政府委員 額面ベース払い込みベース——実際は投資家からお金を集めるということになりますと払い込みベースでいいと思うのでありますが、この払い込みベースで申し上げますと、四十三年度は〇・七%、四十四年度は三・四%、四十五年度が一一・二%、その金額が全体の有償払い込み増資総額のうちに占める時価発行による分の払い込み総額でございます。
  7. 平林剛

    平林委員 この時価発行につきましては賛否いろいろな意見がございますが、いずれにしても、最近の時価発行の占める割合というものが四十三年度から比較いたしますと、わずかの間に一一%をこえるという伸び方を示しておるわけでございまして、一つ傾向を示しておると思うのであります。しかしこの間、この時価発行につきましては、たとえていうとミツミ電機のケース、あるいは昭和四十五年のソニー時価発行増資にからする問題とか、いろいろなこともございまして、なりいろいろな角度から議論をされておるわけでありますが、私はここに一つ注目すべき意見として、この点は一体政府としては時価発行について今後どういう態度をとるかという点をただしてみたいと思うのであります。  それは、株価の高い企業時価発行市場投資資金を大量に吸い上げてまいりますと、たとえば鉄鋼株のように、株価が低くて資本金の大きい企業はなかなか増資ができにくくなる。鉄鋼だけに限らず、電力のような基幹産業でも資金不足になるおそれが強い。特に昭和四十六年の景気状況をいろいろ推測いたしますと、政府のいろいろなてこ入れはございましょうけれども景気自体は下降するというような傾向にありまして、こういう事態において株価が一体どういうふうになるだろうかということは一般的に関心を持たれておるわけであります。ソニーの例あるいは、ミツミの例などを見まして、結果的に見てこうした時価発行食い逃げ増資になるという可能性もないとはいえない。そこで現在のような経済情勢景気見通しにおいて、こういう時価発行というやり方について証券行政はいかにあるべきか、これは私は一つ問題点だろうと思うのでありまして、証券行政がこの事態においてどういうふうにあったらよいのかという御見解をお聞かせいただきたい。
  8. 志場喜徳郎

    志場政府委員 ただいま、株価の高い企業時価発行というお話でございますけれども、なるほど時価発行によって額面をこえて、いわばこれにプレミアム分として払い込まれました分は、当面その全額を資本に組み入れる必要は法律上もございませんので、このことをさしてよく企業側が無コスト資金を吸い上げた、こういうことがいわれるわけでございます。ですけれども、決して無コスト資金、いかに株主からでございましても、そういう資金は、やや長期的に見ました場合にどこからも入ってきょうがない道理でございまして、必ずこれはしかるべき期間内に増配あるいは株式無償交付、そういった方途を通じまして、いわゆるプレミアム分株主還元されていく、こういうことがありませんと、そういういわば無コスト資金を一方的に収奪するといったような事柄経済条理から申しましても存続し得ないわけでございます。ただ、その場合、調達しました資金はもちろんほとんどの場合に企業新設、拡張といったような設備投資に向けられる、それによって生産力を向上し、収益力を向上させる、こういうための資金でございまして、したがいまして、いわばその間、資本懐妊期間とでも申しますか、その新設、拡張される設備が稼働いたしまして収益を生んでくる、それからその収益還元していく、こういう筋合いでございますので、その間はいわば無利息で先借りしておるというかっこうであるべきはずでございます。そういうふうにいたしました場合に、株価が高いからすぐ時価発行ができる、こういうことには思いませんわけでして、その時価発行によって調達いたしましたプレミアム部分を、やがてそれを各種の方法で株主還元して、しかるべき収益を戻しましたあと、なおその還元に耐え得るというような成長なり収益をあげることができるかどうかということが、時価発行当該企業にとりまして合理性があるか、妥当性があるか、持続するか、こういうことになろうかと思うわけでございます。したがいまして、その限りにおきましては、それに耐えられるような企業時価発行を行なっていくということは、これは資本理屈からいいましても当然でございまして、また株主にとりましても、長い目で見て、報酬を考えました場合に必ずや報われるわけでございますから、株主利益をそこなうということにもならないわけであります。また資本の効率から申しましても、そういう収益力をあげることができるところに資本が集まるということが、まさに経済合理性にかなっている理屈だと思うわけでございます。  ただ、御指摘になりましたように、大型基幹産業、中でも電力及び鉄鋼につきましては、そういった意味でどんどんと収益力が目立ってふえるというようなことが見込まれる業種でもございません。したがいまして、株価も、通常の額面による配当が、金利状態からいたしましてもまあ妥当な利回りに回るという、いわば資産株というような意味で観念されておりますために、株価も五十円台あるいは六十円がらみといった事態でずっと推移してきているということは御承知のとおりであります。ですけれども、これらの企業にとりましては、やはり安定性というものが根っこにございますわけで、それなりの信用がございますために、妥当な利回りを維持することが見込まれる限り、増資は全然だめになるということもございませんが、ただその場合は額面による発行ということになろうと思います。ですけれども、いわゆる時価に比べまして、時価発行します場合には妥当なディスカウントをいたしますので、六十円前後の市場価格における時価五十円というものは、いわば五十円そのものが時価発行による価格である、時価であるというふうにもなるわけでございまして、もちろんそれ以上の調達は見込めないわけでございます。ですけれども、そういうふうになるということはそういう当該企業の性質によるものでございます。  しかし反面、基幹産業として非常に重要でございますので、従来もそういう場合にはどういうふうに資金調達されたかと申しますと、御案内のとおり、これらの業種金融機関の借り入れのほかに長期資金ということでもって、設備産業でございまするので、資金はなるべく長期調達することが望ましいわけでございますが、社債というものにかなり多く依存している。これは私といたしましては、非常に自然な姿でございまして、諸外国例等を見ましても、こういった基幹産業大型産業あるいは公益事業といったようなところにおける資金調達は、どちらかと申しますと、増資といったような株式による資金調達はある程度のステッディな動きをいたしましょうが、これ以上は社債に依存するということが資金供給の筋道であるというように考えておる次第でございます。
  9. 平林剛

    平林委員 先ほど申し上げたように、私は従来、時価発行についてあまり知識はありませんけれどもソニー時価発行増資をしたときには、当時のアメリカのウォール街の株が大暴落のあおりで、そのときの発行価格三千二百円が三千円割り込んだ、そういう意味で公募に応じた大衆投資家が結局高値をつかんで、その損が救済されると必ずしも期待できないという状態などがありました。そこで、時価発行投資家を犠牲にして、企業証券市場が得をする結果になるのではないかというような議論も行なわれたことを承知いたしておるわけであります。特に時価発行は、いろいろ検討はなさるでしょうけれども発行会社にとってもまた引き受け証券会社においてもある程度の利益をもたらす。つまり当事者利益が一致をしておるわけでありますから、ともすれば暴走していくという危険性もないわけではありません。こういう点から考えると、何らかの形のルールづくりというようなことがいわれておるわけなんでありますけれども証券当局としてはこうした問題についてはどういうお考えを持っておりますか。
  10. 志場喜徳郎

    志場政府委員 先ほど申し上げましたように、時価発行につきましては、株価が高いときに一括の食い逃げ的に、その価格市場から、投資家から吸い上げる、こういうことでは決して成り立ち得ないはずであると思うのでありまして、発行価格に対しまして、しかるべき期間内に、しかるべき利潤、利回り的なものを投資家還元できる、この見通しがつく、その金額の範囲内でなければ発行すべからざる、またでき得ないはずのものでございます。その点につきまして、ただいま御指摘になりました一昨年の後半から昨年の前半にかけましての若干の時価発行につきましては、そのタイミングを誤っておるという面があったのではないかということが反省されるわけでございます。  今回、この昨年の、いろんな原因からの暴落ではございますけれども、世界的な影響もございましたわけですが、この暴落ということを受けまして、時価発行についてまたあらためて関係者間に深刻な反省を呼び起こしておるということも事実であります。私どもといたしましては、幹事証券会社引き受け証券会社に対しまして、かねてから健全な時価発行を定着させる必要があるという見地から、まず証券会社相互間の過当な幹事競争ということを厳に戒める、過当競争に走るあまり不健全な時価発行投資を無理に企業にすすめる、こういうことがあってはとんでもない話であるということがございますので、過当な幹事競争を排除するという観点。それから、これは幹事証券会社引き受け証券会社発行企業に対しまして、いわば株主としての利益を代弁するという地位に一面におきまして立つわけでございますから、その面からいたしまして、かねてこれは機関投資家のサイドあるいは証券取引審議会等の場面におきましていわれておったことでございますけれども、先ほど申しましたように、時価発行を行なう場合におきましては、原則的にこの次の増資時価発行を行なうということを株主にあらかじめ予告しておく。それによって株主当該株式に対してどういう反応市場において示すかという、その反応を示した上での市場価格というものをベースにするという意味からまずオープンするということ。それから、先ほど申しましたけれども、もちろん増資でございますのできょう集めたものをあした還元する、こういうような一方的なお金のやりとりというようなものは無意味であり、あり得ないわけであります。しかるべき期間というものが必要でございますけれども、そのしかるべき期間内に増配あるいは無償交付といったようなことでプレミアム還元すべきでございます。その還元方途あるいはめどというもの、これは見通しでございますので、経営者といたしまして、そこをきわめて断定的に話すということも期待できないという面もございますけれども、できるだけその方向を具体的に明らかにするという努力をしてもらう。この二つを実は柱といたしまして、幹事証券会社幹事業務を行ないますときに、発行会社のほうに十分そこを詰めるようにということを申し上げて指導しているような次第でございます。
  11. 平林剛

    平林委員 大体お話わかりましたが、もう一つ問題点は、時価発行引き受けをする場合にはどうしても大きな資金力販売力が要請をされる。今日までの傾向合計二十八件は、こまかくいえばどういう状態になっておるかわかりませんけれども、ただいま申し上げましたような状況であるとすれば、大手の集中がますます激しくなる、そこにまたつくられた時価というものがありはしないかという危険性株主としては感ずるわけであります。特に今度のように国際化自由化影響から、海外から証券会社がわが国に進出してまいりますと、そういう立場から防衛をするという意味もあり、私は、いまの大手証券会社がわずか四社でほぼ独占しておるという形は必ずしも望ましくないんじゃないか。どうしてもその間、今日までいろいろな動きを見ておりますと、作為的な株価市場がゆがめられたりいたしまして、株価が公正につくられないというような批判もあったりして、証券市場に対する大衆の信頼や不信感をあおっておる面もなきにしもあらずなんであります。そこでこれらのことを総合して考えますと、証券界体質強化といいますか、四社独占という形をもっと進んで考える必要がないかというような声も聞かれるわけでありますが、これについてはどうお考えになっておりますか。
  12. 志場喜徳郎

    志場政府委員 時価発行増資というようなことを前提といたしますと、そこに証券会社引き受け機能強化充実ということがあらためて要請されるわけだと思うのであります。株主割り当て額面発行でございますと、いわば株主に対して払い込みが強制されるということに経済的に働きますので、そこに引き受け機能として独自の分野の必要性、存在の理由というものが比較的乏しい、ほとんど皆無だと言う人もおられます。ですが、時価発行になりますと、先ほど申しましたように、一方におきましては、発行企業側に対していわばわがままを押えるといいますか、なすべきことを十分に検討させて時価発行させるということを主張しなければなりませんし、また株主動向ということ、反応ということをよくつかんでおく必要がある。また、引き受け証券会社が広くこれを投資者に消化していく、この販売網があくまで必要でございます。そういうことを考えますと、時価発行の場合の幹事証券会社になる会社というものは、勢いその規模あるいは財務体質あるいは販売網といったものが、相対的には大きくならなければならないという面が確かにあるわけでございます。現に証券会社のいわゆる業務別最低資本金の定めをごらん願いましても、元引き受け証券会社、主幹事証券会社として機能できる場合の最低資本金は三十億円以上である、こういうふうに一番上のランキングのところに置いてあるわけでございまして、その点から申しましても、そういう機能的にまさにそれが要請される、これは否定し得ないかと思う次第でございます。  ですけれども、一方において考えますと、確かに御指摘のとおり、日本の現状におきましては、いわゆる四社というものの日常の株式売買高、あるいは上場有価証券取引所における株式売買高のうちに四社の分の占める割合が六〇%近くあるということも事実でございます。もちろんこれを均分に四の一といたしましても、一社といたしましては一五%程度ということになるわけでございますが、要するに、四つ合わせますと六、七〇%近くなるという点は否定できないわけでございます。もっともこの割合も、このところ徐々に下がりつつございます。ですけれども、約五〇%台ということは当面続くような気もいたします。もちろん、四社といいましてもいろいろと判断がございますわけでありまして、営業方針も異なっておりますので、四社がみんな、はずを合わして統一行動をとるということはございませんわけですから、この全部五〇%台のものが同じ方向影響を及ぼすというふうにもいえないわけでございます。いずれにいたしましても、それだけの売買高のシェアを占めますと、市場動向に対しまして大きな影響力を持つということは否定できないわけでございます。もちろん、その五〇%台と申しますのは、委託売買ブローカー業務としての売買、これは自己売買、両方を含んでおりますので、全部が全部自分の判断による売買でないことはもちろんでございますが、ただ投資勧誘その他におきまして、やはり時価発行を受けた分につきましても影響を及ぼすであろうということはいえるわけでございます。  そういう事態でありますので、一方において引き受け機能が、ことに国際化ということにおきましては、資本力なり営業販売力の面においてかなり規模を要するという面と、それから市場での実際の機能といたしまして悪影響を及ぼさないかという面との調和をどこに求めるかというわけでございますが、私どもとしましては、やはり大きな組織を持っている会社につきましては、国民の各層各階におきまして広く投資家を健全に開発していく、それだけの支店網あるいは調査網もございますわけですから、広く開発していく、その前提に立ったブローカー業務ということに主力を拡大する。その周辺といたしまして、公社債といったような確定利付の、そういう投資層といいますか、その辺が育ってきまして、そのうち投資判断がある程度自主的に働き得るような、そういう層を多く公社債市場あるいは投信あたりから育ててまいりまして、そういう土壌なり環境というものをつくっておくということ。  それから、その反面、自己売買でございますが、これは私どもといたしましては、先ほど申しましたように非常に影響がございますために、四社は特に自粛を求めるべきではないか、こういう感じが今後についてはいたすわけでございます。現在、商品有価証券としての保有限度は、全体の証券会社と同じように、特に純資産の四割というふうに保有限度を制限しておるわけでございますが、だんだんと純資産が、特に大手証券についてふえてまいりますと、それにスライドして商品有価証券を多く持てるということがはたしていいのかどうか。したがいまして、今後そういった純資産の経過というものと見合いながら、その商品有価証券保有限度についても検討を絶えず加えまして、四社の自己売買業務ウエートというものが市場に大きな影響を及ぼすようなことを極力なだらかにいたすべきではないか、こういうふうなことを基本的には考えておる次第でございます。
  13. 平林剛

    平林委員 たとえば、四社以外に、ある程度の中証券ですか、そこいらで合併のような話が出てくる——昨年来伝えられておりますのは、新日本と和光とが提携して合併するんじゃないかという議論うわさとしては流れておるのですけれども、かりにこういうような事態があったとき、証券行政としてはどういう態度をおとりになるのですか。
  14. 志場喜徳郎

    志場政府委員 合併大蔵大臣認可事項になっておりまするが、事柄当事者の自発的な問題でございますので、なかなかお答えしにくいわけでございますが、今日いわゆる総合証券会社として資本金三十億円以上ある会社は実は七社あるわけでございます。そのうち、ただいまおあげになりました新日本証券及び和光証券、いずれも総合証券会社であるわけでございます。もちろん資本金は一方は七十億円であり、一方は三十億ということでございますので、倍以上の違いがございますけれども、いずれも総合証券会社になっておるわけでございます。いまお尋ねのような事柄、私どもは全然聞いたこともございませんし、単なるうわさではないかと思うのでございますが、これを二つ合わせますと、資本金百億円の会社になるわけでございます。私どもといたしましては、あまり資本金の大きなものを、つまり四社並みのものを多くつくるということがはたしていいのかどうか。むしろ問題は、総合証券会社に至らない、現在資本金で申しますれば十億円台でございますところが、実はもう少しそれなり機能を発揮してもらいたいという期待は持っておるわけでございます。小さな資本金は、二千万、三千万、五千万とございますけれども、案外ここら辺は地場の投資家と結びつきまして小回りがきくということもございまして、収益状態等もまあまあやっておりますが、資本金五億、十億台ということになりますと、案外そこは中途はんぱであり、私どもとしてはもう一歩期待したいという面がございます。さような点もございますので——もちろんこれも現在のところ収益という面におきましてはよろしいわけで、その面から合併を指導しなければならないといったような事例はございません。ございませんが、その辺にさらに今後の証券界における機能というものを自覚して、そういう業務提携しようではないかということになりますれば、一種の、先ほど御指摘の寡占的な状態に対する一つのアンチテーゼという意味も期待できるという面もあるのではないかというふうに考えます。
  15. 平林剛

    平林委員 この問題はこの程度にいたしまして、次に、株式公開による譲渡所得について課税をするかどうかという問題につきまして少しお尋ねしたいと思うのであります。  御承知のように、現在株式売買利益には税金がかけられておりませんで、所得税法第九条によって非課税扱いを受けておるわけです。私は昨年税法の審議の際に、赤井電機が東京証券の第二部に上場されたときに、大株主であった赤井社長が一挙に四十数億円の利益をあげながら全く非課税であるという措置について、一般のサラリーマンはわずかな月給からも税金が取られているということに比較をいたしまして、株式の公開がいかに優良な株の民主化につながるとしても、不公平に過ぎるんじゃないかということで問題を提起をいたしたことがございます。これについて、最近大蔵省筋では、新規の上場によるところの株式売買益はこれを譲渡所得とみなして、すべてに課するかどうかは別にして、常識的な課税をする方向検討しておるということを伝えられておるわけでございます。これについて証券局長、御見解はいかがですか。
  16. 志場喜徳郎

    志場政府委員 株式の譲渡所得課税の問題でございますが、申し上げるまでもなく、現在の所得税法におきましては株式の譲渡所得は原則的に非課税ということにされております。ただし、営利を目的とした継続的な取引から生ずる場合の譲渡所得並びに事業等の譲渡に類似するような株式の譲渡所得、もう一つございますが、その二つは典型的に例外として課税する、かようになっておるわけでございます。株式のキャピタルゲインの課税問題はなかなかむずかしい問題でございます。いたずらに理屈に走らず、現実的な現状を見ながら、一方において有価証券取引税を課しながら、他方においてただいま申しました二つの場合を中心にして課税を行なうという現在の法律体系は、私は税法が実際的な法律であるという点から申しまして、基本的に妥当な制度ではないか、かように私自身も考えます。  ただその場合に、この株式の新規公開の問題でございますが、証券行政の面から申しまして、閉鎖的でございました株式が公開されて上場につながっていくということは、単に資本市場証券市場の拡大拡充ということのみならず、当該企業自体の国民経済の中における発展ということから考えましても、ぜひとも必要な方向である、かように基本的には思っておるわけでございます。  ただ、昨年も平林委員から御指摘ございましたが、その場合の公開価格の決定等につきまして不合理な面が多いんじゃないかという面が一方にございました。それを昨日広瀬委員の御質問にお答えいたしましたように、その点の合理化を極力進めてまいりまして、その一環といたしまして、公開する際の放出株を多くする、上場会社の浮動株の占める割合と同じような程度にまで公開をしてもらう。それによって価格が需給関係からナチュラルに動向するように仕組む、こういうことを一方においてさせまして、資本金別に若干の差はございますが、多く公開されるという事例に見られるところを見ますと、その公開する株数は、大体発行済み株数の二割近くの数量の株式を一時に放出するということに相なるわけでございます。そこでこれを、私どもとしましては、極力進めるということを基本的に置きたい。ただ、現在の税法を見ますと、こういった放出行為は決して、現在課税になっております営利を目的とした継続的株式の取引とは思われません。それは理屈でもそう思われるのでございます。  もう一つの事業譲渡の類似所得の問題でございますが、それは現在の所得税法施行規則では、御案内のとおり、ある同族会社発行済み株数の二五%以上を一時手放しました場合に、それは事業譲渡に類似するものである、こういうことを基本的にとらえております。ただそれを、脱法行為を防止するという見地から三年間通算する。で、一年としまして一〇%こえれば、その分を含めた三年間の合計が二五%以上になれば、その一〇%以上の分を課税する、こういうことになっておるわけでございます。基本は、二五%以上放出すればそれは事業の譲渡とみなすんだ、こういう基本でございます。  そこで私ども、先ほど申しました公開の場合は、一時に二〇%近くを放出するのである、これは別に事業譲渡でもございませず、意図的にこれを分割することはかえって公正な価格を形成しないことになる。どうしても二〇%近くというものを一時に放出する必要がある。それだからこそ公開でございます。そういうわけでございますので、この二五%以上の放出を一時にいたしますと、それはもはや公開ということに籍口して、便乗して実は税の逋脱をはかるのだ。事業の譲渡とみなされてもやむを得ないのだというところは二五%を境としてくるかと思いますが、それを脱法的に、防止しようとしておりますところの、毎年一〇%をこえる分はいけないぞという分については、公開という場合にはそういうことじゃないのだから、これはひとつ除外してもらいたい。公開の場合にも二五%をこえて、事業譲渡とそこで並ぶじゃないか、こうなれば、いかに公開の意図からスタートしたものでもこれはやむを得ないだろう、量は質を規制することから考えてもやむを得ないだろうということを基本的に考えて要望している次第でございます。
  17. 平林剛

    平林委員 これにつきましてはいろいろ議論がありまして、株式の公開はもちろん証券市場の拡充に通ずるという意味では、大衆化という好ましい面は一面持っておりますけれども、しかし株式公開は別の面からとらえると、それだけ上場することによって知名度、信用度というものが向上するわけで、企業にはメリットがあるわけなんです。したがって、ある一定の割合をつければ、それでその所得に対しては課税をしなくてもよいという議論に、私は直ちにはなじまないものがあるわけです。しかし、かりにある一定の限度を設けてこれに課税するという一歩前進の道をとるといたしましても、私はそれによって新規上場というようなものは阻害をされないと考えておるのでありますけれども、かりにそういう措置をとるとしたら、証券市場にどういう影響を与えるか、こういうことにつきまして証券局長判断をお聞かせいただきたいと思います。
  18. 志場喜徳郎

    志場政府委員 先ほど申しましたように、私どもは、株式の公開は取引所の規則でもってつくられておりまして、いろいろと公開を馴化する、価格形成も公正に行なわれることを期待しながら馴化するということで改正をもくろんでまいりました。その結果が、先ほど申したように公開の価格算定方式の合理化は別といたしますると、放出株数になりますと先ほど申したような数字が出てきたわけでございます。私どもとしましては、この範囲は多少ゆとりを持ちましても、これはぜひ非課税でやってもらいたい。もしこれに課税が、ダイレクト、そのとおりにやればそこに課税が及んでくるということになりますと、必ずやいろいろとそれを避けて通る道に走ることは明らかでございます。率直に申しまして、もし課税されてもそういう抜け道が考えられるから、やろうとする者はのがれるじゃないかという意見もございました。しかし、私どもといたしましては、それは適当ではない。やはり株式の公開、資本市場株式市場というものはオープンに、あるべき筋合いに沿ったものをいたしまして、それが公正に行なわれるというところでなければならないわけでございます。それがいたずらに形の変わった、もぐるような形でだらだら行なわれることは決して適当と思わないわけでございますので、それがそのとおりの形で、課税に関係なく維持されることを強く期待しておるわけでございます。  課税が及んだらどうなるかということでございますが、課税が及ぶことになりますと、それでは課税をやむを得ないからきめられた方式でやりますということではなくて、必ず別の方策ということに移っていくでありましょう。しかしまた、それは証券市場に対しては決して好ましくない、かように考えるわけでございます。
  19. 平林剛

