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1971-02-09 第65回国会 衆議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年二月九日(火曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 毛利 松平君    理事 宇野 宗佑君 理事 上村千一郎君    理事 丹羽 久章君 理事 藤井 勝志君    理事 山下 元利君 理事 広瀬 秀吉君    理事 松尾 正吉君 理事 竹本 孫一君       奥田 敬和君    木部 佳昭君       木村武千代君    坂元 親男君       高橋清一郎君    中村 寅太君       原田  憲君    福田 繁芳君       坊  秀男君    松本 十郎君       森  美秀君    吉田 重延君       阿部 助哉君    佐藤 観樹君       平林  剛君    藤田 高敏君       堀  昌雄君    貝沼 次郎君       伏木 和雄君    古川 雅司君       春日 一幸君    小林 政子君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省証券局長 志場喜徳郎君  委員外出席者         参  考  人         (野村証券株式         会社社長)   北裏喜一郎君         参  考  人         (東京大学名誉         教授)     鈴木 竹雄君         参  考  人         (日本公認会計         士協会会長) 尾澤 修治君         参  考  人         (十条製紙株式         会社社長)   澁谷 健一君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ――――――――――――― 委員の異動 二月八日  辞任         補欠選任   堀  昌雄君     辻原 弘市君 同日  辞任         補欠選任   辻原 弘市君     堀  昌雄君     ――――――――――――― 二月五日  塩業整備及び近代化の促進に関する臨時措置  法案内閣提出第二九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  証券取引法の一部を改正する法律案内閣提出  第九号)  外国証券業者に関する法律案内閣提出第一〇  号)      ――――◇―――――
  2. 毛利松平

    毛利委員長 これより会議を開きます。  証券取引法の一部を改正する法律案及び外国証券業者に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  本日は、まず、証券取引法の一部を改正する法律案及び外国証券業者に関する法律案の両案について、参考人出席を求め、その意見を聴取することといたしております。  本日御出席をいただいた参考人は、野村証券株式会社社長北裏喜一郎君、東京大学名誉教授鈴木竹雄君、日本公認会計士協会会長尾澤修治君及び十条製紙株式会社社長澁谷健一君の各位であります。  参考人各位には、御多用のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。  御承知のように、証券取引法改正案粉飾決算に対する民事責任の所在の明確化企業内容開示制度整備有価証券公開買い付け規制に関する制度新設等の必要があるとして、また外国証券業者法案は、外国証券業者が国内において証券業を営む道を開くとともに、その営業活動に対し適正な規制を行なう等の必要があるとし、それぞれ政府から提出されたものであります。  参考人各位におかれましては、両案に対し、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  なお各位の御意見は、最初におのおの十分程度にお取りまとめ願い、その後に委員からの質疑によりお答え願うことといたしますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。  それではまず、北裏参考人よりお願いいたします。北裏参考人
  3. 北裏喜一郎

    北裏参考人 私は、ただいま御紹介にあずかりました野村証券北裏でございます。  日ごろは証券市場の諸問題につきまして、皆さま方から格別の御配慮と御支援をいただきまして、また本日は皆さまにこのような機会を私どもに与えていただきましたことを、心から感謝いたします。  本日は、今国会に提出されておりまする証券関係の二法案につきまして意見を申し述べよということでございますので、若干お時間を拝借いたしまして、ただいまより十分ばかり申し述べさせていただきたいと思います。  今回の証券法案趣旨は、投資家保護の徹底と同時に、国際化進展に備えて、証券市場の諸制度につきまして十分な施策を講ずることにあることは承知いたしておりますが、このことは証券市場の健全な運営のために必要なだけではなく、国際化するわが国経済発展のためにもきわめて重要な意義を持つものと考えます。そういう意味におきまして、この法案内容はまことに当を得たものであると存じます。  証券取引法昭和二十三年以来今日まで十回余り改正されておりますが、これまでの改正の多くは、証券市場の組織、機構に着目いたしました、いわば狭義の証券市場と申しますか、その手直しにとどまっておったわけでございます。また証券会社免許制移行に伴う前回証券取引法改正にいたしましても、証券会社健全化を通じまして投資家保護に資するという面ではまことに画期的なものでございますが、それが今日御高承のような大きな効果をあげておりまするが、これとてもやはり証券市場の機能の強化を意図したものでございました。  これに対しまして今回の改正のねらいは、証券市場流通する有価証券価値そのもの真実を求めるということでありまして、わが国投資家保護の歴史の上では新時代を画するものといえると思うのであります。前回免許制施行と相まちまして、今後の証券市場をささえる二大支柱となるものと期待しておるわけでございます。と同時に、今回の法律改正は、単に一証券業界にとどまりませず、広く金融界産業界全般にわたって、従来とは比較にならない広範囲な影響を及ぼすという重要な意味を持つものでございます。  これを具体的に申し上げますと、有価証券発行流通市場におきまするディスクロージャー――ただいまの内容開示でございますが、ディスクロージャー、なかんずく粉飾決算防止策としての発行者その他関係者賠償責任強化明確化等がそれであります。  また、いわゆるテークオーバー・ビッド、すなわち公開買い付けにつきましても、このような事例はわが国におきましてはまだございませんけれども国際化進展に備えまして、その規定整備をはかっておくことは、将来経済界資本市場の無用の混乱を避けるためにもぜひとも必要なことでございまして、全面的にこれに賛意を表するものでございます。  しかし、何ぶんにも今回のような各界に影響を及ぼす重要な改正は初めてのことでございまして、それだけにわが国の風土になじむという現実の過程にはいろいろむずかしい問題が生じてくることも十分考えておかねばならないと思うのであります。それだけに、法律で基本的な事項を定めまして、政令に細目をゆだねているということは現実に即した妥当な措置であると思うと同時に、今後の行政の上にくれぐれも適切な御配慮をお願いいたしておきたいと存ずる次第でございます。  次に、外国証券業者に関する法律案でございますが、昨年の秋、証券業の五〇%自由化措置がとられたことから、外国証券業者わが国への進出希望が日増しに強くなりつつあることは御高承のとおりでございます。しかしながら、証券業業務の性格上、合弁会社という態様はなじみにくいのでございまして、そういう意味では今回の支店開設を認めるという法律案が施行されて初めて実質的に証券業自由化が行なわれることになろうかと思うのであります。このことは、これからの資本市場の国際的な拡大、発展という観点から大きな意義を持つものであり、わが国証券会社がすでに海外進出の実績をあげつつあること、また今後全般的な国際化の趨勢から見ましても、まことに時宜を得た立法措置であると存じます。私どもといたしましては、今後は海外の有力な証券会社と同じ競争条件のもとに、国際的な尺度での公正な競争を展開していかなければならないと覚悟を新たにいたしております。  以上、法案につきましての所見を申し述べましたが、この機会証券業自由化関連して一言触れさせていただきたいと思いますが、たとえばわが国の今日の為替管理あり方、あるいはプライスメカニズムの働かない公社債市場の慣行など、資本市場そのもの国際化という点につきましては、今日なお幾つかの問題があるように思われるのでございます。  私どもは過去たびたび、国際化時代に即しまして、間接金融偏重資本構成を早急に是正する必要のあること、中でも公社債市場の育成と正常化が何よりの急務であり、そのためには金利の自由化に英断をもって踏み切る必要のあることを繰り返し主張してまいりました。おかげをもちまして、昨年あたりから徐々ではありますがその方向が見え始めておりまするが、しかし国際的な視野で見る限り、まだきわめて不十分であると考えるのでございます。こうした資本市場環境整備されることによりまして、わが国資本市場が真に国際化し、その上で海外証券業者と相競い、相提携してこそ、資本市場の大きな広がりがあり、発展が期待されるものと信ずるものでございます。われわれ証券会社は、海外証券会社と十分競争していけるだけの体質を備えるよう、今後とも努力していく覚悟でございますので、ただいま申し上げましたような環境整備の面につきましても、皆さま方の今後の御理解と御支援をこの機会にあわせてお願い申し上げます。  なお、今回の法律改正につきましては、日本証券業協会連合会及び東京証券取引所の連名で、一月十六日付をもちまして要望書を提出しておりますので、御参照いただければ幸いでございます。  以上、簡単でございますが、私の話を終わります。
  4. 毛利松平

  5. 鈴木竹雄

    鈴木参考人 今回の証券取引所改正には、御承知のように、開示制度改正と、公開買い付け規制という二つの問題が含まれております。  そこで、前者につきまず申し上げますと、私は多年証券取引審議会委員として証券制度の改善に取り組んでまいりましたが、昭和四十年の証券取引法改正の際、第三章の証券会社と第四章の証券取引所規定改正しただけで、もちろんそれも大きな意義のあることでございますが、第二章の有価証券募集売り出し規定改正に及び得なかったことをたいへん遺憾に思っておりました。したがって、一昨年証券取引審議会専門委員会を設けて証券取引法の新たな改正問題を検討することになりました際には、その委員長として、今度こそはそれを実現したいと考え、自来一年半あまり審議を重ねました結果、今回の改正法案の基礎となった意見を提出いたしました。  その基本的立場は、必要があると認められるところではきびしくする、しかし不要と認められるものは落とすという意味で、開示制度を合理化するということに尽きているわけでございますが、それを判断する場合には、今日の実情を考慮しつつ、開示制度をめぐる利害関係人の対立する利益の調整をはからなければなりませんので、単純な理論の要請を若干修正せざるを得なかった場合もございます。したがって、今回の改正法案に対して、こまかい点ではありますが、いろいろな批判が聞かれないではございません。しかし、そのような批判は、特定立場利益を強調したものとか、ないしは実際を顧みないで一挙に理想の実現を希望するものとかが多く、総合的立場に立って考えますと当たらざる批判のように思われるのでございます。たとえば、半期計算書公認会計士監査を要求していないとか、あるいは連結財務諸表作成を要求していないとかいうようなことが批判されておりまするが、少なくともいま直ちにそれを実現するには、その実際的地盤がまだ熟していないように思われるのであります。このように考えますと、改正法案は、現段階における実際的な解決としてはきわめて妥当なものと考えてよいと思うのであります。  そして、このような考えはひとり私ばかりではなく、他の学者もほとんどみな私と同意見のように存ぜられます。すなわち、前述いたしました証券取引審議会専門委員会の当初の委員四名のうち三名までが法律学者であります。そこで一応構想を立てた上、実際界各方面から専門委員をさらに加えまして、それぞれの立場からの発言を聞き、また実情を説明してもらいまして、学者的立場からも不条理でないと認められたものを意見にしたのでございます。その上、証券経済研究所証券取引法改正問題を研究するための研究会をつくってもらいまして、多数の学者実務家宏加を願い、さらにその間、四十四年と四十五年の夏に、アメリカから証券取引法関係の第一級の単者であるハーバード大学ロス教授と、カリフォルニア大学ジェニングス教授とを招聘いたしまして、アメリカにおける証券取引法の運用と改正動向を親しく聴取いたしました。そして、このような研究成果専門委員会審議に十分反映するようにつとめたのでございます。私はしばしば法案作成というものに関与をしておりまするが、今回のような周到な準備をして法案作成いたしましたことは他に例がなかったのでございます。  専門委員会におきましては、開示制度のほか、他にも今回の証券取引法改正にできれば盛り込みたいと考えた問題が多々ございましたが、そのうち公開買い付け規制外国証券業者の取り扱いとは、資本自由化との関連でどうしても緊急に立法の必要があると考えまして、それを意見に盛り込みました。  そのほか、株価安定操作につきましても、現行制度を改善合理化する必要があると考えまして意見に盛り込みましたが、これは政令で処理できる問題でありますため、改正法案には盛られておらないわけでございます。そしてこれらの内容も、開示制度改正について前述したのと同様の立場で考えましたので、私としてはいずれも妥当な本のと考えております。  なお、今回残りました問題につきましては専門委員会において引き続き検討いたしまして、できるだけすみやかに意見をまとめたいと思っております。  以上申し上げました理由によって、私は、この法案国会を通過し、また安定操作に関する政令改正されることを強く希望しておりまするが、最後に、開示制度との関連で申し添えたいことは商法改正についてでございます。  私は、法制審議会商法部会長をしておりますが、商法部会におきましては、先般、株式会社監査制度改正を中核とする商法改正要綱を答申いたしました。その主たるねらいは、大会社において、株主総会決算書類承認を受ける以前に、公認会計士または監査法人監査を受くべきものとしたことでございます。つまり、証券取引法による開示制度が広く投資者保護をはかるのに対して、商法上、株主及び会社債権者を一そう保護しようと考えたのでございまして、法律の体系としてはもとより証券取引法商法とは別個のものでございますが、実質的には深い関連を持つわけでございます。すなわち、証券取引法による監査株主総会において確定された計算書類に対してなされるものでありますから、かりに公認会計士がこれにつき限定意見をつけましても、それはすでになされた総会における承認決議とは無関係なものでございます。そこで、証券取引法による事後監査に加えて、商法上、事前の監査をも要求することにしたのが商法改正の新構想であって、これにより、証券取引法によって開示される計算書類内容につき一そうの確実性が期せられるわけでございます。この意味におきましても、私は今回の商法改正について、その実現が強く希望されてならないのでございます。  以上をもって私の陳述を終わります。
  6. 毛利松平

  7. 尾澤修治

    尾澤参考人 私はさきに、日本公認会計士協会を代表いたしまして証券取引委員会特別委員会の一員に列しまして、証券取引法改正に関し、審議会並びに証券局に対しまして忌憚なく意見を開陳することを許されましたが、今回さらに本席におきまして私どもの考えるところを申し述べる機会を与えられましたことを厚く感謝申し上げます。  まず第一に申し上げたいことは、今回の改正法案は、届出書提出基準発行価額総額一億円以上とし、また報告書提出基準上場会社店頭売買登録会社、それから届出書提出会社といたしました。これらの点はよいといたしまして、現実を見れば、不特定多数の投資家の間に流通しながら届け出を要しなかったために、報告書提出義務がなく、したがって投資者保護のための企業内容開示が行なわれていない会社が見受けられます。かかる流通性を有する有価証券発行会社に対しましては、何らかの措置を講ずる必要があり、今後の問題として御検討をいただげればと存ずる次第でございます。  少なくも、届出書提出基準としましては、従来は一年間通算五千万円以上といたしたのでございまするが、アメリカにおけるがごとく二年間通算一億円以上と改めまして、できるだけこの種の届け出会社の漏れを防止する方法を講ぜられたく、これは省令にゆだねられている事項でございまするが、今後の問題として御考慮をわずらわしたい次第でございます。  第二に、今回の証取法改正は、開示書類虚偽記載に対する公認会計士監査証明について、民事責任強化が行なわれているのでございますので、この点について一言申し上げます。  まず、私ども公認会計士基本的態度といたしましては、有価証券発行流通円滑化価格形成公正化をはからんとする社会経済制度の一端をになうものとしまして、その使命と負託に反する行為があったとき責任を追及されることは避けがたいところであると考えております。このことは、商法改正案公認会計士監査についても同様でございまして、この点は、さき商法改正法律案要綱が示されたとき以来、日本公認会計士協会は一貫して、終始変わらない態度を持して進んでまいっております。  今回の改正は、故意、過失の立証の挙証責任の転換は、専門知識を必要とする業務の性質上当然のことでありますが、虚偽証明損害との間の相当因果関係損害賠償額とにつきましては、民法及び商法一般原則によることとされましたので、証取法改正案商法改正案も、責任あり方といたしましては同列に置かれたのでございます。協会といたしましては、責任は重いがやむを得ないところと考えております。  公認会計士が確信を持って的確な監査意見を表明し、それに対してあくまでも責任を負うためには、監査の実施をする場合、必要な時間と費用が保障されていなければなりません。そのために、監査を受ける側におかれましても、監査意義を理解し、その御認識の上に立ちまして協力を惜しまないという態度をここに強く要請いたしたいのでございます。  次に、公認会計士虚偽証明に対する損害賠償制度制度として実効あらしめるためには、諸外国においても行なわれているがごとく、監査証明についての賠償責任保険制度の創設が焦眉の急と考えられます。場合によれば、ドイツにおけるがごとく強制加入制度をとるなど、何らか適切にしてかつ強力な措置が必要でございます。こうした受け入れ体制の未成熟な面に対しては、協会といたしましてもでき得る限り自主的に解決をはかるべく着々と準備を進めているのでございまするが、なお関係方面の御支援なくしては万全を期し得ないと考えております。  さらに、公認会計士監査証明財務諸表の重要な項目についての問題点を指摘すべきものとされておりますが、公認会計士の世界におきましては、重要性の判断は最も微妙かつ困難な問題とされております。この事実を公正に判定するためには、深い専門知識と豊富な実践経験を必要といたします。この点について、協会としても何らかの特別の措置、たとえば公正会計鑑定機構のごときものの設置などを講ずべきではないかと考えまして、今後の問題といたしまして慎重に研究を進めてまいる所存でございます。  なお、この種の民事責任の追及の行なわれる際に、ときには乱訴が行なわれるのではないかと、その辺若干懸念されておることを申し添えます。  第三に、証券取引法改正関連いたしまして商法改正について一言申し述べます。  御高承のとおり、商法改正案では、監査制度充実の一環として、大会社公認会計士監査を義務づけんとしております。その趣旨は、株主及び債権者等利害関係人保護目的といたしまして、その計算書類株主総会開催以前に監査されまして、その監査結果を株主総会に反映せしめて、会社経理適正化をはからんとするにあります。これに対しまして証券取引法監査は、会社株主のみならず、一般投資家保護目的とする会社財務内容開示について真実性を確保せんとするにあります。ただ、現状で進めば、証取残はいわゆる事後監査となることを避けられず、このため監査結果も直ちにその期の決算に反映し得ない場合もあり得るわけでございます。この点は、もし商法において計算書類監査が充実強化されれば、このことは直ちに証取法によるディスクロージャー制度をより一そう実効あらしめることと相なると存じます。その意味におきまして、両法は密接な関係を有することは事実でございます。  もともと、両法は目的立場法体系を異にするものでございまして、今回の両法の改正もそれぞれ独自の意図とねらいのもとに推進されてまいりました。したがって、両者の改正を相互関連的に受け取るべき筋合いではないかと考えております。とは申せ、私どもといたしましては、上述のごとく両法の密接な関係を重視する立場から、この二つ立法が相並んで今国会を通ることを切望いたしてやみません。  以上、御参考となれば幸いと存じます。
  8. 毛利松平

  9. 澁谷健一

    澁谷参考人 澁谷健一でございます。  今回の証券取引法の一部を改正する法律案につきまして、産業界立場から意見を申し述べたいと存じます。  不肖私は、大蔵省証券取引審議会委員といたしまして、改正案審議にも参画いたしてまいりました。経済界としても経団連で意見を取りまとめまして、審議会におきまして逐一、改正原案につきまして種々の意見を申し上げた次第でございます。これらの産業界意見はおおむね今回の改正法案に取り入れられておりまして、大筋といたしまして、現在の日本経済実情に合致した適切な改正であると考えておる次第でございます。  まず第一に、企業財務内容開示制度につきまして、従来の有価証券届け出会社のほかに、取引所上場会社及び証券業協会に登録されております店頭銘柄会社につきましても、届け出報告制度の対象にされましたことは適切であると考えております。また、投資家保護という観点から適切な企業財務内容公開が必要でありますが、公認会計士監査制度につきましては、今回の証取法改正案のごとく、実質上株式公開している会社に限って監査を義務づけられましたことは、制度趣旨に合致しておりまして、妥当と考えておる次第でございます。  第二に、有価証券届出書提出基準につきまして、有価証券募集売り出し価額総額が一億円以上の会社に改められました点も、貨幣価値の変動並びに時価発行増資の普及してまいりました現在、妥当であると考えます。また、時価発行額面発行とを分けて規定し、権利落ちの生ずる額面発行につきましては、権利落ち前に届出書の効力が発生するように措置されましたことも必要な改正であると賛成いたす次第でございます。一方、株価安定操作が従来あまり活用されておりませんでしたが、時価発行関連しまして、これを利用しやすくするように政令改正が考えられておるようでありまして、産業界としましては、時価発行による資金調達がスムーズに行なわれるように望んでいる際でもありまして、この点も時宜を得た改正であると存ずる次第でございます。  ところで、現在の日本の企業財務内容公開制度は、米国の例にならって、戦後に取り入れられたものでありますが、日本では米国よりもさらに詳細な財務内容公開をいたしておりまして、これでは日本企業の国際競争上差しつかえると考えております。あまり詳細な企業内容公開は、一般投資家にとりましては、詳し過ぎるためにかえってわかりにくい複雑なものとなっているという欠点もございます。今回の改正にあたって、政省令におきまして、有価証券届出書、目論見書、有価証券報告書等の簡素合理化が十分に行なわれまして、諸外国並みになることを期待しておる次第でございます。  反面、現状におきまして、欧米諸国に比べて日本の企業がおくれをとっておりますのは連結財務諸表作成していない点でございます。つまり、親会社、子会社財務諸表を連結して、親子会社を一体として決算をしなければ企業本来の損益が出ないわけでありますが、日本ではごく一部の会社を除きましてはこれが行なわれておらないわけでございます。親会社、子会社は別々に決算をいたしております。本来、親子会社間の取引は本支店間の取引に類似するものでございまして、この間の取引に生じました収益に対して、外部に売り上げて初めて実現したものと同じ収益と同様に扱われまして、これに課税が行なわれております現在の制度は、企業を疲弊させることになりまして、国際競争の上からも問題があろうかと考えます。そこで、欧米のごとく、まず税法の上で連結納税制度を採用しまして、かような親子会社間の売買収益には課税をしないよう措置せられるとともに、商法証券取引法におきましても税法と軌を一にして、連結財務諸表制度を採用される必要があるのではないかというふうに考えておる次第でございます。  しかし、現在直ちにその実現を期待することは困難でありますので、子会社決算書を添付した報告書を大蔵大臣や証券取引所に提出することに今回の改正ではなるようであります。この場合、子会社が数多くある大会社の場合には、添付される子会社決算書が非常に多くなりまして、あまり投資家の便宜にはならないのではないかと考えられますので、大蔵省令で特に重要な子会社に限定されるよう要望申し上げたいと存ずる次第でございます。  いま一つ、欧米と日本とで著しく異なっております点は、一年決算と六カ月決算という違いであります。欧米では一年決算が通例でありますが、日本の大会社の多くは六カ月決算であります。これを一年決算に切りかえるためには、中間配当を取締役会の決議のみでできるように措置してもらう必要があると考えております。もっともこの問題は商法の問題でありますが、私どもとしましては、このような商法改正について別途要望いたしておる次第でございます。今回の証券取引法改正案では、一年決算会社に対し半期報告書の提出を義務づけることになっておりますが、企業といたしましては、制度趣旨に照らして、簡略な中間概況報告書公開することにはやぶさかではありません。しかし、あまり詳細な内容の半期報告書を義務づけられますと、季節変動など、上期、下期の収益のアンバランスな日本企業にとりましては一年決算のメリットが失われます上に、投資家にも誤解を与えます。そこで、半期報告書には売り上げ高とか生産高、契約高、受注高、経費など、収益を除いた営業活動の事実を記載するにとどめるようぜひお願いいたしたいと考えておる次第でございます。  次に、株式公開買い付け制度につきましては、基本的には規制すべきものと考えております。と申しますのは、ひそかに株式の買い占めが行なわれまして、株価がその影響で上昇しているのか、それとも会社の業績がよろしいので上昇しているのか、外部から見たのみでは判断できませんが、かような公開買い付け届け出制を施行されますと原因がはっきりすると思われますので、投資家保護としてよろしいかと思います。産業界としましては、資本の自由化に対処しまして、外資による株式公開買い付けが野方図に行なわれますと混乱を生じますので、かような届け出制が少なくとも必要であると考え、今回の証取法改正に取り入れられることを要望いたしたわけでございます。  なお、国民経済上好ましくない買い占めに対しましては、証取法でこれを規制できるよう措置されることを産業界で要望があったわけでありますが、投資家保護をたてまえとする証取法に産業政策を導入することは困難のようでありますので、別の法域におきまして何らかの対策がとられるよう要望いたしておる次第でございます。  以上、要点につきまして簡単に意見を申し述べさしていただきました。御清聴ありがとうございました。     ―――――――――――――
  10. 毛利松平

    毛利委員長 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。阿部助哉君
  11. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 まず、尾澤先生に御教示願いたいのでありますが、先ほど陳述で、商法改正に密接な関連がある、こういうお話がございましたけれども、それならどういうところが一番関連があるかをひとつ御教示願いたいのであります。
  12. 尾澤修治

    尾澤参考人 先ほど鈴木先生からもやはり申し上げましたように、今般の商法改正法案の中では、公認会計士監査証明は、取締役から提出されましたところの計算書類につきまして監査をいたしまして、その結果を取締役並びに監査役にまた通知いたしまして、そしてそこで初めて今度は株主総会にかけられる、こういうことに相なっております。したがいまして、商法改正趣旨は、監査の結果が明らかに計算書類に反映するということに相なっているわけでございます。ところが証券取引法におきましては、ただいまのところは決算期はやはり二カ月でございまして、一方監査証明は三カ月後に提出してよいことと相なっておりまするので、そこで決算が行なわれましても、そしてそれについて公認会計士監査いたしましても、その監査の結果を直ちにその期の決算に反映することはできないのでございます。できないとは申しませんが、反映し得ない場合も多々あるのでございます。そういう意味におきまして、証取法における監査結果をより的確かつ有効ならしめるためには、どうしても商法決算において確定した決算、それは公認会計士監査意見が反映したものでございますが、それと同一のものにすることによって初めて実効あるものとすることができる、私はこういうように考えておるのでございます。
  13. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 鈴木先生からもやはり商法とは深い関連がある、こういうお話、お伺いしたのですが、やはり同様なこと――いまのにつけ加えることございませんでしょうか。
  14. 鈴木竹雄

