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澁谷参考人 澁谷健一でございます。
今回の
証券取引法の一部を
改正する
法律案につきまして、
産業界の
立場から
意見を申し述べたいと存じます。
不肖私は、
大蔵省の
証券取引審議会の
委員といたしまして、
改正案の
審議にも参画いたしてまいりました。
経済界としても経団連で
意見を取りまとめまして、
審議会におきまして逐一、
改正原案につきまして種々の
意見を申し上げた次第でございます。これらの
産業界の
意見はおおむね今回の
改正法案に取り入れられておりまして、大筋といたしまして、現在の
日本経済の
実情に合致した適切な
改正であると考えておる次第でございます。
まず第一に、
企業財務内容の
開示制度につきまして、従来の
有価証券届け出会社のほかに、
取引所上場会社及び
証券業協会に登録されております
店頭銘柄の
会社につきましても、
届け出、
報告制度の対象にされましたことは適切であると考えております。また、
投資家保護という
観点から適切な
企業財務内容の
公開が必要でありますが、
公認会計士監査制度につきましては、今回の
証取法改正案のごとく、実質上
株式を
公開している
会社に限って
監査を義務づけられましたことは、
制度の
趣旨に合致しておりまして、妥当と考えておる次第でございます。
第二に、
有価証券届出書の
提出基準につきまして、
有価証券の
募集・
売り出し価額の
総額が一億円以上の
会社に改められました点も、
貨幣価値の変動並びに
時価発行増資の普及してまいりました現在、妥当であると考えます。また、
時価発行と
額面発行とを分けて
規定し、
権利落ちの生ずる
額面発行につきましては、
権利落ち前に
届出書の効力が発生するように
措置されましたことも必要な
改正であると賛成いたす次第でございます。一方、
株価安定操作が従来あまり活用されておりませんでしたが、
時価発行に
関連しまして、これを利用しやすくするように
政令改正が考えられておるようでありまして、
産業界としましては、
時価発行による
資金調達がスムーズに行なわれるように望んでいる際でもありまして、この点も
時宜を得た
改正であると存ずる次第でございます。
ところで、現在の日本の
企業財務内容の
公開制度は、米国の例にならって、戦後に取り入れられたものでありますが、日本では米国よりもさらに詳細な
財務内容の
公開をいたしておりまして、これでは日本企業の国際
競争上差しつかえると考えております。あまり詳細な
企業内容の
公開は、
一般投資家にとりましては、詳し過ぎるためにかえってわかりにくい複雑なものとなっているという欠点もございます。今回の
改正にあたって、政省令におきまして、
有価証券届出書、目論見書、
有価証券報告書等の簡素合理化が十分に行なわれまして、諸
外国並みになることを期待しておる次第でございます。
反面、現状におきまして、欧米諸国に比べて日本の企業がおくれをとっておりますのは
連結財務諸表を
作成していない点でございます。つまり、親
会社、子
会社の
財務諸表を連結して、親子
会社を一体として
決算をしなければ企業本来の損益が出ないわけでありますが、日本ではごく一部の
会社を除きましてはこれが行なわれておらないわけでございます。親
会社、子
会社は別々に
決算をいたしております。本来、親子
会社間の取引は本支店間の取引に類似するものでございまして、この間の取引に生じました収益に対して、外部に売り上げて初めて
実現したものと同じ収益と同様に扱われまして、これに課税が行なわれております現在の
制度は、企業を疲弊させることになりまして、国際
競争の上からも問題があろうかと考えます。そこで、欧米のごとく、まず税法の上で連結納税
制度を採用しまして、かような親子
会社間の売買収益には課税をしないよう
措置せられるとともに、
商法、
証券取引法におきましても税法と軌を一にして、
連結財務諸表制度を採用される必要があるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
しかし、現在直ちにその
実現を期待することは困難でありますので、子
会社の
決算書を添付した
報告書を大蔵大臣や
証券取引所に提出することに今回の
改正ではなるようであります。この場合、子
会社が数多くある
大会社の場合には、添付される子
会社の
決算書が非常に多くなりまして、あまり
投資家の便宜にはならないのではないかと考えられますので、
大蔵省令で特に重要な子
会社に限定されるよう要望申し上げたいと存ずる次第でございます。
いま一つ、欧米と日本とで著しく異なっております点は、一年
決算と六カ月
決算という違いであります。欧米では一年
決算が通例でありますが、日本の
大会社の多くは六カ月
決算であります。これを一年
決算に切りかえるためには、中間配当を取締役会の決議のみでできるように
措置してもらう必要があると考えております。もっともこの問題は
商法の問題でありますが、私
どもとしましては、このような
商法改正について別途要望いたしておる次第でございます。今回の
証券取引法改正案では、一年
決算の
会社に対し半期
報告書の提出を義務づけることになっておりますが、企業といたしましては、
制度の
趣旨に照らして、簡略な中間概況
報告書を
公開することにはやぶさかではありません。しかし、あまり詳細な
内容の半期
報告書を義務づけられますと、季節変動など、上期、下期の収益のアンバランスな日本企業にとりましては一年
決算のメリットが失われます上に、
投資家にも誤解を与えます。そこで、半期
報告書には売り上げ高とか生産高、契約高、受注高、経費など、収益を除いた
営業活動の事実を記載するにとどめるようぜひお願いいたしたいと考えておる次第でございます。
次に、
株式公開買い付け制度につきましては、基本的には
規制すべきものと考えております。と申しますのは、ひそかに
株式の買い占めが行なわれまして、株価がその
影響で上昇しているのか、それとも
会社の業績がよろしいので上昇しているのか、外部から見たのみでは判断できませんが、かような
公開買い付けの
届け出制を施行されますと原因がはっきりすると思われますので、
投資家保護としてよろしいかと思います。
産業界としましては、資本の
自由化に対処しまして、外資による
株式公開買い付けが野方図に行なわれますと混乱を生じますので、かような
届け出制が少なくとも必要であると考え、今回の
証取法改正に取り入れられることを要望いたしたわけでございます。
なお、国民経済上好ましくない買い占めに対しましては、
証取法でこれを
規制できるよう
措置されることを
産業界で要望があったわけでありますが、
投資家保護をたてまえとする
証取法に産業政策を導入することは困難のようでありますので、別の法域におきまして何らかの対策がとられるよう要望いたしておる次第でございます。
以上、要点につきまして簡単に
意見を申し述べさしていただきました。御清聴ありがとうございました。
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