    平林委員 私、その点がちょっとわからないのですが、このキャピタルゲインの問題で、いろいろな考え方はあると思うのでありますけれども、もしかりに課税を強化し、あるいはある程度課税をするというと、いま二五%ラインを言われたのでありますけれども、それを確保しなければ抜け道が考えられるだろうと言いましたが、どういうようなことが予想されるのでしょうか。
  20. 志場喜徳郎

    志場政府委員 あたかもこれは、別途お願いしております公開買い付けをあまりきつく規制するとどういうふうに分散するであろうかということとちょっと似通った点もあろうかと思うのでありまして、一年なら一年にあるまとまった株数が、公開である場合はとらえられるわけなんですが、そのパーセンテージというものを免れるために分散していくわけでございます。しかし、その場合はもちろん上場前の話でございますので、市場にある程度の数を適宜流すということじゃございませんで、あるいは相対取引のような形でもってあるいは形式的に持ってもらうような形にしますとか、いろいろなことがございましょうと思いますけれども、そういうふうな形でもって株式の分散を形式的にはかることを考えるだろうと思うのであります。そういたしますと、その場合の株価というものにつきましては、もちろん公の場で判断が働くわけではございませんで、取引はあくまでも相対的なことになるわけでございますから、新規の取引の場合におきましては、その値段につきましていろいろと混乱なり、また買わされた人にも損害が及ぶということがあるかもしれませず、価格の点について非常に不明朗と申しますか、不公正な面もございましょうし、あるいはまたその分散ということが、真に株主が分散したのではなくて、いわば名義株のようにいろいろと分けるというようなこともあるのではなかろうか。そういうふうな状態で、上場ということにつきましては決して好ましい上場になったとは思えない、かように思うわけでございます。
  21. 平林剛

    平林委員 しかし、ただいまおっしゃったようなことは証取法に違反をしていくのじゃないですか。ですから、それは結局市場に株を上場する経営者の心組みであるし、制度がそういうことであればまたそれでも、私に言わせれば、上場によるところの知名度や信用度ということが企業に対していい影響を与えるという点も十分考えられるわけでありますから、そういう脱法的なことをやるということはまた証取法の違反になるわけなんでありますから、それができないということはないのじゃないでしょうか。
  22. 志場喜徳郎

    志場政府委員 私がいま申しました方法によって、いろいろと相対取引でもって株式を持たせていくということは、当該株主にとりましては別に証取法上禁止されておる行為ではございません。ですから、証取法の脱法という問題は、その段階では起こらないわけであります。
  23. 平林剛

    平林委員 まあいずれこの問題は別の機会に議論しますが、この一、二年における新規株式の公開の実態について少し知りたいと考えますので、これに関する資料の御提出をいただきたいと思いますけれども、よろしゅうございましょうか。
  24. 志場喜徳郎

    志場政府委員 公開の関係は個別にいろいろと資料を持っておりますので、どういうようなフォームでいたしますか、あとでお打ち合わせさせていただきまして、出させていただきたいと思います。
  25. 平林剛

    平林委員 次に、証券市場国際化に伴いまして外人投資がふえてくると思うのでありますけれども、この外人の投資の現状について、昭和四十五年の現況はどうなっておりますか。
  26. 志場喜徳郎

    志場政府委員 四十五暦年中におきましては、外人のわが国株式の取得は約一億五千万ドルの買い越しに終わっております。
  27. 平林剛

    平林委員 昭和四十五年の四月から六月の累計で私の承知しておるのでは、取得額で二億二千四百万ドル、売却分を差し引いた差額でマイナス九千百万ドルというふうに聞いておるわけですけれども、そこのところをもう少し——結果的に一億五千万ドルの買い越しになっておるというトータルだけでなくて、経過をちょっとお話しいただきたい。
  28. 志場喜徳郎

    志場政府委員 四十五年について申し上げますと、月別に申し上げますと……。
  29. 平林剛

    平林委員 いままでの累計でけっこうです。
  30. 志場喜徳郎

    志場政府委員 実は十二月分までしかわかっておりませんが、暦年でやっておりますので、四十五年度——つまり四十五年の四月から四十五年の十二月までで申しますと、合計で取得額が六億四千三百万ドル余り、売却額が六億三千六百万ドルでございまして、差し引き七百二十四万四千ドルの買い越しでございます。
  31. 平林剛

    平林委員 さっきおっしゃった一億五千万ドルの買い越しと、いまのお話と数字が違いますが、どういうことですか。
  32. 志場喜徳郎

    志場政府委員 先ほど四十五暦年と申し上げましたわけで、昨年は、御案内のとおり四月の末から五月にかけて暴落がございまして、国際的に売却が多かったわけでございます。一−三月の間における買い越し額が多かったわけでございます。
  33. 平林剛

    平林委員 そうすると、最近は外人投資の額は六億四千三百万ドルだが、売却もそれにほぼ匹敵するというような状態になっておるという結果でございますけれども、これはどういうような理由によりますか。
  34. 志場喜徳郎

    志場政府委員 一昨年の十二月でございますが、アメリカにおきましては、海外株式投資についてガイドラインを設けまして、それが、一昨年中におけるわが国の株式の買い入れ超過というものを、昨年におきましてはセーブするという一つの要因として働きましたことは御案内のとおりでありますが、昨年の四月末のいわゆるIOSの破綻というものを中心にしました国際的な投資信託の投資の動向は、単にわが国だけではございません、世界的に買い控え、むしろ売却をいたしまして資産の現金化、流動化をはかり、解約に備える、こういう事態でございました。あたかも、取引市場株価動向も、わが国の場合は四月末から五月でございましたが、ヨーロッパの諸国あるいはアメリカにおきましては、むしろその少し前あたりから下落傾向を強めまして、このところようやく上向きかけておるという状態でございます。その点はわが国の場合もほぼ似通った動きを示しておりますけれども、おおむね昨年の九月—十月ごろまでは非常に下落傾向、底値傾向というようなものでございました。世界景気動向見通しにくいというようなことで、国際的な影響力を持ちましたところの諸外国の投資信託の資金の運用は非常に慎重であり、むしろ売却をいたしまして、現金化、流動化を高めるということで、これは軌を一にしておったようでございます。その影響がわが国の市場に対する株式売買にも同様に、ひとしく及んできておる、かように私どもは見ております。
  35. 平林剛

    平林委員 いまのお話ですと、そうすると取得ベースなどにおきましてもどういう変化が見られておりますか。十二月までの統計でとらえてある地域別の比率などの動きはどうなっておりますか。
  36. 志場喜徳郎

    志場政府委員 まずその前に、たとえば月々の取得額を見ましても、一昨年の第三・四半期、十月より十二月あたりは一カ月の取得額が一億五千万ドルから一億七千万ドル、去年の二月−三月ごろも一億三千万ドルから一億六千万ドル、こういうオーダーであったのでございます。それが昨年の五月以降におきましては、四千万ドル台、五千万ドル台というふうにやはり額がぐんと減ってきております。他方、売却処分額のほうも、月ごとに見ますると減ってきておるのでありまして、一昨年の十−十二月あたりは七千万ドル、八千万ドルという月ごとの処分額でありました。去年の一−三月も同様でありますが、今日ではこれが四千万ドル、六千万ドル台というところでございまして、要するに処分額のほうは日本の場合はあまり下がっておりませんが、それ以上に取得額のほうが著減してきた、三分の一程度に下がってきたということが、この差額を小さくしてきたということじゃないかと思っておるわけであります。  なお、地域別でございまするが、外国からのわが国の株式の取得状況は、欧州の投資信託が多いわけでございまして、国ごとには正確にはわかっておりませんが、外人取得の中で占める割合は、欧州の株式取得が去年の十月−十一月ごろにおきまして六〇%から七〇%程度を占めておる。アメリカは、大体去年からはガイドラインのせいもありましてふえておりませんで、去年の十二月では一二%ばかり、去年の夏ごろから秋にかけて一五、六%程度、こういうことでございます。その他、東南アジアは六%から一〇%、一四、五%、その月によって若干違います。その他は三%から四、五%程度というふうなことでございまして、まず六割から七割見当が欧州、一割五分程度がアメリカ、東南アジアが一割ぐらいまで、こういうふうな事態でございます。
  37. 平林剛

    平林委員 大体傾向からいきますと、地域別に見るとアメリカの取得ベースがだいぶ下がってきておる。これに対して欧州と東南アジアがふえておるというような傾向と理解しておるわけでありますけれども、ちょっとこれに関連をしてお尋ねをしますが、松下電器がニューヨークで上場できるのじゃないかというような話を昨年来聞いておるのですけれども、いまどうなっておるのでしょうか。
  38. 志場喜徳郎

    志場政府委員 御案内のとおり、ソニーはニューヨークに上場いたしましたが、松下につきましては、そういうことに関心を持っていろいろと向こうのSEC等に接触しているといううわさ等も聞いたことがございますが、正式に上場の申請をしたとかいうようなことにつきましては、私ども承知しておりません。
  39. 平林剛

    平林委員 まだいろいろありますが、時間の経過もございますから、ひとつ別の問題に移りますが、今度の証取法の改正について、株式の公開買い付けということが柱になっておるようでありますけれども、いろいろ議論をしませんけれども、端的に聞きますが、こうした株式公開買い付けにあたって、政府から提案をされておる趣旨は大体わかるのだけれども、単に投資家の保護にとどまらず、不当な買い付けについては産業政策の立場から大蔵省が届け出を受理しないほうがいいのじゃないかというような意見もあったと聞いておるわけです。これについてはどうなったのでしょうか。
  40. 志場喜徳郎

    志場政府委員 お尋ねのような不受理といったようなことは考えておりません。届け出でございまして、ただその場合に、その内容におきまして訂正を要すると認められるものは訂正をさせた上でその効力を発生させる、あるいはその状態によっては効力の発生を延長する、ないしは効力の発生をせしめないということもあり得るかとも思いますけれども、そういう届け出のシステムに持っていったのでございまして、その申請を受理しないということは、法律形態としては考えておりません。  またそこで、この審理の内容でございますが、これはこの前委員会でも申し上げましたけれども、たとえば独占禁止法のような法律違反という疑いがある場合におきましては、政府といたしましては十分にその点は慎重にクリアしなければなりませんけれども、そのほかの産業政策その他につきまして、それを理由にしましてその効力について云々する、中身について云々するということは適当でないと考えたわけでございます。あくまでもとの買い付けの方法なり条件というものが公益または投資家保護の点から適当であるかどうかという観点からの審理をいたしまして、そうしてその点を審理した上での効力発生ということにもっていきたい、こういうことに相なります。
  41. 平林剛

    平林委員 最後ですけれども外国証券業者証券取引所に対する加入の問題はどうなのか。私の承知しているところでは、証券取引所は現在定款によって会員の資格を制限をしておる。あるいはこれに付帯する理事会決議で、外国証券会社、外資によって支配を受けることになった証券会社等は会員になれない、あるいは会員の資格を失う旨、明記をされておるのですけれども、こういうものと今度の法律改正とはどういうような関係になりましょうか。
  42. 志場喜徳郎

    志場政府委員 今回の外国証券業者に関する法律の附則におきまして、現在の証券取引法第九十条を改正しております。現在の第九十条は「証券取引所の会員は、証券会社に限る。」となっておりまして、この場合の証券会社はもちろん日本の法人たる証券会社でございますので、国際的な問題があろうということで、所要の改正を加えることにいたしておりますけれども、そこには一つのレシプロシティーといいますか、相互主義ということで改正することになっております。と申しますことは、わが国の会員は法人を会員といたします。けれども外国はおおむね個人を会員としておるのでございまして、その点はたてまえが違うのでございますけれども、アメリカのニューヨーク取引所をはじめといたしまして、ヨーロッパの諸国の主要取引所におきましては、まず原則といってもいいほど自国民に限っております。自国の国籍のある者、市民権のある者あるいは参政焔のある者、こういう国籍なり市民権というものを会員の要件にしておるわけでございます。したがいまして、日本証券会社が当該外国に現地法人をつくり、あるいは支店をつくりましても、その代表者が日本人である限り、その日本人が個人として会員になろうといたしましても、その取引所の定款によりまして会員の資格は与えられておりません。さようなことも考えまして、会員の資格をきめるのは取引所でございまするが、この差別待遇が当該外国でわが国に対してない限りは、わが国も当該相手側に対しましては国の法令として誰別待遇をすべきではないだろう、そのようなことを考えまして、法律の段階では相互主義でもって資格を認めるということに改正案をいたしております。ただ、これはあくまで、申しますように取引所が実際問題として外国取引所を見ながら、取引所のルールで、またレシプロシティーを考えていくということを拘束するものでは毛頭ないわけでございます。
  43. 平林剛

    平林委員 いまのお話のように、法律上はたてまえとして証券取引所に加入ができるということになっておるわけでありますけれども、アメリカでは最大の取引所のニューヨーク取引所で、いまお話のあったように、会員資格はアメリカの国籍を有する者というふうに限定をしておるわけです。相互主義で解決するといいましても、すぐアメリカでこうした制限を撤廃する、なくしていくというようなことがなければ、外国証券業者証券取引所の加入の問題も相互的に考える、こういうことなんでしょうが、もしそうだとすると、それを具体的に法律の意図しているような方向にやるためには、政府としてはどういう手だてをするのか、そしてまたそういうことの実現性の見込みはどうなのかということがお聞きしなければならぬ点なんですけれども、それはどうですか。
  44. 志場喜徳郎

    志場政府委員 私ども今度の法律で証取法九十条を直しましたゆえんは、支店を認める段階におきまして、現在の法律ではわが国の証券会社だけに会員の資格を与えるということに、法律上差別待遇を国の内外に対してしているというところを考えまして、法律上の措置としましては、これは相手方の法令上わが日本に対して差別待遇をしない限りは、わが国もその外国に対しては法律上の門戸は開くということにいたしたのであります。したがいまして、その国が法律をたてにいたしまして、もしも外国に法令上の差別待遇がございますれば、それを改正してもらうということの働きかけをすることができましょうし、またしたいと思いますが、しかしそうなりましても、取引所の会員資格は各取引所が定款でもってきめておるということが現状でございますので、今度実際問題といたしまして、たとえばわが国の東京証券取引所外国の支店を会員にするかどうかにつきましては、今度は当該外国支店の属する外国取引所の定款でどうなっているかということを見まして、それがわが国の証券会社に対して依然として差別をしておる限りは、日本証券取引所も定款を直すことはしない。しかし、だんだんと交流が進むにつれまして、わが国は法律上のそういう相互主義が貫かれますので障害がございませんから、取引所取引所の交渉段階でもって、そういう相互に門を開き合うという機運が推進されるということが期待されるわけでございますけれども、そのためには法律上の現在の制約を少なくとも除いておく必要があるということで、今回の法律の改正案をお願いしておる次第でございます。
  45. 平林剛

    平林委員 終わります。
  46. 毛利松平

    毛利委員長 堀君。
  47. 堀昌雄

    ○堀委員 最初に政務次官に一つ要望を申し上げたいのでありますが、実は法案の審議をいたします場合に、私どもとしては、その法案に盛り込まれておりますことをできるだけ正確に勉強をして当委員会で論議をいたしたいと思うのであります。ところが、御承知のように当委員会は非常に法案がたくさんありまして、実はそれが一カ月くらい前に提案されておれば、私ども十分その法案の条項について勉強する時間があるのでありますが、御承知のように、二、三日に一本ずつ上げてくれというようなことになってきますと、われわれは時間を効率的に使わなければならない。ところが、全文書きかえの改正案でありますと読めばわかるのでありますが、実はそうでない部分は、第何条第何項がどうなって、第何条第何項がどうなってと書かれているわけですね。これは法案そのものもそうなっているし、新旧対照表もそうなってくるということになりますと、その第何条第何項を一ぺんずつこうやってこうしないことには、法律に何が書いてあるかわからぬというのが実際の実情なんです。しかし、やはり私どもは正確に法律の中に何が書いてあるかを承知しておきませんと、やはり立法府の責任が十分に果たされない、こういうことでありまして、政府が二カ月くらい前から法案を出していただけば、私こういうことを申し上げませんけれども、提出する、すぐ審議してくれ、こうなりますので、ひとつ当委員会には特にそういう事情もありますから、新旧対照表のほかに、ひとつ何条何項というふうに読みかえなくても——法文としてはていさいがおかしくなりますよ。おかしくなりますが、中に書いてあることはこういうことだということがきっちりわかるような付属文書ですね、法律案の一種の付属文書といいますか、ですから、それをあとで正確に読みたい人はその法律案が出ているんですからいいんですが、短時間にその中に書いてあることを全部承知しようと思う便益のための法律案付属文書を、ひとつこの以後の法律についてつけて出してもらいたい。それでないと、実は今度のこの証券取引法につきましては、証券取引法の一部を改正する法律案要綱というのが出てますが、要綱だけでは全然違うんです。中にこまかいこと一ぱい入っているわけです。ところが要綱だけではどうにもならぬので、しかたがないから、どうしてもまず頭の概念には、証取審の答申をまず読んでみて、こういうことがあるなということで、今度それが法律にはどうなっているかをもう一ぺん法律を見るという、たいへんむだな時間をわれわれ法律の審査のためにかけなければならないという問題がありますから、どうかひとつ、効率的にわれわれの法律の審議を促進するためにも、大蔵省として、この際、この新旧対照表の付属文書のようなもので、いまの何条何項の読みかえなしに読めるものをひとつ便宜的につくっていただくなり、あるいはきわめて正確な要綱ですね、言うなれば、第何条はこういうことです、第何条はこういうことですという要綱をつけてもらってもけっこうです。どちらでもいいですが、何か、それを読んでおけば、要するに取り残したものがないということの内容のあるものをひとつ大蔵省として準備をしてもらいたい。そのことによって、以後の法案審議をスムーズに行なうようにしたいと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  48. 中川一郎

    ○中川政府委員 今回の扱いといいますか、法案に対する資料その他は、従来と同じ形式に従ってやっておるようであります。ところが、今国会は御承知のように地方統一選挙、十二年に一回の異常な事態でありますので、勉強していただく時間が非常にないということで御迷惑をかけておるようであります。したがって、いま御要望の、ことしの異例な年に対処して勉強しやすい資料整備については、これから事務当局と相談いたしましてできるだけ便宜をはかりたい、このように考えております。
  49. 堀昌雄

    ○堀委員 ひとつそのように御配慮をいただきたいと思います。  そこで法律の問題でありますけれども、第十三条の三項でありますか、「第四条第一項の規定による届出がその効力を生ずることとなる日前に伴なう有価証券の募集又は売出しのために使用する目論見書については、前項の規定により記載すべき内容のうち大蔵省令で定めるものを省略して記載することができる。」こういうふうに法律が書かれておるわけであります。これが実は答申の中における仮目論見書ということに該当するのだと理解をしているわけでありますが、「前項の規定により記載すべき内容のうち大蔵省令で定めるものを省略して記載することができる。」というこの「大蔵省令」というのは、これを何でしょうか。
  50. 志場喜徳郎

    志場政府委員 今回、時価発行等の場合を主として考えまして、投資家投資判断、応募する九どうかの判断のための期間というものを、熟慮期間とでも申しますか、それをできるだけ前広にと申しますか、十分に与える必要があることを考慮いたしまして、アメリカの制度にもこの点はならったわけでございますが、届出書が出ますと、これを公衆縦覧に供しますと同時に、いわば仮目論見書というものを使いまして、それで勧誘行為までは認める、こういうことにいたしたわけでございます。仮目論見書と申しましても、実はこの効力が出ましてから初めて目論見書となるのでございまして、中身につきましては実は本目論見書と変わらないというたてまえでございます。ただ仮目論見書となっておるときの「仮」を落とせば目論見書になる。あるいは目論見書案と書いておりますれば、「案」を落とせば目論見書そのものになるといったようなことを考えるわけでございます。  しかしながら、時価発行の場合におきましては、発行価格、募集価格でございます、これは商法上の制限もございますが、ぎりぎりの段階になりまして実はこれをきめるということに当然なるわけでございます。したがいまして、届出書を出す段階におきましては、その募集価格、また募集手数料等につきましてはブランクのまま届出書が出されるということが従来の慣例でもございます。でありますので、それがきまったならば訂正届出書という形をとりましてそのブランクの分を埋める、こういうことになるわけでございます。さようなわけでございますので、お尋ねの省令も主としてブランクにとどまらざるを得ないところの募集価格及び募集手数料、これが省略の内容になる、かように御理解いただきたいと思います。
  51. 堀昌雄

    ○堀委員 そこに私はちょっと疑問が少しあるわけです。いま局長がお話しのように、仮目論見書と目論見書の相違は、発行価格あるいは手数料だけが抜けてあとは目論見書と同じである、こう言われたわけですね。目論見書と同じであるということは、有価証券の届出書が効力を発生した後におけるのが目論見書ですね。そうすると、効力が発生してからできる目論見書と効力が発生しないときに出される仮目論見書は同じなんだ、こういうことになったら、一体効力の発生という問題は目論見書についてはどうなるかという点を伺いたいわけです。効力発生以前に仮目論見書は出すのですから、そうすると、その仮目論見書の中で違うのは価格のところと手数料だけというのは非常にはっきりしておるのですから、ディスクロージャーの問題ではないのですから、それは大衆に周知はさせなければならないけれども価格がどうなるかなんということはそのときの問題なんであって、その会社の内容の問題、いろいろな問題を目論見書の形でやはり出してくるのでしょうから、効力を発生してからでなければ目論見書を出せないということは、その土台になる有価証券届出書を三十日間に大蔵省がある程度見て、この程度ならよろしいということで効力が一応発生するんだ、私はこう見ておるわけです。ただ届出書を出させて、そのまま机の上に積んでおいて、三十日たったらそれでよろしいということではないはずです。それならば、届け出の効力発生以前に出すものとあとで出すものは同じではないんだと私は思うわけです。同じであるかもしれないけれども、場合によってはあなたのほうでは訂正をさせたりいろいろするわけでしょう。第一、縦覧を認めていますね。公衆縦覧を認めて仮目論見書を出させるということと、有価証券届出書の効力との関係の問題ですね。なるほど募集はできないでしょうが、勧誘をしたりいろいろすることは、要するにある程度それは間違いないものだという前提で事前にやらせているんだろう、こう思うのです。そこの関係は一体どうなるのか。ちょっと裏返していうと、このやり方は公衆に便宜を与えるようだけれども、もしこれが粉飾であった場合には、誤った先入観を公衆に植えつけることになって、はたしてその便宜のほうがいいのか、あるいはいまの証取法で考えておる正しいディスクロージャーとして投資家に縦覧させるということのほうがいいのかという点の選択の問題になるのではないだろうか。確かにこれから時価発行がふえていく傾向にはありますけれども、しかし日本の現状としては、そうでない、要するに割り当て増資というものがいままだ大勢を占めておるという段階でもありますので、この間のところは少しきちっとしておかないと、いまの届出書の効力というところに非常に問題を生ずるおそれがある、こう考えるのでありますが、どうでしょうか。
  52. 志場喜徳郎