    鈴木参考人 特にございません。
  15. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 澁谷先生にお伺いいたしますが、一年決算にだんだん切りかえる、こういういまのお話でありますし、答申を見ましても八ページにこう書いてあるのですね。「しかしながら、別途、商法改正が」云々ときて、「一年決算への移行を容易ならしめようとしていることをあわせ考えると」云々と書いてありまして、皆さんの審議会での御意向は、逐次一年決算に移行をさせたいという御意見があるやに私は感じたのでありますが、そうでございましょうか。
  16. 澁谷健一

    澁谷参考人 お説のとおりでございまして、先ほどからも他の参考人の方々から御意見も出ておりますが、連結財務諸表制度でありますが、これの基盤となっておりますのはやはり一年決算制度でございまして、現在のところ一般の産業界ではこの一年決算制度になかなか慣熟していないのです。これにはいま申し上げましたように税法の関係その他ございまして、企業としてはなかなかこれに踏み切れないわけでございますが、これまでのような半期決算におきましては、従来問題になっておりましたようないわゆる粉飾決算の原因になりかねない。たとえば上期と下期とでは取引高の量が違う。いわゆる需要期が上期と下期では違うということから、売り上げ高、ひいては期間損益が、厳格に処理いたしますと当然相違が出てくるわけでございます。したがいまして、これまで粉飾決算といわれるものの中には、いわゆる上期、下期の利益の平準化の問題が含まれておるわけでございます。あまりに上期と下期の決算上の利益が相違をいたしますと、やはりこれはその時点でこの会社の業績をごらんになる一般投資家、債権者にとりましては、非常に不安感を与えますので、企業としてはできるだけ一年を通した、そういったような正常な損害公開したいわけでございますね。そういうために一年決算に早く移行したいという願望は前から持っておりまして、その意味において商法改正を多年御要望申し上げてきたわけでございます。  でございますから、この国会商法改正が通過いたしますことは非常に望ましい点でございますけれども、これはしかし、証券取引法改正案とは相関連はいたしておりますけれども、これは補完し合っているものでございまして、商法改正案が通過しなければ証取法が実施ができない、また産業界においてもそれは非常に困るという問題ではないように考えます。これは商法が通過しなければ要するに一年決算は実施しにくいわけでございますから、現在のこれまでのような証取法の適用を受ける形になるわけでございますね。ただ、現在でもすでに一年決算を実施している会社もございますから、そういう会社は今回の証取法趣旨に沿いまして、いわゆる真実財務内容公開するという今回の改正には何らの支障がないわけでございますから、現在一年決算を実施している会社はこの改正案によりまして報告書その他提出することになろうかと思いますが、これも産業界といたしましてはあまり問題がないのではないかと思っている次第でございます。
  17. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 澁谷参考人にお伺いしたいのでありますが、この一年決算になりました場合、どうなんでしょうかね、非常にしろうとの常識的な考えかもわかりませんけれども、きちんとした、粉飾決算をないようにするためには、一年間なら、一年目にきちんとしたものを出せばいいではないか。ある意味でいえば、半期に監査も十分受けないものを出すということは、やはりいろいろな株式の大衆化といいますか、そういうために――半期に配当をせざるを得ないところに半期の決算を出すわけですから、きちんとした、粉飾決算を排除するという点ならば、むしろ一年決算ならば、一年決算日にきちんとしたものをお出しになるというほうが正確を期せられるのではないかという感じがするのですが、その辺はどんなものかお教え願いたいと思います。
  18. 澁谷健一

    澁谷参考人 おっしゃるとおりだと思いますが、現在の投資家の大部分はいわゆる機関投資家が多いわけでございます。これらの投資家は、やはり配当金は半年に一回、従来どおり支払われるということについて非常に強い御要望が出ております。したがいまして、企業といたしましては中間の配当を考えないで直ちに一年決算に移行するということがなかなかできにくい状態でございますので、やはり一年決算に移行するためには中間配当を認めていただかなければ、円滑に投資家の理解を得にくいということだろうと思います。その際に、中間配当する以上はやはり会社の業績について、少なくとも株主に何らかの御報告をする必要があるんじゃないか。その場合に、いまの決算は一年でするのでございますから、実際の損益というものは一年をたってみなければほんとの決算損益というものは出てこない。したがいまして、その期間における、半年間における会社営業活動、ただいま申し上げましたような売り上げ高だとか生産高だとか契約高だとか、そういったような営業活動の事実を御報告申し上げれば、会社の業績の趨勢というものが大体投資家に御理解願えるのじゃないかというふうに考えております。その程度の御報告は投資家にする必要があるのじゃないか。私は寡聞にしてあまり詳しいことは存じませんが、諸外国におきましては、特にアメリカにおいては一年決算が通例でございまして、その間に四半期報告というものが一般の投資家に行なわれているようでございますが、この四半期報告にもやはりそういったような厳格な意味での決算損益というものは計上されないで、営業の概況が投資家に報告されているように聞いておりますが、これはそういったような一年に一回の決算にとどめる場合には、投資家に少なくとも全社の営業活動の概要は報告する義務があるんじゃないか、こんなふうに私ども考えている次第でございます。したがいまして、現在の商法でも一年決算を認めておりますけれども、この商法改正なしに直ちに一年決算に移行できるというふうにはなかなか考えておりません。むずかしいのではないかと思っております。
  19. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 北裏先生にお尋ねしたいのでありますが、いまのお話でも私ども少し理解ができないのであります。半期の報告をさせるというのは、やはり半期に配当しなければなかなか投資家承知をしない。また半期ごとに配当させる。しかしその報告書は一年決算決算期におけるほど正確なものではない。そうすると、その間にむしろ株価の操作みたいなものが行なわれる危険性というものはかえって出てくるんじゃないかという感じがするんですが、その辺はいかがでしょうか。
  20. 北裏喜一郎

    北裏参考人 現在でも一年決算の事例がございます。たとえば証券会社は一年決算でございまして、ただいまのところ半期の報告は出しておりませんが、やはり投資家サイドからいいますと、一つは、企業内容について三月ごとというのではやはり少し短期過ぎますので、半年くらいのことは報告してもらう。その中に、いま澁谷先生がおっしゃったように、一年を通じた販売見通しとか現在の売買状況というのができますと、季節的な変動などについても十分考慮できますから、投資家としては一年だけを通じて見るよりも、全然報告なくてするよりも、やはり半期ごとにそういう報告書なり企業内容の説明があるほうがいいことは間違いございません。  配当につきましては、機関投資家のみならず個人投資家におきましても――これは各機関投資家の資金運用上の問題もむろんございますが、これはなかなか、実は一年決算で配当を受け取るのと半期で受け取るのと利害感が非常に違うのであります。したがって、これは過去の長い間の歴史から見ましても、急に一年にしますと、こまかくいえば採算が変わってくるという意味におきましても、何を厳守するかというような問題がありましょうが、一応中間配当というのが必要だ、こう考えておるわけでございます。  先生のお尋ねの中にありました、そういう半期の報告書が簡略であるために相場操縦などの危険がないかということについては、むしろ逆ではなかろうか。むしろある程度の、報告のない場合よりもあるほうがその点は危険が少なくなる。市場関係する者としましてはそう判断いたします。
  21. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 皆さん、一年決算に移行を逐次してもらいたいという希望をお持ちだ、答申ではそうなっていると私は思うのです。それよりも、正確を期し、投資家保護という点からいけば、むしろ一年決算よりも半年決算の方向へ一これは会社のほうは多少手数はかかるだろうけれども、半期決算の方向へ移行させるのが投資家保護として進んでおる考えじゃないか、こういう観点でお伺いをしたわけなんでして、一年決算だから半期で報告するかしないかということなら、できるだけ正確なものをしたほうがいいにきまっておるのです。むしろ一年決算よりも、半期決算のほうに移行させるほうと比べてどうかという観点でお伺いをしたわけなんであります。その点はいかがでしょうか。
  22. 北裏喜一郎

    北裏参考人 この一年決算、半期決算というのは、企業の性格によりまして半期決算をおとりになってもよろしいと思いますが、いま澁谷先生のおっしゃったように、趨勢といたしましては、特に企業は国際化するにつれて漸次、ときには季節的なあるいは国際的ないろいろな波動があります。そういう意味で一年にしていくほうが、より波動が期間的に少ないということは、これは皆さんもお認めくださると思います。ただし、投資家立場からいうと、一年に一回じゃどうも不安であるというので、その辺を分けて判断しますと、一年決算のほうがよいという事情が多くなるということも事実だろうと思いますし、同時に、一年決算にされてなお半期報告がない場合の投資家の不安ということを避けるためにも、今回のような方法がいいのではないかと私は判断いたします。
  23. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 終わります。
  24. 毛利松平

    毛利委員長 春日一幸君。
  25. 春日一幸

    ○春日委員 まず最初に北裏さんにお伺いをいたしたいのでありまするが、この一月十六日付の証取法改正に関するアピール中で、第一項にこういうことが強調されております。すなわち「企業の長期資金調達を適正かつ円滑ならしめることが是非とも必要」、このことは、申すまでもなく増資や社債の発行が容易に行なわれるようにする必要がある、こういうふうに読むのでございますか。
  26. 北裏喜一郎

    北裏参考人 この趣旨は、企業中心の書き方をいたしておりまして、企業の長期資金調達を適正かつ円滑ならしめることがぜひ必要であるということでございますが、企業の資金調達の反面には投資家がございますので、企業サイドの原因からはこうでございますが、このうらはらには、投資家が資金を投資するにつきまして、長期かつ有利な安定した投資を背景に置いておりまして、そういう意味でございます。
  27. 春日一幸

    ○春日委員 そういう意味ですから、具体的には増資並びに社債の発行などが行なわれやすく、発行した場合に消化されやすく、こういうことなんでございますか。
  28. 北裏喜一郎

    北裏参考人 そのとおりでございます。
  29. 春日一幸

    ○春日委員 そこでお伺いをいたしたいのでございますが、現在、わが国の企業の資本構成なんでありますが、最近のしかるべき資料によりますと、自己資本が一七%、他人資本が八三%、大体これが平均値であるかのごとくに承知いたしております。そこで、こういうような証取法商法その他一連の法改正制度の改善等によって、この自己資本と他人資本との対比率がどの程度改善されるであろうという期待というか、めどがありますのか。あるいはどの程度までその率の改善をはかるのでなければ、いわゆる国際経済に対処して、日本の企業に対する国際的信頼度というものが何か不安な要素がそこにあることになるのか。この点についての御認識はどうなっておるのでございますか。
  30. 北裏喜一郎

    北裏参考人 企業の自己資本についての全般的な一七%というのは今日の現状でございます。この是正の必要は、これは国際的に見まして今日はなはだしく日本は自己資本が少のうございまして、せめて私どもの目標としましては四〇%以上ぐらいのことでないと国際的な企業として通用しにくい、こう考えております。  ただし、この前提として自己資本を充実しにくい理由が多々ございます。この自己資本だけでなくて、その手順があるかと思うので、先ほど私参考意見を申しましたところにもちょっと触れましたが、企業で一番困っておりますのは現在の借り入れ金過多でございますが、その内容でございます。長期借り入れ金であれば、これはわりと安定資金でございますけれども、どちらかといいますと、間接金融と申しながらその借り入れ金の長期化が行なわれておる分が少ないのでございます。その部分を公社債市場正常化によりまして長期化するということが、自己資本に入る一つの過程として、現在企業の安定化に資すると思います。それに次いで、先ほど申しましたように、企業の自己資本をせめて四〇%以上になるような諸種の税法上あるいはその他の処置をお願いしたいというのがわれわれの年来の主張でございます。
  31. 春日一幸

    ○春日委員 われわれの承知いたしておりますところでは、必ずしも正確なデータではございませんが、アメリカ企業における資本構成の対比率は、自己資本が六〇%、他人資本が四〇%と、やはり企業における主体性というものが資本構成の中ですでにこのように確立されておる。非常に悪いといわれるイタリアですら、大体において平均値はいまおっしゃいましたように自己資本が四〇%、他人資本が六〇%くらいのものだ。これに比べると日本はあまりにも自己資本、他人資本の対比率が悪い。だから、資本主義といったところで、その資本主義なるものは自己資本主義ではなくして、他人資本主義みたいな形で日本の経済が運営されておる、こういう非難がなくはない。だからこれを資本主義における原理的なあるいは国際通念に照らすと、何としても日本の企業というものにはそういう意味で非常な危険な要素が内在をいたしておる。これを改善、改革することによって、国際経済に対処するわが国の経済それ自体の体質改善、こういうことをはからねばならぬので、よってもってこのような一連の改正を求める、そういうところにも期待感があろうと思うのでございます。  そこで私が申し上げたいと思いますことは、そのためにこういうような一連の証取法改正商法改正その他の制度の改善、改革を行なうとするならば、同時に、こういう方向を助長するための関連施策というものも同時並行的に行なわれるの必要はなきかという点なんでございます。たとえば現在の銀行法は御承知のとおりでございまして、言うならばこれは組織法みたいなものであって、どこへどういうぐあいに金を貸そうと、それは銀行家の自由自在ということに相なっておるわけでございます。銀行自体の資本金と申しまするものは、トップラインにいたしましても株主勘定を含めまして五、六百億程度ではございませんか。それが日銀の金を借り入れたり大衆の預金を結集いたしますると、ときに二兆円をこえるような資金力を持ち、五百億の自己資本によって二兆円の金の操作が、かつこれは銀行家の恣意によって自由にできる。だから、現在安易に貸し出しを求め、安易に無拘束に貸し出しができることによって、この八三%対一七%という対比率が造成されることになっておるのではないか。だといたしますると、片っ方において自己資本を充実する必要があるから法改正をするんだったら、そのような自己資本というものを充実しなくても企業が経営できる、すなわち間接融資に期待することによって自由に、自由というよりも安易にその事業資金が調達できるという現在の日本のこの金融のメカニズム、これ自体を同時並行的にチェックしていく必要はないかと思うのでございます。  この間私ちょっと調べてみましたら、三井物産と三菱商事におきまする自己資本と他人資本の対比率は、自己資本がたしか四%か五%、借り入れ資本が九五%でございます。こういうように信用度の高いものは幾らでもそういう金融によって企業資本というものが調弁、調達ができ得ております。かくて、そういうような日本全体としての資金を、すなわち金融資金というものが大企業によって優先的にかつ独占的に専有されることによって、他の金融に対する資金源を減らしていく。よってもって中小企業の金融梗塞を来たしておるという一要因はそこにありはしないか。こういうことなんでございまするが、私のいま申し上げました、自己資本を充実せなければならぬとするならば、やはりこういう政策も行ないながら、他人資本に容易に依存できるという金融のメカニズムをあわせて何らかの形でチェックする必要はないか。この点について鈴木教授から御所見を伺っておきたいと思います。
  32. 鈴木竹雄

    鈴木参考人 私は法律を専門にしておりますので、いまおっしゃいましたような問題につきましては必ずしも的確なお返事ができないかもしれませんが、私が常識的に考えまするところでは、なぜ自己資本によらないで他人資本で企業が資金をまかなうのかという点は、それは結局他人資本でまかなったほうがコストが安いからということが一番大きな理由だと思うわけです。つまり税法上、結局借りましたものに対する利子は経費という形で処分されますが、自己資本の場合にはそれが利益となって法人税が課せられるというところが一番根本のような感じがいたします。先ほどおっしゃいましたような……
  33. 春日一幸

    ○春日委員 恐縮ですが、私二十何分しかないのでございまして、なるたけ……。
  34. 鈴木竹雄

    鈴木参考人 これだけでけっこうでございます。
  35. 春日一幸

    ○春日委員 いま教授から述べられましたように、制度として、たとえば金融ならば、大きな金融はその日歩が、利子が非常に安いわけでございます。これが証券になりますれば配当せなければならぬ、配当すれば年一割とか一割二分とかいうことになってまいりましょう。それで安易に金融に依存して、その金融機関から資金の供給がなし得る体制になっておる。なお税法も御指摘のとおりそういう形になっておりまするから、金融資本と大企業とが、結託ということはございませんけれども、結局はそういうような形がいまどういう状態になっておるかといいますると、すなわち、金融というものは産業に奉仕せねばならぬものが、むしろ逆に金融が産業を支配しておる、こういう逆現象を生じております。だから私は、今後国際経済に対処して、そして日本の金融もあるいは証券も、これが国際水準に到達いたしまするためには、あわせもって所要の証取法商法改正を行なうと同時に、やはり銀行法の改正も必要ではないか。アメリカの連邦準備法とかあるいはイギリスの銀行協会、ロンドン銀行協会なんかはやはりそういうような偏向融資、集中融資をチェックしております。それをやらねばならぬのではないか。ただ一方的にこういうことをやってみたところで実際の効果というものは期待できないのではないか、私はこう考えるのでございますが、北裏社長いかがでございますか。
  36. 北裏喜一郎

    北裏参考人 お説の中にありましたことばを縮めて言いますと、金融偏重ということはわれわれ証券業界としましてもかねがね諸種の点から申し上げております。ただ、そのよって来たる戦後の日本の資本の崩壊という事情、その他今日までやむを得ない事情もたくさんあったかと思いますが、幸いにして個人の所得もだんだんふえてまいりました。長期的な自己資本を充実させるための投資余力もでき、また長期的な公社債に投資するような余力もできてまいりました今日といたしましては、戦後のような金融偏重を改めるということにつきましては、私は先生のお説に賛成でございます。ただ、金融関係に何らかの規制を着せるということにつきましては、はなはだ知識が不足いたしておりますので、お答え申し上げません。
  37. 春日一幸

    ○春日委員 うしろにすわっておる大蔵省のボス諸君もひとつよく聞いておいて、適切なる改善に踏み切ってもらいたいと思います。  それから一つだけお伺いいたしますが、鈴木教授がいま御意見を御開陳の中で、株価の安定操作に関する政令改正がなさるべきであると期待されておりましたが、どの点をどういうぐあいに改正すべきものであるというお考えでございますか。
  38. 鈴木竹雄

    鈴木参考人 その点は、私たちが証券取引審議会関係しておりまするが、証券取引審議会で答申をいたしましたときにこの問題に触れているわけでございまして、結局いまの株価安定操作規定というものは、やはりいろいろな点において実際にやりにくいというふうなところがある。そしてまた世の中では、こういう方法に、公開をしてやるというふうなことについて、いままで何か、そうすると変な株価なんじゃないかといったように思われるというふうなところからなかなかやりにくかったというようなことがございますので、とにかく安定操作をいたしますときの届け出をいたしますについても、事前に届けさせるということはなかなか困難なので、開始したあとで、安定操作したあとで届出書を出すというふうにする。もっともその前に安定操作をやろうという見込みがある場合にはそのことを目論見書に書きまして、そしてみんなに知らせるというふうなことをやっておきます。それで先ほど申しましたように、安定操作をやりますと届け出をする、またその間にも報告を出しまして、そしてそういうようなものを一般に公開をするというような措置をとるべきではなかろうか。それとともに、元受け証券会社安定操作をやる場合が多いわけでございますが、それが安定操作をやりながら、しかもそれ以外に自己買いをやるということになりますと、自分も自己買いをやるというようなことはどうもおかしいというふうなことで、それを禁中するといったようなことで措置をしようかと一瞬考えたわけでございます。
  39. 春日一幸

    ○春日委員 その問題は本委員会でもしばしば、取引所の本来の機能に関する問題として論じられてまいったのでありまするが、そういうような証券市場に大衆が参加する魅力の根源は、やはり綱場が移動するということなんでございます。下がるあるいは上がるというところにその魅力があって大衆参加があるわけなんでございます。したがって、証券取引法では、値下がり操作も値上がり操作も安定操作も、これを禁じておる。ただ、必要あって事前の届け出があり、これが必要ありと認められたときはこれが許されるように了解をしておるのでございまするが、これがやったあとで届けてもいいということになりますると、安定操作を必要に応じて証券会社が、あるいは取引業者がこれをやる。そういうことになってきますると、株式市場に対しまする魅力というか、あるいはその本来的な機能という面を阻害することによって、証券取引所の機能そのものを阻害するような形になりはしないか、私は直観的にそう感じたのでございまするが、この問題について北裏社長、御所見いかがでございますか。
  40. 北裏喜一郎

    北裏参考人 そういう見解もわからぬことはございませんが、実際家として、従来のように――従来は額面割り当てが多うございましたから、これは安定さすということが間々あるかもしれませんが、その必要性は少なかった。今後時価発行がだんだんふえてまいりますと、あらかじめ安定操作するということも目論見書に書かないと――従来のように安定操作することが何か悪い会社のような印象を受けるということを除くためには、大部分の会社時価発行の際には安定操作をするということを書いていると思うのです。ただし、事前に値段その他を発表していきますと、これはまたかえって逆に市場の価格を混乱させるというのが実情でございまして、その辺は事前に価格などを発表しないほうがいいという意見に私どもは賛成いたしております。かえって市場を混乱するというほうに要素が多いんじゃないか、こう思っておるのでございます。
  41. 春日一幸

    ○春日委員 私は、この問題は取引所の機能の根源に関する重大な問題だと考えますから、いずれその問題はその問題として議題になりましたときに深く論ずることにいたしまして、私の質問は終わります。ありがとうございました。
  42. 毛利松平

    毛利委員長 広瀬君。
  43. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 先ほど阿部委員から半期報告書の問題が取り上げられたわけでありますが、商法改正との関連ということでは、本委員会においても大蔵省は、法理論的には別に今度の証取法改正関係がありませんと、こう言っているのですが、先ほど鈴木先生からもお話がありましたように、これは深い関係があるということなんでありまして、商法のほうではやはり一年決算に持っていきたい、そういう政策的な誘導をやはり商法改正でやりたい、こういう意向がはっきりしているわけですね。それで、証取法ではいわゆるディスクロージャーを徹底して投資家保護する、こういう立場で半期決算ディスクロージャー機会投資家により多く提供するんだという立場で半期報告書の提出ということも求めるんだということなんでありますが、そこにどうも実態的に矛盾があるのではないか。半期決算の場合には、やっぱり公認会計士の事前の監査も受けないでよろしいということにもなっておるわけであります。そうしますと、どうもディスクロージャー機会はふえるが、実態的にはむしろ何か不安な材料が出て、投資家を惑わしたり混乱さしたりするというようなことになるのではないか。こういうような点がどうしても――私どもかえってこれは逆効果の面のほうが、より投資者を迷わすような結果になるのではないかという――きちっとした半期の決算でやって、しかもそれが公認会計士の事前監査も受けておるということであるならばそれはそれでいいのですけれども、そうでないものがディスクローズされるということは、かえって惑わすような事態というものが出ないのかどうか。この点について鈴木教授公認会計士協会参考人にお聞きしたいわけです。
  44. 鈴木竹雄

    鈴木参考人 商法では、先ほど申し上げましたように、株主総会の前に公認会計士または会計監査人の監査を得まして、その結果を株主に報告をして、それを材料にして決算承認決議の賛否をやってもらうということにしております。そういたしますと、いままで決算期から定時総会まで二月で済みましたものが、どうしてももう一カ月延びまして三カ月になるわけでございます。その間、一方におきましては株主名簿の閉鎖が行なわれまして、結局株主名簿が開かれるのが、もし年二回のいままでのような決算でありますと、一年の半分が閉鎖されているというふうな状態になるわけでございます。さようなことを考えますと、一年決算に移行したいと思うものがあれば、それでそれを認めるということはやはりやらざるを得ないのではないのか。そうすると、先ほど澁谷参考人が言われましたように、株主としては年二回の配当というものを希望するということになりますと、どうしても中間配当というものを認めることが一年決算に移行することを容易ならしめるということになるんだ。そういうふうな関係から、別に一年決算に移行せよということを奨励しているわけでもございませんけれども、事柄の性質、動きから申しまして、自然とそういうことになっていくだろうということについての手当をしたわけでございます。そして、その際、利益なきにかかわらず中間の配当が行なわれるというふうな心配もございましょう。したがって、その点につきましては商法では、前の期の決算期のいわば剰余金でございますが、その中から利益とかあるいは重役賞与として払いましたようなものを差っ引きましたものを限度としてしか中間配当はできない。さらに、その期の終わりに赤字にならないような自信があるのなら中間配当をしてもよろしいといったような制約を加えまして、そしてそれに反したような場合にはそれぞれ法律効果をきめていくというふうな行き方で、中間配当しても会社内容を脆弱ならしめるというふうなことのないような配慮を加えているわけでございます。そういたしましたときに、もしいまおっしゃいましたように半期半期には決算をし、先ほど澁谷参考人が言われましたように収益を出すというふうなことになり、しかも公認会計士監査を経ろということになりますと、それは株主総会を開かないでいいというだけのことであって、ほかはみんな同じことになってしまうわけでございまして、それではかえって株主軽視という声も出てこようかと思います。それではむしろかえって妥当ではないと私ども考える次第でございまして、したがって、半期報告書に盛られまするような事項は、期の末における報告書に盛られますものとはおのずから違ってくる。そして、その場合においても公認会計士監査をしろといわれまするが、その点につきましては、いままでの会計学における監査というふうなものは、結局決算期の監査についてでき上がったものでありまして、いわば半期の、中間における監査というふうなものについての基準というふうなものもまだ十分に立てられておりませんので、そういうものを待って、その点は、将来進んでいくべきものであったら進んでいくというふうなことになるべきではなかろうか。つまり、ある一つの面から申しまして、できるだけ確実なものを出せというポイントから申しますればそうでございましょうし、何も一年決算にする必要はないということになりましょうが、しかし、期の終わりに事前の監査までを加えて確実にしていくというふうなことと、それと関連をいたしまして、いま申し上げましたようなことにずっと相なってくると私は思っております。
  45. 尾澤修治