    志場政府委員 先ほど同じであると申し上げましたのは、実は先生のおあげになりました第十三条第三項の、大蔵省令で定めるものは省略して記載することができるという記載の内容そのものの効力発生前後における、というよりも、項目と申しますか、そういう点について申し上げたつもりでございまして、もちろん有価証券届出書は大蔵省とかあるいは取引所とか本支店に置いて縦覧に供するということでございまして、これは広く投資家に勧誘の際に持ち回られるものではないわけでございます。目論見書は、届出書の、原則的にはこれ以外のものをつけ加えてはならず、また違ったものを書いてはいけないという制約のもとに、しかし投資家にその説明をしていくためには、そこにやはり届出書のうち一部を省略するということも、公益または投資家の保護のために必要でないと認めたときは認めておりますし、また今回の改正に際しましては、目論見書の様式につきまして、先日も議論が出ましたけれども投資家がいろいろとわかりやすいようにということも考えますので、届出書そのものはたとえば数字の羅列でありましても、目論見書の段階ではこれを図表にするとかグラフにするというように、わかりやすいというくふうも認めていこうじゃないか。こういうことを考えておりますが、いずれにいたしましてもそういう目論見書は投資勧誘の際には使わなければなりません。そこで、その項目につきましては、正規に効力を生じた後に確定いたしますその目論見書の項目と、先ほどの価格、手数料を除きました点につきましては同じ項目でございますが、たてまえは、中身につきまして確定的になるのは、有価証券届出書が効力を発生した後に初めて目論見書として効力が出るあるいは有効なものになるわけでありまして、その意味で私は仮目論見書ということばを申し上げたわけでございますが、そこはおっしゃるとおり、途中で訂正があるということになった場合におきましては、その訂正というものを同じようにやはり周知させないと投資家に誤解を与えることになるのじゃないかという点もございます。もちろんこれは、その効力が発生しましたならば、正規の目論見書に応じて、その投資判断について投資家にだめを押す、念を押すということが義務づけられておりますので、証券会社は当然その手続をいたしませんと、この目論見書をあらかじめ、または同時に交付しなければ募集してはならないということの違反を免れないことになります。したがいまして、私はそこは十分にきちっとされると思うのでございますが、先ほど申しましたのは、そういう効力の点を離れまして、項目的に省略すべき内容は何かという点に重きを置いて申し上げたと思います。
  53. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、法律にそう書いてあっても、実際にはその仮目論見書で勧誘をしておいて、そのまま処理がされるという危険が非常に高いと思うのです。ですからその点は、法律に書いてある九やるべきだということではなくて、実態の上でそれが行なわれるように、十分指導の点はきちんとしてもらいたいと思います。これが第一点です。  第二点は、ちょっとこれを伺いたいのですが、三十日間で一応皆さん審査をされるわけでしょうね。しかし、その三十日間の審査のときは、一応受理をし、効力が発生した。それから今度は重点審査をやる。そこで粉飾が出てくる。これはどうしても三十日間では、届け出られた会社の問題を大蔵省としてこまかく点検をして、それが粉飾であるかどうかということは、著しいものはわかると思うのですが、なかなかむずかしいんじゃないか。過去に粉飾決算として問題を提起された件数かなりありますが、要するにそのあとで提起されたものは、届出書段階では効力が発生したものではないんだろうかと思うのですが、この関係は一体どうなっているか。届出書の段階で訂正命令を出して、それで済めば一番いいのですけれども、実際問題としてこの問題はなかなか複雑だからそうはいかない。そのことは確かに二十三条でちゃんとチェックがしてあります。チェックがしてありますけれども、やはり大蔵省が効力発生として認めたのなら、まあまあこれは一応パスだということにはなるわけです。それでなければ効力発生なんというのは意味がないんだから。一応効力発生というわけで、一次試験はパスですよ、しかし実際それで完全だとは責任持ちませんよと、二十三条であなた方書いているけれども、これは私に言わせたら、大蔵省としてはそういうエクスキューズがつくってあるけれども投資家のほうとしては、効力が発生したら一応大蔵省の審査もパスしたんだからと思って安心して買うと、こうなるわけですね。問題は、今度の法律を見ていて、かまえとしては粉飾をさせないようにするためにいろいろ努力されておるのですけれども、どうもやはりむずかしい点が一つある。その予防処置のほうになかなか手が回らなくて、結果としては、粉飾が起きたらそれは処分をし、いろいろな賠償その他をやりますよということをてこにして実は粉飾させないようにしようということになっておるけれども、残念ながら粉飾があるわけですね。粉飾がずっとあるという非常に残念な事態が起きておる。  そこで問題は、三十日というのは、いま証券局としてそういう一次審査をするのに、はたして必要にして十分な時間なのかどうか。そういう審査の能力なり効力を高めるところの関係では三十日でなければならないのかどうなのかという問題ですね。できるだけ精度が高まることが望ましいし、そのためにはいまの三十日というのはこれ以上は延ばされないものなんだろうか。今度は皆さんのほうでは、権利落ちとの関係等を見て四十日という規定も出しておられるわけですが、この三十日、四十日の関係というものは、いま私が申し上げておる効力の権威との関係ではどうだろうかという点は検討されたのでしょうか。
  54. 志場喜徳郎

    志場政府委員 この一月の期間内に——この二十三条の規定があることはまあ規定として置くといたしましても、最後の最後は政府サイドで、まず大蔵大臣が審査して効力発生したんだから間違いないと思うことは、むしろ投資家としては当然の期待なので、その間に粉飾を必ず見つけ出すというように考えるかどうかということであります。実際問題としてそれを全部引き受けますと申すことは非常に至難だと思います。むしろ一月という期間につきましては、実は証券取引審議会の場でも議論がございました。これは当初におきましては、こういう届け出制度というようなものがわが国で初めて導入されたということでございまして、実は非常に書き方その他についての教育的期間を含めてあったと思うのであります。その後、実情を申しますと、次第にそういったことで会社のほうもなれることはなれてまいりまして、今日私どもの運用の実情から申しますと、大体この点検は一週間程度で普通の場合に終わっております。そのことから実は証券取引審議会の場では、主として産業界でございますけれども、もっとあの一月というものをむしろ短縮してもらえないかという希望があったのでございます。しかしそれは、現行規定におきましては、この一月というものは何も一月置かなければならぬことにはなっていないのでありまして、短縮することができるわけでありますから、その運用でできる。しかし一月というものについては、これを縮めるという積極的理由はいまのところ見つからないということで現行どおりとなったわけでございます。まあ二十三条との関係もございますが、日本テレビの粉飾の発見は、たしか届出書の一月の期間内にわかったわけでございまするけれども、私たちは将来、重点審査と申しましても、ふだんからいろんな経営分析その他を分析いたしました上で、まあ要注意会社と申しますか、そういうものをリストアップしておくということをやっておるわけでございまして、その会社につきましては、ふだんからもそうですが、なかんずく届出書の段階におきまして特に一週間ということでなくて、できるだけ念査をするというようなぐあいにし、一般はむしろ形式的な内容について漏れがないか、その他投資家判断からしてどうであろうかというところにウエートを置きまして、同じく一月というものをのべつまくなしに、べたにかけるのではなくて、緩急よろしきを得ると申しますか、そういうことを見合いまして重点的に運営していくということでつとめてまいりたい、かように思います。
  55. 堀昌雄

    ○堀委員 いま日本テレビの話が出たんですけれども、どうでしょうね、過去にどこかの一年をとっていただいて、届出書の効力発生期間に訂正命令を出された。要するに、程度は別ですが、粉飾とみなして訂正命令を出したりして、それで多少効力発生期間が延びたにしても、そのところで処理ができたものの件数と、あとの点検で粉飾がわかった件数のウエートはどの程度でしょうか。
  56. 志場喜徳郎

    志場政府委員 件数的に申しますと、届出書と有価証券報告書の違いは、期の途中で届け出がされますために、前事業年度の決算、損益計算等の状態のほか、その現事業年度状態というものが入ってくる、そこだけが実は違うわけでございます。しかも、それは決算を終了していないという段階でございます。ですから、届出書と申しましても、その中に載っておるところの財務諸表というものは、有価証券報告書で明らかにされておるところと全く同じなわけとみなしていいと思います。でありますが、届出書の段階におきまして、したがって、見つけるということは、前事業年度までの毎期出しておる報告書の中身について吟味するということになるわけでございます。ただ、届出書の段階におきましては、率直に申しまして、日本テレビのときもあれだけ新聞にも出ましたし、会社のほうも認めたということで、自発的にすぐ訂正書をわれわれのほうへ出してまいりました。さようなわけで、あらためて訂正命令を出すという必要もなかったことで済んでおります。いま担当の者に聞きますと、従来の事例といたしまして、届出書の段階で価格を埋めるという意味での、形式的な意味での届出書の訂正ということは別といたしますと、実質的な意味での届出書の訂正の命令とかあるいは自発的訂正ということは、従来の実績ではございません。こういうことでございます。
  57. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの局長のお話のように、一番多くの問題は、流通の問題よりも発行の問題のところが一つ大きな問題があると思うので、その発行の問題のところについては、少なくとも私は、あまりあとで賠償だなんということが起きないほうがいいと思っているのです。というのは、ちょっとそこで伺っておきたいのですが、現在でも発行会社に対する賠償責任、きちんとしてあるのですね。実際そういう粉飾で投資家かなり損していると思うのですが、賠償を要求した例、同時にそれが裁判によって賠償が決定をして、大体正当な額ということが決定を見たというような実例、どのくらいなのでしょうか。私はあまりないんじゃないかと思うのですが、その点をちょっとお伺いしたい。
  58. 志場喜徳郎

    志場政府委員 従来は、あまりはおろか、皆無でございます。と申しますのは、有価証券届出書の場合の虚偽記載につきましては、これは現行法律上、届け出会社は無過失の損害賠償を負うことになっておりますし、その場合の賠償すべき額も法定されておりますので、投資者としましては訴訟提起は比較的容易であろうと思うのであります、現行法でもその場合は。しかしながら、ただいま申しましたように、届出書の段階での虚偽記載ということは、実は従来例がございませんで、一昨年の日本テレビが最初であったわけです。あのときも株価は確かに下がったのでありますが、あのときも訴訟は提起されませんでした。さようなわけで、今日まで訴訟提起は皆無、こういうことであります。
  59. 堀昌雄

    ○堀委員 そこに私は、今度いろいろと賠償責任を書いてもらったのですけれども、これまで一回もなかったものが範囲が広がり、いろいろなっておっても、はたして投資家がそこまでそうやって踏み切れるのかどうか。ちょっとこの点調査をしておられるかどうかわかりませんが、今度のちょっと問題になるところの、これまでは発行会社が賠償責任と、こうなっておりましたものを、発行会社の役員、証券会社、公認会計士と、ここまで広げてきたわけですが、アメリカでは、おそらくこういう問題が起きた場合にはそういう損害賠償がかなり行なわれているのじゃないだろうか、国民性なり、法律の熟知しているといいますか、こう思うのですが、その点は調査をされたことはあるでしょうか。
  60. 志場喜徳郎

    志場政府委員 アメリカの訴訟の実例は、実はよく承知しておりません。ただこの機会に申し上げたいことは、今回の改正では、賠償責任の拡大ということのみならず、刑事処罰を強化しております。従来は有価証券報告書につきましては罰金三万円だけでして、懲役刑はないという状態でございました。しかるに粉飾が発見されますのは、先ほど申しましたように、有価証券報告書の段階でございます。今回はそれを三年以下の懲役という、懲役刑もつけることにいたしております。さようなわけで、その罰則となりますと、検察官が独自で起訴する場合ももちろんあるわけでございますが、私どもが告発をしていくということに相なりまするので、これは強力に働いていくと思います。また実際問題といたしまして、アメリカは別途にSECが、いわば株主に対する代理訴訟というようなこともあるようでございます。実は私どもも、今回の場合に、株主はもちろん被害をこうむった者でありまするから訴訟当事者になるべきなのですが、やはりその訴訟手続にふなれであるとか、めんどうくさがるというような点もあるというようなことで、どうも実効を期しがたい点があるのじゃないか。したがって、アメリカのSECのごとく機関訴訟と申しますか、ある機関が株主にかわって訴訟を出していく。そういたしますと、それにいわば便乗ということばはおかしいですが、参加するという形で投資家が入ってくる。こうなりますと非常に投資家も参加しやすいわけです。その点も検討し、議論もいたしましたが、法務省とも詰めたのでございまするが、わが国ではどうもその辺は他に例もなく、構想も浮かんではおりません。今後この点はやはり問題ではないかという意識のまま、今回は残念ながら終わったのであります。が、今回、多く粉飾の見られますところの有価証券報告書の段階で挙証責任を転換するということをいたしておりますので、今後はこの刑事罰の強化とともに、たとえば私どものほうで粉飾を摘発し、これを刑事訴追をする。その刑事訴追の段階で、これは刑事裁判ではございまするけれども、裁判の段階で粉飾の責任者なり粉飾の額なりというものが確定するというようなことがありますと、これが民事訴訟において、その事案についての訴訟なり損害のほうの訴訟もありますが、そういうところは訴訟の提起者としても訴訟をしやすくなるであろうということは期待されます。さしあたり、今度の改正におきましてはその程度の期待でありまして、今後なお問題は残っておると思いまするが、現行のわが国の司法体系の立場から申しますると、これが限度であろうと考えたわけでございます。
  61. 堀昌雄

    ○堀委員 どうも日本では訴訟になじまないといいますか、公害問題一つをとらえてみましても、アメリカにおける公害問題というのは実はまさに訴訟問題なんですね。ところが日本ではそうではなくて、公的介入によって処理するというのが今日までの経過で、本来やはり日本でも、公害問題についてはもっと訴訟がどしどしと起こされて、損害賠償が要求をされ、またそれの専門の裁判官ができて、そういうことがやはり国民の権利を守ることになるのですが、残念ながらわが国ではまだそういう権利を訴訟によって確定をしようという段階にきていない。法制を整備されることはたいへんけっこうなんでありますけれども、やはりそこらの面を含めて……。  いまのお話はたいへんけっこうだと思うのですが、本来なら、私はこういうふうだと思うのです。実は、最近保険会社時価発行について非常に意見を述べてきております。これは、保険会社機関投資家の立場から、その時価発行によって株主が必ずしも報われていないという問題提起をしながら、そういう時価発行を行なう会社の株は、場合によっては売るというような意思表示までしておることは、私は一つの進歩だと思うのですね。機関投資家という立場からの一つの進歩だと思います。ところが、日本の経済界というものは実は非常にウエットな経済社会ですね。非常にウエットな経済社会ですから、そのことはあらゆる意味で、財閥なり銀行なりとの関係の系列が企業の中にも縦横にできておるものだから、保険会社がああいう発言はしておっても、実際にそれが行動に移せるかどうかという点については、私はやや疑問がある。ほんとうは、保険会社がそういう意味機関投資家の立場に厳然と立って、もしいまのような問題をやってくることになれば、私は、まず率先して、そういう粉飾決算があった場合には、大きな株主であるところの保険会社が訴訟を提起すれば、あなたが言われるような新たな機関をつくらなくても、それと同じ意味で被害を受けた一般の投資家が訴訟に参加できると思うけれども、残念ながらまだ日本の保険会社機関投資家というよりも系列資本の中でのウエットな企業として動いておる限り、この問題はもう一つうまくいかないと思うのであります。そういう点をもう一つ証券局というよりも大蔵省として十分ひとつ指導を考えながら——やはり粉飾決算が、これはいいことだなんて考えている者は国民の中に一人もおらぬわけですね。何とかしてこういうフェアでないことはやめさせたい。やめさせるためには、確かにいま局長の言われたような刑事罰ももちろんでありますが、同時に、私はやはり、そういうことの損害を実際に請求されて損害賠償を取られるということが、よりそういう企業家のビヘービアに影響してくるだろう、こう考えます。これまでのところは、少々粉飾をやってもあまり損はない、被害は少ないということが、ややもするとモラルの点へはね返っておるのではないかと思うので、この点は特にひとつ、せっかくこの際こういうあれを設けられたのだから、推進をするように大蔵省でも考えてもらいたいと思うのですが、政務次官、どうでしょうか。
  62. 中川一郎

    ○中川政府委員 粉飾決算に対しては従来も制度があったのですけれども、いま答弁のように、一回もまだ、罰金ですか、訴訟になっておらない。実効が上がっておらないきらいも確かにありました。しかし今回、そういった点があるので、さらに届出書の内容なり罰則なりで強化をして、まず未然に防ぎたい。また、それでもなおかつ実際あった場合には起訴なり処罰ができるようにしたいということの制度改正でありまして、これは満点ではありませんけれども、そういう趣旨に沿っておりますし、また運用にあたってもそういう心がけでやってまいりたい、このように考えます。
  63. 堀昌雄

    ○堀委員 その次は一年決算会社の半期報告の問題でありますが、今回はこの半期報告は公認会計士の監査は必要としないということになっておるようでありますね。しかしこの問題は、現在東証に上場しております会社の四割は東京証券取引所との間の契約に基づいて、中間報告については公認会計士監査を必要とするということになって去ると思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  64. 志場喜徳郎

    志場政府委員 上場会社との上場契約に基づいてそうやっております。
  65. 堀昌雄

    ○堀委員 それは上場会社の中で四割と私は聞いておるのですが、その点はどうでしょうか。
  66. 志場喜徳郎

    志場政府委員 前回の当委員会でございますか、上場会社の総数のうち、一年事業年度会社の数は約四八%、五割近くと申しましたが、ただいまお話しの公認会計士の監査をつけておりますものは、割合で三七・三%でございます。
  67. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、私この点はたいへん取引所はりっぱだと思っておるのですが、おそらく新規上場のときにこれをやったために、古くから上場しておるものはこのワクの外に出て、新規のものは三七%中間報告をするようになっている。  まず、経過を離れて、中間報告をする以上、報告書を提出する以上は、これはやはり正確なものが提出されることが望ましいというのがものの考え方ではないかと思いますが、局長どうですか。まず考え方ですよ。
  68. 志場喜徳郎

    志場政府委員 全く同様でございまして、したがいまして、罰則におきましては、虚偽の記載がありますれば一年以下の懲役に処することになっております。
  69. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと伺いたいのですがね、いま局長盛んに罰則をおっしゃるわけですが、これまで確かにこの法律ではそういう罰則が、まあ三万円とかいろんなことで非常に不十分だったのですが、実際にこれまでに幾つかの粉飾決算のあったものについては、罰則は満度に適用されておるでしょうか。
  70. 志場喜徳郎

    志場政府委員 数件の告発があると思いますが、ここはちょっと内輪話になるので恐縮でございまするが、私どもは、資本金割合あるいは絶対額におきましてかなり重要な粉飾度におきましては、実はそのつど検察庁と法務省の刑事局と緊密に連絡をとり、報告をしておるのでございます。ただ、ここで言っていいかどうかわかりませんが、罰則自体が今日あまりにも軽微でございます。さようなわけで、やはり罰則の重さというのがその反社会性の大きさということをはかる尺度というふうに司法当局としては考えますわけです。さような段階におきまして、やはり告発をしない、しても起訴にはならないという見通しのもとに告発をしないということで終わっているのが多いのでございまして、その点におきまして、罰則の強化は実際問題としての告発あるいは起訴につながる道を開く、かように考えておりますが、従来はほとんど少ないのでございます。
  71. 堀昌雄

    ○堀委員 政務次官、いまの点は非常に私重要な問題だと思うのです。いいですか、罰則をつくり、賠償責任を書き、法律のたてまえの上ではたいへん投資家保護になっているように実は見えるのですね。しかし、幾ら書いてあっても、訴訟は起きない、告発がされないのなら、企業側は痛くもかゆくもないわけですね。これが私はいま粉飾決算の中の非常に重要な問題点だと実は思っておるのです。だから、せっかく今度はこうやって法律に書いた以上は、ひとつあらゆる努力をして、さっき私が申し上げましたように、ひとつ銀行局も保険会社に対して——要するに、粉飾決算があったために損をしたということは、それで損害賠償の訴訟をしないことは、かりに保険会社の社員なりの側から見れば、ある意味では会社背任になると思うのですよね。正当な会社の権利を行使をしないで損害を見のがして通ったということは、株式会社ならば株主は、背任だと言って問題提起できるわけですからね。しかしそういうことは、現在の保険会社はこれまたちょっと問題がありまして、保険会社というものはクローズドな仕組みの中で、相互会社が多いものだから、相互会社の中の総代会というものは、実はほんとうの社員が選ぶのではなくて取締役会が選ぶ。その取締役会の選んだ総代が取締役を選ぶというクローズドな環の中で動いておりますから、総代会の中でこんな話はできないわけです。結局われわれが、要するにアウトサイダーの立場から国会の中でものを言うようなこと以外に、そういう意味での投資家を保護する道がない、こうなっておりますわけですから、どうかひとつ行政指導の面で、要するに保険会社が保険加入者の利益を守ろうとするならば、今後重要な粉飾が起きたときには、保険会社機関投資家としてその保険加入者の利益を守るために損害賠償請求をやれ、あるいは法務省なりその他の次官会議等の中で、今度は罰則をきちんと上げました、この際大蔵省として問題があるということで提起をしたものについては、ひとつ告発をし適正な処理をしろというような点を十分連絡をとってもらって——法律を書いたけれどもそれは横へ置いておけというようなことになったら、これは当委員会の権威にも関する問題であります。同時にその法律を施行する大蔵省の権威にも関することでありますので、その点はこの際ひとつきちんとしてもらうということをお約束を願いたいです。
  72. 中川一郎

    ○中川政府委員 先ほどもお答えしたわけですが、いままでの刑事罰といいますか、罰則が非常に軽いというところから、三万円の罰金ですか、その程度であれば、起訴してみても、三万円取ってみてもたいしたことない、弁護士料その他がかかるというようなこともあったのではなかろうか、それで見のがしてきた。しかし、今回は体刑までの罰則ですから、相手もこわがるだろうし、立ち上がるのにも立ち上がりやすいということになると思います。これは証券局長が答弁したとおりでありまして、運用にあたっても実効があがるように万全を期したいと存じます。
  73. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでもとへ戻りまして、中間報告書の監査、公認会計士監査の問題ですが、今回の法律では、事業会社側としてはいろいろと意見があるようであります。意見があるようでありますが、少なくとも報告書の提出を求める以上、その報告書が正確であるということでないことには報告書の提出を求める意味がない。正確であるかどうかということは、あとで調べたらわかったではこれまた報告書を求める意味がない、こうなりますので、次回の改正の際には、公認会計士の監査をつけるのだ。いませっかく東京証券取引所が三七%に、上場契約に基づいて公認会計士の監査をさせておるという現状から考えて、不公平があるわけですよ、そういう意味では。だから、少なくともあなたもいま監査するほうが正しいのだ、こういう意見でもありますから、今回いろいろ経緯があったろうと思うのですけれども、これは現状から見ても公認会計士の監査をやらせるということになるのが筋ではないのか、私はこう思いますが、その点、局長はどうですか。
  74. 志場喜徳郎

    志場政府委員 筋といたしましては全く同様に考えます。現に証券取引審議会の報告におきましてもごらんのとおり、主としてといいますかほとんどといいますか、半期の損益に対する監査基準がどういうふうに出るかということがこれからの問題だということの理由で、少なくとも現段階では無理であるということになっておりまして、私どもも全くそのとおりとして受け取っております。したがいまして、今後早急にこの監査基準というものを策定いたしまして、それを待って監査証明を要するという制度に、本来に持っていくように私どもも努力してまいりたいと思っております。
  75. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで——私の流儀ですから……。一体中間報告書の監査基準はこれからスタートして大体どのぐらいあったらできますか。
  76. 志場喜徳郎

    志場政府委員 これは実は昨日までの委員会でも出ておりましたが、これは別にこれを奨励しよう、その方向に持っていこうということでやっておるわけじゃございませんが、実際問題として、別途商法におきまして中間配当ということになるかもしれません。そういたしました場合に、商法で中間配当のためにどれだけのいわば仮決算手続を要求いたしますか、それにもかかってくる面もあろうかと思います。したがいまして、その商法がたとえば今度の国会でそういうことになった場合、あるいはこの次の通常国会になった場合とかということによりまして、いまお尋ねの点は変わってくる面があろうかと私は思うわけでありすす。さようなわけで、いまからある場合を想定してどれぐらいということを正確に申し上げることははなはだ困難でございます。しかし、別途の次の証取法の改正問題が、きのうも申しましたけれども、今後少なくとも一年半とか二年ぐらいというような時間を必要とするような研究テーマもございますが、できればこの期間に並行して検討する、かようなことじゃないかと思います。
  77. 堀昌雄

    ○堀委員 大体の大勢は、いま商法改正で中間配当の問題というのは実現する方向にあると私は思っております。ですから、確かにいまの決算がどうなるかというのはその時点の問題でありますが、私はやはり今日からスタートをして準備をしておいてもらわないと、それがきまったからすぐできるものでもありませんから、できるだけ早くひとつ準備をして、そしていまの中間報告書に公認会計士の監査をつけるということを実現してもらうように強く要望しておきます。  大臣がお入りになりましたので、法案の問題もさることながら、この証券界一つの重要な問題をちょっと申し上げておきたいと思うのです。  実は御承知のように、最近証券市場というのは、流通面が一時の非常に大きな流通からやや低下をしてまいりました。最近の平均した取引高というのはどのくらいですか。証券局長、簡単に……。
  78. 志場喜徳郎