    尾澤参考人 ただいまの御質問は、一年決算でやるか、あるいは一年決算を半年決算に分けましてやった場合と中間報告とどういう関係になるだろうかという点にあるだろうと思います。そこで私は、中間報告に示されているところの数字も、それから年次決算において示される数字も、そこには本来何らの操作あるいは粉飾があるべきものではないと存じます。その意味においては正しいディスクロージャーがすでに投資家に対して行なわれているというように見るべきでありまして、必ずしも、半期決算といいましょうか、六カ月決算決算を締めることがすべて正しい数字であり、一年になればその点粉飾が行なわれる可能性があるということには相ならないと存じております。ただ私どもといたしましては、会計のあるところに監査ありというような考え方を持っておりまするので、半期報告書におきましても会計に関する数字の示される限り、そこには公認会計士監査証明があったほうがよいのではないか、こういうように考えまして、特別審議会の席上におきましてもそのことは一応申し上げましたが、実際問題として法律でこの点を明確にすることはやや困難ではないかということが理解されました。すなわち、中間決算は私どもはいわゆる仮決算と申しまするが、仮決算のやり方というものあるいは手続というものについては、まだはっきりしたルールが確立されておりません。したがいまして、確立されていないところの手順によって出された数字を公認会計士監査証明するということになると、これはちょっと簡単にはできないのではないか、こういうように思いましたので、したがいまして中間報告書に対する監査証明というものは、もう少し慣行が完全に熟成された暁において実施される方向に持っていっていただければけっこうである、こういうように思ったのでございます。繰り返して申し上げたいと思いまするが、半期報告書に示されている数字は本来粉飾操作されるべき筋合いのものではございませんから、これによって株主に不利を与えることはあり得ないと私どもは考えております。
  46. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 なければたいへんけっこうなんでございますが、これはまた時間がありませんので次の質問に移りたいと思います。  澁谷参考人にちょっとお伺いしたいのでありますが、この公開買い付け制度、いわゆるテークオーバー・ビッドというものが今回導入される。これはいままででもこういうようなことは不特定多数の者に対して市場外であるいは市場内で、いわゆる経営支配を目的とするこういうものが行なわれておったと思うのですが、これは公開ではなくひそかにやられた。そういうようなことであるけれども、このいわば俗にいう企業乗っ取りというようなことが、今度は言うならば大道を明るい天日のもとに闊歩するというようなことが、道が開けたというように考えられるわけなんです。こういう公開買い付け制度というものを導入し、若干の規制を今回加えようというわけでありますが、この企業乗っ取りというものについて、そしてまた今回この証取法改正においてこれが法定されるということに対して、産業界としてこの問題をどう評価をされるのか。そしてまたその及ぼす影響、そして実際にこの法律ができたことによってどういう事態が、この公開買い付けというようなものがどんどん行なわれるような状況に現在産業界はあるのかどうか。あるいはまたこれはこれとして法律上はきめておくけれども、ケースとしてはいままで程度であるのかどうか。経営支配を通じて経営者の交代というようなことがいいとか悪いとかというような評価もまじえながら御意見をお聞かせいただければと思っております。
  47. 澁谷健一

    澁谷参考人 いわゆる企業乗っ取りのための買い付けでございますね。これにはいい場合と悪い面と両方あるんじゃないかと思うのです。たとえば国内資本によるいわゆる乗っ取りの場合には、現在のその会社に対する経営者の不信の問題ですね。自分たちの資本でやればその会社がよくなるだろうということから買い占めが行なわれるという場合には、これは投資家にとりましても好ましい買い占めになる、あるいは乗っ取りになるということだろうと思うのでございます。したがいまして、今回のこの公開買い付け制度は、私は国内資本による買い付け制度の場合にはあまり問題がないというふうに考えるのですが、最近資本自由化の問題がやかましくなっておりまして、たとえば自動車産業におきますクライスラーとかフォード産業が日本の自動車業界に向けておりますいわゆる攻勢というものから判断いたしますと、外資による日本企業の乗っ取りというものはやはり相当警戒しなければならぬじゃないかというように考えておるわけでございます。そのために、この公開買い付け制度がなければ、これは極秘裏にそういう買い付けが行なわれるおそれもありますので、この機会に、こういったような証券取引法の上で届け出制度によって規制が行なわれる、しかもその期間は届け出から十日間たたなければ効力が発生しない。さらにその効力が発生した上で新聞公告をいたしまして、一般の投資家に新聞公告をして呼びかけた後でなければその買い付けに着手ができないということでございますから、約二週間近くの期間があるわけでございますが、その間にいわゆる当該会社に対しましては、買い付けを行なおうとする会社大蔵省届け出をすると同時に、その写しを当該会社のほうに送られることになっておりますから、当該会社におきましてはそれらの十二、三日間くらいの期間内に、場合によっては緊急株主会を招集する、あるいは一般の株主に対して新聞公告をする、あるいは直接書信でもって会社の経営方針なり経営者の抱負、経綸というものを明らかにいたしまして、誤った外資の攻勢に、間違いのない判断のもとに対処していただくという機会が、十分公開買い付け制度によって対抗策がとれるのじゃないかというふうに考えておりますので、今回の公開買い付け制度は、そういう意味におきましてはたいへん意義があるというふうに考えておる次第でございます。
  48. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 重ねて澁谷参考人にお伺いしたいのですけれども、これはいろいろ議論があったようでありまして、外資対策という面、外資による乗っ取りという面と、それから国内の産業政策的に、いわば親会社が子会社を乗っ取るというような、関連会社同士の中で起こるということと、こういう二つの面が当然あるわけなんですけれども、われわれ国民全体のマインドとして、あるいはビヘービアというか、そういう問題として、やはり外資による乗っ取りというものに対しては、非常に民族的なというかナショナリティーの発露からも、そういうものに対してこれは悪だというような場合が非常に多いし、またヨーロッパ諸国なんかでも、自動車産業がアメリカの資本に乗っ取られるというようなことなんかについて、いろいろその国全体の国益の問題というようなことにも関係する。しかし、そういうものについて、これはやはりこういう制度をつくって、しかもそれに対する若干の規制という措置を講じて日の目を当てさして、道を開いておく。外資の乗っ取りをできるだけ防ごうというようなことについてはその他の方法があるのだ、こういう外資法なり外為法なりというものによる面があるのではないか、こういうことであります。そういうものについてどうなのかという問題と、むしろ私はこの制度ができることによって、そういう外資対策以上に、日本の産業のいわば系列化の一そうの促進ということに――グループ化といいますか系列化といいますか、そういうもの、そしてそれがだんだん、やがては日本の財閥復活の方向にすら、この制度ができたことによって、産業構造の問題として発展していく道が一つ開けたのではないか、こういうように思うのですが、その辺のところ、どういうようにごらんになりますか。
  49. 澁谷健一

    澁谷参考人 当初この案が、公開買い付け制度といったことが発表されましたときに、産業界の一部には、先生のおっしゃいますように、そういう制度がそういったような買い付けを誘発するのではないだろうかということで、一部の反対論もあったことは事実でございます。しかし、経団連においてもよく論議をいたしました結果、現在においてそういう公開制度をつくらなくても、もうそういう乗っ取りというものはやろうとすればできるわけでございますし、現に行なわれているわけでございますから、むしろそういうことが現在すでに行なわれておるならば、ひとつそういうことは公開裏にやってもらったほうが投資家利益にもなるのじゃないか。知らない間に株価が暴騰しておるということが、陰において乗っ取りのやめに買い付けが行なわれるということになりますと、たいへん他の投資家利益も害することにたりますので、そういった意味におきまして一般投資家保護にもなるということで賛成をいたしまして、むしろ産業界からこういう制度はひとつ要望したほうがいいということで、積極的に経団連から大蔵省まで要望申し上げたわけであります。
  50. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 時間がありませんので、北裏参考人にひとつお聞きしたいのですが、外人の株式取得制限が今日一人当たり七%ということ、さらに総額において二五%という、こういう制限が外資法にあるわけでありますが、これを一人当たり一〇%ぐらいまではいいじゃないか、総額においても三〇%ぐらいまではいいではないか、こういう意見も最近かなり有力に、国際化時代を迎えて出ておるという状況でありますが、この問題についての御所見が一つ。  それからもう一つ、先ほど公社債市場が非常に、日本ではまだ正常化してないし、未発達である。既発債と新規債の金利の関係、利回りの関係であるとか、またその他いろいろな問題があって、これはもうすでに十年前から、このことは非常に強くこの委員会でも問題にし、またこれをどうしても育成しなければいかぬということを言われておるわけでありますけれども、こういう点がいまだに正常化され完全に育成されていない。この原因として金利体系の整備という問題が先ほどちょっと出されたわけですけれども、この公社債市場育成の、あるいは正常化の、具体的にこういう条件が満たされ得ることだということを、ひとつこの機会に皆さんのお考えを聞かしていただきたい。  その二つ最後に質問します。
  51. 北裏喜一郎

    北裏参考人 まず外資の取得制限の問題ですけれども、これは本来、経過的には、過渡的には、やむを得ない措置であったと思いますが、今後国際化進展するにつれて、現在のものがこのまま制限すべきかどうかについては問題があると思います。過去の経緯からいうと、だんだんふやしてくるという経緯のほうがよかったと思いますけれども、今日でもすでに、公開会社で、会社によりましては個別的に御認可をいただいて三〇%以上を外国に持たしているところもございます。ソニーのごときはまさにそのとおりであります。ですけれども、一般的にはなお徐々に拡大していくほうが今日の状況としてまだ必要だ、こういう見解についても私どもは賛成いたしております。ただこのまま固定するということについては反対して、長い目で見ますと当然これはフリーであっていい、こう思うのであります。  それから第二のお話でございました公社債市場につきましては、おっしゃるとおり十年来われわれは主張してまいりました。今日なお主張して、これがほどけないという理由は、諸種あるには違いございませんけれども、基本は、それによるひずみがやはり非常にふえてまいっておりまして、一つは実勢価格と発行価格の乖離というようなものも当然であります。したがって、新規債は、なかなかそういう一般に消化するということは困難である事情であると同時に、われわれ自身としても、実際の価格が非常に著しく変わっておるにもかかわらず、起債市場の値段で売っているということは、いささかこれは実際の投資家に対する気持ちとしてもむずかしい点がございます。しかし、ここでいよいよ踏み切っていい時期であるということを私は先ほど申しましたが、それは一つは、春日先生もおっしゃいましたが、非常に借り入れ過多であるということをほぐすには、この借り入れ金がまず公社債によって長期化するということが必要である。その反面の大衆貯蓄がだんだんふえてまいりまして、そういう長期的なものを持ち得る余力ができた。この二つが国内的な環境の違いであります。十年前と違う点であります。  それからもう一つは国際化であります。現に日本の企業が海外で起債する場合は、国内よりもはるかに高い自由価格でやっておるわけであります。したがって、自由化するにつれまして、国内だけこういう硬直した価格に置いておいて、国際的な市場で見る場合、著しくこれは国際的な資本市場の線から見るとおくれておる、これをほっておけないということが第二点です。国際化が進んでおる場合と進んでない場合とまた変わってくる。御承知のとおり、昨年来の日本の企業の海外における起債は、全部国内起債よりも長期社債につきましては非常に高いレートでやっておるわけであります。これは国際資本市場自由化が進むにつれて、おのずから解消さるべき環境が備わってきました。したがって、国内国外同時に起債市場正常化されるべき時期がきたと思います。その具体的な方法は、公社債市場正常化するという具体的な方法はきわめて簡単でありまして、それは起債条件を自由化することが即公社債市場が育成される理由であります。長らく各方面で言われておりまする、公社債市場正常化が言われますけれども、公債の売買価格形成は起債市場自由化でなければこれはできません。その点におきまして、起債市場自由化すれば、即日公社債市場自由化されます。正常化されます。
  52. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 時間が来ましたのでこれで終わります。どうもありがとうございました。
  53. 毛利松平

    毛利委員長 松尾君。
  54. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 最初に、企業代表の澁谷社長に伺いたいのですが、先ほど御説明をいただきまして、今回のこの証取法の諸措置が適切である、こういうお話を伺いました。今回の改正において大きな柱といいますか軸になるものは、いま論議された開示制度であろうと思います。  この開示制度について、いままで皆さんからも質疑がございましたが、私はもう一歩堀り下げたところで、投資者から投資をしてもらって企業がどんどん栄えていくというためには、この開示制度についての考えは一つでなければならないと思うのです。企業としては全部あけ広げて知ってもらう、そして安心して投資してもらう。また、投資者は、隠れたところを全部、商品を手に取るように知って、そして安心して投資をしたい。一つでなければならないのですけれども、理論的な面は別として、現実面では、この企業側と投資側に相当離れたことがいろいろ論議されている、こういうことも御承知であろうと思います。  そこで、一つ伺いたい点は、企業側として十分考えなければならない点は、機密あるいは秘密という問題があります。それからもう一つは、いろいろな経費負担、こういうものがございますが、企業として、この開示制度を設けたたてまえ、どこまでを秘密としてとにかく広げて見てもらうのだというお考えがあるのか。  それから、簡素化ということがいわれておりますけれども、要するに投資に参考になるものを開示してもらうというのが趣旨であろうと思うのですが、投資者保護投資者に対して企業はこう考えているという基本的な面を、まずお話を伺いたいと思います。
  55. 澁谷健一

    澁谷参考人 おっしゃいますように、産業界におきまして、われわれは常に同業者との間にあらゆる面での競争をやっておるわけでございます。たとえばそれは品質の競争、コストの競争ということが一番重大な関心事でございますが、結局よそよりも安く仕上げるということ、それからよそよりも安くいいものをつくるということが、これが競争の原理だと思うのでございますが、その際に、やはり会社の製造原価の内容がだれにでもわかる。国内の場合はそれほどではございませんが、特にこれが国際間にそういったような企業のコストが漏れていくということになりますと、やはりこれは競争上不利ではなかろうか。で、諸外国の場合には、コストの場合には売り上げ原価一本で表示されております。でございますから、これは今後、この内容につきまして、私どもは、そういう意味から、自由な競争は大切なことでございますけれども会社のそういったようなあまりに不利になりますような企業内容の詳細な開示につきましては、できるだけそういったような不利にならぬようにお願いしたいと思うわけでございますが、今後その点は大蔵省政令でいろいろ報告書の様式とか内訳をお定めになる際に実情に即してやっていただけますように、経団連のほうにも一応案をお示し願えることだろうと期待いたしておりますので、その程度になるべく簡素化していただきたいと思うわけでございます。
  56. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 企業としてはお気持ちはよくわかります。また機密等については、競争の原理はございますので、との点もよくわかるのです。ただ、いま社長がおっしゃったとはちょっと別なような論議、すなわち機関誌等で時々討論等がございますが、このときに業界代表が出てこういう論議を言っておるわけですよ。届出書あるいは報告書、目論見書等がほとんど投資者に見られていないんではないか。それから勘定科目等は、これを見ても投資判断に役立つかどうか疑問だ。それから万人がほとんど見てわかるようなものにはとうてい応じ切れないんだ。こういうようなことが公の場で論議されている。こうなりますと、それではせっかく証取法というものが投資者を守って、そうして資金をという考えで設けられたのに、基本的にだれにもわかるようなものはもうできないんだという、こういう考え方になりますと、これはむしろ逆行する。資金の流れをよくしようというのが逆になっていくというような点も考えられるわけです。ですから、こういう点が論議されることは、はたして業界等では打ち合わせをして、そうして一方、一般にはこういうこと、公の場ではという、そういう統一が何か欠けているように思うのですけれども、その点はどうでしょう。
  57. 澁谷健一

    澁谷参考人 いわゆる投資家の中には一般投資家、これは主として会社のそういったような決算書をごらんになってもよくおわかりにならない投資家もおありになると思います。そういう方々は常に証券会社に相談をされて株をお持ちになるという投資家層だろうと思います。でございますから、やはり投資家としては企業内容につきましても相当関心を持って、また理解していただいているというふうに私ども理解しております。でございますから、いわゆる機関投資家あるいは経済分析家と申しますか、そういう意味で専門にお調べになっている方もございますが、そういう方がいろいろ会社の評価をなさっておられます。こういうものが一般投資家にたいへん参考になっておるんではなかろうかと思いますので、私どもとしまして決してみながわれわれの発表したものはどなたも御理解願えないんだというふうには理解してないわけでございます。皆さんそれをよく理解していただいていると思うのですが、その中で、いま申し上げましたような点だけをあまり詳しくならない程度にということはお願いしたいと思うわけでございます。
  58. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 時間がありませんから、もう少し掘り下げたいんですけれども……。いま、澁谷社長から、証券会社のほうでこれを一般投資家には理解できるようにしているんだ、こういうお話でございました。そこで、北裏さんにお伺いしたいんですが、証券会社としては届出書あるいは報告書について、いろいろ財務諸表等むずかしいものがある。これらを一般投資家に理解してもらうために、相当努力はなさっておると思うのですが、具体的にどういうふうにやっておられるか、お伺いします。
  59. 北裏喜一郎

    北裏参考人 これは証券会社の仕事の最も重要な仕事でございますので、ある場合は、どことも調査部であるとか研究室だとかを持ちまして、その分析、サモライズ、理解度を深める諸種の方法をとっております。したがって、いま澁谷先生からおっしゃったような詳しいものをいただきまして、それが一般個人投資家方によくわかるように集約するのがわれわれの仕事でございます。これは相当精密な、しかも充実した機能を持っております。
  60. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 膨大な一般投資家に対して、各証券会社で充実した機能を持っておられるというんですけれども、総数で、人数だけあげますとどのくらいになるか。一人でどのくらいの投資家を対象にしているのか。参考にその点だけお伺いいたします。
  61. 北裏喜一郎

    北裏参考人 いま申し上げましたのは、調査資料は調査部の部員がサモライズするのであります。投資家に対してやりますのは営業マンでございまして、セールスマンと申します。その人数は、個々でありますけれども、調査機能はおのずから一人で相当部分を持っておるわけです。各社を調査するわけですね。それからお客さまに対するほうは、これまた態様によりまして何人ということはございませんが、これは相当多く持っておる。そのセールスマンがまず調査するということではなくて、まず基本的なそういうものは調査マンがいたしまして、それをさらにセールスマンが理解する、こういう順序でございます。
  62. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 わかりました。  それで、次に公認会計士協会の副会長尾澤さんにお伺いしたいのですが、半期決算についてはいままでずいぶん論議がございましたけれども、半期決算については、一年決算会社で半期決算というとここにいろいろな事務的な問題がございまして、結局投資者からは半期報告即二倍という見方をされることが非常にこわい、こういうことをいわれております。それでこれに対して先ほど来、半期決算は仮決算報告的なもので、監査を必要とはしないんだ、こういうことがございましたけれども、ここに設けた趣旨というのは、投資家がこの半期報告によってその会社を判断する、こういうために設けられておると思うんですね。ところがこれに対しての見方は、やはり先ほどもお話ございましたが、予報的な性格を持ったものだ、半期報告というのは予報的な性格を持ったものだ、あるいは実績速報ないし実績報告なんだ、こういう見方が多いんですけれども、この性格について公認会計士のお立場でどういうふうにお考えになっておられますか、その点を伺いたいと思うのです。
  63. 尾澤修治

    尾澤参考人 中間報告書の様式、それから記載内容、そういうものにつきましては、まだはっきりきまっておりませんので、少なくも私どもには示されておりませんので、決定的なものはない。したがいまして、それがどういう意味を持っているかということははっきりは申しかねますけれども、一応私どもの知る限りにおきましては、半期報告書は、いわゆる財政状態と経営成績の表示をするというような、通常の一年決算のものとはやや趣を異にしているようでございます。言うならば、半期間におけるところの経営成績の推移がわかるような資料にとどまるように承っております。その意味におきましては通常の決算書とは違っております。  それからその場合に、やはり中間は中間の推移によりましての一定の利益がここで表示されるわけでございますが、その利益の表示方法あるいは算出方法のルール、手続というものが実ははっきりしていないので、この辺をどういうようにするかということは、今後詰めていくべき問題ではないか、こう思っております。私どもは、少なくとも投資者といたしましては六カ月間の推移を知ることによりましてある程度の状況ないし業績を知ることができますので、投資判断の資料としては十分役立ち得るものであろうかと思います。ただし、私は先ほども、中間報告におけるところの計数も本来は正しくあるべきものである、こう申し上げましたが、それは本質的にそうあるべきであるということを申し上げたものでございまして、ときにはそこに経営者の立場の方に何かの操作を加えられることもあり得るかもしれません。その意味におきまして公認会計士監査証明というようなものがつき得るならば、非常にこの信頼度は高いものとなることは否定できないと思います。しかしながら、遺憾ながら現在のところではまだ中間報告の決算のやり方につきましては判然と一つの基準ができ上がっておりませんので、そこで功を急ぎましてやりますといろいろばらばらの結果があらわれてくるおそれもございます。そういう意味におきまして、私ども公認会計士といたしましては、でき得ればこういうものには監査証明をつけるようにしないと、ときに経営者の暴走をすることもあり得るかもしれませんので、そういう場合の歯どめとして必要ではないか。少なくも一年決算の数字が最後には正しく示されておりましても、中間決算の数字は場合によれば妙な形になるおそれもあるので、そういうことをチェックする歯どめも必要ではないか、こういうように思っておりまするが、法律的に考えますると、中間報告書の数字の出し方というものがまだ決定的にルールができてないというところから、しばらくこれを見送るよりほかはない、こういうように考えております。
  64. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 それからもう一点お伺いしたいのですが、今度公認会計士賠償責任が課せられる、こういうふうになりまして、これが広がったわけであります。まことに素朴で恐縮ですけれども責任はある、しかし膨大な損害賠償というと、何億、何十億ということになると、責任は負うけれども賠償が不可能だ、こういうことがやはり心配されておって、ほんとうの投資者保護のためには何らか対策を講ずべきだ、こういうことで保険制度等が論議されているように聞いておりますけれども公認会計士の人数が非常に少ない、これらのためにこの対策に対して保険制度その他何かお考えがあるかどうか、その点だけ伺いたいと思います。
  65. 尾澤修治

    尾澤参考人 われわれの損害賠償責任に対しまして保険をつけるということは、自衛上も非常に大切なことでございますので、私ども公認会計士協会におきましては、すでにこの点については研究を進めております。同時に、公認会計士協会側だけで研究をいたしましてもこれは話が進みませんので、保険会社側の御協力を得ております。目下有力なる損保会社二社からいろいろと御教示と御相談にあずかっておりますので、漸次このほうは固まっていくと考えております。
  66. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 そうしますと、証券会社を含めてという方向で検討が進められているというふうに理解して……。
  67. 尾澤修治

    尾澤参考人 証券会社ではございませんで、保険会社でございます。わが国における有力保険会社がそれぞれかねてから研究をされておりまするが、私どもとそこで共同研究をいたしまして、業務的に成り立つようにという方向でいま盛んに準備を進めております。
  68. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 あと鈴木教授に一点お伺いしたいのですが、先ほどの御説明で、株価操作については政令でできるようになっている、こういうお話がございました。私が承知している範囲でも、株価操作という問題はいままで相当頻発しておりました。したがって、鈴木教授はこれは政令でできるんだというおことばでございましたけれども、百二十五条ですか、それから罰則が百九十七条にございますが、はたしていままでに現実にこれが頻発した相当大きな事故にも効用を果たしたのかどうか、その点を伺いたいと思います。
  69. 鈴木竹雄

    鈴木参考人 ただいま御指摘の百二十五条でございますが、これはここに書いてありますような目的を立証いたしますことが非常にむずかしいものでございますから、実際にこの本条が発動し、いまおっしゃったような刑罰の問題につながったというふうなことはほとんどないのじゃなかろうかと思っております。したがって、この相場操縦の禁止の規定というものは、次の証券取引法改正にはどうしても取り上げまして何らかの措置を講じなければならないと私自身は考えておりますし、証券取引審議会のスケジュールにものっているわけでございます。それでよろしゅうございますか。
  70. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 政令で処理できるんだというその政令はどういうふうになっておるか。
  71. 鈴木竹雄