    志場政府委員 昨年の十月からことしの一月までの、いわば本事業年度に入ってからの分でございますが、一旦平均高、東京証券取引所の単位で、一部、二部合計一億三千四百万株程度でございます。今月に入りましてから、一週は二億四千万株、今週は一億八千万株、一億六千万株程度でございます。
  79. 堀昌雄

    ○堀委員 実は御承知のように取引量がいまちょっとふえておりますが、過去における状態と比べると少し低下傾向にあるわけです。私ども証券取引法の改正をやりますときに、できるだけ証券業者はブローカーによる利潤、売買手数料で証券業が成り立つようにしろ、要するに自己売買による問題はきわめて危険を伴いますので、ひとつ自己売買はできるだけやめさせて、ブローカーに徹しさせるということが証券会社の安全な運営だ、こういう考えで来ておるわけであります。ところが取引高で減ってきますと肝心の収入が減ってくるということになります。しかし、御承知のように、現在物価が非常に上がりますから、人件費というものはそれにつれて、一面は人がいないという問題を含めて、だんだん上げざるを得ない。証券会社というのは御承知のように人間で成り立っておるわけでありますから、人間が来なくなれば、これは労務倒産することになるわけでありますので、やはりそこで証券会社長期安定の方向というものをわれわれとしても考えておく必要があるんじゃないか。特に四社のような大証券は問題はありませんが、中小の証券会社というものは、今日免許制の状態ですから、ばたばた倒れてよろしいということにはなかなかならないだろうと私も思うわけです。  そこできょうひとつ問題を提起いたしたいのは、最近そういう情勢の中で、中小の証券会社公社債投資家に販売することにきわめて積極的になっておるように聞いておるわけであります。ところが実はそこに一つネックがありますのは、現在の公社債の問題というのは、古い伝統のために四社が大体ほとんどを占めて、ごくわずかだけ中小にいくという仕組みが実は長いこと継続されておるわけです。ちょっと簡単にそこの現状を証券局長から言ってください。
  80. 志場喜徳郎

    志場政府委員 公募事業債の引き受け状況について申し上げますと、大手四社の計で八〇%、勧業角丸証券及び新日本証券の二社で一三%、以上、いわゆるレギュラー六社といっておりますが、合計九三%——レギュラーと申しますのは、あらゆる公募引き受けに顔を出すという意味で、レギュラーメンバー九三%、その他の参加証券会社は七%となっております。
  81. 堀昌雄

    ○堀委員 これは長い間固定して今日きておるわけです。実は私も業界の人に、これをもっと取っ払えと言ってきましたが、なかなか実際そうならないわけですね。私は、実はこれはやはり不公正取引だと思っているのです。こういうようにあるシェアをきめて、新規参入に対して道を開いていないというのは明らかに不公正取引だと思うのですが、大蔵大臣へせっかく中小の会社社債その他を売りたいという以上、私はいまの九三%というワクを、もう少し四社なりいまの二社は配慮をして、中小証券が参加できるような道を開くべきだろう、こう思いますが、大蔵大臣いかがでしょうか。
  82. 福田赳夫

    福田国務大臣 最近社債に対する証券業界の関心が非常に高まってきておるのです。これは、一つは金融引き締めということですね。社債によって資金調達するという意欲が企業界に多い。それと並行しまして、社債利回りの改善、そういうようなことが総体的に見られるような状態になってきた、そこにあるのだと思います。  そこで、御指摘の問題でありますが、確かにいま証券局長から申し上げましたように、大証券社債の消化が非常に片寄っておる、これは理由があるのだろうと思うのです。つまり、もうしばらく前の状態でありますと、社債はどうも割りが悪い、こういうようなことがあったのじゃないか、中小だけに採算に敏感である、こういうことが大証券社債が集中するという傾向をもたらした面じゃないかと考えますが、この状態は私は正常な状態じゃないと思うのです。そこで、中小の証券会社の占めるシェアの拡大、これは証券局としても努力していかなければならぬ方向である、こういうふうに考えまして、そういう誘導政策、また誘導に乗って中小も持てるという環境づくり、こういう方向に努力をしてみたい、さように考えております。
  83. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、実は昨年の暮れに、御承知の割引債が爆発的に売れました。大臣もよく御承知だと思います。売れた理由は、一つは、実は本年度から源泉選択の問題等で、その他の債券に比べて非常に割引債が有利だという判断があったと思いますが、もう一つは、実は社債をそういう証券会社が扱います手数料に関係があります。割引債は、それを売りますと、まず売りましたときに一円手数料が証券会社に入るわけであります。そして今度は償還のときに二十銭来ます。要するに一円二十銭というのがスタンダードレートです。まあ割引債にもいろいろ強弱がありますから、弱いものはいずれば二十銭ぐらいのディスカウントもあるというようなことでありますが、一年で一円二十銭、これだけ回るわけです。ところが社債は一回売りますと七年間ですね。その七年間に対して一円六十銭しか手数料がない。これを七で割ってみましたら問題にならないわけです。これはやはりちょっと問題があろうかと私思っておるわけです。幾ら何でも七年のものを一回売るのに一円六十銭というのはちょっとひどいではないか、こう思いますので、ちょっと私、この間日本銀行の総裁においでいただいたときに、これから金融がゆるんできたら、この際ひとつ公社債発行条件を思いきり弾力化して——私はこの際大臣にほんとうは踏み切ってもらいたいのは、ここで一ぺん自由レートとしてしまえば、あとはいけると思う。中途はんぱにやったらまたもとのもくあみになるので、今度の金融緩慢時期というのはほんとうに勇断を持ってやるべき時期だと思っておりますが、そういう条件改定を行なう際でも、あるいはその計画まででもけっこうですから、ひとつ社債手数料の改定という問題を大蔵省として真剣に一ぺん考えていただきたい。それをあわせて行なうこと。いまのシェアをゆるめることと、社債の手数料の問題を考えていただくことは、私は今後の中小証券体質強化に非常に役立つし、同時にそのことは、いま大臣おっしゃいましたけれども、場合によって担保金融が必要だということについては、今度は日本共同証券を財団に変えて、社債の担保金融というものの道を開いておるわけでもありますし、いろいろ客観情勢はいまできておる中での一つの問題提起でありますから、ひとつこの際思い切って、いま私が申し上げているような方向の措置をしていただきたいと思うのですが、大臣いかがでございましょうか。
  84. 福田赳夫

    福田国務大臣 ごもっともな御指摘と存じます。そういう方向検討いたしたいと存じます。ただ、これは企業家のほうのコストのほうにも影響する問題でありますので、簡単に割り切るというわけにもまいりませんが、その辺もにらみながら御説のような方向検討をいたしていきたい、かように思います。
  85. 堀昌雄

    ○堀委員 確かに事業会社の側の問題もあるわけでございますから、そこらは十分検討していただきたいと思いますが、事業会社としても社債が十分に発行できる条件ができることはたいへん望ましい、こう考えておるわけでありまして、ひとつその点をお願いしたいことと、もう一つあわせて、この前大臣も私の質問に対して、公債の七年を少し延長する必要があるだろうというお答えがあったわけです。この前、電力債を十年にしようという話が出てきたようですけれども、何か立ち消えになっておるようですが、社債にしてもそうですし、金融債でも私そうだと思うのですが、こういうものをできるだけ延ばしていくことのほうがそういう意味で安定をしてくるのじゃないか、私はこう考えておるわけです。公債を含めて事業債の期間延長ですね、七年を十年なら十年にするとか、一ぺんにもできないでしょうが、このほうがやはり望ましいことだ、私はこう考えておりますが、その点、大臣いかがでございましょうか。
  86. 福田赳夫

    福田国務大臣 その点も私、堀さんと同じような考えです。いますぐというわけにはまいりませんけれども、いずれそういうことが実現するように、かように考えております。
  87. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に、今度は法案の中にちょっと入ることになるのでありますが、実は公認会計士の監査の問題でありますけれども、これは前からよく事業会社のほうから言われることでありますが、実は公認会計士に監査してもらう、しかしまた税務署が来て同じことをやるということなんですね。同じようなことを二回もやるということで、どうも事業会社は抵抗があるようですね。  私はひとつ提案をしてみたいのは、しばらくは並行的にやらざるを得ないと思います。確かに公認会計士なり監査法人の権威についてまだ大蔵省が必ずしも全的に信頼できない点があると思いますから、そこでまず順序として、これは私の提案でありますけれども、公認会計士個人の場合はちょっと無理がありましょうが、一応私は監査法人というものの権威を認めたいと思うのです。その監査法人に一回監査をさして、それによって出してきた資料——これは将来はおまえたちにやらせるんだから、税法上の問題も含めて一ぺんこういう監査をしろということでやらせて、もう一ぺん税務当局で調査をやってみる。そうしてみて、この監査法人のやった調査は十分正確であるということがチェックできますね、あとからトレースするわけですから。一年なら一年、二年なら二年やってみて、そこでその結果この監査法人がやったものは心配ないというものについては——またやらないというのじゃないのですが、しばらく監査法人にやらせるだけにとどめる。また適当なところでやればいいんですよ、やらないんじゃないのですから。そういうことで少し監査法人の権威を認めながら、税の問題の処理をしてみたらどうだろうか。実は事業会社側は、そういうふうに監査法人が権威あるものになってきたらもっと報酬をたくさん出しましょう、こう言っておるのですね。何も報酬をたくさん監査法人に払えというよりも、報酬がたくさんもらえるような監査法人にすることが、監査法人が安心なものになるということだと私は思うのですね。ですからそういう点の関係を見ると、この際——私も税の重要性がわかっておりますから、野放しでひとつやらしてみろなんて言わないわけです。一応監査法人に、来期なら来期間のものはこういうことでやれ、税務署もやるぞ、合わせてみて心配ないというものには合格証をやる。二年ぐらい続けてやってみる。そうしたら、合格証のあるものには、しばらくおまえたちでやってみろ、そのかわり不審があったらいつでもやるぞ、こういう形でひとつ税務調査の面における監査法人の活用ということをやっていただけば、私は国税の側も助かると思うのです。それがかなり信用できるものをやってくれていれば——それを見ておかしいなと思えばまたやればいいわけですから。そういう国税面における合理化とあわせて監査法人の位置の向上のためにそういう問題提起をしてみたいと思うのですが、大臣いかがでしょうか。
  88. 福田赳夫

    福田国務大臣 一つの御着想かと考えます。主税局当局ともその利害得失をよく検討いたしまして、適当な機会に私の所信を申し上げさせていただきたい、かように存じます。
  89. 堀昌雄

    ○堀委員 この際国税庁長官に、そういうことをすると不都合な点というか、うまくないところがあるかどうか。私も専門家でないのでわからないから、あなたの立場から、いまの私の問題提起について事務当局としてはどういうふうにすればいいか。問題はどこにあるかをちょっと簡単に答えてくれませんか。
  90. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 その考え方自体は、私どもも、公認会計士がついているとか税理士がついているとかいうものが一般の申告書よりもよりいいという状態が一般的に出てまいりますと、非常にいいことだと思うのです。現にイギリスでは、公認会計士が出したスケジュールと申しますか、申告書に対する意見書をもとにして決定をしているというのは事実でございます。そういう意味で、将来の姿としてそういうことが望ましいと思いますが、一つ問題だと思いますのは、公認会計士は、証券取引法上の基準で監査をするというたてまえになっております。同時に、その監査をやっている公認会計士は、今度はその会社の税理士にはなってはいかぬというのが慣習でもあり、法制化しようともされているようでございます。そこで、公認会計士が税務計算についてはそこで手を放してしまうと問題がありはしないかということが一つの問題で、これをどう解決するかということが一つ残ると思います。  それから実際問題としては、おっしゃるようにこれは実験をしてみなくちゃわからない。現に調査部所管法人と申しますのは五千万円以上の資本金の法人でございますから、相当数は公認会計士の監査を受けているわけでございますが、現在の方法では、調べますと遺憾ながら非違が発見されるという結果が、ごくわずかではございますけれども出ております。公認会計士のところで発見された非違だったという場合に——公認会計士がそこまで調べるとなると公認会計士としても相当大きな監査をしなくちゃならない。それが会計士法人であればあるいはずいぶん手数はあるかもしれませんが、ある程度のところまで監査をして、そこで軽微な非違が発見されるという場合には、あながち公認会計士が非難されない点があるかもしれない。その辺のこまかいところがはたしてどうなのか。私ども実際は、現在税務の調査も全部調査しているわけではなくて、信頼のできる申告書が多数、多年出ているものについては監査を一時期省略するということもやっておりますから、公認会計士の法人が非常に正確な監査をしてくれているということになれば、それが一つの有力な省略条件になるということは決してできないことではないと思いますが、いま申しました理論的な問題と実際上の問題とをさらに検討してみる必要があると思います。
  91. 堀昌雄

    ○堀委員 私もすぐになるという問題ではないと思いますが、これからは人も節約しなければならぬ。国税庁もいたずらに人間をふやすわけにいきませんから、そういう意味での税務監査の合理化を含めてひとつ検討を進めていただきたいと思います。  それじゃ大臣、昼めしを食べてもらいますから特別にひとつ。  あと、実は監査法人の問題なり安定操作の問題、損害賠償の中身の問題なり責任の範囲なりいろいろ問題がございますが、この際ここまでにさせていただいて、あとは保留をいたします。      ————◇—————
  92. 毛利松平

    毛利委員長 この際、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  預金保険法案及び貸付信託法の一部を改正する法律案につきまして、来たる十二日参考人の出席を求め、その意見を聴取することとし、参考人の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 毛利松平

    毛利委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時休憩      ————◇—————     午後二時十二分開議
  94. 毛利松平

    毛利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。堀君。
  95. 堀昌雄

    ○堀委員 午前中の審議に引き続きまして、株価安定操作の規制に関する問題を取り上げたいと思います。  昨日参考人の皆さんにもお尋ねをしたわけでありますけれども株価操縦と株価の安定操作との間に一体線が引けるのか引けないのか、その点を最初にお答えをいただきたいと思います。
  96. 志場喜徳郎

    志場政府委員 ただいまの点は、証券取引法第百二十五条という、同じ条文に書いてあるわけでございますけれども、三つの項に分かれておりまして、第一項、第二項、第三項と分かれております。ただいま御指摘の安定操作は第三項に規定しておるわけでございます。所定の方式に従う安定操作でない限りは、第一項の仮装売買、第二項の相場操縦と同じく法律上の違反行為、禁止行為になるという点では相並ぶわけでございますけれども、その法律の構成要件としては、もちろん明らかに異なっておるわけでございますし、また安定操作の目的といたしますところは、この有価証券の相場をくぎづけ、固定、また安定する目的ということになりまするが、その場合に合法化されるいわゆる株価安定操作は、新たなる増資あるいは売り出しに関連しまして一定の期間認められる方式でございまして、それにおきまして他の相場操縦あるいは仮装売買と明らかにたてまえを異にしておる、こういう問題でございます。
  97. 堀昌雄

    ○堀委員 これまでのこの法律ができた当時には、実は時価発行という問題はまだ国内では行なわれていなかったと思います。この前の四十年ですかの改正は、時価発行の問題はなかったと思います。額面割り当ての増資の問題については、実はもしそういう安定操作が必要である場合には、まず額面割れであるかないかというところが実は最大の問題であったと思います。百円の株であるか、百五十円の株であるかは別として、すでに、増資によってプレミアムがつくことによって、安定操作は必要でなかったわけであります。ただ額面を割っておると、五十円の株式払い込み金を四十五円の株にするというのなら投資家は五円損をすることになりますから、そこで失権株が出くるということで、これは割り当て方式としては増資が非常に問題になる、こういうたてまえで、安定操作というものの法律はできておる。いまの百二十五条第三項の問題は実はこう考えておるわけです。  ところが御承知のように、最近の情勢として時価発行というものが非常にクローズアップをされてきた。顕著な例は、時価の、株価の変動が非常に強かった時期に行なわれたにしても、実はこの前の松下電器の時価発行問題というのは多方面にいろいろな問題を今日残しておることは、皆さん方もよく御承知の問題だろうと思います。そこで私は、時価発行の問題の状態における株価安定操作というものと、そうでなしに額面割り当てで、割り当て方式の増資を行なう場合とは、安定操作というものの性格は基本的に違うと思いますけれども、どうでしょうか。
  98. 志場喜徳郎

    志場政府委員 安定操作の本質といいますか、そういう点につきましては、時価発行の場合と額面発行の場合とでは変わらないのじゃないかと思うわけでございます。と申しますことは、要するに現在の安定操作に関する規則の第一条でもございますように、認められる安定操作の目的は「有価証券の募集又は売出を容易ならしめるため、」ということでございまして、もちろん今日では、いわゆる増資調整基準というような自主的なルールによりまして、額面割り当て発行の場合におきましても、株価が六十円以上というふうに、そこでおのずから額面発行の場合には、株主にとりましては事実上の払い込み強制が働くような、そういう株価ということを意味しておるという意味におきまして、この安定操作を必要としないということではございますけれども理屈を詰めてまいりますと。安定すべきと、あるいは固定すべきと、目ざしますところの価格は、あるいは額面を若干上回るところにするか、あるいは妥当な時価にするかの差はございましても、安定操作を必要とする場合あるいはその目的等につきましては、時価発行の場合と額面発行の場合とでは異ならないのじゃないか、かように考えます。
  99. 堀昌雄

    ○堀委員 確かに、その株式増資を容易ならしめるという点では私は同じだと思います。ではどこが違うかといいますと、額面割り当ての場合には五十円という一つの基準がきまっているわけです。ですから、五十円を五十五円がいいか、六十円がいいか。高いほどいいにきまっています。きまっていますけれども、いま四十五円なり四十円の株を、せめて株主払い込みをして損だという感じのしない範囲、ここにきまるわけですね。五十円がきまっていて——だからその幅というのは、要するに株価が四十円の場合には十五円になるかもしれない。しかし少なくともそれの基準というものは、四十円からスタートするんじゃなくて五十円という、もうすでにきまった価格の上へ五円積むのか十円積むのかというだけで、その当時四十円の時価であるか四十五円の時価であるかということよりも、問題はそれを上へ上げるところがおのずから一定だと思うのですね。それは高いほうがいいにきまっているけれども、そんなにどんどん上がる株を買ったのではあまり安定操作の意味がありませんから。増資をするためにある程度安定操作をしてということは、どこかで株を買って、そのことによって値下がりを防ぎながらある水準にして増資をしようということですから、そんなにたくさん買ったのでは意味がない。  ところが時価発行になると、もし発行をするものがたとえば現在三百円にずっと平均しているというときに、最近は幾らかディスカウントをした形でやっていますけれども、しかし裏返していえば、ディスカウントをしてきめた価格より上にしない限りこれもだめですね。ところがディスカウントをしてきめるこの価格というのは、さっきのように客観的に五十円ときまっているわけじゃないんです。卒直にいえば恣意的に企業側がきめられる価格になっているわけですね。恣意的にきめられるところをどこかにきめておいて、そこに株価を維持しようということは、言うならばすべてが恣意的に行なわれることになる。片一方のほうは五十円がスタンダードだから五十五円がスタンダードだ。ある意味で、そこに集中しているのと恣意的な価格のところに持っていくのとは、私は性格が非常に変わってきておると思うのですね。  だから、私はこの間議論したように、要するに二割であれ三割であれ、安定操作で株価を動かして増資をするなんてことになるのなら、これはたいへんだと実は思っているんですね。おのずから安定操作の幅というものはその時価との間に——ある程度の限られた範囲以上だったら株価操縦だと私は判断せざるを得ない。だから株価操縦と安定操作との限界はやはりこの委員会で明らかにしておかないと、今後安定操作に名をかりて株価操縦を行ない、不当な利得を発行会社が受け、そうして同時に安定操作が放されたらすとんと下がって、そのことによって受ける損害は、私は言うなればこれまでやってきた粉飾決算によって起きた損害と責任は同じじゃないかと思うのですよ。そうなら当然その場合には百二十五条の罰則が適用されてしかるべきではないのか、こう考えるわけですが、証券局長どうでしょう。
  100. 志場喜徳郎

    志場政府委員 先ほど少しことば足らずであったかとも思いますが、百二十五条の第三項は違反行為、法律上の禁止行為をうたっておるわけでございます。百二十五条第三項で禁止されているところの行為全体を株価安定操作というふうに、もしいいますならば、それは一種の株価操縦として違法行為であります。ただその場合に「政令で定めるところに違反して」というのがございまして、そこで合法化されているところの安定操作があるわけでございます。その二つを区別していただくことにいたしまして、いま申し上げておりますのは、合法化されている安定操作に限って申し上げますと先ほどのようなことなのでございますが、確かに御指摘のとおり、合法化されている以外の株価安定操作は広義の相場操作の一種として違反である。これは明らかでございます。ただ合法化されている安定操作というのは、発動される時期がまず限定があるわけでございます。時価発行の場合でございますと、その募集価格を決定するわけでございます。その決定は商法の規定もにらみ合わせながら払い込み期日にできるだけ、募集期間にできるだけ近いところできめるということでありますが、そのときにはその日の終わり値あるいは値つきの状態、その前一週間あるいは一月間といったような、株価の毎日の平均価格をとりまして、それから商法で認められると思われる範囲内でのいわゆるディスカウントをいたしまして価格が決定される。決定されますと、そのあくる日から合法的な株価安定操作は可能である、払い込み期日前、こういうことでございます。  そこでいま先生が御心配の、従来の実勢価格時価が三百円なら三百円であった。それを決定する前に、公募価格をつり上げるという、多くの払い込みをとろうという意図でもって三百円のものを三百三十円、四十円にも価格をつり上げておきまして、それをもとにしてしかるべくディスカウントしてその公募価格をきめる、こういうことになりますと、その三百円を三百四十円につり上げるという行為は、実は合法的な株価安定操作を行ない得る期日よりも前に始まった操作でございまして、これは第百二十五条の三項あるいはその他の違反行為に当たるおそれといいますか可能性が十分あるわけでございます。したがいまして、安定操作と申します場合には、この合法化されたるある条件のもとに限定されましたる安定操作というものと、そうでない違反行為たる安定操作というものと、絶えず二つを分けまして考えていかなければなるまい、かように思うわけでございます。
  101. 堀昌雄

    ○堀委員 法律的には確かにそういうことだと思うのです。ただ私は、法律的にもしそういうことでごく短時間なら問題がないかというと、あなたのほうでは、要するに安定操作の場合、あとで事後報告を求め、数量も価格も報告しなさい、こうきておるわけですね。だから、数量、価格も報告しなさいということは、なぜこういうことを要求するのでしょうか。
  102. 志場喜徳郎

    志場政府委員 ただいまはいわゆる合法的な安定操作を行ない得る期間というものについて申し上げましたが、この安定操作として買い得る価格につきましても法令上の制限があるわけでございます。その点、現行の安定操作に関する規則では、第二条の一項一号というところに「当該有価証券の買付につきその買付の直前の価格を超えてこれをなすこと」とございまして、その「直前の価格」と申しますのは直前の市場価格であることは申すまでもございません。今回私どもが改正しようかと考えておりますのは、この価格について、現行のような買い付け直前の価格という、その客観価格というところにいたしますか、あるいは別の基準をとりますか、いろいろ検討しておりまするが、いずれにいたしましても、価格の点につきましても、そのある客観的な相場、時価というものに限度を置く、こういう意味におきまして価格上の制限ももちろん伴うわけでございます。
  103. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、ちょっとよくわからなくなってきたのは、確かにいまの法律では直前の価格をこえて買ってはならぬとあるわけですね。ということは、要するに売り買いですからね。一体幾らで売りが出てくるかは事前に予測はできませんね。ですから相場は成り立つわけですね。下がりますね、売りがばっときたとしますね、ぐっと下がる。そうしたら、それは一つの直前の価格になるわけですよ。いいですか、その直前の下がった価格より上では買えないということは、それ以上の下げはデフェンスできますよ。そのときはできますけれども、裏返していえばその範囲になるわけですね。だから、要するに事前にその売買が予測できない限り、いまの形ならば、私はあなた方の期待するような安定操作というのは本来ないのじゃないかと思っているわけですよ。だからこの間の松下の例を見て感じるのですけれども、あれは安定操作の届け出も何もなかったのじゃないですか。実際にはなかった。しかしあれをしさいに見ておると、私はどうも問題がある感じがしてしかたがないわけです。特に、そのあとの安定操作をやったとおぼしき時期、手を放したあとの状態は、まさに何らかの安定操作が行なわれたのではないかというふうに感じられるような株価動きであったというように私は認識をしておるわけです、実は。ですから、あれがなければ、私もこの安定操作問題というものについてここまでいろいろ議論する必要もなかったのですが、ああいう実例があり、そしてそれを処理に当たったのが実は四社ですね。四社がその衝に当たった、処理をしてやってきている。そうすると、四社なら何をしても、たいして問題にならぬことでも、これは困るわけで——これは実は私も確実に安定操作であったと断言もできないけれども、安定操作が行なわれた感じがしてしかたがない、こういうところにあるわけですね。だから一体、ここにこの価格の問題を出したらどうするのか。しかし書き方は、現在のような直近の価格をこえて買ってはならないということでないと、積極面が出てきて、要するに幾らでも買っていいのだということになるのは、これまた私はやや安定操作としては行き過ぎの問題も起こるのじゃないかと思う。第一点がこういう感じがしますね。  第二点の問題は、周囲の株価がずっと——価格発表した、今度のような条件のように。しかし周囲の株がその後ずっと趨勢的に下がってきておる、こうなりますね。ところが非常に正直に安定操作を理想的にやった。ある一つの、発行価格三百円で発行しますということで、三百十円のところでひとつディフェンスしようということでどんどんやっておる。初めは周囲の実勢価格が大体平均して、並行しているのなら問題ないのだけれども、こう下がりつつあるところで三百十円に固定をするということは、実はずっと安定操作をやっていて、はずしたときにすぽんと実勢価格に差が出てくるわけですね。これは一つ企業だけの問題ではない。全体の流れの中の問題ですからね。そうすると、これまたこの幅が広がってきたということは、いまの合法的な安定操作といえども投資家にすると錯覚を起こさせることになるわけですね。なるほど増資をしやすくするというほうはいまの発想で満度に満たされる。しかし、そういう仮装の売買によって実勢でない価格をそこにつくりあげておって増資をやり安くさせるということは、粉飾決算の肩を持ったのとあまりたいして変わらないように思われるのですがね。これはどうもひっかかるのです。  ですから私は、額面なしのときの安定操作ならここでいろいろがたがた言う気はないのですが、どうもこの間の、最近における、ああいう時期における時価発行の問題と、それに対応をした対処のしかたを見ておると、これは非常に事重大だ、こう考えておるわけです。これは政令事項ですからね。この法律のこの時期にいま結論を出さなければならぬということではないと思うので、これは政令事項だから、この際分離をしてもらって十分ひとつ再検討の余地はないのか。いろいろな点、いまあなた方すぐ答えられない点もあるだろうと思うので、これはひとつ分離して扱うということにしていただけば、何もいますぐ答えなければならぬということでもないと思うので、まあ論議をされた一環でありますから、できるだけ近い機会に、しかし短時間の中で結論を出すのではなくて、もう少し検討の余地があるように私は思いますが、政務次官どうですか、その点は。
  104. 志場喜徳郎

    志場政府委員 いまお尋ねございましたので、私ども確定的になっておりませんので、その前提で、しかし大体の考え方を申し上げて御参考にしたいと思うのですが、現在、先ほど申し上げました安定操作のための価格は直近の、直前の価格をこえてはならないというのは、実はアメリカの法律に見習っておるようであります。ところが、その安定価格のきめ方につきましては、確かにおっしゃるように、ためにする売りくずしというのがあり得るわけなのでございます。アメリカの場合は機関投資家の取引が多うございますし、全体の市場が幅が広いものでございまするから、またから売りの規制ということも厳格に行なわれておりますので、日本のように少しの売りから、から売り等によりまして相場が乱高下で動くというおそれも少ないということが、ただいまの政令の直近価格をこえないということになっている背景かとも思うのでございますが、わが国の場合にそういう保証もないわけでございます。そこで直近価格だけにいたしますと、どうしても御心配のような、ためにする売りというもので値段が下がったときに、そのあとではもはや回復がきかないということになりまするので、私どもいま大筋として考えておりまするところは、先ほど申しましたように、きょうまでの価格を見ましてあした価格を決定をし、あさってから安定操作ができる、こうなります。そこで、きょうまでの価格につきましては、つまり公募価格を決定する基礎になる価格でございます、この中にいわゆる株価操作があってはならぬことはもちろんでございますが、それを一応なしと仮定いたしますると、きょうの価格がたとえば三百円であった、その三百円から一割ディスカウントして二百七十円の募集価格をあしたきめました。で、あさっては安定操作ができますと、こうなります。そこでそのときに最初に買い出動いたしますが、安定買いをしようとするときは、きょうの終わり値、つまり募集価格をきめる日のその基礎になった前日の終わり値、いまの例で申しますと、本日の三百円ということをこえてはならない、こういうふうにしようと思ったわけであります。それからあとにだんだん進んでまいりまして、二回目三回目の買いがあるかもわからないというときも、直近にいたしますと、やはりその場の最中で、五分前に売りくずしがあったというときには、五分後の買い値は下がってしまいますから、やはりそのときも前日の終わり値ということをシーリングといいますか、こえてはならぬことに、それ以上買い上がることはできない。しかし、当日売りくずしがあったからといって、その直近の価格に制限されたならば、これは非常にたいへんなことになるので、それは売りくずしのない前日の終わり値をもっていけば、それをこえてはならぬことにしておけば、故意の買い上がるということは防げるし、また売りくずしに対しましても妥当に対処できるのではなかろうかということで、現在の第二条の直近価格をこえてはならぬという点は、それを改正する必要があるのじゃないか。方向といたしましては大体そういうようなことにするのが妥当ではあるまいかということで、なお今後検討していきたいと考えております。  それから第二段目の、全体の株価が地合いが悪くなって下がったということでございます。それは幹事証券会社といたしましては、公募価格を若干上回ったところで保全といいますか、安定すべくつとめるでございましょうけれども、しかしこれはいずれにいたしましてもリスクを伴うものでございますし、一ぺん始めました場合に、この価格で絶えず買いささえなければならぬという義務を負うことでもございませんし、また義務を負わせるということでもございません。ですからそこは幹事証券会社判断によりまして、途中で安定買いはもうとてもできないということで放棄することもあろうかと思うのです。それはやむを得ない。その後におきましても、その状態を見ながら、株主は失権するならば失権する、こういうことにしていただくよりしようがない、かように思うわけでございます。
  105. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの前段はだいぶそれでカバーできると思います。しかしそうなればまた私はそれに対応する手が次に出てくるだろうと思うのですね。そうすればともかく、要するに前日の引けの直前にぶつければ、これまた下がるわけですね。こういうものは相対の話ですからね。私は実はそんなにうまくいかないと思うのです。ある一つの意思によってやろうとすれば、片方は株価操縦じゃないのですよ。値段を下げようとか上げようというのは、それはもう純粋にその人の利益でやるのだから、これはチェックのしようがないわけです。ディフェンスをするほうは、守るのは限界があるわけですよ。攻撃の場合はフリーハンドだというのが、私はこういう問題の性格だと思います。ですから私は、証券局でいろいろお考えになっても、はたしてそれが——まあいまのよりは弾力ができるけれども、また次の対抗策が出てくる。第一点はこう思うのですね。だから、いまのこの問題は、株価というものが自然につくんだという前提に立つ限り、私は逆の言い方をしたいわけなんです。安定操作を必要としない増資をやらせるということじゃないかと思うのですよ。いいですか、安定操作をしなければならぬようなときに増資をしてはならぬ、それがいまの増資基準になっているんじゃないですか。六十円以下のものは増資を認めないというルールをつくっているのは、安定操作が要らないものでなければ増資をしてはならぬ。だから、要するに安定操作という発想は、私に言わせたら、事業会社にフェーバーを与えておるけれども投資家にはきわめて大きなリスクを与える増資ではないのか。だから私は、原則的に安定操作というものは要らない、安定操作がなしに増資ができるのでなければしてはならぬということにするのが、現実の証券の問題で発行会社投資家を対等に見た次元ではないか、こう思っておるわけです。幾ら考えてみたところで、こうやればそれに対抗する手段がこの世界は出てくるのですよ。売り買い自由の原則があるわけですから、ここはすべてがフリーなものですから、そのフリーの中に、ある特定のものの利益を守るために特定な力を加えようというところにやはり問題がある。だから、いまの証取法の発想であなた方が投資家を保護したいというのなら、この際安定操作の問題は打ち切るべきだ、私はこう思うのだが、あなた方いまやっておる経緯もあるから、この際はひとつ結論を出さないでもう少し論議をしたほうがいいのではないか、こう思いますが、中川政務次官どうですか。
  106. 中川一郎

    ○中川政府委員 いろいろ御意見拝聴いたしましたが、これは固定的にいま廃止するとかあるいはこのままでいくとかいうことではなく、継続的に十分検討していく問題だと存じます。
  107. 堀昌雄

    ○堀委員 この問題は、私もここまで論議を取り上げておるのでありますから、ひとつ私ども委員会と十分連絡をとっていただいて、行政当局も、一方的な政令事項ですから一方的にできますけれども、しかし一方的な処理がされないことを強く要望しておきたいと思うのです。それは投資家を保護するためには、どうしても対等の原則が守られるような条件にすることが必要です。そのことをいま私は申し上げましたので、この点をひとつ特に要望申し上げておきます。  その次は損害賠償の問題でありますが、きのうでしたか、きょうでしたか、証券局長が、損害賠償というのは三者で何か分担するんだ。要するに、損害賠償訴訟が起きるときには、これは個々に起こすのかどうか、私もちょっとそこの技術的なところはよくわからないのですが、損害賠償一つの問題なんですね。問題は一つの案件で、しかし損害を負担するものが三者というか四者というか、会社も負担する、会社の役員も負担する、それから証券会社、公認会計士または監査法人、四者かもしれませんね、こうなるのですね。この場合には、私はちょっとそこまでよくつまびらかでないのですけれども、取り扱いはおそらくこの四人を相手に一ぺんに訴訟を起こすということになるのだろうと思いますが、手続上はどうなりますか。
  108. 志場喜徳郎

    志場政府委員 これは無過失賠償責任じゃございませんので、増資の場合の、届け出会社は別でございますが、あとの役員、公認会計士、元引き受け証券会社は、故意、過失ということを要件にしております。そのうちの一人について、立証する責任は転換しておりまするから訴訟提起者は立証する必要はないのでございますが、確実だと認められるものあるいは資力からして十分と認められるものがありますれば、そのうちの一人を目ざして訴訟を提起することももちろん自由でございますし、資力のほどもわからず、責任はどうもありそうだというときに、連名で相手にして訴訟できることもございまするし、その辺は別に、訴訟が連名でなければならないとかいうようなことは制限がないわけでございます。
  109. 堀昌雄

    ○堀委員 これは訴訟を提起する側に過失があるか故意があるかを挙証する必要はなくなっているわけですから一応やれますね。それがあったかどうかは裁判所が判断することでそれはいいのですが、それを全部ぽんと四者にぶつけたとしますね。きのうの話ですと、証券局長は、その損害を適当に分担するというふうな話をしておられたですね。この場合に、私ここで一つ問題が出てくると思うのは、裁判所がどうするか、判断は裁判所のことですからいいのですが、一体、責任は確かに発行会社にあるし、それから発行会社の役員にある。ここまでは非常にはっきりしますね。確かに発行会社が粉飾をするわけだからここまでははっきりする。その次にこれは公認会計士が監査をする。ところが、きのうもちょっとそこで公認会計士の方に申し上げたけれども、要するに故意または重大な過失がある場合は別としても、今度は過失というのと不可抗力との間というのはこれは私はつながっていると思うのですよ。ここまでが過失でここからぴちっと不可抗力になるというようなことじゃないと思うのですね、ものごとの経過から見て。そうなってきたときに、要するに公認会計士のところでは、いまの過失なのかそうでないのかという判断がむずかしい問題がちょっと出てくると思うのですが、その次の今度は証券会社の段階になりますと、公認会計士が適正だといって判断をしてきめてきたものを、それに基づいてやるのだと思うのですよね。引き受け会社になる。もしこの形でいくと、証券会社も公認会計士以上の能力のある監査のエキスパートをそろえていて、要するにこれが増資をするというときになると、報告書を見て徹底的にその会社を調べて、よし心配ない、それで引き受け会社になるということならもう故意や過失にならないけれども、ともかく中途はんぱな、公認会計士の監査が適正だということで引き受け会社になったら問題が起きたということになると、これは過失なのか不可抗力なのか、そこらはどうなりますか。
  110. 志場喜徳郎

    志場政府委員 これは私が申すのも、どうも地位でないのかもしれませんが、民商法損害賠償という分野で考えますと、故意と過失との間には差がない。故意の場合はもちろん、しろうと考えでも同じ責任を持つのはよくわかるのですが、過失の場合、しろうと的な気持ちといたしましてはどうなるだろうという点がございますけれども、したがって過失があるかないかということがきめ手でございまして、過失があったということになる限りにおきましては、故意と同じく真正連帯責任というような連帯責任を負うということの解釈として了解しております。  それで、お尋ねの証券会社の場合でございますが、これは第二十一条の第二項第三号におきましてこういうふうに書き分けておるのでございます。つまり、元引き受け証券会社につきましては、おっしゃいますとおり、届出書のうち財務諸表につきましては、公認会計士の監査証明がございますのでそれを信頼するということは当然でございます。したがいまして、それを相当な注意を用いなければならないということになりますると、証券会社としましてはたいへんなことになるといいますか、その限界を越えておることになるわけでございますので、その場合におきましては「知らず」ということで、故意の場合に限定しておるのでございます。故意がある限りは責任をとらなければならぬ。しかし、アドバイザーといたしまして、アンダーライターといたしまして、その他の届け書の内容にかかる部分があるわけでございます。資金計画とかその他の点につきまして、引き受け会社といたしまして、アドバイザーとして、コンサルタントとして、元引き受け契約をつくるにつきましては発行会社とよく協議をし、連絡をしておるわけでございます。ですから、公認会計士の監査証明以外の分につきましては、故意、または相当な注意を用いたにもかかわらず知ることができなかったこと、つまり過失があったということで、ほかの一、二号とその点は合わせておりまして、ただ監査証明の部分につきましては故意の場合に限定する、こういう書き分けをしておるのでございます。
  111. 堀昌雄

    ○堀委員 その点よくわかりました。  その次に、今度は刑事罰を含めて人に問題が出ているわけですから、その会社でそういう粉飾決算をやったときに、その相手方になる人というのは大体どういう範囲が考えられておるのでしょうか。代表取締役というのは当然責任があると思いますね。その企業の中では当然ある、こう思いますが、同時に、そういう経理担当重役といいますか、その決算その他を預かっておる重役もあるわけですから、実際は、代表取締役というのは実務は知らないで、担当重役にまかしておる。ですから、担当重役が持ってきたものについてはやる、こうなっておると思うのです。そういう場合にいまの故意、過失ということになってくると、担当重役がそういうことをやっておるのを十分監督できなかったのは明らかに過失だから、代表取締役はどうも責任があるように私は思えるのだけれども、それと、いまのそういう経理担当というか、報告書をつくるところの最高責任者、こういうことになりますか。大体粉飾をやる以上は、上のほうが知らないで粉飾をやっておるはずはないのですから、どうせ協議の上、粉飾が行なわれておると私は思うのです。その協議の内容というとまた複雑だけれども、一応形式的にとらえてみると、大体代表取締役と担当重役が、いまの刑事罰なり損害賠償の企業側における個人に該当するのかどうか、その点はどういうふうに考えておられますか。
  112. 志場喜徳郎

    志場政府委員 刑事罰の場合に、本則的な処罰は自然人でございますし、あとは両罰規定で会社に罰金刑が科せられることになるわけでございます。そのときの自然人はいわゆる行為者でございまして、当該具体的ケースについての行為をした者でございまして、それは実行行為者であるのみならず、それに認識を持っておった役員は当然含まれるわけでございます。損害賠償の場合もその意味での行為者であるということになるわけでございます。したがいまして、今日の会社役員のごとく、同じく役員といいましても、商法上も役員の責任の程度によって書き分けることをいたしませんで、ただ、ある行為と結びついての役員の責任の場合は故意または過失のあった取締役というふうな表現でもって、何担当だ、かに担当だという、あるいは常勤、非常勤といったそういう区別できめておりませんで、当該具体的ケースの場合に故意、過失があった役員というとらえ方をしております。今回の証取法もそういうふうに受けておるわけであります。ただ、実際問題といたしまして、私どもが大蔵省において重点審査の結果粉飾を発見したという実例から考えてみますと、その単独行為としてある行為が行なわれるということはまず見当たらないように思います。のみならず、ほとんどの場合におきまして、使用人だけが行為をしてしまっておりまして、役員は一切知らなかったというのはまずないと考えてよろしいと思います。普通の場合におきましては、常務といっても専務といっても、あるいは工場長たる名もございましょうし、いろいろと分担がございますが、普通常務会ないしは専務会といったところ以上のところでこの計画が行なわれ、指示が行なわれて、そこで意思決定されるということになっておるようであります。もちろん決算取締役会というものがございますが、その前に決算をどうするかにつきましては、少なくとも常務会以上のところ、しかも常務もいまおっしゃいました経理担当の常務というものを中心にいたしまして、これに関連する社長を含めた主位の役員が集まるのでございますが、そういったような会のところでこの草案といいますか、方針をきめておりまして、それに従ってできてきた決算内容というものを、あとは、形式的と言っては言い過ぎでございましょうけれども、取締役会という議を経まして、そうして株主総会に出す、こういうようでございす。したがいまして、そういった会社決算手続につきまして、どういうしきたりなり手続を経て毎期毎期の決算を取締役会で決定するまでの段取りをするかということに応じまして、実質的にその方針が策定され、内容が確定され、方法が確定される。その役員会に出席した者のうちから、原則的には、当該出席した者が、蓋然性としましては全員ということになると思いますけれども、そういう者の中で具体的にケースケースに応じまして責任者が、あるいは行為者がきまっていく、かように考えられるのじゃないかと思います。
  113. 堀昌雄

    ○堀委員 最後にお伺いをしたいのは、私ども、公認会計士法の改正をいたしまして監査法人をつくることにいたしました。監査法人をつくる目的というのは、公認会計士一人ではなかなか問題の処理がむずかしいけれども、監査法人となると、パートナーシップとなればそこにはおのずから相互牽制も働いて、要するに公認会計士としての本来の正確な監査がより高められるというのが発想の根拠にあるわけですが、最近の大蔵省のいろいろな審査の中で、監査法人が粉飾決算に関係をした例があれば、その例についてちょっと報告してもらいたいと思います。
  114. 志場喜徳郎

    志場政府委員 一昨年に一件、昨年に一件、実は監査法人がタッチしております監査証明における粉飾決算がございました。それは一つは、一昨年の例は芝電気にかかわるものでございますし、昨年の例は昭和製作所にかかわる例でございます。ただその処分は、たしか戒告という軽い処分で済んでおるということでありまして、その粉飾の程度が軽微であったということでございます。のみならず、それを見ますと、これは現在の過渡的な形として監査法人の欠点であるということで私ども指導しておるのでございますが、従来個人として公認会計士業務を営んでおりました方々が、五人以上なら五人以上集まらなければならないという組織法上の制約で集まりましたけれども、その実、かつてのいわゆる企業組合のごとく、それぞれが監査法人の名前の看板は掲げておりますけれども、業務は、その法人一体としてそこに統一的な監査あるいは審理といったようなことを経ませんで、あるいは討議、内容審査を経ませんで、その個人営業が法人の看板を掲げながら引き続き個人的なことをやっておるというような事例もあるのでありまして、そのときにはやむを得ない点もございますが、いま申しました二件につきましても、そういう従来から個人として開業しておりました時代に発生いたしました粉飾というものが一昨年から去年になって見つかってきた、こういう事例でございますので、今後は、この監査法人の質の向上を通じましてその御期待のように、いやしくも監査法人については充実した体制的な監査ができるように極力指導してまいりたいと思っておるわけでございます。
  115. 堀昌雄

    ○堀委員 私も別に公認会計士そのものと監査法人を著しく区別をしようとは実は思っておりません。思っておりませんけれども、少なくとも一人でやるよりは何名かが集団としてものに当たれば、過失にしろそういうものは減ってくるし、もちろん故意などは、相互牽制が働いてそういうことはできなくなるわけでありますから、仕組みの上でそういうものを減らすことがより重要だという考え方に実は立っておるわけであります。しかし、いまのお話のように、せっかくそういう発想に基づいて監査法人ができても、中身は五人のこれまでの公認会計士がそのままいて、名前だけが ○〇監査法人では、これはどうも困るわけです、私ども考え方としては。ですから、この問題はやはり、現在どうなっているかわかりませんが、まだなおそういうものの残燈があるとするならば、少なくとも一定の期間を限って、監査法人は、私ども考えておる監査法人でなければもうこの際監査法人を取り消す、この期間のうちに本物の監査法人にならないところはばらばらに戻しますよという程度の処理をして、いやしくも監査法人が監査をした中で粉飾が起きたなどということのないようにしてもらわないと——私はさっき前段で、国税の問題を含めて何とか監査法人の位置を高めたい、高めるためにはひとつ大蔵省としてもそういういろいろな処置を各般にわたって考慮してもらいたいと申しましたが、こういう方向でわれわれ幾ら国会の中で努力をしてみても、実態は、言うならば魂入れずの状態では困りますので、その点について証券局として、私もいますぐというごとは言いませんけれども、一定の期間を置いて、その間にまあまともなといいますか、やはりわれわれの考えておる監査法人にならない監査法人は監査法人として認めない。もうそれは解散を命じてばらばらの公認会計士だ。実態はそうなんですからね。実態はそうであるにもかかわらず名称の上において監査法人だけを名のられては、実態が監査法人になっておるところとの間にたいへん問題も出てくるので、私は、この点はひとつ少しきびしい処置をとってもらいたいと思うのですが、どうでしょうか。
  116. 志場喜徳郎

    志場政府委員 一昨年、先ほど申しました芝電気の粉飾決算が、監査法人が関与しておるということで私どももびっくりいたしまして、それで結局公認会計士協会に対しましても、おっしゃるような意味での監査法人らしい監査法人といいますか、その実を備えたものであるようにということを強く要請したところでございます。先ほど申し上げました二件は、それまで個人として関与しておりましたものが持ち込まれたということであったわけでございまして、この新しく監査の対象にしておりますところのものにつきましては、万そういうことがあってはならないと思っておりまするけれども、私どもは、ただいま先生の御指摘のような方向を体しまして、その内容の充実につきましてしばらく時間をかしていただきたいと思いますけれども、できるだけ早急にその御期待に沿うように強く今後指導してまいりたい、かように思っております。
  117. 堀昌雄