    鈴木参考人 それは先ほどの百二十五条でございますが、ここで「政令で定めるところに違反して、有価証券の相場を釘付け、固定し、」何とかする目的をもってやってはならないと書いてあるのでございまして、政令の定めるところによればできるという考え方でございますから、現行法の上で安定操作規則というものを政令で定め得ることになっているわけでございますから、そういう意味法律事項ではなく政令事項でやれるのだ、こう申し上げたつもりでございます。  そしてどんな政令になるかということも、これも大蔵省がきめるわけでございますが、証券取引審議会の答申の線に沿って政令を定めることになると思いますし、その答申の内容につきましては、ごく簡単でございますけれども、先ほど御質問に対してお答えしたつもりでございます。
  72. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 むしろ、ほんとうの投資家保護という今回の答申の根本精神を受けての改正であるとすれば、現在こういうことが頻発して相当迷惑を受けている一般投資家がおるわけですね。したがって今回のわずかな改正ですから、これは当然含まれなければならなかったのではないか。政令でといいますけれども、私は法体系自体に問題があるのではないかと思いますのは、要するに株価操作をしようとするものが、株の相場を変動させる目的というようなこういう目的がはたしてあるのかどうか。何かやろうとする場合には必ず自分の利益あるいは個人ないし共謀でやることが中心であって、実際に、百九十七条にありますように「有価証券の相場の変動を図る目的を以て、」風説を流布したり何かするということが現実にあり得るかどうかですね。そんな点が私には理解できないのですが、教授、どうお考えでしょうか。
  73. 鈴木竹雄

    鈴木参考人 そういう目的があるということを積極的に立証しなければ制裁を科し得ないというふうなことになりましては、結局これが形だけある法律になってしまうわけでございます。情況証拠というふうなものから目的を推論して、そういう目的があるだろう、そうでないというのならおまえのほうが反証をあげろというふうな形でこれを動かすことができますならば、私は相当効果はあると思うのでございますけれども、どうも刑罰規定の解釈につきまして、少なくとも日本の裁判所の行き方というものは非常に厳格な立証を要求するものでございますから、それでこれがいわばざる法のような形になってしまっているのだと思っております。アメリカあたりだったらその点はもっと常識的に動かしているのだろうと思いますので、同じ刑罰法規でも動かし方を違えていかなければならないのではないかと私限りは思っておりますけれども、少なくとも法解釈といたしましては、そこまで裁判所のほうを動かしていくということはなかなか困難のような感じがしておりますので、いまおっしゃいましたような意味で、百二十五条というものを改めていかなければならないんだというふうに思っております。  ただ、いまおっしゃいましたように、今度もそれができればよかったのでございますけれども、いわゆる開示制度改正というふうなものもこれも大問題でございまして、私たちの限りある力をもちましては、一年半ばかり鋭意やったのでございますけれども、この程度のものに大半をとられてしまって、こちらのほうにまで、そうして公開買い付けをやりましたというところで実際問題としては時間切れになったわけでございますが、そうかと申しまして、これができますまで開示制度改正をおくらせるということもかえって妥当ではないという判断がなされた結果、一応答申を行なったわけでございますが、引き続いてやる覚悟はしているわけでございます。
  74. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 それからもう一点、順序は逆になりましたけれども鈴木教授にお伺いしたいのですが、今度の開示制度については必要なものはきびしく、不当なものは切る、こういうことでありましたが、現在までの私の承知する範囲では、まだこのきびしさに欠けるのではないか、という点は、投資者が判断をする場合に、一番知りたいのは企業の将来の動向、いわゆる、たとえていいますと、次のために教育費をこういうふうに設けようとかあるいは厚生施設をこうしようとか、それからまた実際の業績については生産あるいは返品、生産の伸びとかあるいは後退とか返品の状況とか、そういった具体的なものがあって初めて投資者には一番理解しやすい投資判断になる、こう思うのですが、これらは当然含められるものと思うのですけれども教授立場ではどうでしょうか。
  75. 鈴木竹雄

    鈴木参考人 いまおっしゃいましたような第一の将来の見通しでございますけれども、これは非常に確実なものを要求いたしますことは困難だろうと思いますし、これについて公認会計士監査をしろといってもどうにもならぬ問題でございますので、見通しのほうについて一それは虚偽のことを申しますればもちろんいかぬわけでございますけれども、将来……。
  76. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 いや、見通しというのは将来のための投資です。たとえば教育費にどう。いろいろなものにですね。
  77. 鈴木竹雄

    鈴木参考人 その将来のための投資、それはしかし計画でございまして、その計画というものを当然に実現できない場合も出てくるわけでございますから、したがってそういうことを申しますことのほうがかえって誤るおそれもあるんじゃないかというふうな感じがいたしますけれども、いまのところはそのつもりでいるけれども、しかしそうはいかない、国の来年の計画をどうするかというようなことを、来年と申しますか再来年のことまで言わなければならぬようなことはちょっとむずかしいんじゃないかと思いますがね。
  78. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 それからもう一点、実際の業績ですね。注文が向上してきたとかあるいは後退してきたとか、あるいは返品の状況がこうだ、こういう実態は、企業としてはあまり出したくない点はわかりますけれども、そういう点は当然判断の資料としては大事だと思いますので、それについては……。
  79. 鈴木竹雄

    鈴木参考人 私、こまかい有価証券報告書内容について一々存じておりませんけれども、その点も、何と申しますか、ある点は書かれているんじゃないのかというふうな感じがいたします。そう直截簡明に書いているかどうか存じませんけれども、むしろ私よりもその点は尾澤さんのほうが御存じじゃないかと思います。
  80. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 では業界の澁谷社長にひとつその点について……。
  81. 澁谷健一

    澁谷参考人 私もどうもあまりこまかい点は承知していないのですけれども……。
  82. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 注文の後退、注文の増加ですね、それから返品等、具体的な問題についてはということです。
  83. 澁谷健一

    澁谷参考人 私どもの事業ではいわゆる注文生産でございませんので、ちょっとそういうあれは実際問題として……。
  84. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 では尾澤さんからお答えいただいて、終わりたいと思います。
  85. 尾澤修治

    尾澤参考人 有価証券報告書で書かれている資料はすべて過去の確定した資料でございまするが、その中で一つだけ前向きの資料がございます。それは次の期における生産に関する計画でございます。それだけが前向きの資料になっています。ただし、一部の業種につきましては、受注状況だとかが明示されているのもございます。これはむしろ記載の方法について大蔵省の行政指導によって行なわれているものでございまして、その一例をあげるならば、土建業などにおきましては、現在の受注いたしまして目下作業しているものの明細がある程度表示されております。
  86. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 それでは以上で終わります。
  87. 毛利松平

    毛利委員長 堀君。
  88. 堀昌雄

    ○堀委員 最初に澁谷参考人にお伺いをいたします。  十条製紙社長という立場よりも経団連常任理事というお立場を含めてひとつ伺いたいのでありますけれども、さっき鈴木先生が、増資とそれから借り入れが並んでいて、借り入れのほうがどうしても優先していくのはコストが安いからだ、こういうお話がありました。経済行為として見ますれば税制なりいろんな面から確かにそうでありますが、それでもなおかつ増資が行なわれるというのは一体どういう場合でございましょう。私どもは、どうも一般的に増資は限界資金供給を必要とする場合に起こっておるのではないか、こういう感じがしておりますが、要するに企業側として不利な増資、そういう経済条件としては不利な条件にある増資を行なわれる場合というのは、いま私が申し上げたような資金供給が非常に困難になったところで起こるということなのか、そうでなしにも増資というものは企業側としてはお考えになるのか、その点をちょっと最初にお答えいただきたいと思います。
  89. 澁谷健一

    澁谷参考人 現在投資をいたします場合に、その資金の調達といたしましては、もし借り入れによった場合にはその利息は経費に算入ができるということで税金がかからない。もしこれを増資によって行ないます場合には利益の配当はしなければならぬ。かりに一割の配当をするとしますと大体それに相当する税金を払わなければいかぬということで、コストは明らかに借り入れ金でやったほうがよろしいということでございますけれども、やはり借り入れ金も無制限にできるというものではございませんので、われわれ常識的に考えていますのは、大体一年間の売り上げ総額の約半分が常識的な借り入れの限界だということをちょっといわれております。それをこしますとちょっとやはり借り入れ過多じゃないかというふうに私ども常識的に理解いたしております。でございますので、だんだんそういう限界にきますと、やはり大きな会社でありましても、採算がいい会社でありましても、だんだん借り入れにくくなるということがございます。それともう一つは、最近のように金融が非常に逼迫してきて、そしてその企業が相当の収益力を持っていて配当力があるという場合には、やはり増資によって資金を調達する。これは配当力がある場合にはそういうことで来ます。いま申し上げましたように、どうしても増資をしなければならぬというのは、もう借り入れ金か限界に達している場合、それからその会社自体が相当の収益力があってコストを無視しても増資をしたほうが資金調達に楽だという場合に増資を行なう。この二通りがあるじゃないかというふうに考えております。
  90. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのお話は私も確かに私どもが感じておったことと同じ御答弁をいただいたわけですが、要するに日本の増資というものは、北裏さん、そうすると一般的な経済行為のニュートラルな中で行なわれていない、こういうふうに証券会社も認識しておられますか。私はそういう意味でさっき申し上げたような限界資金供給が増資にくる問題だと、こう見て、それはしかし非常に実は証券界としてはまずいことだろうと私は認識をしておるのですが、証券界としてはどうでございましょうか。
  91. 北裏喜一郎

    北裏参考人 そういうきらいがなきにしもあらずでございますけれども、先ほど澁谷先生からおっしゃった以外に、やはりある短期的な見方をすると、税制上その他で限界資金というような意味でコストということを中心に考えますけれども、少し五年、三年と長期にわたって見ますと、投資の初期においてはまだ収益を生みませんものが、ようやく収益を生んできて蓄積ができるとなると、やはり借り入れ金よりは自己資本がよろしいというので増資を――これは、ほかの理由で当然企業の安定として増資をしなければいかぬという――限界資金調達というんではなくて、企業の安定という面から増資が行なわれていく傾向がだんだん日本の企業のマインドとして行なわれておりますので、すべてが限界資金調達という過去の事例は、だんだん今後とも少なくなっていくのではないか。今後本格的にやはり資本市場をになうわれわれとしましては、限界資金調達市場であっては困ると思っておるのであります。
  92. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの問題に対する回答が、私は時価発行に求められておると思うのであります。で、時価発行ですと、御承知のようにそれに対する配当というのは非常にウエートが小さいわけでありますから、私は、これがいまのエクスキューズとして時価発行が出てきた、こう考えているわけであります。  鈴木参考人にお伺いいたしますが、どうも私はこの額面株を出していて時価発行というのは制度としていかがであろうか。時価発行に切りかえていくというのならば、これは当然無額面株であるべきだ――これは商法にちょっと問題が残っておるわけでありますが、いまの制度でいきますと、場合によっては時価発行し、場合によっては額面発行もできるという、どうもまことにその資金調達が少し複雑に過ぎるようになるんじゃないか。ですから、考え方としては、私は、これから時価発行するところは、以後それは無額面株に切りかえてもらって、それは時価発行をずっとその会社はやるんだというようなふうにしていただかないと、投資家としてはたいへんそのときの企業側の都合だけで振り回されるのではいかがであろうか、こういう感じがするのでありますが、いまの時価発行と額面関係の問題について、鈴木参考人の御意見を承りたいと思います。
  93. 鈴木竹雄

    鈴木参考人 商法の解釈といたしますならば、額面株の場合に時価発行しても何ら差しつかえないわけでございます。また、かりに無額面株にいたしましたときも、時価発行に必ずよらなければならないことはないんで、もし無額面株を株主に割り当てますれば、もっと低い価格で発行することも可能でございます。したがって、いまおっしゃいましたように、その額面株にするとか、無額面株であるとかといういまの問題とは関係しないで、むしろそういうルールというふうなものが確立をされていくということが望ましいんじゃないかというふうに考えております。  ただ、別の見方をいたしますれば、これは将来の問題としては、あるいは額面株というものはやめてしまって、全部無額面株にしてしまってもいいんじゃないのか。いまの額面の作用というものは何なんだろうかということについて、私自身としては非常な疑問を持っておりますので、次の商法改正といったような問題が出てまいりますときには、その問題も私は考えたいと思っております。
  94. 堀昌雄

    ○堀委員 実は、かつて無額面株を住友金属が発行したことがありまして、その問題を少し取り上げたことがありますが、日本の場合には、実は額面以下で発行するときにだけ額面株の場合における無額面株といいますか、たいへんおかしいのですけれども、そういうことがエクスキューズのようなことで行なわれた前例があるわけでありますが、やはり私はいま鈴木先生がおっしゃったように、今日ここまでまいりますと、その額面株という問題の意味が、非常にどうも逆になりつつあるので、将来的には――いま商法にああ書いてございますから、いまの制度はどうしても残るのでありましょうが、方向としては、もう今日無額面株になることのほうがよりすっきりするし、同時に、いまの時価発行の問題というのは、あとの安定操作にちょっと関連がございますけれども、そういうあまり無理なことが行なわれないでやっていかれる慣習がつくならば、私は日本の現状の税制の中におけるエクスキューズとして自己資本をふやす一つの道にもなるかと思いますので、時価発行が進むことを望むのでありますが、その際に実は問題になるのは、この安定操作の問題でございます。  これはちょっと簡単に伺うわけにいかぬことなんでありますが、北裏さんにちょっとお伺いをしたいのですが、政令をいろいろ書き直しましても、問題はどこにあるかというと、安定操作が行なわれておるときの株価と実勢の株価との差額が一体どの程度になるかという問題じゃないかと思うんですね。結局そのことは、安定操作をはずしたときに株価が下がってきた、その下がりぐあいが著しく下がる場合――すでに事件になっているようでありますけれども、四社でございますか、例の松下の時価発行のときに安定操作があったということで問題が起きているわけでありますが、あの時期は、たまたま株価の非常に変動のあった時期でありますから、ちょっと複雑でありますが、一体証券会社として、今後安定操作をもしやろうとされる場合の実勢と安定操作株価の乖離というのは、どの程度なら安定操作をやろうということになるのか。これがうんと著しい安定操作をやられますと――政令でともかく価格なり売買を届け出ろ、こうなっておりますけれども、それでは安定操作の途中で打ち切るときはどうするかなんていうことは、何も政令に書いてないわけです。ですから、目論見書を一応書いて安定操作がスタートした、その価格の幅がどうかということが、それをこえて安定操作がもし行なわれるようならば、これは実はもう安定操作の範囲をこえるのではないか、こう思いますので、その安定操作といわれる幅はどの程度にお考えか、証券会社立場でお答えをいただきたいと思います。
  95. 北裏喜一郎

    北裏参考人 これは実際論としてなかなかむずかしい問題でございまして、先生のおっしゃるように著しく安定操作の値段が高い場合は、操作中止後もまた価格の変動を生むということで、その判定は、何割であるとかいうことは、なかなかむずかしいと思います。ただ問題は、従来と違いまして、安定操作の場合にある程度価格を表示するという――公募の場合ではなくて、一応届け出を出しまして、三十日後効力が発生をしてからやるということではなく、届け出を出しまして、それを大衆の投資家に十分縦覧を許すという形で投資判断ができて、そこで投資家サイドから一つの価格に対する判断が行なえる、企業サイドのまた売り出すという判断、それを調整して仲に立つのがわれわれでございますので、実際において何割という基準よりも、むしろ一つの売り出し行為に対しまして、投資層があらかじめそういう得た資料によって判断をして、そこでこれならば買おうという金額が出てくるわけです。同時に、発行会社側もそれでは安い高いという判断が出るわけです。そこを調整するのがわれわれの機能でございますので、ときによっては一割の場合もあるし、四あるいは五%の場合もあるかもしれません。これは画一的でないと思います。御承知のとおりアメリカども公募の値段は最終的に決定するので、届け出制によってみな投資家が判断したあとでございます。日本の場合は効力が発生したということと値段をきめることが、ここに一応相違がございましたから、間々そういう心配がございました。著しく発行価格と時価とを開かさなければならぬ場合もあったわけでありますけれども、これはどちらもおかしいと思うのです。下がる場合は、もちろん投資家は困りますが、著しく公募値段よりも時価が上がる場合は、これは企業の経営責任がまた生まれるわけでございますので、その両者を調整する機能がわれわれにあると思っております。
  96. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私はこの問題の考え方が二つあると思うのです。いわゆる安定投資家といいますか、かなり長期に投資をしている人があるわけですね。本来はこれが一番望ましいわけです。その次は短期的に、要するにキャピタルゲインを上げようという方たちがある。そこで安定操作を行ないますよと、こういう発表があって、もしかりに株価が上がってきたとしますね。そのときに、いわゆるくろうと、半くろうとの方ならば、いろいろそれをにらみながら、それは逆に売ってくるという手があると思うんですね。これは、その人たちにとってはヘッジにもなるし、いろいろあると思うのですが、安定投資をやっている一般の大衆、要するにしょっちゅうそういう目論見書を見たりいろいろしない投資家というのもかなりあるのではないか。ですから、いま北裏さんのおっしゃったように、確かに売買がクロスをしながら安定投資をやるといったって、場合によってはうんとこれが売られる場合があるわけですね。安定投資をしますといったら逆に売ってくるという場合だってあるだろうと思うのですが、そういうことで自分たちの利益をヘッジできる方たちはそれなりのあれがあるのですが、そうでないやや第三者的な投資家ですね、こういう投資家に対しても私はやはり責任があるんじゃないかと実は思うのです。そうなると私が申し上げているように、安定操作によって価格が著しく実勢価格から乖離するような価格をつけることは、明らかに私はやはり安定操作の域を越えて価格操作になるんじゃないだろうか。さっき春日さんもそこをおっしゃりたかったと思うのですが、これはもう私ども市場取引の根幹にかかわる重要な問題なものですから、一体やはり安定操作というのはどこからが一定操作でどこからは株価操縦かという問題の限界がやはり私どもはある程度求められてこなければならないんじゃないか、こういう感じがするわけです。この点について鈴木参考人いかがでございましょうか。
  97. 鈴木竹雄

    鈴木参考人 たいへんむずかしい問題のように思います。そういうことを、本質としてはそうなるかと思うのでございますけれども、どういうふうに一体法律の上に技術的に盛り込んでくるかということにたいへんなむずかしさがあるようなふうに思いますので、その点につきましては私も今後大いに考えてみたいと思っております。
  98. 堀昌雄

    ○堀委員 法律に書くのは確かに私非常にむずかしいと思うのでありますが、やはりどこかにひとつ私は行政指導なり何なりによりましてその安定操作届け出をする、それから事後でありましてもされる場合には、要するに報告を求めるわけですから、売買報告を求め価格を求める以上は何らかのチェックがあるんだという前提だと私は理解するわけですね。何にもチェックしないのなら売買報告書を求める必要はありませんし、価格を求める必要もないわけでありますから。まあこれは政府の問題になりますからまた後日あれいたしますが、皆さん方としてはどうでしょうか。私がいま申し上げたように、安定操作は単純な双方のバランスのところでなればいいという、まあ北裏さんがおっしゃった一つの意見もあるのですが、私ども投資家立場という面から見ると、やはりどこかに限界があるという――その限界を判断するのは行政当局が行政指導に基づいて適当な範囲で行政的な判断をするということが残されてこなければ、どうもちょっと私は安定操作という問題といまの価格操縦の限界がきわめて複雑になるおそれがある、こういう感じがするのでありますが、企業側としてはいかがでございましょうか。いまの問題、澁谷参考人にちょっとお伺いをしたいと思います。
  99. 澁谷健一

    澁谷参考人 先生おっしゃることはよくわかる気がするのでございますけれども、そこらの限界もよくわかりませんので、結局は私どもとしましてはやはり証券会社にそこのところはたよらなければならないかと思うのでございますが、なるべく公正な形で、あまり一般投資家に迷惑のかからぬようなことがぜひ望ましいと思うわけでございます。
  100. 堀昌雄

    ○堀委員 最後に尾澤参考人にお伺いいたします。  さっきの賠償保険の導入の問題はけっこうだと思うのですが、御承知のようにこれは、責任がありますのは故意と過失の場合ですね。それは責任がある。要するに故意と過失がなければ賠償責任に応じることはない、こうなっておるわけですから。しかし、まさか故意で起きたものも賠償の範囲に入るということじゃないでしょうね。過失というのはある程度避けられざるものですが、故意も賠償責任に入れるなんということになったらたいへんだと思うのですが、その点をちょっとひとつ……。
  101. 尾澤修治

    尾澤参考人 まだ保険会社とそういうこさいの点について詰めてはありませんが、故意による責任については私は賠償責任の対象にはならないんじゃないか、保険会社のほうの対象にはならないんじゃないか、こういうように思っております。
  102. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、保険会社の話じゃないのですよ。公認会計士協会の話です。公認会計士協会が、故意にやった会計士や監査法人まで賠償保険でまかなおうなんという発想だったら、これはとんでもない話ですからね。私に言わせれば、いまの過失の場合でも重過失はだめだと思うのですね。過失でも軽度の過失なら賠償はあってもいいですが、重大な過失を犯しておいて、あとで責任が負担が、賠償がきたらそいつは保険でもらうんだということになれば、まあたいしたことはないや、適当にやっておけということになるので、私は率直に言いますと、この保険制度は実はやめてもらいたいと思うのです。そのぐらいの姿勢でやっていただかなければ――まあずいぶん、四十年以来公認会計士及び監査法人の中で処分の対象になっている人があるわけです。私は長年この監査制度なり公認会計士制度を当委員会でやっておりますが、少なくとも国民の期待にこたえられるものにしてもらいたいと思うので、もう少し意気込みをほんとうはきちんとしてもらわないと、事故が起きて適当にやっていたら、過失側のときだけは金がもらえるなどというそんな気持ちで監査をやられたのでは、私は国民として納得ができませんので、せっかくの制度の御検討でありますが、少なくともそういう事故があったら全責任公認会計士なり監査法人は負うという気がまえで今後監査に当たっていただかなければ、私どもディスクロージャー制度を幾らこうやって法律を制定しても意味がないと思うのでありますが、その点いかがでございましょうか。
  103. 尾澤修治

    尾澤参考人 たいへん痛いと言いましょうか、私どもが平生考えているところをおっしゃっていただきましたわけでございまするが、さっき陳述の中でも私ははっきり申し上げましたが、われわれ公認会計士としては、この重大なる社会的使命につきましてはあくまでも責任は負っていかなければいけないという態度でいままで進んできております。ただ保険の制度というものを導入してこようというのは、もちろん故意とか非常に重大な過失があった場合、このことについては別問題でございまするが、通常公認会計士として払っているデューケアによって、なおそれによって補うことができなかったような場合に生じたいろいろの事故に対しては、何らかの救済措置がなければ私どもとしても安心して業務ができない、こういうことに存じまするので、その程度において保険に依存することもやむを得ないからと思っております。故意の監査証明をしたりあるいは重大な過失になるといささか問題があるかもしれませんが、少なくも故意の監査証明をいたしまして、それによって生じたるところの責任を保険会社に転嫁しようといたしましても、これは公序良俗に反する契約にあるいはなるかもしれないので、そう簡単にいくものではないし、また私どももそんな安易な考えでは進んでいないということだけをはっきり申し上げておきたいと思います。
  104. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  105. 毛利松平

    毛利委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用のところ長時間にわたり御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。ここに厚く御礼を申し上げます。  午後一時四十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時八分休憩      ――――◇―――――     午後一時五十二分開議
  106. 毛利松平

    毛利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  証券取引法の一部を改正する法律案及び外国証券業者に関する法律案の両案に対する質疑を続行いたします。広瀬秀吉君。
  107. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 証取法外国証券業者に関する法律の質問に入ります前に、証券関係で若干質問をしたいのですが、日本共同証券の問題です。これは御承知のように、不況段階において株を凍結して、その景気回復を待って放出をするという役割りを果たして、ほぼ今日の株価好況の中でかなり大きな黒字を生んで任務を終了したということになっておるわけであります。そこでこれが一月三十一日で解散をして、日本共同証券財団を結成をしたということになっておるわけでありますが、この問題について証券局長から、この清算の状況、概略でけっこうです。そして日本共同証券財団というものが何をなす財団であるのか、こういう点について概略まずお聞きをいたしたいと思います。
  108. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 広瀬先生からいま御指摘のごとく、株式会社日本共同証券は一月末日をもって解散いたしまして、ただいま清算過程に入っております。清算事務は、見通しでございますけれども、四月中に結了するという一応のめどで進行しております。これと並行いたしまして、二月一日付をもちまして財団法人日本共同証券の設立認可が大蔵大臣によって行なわれまして、株式会社日本共同証券の残余財産のうち――うちと申しますか、総額、もちろん税引きでございますが、二百八十億円の寄付を財団法人が受けました。その財団法人は、証券金融市場を取り巻く諸環境整備のために、必要と認められる公共的な活動をするという目的にこの資金を利用していこう、こういう大筋でございます。  より若干具体的に申し上げますと、日本共同評券が保有しておりました株式は一月末をもってすべて売却完了いたしました。その間値上がり等によりましてキャピタルゲインを得たわけでございますが、その剰余金約二百八十億円と見込まれております。そのうち財団法人の事務費と申しますか経常費と申しますか、それを毎年の果実から比ずる金額によりましてまかなおうというために、元本の段階で約十五億円程度の留保を本部にしておきまして、したがいまして、残り約二百六十億円余りかと思いますが、これを金融証券市場環境整備のために使おうということであります。  その使う方式でございますが、大きく分けますと、二百八十億円のうち約九十億円は、昨年中ごろから実施いたしました電力債の取得に充てております。残りがしたがってキャッシュというわけでございますが、その十五億円の保留分及び電力債九十億円を差し引きました残り、約百六十億円程度かと思いますけれども、その半額を電力債とともに証券金融株式会社、つまり日本証券金融株式会社あるいは大阪証券金融株式会社というようなものがございますけれども、それに預託をいたします。そしてその預託を受けましたものにつきすしては、電力債は当面そのままの形態で証券金融会社が保有いたしまして、それを、あるいは証券金融会社が公社債金融をいたします場合に、資金調達のための担保として当該電力債を用いるというふうに活用されることはございますけれども、それと、それからキャッシュで受け入れましたもの約八十億円何がしというものは、もっぱら公社債金融のために証券会社あるいは直接個人に貸し付けていこう、こういう構想でございます。もちろんこれは妥当なる金利をつけて貸すことは言うまでもございません。  そういうふうにしまして、実際の場は証券金融会社の活動という場におきまして公社債金融、流通金融のためにこの元本を利用していこう、こういうわけであります。別途残りましたキャッシュ約八十億円ばかりがあるわけでありますが、これは証券関係とは直接関係がございませんで、目的といたしております証券金融の環境整備のほうの金融部門ということに相なろうかと思いますが、しかもその中でも公的な財政資金等も用いて環境整備をはかっておりますところの中小企業信用保証協会、これが御承知のとおり全国数十の単位かに分かれまして中小企業のための信用保証業務を行なっておるわけでございまするが、そのほうに利用していこう、こういうわけでございます。これももちろん妥当なる利子をつけまして運用していく。かたがたそういうことをやろうとしているわけであります。  そういうふうにして、毎年それらの利子から果実を生むわけでございますが、その果実はおおむね十億円台であろう、こういうふうに思われますが、それは毎年毎年の財団の理事会の決定によりまして、財団が目的としております趣旨に沿いまして、証券金融を取り巻く諸環境整備のための公共的目的に使っていこう、こういうことに考えられておるわけでございます。  以上が、はなはだ大略でございますけれども、お尋ねに対する今後の財団法人及び株式会社日本共同証券の様相でございます。
  109. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そうしますと、清算費用を除いて大体残余財産二百八十億と、こう新聞等にも出ているわけでありますが、そのうち電力債の保有九十億ということですね。九十億引きますと、あと百九十億でありますが、さらに十五億は手元に留保しておくということでありますから、まあ百六十五億ぐらいになるわけですが、そのうち半分といいますと大体八十五億、約八十二億五千万円ということになりますが、正確に、日証金あるいは大阪証券金融会社に回すというのはこれはどの程度の利子でどういうように運用されるのか。その額と、日証金なり大阪証金に預け入れをするわけですね、これが回り回って個人への貸し付けにもたとえば日証金を通じてなっていく、こういうことでございます。さらに百八十億ばかりやはり残ってくる、これが信用保証協会、中小企業金融の助成ということで出される。この中小企業金融を強化するということで信用保証協会にこれだけ大きな金が回るということはたいへんけっこうなことなんですが、この性格はどういうものであるのか。出資金という形なのか、あるいは出損というようなこともいわれているようでありますが、この信用保証協会に対する助成金というのはどういう性格であるのか、その点を伺いたい。  さらに、これらの電力債保有あるいは日証金に対する預け入れ、信用保証協会の分というもの、こういうものは、これは出資金だとするならば、別に運用益というものがそう期待されるわけはないのですが、まあ少なくとも十億以上の運用益というものが当然出てくる。これの使い道を、いまおっしゃったように証券、金融、保険各界に対する何らかの役立つようなところに使いたいというのでありますが、これらの運用益の問題が、人件費も相当かかるだろうけれども、こういう運用益が、これだけのことしかやらない組織機構の中で承認されるということはまずないだろう、どういうようなことでこれを使うのか、そういう問題について、もう少しわかっておったらはっきりさしていただきたいわけです。
  110. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 先ほど申しましたことをちょっと一部訂正さしていただきます。と申しますのは、財団本部に約十五億円見当の財産を留保すると申し上げましたが、その留保を私は現金のようなことに言いまして、九十億円の電力債は証券金融会社に預託と、こう申し上げましたが、実はその留保は、主としてと申しますか、ほとんどと申しますか、電力債債券を留保する、こういうふうに考えられております。したがいまして、証券金融会社のほうに預託されます電力債は九十億円ではございませんで、それから約十五億円引きました約七十五億円でございます。したがいまして、この現金部分といいますのは約九十五億円見当になる。先ほど先生、八十二億五千万とか八十五億とかおっしゃいましたが、これがやはり十五億円ばかり現金部分がふえてくるということだけを訂正さしていただきたいと思います。  なお、証券金融会社に出しますお金は金利といたしまして年利七%、もちろん金利はそのときどきの情勢によって変わりますので、将来ずっと固定的に七%ということを申し上げることも適当でないかもわかりませんが、さしあたり七%ということに考えられております。  なお証券金融会社間で――日本証券金融会社、大阪証券金融会社及び中部証券金融会社、三証券がございますけれども、その三つにいかように預託先を配分いたしますかは今後の検討でございまして、現在のところまだついておりませんが、目下、公社債流通金融、こういうことになっておりまするので、私どもとしましてはその実情、実態というものをよく踏まえました上でしかるべく配分をしてもらいたい、かような目で必要な行政指導と申しますかあるいは助言と申しますか、さようなことも場合によってはしていきたいと考えておりますが、なお今後の問題でございます。  それから、その証券金融会社に出します分も、信用保証協会に出します分も、いずれも出資とかいうものではございませんで、預託でございます。したがいまして、もちろんこれには利息を取るわけでございます。信用保証協会につきましては、何パーセントかは確実ではございませんが、約三%前後といったような非常に安い利息、これは信用保証協会自体の業務が先生御案内のとおりでございますので、コストの面から考えまして争ういう低い金利にならざるを得ない。また、そういう低金利で九十億円を預託するということが公益法人の公益法人たるゆえんでもある、そういうことでございますので、そういう形になろうかと思います。  なお、そういたしますると、果実は、毎年十億円台を生むと思うわけでございます。それをどういうふうに使いますかは今後の問題でございまして、大きな目的は認可になりました定款に掲げられておりますけれども、具体的に金額をどういうふうに配分してどうするかということは今後の財団運営上の問題でございます。ことに信用保証協会につきましては、組織が全国的に散らばっておると申しますか、中央の組織もございますけれども、全都道府県に散らばっておるという点もございますし、また、保険につきましても、公共的な意味での環境整備、改善というような使途もやってみたいということも、設立発起人と申しますか、関係者のほうでもございますが、それにつきましても、今後どういうふうに具体化すればその目的を逸脱しないで効果的であるかということもございますが、いずれも今後の問題でございますが、私ども証券局としての感じで申しますと、証券市場の振興という点から申しまして、別途財団法人資本市場振興財団というものが設立されておることは御案内のとおりでございます。そこでは、各種の公益的な見地から、資本市場証券市場の健全な発展のために必要なる助成ということをやっております。そこで、この毎年の果実のうち、どのくらいの割合が資本市場証券市場のほうに回されるか、これは今後の問題でございますけれども、かなりの部分は回されると当然予想されます。そういたしました場合には、私どもは、それを二つの財団で競合といったら語弊がありますが、別々にという形にするよりも、あげてこれを資本市場振興財団に出しまして、資本市場振興財団が、固有の毎年の生ずる果実と、それに、ただいま申しました今度の新しい財団から受け入れます何億円かをお預かりいたしまして、そこで合わしたものを証券市場振興のために使っていく、これが最も効果的ではないか、かように考えておりますが、額その他につきましては今後の問題でございます。
  111. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 この問題をやるのが本旨ではありませんので、いろいろこの処理をめぐって本委員会でもしばしば質問をしてきた問題が一段落をしたということでございますから、この残余財産の処分の問題等について、適時適切に本委員会に対しても御報告をいただくように、また、電力債保有分を九十億、先ほどこのワク外に十六億あるようなお話でもありましたけれども、それらの数字等につきましても、詳細な資料をひとつあとで提出をいただきたいと思うわけであります。そこで、いま、そういう株式会社日本共同証券の清算の残余財産処分の問題につきましても、約九十億という金が公社債金融にという限定目的を持って日証金あるいは大阪証金あるいは中部証金等に回されていく、こういうことでありますが、先ほど参考人の皆さんからも出ましたように、証券市場の中で、やはりいま、公社債市場というものが非常に正常化され、育成されていかなければならぬということが十年来の懸案としてあるわけで、こういうところに回っていくことも、これは今度の残余財産処分の問題としてたいへんけっこうなことであると思うのであります。そこで一つ関連してお伺いしたいのは、国債償還期限、何といっても公社債市場の一番大きなものとしては国債の問題があるわけですし、国債の先行条件、また期限の問題、こういうようものと関連して公社債市場正常化というような問題も考えられるわけでありまして、その中で、この国債償還期限を三年延長するというような方針も最近ちらほら報道をされている、あるいはまた、応募者利回りの引き上げというようなことについても報道をされておるわけでありますが、さらに、それと歩調を合わせて、一流会社発行の事業債の償還期限を十年にしよう、そういう方針が、たとえば電力、鉄鋼あるいは重電機というような証券市場における最有力銘柄といいますか、優良銘柄というものについてそういう方針が出されているというようなことがあるわけでありますが、この公社債市場の育成という問題について、こういうものがどういうようにいま大蔵省として考えられ、いま申し上げたような方向、国債、事業債を通ずる償還期限の延長の問題あるいは利回りの是正の問題、先ほど北裏参考人が、公社債市場の育成といったら、もうずばりで言えば、発行条件、特に利回りの問題というものが自由化されるというようなことがまず最初に行なわれなければならないし、そのことがもうむしろすべてでもあるというような言い方もなさったわけですが、これらの問題について証券局の考えをお聞きいたしたいと思います。
  112. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 国債の問題につきましては、別途、財政当局という意味大蔵省の中でまだ議論を始めておりませんので、言うことを差し控えたいと思いますが、公社債市場正常化という点からは、先ほどから意見がございましたように、発行条件を弾力化する、自由化するということが大きな眼目だろうということは、私どももそのように思っております。しかし、今日でも別に法令その他によってこれを固定する、あるいは統制するということはしておらぬのでございまするが、そこに一つの慣行と申しますか、指導と申しますか、そういうものができておりますために非常に硬直したような形になっておりますことは、はなはだ残念でございます。私ども、今後の弾力化、自由化の方向といたしましては、いま仰せのような償還期限の問題でございますが、ことに大型の、たとえば電力、鉄鋼といったような大型企業で設備産業という面につきましては、設備の耐用年数から申しましても、現在の七年という償還期限はいかにも短期に過ぎる。国際的に見ましても、そういう短期の社債というものは非常に珍しいわけでございますので、この期限のしかるべき延長をはかるということが望ましい方向である、かように思っておるのであります。ただ問題は、来年度なら来年度における公債において見通される資金需給の状態でございまして、私どもとしましては、目下金融が緩和しておる、緩和基調にあるということもございますが、はたして来年はどういう発行規模ないしは償還見込みが現状のままで立つであろうかどうだろうかということをいま作業中でございますが、お尋ねの自由化のことにつきましては、機会を見てさようなことに動き出すことが望ましい、かように考えております。
  113. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 長短金利の異常な状態、コールについて見れば八・二五%だ、こういうようなことになっておって、しかも長期金利の一流事業債ですら八・〇四六%ですか、こういうような状態にあるという、こういうものを是正しない限り、起債市場流通市場の育成ということにはつながらないだろうと思います。しかも、そういう中で今日国際化進展をしてくるし、日本市場でもアジア開銀債が昨年発行されましたが、今後外国法人等が日本の市場において債券を発行するというような事態もあるだろうし、あるいは四十六年の秋には世銀の円建て債券発行も予定されているというようなこともあるようであります。  こういうような状況において、いま、将来にわたることだから慎重な答弁をなさったのかもしれませんけれども、たとえば証券界などでは、むしろ今日のような事態においてこそ公社債市場を育成強化して、長期より短期のほうが高いというこの異常な金利体系といいますか、こういうものを是正する一つのチャンスだというようなこともある。金融界などでは、これが金融債に波及するとコストアップにつながるというような警戒論もあるようでありますが、こういう問題についてもっと積極的なかまえで、先ほど申し上げたような国債の長期化を含めて、あるいは利回りをよくしていくというようなこと、一流事業債等についてもそういう方向をとるということについては、かなり公社債市場の育成などということを常に叫びながら、そういう問題についてふん切りがとうとうつけられないで今日まで来ているという事態であるし、先ほど申し上げましたような国際環境の変化という事態、経済の国際化というような問題を踏まえて、やはりことしじゅうにはこういうものが実現するような方向に進むべきではないかと思うのでありますが、この点について局長からでもけっこうだし、次官からでもけっこうですが、その見通しをひとつ明らかにしていただきたい。
  114. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 従来公社債市場正常化をはばんできた理由はいろいろありましょうけれども、一つには、ただいま御指摘のありましたように、借り入れ金にのみといいますか、何しろ金融がタイトになってまいりまして、限界需要的なところで、しかも低金利政策というようなところで、無理をした――ほんとうを言いますと、実勢から申せば相対的に低い金利の社債発行が行なわれる、この繰り返しが正常化を妨げる大きな原因だったと思うのです。むしろ金融緩和下、正常時においてこそ、ノーマルな自然な条件において長期的な資金を安定的に確保していくということでなければならない、かように考えるわけです。そういう意味からいいまして、今後比較的緩和ぎみの正常な金融情勢が見通されるといたしますれば、まさしく御指摘のような、おのおの望ましい正常化の方向にいくべき時期としてはふさわしいのじゃないか、かように存じます。  ですけれども、反面、今後、従来の傾向からいたしまして、事業側その他におきましては、金融が緩和されますと、従来のようにあるいは借り入れ金で起債できるのではないかというような気持ちがまた上がってくることも事実でございます。私どもとしましては先ほど申しましたように、ここは客観的、冷静に、来年度における社債発行資金調達の必要額を考えますと、現状のままでいった場合に、はたしてどれだけ新しい消化が可能であるのかという見通しをできるだけ客観的に描きまして、それをもとにしながら各方面のコンセンサスといいましょうか、理解を得ながらスムーズにこの正常化の方向に踏み出すことにいたしたいと思っておるわけでありますが、いずれにいたしましても、まだ本年度二カ月近くございまするし、そのうちには新年度における金融情勢の見通しもより具体的にアプローチも可能であるかと思いますので、新年度に入りますまでに、新年度におけるやるべき事柄も含めまして何らかの見通しというものを立ててみたい、かようなことで鋭意勉強中でございます。
  115. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 あまり慎重に慎重に、各界各方面とのコンセンサスというようなことでなく、これはある程度政策的な判断としてそういう方向というものを強力に誘導する、どこかで踏み切りをつけるというようなことをやらないと、いつまでたっても――十年一日のごとく、今日までこの問題が同じような状況で来たということから一歩踏み出すというためには、次官も局長も決断する時期というものを少なくともことしじゅうあたりに設定できるような気がまえで真剣に取り組んでいただきたいと思うわけであります。  次に、本委員会で昨年、税制の審議の中でございましたけれども、非公開株が審査基準を満たして上場されるという場合に、額面五十円の株が一気に三百三十円になるあるいは六百円になる、こういうようなことがあるわけであります。もちろん、その前段階において、登録、店頭売買などで実績はあると思うのでありますが、そういう際に、やはり今日の日本の譲渡所得の場合に、いわゆるキャピタルゲインに課税をつけないという問題があって、無税のプレミアムを個人が、膨大な四十数億というようなものを得て、しかも税金がかからぬという問題を通じてこの委員会で取り上げたわけでございます。その際に証券局長は、この新しく上場をする場合の株価をどのくらいにするかというようなことについては、何らかの基準のようなものを設けて適正なものにしていきたいというような答弁があったわけでありますが、この点についてその後どのような御検討をなされておるのか、この点をお伺いいたします。
  116. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 お尋ねの新規公開の場合の価格の適正化の問題でございますが、私ども、いろいろと検討をいたしまして改善を行ないました。  一つには、公開の際に、放出すると申しますか売り出すと申しますか、いままで一人ないし若干名が大量に持っておりました株をいわゆる浮動株として放出するわけでございますが、その株数が従来はあまりにも少な過ぎたように思うのでございます。やはり需要供給の関係がございますので、かなりの妥当な数量を放出いたしませんと、需給上どうしても、理論的に考えられました価格以上の価格になってしまうということがございますので、その点について改善を加えました。こまかい基準はこまかくなりますので省略させていただきますが、感じといたしましては、すでに上場されております株式のいわゆる浮動株の割合というものを資本階層別に調べてみたのでございます。そうしまして、新規公開の場合の放出割合というものを、すでに上場されておる上場会社の資本金別の浮動株割合とほぼひとしくなる程度まで放出させる、その割合を放出させる。資本金によって違うのでございまして、比較的小資本の場合は放出割合、浮動株割合が多くなるわけでございますが、おおむね二〇%程度が放出されるように、浮動株になるように、かなりの大きな資本金になりますと一割近くというふうにとどまるわけでございますが、大体新規公開になりますのは比較的中小資本の場合でございます。一五%から二〇%近くといったような、すでに上場されておる会社の浮動株の割合と同じような数量が放出されるように、売り出されるようにということにいたしました。  そして、なおこの価格の計算でございますが、それを改善まで、幹事証券会社がやっておった実例を見ました上で、いろいろと理論的に出てくるものに対して手心と申しますか、鉛筆なめなめといってはちょっとことばが悪いのでございますけれども、非常にしんしゃくを加えるということをいろんな算式の中でやっておる向きがございまして、そのやり方も各社まちまちである面もあり、理屈も見られないのにやたらに一割減とか一割五分減というようなことを、いわば大事をとる意味でやっておる。しかも反面、実は希少価値等から理論計算よりも上がるべきといったような点が全然考慮されておらないという面もございますので、原則的には一切そういう根拠のないしんしゃくは加えない。いわば国税庁方式でいえば同族会社の株の方式もございますが、それで出っぱなしなら出っぱなしということを原則といたしまして、それにしましても特殊の場合がございますので、非常に例外的には多少しんしゃくという余地も残してございますけれども、原則的にはしんしゃくなし、はじきっぱなし。なお基準会社、バランスをとるべき会社の選択も、従来ではその最も似通っておる会社の株に比較すれば、たとえば二百円ぐらいになるのだけれども、感じとして急に高過ぎると思われるので、少し内容は違っているかもしれないけれども、もう少し値段の安いものはないかというぐあいに、たとえば百五十円の株の会社を引っぱってきてその平均をとるといったような、どっちかといえば大事をとる、大事をとるというふうにいっておりましたのですが、私どもはそういうことに関係なしに、もう業績なり事業内容というものが最も近似しているものが一つなら一つでいいのである。あえて株価から見て他のものを引っぱってくる必要はないのであるということを、その点を整理いたしまして、さような主として三つについての改正を行ないまして実施しておるわけでございます。私どもできる範囲の改善の方法といたしましてはそれが限度ではあるまいかと思っております。もっとも、そう申しましても、市況によっていろいろ違いますが、今日の姿を見ますと、おおむね、たとえば二百円前後で公開価格決定がされたものの当初の値つけ状態は二百四、五十円くらいまでというようなとろで推移しているのではなかろうか。かねてのように二倍、三倍といったような例はまず消えておる、かように考えております。
  117. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 次に法案の問題で、公開買い付け規制に関する制度の創設の問題でありますが、これは企業の買い取りあるいは乗っ取り、先ほども参考人にも質問をしたわけでありますが、こういうことが公開の場で行ない得るということに道を開いたわけでありますが、公開買い付けをやろうというものが大蔵大臣に届出書を提出する際に、買い付け期間であるとか目的であるとか、買い付けの価格あるいは買い付けの資金源などを届け出をするわけでありますが、この買い付けの目的としてどういうものが――これは一般的には経営の支配というようなことがあるのでしょうけれども、そのほかにどういう目的というものがありますか。
  118. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 目的投資家にとりまして判断上非常に重要な要素になろうと思うのですし、相手方の対象になっています会社の経営者にとりましても非常に重要な関心事だろうと思うのでございます。はたしてどういう目的が出てまいりますかわかりませんが、従来外国で行なわれております例からいたしますと、一つには経営支配、つまり自分の会社なり自分はこれこれの経歴を有し、これこれの事業を営んでいるものであるというまず自己紹介をいたしまして、ついては買い占めの対象になる会社のこれだけの株数をもらったならば、自分はこの会社について、たとえばこういう技術を提供し、あるいはこういうものをつくって、引き続き自分の系列としてそこでどういうものをつくっていくのである、こういう今後の相手方の会社の経営方針、事業目的ということをいう一つの例。もう一つは、事実上合併の目的であるということをいう例。あるいは買い付けてしまったならば、この対象会社の持っている、つまりいろいろと有形無形の資産がございましょうが、その資産を売るつもりである、つまり事実上解散するつもりであるというような、三つないし四つの類型があるようでございます。