    ○堀委員 最後に、公認会計士の問題で昨日私は参考人にちょっと申し上げたんですが、賠償保険の問題であります。  私はどうも、ちょっときのう伺った範囲の発想はたいへん残念だと思っております。公認会計士が、事故が起きた場合、故意や過失がなければ責任がないわけですから、要するに故意や過失がないことをわれわれは期待しておるわけですから、本来なら賠償保険は要らないと思うのです。しかし、もし賠償保険を設けるとするならば、それは公認会計士の側のために設けるのではなくて、損害賠償の請求があったときに直ちにそれを払って、要するに損害賠償の請求を行なう人に迷惑をかけないようにするという発想で賠償保険を公認会計士協会が考えるというなら、これは話は別だと思うのですが、力点の置き方を、自分たちを守るために賠償保険をやる。その自分たちの守り方は、故意または過失があった場合にしかこないのに、それに対する対抗策を設けようなどという発想は、私は、公認会計士協会としてはあるまじき発想だ、こう考えておりますので、この点を含めて公認会計士協会が、少なくともいままでは特別法人として多くのいろいろな権限を与えておることでもあるし、もう少し公認会計士協会が、公認会計士協会というのは公認会計士の利益のためにあるのではなくて、要するに投資家保護のために設けられておるんだといろ点を十分ひとつ認識して、かりそめにも公認会計士が自己のそういう計抗策などで問題を考えるような発想がなくなるように、十分ひとつ指導をしていただくように要望いたしまして、私の質問を終わります。  ちょっとすみません。私、うっかりしてテークオーバー・ビッドのところをちょっとメモして丸かったものですから抜かしたのですが、このテークオーバー・ビッドの問題について、こういう問題に私は日本ではなると思うのです。実は公開をしましていろいろな問題が起こることは——隠密の中で株の買い占めが行なわれることを防ぐことになりますから、制度としては私はこれは一つの進歩だと思うのであります。ただ、その場合に問題になるのは、そのテークオーバー・ビッドによってビッドされる側がどういう角度で判断をするかというところに実はあると思うのです。どういう角度で判断をするかというのは、日本の場合には、日本企業というのは、私のこれまでの感触では、株主利益というものをどうももう一つ重要視しない感じがしてならないわけです。要するに企業側利益が優先をして株主利益がその次だ、こういう感じがするのです。そこでいまの場合に、企業だけの判断でものが行なわれることは、場合によって株主に不測の損害を与える場合が十分私はあり得るのではないかという感じがしてなりません。日本ではそういうときに、株主のこともさることながら、企業側が最初に考えるのは金融機関のほうのことだろうと思います。金融機関は八〇%も貸し付けをしているわけだから、その会社がビッドされるかどうかは、自分たちの貸し付けの問題の将来とかいろいろな問題に非常に関係があるでしょうから、彼らも判断をするでしょうが、私は、これらの問題について何か公的なといいますか、要するに国民的利益を守る側から何らかの介入の余地を残しておく必要はないのか、そういう気がいたします。それはもう直ちにフランス式に大蔵大臣の拒否権ということがいいのかどうかは、これは仕組みがいろいろ違いますから少し検討の余地があるかもしれませんが、どうも何かひとつこのビッドの問題については、そういう国民的利益の介入のできるものを考慮しておく必要があるのではないか、こう思いますが、その点どうでしょうか。
  118. 志場喜徳郎

    志場政府委員 従来の株の買い占めは、いま御指摘のように、ひそかに行なわれておりましたものが、ある日突然経営者に、いわば高く売りつけに行くということで、経営者はそのときは主として株主のことを考えるというよりも、むしろ主として自己保全というようなところから、ほんとうはその意味では会社の株は扱うべきじゃないというふうに思うのでございますが、何か高く株を買い戻しておるということで、いわば株主不在、投資者不在といったようなことになっておったと思うのであります。しかし、今回の株式の公開買い付けば、堂々とオープンにしまして、こういう方針でこういうふうに経営していくが、株価をこういう価格で売ってくれという呼びかけでございます。その相手方の会社経営者も、これにいろいろ異論があるならば、買い占めをする者の言い分よりも、株主が現経営者の言い分に耳を傾ける、その結果現在の株を持っておったほうがなるほどいいなという一つの名分のある、その意味では株主のことを考えた大義名分がなければ、その株は売られてしまうと思うのです。ですから、その意味におきまして、おっしゃるように確かに今回の改正は、株主保護あるいは自主性尊重と申しましょうか、あるいは経営者のそういう自己保身的なところではとうていもたないということの一つのあらわれとなってくると思うのでございまして、結局、お尋ねのような公的機関というような構想もあるかとも存じまするが、やはり私は、この従来の反省も含めて、こういう株主というものに公にものを言う、それだけの大義名分が立たないことには、その株主はおのずから判断すべきものを判断していくであろう、こういうことに徹するのが、先生の目ざしておられるような株主保護ないしは日本経済の発展の土台となるのじゃないか、かように考えておりますので、私どもといたしましては、さような第三者的機関を設けるということは考えていないわけでございます。
  119. 堀昌雄

    ○堀委員 この問題は、単にビットだけの問題ではなくて、外資法なりいろいろな面でまだ少し問題が残っておりますから、いますぐにどうかしなければならぬ問題だとは私も思っておりませんけれども、しかし、外資法なりいろいろな為替管理なりの面がいつまでもいまのままでいくとも考えられませんので、そういうものが弾力化されるのと並行しながら、何らかの国家的利益を守る——介入というものがすべてにということではありませんが、重要なものについては、何らかのものが担保されることが必要ではないかと思います。これをひとつ検討事項としておきます。
  120. 毛利松平

    毛利委員長 関連質問を許します。佐藤君。
  121. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 まるまる三日間、証券二法についての質疑があったわけですが、特に株式の公開買い付けについて、基本的な点とそれからこれが新しい制度であるという点について、実際に具体的にこういう場合にはどうなるのだということを、これからいろいろな問題が起こってくるので、その二、三点をちょっとお伺いしておきたいのです。  まず、基本的な点でございますけれども株式の公開買い付けなるものが一体どちらの面を向いているのか。いわゆる証取法の基本精神である大衆投資家保護という観点から、一体どういうことなんだろうかという点について、この三日間の論議の中で、私は十分に尽くされてはいないのじゃないかと思うのです。私が一番最初に御質問を申し上げましたときに、株式の公開買い付けというものが、会社側のほうを向いているのかあるいは投資家のほうを向いているのか、この側面と、もう一つは、外資に対するものなのかあるいは日本国内のものに対するものなのかということを御質問申し上げたのですが、そのとき証券局長のお答えの中に、会社のほうか投資家のほうかということに対してはニュートラル、中立であるというふうに答えられたと私は覚えているのでございます。やはりこの公開買い付けというものは時代の趨勢であるし、その点はわかるのですけれども、証取法にいうところの、基本精神である大衆投資家保護ということになると、テークオーバーがなされてみて、それが投資家にとって結果的によかったのか悪かったのかということでないと、この公開買い付けがいいか悪いかということでは、新しい制度を設けるについては理論的には弱いのじゃないか。いままでの三日間の質疑の中では、結果論としてよくなるか悪くなるかということは出てくるけれども、この公開買い付けそのものが大衆投資家の保護になるんだという点については、私はどうも理論的に説得力に欠けているのじゃないか。まず、この基本的な点についてお伺いしたいと思うのです。
  122. 志場喜徳郎

    志場政府委員 ニュートラルと申しましたのは、ちょっと私の言い方が悪かったのかどうか存じませんが、私は、ニュートラルというのは、ある会社のいわゆる買い占め、乗っ取りということ自体がいいか悪いかという点を申したのであります。それについては、この制度はニュートラルでありますというふうに申したと思います。今回の制度をいかなる観点から設けておるかと申しますと、その乗っ取りを成功させようが、あるいは失敗に終わらせようが、それは株主判断である。ということは、今回の制定の趣旨はもちろん株主保護という点に重点を置いての立法でございまして、そのビッドの結果、乗っ取りができるかできないか、現経営者と国民経済の、何を保護すべきか保護すべからざるか、これはあげて投資家判断にかかることでございまして、その点についてはニュートラルという考え方からスタートしておる、かように申し上げたのであります。
  123. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 あと数点について簡単にお伺いしたいのですが、この株式の公開買い付けのおもな目的となるのは経営権の取得だと思うのですが、その際に一番問題となるのは、一体幾らの値段を提示すれば株式が目的の量だけ買えることになるか、この点が買い取りをやる場合に一番問題になってくると思うのですけれども、この値段のつけ方について何らかの規制をする必要はないのか、その点についてはどうでしょうか。
  124. 志場喜徳郎

    志場政府委員 買い付け価格は届け出事項になりますので、それは大蔵大臣による審査といいますか、検討の対象になるということにはなりますが、これは法律上においてどれまでということを一律に引くことができないことは申すまでもございません。確かに、その買い取りを成功させようと思えば、高ければ高くするほど可能でございましょう。しかしながら、買ったあと、何のためにどうするかということが、買い付け目的がございますわけで、その目的が、傘下におさめて経営していく限り、その買い占め者にとりましては、コストのかかっている金を投じますのに収益とかそういうものの見合いがございませんと、それはおかしなことになるわけでございます。その点につきまして、そういう観点から価格について事情を聞き、チェックするということはあろうと思いますけれども、これは個別のケースにおいてその両面から考えるべきでございまして、だからその意味におきましておのずから制限というか、おのずからの限度はあるといえると思います。けれども、これを市場価格の何割増しとか、そういう一律の線を引くことは不可能ではないか、かように考えます。
  125. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 それから、申し込みを募集する際に、募集者の望んでいた数量よりも上回る場合が当然あると思うのです。その際には一体どういうふうにするのか。こういうことは政令できめるわけですか。
  126. 志場喜徳郎

    志場政府委員 さようでございます。諸外国の例を見ますと、申し込みがそれまでにだんだんたまっているわけでありますが、全体を合計いたしましてオーバーしました分を圧縮するのに、全体の数量を分母にし、そして限度額というものを分子にしまして、その割合でもって各人に案分して削減していく、同じ比率で削減していく、こういう方法を各国大体とっておるようでございますので、私どももそういう方向検討しております。
  127. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 最後に、時間もありませんので……。  これは集まらない場合も当然あると思うのですけれども、その際に、一回目と二回目の値段が変わってくるということもあると思うのです。これは株主平等の原則からいくと非常におかしなことだと思う。その点と、当初、目的としては経営権の取得ということを考えていたけれども、どうにも集まらない。その際に、それを変更して売却してしまうということも当然考えられると思うのです。その際には目的の変更というふうに考えるのか、あるいは当初から、その株だけを集めて、ある程度のときが来たら高い値段で売りつけるというふうに見れないこともないと思うのです。この辺のところの判断を一体どういうふうにするのか。こういうものまで政令できめるおつもりがあるのかないのか、その点を最後にお伺いしたいと思います。
  128. 志場喜徳郎

    志場政府委員 虚偽の記載がありましたならば罰則をもって臨んでおりますが、申し込みが予定数量を上回ったときの配分方法、並びに、もしもある数量に達しなかった場合においては、それをそのままで買い取るか、あるいはその申し込みをキャンセルするということにするか、それはいずれも届け出事項に最初に明らかに書かしておく、その届け出事項にするつもりでございます。それを実行しませんでしたならば、もちろん虚偽の記載ということでの処罰ということになりますが、そういうふうに、あらかじめそういった契約の中身につきましては詳細に届け出事項に明らかにしておきまして、それを公示して、その上で申し込もうとする株主はそれを見た上で判断をして行動に移る、かようになるわけでございます。
  129. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 終わります。
  130. 毛利松平

    毛利委員長 竹本孫一君。
  131. 竹本孫一

    ○竹本委員 私はきわめて簡単に二つ三つ伺いたいと思いますが、最初に企業長期資金調達の場としての公社債市場の正常化ということがいわれるけれども、それはどういう意味であるのか、また政府はそのためにどういう努力をしておられるのであるか、このことを聞きたいと思います。
  132. 志場喜徳郎

    志場政府委員 正常化は、企業社債による資金調達が真に長期資金の供給者のところによって購入されるという点と、それからその発行条件が流通価格、流通市場における利回りということと原則的に乖離をもたらさない。したがいまして、理論上の利回りはともかく、実際に換金の必要があって換金する際にはロスを生じて、したがって利回りは低下する、したがって新発債は売りにくいというようなことじゃなくて、その発行条件と実勢の利回りの乖離が原則でなくなるということ、並びにそれとうらはらにはなるのでございますが、資金の供給者、つまり社債の購入者が長期貯蓄という意味合いにおいて長期資金を投ずる、そういうことにおいて社債が多く消化される。この両面を正常化と考えておるわけでございます。さような意味から、私どもは、発行条件の弾力化、実勢との接近につきましては、これは別に法律上どれに従うということはないのでありますが、私ども正常化という資本市場に行政的な責任を持っております者といたしまして、証券界のみならず金融、産業界にもいろいろと説明もして、こういうふうにつとめるという配慮と、並びに証券会社を主として督励いたしまして、そういった長期資金の供給者にふさわしい個人投資家と申しますか、あるいは機関投資家と申しますか、さようなところを広く営業上開発していく、この二つの面について及ばずながら努力しているつもりでございます。
  133. 竹本孫一

    ○竹本委員 いろいろ御説明がありましたけれども、結局売るほうも買うほうも、いわゆるプライスメカニズムで、営利原則といいますか、利潤原則といいますか、大体においてそういう立場に立って取引ができるということですね。
  134. 志場喜徳郎

    志場政府委員 さようでございます。
  135. 竹本孫一

    ○竹本委員 そういうことになりますと、いまのように新規の発行債とそれから従来出しておるものとの間に価格差があるということは、そういう正常化を非常に大きく妨げると思うのですけれども、現実にはどのくらいの価格差があるのか、そしてそのことが正常化をどの程度じゃましておるかということについて……。
  136. 志場喜徳郎

    志場政府委員 公社債の条件につきましては昨年の三月に改定が行なわれたわけでございます。その昨年の改定直前と直後並びに現在を考えてみますと、昨年の改定直前におきましては、たとえば事業債のA格債で申しますと、応募者利回りと流通利回りとでは、つまり発行条件と実勢とでは年利にしまして一・三八五%の乖離があったわけであります。つまり新発債が不利であったわけです。それがこの〇・四%ばかりの改定をいたしましたために、この乖離幅は改定直後におきましては〇・九五八%、それでも約一%近くの年利の乖離があったわけでございますが、最近、金融の緩和という状態を反映いたしまして、店頭気配の価格が上がりまして、その結果流通利回りが下がりまして、最近の乖離幅は〇・五七二%でございました。一年前に比べますと乖離幅は一・三八%から〇・五七%というふうに約〇・八%ばかり縮まってきておるのでございますが、しかし依然として〇・五七%の乖離がある、かようなわけでございます。
  137. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで、起債条件を弾力化する、そして自由化していくということについて、今後の見通しはどういうことになりますか。
  138. 志場喜徳郎

    志場政府委員 昨日も申し上げたと思いますが、なかなかむずかしい問題でございまして、と申しますのは、一方において金融緩和が続いてまいりますと、企業資金調達が銀行からの借り入れを通じて楽にならないかという期待感があるわけです。かような状態におきましては、発行会社としましてはついそういうふうな道に走りがちであるという気もいたします。そこで私どもといたしましては、早急に、来たるべき四十六年度において社債発行の希望額がどの程度あるか、また現在において見通される金融情勢のもとにおきまして、発行条件その他を見た場合に現状のままでの消化見込み額がどのくらいあるかということの需給面を至急に、できるだけ客観的に、具体的に描きまして、それから考えてみたいと思うわけであります。私どものほうとしましてはまだその数字が固まりませんで、つかみかねておりますので、しばらく時間がかかると思いますが、できれば本年度内くらいにその見通しをコンクリートにいたしまして、金融緩慢の時期が比較的続くと思われる来たるべき四十六年度におきまして何らかの前進を見たい、そのようなスタンスは持っておりますけれども、まず需給バランスの一応正確な見通しというところからスタートすべきではないか、かように考えております。
  139. 竹本孫一

    ○竹本委員 たいへんむずかしい問題でございますけれども、一番大事な問題ではないかと思いますので、ひとつ御努力を要望いたして次へまいります。  安定株主工作ということをまたよくいわれるのだけれども、どういうふうにすることが一番安定株主であるか。時間がないから簡単に申し上げますが、生保や損保はどうか、また現在どのくらいのウエートを持っておるか、銀行はどうかということについて伺いたい。
  140. 志場喜徳郎

    志場政府委員 日本の場合に、終戦後の昭和二十五年のころでは、株主のうち法人株主が株数の割合で三〇%程度だったと思います。最近では法人株主割合が非常にふえておりまして、全体では約五八%というふうに記憶しております。その中で一番多いのは金融機関でございまして、金融機関が三〇%余りでございます。その金融機関の中には生損保は入っておる次第でございます。それから普通の事業法人が二四%を持っております。個人その他が四〇%余りでございまして、つまりこれをごらん願いますと、保険会社を含んだ金融機関と事業法人、この二つでもって約五四、  五%を占めておるわけでございまして、その他若干の証券会社持ち分とか外国人持ち分とかございますが、依然として金融機関と事業法人の持ち株が多いわけでございます。
  141. 竹本孫一

    ○竹本委員 銀行プロパーはとうですか。——それじゃ資料が出るまでの時間の節約ですが、生保、損保というものが安定株主工作のときにたよりになるものと考えていいか。情勢がだんだん変わりつつあるのではないか。先ほども議論があったと思いますが、その辺の見通しはどうですか。
  142. 志場喜徳郎

    志場政府委員 けさほども堀委員からですか、日本のいわゆる機関投資家は、機関投資家でありながらウェットな感じが多い、こういう御指摘もありましたが、私ども少なくとも従来までの傾向ということで見ておりますと——直接保険会社の人に聞いたわけではございませんが、見ておりますと、産業界が往々にしてよく安定株主として期待する相手方に保険会社を入れておったようでございまするが、おおむねそういうビヘービアなり意識のもとに動いてきたのじゃないかと思うのですが、先ほど御指摘がありましたが、時価発行に関連いたしまして、今度はドライといいますか、その投資によるところの収益目的ということを考えていく、これはいわば当然でございまして、さようなことを考えますと、また現在までの保険会社の総資産のうちに株式投資の占めます割合が、アメリカ等の諸外国に比べて日本の場合は特に多い。有価証券全体が三割弱で——外国は五割台あるのですが、その三割ぐらいの中で株式を二五%前後持っておる。諸外国の場合は数%でございます。残りは社債でございます。そういうことを考えますと、現在の場合においては、リスクキャピタルといろ意味においての株式に対する資産保有割合が、国際的に見て、日本の保険の場合、非常に多いのでございます。さようなことを今後考えてまいりますと、もちろん長期投資以外の投資が、キャピタルゲインを追求するということでもって、株式を保有することは間違いないと思いますが、従来のように、しかもそれが安定株主というような意味でもってウェットな関係その他で、いま買い増しあるいは持続するであろうか。この点については、また従来と違った考え方が見通されるのじゃないか、かように思います。
  143. 竹本孫一

    ○竹本委員 安定株主工作というのは一体どの辺を目標にするのかという点はどうですか。現在、たとえば自動車が上陸作戦をやってきておるというような場合に、トヨタにしても日産にしても、どの程度の安定をしておるか。いすゞがよく問題にされますけれども、どのくらいであって、どのくらいになれば大体安定化工作ができたと見るのか。その辺についていかがですか。
  144. 志場喜徳郎

    志場政府委員 その前に、先ほどお尋ねの銀行と保険会社の持ち株割合を申し上げますと、銀行——信託銀行、相互銀行は含んでおりません。銀行では一五%でございます。生命保険会社が一一%、損害保険会社が三・九%、上記以外の金融機関が二%、こういうことでございます。  その次に、お尋ねの安定株主でございまするが、自動車についてのお尋ねの資料はあいにく持ち合わしておりませんが、どの程度固定的な株主があれば安定株主と言えるか。実はよく考えたこともございませんが、大体私考えますと、金融機関はいま申しましたように、非常に持ち株割合は全国的に多いのでございますが、独禁法上一割をこえて持てないという制限がございますから、私ども有価証券報告書その他によって株主構成を見まするというと、大体筆頭の大株主というのは金融機関と思います。その金融機関も単独では一割ということを限度にしておりますので、一割の限度一ぱいに持っているところの銀行が二、三行、あるいは数行ということでございまして、金融機関全体を合わせますると、ある会社にとりましては五〇%、六〇%ということもございまするが、個々の株主からいいますと、一〇%をこえて単独でその株式を持っておるということはあまり見当たらない、かように思います。
  145. 竹本孫一

    ○竹本委員 私が尋ねたのは、特に大事な点は、六〇%がいいのか、七〇%があれば安定化工作はやや完了したと見るのか、その辺を伺っておるのです。特にいま外資から——きょうは時間がありませんから本格的な議論もできませんけれども、外資からねらわれるような事業については、安定化工作というものはどの辺までいかなければ不安だという問題について、一つのめどがありますか。
  146. 志場喜徳郎

    志場政府委員 まあ全株主が出席して総会で争うということになりますと、五〇%以上持っておればいいわけでございます。実際問題としましては全部が出席するわけでもございますまいから、それほどまでにはいかなくてもいいのじゃないかいう感じもいたしますが、おおむね会社としてねらうといたしますれば、一応五〇%ということを——単一の株主ではございませんが、同一の行動をとってもらえる見込みのものを五〇%程度以上集めるという努力は一応要るわけでございます。
  147. 竹本孫一

    ○竹本委員 その辺が実はなかなかデリケートな問題なんですけれども、時間がありませんからきょうはやめますが、先ほどもいろいろ御議論が出ておる点と関連するわけですが、外資が乗っ取りをねらっていよいよ出てきたという場合に、それを防ぐ日本法律的なとりでは何と何であるか。外資法がどの程度役に立つか。それから今度の公開買い付け制度がどのくらい役に立つか。商法の改正がどこまで役に立つか、それらにもかかわらずどれだけの欠陥があるかないか。その辺をちょっとまとめて……。
  148. 志場喜徳郎

    志場政府委員 私もすべての法律についてはよく存じませんが、まず独占禁止法があるわけでございまして、それは産業政策上望ましくない、不当な競争制限になるような、独占になるようなそういう買い占めとか、合併企業合体ということを禁止しておる法律でございます。これは外国人にももちろん適用があるわけでございます。  その次には外資法がございますけれども、この条文を見ますると、どっちかと申しますと、外貨準備、日本の外貨保有ということ、これの拡大をはかるという、いわばそういう事態でございまして、その条文の中には、わが国の経済の復興に妨げになるとかいう文言を使っておる条文もございますが、これでずばり、産業再編成でございますとか、そういった措置を適用するのにはかなり大きな限界があるのではあるまいか。外貨という状態判断の重荷になるのではなかろうかという感じがするわけでございます。もっとも、それに基づきまして一人当たり七%ないしはトータルで二五%という自動認可ということでのワクを設けておるわけでございまして、これがさしあたりは最もきいておるわけでございます。しかしこれとても漸次前向きで、ということは、日本の現在あるいは将来の外貨準備高の保有状態見通しからいたしまして予想されることでございますが、そうなりますると、その点における限界は次第に上限は引き上げられてくるということになります。今回の証券取引法の公開買い付けの制度の創設はさような状態も予想しながら、最後にはもちろん独禁法の法令上の不法行為のチェックがございますけれども、この日本株主というものに、わが国の国益なりというものを考えあわせながらよくしっかりと判断を求めていく、そういう方向に誘導していくということを考えての措置でございます。
  149. 竹本孫一

    ○竹本委員 これは政務次官にもちょっとお伺いしておきたいのですけれども、いま三つあげられたわけですが、独禁法と外資法と公開買い付け、いろいろありますけれども、それぞれ法の出てきた本来的な目的なり任務なりがあるわけですから、新しい時代と段階に即応して外資の乗っ取りを防ぐということには、直接それを目的にしていないのだから、その法律が間に合わぬのはあたりまえなんですね。いまの日本経済の復興なんていっておるのは、これができたときは、戦後すぐにできたのだけれども日本の復興の時代に復興の問題が出てくるのはあたりまえで、いまは高度成長し過ぎて問題になっておるのだから、日本経済の復興なんといってみたって初めから話に合わない。そういう意味で、独禁法にも独禁法の制約と限界がある。外資法にも外資法の限界と制約がある。公開買い付け制度といってみても、これも目的が投資者保護であったりするし、また業界がいろいろ言った拒否権の問題とか許可制の問題も避けてある。こういうことを考えると、商法の改正も、ぼくはあまりたいして役に立たないと思うのです。  そういう意味からいうと、やはり新しい段階に即応した、外資による乗っ取り防止のための本来的な、それに対応する法律考えるべきではないかということが一つ。それからもう一つは、とりあえずのところで、外資法なら外資法を少し時代に合ったような、日本経済の復興なんといわないで、今日の段階に応じて、乗っ取りを防止するとかいったような意味で、外資法自体を再検討する意思ありやいなや。この二つを伺っておきたい。
  150. 中川一郎