  119. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大体経営支配ということが常識的に考えられる目的であり、あるいはまたそのほか三つないし四つの類型があるというのでありますが、やはり一番多いのは何といっても経営支配、企業の支配権を得るという手段としての公開買い付け制度であろうと思うわけであります。  そこで、この公開買い付け届け出を大蔵大臣に出す。それと同時に届出書の写しを発行会社に送付をする。これは十日以内に行なわれるのか。あるいは大蔵大臣に届け出を出したと同じ日にやはり行なうのか。この点が一つ。  それから通知を、届出書の写しを送付するということによって、発行会社としてはこれに対する防衛の措置を講ずる場合があるだろうと思うのです。防衛の措置を非常に強力にやられた。やる機会を与えるということの一つのメリットが写しを送付するということにあるわけだろうと思うわけですが、こういった場合の、公開買い付けをやろうというものと防衛側との関係というのは、具体的にどういうことになるのでありますか。その間、十日間ではあるけれども、非常に混乱した事態というものがその両者間には起きるだろうと思うのですね、防衛しようという意識が発行会社にあるという場合に。この間のさばき方というようなものはどういうことになるのか。この点についてはどうもあまりいままで質問もないし、また法律上もこれについての調整なり、成り行きというものがどうなっていくのかというようなことについて、私どもわからないわけです。その点をひとつ明らかにしていただきたい。
  120. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 お尋ねの対象会社への通知につきましては、今回改正しようとしております第二十七条の三という規定にあるのでございまして、これによりますと、公開買い付け届け出をした――届け出といっても大蔵大臣への届け出でございますが、届け出をした者は、その届け出が効力を生ずるときまでに、届出書内容と同じものの写しを対象会社に送付するわけであります。ですから、いつ出すのであろうか、送付するのであろうかということは、場合場合によって違うと思うのであります。おそくとも十日なら十日の、効力が生ずるときまでに相手方に着くようにしなければならないのでございます。  ですから、たとえば相手方とすでに話し合いがついてる、事実もう合併のようなことで、業務提携しようという話し合いがついてるというようなときには、むしろ大蔵大臣に届け出を出しますと同時に相手方に送ってしまうということもあるかもしれませんと思います。しかし話し合いがつかなくて、一つの攻防戦になろうかというときには、それはぎりぎりまで相手方には送らないと思います。ぎりぎりは、十日の日がたちまして、効力が生ずるときまでにおそくともしなければならないのでございます。  そういたしますと、前者の場合は、もちろん両当事者が一致してのことでございますから、それは別に混乱とか相手方を拘束するということもないわけでございますが、後者の場合は、相手方は効力を生ずる直前まで実は知らないことになります。と申しますことは、これを知ることにいたしますと、そこにやはり相手方の役員その他によるインサイダー・トレーディングと申しますか、そういうようなことで、その機会に、悪いことを考えれば、市場から現在の比較的安い値段で株を買い占めておきまして、高いオファーの価格でもって売ってしまうということもあるかもしれない。あるいはまた株価操作その他をやろうといたしましても、けさほども非常に議論が出ておりましたけれども、何のことやらわからない間に株価が非常に動くということもございます。  したがいまして、私どもはそこを考えますと、どうしてもその点は、効力を生ずるというときまでには、買うほうも何ら買い付けば開始できないのであります。したがいまして、相手方もその間は何もできないということにしておきまして、それから新聞公告を買い付け者がいたしまして、いよいよ買い付けの申し込みにかかるわけでございますが、相手方の会社はその届け出の写しの送付によりまして、買い付け期間にかけていろいろと株主に訴え、あるいは対策を考えるのであろう。  それからなお、これは政令できめるわけでございますけれども、買い付けば始まりましてから二週間以上一月までというふうにするつもりでございますが、最初の一週間につきましては契約の解除権を投資家に認めようとしております。と申しますことは、最初の買い付け申し込みが現在の値段よりも高い価格でありましたので、株主はこれはいいじゃないかと思って申し込んだところが、相手会社がいろいろとそれに対する反論といいますかを申しまして、なるほどそうであったか、それでは引き続き持っていようというふうに判断を変えるということもあり得ると思います。したがいまして、それぞれに備えまして、初めの一週間につきましては、一ぺん売り付けの申し込みをいたしました投資家株主に対しまして、この契約の解除権を認める、こういうふうなことになっておるわけでございます。
  121. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大蔵大臣に届け出が出て十日して効力を発生する、その期間内に到達すればいいんだということになりますと、意ならずして、すなわちこれに対しては防衛をしたいという形で攻防戦というものが始まる場合はなるべく避けて、公開買い付けができるだけスムーズにいくようにというむしろ配慮なのではないかという感じがするわけであって、そういうことではたしていいのかどうか。あとで若干、一週間以内の場合についていま契約解除できるような方途も講ずるというようなことで、投資家保護しようということもあるようでございますけれども発行会社としてもやはり乗っ取られたくないんだという立場において攻防戦をやるというのだったら、やはり大蔵大臣に提出すると同時に――この公開買い付けをやろうというのはかなり力のある大きい会社だと思うのですね。力のない比較的弱い会社に対して、そういうことが行なわれるわけですから、それがもっと加速されたような形に、この届け出規制などにしましても、発行会社側にきわめて不利な形になるではないかというような点をおそれるわけなんですが、その辺のところをお伺いしたいわけです。  それと同時に、公開買い付け制度を今回導入をするということは、外資対策に力点が置かれたかあるいは日本自身の産業構造、産業政策、こういうものにより一そう傾斜をした考え方なのか。いずれにしても企業支配あるいは合併というようなものに道を、大手を振って白昼堂々という形でこういう制度を設けるわけですか、そのどっちにウエートがかかってこの制度を導入したのか、この二点を伺いたいと思います。
  122. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 前者の点でございますが、公開買い付けをどういうスタンスでこれを規制するかということは両面ございまして、非常にむずかしい点でございます。と申しますことは、けさほども参考人のほうからも意見もございましたけれども、隠れたる、いたずらに市場に混乱をもたらすような買い占めというものはできるだけ避けてもらうように、ないようにしたい。つまりオープンの、はっきりわかっているそういうものを、同じ買い占めをしようという意思を持っている人がある行動をとろうとした場合に、できるだけその方向に、形態としては望ましい方向に誘導するものでなくてはならぬ。つまり暗いところ、陰湿なところに追い込むようなことでは困るということでございます。その意味におきましては、確かに道をつけてやる、開くということの配慮はその面からは必要である。同時に、相手方の会社という面、ことに御心配の外資ということを考えますと、その意味で現在の会社の経営者側と申しますか、経営陣と申しますか、そういうようなところがそれに対応して何らかの防衛策というようなものを考える余地が少しでも取り入れられればというようなことも考えられなければならぬというような、実はその両面があるのでございます。  そこで、今回の届け出制度でございますが、十日間とにかく大蔵大臣が内容を審査いたしまして、効力を生ぜしめる。ただ届出書一本を大蔵省に買い付け開始と同時にほうり込んでおけばいいということではない。大蔵省というところでチェックをするというか、事前の審査をする。各国に比べて非常に特異な例をとっております。アメリカの場合は、それは同時にSECにほうり込んでおけばいいのでありまして、ほうり込んだらもう買い付けが始まっておるということでございます。もちろんあとの差しとめ命令というものもございます。日本も同様にございますけれども、そういう事前の審理、審査というものはございませんわけで、ヨーロッパのほうでもその点につきましてはほぼ同様でございまして、ほとんど二日とか三日とか、事前のそういうことはございますようですが、これは同時に、いわゆる届けがなされ相手方にも通知されておるということじゃないかと思っております。  さようなわけでございまして、これを今回の届け出制度で十日間大蔵大臣が審査するということにいたしましたゆえんのものは、かなり、こういう道に誘導しながらも、相手方の会社立場を考え、また国民経済全体のことも考え、投資家のことも考えるというような意味で、できるだけのきびしい条件ということも考えた結果と御了解いただきたいと思うのでございます。その意味で、非常に特異な形態をとっておるわけでございます。ただでさえ、たとえばアメリカのような制度でさえ――けさほど鈴木参考人から、先生方が去年とおととしにわたりまして、証取法改正で、アメリカ証券実務に詳しい先生方のレクチュアなりセミナーをやったというお話もございましたけれども、私もそのとき親しく伺いますと、アメリカ制度ですらも、つまり届け出と同時に開始するというその制度ですらも、それがない場合に比べれば相手方の会社の経営者に有利であるということをいまいわれております。それから考えますと、むしろ十日間というのは長過ぎるという批判が、私は率直にいうと、国際的には出るかもしれぬと思うくらいでございます。それはいろいろ外国との間で審理に時間がかかるということもあると思いますので、その面からは理屈がつくと思っておりますけれども、さような面を御了解願いたいと思います。  なお、国内的な面を考えたか外資対策的な面を考えたか。両面あることはあるのでございますが、提案理由でも説明申しましたように、従来日本ではなかった方策であり、外国では多く用いられている。今後国際化するにつれまして、日本に対しても外国からそういうオファーが自由に行なわれるということが想定されるというふうに書いてございますように、どっちかと申しますと当面は、少なくとも当面は、外国からわが国へのオファーがあるということを主として想定しながらこの制度をつくった、こういうことに申し上げられようかと思います。
  123. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 この法案が成立して施行されてまいりますと、企業の系列化、グループ化というようなことが非常に促進されていくのではないか。参考人に対する先ほどの質問でも、これは非常に長い先のことになるかもしれないけれども、かつて経済民主化のために解体された財閥復活というような方向への一つの突破口ができた、こういうふうに理解してもよいのではないかというように考えられるわけなんですが、企業の系列化がより一そう促進される、グループ化が促進されてくる、そのことはやがて財閥形成への方向に証券面から道を開いていくことになるのではないのか。そういう方向というものがこれから出てくるのではないのかということについて、それは私の杞憂であるというのか、そういう方向にも発展する可能性があるというのか、その辺のところをひとつ御答弁願いたいと思います。
  124. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 先のことでございますので断定的に私の口から申し上げるほどの自信もございませんが、率直に申し上げますと、さような御心配はむしろ乏しいのじゃないか。と思いますことは、現在でも合併ということは自由にできるわけであります。それから、こういうオープンの方式を用いないで買い占めを行なうということはできるわけであります。合併はもちろん株主総会承認を得てやりますけれども株主総会というものの現状を見ますと、好むと好まざるとにかかわらず、むしろ合併というのは両当事務者間の、経営者陣の話し合いでしか進んでいかないというふうに思うわけでございます。そうして合併、合併ということを重ねながら大きくなるということは、やろうと思えば幾らでもできるわけでございまして、今回の公開買い付けば、経済的には合併というような場合にひとしい効果を示す場合もございましょうが、いやしくも投資家に広く訴えまして、そこで投資家が売るか売らないかということを個々別々に判断してもらう機会を与えるということになるわけでございます。したがってその辺から考えますと、先生の御質問の点につきましては、私は、現在のままとこの制度ができた場合とにおきましては、株主の判断を、公に、両方の言い分を聞いた上で判断するというクッションを入れましただけに、むしろ経営者同士の意図に基づく企業連合、合体よりも、その点については慎重に運ばれるという点も見られるのじゃないかというふうに考えます。もちろん独占禁止法におきまして競争制限になるような不当な合併とか、あるいは経営者につきましては、当然いずれの場合もひとしく公正取引委員会からの排除命令が出るわけでございまして、これは独占禁止法の適用を排除するものでは毛頭ございません。その点を同一として考えました場合に、以上私が申し上げましたようなことも考えられるのじゃないかというふうに思っております。
  125. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 次に、公開買い付けをやって株を取得をした。この目的あるいは大蔵大臣に届け出目的に反して、買い付けた大量の株を値段の上がったところで売ってしまうというような事態だって、これはあり得ないとは限らぬわけですね。それに対する有効なチェックというものは何かあるのですか。
  126. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 まず罰則でございます。罰則では、その届出書に虚偽の記載をいたしまして実行いたしました者に対しましては、虚偽記載の罰則がございます。
  127. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そのくらいにしまして、次に破ります。  株価安定操作の問題でありますが、株価安定操作は本来いけないことだというのが常識だと思うのであります。それは市場における公正な株価形成、証券市場内における需要と供給を中心にした自然の流れの中でプライスメカニズムが働く、そういうようなことからいえばこれはむしろ邪道であるわけなんですね。しかし経済の実態からいって、あるいは増資をやるとかあるいは時価発行をやるとかいうような事態において、安定操作が必要だというような場面もあるわけだけれども、したがって、そういう安定操作がどういう事態において、どういう範囲で許されるか。あるいはまたそういう操作をやる場合の基準、こういう場合に許されるのだという基準というようなものなどを、現在では政令に委任をされて、政令が出ておるわけなんですが、これを証取法の法文の中に――これは株式市場証券市場の中でやはり非常に根本的な大きい問題だと思うのですね。証券取引法目的自体の中にある公正な株価形成だとかあるいは市場の円滑な運営というような点について、この問題がむしろ逆な面を本質的には持っているのだ、そういうものに対する規制、ルール化というようなものについては、政令事項ではなくて当然法律事項として証取法の本文の中にこれはやはり入れていくべきものだ、このように考えるのでありますが、なぜ政令でなければいけないのか、法文に書けないのか。その辺の事情を明らかにしていただきたい。
  128. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 率直に申しまして、政令でなければ規定できないとは思いません。ただ、現在百二十五条で、仮装売買、相場操縦の禁止及び安定操作の制限というようなものがございまして、いまお尋ねの安定操作は第三項でございますが、その三項は今回の改正でも法律としましてはそのまま残るわけでございまして、政令で定めるところに違反して安定操作を行なっては違法でございます。その条文は、一項、二項と同様に処罰を伴う法律条文としてそのまま残るわけでございます。百二十五条全体につきましては、けさほど鈴木参考人から意見の開陳もございましたが、私どももいろいろ検討いたしましたが、この目的観念というようなものをどうはずすか、はずすべきかどうか、実効あらしめるようにどうするかという点は検討いたしましたが、なかなかむずかしい問題でございまして、なお今後の検討に待たなければならぬという点で今回は見送るということになっております。したがいまして、そのことと関連して第三項の安定操作ということもしかるべき位置を与えられ、また条件づけられると思います。しかしそれまでの間でも、現在の政令そのものが、はたして現在百二十五条の三項で違法な行為でないとしてはずされておりまする、その目的に合致しているだろうかどうかということを考えておるわけでございます。そういたしますと、それはいろいろと問題がある。なおこの条文だけでございませんで、証券会社は別途にディーラー業務、自己売買業務ができるということになっておるわけであります。いかにいわゆる安定操作政令それ自体であれいたしましても、別途に自己売買ができることといたしますと、やはり自己売買ということを通じて安定操作、相場操縦を行なうという疑いがどうしても残るわけでございます。したがいまして、今回の安定操作政令改正のポイントは、どちらかと申しますと、現在の百二十五条第三項の政令の合理化の面も確かにございますけれども、それより以上にむしろ大事なことといたしましては、つまり増資の払い込み期間中と、ラフに申し上げてよろしいかと思いますが、その期間中その幹事証券会社は自己売買を禁止する、これを伴うことに意味があると思っております。したがいまして、それはまた別の条文から出てくるわけであります。その点もございまするので、今回は政令の合理化という範囲内で、しかしねらいは、現在考えられております改善はこれは達せられるという判断のもとに、政令改正でまかなおうとしたわけでございます。先生御指摘のとおり、今後、百二十五条並びにいわゆる相場操縦に関連するような、証券会社の禁止行為にわたりますようなことを引き続き検討しました段階におきまして、あらためてこの政令を含めまして、どういう法律条文にいたしますか、そのときの懸案にさせていただきたい、かように考えておるわけでございます。
  129. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いずれまた機会を見て、この問題は引き続いて取り上げたいと思います。  次に問題を移しますが、この粉飾決算有価証券届出書なりあるいは報告書に、たとえば公認会計士が今度は監査をする。その中に虚偽の記載があり、粉飾決算が行なわれた。そのことによって、それが後になって明らかになり、相場が下落をするということを通じて投資家損害を受けた。たとえばその場合に、いままでと違って、今度は届け出会社あるいは会社の役員、公認会計士及び監査法人あるいは元引き受け証券会社、こういう人たちが賠償の責任を明確にされたわけであります。たとえば、粉飾決算に基づいてかくかくの損害があった、たとえば投資家から一億円の損害賠償請求がなされた。こういう場合に、届け出会社会社役員、公認会計士、元引き受け会社、こういう人たちがどういうふうにその賠償責任を分担をするのか。そういう点について、これは裁判上でだけ争われ、裁判上でだけ決定するということになるのか。それとも、そのことについてどういうシステムで責任の限界を設けて、損害は一億円であったけれども、そのうち公認会計士の分としては幾らだ、会社役員の責任はどのくらいだ、届け出会社の責めに帰すべきものはどれくらいだ、そういうものについて、これは何らかの対策というものはお考えになっておられるわけですか。
  130. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 今回賠償責任者の範囲が役員等に広がりましたが、これは申すまでもございませんけれども規定にはっきり書いてございますように、別段無過失責任を書いたわけではございません。つまり故意または過失があるということでございます。そういう意味においていえば、民法、商法上の一般原則から申しますと、共同して違法、不法行為を行なったという場合に当たります。その場合の責任は、この一般原則の解釈といたしまして連帯の責任を負うというふうに私は了解しております。証取法自体にその点は書いておりませんけれども、これは賠償責任に関する共同の不法行為の場合の責任あり方という原則がそこに適用される結果、連帯になるだろうと思います。その場合の連帯というものは、先日も申しましたが、原則的には均一の負担ということになるはずでございます。
  131. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 どうもその辺のところ、はっきりしませんが、時間がありませんので……。連帯責任だということになりますと、今度はお互い同士の間の求償権の問題などが出て、法律関係がたいへんややこしいものになるだろうと思うのであります。したがって、この問題について、被害者としては、連帯保証ならばだれに請求してもよろしい、会社に請求してもよろしい、あるいは公認会計士にまとめて請求してもよろしいということになり、またお互い、そのあとの処理として求償権の行使というようなことにも発展するということになって非常にむずかしい。まあ法律ではこういう制度はきちんときめた、しかし実際、現実責任の分配というような問題については非常な難点があるのではないかという疑問だけ留保いたしまして、次に移ります。  証取法六十五条との関係で若干伺いたいのですが、最近、金融がタイトであるということの中に、非公募社債、私募がかなり増大をしているというような事態が見られるようであります。そういうことになってまいりまして、これが今度は自由化進展とともに外国証券の支店が設置をされるというような場合に、こういう私募債を引き受けることについて、まあ引き受け業務はいいわけでありますから、外国証券会社の支店が許された場合にこの私募債を相対で契約をしてどんどん引き受けていくということになりますと、この六十五条はそういう面からくずれていくのではないか、こういう気がするわけでありますが、その辺のところはどういうようにお考えでございますか。証取法六十五条がこういう面から、非公募倍がふえている、外国証券の支店がふえてきているという形の中で、どういう関係になるのか。また国内の企業でも銀行と話し合いをして、あるいけ生保会社と話をして私募債がどんどん引き受けられるというようなことについて、証取法六十五条との関係でその問題はどういうように理解をされるのか、この点を伺いたい。
  132. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 私募債につきましては、御心配の六十五条の問題よりも、それがいわば乱発的になり、それが望ましくない姿で流通市場に出てくることのおそれのほうを私どもといたしましては重視してまいりたいと思っております。この六十五条で金融機関に対して禁止しておりますのは、申すまでもなく証券取引法第二条に規定します証券業務――証券取引行為とでも申しますか、証券業務をということでございまして、その中には確かに「引受」というのがあるわけでございます。証取法では「引受」という定義はないのでございますけれども、二条六項におきまして「引受人」というのがございまして、これは他に有価証券を転売といいますか、売りさばく目的をもってある有価証券発行者から取得するという、その者を「引受人」という、その「引受人」の定義を通じてこの第八項に書いております「引受」ということの意味がおぼろげながら察知されるというようなことでございますけれども、たとえば機関投資家というものがある有価証券発行に応募いたしましてその有価証券を取得する。これは投資対象として購入するわけでございまして、別に証券業務の違反行為をやっておるということではないわけでございます。それが他に転売する目的ということになってまいりますと、そこに証取法上免許違反という問題が出てくるわけでございます。で、先ほど申しましたように、私募が乱発的になる、不健全なものが流通市場にいつの日にか還流していくということももちろん警戒しなければなりませんし、また私募という形を通じて、実は転売の意図をもって取得する、こういう免許違反行為がありますれば、これは私どもとしましては十分にその面からチェックしなければならぬと思いますが、その点につきまして、内外を問わず金融機関等が機関投資家としてそれに応募する、あるいは取得するということにつきましては、私は別に六十五条の問題もございませんし、それ自体法律上の問題はない、かように考えるわけでございます。
  133. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 次に、時間もありませんから……。  外国証券の支店が設置されるわけでありますが、まず最初に伺いたいのは、現在アメリカのメリル・リンチ社がもうすでに申し込んできているという話でありますが、大体いまのところ予想される外国証券業者はどのくらい――あとベーチェ、バーナムとかいろいろあるようでありますが、どの程度支店設置の希望があると把握をされておるか、その点をまず伺いたい。
  134. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 さきにも申しましたが、欧米とも今回の立法に非常に注目をしておるということは事実でございますが、ただいまおあげになりましたメリル・リンチにいたしましても、まだ正式に私どもにアプローチといいますか、手続的な申し込みあるいはそのサウンドには参っておりません。しかし関心を示しておる会社はかなりあると思います。  どれくらい実際に申請書が出て免許をすることになるのだという今後の見通しのお尋ねでございますが、さような事態でありますので、しかと予測することは困難でありますが、またそれが広く行なわれるようになるのは、日本人が外国有価証券への投資を為替管理自由化するという時期までは、まああまり日本人からしましてのそういう支店のニードというものもないかとも思いますし、向こうにとりましても収益見込みということも乏しいかとも思いますが、そういった事態にも備えましてあらかじめ店舗を出すということも考えられます。さようなことを考えますと、まあ私ども証券局といたしましては、数社程度が進出してくるのではないか、かように各種の事態から想像しておるわけでございます。
  135. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 外国証券の支店を日本に設けた場合に、認可を業務別にやる、こういうたてまえになっている、あるいは併営も認めるということになっているわけですが、一番予想される彼らの希望する業務というのは東証における引き受け業務だろうというようなことがいわれているわけでありますが、その点についての見通しはいかがでございますか。
  136. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 わが国の対外証券投資が自由化されますまでの間は、おっしゃるようなアンダーライティングの業務に主として関心を示すであろう、かように想像されます。
  137. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 以上で私の質問を終わります。
  138. 毛利松平