    ○中川政府委員 現在の法律制度でもって、外資によって乗り取られるというようなことはないというふうに判断をいたしておりますが、今後資本自由化その他によりてまた情勢が変わってくるかもしれません。変わってきた場合には、株主安定といいますか、業界の体質改善、業界みずからの努力も必要でありますが、政府としても、特別法をつくるかどうかは別としまして毛、そういったことのないように善処する姿勢をとってまいりたい、このように存じます。
  151. 竹本孫一

    ○竹本委員 これで終わりますけれども、そういう情勢になるかもしれぬと次官はいまおっしゃったけれども、私はそれ以上にきびしいものがあると思うのですね。これは、日本の外貨が五十億ドル、六十億ドルということになってきているし、その他いろいろ、円の切り上げの問題もありますし、とにかく資本自由化に対する対応の政策をきちんとやらなければならぬということになりますと、乗っ取りが、現実にもう自動車も心配が出てきているのですから、あまりのんきなことをおっしゃらないで、現実に応じたような対応策を考えてもらいたい。  やめるつもりだったけれども、なおちょっと念のためにもう一つだけ伺っておくが、アメリカ資本がドイツに出ていった資本の総額は、一体どのくらいであるかということを調べてありますか。私の記憶するところでは十数兆円にのぼっておると思うのです。ところが日本株式のいま第一のやつを全部あげても、時価総額で大体十六兆円でしょう。だからちょうどそれと対応したものが、ドイツの市場だけをねらってアメリカは行っているのでしょう。ドイツの次にねらっているのはだれが考えても日本なんですから、その日本の姿勢は、まあ公開買い付け制度ができた、少しオープンにものごとをやるのだということにはなったかもしれぬけれども、具体的にそれを防ぐという法のとりではまだ、いまの答弁にもあるように、これから考えるというような段階ですが、もう現実に上陸作戦が始まっているのだから、相当お急ぎにならないとたいへんなことになりはしないか。要望になりますけれども、アメリカがドイツにどれだけ資本を持ち込んで上陸作戦をやったか。これは話せば長くなりますが、日本のいまの時価総額と大体同じ見当だとぼくは思っているのです。そういうことですから、よほど用心しなければならぬし、またそのあくどい乗っ取り作戦については、私きのう予算委員会でやや詳しく述べておきました。そういう意味で、ひとつ前向きに、立ちおくれにならないように準備を進めてもらいたい。その一環として外資法を検討されるもよろしかろうし、特別法を考えるのもよろしかろうが、いずれにしても無防備の態勢では強いアメリカ資本を迎え撃つということは不可能ですから、このことだけは特に注意を願いたい。  以上、終わります。
  152. 毛利松平

    毛利委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  153. 毛利松平

    毛利委員長 次に、日本輸出入銀行法による貸付金の利息の特例等に関する法律案及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。     —————————————
  154. 毛利松平

    毛利委員長 政府より提案理由の説明を聴取いたします。中川大蔵政務次官
  155. 中川一郎

    ○中川政府委員 ただいま議題となりました日本輸出入銀行法による貸付金の利息の特例等に関する法律案外一法律案につきまして、提案の理由及びその概要を御説明申し上げます。  まず、日本輸出入銀行法による貸付金の利息の特例等に関する法律案につきまして御説明申し上げます。  開発途上国に対する経済協力の促進は、最も重要な国際的課題の一つであり、わが国といたしましても、開発途上国の自助努力を積極的に支援するため、他の先進諸国とともにその拡充につとめてきておりますことは御承知のとおりであります。  このような方針のもとに、インドネシアに対しましても、同国の経済安定と開発を促進するため、適切な経済協力の推進に努力いたしている次第であります。  同国に対する経済協力につきましては、特に昭和四十一年以降、IMF、世銀等の協力を得て、関係各国でインドネシア経済の実情に即した援助のあり方を検討し、これに基づいて国際的な協調のもとに援助を行なうことといたしております。この間におきまして、インドネシア経済はようやく安定化の時期から復興と開発の時代に移行するきざしを見せてまいり、同国の経済発展のための努力を引き続き支援し、これを一そう効果あらしめるためには、新規援助と並行して、対外債務の救済について長期的な観点に立った措置を検討すべきであるとの国際的認識が強まってまいりました。かかる認識に基づいて、いわゆるアプス案を中心に検討が重ねられた結果、昨年四月の債権国会議において、無利子三十年償還という方式で債務を繰り延べることを骨子とする長期的債務救済の措置について合意を見るに至ったのであります。この合意は、各国政府がインドネシア政府と二国間協定を締結することにより実施されるのでありますが、オランダ及びフランスはすでにこの二国間協定を締結し、その他の債権国会議参加国も近く二国間交渉を開始する模様であります。また、債権国会議参加国以外ではソビエト連邦が債権国会議の合意と同様の内容で協定を締結いたしております。  わが国といたしましても、国際的経済協力の一環として、この合意に基づく債務救済を実施することが必要であると考えます。その場合、その対象となる債権のほとんどすべては、日本輸出入銀行がすでに行なった債務救済の結果としてインドネシアの中央銀行に対して有する貸し付け金債権及び日本輸出入銀行の融資にかかる対インドネシア民間債権であります。したがって、今回の債務救済につきましても、従来と同様、同銀行がその実施に当たることが適当であると考えられますが、この救済措置をこの合意に基づいて無利子で行なうためには、日本輸出入銀行法の貸し付け金の利率の決定に関する規定についてその特例を設ける必要がありますので、ここにこの法律案を提出いたした次第であります。  以下、この法律案の概要について申し上げますと、まず、日本輸出入銀行が本件債務救済を実施する場合には、インドネシアの中央銀行に対して無利子で債権の繰り延べ及び貸し付けを行なうことができることといたしております。  次に、日本輸出入銀行は、本件債務救済の実施に関する業務について、これを一般の業務と区分するため、特別勘定を設けて経理するものといたしております。さらに、この特別勘定にかかる業務に要する資金の財源に充てるため、政府日本輸出入銀行に対し、予算の定めるところにより、無利子で資金の貸し付けができることとし、その他、所要の規定の整備をはかっております。  次に、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  国際開発協会は、昭和三十五年十一月に設立され、開発途上国に対し、きわめて緩和された条件での融資を行ない、低開発地域の経済開発の促進に大きな役割りを果たしてまいりました。わが国は、その原加盟国として当初出資を行なったほか、昭和三十九年の第一号増資及び昭和四十四年の第二号増資の際にも応分の寄与を行なってまいりました。  しかしながら、開発途上国の同協会に対する融資の要請は年々増大し、同協会の保有する資金の大部分は遠からず貸し付け約束済みとなる見通しとなったため、昭和四十四年九月の総会において、同協会の第三次増資が提案されました。その後、この増資提案に関し関係国間で累次検討が伴なわれ、昨年七月、総額約二十四億ドルの増資及びその分担に関する理事会決議が採択され、これを内容とする総務会決議案が各国を代表する総務の投票に付されました。これに対し、わが国は、昨年十月末、わが国総務である大蔵大臣が賛成投票を行なっております。  ここにおいて、わが国といたしましては、の定めるところに従い、同協会に対し新たに一億四千四百万合衆国ドル相当額の本邦通貨(五百十八億四千万円)による出資を行なうため、所要の国内措置を講ずる必要が生じたものであります。したがいまして、この法律案により、新たな出資についての規定を設けることとし、この法律案の成立後、出資の分担を引き受ける旨の正式通告々行ないたいと考えております。  なお、国際開発協会に対する出資は本邦通貨にかえて、国債で行なうことが認められておりますので、今回の出資も、前回及び前々回と同様、さしあたり国債で行なうことを予定しております。  以上が日本輸出入銀行法による貸付金の利息の特例等に関する法律案外一法律案の提案の理由及びその概要であります。  何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  156. 毛利松平

    毛利委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  両案に対する質疑は後日に譲ります。      ————◇—————
  157. 毛利松平

    毛利委員長 次に、預金保険法案及び貸付信託法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。藤田高敏君。
  158. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は預金保険法案について以下質問をしたいわけでありますが、まずその第一点として、この保険法案の立法の理由は、その提案説明の中にもありますように、預金者の保護ということになっておりますが、しかし預金者の保護ということだけではなくて、この制度設立の目的の中には、これ以外に別途の政策目的というものが幾つかあるのではなかろうか。私なりに考えますなれば、その一つは預金者の保護であり、その一つ金融機関それ自体の保護であり、また預金率を高めていくという、そういう政策上の目的があるのじゃないか、こういうふうに思うわけでありますが、そのことについての見解をまず聞かしていただきたい。  それと、時間的な関係でできるだけ集約をして質問をしたいと思いますが、このような制度は、わが国に銀行制度ができて以来、歴史的に見ますと、昭和三十年から三十二年にかけて国会でも論議をされて、一度これに類するような法案が出てきたという経過もありますけれども、いわば四十数年来で初めてできる制度でありますから、そこには、こういう金融制度上からいけば、この種の保険制度をつくらなければならないという積極的にしてかつ具体的な条件というものがなければ、制度自身をつくるにあたって、ないよりはましだ、できておることのほうが、あることのほうが、ないよりは安心だという程度のことでは、こういう制度をつくる積極的理由というものについては乏しいのじゃないか。したがってその積極的理由、具体的な条件というようなものについてまず説明を伺いたいと思います。
  159. 近藤道生

    ○近藤政府委員 お答え申し上げます。  まず御質問の第一点は、金融機関の保護ということになるのではないか、預金者保護よりも金融機関保護ということが表に出るのではないかという点であったかと存じますが、実はこの点は、今度の法案が予想いたしておりますのは、むしろ従来あまりに金融機関に対する保護のほうに重点が置かれ過ぎておりましたので、これを改めまして、預金者を直接保護するというほうに切りかえていってはいかがかということが目的でございます。したがいまして、金融機関を直接保護しなければ預金者が保護できないというのがいままでのいわばたてまえみたいな形になっておったわけでございますが、今後は直接端的に預金者を保護するという方向に、この法律によって切りかえることができるということが法案の趣旨でございます。  それから第二点は、この法律案によりまして、預金の各種金融資産に占めますシェアを高めるのがねらいではないかという御質問でございます。この点は実は、すでに御承知のように、預金の金融資産全体に占めますシェアというのはわが国ではたいへんに高うございます。たとえばアメリカあたりでは現在二五%くらいかと存じますが、日本の場合には七割くらいが預金ということになっておりますので、むしろこれだけシェアの高い預金につきまして預金者の保護をはかるというそちらのほうでございまして、さらにこの預金のシェアをこれによってもっとふやしていくということを特に考えておるわけではございません。  それから御質問の第三点は、いまこの時期に特にやらぬでもいいじゃないかということ、この時期を特に選んだのはどういうわけかという点であったかと存じますが、これは御承知のように、昨年の七月に金融制度調査会が最も重点的な施策といたしまして、預金保険制度の導入ということをいいましたゆえんのものは、国の内外にわたりましてたいへんな激動期を迎えつつあり、外からは自由化を迫られ、内におきましては各種金融機関が、あるいはコンピュータリゼーションというようなことを中心といたしまして業務の態様が非常に違ってきておる。それからまた、金融機関の取引先の産業自体が構造が激変しつつある、そういった状況のもとにおきまして、いかにして金融機関の体質を強化するかということを考えるためには、金融機関も相当真剣な体質強化のための努力をしてまいらなければならないということ、そういうことを金融制度調査会では申してまいったわけであります。同時に、従来とかく預金者の保護ということが金融機関保護という方向であり過ぎたために、そういう金融機関自身の体質強化の努力が怠られるのではないかという面もなきにしもあらずであったが、この際預金者を直接保護するという制度の導入は、このような激動期に際しましてぜひとも必要であるということで設けられたというふうに考えておる次第でございます。
  160. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 政策目的としては預金者保護に非常に大きな重点を置いているのだ、こういうことであります。私は私なりに、いま少し幅広い観点からその政策的なねらいもあるというふうに理解をするわけですが、まず質問の順序としてそこに焦点をしぼっていきます場合、なるほど提案説明の中にも、金融制度調査会の答申に基づきということがその主張として出てきております。また、いま局長の答弁でもそういうことになっているわけですが、それでは預金者保護というものをそこまで重点に考えるのであれば、現在預金をしておる、主としてこれは大衆預金ですね、制度そのものが——あってはならぬことですけれども金融機関が倒産した場合に、百万までは保障をする、こういう性格のものですから、おのずから大衆預金というものが対象になろうと思います。その場合に、そこまで本制度新設の主たる目的が預金者保護で、しかもその重点が大衆預金者保護というところに置かれるとするならば、その預金者の意向というものは、政策当局としてはどういう形で集約したのか、意向というものをどういう場所を通じて把握したのか、そのことをひとつ説明願いたい。
  161. 近藤道生

    ○近藤政府委員 預金者にとりましては、ただいまお示しのございましたように、何を望んでおるかと申しますと、一番望んでおりますことは預金の安全性であり、それから第二に望んでおりますことは、収益性と申しますか、適当な利回りというようなこと、そういうことを望んでおるであろうということが金融制度調査会の席上におきましても議論されたわけでございます。そこでその預金の安全性ということが預金者の第一の希望であるということを前提といたしまして、今回の法中も作成されたわけでございます。
  162. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私の質問の趣旨には答弁は出たっていないわけです。というのは、いわゆる百万以下の小口預金と称する大衆預金者は、まあいろいろなことを考えているわけですよ。いま局長が言った安全性の問題もありましょうし、利回りの問題もありましょうけれども、こういう制度をつくってほしいという、そういう意向というものが大衆預金者の強い要求としてあるかどうかということについて、行政当局なりこういう政策立案のそれぞれの機関は、どういう手だてを通してその預金者の意向を集約したかということなんです。もっと結論的に言うと、そういう手だてが何ら直接的にはなされていないじゃないか。金融制度調査会の意向というものを、大蔵当局はいわばそれをうのみにして、待ってました、かれこれ三年近く検討した結果出てきたのだから、これは大蔵当局の多年の念願であった、こういう制度をつくる考え方であったということで、渡りに船と乗っかったものがこの制度であって、大衆預金者の意向というものは、具体的に直接的には反映されていないのじゃないかということを聞いておるわけです。
  163. 近藤道生

    ○近藤政府委員 御承知のように、過去十五、六年間にわたりまして金融機関の破綻の事例はかなり多いわけでございます。たとえば信用金庫で申しますと大体五年に一度、信用組合で申しますと三年に二回、一年に一・五回、そうしてそれらのつど、大蔵省といたしましては、いろいろと手を講じて預金者の保護に当たってきておりますわけでございますが、そういう事件の際に、預金者心理の断面と申しますか、預金者が何を一番望むかということが最も端的に出てきておるかと存じます。それらの事件のあるつど、預金者が一番強く声を大にして望まれるのは、とにかく元本だけでも確実に返るということ、これがそのような破綻の事例に際しての最大の声でございます。いま申し上げました事例の数は、たまたま今回のこの法案の対象となるような事例だけに限られるわけでございますが、そのほかに、それに近いところまで参りましてどうやらおさまってしまったという事例も、もっとそれに倍するか、あるいは三倍くらいはあろうかと存じますが、そのような場合にも、いつもそういう事件のたびに一番強く示されます預金者の関心は、とにかく自分の預金の元本がちゃんと返るかどうか、そこが一番の強い関心事であったのであります。そういう実態、実例を踏まえまして、金融制度調査会も答申をされ、私どももまたその方向で法案の作成に当たったわけでございます。
  164. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 大蔵当局からもらいました資料によっても、昭和三十年以降かれこれ二十件くらいの金融機関の倒産ないしはそれに類した事態が発生しています。そういった事故発生時における預金者の意向は、いま局長の答弁にあったようなものであろう。しかし私どもは、国の制度としてこういうものを法制化し、しかも四十年来のわが国の金融制度上新たに設けられる制度としてつくるような場合には、もっと直接的にこの預金者の意向というものを、たとえばそういう事故が発生したときに意見を聞くだけでなくて、正常な状態の中で、たとえばアンケート調査をやるとか、あるいはこの金融制度調査会の中に労働団体の代表を入れるとか、あるいは消費者団体の代表を入れて、正規の機関の中に、こういう諸団体を通して大衆預金者の意向を聞くような手だてをした上でこういう制度をつくるのであれば、なるほど預金者の意向というものは制度上反映されておるだろうというふうに客観的に評価できるわけですね。そういう手だては今回の場合はなされてないし、なされるような仕組みになってないわけですが、そのことについてのお考えはどうでしょう。
  165. 近藤道生

    ○近藤政府委員 ただいま御指摘のような点、まず預金者心理を調べてからかかるべきではないかという議論は、金融制度調査会の際にも存在いたしたわけでございます。そして、その種の調査が幾つか行なわれましたわけでございますが、その調査を行ないます際に、金融制度調査会の委員でございますジャーナリズムの方々、あるいは参考人として評論家の方々も参加されたわけでございますが、それらの方々の御意向も聞いた上で、預金者心理をどういう角度から調査をしたらいいのか、そのアンケート調査の方式なども定めたわけでございます。その際に実は、たとえば預金者が一番何を望んでおるかというようなアンケート調査をやります際に、安全確実性というものは、これはもうまず前提として当然預金者が一番強く望んでおるのだということを前提といたしました調査のしかたということが、各委員、ジャーナリズムの方々あるいは参考人の方々によっても示されたわけでございます。したがいまして、その安全確実ということはまずもう大前提といたしまして、その上で、たとえば預金者が金融機関に何を望むか、そういう調査が幾つか行なわれたというのが実情でございます。
  166. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は、この金融制度調査会のいわゆる金融機関のあり方についてという、これを中心にずっと検討してみましたが、いま局長が言われたようなそういう意向というものは、この中にはあまり——これは抜粋かどうか知りませんけれども、あまり出てないわけですよ。主としてやはり正規の制度上の機関である金融制度調査会の意向というものを相当重視をされてこの制度設立に至った、こういう経過をたどっておるわけです。これは私から申し上げるまでもないと思いますけれども、この金融制度調査会のメンバーを見れば、会長は日本国有鉄道の理事であり、あとはほとんど大きな銀行や商工会議所の会頭とか、銀行協会の会長とか、経済団体連合会の理事であるとか、日銀の副総裁であるとか、こういった金融機関なり経済団体の長のつくような人がほとんどであって、あえて一般的な者を代表するといっても、なるほどジャーナリストの代表だといえば、一人いるのですか、どこか、朝日新聞の論説委員の副主幹が入っている程度だ。これではやはり理屈はどこにでもつくという言い方であって、やはり制度上は、社会保障制度審議会の中には労働団体の代表も入るとか、あるいは物価問題懇談会の中には消費者団体の代表が入るという形で、やはりせっかく預金保護の、しかも大衆預金者の保護をするというのであれば、いま少しそこの層の意向というものがストレートで政策立案機関の中に反映されるような手だてというものをとるべきじゃないか。そういう観点から——それだけに時間を費やしてもどうかと思いますので、私のこの問題についての結論質問をいたしますが、こういう機関の中に、この機会に労働団体の代表ないしは消費者団体の代表というような者を入れたらどうかと思うのですが、そのことについての答弁ですね。これはひとつ局長でもいいし、またできれば次官の見解を承りたい。
  167. 近藤道生

    ○近藤政府委員 御承知のように金融制度調査会の、ただいまお読み上げになられました中にも、実は四人ほど学識経験委員が入っておられるわけでございますが、そのほかに幅広く労働代表その他の委員を入れろというお話でございます。この金融制度調査会の場では、特に具体的な問題を取り上げますときには、正規の委員だけで議論をするということではございませんで、必ず臨時委員を任命いたしまして、その臨時委員からなる会合でいろいろと問題を取り上げておるわけでございます。そしてその問題のつどそれにふさわしい方々にお集まりをいただいておるわけでございますので、ただいまお示しのありましたような方向も当然考えてしかるべきことではないか。問題によって一々ケース・バイ・ケースで人選は考慮するということになっております。
  168. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 前向きの御答弁があったわけですが、この問題は、まだ法案自体の審議時間もありますから、私は一時留保します。しかし私の意向としては、なるほど制度上は臨時の委員ということもありますが、正規の委員としてやはり入れることがよりベターであろう、こう思いますので、これは強く要求をしておきたいと思います。したがって、これは後日私の要求に対する最終的な御答弁をいただきたい。  次に進みます。順序は不同になりますが、預金者保護というたてまえですけれども、この制度それ自体は、こういう預金者保護の制度をつくる以前の問題として、金融機関をそれ自体が自主的な努力をして、端的にいえば万分の一といえども企業倒産の起こらないような経営努力をやる。また、それに向けて、大蔵省を中心とする行政当局は適切な行政指導を強化していく、こういう施策が講じられるなれば、万一に備えての措置というものも、あえていえば必要であるかもわからないけれども、そういう倒産の心配がないような、そういう事前の施策なり手だてというものが、まだ私の見た限りにおいては十分ではないと思うのです。たとえば支払い準備の問題とか流動性資産の問題とか、あるいは自己資本比率の構成等々から見て、諸外国との比較においても、わが国の金融機関資本構成というものは非常に条件が低いわけですね。こういう本来的な努力をやっていくとか——この説明では、見てみますとそういうことも実効をあげつつあるのだ、今後も努力をしていくのだ、こういっておりますけれども、ものの順序としては、本来的にやるべきことをやって、そしてその成果を十分見きわめる。諸外国、欧米と比較しても十分遜色のないところまで、そういう行政上の手だてもなされているのだ。それでもなおかつ、こういった預金者保護制度、保険制度というものをつくらなければならないのだということであれば、制度を新設する積極的かつ具体的な理由というものがあると私は思うのです。そういう手だてというものは非常におくれておるように思うのですが、そのことについての見解はどうでしょう。
  169. 近藤道生