    毛利委員長 松尾君。
  139. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 一つ伺いたい点は、午前中参考人意見を聴取して痛感したことは、この証取法投資者保護に徹している、こういう点を強く感じたわけです。それで、投資者保護して、投資者から企業に投資をする、企業はそれによって栄えていく。こういう立場を考えると、投資者保護が中心でなければならない、こう考えるわけですが、まずこの点について、この法の精神は投資者保護が根幹なのか、最優先するものかどうか、証券局長の考え方を伺っておきたい。
  140. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 第一条に「国民経済の適切な運営及び投資者保護に資するため、」と、この法律目的がうたわれております。今回もちろんこれを改正しておりませんで、私どもは全くおっしゃるとおり、投資家保護が第一義とするところであると考えております。
  141. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 投資者保護が第一義というのですけれども、いま局長が読まれたように、これには「及び投資者保護」として、「経済の適切な運営」が中心になっているのじゃないか、こういうふうに法の第一条の目的を見た限りでは考え得られるわけです。そうすると、いま精神は貫かれているんだ、このとおりだと言うのですけれども投資者保護する、しかる後に国民経済の適切な運営をはかる、こういうふうに改むべきじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
  142. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 国民経済の不適切な運営を目的とする法律はどこにもあり得ないわけでございまして、あらゆる経済法規はあげて国民経済の適切な運営に資することを目的としていると思うわけでございます。そういう意味から申しますと、確かにおっしゃいますように、この「及び」というあたりの表現は直しまして、投資者保護を通じて国民経済の適切な運営に資すというような考え方も出るかと思いますが、それは国民経済ということが次元的により高次な概念であるということで、この解釈といたしまして、私どもは、この証取法はとにかく投資者保護ということを通じまして国民経済の適切な運営に資するんだ、こういう読み方をしております。
  143. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 これは読み方の相違で、確かに第一義、それから「及び」という点に相違はあると思うのですが、今回の改正を見て確かに、開示制度そのもの、それから賠償責任の拡大、公開買い付け制度等を通して見たときに、これは投資者保護ということに相当意を用いられているということは了解できます。ただ、いま言った点が中心になっているかどうかという点については、個々に見てまいりますと、一部疑義があるわけで、この点については、きょうは私としては詰めになりますので、具体的な点について伺ってまいりたいと思うのです。  先ほど来、一年決算会社の半期決算について相当論議されております。私も伺ったのですが、まず第一点は、現行証券取引所においては、半期決算公認会計士監査を必要としておる。ところが、一年決算会社に半期報告を義務づけたのに対して、公認会計士監査を必要としなくなった。この点がむしろ逆行するのではないか、こういうふうに考えるのですが、投資者保護のために一年決算会社に半期報告を提出させるということは、これはこのとおりでなければいけないと思いますが、ただ、なぜ従来証券取引所でもって半期決算公認会計士監査をやっておったものを改めて公認会計士監査を必要としなくしたか、この理由を伺いたいと思います。
  144. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 その点は証券取引審議会で議論する際も十分検討いたしたところでありまして、現在一年決算会社について、取引所が半年ごとの半期報告書について公認会計士監査証明を要求しておりますのは、この上場会社と取引所との間の上場契約に基づくものでございます。したがいまして、証券取引法上は、それにもしも虚偽の監査証明がありました場合、罰則の規定並びに民事責任規定――今回特に公認会計士民事責任強化されるわけでありまするが、さような法律上の制裁はもちろん伴っていないわけでございます。  で、片方、今回の提案では、半期報告書につきましては公認会計士監査証明を要求しないということにいたしておりまするが、けさほど来参考人からの意見の御開陳がございましたように、また答申に盛られておりますように、いつまでもそういうふうにするというつもりでやっておることでもございません。今後は、望ましい姿、あるべき姿、当然それにもこの監査証明がいくべきであるという認識は持っております。ただ、けさほど来のように、決算が行なわれておりませず、また監査証明の基準というものにつきましてはまた今後の研究にまたなければならないという面がございます。さようなわけで、その点をペンディングということにいたしておるわけであります。やがてそれらのことにつきまして詰めました上においては、今度は証取法に基づく監査証明を導入するという時期が必ずや来ることを期待しておるわけでございます。
  145. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 確かにルールを確立することを急がなければならない。このルールを確立するために、これを保護をするために、虚偽記載その他――まあ監査がありませんので、かりに一年決算の慣行でやったところが、半期の報告を書く、この場合に、何らか虚偽記載等があると考えられる。そういう場合の歯どめについては、ルールを確立するまでの間に何か考えているのかどうか、その点を伺いたいと思います。
  146. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 ごもっともでございまして、その届出書報告書に虚偽その他訂正を要すべき点がありました場合は、大蔵大臣が訂正命令を発するということ、並びに、虚偽の報告書を提出しました者に対しましては、一年以下の懲役または十万円以下の罰金――これは従来の罰則からしますと非常に重くなり、従来の普通の決算の際の報告書虚偽記載よりもはるかに重くなったのでありますが、この罰則強化の一環といたしまして、一年以下の懲役または十万円以下の罰金ということに会社は処せられる次第でございます。
  147. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 この歯どめについては、ただ罰則だけでなく、早急にこのルールを確立するために、一応目途は、次に審議会が答申してなのか、どういう目途で進めようとしているのか、これだけ伺っておきたいと思います。
  148. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 今後の手続につきましては特に目途もございませんが、引き続き証券取引法改正問題を検討するということに証券取引審議会のほうではなっておりますので、いずれそれに基づくまた別個の法案というものが御審議をお願いするという時期も来ようかと思いますけれども、その場におきましてなお検討していただけば一そういいかなという感じはいたしますが、別にこれをそういう手続を経なければならない、こういうわけでもないかと思いますけれども
  149. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 半期決算についてはこれで終わって、次に届出、報告書開示制度の改善ですが、二十五条で届出書の公衆に対する縦覧について、「発行者がその事業上の秘密の保持の必要により」「書類の一部について」大臣の承認ある場合には、「その一部は、公衆の縦覧に供しないものとする。」と、こうあります。これは大臣の認定ということが非常に重大な問題になりますので、この事業上の秘密保持に必要なというと、けさも伺ったのですが、どうもあんまりはっきりしなかった。この点について具体的にはどういうふうに考えているのか、具体的な面でひとつお答え願いたいのですが。
  150. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 けさほど澁谷参考人から、原価計算を部門別にするのが非常に繁雑である、あるいは国際競争上明らかにするのは不利であるからやめてくれといったような御要望もございましたが、私どもはこの二十五条第四項の事業上秘密の保持という事項の中身として、原価計算の部門別内訳のことを読んでおりません。その他、現在この条の適用を受けて一部を公表していないという事例はございません。この事例といたしましては、昭和三十年代でございますが、主として外国との間と思いますけれども、いわゆる事実上の技術提携契約、しかもパテントで特許登録されているものでなくて、いわゆるノーハウとしての技術提携契約がございまするが、それはまさしくシークレットということがパテントを使ったノーハウの特質でございまするから、そういう契約がありましたならばその部分は添付しなくてもよろしいとした例はございまするが、最近では、数年前の改正でそういった提携契約書類の添付は要しないということに別途改正が行なわれておりまするので、現在二十五条第四項による事業上の秘密というものは事例がないと思うわけでございます。
  151. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 私は、この秘密保持ということに便乗をして、将来の投資判断を欠くようなことがあってはということをおそれるわけです。特にむしろ積極的に進めて、午前中にも申し上げたのですが、企業の将来のための支出ですね、まあ、たとえていいますと、調査費用とか、あるいは広告費用、あるいは従業員の教育費用、こういったことは投資者としての将来の判断に重要な面だと思うのです。また、業績の上では、注文の上昇とか、あるいはまた停滞並びに返品その他の顧客のための情報、動向というものは非常に重要なものとなると思うのですけれども、これらを積極的に報告書あるいは届出書にむしろ行政指導としても加えるべきではないか、こういうふうにも考えておるのですが、これらについてその必要があるかないか、あるいはあるとすればどうするかという点についてお答え願いたいと思います。
  152. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 けさほど参考人からの答弁にもございましたように、生産計画、受注残高といったようなことは記載することはありまするが、将来の見込みにつきまして、はたして届出書あるいは報告書の記載事項としていいかどうか、行政指導といたしましてもなかなかむずかしいところだと思います。投資者といたしましては、なかんずく収益の見通しということに非常に重要な関心を持つことは申すまでもございませんが、一方報告書なり届出書というものは、虚偽記載者に対する厳重な制裁をもって臨んでおりますし、いやしくも虚偽にわたることがあってはならないわけでございます。さようなわけで、これを、いまお尋ねのお気持ちは投資家立場として非常によくわかるのでございますが、その虚偽証明という、そういうことの範疇外で、しかも投資家に、確定的事実ではないというような一つの条件、制限ということをはっきりした上で、投資者として非常に知りたがっているようなことをどういう方法で発表してもらうかといいますか、したほうがいいか、私お説のお気持ちは非常によくわかりますが、今日のところ明確な方向づけを用意しておりませんが、この面につきましてはお説を十分に心にとどめまして、今後慎重に検討させていただきたい、かように思います。
  153. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 単に見通しだけでなしに、いま言いましたところを具体的に、教育費あるいは広告費、こういったものを計上するわけですから、したがって、これは見通しでなく、今後十分に考えていかなければならぬと思うのです。アメリカあたりでもずいぶん、将来のための支出である、いわゆる広告費あるいは職員の教育費等は将来のための支出なんだ、したがって、将来の企業判断としては非常に重要なものであるから、これは投資判断として十分考えていかなければならない問題だ、こういうことが相当論議されております。したがって、たとえ民事責任あるいは刑事責任筆があったとしても、こういうことを抜きにして、不明朗な状態の報告等があるとすれば監査人を窮地に追い込む、こういうことも生まれるわけでありますので、ぜひこの点は真剣に取り組んで、ひとつ積極的に検討してもらいたい、こういうふうに思います。  それから次に、賠償責任の問題についてでありますが、まず免責条項の中に、法文で、役員等について、相当な注意を怠った、こういうことがありますけれども、高度な知識を持った者が相当な注意を欠いたということは、将来の責任上非常に重要な点になると思うのです。そこで、ここに注意を欠いた点というのを具体的に想定したらどんな場合があるか、それをまず伺いたいと思います。
  154. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 具体的にというのははなはだむずかしいわけでございますが、その当該役員の具体的な会社の中における地位、ポストに応じまして、社会上あるいはその地位上要請されていると認められるそれこそ相当の注意を欠いた、こういうことになるわけであります。と申しますのは、公認会計士の場合は一人ということで、また十分な注意をもってあらゆる監査証明をしなければならぬということでございまするが、役員の場合におきましては、いろいろと役員の種類の分担もあるわけでございます。さようなところからいたしまして、一律にこれを具体的にこういうことだということを申し上げることはできないのでございますが、その分担がある場合は分担、あるいは代表権がある場合は代表人らしく、通常のその職分を尽くすべき場面におきまして、社会的に要請される職分を相当の注意をもって果たしているかどうか、こういう点になろうかと思います。
  155. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 この賠償責任については、法制化の上でワクが広げられて、投資者保護の万全の手が打たれたようには見えるんでありますけれども、午前中にここで伺ったように、公認会計士が一応賠償責任に応ずるといっても、実際には資力的に応じられない、こういう面で公認会計士協会あるいは監査法人等で今後十分検討していくということでありますから、これらについては、やはりこういう場合が注意を怠ったもの、あるいは過失立証についてはこういう場合は過失とするというある程度のワクはきめておかなければならないと思うのです。非常にむずかしい問題ではありますけれども、起こってから結局立証責任ということで立証できなければ、一般投資家はいままでと同じように大きな損害をこうむる、こういうことになりますので、その点についてもひとつ十分に御検討を進めていただきたい、こういうふうに、これは要望しておきます。  それから次に、株の操作あるいは操縦について、いまも広瀬委員からもお話がございました。現実にこれは株の操作等によって相当事故が頻発しておるわけでありますけれども、具体的な例で二十条、百二十五条ですか、これらについて伺いたいのです。  たとえば私の知った範囲では、ある株価が百三十五円がらみであった。ところが、新製品ができたという風説を流布して、これが三百五十三円に急上昇した。その後会社が否定的な態度に出たんですけれども、うわさは容易に解消することはできないで、結局会社でもやむなく新製品発表、こういう言明をした。それがために百三十五円であったものが三百五十三円、さらに五百五円の高値を示すようになってしまった。しかし専門家から、新製品について内容に疑惑があったのでこれを検討するんだという報道がなされたところが、この株価は急落して百九十円になってしまった。これは明らかに相場操縦ですが、百二十五条の第二項に当たるものですけれども、これはどうでしょうか。
  156. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 なかなかむずかしいんでございまして、いまおあげになりました百二十五条の第二項は「何人も、有価証券市場における有価証券の売買取引を誘引する目的を以て、左に掲げる行為をしてはならない。」その第三号に「当該有価証券の売買取引をなすにつき、重要な事項について虚偽であり、又は誤解を生ぜしむべき表示を故意になすこと」、あるいは第二号で「当該有価証券の相場が自己又は他人の市場操作によって変動するべき旨を流布すること」とあるのでございますけれども、けさも鈴木参考人からの御答弁もございましたけれども、いまおあげになりました会社の新製品開発ということがはたしてこの第二項の有価証券の売買取引を市場に誘因する、誘い入れる目的を持っておるものであるかどうか、この立証はなかなか困難ではないかと思うわけであります。先生がいまおあげになりました例は数年前の例であったように思います。私どももその当時のことを聞きますと、取引所におきましても、その辺の会社からいろいろと事情を聴取するということで、十分にその辺の監視は怠らなかったようでございますが、これをもって百二十五条の違反として告発するというまでには至らなかったのでございまして、にわかに百二十五条に該当する、こういうふうにお答えできないかと思うわけでございます。
  157. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 鈴木参考人からもお話がありましたように、私も第百二十五条並びに罰則の百九十七条については、こういう目的ははたして、どんな場合にも見られないんじゃないかと思うのです。いわゆる「何人も、他人をして証券取引所に上場する有価証券の売買取引が繁盛に行われている」、これは、新製品ができたのでこれはよくなるぞ、こういうことを流布する場合に、要するに有価証券の売買取引の状況に関して他人に誤解を生じさせる、これは故意であるわけですね。ところが、百九十七条によりますと、「有価証券募集、売出若しくは売買その他の取引のため又は有価証券の相場の変動を図る目的」です。この事実を見ますと、明らかに、ただ有価証券の相場変動のためにやったのだ、私はこういうことはないと思うのですね。したがって、この目的をはずすということについては、どういう結果が生まれるのかをひとつお答え願いたいのです。
  158. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 お気持ちはよくわかりますし、私どもも百二十五条ないしは百九十七条がなかなか目的概念から確証を得にくいというところで、何とか改正すべきじゃないかという議論もずいぶんしたわけでございます。そのときに第一次的に直感的に浮かびますことは、目的概念を取ってしまったらいいのじゃないか、こう思うのでございますが、しからば目的概念を取ったあとの姿がどうなるかと申しますと、これまた人と人との単なるうわさ話も処罰の対象になるかのごとくに及んでまいりまして、これも罪刑法定主義と申しますか、いやしくも人を処罰するという段になりますと、非常におそろしい規定のような気がするわけでございます。さようなことでいろいろ議論をいたしましたが、いまもってまだ非常に結論が出しにくいという状態でございますので、今後引き続き証券取引審議会におきまして慎重に、しかも前向きに、どうすればお説のような方向に、しかも妥当な改正がなされるだろうかということを検討してまいりたい。今日の段階ではさようにしか申し上げることのできない段階であることを御承知いただきたいと思います。
  159. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 目的をはずすということについては、非常に範囲が広がって困難だということでありますけれども、この規定は明らかに、操縦をして投資家が大きな損害をこうむることを防止している規定であるわけですね。したがって、今日まで相当、数多く事例が――一、二あげたいと思ったのですけれども時間の関係で省略しますが、非常に多発しているわけです。ところが、これに対していままでこの百二十五条あるいは百九十七条で処罰をされた者がない。現実に多発している事故がそのままになっておって、結局法の上では規制しているようには見えるけれども、これは効用がさっぱりない。まるでしり抜けになっている。こういうことを考えると、鈴木教授も早急にこれは何とかしなければならない、こういうことを答弁されておりましたが、当局としては、これについて目途は――今回も当然改正のために論議されたと思うのですけれども、引き続いて早急にやらなければならない。一応の目途はどうですか。
  160. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 あるいはけさほど鈴木参考人からお聞きになったほうがよかったのかも存じませんが、私ども今回のディスクロージャー制度改正のために要しました検討期間ということを参考に考えますると、やはり少なくとも一年半とか二年という期間は必要ではないか、かように考えます。
  161. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 これも鈴木教授は次の審議会にということでありますけれども、どうか次の審議会では積極的にこれが改められるようにひとつ進めていただきたい、こういうふうに考えております。  次に公開買い付けの問題でありますが、この公開買い付けについては、政令で大蔵大臣に添付書類の提出をして届け出る義務が規定されております。ところが、大臣がこの数の多い届け出を受理して、その発効の期間を十日としたのですが、この十日の期間の間に情報が漏れる、はたしてこういう危険はないか、この点はどうでしょうか。
  162. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 実は先ほど広瀬委員からの御質問の際にもございましたが、十日という期間の盛り方でございますけれども、確かにその懸念というものも考えられるわけです。その意味から申しますと、その期間は短ければ短いほどそのほうでの危険性は少なくなるわけでございますけれども、実際問題として当面考えられますそういった公開買い付けの申し込みは外国からのものが考えられる。その場合に、政令で別途、そういう場合には日本国内の居住者をその届け出その他の接触のための代理人ということで選んで、それを通じてということを義務づけるつもりでございますけれども、それにいたしましても、やはり今日のごとく通信、交通が発達しておりましても、多少諸外国との間の時差の関係もございまするし、時間的必要もございますので、やはり三日や四日では不可能であるということで、十日ということが妥当な時期と思ったわけでございます。もちろん私ども役所といたしましては、公務員は公務員法の規定によりまして、罰則をもってその守秘義務というものを義務づけられておることでもございまするし、この点は慎重に扱いまして、いやしくも御懸念のような、その間に役所からこれが漏れていくというような事態の絶滅を期する所存でございます。
  163. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 イギリスの例、あるいはアメリカ規制法案が五日の期間を置いたのを修正されて即日というふうになったという点は御承知のとおりでありますが、この十日間の期間を設けたことについて、十分秘密の漏れないようにということではありますが、具体的にはどういう対策を持っておりますか。秘密漏洩について、十分秘密漏洩のないように指導していきたいということでありますが、具体的に対策は何か持っておられるか。
  164. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 大蔵大臣への届け出でございまするけれども、あるいは大蔵大臣による効力の発生でございますけれども、事務局は証券局でございます。私をはじめ部下職員が守秘義務の順守に徹する、こういうことだと思います。
  165. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 これはイギリス、アメリカ等の例を見ても、やはり秘密の漏洩ということが大きな事故の原因になりますので、これは当然具体策を十分検討しておいていただきたいと思います。これは強く要望しておきます。  次に、この答申案で投資顧問法案の問題について、有価証券流通制度については相場の操縦等の不公正な取引その他、投資顧問制度等の問題がある。これらの問題については引き続き慎重に検討をしていくべきである、こういうふうに答申されておるのですが、投資顧問法案について現在どのように検討されてきたか、その経過を最初に伺いたいのです。
  166. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 投資顧問法につきましては、実は日本の実情といたしましては、証券会社の付随業務としましてお客さまと窓口で接触しながら、いろいろと投資上あるいは資金計画上のアドバイザーを証券会社が行なっておるという例がございます。これは投資勧誘といいますか、証券投資の勧誘と関連いたしまして相手方の資金状態、資産状態そのほかのこともございましょうし、向こうさんの要望なり御質問に応じましてアドバイスするということもあろうと思います。しかしそれは主として証券会社のお得意に対するサービスというのが日本の従来の慣例といいますか、あり方でございます。お客さまのほうもこれに報酬を払うという慣行なりもございませんので、そこにはっきりした投資顧問サービスというほどの重いといいますか、中身の濃いようなサービスなり役務の提供が行なわれているかどうかはよくわからないのでございます。ただ、今後個人の金融資産というものも多様化する、多くなるというようなことになりますと、やはりこの点における先進国たるアメリカにおきましてはそういう資産の運用について、今度は報酬を取ってその資産を預かる、あるいは管理、運用についてアドバイスをしていくというような業務が自然発生的に行なわれており、それについて所要の法的規制も行なわれておるわけでございます。私どもは、実際の日本の現状といたしまして、また従来の姿といたしまして現実のそういうニードというものは乏しかったということから、実はお尋ねの投資顧問法の研究につきましては突き進んだ研究、検討はいままでのところまだ十分にいたしておりません。ただ今後の動向を見まする場合に、そういう立法をするということが広い意味での投資家保護と申しますか、そういうことからも、あるいは詐欺的行為からの防止ということも考えますと必要だと思いますので、従来のところは主としてアメリカの当該法律の勉強、またその法律の運用、またその取り締まりの対象になっているいわゆる投資顧問提供業者の実態の勉強というところにとどまっている次第でございます。
  167. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 午前中、証券の社長から、投資顧問制度については、いわゆる顧客に対しての範囲を伺ったわけですが、私は非常に限られていると思うのですね。いわゆる店頭あるいはセールスマン等が調査機関で調査したものを伝えていくというので、結局開示制度を設けてもごく狭い範囲に限られるのじゃないか、そうしてみると、開示制度をせっかく設けて、これを完全に生かすためにはどうしても顧問制度法案というものは早急に進めていかなければならないものだ。むしろこれがないことは、せっかく法律は改められても大きな穴があいている、こういうふうに言えると思うのです。  そこで、まず、いま局長からはアメリカ制度等を十分勉強する段階だというのですけれども、いま投資顧問を設けるかどうかということに対する問題の焦点にはどんなものがございますか、それをひとつあげてもらいたいと思うのです。
  168. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 率直に申しまして、投資顧問は非常に関連するところが多いと思うのです。アメリカの実態などを見ますると、個人の資産家から財産の信託を受けまして、それを専門的に運用して、その中から一定の割合の報酬を受け取るというような、いわば財産の運用をまかされてしまうという信託行為をしている。ただ窓口で、あの会社の業績がどうでしょうか、株価の将来性はどうでしょうか、こういう単なるインフォーメーションといいますか、そういうのを受ける部門もございますが、これを離れて財産の運用をまかされるというところまで進んでおる、こういう模様のようでございます。そういたしますと、やはり日本国内におきまして関連してくる法域というものがいろいろと出てまいります。その面が一つ。だからどういう業務、業態あるいは法域の中の位置づけということでとらえていくかという面が一つ。それからもう一つは、責任を持ってそういう投資顧問を行なうことができるための資格を持つ人の養成といいますか、資格的な点をどう持つかということでございます。現在日本では任意組合といたしましてアナリスト協会というのがございます。産業分析、証券分析家とでも申しましょうか、そういう各証券会社の調査マンの任意の集合体のアナリスト協会という任意組合がございますけれども、そういったアナリストの養成といいますか、それについてアメリカでは相当高度の試験制度を実施いたしまして、そういう財務分析、その他証券分析、経済調査といったような能力なりキャリアを持っている人を養成する、それが信頼を得て投資顧問に従事する、こうなっておるようでございます。したがって、そういう専門家といいますか、アナリストを養成するという面について、どういうふうな組織なり機構をもってこれを養成していくか、この二つの面があるわけであります。  一方、証券投資信託という面もございますし、それはいろいろとファンドを分けまして、そのファンドの性格に応じた運用をはかっていくというたてまえになっているわけであります。もっとも、これは受益証券発行する、こういう定型化された形において、人から金銭的な信託を受けて専門家として運用するわけでございますけれども、それとの関連も当然ございましょうし、関連するところ、証券界あるいはその周辺との関係、またその人の養成の問題、おおむね申しましてこの三点あたりを中心にアウトラインを描いていかなければならないという感じじゃないかと思っております。
  169. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 答申では、この投資顧問制度というものは引き続いて慎重に検討していかなければならないということなんですが、いま局長のお話ですと、大体アメリカのものを勉強する段階、しかも非常にむずかしいということで、むしろ冒頭に言いましたように、いま問題になっている投資者保護するために前向きになって、いまいろいろ起きておる問題点、あるいは法にまだ不備な点がある、これらを総合してやはり投資者を守っていくためには、こういう点、こういう点はやはり法に不備がある、不十分であるからこの顧問制度等を考えなければならないんだ、こういう焦点等があまりはっきりしていないように思う。したがって、これについてはまだ、いつ答申をしよう、どういうものを答申しようというものはまだ固まっていないわけですね。
  170. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 さようでございます。
  171. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 私はいままで幾つか質問してまいりましたけれども、やはりこの法をほんとうに投資者のために完全に運営していくためには、絶対に必要なものであろう、こういうふうに考えますので、この点についてもひとつ積極的に検討をしていただきたい、こう思います。  それから、ぼつぼつ時間もなくなりましたので、次に外国証券業者の引き受け業務についてでありますが、第十三条に、外国証券業者は引き受け契約の内容を確定させるための協議については、特に支店の免許がなくても大蔵大臣の許可を受けることによって認められる、こういうふうになっております。そうすると、支店を開設しないで、そうして許可を受けて日本企業に関する引き受け業務ができる、こういうことなんですが、欧州の証券業者のように、銀行業務と兼務している場合に、一体これはどういうふうになるのか。この点について先般もちょっと論議されましたが、もう一回お答え願いたいと思います。
  172. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 お尋ねの十三条は、引き受け業務について免許でなくて許可で対処しよう、こうしているものではございません。見出しにもございますように、「(引受業務の一部の許可)」でございまして、その「引受けの業務のうち、元引受契約への参加その他の行為で政令で定めるもの」というふうにいたしております。先ほど証券取引法関連いたしまして、「引受人」の定義はあるけれども「引受」ということの定義はないというふうに申しましたけれども、引き受け業務と申しますことは、準備行為から始まりまして完結的なところまで、かなり幅広い、時間のプロセスもそうでございますが、その行ないます行為の態様もいろいろの段階を経ながら多数の行為が積み重なって一つの引き受け行為が完結する。いわば準備から始まりまして完結まで、いろいろとさまざまな時間の経過とともに行為というものが積み上げられていくという、そういう性質のものでございます。  そこで、そういう一連のものを全部やることは、もちろん免許がなければできませんが、ここで申しておりますものは、「元引受契約への参加」というのは一つの例でございますが、日本で、たとえばアジア開銀債ならアジア開銀債の例をとりますと、アジア開銀債が円建てで日本で発行されました。それでこの幹事証券会社というものは、去年行なわれましたあの場合は、野村証券を代表幹事といたしまして、ほかの三社が共同の幹事会社、それは発行条件等につきましてはマニラからアジア開銀の職員なり総裁なり責任のある人がたびたび往復いたしまして、そうして日本において幹事証券会社あるいは受託銀行との間にさまざまな議論を重ね、折衝を重ねられました末、条件が確定いたしました。そこで日本において引き受け契約にサインされ、引き受けがなされ、発行がなされることになったわけでございます。もっともあの場合におきましては、この現行法のもとにありますので外国証券会社がその引き受けに参加することは認められておりません。しかし、あのときは、外国証券会社で日本で発行された円建てのアジア開銀債が、たとえば東南アジアとか欧州でも売れるから、自分の販売網を使って売りたいという希望を申し入れたこともあったわけでございます。そういう場合に、ここで予定しておりますのは、あるAならAというアンダーライターが外国におりまして、そうして日本において確定いたしましたこのアンダーライターの契約に対しまして、国際的にこれを売りさばいていこうというふうになったといたしますると、そのでき上がりました条件の中においてその販売員の一員になっていこうということで、ついては自分が何万株か引き受けてそれを諸外国で売っていこう、こういう業者があらわれるわけであります。そのときに、おおむね慣例によりますると、その元引き受け契約、アンダーライティングの契約というものが固まりました段階で、そういう諸外国で売りたいと発行者なり主幹事が思いますると、そういう諸外国のしかるべき人に対して招待状といいますか、参加しないかという呼びかけをするようでございます。そのときにはもちろん条件が確定しております。その条件なら自分のところの販売網で売れるという見込みがつきますと、その誘いに応じましてその外国の引き受け会社が日本にやってきましてその元引き受け契約にサインをするということになります。そのサインをする行為は日本国内における行為でありますし、その引き受け業務の一部は日本において行なわれることは間違いございませんが、そのときのような場合に限りまして許可していいということにしようと思うのであります。これは冒頭申しましたように引き受け業務ということが非常に幅広い概念でいろいろな行為から積み重なっておりますので、そういうごく一部だけの行為に参加するということにつきましては、これはあえて日本の免許を要するということにし支店を設ける必要があるということにしますことは、少しオーバーではないかというふうに考えます。アメリカの例等もよく見てみましたが、さような慣例も考慮いたしまして第十三条を設けることといたしたわけでございます。
  173. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 以上で終わります。
  174. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 実は国対からの連絡が私どもにあったわけでございますが、いま予算委員会はストップされて理事会を開催し、理事会がいま休憩になった、こういう状況でありますが、それというのは、四十六年一月十八日浜松市における市民会館において、自民党の、これは静岡県知事選挙における小林法務大臣の演説の内容をめぐって非常に混乱におちいっておるわけでございますが、これは非常に重大だと思うわけであります。これは単に予算委員会だけの問題ではなくて、国会全体のきわめて重要な問題でございます。  その中で特に許しがたい発言というのは、十一月、十二月は自由民主党にとっては書き入れどきだ、それは予算のために努力するからだ。野党の諸君はおそらく郷里に帰ってこたつに入っているのだ、こういう発言がある。野党の諸君は予算の編成の段階において一切タッチをしないのだ、野党の諸君は予算には一指も触れない、役に立たないものだということがおわかりいただけるだろう、こういうことであります。さらに、「参議院、衆議院において毎日野党の諸君は大きな声を出して悪口を言い、批判をし、あげ足をとって、毎日、新聞にはこんなでかい活字で何の某がこう言った、ああいったと出ますが、あのふた月間あれだけやって予算が一銭一厘なおったことがあるか、そういうことになると、なるほど国会というものはギャアギャア騒いでいるが、予算については力のないものだなとおわかりいただけると思うのでございます。」こういうことを言っております。さらにあと続いて、予算委員会などというのはこれはまあ言うならばぎゃあぎゃあのお祭り騒ぎだ、こういう発言をしておられるわけであります。定数があるから自由民主党議員はその委員会に出て、眠っているけれども、これは休んでいるだけなんだというようなことを言っておられるのですね。  それでそういうようなことを契機といたしましてこの発言が予算委員会で問題になった。そしていま休憩になっているというような状況下にあるわけであります。これはまさに現大臣の法務大臣が――かつて倉石放言というものが問題になりましたけれども、それよりももっともっと悪質な、国会を否定するような、そして野党の役割りというものに対してまさに中傷と誹謗を加えた許しがたい発言である、こういうような事態になっておるわけです。したがいまして、この問題については、委員長としても単に法案審議を促進するということだけではなしに、国会の基本に触れる重大な問題に対して、本委員会としても善処されるように要望を強くいたしておく次第であります。  以上です。
  175. 毛利松平