    ○近藤政府委員 ただいま仰せがございましたように、まず銀行行政、金融行政というものにおいて、あるいはまた金融機関自身の努力において、十分の準備をなすべきではないかということは御説のとおりでございまして、それがまず順序であろうと思っております。  ただ、そこで私ども銀行行政に携わっておりまして非常に感じますことは、そこに非常に大きな限界があるということでございます。一つ金融機関自身の努力によってということの場合に、たとえばある金融機関が破綻に瀕したという場合に、付近の、近傍の金融機関によってこれを救うということを考えるわけでございますが、それを考えます場合に、その近傍の金融機関経営者考え方に左右されたり、あるいはその近傍の金融機関経営者自身も、破綻に瀕しておる金融機関を救うということになりますと、やはり自分のところの株主に対する説明もありまして、たとえば特に店舗行政上のメリットがほしいというような話にどうしてもならざるを得ない。そういうことから店舗行政の筋をあまりに乱すということになりますと、大蔵省としても二の足を踏まざるを得ない。そういったような限界が一つはございます。  それからもう一つは、いま御指摘のございました支払い準備を厚くする、流動性資産を厚くする、そういう方向で、もっともっと欧米並みの水準に達してからにしてはどうかというお話でございますが、これももうよく御承知のように、成長の角度がたいへん急であります間は、どうしても企業の他人資本に対する依存度がたいへん高くなる。したがって、いわゆる金融機関に対する資金需要というものが非常に旺盛でございまして、流動性の比率あるいは支払い準備の比率というものが、成長の角度のそれほど急でない国々に比べて、かなり努力をいたしましても相対的に低いという状態に置かれるわけでございます。そういうことからまいりまして、やはりいろいろな行政上の手段あるいは自助努力、そういったものに対する限界が痛感されました結果といたしまして、やはりこの預金保険制度というものはどうしても必要であるということを考えた次第でございます。
  170. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 答弁を聞いておりますと、私はある意味において非常に疑問を持つわけですね。というのは、経済発展のテンポがいわば非常に早い。その結果相対的に、いま私が指摘したようなことについては、欧米諸国と比較しても低いのだ、こういう言い方ですが、預金者の立場からいけば、経済発展のテンポが早かろうとおそかろうと、預金の安全性そのものについての要求というものは私は同じだと思うのです。ヨーロッパの比較をとるまでもなく、大蔵省当局が、政府がやはりこの程度の基準にしなさいというその基準自身にも達していない今日のわが国の金融機関資本内容、資本構成というものは、こういう制度をつくる以前の問題としてやはり、ものごとにはかなり八合ということがありますが、これは私のいなかことばかもわからないけれども、少なくとも八割以上くらいに達していなければこの理由にはならないんじゃないだろうか。審議の時間の効率上、私の持っておる資料で説明すれば、この流動性資産については、行政当局の指導基準は、預金平均残高の三〇%以上ということになっておるんだが、現実には——私の手元にあるのは四十二年の資料だと思いますから、それより新しいものがあって、そのパーセンテージが上がっておれば説明してもらいたいと思いますが、都市銀行で二五・九、地方銀行で二四・五ということで、行政当局の指導基準よりもうんと低い。この流動性資産の内容、基準というものを諸外国と比較する場合には、日本の場合には非常に幅広く、事業費とか株式とかいうものが入っておりますからこういうことになっておるけれども、アメリカならアメリカというものを対象に、アメリカがとっておる実質預金の三〇%以上というようなところに基準を合わせると、都市銀行はわずかその一割の三%、地方銀行は五・九%、これはお話になりませんね。非常に低い。たとえば流動性資産の構成内容を見れば、これはとてもじゃないが比較にはならない。自己資本比率においても都市銀行の場合で四・一%、地方銀行で五二、相互銀行で四・〇ということで、これは四十三年の上期の実績ですが、こういうものとアメリカや西ドイツと比較すると、アメリカが九%、西ドイツは九・六%、これまたこの半分以下なんですよ。こういう条件の中で、制度それ自体としては私は悪い制度だとは言わないけれども、本来なすべき手だてというものが、しかもこういう預金者保護という金融機関の信用度を高める手だてからいっても当然やるべきことが、大きなところが残されたまま、こういうものを先行さすような形で行政指導をおやりになるその考え方はどういうものなのか。それが私、納得がいかない。その見解を聞かしてもらいたい。
  171. 近藤道生

    ○近藤政府委員 お説のとおりに、支払い準備率、流動性資産比率、たいへんに劣弱でございます。たとえば、ただいま御指摘のアメリカ並みに換算いたしました場合の数、これは少し上がってまいりまして、四十五年三月期で都銀で六・四、地銀の一〇・三といったところぐらいまでは上がっておりますが、まだまだ、おっしゃるとおりたいへんに彼我の遜色ははなはだしいわけでございます。そこで、これをできるだけ充実してまいるということは、非常に私どもといたしましては大切な急務であると考えております。ただ、預金保険制度はこれらの要請とはまた別個に、先ほど申し上げましたように内外の激動期に際しまして、この際これを設けませんと、従来からいろいろ預金者を保護する上において行政上幾つかの限界を感じておりますことは事実でございます。それらの事例を考えますときに、この支払い準備なり流動資産の積み増し、増加ということも急務ではございますけれども、同時に預金保険という制度を設けて、直接預金者を保護する制度をこの際つくるということも、これまた急務であるというふうに感ずる次第でございます。
  172. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 諸外国と比較しても条件が悪いということは認める、その認めるということだけでは、これはもうお互いこういった国会審議を通じての前進がないと私は思うわけです。そこにはおのずから、行政当局としては、何カ年計画で、少なくとも三年先にはあるいは五年先には、いま私が指摘したような本来的な条件整備については行政当局としてはやります、そのことに対してこの対象銀行になるべき金融機関はどういう具体的な意思表明をしておるのか、それにどういう反応を示しているのか、こういうことが具体的に示されないと、なるほど本来的に努力することも大事だ、預金の保険制度をつくることも大事だ、これは大事なことはたくさんあると思うのです。しかし私は、ものごとは前の川から渡らなければならないのでして、そういう点では、これだけ、戦後二十五年ではありませんけれども、GNP世界第三位だというようなところまで、経済大国といわれるほど発展してきたわが国の条件下において、本来的になすべきことがあまりにも立ちおくれておるのじゃないか。そういう点では、行政当局は、先ほど指摘したように、どういう計画を持たれて指導をなされているか、このことについて具体的にお答えいただきたい。
  173. 近藤道生

    ○近藤政府委員 先ほども申し上げましたように、日本の場合にただいまの支払い準備、流動性資産、これを充実いたすための非常に大きな隘路になっておりますのが企業の自己資本の問題、借り入れ依存率が高いという問題、こういう問題がございます。そして、それはたとえばアメリカの場合と比較いたしまして、成長の角度と申しますか、高さに非常に関係があるというふうな感じがいたします。したがって、現在同じ努力をいたしましてもそこが一番いわば弱い部分でございまして、なかなか資金需要の構成、それから一般的な企業の借り入れ依存度を低下させることのむずかしさ、そういう難点がございますので、この辺が私どもが努力しつつ一番がんばらなければならぬ点であろうと思っております。そういう意味でたびたび銀行局長通達、たとえば信用金庫及び信用組合に対しましては、昭和三十四年夏から始めまして、昭和四十三年の八月三十一日にも出しております。それから銀行に対しましても、流動性資産の平均残高の比率を三〇%以上にしろということを目標として指導をいたしております。相互銀行につきましては、御承知のように相互銀行法の十三条で、支払い準備といたしまして、定期性預金の一〇%に相当する金額と要求払い預金の三〇%に相当する金額との合計額以上の支払い準備資産というものを義務的に保有することを命じております。  そのようなことで、それぞれの金融機関に対しまして、あるいは法律をもってあるいは通達をもって、支払い準備あるいは流動性資産の充実には極力つとめておりまして、先ほど申し上げましたような一般的なむずかしいバックグラウンドはあるわけでは、ございますが、その中でもできるだけ力を注ぐべき分野であるというふうに考えております。
  174. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 いま私が問題にしておるようなことの条件整備が十分なされれば、そのことが即いわゆる預金者保護の実質的条件を整備することになるんだ。そのことが一つの基準があり、他国との比較をしても非常な見劣りがするという場合は、先ほども指摘しましたように、目標を定めて、しかも年度計画で一定の、たとえば昭和五十年度までには少なくとも、相互銀行の関係であればこう、都市銀行はこうという、その程度の計画性は当然あってしかるべきじゃないか。そういう計画もないまま、こういう制度の新設ということについては、本末転倒のような気がするわけです。ですから、そういう計画をひとつ立案されて、強い行政指導をやるべきではないか、こう思いますが、そういう計画を立案される——もちろん計画を立てれば、立てる以前の問題としてあるいはそれぞれの金融機関との協議もありましょうけれども、そういう手だてをなさるお考えがあるかどうか。
  175. 近藤道生

    ○近藤政府委員 その点はぜひそういう方向で進みたいと思っております。
  176. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 その点につきましては、しばしば指摘しましたように、できることならば今日段階でそういう条件整備ができるような行政指導をしてもらいたかったわけです。また金融機関が自主的な立場で努力をすべきであったわけですから、同じ計画を立てるにしても間延びのしない、短期間の目標の中にそういう条件整備をするように努力をしてもらいたい。このことは強く要求しておきたいと思います。  次に、今度は最初の振り出しに返るわけですけれども、預金者保護ということで非常にこの保険制度を強調されますけれども、預金者がいま金融機関に対して何を強く求めているかということになれば、やはり基本的には安全性の問題でしょう。預けた金は、これはもう倒産したりしないということもあるでしょう。しかし、現実の問題としては物価との関係で、幾ら預けても定期預金の利子より高い率で物価が上がるのでは、これはどうにもなりませんよ。ですから、物価を上げるのだったら、政府の責任において物価で奪われた分だけ預金者に対して金利を上乗せしてくれるのか、こういう利回りの要求があると思うわけです。これは銀行当局だけの政策立案の守備範囲の中には入らないかもわからないけれども、私は政府自身として、そういう預金者が一番求めておる物価と預金との関係、こういうものに対して根本的な解決策というものを見出す政策をつくらないで、なるほどこのことも大事かもわからないけれども、末梢的な保険制度というところに力点を置いて、その結果は——これはあとでも時間があれば触れたいと思いますが、日本の社会保障が非常に貧困だということで、一方ではみすみす物価との関係では損をするということになっても、病気や不時の災害が起こった場合とかあるいは老後の生活保障とか、そういう関連においてみんなが預金をしておるわけです。国民一人当たりの所得からいけば、欧米諸国と比較してどうかといえば、相対的にこれはまた非常に低いわけです。そういう中でこういった預金制度というものを考えるときに、まず物価の問題について、これは少なくとも銀行当局は、政府の物価問題なり金融制度を論議するときにこの根本問題に対してどういう考え方を持っておるのか。それとの関連においてあるいは社会保障との関連において、今回のこの保険制度というものをどう考えておるのかということをぜひ聞かせてもらいたい。きょうの答弁で、この問題が保険法案の関係だけで論議が尽くされない場合は、もちろん一般質問の中で、保留をして、煮詰めていきたいと私は思っておりますけれども、銀行当局自身の見解、この点についてはぜひ次官の見解を、できることならば大蔵大臣にかわって聞かしてもらいたいと思う。
  177. 近藤道生

    ○近藤政府委員 物価問題につきまして財政、金融、両政策の総力を結集いたしまして、この安定につとめなければならないということはまことにそのとおりだと思います。たとえば金融政策につきましても、以前は御承知のように外貨準備というような問題、要するに対外均衡というようなことを主眼といたしまして操作が行なわれたわけでありますが、一昨年の引き締めなどは対内均衡がかなりのウエートをもって論ぜられた。そしてそのために金融政策の発動がなされた。その場合、対内均衡は申すまでもなく物価問題でございます。そういうことで、物価問題のための金融政策というものが非常なウエートを持ってきておるというごとは御承知のとおりでございますが、預金保険につきましては、この物価問題ともちろん関連はございますが、一応別問題といたしまして、預金者保護ということが基本的に必要なことである。ことにこのような激動期を迎えまして、預金者保護ということはどうしても必要欠くべからざることであるということでこの法案の御審議を願っておるわけでございます。預金者の希望も、まず基本的にはやはり安全確実というところにあり、それからその次に物価との関係で損をしないような状態、そういうことを望んでおられるかと思います。物価との関係で損をしないということのためには、やはり預金金利をはじめとする金利の弾力化が必要でございまして、二月一日から実施されております一年半定期預金なども、やはりこの金利の弾力化ということを一つの目的としてその方向に沿って実施をなされたものというふうに考えております。
  178. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 これはことばじりをとらえてどうこう言うわけではありませんが、一年半もののああいった金利を若干よくした預金制度ができましたけれども、これは見方によっては資金集めの苦肉の策みたいなものであって、私の計算に間遣いがなければ、十万円で約五百円利回りがよくなるという程度のものでして、私はそういういわば、ことばは適切でないかもわからないけれども、出たとこ勝負式のやり方というのは好ましくない。むしろ、一年ものであれば一年ものの定期預金の利子を、やはり物価との関係において上げるのであればどう上げていくかということが基本になるべきではないか。その問題については私はそう考えるわけであります。私は冒頭断わったように、物価問題との関連は、これは総合的な国の政策にも関連しますから、これはきょうは一応この程度で留保したいと思います。  しかし、私はこの種の制度をつくる場合に、部分的な非常に狭い範囲だけでその政策的効果のよしあしを論ずるのではなくて、預金制度であれば預金制度全体の中で、金融制度であれば金融制度全体の中で、本来的に何を優先的に政策課題としてこなしていくべきか、そういう立場からこの預金者保護の問題をとらえるのであれば、やはり物価の問題が出てくるであろうし、それから金利の問題が出てくると思うわけです。そういういわば総合的というか重点的というか、そういう立場からこの種の問題を取り上げてもらいたい、こう思います。  これについてはあとでひとつ、先ほど申しましたように次官のほうからその見解を聞かしてもらうことを私は要求すると同時に、前後しますが、今度は制度それ自体の——今回の制度をつくることに関連をして、金融機関に対して、この制度をつくることによって、先ほどの御答弁の中にも若干ありましたが、競争原理を導入することによって、それぞれの金融機関間の格差を、たとえば配当において、店舗において、金利の面において、いわば銀行間の優劣を発揮さすように、そういうところに一つの指導方向をこの制度の新設を通じて求めていきたいというような意味のお話もありましたが、それはそれなりに解釈してよろしいかどうか、この点ひとつお尋ねしたいと思います。
  179. 近藤道生

    ○近藤政府委員 そこはそうではないのでございまして、金融制度調査会の議論におきましても、金融機関の効率化を通じての体質の強化、その一連の方向は十分推し進めるわけでございますが、同時に金融機関の持つ公共性にかんがみまして、そこにいわゆる弱肉強食的な競争というものがあってはならない。「適正な競争原理」ということばで表現をされておりますが、そういう形のものでなければならないということがいわれておるわけでございます。したがいまして、お互いに競争さして落後者を出さして、それをこの預金保険制度で救うのだという考えではございませんので、競争原理の活用によって金融機関の体質の強化をはかる。しかし片方において、万一の場合のいわば伝家の宝刀的な存在としてこの預金保険制度を考えるということを考えておるわけでございます。
  180. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 次官の答弁。
  181. 中川一郎

    ○中川政府委員 物価の問題が日本ではたいへんなことになっております。そのことが預金金利を上回った、簡単にいうと、貯金しておいたら貨幣価値が下がったというような事態、これは非常な大問題であります。しかし、藤田委員御指摘のように物価が上がったからそれに金利を合わせるというのは筋ではないのではないか。逆に物価のほうに思い切った施策を講じて、金利を上回ることのないようにすべきではないか。御指摘のようなことをやりましたならば、これまた資金コストが高くなって——金利の引き上げということをやりますと資金コストが高くなって、これがまた物価にはね返っていくという悪循環になるのじゃなかろうかということを考えますと、御指摘のようにおいそれと金利をその面でスライドしていくということはいかがか。ダブるようでありますが、金利を上回らないように物価について積極的に取り組む、このほうが本筋ではないかというふうに考えます。
  182. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 この物価と金利の問題は、私の質問のしかたがまずかったかもわかりませんけれども、私は、物価を目いっぱい上げておいて、その上金利を上積みしてどんどんやれなんていう、そういうそもそもしろうとが考えてもわかり切ったようなことを言っておるわけではないので、少なくとも預金をする以上はその預金の経済的効果というものが、預金効果というものが具体的にはね返ってくるものでなかったら預金者保護にならないじゃないか。そういう点からいけば、物価問題を根本的に解決するということと全く一致しておるわけです、その次官のなにと。しかし私は、ここでそういう考え方が一致しても、毎年これは本会議から予算委員会を通し、大蔵委員会、各種委員会を通して論議しますけれども、効果があがってこないのですね。そうしてこの金利問題等に関係すると、特に物価と金利の問題というのが問題になってくる。そうすれば、こういった預金者保護という観点から新しい制度をつくったりする場合には、むしろそういうところへ根本的なメスを先に入れなければ、預金者保護だなんていったって、預金者にとっては非常にぴんとこないのじゃないかという点を私は指摘をしておるわけです。そういう点で具体的な措置について次官の御見解を聞かしてもらいたい。これが一つ。  いま一つは、局長の競争原理の導入の問題ですが、これは適正という観点があるのだ、ですから弱肉強食という形の競争ではないんだ、あるいっとき論議された過当競争というようなものではないのだ、こう言いますけれども資本の本質からいって、それをお互い間で調整し合う、コントロールし合う条件というものは私はないんじゃないかと思うんですよ。私が心配するのは、あってはならぬことですけれども、この競争原理を導入することによって、金融機関同士の適正な競争とはいっておるけれども、そこにはやはり資本の本質が働いて、どうしても弱肉強食的なものが出てくるということになると、金融機関が万一倒産をした場合にこういう制度で補っていくのだということではありますけれども、倒さない、倒産させないということが本来のたてまえであれば、私はこういう競争原理をへたに導入しますと、かえってそこにそういう過当競争現象というものが起こってくる。そのことが倒産件数を、金融機関の倒産現象を促進する結果になりはしないかどうか。この点が一つ。そういうことになってきますと、倒産の寸前において行政当局が、あるいは金融機関同士で話し合いをして、今日問題になっておる金融機関それ自体の寡占体制、いわゆる行政当局が中に入って、AとBの銀行、ひとつ合併せいといっても、なかなか一国一城のあるじとして合併は思わしくいかない、競争原理を導入することによってそこに優勝劣敗の条件が出てくる、おまえさんのほうは合併せざるを得ぬだろうという形で、金融機関の寡占体制を促進するというような政策的なねらいもあってこういう制度を考え出したのではなかろうかという面を——これは私は金融機関に対する政策的な効果という観点から見た場合にそういう考え方がひとつ生まれてくるのですが、その点についてはどうでしょうか。
  183. 近藤道生

    ○近藤政府委員 競争原理の問題でございますが、これは釈迦に説法で恐縮でございますが、先ほども申し上げましたような日本の特殊な事情からまいりまして、金融機関の社会的影響力、これが特に強いということがいえるかと思います。したがって、金融機関の取引先に対する影響力はよその国に比べて特に強いわけでございます。こういう金融機関同士が普通の企業と同じような競争をするということになりますと、そこにいろいろな問題が出てまいります。普通の企業間の競争の場合には出てこないような弊害も出てまいります。そういうところから、ただただ弱肉強食的なやみくもの競争をすることは困る。やはり公共性を考えて免許されて成立した企業であることを考えた競争、そういう競争をやってほしいということが金融制度調査会の答申の趣旨でございます。競争が全然ないということになりますと、これまた先ほどちょっとお声がかかりましたように、もうけ過ぎとか、そういったようないろいろな事例、お互いに本質の中に入ってくる、あるいはいわゆる護送船団行政と称せられるような、一番船足のおそいものに照準を合わせた行政ということになってまいりまして、これはいわゆる金融機関の過保護につながる。その過保護のからを脱皮して競争しようとすれば、ほかの企業の競争とは違う特殊の制約がある。その中間をいかなければならないというわけでございまして、そこがまことにむずかしいところではございますが、そういう公共性の原則に立った適正な競争原理の発展、それを通じて金融機関体質強化をはかってまいるということが一つございます。  そしてまた、預金者の保護につきましては、先ほど来の金利の弾力化ということを通じて、いわば横の関係での一般的な問題としての預金者の保護と申しますか、預金者に利益還元すると申しますか、そういう方向をはかるし、片やこの預金保険制度におきまして、縦の関係と申しますか、部分的な問題として、局部的な問題としての預金者保護をはかる。それによって全般に問題が広がるのを防ぐという意味では全般の問題でもございますが、そういう両面の施策を講じてまいるというのが必要であろうかと存じております。
  184. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 次官の答弁は最後にやってもらいたいと思います。  私の与えられた時間もおおむね来たようですから、最終的な質問をしたいと思いますが、ただいまの過当競争的なものにはならない、いわゆる金融機関の公共性というものを十分堅持した形の適正な競争、これは考え方なりことばの上ではもうそのとおりでなければならぬ。それを適正にコントロールし、実効としてそういうことになるような指導はどこがやっていくのか、責任ある調整機能を発揮するのか、そこらをひとつお尋ねしておきたいと思うわけです。  それと、この制度ができるまでに、相互銀行は相互銀行、信用金庫は信用金庫という形で相互間の保障制度、これは倒産した場合に今度のような補完的な措置を講ずるということでなくて、倒産する前の相互間の協力体制というものがありましたが、これをいますぐに拡大するというか、横の関係を考えて、金融機関それ自体にはもちろん公共性はありますけれども、やはり銀行、金融機関それ自体は営利目的で動く機関ですから、そういうものに対しては政府出資というような、そういう機構づくりではなくて、金融機関独自で、全体的にこの種の制度をつくるようなことはできないものかどうか。政府機関が出資をする、そういう構想になったのはどういう理由があったのか、そこらをひとつ聞かしてほしいと思います。
  185. 近藤道生

    ○近藤政府委員 まずただいまの出資の問題を先にお答え申し上げますと、信用秩序の保持育成ということが預金保険制度の一番の眼目でございます。その保持育成をやる第一次的な責任者、これは先ほど来たびたび御指摘がございましたように、当然民間金融機関自身でなければならない。それから第二次的と申しますか、その次の責任者といたしましては、中央銀行、日本銀行が信用秩序の保持育成ということを大きな目的の一つといたしておりますので、日本銀行が負わなければならない。それから最終的な責任は政府が負うべきものであるというふうに考えております。したがいまして、それらの三者が同額の出資をいたしますことによりましてそれぞれの責任の所在を明らかにするということで、一億五千万ずつの出資が三者によって行なわれるということが考えられておるわけでございます。  それから最初の銀行行政の責任者と申しますか、金融機関間の調整、これも第一次的には金融機関相互が自主的に行なうことが一番望ましいわけでありますが、その場合に、なかなかうまくいかないという場合には、あるいは日本銀行、あるいは大蔵省、政府というものがその間に立ってできる限りの調整をいたさなければならないものというふうに考えております。
  186. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 最後ですが、なかなかうまくいかなかったというのですか、なかなかうまくいかないから政府機関が入ったというのですか、そういういわば金融機関自身に積極性がない、非常に消極的で、政府がこういう指導方針を出すからもうついていかなければならないのだということなのか。そこには、そういうことであれば積極的に金融機関としてもこの制度に乗っかっていかなければいくまい、いや、政府は言うまでもない、われわれ自身で自主的にやっていきたいのだ、こういう場合があると思うのですが、私はこの金融関係のなにについてはしろうとですけれども、本来的にいえば、先ほど指摘したように、それぞれの銀行系列といいますか、相互は相互銀行系列で、縦のこれに準ずるような、今回の制度に準ずるようなものがあったわけですから、そういう金融機関独自でこの種の制度をつくるにしても、金融機関独自の機構というものをつくることができなかったのかどうか。なぜ積極的に政府機関が入った機構になったのか、そこのところをひとつ最後に聞かしてもらいたいと思います。
  187. 近藤道生

    ○近藤政府委員 御説のように、まず一番望ましいのは、そういう自主的な互助制度と申しますか、そういうものが発展し、それによって十分に万一の場合の破綻をカバーできるという形が一番望ましいわけでございます。したがいまして、今後ともそれらの業界の自主的な互助制度というものは一そう充実をしていってほしいと思っておりますし、またその自主的な互助制度が出る幕と申しますか、そういう機会が多いだろうと存じます。ただそれらで、従来の例から見ましてどうしても限界がある。やはり最終的に預金保険制度というようなものが、保険機構というようなものが発動しなければならない場合というのが、非常に少ないことを望むわけでございますが、やはりどうしてもある、その場合に備えてのものでございます。いままでの自主的な互助制度というものをここでやめて、取ってかわってしまうということではなくて、それをますます拡充して、その発動の機会をもっともっとふやしていくということを望んでおります。
  188. 中川一郎

    ○中川政府委員 藤田委員からいろいろ銀行行政について御指摘があって、一つは銀行の体質そのものに改善を加えるべきではないか、あるいは物価と金利の関係からいって金利について配慮する、こういうようなこと、あるいは競争原理が銀行行政に不安を与えるのじゃないか、そういうことを解決しないで預金者保護だけをやるのは片手落ちではないかという御指摘でありましたが、御指摘としてはまことに当を得たものではあると存じます。それぞれ御指摘のあった点は、改善すべきは改善し、また今後検討すべきは検討していくべきでありますが、とりあえずそういったむずかしいいろいろの問題がある中で、少なくとも元本だけは、特に大衆投資家の元本だけは保障するということは、切り離してでもやるべきである、やっていかなければいかぬ。それらとからんでこれをおそくするということは決して投資者のためにならないということから、切り離して、それはそれとして、ほかの諸問題については別途鋭意検討することとして、これはこれとして切り離して今回提案いたした次第でございまして、ひとつ御了承いただきまして、御賛同賜わりますようお願い申し上げます。
  189. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 終わります。
  190. 毛利松平

    毛利委員長 次回は、明後十二日金曜日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時一分散会