    毛利委員長 質疑を続行いたします。小林君。     〔発言する者あり〕
  176. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いま最後のほうで要望と言ったわけでありますけれども委員長国会運営の一つの委員会責任者でありますが、この委員会だけの問題ではないと思うのであります。この委員会も予算関連法案を十三もかかえておる委員会であります。その委員会委員長としまして――われわれは小林法務大臣の責任をいま追及いたしておるわけでありますが、こういうものについて国会がスムーズな軌道に乗るためには、やはり委員長としてもしかるべく善処をすべきである、中身としてはこういうことを要請いたしたのでありまして、そのことをつけ加えて申し上げまして、私の発言といたします。
  177. 毛利松平

    毛利委員長 要望を承りましたが、聞くところによると、目下予算委員会並びに国対において善処を各種協議しておるようでありますから、わが委員会においては予定どおり審議を続行いたします。小林君。     〔広瀬(秀)委員委員長自身その点どうする   のだ」と呼ぶ〕
  178. 毛利松平

    毛利委員長 記録にとどめておきます。
  179. 小林政子

    ○小林(政)委員 私もいま広瀬委員から出されました静岡県知事選での小林法務大臣の暴言問題については、委員会としてもきわめて遺憾であるというふうに考えますが、時間の関係もございますので直ちに質疑に入りたいと思います。  今回の法改正は、一つには企業内容開示制度改正の問題、また公開買い付け制度の新設の問題、大きな柱に分ければこれが二つ提案をされているわけでございます。私は証券取引審議会の答申の内容等も検討をしてみましたけれども企業内容開示制度の改善といわれておりますが、これは投資家保護という基本的な立場から行なわれたというふうにいわれております。有価証券届け出制度改正内容を見てみましても、募集だとか売り出しだとか、増資の届け出についても、その提出基準発行価額で一億円に改め、発行価額一億円以下のものをなぜ除外したのだろうか。そしてまた、届出書の効力が発生する以前に投資の勧誘を実施することを認めているとか、また増資の際の届出書有価証券報告書の記載の簡素化の問題、あるいはまた仮目論見書制度の採用など、投資家保護立場から非常に矛盾する内容のものが盛り込まれているということに大きな疑問を感ずるわけでございます。証券市場を通じて現在資金の多様化とか多面化というようなことがいわれておりますけれども流通市場における長期資金の調達というものが、産業界の中でも一部の大企業に投資が集中していくというような結果を今後招いていくのではないだろうか、その点についても私は大きな疑問を持つものでございます。私は以上述べてきたような基本的な立場から、何点かにわたって質問をいたしたいというふうに考えます。  まず、第一にお伺いいたしたい点は、有価証券報告書、この記載事項の簡素化ということがいわれておりますけれども、その範囲と内容についてはどの程度のものを考えていられるのか、明らかにしていただきたいと思います。
  180. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 有価証券報告書につきましては、この様式について、証券取引審議会の答申では簡素、合理化をはかるとなっております。私どもいずれかと申しますと、今回考えております改正は、合理化のほうにウエートを持って報告書については考えております。と申しますことは、重要な子会社の財務書類を添付書類として添付させる、これは連結財務諸表作成ということから見ますると、まだ一歩足らないといううらみはございますけれども関連をして親子関係その他関連会社の収支の状態、財産の状態を総合して見るという意味から申しますと、合理化であることは間違いございませんが、それにむしろ重きがあると考えております。それじゃなぜ簡素化があるかという点でございまするが、それは現在の様式をつぶさに点検いたしますと、たとえば事業の内容でありますとか営業の概況という点におきまして不必要なダブりというような面も散見されますこと、あるいは剰余金の処分の明細表といったような明細表の中におきまして、当期の収益の状態ないしは財産目録の状態に投資家の判断として、ほとんどと申しますか、それほど影響がない、利用性に乏しいといったようなこと、しかも明細表の段階でいたずらにこまかいという面も若干見受けられまするので、その辺を主として簡明にするということであります。なお、合理化の面に重きがあると申しますか簡素と申しますことは、投資家立場からは複雑にして見やすいということもあるかもわかりませんが、簡素であるからこそ見やすいという点もあるかと思います。その点を考えますと、株価の推移あるいは一株当たりの配当の推移ないしは利益の推移といったような、そういうトレンドでございますね、投資家としましてあるいは売買高の推移といったような、株主として知りたいトレンドというものにつきましても、やはり簡明な記録をさせるということのほうが、むしろいたずらなる明細の詳しいことを膨大につけますよりは、簡明にそういうところがわかり得るのじゃないかということも考えまして、この簡素化ということばも入っているわけでございますが、率直に申して、どちらかと申しますと報告書は合理化ということに重きがあるというふうに考えていただいてけっこうかと思っております。
  181. 小林政子

    ○小林(政)委員 ただいま合理化のほうに重点を置いてという御答弁を伺ったわけですが、これは審議会として討議をされた場合にも、いま局長述べられたような内容と全く一致していたものなのか、それともどのような意見が出ていたのか、この際具体的に明らかにしていただきたいと思います。
  182. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 十分認識されておったはずでございます。たとえば答申の八ページにございますけれども報告書につきまして詳細であることだけが投資者の投資判断資料として適当であるとは必ずしもいえないので、この際投資者の投資判断上差しつかえない範囲内において簡素化を進めるということでございます。簡素化と申しましても、決して企業側といいますか、その側からの簡素化ということではございません。投資者の判断上、投資判断がしやすいという面から見てということで簡素化の趣旨はなっておるわけでございます。なおその際に企業側から、さような意味から子会社財務諸表をつけることはもちろん賛成であったのでございますが、特に企業側の手数等からして省略してもらえないかという要望がございましたのは、けさほどの澁谷参考人から御要望として述べられておりましたように、主としてこの原価の内訳でございまして、これをアメリカ並みに、部門別じゃなくて当該会社の一括したのを原価計算ということに統合してもらえないかということがございましたけれども、それ以外に企業側からして、これは投資家として不要だから、めんどくさいからやめてくれといったようなことはかかったわけでございます。
  183. 小林政子

    ○小林(政)委員 そうしますと、一つには企業側から出されていた内容というのは原価、いわゆる製造原価の問題一点だけだと受けとめてよろしいですか。
  184. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 こまかい点は幾つかあるのでございます。たとえば所有株数別の株主状況というものをつくっておるわけなんですが、そのときに千株未満の段階というのはやめてもらいたいとかあるいは株主の地域別の分布状態は要らないんじゃないかとか、大株主、役員の所有株式につきまして、額面、無額面の区別は何株でいいじゃないかというようなこととか、さようなさまつにわたる点のことはごちゃごちゃと出ておりましたけれども、大筋におきましては、投資家の判断上問題があるといったようなことにわたる要望は出ていないように承知しております。
  185. 小林政子

    ○小林(政)委員 私、二、三の問題を具体的にお伺いをいたしたいと思いますけれども、そうしますと、いまお話の出ておりました有価証券報告書の製造原価明細書の問題等については、この記載事項を何らかの形ではずすとか、あるいはまたそのほかの形で掲示をするようにするとかというようなことについてはいま全然お考えになっていらっしゃらないというふうに受けとめてよろしいですか。
  186. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 産業界の中には一部、大蔵省に部門別の製造原価を出すことは従来どおりいいけれども、これを公衆縦覧に供するということになりますと、今後外国との関係になった場合に非常に厳格なこまかい比較ができて、いわゆる日本の原価の内容というものをこまかく外国に知らせることになる。これがいろいろな意味においてわが国の対外国競争上支障になることがありはしないかという点から、公衆縦覧は一つの手ではあるけれども、ある程度のまとめたところでいいようにしてもらえないかという要望が、実は立ち入った御意見としてはございます。大蔵省まで出していくということについて積極的に反対はないというように私は受けとめております。その点につきましてどこまで要望にこたえることができるのか、あるいは投資判断上からしてその要望にこたえることができないのであるか、これは今後私どもは慎重に検討してまいりたいと思っておるところでございます。いまこの際、この点は簡素化するとかしないとかということは実はまだ決しかねておる状態でございます。
  187. 小林政子

    ○小林(政)委員 貸借対照表とかあるいは損益決算書とかあるいは付属明細書、これらの問題については、これはやはり投資家にとってはきわめて重要な判断の基礎になる内容でございますけれども、これらの問題等については、やはり製造原価と同じように何らかの形で手を加えようとしているのか、それともこれらの問題についてどのように処置されようとしているのか、その点をひとつお伺いをいたしておきたいと思います。
  188. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 損益計算書並びに貸借対照表につきましては、まあいえば業種ごとに若干の違う点もございますが、おおむね業種に適用しました定型化されたひな型というものが順序としてあるわけでございまして、それにつきましては私どもは今回改正しようとは思っておりません。
  189. 小林政子

    ○小林(政)委員 何ぶんにも省令で定められている内容事項でございますので、私どもこの法案審議する場合にも、やはりその内容がどのように改正をいま準備されようとしているのか、そういう点がわかりませんと、ほんとうに責任を持った審議ということにならないわけでございます。したがってまた答弁も、そのような過程の中で、いま伺った範囲でも、正確というよりも非常にあいまいな御返答があるわけでございますけれども、企業の資産内容その他も、いま申し述べました何点かの問題につきましては、少なくとも局長が最初に言われたように、投資家保護立場に立って、現行の記載制度あるいは現行のものより後退するというようなことはないというふうに確認してよろしいですか。
  190. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 さように御了解いただきたいと思います。
  191. 小林政子

    ○小林(政)委員 いままでよりは後退しない、こういう御答弁でございますので一応了承いたしますけれども、しかし具体的な内容については、私ども手元には何ら検討する資料等がないわけでございます。どのように省令で改正をしようとするかというようなことについても……。こういうようなことでは、国会審議を行なう場合に、一体これでいいだろうかと大きな疑問を持つわけでございますけれども、局長はこれらの問題について、先般も阿部委員から同じような意見が出ておりましたけれども、具体的にこのような審議の重要な中身の問題が省令できめられており、しかもそれが資料としても国会に提出されてない、こういうあり方について、基本的にはどうお考えになるのか、この点についてお伺いをしておきたいと思います。
  192. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 現在の法体系は、御案内のとおり、法律では、営業及び経理の状況その他公益または投資家保護に適当と認める事項大蔵省令で定めるもの、こういうことを踏襲しているわけであります。大体そういう様式とか明細とか申しますものは、これは法律事項と申しますよりは省令、政令事項であるということがむしろ法律体系としては自然、すなおではないかというふうに考えておりますし、今回もその点については全く同様に考えております。ただ私どもとしましては、商取審の議論もございましたし、省令にわたることについての議論もございましたから、その点を率直に申し上げておりますし、また本委員会におきまして省令事項にわたりましての国会の皆さん方の御意見というものにつきましては十分に尊重いたしまして省令を定めてまいりたいと思いますので、その点はひとつ御信頼いただきたいと思う次第でございます。
  193. 小林政子

    ○小林(政)委員 いまの御答弁では、私どもその内容が、具体的に審議の対象が明らかにならないという中で審議をしなければならないということになりますので、それはもうすべて役人にまかしてくれ、こういう方向での法案だけつくってくれればその内容は、あとはもう全部いわゆる役人がやるんだといえば、全くそれは情勢が、一方的に相当の権限を持ってやるということになるのではないだろうか。まして今回のような罰則まで伴うような法案の中身の具体的な問題等にも触れるわけでございますから、この点については、やはり国会審議あり方というものについてはもっと慎重な態勢で資料等を十分委員会等にも出してもらうような、そういうことを強く要望をいたしておきたいと思います。  私は、いままで述べてまいりました投資家保護の問題についても、いまの御答弁では筋論としても非常に納得できないわけでございます。たとえば昭和二十二年の証券取引法が初めて国会に提案をされましたときの提案理由を見てみますと、「本制度を設ける趣旨は、投資家株式または社債の発行会社の事業計画、資産の状況等に関する正確な資料を提供し、投資家の判断と責任とにおいて、証券投資ができるようにしようとすることにあるのであります。」このように述べられておりますし、翌年二十三年の三月に証取法改正案が出されておりますけれども、そのときの提案理由の説明を見ましても、「有価証券募集または売出の届出に関する規定改正であります。有価証券の届出制度は、有価証券発行に際してその詳細かつ正確な資料を政府に提出させ、投資家に判断の資料を与え、容易かつ安全に証券投資ができるようにする制度であります」、このように提案理由が述べられているわけでございます。私は、本来このようであった制度を、今回投資家立場に立ってということを前提にしながらも、記載内容等簡略化をはかっていく、あるいはまた合理化ということもいわれておりますけれども、これはむしろ逆行するものではないだろうか。当時証券法が制定され、そして政府が説明していた点から考えてもこのような行き方は逆行するものではないだろうか、このように考えます。国民がこの記載内容の合理化、簡略化という点について十分納得をするような御答弁をもう一度願いたいと思います。
  194. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 今回の改正案は、御承知のとおり、相当流通していながら毎事業年度有価証券報告書を提出しておりませんでした会社に、新たに有価証券報告書提出義務を課するということ、そのほかに、一年決算会社につきましては半年間の営業及び経理の状況を報告させるということでございます。そうなりますと、従来のこの体系からいたしますと、従来はまず増資の際の有価証券届出書という制度がございまして、その届出書を要したために、届出書を出した会社だけがその後有価証券報告書を出していくということになっておりました。したがって有価証券届出書から始まったわけでございます。ところが今回は、投資者の判断が、増資の際ももちろんでございますが、むしろ日々多く流通しておる、そういうところにあるわけでございます。したがいまして、流通面に重きを置いた有価証券報告書改正、範囲を拡大する、二回に開示をふやすということが今回の法律改正の眼目でございます。さようなことからいたしまして、有価証券報告書につきましては、先ほど申しましたように、中身が重複しておりますとか、その明細がありましてかえって不要なところのためにいたずらにページ数を多くしておるとかいうことがあれば、それは投資家判断から見ましても、差しつかえない範囲内において簡略化するということはやっていいと思いますが、むしろ合理化に重点を置きまして、投資家判断上必要な事項で漏れておるもの、不十分なものを、子会社財務諸表の添付をはじめ合理化をはかっていくということに重点がございます。反面、有価証券届出書につきましては、有価証券報告書が出ております会社の場合はいたずらにその届出書がダブるわけでございますので、これは目論見書というものの中身を充実していこう。これは投資家にわかりやすいように、あるいは図表でもって示すとか、そういうようなわかりやすい、くふうした――簡略化ではございません、くふうをこらしてわかりやすくしていこうということであるわけでございまして、ただいま小林委員がお読みになりました二十二年、二十三年の提案理由にございますところのディスクロージャー制度の持っている趣旨というものを、私どもとしては今回もより充実、拡充していこうとこそすれ、決してそれを廃棄しようということは毛頭考えていない次第でございます。
  195. 小林政子

    ○小林(政)委員 先ほど来から、簡素化、合理化の内容について、より投資家にとってわかりやすいものという説明でございますけれども、あるいはまた外国との関係でいろいろな関係が出てきて、あまり詳細なものについては云々というお話もございましたけれども、大企業の収益の実態、こういったようなものについてはむしろ最近は国民の中にわかりにくくなってきているのではないだろうか。公害企業の問題等一つ取り上げてみましても、あるいはまた消費者団体などがカラーテレビの運動をずっと盛り上げておりますけれども、このような中でも企業が経営の秘密というようなことをたてにとって、なかなかその経営の実態、財政の実態というような収益の状況、こういったようなものについては、むしろ国民の目からは、だんだんと複雑になっていけばいくほど多く隠されていって、そしてむしろこれは一般の人たちの中からも暗黒のジャングルの中に迷い込むような、こういう複雑な状況だというようなことすらいわれているのはそういう傾向が強まってきておるからであります。まして簡素化、合理化という、そういう名のもとに、投資家にとっては唯一の正しい判断の基礎であり、そしてまたその基準ともなります記載項目につきましては、少なくともいままでの状態を後退は絶対しない、そしてむしろより改善の方向が打ち出されるというようなことをどうしても今回とっていく必要があるんではないだろうか、このように考えますが、その点についてもう一度御答弁をいただきたいと思います。
  196. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 繰り返して申しますように、いたずらに企業の御都合主義に応ずるという気持ちは毛頭ございません。あくまでも今回の改正趣旨を充実するということで、記載内容、様式につきましても、投資家の判断上必要だ、重要だという点を中心にいたしまして改善すべき点を改善していくという方向でございます。
  197. 小林政子

    ○小林(政)委員 次に、私先ほど省令の問題について申しましたけれども、やはりこれは要望として、第五条あるいは第二十四条、第十三条など、いずれもこれは届出書やあるいは報告書、目論見書等のその中身の問題について、どう改正するのかという、そういう点についても資料が出ていない、こういう中でいま審議が行なわれているということは、これは私はやはり責任を持った審議というものが行なえない、このようにはっきりと申し上げると同時に、また具体的な考え方や、これをどうしようとするのかという点についても、より明細に委員会に反映してもらえなければ責任を持った審議というものを行なうことができないと思います。もしこのような形で、すべてを省令だ、政令だということできめていくのであれば、それこそ私は行政独善だといっても言い過ぎではないんじゃないか、このような感すら強く持っておりますので、今後これらの点についてひとつ十分な資料の提出を要求をいたしたいと思います。  次に、公開買い付けの問題についてお伺いをいたします。  公開買い付けとは、いままでも各委員からも御意見が出ておりましたとおり、主として会社の支配権、これの取得を目的として、有価証券市場外で不特定多数の株主から株式を買い付けていく、これが公開買い付け制度でございます。今回、この株の取得によって他の会社の支配をしようとすることを主たる目的とする、いわゆるこのような公開買い付け制度、こういうものをあえてここで法制化されたわけでございますけれども、はたしてこれによって外資の会社乗っ取りとかあるいは支配というようなものを防ぐことが完全にできるというふうにお考えになっているのであるかどうか。まずこの点についてお伺いをいたしたいと思います。
  198. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 公開買い付け制度の創設は、決してこの方法による買い付けを禁止してしまうという趣旨ではございません。むしろ現在は何らのルールもないわけであります。あすにでも自由かってなこういう方式が行なわれるかもしれないのであります。あるいはまた、これを禁止いたしますと、逆に、その他の投資家にとって、あるいは国民経済にとって、証券市場にとって、望ましくない方法による買い占めということが行なわれるところに追い込むおそれもあるのであります。その辺のことを考慮いたしまして、投資家保護市場秩序の維持というふうな観点から、所要のルールをつくっておくことが望ましいと考えたわけであります。もちろんその際も、外資からのこういう買い付けということが、実際問題としては当面あるかもしれないということを考えましたけれども、これを公開することによりまして、わが国民の株主個々が自主的に、また対象となったわが用企業が株主に訴えることによりまして、公正な判断のもとに、わが国の企業なら企業を守るという判断が出ると思うのであります。これを証券取引法の場で禁止してしまうということはとうていできませず、またあまりにもこういった方法をとれなくなるような程度にまできびしくしてしまうということは、かえって好ましくない影響わが国経済に起こす、かように判断したわけでございます。
  199. 小林政子

    ○小林(政)委員 このような制度を今回取り入れたということによっても、国内企業の中でも大企業が競争相手の株式の買い占めをやる、こういった事態というものが当然予想をされるわけでございますけれども、これらの今後の見通しといいますか、方向などについてはどのようにお考えになっているのか、お伺いをいたしたいと思います。
  200. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 国内外を使い分けておりませんから、わが国ではこういった方式による企業の合体、集団化というものは、例は、慣例はなかったわけでありまするが、今後はこういう方式による企業の合体、連合ということも可能性はあろうと思います。ただその場合、けさほど澁谷参考人からの意見開陳もございましたけれどもわが国内におきましてはどちらかと申しますと、買い占めをしようとする側と相手方との間で事前の了解なり話し合いが行なわれまして、そしてまあ、いえば合併でもしていいのですが、合併の手続はいろいろと繁雑であるとか負担があるといったようなことからして、この方法で株主にぶっつけていくことが多く行なわれるのではないか。現にイギリスの実例を見ますと、こういった方式による買い付けの申し込みが年間数百件あるのでございますが、そのうち成功している事例は五、六十件、数十件でございまして、その中身は、ほとんど両当事者間におきましてあらかじめ話し合いがつきまして、その上に行なわれる場合であるように実例から見られます。そういうことを考えますと、イギリスでは、むしろイギリス国内において企業の合併にかわるべき提携の方法としてこれが用いられておるということに思われるわけでありまして、わが国の場合も、将来の国内の姿といたしましてはさようなことが想定される、かように考えます。
  201. 小林政子

    ○小林(政)委員 株の買い占めということが、一応制度的にもルール的にも法的にここで切り開かれたといいますか、ということになりますと、今度の公開買い付け制度というのが、一部ではやはり持ち株会社への第一歩に移行していくというような心配がいろいろと取りざたを新聞などでもされているようでございます。私はこの点については、やはり私の単なる憶測というようなことだけではなくて、現に八月二十六日の日本経済新聞に載っておりましたけれども、経団連の産業政策委員会、この独禁法の研究会の中間報告が載っておったわけでございますが、その中で、商法とか証取法、税制等の一連の関連の法規の改正を行なって、そうしてそのあとで独禁法第九条、いわゆる持ち株会社への禁止の条項等についても改正をすべきであるということが中間報告として新聞に載っておったことを考えますと、この点についてはやはり非常に重大な内容を持つのではないかという危惧を深めておりますが、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  202. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 私ども証取法改正としてこの問題を出しましたときには、御心配のような、将来独占禁止法の持ち株禁止規定を緩和する、そのための一つの環境づくりと申しますか、手段を提供すると申しますか、そういうことは毛頭念頭にございません。また、この方式によらなくても、株式を取得するあるいは持ち合うということは、もちろん相対取引その他市場取引を通じまして自由に行なえるところでございます。むしろこの方式をオープンすることによりまして、独禁法の違反がないかどうかということを公の前に出すことになりますので、この隠れたる株式取得が先行することに比べまして、一そう独禁法の監視上からは目を光らせやすい、こういう効用毛あるかと存じます。いずれにいたしましても、独禁法との関係は一切この立法趣旨からは念頭になかったわけでございます。
  203. 小林政子

    ○小林(政)委員 その点につきましてはちょっと時間がございませんので、いま局長がそうおっしゃいましたけれども、決してそのような心配がないという点についてはまだ私も納得ができませんけれども意見だけを申し述べておきたいと思います。  最後に、証券取引市場の最近の地方の取引高と申しますか、こういったようなものが、情報化の進んできている中で中央に集中していくという形の中で、前にも神戸証券取引所が閉鎖をいたしておりますけれども、このような問題等が非常に強まってきているのではないかという点と同時に、具体的には昭和四十二年の神戸証券取引所の閉鎖、ここでは会員の人たち、いわゆる証券会社は大阪証券取引所に加入をするという形で、これは大蔵省の行政指導だと思いますけれども、そのような形で処理がされておりますが、従業員に対しては事前に何の連絡もなかった。そうして取引所の閉鎖というようなものを全く知らされておらなかったし、その日の新聞によって取引所の閉鎖というものを知ったというような、こういう状況のもとで全員解雇が行なわれたことは御存じだろうと思います。私は、このように解雇された、取引所で働いておりました従業員に対して、大蔵省証券会社とともに何らかの対策を真剣に行政指導の面で行なうべきではなかっただろうか、このように考える。と同時に、閉鎖を許可した大蔵省が、その当時の責任についてどのような見解を持っていられるのか、ひとつお伺いをいたしたい。  と同時に、時間がございませんので、現在、それから約三年の月日が経過をいたしておりますけれども、いまだにまだ裁判などによって、大阪証券取引所に就職させることを要求している従業員の方々がおられます。このような要求に対して、大蔵省責任を持ってこれを実現させるように努力をお願いをしたいと思いますが、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  204. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 取引所の設立は、法律上、その会員たらんとする人たちが設立をきめまして、大蔵大臣の認可を求めていく、こういうことでございます。神戸証券取引所は確かに三、四年前に解散されたわけでございます。しかし、これはさような会員が設立し、また会員が解散する、こういうことを発議するわけでございまして、その当時大蔵省が行政指導あるいは強制的に指導してということではございません。ただ、認可という問題がございますために大蔵省に認可を求めてきた、これが認可されたということでございます。その後、各地の取引所がございますけれども、取引のウエートから申しますと、御懸念のようにだんだんそのウエートは減っておるという点もございますが、ただ、地場産業会社に対しまして適切な上場の機会を与えるというような、地方的な存在理由ということは否定できませんので、私といたしましては、今後また引き続きそういう閉鎖問題が起こってくるというふうには予想は立てていないわけでございます。  なお、投資家保護という点から申しまして、事実問題といたしまして、東京に取引が非常に集中しているという事実もございます。東京の市場の情報ができるだけ早く地方まで伝達されるということが望ましいわけでございますので、別途にその機械化ということで、情報の伝達につきまして、東京証券取引所を中心にして、目下いろいろ検討を進めている段階でございます。  なお、後段の問題でございますが、私どもといたしましても、この訴訟問題で数年間争っているということはまことに残念なことに存じております。私どもも近畿財務局を通じましていろいろその間の実情を聞いておりますし、またこの取引所なりに対しましても、できれば円満な解決はできないものかという関心を持って見ておりますけれども、事柄がなお本訴という訴訟問題もございますし、また当事者マターという問題もございますので、非常に関心を持ちながら、直接関与するということは避けておるわけでございますが、何とか当事者間の円満なる理解によりまして、事態がすみやかに解決されますことを心から期待しておる次第でございます。
  205. 小林政子

    ○小林(政)委員 以上で終わります。
  206. 毛利松平

    毛利委員長 次回は、明十日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開くこととして、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十四分散会